1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年八月六日(火曜日)
午後一時二十七分開議
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議事日程 第二十四號
昭和二十一年八月六日
午後一時開議
質 問
一 憲法改正に關聯する質問(布利秋君提出)
二 帝國憲法改正案に關する質問(大石ヨシエ君提出)
三 勞働關係調整法案に關する質問(志賀義雄君提出)
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第一 林業會法案(政府提出)
第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 諸般の報告を致させます
〔書記官朗讀〕
一、本日政府から左の答辯書を受領しました
衆議院議員布利秋君提出憲法改正に關聯する質問に對する答辯書
衆議院議員大石ヨシエ君提出帝國憲法改正案に關する質問に對する答辯書
衆議院議員志賀義雄君提出勞働關係調整法案に關する質問に對する答辯書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=1
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002・会議録情報2
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〔參 照〕
憲法改正に關聯する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和二十一年七月十六日
提出者 布利秋
憲法改正に關聯する質問主意書
六月二十八日の衆議院本會議における私の質問は、木村副議長から屡屡注意警告を受けて、足らない點あるために、文書を以て質問する。
第一點 (ポツダム宣言受諾に關して)
六月二十四日、衆議院本會議における吉田首相答辯の一節に、「ポツダム宣言に對しましては國體護持を條件として受諾致したのであります」と明答されたが、これは昨年八月十五日以來、國民が惱みぬいた問題である。若し吉田首相の言ふ通りであれば、憲法改正の起案文に現はれる第一條その他が、論議の的となるわけはない。從つて、首相が外務大臣の當時において、國民に明答されることが、政治家たる義務であると思ふ。然るに十箇月經過後、突如、議會において何故に發表しなければならなかつたか、その理由を承りたい。私が本會議場で、これに關しての質問を發したる時、政府與黨から、首相は答辯無用と叫ぶ聲が起つた。首相は衆議院規則を知りつつ默殺された理由が那邊にあるのか。議員侮辱か、それとも答辯が苦しいためか。茲に明答を要求する。
第二點 (國務調査委員會に就て)
新憲法第五十八條には「兩議院は各各國務に關する調査を行ひ」とある。過去においても調査の必要は當然であつたのである。將來においても、なくてはならぬのが議員の國政調査委員會である。その新設を考慮される熱意はなきか。
第三點 (神社及び寺院の既得權に就て)
第八十五條に現はれる宗教上の組織守護の立場と、第十八條の宗教上の行爲保護の立場から見て、現に神社、寺院の境内地及び保管林につき、それ等既得權は尊重される筈であるが、政府の解釋は如何。
第四點 (大臣は國家の臣なり)
七月八日の右の言葉は、理論を離れた感情論である。新憲法において、「臣」はない筈である。即ち内容と形式は不離不即のものである。新憲法上の大臣と舊憲法上の大臣とは意味においても權能においても互に間隔がある。殊に舊憲法上の大臣は戰爭命令者である。即ち大臣なる權力から戰爭の責任を發生させてゐる。又大臣たる名稱が古來の封建と現在の官僚獨善とを培養してゐる以上、新憲法の發祥する際には、斷乎として改變することが良心的と思ふが如何。
第五點 (代議院に改めては如何)
第三十八條に明記される新國會は、本質的に代議院である。然るに衆議院と呼ばせてあるが、過去の衆議院も戰爭責任者である以上、傳統を一掃する御考へはなきや。
第六點 (新憲法を護る取締に就て)
