1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年七月二十五日(木曜日)
午後一時二十三分開議
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議事日程 第十九號
昭和二十一年七月二十五日
午後一時開議
第一 改定豫算に關する法律案(政府提出) 第一讀會
一 國務大臣の演説
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである
昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算案 (以上七月二十四日提出)
一、去二十三日貴族院から受領した政府提出案は次の通りである
罹災都市借地借家臨時處理法案
一、去二十三日貴族院に於て本院から送付の次の議案に對し承諾することを議決した旨、同院から通牒を受領した
隱匿物資等緊急措置令(承諾を求める件)
一、議員から提出された議案は次の通りである
文教再建に關する決議案
提出者
大野伴睦君 大久保留次郎君
山崎猛君 北れい吉君
高津正道君 田中萬逸君
成島勇君 井上知治君
二階堂進君 井上徳命君
松原一彦君 笹森順造君
伊藤實雄君 石黒武重君
西尾末廣君 東井三代次君
中西伊之助君 竹田儀一君
教職員生活安定に關する建議案
提出者
森崎了三君 細田忠治郎君
小島徹三君 山本勝市君
上林山榮吉君
建設省設置に關する建議案
提出者
逢澤寛君 村上勇君
小柳富太郎君 青木泰助君
佐藤乕次郎君 松浦薫君
小西寅松君 太田秋之助君
疋田敏男君 木村義雄君
山崎岩男君 關谷勝利君
塚田十一郎君 赤澤正道君
仲川房次郎君 地崎宇三郎君
(以上七月二十三日提出)
緊急解決を要する乳幼兒及び婦人問題の對策に關する建議案
提出者
竹内茂代君 和崎ハル君
松尾トシ君 近藤鶴代君
戸叶里子君
漁業法改正に關する建議案
提出者 澁谷昇次君
水政省(又は電氣省)設置に關する建議案
提出者 武藤運十郎君
水産省設置に關する建議案
提出者 澁谷昇次君
銅山川分水工事促進に關する建議案
提出者
林田哲雄君 安平鹿一君
桂作藏君 藥師神岩太郎君
馬越晃君 關谷勝利君
高橋英吉君 稻本早苗君
災害土木費國庫高率補助復活に關する建議案
提出者
大野伴睦君 北れい吉君
稻田直道君 田中萬逸君
葉梨新五郎君 森幸太郎君
松本淳三君 八坂善一郎君
竹田儀一君 村上勇君
原侑君 石井光次郎君
細田忠治郎君 長谷川保君
小池新太郎君 古賀喜太郎君
山田善三君 林田哲雄君
松澤兼人君 井上卓一君
森崎了三君 馬越晃君
藥師神岩太郎君 飯國壯三郎君
佃良一君 厚東常吉君
山下榮二君 綿貫佐民君
佐伯忠義君 寺尾豊君
田中重彌君 井伊誠一君
(以上七月二十四日提出)
一、昨二十四日議長に於て撤囘を許可した議案は次の通りである
馬券税法中改正法律案
提出者
小笠原八十美君 野溝勝君
麻生正藏君 佐伯忠義君
瀧澤濱吉君
一、去二十三日提出された緊急質問は次の通りである
國内治安維持に關する緊急質問
提出者
大野伴睦君 田中萬逸君
一、去二十三日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
四 山下ツ子君
五四 武藤嘉一君
一、去二十三日議長に於て次の通り常任委員の許可があつた
第四部選出懲罰委員 木村チヨ君
第九部選出建議委員 山下ツ子君
一、去二十三日次の通り特別委員の異動があつた
帝國憲法改正案(政府提出)委員
辭任 藤田榮君 補闕 大谷潤瑩君
辭任 田中伊三次君 補闕 石黒武重君
辭任 安部俊吾君 補闕 福田繁芳君
東京都制の一部を改正する法律案
(政府提出)外三件委員
辭任 細迫兼光君 補闕 磯田正則君
勞働關係調整法案(政府提出)委員
辭任 野本品吉君 補闕 藤田榮君
辭任 磯田正則君 補闕 石田一松君
生活保護法案(政府提出)委員
辭任 松谷天光光君 補闕 川野芳滿君
一、昨二十四日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
五一 中田榮太郎君
七五 大島多藏君
一、昨二十四日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第四部選出
懲罰委員 中野四郎君(木村チヨ君補闕)
第九部選出
建議委員 江川爲信君(山下ツ子君補闕)
一、昨二十四日次の通り特別委員の異動があつた
生活保護法案(政府提出)委員
辭任 紅露みつ君 補闕 松谷天光光君
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きます、昨二十四日吉田内閣總理大臣より、八月二十八日まで三十日間會期延長を命ぜらるる旨の詔書が傳達せられました、右御報告申上げます
日程第一、改定豫算に關する法律案の第一讀會を開きます──石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=1
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002・会議録情報2
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第一 改定豫算に關する法律案(政府提出) 第一讀會
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改定豫算に關する法律案
昭和二十一年度においては、豫算を適實簡明ならしめるため、政府は、施行豫算から不用とする費額を減じ、又必要とする費額をこれに加へ、その他昭和二十一年勅令第二百四十二號に規定する經費をこれに統合する等必要な調整を施して、改定豫算を今期の帝國議會に提出することができる。
改定豫算の成立前に、施行豫算の定額から支出した金額、豫備金支出に基いて支出した金額及び昭和二十一年勅令第二百四十二號に基いて支出した金額は、これを、改定豫算の定めるところによつて、改定豫算の定額から支出したものとみなす。
改定豫算には、會計法第九條の豫備金の外に、豫備費として經濟安定費を設けることができる。
經濟安定費は經濟安定に關する豫算の不足を補ひ又は豫算外に生じた經濟安定に關する費用に充てるものとする。
經濟安定費を以て支辨したものは、年度經過後の常會において、帝國議會に提出してその承諾を求めなければならない。
附則
第一項及び第二項の施行豫算には、改定豫算の成立前に成立した昭和二十一年度追加豫算があるときは、これを含むものとする。
昭和二十一年度における豫算超過又は豫算外の支出にかかるものは、改定豫算の提出に伴つて、會計法第十條の規定にかかはらず、今期の帝國議會に提出して、その承諾を求めなければならない。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=2
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003・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題となりました改訂豫算に關する法律案提出の理由を御説明申上げます
御承知の通り昭和二十一年度豫算は、昨年十二月衆議院が解散になりまして、其の後總選擧が豫定より遲延致した等の爲に、遂に年度初めまでに成立するに至りませぬでした、爲に政府は憲法第七十一條に依りまして、前年度豫算、即ち昭和二十年度豫算を施行致したのでありますが、申すまでもなく昭和二十年度豫算は戰爭の遂行を前提として編成されました豫算でありまして、事態が全く一變致しました今日、之を其の儘昭和二十一年度豫算として踏襲することは許されませぬ、又斯かる場合に、從來行はれました所に依れば、實行豫算を編成し、施行豫算にて支辨し難き部分は追加豫算の協贊を願ふのでありますが、斯くては豫算の數字が徒らに厖大と相成りまして、本年度財政の全貌を現はすことが出來兼ねます、又豫算の遂行の上にも種々不便がございますのみならず、本年度の豫算は新生日本第一年度の豫算でございまして、意義も殊に深い次第でありますので、政府は此の施行豫算の定額から、昭和二十一年度に於きまして支出する必要のない費額、又は支出するのを適當としない費額を減じますると同時に、昭和二十一年度に於て緊急の必要であつて施行豫算では不足致しまする金額、又は施行豫算では處理の出來ませぬ費額は之を施行豫算に加へ、更に昭和二十一年勅令第二百四十二號に規定する經費をも之に統合致します等必要な調整を施しまして、實質的な昭和二十一年度豫算を編成し、之を改定豫算と名付けまして、以て帝國議會の協贊を經るやうに致したいのであります、本法律案は、即ち以上の趣旨に依りまして改定豫算を帝國議會に提出することを得る法律でございます
尚ほ此の改定豫算には、會計法第九條に規定する第一豫備金及び第二豫備金の外に、新しい種類の豫備費と致しまして、經濟安定費を設けることが出來るやうに致したいのであります、此の經濟安定費は、經濟安定に關する豫算の不足を補ひ、又は豫算外に生じた經濟安定に關する費用に充てんとするものでございます、以上を以ちまして此の法律案提出の理由を御説明申上げました、何卒御審議の上速かに御協贊を賜はらんことを御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=3
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004・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=4
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005・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は政府提出會計法戰時特例廢止等に關する法律案委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=5
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006・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
(「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=6
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007・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます仍て動議の如く決しました──大藏大臣より財政に關する演説の爲め發言を求められて居ります──―石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=7
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008・会議録情報3
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一 國務大臣の演説
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=8
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009・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 昭和二十一年度一般會計歳入歳出豫算の御審議を煩はすに當りまして、茲に其の豫算の性格の大要を申述べ、併せて政府が只今考へて居ります財政經濟政策の大體の方針を明かにして御協贊を仰ぎたいのであります
先程も申上げましたやうに、昭和二十一年度の總豫算は遂に成立致しませなんだ關係上、今囘改定豫算を編成し、之を御審議を煩はす次第でございます、昭和二十一年度の一般會計改定豫算の歳出は五百六十億八千八百餘萬圓、之に對する普通歳入は三百五億百餘萬圓、差引歳入不足二百五十五億八千七百餘萬圓に上るのであります、但し以上の金額の中には、既に本年四月乃至七月までに施行豫算、豫備金支出、緊急財政處分及び先般の追加豫算に依つて支辨せらるべき歳出百十三億四千百餘萬圓、歳入四十七億六千三百餘萬圓を含んで居ります、隨て本豫算の御協贊を願ひまして今後實際に行はるる歳入及び歳出は、以上四月乃至七月までの金額を差引きました殘額でございます、斯樣に本年度の改定豫算は既に過ぎ去りましたものを含んで居りますが、兎に角前年度の歳出は以上に申上げました如く五百六十億八千八百餘萬圓の巨額に上る次第でありまして、今之を總括して費目別に申上げますると、民生安定費六十三億ニ千四百萬圓、經濟再建費百億四千四百萬圓、教育文化費十二億六千三百萬圓、同胞引揚費七十七億七千二百萬圓、終戰處理費百九十億圓、此の終戰處理費は進駐軍に要する所の經費でございます、特別住宅建設資材費十二億圓、是は朝鮮に進駐軍用の住宅等を建設する資材を送る其の資材費でございます、地方分與税分與金二十五億五千九百萬圓、國債費五十億四千八百萬圓、國庫豫備金八億圓、其の外二十億七千四百萬圓と相成ります、即ち其の割合の最も大きいものは終戰處理費でございまして、之に只今申上げました同じ性質と認めらるる特別住宅建設資材費等を加へますと、其の金額は實に二百二億圓の多額に上りまして、本年度改定豫算の總歳出の約三割六分に達するのでございます
次に大いなるものは經濟再建費でありまして、總歳出の約一割八分に上ります、其の他總歳出に對する割合は同胞引揚費が約一割四分、民生安定費が一割一分餘、國債費九分、地方分與税分與金四分六厘、教育文化費二分三厘、國庫豫備金一分四厘、其の外三分七厘と云ふ割合に相成ります、即ち以上の數宇に依つて察せられまする如く、本年度の豫算は全く終戰後の變態に基く變態豫算であります、それは例へば此の約五百六十億圓の歳出の中で、大體に於て本年度限りの支出と認められますものを擧げますると、約其の半分の二百九十七億圓に上ることでも分るのでありまして、本年度限りの歳出と認められますものの主なるものを擧げますと、同胞引揚費七十七億七千二百萬圓、戰災保護費四億三千四百萬圓、價格調整補給金四十三億ニ千七百萬圓、船舶運營會補助九億四千二百萬圓、終戰處理費百四十七億三千四百萬圓、朝鮮住宅建設資材費十二億圓、其の外三億三百萬圓と云ふことに相成ります、斯樣な大きな財政支出が特に歳入不足を伴ひまして、累積的に繼續致しまするならば、其の結果は申すまでもなく甚だ憂慮しなければならない譯であります、併し本年度の支出は、只今申上げました如く、其の建前に於て本年度限りと認めらるるものが甚だ多いのであります、固より今日の我が國は特殊事態の下にありますから、今後尚ほ特殊の支出を要する場合があるものと覺悟を致さなければなりませぬ、又本年度に於きましても若干の追加豫算の御協贊を願はなければならない豫定に相成つて居ります、併し以上申上げました本年度豫算の性格から判斷致しまして、來年度以後に於ては逐次歳出を減少することが出來、遠からず將來收支の均衡を囘復し得ることを我々は確信して疑はないのであります
更に本年度の一般會計改定豫算を他の側面から觀察致しますると、其の運用に依りまして失業對策費として役立つであらうと思はれるものが二百二十二億圓を算しまして、總歳出の三分の一以上に當るのでございます、即ち其の主なるものを申上げますと、援護其の他民生施設費三十億圓、就業對策費九千三百萬圓、公共事業費六十二億三千五百萬圓、終戰處理費の中で勞務費及び施設費百二十九億二千七百萬圓と云ふことに相成ります、但し此の中には前にも申上げました如く、既に四月から七月までの間に支出を豫定されて居りましたものを含んで居るのでありますから、今後新たに是だけの失業對策費が支辨致さるる譯ではございませぬ、併し其の中の大いなる部分は今後支出せられるものであります、失業對策に付きましては後に更に申上げたいと存じますが、自發的でない失業者が國内に存在し遊休生産施設及び資材が存在する現状は、一刻も早く之を解消致さなければならないのであります、即ち凡ゆる現存生産諸要素の完全稼働、即ち「フルフルエンプロイメント」の實現こそ、我々が目掛けねばならぬ財政經濟政策の最大の目標と考へて居る次第であります、而して本年度の改定豫算、は固より未だ理想的とは申上げ兼ねますが、聊か其の目標に向つて邁進せんとするものであることを御諒承願ひたいのであります
次に歳入に付て申上げます、只今まで申上げました如く、歳出は著しく巨額に上りますので、我々は之に對して出來る限り歳入の増加を圖らねばなりませぬ、我々は此の目的の下に別途御協贊を仰ぎます如く、終戰後の現實に即して税制に若干の改正を施すと共に、増税を行ひたいのであります、又先般煙草の値上を實施致しました、是等に依つて本年度改定豫算の歳入總計は三百五億百餘萬圓を計上することが出來たのであります、併しながら此の努力を以て致しましても、遺憾ながら尚ほ二百五十五億八千七百餘萬圓と云ふ大いなる歳入の不足を生ずるのであります、のみならず今後更に必要とする追加豫算を加へますと、恐らく其の不足は三百億圓に達するであらうと考へられます、是は今後實行致すべき財産税等の收入を以て支辨する計畫であります、此のやうに財政に不足を生じ、之を財産税等の收入を以て支辨する結果はどうなるか、財産税は其の名の如く國民の財産を徴收するのでありまして、國民の現在の所得に課税するのではありませぬ、國民の現在の所得に課税を致し、之を國家が消費致します場合には、それだけ課税された國民の消費を減少致しますから、國民經濟全體と致しましては消費に増減のない勘定でございます、隨て茲に最も恐るべき財政上からの「インフレーション」を發生する懸念はないのであります、然るに財産税で徴收致します收入を國家が消費する場合の影響は、斯樣に單純ではないと考へられます、例へば財産税が物に依つて納付される場合を考へますに、國家が之を消費する爲には、此の物を金に換へなければなりませぬ、其の場合若し其の物を國家が民間に賣却致しまして、而して之を買受ける國民が、其の代金を現在の所得を以て支拂つて呉れますならば、それは間接に國民所得に課税する結果と相成りますから、「インフレ」の懸念はないのであります、併しながら若し其の買受者が、さもなければ使用しなかつたであらう所の銀行預金を引出して買受けますとか、或は又國家が、收納致した物を見返りにして通貨を發行して使用するとか致しますれば、是は明かに通貨増發を來しまして、「インフレ」の原因を成すのであります、又例へば國民が今日我が國に存する封鎖預金で財産税を納め、さうして之を國家が消費すると致しますならば、それは詰り大量の封鎖預金を解除することに相成りますからして、是れ亦「インフレ」の原因を成す懸念があるのでございます、斯樣にして財産税收入を財源として歳出を賄ひますことは、其の全部ではありませぬけれども、恐らく其の少からざる部分は赤字公債を發行し、之を日本銀行に引受けさせて國家が消費するのと、經濟的には等しい結果を生ずるのであります、率直に申しますと、我々は本年度の豫算に斯くの如き危險が伴ふことを強く注意致しまして、隨て之に對して善處致したいと考へて居る次第であります、併し以上は一應の解釋でございまして、國家財政の目的、殊に今日の我が國の如き場合の財政は、何よりも先づ第一に國民に業を與へ、産業を復興し、所謂「フルフルエンプロイメント」を目指して國民經濟を推進することにあると考へます、如何に財政收支は均衡を示しましても、國内に失業者が溢れ、多くの生産要素が遊休状態に置かれる有樣でありましては、是は眞の意味の健全財政とは決して稱することが出來ないと考へるのであります、終戰後の我が經濟は甚だしき「インフレ」に襲はれて居るとは一般の觀察であります、發行紙幣は著しく増加し、物價、賃金等の騰貴を示しました現象を取つて申せば、確かに「インフレ」に相違ありませぬ、併し我々が從來漠然と「インフレ」と稱して居りました現象は、曾て「ケインズ」も指摘致しました如く、一つの明かな意味があると考へるのであります、それは或る社會の經濟が既に「フル・エンプロイメント」の状態を示し、凡ゆる生産要素、即ち人も設備も既に「フル」に稼動して居る場合に於て、尚ほ其の上に購買力が注入をされ、爲に物價の騰貴を生ずる場合でございます、斯かる場合の購買力の増加、より正確に申せば所謂有效需要の増加は、百「パーセント」物價の騰貴となつて現はれます、所謂惡性「インフレ」は此の段階に於て生ずる現象であると考へるのでありまして、戰時中の我が國には、確かに此の意味の「インフレ」があつたと考へます、所が昨年の終戰以來の我が國は果して「フル・エンプロイメント」の状態にあつたかと申せば、それは左樣には申されませぬ、それどころか、現に我々が見ます如く、多くの失業者が發生し、表面就業を致して居る人達も十分の生産活動をなすことが出來ませぬで、生産設備の甚だ多くの部分は遊休化して居るのであります、是は斷じて完全稼働ではなく、逆に甚だしく「アンダー・エンプロイメント」であると思はれるのであります、斯かる状態の下に於ての通貨膨脹と物價騰貴とは、假令それが「インフレ」であると致しましても、普通の意味の「インフレ」ではないと考へられるのであります、終戰後の我が國の所謂「インフレ」は以上の次第でありまして、實は戰爭及び敗戰に基いて生じました經濟秩序の破壞と虚脱状態、而して是より生じた飢饉現象乃至恐慌現象と見るべきであらうと考へます、食糧を初め物資は著しく不足しました、生産は停頓しました、而も之を囘復する智慮と勇氣とが不幸にして國民の間に一時失はれました、茲に即ち飢饉物價を發生したのであります、而して此の飢饉物價及び其の他全般の經濟不安から、預金の引出、通貨の退藏等等の現象が現はれまして、終戰後の通貨膨張及び物價騰貴を發生した原因は、細かく分析致しますれば、固より多くのことが擧げられなければなりませぬけれども、私は其の基調を成して居るものは、以上に申上げた所にあると信ずるのであります
