1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年八月三日(土曜日)
午後二時四十分開議
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議事日程 第二十三號
昭和二十一年八月三日
午後一時開議
第一 文教再建に關する決議案(大野伴睦君外十七名提出)
第二 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三 辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 工業所有權法戰時特例を廢止する法律案(政府提出)
第一讀會
第六 郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、議員から提出された議案は次の通りである
倉吉、津山間省營自動車運行に關する建議案
提出者
佐伯忠義君 西山富佐太君
福島、米澤間鐵道電化促進に關する建議案
提出者
石黒武重君 松浦東介君
大久保傳藏君 海野三朗君
小野孝君 山木武夫君
圖司安正君
雪國地方財産税の特別措置に關する建議案
提出者
松浦東介君 大久保傳藏君
海野三朗君 石黒武重君
山木武夫君 小野孝君
圖司安正君
雪國地方の副業及び農村工業復興に關する建議案
提出者
圖司安正君 大久保傳藏君
山木武夫君 小野孝君
海野三朗君 石黒武重君
松浦東介君
觀光國策確立に關する建議案
提出者
高橋傳君 船田享二君
小島徹三君 川崎秀二君
藤田榮君 志賀義雄君
石田一松君
由良川改修工事促進に關する建議案
提出者 大石ヨシエ君
(以上八月二日提出)
一、去一日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
内務事務官 高村坂彦
同 荻田保
第九十囘帝國議會内務省所管事務政府委員被仰付
同 田中楢一
第九十囘帝國議會内務省所管事務政府委員被免
一、去一日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
四四三 河野金昇君
四六三 木下榮君
四六四 船田享二君
四六五 北勝太郎君
四六六 山本實彦君
一、去一日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第三部選出
請願委員 石橋千松君(小坂善太郎君補闕)
第九部選出
建議委員 大石ヨシエ君(江川爲信君補闕)
一、去一日議長に於て次の委員を選定した
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)外二件委員
小川原政信君 河原田巖君
片岡伊三郎君 上林山榮吉君
坂本實君 田中実司君
寺尾豊君 殿田孝次君
中野武雄君 平岡良藏君
深津玉一郎君 飯島祐之君
江川爲信君 加藤高藏君
苫米地義三君 松岡運君
宮澤才吉君 武藤嘉一君
八木佐太治君 奧村又十郎君
川島金次君 榊原千代君
玉井潤次君 林田哲雄君
松永義雄君 山崎常吉君
米山久君 飯田義茂君
今井耕君 橋本二郎君
原尻束君 鈴木憲一君
増井慶太郎君 山下ツね君
喜多楢治郎君 布利秋君
自動車交通事業法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
河原田巖君 鈴木平一郎君
松浦薫君 松浦東介君
村上勇君 森崎了三君
堀川恭平君 本名武君
八坂善一郎君 早稻田柳右エ門君
井上良次君 海野三朗君
高瀬傳君 森本義夫君
香川兼吉君 木下榮君
吉田セイ君 布利秋君
一、去一日次の通り特別委員の異動があつた
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)外三件委員
辭任 宇田國榮君 補闕 原國君
勞働關係調整法案(政府提出)委員
辭任 安平鹿一君 補闕 中原健次君
生活保護法案(政府提出)委員
辭任 日比野民平君 補闕 竹内歌子君
辭任 久保猛夫君 補闕 田中たつ君
一、昨二日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
三五三 井上徳命君
三五八 丹野實君
三六三 坪井亀藏君
三六八 酒井俊雄君
三六九 河野金昇君
四二五 原國君
四二六 越原はる君
四三一 川越博君
四三三 平野八郎君
四三四 的場金右衞門君
四三五 竹山祐太郎君
四三六 森由己雄君
四三七 藤井正男君
四三八 林興一郎君
四四一 飯田義茂君
四四二 北政清君
四四三 香川兼吉君
四四四 今井耕君
四四五 米倉龍也君
四四七 麻生正藏君
四四八 稻田健治君
四四九 二階堂進君
四五三 藤本虎喜君
四五四 橋本二郎君
四五五 松本瀧藏君
四五六 三木武夫君
四五七 伊東岩男君
四五八 山本實彦君
四五九 林平馬君
四六〇 石原登君
四六一 東隆君
四六二 川野芳滿君
四六三 宇田國榮君
四六四 木下榮君
四六五 船田亨二君
四六六 北勝太郎君
一、昨二日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第六部選出請願委員 大原博夫君
一、昨二日常任委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
請願委員
理事 石崎千松君(理事小坂善太郎君去三十一日委員辭任に付其の補闕)
一、去二日委員長理事互選の結果次の通り當選した
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)外二件委員
委員長 苫米地義三君
理事
殿田孝次君 中野武雄君
深津玉一郎君 飯島祐之君
宮澤才吉君 松永義雄君
山崎常吉君 今井耕君
自動車交通事業法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
委員長 八坂善一郎君
理事
村上勇君 森崎了三君
堀川恭平君 高瀬傳君
一、昨二日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)外三件委員
理事 中野四郎君(竹谷源太郎君昨二日理事辭任に付其の補闕)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=0
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001・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是より會議を開きます、日程第一、文教再建に關する決議案を議題と致します、提出者の趣旨辯明を許します─竹田儀一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=1
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002・会議録情報2
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第一 文教再建に關する決議案
(大野伴睦君外十七名提出)
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文教再建に關する決議案
文教再建に關する決議
眞理と眞實とを尊重し、平和と人道とに奉仕し、以て民主主義的理想に徹底せる國家の成員たるべき資格を具有する世界的なる日本人を養成することは、正に今後の我が教育の目標でなければならない。而して我等が今「戰爭の抛棄」を國是として中外に宣明する以上は、ただに日本が世界各國に對し一層友誼を厚うすることに力を致すべきは勿論、又日本が各國の信頼と親愛とをかち得るに足る高度の文化國家の水準に到達することが絶對に必要である。この目的に向つて我等は渾身の努力を教育の再建に傾注しなければならない。これ實に既往の過誤と現時の悲慘とを世界の平和と人類の福祉の礎石に轉換する所以である。
我らは茲に、教育の尊重と教育權の獨立を強調し、以て政治に於ける「教育優先の原則」を確立せんことを期するものである。
今文教再建が焦眉の急務であり、解決を必要とする教育關係の諸重要案件堆積せる秋、特に左の政策を速急に斷行せられんことを切望するものである。
一、教育制度の根本的刷新のための特別の機關の設置
二、教育の官僚主義化よりの解放殊に地方教育行政の獨立
三、青年教育の充實及び振興
四、社會教育の壙充強化と體育及び科學教育の劃期的振興
五、戰災學校復興の促進竝びに教育に關する設備資材の充實
六、教職員正遇の斷行と教育者養成機關の革新
右決議する。
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〔竹田儀一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=2
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003・竹田儀一
○竹田儀一君 只今議題と相成りました各派共同提案に係る文教再建に關する決議案の趣旨辯明を致したいと思ひます、先づ決議案の朗讀を致します
文教再建に關する決議
眞理と眞實とを尊重し、平和と人道とに奉仕し、以て民主主義的理想に徹底せる國家の成員たるべき資格を具有する世界的なる日本人を養成することは、正に今後の我が教育の目標でなければならない。而して我等が今「戰爭の抛棄」を國是として中外に宣明する以上は、ただに日本が世界各國に對し一層友誼を厚うすることに力を致すべきは勿論、又日本が各國の信頼と親愛とをかち得るに足る高度の文化國家の水準に到達することが絶對に必要である。この目的に向つて我等は渾身の努力を教育の再建に傾注しなければならない。これ實に既往の過誤と現時の悲慘とを世界の平和と人類の福祉の礎石に轉換する所以である。
我らは茲に、教育の尊重と教育權の獨立を強調し、以て政治に於ける「教育優先の原則」を確立せんことを期するものである。
今文教再建が焦眉の急務であり、解決を必要とする教育關係の諸重要案件堆積せる秋、特に左の政策を速急に斷行せられんことを切望するものである。
一、教育制度の根本的刷新のための特別機關の設置
二、教育の官僚主義化よりの解放殊に地方教育行政の獨立
三、青年教育の充實及び振興
四、社會教育の擴充強化と體育及び科學教育の劃期的振興
五、戰災學校復興の促進竝びに教育に關する設備資材の充實
六、教職員正遇の斷行と教育者養成機關の革新
右決議する。
是でございます(拍手)今や我が國は民主主義國家を建設せんとする首途に當りまして、聲高らかに戰爭の抛棄を中外に宣明致し、平和國家、文化國家として新發足を決意するに至りました、我が國が將來世界の信頼と親愛とを羸ち得まして、國際社會の一員となり、更に進んでは武力なき世界平和の確立と人類の福祉とに寄與せんと致しますことは、獨り全人類に對する過去の罪科を償ふこととなるばかりでなく、國家の理想を實現せんとする敬虔なる我我の念願でございます(拍手)開始すべからざる戰爭を開始し、繼續すべからざる戰爭を繼續して國運を破滅に導いた原因の一つが、過去の軍國主義的、超國家主義的教育にあることは萬人の齊しく承認する所であります(拍手)我我は此の點に深く思ひを致しまして、權力に盲從する封建的、事大主義的な態度を脱却せなければなりませぬ、而して眞理こそ至高の力であることを確認致し、飽くまでも眞理の探究と、之に對する奉仕とを目指すと共に、人格の完成及び個性の健全なる發達、竝に社會連帶の觀念に徹底した責任を自覺せる國民の育成を目標とすべきものと固く信じて疑はないものでございます(拍手)我々は此の目標、此の念願を達成すべく、我が國の教育制度全般に亙り劃期的改革の斷行を希望致すものでありまして、先般來朝せられたる米國教育使節團の好意ある勸告を參酌し、廣く先進各國の教育理念及び教育制度の長所を攝取致しますと共に、我が社會の具體的事情に即した文教の根本方針の確立の爲に、特別の機關の設置を急がれんことを要望して已みませぬ(拍手)此の點特に文部大臣の御英斷を望むものでございます