金森國務相は、「將來を心配すれば際限がない」と答へられたが、支那には事の終りを熟慮せずして事を始むる勿れと云ふ言葉がある。細心の注意を將來に致さずして、再び過去の憲法蹂躪なる暴力を容認されるつもりか。勿論、取締は考慮されてゐるであらうが、その取締は用意周到たるべきものと考へるが、政府にはどの程度の具體策ありや。
第七點 (議員任期に就て)
第四十一條には任期四箇年とある。この四箇年が種々弊害を發生させてゐる。二箇年無解散が能率的である。又議會淨化に貢獻するものと考へるが、御意見は如何。
第八點 (國會常會に就て)
第四十八條には、毎年一囘召集とあるが、國務は無休である。殊に民主政治は常時議會たることが當然と考へる。右に對し御意見は如何。
第九點 (華族制度に就て)
第十三條には華族を否定して、第九十八條には一代華族を認めるなど、感情的矛盾と考へるが如何。
第十點 (總理大臣の指名權に就て)
第六十三條では衆議院が最後に總理大臣を指名するとあるが、寧ろ複雜なる手數を省き、最初より衆議院の議決に任すと改めては如何。
第十一點 (最高機關に就て)
國會が最高立法機關たることを三十七條に明記されながら、七十七條には司法權が立法權の上にあるかの感がある。これに對する解釋は如何。
第十二點 (公務員に就て)
第十四條には公務員は一部の奉仕者でないとある。然し官尊民卑の弊風は、依然として將來も官僚獨善を護持するものと思ふ。金森國務相は、これに關して極めて樂觀的であるが、逆作用を御承知であるか否や承りたい。
第十三點 (勞働權に就て)
第二十五條には一方的に勞働權が認められてゐる。併し勞働を不要と考へる有産階級は、この勞働權には不關焉である。即ち二つの相違する性格に對する一視同仁主義は、軈て社會的副作用を起す虞がある。これに對しての御意見が承りたい。
第十四點 (何故に義務を輕視するか)
「權利に重きを置き、義務については餘り觸れないのは權利の觀念を國民に深く慘み込ませるためである」と金森國務相は六月二十六日の本會議で明答されてゐるが、これは過去の軍閥權力が、人民の權利を躪躪して、苛酷極まる義務奉仕を強制した結果に對する思ひやりであらうが、然し束縛から解放への自由主義を誤解して、現在及び將來の罪惡社會を創りつつある現象は、義務を輕視する結果の反動作用と言ひ得る。勿論法律的具體性のない第十一條の道義的指導が明記されてあるとしても、責任は義務に附帶するものである以上、義務を輕んずれば無責任なる本能生活に陷り易い。かくして暗黒時代を創造することになる。これを如何なる方法で指導し、又取締るお考へであるか。具體策を承りたい。
第十五點 (家族制度の取扱は如何)
神道、佛教が滲透する家族主義と國家の連帶責任に死生を賭して來た日本人は、家族主義的利己主義を發達させた。歐米はキリスト教が個人と社會に滲透して、家族と國家を否認しつつ民主主義を發展させて來た。兩者各各相違するものを、同性格と認めるときは、そこに反動的副作用が起りはせぬか。識見ある御意見を承りたい。
第十六點 (憲法と生活の關係に就て)
これまでの戰爭は、天皇を擔いで生活のために戰つて來た。今後は戰爭抛棄であるが、戰の原因は食へないためである。今後において益益食へない社會が展開する。これを如何に取扱はれる積りか、見透しの利く識見を承りたい。
第十七點 (憲法起案と社會觀に就て)
新憲法は苦しみもなく生れてをる。そのために、社會觀の檢討を粗末にされてはゐないか。憲法起案者は獵師山を見ざるの類に陷り、理論のための理論に向けて、盲目的に走る嫌ひはないか。憲法起草には社會觀も人生觀も、哲學からの發足が必要ではないか。只、法理さへ透徹すれば、社會人は直ちにこれを咀嚼し得ると考へられるか、御意見を承りたい。
第十八點 (憲法運用の具體策を問ふ)
咀嚼することの出來ない場合に、如何なる方策を以て、水村山村にまで新憲法を滲透させる御所存か。憲法は通過しても、咀嚼が大切であらう。その具體的運用方策を承りたい。
第十九點 (新憲法から生れる優勝劣敗はどうなるか)
新憲法から絶對自由が生れる。即ち社會は優勝劣敗に陷る。總てにおいて正邪は多數決で裁かれる。即ち今後の政治は、政黨の多數權爭奪となる。これが社會的に如何なる反動を起すかについて御意見を承りたい。
第二十點 (文部大臣の公選に就て)
