1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年七月十三日(土曜日)
午後一時四十六分開議
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議事日程 第十五號
昭和二十一年七月十三日
午後一時開議
第一 勞働關係調整法案(政府提出) 第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、昨十二日政府から提出された議案は次の通りである
勞働關係調整法案
改定豫算に關する法律案
一、議員から提出された議案は次の通りである
宗教教育に關する決議案
提出者
地崎宇三郎君 犬養健君
田中萬逸君 成島勇君
林連君
(以上七月十一日提出)
一、去十一日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第七部選出決算委員 三木キヨ子君
一、去十一日委員長補闕選擧の結果次の通り當選した
懲罰委員
委員長 本田英作君(委員長山崎猛君去八日委員辭任に付其の補闕)
一、去十一日議長に於て次の委員を選定した
會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)委員
青木孝義君 菊池長右エ門君
坂田道太君 瀧清麻吉君
坂東幸太郎君 松浦薫君
青木清左ヱ門君 江部順治君
太田秋之助君 北村徳太郎君
高津正道君 新妻イト君
松本七郎君 吉川兼光君
東隆君 松本瀧藏君
竹谷源太郎君 伊藤恭一君
特別都市計畫法案(政府提出、貴族院送付)委員
鈴木仙八君 西村久之君
本多花子君 水田三喜男君
森崎了三君 森田豊壽君
加藤高藏君 佃良一君
林田正治君 細川八十八君
今村等君 前田榮之助君
山口靜江君 山下榮二君
原國君 原尻束君
森曉君 中田榮太郎君
一、去十一日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第二部選出
請願委員 庄司一郎君(栗山長次郎君補闕)
第五部選出
請願委員 坂東幸太郎君(武田キヨ君補闕)
一、去十一日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
帝國憲法改正案(政府提出)委員
理事 柏原義則君(理事田中久雄君去九日委員辭任に付其の補闕)
一、去十一日次の通り特別委員の異動があつた
食糧緊急措置令(承諾を求める件)委員
辭任 林興一郎君 補闕 米倉龍也君
辭任 田中健吉君 補闕 細田綱吉君
辭任 叶凸君 補闕 金子益太郎君
一、昨十二日衆議院規則第十五條に依り議長に於て議席を次の通り指定した
三五八 藤井正男君
一、昨十二日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
一 香川縣選出議員
五 宮崎縣選出議員
五五 竹内歌子君
一〇〇 青木清左ヱ門君
二二四 田中健吉君
三四三 瀧清麻吉君
三五三 越原はる君
三六二 米山久君
一、去十二日委員長理事互選の結果次の通り當選した
會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)委員
委員長 坂東幸太郎君
理事
青木孝義君 松浦薫君
青木清左ヱ門君 高津正道君
特別都市計畫法案(政府提出、貴族院送付)委員
委員長 林田正治君
理事
鈴木仙八君 西村久之君
加藤高藏君 今村等君
一、昨十二日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第七部選出
決算委員 圖司安正君(三木キヨ子君補闕)
一、昨十二日の通り特別委員の異動があつた
帝國憲法改正案(政府提出)委員
辭任 石原登君 補闕 森由己雄君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きます、日程第一、勞働關係調整法案の第一讀會を開きます──河合厚生大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=1
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002・会議録情報2
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第一 勞働關係調整法案(政府提出) 第一讀會
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勞働關係調整案
勞働關係調整法
第一章 總則
第一條 この法律は、勞働組合法と相俟つて、勞働關係の公正な調整を圖り、勞働爭議を豫防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて經濟の興隆に寄與することを目的とする。
第二條 勞働關係の當事者は、互に勞働關係を適正化するやうに、勞働協約中に、常に勞働關係の調整を圖るための正規の機關の設置及びその運營に關する事項を定めるやうに、且つ勞働爭議が發生したときは、誠意をもつて自主的にこれを解決するやうに、特に努力しなければならない。
第三條 政府は、勞働關係に關する主張が一致しない場合に、勞働關係の當事者が、これを自主的に調整することに對し助力を與へ、これによつて爭議行爲をできるだけ防止することに努めなければならない。
第四條 この法律は、勞働關係の當事者が、直接の協議又は團體交渉によつて、勞働條件その他勞働關係に關する事項を定め、又は勞働關係に關する主張の不一致を調整することを妨げるものでないとともに、又、勞働關係の當時者が、かかる努力をする責務を免除するものではない。
第五條 この法律によつて勞働關係の調整をなす場合には、當事者及び勞働委員會その他の關係機關は、できるだけ適宜の方法を講じて、事件の迅速な處理を圖らなければならない。
第六條 この法律において勞働爭議とは、勞働關係の當事者間において、勞働關係に關する主張が一致しないで、そのために爭議行爲が發生してゐる状態又は發生する虞がある状態をいふ。
第七條 この法律において爭議行爲とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他勞働關係の當事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ行爲及びこれに對抗する行爲であつて、業務の正常な運營を阻害するものをいふ。
第八條 この法律において公益事業とは、左の事業であつて、公衆の日常生活に缺くことのできないものをいふ。
一 運輸事業
二 郵便、電信又は電話の事業
三 水道、電氣又は瓦斯供給の事業
四 醫療又は公衆衞生の事業
主務大臣は、前項の事業の外、中央勞働委員會の決議によつて、業務の停廢が國民經濟を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業を、一年以内の期間を限り、公益事業として指定することができる。
前項の中央勞働委員會の決議においては、使用者を代表する委員、勞働者を代表する委員及び第三者である委員の各各の過半數の同意がなければならない。
主務大臣は、第二項の規定によつて公益事業の指定をしたときは、遲滯なくその旨を、官報に告示するの外、新聞、ラヂオ等適宜の方法により、公表しなければならない。
第九條 爭議行爲が發生したときは、その當事者は、直ちにその旨を勞働委員會又は行政官廳に届け出なければならない。
第二章 斡旋
第十條 勞働委員會は、斡旋員候補者を委囑し、その名簿を作製して置かなければならない。
第十一條 斡旋員候補者は、學識經驗を有する者で、この章の規定に基いて勞働爭議の解決につき援助を與へることができる者でなければならないが、その勞働委員會の管轄區域内に住んでゐる者でなくても差し支へない。
第十二條 勞働爭議が發生したときは、勞働委員會の會長は、關係當事者の双方若しくは一方の申請又は職權に基いて、斡旋名簿に記されてゐる者の中から、斡旋員を指名しなければならない。但し、勞働委員會の同意を得れば、斡旋員名簿に記されてゐない者を臨時の斡旋員に委囑することもできる。
第十三條 斡旋員は、關係當事者間を斡旋し、雙方の主張の要點を確め、事件が解決されるやうに努めなければならない。
第十四條 斡旋員は、自分の手では事件が解決される見込がないときは、その事件から手を引き、事件の要點を勞働委員會に報告しなければならない。
第十五條 斡旋員候補者に關する事項は、この章に定めるものの外命令でこれを定める。
第十六條 この章の規定は、勞働爭議の當事者が、雙方の合意又は勞働協約の定により、別の斡旋方法によつて、事件の解決を圖ることを妨げるものではない。
第三章 調停
第十七條 勞働組合法第二十七條第一項第三號の規定による勞働委員會による勞働爭議の調停は、この章の定めるところによる。
第十八條 勞働委員會は、左の各號の一に該當する場合に、調停を行ふ。
一 關係當事者の双方から、勞働委員會に對して、調停の申請がなされたとき。
二 關係當事者の雙方又は一方から、勞働協約の定に基いて、勞働委員會に對して調停の申請がなされたとき。
三 公益事業に關する事件につき、關係當事者の一方から、勞働委員會に對して、調停の申請がなされ、勞働委員會が、調停を行ふ必要があると決議したとき。
四 公益事業に關する事件につき、勞働委員會が職權に基いて、調停を行ふ必要があると決議したとき。
五 公益事業に關する事件又はその事件が規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に關するものであるために公益に著しい障害を及ぼす事件につき、行政官廳から、勞働委員會に對して、調停の請求がなされたとき。
前項の規定によつて地方勞働委員會又は特別勞働委員會の行つた調停が成らなかつたときは、中央勞働委員會は、關係當事者の双方若しくは一方からの申請又は職權に基いて、その事件の調停を行ふことができる。
前項の規定によつて中央勞働委員會が職權に基いて行ふ調停は、第一項第五號の事件に限る。
第十九條 勞働委員會による勞働爭議の調停は、使用者を代表する委員、勞働者を代表する委員及び第三者である委員から成る調停委員會を設け、これによつて行ふ。
第二十條 調停委員會の、使用者を代表する委員と勞働者を代表する委員とは、同數でなければならない。
第二十一條 調停委員會の委員は、勞働委員會の委員の中から、勞働委員會の會長がこれを指名する。但し、左の場合には勞働委員會の會長は、勞働委員會の委員以外の者を、調停委員會の委員に委囑することができる。
一 勞働委員會の委員以外の者を、使用者を代表する調停委員會の委員に委囑することにつき、勞働委員會の使用者を代表する委員の同意を得たとき。
二 勞働委員會の委員以外の者を、勞働者を代表する調停委員會の委員に委囑することにつき、勞働委員會の勞働者を代表する委員の同意を得たとき。
三 勞働委員會の委員以外の者を、第三者である調停委員會の委員に委囑することにつき、勞働委員會の使用者を代表する委員及び勞働者を代表する委員の各各の過半數の同意を得たとき。
前項但書の規定によつて委囑された委員は、これを法令によつて公務に從事する職員とみなす。
第二十二條 調停委員會に、委員長を置く。委員長は、調停委員會で、第三者である委員の中から、これを選擧する。
第二十三條 調停委員會は、委員長がこれを招集し、その議事は、出席者の過半數でこれを決する。
調停委員會は、使用者を代表する委員及び勞働者を代表する委員が出席しなければ、會議を開くことはできない。
第二十四條 調停委員會は、期日を定めて、關係當事者の出頭を求め、その意見を徴さなければならない。
第二十五條 調停をなす場合には、調停委員會は、關係當事者及び參考人以外の者の出席を禁止することができる。
第二十六條 調停委員會は、調停案を作成して、これを關係當事者に示し、その受諾を勸告するとともに、その調停案は理由を附してこれを公表することができる。この場合必要があるときは、新聞又はラヂオによる協力を請求することができる。
第二十七條 公益事業に關する事件の調停については、特に迅速に處理するために、必要な優先的取扱がなされなければならない。
第二十八條 この章の規定は、勞働爭議の當事者が、雙方の合意又は勞働協約の定により、別の調停方法によつて事件の解決を圖ることを妨げるものではない。
第四章 仲裁
第二十九條 勞働組合法第二十七條第一項第三號の規定による勞働委員會による勞働爭議の仲裁は、この章の定めるところによる。
第三十條 勞働委員會は、左の各號の一に該當する場合に、仲裁を行ふ。
一 關係當事者の雙方から、勞働委員會に對して、仲裁の申請がなされたとき。
二 勞働協約に、勞働委員會による仲裁の申請をなさなければならない旨の定がある場合に、その定に基いて、關係當事者の雙方又は一方から、勞働委員會に對して、仲裁の申請がなされたとき。
第三十一條 勞働委員會による勞働爭議の仲裁は、特別の委員會を設けることなくこれを行ふ。但し、事件の事實調査のため、小委員會を設けることは差し支へない。小委員會は勞働委員會の請求があつたときは、これに對し、仲裁裁定案を提出しなければならない。
第三十二條 仲裁をなす場合には、勞働委員會は、關係當事者及び參考人以外の者の出席を禁止することができる。
第三十三條 仲裁裁定は、書面に作成してこれを行ふ。その書面には效力發生の期日も記さなければならない。
第三十四條 仲裁裁定は、勞働協約と同一の效力を有する。
第三十五條 この章の規定は、勞働爭議の當事者が、双方の合意又は勞働協約の定により、別の仲裁方法によつて事件の解決を圖ることを妨げるものではない。
第五章 爭議行爲の制限禁止等
第三十六條 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廢し、又はこれを妨げる行爲は、爭議行爲としてでもこれをなすことはできない。
第三十七條 公益事業に關し、關係當事者が爭議行爲をなすには、第十八條第一項第一號乃至第三號の規定によつて調停の申請をなしその申請をなした日又は同項第四號の決議若しくは同項第五號の請求がなされた日から、三十日を經過した後でなければならない。但し、爭議行爲の發生中にその事業が第八條第二項の規定によつて公益事業として指定されてもその爭議行爲については、この限りでない。
第三十八條 警察官吏、消防職員、監獄においた勤務する者その他國又は公共團體の現業以外の行政又は司法の事務に從事する官吏その他の者は、爭議行爲をなすことはできない。