世の中には第一次世界大戰後「ドイツ」に起りました「インフレ」を想ひ起して、之と今日の我が國の通貨膨脹とを比較して云々する方もありますが、私は此の兩者は全然其の性質を異にするものと考へて居るのであります、斯かる今日の我が國の所謂「インフレ」は、以上の次第でありますから、通貨收縮即ち「デフレ」政策に依つて處理し得るものでは斷じてないと信じます(「ノーノー」拍手)飢饉物價は物の生産と出廻りの増加に依つて救治し得るのであります(「ノーノー」拍手)恐慌は人心の不安を一掃してのみ鎭靜し得るのであります、若し此の際「デフレ」政策を執りますれば、物價の水準は引下げ得るでありませう、併し恐らく生産は一層縮小し、國民所得は減じまして、國民の生活難は寧ろ益益激しくなるのではないかと思ふのであります(拍手)人心の不安は、斯樣なことであつては固より之を拂ひ去ることは出來ないと考へます、國に失業者があり、遊休生産要素の存する場合の財政の第一要義は、是等の遊休生産要素を動員し、是等に生産活動を再開せしめることにあると考へます(拍手)此の目的を遂行する爲ならば、假令財政に赤字を生じ、爲に通貨の増發を來しても何等差支へはない(「ひやひや」拍手)それどころか、却て是こそ眞の意味の健全財政であると信じます(拍手)而して是は今日の經濟學説も亦認める所と私は考へるのであります、昭和二十一年度の改定豫算は、先程も申上げましたやうに、未だ決して理想的なものではありませぬが、以上の意味に於て正に健全財政の線に沿へるものと確信する次第であります(拍手)勿論斯く言うても今日の我が國の状態は、單に購買力を經濟界に注入することのみに依つて直ちに經濟活動を増進し得るが如き簡單なものではありませぬ、終戰後多くの企業は收支償はず、生産は停頓、減少し、甚だ憂ふべき状態を示して居りますが、それは唯普通の景氣循環の場合の不景氣現象ではありませぬ、前にも一言致しました如く、戰爭及び敗戰に依つて生じたる破壞と虚脱状況に基いて起つた現象であります、隨て我々は茲に單なる不景氣を克服するのとは異つた政策を遂行する必要があると信じます
其の第一は先づ以て終戰後の現實に即應し、且つ平和日本建設の方途に合致しましたる整理を經濟界に施し、經濟再建の基盤を確實にし、經濟界の進路を明朗にし、所謂虚脱状態から脱却することが必要であると考へます(拍手)我々は此の觀點から、終戰後の懸案であります所の補償問題等を速かに且つ合理的に處理し、又金融緊急措置令等に依つて一時已むを得ず採用致しましたる封鎖預金等の制度を、出來る限り早い機會に撤廢致したいのであります(拍手)此の方策は目下政府に於て愼重に練つて居ります、前内閣以來の計畫でありました財産税等も、亦是等の諸措置と關聯致しまして適切の修正を施し、國民各自がそれぞれ其の分に應じて新生日本の經濟再建に寄與する途を開きたいと考へて居る次第であります(拍手)我々は日本の前途を決して悲觀致しませぬ、眞に我々は民主主義と平和主義とに徹底し、協力一致奮勵致しますならば、希望は前途に充ち滿ちて居ると考へます、併し何せよ八年に亙る戰爭に依りまして國力を極度に消耗し、加ふるに敗戰に依り秩序ある平和産業への轉換を一時不可能に陷れました、是等が國民經濟に與へた損失は莫大であります、經濟界の整理とは、言葉を換へて申せば此の損失を率直に承認し、之を國民經濟の資産表から切捨てることであります(拍手)勿論此のことは口で申すのは甚だ容易いのでありますが、實行には非常な苦難を伴ふことを我々は覺悟致さねばなりませぬ、併し此の整理は成行きに任せて置きましても、何時かは必ず行はなければならぬ所のことであります、然るに之を成行きに任せて置きますことは、整理の期間を長引かせるのみならず、秩序ある整理を不可能にし、好ましからぬ經濟上の波瀾を繰返し、此の經過に於て更に損失を累加する危險があると考へます、故に政府は此の際忍び難きを忍び、斷乎として以上の整理を敢行し、以て經濟再建の時期を促進致したいと考へて居ります(拍手)併し經濟界の整理はどんな方法を以て致しましても、必然「デフレーション」的傾向を伴ひます、而して今や我が國の經濟が是非とも整理過程に入らなければならないことは、假令國家が茲に何等かの積極的處置を執りませぬでも、必然免れない所であります、我々は茲に我が國の今日の所謂「インフレ」乃至物價騰貴は、好むと好まざるとに拘らず「デフレ」に轉ずる時期に近付きつつあると考へるのであります、併し「デフレ」に轉ずればそれで問題は解決するか、決して是は解決致しませぬ、前に述べました如く、今日の我が國の問題は、どうして物資を増産し、飢餓現象を解消し、經濟の前途の見透しを明かにして人心を安定するかにあります、我々が經濟界の速かな整理を求めるのも此の目的を達する爲めでありますが、それは謂はば消極的政策であります、我々は更に積極的に是等の目的を達成する手段を講ずる必要があると考へます
此の積極政策の一つは、樞軸産業に對する特殊の促進策でございます、其の中、既に政府が其の計畫に著手致して居ります其の一つは、石炭業に對するそれでございます、今日石炭の強力なる増産を行ふことは、凡ゆる産業の復興を促す第一の緊要事であると考へますが、政府は是が爲め今や劃期的な方策を講ぜんと致して居ります、我々は是が爲め必要であるならば、石炭業の過去の債務を整理し、且つ將來の收支の均衡を確保する爲に生産者價格の大幅の値上をも辭せない積りであります、但し消費者の價格を此の際動かしますことは、他の多くの物資の價格に影響を致すのみならず、それ等の價格の改訂が行はれるまで物資の出廻りを阻碍する危險がありますから、是は姑らく避けまして、代りに思切つた價格調整補給金を支出することに致します、但し斯樣な措置を行ひます爲には、炭礦の經營を凡ゆる側面に亙つて合理化し、必ず増産の行はれることの保證がなければなりませぬ、假令最初の生産價者格は相當に高く定めましても増産さへ行はれるならば、それに從つて生産費は追々に下ると思ひます、隨て價格も亦下る筈であります、故に我々は増産の保證さへ炭礦が確實に與えて呉れますならば、合理的な價格の値上に對して之を値切ることは致さない積りであります、其の代り全國の炭礦業者及び石炭の生産に關係する總ての人には、強く責任を持つて貰はなければなりませぬ、増産をする筈であつたが、他の事情が斯う變化したからなどと云ふ申譯は、眞に不可抗力に依る場合の外は許さない積りであります、言ふまでもなく、それには炭礦の經營者のみでなく、又總ての從業者諸君の固き協力を必要と致します、我々は斯うした決意の下に、幸ひに石炭増産が明かな目途を示すに至りますならば、全國産業の立直りは茲に確實な緒を開き、所謂「インフレ」の惡循環も必ず斷絶し得ると考へます
以上は石炭を一例として申述べたのでありますが、其の他食糧に付きましても、肥料に付きましても、此の際執るべき策は大體之と同樣の線に沿ふべきものであると考へるのであります、幸ひにして只今の所、本年の天候は頗る良好でありまして、今秋の豐作を思はしめるものがございます、米國、「カナダ」等の小麥も亦甚だ豐作であると傳へられて居ります、我々は、斯樣にして憂へられた食糧危機も内外を通じて打開せられる時期が近づいて居るのではないかと喜ぶ次第であります、と申して油斷は禁物であります、我々は飽くまでも、天は自ら助くる者を助くると云ふ格言に基きまして、邁進致したいと考へて居ります、
第二は復興金融の強力なる推進であります、資金は言ふまでもなく物であります、然るに其の物が今我が國には缺乏して居るのでありますから、隨て今日の我が國に資金が豐富である理由はございませぬ、故に我々は資金を極力節約致し、有效に之を利用し、又其の蓄積を圖らなければなりませぬ、我我は此の觀點から、資金の使用に相當の制限を加へなければならないと考へます、併し左樣であるからとて、資金の圓滑なる供給を缺く爲ら生産の勃興を妨ぐるが如きことがあつては相成りませぬ、前に申上げました如く、經濟界の整理過程に於ては、往々にして斯樣な弊を生じ易いのであります、其の爲に當然生くる筈であり、又生かさなければならぬ所の企業を、みすみす殺してしまふやうなことが往々にして起ります、我々は此の弊の發生を防ぐ爲め、政府出資の下に、近く復興金融機關を設けまして、是が出資二億圓は今囘の改定豫算に計上してございます、又此の復興金融機關が出來ますまでの過渡的處置と致しましては、直ちに興業銀行をして復與金融を行はしめる準備を整へて居ります、併し斯樣な一つの特殊の金融機關のみに依りまして日本經濟再建の金融に遺憾なきを期することは困難であります、我々は特殊の復興金融機關を設立して、其の活動に期待すると共に、又舊來の凡ゆる金融機關の總動員的活躍を期待するものであります、資金は固より生産を興す所の部面に集中致されなければなりませぬ、所謂放漫なる貸出は如何なる場合に於ても嚴に之を戒めなければなりませぬ、併し苟くも生産資金でありますならば、日本銀行は之を供給することに躊躇致しませぬ、政府も亦必要にして可能なる援助を惜しむものではありませぬ、殊に中小商工業者に對する金融に付きましては、政府は各地財務局等に命じまして、不斷にそれぞれの地方の金融機關と緊密なる連絡を保ち、萬遺憾なきを期して居ります
金融に付て近來一つの問題は、國民中の或る部分に滯留して居る所の紙幣に付てであります、世の中には、是等の紙幣を再び新紙幣と交換或は封鎖をせよと云ふやうなことを言はるる方がありますが、左樣なことは我々の今全く考へて居ない所であります、のみならず、又是は何人が金融政策の衝に當りましても、恐らくなし得ない所であらうと考へるのであります、滯留している所の通貨は、唯強權を以て囘收致しましても、之を收縮し得る效果は一時的であります、それは本年二月以降の實況が證明して居ると考へます、外から力を加へずとも、滯留せる通貨が自ら銀行に集まり、郵便貯金に化すやうに致すことが必要であります、それには先づ第一に經濟界の前途を明るくし、預金が再び封鎖されるのではないかなどと云ふ風説の現はるる餘地のないやうにすることが必要であります、所謂新圓と舊圓との區別を出來るだけ速やかに撤廢致したいと考へるのも此の點からであります、我々が經濟界の整理を斷行したいと云ふ其の目的の一つは、又是にあるのであります、と同時に我我は又預貯金等を行ふ習慣の乏しき人人に對しましては、之を誘導して預貯金等に興味を感ぜしめる如き方法を講ずる必要がございます、其の方策は勿論色々ありますが、我々は之を端から實行致して行きたいと考へて居ります、尚ほ我が國の通貨及び金融制度に付きましては、前内閣時代既に委員會を設けまして、其の改革案の調査を開始致して居ります、追つて本議會に於て御審議を煩はす筈になつて居ります所の證券取引所の新機構は、其の委員會の所産の一つでございます、我々は更に此の調査を再開致しまして、以て我が國通過金融に關する民主主義的方途を確立する計畫でございます
第三は産業の合理化であります、前に我々は、我が國の經濟界は整理しなければならぬと申上げましたが、是は唯消極的に事業を縮小することではありませぬ、積極的に、又産業に凡ゆる合理化を行ふことでなければならないと考へます、産業の合理化とは、言を換へれば從業者一人當りの能率を増し、其の生産を高めることであります、能率が上らずして日本の産業の興る筈はなく、又勤勞者の所得を増加し、國民生活の改善を圖り得る譯はないと考へます、元來我が國の賃金俸給が歐米諸國に比し低かつたと言はれますのは、主として生産能率の低かつたことに依ると私は信じますが、遺憾ながら今日の我が國に於きましては、一層其の生産能率を低下して居るものと考へられるのであります、隨て今日の此の状態の下に於きまして、國民の生活水準は必然低下する外はないのであります、俸給賃金は最近一般に著しき引上を見ましたに拘らず、依然として勤勞者の生活苦は緩和せず、他方企業は赤字を累積して居る所以だと考へます、況や我が國は戰爭と敗戰に依りまして多くの資本を失ひました、其の上に尚ほ今後賠償に依つて資本を失はうと致して居るのであります、此の缺陷を償ひ、以て國民一人當りの生産を増加する方法は、思ふに産業を合理化し、而も其の産業の合理化は、一つ一つの企業に付てのみでなく、廣く産業全體に亙つての合理化の外にないと考へるのであります、第一次世界大戰後、一時我が國にも産業合理化運動が起り掛けたことがありますが、それは遂に徹底致しませぬでしたが、我々は今度こそ之を徹底する必要があると考へるのであります、前に申上げました經濟界の整理は、此の目的の下に行はなければなりませぬ、目下政府が計畫致して居ります農地制度の改革の如きも、亦茲に一つの使命が存すると考へて居る次第であります
第四は失業者受入體制の強力なる推進であります、經濟界の整理と合理化とは、必然失業者を發生することを免れませぬ、さうでなくても現に多數の失業者が存する所に、更に之を増加することは固より甚だ憂ふべきことであり、忍び難きことであります、併し之を惧れて居りましたのでは、整理は進行致しませぬ、隨て經濟の再建は出來ませぬ、此の矛盾を我々は解かなければならないのであります、茲に我々はそれ等の失業者を受入れる體制を強力に整へる必要が起つて參ります、併し其の體制は單に失業者を失業者として消極的に救助し生活させると云ふことに止まつてはなりませぬ、我々の理想は、それ等の人々が苟しくも何等かの勤勞に耐へる能力を持つて居ります限り、直ちに適當なる業務を供給し、失業者たらしめざることであります、純然たる救助は出來る限りの小範圍に止めたいのであります、是れ即ち國民の生活權を擁護する所以でもあり、又刻下緊要の生産増加を齎らす方法でもあると考へます、我々は此の觀點から、前に申上げました如く、豫算の上にも相當の金額を計上致しました、我々は之を適切に運用致し、且又廣く民間にも協力を求めまして、此の問題の處理に遺憾なきことを期したいと考へて居る次第であります、尚ほ一般失業者とは其の性質を異に致しますが、海外よりの引揚同胞及び舊軍人軍屬諸君の問題があります、之に付きましては、前に豫算の數字に付て申上げました如く、其の直接の引揚費七十七億餘圓を計上致しました、併し是等の諸君に關し最も重要な問題は、どうして是等の諸君に仕事を供給し、其の生活の再建を圖るかでございます、政府は之に付きましては特に意を用ひまして、取敢へず援護其の他民生施設費三十億圓中より、必要なる生業資金の供給を圖りたいと考へて居ります、又六十億圓の公共事業費其の他に依りまして行はれます所の事業に、是等の諸君の勞苦を吸收する途を強力に開きたい計畫でございます、戰災復興事業も、以上に關聯せしめまして、同時にそれが失業對策たるが如き方法を以て促進致したいと考へて居ります
第五は經濟の民主化であります、此のことは既に今まで屡屡繰返して述べられたことでありますから諄くは申上げませぬ、併し世の中には往々にして、今日尚ほ我が國に所謂大地主、大金持を擁護せんとする運動があるかの如く言ふ人があります、是は甚だ理解し難いことであります(拍手)既に所謂財閥は事實に於て悉く解體され、農地制度の改革は一層強化され、其の上に更に、以上に述べました如く、經濟界の整理は斷行され、加ふるに財産税が又課されるのであります、從來と雖も我が國に所謂大地主、大金持と稱せられる程の者が幾何あつたかは疑問でありますが、今後の我が國に於ては、其の僅少なる大地主も大金持も全く姿を沒するのであります(拍手)惟ふに今後の我が國の社會は、好むと好まざるとに拘らず、地方に於ては小規模にして且つ殆ど相互の間に差等のない自作農、都會に於ては中小商工業者及び勤勞者、又會社、事業に於ては多數の小株主、殆ど斯樣な人々が我が社會を構成することであらうと思ひます、此の意味に於て、我が經濟の民主化は既に半ば成れりと申しても過言でないでありませう(拍手)併し申すまでもなく眞の意味の民主主義は、社會の構成員を唯小粒にしただけで實現されるものではありませぬ、(「ひやひや」拍手)それには民主主義的道徳と文化との裏付けがなければなりませぬ(拍手)我が國の今日の急務の一つは、實に此の道徳と文化とを高めることだと考へます、經濟の側面から申しましても、其の道徳と文化とが向上致しまして、初めて其の眞の民主主義化は期待され、同時に能率の増進と生産の増加とを齎らし得るものと考へます、本年度の改定豫算には、先程申上げました如く、臨時的歳出が非常に多く、爲に不幸にして教育、文化の爲の支出の計上は比較的少額に止まりました、併し此の窮屈な豫算の中に於きましても、尚ほ國民學校教職員の待遇改善等を行ひまして、尚ほ今後御協贊を仰ぎます所の追加豫算の中にも其の費目が出て參ります、以て聊か民主主義道徳と文化との向上に資したいと考へる次第であります(拍手)今後財政に餘裕を生ずるに從ひまして、更に大いに是等の費用を増額致したいと我々は考へ、且つ望んで居る次第であります
以上は、只今政府が計畫し、或は著手し始めて居ります所の財政經濟政策の大要でございます、此の外尚ほ問題は甚だ多いのでありますが、最後に一言を附加へまして終りたいと思ひます、我が國は今純然たる閉鎖經濟を營んで居るのでありませぬ、我が國は既に必要なる食糧及び纖維原料等の輸入を、聯合國最高司令部を通じて許されて居ります、之に對して又我が國は生絲其の他の見返り物資の輸出を許されて居ります、併し此の輸出入は、言ふまでもなく司令部の嚴重なる監督と制限との下に許されて居るのでありまして、未だ遺憾ながら國際經濟への自由なる參加は許されて居りませぬ、併し此の狹小なる領土、曾てから國民にそれが愬へられ、世界の識者も亦或る程度まで之を承認して居りました我が國の此の小さな領土は、更に此の戰爭に依り著しく狹められました、此の變化せる條件の下に、日本國民が平和的民主的國民としての教養を高め、世界の文化に貢獻し得るに足るだけの生活水準を保ちます爲には、是非とも國際經濟への一層自由なる參加が許されることが必要であります(拍手)以上申上げました經濟界の整理、増産促進に依る所謂「インフレ」の克服、金融制度の改革、經濟の民主化等の諸政策は、一面から申せば、即ち日本國民が軈て國際經濟への自由の參加を許される場合に對する準備であると考へます(拍手)我々は斯樣にして國内を整へ、何時でも國際經濟への全面的參加をなし得る態勢を執つて置かなければなりませぬ、而して是は又其の參加が速かに許される準備であるとも考へます、今囘の戰爭に依りまして大いなる損害を被りましたのは、獨り我が國のみではありませぬ、戰勝國と雖も、亦其の戰後の囘復は決して容易の業ではないやうに見受けられます、所謂「インフレ」の危險は世界的であります、我が國が此の危險を能く突破し、平和的民主主義經濟の建設に速かに成功致しますならば、是は改正憲法に於て武力の撤廢を世界諸國に先驅して宣言せんとして居るのと同樣に、産業經濟の分野に於きましても亦世界に範を示すものだと考へます(拍手)而して我々の此の努力に對して、聯合國最高司令部は必ず全面的支援を惜しまざるものと私は信じて居ります、繰返して述べます如く、併しながら此の成功を齎らすまで今後暫く我が國民が忍ばなければならぬ所の困難は尋常一樣のものではありますまい、併し人間は現在よりも將來の希望に生きるものであり、輝かしき平和日本の民主主義經濟の建設が斯くて成功すると云ふ日を想望致しますならば、又我々の勇氣は勃然と起ると考へます(拍手)
以上は甚だ意を盡しませぬが、政府が只今考へて居ります大體の所を申上げた次第であります、何卒政府の意の存する所を諒察され、本豫算に對して速かに協贊を垂れられんことを切に御願ひする次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=9
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010・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より只今の財政演説に對する質疑に入ります、順次發言を許します──苫米地英俊君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=10
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011・会議録情報4
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國務大臣の演説に對する質疑
〔苫米地英俊君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=11
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012・苫米地英俊
○苫米地英俊君 私は石橋藏相の財政經濟方針の演説に付きまして、日本自由黨を代表致しまして若干の質疑を致したいと存じます
