1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十一年七月六日(土曜日)
午後二時十八分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十二號
昭和二十一年七月六日
午後一時開議
第一 東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第二 市制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第三 町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第四 府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
━━━━━━━━━━━━━
〔朗讀を省略した報告〕
一、昨五日貴族院から受領した政府提出案は次の通りである
農林中央金庫の一部を改正する法律案
一、議員より提出された議案は次の通りである
水産省設置に關する建議案
提出者
石原圓吉君 森幸太朗君
原侑君 夏堀源三朗君
北れい吉君 坂本實君
磯崎貞序君 加藤一雄君
亘四朗君 河原田巖君
宮原庄助君 内海安吉君
中野寅吉君 吉川兼光君
原捨思君 成島勇君
細田綱吉君 田中善内君
(以上七月五日提出)
一、昨五日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
外務事務官 大野勝己
第九十囘帝國議會外務省所管事務政府委員被仰付
一、昨五日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第七部選出懲罰委員 西山冨佐太君
一、昨五日次の通り特別委員の異動があつた
帝國憲法改正案(政府提出)委員
辭任 若林義孝君 補關 竹谷源太朗君
辭任 保利茂君 補關 山田悟六君
金融緊急措置令(承諾を求める件)
外十一件委員
辭任 林虎雄君 補關 奧村又十朗君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=0
-
001・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是より會議を開きます、議事日程第一乃至第四の四案を一括して第一讀會を開き、前會の議事を繼續致します──松永佛骨君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=1
-
002・会議録情報2
――――◇―――――
第一 東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第二 市制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第三 町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第四 府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
━━━━━━━━━━━━━
〔松永佛骨君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=2
-
003・松永佛骨
○松永佛骨君 今囘上程せられましたる東京都制の一部を改正する法律案外三案に付きまして質問を致します、此地方制度改革案は、極めて廣汎且つ進歩的なものでありまして、現行法の改正と申しまするよりも、寧ろ全く新たなる地方自治制の制定とも申すべきものでありまして、此の改正案自體を以て直接我が國民主化の徹底強化を圖らんとして居るものと認めます、此の點に於て私は政府の心構へを深く諒と致すものであります
第一に御尋ねしたいのは、地方自治制民主化の根本は、地方自治體の自主性と自律性の強化にあります、改正案は、自主性の強化に付きましては、一方に於て地方財政制度を改正し、財政權の強化を圖る方針の下に目下立案中であつて、近く提案をするとの内務大臣の昨日の御話でございますが、總體的に之を見ますると、自主性の強化は、此の改正案に依つては尚ほ不十分なものがあると存じます、一例を擧げますると内務大臣の説明に依れば、今囘の財政改革は、現下の經濟情勢をば非常に考慮致されまして、主として應急なものに止まつて居るやうでありますが、政府は財政上の獨立權を恒久的に擴大する意思ありやなしやを第一に御伺ひしたいのであります
第二には公選せられたる知事は之を官吏とすると云ふことになつて居ります、現行の官吏制度から見ますると、是は極めて異例でありまして、常識的に見まするならば、是は公吏とするのが適當であると思ひます、内務大臣は昨日の答辯に於きまして、官吏とするとも公吏とするとも大した差はないのだ、斯う云ふことを仰しやつたやうに覺えて居りまするが、是は單に官吏、公吏と云つた言葉の相違だけではなくして、根本的には府縣廳の法的性格と離るべからざるものがあるのであります(拍手)又昨日の御答辯に於ては、今日の府縣廳は地方自治體それ自體の仕事よりも、寧ろ國家から委任されたる仕事の方が多い、之を以て官吏とする必要がある、斯う云ふやうな御答辯でありましたが、成程府縣廳は第一次的には國家の地方行政の綜合機關でありまして、自治團體としての機能は寧ろ第二次的に取扱はれて來たのが今日までの状態であります、所が今囘の此の改正案では、府縣住民に住民權が與へられ、府縣會も市町村會と略略同じやうなる議決機能と云ふものが與へられることになります、所謂府縣會の完全自治體化が行はれんとして居るのであります、併しながら一方に於きましては、國の行政機關としての府縣廳の地位は、現下の國情から見まして益益其の重要性を加へて居ることは勿論であります、此の府縣廳の官治と自治と、此の二重性格をば、官吏とすることに依つて調整を圖らんとする所に政府の狙ひがあるやうでありますが、完全自治體化を徹底させる爲には、國家の事務は、道廳を設置して、之に依つて政府が意圖する中央行政の施策を徹底せしめる、道州制を實施して、それを政府の地方機關とすれば、地方自治體は當然完全自治體となるのではないかと思ひます、さうして置いて、府縣廳の國家委任事務を必要ある最小限度に止めまして、公選せる知事は之を中央政府から切離してしまはなければならない、でないと、知事は上からは内務大臣の指揮監督、下からは地方政黨の勢力移動、側面からは解職請求權の濫用、是では身動きの出來ない羽目に陷るのではないか、斯う云ふ虞のあることは、是は決して私一人の杞憂ではないと思ひまするが、之に對する政府の御所見を伺ひたいのであります
第三は、知事は人事の問題に對しては、單に具情權を與へられて居るに過ぎないのでありますが、是は少くとも知事の手となり足となつて働く部長級、課長級までの任免權と云ふものを持たさなかつたならば、知事は單なる「ロボツト」化する虞が多分にあるのであります(拍手)之に對する政府の御所見を伺ひたいのであります
第四は知事、市町村長、府縣會議員或は市町村會議員其の他の者に對する、地方民の發意に依る解職權の發動の問題であります、東京都の場合は二十萬人、其の他は總有權者の五分の一の連署に依つて解職權が成立することになつて居りますが、凡そ權利のある所に之を濫用し、之を惡用する者の現はれることは又已むを得ないかも知れませぬが、現下の事情から見まして、其の解職請求權の濫用、利用、常用或は惡用者がないとは限らないのであります、斯う云つた問題が隨所に行はれて、地方自治體の基礎を危うする虞れなしとはしない、例へて申しますると、其の地方で一番勢力のある大政黨が知事を出して居る、此の知事が、黨勢擴張の爲に絶えず市町村長の下にある住民に五分の一の運動をやらして、是が請求權となつて現はれて來たら、知事の權限を利用して此の發動をやる、斯うなると大政黨は意の儘に黨勢擴張が行へる、更に此の上に政黨の内務大臣があつて之をやるならば、全日本をして自己の政黨一色に塗り潰すこともさして難事でないとも考へられます、又其の反對に小政黨が之を利用致しまして、不斷に五分の一運動と云ふものをやつて、其の椅子を搖り動かし、之を嫌がらせて、立派な人格者にこんなうるさいことは眞つ平御免だ、斯う云ふ氣持を起させるに至る、或は或る種の團體の民主戰線的攻勢の武器となる場合もあるかも知れませぬし、又選擧の直前に之をやりますると、何しろ五分の一以上の調印、多い方は幾らでも宜いのでありますから、選擧の直前に之をやつたら、極めて合法的、且つ有效的確なる個別訪問が行へると思ふのであります、斯かる制度が廣範圍に、而も頻繁に發動されるならば、地方自治體の長は落著いて敏活なる活動が出來ないのではないかと思ひます、内務大臣は此の問題に對して昨日、それは解職權の請求があつても、政府にはそれぞれの機關を設置して、愼重審査の結果でなければ、此の召還權の發動は行はない、だからさう云ふやうな杞憂はあり得ない、斯う云ふ御答辯でありました、民衆が解職權の請求を出す、所が政府の方に於て審査機關を設けて適當に之を審査してやつて行く、それならば現在の制度と五十歩百歩でありまして、何等實際上には變る所がないやうにも思はれます、是こそ今日國民が怨嗟の聲を放つて居る官僚が、其の全盛時代の見果てぬ夢を追つて居るものであるとの謗りを免れ難いのではないかと思ひます、抑抑民主主義の政治的特長は、輿論主義政治にあることは勿論であります、此の輿論の意味が民衆に必ずしも理解されて居るとも斷定出來ぬ場合がございます、どうでも宜いと云つた民衆がまだまだ澤山あります、先般の東京都第二區の再選擧の状況を見ましても、實に九〇%以上も棄權者があつた、是はどつちでも宜いぢやないか、斯う云ふ民衆が未だ大多數にあることを窺ひ知ることが出來るのであります、常識的に、輿論と云へば民衆の聲であり、街の聲であり、量の政治であり、數の政治でございます、知事、市町村長の召還權に付きましては、獨り此の量のみに依らず、此の量に加ふるに質をも考へる必要があるのではないかと考へられまするが、此の問題に付て更に掘下げた政府の御所見を伺ひたいのであります
