1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年八月一日(木曜日)
午後一時四十九分開議
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議事日程 第二十二號
昭和二十一年八月一日
午後一時開議
第一 (第三號)昭和二十一年度歳入歳出總豫算追加案
第二 (特第二號)昭和二十一年度特別會計歳入歳出豫算追加案
第三 所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第四 臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第五 地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第六 自動車交通事業法の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである
臨時物資需給調整法案
商工經濟會法を廢止する法律案
工業所有權法戰時特例を廢止する法律案
自動車交通事業法の一部を改正する法律案
(以上七月三十日提出)
一、昨三十一日貴族院から受領した政府提出案は次の通りである
辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案
郵便貯金法等の一部を改正する法律案
一、昨三十一日貴族院に於て、本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した
會計法戰時特例廢止等に關する法律案
一、議員から提出された議案は次の通りである
省營自動車の復興擴充促進に關する建議案
提出者
石原登君 河野金昇君
川島金次君 小川原政信君
豐後森、宮原間鐵道敷設速成に關する建議案
提出者
松原一彦君 金光義邦君
(以上七月三十日提出)
一、去三十日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
内閣事務官 三橋則雄
第九十囘帝國議會政府委員被仰付
(各通)農林事務官 平川守
同 長谷川清
第九十囘帝國議會農林省所管事務政府委員被仰付
一、去三十日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
一七 井上東治郎君
三二 伊藤幸太郎君
八四 江川爲信君
一、去三十日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第三部選出
豫算委員 松原一彦君(小川一平君補闕)
第八部選出
豫算委員 小坂善太郎君(武藤嘉一君補闕)
一、去三十日議長に於て次の委員を選定した
罹災都市借地借家臨時處理法案
(政府提出、貴族院送付)委員
有田二郎君 石原圓吉君
神田博君 鈴木仙八君
廣川弘禪君 本田英作君
九鬼紋十郎君 佃良一君
林連君 細川八十八君
金井芳次君 松澤兼人君
武藤運十郎君 山崎常吉君
鹿島透君 酒井俊雄君
中田榮太郎君 小西寅松君
一、去三十日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)委員
理事 島田晋作君(理事高津正道君去二十七日委員辭任に付その補闕)
一、去三十日次の通り特別委員の異動があつた
勞働關係調整法案(政府提出)委員
辭任 疋田敏男君 補闕 磯田正則君
食糧緊急措置令(承諾を求める件)委員
辭任 金子益太郎君 補闕 田中健吉君
一、昨三十一日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
一一 中野四郎君
三〇 布利秋君
一、昨三十一日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第三部選出請願委員 小坂善太郎君
第九部選出建議委員 江川爲信君
一、昨三十一日委員長理事互選の結果次の通り當選した
罹災都市借地借家臨時處理法案(政府提出、貴族院送付)委員
委員長 理事 本田英作君
石原圓吉君 鈴木仙八君
林連君 武藤運十郎君
一、昨三十一日次の通り特別委員の異動があつた
會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)委員
辭任 伊藤恭一君 補闕 豊澤豊雄君
勞働關係調整法案(政府提出)委員
辭任 柏原義則君 補闕 中野四郎君
罹災都市借地借家臨時處理法案(政府提出、貴族院送付)委員
辭任 山崎常吉君 補闕 大矢省三君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=1
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002・会議録情報2
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議員表彰の件(議長發議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=2
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003・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御諮り致します、本院議員として在職二十五年に達せられました植原悦二郎君に對し、先例に依り院議を以て功勞を表彰することとし、表彰文は議長に一任せられたいと思ふのであります、此の議長發議に贊成の諸君の起立を求めます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=3
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004・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 起立總員、仍て全會一致を以て可決致しました(拍手)
茲に議長の手許に於て起草したる文案があります、之を朗讀致します
議員正五位勳二等植原悦二郎君衆議院議員に當選すること九囘在職二十五年に及ひ恆に憲政の爲に盡瘁し民意の暢達に努む衆議院は君か積年の功勞を多とし特に院議を以て之を顯彰す
〔拍手起る〕
此の贈呈方は議長に於て取計らひます、此の場合植原悦二郎君より發言を求められて居ります、之を許します──植原悦二郎君
〔植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=4
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005・植原悦二郎
○植原悦二郎君 一言御挨拶を申上げますことの御許しを御願ひ致します
只今は院議を以て御鄭重なる表彰の御決議を戴き、不肖身に餘る光榮と存じます、今にして私が大正六年初めて議會生活に入りし以來、過去二十五年の私の議會生活を顧みまする時に、洵に感慨無量なるものがあります、微力ながら私は常に國家憲政の爲に努力致したのでありますが、事志と違ひ、時に憲政は逆轉せられ、國家は敗戰の慘状を見るに至りし如き状態に立至りましたことは、私共何等の貢獻をなし得なかつたことを衷心慚愧に堪へない次第であります
幸ひ此の新生議會に於きまして尚ほ微力を致す機會を與へられましたる以上、魯鈍に鞭うち、全力を擧げて、民主主義政治の實現と平和日本の建設の爲に餘生を捧げたい覺悟でございます(拍手)向後皆樣方の一層の御鞭撻と御支援の程を御願ひ申上げる次第でございます、簡單ながら茲に謹んで御挨拶を申上げます〔拍 手〕
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=5
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006・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 日程第一及び第二は豫算案でありますから、一括議題となすに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=6
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007・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、日程第一、(第三號)昭和二十一年度歳入歳出總豫算追加案、日程第二、(特第二號)昭和二十一年度特別會計歳入歳出豫算追加案、右兩案を一括して議題と致します、豫算委員長の報告を求めます──矢野庄太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=7
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008・会議録情報3
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第一 (第三號)昭和二十一年度歳入歳出總豫算追加案
第二 (特第二號)昭和二十一年度特別會計歳入歳出豫算追加案
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報告書
一 (第三號)昭和二十一年度歳入歳出總豫算追加案
