1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年七月二日(火曜日)
午後一時五十四分開議
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議事日程 第九號
昭和二十一年七月二日
午後一時開議
第一 金融緊急措置令(承諾を求める件)
第二 日本銀行券預入令(承諾を求める件)
第三 昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
第四 臨時財産調査令(承諾を求める件)
第五 昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
第六 昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
第七 昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
第八 昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
第九 昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
第十 昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
第十一 昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
第十二 昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
第十三 食糧緊急措置令(承諾を求める件)
第十四 隱匿物資等緊急措置令(承諾を求める件)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、議員から提出された質問主意書は次の通りである
憲法改正案に關する質問主意書
提出者
田中伊三次君 寺島隆太郎君
(以上六月二十九日提出)
一、去二十九日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
三五九 松本七郎君
三六四 岡田春夫君
三六六 叶凸君
三六七 澁谷昇次君
一、去二十九日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第六部選出
豫算委員 岡田勢一君
一、去二十九日委員長理事互選の結果次の通り當選した
帝國憲法改正案(政府提出)委員
委員長 芦田均君
理 事
江藤夏雄君 高橋泰雄君
廿日出厖君 長井源君
吉田安君 菊池養之輔君
鈴木義雄君 宇田國榮君
田中久雄君 大島多藏君
一、去二十九日議長に於て次の委員を選定した
郵便法の一部を改正する法律案
(政府提出)委員
井上卓一君 伊藤郷一君
栗原大島太郎君 左藤義詮君
鈴木平一郎君 中島守利君
天野久君 白木一平君
橘直治君 原捨思君
澤田ひさ君 高瀬傳君
正木清君 森本義夫君
香川兼吉君 駒井藤平君
山下ツ子君 藤田榮君
臨時通貨法の一部を改正する法律案(政府提出)外一件委員
荒船清十郎君 小野眞次君
小池政恩君 瀧澤脩作君
圓谷光衞君 山田善三君
坪川信三君 中山たま君
原夫次郎君 八木佐太治君
川島金次君 島田晋作君
田村定一君 松永義雄君
石原登君 河野金昇君
和崎ハル君 伊藤恭一君
昭和二十年法律第三十四號(衆議院議員選擧法の一部を改正する法律)中まだ施行してゐない部分の廢止に關する法律案(政府提出)委員
磯崎貞序君 稻田直道君
大内一郎君 坂田道太君
田中実司君 瀧清麻吉君
逢澤寛君 小笹耕作君
星一君 山口光一郎君
岡田春夫君 中村高一君
細田綱吉君 矢尾喜三郎君
川野芳滿君 原尻束君
三木キヨ子君 丸山修一郎君
一、昨一日衆議院規則第十五條に依り議長に於て議席を次の通り指定した
二一一 廣川弘禪君
一、昨一日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
一 廣島縣選出議員
三七二 淺沼稻次郎君
三七三 大澤喜代一君
三八○ 林虎雄君
一、昨一日委員長理事互選の結果次の通り當選した
郵便法の一部を改正する法律案
(政府提出)委員
委員長 中島守利君
理 事
井上卓一君 左藤義詮君
橘直治君 正木清君
臨時通貨法の一部を改正する法律案(政府提出)外一件委員
委員長 原夫次郎君
理 事
荒船清十郎君 小池政恩君
八木佐太治君 松永義雄君
昭和二十年法律第三十四號(衆議院議員選擧法の一部を改正する法律)中まだ施行してゐない部分の廢止に關する法律案(政府提出)委員
委員長 稻田直道君
理 事
磯崎貞序君 田中実司君
小笹耕作君 中村高一君
一、昨一日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第六部選出
豫算委員 寺島隆太郎君(岡田勢一君補闕)
一、昨一日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
帝國憲法改正案(政府提出)委員
理 事 林平馬君(理事宇田國榮君昨日委員辭任に付其の補闕)
一、昨一日次の通り特別委員の異動があつた
帝國憲法改正案(政府提出)委員
辭任 宇田國榮君 補闕 石原登君
臨時通貨法の一部を改正する法律案(政府提出)外一件委員
辭任 石原登君 補闕 原尻束君
辭任 河野金昇君 補闕 坪井亀藏君
昭和二十年法律第三十四號(衆議院議員選擧法の一部を改正する法律)中まだ施行してゐない部分の廢止に關する法律案(政府提出)委員
辭任 原尻束君 補闕 河野金昇君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きます、此の際新たに議席に著かれました議員を御紹介致します──第三百六十三番廣島縣選出議員林興一郎君
〔林興一郎君起立〕
〔拍 手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=1
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002・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 輸入食糧の放出許可に付て報告の爲め、農林大臣より發言を求められて居ります──和田農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=2
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003・会議録情報2
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輸入食糧放出許可に關する和田國務大臣の報告
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=3
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004・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 輸入食糧に關しまして御報告致します、食糧輸入の問題に關しましては、去る六月二十五日本議場で御報告申上げたのでございまするが、昨一日、七月上旬分と致しまして四萬七千四百五十萬「トン」、即ち約三十一萬六千石の放出許可の指示がございました、此の好意に對しましては洵に感謝に堪へぬ所と存じます、右の輸入食糧は、現在食糧事情の最も窮迫致して居りまする京濱地區、北海道を初めと致しまして、青森、岩手、宮城、福島、山梨、長野、靜岡、岐阜、福井、京阪神、和歌山等の各府縣の不足を補填致しまする外、一部は海外引揚者の爲の食糧にも充當する豫定でございます、以上取敢ず御報告申上げますると共に、政府と致しましては、曩に其の決意を披瀝致しました通り、今後一層國内施設の徹底を圖りまして、以て全國民と共に食糧危機突破の爲に最善の努力を致すべきことを深く期する次でございます、右御報告申上げます、(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=4
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005・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 日程第一乃至第十二は便宜上一括議題となすに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=5
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006・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て日程第一、金融緊急措置令、日程第二、日本銀行券預入令、日程第三、昭和二十一年勅令第九十號、日程第四、臨時財産調査令、日程第五、昭和二十一年勅令第百二十八號、日程第六、昭和二十一年勅令第百十一號、日程第七、昭和二十一年勅令第百二十七號、日程第八、昭和二十一年勅令第百五十九號、日程第九、昭和二十一年勅令第百七十九號、日程第十、昭和二十一年勅令第百八十號、日程第十一、昭和二十一年勅令第二百四十一號、日程第十二、昭和二十一年勅令第二百四十二號、右承諾を求める件十二件を一括して議題と致します──石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=6
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007・会議録情報3
――――◇―――――
第一 金融緊急措置令(承諾を求める件)
第二 日本銀行券預入令(承諾を求める件)
第三 昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
第四 臨時財産調査令(承諾を求める件)
第五 昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
第六 昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
第七 昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
第八 昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
第九 昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
第十 昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
第十一 昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
第十二 昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
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金融緊急措置令
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項に依り金融緊急措置令を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年二月十七日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十三號
金融緊急措置令
第一條 金融機關は本令施行の際現に存する預金其の他金融業務上の債務にして命令を以て定むるもの(以下封鎖預金等と稱す)に付ては第三條第二項の規定に依るの外其の支拂を爲すことを得ず
日本銀行券預入令第四條第二項の規定に依り生じたる預金、貯金及金錢信託は之を封鎖預金等と看做す
第二條 封鎖支拂に基き生じたる金融機關の預金其の他金融業務上の債務は之を封鎖預金等と看做す
前項の封鎖支拂とは手形、小切手、郵便爲替證書其の他之に準ずる支拂指圖を以て爲さるる封鎖預金等への拂込又は振替及金融機關の帳簿上の振替の方法に依る封鎖預金等の支拂にして命令を以て定むるものを謂ふ
第三條 第一條の規定は左に掲ぐる者が金融機關に對し有する預金其の他の債權に付ては之を適用せず
一 國又は都道府縣其の他地方公共團體
二 金融機關
封鎖預金等の支拂は命令の定むる所に依り現金に依る支拂、現金以外の封鎖支拂に非ざる支拂又は封鎖支拂に依り之を爲すべし
第四條 本令施行の際現に存する國債、地方債、社債其の他命令を以て定むる之に準ずる債券の元本の償還及利息の支拂は封鎖支拂に依り之を爲すべし本令施行の際現に存する株式、出資其の他命令を以て定むる之に準ずるものに對する配當金、殘餘財産の分配金及合併又は減資に因る交付金にして命令を以て定むるもの竝に本令施行の際現に存する保險契約に基く保險金にして命令を以て定むるものの支拂に付亦同じ
第五條 大藏大臣は命令の定むる所に依り封鎖預金等の債權を讓渡し又は之を債務の擔保に供することを制限し又は禁止することを得
第六條 大藏大臣は命令の定むる所に依り金融機關其の他大藏大臣の指定する者に對し資金の融通を制限し又は禁止することを得
第七條 大藏大臣は命令の定むる所に依り金錢債務の辨濟に關し封鎖支拂其の他命令を以て定むる現金支拂以外の方法に依るべきことを命ずることを得
大藏大臣は命令の定むる所に依り資金の保有方法に關し必要なる命令を爲すことを得
第八條 本令に於て金融機關とは郵便官署、銀行、信託會社、保險會社、無盡會社、農林中央金庫、商工組合中央金庫、恩給金庫、庶民金庫、國民更生金庫、地方農業會、漁業會及市街地信用組合其の他貯金の受入を爲す組合を謂ふ
第九條 封鎖預金等に付ては其の債權者は第三條第二項に規定する場合を除くの外支拂禁止の解除せらるるに至る迄は其の支拂の請求を爲すの權利を有せざるものとす
支拂禁止の解除せらるるに至る迄の間に於て封鎖預金等に附すべき利息に付ては命令の定むる所に依る
支拂禁止の解除前に於て時效期間の滿了する封鎖預金等に付ては支拂禁止の解除後一月以内は時效完成せず
第十條 本令は他の法令の規定に依る制限又は禁止の適用ある場合に於ても仍之を適用す但し他の法令の規定に依る制限又は禁止が本令の規定に依る制限又は禁止よりも重きときは當該法令を適用す
第十一條 第一條、第三條第二項若は第四條の規定、第五條若は第六條の規定に依る制限若は禁止又は第七條の規定に依る命令の違反ありたる場合に於ては其の行爲を爲したる者は三年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處す
第十二條 法人の代表者又は法人若は人の代理人、使用人其の他の從業者が其の法人又は人の業務に關し前條の違反行爲を爲したるときは其の行爲を爲したる者を罰するの外其の法人又は人に對し亦同條の罰金刑を科す
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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日本銀行券預入令
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項に依り日本銀行券預入令を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年二月十七日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
國務大臣 小林一三
文部大臣 安部能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十四號
日本銀行券預入令
第一條 命令を以て定むる種類の日本銀行券(以下舊券と稱す)は命令を以て定むる日限強制通用の效力を失ふものとす但し舊券は第二條の規定に依り金融機關に對する預金、貯金又は金錢信託と爲す場合に付ては仍強制通用の效力を有するものと看做す
第二條 舊券を所持する者は命令を以て定むる日迄に當該舊券を以て金融機關に對する預金、貯金又は金錢信託と爲すべし
命令を以て定むる期間内に日本銀行に對し舊券を以て預金を爲す者は預入と同時に命令を以て定むる金額を限り命令を以て定むる日本銀行券(以下新券と稱す)に依り當該預金の支拂を爲すべきことを請求することを得
前項の規定に依る請求ありたる場合に於ては日本銀行は直ちに新券に依る支拂を爲すべし
第三條 郵便官署、日本銀行以外の銀行、市町村農業會及市街地信用組合は日本銀行に代り前條第二項に規定する舊券に依る預金の受入及當該預金の新券に依る支拂に關する事務を取扱ふべし
前項の事務の取扱に關し必要なる事項は大藏大臣之を定む
第四條 手形、小切手又は郵便爲替證書にして第四項に規定する表示なきもの其の他命令を以て定むる之に準ずる支拂指圖(以下封鎖支拂指圖と稱す)に付ては金融機關は第一條に規定する日以前に於ては新券に依り其の支拂を爲すことを得ず
第一條に規定する日の翌日に於て現に存する命令を以て定むる封鎖支拂指圖は遲滯なく之を金融機關に對する預金、貯金又は金錢信託と爲すべし
金融緊急措置令の適用に付ては金融機關に對し舊券又は命令を以て定むる封鎖支拂指圖を以て爲したる預金其の他金融業務上の債權にして命令を以て定むるものは之を金融緊急措置令に規定する封鎖預金等と看做す但し第二條第二項の規定に依り新券に依り支拂を爲さるる預金は此の限に在らず
金融機關は命令を以て定むる期間内に振出し又は發行する手形、小切手及郵便爲替証書には舊券の受入に依り振出し又は發行するものを除くの外命令を以て定むる表示を爲すべし
前項の場合を除く外金融機關は手形、小切手又は郵便爲替證書に同項の命令を以て定むる表示を爲すことを得ず
第五條 日本銀行は命令を以て定むる日に於ける債券の發行高を其の翌日に於ける日本銀行券發行高より除去すべし
日本銀行は特別の勘定を設け前項の規定に依り除去したる發行高に相當する金額を區分整理すべし
前項の金額に相當する日本銀行の財産の處分に關しては大藏大臣之を定む
第六條 本令に於て金融機關とは郵便官署、銀行、信託會社、無盡會社、農林中央金庫、商工組合中央金庫、庶民金庫、地方農業會、漁業會及市街地信用組合其の他貯金の受入を爲す組合を謂ふ
第七條 第二條第一項及第二項に規定する場合を除くの外第一條に規定する日の經過後に於ては舊券は之を授受することを得ず
第八條 第二條第二項に規定する金額を超ゆる新券に依る支拂又は同項に規定する期間經過後の請求に對する新券に依る支拂ありたる場合に於ては其の行爲を爲したる者を三年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處す第四條第一項、第四項又は第五項の違反行爲ありたる場合亦同じ
