1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十一年七月九日(火曜日)
午後一時四十八分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十三號
昭和二十一年七月九日
午後一時開議
第一 東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第二 市制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第三 町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第四 府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第五 隱匿物資等緊急措置令(承諾を求める件) (委員長報告)
第六 金融緊急措置令(承諾を求める件) (委員長報告)
第七 日本銀行券預入令(承諾を求める件) (委員長報告)
第八 昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
(委員長報告)
第九 臨時財産調査令(承諾を求める件) (委員長報告)
第十 昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)(委員長報告)
第十一 昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
(委員長報告)
第十二 昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
(委員長報告)
第十三 昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
(委員長報告)
第十四 昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件) (委員長報告)
第十五 昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
(委員長報告)
第十六 昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
(委員長報告)
第十七 昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
〔朗讀を省略した報告〕
一、議員から提出された議案は次の通りである
青年禁酒法案
提出者
林平馬君 田原春次君
北村徳太郎君 片山哲君
阪東幸太郎君 西尾末廣君
竹内茂代君 田中萬逸君
和崎ハル君 徳田球一君
森山ヨネ君 水谷長三郎君
(以上七月六日提出)
國民健康保險制度の刷新に關する建議案
提出者
大野伴睦君 北れい吉君
田中萬逸君 成島勇君
(以上七月八日提出)
一、議員の異動
東京都第一區選出議員鳩山一郎君は退職者となつた
東京都第一區選出議員鳩山一郎君が退職者となつたに付其の補闕として島村一郎君が當選された
福井縣に於て再選擧の結果堂森芳夫君が當選された
福井縣選出議員薩摩雄次君は辭職された
香川縣選出議員三木武吉君は辭職された
神奈川縣選出議員河野一郎君は辭職された
廣島縣選出議員田中貢君は辭職された
廣島縣選出議員渡邊忠雄君は辭職された
福岡縣第一區選出議員稻富稜人君は辭職された
宮崎縣選出議員甲斐政治君は辭職された
東京第二區に於て再選擧の結果廣川弘禪君が當選された
廣島縣選出議員田中貢君、同渡邊忠雄君の補闕として林興一郎君、藤井正男君が當選された
福井縣選出議員薩摩雄次君の補闕として青木清左ヱ門君が當選された
福岡縣第一區選出議員稻富稜人君の補闕として古賀太郎君が當選された
神奈川縣選出議員河野一郎君の補闕として中西伊之助君が當選された
一、去六日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
一九六 副議長 木村小左衞門君
一九七 議 長 樋貝詮三君
三四二 神奈川縣選出議員
三四三 香川縣選出議員
一、去六日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第七部選出
懲罰委員 井上赳君(西山冨佐太君補闕)
一、去六日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
帝國憲法改正案(政府提出)委員
理 事 青木泰助君(長井源君去六日理事辭任に付其の補闕)
一、去六日次の通り特別委員の異動があつた
帝國憲法改正案(政府提出)委員
辭任 林連君 補闕 天野久君
辭任 井上赳君 補闕 久芳庄二郎君
一、昨八日衆議院規則第十五條に依り議長に於て議席を次の通り指定した
九 古賀太郎君
四二八 中西伊之助君
一、昨八日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
二三二 齊藤行藏君
二四二 加藤一雄君
二六〇 中野寅吉君
二六一 山村新治郎君
三〇二 竹内克己君
三四二 圓谷光衞君
三五八 越原はる君
一、昨八日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第九部選出懲罰委員 山崎猛君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=0
-
001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きます、此の際新たに議席に着かれました議員を御紹介致します、第九番、福岡縣第一區選出議員古賀太郎君
〔古賀太郎君起立〕
〔拍 手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=1
-
002・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 第四百二十八番、神奈川縣選出議員中西伊之助君
〔中西伊之助君起立〕
〔拍 手〕
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=2
-
003・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第五を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=3
-
004・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=4
-
005・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第五、隱匿物資等緊急措置令(承諾を求める件)を議題と致します、委員長の報告を求めます──委員長中野寅吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=5
-
006・会議録情報2
――――◇―――――
第五 隱匿物資等緊急措置令(承諾を求める件) (委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 隱匿物資等緊急措置令(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 中野寅吉
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
〔中野寅吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=6
-
007・中野寅吉
○中野寅吉君 本委員會に付託されました隱匿物資等緊急措置令に對し事後承諾を與へる件の會議の經過竝に結果を御報告申上げます
先づ七月二日此の會を開き、委員長、理事の選擧を致しました、委員長に不肖中野、理事に石原圓吉君、水田三喜男君、山田悟六君、井上良次君が當選致しました、其の後此の件に付きましては、前後四囘に亙つて委員會を開催して仔細に檢討致しました、即ち商工大臣より本令を發布しなければ相成らないやうになつた事情を詳細に説明され、それから本緊急勅令の施行の内容、状況等細かに説明されました、質疑に入りまして九鬼紋十郎君、山田悟六君、田中実司君、原侑君、八木佐太治君、小柳冨太郎君、長谷川保君、井上良次君、飯田義茂君、石原圓吉君等より、本令實施の效果、摘發物資の處分の方針、闇市場に流入する物資の取締の問題、警察力の再建及び警察官の待遇改善の問題、朝鮮人等の隱匿物資の摘發の問題等、廣く經濟、治安に亙りまして熱心な質疑がありました、之に對し、星島商工大臣、吉田商務局長、大村内務大臣、谷川警保局長、楠見農林次官、佐藤司法省刑事局長、それから厚生省當局の出席を求めました、是は主として朝鮮人關係のことを聽かうとしたが、都合上中々厚生省も忙しくて來ることが出來なかつた、併し星島商相は等しく是れ國務大臣であるから、厚生省所管に付ても責任を負つて答辯すると云ふので、朝鮮人は成べく早く引揚げさせると云ふことを御答へになりました
そこで最後の討論に移りまして、自由黨を代表して内海安吉君、又進歩黨を代表して山田悟六君より、本令の如き非常立法は物資需給の逼迫せる現況に於ては已むを得ないと思ひますけれども、今後速かに經濟の再建を圖つて物資の生産を増加すると共に、國民の道義を昂揚し、──ここには皆隨分力を入れました、國民の道義を昂揚し、と云ふことは、後に社會黨の方も協同黨の方も、新光倶樂部の方も、無所屬も道義昂揚に力を入れた、特に是は進歩黨と自由黨だけではない、國民道義の昂揚と云ふことに付ては皆な力を入れた、是は本當に力を入れた、國民の道義が廢れて居るから物を隱匿されて居るのであると云つて、本當に眞面目に眼に角を立てて議論されたのである、國民道義の爲め嬉しく感じました(拍手)そこで隱匿物資の摘發と云ふ如き不名譽の法令は、速かに廢止するやうに處置されたき旨の希望があり、斯う云ふ法律は甚だどうも不名譽であると強調した、社會黨を代表して井上良次君より、本令に依る摘發の效果は十分でない、民主的方法に依り迅速に行ふと共に、配給に付ても民主的機關に依り行ひ、物資の配給の公正を期せられたい、又本令に依り摘發された食糧は、勞働者、戰災者等生活困難な所へ優先的に配給されたい、又隱匿退藏物資の闇市場流入防止を嚴重に行ふと共に、公定價格の維持に努めて、速かに本令を廢止するやうに希望すると井上君から述べた、それから新光倶樂部を代表して仲子隆君より、本令を初め商工關係の法令はどうも難解である、難かしい、もつと分り易く平易に努めて貰ひたい、斯う云ふ希望がありました、協同民主黨を代表して飯田義茂君より、食糧缺乏の折柄物資を農村漁村に優先的に配給して貰ひたいと云ふ希望があり、最後に無所屬を代表して木村チヨ君より、本令に依る摘發物資を引揚民、乳幼兒等に優先配給されたいと云ふやうなことを、婦人代議士であるから乳幼兒の所で大いに力を入れられて、それぞれ本案に贊成されたのであります、仍て採決の結果滿場一致を以て本令に對し承諾を與ふべきものなりと決まりましたから、どうぞ宜しく願ひます、此の段御報告申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=7
-
008・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 本件は承諾を與ふるに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=8
-
009・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て本件は承諾を與ふるに決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=9
-
010・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第六乃至第十七の十二件を繰上げ一括上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=10
-
011・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=11
-
012・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第六、金融緊急措置令、日程第七、日本銀行券預入令、日程第八、昭和二十一年勅令第九十號、日程第九、臨時財産調査令、日程第十、昭和二十一年勅令第百二十八號、日程第十一、昭和二十一年勅令第百十一號、日程第十二、昭和二十一年勅令第百二十七號、日程第十三、昭和二十一年勅令第百五十九號、日程第十四、昭和二十一年勅令第百七十九號、日程第十五、昭和二十一年勅令第百八十號、日程第十六、昭和二十一年勅令第二百四十一號、日程第十七、昭和二十一年勅令第二百四十二號、右承諾を求める件十二件を一括して議題と致します、委員長の報告を求めます──委員長竹田儀一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=12