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月三十日
豫算委員長 矢野庄太郎
衆議院議長樋貝詮三殿
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報告書
一 (特第二號)昭和二十一年度特別會計歳入歳出豫算追加案
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年七月三十日
豫算委員長 矢野庄太郎
衆議院議長樋貝詮三殿
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〔矢野庄太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=8
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009・矢野庄太郎
○矢野庄太郎君 只今議題に供されました(第三號)昭和二十一年度歳入歳出總豫算追加案竝に(特第二號)昭和二十一年度特別會計歳入歳出豫算追加案、此の二案に付きまして豫算委員會の經過竝に結果を簡單に御報告申上げます
此の兩案とも八月分の豫算でございます、先づ第三號の一般會計に付て申述べますと、歳出は追加額四十一億七千七百萬圓であります、萬以下の數字は切捨てて申上げました、併しながら八月分の政府の支出と致しましては、此の追加額四十一億七千七百餘萬圓の外に、二十年度の豫算に依ります所の所謂施行豫算の支出分がございます、それは九億一千六百餘萬圓でございます、隨ひまして一般會計に於ける八月分の支出全體の金額は、其の合計でありまする五十億九千四百餘萬圓となるのでございます、而して歳入は租税、印紙收入、官業、官有財産收入及び雜收入を以て之に充當することに致して居るのでありますが、御承知の通り勿論不足分が出るのでございます、其の不足分は大藏省證券と借入金を以て之を賄ふことになつて居りまして、即ち四月以來通じて其の證券發行限度、又借入限度を擴張して、其の擴張金額は三十三億圓と云ふことに相成つて居ります
次に特第二號の特別會計に付て申述べます、特別會計に於きましては、先般七月分の豫算を議する際に申上げましたる通りに二十四ございます、尤も名目上は四十二の特別會計を持つて居ります、其の中の十八は將に廢止の運命にあることは皆さんの御承知の通りであります、其の殘りの二十四の特別會計の中で、追加の豫算を出して居りまするのは七つの特別會計であります、大藏省の印刷局及び専賣局特別會計、農林省の漁船再保險特別會計、文部省の學校特別會計、商工省の燃料局特別會計、それに鐵道特別會計と通信特別會計でございます、さうして此の歳出の總額は三十九億八千餘萬圓となつて居りまするが、一般會計に於て申述べましたやうに、此の外に施行豫算の支出分があるのであります、其の金額は殆ど總ての特別會計に亙つて施行豫算の支出分があるのでありますが、其の金額は二十三億五千九百餘萬圓となつて居ります、特別會計に於きましては左樣でございますからして、合計六十三億三千九百餘萬圓と云ふ支出をすることになるのであります、歳入の方はどうかと申しますると、特別會計の中で歳入豫算を立てて議會に提出になつて居りまするのは、文部省の學校特別會計だけでございまして、殘る六つの特別會計に於きましては、歳入は本年度の歳入を以て之を充當すると云ふことになつて居るのでございます、以上申上げました通り、八月分豫算の支出額は一般會計に於て五十億九千四百餘萬圓であり、特別會計に於て六十三億三千九百餘萬圓、此の合計は百十四億三千三百餘萬圓と相成るのでございまするが、然らば政府支出八月分は此の百十四億三千三百餘萬圓であるかと申しますると、さうではないのでございます、と申しまするのは、皆さん御承知の通りに日本の政府の會計は非常に複雜でございまして、一般會計と特別會計の間には重複勘定がございます、又一つの特別會計に於きましても、例へば鐵道或は通信の如きは、資本勘定、用品勘定、業務勘定は重複して居ります、又特別會計と他の特別會計の中にも重複勘定があると存じます、斯樣な重複勘定を差引かなければ、純粹の政府の支出は分りませぬ、併しながら委員長の許に於きましては資料もございませぬし、又時間もありませぬので、其の差引勘定を詳細に御報告することが出來ぬのでございます、そこで私が目の子算用で其の重複勘定を先刻計算しました所、凡そ三十四億圓位あらうと存じます、故に百十四億三千三百餘萬圓から此の三十四億圓程を引きました殘り約八十億圓と云ふものが、特別會計、一般會計を通じての八月分の政府支出額と相成るのでございます
以上簡單に案の内容を申述べましたが、偖て豫算委員會は二十九日午前十時から連續して會議を開いて居ります、暑中でありまして、委員各位には洵に御迷惑でありまするけれども、成るべく多くの時間を用ひて審議を致したいと存じて居るのでありまするが、只今申しまする通りに、此の豫算は八月分の豫算でありまして、一般會計に於ては只今審議致して居りまする所の改定豫算の一部でありまするし、又特別會計に於ては近く提出さるべき筈の二十一年度特別會計の一部をなします、各各一部でありますので、特に審議を省略致しまして、質疑應答は主として改定豫算及び近く提出になりまする其の特別會計に付て十分に行ふことと致しまして、此の二件は切離して討論に入りました
討論に於きましては、自由黨田中源三郎君、進歩黨荒木武行君、此の兩君共に無條件に政府原案に贊成されました、而して社會黨米窪滿亮君、協同民主黨竹山祐太郎君、新政會石田一松君、無所屬倶樂部伊藤實雄君、此の四君は何れも已むを得ず自分達は贊成をする、四君の中には、どん底へ突落されたから贊成すると云ふやうな表現さへ用ひられましたが、何れも改定豫算に對する審議權は十分に之を留保するのであると云ふことでございました、斯くて採決に入りまして、可否を起立に問ひました所、全員一致、二案とも政府原案に贊成でございました
茲に一言私は政府閣僚に對して警告を發して置きたいと存ずることがございます、それは外でもないのでありまするが、兎に角閣僚の出席率が惡いのでございます、それが爲に屡屡議事の停頓さへ來しました、斯くては何時になつたら豫算案の審議が終るか豫定が付きませぬので、成べく各閣僚に於ては時間を御割きになつて委員會に出席されたいと云ふことでございます、斯樣なことを申しますと、如何にも憎まれ口を叩くやうでございますけれども、古い閣僚は御承知の通り、滿洲事變勃發前の昭和五、六年頃の議會では、廊下に守衞諸君の人垣を作らないと大臣諸公が豫算委員室に出入りすることが出來なかつたと云ふやうな状況でございました、今日昔のやうな騷擾があるとは私は考へませぬ、考へませぬが、餘り議員を舐めて掛つたり、又出來ないことに大きな法螺を吹いたり致して居りますと、とんでもない暗礁に乘上げまして、二進も三進もならないことに陷る虞があるから斯樣なことを申上げるのでございます(拍手)我々が斯く結論を急いだのは、七月分でも、八月分でも、間際になつて出して來て、そらやつて呉れ、やれやつて呉れと云ふやうに促されますので、私達に於きましても支出期が切迫して居ると云ふ客觀的情勢に制せられて、本當に已むを得ず大所高所から判斷したからでございます、左樣な次第でありますので、政府閣僚に於ては十分に御注意あらんことを重ねて望みます、之を以て報告を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=9
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010・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 採決致します、兩案の委員長の報告は何れも可決であります、兩案を一括して委員長報告の通り決するに贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=10
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011・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 起立多數、仍て兩案とも委員長報告の通り可決確定致しました(拍手)議事日程第三乃至第五の三案を一括して第一讀會を開き、質疑を繼續致します―西村榮一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=11
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012・会議録情報4
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第三 所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第四 臨時租税措置法を改正する法律案(政府政出)
第一讀會(前會の續)
第五 地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
〔西村榮一君登壇〕
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=12
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013・西村榮一