前條の規定に違反したる者の罰亦前項に同じ
第九條 第二條第二項に規定する金額を超えて新券に依る支拂ありたる場合に於ては當該支拂に依り交付を受けたる新券の中同項に規定する金額を超ゆるものは之を沒收す若し其の全部又は一部を沒收すること能はざるときは其の價額を追徴す同項に規定する期間經過後の請求に對し新券に依る支拂ありたる場合に於て當該支拂に依り交付を受けたる新券に付亦同じ
第十條 法人の代表者又は法人若は人の代理人、使用人其の他の從業者か其の法人又は人の業務に關し第八條の違反行爲を爲したるときは其の行爲を爲したる者を罰するの外其の法人又は人に對し亦同條の罰金刑を科す
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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昭和二十一年勅令第九十號
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項に依り日本銀行券預入令の特例の件を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年二月十九日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第九十號
第一條 日本銀行券預入令に規定する舊券にして日本銀行に於て一定の證紙を貼附したるものは大藏大臣の定むる日迄は之を同令に規定する新券と看做す
前項の證紙は日本銀行之を發行し其の種類及樣式は大藏大臣之を定む
大藏大臣前項の種類及樣式を定めたるときは之を公示す
第二條 行使の目的を以て前條に規定する證紙を僞造又は變造したる者は一年以上の有期懲役に處す
行使の目的を以て僞造又は變造の證紙を人に交附し、輸入し又は移入したる者の罰亦前項に同じ
行使の目的を以て僞造又は變造の證紙を收得したる者は三月以上五年以下の懲役に處す
前三項の未遂罪は之を罰す
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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臨時財産調査令
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項に依り臨時財産調査令を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年二月十七日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十五號
臨時財産調査令
第一條 本令は戰時利得の排除、國家財政の再建、國民經濟の安定等を目途とする新税の創設及確保に資する爲命令を以て定むる時期(以下調査時期と稱す)に於ける個人及法人の財産等を調査するを以て目的とす
第二條 調査時期に於て左に掲ぐる財産を有する者は命令の定むる所に依り當該財産に關する事項を所轄税務署に申告すべし
一 預金、貯金其の他此等に準ずる債權にして命令を以て定むるもの
二 公債、社債、株式其の他此等に準ずる財産にして命令を以て定むるもの
三 手形又は小切手にして命令を以て定むるもの
四 投資信託の受益權にして命令を以て定むるもの
五 前各號に掲ぐるものの外命令を以て定むる財産
前項の場合に於て同項に規定する者(其の者が法人なるときは當該法人の代表者及支配人其の他の代理人)が調査時期に於て本州、北海道、四國、九州及命令を以て定むる其の附屬島嶼に住所及居所を有せざるときは命令の定むる所に依り同項に規定する者又は當該財産を管理する者同項の申告を爲すべし
當該有價證券其の他當該財産を證する書面を保管する者は命令の定むる所に依り本人に代りて第一項の申告を爲すことを得
第三條 調査時期に於て現に存する左に掲ぐる契約にして命令を以て定むるものの契約者又は郵便年金受取人は命令の定むる所に依り當該契約に關する事項を所轄税務署に申告すべし
一 生命保險契約
二 金錢信託契約(投資信託契約を除く)又は有價證券信託契約
三 無盡契約
四 郵便年金契約
前條第二項及第三項の規定は前項の場合に付之を準用す
第四條 日本銀行券預入令第二條第一項の規定に依る預金、貯金又は金錢信託を爲さんとする者及同條第二項の規定に依る支拂を請求せんとする者は命令の定むる所に依り當該預金、貯金、金錢信託又は支拂請求に關する事項を所轄税務署に申告すべし
第二條第二項の規定は前項の場合に付之を準用す
第五條 法人は命令の定むる所に依り調査時期に於ける財産目録、貸借對照表、動産及債權債務に關する明細書其の他の書類を作成し之を所轄税務署に提出すべし
第六條 命令を以て定むる事業を爲す個人は命令の定むる所に依り調査時期に於て其の事業に關して有する動産及債權債務に關する事項を所轄税務署に申告すべし
第七條 第二條又は第三條の申告を爲さんとする者は命令の定むる所に依り當該有價證券其の他當該財産又は契約を證する書面を所轄税務署に提出すべし
第八條 第二條又は第三條の申告ありたるときは政府は當該財産又は契約に付申告ありたることを證する爲必要なる措置を爲すものとす但し命令を以て定むる場合は此の限に在らず
前項の措置は命令の定むる所に依り前條の規定に依り提出せられたる當該有價證券其の他當該財産又は契約を證する書面に政府の發行する證紙を貼附し之に契印するの方法其の他命令を以て定むる方法に依り之を爲す
第九條 第二條又は第三條の申告を爲すべき財産又は契約にして申告の爲されざるものに付ては命令を以て其の效力の制限又は處分の制限若は禁止に關し必要なる定を爲すことを得
前項に規定する財産及同項に規定する契約に基き契約者、生命保險金若は郵便年金の受取人又は信託の受益者の有する權利は法律の定むる所に依り之を國庫に歸屬せしむるものとす
第十條 第四條の申告なき場合に於ては日本銀行券預入令に規定する金融機關は同令第二條に規定する預金、貯金若は金錢信託の受入又は日本銀行券に依る支拂を爲すことを得ず
第十一條 税務署長又は其の代理官は調査上必要あるときは第五條の規定に依り書類の提出を爲すべき義務ある法人又は第六條の申告を爲すべき義務ある個人に質問を爲し又は當該事業に關する帳簿書類、財産其の他の物件を檢査することを得
第十二條 大藏大臣は命令の定むる所に依り郵便官署、銀行其の他命令を以て定むる法人をして第二條乃至第四條、第七條及第八條に規定する事項に關する事務を取扱はしむることを得
前項の規定に依り同項の事務の取扱を爲す法人の當該事務に從事する職員は之を法令に依り公務に從事する職員と看做す
第十三條 行使の目的を以て第八條第二項に規定する證紙を僞造したる者は三年以下の懲役又は五萬圓以下の罰金に處す
僞造の證紙を使用したる者、行使の目的を以て僞造の證紙を人に交付し、輸入し若は移入したる者又は第八條第二項に規定する證紙を不正に使用したる者の罰亦前項に同じ
前項の未遂罪は之を罰す
第十四條 第八條に規定する措置に關する事務に從事する者同條第二項又は第十二條第一項の規定に基き發する命令に違反して當該措置を爲したるときは三年以下の懲役又は五萬圓以下の罰金に處す
第十五條 第十條の規定の違反ありたる場合に於ては其の行爲を爲したる者を三年以下の懲役又は五萬圓以下の罰金に處す
第十六條 當該官吏其の他本令に規定する事項に關する事務の取扱を爲す官署若は法人の當該事務に從事する職員又は此等の職に在りたる者其の事務に關し知得たる祕密を漏泄し又は竊用したるときは二年以下の懲役又は二千圓以下の罰金に處す
第十七條 第十一條の規定に依る帳簿書類、財産其の他の物件の檢査を拒み、妨げ若は忌避し又は虚僞の記載を爲したる帳簿書類を呈示したる者は五千圓以下の罰金に處す
第十一條の規定に依る税務署長又は其の代理官の質問に對し答辯を爲さず又は虚僞の陳述を爲したる者は二千圓以下の罰金に處す
第十八條 第五條の規定に違反し當該書類を提出せず若は虚僞の記載を爲したる書類を提出したるとき又は第六條の規定に違反し申告を爲さず若は虚僞の申告を爲したるときは當該法人の取締役、理事、清算人若は此等に準ずる者又は當該個人を一萬圓以下の過料に處す
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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昭和二十一年勅令第百二十八號
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項に依り所得税法中改正等の件を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年三月八日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
國務大臣 石黒武重
國務大臣 楢橋渡
勅令第百二十八號
第一條 所得税法中左の通改正す
第十二條第一項第八號及第九號中「三千圓」を「五千圓」に改む
第十四條第一項中「百五十圓」を「三百圓」に改む
第十六條第一項中「六百圓」を「二千四百圓」に改む
第十七條中「四百圓」を「千二百圓」に、「六百圓」を「二千四百圓」に改む
第十八條中「六百圓」を「千八百圓」に改む
第二十條第一項中「四百圓」を「千二百圓」に改む
第二十一條第一項第五中「二千圓以下の金額 百分の十八
二千圓を超ゆる金額 百分の二十三
四千圓を超ゆる金額 百分の二十八」を
「六千圓以下の金額 百分の十八
六千圓を超ゆる金額 百分の二十一
一萬圓を超ゆる金額 百分の二十八」に、
同條第二項中「六百圓」を「千二百圓」に、同條第六項中「千圓」を「二千圓」に改む
第二十四條第一項中「二十四圓(扶養家族中子五人以上なるときは年三十六圓)」を「七十二圓」に改む
第二十五條第一項中「二十四圓(扶養家族中子五人以上なるときは三十六圓)」を「七十二圓」に改む
第三十條第一項第五號中「千五百圓」を「五千圓」に改む
第三十一條 削除
第三十二條 總所得金額一萬圓以下なるときは綜合所得税を課せず
戸主及其の同居家族の所得は之を合算し其の總額に付前項の規定を適用す戸主と別居する二人以上の同居家族の所得に付亦同じ
第三十三條第二項中「適用して算出したる金額を各其の總所得金額に按分して各其の税額を定む」を「適用す」に改め同條に左の二項を加ふ
前二項の場合に於て前二項の規定に依り算出したる金額が總所得金額(前項の場合に於ては合算額)より一萬圓を控除したる金額を超過するときは其の超過額を前二項の規定に依り算出したる金額より控除したるものを以て税額とす
戸主及其の同居家族の税額は前三項の規定に依り算出したる税額を各其の總所得金額に按分して各之を定む戸主と別居する二人以上の同居家族の税額に付亦同じ
第二條 營業税法中左の通改正す
第十三條中「四百圓」を「千二百圓」に改む
第三條 遊興飮食税法中左の通改正す
第二條第一項中「百分の三百」を「百分の百五十」に、「百分の百二十」及「百分の百」を「百分の八十」に改め同項第五號乃至第七號を左の如く改む
五 前各號及第七號以外の遊興飮食の料金
料金の百分の五十
六 洋式の旅館に於ける宿泊の料金但し第三號に該當する場合を除く
料金の百分の四十
七 洋式の旅館以外の旅館に於ける宿泊の料金但し第三號に該當する場合を除く
料金の百分の四十
一人一泊の宿泊の料金中命令を以て定むる一人一泊の料金(以下普通宿泊料と稱す)を超ゆる金額に付ては百分の十を加算したる税率に依る
第三條中「一圓五十錢」を「十圓」に、「三圓」を「十二圓」に、「四圓五十錢」を「二十圓」に改む
第四條 入場税法中左の通改正す
第三條第一項を左の如く改む
入場税の税率左の如し
第一種の場所
入場料が一人一囘三圓五十錢未滿のもの
入場料の百分の五十
入場料が一人一囘三圓五十錢以上のもの
入場料の百分の百
囘數、定期又は貸切にて入場の契約を爲したるもの
第二種の場所
入場料の百分の百
第四條第一項中「十九錢」を「五十錢」に改む
第十條第一項中「一圓」を「三圓五十錢」に改む
第十一條第一項中「十九錢」を「五十錢」に改む
第五條 特別行爲税法中左の通改正す
第四條中「二圓」を「十五圓」に、「八十錢」を「三圓五十錢」に、「五圓(染替に付ては十圓)」を「三十圓」に改む
附 則
本令は公布の日より之を施行す
不動産所得、甲種及乙種の事業所得、乙種の勤勞所得、山林の所得、乙種の退職所得及個人の總所得に對する所得税竝に個人の營業税に付ては昭和二十一年分より本令を適用す
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昭和二十一年勅令第百十一號
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項及第七十條第一項に依り通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年二月二十七日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
國務大臣 石黒武重
國務大臣 楢橋渡
勅令第百十一號
通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲政府は夫々當該特別會計の負擔に於て借入金を爲すことを得但し其の金額は通信事業特別會計に在りては一億八千九百四十萬圓、帝國鐵道會計に在りては七億四千五百萬圓を超過することを得ず
前項の規定に依る借入金は通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定の歳入とし當該借入金の償還金及利子は夫々當該勘定の歳出とす
通信事業特別會計業務勘定に於て昭和二十年度の決算上過剩を生じたるとき又は帝國鐵道會計收益勘定に於て同年度の決算上歳入總額の歳出總額に超過する金額を生じたるときは之を通信事業特別會計法第十條第一項又は帝國鐵道會計法第九條の規定に拘らず夫々當該勘定の翌年度の歳入に繰入るべし
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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昭和二十一年勅令第百二十七號
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第七十條第一項に依り復員に關する經費等支出の件を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年三月八日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
國務大臣 石黒武重
國務大臣 楢橋渡
勅令第百二十七號
政府は昭和二十年度一般會計歳入歳出豫算實行上の歳入超過額を以て左に掲ぐる經費を支出することを得
一 航空機工場等の管理及保全に關する經費 千五百萬圓
二 引揚民對策に關する經費
二億三千九百萬圓
三 船舶運營會の昭和十九年度に於ける損失を補填するに要する經費
二億四千九十八萬圓
四 復員に關する經費
七億八百萬圓
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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昭和二十一年勅令第百五十九號
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第七十條第一項に依り生鮮食料品、石炭、鐵及電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件を裁可し之を公布せしむ
御名御璽
昭和二十一年三月二十二日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
國務大臣 石黒武重
國務大臣 楢橋渡
勅令第百五十九號
政府は昭和二十年度一般會計歳入歳出豫算實行上の歳入超過額を以て左に掲ぐる經費を支出することを得
一 生鮮食料品、石炭、鐵及電氣銅に關する價格調整補給金
九億八千四十萬二千圓
二 行政整理に伴ふ退官退職給與に要する經費 九千百九萬六千圓
三 外地職員の給與に要する經費
六千百五十五萬圓
四 地方職員の給與改善に伴ひ地方公共團體に對し補助するに要する經費 四億七百二十八萬五千圓
五 風水害緊急復舊に關する經費
一億九千二百三十八萬四千圓
六 聯合國軍より返還を受けたる元陸海軍所屬資材等の處理に要する經費 五千三百四十二萬四千圓
七 緊急開拓事業施行に關する經費
一億九千四百四十萬九千圓
八 土地改良事業施行に關する經費
五千四百二十四萬四千圓
九 戰爭再保險金支拂の爲にする漁船再保險特別會計繰入金
二千五百六十四萬六千圓
十 船舶運營會の昭和二十年度に於ける事業費に對し補助するに要する經費 六億圓
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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昭和二十一年勅令第百七十九號
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第七十條第一項に依り政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年三月二十九日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
國務大臣 石黒武重
國務大臣 楢橋渡
勅令第百七十九號
政府は昭和二十年度一般會計歳入歳出豫算實行上の歳入超過額を以て左に掲ぐる經費を支出することを得
一 政府職員の給與改善に伴ひ要する經費 七千七百六十五萬六千圓
二 地方職員の給與改善に伴ひ地方公共團體に對し補助するに要する經費 一億七千六百十五萬六千圓
三 地方職員の整理に伴ふ退職給與に要する經費に付地方公共團體に對し補助するに要する經費
三千三十五萬六千圓
四 地方公共團體の疎開事業費に對し補助するに要する經費
一億八千二百九十七萬三千圓
五 日本發送電株式會社の經費に對し補助するに要する經費
四千五百二十七萬六千圓
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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昭和二十一年勅令第百八十號
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項及第七十條第一項に依り通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件を裁可し之を公布せしむ
