1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年七月十一日(木曜日)
午後一時五十一分開議
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議事日程 第十四號
昭和二十一年七月十一日
午後一時開議
第一 戰災復興促進決議案(山口喜久一郎君外十一名提出)
第二 衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 特別都市計畫法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第五 農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第六 郵便法の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、議員より提出された議案は次の通りである
北海道旭川市に男女共學の醫科大學設置に關する建議案
提出者
武田信之助君 坂東幸太郎君
津島英二君
(以上七月九日提出)
戰災復興促進決議案
提出者
山口喜久一郎君 佐藤乕次郎君
逢澤寛君 關谷勝利君
鈴木明良君 大矢省三君
西村榮一君 河野金昇君
疋田敏男君 岡田勢一君
喜多楢治郎君 志賀義雄君
技術省設置に關する建議案
提出者
海野三郎君 西尾末廣君
加藤勘十君 河野密君
水谷長三郎君 平野力三君
須永好君 松岡駒吉君
中村高一君 淺沼稻次郎君
鈴木茂三郎君
漁船保險に對する再保險の金額竝に料率是正に關する建議案
提出者
石原圓吉君 夏堀源三郎君
宮原庄助君 原捨思君
馬越晃君 田中善内君
(以上七月十日提出)
一、去九日貴族院に於て、本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した
臨時通貨法の一部を改正する法律案軍人及び軍屬以外の者に交付された賜金國庫債券を無效とすることに關する法律案
一、去九日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
大藏事務官 今井一男
第九十囘帝國議會大藏省所管事務政府委員被仰付
一、去九日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第九部選出
懲罰委員 杉田一郎君(山崎猛君補闕)
一、去九日議長に於て次の委員を選定した
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)外三件委員
岩本信行君 内海安吉君
小野眞次君 大久保留次郎君
大塚甚之助君 田邊讓君
高橋英吉君 中島守利君
淵田長一郎君 細田忠治郎君
本多市郎君 松川昌藏君
松永佛骨君 水口周平君
綿貫佐民君 小野瀬忠兵衞君
小池新太郎君 佐伯忠義君
鈴木明良君 關根久藏君
坪川信三君 本間俊一君
八坂善一郎君 早稻田柳右エ門君
大矢省三君 岡田春夫君
堤隆君 中村高一君
永江一夫君 細田綱吉君
松本淳造君 宮村又八君
武藤運十郎君 矢尾喜三郎君
稻田健治君 宇田國榮君
大原博夫君 駒井藤平君
伊藤實雄君 竹谷源太郎君
中野四郎君 中田榮太郎君
細迫兼光君 丸山修一郎君
増井慶太郎君
一、去九日次の通り特別委員の異動があつた
帝國憲法改正案(政府提出)委員
辭任 長井源君 補闕 西山冨佐太君
辭任 穗積七郎君 補闕 東井三代次君
辭任 竹谷源太郎君 補闕 安部俊吾君
辭任 大谷瑩潤君 補闕 笠井重治君
辭任 大石ヨシエ君 補闕 石黒武重君
辭任 田中久雄君 補闕 柏原義則君
一、昨十日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
特許標準局長官 久保敬二郎
第九十囘帝國議會商工省所管事務政府委員被仰付
一、昨十日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第二部選出請願委員 栗山長次郎君
第五部選出請願委員 武田キヨ君
一、昨十日委員長理事互選の結果次の通り當選した
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)外三件委員
委員長 中島守利君
理 事
大塚甚之助君 本多市郎君
松川昌藏君 本間俊一君
早稻田柳右エ門君 中村高一君
永江一夫君 大原博夫君
竹谷源太郎君 丸山修一郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きま──す此の際暫時休憩致します
午後一時五十二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=1
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002・会議録情報2
――――◇―――――
午後二時十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=2
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003・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 休憩前に引續き會議を開きます、日程第一、戰災復興促進決議案を議題と致します、提出者の趣旨辯明を許します──提出者逢澤寛君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=3
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004・会議録情報3
――――◇―――――
第一 戰災復興促進決議案(山口喜久一郎君外十一名提出)
戰災復興促進決議
戰災地の復興事業は平和日本建設上喫緊の要務たり
政府は戰災復興院を設け其の計畫を進むと雖も終戰後一ヶ年に垂んとする今日尚建築資材の入手難及都市計畫、土地區劃整理の遲延に因る應急恒久住宅の未進捗、燒跡の放置、港灣、鐵道、軌道、電信、電話等交通通信機關の未復舊竝びに學校、官衙の不整備等國民の期待に反するものあり、眞に遺憾なり
政府は勇斷以て是等に對する應急施策を速かに實施すると共に國家百年の大計を樹立するの要あるは言を俟たざるなり
政府はよろしく轉災爲福の決意を以て萬難を排し民生の安定と日本再建の爲戰災の復舊復興に全力を擧げて邁進すべし
右決議す
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〔逢澤寛君壇登〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=4
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005・逢澤寛
○逢澤寛君 只今上程致されました本院各黨派共同提案に係ります戰災復興促進に關する決議案の提案理由の説明を致したいと存じます、先づ其の決議文案の朗讀を致します
戰災復興促進決議
戰災地の復興事業は平和日本建設上喫緊の要務たり
政府は戰災復興院を設け其の計畫を進むと雖も終戰後一ヶ年に垂んとする今日尚建築資材の入手難及都市計畫、土地區劃整理の遲延に因る應急恆久住宅の未進捗、燒跡の放置、港灣、鐵道、軌道、電信、電話等交通通信機關の未復舊竝びに學校、官衙の不整備等國民の期待に反するものあり、眞に遺憾なり
政府は勇斷以て是等に對する應急施策を速かに實施すると共に國家百年の大計を樹立するの要あるは言を俟たざるなり
政府はよろしく轉災爲福の決意を以て萬難を排し民生の安定と日本再建の爲戰災の復舊復興に全力を擧げて邁進すべし
右決議す
〔拍 手〕
戰爭に因る犧牲は全國民の殆ど全部でありまするが、特に戰災地に於ける被害者は、住宅、家財、商品、店舖、工場、倉庫などを一瞬にして燒失し、又は破壞せられ、或は肉身を失ひ、或は負傷の爲め不具の境遇となられました方々は一千萬の多きを數へるのであります、是等の罹災者は致命的の二重の犧牲でありまして、洵に同情に堪へない不幸の方々であります、終戰後既に一箇年になる今日、不幸なる罹災者と、幸ひに此の難を免れました者との境遇上の開きが益益大きく、其のこと自體が、國民一體化の必要なる時にも拘らず人心の動搖を激化し憂慮すべき社會上、道徳上の諸問題をさへ惹起しつつある今日、政府は速かに綜合復興計畫を確立實施して、住むに家なく着るに衣服なき國民なからしむべく、格段の努力を傾倒すべきものであります(拍手)又是等と竝行して、新日本建設の原動力とも稱すべき凡ゆる産業施設、交通、教育、文化などの廣汎なる復舊復興を急速に實施すると共に、此の際産業道路、觀光施設など劃期的計畫をなすべきである、即時實施すべき方策の一例を擧げれば次の如きものがあります
住宅建設に適する舊軍用地、官公用地、御料地などの貸下拂下を促進し、或は自力建築能力ある者に對しては、封鎖、特殊の預金及び保險金の引出し、運輸其の他各般の便宜を大幅に供與し、又自力建築能力なき者に對しては、共同住宅を建設して、廉價に供與し、又或は戰災者の就業復興に萬全を期する必要があると存じます、而して戰災復興は總て迅速主義を執り、效果主義に徹し、官公署の怠慢に對しては之を糺彈するの方途を講ずべきであります、尚ほ詳細の點に付きましては、他の機會に讓りたいと存じます、是が完遂には、豫算の計上と政府の白熱的の努力に依つて、國民の奮起と協力をせしめることが必要なのでありまするが政府は日本再建の原動力たる此の重要事業に對しまして、果して如何なる程度の熱意を有せらるるや、甚だ憂慮に堪へない所があるのであります(拍手)承知する所に依りますれば、本年度の豫算には極めて少額の計上をせらるると聞き及んで居ります、「狐には穴あり、然るに人の子は枕する所だになし」是は有名な言葉でありますが、萬物の靈長である人間の住むべき家がない、遲々として政府の復興計畫は進まない状態であります、是れ即ち本事業に對し政府の熱意の微弱なることを立證するものでありまして、洵に憤慨に堪へない所があるのであります(拍手)斯くの如き状態では、今や萬難を排して雄々しくも起ち上らんとする罹災者に對して、希望と光明を失はしむるものである、又失業對策として計上を傳へられて居る所の六十億の其の使途の如きは、本事業に全面的に充當すべきであることは、論を俟たざる所と庶幾するに、未だ其の具體的聲明を見ざるは甚だ遺憾に堪へない所であります、政府が眞に本事業の重要性を確認するならば、各省の舊弊を一掃して、此の際は各省とも本事業に對し高度の協力と支援をなし、一擧に各部門の完遂に邁進することを強く要求致し、以て政府を強力に鞭撻致すものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=5
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006・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より討論に入ります、順次發言を許します──武田キヨ君
〔武田キヨ君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=6
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007・武田キヨ
○武田キヨ君 私は日本自由黨を代表致しまして、只今の復興促進の決議案に對して贊意を表明致します
終戰後將に一箇年に垂んと致して居りますが、今日全國の大小百二十有餘の戰災都市は如何なる状態でございませうか、殆ど終戰當時の状態、あの戰災を受けました状態と變らない儘で放置されて居るのでございます、我々が待望致して居りました戰災復興院は、果して健在であるかと私は尋ねたいのでございます(拍手)昨年の冬越冬に備ふる爲に難民の救護を意味致しまして、三十萬戸の緊急簡易住宅、應急簡易住宅を計畫致されましたが、果してあの中のどれだけが難民の役に立つたでございませう、多くの話題と疑問とを殘しまして、今日のあの掘立小屋に近いやうな家屋は殆ど雨曝しになつて居ります、さうして曾て文化を誇りました都民は、其の傍らの荒廢した雜草の累々たる中に、赤く燒け爛れました「トタン」や、或は木片などを集めまして、實に蓑蟲のやうな家を建てまして、其の中に、泥に塗れ、垢に塗れて、野蠻人のやうな生活を今日まで續けて居るのでございます(「ヒヤヒヤ」)元來政府の計ります所は、國民の要求に應じたものでなくては私はいけないと信じて居ります、指導者の一擧手一投足と云ふものは、之に對して無言ではございますけれども、國民大衆は決して盲目無批判で採入れるものではないのでございます(「其の通り」と呼ぶ者あり)自己の生活經驗から割出しました所の生存哲學、之を基礎と致しまして、與へられましたものをどう云ふ風に取扱ふかと云ふことを決めるのでございます、此の國民大衆の感度にぴつたりと合つたものでなければ、大衆は手を付けないで、無關係の儘で離れてしまつて居るのでございます、此の無言の拒否と申しますか、其の無言の拒否を表示致しました態度は、あの住宅營團の建てました側近く、銘々がああ云ふ生活を、自分からささやかな家を營んで暮して居るのでも證明されます、斯ふ云ふ點に付て政府當局は能く御考へになつて戴きたいと存じます、今や此の焦土の上に我が文化日本は建設されなくちやなりませぬ、此の廢墟から我々は起ち上つて、平和國家と云ふものを造り出さなければならないのでございます、所が一箇年以上も此のやうな状態で居りまして、まだ帝都は何の處理も致して居りませぬ、燒け殘つた「ビルディング」は其の儘で放置されて居りまして、何の修理の氣配もございませぬ、我々の前にまるで敗戰の記念碑と見えるぢやございませぬか(拍手)是等のものを我々は眼前に見まして、而も此の荒涼たる燒野に立ちます時に、此の國民に對して國家再建の意欲、其の情熱、それを如何にして盛り上げようと政府はするのでございませう、私は帝都のみならず、地方が──何時も東海道往復の途次にも其の車窓で見まするが、全然戰禍の儘放置されて居るのを見るのでございます、殊に廣島や呉などは戰禍の後昨秋は風水害を受けまして、今日尚ほ少し雨が降りますと、道路は全然川と同じになりまして、下駄を脱ぎ足袋を脱いで渡らなければ行けない状態でございますが、まだそれに何等手を付けて居ないのでございます、斯う云ふ状況を當局は何と御覽になつて居られるでありませう、政府が國家再建の熱意、さうして其の目標、それを何處に私は求められるであらうかと存じます、勿論政府當局は飽くまで愼重に、復興計畫に對しては百年の大計を考へられ、周到綿密な行届いた計畫をなされて居ることは想像に難くないのでございますけれども、餘りの愼重さに却て時機を逸しはしないかと云ふことを私は心配致します
惟ふに「ポツダム」宣言下にごさいます我が國が、如何なる状態にあるかは今申上げるまでもございませぬ、凡ゆる方面、どの斷面を見ましても、難局中の難局に面して居ります、資材の面でも、迚も是は普通の状態では出來ないのでございますから、斯う云ふ場合國家に多きを要求すると云ふことは私は無理だと存じます、唯私は現在決して完全無缺の復興計畫──其の復興の早からんことを期待するものではございませぬので、荒削りで宜しうございますから、どうぞ國民の氣持にぴつたり合ひますやうに、さう云ふ計畫をして戴きたい、大膽率直に、願はくは現在の國民の、すつかり消耗、意氣鎖沈して居ります其の沈淪のどん底に喘いで居ります國民大衆を奮ひ立たせるやうに、積極果敢の再建方策を早く立てて戴きたいのでございます(拍手)國民の魂を搖り動かすやうな建設の息吹を吹き掛けて戴きたいのでございます、明日からでもどうぞ「トラック」で街の清掃整備をやつて戴きたい、さうして斧や槌の音があちらこちらに響いて、其の建設の響きが國民の耳にも聞えましたならば、必ず國民は、今まで意氣沮喪して居りましても、兩方の手に唾をして、さあやらうと起ち上ると私は思ひます、もう國民は一箇年敗戰の重壓に苦しんで居ります、今や我慢して居りました此の腰を延ばして、しつかり起ち上らうとして居るのでございます、勿論復興に付きましては、經濟的にも或は又資材の方面にも隘路が如何に多いか、どんなに其の隘路が大きいかと云ふことは能く分つて居ります、隨て都市の復興に關しましても、決して國民は全部を政府に依存しようと致すものではございませぬ、政府が若し最初の手を打つて下されば、國民は二の手を引受けようと用意して居ります、戰災者自身も再建の意欲に燃えて居るのでございます、唯要は一日も早く此の國民の心持を大きく織込んで、勇猛果敢に政府に復興の根本方針を打樹てて戴き、同時に目下國内に充滿して居りますあの失業者の方々に此の重大なる國家再建の片荷を背負つて戴くやうにしたいのでございます、何は偖て措き、先づ國の起ち上りを如實の姿に現はします戰災復興の事業こそは、文化、經濟、工業などの凡ゆる國民生活の基盤になるものであると私は存じます、殊に國民自體を眼の前の敗戰の氣持から救つて、其の再出發の意氣を昂揚致しまする爲には、隨分是は精神上の效果が大きいであらうと存じます、(「簡單々々」と呼ぶ者あり)右の意味に於きまして、私は本案に贊成の意を表します、寸刻も早く政府が之を實現せられんことを希望致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=7
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008・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 今村等君
〔今村等君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=8
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009・今村等
○今村等君 只今上程されました戰災復興促進決議に對して、日本社會黨を代表して贊成の意を申上ぐる次第であります
政府は戰災復興に對して、昨年の八月終戰後凡ゆる施策と凡ゆる方針を以て、復興を一日も早からしめんとして努力されて居ることを多とするものでありまするが、併しながら其の戰災都市に於ける復興の状態と云ふものは、遲々として進んで居らないのであります、(拍手)政府の方に於きましても、戰災復興院であるとか、國土計畫局であるとか云ふ凡ゆる政府機關を動員して、計畫其のものは極めて綿密に成立つて居るやうでありますが、其の計畫を實際に當嵌めまする場合に、果して國民が要求して居るやうな所へ其の復興の事業が進んで居ないと云ふことを遺憾とするものであります(拍手)御承知の如く戰災者の身になりますると、日本に於ける空襲に因る戰災の一番激しい所は、廣島、長崎であると思ふのであります、私共は世界にない新しい新型爆彈の空襲の洗禮を受けたる長崎の一人でありまするが、唯一瞬を出でずして、廣島に於ける所の十萬の生靈を葬り、或は長崎に於ける所の六萬の生靈を葬り去る、此の極めて深刻悲痛なる空襲のどん底に洗禮を受けた私共としては、復興計畫と云ふものは、極めて政府が愼重に、又凡ゆる政策の上に之を盛り上げて一段の努力を望まなければならぬと思ふのであります、私は與へられた所の時間が約五分間でありまするので、喋々と之を申しませぬ、本日此の議場に御出席の各員は、恐らく此の戰災復興に對しては極めて同情ある所の意思を以て本決議案を共同提案されたと思ふのでありまするが、私は日本社會黨を代表して、此の議案が、單なる決議案と云ふ空文に終らざる所の、實際的の決議案として、國民が悲壯なる決意を以て手を伸ばして居るものに對して、政府は何卒斷乎として國民に對して救ひの手を伸べられんことを切に御願ひ致しまして、贊成の意を表する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=9
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010・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 川野芳滿君
