1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
貿易資金特別會計法案(政府提出)
産業復興營團法案(政府提出)
恩給法臨時特例案(政府提出)
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本委員は昭和二十一年九月三十日(月曜日)議長の指名で次の通り選定された
飯國壯三郎君 小野孝君
栗原大島太郎君 栗山長次郎君
杉田馨子君 深津玉一郎君
森崎了三君 若林義孝君
亘四郎君 稻本早苗君
江部順治君 九鬼紋十郎君
白井秀吉君 寺田榮吉君
林田正治君 早稻田柳右エ門君
大矢省三君 加藤シヅエ君
島田晋作君 土井直作君
松永義雄君 山花秀雄君
川越博君 原尻束君
松本瀧藏君 安藤はつ君
大津桂一君
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十月一日(火曜日)午前十時三十分委員長理事互選の爲め次の委員が參集した
飯國壯三郎君 栗原大島太郎君
栗山長次郎君 深津玉一郎君
若林義孝君 稻本早苗君
九鬼紋十郎君 白井秀吉君
寺田榮吉君 林田正治君
大矢省三君 加藤シヅエ君
松永義雄君 川越博君
原尻束君 松本瀧藏君
安藤はつ君 大津桂一君
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〔年長者栗原大島太郎君投票管理者となる〕
昭和二十一年十月一日(火曜日)午前十時三十四分開議
出席委員
委員長 白井秀吉君
理事
栗山長次郎君 深津玉一郎君
松永義雄君 寺田榮吉君
飯國壯三郎君 栗原大島太郎君
若林義孝君 稻本早苗君
九鬼紋十郎君 林田正治君
大矢省三君 加藤シヅエ君
川越博君 原尻束君
松本瀧藏君 安藤はつ君
大津桂一君
九月三十日産業復興營團法案(政府提出)
恩給法臨時特例案(政府提出)の審査を本委員に付託された
出席國務大臣
商工大臣 星島二郎君
出席政府委員
法制局長官 入江俊郎君
内閣事務官 三橋則雄君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 野田卯一君
商工事務官 岡村武君
貿易廳長官 塚田公太君
商工事務官 和田太郎君
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本日の會議に付した議案
貿易資金特別會計法案(政府提出)
産業復興營團法案(政府提出)
恩給法臨時特例案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=0
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001・栗原大島太郎
○栗原投票管理者 先例に依りまして、私が年長の故を以て投票管理者となり、是より委員長の互選を行ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=1
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002・原尻束
○原尻委員 投票を用ひず白井秀吉君を委員長に推薦致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=2
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003・栗原大島太郎
○栗原投票管理者 原尻君の御意見に御異議はありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=3
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004・栗原大島太郎
○栗原投票管理者 御異議なきものと認めます、仍て白井秀吉君が、委員長に御當選に相成りました、委員長白井秀吉君に本席を讓ります
〔拍手〕
〔白井秀吉君委員長席に着く〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=4
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005・白井秀吉
○白井委員長 一言御挨拶を申上げます、皆樣方の御推薦に依りまして私が委員長の席を汚すことに相成りました、何分諸事不慣れの者でございますから、皆樣方の深甚なる御助力を切に御願ひ致します、引續き理事の互選を行ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=5
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006・原尻束
○原尻委員 理事は其の數を四名とし、委員長に於て御指名あらんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=6
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007・白井秀吉
○白井委員長 原尻君の御意見に御異議はありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=7
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008・白井秀吉
○白井委員長 御異議なきものと認めます、仍て私より御指名申上げます
栗山長次郎君 深津玉一郎君
寺田榮吉君 松永義雄君
を理事に指名申上げます
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009・白井秀吉
○白井委員長 是より引續き會議を開きます、本委員會に付託せられました議案は、貿易資金特別會計法案、産業復興營團法案、恩給法臨時特例案の三案であります、本日より右三案を一括して議題に供することに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=9
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010・白井秀吉
○白井委員長 御異議なしと認めます、先づ政府當局より提案の説明を願ひます──大藏政務次官上塚司君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=10