-
013・会議録情報3
――――◇―――――
第六 金融緊急措置令(承諾を求める件) (委員長報告)
第七 日本銀行券預入令(承諾を求める件) (委員長報告)
第八 昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)(委員長報告)
第九 臨時財産調査令(承諾を求める件) (委員長報告)
第十 昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)(委員長報告)
第十一 昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件) (委員長報告)
第十二 昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件) (委員長報告)
第十三 昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件) (委員長報告)
第十四 昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件) (委員長報告)
第十五 昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件) (委員長報告)
第十六 昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件) (委員長報告)
第十七 昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件) (委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 金融緊急措置令(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 日本銀行券預入令(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 臨時財産調査令(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月九日
委員長 竹田儀一
衆議院議長樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
〔竹田儀一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=13
-
014・竹田儀一
○竹田儀一君 只今議題となりました金融緊急措置令外十一件の緊急勅令に對する事後承諾案の委員會に於ける審議の經過竝に結果に付て御報告申上げます、右十二件の緊急勅令の事後承諾案に付ては、本月三日から六日に亙り委員會を開くこと五囘、愼重審議を遂げ、現下深刻なる世相を反映致しまして終始熱心に質疑應答が行はれたのであります、詳細は速記録に依つて御承知を願ふことと致しまして、其の主なる質疑應答の内容を御紹介申上げたいと思ひます
第一に金融緊急措置の廢止の時期如何と云ふ御質問がありましたが、之に對し政府よりは、本措置は飽くまでも臨時的な措置であつて、出來得れば可及的速かに廢止して、新圓一本の經濟を確立すべきであると考へるが、現下の物資の状況、物價の情勢、財政の見透し等より見る時は、今直ちに之を廢止することは困難な事態にある、故に漸進的に新圓經濟に移行せしむることに致したい旨の御答辯がございました
第二に「インフレーション」對策として金融面に於ては金融緊急措置に依り相當の效果を收めたが、物資面に於ける措置が不十分であつた爲に、結局に於て成功して居ないと認められるが、政府の對策はどうかと云ふ御質問がありました、之に對して政府よりは、「インフレーション」の防止は金融の措置のみに依りなし得るものでないことは御指摘の通りであつて、殊に物資の不足せる現状に於ては、物資の生産及び配給等に關する綜合的諸施策と一體的に行ふべきものであつて、此の方針の下に鋭意努力しつつある旨の御答辯がございました
第三に個人的生活費に於ける現行五百圓の枠の問題が凡ゆる角度から論議せられたのでございます、例へば物價の現状に顧みまして、一世帶五百圓を以てしては到底最低生活を維持することは困難であるから、直ちに之を緩和すべきものではないか、更に五百圓以下の勤勞所得に對する分類所得税の課税は廢止してはどうか、又政府の下級職員の待遇を大幅に改善すべきではないか等の御質疑が行はれたのであります、之に對しまして政府よりは、給與支拂に對する現行五百圓の枠は成べく早い時期に廢止したい考へであるが、現下諸般の情勢より致しまして、今直ちに之を實行する譯には行かない、尚ほ個人生活費は實際上五百圓に限られて居るものではなく、封鎖預金から拂出も認められて居るのであるから、非常に窮屈とは思ひまするが、今暫くの間お互ひに乏しきに耐へて御辛抱をして戴きたい、次に勤勞所得に對する分類所得税の課税に付きましては、過般基礎控除額を月額五十圓より二百圓に引上げて負擔の輕減を圖つたのであつて、之を直ちに撤廢すると云ふことは現行税制の上より見まして適當でないと考へる、又政府下級職員の待遇改善に付ては、最近大體五割程度の増額を決定したが、尚ほ若干の増加を考慮中である、更に給與制度の根本的改革に付ても目下研究中であるとの御答辯がございました
第四に金融緊急措置は特に中小企業をして極度の資金難に陷らせて、生産の増強を阻碍して居ると認められるが、政府の御所見はどうであるかと云ふ御質問に對しましては、政府は中小工業が我が國の産業上に於て占めて居る地位の重要性は十分承知して居る、是が金融上困難を招來することのないやう金融機關の指導に當つては適當な配慮を加へて居ります、又國家的な緊要産業に對する金融の疏通に付ては復興金融機關の設立も考慮中である、又それまでの經過的措置も講ずる旨の御答辯がございました
第五に引揚者に對する金融上の援護に付て、庶民金庫の貸付は少しく消極的に過ぎるから、之をもつと積極的に活動せしめてはどうか、斯う云ふ御質問に對しましては、政府よりは引揚者の實情は實にお氣の毒であるから、十分と云ふまでには行かないかも知れないが、豫算の許される範圍内に於きまして援護の方法を講じたい、併し庶民金庫は救濟機關ではないから、無條件に貸付を行ふ譯には行かないが、物的擔保がなくても保證人があれば宜いので、相當活用し得るものと考へる、殊に引揚者の團體的信用を利用した事例もある旨の御答辯がございました
第六に物價に對する根本的方針はどうか、特に價格調整補給金の取扱及び煙草、郵便料の値上との關係に付き質されたのに對しまして、政府としては必ずしも物價の引下に付ては考へて居ない、又高物價政策も考へて居るのではない、要するに一定の水準に於て物價を安定せしむることを眼目とする、又價格調整補給金は、國家的見地から特に存置するの必要あるものを除くの外は漸次廢止する方向で進みたい、尚ほ煙草等の値上は物價水準の引上を意味するものではなくて、唯一般の物價水準に近付けたに過ぎない旨の御答辯がございました
第七に財産税の免税點、負擔の衡平、不動産の評價方法、税收入額に付て質されると共に、其の收入金の使途に付て御質問なされたのに對し、政府よりは具體的な御言明はなかつたのでありますが、免税點は少くとも三萬圓以上となること、負擔の衡平に付ては十分の考慮を拂ふこと、不動産の評價は原則的には賃貸價格を基準とし、評價委員會に諮つた上、評價の適正を期すること、税收入額は五百億圓乃至千億圓の範圍内であること、及び税收入金の使途は、現下の情勢では其の一部を一般財政支出に充てることも已むを得ないと考へて居る旨の御答辯がございました
第八に終戰後の新事態に適應する租税體系の根本的改革を行ふ必要があると認められるが、政府の方針はどうかと云ふ御質問に對しまして、政府からは税制全般に亙る根本的改革の必要は認めるけれども、今日は未だ其の時期でないと考へる旨の御答辯がございました
第九に遊興飮食税、特別行爲税を廢止し、又物品税に付て課税方法の改善を行ふの意思はないかとの御質問に對し、政府としては遊興飮食税に付ては御趣旨に副ひ難いが、特別行爲税及び物品税に付ては、其の方針で研究中である旨の御答辯がございました
最後に財政再建の爲に鐵道、通信事業等の官營事業を民間に拂下ぐる考へはないかとの御質問に對し、政府としては左樣な意向は全く持つて居ない旨の御答辯がございました、其の他軍需補償打切の範圍、國債の處理方針等に付ても質疑應答が行はれたのでございますが、是等は速記録に讓りたいと存じます
大體以上の如くにして質疑を終りまして討論に入り、細田忠治郎君、白木一平君、河野密君、東隆君、若林義孝君、伊藤幸太郎君より、それぞれ原案通り承諾を興へることに贊成する旨の御意見を述べられ、それと同時に將來の運營に關して、社會黨其の他より若干の希望意見を提示せられたのであります、全部を申述べますことは餘りに長くなりますから、其の主なるものを申上げますと、一、金融に關する措置は巧遲よりも拙速を貴ぶことを旨とし、事態の推移に即應して勇敢且つ迅速に機動的運營を圖るべきこと、二、「インフレーション」の防止の爲に、金融面に於ける施策と共に、食糧其の他物資面に於ける綜合的施策を強力に推進すべきこと、三、生産増強の爲め事業資金、特に中小工業、農業に對する資金の疏通に付て格段の留意をなすべきこと、四、個人生活資金の限度に關しては、物價昴騰の現状に鑑み、新たなる構想をなすべきこと、五、農業關係所要資金、例へば開開資金、中小産業の共同組織體の所要資金等に付ては、自由支拂の範圍を擴張すべきこと等でありました、而して採決の結果、全會一致を以て本案を承諾することに議決致しました、以上御報告申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=14
-
015・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 金融緊急措置令外十一件は承諾を與ふるに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=15
-
016・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て十二件とも承諾を與ふるに決しました(拍手)
議事日程第一乃至第四の四案を一括して第一讀會を開き前會の議事を繼續致します──大原博夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=16
-
017・会議録情報4
――――◇―――――
第一 東京都制の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第二 市制の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第三 町村制の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第四 府縣制の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
━━━━━━━━━━━━━
〔大原博夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=17
-
018・大原博夫
○大原博夫君 私は協同民主黨を代表致しまして質問を致します、政府は地方自治制の民主化を急速に斷行する爲に、地方制度改正案を御提出になりました、固より民主化は日本の履行すべき絶對の義務であり、又新日本建設の第一段階であります、而も國民の民主化は地方制度の改正に依つて本格的に踏み出すのであります、本案は相當思ひ切つた改正案であり、又或る部面に於ては極めて進歩的な改正案であります、それだけに愼重に審議しなければなりませぬ、又此の變革期に當りましての法律の改正は、萬全の注意を拂はなければならぬと存じます、就きましては重複も致すやうでありますけれども、大體補足すると云ふ意味に於て、左の數點の質問を致したいと存ずるのであります
先づ第一は知事が官吏であると云ふ點でありますが、是は前に御質問の方方が全部觸れられた問題でありますから理由は省略致しますが、種々檢討を致しましたが、知事が全く官僚と化すか、又は政府と同一の政黨人となるか、此の二つの場合以外は、此の機構では運用の途はないやうであります、民主化を目的とする改正の官僚化は、是は勿論論議の外でございますが、政黨人、特に政府と同一政黨に屬する者以外の者は、運用が困難であると存ずるのであります、政府と反對の政黨人にも勤まる所の機構制度にしなければ、一旦、一黨の專制に陷ると、其の專制から容易に脱出することの途も開かれないと思ふのであります、知事を公吏とすると云ふのが最も適當であると存ずるのでありまするが、過日來内相の御答辯は、是は官吏とすると云ふことを屡屡御囘答になりましたので、是は改めて御尋ね致しませぬが、將來に於ても知事を公吏にすると云ふ途はないとの御意見でありますか、之を御伺ひ致したいのであります、尚ほ又知事の具情權は完全に尊重すると云ふ御意思を承ることが出來ますかどうか、此の問題では以上の二點を御伺ひするものであります