第五には都道府縣知事及び市町村長の人事權に關しまして、都道府縣廳及び市町村役場に於ける勞働組合、職員組合との關係に付て御尋ねを致したいのであります、勞働組合法に依る團體協約權の確立と協約の成立に依つて、雇傭、解雇、異動、賞罰、斯う云つた人事問題に付てであります、現に宮城縣廳に於ける農務課長異動に對する縣廳職員組合の反對運動、更に危機突破資金に端を發した東京都廳竝に大阪市役所に於ける勞働組合側の行つた行政管理運動等は、自治體に於ける勞働組合の問題が極めて複雜なる要素を含んで居た證左であります、知事、市町村長の人事權行使に當りまして、據るべき法的根據を此の法文に具ふることを必要とせざるや否や、政府の御所見を承りたいのであります
第六には此の法案に警察制度の改革が盛られて居ない、此の理由に付て御尋ね致します、治安維持の爲の司法警察は姑く措ゐまして、行政警察は當然之を地方自治體に移すことが民意を尊重し、民主化を徹底せしむる最も重大なる問題であらねばなりませぬが、之に對する政市の御考へを承りたいのであります
第七には、公選知事と政黨勢力との關係をどう見るかに付て御所見を質して置ゐたい、政黨政治を建前とする民主政治に於きましては、政黨を基礎とした選擧が行はれることは當然であります、今日まで政府の執り來つた方針は、地方自治體には政黨勢力を進出させない、此の建前を堅持致して來たのであります、今後は此の懸念はないと信じまするが、一應政府の御所見を伺つて置く次第であります
次に第八番目の御尋ねは、町内會、部落會の問題に付て御尋ねを致します、町内會、部落會は現在は市町村役場の下部組織たる役割をして居るのであります、町内會、部落會は行政の最末端ではありまするが、民衆の生活に對して重大なる利害關係を持つて居ります、總理大臣を初め内閣諸公と雖も、家庭に於ける日常生活に於ては、皆此の町内會、部落會の構成員であります、町内會、部落會と離るべかざる關係を持つて居られるのであります、然るに本改正案に於きましては、是等職員の有給制を規定して居るのみであります、一歩進んで町内會、部落會を地方自治體の定全なる下部機構とするか、又は下部機構より全く切離して、是の自由權を強調する必要がありと信じますが、政府の御所見を伺ひたいのであります
最後に私は此の機會に政府の御所見を質して置きたいのであります、今日は交通通信等の機關からも、經濟、食糧事情からも、地方財政の關係から見ましても、府縣の區域を變更するのが適當ではないか、公選知事が出て來まする以上、どうしても自縣本位の、所謂府縣「ブロック」が強化される虞が多々あると存じます、それは知事を官吏とする位で簡單に片付くものではございませぬ、現に殆ど同一の利害關係にあるが如き地區に於ても、唯府縣を異にして居ると云ふだけの理由で以て、或は縣外移出禁止だ、或は食糧對策に政府の命令が滲透しない、封建時代の藩政其の儘の睨み合ひをやつて居る所がなしとはせないのであります(拍手)現に或る大都市では戰災復興の爲にも木材が要る、そこで府廳が建築の許可を與へまするが、隣の縣では木材の搬出を許さない、又農林大臣が或る縣に對して米の搬出を委囑しましても、自縣の食糧事情の將來を杞憂するの餘り速かに之を搬出しない、乙の縣では食糧が餘つて居る、甲の縣では飢餓戰線を彷徨して居る、斯う云つた實情もあるのであります、先般大阪府に於きまして一千萬圓の資金を以て食糧の買付をやらうとした、斯う云ふ問題が農林省の忌諱に觸れて、それは困ると差止められた、併し實情はさうぢやなかつたのであります、詰り政府が大阪府へ甲の縣から何千石、乙の縣から何千石と食糧の搬出を割當てられるが、どうも圓滿に此の食糧が入つて來ない、そこで農林省に任して置いたのぢや何時になるか分らない、今日の食糧に困つて居る大阪府としては此の儘看過出來ないから、茲に一千萬圓の金を以て、さうして農林省が割當てられた府縣に行つて、農民の方の御喜びになりさうな代替物資をば持つて行つて、さうして搬出を速かに御願ひする、斯う云ふ意味であつたのであります、是なんかは府縣「ブロック」と云ふ弊害さへなければ、極めて簡單に、極めて「スムース」に片付く問題であらうと考へます、政府は此の際思ひ切つて府縣の區域を變更するとか、或は道州制を布くとか、斯う云つた施策を斷行なさるだけの御意思ありや否や、是は當該關係當局たる内務大臣のみに止まらず、之に依つて所管事務から生ずる御所見に付て特に文部大臣、農林大臣、商工大臣等の答辯を願ひたいのであります、以上を以て私の質問を終ります(拍手)
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=3
-
004・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今松永議員より凡そ九項目に亙りまして御質疑がございましたので、それに御答へ申上げます
先づ第一に地方自治の完璧を期する上に於て、地方財政の自主性、自律性を確立する必要があるが、政府はそれに對してどのやうに考へて居るかと云ふ趣旨の御尋ねでございましたが、昨日岩本議員の御質問に對して御答へ申上げました如く、近く提案せんとする地方財政、税制の改正は、現下の經濟状況に即しまして、謂はば應急的の對策を立てたに過ぎないと申上げたのでありますが、事實其の通りであります、併し此の應急對策を立てまするに當りましては、將來のことを見透しまして、地方財政の自主性、自律性を確立する目途で立案を致して居る次第であります、即ち昨日も申上げました如く、地方財源の擴充を致し、地方財政の自主性を強化し、及び地方財政調整の適正化を圖ると云ふ此の三大目標は、既に之を定めまして、其の目標の適用上、現在の經濟事情から拔本的な根本的な解決を悉くやり得た譯ではありませぬが、其の意味に於きまして應急的のものであると云ふ趣旨でございます、之を結論的に申上げますると、政府は此の應急策を更に強化致しまして、將來地方財政の自主性、自律性を確立することに邁進する方針で居る次第であります
次に公選知事を官吏とする點に付ての御尋ねであります、申上げるまでもなく現在の府縣廳と云ふものは、茲に御審議中の府縣制に於て規定されて居ります所の地方公共團體の事務を處理致して居りますると同時に、中央政府の地方機關として少からざる又重要なる國政事務を分掌致して居るのであります、固より國政事務の一部は、府縣制の定むる所に依りまして、地方自治團體たる府縣に委任されて居るものも相當ございますが、現在の府縣廳の仕事の中には、國政の中で府縣の公共團體に委任をせざる直接行政の部分が極めて多く、又重要なものがあるのであります、兩者の比率から申しまするならば、寧ろ直接國の政務と認められる部分が、地方公共團體の固有又は委任事務に比べまして極めて多い部分を占めて居る現状であるのであります、そこで御述べになりました如く、地方府縣制に於て府縣を完全自治體とする以上、現在の府縣廳を解體致しまして、府縣の固有事務竝に委任事務を處理するだけの府縣廳を作り、別に國政事務を處理する爲の特別官廳を組織すると云ふことは何人も想ひ到る所であります、道州制の構想も此處に出發して居る點も大いにあるのであります、併し此のやうな拔本的の改革を致しますことが、果して日本の地方行政の上に於きまして適當でありや否やと云ふことに付ては、篤と考慮を加へて見なければならぬことと思ふのであります、若し府縣廳をして單に自治團體たるの性格に限定致しますると、其の府縣廳たるや一般の市と殆ど同一の性格になるのでありまして、我が國の地方行政機構と致しまして、運用にも習熟し、地方民の一つの政治的中心地となり、又地方行政は、國政事務と自治團體事務とを府縣廳に於て極めて適當に統合運營されて居りましたものを解體することになりまして、是は遽かに贊成することが出來ない案だと確信するのであります、尚又道州制の如きものを特に此の際作りまして、それが構想上極めて適當な案でございましても、其の運營に慣れて實效を收めるまでには相當の日子を要することであります、又一面に於きましては、今日の府縣廳と離れた特別の行政官廳は、必ずや其の制度は民主主義に反するやうなことになる虞が多いのであります、即ち特設行政官廳は所謂官僚化の虞が多分にあるのであります、彼此れ考へ合せまして、今日の如き非常の時局、直ちに行政の效果を期待しなければならぬ時勢に於きましては、現在の府縣廳の解體は到底實行すべき時期でないと思はれるのであります、そこで現在の府縣廳を大體其の儘存續し、さうしてそこに改正憲法にも要望されて居りますやうな知事の直接公選制を採用すると云ふことになりますると、自治團體の長として公選せられました府縣知事に官吏の身分を附加致しまして、更に國政事務の樞軸を握りまして、國政事務と自治事務と併せ統率を致しまして、府縣廳の活動を兩者に亙つて民主化すると云ふことが適切であることになると思ふのであります、而して此のやうな二重の性格を持つて居ります府縣廳に於きましては、當然の結論として府縣知事に官吏としての性格を附與すると云ふことが必要になつて來るのであります、是れ公選知事を官吏に併任する所以であります
次に知事が部下の任免權を持つに至らざれば其の職務執行上支障があるのではないかと云ふ御疑問であります、是は一應洵に御尤もな御疑問でございますが、地方制度の改正に伴ひまして、官制にも必要なる改正を加へまして、府縣知事には部下の官吏の進退の具情權を附與すると云ふことに改正する方針であります、之に依りまして知事は能く部下の官吏を統率して行くことが出來ると信じて居るのであります
次に解職請求權は各種の弊害を生ずるではないかと云ふ御尋ねであります、又政黨政治の實際に立脚して、そこに弊害の發生する禍因があると御指摘に相成つたのでありまするが、我が國の過去の政黨政治に於きましては、批評をする者は、或は私黨的存在であつて、洵に適當なものでなかつたと云ふやうな聲もないではございませぬが、民主主義時代の政黨は、必ずや是が公黨としての面目を十分に發揮されると云ふことを私共は大いに期待を致して居るのであります、政黨は公器である、又公器としての權能を持つて居ると云ふことになりますれば、權能には必ず責任を附隨して居るものであります、公黨たる政黨は、單に權能のみを振廻して、其の責任を忘れると云ふやうなことはあり得ないことと思ふのであります、民主主義政治の發展の爲には、必ずそこに良智良能が働きまして、立派な公黨が生れて來るものと確信するのであります、其のやうに考へて見ますると、政黨政治に依りまして知事等の解職請求權が濫用されると云ふやうに考へるのは、餘りに心配し過ぎる問題ではないかと思ふのであります