從來の例に依りますと、議會開會の劈頭先づ總理大臣の演説、之に引續きまして藏相、外相の財政竝に外交演説があり、之に質疑を致すのが慣例となつて居りました、國民は之に依りまして内外の情勢の全般を知り、豫算を通じて政府の意圖する政策、施策を具體的に把握することが出來、生活の心構へ、事業の計畫が樹ち、興論も沸騰し、妥當なる國策が成立するやうになつたのであります、然るに本議會に於きましては全く型破りで、既に二箇月有餘が經過して、漸く本年度の改定豫算が提出せられることになつたのであります、是は此のこと自身が現下我が國の直面せる苦腦を明確に反映して居るものであると考へる次第であります、併し世間では色々に取沙汰致しまして、或は政府の無爲無策、或は藏相の自由主義經濟觀念の行詰り、或は内閣不統一、藏相と下僚との對立の結果であるとなして居る向きもあります、斯う云ふ見方が果して其の根柢なのか、誤解に基くものであるかと云ふやうな事柄は別と致しまして、それが民心に及ぼす影響、是は容易に輕視致すことが出來ないと思ふのであります、そこで此の機會に於きまして、政府は何故に此の遲延を來したか、其の實相を明かにして國民の疑惑を解かれることを希望致すものであります、都大路荒凉たる廢墟の中に立つて熟熟考へまするに、日本再建の事業たる、實に想像に絶えた難事、至難中の至難と感ずる次第であります、幾多の統制の中で、涸渇した財源をやり繰り、複雜微妙な政策を盛つた豫算案を編成しなければならなかつた苦心、其の努力に對しては、政府當局に深甚なる敬意を表するものであります、併し是と、豫算案を通じて見る政府の政策に支持を與へるかどうかは自ら別個の問題であります、各方面から放漫財政として嚴しい批判を受けることも免れますまい、又財政を危機に陷れたものとして、反對の意見の起ることもあり得ませう、併し一切は敗戰と云ふ冷嚴なる事實に基くもので、決して單り現内閣の責任のみとは考へませぬ
偖て質疑の第一點は、一般收支の差額、即ち歳入不足二百五十五億八千七百萬圓の補填財源に付てであります、一般會計總豫算は五百六十億八千八百萬圓で、其の歳入歳出共に一應均衡が取れて居りますが、財産税に依つて其の大きな部分二百五十五億八千七百萬圓を補填しなければならないと云ふことは、洵に財政の健全さに付て國民が疑惑を持つのであります、先程も藏相が申されました通り、財産税を以て之を補ふと云うことは、赤字公債を發行するのと同じ結果になる、而も財産税が當初の目的に使はれず、戰時利得税の拂拭、富の再分配、公債の返還、財政の健全化等に用ひられずに、赤字の穴埋めに用ひられると云ふことは、是は決して正當とは認められませぬ、邪道と言はれても致し方がないと存ずる次第であります、而も先程大藏大臣も申された通り、封鎖預金が政府の手に入り、是が一般經濟界に放出せらるると云ふことになりまするならば、現在既に惡化して居る所の「インフレーション」はどうなつて行くか、茲に大きな憂慮がある次第であります、併しながらここで財産税を以て穴埋めをしなければならないとするならば、次の諸點を明かにして戴きたいのであります、第一は財産税收入の見込總額、是が幾何ある豫定であるか、其の金納と物納との割合に關する見透し、又公債を以て財産税を納付し得ると致しますならば、此の公債の評價方法、其の額面額を基準とするか、市價を基準とするか此の點に付てはつきりさせて戴きたい、次に物納に付ては、其の評價方法及び評價價格と現物を換金して得る實收價格との差額を如何に處理するか、又次に財産税の收入時期及びそれを豫算に繰入れる見込金額、是等を明かにして戴きたい、財産税の一般免税點は、之を十萬圓とし、戰災者、海外引揚者の場合は、十五萬圓と致すと云ふのが自由黨の政策であり、自由、進歩兩黨の政策協定でも採擇致した所であります、然るに政府は之を三萬圓と決定されたのであります、それには相當の理由があるものと認めますが故に、敢て反對は致しませぬが、出來得る限り輕減課税を考慮せられんことを期待して居ります、次に若し赤字公債で補填する必要が起つて參りました場合は、從來通り日銀の引受けとするか、又一般からの公募とするか、此の點を明かにし、若し此の兩者を併用するならば、其の比率は如何なる程度に落著くかを明かにして戴きたい、先程も大藏大臣の御話にもありました通り、本豫算の項目の中には、本年度限りの歳入が相當ある樣子であります、隨て明年度は或る程度支出が減少し、國民負擔が輕減するやうになると思はれますが、是と同時に明年は又新規な經費が必要となることは考慮しない譯には參りませぬ、現に賠償施設撤去に要する所の費用が四百億の巨額に達し、是は本年七月から向ふ二箇年間に終了しなければならないことになつて居ります、此の經費の本年度分擔が此の豫算案に計上せられて居るのでありませうか、それとも追加豫算として提出されることになるでありませうか、何れに致しましても類似のことが逐次續出し、國民負擔は容易に輕減せられるとは考へられませぬ、占領治下數年に亙りまして、相當厖大な終戰處理費が必要になると存じます、然るに財産税は一度限りのものであり、假令其の一部が次年度以後に繰越され得ると致しましても、それは大した助けになるものではありませぬ、是に於て大藏大臣は此の數年を見越し、如何にして健全財政に導かれるか、先程多少の御説明はありましたが、もつと具體的な計畫を承りたいと存ずるのであります
そこで質疑の第二點は政府の經濟再建に付ての方針であります、經濟再建費が百億四千四百萬圓見積つてあります、併し此の經濟再建、其の他の國策を遂行する爲には、今後益益厖大なる國庫收入が必要となり、其の收入増加は國民所得の増加に俟たなければなりませぬことは論を俟ちませぬ、而して國民所得の増加は一に懸つて産業の復興にあるのであります、是に於て政府は民力の培養の爲に、産業復興に十分の力を致さなければなりませぬ、其の第一歩と致しまして、戰時以來失はれて來た所の經濟の均衡を囘復して、其の運行の圓滑化を圖り、可及的速かに産業を正常の軌道に乘せるのが絶對に必要であると存じます、其の爲には統制や其の機構を改めて行かなければなりませぬ、併し現在の國民の腦裡に去來する所の漆黒の陰影は、何と申しましても、補償打切の問題であります、是は擬制資本を整理し、産業を堅實にする爲に當然なさなければならないことであります、で斯うした問題は、善かれ惡しかれ速かに決定する方が宜いので、何時までも國民を不安焦慮の中に置き、暗中模索、憂鬱無爲に其の日を暮させるのが最も惡いのであります、仍て政府は此の際徒らに左顧右眄することを止め、大膽率直に宿命的の成行、終局落著くべき所を國民に明示し、敗戰の深刻さをありの儘に認識せしむることが、却て國民に對し親切であり(拍手)國民は之に依つて肚を決めて、現實即應の對策を練ることになりませう、中には大きな衝動を受けて、一時は茫然自失するやうな者もありませうが、國民の大多數は既に相當の覺悟は出來て居ることと信じます、さうして近い將來必ず晴れ晴れした日本人らしい諦觀を胸に抱いて、反撥的勇氣を振ひ起し、創意工夫を廻らして經濟再建に邁進し、そこに新しい熱情と歡喜とを見出すことになると信じます、此の眞裸になりました姿、是が經濟再建、新日本建設の眞の出發點であると斷言して憚らないのであります(拍手)此の眞裸になり、人生を諦觀した所に滲み出して來る所の熱情と歡喜の上に、經濟再建費を有效適切に用ひ、之を活かして行くのが、今日の政治の要諦めであると信ずるのであります、隨て具體的に此の經費の用途を、又其の處理方法を御示し下さることを御願ひ致す次第であります
次に質疑の第三點は「インフレ」對策に付てであります、「インフレ」防止は容易ならざる難事であり、我が國獨立で徹底的に解決することは、或は企て及ばないのではないかと云ふ疑問すら胸に浮かんで來るのであります、第一次世界戰爭後の「ドイツ」を見ましても、思半ばに過ぐるものがあります、當時「ドイツ」の國土は寸毫も荒廢された所がなく、産業施設は完全に保全せられ、資材の手持もあり、復員者も元氣旺盛で順調に歸郷し、食糧、石炭なども左程窮迫はして居らなかつたのであります、英國などに於きましては、工場の煙が止まつて居つたのに、「ドイツ」に於ては工場の煙が絶えず、早朝から操業せられて居つたのを目撃致し、之と日本の現在とを比較して見ます時に、あの實情であつたに拘らず、あの大きな惡性「インフレーション」に見舞われたことを考へますと、日本の直面して居る所の「インフレーション」克服は決して容易な業でないことが思はれるのであります、「インフレーション」防止は、金と物との均衡が取れるやうにすれば宜いので、理窟は至極簡單明瞭でありますが、然らば具體的にどうすれば宜いかと云ふ段になりますと、中々名案がないのであります、社會は複雜微妙な有機體であり、今日は其の機構がばらばらに解體され、而も利害が錯綜し、自働的自然の調節力が失はれ、不均衡が益益擴大して行つて居る、茲に我々は憂慮の念を懷くのであります、前内閣は今春「インフレーション」防止綜合對策として、通貨面の方策として新圓を出し、購買力の縮減を企てたのであります、併し是は御承知の通り全く無爲に終つたのであります、無爲に終つたばかりでなく、そこに封鎖、自由二本建の支拂が頗る不合理であつたが爲に、事實上二通りの通貨、即ち惡貨と良貨を併用した形になりました、そこで忽ちに其の間に打歩を生じ、新圓が二割程度高くなりました、「グレジャム」の法則が現はれ、新圓が退藏せられ、その大部分は流通から姿を消し、而もそれが一部の人々の手に偏在することになりましたのは當然の成行であり、其の上に國民が政府を信頼せず
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=12
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013・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=13
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014・苫米地英俊
○苫米地英俊君(續) 金融機關に對しても往時の安心感を持たなくなつたのであります、そこで此の状態に於て預貯金が増加したとしたならば、寧ろ不思議と申さなければならないのであります、是に於て國民生活は益益重壓せられ、産業は缺損を續け、融資に惱み拔いた其の擧句、人生易きに就く弱味を暴露し、拱手傍觀、無爲徒食、手持ち資材の値上りを待つ所謂生産「サボ」状態が愈愈瀰漫するに至つたのであります、こんな状態の時に、限界價格の引上を斷行した所で、それは決して生産の刺戟になるものでもなく、却て生活難を惹起し、社會不安を激化する位が落ちであります
〔「議長、質問をさせろ」と呼び其の他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=14
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015・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=15
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016・苫米地英俊
○苫米地英俊君(續) 而も鐵、石炭、運賃、通信など生産の基本經費になるものが一擧に大幅に値上げせられ、それが經濟金融に波及したから勞働爭議が隨所に頻發し・・・・
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=16
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017・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=17
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018・苫米地英俊
○苫米地英俊君(續) 購買力の増加、物價の騰貴等は因果の歯車、惡因縁に拍車を掛けて來たのであります、此の惡循環を何處かで打切らなければ「インフレ」防止は不可能となるのであります(拍手)通貨面から申しますと、それが三百億ならば宜しい、六百億ではいけないと云ふ性質のものではありませぬ、一定の所で金と物との均衡が取れ、安定さへ致しますならば、縱しや通貨が一千億であつても差支へないのであります、此の立場から一つの新規な工夫として、一定の物價修正指數に依り一切の收支を調節する方法が考へられます、此の指數と申しますのは、例へば日銀の物價指數と闇値指數とを按配勘案して、月々妥當な物價修正指數を案出するのであります、さうして之を毎月一定日に公表し、其の翌日は其の指數に依り自動的に一切の收支勘定を調節決濟するのであります、租税を初め凡ゆる公納金も、政府の交付金も、給與、賃金も、債權の取立、債務の辨濟も悉た此の指數で修正することに致すのであります、斯樣に致しますれば、政府の收支も物價の變動に連れて伸縮し、其の均衡が保たれ、債權債務も其の決濟時に於ける「インフレ」の状況に依つて影響を受けることもなくなり、勞働爭議の原因も大方は削減することになると同時に、貨幣の我々に與へる所の錯覺を矯正し、擬制資本の正體を明確に捉へるやうになり得るのであります、之に關する研究は日本銀行で相當進捗して居る模樣でありますが、政府は此の方法を採擇して法制化する用意があるかどうか、大藏大臣の所見を承りたいのであります
次に質疑の第四點は、物の面からする「インフレ」對策に付てであります、物の面からする對策は、生産増強にあることは勿論でありますが、現在の段階では、限界價値の引上では大した效果がなく、さりとて産業を國營にすれば能率が上ると云ふ考へも、或る「イデオロギー」に囚はれた、現實を見ない瞑想であります(「ひやひや」拍手)其の根本對策は、販賣竝に價格に對する統制及び制限を可及的速かに撤廢し、自由市場を復興することであります、それを餘所にしては、人類共通の性情を活かし、自力更生の道を辿る方法はありませぬ(「ひやひや」)病人が健康を囘復するのも、生物が成長をするの、皆自己の力であります、それが自然に惠まれて、病を囘復し育成されて行くのであります、科學のなし得る所は、僅かに之を助成するにあるのみであります、是は國家の經濟に付ても道理は同じであります、併し物資が不足し、通貨が溢れて居る今日、一擧に統制の枠を外すことは暴擧に等しいのであります、是と同時に、新時代の經濟は計畫經濟である、それが進歩した經濟である、進歩的であるとの理由で統制を強化し、持續しようとする行き方は獨善に過ぎませぬ(「ノーノー」拍手)米國や「ソ」聯のやうに自給自足の出來る國であるならばいざ知らず、我が國の如く資源に乏しく、殆ど一切を擧げて外國市場に依存し、常に其の支配的影響の下に置かれる運命にある國に於ては、全面的計畫經濟は絶對に成立ちませぬ、今日の「インフレ」問題は、食糧問題さへ片付けば其の大半は解決が出來ると言はれて居ります、實際其の通りで、食糧が十分になれば、産業の基本たる石炭の増産も容易になり、出炭量の増加に連れて、他の産業も漸次軌道に乘つて動き出すことは明白であります、でありますから、食糧問題に付ては、擧國一致、政黨政派を超越して其の解決に乘出して居るのも其の譯でありますが、此の食糧でさへ自力だけではどうにも行かず、絶對不足量はどうしても輸入に俟たなければなりませぬ、増産に必要な肥料すら、燐酸肥料、加里肥料は其の補給を海外に仰ぐ外致し方がありませぬ有樣、是は肥料生産の國有であるとか國營であるとか云ふやうな問題ではありませぬ(「ひやひや」)仍て政府は生産を阻む最大原因たる統制を成べく速かに撤廢すべきで、其の順序は消費面よりも寧ろ生産面、多角經營を可能ならしめ、又生産意欲を向上せしむる爲の方向から行かなければならないと思ふのであります、政府は宜しく統制政策に對する一つの此の方向を國民に示すものとして、今年の秋の收穫期から、一定量供出終了後、農家の手持米は之を自由市場に販賣し得るやう、自由を認むべきであると存じます(拍手)本年は非常に豐作の模樣で、六千萬石の收穫は今の所では略略確實と見られ、食糧事情に明るい氣分を與へて居ります、是は正に統制緩和の好機であります(「颱風の心配があるぞ」と呼ぶ者あり)若しさう云ふことになりますれば、農家は進んで供出に協力するやうになり、増産をすればするだけ利益が殖える勘定になりますから、生産意欲は勢ひ向上され、明年度の肥料増加と相俟つて、飛躍的増産が期待されることになるのであります、斯くの如くして進駐軍最高司令部の厚意と政府の努力とに依つて、絶對不足量が輸入に依つて確保せられることが明かになれば、買漁りや買溜めは其の必要もなく、又それをする者もなくなります、そこで食糧事情が安定するものと確信致します、政府は此の秋から主食の一部を自由販賣にする用意があるか、若し萬一それが不可能であると致しますならば、其の根據は何處にあるか、國民の納得出來るやうに、明確に説明をして戴きたいのであります、是は農林大臣の御答辯を願ひます、尚ほ食糧問題の一環たる水産業に付ても、重大な問題がありますが、是は豫算總會に讓ることに致します
先程申述べました通り生産に對する障碍は、販賣竝に價格に對する統制及び制限に基因し、資材、資金の不廻りとなり、轉じて換物思想となり、生産意欲が萎靡して、所謂生産「サボ」に陷つたのが現在の状況であります、戰後國士が狹隘となり、資源が愈愈貧困に陷り、曾て一部國民が夢想致しました所の、資本帝國主義などは、思ひも寄らぬことに成り果てたばかりではなく、國民の最低生活維持に必要な重工業の運命すらはつきり致しませぬ今日、確實に我が國民の手に殘るものは中小工業あるのみであります、此の中小工業を振興することが、日本建設の唯一の道であり、其の新しい構想は色色ありますけれども、先づ第一に著手すべきは、生産竝に營業の單位を思ひ切り縮小し、擬制資本のない、小さいながらがつちりした堅實な地盤に立つたものにすることであります、政府は企業家の心理を能く理解して、生産及び販賣の障碍となる一切の法令、機構を除去することに努むると共に、商工振興費の三百三十六億五千萬圓を最も有效適切にし、且つ商工業の金融を圓滑にするやうに努めなければなりませぬ、斯くして中小工業者が、自由の天地に自由に天分を活かし、自由に驥足を伸ばして働き、働けば働き甲斐のある世の中を作るやうに、政府が努むべきであると信じます、今後の生産活動は、當分の間生活必需品竝に見返り物資の範圍に限定されることになりませう、此の見返り物資の生産に關しましては價格の變動に因る損失を政府が補償することに依つて、業者をして安心して生産に從事せしむると共に、品質、數量、受渡等に付きましては、國家の面目に掛けて、業者に責任を負はせるうに致すべきであると信じますが、政府に此の用意があるか、又中小商工業育成に付き、如何なる具體策があるか、之に付ては商工大臣の御答辯を願ひたいのであります
從來生産資金の放出は、生産資材の補給と何等の關係もなく、全く沒交渉の感があつたのであります、其の爲めともすれば放出された生産資金が徒らに生活資金の面に流れて、效をなさなかつた嫌ひがあるのであります、凡ゆる産業の基本であり、工場の主食糧とも稱すべき石炭がなくては生産は出來ませぬ、そこで生産の裏付けのない生産資金程無意味なものはなく、徒らに「インフレーション」を促進するのが關の山、有害無用と斷ずる外ないのであります、隨て今後は出炭量と睨み合せて、生産資金の放出を決定すべきものであると信じます、此の點に付て大藏大臣の所見を承りたいのであります
次に質疑の第五點として失業對策に付てであります、本豫算案に六十二億三千五百萬圓の公共事業費が計上されて居ります、一寸其の範圍が漠然として、的確に捕捉致し兼ねるのでありますが、それは生産増強と結び付けられた失業對策費と解して然るべきものであると存じます、併し生産に結び付いた公共事業にも、今直ちに役立つものと、後日に至つて徐々に效果の現はれて來るものとがあります、所で今日の如く緊迫した世の中では、遠き將來を慮つて居る餘裕などある筈がなく、明日、否今日からでも役立つ事業にのみ此の經費を充當するのが理の當然であると存じます、さうすると失業救濟と調和しない二つの行き方が問題となつて參ります、即ち公共事業の遂行を能率本位にするか、授産本位で行くかと云ふことになります、若し授産本位と云ふことになりますれば、能率に拘らず食へるやうにしてやると云ふことになり、隨て仕事の能率は從になるのであります、此の中間説もありませうが、それでは結果は虻蜂取らずになるのであります、概論的になりますが、一能に長ずる者には失業者が少く、特技のない凡庸の者にそれが多いのが通例でありまして、一般勞務者に付ても同樣であります、仕事に依り、所謂素人を玄人と云ふものがあります、そこで低級な仕事でも、玄人を組織的に使はなければ能率は上りませぬ、そこで能率本位で行くのならば、公共事業計畫委員會とも稱すべき一つの機構を設け、研究と共に組織を作つて出發すべきであります、此の場合海外引揚の科學技術者に先づ著目して、之を共濟すると共に、其の持つて居る所の技能を十分に利用すべきであると存じます、さうなると勤勞署が大切な仕事を分擔することになりますが、其の陣容は果して現在の儘で宜いでありませうか、政府は此の點に付て如何なる考案を持つて居られますか、若し授産本位で行くとなりますならば、恐らく公共事業費は各省に分割せられ、事業の選擇、其の運營の總てが、各省を通じて地方官憲の手に移ることになりませう、さうなると公共事業の遂行、失業救濟の美名に隱れて、本經費の一部又は全部が一般土木費に流れる、其の上各官廳の間に競爭意識でも起らうものならば、勞銀が糶り上げられ、而も能率は上らず、結局公共事業費は有耶無耶になり、生産直結と云ふ重點が失はれる虞があるのであります、之に關する具體的計畫に付て厚生大臣の御答辯を戴きたいのであります