御名御璽
昭和二十一年三月二十九日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
國務大臣 石黒武重
國務大臣 楢橋渡
勅令第百八十號
通信事業特別會計業務勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨竝に帝國鐵道會計收益勘定に於ける同年度の追加經費支辨及歳入不足補填の爲政府は昭和二十一年勅令第百十一號第一項の規定に依り借入金を爲し得る金額の外夫々當該特別會計の負擔に於て借入金を爲すことを得但し其の金額は通信事業特別會計に在りては九千八百十萬圓、帝國鐵道會計に在りては四億五千萬圓を超過することを得ず
前項の規定に依る借入金は通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定の歳入とし當該借入金の償還金及利子は夫々當該勘定の歳出とす
帝國鐵道會計用品資金補足の爲政府は帝國鐵道會計法第二條の規定に依り起債し得る金額の外一億七千六百萬圓を限り當該特別會計の負擔に於て公債を發行し又は借入金を爲すことを得
前項の規定に依る公債の發行價格差減額を補填する爲必要ある場合に於ては同項の制限額を超えて公債を發行し又は借入金を爲すことを得
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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昭和二十一年勅令第二百四十一號
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第七十條第一項に依り昭和二十一年度に於ける大藏省證券及借入金の最高額に關する件を裁可し之を公布せしむ
御名御璽
昭和二十一年四月二十六日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
國務大臣 石黒武重
國務大臣 楢橋渡
勅令第二百四十一號
會計法第六條の規定に依る大藏省證券及借入金の最高額は昭和二十一年度に於ては豫算に定むる金額と通じて三十五億圓とす
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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昭和二十一年勅令第二百四十二號
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第七十條第一項に依り外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年四月二十六日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
國務大臣 石黒武重
國務大臣 楢橋渡
勅令第二百四十二號
政府は昭和二十一年度一般會計の歳出として左に掲ぐる經費を支出することを得
一 外地等職員の歸還に伴ひ要する經費 五千萬圓
二 復員に關する經費
八億二千萬圓
三 終戰處理に要する經費
五億圓
四 石炭價格調整補給金
三億二千五百萬圓
五 船舶運營會補助に要する經費
一億五千萬圓
六 歸還輸送に要する經費
二億七千八百萬圓
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=7
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008・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題になりました金融緊急措置令外十一件の緊急勅令事後承諾案に付て其の提案の理由を御説明申上げます
第一に金融緊急措置令、日本銀行券預入令及び日本銀行券預入令の特例の件に付きまして御説明申上げます、昨年の終戰後我が國の紙幣發行高は急激に膨脹致しまして、其の儘に放置致して置きまするならば、所謂惡性「インフレーション」に突入する危險が憂へられたのであります、即ち日本銀行券は終戰當日は三百二億餘萬圓でございましたが、昨年末には五百五十四億餘萬圓に相成り、更に金融緊急措置令公布當日は、六百十四億餘萬圓を示したのであります、而して同時に物價の著しき騰貴を現はしました、斯樣な終戰後の通貨の急膨脹は、終戰直後に於きましては、政府資金の急激な放出に依つたのでございますが、其の後左樣な放出が止みました後に於きましても、戰時中銀行預金などの形を以ちまして、累積した莫大な購買力が引出されて、是が使用され、且又是が紙幣の形を以て相當退藏致されて居つたと認められたのであります、是に於きまして當時政府は、一面に於て緊急食糧對策を中心とする民生安定の爲の一連の緊急諸方策を實施致しますと共に、金融面に於ては、既存の過剩購買力の主要源泉であります過剩現金及び預金等を一時封鎖致しまして、新たな基礎の上に資金使用の適正な調整を行ふことが同時に喫緊の要事であると考へられたのであります、そこで憲法第八條第二項の規定に基きまして、金融緊急措置令、日本銀行券預入令及び日本銀行券預入令の特例の件の三緊急勅令を制定實施した次第でございます
次に財産調査令に付きまして御説明申上げます、終戰後政府は戰時利得の排除、富の再分配、國民經濟の安定、戰後財政の確立等、財政經濟の再建に資する爲め、財産税等の新税を創設することと致しまして、其の準備を進めて參つたのであります、さうして是等の法律案は、聯合國最高司令部の承諾を得ました上、本年の最初に開會せられまする帝國議會に提案することになつて居つたのでございます、然るに議會の開會が豫定よりも相當遲れるの巳むなき状況に立ち至りました爲に、其の間に財産税等の課税氣構へに依りまして、民間に於きましては預金の引出しや、或は換物等の傾向が相當に盛んになつたやうに見受けられたのであります、同時に又生産活動の意欲は兎角停滯し勝ちな状況を現はしまして、是が所謂「インフレーション」の亢進を刺戟する弊が存したと云ふことは見逃すことが出來なかつた事實でございます、隨て財産税等の新税の調査時點を速かに確定致しまして、民心の安定を圖るの必要が認められたのであります、そこで政府は、日本銀行券の引換及び預金の封鎖等金融緊急措置の實行に即應致しまして、食糧、通貨、金融等の綜合經濟緊急對策の一環と致しまして、財産税等の調査時點を確定致すと共に、直ちに調査して置くのでなければ、後日財産状態の確認が殆ど不可能となるやうな、財産關係の移動の頻繁な財産等を一先づ調査確認して置きまして、新税の創設及び確保に資することと致しました、是が爲め、憲法第八條第一項の規定に依りまして、本勅令の制定を見るに至つた次第であります、本勅令に於きましては、先づ調査時期を本年三月三日午前零時と定めたのであります、次に調査事項と致しましては、第一に現金、預金、貯金又は有價證券等の財産及び生命保險、信託又は無盡等の契約關係に付きまして、個人及び法人を通じて申告せしめたのであります、第二に、一般の法人から調査時期現在に於ける打切り決算の書類を提出致さしめました、第三に特定の事業を行ふ個人から調査時期に於ける特定の動産等を申告せしめました、以上の三點が調査事項の要約致した所でございます、又此の調査を短期間内に的確正當に行ふことに付きましては、特別の考慮を拂ひまして、金融機關を動員致しますと共に、申告の有無を確認する爲め一定の表示の途を講ずるなど必要なる規定を設けた次第でございます
次に昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)に付て申上げます、去る三月三日政府は終戰後に於ける事態に對處致しまして、物價の安定を確保し、社會經濟秩序の維持と國民生活の安定とを圖る目的を以ちまして、物價統制令を實施したのであります、之に依りまして此の際新しい價格體系を創設致しまして、賃金、給與及び各種物資の價格に亙り廣く改訂を行ふことになつたのでございますが、當時施行されて居りました、租税制度の中に於きまして、特に基礎控除、免税點及び一部の税率などは、從前の價格及び賃金等を基礎として定められて居りましたので、それを此の儘にして置きますならば、新物價體系の設定を見る場合に於きまして、課税が重きに失し、或は國民負擔の適正を缺く憂ひがありましたのみでなく、新物價體系の確立、食糧、通貨、金融等の諸政策の遂行の上にも亦支障を來すものと考へられたのでございます、而も其の決定は急を要しまして、議會の開會を待つことが出來ない事情にございましたので、所得税、營業税、遊興飮食税、入場税、特別入場税及び特別行爲税に付きまして、基礎控除額、免税點及び扶養家族控除額を引上げました、又著しく高率に失する税率の引下げを行ひまして、負擔の適正及び國民生活の安定に資することと致しまして、憲法第八條第一項の規定に依りまして本勅令の制定を見るに至つたのであります
次に昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)、昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)、昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)、昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)、昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)、昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)、以上の諸件に付きまして御説明申上げます
先づ通信事業特別會計及び帝國鐵道特別會計に於ける借入金等に關する昭和二十一年勅令第百十一號及び勅令第百八十號に付て申上げますが、兩特別會計の昭和二十年度に於ける事業經營用品費の増嵩、從業員に對する諸給與の増加等に基きます追加經費の支辨の財源に付きましては、兩會計の歳入が戰時中及び終戰後に於ける各種の事情の爲に激減を致しました事情に鑑みまして、之を借入金に求める外、當時途がなかつたのでございます、隨ひまして政府は巳むを得ず昭和二十一年二月勅令第百十一號の御制定を仰ぎまして、通信事業特別會計業務勘定に於きまして一億八千九百四十萬、帝國鐵道會計收益勘定に於きまして七億四千五百萬圓を限度と致しまする借入金の權能を得た次第であります、然るに其の後新物價體系の實施に伴ひまして、政府職員の給與に付きましても、暫定的措置と致しまして、新たに臨時手當支給等の處置を講ずることが必要と相成りました關係上、兩會計に於きましても所屬職員に對しまして、是等の諸給與を支給致します等の爲に、新たに追加經費を必要とするに至つたのでございます、尚ほ帝國鐵道會計に於きましては、以上の外に金融緊急措置令の施行、定期乘車券の料金引上計畫の改訂等に依りまして、運輸收入が減少するに至りましたのと、又諸物價の値上り及び戰災に依る損害に基きまして用品、資金所屬の用品が著しく減少致しました關係上、用品資金を資本勘定から補足してやる必要が生ずるに至つたのでございます、而して是等の諸經費は是れ亦兩會計の歳入の状況から致しまして、其の財源を借入金、又は公債金に求めるの外途がありませぬでございましたので、更に勅令第百八十號の御制定を仰ぎまして、通信事業特別會計業務勘定に於きまして九千八百十萬圓、帝國鐵道會計收益勘定に於まして四億五千萬圓を限り借入金をなし得るの權能を得ました、又帝國鐵道會計資本勘定に於きまして一億七千六百萬圓を限り公債を發行し、又は借入金をなし得る權能を得たのでございます
以上述べました如く是等の諸經費は何れも公共の安全を保持する爲の緊急の需要に基くものでございまして、總選擧後に於て召集せられます帝國議會の開會を待つことが出來ませぬので、政府は豫備金外支出を餘儀なくせられたのであります、隨ひまして其の財源調達に關しましても、憲法第八條及び第七十條の規定に基いて兩勅令が制定公布せられた次第であります
次に昭和二十年度及び同二十一年度の一般會計に於ける緊急缺くべからざる經費の支出に關する昭和二十一年勅令第百二十七號、同勅令第百五十九號、同勅令第百七十九號及び同勅令第二百四十二號に付てでございますが、昭和二十年度及び同二十一年度の一般會計に於きましては、終戰後の新事態に對處致しまする等の爲め、緊要なる各種經費の支出を必要とするに至つたのでありますが、衆議院が解散せられ、且つ第二豫備金も拂切りの状況にありました關係上、政府は己むを得ず右の諸勅令の御制定を仰ぎまして、之に基いて是等の緊急經費を支出致したのでございます、而して是等の勅令に依り支出の權能を得ました經費は、昭和二十年度分としましては、復員に關する經費、引揚民對策に關する經費、生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金、外地職員の給與に要する經費、地方職員の給與改善に伴ひ地方公共團體に對し補助するに要する經費、緊急開拓事業施行に關する經費、政府職員の給與改善に伴ひ要する經費、地方公共團體の疎開事業費に對し補助するに要する經費等の十九件でありまして、其の金額は合計四十三億七千五百八十三萬七千圓と相成りました、又昭和二十一年度分としては、外地等職員の歸還に伴ひ要する經費、復員に關する經費、終戰處理に要する經費、石炭價格調整補給金、歸還輸送に要する經費等の六件でありまして、其の金額は合計二十一億二千三百萬圓と相成りました、兩年度分を通じまするときは其の件數は二十五件で、金額の合計は六十四億九千八百八十三萬七千圓と相成るのでございます、而して前述の諸經費は、何れも終戰後の新事態に即應しまして、緊急に其の支出を必要とするに至つたものでありまして、且つ其の性質上早急に處理を要した次第であります、總選擧後召集せられる帝國議會の開會を待つことを得ない状況にありました關係上、憲法第七十條第一項に基いて是等の勅令の御制定を仰いだ次第でございます
最後に、昭和二十一年勅令第二百四十一號、昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件に付て申上げますが、昭和二十一年度一般會計の四月乃至六月の三箇月間に於ける收支の状況は、當時の豫想と致しましては、普通歳入約二十六億七千餘萬圓と相成りまして、例年に比し大差なき状況を示して居つたのでありますが、他方歳出に於きましては、施行豫算に依る經費の支出の外、終戰に伴ふ復員に關する經費、終戰處理に要する經費等、第二豫備金支出又は財政上の緊急處分に依る支出を必要と致しまする緊急缺くべからざる諸經費を、巨額に且つ年度初めに支出するの必要が生じて參りました關係上、其の所要額は約六十一億五千餘萬圓と相成る状況でございまして、是等の經費を支辨致しますに付きましては、普通歳入に依るの外、更に約三十四億八千餘萬圓の國庫金を調達するの必要を生ずることと相成つた次第でありまぬ、而して右の諸經費は何れも緊急の需用に基くものであり、隨ひまして國庫金の調達も緊急を要するものでありましたので、是が調達の方法と致しまして、年度初頭である實情に鑑みまして、會計法第六條の規定に基き大藏省證券の發行又は日本銀行よりの借入金に依るのを最も適當と致した次第であります、然るに大藏省證券及び借入金の最高額は、施行豫算に於て五億圓と相成つて居りまして、隨て其の最高額を改めまして、三十五億圓に増額する必要があつたのであります、然るに大藏省證券及び借入金の最高額を増額致しますに付きましては、會計法第六條第三項の規定に依りまして帝國議會の協贊を要するのでありますが、帝國議會の速かなる開會を期し得ない状況に當時ございましたので、茲に憲法第七十條第一項に基き本勅令の御制定を仰いで之を増額した次第であります、
以上を以て説明を申上げた次第でありますが、何卒御審議の上御承諾あらんことを偏へに御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=8
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009・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 質疑の通告があります、之を許します──川島金次君
〔川島金次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=9
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010・川島金次
○川島金次君 私は主として本日提案されました金融緊急措置令竝に財産調査令に關し、「インフレーション」防止を中心としての當局の所見を御伺ひ致したく登壇致しました、時間がございませぬので、質問要旨を簡單率直に申上げたいと思ひます、但し當局の之に對する答辯は飽くまでも、言ふに及ばざることでございませうが、我々に納得の出來る程度の御答辯を望んで已まない次第であります、
大藏大臣は先日の豫算總會席上に於て、我が黨の井上議員の發しましたる質問に答へまして、國民生活の國家的管理とも申上ぐべき五百圓生活問題に對して、出來るならば斯樣な緊急措置令は、一日も早く、速かに撤廢することが理想であると斯樣に答へたのであります、而もそれに附加へまして、今の經濟状態は恰も冷藏庫に入れた冷凍魚のやうな状態である、之を誤つて外すと、折角固まつて居る冷凍魚が腐る虞がある、斯う答へて居るのである、其の比喩が當つて居るか當つて居らぬかは別と致しまして、私共の立場から申上げまするならば、大藏大臣は今日の經濟状態を冷凍魚と言はれまするが、國民一般勤勞大衆の立場から申上げますならば、當局の財政經濟政策を此の儘遂行致すとしまするならば、寧ろ國民大衆は干乾しになる虞があるのではないかとさへ私は申上げたいのであります(拍手)殊に五百圓の生活を以て國民に強ひると云ふことは、取りも直さず國民生活を五百圓の枠内に於て國家的な管理を致して居る事柄に相當するのであります、私がここ兩三日來東京都を中心と致しまして、近縣の犯罪容疑者を留置致しましたる場合の、留置人の食糧の經費を調査致しまする所に依りますと、最低平均一人の一囘分は一圓二十錢になつて居ります、犯罪の容疑者を以て警察署に留置致して居ります所の人件費に於ても、一囘分が一圓二十錢であります、一日に之を換算致しますると、申すまでもなく三圓六十錢、之を假に我々國民勤勞大衆の家庭生活に於ける所の家族人を平均致しまするならば、大體五人と見て差支ないでありませう、此の五人の家族を留置人に換算して養うて行くと致しましても、即ち一日一人三圓六十錢、五人の家族では優に正に五百圓の食糧費が掛つて居り、今日政府は掛けて居るのであります、斯樣な状態から起算致しましても、果して今日の食糧飢饉と物價の昂騰に即應致しまして、我々國民、殊に働ける勤勞大衆の生活が保障される枠内であると今日でも當局は考へて居りますかどうかを伺ひたいのであります(拍手)