○西村榮一君 此の度政府の提案せられました所得税法案其の他二件の改正案に付きまして、私は日本社會黨を代表致しまして質問致したいと存ずるのであります、細目の點は何れ設けられるでありませう委員會に讓りまして、私は新しく日本の置かれた地位竝に今後の國家職能に鑑みまして、新生日本は如何なる税體制を必要とするかに付きまして政府の御所見を求むるものであります
先ず第一に簡單な御質問から申上げますが、昨年戰災を被りました戰災犧牲者に對しまして、一箇年間所得税其の他免除せられて居るのでありますが、既に其の期限は滿期に近付いて居ります、併し戰災者の現状は一箇年前と今日と何等異ならざることは贅言を要するまでもなく、内閣諸公竝に同僚議員各位の夙に御諒承のことと思ふのであります、斯かるが故に、私は尚ほ一箇年間戰災者に對する所得税の免除を延期して戴きたいと云ふことを希望するのでありますが、政府には其の御意思はないか、之を御尋ね致します
第二點は、新生國家の税體制は如何なるものを理想とするか、先般大藏大臣は此の席上に於て租税體制の根本的改正に付て目下考慮中であると言はれたのでありますが、私は現在の日本が新しき體制に就く此の際こそ、文明國家に相應しい租税體制を確立する絶好な機會ではないかと存ずるのであります、先ず第一に私は質問の要點を集約する爲に、又政府の御答辯を便利にする爲に、一つの例を勤勞所得税に取りませう、結論を申しますならば、勤勞所得税を撤廢して貰ひたいと云ふことであります(拍手)なぜ私は勤勞所得税の撤廢を要求するかと申しますと、申上げるまでもなく個人の勤勞の所得に直接に課税すると云ふことは、課税技術上極めて簡單ではありますけれども、それは封建國家に於ける幼稚なる課税方法でありまして、文明國家に於ける租税體制と致しましては、多大の考慮を要するものであります、特に本勤勞所得税が昭和十五年創設致されました其の創設の歴史的な事實に鑑みまして、是は國防國家に於ける軍事税的な性格と云ふものが極めて濃厚に盛られて居るのであります、既に日本は、私が贅言するまでもなく今日生れ變つて居ります、斯かる新生平和國家に於ては、此の軍事税的な性格を持つ勤勞所得税を撤廢して、新しき租税體系を確立することが極めて必要ではないかと思ふのであります、政府は、勤勞所得税は一流國家に於てもそれぞれ徴收して居る税であると言はれるかも知れませぬ、私は淺學でありますが、各國も勤勞所得税は取つては居りますけれども、それに對する社會施設其の他間接直接の反對給付は、實に勤勞所得税の徴收以上のものを勤勞大衆に與へて居るのであります(拍手)同時に此の際諸外國の長所を學ぶ必要はありますけれども、申上げるまでもなく、外國に於ても、一流民主主義國家に於ても、其の長き傳統と歴史の中には今日改革すべき多くのものがありませう、私は是に於て我が國が敗戰の結果、身に一劍、一兵も持たずして、世界文化に魁けして、新しき理想國家を建設すると云ふ現下の絶好なる機會を捉へまして、之を改革するに躊躇してはならないと存じます、斯かる見地に立つて、私は繰返し勤勞所得税の撤廢を主張するものでありまするけれども、單に勤勞所得税を撤廢致しまするならば、そこに三十四億圓と云ふ缺陷が生じます、今日の日本は同僚議員各位が日夜苦心せられる如く、膨脹して行く財政と、涸渇して行く財源との此の矛盾をどう解決するかと云ふことが、現下財政上の一大問題であると致しまするならば、私は單に勤勞所得税の撤廢を要求し放しで、其の三十四億圓の財源に對しまして無責任なる放言を致すものではないのであります、それに對する代り財源の二、三を參考までに申上げまするならば、先づ第一に、私は勤勞所得税を撤廢して、それに代る國民相互税と云ふ風なものを創設せられてはどうかと思ふのであります、國民お互いに扶ける税、之を創設されてはどうかと思ひます、細かいことは皆樣御迷惑でありまするから委員會に讓りますが、然らば勤勞所得税と國民相互税との相違は那邊にあるかと申しまするならば、勤勞所得税と云ふものは、是は取り放しであります、國民相互税と云ふものは、是は取り放しではありませぬ、其の人が死亡、老衰、病氣、災害を被りました時に、それに反對給付をすると云ふ生活防衞の税金であるのであります、一例を申上げますならば、今日三十歳の人が千圓の收入がある、其の人が現在の勤勞所得税の額だけを納税致しまするならば、六十歳の老衰しました時に養老年金として七萬圓を受取れる、死亡した時も同樣、病氣、天災等に對しては一定の條件と率を付して其の生活を防衞すると云ふことに致しまするならば、税金を收める人も勵みが付くのではないか、然らばそれで國家はどれだけ穴埋めになるかと申しますと、先般大藏大臣は此の席上に於きまして、大體昭和二十一年度の國民所得は二千億と推定されたのでありますが、此の二千億の中から法人所得税竝に零細所得者、對象外の者を除いて、假に一千億の國民所得が此の對象になるとするならば、それの二割を吸收すれば大體二百億、此の二百億の中から先程申しました諸條件の料金を支拂つて、國家は大體どの位儲かるかと云ふと、三割、四割、七十億前後と云ふものがそこに利益せられる、是は現行生命保險竝に貯蓄、無盡或は傷害保險等の率から料金と諸條件とを對照致しまして、大體七十億前後と云ふものが利益せられるのではないか、皆さん御迷惑でありますから私は結論を急ぎまするが、斯う云ふ風にして自分自身一人では、自分の生命と老衰其の他の災厄に對して防衞することが出來ないが、國民全體が合するならば、そこに防衞の生活態勢が出來る、而も其の問題を政府が取扱ふことに於て、利益を得ると云ふ風な新しき租税體系と云ふものが、私は平和國家に於ける最も穩健なる、相應しい税體制ではないかと思ふのでありまして、之をご參考に申上げる次第であります(拍手)
第二點、是は大藏大臣の從來の御説と眞正面に對立して來るのでありまするが、私は第二點の財源と致しまして、今日問題になつて居る一千四百億圓の公債を破棄して、そこに五十億圓の國債費を捻出致しまするならば、勤勞所得税の三十四億と大體とんとんになるのではないかと思ふのであります(拍手)一千四百億圓の現在の國債の中、百五億と云ふものは日支事變前の國債であります、私は茲に考へなければならないことは、平時に於ける國債と、戰時に於ける國債とは其の性質を根本的に區別しなければならないと思ふのであります、何となれば戰時に於ける國債と云ふものは、それは戰時税金の延長でありまして、此の一千三百億の公債は、是は公債の名は持つて居りますけれども、其の性質は戰時税であります、而も其の戰時税は敗戰の結果、大陸或は南海に埋沒してしまつた實體のなき紙の財貨であります、私は此の戰時税的性格を持ち、而も其の實體が喪失してしまひました一千三百億と云ふ公債を切捨てて、新しき體制に向ふと云ふことが最も健全なる財政政策ではないかと思ふのであります、併しながら先般來大藏大臣が御心配になりましたやうに、私は石橋さんの國家を憂ふる財政政策に對しましては、敬意を表します、併しながら其の根據の立て方に於て、極めて我々と見解の違ふ所があるのでありまするが、石橋さんは公債を破棄するならば、銀行と郵便貯金其の他の預貯金に影響して、金融の動亂が來る、だから公債の打切りも出來なければ、財政の整理と云ふものも思ひ切つて出來ないと言はれるのでありまするが、私はそれは金融業務と云ふ技術的な神祕性に隱れて、政治を壓迫する所の欺瞞的答辯であると信ずるのであります(拍手)石橋さんは經濟評論家として、或は財政通として世界的な名聲を馳せられて居りまするが、私甚だ脱線するやうなことを申しますけれども、十八年の間、銀行と保險會社の飯を食つて參りました、事金融に關しては私も一個の實務家であります、一方石橋さんの財政論の中で、一皮剥いて鋭く突込んで見るならば、そこに先程申しましたやうな金融業と云ふ技術的な神祕性に隱れて、一つの素人騙しの金融論が行はれて居ると云ふことは率直に申上げることが出來る、細かいことは是れ亦私は避けまして、其の點だけを一點申上げると共に、今日資本主義復元と云ふ立場に於きましても、社會主義實現と云ふ立場に於ても、兎に角日本國家再建と云ふ點に於て一番基本的な問題は、根本的な實體の喪失した幽靈財貨は茲に勇敢に切捨て、新しき體制に就かなければならないと云ふ原理であります、今日國家財政の上に於て、金融の點に於て手術しなければならないと云ふことは、大藏大臣初め多くの方々が認められて居るのでありまするけれども、手術をすれば血が出るし、傷の痛みがあるから、手術が出來ないと云ふ風な御議論であるが、私は今日の日本の國家財政が、或は日本の經濟状態が根本的な手術を要すると云ふ認識に到達致しますならば、其の手術の爲には出血止めの注射もありませう、痛み止めの麻藥もありませう、萬全の處置を講じて手術を致しますならば、今日の状態に於ては日本の經濟力は囘復すること疑ひなしと信ずるのでありますけれども、此の切開手術を惧れ、出血に名を藉り、苦痛に名を藉りて今日の病源を其の儘に致して置くならば、日本の將來に取りまして恐るべき結果を招來すると云ふことを私は憂へざるを得ないのであります、此の意味に於て財政整理と共に、公債を整理致されまするならば、五十億と云ふ財源が生じて來るのでありますから、勤勞階級が一生懸命働いて、さうして生活の苦悶の中から三十四億圓の税金を拂ひ、而もそれが實體を喪失した公債利子に捧げられると云ふことになりますならば、勤勞階級の將來の生産意欲を減退させる、是等の思想的の觀點から考へましても、私は至急財源を何れかに見出されまして、勤勞所得税の撤廢を要求して已まざるものであります(拍手)財源は何處にもあるのであります