質疑の第六點は失業對策に關聯致して居りますが、政府の人員整理の問題であります、政府は曩に行政整理を斷行致されましたが、頗る不徹底の憾みがあります、國歩艱難の折柄凡ゆる困苦缺乏に耐へ、國家再建に貢獻すべきは論を俟たない所であります、併し荷斂誅求と申しては少し言ひ過ぎるかも知れませぬが、永年に亙る過重なる負擔、血税と物税との爲に國民は極度に疲弊して居ります、そこへ新しい税制で課税せられ、財産税が徴收せられ、補償金が打切られた曉には、財閥どころでなく、特殊の一部を除いては全國民は赤貧状態に陷り、民力は全く涸渇し、國家再建などは思ひも寄らぬことになるかも知れないのであります、之を考へると、總ての面で出來得る限り國費節約が至上命令となつて來るのであります、本豫算案に於て待遇改善費が各省とも相當に計上せられて居ります、勿論官廳職員の待遇改善は當然のことでありますが、是と同時に過剩人員を整理することを怠つてはなりませぬ、過剩人員の存在は却て能率を阻碍するものであります(拍手)具體的で分り易いと存じますので、御迷惑をも顧みず例を運輸省に採りますが、昭和十一年には定員が二十二萬七千人、實員は其の約一割減、二十萬人程度であつたのであります、それが本年六月現在では約五十五萬人の實員、それに大陸からの引揚者約八萬を加算致しますと六十三萬人となります、此の期間に於て營業の哩數の増加は一割一歩強、車輛は一割三分強、機關車は一割二分強の増加となつて居ります、人員に於ては三倍に上り、一方は一割二、三分と云ふ増加であります、勿論旅行者、貨物の増加と云ふことも考慮致さないではなりますまいが、斯くの如き厖大なる人員が増加して、能率が上らず、「サービス」が下つて居るのは國民の何としても承服出來ない所であります、此の實情は濁り運輸省にあるばかりでなく、各省各官廳共通であると存じます(拍手)隨ひまして是非とも此の人員整理を致さなければならないと信じます、併しさうすると又失業者が殖える、そこに板挟みの苦惱はございますが、政府は之を斷行し、失業者に對して新たなる對策を講ずるだけの勇氣があるか、此の點を如何に處理せられる積りでありますか、是は總理大臣に御伺ひ致したいのであります
次に質問の第七點と致しましては戰災學校の復舊に付てであります、教育に付ては色々の問題がありますが、それは總て豫算總會に讓ることと致し、此處では此の問題だけを取上げたのであります、教育に付て色々憂慮せられる事柄が多くありますが、其の最たるものは何と申しましても年少者が今日頽廢した零圍氣の中に育ち、其の教養を受くべき學校のないことであります、近い所で、東京に於ては私立學校だけでも、中等學校が百以上燒失して居ります、是は特殊預金約三千萬圓持つて居りますが、それだけ全部使ひ得ても、自力更生は容易ではありませぬ、而も此の特殊預金の拂出しが出來ない、又近く是が切捨てられることになりましたならば、果して此の學校の復舊が出來得ませうか、明年四月新入生を迎へる爲にも、現在燒殘つた學校に預けてある一年生は、來年四月になれば追出されて引取らなければならない事情になつて居ります、是等を收容する爲に今から學校建設に取掛つても既に遲い位であります、然るに今尚ほ手を拱いて苦慮して居るのが實情であります、是は獨り東京のみでなく、戰災地に多數ある例であります、そこで是等の學校の復舊の爲に低利資金を融通するとか、特殊預金に付て特別の計らひをするとか、軍關係の建物を優先的に拂下げるとか、建築用資材を公定價格で優先配給するとか、若しくは學校に特別の關係ある人々から、封鎖預金から寄付金を募集することの出來るやうにするとか、何とか特別の保護を與へなければ、學校の復舊は到底覺束ないのであります(拍手)此の點に付て大藏大臣は是等のことを承認する用意があるか、又文部大臣は是等の學校、官公私立を併せて、復舊する計畫を既に樹立してあるならば、それを明かにして戴きたい、若しまだ出來て居らないならば、其の抱負を明かにして戴きたいのであります、以上を以て私の質疑を終ります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=18
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019・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の御質問に對して御答へ申上げます、第一は財産税の收入見込額如何と云ふ御尋ねのやうに拜聽致しましたが、是は財産税其のものの仕組みを只今修正致して居る次第でありまして、最早間もなく出來るとは思ひますが、まだそれに依つての見込額を本日只今申上げる時期に至つて居りませぬ、實は是は豫算總會等の時期になりましたならば申上げるやうになるかとも思ひます、隨て金納と物納との割合と云ふ御質問に付ても同樣であることを御諒承願ひます、其の際公債をどう評價するかと云ふ御尋ねでありますが、是も財産税全體の上から研究を致さなければなりませぬから、未だ確定的のことを申上げる時期ではありませぬが、大體の積りと致しましては、公債は發行價格に依つて評價を致し、又公債に依つて財産税を收納致す場合も、同樣發行價格に致さうかと考へて居ります、それから物納の評價でございますが、是は時價に依る次第でございます、尚ほ其の物納されたものを政府が換金を致して、其の差額をどうするかと云ふ御尋ねのやうに拜聽致しましたが、それは損得共に政府の負擔になる次第と存じます、又財産税を本年度の豫算に繰込む見込如何と云ふ御尋ねでありますが、是も財産税の總額が未だ定まりませぬし、又其の財産税の物納、金納等の關係も未だ定まりませぬから、確然たることは申上げられませぬけれども、大體本年度の豫算の歳入不足だけは之に組込みたいと云ふ考へでございます、それから赤字公債を發行する場合に公募か日銀引受けかと云ふ御尋ねでございますが、是は双方を勿論致しますが、出來るだけ公募に依りたいと考へて居ります
それから賠償其の他の關係で、今後數年を見越した財政計畫如何と云ふ御尋ねのやうでありましたが、是は先程も申上げました通り、現在の所に於きましては、來年度から逐次之を減額出來ると考へて居りますが、尚ほ之には研究を要する大きなる費目、例へば先程申上げました終戰處理費と云ふが如きものを今後如何に處理するかと云ふことは、尚ほ種々研究し、又交渉の必要のあるものと考へて居る次第であります
それから補償打切りを早くやれ、政府の決意如何と云ふやうな御尋ねであつたかと思ひますが、是れ亦補償打切りと云ふことは、言葉に於て如何かと思ひますが、兎に角補償問題に付きましては、目下鋭意研究し、案を進めて居りまするから、遠からざる内に、之に付て必要なる法案の御協贊を仰ぐことにならうと思ひます
次に物價修正指數に依つて自動的に今後收支の調整をする考へがあるかと云ふ御尋ねでありますが、是は種々學者等に依つて斯樣な説が述べられ、大いに研究する必要があるものとは考へて居りますが、現在の所、政府は斯樣な指數を用ひて自動的に全部の收支の調整を圖ると云ふ考へは持つて居りませぬ
次に私に對する御尋ねは石炭補給金のことであります、是は先程私が述べました中にも若干申上げた次第でありますが、其の石炭補給金の效果は大いに之を擧げるやうに今後致す考へでございます
最後に戰災學校の復舊に付ての御尋ねでありますが、是は現内閣が出來ましてから、學校、病院或は寺院等の公共事業の復舊に付きましては、特に心配を致して居る所であります、御承知の如く特殊預金は之を嚴重に封鎖される命令が發せられて居りまして、遺憾ながら未だ之を動かすことが出來ませぬ、併しながら之に付ては後程文部大臣から御答へがあると思ひますけれども、大藏省と致しましては、文部省其の他と緊密なる連絡を取りまして、目下學校等の復舊に付て如何にするかと云ふ具體案を練りつつある次第でございます、或は落ちた點がございますか知れませぬが、以上大體御答へ申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=19
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020・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 此の際御紹介することがあります、聯合國總司令部に於て議會關係の事務を擔當せられて居り、日本の議會の爲に非常に御盡力下さつた、元米國下院議員「ソープ」君が、今囘本國に歸られることになりました、訣別の意味を以て只今傍聽席に參られて居ります(拍手)同君の今日までの御援助に對し深く謝意を表すると共に、同君の御健康を祈る次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=20
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021・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 和田農林大臣
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=21
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022・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 苫米地君の御質問に御答へ申上げます、此の秋から主食の一部を自由販賣にする考へはないかと云ふ御問ひでございますが、此の御意見は非常に多方面に關係する所があるのでございまして、愼重に研究すべきものがあるのでございます、現在の食糧事情其の他經濟事情を考へます時に、遽かに實現することは困難であらうと考へられるのでございます、右御答辯申上げます(拍手)
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=22
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023・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 苫米地君の仰せの通りに、纖維産業は若干大工業として殘ると思ひますが、其の他のものに付きまして、特に見返り品の製造に付きましては、中小工業が中心となることと思ひます、そこで之を振興さす爲には、度々當議場に於きましても既に問題となりましたが、一番困る問題は金融と思ひますので、是等に付きましては、既存の機關、即ち商工中央金庫と云ひ、或は農林中央金庫と云ひ、市街地信用組合其の他の機關は十分之を活用致しまするが、特に最近當然行はるべき事業界の大整理後に於きましては、特に復興金融機關等を設けられますから、それ等を通じて十分是等を遺憾なく活溌に動かしたいと思うて居ります、殊に中小工業に付きましては、餘り統制の枠を嵌めないで、創意と工夫を以て自由なる製造をせしめて、活溌なる生産意欲を發達させたいと思ひますので、其の點に十分考慮を加へて行きたいと考へて居ります(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=23
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024・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の失業救濟に對する御質問に御答へ致します、失業救濟の問題は言ふまでもなく非常に重大な問題でありまして、恐らく日本の國家の興廢の懸る所の大問題であります、それで今年は食糧危機と云ふことで苦しみましたが、明年は──明年と云うて、此の秋から來年に掛けましては、恐らく失業危機と云ふ事態が發生すると思ひます、此の問題の解決に付きましては、何よりも先づ國民全體が本當に國家の爲に増産をやらう、生産意欲を昂揚しよう、さうして失業を救濟して行かうと云ふ、燃ゆるが如き信念が一番大切であります、それで政府も勿論出來るだけのことは致す積りで、今度の豫算にも色々と計上してありまして、第一は言ふまでもなく公共事業を果敢に遂行する積りであります、併しながら此の公共事業と云ふことに付きましても、只今御指摘の如く、餘りに能率にばかりに偏しましても、又旨く行かぬこともありまするし、それは能率と授産との中庸を得て巧みにやつて行く積りであります、併しながら公共事業だけでなく、都市の經濟と云ふこと、都市の失業救濟と云ふことにも餘程意を注がなくちやならぬのでありまして、或は戰災地の復興、戰災地の跡片付、或は授産或は補導或は共同作業場、斯う云ふ點に付ても十分意を用ひて相當の豫算を之に廻はす積りで居ります、それから又其の遂行に付きまして、先程御指摘の如く巧く行くかと云ふ點の心配もありまするから、やはり失業對策推進本部のやうなものを作りまして、さうして一々それを「トレース」しまして──追跡しまして、さうして駄目を押して行くと云ふ態勢を執る積りで居ります
〔議長退席、副議長著席〕
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=24
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025・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 御答へ申上げます、戰災學校の復興の問題は我我の日夜心を惱まして居る問題の一つでございまして、理想的、根本的に申しますと、日本經濟の今後の動向から國土計畫を決定致しまして、學校配分の計畫を樹立しなければならず、又單に復舊のみでなく復興でなければなりませぬが、併し現在戰災學校は授業繼續に非常な困難を感じて居りまして、青空學校と云ふやうな悲慘な事情にございます爲に、根本的計畫以外に、應急的復興計畫に依りまして急場を凌ぐ必要がございますので、二部教授、三部教授と云ふやうなことで以て間に合はせて居る状態を續けて行く譯に參りませぬ、隨て應急策と致しまして、文部省内に一月以來臨時學校施設部を設置致しまして、軍所屬建物の轉用、それから殘存建物なり轉用建物の修理に重點を置きまして、之を以て授業困難なものに付きましては、最小限度の新築をすることも認めて參つたやうな次第でございます、是等の應急復興は一應三年の間と云ふことに致しまして、其の後は國内生産再建の状況に應じまして、速かに本復興に移行する豫定でございます、併し一般には豫算及び資材の不足、私立學校に付きましては、先程御指摘になりましたやうな火災保險金の凍結であるとか、寄附金募集の困難其の他金融上の困難に依りまして、復興が思ふやうに進捗致しませぬのは甚だ遺憾でございます、今後は公私立學校に付きましては、戰災學校の復興に關し一層有效なる助成の途を講じまして、目下關係各省と協議致しまして、先程大藏大臣が言はれましたやうに、具體案を作成致しまして、特に特殊預金とか或は寄附金等の問題も十分研究致しまして、關係諸方面の諒解を得て、出來るだけ速かに實現致したいと存じて居る次第であります、之を以て御答辯を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=25
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026・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 苫米地君宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=26
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027・苫米地英俊
○苫米地英俊君 滿足致さぬ點もございますけれども之を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=27
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028・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 北村徳太郎君
〔北村徳太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=28
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029・北村徳太郎
○北村徳太郎君 敗戰とは申しながら兎にも角にも戰爭が終つたのでありますから、戰時中水膨れになつて居りました行政の整理刷新も行はれ、隨て又財政の縮減も必ずや相當に斷行せられるであらうとの國民の期待に反しまして、只今大藏大臣の御説明に依りますと、今囘の豫算案は實に厖大であり、又殆ど是と云ふ整理の跡が見えるやうにも覺えないのであります、依然として不健全財政其のものであることは、赤字が二百五十五億出る──勿論御説明にありましたやうに臨時的なる終戰事務費、さう云ふ風なものが廣汎な部分を占めて居ることは是は勿論でありますけれども、それに致しましても尚ほ不健全財政であると云ふことは、是は免れないのであります、或は戰爭經濟の延長とさへ目せらるるのであります、恐らく國民の齊しく失望して居る所であると思ふのであります、以下私は極めて主要と思ひます數點に付て質疑を行ひたいと思ふのであります
先づ豫算の形式に付てでありますが、凡そ豫算は凡ゆる觀念、形態の粉飾を洗ひ去つて、國家の眞實なる骨組を示すべきものである、國民と致しましては、豫算經濟を通じて初めて先づ正確に國の活動の方向、國の活動の實態を把握することが出來る譯であります、政治が國民の生活に直結して居ると云ふことは、具體的に申しまするならば、是は國民生活に最も例外なしに重大な關係を持つ豫算と云ふものは、國民一般に十分に理解されると云ふふとが其の第一歩でなければならぬと思ふのであります(「ひやひや」拍手)隨て豫算は總での國民に十分に親しまれるものでなければならない、是は當然であります、然るに我が國の豫算の形式は、凡そ以上のやうな考へ方とは縁遠いものでありまして、豫算と云へば分りにくいものである、素人には分らないものである、斯う云ふ風なことになつてしまつて居る、一體其の理由は何處にあるか、私見を以て致しますれば、其の主なる理由は、官廳會計の形式と云ふものが明治當初以來舊態依然であり、其の簿記法が甚だしく時代後れである、今日憲法でさへも平假名口語體を用ひられると云ふ時代に、今尚ほ「アラビア」數字さへも用ひられて居ない、能率的な簿記法さへ採用されて居ない、是は驚くべきことであると思ふのであります、「イギリス」では、從來の官廳別豫算配列の形式を改めまして、之を事業別にし、又政府の一々の事業を經營と見、一つの經營體と見て、其の效果はどうであるか、其の能率は果して上つたかと云ふ風なことが、誰にも容易に檢討出來るやうに一目瞭然に分類されて居ると云ふことであります、私は豫算と云ふものは大體斯うなくてはならぬと思ふ、政府は此の際從來の極めて分りにくい形式、非能率的な形式を改められまして、又決算と對照して、豫算運用の經濟性、效率、さう云ふものを結果からも十分に檢討し得るやうな改正を實行せられたいと思ふのであります(拍手)其の點に付きまして石橋大藏大臣の所見を質したいと思ふのであります、是が質疑の第一點であります
次に只今の財政演説に示されました所の豫算内容、其の豫算内容の質疑に先だちまして、特に重大な點をもう一つ申述べたいのであります、敗戰下我我は慘憺たる生活をして居る、此の慘憺たる生活、内外の諸情勢に即應致しまして、政府が急速にやらなければならぬことは數多くある、而もあれも重大、是も重大、之もやらなければならぬし、あれもやらねばならぬ、さう云ふ風な重大問題が實に山積して居るのであります、而も財政上其の他の制約がございますから、一切のことを同時にやることは出來ない、そので先づ豫算の重點主義が當然考慮されなければならぬと思ふのであります、經濟上、社會上、又思想上危局は足下に押迫つて居る、不安は日々に深刻となりつつあります、政府は一體何から手を著けようとされるのであるか、今日の如き場合であればこそ、豫算を最も效果的に運用して、てきぱきと政治の機動性の切れ味を十分に活かし、之を示して貰ひたいのであります(拍手)即ち再建日本の爲に、能く見透しの利く大所高所から全局を十分に見拔いて誤りのない所の重點主義が、豫算の實行に當つて遺憾なく準備されなければならぬと思ふのであります、此の點に關しまして政府は果して考慮されて居るかどうか、若し考慮されて居ると致しますならば、豫算面に現はれたる其の重點主義は何處にあるのか、其の内容方法等に付て率直なる御答辯を願ひたいと思ふのであります(拍手)是は私の質疑の第二點であります
