1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
貿易資金特別會計法案(政府提出)
産業復興營團法案(政府提出)
恩給法臨時特例案(政府提出)
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昭和二十一年十月二日(水曜日)午前十時十五分開議
出席委員
委員長 白井秀吉君
理事 栗山長次郎君 理事 深津玉一郎君
理事 寺田榮吉君 理事 松永義雄君
飯國壯三郎君 小野孝君
栗原大島太郎君 森崎了三君
若林義孝君 稲本早苗君
林田正治君 早稲田柳右エ門君
大矢省三君 川越博君
原尻束君 安藤はつ君
十月一日委員九鬼紋十郎君辭任に付其の補闕として笠井重治君を議長に於て選定した
出席國務大臣
商工大臣 星島二郎君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
内閣事務官 三橋則雄君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 野田卯一君
大藏事務官 河野一之君
大藏事務官 石原周夫君
商工事務官 岡村武君
貿易廳長官 塚田公太君
商工事務官 和田太郎君
運輸政務次官 松田正一君
運輸事務官 郷野基秀君
運輸事務官 伊能繁次郎君
運輸次官 平山孝君
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本日の會議に付した議案
貿易資金特別會計法案(政府提出)
産業復興營團法案(政府提出)
恩給法臨時特例案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=0
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001・白井秀吉
○白井委員長 是より會議を開きます、前會に引續き質疑を行ひます――栗山長次郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=1
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002・栗山長次郎
○栗山委員 十數點に亙つて質問を致し、又明かにして置きたいと思ふ點がありますので、項目順に御尋ね致しますから、簡潔に御答へを願ひます、第一は輸出に關して五項目程あります、海外の資材を當込んで輸出品の製造可能なりや否や、原棉は別でありますけれども、此の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=2
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003・塚田公太
○塚田政府委員 海外の資材に依る輸出でありますが、原則として、向ふは輸出するものに付ての資材は、世界的に非常に缺乏して居るものは別でありますが、其の以外のものは供給して呉れることになつて居りまして、現實にぼつぼつ供給を受けて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=3
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004・栗山長次郎
○栗山委員 其の次には、輸出をなし得る限度まで當方に輸出入をなすことが可能であるかどうか、是は現在と將來と各各違ひませうけれども…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=4
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005・塚田公太
○塚田政府委員 向ふの過般の覺書に依りますと、日本が輸出をなし得る範圍内に於て日本の所謂最低生活を維持するに必要なもの、或は輸出に要する原材料であるとか云ふものを、總て供給することになつて居りますが、現在聯合軍司令部の好意に依りまして、事實それ以上に供給を戴いて居るやうに了解して居るのであります、殊に、昨日も一寸申上げましたやうに、國内の統制價格で貿易の「バランス」を見ても――是は或る意味に於きましては、「ドル・バランス」と何等の關係のないものでありますから、意味のないやうなものではありますが、併し、あれで見ましても、棉の積出した數量に對して日本が「デット・バランス」になつて居るのでありますが、其の點に付て輸出を特に要求して來て居らぬのであります、是は專ら司令部の好意に依るものと感謝して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=5
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006・栗山長次郎
○栗山委員 其の次は、輸出品の改良若しくは新規格品を造ると云う點でありますが、在り來りの物を竝べて、それを買つて呉れと云ふのでなくて、十分研究して、是は斯う云ふ風に改良したらどうか、斯う云ふ新しい品物が出來るぢやないかと云つたやうな、官民協力の創意、工夫、努力が望ましいのでありますが、斯う云ふ方向に付て何か御氣付なり考究なりがございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=6
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007・塚田公太
○塚田政府委員 輸出品の改良と云ふことに付きましては、輸出貿易の始まりました第一著に、貿易廳として大なる關心を拂つて居るのでありますが、現在までに出して居りまする物に付ては、大體に於て、過去に於て十分に先方に知られて居るものが大部分を占めて居るのでありますが、最近に、こちらからの輸出申請に基きまして、陶磁器の如き、或は紡績業品の如き、そろそろ雜貨關係のものも向ふから許可をして來て居るのであります、斯う云ふものに付きましては、今御説のやうに、勿論色々の機關を通しまして品質の檢査、或は生産業者の審査と云ふやうなことに付て、業者の嚴重な監督なり或は連絡を持つて居るのであります、貿易廳はそれに付て不斷の注意を拂つて居ります、又新たなる工夫を輸出品にして居るかと云ふ御質問でありますが、此の點に付きましては、既に各方面から色々貿易廳の方に對して、或は貿易廳の手足となつて働いて戴いて居る取扱機關に對して、色色な提案があるのであります、併し何分にも今まで長い間輸出品に付ての製造に關して、間が空いて居るのでありまして、其の間に相當技術の低下して居るものもありまして、斯う云ふものに付ては特に注意をして居る、私共も實は初めて聽いた話でありますが、「アメリカ」向けの陶磁器の如きは、現在の燃料の状態、或は製造家の技術などを考へますと、曾て米國に於て非常に名聲を博しましたやうな、所謂「マーク」を付けて出すことが良心的に出來ないと云ふやうな製造家すらありまして、我々としては、ああ云ふものでも技術が劣つて居るのか、燃料の關係もありますが、技術關係が劣つて居るのかと驚かされるやうな物もあるのであります、併し今まで日本の輸出品、殊に雜貨などの代名詞であるかの如き粗製濫造品でありますが、是はどうして起つたかと申しますと、要するにどちらが原因結果と言ふことは出來ませぬが、製造家と、貿易業者と、お互が非常な海外市場に於ける競爭の結果、知らず識らずに品質を落す、所謂廉賣する爲に段々品質が落ちて來たと云ふやうなことが一番大きな原因であつたのであります、それが此の度、幸か不幸か貿易が國營と云ふ一元的に貿易廳に依つて管理して居ると云ふことで、今は最も品質の低下し易い雜貨の如きに於ては、其の途の鍜練なる業者諸君の集合體である雜貨貿易に全部御願ひして、是等の製品の嚴選と云ふことに付て注意を拂つて戴いて居ります、此の競爭と云ふ點に付ては事實ないものでありますから、將來輸出貿易が自由になる時代になりました時に、出來得るだけ斯う云ふ點に付て、製造業者或は貿易業者自身の良心的製作をして戴くと云ふことに習慣付けて貰ふ、斯う云ふ風に考へて、折角努力を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=7
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008・栗山長次郎
○栗山委員 四番目には、日本品に對する海外需要の誘發の件でありますが、貿易館の活動、對外的に活動する面もありますけれども、此の前質問しました輸出と云ふことに關聯しても、對内的に十分活動の面があるだらうと思ふ、對外、對内兩面に付ての活動が望ましい、之に對しての御考へがあれば伺ひたいと思ひます
それから海外から購入員が見えて居るやうでありますが、斯う云ふ人に貿易館を通じて日本の商品を見せる、それから人が會つて説明をする、接觸は可能であるか不可能であるか、それから工場等をも見せる必要があると思ひますが、さう云ふ便宜があるかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=8
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009・塚田公太
○塚田政府委員 貿易館の問題でありますが、戰前に於ける輸出貿易は、それぞれ各種の代表者が海外に行つて、實情を能く視察して其の結果作られたと云ふやうなものが多かつたのでありますが、現在の状態に於きましては、さう云ふことが絶對に許されぬのでありまして、それを救ふ途と致しましては、貿易館の活用と云ふことが非常に重大なことになつて來たのであります、それで貿易廳としましては、交易協會に主として頼みまして、貿易館を作り、更に其の外に展示會と云ふものをやつて居るのであります、既に數囘に亙つて行ひまして、其の結果相當に效果があつたのであります、又海外から買付使節が來て居るのでありまするが、之に付きまして直接貿易廳が個々の取引をやると云ふことが許されて居らぬのでありますけれども、それ等の人達を貿易廳が案内を致しまして、各産地などに工場を見せたり、或は業者と直接話を聽いて貰つたりと云ふやうなことをやつて居りまして、其の向ふの要求して居る製品の品質とか、或は製造能力、或は製造工場の便宜と云ふやうなことに付て、直接に親しく視察をして貰つて居ると云ふことだけは實行して居るのであります、又品質の改善と云ふことに付きまして、要するに展示會或は貿易館の陳列所と云ふやうなものには、それぞれ専門の人達を御願ひしまして、あまり下らないものは出さないと云ふやうなことをして居る、のみならず相當に數量の出來るものを出すと云ふやうなことをもやつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=9
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010・栗山長次郎
○栗山委員 本會議に於ける私の質問に對して、商工大臣から、粗惡品製造業者に對しては、罰則を設けて罰すると云ふ程度までの御決意の披瀝があつたと思ひますが、是はどう云ふ風にして處理し、どう云ふ風に罰して粗惡品製造業者を戒めたら宜いか、何か御考へがありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=10
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011・塚田公太
○塚田政府委員 商工大臣の御話は我我が夙に考へて居る所でありまして、是はあまり官廳が直接關與すると云ふことを避けて、業者同士がお互が切磋琢磨して行く、お互が所謂業者道徳に依りまして、若し或る種の品種を非常に不信用なものを作つたと云ふやうな人は、將來其の貿易の仲間へ入れないと云ふやうな方法を採るやうに、取扱機關などに對しては話をして居るのであります、併しまだ具體的にどう云ふ機關が出來たと云ふことは申上げ兼ねるのであります、事實將來斯う云ふやうな粗惡品の出來易い雜貨などが出るやうになりますまでに、さう云ふ點に付て十分用意致さうと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=11
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012・栗山長次郎
○栗山委員 次には貿易運營の機構に付て四點程御尋ね致します、本會議で、商工大臣は貿易振興協議會と云ふやうなものを設けて、民間の知識經驗者、それから議員等にも參加して貰つて、精々お役所と業者、竝に國民との連繋を圖らうと云ふやうな御話がございまして、色々考へられて居るやうであります、例へば貿易委員會を作るとか、輸出協議會と云ふものが話題にある所であります、今御話を聽くと、交易協會と云ふものもあるさうでございます、さうした役所と業者と國民と一緒にして、皆の考への一番良い所を實行すると云ふやうな機關の設置でありますが、どんな風に御考へになつて居るか、さう云ふものを作つた場合、又作る際に、貿易廳との付合せをどんな風に御考へになつて居るか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=12
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013・塚田公太
○塚田政府委員 所謂日本の經濟の民主化と云ふことは、貿易廳が創立以來考へて居る所でありますが、更に四月三日の聯合軍司令部の覺書に依りまして、顧問及び參與制度と云ふものを作れと云ふ指令があつたのであります、それに依りまして人選を致して、顧問會竝に參與會と云ふものを作る、顧問は業界の有力なる經驗者、單に貿易だけでなく、貿易金融或は運送、或は船舶と云ふやうな、色々貿易に直接間接に關係ある民間の有力者を網羅しまして、實は今作りつつあるのでありますが、是の人選に付ては、司令部の方へ總て届け出て、向ふの許可を得なければならぬと云ふことになつて居ります、所謂E項G項に觸れる人はいかぬのであります、さう云ふ點に付きまして、今手續上時間を取つて居るのであります、中々「パーミッショネーア」を送つて戴けぬ方もあり、全部揃はぬのでありますが、さう云ふ風にして顧問會を作る、顧問會は貿易の根本的方針、運營と云ふことに付て、司令部の希望を申しますれば、要するに貿易廳の重役會と云ふやうなものであります、それから參與會と云ふものは、それぞれの業界の經驗者、或は學識を持つて居る方々を網羅しまして、顧問會に比べまして相當大勢の方々に御願ひをしまして、色々な貿易商品、或は業種別に御願ひを致して居るのであります、此の參與會と云ふものを作つて、直接の仕事の運營に寄與して戴くと云ふやうに考へて居ります、又輸入に付きましては、是も向ふの指令に基きまして、輸入配分委員會と云ふやうなものを各主なる輸入品に付て作れと云ふ命令であります、之には民間の經驗者を入れて、さうして最も公平に、又最も有效に配分をすると云ふやうなものを作つて居ります、又其の他に各業種別、或は商品別と云ふと餘りに細かくなりますが、主なる輸出物資別にそれぞれ協議會と云ふものを作つて居りまして、さう云ふもので輸出の振興を圖る、是は純然たる民間の團體であります、其の獻策なり提案に依りまして、貿易廳は之を參與會或は顧問會に相談して、非常に適當なものは採上げて直ちに施策しよう、さう云ふやうになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=13
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014・栗山長次郎
○栗山委員 さうすると商工大臣の言はれて居りました貿易振興協議會を御作りになる意思がないと云ふことに了承致しますが、更に御説明から、關係方面の指令に依つて總て機構は作つて居られると云ふことに了解して宜いのでありますか、重ねて御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=14
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015・塚田公太
○塚田政府委員 大臣の御話の協議會と云ふのは、まだ具體的に御相談して居らない問題であります、併し是は是非我々としても能く考究して、顧問會或は參與會以外に、さう云ふものが必要であれば作りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=15
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016・栗山長次郎
○栗山委員 此の場合やはり司令部の指令に依るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=16
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017・塚田公太
○塚田政府委員 さうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=17
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018・栗山長次郎
○栗山委員 第二は貿易廳の人事、序ながら交易營團、是はまだ解散して居らぬのでありますが、此の人事に付て、或る一系統の人のみが比較的重要な地位に就いて、他の系統の人は疎外されて居ると云ふ、臆測だかそれとも噂だかの程度だらうと思ひますけれども、内外人から時々聞くのでありますが、若しさう云ふ傾向がありますならば、是は好ましいことでないと思ひますから、御是正を願ひたいと存じますが、一寸「デリケート」な問題で御伺ひする方も何ですけれども、どんな風になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=18
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019・塚田公太
○塚田政府委員 仰せの如く、私も御答へするのが、自分を何と言ひますか、庇ふやうな形になると云ふやうなことがあつてはならぬと思ふのでありますが、貿易廳の人事に付きまして、殊に重要な地位に關する人事に付きましては、商工大臣が各方面の意向を參酌して決定されるものでありまして、さう云ふ點に付ては、或る一方からどうと云ふやうなことは絶對にないと思つて居るのであります、私が果して適任か適任でないかと云ふことは、皆さんの御判斷に任せると致しまして、まあ商工大臣と致しましては、或る一方面に偏ると云ふやうなことなく、廣く日本全體から一番適任者、さうして戰犯に掛らぬ人と云ふやうなことを、選任の方法に執つて居られるのであらうと思ひますけれども、是は商工大臣に聽いて戴かぬと、一寸私から御答へするのは…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=19
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020・栗山長次郎
○栗山委員 第三點は貿易廳と業者との關係でありますが、業者の方は代行機關として貿易廳の指揮監督の下に業務に從事して居るやうに承知して居りますが、指定された代行機關以外の所謂「アウト・サイダー」をさう云ふ風に取扱つたかどうか、今後又どう云ふ取扱をなさらうとして居られるか、其の點に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=20