第三十九條 前二條の規定の違反があつた場合においては、その違反行爲について責任のある使用者若しくはその團體、勞働者の團體又はその他の者若しくはその團體は、これを一萬圓以下の罰金に處する。
前項の規定は、そのものが、法人であるときは、理事、取締役その他法人の業務を執行する役員に、法人でない團體であるときは、代表者その他業務を執行する役員にこれを適用する。
一個の爭議行爲に關し科する罰金の總額は、一萬圓を超えることはできない。
法人、法人でない使用者又は勞働者の組合、爭議團等の團體であつて解散したものに、第一項の規定を適用するについては、その團體は、なほ存續するものとみなす。
第四十條 使用者は、この法律による勞働爭議の調整をなす場合において勞働者がなした發言又は勞働者が爭議行爲をなしたことを理由として、その勞働者を解雇し、その他これに對し不利益な取扱をすることはできない。但し、勞働委員會の同意があつたときは、この限りでない。
第四十一條 前條の規定の違反があつた場合においては、その行爲をなした者は、これを五箇月以下の禁錮又は五百圓以下の罰金に處する。
第四十二條 第三十九條及び前條の罪は、勞働委員會の請求を持つてこれを論ずる。
第四十三條 調停又は仲裁をなす場合において、その公正な進行を妨げる者に對しては、調停委員會の委員長又は勞働委員會の會長は、これに退場を命ずることができる。
第六章 費用辨償
第四十四條 勞働委員會の委員、第十二條の斡旋員及び第二十一條第一項但書の調停委員會の委員竝びに勞働委員會による勞働爭議の調停又は仲裁のため出頭を求められた者は、勅令の定めるところにより、費用の辨償を受ける。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
勞働爭議調停法は、これを廢止する。
勞働組合法の一部を次のやうに改正する。
勞働組合法第十一條第一項を次のやうに改める。
使用者は勞働者が勞働組合の組合員なること、勞働組合を結成せんとし若は之に加入せんとすること又は勞働組合の正當なる行爲を爲したることの故を以て其の勞働者を解雇し其の他之に對し不利益なる取扱を爲すことを得ず
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〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=2
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003・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今議題となりました勞働關係調整法案の提案の理由を説明致します
先づ理由第一を申上げます、我が國再建の上に於きまして、勞働者の占むる意義は極めて重且つ大なるものがあります、而して勞働者に對して斯かる重大なる責務の完遂を期待致しまする爲には、どうしても民主主義機構の下に於きまして、是等勞働者の團結權を保障致しまして、其の地位の向上を促進致しまして、我々の腕に依つて國家を再建するのだと云ふ勞働者の内發的自覺を促さねばならぬのであります、此の自覺に依るにあらざれば、本當に盛り上る勞働意欲と云ふものは出て來ないのであります、前内閣に於て勞働組合法を制定し、現内閣に於て勞働組合の健全なる發達を促進しつつある所以も亦實に茲に存するのであります、故に勞働組合法の究極の目的と云ふものは、鬪爭でなくして平和であらねばならぬ、破壞でなくして建設であらねばならぬのであります(拍手)最近我が國に於きまして勞働爭議が頻々として起ることは洵に悲しむべきことであります、言ふまでもなく終戰後の我が國の状態は謂はば經濟的斷層に打突かつて居るのでありまして、或は食糧面に、或は生活面に、或は通貨物價面に、或は失業面に各種の不安と激動とが續出致しました、爲に勞働者が收入の不足と生活の脅威とに苦しむ事實は、洵に同情致さねばならぬことでありまするし、此の面に沿ひたる勞働運動の活溌化と云ふことも當然のことと言はねばならぬのであります、又經營者に於きましても、生産に對する惡條件に惱まされ、採算不能に陷り、生産に熱意を有セザル如き者すら見るに至るのは甚だ悲しむべきことであります、併し今日は斯う云ふ現状に滿足すべき時期では斷じてありませぬ、何としても斯う云ふ事態を乘越えて、國民一人々々が國民生活安定及び國家再建の爲に働き拔くと云ふことにしなくてはならぬのであります、勿論今日の勞働爭議は、或る程度まで起るべき事由があつて起きて居ることは否むべからざる事實でありまするが、是は國家の現状から見て、凡ゆる方法を以て最善を盡し、能ふ限り其の發生を未然に防止しなくてはなりませぬ、又萬一發生致しました場合には、迅速に之を解決しなくてはならぬのでありまして、斯う云ふ實際上の根據に基きまして、政府に於ても此の方針の下に新たに法律を制定する必要があるのであります、此の點は昨年十二月勞働組合法制定の際にも豫見せられた所であります、是が本法案を提出した最も重要な理由であります、併し一面勞働爭議は好ましくないとは言ひながら、決して權力を以て之を彈壓して事を處理すべき性質のものではありませぬ、先づ當事者が凡ゆる合理的な條件をお互ひに討究致しまして、相手方の立場と事情とを出來るだけ誠意を以て考へまして、どうしても其の主張の一致せざる點に付ては、事の性質に從ひまして、或は互讓し、或は公平なる第三者の意見を聽き、輿論に鑑み、問題の圓滿なる解決に努力すべきであります、仍て本法案に於ては、常に爭議當事者が自主的に豫防解決に當るべきことを原則と致しまして、之に配するに公正なる斡旋調停又は仲裁等の助力を與へることを目標として法案が組立てられて居るのであります
第二の理由と致しまして申述べたいのは、勞働爭議と公益との關係であります、勞働者の團結權及び團體交渉權は常に公共の福祉の爲に利用せられ、是と調和を保つて行かねばならぬのであります、此の趣旨は憲法改正案にも特に謳つて居る點であります、殊に國家事務はどうしても都合好く遂行されねばならぬし、國民生活の脅威はどうしても除かれねばならぬのであります、本法案に於ては其の趣旨に則りまして、一方現業員以外の官吏等の爭議行爲を禁止すると共に、他方運輸、水道、電氣、瓦斯、醫療、衞生等の最小限度に於ける公益事業に對する拔打的爭議を禁止しまして、且つ状況に依つては當事者の申請なくして調停をなし得ることとなしたのであります、是は國家として一般國民の公益擁護上當然の措置であると思ふのであります(拍手)
以上は本法案提出の大體の理由であります、勿論本法案それ自體は、勞働爭議の豫防及び解決に關する技術的の法制に過ぎませぬから、問題の根本的解決の爲には、是と並行して各般の實體的措置、例へば食糧問題、「インフレ」問題等の解決、失業對策、生活保護問題等の解決が必要であることは申すまでもない所でありまするし、特に現に多くの場合爭議の原因となつて居る所の賃金其の他の勞働條件に付きましても、早急に適當な措置を執るべきでありまして、政府は是等の點に付ても出來る限りの努力を傾注して居る次第であります、以上提案理由を申述べた次第でありまするが、何卒御審議の上御贊成あらんことを希望致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=3
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004・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 質疑の通告があります、順次之を許します──山本勝市君
〔山本勝市君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=4
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005・山本勝市
○山本勝市君 此の法律案の審議の爲に根本的に重大であると考へます五つの點に付て御尋ね申上げたいと思ふのであります、質問は極く簡單に致しますから、答辯は徹底するやうに十分御答へ願ひたいのであります
第一に御尋ね申上げたいことは、今囘の勞働關係調整法の制定と同時に廢止せらるべき從來あつた勞働爭議調停法と云ふものと、今囘の勞働關係調整法との比較に於て、根本的に違つて居る點はどの點にあると政府は考へて居られるか、是は大臣でなくても政府委員の方からでも結構でありますから、要點だけを簡單に御答へ願ひたいのであります
第二に政府は去る六月十三日の社會秩序保持に關する聲明を初めとして、此の本會議に於ける答辯の中に於きましても、屡屡所謂生産管理は之を認めないと云ふことを言明せられたのでありますが、私共も此の生産管理と云ふ方法は、日本の産業の再建に取つて好ましい方法ではない、同時に勤勞大衆の幸福と云ふ點を考へましても、差當りの點は良ささうに見えて、軈て大衆の幸福自身を妨げるものであると云ふ考へを持つて居るのでありますが、併し政府の聲明にも拘らず、各地に於て生産管理は引續き行はれて居るのが事實であります、それは如何なる理由に依るのであるか、實際の取締が困難であるから引續き行はれて居るのであるか、或は現在行はれて居る程度の生産管理であるなら差支へないと云ふ政府の意思であるのか、其の點を厚生大臣から御説明願ひたいのであります、同時に生産管理をどの限界まで認めるのであるか、どの限界から認めないのであるか、認めないとすれば、どう云ふ理由で認めないのであるか、是までの御答辯の中にも斷片的には御答辯がありましたけれども、此の機會に於て其の限界をはつきりと御答へ願ひたい、又現在引續き各地で行はれて居る生産管理に對して、生産管理を認めないと云ふ所信を公にされた政府が、實際にどのやうな態度で之を處理される方針であるか、此の點も承りたいのであります
第三は商工大臣から御答へ戴いても結構ですし、厚生大臣から御答へ戴いても結構でありますが、政府は生産管理は認めないが、勞働條件の改善等に關しては、各工場に經營協議會なるものを設置する方針であると云ふことを屡屡言明せられました、併し其の經營協議會と云ふものが、今日實際に各地で行はれて居る所は洵に多種多樣であります、政府が今後作つて行かうと云ふ經營協議會は、どのやうな構想のものであるか、六月十三日社會秩序の保持に關する聲明をされた同じ日に於て、書記官長談として、經營協議會に關する談がありましたけれども、此の書記官長談を讀んで見ますると、政府の希望する所の經營協議會がどのやうなものであるかと云ふことは明瞭ではありませぬ、經營の全體に亙つて經營協議會に於て協議されるのであるか、さうして協議されて決定されたことは、是は企業者側も勞働者側も忠實に實行して貰ふのだと云ふことは言つて居りますが、其の協議すべき事項が、經營の全般に亙るのであるか、さうではなくて或る限界を有するのであるか、若し限界を有するとすれば、どの限界までの問題を經營協議會に掛けるのであるか、書記官長談を見ますと、生産の計畫を立てる問題に付ても經營協議會に掛けると云ふことであり、人事の一般方針に關しても經營協議會に掛けると云ふ風に取れる言葉もあるのでありますが、さう云ふ意味から、書記官長談は解釋の仕樣に依つては、經營の全般に亙る如くでもあるし、さうでない如くでもある、此の機會に於て、經營協議會で協議すべき問題の範圍を明確に御答へ願ひたい、私共の考へに依ると、企業と云ふものが、組合とは違つて企業の性質上何れの國に於ても企業が企業として存立する爲に、其の企業内に於ける地位と責任と云ふものは、必ずしも其の企業に從事する者全體が負擔して居るのではない、是は當然自明のことでありますけれども、此の事實を考へますと、經營協議會に付議せらるべき問題の範圍は、自ら限界があるべきであると云ふ考へを持つて居るのであります、政府も恐らく同じ考へではないかと思ひますが、其の限界を明瞭にして置くことが、勞働關係の適正なる調整を期する上に必要だと考へるのであります
第四點として文部大臣に御答へを願ひたいのでありますが、新聞の報ずる所に依ると、文部大臣が、教職員の爭議行爲は教職員の仕事の性質上之を認める譯には行かぬのだと云ふことを發表されたやうであります、所が其の後傳へ聞く所に依りますと、此の文部大臣の方針が變つたやうに傳へられて居るのでありますが、果して變つたのであるか、變つたのでないか、若し何等かの事情に依つて其の方針が變つたとすれば、やはり變つた事情をはつきりとさせることが必要だと思ふのであります、苟くも文教の責にある大臣が發表した其の意見が、而も教職員の爭議行爲と云ふが如き極めて重大な問題であり、心ある人々が文部大臣の考へに多く共鳴をして居つたやうに私共は見て居るのでありますけれども、それが有耶無耶の裡に葬られたと云ふことであれば、斯う云ふ已むを得ない事情があつて變つたとか、或は自分の考へが變つたと云ふ點をはつきりさせることが必要だと思ふのであります、其の點の事情を明かにして戴きたいのであります、恐らく世界の何れの國に於ても、勞働に從事する者としての立場に於ては、教職員と雖も他の一般の職員と變りはありませぬけれども、併し特に教育されるべき人を前に持つて居る所の教育者は、教育される者の信頼の上に其の仕事が成立して居るのであつて、單なる勞務關係とか利害の關係で、契約に依つて成立して居ない所の教育者の立場と云ふものを考へますと、私は教育者が爭議行爲を行はない、行ふことが出來ないと云ふことが寧ろ必要だと思ひます、恐らく世界の何人と雖も此のことを承認するであらうと思ふのであります、隨て教育者を今日の如き洵に慘めな待遇の儘に置いて、さうして爭議行爲を認めぬと云ふやうなことではなしに、爭議行爲などをする必要のないやうに、少くとも教育者としての面目を保ち得るだけの十分な待遇をして、又優秀な人材が教育者として集つて來るだけの待遇をして、同時に爭議行爲などは出來ないと云ふ風に決めらるべきものである(拍手)此の主張は恐らく何處へ行つても通る主張であると思ふのでありますから、敢て私は田中文部大臣に御伺ひを致したいのであります