尚又「リコール」制に付きましては、昨日も御答へ申上げました如く、多數專制に對する少數者の權利を認めた點が多分にあるのであります、又少數者が與へられたる權利を濫用すると云ふやうなことは大いに愼まなければならぬことであります、故に解職請求權が發動しました場合に於きましては、監督官廳に於きましては一定の基準を設けて、其の事實を能く調査研究致しまして、其の解職請求權を認めるか否認するか、其の場合の事情に依つて善處を期して居る次第であります、尚又一歩を進めまして、他の國家に於きましては、「リコール」の請求權が成立しました場合に於きましては、之を一般國民の「レフェレンダム」に付きまして──一般投票に付しまして、其の問題を解決すると云ふ方途も講じて居る所がございまするが、我が國に於きましては、此のやうな場合に、一般投票に付すると云ふことは、時期尚早であらうと考へて居る次第であります、何分にも投票の囘數が今後非常に殖えて來ると云ふことが豫想されます、又一般投票の運用に付きましても、確たる成算がない今日に於きましては、只今提案を致して居ります程度の取扱が、我國としては寧ろ適切なりと信じまして、提案を致した次第であります
第五點と致しまして、府縣市町村の職員を以て組織する勞働組合が、府縣市町村の人事に對して容喙をすると云ふ點に付ての御尋ねでございまするが、一口に府縣市町村と申しましても、其の執行しまする事務、事業に依りまして問題は違つて來ると思ふのでありまするが、純然たる行政部面に於きましての勞働爭議に付きましては、適當なる制限が設けらるべきであると思ふのであります、例へば爭議手段としての罷業權の如きものは制限せらるべきものであらうと存ずるのであります、又所謂公益事業に屬する部分に於きましては、是は他の一般公益事業と同じく、共に勞働爭議に適當なる制限をせらるることも亦必要であらうと思ふのであります、是等の點に付きましては、何れ遠からざる内に政府と致しましても案を備へて、各位の御審議を煩はすやうなことに相成ると思ふのであります、それ等の措置に依りまして、只今御尋ねになりましたやうな點は適當に調整され、其のやうな必要なる調整は之を行ふと致しまして、勞働組合運動を悉く壓迫すると云ふやうなことは、時勢上やるべきことではないのでありまして、建全なる勞働運動の發展は、政府も之を庶幾して居る次第であります
次に警察制度を地方制度の改革に織込んで居ないのはどうしたことかと云ふ意味の御尋ねでありまするが、警察制度の改革は、地方自治制度に關する法律自體の改正とは別個の問題でございます、即ち個々の警察に關する法律竝に官制の改正に依つて處理せられる譯でございますから、目下是等の點に付きましては、日本警察を民主主義の線に沿うて如何に改善すべきかと云ふことに付て鋭意考究中であります、今議會に於きましては提案の運びに至つて居りませぬが、成べく早い機會に於きまして成案を得て、各位の御審議を煩はすことに致したい方針であります
次に政黨が地方自治行政に進出すると云ふ點に付ての御尋ねでございますが、我が國の政治が中央と云はず地方と云はず、段々と民主化されて行きます限りに於きましては、健全なる政黨運動が地方自治體にも入つて行くと云ふことは是は當然のことでありまして、そこに地方行政の民主化の意義もある譯と存ずるのであります、併しながら地方行政と國家行政との間に於きましては、性格上の相違がございますので、健全なる政黨運動に於きまして、國家行政の立場から不必要なる干渉を地方行政の上に及ぼすやうなことは、是はあり得べからざることと思ふのであります、政黨運動はそこに自ら適正なる分界が劃されなければならぬものと思ふのであります、尚ほ先にも一言致しました如く、健全なる政黨が發達致します限り、政黨が自治體へ侵入することに依つて自治行政上憂慮すべき事態が發生することはないものと信じて居る次第であります
第八點として、町内會、部落會に關する御尋ねであります、御話の通り今囘の改正に於きましては、町内會長、部落會長に對し報酬を給することを新たに認めました以外は、從來通りに致して居ります、町内會、部落會は、所に依りますと餘程古い時代から發達して居る所もございますが、全國に亙りまして活溌なる活動を致し始めましたのは、近年に屬するのであります、さうして其の活躍の跡は、地方行政の進展の上に大なる貢獻を致して居ることでありまして、是は洵に結構なことと思ふのであります、併し其の活動たるや、各地方の實情に即應致しまして、各各特異性を持つて居ります、之に法律を以ちまして規制を加へると云ふことは、寧ろ適當でないのではないか、法律的規制は必要の最小限度に止めまして、自由なる活動に俟つのが、町内會及び部落會の性格上寧ろ適當であると云ふ見解で、今までの所之に餘り窮屈なる法的規制を加へないと云ふ方針を以て進んで來て居るのでありまして、現に其の方針で居る次第であります
次に府縣の區域を變更する考へはないかと云ふ趣旨の御尋ねでございましたが、現在の府縣の區域が、交通、經濟等の發達に伴ひまして、段々合理性を失つて來つつあるのではないかと云ふ點に付きましては仰せの通りであらうと存じまするが、一體府縣の區域の問題は、我が國の現在の國情に即しまして、新たに且つ愼重に考へて見なければならぬ問題であると思ふのであります、府縣「ブロック」の打破と云ふ一面からのみ問題を考へることは適當でないと考へられるのであります、即ち地方行政運營の單位を如何なる單位として、如何なる區域が適當であるかと云ふ基本的の問題と併せまして、現在の府縣の持つて居ります所の歴史的傳統や地理的沿革や、又各府縣民の團結の實情、其の他各般の點から考究を致しまして、個々の問題に付きまして十分考慮檢討を加へて見なければ結論は出ないものと思ふのであります、さうして是等の檢討を加へました結果、假に府縣を廢合する、府縣の區域を變更することが可なりと云ふ結論に達しましても、少くとも今日は諸般の情勢から考へまして之を實施すべき時期ではないと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=4
-
005・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 松永君より府縣區域變更の問題に付きまして、文部大臣、農林大臣、商工大臣よりの答辯を求められて居りますが、豫め御要求がありませぬでしたから、各大臣とも只今憲法改正委員會に出席中でありますので、適當の機會に答辯を願ふことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=5
-
006・松永佛骨
○松永佛骨君 只今の内務大臣の御答辯は、聊か私の質問の要旨から外れた點が多かつたのであります、其の點は委員會に於て詳細に伺ふとしまして、唯一つ知事は官吏でなければいけないと、色々の意味で仰しやつたのでありますが、其の官吏でなければいけないと云ふ理由に、市町村、府縣廳の事務の大多數が中央の仕事をやつて居る、かるが故に官吏でなければいけない、斯う云ふ御考へでありますが、今後自治制が強化をして參りますと、民主主義に徹底するならば、國民は權利のある所必ずや義務の履行を伴ふことは當然であります、國民的自覺に立つて政府の仕事を行ふと云ふことになれば、敢て官吏でなければならないことはない、寧ろ府縣住民から考へると、府縣廳に於けるたつた一人の自分達が公選した知事までも、之を官吏として持つて行かれることに對する感情的なものもあるのではないかとさへ思はれます、此の點私は官僚政治の全部を排撃するものではありませぬ、總て選擧に依つて選ばれたる人のみに依つて政治をやらうとすることは、動もすると素人政治の弊に陷る場合なきにしもあらずであります、「エキスパート」として此の官吏を認めて行くと云ふことには異議ありませぬが、所謂官僚政治を今後も謳歌せしめることに對しては國民は絶對反對であります、色々の意味に於て此の知事を官吏にすることに付ては更に再考を願ひたいのであります(拍手)
又解職權の問題、請求權の問題で、政黨政治に依つて今後是が濫用される虞があると云ふことは心配する必要がないと仰しやいました、勿論であります、我々は天下の公黨として堂々國民の脚光を浴びて登場して居りますから、此の「リコール」制を我々が濫用する場合は先づあり得ないと信じて居ります、併し是が選擧等に惡用される場合、色々の場合を更に一考願ふ必要があるのであります、又内務大臣は現在の國勢と云ふことを非常に斟酌されることは勿論であります、今日我が國が占領と云ふ枠の中にあることは勿論でありますが、此の枠は軈て取除かるべき性質のものであることを考へられて、將來の日本に處する積極果敢な施策を御考へを願ひたいのであります、詳細は委員會に讓ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=6
-
007・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 此の際一言致します、政府側の御答辯の懇切丁寧なることは洵に結構でありますが、議事の進行を圖りまする爲に、出來得れば質疑者よりも長き時間を御取りにならぬやう御注意願ひます、是は強制するのではありませぬ、希望致すのであります(拍手)中村高一君
〔中村高一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=7
-
008・中村高一