次に教育の官僚主義化よりの解放の問題でございます、既往の教育は、形を整へるに急なるの餘り、中央集權的劃一的統制の弊に陷りまして、或は教育家の創意を抑制し、或は教育家をして、溌剌とした態度で其の高貴なる使命の遂行に邁進せしむることを阻碍したのでございます、即ち教育に關する重要事項は、議會の協贊を經ない勅令以下の法規に依つて規定せられまして、其の内容も複雜煩瑣なものであつて、學科目、授業時間、教科書内容等に至るまで細かに規定せられたのが實情でございます、加之其の運用に於きましても、教育の第一線に於ける經驗の乏しい官僚に依つて行はれました爲め、學問の自由と教育の自主性とは全然阻碍せられて居つたのであります、此の弊風を打破し、教育を官僚主義化より解放致しますには、從來文部省の教育界に對する官僚統制の弊を拂拭すること、及び教育の地方分權を實現することが絶對に要求せられるのでございます、今地方教育行政の現状を見まするに、眞摯で熟練した老教育家も、年若き學務課長に生殺の權を握られ、白髮の老校長も、無經驗なる一視學の鼻息を窺ふの事例も亦少くありませぬ(拍手)教育行政が内務行政の末端たる感があることに對し、之を是正致し、教育を官僚の手から解放し、教育家竝に最も教育に理解ある民衆の組織の下に教育を取戻すことに深く思ひを致さなければならぬと思ふのでございます(拍手)政府殊に内務大臣の理解深き御明艦を望むや切なるものがございます、又地方教育財政の獨立に付きましても同樣の意味に於て政府、殊に大藏大臣の御英斷を希望して已みませぬ、實に民主主義の原理と方法とに基く教育を通じての文化的、平和的日本の再建こそは、正しく敗戰國民たる我々の上に課せられたる大使命である、今にして教育權の獨立、教育の民主化を徹底し、平和日本再建の爲に文教の貢獻すべき大道を開くにあらずんば、我が國文教の再建は百年河清を待つに等しきものがあると存ずるのであります(拍手)
第三に青年教育の問題であります、終戰後特に青年子女の精神に動搖を來し、虚脱状態にあるやに考へられますことは、識者の齊しく憂ふる所でございます、眞に青年こそは明日の國家を背負ふべき國家の輝かしき希望でございます、光でございます、戰時中或は前線に、或は職場に勇躍奮鬪した彼等は、純眞であるだけそれだけ強く軍國主義の被害者となり、犧牲を拂はされて居ります、此の點洵に同情の涙禁じ得ないものがございますが、此の儘にして放置致しますならば、國家再建の途上に一大暗影を投ずることは火を睹るより明かであります(拍手)殊に青年の八割に上るものを教育致しまする機關である青年學校から、軍事教練の歴史を拂拭し、其の内容を改正充實致すと共に、其の進學に付ても出來得るだけ便宜を圖り、高等教育を受け得る機會を與へますことは、教育の機會均等、門戸開放を宣言した新憲法制定の精神に副ふ所以と存じます(拍手)昏迷せる青年に道を開き、次代の國民に正しき進路を示すことは、我々に課せられた最大の責務であります、新日本の前途を雙肩に擔ふ青年の文化水準を高め、其の前途に光あらしむべく、政府は男女青年教育の充實振興に格段の御配慮あらんことを切望致す次第でございます(拍手)
次に社會教育、體育竝に科學教育の問題でございます、終戰後國民の道義の頽廢は其の極に達したるやの感があります、道義地を拂ふの感があるのでありますが、道義心を昂揚し、秩序と責任とを重んずる風習を作興せんが爲には、學校教育と竝んで、社會教育の劃期的振興を圖ることが喫緊の要務と存じます(拍手)殊に新憲法精神の浸潤徹底、地方自治の促進、地方の文化、産業の振興に寄與すべき公民館、圖書館、博物館、成人教育講座等の奬勵助長に一層力を致し、國民文化水準の向上を圖るべきことは申すまでもございませぬ、更に宗教的情操を陶冶涵養し、心の奧底に眠れる良心を目覺まし、宗教的信念に依りまして道義頽廢の危機を突破し、日本文化の根柢を深く培はねばならぬと思ひます、尚ほ長期に亙る戰爭生活に依りまして國民は疲勞困憊の極に達して居ります、發育盛りの青少年の體位は著しく低下し、再建日本の前途に一大不安を覺えしめるのでありますが、此の際體育を奬勵し、保健思想の普及奬勵竝に是が適切なる施策と相俟つて、國民體位の向上に努むると共に、慰安の少い勤勞大衆に健全なる「スポーツ」を奬勵し、明朗濶達なる氣風を振作致しますことも決して忽せにすべからざることと存じます、又眞理尊重の精神に則りまして、科學知識の普及、生活の科學化に依り、國民生活の改善を圖ると共に、科學教育の徹底と科學研究の劃期的振興に依りまして、我が再建日本を、國土狹小、資源の貧困から來ます所の物資缺乏から救はねばならぬと思ひます(拍手)
次に戰災學校の復興の問題であります、戰禍に因り燒失致しました學校は、其の數約三千を超えます、設備、資材、資金の隘路は、到底其の自力復興を許さざる實情にございます、政治に於ける教育優先の原則を確立致しまする以上は、戰災學校の復興は勿論、學校其の他の文化的施設の充實擴張に對しては、或は國庫補助の増額を行ひ、低利資金の融通、封鎖預金の解除、或は教育事業に對する寄附金の免税等を行つて、政府は拔本塞源的の施策を講ずると共に、又教科書用資材、研究用資材、學用品等、教育及び研究の爲の設備資材の配給竝に輸送に關しましては、特に優先的に認められんことを希望する次第であります(拍手)
最後に諸君、良き人間のみ良き文教を作る、文教の興廢は懸つて結局人にありと斷言して憚りませぬ(拍手)由來教育家の職務が純精神的なものであります所からして、其の給與は他の一般官吏より遙かに低く、其の昇給も洵に遲々たる状態でありましたが、今囘の改定豫算に依つて相當改善せられましたことは、聊か意を安んずるものであります、從來の如き給與でありましては、教育の神聖を叫び、教育權の獨立を叫び、教育の尊重を叫びましても、全く其の實はなく、單なる口頭禪と申さなければなりませぬ、私は更に進んで一般官吏以上に給與を改善する必要があるのではないかと思ふのであります(拍手)それは教育關係の教職員の對象となる仕事と、一般官吏の對象となる仕事と同一に論ぜられないのでありまして、仕事が眞の人間の養成であると云ふ、他の官吏の仕事との間に存する質的相違を深く認識しなければなりませぬ、殊に一般の官廳に於きましては、其の構成員は下級職員が比較的多いのでありますが、教育關係の官廳、學校の構成員は下級職員が殆どないのでございます、此の點も亦深く洞察せられまして、教育關係教職員の二級官の定員を相當多數に増加することに思ひを致されんことを希望致します、實に老教育家が二十年、三十年青少年教育に精勵致し、頭に白髮を戴き、愈愈引退の間際に於て、僅かに二級官の末席に列し、弧影悄然として教育界を去り行く姿を見る時に、洵に悲慘其のものと申さなければなりませぬ、教育家に對し、師として敬ふに足る物心兩面に於ける待遇の根本的改善、即ち教職員の正遇の斷行こそ、寸刻を爭うて解決すべき喫緊の問題と存じます、斯く教育家の生活を保護し、教育家の名譽を尊重すると同時に、一面に於て其の内容と實力の向上を圖るべきは申すまでもございませぬ、從來動もすれば劃一的教育に堕し、生彩を失つた感のある教育者養成制度に、根本的改正を斷行して、沈滯した教育界の門戸を開き、清新溌剌の氣を横溢せしむると共に、新日本再建の爲の新しき教育の理念と實力とを具備した教育家の輩出を期待して已まぬものでございます(拍手)其の屋根は破れ、其の柱は傾いたあの松下村塾に於ける吉田松陰先生の其の薫陶は、實に明治維新の大業を完成し、開國進學の大方針を確立せしめたことを想起致します時、實に師範教育の改善こそ文教再建の根基たることを深く信じて疑はぬものであります(拍手)
以上文教再建に關する決議案の趣旨を概略辯明致したのでありますが、食糧危機突破の問題、財界匡救の問題、失業對策の問題等、固より一日も怱せにすべからざることは申すまでもございませぬ、併しながら是等各般の問題に對して警鐘を亂打されて居る眞只中に、各派共同の上、此の文教再建の決議案を提出致しましたのも、國家百年の大計に深く思ひを致したるに外なりませぬ(拍手)今囘の改定豫算案に於ける文教關係の豫算は僅かに十二億圓、實に豫算總額の二・二%に過ぎませぬ、洵に遺憾千萬でありまして、政府の猛省を強く要求するものであります、政府は我々の意の存する所を嚴肅に考覈せられまして、萬難を排して文教再建の爲に遺憾なき施策を勇猛果敢に斷行せられんことを希望致す次第でございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=3
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004・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是より討論に入ります、須次發言を許します─有馬英二君
〔有馬英二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=4
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005・有馬英二
○有馬英二君 私は進歩黨を代表致しまして、只今上程されました教育の尊重と教育權の獨立に付て所信を述べ、さうして贊意を表したいと思ふものであります
惟ふに我が國の現状は、未曾有の社會秩序の紊亂状態でありまして、食糧の缺乏と經濟の破綻は、民心の不安定と道義の頽廢を來し、所謂恐怖状態を來して居るのであります、而して其の原因を探究致して見ますると、明治以來過去久しきに亙る教育の大なる過ちを發見するのであります、我等は茲に其の非を知ると共に、速かに是が是正をなし、以て眞に民主主義國家の建設の基を作らねばならぬと思ふのであります
第一は教育指導原理の過ちであります、明治以來今日までの長い時代の國民の教育は、其の時代時代に依りまして多少の變動はありましたが、其の指導原理は、要するに誤つた世界觀或は極端なる國家至上主義に基いて行はれて、個性の完成は全く無視せられ、教育は單に國家の一手段に過ぎなかつたのであります、そこには個性の自由も、尊貴も、獨立も顧みられなかつたのであります、教育家自身も全く獨自性を失つて、自由に奪はれ、消極隸屬は彼等の別名であるかの如く、單に上官の命令に服從する機械的存在に過ぎなかつたのであります、彼等の指導精神は明治天皇の教育勅語の外に出でなかつた、而して究極の目的は國家奉仕であつたのであります、斯くて國民は排他的、獨善的、極端なる服從的な人となり、其の結果は明治以來數囘の征服行爲となり、國家の爲には虐殺も正義であると考へるに至つたのであります、今や我等は此の過ちを深く悔ひ、教育指導の原理が宇宙を貫く大精神、即ち人類愛の精神にあつて、そこに尊き個性の自由と獨立と權利を尊重し、個性を完成すべきことが教へられなければなりませぬ、斯くて初めて我等は平和愛好の國民に伍して尊敬を受け、眞に世界平和建設に役立つ所の日本人を見出すことを知るでありませうか
尚ほ此の機會に私は田中文部大臣に對し御注意申上げたい、文部大臣は今まで數度の言明に、教育の目的は眞理の探求にあると云ふことを申して居られる、此の言葉は洵に意味深長であり、以て文相の學識の高邁と人格の高遠とを窺ふに足るのでありますが、それは極めて抽象的であり、果して國民の一人々々が此の眞意を理解出來るかどうかと云ふことを私は疑ふ、文相はもつと之を平たく─是からの日本の教育は、單に學校で字を覺えたり數字を習つたりするのではない、人が人として最も尊いものになることを教へるのであると云ふやうに言はれたらどうかと思ふのであります、此の點に付て文相の御意見を伺ひたい
第二は教育行政の大改革である、由來我が國の學校行政が、實際教育の任に當る教育家の眞の獨自性が認められず、其の任免進退は勿論のこと、教育の内容にまで、教育に無經驗なる所の事務系統の支配を受けて居つた、殊に末梢に於きましては内務系統の官吏が支配して居つたのであります、此の弊害は此の際速かに改められ、教育家の眞に自由なる位置が保障せられて、教育家は全く束縛を受けない所の確乎たる信念の下に、人格的教育の徹底を行ふことが出來るやう特別の行政機講を設置して、以て刷新教育の實を擧げられんことを望むのであります、此の點に付て文部大臣の明かなる御答辯を得たい、政府は尚ほ國家の有識を集め、教育審議會に諮つて考案中なりと聞きますが、其の機構は官僚的でなく、民主的なものでなければなりませぬ、此の新しい機構に依り初めて教育と行政との關係が改められ、教育の獨立が尊重せられんことを望むのであります、と同時に私は尚ほ文部大臣に進言したいのであります、御承知の如く明治、大正、昭和を通じて擴張政策に終始して來た我が國の高等專門教育機關は、太平洋戰に至つて極端なる弊害の頂點に達して、各種の高等專門學校が濫設せられた、然るに今や領土の縮小と、復員竝に外地歸還の爲に、勢ひ是等濫立學校の陶汰整理が必要となりました、一方戰災地に於ては多數の專門學校が燒失し、其の復興が計畫されて居るのであるが、私は此の整理と復興に當つて文部大臣は今後の人口分布と我が國文化の普遍普及等を勘案して、高等教育機關の中央集中を去り、地方分散の方針を實行すると共に、地方の實情を詳かにした所の整理に當られんことを望むのであります、而して此の際單に學校の數を論ぜず、其の内容の充實を圖られんことを望むのであります