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021・塚田公太
○塚田政府委員 貿易廳が現在實務を擔當して戴いて居る方々は、それぞれ業界の多年の知識經驗を持つて居られる方々の集合體でありまして、其の集合體は貿易廳から特に指圖をせずに、それぞれ業者の方で新規に作られたものもありまするし、或は既存のものを利用して戴いて居るものもあります、又それが業界と云ふ形で任意團體になつて居るものもありますし、樣式會社と云ふやうな形もあります、又組合と云ふ形もあります、此の組合はよく誤解が起るのですが、過去に於ける貿易組合法に依る組合と云ふものでは全然ないのでありまして、所謂統制機能のない組合であります、と云ふよりも、寧ろ過去の組合を使つて居るが爲に、さう云ふ誤解は受けるのですが、事實貿易廳の皆手足になつて、何等組合自體に統制なり、或は指導機構がないのであります、一切貿易廳の代りと云ふことになつて居るのであります、それ等の團體なり機關は、大體主なる業界の方々を網羅して居るのであります、でありますが、或るものは御承知の通り、第二囘の所謂業界の整備統合と云ふことの結果殘つた方々だけで組織されて居るやうなものも、極く少數ではありまするがあるのであります、さう云ふものに對しては、曾て整備統合された方々、或は統合體になつて入つて居られる方々はまだ宜いのですが、全然少しの差で入つて居られぬと云ふやうな方々もあるのであります、さう云ふ方々の不平と言ひますか、不滿が我々貿易廳の方にも時時傳へられて來ます、又直接に我々の方へ訴へて來られる方もありますので、斯う云ふ方に對しては最も公平に、業界に於て多くの人が、あの人ならば現在の機關に入れて上げて差支へないと云ふやうな方々があれば、さう云ふ方々は必ず入れて上げるやうにと云ふことになつて居るのであります、例へば絹人絹輸出組合の如きは、曾て整備統合の結果二十三組合であつたものでありまするが、是が現在恐らくは四十八位の組合になつて居るのであります、それの一つの原因は、過去に於て國内の商ひであつた、所謂移出移入であつた南樺太、朝鮮、臺灣の如きが、今度は純然たる外國になつたと云ふことで、さう云ふ所に經驗實績を持つて居られる方々が參加せられたと云ふことも有り得るのでありますが、併し其の後の社會情勢、或は業界の情勢が相當急激に變化して居りますので、事實其の當時に餘り力がなかつた人でも、現に非常に力がある方々は現實に入つて居られるのであります、又どう云ふ方法でそれでは入れるのかと云ふことになりますと、何分にもまだ輸出が盛んだと申しましても、昔に比べますと實に微々たるものでありますので、之を昔のやうな大勢の方々でやると云ふことは、事實不可能であり、又それでは能率が上がらない、却て效果が落ちると云ふ點がありますので、斯う云ふ方々の參加、加入されることに付きましては、審査委員會と云ふやうなものを、それぞれ業界の各團體機關に設けてありまして、此の業界の機關が自主的に判斷すると云ふことになつて居るのであります、併し業界が自主的に判斷すると云ふことは、どうも同業者だけであると先づ入れないと云ふことが主になり易いので、第三者を入れて、成べくそれで判斷すると云ふやうなことにして、出來るだけ公平を期して居ります、又同業者同士の摩擦を、今までは役所へ持つて來る非常に惡い習慣がありましたが、私がなりましてからは、飽くまでも自主的にやれ、こんなものを決められない人は、理事長なり組合長を辭めたらどうかと云ふことを強く申しまして、役所の指圖に依らず、全部各業界で決めるやうになつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=21
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022・栗山長次郎
○栗山委員 交易營團がまだ存在して居るやうでありますが、貿易廳と交易營團との關係、それから交易營團は所謂五%の「トンネル」手數料を取つて居るやうですが、其の點に付て御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=22
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023・岡村武
○岡村政府委員 交易營團は、御承知の通り約三年前に、當時の戰爭の段階に處しまして、交易に關する一元的なる統制を行ひまする爲に出來たものでございます、左樣な趣旨目的で作られたものである爲に、終戰と共に當然其の存在の理由を失つた譯でございます、隨て終戰後に於きましては、戰時中に遂行して居りました業務は當然一切停止を致して居るのでございます、隨て政府に代りまして貿易に關する諸般の業務を遂行すると云ふ關係は、最早ないのであります、併しながら同時に交易營團は重要物資管理營團をも吸收包攝を致して居りますので、それ等の仕事をも同時にやつて居ります、即ち重要物資の管理保管等をも併せ行つて居りました爲に、それ等の仕事は終戰後に於きましても引續きまして遂行する必要がございまして、此の方面では役所の監督下にやはり其の仕事をやつて參つて居る譯であります、もう一つの役所の命令に依つて行つて居ります仕事は、進駐軍の需品調達の仕事でございます、是等は緊急にして一時も止めることの出來ない業務でございます爲に、目下も引續きまして、清算間近い今日に於きましてやはりやつて居るのでございますが、是等の仕事は解散後に於きましても、之に代るべき機關が創設致されませぬ限りは、引續きまして之を遂行せしめる方針で、G・H・Qと連絡を取りまして、左樣な手筈で運んで居る次第でございます、左樣な次第でございますので、現在交易營團自體は、貿易業務を何等直接行つて居ないのであります、唯終戰後に於きましても總司令部の命令に依りまする輸出品の調達、集荷、納入、輸送、積出し等を行ふ爲に、之に代るべき適當な機關がございませぬ關係上、例へば「ゴム」或は錫、鉛等に致しましても、此の營團をして其の仕事を一切所擧せしめたのでございます、其の際の手數料が只今御質問の點であらうと思ひますが、是等の手數料に付きましては、貿易廳と致しまして、他の代行機關に對しまする方針と同樣の方針を以て之に臨んで居るのでございまして、過當ならざる、實費主義を主體に致しました手數料の率を決定致しまして、其の決められました手數料のみを之に交付致して居るのでございます、唯從來やつて居りました仕事に對する手數料との均衡上、多少過當と認められるものがあつたかも存ぜられませぬのでありますが、其の點は現在は既に是正されて居りまして、決して不當なる手數料、或は其の他の收入を得て居るとは存ぜられないのかと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=23
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024・栗山長次郎
○栗山委員 其の次に運用に付て御伺ひします、運用計畫と云ふものは輸出入計畫であると我々は了解致しますが、あの計畫を御立てになります根據、「データー」と云ふものは、どう云ふ所から御取りになつて御作りになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=24
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025・塚田公太
○塚田政府委員 輸出入計畫は大體に商工省の物資局に御願ひ致しまして、それぞれの關係業者に照會をしまして、或は一方貿易廳としましては、取扱機關の關係を通しまして、先づ其の計畫を立てます時の在庫品、同時にそれから以後に出來得ると豫想される生産數量、それから國内に是非保留せねばならぬもの、さう云ふものを考へまして輸出を決めるのであります、それから輸入の方面に於きましては、先刻も申しました通り、日本の最低生活を維持するに是非必要な、主として食糧でありますが、其の外に肥料或は燃料、或は原材料と云ふものをこちらから、是もやはり商工省の現局に御願ひしまして、それを作成して、さうしてそれぞれ向ふへ懇請して居るのでありますが、最近經濟安定本部が出來ましたので、是等の輸出入共に安定本部の同意を得て出すことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=25
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026・栗山長次郎
○栗山委員 見込「ストック」品の殘つたものが大分あると云ふことを聞いて居ります、はつきりした數字を存じて居りませぬが、例へば寫眞機の如きは、大分作つたものが動かずに居るやうであります、其の外にもあらうと存じますが、輸出なし得るだらうと思つて作らせる、司令部との連絡がまだ十分に行つて居らぬ當時のものが多いのでありまして、こちら側としますれば、あの當時食糧を何としても早く入れて戴かなければならぬ、それが相當の數量である、それに付ては、それが思ふやうに行かぬと云ふやうな場合に、如何やうに處理をなさるのでありますか、其の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=26
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027・塚田公太
○塚田政府委員 見込生産は、率直に申しますれば、凡ゆる物資を動員しまして輸出しなければ追付かぬ、而も數量は輸入以上になければならぬと云ふ、十月九日のあれにありました、極力國内の物資を動員しまして、輸出に稼して十分に輸出に引當てられ、又相當輸出量があつたものを作らせたのであります、所が其の後中々司令部の方の認可と言ひますか、輸出許可が思ふやうに來ないのであります、全然駄目であると否認したものならば簡單でありますが、留保されるものが非常に澤山あつて、而も其の期間が相當長いのであります、其の爲に曾て公益營團時分に見込生産をさしたものが、現實に殘つて居るのでありますが、是はそれぞれの物資關係の取扱機關が其の後著々と出來まして、昨日大臣も御話の通り、輸出入合せて――輸出が三十四億ありますが、さう云ふものに振替へまして、輸出に振當てられると云ふものが片付くやうになりつつあるのでありますが、何分にも輸出の許可と云ふものが非常に遲いものでありますから、さう云ふ點に付て我々も甚だ遺憾な點があるのでありまして、況して業者には相當不滿もあつたらうと思ひます、之に付いては貿易廳としましても相當責任を感じて善處するやうにやつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=27
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028・栗山長次郎
○栗山委員 次は特別會計法案に付て數點御尋ねを致します、國營貿易でありますから、輸出入の全豫算を對象として、所謂豫算制を執ると云ふことも一つの考へ方でありますが、此處では極く搾つて來た、謂はば帳尻と、行政費と、諸掛りと云ふやうなものだけを問題にして資金制を執られたのでありますが、豫算制を採らずして資金制にされました理由なり、經過なりに付て、簡單に御説明が願へますれば御説明を願ひます、長い御説明は期待致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=28
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029・石原周夫
○石原政府委員 資金の運用で貿易の收支を賄ふことにするか、或は歳入歳出を以て賄ふやうにするかと云ふ點に付きまして、御承知のやうに今までございました所の、昨年の暮の議會を通りました貿易資金を所謂爲替調整特別會計でやつて居りました當時のやり方は、今囘のと同じやうに資金の運用と云ふことであります、でありますから今囘の資金の運用と云ふことに付きましては、從來のやり方其の儘でやつて行く譯でありますが、今御尋ねのございました、歳入歳出と云ふものを通して貿易の收支をやると云ふことも、此の案の出來ます中間までに考へて見た譯であります、色々利害得失はあると思ふのでありますが、其の歳入歳出を執りませぬで、資金の運用と云ふことで此の案を作りました主たる理由は、資金の運用と云ふことになりますと、申すまでもなく歳入歳出に現はれない、歳入歳出に現はれると云ふことはどう云ふことになるかと申しますと、其の歳出と云ふもので收支が抑へられる、即ち歳出は歳出金額を超へて支出することは出來ない、此の會計で歳出と申しますと輸出物資を指すのでありますが、最初に考へました以上の輸出をしなければならぬと云ふ場合、歳出に計上する場合に追加豫算を増加する、或は巨額の豫備金と云ふことを致しませぬければ、價格の變動とか、數量の増加と云ふことに應へ難いと云ふことでありますが、是が歳入歳出の方を採りませぬで、資金の運用の途を採ることと致した主たる理由はそれであります、唯附加へて申上げたいことは、資金の運用と致しますと歳入歳出になりませぬ關係上、其の數字が直接豫算に載りませぬ、それに代へますのに、今囘會計法の後の條文へ付いて居ります參考表を出して、事實上議會に對しまして御審議を願ひます内容に於きましては、同じやうな詳細のものを出すと云ふ方法を執つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=29
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030・栗山長次郎
○栗山委員 其の次には輸出品に對して課税せられる積りでありますか、課税をせぬ積りでありますか、是は聊か將來に屬しますけれども、現在の御考へを承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=30
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031・石原周夫
○石原政府委員 課税の問題に付きましては、今一寸御答へ申上げ兼ねますから、後程其の筋の者から御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=31
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032・栗山長次郎
○栗山委員 第二條に「この會計の負擔で大藏省預金部又は日本銀行から借入金を」云々とありますが、大藏省預金部には、此處に掲げて居るやうな多額の金を特別資金の方へ融通するだけの餘裕がございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=32
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033・石原周夫
○石原政府委員 現在の預金部の資金の状態を見ますれば、今御質問の通りであります、現在の状況を以ちましては、此の金額を預金部から融通する餘裕はないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=33
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034・栗山長次郎
○栗山委員 預金部の餘裕がございませぬければ、勢ひ日本銀行から借入をすることになりますが、日本銀行から借入をなすと云ふことは「インフレ」の培ひになると思ひますが、其の點に付いては財務當局は如何樣に考へられて之を御立案になりましたか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=34
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035・石原周夫
○石原政府委員 仰しやいますやうに、日本銀行から直接に資金を放出致します點に付きましては、それだけ直接な「インフレ」と申しますか、通貨の増出となる點は仰しやいます通りであります、併しながら此の借入金の性質と云ふものは、輸出と輸入とが自らとんとんになることを一應の目標としてやつて居ります關係上、常時何と申しますか、運轉資金的なものは殘ると考へられるのですが、一時的に相當多く輸出超過と云ふやうな状態で借入金が殖えましても、是は必ずしもさう長期に亙るものとは考へて居りませぬ、唯併しながら、殘高に當ります運轉資金の運用に付きましては、日本銀行からそれだけ資金の放出になることは御説の通りであります、是は今申上げるのは早いと思ふのでありますが、御承知のやうな資金の状況でありますので、又先程申上げましたやうに、預金部には之を賄ふことが困難でありますので、それに對しまして尚ほ若干の資金の餘裕が出て參るやうな部面もあるやうでありますし、又將來さう云ふものが相當増加すると云ふ考へ方でございますので、私の方の金融擔當の方と色々考へて居りますことは、日本銀行の借入金と云ふものが、何等か日本銀行から又外へ肩替りと申しますか、移されるやうな方式を考へたらどうかと云ふことを今相談して居りますが、まだそれまでの運びになつて居りませぬ、御示しのやうな點に付ては十分考へて參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=35
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036・栗山長次郎
○栗山委員 第三條の請求權、それから勅令の定めるものに貼易資金を運用すると云ふが、此の二點に付き簡潔に御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=36
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037・石原周夫
○石原政府委員 請求權と申しますのは、此の貿易資金が持つて居ります輸出物資を輸出致します、さう致しますと其の賣れた手取金は謂はば外貨になつて入つて居る譯であります、今の貿易の機構の仕組から申しまして、此の外貨は日本側の直接所有するものとは考へられないのであります、唯そこで考へられますことは、少くとも、其の實質上得て居ります所の外貨に相當します將來の輸入が出來ると云ふことは申せるのでありまして、將來其の外貨に該當する所の輸入商品を入れることが出來る、それを此處に請求權と云ふ言葉で申した譯であります、尚ほ付足りに申上げて置きますが、此處にあります貿易取引に基く請求權と云ふのは、唯外貨だけを含みませぬので、例へば國内的に申しまして、輸入品を賣つたり、或は賣掛けになつて居るものなど、勿論是も含まれて居ますが、主としたる狙ひは、今申上げるやうな實質上は外貨を持つて居るのであるが、直接に外貨を持つて居ると云ふことは出來ない、即ち見合ひになつて居る所の輸入が出來ると云ふ狙ひであります、次に勅令の定むるものに運用致すと云ふ點でございますが、是は貿易以外に於きまして對外收支を生ずる場合など、從來ならば貿易外收支と云ふことでありますが、今はつきり決まつて居る譯ではございませぬけれども、大體斯う云ふものが豫想せられると云ふものを申上げれば、受取の方に於きましては外國の宗教團體是がこちらで活動を致しました場合に於きまして、其の費用をこちらに送つて參つて、それを外貨で貰ふと云ふやうなことも起り得るのではないかと考へて居ります、さう云ふやうな貿易外の收入支出も此の資金で經理を致すと云ふことを考へて居りますので、其の點を意味致しまして勅令で定めると云ふことを書いてあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=37