○中村高一君 今囘提案せられて居りまするものは、何れも現行法にありまする都制、府縣制、市制、町村制の改正でありますが、内容的に之を檢討して見ますると殆ど同じやうな規定がありまして、同じ規定を探すよりは、寧ろ違つた點を探すことが難かしいと云ふ位に、殆ど大同小異であります、何故斯くの如き煩瑣なる法律を其の儘存置致して置きまして、是が改正を行はうとするのか、先づ第一に御尋ねを致したいのは、立法技術の上から致しましても、新憲法草案の趣旨から致しましても、之を一本に致しまして、地方自治法と云ふが如きものに統一することが法制の民主化であると存ずるのであります、殊に從來日本の憲法には、殘念ではありましたが、地方自治に關しまする規定が何處にもなかつたのであります、恐らく憲法制定當時の人々は、官僚國家方式のあることを知つて、自治の觀念と云ふものを知らなかつたと云ふことが原因ではないかと思つて居ります(拍手)日本の國の民主主義の發達の遲れた大きな原因は、中央集權主義であつて、地方自治に依存して居らなかつたことに大きな原因があると思ふのであります(拍手)さう云ふ意味に於きましても、新しい憲法の趣旨から致しましても、地方自治法と云ふが如き法典の作成をせられまして、此の複雜なる地方法制の單一化を圖ることが、地方民に對しまして極めて親切なる所以であると思ふのであります、斯く致すことが出來ますならば、例へば選擧の如きを考へて見ましても、先般の政府の説明に依りますると、此の法律が通過を致しまして、此の秋は十月の上旬から十二月に掛けまして行はれる選擧だけでも、十月上旬には府縣會、十月下旬には町村會、十一月上旬には市會、十一月末には知事、十二月上旬には市町村長、其の間に參議院の選擧が入るかも知れないと云ふのでありますから、僅かに二箇月の間に一體六つも選擧をやつて、國民に向つてさあ全部投票をせよと言うて、果して能く是が完全なる選擧が行はれるかどうかは甚だ疑問と存ずるのでありますが、之を若しも一つに統一することが出來まするならば、例へば選擧に於きまして、知事の選擧と市町村長の選擧とを同時に行ふことも出來る、或は府縣會の選擧と市町村の選擧とを同時に行ふことも出來るのであります、既に外國の先進國に於きましてある例でありまして、斯う云ふことを行はせまするならば、政府で豫定して居りまする十月、十一月と云ふのは、地方に取りましては最も農繁期で、非常に迷惑する時に六囘に近い投票をさせると云ふやうなことを省略致すことも出來るし、十二月なら十二月にして、併せて是が選擧が出來る、而も新しい法律で、どれも全部任期四年でありまするから、一齊に「スタート」をするならば、又再び廻つて來る四年目には同時に選擧が出來ると云ふやうなことになると思ひまするが、之に對しまして政府の御所見を承りたいのであります(拍手)
尚ほ今度の法律に依りまするならば、府縣制にも、市制にも、町村制にも、事務の監査規定と云ふものがありまして、事務の監査委員が任命せられることになつて居ります、是なども府縣に四人、市に二人、町村に二人と云ふやうなことをせずに、是は府縣ならば府縣に、専門的な知識を有する者數名を監査委員に致しまして、併せて市町村の財政の監査をすると云ふことでありまするならば、極めて適切であると思ふのであります、小さな町村などに監査委員を置きましても、中々豫算の内容を監査するなどと云ふことは難かしいことであります、特に役人の作りました極めて巧妙なる豫算や決算の書類などと云ふものは、中々民間の者が之を檢査して、其のあらをほじるなどと云ふことは頗る困難なことでありまして(拍手)之には相當の技術を要するのであります、斯う云ふ點に付きましての政府の御所見を承りたいのであります
次は今囘の改正案の内容でありまするが、私は公平に見まして、極めて進歩的な幾多の部分に付て改正をせられて居ることは認めるに吝かではありませぬ、併しながら一貫をして居りまするものは、其の底を流れる官僚思想が牢固として拔くことの出來ない點であります、官僚制度の限界を固く閉ざされて居ることを私達は看過することが出來ませぬ、例へば既に同僚の議員諸君から論議をされて居りまする所の、折角公選された知事は直ぐに是は官吏でなければいかぬと、がつちり之を押へて居ります、或は知事以外の官吏の任命權は全部中央廳が握つて、是れ亦離さず、官僚の線を固く押へて居ります、或は國民は知事の解職請求權を與へられて居るのでありまするが、解職請求權だけは與へられて居るが、さあ其の解職請求權の當否は誰が審査するかとなると、内務大臣であります、部下の監査を──部下のやつたことの審査をするのに、直接上級官廳がやると云ふことは、私は公平なる所以ではないと思ふのであります(拍手)場合に依るならば、知事は内務大臣の命令に依つて間違つた政治をやるかも知れない、其の時に當つて知事の解職を求めた時に、若しも知事が惡いと言ふならば、自分の首も一緒に飛んでしまふと云ふやうな危險があるのでありまするから(拍手)斯くの如き場合に於きましては、寧ろ公正なる第三者の機關を作りまして、之に審査をさせることこそ最も適正なる所以だと思ふのでありまするが、政府の所見は如何でありまするか
斯う云ふ點の外にまだ、多年是も問題になつた點でありまするが、例の知事の原案執行權であります、今度の改正案に於きましては、斯う云ふ點に付て十分に政府が考へなければならぬと思うたのでありまするが、依然として原案執行權は是れ亦其の儘存置されて居るのであります、一體是で果して地方廳の民主化が行へるでありませうか、新憲法の草案を見まするならば、公務員を選定し及び之を罷免することは國民固有の權利である、と述べられて居るのであります、斯う云ふ新憲法草案の趣旨から致しましても、我々は知事及び地方廳官吏は總て公吏とし、府縣以下を完全なる自治體とすることに一歩を進めることが、最も徹底した民主化であると思ふのであります(拍手)是等の中で知事を官吏とすると云ふやうなことの是非に付ては、既に同僚の議員諸君から色々追究をせられて居りまするから、重ねて私は此の點に付て觸れようとは思ひませぬが、唯從來何故か國家事務と云ふものは官吏がやつた方が宜いのだと云ふ、さうした觀念から一歩も内務省は拔け切つて居らぬのであります、先日委員會で地方局長の如きは、若しも一齊に今の官吏を公吏にしたならば、事務が混亂をし、或は澁滯をすると言うて居りまするが、私は甚だ不可思議なことだと思うて居ります、若しも官吏が公吏と云ふ名前に變つた爲に事務を混亂させると云ふやうな不屆な官吏があるならば、一齊に馘首をする位の覺悟がなければならぬのだと思うて居ります(拍手)特に官僚事務の形式主義、或は非能率、或は優越感と云ふやうな弊害には、地方民が何れも長い間泣かされて居ることであります、又今度の問題になつて居りまする、知事以下の官吏の任命權を全部政府が握つて居る點などに付ても、今まででさへ其の爲の弊害は隨所に現はれて居るのであります、例へば頻々たる官吏の更迭ひどいのになりまするならば、年數囘に亙つて同じ「ポスト」が迭つて居ること、内務大臣は能く御存じだと思ひまするが、而も是は正當なる理由があるならばいざ知らず、單に官僚の出世の踏臺にするだけで、多くは更迭すべき理論的根據はないやうであります、又時に有能の士が局長であるとか、或は部長などに拔擢をせられることがありまするが、茲にも官僚制度と云ふものの缺點は、文官任用令に拘束をせられまして、有能なる士が拔擢せられましても、官等がまだそこに行かない内は、氣の毒ながら何々心得と云ふ名前をぶら下げられまして、さうして一人前になるのには數箇月置かれると云ふやうなことは、如何にも時代後れの制度の遊戲だと我々は考へるのであります(拍手)或は最近も民間人が登用せられて官吏になつて居るやうでありまするが、是れ亦今日の規則に煩はされまして、官等を付ける爲には何か別なものを作らなければならないと云ふので、仕事もしない役に暫く温まつて、官等を付けて貰つてから初めて採用せられるなどと云ふことも、是れ亦今日の官吏制度と云ふものの極めて不都合な理由だと思ふのであります、政府は近く公務員法と云ふ法律を作るさうでありまするが、官吏制度に對して其の内容の根本的解決をなさる御意思があるかどうかを御聽き致して置きたいのであります
次は警察制度の民主化に付てでありまするが、是は既に同僚の方から質問されて居りますから、詳細なことを申上げようとは、思ひませぬが從來日本の警察と云ふものは極めて政治的な警察でありまして、一方に於ては威嚇主義的な警察であり、民意の伸張を阻碍し、民主的運動を妨害し、民主的團體に暴壓を加へ、或は人權蹂躙の如何に多かつたかと云ふことは、諸君の既に經驗をして居られる通りであります、我々は我が國警察制度の改善は最も急なるを要すると思ふのでありますが、先程内務大臣は近く警察制度に付きまして新しい法案を作つて提案をせられると云ふことでありまするが、此の提案せられまする法案に付ては、我々は現在の司法警察と云ふものを内務省から分離致しまして、司法省に直屬せしめまして、人權の擁護を圖ると云ふことに付て、内務大臣竝に司法大臣は如何なる御考へを持つて居られるか、之を御尋ね致したいのであります、尚ほ行政警察に付ては既に質問がありましたから申上げませぬ
次は特高警察が廢止をせられたのにも拘らず、今尚ほ防犯課の中に依然として特高警察に類似する組織があるやうに思はれまするが、是は内務大臣は如何なる御所見でありまするか、而も警察豫算の中には從來の政治警察の名殘を止めて居りまして、所謂機密費と稱する豫算が其の儘盛られて居るのでありまするが、民主主義日本の國に於ては、祕密警察、政治警察の殘骸である所の機密費と云ふやうなものは直ちに廢止すべきものだと考へまするが、御所見は如何でありまするか(拍手)
次は、政府は地方の國土計畫に付きまして再檢討を行ふ必要ありと思ふのでありまするが、此の點に付ては從來此の戰爭を契機と致しまして、日本の國土計畫と云ふものは何れも國防國家體制への樹立でありました爲に、地方國土計畫は何れも如何にすれば敵襲を防ぎ得るかとか、或はどうすれば動員に便利であるとか、斯う云ふ國防國家を前提と致しての道路計畫であり、或は鐵道計畫であり、港灣計畫であり、都市計畫であつたと思ふのでありまするが、新日本の建設には、今日我々は民生の安定を目標として産業經濟の再建、新日本文化の創造進展を考へなければならぬと思ふのであります、是が爲には現在の大都市の分解、人口の適正配分、或は文化の都市偏重の弊を改めて、地方都市への教育文化機關の移動、或は工業の地方分散、農工の調整等の見地から、地方制度を再檢討する必要ありと思ひまするが、政府では如何に考へまするか