第三は我が國教育體系の變更に付てでありますが、是は今春渡來の米國教育視察團の示唆に基き…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=5
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006・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 有馬君に御注意申上げます、本決議案に贊成の御演説を許されたのでありますから、御贊成の趣旨を御述べにならんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=6
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007・有馬英二
○有馬英二君(續) 政府は義務教育の延長と、中等教育の年限縮小、高等教育への進級等に關して愼重審議中なりとのことでありますが、此の變更には必然的に國字の改革、特に漢字の制限、「ローマ」字の採用等基礎的條件の變革が入用なのであり、隨て我が國教育體系は獨得のもので、決して他國の模倣であつてはならないのであります、政府は深く茲に留意せられ、衆智を集めて考察研究せられて、此の際次の時代を背負ふ所の人に對する教育の基を確立せられんことを望むのであります、尚ほ青年教育の點に於て、八割五分を占める所の青年學校の教育の改善の急務なことが叫ばれて居るのでありますが、從來彼等には高等教育の門戸は長く閉鎖せられて居つたのであります、學制の變更に當つて、彼等には高等の學校に進級するの道を開き、廣く英才をして其の眞價の發揮に努められるやう希望するものであります、同時に農村の子弟には實際農業に必要なる農學の實地教育が容易に行はるるやう、青年教育の内容が改められなければならないと思ふのであります
第四は女子教育の根本的改革であります、從來の誤つた低劣なる教育理念の拂拭は、中等教育を以て最終の教育であるかの如き女子への侮辱を改められて、女子教育の向上開放が必然的に行はれ、専門學校或は大學への開放が直ちに實施せられるやう一段の努力を望むものであります
第五に科學教育の徹底的振興でありまするが、御承知のやうに無暴なる太平洋戰爭が、科學知識の不足に基いて起り、又科學の劣勢に依つて終つたことを知りました我等は、平和國家の復興と世界への雄飛には、科學振興と文化の向上以外に途がないことを教へられたのでありますから、政府は一日も之を忽せにすることは許されないのであります、單に專門學校の科學研究費を増額せられなければならないばかりでなく、總ての教育の面に、又社會教育に、或は家庭の教育にまで科學の滲透を圖るやうに努力をせられなければならないと思ふのであります、此の點に付て我々は本案が直ちに採用せられ、文部大臣が、又我が政府が此の點に付て努力せられんことを希望するのであります(拍手)
尚又最も大切なる宗教教育に付て、一言述べさせて戴きたいのであります、現時の道義頽廢の世相から見ましても、人間の最後の教育は道徳律の強調ではなくして、宗教の裏付けであると云ふことは、敗戰が齏した國民への何よりの教訓であるのであります(拍手)然るに今囘の改正憲法草案の中に、國家は宗教教育に付て、其の實施と又援助を許されて居らないのであります、是は洵に我々の遺憾とする所であります、之に付て我々は文部大臣其の他閣僚が、此の宗教教育の教育上に忽せにすべからざることを能く御知りになつて、之に代る特別の、さうして最も實際的なる措置を執られんことを望むのであります、眞の教育は魂の教育でなければならない、此の點は宗教に特別の御理解を持つて居らる、田中文部大臣の能く御承知の點であると思ひます
最後に以上述べました私の贊成の意が、我が教育家の優遇に依つて、教育家の生活の安定が確かめられ、さうして教育家が安心して十分に其の本來の目的の爲に活動をせらるることに依つて、初めて此の目的が達成せられるものと思ふのであります、此の點に付きまして政府が只今豫算に出して居ります通り、教育家の特別の待遇改善を執られて居ることを眞に喜ぶものでありますが、尚ほ是で以て我々は滿足するものではないのであります、常に我々は此の點に付て一段の御工夫を願ふものであります、之を以て私の演説を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=7
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008・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 高津正道君
〔高津正道君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=8
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009・高津正道
○高津正道君 私は日本社會黨を代表して本案に贊成の意見を述べようとするものであります、日本社會黨は教育の問題に對しては深甚の注意を拂ひ、又其の教育家に對して期待する所は非常に大きいのであります、なぜならば我が黨の中には、黨員の中にも、我が黨を支持する團體の中にも、代議士の中にも、多數に教育の關係者が含まれて居るし、隨て教育界の事情は黨内に非常に能く知られて居るのであります、もう一つの理由は、我が黨の第一の綱領は民主主義體制の確立であり、第三の綱領は、一切の軍國主義的思想及び行動に反對し、世界各國民の協力に依る恆久平和の實現を圖ると云ふのでありますが、斯う云ふ我々の行動目標の達成は、毎日々々青少年の側にくつ付いて教育をやつて居る教育擔當者の協力に俟たなければならないと云ふことを我々は知つて居るので、教育家に對しては非常に大きい期待を我が黨は抱いて居るのであります
此の決議案は先づ初めに教育の目的を規定して居り、其の次に教育が如何に重要であるかと云ふことを述べて、政府に於ける教育の優先の原則をはつきりと書いて、最後に其の方法として、今二人の同僚議員より説明されましたやうに、六箇條の方法を示して居るのであります、我が黨は其の一々を十分に讀んで、之には全部贊成であります、勿論各黨共同の提案でありまするからして、それぞれの黨派に聞くならば、是より善い案も或はあるでありませうけれども、最大公約數が此處に現はれて居るのであつて、私は其の範圍内に於て此の提案を支持すると云ふことは申すまでもありませぬ、此の決議案の一つの特徴は、息せき切つたやうな調子が文章の中に見えて居ります、例へば渾身の努力を教育の再建に盡さなければならぬ、もう一つは今文教再建が焦眉の急務である、其の次は政治に於ける教育優先の原則、左の政策を速急に斷行する、もう一つ、教育制度の根本的刷新、實際此の文化革命、智的革命、斯う云ふことの重要性を此の決議案は認めて居るものだと私は思ふのであります、日本國民の自覺を相當十分に此の決議案は盛り得て居るので、それを我々は非常に嬉しく思ふのであります(拍手)日本は今民主革命の嵐の中に立つて居ります、是は明治維新の三倍、五倍の大きさを持つものであることを我々は十分認めなければならないと思ふのであります、此の革命は軍隊を解散し、財閥を解體し、さうして今産業界の大整理に進み、大地主と云ふものは殆どなくし、昨日あたりの新聞に依れば、皇室の百三十五萬町歩と云ふあの御料地も、世襲財産としては三十萬町歩までに削ると云ふやうな話がある位に、實に大きな革命の嵐の中に我々は今立つて居るのであります、貴族は實質はなくなるが、名前だけは殘すのであるかと思つて居つたら、それさへも吹つ飛んでしまふと云ふやうな時代であります、我々は戰時中に聯合國が、今我々は日本と戰爭して居るけれども、日本の民族を滅ぼさうとする意思はないのだ、日本の國民を奴隸とする意思はないのだと斯う言ふことを聞いた場合に、私個人ではないけれども、多くの物知り顏の評論家の中には、是は敵の謀略であつて、戰爭を早目に止めさせよう、早目に降參させようとする作戰であると云ふやうに皆考へたのでありますけれども、聯合國が日本に來てやつた所を見れば、上の財閥、官僚、軍閥に對しては相當の大鉞を揮ふけれども、農民に對しては、農民解放を實行し──弊原國務大臣は之を自分の内閣の手柄のやうに曾て説明されたことがありますが(拍手)勞働者に對しては、勞働組合の組織する所の自由團體交渉權、團體契約權を認め、さうして一般國民に…(「贊成演説にならぬことを言ふな」と呼ぶ者あり)此處が一番根本な點なので──一般國民に對しては言論集會結社の自由、是は聯合國の日本國民に對する大きい「プレゼント」であると私は思ふのでありますが、斯う云ふ民主革命をやつて居る主たる勢力は、武力を持つて日本に上陸して居る所の聯合國であつて、日本の民主革命をやつて居る者は誰であるかと言へば、武力を持つて居る所の聯合國であります、それが此の民主革命の八割位をやり、さうして此の革命の進行に依つて富と權力を失ふ立場にある人間が、此の革命に對して非常にさぼるけれども、之を本當に推進しようとする所の者は、言ふまでもなく勞働組合であり、農民組合であり、全國水平社であり、大衆政黨であり、文化團體であり(拍手)其のことに單なる…(「脱線するな」「脱線脱線」「贊成演説をやれ」と呼ぶ者あり)それで産業の面に於ても、凡ゆる方面に大鉞を揮はれて居るのでありますけれども、思想、文化、教育の面に於ては、大分窪んだ點が見えるのであります、それで此の部分が一大方向轉換をしなければならないことに、現在丁度革命の段階が進んで參つたのであります(拍手、「そんなことは分つて居るぢやないか」と呼ぶ者あり)教育は自分自身が方向轉換をするばかりでなくて…(「自分が方向轉換しろ」「決議案に贊成か反對か」と呼ぶ者あり)大贊成だ(拍手)其の他一切の民主主義化に對して魂を入れ、精神を打込むと云ふやうなことを、教育はやはりやらなければならない使命を持つて居るのだと私は思ふのであります(「同感」と呼ぶ者あり、拍手)
考へて見ると教育は今まで隨分仕事をして參りました、併しながら過去十幾年のやり方と云ふものは、教育の名に値しないものであつたと私は思ふ、軍閥、官僚、財閥の決定した誤まれる國策に向つて國民を訓練して來たのであります、さうして若し世界の目から見るならば、日本の教育は教育と呼ぶべきものではなくて、奴隸訓練作業であると言ふかも知れないのであります(拍手)私は決して田中文部大臣をさうだとは言はないのでありますが、日本の文部省には林銑十郎だとか、或は二宮治重だとか、澤山の軍人が文部大臣の椅子を占めて居りますが、此の日本の文部省と云ふものは、今世界の被告席に立つて居るのであります
〔「國家を侮辱するな」「林銑十郎は文部大臣ではない」「文部省は立つて居ないぞ」と呼び其の他發言する者多く議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=9
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010・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=10
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011・高津正道
○高津正道君(續) 兼任をやつて居ります、私は教育界の名士は自ら顧みて(「取消せ取消せ」と呼ぶ者あり)連名で以て、我等誤まれりと内外に向つて一つの大聲明を發せられたらどうであらうかと屡屡思ふのであります(「國家を侮辱する者のがあるか」と呼ぶ者あり)教育は本當に方向轉換をしなければならぬ、然らばどのやうに方向轉換をすべきであるかと言へば(「何を言つてるんだ」と呼ぶ者あり)日本中心の世界觀を、世界中心の世界觀に改めなければならないと思ふのであります、私は此處に證據を持つて來て居りますが、(「何の證據だ」と呼び其の他發言する者多し)是は一番大事な點だ、(「日本の文部省は被告席に著いちや居ないぞ」と呼ぶ者あり)滿井佐吉の書いた本の中に、元來今囘の時局は…
〔發言する者多く議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=11
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012・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=12
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013・高津正道
○高津正道君(續) 一口に讀まないで要領を言ふが、滿井佐吉の書いた本の中に、明治維新は…
〔發言する者多く議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=13