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038・栗山長次郎
○栗山委員 第五條に資金運用手數料と云ふのがございますが、是はどう云ふ實體を意味して居るのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=38
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039・石原周夫
○石原政府委員 資金運用手數料と申しますのは第五條にございますが、其の前に第三條の第二項を御覽願ひますと、「政府は貿易資金の運用に關する事務を、日本銀行に取り扱はせることができる。」と云ふ規定がございます、即ち日本銀行で此の資金の運用の事務を取扱ひますので、それに必要な手數料を拂つて居ります、御參考に申上げて置きますが、國庫金それ自身の取扱と致しましては、會計法に依りまして日本銀行がやることになつて居りますので、別段の條文も要りませぬが、是は運用の問題でございまして、運用の部分は隨て手數料が要ると云ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=39
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040・栗山長次郎
○栗山委員 第八條の第二項にあります歳入歳出豫算に運用計畫表を附けて出すと云ふことを御規定になつて居りますが、私豫算委員もやつて居りまして、歳入歳出は向ふに出ましたけれども、運用計畫は出て居らぬやうであります、今囘は特別なのでございますか、無論資料はおありのことと存じますから、速かに御提出になられたら宜からうと存じます
次に産業復興營團に對して一、二點御伺ひ致します、復興金融金庫は金を貸し、産業復興營團は設備を貸すと云ふ風に、一言にして申せば私共心得るのでありますが、産業復興營團が復興金融金庫から、融資を受けることが出來る、而もそれが主なる金を得る途であると云ふやうに思はれますけれども、此の産業復興營團が復興金融金庫から澤山金を借りしてしまひましたならば、其の金庫から金を借りて再起を圖らうとする中小商工業者を壓迫しやしないか、中小商工業者の方に向く資金が薄くなつて、營團の方にのみ多く吸收せられやしないかと云ふ懸念があるのでありますが、其の點に付て御答へを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=40
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041・和田太郎
○和田政府委員 産業復興營團は、只今御話の通り復興金融金庫から其の主たる資金を借受けることに相成つて居りますが、復興營團も復興金庫も其の目的と致して居ります所は、何れも現在の一般の融資を以ては之を賄ひ難いと云ふやうな、相當の企業の危險もございます方面を、金融或は設備の貸付を業とすると云ふやうな手段に依りまして、復興を促進して行かうと云ふ、大體に於て其の目的を異にして居るのでございます、隨ひまして大體其の資金計畫等に於きましては、是は一本に考へることは適當でないと考へられまして、産業復興營團の資金は之を專ら金庫の融資を仰ぐと云ふことに相成つて居ります、只今の所一應復興金庫の方は事業資金百億と云ふことに相成つて居りまして、其の中から大體三十億程度を復興營團に融通を致しまして、之に依つて建設其の他の事業をして行くと云ふ規定に相成つて居ります、大體復興營團の仕事と致しまして、今後其の主たる一部門と致しましては、中小工業の振興を圖る爲に、中小工業の遲れて居ります技術的、或は經營的な面を打開致しまする爲に、相當優秀なる設備を復興營團に於て建設致しまして、之を中小工業に貸付ける、或は遊休になつて居ります設備等を買取りまして、之に中小業者を收容致しまして、集團工場のやうなものをして行かうと云ふことを其の主たる目的の一つとして居る次第であります、尚ほ資金の點に付きましては、勿論十分ではないかと存じますが、今後の情勢に依りましては、更に是が増額をも圖つて行きたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=41
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042・栗山長次郎
○栗山委員 重ねて御伺ひ致しますが、私の心配して居ります點は、復興金融金庫から産業復興營團に三十億なら三十億と限つて居れば、是は計數の立て方はありませうけれども、それが爲に中小商工業の方への融資が犧牲になりはしないかと云ふ懸念がありますが、さう云ふ懸念をなさつたことはございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=42
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043・和田太郎
○和田政府委員 大體現状に於きましては、中小工業に對する復興金融金庫からの資金の融通も、市中銀行竝に中小工業者の屬して居ります組合の金融を掌つて居ります商工中央金庫をして之を掌らしめると云ふやうな方法も執つて居りまして、現在の所では一應此の程度で賄つて行けるのぢやないか、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=43
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044・栗山長次郎
○栗山委員 以上を以て私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=44
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045・白井秀吉
○白井委員長 林田正治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=45
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046・林田正治
○林田(正)委員 運輸大臣がまだ御見えになりませぬから、便宜上貿易廳長官に質問致します、私が御尋ねすることは極めて簡單なことであります、美術工藝の振興と云ふことに付て御意見を承りたいと思ひます、貿易振興の策は色々ありまするが、どうしても其の一つの根本問題として、日本人の特長であり、傳統を生かすと云ふことが最も必要であると思ひまして、其の意味からして、美術工藝品の復活と云ふことが最も私は重大な問題であると考へるのであります、戰爭の間殆ど瀕死の状態にあつた美術工藝の息吹きには、勿論之に必要でありまする所の資材の斡旋と云ふことが必要でありまするが、終戰後に於きまして、美術工藝の振興の面に於て、さう云ふ資材の斡旋と云ふことに付て、具體的に只今まで色々なことを御考へになつて居ると思ひまするが、其の御方針を先づ承つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=46
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047・塚田公太
○塚田政府委員 今後の貿易に於きまして、殊に輸出貿易に於きましては、美術工藝が重要な地位を占めなければならぬ、又是非占めさせたいと念願して居るのでありまするが、それは林田委員と全然同感でありまして、貿易廳としましても其の點に付ては殊に重點を置いて居るのであります、其の爲に實は美術工藝品株式會社と云ふものを――是は普通から申しますれば、或はそれぞれの陶磁器關係、或は漆器關係、或は織物關係と云ふ風に分けて、それぞれの代行機關に取扱つて戴くと云ふ方が宜いのかも知れなかつたのでありますが、特に美術工藝品株式會社を單獨の取扱機關に致したと云ふ所に、實は貿易廳の考慮が潛んで居るのでありまして、今後の日本に於ては、出來るだけ少い資材を以て、出來るだけ大きな效果を輸出入に於て擧げなければならぬ地位に――我々日本國民はさう云ふ方面に於て長年の誇りと云ひますか、傳統を持つて居りまして、此の點に付て大いに過去の經驗なり、或は手腕を發揮させて、さうして輸出貿易に貢獻させたいと思つて居るのであります、此の資材の點に付きましても、兎角美術工藝關係の物は數量が少いのであります、數量が少いのでありますから、例へば纖維にしましても、纖維業界に任せて置くとつい閑却してしまふ、又織物などに付きましても、さう云ふ織物は絲にしましても特に嚴選しなければならぬ、或は特殊のものを供給しなければならぬと云ふことになる、さう云ふ専門の、それを十分理解して居る所に扱はせなければならぬと云ふことも、美術工藝を新しい取扱機關にして居る原因でありますが、其の外に今度貿易の全體に關係しまして、原材料會社を作つたのであります、是は特に貿易關係の物に對して、必要なる資材を豫め用意をさせると云ふやうな意味で、さう云ふものを作りました、此の美術工藝會社と原材料會社とが相俟つて、大いに今後の美術工藝品の發展に付て寄與させて戴きたいと思つて居るのであります、是は或は御質問に外れるかも知れませぬが、私共貿易廳に關係しましてから、又曾てもさう云ふことは能く耳にして居つたのでありますが、どうも此の美術工藝の専門の美術家と云ふ風な方は、兎角排他的と云ひますか、自分以外の者を排すると云ふやうなことが能く行はれ、中々協同的にやつて行けないと云ふやうな點も實はあるのであります、それで美術工藝品會社を主にしてやります場合には、彼處を通すならやらぬと云ふやうな、陶磁器にしましても、或は漆器にしましても、織物にしましても、さう云ふやうな見解を持たれる方もありますので、さう云ふ方に付きましては、又それぞれの専門の何處でも、要するに輸出が出來れば宜いのである、何處でもあなた方のお氣に入つた所を通してやつて下されば、原材料會社から其の資材は供給しませう、斯う云ふ風にやつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=47
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048・林田正治
○林田(正)委員 只今美術工藝品の資材の點、或はそれが輸出の問題に付て、色々具體的の御方策を伺ひまして、非常に結構に存じまするが、今御話にありました通り、美術工藝に從業致しまする者に排他的な所があると云ふ御話がありましたが、御尤もな點でありまする、併しながら此の排他的と云ひますか、さう云ふ點が、一面に於きましては言ふまでもなく此の美術工藝の藝術家の氣質、所謂名人氣質と云ふものが、さう云ふ所から又生れて來て居ると私は思ひますので、此の日本の美術品、藝術品のみならず、一切の物の粗惡品を排斥して、本當に立派な品物を作り、之を外國に輸出するには、どうしても、今まで美術工藝の藝人氣質、或は職人氣質と言つて居りましたやうな、一つの生産に自分の魂も精神も打込むと云ふ所の、あの職人氣質と云ふか、美術工藝は勿論でありますが、全部の機械工業方面に對しましても、さう云ふ精神を練り上げることが、最も今日の時局に必要なことであると思ひますので、此の面に於て政府は寧ろ生産昂揚の運動として、さう云ふ精神的な面からなさる必要があると思ひますが、此の點に付ての御考へを承つて見たいと思ひます
それから第二には、栗山委員からも、先日の本會議でも先程も御話がございました、所謂粗惡品製造者に對する刑罰の問題でありますが、確かに商工大臣は本會議で刑罰を以て臨むと云ふことを言明されたにも拘らず、先程貿易廳長官の御話に依りますと、此の問題は當業者の自省自肅に任せると云ふやうな御話でありましたが、斯う云ふことは大臣と長官の間に矛盾があるではないかと思ひますが、私は長官の言はれる當業者間に於ける所の自肅自戒と云ふことも勿論必要でありますが、同時に大臣が言はれた所の、刑罰制度と云ふものを併用すべきものであると思ひますので、此の議會で責任ある大臣として申されました刑罰制度と云ふものを、此の際確立して戴きたいと云ふことを申上げて、貿易廳長官の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=48
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049・塚田公太
○塚田政府委員 今の刑罰主義の方から先に御答へ致したいと思ひます、私が先程申しましたのは、或は言葉が足りなかつたかと思ふのでありますが、刑罰を政府として考へて居らぬと、云ふ意味ではなかつたのであります、どう云ふ方法で刑罰するかと云ふことを、業界の成べく總意を集めて決めて、それを貿易振興の爲に、或は法律なり勅令なりにして出したい、斯う云ふやうな意味に御答へした積りであるのでありますが、刑罰を政府の方は考へて居らぬと云ふ意味ではないのであります、刑罰は是非しなければならぬ、私は寧ろ是からの日本に於ては、今まで五大國、三大國と云ふやうな時の輸出業者と違ふのでありますから、餘程の覺悟を持たなければならぬ、一度信用を落した製品が外國に出ますと、今後中々囘復は困難である、元々さうであつたのでありますが、益益困難になると云ふことがありますので、寧ろさう云ふのは業界から除外すると云ふやうな嚴罰をした方が宜いと思ふのであります、どう云ふ方法で處罰するかと云ふやうな方法を、成べく業者の總意を纏めて、それを容れて、或る方法を執りたい、斯う云ふやうに言つたのであります
それから工藝品の振興に付て、所謂技術家に或る偏狹な點もあると思ひますが、又其の偏狹であるが爲に、特に自分の精神を打込んでやると云ふことに付ては、大いに我々も歡迎して居るのでありまして、其の爲に或る一つの美術工藝會社だけを通さなければ、其の美術は輸出出來ないのだと云ふことのないやうにしたい、のみならず又原材料會社の方も、さう云ふ方に對して、若しも其處の「チャンネル」を通しては出さないと云ふ場合にも、其の原材料會社の方から供給してやる、何處からでも自由にやつて戴けるやうに、さう云ふ意味で作つて居るのであります、此の機會でありますから申上げたいと思ふのでありますが、今の林田委員の御話も洵に御尤ものことでありまして、私共としましても技術家は出來るだけ各各の個性があるのでありますから、それを發揮して、日本獨特のものを作つて戴くと云ふのでありますが、何分にも是はお得意さんがなければならぬ、殊に輸出と云ふことになると外國のお客さんであつて國内ではないのでありますから、さう云ふ方に能く外國人の心理なり、或は風俗習慣なりを十分理解して貰ふ、或は採り入れて貰ふ、それで外國に向くやうなものを作つて貰はないと、同じ皿にしましても、日本の小皿のやうなものを幾ら作つても賣れない、さう云ふことに付て外國に上等なものを、「ヨーロッパ」は當分望みはありませぬから、主として「アメリカ」ですが、それから中等以下のものが東南洋に行くのでありますが、就中今の美術工藝品は「アメリカ」を本位としなければならぬので、「アメリカ」の習慣、風俗或は家の構造と云ふやうなものを能く知つて居る人達が、出來るだけさう云ふ方面の御世話をすると云ふことに致したいと思つて居るのであります、一例としまして、此の間實は或る漆器の展示會を東京でやりました、其の時に三十幾種類かの漆器が出されたのでありますが、司令部の方から行かれた方が、全部是れでは駄目だと云ふ御話があつた爲に、早速美術家の本能を出しまして、どうもああ云ふことでは我々は迚も作れぬ、輸出したいと思つても向ふは分らないのだと云ふやうな話があつたのであります、是は單に藝術家だけでなく、我我日本人としても反省しなければならぬ點でありますが、向ふに賣るのであるから向ふの心理を掴へて作らなければいけない、さう云ふことに付て林田委員のやうな御理解のある方が、さう云ふ業者にもう少し深く印象を付けて戴かぬといけない、向ふに賣るのであるから、やはり向ふの心理なり、向ふの嗜好、趣味、習慣に副ふやうなものを一つやつて戴く、さうして向ふで出來ないものをやらなければならぬと云ふ風にしたいと思つて居ります、それから實は見込生産と申すものが、先程栗山委員からの御話のあつたやうに、澤山溜まつて居る、さう云ふ結果から貴重な資材、なけなしの資材を澤山使つてはならぬと云つて、司令部から禁止して來たのであります、併し美術工藝品のやうなものは、さう大して資材の要らぬものが多いですから、是非之を許可して貰ひたいと、貿易廳では折角盡力して居るのであります、まだ除外令を認めると云ふ點までは行きませぬが、美術工藝品は其の除外令の第一に御願ひして居るやうな譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=49
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050・林田正治
○林田(正)委員 只今貿易廳長官から色々御話がございました、所謂美術工藝品の製作の問題に付て、外國人の氣分を知らなければならない、或は生活環境を知らなければならぬ、是は御尤もの話でありまして、此の問題は、實は將來の日本の平和的國策の一つとして、觀光國策を樹立しなければならないと云ふことを、實は總理大臣に御質問致したいと思ひましたが、御差支があつて出來ませぬから、便宜上從來觀光局が鐵道省にありました關係上、運輸大臣に此の問題に付て御質問致したいと思ひますが、實は私も今貿易廳長官の御話になりました通り、美術工藝品の問題に付て、徒らに日本人的なものを作るにあらずして、向ふの人の心理を掴へて、それに適合するやうな高雅な品物を作らなければならぬと云ふことが、日本の觀光政策の一つであると云ふことを私は申述べたいと思ひますけれども、是は又運輸大臣がおいでになります時に申述べますから、此の點は貿易廳長官の意見と私の意見は完全に一致するのであります、尚ほ機械生産の場合に於きましても、自分が取扱ふ所の機械に、魂を打込んでものを作ると云ふ精神を今後養ふと云ふことが、日本の生産向上の上に於て、品質の向上の上に於て、最も必要でないかと云ふことを、私の希望として申上げて置きますから、別に答辯は望みませぬ