第二は、是は第一問と反對な立場のものでありますが、公選せられたる知事が、官吏として適當でない場合もあり得るのであります、又適任者と思はれる人であつても、どうか致しまして、政府の指揮監督に從はない場合も自然あり得ると思ふのでありますが、此の場合府縣制では罷免すると云ふ權利がないやうであります、之に對して政府には何か對策があるのでありまするか、政府は官吏服務紀律に問ふのではないかと考へて居るのでありまするが、さうなると公選の趣旨と矛盾を生じて、又政黨意識にては服務紀律の問題が故意に起らぬとも限らないと思ふのでありますが、是も官吏にするから起る所の問題でありますが、果して如何なる御意見を持つて居られますか、御伺ひを致します
第三には知事の警察權は如何樣に考へられて居りまするか、從來通りと考へて宜しうございませうか、警保局長から警察部長への直結の如きは、地方自治の民主化を目的とする以上改めらるべきものでないかと存ずるのであります、又市町村長に行政警察權を與へることは用意して居られるかどうかを御伺ひ致します
第四番目に府縣制の自治は以前から變態なものであつたのでありまするが、約十年前より自治と云ふ性格は全く失つて、總て政府の地方出張所的の性格と化してしまつたのであります、知事は實質上は殆ど權限を失つて、地方出張所長と云ふやうな格になつたのであります、其の原因は種々あるのでありまするけれども、茲に指摘致したいのは、例の中央集權であります、地方税中の良いものは、即ち彈力性のある良いものは中央に取上げてしまつて、過日も御質問のあつた通りでありますが、或は國庫下渡金として、或は國庫負擔金として、或は國庫補助金として、或は配付税として地方に分配せられるのであります、是も斯く致しまして、實に全部中央に權利を集めてしまつた、さうして地方自治體を其の手中に握つたのであります、地方の税源は是が爲に枯渇してしまひまするし、一方に於きましては政府が勝手に莫大な事業を計畫して、さうして補助を與へることにしたのであります、是は地方の實情を殆ど考慮に入れずに事業を配分せられまして、其の補助は全額國庫負擔もございますけれども、多くは三分の一負擔、或は三分の二補助、或は四分の二補助と云ふやうな補助の仕方を致しまして、縣の方に於きましては此の補助の足りない所は全部之を補つて、事業を主として縣費で行つたのでございますが、地方に於ては殆ど此の補助事業に足し前をした費用に依つて、地方費はなくなつてしまつたのであります、眞に地方に適切なる事業を行はんと致しますならば、必ず起債に依らなければならないのでありますが、此の起債は餘程のことがなければ許されないのでありまして、地方の新規事業が起る筈はないのであります、それ故に知事は必要なる事業の國庫補助乃至は起債の運動にのみ沒頭して居つたと云ふやうな状態でありまするし、尚且つ地方の豫算を作りますのには、是は大藏省に行つて色々と指圖を受け、豫算もそこで作つたのではないかと思はれるやうな豫算の編成の仕方をして居つたのでありまして、實に實質上知事の權限と云ふものは殆どないと云つて宜い實情であつたのであります、斯くして知事は府縣會に提出致しました豫算は、絶對の主張と權威を以て之に臨んで居つたのであります、隨て斯樣なことでは、法制の上で地方自治制度の組織が出來、知事が民選になりましても、地方に彈力性に富む十分なる財源を與へざる限り何の地方自治であるか、何の民主的運營であるかと云ふことを言ひたくなるのであります、然らざる限り依然として中央集權で官僚化せざるを得ないのであります、如何なる税を中央より地方に委讓する御計畫でありますか
第五は府縣民税の新設、町村民税の増税、地租、營業税、所得税の附加税の大幅引上、及び配付税の増額に依つて地方に與へんとせられるやうでありまするが、是は地方制度の改正が行はれなくても是等の増税は出さなければならない、與へなければならないものではなかつたかと思ふのであります、地方制度を改正致しまして、地方財政の自主確立を圖ると云ふ際に當つては、中央に取上げて居る所の税を一つでも委讓しなければならないと存ずるのであります、以上の税の新設或は大幅増徴に依つて是は實に重税となると思ふのでありますが、斯うした甚だしい住民負擔をさせて地方制度確立に出發すべきではないと思ふのであります、速かに事務の簡素化を圖つて國費の節減を行ひ、軈て迫り來る所の經濟的の苦難を救ふ途を圖るべきであります、事務の簡素化は民主化の第一要件であります、事務の簡素化の御計畫はあるかどうか、御伺ひを致すのであります
第六は選擧人が五分の一の連署をすれば、知事、市町村長及び議員等の解任又は地方議會の解散の請求が出來ると云ふ點に付てでありますが、府縣及び大都市に於ては大した問題はないと思はれるが、小都市及び町村に於て選擧人の五分の一以上を纒めると云ふことは、是は容易なことである、隨て屡屡斯うした事態を發生し、自治體の紛爭を繁からしめるものであると思ふのであります、内務大臣は少數者にも發言の機會を與へる爲に五分の一にしたと答辯をせられましたが、法律にも表から見て良くないと思ふものでも、裏から見ればさう定める外仕方がない場合もあるのであります、此の問題に付ても五分の一以上としたと云ふことが百歩を讓つて正しい議論であるとして、其の裏の面から見て、此の數字に依つて町村に混亂と紛糾を來すものであると云ふことを御考へになりませぬでしたか、之を御伺ひ致したいのであります、民主主義の其の本質から言へば多數決に從ふと云ふことも、是れ亦あり得ないことでありますが、是は國家社會の秩序の上から起り得るものとして一般に認められて居る所であります、併し少數に依つて律せられると云ふことはあり得ないと思ふのであります、少數の意見に聽くことは固より重要でありますが、本問題の如きは甚だ重大なる結果となるのであります、内務大臣は又、罷免、解散は正當なりと認めたる場合にのみ行ふと答辯を致されました、請求權は餘程のことでないと使用せられないやうにして、最後に知事の認定を俟つと云ふことは已むを得ないことであるが、請求の權利が濫用に陷りはしないかと心配さるる程度にまで容易く權利を與へて、其の認定を知事に持たせると云ふこと、即ち其の度毎に町村長の生殺與奪の權を知事に持たせると云ふことは、一般的に見て妥當なることであるとは思はれないのであります、之に依つて人格の立派なる所の町村長が立候補をしないであらうと豫想せられるか、左樣なることを豫想致されませぬか、假令豫想されても已むを得ないとの御見解でありますか、御意見を伺ひたいのであります、選擧に於て多數の候補者があり、其の當選資格者を選擧人の四分の一以上との解釋は、是は比較的多數の意味なりと解して居るのでありますが、此の彈劾權の場合に於て五分の一以上は妥當なりと思はるる所の根據を御伺ひ致したいのであります、民主主義は多數を以て解決し、其の間介在者の意思如何に依つて左右せられないやうな制度とすることでありまして、比較的少數の意思を採用して、介在者たる人に依つて認定すると云ふことは民主化に反しないのでありませうか、此の點も御意見を御伺ひ致したいのであります、解職の請求に對して、請求せられた者は民主的に對抗の權利が認められて居りませぬ、是は片手落ちではないかと思ひます、又解職請求者、署名者よりも更に多數の署名を以て、解職すべからずとの意見を提出したる時の結果は、如何に對處せられるのでありますか、此の場合は知事の認定に依るのでありますか、御伺ひを致すのであります、又内務大臣は、將來政黨政治が發達するから、是が濫用に陷ることはないと答辯をせられたのでありますが、私達は政黨の弊害として却て此の濫用を憂慮致して居るものであります、斯かる法律は此の濫用に對する門戸であると思ふのであります、此の點に付きましても御意見を御伺ひ致したいのであります、此の問題を特に分析して質問を致しました理由は、斯かる制定に依ると、町村長の地位は極めて不安定なるものでありまするし、洵にうるさくなりますので、立派なる人物が町村長として立候補しないであらうと憂慮するものであります、内務大臣の如くに氣輕に看過するには、私は餘りにも重大であると思ふのでありまして、私の憂慮するが如くんば、本案は市町村制度を破壞するものではないかと考へるのであります
第七番は知事と府縣會、市町村と市町村會議員の間に於て衝突が屡屡繰返されると思はれるのであります、殊に府縣會、市會の如きに於て、知事、市長が之に對抗する手段として解散のみを與へてあることは、是は其の解散をすることに依つて不當に議會を壓迫するものではないかと思ふのであります、之に對する政府の御所見を御伺ひ致したいのであります
最後に地方制度の改革案を檢討するに當りまして熟々感じられましたことは、權利の主張に終始して居ることであります、固より解放の爲めの制度の改正でございますから巳むを得ないことでございますが、地方制度、殊に町村の政治に於ては、權利の主張一點張では到底治めて行くことは出來ないので、是は自治精神を以て運用するのでなければ、其の運用は極めて困難であるのみならず、屡屡破壞にまで陷るのであります、民主主義は鬪爭であり、政治は鬪爭に陷り易きものであり、政治は鬪爭するものなりとの觀念が殆ど支配的となりつつあるのでありますが、先づ既設の封建制度を破壞する爲に、鬪爭を必要とする場合も固よりあり得るのであるが、鬪爭が最後の目的にあらずして、自主、相助、相愛の協同精神を以て、鬪爭のなき協同社會の建設こそ、我等の目標でなければならないのであります、内務大臣は此の法律の公布に當りまして、協同精神を以て此の法律の運用を誤らざるやう注意を喚起するの御意思はございませぬか、之を御伺ひ致したいのであります、之を以て私の質問を終ります(拍手)
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=18
-
019・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 公選知事を官吏と致します理由に付きましては、現在の府縣の持つて居りまする性格から致しまして、又現下の我が國情から致しまして、之を官吏とすることが適切であると云ふことは、先囘も御答へ申上げた通りであります、公選せられ、輿望を擔つて出て參りました府縣知事を、之を官吏と致すと云ふことで、そこで直ちに惡い意味の官僚性が附著する譯でもないのでありまして、尚ほ私共と致しましては、今後の府縣廳の吏僚制度と云ふものは、終戰後の新事態に即して大いに改善さるべきもの、又改善する方針でございますので、是で差支へなく府縣行政は運營が出來るものと確信致して居ります、尚ほ御尋ねの將來の問題でございますが、是は日本の民主化が段々軌道に乘りまして、地方政治も發達するに伴ひまして、必ずや中央集權の弊を矯めて、地方分權となり、又其の結果茲に官吏制度に於きましても新しい改善をすると云ふ時期もありませう、殊に新憲法成立の曉に於きましては、必ずや公務員法とも云ふべきものが立案されるものと信じますので、將來に於きましては、或は官吏制度と云ふものをすつかり廢めまして、一律の公務員制度となることも有り得ると思ひます、將來知事を官吏とすると云ふことは、改め得る機會も來るものと私想像致して居ります
次に地方政治の自主性を確保すべき點に付ての御意見は全く御同感であります、地方制度を如何に民主化しましても、地方政治の上に於きまして、從來の如き中央依存性を持續して居りましては、地方團體の自主性、自律性は確立されないことであります、此の點は大いに努めなければならぬ點であります、今期議會に提案せんと致して居ります地方税制及び財政の改正に付きましては、我が國の窮迫したる經濟状況が根本でございますが、十分なる財源を地方自治確立の爲に與へることが遺憾ながら出來て居りませぬが、併し現状に於て許す最高限度の方途を講じた積りであります、將來我が國經濟財政の立直りと相應じまして、更に地方財政の自律性、自主性の確保に付ては、第二段の考慮を成べく近い將來に於て講ずべきものと云ふやうに考へて居る次第であります、それから尚ほ煩雜なる地方行政の事務を簡素化すると云ふことは、是は洵に緊要なことでございますので、今後も此の點に付きましては十分努力をする積りで居ります
それから公選知事に警察權を與へるかとの御尋ねでありますが、府縣知事を公選に致しましても、府縣廳の持つ綜合行政の機能は、依然として存續せしむることが適當であると考へますので、府縣廰の性格には少しも變更を加へないで宜い、言ひ換へて申しまするならば、現在の府縣知事の有して居りまする警察權限は、其の儘公選知事をして掌理せしめることに致す方針であります