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014・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=14
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015・高津正道
○高津正道君(續) 明治維新は廢藩置縣であつたが、今度の大東亞戰爭は世界の…(「簡單にやれ」「降壇々々」と呼ぶ者あり)世界の廢邦置州であると云ふことを言つて居るのであります、廢邦置州と言へば、日本の天皇を世界の天皇として、さうして日本國「アメリカ」州、日本國「スペイン」州と云ふやうに、世界を一つの日本國にしてしまふと云ふ思想でありますが…
〔發言する者多く議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=15
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016・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=16
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017・高津正道
○高津正道君(續) 天に二日なし、天に太陽は唯一つであるやうに、地上にも王樣は唯一つであると云ふやうなことを言うて…(「政府を誹謗するな」と呼ぶ者あり)私は一口と雖も政府を誹謗しては居ない、斷じて誹謗して居ない(「決議案を利用して政府を誹謗して居る」と呼び其の他發言する者多く議場騷然)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=17
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018・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 高津君に御注意致します、御議論は自由でありますが、本決議案の範圍を餘り離れぬやうに御願ひ致します
〔發言する者多く議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=18
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019・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 靜肅に願ひます
〔水谷長三郎君「進歩黨の方はどうした」と呼び其の他發言する者多く議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=19
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020・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 水谷君に申上げますが、椎熊君には降壇を命じました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=20
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021・高津正道
○高津正道君(續) 私は戰爭に負けたから言ふのではないのでありますけれども、聯合國の日本に對する批判に對しては、心靜かに其の批判の一々を味はつて見る必要があると常に思うて居るのであります、其の批判の一つは、東條は惡者であるけれども、東條よりももつと惡いのは荒木である、荒木よりもつと責任のある者は、荒木や東條に思想哲學を提供した者であると云ふ批評であります、是が即ち文部省が如何に斯う云ふ思想に對して責任があるかと云ふことを明かにする爲に極めて大切なる前提をなすものであります(拍手)(「贊成か反對か」と呼ぶ者あり)私は大贊成だ、私は斯う云ふ文部省の議案を扱ふ場合に頭の中に浮んで來るものは、思想家や哲學者の名前であります、鹿子木員信、大川周明、紀平正美、山田孝雄、河野省三、松永材、さうしてもう一人あるが、それは此處では言はないことにして、教育が方向轉換を如何にすべきかと云ふことに付て言へば、第二番目には軍國主義より平和主義へ、第三番目には軍閥、官僚、財閥の專制政治を辯護したり、擁護したりする方向から、國民の民主主義への方向轉換であります、第四番目に神祕主義、絶對主義、封建主義、さう云ふやうなものから、合理主義、科學主義、寧ろ科學精神への方向轉換であります、さうして前に同僚議員が引用された所の米國教育視察團報告書にあるやうに、統制教育、監督教育、上からの教育を、自主、自治的な教育、下からの教育に方向轉換することであります、國家中心主義より個人尊重へ、算へて來るならば際限がないのでありますが、何よりも教育の指導精神は新憲法の精神に依るべきものであるけれども、私は此の新憲法の意味と精神とを青少年に滲透させるやうに努めることが又文部省の新たなる大きい役目だと思ふのであります(拍手)斯くて思ふのでありますが、終戰後「ラジオ」や新聞や或は映畫は、民主主義を掻き立てる爲と云ふか、興す爲に隨分の働きをしたが、教育界は民主主義に對して「ブレーキ」の役目を務めて居つたのであるか、拍車の役目を務めて居つたのであらうか、文部省の上層部門は「ブレーキ」であり、彈壓に抗して、或は困難を蹴飛ばして勞働組合、教員組合を作つた諸君は、是は民主主義に對して私は拍車を掛けるやうな役割をしたことを十分に此の際認めたいと思ふのであります(拍手)
併しながら私は入りませう、此の第一に付て申しますが、「教育制度の根本的刷新のための特別の機關の設置」、既に根本的刷新と言ふ以上は、特別機關の構成も亦根本的な所がなければならないと思ふのであります、從來斬う云ふ機關を組織する場合には、教育界の名士を竝べ、文部官僚が其の中に入つて、さうして調査機關とか、諮問機關がよく出來るのでありますが、今度此の民主主義革命を完成する爲には、教育の弊害を最も能く知つて居るやうな勞働組合、農民組合、全國水平社、文化團體、大衆政黨、勿論議會代表も之に加はつて宜いが、さう云ふやうなものを新たに加へることに依つて、此の特別機關と云ふものに魂を入れなければならぬと私は考へるものであります(拍手)
第六の「教職員の正遇」と云ふ、文字は六文字でありますが、此の教師の生活難の苦しさは、同僚議員に依つて剩す所なく説明し盡くされて居るので多くを申しませぬが、現在生活突破資金の名に於て東京都に於ても百圓乃至二百圓が父兄の寄附金に依つて出されて居るのであります、斯う云ふ寄附金を教育家が受けて居つて教師の面目、教育の權威何處にありやと我々は考へるのであります(拍手)さうして大學の教授さへも、生活に非常に困る爲であるか、私が靜岡縣賀茂郡南上村に行くと、其處に東京帝大の演習林なるものがある、二百何十町歩を、戰爭中官僚萬能の波に乘つて丸公の値段で買上げて、現在其處をどんなに使つて居るかと言へば、帝大の「マーク」のある「トラック」がやつて來て、千何百俵と云ふ炭を運んで居るのであります、麥を作り、米を作り、色々なものを作つて「トラック」で運んで行くけれども、ちつとも供出しないと云ふので、戰爭中から村の人が非常に困つて居り、戰爭が濟んで此の土地の拂下運動を現在起して、社會黨に持込んで居るのでありますが、私はそれを聞くなり、其の拂下は必ず成功する、是と云ふのも國民學校のみならず、大學の教授までも生活に困つて居るが爲に斯う云ふやうなことをしなければならなくなるのであると云ふ事實を考へて、私は此の第六項には根本的に、徹底的に贊成の意を表するものであります(拍手)
それから第二の教育を官僚主義化から解放する、特に地方教育行政の獨立でありますが、視學だとか、督學だとか、或は指令、訓令と云ふやうなもので攻め立てる所のあの官僚主義、それから教育を解放しなければならぬのであります、威張る校長と云ふものを我我は澤山知つて居る、友人の高等學校の教授が、校長の前に行つて椅子に腰を掛けて話すと、君、他の諸君は僕には立つて物を言ふのだが、と云ふやうな、さう云ふ威張つて居る校長もあるのであります、是と云ふのも、教育界に此の官僚的な空氣がもう一ぱいにあるので、お上品な大臣が坐つて居つたのでは、迚も此の荒療治と云ふものは出來るものではないのであります(拍手)當然の結論として、教育中央官廳たる文部省の權力、行政力と云ふものは大いに縮減されなければならぬ、教育視察團報告の言ふ如く、それぞれの地區に教育委員會を組織して、それが地方の教育行政を擔當することになる、それは勿論であります、さうして内務省が教育から手を引くことも是も極まりでありますけれども、そんなことは常識である、併しながら此の地方に出來る教育委員會を、民選と云ふ看板があるから、縣知事が之を統制する、指導するやうになるか、文部省が之を指導するやうになるか、それ等の點は重大なる問題でありますけれども、此の決議案には、それ等の取極めまでは各黨に亙つて協定は濟んで居ないのであります、現在今月二日から六日までの間、お茶の水女高師に千二百人も教育關係者を文部省と教育研修所とが集めて協議をし、衆議院から何故か唯一人之に加へて居りますが、私は此の教育研究全國協議會と云ふものが開かれまして、何か協議するのであるか知らないが、さう云ふことがあれば、皆是は議會に於て協議すべきだと私は思ふのであります、官制がどうなつて居たつて構ひはしない、今は革命の時代なんだ(「滅茶を言ふな」と呼ぶ者あり)
それから第三點でありますが、青年教育の充實と振興──青年學校は戰時中軍事教練ばかりをやつて居つて、まるで特志士官養成學校のやうな姿でありました、さうして軍事教練がなくなつたから、現在は殆ど仕事がなくなつて、勤勞大衆の大部分を含む所の此の青年が、途方に暮れて居るのでありますが、之に對して文部省は何等手を打つては居ないのであります、戰時中隨分苦勞に苦勞をした所の此の勤勞青年に對して、戰後に又此の教育行政が何もしないで居て、本當に涙なくしては考へられないと私は思ふのであります(「高津君、簡單にやれ」其の他發言する者多し)
最後に文部大臣に申上げるのでありますが、文部大臣は、昔陸軍大臣が内閣に在つて威張つて居つた其の威張り方を眞似る必要はないけれども、もつとどつしりと腰を落著けて、其の他の閣僚に對して要求すべきものは大いに要求して戴きたいと私は思ふのであります、曽て國寶や、それから重要美術品を食糧の見返り物資にしようと云ふ問題が起きた時に、敢然として文部省は何等之を言ひ切ることなく、民間から聲が起り、文部省の若手の間からやかましくなつて、民間で之を公開するやうな方法に依つて保存しようと云ふ運動が起きた際も、細川護立なんと云ふ上層から文部省に進言があると、まるで態度が變つてしまふと云ふやうに、兎に角文部大臣と云ふものは、是からは伴食ではなくて、内閣の中の一番大きな椅子に坐るべき立場であることを十分自覺して、必要な頑張るべきことは大いに頑張つて、茲に擧げてある六箇條の要求の通るやうにして貰ひたいのであります(拍手)
私はあと二分程時間を貰つて、最後に吉田首相竝に田中文部大臣に申上げたいのである、政府各省の中で、恰も文部省が陸海軍兩省に次いで戰爭に重大なる責任があつたかの如く、近年文部大臣たりし者より、荒木貞夫、木戸幸一、岡部長景、橋田邦彦の四人の戰爭犯罪者を出し、更に公職追放者を出して居ると云ふ事實を改めて想ひ起して戴きたいのであります、實際過去の文部省は、文教を司る中央政廳として、久しきに亙つて幾多の進歩的教師を馘り、人々は忘れて居ますが、更にそれに幾百倍する何千何萬の有爲なる進歩的學生を間接に退學處分に付し、青少年及び一般國民を精神、思想の面から、訓令に依り、教科書に依り、教師に依り、極端なる國家主義、軍國主義に向つて動員して來たのであります、然るに此の決議案に謂ふ所の、眞理と眞實とを尊重し、平和と人道とに奉仕し、民主主義的理想に徹底せる世界的なる日本人を養成すると云ふ教育の目的は、それ等從來の主張とは凡そ正反對のものであります、此の困難な新たなる教育目的達成の大事業を、今又其の文部省に向つて要望するのでありますが、民主主義は自治なりと申します、我々國民の側に於ても、此のことの爲には極力努力することに吝でありませぬ、併し當局に於ては、其の在任中は責任の彌が上にも重きを痛感され、一日も早く其の成果が指摘出來得るやう、今日より直ちに教育優先の原則を守り、身を入れて眞に大馬力を掛けられんことを熱望して、私の贊成演説を終る次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=21