次は農林大臣においで願ふ筈でありましたが、貴族院で御差支へがあつておいでになりませぬから、是もやはり貿易の問題に關係致しますから、貿易廳長官に御尋ね致し、貿易廳と農林省と、將來十分なる連絡を執つて戴きたいと云ふことを申上げて見たいと思ふ、それは御案内の通り、日本農業は、終戰と共に從來の鎖國的な農業を去つて、將來は必ず世界經濟の一環として立つ運命にあるのでありまして、さうして世界經濟の中に立つ農村の前途と云ふものは、私から申上げるまでもなく、決して用意でなないと思ひます、農林大臣は農村の恐慌と云ふものは當分は來ないやうな御意見で、或は樂觀論のやうでありますけれども、識者は必ずしも其の樂觀論に與しないのであつて、農業の恐慌と云ふことは二、三年經たずして必ず到來すると申して居ります、私も遺憾ながら其の説に贊成する一人であります、さうして、若しさう云ふやうな場合になりました際、此の日本農業をして世界經濟の荒浪を乘切つて安全ならしめるには、どうしても農業の多角經營、言葉を換へて言へば、農村にも農村餘剩勞力を以てする農村工業が起らなければならないと思ひます、然るに其の農村工業は、申すまでもなく、一面に於ては外國輸出向の工業を起さなければ、結局農村の恐慌を免れることは出來ないと思ひますので、製絲、製茶或は罐詰工業の如きは、勿論申すまでもなく其の例であると思ひます、然るに從來の我が國の實例を見ると、何か有利であると思ひますると、無統制に各地に其の事業が簇出して、生産過剩に陷り、遂には或は粗製濫造になり、共倒れになると云ふ傾向が少くないのであります、殊に農民は世界經濟の事情には極めて疎いのでありまして、而も農民の諸君は、割合に個人主義的、排他的であります、さう云ふ點から考へましても、將來農村工業を自由に放任するならば、恐らく又過去の弊害に陷ることがあらうと思ひます、農村其のものを破滅に陷れることになるであらうと思ひますので、斯う云ふ見地から、將來の農村工業と云ふことは、どうしても農林省だけでなくして、貿易を掌る商工省、貿易廳、斯う云ふ方面と農林省が十分に緊密な連絡を保つて、全國的に此の農村輸出工業を統制して、地方々々に即した、即ち立地條件に照し合せての農村工業を指導して行かれると云ふことが、今日最も必要なことではなからうかと思ひますので、此の點に付て貿易長官の御意見を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=50
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051・塚田公太
○塚田政府委員 私の管轄外の問題が大きな部分を占めて居りますので、私から責任ある御答へをするのはどうかと思いますが、唯私が個人として考へて居る所を御答へ致したいと思ひます、第一の農村恐慌と云ふ御話でありますが、私は直接承はつたのでありませぬけれども、林田委員の御話に依りますと、農林大臣はさう云ふことはないと云ふやうに樂觀して居られると云ふことでありますが、御承知の通り昔の國防國家とか、或は國防經濟と云ふやうなことが全然なくなつたのであります、新憲法に依りまして我々は絶對的の平和、無戰爭と云ふ境地に安堵を求めると云ふことになりました關係上、今までのやうな自給經濟と云ふことはなくなると思ふのであります、自然何處からでも要するに安いものを入れる、米にしましても、今までは臺灣なり朝鮮から入れたのが、今度は若し「タイ」なり或は佛印の方が安ければ入れると云ふやうなことが起りませうし、又小麥にしても、小麥粉にしても、濠州なり、或は「アメリカ」なりから入れると云ふやうなことも起りませうから、さう云ふ點で所謂無制限に入つた場合には、恐らくは林田委員の御心配になつて居るやうな恐慌もあり得ると思ふのでありますが、日本に於きましては、今主要食糧が非常に足りないものでありますから、一寸申しますれば、無制限に懇請して居るやうな形で、出來るだけ入れて貰ひたいと云ふやうな形で頼んで居るのでありますが、それも併し或る一定の限度がありまして、それ以上はもう入らぬのであります、併しそれもこつちの懇請して居るものも十分に入つて居らぬやうな譯であります、今後も日本としましては、食糧以外に復興再建の爲に輸入しなければならぬものは幾らでもあるのであります、それでありますから、此の食糧を入れると云ふことは、或る程度必要のないものを入れると云ふことは起り得ないと云ふやうに思ふのであります、是は横道に外れますが、假に貿易が自由になつて、各自が自主的にやれると云ふやうな場合になつても、少くとも輸入に關する限りは、相當に強力な政府管理がなければ、今の御話のやうに、各自が儲かるものであつたならば何でも入れると云ふやうなことが起り得ると思ひますので、斯う云ふ點に付ては、恐らくは輸入食糧なり農産物も、或る一定の制限の下に入れられると云ふことを、農林大臣が豫想されての御話でないかと私は想像して居るのであります
それから農村工業の問題でありますが、是は御説の通り、農村では假に恐慌があるなしに拘はらず、餘剩勞力は出來得る限り――若し出來るならば輸出産業の方に向けて戴いて、他日農村の不況の場合にも備へて戴く方法が非常に宜い、此の點に付ては林田委員の御意見に雙手を擧げて贊成致すのであります、輸出産業に付きましては、恐らくは農村で、所謂農繁期は勿論何でありますが、閑散期になりますれば、或は雪の降るやうな所になりますれば、さう云ふ暇な時に造れる――所謂常時繼續的ではなくて、補足的に造れるやうな貿易商品は澤山あるのでありますから、我々も今の御注意に基きまして、出來るだけさう云ふものは業者の機關に御願ひして、農村の方にさう云ふことを仕向けて戴くと云ふやうなことも考へたい、斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=51
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052・林田正治
○林田(正)委員 前段の農村恐慌の問題は、私と貿易廳長官との意見の相違でありますから、是れ以上申しませぬ、後段の問題に付きましては、私の意見に御贊成下さいましたので、どうか此の問題は貿易廳長官個人の資格でなく、政府の責任者と致しまして、十分に御骨折りあつて其の實現を圖つて戴きたいと云ふことを申上げて、私の商工關係に關する質問は打切ります、次は運輸大臣に…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=52
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053・白井秀吉
○白井委員長 一寸林田君に申上げますが、運輸省から運輸次官と業務局長が御見えになつて居ります、運輸大臣は豫算委員會で答辯中でありまして、十五分位遲れると云ふ話ですが、次官と業務局長で差支へなければ繼續して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=53
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054・林田正治
○林田(正)委員 それでは私は運輸次官に觀光政策の樹立と云ふことに付て御質問申上げたいと思ひます、申すまでもなく、我が國の産業が今後輕工業中心になることと、重工業が縮小せらるること、戰爭に依つて喪失せられた機械其の他の輸入が莫大に上ること、或は一千萬「トン」以上の食糧の輸入等がありますことに鑑みまする時、我が國の貿易が受取勘定になることは勿論想像し得ぬことと私は思ひます、就きましてはどうしても貿易外に於きましても外貨の獲得の方法を講ずることが非常に必要であると思ひますが、此の點から觀光國策の樹立と云ふことが最も必要であると思ひます、現に我が國は戰爭前には鐵道省内に國際觀光局がありましたが、あの國際觀光局がどれだけの働きをしたかは詳細は分りませぬけれども、兎に角昭和十一年の我が國の貿易其の他の收入の統計に依りますと、先づ第一は綿布が主なる輸出の大宗を占めて居つたのであります、第二が生絲、第三が人絹織物、第四が機械、次が貿易外の、即ち觀光客の收入が第五位を占めて居つたのであります、さうして戰爭前日本が「スイス」「イタリー」と共に世界の三大觀光國であつたことも明瞭であります、此の事柄は日本の國土が其の姿を地球上から沒せざる限りに於きましては、相變らず其の資格があるものと言はなければなりますまい、即ち其の日本の持つて居ります自然の風光の明媚であつて、四時の變化に富むこと、或は温泉の豐富なること、それに舊い傳統を誇る美術工藝、史蹟、建築物等、世界の一般と異つた特殊の文化に恵まれて居ると云ふやうなことからしまして、戰前と同樣、觀光國としての王座を我々は當然占むべきものであると思ひます、而も新しき日本は戰爭を抛棄し、世界唯一の非武裝國家、平和國家となつた以上は、我々は此の平和愛好の精神を世界に知らしむると云ふ點からしましても、我が國は眞劍になつて外客を誘致すると云ふことに努めなければならないと思ふ、即ち觀光政策の樹立が茲に最も必要であると思ひまするが、私此の點に考へるに、從來の觀光政策と云ふものは、唯單に平面的な問題であつて、日本の天然自然の風光を紹介したり、或は温泉を紹介したりすると云ふやうな事柄に止まつたのでありますが、將來の日本の觀光國策と云ふものは天然の風景、温泉、山嶽と云ふやうなものと、日本の文化でありまする所の名所、舊蹟、建築、藝術と云ふやうなものを綜合して、其の上に又交通の機關を整備したりすると云ふやうに、所謂立體的に、雄大にして高雅な、而も外國人の全體が決して「ノーブル」な人ばかりでなく――教養の高い人ばかりではありませぬので、やはり一方には一般的な健全なる娯樂、興味と云ふやうなものを採入れた國際觀光政策と云ふものを――是は便宜上運輸大臣においでを願ひましたが、本當は内閣が中心になつて、さう云ふやうな立體的な國策觀光政策と云ふものを、今から研究、凖備して、さうして來たるべき平和に備へると云ふことの必要があると思ひまするが、さう云ふ御意思があるかどうかと云ふことを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=54
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055・平山孝
○平山政府委員 觀光問題に關しまして御質問がございましたが、私等も全く其の通りに考へて居るのでありまして、先日も高瀬代議士外多くの方々から觀光國策を樹立せよと云ふ建議がございました、以前には鐵道省の中に觀光局を置きまして、相當なる效果を擧げたのでございますが、最近に於きましても、觀光事業と云ふものを健全に育て上げなければならぬと云ふことで、各方面からの御意見を承つて居ります、唯敗戰後の今日でありますので、殊に戰爭中一切それを中止して居つたと云ふやうな關係もございまして、只今どちらかと申しますと、それに對する凖備中と申上げた方が宜いかとも思ふのであります、先日運輸省の業務局の中に觀光課と云ふものを置きまして、是が中心となりまして交通公社或は内務省、それから商工省、其の他各省とも御相談を致しまして、其の凖備を進めて居るやうな状態にあるのであります、只今色々御意見を承りましたが、さう云ふ點に付きましては、今後及ばずながら私等の出來るだけのことを致したいと考へて居るのでございます、尚又各地に於きましても、觀光事業に關しまして協會でございまするとか、色々起つて居ります、又交通公社の中に全日本觀光聯盟と云ふものが置かれまして、さう云ふ方面に付きましても十分力を致して居るやうな實情でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=55
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056・林田正治
○林田(正)委員 只今運輸次官からの答辯がありまして、大體滿足を致しますが、どうか私が先程申上げました通り、日本の天然自然の條件と、文化的な條件とを組合せた、立體的な立派な觀光國策の樹立と云ふことに努めて戴きたいと云ふことを、希望として申上げたいと思ひます
次に恩給の問題に付て御質問申上げたいと思ひます、今囘色々の手當等が本俸に繰入れられると云ふことは、是は當然の措置であります、さうして本俸が其のやうになりますならば、それが恩給の基礎になると云ふことも是は當然のことと思ひます、然るに今囘の臨時措置に依つて見るに、國庫納金も恩給も當分は現在通りであると云ふことでありますが、それは確かに明かに矛盾であります、さうして此の臨時措置は、日本財政が好轉せざる限り、恐らく或は永久的であらうと私共は考へます、併しながら何時までも矛盾した儘に放擲すると云ふものではないと思ひますので、何時かは此の矛盾を解決しなければならないと思ひます、私は國家財政を餘り脅威しない範圍内に於て、此の矛盾解決の途が若干あるやうに考へるのであります、それは端的に言ひますならば、過去のことは言ふまでもありませぬけれども、將來は此の普通恩給制度を全廢致して、皆一時恩給制度一本にすると云ふことはどうであるかと云ふ意見を持つて居るのであります、是は私が四、五年前に聞いたことでありますから、此の事實が果してどうであるかは存じませぬが、其の時代の話に依りますと、軍人も文官も併せてのことであらうと思ひます、大體恩給受給者の壽命と云ふものは比較的短いものであつて、其の時分に聞いた所に依りますと、平均すると十年はない、五六年のものであるさうですが、若し此のことが事實と致しまするならば、寧ろ國家は一時恩給制度に改めて、退職の際の年俸に對して、最低三年なら三年、最高十年以内の所で一時恩給の形式を執つた方が、國家の財政の上から言ふならば、或は一時は増すかかも知れませぬが、年を重ねるに從ひまして恒久的になつて、現在のやうな八千萬圓以上の巨額の財政負擔になることはないと思ひます、此の點に付て政府の御意見を承つて見たいと思ひます、現在の恩給がどう云ふ性質のものであるかと云ふことは存じませぬけれども、我々は恩給は所謂生活の保障である、斯う云ふ風に考へて居るのでありますが、此の生活の保障であると云ふ點からするならば、現在の恩給額では遺憾ながら保障にはならないのであつて、恐らく勅任文官の者でも最高四千圓の恩給を取る人は寥々たるものであつて、多くは二千圓か三千圓位のものであると思ひますが、今日の物價から致しまして、それだけの恩給では到底生活の保障にはならないのでありまして、寧ろ私は將來のことを考へるならば、今囘の俸給令の改正と共に、將來は一時恩給として、三年分なら三年分、或は最高十年分と云ふやうなものを支給致しましたならば、其の人はそれを以て、纏まつた金を持つて其の人の將來の生活の方針を定めて行くことが出來るのでありまして、寧ろさう云ふやうなやり方が、將來の恩給の改正すべき道ではなからうか、斯う云ふ風に考へます、同時に私はさう云ふ制度を執るならば、現在の遺族扶助料の如きは當然全廢されて然るべきものと思ひますが、先づ其の點に對する御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=56
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057・三橋則雄
○三橋政府委員 只今の御質問は、現在の普通恩給の年金制度を廢止して、一時金制度にしたらどうかと云ふことと思ひますが、此の點に付きましては、從來から色々と論議されて居る所でございまして、御話のやうな御意見も傾聽に値する御意見だと思つて居ります、一時金制度を執りますれば、社會上の變遷とか、或は又物價の變動に伴ひまして、或は恩給の金額を増すとか或は減らすとか云ふやうなことを、其の都度々々考へると云ふ風なことをする必要もなくなる譯でありますから、私達事務當局と致しましては、それはもう一時金制度とする方が事務的に非常に簡單な譯であります、それから又恩給受給者の面から考へて見ましても、今御話になりましたやうに、年金制度を採つて居りますれば、入つて來る金は僅かな金額でありますけれども、一時金制度にしますれば、相當纏まつた金が一時に入りますから、隨て官職を退きまして、新しく社會に地位を求めようとするに當りまして、纏まつた金を元にして色々な營業をすると云ふことも出來まして、確かに御話のやうに、一時金制度には良い所もあります、併し考へなければいけないことは、一般に役人と云ふものは世間の事情に疎いと言はれて居りまして、又よく役人を辭めまして、社會に出ましても、商賣をしましても、あれは役人上りだからと言はれる位に社會の事情に疎く、隨て役人が商賣に手を出して、一本立になつて成功する者もあると思ひますけれども、又失敗して折角の恩給も臺なしにしてしまふと云ふやうな者も、相當にあるのではなからうかと懸念されるのであります、それとどちらが多いかと云ふやうなことも申上げ兼ねますけれども、一般的に考へますれば、長年役人をやつて辭めた者は、其の恩給を元にして商賣をしても、成功するものはないぢやなからうかと云ふやうな氣が致します、それ等の人達が成功しようが、しまいが、本人の責任に於てやることでありますから、假令失敗しても、それは自業自得だと言へばそれまででありますけれども、併し此の際考へなければいけないことは、公務傷病に斃れた人は特に考へなければならないと思ひますが、折角貰つた恩給を使ひ果してしまつて、路頭に迷つてしまふと云ふやうな場合に、國家として放任して置けるかどうかと云ふ問題が出て來るのであります、一時金で相當の金を出した、其のものは使つてしまつた、使つてしまつた後に又國家として救濟をやらなければならないと云ふやうなことも出來ると思ひます、さう云ふ風なことを考へますと、政府としてはさう云ふ人を自業自得として放任して置く譯には行かない、政府としてやはり能く考へてやらなければならない、さう考へて行きますと、恩給を貰ふ官吏の、今御話のやうな生活保障と云ふ面から考へて行きますと、一時金制度とするのが宜いか、年金制度とするのが宜いかと云ふことになりますと、やはり一時金制度を採ると云ふことにも、色々考へなければならない點があるのではないか、さう云ふ風な見地から致しまして、現行の制度に於ては年金制度を採つて居る、勿論年金制度を採るに當りましては、恩給受給者の年々貰ふ金は僅かな金額でありますから、隨ひまして不時の用の金の要ると云ふ場合に於ては、金融の便を考へて現在恩給金庫の制度を採つて居ります、さう云ふ風に致しまして、現在年金制度を採つて居る次第であります、將來恩給制度の根本的改正を考へる場合に於きましては、勿論今御話のやうな點も考へまして、檢討致したいと思つて居りますが、一時金制度にするにしても、餘程愼重にしなければならない點が多々あると云ふことだけは、御諒承願ひたいと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=57
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058・林田正治