それから知事、市長村長等の解職請求、此の請求權は選擧人の五分の一を以て足れりとする根據如何と云ふことでございますが、是は自治團體の首長を選擧致します場合に於きまして、定足數を過半數と云ふことに致しませぬで、それよりも低い所に取りまして、再選擧の煩を避ける便宜方法を講じたのであります、是等の所と睨み合せまして、理論上五分の一程度が適當であると云ふことに致した次第であります、尚ほ斯う云ふやうな少數者の權利を尊重する意味に於きまして、請求權を與へました場合に於きましては、權利の行使には責務も伴うて居ると云ふ自覺に於て、賢明なる運用を有權者はすることと信ずるのであります、尚ほ此の少數者が請求權を濫用致しまして、解職請求が適當でないと言はれるやうな場合に於きましては、是が解決方法と致しまして、今度の改正案に於きましては、監督官廳の公正なる認定に依つてそれを取捨すると云ふことで解決を致して居ります、他の諸外國の例に於きましては、御承知の如く解職請求權の最後の決定は有權者の一般投票に依つて決すると云ふことになつて居りますが、選擧に慣れて居りませぬ我が國に於きまして、餘り度々選擧の行はれますことも時期尚早と考へまして、其のやうな多數が決すると云ふ一つの理論を、此處では便宜に從ひまして監督官廳の裁定に任せると云ふことに致しました次第であります、故に若し解職請求と竝行致しまして、解職すべからずと云ふやうな請願が多數出て來ると云ふやうな場合に於きましては、監督官廳に於きまして、其の點を十分尊重致しまして、裁定上に善處することと思ふのであります
それから次に知事、市町村長と地方議會との間に於きましての對立、紛爭を生ずると云ふことでございまするが、此の地方自治團體の首長は、住民の輿望に依つて、多數の投票に依つて出て來ることは申すまでもないことであります、又地方議會の議員も、多數を制して居る黨派はやはり團體民の多數の輿望を擔つて出て來て居る議員でありまして、知事、市町村長と地方議會との間に於きまして常に對立を生ずると云ふことは先づ想像が出來ないと思ふのであります、併し例外的の場合に於きましては其のやうなこともあるでありませう、其の際に於きましては、知事、市町村長の府縣會、市町村會の解散權に依つてそれを解決し、又反對に地方議會に於て知事、市町村長の不信任決議に依つて解決すると云ふことで調整が付くものと考へて居る次第であります
尚ほ最後に地方自治團體が其の完全なる職能を果します上に於きましては、住民の自治の精神、公共の精神と云ふものの振興に俟つべき點は多大でございますので、我々地方團體に關係を持つて居ります者と致しまして、又政府と致しましても、今後政治教育の振興と云ふことに付きましては格別の意を拂ふことに致しまして、さうして旺盛なる公共精神、自治精神を作興致しまして、新時代の地方自治を大いに進展せしめたい考へであります、此の點に於きましては今後政府として出來るだけの努力を致したいと思ひます、國民諸君も此の點に付きましては十分御協力を御願ひ申上げる次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=19
-
020・大原博夫
○大原博夫君 …(聽取不能)…
御答辯を戴かない點がありますが(「聞えない」「登壇」と呼ぶ者あり)是は委員會に於て質問することに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=20
-
021・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 磯田正則君
〔磯田正則君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=21
-
022・磯田正則
○磯田正則君 本來は小物が先に出まして大物が後に起つと云ふのが普通でありますが、大分大物に先に御立ち戴きまして、小物が後になりまして(「ノーノー」)而も本法案に對しましては本員の發言は既に八人目でございますので、各先輩議員から主要なる點に付きましては微に入り細を穿つて質問され、又政府當局からも之に對しまする答辯がありましたので、大體本法案に付きまする將來の行き方と云ふやうなことに付きましては想像出來得るのであります、隨ひまして本員は極く大雜把に本案の立案の精神、又運用の方針と云ふやうなことに付きまして御尋ねを致したいと思ふのであります
偖て本員の質疑に當つて議長に申上げたいことがありまするが、本員の質疑中には、内務大臣、司法大臣、大藏大臣、農林大臣、文部大臣、總理大臣、或は又場合に依りましては植原國務大臣からも御答辯を願はなければならないやうな點があると思ひまするので、只今空席になつて居ります各關係大臣には、議長から御連絡を願ひまして、それぞれ御出席を求めて貰ひたいと思ひます
(「議長、後廻しに願ひます」と呼び其の他發言する者あり)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=22
-
023・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=23
-
024・磯田正則
○磯田正則君(續) 現下の國情の推移と世論の動向とに鑑み、府縣、市町村の組織及び運營の民主化を圖り、地方自治體の本旨の徹底を期する爲め府縣制、市町村制の一部を改正する云々、是が今囘政府提案の府縣制、市町村制の一部を改正すると云ふ理由であります、事實現在の府縣制、市町村制は明治時代に制定されたものでありまして、地方自治と云ひましても、其の實は結局封建的、官僚的な出先御用機關にしか過ぎなかつたのであります、殊に今次大戰中は中央政府や議會が軍闕の御用機關として無力化するに連れまして、地方廰や地方議會も亦有名無實且つ無力なものになつてしまつたのであります、而して其のなす所は單なる戰爭行爲の上意下達機關にしか過ぎないと云ふやうな状態になつてしまつたのであります、そこで終戰と同時に地方制度の根本的改革は是非とも斷行されなければならない、謂はば日本民主化の重要な條件の一つとなつたのであります、隨て今囘地方制度改革の最大眼目は、地方制度を民主化し、地方住民の意思を廣汎且つ有效に地方自治に反映せしめんとするにあると信ぜられるのであります、所が此の度の改正案の最大目標でありまする所の知事と市町村長の公選に付きましても、本案上程以來既に先輩各議員から質疑された如く、其の内容に幾多の矛盾と不合理な點があるのであります、例へば只今前議員も御質疑なされましたやうに、府縣知事は何處までも公吏でなければならない、又或は知事以下、部長以下の全部の官吏も、之を公吏としなければならないと云ふやうな點、其の他選擧の關係に於きましても、地方財政の問題に致しましても、色々と改正しなければならない點があるのでありますけれども、内務大臣の數次に亙りまする所の答辯に依りますれば、府縣「ブロック」制の助長防止等の點を考慮し、特に知事の身分に官吏の一面を持たせ、中央との連絡を密接にせしめると云ふ點からしても、政府は何處までも府縣知事は官吏として、一面國政に當らせますと共に、一面府縣の自治運營をやらせようとする方針であることが判然と窺はれるのであります、そこで本員は斯くの如く法案改正の趣旨が、明瞭に府縣知事は官吏とすると云ふことになりまする以上は、茲に大きな注文があるのであります、それは即ち此の際政府は思切つて知事に大幅の權限を委讓して貰ひたいことであります、勿論今次改正案の内容には、從來に比較致しまして、相當廣汎な權限は委讓されて居ることになつて居りますが、どうも此の程度では物足らない感があるばかりでなく、知事が眞に思切つて仕事を致すことが出來ないと思ふのであります、と同時に之に依つて見ても、此の變革期に處しても今尚ほ政府が各省割據主義を捨て切れない、官僚的小細工の證左が歴然と窺はれるのでありまして、此の際知事の權限を擴大すると云ふのであれば、何故に現在地方にありまする所の出先官廰たる、或は税務署或は營林署或は專賣局、斯う云つたやうな官廳までも之を知事の行政下に入れることが出来ないのか斯くすることに依つて、一面各種事業の事務の改善迅速を圖ることが出來、一面官廳の民主化も實現することが出來るのであります、而して地方廳に對し此の廣大な權限の委讓が出來ますれば、其の首長の責任が益益加重され、部下官吏の採用や勤務に對しましても相當な威令を行はなければならないやうになるのであります、御承知の如く終戰後官吏「サボタージュ」の事實は歴然たるものがあるのでありまして、官廳の非能率的な行動や不親切は、國民の齊しく指彈して居る所でありますが、其の理由としては勿論中央政治に對しまする所の不信、或は終戰と云ふ大きな「シヨック」に依る所の思想の混亂、又生活の不安定等多々あると思ひますが、現在の官吏が斯くまで信用を失墜し、國民の指彈を受けるのは、從來の官吏採用の制度に大きな缺陷があると言はなければならないのであります、即ち其の一つは學歴第一主義の採用方針で、あります、此の爲め、眞に民情に通じ、實力を持ち、職務に對する強い信念と責任感を持つ立派な者でありましても、學歴に左右せられて出世が出來ないと云ふやうな實情であり、殊に地方の府縣等に於ては、現在の制度で採用されました多くの官吏が、唯自分の保身と出世第一主義で、眞に地方の實情に副はない机上の空論で、お座なり、其の日暮し的の事務で其の場を茶化して居る者が多くあるのは洵に困つた現象であります(拍手)さうした觀點からも、現在の官吏採用制度には相當改正すべき必要を痛感するものでありまして、眞に國政に當り、自治體の指導的の地位に立つ官吏などは、須らく今少しく民情を知悉し、民と共に苦しみ、民と共に樂しむ經驗を必要とするものであり、此の爲に大臣や知事を初め、苟くも官吏たらん者は、民と直接苦樂を共にする所の町村長や警察官の一度位やつた者でなければ、眞の民主主義政治は實現されないと思ふのであります(拍手)政府は官吏採用に付きましての方針に付て如何なる考へを御持ちであるか、御伺ひ致したいと思ひます
次に凡ゆる法案が如何に立派に出來ましても、之を用ひる所のものは國民であります、人であります、如何に立派なものでありましても、之を用ふることが出來なかつたならば何にもならないのであります、最近我が國の社會秩序は甚だしく紊亂致しまして、此の儘に推移せんか、眞に亡國の外はなく、政府は曩に社會秩序保持に關する聲明を發表したことは、洵に時宜に適した處置として國民の齊しく歡迎する所であります、言ふまでもなく今次の敗戰の原因が、多年に亙る軍閥、官僚等の專制横暴にありとは云へ、一たび敗戰と云ふ冷儼なる現實に直面した以上、官吏も等しく日本の國民であることだけは、お互ひによく考へなければならないと思ひまぬ、勿論其の秕政、其の非行に對しましては何處までも之を糺彈し、糺すべきは何處までも之を糺さなければなりませぬ、だが併し、其の行爲が其の時の所謂時流に依る國家最高指導者の命令や強壓に依るやうな已むを得ない場合は、責任者を除いて一般官吏等の責任は、敗戰と云ふことに依つて一先づ解消したものと見なければなりませぬ、それを唯官僚が惡い、官僚が惡いと言つて見ても當らないのであります、官僚が惡いのは何處が惡いのか、其の原因は何處にあるのか、それを直すにはどうすれば宜いかと云ふことを國民全體で能く考へ、特に此の衆議院等に於きましては、お互ひに本當に眞劍に考へまして善く教へ、善く導いて、皆の力でそれを直して行くと云ふ風でなかつたならば、到底何時になつても住み好き我が村、住み好き我が市、住み好き我が國家を作り、平和日本を建設することは到底出來ないばかりでなく、斯くては何時になつても官民融和の政治は實現されないのであります、殊に一部の者の非行を擧げて之を全體なりとして指彈するがが如き行動行爲は、儼に之を愼まなければならないと同時に、國民の斷然排撃する所であります、最近官僚に對しまする惡評は、一部特殊政黨等の宣傳も手傳つて洵に甚だしいものがありますが、是が爲め官僚の多くは甚だしく萎縮し、引込思案となり、自己の職責に對する自信すら失つて、唯事勿れ主義に其の日暮しでやつて居ると云ふやうな實情でありますが、斯くては官僚「サボ」の原因が指彈惡評する側にもあり、殊に斯くの如き状態では法治國としての威令も保たれなければ、官吏としての職責を全うすることも出來ないと思ひます、終戰後我が國民は會合の自由、行動の自由、言論の自由は認められ、又今囘の憲法改正草案にも人民の自由は廣く之を認められることになつて居るやうでありますが、近時此の自由を履違へて、勝手氣儘な行動をなす者がど著しく殖えて來た、やれ人民管理だなと言つて、やたらに個人の家庭に外部から侵入したり、或は脅迫したり、やれ人民裁判だなどと言つて、個人の人權を平然と蹂躪し、人の名譽を傷つけたりするが如き行動をなす者があるが、是等の行爲は主として或る特殊の政黨員等に依つて行はれて居る、本員は斯くの如き不都合、不穩當なる行動が或る特殊なる政黨等の正當なる權限であり、其の特權を持つて居るものだなどと云ふが如き印象を國民に與へて居ることを甚だ遺憾に思ふものでありますが、斯かる行過ぎの不當なる行動をなす政黨や其の黨員に對して、當局の取締の方針、本員の私見に依れば斯くの如き行動が平然と行はれる…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=24
-
025・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 磯田君、御注意致します、本旨から外れないやうに御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=25
-
026・磯田正則
○磯田正則君(續) 只今議長から御注意を受けましたが、關聯事項でありますので、論旨を續けます