〔川野芳滿君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=10
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011・川野芳滿
○川野芳滿君 私は協同民主黨を代表致しまして、只今各黨各派共同提案になつて居る戰災復興促進決議案に對し、滿腔の誠意を以て贊意を表せんとするものであります
國を擧げて無謀なる戰爭に突入致しました我が國民は、時の指導者の命令の儘に、或は永年住み慣れた我が家、我が土地を強制疎開され、或は又戰災に燒かれたのでございまして、今では是等戰災者は住むに家なく、着るに衣なく、昂進する「インフレ」と食糧難と鬪ひつつ、親戚知己を求めて轉々として流浪の歩みを續けて居るのが、今日の戰災者の姿であると私は思ふのであります、燒かれた者と燒かれざりし者との幸と不幸、運と不運の差は、今後益益甚だしくなつて行くものと私は思ふのであります(拍手)故に政府は一日も早く戰災者の救濟に對し、凡ゆる智能を傾注して救濟に乘出さなければならないと思ふのであります、今日の戰災者の思つて居ることは、昔の華かさに還るが如き贅澤なものではございませぬ、雨露を凌ぐ安住の土地が欲しい、家が欲しい、せめて夜だけでも家族一同が同じ所に寢たい、其の家屋が欲しいと云ふ叫びであると私は思ふのであります(拍手)然るに政府は近く軍需補償を廢止されると云ふことであります、是は當然でありますが、戰災保險の如きは當然是は戰災者に渡すべきものであると私は考へるのであります、殊に少額の戰災保險の如きは即時放出すべきものであると私は思ふのであります、政府は色色施策を發表致して居りまするが、遲遲として進まず、今日國民の憤懣を買つて居るのでございますが、今日國民が家屋を建てるに付きまして、最も障碍を來して居るものは區劃整理法であります、區劃整理法は、聞く所に依りますと、六箇年の繼續事業で御計畫になつて居ると云ふことであります、今日戰災者が家を建てんと欲しても、建築線の關係で建てられないと云ふやうな實情である、故に政府は少くとも此の區劃整理事業に於ても、二、三年の中に必ず結論を付けて戴きたいと私は思ふのであります、今日自力復興と云ふことは洵に立派な言葉でありまして、私も贊成致します、併しながら今日戰災都市百十九の状態を見てみますると、殆ど目拔の場所、大半の都市はやられて居るのであります、收入のない此の戰災都市に對して、自力更生などと云ふが如きは、木に縁つて魚を求むるが如きものでありまして、洵に現實を知らざる所の暴言なりと言はざるを得ないのであります、宜しく政府は此の戰災復興事業に對しまして、思ひ切つたる所の補助政策を斷行すべしと私は斷言致すのであります、政府は曩に國民學校の建築に對しまして、半額の補助を致すかの如き御通牒でありましたが、其の後半額の補助も打切りになつたさうであります、今日將來の我が國を背負ふべき所の國民學校教育が如何に必要であるかと云ふことは、茲に私が喋々申すまでもない所であります、此の將來の日本國家を背負ふべき國民學校の校舍の建築には、少くとも相當の補助を計上すべきものであると思ふのであります、斯くの如き事柄を拾ひ上げて見ますと、洵に數限りはありませぬが、今日は時間の制限がございますので述べることを略しまするが、併しながら百の宣言よりも、私は一の實行が貴いものであると思ふのであります、十年先の百の仕事よりも、今日の十の仕事が私は貴いものであると思ふのであります(拍手)政府は須く此の眞理を體せられまして、一日も早く戰災復興に邁進せられんことを切望致し、而して只今上程になりまして決議案に滿腔の誠意を以て贊意を表する次第でございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=11
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012・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 喜多楢治郎君
〔喜多楢治郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=12
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013・喜多楢治郎
○喜多楢治郎君 私は無所屬倶樂部を代表致しまして、本日茲に各派共同提案になりましたる戰災復與促進決議案上程に滿腔の贊意を表して意見を申述べたいと存じます
惟ひまするに、戰災地の復與其のことが可及的緊急に行はれないことには、我が祖國日本の新生は絶對にあり得ないのであつて、今更に贅言を要せぬ事實其のものが之を證明致して居るのであります、彼の家を燒かれ、衣類を燒かれ、無一物になりました罹災の同胞が終戰後早や一箇年に垂んと致して居りまする今日、未だに住むに家なく、着るに衣類なく、或は疎開先の親族には疎外され、或は家族が今尚ほ數箇所に分散寄寓し、遂に經濟的の破綻に窮迫して、動もすれば混亂の一歩手前に直面致して居るのであります、又一面彼の焦土と化しましたる都市の廢墟に、雜草の伸びた中に、赤く錆びた「トタン」の小屋に、破れ莚を吊下げまして、雨漏りを防ぐ術もなく、長雨の五月雨の昨今、飢餓と戰ひ、求むるに職もなく、心身の衰耗其の極に達して居るのであります、洵に保健衞生上より見ましても、眞に憂慮すべきあばら屋に屯住せる有樣、何時の日に安住の居が與へられるか、今日までの推移より推し量りまする時、前途の希望の曙光すら持ち得ず致しまして、搗てて加へて物理的にも精神的にもどん底に追詰められて居るのが、我が同胞戰災者の現状其のものであります(拍手)固より政府當局に於かれましても、是等戰災者住宅及び衣料に對しまして、應急の措置を講ぜられ、且つ其の施設を實行に移されて居るやうでありまするが、最も重要なる緊急措置に於ては、依然として緩漫であり、而も遲々として其の進捗の見るべきものがないのであります、實に我が罹災者の窮状に至りましては、聊かも打開せられて居らないのであります
申すまでもなく當局要路と致しましては、汲々として計畫を立て、善處展開に當られて居るのでありますが、其の拔本塞源の策は固より、更に其の末端に於きまする實情は、殆ど無策に等しい状態が露呈されて居ることは、最も遺憾とする次第であります、例へば大阪に於ける官營の復興住宅に於きましても、建設はせられましたが、洵に御話にならぬお粗末なものでありまして、戸締りすら十分ならず、而も治安状態の行届かざる今日此の頃、到底其處に喜んで團欒の生活をすることは夢更覺束なく、又建てられた勿々、雨は漏り次第と云ふ現状を如何に見るべきでありますか、又一方戰災者に特配されましたる物資に於きましても、其の證左をまざまざと見せられたので、事實其のものを私が直接體驗致したのでありますから、はつきりと申述べたいのであります、戰災直後の際、罹災者に對しまして、成年男子には、其の激勵と致しまして一人當り酒一合、婦女子には慰安用として一人當り金米糖一袋づつを、無料配給を致したことがあります、是等の物資を戰災者に手渡し致す前に、係官が其の何割かを横領した爲め、配給漏れの罹災者が多數出來た事實が數件あつたのであります、斯かる戰災者に對する配給物資の横領行爲は、我が國民同胞と致しまして、戰災者に對しまする同情慰藉の眞心が深ければ深いだけに、より一層公憤を催し、眞に憎惡すべく糺彈すべきであります、斯かる行爲が、戰災者住宅建築に於ては、柱を噛り、板を食べる結果ともなり、風雨を凌ぐどころか、新居即夜に雨漏りが出ると云ふ事態が起つて居るのであります、洵に由々しき社會問題ではありませぬか、而も非國民的私利私慾の悖徳悖禮のことに於ては、痛憤此の上もないのであります
飜つて思ひまするに、肇國此の方未曾有の大轉換期の今日、其の新再建の日本國は、國民擧つて相互の誠を盡し合ふことこそ、現下の最急務と固く信ずるのであります、勿論長年の戰禍の爲に疲弊し頽廢したる爲め、辛うじて生きて行くことすら手一ぱいであり、他にまで推進して行くと云ふことは至難のことでありませうが、さりとて其の同胞の大窮乏の時に於て、無關心の冷淡を以て、祖國同胞として許さるべきことでは斷じてないと私は思ふのであります、惻隱の心を離れ、人倫の道の廢れたること、眞に澆季の世相と言ふべきであります、斯かることどもは、我が國と致しましては、大東亞戰爭の起るまでは、眼にもし耳にもしなかつたのであります、此の大戰禍は、我が國民をして道義和敬の信實心を全く不感症にしてましたのではありませぬか、否々、私は此の國風の傳統の痲痺より目覺め、相倶に同愛同喜の祖國愛の護持に依り、初めて眞の日本再建が出來得るものであると深く痛感する次第であります、本日、稍稍遲蒔きではありますが、兎にも角にも戰災復興促進決議案を各派共同提案せられまして、政府當局を鞭撻されることになりましたことは、我等の最も欣快とする次第であります、唯此の上は一刻も早く復興成案を實行に移し、是等逆境にある戰災者の境遇打開と民族の更生に大いに邁進せられんことを切に切に冀ふ次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=13
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014・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 疋田敏男君
〔疋田敏男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=14
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015・疋田敏男
○疋田敏男君 私は新光倶樂部を代表致しまして、只今の決議案に贊意を表するものであります、申上ぐるまでもなく戰災復興の事業は、戰災者のみの要求ではなく、復員者も引揚者も失業者も皆喜ぶのであります、殊に食糧の増産にも此の事業の進行が非常な影響のあることを考へますならば、政府の今日までおやりになつて居られることは手緩いと考へます、或は復興院に於かれましては、我々が申上げるまでもなく、氣をいらいらさせて、しつかりやつて居られる氣かも知れませぬが、大藏省の方で金庫の鍵をしつかり締めて握つて、十分に金を御出しにならないのではないかと思ひますので(拍手)此の際思切つて二千萬人の戰災者は勿論、全國民の熱望でありまする此の戰災復興事業が、一日も早く完結を致しまするやうに御努力を希望致します、殊に只今復興院で力を入れて居られます住宅營團の六坪二合五勺の家は大失敗であります、私は専門的立場から見ても、雨が漏り、疊の上に力を入れれば波を打つて入れないのであります、是では困ります、又三千二百の學校が燒けて居りまするが、文化國家の建設の上には之をどうされるかと云ふことも、愼重に考へて戴きたいのであります
尚ほ又大藏省は建築をするのには一萬圓だけの建築資金を出すことを認めると仰しやつて居られまするが、此の度復興院が御計畫になつて居るのは、六坪二合五勺は失敗をしたから、十二坪の理想的な家を土地の事情に依つて建てようと言つて居られます、先日復興院の總裁も、一坪で二千圓乃至三千圓の建築費が掛ると仰しやつて居られまするが、政府の御計畫の十二坪では、二千圓と見ても二萬四千圓、三千圓なら三萬六千圓掛るのでありまするが、大藏省が一萬圓と云ふことでは算盤が合はない、實に不思議に堪へないのであります(拍手) 斯樣なことをどんどん擧げて參りますならば、未だ都會では壕舍生活をして居られる方がある、先日も新橋驛へ行つて見ますと、驛に澤山戰災者が小さな子供さんを連れて休んでおいでになります、田舍では田舍で家が燒けて、それが建たない爲に、食糧の増産が出來ないと零して居られます、之を數へ立てまするならば時間がありませぬが、斯う云ふやうな切實な問題を──どうか本日の此の決議案の上程を機會と致しまして、政府は頭を百八十度轉換して戴いて、思ひ切つて事業の促進に乘り出されんことを御願ひする次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=15
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016・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 吉田セイ君
〔吉田セイ君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=16
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017・吉田セイ
○吉田セイ君 私は日本民主黨準備會を代表致しまして、只今上程されました戰災復興促進に關する決議案に贊意を表するものであります
今囘の戰災は、北は北海道から南は九州の端まで日本全土に亙り、戰災住宅だけでも二百十餘萬戸、罹災者一千萬を數へ、正に同胞七人に一人の割合でありまして、近代戰の被害が如何に甚大なるものかを證する空前の悲慘事であります、或る者は家を燒かれ、財を失ひ、肉親を奪はれ、失業者は巷に溢れ、食糧難に加へて道義は頽廢し、嘗ての文化の中心たりし都市は、今や滿目荒寥たる瓦礫と燒「トタン」に夏草生ひ茂り、眼に觸れるものは皆心を傷ましむるものばかりでございます、今囘の戰災は主として都市に集中され、三大都市を初め、百二十の中小都市が殆ど壞滅に瀕して居りまして、戰災復興は即ち戰災都市の復興であると申しても敢て過言ではありませぬ、而して東京都を初め、横濱、名古屋、神戸外五十有餘の戰災都市は、殆ど海運及び交易に依つて急速な發展を遂げた臨港都市でありますので、將來も亦我が國の經濟上に極めて大なる關聯性を持つものでありまするから、是等の都市の復興は單に道路計畫其の他の一般的復興計畫に止まらず、港灣及び鐵道をも考慮に入れて實行すべきであると思ひます(拍手)特に東京都は從來の如き放漫なる膨脹を許さざるは勿論、官衙を中心とした商業地帶、住宅地帶、工場地帶、それに配するに大道路を基幹とする環状線、放射線の開通、而して空地、緑地帶の設定をなし、能率的、衞生的なる不燃都市の建設に力を注ぐべきでありまして、今日に於て百年の大計を樹て、子孫に累を及ぼさざることが肝腎であると思ひます
應急對策と致しましては、第一に燒跡の清掃、それから電氣、「ガス」、水道、醫療、教育、娯樂の諸施設の完成復舊を急ぎ、假令小さくても各自に住宅を提供すべきであります、先般政府に於かれましては、昭和二十一年度住宅對策としまして、新築二十五萬戸の閣議決定を見たと報ぜられましたが、此の分で推算すれば、自然腐朽、風水害其の他に依り失はれます數を併せ考へますならば、向後二十年以上の歳月を要するものとなりまして、是では洵に任重くして道遠しの感が致します(拍手)暑いにつけ寒いにつけ思ひやられるのは「バラツク」に不自由な生活をして居られる罹災民の上であります、何とかして此の際窮迫して居ります資材難、勞務不足等の隘路難關を突破しまして、政府が曩に發表されました五十萬戸新築計畫を是が非でも實施すべく要望して已まないものであります、斯くして太陽の差す明るい街、健全娯樂の發達した親しみのある憩ひの街、生産の街、文化の街として、私共及び私共の子孫が存分に生活を樂しむことの出來る都市を一日も早く全國に見得るやうに政府に要望して己まないものでございます、之を以ちまして私の贊成演説を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=17
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018・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 高倉輝君
〔高倉輝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=18
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019・高倉輝
○高倉輝君 私は共産黨を代表致しまして贊成の意を申述べます、各黨の代表者の御話がありました通り、復興に關しまして政府は全く何もまだ手を着けて居ないと云ふのが實情であります、同じ戰災に苦しむ各國を見ましても、戰勝國は固より、「ドイツ」を例外と致しまして、戰敗國も既に雄々しく復興に起ち上つて居る模樣であります、其の中で我が日本だけが此のやうな足踏みをして居りますことは、唯單に戰災者の勞苦を救ひ得ないだけでなく、將來日本が國際的な正しい位置を復活致します爲にも、最も大きな妨げとなるものであります(拍手)さう云ふ意味から申しまして、眞に我が民族を復興致します爲に、此の決議を單なる決議に止めることなく、當局を鞭撻致しまして、一日も早く實行に移すことが出來ることを望みまして、贊成の意を申述べる次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=19
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020・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本案に贊成の諸君の起立を求めます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=20
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021・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 起立總員(拍手)仍て本案は全會一致可決致しました──此の際内閣總理大臣より發言を求められて居ります──吉田内閣總理大臣
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=21
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022・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 本決議案に對しまして、政府の所信を開陳致します
政府は曩に戰災地復興計畫竝に住宅建設に關する方策を定めまして、是が速かなる成果を擧げる爲に努力を傾注致し來つたのでありますが、何分にも御承知の如く資材其の他甚だ窮屈なる状態の下にありまして、豫期の成績を得ることが出來なかつたことは、甚だ遺憾に存ずる所であります、併しながら一面目下各官廳、民間各方面との緊切なる連絡の下に、出來るだけ速かに復興諸計畫の成果を擧げんとして、懸命に努力致して居ります所であります、是が實現の曉には、相當各位の御期待に副ふことが出來ると確信致して居ります、幸ひに今日茲に此の決議案に依り各位の御協力を得たことは、政府と致しまして甚だ仕合せに存ずる所であります、尚ほ御趣意を體し一層復興の事業の完遂の爲に精進する決意であります(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=22
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023・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第六を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=23
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024・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか、
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=24