○林田(正)委員 今恩給局長の御説明がありまして、一例として公務の傷病者の恩給の問題がありました、斯う云ふ風な不具癈疾に付きまして、社會的に今後活動の出來ないやうな状態にあります人の問題も、引括めて一時恩給で解決せよと云ふやうな考へは勿論別問題と致しまして、さう云ふやうな人に對しては、私は現在の恩給制度が或は妥當であると思ひます、尚ほ此の際、今公務傷病の問題がありましたから、その問題に付て御意見を承りたいと思ひます、それは云ふまでもなく、傷痍軍人に對する所の増加恩給と、文官に對する増加恩給の差が、今囘の此の改正に依りまして、餘りにも甚だしき差になつたと云ふ問題であります、云ふまでもなく軍人に關する問題に付きましては、昭和二十年の十一月二十四日聯合軍最高司令部の指令に依つて、軍人恩給は全面的に停止されました、但し傷病者に對する恩給、即ち増加恩給のみは、折衝の結果、其の支給を現在通りのことが認められました、是は當然なことであると思ひまするが、然るに今囘提案されました所の恩給法臨時特例の第八條に依りますと、即ち増加恩給は、文官の側に付きましては非常なる恩典に浴することになつたのでありまして、一例を申上げますならば、中尉相當官の文官の人は五千四百六十圓になると云ふ計算であるさうであります、而も今度は下士官に相當する文官は四千五百圓、それから兵に相當する文官は四千九十五圓の増加恩給を受くるに拘らず、武官の方に於きましては、此の法令から除外されました結果、現在通り僅に中尉の階級に於て八百四十圓、下士官に於ては六百三十圓、兵に於ては五百六十圓の給與しか受けないと云ふことになるのでありますが、勿論軍閥の巨頭の罪は、我々は鼓を鳴らして之を責めるのでありますけれども、併しながら今茲に擧げました所の、或は中尉、下士官、兵と云ふやうな人々は、決して此の人達が國家を滅亡の淵に導いたものではないのでありまして、此の人達は單に大命の間に間に命を鴻毛の輕きに比して戰つただけでありまして、我々は此の人々に對しては、寧ろ無限の感謝と同情こそしなければならないと思ひます、決して文官に優るとも、劣らない所の、國家の爲に盡したものと云つても差支へない人も相當あると思ひますが、今囘の改正令に依りまして、今申述べたやうな甚だしき懸隔を持つやうになりましたことは、實に日本の國家の爲に、我々は嘆かはしきことであると思ひます、勿論此の問題は、進駐軍のG・H・Qとの關係もありませうけれども、併しながら「ポツダム」宣言の際に於ても、普通の軍人は、無條件降伏の曉には其の家に歸つて、當り前の人間としての平和的の生活が出來ると云ふやうな條件さへもあつたのでありまして、其の條件を擴大強化して、其の精神を考へます時に於て、決して文官と斯の如き差別的の待遇を受くべきものではないと私共は考へるのでありますが、慥か昨日でありましたかも、新聞で御覺の通り、相模の國立病院に於ける一傷痍軍人が、心ならずも泥棒をやつたと云ふやうな記事があつたのでありますが、此のやうな不祥なる事件は、決して本人の罪ではなくして、已むに已まれずして、國家の待遇が餘りにも微弱である爲に起つたものであると言つて差支へないと思ひますが、此の軍人と文官の間に於ける増加恩給の、餘りにも甚しき差異の問題に付ては、政府は今後如何なる考へを持つておいでになりますか、近き將來に於て此の問題を解決せられる所の御意思がありますか、或は斯の如きことになつたことに付て、G・H・Qとの何か交渉がありましたか、さう云ふ交渉の纒末に付ても承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=58
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059・三橋則雄
○三橋政府委員 傷病軍人に對する恩給は、今御話のやうに、昨年の十一月二十四日の聯合國總司令部から日本政府に對して發せられた覺書に依つて、其の金額を決めて居る次第でございまして、此の傷病軍人の恩給の金額は、其の覺書の線に沿うて考へて行かなければいけないと云ふ制約を付けられて居る譯であります、其の金額に付ては、今御話のやうに極めて少ない金額でありまして、心から同情はして居りますけれども、今其の金額に付て、私から増額し得ると云ふやうなことは、はつきり申上げることは困難であります、今覺書の線に沿ひまして、増額し得ることであるならば、増額したいと云ふことは常に考へて居りますし、又儉討を加へて居りますけれども、未だ成案を得まして、今御話のやうな風に聯合國軍最高司令部の承認を得るまでには至つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=59
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060・林田正治
○林田(正)委員 私が承りたいことは、此の問題に付て、只今恩給局長からは、所謂昭和二十年の十一月二十四日の聯合國軍の最高司令部の指令の線に沿うたと云ふ御話でありましたが、此の指令は、先程讀みました通り、普通恩給は全面的に停止されましたけれども、増加恩給のみは支給を認められて居るのであります、然らば認められた以上は、やはり増加恩給に關する限りに於きましては、文官の恩給と同樣に取扱ふべきものであると、斯う云ふ風に解釋するのも妥當ではないかと私は思ひまするが、其の邊はどう御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=60
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061・三橋則雄
○三橋政府委員 聯合國軍最高司令部から參りました覺書は、今御話のやうな意味に單純に書いてないのでございます、認められました傷病軍人の恩給は斯う云ふ風に書いてあるのであります、恩給受給者の勞働能力を制限するが如き肉體的障害に對する補償的である所の恩給給與に付きましては、非軍事的原因に因る肉體的障害者に對して支拂はれる最低の補償額の限度を超えざる限りに於て支拂つても宜しいと云ふのでありまして、是は一般的に非軍事的原因を理由として支拂はれて居る所の、其の補償的給與に付てであります、そこで此の一般的なさう云ふ補償的給與と云ふのはどんなものかと云ふことが問題になる譯であります、之に付きましては、色々と關係の向きとの折衝の經過を申上げれば色々ありますが、之を恩給法の中に規定するやうな取扱ひをするか、或は社會救濟の中に此の問題を入れるやうな取扱ひをするかと云ふ問題もあつたのであります、最初は社會救濟の中に入れると云ふ風な話もありましたけれども、色々と話をしました結果、恩給法の方に規定することが認められると云ふことになつたのであります、さう云ふ譯で此の補償の程度は、社會一般救濟の枠の中に於ける最低補償の程度と云ふやうに解されて居るのであります、そこで今の御話のやうな風に、文官恩給竝にと云ふ風に之を解釋し、斯う云ふ風な意味に取られるならば、是は増額は勿論し得ることと思ひます、併し今までの所では、是は出來得ないことと存ずるのであります、御了承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=61
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062・林田正治
○林田(正)委員 最早是れ以上論議致しましても、是は議論の問題になります、私の質問は是で打切りまするが、併しながら政府と致しましては、是は國家的の大問題と致しまして、どうか將來に於て、文武間に亙る所の不均衡を、必ず是正して戴くことに全力を注いで戴きたいと思ひます、恐らく「マックアーサー」司令部と雖も、人道的の見地に於きましては、我々より以上に人道的精神を持つて居られると思ひまするので、此の日本の二つの面に於ける所の、斯くの如き矛盾と撞著は、是は國民として、本當に國民生活を兩斷されるやうな形になるのでありまして、何とも申されないことであると思ひますので、どうか政府は將來此の問題に付ては、常住不斷に努力されて、來るべき議會に於ては、此の問題が、少くとも此の増加恩給に關する限りに於きましては、文武間が平等になるやうに御盡力を御願ひして、私の質問は打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=62
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063・白井秀吉
○白井委員長 此の際御諮り致したいと思ひますが、今までの質疑の通告の分は是で終りました、別に御質疑をなさる御方はございませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=63
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064・大矢省三
○大矢委員 質疑があります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=64
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065・白井秀吉
○白井委員長 通告になつて居りませぬが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=65
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066・大矢省三
○大矢委員 黨の方で打合せをしますから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=66
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067・白井秀吉
○白井委員長 質疑がまだ殘つて居るとすれば、一旦ここで休憩致しまして、午後再開するやうに致したいと思ひます、午後一時まで休憩致します
午後零時十六分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=67
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068・会議録情報2
――――◇―――――
午後一時五十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=68
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069・白井秀吉
○白井委員長 それでは是より開會致します、午前中に引續き質疑を行ひます、此の際貿易廳長官より發言を求められて居りますから、之を許可致します――貿易廳長官発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=69
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070・塚田公太
○塚田政府委員 先刻栗山委員からの御質問の中に、外國からの買付使節のことに付きまして私から答辯致して置いたのでありまするが、此の買付使節のことに付きまして、尚ほ一層明確にして一般の御諒解を得て置きたいと思ふ點がありまするので、茲に發言を御願ひしたやうな次第であります、日本からの輸出は、御承知の通り聯合軍の完全なる管理統制の下に置かれて居りまする現階段に於きましては、政府對政府、即ち聯合軍司令部の方の經濟科學局内の外國貿易課と貿易廳との間に於て輸出を實施しなければならいのでありまして、各商社の自由取引、又は直接の取引は、現在全然許されて居らないのであります、隨ひまして外國が日本の商品を買付、それを日本から輸出したいと云ふ時には、其の國の代表者が、先づ日本外國貿易の管理統制機關である所の司令部の外國貿易課に交渉しなければならぬのであります、先般司令部の外國貿易課は、日本の製品の買付及び其の輸出に關する交渉の相手方たる貿易代表又は貿易委員を、日本に送るやうに世界各國に招待状を出して居られるのであります、其の結果現在までに米國、英國、「ソ」聯、中國、濠州、朝鮮、「カナダ」、「フランス」、「インド」、「スエーデン」、「スイス」、「イタリア」、佛印、蘭領東「インド」の代表者が東京に常駐的の委員を置いて居られるのであります、尚ほ「ビルマ」、香港、「マレー」、「シンガポール」も東京に臨時の買付使節を送つて居り、又送りつつあるのであります、是等の貿易代表又は買付使節は、日本からの輸出が管理されて居るので、箇々の取引に付ては司令部の外國貿易課と交渉することになつて居るのであります、貿易廳又は其の他の日本の取扱機關は、特に此の外國貿易課の許しを得た場合に於てのみ、是等の外國代表と折衝することが出來るやうになつて居るのであります、其の許可と云ふのは、外國代表又は使節が、其の買付をせんと欲する日本の商品の輸出に關して、貿易廳又は特定の商社と直接話合ひをしたいと云ふ旨を、一定の書式に記載しまして司令部の外國貿易課に申込み、外國貿易課が其の申込を十分根據あるものと認めた時に許可を與へられるのであります、實際問題と致しましては、貿易廳の官吏又は日本製造業者が、司令部外國貿易課の官吏の立會の下に、或る種の輸出商品が輸出適品なりや否やに付て、或る外國代表と懇談したこともあるのでありまして、又外國代表が、貿易廳の官吏が一緒にお供をしまして、日本の輸出品の製造工場を視察旅行をしたこともあるのであります、日本政府の爲に外國代表と司令部の外國貿易課との間で行はれる日本品の輸出契約には、貿易廳が司令部の外國貿易課の許可を得て署名することになつて居るのであります、斯くしまして日本占領の根本政策の觀點から、現段階に於きましては、外國代表との直接交渉は或る制限を受けて居りますのでありますけれども、將來聯合軍總司令部は、一般占領政策と兩立する限度に於て、日本側業者と外國の購入者との直接交渉の範圍を次第に擴張して戴けるものと期待して居るのであります、更に又司令部の外國貿易課は、一定の制限を設けて、其の枠の中で日本の商社と其の曾てのお得意との商取引、又は商業通信の再開に付て、目下研究して貰つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=70
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071・白井秀吉
○白井委員長 大矢省三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=71
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072・大矢省三
○大矢委員 私は極く簡單に二、三質問致したいと思ふのであります、會期もあと數日に迫りました今日、突如として此の種の法律案が提出された理由を最初に御聽きしたい、それは財産税、戰時利得其の他の重要な法案ならば、G・H・Qとの折衝其の他色々な事情に依つて遲れることも已むを得ないと思ひます、此の内容を持つ此の種の法律ならば、私は當然今度の議會劈頭に出るべきだ、それが今日會期切迫した時に、而も延長した此の會期の終りに出されるからには、特別の理由があらうと思ふのであります、昨日來の説明を承つただけでは、まだ了解出來ませぬから、其の點を先づ御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=72
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073・星島二郎
○星島國務大臣 復興營團のことに付て先に申上げます、復興營團は實は御話の通りで、私は此の議會の劈頭位に出して御審議願ふ方針でありましたのですが、率直に申しますれば、關係筋との交渉に暇取りまして、詰り營團と云ふ經營體に對してどうしたら宜いかと云ふ、一つの行き方に付て非常な調査をされたのであります、それで實は遲れたんですが、是は何か社團法人式なものでやつたらどうか、本當を言へば、政府自らの仕事ぢやないか、「アメリカ」ではどうも皆斯う云ふことは政府でやつて居られるらしいですね、所が日本の状況から言ひますと、それは官吏が殖えたり、どうも歳入歳出の關係上、大藏省との關係が非常に面倒臭いから、營團と云ふ日本特有のものが生れた譯でございます、詰り政府の機關でありながら、別個に獨立した機關として行くやうな形を執つて來たのでありますが、それで手間取りましたのであります、もう一つは現在あります産業設備營團其のものを改組して行きたいと云ふ積りでありました所が、當初はそれを第二會社に移して行く積りでありました、所が今度の補償打切りと關聯しまして、それが又話が變りまして、全然新しい營團を作つて、さうして之を清算したものを後に引受ける、或は引受けなくても宜いと云ふやうなことで、法律の體裁から言ひますと全然別個なものが出來た譯であります、一連の關聯はありますけれども、それで手間取りましてやつと――次の議會でも宜いかも知れませぬけれども、折角苦勞して出來たものだから、是非此の議會に間に合はすやうにと云ふやうな注文もありまして、率直なことを申上げますが、遲れたやうな次第であります、尚ほ今中小工業を急ぎます關係上、又冬の議會まで延びますことはどうかと思ひますので、是非最後の此の延長した議會にでも之を通さして貰つて、少しでも中小企業の――今度は從來のやうに大企業のみを相手と致しませぬから、是非やらして戴きたい、斯う云ふ次第であります
それから貿易資金特別會計の方は、是は初めから相談があつたのでありますけれども、大藏省、商工省の間に於ける色々な相談で延びて居りました、どうせ、追加豫算とか斯う云ふやうなものは、一番お終ひに、總ての豫算が終つた後で御相談願ふ習慣には從來からなつて居りますが、特にさう云ふ意味に於きまして延びた譯でありまして、別に他意ある譯ではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=73
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074・大矢省三
○大矢委員 大體まだ私には納得行きませぬけれども、此の程度にして置きます、産業設備營團が産業復興營團に變つたと私は見て居りますが、從來の設備營團と復興營團とは、此の法律の内容に付ては私は大差がないと思つて居りますが、どの點が違ふのかと云ふこと、今一つは營團なるものが、色々見方に依つては、是が非常に設備なり或は復興に貢獻をなすものであると云ふ風な考へ方もあると思ひます、私共の知つて居る範圍内では、事變中營團が相當に逆な阻碍をして居ると云ふこと、言ひ換へれば機能を十分に發揮しない爲に、一般からは寧ろ非常に怨嗟の聲があつて、斯う云ふものはない方が宜いと云ふ風に考へて居るのでありますが、それを今度名前を變へて出すのでありますが、果して今日までの營團が、是は單に設備營團のみならず、醫療營團然り、或は住宅營團然り、此の營團と稱するものが決して成功して居ない、成功して居ると商工省の直接關係される方々は感じて居られるか、若し缺點がありとするならば何處にあるか、營團が十分機能を發揮し得なかつた原因が何處にあるかと云ふことを、其の衝に當つて居る人々の實際から一つ御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=74
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075・星島二郎
○星島國務大臣 後で事務當局から何れ詳しく御説明すると思ひますが、大體私共在野の時に、實は營團と云ふ名前に對して若干の疑念を持つて居りましたが、食糧營團、住宅營團、開墾營團と色々出來ましたが、併し産業設備營團は、實業界に功成り名遂げた藤原銀次郎氏が最初から其の衝に當られて、今日まで兎も角も二十數億圓の金を投じまして、まだ多少未拂ひもありますけれども、假に肥料に例を取つて見ても、肥料がここまで復興し得たのも、全く設備營團が非常な力を以て之を支へて居つたやうな關係もありますので、個々の仕事に對しましては、或は若干官僚的な經營もあつたかも知れませぬけれども、私は少くとも之を見まして、之を全部清算に廻してしまふのは惜しい、そこで少くとも從來の行き方は主として軍事工業、主として重工業、斯う云ふものであつたのですけれども、之を型の變つた從來のやうな行き方で設備を貸し、或は設備をしてやり、それを中小工業の所へ持つて行くことは非常に宜いと思ひまして、從來の營團の其の儘改組して、戰時型を平和型に直すだけの、法律の體裁を直して貰つてやらうと云ふのは、私は商工省に入ります當初より、實はそれを念願して居つたのであります、先程も申したやうに、延びたのは、從來のものは從來のもので一應全部濟ましてしまつて、全然新規な氣持、清新な氣持で新しい復興營團として進んで行かうと云ふやうな場合にも、營團と云ふのが宜いか公社が宜いか、會社が宜いか、色々と研究されたのでありますが、結局營團と云ふ形で行かふと云ふやうなことになつたのでありまして、他の食糧營團、住宅營團、開墾營團、色々非難もありませうけれども、一通りの仕事はして居ると思ひます、私は産業設備營團は、戰時中實はやり過ぎて或は追放に逢ふやうな氣持に――或はさう云ふ面から言へば多少批評さるべき點があつたかも知れませぬが、所謂肥料に例を取つて見ましたやうな場合に、やはりあつて宜かつた、又多くの仕事は之に依つて救はれた點もあらうと思ひますので、是からの日本の建直しには、やはり從來の程度政府が直接――單に復興金融を通して金を貸すと云ふ以外に、やはり自ら設備をして、さうして積極的に設備をしたものを貸し與へる、或は今日軍需工場等で全然不用になつた工場の如きを、小さな人達に任して居つては仕樣がないから、茲に全體を引受けて、それぞれ向くやうな貸工場にしてそれを運用さすと云ふやうなことは、正に執るべき手ではないかと斯樣に考へまして、再び之を始める譯でありますが、そこであなたの御心配の、從來の若し惡い意味のなにがありますれば、それを一掃する爲に、今度は清新な氣持で、全然實は首腦部陣容も變へて掛かると云ふやうな話合もありますので、さうして今度は新發足をした後で、或は從來の清算した最後の設備等を引繼ぐこともあり得るかも知れませぬけれども、建前は全然新しいもので行きたい、斯樣な考へで初めた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=75