最後に勤勞所得税の撤廢と共に、八十六億の所得税の問題に付て御質問致しますが、其の前に現在のやうに加速度に進行致して居ります「インフレーション」の現状から言つて、私は政府が本年度豫定された八十六億と云ふ所得税收入と云ふものは果して上るかどうか、それが假に上るとしても、現在の物價と通貨の比率から言つて、八十六億の所得税の收入を以て政府は何程のことが出來るか、根本は「インフレーション」の速度如何と云ふことの問題になると思ふのでありますが、先般來私共は屡屡大藏大臣から樂觀的の御説を承りました、併し私は政黨政派を超越して、此の問題を熟熟考へて見まするならば、我々が今日過去に於ける自分の自説、或は自分の希望的な觀察に囚はれて、或は「インフレーション」の問題を樂觀したり、過度に悲觀したりすると云ふことは、是は嚴禁しなければならないと思ひます、冷靜に現下の通貨の状態と經濟の状態、而もそれが生き物であつて、どう發展するかと云ふことを科學的に嚴密に檢討した上に、日本の「インフレ」對策と云ふものを立てなければならないと思ふのであります、大藏大臣は、成程今日通貨は膨脹して居る、併し人と物とが遊んで居るのであつて、之をもつと運轉し活動せしめて行くならば、生産は勃興して「インフレーション」は恐れるに足らずと云ふ、而も其の上に立つて今日遊んで居る資材と施設と産業機關に對して追加信用を加ふるならば、尚ほ一歩「インフレーション」の先手を打つならば、食ひ止めることが出來ると仰しやるのでありまするが、私はそれは極めて危險であると云ふことと、而も其の議論の立て方が根柢に於て──今日の戰前に於ける一六%以下にある生産状態が、何が故に左樣な低位にあるかと云ふことを考へて見まするならば、是は齊しく世人御諒承の通り、生産界は徹底的に壞滅して居ります、原料資材がないと共に日本の産業は何處へ行くかと云ふ、産業政策の明確なる方針が缺けて居ると云ふ、此の三點が生産を減退に減退をせしめて居るのであります、隨て問題は今後に於ける「インフレーション」が、此の壞滅したる生産界の中になんぼ追加信用を加へましても、それより前に根本的に幽靈財貨と申しまするか、實體のなき紙の財貨を清算致しまして、新しく出發するにあらずんば、國家の信用はがた落ちである、生産施設は何もない、原材料はない、方針はないと云ふ状態の下に於て、なんぼ通貨の信用を増加致しましても、それは空廻りでありまして、將來に於ける日本の國民は、世界未曾有の通貨の膨脹と物價の暴騰、同時に生産減退から來る國民所得の皆無と云ふ現實に打突かつて、歴史上比類なき悲慘なる生活が、此の「インフレーション」の災害として國民の上に蔽ひかぶさることを半年前に豫言し得るのであります(拍手)之を考へて見まするならば、(「本論に入れ」と呼ぶ者あり)私は之を考へて見まするならば(「本論に入つて質問戰をやれ」と呼ぶ者あり)質問をして居ます(「やれやれ」と呼ぶ者あり)私は以上申述べた諸方策を結論致しまするならば、勤勞所得税を撤廢して貰ひたいと云ふこと、それの代り財源として新しく文化的税金を創設される用意があるか、公債を破棄して、其の中に財源を求められる意思があるかどうか、それと共に今日の國家財政の基本を搖り動かして居りまする所の「インフレーション」の問題に付て、從來の持説を離れ、嚴密に今日の事態を檢討せられて之に對する對策を講じなければ、八十六億圓の所得税の收入と云ふものが、其の收入が假にあつても根柢が崩れると云ふことを私は申上げざるを得ないのであります(「言ふことは分つて居るよ」と呼ぶ者あり)是は既に大藏大臣も屡屡此の席上に於て御言明の通り、租税體制の確立、財政改革の確立と云ふことを今日立案中であると言はれるのでありますが、私は繰返し申しませう、今日がそれをなすに絶好の機會である、古來戰爭に敗れて亡びた國はありませぬ、けれども敗戰の原因を靜かに、嚴密に、而も勇敢に剔抉して、其の改革を怠つた民族は必ず亡びると云ふことを申上げざるを得ないのであります(拍手)私は此の意味に於て租税體制の確立を通じ、財政の根本的の改革を要望して已まざるものでありまして、財政の根本的な改革を要望する所以は、租税の目的が達せられるか否やと云ふことでありまして、此の三點に付て大藏大臣の明確なる御答辯を煩はすのであります、以上を以ちまして私の質問を終ります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=13
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014・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の西村君の御質問の三點に御答へ致します、第一に勤勞所得税の件でありますが、是は屡屡申上げました通り、撤廢する意思はございませぬ、現在の租税體系に於て、此の勤勞所得税は中心をなすものでありまして、之を今變へると云ふことは是れ亦屡屡申上げましたやうに出來ないのであります、又此の租税體系は、只今西村君の御演説の中にもありましたやうに、先づ現在の世界各國の悉くが採つて居る體系でありまして、之を如何なる新しきものにするかと云ふことは、若し出來るとするならば、それは是れ亦今まで申上げましたやうに、今後我々の研究すべき題目であります、併しながらここで第二點に御答へ致しますが、今西村君が新しい體系として御提唱になりました國民相互税なるものは、伺つた限りに於ては社會保險と租税とを結び付けたもののやうに考へられますが、(拍手)斯樣なものが果して租税なりや否や(「同感々々」と呼ぶ者あり)尚ほ御説を詳細に承らなければ分りませぬが、私の只今の判斷では是は租税ではあるまいと思ひます(「ヒヤヒヤ」拍手)
次に戰時國債破棄の問題でありますが、是れ亦私が屡屡機會ある毎に申上げて居りますやうに、破棄は致さない覺悟で居ります、西村君は銀行及び保險會社に御關係であつたさうでありますが、然らば十分御承知のことと思ひますが、今日日本の國債は其の九割以上を金融機關が持つて居ります、さうして其の金融機關が持つて居る公債は、片方に於て負債の面には預金が立つて居るのであります、ですから國債を破棄すると云ふことは即ち預金を破棄することであります(拍手)預金を破棄して宜しいならば、是は政府としてはこんな易いことはありませぬ、併しながら現在の大衆の預金を悉く破棄し、さうして勤勞所得税を假に廢めたとして、是は何になるかと私は考へる譯であります(拍手)
次に「インフレーション」の問題でありますが、是も屡屡申上げましたが、どうも私の申上げて居ることが徹底しない點があるやうに思ふ、先日豫算總會に於ても水谷君の御質問の場合に御答へして置いたのでありますが、私は先般の此の本會議に於ける財政の説明の場合に色々申しました間に、今日の日本の經濟界は、單に購買力を注入することに依つて直ちに經濟活動を増進し得るが如き簡單なものではない、終戰後多くの企業は收支償はず、生産は停頓減少し、甚だ憂ふべき状態を示して居るが、それは唯普通の景氣循環の場合の不景氣現象ではない、前にも申した如く戰爭及び敗戰に依つて生じたる破壞と虚脱状態に基く現象である、我々は單なる不景氣を克服するのとは異なつた政策を遂行する必要があると明白に述べまして、それから經濟界の整理及び其の他の若干の政策を申上げたのであります、ですから私は今日の場合唯通貨を發行すればそれで日本の經濟界が囘復するなどとは、未だ曾て何處でも言うて居らないと云ふことを御諒承を願ひたいのであります、左樣な次第でありますから、御説と其の點は全く同じなのでありまして、即ち經濟界を囘復する爲には、思ひ切つた處置を一面に講ずると共に、生産を増強するだけの強力なる政策を執らなければならぬ、斯樣に信じて居る次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=14
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015・西村榮一
○西村榮一君 答辯が漏れて居ります、戰災者に對する所得税を延期される意思があるのかどうか
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=15
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016・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 是は失禮致しました、あとで三點と更に結論を申されたから、三點だけ御答へ申上げた次第であります、最初に仰しやつた戰災者の所得税は、一年間之を減免致しましたが、既に一年を過ぎました後は新しい所得でございますから、今後生ずる新しい所得に對しては、戰災者と雖も其の所得に應ずる負擔を國家の爲に致して宜い、斯う考へて居りますから、戰災者に對する減免税は、初めに決定致しました通り一年間で打切る積りで居ります、(拍手)
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=16
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017・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=17
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018・西村榮一
○西村榮一君 あとは委員會に譲りまして、私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=18