尚ほ先程も質問に出たのでありまするが、各府縣地方廳の職員組合、從業員組合等の關係に付て、別の角度から一言質問を致して置ゐたいのでありますが、府縣廳或は地方事務所、或は市町村、斯うした地方廳の職員、從業員が勞働組合を結成する場合に於きまして、如何なる標準に依つて是が參加の標準とせられるのであるか、言ひ換へまするならば、使用者又は其の利益を代表すると認むべき者の參加は許さないことになつて居りますが、地方廳に依りますならば、係長級以下であつて、課長級以上は使用者側に立つものである、併しながら是は地方事務所、市町村役場に參りますならば、必ずしも同一ではないと思ふのでありまするが、是等に對しましては如何に考へられるか、或は國民學校の教職員等に付きまして、校長は使用者側の代表であるから勞働組合の參加はいけないと云ふやうな解釋もせられて居るさうでありまするが、此の際此の點に付きましての政府の所見を質したいと思ふのであります、尚ほ爭議になりまして、先般も東京都に於きまして業務管理と云ふ新しき爭議が起つて居るのでありますが、此の場合に於て新たなる問題として論議せらにべきものは、行政廳る於きまして爭議中に起りました許可或は認可の如き行政行爲と云ふものは、果して如何なる效力を有しまするか、政府では是は反對であるから效力がないと言はれるのか、上司が之に裁決を致した時に當つて、我々は斷じて違法ではないと存ずるのでありますが、將來の爲に此の行政行爲の有效無效を一應御聽きを致して置きたいのであります
最後に地方財政の確立に付て申上げたいのでありますが、是も既に他の方から述べられましたし、今大藏大臣も見えませぬので、詳しいことに付きましては觸れようと思つて居りませぬが、唯一つ最近大藏省の指示に依るものと思ふのでありまするが、地方の農村に對しまする所得税が非常に多額であります爲に、地方の農民は今大混亂を致して居ります、中には斯くの如き所得税を完全に拂ふことは困難であるからして、供出を見合せると云ふやうな極端な意見さへ出て居るのでありまして、中々此の問題は大きくなりつつあるのであります、大藏省の解する所に依りますると、地方の農民は闇をやつて居ると云ふことを前提に致しまして、言葉は闇に課けるとは言うて居りませぬけれども、實收に課けると稱して事實は闇に課税を致して居るのであります、司法大臣もおいでになつて居りまするが、一體あなた方司法省としては、闇の取引に付ては嚴罰を以て臨んで居るのでありますけれども、大藏省では闇に課税をすると云ふやうな(拍手)、同じ政府に於きまして裏と表の立場を執つて居ります、斯う云ふ場合に於きまして闇を闇とは言はないけれども、實收の名に依つて公然闇に課税を致して、税務署に出頭して訂正を求めると云ふと、闇の親分が其處に來たと言つて一喝するさうでありまして、明かに闇に課税をして居るのでありますが、司法大臣は之に對して如何なる御所見でありまするか、伺ひたいと存ずるのであります(拍手)
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=8
-
009・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 御答へ致します、第一に今囘提案致しました四つの法律を別々に規定致して居りますることは、それぞれの地方團體に取りましては却て便宜でありますので、現在の通りを踏襲致した次第であります、唯將來の問題と致しましては、御述べになりましたやうな理由も大いにあることでございますので、考へて見たいと思ひます
次に數個の選擧を合一して一度に行つたらどうか、是も先進國に於きましては段々さう云ふ方途も講ぜられて居るやうでございまするが、我が國の現状に於きましては、選擧の目標が不明瞭でありまして、新有權者の投票の場合を考へますると、必ずしも適正でないと云ふやうに考へまして、其の方途を認めて居ないのであります、又一たび合一執行されましても、解散とか解職等のことが行はれますると、別々になつて來ると云ふやうなこともございまして、合一選擧は之を執行することを原則とすると云ふやうな建前に立ちまして新たなる構想を以て立法せざる限り、其の目的を達することは困難な場合が多いと思ふのであります、何れに致せ、現在と致しましては時期尚早であらうと思ふのであります
次に監査委員を府縣、市町村に別々に設くることをやめて、何處か一箇所に置いて共用したらどうかと云ふ御尋ねでありまするが、改正案に於きましては、それ等の點を考慮致しまして、町村では必要がある場合に置く、なければ置かないで宜しいと云ふ建前を執つて居ります、府縣及び五大都市に付きましては、事務の分量も多うございますし、内容も複雜でございますので、府縣市行政の適正を確保する上に於きまして、各各監査委員を置くのが適當であると云ふ見解で、此のやうな立法を致した次第であります
次に官僚制度を維持することに私共が汲々として居ると云ふ點に付きましての御尋ねでございましたが、其のやうな主義から此のやうな立案を致したものでは毛頭ないのでございます、又政黨政治が發達致しまするのと竝行致しまして、健全なる官僚制度──と云ふ言葉が適當でなければ、或は吏僚制度と申しても宜からうと思ひますが、吏僚制度を打立てることは甚だ必要であらうと思ふのであります、併し此の新しい吏僚制度は、從來非難をされましたやうな官僚制度であつてはならないことは申すまでもないことであります、我が國の現状が、物が豐かで社會が極めて靜謐であると云ふ時代でありますると、公選知事をして府縣の自治團體の公吏として職に就かせ、國政事務は大幅に之を地方自治體に移讓すると云ふやうなことも考へらるることでありまするが、現状を以て致しましては、御審議を仰いで居ります程度の案が寧ろ適當であると云ふ信念で、御審議を仰いで居る次第であります
次に原案執行を改正案に於きましても存して居りますのは、地方議會の議決が公益を害し、又は違法であると云ふやうな例外的な場合、又或る場合は地方議會が缺けて居りましたやうな場合には、そこに救濟方法を設けて置く必要があると信じますので、極めて例外的のことが起りました場合の對處策は、依然存置する必要を認めた次第であります、前にも一言致しましたが、今後地方自治團體の發達に伴ひまして、國家事務が段々と地方團體に大幅に委讓されると云ふことは、極めて望ましいことでありまするし、政府としても其のやうに努むべきものと考へて居ります
官吏の更迭が頻々たることの宜しくないことは御説の通りであります、唯私の所管致して居りまする内務關係に於きましては、最近所謂公職追放が廣汎に行はれまして、其の爲に特に官吏の同一地在任期間が短くなつて居ると云ふ事實があるのであります、是は洵に面白からざる現象でありますので、地方官の更迭等には此の點に十分注意を加へまして、同一地位から極力動かないやうに努めて居る次第であります
尚ほ官等の問題に付きまして御尋ねがございましたが、最近官吏制度にも或る程度の改正が加へられまして、御述べになりましたやうな缺點は相當大幅に除去し得ることに相成つたのであります、尚ほ是等の點は將來公務員法とも云ふべきものが立案される場合に於きましては、十分考慮致しまして善處を要することと考へて居る次第であります
警察の民主化に付きましては今後極力努力し、又其の線に沿うた立案を致す積りであります、特高警察、政治警察は現に全廢致して居ります、御尋ねのありました特高警察に似たる事務を内務省に於て處理して居ると云ふ點でございますが、是は一月四日の聯合軍の指令に基きまして、或る種の政黨結社の届出を要することに相成りまして、それに關する限度に於て事務を取扱つて居ると云ふ點を御諒承を願ひたいと思ふのであります
次に現在の一般警察の中から司法警察を分離すると云ふ問題に付きましては、是はもう既に多年の間論議されて居ることでありまして、贊成論あり、反對論あり、少くとも私共内務省と致しましてはまだ結論に達して居ない所であります、尚ほ今日の警察力は社會情勢から申しまして非常に微弱でございますから、現在の一般警察を割きまして司法警察を打立てると云ふことは、時機が適當でないと思ひます、又司法警察の方面に増員する餘力ありと致しますならば、私共の立場と致しましては、一般警察を増強致しまして、社會治安の萬全を期したいと云ふ切望を持つて居ります、此の問題は政府部内に於きましても現に研究を進めて居る所でありまして、内務省として最終的決定には參つて居ない次第であります
次に機密費は、特高警察、政治警察の廢止されました以上、其の方面に要するものは固よりなくなつた次第であります、併し特高警察、政治警察を除外しました殘りの面に於きましても、從來の機密費と同樣のものを或る程度要することは勿論でございまして、それは今日の豫算に於ても計上を必要とする考へであります、唯政府に於きましては機密費と云ふ名稱を廢しまして、他の言葉に改正をされた次第であります
次に新時代に即する國土計畫を新しい見地に於て立てると云ふ必要は、政府も大いに之を認めて居るのでありまして、關係豫算も要求を致し、此の點に努力する積りであります
最後に業務管理の御尋ねでありますが、先般東京都に行はれました所謂業務管理は、事實上其のやうな業務管理の實質は何處にもなかつたのであります、尚ほ業務管理中の行政行爲の效力に付て御尋ねでありましたが、業務管理の方法が、先般の如く其の實なくして、關係職員が最も忠實に適正に職務を執行して、其の作成したる書類に付て上司も之を適正に決裁をしたと云ふ場合に於きましては、何處にも違法問題はないと思ひます、隨て有效無效の問題は起らないと思ふのであります
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=9
-