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076・和田太郎
○和田政府委員 舊營團と新營團との性質の相違でございますが、法律的に申上げますと、第一に舊營團は、其の事業の目的と致して居りました事業は、戰時緊要な産業設備の建設をすると云ふことと、未働遊休設備の買取りをやる、それから戰時型の標凖船を造る、此の三つの仕事を致して居りまして、何れも戰時産業の振興と云ふことを目的と致して居つたのでございますが、今度の新營團は戰後に於ける緊要民需産業に必要な産業設備の建設、或はそれ等の設備の買取りと云ふやうなことになりまして、大體戰爭經濟を目的とするか、平時經濟を助成することを目的とするかと云ふ點に根本的な相違がある譯でございます、唯其の造りまする所の設備其のものは、何れも普通の企業者に於きまして、一般の金融を受ければ出來ると云ふやうなものではございませぬで、色々な企業上の危險がございまして、企業者自身の危險に於て之をやると云ふことが困難なものでございまして、而も時局下早急に之を増強しなければならないと云ふやうな産業に限りまして建設を致して居つたのでございます、尚ほ實際問題と致しましては、從來の營團は專ら軍需産業を目的と致して居りましたが、新營團に於きましては、只今大臣からも御説明がございました通り、中小工業の振興の爲の設備をすると云ふことを其の仕事の主要なものの一つと致して居る次第であります、舊營團の運營に付きましては色々の批判もあつたかと存じますが、舊營團に對しましては、其の事業のやり方に付きまして、各方面から制肘があつた譯でございます、例へば設備の建造に付きましては、軍需省は勿論、陸海軍省の方からも色々な注文が出る、造船に付きましては運輸省の方から、其の賣渡價格其の他に付ての色色な指示が出ると云ふやうなことで、非常に其の運營に制肘が加へられて、營團首腦部の自發的な意向を十分に發揮すると云ふ餘地が可なり狹かつたやうな事情もございますし、又建設を致しまする場合に、從來は其の設備を借受けるべき者に實費請負をさして居つたやうな關係もございまして、時に其の建設費が割高であると云ふやうな非難もあつたのでございまするが、今度の營團に付きましては、其の外部からの指導と云ふことも非常に簡素になつて參りましたし、又建設自體に付きましても、從來のやうに借受者に一任をして置くと云ふことでなく、或は指名入札のやうな方法を取りますとか、或は營團自身に技術方面をもつと増強致しまして、積極的に監督をして行くと云ふやうな方法も執り得るかと思ふのでございます、要するに舊營團の運營に付ましては、非常に大きな部分を關係方面からの掣肘を受けて居つたと云ふ所に、相當な仕事のやりにくい所があつたと思ひますので、新營團の運營に付きましては、此の點に付て十分留意致しまして、營團首腦部の手腕に期待致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=76
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077・大矢省三
○大矢委員 此の法案を見て居りますると、第十條に産業復興營團でないものが産業復興營團又はそれに類似の名稱を用ひてはならぬ、更に第三十五條に、此の種の類似のものがあるならば、今後六箇月後に之を解散しろ、さう云ふ規定があるのであります、是は明かに自主的にさう云ふ營團が現實にあると云ふことを目標に、此の箇條が設けられて居ると思ふ、そこで類似の營團と云ふものは一體現在幾つあるかと云ふことを、先づ御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=77
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078・和田太郎
○和田政府委員 現在の所産業復興營團と云ふ名稱を使つて居るものは承知致して居りませぬ、唯從來の例と致しまして、産業復興營團と云ふ名前、或は是と非常に似通つた名稱を用ひて居るものがございますと致しますれば、それに依つて第三者を害すると云ふやうなことも起きて參ります、此の類似名稱の使用を止めると云ふのが從來の例でございますので、是も其の例に傚つたのでございます、唯只今も申上げましたやうに、産業復興營團と云ふはつきりした名稱を用ひて居るものは、現在の所承知して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=78
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079・大矢省三
○大矢委員 其の類似のものがあるかないかと云ふことを御聽きしたいのです、是と同じやうなものがあると私考へませぬけれども、此の文字の通り類似のものがあるのか、ないと云ふならば第三十五條の規定はどうして設けられたかと云ふこと、それともう一つ一緒に御答へ願ひたいのですが、斯う云ふ風な規定を見ますると、是は明かに此の復興營團を一つの會社が獨占すると云ふことになる、一つでなければならぬと云ふ原則になる、だからして斯う云ふものが出來たと思ふ、更に是等の役員の人達は、從來と同じやうに政府の任命になる理事長以上監事、理事、任期を三年として、監事のみは二年とすると云ふことで、斯う云ふ風なことが今日非常に禍ひをして、民間の所謂復興意欲と云ふものを抑へて居る、殊に私は、營團の今日まで至つて不成績な大きな原因は、一つの計畫性を持たないと云ふことであります、殊に戰爭中は周圍の情勢が刻々と變りましたから、是は已むを得ないことと思ひますけれども、平和工業の所謂復興に付ては、相當長期の計畫がなければ、――營團が金を貸付けるにしても、將來性があるならば或は危險を冒しても貸さなければならぬのであります、さう云ふことに對しての責任感と云ふものは官僚には薄い、それで若し斯う云ふ營團の運營に付ては、今後相當長期の計畫性を持たなければ私は成功しないと思ふ、而も民間のさう云ふ類似のものを一切禁止し、是れ一つでなければならぬ、そこへ持つて來て役員は悉く政府の任命する所の者である、民間のさうした組織を壊して、一體何處から理事を選ばうとするのか、或は政府の今までの組織を其の儘持つて來て、名前だけ變へて任命するのではないかと私は想像する、若しそれであるならば、私は相當な計畫が之に必要ではないか、先程來色々質問の中にもありましたやうに、貿易のことに致しましても、是は日本の資材、或は輸入其の他と睨み合せての計畫があつて、其の計畫を發表されて初めて數字が出て來る、さう云ふ計畫性を持たせて、斯う云ふものを唯終戰後復興の爲に必要だからと云ふことで、之を拵へると云ふことに付ては、私共は十分納得することが出來ないのであります、此の點を一應御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=79
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080・和田太郎
○和田政府委員 第一の名稱の點でございますが、復興營團と云ふ名稱を使つて居るものは承知致して居りませぬが、それ以外の色々な法人格のあるものとか、或は法人格がなくても任意に色々な名稱を使つて居るものがございます、之を全國に亙つて調査致しますことは不可能でございますので、實はあるかないかと云ふことがはつきり申上げられないのでありますが、是は唯名稱を産業復興營團或は之に似通つた名前を使つてはいけないと云ふことでありまして、他の機關がそれぞれの目的に從つて事業を致すこと其のものを禁止して居るのではないのであります、是は産業復興營團と取引を致す第三者が、名稱が偶偶似通つて居る爲に、此の法律に依つて作られる復興營團と誤認して、他の團體と取引などをした爲に損害を蒙つたと云ふやうなことを豫め防ぐ爲に、唯單に産業復興營團或は之に類似する名稱の使用だけを禁じて居る次第であります、それから役員の任命の問題でございますが、此の點に付きましては只今大臣からも御説明がありました通り、此の機關が實行致します仕事は、本來國家其のものがやつたら宜いではないかと云ふやうな意見もございますやうに、其の實質は國家の事業でございます、唯官廳の組織を以て致しましては、色々な關係から適切活溌な活動が出來ませぬので、之に代る國家的な機關として復興營團を設けるのでございますから、其の役員に付きましても政府が任命して、國家の機關としての自覺の下に其の仕事を遂行して貰ひたいと云ふ考へでございます、尚ほ此の營團の事業の計畫性に付てでございますが、是は事業の所にも書いてございますやうに、今後經濟安定本部に於きまして、我が國の産業に付て基本的な色々な政策なり計畫なりを決定せられるのでございますが、其の安定本部の決定致しました各種の政策、或は方策と云ふやうなものに基きまして、營團の仕事を計畫して行くと云ふことでございます、隨ひまして安定本部の定めました各般の計畫を、設備の建設と云ふ面に於きまして此の復興營團が擔當して行く、斯う云ふことに相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=80
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081・大矢省三
○大矢委員 此の營團に復興金融金庫の百億圓から約三十億圓、之を差當り運用する意思だと云ふ答辯がありましたが、斯う云ふ三十億圓と云ふ金が營團に出されると云ふことになれば、自らそこには計畫があるのではないかと思ひます、唯漠然と安定本部で計畫したものを行ふと云ふものではないやうに私は考へる、もつと何か――今直ちに答辯が出來ないならば、明日でも結構でありますが、此の營團は斯う云ふことをやらなければならぬと云ふやうな、もつと具體的なものを聽きたい、其の點は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=81
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082・和田太郎
○和田政府委員 大體此の復興營團に於きまして、今後實施して參りたいと考へて居りますものは、第一に肥料工業の復舊及び建設であります、硫安、石灰窒素、加里肥料等の増産を圖ります爲に、生産設備の復舊、或は建設を行はうと云ふのが第一點であります、現に問題になつて居りますものは昭和電工の川崎工場外四工場の復舊工事であります、之に約六億數千萬圓の資金を要するものと考へられて居ります、第二の仕事と致しましては、炭礦施設の更新或は新設でありまして、炭礦に於ける積込施設、坑内掘進、運搬施設と云ふやうな、中小の炭礦に付きまして、更新或は新設を致しまして、之に依つて石炭の開發を圖つて行きたい、第三には中小工業に對する設備の貸與でありまして、中小工業の設備の改善、或は技術の向上を圖りまする爲に、特に政府或は民間の試驗研究所と提携致しまして、其の研究に基く改善設備を、廣く中小工業者に利用させる施設を致して參りたい、斯樣に考へて居ります、只今申上げました川崎電工の外は、まだ是と云つて、實は具體的に計畫が具體化して居る譯ではありませぬが、此の線に副ひまして、今後安定本部の策定致しまする政策に基いて事業を進めて行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=82
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083・大矢省三
○大矢委員 大變參考になりまして有難うございました、能く分りました、さう云ふ風でありますならば、大體承りますると、重要な最も急を要するものに對しての計畫は是で分つた、此の中小工業の一般平和産業に於ける計畫と云ふものが私は聽きたかつた、斯う云ふ重要な産業は、是は此の營團はなくても進められて行く問題でありまして、中小工業の復興こそ、私は最も戰後に重要な問題であるべきと思ふのであります、若しありまするならば、それを御聽きしたいと思ひます、今日は其の點で是れ以上御聽きしてもどうかと思ひますから、次に私は此の機會に、商工大臣が見えて居りまするから伺ひたいことは、過日協同組合法が通過致しましたが、あの組合法に依つて從來有る大事業主を中心とする商工會議所と代るべきことが出來るかどうかと云ふことを、之に關係があるかどうか知りませぬけれども、此の機會に一遍御聽きしたいと思ひます、之をもつと詳しく言ひますると、今後協同組合方法に依つて出來る商工組合が、地方にある商工會議所の行ふ機能を行ふことが出來るかどうか、此のことを一遍御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=83
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084・星島二郎
○星島國務大臣 前段の中小工業の振興に付きましては、何れ安定本部内にも中小工業振興對策委員會も開かれまするし、又商工省内に於きましても、それぞれ研究致して居りまして、共同施設等に對して、どうしても其の上に於ての出資なり、或は自らの資本で出來ない場合は、一つ是は此の營團の方で引受けてやらす場合もありませうし、中小部面の綜合的な協同に依つて、尚ほ無理であるやうなものに付きましては、相談を受け次第それにやつて行きたい、斯樣に考へて居る譯でありまして、まだ具體的に何處々々の部分に付ては斯うすると云ふ考へはありませぬが、今後さう云ふ風な點に付きましては、十分一つ研究致しまして、成べく早く實施に移したい、一つの例と致しましては、菓子工場が一番宜い、大きな工場が空いて居りますのを分けまして、動力とか水道とか色々な設備を致しまして、それを適當な小さな工場に貸し與へると云ふことが、最も良い中小工業振興策として、現に民間でも一、二出來て居りますが、之を一つ積極的にやつて見たらどうかと云ふやうな考へを持つて居る次第であります
次に今の商工會議所のやうな一つの素質を、若し協同組合が、――或る縣では極めて自主的に出來る譯でありますから、中小工業に關する諸種の聯合會でも出來ますれば、殆ど其の會議所に似たやうなことが出來るかも知れませぬけれども、それは業態に於て多く結ばれるのでありまして、商工會議所は地域を限つて行はれることになりますから、私は全然同じものが出來ると云ふことは考へられませぬが、唯商工會議所に參加するのに協同組合の代表者が參加致しまして、其の機能を巧く利用することは出來るだらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=84
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085・大矢省三
○大矢委員 産業復興營團のことに付ては此の程度に致しまして、次に貿易の關係でございますが、先程來の局長からの補足的な説明の中に、各國を擧げて貿易は今折衝中だと云ふことでありますが、朝鮮はまだ獨立して居られないので、此の點が直接さう云ふ貿易の對象となるか、或は今後他國と同樣に扱はれるのか、此の點一寸承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=85
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086・塚田公太
○塚田政府委員 御説のやうに、朝鮮はまだ完全な一つの政府が出來て居りませぬから、現在に於ては總て司令部と貿易廳とが引合はせて居ると云ふことであります、實際に於ては、朝鮮へは既に日本の統制價格にして約四億圓近くのものが輸出されて居るのであります、併し向ふからは我々の最も期待して居つた米も全然來ませぬし、僅に黒鉛、それから鹽が百二、三十萬圓來ただけでありまして、實際に於ては昭和二十一年六月二十日に勅令第三百二十八號で公布しました貿易等臨時措置令の第七條でしたか、「本州、北海道、四國、九州及びこれらの附屬島嶼(命令の定める地域を除く。)とこれらの地域以外の地域との間に行はれる取引その他による物品の移動は、この勅令の適用については、これを輸出又は輸入とする。」として、外國としては、取扱つて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=86
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087・大矢省三
○大矢委員 朝鮮は御承知の通り一番手近でもあるし、殊に北鮮には鑛石、或は「タングステン」等もありますし、日本に缺くべからざる工業に必要な「カーバイト」などふんだんにあるのであります、是は出來るだけG・H・Qとの諒解の下に、一日も早く貿易を開始するやうに希望致します、それから貿易品の中で、午前中にも質問がありましたやうに、日本獨特の色々な工藝品もありませうが、何と云つても日本の貿易の王座と申しまするか、外國で最も尊重されるものは眞珠であります、是はもう日本獨特のもので、而も之を養殖するには三年以上の歳月を要するのであります、是は今後敗戰日本としての貿易に重要な關係を持つ所の、生絲と同樣以上の特産物でありますからして、是等に對する助成と云ひますか、補助と云ひますか、さう云ふ事業に對する何か積極的な方針が若しおありでしたら、此の際に助成或は補助金を出す御意思があるかどうか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=87
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088・塚田公太
○塚田政府委員 朝鮮からこちらへの輸入品に付て色々御注意有難うございました、先程申しましたやうに、米其の他「タングステン」などは相當に大きな包藏量を持つて居ることは十分承知して居りますので、斯う云ふものに付てもう少し何とかならぬかと云ふことに付ては、貿易廳も度々司令部の方には御願ひして居るのでございますが、どうも向ふに集荷とか、或は買付設備と云ふものが破壊された關係でありますか、其の點がまだ旨く行かないのは非常に遺憾に思つて居ります、併し御承知の通り、一番密接な關係のある日本と朝鮮でありまするから、向ふの秩序が或る程度出來ますれば、此の點は早く軌道に乘つて來るだらうと思ひます