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011・上塚司
○上塚政府委員 貿易資金特別會計法案提出の理由に付きましては、本會議に於て大藏大臣より申上げました通りでありますが、此の際更に其の理由を御説明申上げたいと存じます
從來政府で行つて參りました貿易に關する經理に付きましては、昨年十二月に貿易資金設置に關する法律を制定致し、之に依つて輸出及び輸入の決濟に關する資金を設け、此の資金の運用として輸出物資の買入及び輸入物資の賣拂等を行ひ、之に伴つて生ずる歳入、歳出は便宜の措置として之を爲替交易調整特別會計の所屬と致して參つたのでありますが、今囘貿易に關する經理を一層明確にすると共に、旁旁其の運營を一層圓滑にするのを適當と認めまして、現行の貿易資金設置に關する法律を廢止し、新たに獨立の特別會計を設置して經理致すのを適當と認めまして、此の法律案を提出致しました次第であります、何卒御審議の上速かに御贊成あらんことを御願ひ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=11
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012・白井秀吉
○白井委員長 次に恩給法の臨時特例案に付て御説明を願ひます──法制局長官発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=12
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013・入江俊郎
○入江政府委員 只今議題となりました恩給法の臨時特例に關する法律案の提案理由に付きまして、昨日本會議に於きまして其の大略を御説明申上げましたが、稍稍詳細に更に申上げたいと存じます
此の法律に依りまして恩給法に特例を設けようと致します事柄は大體三つございます、先づ第一の點は、本法案第一條及び第三條でありまして、官吏俸給令の改正に依つて本俸が増額致しますけれども、一般恩給金額竝に所謂國庫納金の額に付きましては、原則として從來の程度に止めようと云ふ點でございます、御承知のやうに恩給法に於きましては、一般に恩給の金額は退職當時の俸給を基準として算定せられることになつて居ります、又公務員は在職中の俸給を基準として算出した若干の金額を俸給給與者に納付し、國庫又は地方經濟は同樣にして算出した金額を、互ひに他の經濟に納付又は交付することになつて居るのでありますが、今囘の官吏俸給令の改正の結果、從來臨時手當とか物價手當とかの名目で以て支給して居りましたものを、皆本俸の名目として之を組入れることに致しましたので、俸給と云ふ名目で以て支給される額は大幅に増加されることになつたのであります、若し之を現行法の儘にして置きますと、當然に恩給金額及び納金、交付金等の額が増加を來たす譯であります、けれども財政的見地其の他の點から色々考へますと、恩給金額を俸給の増加に伴つて今直ちに増額すると云ふことは、どうも適當と考へられませぬので、是等は今後の情勢と睨み合せまして速かに檢討を進めることとして、此の際としては現行程度の金額を支給するに止めることと致したのであります、是が爲に退職當時の俸給に對應する假定俸給と云ふものを設けまして、之を恩給金額算出の基礎とすることと致したのであります、此の法律の第三條の規定が是であります、今も申します通り、此の際と致しましては、恩給金額は後で申します増加恩給、傷病年金及び公務傷病死亡者の遺族扶助料に付きまして、若干増額致します外は、一般的には改訂を致しませぬ、是が爲に眞に生活に難澁する人々に對しましては、一般の社會救濟若しくは生活保護の方法に依つて對處する外はないやうに考へて居るのであります、其の方面に付きまして恩給受給者とさうでない者との差別を問はず、政府としては十分努力をしたいと考へて居るのであります
それから同樣に公務員の納金、國庫又は地方經濟の納付金又は交付金に付きましても、現行の程度を維持することを目途と致しまして、是等と俸給に對する比率を引下げることにして居ります、唯警察監獄職員及び國民學校の教職員に付きましては、給與が改善せられましたので、そこで國庫納金に關する從來の一般文官との差等と云ふものを撤廢して、是等の方々に付きましても一般文官並で措置をすることと致して居ります、此の法律案の第一條は今申上げましたやうな點に關する規定でございます
第二の改正の點は、公務傷病關係の恩給、即ち増加恩給、傷病年金及び公務傷病に起因して死亡した者の遺族に給する扶助料の増額の點であります、曩に申しましたやうに、恩給の金額は原則として一般的には改訂せず、現行通りに据置く外はないと考へて居るのでありますが、公務の爲め傷病に殪れ、退職致しました者及び公務に起因して死亡した者の遺族に付きましては、只今の社會情勢から見まして、一般の恩給受給者に比較して其の生活上の苦痛は特に甚だしいと考へられます、假に恩給金額が一般的に改訂せられる時期が近くあると致しましても、其の時まで猶豫致しますことは、洵に忍び難い事情でありますから、是等の恩給に限りまして、特に臨時増額の措置を講ずることと致したのであります、唯其の増額をどの程度にするのが適當であるかと云ふことは、是は極めて困難な問題でありますが、差當り勞働能力を全く喪失したと認められまする増加恩給第一項症の最下位に屬する者を標準と致しまして、是等の者が生活に支障を來すことのない程度の金額を支給することを目途として研究した結果、大體現行支給額の三倍半程度に増額することと致したのであります、尚ほ此の増額は昭和二十一年七月一日以後に給與事由の生じた者に付てばかりでなく、從來から傷病關係の恩給を受けて居ります者にも及ぼす趣旨でございます、此の法案の第四條乃至第六條と附則第八條の規定が其の趣旨を規定してございます
