1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
貿易資金特別會計法案(政府提出)
産業復興營團法案(政府提出)
恩給法臨時特例案(政府提出)
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昭和二十一年十月三日(木曜日)午前十時五十五分開議
出席委員
委員長 白井秀吉君
理事 栗山長次郎君 理事 深津玉一郎君
理事 寺田榮吉君 理事 松永義雄君
飯國壯三郎君 栗原大島太郎君
稲本早苗君 林田正治君
大矢省三君 島田晋作君
山花秀雄君 川越博君
原尻束君 安藤はつ君
大津桂一君
出席國務大臣
商工大臣 星島二郎君
出席政府委員
商工事務官 岡村武君
貿易廳長官 塚田公太君
商工事務官 和田太郎君
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本日の會議に付した議案
貿易資金特別會計法案(政府提出)
産業復興營團法案(政府提出)
恩給法臨時特例案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=0
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001・白井秀吉
○白井委員長 是より會議を開きます、前會に引續き質疑を行ひます——山花秀雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=1
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002・山花秀雄
○山花委員 産業復興營團法案に關しまして質問致したいと思ひます、第一條に、「産業復興營團は、經濟安定本部總裁の定める基本的な産業政策及び」云々と云ふことが書いてありますが、從來産業設備營團のやつて居た事業内容と、名前は復興と云ふやうに變つて居りますが、是との相違點はどう云ふ所にあるかと云ふことと、それから相違點がなければ、從來の産業設備營團で其の儘それを踏襲してやれば宜いと思ひますが、それを特に復興營團に編成替へすると云ふことに付きましては、前の産業設備營團が事業に於て計畫通り宜しきを得なかつた爲に、之を變更したのかどうか、それから産業設備營團の事業内容及び貸付其の他を、今度の此の法案を審議するに付て參考資料として提出されることが出來るかどうかと云ふこと、第十二條に、理事長、副理事長其の他の役員は政府が之を任命すると云ふやうに規定されて居りますが、從來の産業設備營團に關係して居た役員を再び任命するのかどうか、それともそれは全然考へずに、新しく任命するのかどうか、それから從來斯う云ふやうな營團は、世間の惡口と言へばまあ惡口でございますが、官僚の姨捨山と云ふやうな批評を往々にして聞いて居るのでありますが、今度はどう云ふやうな所の人材を拔擢して之を任命するのか、一應之に付て御答へを伺ひまして、それから又質問したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=2
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003・和田太郎
○和田政府委員 只今御質問の第一點でございます從來の營團と今度の營團との事業の問題でございますが、昨日も申上げました通り、從來の設備營團は、戰時に際しまして戰時に必要な緊要な産業設備の建設、それから未働遊休設備の買收、それから戰時標準型の船舶の建造と云ふ三つの事業を致して居りまして、結局戰時産業の促進と云ふことを其の目的と致して居つたのでございます、今度の復興營團は戰時の産業では勿論ございませぬので、十五條に規定してございますやうに、經濟安定本部總裁の定めまする、今後の戰後に於ける産業の急速なる振興を實行する一つの手段と致しまして、民需生産に必要な産業設備の建設、それから其の貸付或は賣渡、それから從來ございます設備で、今後企業整備と云ひますか、補償打切りの善後策とか、或は賠償に依りまして撤去されて片輪になりましたやうな設備、さう云ふ産業設備を買取りまして、それを綜合することに依つて有效に使はれると云ふやうなものを買取りまして、貸付をやる、それから更にさう云ふ方面から手持の資材等が出て參りました場合には、之を買取りまして、其の資材を有效な方面に賣渡す、それから更に現在産業設備營團が持つて居ります設備の、民需産業方面への貸付或は賣渡と云ふやうな仕事を致すことに相成つて居りまして、仕事の内容が稍稍似た所もございますが、其の目的と致して居る所が全く相違して居るのでございます