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025・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第六、郵便法の一部を改正する法律案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長中島守利君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=25
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026・会議録情報4
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第六 郵便法の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 郵便法の一部を改正する法律案
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月十一日
委員長 中島守利
衆議院議長樋貝詮三殿
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〔中島守利君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=26
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027・中島守利
○中島守利君 私は只今議題になりました郵便法の一部改正に關する法律案、此の審議を付託されました特別委員會の委員長と致しまして、委員會の經過結果を御報告申上げます
本法案は國民の日常生活に直接關聯を持つて居りまする問題でもありますし、又國民の心理に及ぼす影響も極めて微妙なものがありますので、委員各位に於かれましても、五日間に亙りまして熱心に凡ゆる觀點より愼重審議を重ねた次第であります、之に對する質疑を二つに分けますと、一つは今囘の値上に對する財政的根據とでも申上げますか、又もう一つは從業員の待遇改善、或は戰災復興に付て、或は又各種の通信事業に於ける「サービス」、又三等局の局長の待遇改善、遞信事業一般に亙つて質問應答があつたのであります、前者に付きましては、多くの委員は、葉書を十錢程度に値上を致して置きたいと云ふやうな意見が多かつたやうに見受けられます、併しながら政府は現在の物價の状態では、待遇改善や戰災の復興の費用等を賄ひます爲に、どうしても政府の原案が最も妥當であると云ふやうな説明があつたのであります、又待遇改善の問題に付きましては、遞信大臣より、責任を以て是が實現を期する、而して從業員が安心して通信事業に從事出來ると云ふやうに善處すると云ふやうな答辯がありました、又現在の切手の糊付や、或は又切手の「ミシン」若しくは切手、葉書の不足、葉書の紙質の粗惡、或は又小包の不著、電報、速達郵便の遲配、是等の問題に對しましては、委員各位の意思を付度致しまして、委員長の私より遞信大臣に質問致したのであります、之に對しては大臣よりも洵に是等の「サービス」問題は遺憾である、極力是が囘復に努め、現在遞信事業に對する國民の不滿不平、之を一掃するやうに極力努力致しますと云ふ答辯があつたのであります
而して討論に入りまして、各黨より贊成意見の陳述がありました際に、特に大臣に對する希望を述べられた其の中の二つだけ、此處に御紹介申して置きたいと思ふのであります、從業員の待遇竝に「サービス」の改善を責任を持つて遞信大臣は善處する旨確約されたが、是が急速なる實踐を期されたいと云ふ一つの意見、又もう一つは、國民は政府事業の度々に亙る値上に對し、極めて大なる不信と不安を有して居る、大臣は國務大臣として物價政策を根本的に是正するやうに盡力して貰ひたい、是が意見であります、以上で討論を打切りまして、採決致しました結果、全員一致を以て原案を可決致しました、以上御報告申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=27
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028・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=28
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029・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=29
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030・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長の報告通り可決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=30
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031・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=31
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032・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=32
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033・会議録情報5
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郵便法の一部を改正する法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=33
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034・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決確定致しました(拍手)日程第二、衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案の第一讀會を開きます──大村内務大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=34
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035・会議録情報6
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第二 衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會
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衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案
第一條 衆議院議員選擧法第十二條第一項の規定により、昭和二十一年九月十五日の現在で調製する選擧人名簿は、同項の規定にかかはらず、命令の定める日の現在で、これを調製しなければならない。
前項の規定により調製する選擧人名簿は、次の選擧人名簿が確定するまで、その效力を有する。
第一項の規定により調製する選擧人名簿の調製、縱覽、異議の決定及び確定に關する期日及び期間は、命令でこれを定める。
第二條 前條第一項の規定により調製する選擧人名簿及びこれに代り又はこれを基本とする選擧人名簿については、選擧人名簿の調製、縱覽等に關する市區町村長その他の名簿調製義務者(町村制を施行しない地における町村長に準ずる者を除く。)の事務は、市區町村會議員選擧管理委員會(市制第六條及び第八十二條第一項の市においては市會議員區選擧管理委員會、以下これに同じ。)その他の選擧管理委員會がこれを行ふ。
第三條 第一條の規定は、東京都制第十七條第一項又は第百四十八條第二項、市制第二十一條第一項、町村制第十八條第一項その他の規定により昭和二十一年九月十五日の現在で調製する選擧人名簿にこれを準用する。
第四條 市區町村會議員選擧管理委員會その他の選擧管理委員會は、選擧人名簿を調製するために必要があるときは、選擧人に對して必要な事項の屆出を命ずることができる。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律施行の際現に效力を有する選擧人名簿は、第一條及び第三條の規定により調製する選擧人名簿が確定したときは、その效力を失ふ。
昭和二十一年の東京都制の一部を改正する法律、同年の市制の一部を改正する法律及び同年の町村制の一部を改正する法律中市區町村會議員選擧管理委員會その他の選擧管理委員會に關する規定は、この法律の適用については、この法律の施行と同時に、施行されたものとみなす。
第一條第一項の規定により調製する選擧人名簿及びこれに代るべき選擧人名簿については、昭和二十年勅令第五百三十七號(衆議院議員選擧法第十二條の特例の件)は、これを適用しない。
衆議院議員選擧法施行地域に住居を有しなかつた者で、第一條第一項の規定により調製する選擧人名簿の調製期日に同法施行地域に住居を有してゐたが、引き續き六月以上同一市區町村その他これに準ずるものの區域内に住居を有しなかつたため、これに登録されなかつたものは、昭和十三年法律第八十四號(今次の戰爭に際し召集中の者の選擧權及び被選擧權等に關する件)第一條第一項の規定の適用については、衆議院議員選擧法施行地域に住居を有しないため、衆議院議員選擧人名簿に登録せられなかつた者で、同法施行地域に住居を有するに至つたものとみなす。
昭和十三年法律第八十四號第一條第一項中「左に掲ぐる者あるときは」の下に、「本人の申請に依り」を加へる。
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〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=35
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036・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今上程に相成りました衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案に付きまして、其の提案理由竝に内容の大綱を説明致します
御承知の如く、府縣會議員の任期は八月三十一日、市町村會議員の任期は九月二十日を以て滿了することと相成つて居るのでありますが、是が爲の名簿と致しましては、昨年九月十五日現在で調製せられ、其の後數次に亙つて補完せられました現在の衆議院議員選擧人名簿を用ひざるを得ないことに相成つて居るのであります、然るに是等の地方議會の議員の選擧權に付きましても、別途御審議を願つて居ります通り、衆議院議員選擧法の改正に即應致しまして、今囘選擧權の大擴張を致すことに致しましたのみならず、住居期間をも從來の二年を新しく六月に短縮致しますので、現在の儘の衆議院議員選擧人名簿を利用することは困難であります、加ふるに此の名簿自體に付きましても脱漏問題と云ふ遺憾な問題を惹起して居ります、又調製期日が數囘に分れて居ります、且つは昨年の九月十五日現在で作りました所の基本の部分は、其の後の住居異動等の爲め甚だしく實情に副はなくなつて居る憾みがあるのであります、仍て姑息な補正手段を棄てまして、此の際出來得る限り早急に新しい一つの選擧人名簿を調製致しまして、正確に且つ脱漏なく選擧人を把握致しますると共に、名簿自體を簡明ならしめ、以て今秋の地方議會の議員の總選擧其の他の選擧に備へしめることと致したいのであります
本法に於て規定せんとする要點の第一は、本年九月十五日の通常選擧人名簿の調製期日を繰上げて調製せしむること、第二は名簿調製義務者を、今次の地方制度の改正に依り設置することに相成つて居ります所の選擧管理委員會とすること、及び第三は六月の住居期間の要件を原則として復活することであります
第一の選擧人名簿の繰上調製に付きましては、本年九月十五日現在で調製することと相成つて居ります所の衆議院議員選擧人名簿及び東京都制、市制、町村制其の他の規定に依つて調製する選擧人名簿は、之を出來得る限り繰上げまして、早急に調製を致し、主として今秋の地方議會の議員の選擧に之を用ひしめる爲め、調製、縱覽等に關する期日及び期間は命令を以て之を定める所に依ることと致した次第であります
第二の選擧管理委員會でありますが、是は別途御協贊を願ふことになつて居ります所の地方制度の改正案に依りまして、市區町村等に設置せられる選擧に關する事務の大綱を管理する機關であります、抑抑地方自治團體の中心機關である地方議會の構成者及び地方團體の長を決定する重要な意義を有する選擧事務の執行は、之を一般の執行權より分離せしめまして、民意に基く別個の機關に掌理させることが、事務の公正を擔保する所以であると認められますので、今囘之を新たに設置しようとするものであります、衆議院議員の選擧事務も此の種の機關をして處理せしむることが適當であると考へられるのでありまするが、衆議院議員選擧法の改正は、他に尚ほ重要な問題があり、其の根本的解決は擧げて今後の研究に俟たなければならない所であります、併しながら今秋の地方議會の議員の選擧を當面の目標として、今囘臨時に調製せんとする所の衆議院議員の選擧人名簿の調製には、先づ以て選擧管理委員會をして之に當らしめることが適當と認められますので、特に之に付て規定を設けんとするものであります
第三に六月の住居要件の復活でありますが、昨年九月緊急勅令を以ちまして、衆議院議員選擧法第十二條に特例を設け、昭和二十一年十二月十九日までに施行せられる衆議院議員の選擧に用ひる選擧人名簿に登録せられまする爲には、六月の住居要件を要しないことと規定せられたのであります、是は一に當時の特殊事情に基くものであり、疎開者又は戰災に因る避難者に對して、出來得る限り國政參與の機會を得させようとするものであつたのであります、併しながら終戰後相當の日時を經過致しました今日と相成りましては、其の間の事情が一變致しましたのみならず、更に住居要件を撤廢致しました其のことが、實は名簿脱漏の主たる原因の一つでありましたことにも鑑みまして、本法に依りまして調製する選擧人名簿には、此の特例を適用せず、名簿に登録せられまする爲には、原則として六月の住居要件を具備することを必要とすることに改めるのを適當と考へた次第であります、何卒愼重御審議の上速かに御協贊あらんことを切望致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=36
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037・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=37
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038・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は政府提出東京都制の一部を改正する法律案外三件委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=38
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039・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=39
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040・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第三、會計法戰時特例廢止等に關する法律案の第一讀會を開きます──石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=40
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041・会議録情報7
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第三 會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)
第一讀會
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會計法戰時特例廢止等に關する法律案
第一條 會計法戰時特例は、これを廢止する。
第二條 會計法の一部を次のやうに改正する。
第十一條中「翌年度に亘る契約」を「國庫の負擔と爲るへき契約」に改める。
第二十一條但書を削る。
第二十七條中「年度内に其の經費の支出を終らさりしもの」の下に「竝補助の目的たる事業の進捗遲延其の他避くへからさる事故の爲年度内に補助費の支出を終ること能はさりしもの」を加へる。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
舊法第二條の規定は、この法律施行前に生じた亡失毀損に關しては、この法律施行後においても、なほその效力を有する。
舊法第三條第二項の規定は、同條第一項の規定により現金又は物品の出納保管を掌つた者の責任に關しては、この法律施行後においても、なほその效力を有する。
舊法第四條の規定は、昭和二十年度所屬の歳入歳出の出納に關する事務の完結に關しては、この法律施行後においても、なほその効力を有する。
舊法第八條の規定は、昭和十九年度若しくは同二十年度の歳入歳出の決算、臨時軍事費特別會計の歳入歳出の決算又は附則第六項若しくは昭和二十一年勅令第百十號第三條第二項の規定により歳入金若しくは歳出金を組み入れ整理した決算の樣式に關しては、この法律施行後においても、なほその效力を有する。
舊法第九條の規定は、昭和十八年度乃至同二十年度所屬の歳入金又は歳出金で避けられぬ事故のため同條に規定する期限までにその金額が判明しなかつたものについては、この法律施行後においても、なほその效力を有する。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=41
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042・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題となりました會計法戰時特例の廢止等に關する法律案提出の理由を御説明申上げます
會計法戰時特例は、戰時の必要に應じまして、會計法に特例を開き、以て戰時の實情に即應せしめる爲め昭和十七年二月に制定せられたものであります、而して其の後戰局の推移に伴ひまして數囘改正を致して參りました、併し終戰後の今日に於きましては、最早之を存續せしむる理由を失ひましたから、今囘其の廢止を行ひたいと存ずるのであります、併しながら此の會計法戰時特例中には、今後の經濟事情竝に社會事情などから考へまして、尚ほ存置して適用するのが適當と認められます二、三の條項がございます、そこで今囘會計法の一部を改正致しまして、それ等の條項に定めて居ります所の制度を實質的に存續することに致したいのでございます、以上の理由に依りまして此の法律案を提出致した次第であります、何卒御審議の上速かに御協贊下さらんことを御願ひ致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=42
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043・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=43
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044・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=44