最近厚生省の勞政局給與課に於て調査を致しました計數を見ますると、是は本年の四月頃に厚生省が調査をしたと存じ上げて居るのでありますが、其の場合全國の勤勞大衆の生活實情調査を致した結果、六大都市に於きましての勤勞者の生活状態と云ふものは、收入が五百四圓八十二錢の平均であり、之に對して生活費の支出が八百四十四圓八錢と云ふことになつて、差引實に三百四十四圓四十錢と云ふ生活的な赤字を續けて居ると云ふことが、調査報告に依つて判明をしたのであります、更に一面同じく厚生省の調査に依りますと、人口五萬以上十萬内外に亙る中小都市の勤勞者の生活状態の調査結果に依りますると、是れ亦收入が三百四十四圓八十五錢の平均であり、之に對する支出は實に八百八十四圓八十錢である、其の差引實に五百三十九圓八十二錢と云ふ赤字を出して、勤勞大衆と云ふものは生活を續けて居ると云ふことが、厚生省の調査に依つて判明を致したのであります、聞く所に依りますと、昨日の晩、大藏省の省内に於きましては、大臣を中心に各局長、課長等が鳩首凝議を致しまして、此の五百圓生活問題に付て熱心なる協議を行つたと云ふことを、今朝程仄聞を致して居るのであります、而も其の結果大藏省の役人の人達と雖も、此の五百圓の枠内の生活では到底やり切れない、のみならず大藏省の下級役人が、平均精々二百六、七十圓の收入でやつて居ると云ふことも、大藏當局の言明を俟つまでもなく判明致して居る數字であります、是等を中心として協議評議を致しました結果、是は一日も早く何とかせねばならぬと云ふ談話の間でも結論に達したと云ふ御話を、私は今朝承つて居るのであります、私は現實の國民生活の實態から致しまして、只今申上げました如く、容疑者、留置者の食糧生活だけを賄ふ經費に於ても、五人と致しますならば五百圓に相當すると云ふ此の實情に鑑みまして、勤勞大衆の生活が果して五百圓で今日保障されるかどうか、當局は此の資金凍結を致す場合に、國民の大體の生活標準は五百圓で事足りると云ふ標準を以て確定を致したのである、然らば今日の物價状況に照して、尚且つ今日に於ても五百圓の枠内生活が適當であると今日まで考へて居られますかどうか、同時に私共から言はせるならば、此の際生活の實態に即して、實際は五百圓であるが、其の實態の生活と云ふものは八百圓になり、千圓と云ふ状態に國民大衆の生活はなつて居るのでありますから、徒らに銀行の勞務を煩雜にし、國民大衆の勞務を煩雜にし、事業場、工場の勞務を煩雜にしてまで、此の五百圓を堅持しなければならぬと云ふ有力なる理由と根據を解するに、私は今日苦しんで居るのであります、此の際當局は國民大衆の實際の生活に即して、此の枠内の五百圓を思切つて八百圓乃至千圓に窓を擴げて見てはどうかと云ふ考へ方を持つて居りまするが、大藏大臣の所見を御伺ひ申上げたいと思ふのであります
尚ほ更に只今申上げました如く、國民生活の枠を五百圓に限定して居りまするが、國民の大多數を占めて居りまする所の勤勞大衆に對しましては、御承知の如く百分の十八の甲種勤勞所得税が最近掛かつて居ります、而も此の百分の十八の課税標準は、五百圓の枠内以下の收入を取つて働いて生活して居る所の勤勞階級にまで今日課税をして居ります、大藏大臣が最早國民の生活が五百圓では立行かないと、屡屡新聞記者其の他に語つて居る所から見ましても、五百圓以下の收入を得て居りまする勤勞生活者に對してまでも、尚且つ今の物價状況に照して、甲種勤勞所得税百分の十八を課税致して居ることは、國民勤勞大衆の生活に對する重大なる壓迫であると私は考へて居ります(拍手)此の際大藏當局は勤勞所得税の撤廢が出來ないとすれば、せめても五百圓以下の勤勞所得階級に對する課税を、二百圓と云ふけちな算定基礎控除でなしに、思ひ切つて五百圓まで免税點を引上げると云ふ政策を斷行することを、私は要求するのでありまするが、當局の所見を御伺ひ申上げたいと思ふのであります(拍手)
次に私は財産税の問題に付て一、二御伺ひを申上げたいと思ひます、幣原内閣は此の財産税を課税致します立案を致しまして、金融緊急措置令と云ふものを出して、此の財産税と云ふものは金融緊急措置令と不離一體の關係にあることは、私が申上げるまでもない事柄であります、本來でありましたならば、當時の當局が此の金融措置令を實施致しまする時期と云ふものは、財産税其の他の徴税の立案を發表致しました直前か、若しくは同時に之を發表すべきでなかつたかと思ふ、然るに前幣原内閣は如何なる根據と理由を以て致して居るか分りませぬが、財産税の發表を本年初頭にして置きながら、財産調査令の實施と云ふものを御承知の如く三月になつて行つたのであります、此の間に於て有力なる所の地主、勢力ある大事業家、大資本家は此の僅か三、四箇月の間に換物活動を旺盛に致しまして、國内の物價騰貴を助長したと云ふ例は、洵に枚擧に遑ない程であります(拍手)一體幣原内閣は此の財産調査令を發表すると同時に、何故に金融措置令をも同時に實施致さうと云ふ決意を持たなかつたか、此の點に對して御伺ひを致すのであります
尚ほ更に私は之を春秋の筆法を以て言ふ譯ではございませぬが、幣原内閣は一方に於て財産調査令を發表しながら、一方に於ては有力なる地主階級若しくは資本家階級の換物の旺盛なる活動を援助せんが爲に、寧ろ三月も其の實施を延期したものではないかとさへ私は想像致すのであります(拍手)之をもつと端的に申上げますならば、財産調査令と金融措置令の一聯の發表の關係は、寧ろ政府が資本家と地主階級の財産を擁護せんが爲に、此の期間を置いたと私は斷言しても憚らない次第であります、此の措置に對しまして、現在の大藏大臣である石橋藏相は、幣原内閣の執りました此の措置に對して、適切なる措置であると今日も御考へになつて居るかどうか、又只今申上げました如く、三箇月の期間を置いたことに依つて、全國的に有力なる地主階級若しくは資本家階級の換物を助成した結果になつたと云ふことを御認めになつて居るかどうか、此の點に付て御伺ひを申上げたいのであります
更に此の機會に御伺ひを申上げたいのでありまするが、財産税は、御承知の如く政府の當初の發表に依りますれば、二萬圓の基礎控除があることになつて居ります、此の二萬圓の基礎控除に對して、現在の大藏大臣である石橋さんは東洋經濟誌上に於きまして、在野當時屡屡政府の執つた「インフレーション」防止策は、結局に於て國民大衆の生活を擁護すると云ふこともあつたが、本質的には金融業者の救濟に外ならなかつたと、五月十一日の東洋經濟にはつきり書いてあつたことを私は覺えて居ります、然らば大藏大臣に於きましては、此の「インフレーション」防止を目的と致しました所謂財産税に對して、此の際大藏當局に於きましては二萬圓の基礎的控除額を三萬圓程度に引上をしようと云ふ肚になつたと私は承つて居りまするが、自由黨竝に進歩黨の各位が先月の末に政策協定を行はれました場合には、此の免税點は十萬圓が適當なりと主張されたことは御承知の通りであります、尚ほ私共の社會黨に於きましては、財産税の基礎控除額は今日の物價状況に照し、又課税の對象となるべき國民生活の實況に即應する意味合からに於きましても、最低五萬圓に基礎控除免税點を引上げる必要があるのではないかと思ふのでありますが、之に對して大藏大臣は自由黨、進歩黨の政策協定の十萬圓と我が黨の五萬圓説、何れを以て適切なるものであるか、更に又二萬圓の基礎控除を變更する固き御決意を今日持つて居るかどうか、其の點をも併せて御伺ひ致したいのであります
更にもう一項御伺ひ致したいのは事業資金に關する再封鎖の問題であります、最近大藏當局は事業場、工場に於ける所の所謂事業資金を完全封鎖を致しまして、今後工場、事業場と云ふものは、一切の設備資金竝に運轉資金は勿論一々金融機關の融通を受けなければ、工場の經營が出來ないと云ふことに相成つたのであります、此の資金再封鎖の眞意と云ふものは大藏大臣の説明を俟つまでもなく、三月二日の資金凍結當時に於ては約二百億萬圓に壓縮が出來た所謂通貨の状態が、又しても月々五十億圓乃至七十億圓の増發となつて、六月二十四日現在の通貨發行高は正に四百億圓を突破する状態になつて來た、此の通貨の増發を見たことは、事業會社或は資本家が設備資金若しくは運轉資金に名を籍りて銀行から自己資金を拂戻し、而もそれが生産の面に振向けられずして、自家消費に當てることが旺盛になつたから、斯くの如く通貨の増發を見、再び幣原内閣當時に劣らない所の通貨の膨張を見たのであるとの斷定の下に、事業場に於ける所の通貨の増發を防止することは、先づ、資本家の、或は事業場の、工場の此の資金を抑制することが最も徑捷であると云ふ建前から斷行されたと私は考へて居ります、一應其の施策に付きましては洵に御尤もだと思ひますが、今日日本の産業の現状から推して見ますと、設備資金や運轉資金に依つて銀行から自己資金を拂下げ、其の自己資金を生産に振向けず致しまして、一般消費に流用して參つたと云ふ階級は、日本全土内に多少の例外はありまするが、眞面目なる、健實なる中小工場には恐らく其の餘裕がないと云ふのが現實の姿である、若しありと致しますれば、それは國内に於ける所の生産「サボ」をやつたり、或は鍋釜を作つて時の闇相場に便乘して儲けようとする、所謂有力なる事業家に多數の例があるやうに私は聞いて居るのであります、此の不眞面目なる所謂大資本家を中心としての弊害があつたからと云つて、眞面目で眞劍に日本經濟産業再建の爲に生産意欲を旺盛にし、勞働者も資本家も一體となつて生産に一路邁進を致して居りまする所の中小工場に對してまで、同一に之を取扱はんと致しますることは、軈て其の中小工場と云ふものは銀行からの融資が不圓滑になり、生産が阻碍せられ、更に延いては中小工場の閉鎖倒壞が續出し、更に延いては新しき失業問題が起り、社會不安を一層増大する結果になりはせぬかと云ふことを私は心配して居る次第であります(拍手)之に對して大藏當局は眞面目なる中小工業者に對しては、私共の立場から申上げますならば、より力を發揮して、政府は此の中小工場に對する全面的な、積極的な育成助成の方法を講ずべき時ではなからうかと私は思ふのであります、之に對して大藏當局の御囘答を望みたいのであります
更に政府は事業資金の問題に對して、銀行から中小工場まで勿論でありまするが、金融を受けまする場合に、其の利息は、普通手形に依つて借入れまする所の利息一錢三厘、若しくは一錢五厘、是と同率に事業資金の融資も取扱ふと、斯う言はれて居るやうであります、一體事業場、工場に自己資金、預金を持ちながら其の經營費に充てる所の金を銀行から借りる場合、有力なる現金の擔保があるに拘らず借りる場合に、同率の利息を徴收しても宜しと銀行に通達を致されて居るやうでありますが、是は私に言はせるならば、洵に妥當でないと考へるのであります、一體大藏大臣は如何なる根據と理由で利息と云ふものを同率に認めて居るのか、之に對する所の明快なる理由を私共に説明して戴きたいのであります、申すまでもなく只今私が申上げました中小工場と云ふものは、大藏大臣は地方の工場等を餘り御調査がなかつたやうでありまするから、定めし御存じがないと思ふのでありますが、中小工場の大部分と云ふものは、戰爭中に眞に工場主、勞働者が一體となつて生命を賭けて生産の増強に邁進をして參つたのであります、而も中小工場と云ふものは軍部、官僚の庇護と云ふものが比較的薄かつたが爲に、所謂勞働者の賃金統制令などと云ふものがあつて、餘りに強力に此の恩惠に預からなかつた、其の他賃金の面に於きましても、資材の購入に於ても、ありと凡ゆる方面に於て、凡ゆる惡條件を克服しながら勞働者、中小工場の營業主と云ふものは懸命なる努力を拂つて來、尚ほ其の外に生産増強の實現を達成する爲に各種の計畫を立てまして、銀行から借入金をなし、設備の擴充、勞働者の雇入れの増加などにも眞劍なる、眞面目なる氣持に於てやつて參つたのであります、然るに終戰と同時に是等中小工場は一面に於て厖大なる銀行借入金を負擔しながら、而も今日の實況から致しますならば、軍需工場と言はれて居る所の三千二百餘工場の中に、大藏大臣も御承知の如く、今日生産を再開して居りまする所の工場數と云ふものは、僅かに四割しかないと私は聞いて居ります、而も其の四割の中實際十分に其の設備能力を發揮して居ります所の工場數と云ふものは、是れ亦「パーセンテージ」に於きまして極めて僅少であると云ふのが軍需工場、有力工場の實態である、然るに之に反して中小工場は、終戰と同時に逸早く眞劍に、眞面目に國家の再建を考へ、勞働者の生活を考へて、實に急速なる再轉換を實施して居り、それが今日有力なる生産増強の一翼を擔つて居るのであります、是等中小工場こそ私は日本産業經濟の推進力であると斷定致すのでありますが、是等中小工場に對して、大藏當局は如何なる助成と育成の方法を今後執る方針でありますかを此の際御伺ひ致したいのであります
尚ほ同僚の二、三が居りまするので、質問の要項は澤山ございますが、省略を致しまして、此の程度に私の質問を止めて置く次第であります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=10
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011・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の御質問に對して御答へ申上げます、各自の收入五百圓以上のものを封鎖すると云ふ今日のやり方が甚だ不自然なものであると云ふことは、毎々申上げます通りでありまして、是は是非早い機會に左樣な制限のない状態に致したいと考へて居る次第であります、唯併し今日五百圓で封鎖と申しますが、實は家族がありますと、若しそれ以上の收入のある人であり、若しくは封鎖預金を持つて居られる方でありますと、家族一人百圓づつ別に取れるのでありますから、多少面倒ではありますけれども、例へば五人家族であれば、千圓までの生計費は取れる譯であります、同時に其の外封鎖預金で拂へるものを最近も少し擴張致しましたが、瓦斯の料金であるとか、電氣の料金であるとか、其の他細かく申上げませぬが、色々封鎖で拂へるものもある次第でありますから、必ずしも生活費が五百圓に限定されて居ると云ふ意味ではございませぬ、御話の中の問題は大分給與の事柄に亙つて居りまして、詰り封鎖とは又別問題の御指示がありました、昨日大藏省内の云々と云ふ御話もありましたが、政府職員の給與に付ては、最近之を改善することに相成りまして、相當滿足すべき状態になることと私は信じて居る次第であります
それから勤勞者に對する分類所得税を免除せよと云ふ御話でありますが、必ずしも最低生活費を保障すると云ふやうな意味で税はある譯ではありませぬので、比較的小所得の國民にも應分に國税を負擔して貰ふ、斯う云ふ趣意でありますから、假に五百圓が今日本に於て最低生活費であると致しましても、分類所得税の控除を五百圓までにしなければならぬと云ふことには相成らぬと思ふのであります、のみならず、是も毎々申上げますやうに、日本の所得の構成は、上が少なく、比較的小所得の國民が多數にある次第でありますので、國庫の歳入と致しましては遺憾ながら所謂大金持、大地主だけに課税をして今日の財政を賄ふと云ふ譯に參りませぬ、どうしても比較的小所得の國民にも應分の納税をして戴かなければならぬ次第であります、隨て此の勤勞所得税を全廢しますとか、或は非常に大幅に此の控除額を引上げるとか云ふやうなことは、今日の財政上としては其の力がないと云ふことを御諒承願ひたいのであります
それから財産税の發表と財産調査令の施行との間に食違ひがあつて、其の間に種々なる好ましからざる現象が起つたと云ふ御説であります、是は前内閣のことでありますが、先程の緊急勅令の事後承諾案の説明の中にも申上げましたやうに、實はあの財産税等は順調に議會が開かれますならば、疾に議會に提案されて實行された筈であつたのであります、それが色々の事情で延びましたので、其の間に好ましからざる現象が起り、隨て前内閣も已むを得ず二月十七日にあの勅令を出して、急に財産調査を致したものと私は心得て居りますので、今日から考へましても、當時の事情上已むを得なかつたものと私は承知致して居ります
それから金融措置令の御話と思ひますが、私があれは銀行の保護になつたのだと云ふことを申したと云ふ御話でありますが、確かに左樣なことを申したことがあるのであります、と云ふのは、私は所謂金融資本を擁護すると云ふ意味で申したのではありませぬで、詰りあの金融緊急措置令が出ずに、預金がドシドシ引出されましたならば、銀行は遂に倒壞せざるを得ず、隨て引出した預金者は宜うございますが、殘つた預金者は非常な損害を被る危險があつたのであります、でありますから其の結果としてあれが果して當時の政府が豫定した通りの效果を擧げたかどうかと云ふことは別問題と致しまして、あれはあの限りに於ては、あの場合はやはりやらなければならなかつた措置であつたと私は今日信じて居ります、其の銀行を保護したと云ふ意味は、預金を保護した、斯う云ふ意味でございます
それから財産税控除額のことに付て御尋ねがありましたが、是は只今尚ほ研究致して居りますので、どれだけに致すかと云ふことを此處でまだ申上げる時機になつて居りませぬが、是も亦先程申上げますやうな譯で、色々御説がありまして御尤もと存じますけれども、何せ國民所得或は財産の状況が、割合に小さい人が多いと云ふ次第でありますから、十分色々の御説に御滿足を與へるやうな處置が出來るかどうかと云ふことを只今懸念して居るやうな次第であります
それから最近行ひました事業資金は原則として新貸出に依ると云ふことに付きまして御尋ねがありましたが、是は御話の中にもありましたやうに、今までのやうに、封鎖預金に依つて事業資金を出すと云ふ方法でありますと、偶偶預金を持つて居るが、其の事業は必ずしも生産に十分の力が入つて居らぬ、所が生産に力を入れる事業には却て預金がないと云ふやうな現象が中々多いのであります、そこで我々としましては、出來るだけ日本の將來の産業を見渡しまして、日本に於て之を助長し育成しなければならぬ産業に資金が十分に供給さるるやうに、それに反して生産に餘り努めないと云ふ方面に資金が流れ込むと云ふことを防ぐ必要があると考へまして、先般の如き處置を執つたのであります、其の爲に中小工業等に迷惑を掛けると云ふ懸念も無論過渡的にはございますので、是は左樣なことがないやうにと、日本銀行其の他の金融機關等にも十分に言うて、其の處置を執つて居る筈でありまして、私はそれが爲に有力な中小工業が非常な困難に陷つて居ると云ふ事實は恐らくないだらう、萬一それがありましたとすれば、是は躊躇なく左樣なことのないやうに努めることに致して居る次第でありまして、若し實際の事實がございましたらば、御知らせを願へれば大變幸ひに存じて居るのであります、
尚ほ左樣な處置を執りました爲に自然預金があります人も、新しく金を借りれば利子を拂はなければならぬと云ふ矛盾が茲にあると云ふことは、御指摘の通り私も十分それを認めて居る次第でありますが、封鎖預金、新圓、それから事業に健全な資金が流通して參るやうにと云ふ、色々な一連の政策の上から左樣な部分的に多少不公平と申しますか、さう云ふ現象が生じて居る次第でありまして、是は何時も申上げますやうに、新圓、舊圓と云ふやうな區別、或は封鎖預金、自由預金と云ふやうな區別、是が撤廢せらるるまで左樣な矛盾が時々起るのでありますが、尚ほどうか暫く時を御籍し願ひまして、是等の状況が常態に復するやうに速かに致したいと、只今折角努力して居る次第でございます