第五に厚生大臣に御伺ひ致しますが、先般此の議場に於て、或る議員の方から、最低勞賃法を設ける意思はないかと云ふ意味の質問があつたのに對して、物價が安定しなければ、今日のやうな物價不安定の状況で最低勞賃を決めて見ても意味がないと云ふやうな御答辯がありました、私は洵に御尤もな御答辯であると考へたのであります、私は此の理由と全く同じ理由に基いて、今囘制定せられる所の勞働關係調整法を適正に運用して行く場合に、物價不安定と云ふ事情から種々なる困難に遭遇するものと考へるのであります、勞働關係調整の主たる問題は、勞働條件に關する問題でありませうし、其の中でも勞賃の問題が大きな問題になるのであります、其の場合に今日のやうな價格が極めて不均衡であり、不安定であると云ふ状況の下に於ては、如何に勞働方面の代表と使用者側の代表と、或は第三者の代表が集まつて裁定致しましても、適正な裁定をなすべき基礎が定まつて居らない爲に、不可能に近い程の困難に遭遇するものと考へるのであります、隨て此の法案を今日の實情に照して提出されたと云ふことは、洵に時宜を得た必要なことと考へるのでありますけれども、此の法案の目的を十分に達成する爲には、何を措いても經濟の安定、殊に物價の安定均衡を實現すると云ふことがなければ、此の法案の目的は達成されないと信ずるのであります(拍手)そこで政府は如何なる方法を以て、此の不均衡な不安定な經濟、殊に物價の不均衡、不安定に對して、均衡を取り、安定を得しむる方針であるか、經濟安定本部と云ふものを作るから、そこで色々考へると云ふ風なことが他の質問に關聯して屡屡答へられたのでありますけれども、其の經濟安定本部と云ふものを作つただけで、經濟殊に價格の安定が得られる譯のものでないと云ふことは、改めて申上げるまでもない所であります、其の經濟安定本部が如何なる方針で經濟界の安定を實現するかと云ふことに關しては、皆樣も御承知の通り、如何なる國に於ても二つの途が爭つて居るのであります、一つは計畫經濟の途に依つて價格の均衡を實現し、經濟界の安定を圖らうとする途と、自由主義經濟の途に依つて價格の均衡を實現し、經濟界の安定を圖らうとする途とであります、吉田内閣總理大臣は、自由黨の總務會長として組閣の命を受けられたと云ふ風に私は了解して居るのであります、又自由黨から澤山の閣僚が送られて居ります、さう云ふ點から色々考へますと、經濟安定本部の執らうとする經濟安定の方途は、自由主義經濟の方針の上に行かうとして居るやうにも考へられるのであります、一言申上げますが、私が此處で自由主義經濟と申しまする意味は、誤解のないやうに申上げて置きますが、國民の財産の安全を守り、營業の自由、勞働の自由と云ふものを確保して、國民各各をして其の志す所に從つて、自己の責任と自己の創意に基いて、自由濶達に仕事をさせることを根本の方針とする、此の方針だけでは不十分な所を補ふ意味に於てのみ政府は之を統制する、統制を全面的にやめるのではないけれども、飽くまでも原則は國民各各の志す所に從つての創意と責任に基いての經濟活動に置くのであつて、政府の統制は補足的に行はれるのであり、其の補足的に行はれる統制に於てのみ計畫が必要である、斯う云ふ自由を主として、統制は補足補充の意味に於て行はれると云ふのが、我々の考へて居る自由主義の經濟と申すものであります(拍手)さう云ふ自由主義の政策は、唯私一個が考へるだけではなくて、自由黨が結黨以來幾度か天下に公約をして居る所であります、隨て其の方針で行かれるものとも解釋されるが、併しながら經濟安定本部の責任者として何人を選ぶかと云ふ場合に、新聞紙の傳へる所を見て居りますと、或は日本の經濟の總本部とも申すべき此の安定本部が、計畫經濟の途を採つて行くのではなからうかと考へられるやうな節もないではない、斯う云ふ風な根本的な方途──世界の何れの國に於ても兩者が相爭つて居ると云ふか、相引合つて居る所の此の二つつの何れの方途を採るか、曖昧の儘に置くと云ふことが經濟の安定を傷つける、安定の促進を妨げると云ふことは明瞭でありまして(拍手)私は此の點に付て政府の所信を聽きたいのであります、大體私の御伺ひしたい點は以上の五つの點であります(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=5
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006・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の山本君の御質問に對して答辯致します
第一の問題は、本法案と現行の勞働爭議調停法との相違點に付てでありましたが、是は古い勞働爭議調停法に於きましては、調停と云ふことだけしか捉へて居りませぬ、さうして極く弱い法律です、且つ仲裁とか、それから斡旋とか云ふことを規定して居りませぬ、其の上に調停を行ふ調停委員會の編成と云ふものは、其の時々に作るものでありまして、是ではどうも餘り安定して居りませぬ、そこで勞働委員會を母體として常置的に之を置いて、さうして爭議問題が起る度にそれを扱はして行くと云ふ制度に致して居ります、尚ほ第三に公益的見地から、爭議問題との交錯點に注意を致しまして、先程説明しましたやうに、色々爭議の禁止なり或は拔打的爭議の制限などを致して居ります、斯う云ふ點にありまして、大體は民主主義の確立に伴ひまして勞働組合法が出來、さうしてそれに基いて斯う云ふ法律が出來るのでありまして、前のとは大分性格が違つて居ります、さう云ふ風に御承知を願ひたいと思ひます
それから第二の點は生産管理の限界と云ふやうな意味の問題、或は生産管理の限界をどうして決めるかと云ふ根本問題に觸れての御質問のやうに拜承致しましたが、此の點に付きましては、憲法草案にも明示してある如くに、個人の人格權の尊重、基本人權の尊重と云ふものは、民主主義機構の最も根本を成して居りまして、其の個人の基本人權に附帶しまして、勤勞をやる權利は勿論ありまするし、又個人が財産を所有する、或は利用すると云ふ財産權と云ふものも當然出て來るのであります、一つは屬人的と申しますか、一つは屬物的と申しますか、言葉は惡いかも知れませぬが、さう云ふ線に沿うた權利自由を認めて居ります、それで勿論是は人間に屬した二つの權利でありまするが、それは物の方面、財産權の方面が經營權となつて現はれて居ると云ふ風に私共は見て居りますので、二つとも人間の自由であり權利であると云ふ風に、勞働權と云ふもの、經營權と云ふものも權利であると認めて居ります、さう云ふ二つのものがありまするから、お互ひにそれを尊重し合つて、さうして相手方の承諾なくしては之を侵さぬと云ふ所に、生産管理の限界がある、さう云ふ風に私共は解釋して居ります
それで尚ほ只今行はれて居る生産管理に對して、どう云ふ措置を執つて居るかと云ふ御話でございますが、過日生産管理は正當な爭議行爲でないと云ふことを言明致しまして、其の後は私はまだ寡聞にして起きて居るのを聞きませぬが、今まで起きて居るものの處置に對しましては、色々の事情、色々の環境がありますので、一概に之を高壓的にどうすると云ふことも、場合に依つては考へなくちやならぬ點がありますので、成べく穩健な方法で、反省的な處置を執り、又執つて貰ひ、又は地方廳等に連絡を取りましてやつて居ります、併しながら是が刑法に觸れると云ふやうな顯著な事實がありまする時には、是は司法省に於て取締をすると云ふことになつて居ります、又民事上の問題もそれに關聯して起きて居り、民事上の處置を執つて之を解決して居るものもあります、さう云ふ風に御承知願ひたいと思ひます
それから第三點の經營協議會の事項でありまするが、是は商工大臣からも御説明があるかも知れませぬが、大體經營協議會に掛けまする事項は、賃金其の他の勞働條件、それから生産に關する事項を主にして居りまして、經營權自體の問題は直接經營協議會に於てどう決定すると云ふ問題でなからうと思つて居ります、だから人事の問題、經理の問題などは、經營權自體と非常に重大な關係を持ち、其の線に沿つたことであり、それから又現行商法に於て取締役其の他の責任者、役員が、さう云ふ問題に對する經營上の責任を持つて居るのでありますから、其の問題は經營協議會の問題として取上げないと云ふ風に考へて居りまするが、併しながら斯う云ふ問題に付ても、出來るだけ勞働者側の意見を聽いてやるべきものだと云ふことに付ては、私共はさうあるべきことと考へて居ります、左樣御承知願ひたいと思ひます
そから第四番目は文部大臣に御尋ねでありましたが、此の機會に私からも一寸説明致しまするが、此の草案に於て教員の爭議權を禁止すると云ふ意味を採らなかつた譯は、此の草案に於きましては國務を遂行することに妨害があつてはならない、國民の日常生活に脅威を及ぼしてはいかない、此の二つのことを二本の太い線としまして組立てて行つたのが此の法案の趣旨であります、そこで其の線に教員の問題が入らなかつたと云ふ風に御承知願ひたいと思ひます
それから第五の問題は、是は私から御答へすべきかと云ふことは、多少私も躊躇をしたのでありますが、勞働關係法案の御質問であり、賃金其の他勞働問題と重大な關係がある意味に於ての御尋ねと了解しまして、其の線に沿つた意味に於て御答へを致しまするが、御承知の通りに段々世の中は斯う云ふ風になつて參りまして、非常に困つて居ります、個人の創意責任を以て物をやらなければならぬと云ふことは、是は民主主義の根本であります、此の點に付きまして、自由原則を根本とすると云ふことは、全く私は山本君に御同感であります、併しながらこんな時代になりまして、非常に面倒だ、それで物は足りませぬで、通貨は非常に膨脹して、信用がここまで、擬制資本と云ひますか何か知らぬが、非常にぶかついて居ると云ふことで、此の二つの調和を如何に求めるか、さうして此の二つの調和の上に於て、日本經濟をどう云ふ風に建設するかと云ふことは、中々難かしい問題で、唯自由一本では勿論參りませぬ、そこで計畫性を或る程度持たせなければならぬと云ふことは、是は疑ひないことです、そこで安定本部が出來るから安定するのではありませぬ、是は全内閣の責任に於てやらなければならぬ、此のことは尤もであります、併しながら此の自由の本旨と、自由の魂と申しますか、それに計畫の着物を着せる、どう云ふ着物をどう着るかと云ふことは、中々千變萬化で、一寸簡單に言へませぬが、或る程度厚い着物を着なければならぬと云ふことは覺悟願ひたい、と云ふのは、此の非常な「ドラステイック」な時だから、之に對してはやはり相當なことはやつて行かなければならぬ、併しながら本心は自由だ、さう云ふ風に御諒承願ひたいと思ひます(拍手)
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=6
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007・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 教職員の爭議行爲の問題に付きまして、山本君の御質問に御答へ申上げます、只今厚生大臣から答へられました所は、勞働關係調整法の立場からでありますが、私の御答へは教育の面からと云ふ風に御承知置き願ひます
教職員の爭議行爲の問題は甚だ複雜でございます、政府と致しまして教育者の待遇を大幅に改善しなければならないと云ふことは、輿論になつて居りますので、大いに目下努力致して居る次第であります、教育の本義と、それに基きます教職員と被教育者との人格的關係、教育者の被教育者に對します偉大なる精神的影響の重大性を考へまする時に、教育者が現業員と同じやうな爭議行爲に出まして、爭議行爲を決行致しますことは、其の地位に相應しからぬ、好ましくないことでありますことは、御指摘の通りでありまして、極力斯樣な手段を排しなければならぬものと存じて居る次第であります、所で法文の中に教職員の爭議行爲の禁止の條項が入つて居ないではないか、それをなぜ入れないかと云ふことでありますが、此の點は非常に考慮しなければならぬことがございます、法律で以て明瞭にした方が宜い事柄と、事柄の性質に依りましては法律に規定することが必ずしも適當でない行爲とございます、最も望ましいことは、此の教育者の高貴な使命の自覺に徹底致しまして、教育者として相應しい他の方法、手段を選ぶのが、一番宜いことであります、現に米國に於きましても、教員組合の規約書などで、罷業をしないと云ふことを自治的に決めて居る向もあると云ふことを、教育使節團の團員や、或は又こちらに滯在して居られる米國人から聞いたこともあります、政府と致しましては斯樣な點を考慮に入れまして、教職員の爭議行爲の禁止を法文の中に特に現はさなかつた次第でございます、尚ほ此の現はさなかつた經緯を、此處で以て話すやうにと云ふことでございましたが、此の内部的の經緯は申上げ兼ねるのであります、尚ほ新聞に傳はつて居ります所の經緯は、必ずしも正確ではありませぬ、文部大臣と致しまして教職員の爭議行爲の問題に對しまして、是まで執つて參りました所信と態度とは微動だも致して居りませぬことを附加へて置く次第でございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=7
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008・山本勝市
○山本勝市君 現在行はれて居りまする生産管理に對して、實際どう云ふ風に對處して行くかと云ふ問題に付ても尚ほ確めたいし、又最後に申伺ひ申しました自由を主として統制を從とするか、或は相變らず公定價格制度と配給制度の上に經濟の再建をしようとするのかと云ふ點に付ては、御承知の通り「アメリカ」の先般の價格統制局の問題で、議會と政府が對立して居る問題でありますが、私は其の重大な問題に付てもはつきりと政府の所信を此處で聽きたいのでありまするけれども、總理大臣も居られぬやうであるし、又内務大臣も居られぬやうであるから、私の質問は後の機會に留保致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=8
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009・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 川崎秀二君
〔川崎秀二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=9
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010・川崎秀二
○川崎秀二君 私は只今上程中の勞働關係調整法案に對し、其の基本的な問題と、各條項の中特に重要なる數點に付て質問を致すものであります