最後の第三の改正點は、所謂多額所得者の恩給停止に關するものであります、恩給法に依りますと、恩給金額が年額千圓以上で、恩給外の所得の年額が四千圓を超ゆる者に付きましては、其の合算額の多寡に應じて、恩給年額の内一定の割合の金額を停止することになつて居るのでありますが、恩給外の所得の調査は全國の税務署で之を行ふことになつて居ります關係上、綜合所得税の免税點以下の所得者に付きましては、事實上調査が極めて困難であります、現行恩給法に於きまして恩給外の所得の年額最低を四千圓としてありますのは、綜合所得税の免税點が三千圓であることに照應するのでありますが、最近綜合所得税の免税點が三千圓から一萬圓に引上げられることになりました爲に、恩給法の規定に依りますと、四千圓以上一萬圓未滿の所得者に付きましては、税務署で調査をして、戴くと云ふ關係上、其の調査が甚だ困難であり、不可能に近い状態となつたのであります、斯かる技術的困難以外にも、一體免税點の引上を必要とすると云ふやうな社會的な實質上の理由から考へましても、恩給を停止せられる所謂高額所得者の範圍に付きましても、檢討を加へることが適當であると考へまして、そこで今囘此の恩給停止は、恩給外の所得が一萬圓を超ゆる者に付てのみ行ふことと致した次第でありまして、此の法律案の第二條が其の點に關する規定でありまして、尚ほ此の特例は官吏の給與改善等との關係と睨み合ひまして、本年七月分以降の支給から直ちに適用することと致したいと考へて居ります、以上の外尚ほ多少技術的な點に付きまして細かい規定も置きましたが、細かいことは御質問に應じて御答へ致したいと存じます、何卒御審議の上御贊成あらんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=13
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014・白井秀吉
○白井委員長 引續いて産業復興營團法案の御説明を御願ひ致します──星島商工大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=14
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015・星島二郎
○星島國務大臣 産業復興營團法案の提案理由を御説明致します、産業復興營團は戰後經濟の速かな復興を圖る目的の爲に、産業設備及び資材の整備活用を圖ることを其の業務とするものであります、政府に於きまして今囘産業復興營團の設立を企圖致しましたのは、主として次の理由に基くものであります
日本經濟の現状に於きまして其の最低限度必要な民需生産の充足を圖りまする爲にも、戰災設備の復舊、老舊設備の改造、軍需産業設備の轉換乃至新規設備の建設等、産業設備の速かな充實を圖る必要があるのでありますが、是等の設備の建設又は復舊費は現状に於て異状な昂騰を示して居るのでありまして、此の變則的に値上り致して居りまする設備費を以ては、企業の將來に對する健全な見透しが立ち難いこと、事業者が一般に金融上の甚だしい梗塞に苦しんで居りますること、製品の需給の將來に對しても未だ確固とした見透しが立ち難い状況にあること等の各般の事由に依り、設備の復興、建設等に對する多額の固定資本の投下が手控へられ、自然生産の沈滯を生じて居る實状であります
右に申述べました事情の中の金融の手詰り等は、別に準備致して居りまする復興金融金庫の金融を以て解決されるのでありますが、此の外に尚ほ單なる金融助成のみを以ては解決されない幾多の問題があるのでありまして、就中金融を受けましたる場合に於て、將來の經濟變動の爲め其の辨濟が不能となるやうな虞がありまする場合は、一つの設備の増設に付て金融を受けた爲め、結局企業全體が倒壞する危險に曝される等の危惧が生じ、自然現状の如き經濟界の變動期に於きましては、必要な設備の擴充が見送られ、産業の囘復が容易に其の緒に付かぬ儘推移致して居る實情であるのであります
右の如き事情に對して、當面産業復興に必要な設備を充實して、所要の生産遂行を圖る爲には、到底之を所謂産業の自主的立直りに放任することを許さぬのでありまして、國家又は之に代る機關に於て設備を建設し、之を事業者に貸付け運營せしめて、金融を受けた場合の如く他の事情を顧慮することなく、生産の遂行に全力を盡すことを得しめ、以て生産の達成を圖ることが最も緊要であると考へる次第であります
固より右の如き施設は、國又は其の代行機關に於て設備建設に對する負擔を全面的に負ふこととなり、國の犧牲は已むを得ぬとは云へ、少からぬものであるのでありますから、産業復興營團に於て設備の建設を行ひまするものは、眞に國民經濟の復興再建に必要な場合にのみ限定されることは當然でありまして、又貸付を受ける企業に對しても、國の犧牲に於て過度の利潤を貧るが如きは、嚴に抑制せしめなければならないのでありますから、企業の正當な報酬以上のものが其の手に渡ることを防止する爲め、貸付を受ける企業の運營に付ても必要な監督を加へる方針であります
尚ほ右の如き業務は、其の性質上國に於て行ふことを適當とするとも考へられるのでありますが、日本の行政組織の實状に於て、官制及び豫算の制約等の爲め、機敏且つ自由な活動を必要とする組織を設けること實際上困難でありまして、且つ此の機關の業務が經濟界の實状に接觸すること敏活で、其の實情を取捨判斷するに、多年に亙る經濟界の權威者の手腕を借りることを要するのでありまして、是等事務の捌きより考へ、國家の必要な監督下に特別な機構として産業復興營團の設立を適當と思料致した次第であります
産業復興營團の事業として差當り著手致すべき産業部門は多々あるのでありますが、曩に申述べましたる趣旨もあり、且つ現状の日本經濟に於ける逼迫した資金と資材の實情から考へまして、差當り肥料工業設備の復興再建竝に中小炭礦に於て近代化設備の採用が遲れて居る爲め、非能率を來して居る部面に於ける設備の更新、新設を圖ることを以て最初の事業と致したいと考へる次第であります、又財閥解體等に依り大企業が倒壊した後を承けまして、中小工業の急速な生産發展を助成する必要があるのでありますが、是等の中小工業は概して設備の近代化が遲れ、技術的、經營的に行詰りとなつて居る部面が多いのでありまして、是等に對しましても必要な設備の貸付等を圖り、中小工業育成を圖りたく考へる次第であります、殊に舊軍需工場等の大きな工場建家等は、施設が完備して居ながら、之を利用するものがない實情でありますが、是等の遊休設備及び資材を産業復興營團で取得し、之を中小工業に分割貸與して新しい工場集團の設置を圖ること等は、直ちに産業復興營團の事業として實施したい考へで居る次第であります
以上申述べましたる趣旨に從ひ、茲に強力且つ清新なる國策遂行機關として、産業復興營團の設立を圖りますると共に、戰時中の機關たる産業設備營團は之を整理解散致しますることとし、茲に産業復興營團の設立及び産業設備營團解散の根據法律と致しまして、産業復興營團法案を提出致しました次第であります、何卒十分御審議の上御協贊を賜はることを切に希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=15
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016・白井秀吉