尚ほ中小工業に對して政府は今後如何なる處置を執るかと云ふ御尋ねでございまするが、是は無論政府と致しましては、今後の日本の産業が中小工業に大いに依存しなければならぬと云ふことは、常に繰返して申して居るやうに、又深く左樣に信じて居る次第でありまして、大藏省と致しまして、金融部面に於ける處置は十分に其の方面には講ずる覺悟であり、又現に是れ是れと云ふ別段法律とか何とか云ふものは出しませぬけれども、興業銀行其の他にも命じまして、其の點に於ては萬違算なきやうに取計らつて居る次第であります
以上甚だ簡單でありますが、時間も餘りありませぬので、御答へを終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=11
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012・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是にて質疑は終了致しました、各件の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=12
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013・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第一乃至第十二の十二件を一括して議長指名二十七名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=13
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014・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=14
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015・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第十三、食糧緊急措置令(承諾を求める件)を議題と致します──和田農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=15
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016・会議録情報4
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第十三 食糧緊急措置令(承諾を求める件)
食糧緊急措置令
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項及第七十條第一項に依り食糧緊急措置令を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年二月十七日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十六號
食糧緊急措置令
第一條 主要食糧(食糧管理法第二條の主要食糧にして農林大臣の指定するものを謂ふ以下第八條迄同じ)の所有者が同法第三條第一項の規定又は同法第九條の規定に基く命令に依り政府に賣渡すべき主要食糧を當該命令に定めたる時期迄に賣渡さざるときは政府は當該命令に係る主要食糧にして政府に賣渡さざる數量に相當するものを收用することを得
第二條 政府前條の規定に依り主要食糧を收用せんとするときは當該官吏をして收用せんとする主要食糧に付收用すべき主要食糧たるの表示を爲さしむると共に當該主要食糧の所有者に對し收用令書(以下令書と稱す)を交付せしむべし但し所有者知れざる場合其の他所有者に交付すること著しく困難なる場合に於ては權原に基き當該主要食糧を占有する者(以下管理者と稱す)に對し之を交付するを以て足る
第三條 當該官吏が令書の交付を爲したるときは政府は遲滯なく令書の交付の際に於ける當該主要食糧の所有者又は管理者(令書の交付を受けたる者を除く)其の他當該主要食糧に付權利を有する者にして知れたるものに對し之を通知すべし令書の交付後當該主要食糧の所有者又は管理者と爲りたる者其の他當該主要食糧に付權利を有するに至りたる者にして知れたるものに對し亦同じ
第四條 令書の交付又は前條の通知を受けたる者は收用に支障を及ぼす虞なき場合を除くの外政府の許可を受くるに非ざれば當該主要食糧の形質若は所在場所を變更し又は之を讓渡し、貸與し、質權の目的と爲し其の他當該主要食糧に關し新なる處分を爲すことを得ず
第五條 令書の交付又は第三條の通知を受けたる者にして令書に記載したる引渡時期に於て當該主要食糧の所有者たるものは令書に記載したる引渡時期に當該主要食糧の所在場所に於て之を引渡すべし引渡時期に於て所有者知れざる場合又は所有者より引渡すこと能はざる場合若は引渡すこと著しく困難なる場合に於ては令書の交付又は第三條の通知を受けたる者にして令書に記載したる引渡時期に於て當該主要食糧の管理者たるもの之を引渡すべし
前項の規定は當該主要食糧に關し強制執行手續、國税徴收法に依る強制徴收手續其の他此等の手續に準ずべきものの進行中と雖も其の適用を妨げず
第六條 政府は當該官吏をして收用すべき主要食糧の引渡を受けしむるものとす
前項の規定に依り主要食糧の引渡ありたる時に於て政府は其の所有權を取得し其の他の權利は消滅す
第七條 政府は命令の定むる所に依り第一條の規定に依る收用に因り生じたる損失を補償す
前項の規定に依る補償金額は食糧管理法第三條第一項に規定する主要食糧に付ては同條第二項の規定に依る買入の價格、其の他の主要食糧に付ては時價に準據して農林大臣之を定む
第一條の規定に依り收用したる主要食糧は食糧管理特別會計の所屬とし第一項の規定に依る補償金は同會計の負擔とす
第一項の規定に依る補償金は一年内に償還すべき無記名證券を以て其の額面金額に依り之を交付することを得
前項の規定に依り交付する爲政府は證券を發行することを得
前項の規定に依り發行する證券は之を食糧管理特別會計法第三條の規定に依り發行する證券と看做す
第八條 第一條乃至前條に定むるものを除くの外主要食糧の收用に關し必要なる報告の徴取其の他主要食糧の收用に關し必要なる事項は命令を以て之を定む
第九條 政府は青果物、魚介類其の他勅令を以て定むる食料品に付其の配給の適正又は價格の安定を圖る爲特に必要ありと認むるときは勅令の定むる所に依り此等の食料品の配給、讓渡、讓受、使用、消費、保管、移動又は價格の統制に關し必要なる命令を爲すことを得
第十條 主要食糧(食糧管理法第二條の主要食糧を謂ふ以下第十一條迄同じ)の配給に關し不實の申告を爲し其の他不正の手段に依り主要食糧の配給を受け又は他人をして之を受けしめたる者は五年以下の懲役又は五萬圓以下の罰金に處す其の刑法に正條あるものは刑法に依る
第十一條 食糧管理法第三條第一項の規定又は同法第九條の規定に基く命令に依る主要食糧の政府に對する賣渡を爲さざることを煽動したる者は三年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處す
第十二條 第九條の規定に依る命令に違反したる者は五年以下の懲役又は五萬圓以下の罰金に處す
第十三條 第一條の規定に依る主要食糧の收用を拒み、妨げ又は忌避したる者は三年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處す
第十四條 前二條の罪を犯したる者には情状に因り懲役及罰金を併科することを得
第十五條 第八條の規定に基く命令に依る報告を怠り又は虚僞の報告を爲したる者は千圓以下の罰金に處す
第十六條 法人の代表者又は法人若は人の代理人、使用人其の他の從業者其の法人又は人の業務に關し第十二條、第十三條又は前條の違反行爲を爲したるときは行爲者を罰するの外其の法人又は人に對し各本條の罰金刑を科す
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=16
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017・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 只今議題になりました食糧緊急措置令に付きまして御説明申上げます
昭和二十一食糧年度は食糧事情が非常に窮屈でございましたことは、昨年の産米の未曾有の凶作を受けまして、豫て是は豫想されたことでございましたが、更に此の供給面に付て見まするに、現實の集荷状況が極めて寒心すべきものがございました、即ち本年一月に於きまする政府の買入數量は約千九十六萬石、供出割當數量に對しまして漸く四割一分の状態でございまして、之を昨年の同期に於きまする約七割、一昨年の同期に於きまする約八割六分の成績に比較致しまする時に、絶對數量の點に於きましても、又買入の進捗率の點に於きましても極めて不成績でありまして、此の儘推移致しまする場合には、洵に容易ならぬ事態が豫想せられたのでございます、隨ひまして此の状態を急速に改善致しますることは、一刻も忽せにすることの出來ない實情でございましたので、政府と致しましては主要食糧の管理の強化竝に食糧品の配給の適正及び價格の安定に關しまする緊急措置を講じまして、國民生活の安定、延いて公共の安全保持を期しまする爲に、本緊急措置令の制定を仰ぎました次第でございます
本勅令の主なる骨子と致しまする所は、第一に主要食糧の所有者が、政府の供出割當に依りまして、政府に賣渡すべき主要食糧を供出期限までに賣渡しませぬ場合に於きましては、其の事情が特に惡質なものに付きまして、政府に於きまして強制的に收用することが出來ると云ふことに致した點でございます、此のことは御承知のやうに從來の事例に徴しましても、一部少數の惡質不良なる者の存在が、善良な一般農家に少からぬ惡影響を及ぼしまして、而も本年は其の傾向が特に顯著の如くに見受けられましたので、所謂正直者が損を見たと云ふやうな從來の弊害を矯めますると共に、之に依りまして當時全國的な傾向でありました供出に付きましての日和見的な態度の一掃を期したのでございます
第二の點と致しましては、生鮮食料品の再統制でございます、生鮮食料品に關しましては、昨年の秋生鮮食料品の統制を撤廢致したのでございますが、其の結果市場に出廻りました數量は或る程度の増加を見ましたけれども、價格の點に付きまして非常な暴騰を致しまして、一般消費者は是が入手に多大の困難を感じまして、國民生活の安定上も憂慮すべき状態でございましたので、配給の適正、價格の安定を期しまする爲に、適當な統制の措置を再び執り得るやうに致したのでございます
第三の點は主要食糧の配給上の不正の防遏及び供出阻碍行爲の取締に關する措置でございます、以上が食糧緊急措置令の内容でございまするが、特に其の中心をなしまする、所謂強權發動の點に付きましては、強權發動に依りまする主要食糧の收用状況は、數量的には左程多くはございませぬが、寧ろ傳家の寶刀と云つたやうな役割を十分に果しまして、供出の促進、延いて食糧事情の緩和には少なからぬ效果を擧げ得たものと考へて居ります、今後に於きましては、強權發動の規定は之を存置致しまする考へでございまするが、其の運營に付きましては、一層之を適正ならしめることが必要と考へまするので、市町村食糧調整委員會の申請を俟つて、初めて發動すると云ふことを原則と致したいと考へて居る次第でございます、何卒宜しく御審議の上に御承諾を與へられますることを御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=17
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018・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 質疑の通告があります、順次之を許します──堂森芳夫君
〔堂森芳夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=18
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019・堂森芳夫
○堂森芳夫君 私は日本社會黨を代表致しまして、只今議題となりました食糧緊急措置令に關しまして、農林大臣、内務大臣、司法大臣に、時間の關係上簡單に質問致したいと思ひます、本措置令が施行せられねばならない所の理由として、食糧の問題が極めて重大であると云ふ點に鑑みまして、已むを得ないと考へるのでありまするが、併し此の際本案提出に當りまして、左の質疑を致して置きたいと存じます
本措置令は果して十分效果があるかどうか、極めて疑はしいのであります、泥棒を見て繩を綯ふと云ふ譬がございまするが、寧ろ泥棒が逃げてから繩を綯ふと言ふ方が或は適當でないか、即ち時期を失して居る點から見ましても尚更である、斯う私は考へるのであります、強權發動に依りまする所の六月十五日現在の主要食糧の收用状況と云ふものを見まするに、米に換算致しまして僅か二千四百六十一石であります、斯かる僅少な效果しかないのに、農民の生産意欲を非常に減退するやうな措置は甚だ有害無益であると、斯う考へられるが、どう御考へになるか、本來供出の成績が極めて不良な原因と云ふものは、根本的には農民が政府を信頼しないと云ふことである、即ち供出の割當が不合理である、土地の問題、或は肥料の問題、或は農機具の問題が根本的に解決されない限り供出は圓滑に行く筈がない、斯う考へるが故に、斯かる措置令も極めて效果が少いと思はれるのであるがどうか、又強權發動の矛盾が非常に甚だしい例が地方に澤山あるのであります、例へば眞面目な農民が、事情已むを得ないと云ふにも拘らず強權發動を受けて居る、或は農民組合に入つて居ると云ふだけで強權發動を受ける、然るに反面非常な惡質農でありながら、當然發動を受くべき者が受けないと云ふやうな事情が澤山あるのであります、此の點どう御考へになるか
次に昨年度の主要食糧の收穫量はどれ位あつたのであるか、二合一勺の配給をどう云ふ根據で決定せられたのか、又何時まで之を續けられるのか、是も御尋ねしたいと思ふのであります、又供出が極めて不良な點は、どう云ふ譯でさうなつて居るのか、又百「パーセント」供出したものは新圓で拂ふことになつて居りますが、其の他のものは新圓で拂ふやうになるかどうか、其の處置をどうされるか、又供出不良の縣はどうするのか、其の點も御尋ねしたいと思ふのであります、又食糧供出と密接な關係にありまする所の、食糧調整委員會の實際の運營の方法はどうするのか、是も極めて重大な問題でありまして、丁寧に御答へを願ひたいと思ふのであります
次は内務大臣、司法大臣に御尋ねしたいのでありますが、本措置令の運營が、大都市と東北地方では非常に手加減が加へられて居ると云ふことがあるのでありまして、どう云ふ基準で供出或は買出を取締つて居られるのか、又どうして東北地方と大都市とさうした差があるのか、又食糧營團に對しまして地方に於きましては非常な激しい非難があるのでありますが、それに對する措置はどうされるのか、要するに根本的な問題、即ち土地、肥料或は供出等の問題が解決せずして、如何に法律を作りましても、其の效果は極めて疑はしいのでありまして、政府は拔本塞源的な努力をしなければならぬことを警告致しまして、本措置令に贊成するのでありますが、以上御尋ね致します
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=19
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020・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 只今の堂森さんの御質問に御答へ申上げます、此の緊急措置令が時期が遲れました故に、又供出の割當に於て不當な所がございましたが故に、餘りに效果がなかつたのではないかと云ふやうな御質問でございますが、成程私も時期が遲れた點、又昨年度の米の供出の割當に付きまして、不合理の點がございましたことは之を認めるに吝かでありませぬ、併し只今申上げましたやうに本緊急措置令は、あの時の事情としましては、洵に巳むを得ない事情があつたのでございまして、只今御説明に申しましたやうに、是は寧ろ傳家の寶刀的な意味に於きまして供出の状況を促進致しました效果は認めなければならぬと思ひます、一時下り坂にございました供出状況が、此の強權を發動すると云ふ聲に依りまして盛返して來ましたことに付きましては、是は數字的にも明かでございますので、此の點に關しましてはやはり效果があつたと云ふことは認めなければならないと、斯樣に考へて居ります
それから供出の問題に關係致しまして、肥料の問題、土地問題と云つた農政上の根本の問題の解決が必要ではないかと云ふ御意見に對しましては、私も同感でございます、肥料に付きましては、それぞれの策を研究中でございまするし、土地問題に付きましては、本會議に於きまして先般御答へ致しましたやうに、關係方面とも緊急に密接な連絡を執つて居ります、近く準備が出來まするならば、私は法案を提出致したい、斯樣に考へて居ります、目下準備中でございます
それから昨年の收穫量に付きましては、當時の混亂致しました世相の下に於て、供出の關係もあり、正確に把握することは極めて困難を感じた所でございまして、一應推定の數字は立つて居りますが、正確な實收量は尚ほ調製を要するものと考へて居りまするので、公表するに至つて居りませぬことを御諒承を御願ひ致したいと存じます
二合一勺の根據は、是は二合三勺を一割節減することの昨年七月に於きまする臨時措置を、其の後の食糧事情が好轉しませぬ爲に、巳むを得ず續けて居るのでござりまして、出來るだけ早く復元致したい希望は、政府としては勿論持つて居るのでござりまするので、其の方向に極力努力を致したい、斯樣に考へて居ります
供出が百「パーセント」にならぬ理由と致しましては、色々の點があると思ひます、例へば今仰しやいましたやうに、供出の割當方式に於て或る程度不合理な點があつたと云ふことも一つの原因と思ひまするが、其の中不正不當な事理に基くものに付きましては、市町村食糧調整委員會の積極的な活動に期待致しまして、今後の麥、薯の供出に於きまして十分調整致したいと考へまして、今囘御承知のやうな新しい割當方針を決定致した次第でございます
それから供出に對しまする新圓の支拂に付きましては、昨年の産米の割當以上の供出、本年の馬鈴薯、麥に付きましては、全額新圓拂と致しまする方針を、先般食糧危機突破對策に於きまして決定致しましたが、今後の米、甘藷に付きましても、同樣の方針で行きたいと考へて居る次第でございます