それから第二の御質問の點でございます從來の設備營團を活用しないで、なぜ新しいものを作るかと云ふ點でございますが、從來の設備營團は、只今申上げましたやうに戰時産業に關係を致して居りますので、其の建造致しました産業設備と云ふやうなものは、何れも戰時産業に使ふことを目的と致して居りました關係上、之を今日の民需産業に轉換致しまする爲には相當の改修をしなければならない、又船舶に致しましても、戰時標準型の船を造つて居りました關係上、必ずしも優秀船とは言へないやうな状況でございます、尚ほ從來の設備營團は、今囘の補償打切りに伴ひまして保險金約二億圓餘のものが赤字になります外、在外設備と致しまして約四億圓、それから第二封鎖になりましたものが約九千萬圓、其の他機械を貸して居りましたものが一應賠償の豫定工場になりました關係上、或は撤去されるかも知れないと云ふものが大體一億ばかりございます、勿論此の在外資産とか、或は預金、賠償關係の問題は、今後の取扱如何に係はる譯でございますが、是が場合に依りましては相當の赤字になると云ふことも一應考へられる譯でございます、他面設備營團の資金の状況を見ますと、資本金は四億と云ふことになつて居りますが、今日までの所、政府が實際出資致しましたものが、一億五千萬圓餘でございます、運用資金と致しましては營團債券を發行できることになつて居りますが、既に營團債券で發行されまして、まだ償還せられて居りませぬものは約十八億近くございまして、其の發行餘力が約五億圓程度しかございませぬ、尚ほ一般銀行から四十九億程度の資金の融通を受けて居る現状でございます、此のやうな資産状況竝に資金の状況を以て致しますると、今後此の設備營團に於て其の手持の設備を囘收するとか、建造中の船舶を續行するとか、更に民需産業に必要な設備をする爲に要します相當巨額の資金を賄ひますことは、相當困難でございますし、旁旁戰時中の設備でもございましたので、此の際舊營團は之を廢止致しまして、全然さう云ふものとは係りのない、清新な機關を作つてやつて行くことに致した次第でございます
第三の御質問の點でございますが、舊營團の事業と致しまして、緊要設備の建設人總數二百九件ございます、其の支拂ひました金額は約十六億でございます、それから造船設備の建造を致しましたのが五十一件、支拂ひました金額が六億餘でございます、それから未働遊休設備を買受けました數量は約六十萬「トン」、之に支拂ひました金額七億餘でございます、船舶の建造に付きましては、建造を完了したものが、鋼造船竝に木造船合計致しまして四千餘隻、其の總「トン」數約三百二十萬「トン」、尚ほ從來の營團に於ては、設備の建設は終戰と共に之を打切りましたが、造船は引續き建造中のものに限り建造を續行して居ります、其の總數二千九百隻餘りでございます、大體事業の内容は以上の通りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=3
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004・星島二郎
○星島國務大臣 大體今政府委員より申上げた通りでありますが、役員等は從來の産業設備營團の人とは變りました、清新な氣持で新しい人達にやつて貰ひたい、斯樣な希望を持つて居る譯であります、極めて民主的な氣持で以て、實業界の人等經驗のある人を入れる、併し政府の事業でありまするから、若干はやはり官界出身の人も要るかと思ひます、又今囘は中小工業等の振興策から言ひましても、さう云ふ方面の經驗者も入れたらどうか、斯樣な考へ方を以て關係當局と折衝中であります、其の外の點に付ては、大體今政府委員の申上げたことで盡きると思ひますが、尚ほ御必要とありますれば、只今極く大雜把な數字を申上げましたが、今までの營團は、是も世間に發表して一向差支へないものでありますから、若し御必要ならば後程極く項目だけの數字は、從來の營團の成績表は差上げても結構と思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=4
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005・白井秀吉
○白井委員長 一寸政府委員に申上げて置きたいと思ふのですが、時間の節約上、是までの質問者と同一趣旨のものであつて、既に御答辯なつたものは、其の旨を申述べられまして、省略するか或は極く簡單に御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=5
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006・山花秀雄
○山花委員 只今の御囘答で能く分りましたが、今度の復興營團に付きまして、大體の復興の計畫に付て、問題は資材其の他のこと、それから賠償で相當我が國の工業設備が取られてしまひますが、殘る機械で大體日本の産業を復興し得る見透しありや否や、私共の常識から申しますと、取られる機械は相當償秀な機械が取られて、殘る機械はぼろ機械が殘るんぢやないかと考へて居りますが、さう云ふぼろ機械で日本の産業を復興出來るか否かと云ふことは、それから産業を復興する爲には、殘されたぼろ機械に何等拘りなく、新しく優秀な機械を造つて、高能率、高賃金と云ふ形態で産業を復興しなくちやならぬと云ふ風に私共は考へて居りますが、之に付て新しき優秀なる機械設備の設定の爲に、政府としては外資を仰ぐ意思があるのかどうかと云ふ點を、一應御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=6