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019・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 宇田國榮君
〔宇田國榮君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=19
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020・宇田國榮
○宇田國榮君 私は協同民主黨を代表致しまして、政府提案の増税案に對しまして質問を致したいと思ひます
御承知の通り大藏省では、税收見込初年度二十四億圓、平年度三十九億圓に上る戰後初めての一般増税案を發表されましたが、改正法案の要綱に從へば、今囘の税制改正法案の目的とする所は、第一に國庫收入の増加を圖り財政の強化に資すること、第二には經濟諸情勢等の推移に應じ國民負擔の公正を期すること、第三には徴税の簡素化を圖ること、以上の三點にあると察せられるのであります、大藏大臣は先日の本會議に於きまして、國家財政の收支の「バランス」を合せることも重要であるが、それ以上に國民經濟の「バランス」を合せることに、より一層意を用ひて居られる旨の御答辯がありましたことは、洵に私共の同感とする所であります、併しながら國家財政の面に致しましても、又國民經濟の面に於きましても、通貨の價値が不安定でありましては、到底之を満足に實行することは困難であると思ふのであります、現在此の増税案を審議致しましても、之を徴收し、之を使用する頃の貨幣の價値が、現在のそれと著しく相違して居ると云ふことになれば、本案の審議も殆ど其の意味を喪失する次第であらうと思ふのであります、私は現在の貨幣通貨價値の不安定なる時に於て、先づ大藏大臣は如何なる通貨價値の安定策、即ち物價の安定策ありや否や、或は又現在の貨幣價値は當分現在の水準に於て安定し、著しく變動なき見透しを持つて居られるか、御伺ひ致したいのであります、敗戰後の日本としては、其の財政倦全化の爲に税收の増加を圖り、財政の基礎を強化する爲の増税は洵に已むを得ぬ處置であつて、増税其のものに對して我我は敢て異議を唱へるものではないのであります、併しながら今囘の増税案が前述の三つの目的に果して適應して居るかどうかに付ては、聊か疑義なきを得ないのであります、以下原則的な問題に付て政府の所見を質して見たいと思ふのであります
日本の財政に對する聯合軍司令部の方針と政府の財政健全化、財政の均衡化への努力にも拘らず、當分の間は巨額の歳入不足が豫想され、本年度は財産税の徴收に依つて歳入不足を補填し得ると致しましても、來年度以降如何にして是が補填をなす方針であるか、更に第二次、第三次の増税をせねばならぬのではなからうかと云ふことを私は甚だ深憂を致して居る一人であります、併し今囘の増税案に依れば、税源の大宗たる所得税に付ては、最早其の極度に達して居ると思はれるのであつて、其の他の税を引上げることは、其の多くは税の負擔が結局は大衆に轉嫁されるので、物價高を誘致すると思ふのでありまして、政府は之に對し如何なる對策と見透しを持つて居られるか、御所見を御伺ひしたいのであります、更に七月六日衆議院の金融緊急措置令委員會に於て、池田主税局長は我が國と米英兩國との分類所得税に付て比較説明され、日本に於ては分類所得税の納税者は總人口に對して約一割五、六分に過ぎぬが、米國に於ては約三割六分、英國に於ては約三割であると指摘致して居り、又勤勞所得税を他税と比較して、扶養家族四人、年所得五千圓の場合、勤勞所得税は百八十圓、農業所得税は地租を含めまして五百八十圓、營業税は九百十圓、不動産所得税は最も重課されて、地租をも含んで千四十九圓であると發表して居られ、勤勞所得税を最も優遇して居られる旨を示されたのでありますが、勤勞所得に對する優遇は當然のことであらうと信ずるのであります、大體其の國民が富んで居るか否かは、其の國民が其の收入の中幾許を生活保持の爲に費消するか、即ち衣食住に費消する程度に依つて決めらるべきであると云ふことは、是れ即ち學者の定説であります、言葉を換へて申しますならば、收入の大なるもの程生活維持に支出する金額は少くて濟むのであります、今日米國の中流家庭に於て、食生活の爲め支出する金額は其の收入の凡そ二割程度でありますが、我が國の場合に於ては、正確なる資料が存在致しませぬので申上げられませぬが、相當高率なものになつて居ると思ふのであります、殊に勤勞者に於ては其の比率が高いことは想像に難からぬのであります、而も其の收入は所謂封鎖制度に依つて五百圓生活を餘儀なくされて居る現状であります、斯かる見地から考へまして、現在の基礎控除、即ち月二百圓は餘りに低額に過ぎると思ふのでありまして、少くとも之を五百圓程度に引上ぐべきことは今日既に國民の聲となつて居ると思ふのであります、此の基礎控除を引上げた場合の減收見込額及び納税の人員などに付き、政府の見透しを御尋ね致したいのであります
次に所得税は租税の中樞であり、根幹でありますが、是が増收を圖らんとすれば結局生産を向上せしめなければならないのでありまして、生産を伴はざる限り所得税の増收を期待することは出來ないと思ふのであります、現下の情勢は財界前途の見透し難、原材料の入手難、勞銀の飛躍的昂騰に依る製造工業の不引合、或は戰災復舊の遲延、資金の封鎖など、各般の事由に依りまして生産は遲々として上らざる状態でありまして、所得税收入を大ならしむる爲め政府は如何なる生産増強策を持つて居られるか、又其の見透しに對しまして、大藏大臣及び商工大臣に御答辯を御願ひ致す次第であります
更に今囘の増税案の目的の第二は、國民負擔の公正を期する點にあるのであつて、政府は此の目的の爲に負擔力に即應する課税を行ふ爲め、鑛區税、有價證券移轉税、登録税、印紙税、骨牌税等をも相當増徴する方針のやうであるが、是は餘りに間接的なる方策ではないかと思ふのであります、眞に社會政策的に負擔の公正を期さうとするならば、如何なる階級に重課するかが問題であります、今囘の案は勤勞所得に對して資産所得に重課する方針を執つて居られますが、眞に負擔公正の原則を徹底しようとすれば、農民、俸給生活者など、一般勤勞階級の負擔を輕減し、之に反して眞に擔税力を有する闇取引などに依つて不正に巨富を成して居る者に對しては重課すべきであると信ずるのであります、此の點に付て何等對策の示されて居ないのは洵に遺憾と存ずる次第であります
次に地租と營業税との不均衡に付て何等かの對策を考慮して居られますか、即ち地租の賃貸價格は十年間据置であるが、之に對應する營業税は毎年申告に依る賦課である、又異議の申立も可能であります、又小作料が金納になれば賃貸價格は當然下ると思ふのでありますが、從來通りの地租を賦課するか、承りたいのであります
次に税制と賦課徴收の手續を簡素化する爲め、各種税種目を整理する方針であるが、徒らに簡素化に名を籍りて徴收の實の擧がらぬことのないやうにせねばならぬと思ふのであります、現在國民の擔税能力は著しく低下して居り、且つ人口は疎開及び戰災に因つて甚だしく移動して居る現状に於ては、實際の租税を徴收することは技術的にも極めて困難であると思ふのでありまして、戰災復興と國土計畫の樹立、人口配置の適正化等重大問題が山積して居り、是等の問題と睨み合せて正確なる人口調査を行はなければならぬと思ふのでありますが、此の點に付ては政府は如何なる方針と如何なる用意を有して居られるか、政府當局に承りたいのであります
更に租税制度に於ても民主化を圖る必要があると思ふが、政府の具體的方策は如何なるものでありませうか、從來所得税に付ては、所得税調査委員なるものがあり、民間より選出されて居つたのでありまするが、實際には税務署長の責任轉嫁の機關に過ぎないことは世間周知の事實でありまして(拍手)所得の決定の如きは從來のやうな高壓的な方法でなく、もつともつと民主的に決定さるべきであると信じて疑はない次第であります(拍手)現に農民は本年度の所得は闇取引を行つて居るものとして決定通知を受けて居る者が少くないのでありまして、所得の決定は正確なる資料に基いて、其の事情に最も明るい人に行はせるべきであると思ふが、政府の方針如何(拍手)
更に今囘の改正に依つて特別行爲税などが廢止されるが、是は其の補捉が困難で、脱税が容易であり、税收としての實益が少いからであります、今後何囘税制改正を行ひ、又増税を行ひましても、國民負擔の衡平を圖ることは勿論、増收を期待することも困難であると思ふのであります、要は其の税源となるべき對象を完全に捕捉する機關の確立こそ、必要なる課題でなければならぬと思ふのであります、從來の税務署では此の點甚だ不十分でありまして、勿論税務官吏の待遇を改善し、之に寄與せしむるのも一方法でありますが、我々は計理士の資格を向上せしめて之に協力せしむるとか、或は其の他何等かの方法を以て公正なる機關を確立しなければならぬと思ひますが、政府は此の點に付ては如何に考へて居りますか、承りたいのであります(拍手)
最後に法人税中の超過所得は、從來の臨時利得税に相應するもので、是は大資本を優遇する結果になつて居ります、何故ならば、小會社は資金調整法其の他に依つて増資が一般に抑制されて居り、已むなく借入金などで賄つて居るので、其の利益金は資本に對して高率にならざるを得ないからでありますが、御所見を拜承致したいのであります、私の質問は以上でありますが、大藏大臣其の他關係大臣の明快にして且つ誠意ある御答辯を期待して巳みませぬ、私は再質問は致しませぬから、成たけ明瞭に、而して要約して御答辯されんことを御願ひする次第であります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=20