○白井委員長 是より付託三議案に對する質疑に入ることに致します、質疑は通告順に依りまして之を許します──寺田榮吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=16
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017・寺田榮吉
○寺田委員 私は貿易資金特別會計法に付て專ら御質問致したいと存じます、先づ貿易の一般に付ての若干の質問をしたいと思ふのでありますが、本日の新聞に、本年度の大體の貿易の實績或は計畫が出て居つたのであります、又昨日の本會議に於きまして、各黨から質問されましたので、多少質問に重複する點があるかも知れませぬが、まだ昨日の御答辯に盡されて居らぬ點があつたやうに思ひますので、其の點豫め御諒承願ひたいと思ひます、今後の貿易は外國との衝突を避け、又其の效率を大にする爲に高度の計畫化が必要であると思はれるのでありますが、將來日本の貿易の對象の地域、或は貿易の物資、其の生産、集荷、輸入物資の割當の方法或は數量等に關しまして、基本的な貿易の計畫に付ての御説明を先づ承はりたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=17
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018・塚田公太
○塚田政府委員 只今の御質問に御答へ致します、現在貿易は嚴重なる聯合軍司令部の管理下に於て行はれて居るのでありまして、又同時に輸出入共に或る一定の制約が置かれて居るのであります、隨て其の制約の範圍内に於て、我々は色々の計畫を立てて、行かなければならぬのでありまするが、自然今の所貿易廳としましては、特に或る一定の方針を其の儘實行すると云ふことが、多くの場合に不可能なのであります、併し先づ貿易の計畫と致しましては、過去の戰前の貿易の實績に照合しまして、輸出方面に於きましては、やはり東亞、南洋を主とした計畫を立てて居るのであります、又輸入に於きましては、主として食糧竝に原材料でありまするが、是は「アメリカ」濠洲及び「ヨーロッパ」方面ではありまするが、「ヨーロッパ」方面に於きましては、現在大した期待を持つことが出來ないのでありまして、「アメリカ」、濠洲竝に東亞を主として居るのであります、過去に於きまして東亞の占めまする貿易の實績は、輸出に於きましては大體六割乃至七割を占めて居つたのであります、又輸入に於きましては五割乃至六割を占めて居つたのでありまするが、今後運輸、船舶などの關係から、恐らくは此の程度が更に度合が殖えるのではないかと云ふやうに考へて居るのであります、又貿易商品に付きましては、主として日本は國内に於て産出する資材、原料に依りまして輸出の大本と致したい、其の次には外國から仰ぎまする原材料を以て、日本の豐富なる勞力に依りまして、之を加工化してやりたいと思ふのでありますが、現在の程度に於きましては、今御説の高度化と云ふ點に付ては、我々もさう云ふ點は十分贊成ではありまするが、之を東亞、南洋以外の方面に向ける程には進歩して居りませぬので、先づ化學工業、又機械工業に於きましては、主として東亞を主力として計畫して行きたいと思つて居るのであります、只今輸出計畫と致しましては綿絲布、次いで絹、人絹、生絲と云ふやうな纖維を主力と致しまして、それに次ぎまして機械器具、農水産物、美術工藝品、雜貨等を計畫して居るのであります、輸入に於きましては主要食糧品を主としまして、それに次ぎまして纖維原料品、更に自動車機具類、或は鉱産物、油脂類竝に肥料と云ふやうなものを主として致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=18
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019・寺田榮吉
○寺田委員 只今細かく承りましたが、大體現在までの貿易状態──今日の新聞に依りますと、本年の計畫として大體三億三千七百萬圓程の入超になると云ふ計畫が出て居るのでありますが、今まで新聞に餘り出なかつたし、資料が得られない爲に私等能く分らないのでありますが、理事會で發表されたり、或は「アメリカ」の國務省で發表されて居る所に依ると、出超であるのか入超であるのか全然分らぬと云ふ状態でありますが、どれが一番本當なのか、一つ御答へ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=19
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020・塚田公太
○塚田政府委員 只今出超であるか入超であるかと云ふ御質問でありますが、此の點は御承知の通り、只今我が國は外貨の操作「オペレーション」は許されて居らぬのでありまして、自然國内の圓で發表しまする輸入輸出の實績と申しまするものは統制價格を主としてやつて居るのであります、又「アメリカ」で上半年の「ドル」の「バランス」を發表致しましたが、是は遺憾ながら、實際我々にも今までの所分つて居らぬのであります、自然貿易の實績に付て御照會になりました場合には、貿易廳としては國内の輸出も輸入も統制價格を標準と致しましたものに依つて發表して居るのでありますが、若し御差支へなければ大體の數字を申上げても宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=20
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021・寺田榮吉
○寺田委員 出超か入超か本當の所を一つ仰しやつて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=21
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022・塚田公太
○塚田政府委員 九月十日現在に於きまして、輸出は統制價格で十六億萬圓、之にF・O・Bに致しますと更に約一割五分乃至二割の諸掛りが加はるのでありますから、自然十九億前後の金額に上るのであります、輸入に於きましては十八億八千萬圓になつて居るのでありますが、此の他に棉花が四十六萬三千俵入つて居るのであります、併し是は早晩製品にしまして出すものでありますから、此の中へは加へて居らぬのであります、其の他に米國から輸入されました食糧の中、野菜、魚肉其の他約三百萬「ポンド」のものが統制價格がはつきり決つて居りませぬ爲に、是は除外してあります、現實に申しますれば、今の棉花を考慮に入れますと、統制價格では相當多額な入超になつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=22