010・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 司法警察官の問題に付て答辯致します、御承知の通り現今の法制上、犯罪搜査は檢事の下に司法警察官が補助と致しまして、全國的に統一ある運營を致して居るのであります、所が司法警察官の身分は行政警察官の身分と共に内務省の管轄に屬して居ります、それが爲に幾多の不便が我々の方から見てあるのであります、之に鑑みまして檢事の下に隸屬したる、司法警察官を設けて、さうして犯罪搜査の圓滑と完璧を期したい爲に、何れ豫算に若干之を計上致しまして、其の實現を期すべく努力致して居ります、何れ本院に於て御協贊を願ふことに相成ることと思ひます、全面的に司法警察官と行政警察官を分離する問題に付ては、色々の事情もありまして、早急には實現不可能かと考へて居りますが、我々は是非とも此の問題は實現致したいと云ふ希望を持つて居ります、
第二に闇取引に對する大藏省の課税の問題でありますが、私は此の惡質な闇取引に對しては、どうしても嚴罰を以て臨まなければならぬと云ふ考へを持つて居ります、其の闇取引から生じた收入に對しての課税の問題でありますが、是は恐らく大藏省では、其の取引から生じた實收より仕入を差引いた殘額に對して課税をしたものと思ひます、收入を基本にしてやつたものと私は考へて居るのであります、是が若しも大藏省の扱ひとして闇取引を認めるが如きことがありと致しますれば、私は十分それを注意致したいと思ひます、結局實收入に對する課税の問題と處罰の問題とは、是は別個に考ふべきものと私は考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=10
-
011・中村高一
○中村高一君 簡單でありまするから自席から申上げます、再質問を致したいのでありますが、詳細に亙りまするので委員會に讓りまして質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=11
-
012・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 宮澤才吉君
〔宮澤才吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=12
-
013・宮澤才吉
○宮澤才吉君 私は只今議題に相成つて居ります所の地方制度改正案に對しまして、日本進歩黨を代表致しまして、案の一部に對して質疑を致したいと存ずる次第であります、政府は地方公共團體の自治制と自律性の確立と、國政の民主化に對應する爲に自治制の徹底的民主化を期し、地方制度の改正法律案を提案致されましたことは、私は衷心敬意を表するものであります、申すまでもなく民主主義平和新日本を建設するには、其の基盤である所の市町村と府縣の地方自治團體の徹底的民主化を圖ることである、尚又之に依つて「ポツダム」宣言を忠實に完全に遂行する所以であると存ずる次第であります、政府は此の觀點から致しまして、今囘劃期的とは言へ、大膽にも地方制度の大改正を行ふのでありますが、改正法律案に依れば、住民の權利の延長、知事、市町村長の公選、府縣市町村會の解散請求權、知事、市町村長其の他役職員の解職請求權、條例其の他改正請求權等が認められてあるのでありまして、此の法律案を施行するに當りましては、法の運行と、國民が眞に民主主義觀念と法の精神を十分に把握し、自治體の發展に協力するのでなければ、地方政治は再び政爭の具に供せられ、却て自治團體をして混亂に陷れるやうなことになりはしないかと心配するものであります、多くの點に付て私は御聽きしたいのでありますけれども、只今議長より出來得るだけ簡便にせよと云ふやうな御注意もあつたので、私は數項目は委員會に於て御聽き致すことにしまして、不可解な點、不明な點に付て三、四御聽きしたいと思ふのでありまして、當局に於かれましては明確なる所の御答辯を與へられるやう要求する次第であります
質問の要點は、府縣、市、町村の三つに分けて其の一部のことに付て御聽きしたいと思ふのでありますが、先づ第一に、國民の久しく待望して居りました知事の公選の實現に付きましては欣快とする所であります、知事を直接公選で選ぶとすると、所謂煽動的政治家や金權候補者が選出される機會が多くなり、健全なる所の地方行政の發展を期することが出來なくなりはせぬか、又斯うしたことになり易いと考へるものであります、尚ほ金權候補者の立候補と云ふやうな觀點から致しまして、多額の選擧費を要すると存じますが、法定選擧費用を御定めになる御考へがあるか、或は定めるとしたならばどの位に致す考へであるか、先づ御聽きして見たいと思ふのであります、又知事が公選で、部長以下を其の儘官吏にして置くとすれば、昨日も他の方々から色々と御意見があつたのでありますが、斯うした關係に於て知事は全く浮上つてしまふと云ふことは、我が黨の本間議員よりも昨日申された通りでありますけれども、是等の關係に付て、政府は知事、部長其の他の官吏との連絡協調に付てどう云ふ考へを持つて居るか、之を御尋ねしたいのであります
又府縣會を隔月に開く必要に付ては、昨日も大村内務大臣より、議案がなければ議員が各各持寄つて會議を開くことが出來るのであるから、隔月に開く必要はある、斯う述べて居りますが、若し隔月に開くとしたならば、殊に又臨時會が開かれるのでありますから、參事會を置く必要はない、斯う私は考へるのでありますが、政府の所見は如何であるか、御聽きしたいのであります、尚ほ私はいつそ府縣會を無休に致しまして、隨時開會する方が宜いのではないかと思ふのであります
次に市の問題でありますが、政府は地方團體の自治制と自律性とを確立することを以て、今囘の地方制度の改正の重點として居つたのでありますが、都市に付ても其の特殊性を尊重して、特別市制を制定することが適當ではないかと思ふのであります、今囘の改正案は特別市制の提案がないが、其の理由は如何であるか、又特別市制に對する所の所見はどうであるか、御聽きしたいのであります、御承知の如く、市は町村と違ひまして、大阪であるとか或は名古屋を初め非常に大きな市があり、又それと反對に人口三萬内外の小さな市があります、尚ほ戰災其の他商業であるとか或は工業と云ふやうな特殊性があるのでありまして、斯うした觀點から致しまして、特別市制の必要を認めるのであります、先程御伺ひしたやうに、斯うした諸點に付て御答辯を願ひたいと思ふのであります、尚ほ聞く所に依りますれば、政府は市長に對して相當大幅なる權限の委讓をすると云ふが、此の點を併せて御聽きしたいのであります
次は町村關係でありますが、町村會議員の選擧に管理委員會を置く必要は何處にあるか、又管理委員會は選擧の外に如何なる事務を處理するか、從來市町村長の責任に於て選擧事務竝に選擧の執行に當つたのでありますが、改正法に依れば管理委員會が一切此の事務を掌ると云ふのでありますが、其の必要を御伺ひするのであります
次に參與度制の問題でありますが、私は今囘の改正に於て、此の參與制度に手が觸れられなかつたことを遺憾に存ずるのであります、御承知の如く市は參與を置くことを得とあり、町村は參與を置くことを得と云ふことになつて居りまして、置くことを得と言へば、置いても宜し、置かなくても宜いと云ふことになるのでありますが、置くと云ふことになれば、必ず置かなければならない、町村に於ては參與を必ず置かなければならないのでありまして、町村長が參與の人選に非常に苦しんで居のであります、殊に又姑が出來たやうなものでありまして、此の參與に氣兼ねをしなければならない、併し參與制度は他の觀點から參りますと、町村長の諮問に應じて町村内に於ける各種施策に關する重要事項を審議すると云ふことになつて居りますから、町村長の協力體制を組織化し、法制化したと云ふことでありまして、非常に結構のやうでありますけれども、是は町村に於きましても參與を置くことを得と云ふことに致しまして、其の町村の特異性に依りまして、置ける町村は置く、置くことの出來ない町村は置かぬと云ふことにしなければ、町村長が非常に苦しむと云ふことでありますから、先づ參與を置くことを得と云ふやうに町村に於てもすることが適當ではないか、斯う考へるものであります
次に有權者五分の一以上の者の連署を以て、町村長、助役、監査委員、收入役、町村會議員、選擧管理委員等の解職權を認められたのでありますけれども、是は町村に紛擾の種を蒔いたやうなものであると云ふ風に私は考へるのでありまして、此の所見を御伺ひしたいのであります、村會は村長の不信任の決議が出來る、それで又將來斯うした關係から致しまして、先程の參與の制度に付て姑が出來たと申したのでありますけれども、上に厚い笠を被り、下には斯うした五分の一以上の連署を以て解職權を請求すると云ふやうな茨を履いて、町村長がやつて行けるかどうかと云ふことを私は先づ考へるものであります、現在の町村の實情から參りますと、町村長は今日逃げるか、或は明日逃出さうかと云ふやうな状態を續けて居ることは、皆樣方も御承知のことと存ずる譯でありますが、斯うした關係が益益強化され、今日民主的になつて參りましたから、是でなければならないのでありますけれども、斯うしたことも、其の町村の住民が色々な法の精神や其の他の關係のことを十分に納得しなければ、是等のことに付ては非常に危險であると云ふことを考へるものでありまして、參與制度、或は五分の一以上の連署を以ての解職權の請求が出來ると云ふやうなことに付ては、何とか考慮を願ひたいと存ずる次第であります
次の問題は、農林大臣に御伺ひ致したいのでありますが、地方制度或は農林關係──農林關係に付きましての法案は、農林省と内務省には其の條項の一部に於きましては不可分の關係があると思ふのであります、町村長は町村内の各種の施策を綜合施策する場合に於きまして、各種團體に對して色々指示をする、之をやれと云ふやうに命令を下す、指示をした場合に、其の團體が其の指示に應ぜざる時は、其の團體の監督官廳に處置を申請することが出來ると云ふことになつて居るのでありますけれども、斯うした處置が──假に農業會を指して私は申上げるのでありますが、農業會に對して指示が出來るか、或は實際に行へるか、唯法に現はれて居るだけであるかと云ふことに付きまして、農林大臣の御意見を伺ひたいと思ふのであります、尚又先年、慥か昭和十八年だと記憶して居りますが、農業團體法の改正の當時に、農業會は地方廳即ち府縣町村の監督を受けず、直接政府の監督に依らうと云ふやうなことで、法案の作成に付きましても、隨分内務省と農林省との間に異論があり、經緯があつて、法案の提出が遲れたと云ふことも私は承知して居る譯であります、今囘の改正に於ては何等斯う云ふ問題に付て觸れなかつたかどうかと云ふことを農林大臣に御聽きする譯であります、又其の關係の中には、町村長の指示に依ると云ふことになると、勿論町村長は其の町村の最高位である、他の團體は下であると云ふ風に農林大臣が認めて居るかどうかと云ふことも御聽きしたいのであります