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021・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の宇田君の御質問に御答へ申上げます、通貨價値が不安で、變動致しますと、租税收入に好ましくない影響を生ずると云ふことは御説の通りであります、是は通貨價値が下る、即ち物價が上る場合だけでなく、通貨價値が上ります、即ち物價が下ります場合には、納税者に非常な苦痛を與へます、それに反して通貨價値が下ります場合には、國庫の收入が實質的に減る譯でありまして、何れにしても好ましくない次第であります、隨て政府としては、單に租税の問題ばかりではありませぬが、通貨價値の安定と云ふことが最も好ましい状態でありまして、我々は其の方途に向つて現在總ての經濟施策を執つて行きたい、斯樣に考へて居ることは屡次申上げた通りであります、而して是は果して其の見込があるかと云ふ御尋ねでありますが、是は先般來申上げて居るやうに、一面に於ては經濟界の思ひ切つた整理をし、他面に於ては生産を増強する方策を強力に遂行して參る次第でありますから、物價の安定は必ず期待し得ると信じて居る次第であります、
次に今後の財政に付ての御尋ねであります、即ち本年度は財産税が取れるが、來年度以降はどうするかと云ふ御尋ねでありますが、是は只今、第一の御尋ねに對して御答へした所が半ば御答へになつて居るかと思ひますが、普通の財政處理と致しましては、第一に歳出の出來る限りの節減を行ふと云ふことは申すまでもございませぬ、而して是は先般本會議で申上げましたやうに、本年度の改定豫算は歳出が頗る多額に上つて居りますが、其の約半分は一應本年度限りの經費と認めらるるものでありますから、是は來年度に於ては、其の點に於て相當の手が加へられるものと信じて居る次第であります
次に生産増強策は是非とも成功致さなければならぬ、然らずんば是は單に政府の施策に妨げを起すと云ふのみでなく、殆ど國家の存亡に關する問題でありますから、石に噛り付いてでも生産増強に向つて邁進致さなければならないのでありますが、其の方向に國民經濟が向ひますならば、茲に即ち自然増收があるものと考へられます、又それでも尚ほ餘つた施設があり、餘つた人があり、それ等を動かせば尚ほ生産に向つて進み得ると云ふ、即ち「フル・エンプロイメント」に向つて尚ほ我々が努力しなければならぬと云ふ状態が來年度に於てもあるならば、其の中の相當程度は赤字で賄つても差支へないと云ふことは、先般是れ亦本會議に於て申上げた通りでございます
次に勤勞者の所得の大部分は食糧に費されて居る状態である、現在の所謂收入が五百圓に限定されて居る際、所得税の基礎控除を更に五百圓に引上げる意思はないかと云ふ御尋ねのやうでございましたが、是れ亦屡屡御答へ申上げました通り、現状に於ては此の所得税の控除を五百圓に引上げる意思もございませぬし、又事實出來ませぬ、と申しますのは、歳入だけの點から見ましても、正確なことは分りませぬけれども、大體若し五百圓程度に控除を引上げますと、勤勞所得税の歳入は恐らく三分の一以下に下るだらうと考へられます、斯樣な譯で、現在の財政の上から申しましても、遽かに左樣に取計らふことは出來ませぬ、同時に成べく多數の國民がそれぞれ其の分に應じて國家の爲に直接の納税をすると云ふことも亦色々の意味に於て必要と考へられますので、今後日本の國民所得が非常に殖えた場合には別問題でありますが、現状に於きましては暫く二百圓程度で我慢をして戴きたいと考へて居る次第であります
次に所得税の増收の爲にも生産増強策を講じなければならぬが、其の方策如何と云ふ御尋ねでありました、是も色々の機會に只今政府が考へて居りますることを申上げて居る次第でありますが、差詰め私は──私のみでなく政府としては、工業方面に於きましては、何を措いても石炭の増産と云ふことが基本である、茲に明かな方途が示さるるやうになるならば、肥料に致しましても、其の他のものにしても、必ず増産が出來ると云ふことが明かになる次第でありますから、實際の政策と致しましては、取敢ず遮二無二石炭を増産すると云ふ方向に邁進を致しまして、そこを絲口にして總ての生産増強策を執つて行きたいと考へて居る次第でございます
次に地租と營業税との問題の御尋ねであつたと思ひます、御説の如く地租は昭和十一年に調査しました賃貸價格に依つて課税をし、營業税の方は年々其の前年の收入に對して課税を致して居るのでありますから、其の點から申しますと、地租の方は古い、物價のまだ安い時分の賃貸價格に依つて居るだけ、營業税に比較して輕過ぎると云ふ結果を生ずる次第でありますが、其の代り實は地租は大分税率が其の後上りまして、今囘の改正案に依りましても、地方税を加へますと税率は百分の二十四に相成ります、營業税の方は百分の十五、斯う云ふ風に税率が違つて居ります、それで現在に於きましては、政府としては地租と營業税との間には大なる不均衡はないと考へて居る次第でありますが、唯此の地租に付ては所謂地代、經濟上の地代と云ふ問題が考究せられる必要がある譯でありまして、今後税制改革等の場合には、此の問題は理論的にも實際的にも十分取上げられて檢討されなければならぬことと信じて居ります
次に徴税の實を擧ぐる爲に人口調査を行ふ意思なきやと云ふ御尋ねのやうでありましたが、是は只今政府と致しましては、特に徴税の爲に人口調査を行ふ計畫は持つて居りませぬ、併し税務當局と致しましては、常に納税者の調査を怠つては居らないのでございまして、無論最近のやうに經濟上の變動が激しい時期には、兎角調査漏れが多い譯でありますが、是は努めて左樣な脱漏のないやうに致して居る次第であります、尚ほ何れにしましても、斯樣に變動の多い時期には、假に人口調査を行ひましても、其の人口が又移動すると云ふやうなことに相成りますので、繰返して申しますやうに、經濟界で色々の行はるべき整理が行はれ、生産が其の緒に就いて、各人がそれぞれ其の業に安んずるが如き事態になりませぬと、税務の方も完全なることにならない譯でありまして、是非とも左樣な時期を早く齎したいと考へて居る次第でございます、それから税務の民主化の件は屡屡多くの方から御尋ねがあり、又我々も此の民主化と云ふことには常に留意して居る次第でありますが、其の税務官吏の素質の向上、再教育、或は又民間からもそれぞれの方面の方に入つて戴き、然るべき機關を作つて税務の諮問等の機關にすると云ふやうなことは考へて居る次第でありまして、未だ十分の所に行きませぬことを殘念に思つて居りますが、鋭意其の方面に努めて居る次第でございます、それから税に關して計理士を利用する方法はどうかと云ふ御尋ねでございますが、計理士の問題は、必ずしも税務だけでなく、私は日本に於て計理士制度と云ふものをもつと確立し、又立派なものにする必要があると考へて居る次第でありまして、特に之を税務に利用すると云ふことは未だ考へたことはございませぬ、併しながら其の代りに、今税務辨理士と云ふものがございまして、是はやはり計理士の如く一定の資格を持つた者にやらして居る譯でありますが、只今の所では其の税務辨理士も十分の利用が行はれて居らないやうでありますが、斯樣な制度を尚ほ段々完全に致しまして、御質問にありましたやうに趣意に副ひたいと考へて居ります
それから最後に法人税の中の超過所得は、大資本を優遇することにならないかと云ふことの御尋ねであつたやうに思ひましたが、是は現在に於きましても、十萬圓以下の資本のものに、對しましては税率を百分の十づつ下げて居る、又其の他に法人資本税と云ふものがありまして、是は資本に對して「プロフィット」に千分の三を課税すると云ふやうなことにして居りまして、御説の如き弊が法人税の超過所得に關する所から生ずることを防いで居る次第でございます、以上甚だ簡單でございますが御答へ致します
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=21
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022・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 宇田君の御熱心なる生産増強に對しての御心配に對しまして、只今大藏大臣よりの御答辯で大體盡きて居るやうに思ひますが、折角私指摘されたので御答辯致したいと思ひます
只今大藏大臣が申された如く、物價と通貨の問題が、殊に増税を控へまして色々御懸念の點は洵に御意見のやうに思はれますが、大藏大臣の御答辯の通りに生産増強を害しないで、而も此の程度の増税に付ての施策に對しましては私共全く同意見でありまして、殊に生産部面に付ての心配は寧ろ私は行過ぎたる統制や或は物價の問題で、原材料を持つて居る方が寧ろ利益があると云つたやうな點から生産「サボ」等が起つて、非常に生産増強を害して居るやうに思つて居りますので、此の點に付きましては經濟安定本部が出來まするし、物價局が物價廳になりまして擴大強化されまして、斯う言ふ缺點を補つて行きたいと思ひますので、此の經濟界の何と言ひますか、大變革と言ひますか、此の戰後再建の爲に總ては生産増強に向つて邁進したいと、斯樣に思ひますので、凡ゆる隘路を克服して生産意欲を十分活溌ならしめたいと考へて居る次第であります、以上御答辯致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=22