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023・寺田榮吉
○寺田委員 大體現在の貿易の状態は承りましたが、只今御話のやうに、現状に於ては日本の貿易機能は完全に聯合軍の手に把握されて居ると云ふことになつて居りますが、將來此の貿易の實勢が囘復された場合にも、現在の機構である貿易廳の機構と云ふものを繼續されて行くのかどうかと云ふことを、先づ御尋ねしたいのでありまして、大體我が國の貿易は、從來財閥的の機構に依つて運營されて來た、併し是が勿論今後許されないとしますると、將來どう云ふ形態になつて進めて行くのか、之に付ての政府の御考へを伺ひたいのであります、元來貿易と云ふものは、生産者と國内販賣者と貿易業者が、業種別に一貫されてさう云ふ組織を持つて行くのが建前である、是れ亦必要であると思ふのでありますが、斯う云ふ風に進んで行くのかどうか、又其の指導に付て政府が如何なる御考へを持つて居られるか、それから將來の貿易と云ひますか、其の一つに、物資のみを輸出すると云ふことに限らないで、殊に東亞の諸地域へ技術を出して行くと云ふことも一つの大きな貿易ではないかと思ふのでありますが、是からの東亞の諸地域へ、工業の建設などして技術的の「ブレーン」を供給して行く必要が非常にあるのではないか、之に付ての政府の何か御考へがあるかどうか、斯う云ふ點に付て御答へ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=23
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024・星島二郎
○星島國務大臣 仰せの通りに、やはり現在貿易が一元的に國營になつて居ります關係上から云ひましても、貿易廳自らが仕事をしないのでありますから、やはり其の繋がりと致しましては、各業種別にそれぞれ、現在の所は約七十四團體の手足がある譯でありますが、それは直接輸出入の業務を預かつて仕事をやつて居るのでありますが、併し其の業それ自體は、各國内のそれぞれの業種別團體と密接なる關聯を持つて行かなくては圓滑に行かぬだらう、斯樣に私は思つて居りますので、是は今後又ぽつぽつ設立されて行く譯でありますが、是等の點に付ては一層民間の業界と手を組合せて行くやうに仕向けなければならぬ、斯樣に思つて居ります、又將來は技術までも共に一緒に行くと云ふ所まで行かなければならぬのでありますが、殘念なる哉、まだ現在は自由でありませぬから、そこまで參りませぬけれども、併しせめて今囘賠償物資等に依りまして、若干の設備が東亞に移るやに聞いて居りますが、是等に對しましても、責任を以て、成べく數は少くして欲しいが、是非とも出て行くものに對しては、技術者も加へて完全に向ふで建設して、出來るならば向ふで居著いて、それ等を運轉するものにして差上げたい、日本が今後從來の所謂侵略的なことから目覺めて、眞の平和的建設と云ふ立場から行きますれば、そこまで考へて行く、又日本の國民の此の多い中から、優秀な「エンジニーア」をして東亞の各地に行つて貰つて、さうして共に働くと云ふ所まで理解を得て、今後平和な國の建前として進んで行きたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=24
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025・寺田榮吉
○寺田委員 只今大臣の御話に依りますと、貿易廳と云ふものは相當長期間あるだらうと云ふ御話のやうに承りましたが、其の場合に最も憂慮されるのは、例へば是は貿易廳長官も專門家であられるので勿論詳しいとは思ひますが、原棉及び綿絲で例を取りますと、綿絲二「マル」の一梱が丸公で二千三百圓、此の工費が七百二十三圓と云ふことに若し致しますと、原棉代が千五百八十圓となる、此の歩留まりを見まして、一「ピクル」に直すと、四百四十圓位になる、然るに「ニューヨーク」の相場が一「ポンド」三十七「セント」と云ふことから考へまして、是は「ベーシス」を入れて計算しましても、十五圓の爲替として、それが一「ピクル」八百七十七圓餘となると云ふ勘定になるのでありますが、此の差額が非常に莫大でありまして、四百三十七圓の差が出て來るのであります、斯う云ふ場合に、此の危險を誰が負擔して行くかと云ふことが非常に大きな問題ではないかと考へるのであります、勿論業者も生産或は其の他の面に付ては十分努力する積りでありますが、其の努力が、爲替の損失に依つて一朝にして飛んでしまふと云ふやうな危險が非常にあるではないかと云ふ感じがするのであります、貿易廳長官が非常に其の點に造詣の深い方であることを我々は幸ひとして居るのでありますが、何分お一人で、果してそれが巧く運營されるかどうかと云ふことを非常に憂慮するのであります、さう云ふ點に付て、將來の貿易廳の運營と云ふことに付てどう云ふ風にされるのか御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=25
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026・塚田公太
○塚田政府委員 初めの貿易廳が相當長期間に續いて存在して行くのではないかと云ふ御話でありましたが、只今の大臣の御説明は、貿易廳と云ふ監督機關は勿論存在しなければならぬと思ふのでありますが、所謂貿易廳が依然として業者を取扱機關として扱つて、今の商事會社のやうな形態を貿易廳の「アカウント・アンド・リスク」でやると云ふことは、出來得る限り早く止めたいと云ふやうに考へて居るのであります、自然取扱機關に對しても、他日それぞれ自由と申しますと語弊がありますが、或る程度の制約の下にやれると云ふやうな場合に、さう云ふ用意をするやうにと云ふことは、貿易廳の方からも、始終さう云ふやうな御願ひをして居るのでありまして、唯今の貿易廳は、要するに商事會社と同時に一種の行政官廳、所謂監督或は統制の官廳と二つの部面を持つて居るのでありまして、其の商事會社の部面は、他日成べく早い機會に、貿易廳としましては業者にそれぞれ業種別に運營させて行きたいと云ふやうに考へて居るのであります、併し是は果して日本政府の考へ通りに許されるかどうかに付ては、我々も全然何とも申上げ兼ねるのであります、其の點は我々としてはさう云ふやうに考へて居ると云ふだけ御諒承願ひたい