食糧調整委員會の運營に付きましては、是は耕作農民を主體と致しまして、眞に民主的な運營を期したいと考へて居ります、其の仕事と致しましては、供出割當の公正化、保有食糧の認定、供出の促進、肥料農機具等報奬資材の割當等、各般の事項に付て本委員會の本當の意味の働きを、我々と致しましては期待致して居る次第でございまするし、其のやうな方向に勸奬して行きたい、斯樣に考へて居る次第であります
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=20
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021・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 私に御尋ねになりました點を御答へ申上げます、此の食糧危機を切拔けます爲に、國民が乏しきを分ち合ひまして進んで行くと云ふことが、今日の食糧對策としての中心問題だと思ふのであります、警察の取締に於きましても、此の目的に要約されて行動をするのは當然のことであると思ひます、併し其の取締が極めて嚴正公平に行はれなければならぬことは申すまでもない所であります、其の點に付きましては從來も十分注意を致して來た積りであります、今後も大いに努力する積りで居ります、唯取締を致しますに際しまして、食糧を供出する地方と、又之を消費する地區との間に於きましては、實際の取扱に於きまして、多少の相違の出來ますことは、已むを得ないことと思ふのであります、食糧供出を致します地方に於きまして、それの妨害となる惡質なる行爲は、之を斷乎取締る、又消費地區に於きましては、數日或は十數日に亙りまして缺配が起りまして、其の消費地方の人々の生活に非常な困難が加はつて來て居ると云ふやうな場合に於きまして、餘り微に入り細を穿つた取締をしますことは、愼まなければならぬと云ふやうな事情が展開しました場合には、其の社會情勢に合ふやうな取締をすることも、是れ亦已むを得ないことと思ふのであります、其の邊で供出地及び消費地に於きましての時宜に依りまして、取締の緩嚴の起つて來ると云ふことは、是は實際問題として已むを得ざることと思ひまするが、併し何れに致しましても、見逃すことの出來ない惡質犯は斷乎取締つて、さうして乏しきを分ち合つて食糧危機を切拔けると云ふ大目的の爲に、萬全を期して居ります次第であります
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=21
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022・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 司法當局と致しましては、收用令書が發令されたに拘らず供出を拒む者に對しては、刑事事犯として之を取扱ふのであります、只今の所供出を拒んで刑事犯となつたものは、全國で極めて稀であります、而して收用令書の發動されるのは、極めて惡質な農家に對してであります、是等の農家は大體横流しをして、現在刑事犯が起つた人なのであります、當局と致しましては、幽靈人口の取締、其の他惡質「ブローカー」の横流し等に付て、將來嚴重に取締つて行きたいと思ひます(「件數を示せ」と呼ぶ者あり)件數は只今の所正確に發表は出來ませぬ、何れ機會を見て發表致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=22
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023・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 伊藤實雄君
〔伊藤實雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=23
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024・伊藤實雄
○伊藤實雄君 私は無所屬倶樂部を代表致しまして、食糧緊急措置令に對しまして御尋ねを申上げたいのでありまするが、就中供出事務の第一線を掌りましたる町村長、農業會長の立場に於きまして、此の食糧緊急措置令が果して農家に對して如何樣なる結果を生じたか、之を囘想致しまして、實際的な農家の感情を愬へ、以て當局の御答辯を御願ひ申上げたいと存ずるのであります
先づ第一番に昨年十二月の供出割當の當時に於きましては、時の内閣は供出は愛國心に愬へてして貰ふのである、決して警察權などを發動して、強ひて之を供出するのではない、斯樣なことを聲明なされました結果として、農家と云ひ或は消費者と云ひ、供出に對する所の自由意志が起りまして、茲に日を送るに連れまして、主要食糧は段々と横に流れて參つたのであります、是に於て政府は食糧危機突破の爲に、此の食糧緊急措置令を御發令になりましたことは、固より適當なることとは存ずるのでありまするが、時の内閣が若し斯樣な強權を發動するならば、何が故に十二月の供出割當當時より確乎たる信念を以て政策を實行しなかつたのであるか、此の強權發動に至りまする間に於きます所の主要食糧の横流れは、何としても農家が横に流したと云ふ所の責任もありますけれども、農家をして横に流さしめた所の大きな責任は、時の内閣でありまする所の幣原現國務大臣の政策の洵に軟弱であつた責任だと私は思ふのであります(拍手)然らば今日食糧危機となつたのも、或る意味から申しますると時の内閣の軟弱なる政策の結果であると、私は斯樣に考へまするが故に、此の間に於きまする所の現國務大臣幣原殿の此の間の詳細なる政策の行違ひに付て、はつきりと全天下に御聲明を相願ひたい次第なのであります
尚ほ續いて若し強權を發動するとするならば、政府は直ちに政策として織込まなくてはならぬ二、三の點に付て御伺ひ致したいと存ずるのであります、先づ第一番に、主要食糧に供出強權を發動するとするならば、食糧増産上なくてはならぬ所の農業用資材、即ち農機具、肥料に對して何が故に生産責任體制の確立を致さぬのであるか(拍手)獨り農家に於てのみ國民の義務を負擔致し、反面資本家とも言ふべき、あの農機具、肥料を製造致す所の大きな會社に對しては、何が故に強權を發動しないのであるか(拍手)是が即ち農家をして非常に供出意欲を減退致さしめた所以なのであります、將來此の點に付て政府御當局は如何なる決心を持つて居られるか、此の點はつきりと御答へを御願ひ申上げたいのであります
尚ほ續いて、農産物價の問題でありまするが、果して政府が此の主要食糧供出に對しては斷乎強權を實行するとするならば、農家がまともに供出して行けるやうな農産物價を決めなくてはなりませぬ(拍手)只今私町村の状態を見まするに、假りに一町耕作致しまして、米の全收量が、良い所と惡い所の田地を持つて居りまするから、概ね十五、六石乃至七石と見るのが妥當であります、爾か致しまして、供出します所の數量は概ね十一石乃至十二石、假りに十二石と致しましても三千六百圓の實收と相成るのであります、然るに飜つて現在の農機具、肥料の價格を見まするに、目の飛び出る程の昂騰を致して居りまして、此の諸經費將に二千圓に垂んとするのが現在農家の必要金額であります、之を引きまして、米の收入が概ね農家の一年中を通して七割程度の生活費に充當せられまして、あとの三割が麥、馬鈴薯、甘藷の收入を以て補ふのが普通の農家の經濟状態であります、然らば三千六百圓の中で以て、二千圓は肥料、農機具に取られ、殘る千六百圓で以て八箇月、即ち一箇月二百圓でやれと云ふことに相成るので、農家は四人の自分の家族は養はれない、隨て米麥を横に流さなくては生きて行かれませぬ、農家は決して好んで闇をするのではありませぬ、生きて行かれないから、致し方なく闇をさすやうにする政府の農産物價の決めやうが惡いと私は考へる、之に對して、政府は將來農産物貨の價格を如何に御考へであるか、はつきりと御答へを願ひたいのであります
續きまして供出時期の問題でありまするが、只今政府が執つて居らる、所の供出方法に致しましては、如何樣に農家に作れよ作れよと言つても作る筈がありませぬ、なぜならば供出に對する所の基礎を常に實收豫想に置いて居られる、隨て實收報告が多い程供出數量は殖えて來る、農家をして言はしむるならば、作れば作つただけ取られるぢやないか、一生懸命に働いた所が作つただけ全部取られるぢやないか、是では一生懸命汗水垂らして自給肥料なんか作る必要はないぢやないか、隨て増産も出來ませぬが、供出も減退して居るのが現状であります、茲に於て私は、凡ての主要食糧の供出に當りましては、田或は畑の値打に依つて等級を決めて、其の等級毎に生産責任數量を示してやる、生産責任數量を示して、それ以上作つた物は自分勝手なものであると云ふ所の伸縮性を農家に與へる所に於て、初めて増産意欲も昂揚致します、隨て供出數量は一體どの位の程度かと云へば、政府は昭和二十一年度に於きまする所の米の供出は何ぼ取ると云ふ、それで直ちに何割位のものであると云ふ目安が付く、茲に初めて食糧増産上に農家が安心をして精進を致し、以て供出の完遂を致すことが樂々と相成つて來ると信ずるのであります(拍手)之につきまして、政府は將來供出方法に付ては從來通り實收豫想に依つて供出割當をなさるのであるか、或は又田畑各各に於て生産責任數量を示して、勤勉なる農業者に對しては澤山の保有米を置かしめ、惰農に對しては少量なる所の保有米を置かしめるが如き、斯樣な供出意欲を昂揚致すが如き政策を執られるのか、はつきり御答辯を願ひたいのであります
尚ほ最後に、食糧事情の逼迫に伴ひまして、只今提案になつて居ります所の緊急措置令が御發令になつたのでありまするが、爾來供出に付きましては果して政府の豫定通りに供出が完了して居るのであるか、或は又現在未完了地があるならば、如何樣なる地方が未完了地であり、且又如何なる理由で以て完了致さないのであるか、而して此の完了致さざる所の地方に對しては政府は將來如何なる所の政策を立つて、主要食糧供出しなくてはならぬものであると云ふ認識を全國民に與へられるのであるか、若し現在未完了でありまする所の地方に對して、是なりにずるずると濟まされたならば、全國農民は、政府は口喧しく言ふけれども、出さなくても宜いぢやないかと云ふやうな結果になつて、我が國の食糧事情は幾年經つても安心することは出來得ませぬ、此の未完了地域に對する所の政府の將來の政策に對して、はつきりと御答辯を御願ひ申上げたいのであります
以上の五點に付きまして、幣原國務大臣竝に和田農林大臣より明確なる所の答辯を御願ひ申上げまして、降壇する次第であります(拍手)
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=24
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025・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今の御質問は、強權發動は當然なことであるけれども、思ひ切つて之を斷行しなかつたが爲に、其の間に横流れと云ふやうなものが行はれるやうになつたのである、是は即ち其の當時の政府の責任であると云ふ御話でありました、此の強權發動と云ふものは、申すまでもなく是は目的ではありませぬ、手段であります、丁度先刻農林大臣が申された通り、是は傳家の寶刀であります、傳家の寶刀と云ふものは、之を拔いて斬り付けると云ふのが目的ではありませぬ、身を護るのが即ち本來の目的であります、それ故に傳家の寶刀と同樣に、此の強權發動も成べくは斯う云ふ手段を盡さずに、他の方法で以てやつて行かうと思つて、出來るだけ努めたのであります、それが或は手後れになつたと仰せられますけれども、我我は目的と手段と云ふものとは別々に致しまして、目的と云ふものは強權發動ではない、出來るだけ國民の自由の意志を以て供出を頼むと云ふことにするのが本來の性質であると考へて行はなかつたのであります(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=25
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026・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 伊藤さんの御質問に御答へ致します、第一點は農業資材に對しても強權の發動をしてはどうかと云ふことでありますが、農家に對して食糧の供出を願ひ、又其の供出に關しまして強權の發動を特に惡質の農家に致しまする以上は、農業を營みまする上に必要な農業の資材に付ても、政府としてさう云ふ政策の體系を整へて臨むと云ふことは勿論御同感であります、之に付きまして、農機具に關しましては、其の農機具の出荷に付きまして強制命令的な措置を既に講じて居る次第でございます、肥料に付きましては、根本問題でありまするので、是が生産の増強に付きましては、具體的に工場毎に生産計畫を基礎と致しまして之を確保するとか、或は不正な流出を出來るだけ徹底的に取締るとか、其の點に付きましては十分今後努力致して行きたいと考へて居ります
供出割當の時期の點でございまするが、從來供出の割當の時期に付きましては、色々と議論があつた點でございまして、殊に昨年度は非常に遲れたのでございまするが、此の點に付きましては、私と致しましては今度の新米に付きましては、早期の供出割當を致したいと思ひまして準備中でございます、其の供出の割當方法に付きましては、御説の點も十分考慮致しまして合理的に決めて行きたいと思ひます、唯農家の増産意慾と云ふことは十分考慮すべき點でございますが、農家と言ひましても、農家の中には御承知のやうに大經營の農家もありますれば、貧農もあるのでございます、隨ひましてそれ等の農家の内部の實情を十分考慮致しまして、公平合理的な割當方法を講ずることが必要だと、斯樣に考へて準備致して居る次第でございます
全國の供出状況は、六月二十日の現在に於きまして、未利用資源を除きまして、米其の他の雜穀類に於きましては約千九百九十五萬石で、割當量二千五百萬石に對しまして七九・六%でございます、尤も此の數字は政府の買入數量でございまして、既に檢査を了しました數量、即ち供出數量は六月十日現在で二千三十六萬石、割當に對しまして八一・三%となつて居ります、今後の供出に付きましては、一つは前々から申して居りますやうに、救國運動と致しまして之を促進致しまする一面、今囘の新麥及び新馬鈴薯と綜合的に考へまして、各縣に割當を致しまして、是が達成を期して行きたい、斯樣に考へて居る次第でございます
農産物の價格の點に付きましては、御説のやうに唯肥料と米とを比べますれば、そこに不均衡のありますることは私も前から、認めて居る所でございます、唯御考へを願ひたいのは、肥料は、米の生産費としましては御承知のやうに、勞力と竝んで大體約三〇%づつを占めて居る一要素でございます、隨ひまして唯肥料と米とだけ數字的に並べるのではいけないのでありまして、やはり經營の内部に入りまして、又一面に於きましては、肥料の生産の實情、數量、其の他肥料の方面に於きまする實情を十分考慮致しまして、農家の購買力其の他米價等色々な事情を綜合致しまして、農産物と工産物との間の均衡を取つて行く方向に進んで行くべきだと考へて居る次第でありまして、是等の點に付きましては十分努力致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=26
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027・伊藤實雄
○伊藤實雄君 只今の幣原國務大臣の御答辯は、私が御尋ね致しました要件とは洵に要件が間違ひなので、私の要件は、昨年米の割當當時に於ては、供出は唯單に愛國心に愬へろ、決して警察權なんかには愬へはしないと云ふことであつた、曽て私郡の割當會議に行きましたが、然らば出さないと頑張つた者は一體どうするんだと言つた時に、縣警察部長は、是は警察としては手の付けやうがない、出さないものは仕樣がないとまで明白に答辯を致したのでありますが、爾來責任のある同じ内閣で掌の裏を返した如く、農家に煮湯を飮ますと申しますか、突如として強權を發動致しました此の責任は一體どうであるか、之を御尋ね申したのであります
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=27
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028・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 私は只今其の點を答辯した積りでありますが、元來強權發動なんと云ふものは我我は望んで居なかつたのである、成べくは國民の自由の意思を以て供出をして貰ひたい、其の爲に全力を盡す積りであつたのであります、初めから傳家の寶刀を拔くと云ふのが我々の方針ではなかつたのであります、然るに其の結果はどうかと申しまするのに、正直に自分の割當てられた分量を供出する人は、其の儲けをする機會は少くて、却て何とかの口實を以て横流しをして、其の供出をしなかつた人が利益をして居る、是ではどうも世の中は公平と云ふことではないと云ふことで、已むを得ず此の強權發動と云ふことに變つたのであります(拍手)是は一體何處が惡いのでありませう、私はそれは責任とは思ふ譯に參りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=28
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029・伊藤實雄
○伊藤實雄君 私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=29
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030・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是にて質疑は終了致しました、本件の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=30
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031・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本件は議長指名三十六名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=31