曾て我が國に於て産業の重點主義が強調せられたことがございます、然るに其の成績は所期の如くに擧らなかつた、一般の期待を裏切りまして思はしい結果を擧げなかつた、其の原因は固より種々ございませうけれども、少くとも其の原因の最も主なるものの一つとして、官廳の「セクショナリズム」の弊を擧げることが出來るのであります、私は豫算の重點主義の必要を述べましたが、それは日本の再建設に向つて敏速果敢にやるべきこと、即時即刻勇斷を振つて小氣味良くやり拔く其の爲に必要なのであります、全國民の政府への期待も恐らくは此處にあるのであります、のみならず各種の客觀的事情は又さうあらねばならぬことを強く要求して居るのであります、然るに茲に豫算の重點主義を行はうとするに當りまして、其の進路を阻む所のものがある、其の進路を阻む障碍物がある、それは一體何であるか、私は茲に最も戒むべく、最も愼むべき二つのことを率直に擧げねばなりませぬ、其の一つは先に申しました所謂官廳の「セクショナリズム」であります、今一つは豫算の分取主義であります、豫算の分取主義と豫算の重點主義とは全く二律背反であり、分取主義が行はれる限り、重點主義は決して行ひ得ないと斷言致しましても誤りではないと思ふのであります、大藏大臣は只今産業の合理化を強調せられました、極めて同感であります、私は其の道の「エキスパート」である石橋大藏大臣が、願はくは行政の合理化、財政の合理化を以て民間に範を垂れて戴きたい、此のことを切に望むものであります、又政府が屡屡國民に公約されて居る所の行政の整理刷新、此のことも果して是はどうなつて居るか、私は今日厖大なる豫算を最も有效に、最も效果的に使ふ爲には、重點主義であらねばならぬと思ふのでありますが、之を阻む以上、申上げました行政活動の此の鈍い點、「セクショナリズム」、分取主義、斯う云ふ宿弊を此の際一掃されなければ、到底是は望み難いことであると思ふのであります、此の點に付きまして關係諸大臣の御答辯を求めたいと思ひます
次に私は質疑の第四點と致しまして、豫算の内容に付て少しく所見を述べながら御答辯を求める次第であります、今囘の豫算は、先に申しましたやうに國民の豫期に反しまして、五百六十億を超える厖大なものであります、又二百五十五億と云ふ赤字を出して居るのでありまして、是は洵に不健全財政と申さねばなりませぬ、而も其の歳入の約半分が租税で賄はれて居る、而も今囘相當大幅の増税が見込まれ、今年度二十四億、平年度三十九億の税増收が見込まれて居るのであります、一體政府は此の増税と共に今囘の豫算編成に當りまして如何なる資金計畫を立てられて居るのであるか、其の財政計畫の基礎は何處に置かれて居るのであるか、増税の立案に當つて國民所得を如何に算定せられて居るのであるか、所得の配分に於て課税が其の如何なる「パーセンテージ」を占め、國民消費に充てられる所のものが何程であるか、それ等の具體的なる點を御答辯願ひたいのであります
今や日本産業の現實は、復興の叫び、再建設の掛聲だけは洵に高いのでありますが、實は壞滅状態を續けて居る、國民經濟は衰弱の極に喘いで居るのであります、斯くして現實は必然的に可なり廣汎な部分に亙つて税源が失はれて居ることを認めねばなりませぬ、言換へれば國民所得は激減して居る、又同時に其の所得の配分所在が甚だしく移動し、又甚だしく偏在して居る、此の點は今更私が絮説するまでもなく、生々しい社會實相として當局も十分に御認識になつて居る所と思ふのであります、然るに税徴收の方法は原則として前年度の實績に依る、斯う云ふことになつて居るやうであります、若しさうだと致しますならば、私が述べ來りました國民所得の激減に依る税源の喪失、又所得配分の移動、殊に青空市場、映畫館或は一部の農漁村等々に新圓の偏在して居ること、斯う云ふやうな現實の事實と、前年度の實績主義と、茲に到底調和し難い大きな矛盾があるのではないかと思ふのであります(拍手)斯樣な實情の下に、國民擔税力の公正的確なる把握が果して可能でありませうか、私は其の點に大きな疑問を持つものであります、國民は日毎苦しい生活の中に喘いで居りましても、眞の平和日本を打立てると云ふ希望の前には、先程大藏大臣も御話になりましたが、さう云ふ希望の前にはどんなに現在苦しくても、祖國を熱愛致しますが爲に必ずしも犧牲を否むものではありませぬ、例へば時に重い税金でも、默々として其の負擔に甘んずることもありませう、併し茲に動かすべからざる鐵則があります、それは其の負擔が飽くまで平等の原則、即ち所謂能力原則に從ふものでなければならないこと、又それが租税主體たる個々人に如何に重く感ぜられませうとも、客觀的には何處までも儼として公平の原則に立脚するもの、即ち正義の原則から微塵も外れたものであつてはならないのであります、是は税に關する必須の要件であります、偖て斯樣に考へて參りまして、今囘の増税が果してそれぞれの能力に正しく應ずる所の公正なる負擔として徴税が可能であるかどうか、洵に變態的社會情勢が現はれて居る、新しい意味に於ての──從來とは違つた意味に於ての新圓以後新たに起つた新所得階層と云ふものがある、定額收入者は最も悲慘なる状態に置かれて居る、社會の中堅層である所の知識層が、今や生活の最も大きな苦難を背負つて居る、斯う云ふやうな時、所得は甚だしく移動し偏在して居る、それを前年度の實績主義の徴税方法を以て果して捕捉し得て、徴税が可能であるかどうか、此の點に疑問を持つのであります、即ち要約致しますと、政府の資金計畫と、之に基く國民所得の測定竝に其の配分はどうであるか、是が一つ、増税を含む所の今囘の財政立案の基本たるべき財政計畫は如何なるものであるか、是が一つ、税源が甚だしく失はれて居ると云ふ今日、果して徴税が豫期の如くに出來るかどうか、是が一つ、私は我が國民經濟の實情から、以上三つの點を質疑の第四點として大藏大臣に御伺ひ致すものであります
次に質疑の第五點と致しまして、是も大藏大臣に御尋ね致したいのであります、此の際税制の根本改革をする必要はないか、我が國の租税體系は初期資本主義的租税體系であり、又戰時から持越した儘である、今や財閥の崩壞があり、財閥の崩壞は必然的に新しき企業整備を必要として居る、都市は戰災に遭ひまして、其の爲に財政的の位置は轉落して居る、斯樣な點から考へまして、根本的に租税對策と云ふものを考へ直す必要はないのであるか、此の點に付て大藏大臣の御答辯を求めたいのであります
次は質疑の第六點として財産税に付てであります、先程も御話がございましたが、財産税は惡税である、是は元本不可侵の税の原理に反するからであります、元を食つてしまふからであります、財産税が惡税であると云ふことは論議の要はない、是は例外のない世界の定論であるからであります、而も有史以來世界最高率の財産税を今日本は取らうとして居るのであります、日一日と我々の生活苦を深刻ならしめる「インフレーション」の嵐に惱み拔いて居る我が國民は、政府當局から「インフレ」防止の爲には、國民に取つては相當痛いけれども、此の財産税と云ふ荒療治をする外途がない、其の代りに此の荒療治をやりさへすれば「インフレ」退治が出來ると、斯樣に説得されて來たのであります、勿論「インフレ」の實態は、戰時中無暗に撒き散らされた臨時軍事費の支出を中心と致しまして、巨額の擬制資本が形成された、而も其の背後にあるべき實質的な見返りは疾に消耗して居る、紙の資本だけが殘つたと云ふ譯でありますから、巨額の貨弊資本がありましてもそれは固より生産を代表する資本ではないのであります、而も擬制資本に依る購買力、或は潛在購買力の顯在化が「インフレ」の正體でありますから、此の擬制資本を壓縮して、「インフレ」に對し其の根本に「メス」を加へると云ふ考へ方は正當であり、此の限りに於て財産税の徴收も亦正當であると認めねばなりませぬ、唯ここで問題となりますことは、元來「インフレ」防止の根本療法なのであるから、世界が曾て經驗しない程の「ドラステイック」な痛い療法ではあるが我慢をして呉れと説得されて、國民は實を言えへば厭々ながら、まあ承知をした所の其の財産税收入が、國民の期待に反して正常なる使途に向けられずして、一般經費、詰り財政上の赤字補填の爲に使はれると云ふ此の豫算案は正に、羊頭を懸げて狗肉を賣るものであると斷じて宜しいのであります(拍手)財産税は先に申しましたやうに惡税である、百年に一囘か二百年に一囘かの、國家が此の惡税をさへ敢て徴收しなければならぬ程、極めて不幸な事態に陷つた場合にのみ、非常の手段として徴收するものであります、隨て是は政府當初の約束通り、擬制資本の壓縮に使ふべきは當然であります、然るに之をどうせ赤字が出るのだから、是で其の赤字補填に使つても、詰りは同じことであると云ふやうな考へ方であるならば、それは使途を誤るものであり、使途を誤ることは明かに邪道であります、經濟的にも、論理的にも、此のことはどうも當を得ない、斯樣に考へるのであります、實際問題と致しまして、此の税に依つて國民の或る階層は必然的に沒落の運命に陷ります、又此の税の物納以外の分は、恐らく封鎖預金を以て拂込まれるものと見られるのであります、茲に第二の問題が起きるのであります、即ち購買力化を防ぐ爲に折角封鎖されて居た預金が、税收入として政府に向けられた場合、政府が之を經常費として使ふと云ふことになれば、結果としては二百五十五億と云ふ巨額の封鎖預金が、政府の手で解除せられて、政府自らの手で之を新圓に換へ、斯くて政府自らそれだけ新圓の増發を敢てさせる結果となり、度々「インフレ」防止の爲と國民を説得して來た所の其の財産税は、「インフレ」防止どころか、逆に政府自らの手に依つて、却て新圓「インフレ」の促進に拍車を掛けることになると思ふのであります(拍手)先程大藏大臣は「フル・エンプロイメント」への途に付て力強く御話になりました、生産の再開が極めて必要であることも力説せられましたけれども、其の「フル・エンプロイメント」の爲にも、生産再開の爲にも、今のやうな状態を以てしては其の實は不可能ではないか、今の現象を以て恐慌的現象であると云ふ見方もございませう、どうせ是だけ厖大な經費を消盡して戰爭に負けたのでありますから、一部にさう云ふ現象は見えませうけれども、兎に角今の状態で此の儘で押して行つたのでは、生産の再開は甚だ覺束ないと思ふのであります
尚ほ私の質疑は、第七點と致しまして、財産税を取つてから後どうなるか、財産税は謂はば根こそぎ税である、此の根こそぎ税である所の財産税の徴收後、經濟的にも社會的にも相當大きな變革が來ることは避け得られないと思ふのであります、隨て謂はば取れるだけ取つてしまつた後の經常財政を一體どうして賄ふのであるか、財産税以後の財政計畫、之を如何に組立てられて居るのであるか(拍手)今國民の大きな不安は實は此の點に懸つて居ると思ふのであります、而も又正に文字通り焦眉の急を要する生産の再開にも此のことは至大の關係があるのであります(拍手)國家の財源は今や痩せ衰へて居る、愈愈涸渇に瀕して居る、榮養失調に陷つて居る、一方今後政府の支出を要するものが益益増加の趨勢を辿るべきことも必至であります、故に其の日暮しであつてはならない、先に質問の第四點として國家の資金計畫、財政計畫に付て御尋ねしたのでありますが、ここで伺ひたいのは、財産税徴收後政府はどうせられる積りであるか、殊に見逃し得ない重大問題は、今後の物價と豫算の關係であります、現在の實情から考察致しますると、政府の厖大豫算の執行は、恐らくは必然的に、更に「インフレ」の激化となり、物價騰貴の傾向を更に煽ることになるであらうと思ふのであります、只今聽きますると、續いて巨額の追加豫算が出るさうである、是では結局雪達磨財政ではないか、又果して此の豫算が物に「マッチ」するかどうか、言換へれば豫算が計畫通りに實行出來るかどうか、此の豫算を計畫通りに實行するだけの確信を御持ちになつて居るかどうか、即ち私は財産税徴收以後の財政計畫竝に豫算と物價との關係に付て御答辯を煩はしたいのであります(拍手)
第八の質問と致しまして、私は政府の公債政策に付きまして御答へを求めるのであります、巨額の公債を一體どうして整理するか、此の問題は種々の意味から實に國家の重大な問題であります、此の公債問題を中心とする我が財政整理の問題が解決致しませぬ限り、實は「インフレ」問題の解決もない譯であります、隨て問題は實に急務である、問題は國家復興の基礎である所の國民經濟を破壞することなくして、どうして財政を整理するかと云ふことにあると思ふのであります、由來金融經濟等の問題は、試驗管の研究や動物實驗の出來ない問題でありますから、單なる「イデオロギー」や、又所謂疊の上の水練では駄目である、施策の實行に當りましては、事の全局を見極め、影響の及ぶ所を洞察致しまして、極めて愼重なる態度を要することは申すまでもないのであります、從來發行せられました所の公債をどうするかと云ふ問題は、今後發行せらるべき公債に付て無言の、併しながら最も鋭い示唆を與へることになるのであります、勿論私は長い間に亙る戰爭の浪費、敗戰の慘めな今日、其の跡始末をせねばならぬ場合に當つて、單なる「オーソドックス」の議論を振廻して、平常のやうな、常態的な、隨て微温的な、又所謂一部資本家の温存的な考へ方には必ずしも同意するものではないのであります(拍手)唯世間往々にして輕々しく公債打切論などが流布されて居るのでありますが、萬一不用意に斯樣なことが行はれますと致しますならば、それは國民經濟の破壞であり、信用組織の崩壞となることを免れ得ませぬ、殊に國民中最も愛國の熱意ある人々を急に路頭に迷はせなければならぬ、なぜならば戰時中國家の指導に最も忠實に服從致しまして、自分の利益を度外視し、物價漸騰の見透しが出來ない譯ではないけれども、世間の換物運動に反對をして、勤勞の汗を公債に換へた人人、さう云ふ中堅層を沒落させることになるのであります、社會構成上大切なる中堅層が沒落致しまして、そこに社會構成上危險なる空洞が生ずる、若し眞中に危險なる空洞が出來ると云ふことになれば、恐らく富裕階級と無産階級とが殘る、さうして富裕階級と無産階級とが對立すると云ふ關係に立ちますならば、其の結果が如何に恐るべきことであるかと云ふことは、世界の歴史の實證する所でありますから、此處で多くを申しませぬ(拍手)唯政府は此の際公債政策に付きまして、はつきりと其の所信、又將來の見透しを國民の納得の行くやうに聲明せられる必要があると思ふのであります、財政收支上政府は今後公債を必要とするのか、或は公債は必要でないとするのか、若し公債が必要であると致しますならば、決して公債を繼子扱ひしてはならない、政府は此の度大藏省證券の發行限度を二百五十五億として居る、今後大藏省證券の發行が漸次出て來ると思ふのでありますが、此の大藏省證券も含めての政府の公債政策に付ての根本方針を示して戴きたいのであります、是が一つ、それから現下の我が金融經濟の實情から、今後相當多額に上るべき大藏省證券の消化が果して可能であるかどうか、私は必ずしも之に樂觀をしないのであります、國債の八割以上を持つ銀行が今や疲弊困憊して居る、氣息あん々たる現状である、斯う云ふ實情に於て此の大藏證券竝に一般公債の消化力と云ふものが果して十分にあると御考へになるかどうか、此の點を伺ひたいのであります、公債は公債を生むの譬へ通りに又雪達磨財政になるのではないかと云ふ不安が國民には相當深くあるのであります、故に以上の點に付てはどうか明確に御答辯を煩はしたいのであります
次に復興金融會社の爲にも將來巨額の起債がされる筈であると思ふのであります、又一方既發公債の打切論も相當有力に傳へられたりして居る際に、一方に於ては農地證券の發行がある、若し公債が打切りにでもなると云ふことでありますならば、是は直ちに紙屑になる、農地證券に付ても是は公債と同樣であつて、公債にして若し反古になるならば農地證券も反古になる、さうすると國民の僞らざる一つの心理状態としては、反古になるかも知れない紙を以て、父祖傳來の美田を政府は捲上げるのかと云ふやうな疑問を持つ者も少くないのであります、若しそれが杞憂であるならば、杞憂であると云ふ點をはつきりとさせる必要がある、此の點に付て大藏大臣の明確なる御答辯を求めたいのであります
次に私は政府の新圓政策と云ふものは、今日の結果から見まして大體失敗であつたと申して間違ひないと思ふのであります、併し私は此處で質問を簡單に致します爲に暫く此の問題は拔きに致しますが、もつと根本的な問題と致しまして、政府は現在の管理通貨をどう考へて居られるか、何時までも此の管理通貨制を持續せらるる御意思であるかどうか、元來管理通貨なるものは權力主義の所産である、便利に過ぎて危險も大きいのであります、若し國の生産力に相當餘剩でもあると云ふ場合ならば、而も又調節の機能が敏感に働くと云ふ場合ならば、國内的の通貨として必ずしも弊害はないかも知れませぬ、併し極端なる缺乏經濟の日本の現状、物の需給の「アンバランス」が日一日と益益甚だしくなつて行く現状に於きまして、茲に管理通貨制其のものに付て考へ直す必要があるのではないか(拍手)勿論只今理想的なる方法として金本位に復歸しろと言つて見ても、それは望ましいことではありますけれども、政府保有の金は既に沒收されて居り、日本銀行保有の金も押へられて居る、金本位復歸は現在では單なる希望──それも恐らく當分實現性のない希望に過ぎないかも知れないのであります、併し私が之を問題として敢て質疑致します理由は、現下の我が國の實情は領土を失ひ、資源を失ひ、其の上に過剩人口を抱擁して居る、今後日本の産業は何としても貿易再開への方向に力を傾倒しなければならないと思ふのであります(拍手)それには諸般の準備を要する、其の準備の主要なるものとして通貨問題を採上げなければならぬ、先程大藏大臣の御説明の中にありましたやうに、一部のやり取りは許されて居る、併しながら今後はどうしても、資源地帶を持たない、過剩人口を持つ所の日本は、貿易再開に大きな望みを懸けて行かなければならぬのであります、それが爲には國内の通貨問題、對外爲替關係の問題、之を一聯のものとして十分に準備に掛らなければならないと思ふのであります、曾て我が進歩黨に於ては、「インフレ」對策中、其の通貨面への施策の一つと致しまして、國有鐵道財團を以て新圓の裏付けとすると云ふやうなことを研究したことがあるのであります、差當り財産税として物納の場合に、其の物件を一應通貨の裏付けにすると云ふことも一方法ではないかと思ふのであります、是と同時に發券銀行たる日本銀行の現在の發券方法に付ても、是は現在大藏大臣が或る機關との關係に於て許可をされると、發行限度と云うものは増額出來るやうになつて居るやうであります、併し是はもつと民主化されまして、議會人、財界人、學識經驗者等より成る委員會の議定を經ると云ふやうな方法を採ることも一方法であると思ふのであります(拍手)兎に角怠りなく準備を致しまして、通貨の正常化の方面へ力を注ぎ、現在は世界市場への出口を塞がれて居りますけれども、一日も早く貿易再開が許されまするやう、又「ブレトン・ウッヅ」の通貨協定への參加なども出來るならば、今から凡ゆる努力を拂ひまして、之に參加さして貰ふと云ふことに十分なる努力をしなければならぬと思ふのであります(「其の通り」拍手)其の點に付きまして大藏大臣の所見を伺ひたいのであります
尚ほ質疑の第十點は、今危機的なる日本經濟の實情に於て、資金計畫、財政計畫が如何に重要であるか、是は既に述べた通りであります、斯かる危機的の現實に直面致して居りまするが故に、思切つた改革も行はなければならない、此の際政府は金融行政を一元化する御考へはないか、資金を重視すると云ふことが生産再開への重大問題であると先程大藏大臣は言はれたのであります是は極めて同感でありまするが、只今の如く農業會、農林中央金庫は農林省、郵便貯金は遞信省、同じく一國の金融の系統でありながら、金融の中軸であるべき大藏省に是が一元化されて居ないと云ふことは、一般の資金計畫、財政計畫の上にも相當に不便があると考へるのであります、先程商工大臣の御説明の中にも中小商工業の金融問題に言及せられましたが、是は商工中央金庫のやうな問題に付て、或は市街地信用組合の問題に付て御説明になつて居ります、けれども現實に日本に於ける中小商工業の本當の金融と云ふものは、此の商工中央金庫や或は市街地信用組合のやうなものでは役に立つて居らぬ、全體の問題として考へますと、もつと一般金融機關が之に呼應して相當大きな貢獻をして居るのであります、斯樣な點から考へましても、此の際思切つて、革新の時機でありますから、金融行政を大藏省に一元化すると云ふことに付て、大藏大臣竝に關係大臣の所見を伺ひたいのであります(拍手)
次は補償問題でありますが、最近補償打切り問題が既に經濟界に相當大きな波紋を捲き起して居ります、政府は國家補償を全面的に打切るのかどうか、若し之を斷行せらるるとしますならば、因つて生ずべき社會的混亂をどうして防ぐか、經濟的破壞を救ふ爲に如何なる手を打たれるのであるか、此の點を明かにせられたいのであります、私は決して補償打切りに反對ではない、今日物資の裏付けのない擬制資本が巨額に存在して居る、當然早く整理をしなければならぬ筈の企業が、尚ほ其の儘に放置せられて居る、是は如何にも不合理であります、是が生産の再開を妨げ、新生日本の經濟の進路を阻碍して居ると云ふことは事實であります、我々は當然敗戰の跡始末として、是等の整理を急がねばならぬことは勿論であります、併し是が整理の斷行は、其の影響の及ぶ所が産業、金融から、經濟、社會全般に深刻に波及するのであります、隨て周到適切なる用意、具體的、科學的なる對策の準備なくして斯かる大手術をやると云ふことになれば、是は極めて危險であると申さねばなりませぬ、補償全面打切りに依る企業整理は、第一次的には軍需關係會社、戰災會社、外地關係會社、賠償に指定せられた會社から、第二次的には是等の子會社、下請會社に及び、又是等の事業と直接間接に結び付く所の各般の事業に波及するばかりでなく、是等の企業の上に債權を有する所の金融機關にも整理が強行される結果となるのであります、更に又此の金融機關に關係を持つ多數の大衆にも其の餘波が及ぶのであります、勢ひ大量の失業群を出さなければならぬことになります、斯く致しまして食糧飢饉と高物價に喘ぐ國民生活をして廣範圍に亙り一層深刻な窮境に陷れる結果になることを免れないのでありますから、洵に心を寒くすべき社會不安、思想的混亂を招くに至ることは、是は實に憂慮すべきことであると思ふのであります、我が經濟再建に一大頓挫を來すことは明白であります、社會的經濟的混亂を防止すべき確實なる方法を先づ準備されたいのであります、補償の全面的打切りを行ふと致しますならば、國家に對する國民の信頼感喪失はどうするか、一般信用組織の崩壞をどうして防ぐか、信用組織が若し一度び崩壞致しますると、是が再建は實に困難である、不幸にして若し斯かる事態に陷りますならば、今後日本經濟再建竝に失業救濟に必要なる公債の發行、資本の調達、預金の吸收等、金融的活動は停止の状態に陷ることを免れないのであります、要するに補償の全面的打切りは、日本經濟再建の一線を飽くまで死守すると云ふ建前の下に處理されなければなりませぬ(拍手)補償打切りに依り一時的財政の均衡が得られますと致しましても、其の爲に國民經濟を崩壞させ、生産を犧牲にすることになると致しますならば、是は改めて産業を再出發させる爲に、又失業救濟の爲に、再び大量の赤字公債發行を餘儀なくされる結果となるのであります、財政は忽ちにして一層不健全化することを免れないのであります、是等の點に付きまして商工大臣、大藏大臣竝に厚生大臣より十分なる所信を伺ひたいのであります