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022・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 鹿島透君
〔鹿島透君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=22
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023・鹿島透
○鹿島透君 歴代の内閣に於て、政府當局は口を開けば必ず教育尊重を説き、是が振興を唱へたのでありますが、併し其の實績に於ては殆ど見るべきものがなかつたのみならず、動ともすれば教育を其の本來の目的から逸脱せしめて、誤つたる方向に導き、遂に今日教育をして根本的に刷新再建するの必要を招來したことは、洵に遺憾に堪へない所であります、尚ほ國民をして此の塗炭の苦しみに陷れた敗戰の罪も、亦過去に於ける教育行政が其の方策と運營を誤つた結果であると斷じても敢て過言でないと思ふのであります(拍手)吉田首相は、過般其の施政方針演説に於て、軍國主義と極端なる國家主義を完全に拂拭する爲め、教育の内容と其の制度の全面的に亙つて根本的刷新を行ふことを述べられ、又今日の社會秩序混亂の原因を成す國民道義の廢頽を、永年に亙る教育の積弊と、過去の政府が教育を其の時々の國策の具に供したる罪に歸して、從來の教育行政の過誤を指摘し、而して現内閣に於ては、學校教育は固より、是と竝行して社會教育、家庭教育を大いに尊重して、道徳の滲透、被教育者の人格の完成竝に個性の健全なる育成等に重點を置いて、教育本來の目的達成に鋭意努力すべきことを公約されたのであります、而して此の首相の演説に對しては、國民齊しく非常な期待を持つて居る所であります、然るに目下審議中の豫算案を見ますると、教育振興に付て積極的なるものが十分盛られて居ないと云ふことは、洵に遺憾でございます、尚ほ又世間の指導者の一部には、此の物的の窮乏に瞠目をして、教育どころではないと云つたやうな考へ方をして居る者もなきにしもあらず、民主主義的平和國家の建設の歴史的の大使命を持つて居られる所の現政府としては、此の際教育の制度、内容共に拔本的な刷新を加へて、國家百年の大計を樹立すると共に、誓つて其の公約を實踐し、以て教育の將來に斷じて再び過ちなきを期すべきであると思ふのであります、今囘の新憲法に依りまして、民主主義的平和日本の骨組は一應出來上ると思ふのでありますが、併し骨格が出來ましても、決して新生日本は出來上つたのではないのでありまして、之に肉を付け、血を通はせ、更に眞理を愛し、平和と人道を重んじ、自主的にして勤勞を樂しむ所の、眞の民主主義的精神を吹込むべき大事業は實に今後に殘された重大問題であります、而して此のことは現在及び將來の青少年を正しく薫化育成する教育事業に依つて、初めて其の目的を達成することが出來るのであります(拍手)政府は宜しく此の秋、教育の重要性を再認識して、教育の根本義に則り、本日上程されました此の決議案の趣旨に鑑み、國家喫緊の問題として、此の決議案に盛られました諸政策を初め、教育の全般に亙る重要諸案件を、雄渾にして而も斬新且つ積極的な構想を以て檢討の上、速かに文教再建の有效適切なる大方策を決定し、之を勇敢に斷行し、以て精神的に飢餓の状態を彷徨して居る全國民の心からなる輿望に應ふべきであると思ふのであります(拍手)私は茲に協同民主黨を代表しまして、本決議案に衷心から贊意を表し、併せて政府に格段の善處を要望して巳まない次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=23
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024・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 伊藤恭一君
〔伊藤恭一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=24
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025・伊藤恭一
○伊藤恭一君 現下の我が國情に於て、食糧の解決と終戰後の各種社會事業の處理とが最も重大喫緊なる問題であることは、今更申上げるまでもありませぬ、併しながら我々國民は飽くまでも此の危局を突破し、苦しさを忍んで日本再建の目標に一路邁進しなければならぬと信ずるものであります、即ち列國の期待に副ひ得る所の國際的文化國家、平和國家を建設して、其の信頼と敬愛とを贏ち得るやうに致さなければなりませぬ、戰爭抛棄の今日、文化國家の建設は我が國の永久に信奉すべき唯一の國是であります(拍手)唯眼前の食ふこと、戰後の跡片付けだけに沒頭して、呆然自失するやうでは、所謂理想なき民族の將來は實に慘憺たるものである、否寧ろ破滅あるのみとの謗りを免れ得ないものであると信ずるものであります(拍手)今や我が國民は飢餓線上に彷徨して、思想昏迷、道義は頽廢し、動もすれば前途の目標さへも見失はんとして居る今日、茲に文教再建に關する決議案の提出致されましたことは洵に機宜に適する措置として私は滿腔の贊意を表するものであります(拍手)恐らく全國の文教に關する所の人達は、此の各黨の期せずして一致したる文教再建決議案に對して、深甚なる注意と感謝とを感ずるものであらうと信じます、同時に政府に於かれましては、徹底的に強く此の空氣を反映し、それを實際に移されて、眞に文化國家建設の實現せられんことを切に切に念願するものであります(拍手)
偖て文化國家建設の其の根柢は、正しい民主主義教育をやらなければなりませぬ、而して民主主義教育の確立には、先づ以て廣く民間の聲を聽き、世界の大勢に順應し得るやう拔本塞源的の教育制度の改革が行はれなければならないと信ずるものであります(拍手)從來の教育制度は所謂天降り式の勅令に依るもので、其の時々の國策に利用せられる所謂方便的の性格が多分に盛られて居つたのであります、今後の教育制度は、飽くまでも民意に依り盛上る所のもの、更に十分檢討せられたる所の法律に依り、民主的に教權の確立を圖ると共に、そこに文教の自主性、特殊性と云ふものを發揮されるやうにしなければならないものと信ずるのであります(拍手)同時に此の際官公立、私學と云ふやうな差別を撤廢して、廣く民間の文化團體の振興を促し、國民文化の水準を高めると共に、更に學徒、學童の愛護に要する厚生施設の如き、其の他民間の有力團體に移讓すべき所のものは、勇敢に之を移讓して、さうして教育民主化の能率化を圖らなければならないと信ずるものであります(拍手)特に教育の機會均等等に付きましては、我々の言ふべきことは澤山にありますけれども、重複を避けまして是は後日の機會に讓ります、唯此の際特に強調して置きたいのは、一般青年の教育新方策であります、全國青年の八割五分を占むる所の一般勤勞青年、從前青年學校の三百萬に近い所の生徒、更に復員者を加へれば、數百萬人にも垂んとする現在の青年、而も前途に光明を失ひ、希望を斷たれ、虚脱空白の現状にある所の青年教育再建こそ、實に重大喫緊の問題にして、而も早急を要するものであると信ずるのであります(拍手)然るに現在の提出せられました豫算面より見ますると、何等そこに措置を講じて居られないやうに察せられます、今や青年學校の機構を根本的に改革して、さうして新日本の公民としての基盤を作る此の重大なる時期に際して、何等青年學校教育に新しい措置の講ぜられて居ないと云ふことは、我々の實に遺憾千萬とする所であります、寧ろ心外と申さなければなりませぬ、次代を背負ふ所の青少年を差措いて、何で民主日本の建設が圖られませうか(拍手)特に子を持つ親の個人的感情より致しましても、此の子弟の將來と云ふものは實に眞劍其のものに考へて居るのであります、此の際私は各種教育──社會教育の振興と云ひ、公民教育、家庭教育の振興と云ひ、或は特に我が國として遜色著しき科學教育の充實刷新と云ひ、申上げたいことは山積して居りますけれども、是は悉く省略致しまして、唯最後に一つ申上げたいのは、何と申しましても凡ゆる制度を改善し、機構を變へましても、結局それの運營の實に當る時の要點は、經費に掣肘せられるのであります、曩に總理大臣が施政方針の演説を述べられました時にも特に教育尊重を強調せられました、又是は當然なことであると信ずる關係上、我々は今囘の豫算には相當額の豫算が盛られるものであらうと云ふことを私かに期待して居りました、然るに今囘提出致されました所の豫算を見ますると、僅かに二・二%に過ぎませぬ、本年度限りの臨時費用二百九十七億を差引いた其の殘額に對してすら、尚且つ四・七%に過ぎない貧困さであります、私の記憶する所に依りますれば、昭和四、五年には八%でありました、十年後のあの支那事變の眞最中ですら、尚且つ五%以上であります、國民苦惱のどん底に喘いで居た此の戰爭中、昭和十七年度に於てすら尚且つ三・三八%でありました、然るに今や文化國家建設の發足の糧たる本年度の豫算が、僅かに二・二%に過ぎないと云ふやうなことは、實に慘めな状態であると私は痛切に感ずるのであります(拍手)去る二十七日の本議場に於て、大藏大臣は松本氏の質問に對し、財政に餘裕が出來るやうになつたならば文化費も増さうと云ふことを仰しやいましたが、此の文化國家建設の費用と云ふものは、即ち先刻申しました國是確立の爲の費用であつて、財政に餘裕が出來たら増してやらうと云ふやうな、そんな生温い問題ではないと私は信じます(拍手)特に正しい民主主義政治の確立を圖る爲の啓蒙運動竝に實踐運動、更に又新憲法の精神を普く國民に普及徹底させる所の社會教育、全國民の教育に關する其の社會教育費が、僅かに三百五十萬圓に過ぎないと云ふやうな貧困さは、實に痛憤に堪へない感じが致すのであります(拍手)果してこんな状況で進んで行つたならば、青年は愈愈尖鋭化し、道義は頽廢し、さうして正しい國の秩序と云ふもの、正しい民主主義の政治と云ふものは果して確立されるでありませうか、私は此の點に付て非常に危惧の念を持つものであります、勿論現在の國情から言ひまして、萬巳むを得ない事情の多々あることは信じますけれども、兎に角政府と致しましては、いま一段の熱意と努力とを以て、文教再建の言葉が唯單なる一片の形式的言辭に墮せないやうに、強く之を實行に移して、さうして本當に文化國家建設の國是確立の爲に勇往邁進し、國民をして安んじて日々の良い生活、良い教育を受け得られるやうな工合に、特に努力せられんことを熱望して私の演説を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=25
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026・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 若林義孝君
〔若林義孝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=26
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027・若林義孝
○若林義孝君 新しい日本建設の爲に、未曽有の困難なる諸問題解決に、老躯を提げて日夜身を捧げて居られます吉田總理大臣竝に政府閣僚を前に致しまして、限りなき敬意を披瀝しつつ私の有する全能力を傾けて、只今上程中の文教再建に關する決議案に對し、無所屬倶樂部を代表致しまして、私の贊成の所見を述べ、同僚各位の力強き御贊同を賜はりたいと存ずる次第であります
只今までに竹田儀一君初め各位から提案理由竝に贊成の理由を縷々御述べになつたのでありまして、私自身も其の蒙を啓かれ、同感共鳴の禁じ得ざるものがあるのであります、私の本決議に對する贊成理由は、極めて多岐に亙るのでありますが、其の三、四に付て申上げたいと存ずるのであります、文教と云ふ意味は教育と宗教をも含まれて宜いと思ふのであります、教育、宗教の立場から申上げますならば、今日本建設の第一必要條件であります事項は、國内諸般の誤れる封建的、幕府的制度思想から脱却して、民主主義化することであることは申すまでもないのでありますが、此の政治の民主化から家庭の民主化等に至りますまで、此の民主化、民主主義に缺くべからざる所のものは、其の底を流れて居る限り知られぬ人間尊重の心でなければならぬと思ふのであります、而も此の人間尊重の極致は、信仰化されたる神格的人間の尊重でなければならぬと考へるのであります、人類お互ひに自己の尊嚴に自覺すると共に、之に先だち他人の尊嚴に襟を正す心に根ざす民主化でなければならぬと思ふのであります(拍手)私達人類に與へられた天與の自由と平等とは、極めて謙虚な、反省的な生活を泉として湧き出る自由であり、平等でなくてはならぬと思ふのであります、他國の存立を脅かして、他國の犧牲に依る自國の存立繁榮はありませぬ、同樣に社會の秩序を無視し、他人の心を蹂躪する所に、正しい自由も明るい平等もないのであります(拍手)我等の求める自由は、奪ひ還す自由であつてはなりませぬ、鬪ひ取る平等であつてはならない(拍手)眞に人類の一員たることに徹した、自然に得られる所の自由、自ら湧き出て來る所の平等でなければならないと思ふのであります、此の解釋にして若し誤りなしと御許し下さいますならば、現在我が國に旋風の如く起り來つた諸種の民主化運動の現象を見る時、轉た無量の感に打たれるものがありはしますまいか、吉田總理大臣閣下を初め、特に文教に御關係の田中文部大臣の御心中晏如たらざるものあることを御察しするのであります