過ぐる第八十九議會に於きまして、我が國勞働運動の史上に劃期的なる勞働組合法案が成立致し、此の施行を見まするや、長く封建的な制度と桎梏に束縛されて居た勞働階級、特に戰時中は軍閥官僚政治の壓政の下に悲慘なる強制勞働に追込まれて居た全國數千萬の勤勞大衆は、其の束縛と壓政から解放され、爾來勞働組合運動は、時代に目覺めたる勞働者の蹶起に依つて、澎湃として全國を蔽ひ、敗戰日本の經濟再建設の上に偉大なる役割を演じつつあることは洵に喜びに堪へない所であります(拍手)敗戰後の我が國産業界は、此處に私が敢て喋々するまでもなく、食糧の窮乏、物價の騰貴「インフレーション」の襲來と云ふ惡材料が集積致しまして、平和産業の建設は遲々として運ばず、勞働者の生活を脅威するに至り、戰前戰時中を問はず、世界の先進諸國家に比較致しまして、最も慘めなる状態にあつた我が國の勞働者は、更に此の勞働條件の惡化の爲に困窮の淵に投込まれたのでありますが、勞働組合法の施行以來、勞働者が團結の力を以て自らの生活を護り、勤勞の結果としての當然の生活保障、待遇の向上改善を自らの力に依つて解決致し、基本的人權の確立を目指し、自覺ある風潮を見、組合の自由なる發展を見るに至りましたことは、往昔を顧みて感慨に堪へぬ所であります、勞働組合は全國的に結成され、是と共に經濟生活難に伴ふ勞働爭議は頻發するに至りました、勞働爭議の件數は、昨年末から本年一、二月に掛けて最も多く、今日も尚ほ衰頽の色を示さない、是は敗戰後の社會情勢と致しまして當然の趨向とは考へますが、各産業に亙る勞働爭議の頻發は、漸く生産を澁滯に陷らしむると共に、勞働爭議の一部に於きましては、少數の指導者が多數者心理を利用して行ふ示威、「テモンストレーション」、或は暴行、脅迫などが行はれ、更には爭議の當時者以外の第三者が努めて爭議を煽動すると云ふが如き現象も現はるるに至りまして、社會人心に與ふる衝動、影響は之を看過し得ないのであります(「ヒヤヒヤ」拍手)殊に勞資の對立を尖鋭化して、文化國家建設に當つて缺く能はざる産業の再開が、是が爲に危殆に瀕する状況を誘致することとなり、洵に憂慮すべき状況であります(拍手)勞働爭議は元々決して好ましいものではありませぬ、併し一部の資本家のやうに、頭から勞働爭議を敵視して考へるのは斷じて過ちである、我々は勞働爭議を恐れる一部の資本家の心理は洵に了解に苦しむものでありますが、一方我々が惧れるものは、産業再開の停頓と云ふことであります、私は斯かる觀點から致しまして、以下具體的に質問を申述べたいと思ひます
先づ第一に御伺ひしたい點は、本法案は、勞働組合法の成立に依りまして熾烈になつた勞働運動に對し、動もすれば之を抑制せんとする傾向、即ち勞働組合運動の彈壓なりとする見解に對し、果して政府は此の疑問を解消し、勞働運動を健全に導き得る確信ありや否やと云ふ點であります、勞働組合法は、勞働組合の結成及び其の活動に付て凡ゆる障碍を排除し、其の自由なる發展を促進して居るのであります、然るに此の法案は第一章から第六章の各章を通じまして、官公吏、警察官等の爭議行爲禁止と、公益事業等の爭議の制限であり、要するに之を規制せんとするものであることは間違ひない、組合運動を一方に於ては之を助長し、片方に於ては之を制限する、然らば此の法案は勞働組合法と相俟つて、窮極の目的である經濟の興隆に寄與すると云ふ過程に於て矛盾撞著が起りはしないかと云ふのであります(「其の通りだ」と呼ぶ者あり)此の法案は、私自身は寧ろ勞働組合法を提出する際、是と併行して提出され、勞働組合法に於て勞働者の團結と爭議權を認め、自己の權利を自覺せしむると共に、公益事業を初め、公衆の生活に多大の影響を及ぼす事業に付ては、調停仲裁を行ふ此の調整法案を成立せしめて居つたならば、組合運動を繞るあのやうな混亂は起らず、日本經濟の破局を最小限度に食止めて居たのではないかと觀測するものであります、問題は今日勞働者の生活を保障する勞働保護法を伴はずして、此の法案を單獨に今議會に提出した政府の所信であります、本法案は聞く所に依れば、勞務法制審議會が答申を致しまして、其の後、日本で初めて法律を作る前に輿論に聽くと云つた所謂公聽會なるものを開いた結果提出されたものであると云ふ、手續の點に於きましては極めて民主的な法律であることは之を認むるに吝かではありませぬ、而して此の法案に對し、使用者側の團體或は第三者にある者は概ね之を支持して居るやうであります、其の反對に重要な勞働團體の多くは明かに之に反對して居ることも又事實のやうであります、中央勞働委員會では、色々の經緯を辿つて、使用者側委員及び中立委員は之を支持し、勞働者側の委員は此の法案に反對したと聞いて居る、重要なる勞働團體が悉く之に反對し、勞働者側の委員が、諸般の事情は兎も角として、之に反對して居るとせば、是は極めて重大な現象であります、其の反對の原因が、勞働者の基本權を蹂躪するものであるとし、其の他此の法案に眞向正面から全面的に反對すると云ふならば兎も角として、端的に申して、先頃勞働組合法を成立させて置いて、折角燃え擴がつた勞働運動に水を掛けるやうな結果になると云ふ極めて政治的な議論であるならば、是は厚生大臣が本法案提出に際し、此の法案は勞働運動を正常に發展せしめる爲め絶對に必要であると云ふ信念と見解と、更には又其の妥當性を今少しく明瞭に國民一般に滲透せしめねばならない義務があると私は確信するのであります(拍手)私自身は此の法案が必ず産業再開に大いなる貢献をなすものと信ずるものでありますが、本法案提出に當つての厚生大臣の信念と、法案の運用如何が之を左右する面は極めて大きいのであります、是等に付て私は厚生大臣に對し明快なる所見の開陳を求めるものであります
第二の點は勞働爭議を眞に豫防し之を解決する爲には、組合法と調整法とでは不十分であります、勞働者の生活を保護する勞働保護法の制定をなすべき意思はないかと云ふ點であります、今日國民の最大の問題は、言ふまでもなく食糧の問題である、國民は如何にして食ふかと云ふことに日々を追はれて居る、それこそ文字通り自衞權を發動しなければ食へない状況である、政府は如何にして國民を、勤勞大衆を食はせるかと云ふことに施策の重點を向けなければならないと思ふのであります、少くとも食糧獲得の爲に「リユック」を背負つて交通機關を混亂させて居るあの状況を一掃する責任が政府にあると私は思ふのであります、働く勞働者の生活を保障しなければ生産の再開は望めませぬ、勿論勞働法の制定は、獨り國内問題のみではなく、國際的な水凖を參考にせねばならない面もあります、又國内問題に於きましても種々の問題に關聯があることでありますから、爾く簡單には成案を得るものとは思はれませぬが、勞働者の最低賃金、就業時間等の勞働條件の最低限度を規定して、働く者の生活を保障することは絶對必要である、我々は是なくして勞働問題の健全なる基盤は確立されないと斷言しても憚らぬのであります、政府は速かに勞働保護法を作成し、本議會に提案すべきであつたと思ひますが、政府に只今までに勞働保護法に對して纒つた御考へがあれば此の際御示しを願ひたいと思ふものであります、厚生省は生活保護法を制定して、貧窮者、働くことの出來ぬ人々の生活を保護しようと試みることは現下洵に結構なことでありますが、産業建設や國家運營の主動力たる働く者の最低生活を如何に保障するのであるか、私は敢て質問せざるを得ないのであります、元來此の調整法案の起案に當りましては、恐らく先進各國の調停仲裁法を研究されて、其の優れた所は採入れられたものと推測致します、一九〇七年「カナダ」に作られた産業爭議審査法なるものは、公益事業、鐵道及び鑛山を初め各種の重要産業に適用されて居り、平時の勞働問題解決に當つて最も效果的な且つ模範的な立法と言はれて居ります、今囘の法案が此の流れを汲んだものかどうかは知りませぬが、極めて似て居るやうに感ぜられるのであります、併し私は敗戰後の經濟界の混亂を乘切つて行くのには、特にここ一二年の經濟危機を克服する爲には、經濟安定と強く聯關せしむる勞働立法が必要ではないかと考へる、厖大なる資源に恵まれ、經濟界に何等大いなる不安がない戰勝國「アメリカ」でさへ、戰後の經濟安定の爲に、本年一月二日勞働省内に賃金安定局を作り、營々として戰後の經濟安定に努力して居るのであります、更に一方「トルーマン」大統領は、終戰直後議會に教書を送りまして、國家の福祉に影響する重大罷業が勃發する形勢となつた場合は、五日以内に委員會を組織し、二十日以内に勞働爭議の事實と共に政府に報告を行はしめる、更に其の後五日間は「ストライキ」も工場閉鎖も共に之を禁止すると云ふのであります、是は法律としてこそ成立致しませぬでしたが、事實上調査委員會が設置され、逸早く自動車工業、製油業、製鋼業、運輸業に亙つて續々委員が任命され、戰後經濟の安定を圖つて居るのであります
更に私が伺ひたい第三の點は、本法案第一章第八條の公益事業に於て掲げられたる公益事業の外、「主務大臣は、前項の事業の外、中央勞働委員會の決議によつて、業務の停廢が國民經濟を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業を、一年以内の期間を限り、公益事業として指定することができる。」と書いてありますが、是は勞働委員會が公正なる機能を發揮する上に於ては當を得たるものと信じます、併し此の規定に續いて、「前項の中央勞働委員會の決議においては、使用者を代表する委員、勞働者を代表する委員及び第三者である委員の各各の過半數の同意がなければならない。」と規定してあるのでありますが、是は一體どう云ふことでありませうか、勞働委員會は是が成立すれば權威ある機關としてそれを自體一個の性格を持つものではなからうか、其の勞働委員會の行ふべきことは大體に於て多數決を以て決めることになつて居るのに、此の條項に於て、使用者側、勞働者側、中立側の委員の各各の過半數の同意が必要となりますと、國民生活の上に多大の影響のある事業が、或る一方の側の委員が、階級的な立場から、或は政治的情勢から、結束して其の事業の指定に反對した爲に是が成立しないと云ふ虞があるのであります、今日業務の停廢が國民經濟を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業は、例へば主食配給に携はる業務や、重要産業の中にも公益事業として指定しなければならないものがあると思ひますが、此の場合、假に一方の委員が結束して反對した結果不成立と云ふことになれば由々しき事態を招來致しはしまいか、之に對する厚生大臣の見解を私は承りたいのであります、公益事業の「ストライキ」や「サボタージュ」がどのやうに大衆生活に影響するかは、我々が此の春東京鐵道局管内の省線電車の安全運轉なるものに於て深く味はされた所であります、此の罷業の原因が、使用者側と勞働者側の何れに是非があるかは知らず、是は恐らく勞働委員會が後に裁定された所のものが私は公正であると信じますが、大衆が迷惑を蒙つたことだけは又間違ひない事實であります(拍手)有樂町、東京驛から杉並方面まで、都心に勤務して居る所の「サラリーマン」が歸るのに、三時間、四時間も掛つて、徐行する滿員電車の中で、冬の眞最中に玉の汗をかいた經驗は、恐らく私一人ではないと感ずるのであります(拍手)空腹と焦燥に怒つた所の乘客が、運轉手に怒りを向けて暴民と化したあの悲しむべき事實を目撃した者の總て、又往復の足を奪はれて、國家機能や事業遂行に多大の障碍を痛感した人々の總て、更には又新聞紙上に於てあの事件を知つた所の國民の誰しもが、公益事業の爭議は、勞資双方の當事者が話合に依つて、相成べく爭議の形態に入らぬやうに解決して欲しいと信じて居ると考へるのであります(拍手)
第四に御伺ひ致したい點は、勞働委員會の構成に付てであります、本調整法が成立するとすれば、中央地方を通じての勞働委員會の任務は極めて重要となり、本調整法が成功するかしないかは、特に中央勞働委員會の雙肩に懸つて居るものと思ひます、然るに現在の勞働委員會の成規の手續、即ち勞働組合法施行令第三十七條第四項に據つたものではなく、勞働者側の委員も、使用者側の委員も、又中立側の委員も、如何なる基準に於て選ばれたか頗る不分明な人があります、更に個人の情としては洵に忍びない所でありますが、勞働委員會の重要なる地歩を占める人に、追放令に該當するやの人もあると聞いて居る、此の勞働委員會の構成替に付て政府は如何に御考へになるか、又此の法案成立の曉には、直ちに民主的に改組するかどうかを御伺ひ致したいのであります、私は勞働者側委員は、眞に勞働に從事し、全國的勞働團體に依つて民主的に選出された代表を以てし、使用者側委員は、經營者組合其の他使用者團體の意思を代表する人が、又中立委員に於きましては、勞働運動に深き理解と學識を持ち、公正にして私なく、且つ是こそ勞資雙方の代表者が異存のないと考へるやうな人物を以て構成さるべきだと思ふのでありますが、政府の御考へは如何でありませうか
質問の第五點と致しまして、先程山本議員からも御尋ねがありました、教職員の爭議を容認したことに付て御尋ね致します、一時新聞紙上の傳ふる所に依れば、本法案に於て教員の爭議行爲は禁止されると云ふ報道があつた、其の後禁止しないと云ふことに改められたと思ひますが、我々は其の間の經緯を聽かうと云ふのではない、教職員の爭議を禁止することは、官吏のやうに直接國家機能の中樞に參加するものや、其の基幹となつて居るものではないと云ふ意味から、或は公益事業のやうに直接大衆の經濟生活に關係するものではないと云ふ點から、確かに私は爭議を認めて宜いのではないかと考へる、殊に教員の俸給を初め、給與一般が、他の階層に比べ餘りに冷遇されて居る現状から致しますならば、其の勞働條件を引上げる點に於ては、教員の團結權は認めなければならぬのであります、併し是は寧ろ政府や議會が進んで其の待遇を改善することに努むべきではなからうかと痛感するものであります(拍手)現在薄給なる國民學校の教職員の中には、兒童の授業に専念する能はずして、闇物資の斡旋に依り糊口を凌いで居る者ありと言はれる、眞に其の境遇には同情せざるを得ませぬ、是は國民學校の教職員ばかりではない、中等學校や、大學の教員にも決して此のやうな事實なしとはしないでありませう、私は是では次代の日本を背負つて立つ青少年、第二の國民を養成する師表としての教員の眞の姿ではないと確信するものである、其の原因の芟除に付きましては、政府は格段の努力を拂はねばならぬと思ふものであります、併し又一面に於きまして、教職員が爭議をなし、特に是が全國的に波及したる状態を惹起致しますならば、教育の成果に依る國家の健全なる歩みは瓦壞に瀕すると言つても過言ではないのであります、兒童や生徒に與ふる影響、之を通じて家庭に響く衝動、洵に寒心に堪へない状態が起らぬとも測り知れないのであります、隨て私は教職員の爭議に付ては特別の措置を考へるか、或は爭議を禁止するか、二者其の一を擇ぶ以外に方途なしと思ふものでありますが、勿論官吏や教職員の爭議を禁止するならば、是等の人々の待遇は、他の勞働者の現に受けつつある待遇の平均以下には決して置かないと云ふ生活保障を具體化すべきことは言ふまでもありませぬ、厚生大臣及び文教指導の責に任ずる文部大臣は如何に之を御考へになるか、山本議員に答へられた點と、更に私が質問致しました點に對し、僞らざる所信を披瀝されたいと思ふものであります