要するに今次の豫算は、敗戰の苦杯を嘗め、悲痛なる現實に直面して、苦しい中から再生日本の起ち上らんとする最初の豫算でありますから、豫算内容には其の特質が十分に織込まれて居らなければなりませぬ、國民は空腹を忍びながらでも、困難な時局の匡救、それから日本の復興、此の二つに付て實に火のやうな熱烈な要求を持つて居るのであります、然るに藏相御説明の所では、豫算を大體通覽した所では、國民の此の切實なる念願、此の悲痛なる要求には必ずしも應へられて居るとは申しにくいのであります、是れ程國民が待ち設けて居る經濟復興に付ても、政府の積極的な熱意は此の豫算面に表現されて居りませぬ、厖大な豫算の中にありまして、經濟再建費と云ふのは非常に大きな數字が出て居るけれども、正味の産業復興費が占める割合は僅かに二分六厘、金額にして僅々十四億に過ぎないのであります、斯樣な事實は洵に情ない、又政府の施策は其の規模が小さい、復興金融會社の資本金が二億である、今日の如く貨幣價値が下落して居る時に、二億位の資本金を以て何が出來るかと申したいのであります、又茲に注意を要しますことは、此の厖大豫算の實行が益益「インフレ」を激化し、人件費の増額に依つて購買力は増しませうけれども、物は増さない、物價高を促進して益益惡循環の速度を早めると云ふやうな危險を孕んで居ると云ふ豫算である、又目ぼしい生産性が豫算の中に認められない、此の點は私の甚だ遺憾とする所であります要するに藏相は生産増強に付て洵に熱心なる御説明がありました、極めて共鳴する所であります、併しながら一面に於て生産の増強は勿論しなければなりませぬけれども、一面に於て現在の社會情勢としては購買力が餘りに偏在して居る、購買力の平均化、其のことに依つて庶民の生活がもつと樂な、もつと生甲斐のあるやうな生活にまで立直さるる所に、同時に大きな問題を孕んで居ることを忘れてはならないと思ふのであります(拍手)以上を以て私の質疑を終ります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=29
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030・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の北村君の御質問に御答へ申上げます、政府は今日までの非常に分りにくい豫算の形式を改める意思があるかと云ふ御話でありますが、是は改めます(拍手)今囘の豫算提出に於きましては正式に之を改める餘地がありませぬでしたが、參考表として或る程度分り宜い計數を御手許に差出したと考へて居ります、豫算の重點は何處にあるか、是は先程も御説明申上げました通り、終戰處理費等の如き特別の經費が多額を算して思りますが、それを除いて考へますと、是れ亦先程申上げました如く、結局失業對策、それを裏返して申せば失業者の勞力を吸收して生産に寄與する、そこに今日の政府の差詰めの政策の重點が置かれ、隨て豫算にもそれが現はれて居ると私は考へて居ります
次に官廳の「セクショナリズム」と分取主義、之を改めねばならぬと云ふ御意見と同時に、改める意思ありやと云ふ御尋ねのやうに考へましたが、言うまでもなく是は改めなければなりませぬし、又私が大藏省を預かる限り各省の分取主義は斷じて許しませぬ(拍手)尚ほ全體の政策と致しましては、各省の所謂「セクショナリズム」は、今般出來ました經濟安定本部に於て政策を綜合し、其の點が大いに調節されるものと信じて居ります
次に財政及び資金計畫に付きましては、現在物價が未だ安定せず、隨て國民所得の計算も確かなものを握ることが困難であります、大體我々は今日、今年度の國民所得を二千億圓餘と考へて居る次第でありますが、是等の計數を調整致しまして財政及び資金計畫も考へつつある次第でありますが、是等の計數に付ては豫算總會等に於て申上げたいと存じます
今年度の徴税可能なりやと云ふ御話でありますが、大體國民所得を二千億圓餘と致しますれば、今年度の普通の租税の割合は比較的少いものであります、無論御話の如く昨年度の收入を基礎とした計算になりますが、私は無論此の比較的困難な經濟界に於ても、今年度だけの徴税は可能なものと信じて居ります
税制の根本的改革をなす意思ありやと云ふ御話でありますが、是は根本的改革を行ひます
それから財産税の使途に付ての御質疑でありますが、是は原則的に申せば、財産税は一應國家の債務の償還に充てると云ふのが正しいと私も考へます、此のことは先程の私の財政に付ての所見を述べます際にも申上げたと思ひます、併しながら同時に今日の日本は一面に於て失業者があり、さうして生産を興す必要がありますから、此の財政は是れ亦先程申上げましたやうに、必然赤字財政になるべきものと考へて居ります、此の赤字は人を動かし、生産を殖やす限りに於ては赤字を生じ、通貨を發行しても私は危險がないものと考へて居ります、でありますから、若し財政の繰廻し上必要ならば、財産税收入は一應國家の債務の償還に充て、同時に國家の必要とする所の歳出の不足は、公債の發行に於て賄ふと云ふ手續を執つて宜い譯でありますが、併しながら現在に於きましては、色々の關係から財産税を直接歳入に結付ける、即ち公債の發行を寧ろ財産税特別會計に任せる方が技術上便利と考へて居る次第であります
財産税徴收以後の經常計畫如何と云ふ御話でありますが、是は財産税を只今計畫致して居りますが、其の計畫の間に於て、今後の經常歳出を賄ふに足る財源は殘す積りで居ります
それから今囘の大いなる財政が「インフレ」を生ずると云ふ、其の點如何と云ふ御質問であつたやうに考へますが、是は先程も申上げますやうに、人が餘り、設備が遊んで居ります場合に、一體國家の財政は如何になすべきものか、唯財政の收支を均衡致せば失業者があつても、遊休施設があつても差支へないと云ふことは言へないと考へるのでありまして、其の場合に於ては、どうしても財政は一應赤字を出して、さうして此の遊んで居る生産諸要素を動かし、出來るだけの生産を興す、此の生産が興れば、即ち其の赤字が克服出來るのでありまして、私は此の外に今日日本の財政處理の途はないと考へるものであります(拍手)
國債整理に付て、御話は多分國債を「カンセル」するが如きことはないかと云ふ御尋ねのやうに思ひましたが、政府は國債を左樣に打切る考へはありませぬ、實は國債に付きましては、國債の利子を一分に下げる、或は之を棚上げする等々の説もありまして、一時は政府に於ても左樣な考へを以て財政を計畫したこともあるやうに私は聞いて居りますが、私は今囘の改定豫算に於ても三分五厘の利子を計上致しました、是は關係方面との十分の折衝を盡しまして左樣に定めた次第でありまして、國債は御承知の如く九〇%までは金融機關の持つ所であり、國債を打切ると云ふことは、換言すれば預金を打切ると云ふことでありまして、此の際補償問題等に絡みまして、それでなくても經濟界の安定を動もすれば害せんとする際に、國債に手を付けると云ふことは斷じてやつてはならないと考へて居る次第であります、此の點はどうぞ御安心を願ひます(拍手)
今後の國債消化如何、併せて農地證券等はどうかと云ふ御話でありますが、農地證券に付ては、只今國債に付て申上げましたと同樣でありまして、折角の土地を國家の爲に小作人に賣渡す、其の代りとして受取る所の農地證券を紙屑に致すが如きことは、今後の日本の斷じてなし得ざる所であり、如何なる政府が現はれても斯樣なことは致さないと考へます、公債の消化に付きましては、無論現在は甚だ困難であることは御説の通りであります、其の場合に於ては、或は財産税特別會計を利用し、或は場合に依つては日本銀行を利用することも亦一時巳むを得ないと考へて居ります
管理通貨の問題でありますが、是は金本位なるものも元來一種の管理通貨である譯でありまして、恐らく學問的には根本的の相違はないものと思ひます、唯違ふ所は、國際關係を結ぶ場合には金を必要と致します、是も説明を致せば長くなることでありまして、茲に説明をする必要はないと思ひます、でありますから、日本も金本位とは申しませぬ、私は管理通貨で宜しいであらうと思ひますが、金をやはり背景に持つ必要はあらうと考へて居ります、現在遺憾ながら日本には金がありませぬ、日本銀行が所有して居る若干の金がありますが、是も先程北村君の言はれた通り、今は抑留されて居る譯であります、併しながら今後「ブレトン・ウッヅ」協定等に依つて日本が國際經濟に自由に入り得る時期は、是は我々が努めて早く齋さなければならぬと云ふことは、先程も聊か申上げた通りでありまして、此の場合に於て何等かの方法を以て金を背景に致したい、併しながら金は物の輸出があれば自ら出て來るのでありまして、必ずしも國内に金の産出がなければ金本位にはなれぬ、金の凖備は出來ないと云ふ譯ではないのでありまして、要するに日本に最も有利な生産物が多量に出來る、例へば金よりも生絲が國際的に見て有利な商品であるならば、生絲を大いに生産して外國に輸出し、其の代りに日本が金を獲得すれば宜しいのでありまして、私は日本の經濟が復興さへ致せば、金の問題は何等憂ふる必要はないと考へて居る次第であります、尚ほ紙幣の裏付けとして鐵等を用ひる、或は其の他の何等かの物を用ひると云ふことも一應の考へでありまして、曾ては左樣な通貨も出されたことはありますが、私は今日の日本の状況に於ては、幸ひにして通貨に對する信用は未だ厚いと考へます、隨て私は左樣な物の裏付けを特に致さなければならぬと云ふことは、只今の所では考へて居りませぬ、發行限度の定め方は、從來の制度は確かに非常に惡いものと思ひます、大藏大臣の一存で發行限度を定め得ると云ふことは間違つて居ります、是は近く日本銀行の制度にも──先程申上げましたやうに、金融制度全般の改革に伴ひまして、日本銀行制度の改革を行ひ、それと共に通貨發行制度に付ても、強力なる何等かの委員會等を設けて、之を定める方式に致したいと考へて居ります
金融行政の集中は仰せの通りでありまして、從來も屡屡世に議論のあつた所であります、併しながら今日は大體大藏省に集中し、且又未だ農林、商工等にあります金融機關も、大藏省と共管になつて居りまして、是は大藏省と緊密なる關係の下に種々なる行政を行つて居る次第でありまして、現状に於てさしたる支障があるとは考へて居りませぬ、併しながら是れ亦根本問題でございますので、金融制度全般の改革と共に、此のことも改めて考究して見たいと存じて居ります
補償の打切りの問題でありますが、是は先程も一寸申上げましたが、觀念論としては、私共は飽くまでも拂ふものは拂ひ、取るものは取ると云ふ建前を執つて行きたいと考へて居ります、併しながら無論補償等に付ては、相當の整理を要することは言ふまでもないのでありまして、而して其の整理の結果が、我が經濟界に惡影響を及ぼすことは極力避けねばならないのでありまして、此の點に、實は現内閣が始まりまして以來今日まで苦心を重ねて居る次第であります、我々は全力を盡して其の點に萬全を期したいと考へて居る次第であります、尚ほ此の補償問題等の整理が行はれれば失業者が現はれると云ふことは、御説の通りでありまして、政府も亦茲に大いに苦慮して居る次第であります、先程も御答へ申上げましたやうに、今日當面の我々の政策の重點は此の點にあり、豫算も亦茲に重點を持つて居る積りであります、尚ほ或は落ちました所があるかも存じませぬが、一應是で御答へと致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=30
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031・北村徳太郎
○北村徳太郎君 自席より發言を御許し願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=31
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032・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=32
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033・北村徳太郎
○北村徳太郎君 尚ほ伺ひたいこともありますが、豫算總會に讓りまして私の質問は之を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=33
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034・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 鈴木茂三郎君
〔鈴木茂三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=34
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035・鈴木茂三郎
○鈴木茂三郎君 私は日本社會黨を代表致しまして、大藏大臣の財政演説に對しまして、財政經濟の一般に亙つて我が黨の質疑を致さんとするものでございます
會期既に終らんとして延長されました今日、漸く豫算案の提出を見ました、何の爲に斯くの如く豫算の提出が遲れたか、我々議會は何等關知する所がございませぬ、出ました豫算案を見ますると、何等の計畫性がない、此の重大なる時期に當つて、計畫に依つて盛られたものは殆どなく、大藏大臣の御答辯に依りましても、何等計畫的なものを私共は見出すことの出來ないことを甚だ遺憾とするものであります(拍手)大藏大臣は、質問に對しまして、計畫的なことは安定本部が出來てからと云ふやうな御答辯もあつたやうでございます、安定本部の蔭に隱れて、答辯を囘避されることは卑怯であると存じます、安定本部は經濟閣僚の上に位して、日本の計畫經濟の施策を樹てる所の重要な位置にあるものでございまするから、組閣に當つて當然總務長官の人選を、大藏大臣よりも、厚生大臣よりも、何人よりも先に行はなければならない性質のものであるに拘らず、今日まで何をして居つたのか、教授「グループ」の後を追廻して、媚態を盡し、遂にG項に該當する者を捉まへ、之を捉まへ損なつて、漸く資本家階級の「チャンピオン」を安定本部の總務長官に迎へるに至りましたが、新聞は之を評して、蟹は甲羅に似せて穴を掘ると云ふ批評を下し、落著く所に落著いたと云ふ批評を致して居ります、私は斯くの如き安定本部に期待を致すものではございませぬ、私の質問は計畫的な問題に觸れまするが、私は大藏大臣其の他現内閣の所見を質さんとするものであります
私の質問は大體三つに分れて居ります、第一は敗戰後の日本の經濟の骨組、骨格をどうして作るか、經濟體制、經濟機構のあり方に付て、如何やうなものを作るかと云ふことが私の質問の第一點でございます、第二の點は軍需補償の打切りに關聯致しまする財政、財界整理の問題でございます、第三の問題は「インフレーション」と其の惡性化防止の問題でございます、此の三つは何れも關聯を致して居りまするが、便宜上三つに分けまして、順次御尋ね致したいと存じます
第一の日本の經濟の骨組、骨格に關しましては、賠償であるとか、或は財閥の解體など、大資本、大産業に關する問題が重要な觀點となつて參ります、賠償の問題に關しましては、「ポーレー」大使に依りまして、三つの原則、即ち日本から戰爭の能力を剥奪すること、日本に平和經濟を維持せしめること、極東の經濟を發達せしめること、此の賠償の三原則に基きまして、十二月七日に「ポーレー」大使の中間報告が行はれ、續いて五月から六月に掛けて、極東委員會に於て大體の賠償の輪廓が決定致したやうでございます、曩の「ポーレー」大使の時に比べまして、其の後の極東委員會に於ける決定は、日本に於ける人口の増加を豫定されまして、賠償の範圍が幾らか緩和されたやうでございます、併し大體に於て既に凡その賠償の輪郭が決定致したのでありまするから、私が御尋ね致したいことは、日本の今後の經濟の機構のあり方を決定致しますに付ては、賠償に依つて撤去された後に、どれだけの生産力が殘るかと云ふことでございます、是が賠償に關する私の質問の第一點でございます、經濟の骨格に關する賠償の問題は是でございますが、賠償の問題を御尋ね致します序に、私は賠償に關しまする經過であるとか、内容に關しまして、例へば賠償の經過と今後の見透し、海外の資産、或は國内の賠償に充てられて居る物の價額、之を補償するのかしないのか、補償するかしないかと云ふことは、後に御尋ね致します所の「インフレーション」に重大な關聯を持つて參ることは當然のことでございます、或は何年に於て撤去が行はれるのか、是は日本經濟再建の目標を何處に置くかと云ふことを決める基凖にもなるものでございますから、凡そ撤去の期間は何箇年であるか、其の費用は四百億圓と傳へられて居りますが、斯樣なことも此の機會に明白に致して戴きたい存じます、一應極東委員會に於て賠償の範圍は決定せられたのでありまするが、併し尚ほ賠償に關しましては、極東委員會に於て決つたものは最高の限度であつて、此の最高の限度は日本の經濟の生産の水凖が決められてから、其の中からどれだけ殘すかと云ふことが決定されることに相成つて居ります、私が傳聞する所に依りますると、政府は賠償協議會と云ふものを作つて、賠償に關する凖備に當つて居られると云ふことでございまするが、「マッカーサー」司令部の意向に依りますると、撤去されて大陸に移される機械類は、大體に於て肥料の生産、農機具の製造に充てられると云ふことでございます、私共長く大陸の情勢を知り、又日本の生産の状態を知る者に取りましては、機械を大陸に移して大陸の原料を使ふよりも、勞働者の技術、熟練、水利、電力其の他の關係に於きまして、寧ろ大陸の原料を國内に於て使用致しました方が、却て極東經濟の發達に有利だと云ふ條件を私は屡屡發見致します、(拍手) 私共は賠償に對しましては全幅的に之を支持致します、併しながら斯樣な問題に關しましては、政府に於きましては出來得るだけ聯合國側の好意ある理解を深められるやうに努力されてはどうかと云ふことが、賠償に關する私の御尋ねでございます
次は經濟機構を決定致しますに付ては、財閥解體の問題が重要な問題となつて參ります、私は財閥の問題に付きましては、是れ亦「マッカーサー」司令部に依つて此の解體の方針が示されて居ります、それは平和的經濟の建設、即ち日本から戰爭の危險を取除くこと、民主的經濟の建設、即ち少數者に依る獨占を打破すること、此の二つが「マッカーサー」司令部に依つて財閥解體に關して示された方針でございます、此の方針に基いて著々財閥解體の仕事が進められて居るものと推測致しますが、之に關しまして私は、財閥の解體は一つの企業をばらばらに組みほどいて中小工業に還元する方針であるかどうかと云ふ此の一點を御質し致したいのであります、若しも中小工業にばらばらにして還元すると云ふことになりますると、資本必然の發展の法則である、資本は低きより高く、高度化して參ります所の資本必然の發展に反しまして、歴史を昔の古い―前世紀の資本主義時代に逆轉せしめることになりますだけでなくて、新しき日本の經濟の建設は、斯樣に中小工業のみを骨格と致しましては、是れだけを骨組と致しましては、八千二百萬人に殖える同胞を養つて行く經濟力を斷じて持ち得ないと存ずるものでございます
(拍手) 斯樣な意味に於きまして、財閥の解體に當たりましては、其の持株の中適當なものを開放致すに致しましても、出來得るだ多數の纏まつた株を一應國有に移しまして、此の經營は國民の代表者を參加させました所の、所謂社會化した所の委員會に依つて經營を行はんとする、斯樣な方法に致しますれば、解體された財閥が少數者に依つて獨占されると云ふことも免れ、又ばらばらに小さく解體して、日本經濟の基礎を弱化せしめると云ふこともなくなると存ずるものでございます
(拍手) 政府に於きましては、財閥の解體に當つて斯樣な方針を執られる御意向はないかどうか
序に所謂國家資本「トラスト」──「マッカーサー」司令部の命令に依つて、政府は財閥の獨占資本の解體を急いで居りますが、併し日本に於ける獨占は、國民の上にのし掛つて居る國民の經濟を支配して來た所の獨占資本は、唯財閥だけでなく、所謂専賣であるとか、國鐵であるとか、遞信であるとか云ふ、國家資本に依る所の大「トラスト」が、今日まで其の儘に殘存されて居ります、私は是等は今日まで少數の官僚の經濟的地盤となつて參りまして、少數の官僚に依つて戰爭の危險に入り込んだ事實に顧みまして、此の際「マッカーサー」司令部からの命令を待つまでもなく、政府自ら國家資本の經營を、財閥と同じやうに、社會化された所の委員會の經營に移す御方針はないかどうかと云ふことを御尋ね致します(拍手)