最後に之を纒めまして内務省の所見を承りたいのでありますが、民主化を圖り、平和新日本の建設を圖るには、總て民度を高める必要があると私は思ふのであります、國民が眞に民主主義政治の精神を體得する精神訓練、即ち公民教育の徹底強化の必要があると思ふのでありますが、官吏を初め國民に對して是等の教養指導を政府はどう考へて居るかと云ふことを承りたいのであります
あとの問題に付きましては餘りにも細かい問題であり、尚ほ重複する點があるのでありまして、委員會に於て更に再檢討の爲に御質問申上げることに致しまして、私は以上を以て質疑を終ることと致します(拍手)
〔國務大臣大村清一君登壇」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=13
-
014・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 御答へ致します、知事の直接選擧制採用の結果、全權候補者が當選することとなりはしないかと云ふ趣旨の御尋ねでございますが、知事の直接公選に多額の運動費用を使用致しますることは固より適當でございませぬので、選擧運動費用は成べく之を低く押へたいと考へて居ります、只今の所、大體衆議院議員の選擧運動費用の制限額程度に致したいと云ふやうに考へて居ります、併しながら知事公選の場合に於きましては、有權者も非常に多いことでありまして、此のやうに選擧運動の費用を制限致しますならば、他にそれを補ふことを致さなければならぬ、就きましては知事の公選に當りましては、選擧公營を實施致しまして之を補ふことに致す積りであります
公選知事に部下の任免權を與へるべきではないかと云ふ御尋ねでありまするが、府縣廳に於ける部長以下の官吏の任免に付きましては、官制を改正致しまして、部下の官吏の進退に付きましても具情權を認める方針であります、隨て實際の運用に當りましては、知事に任免權を認めましたと略略同樣の結果と相成るものと御諒承を願ひたいのであります
府縣會を年六囘開くと云ふことに致しましたのは、府縣會に於きまして處理致しまする仕事の分量を考へ、又府縣會の性格も考へまして、隔月制を執つた譯でございまして、是も無休と致しますことは、事務の分量の上から申しまして必要がないばかりでなく、實際上も常時開會して居ると云ふ態勢に置きますことは適當でないと考へて居る次第であります、參事會を設けましたのは、一々府縣會を開いて議事をすると云ふ煩を避ける爲の、謂はば府縣會の常置委員會の考へで之を設けて居るのでございまして、府縣會に開會の隔月制を採りまする以上は、依然として參事會を存置することが必要であり、適當であると考へて居る次第であります
全國二百に餘る市の中で、特に大きい都市に對しまして特別の市制を制定すべきであると云ふことは、我が國に於きまして多年議論をされ、又要望もされて居る所でございまするが、特別市制に於きまして、如何なる區域を以て特別市を置くべきか、又其の殘存部分の關係を如何にするかと云ふ點に付きましては、中々結論を得るに困難な問題であります、又此の度地方制度を全面的に改正致します以上、是との關係も睨み合せまして、更に考慮を加へる必要があると存ずるのであります、隨て現在政府に於きましては、特別市制の確たる成案を得るに至つて居りませぬ、今後尚ほ篤と考究致して見たい積りであります
市町村長に對しましては、今後相當思切つて實質的に權限を委讓して參つて、名實共に地方自治の實を擧げることに努めなければならぬと思ふのであります、地方警察事務の一部を市の如き地方團體に委讓することに付きましては、目下研究中でありまして、是非之を實行致したい積りで居るのであります、其の他關係各省の所管に屬する事務に付きましても、各省の協力を得まして將來極力委讓することに努めて行きたい方針であります
町村に管理委員會を置きまする理由は、他の府縣、市に於きますると同樣、選擧の公正を期することが一つの著眼であります、もう一つは町村長直接公選の制を採用するに當りまして、現在町村長も立候補を可能ならしむる、選擧事務に關係ある吏員は立候補が出來ない建前でありまするが、市町村から選擧事務の責任を取除きまして、之を管理委員會をして掌理せしむると云ふことに致しますれば、現任町村長も立候補し得ることになるのでございまして、旁旁町村にも管理委員會を設 ことに致したのでございます、尚ほ管理委員會に於きましては選擧事務を掌理します以外に、別に他の權限を附與することには相成つて居ないのであります、町村に參與を置くことと致しましたのは、町村行政に於きまして各種の團體と連絡協調を圖り、施策の統合、調整を圖りますることが緊要なことでございますので、此の見地に於きまして參與を必置することに致して居ります、此の建前は今後と雖も尚ほ維持することを適當と認めまして、其のやうに現状を維持して居る次第であります、最後に町村長等の解職請求權を認めました理由、又是が濫用に付ての對策と云ふことに付きましては、此の席に於きまして數次御答へを申上げて置きましたから、それに依つて御諒承を願ひたいと存じます
尚ほ民主主義の政治の發達の爲には、國民の政治教育、國民教育を活溌に致しまして、尚又國民の間に公共精神、公民精神を振興することの必要なることは、宮澤議員と全く御同感でありまして、政府は今後各省各各其の職司に立ちまして、此の點に努力致す積りで居ります(拍手)
〔政府委員大石倫治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=14
-
015・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 只今の宮澤君の御質問に、大臣が出て居りませぬから私より代つて御答へを致したいと存じます
御質問の趣旨は此の度の改正案の提案に當りまして、能く農林省とも打合せがございましたので、御心配のやうなことはなく、圓滑なる運營が出来るものと存じます、又御質問のやうな場合に於きましては、能く町村長と農會長とが自治的精神に依つて協調をして戴きたいと云ふことを望むのであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=15
-
016・宮澤才吉
○宮澤才吉君 自席より御許しを願ひます──先程申上げましたやうに、質問の條項もまだ殘つて居りますから、再質問の點に付きましては、委員會に於て質問を致すことに致しまして、私の質問を打切ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=16
-
017・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 矢尾喜三郎君
〔矢尾喜三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=17
-
018・矢尾喜三郎
○矢尾喜三郎君 私は、先に我が黨の中村高一氏の質問に依りまして、大體要を得たと思ひまするが、之を補足する意味に於きまして、簡單に二三質問を致したいと存ずるのであります
先づ第一に御尋ね致したきことは、今囘提案されましたる地方制度の改正法律案は、其の提案理由にある如く、此の改正案に依り地方制度の組織及び運營の民主化を圖り、地方自治の本旨の徹底を期する爲め、とありまするが、内務大臣は此の法律案に依りて、果して徹底を期し得る所の確信があるかどうかと云ふことに付て私は御伺ひしたいのであります、今日まで全國民が地方制度の徹底的改革を要望して巳まなかつた點は何れにあつたか、それは少くとも市町村の改革よりも、寧ろ官僚獨善に依る官治制度に慊らざる府縣の完全自治の要望であると考へるのであります(拍手)然るに今囘の都制、府縣制、市町村制の改革案を通じて見まするに、市町村に於ては尚ほ不徹底の嫌ひもありますが、或る程度の目的を達し得る可能性があると思ひまするが、獨り府縣制に至りては、知事を公選にしたることが重點であり、他は之に伴ふ法規を改正したるに止まり、尚且つ知事を官吏に任用するが如きことは、要は改正と言はんよりも、寧ろ地方自治を攪亂するものなりと斷じても憚らないと思ふのであります(拍手)人民の輿望を擔ひ選ばれたるものを官吏に任用し、官吏服務規定で拘束するのと、今日までの官吏服務規定に縛られた天降りの官僚とどれだけ違ふのであるか、他の改正點に至りては、之に關聯する附隨的法規の改正より一歩も出て居ないと考へるのであります、是は要するに何者かの力に強ひられる儘、現在の形態を最大限度に維持して行かんとする苦心を拂はれたる、名は改正案であるが、實は現状維持案であると斷言しても憚からないのであります(拍手)今日まで多年に亙る完全自治要望の聲は、知事公選を行ひ、之を官吏にして貰ふことでは斷じてない、府縣が完全なる自治體として、何等の干渉も、何等の拘束もない、自らの力で幸福なる自らの政治を打立てて行くことであると私は考へるのであります、然らば今日まで何處に此の要望の根源があつたか、又何處に弊害があつたか、それは言ふまでもなく、地方に中央の政治力の干渉が餘りあり過ぎたことであると私は信ずるのであります、地方には地方の慣例があり、風習がある、其のやうなものは常に無視され、中央の政策或は方針が押付けられつつあつた所に其の根源があると考へられまするが、然らば果して此の改正案に依り、此の弊害を除去し得るやと考へまする時に、初めて知事公選の意義はあるのでありますが、其の知事が官吏服務規定に依り縛られ、官吏に任用される時、全く其の意義をなさないものになるのではないでせうか、此の點如何に内務大臣は御考へになつて居られまするか、尚ほ一歩進めて考へる時、公選知事が人民から選ばれたる際、地方的に種々なる政策政見を以て立候補して選ばれまするが故に、其の政策實現に努力することは當然でありまするが、其の場合中央の方針と相反すると云ふが如きことなしとは保せられぬのであります、斯くの如き場合執るべき手段は、中央と抗爭するか、或は泣寢入、徒らに公選知事の無能を天下に曝すのみと考へまするが、如何に御考へになつて居りまするか