第六の點として、是も山本議員から質問があつたのでありますが、今後經營協議會の持つ役割と云ふものは非常に大きなものであると思ひます、破局に瀕した我が國經濟の現状に於きましては、勞働者が其の立場を確保する爲に、經營參加を要望するのは蓋し當然でありまして、使用者側に於ても此の要望を快く聽き容れて、新しい勞働秩序を建設することこそ、新日本建設に貢獻する所以であると考へるのであります(拍手)私は又經營協議會は斷じて爭議發生の豫防機關としての消極性に終ることなきを期待する一人であります、此の經營協議會の性格の基準は如何なるものが適當であらうか、又之を成文化する意思はないものか、河合厚生大臣の更に突込んだ構想を伺ひたいものであります
最後に私は此の法案と關聯して勞働組合の健全なる發達は如何にあるべきか、其の點に付て河合厚生大臣の所信を承りたいものであります、勞働組合が、獨り勞働者の經濟的社會的地位の向上を圖るのみでなく、其の目的を達成致します爲には政治的の行動を執らねばならぬこともある以上、政治行動は自由に許されて然るべきであると考へるのであります、本來の目的を達成する爲の政治行動、選擧に臨んで、好む政黨に對する組合の政治活動は當然のことと思ふのでありますが、私をして言はしむるならば、近來一部に見らるる如き、勞働組合が常に特定政黨の看板を擔ぐが如き、或は政黨の地盤競爭の具に供せらるる如きは、却て組合の恆久的發展を害するのではないかと信ずるものであります(拍手)此の意味に於ける組合の偏つた政黨的色彩は排除せられなければならない、今日勞働運動に重大なる關心と、是が側面協力に盡さんとするものは、決して特定の政黨のみではありませぬ、勞働運動に甚大なる關心と協力を持たぬ政黨は、沒落の運命を辿る外はないのであります、私は今日大政黨と云ふものは總て、いや全議員の方々が、立場と主張は異なつても、勤勞大衆の生活向上に、勞働組合運動の健全なる伸張に、深き理解を持たれ、又其の支持と共鳴を得たればこそ、今日議席を獲得されたものと確信致すものであります(拍手)厚生大臣は勞働組合運動の健全なる發展と、其の政治活動に付て如何なる抱負を持つて居られるか
〔「勤勞所得をどうする」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=10
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011・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=11
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012・川崎秀二
○川崎秀二君(續) 此處に闡明して戴きたいと思ふのであります
質問を終るに際しまして、私は戰時中に於ける「アメリカ」の勞働組合運動の動きを想起するものであります、戰時中「アメリカ」では屡屡炭鑛爭議が勃發して居つたことは御承知の通りでありますが、其の度毎にC・I・Oを初めとして、勞働組合は勞働者の保護と地位向上の爲に、果敢にして一絲亂れざる行動を執り、政府も亦極めて公平なる立場に於て戰時勞働委員會を活用して、是が調停を行はしめ、其の結果は爭議の圓滿解決を見て、常に生産の増大を見て居つた事實であります、又是等の爭議に關する報道、「ニュース」を戰爭の最中に於ても、自國の不利をも顧みずして、一切堂々と發表して居つた事實であります、勞働運動の正常なる發展と、言論報道の自由、此の二つこそは今次戰爭の「アメリカ」の勝因に止まらず、實に人類正義の地位を示したものと思ふのであります(拍手)産業推進の鍵を握るものは、言ふまでもなく工場勞働者を先頭とする勤勞大衆に外ならない、勞働者こそは正に未來を告げる鬨の聲の主人公であります、其の誇りと自覺の上に立ち、正義を踏んでは何ものをも恐れざる戰鬪的精神と共に、一方に於ては産業再建を擔ふ指導力としての自重と責任、且つは義務としての勤勞意欲の旺盛なることは、強く要望さるる所以であります(「それは尤もだ」「社會黨の言ふことがなくなるぞ」と呼ぶ者あり)此の時代に於きまして、自覺と反省は資本家や使用者側に於て更に強烈でなければならない、利潤を追求することにのみ汲々たる從來の金儲け主義の資本家が殘存するならば、是等は世界の産業界から嚴重に之を監視し、國民の壓力を以て之を封じ込まなければならぬと思ふのであります、ともあれ勞働者の逞しき且つ自覺ある行動と、一方に於て正しき企業經營に進歩的な見解を持つ資本家、それぞれの立場に於て、堂々と主張見解を吐露し、省みて恥づかしからざる行動を執る上に於て、渾然一體がつちりと協力をしてこそ、初めて困難なる産業再開も促進され、生氣溌刺たる民間企業の發展を見ることが出來ると確信致すものであります、斯かる見解の下に、私は此の法案が勞資雙方の「フェヤ・プレー」の精神に依つて、勞働組合運動の正常なる「レール」を敷き、勞働意欲の向上を前提とする自律的勞働秩序とも謂ふべき大道を開くにあらざれば、此の法案提出の意義は失はれると考へるものであります、私の御尋ね致しました點に付きましては、敢て懇切丁寧とは申さないが、率直且つ積極的なる御所信を開陳されたいと思ふのであります(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=12
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013・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の川崎君の御質問に對して答辯を致します
第一の問題は、此の法案を提出したに付て信念を持つてやつたか、又妥當性と云ふことに對して、是も信念を持つて出したかと云ふ御尋ねであります、正に其の通りであります、勞働爭議が頻發して參りますので、是は出來るだけ防止しなくてはならぬ、それは勞働組合法だけでは簡單で旨く行かぬ、それで此の法律を作つた譯です、さうだから、是でやらぬとどうも此の時代には旨く行かぬと云ふことに於て強い信念を持つて居ります、それから此の案は妥當です、と云ふのは、一つは此の調停の方法を書いたものであります、是は勿論書かぬといかぬ、それからもう一つは公益との問題であります、是は提案理由の説明にも申した通り、國務の遂行と云ふことと、日常生活上の脅威を除くと云ふことは、是はどうしても大切なことで、此の線に於て新たに法律を作らなければならぬと思ふ、どうしても是はやらなければならぬと云ふ意味であります、正當な勞働爭議を彈壓しようと云ふ考へは夢にも持ちませぬ、それで大體總同盟等でも贊成下さることと最近まで思つて居つた、所がさうでないと云ふことですが、能く御分りになれば贊成して下さると思ひます
それから第二に勞働保護法を制定する意思ありや否やと云ふ御質問でありまするが、勿論其の意思を持つて居ります、さうして是は出來るだけ早い機會にやります、唯問題は非常に廣汎です、今草案の草案と云ふやうなものが出來まして、私も目下讀んで居りますが、實は私もまるつきり素人でない、一番初めに工場法を作つた時の役人で、それを實施しました、是は昔のことだから今日は通用せぬかも知れませぬが、併し大體の觀念は能く理解して居りまして、讀んで見ましたが、中々廣汎に亙つて居ります、勞働組合法は去年の十一月に取敢ず出來た、其の時に調整法も出來れば作つたが宜いが、今の人間の力と申しまするか、官僚の組織と申しまするか、そこまで參りませぬので、調整法は後れ走せに出來た、成べく早くやつたら宜いと思ふから、成べく早くやつたと云ふのが實情です、だから此の次の議會には出しますが、中々内容は、例へば賃金の問題、就業時間の問題、婦女の問題、危險有害作業の問題、寄宿舍の問題と中中廣汎なものでありますので、特に是は專門家の意見なり、或は一般輿論なり、殊に勞働者側の意見を十分尊重しなくちやいけませぬから、之に關しては公聽會を開くとか、或は勞務法制審議會に掛けるとか、色々手續をしなければなりませぬ、其の手續も今始めて居ります、さう云ふことだから是は暫く遲れるのは御勘辨下さい
それから第三番目は勞働關係調整法第八條第三項の問題でありましたが、是は使用者側委員の過半數、勞働者側委員の過半數、第三者側委員の過半數と云ふので、其の一つの勞働委員會と云ふものの決議權を片方に認めながら、又それを碎いて階級的の方に持つて來るやうなのはどう云ふ譯かと云ふ御質問だと了承致しますが、此の點に付ては實は大分問題が色々ありまして、さうして公益事業の遂行と云ふことは事甚だ重大だと云ふので勞務法制審議會で色々意見が出た、其の結著が斯う云ふことになつたのでありまして、政府としましても其の審議會の意見を尊重して提案した譯であります
第四番目の質問でありまするが、中央勞働委員會の構成の本當の姿はどうか、今のやうなものであるかと云ふ御話でございまするが、中央勞働委員會ばかりではありませぬ、總ての勞働委員會、地方のものも入ります、是は御尤ものことであります、是は勞働組合法の規定に依つてやつて居るのでありますけれども、御承知の通りに勞働組合法が出來て直ぐ委員會を作りました當時は、まだ勞働組合側の代表などを出す機關が十分整つて居りませぬでしたが、やつと最近整つたかに見えますので、此の點は只今中央勞働委員會にどう云ふ風にして其の方法をやるかと云ふことを諮問中であります、委員會でも何囘か會議を開いて具體案を作成しておいでのやうであります、此の案が出來ましたら直ちに組合法の本則に基いてやります、只今のは暫定的の措置で已むを得ざることと御承知願ひたい
それから第五の教職員の問題でありまするが、是は大體御同感であります
第六の經營協議會の問題でありまするが、是は其の業態に依つて色々特殊性もありますので、又協議會との關係と云ふことに付きましても、今段々發達の途上にあると思ひますので、 じひに茲に一つの決まつた型に嵌めさせると云ふことはどうかと云ふ考へを持つて居ります、大體今まで日本でやりましたが、經濟其の他の問題に於て型に嵌めて成功したことは餘りないのです、其の點に苦い經驗を持つて居りますので、段々と之を發達に任せて行く、併しながら大體茲に目安のやうなものを與へることは、是は此の問題の發展上宜からうとも考へまするので、やはり是も中央勞働委員會に、基準案と云ふやうなものに付て審議を願つて居る次第であります、左樣御承知を願ひたい、兎も角經營協議會と云ふものは、非常に將來のある展開的性質を持つて居りまして、勞働問題、殊に爭議の發生を防止するのは此の線に沿つて行くことが非常に宜い、又是は本當に日本民族として特質のある民主主義と云ふものの解決が出來るのではないかと云ふ風に考へて居ります
それから第七の問題は勞働組合と政黨との關係と云ふ風に拜聽致しました、勞働組合は申すまでもなく、經濟興隆と云ふことを目標として居るものでありまして、勞働組合の大目標は言ふまでもなく經濟にあります、さうして又反面に於て主として政治運動をやるものは勞働組合でないと云ふ風に勞働組合法でも規定して居りまするから、主として政治運動をやるのは勞働組合でないとやはり解釋しなくてはなりませぬ、そこで勞働組合と政黨と云ふものとの間には、自ら一線を劃することが出來ると云ふことを信じて居ります、其の一々の場合にどうと云ふことは、是は社會通念で以て律すべきものでありまして、ここらのことで御諒承願ひたいと思ひます(拍手)
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=13
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014・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 御答へ申上げます、教職員の爭議に關しまする御質問の趣旨は御同感至極でございます、爭議の禁止を法文の中に表はすや否やと云ふことに付きましては、強ひて法の力のみに依りませぬ、詰り法律萬能に頼らないで、待遇改善と教育者の使命の自覺に依りまして、適當なる解決に到達すると云ふことが最も望ましいことでございます、教育者の待遇問題に付きましては、國民學校から大學に至るまで大幅に改善を致しまして、少くとも官公吏竝みの水準には到達したいと云ふことに依りまして、目下具體案を作成中であると云ふことをはつきり申上げることが出來ます、要しまするに我我は、我が日本の教育者が爭議行爲をすることを明文を以て禁止されて居なくとも、教育者の使命を自覺致しまして、其の品位及び節度を守ると云ふことに付きまして、我々は深い信頼を持つて居るものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=14
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015・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 松岡駒吉君
〔松岡駒吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=15
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016・松岡駒吉
○松岡駒吉君 本日上程されました本案の狙ひます所の、即ち冒頭に掲げてあります「この法律は、勞働組合法と相俟つて、勞働關係の公正な調整を圖り、勞働爭議を豫防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて經濟の興隆に寄與することを目的とする。」、此の目的は洵に結構であるのでありますが、本案の内容を檢討致しましては固よりのこと、それのみではなくして、現内閣の財政經濟或は勞働政策の各般に亙りまして之を見まする時に、此の法律を制定することに依つてのみ、果して冒頭に掲げられて居ります所の其の目的を達成し得るや否や、私は洵に大なる疑問を感ずるのであります、寧ろ只今申上げますやうに、綜合的に之を考へることなくして、一片の法律の制定に依つて此の解決を圖らんとするが如きことは、寧ろ不可能ではないかと考へるのであります、現内閣は斯樣な法律を制定することに依りまして、冒頭に掲ぐる所の偉大なる目的を達成し得る自信ありや否や、明瞭に御答へを願ひたいと思ふのであります、私が只今から質問致しますことは、大體六項目──今から申上げる所の項目を三つに分け、次の項目を更に五つに分けて、大きな項目が六つ、小さな項目として八箇條の事柄に付て御聽きしたいと思ひます、私の聽かんとすることは、恐らく全日本の勞働者が欲して居ることであると私は確信するのであります(拍手)願はくは極めて明確に──徒らに言葉を飾り、若しくは曖昧な言辭を以て御答へにならないで、明確に御答へ下さることを御願ひするものであります、豫め申上げて置きますが、首相は固より、厚生大臣、内務大臣、大藏大臣、運輸大臣、遞信大臣、商工大臣の各各の御答辯を要求するものであります