次には財閥の特殊整理委員會に付て―是は委員長さへ決まらないで、開店休業の状態にあるやうでございます、財閥解體の政府の手續が遲れて居りますることは、生産の阻碍に大きな影響を與へて居ると存じまするから、財閥の持株整理委員會をして急速に活動を行はしめ、私の只今御尋ね致しましたやうな方針に依つて財閥の解體を處理される御意思ありや否や
次に「マッカーサー」司令部は十一月六日附を以て、日本に「トラスト」を制約する所の「アンチ・トラスト」法と云ふやうなものを作つて、此の議會に提案することを命じて居ります、前の内閣でも産業秩序法案要綱と云ふものが出來て居つたやうに聞いて居ります、其の案の如何は別と致しまして、此の議會に何が故に産業秩序法案を提案されないのであるか、或は又戰時中に統制會と云ふものが作られて居ります、是は今日所謂獨占「カルテル」の役割を持つて居るものでございまするから、當然財閥の解體と同じ意味に於て統制會を處斷しなければならぬと存ずるのであります(拍手)
私は財閥或は又賠償の問題に續きまして、斯樣な財閥、賠償に對する所の御方針が決まつて參りますると、大體に於て日本の經濟の骨格と云ふものを決める基礎條件が出來てくるやうに存じます、「ドイツ」に於きましては、賠償は大體に於きまして、機械を撤去する期間を一つの條件と致しまして、一九四九年、昭和二十四年を大體の目標に置きまして、ここを目標として一九三八年、昭和十三年の生産力の大體五割から五割五分、ここまでの生産を復興して行くと云ふ生産の水凖と、凡その目標と云ふものをはつきりと決めまして、生産に關しましては、私が只今御尋ね致しましたやうな計畫が、極めて詳細に樹立されて居るのでございます、日本に於きまして、敗戰後の日本の經濟を再建致すに當たりまして、其の目標を何處に置くか、昭和何年に目標を置き、其の目標までにどれだけの生産力、生産の水凖を形成せんとするものであるか、是は經濟再建の根本理念に觸れる問題でございまして、政府の御答辯を得たいと存じます
それと同時に私が只今まで御尋ね致しましたのは、主として大資本、大工業でございましたが、先程から個々の質疑應答に於ても見られますやうに、新しき日本の經濟に於きましては、特に中小工業と云ふものが重要な位置を持つて來ると存じます、現に動いて居ると所の中小工業、或は戰災に因つて燒かれた所の中小工業が、大資本、大産業の中にどれだけの位置を占めると云ふ方針を以て、經濟の再建計畫を立てられようとして居るかどうかと云ふことも御伺ひ致したいと存じます、又日本の經濟の再建に當りましては、私は最も重要なことは、積極面に於きましては、生産の手段でもあるとか、原料であるとか、消極面に於きましては、消費資料、食料などの輸入を絶對に確保することが必要だと存ずるのでございます、大藏大臣は國際的な經濟機關への囘復を目指して居られるやうでございますが、私は先づ其の前に、斯樣な、例へば「ブレトン・ウツヅ」の通貨協定のやうなものに入れと云ふ前に、私は政府に於かれましては、日本の經濟再建を早める爲に、「インフレーション」を防止する爲に、一日も早く「マッカーサー」司令部の十分なる理解を深められて、「アメリカ」との間に「クレヂツト」を設定される御考へがあるかないかと云ふことを御伺ひ致したいのであります(拍手)
經濟の再建に當たりまして、私は何よりも勞働階級が、勤勞階級が、其の勞働力と生産意欲を以て日本の經濟の再建に當るのでなければ、私は日本の經濟の再建は斷じて不可能と存ずるのであります(拍手)我々社會黨に於きましては、勞働階級が、建設的な方面に向つて凡ゆる力を向けなければならぬと云ふ必要を主張致して居るものでございます、併しながら政府の執つて居る一つ二つの例を以て見ましても、私が御尋ね致しました範圍内に於て實例を採つて申しましても、賠償協議會と云ふものに色々な資本家の代表を澤山入れて居られまするが、此の賠償協議會に對する勞働組合なり、或は從業員を代表する所の勢力が非常に少いやうに存じます、或は持株整理委員會であるとか、或は兵器處理委員會であるとか、或は企業整理委員會であるとか云ふ、色々な建設に役立つ委員會を持つて居られまするが、是等には殆ど勞働階級の代表者と云ふものが入つて居らないやうに存じます、是は政府に於きまして、斯樣な點に付て十分御答辯を求めたいと存じます、私の日本の經濟の骨格を決める大體の基礎條件に關する質疑の第一は之を以て終ります
第二は軍需補償の打切りに伴ふ所の財界整理の問題でございます、軍需補償に關しましては、本日大藏大臣からはつきりと之を打切ると云ふ御答辯を得て居りませぬが、併しそれは本日私の質疑に於ては第二と致しまして、軍需補償の問題に關しましては之を打切るべし、支拂ふ必要のないと云ふ主張を致して參つたのが我々社會黨でございます、社會黨は大口の國債であるとか、或は軍需資本家に對する軍需補償であるとか、斯樣なものは今日日本の經濟再建の上に支拂ふ必要がないと云ふ主張を致して參つたものでございます、滿洲や或は中華民國から着のみ着の儘で歸つて參りまする所の歸還者に對しては、極く僅かな涙金より出さないと云ふやうに私は承つて居ります、或は又戰爭中に戰線に動員された所の我々の同胞、或は又戰災を蒙つた所の澤山の戰災者達が、戰爭の犧牲を負據致して居りますのに、戰爭中に儲けた所の軍需資本家が、敗戰の今日國家から軍需補償を貰はうなどと云ふことは不都合千萬であると云ふのが私共の主張でございます(拍手)私共が之を主張致しまする理由は三つございます、戰爭は儲からぬものだと云ふ聯合國側の指示を、資本家をして身を以て體驗せしめて、戰爭の危險を防ぐことが第一であります、惡性「インフレーション」の潛在力となつて居りまする所の戰時利得を取除いて、國民の生活を惡性「インフレーション」から護らなければならないと云ふことが其の第二でございます、第三には軍需補償も拂へと云ふやうに、段々と斯うして拂つて參りますと、日本の健全財政を確立致しまして、日本經濟再建の基礎を築くことが絶對に不可能なのであります、我々は斯樣な三點の理由より、大口の國債であるとか、或は軍需補償の支拂の打切りを主張して參つたものでございます、資本家であるとか、或は歴代の政府も之に強力に反對をされました、此の内閣も最近まで反對をされて居つたやうに聞きます、或る者は、是は國家の公約であるから、支拂はなければならないと云ふことを言つて居ります、それならば、私は此處に古い十圓札を持つて來て居りますが、此の十圓札には「此券引換に金貨拾圓相渡可申候」と公約が書いてございます、併し斯くの如き公約は、國家の目的の變更の爲には、一片の勅令に依つて反古にされて來たことが今日までの實情でございます、或は又預金者に迷惑を掛けるからと、云ふことで反對をされて居ります、預金者に迷惑を掛けないと云ふことは、預金者が持つて居る預金を何時でも引出して來て使へること、是が預金者に迷惑を掛けないことでございます、然るに政府に於きましては、銀行の救濟の爲に預金者の預金を封鎖したではありませぬか、私は斯樣な國債或は又軍需補償の打切りに對する凡ゆる方面の反對を一々此處で駁撃致して居る暇がございませぬ、我々は軍需補償の打切りから起つて來るところの色々な影響に對しましては深く考へて居るものでございます、私共は決して之を過小評價せんとするものではございませぬ、併しながら此の影響が徒らに大きいと云ふことを宣傳致しまして、軍需補償の打切りと或は財界の整理に依る所の犧牲を、戰爭の犧牲者、勤勞大衆の肩に掛けんとする態度に對しまして私共は絶對に反對致すものでございます(拍手)政府は先程の答辯に依りますると、軍需補償は打切るかも知れないと云ふやうな意向を洩らして居られます、私は恐らく極東委員會の方向を見ましても、政府の方針の如何に拘らず、政府が如何に打切りたくなくても、打切らざるを得ないことに相成るであらうと存じます(拍手)政府は、今まで反對をされて參りましたに拘らず、今日の御答辯に依りまするも、或は前の議會の答辯に依りまするも、若しも之を打切ることになればと云ふ含みのある答辯をされて居ります、然らば今日まで軍需補償に反對をして來た所の政府が、如何なる理由に依つて軍需補償を打切られんとするのか、私は軍需補償の打切りに對する政府の御所見を質したいのであります、是は其の政府の方針の如何、軍需補償の打切りに對する理由の如何に依りましては、財界の整理、軍需補償の打切りから起る所の財界の影響に對しまする處理に關して、色々と方法が變つて來るからであります
第二の點は國債の問題でございます、特に大口の國債の問題でございます、國債に關しましては、主として本年三月末に千四百億圓の國債がございましたが、其の中大部分のものは銀行が所有して居ります、日本銀行を除く所の各金融機關が五割七分を所有して居ります、其の他三割二分は政府關係で所有しております、個人と法人が持つて居りまする所の國債の所有率は〇・九、僅かに一割足らずの九分に過ぎないのでありますが、此の國債に付きましては、先程大藏大臣の御答辯にもありましたやうに、利息を或いは一分に減らすとか色々な意見が今日まであつたやうでございます、私は此處に資料を澤山持つて居りまするが、之を省略致しまして、國債破棄又は國債の利子を低減、引下げを致さない所の理由を承りたいのでありまするが、其の理由よりも、國債を破棄しないと致しますならば、然らば果して政府は戰時中に發行致しました所の軍事公債を今後國民に必ず支拂ふと云ふことを約束する所の、唯口約束でなくて、確實に國民が納得し得るやうな財政計畫を此處で示して戴きたいのであります(拍手)何等の財政計畫なくして、國債は拂ふと云ふやうなことは、さうして軈て又國債を棚上げし、或は國債の棒引をして我々の意見に追隨して參りますることは、徒らに國民を欺瞞すにる過ぎないと存ずるのであります(拍手)或は又此の財界の整理に當りまして、金融機關の救濟を政府は餘りに重く考へられて居るのではないかと云ふ、此の一點を質したいのであります
金融機關に關しまして、主として六大金融機關と致しましては、終戰の直後に興業銀行を含む帝國銀行、住友、三菱、安田、三和などの六大銀行は、其の全部の貸出の八割八分までは軍需關係の貸出でございました、その總資産の七割二分までは六大銀行の軍需の貸出でございます、斯樣に六大銀行は厖大な所の軍需關係の財源を所有致して居りまする關係上、終戰後六大銀行の手許は非常に逼迫をして參りました、さう致しまして一方に於きましては預金はドンドン引出されて行く、貸出は殖えて行く、隨て其の金のやり繰りに困つて、日本銀行から高い利子の金を借りると云ふ非常な窮境に陷りまして、銀行の利鞘が惡くなり、破綻の一歩手前に參りました爲に、前内閣に於きましては突如として、所謂國民の預金を犧牲と致しまして、國民の預金を封鎖致しまして、六大銀行の手許を救濟致したことは明白でございます(拍手)是は私が申上げるまでもなく、大藏大臣自身も他の機會に於て、政府の執つた金融緊急措置が實際の「インフレ」對策でなくて、銀行の救濟に過ぎない
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=35
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036・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=36
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037・鈴木茂三郎
○鈴木茂三郎君(續) と云ふことを大藏大臣は明瞭に申して居られます、唯是は前内閣だけでなくて、此の内閣になりましてから、六月二十日に執られました所の金融に關する措置に致しましても、大藏大臣が大臣となる前に社長であられた所の東洋經濟新報は、石橋藏相が六月二十一日執られた所の金融に關する新措置は―今囘の新措置は切迫した大銀行筋の危機を囘避せしめる爲に、更に一段の努力が拂はれたものと評し得る―石橋藏相の居られた所の東洋經濟新報の社説に於て、此の石橋藏相の執られた六月二十一日の措置は、餘りにも大銀行筋の危機を囘避せしめることに一段の努力が拂はれ過ぎたと云ふことを指摘致して居るのであります(拍手)石橋藏相に依りますると、今囘の財界の問題は金融恐慌であると言つて居られます、私は其の問題に付て此處で論議を致しませぬ、金融恐慌であるかどうかは別と致しまして、銀行が、其の手許が逼迫し銀行を救濟する爲に預金者の犧牲を要求して居ることは事實でございます、今日まで幾度か日本は金融恐慌に襲はれて居ります、例へば昭和二年に御承知のやうに大きな金融恐慌が起りました、此の昭和二年の金融恐慌に當りまして、例へば十五銀行に於きましては、重役は三割三分、七百萬圓の私財を出し、未拂込の株金を拂ひまして、總負債に對して、赤字に對して三割三分の私財を投出して、預金者に對する申譯をされて居るのであります、今日六大銀行に於きまする未拂込資本或は諸準備金などを調べて見ますると、六大銀行だけで約十一億圓の諸準備金と未拂込金がございます、私が大藏大臣に御尋ね致したいことは、預金者に迷惑を掛けて、銀行の救濟をしまするやうな今囘の財界整理に當りましては、先づ何よりも前に、銀行資本家に未拂込の株金を拂込ませ、今まで溜めて居つた所の私財を投出させることが、假令額は少くあつても、私は預金者に對する所の當然銀行資本家の負はなければならない責任であると信じて疑はないのであります(拍手)私は先程政府が…
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=37
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038・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=38
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039・鈴木茂三郎
○鈴木茂三郎君(續) 今囘の財界の整理、軍需補償の打切りに依る所の財界整理の影響に關しまして、我々は決して過小に、少く評價するものではございませぬが、政府のやうに大きく之を評價して宣傳致しますことは、此の整理の犧牲を、整理の影響を勤勞階級の肩に掛け、中小工業の背中に負はせるやうな危險を十分に感じまするが故に、財界の整理に當りまして、政府は中小工業であるとか、或は又戰災者であるとか、引揚同胞等に對しましては、十分なる考慮を拂はれる用意ありや否やと云ふことを御尋ね致したいのでございます
同時に此の機會に、財界の整理に依つて街頭に投出される所の失業者の數は幾らであるか、或は又財閥の解體、賠償に依つて街頭に投出される所の失業者が幾らあるかと云ふことを個別に承りまして、失業者に對する所の手當が、其の救濟の方法が、先程厚生大臣に依つて御説明になりましたやうなものでは、今日此の財界整理其の他に依つて輩出致して來る所の、大量の失業者に對する手當と致しましては、極めて不滿足のものであると存じますが故に、之に對する厚生大臣の御答辯を求めたいのであります
第三は是等の點と關連致しまして、當面の「インフレーション」の問題でございます、「インフレーション」の問題に付きましては、總理大臣の今議會に於ける施政方針に依りますると、今日の時局を、總理大臣は、我が國は洵に容易ならぬ事態に際會致して居りますと認識されて居ります、「インフレーション」に對しましては、惡性「インフレーション」を絶對に生ぜしめざるやう、必要なる對策を行うべきは當然でありますと、斯樣に施策方針に於て述べられて居るのであります、然るに石橋大藏大臣は、藏相になられる直前に、御承知のやうに東京第二區に於て立候補されて居りまするが、其の選擧公報に於て、今日の時局を如何に認識されて居るかと言ひますと、石橋藏相の時局認識は…
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=39
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040・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=40
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041・鈴木茂三郎
○鈴木茂三郎君(續) 病氣に譬へて言へば、今日の日本は決して身體が芯から疲れて居るのではありませぬ、病氣は極めて根が淺い、戰災地の住宅費の如きものは何でもないと云ふやうに、今日の時局を極めて樂觀的に認識され、「インフレーション」に對しましては、新圓經濟に入つてからも―是は五月十一日號の東洋經濟でありますが、新圓經濟に入つてからも依然として「インフレ」が叫ばれて居るが、決して「インフレ」ではなく、やはり金融恐慌である、斯樣に今日は「インフレーション」でないと云ふことを斷言されて居るのであります、斯樣に今日の財界の時局に對し、「インフレーション」に對しまして、此の内閣に於きましたは、總理大臣と大藏大臣の認識と見解には根本的な相違があることを、私は皆さんと共に注意しなければならぬと存じます(拍手)併しながら私は只今も大藏大臣のより「インフレーション」に關する變轉極まりない御所論を承わりましたが、此處で大藏大臣と「インフレーション」に關する論戰をする興味を持つては居りませぬ、今日我々國民は大藏大臣の認識の如何に拘らず、現實に國民は「インフレーション」の眞只中に置かれて居る、「インフレーション」の眞只中にあつて、今日は「インフレーション」であるとかないとか云ふやうな議論を此處で致すことは、私は差控へたいと存じます、我々社會黨の「インフレーション」に對する對策は、第一に何よりも生産を増強することであります、生産の増強は今日のやうに「インフレーション」の時代に於きましては、段々と「インフレ」が増進致しますに連れて、物價の値上りを待つて―資本家は仕事をしないで、物の値上りを待つ方が利益だと云ふ状態も片方にございます(拍手)或は又今囘のやうに金融面に對して政府が締切ると、生産が止まると云ふやうな事態も起つ參りまして、昴進致します「インフレーション」の眞只中にあつて生産を起しますに付ては、斯樣な「インフレ」の面から生産を切離しまして、生産を強力に展開するのでなければ、私は斷じて今日の時代に生産の増強を來すことは出來ないと存じます(拍手)斯樣な意味に於きまして我が社會黨が、基本産業である所の石炭事業の國有を主張し、或は又食糧問題解決の爲に肥料事業の國有を主張し、或は又金融機關の社會化を主張致します理由の一つは、今日「インフレーション」の中にあります所の生産を、國家の強力な力に依つて生産の車を動かして行かなければならないと云ふのが、我々の國有論の一つの理由でございます(拍手)或は又第二には、通貨面に於て先程申しましたやうな軍需補償であるとか、さう云ふ「インフレーション」を起して來る所の戰爭中に作られた滯在力と云ふものを取除いて、或は又會社に資産整理令を發して、今日のやうに財界の整理を行ひますことが「インフレーション」解決の第二の問題であります、第三の問題は、財政に關する五箇年計畫を樹立致しまして、之に基いて、只今執つて居りまする政策は「インフレーション」を或る限度に於て解決せんとする方策でございますから、我々は財政計畫を樹立致しまして、金と紙幣との關係を解決致す爲に「インフレーション」の根本的解決の計畫を樹立して、之に邁進することが「インフレーション」解決の第三の點であります、第四は食料問題の解決でございます、終戰直後に、今日までの歴代の内閣が我々の斯樣な「インフレーション」對策を實行致して參りましたならば、今日の斯樣な事態に立至らずに濟んだと我々は考へるのであります、斯樣な「インフレーション」の根本的な問題は何れ豫算委員會に於て重ねて質疑致したいと存じます
差當つて新圓の問題でございますが、大藏大臣は、新圓に關しては將來封鎖する意向はないと言つて居られます、併し新圓に關しましては唯大藏大臣が新圓の封鎖はしない、新圓の「インフレ」は起らないと此處で言明されたことに依つて、新圓の「インフレ」を防止することは斷じて出來ないのでございます(拍手)私は此處に日本銀行の發表致しました所の資料を持つて居りまするが、今日財界整理が行はれ…
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=41
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042・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=42
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043・鈴木茂三郎
○鈴木茂三郎君(續) 軍需補償を打切られんとして居りまする折柄、必ずしも私は日本銀行の資料を絶對的のものとして主張するものではございませぬが、之に依って見ましても、七月には新圓は五百五十一億圓になり、八月には六百三十九億圓になり、十二月には九百三十億圓になると云ふことを日本銀行に於て發表致して居ります、併し私は、大藏大臣の御意見のやうに、出來得るだけ増税に依つて新圓を吸收して來るとか、或は又大藏大臣が御答辯なりましたやうに富籤を發行するとか、或は割増貯金をやるとか、斯う云ふ細かいことに依つて新圓の「インフレ」を防止することは斷じて今日出來ない危機に立至つて居るものであると存ずるのであります(拍手)