又國内には自晝公然と強盜殺人事件の横行から、野荒し、闇行爲等々眞に物情騷然たる事情下に於ては、現在の警察力では國民の安寧秩序を保持することは絶對不可能であると思ひますが、政府は戰時中に於きまして補助警察官のやうなものを置いたと思ふが、今後市町村の警防團等に對し、「マッカーサー」司令部の諒解を得て、相當強力な自警的組織を作らせる必要があると思ふが、此の點に對する内務大臣竝に司法大臣の確固不動なる所信を承りたいと思ひます
尚ほ次に、善政は善人から、善人は食の安定からです、須らく善良なる官公吏を得んとするには、現在「インフレ」下、下級官公吏、教職員に對し、思切つて待遇の改善をする所の施策の必要があると思ひますが、此の點に對しまして大藏大臣の所見を承りたいと思ひます
尚ほ政府は本法案に依り地方議會の選擧に臨まれる場合に、其の選擧方法は如何にするか、例へば其の區域、又單記か連記かと云ふやうな點、用紙の配給、共同演説會の開催と云つたやうなことに付て政府の御考へを承りたいと思ひます
次に市町村長の權限に付て御伺ひ致します、現在の市町村自治體には、納税、土木、戸籍を初め非常に多くの國家事務が委任されて居りまして、是が爲め地方民の福祉を増進し、直接人民の生活に關係ある事務は殆ど放任されて居ると云ふのが實情でありまするが、是では眞に地方自治體の民主化も、地方自治の發達も、期することが出來ないと思ひまするが、其の爲にはどうしても國の委任事務と自治體の固有事務を何等かの形で整理調整しなければならないことは言ふまでもありませぬが、偖て實際問題と致しましては、今後新生日本の建設の爲には、現在より以上國家事務が市町村に委讓されることも亦已むを得ないことだと思ひます、そこでそれにはそれだけの權限をやはり市町村長に與へて貰はなければならぬことになるのであります、さうして國家行政の健全なる確立の前提と致しまして、先づ以て其の基礎である市町村が、政治的にも、經濟的にも、文化的にも、ゆつたりとした、丸やかな、而も強力にして健全なる自治體とならなければならないと思ひます、其の爲には、先づ有爲な人材を一人でも多く養成しなければならない、さうしてうんと働かせなければならない、又町村民の個々が豐かにならなければならない、其の爲には、町村民に過重の負擔や不公平な供出などをさせてはならない、尚ほ又文化にも惠ませてやらなければならない、さうして此の豐かにして明朗な個々の基礎の上に立つた協力一致の集團たる地方自治體になつてこそ、初めて國家の再建も出來るものであるが、斯樣な見地から市町村長の權限擴大も必要になつて來るのであります、其の中でも當面最も必要な事項として、次の諸點に付て關係大臣の所見を承りたいと思ひます
一つは國政事務を取扱ふ市町村吏員の諸給與は、之を國庫負擔とする意思はないか、戰災都市民竝に復員軍人軍屬、外地引揚同胞等に對し、一定期間各種納税の輕減又は免除をなす考へはないか、町村自治體の活溌なる運營を圖る爲め、町村に於て收益事業をなし得るやう制度を改正し、自治體財政確立に役立たせたらどうか、現在私物化し、多くは安易な娯樂と闇商人に轉落しつつある青年學校生徒に對し、町村長、青年學校長等が強制入學をせしむる法的根據を持たせる意思はないか、各種平和産業の發達と生産の増強、供出の完遂を圖り、勞銀調整をなす爲め、市町村長に勞力の調整に對する法的根據を與へてはどうか、戰時中農業會長を市町村長が兼務したことに依つて、非常なる實績を擧げて居ると云ふ事實に鑑みまして、政府の意圖して居ります農業協同組合法に、農業會長は市町村長を以て充てると云ふやうに法的根據を入れる意思はないか、新憲法に依つて行政裁判所はどうなるか、尚ほ現在行政裁判になつて居る山林で、相當多くの原生林などが、年々枯損に因る損害が非常に多いと思ふが、木材資源不足の折、之を地元府縣又は町村に投出して、地方自治體の財政確立をさせ、一面戰災地復興や、木炭、木材等の増産を圖らしむる考へはないか
更に又改正案に依れば、帝國議會の議員は府縣知事を兼ねることを得ずと規定されて居ることは、内務大臣の數次に亙る答辯でありまする所の、府縣「ブロック」制の助長防止等の點も考慮し、特に知事の身分に官吏の一面を持たせ、中央との連絡を密接にする云々と云ふ趣旨と矛盾しはせぬか、又眞の民意を議會竝に自治體に直結する點からも、國民の代表たる帝國議會の議員が知事を兼ねる所に、何處に不思議があるか、何處に不都合があるか、寧ろ是は府縣知事は國民の代表たる衆議院議員中より之を選ぶと云ふが如くなすべきだと思ひますが、之に對する當局の御考へはどうでありますか、尚ほ本員は、最近現職知事が此の法案の通過を見越して、盛んに届出前の選擧運動をやつて居ると云ふことを耳にして居るが(拍手)斯くの如き事實があれば實に不都合千萬であり、公選の趣旨に反すると思ふが、斯くの如き噂を内務大臣は聞いて居るか、又斯樣な誤解を持たせない爲にも、本法施行前に、現在の知事を──今朝程新聞に發表になつて居りまするが、あんな程度でなく、もつと全國的の大異動を斷行する考へがあるかどうか、此の點を御伺ひ致したいと思ひます
最後に──発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=26
-
027・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 磯田君に御注意申上げます、地方制度改革案と御關係がありますか、御關係がある程度で御質問願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=27
-
028・磯田正則
○磯田正則君(續) 論旨を續けます(「笑ひ事ぢやない」「眞面目にやれ」と呼ぶ者あり)既に發言致して居ります事項に付きまして…
〔「取消せ取消せ」「具體的に言へ」と呼び其の他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=28
-
029・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=29
-
030・磯田正則
○磯田正則君(續) 事項に付きまして、關係大臣の答辯を望みまして、本員の質疑を終ります
〔「何の關係があるんだ」「そんなことで關係があると信ずるか」と呼び其の他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=30
-
031・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 私語を禁じます
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=31
-
032・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今御質問のありました中、私に關係して居る部分を先づ御答へ申上げます
府縣知事の權限を擴張すべきではないかと云ふ御尋ねであります、府縣知事を公選致し、さうして府縣廳の職員を悉く公吏にすると云ふ建前を執りますと、現在の如き府縣廳の仕事は自治行政の面に限られまして、國の行政の面が逸することになりまして、府縣廳の權限は餘程狹くなることを免れないと思ふのでありますが、今囘の改正案に於きましては、現在の府縣廳の持つて居りまする二重性格を其の儘存續致しまして、さうして自治行政の面は一層之を民主化し、自治化すると云ふことに努めますると同時に、公選知事の持つて居りまする民主性に依りまして、今日の府縣の持つて居りまする官治面にも民主性を確保したいと云ふことに相成つて居る譯であります、知事公選が行はれまするならば、多數府縣民の輿望を擔ひまして、立派な大物が府縣知事に當選することと信ずるのであります、此のやうに相成りますれば、政府と致しましても順次中央集權から地方分權に事務を移行させると云ふことは、當然の歸趨であると思ふのであります、現在の知事の權限は、改正制度に於きましても或る程度必要なる擴張を致して居りまするが、今後改正地方制度の實施の成績に依りまして、段々と府縣知事の權限は更に擴充されるものと信じて居る次第であります、それから内務省と致しましては、國民に接觸する機會が最も多いのであります故に、内務省系官吏の採用に付きましては、今後一層の注意を拂ひまして、國民の公僕として民主主義政治の要諦を體得し、民生の爲に全能力を傾倒すると云ふことに最善を期する積りであります、尚又現任官吏の進退竝に教養乃至は今後の執務のやり方に付ての注意と云ふやうな點にも留意致しまして最善を期する積りであります
次に補助警察を設ける意思はないかと云ふことであります、終戰前に於きまして警防團等の所謂補助警察が或る程度發達を見たのでありまするが、あの儘の警防團を戰後に於きまして復活致しますことは、餘程考慮を要することと考へます、新時代に對する警察の行き方に付きましては、目下折角考究立案中であります、是の進行と相俟ちまして、適切なる補助警察が考案され、運營の自信を得るならば、それを考慮して見たいと云ふやうに考へて居る次第であります
地方議會の議員の選擧に付きましては、選擧區も從來通りで何等變更はございませぬ、又連記自體に付きましても相當檢討を要する點もありまするので、地方制度に於きましては、制限連記制を採用する意圖はございませぬ、用紙に付きましては、是が確保に付て折角努力中であります
國政事務を取扱ふ町村吏員の俸給を全額國庫で支辨したらどうかと云ふ御尋ねでございまするが、町村役場の職員の中、專ら國政事務のみを扱ふ者と、其の他の者とを區分致しますことも、實際問題として困難であります、政府と致しましては、町村役場が國政事務、委任事務、國有事務を遂行するに必要なる財源を、或は自己の課税權に依りまして、或は國庫の交付金に依つて、乃至は補給金に依つて扱ふ、さうしてそれ等の總ての仕事が扱ひ得る財源を十分に考慮すると云ふことで此の問題を解決するのが、寧ろ實際論として適當であると云ふやうに考へて居る次第であります
府縣知事は帝國議會の議員と兼ねることが出來ないのはどう云ふ譯かと云ふ御尋ねでございますが、申すまでもなく府縣知事は、地方行政の中樞として洵に重要なる職責を持つて居りまするので、其の知事が職を空ける、曠職は出來るだけ之を避けなければならぬのであります、而も帝國議會の議員は、憲法の改正に依りまして、其の權限は著しく擴張せられ、職務は癒癒繁劇となることが豫想されるのでありまして、府縣知事と帝國議會の議員と、兩者を一人で兼ねますることは、其の何れの職責をも十分に盡すことが出來ない虞が多いのでございますので、是に基きまして兼職を禁止することに致した次第であります、尚ほ此の點は現行衆議院議員選擧法の規定に於きましても、官吏と衆議院議員とは兼職禁止をされて居るのであります、此の思想と揆を一にするものでございます
最後に現任の地方長官が知事公選を見越して、選擧の事前運動をして居ることは適當でない、其の點如何に思ふかと云ふ御尋ねでございます、現任の地方長官が選擧の事前運動をやつて居ると云ふやうなことは、私全然耳に致して居りませぬ、又斯かることがあるべき筈がないと信じて居る次第であります、併し將來其のやうなことがありましては、洵に由々しき大事でありますから、此の點に付きましては先般の地方長官會議に於きましても十分警告を發して置いたことでございますが、今後も其のやうなことのないやうに善處する積りであります、尚ほ地方長官の大異動はやる意思を持つて居りませぬ
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=32
-
033・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 御答へ申上げます、青年學校入學に對して、市町村長及び學校長に強制力を有せしむる法的權限を與ふる意思があるかどうかと云ふ御質問に對して御答へ申上げます、青年學校が終戰後特に虚脱状態になつて居りまして、義務教育の實を擧げて居ないと云ふことは、私共も等しく認める所でありまして、之を何とかしなければならないと云ふ御趣旨ろ、十分了解致します次第でありますが、併し市町村長竝に青年學校長に強制力を與へる、さう云ふ法的權限を與へると云ふ行き方に對しては、考慮の必要があると思ひます、結論を申上げますと、斯樣な意思は持つて居りませぬ、現在の所、市町村長及び學校長が、それぞれ事務を執行することに依りまして、就學を督勵して居るだけに止まります、勿論此の督勵は不完全で、徹底しない場合もありますけれども、併し教育の本義に照しますと、或は納税であるとか、或は警察であるとか、衞生であるとか、さう云ふ方面と違ひまして、自發的の意思を教育上は重んじなければなりませぬから、隨てさう云ふ意味に於ては強制すべきものでないと云ふ風に心得て居ります、詰り青年學校の内容十分充實致しまして、魅力あるものとして、青年を惹付けるやうな方向に向はなければならないと云ふ風に考へて居ります、併しながら義務制をどうするかと云ふやうな問題は、是は大いに教育制度刷新委員會で以て研究したいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=33
-
034・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 磯田君に申上げます、先程多くの大臣の出席を御要求でありましたが、只今まで出席が可能の大臣が他にはございませぬ、各派交渉會で、前以て出席を要求する大臣の御申出をすると云ふことに打合はしてありましたが、今日磯田君から其の豫めの御申出がありませぬものでしたから、連絡が付きませぬ、隨て答辯は此の程度と思ひますが、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=34