本法の中で最も重要なる點は、公共事業關係者に對しまする所の爭議行爲の制限でございます、更に所謂一般國務に關係致しまする所の警察、消防、司法、行政等の事務に携はる人々の爭議行爲の禁止の條項でございます、由來「ストライキ」竝に爭議行爲と云ふものは、決して勞働者は花見をやつたり、遊山をやつたりするやうに、之を喜んでなすのではないことは申上げるまでもないのであります、談判と交渉に依つて、正々理論の鬪爭に依つて、物事を平和的に解決しようと致しますることは、凡そ勞働組合にして此の方針を堅持せざるものはないと申上げて敢て過言ではないのでございます(拍手)併しながら不幸に致しまして、過去の總てがさうでありましたと同樣に、今日も尚ほ中々其の平和的な手段のみでは公正なる主張を貫き得ず、遂に萬策盡きて餘儀なく爭議行爲に愬へ、或は「ストライキ」をなすと云ふ實力の行使を以て臨むの餘儀ない場合があるのでございます、斯かる事實は、今日施行されて居りまする所の勞働組合法に依つて、勞働者の團結權、或は其の交渉の權利、罷業の權利が法律的に確認され、即ち勞働權が法的に確認されるに至りました所以であるのでございます、之を以てすることなくしては、勞働者は自己の生活を防衞すること能はず、自らの生活權の主張すらなし得ないと云ふ、此の深刻なる問題の解決の一手段として、法律に依つて是が確認されて居ることは極めて明瞭なことであります、でありますから、曩に申上げました爭議行爲の制限若しくは禁止の適用を受けます所の人々の生活の問題に關しましては、特に政府は意を用ひて、其の適正なる、言換へれば生活の不安、其の脅威を取除くことの爲に十分の用意がなければならないのでございます(拍手)敢て爭議行爲に愬へるまでもなく、政府に左樣な用意があるならば、政府自ら此の問題の爲に戰々兢々として之を取締らんとするが如き立法の必要、亦自ら解消することは極めて明瞭であるのであります、政府は斯樣な見地からそれ等の人人の生活の不安、脅威を取除きますことの爲め、それ等の人々の組織して居ります所の勞働組合との團體協約に依る適正なる解決に付て、或は又第三者を交へた所の權威ある委員會樣の機關に於て、官公吏の生活條件に付て適正なる解決をなし得ると云ふ、其の可能性を保障し得る所の斯かる機關を御作りになる意思ありや否や、其の用意ありや否や、之を先づ此の制限竝に禁止適用の人々の爲に私は聽かんとするのであります
第二に御聽きしたいことは、斯樣な用意がなくして、果して閣僚諸君が率ひられる所のそれ等の重要なる國務に、若しくは公共事業に携はりつつある人人をして、本案制定の精神を納得せしめ得る所の自信ありや否やと云ふことを御聽きしたいのであります
第三に御聽きしたいことは、本案に依つて制限され若しくは禁止されます所のそれ等の事業、國務に携はる所の人々が、幾許の數に上るかと云ふことであります、それが日本全體の勞働者の總數の幾「パーセント」に當るかと云ふことであります、今後此の問題を審議致します上に極めて重要なる一點であると考へますので、此の點を明瞭に御知らせを願ひたいのである
大きなる項目として其の次に生産管理の問題に付て御聽きしたいのであります、生産管理は申上げるまでもなく、爭議行爲の一形態でございます、餘り多くの言葉を以て説明申上げるまでもなく、今日の日本の敗戰後の此の荒廢し切つた産業状態に於きまして、勞働者も或は第三者も、況や國家の此の立場から見まして、「ストライキ」の成べく起らないことを希望することは當然であるのでありまするが、而も新圓生活と云ふ、此の一般國民を強く拘束致しまする所の此の不自由な生活の行はれて居る今日に於きまして、先に申上げましたやうな理由の爲に餘儀なく「ストライキ」の手段を執らうと致しましても執り得ない事情にあるのであります、産業の状態のみではなくして、新圓生活は勞働者に「ストライキ」の戰術を以て資本家に對抗することを許さない現状に置かれて居るのであります、斯樣な状態に於きまして、簡單に頭ごなしに生産管理を非合法的な爭議行爲なりとして之を否定し去るが如きは、洵に以て怪しからぬことであると私は斷言するのである(拍手)資本家團體の中にも、皆さんも數日前の朝日新聞で御覽になりましたことと思ひますが、閣僚諸公も固より能く御存じのことであると私は信ずるものであるが、經濟團體同友會と稱する財界の新進の若手の人々の團體に於きまして、生産管理の可否が色々研究されて、生産管理を頭ごなしに非合法的な行爲として禁ずることの不當を指摘して居るのである、資本家の中にですら斯う云ふ人人があるのでありまするが、慥か二十二日の本會議に於きまして、厚生大臣竝に内務大臣は、生産管理の非合法性を指摘して、之を明瞭に否定して居るのである、今日も尚ほ同樣な見解を御持ちであるかどうか、生産管理を否定し、之を禁壓する所の現内閣の方針が堅持されたと致しまするならば、以上申上げましたやうな仕事に携はります人々は、否勞働者は、一體どうして今後生活して行つて宜いのであるか、生存權擁護の爲の自衞權として、如何なる手段方法が日本の勞働者に保障されて居るのであるか、此の點を明瞭に答へて戴きたい、私共は生産管理に藉口致しまして之を占領するが如き行爲、工場占領に等しき行爲は我々の斷じて同ぜざる所であります、又生産管理の無條件的合法性の獲得の主張の如きに對しましても、それは私共の贊成し能はざる主張であります、生産管理には一定の限界を設けて、一定の範疇の中に於て、其の合法なるものと非合法なるものとを先づ判別する基準を設ける必要があるのではないか(拍手)殊に私の問ひたいことは、政府は勞働組合法に依る所の勞働委員會に絶大の權限を附與して、行政の一部竝に裁判權に近いものまでも之に附與して居るのである、勞働組合法運營の上に當然斯くの如く重視されなければならない勞働委員會が嚴存するに拘らず、生産管理の如き、先程來申上げて居ますやうな、已むに已まれず今日の勞働階級に殘された所の唯一の手段としての生産管理を、其の合法、非合法を閣内に於ける相談に於て輕々に是が非合法であるとか何とか決定することは甚だ僭越ではないか(拍手)閣僚諸君の反省を促すものである
〔發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=16
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017・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=17
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018・松岡駒吉
○松岡駒吉君(續) 殊に生産管理の問題に付きましては、前にも申上げました通り個々の内容を正確に吟味致しまして、それが合法であるか非合法であるかと云ふことを嚴重に審査する意味に於きましても、組合法に依つて存在致しまする所の勞働委員會が、之を扱ふことも亦當然であると固く信ずるのである(拍手)
生産管理の問題に付きまして第三には、一體政府は資本家の「サボタージュ」をどうなさる積りであるか、勞働階級の生産意欲から來る所の本當の意味の生産管理、是があるのであります、其の勞働者の生産意欲から發する所の生産管理、資本家の意識的な「サボ」、政府は資本家の意識的な「サボ」を現に認めて居るのである、日本の資本家自らも是は必ずしも否定なし得ないのである、唯之を如何にして査察するかと云ふことであります、政府は其の取締に付て、其の「サボ」の事實をどうして一體査察するかと云ふことに付て御考へになつたことがありますか、御方針がございますか、さうしてそれが眞に意識的な「サボ」であり、或は意識的でないまでも、資本家の生産意欲の缺如から來て居ると云ふならば、それに對して強權發動、生産再開を命令なさる所の御意思があるかどうか(拍手)此の點に於て明確なる御答辯を御願ひしたい
此の問題に付ての第四の質問を致したいのでありまするが、政府は先に申上げました通り、生産管理と云ふものを非合法として否定し去る代りに、經營協議會を法制化せんとする意圖を有するものの如く國民には認識されて居るのでありますが、今尚ほさう云ふ御方針であるかどうか、之を御聽きして置きたいのであります、私共の考へから致しますならば、生産管理を否認せんが爲に經營協議會の法制化などと云ふことは、洵に嗤ふべき猿智慧だと言ひたいのでございますけれども、それのみではない、一體經營協議會と云ふやうなものを法制化して、さうしてそれに依つて勞資關係の適正な調整が出來ると、斯う云ふ物の御考へ方は洵に迂濶なのではないかと考へるのであります、一片の机上「プラン」として考へられることではありまするが、經營協議會が法制化される前提としては、寧ろ基本的な團體協約の具體的な運營宜しきを得まして、其の發展として經營協議會を持つに至るのでないならば、形式的に制定されました經營協議會が果して一體何の役に立つと御考へになるか、斯くの如きは實に官僚の机上「プラン」の尤なるものであると私は思ふのであります、斯樣な見解から致しまして、何より大切なことは、團體協約の普及と徹底であります、此の團體協約の普及と徹底の爲に、政府はどう云ふ御方針を御持ちになつて居られるか、勞働組合法に唯規定されたと云ふだけで宜いと御考へになるか、今日の日本の實情から見まして、殊に此の點商工大臣に御伺ひ致したいのであるが、まだまだ上面だけで、日本の資本家階級の全部とは言ひませぬが、大多數は、心から團體協約に依る所の適正なる勞働條件の妥結點を見出すと云ふ程度にすら、中々なつて居ないのであります、斯う云ふ點に於て、一段の御工夫があつて然るべきではないかと信ずるのである、此の點に付ての政府の所見を御伺ひしたいのであります
第五に日本の産業は今日洵に危なつかしい、文字通り危機に瀕して居るのであります、我々は終戰と同時に、此の荒廢し切つた日本の産業のより急速な再建、其の復興が勞働階級に課せられたる所の大なる責任であり、勞働階級のみのなし遂げ得る所の是は偉大なる仕事である、此の困難な仕事を、勞働階級の歴史的使命と其の責任感と矜恃に依つて、敢て買つて出ようではないかと云ふ態度を以て運動を進めて來て居るのである、斯くの如き我々の運動の方針は、今日只今申上げました團體協約の運動の上に於ても、大いに見るべき實績を擧げつつあるのでありまするが、我々は更に百尺竿頭一歩を進めて、之を救國的な産業の復興運動として全國的に展開しなければならないと云ふので、先月來熱心に努力して今日に來て居るのであります、政府は今日の如き産業の危機、生産の混亂期、斯う云ふ時に當りまして、徒らに取締的な御考へのみをなさらないで、須らく積極的に、寧ろ國民を本當に信用して──戰爭中東條内閣を初め國民 まるで信用致しませぬ、國民を監視するやうな態度を執りましたことは、著しく國民の憤懣を買ひ、却て敗戰へ敗戰への一途を辿らざるを得ないことになつた原因の一つではないかと思ふのでありまするが、國民を信用する、勞働者を信頼することである、勞働者を産業復興への運動に奮ひ起たしめる底の、大いに積極的構想と施策があつて宜いのではないか、厚生大臣は固より商工大臣の所感を御聽きしたいのであります
第四に御聽きしたいことは、今日既に日本には數百萬の失業者があるのでありまするが、復員されて來る所の軍人諸君は固より、今後生産施設の賠償處理の進行に伴ひまして、失業者は日一日と増大の一途を辿るのみであると云ふことは、容易に其の前途を想像することが出來るのであります、失業と云ふことが如何に深刻な苦しみであるか、必ずしも是は勞働者ならずとも御想像出來ることであるとは思ひますが、失業した者でなければ本當のことは分らない、其の痛烈なる失業苦、而も今日就業はして居りましても、役所に勤めて居りましても、會社に勤めて居りましても、工場に勤めて居りましても、軈てそれ等の厖大なる失業群がそれぞれ全勤勞者を脅かす所の大なる脅威であることは、是は言ふまでもないのであります、それ等の多くの失業者諸君の爲に政府は一體何を御考へになつて居られるか、一體どう云ふ失業對策を御持ちであるか、失業救濟事業を、司令部から命令されて漸く御考へになつたやうなことに對して、私共は大なる不滿がある、色々事業に失業者の吸收することに付て不滿がありますが、今後御努め下さるであらう、或は短時間勞働に依り、破壞された生産機關の「フル」の運轉と云ふやうなことも、生産的にも或は失業對策の爲にも考へなければならない問題の一つでございます、然るに是は如何に凡ゆる努力を致すと雖も、此の失業者を全部吸收し盡すことは不可能なのでございます、今囘出て居りまする所の失業者は、資本主義の週期的に齎す所の、景氣、不景氣から來るものではないから、さう云ふことに對しては大して責任がないやうな、妙な御答辯、極めて曖昧な御答辯を本議場に於てどなたからか御聽きしたのであります、今日ある所の失業者と云ふものは、是は悉く國家の犧牲者であります、それは現内閣に責任があるかないかと云ふ問題ではない、是は國策の犧牲者である、でありますから、國家が其の最低生活を保障しなければならない責任があると私は斷定するのである(拍手)現に失業して居る者の爲に失業手當を支出される御方針であるかどうか、將來失業しはしないかと云ふ其の大なる脅威の中にある所の全勞働者の爲に、失業保險法を制定される所の用意ありや否や(拍手)之に付て御伺ひしたいのであります
第五に御聽きしたいことは、勤勞所得税の問題であります、見らるる如く、日本の津々浦々、全土を蔽ふが如くに、甲種勤勞所得税の撤廢は、最早輿論となつて居るばかりではなくして、其の反對運動が日一日と熾烈になり、此の問題の如何に依りましては、由々しき一大鬪爭が茲に捲起されはしないかと云ふ形勢が看取されるのであります、然るに政府は逆に百分の二を増税されまして、一割八分であつたものが二割天引されることになつたのであります、一體斯樣なやり方が果して賃金値上運動を誘發せずして濟むと大藏大臣は御考へになる自信がおありになりますか、大臣は餘儀なき所用の爲に御外出であることは存じて居りますので、已むを得ませぬ、適當なる人から是は御囘答を願ひたい