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007・星島二郎
○星島國務大臣 先般の賠償の枠全部が假に撤去さるべきものと見ましても、まだ根本的に日本の産業が全部立直りが出來ないと云ふ譯でもありませず、又其の中の必要なものは、相當に亙りまして今解除の申請を致して居ります、若干は既に解除の内命をを得て居る所もあるのでありまして、さう悲觀せぬでも宜いのであります、大體日本の産業を潰さうと云ふ氣持は毛頭ないのでありまして、日本が平和的に伸びて行く爲のものは最小限度殘されて居る、唯從來の兵器を造つたり、或は侵略行爲、戰爭行爲に移る爲のそれを狙つて居られるのであります、假に肥料の問題に付きましても、濃硫酸の製造は殆ど全部撤去の命を受けて居りますが、併し決して火藥を造つたり其の他のことをしないのですから、最小限度肥料製造に是れ是れのものを是非殘して貰ひたいと言つて、瀕りに懇請致しまして、其の中の一、二は多分許されると思ふのであります、其の他の問題に付きましては、先般の枠内から相當こちらの言ふことが、言分ありと認められて解除になるだらう、斯樣に思ふて居る點もあるのであります、そこで此の中小方面に對する色々な工作機其の他と云ふものは、無論仰せの如く相當良いものは取られます、そこでそれに代るべきものが、若し民間に資力がないと云ふ場合には、之を是非うんと利用したい、併しまだまださう云ふ線が決まりませぬので、取敢ず政府と致しましては、先づ肥料、石炭と云ふ方面に重點を置いてやりまして、さうして中小工業の振興助成審議會が開かれまして、安本の方で一定の方針が決まると云ふと、假に時計の問題、是は先般の枠に入つて居りますが、是非日本の産業として殘して貰ひたい、是は小さな工作機で宜いのでありますから、どうやら是も若干目的を達せられはせんかと安心して居りますけれども、萬々一斯う云ふものがいかぬやうな場合には、先づそれを補充する爲には、何ものを措いてもさう云ふものは必要だ、斯樣なことになる譯でありまするが、さう云ふ際に、偖て日本に良いものがないと云う場合は、工作機自ら或は輸入を仰がなければならぬ、或は良い工作機を造るべき相當の鋼材を得なければならぬと云ふやうな場合には、特別に一つ貿易廳を通しまして輸入を懇請しなければならぬ、其の輸入を懇請する場合に、日本が見返り物資として十分の物がない場合には、或は「クレヂット」設定も一時願はなければならぬと思ひますけれども、併し今の貿易關係は或る時は日本の見返り物資の方が非常に溜つて居る場合もありませうし、或る時は向ふの勘定がある、向ふの勘定が多い時は、隨てそれは一種の「クレヂット」設定になつて居る譯でありますが、日本の中小工業振興及び日本の工業の將來出べき途に必要なものは、是非ともさう云ふ見地から、十分此の營團を利用して行きたい、斯樣に思うて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=7
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008・山花秀雄
○山花委員 それでは日本の産業の基礎的産業であります所の石炭、肥料の面に付ては、殘存設備で十分間に合ふと云ふ見解で政府の方はいらつしやるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=8
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009・星島二郎
○星島國務大臣 殘存と云ふ意味ではございませぬ、現在でも産業設備營團の方から相當設備を貸與して居る關係がありますが、今度出來まする復興營團からも、現在既に出て居ります金を此の方に引繼ぎまして、續いて此の産業復興營團の方で肥料の方の仕事を伸ばして行きたい、それから石炭の方の中小以下の山で以て、若干の設備其の他色々な面に付きまして先づ手を著けて、一つ増産を圖りたい、斯樣な方針を決めて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=9
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010・山花秀雄
○山花委員 新しく出來ます産業復興營團は、只今政府の方からも仰しやつたやうに、民主的な組織機構を以て之を運營して行きたい、就きましては從來の政府事業に依る營團組織は、兎角官僚的であり、獨善的であると云ふやうな非難を蒙つて居たのであります、私共も左樣考へて居る譯でありまするが、今度出來ます産業復興營團に付きましては、各職業別業界の代表者及び貴衆兩院より成る代表者、或は學識識見ある代表者、斯う云ふやうな構成を以て、特別監査と云ふやうな制度を設けて、是が運營の萬全を圖るやうな御意思があるかどうか、それから中央、地方の色々な組織になつて參りますが、御承知のやうに、今日勞働組合其の他勞働組合と事業主に依る經營協議會と云ふやうな組織が、全般的に運營されて居るのでありますが、斯う云ふやうな所から、此の營團機構の組織内に人を入れる意思があるかどうか、此の點に付て御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=10