-
035・磯田正則
○磯田正則君 交渉委員からさうした注意を聽いて居りませぬし、一年生でありますので、申出を怠つたのであります、併し機會ある場合に御聽かせ戴ければ、それで結構であると思ひますので、本員の質疑は之を以て終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=35
-
036・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 細迫兼光君
〔細迫兼光君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=36
-
037・細迫兼光
○細迫兼光君 私の質疑は三つの問題に觸れます、何れも内務大臣より御答辯を仰ぎたいと存じます
第一は、先日此の本會議場に於きましての質問に對しまして、内務大臣の答へられました言葉の中に、教職員が選擧運動をなすことを不都合として、之を禁止すべき方向に向つて折角調査中であるかの如くに聞える言葉がありました、民主政治に於きましては、國民の政治關與の權利が重大視せられる、それは單に一つの投票をすると云ふだけには止まらない、自分の意見を擴大する、即ち選擧運動をすると云ふことまでもが極度に尊重せられなければ相成らぬのであります、勿論教職員が教壇を利用し、或は子供を通じて運動すると云ふが如きことが不都合であることは是は常識であります、併しながら是は自肅自戒すべき問題でありまして、教職員自身の選擧運動云々とは全く別問題、混同すべからざる問題であるのであります、然るに教職員の選擧運動を茲に制限せんとするが如き考へが若しありとするならば、是は政治參與に對する國民の基本的權利、政治的な權利を剥奪するものと言はなければならぬのでありまして、選擧は飽くまで自由明朗になされなければならぬことは申すまでもないのであります、此の點に關する内務大臣の御所見をもう一應はつきりと承りたいと存ずるのであります
第二の問題は府縣會議員選擧に於ける選擧區の問題であります、前の御方が一寸觸れられましたが、現在選擧の基本的な制度を見ますれば、上の衆議院議員選擧は大選擧區制を採つて居ります、下の市町村議員の選擧に於きましては、是れ亦概ね全區域を一區とするが如き大選擧區制を採つて居ります、獨り何が故に此の中間の府縣會議員選擧に於きまして小選擧區と云ふ制度を維持する必要がありませうか、小さい市などに於きましては、定員一人と云ふが如き小選擧區がざらにあるのであります、政府は果して大選擧區を是なりとする所の精神に反對なのであるか、反對でないならば、なぜ府縣會議員選擧だけに小選擧區を尚ほ維持せんとして居るか、御答辯を御願ひ致したいのであります
第三の問題は、質疑の意味の御諒解を深く得たいが爲に若干の前置きを御許し願ひます、民主主義政治機構は必ずしも完全無缺のものではありませぬ、幾多の缺陷を持つて居ると思ひます、一つは多數決であります、多數必ずしも正しくない、少數も正しい場合がある、正しいことが時に少數の中に含まれて居ることがあるのであります、然るに總てが多數決で進む、所謂茲に民主政治は衆愚政治なりとする非難の起る所以であります、又一つには政治の「テンポ」が遲い、何かと言へば議會に掛けなければならぬ、或は三權分立と云ふやうに相牽制して、事が中中に運ばない、之に對しまして專制政治はびしびし思ふ通りに早くやれる、さう云ふ「テンポ」が遲い、或は又政策の前後一貫する其の一貫性、持續性が缺けて居る、一人の人が常に政治の責任に於きまして事をなせば、永きに亙中て一貫した政策が執られる、然るに民主的政治機構には其の特長が缺けて居る、斯樣な幾多の缺陷を持つのでありまするが、それにも拘らず民主主義制度が要求せられて居る所の所以は何であるか、之を其の動機から見ますれば、基本的人權の擁護の要求、是は「イギリス」に於ける、又「フランス」に於ける民主主義制度の獲得の歴史を見れば明かであります、又色々缺點はあるにしましても、それでも一個人の專制よりはまだましだ、もう一個人の專制政治には懲り懲りだ、少々「テンポ」が遲くても、衆愚政治になつても、專制政治よりはまだ宜いと云ふやうな、さう云ふ氣持、さう云ふ所、是が動機的に見て民主政治の要求せられた所以でありますが、此の要求から生れましたものが三權分立の制度でありまして、一七八九年の「フランス」の人權宣言には、權力の分立なき國は憲法はないものであるとまで極言致して居るのであります、又此の三權分立制度は、民主政治に於ける根幹的な一つの要素であるのであります、併しながら此の重大な要素も、近年政黨の發達に依りまして其の實は段々に失はれつつあるのを見るのであります、即ち我が新憲法草案に依りますれば、國會は國權の最高機關であります、さうして是が立法を司る、行政の首班たるべき内閣總理大臣は此の國會が指名する、又一方獨立である所の司法の最高機關たる最高裁判所の裁判官は此の總理大臣が任命する、即ち國會から見ますれば、總理大臣は子であり、最高裁判所は孫である、斯う云ふ關係になつて居るのであります、是に於て政黨が益益發達致しまする形勢に於きましては、議會に多數を占める所の黨の黨首が、行政權の首班たる内閣總理大臣に指名せられるであらうことは、是れ亦容易に想像し得る所であります、又内閣總理大臣が最高裁判所の裁判官を任命致すに付きましても、自分と主義主張を同じうした者、政見を同じうした者を任命するであらう、其の傾向があるであらうと云ふことも、是れ亦否むべからざる所であると思ふのであります、即ち是に於て三權分立の姿は殆ど消えて、實に國會に於ける多數黨、是が立法、行政、司法を押しなべて支配すると云ふが如き形を示すに至るであらうと云ふことは、單に私の想像だけではありませぬ、茲に於て多數黨の横暴とか、或は惡政と云ふやうなことが現はれないとは限らないのでありまするが、それでも尚ほ專制主義よりは宜しい、それでも尚ほ專制制度よりは宜しい、其の理由は一體何處にあるか、惡政の根源は、さうした惡政が出ました場合に、其の根源が人民の手の届く所にある(「質疑はどうした」「簡單々々」と呼ぶ者あり)直ぐ入ります──又惡い政治が現はれました場合に、其の病源には人民の手に依つて「メス」を入れることが出來る、即ち國民に依つて選擧せられました政黨にある、茲に民主政治が幾多缺陷あるに拘らず尚ほ良い所があるのでありまして、即ち政治的自由の茲に確保せらるる限りは、若し惡政が起りましても、人民はそれを直すことが出來る、人民の手の届く所に政治の根源がある、それに依つて、例へば或る黨の政治の下に惡政が布かれましたならば、人民は今度は其の政黨を應援しない、他の良き政黨を應援しようと云ふことに依つて、自ら之を直すことが出來る、即ち將來惡政が出ましても、民主政治は之を善き政治へ復元する所の作用を持つのであります、茲に民主政治が客觀的に國民の爲に最も幸福である性質を持つのであります、然るに今府縣制の改正案を見まするに、知事は公選であつても、部長、課長等の下僚は天降り的な官吏である、私は其の不當に對して今同じ答辯を得ようとはしないのでありまするが、強力なる政治は、長官が其の部下をしつかり把握して居ると云ふ所から發するのであります、現在に於てすらも、或は警察部長は警保局の直系だと言つて威張り、今はないけれども特高課長は保安課の直系だと言つて威張つて、中中に知事の統制が及ばないと云ふやうな實例は各地に見るのであります、知事が惱まされて居ることを聞くのであります、其の表面に現はれました一例と致しましては、滋賀縣事件などがあります、警察部長が經濟部長を告發すると云ふやうな事件までも起きたのであります、現在に於てすらもさうであります、況や將來に於きまして、民選知事の下に天降り的な官吏の部下が居る、是でどうして統制のある、しつかりした強力な府縣制を豫期することが出來ませう、是では第一、先に申上げました惡政に對する善政への復元の作用が行はれない、善政への復元の作用の爲には三つの要件が要る、第一には言論集會等の政治的自由が絶對に確保せられなくてはならぬ、惡いことが指摘せられ、それを善くする途が教育宣傳せられなくてはならぬ、第二には其の政治の所在がはつきり致して居らなくてはならない、第三には其の政治の根源が手の届く所になくてはならぬ、そこで初めて國民は惡い政治に對しまして、今度は思ひを變へて、善き政治に直す所の力を發揮し得るのであります、然るに此の草案の如くに公選知事の下に天降り的な官吏があつては、國民は何處に一體惡政の根源があるか、知事に根源があるならば、知事を改選しよう、併しながら部長、課長に惡い所があるのか、何れに其の惡政の根源があるのか、其の所在を知ることが出來ない、又假に其の惡政の根源が部下の官吏にありとしても、國民は唯あれよあれよと見るばかりで、之を替へることが出來ない、之に改革の「メス」を入れることが出來ない、斯くして善政への復元の作用は完全に奪はれるのでありますが、それでも尚ほ内務大臣は宜しいと言はれるのでありまするか、此の點を一應御聽き致したいと思ふのであります
尚ほ内務大臣は、此の草案に現はれましたる制度を、中央との調整上必要であるとか、或は扱ふ國務が多いとか云ふ理窟を以て擁護せられるのでありまするが、併しながら現在の市町村に於きましても、非常に多くの國務を持つて立派にやつて居ります、或は縣廳で扱はない所の税の徴收、或は今ではありませぬが兵事のこと、或は戸籍のこと、或は供出のことに致しましても、凡ゆる大きな國家的な仕事を立派に公吏の制度でやつて居るのであります、寧ろ是等の點に於きましては縣廳よりは國務の仕事が多いと言はなくてはならぬ、理窟になりませぬ、又或は時期尚早と言はれますが、如何に此の時期尚早と云ふ言葉に依つて、進歩的な民主的な人民の要求が壓迫せられて來たか、普通選擧に於て見るが如く、或は勞働組合法に於て見るが如く、常に阻止せらるるものは時期尚早の言葉に依つてであります、加之時期尚早どころではない、私の見る所に依りますれば、寧ろ府縣制、地方自治制こそ、最も徹底して而も早く行はなくちやならぬことであります、地方自治は全國に於ける民主的な政治の訓練であります、最も必要なことである、日本の歴史に於きましても、明治の初年に憲法が施行せられ、帝國議會の選擧が行はるるに先だちまして、明治十二年既に府縣制は設けられ、明治十三年既に區町村制が設けられて、謂はば此の帝國議會に對する參政の訓練がなされた、然る後に此の議會の召集があつたと云ふやうな事例に徴しましても、時期尚早どころではない、一刻も早く地方自治體に於きまして此の民主政治に對する國民の訓練がなされなくてはならない、政府に於ては、如何にも地方自治體を一人歩きさせるのが危な氣に、御心配氣に見えるのでありまするが、何時までも手を引いて居つては泳ぎを覺えない、早く手を放す、そこに初めて眞劍な、自らの責任に於ける訓練が出來るのであります、斯樣な何等の理由をなさないことを以て理由として、尚ほ此の改正法に見るが如き案を強行せんとするのは、是は知事公選、或は地方自治體に完全なる自治を與へると云ふが如き羊頭を懸けて狗肉を賣るものであり、知事公選の下にも尚ほ封建的な官僚勢力を温存せんとするものであり、結局は日本の民主化に熱意がなく、之を「サボタージュ」するものである、早くやらうとするならば、早く國民を習熟させようとするならば、一刻も早く其の訓練習熟に力を致すべきである、今や國民は現在の不名譽に堪へ切れず、一刻も早く國内に民主體制を確立して、國際的な平等な交際をなし得る地位を獲得して、早くそこまで行きたい、名譽を囘復したいと思つて居る時に、此の民主化の「サボタージュ」は、國民を何時までも此の不名譽に繋ぎ止めようとするものであり、國民は今日の飢餓窮乏から脱する爲に、一時も早く自由貿易の出來る立場を獲得したい、其の爲に民主化を急ぎたいと云ふ場合に、此の民主化におつかなびつくり、國民の徹底的な民主化におつかなびつくり「サボタージュ」すると云ふことは、いつまでも國民の飢餓窮乏を此の儘に括り付けんとするものに外ならないのであります、民主制度への訓練習熟、是は極めて急務であるのでありまするが、此の急務を政府としては御認めにならないか、而して此の急務を果す爲に先づ地方自治體に徹底的な民主制度を施行する所の御意思はないか、以上に對しまして政府の御所見を伺ひたいと思ふ次第であります(拍手)
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=37
-
038・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 御答へ致します、第一點は教職員の選擧運動に關しての御尋ねでございます、先般此の席で御答へ申上げましたことがございますが、改めて此處に御答へ申上げます、先般の總選擧の結果に鑑みまして、教職員が選擧運動に國民學校の兒童を使つた向が一部にあつたと云ふことで世間に論義を惹起して居るのでございまするが、此の點に付きましては、各方面の意見、事情を取調べまして、適當の措置を講ずべく目下研究中であります、尚ほ其の他の教職員の選擧運動に關しましては、教職員なるが故に一般人の運動と差別して之を取扱ふ考へは持つて居りませぬ