第二の點に付きまして、實は先般統制價格を決めます時に、御説の通り非常な矛盾があります、又非常な危險も包藏して居る譯でありますから、之に付ては出來るだけ早く改めたいと考へて居るのであります、併し私はまだ、御承知の通り就任日も淺いのでありまして、私の就任致しました時には、既に大體其の傾向に決り掛けて居つた時でありまして、急に御説のやうに改めることが出來なかつたのは、私としても遺憾なのでありますが、其の御趣旨は十分了解して居りますので、成べく「ニューヨーク」の相場に副うて變動して行きたい、斯う云ふやうに思つて居りますが、一方斯う云ふ物は必需物資であり、最も國民の大切な物資でありまして、今他の物價の方面からも色々論議されるのであります、果して只今申上げた通りに、早く出來るか出來ぬかに付ては今の所申上げ兼ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=26
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027・寺田榮吉
○寺田委員 それに付きまして爲替の問題は最も大きな問題になつて來ると思ふのであります、現在政府としましては、恐らく大體十五圓の爲替でおやりになつて居るだらうと云ふことは想像されるのでありますが、是も、若し或る物に付てはさうでないと云ふやうな物がありましたら、御説明を願ひたいのであります、將來の爲替をどう云ふ風にするかと云ふこと、又それに付ての研究をどう云ふ風にされて居るかと云ふことは、私は非常に大きな問題ではないかと思ふのであります、我が國で今殘るものは勞力である、勞力に依つて國を建直して行かなければならぬと云ふことも考へられるのでありますが、此の殆どの資材と云ふものは輸入に俟たなければならぬと云ふときに、將來の爲替の決定に依りまして、如何に日本の國民が努力をしましても、爲替の決め方に依つてどうなつて行くか分らないと云ふ不安を非常に感ずるのであります、又勿論それに付隨して「クレヂット」の問題はどう云ふ風に考へられて居るのか、又勿論是は將來「クレヂット」を設定しないとどうしても貿易が再開されないぢやないかと云ふことも考へられるのでありますが、其の「クレヂット」の設定に付ての御考へがあるのかどうか、さうしてそれに付て聯合軍に交渉され、或は又聯合軍がどう云ふ風に言はれて居るかと云ふことを御聽きしたいのであります、尚ほ此の「ブレトン・ウッヅ」に加入することに付きましては、昨日も大藏大臣からさう云ふ風にしたいと云ふことを承りましたが、聯合軍の方ではどう云ふ風に思つて居るか御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=27
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028・塚田公太
○塚田政府委員 爲替の點でありますが、私も長い間民間に居りまして、此の度お役所に入りました、寺田委員と全く同じ心配と考へを持つて居るのであります、でありますが、遺憾ながら此の點に付ては、未だ我が國としてどうすると云ふことも出來ないのでありまして、爲替を「オペレート」することは固く禁じられて居るのは御承知の通りであります、それでは何時から爲替の操作に依つて我々は本當の貿易が出來るかと云ふことに付きましても、やはり寺田委員と同じく、私も早く知りたい、出來るだけ早く知つて、其の用意なり準備をしなければならぬと云ふ氣持でありまして、就任早々司令部の方へ挨拶に參りまして、或る種の責任の方に其の點を伺つたのでありますが、其の方の言はれるには、要するに先づ日本は憲法其の他附屬法の制定に依り政治的安定が第一である、其の次に、金融非常措置法に依つて金融經濟的の安定が第二である、第三には賠償物資の撤去に依つて、日本の眞の生産力がどう云ふ所に落著くのかと云ふことが決まつて、初めてそこに日本の經濟の眞價が分つて來る、其の上で初めて外國が日本の圓に對する信用と言ひますか、或は圓に對する評價が出來る、それに依つて爲替の取決めも考へられるやうになるのぢやないか、何れにしてもそれはまだ先の話である、併し出來得るだけ早くそれを決めるやうな時期に達することを希望するし、又日本としても、皆が最善の努力をして、其の時期に達することに進まなければならぬと云ふことを言はれたのであります、更に其の爲替の點に付きまして、私は率直に、日本は寧ろ我々の言葉で言へば破産者である、破産者は中々日本だけの力で、今の所經濟的に自立すると云ふことは不可能ぢやないかと自分は思つて居る、自然爲替と云ふものは、或る程度の支へがなければ安定すると云ふことは或は困難なんぢやないか、向ふの言はれるやうな安定と云ふことが、若しも何等の支持がなかつたなら、或は援助がなかつたならば、何時までも斯う云ふ不安な状態が續くのぢやないかと云ふことを申したのであります、併しそれに付てははつきりした答辯がなかつたのでありますが、それに付ては聯合軍としましては出來得る限り好意を持つてやると云ふやうな意味のことが諒承出來たのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=28
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029・寺田榮吉
○寺田委員 それから、現在の貿易廳としては、U・S・C・Cの關係及び將來の行き方、又U・S・C・Cの組織、活動範圍、さう云ふものに付て御説明を願ひたいのであります、さうして、私は考へますのに、此の頃、是は噂に過ぎないのかも分らぬですが、例へば羊毛の輸入に付て、U・S・C・Cを通じなければどうしても入れさせないと云ふことの爲に、羊毛の輸入と云ふものが相當遲れて居るのぢやないかと云ふことを言ふのでありますが、例へば「イギリス」のさう云ふ貿易機關を押へたら、もつと早く羊毛が入れられるのぢやないかと云ふやうなことも考へられるのでありますが、さう云ふ點に付て、司令部との交渉、或は政府の御考へなりを聽かせて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=29
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030・塚田公太