尚ほ今日までに地方自治の發展を阻碍する最も大なるものは警察力であると考へるのであります、今日まで地方議會を通じて官と民とが意見の互ひに相對立する時、常に動くものは警察力であります、今日まで此の無言の警察力の爲め、どれだけ地方自治の本旨が傷けられて來たことかを考へまする時、公選知事の指揮監督下に置かるる警察力を、果して素人の知事が運用し調和し得らるるかどうかと云ふことを私は考へざるを得ないのであります、又公選知事と警察力とが相對立する場合、又は地方議會に於ける官と民との對立抗爭、或は人民の不信任表現等の場合を考慮する時、常に動くものは警察力であると考へるのであります、地方自治の發達を常に毒するものは警察力であると考へます、若し之を濫用し此の運用を誤るならば、地方の自治の如きは一朝にして覆へされると云ふことは私が言ふまでもないのであります、地方自治の健全なる發達を圖る爲に、先づ地方自治より警察力を除去することを圖らねばならぬと考へますると共に、現在市町村が曲りなりにも表面圓滿に維持されつつあるのは、此の警察力のなき結果と思ひます、此の點に立ちて地方自治より此の弊害を除去する爲め、斷乎として新しき方策を打立て改革する所の御意思がありませぬか、先に我が黨の中村高一氏に依つて主張されましたから私は此の點は省きますけれども、少くとも司法警察は司法省の直屬とし、さうして一面行政警察に於きましては、此の行政警察として取扱つて居る所の一切のものを、地方の自法體に全面的に御委讓になる所の御意思がないかどうかと云ふことを承りたいと思ふのであります
又之に關聯致しまして、若し今日の制度の上に於きまして、警察制度を今日の公選せられたる知事の指導下より省く爲には、私は知事の官吏任命と云ふことを阻止しなければならないと考へるのであります、斯う云ふ意味に於きまして内務大臣は之に對しましてどう云ふ御意見を持つて居られるかと云ふことに付て承りたいと存ずるのであります
次にもう一つ御伺ひ致したいことは、今日までの市町村なるものは、名は市町村でありまするが、其の實は市町村民の市町村にあらずして、市町村會議員の市町村であると私は斷言して憚らないのであります(拍手)故に其の行はんとする政策も事業も、常に市町村會議員の御機嫌を伺ふことのみに汲々として、眞に市町村民の幸福は是等市町村長を取卷く地方的な「ボス」達に依つて歪められて來たのであります、隨て其の市町村長も是等の連中が自己達に氣に入る者を迎へ、据付けて來たので、表面は恰も圓滿の如く見えて居りましたが、實は是等の「ロボット」か、或は御機嫌取りに汲々とするのみならず、市町村民の利益幸福は多分に歪められて來たのであります、併し今囘の公選に依りまして、眞に人民の幸福を圖ることの出來る立派な人が選ばれると思ひまするが、其の反面、市町村會議員に於ては、眞に民主主義政治に徹した人が選ばれると云ふことは、急速には困難なる状態で、舊態依然たる分子が多數選ばれることは想像し得るのであります、然る時、公選知事等は是等の分子と關係なく選ばれて來たのであります、だから事毎に地方議會に於て正面衝突をすることは、私も多年地方政治に關與致しまして經驗することで、反對せんが爲の反對と云ふことはあり勝ちなことで、特に地方に於て甚だしいと思ふのであります、斯くの如き時、公選の市町村長が立派な政策を斷行しようとしても、是等の人々に依り阻止、即ち否決されると云ふ運命に陷り、健全なる地方自治の本旨は全うし得ないと思ふのであります、之に對し政府は地方議會の自覺を要望するやう仰せになるかも知れませぬが、一朝一夕では斷じて全地方民をして民主主義に徹せしむるものではありませぬ、又斯くの如き誤りを矯正せずには、斷じて健全なる地方自治はあり得ないと考へます、之を矯正し得る途は、市町村長の解散要求權を、唯不信任の場合に限らず、之を擴大し、政策の否決其の他に適應せしむるやう改正する意思なきや、是なしでは市町村長は公選されるも、自分の女房役たる助役の推薦に於てすら──今日までは市町村會議員に依り選ばれたる市町村長でありましたから、其の助役の推薦は默認して來たのでありますけれども、公選市町村長と對立した場合、助役の推薦すら圓滿に推薦することが出來ないと云ふやうな結果に私は陷るのではないかと考へるのであります、之に對し市町村長に大なる權限を持たすと云ふことは、市町村長の行き過ぎをし出かすと云ふやうなことが起るかも知れませぬけれども、それは所謂民衆の解職權或は議員の不信任案に依つて完全にそれを監視し、之を阻止することが出來るものであると私は考へて居るのであります、此の點に關しまして内務大臣は如何なる御考へを持つて居られまするか、御伺ひ致します
最後に御伺ひ致したいことは、今日地方に於きまして無用の長物と言はれ、又失業官吏の救濟所と言はれて居りまする所の地方事務所制度に對しまして、如何なる御考へを持つて居られるかと云ふことを御伺ひ致しまして、私の質問を終ります(拍手)
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=18
-
019・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 御答へ致します、今囘の地方制度の改正は府縣行政を民主化し、之を自主化すると云ふ點に重點の一つが指向されて居るのであります、府縣行政を弱體化することは宜くないことと考へて居るのであります、一擧に府縣を完全自治體に局限するやうな改正を致しまする時は、今日の現状を以て致しましては、府縣の行つて居りまする所の國家行政を他の機關に分屬せしむることに相成ると想像せられるのであります、御話のありました警察權の如きも、其のやうな歸屬に相成ると思はれるのであります、此のやうな府縣行政の弱體化は宜くないことと考へて居るのであります、知事の直接公選に依りまして、必ずや民衆の輿望を擔ひました立派な信頼すべき知事が選出せらるることは、私共の深く期待を致して居る所であります、恐らくは今日の官選知事よりも其の素質は數段と向上されることに相成ると思ふのであります(拍手)此のやうに有力にして輿望のある知事には、現在の府縣行政の全部は固より、今後更に府縣知事の權限を擴張致しまして、地方行政の健全なる發達、殊に其の民主化を圖らねばならぬと考へて居るのであります、之に依りまして單に府縣の擔つて居ります所の自治行政部面のみならず、官治行政部面にも民主的運營が行はれるやうに相成る次第でありまして、警察の如き國家的性格を現に持つて居りますものも、知事の下に運營して行くことが我が國政治の民主化の上に極めて必要であると考へて居る次第であります、知事をなぜ官吏とするかと云ふ點に付きましては、既に御説明を申上げましたので、省略致して置きます
町村制に於きまして、民主政治が發達して參りますならば、其の町村會に於きましても民意が反映するでありませう、又町村長の公選に於きましても、同樣に民意が反映すると思ふのであります、そこで町村會と町村長とは同一の主義方針を持つて居る人が選ばれることが常態であらうと思ふのであります、故に其の間に無用の摩擦の起るやうなことは、多くの場合に於きまして想像することが出來ないのであります、一部少數の場合に於きまして、其のやうな摩擦が起りました場合に於きましては、或は町村長の不信任決議なり、乃至は町村會の解散と云ふことで、政治的に適當に解決され得ると思ふのであります、又町村會議員が不當違法なる決議のみを致すと云ふやうな好ましからざる存在となりました場合に於きましては、必ずや町村民が町村會議員の退職請求權を發動することに相成らうと思ふのであります、それに依つて解決が出來ないと云ふ場合に於きましては、新制度に於きましても監督官廳の町村會の監督權は尚ほ存續することに相成つて居りますので、最後の段階に於きましては、其のやうな措置も執り得ると云ふことを御諒承願ひたいのであります
尚ほ最後に地方事務所に付ての御尋ねでありますが、現在の地方事務所に付きましては世間に色々の論議があるのでありまするが、併し現在の状態に於きましては地方事務所が食糧の供出、經濟行政其の他の點に於きまして重大なる任務を持つて居りまして、多數の地方事務所は十分に其の機能を發揮して居る次第でありまして、今日の状態から直ちに地方事務所を廢止するとか、之を改組すると云ふやうな必要は認めて居ない次第でございます(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=19
-
020・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の質疑を延期し次會に之を繼續することとし、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=20
-
021・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=21
-
022・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て御通知致します、本日は是を以て散會致します
午後四時五十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01319460706&spkNum=22
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。