第二點は府縣會議員の選擧區に關することでございましたが、府縣會議員の選擧は、地域代表の原則を採入れることが必要であり、地理的環境又は土地柄に應じましてそれぞれ民意を反映せしむることが望ましい所でございますので、其の爲には一應纏まつた地域的區分を致す、それには市の區域又は地方事務所の管轄區域を選擧區とすることが適當であると考へて居りまするのみならず、選擧事務執行上にも此の方が便宜でございますので、改正案に於きましても現制の如く之を變更しないことに致して居る次第であります
第三に知事と部下の官吏との間の關係でございまするが、改正案に於きましては、公選せられたる知事に部下官吏の進退の具情權を新たに附與することに致す方針であります、現在の官選知事に於きましては、知事に部下の官吏の進退に付きましての具情權は全然ないのであります、改正制度に於きましては新たに之を認めることに致すのであります、之に依りまして公選知事が部下の官吏を把握することに於て、遺憾があると云ふやうなことはなくなると確信致して居ります、民意を代表して、縣民の多數の輿望を擔つて當選しました知事のことでございますから、又部下の官吏の進退に付きましても縣民の聲を聽き、之を容れると云ふことは、現在よりも鋭敏に行はれることは豫想に難くないのでありまして、是等の點から致しまして、段々御述べになりました御心配は實際上無用であると考へて居る次第であります
第四點に於きまして、府縣を市町村に譬へられまして、府縣の事務も市町村の事務も大體同樣なものである、而して市町村は完全自治體として運營して居るではないか、何故に府縣に完全自治體としての性格を此の際直ちに附與しないかと云ふ御質問であります、此の點は度々當議場に於きましても論議のありました所で、政府の意のある所は大體申上げた積りでありまするが、唯簡單に此の際申上げて置きたいと思ひます、今日の如き食糧行政其の他の經濟行政竝に治安維持の面から見まして、府縣行政に於きましては、市町村とは其の事務の内容に於きまして非常に大きな相違があるのであります、其の大きな相違のありまする所が、府縣に對しまして市町村と異つたる制度を維持しなければならぬと云ふ重大な理由であることを御諒承願ひたいのであります、別に民主化の「サボタージュ」をやつて居ると云ふやうな氣持、趣旨は毛頭ないのであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=38
-
039・細迫兼光
○細迫兼光君 此の席から發言の御許しを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=39
-
040・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=40
-
041・細迫兼光
○細迫兼光君 内務大臣の御答辯中、教職員の選擧運動に關する點は之を諒承致します、其の他の點に付きましては滿足を與へるものはありませぬが、是の追究は後の機會に讓り質疑は之を以て終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=41
-
042・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 此の際磯田君に申上げます、個人の身上に關して論議することは、議院法第九十二條に依りまして禁止せられて居ります、先刻磯田君の御質疑の終りの方に、同僚議員の身上に關する御發言がありましたが、氏名を指して居りませぬでしたから、取消を命じなかつたのでありますが、それは不穩當だと思はれますから、速記録を調べた上で、此の點を削除致すことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=42
-
043・磯田正則
○磯田正則君 承知致しました(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=43
-
044・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 徳田球一君
〔徳田球一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=44
-
045・徳田球一
○徳田球一君 私は日本共産黨を代表致しまして、地方行政改革に付て質疑を致したいと思ふのであります、質疑すべき問題は六項目に分れて居ります
第一、本案は根本的に矛盾を藏して居ると云ふことであります、なぜならば、政府は本案を提出したのは、全行政をして民主化すると云ふことであるのである、然るに本案には何等民主化される所の内容を含んで居らぬ、其の理由如何、中央及び地方を通じまして、民主化された政體と云ふものは全部統一されなければならない、斯くして初めて此の民主化は問題になるのである、即ち地方機關は中央機關の決定した法律に完全に服從しなければならない、さうして其の範圍に於て全國務を遂行しなければならないのである、是は義務である、でありますから、中央機關と地方機關とは何等對立のあるべき筈はないのである、然るに此の法案を見ますれば、總て中央機關と自治機關との對立がある、此の自治機關を如何に伸ばし、中央機關の命令を如何にして滲透させるかと云ふことに苦心して居るのである、是は根本的に間違つて居る、さうして地方は國家機構の一構成部分であつて、地方が國家の全機構から分立して居る譯ではない、だから地方自體の生活と云ふものがある筈はないのである、是は全國家の生活の一構成部分であるのである、然るに是が所謂府縣「ブロック」の形成、現在實際上中央と地方とが對立、分立する傾向、此の傾向が存在するのである、即ち是は天皇制の專制の下に、全國民が壓倒せられ、凡ゆる生活を窮屈にせられた、其の爲に僅かに地方の部分だけでも自治をやつて、息拔きをしようとする、此の專制主義に對する彌縫政策から起つて來たものであります、此の彌縫政策から起つた自治制度を、現在も尚ほ之を固持せんとする所に、即ち全日本の機構に於て民主化が徹底しない所の基本的の原因があるのである、即ち府縣「ブロック」云々が問題になるのは、斯かる理由に存在するのである、然るに改正憲法は、天皇制は實際上非民主主義である、主權の行使は依然として天皇制、官僚の手にある、さうして此の現はれとして、内相は吏僚主義と云ふものを非常に強調して居る、此の吏僚主義はやはり官僚主義である、官僚主義以外の何ものでもない、此の官僚主義を頑固に固持し、之を透徹させようとすることにのみ現在でも汲々として居るのである、であるから、此の知事を公選にしながら之を官吏にすると云ふ矛盾が茲に發生して居るのである、即ち是は民主主義と云ふ名の下に、事實上は官僚主義を一層強化せんとする所のものである(拍手)民主主義を強調すればする程、官僚政治は愈愈益益是は強化されるのである、そこに重大なる缺陷を有すると私は信ずるのであります、中央地方に於ても、主權の行使は總て議會に俟たなければならぬ、此の議會と雖も現在主權の行使をやつて居らぬ、總て議案でも、法律でも、豫算でも、何でも大體鵜呑みにさせる方針で政府は向つて來て居る、私は此の前の追加豫算に對しては、如何に此の追加豫算が粗漏であるか、其の内部に對して何等の關係を説明せずして、我々に十分なる檢討をすることをさせずして此の豫算を通さうとして居るのである、又來るべき豫算と雖も、もう八月の豫算を今から審議しなければならないのに、此の審議を怠つて、さうして之を全豫算の中にやらうと云ふ、之を八月末までには我々のみならず、貴族院に於ても之を可決しなければならぬ、さう云ふやうでは、議會と云ふものは結局是は鵜呑み主義に過ぎないのである、だから議會は一面に於て決議機關であると共に、他面に於て執行機關でなければならぬ、是は府縣會其の他市町村議會に於ても同樣である、即ち其の意味からしますれば、内閣、知事、市町村長は總て議會の代行機關でなければならない、即ち議會は人民の議會であり、人民の意思を反映して居るものであるが故に、人民の代行機關として、知事も市町村長も自分の職務を行はなければならないのである、此の召還權が、今度の改正法律に於ては選擧監査に與へられて居りますけれども、實際上今のやうなばらばらの状態では、此の召還權を行ふことは非常に困難である、是は議會が召還權を握らなければならぬ、議會は常に市長でも、町村長でも、知事でも、自分に對する責任を負はせ、それを常に追究することに依つて召還權を即時やらなければならない、さうでなければ、知事は必ずや全人民の要求と違つた方向に行き、官僚主義は横行するに違ひないのである、然るに之を人民に與へることに依つて、此の召還權を固呑みにして居るのである是は重大なる缺陷であると私は思ふ、それ故に知事、市町村長其の他のものは總て内務大臣其の他の官僚の代行者となり、ちつとも人民の意思を反映しない、人民の意思を遂行しないことになつて居るのである、又さうならざるを得ないのである、故に地方議會と知事、市町村長とは對立し、現在も是が癌になつて凡ゆる紛爭が起り、陳情攻めになる、議會も政府も陳情攻めになるのは此の點であるのである、人民自身が議會を握り、議會が是等執行者を握るならば、斯かる陳情沙汰はないのである、陳情をしなくても、自分自身で惡い奴の首を引つこ拔けば宜しい、さうして初めて此の地方行政の癌は除かれるのである、斯かる意味に於きまして、今囘の地方行政の改革と云ふものは、民主主義とは恐らく遠いものである、根本的に斯かる矛盾が存在すると思ふのである、それ故に此の根本的の改革に對して、首相及び内相は如何なる所見を有せられるか、私は一年生であるけれども(笑聲)交渉會に於て首相の出席を求めてあるのでありますが、首相は現在居られませぬので、ちよつとお負け致しまして(笑聲)内相だけに一つ返事をして戴いても宜しい
第二項に付て申上げる、第二項は何であるか、即ち現在の行政區劃、府縣其の他市町村と云ふものは、大體の構想に於て明治初期の封建的遺制のまだ澤山殘つて居る時に定められたものであつて、現在是は既に用をなさない遺物になつて居るのである、此の府縣の區劃を以て府縣制を改革しようとしても、是は全然出來ない仕事である、不可能のことに屬する、それ故に多くの議員諸君から申されましたやうに、經濟的及び財政的の貧困さを指摘し、將來之を向上せしめることを政府に迫つて居るのでありますが、政府は此の時代後れの實際に適應しない基本的な誤謬の下に立つて居る此の行政區劃に於て、如何にして是が經濟的及び財政的貧困を矯正することが出來るであらうか、私は是は根本的に間違つて居ると思ふ、現に我々が鐵道の從業員を組織し、遞信の從業員を組織し、其の他の重大主要産業の從業員を組織するならば、此は北海道から、南は九州に至るまで一律に統一的にやらねばならぬ、且つ今の府縣制度と云ふものは殆ど意味をなさないことを、我々は經驗に於て十分感得して居るのである、此の點に於て此の財政的な基礎を鞏固にすると云ふのは、内務大臣及び大藏大臣の手先に依つて之を構成されるものではない、斯かる根本的矛盾を徹底的に矯正することに依つて、引繰り返すことに依つてのみ、是は初めて出來得ると思はれる、此の點も内相に付て所見を御願ひする次第である
第三項、是は實際上内務大臣が非常な厖大なる權限を持つて居る、隨て内務官僚が此の權力の行使者となり、結局する所、此の地方行政の總てに於ては内務省の官僚が實權を握ると云ふ結果に陷るのである、之を一、二例を擧げて見ますれば、府縣會が知事を不信任した時、此の地方議會を解散する所の權限は、やはり内務大臣に伺ひを立てて、内務大臣の許しを得なければ出來ないのである、又府縣會の解散を人民が要求したのに對して、實際之を解散して宜いと云ふ許しを得るのには、やはり内務大臣の許可を要するのである、又知事、府縣會議員の解職に對しましても、内務大臣は決定的な權限を持つて居る、それから市長、町村長の改選、其の他重要職の解職に對しましても、内務大臣及び是の代理人、代行者としての知事が此の權限を持つて居るのである、然らば此の内容に於きまして、全面的に是は官僚主義を徹底せしめるものであつて、何等民主主義にはなつて居らないのである、彼等の幾多の委員、幾多の役人を公選すると雖も、是は單に型ばかりである、是は人民を欺く所の一つの「デモクラシー」の白粉に過ぎない、斯かる白粉を引剥いで、徹底的に民主化することが必要であると思ふのである、内相の所見如何
第四項、官僚政治の基本的な中樞神經は、警察政治であるのである、即ち警察が全面的二行政の基本を握り、總て警察の強制力に依つて凡ゆる官僚の命令が強行さるるのである、それ故に警察を民主化しない限り、地方行政の民主化と云ふことは問題にならない、然るに此の改正案に於きましては、警察の民主化に對して何等規定する所がない、たつた一言でも觸れたものはない、之に對しまして内務大臣は大いに民主化に努めると言はれるけれども、唯努めるだけでは問題にならない、唯熱心だけでは問題にならない、即ち警察の根本的缺陷は、警察署長、是が天降り的任命に依ることである、是が其の治める所の人民と直接の關聯を持たない所にある、だから凡ゆる横暴を盡しても、之を止める所の何等の能力が人民に與へられないのである、それ故に私達は主張する、警察署長は、其の警察の管區内の有權者に依つて直接に選擧さるべきものである、同時に此の警察の署長、責任者は人民に直接の責任を負はなければならぬ、惡ければ人民自身に依つて之を召還することが出來るのである、現在官僚の腐敗と云ひ堕落と云ふ、是が總て此の警察の有力なる保護に依つて、此の警察の強權に對する恐怖心を以て是が遂行されて居ると云ふ此の事態を見るならば、食糧問題其の他の問題を解決する爲にも、非常に急速に此の警察の民主化をやらなければならないのである、然るに此の改正案は何等之に觸れないのは如何なる理由であるか