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011・星島二郎
○星島國務大臣 本來が此の營團の根本の方針に付きましては、經濟安定本部の方で其の方策を決定されます、其の經濟安定會議には貴衆兩院其の他から入りまして、十分に審議する「チャンス」がある譯でございます、併し尚ほ實は戰爭中の戰時型から思切つて離れる爲には、ともすると官僚的、獨善的になることから本當に懸け離れて行く爲には、實際平時の經營の上にも、民主的な何か形を執つたら宜からう、斯樣に思うて交渉に掛つたのであります、例へば一つの評議員のやうなものを作りまして、それは只今あなたの仰せられたやうな調子に仕組んで行けば宜いのではないか知らんと云ふことで、關係方面とも折衝したのでありますが、議會が今後は主となりますし、從來と違つて殆ど開かれるやうな調子になりませうし、或は安定會議其の他の會議に於て、十分其のやうな機會に監督も出來る、從來の戰時型とは違ふ、祕密はなくなり、數字は發表されると云ふことになりますから、從來とは違つてそんなことは要らぬだらう、さうして議會の度に十分材料を取つて、ぴしぴしやれるではないかと云ふことで、評議員を設けることすらも、今囘は仕事は仕事で單純に、或る意味に於ては抽速的にやるのが、本當なんだと云ふやうな意見もありまして、評議員制度もなくなりました、評議員を作つて、評議員の中から理事を銓衡しようと云ふことも一時相談したのでありますけれども、評議員すら要らないと云ふので、全く一つの政府事業で宜いのだ、本當は政府の中に仕事をする特別會計を設けてやれと云ふのが、率直な其の筋の希望であります、それは日本では巧く行きませぬから、營團と云ふものが自然生れて來た、それならば政府自ら責任を取つてやれ、政府が責任を取つてやれば、議會の度に皆さんが全部監査員となつて檢討出來るのでありますから、それで宜いではないかと云ふことになつて、結論として、之には一定の委員會とか、評議員會とか云ふものを設けませぬで發足することに決定した譯でありますが、併し運營に當りましては、御希望の通りにどこまでも官界からも民間からも、さうして業界からも取りまして、運營宜しきを得たい、斯樣に思うて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=11
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012・山花秀雄
○山花委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=12
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013・白井秀吉
○白井委員長 松永君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=13
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014・松永義雄
○松永(義)委員 私の質問の殘つて居る點は、大體一點に過ぎないと思ふのでございますが、將來僅かな資材で以て、僅かな設備に對して生産を増大して行くが爲には、國民擧つて働かなければならぬと云ふことを考へて居るのであります、さうして別けても生産に直接從つて居る廣い意味の勤勞者諸君、普通の勞働者であると筋肉勞働者であるとを問はず、特に奮鬪して戴かなければならぬと思ふのであります、從來産業を復興し、或は生産を増大する爲に、經營者側の利潤を刺戟して參つて居つたのでありますが、併し斯うした日本の現状の下に於ては、利潤本位の生産増強の方法と以てしただけでは、私は本當に産業の復興及び産業の増大と云ふやうなことは求め得られないと思ふのであります、寧ろ是からの世の中は、眞に生産に直接從つて居る技術者、或は又筋肉勞働者、其の他の勞働者諸君の生産意欲を刺戟して、行くと云ふことが本筋であると、私は信じて疑はないのであります、然らば其の刺戟の方法でありますが、其の刺戟の方法に付ても色々あると思ひます、既に農産物に付きましては、供出に付て色々の報奬制度が設けられて居りますことは、是はお互ひ能く承知して居る所でありますが、是と同じやうに、勤勞階級諸君の生産意欲を刺戟して行く爲に、少くとも是だけのことはやらなければならぬのではないかと云ふ風に考へる點に付て、政府に御相談申上げたいと思ふのであります、其の趣旨は、勤勞者にして生産に關する質及び量に付て優秀な成績を擧げた者に對して、