眞珠に付ては御説洵に御尤もでございまして、既に是の自由買付と云ふものは禁止されて居るやうな工合で、所謂日本としましては最も重要なる輸出品として、外へ散逸しないやうに保護して居るやうな譯でありますので、重要性は十分認めて居るのでありますが、特に補助金とか或は助成金と云ふやうなものに付ては、未だ考て居らぬのでございますが、此の點御注意に基きまして、農林省ともよく相談しまして、若し必要ならば、さう云ふ點も出來るだけ保護を與へて發達を圖らう、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=88
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089・大矢省三
○大矢委員 私は餘り一人で獨占するといけませぬから、他の質問者に讓りまして、又後から質問することに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=89
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090・白井秀吉
○白井委員長 質問の通告はもう是で終つて居るのですが…………発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=90
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091・松永義雄
○松永(義)委員 私、商工大臣に質問しようと思つたのですが、商工大臣御歸りになつてしまつたから………発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=91
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092・白井秀吉
○白井委員長 商工大臣は戰時補償の委員會に一寸行つて來ると云ふことで、御出掛けになつたのですが、御質問があるのですか――松永君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=92
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093・松永義雄
○松永(義)委員 産業のことに付て御尋ね致したいと思ひます、數字的に一寸申上げます、私共は少くとも此の二、三年先の計畫としまして、以下述ぶる産業上の計畫を持つて居たのであります、第一は、言ふまでもなく只今御話のありました肥料、硫安に付きまして約二百萬「トン」と云ふことを考へて居る、それから商工大臣から御話のありました石炭、是が約四千萬「トン」、更に紡績に付きまして五百萬錘、「セメント」に付きまして六百萬「トン」、鐵に付きましては約三百萬「トン」、少くとも是だけは國民の平和的經濟生活を營む上に於て必要かと思ふのであります、政府の御考へを御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=93
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094・白井秀吉
○白井委員長 只今商工大臣が居られない爲に、今の答辯は致し兼ねると云ふことですが、外の方の御質問がありましたら、外の御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=94
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095・松永義雄
○松永(義)委員 さうですか、それでは自分自身の議事進行に付きまして……、只今商工大臣でなければ御答辯出來ないと云ふことですが、商工大臣に御質問しまして、更にそれから輸入資金の問題に移ります、輸入資金の問題に移りますと、質問する先は大藏省になりますか、或は安定本部の御計畫に依るので膳國務大臣に御質問することになりますか、それから更にどなたも能く質問して居られます貿易上に關する「クレジット」、それから尚ほ其の次に御尋ね致したいことは、現在の通貨に關する問題、それは膳國務大臣に關係して來ることと思ひます、尚ほ大藏大臣にも關係して來ることと思ひます、と云ふことは貿易に關する爲替換算率と云ふことが結論で、其の前提としてさう云ふことを御質問致したい、爲替換算率に付きまして將來の計畫を大藏大臣に御尋ねしたい、大體原則として――、あと細かい點は派生的に起つて來ますか、要は日本の産業計畫と貿易に關する點、それに依る國民生活の安定と云ふことを目標にして御尋ね致したいと思ひますので、それぞれ所管の大臣に、若しおいでになつて戴くと非常に結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=95
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096・白井秀吉
○白井委員長 只今關係大臣がおいでにならぬので、御質問出來ないことになつて居るので、暫時休憩します
午後二時五十分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=96
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097・会議録情報3
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午後三時十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=97
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098・白井秀吉
○白井委員長 それでは休憩前に引續き開會致します――松永義雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=98
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099・松永義雄
○松永(義)委員 出來るだけ簡單に箇條的に申上げて御質問致したいのであります、茲兩三年先の我が日本の國民經濟を確立する爲に、是だけはどうしても必要ではないかと云ふ數字を申上げまして、御當局の御意見を伺ひたいと思ひます
第一は紡績五百萬錘、石炭が四千萬「トン」、肥料が二百萬「トン」、「セメント」が六百萬「トン」、鐵が三百萬「トン」、之に對して政府の御考へ及び此の三年位の計畫として、どう云ふ御考へを御持合せになつて居るか、其の點を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=99
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100・星島二郎
○星島國務大臣 最後の決定は最近經濟安定本部會議が議會閉會勿々開かれるさうでありますから、それ等に付て審議されまして、それが大凡の線は決めて呉れると思ひますが、商工省としまして、從來大凡の目安を考へて居りますことは、硫安は事變前に還したい、是は二百萬「トン」でありましたから、大體其の線までは是非早急に還したいと云ふ計畫の下に、今施策を致して居ります、硫安以外の物を入れまして、精々三百萬「トン」あれば大體やつて行けるだらう、大分面積も狹くなりましたから……、石炭は、是は多いに越したことはないのでありますけれども、大體の計畫は三千萬「トン」は是非欲しい、詰り月産二百五十萬「トン」、斯樣な計畫で、是は今著々と其の手を打つて居る譯でございます、是れ以外に重油の輸入及び粘結炭等を入れますれば、あなたの御希望の四千萬「トン」に大體近い所に持つて行きたいのでありますけれども、先づ堅い所は三千萬「トンハ」必ず出すと云ふ方針で一つやつて行きたい、紡績は五百萬錘と云ふ所でありませう、併し昨日の閣議決定を經まして、纖維品の三箇年計畫と云ふものを確定致しました、今日の新聞にも發表した譯でありますが、あの計畫から行きますと、無理をしないで順調に進んで先づ四百萬錘強です、四百六十萬錘と云ふやうなことが出て居りましたが、先づ此の五百萬錘位の所を狙ひ所にして行つたら宜いかと思ひます、「セメント」の六百萬「トン」はどうですか、今の設備だけではここまでは行かないと思ひます、併し大體日本の戰災復興等を思ひますれば、或は水力發電等の大發展を思ひますれば、是れ位欲しいのであります、鐵は三百萬「トン」は、是は關係筋からも許されて居る數字なんであります、併し中々ここ三箇年の間には之に届きませぬ、本年度の所五十萬「トン」も難かしいのでありますから、是は三百萬「トン」まで行きますことは中々困難と思ひますけれども、併し少くとも此の數字までに是非達しなければ、鐵飢饉が起つてえらいことになるだらう、斯樣に心配して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=100
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101・松永義雄
○松永(義)委員 そこで次いで御伺ひしたいことは、内地で掘出される鐵の原料なり、或は石炭なりでは不足するので、どうしても輸入に仰がなければならぬものがあると存じますが、其の仰がなければならぬ輸入の鐵に關しては、鐵礦石にしましても、或は「スクラップ」にしましても、或は石炭に付きましては製鐵用の石炭であるとか、或は「カーバイド」用の無煙炭と云ふものがありますが、其の輸入計畫と云ふものがおありになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=101
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102・星島二郎
○星島國務大臣 勿論仰せの如く、少くとも鑛石の輸入を圖りまして製鐵をしなければ、それに對する副産物及び技術も殘したいと思ひますから、是非さう云ふ方針の下に、三百萬「トン」を全部鑛石に依つてやると云ふことは、是は到底不可能と思ひます、併し少くとも今日の日鐵は、八幡に一箇所に集中致しまして之を生産したい、斯樣に考へて居る譯でありますが、到底内地の鑛石だけでは償へませぬから、將來早く鑛石の輸入をやりたい、斯樣に思つて居るのですが、幸に近い所にあるのでありますから、熱心に交渉致しますれば許されるやうに決まるだらう、斯樣に思つて居る譯であります、隨て又石炭にしましても、製鐵に向いた石炭を、是は現在でも大體諒解を得まして、十萬「トン」の粘結炭を入れる、其の十萬「トン」も亦日本で生産の石炭と交換すると云ふ話も出來つつありますし、又三萬「トン」位の製鐵所の粘結炭を入れても宜からうと云ふ話も進みつつある譯であります、さう云ふことに依つて本當の復興を圖りたい、斯樣に考へて居る譯でありますが、其の他の産業に對しましても、大體一應纖維製品も三箇年計畫を立てた譯でありますから、先づ五年は長過ぎるし、二年は短い、三箇年計畫位の所を狙つて一應やつて見る、他の産業方面に付きましても、そこを狙つて安定本部に於きましても計畫は立てられることと思ひますが、少くとも安定本部に臨む商工當局としての心構へは、さう云ふ筋でやつて見たい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=102
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103・松永義雄
○松永(義)委員 只今商工大臣の御答辯に依りますと、大體私の、少くとも是だけは必要であると云ふ要求に對して、ざつと計算上約八割位の程度に感じられるのですが、それに對して、問題は輸入原料に要する資金の問題であります、其の資金は、大體昭和十六年頃の値段で踏みまして約四十億圓と考へて居るのでありますが、政府の御考へはどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=103
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104・星島二郎
○星島國務大臣 今の所斯う云ふ國營的貿易になつて居りまするから、日本は丸公でそれを買上げて向ふに出す、司令部の方ではそれぞれの國から取つて、さうして適當な値段でこちらへ渡すと云ふ譯で、向ふ任せの計算になつて居る譯であります、併し是は何時までもさうでは困るのでありますから、成べく早い時期に於きまして、本當に自由に持つて行つて、爲替相場も立てなくちやならぬのでありますが、是は何れ専門の貿易長官から御意見があると思ひます、そんな譯で、私の方では見返り品を造るにしても、實は張合のない所がある、是が高く賣れる點があれば宜いのですが、今は兎に角「バーター」でありますから、うんと之に要する品物を造つて、置くより外ないのであります、即ち絹絲等の増加、其の他雜貨、工藝品等、凡ゆる見返り物資を造ること以外に今の所方法がないので、成べく早く講和會議も濟まして戴いて、是は司令部でも成べく早くさうすべきだと云ふ原則は認めて呉れたのでありますが、偖て是が何時のことですか決定は出來ませぬけれども、少くとも講和會議に依つて總ての事が決つて行くだらうと思ひますから、早く講和會議を開いて戴きたい、さうして講和會議が開かれる前提としては、憲法實施と賠償義務の一切の完了と云ふことが考へられる譯であります、尚ほ爲替のことに付きましては、貿易長官が居られますから其の方より御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=104
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105・松永義雄
○松永(義)委員 大體の御考へは述べられたやうですが、尚ほ數字的に御聽きして置きたいと思ひます、結論は、只今商工大臣の仰しやつた三箇年計畫なるものは悲觀的であるか、或は樂觀的になるかと云ふ境目になると思ふのでありますから、其の點に付て御伺ひしたいと思ひます、大體今日考へられて居るのは、見返り物資として、生絲其の他の加工品を一切加へて十億圓位に過ぎない、斯う言はれて居る、さう致しますと、見返り物資だけでは迚も追付きさうもないと云ふ感じを持つのですが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=105
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106・星島二郎
○星島國務大臣 十億どころでない、もう少し大きいのであります、今貿易長官から數字に依つて一應の説明をして戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=106
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107・白井秀吉
○白井委員長 松永君に一寸申上げます、大藏大臣は補償打切り委員會の方に出席を急いで居られますから、大藏大臣に對する質問を先に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=107
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108・松永義雄
○松永(義)委員 承知致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=108
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109・塚田公太
○塚田政府委員 今御話の輸入の資金に付きましては、商工大臣から御答への通り、輸出品を以て全部賄ふと云ふ建前になつて居るのであります、それで四十六年、詰り今年の下半期に起きまして輸出を計畫して居りますものは、既に九十億圓になつて居るのであります、來年一年間の輸出計畫は二百三十九億と云ふことになつて居るのであります、唯是は一部の原材料を外國から仰がなければならぬ、それが完全に入つて來まして初めて是が完成する譯でありまして、現在の所一部まだ入らないものもあります、斯う云ふ點に付きまして、是非急ぐものだけは、最近に緊急要請を二度ばかり御願ひに行つて居る譯でありまして、近々に斯う云ふものもどの位入るかと云ふことに付ては、大體見當が付くことになつて居ります、十億と云ふのは非常に少い數字であつて、何かのお間違ひではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=109
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110・松永義雄
○松永(義)委員 私の先程申しましたのは、昭和十六年頃の價格から換算しての四十億圓で、どうしても三十億圓位足りない勘定になりますが、それはどうなさるか、私の考へと商工大臣の考へはそれ程差異はないと思ひますので、數字的に細かい點は別として、結論として、見返り物資だけでは今の御計畫は價格の點から言つて出來ないのではないか、能く度々質問される「クレヂット」がどうしても必要になつて來る、斯う云ふ點にあるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=110
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111・塚田公太
○塚田政府委員 只今どうしても見返り物資だけでは足りないと云ふ御話でありますけれども、現在日本の生産力竝に「ストック」、さう云ふものを合せて、日本から輸出して欲しいと云ふやうなものを大體推算しました結果は、輸出の方で九十億でありまして、それに對して輸入が約百億と云ふことになつて居ります、併し來年の一年間に於きましては、只今申上げました通り輸出が二百三十九億五千萬圓に對して、百八十八億五千萬圓と云ふことになるのであります、でありますから、此の下期は輸入が少し超過することになるかも知れませぬが、來年の一年間には之を十分「カバー」して餘りあるやうになる計畫であります、又是はしなければならぬと思つて、折角努力して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=111
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112・松永義雄
○松永(義)委員 さうしますと、只今の輸出入代金で以て、商工大臣の仰しやつた三箇年計畫が實行出來る、斯う云ふ風に御聽取りして宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=112
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113・塚田公太