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045・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=45
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046・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第四、特別都市計畫法案の第一讀會を開きます──阿部戰災復興院總裁発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=46
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047・会議録情報8
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第四 特別都市計畫法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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特別都市計畫法案
特別都市計畫法
第一條 この法律は、特別都市計畫に關し、都市計畫法の特例を定めるものである。
この法律で特別都市計畫とは、戰爭で災害を受けた市(東京都の區の存する區域を含む)。
第十八條を除き第二條以下これに同じ。)町村の區域により行ふ都市計畫をいふ。
前項の市町村は、主務大臣が、これを指定する。
特別都市計畫事業は、行政官廳は、これを執行しない。
第二條 この法律で宅地とは、勅令により公共の用に供するものと定める土地以外の土地をいふ。
この法律で借地權とは、借地法にいふ借地權をいひ、借地とは、借地權の存する宅地をいふ。
第三條 主務大臣は、特別都市計畫上必要と認めるときは、第一條第三項の市町村の區域内において又はその區域外にわたり、特別都市計畫の施設として緑地地域を指定することができる。
第一條第三項の市町村の區域外にわたり緑地地域を指定しようとするときは、區域外關係市町村の意見を徴しなければならない。
第一項の規定により指定する地域内における建築物又は土地に關する工事若しくは權利に關する制限で特別都市計畫上必要なものは、勅令で、これを定める。
第四條 行政廳が執行する特別都市計畫事業に必要な費用を、都市計畫法第六條の規定により、公共團體が負擔する場合には、國庫は、勅令の定めるところにより、その費用の全部又は一部を補助する。
第五條 行政廳が、特別都市計畫事業として施行する土地區劃整理については、耕地整理法(都市計畫法第十二條第二項で準用する同法をいふ。以下これに同じ。)第四十三條第一項の規定にかかはらず、同項に掲げる土地(名勝地、舊蹟地及び古墳墓地を除く。)は、同項但書に定める認許又は同意を得ないでも、これを土地區劃整理施行地區に編入することができる。
前項の土地區劃整理については、耕地整理法第三十一條の規定にかかはらず、整理施行地の全部について工事が完了する前においても、換地處分をなすことができる。
第六條 前條第一項の土地區劃整理の施行地區に編入された土地について、所有者(その土地に地上權、賃借權又は永小作權がある場合は、これらの權利の權利者を含む。)の同意があつた場合には、勅令の定めるところにより、換地を交付しないで金錢で清算することができる。
前項の規定により換地を交付しないで金錢で清算する場合において、同項に掲げる權利者があるときは、その權利についても金錢で清算する。
第七條 第五條第一項の土地區劃整理について、宅地地積の規模を適正ならしめるために必要があるときは、土地區劃整理委員會の意見を聞いて、過小宅地に對し、地積を増して換地を交付し、又は換地を交付しないで金錢で清算することができる。
前項の規定により、過小宅地に對し、地積を増して換地を交付するために必要があるときは、大なる地積の宅地に對し地積を減じて換地を交付することができる。
前二項の規定により、地積を増し又は減じて換地を交付する場合に、その換地について存する地上權、賃借權又は永小作權に對し、又、第一項の規定により換地を交付しないで、金錢で清算する場合に、從前の土地について存するこれらの權利に對しては、各各これらの權利の全部又は一部について、金錢で清算することができる。
第八條 第五條第一項の土地區劃整理について、借地地積の規模を適正ならしめるために必要があるときは、土地區劃整理委員會の意見を聞いて過小借地の借地權に對し、その地積を増して權利の目的たる土地若しくはその部分を指定し、又は從前の權利を消滅せしめて金錢で清算することができる。
前項の規定により、過小借地の借地權に對し、その地積を増して權利の目的たる土地又はその部分を指定するために必要があるときは、所有者を同じくする土地について存する他の地上權、賃借權、永小作權又は地役權について、その地積を減じてこれらの權利の目的たる土地若しくはその部分を指定し、又はこれらの權利を消滅せしめて金錢で清算することができる。
前二項の規定により、地積を増し又は減じて權利の目的たる土地又はその部分を指定する場合に、その増減のあつた部分については、金錢で清算する。
第九條 第七條の過小宅地及び大なる地積の宅地竝びに前條の過小借地の意義その他前二條の場合に關して必要な事項は、勅令でこれを定める。
第十條 第五條第一項の土地區劃整理を施行する場合において、換地に關する事項及び第十六條の規定による補償金の配當割合に關する事項は、土地區劃整理委員會の意見を聞いて、これを定める。
第十一條 土地區劃整理委員會は、土地區劃整理施行地區毎にこれを置き、行政廳がこれを監督する。
土地區劃整理委員會は、會長及び委員若干人を以てこれを組織する。
會長は、委員の中からこれを互選する。委員は、土地區劃整理施行地區内の土地の所有者及び借地權者が、各別にこれを選擧する。
土地所有者及び借地權者は、勅令の定めるものを除いて、その土地區劃整理施行地區にある土地區劃整理委員會の委員の選擧權及び被選擧權を有する。
第十二條 この法律に定めるものを除いて、土地區劃整理委員會に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十三條 第五條第一項の土地區劃整理のために必要があるときは、換地豫定地を指定することができる。
前項の規定により換地豫定地を指定したときは、換地豫定地及び從前の土地の所有者にその旨を通知し、且つこれらの土地の全部又は一部について地上權、賃借權、永小作權又は質權を有する者その他命令で定める者(以下關係者といふ。)があるときは、これらの關係者にもその旨を通知する。
第十四條 從前の土地の所有者及び關係者は、前條第二項の通知を受けた日の翌日から、第七條第一項若しくは第二項又は耕地整理法第三十條第一項の規定による換地處分が效力を生ずるまで、換地豫定地の全部又は一部について、從前の土地に存する權利の内容たる使用收益と同じ使用收益をなすことができるが、從前の土地についてはその使用收益をなすことができない。
從前の土地の關係者が、前項の規定により使用收益をなすことのできる換地豫定地の範圍は、前條第二項の規定による通知と併せて、これらの關係者にこれを通知する。
第一項の場合に、換地豫定地に建築物その他の工作物が存するときその他特別の事情があるときは、換地豫定地について、別に使用開始の日を定めることができる。この場合には、從前の土地又は換地豫定地の所有者及び關係者にその旨を通知する。
換地豫定地の所有者及び關係者は、前條第二項の規定による通知を受けた日の翌日若しくは前項の規定による使用開始の日から、第七條第一項若しくは第二項又は耕地整理法第三十條第一項の規定による換地處分が效力を生ずるまで、換地豫定地の使用收益をなすことができない。この場合において、その換地豫定地の所有者及び關係者がその使用收益をなすことができないために損害を受けたときは、通常生ずる損害に限り、これを補償する。
第三項の規定により換地豫定地について別に使用開始の日を定めたために、從前の土地の所有者及び關係者が、損害を受けたときは、通常生ずる損害に限り、これを補償する。
第十五條 第五條第一項の土地區劃整理のために必要があるときは、土地區劃整理施行地區内に存する建築物その他の工作物について、三箇月を下らない期限を定めて、所有者に對してはこれらの工作物の移轉を命じ、占有者に對しては立退を命ずることができる。 前項の規定により工作物の移轉を命ずる場合には第十三條第一項の規定により、換地豫定地を指定しなければならない。
第一項の工作物の移轉又は立退に因り損害を受けたときは、勅令に特別の定のある場合を除いて、通常生ずる損害に限り、これを補償する。
第十六條 第五條第一項の土地區劃整理の施行により、土地區劃整理施行地區内における施行後の宅地の總地積が、施行前の宅地の總地積に比し、一割五分以上減少するに至つたときは、その一割五分を超える部分について、土地所有者及び關係者に對して、勅令の定めるところにより、補償金を交付する。
前項の土地區劃整理で主務大臣の指定するものについては、その土地區劃整理施行地區を數區に分ち、各區について、前項の規定を適用する。
第十七條 第十四條第四項及び第五項、第十五條第三項竝びに前條の規定による補償金は、補償審査會が、これを決定する。
前項の規定により、補償金額の決定があつたときは、地方長官は、その金額を補償金の交付を受ける者に通知する。
第十八條 補償審査會は、都道府縣又は主務大臣の指定する市毎にこれを置き、地方長官が、これを監督する。
補償審査會は、當該都道府縣の區域内(その區域内に主務大臣の指定する市があるときは、その市の區域を除く。)又は當該市の區域内にある土地について、前條に掲げる權限を行ふ。
補償審査會は、會長及び委員若干人を以てこれを組織する。
會長は、地方長官(第一項の規定により主務大臣の指定する市においては市長、以下これに同じ。)を以てこれに充てる。
委員は、關係各廳の一級又は二級の官史、都議會、道府縣會又は市會の議員及び學識經驗ある者の中から、地方長官が、これを命じ又は委囑する。
補償審査會に臨時委員を置き、地方長官が、關係市區町村長及び關係市町村會議員の中から、これを委囑することができる。
臨時委員は、關係市區町村に關しない事項については、議事に參與することができない。
補償審査會に關する費用は、公共團體の負擔とする。
第十九條 この法律に定めるものを除いて、補償審査會に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十條 清算金を納付する義務ある者に對し、土地區劃整理施行地區内の土地に關する權利について、第六條、第七條第一項若しくは第三項、第八條又は耕地整理法第三十條第一項但書の規定による清算金又は第十六條の補償金を交付する場合には、その交付する清算金又は補償金は、その者から徴收する清算金にこれを充てることができる。但し、その補償金が耕地整理法第二十五條の規定により供託する必要のあるものであるときは、その補償金を交付すべき土地に關する權利について徴收する清算金にのみ、これを充てることができる。
第二十一條 第五條第一項の土地區劃整理について徴收する清算金については、勅令の定めるところにより、利子を附してその分納を認めることができる。
前項の利子は、これを清算金とみなす。
第二十二條 第五條第一項の土地區劃整理について、清算金に剩餘を生じたときは、その剩餘金は公共團體に歸屬する。
第二十三條 第五條第一項の土地區劃整理において、土地に關する權利について、清算金を徴收又は交付さるべき場合に、その土地に關する權利を讓渡したときは、當事者雙方は、連署して、遲滯なく、土地區劃整理施行者に、その旨を届出なければならない。
前項の届出をしない場合には、清算金の徴收又は交付に關し、その讓渡は、これを以て土地區劃整理施行者に對抗することができない。
土地に關する權利について清算金を徴收又は交付さるべき場合に、その土地に關する權利の分割讓渡について第一項の届出があつたときは、土地區劃整理施行者は、遲滯なく、各當事者に對しその者から徴收すべき清算金額又はその者に交付すべき清算金額を通知しなければならない。
第二十四條 第五條第一項の土地區劃整理において、土地に關する權利について、清算金を徴收又は交付さるべき場合に、その土地に關する權利が消滅したときは、前條の規定を準用する。
第二十五條 第十四條第四項若しくは第五項、第十五條第三項又は第十六條の規定により補償を受くべき者が、補償金額の決定について不服があるときは、その決定の通知を受けた日から三箇月以内に、通常裁判所に出訴することができる。この場合においては、訴願し又は行政裁判所に出訴することができない。
第二十六條 都市計畫法第二十三條乃至第二十六條の規定は、この法律又はこの法律に基いて發する命令によりなす處分について、これを準用する。
第二十七條 耕地整理法第二十五條の規定は、第六條、第七條第一項及び第三項、第八條、第十四條第四項及び第五項、第十五條第三項竝びに第十六條の規定により拂ひ渡すべき金錢について、これを準用する。
第二十八條 第五條第一項の土地區劃整理について、耕地整理法を準用し難い事項に關しては、勅令で必要な規定を設けることができる。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
神宮關係特別都市計畫法は、これを廢止する。
神宮關係特別都市計畫法に基き、この法律施行前に發生した事由に因り交付する補償金、この法律施行前に行政官廳のなした處分に基く損失補償及び費用の負擔竝びに補償に關する訴訟に關しては、同法はこの法律施行の後においても、なほその效力を有する。
この法律施行の際現に公共團體が都市計畫事業として施行してゐる土地區劃整理は、命令の定めるところにより、これを、第五條第一項の土地區劃整理とみなすことができる。
農地調整法第四條の四第四號中「都市計畫法」の下に「又は特別都市計畫法」を加へる。
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〔政府委員阿部美樹志君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=47
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048・阿部美樹志
○政府委員(阿部美樹志君) 只今議題となりました特別都市計畫法案に付て提案の趣旨及び内容を申述べます
今囘の戰災は全國に亙り、百二十餘の都市に及び、其の燒失面積は一億六千萬坪と云ふ有史以來のものであります、是が戰災都市の復興計畫を確立致しまして、其の事業を迅速に遂行致しますことは、將來の新日本建設の爲には申すに及ばず、當面の民生安定、産業振興の點から申しましても、洵に緊要のことと存ずるのであります、政府に於きましては、終戰以來、是等戰災都市の復興の一日も速かならんことを期し、復興に關する都市計畫の決定を著々進めつつあるのでありますが、是等の復興の計畫乃至事業に付まして、現在は都市計畫法に基き、所謂都市計畫及び都市計畫事業として行はれて居るのでありますが、戰災都市の急速なる復興を圖る爲には、現行の都市計畫法では不十分な點が少くないのであります、特に戰災地の土地區劃整理は此の復興事業の基礎をなすものでありまして、之を急速に且つ徹底的に施行する必要が認められるのでありますが、之に付きまして都市計畫法は、今囘のやうな大戰災の場合を豫想して制定されたものではありませぬ爲に、同法の規定だけで此の事業の迅速徹底を期することは極めて困難であります、茲に主として戰災都市の土地區劃整理に關しまして新たに立法する必要を認めまして、此の法案を提案致した次第であります
而して此の法案は戰災復興の特異性に鑑みまして、戰災都市の復與計畫と其の事業に限つて適用する臨時的立法とし、此の法律に規定する事項の外は、現行都市計畫法を適用することになるのでありまして、第一條に都市計畫法の特例として制定する旨を明かにした次第であります、第五條以下に於きましては土地區劃整理の施行上必要な規定を設けたのでありますが、其の規定を設くるに當りましては、努めて公共の利益と個人の利益の調和を圖ることと致しましたが、將來の理想的都市建設に備へまして、公共的見地から必要な限度に於きまして個人の權利を制限することも巳むを得ないことと考へて居るのであります
尚ほ附則に於きまして神宮關係特別都市計畫法の廢止を規定致して居りますが、神宮關係施設整備事業は、昭和十四年度より具體的調査を進めまして、式年御遷宮に當る昭和二十四年度までに關係施設の主要なるものを完成せしむる爲に、昭和十五年度より同二十四年度に至る十箇年繼續の政府直轄工事として、宇治山田市都市計畫及び神域等の改良を施行して參つたのでありますが、諸般の事情に鑑み、之を中止することが妥當であると考へますので、此の機會に神宮關係特別都市計畫法をも廢止致したいと思ふのであります、尚ほ宇治山田市の戰災復興に付ては、此の特別都市計畫法に基いて之を行ふことは勿論であります、何卒御審議の上、速かに協贊を與へられんことを希望する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=48
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049・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=49
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050・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=50
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051・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=51
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052・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第五、農林中央金庫法の一部を改正する法律案の第一讀會を開きます──和田農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=52
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053・会議録情報9
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第五 農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會
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農林中央金庫法の一部を改正する法律案
農林中央金庫法の一部を次のやうに改正する。
第五條第一項中「森林組合聯合會」の上に「蠶絲業會、蠶絲協同組合、」を加へる。
第十四條の二第一項中「融通を爲す場合」の下に「竝に自作農創設維持の事業、農地の造成及改良に關する事業其の他主務大臣の指定する事業に必要なる資金を融通する場合」を加へる。
第十五條第一項第六號中「、戰時金融金庫」を削る。
第十五條の二 農林中央金庫は特に必要ありと認めたる場合に於ては前條第一項の規定に拘らず命令の定むる所に依り業務上の餘裕金を以て同項第四號又は第五號の法人に對し主務大臣の認可を受け十箇年以内の定期償還貸付又は年賦償還貸付を爲すことを得
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=53