もう一つ、司法警察を一般行政警察から分離せよと云ふことである、私は之に完全に反對する、何故ならば若し司法警察が行政警察から分離するならば、此の司法警察は官僚の牙城となり、上から下まで、此の司法警察の力に依つて官僚の一切の罪惡は保護せられるのである、現在だつて警察の強味は此の司法警察の強力なる點にある、即ち犯罪に依つて引上げると云ふ此の威し言葉こそは、正に警察をして凡ゆる官僚政治を打開する堡壘たらしめて居るのである、でありますから、斯かる司法制度を獨立さして、上から下まで一貫させると云ふことは、愈愈益益強化され、愈愈益益侵し難きものになり、官僚政治の横暴を助けるものである、それ故に我々は、司法警察も行政警察も込めて總て民主化された人民の警察に任さなければならぬことを極力主張するのである、内相の御意見如何、法相に對しても御聽きしたいと思ひましたが御出席がないから、それは内相から國務大臣として答辯せられんことを希望するのである
第五項、東京都の制度の存在することは不合理である、是は軍國主義と官僚主義が横行を極めた、其の戰時時代に作つた所の遺物である、現に此のことに依つて東京市及び郡部が如何に苦しんで居るかと云ふことは、我々東京に居る人間自身が能く之を知つて居るのである、茲に特別組織を持つ必要は何等ない、是れあるが爲に東京は飢餓に陷つて居るのである、非常に是は厄介な存在である、であるから、尚ほ此の軍國主義と官僚主義の遺物を政府が依然として固持する所のものは、如何に政府が官僚主義的であるか、官僚主義を何處までも固持して、之を活かしたいとする意思の重大なる發露であると見て宜しいと思ふのである
其の次に警視廳が東京都と分離し、東京都の地方機關と分離して居ることは、是は極めて重大なる問題である、何故に警視廳が分離して居るか、是は此の東京が政治の中心地であるが爲に、人民の政治を彈壓する爲に、即ち軍國主義的官僚主義の横行を一層強力にする爲に存在して居るのである、であるから此の警視廳の分離は極めて不當である、即時此の警視廳の分離を取消し、一般地方行政と同樣、全警察の民主化を必要とすると信ずるのである、是れ亦内務大臣に御答へを願ふ次第である
第六項、選擧に付きましては何等此の改正される地方制度に於て示されて居らぬけれども、是は是非明かに此の地方制度の上に示して置かなければならない、是なしには民主主義の徹底と云ふことは、單に畫いた餅に過ぎなくなる、選擧なしの民主主義の徹底と云ふものはあり得る筈がないからである、是は地方行政と不可分離の問題であるのである、それ故に選擧は政黨本位であり、さうして比例代表制でなければならない、政黨に關して其の成長を云々し、その幼稚さを云々することは、實に官僚の僭越である、官僚が此の長い間、我々人民を苦しめ、此の世界戰爭に於て如何に官僚が我々を苦しめたかと云ふことに對しては、全人民の憤怒する所である、斯かる官僚は一日も早く去るが宜しい、我々人民が權利を行ふ所の政黨の措置、又選擧の組織に對して色々お節介をすると云ふことは、是は分不相應である、それ故に直ちに此の選擧制度を解體し、比例代表に依つて、政黨の眞に責任ある政治を實現せられることが重大なる問題であると思ふのである
次に警察に關することに續いてでありますが、内務大臣が七月六日本會議に於きまして御答へになりました、特高警察に似た事務を内務省に於て處理して居ると云ふ點でございますが、是は一月四日の聯合軍の指令に基きまして、或る種の政黨結社の屆出を要することに相成りまして、之に關する限度に於て事務を取扱つて居ると云ふ點の御諒承を御願ひしたい、と斯う言はれて居るのであります、是は社會黨の中村高一君の質問に對しての御答辯でありますが、之を見ますと、我が共産黨に對して最も重大なる問題が降掛つて居る、即ち共産黨に對して、又は社會黨に對して、又は農民組合に對して、勞働組合に對して、其の他一般民主主義的政黨及び結社に對して、或は大衆團體に對して、特別高等警察を存すると云ふことになると思ふのでありますけれども、是は如何なる意味であるか、特高警察を存すると云ふ意味であるか、又特高に似たやうなことをやつても宜いと言ふのであるか、我々が内務大臣に面會して此の點に關しまして色色御尋ねした所に依る其の答辯と、實際此の本會議に於ける答辯とは非常に矛盾する所がある、政治に關しては警察は決して關與をしない、是等の政黨の屆出に關しても、其の内容に一々立入つて之に關與するものではないと云ふことを言明せられて居るのでありますが、此の本會議に於ける答辯は、之に相反するものと思はれるのである、内務大臣から篤と御答辯せられんことを希望する次第である(拍手)
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=45
-
046・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 御答へ致します、御質問の第一點は、今囘の地方制度の改正は政治の民主化がない、是はどう云ふ譯かと云ふ御尋ねと思ふのでありますが、知事、市町村長は、改正地方制度が實施せられますると、總て住民の意思に基いて選擧せられるのであります、單なる中央政府の代行機關ではなくなつて來るのであります、のみならず中央政府の機構も、今後に於きましては政黨的基礎に於て、即ち國民多數の意思を受けた政黨が、民意を背景として、其の全責任に於て國政運營の任に當るのでありますから、其の地方行政機關に對する監督の如きも、自ら民主的に相成るものと存ずるのであります、斯くて中央地方を通じ、行政の運營は民意を基礎として行はれることに相成るのでありまして、絶對に御話の如き結果には相成らぬと信じて居る次第であります
第二に府縣の行政區劃に關する御尋ねでございますが、御話の如く行政區劃は明治以來多年の間殆ど變つて來て居りませぬ、經濟、交通、其の他諸般の情勢の變化に依りまして、府縣の區域を變更すべしと云ふ議論は多年あることでございまするが、各府縣の歴史的沿革、地理的事情乃至は府縣民の團體の實情等に鑑みまして、此の問題は餘程愼重に考究しなければならぬ問題であります、又假に府縣の區域を變更すべしと云ふと結論に達したと致しましても、今日我が國の現状を以て致しましては、是が變更を斷行すべき時期でないと考へて居る次第であります
第三に内務大臣が解職及び解散の請求權を審査することに關しての御尋ねでございまするが、現在の國情から致しまして、是等の請求がありました時分に、一般投票に依つて其の可否を決しますることは適當でないと考へられますので、一定の客觀的基準に依りまして、内務大臣が此の問題を公正に決定することに致した次第でありまして、決して御話の如き官僚温存の意圖から出て居るものではないのであります
次に警察制度の改革には今囘の地方自治制度の改正案に於て何等觸れて居ない、此の改革は速かに民主主義的にやるべしと云ふ點に付ての御尋ねでございますが、御承知の通り現在の地方自治制度は警察問題を取扱つて居りませぬ、地方自治制度の外に警察制度がある次第であります、隨て今囘の改正に於きましても、此の點に觸れないことになつて居るのであります、併し度度此處で言明致しました如く、終戰後我が國の警察を民主化すると云ふことは、洵に緊要なことに相成つて居りますので、此の點に付きましては政府に於きましても目下愼重に考慮研究を致して居ります、其の結果、要すれば次の議會には案を具へまして各位の御審議を仰ぎたいと云ふやうに考へて居る次第であります、尚ほ御話の中に警察署長を公選とすべしと云ふ御意見がございましたが、現在の警察制度竝に現下の國情から考へまして、警察署長を公選と致しますことは適當でないと考へて居る次度であります
第五に都制は軍國主義の遺物であるから、之を廢止すべしとの趣旨の御尋ねがございましたが、東京都制は御承知の如く其の改正前に於きまして、殆ど同一の區域を基礎と致しまして、東京府と東京市が併存致して居つたのでありまするが、地方行政の運營上此のことは種々缺點、弊害がございましたので、新たに東京都を設置致しまして、東京府及び東京市の二段階を廢止したのであります、其のやうな事情に依つて東京都制が生れたのでありまして、軍國主義、封建主義を打立てると云ふ理由ではないのであります、尚ほ東京都制の運用に付きましては、地方制度の改正に依りまして新たに公選都長官を迎へることに依りまして、今後其の面目を一新するに至るであらうと信じて居るのであります
尚ほ警視廳に關する御尋ねがございましたが、警視廳は東京都と別個の機關として之を存置致して居りまするのは、帝都に於ける治安維持の重要性に鑑みまして、之に専念する所の警視總監を置いて其の任に當らせることが適當であり、必要であると認められて居るからでありまして、此の點に付きましては、諸外國の制度に於きましても同樣の方式を採つて居るものが少くないのでありまして、我が國の現状に於きましては、現行制度を維持することが適當であると考へて居る次第であります
次に地方選擧に比例代表制を採用すべきではないかと云ふ御尋ねでございます、選擧制度の中核をなして居りますものは國會議員の選擧であることは申すまでもございませぬ、隨て地方の選擧制度を基本として立案することが適當であらうと考へて居るのであります、而して國會議員の選擧に付きまして、政黨本位の比例代表制を採用致しますことは、確かに一つの考慮すべき方式であると考へられるのでございますが、反面に於て政治勢力の安定と云ふ點を強く考へますと、尚ほそこに比例代表制に於きましては、考慮を要するものがあると考へられるのであります、此の制度を地方自治體の選擧に持つて行くと云ふことに付きましては、地方自治體の特質に鑑みまして大いに尚ほ考慮をして見なければならない點があると思ふのであります、隨て目下の所地方選擧に政黨本位の比例代表を採入れると云ふことは考へて居らない次第であります
最後に内務省に於て政治警察乃至特高警察は廢止して居りまして、或る種の政治團體の屆出に關する聯合軍司令部の指令に基いての屆出事務のみをやつて居ると云ふ答辯を致したのであります、重ねての御尋ねでありますが、全く其の通りであります、而して是が事務の處理に當りましても十分注意を加へまして、届出先は市町村區役所と云ふことに致しまして、政治警察、特高警察の復活の印象をなくしたいと云ふ配慮も致して居る次第であります、其のやうに御諒承願ひます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=46
-
047・徳田球一
○徳田球一君 自席から一寸…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=47
-
048・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=48
-
049・徳田球一
○徳田球一君 部分的に事務的な點では滿足して居るのでありますけれども、全體に亙りましては、是は完全に官僚主義と我々人民の利益を代表する民主主義との對立して居ることを明かにして居る答辯と信ずるのである、尚ほ是等の詳細の檢討に於きましては委員會に於て述べることにしまして、私の質問を打切りたいと思ひます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=49
-
050・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是にて質疑は終了致しました、各案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=50
-
051・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第一乃至第四の四案を一括して議長指名四十五名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=51
-
052・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=52
-
053・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、是にて議事日程は議了致しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後四時三十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01419460709&spkNum=53
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。