○塚田政府委員 U・S・C・Cのことに付きましては、私もまだ詳しいことは存じて居らぬのでありますが、貿易廳が引合の相手先は「ホーリン・トレード・デヴィション」であつて「ホーリン・トレード・デヴィション」が仕事を任せて居るのがU・S・C・Cであると云ふことになつて居りますので、一方日本の方は、各業種別にそれぞれの專門家を集めた機關に任せて居りますから、是は仕事は割合に圓滑に事實運んで居るのでありまして、御承知の通り、棉の輸入の如きは、向ふから上手にやつたと云ふ感状を貰ふ位によくやつて居るのであります、でありまするが、U・S・C・Cの方は、今御話の通り一本でやつて居る關係上、其の邊にどう云ふことがありますか、さう云ふ御話の點も或はあるかも知れませぬが、それは貿易廳としては一向存じないのでありまして、唯羊毛に付きまして私共の知つて居りまする範圍は、實は先般羊毛を出來るだけ早く入れて戴きたい、殊に金融非常措置以來失業者が更に増加すると云ふ心配もあるので、出來るだけ設備を持つて居るものに對しては原料を入れて、さうして失業を少くしたいと云ふ考へで要請したのでありまするが、其の點に付て向ふの答へは、今御話のやうな點は全然なかつたのでありまするが、唯、日本は石炭が足りないのに、さう云ふものを入れてもさう早く製品が出來るかどうかと云ふ點を言はれたのであります、紡績が今是だけ計畫して居つて一向出來ないではないか、其の上又更にさう云ふものを入れても、果してお前の言ふやうに早く製品化されるかどうか、斯う云ふ點に疑問を持つて居ると云ふ程度の答へを得ただけであります、併し羊毛に付ては、私共は表向き全然存じませぬが、内面的に色々話を聞いて居りますると、司令部の方では、入れてやることに付ての盡力は致して貰つて居ることは、朧氣ながら了解出來るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=30
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031・寺田榮吉
○寺田委員 大體一般の貿易に付きましてはそれ位にしまして、條文に付て少し質問したいと思ひます、大體此の會計法は何時頃から實施されるのかと云ふことが考へられるのです、又會計法の勘定科目が五條六條なんかを見ますると、相當ややこしい勘定科目になつて居りまして、一寸分り兼ねるのであります、又此の法案は、自由に貿易を許された時には廢止されるのかどうかと云ふことに付きまして、御答へ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=31
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032・野田卯一
○野田政府委員 御答へ致します、此の特別會計法案は、議會で御協贊を經ましたならば、出來るだけ早い機會に實施したいと思ひます、それから、内容の條文を御覽下さると非常に御分りにくい點があるのでありますが、是は議會に提案致して居ります特別會計其のものを御覽願ふと、割合に分り易いと思ひます、御參考に議會に提出してあります貿易資金特別會計昭和二十一年度豫算の内容を極く簡單に申上げますと、歳入と歳出に分けて御話しますが、歳入の部分では、大體雜收入と云ふものと借入金に依つて出來て居ります、雜收入は所謂手數料──貿易廳の方で色々な手形の認承される場合の手數料と云つたやうなもの、それから其の他の極く細かい種類の延滯金の收入とか、さう云つた雜收入があるのでありますが、此の雜收入が百三十九萬二千圓程度を豫定されて居ります、それから雜收入だけでは足りませぬので、それを補ふ爲に借入金を致すことになつて居ります、此の借入金が百三萬四千圓、合計致しますと歳入の總計が二百四十二萬六千圓と云ふことになつて居ります、それに對しまして歳出の方でありますが、是は貿易運營に要する各種の經費で、大體事務費であります、即ち大體の方針と致しましては、貿易廳の關係の事務費は此の會計から出さう、勿論改訂豫算の中に入れたのがあつたのでありますが、今後殖える部分は是で賄ふ、尚ほ來年以降は、貿易廳關係の色んな資金は全部貿易資金特別會計から支出したいと考へて居ります、併しながら此の貿易資金特別會計の特色と申しますか、是は此の資金の收支だけは、先程申しましたやうに、歳入が二百四十二萬六千圓で、歳出も等額になつて居るのでありますが、極めて小さいのでありまして、最も大きな貿易資金の運營の關係は出て來ないのであります、是は別に貿易資金と云ふものがありまして、それが色んな輸出輸入品に運用されると云ふ形になつて居ります、是は別途考慮されて居ると云ふことであります
貿易資金の大體の運用の計畫がございますので、それを申上げますと、大體收入の部と支出の部に分れるのでありますが、收入の部に於きましては、此の貿易資金特別會計が只今まで出來て居ないのであります、只今は爲替交易調整特別會計と云ふ中に貿易資金を作つてやつて居るのでありますが、從來やつて居る系統を清算致しまして、此の會計に引繼ぐ譯であります、其の時に貿易資金の方へ引繼ぎますものが八千六百八十一萬三千圓と云ふので、八千六百萬圓程ある、それから是は代表的なものでありますが、輸入物資を賣拂つて此の貿易資金が收入します金があります、是が七十八億四千四百萬圓と云ふ輸入物資の賣拂代金を生ずるのであります、其の他に此の貿易資金を通じまして貿易外收支も或る程度行はれます、貿易外收支の關係で入つて來る金は、極く小さく四萬圓程度豫定されて居ります、今後是は色んな關係で増加致すかも知れませぬが、要するに貿易外收入と云ふのは外國に對する所謂送金に當る譯であります、日本の内地から外國に送金致しますと、内地の勘定として圓が入つて來る、是が收入となる譯であります、以上三項目合せまして七十九億三千百萬圓であります、それから支出の部では、輸出物資の買上費用が七十六億四千萬圓、それから輸入の諸費が九億九千九百萬圓と云ふことになつて居ります、其の外に二つばかり項目がありまして、輸出の見本の購入費が一千萬圓程あります、是は貿易關係のお金でありますが、其の外に貿易外の支出金が七千五百萬圓、是は外國から送金を受けて内地で拂出す金であります、此の四項目を合計致しますと八十七億二千四百萬圓と云ふことになるのであります、さうするとさつきの數字と食違ふことになる、其の差額が七億九千三百萬圓で、是は借入金に依つて補ふ、此の條文に五十億程度の借入金が出來ると書いてございますが、是が「マキシマム」でありまして、其の範圍で借入れる、斯う云ふ關係になつて居ります、尚ほ此の會計の特色は、貿易資金を運用致しまして、一定の外貨と圓とを對照致しまして、今度一般會計と此の會計との繋がりに依つて、若し圓で利益したと云ふやうな場合になりますと、其の利益を一般會計の方へ納める、若し損を致しますと一般會計から埋める、斯う云ふ關係になつて居るのであります、條文は非常に御分りにくいのでありますけれども、大體の趣旨はさう云ふことになつて居ります、尚ほ此の會計の存續の期間でありますが、是は貿易廳が自分でおやりになつて居る間は、斯う云ふ會計の存在の必要があるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=32