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054・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 只今提案せられました農林中央金庫法の一部を改正致しまする法律案の提出理由を御説明申上げます
御承知のやうに現在我が國が當面致して居りまする經濟上の諸困難を克服致しまする爲には、各種の生産力の向上を圖りますることが最も緊要なことでござりまするが、就中食糧の増産と見返り物資の生産の増進とは、現下の危機打開の爲めの主要な施策であると存じます、而して是等の施策を強力に促進致しまする爲には、事業資金の圓滑を圖りますることが必要でござりまするので、農林中央金庫にも、より一層此の方面に於きまして協力をなし得る途を開きますることが此の改正法律案の骨子であります
即ち改正の第一點は、現在政府資金の融通が停止せられて居りまする爲め、自作農創設維持事業資金、農地開發事業資金等の長期年賦資金の融通を、農林中央金庫の自己資金を以てなし得まするやうに、其の年賦貸付に對しまする制限を撤廢すると云ふ點であります
次に第二の點は現下の金融事情に鑑みまして、農林水産業に關しまする事業を營む法人の所望しまする設備資金等の比較的長期の資金を、農林中央金庫の餘裕金を以て融通し得る途を新たに開く點でございます、又蠶絲業に關しまする團體に對して、農林中央金庫の所屬員たるの資格を與へまして、見返り物資の大宗でありまする蠶絲の増産に資することと致したのでございます、以上が改正案提出の理由の概要でございます、何卒御審議の上、速かに御協贊あらんことを御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=54
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055・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 質疑の通告があります、順次之を許します──磯崎貞序君
〔磯崎貞序君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=55
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056・磯崎貞序
○磯崎貞序君 私の御質問すべき諸項目は、既に色々の機會に於きまして同僚から御質疑があつた問題であります、極めて簡單な、唯當局が誠意さへございますならば、是が解決は立どころになすことが出來ると云ふ案件でありまするので、どうぞ從來御答辯に相成りましたる如き、餘り御熱意の足らざる所の御答辯では不肖洵に困ります、熱意を以て是が解決の御答辯を煩はしたいと思つて居ります
今日本には洵に色々の方面から難かしい問題が山積して居ります、併し此の總ての重大な問題も、歸する所食糧難の打開の一途で解決し得るものであると、斯う云ふ風に私は考へて居ります、食糧難の打開の問題は、陸に於きましては、所謂主要食糧或は畜産問題、蔬菜類の増強に依つて之を求むることは出來まするし、併せて海に於きまして、其の蛋白資源たる海藻、魚介の増強に依つて之を求むることが出來る、所謂海陸を一體とする食糧増産施策でなければ決して現下の問題は解決し得ない、此の觀點から申しまして、先づ陸の問題でありまするが、此の主要食糧の増産の上に如何に現在の情勢が大きな隘路を齎して居るかと云ふ一事であります、之を資金の面に付て簡明に申しましたならば、農家が現在扱はれて居る所の資金の待遇でありまするが、農家に對しまする生活資金は封鎖されて居る、或は農家が時代の要請に依つて食糧の増産に御奉公せんとしましても、其の生産資材を得んとする資金が凍結されて居る、斯くの如き意味合からしまして、政府が大童になつて食糧の増産乃至供出に御力添を願つて居るのではありまするが、農家の心理状態としますると、其の政府の御要請に應へたいのであるが、遺憾ながら金がない、遺憾ながら此の儘では増産が出來ない、惡いこととは知りつつも、現在持つて居りまする所の食糧品を物交する、或は現在の品物を横へ流す、斯うした形に依りまして、政府が今都市消費階層の爲め各方面に對しまして食糧供出に御奔命になつて居りますが、中々政府の思ふ通りに參らぬ、斯うした資金封鎖の状態、之を解除する、之に對する改正をするにあらずんば、此の増産計畫、供出問題は到底全うすることは出來ないと私は考へて居ります、所謂現在の資金調整法第十三條の二、或は第六條の四、斯うした幾多の細かい封鎖事項に對しまして、相當思ひ切つた所の一つ御施策を要請する、之に對しまして大藏當局の御囘答を煩はしたいと思つて居ります
次に肥料の問題でありまするが、農家が肥料に對します所の欲求は、恐らく食糧に對しまして訴へて居りまする都市消費階層の叫び、所謂米を求むる聲、それ以上に農家は肥料を求めて居る、現在農家は政府から配給されて居りまする金肥水稻肥料としまして二貫匁内外の笹つ葉配給では、到底御要請には達することが出來ないと云ふことから、色々力を致して努力をして居る、其の農家の欲求に巧みに乘じたのが所謂闇肥料の跋扈であります、現在農村に行はれて居りまする闇肥料は、米一俵に對しまして硫安二袋、安いのになりますると二袋半、或は金圓に依つての賣買は一袋が千圓から千二百圓、斯うした品物が今日滔々として風をなして居る、寧ろ政府當局、系統方面から流れまする品物よりも、斯うした方面に大きな品物が流れつつある現状であります、或は更に又闇肥料の次には僞肥料の跋扈、實に最近僞肥料の跋扈に付きましては慘憺たる憂目を見て居りまする農民の現状であります、つい先般硫安まがひの肥料を八、九百圓で買ひまして、施して見た所が作物を枯らしてしまつたと云ふやうな現實の被害があります、更に其の僞肥料の次になりますと、農家はどうしても此の儘では肥料を求めることが出來ない、それでは愈愈と云ふことから最後案としまして、最近火葬場方面にさへこつそりあの灰を竊盜する者が出來て居る、御話するさへもぞつとしまするやうで、草木も眠る丑三つ頃にあの火葬場へ行つて、「リヤカー」で火葬場の灰を持つて來ると云ふことは、如何に農村が、農民が肥料に大きな憧れを持つて居るかの一つの例であります、斯くの如く致しまして、少くとも現在は肥料の問題が總ての食生活の根幹であると云ふ建前からしまして、政府は今少し肥料施策に付きまして御力添を願ひたい、所謂一月から四月までの目標が三十五萬「トン」と拜承して居りまするが、其の目標に現在達して居るかどうか洵に覺束ない現況であると聞いて居ります、併し此の問題にも大きな隘路がある、所謂肥料の生産に付きましては、或は礦材がない、「コークス」がない、資金が足りない、色々の問題があります、或る方面では之を國家管理にしよう、或は國營にしようと云ふ色々の話がありますけれども、少くとも現在の状態に於きましては、肥料に對しまする資金の流れさへ圓滑になりますれば、相當此の問題に付ての増産が期待出來ると思ひます、私は現在農林中央金庫に於ける所の法人貸付の問題に付きまして、是非一つ色々の債券其の他の増發を總ての面に於きまして廣汎に之を認めて戴き、此の農家の最も必要とする、一般國民大衆も要望して居りまする食糧問題の解決の爲に、肥料に對しまする融通を圓滑に──假に二十數億と申し、或は三十億と稱せられて居りまする其の資金は、一つ農家がお互ひが貯金した此の金の集りの中央金庫からやつて戴きたいのであります、之を一つ當局に御願ひするのであります
次に先程申しました、増産の大きな問題は、所謂如何に肥料を澤山に、如何に管理を十分に致しましても、現在の食糧は五俵の米を十俵穫ることは不可能であります、併しながら眼を轉じて海の方へやつて下さい、海に對しまする限り、相當御力添へがございまするならば、二倍、三倍の増收を來すことが出來る、戰前に於ける我國の水産魚獲高は五百五十萬「トン」と稱され、現在二百萬「トン」に轉落して居りまするが、而も其の轉落の大きなものは、各種の生産資材の要素を缺いて居る、網がない、油がない、船がない、殊に只今申しまする船の如きは、殆ど戰時中に於きまして國家の御用としまして徴用されて居ります、最近「マ」司令部の恩顧に依りまして海面が相當擴大され、活躍の舞臺は展開されて居りますけれども、船を必要とする、其の船を拵へまするに付て、今まで持つて居つた金は凍結され、建造費用は出ない、勿論今仰せの如くに政府當局では、今後資金の貸付方法に付ての御力添へもあるやに聞いて居りますが、貸付は貸付であつて、中々貸して呉れない、其の事實は海外から引揚げて參ります同胞が、慘憺たる形で國土に上る、再建の途を求めんとして政府の御施策になる所の融資を求めましたる場合、制度上に於ては三千圓程度の所謂資金貸付の制度は開かれて居りまするが、實際は殆ど皆無に等しい、此の恩典に浴することは出來ない、斯う云ふ現況でありまするので、自分等が出しました、凍結されて居る金が儼然として預金口座にある以上は、是等の生産資材に對しましては、全面的に思ひ切つて其の融資の途を講じて戴きたい、是は融資ではない、自分の金を引出すのである、斯う云ふ意味合に於きまして一つ水産部門に對する所の要請を申上ぐる、一體食糧の問題に對しまして、今までも農林當局は、食糧解決は殆ど米か、麥か、薩摩芋を作ることに依つてのみ解決し得ると云ふのが御考への重心であると考へて居ります、私は左樣なことでは此の緊迫せる國民の食糧問題打開は到底解決出來ない、どうしても其の食糧の三〇%、四〇%の地位を占むる所の此の海面に活躍し、孤舟を驅つて各方面に散在する豐庫を開拓して、國民食糧を豐富にすることが最も必要である、此の意味合に於きまして、私は是非とも近く同僚が御願ひ申すであらう所の水産省の獨立、現在農林省の一廓、蠶絲會舘の地下室に水産局が一局存在して居りまするが、ああ云ふことでは私共の要請して居ります所の水産問題の解決、其の水産問題に横たはつて居る行政の多元化、之を一元化しなければ、刻下喫緊の食糧問題の解決を期することは、木に縁つて魚を求むる類であると私は考へて居ります、此の意味合に於きまして政府當局は勇猛果敢に、恰も豫算案が近く提案されると聞いて居りまするが、是非とも此の水産省獨立の案件も併せ考へて御提案を煩したい、是が私が此の問題に附加へて御願ひする案件で、當局の御辯明を願ふのであります
大體資金問題は其の程度で、細かい問題に付きましては又他日の委員會に於て御願ひするとしまして、今私が本議會へ參りまする直前に、農家が血判を以て私に要請しました數項の切なる要件を申上げて、今食糧難打開、供出に奔命なさつておいでになる農林當局に御一考を煩したいと思ひます、現在馬鈴薯と大小麥が供出の眞最中と聞いて居りますが、馬鈴薯はどうやら板に付いて居ります、併しながら大麥、小麥に付ては、如何なることであるか未だに供出の御指示がない、此の御指示がない所へ、各方面から猛烈なる勢ひで品物の買漁りに參つて居ります、恐らく此の形で政府當局が、縣或は地方方面へ廻しまして適正な數字を御決定に相成りまする前には、遺憾ながら其の大半は横へ流れ、或は食はれてしまふぢやないかと云ふことを惧れて居ります、特に同胞が十日、二十日、十數日、遲配缺配を重ねて居りまする此の際に當つて、最も政府が力を致さるべき此の大小麥の供出問題に付きまして、斯かる現況は何事ぞやと私は申したいのであります
次に現在農家が申しますには、到底此の儘では我々は供出しないと言つて居ります、どう云ふ理由を以てしないかと申ししますると、第一私共の供出には斯う云ふ隘路が澤山あります、馬鈴薯を出します、薩摩芋を近く出す、或は大小麥を出します、併しそれ等の包裝俵に付きまして、遺憾ながら農家の供出しまする俵と云ふものは餘計なものになつて居る、此の俵に付きまして、現在空俵商業組合と云ふものがありまして空俵商業組合が食糧營團とか或は製粉工場へ參ります空俵を、其の機關を經て各方面へ撒布せられる、所謂其の機關を經て受取ると云ふやうな現況であるが、之を強ひて求めると、一圓五十錢とか、闇で求めますと五圓内外の大きな負擔を背負つて居る、之を何とかして貰ひたい、是が一つの要請であります、更に藷類の統制組合と云ふのがある、是も馬鈴薯、薩摩芋に付て中間搾取の存在になつて居る、之を何とかして貰ひたい、是も細かいことは委員會で申上げる機會があると思ひますが、此の席上で特に眞摯な農民の叫びを、此の議場を通じまして農林大臣に申上げて見たい、或は此の青果市場ら經まして野菜を出す、市場で寺錢を刎ねられる、其の上に食料品統制組合と云ふものがあり、そこで又通過料を取られる、さうした機關があります爲に、其の手取が少くなる、手取が減つて來る、斯う云ふ數多くの細かい搾取機關が存在して居るが、之を一つ撤廢して戴きたい、斯う云ふ問題が、我々の今將に供出しようと云ふ意欲に如何に大きな害を與へて居るかと云ふことを當局は眞面目に一つ考へて、直ちに此の撤廢に要請するものであると云ふことを申して居ります
斯くの如くに致しまして、現在總ての隘路は各方面に散在して居りまするが、特に最後に一言申上げますることは、私は此の席上に於きまして、徒らに空理空論を言つて居るのではありませぬ、反面には農家に向つて、眞に現下の情勢は容易ならざるものであるから、是非とも大小麥の供出をして貰ひたいと言ひますと、彼等は叫ぶが如く愬ふるが如く私に求めます、即ちそれは、現在政府に御力添へを願つて居る所の僅々二貫目の肥料に於きまして、先般配給せられたのは、硫安が半ば、或は半ば以下であつて、大體が石灰窒素である、其の石灰窒素を田植の最中に配給されて居る現況である、石灰窒素を田植の最中に配給されましても、是は肥料として何も効果がない、斯うした問題に付きまして、是非一つ政府當局は御考へを願ひたい
更に故に結論としまして、兎に角現在の場合に於きまして、肥料を徹底的に努力して配給して貰ひたい、此の肥料が完全に出ませぬと、今や我々の供出する大小麥は、右手に米、麥、左手に政府當局から寄越します所の金肥を求める、物と物とで手渡ししなければ出さないと言つて居る位に惡化して居ります、斯くの如き状態からしまして、洵に此の眞摯なる農村の叫びを此の議場を通しまして所管大臣に御愬へします、何卒此の五百五十萬農家が愬へて居りまする問題に對して、明快果敢なる所の御施策を願ひ、目下供出の途上にあります是等の問題に付て、御奉公の完璧を期して戴きたい、之を併せ御願ひ致しまして、本員の質疑を終ります
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=56
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057・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 簡單に御答へ致します、肥料の増産が食糧の對策として最も重要でありますることは御説の通りでございまして、私共と致しましても極力此の増産には努めたいと思つて居ります、肥料資金が現在肥料増産の隘路となつて居りまするので、今囘農林中央金庫法を改正致しまして、復興計畫に付て必要なる資金の融通が出來まするやうな途を開きました、之に依りまして尚ほ一層肥料の資金問題に付ては解決の途が開かれたのでございますから、一層増産に貢獻する所があると斯樣に考へて居ります、それから今囘は、只今御説明申上げましたやうに、農林中央金庫の餘裕金を長期信用に使ふ途を開きましたので、此の方法に依りまして、漁船の建造の爲に必要な資金も參ることになりますので、漁獲物の増産に付きましても資する所があると存ずるのであります
水産省の問題は、是は一つの問題ではございまするが、私共と致しましては、現在の機構に於きまして、十分努力を致しまして御期待に副ひたい、斯樣に考へて居ります、其の他の點に付きましては何れ委員會等で御答へ致す機會があると存ずるのであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=57
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058・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 磯崎君、是で宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=58
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059・磯崎貞序
○磯崎貞序君 只今の大臣の御話は洵に私の腑に落ちませぬが、委員會に於きまして事を掘下げて更に御質問を致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=59
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060・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 稻村順三君
〔稻村順三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=60
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061・稻村順三
○稻村順三君 私は今囘農林中央金庫法の一部を改正する法律案の上程に際して若干の質疑をしたいと存じます
言ふまでもなく、中央金庫設立の目的と言へば農業金融であります、今日では成程種々なる條件の下に於きまして、農業を繞りまして諸部門に金融することになり、現に本案が茲に上程されて居るのでありますが、而も尚ほ其の本質に於きましては、農業金融と云ふことに於ては聊かの變化もない筈であります、然らば中央金庫の持つ所の我が國の農業金融と云ふのは如何なるものであるか、私は我が國の農業金融と申しますことは、日本の國民經濟に於きまして農業の持つ歴史的特有性に鑑みまして、日本農業の生産機構を改善るすると云ふ所に、實に此の農業金融の目標があつたのであらうと存ずる次第であります(拍手)然らば此の歴史的な農業の特殊性とは何かと申しますならば、殆ど國内に溢るるばかりにある所の過剩人口、此の過剩人口を基礎と致しまして、零細なる農業經營、更に其の零細なる農業經營の上に立ちます所の、世界的に殺人的と言はれて居ります所の高額なる小作料、更に高率な農村金利、又農村に於ける所の商工業の搾取、更に農民の意思に反して作られた所の強權を以てなされて居る農業統制、是等のことは「マッカーサー」司令部が日本の農民解放に關する指令に於て既に指摘して居ります所でありまして、所謂民主化促進上、經濟的障碍と名付けて居る所のものであります、それでありますからして、農業金融と云ふやうなものの目的は、實に此の障碍を根柢的に排除して、さうして農業を他産業の水準にまで近代化すると云ふことになければならないと思ふのであります、無論中金設立以來、農業金融は比較的改善されました、此の方面に多少は貢獻して居ることは私も認める次第でありますけれども、併しながら實質的に見ますならば、是は本當の言葉通り多少の程度でありまして、實に其の徹底を缺く憾みが多分にあつたであらうと存ずるのであります、是は一體何に原因をして居るのでありませうか、農業は元來非常に小規模である爲に、農業經營の中からは利益と云ふものは餘計見られなかつたのであります、隨て此の農業生産に投資すると云ふことは一箇の危險であつたことは明かでありますので、日本に於ては農業團體として産業組合時代から農業金融には從事して居りましたけれども、併しながら産業組合の金融を見ますと、主として農民の作つた所の農産物の取引に關して、或は又農民が必要とする品物に對しまして、即ち物の賣買に對しては相當の投資をするのでありますけれども、併しながら生産の資金としての投資が極めて不活溌であつたのであります、私は此の根本的原因は何であつたかと申しますれば、實に最下部團體である所の信用組合等は、地主が其の地位を主に占めて居りまして、さうして農業生産と云ふことを中心にして考へますと、生産増強には自ら土地問題と云ふものに觸れざるを得ないのであります(拍手)此の爲に地主は土地問題に觸れることを惧れまして、生産増強である所の此の面に投資すると云ふことを怠り勝であつたと云ふことは、私は否認することの出來ない事實であつたらうと存ずるのであります(拍手)隨ひまして農業は殆ど神代ながらの儘の形態を存するとまで言はれまして、所謂討建制の貯水池と化し、單に獨占資本或は地主に依つて非民主的に強厭されて居ると云ふだけで、民主主義的でないばかりでなく、生産形態それ自身が封建的であると云ふ所に、實に我が國民主主義化の一大障碍となつて居ることを見逃すことが出來ないのであります(拍手)是は新しく農業生産に資金を投ずることに依つて、農業を近代化することに依つて救はなければならぬ、農民も解放しなければならぬと云ふのが私達の主張なのであります、然らば是は如何なる方法に依つて近代化しなければならないか、それは言うまでもなく、今日の如く人口が農村に溢れて居る時代、而も耕地の少い時代に於きましては、私は單に農家に之を近代化せよと言つた所でそれは無理である、唯金を貰つた所で決して近代化する餘裕はないと考へるのでありまして、農業を他の産業に於ける水準にまで近代化する爲には、どうしても經營の共同化と云ふ所にまで發展しなければならないと思ふのであります(拍手)若し戰爭前に於て、所謂農村には勞力が不足して居る、其のことが愬へられた時に於て、政府が此の方面に十分に注意致しまして、さうして農業金融の改善を若し圖つて居つたと致しますならば、私は戰爭の直前、直後に起つて居つた所の、産業組合が遊資に惱んで居る、貯金が殖えて、さうして貸付が減少して居ると云ふやうな現象は、全く起らなかつたであらうと信じて疑ひませぬ(拍手)此の點に關する農林大臣の所見を伺ひたいのであります