財産税に付きましても、我々が財産税を主張した理由は、戰爭に依つて儲けた者に其の戰時利得を吐き出させて、之に依つて「インフレーション」を防ぐと云ふことが、我々が財産税を主張した理由の根本であつたのであります、然るに今囘の政府に依りますと、一方に於て財産税を取つて來て、此の財産税を一般會計に繰入れて、之を市中に放出する、是は大藏大臣も極めて「インフレーション」の上には憂慮すべきであると云ふやうに此處で御述べになつて居ります、私は今囘の改定豫算案を見まして、此の豫算の中から厖大な「インフレーション」を助長し、「インフレーション」を煽る所の、生産に役立たない所の澤山な金が市中に放出されると云ふことを見まして、大藏大臣に對しまして、新圓の「インフレーション」に對して、斯うすれば必ず「インフレーション」は防げると云ふ具體的な方策を此處に示されんことを私は要求致すものであります(拍手)特に「インフレーション」の問題に關しまして、今日最も重要な問題は政治力でございます、此の内閣ならば、此の大臣ならば必ず「インフレーション」を防ぐと云ふ信頼が國民になければ、其の國民の信頼をみち得るに足る政治力を持つものでなければ、私は「インフレーション」を防ぐことは斷じて不可能であると信じます、此の點に對し政府は果して現内閣の政治力を以て「インフレーション」を防止し得る所の確信を持たれるかどうかと云ふことを御尋ね致すものであります
「インフレーション」に關する第二の點は、當面の解決點を何處に置くかと云う基準であります、假に財界の整理をするに致しましても、凡ゆる不良資産を一擧に排除をして、「インフレーション」を一擧に解決するのであるか、さうでなくて何箇年間の一つの計畫を持つて、其の計畫に從つて除々に此の整理を行つて行かんとすつのであるか、さう致しますと、其の解決點を何處に置くか、是は財界整理の問題にも關連致します、「インフレーション」の解決に致しましても、其の解決點を一應どの點に置くかと云ふことは極めて重要であります、大藏大臣の御答辯に依りますと、公定價格と闇値との中間が、大體大藏大臣の御認定になつて居る只今の解決點であるやうに、私には受取れるのであります、今日の物價を──斯樣な一つの物價の問題に致しましても、唯大藏大臣の言はれるやうに、何の基準もなくて、何の據りどころもなくて、公定價格と闇値との中間に物價の基準を置かうと云ふやうな、其の日暮しの方針は極めて危險である、又有害であります、私は茲に財政計畫と云ふものを明確に樹てまして、「インフレーション」の根本の解決と財政の健全の爲の計畫を立てまして、此の計畫に基いて、今日の流通面に於ける物の流通する量、或は單價或は國民所得と云ふものを睨み合せまして、極めて合理的な物價の基準と云ふものを立てますれば、之を基準として、財界の整理或は「インフレーション」の解決點と云ふものを、此の基準に依つて決つた物價の安定點に求めることが出來ると存じますが、大藏大臣は今日の物價を、闇値と公定價格の中間に物價の安定點を求めんとせられる、其の大藏大臣の科學的な基準を承りたいと思ふのであります、それと關連致しまして、提出されました所の豫算案の物件費は非常に澤山ございますが、此の物件費の單價は何を基準として出されたのであるか、或は又終戰處理費の單價が極めて安いやうに見受けられます、此の終戰處理の單價で果して是だけの仕事が出來るかどうか、若しも此の豫算が大きな穴を開けた場合に、大藏大臣は其の不足の財源を何に求められんとして居るのであるか
「インフレーション」に關する第三點は、増税と税制の問題でございます、大藏大臣は豫算案との一緒に増税案を提出されて居ります、此の増税案に對しましては、我々社會黨は豫算委員會に於て詳細に質疑致し、檢討を加へたいと存じて居りまするが、私が此處で御尋ね致したいと思ひますることは、本年度の増税でなくて、大藏大臣は、來年、再來年の此の大きな赤字に對して、財源の不足に對して、大増税を行ふ以外に、此の赤字を埋める所の財源を何處に求められんとして居るのであるか、私は今日戰後に非常に澤山な國民の負擔となり、國民の頭上にある所の澤山な軍事公債であるとか、或は軍需補償の問題が、今日の大きな問題となつて居ることを考へまして、戰爭中に於て東條内閣其の他の執つた所の態度に付きまして、戰爭中に於て出來るだけ増税に依りまして戰費を賄つて參りましたならば、當然戰後に今日のやうに大きな軍事公債を背負ひ、軍需補償を背負ふことはなくなつたのでございませう、然るに歴代の政府は、戰爭の最中に増税を行つて國民の負擔を重く致しますると、國民が戰爭に對する反對を起す、或は又政府は出來るだけ國民に戰爭は儲かるものだと云ふことを教え込んで國民を戰爭に驅り立てる爲に、戰爭中に増税を行はなかつた爲に、戰敗後の今日、我々は重い負擔を軍事公債、軍需補償に於て背負はなければならぬと云ふことになつて居ります(拍手)私は此のことを大藏大臣が來年以降の財政計畫の上に考慮されなけらば、又同じ轍を踏まれるのではないかと云ふことを憂慮致しまして、來年度以降に於ける大藏大臣の數箇年の財政計畫と、之に基く所の赤字に對する財源の補填を何れに求めんとするものであるかと云ふことを御尋ね致したいのでございます、私の質疑は之を以て終了致します(拍手)
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=43
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044・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 鈴木君の御質問が最初に賠償に觸れましたから、順序と致しまして私より御答辯致したいと思ひます
御話の通りに「ポーレー」大使が十二月に聲明を致されましたので、或る程度の範圍は掴むことが出來ました、併しまだ極東委員會等で色々論議されて居りますけれども、最後の決定はありませぬから、其の決定あり次第、産業再建其の他に對しまして方策を決定致したいと思ひまするが、今日それに付きまして將來のことを申上げるのは聊か早計かと思ひます、併し大體の範圍が分りましたから、商工省に於きましては之に付て専門の研究を致しまして、目下整理部を中心に色々な案を立てて居る次第であります、推定致しますと、大體千二百萬「トン」からの賠償物資を送ることになる譯でありますから、それの梱包、輸送だけでも大變なころになるのでありまして、何百億と云ふやうな經費を要する譯であります、是は國費で賄はなければならぬのでありますが、實に大したことであります、そこで鈴木君の申された通りに、若し之を國内に置いて、さうして是で色々な生産品を造つて、其の製品を以て之に替へることがで出來ないとか云ふことは、是は國民皆希望する所とは思います、併し前大戰後の「ドイツ」の状況等に見ましても、之を望むことは私は無理だと思ひます、そこで「ポツダム」宣言を受諾した以上は、誠心誠意我々は是等の賠償物資を安全に送り出すと云うことに専念致しまして、目下色々な準備を致して居る譯であります、私は殊に解體を致すに付きましても、専門の技術家を入れ、約束から言ひますれば港まで送り届けるのが約束でありますが、寧ろ技術者を付けて向ふで組立てて、それが運轉するまで見届けて、日本は流石送るものはちやんと送つて、決して惡い物は送らなかつたと云ふ程にやつて退けますれば、是は約二年位の豫定を以てやることでありますから、私は若し日本の將來に眞に平和を期待されて、お互ひのやることが何處までも誠心誠意であると云ふことが見届けられまするならば、或は我々の若干の希望も容れて載けるかと信ずる次第であります(拍手)そこで今賠償に關する協議會が出來て居りますが、之に關しましては組合の方等はまだ入つて居られぬやうでありますが、併し私が今日申しまする此の賠償の物資撤去に關することに付きましては、是は殆ど運送、荷造りでありまして、之を完全にやりますのには、どうしても勞働組合の方に十分の御諒解を求めなければ出來ぬことでありますから、商工省に於きましては最近民間の人を入れ、組合の方にも加はつて戴きまして、之を一體どうして完全にやるかと云ふことに付きましての委員會を作りたいと思ひますから、其の節には御協力を仰ぎたいと思ひます(拍手)
尚ほ反「トラスト」問題に付きましては、十一月に指令を受けて居ります、併し今日率直に申上げますと、「トラスト」の心配はない、寧ろ社會無秩序に依つて産業が本當に生き返らないと云ふ所に心配がありましたので、まだそれに對しては一向手を著けて居りませぬことは事實であります、併し將來「トラスト」或は「コンツェルン」の如きものが出て來ます傾向が起りますれば、十分之に對して抑へるだけの相當の研究はして居る次第でありますが、私は當分是は心配ないと思ひます、寧ろ中小工業が餘りに分れ分れになつて居る、之を協同體にして、さうして其の産業を助成すると云ふやうな方向に寧ろ進むべきではないか、斯樣に思つて居ります、併し一旦指令を受けたのでありますから、將來「トラスト」「コンツェルン」に對しましては斷乎之を抑へるだけの方策を運らすべきだと思ひます
尚ほ御話の中で觸れられました中小工業等に付きまして、今御話の出ましたやうに、將來どうせ財界の大整理をしなければなりませぬ、それを待つて―今色々なことが起つて居ります際に、「クレヂット」を設定して色々原料物資を入れると云ふことは、我々は望んで巳まぬことでありますが、是等は今後の問題と致しまして、皆樣の力強い協力に依つて日本の將來と云ふものが信用付けば、私は必ずや何時かは目的は達成せられると思ひますので、爾今十分努力致しまして、此の目的達成に努力致したいと考へて居るのであります
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=44
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045・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 鈴木君の御質問に對しまして私から御答へすべき點を申上げます
主として最初に補償の所謂打切り問題でありますが、所謂戰時補償なるものには廣い意味と狹い意味とありまして、狹い意味であるのは、所謂軍需補償でありませうが、更に火災保險等までも含める意味でありますかどうか、個人の火災保險をも打切る、或は學校、病院等の公益團體の火災保險をも打切る、學校の如きは火災に罹つた學校は直ちに破産をする譯でありますが、鈴木君も其の影響は決して過小に評價せられては居らない、唯政府が之を過大宣傳して居られないと言はれるやうでありますが、政府は未だ此の問題に付て過大宣傳を致したことはございませぬ、第一又そんなことを政府から發表したことはございませぬ、唯鈴木君の御調査に依りまして過小評價をなさつて居らぬと云ふことでありますから、私はそれに非常に──申上げるまでもなく、鈴木君も是が如何なる影響を及ぼすかと云ふことは十分御承知のことと存じますから、此の點の御質問に對しましては御答へする必要がないかと思ひます
尚ほ斯う云ふ問題は、先程鈴木君の御話の中にも、昭和二年の恐慌のことが出ましたが、鈴木君の御質問を伺いながら、私も昭和二年の恐慌のことを思出しました、あの恐慌は經濟問題が、殊に金融問題が政治に惡用せられた爲に、あの起さぬでも宣い恐慌を起して、多數の者に迷惑を及ぼし損害を大にした、私は是等の問題に付てはどうか愼重に御取扱を御願ひ致したいと思ひます(「ひやひや」拍手)
金融緊急措置令等の其の後の金融機關に對します政府の措置が、預金者を犧牲にして金融資本を助けたと云ふやうな御話だつたやうに伺ひました、私が居りました東洋經濟の何かを御讀みになりましたか、實は能く聽取れませぬでした、併し是は若しも金融緊急措置令を出さずして、さうしてあの時に預金者が預金を引出す儘に任したらどうなるか、私は確かに私自身一つの金融機關を救濟する役目をなしたと言うて來ました、それは其の通りでありますが、金融機關を救濟するとは、言換へれば預金者を救濟することであります(拍手)あの時に若し預金を引出す儘に政府が許して居りましたならば、其の銀行は倒産を致し、さうして其の預金者は損失を被るのであります、ですから私はあの措置は前の内閣の責任でやつたことでありますが、あの當時としては當然の措置であつたと今日考えて居る次第であります
引揚者等の救護に付て十分のことをなすやと云ふ御尋ねでありますが、是は政府としては出來るだけのことを致して居る次第であります、實は鈴木君等も能く御承知のことと思ひますが、政府としては非常な努力をして居つて、而して巳むを得ず其の程度に止まつて居ると云ふことを御諒察願ひたいのであります
それから總理大臣と私と「インフレ」に對する意見の相違がある、是も實は能く聽取しませぬでありましたが、左樣な御話がありましたやうでありますが、是は絶對にございませぬから御安心願ひたい
其の他生産増強が今日最も大切である、或は財界の整理が最も大切である等々の御意見がありましたが、是は全部私も贊成でありまして、先程私の方針に付て申上げました中にも、其の大部分は殆ど鈴木君の言葉の儘に申して居る次第であります
今度の豫算と「インフレ」との關係に付て御尋ねでありましたが、是も先程述べました私の比較的長い言葉の全部が、それの御答へになつて居ると私は考へて居る次第であります、現内閣に於ては此の「インフレ」を克服する十分の確信を持つて居る次第であります(拍手)「インフレ」は徐々に解決するのかどうかと云ふ御尋ねでありましたが、是は「インフレ」の定義次第でありませうけれども、私は所謂徐々に解決すると云ふやうな性質のものでないと考へて居ります、「インフレ」は或る所に於てそれが止まればそれで解決するのでありまして、物價の下落と云ふことを考へれば、是は徐々に下げるとか急に下げるとか云ふことがございますが、「インフレ」現象は左樣なものではないと考へて居ります
私が、闇と公定價格との中間に解決點があると申したやうに仰せられましたが、私は左樣なことを申した覺えはございませぬ、物價或は金利の如きは、鈴木君の御意見では何等か科學的の、方法に依つて或る點を見出すと云ふ仰せでありますが、是は例へば日本銀行が金利を從來決めますやうな場合にも左樣な方法は採りましたが、是は一つの參考でありまして、實は市場がなければ金利も物價もはつきりしないのであります(拍手)でありますから、無論金融或は物價政策を操作する場合には、何等かの操作資料を集めまして、左樣な點を搜索する譯でありますが、今日恐らく、世界に於て左樣な方法に依つて、例へば物價がどの點にあり、金利がどの點にあると云ふことを的確に示し得る學問も技術も未だないと考へて居ります
終戰處理の物價の計算が低過ぎはせぬかと云ふ御話でありますが、是は實は此の費用の性質が性質だけに、實はG・H・Qに於て非常な研究を致しまして、G・H・Qが一々の資材等に對しての檢討を致して居ります次第でありまして、恐らく非常な誤差はないものと考へて居ります、併しながら無論今日の場合でありますから、今後或は多少物價が上ると云ふやうなことがある、或は此の豫算を決めました場合と今日とは、既に多少の相違があると云ふこともありませうが、是は今後巳むを得なけらば尚ほ經費を追加するより外には致し方ないと考へて居る次第であります
戰時中に増税をしたらこんなにならなかつたと云ふ仰せは、全く同感でありまして、其の通りであります、洵に今日殘念なことに考へて居ります(拍手)隨て此の經驗を顧みまして、今後の財政處理には十分鈴木君の御説の如き考へを以て處理致したいと考へて居ります、以上簡單でありますが、御答辯と致します(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=45
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046・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 財閥解體、賠償物資撤去、補償打切り等の爲にどれ位の失業者が出るだらうかと云ふ御尋ねと拜承致しましたが、財閥解體の方は、是は企業解體ではありませぬので、企業には變わりないと思つて居ります、それで此の點には多少失業者が出るかも知れませぬけれども、擧げて言ふ程の數ではないと思つて居ります、それから賠償物資の撤去は、是もはつきり致しますが、只今の推定では十七、八萬人の失業者が出はせぬかと考へて居ります、是は併し時は二年位の間に出ると云ふ考へで居ります、それから補償打切と云ふ問題でありますが、此の點に付きましては、まだ政府でも方針をはつきり公表致して、居りませぬので、一寸はっきり致さぬ問題でありまするが、是は斯う云ふやうなことを相當やりますならば、企業整備が伴うて來ますから、相當の失業者が出ることは當然であります、其の數は非常に難かしい問題で、中々確實には申されませぬ、併し先づ數十萬と云ふ所は問題ひないと思ふのであります、斯う云ふ風に色々な問題で失業者の増加を見まして、只今現に存在して居る失業者、それから今後引揚或は復員其の他で出るだらうと云ふ失業者、其の上に賠償物資、補償問題の解決等に付て生ずる失業者などが澤山出まするが、特に補償打切りの爲にやはり職場がなくなる、工場閉鎖或は解雇手當と云ふやうな問題が色々御指摘の通りに起きると思ひますので、斯う云ふ問題に依つて勞働問題の性質も多少變つて來るのではないかと云ふ見透しを持つて居ります、それで特に解雇手當に付きましては、何か適當な方法はないかと云ふことを目下具體的に考慮致して居ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=46
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047・鈴木茂三郎
○鈴木茂三郎君 簡單でございますから自席より發言を御許し願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=47
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048・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 簡單ならば許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=48
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049・鈴木茂三郎
○鈴木茂三郎君 私の質問は可なり質問事項が多うございましたが、答辯のあつたものは極めて少うございます、之に依つては、今後の日本の經濟の骨組をどうするかと云ふことを我々は考究する何等の資料も答辯も得て居りませぬ、甚だ不滿足であります、或は又「インフレーション」の問題に致しましても、私が御尋ね致しました骨子は「インフレーション」を防止し得る確信がある、斯う藏相は御答へになりましたが、私はさう云ふ言葉だけでは「インフレーション」を抑へることは出來ないと云ふことを申上げて、具體的にどうすれば「インフレーション」を避けることが出來るかと云ふ具體策を御尋ね致したのであります、併し一點自分の言はないことがあると云ふことでありましたが、是は速記が間に合ひませぬから私は新聞記事に依つたのでございますから、新聞記事に間違ひがあれば、是は私の間違ひでございます、七月六日の日本經濟新聞の記事には、大藏大臣の答辯として、是は衆議院の金融緊急措置令の委員會でありますが、「現在の物價には、公定價格と闇價格があり、實際の物價水準は此の兩者の中間にあると思ふ、現在の物價水準を上げてはいけないが、下げる必要はない、物價を安定させる方針で進みたい」斯う言つて居ります、私は此の安定點に對するどう云ふ科學的な根據があるかと云ふことを御尋ね致したたのでございます、併し是等の點に付きましたは、何れに致しましても極めて私は御答辯を不滿と存じますが故に、豫算委員會に於て一々重ねて質疑應答することとして保留致しまして、私の質問を打切ります、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=49
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050・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 國務大臣の演説に對する殘餘の質疑は之を延期し、次會に繼續することとし、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=50
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051・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=51
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052・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後五時四十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02019460725&spkNum=52
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