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023・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是にて質疑は終了致しました、各案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
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024・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第三乃至第五の三案を一括して、議長指名三十六名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=24
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025・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=25
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026・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました─日程第六、自動車交通事業法の一部を改正する法律案の第一讀會を開きます─平塚運輸大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=26
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027・会議録情報5
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第六 自動車交通事業法の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會
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自動車交通事業法の一部を改正する法律案
自動車交通事業法の一部を次のやうに改正する。
「第一章 旅客自動車運輸事業」を「第一章 旅客自動車運輸事業及旅客自動車運送事業」に改める。
第八條を削り、第九條を第八條とする。
第十條に次の一項を加へる。
主務大臣は旅客輸送の確保を期する爲必要ありと認むるときは旅客自動車運輸事業者に對し運送すべき旅客、運賃其の他の運送條件を定めて旅客の運送を命じ又は旅客の運送の制限若は禁止を爲すことを得
同條を第九條とし、以下第十三條まで順次繰り上げ、第十三條の二を第十二條の二とし、第十四條を第十三條とし、第十五條を第十四條とする。
第十六條第一項中「第十條(第一項第二號及第四號を除く)及第十一條乃至第十三條の二」を「第九條(第一項第二號及第四號を除く)及第十條乃至第十二條の二」に、「第十條及第十二條乃至第十三條の二」を「第九條第一項第二項及第十一條乃至第十二條の二」に、「東京府」を「東京都」に改め、同條第三項中「運送する事業」の下に「(特定旅客自動車運送事業等)」を加へ、同條を第十五條とする。
第十六條 旅客自動車運輸事業、旅客自動車運送事業又は特定旅客自動車運送事業等の何れにも屬せざる乘用自動車(自家用乘用自動車)は之を對價を得て運送の用に供することを得ず但し主務大臣の許可を受けたるときは此の限に在らず
主務大臣は公益上特に必要ありと認むるときは命令の定むる所に依り自家用乘用自動車の使用を制限又は禁止することを得
主務大臣は必要ありと認むるときは命令の定むる所に依り自家用乘用自動車を所有し又は使用する者をして其の使用の状況に關し報告を爲さしめ、書類を提出せしめ又は監査員を派遣して自家用乘用自動車の使用の状況を監査せしむることを得
第十六條の六第一項中「東京府」を「東京都」に、同條第三項中「運送條件を定め物品の運送を命ずる」を「運送條件を定めて物品の運送を命じ又は物品の運送の制限若は禁止を爲す」に改める。
第十六條の八中「第九條、第十一條乃至第十四條及第十五條第六號」を「第八條、第十條乃至第十三條及第十四條第六號」に改める。
第十六條の九に次の一項を加へる。
第十六條の規定は貨物自動車運送事業に屬せざる貨物自動車(自家用貨物自動車)に之を準用す
第十六條の十第一項を次のやうに改める。
旅客自動車運輸事業、旅客自動車運送事業又は貨物自動車運送事業(以下自動車運送事業と總稱す)の事業者は各其の事業の健全なる發達を圖る爲自動車運送事業組合を設立することを得但し特別の事情あるときは二種以上の事業者を以て之を設立することを得
第十六條の十一 自動車運送事業組合は左に掲ぐる事業を行ふことを得
一 組合員の事業に必要なる物の購入、共同設備の設置其の他組合員の事業に關する共同施設
二 組合員の事業に必要なる資金の貸付又は組合員の爲にする其の事業上の債務の保證若は資金の借入の斡旋
三 組合員の事業に樅事する者の福利増進に關する施設
四 組合員の事業に於ける勞務管理に關する指導、調査及研究
五 前號に掲ぐるものの外組合員の事業に關する指導、調査及研究
六 運賃、輸送又は輸送用物資の購入の統制其の他組合員の事業に關する統制
七 組合員の事業に關する檢査
八 前各號に掲ぐるものの外組合の目的を達するに必要なる事業
前項第一號の共同施設は組合員の利用に支障なき場合に限り組合員に非ざる者をして命令の定むる所に依り之を利用せしむることを得
第十六條の十二 自動車運送事業組合を設立せんとするときは命令の定むる所に依り豫め地區を定め其の地區内に於て組合員たる資格を有する者の三分の二以上の同意を得て創立總會を開き定款其の他必要なる事項を定め役員を選任すべし但し第十六條の十第一項但書の場合に於ては各事業毎に組合員たる資格を有する者の三分の二以上の同意を得ることを要す
第十六條の十三を削る。
第十六條の十四に次の一項を加へる。
組合設立の登記を爲したるときは理事は命令の定むる所に依り二週間以内に主務大臣に組合設立の届出を爲すべし
同條を第十六條の十三とする。
第十六條の十五 自動車運送事業組合には役員として理事及監事を置くべし
理事は組合の業務に付組合を代表す
監事は組合の業務及財産の状況を監査す
理事の任期は三年、監事の任期は二年とす但し定款に別段の定あるときは此の限に在らず
理事と監事とは相兼ぬることを得ず
組合と理事と利益相反する事項に付ては監事組合を代表す
理事缺けたるときは監事其の職務を行ふ但し其の期間は三月を超ゆることを得ず
理事の職務を行ふ者なきときは主務大臣は假理事を選任し理事の職務を行はしむることを得
第十六條の十六中「記載すぺし」の下に「但し第十六條の十九第三項の規定に依る自動車運送事業組合に在りては第七號乃至第九號に掲ぐる事項は之を記載することを要せず」を加へる。
同條第五號を次のやうに改める。
五 組合員たる資格に關する規定同條中第六號を第十一號とし、以下順次五號づつ繰り下げ、第五號の次に次の五號を加へる。
六 組合員の加入及脱退に關する規定
七 出資一口の金額及其の拂込の方法
八 剩餘金の處分及損失分擔に關する規定
九 準備金の額及其の積立の方法
十 組合員の權利義務に關する規定
同條に次の一號を加へる。
十五 存立の時期又は解散の事由を定めたるときは其の時期又は事由
同條を第十六條の十四とする。
第十六條の十六 左に掲ぐる事項は總會の議決を經べし
一 定款の變更
二 事業計畫の設定及變更
三 收支豫算竝に賦課金の額及徴收方法
四 財産目録、貸借對照表、事業報告書及剩餘金處分案の承認
五 統制規程の制定及變更
六 自動車運送事業組合聯合會の設立の發起及同意、加入竝に脱退
七 役員の選任及解任
八 合併及解散
前項に掲ぐる事項(第六號中聯合會の設立の發起及同意を除く)に付、議決ありたるときは理事は命令の定むる所に依り主務大臣に之を届出づべし
第十六條の十七 組合員は總組合員の五分の一以上の同意を得たるときは命令の定むる所に依り理事に對し總會の招集を請求することを得
理事正當の理由なくして前項の規定に依る請求ありたる後二週間以内に總會招集の手續を爲さざるときは請求者は主務大臣の認可を得て之を招集することを得
第十六條の十八 組合員は總會に於て各一個の議決權を有す但し定款の定むる所に依り一人に付二個以上の議決權を有せしむることを得
第十六條の十九 組合員は出資一口以上を有すべし
組合員の有すべき出資口數は五十口を超ゆることを得ず但し特別の事由あるときは定款の定むる所に依り之を増加することを得
第十六條の十一第一項第一號乃至第三號の事業を行はざる組合に在りては第一項の規定に拘らず定款の定むる所に依り組合員をして出資を爲さしめざるものと爲すことを得
第十六條の二十 自動車運送事業組合は定款の定むる所に依り其の組合員に對し經費を賦課し過怠金を課することを得
第十六條の二十一 組合員の責任は前條の規定に依る費用負擔の外其の出資額を限度とす
自動車運送事業組合は定款の定むる所に依り組合財産を以て其の債務を完濟すること能はざる場合に於て組合員の全員が其の出資額の外一定の金額を限度として責任を負擔するものと爲すことを得
第十六條の二十二 自動車運送事業組合の組合員たる資格を有する者組合に加入せむとするときは組合は正當の理由なくして加入に困難なる條件を附し又は其の加入を拒むことを得ず