第六に御聽きしたいことは、勞働省を設置されまして、勞働行政の一元化を圖られる所の御意思がおありであるや否や、(「何ぼ言うてるんだ」と呼ぶ者あり)何ぼ言うて居ると云うても、明かになつて居りませぬ、勞働關係の調整と云ふことは、取締本位でありましたり、それが監督行政であつたりしてはいけないと云ふことは、もう今日議論の餘地のないことであります、勞働關係の調整の基本的な原則は、健全な勞働組合運動の助長と育成にあることは、今日日本の定論である、即ち私の謂ふ所の勞働省設置の緊急を要すると云ふ理由は、日本の政府が如何に勞働問題を重視して居るか、日本の政府が如何に勞働者を尊重して居るか、此のことを最も端的に表現し、之を端的に確實に象徴することが、即ち勞働省の設置であるからであります、是は俺達の役所だ、勞働者の役所を作ることである、斯う云ふ意味に於きまして、急速に勞働省を設置される所の御意思があるかどうかと云ふことを私は聽きたい、今日厚生省と云ふ名の下に勞働行政が行はれて居るのでありますが、是は御承知の通り、戰時中に於ける誤つたものの考へ方が、斯樣な厚生省と云ふやうな妙ちきりんな名前を付けた、其のやうな事實に鑑みましても、一刻も早く、一日も早く勞働省の設置を私は要求して已まないのであります(拍手)
以上質問致しましたことに依りまして、私の言はんとすることが明瞭であるのでありまするが、結論として私は申上げたい、今日日本の勞働者が何が故に一體本案に對して大なる反對運動を起して居るのであるか、一體其の眞意は何處にあるのであるか、固より本案に反對して居ることは申上げるまでもない、併しそれは本案のみに反對するが故ではないのであります、現内閣が今までの内閣のそれと同じやうに、依然として全勤勞者の生活に對して極めて冷淡であると云ふことであります(拍手)表向き如何に民主的な修飾を以てなさらうと、事實は極めて保守的で、資本主義的であると云ふ勞働者の認識、其の憤懣の感情が、政府に對する不信用、即ち勞働者の不信任の意思表示として、本案に對する猛烈、熾烈な反對運動が今展開されて居るのであります(拍手)本案に對する勞働者の此の反對の叫びは、勞働者の魂より迸り出る所の叫びである、願はくは此の深刻なる勞働者の叫びに對して、現内閣は虚心坦懷、深く自らを省み、勇斷以て今日までの凡ゆる施策に一大轉換をなすべきではないかと云ふことを私は考へるのである、現内閣は果して其の政策の一大轉換を以て、さうして此の法案の冒頭に掲げてある所の産業の平和を維持し、勞働の能率を向上せしめ、産業の興隆に寄與すると云ふ其の目的を達成すると云ふことの爲に御考へにならなければならないのではないか、斯樣に考へるのであります、此の最後の點に付きましては、特に總理の答辯を求めるものであります、之を以て私の質問を打切ります(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=18
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019・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 松岡君の御質問に對して御答へ致します、勞働問題に對する先輩の松岡君の色々の御質問に對して、深く敬意を表します、大體に於ては御所論と贊成の所が多いのでありまするが、多少意見を異にする點のあるのを甚だ遺憾と致します、あの席が非常に聽取りにくい席でありまして、或はぴつたり當らぬ御答へをするかも知れませぬが、又の機會に十分御答へ致す積りであります、
第一の官公吏の問題でありまするが、之に付ては只今まで、色々財政上の問題もありませうが、從來官公吏と云ふものは、此の時局の物價高其の他に付て、どうも他の勤勞者に對して立後れて居る、給與も甚だ少かつたと云ふ點に付ては、全く御同感であります、最近大分上げましたが、豫算の都合などもあつて、百「パーセント」と云ふ譯に行かぬのは甚だ殘念であります、政府もさう云ふ差別の成べくないやうに今後致す積りであります、それに付て色々何か經營協議會と云ふやうな意味のものを作る意思があるかと云ふやうな御尋ねでありましたが、斯う云ふ點に付ては、研究の致して居りますけれども、まだ決まつた考へを持ちませぬ、それから官公吏に付て、此の勞働調整法に於て官公吏の「ストライキ」を禁止したと云ふことに對して、納得をさせる自信があるかと云ふ御尋ねでありましたが、是は努めて納得をさせるやうに努めまするし、又國務遂行と云ふことは、公益上の最も重大な問題でありますから、どうしても是はさうしなければならぬと云ふ點に、相當重點を置いて考へて居る次第であります
それから生産管理の點に付て色々御尋ねでありましたが、是は先程も申しました通りに、生産管理は爭議手段として正當でないと云ふ政府の見解を持つて居りまする以上は、生産管理を正當、不正當と分けまして、其の基準を定めるやうな意思は持ちませぬ、又政府が正當ならずと思つて居りまするから、其の正當、不正當を勞働委員會に掛けて審議すると云ふ必要も認めませぬ
〔發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=19
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020・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に──靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=20
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021・河合良成
○國務大臣(河合良成君)(續) それから資本家の「サボ」をどうするかと云ふ御話でございましたが、十分之に付て査察も行ふだけ行ひ、さうして強權發動の命令を下す意思を持つて居ります、此の議會に多分提案出來ると思ひます、それから經營協議會を法制化する考へは持たぬことは先程申した通りであります、是は大體松岡さんの御意見と御同感とも思ひますが、團體協約の運營宜しきを得ると云ふことは非常に結構なことでありまして、是はやはり經營協議會が其の内容となつて行くと云ふことが最も主眼點と思ひますから、斯う云ふ面に於て經營協議會の自然的發達を促進すると云ふことは非常に結構なことだと思つて居ります、それから勞働者を大いに奮起させるやうな積極的な施策があつて宜いぢやないかと云ふ御質問でございましたが、是も御尤もで、政府も出來るだけ努力をする積りでありますが、何か具體的な思ひ付きでもありましたら、どうぞ御教示を願ひたいと思ひます
それから失業問題に付きまして、過般本議場に於きまして、此の失業問題は資本主義の循環的景氣から起る失業問題とは性質が違ふのだと云ふやうな意味を私は申上げました、それは資本主義の一種の拙い所から失業問題が起きるのぢやないかと云ふやうな御所論にも聽えましたので、現在の失業問題はさう云ふことでない、偶發的事實、戰爭に負けたと云ふ事實から大部分は起きて居るのだと云ふことを申します、それはなぜさう申しますかと云ふと、色々救濟方法を講ずる上に於て、政府の方針が其の線に沿ふと云ふことを申上げることが適當なりと思つて申上げたのであります
それから失業救濟計畫の大體を説明せよと云ふことでありましたけれども、是は申すまでもなく今日の失業問題は非常に遺憾な問題でありまして、尚ほ是から例の補償打切其の他の問題にも關聯しまして、事業の整理も行はれませうし、一層失業者が出て來ると云ふことを非常に心配して居る次第であります、之に對しましては、六十億の豫算を初めとしまして、尚ほ生活保護法に基くものも其の面に對する救濟に當つて行くと思ひますが、それをどう云ふ風に實施するかと云ふことに付きましては、成べく生産と──一石二鳥を狙つて生産と失業救濟とを一緒にやりたいと云ふ考へでは居りますが、と云うて生産の爲に餘り金が要つて、失業の勞銀を拂ふ方には金が向かぬと云ふことは宜しくない、どうしても失業救濟と云ふことが此の六十億の非常な眼目であると云ふことを注意して參りたい、又地域的の問題も十分考へます、それから是は政府全體に於てやる仕事でありますが、尚ほさう云ふ公共事業以外に色々な落ち零れの失業者が出來ると思ひます、特に都市中心に出來ると思ひますが、斯う云ふ部面に對して機動的の公共事業をやるとか、或は授産場、補導機關などに於て之を拾つて行くとか、色々それに應じた特別の方法を購じなくちやならぬと云ふことを只今考案して居る最中であります、それから失業手當をやる意思があるかと云ふ御尋ねでありますが、只今は失業手當の問題として考へる意思は持つて居りませぬ、又失業保險も間に合ひませぬが、大體に於て斯う云ふ急に來た事態でありますから、社會保障を完全に行ふと云ふことは出來ぬにしましても、出來るだけ其の線に沿うたことはやりたい、特に此の生活保護法などに於きまして給與をして行くのだと云ふことは、一種の失業手當とも關聯性を持つたものではないかと云ふ考へを持つて居るのでありまして、出來るだけ遺憾ないことを期して居ります
それから勞働行政の一元化に付きましては、是は本議場に於て申上げました通りに、今勞働省を作ることに具體的に進行して居ります、出來るだけ早い機會に致す積りで居ります
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=21
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022・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 松岡君の御質問に對しまして、私は其の中で生産「サボ」に關する件と、經營協議會に關する件に付きまして御答へをしたいと思ひます、生産「サボ」は好ましからざることでありますが、先般當席より、洵に其の認定に困つたことを實は告白致したいのでありまするが、其の後色々考へまして、まだ最後の確定案ではありませぬけれども、商工省の地方商工局毎に──、是は一つの案でありまするが、生産監査委員會と假に名を付けますれば、さう云つたものを設けまして、それには各統制團體或は勞働組合の人達、其の他の人の參加を願ひまして、さうして行政官廳よりの諮問があつた時とか、或は勞働組合より提訴のあつた場合、或は勞働委員會より要求のあつた場合に於きまして、其の監査委員會に依つて生産「サボ」を認定する、斯樣な構想の下に今研究を致して居るやうな譯であります、何れに致しましても、生産管理、生産「サボ」、共に敗戰日本の現状より見ますれば好ましからざることでありまして、雙方の協力に依りまして、斯かることのないやうに御願ひしたいのでありまするが、其の一つの工作として、決して是は唯一時を糊塗すると云ふ意味ではなくして、私は勞働組合の健全なる發達を望みまして、經營協議會は決して法制化しないで、寧ろ勞働組合の團體協約の條件として之を設置するが宜しい、斯樣に考へるものであります、殊に工場委員會或は勞務委員會等に形を決めないで、それぞれの經營の樣子に合ふやうな經營協議會を形作る、それは勞働委員會等に於きまして一つの「サンプル」を設けまして、さうしてそれぞれの經營に合ふやうにやつて行つたらどうかと斯樣に考へて、敢て法制化せぬ所は、即ち勞働組合の健全なる發達を希望しての考へでありまして、此の邊御酌取の上、決して政府は經營協議會を以て生産管理を抑へる一つの胡麻化しとして行くやうな無誠意のものでないと云ふことを御諒承ありたいと思ふ次第であります
〔國務大臣一松定吉君登壇」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=22
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023・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 松岡議員の御質問中、私に關係ある點を簡單に御答へ申上げます
勞働關係調整法案の第八條第二號には、郵便、電信又は電話の事業に關しますることが公益事業として規定せられて居ります、而して此の公益事業に關しましては色々なる條件が規定されて居りまするが、其の中の第三十七條には、公益事業に關して關係當事者が爭議行爲をなすのには、色々な條件を經て其の調停の申請をなした日、若しくは決議をなした日、若しくは決議に依つて請求をなされた日等から三十日を經過した後でなければ、勞働爭議をなすことの出來ないと云ふやうな色々な制限規定がありまするが、要しまするに是等の從業員諸君が勞働爭議をすると云ふことに關しては、松岡議員御指摘の如く、生活が出來ないが爲に其の生活を保護する立場から、斯う云ふやうな好ましからざる勞働爭議と云ふことをしなければならぬのである、願はくは斯くの如き行爲は之を未然に防ぐのみならず、どうかすれば左樣なことは絶對に出來ないことが理想であるのだ、此の御意見に付ては私は全然贊成であります、さう云ふやうな立場に是等の從業員諸君を置くと云ふことは、政府當路者と致しましては當然なすべき職責であると私は考へて居ります(拍手)故に是等の人々をして勞働爭議を起させないやうにする爲には、生活を保障してやつて、彼等が安んじて其の業務に從事することの出來るやうな待遇を致してやりさへすれば、斷じて斯樣なことは出來ませぬ(拍手)さうかと言ひまして、際限なく其の生活を保護すると云ふことの出來ないことは、又國政燮理の上に於てもそれぞれ際限があることでありますけれども、少くとも最低生活の保障は當然政府としてなすべきものであると、斯樣に考へて居ります、此の意味に於きまして、過般遞信從業員四十萬の諸君が是等の主張を致しまして、私に是が解決を迫つたのでありまするが、私は出來得べき限り是等從業員諸君の意を採入れまして、兎に角最低生活の保障の出來るだけの責任は本大臣として之を持たうと云ふことに於て、圓滿解決の曙光を見るに至つたのであります(拍手)故に將來とても此の方針に依つて私は是等の從業員證君に臨みまして、互ひに大臣であらうと、從業員であらうと、打つて一丸となつて、遞信行政の爲に渾身の努力を拂ひたいと考へて居ります、(拍手)さう云ふことを致すに付きましては、必ずしも勞働關係調整法に依らなくても、此の法文に規定されて居りまする十六條、若しくは二十八條、若しくは三十五條等の規定に依りまして、所謂團體協約と云ふやうな規定に依つて、若しくは經營協議會と云ふやうなものに依つて、雙方の間にお互ひに意見を吐露して、さうして出來得べき限り圓滿に解決する方法に依つて斯くの如きを未然に防ぎたいと、斯樣に考へて居ります、之を以て答辯と致します(拍手)
〔政府委員上塚司君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=23
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024・上塚司
○政府委員(上塚司君) 松岡君の御質問中、勤勞所得税に付きまして御答へを申上げます