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033・寺田榮吉
○寺田委員 只今の御説明で能く分りましたが、此の日本銀行からの借入金を五十億圓に限定したと云ふことは、何か理由があるものでありますか、唯さう云ふやうに決めたものであるのか、又其の償還を一箇年以内として居るのでありますが、是も何か理由があるのかどうか、又償還をするとしますると、さう云ふ自信がおありになるのかどうか、それから只今足りない時には、歳出から補填すると云ふことも承りましたが、さうでなくても、此の一般會計は非常に赤字であると云ふ時に、さう云ふことを此處へ入れられると云ふことがどうかと思ふのでありますが、さう云ふ點に付きまして御答へ願ひたいと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=33
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034・野田卯一
○野田政府委員 借入金の方は、大體今年、來年等を見透しまして、餘程貿易が振興致しましても、此の程度の借入金の限度で賄へるだらう、是は種々な關係がございまして、絶對額の「マイナス」と云ふことでなく、「シイズナル」の關係で資金が要る場合がございます、それを十分考へまして算定した數字であります、大體來年まで是で行けるだらうと云ふ數字であります、それから一年で返すか、大體借入金がだらだらになると、會計經理上も面白くないし、其の他の關係がございますので、大體一年程度で一應借入金として其の度に償還されて行くと云ふ方が、會計の健全性を維持さして行く上に宜いと、斯う考へたのであります、尚ほ損失が出た場合に一般會計から埋めると云ふことは、今日の非常に財政多端の折から非常な問題ぢやないかと云ふ點は御尤もでございまして、是は寧ろ御心配のやうな點から、斯う云ふ制度が執られたと云ふやうに申上げたら宜しいと思ひますが、此の會計が現在爲替交易調整特別會計と云ふので、御承知の通りに對外關係で爲替を調整して居りますが、此の締切を放つて置きますと、大體の傾向として、其の中に大きな赤字が溜つてしまふと云ふのが從來の實例でございます、若し之を一定期間毎に區切つて、其の中の收支を明かにして參りますと、さう云ふ赤字が知らぬ内に巨額に溜まることを防げるのであります、大體毎年々々赤字になるか黒字になるかを調べまして、赤字になつたら一般會計から埋める、黒字になつたら一般會計が取ると云ふのは、此の會計の「ソルベンシィ」を維持すると云ふ觀點から出て居るのであります、隨て一般會計が知らぬ内に非常に大きな尻を拭つてやらなければならないやうな損失を防ぐと云ふ所に趣旨があるのであります、又毎年々々清算を致しますると、今度はもう少し其の情勢を見て行く爲には、毎月々々收支を睨んで行く、極く平凡に申しますると、輸出品を内地で高く買つて、輸入品を内地で安く賣ることを致しますと、會計は必ず赤字が出るのであります、隨ひまして、此の會計を運用する場合に、絶えず外貨と圓の「ポジション」を睨み合つて參りますと、無暗に高い値段で輸出品を買上げない、又無暗に安い値段で輸入品を賣らないと云ふことになりまして、其の間を調節する餘地が出來る、隨て知らぬ内に赤字が溜ることが妨げる、斯う云ふ所に狙ひがあるのであります、御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=34
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035・寺田榮吉
○寺田委員 最後にもう一點御尋ねしたいのでありますが、第九條に「この會計の收入支出」云々と云ふものが勅令を以て定めると云ふことになつて居りますが、勿論此の本會計の「バランス」を保持して行くと云ふことは當然であると思ひますが、之に重點を置く爲に、業者に其の損失の負擔を掛けはしないかと云ふことが、此の條文を讀みましたら一寸考へられるのですが、さう云ふ點はどうでありませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=35
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036・野田卯一
○野田政府委員 此の點に付て御説明を申上げる必要があつたのでありますが、先程一寸觸れたのでありますが、損益の計算が非常に複雜なのであります、例へば内地で年間に五十億なら五十億のものを、圓で買つて外國へ出した、それが「ドル」なら「ドル」、或は外貨に於てどれだけになつて居るか、其の外貨資金を使ひまして、内地へ輸入して賣つて居る、其の圓金額が幾らになるか、斯う云ふことを計算致しまして、それが假に五十億圓で買つたものが、向ふへ行つて三億「ドル」なら三億「ドル」と云ふ風になつて居つて、其の三億「ドル」で詰り内地へ物を輸入した場合には八十億になると云ふやうなことになりますと、そこに三十億と云ふ非常な利益が生れることになりますが、是は極く單純な場合であります、是が三億「ドル」の中、二億五千萬「ドル」しか使つて居ないとか、逆にもつと澤山使つて居るとか、色々な場合が出て參ります、さう云ふ場合に、どう云ふ風にそれを計算して、所謂帳簿上の、計算上の損益を出すかと云ふ技術上の問題は可なり複雜でございますので、さう云ふことを勅令で定めて置きたい、斯う云ふ趣旨でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=36
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037・寺田榮吉
○寺田委員 私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=37
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038・白井秀吉
○白井委員長 それでは十二時も近くなりましたから、本日は此の程度で散會致します、次會は又公報で御知らせすることに致します
午前十一時五十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00119461001&spkNum=38
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