次に農業金融は前に述べたやうな目的を以て生れたのでありますから、其の機關が利潤を見込んで居ると云ふことは邪道なのであります、然るに今日信用組合から中央金庫に至ります農業金融の機關と云ふものは、實に斯う云ふ目的からすつかり離れてしまつて居ります、御承知の通り信用組合から中金に至る金融機關の系統は非常に厖大になりまして、多數の職員群と云ふものを有して居るのでありますが、此の職員群が實際上の仕事を致して居ります爲に、遂に自分自身農業金融が職務であると云ふことを忘れてしまひまして、單に金融機關の利益の爲に農民の利益を沒却すると云ふが如き態度に出て來て居るのであります(拍手)私は是は國政に付ても同じに言へると思ひます、國民の爲に出來た所の政府が、即ち國家が厖大なる官僚群に依りまして、獨特の所謂行政と云ふ仕事をするに當りまして、いつの間にやら國民の存在を忘れ、國家と國民を引離して、國民の上に君臨すると云ふ態度と、此の職員の態度とは同じであると私は信じて居ります(拍手)是が爲に農業金融なるものは、實に組合乃至は金融機關の利益の爲にのみ圖られるのでありまして、隨ひまして單に利益のある所に投資し、利益のない所には投資しないと云ふやうな現象が生じて來て居るのであります、其の一つは、私は今日の信用組合から中央金庫の持つて居ります有價證券に依つて現はれて居ると思ふのであります、農民の貯金を掻き集めまして、其の掻き集めた金を農村に還元すべきが私は常道であらうと思ふのでありますが、併し農民は非常に零細であつて、高い金利は取れない、そこで有利な有價證券を買漁ると云ふが如き現象は各地の信用組合に見られる事實であります(拍手)其の例を統計の上で見ますと、昭和十六年中央金庫の持つて居る有價證券の總額が約十三億であります、信用組合聯合會の持つて居る額は約十二億、それに信用組合の有價證券が十二億五千萬圓でありますので、總額實に三十七億五千萬圓と云ふ巨額に達して居るのであります、之を當時の貯金總額五十億に比べて見ますと、實に貯金總額の七割何分に當つて居ると云ふ事實を我々は見逃すことが出來ないのであります(拍手)若し是が公債であるならば、私は斯くの如き零細なる農民に對する金融を受持つものが、軍事的な斯樣な目的の爲に流用されるものとしたならば、それこそ戰爭に依つて農民を殺すことを如實に現はしたものであると信じて居るのであります(拍手)斯樣なことから、動もすると所謂金融機關は利鞘稼ぎをすると云ふやうな風評の立つて居る事實を發見するのでありますが、此の點に關して政府は、今後斯う云ふ方向を趨らざるやうにするには如何なる方針を御執りになるか、其の點に付て農林大臣の御所見を問ひたいと思ふのであります
尚ほ今日の金融封鎖と云ふものと農業との關係に付ても聊か私は質問して見たいのでありますが、時間がないのでそれは省略致しまして、次の方面に進んで行きたいと思ひます、以上のことを前提と致しまして、私は是から本案の改正の要綱に付て聊か質して見たいと思ふのでありますが、先づ第一に茲には蠶絲業會、蠶絲協同組合を貸付の對象に加へて居るのでありますが、此の際に蠶絲とは、製絲と養蠶とを一緒にして言つて居るのか、別にして居るのかと云ふ、其のことに付て御尋ねしたいのであります、なぜ私が左樣なことを問ふかと申しますと、之を一緒にして行くと云ふやうなことになりますれば、是は政府の説明に依りますと、大きな製絲家でも養蠶家でも、一票と一票とだから獨裁は起らぬと云ふやうなことを盛んに辯解して居る方もあるのでありますが、同じ一票と一票であつても、財力の上に於て非常な相違のある者が、獨占資本と渺たる一個の養蠶農家とが、一つの組織の中に入つて居るならば、財力に依つて完全に此の渺たる者は抑へられてしまふ、さうして此の組織の中には實に獨占資本の獨裁惡があると云ふ事實を我々は否定することが出來ないのであります(拍手)更に若しも是が分離すると致しましても、私は協同組合と云ふ以上は、是は恐らく農業協同組合法案と云ふやうなものを政府が提出せられ、それが實施せられることを見込みまして、養蠶協同組合と云ふやうなものを作られるのであらうと信ずるのであります、併し私はそれでもまだ茲に問題があると存ずるのであります、なぜそこに問題があるかと申しますれば、私達は是までの經驗に鑑みまして、協同組合と云ふものは、今後單に物を取扱ふ所の協同體ではなくして、實に生産の協同體でなければならない、今後此の協同體が段々と發達し、全國が一つの協同體になつた時、それこそ私は農業の社會主義化であると信じて居るのであります(拍手)今日では單なる協同資本として發達して行くのでありますが、併しながら此の協同組合が生産協同體として存續するならば、それは養蠶もするでありませう、又それは畜産もするでありませう、農業もする、凡ゆるものが一個の生産單位としてあるのであります、之をあつちの方面から物の取扱をやる、こつちの方から物の取扱をやる、あつちから指導するこつちから指導すると云ふやうなことは、要するに此の生産協同體の發達を阻碍する以外の何ものでもないと云ふことを私は信じて居るのであります(拍手)斯樣に考へて見ますと、私達は協同組合たる以上は、是は農村協同組合が一つのものでなければならないと考へるのでありまして、特殊協同組合に對しては絶對の反對を私は個人として持つて居るものであります、政府はそれに付てどう御考へであるか、其の點に付きまして政府の御答辯を願ひたいと思ふのであります
第二に本法案は自作農創設維持竝に農地造成、或は改良の方面に金融を極めて圓滑にするやうに改正すると云つて居ります、之に關しても所管大臣に質して置きたいことがあるのであります、先づ自作農創設維持であります、此のことに關して最も重要なものは農地價格の問題であります、私をして言はしめるならば、農地が價格を持つて居ると云ふことは、農地が恰も商品であるが如く一般には考へられて居るのでありますが、經濟學的に見まして農地は決して商品ではないのであります、商品たる以上はそれは生産の結果でなければならぬ、勞働の結果でなければならぬのでありますが、併しながら農地は天から與へられたものであつて、決して是は農業勞働の生産の結果ではないのであります、要するに農地が價格を持つに至つたのは、それは土地を占有することに依つて、地代を取上げる所の權利が強化したと云ふだけのことなんであります、私は斯樣なことが合理化せられまして、そこに地代を基礎として價格が算定せられ、恰も商品としてそれが通用して居るものを、政府が之を商品として認めること自體が間違つて居ると考へて居るのであります、なぜならば農地と云ふものは、耕作する農民が之を持つてこそ初めて生産に寄與するのであります、併しながら耕作せざる所の地主が之を持つて居ると云ふことは、甲が持たうが、乙が持たうが、生産には何の關係もないことに依つて、明かに證明せられて居るものであると私は信じて居ります、併しながら私は自作農創設それ自身に反對するものではないのでありまして、勿論自作農創設は耕作する農民に土地を與へることでありますからして、是は大いに贊成するのであります、又今日の社會安寧の上から申しまして、之を地主から有償で買ふと云ふのも是れ亦私は敢て反對するものではありませぬ、併しながら是は政府が地主の正當なる權利として、決して土地を買上げるのではなくして、實に土地を放した地主を救濟する爲の社會改策として土地を買上げると云ふのが本質であらうと考へるのであります、隨ひまして私は今日農地調整法に依つて定められました所の、田なら賃貸價格の四十倍、畑なら四十八倍と云ふあの農地の最高價格の決定と云ふのは、實に農業資本を農地價格の爲に吸收すると云ふ虞が十分にあるのでありますから、私は斯樣な高い所の水準を引下げまして、新しく價格を決める所の水準を定める意思ありやなしやと云ふことを農林大臣に御尋ねしたいと思ひます(拍手
次に農地の造成に付てであります、今日食糧問題の上から申しましても、又農業過剩人口の吸收上の問題から申しましても、又農業の近代化の上から申しましても、農地を造成しなければならないことは固より明かであります、併しながら今日まだ耕さずに殘つて居る土地と云へば、實に條件の惡い所の土地だけが殘つて居るのであります、此の土地を單に個人や或は開發營團や又農業團體などに任して置いて、開墾し放しにして置いて、あとは野となれ山となれと云ふことでは、此處に入地した人間が居付かないのは當然であると思ふのであります、私が或る開墾地に行つた時に、是は洒落でもないのでありますが、開發營團の仕事を評しまして、お前さん達は開拓すればそれで宜いだんべと云つて皮肉つて居つたのでありますが、斯樣に入地者を其の儘に放擲して置いて生活を立てろと云つても、條件の惡い土地にどうして生活が出來るか、それは明かであります、今日凡ゆる開發營團の開墾した土地が荒蕪地になつて居ると云ふ事實は、之を證して餘りあるではありませぬか、私達は斯樣なことを考へる度に、私は條件の惡い土地に對して、若し開墾しようとすれば、文化的な施設と、入植農民に對する所の手厚い保護と、此の二つがなくしては殆ど不可能であらうと思ふのであります、併しながら之を徹底する爲には、私は新しく開墾すべき土地は總て是は國營開墾とすべきであると云ふ主張を持つて居るのであります(拍手)之に對する農林大臣の御意見は如何なものでありませうか、それを御尋ね致します
更に農地造成の問題に付てもう一つ重要な問題があることを忘れてはならないのであります、それは山林に於ける所の土地所有權が、今日の如く農地が不足となりまして開かなければならないものがありましても、地味が肥えて居るやうな所は植林すれば土地が肥えると云ふので、それが開墾は中々肯んじないのであります、而も開墾を肯んずる土地と云へば、木も碌に育たないやうな瘠せた土地しか開墾を肯んじないと云ふ傾向があるのでありまして、殊に平らな土地は成べく木を植ヱて、傾斜地の木は伐つて、其の土地は勝手に開墾させると云ふ状態で、治水の上から見ても由々しき問題が多々あるのであります、隨ひまして開墾を徹底的になすのであれば、どうしても此の山林の所有權と云ふやうなものを或る程度之を抑へ付ける、制限を致しまして、さうして此の入植も十分になし得るやうな方策が今日緊急なものとなつて居るのではないかと思ふのであります、此の意味に於きまして私は山林の開放令と云ふやうな法律を出す意思が政府にありやなしやを御尋ねしたいと思ふものであります
最後に私は肥料問題に付て多少私の見解を述べて見たいと思ふのであります、肥料の點に付きましては、細かいことは他の人が多くやつて居りますので、私はそれに付てさう詳しくは申しませぬが、唯若しも中金が肥料會社に對して投資することが許されるならば、此の農民の金を投資したのでありますから、之に對する所の監督を誰が一體なすかと云ふことなのであります、私は中金がなすとか、政府がなすとかと云ふだけでは、決して今日の農民は滿足しないと信じて居ります、是が監督は直接國民から選ばれた所の代表者が當らなければ、私は絶對に信用しないと云ふことを考へて居るのであります(拍手)
更に私は肥料會社に對して今日相當の勢力を發揮して居ります所のあの日本肥料會社に付て聊か私の見解を述べて見たいと思ふ、今日の肥料會社と云ふものは實質に於ては何の役にも立つて居ないのであります
〔議長退席、副議長著席〕
生産の割當或は又分配の割當と云ふやうな仕事は官廳がやつて居ります、又新潟縣の如きは肥料が中々來ないと云ふので、農業會の職員自體が、九州、四國の山地にまで行つて督勵して居ります、それならば私は日本肥料が設立された所の目的は一體何處にあるかと言ひたいのであります(拍手)私は斯樣な意味合に於きまして、日本肥料に對する資料を此處に持つて居りますが、此の重役の顏觸れを見れば、十七人の重役の中三人は農林省の官僚であり、二人は官僚化した所の全國農業會の理事であり、あとは全部肥料會社の重役であると云ふ事實を見るのであります(拍手)斯くの如き状態に於きまして果して金融をしたと申しましても、農民の欲するが如き肥料生産を擧げ得るや否や、私は疑問と存じて居る次第でありますが、之に對する政府の所見を伺ひたいのであります、簡單でありますが、私の質疑は是で終ります(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=61
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062・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 稻村さんの御質問に御答へ致します、順序は多少違ふかも知れませぬが、豫め御諒承を御願ひします、農業金融が從來生産方面に滲透して居なかつたが、それに付てどう考へるかと云ふ點でございます、農業金融が、生産部面に付きましては、融通部面に農業金融が融通されて居つたと同じやうに、從來と雖も多少の努力は致して來て居るのであります、併し今後に於きまして此の中金法の改正に於てはつきりと意圖が現はれて居りまするやうに、現在農村に於て蓄積されました其の餘剩を何處へ還すかと云へば、やはり農村に還しまして、農村に於て一番必要な肥料であるとか、其の他農民に取つて缺くべからざる土地の購入でありまするとか、さう云つた生産部面に投資をすると云ふ考へ方があるのでございまするが、此の中金法の改正に於きましては、正に其のやうなことを意圖して居るのでございます
それかを農業金融の將來の投資の方法如何の問題でございますが、是はやはり農業に依つて蓄積されましたものに於きましては、出來るだけ生産部面に是が再投資されまして、本當に農家の爲になるやうな方向に投資されることを望むのであります、併し是は國の全體の再建のやり方、其の他あり方に從ひまして變つて來ることでありまするが、やはり方向としましては、十分農業の生産力を高めると云ふ方向に農業金融がなさるべきことは、是は申すまでもないのであります
それかを次の自作農は經營資金に付てでございますが、是は質問の要點を、私或は取違へて居るかも知れませぬが、自作農創定の爲に土地の購入に餘り金を使つたならば、其の後に經營資金が乏しくなるのではないか、斯う云ふ御質問だと思ひまするが、此の點に付ては我々と致しましては、十分考慮致しまして、自作農の創定の爲には低利の土地購入の資金を融通致して居る次第でございまして、經營資金と云ふものに付ての涸渇を來さないやうに考慮致して實行する積りでございます
それから土地の改良に付て、國營に移す意向はないかと云ふことでございます、目下大地區に付きましては是は國營で行つて居るのでございますが、全部を國營に移すと云ふ考へは只今の所ございませぬ
それから山林の開放でございますが、山林の開放に付て特別の立法を致す考へは今ございませぬが、國有林の中で農耕に適するものは、治山、治水上必要なものを除きましては、拂下も行つて居りまするし、今後其の方針に從ひましてやつて行きたいと、斯樣に考へて居ります
それから蠶絲と云ふ言葉の中に、製絲と養蠶とを含むかと云ふ御尋ねでございまするが、是は何れも製絲と養蠶とを含んで居ります
それから蠶絲協同組合に付きまして、之を特殊協同組合とすることは反對だと云ふ御意向のやうでございましたが、此の點に付きましては農業協同組合の問題に致しまして、其の方に讓つて戴きたいと、斯樣に考へます
それから肥料會社に對しまする金融の點でございまするが、中金から肥料會社に資金の融通を致した以上は、それに對しまして農民代表の參加したやうなものを以て監督したらどうかと云ふ御考へのやうでございますが、此の點に付きましては農林省としまして十分監督指導を加へて行きまして、殊に只今稻村さんが御述べになりましたやうに、中金の職員、其の他の能率と云ふ點に付きましては、十分今後監督を致して行きたいと、斯樣に考へて居ります
それから日本肥料會社廢止の點でございまするが、之の運營に付きましては出来るだけ監督致しまして、私共としては誤りなきを期して行きたいと存じて居りますが、現在日本肥料は、肥料を買ひましてそれを賣つて居るのでございまして、或る働きを致して居りますので、今それを直ぐに廢止すると云ふことは考へては居りませぬ
それから中金が低利資金の利鞘稼ぎのみに傾いて居ると云ふ點がございましたが、此の點は、中金の貸付金の總額の中で低利資金の占むる割合は、自作農の資金等の特別のものを除きますれば、漸減の方向にあつたのでありますが、又今後は政府資金の融通は原則的に事實上不可能になつて居りますから、利鞘稼ぎに傾く心配はないと思ふのであります、今囘の法律改正の趣旨も、中金の自己資金を一層農業の生産部面、其の他農林水産業の生産力の上ります方向に投資致しまして、農民の蓄積しました資金を其の方向に還元して行つて、以て食糧の増産と、見返り物資の増産とを圖りたいと、斯う考へて居る次第でございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=62
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063・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 稻村君、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=63
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064・稻村順三
○稻村順三君 私の質問に對する十分な御答へとは思ひませぬけれども、あとは委員會に讓りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=64
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065・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 竹山祐太郎君
〔竹山祐太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=65
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066・竹山祐太郎
○竹山祐太郎君 私は協同民主黨を代表致しまして、只今上程されて居ります議案に對して、大藏、商工、農林三大臣に質問を致したいと思ひます