第十六條の二十三 自動車運送事業の事業者に非ずして自動車を使用して運送を爲す者は定款の定むる所に依り自動車運送事業組合の組合員と爲ることを得
第十六條の二十四 自動車運送事業組合は組合員の事業の統制を行ふ場合に於ては之に關する統制規程を定むべし
第十六條の二十五 自動車運送事業組合は組合員の事業の統制を確保する爲必要ありと認むるときは主務大臣の認可を受け命令の定むる所に依り組合員に非ずして當該組合の地區内に於て組合員たる資格を有する者の事業に關し統制を行ふことを得
主務大臣前項の認可を爲したるときは其の旨を告示すべし
第十六條の二十七を削り、第十六條の二十六を第十六條の二十七とする。
第十六條の二十六 主務大臣は自動車運送事業の經營に關する弊害を豫防し若は矯正する爲又は其の健全なる發達を圖る爲必要ありと認むるときは自動車運送事業組合の組合員又は其の組合の組合員に非ずして其の組合の地區内に於て組合員たる資格を有する者に對し其の組合の統制に從ふべきことを命ずることを得
第十六條の二十八中「統制規程、」の下に「事業計畫、」を加へる。
第十六條の二十九 自動車運送事業組合の事業の繼續を困難なりと認むるとき又は組合の行爲が法令、法令、に基きて爲したる處分若は定款に違反したるとき若は公益を害し若は害するの虞あるときは主務大臣は左の處分を爲すことを得
一 總會の決議の取消
二 役員の解任
三 事業の停止又は禁止
四 解散
第十六條の三十 自動車運送事業組合聯合會は所屬の自動車運送事業組合及自動車運送事業組合聯合會の共同の目的を達する爲之を設立することを得
聯合會は自動車運送事業組合又は自動車運送事業組合聯合會を以て之を組織す
自動車運送事業者にして組合の組合員又は聯合會の會員たらざるもの(組合又は聯合會なき地區内に於ける者に限る)は定款の定むる所に依り聯合會の會員と爲ることを得
聯合會は法人とす
第十六條の三十一 自動車運送事業組合に關する規定は第十六條の二十三の規定を除くの外自動車運送事業組合聯合會に之を準用す
第十六條の三十二乃至第十六條の三十七を削り、第十六條の三十八を第十六條の三十二とし、以下第十六條の四十一まで順次六條づつ繰り上げる。
第三十三條の二 主務大臣第九條第三項(第十五條第一項に於て準用する場合を含む)、第十六條第二項(第十六條の九第二項に於て準用する場合を含む)、第十六條の六第三項若は第十六條の二十六(第十六條の三十一に於て準用する場合を含む)の規定に依る處分又は第十六條の二十八(第十六條の三十一に於て準用する場合を含む)の規定に依る事業施行の命令を爲さんとするときは自動車交通事業委員會の意見を徴すべし但し重要ならざるものに付ては此の限に在らず
自動車交通事業委員會に關する規程は勅命を以て之を定む
第三十四條第一項中「東京府」を「東京都」に改める。
第三十七條第一項中「第九條」を「第八條」に改める。
第五十條中「千圓」を「五千圓」に改める。
第五十一條中「五百圓」を「三千圓」に改める。
第五十二條中「又は自動車道事業者」を「、自家用乘用自動車若は自家用貨物自動車を所有し若は使用する者又は自動車道事業者」に、「三百圓」を「千圓」に改め、同條第三號中「(第十六條の十三第一項及第十六條の三十七に於て準用する同條同項の規定に基きて爲したる處分を除く)」を削る。
第五十三條第一項及び第二項中「又は自動車道事業者」を「、自家用乘用自動車若は自家用貨物自動車を所有し若は使用する者又は自動車道事業者」に改める。
第五十八條 自動車運送事業組合又は自動車運送事業組合聯合會の役員其の他の職員の職務に關し賄賂を收受し、要求し又は約束したるときは二年以下の懲役に處す因て不正の行爲を爲し又は相當の行爲を爲さざるときは五年以下の懲役に處す
前項の場合に於て收受したる賄賂は之を沒收す若し其の全部又は一部を沒收すること能はざるときは其の價額を追徴す
第五十九條 前條第一項に掲ぐる者に對し賄賂を交付し、提供し又は約束したる者は二年以下の懲役又は三千圓以下の罰金に處す
前項の罪を犯したる者自首したるときは其の刑を減輕し又は免除することを得
第五十九條の二を削る
第五十九條の三中「第十六條の二十六第一項又は第十六條の三十七」を「第十六條の二十七第一項又は第十六條の三十一」に、「五百圓」を「千圓」に改め、同條を第五十九條の二とする。
第五十九條の四中「自動車運送事業組合なるときは第五十九條の二の規定は其の行爲を爲したる組合の役員又は使用人に、」を「自動車運送事業組合又は自動車運送事業組合聯合會なるときは」に、「組合の役員に」を「組合又は聯合會の役員に」に改め、同條を第五十九條の三とする。
第六十條中「五百圓」を「千圓」に、同條第五號中「第十六條の三十九」を「第十六條の三十三」に、同條第六號中「第十六條の四十」を「第十六條の三十四」に改め、同條第二號中「(第十六條の三十七に於て準用する第十六條の十三第一項の規定に基きて爲したる處分を除く)」及び同條第四號中「本法に依り行政官廳の徴する報告を差出さず又は」を削り、同條第二號の次に次の二號を加へる。
二の二 第十六條の二十二の規定に違反したるとき
二の三 本法又は本法に基きて發する命令に依る届出若は報告を爲すことを怠り又は虚僞の届出若は報告を爲したるとき
附則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
この法律施行の際現に存する自動車運送事業組合及び自動車運送事業組合聯合會は、これを改正後の自動車交通事業法により設立したものとみなす。
前項の場合における定款、役員その他に關し必要な事項は、勅令でこれを定める。
この法律施行前にした行爲に關する罰則の適用については、この法律施行後でも、なほ從前の例による。
印紙税法の一部を次のやうに改正する。
第四條第一項第十二號中「貿易組合聯合會、」の下に「自動車運送事業組合、自動車運送事業組合聯合會、」を加へる。
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〔國務大臣平塚常次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=27
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028・平塚常次郎
○國務大臣(平塚常次郎君) 只今議題となりました自動車交通事業法の一部を改正する法律案の提案理由を申上げます
本法は、昭和六年の制定に係るものでありまして、今日まで昭和十五年と十八年の二囘に亙つて、相當廣範圍の改正を見たのであります、殊に十八年の改正は、今次戰爭に際會致しまして、軍需輸送の完遂を期する爲め、ともすれば低下し勝ちでありました自動車輸送力の維持増強を目途と致しまして、戰時統制的色彩が相當濃化されたのでありますが、終戰後の今日、自動車行政を此の儘放置致して置きますことは、産業再建の爲にも適當ではないと考へまするし、輸送力の眞の増強は、畢竟事業者に於ける企業意欲の昂揚に求めなければならぬと考へまして、今囘自動車交通事業に於ける是等戰時統制的色彩の拂拭と行政の民主化とを圖りまする爲に、自動車運送事業組合の民主化及び自動車交通行政の運營に關する委員會制度の採用を企圖致しますると共に、陸運統制令は昨年十月之を廢止致しましたが、其の後の我が國に於ける自動車輸送の状況に鑑みまして、新たに擡頭して參りました自家用自動車に依る現下の輸送秩序を保たしめ、適正なる自動車輸送の分野を確立致しまして、自動車輸送の綜合調整を圖る爲め、必要なる監督規定を新設致したいと存じまして、今囘本案を提案致した次第でございます
以上簡單ながら提案理由を御説明申上げましたが、右の事情を御諒察下さいまして、何卒御審議の程を御願ひ申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=28
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029・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=29
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030・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=30
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031・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と、呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=31
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032・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、是にて議事日程は議了致しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後三時十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02319460801&spkNum=32
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