第二に改正憲法の第二章に於きまして、戰爭を永遠に抛棄し、平和愛好の積極的宣言を世界になさんとして居るのでありまして、御同慶に存じて居りますが、此の眞意を一人々々の國民の胸に、輝かしい宣言、榮譽ある宣言たることを周知徹底せしめることの急務を痛感するのであります、「ポツダム」宣言の履行の意味も主なる理由の一つでありますが、それよりも戰爭抛棄、平和の宣言こそ、我が日本の國が天皇を象徴と仰ぐ大和民族本然の姿であることを徹底せしめなければなりませぬ(拍手)心から、肚の底から本然の姿に立還つたことを喜ばしめるべきだと思ふのであります(拍手)武道の武と申しますか、あの武と云ふ字は本來戈を止めると書くのであります、所謂此の戈を止める武こそ、平和の根源でなければならなかつたのだと云ふ眞意に徹し、戰爭に代る道義を打立てて、道の國の日本、光の國の日本、文化の國の日本たるべき輝かしさを、八千萬國民をして歡喜せしむべきだと存ずる次第であります(拍手)平和的世界建設の努力の中心たるべき一大使命の大行進の喜びに、八千萬國民をして浸らしめなければならぬと思ふのであります、我が國土は悲しいことでありますけれども、廣さの點では四つの島に退いたのであります、併し靜かに胸に手を當てて考へる時、國土は四つの島に縮小されたけれども、却て心を世界に擴めて行くことに依り、誠を以て全世界に心の友を求むることの出來る喜びを、光榮と自覺せしめなければならぬと思ふのであります(拍手)此の點、道義文化と云ふことに思ひを致す時、我が國の現状は如何でありませう、思ふだに膚に粟を生ずることのみなることを歎ずるは、唯私一人ではないであらうと思ふのであります
第三、法律と法令を作成することを以て能事畢れりと考へたやうな時代があつたやうに思はれます、今のことは存じませぬ、統制規則、統制要綱さへ作れば、統制が直ちに行はれ、政治家の任務畢れりと考へたやうな時代があつたやうに思ふのであります、現在に付ては私は申しませぬが、法律を遵守すること、統制を守ると云ふことを教へる前に、人の道と申すか、天の道と申すか、神が示す道を守る心を、心の奧深く培ふことを忘れては何の法律、何の統制があらうかと私は思ふのであります(拍手)私は法律の排撃論者でもなければ、統制の無用論者でもありませぬ、それと相竝行して道義を守ることの尊さを教へ、道義を守る者の幸福を打守る政治でなければならぬと考へるのであります(拍手)法律はなくとも、天道は常に我等の道を照し、統制は廢せられても、神は人類社會への貢獻を命ずることを知らさなければならぬと思ふのであります、旦に法律を作り、夕に統制規則を作りましても、人の作つた法律は破られ、潛ることが出來るのであります、唯善良なる國民は前も後ろも法律規則に動くことさへ窮屈に縛られて、道義を破る不良分子の法律を破り、統制を潛る鐵面皮が榮えつつあるやうな形を見る時、轉た感慨無量のものがあるのであります、此の見方から現状を如何樣に御覽になりませうか、天道地に墜ち云々と伯夷叔齊を俟つまでもなく、慨歎の聲は我々の所ばかりではない、政府要路の方達に犇々と迫つて居ることを承知致して居るのであります
私は以上三つの點を擧げましたが、之を要約致しまして卑近なる言葉を使ふことを御許しを願ひたい、之を卑近に申上げますならば、所謂政治に明るさを持たし、明朗さ、正しさを持たすこと、政治に温かみを持たすこと、政治に情愛を持たすこと、政治に明るい希望を持たすこと、是等の言葉を以て今まで述べましたことを要約して表現することが出來ると思ふのであります、闇と云ふ言葉は物の値段のみに付くのではありませぬ、色々な事柄に暗い部面がありはしないか、或は虚僞と云ふことが國民を指導する政府要路者の虎の卷の如きことであつたことを記憶致すのであります、或は冷嚴と云ふ言葉に隱れて、法律を遵守する爲に、尊い人間性を沒却して居つたやうなことはないか、或は情愛を無視して、統制のみを遵守して居つたやうなことはないか、今日の混亂に震ひ戰き、明日の樣子の正しさを知らずして、今日の生活に怯えて居る幾多の人々に、明るい希望を一日も早く持たすことが出來るやうにしなければならぬ、私は是等の事象を列擧する勇氣さへ持たないのであります
以上の諸點を心靜かに考へます時、我が國の過去文教に對して執り來つた政府要路者の施策、方針に思ひを致しますならば、所謂現政府の文教に對する熱意を察します時、國民の心、國民の要望を本決議の中に打込んで、政府當局に迫る有力なる手段として、此の決議案を考へたいと思ふのであります、今議會に於きまして幾多重要な法案が逐次可決せられ、特に改正憲法に依りまして平和民主日本の方途が示されましたことは御同慶の至りに堪へないのでありますが、之に伴つて教育、宗教こそ、總ての基礎をなす所のものと心得、此の基礎なくしては、如何なる施策も法律も砂上の樓閣と存ずる次第であります(拍手)宗教なき國家は亡ぶと云ふ言葉があります、教育は次代の國の姿なりとも言はれて居るのであります、國民の信仰の自由を無視し、宗教教育の尊さを知らずして、唯武力のみを恃み、武力を誇つた我が國の悲慘な今日の現状と、反對に限りなき國民の信仰を守り、只管宗教教育の尊嚴を守り續け來つた「アメリカ」の我が國に於ける進駐振りを比べ見る時、文教に對する關心を最高度に高めて持たなければならぬのではないかと信ずるのであります(拍手)過去の一切の誤りを脱却して、新生日本の門出に改正憲法を人類の遵守すべき普遍の原理として、文教諸施策の確立こそ急務中の急務なりと確信を致しまして、私の贊成演説を終ることに致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=27
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028・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本案に贊成の諸君の起立を求めます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=28
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029・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 起立總員、仍て本案は全會一致可決致されました(拍手)此の際政府より發言を求められて居ります──田中文部大臣
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=29
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030・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 各派共同の御提案に係りまする決議は、正に我が教育史上竝に政治史上畫期的な一大歴史的紀念碑とも申すべきものでありまして(拍手)苟くも職を文教の府に奉じまする者に取りまして、是れ以上の激感、是れ以上の感謝はないのであります(拍手)決議の指導原理となつて居ります所の眞理と人道とを目的と致しまする教育の尊重と教育權の獨立とは、洵に國内的には各派が一致共同せられましたことに依つて明かになりましたやうに、實に政黨、政派の差異を超越致しまする教育の根本政策であります、それ等は更に國際的意義をも持つて居るものでありまして、世界の先進諸文明國に於きまして齊しく承認せられて居りまする民族の差異を超越致しまする所の、普遍人類的教育理念に源を發して居るものであります、此の決議こそ、正に世界各國の信頼と敬愛とを贏ち得るに足るものと信じます(拍手)掲げられました六箇條の項目は、何れも現下の文教政策の死活問題とも申すべき程の重要性を持つて居るものでありまして、一々全く御同感至極でありまして、渾身の努力を以て實現致したいと存じます、或は教育制度の根本的刷新、青年教育の充實と振興、戰災學校の復興、社會教育、科學教育竝に體育の充實振興、教育者の養成機關の革新等の御要望に付きましては、過去に拘泥することなく、最善の方策を探求致しまして、一々斷行致したく存じます(拍手)
特に教育の官僚主義化は、明治以來の經驗に徴しまして夙に識者が痛感致しました所でありまして、或は文部省に於て先程御指摘になりましたやうな弊害があり、又地方教育行政に於ても非常な弊害がありまして、今日是等の健全なる教育を阻碍するものが現在存在して居ることは否定出來ない所であります、「アメリカ」の教育使節團の殘して行きました所の、日本教育の地方分權化の趣旨もそこにあると信じて居ります、教育は教育者自身の手に依つて、之を「モットー」と致しまして、今後の教育行政を、或は文部省に於きまして、或は地方に於ても建直して行くと云ふことに努力致したいと存じて居る次第であります(拍手)茲に全國四十萬の教職員は、此の劃期的な決議が成立致しました今日此の日を、涙ぐましい感謝と、心からなる感激とを以て囘想致すことでありませう(拍手)又全國民は平和國家、文化國家の建設の門出に最も想應しい、各國の信頼と敬愛を贏ち得るに足る此の歴史的な決議に對しまして、心からなる喝采を送るに躊躇致さないことを私は確信するものであります(拍手)我々は今此の力強い御支持と御激勵に御酬い申上げます途は、此の決議と贊成の數々の御演説の精神を體しまして、決議の各項目を文字通り忠實に、最大努力を以て今後の教育政策の上に具體化し、終戰前の文部省の罪滅しを致すことより以外にないと確信して居る次第であります(拍手)此の上とも各位の御同情ある御鞭撻を衷心御願ひ申上げる次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=30
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031・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 吉田内閣總理大臣
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=31
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032・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 教育再建の決議案に付ての各位の御演説、随て決議案の趣意に付ては篤と了承致しました、又之に對する政府の所信は、只今田中文部大臣から此處に於て述べられた所が、即ち政府の所信であります、又決議文に現はれて居る御希望各項に付ては、其の實現に政府は善處する覺悟でありまするから、左樣御諒承願ひたいと存じます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=32
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033・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 日程第二及び第三は、便宜上一括議題となすに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=33
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034・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、日程第二、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案、日程第三、辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案、右兩案を一括して第一讀會を開きます──木村司法大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=34