第一點は、農林大臣は提案理由を極めて簡單に片付けて居りますが、此の問題は此の部分的な簡單な改正で事の濟むものではないと考へます、農林中央金庫の改正はもつと根本的に──現に理事長、副理事長、理事、監事の如き全部の役員は、農林大臣の任命に依つて構成されて居ります、而も其の殆ど全部が官僚出身であると云ふやうなこと、又極めて微細な點にまで、許可認可の事項で金縛りに遭つて居りますやうな、何處に協同主義の臭ひがあるか分らない現在の段階に入つて居ります、農林中央金庫の根本的な修正を、何故に此の新しく發足する日本の現段階に對して御考へにならないのか(拍手)現に政府は農地制度の改革、農業協同組合法の提案をなさんと致して居るのであります、此の面から見ましても、直接直ちに現在の農林中央金庫の機構に重大なる影響が及んで來るのでありますから、同じ議會に於て、倉卒に此の部分的改正を提案し、又引續いて根本的な改正をやる、御考へがあるかどうか、斯樣な分裂をした政策の執り方をしなければならぬ理由が、農林大臣の提案の理由では了解致し兼ねるのであります、此の點に對する農林大臣の明確なる御答辯を伺ひたいと思ひます、恐らく此のことは銀行制度の改正に關聯をして、全金融機關の根本的改正に關聯を持つと云ふことに重要なる點があると云ふことは、十分想像致されるのであります、隨て此の全金融機關との關聯に於て將來改正をせんとする場合に於ける、唯一の農業金融機關の中心である農林中央金庫の性格に付て、如何なる構想を持つて居るかと云ふことに對する農林大臣の答辯を求めると同時に、大藏大臣に對して、全金融機關の中に占むる農業金融機關としての中央金庫の性格、改めんとする機構の方針を、此の際伺つて置きたいと思ふのであります、其のことは多少の説明を附加すれば、今の農村の現状から見ますと、どうも終戰後銀行が積極的に農村の唯一の金融機關である農業會の信用事業を壓迫して居ると云ふ感じを農民は持つて居る、新圖の配付の場合に於ても、銀行が横暴である、農業會の百姓臭い役員の爲に農民は非常な迷惑を感じて居る(拍手)さう云ふやうなことを大藏當局は意識してやつて居られるかどうかは分らないけれども、現在の農村には現に現はれて居ります、此の銀行と、日本に之に取つて代るもののない唯一の農村金融機關である此の中金を初め、系統農業機關と云ふものに對して、今後如何なる御考へで當つて行かれんとするか、同時に是は農業金融の根本に今非常なる危機が招來を致して居ります、是は勿論農業金融だけでないことは承知を致して居りますが、農民は由來金融經濟のことは全く疎いのであります、先祖傳來營々として日夜努力をした結果、本當に爪に火を燈す思ひをして溜めた僅かの金が集まり集まつて、今日厖大なる中金其の他の農村資金を構成致して居るのでありますが、それが政府の監督下に於て今日百億に近い有價證券を持ち、而も其の中三十數億は在外資産として、其の運命は如何に成行くか分らない状態に置かれて居ります、農民だけが助からうと云ふことは勿論考へて居らぬと思ひますが、併し斯樣なことは恐らく全農民は大部分夢にも考へて居らぬことだと思ひます、之を簡單に、今農家は經濟が良いのだと云ふやうなことに依つて、農村經濟の大波綻を來すやうなことを招來するに至りましては、幾ら政府が土地の開放をやつて農村の新しい構成をやるのだと力んで見た所で、此の力弱い農村經濟機構を根本から破壞をしてしまつては日本の再建は出來ないと思ふ、是等の點に對して大藏大臣は如何なる御考へを持つて居られるかを伺ひたいのであります
次は農林大臣に對して──今度の改正は自作農の創設維持と農地の造成管理と云ふことを目標に取上げて居りますが、自作農の創設維持と云ふ問題は一體今度提案をせんとする農地の大改革に伴つて、斯樣なか細い農村金融で以てどうして始末が付くのか、常識を以てしても考へられない、是は當然國家の責任に於てなすべきものであつて、農民の零細なる資金を殆ど全部と云ふか、全部でも足りない資金を數十箇年に亙つて固定するやうなことは、言うて見た所で出來ない相談であります、斯樣なことを簡單に書き上げて居ることは、今後來る政策との間に大なる矛盾を感ずるのでありますが、政府はどう御考へになつて居られるか、土地改良の問題に付ては、私は多少角度を違へて──今までの農村に對する土地投資は、地主が一寸もやらなかつたと云ふ議論はありましたが、細々ながらも多少政府と共にやつて來たが、明治、大正、昭和を通じて戰爭までに、日本の政府は地主と共にと云ふか、結局政府の全力を以てして僅か十三億圓しか日本の土地には投資して居りませぬ、是は結局農村が本當に營々として努力し蓄積されたる資本の總てが、農村に戻らずして都市の膨張となり、商工業の發達となり、軍備の充實となつて、戰爭をやつて負けたと云ふことであります(拍手)其の結果、今日根本的なことに一つも金が注ぎ込んでない爲に、幾ら食糧増産を騷いで見ても、食糧の生産は出來ない、三百萬町歩の耕地に、完全に水が掛り、完全に排水が出來る土地がどれだけあるか、神代さながらの耕地で、農民をして農業をさせて來たのであります、之を考へる時に於て、新しい土地の開放と云ふ法律一本で片付けても、本當の生産力の發展は出來ませぬ、都會の人だけが、農民は拍手喝采をして居ると考へるかも知れませぬが、土地の開放に伴つて根本的に國家の力を此の土地に思ひ切つて集中しなければ、本當の土地開放の結果の收穫は擧らないのであります(拍手)其の意味に於きまして、六十億の公共事業を政府は唯一の頼りに宣傳を致して居りまするが、斯樣な貧弱な計畫で、今考へて居ります農村の施策は絶對に出來ませぬ、而も尚ほ此の相當部分を農民の負擔に於てやらんとして居るやうな模樣が感ぜられます、安定本部で如何に捻くつて見ても、農民に尚且つ失業對策の負擔をさせるに於ては、農村の現状を知らざるも甚だしいのであります(拍手)今日の農村は、戰災者、復員者、外地歸還者を初めとして、溢れるやうな國民の多數を、か細い耕地の上に收容して、政府の一文の補助、應援もなしに之を養つて居るのであります(拍手)其の厖大なる分量たるや、厚生大臣が考へて居る分量より遙かに大きな分量を農村は負擔致して居るのであります(拍手)其の上に今度やる政府の失業對策の相當の部分を、農民の負擔附きで仕事をさせようとは何たることか、どこまで農村をこけにするのかと云ふことを私は叫びたいのであります(拍手)資金を出すならば、飽くまで國家の責任に於て出すことを御考へ願ひたいが、此の改正で左樣なことを意圖して居るかどうか、大藏當局と農村當局の──決定はして居ないかも知れませぬけれども、安定本部に對する現在に於ける政府の考へ方を伺ひたいのであります
尚ほ序に、今都市の戰災者、或は復員者、外地歸還者の人達で、一番眞面目に苦勞して居るのは誰かと云へば、政府の方針に協力して逸早くも山や原野に入つて開拓者とならんとして努力せられた開拓者の人達であります、政府の政策が十分に行かない結果、又仕事の困難なる結果、今日此の人達は本當に氣の毒な状態に置かれて居ります、闇屋をやつて居たら、もつと樂に生活出來たかも知れない、それが眞面目に政府の言ふことを聽いて困難なる開拓地に飛込んだ爲に、洗ひ浚ひの資産を使ひ果して、今や自分の露命を繋ぐにも事缺く状態になつて居る開拓者が多數にあります(拍手)政府は之を何と考へて居られるか、之に對する政府の資金の供給は此の改正に於て考へて居られるかどうか、願はくは速かに一萬圓程度の資金を國庫に於て直ちに出して、之を救濟することを考へられんことを希望するのでありますが、之に對して政府はどう考へて居られるか
最後に農林大臣は、改正の重點を肥料にあると言はれたのでありますが、今度の改正には肥料の問題は文字の上に現はれて居りませぬ、而も肥料のことが速急に必要だからと云ふことで此の改正案を出されたと云ふことに付ては、我々は疑はざらんとしても疑はざるを得ない、なぜ肥料の問題がそれ程重要であるならば、もつと根本的に考へた上でおやりにならないか、勿論農村は肥料を一刻も早くと云ふことで急いで居ります、其の農村の弱味に付込んで、厖大なる水膨れの肥料會社を其の儘農民の資本を以て救濟をして行かうと云ふ考へ方を持つて居るのではないかと云ふ點に對する私の疑問であります(拍手)そこで大藏大臣に伺ひたいことは、一體財閥の解體はどうなつて居るのであるか、國民は財閥の解體の聲を聞いてから、其の後杳として分りませぬ、恐らく肥料會社は財閥の下にあつたものが多數であると思ひますが、此の財閥解體後、此の一例を以てする肥料會社の經營を如何なる形態を以てやつて行かんとする國家の方針であるか、それを決めずして、其の日暮しに農民の資金を使つて居ることに付ては、將來の方針と現在の應急處置との間に於て、如何なる關聯を持たせる積りであるか、商工大臣の先般からの答辯を伺つて居りますと、肥料は兎に角急速にやらなければならぬ、洵に農民も感謝し、國民も納得する所でありますが、何でも彼でも作つてしまへば宜いのだ、三十億だと言ふが、三十億も餘裕金を中金から全部肥料會社に集中をしたら、恐らく農林中央金庫は肥料會社と野垂死にであります、是で一體國家管理なのか、國營なのか、農民の此の粒々辛苦の唯一の資本を肥料會社の共倒れにさして置いて、それで國家管理や國營であると言ふのならば簡單であります、我々は決して農村資本を肥料生産に投資すると云ふことを拒むのではありませぬ、やるならやる手段をはつきりと立て、やられんことを望むのであります(拍手)今恐らく中金の短期資金として數億萬圓の金が既に融通されて居ると思ひますが、國民に對し、農民に對してどう云ふ御挨拶をされて居るか、之に對する政府は將來の保證をどう考へて居られるか、やるならばしつかりと農村資本と肥料資本とが手を握り合つて、本當に農民が納得するやうな肥料生産の形態を構成するならば、假令全部の資金を肥料に投ずるとも恐らく全農民は遺憾は感じないと思ふのであります(拍手)それをこそこそと胡麻化して、斯樣な部分的な法律の改正に依つて胡麻化して、其の後で結果を改めて修正をしようとすると云ふやうな氣持を今日農民は持つて居るのであります、此の農民の感じは、政府がはつきり釋明をしない限り解く方法はありませぬ、どうか商工大臣は農民に能く納得の行くやうに此の間の事情をしつかりと──現在及び將來に對する御考へを御説明願ひたいと思ふのであります
肥料に付て色々ありますが、大分遲くなりましたから、要點だけを申上げて、最後に稻村君の意見と同樣に、私は日本肥料は不必要だと思ひます、之に金を融通をして、農民の肥料は一錢も安くはならないし、少しも殖えは致しませぬ、是ははつきりと御やめになつたら宜いと思ひますが、もう一度重ねて農林當局の所見を伺つて置きたいと思ひます(拍手)私の質問は以上でありまして、御答辯に對する再度の質問は委員會に於て致したいと思ひます(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=66
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067・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 竹山代議士の御質問に御答へ申上げます、農林中央金庫の民主化の問題でございまするが、農林中央金庫の性質如何と云ふことでありますが、是は現在と雖も組合金融の中央の機關であります、將來と雖も此の性格は變らないと思ひます、唯能く御考へを御願ひ致したいのは、農林中央金庫と言ひまするものは、組合金融の中樞機關でございまして、一般の金融界との接觸を必要とするのであります、農業に於て蓄積されました資本が、農村に還つて行きますると同時に、それは農業の特殊の性質上、特別な中央の金融機關を必要とするのでございまするが、丁度農業が國民經濟に於きまして工業と相共に依存し、存立して行くと同樣に、金庫も亦他の金融機關と金融的に提携する必要があるのであります、唯性質が組合金融でありまするので、其の本來の性質を失はないやうに此の中金を運營して行くと云ふことが要點だらうと考へるのであります、農業金融の根本的な改正に付きましては、從來と雖も種々研究されて居つたのでございまするが、是等の點に付きましては、愼重に私としては今後研究を續けて、成べく成案を得たい、斯樣に考へて居ります
それから自作農の資金の融通が、今度出される農地改革との間に矛盾があるではないかと云ふのでございまするが、是は矛盾はないのであります、と申しまするのは、此の中金の今度の融資だけを以ちまして、自作農の創定を總てやらうとして居るのではございませぬ、現在自作農創定の事業は進行中であります、隨ひましてそれに要しまする資金はやはり要るのでございます、それ等に付ての途を開きますることは必要なのでございまして、其の間に何等私の矛盾を感じて居りませぬ
それから開拓の營農資金の問題でございまするが、是は御説のやうに開拓地に入りまして營農をやりまする者には、其の經營資金が要りますることは私も同感であります、之に關しましては大體一萬圓を出す考へで居るのでございまするが、其の出し方に付きましては關係方面と折衝中であります
それから今囘の肥料金融の途を開いたことは、是は肥料會社を救濟する爲ではないかと仰せられるのでございまするが、さう云ふ潰れてしまふやうな肥料工業を救濟すると云ふのではありませぬ、是は法案の提案理由で説明致しましたやうに、農村で中金に蓄積されました其の金の、而も中金の餘裕金を肥料の施設の復興に必要な資金として融通する長期の信用の途を開くと云ふのでございまして、現在肥料工業に於きまして増産の成績の擧がりませぬ一つの理由は、大きな原因は、復興資金の涸渇と云ふ點にあるのでございまするので、幸ひ農村に於て蓄積されました此の資本、而も其の餘裕金を肥料の方面に融通致しまして、一定の計畫に從ひまして復興を促進致しまして、一刻も早く肥料の増産に資したい、斯う云ふ考へなのでございます、御諒承を御願ひ致したいと存ずるのであります
それから農村に於きまする今囘の失業對策に付ての補助の問題でございまするが、農村に此の上負擔を持たして、而も失業對策と云ふことは極めて虫の好い話ではないかと云ふやうな御言葉でございまするが、財政上の關係もございまするので、多少の地元負擔は已むを得ぬと私は思ふのでございまするが、出來得る限り政府が負擔致しまするやうに努力致す考へであります、農家が營々として農業を營みまする上に於きましては、又御説のやうに土地開放をしただけが農業が良くなると云ふことは私は考へませぬが、併し土地の改革をやりますると云ふことが農業の經營を改善致しまするに付きましても不可分の條件と考へまするので、是はどうしても不可分に考へまして、兩々相俟つて行くべきものだと、斯樣に考へて居るのでございます
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=67
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068・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 今竹山君からの御質問は、實は私の場所が惡いのでありますか、どうも十分に聽き取れませぬでして、私理解し得なかつたかも知れませぬ、第一に此の金融機關、中央農林金庫に關する改正を、もつと根本的にやらないかと云ふ御質問のやうでありましたが、是は毎々申上げまするやうに、獨り農林中央金庫のみでなく、總ての金融機關、就中特殊金融機關に付きましては、全般的に其の系統を正し、改正をする必要があると云ふことは特に認めて居る次第であります、前内閣時代に於きましても金融制度調査會が設けられまして、其の調査を行つて居つたのでございます、此の事業は其の後只今中絶して居りますが、成べく早い機會に機關を設けまして、各方面の知識を集めて、金融機關全體の改正を行ひたいと存じて居る次第であります、今囘の改正はそれまでの間に、特に差詰め種々なる關係から必要であると考へられまして、改正が行はれた次第でありまして、其の點を御諒承願ひたいのであります
又農村の貯蓄が金庫等に集りまして、それが有價證券に變つて居る、それに依つて今後損失が起りはしないかと云ふやうな御質問であつたかと考へますが、是は有價證券の性質に依りまして、場合に依つて損害の起ることもございますけれども、無論特に農村の資金に大いなる損害を及ぼすやうなことがないやうに我々は現在努めて居る譯でございます、尚ほそれ等に付ての細かい點は、委員會等に於て詳しく御意見も承り、御答へ申上げたいと存じて居ります
尚ほ農村の資金を或る部面に融通する、それは非常に危險だ、さう云ふ資金は寧ろ政府が供給すべきではないかと云ふやうな御尋ねであつたかと思ひますが、政府には實は資金はないのでございまして、政府が資金を出すと申しますのは、是は租税で政府が徴收するか、或は又其の他の形で國民貯蓄を利用するか、是れ以外には政府其のものには資金がありませぬ、でありますから、農林中央金庫から、例へば肥料の方面に資金を供給する、之を政府が供給すると致しましても、或は農村に資金がなければ外の方の資金、何れにしても國民の貯蓄を其の方面に廻さなければなりませぬ、唯其の場合成べく國民の貯蓄を安全に、且又最も國家に有益な方面に融通させるやうに政府も指導致します、それだけのことは十分心得て居りますし、又今後も努めたいと思ひますが、特に政府の資金を廻す云ふことは、是は私の誤解かも知れませぬけれども、若しさうでありますならば、只今私が申上げたやうに理解して居る次第であります
それから財閥解體の問題でありますが、それは目下解體の調査を始めて居る譯でありまして、是は洵に遺憾なことに非常に遲延致して居ります、殊に財閥の解體に關する委員會は、或る事情の爲に委員長が中々出來なかつたのでありますが、折角出來ました委員長が、又辭職せざるを得ないことになる、と云ふやうなことでありまして、種々なる關係から組織が遲れて居ると云ふやうな譯で、甚だ殘念であります、私共政府と致しましても、是が早く片付きまして、財閥の解體が行はれ、それぞれ安定することが、日本の經濟の爲に最も必要でありますから、只今焦つて其の事業を致さうと致して居る次第でありまして、此の點尚ほ細かい點は、委員會等に於て又御答へする機會があらうかと存じて居ります(拍手)
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=68
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069・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 肥料の増産の爲に、取敢へず修復に、或は色々な金融方面から、先ず二十一億圓餘の見積りを致して居る譯でありますが、其の中で本年度五億圓を實は要して居ります、是も色々な資材の値上り、勞銀の値上り等で、此の儘で行けるかどうか分りませぬが、取敢ず此の五億の金を、興銀、勸銀、市中の五大銀行及び農林中金共同で社債を引受けて貰つて居るやうな譯であります、併しながら其の社債の中で、殆ど九〇%は實は中金から受けて居るのでありまして、此の意味から行きましても、私は中金の實力に實は敬意を拂つて居るのでありますが、是が即ち肥料の方に廻つて居ることを其の預金者に知つて戴けば、洵に感謝に堪へない次第でありまして、斯くしてこそ、本當に還元的に是が生産方面に活用出来るものと喜んで居る次第であります、此の貸出に付ては十分の注意を致さなければならぬと、斯樣に思つて居る譯であります
序に此の問題が丁度出ましたから、御報告旁旁申上げますが、今後肥料の増産の爲に、只今は多少資本家云々の御心配がございましたけれども、實は物價の面から見まして今生産意欲が出ない、餘りにも生産を──所謂資本家から言ひますれば、利益が少いから馬鹿らしいと云ふことになつて居る程、決して搾取は致してないと云ふことを茲で考へるのでありますが、さう云ふ御懸念のないやうに圓滿にやつて行きたいと思ひます、それに致しましても今後會社の社債が、今法律で以て二倍以上は出せないことになつて居ります、是は將來改正を願つて、今少し活溌に此の金融方面も致したい、斯樣な考へであります、又若干の新圓が出來なければ到底増産に十分な働きが出來ませぬので、先般大藏當局の諒解も得まして、硫安に對しましては一割五分、燐灰に對しては一割、修復に付ては二割程度の新圓が還つて來るやうに致しましたので、若干之に依りまして今後肥料増産の爲に働き得ることと思ひます、竹山君の御質問は、言葉は相當鋭かつたけれども、私は甚だ興味のある點と敬服致して居る次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=69