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032・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=32
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033・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第十四、隱匿物資等緊急措置令(承諾を求める件)を議題と致します──星島商工大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=33
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034・会議録情報5
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第十四 隱匿物資等緊急措置令
(承諾を求める件)
隱偏物資等緊急措置令
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項に依り隱匿物資等緊急措置令を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年二月十七日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十八號
隱匿物資等緊急措置令
第一條 本令施行の際現に別表に掲ぐる物資(以下調査物資と稱す)を所有し又は占有する者は本令施行の日に於て所有し又は占有する調査物資に付左に掲ぐる事項を記載したる報告書三通を昭和二十一年三月十日迄に當該物資の所在の場所を管轄する地方長官を經由し商工大臣に提出すべし但し商工大臣の指定する數量に滿たざる數量の調査物資を所有し又は占有する者に付ては此の限に在らず
一 所有し又は占有する本人の氏名又は名稱、住所及職業又は事業
二 當該物資に付本人以外の所有者又は占有者の存する場合に於ては其の者の氏名又は名稱、住所及職業又は事業
三 當該物資の名稱、數量及所在の場所竝に本令施行前一年間に入手したるものに付てはその旨
四 所有又は占有の目的
五 入手の經路
六 最近四月間の使用又は販賣の數量及今後四月間の使用又は販賣の見込數量
七 其の他必要と認むる事項
調査物資にして世帶を同じくする戸主及家族の所有し又は占有するもの(戸主及家族の業務上所有し又は占有するものを除く以下同じ)に付ては前項本文の規定に拘らず世帶主は同項に掲ぐる事項を同一の報告書に取纒め記載し之を提出すべし此の場合に於ては同項但書の規定は調査物資にして世帶を同じくする戸主及家族の所有し又は占有するものの合計數量に付之を適用す
世帶を同じくする戸主及家族にして世帶主以外のものは其の所有し又は占有する調査物資に關する記載に付前項の規定に依る世帶主の報告書の作成に對し協力すべし
第一項の規定は昭和二十年商工農林省令第一號第一條の規定の適用を受くる者の所有に係る絹紡絲、柞蠶絲又は絹製品に付ては之を適用せず
第二條 前條の規定に依り報告書を提出すべき調査物資を所有し又は占有する者は本令施行の日より昭和二十一年四月二十日に至る期間當該物資を讓渡し又は隱匿若は退藏の目的を以て其の形質を變更し若は之を移動することを得ず但し左の各號の一に該當する場合は此の限に在らず
一 物資統制令又は昭和十二年法律第九十二號に基きて發する命令の定むる所に從ひ又は此等の命令に基く處分に依り調査物資を讓渡する場合
二 重要産業團體令に依る統制會の統制規程又は商工組合法に依る統制組合の統制規程の定むる所に從ひ調査物資を讓渡する場合
三 商工大臣又は地方長官の指示する配給經路に從ひ調査物資を讓渡する場合
四 商工大臣の指定する者(以下統制機關と稱す)が調査物資を讓渡する場合
五 統制機關に對し調査物資を讓渡する場合
六 統制機關の指示に基き調査物資を讓渡する場合
七 農業團體法に依る農業團體、水産業團體法に依る水産業團體、森林法に依る森林組合又は市町村其の他の公共團體が調査物資を讓渡する場合
八 工場又は事業場に於て其の從業者に對し其の業務上必要とする數量の調査物資を讓渡する場合
九 小賣業者が消費者に對し調査物資を讓渡する場合
十 特別の事情に依り商工大臣又は地方長官の許可を受け讓渡する場合
前項の規定に依り調査物資の讓渡の禁止せられたる場合に於ては當該物資は之を讓受くることを得ず
第三條 主務大臣又は地方長官調査物資又は調査物資以外の國民生活の安定を確保する爲必要なる物資にして主務大臣の指定するもの(以下指定物資と稱す)の配給の適正又は價格の安定其の他國民經濟の正當なる運行を圖る爲必要ありと認むるときは調査物資又は指定物資を隱匿し又は退藏すと認めらるる所有者其の他此等の物資を多量に所有する者に對し期間其の他必要なる事項を指定して當該物資の讓渡其の他の處分を禁止し又は讓渡の時期、價格、相手方其の他必要なる事項を指定して當該物資の讓渡を命ずることを得
主務大臣又は地方長官前項の規定に依る讓渡其の他の處分の禁止の命令を爲したる場合又は調査物資若は指定物資の所有者知れざる場合其の他所有者に對し當該物資に付同項の規定に依る讓渡其の他の處分の禁止の命令を爲すこと著しく困難なる場合に於て必要ありと認むるときは當該物資を占有する者に對し期間其の他必要なる事項を指定して當該物資の引渡其の他の處分を禁止すること 得主務大臣又は地方長官第一項の規定に依る讓渡の命令を爲したる場合又は調査物資若は指定物資の所有者知れざる場合其の他所有者に對し同項の規定に依る讓渡の命令を爲すこと著しく困難なる場合に於て必要ありと認むるときは當該物資を占有する者に對し引渡の時期、相手方其の他必要なる事項を指定して之が引渡を命ずることを得
主務大臣又は地方長官調査物資又は指定物資の所有者知れざる場合其の他所有者に對し第一項の規定に依る讓渡命令を爲すこと著しく困難なる場合に於て前項の規定に依る引渡の命令を爲したるときは當該物資の引渡の相手方をして其の對價を供託せしむべし此の場合に於ては當該物資の引渡の相手方其の供託を爲したる時當該物資の讓渡を受けたるものと看做す
第四條 調査物資又は指定物資を隱匿し又は退藏すと認めらるる所有者其の他此等の物資を多量に所有する者は主務大臣又は地方長官の指定する者が讓渡を受くべき調査物資又は指定物資の名稱、數量及價格、所有者、讓渡の時期其の他必要なる事項に付主務大臣又は地方長官の認可を受け之が讓渡を求めたるときは之を拒むことを得ず但し特別の事由ある場合に於て主務大臣又は地方長官の許可を受けたるときは此の限に在らず
調査物資又は指定物資を占有する者は前項の規定に依り主務大臣又は地方長官の指定する者が同項の規定に依り當該物資の讓渡を受けたる場合又は當該物資の所有者知れざる場合其の他所有者に對し同項の規定に依る讓渡を求むること著しく困難なる場合に於て引渡を受くる當該物資の名稱及數量、占有者、引渡の時期其の他必要なる事項に付主務大臣又は地方長官の認可を受け之が引渡を求めたるときは之を拒むことを得ず但し特別の事情ある場合に於て主務大臣又は地方長官の許可を受けたるときは此の限に在らず
前二項の規定に依る主務大臣又は地方長官の認可は調査物資又は指定物資の配給の適正又は價格の安定其の他國民經濟の正常なる運行を圖る爲必要ありと認むる場合に於て之を爲すものとし主務大臣又は地方長官は其の認可を爲したるときは其の旨を告示すべし
第一項の規定に依り主務大臣又は地方長官の指定する者が調査物資又は指定物資の所有者知れざる場合其の他所有者に對し同項の規定に依る讓渡を求むること著しく困難なる場合に於て第二項の規定に依り當該物資の引渡を受くるときは其の對價を供託すべし
前條第四項後段の規定は前項の場合に之を準用す
第五條 調査物資又は指定物資に關し強制競賣手續、國税徴收法に依る強制徴收手續、要求物資使用收用令に依る使用又は收用の手續其の他此等に準ずべきものの進行中なるときは其の進行中に限り當該物資に關しては前二條の規定は之を準用せず
第六條 第三條又は第四條の規定に依る調査物資又は指定物資の讓渡は他の法令に拘らず其の效力を有す第三條又は第四條の規定に依り讓渡すべき調査物資又は指定物資が知れたる擔保權の目的たる場合に於ては當該物資の讓渡を受くる者は其の對價を供託すべし
第三條又は第四條の規定に依る調査物資又は指定物資の讓渡又は引渡ありたる場合に於ては當該物資に付存したる擔保權は他の法令に拘らず所有權移轉の時より之を行ふことを得ず
第三條又は第四條の規定に依り讓渡又は引渡を命ぜられたる調査物資又は指定物資に付擔保權を有したる者は第三條第四項、第四條第四項又は第二項の規定に依る供託金に對し其の權利を行ふことを得
第七條 主務大臣又は地方長官は調査物資若は指定物資に付關係者より必要なる報告を徴し又は當該官吏をして工場、事業場、店舖、倉庫其の他の場所に臨檢し業務の状況若は調査物資、指定物資、書類、帳簿等を檢査せしむることを得
前項の規定に依り當該官吏をして臨檢檢査せしむる場合に於ては其の身分を示す證票を携帶せしむべし
前項の證票の樣式は主務大臣之を定む
第八條 主務大臣又は地方長官必要ありと認むるときは關係ある法人其の他の團體の職員をして前條の規定に依る檢査に關する事務に從事せしむることを得
前條第二項及第三項の規定は前項の場合に之を準用す
第一項の規定に依り檢査に關する事務に從事する職員は之を法令に依り公務に從事する職員と看做す
第九條 主務大臣又は地方長官必要ありと認むるときは市町村長又は之に準ずべきものをして本令に依る調査物資に關する調査の實施上必要なる事務を行はしむることを得
第十條 左の各號の一に該當する者は三年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處す
一 第一條の規定に違反し報告書の提出を怠り、虚僞の報告書を提出し又は世帶主の報告書の作成に協力せざる者
二 第二條の規定に違反したる者
第十一條 第三條第一項乃至第三項の規定に依る處分又は第四條第一項若は第二項の規定に違反したる者は五年以下の懲役又は五萬圓以下の罰金に處す
第十二條 前二條の罪を犯したる者には情状に因り懲役及罰金を併科することを得
第十三條 第七條又は第八條の規定に依る當該官吏又は職員の檢査を拒み、妨げ又は忌避したる者は五百圓以下の罰金に處す
第十四條 法人の代表者又は法人若は人の代理人、使用人其の他の從業者其の法人又は人の業務に關し第十條又は第十一條の違反行爲を爲したるときは行爲者を罰するの外其の法人又は人に對し各本條の罰金刑を科す
附 則
本令は公布の日より之を施行す
別表
一 石油製品(鑛物性の揮發油、燈油、輕油、機械油及重油を謂ふ)
二 絲(屑絲及生絲を除く)
三 左に掲ぐる纖維製品(中古品を除く)
い 織物(長さ半ヤール以上の布を謂ふ)
ろ 毛布
は 外套(婦人子供用のものを除く)
に 洋服(婦人子供用のものを除く)
ほ 作業服
へ シヤツ及ズボン下
と 軍手
ち 卷脚絆
り 靴下
ぬ 足袋
四 纖維屑
五 生ゴム、屑ゴム及ゴム製品(地下足袋、總ゴム靴、タイヤ及チユーブを謂ひ中古品を除く)
六 革及革靴(牛、馬、山羊、緬羊及豚の革及此等を主たる材料とする靴を謂ひ中古品を除く)
七 硬化油及脂肪酸
八 鐵鋼(銑鐵、普通鋼鋼材及特殊鋼鋼材を謂ふ)及鐵鋼製品(釘、鋼索及亞鉛鐵板を謂ふ)
九 電氣抵抗合金
十 電氣銅、黄銅及青銅(此等の板、管、棒及條を含む)竝に此等の屑及故
十一 錫(板、管、棒及條を含む)竝に其の屑及故
十二 アルミニウム及ジユラルミン(此等の板、管、棒及條を含む)竝に此等の屑及故
十三 電動機(据付けたるものを除く)
十四 變壓器(据付けたるものを除く)
十五 電球(使用中のものを除く)
十六 軸受
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〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=34
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035・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 本案は終戰當時の混亂に乘じて、軍等から不當に物資の拂下を受けたり、又は「インフレーション」や財産税を見越して買溜や賣惜みをしまして、面白からぬ向も相當見受けられましたので、斯くては國民一般に惡影響を與へますのみならず、産業活動にも大なる障碍を與へますので、政府と致されては、此のやうな面白からぬ形體に於て物資を保有して居る者、其の他物資を特に多量に所有して居る人から是等の物資を供出させて、之を食糧供出の見返りや、或は海外引揚者及び戰災者の救護其の他緊急なる方面に適正に配給して、以て窮迫せる國民生活を物心共に安定せしむる措置を急速に斷行する必要を痛感したのでありまして、斯かる見地から、公共の安全を保持する爲め緊急の必要があると認めまして、本年の二月十七日に此の措置令が御制定を得られたやうな譯でありますが、本令は目下實施中でありまして、今後繼續して運用致したい考へでありますので、何卒速かに御審議の上御承諾を與へられんことを切望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=35
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036・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 質疑の通告があります、之を許します──田万廣文君
〔田万廣文君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=36
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037・田万廣文
○田万廣文君 私は社會黨を代表致しまして隱匿物資等緊急措置令に對する質疑を致したいと思ふのであります、時間の關係上簡單に要領宜く話したいと思ひます(笑聲)第一、第二、第三の點に分けまして、第一の點に付きまして所謂隱匿物資等緊急措置令の公布の時期が適當な時期であつたかなかつたか、此の點に付て當時の、本年二月十七日公布の措置でありまするから、内閣の首班であつた所の幣原國務大臣に此の點を御尋ね致したいと思ふのであります、第二の點、是は本措置令の調査物資の内容に付て、非常に重大なる所の物資を忘れて居るのであります、此の點に付て和田、星島兩大臣の御答辯を望むのであります(「大臣は居らぬ」「大臣の出席を求めます」と呼ぶ者あり)第三の點に付きまして、是は隱匿物資の摘發状況に付て非常に遺憾な點があるのでありまして、此の點に付て内務大臣竝に司法大臣の御答辯を求めたいのであります
〔「皆居ないから待つたらどうだ」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=37
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038・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に願ひます〔「大臣の來るまで質問するな」と呼び其の他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=38
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039・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 田万君に申上げます、司法大臣は憲法改正委員會に出席中、それから農林大臣の分は次官が居つて御答辯申すと云ふことであります
〔「議會をやる積りなのか」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=39
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040・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 休憩中ではありませぬ、靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=40
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041・田万廣文
○田万廣文君(續) 第一に御尋ね致したいことは、只今申上げました如く、本隱匿物資等緊急措置令の公布の時期が適當な時期であつたかなかつたかと云ふ點であります、此の勅令は本年の二月十七日に公布されて居るのであります、終戰後六箇月を經過して居ります、只今星島商工大臣の御話を承りますと終戰當時の軍解體物資を主に隱匿して居る、之を摘發すると云ふ目的の下に本措置令が執られたと云ふ話でありまするが、それならば何故に終戰當時、直ちに適當の時期に於て之をやらなかつたかと私は言ひたいのであります、恰も財産税の場合に於きまして、豫め財産税が出ると云ふ豫告をして澤山の財産が隱匿されましたと同樣に、此の解體物資も同じ意味で凡ゆる方面に隱匿退藏せられたのであります、此の事實は、私思ひまするのに、終戰當時のあのどさくさに於て、政府當局が茫然自失して居つたのか、兎に角怠慢の責は絶對に免れることが出來ないと私は思ふのであります、而も總ての政治と云ふものは民心を正しく「キャッチ」して、其の時期を失はずして適正なる施策をやる、是が凡ゆる政治を通じての信念でなければならぬと思ふのであります、此の勅令の内容其の他の時期に關しまして能く考へまするならば、恰も盜人を捕へて繩を綯ふと云ふやうなものではなくして、盜人が逃げて遠くへ離れて居る時に繩を綯つて居ると云ふ感じを私は深くするのであります、結局適切なる所の時期を失して居つたと云ふ責任は、如何にしても言ひ逃れ得ないと私は思ふのであります、相當調査の結果、凡ゆる隱匿物資が出て參つて居りまするが、其の量たるや實にまだ微々たるものであります、隨て其の微々たる原因の尤なるものは、所謂適當なる時期に於て之をやらなかつたと云ふことに私は原因があると思ふのであります、私は諄いことは申しませぬ、唯幣原前首相──現國務大臣に對しまして、此の點に付て如何にして斯樣なぶざまな時期に於て本緊急措置令が公布されたかと云ふ點に付て明確なる所の御答辯を望む次第であります