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035・会議録情報3
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第二 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三 辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案
訴訟費用等臨時措置法の一部を次のやうに改正する。
第一條中「戰時に於ける」を削り、「特例は」の下に「當分の内」を加へる。
第二條中「百分の百」を「百分の九百」に改める。
第三條中「五圓」を「十五圓」に、「日當は十五圓」を「日當は四十五圓」に、「止宿料は十五圓」を「止宿料は四十圓」に、「一圓」を「三圓」に改める。
第四條第一項中「二圓」を「六圓」に、「五圓」を「十五圓」に、「五十錢」を「三圓」に、「十圓」を「三十圓」に改め、同條第二項中「前項」を「前四項」に、「百分の百」を「百分の八百」に改め、「及大正八年法律第四十一號」を削り、同條に第一項乃至第三項として次のやうに加へる。
執達吏手數料規則第二條の手數料は五十三錢、同法第十四條の書記料は四十七錢、同法第十五條の手數料は一圓五錢を増加す
執達吏手數料規則第三條第一項の手數料は左の區別に從ふ
執行すべき債權額 手數料
二百まで 五圓
五百圓まで 十圓
千圓まで 十五圓
二千五百圓まで 二十圓
五千圓まで 二十五圓
一萬圓まで 三十圓
一萬圓を超ゆるとき 四十圓
執達吏手數料規則第九條第一項の手數料は左の區別に從ふ
競賣金額 手數料
二百圓まで 十圓
五百圓まで 二十圓
千圓まで 三十五圓
二千五百圓まで 五十圓
五千圓まで 六十五圓
一萬圓まで 百圓
一萬圓を超ゆるときは一萬圓毎に三十圓を加ふ但し一萬圓に滿たざるも一萬圓と看做して算定す
附則第三項を削る。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
大正八年法律第四十一號(執達吏の手數料及び立替金増額に關する法律)は、これを廢止する。
この法律施行前に要した費用については、なほ從前の例による。
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辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案
第一條 朝鮮辯護士令による辯護士たる資格を有する者で辯護士法第十三條第二項に規定する審査委員會の銓衡を經た者は、同法第二條第一項第二號の規定にかかはらず、同法による辯護士たる資格を有する。
第二條 朝鮮辯護士令による辯護士たる資格を有する者で前條に規定する者以外の者及び同令第五十一條の規定による朝鮮辯護士試補たる資格を有する者は、辯護士法第三條第一項の規定にかかはらず、同法による辯護士試補たる資格を有する。
第三條 昭和二十年八月十五日以後この法律施行の日までの間に廢止され、又は停止された政治的、社會的、思想的若しくは宗教的自由又は言論、著作、印行、集會若しくは結社の自由を制限する法令に違反して、罪を犯した廉で、拘禁され、有罪の言渡を受け、懲戒により免官、免職、除名若しくは業務禁止の處分を受け、又は退會の處分を受けた者は、その理由によつては、前二條の場合において辯護士又は辯護士試補たる資格を有しないとすることを得なない。
第四條 前三條の規定は、昭和二十年八月十五日以後に、本州、北海道、四國、九州又は命令で定めるその附屬島嶼へ、これらの地域以外の地域から引き揚げた者に限り、これを適用する。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
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〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=35
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036・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 只今上程せられました訴訟費用等臨時措置法中改正法律案外一件の提案理由を御説明申上げます
訴訟費用及び執達吏手數料等は、民事訴訟費用法、刑事訴訟費用法及び執達吏手數料規則の三法律中に規定せられて居りますが、制定後社會經濟状態の變遷に伴ひ、數次の改正を經まして、戰時中には更に訴訟費用等臨時措置法に依り、戰時中の臨時措置と致しまして相當の増額が行はれ、昭和十九年四月一日から施行せられたのであります、然るに其の後の經濟情勢の變遷は眞に甚だしく、右の臨時措置に依り定められました額は、全く實情に副はないものとなつたのであります、之を此の儘にして置きまする時は、民刑訴訟關係人の不利不便は固より、延いて民刑訴訟事件の圓滑な進行を阻碍し、又執達吏は其の生計の基礎を失ひ、強制執行制度も著しく其の機能を害せられる虞があるのであります、仍て此の際訴訟費用等臨時措置法に改正を加へまして、物價の状況其の他を斟酌致しまして、訴訟費用及び執達吏手數料等の額を大體現行の三倍程度に増額致しまして、唯特殊の事情のあるものに付きましては此の率に依らず、若干の補正を加へることに致します、尚ほ經濟情勢の歸趨必ずしも明確でないが爲に、此の處置を當分の内の臨時の特例に改めようとするものでございます
次に辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案の御説明を申上げます、本案は從來朝鮮に於ける司法の協力者として、朝鮮辯護士令に依る辯護士たる資格を有する者で、辯護士法の辯護士審査委員會の銓衡に依りまして、適當と認められたる者に對しまして、辯護士法第二條第一項第三號の辯護士試補としての實務修習及び考試を經ないものであつても、同法に依る辯護士となり得る資格を附與致します、又朝鮮辯護士法に依る辯護士たる資格を有する者で、此の銓衡を經ない者や、朝鮮辯護士試驗合格者で辯護士試補たる資格を有する者に對しましては、辯護士法第三條第一項の成規の試驗の合格者でなくとも、同法に依る辯護士試補たるの資格を附與しようとするものであります、尚ほ曾て所謂政治犯を犯しまして刑の言渡を受けた事實ある者でありましても、其の違反した法令が終戰後廢止又は停止せられたものである場合は、其のやうな事實の爲に銓衡等に於て何等不利益を受けないことを明かにしたのであります、以上辯護士及び辯護士試補の資格に關する特例を認めんとするものであります、而して此の措置は終戰に伴ふ引揚者の救濟援護の切實なる必要に應ずるものでありますから、昭和二十年八月十五日以後本州、北海道、四國、九州、又は是等の一定の島嶼へ是等の地域以外の地域から引揚げて參つた者に限り其の途を開かんとするものであります、以上提案の理由を述べました次第であります、何卒愼重審議速かに御可決あらんことを切望致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=36
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037・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諾り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=37
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038・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第二及び第三の兩案は、一括して政府提出罹災都市借地借家臨時處理法案委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=38
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039・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=39
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040・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第四及び第五は便宜上一括議題となすに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=40
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041・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 日程第四、商工經濟會法を廢止する法律案、日程第五、工業所有權法戰時特例を廢止する法律案、右兩案を一括して第一讀會を開きます──星島商工大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=41
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042・会議録情報4
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第四 商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 工業所有權法戰時特例を廢止する法律案(政府提出)
第一讀會
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商工經濟會法を廢止する法律案
商工經濟會法は、これを廢止する。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
この法律施行の日に現に存する商工經濟會は、この法律施行の日において解散する。
前項の商工經濟會の解散及び清算について必要な事項は、勅令でこれを定める。
この法律施行の日に現に清算中の商工經濟會の清算については、舊法は、この法律施行後も、なほその效力を有する。
この法律施行前になした行爲に關する罰則の適用については、舊法は、この法律施行後も、なほその效力を有する。
商工大臣が指定した公益法人が商工經濟會より承繼した不動産に關する權利の取得について、登記を受ける場合には、その登録税の額は、不動産の價格の千分の四とする。但し、登録税法により算出した登録税の額が、この法律により算出した税額より少いときはその額による。
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工業所有權法戰時特例を廢止する法律案
工業所有權法戰時特例は、これを廢止する。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
査定に對する抗告審判の審決で、この法律施行の際、審決の送達を受けた日から三十日を經過してゐないものについては、この法律施行の日から三十日以内に、特許法第百十五條の規定により大審院に出訴することができる。
審判の審決で、この法律施行の際、審決の送達を受けた日から三十日を經過してゐないものについては、この法律施行の日から三十日以内に、特許法第百九條の規定により抗告審判を請求することができる。
この法律施行の際、舊法第五條の規定により現に大審院に繋屬する事件については、同條の規定は、この法律施行後も、なほその效力を有する。
舊法第五條の規定によりなした確定判決については、舊法第六條の規定は、この法律施行後も、なほその效力を有する。
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〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=42
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043・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 商工經濟會法を廢止する法律案及び工業所有權法戰時特例を廢止する法律案及び工業所有權法戰時特例を廢止する法律案の御説明を申上げます