特別の待遇をしなければならぬと云ふことであります、即ち良い考へ方を出して良い品物を作る、或は又一生懸命に働いて、石炭の量を人並以上に掘出す、さうした優秀な成績を持つた者に對して、其の勤勞者に報ゆる爲め政府自體が、斯うした優秀なる勤勞者に對して特別の待遇をする、其の内容は別に不思議な珍しいと云ふことでもないので、最も明瞭なはつきりした方法は、少くともさうした優秀な成績を擧げた者に對しては、月給或は日給を倍額にする、唯賞與を増すとか、或は特別のものを給すると云ふことでなくして、原則的にさうした優秀な成績を擧げた者に對しては月給を倍にして、其の倍額の支給は政府自體が之を支出して、増産意欲を刺戟して行く、俗に言ふ樂しみを持たすと云ふことを屡屡我々は資本家側から聞くのでありますが、其の樂しみと云ふものを直接生産に從ふ勤勞者の側に與へる必要があると云ふことを堅く信じて居るのでありますが、それに關する政府の御考へ如何、是は安定本部の膳國務大臣に御聽きすることか、厚生大臣に御聽きすることか知れませぬが、一應生産に關係して居る商工大臣の御意見を伺つて、商工大臣を通じて其の方面に御相談して戴ければ結構だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=14
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015・星島二郎
○星島國務大臣 大變宜い言葉を聽きまして、私も全然御同感其のものでります、殊に私は先日石炭の委員會に於きまして、御説のやうなものを採用して行きたい、是は一つの能率給を出して行きたいと云ふことを最後に決定致したのでありますが、其の趣旨と致す所は、只今松永君の仰せられた精神と根本は同じなんであります、八月に九州の石炭の増産が、豫期の十萬「トン」を越しましたことを調べて見ましたが、それは食糧が若干殖えたと云ふことも確かに其の原因でありましたけれども、其の主なる點は、資本家と勞働組合の人が眞に手を取つて、さうして組合の幹部の方が指導宜しきを得たことが最も大きな理由である、即ち是は日本の爲に起たなければならぬと云ふことで、眞に樂しんで仕事に從事して、一「トン」でも多く出さう、一人の人が一叺だけ一日に餘計出さうと云ふやうなことを申合はせてやつたことが、あれだけの數になつたと云ふことを聽きまして、さう云ふ場合には有難うでは濟ませない、何かしら普通の俸給以上に酬いる途を作らなければならぬと云ふことが動因となりまして、基礎に一つの標凖の日給がありますれば、それだけの仕事をした場合には、それに對して一つ別に褒賞をしようと云ふことで、今囘石炭の増産方針に付きまして根本が決定致しましたのも、一つは今あなたの仰せられた趣旨に外ならぬのであります、之を他の産業方面にも旨く植付けて行けば、私は確かに日本の再建の上に非常な一つの功績でありはせんかと思ひます、私は元來が自由黨に屬して自由經濟を主眼と致したものでありますが、日本の現状では思ふ存分の自由型は採用出來ませぬ、併しながら從來の所謂我々の觀念として居つた社會主義經濟の觀念は、ともすれば一律平等になつて、官僚化するやうなことが多く、自由主義の立場から見まして反對して居た理由でありましたが、先般來加藤勘十君の御意見、或は西村代議士の御意見、或は今日のあなたの御意見等を聽きますと、我々が思うて居た社會主義は修正——修正と云ふ言葉は間違つて居るかも知れませぬが、詰り私共の考へて居る所と餘程接近して來まして、さうして所謂仕事を樂しむと云ふ所に一面自己の創意工夫が生れ、それに依つて或る報いが與へられると云ふ所に、やはり同じ狙ひがあると云ふことを感じて居るやうな譯でありまして、是は安定本部會議の時にも、安定本部の根本方針にも今の御精神を取入れて行きたい、又私は此の産業省に關係して居る一員と致しまして、それを狙ひとして今後に處したい、斯樣に思ひまして全然御同感の意を表する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=15
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016・松永義雄
○松永委員 私の質問は終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=16
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017・白井秀吉
○白井委員長 是にて質疑の通告は全部終了致しました、仍て質疑は之を以て終局と致します、次會は明四日午前十時より開會致しまして、議案全部に對して討議採決を行ひます、本日は之を以て散會致します
午前十一時三十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013168X00319461003&spkNum=17
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