我が國民生活の現状を見ますると、勤勞に依りまして生活を營んで居る者の數は、我が國民層中の大部分を占めて居るのでございます、又勤勞所得税と云ふ方面から見ますれば、此の勤勞所得税は、我が國の租税體系の根幹をなして居りまする所の所得税の大半を持つて居るものであります、唯其の性質上、勤勞所得は、不動産所得、配當利子所得のやうな純然たる資産所得、又は資産と勤勞との共同所得でありまする所の事業所得等と同一の率を以て課税すると云ふことは適當でないと考へまするので、既に今囘の税制改革に當りましても、勤勞所得税は分類所得税中の最も低率であります百分の二十を賦課すると云ふことに相成つて居るのであります、特に去る三月、新物價體系の設定、其の他經濟諸政策の遂行に即應致しまして、基礎控除額を年六百圓から二千四百圓に引上げ、又扶養家族控除を一人一年二十四圓から七十二圓に引上げて居ります状態でありまして、財政收支の現状及び國民經濟の實情から考へますれば、現在の所此の程度の課税は已むを得ざる所と考へまして(拍手「絶對反對だ」と呼ぶ者あり)此の勤勞所得税を廢止致しますることは適當でないと考へます
〔「明答々々」「ノーノー」「進行進行」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=24
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025・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 木下榮君
〔「答辯が殘つて居るぢやないか」「進行せよ」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=25
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026・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 松岡君に申します──松岡君に申します…
〔發言する者多く議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=26
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027・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に願ひます──靜肅に願ひます、松岡君が──松岡君が──靜肅に願ひます──靜肅に願ひます──松岡君が──松岡君が再質問があるさうでありますから──靜肅に──松岡君が再質問があるさうでありますから、木下君の發言の許可を取消します、松岡君──松岡君──重ねて申上げます、松岡君が再質問があるさうでありますから、木下君の發言の許可を取消します(拍手)──松岡駒吉君
〔松岡駒吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=27
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028・松岡駒吉
○松岡駒吉君 勞働省の設置の問題に關しまして、何等御答へなきことは甚だ遺憾であります、尚ほ其の他の問題に關聯致しまして、其の答辯は極めて曖昧な所がありまして、多々不滿の點もあるのでありますが、委員會に於て十分に其の疑義を闡明する機會を必ず與へらることと信じまして、私の質問は之を以て打切ることと致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=28
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029・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 木下榮君
〔發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=29
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030・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に願ひます
〔木下榮君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=30
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031・木下榮
○木下榮君 私は協同民主黨を代表致しまして、本案に對し、又之に關聯致しまして、平和産業の維持、此の根本問題に關し、所轄大臣の所信を御伺ひしたいのであります
本案は厚生大臣の御説明の通り、又本案の第一條を見ましても、勞働組合法と相俟つて、産業の平和を維持し、以て經濟の興隆に寄與せんとすることを目的として居ります、本案の實施に依りまして果して經濟興隆に寄與出來るか、厚生大臣は之に對して固い信念を持つて居るか、先づ第一に其の根本に矛盾があるのではないか、調整法と云ふものは、當事者相互に其の利害が均霑しなければならないのでありますが、此の法案に依りますと、或は勞働者に對して爭議權の抑壓となるのではないか、斯くの如く感じますが、厚生大臣の所信を聽きたいと思ひます、元來勞働法案に於きまして、勞働組合の性質を明かにし、團體交渉權を與へ、爭議權を認めて居ります、さうして其の第三章に於きましては、勞働協約の規定があり、又第四章に於て勞働審議會の規定があります、是等の規定のみにては産業の平和が維持出來ませぬから、今囘此の法案を提出されたものと察せられまするが、勞働保護法案の如きものを提出せずに置いて、本案を先に提出し、而も一方に於ては爭議の因となるべき規定を定め、又一方に於ては本案に依つて爭議を解決し、之を調整せんとするのは、其の根本に矛盾があるのではないか、之を第一に御聽きしたいのであります
又第二には勞働團體に對し經營參加を認めるか、又之を經營に參加せしめて、さうして、特殊の權利を與へよ、斯う云ふ問題であります、元來此の勞働問題は爭議又は鬪爭のみに依つて解決するものではありませぬ、爭議の根本を探求しまして、其の原因を芟除し、或は之を是正して、さうして之を防ぎ、又延いて之を根絶せしめなければならぬと思ふのであります、勞働組合に於きましては…
〔「不眞面目だぞ」「だらだらするな」と呼び其の他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=31
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032・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=32
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033・木下榮
○木下榮君(續) 勞資問題の解決は、其の爭議の由て來る所の根本を探求して之を芟除しなければならないことは只今申上げた通りでありますが、只今の段階に於きましては、勞資は形式に於て對立致しましても、其の實質に於て一體化するの要があるのであります、即ち第一には其の目的を一にし、第二には其の利害を一にし、即ち利害を共通せしめるのであります、第三には其の責任を一にしなければなりませぬ、是は均等なる責任を負ふのであります、斯くして勞働組合又は勞働者をして事業の經營に參加せしめ、而して其の經營と申しましても、普通に見る所の勞働協約、斯くの如き枝葉末節の參加ではありませぬ、眞に其の事業の本質に實質的に參加せしめるのであります、之に依りまして勞働組合が株を持つ、或は個人が株を持つ、さうして實際的經營に參加するのであります、さうして其の事業の全貌が勞働組合或は全部の勞働者に知悉されまして、初めて其の事業が如何なるものであるか、國家的に社會的に如何なる地歩を占むるものであるか、又勞働者自身の勞働が如何に神聖であるか、如何に貴重であるか、斯う云ふことを自然と自得するでありませう、是に於て勞働者は自己の使命の貴重なる、又貴き所以を自得致しまして、一種の矜恃を持ち、歡喜を持つて其の勞務に奉仕することとなるのであります、斯くすれば自然に生産意欲は昴揚されまして、其の事業の興隆を見ることは明かであります、此の事業の業績に正比例致しまして、勞働者の地位は向上致します、又勞資共に其の幸福を享受することが出來るのであります、私の經營參加は、斯くすることに依つて之を實現しようと云ふ意圖であります
偖て現行の商法では、營利を目的とする所の法人の此の規定が著しく資本家に偏重して居ります、一株の株を持つて居る所の株主に對しましても、其の事業の報告を提示し、損益計算書を提示し、其の利益の處分までも承認を得なければならぬことになつて居ります、之に反し勞働者は其の全精力を提供して其の事業に參與して居るに拘らず、單に勞力の代償として一種の俸給を得られるのみであります、甚だ不合理を極めて居ります、政府は此の法規を即時改正して、株主に對すると同樣に、勞働者に對して株主同樣の權利を與へるの意思があるか否や、之を質問したいのであります、又勞働問題は單に爭議鬪爭、それ等に依つてのみ解決するものではありませぬ、又勞働問題は物質的に依つてのみ解決するものではありませぬ、勞働問題の調整は物質以外に精神の結合が必要であります、之に關して政府の所信を問ひたいと思ひます
元來外國はいざ知らず、日本に於ては少くとも勞働問題は、此の勞資が眞に精神的に結合しなければならぬのであります、此の精神問題を離れて之を解決せんとすることは、誤れるも甚だしいものであります、若し極端に其の例を以てしますれば、勞資は恰も夫婦の如き關係を持つべきものと信ずるのであります、其の間に何等の隔意なく、又一片の祕密があつてはなりませぬ、眞に相愛互助の精神に依つて結ばれなければならないものと思ひます、二宮尊徳翁は、貧富相和して財寳生ずと申して居ります、洵に至言であります、私は、勞資相和して生産生ず、斯く信ずるものであります、勿論此の勞資の間には、爲にせんが爲の不純なる第三者の介在などは絶對に排撃しなければならぬものと思ひます、斯くの如く勞資は精神的結合を必要とするに拘らず、資本家の中には、未だ封建的思想の夢覺めず、自己の信頼すべき從業員を主從の關係に置いて、搾取と利潤追求に汲々たるものがあるのは遺憾であります、又多數の勞働者の中には、漫然資本家を仇敵視し、之を排撃する等の例あるは嚴に愼まなければならぬと思ひます、是が監督指導の任を持つて居る政府は、宜しく善導しなければならぬと思ひますが、之に對する當局の所信を伺ひたいのであります
併し此の勞働問題の根本的解決は、何と申しましても我々の主張する所の協同組合原理、即ち協同組合の組織に依らずんば完全に達成することは出來ないと信ずるものであります、即ち資本家もなく勞働者もなく、全く一人一票の表決權を有する、眞に民主主義に徹した、而も利潤に墮せず、又公益を目的と致しまする所の協同組合主義に依つて、欣然各界を通じて一體となり、鬪爭なき世界、即ち平和日本を建設すべきであると確信するものであります、今や我が日本は、憲法改正に依りまして自ら戰爭を抛棄し、世界の平和に貢獻せんとして居る時であります、國内に於ける鬪爭は斷じて許されないのであります、此の共同主義に依つて經濟界、産業界諸般の革新を行ひ、以て眞に平和日本を建設すべきであると確信しますが、之に對して政府の所信を御伺ひする次第であります(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=33
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034・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の御質問に對して御答へ致します、第一の點は、此の提案に付て政府の政策に矛盾があるがと云ふやうな御議論のやうでございましたが、斷じて矛盾はありませぬ
第二の點は、勞働者をして經營に參加せしむべし、特に協同組合の考へを以てやらなくてはならぬと考へる、それに對する政府の所信如何と云ふ風に解釋致しました、それに付て御答へ致しまするが、協同組合の理論を以て勞資の問題を解決して行かねばならぬと云ふのは非常に結構な考へと思つて居ります、殊に「マス・プロ」は非常に少くなりまして、是から中小工業、或は農村工業を日本産業の基體となして行かねばならぬと云ふ時には、此の問題は非常な深い注意を以て處理して行かなくてはならぬ、大いに此の線に沿うてやつて行かなくてはならぬ問題だと思ひますけれども、現實の問題はもつと急迫した色々な問題がありまして、將來の目標として斯う云ふことも理想論の一つとして其の線に沿うてやつて行かねばならぬと云ふ考へを持つて居ります、隨て勞働者に利潤をどう與へるかと云ふ問題も、此の協同組合の理論が段々實行されるに從つて、さう云ふ問題は自然的に解決を見る問題だと云ふ風に考へて居ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=34
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035・木下榮
○木下榮君 私の質問は之を以て打切ります
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=35
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036・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の質疑は延期し、次會に之を繼續することとし、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=36
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037・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=37
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038・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後四時四十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X01619460713&spkNum=38
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