先づ商工經濟會法を廢止する法律案に付て申上げまするが、本法案は現在の商工經濟會法を廢止しようとするのであります、抑抑商工會議所制度は明治初年以來の長い傳統を有して居つたのでありまするが、今次戰爭の進展に伴ひまして、戰爭經濟遂行の國策に協力致しますることを目的とする商工經濟會に改組せられたのであります、隨ひまして現在の商工經濟會は政府の經濟統制に協力し、其の地域的調整を圖ることを主眼として居り設立は政府の命令に依りますと共に、會員は地方長官が指定致しますると共に、指定された業種に該當するものは強制加入制を取り、會頭は政府が任命する等、極めて非民主的な機構となつて居るのであります、是等の諸點から見まして、現在の商工經濟會を此の儘存續させて置くことは、戰後の國情から見て不適當であり、寧ろ法律の枠に拘束されぬ自由な團體にするのが適當と思はれますので、茲に商工經濟會法を廢止する法律案を提案することと致したのであります、さうして一面政府は新たな民主的な商工會議所の設立に付て十分の援助と便宜を與へる方針であります
次に工業所有權法戰時特例を廢止する法律案に付て申上げます、工業所有權法戰時特例は特許法、實用新案法、意匠法及び商標法に關し戰時に於ける特例を規定した戰時法でありまして、其の内容の主たる點は次の通りであります、即ち一、戰力増強に比較的關係の薄い意匠出願を停止したこと、二、審査竝に審判事務の簡素化を圖る爲に意見書徴收及び出願公告の兩制度を停止したこと、三、審査竝に審判事務の迅速化の爲に審級を二審制度としたこと、以上の三點であります、此の他に意匠出願及び出願公告の停止に伴ひまして、意匠公報及び特許公報の發行を停止したのであります、以上の戰時措置の實施は、戰時中の巳むを得ない措置であつたとは言ひながら、特許法其の他に依つて保護せられてあります國民の權利利益の十分な保護と云ふ見地から見ますれば遺憾の點が少くなかつたのであります、そこで戰爭終了後出來得る限り早期に本法を廢止したいと考へ、諸般の準備を整へました結果、今次の議會に本廢止法案を提出する運びに至つた次第であります
以上商工經濟關係の二法案に付て御説明申上げましたが、何卒愼重審議御協贊あらんことを希望する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=43
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044・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
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045・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第四及び第五の兩案を一括して議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=45
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046・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=46
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047・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第六、郵便貯金法等の一部を改正する法律案の第一讀會を開きます──一松遞信大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=47
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048・会議録情報5
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第六 郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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郵便貯金法等の一部を改正する法律案
第一條 郵便貯金法の一部を次のやうに改正する。
第三條第一項中「五十錢」を「一圓」に、「五千圓」を「一萬圓」に改める。
第二條 簡易生命保險法の一部を次のやうに改正する。
第二條 削除
第四條第一項中「二千圓」を「五千圓」に改め、同項但書を削る。
第四條の二 被保險者六歳未滿にて死亡したるときは勅令の定むる所に依り保險金額の一部を支拂はさることを得
第八條及び第二十三條第二項中「一年六月」を「二年」に改める。
第二十六條に左の一項を加へる。
保險契約者貸付金の辨濟を爲さすして命令の定むる期間を經過したるときは政府は命令の定むる所に依り貸付金の辨濟に代へ保險金額の減額を爲すことを得
第二十八條中「保險金額又は」を「保險金額、」に改め、「還付すへき金額」の下に「又は保險契約者に對する貸付金額」を加へる。
第二十八條の二 政府は契約條項に關する命令を變更する場合に於て簡易生命保險事業の經營の状況に依り又は事情の變更に依り必要ありと認むるときは簡易生命保險及郵便年金事業委員會の議を經て其の變更の際現に存する保險契約に付ても亦將來に向て其の變更の效力の及ふものと爲すことを得
簡易生命保險及郵便年金事業委員會に關する規程は勅令を以て之を定む
第三條 郵便年金法の一部を次のやうに改正する。
第三條中「三千六百圓」を「六千圓」に改める。
第六條の二 年金受取人又は年金繼續受取人か死亡したる場合に於て其の者か支拂を受くへき年金にして未た其の支拂を受けさりしものは勅令の定むる所に依り年金受取人又は年金繼續受取人の遺族に之を支拂ふ
第八條中「二百五十圓」を「六百圓」に改める。
第十條第二項中「前項」を「前二項」に改め、同條第一項の次に左の一項を加へる。
年金支拂の事由發生したる後は年金受取人(年金受取人死亡の場合に在りては年金繼續受取人)は年金契約の解除を爲すことを得
第十七條 削除
第十八條中「及前條の特別返還金受取人」及び「又は特別返還金」を削る。
第十九條第一項を次のやうに改める。
政府は年金契約者、年金受取人又は年金繼續受取人の請求あるときは年金契約の解除に因り返還すへき金額の範圍内に於て命令の定むる所に依り貸付を爲す
第二十二條中「特別返還金又は」を削り、「返還すへき掛金」の下に「又は第十九條第一項の規定に依る貸付金」を加へる。
第二十二條の二 政府は契約條項に關する命令を變更する場合に於て郵便年金事業の經營の状況に依り又は事情の變更に依り必要ありと認むるときは簡易生命保險及郵便年金事業委員會の議を經て其の變更の際現に存する年金契約に付ても亦將來に向て其の變更の效力の及ふものと爲すことを得
第二十三條中「、返還金及特別返還金」を「及返還金」に改める。
第二十四條中「、返還金受取人又は特別返還金受取人」を「又は返還金受取人」に改める。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。但し、第一條の規定は、公布の日から、これを施行する。
この法律施行前の保險契約については簡易生命保險法第四條の二、第八條及び第二十三條第二項の改正規定にかかはらず、なほ從前の規定による。
この法律施行前の年金契約については、郵便年金法第八條、第十七條、第十八條、第二十二條、第二十三條及び第二十四條の改正規定にかかはらず、なほ從前の規定による。但し、同法第十九條第一項の規定による貸付については、この限りでない。
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〔國務大臣一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=48
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049・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 只今議題となりました郵便貯金法等の一部を改正する法律案の提出理由を説明申上げます
此の法律案は現下の經濟事情に對應し、國民生活の安定確保を圖る目的で郵便貯金の最高制限額、最低制限額、簡易生命保險の保險金最高制限額及び郵便年金の年金最高制限額を引上げると共に、簡易生命保險事業及び郵便年金事業經營の適正強化を期する爲め、契約條項に關する命令變更の效力を既存の契約にも及ぼし得ることとする等、郵便貯金法、簡易生命保險法及び郵便年金法の一部に必要なる改正を加へんとするものであります
今其の内容の主なるものを申上げまするならば、先づ第一條の郵便貯金法の一部の改正でありますが、是は最近の經濟情勢から見まして、現在の一人の郵便貯金の最高制限額五千圓を一萬圓に、預入最低額五十錢を一圓に引上げんとするものであります
次に第二條の簡易生命保險法の關係に於きましては、最近に於ける物價の急激なる昂騰に備へ、國民生活の安定強化を圖り、制度本來の機能を十分に發揮せしむる爲め、保險金最高制限額を五千圓に引上ぐると共に、此の事業の政府獨占を廢止し、又小兒の保險的保護を厚くする爲め、現行の小兒に關する保險制度を改正し、小兒の加入し得る保險金最高制限額を、成人の加入し得る保險金最高制限額と區別することなく、生後直ちに五千圓まで契約の出來るやうに致したのであります、尚ほ此の簡易生命保險契約は長期に亙り繼續するものでありますから、此の間事業經營の状態に鑑み、且つ社會情勢の推移變遷に伴ひまして、從來の契約條項に關する命令を變更して、之を既存の契約にも遡及せしむる必要がありますので、此の變更の出來る規定を設けまして、事業經營の適正強化を圖ることに致したのでございます、是等の改正に依りまして、簡易保險制度は益益其の機能を發揮することとなり、國民生活の安定強化に寄與する所少からずと確信致して居ります
第三條の郵便年金法の關係と致しましては、先に申上げました簡易生命保險の保險金の引上と同樣、最近に於ける物價の騰貴を勘案し、國民生活の安定と強化とを圖り、本制度創設の趣旨を十分に發揮する爲め、年金最高制限額を六千圓に引上げると共に、年金の差押禁止規定を改正し、年額六百圓を超える金額に付てのみ之を差押へ得るものと致しました外、戰死した者に支拂ふべき特別返還金制度を廢止したのであります、此の外郵便年金契約も亦長期に亙り繼續すべきものでありますから、簡易生命保險の場合の如く、從來の契約條項に關する命令を變更して、之を既存の契約にも遡及せしむることが出來るやうに致したのでありまして、是等の改正に依つて郵便年金制度は愈愈其の機能を發揮することとなり、國民生活の安定強化に寄與する所多しと確信致して居る次第でございます
以上説明申上げました點を十分に御諒承の上、何卒愼重御審議を盡され、速かに御協贊あらんことを切望する次第でございます(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=49
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050・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=50
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051・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=51
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052・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=52
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053・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、是にて議事日程は終了致しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は之を以て散會致します
午後四時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02419460803&spkNum=53
4. 会議録のPDFを表示
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