○塚田政府委員 大體にさう云ふ豫想と計畫の下に進めて居ります、來年の一年間はさう云ふ程度で行けると云ふやうに考へて居ります、併し何分にも買付けも全部向ふの考へ次第、又入つて來るものも向ふの考へ次第と云ふ實情でありますから、我々の計畫した通りにして戴ければ斯う云ふ程度になると云ふことだけを、豫め御諒承して戴けないと――我々としては、出來る限り向ふの御考へを能く忖度した上で計畫を立て、或は總ての策定をして居りますけれども、併し何分にも現在に於きましては、輸入も我々の懇請して居るものが果して全部が入るのか、半分入るのか、三分の一貰へるのかと云ふやうなことに付きましては、食糧以外のものに付きましては、殆ど見當の付かないものが大部分であります、又輸出の方も或る程度の目安は付くのでありますが、先程も御話しました通り、確定的な返事は非常に遲れるのでありまして、其の點に多少の齟齬はないと言へないと思ふのでございますが、我々としては出來るだけさう云ふ方面に向つて努力致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=113
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114・松永義雄
○松永(義)委員 さうしますと輸入物資及び輸入代金の決濟と云ふことですが、計畫的に行はれる結果、貿易と云ふものは非常に統制されると云ふ風に考へて宜しいですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=114
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115・塚田公太
○塚田政府委員 今の御質問の御趣旨が一寸私に能く分り難いですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=115
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116・松永義雄
○松永(義)委員 詰り見返り物資の代金で以て輸入を行はれる、今の計畫を實行される爲には、それだけの金が必要だ、今見返り物資を以てすればそれだけの計畫しか實行出來ない、斯う云ふ風に御聽き致しますと、一文の金も無駄が出來ないのであります、さうすると輸入物資及び輸入代金の決濟に付きましては、嚴格に、且つ日本の國民經濟安定の爲の計畫の線に沿ふやうに統制されて行くと云ふことにならうかと思ひますが、さう考へて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=116
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117・塚田公太
○塚田政府委員 其の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=117
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118・白井秀吉
○白井委員長 それぢや大藏大臣が見えて居りますから、續いて松永君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=118
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119・松永義雄
○松永(義)政府委員 それぢや大藏大臣に御尋ね致したいのですが、只今の貿易廳長官の御答辯に依りますと、見返り物資で以て物資の輸入を圖り、さうして日本の經濟の計畫を樹てて行かれると云ふ風に仰しやつたのですが、其のやうに窮屈に考へて置いて宜しいのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=119
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120・石橋湛山
○石橋國務大臣 私も左樣に考へなければならぬと思つて居ります、「クレヂット」の問題に致しましても、是は無論「クレヂット」を與へられればそれに越したことはありませぬが、之にさう大いなる期待を掛けることは危險なことです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=120
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121・松永義雄
○松永(義)委員 そこで更に同じことを繰返すことになるかも知れませぬが、貿易の自由を許すことは、日本の現状としては相容れられない事實である、隨て貿易の自由をやつて行かれるとすれば、其の間色々日本の現状に副はない不必要な物資が輸入される虞が多分にあると思ふのであります、隨て只今大藏大臣の御答辯は非常に私共贊意を表するのでありますが、將來ここ三箇年計畫を實行する限りに於て、自由貿易と云ふものは、今までのやうな自由貿易でなく、計畫貿易、統制的な貿易の方針で進んで行くと考へて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=121
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122・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は講和條約が出來まして、何時それが出來るかと云ふことが問題ですが、或る時期にそれが出來る、其の後の貿易がどう云ふ形になるかと云ふことは、今日からはつきり致しませぬが、少くとも講和條約が出來るまで、言換へれば日本が聯合軍の占領下にある間は、今日の貿易の形を執る、但し輸入物資は無論左樣でありますから、此方の思ふ儘にはならない譯でありますが、併し是は聯合國軍を我々は深く信用して居りますから、日本に取つて最も有利な輸入をして呉れるものと信じて居ります、是は今までの實例でもさうであります、それから講和條約後の貿易に付ては、多分日本も普通の自由な國際經濟關係に入り得るものと信じ、隨て「ブレトン・ウッヅ」協定にも參加するものと考へますが、併し其の場合にも、貿易なるものは今「アメリカ」英國等にも色々議論が出て居りますやうに、今日よりもより自由な貿易と云ふことは考へられるのでありますが、過去に於けるが如き所謂自由貿易が復活するや否やと云ふことは、是は爲替關係等から見ましても「ブレトン・ウッヅ」協定等から見ましても、貿易の形は一寸變るのではないか、詰り或る程度計畫貿易と云ふものが各國とも行はれるのぢやないかと考へて居ります、併し是は將來の豫想でありますから、今兎や角申すことは出來ませぬが、大體そんなことになるのではないかと云ふ風に想像して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=122
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123・松永義雄
○松永(義)委員 只今大藏大臣の御答辯甚だ諒とする次第であります、日本の窮迫した經濟の下に於て輸入を圖つて行く、昔のやうな自由貿易を執られたのでは、人に依つては「ダイヤモンド」を輸入しないとも限らない、さうしたことにしたのでは、日本の經濟の再建と云ふものは出來ないと思ふことは常識であると思ふのであります、隨て假令講和條約後に於て、經濟の自由或は貿易の自由が許されるとしても、事實上は出來ないことぢやないか、將來其の時の御方針は、やはり計畫的に無駄のないやうにやつて行かなければならぬと考へて居りますが、重ねて簡單に御答へ願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=123
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124・石橋湛山
○石橋國務大臣 同感であります、左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=124
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125・松永義雄
○松永(義)委員 それでは別の方に移りまして御伺ひ致します、此の頃斯う云ふ話がある、日本の現在の通貨を安定させる爲に米價を基凖として行くと云ふことが言はれて居るのです、大藏大臣の御考へは如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=125
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126・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は今年の三月ですか、前内閣の時に所謂新物價體系なるものを作る時に、大體米價を基凖として――米價を決め、それを基凖にして色々計算をしたやうであります、隨て今度の物價廳に於ても、一應それと同じ方法に依つて計算をしよう、斯う云ふ考へを物價廳の方面では持つて居ると思ひます、ですから是は技術的な考へ方、計算の仕方ですが、是が何處かの委員會か何かで、膳國務大臣からもさう云ふ話がありましたやうに、今度更に物價の色々の改訂を致します場合に、一應米價と云ふものを基凖にして見て行かう、斯う云ふ考へを持つて居るものと私も信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=126
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127・松永義雄
○松永(義)委員 さうすると、それから更に米價を基凖として物價或は賃金其の他給料と云ふものを決めて行かれることになるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=127
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128・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは一寸私から、はつきりそこまで御答へして宜いかどうか知りませぬが、今までの政府の物價の計算の仕方と云ふものは、大體左樣にして居つたものと承知して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=128
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129・松永義雄
○松永(義)委員 現在の通貨量でありますが、現在の米價を基凖にして通貨量を見て行くと云ふ考へ方を以てすれば、今の米價は公定價格石六百圓、一升六圓、一升五十錢位の時から見れば十倍乃至十二倍です、其のやうに通貨量を御決めになつて行く考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=129
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130・石橋湛山
○石橋國務大臣 さう云ふことからは通貨量は決まらぬと思ひます、現在通貨が非常に出て居りますのは、大體に於て退職されて居る譯であります、ですから通貨量と云ふものは、理論的に申しましても、無論物價と關係はありますが、物價それから其の時の社會の状態で、どれだけの現金を皆の懷ろに入れて居るかと云ふやうなこと、或は銀行預金、詰り小切手などがどれだけ利用されるかと云ふやうな、色々の要素が綜合されて通貨量は定まる譯でありますから、今日例へば米が六百圓なら六百圓に決まつた、それが或る過去の時期の米價に比較して十倍なら十倍であるから、通貨も十倍で宜いとか惡いとか云ふことは言へないのであります、通貨量は通貨量で又別に考へなければならぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=130
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131・松永義雄
○松永(義)委員 斯う云ふ話があるのです、通貨の見返りとして米を見る、斯う云ふやうな考へを以てして、其の考へ方から平價の切下をやると云ふことが言はれて居るのですが、さう云ふことに對してはどう云ふ御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=131
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132・石橋湛山
○石橋國務大臣 通貨の凖備と申しますか、曾て金本位の時分には金が凖備になつて居りました、それから又金の價値と云ふものが通貨の價値を規定すると云ふことになつて居つたのですが、日本に於ては米の價格を以て通貨の價値を決めるべきだと云ふやうな説を、曾て例へば富田愛次郎氏などと云ふ人が唱へたことがありました、併し現在政府は無論左樣なことは考へて居りませぬし、又理論的に申しましても、米の價格と通貨の價値とを結付けて行くと云ふことは、理論的にも實際的にも困難と思ひます、左樣な考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=132
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133・松永義雄
○松永(義)委員 それでは若し講和條約が出來ましてから、貿易の事業をおやりになる、但しそれは計畫的であることを要すると云ふ御話であります、併し現在に於ては日本の物價と外國の物價と云ふものは、比率の問題から云つて中々困難であると思ふのでありますが、兎に角さうした時に於ても、現在のやうな貿易の仕方を以てされるか、それとも又貿易の自由の進むに從つて爲替相場を決めて、さうして貿易をやつて行かれるか、どちらの御考へですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=133
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134・石橋湛山
○石橋國務大臣 現在は御承知のやうに、日本側に於ては、さつき貿易廳長官から御話があつたやうに圓を以て計算をする、向ふでは又「ドル」の計算でやつて居る譯ですが、「ドル」と圓が離れて居る――離れて居ると云ひますか、隨て勘定が一面はつきりしない點もあるのであります、圓で「バランス」が取れても、又「ドル」で「バランス」が取れるかどうかと云ふことは別問題と云ふことになつて居りますが、講和條約でも出來まして、日本が普通の國際經濟に參加する場合は、無論圓でも「ドル」でも「バランス」するならする、しないならしないと云ふ、計算上は元の貿易の形に還る譯であります、隨て其の場合には爲替相場が決まります、爲替相場なしにはやれない、今日では爲替相場なしに、無關係でやつて居る譯であります、其の場合に爲替相場が幾らに定まるかと云ふことは、其の時の日本の物價、其の時の「アメリカ」等の物價、是は物價だけで以て、所謂購買力平價を計算して決めると云ふことも、實際上にはさう購買力平價を算出して、直ぐ其の儘と云ふ譯には行きませぬが、大體理論的にはそこが基凖になります、それから日本の物價が何處の水凖で安定しますか、我々が今日本の物價を、高いか低いかは別問題として、或る所で安定させて、國際經濟に參加する場合に、それを一つの凖備に致さうと考へて居るのであります、そこで安定します、「アメリカ」なら「アメリカ」の物價と云ふものも、是は相當是から激動期に入るだらうと思ひます、だから日本が國際經濟に入る時、果して「アメリカ」の物價が今の水凖に比較して高いか低いかと云ふことは分りませぬが、それで向ふも幸ひに安定する、こつちも安定して居れば、其の比率で理論的には決まる譯です、さう云ふ譯で爲替相場をどうしても作らなければならないと私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=134
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135・松永義雄
○松永(義)委員 そこで巷間傳へられる所の、通過を米價を基凖としてやつて、物價を安定して、さうして平價の切下なら切下をやる、さうして公正なる爲替相場が生れるやうな用意をして行くんだ、斯う云ふ風に言はれて居る譯でありますが、只今大藏大臣の御答辯に依りますと、米價に關しては問題にするに足りぬ、現状の、今のやり方を以て其の用意をして行く、斯う云ふ風な御話なんですが、其の講和條約以後に於ける、貿易に關する爲替相場の安定を期する爲に、現在の施設方針として、どう云ふ用意と凖備をなして行かれる積りであるか、もう一遍具體的に伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=135
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136・石橋湛山
○石橋國務大臣 米價の問題は、一寸誤解のないやうに申上げて置きたいと思ひますが、先申しましたやうに、米價を基凖にして物價を定めると申しますことは、一つの物價體系を作る場合の「スタート」としては、一つさう云ふものを置いて、それを基凖として計算をして「スタート」すると云ふことは、適當かと私も考へますが、將來何處何處までも米價を基凖にして日本の物價を決める、斯う云ふ意味ではないと私は思ひます、詰り「スタート」して一つの流れに入つてしまへば、後は米價が下るか上るか、是は全體の「レベル」で見て行くべきものと思ひます、左樣になると思ひます、それから國際經濟に參加する用意と云ふことは、是は中々複雜で、凡ゆることをやらねばならない、今の所謂見返り品と言はれて居る輸出貿易に入るべき産業をどうするか、隨て其の場合に、一體日本の生絲と云ふものが、將來世界の纖維界に於てどう云ふ位置を占めるかと云ふやうな、實際の産業上の檢討、それに從つての日本産業政策と云ふものをやらなければならない、隨て是は商工省にも關係あり、農林省にも關係あり、凡ゆる産業者に關係がある譯です、さう云ふ譯で商工、農林それぞれ、殊に商工省に於て色々考へられ、或は貿易廳も實際苦心して考へられて居る所と信じます、それから大藏省關係の調査と致しましては、物價を安定する、言換へれば通貨價値を安定すると云ふことが中心でございます、今の補償の打切りとか何とか云ふことも、色々意味がありますけれども、やはり通貨價値の安定と云ふことに持つて行く一つの重要な施策だと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=136
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137・松永義雄
○松永(義)委員 是で私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=137
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138・白井秀吉
○白井委員長 それでは本日の質問は此の程度で打切りまして、明日午前十時再開して質問を繼續することに致したいと思ひますが、成べく質問は明日午前中に切上げるやうに致したいと思ひます、午後再開致しまして、討論採決に入るやうな順に進めたいと考へて居りますから、其のお積りで各黨とも御用意願ひたいと思ひます、本日は是で散會致します
午後三時五十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00219461002&spkNum=138
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