第二の點は、是は本措置令の調査物資の内容に付て和田農林大臣、星野商工大臣に御尋ね致したいと思ひます、先程申上げました如く、本措置令は二月十七日に出されて居るのであります、其の措置令に於きまして所謂調査物資と云ふものがあります、調査物資の總てのものが所謂主食を含んで居らない、手袋とか、油とか、絲とか、織物とか、左樣な衣類、油、電氣器具、鋼鐵、錫等の金屬に及んで居るのでありますが、主食に至つては一つも觸れて居らないのであります、食糧には觸れて居らなかつた、今日食糧危機が叫ばれて居りまする時に、既に今日あることは其の當時に於てはつきりと分つて居るべき筈なのであります、然るに拘らず此の二月十七日に於ける措置令は、何等の食糧を含んで居らない、御存じの如く現在は一千萬餓死線上に彷うて居ると云ふ極めて逼迫したる時代でありますが、政府は二月十七日の本隱匿物資等緊急措置令を發布した時の状態は如何なるものであつて、何故に食糧を是から除外して居つたかと云ふ點に付て、其の當時の氣持を率直に農林大臣竝に星島商工大臣に御尋ね致したいと思ふのであります、然るに其の後四月二十七日に至りまして、農林省告示第八十六號に依りまして、隱匿物資等緊急措置令第三條に基いて、次のやうに定めると云ふ指令が出まして、四月二十七日になつて初めて米穀、大麥、裸麥、小麥、雜穀、穀粉、甘藷及び馬鈴薯竝に其の加工品たる食糧、麺類、「パン」、澱粉食料品、罐詰、砂糖、斯樣な食料品を附加へたのであります、なぜ初めから之を附加へて措置令に入れて置かなかつたかと云ふ點を御答辯願ひたい、尚ほ續きまして五月二十三日に至りまして、政府は農林省告示第九十八號として隱匿物資等緊急措置令第三條に基いて、次のやうに指令するとして、味噌、醤油、煉粉乳、食用油、斯樣なものを又附加へて居るのであります、甚だ不徹底だつた所の緊急措置令が初めに出來て居る、完全な緊急措置令として公布されなければならない所のものが、斯樣に非常に拔けて拔けて拔け切つて居るのであります、尚又大事なことには、今申上げたやうに、此の緊急措置令の中には水産物資、所謂漁網、漁具、斯樣なものも拔けて居るのであります、現在一億國民が所謂調査物資、色々なものを調べて、隱退藏物資を徹底的に摘發して貰はなければならないと云ふ要望は、一般大衆の聲として澎湃として起つて居るのであります、而もそれは現在の食糧危機を突破せんが爲に叫ばれて居る言葉であります、今申上げたやうに、水産物資、漁網、漁具を云ふやうなものが、如何に水産物獲得の上に重要なる物資であるかと云ふことは、私が申上げるまでもなくはつきりして居るのであります、斯かるものすらも政府は未だに緊急措置令の中に嵌めて居らないやうに私は記憶して居る、是は何が故であるか、此の點に付て農林大臣竝に星島商工大臣に御尋ね致したいのであります
次に申上げたいことは第三點でありまするが、隱匿物資の摘發状況に付て遺憾の點があるのぢやないか、内務大臣、司法大臣に御尋ねしたいのであります、一つの御話を申上げまして、現在の司法部竝に官界に於ける所の諸君が如何に間違つたことをやつて居るかと云ふことに付て聊か觸れて見たいのであります、私は辯護士であります、田舍の裁判所に於て職を奉じて居りますが、裁判所の判事が晝飯を食つて居る、其の辯當は、──
〔「要らぬことを言ふな」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=41
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042・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=42
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043・田万廣文
○田万廣文君(續) 自分の配給量から差引いて貰つて居るか、若しくは食卷を以て食つて居るかと云ふ點に付て私は申上げたいのであります
〔「取消せ」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=43
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044・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=44
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045・田万廣文
○田万廣文君(續) それは何故であるか…
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=45
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046・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 田万君に申上げます…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=46
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047・田万廣文
○田万廣文君(續) 只今申上げた點に於て遺憾な點があれば私は取消を致します、但し私の申上げて居ることは(發言する者あり)靜肅に聽いて下さい
〔「取消し給へ」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=47
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048・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に──田万君に申上げます…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=48
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049・田万廣文
○田万廣文君(續) 只今私の申上げましたことに誤りがありますならば、取消を致して置きます、能く聽いて戴きたいと思ひます、裁判所に於て斯う云ふ事實があるならばどうなるか、自己の晝飯を自分の配給量から減して食べて居るか、或は食券で食べて居るかと云ふ問題があるのであります、此の點に付て私が斯樣なことを申上げるのは何が故であるか、それは近來に於ける裁判所の諸公は闇取引、僅か一升二升の米の闇取引をして居る者を公判に引張つて來る、さうして諸公が言ふことが、どう云ふことを言うて居るかと云へば、自分達は二合一勺で食うて居る、皆大衆は二合一勺でやつて居るのに拘らず、お前がやることは善くないと云ふことを言うて居るのであります、此の點を私能く調査しました所、──斯樣な米が隱匿物資其の他の中にないと云ふことは誰も言へないのであります、斯かるが故に私は司法部に於て徹底的に…
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=49
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050・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=50
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051・田万廣文
○田万廣文君(續) 此の現實の食糧危機に臨んで居る時代に於て、徹底的に左樣な間違つた方向を歩まさないやうに、司法大臣として法の適正、正しき道を歩むと云ふことを何等かの形に於て指令を出して戴きたい、而も此の隱匿物資の摘發の状況に付きましては、諸君も能く御承知の如く、所謂官僚は地方の資産家其の他の者と馴合ひまして、徹底的なる所の物資の摘發には至つて居らないのが現状なのであります、此の點に付きまして私は飽くまでも社會黨を代表致しまして、社會黨は所謂社會民主主義、最大多數の最大幸福を願ふ政治を標榜して居ります社會黨と致しましては、此の隱匿物資の摘發に付きましては、絶對的に公正なる所の摘發を斷乎としてやつて戴くことを私は叫んで居るのであります
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=51
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052・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=52
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053・田万廣文
○田万廣文君(續) 尚ほ農業會倉庫、水産業團體の倉庫、それ等の所謂官僚系統の倉庫に於て多數の隱匿物資が擧つて居ると云ふ事實は何を物語るか、所謂それは政府のやり方が洵に徹底して居らぬ、所謂官僚摘發の失敗が茲に見受けられるのであります
尚ほ最後に一つ申上げたいことは、民間の協力をば告示で商工省其の他農林省に於ては求めて居りますけれども、此の民間協力の程度が、所謂現場に檢査に行くことをば拒否して居ります、唯密告だけをさせて、さうして現場に行つてそれを摘發することには參加せしめて居らない、隨て自分が投書して、自分が現場で立會つて、是れ是れの物資があつたと云ふことがはつきり分つて、是がどう云ふ「ルート」に依つて一般大衆の口なり、其の他生活に向けられて居るかと云ふことを知らなければ協力は私は出來ないと思ふのです、此の點から考へまして、私は所謂此の隱匿物資の摘發に民間に協力をさすことは、從來のやうに官僚的なる秘密主義を排しまして、公開主義を以て臨んで戴きたい、斯う考へるのであります、此の點に付きまして司法大臣竝に大村内務大臣の御答辯を明確に致して戴きたいと思ふのであります、私の質疑は之を以て終ることと致します(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=53
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054・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 私に關しまする限りに於きまして簡單に御答辯致します、四月二十七日に指定を致しましたに拘らず、二月のものには入つて居なかつたと言ひますのは、實は食糧管理法と食糧緊急措置令の運用で出來ると思つて居りましたので、初めの時には入つて居なかつたのでありますが、是のみでは不十分であると考へましたので──と申しまするのは食糧管理法では賣渡命令は發せられますが、收用が出來ないので、四月二十七日に隱匿物資の緊急措置令の中に色々の食糧關係の物資を入れたのでございます
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=54
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055・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 隱匿物資の摘發に際しまして、警察官は最も嚴正に間違ひのないやうに之を執行することに極力努めて居ります、只今民間が隱匿物資の摘發に對して協力する點に付きまして、現實の臨檢をさせないことは宜しくないと云ふことでございましたが、私生活を保全致しますることは洵に重要なことでありますので、臨檢に際しましては、必ず權限ある官憲が之を行ふと云ふことは何處までも嚴守して行く積りで居ります、唯隱匿物資の情報を提供した者、又其の提供されました情報を公正に取扱ふと云ふやうなことに付きましては、經濟行政方面に於きまして其の適正を期して戴きたいと希望致して居ります、又警察面に於きましても其の點には十分意を用ひて居る積りであります、又摘發しました物資の適正なる處置に付きましても、是は警察から經濟行政面の方に渡しまして、そこで正當「ルート」に乘せて公正なる處置の出來ますことを努めて居る譯であります、又是も警察外の方面に於きまして適正に扱つて戴くことを切望致して居ります、又警察面に於きましても其の點に出來るだけ協力を致す積りで居ります
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=55
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056・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 實は率直に申しますと、終戰直後占領軍が來た時にはどんなことがあるかも知れぬと云ふので、餘程宣傳もあつたのか、皆うろたへ廻つた結果と致しまして、其の當時のことを思ひますれば、必ずしも政府を責める譯にも行きませぬが、又民間を責める譯にも行かない(「其の通り」と呼ぶ者あり)私は寧ろ進駐軍が日本に進駐されました時の樣子を見て實は感心したものであります、先般も私參りました時に、私はそれを本當に率直に吐露致した次第であります、それで今日其の當時のことを顧みて、率直に出して呉れ、出したものは全部民需に廻はすんだ、斯う云ふことで今日努めて居るのでありまして、概ね出て參りました、是は何れ委員會等で或はもつと率直に申上げた方が宜いと思ひますけれども、相當出て參つて居ります、例へば主な物資に致しましても、揮發油が千六百「キロリットル」、或は機械油が約五千「キロリットル」、生「ゴム」が千二百「トン」、地下足袋が十五萬足、其の他靴下の如きは百五萬足となつて居ります、織物が四十八萬反と云ふやうな譯で、相當出て居ります、又是れ以外に特殊物件と致しまして正式に引繼がれまして、それが正當「ルート」を通して今日一般民需に振向けられて居る數を見ますれば、是で殆ど私は出盡して居ると思ひます、是が刑罰法規でありますけれども、今になつて良心的に出して戴けば丸公價格で之を買取ると云ふことでやつて居りますので、先づ先づ是は成功であらう、斯樣に思ひますので、今後ともさう云ふ方針で行きたいと考へて居ります、なぜ之をもつと早くやらなかつたかと云ふことに對しては、其の當時の内閣の人に聽いて貰ひたいと思ひます(笑聲、拍手)
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=56
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057・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 終戰勿々此の緊急措置令をなぜ出さなかつたのであるかと云ふ御質問でありましたが、終戰勿々の際は私等の内閣は出來て居りませぬ、私等の内閣は其の當時から三番目の内閣であります(笑聲)併しながら今から思つて見れば、成るべく斯う云つたやうな措置令は早く出した方が宜かつたと思ひます、併しながら終戰當時の混雜の中で、恐らくは斯う云ふ所まで思ひを廻らすだけの餘裕はなかつたであらうと私は想像致します、今日から言つて見ても詮のないことだと考へます(拍手)
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=57
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058・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 隱偏物資等緊急措置令違反事件は、官民合同に依ります摘發に依りまして只今相當數の事件が繋屬して居ります、正確な數字は此處で申上げることは出來ませぬ、官公吏に付ての違反事件は只今の所ないのであります、併し將來官公吏の或は横領とか、或は收賄とか云ふやうな事件も豫想されますので、其の點に付ては司法省當局としては十分の警戒を加へ、萬一さう云ふものが發見された場合には嚴重な處置をする積りであります
只今容易ならぬことを御聽きしたのであります──是は私は嚴重に取調べる積りであります(拍手)何處の裁判所でさう云ふ事實があつたか、是は私は相當の決意を以て取調べる積りであります(拍手)不肖私は屡屡裁判官初め檢事、所謂司法官に對して、嚴肅公正にやるべきことを身を以て訓戒して居るのであります、此の司法部の一部が崩れれば、私は日本の將來と云ふことに付ても相當寒心に堪へぬと云ふ考へを持つて居ります、司法當局に關する限りに於ては、私は十分の警戒をする積りで居りますから、どうぞ左樣御諒承を願ひたいと思ひます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=58
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059・田万廣文
○田万廣文君 司法大臣の答辯に依りますと、嚴重に調査すると言ふ、私は確實な證據を持つて居りますが、是は又追つて司法大臣に御尋ね致したいと思ひます
尚ほ幣原國務大臣の御答辯でありまするが、二十年十月九日に幣原さんは内閣總理大臣としての印綬を受けられて居るのであります、終戰が八月十五日でありますから、それから後二箇月掛らないのであります、隨て只今の御答辯に依りますと、早くやれば宜かつたと云ふ點に於て、聊か幣原國務大臣の良心的な點を認めて私は質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=59
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060・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是にて質疑は終了致しました、本件の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=60
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061・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本件は議長指名二十七名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=61
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062・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=62
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063・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、
是にて議事日程は議了致しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後四時十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01019460702&spkNum=63
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