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070・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 小坂善太郎君
〔小坂善太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=70
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071・小坂善太郎
○小坂善太郎君 既に多くの諸君に依りまして、本法案に付ての質疑が種々交された後でありますので、私は出來る限り同一の問題を取上げることを避け、又取上げると致しましても、異つた角度から之を取上げたいと考へて居ります
此の法案は敗戰後の政府資金の融通の停止に依りまして、農林中央金庫の保有する二百二億圓にも上ります厖大な預金を、農林水産等の農政上に必要なる事業に對しまして、簡易に且つ長期に亙つて融通することを可能ならしむる爲のものでありまして、私は其の御趣旨に付ては洵に結構と思ひ、殊に農村の民主化の爲に大いに有效に運用されることを望むものでありますけれども、若し假に其の運用に付きまして一歩を誤りまするならば、農山漁村に於て蓄積せられました所の零細なる資金を、産業資本の犧牲に供してしまふ虞が多分にあると云ふことを御注意申上げたいのであります、只今農林大臣の御話にもあり、又商工大臣の御話にも出ましたが、最近の肥料工業の復興に要する資金、即ち二十一億圓に上りまする本年度の復舊補修竝に増設に要する資金の中、商工大臣は九〇%と仰しやいましたが、私の聞く限りでは九三%、即ち殆ど全部を農林中央金庫に依つて負擔すると云ふやうに承つて居ります、肥料工業が此の際急速に立直り、又急速に設備を擴張致しまする爲に巨額の資金を要しまするし、又此の資金の調達の爲に種々困難致して居りますることは、私も聊か此の事業に經驗ある者と致しまして能く存じて居るのでありまして、是が解決さるることは甚だ結構なことであると存じて居りまするが、此の融資の方法が、日本興業銀行を幹事と致しまして、農林中央金庫、三菱銀行、安田銀行、帝國銀行、三和銀行、勸業銀行、住友銀行等が「シンヂケート」團を結成致しまして、肥料會社の發行する社債を引受けるのでありますが、殊に九三%を中央金庫が引受けると云ふこと、是は農林中央金庫が其の性格を變へまして、金融資本として發足すると云ふことに解されるのであります、私は此の法案を能く拜見して見たのでありますが、此の改正法案中にも、斯かる機能を中央金庫が行ひ得ると云ふ規定は特に見出し得ないやうに思ふのであります、是が法的根據に對しまして農林大臣竝に大藏大臣の御答辯を願ひたいのであります
第二に肥料工業は、現在に於きましては全く單純に資本主義的な機構の下にありまする私的企業であります、さうして是は過去の實績に見ましても、外國からの幾多の輸入商品の影響を受けまして、殊に昭和四、五年頃「ドイツ」からの硫安の「ダンピング」に依りまして甚だしい影響を受け、所謂甚だ浮沈の多い事業であります、そこで之に對しまして農山、漁村の零細なる資金の集積を長期に亙つて貸付ること、此のことは極めて危險であると考へるのでありますが、此の點に關しまして農林大臣の御所見を承りたいのであります
第三に肥料工業に對しまして、斯かる厖大なる金額を貸付ることに依りまして、農林大臣の肥料工業に關する發言權と云ふものは著しく増大すると考へるのであります、私は官制を拝見致したのでありますが、官制に依りますと、商工省は生産數量の決定を除く外、化學肥料の生産行政を擔當する、又農林省は化學肥料の生産數量の決定及び其の他の肥料を含む配給及び消費を擔當すると云ふことになつて居るのであります、又一方法令の上から見ますると、重要肥料業統制法又は硫安増産及配給統制法に依りまして、此の法律案に於ける主務大臣が農林大臣となつて居られます、そこで硫安製造事業組合或は石灰窒素製造事業組合又は過燐酸製造事業組合に對する監督權を農林大臣が特たれて居る、又斯う云つたものの製造業者に對する監督權を御持ちになるのであります、又業者の設備の擴張或は改良工事に對する認可權、命令權と云ふものも農林大臣が持たれる譯であります、又社債の發行限度の擴張、さう云つたものに對する權能も持たれて居るのでありまして、謂はば生産増強上に關する諸權能を農林大臣が持たれて居ることになつて居るのであります、さうして此のことは、肥料の生産行政が謂はば農林、商工兩省の間に二元化されて居る、さうして或る場合には此の兩省が發せられます各肥料製造事業工場に對する生産指示が、食ひ違つて居る實例もあるのであります、私は是は新潟縣の例でありますが、新潟縣の電氣化學の青海工場に對する三月の生産指示が、商工省が五千「トン」、農林省が四千五百「トン」、又昭和電工の鹿瀬工場でありますが、三月の生産指示が商工省が二千五百「トン」、農林省が二千「トン」、四月が商工省が四千五百「トン」、農林省が三千二百「トン」、更に五月、六月は同樣な數量を指示して居り、七月に至つては商工省が五千「トン」指示するに對して、農林省が三千二百「トン」を指示して居るのであります、斯う云つた最も今必要とされる肥料の生産目標に付きまして、兩省の命ずる所の數量が違つて居る、こんなやうな實例もあるのであります、又製造業者と致しましても二重手間になり、色々あちらにも、こちらにも氣兼ねをしなければならぬ、又對外的にも煩瑣なる手續を履まなければならぬと云ふことがございまして、どうしても此の二つの省に跨がることの持ち來らす非能率或は煩瑣なる手續と云ふものが、肥料増産の上に極めて大きな癌となつて居るやうに現状は思はれるのであります、此のことは一日も早くしつくりとした形態に置いて戴きたい、斯う一般は熱望して居るやうに私は承知をして居ります、此の意味に於きまして、農林大臣は金融まで見て行かうと云ふ御心持なら、思ひ切つて官制を變へて、農林省が生産行政の一元化を圖られては如何かと云ふことを伺ひたいのであります、又商工大臣は之に對してどう御考へになりますか、商工大臣は、法律を改廢して官制を一元化して、商工省が肥料の生産行政の一元化を圖られようとするか、此の點をはつきりと御伺ひして置きたいと思ふのであります、官制に、生産數量の決定を除きまして肥料工業の一切を見ると書いてありますることは、恐らく化學肥料工業と云ふものは純粹なる化學工業である、さうして化學肥料工業と云ふものは、鐵鋼工業、或は石炭工業の上に立つものである、言葉を換へて申しますならば、原料として非常に多量の、殆ど生産數量と同一量以上の石炭を必要とする、又補修資材として非常に多くの鐵鋼、銅其の他の非鐵金屬類を使用する、又其の全體の生産體系が所謂化學工業である、即ち「ベンゾール」工業、「ホルマリン」工業、或は「アセトン」工業と云ふ一つの大きな魂の中の一環である、又此の工業が「アンモニア」工業、或いは、硫酸工業、又石灰窒素の場合であれば「カーバイト」工業、斯う云つた工業の基礎の上に立つて居る、さうして是等の工業は硫酸を例に採つて見ましても、其の先の發展の目標と致しまして、人絹とか、或は人造石油、或は電池工業、さう云つたもの、又有機合成工業等、色々と純粹化學工業方面に實に多くの枝を待つて居るのであります、でありますから、是等の枝があるから、是等の工業を持つ専門の省と云ふ意味に於て、商工省が其の肥料行政を、生産數量の決定を除いて全部見る、斯う云ふ意味であるやうに思ふのであります、商工省は之を其の通り忠實に實行されまして、官制に從つて肥料生産行政を一元化される御積りがあるかどうか、此のことを商工大臣に伺ひたいのであります、私は今述べましたやうに、農林中央金庫の資金を肥料工業に用ひることは非常に危險なことであると云ふことを申上げて──私はさう考へて居りまするが、商工大臣は官制上の主務大臣とされまして、肥料會社の復興資金を御作りになる御氣持はないのであらうかと云ふことを御伺ひ致したいのであります
肥料工業に限らず、戰後の工業の復興の爲には、全く茲に今までと構想を新たにした復興金融會社と云ふやうなものを作つて、之を助成する外ないと考へて居るのでありますが、商工大臣は此の點に關して如何考へられて居るのでございますか、又私共復興金融會社の設立が當然にそこに要望されるもので、又それが一日も早く出來なければならないと思ふのでありまするが、是が今日まで出來ないことの理由を大藏大臣に御伺ひ致したい、又大藏大臣はそれを御作りになる積りであるならば、どう云ふ規模に、どう云ふ構想の下に於て之を御作りになるものであるかと云ふことを御伺ひ致したいのであります、私は農林中央金庫は、飽くまで本來の使命である所の農業金融に遭進して戴きたい、さうして工業の復興に關しては、之に専門の金融機關を一日も早く作られることを希望致します、さうして肥料生産行政の二元化と云ふやうな、今の甚だすつきりとしない形を一日も早く直して戴きたい、斯う考へるのであります、私が此のやうなことを特に申上げまするのは、現在の情勢の下に於て、肥料の需要と云ふものが甚だ切實なものであり、又此の生産の見込と云ふものが、前途中々に多難なものであると云ふことを考へるからであります
そこで極めて簡單に肥料工業の現在と將來の關係に付て私の考へを申上げて、當局の御意見を伺ひたいのでありまするが、窒素肥料の五箇年後の計畫、即ち昭和二十五年度に於ける窒素肥料の生産計畫は、二百二十七萬「トン」であると云ふことを承つて居ります、是は過去の實績に較べて見ますると、其の最高の生産のあつた昭和十六年の百四十五萬「トン」に對しまして、八十萬「トン」を増加して居ります、最低の生産は昨年の三十萬「トン」でありますが、之に對して五年後に二百萬「トン」を増加する計畫であります、如何に昨年度即ち最低生産の時が敗戰の直後であり、又敗戰しつつあつた年であると致しましても、それにはそれだけの數量を生んだ理由、即ち設備の老朽があるのでありまして、之を復興することは、二百萬「トン」以上五箇年間に殖やすと云ふことは、實に並大抵の努力でないと云ふことを當局の方は肝に銘じて考へて置いて戴きたいのであります、窒素肥料の生産設備は爆撃に依りまして、所謂其の戰災を受けた規模は、生産設備の七八%であると言はれて居ります、其の後十箇月の間に於て、罹災しました能力を五五%囘復致して居ります、此の囘復の速度と云ふものは、比較的滿足すべきものであると私は考へるのでありますが、此の復興を可能ならしめたものは、軍需工業が廢止されて、それに依つて鐡鋼とか、銅其の他の非鐡金屬、或は「セメント」或は耐火煉瓦等の「ストック」が此の肥料工業に一遍に振向けられたことに依つたものである、是等の「ストック」は概ね使ひ盡されたものと考へて宜いと思ひます、又石炭とか「コークス」と云つたやうな運轉用資材に付ても同樣であります、所謂食ひ延ばし生産の時期は限界點に達して居る、でありまするから今後は相當に強力なる行政的の措置に依つて、國内の資材を總動員致しまして、さうして之を重點的に配分することがなければならないと私は思ふのであります、又是等の鐡とか石炭の増産に付ては、特段の力を以て之に邁進せねばいけないと考へるのでありますが、此のやうな非常に重要な際に、此の重要な生産行政が兩省の間で分割されて居ると云ふやうなことは、極めて此の推進力を弱めるものであります、過去十箇年間に於て、肥料工業と云ふものは、非常に華やかな軍需工業の蔭に隱れて、殆ど兩省からの援助が受け得なかつた、例へば生産擴充品目と云ふものが指定された時にも、肥料工業と云ふものは生産擴充品目に入り得なかつた、さうして年間五百萬「トン」以上も生産される鋼材が、肥料工業に割當てられたものは一萬二千「トン」程度のものであつた、而も是が所謂生擴品目に入つて居なかつた爲に、現物として獲得し得たものは僅かに六〇%に滿たなかつた、こんなやうな状態と思ひ併せまして、過去の過ちを再びするなかれ、今にして肥料行政の一元化をしなければ、絶對に五箇年後の二百二十七萬「トン」に到達し得ないと私は考へるものであります
以上が私の意見でございますが、若し商工大臣にして、官制上の立場に於て肥料行政は商工省に一元化されて居ると云ふことを御考へになつて居るので、之を更に續けようと御考へになるならば、農林中央金庫から肥料工業が融通を受けると云ふやうな變態的な形は早く御やめになりまして、別途に肥料工業の復興の金融措置を講ぜられる、即ち復興金融會社を早く作つて、さうして工業の資金は工業的金融の「ソース」から供給されるやう、特段の御考へがなければならないと思ふのであります、農林中央金庫法中改正法律案が今囘上提せられましたので、其の資金の使途に關して私の意見を簡單に述べました、尚ほ時間がないので、端折りましたことは遺憾に存じますが、肥料行政一元化の問題を茲に取上げて浮び上らせたのであります、關係各大臣の御懇篤なる御答辯を願ひたいと思ひます(拍手)
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=71
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072・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 小坂君の御指摘の生産の指示に、從來二元的なものがあつたことは、卒直に申上げればさうらしいです、是は改めなければならぬと云ふので、最近に於きましては兩省から兩局長の名に依つて指示が出て居りますから、爾今は斯かることはないだらうと思ひます、尚ほ専門家であられる小坂君から色々の御質問が出ましたが、率直に申しますと、昨今或は國營論と云ひ、國家管理論と云ひ、色々議論が出て居ることは事實であります、私は斯う云ふ肥料の非常に重大な問題は、色々議論が出て、鬪はして、さうして落付く所に落付くのが宜い、取敢ず目前のことと致しましては、生産増強が一番大切なことでありますから、私は生産部面を受持つて居る所管と致しましては、機構よりも、兎も角も増産と云ふことに今主力を注いで構想致して居るやうな次第であります、併し國家的見地から考へますれば、商工も農林もないのでありまして、本當に渾然一體化して將來は一元化しなければならぬ、斯樣に思つて居るやうな譯であります、殊に金融部面に付きまして小坂君の御内意を聴いて居りますと、やはり金を貸されると、其の方に自由になるぞと云ふ御感じが見えますが、廣い國家的見地から見まして、先づ遊しで居ると云ふやうな所から借受けて之を利用するのも當然でありますし、又商工省と致しましても、商工中央金庫がまだ發達が十分でありませぬが、將來是が發達致しますれば、斯う云ふ方面から融通することも最も望ましいことでもありますし、又現に肥料會社の轉換工場等に付きましては、産業設備營團から相當の融資を致して修理復奮に努めて居るやうな譯でありますから、必ずしも農林中金のみから金融を受けると云ふ譯でもありませず、又農林中央金庫──和田農相に致しましても、金を貸して居るからそれで權力を張ると云ふやうなさもしい考へはないと思ひますから、其の點は御安心を願ひたいと思ひます(拍手)併し何れに致しましても、將來經濟安定本部等が設けられました後等に於ては、どうか此の問題を一つ取扱はれまして、本當に氣持好く仕事が出來得られるやうにしなければならぬ、斯樣に私共は考へて居ります、どうぞ左樣御諒承願ひたいと思ひます(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=72
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073・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 今度の改正に依りまして、肥料會社に中金から金を貸しますることに依りまして、農林大臣の指導力を強化すると云ふ御尋ねでありますが、商工大臣が言ひましたやうに、さう云ふやうなさもしい考へはございませぬ(笑聲)肥料の一元化の問題に付きましては、是は今の状態に於きまして、増産が最も必要なことでございまするので、此の行政機構上の關係で相爭ひますことは、私はやつてはならないことだと考へて居りまして、是は公平な議論を鬪はして、本當に妥當な所に一刻も早く問題を解決して行きたいと、斯樣に考へて居ります、さうして本當に氣持好く肥料の増産に挺身致したいと考へて居ることは、商工大臣と全く同樣であります、それから現在融通致して居る其の法律上の根據はどうかと云ふことでございまするが、是は現在肥料會社に農林中央金庫が融通致して居りまするのは、第十五條の餘裕金の運用として融通を致して居るのでございます(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=73
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074・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 小坂君の御質問に對しては既に商工、農林兩大臣から御答へがありまして、私から申上げるのは唯復興金融會社の一點かと思ひます、是は急いで居りましたのですが、色々交渉する向もありまして延びて居りましたが、最近大體案が定まりましたから、極めて近い中に御審議を願ふことにならうと思ひます、唯殘つて居ります問題は、之を會社にするか、それとも政府機關にするかと云ふ點に少しく檢討を要するものがありまして、それが決まりさへすれば、直ちに法案として提出する積りであります、其の規模は差詰め政府出資二億圓と云ふことに致して居ります、其の外復興金融機關が資金を利用する途は、一般の市場から、或は場合に依つては日本銀行からの融資を受けると云ふ風なことで、其の點は普通の金融機關と大體同じ仕組に致す積りでございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=74
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075・小坂善太郎
○小坂善太郎君 只今の誠意ある御答辯感謝致しますが、其の内容に於きましては、必ずしも滿足することは出來ないのであります、併し時間も遲いことでありますし、詳細は委員會に讓ることに致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=75
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076・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是にて質疑は終了致しました、本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=76
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077・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は政府提出食糧緊急措置令(承諾を求める件)委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=77
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078・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動機に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=78
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079・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、是にて議事日程は議了致しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後五時三十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01519460711&spkNum=79
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