社會が弱肉強食の弊に陷り、政黨の横暴増大する時に、文教指導者が、横暴なる階級から選ばれることが、國民の幸福であるか否か、せめて文部大臣だけでも、文化團體の公平な公選に任すことが、文化建設の上に妥當と思ふが、それについて御意見を承りたい。
最後の一點 (憲法と人心の遊離に就て)
民主主義なるものに何等の經驗なく、訓練なき國民の大部分は憲法と遊離する場合があると思ふ。我我は今、憲法改正に贊意を表する直前において、民衆の心理を解剖する場合、幾多の質疑が生れる。從つて我等の質問は、法理學者が考へる狹い枠の中において、理論のための理論に依つて質問するが如き、金魚壷の金魚の本質論に沒頭するものでない。
我等は高遠な社會現象を洞察して、哲學的人生觀、社會觀の基準點に立ち、憲法運用に關する諸現象に觸れて質問するのである。從つて、從來の議會質問の陋弊的な軌道を眞似る法理の枠内における質問ではない。即ち幸福な將來を約束するために高遠な考へ方から質問するのである。これが即ち忠實なる努力ではないかと考へるがお説は如何。殊に金森國務相が、一人で應答されてゐるが、その言責は、内閣が諒解したものであるか。そして人民が要望する道理ある修正については御再考の餘裕があるか否やも承りたいのである。以上の諸點について、吉田首相及び金森國務相は、本會議場において、夫々口頭をもつて答へられる義務がある。即ち後世の國民のために、答辯されることが當然である。本會議においては特に私は遠慮して答辯要求を見合せたのであるが、本會議の時間を利用して、御答辯あらんことを要求する。
右質問する。
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昭和二十一年八月六日
内閣總理大臣 吉田茂
衆議院議長 樋貝詮三殿
衆議院議員布利秋君提出憲法改正案に關聯する質問に對し別紙答辯書を送付する。
〔別紙〕
衆議院議員布利秋君提出憲法改正に關聯する質問に對する答辯書
第一點 六月二十六日衆議院本會議における原夫次郎議員の質疑に對する答辯及び六月二十七日衆議院本會議における吉田安議員の質疑に對する答辯の通りである。
第二點 第五十八條の定める兩議院の國務調査に關し、適當の機關が設けられることは結構であると思ふ。これは議院内の組織のことであるから、議員側において充分考慮されて然るべきものと思ふが、政府としても研究して見たい。
第三點 お尋ねの神社及び寺院の既得權については、これを尊重する趣旨の下に、諸般の考究を進めてゐる。
第四點 御意見のやうな趣旨で、國務大臣の名稱を特に改める必要はないと考へる。
第五點 第四點に對する答辯と同樣の意見である。
第六點 憲法改正案は、過去においてあつたやうな間違ひを繰返す餘地のないやうに、できてゐる。なほ將來は、政府は固より、全國民が改正憲法の精神に徹しこれが運用に萬遺憾なきを期するやう努力することとしたい。
第七點 衆議院議員の任期を二箇年とすることは一つの見解であるが、選擧が頻繁に失すること等に關聯して難點がある。又二箇年の間は解散を行はぬこととすることは、所謂議院内閣主義を採る以上不適當と考へる。
第八點 六月二十七日衆議院本會議における森戸辰男議員の質疑に對する答辯の通りである。
第九點 六月二十七日衆議院本會議における森戸辰男議員の質疑に對する答辯の通りである。
第十點 内閣總理大臣の指名は、極めて重要な事柄であり、特に愼重を要するものであるから、衆議院のみの議決に任せることは適當ではないと考へる。
第十一點 國會は、國民を直接に代表する機關であるから、この憲法は、他の機關に比して國會が國權の最高機關である旨を規定してある。第三十七條はかやうな點に主眼を置いての規定であるが、見方によつては、最高裁判所が裁判をする上に必要な法律審査を行ふことは、その限度において、國會の最高性に對する特例をなすものと云ふことができる。この意味では、第七十七條第二項は一般規定たる第三十七條に對する特別規定である。といふべきである。(かかる一般規定、特別規定の關係は法制上普通認められてゐるところである。)しかし、かやうな極く一部の例外があるからと云つて、一概に司法權は立法權の上に在ると云ふことにならないことは、多言を要しないと思ふ。
第十二點 改正憲法の下における公務員の性格は、官尊民卑、官僚獨善等の弊風を許さないものであることは明かである。從つて、今後は、公務員の努力と一般國民の協力によつて、是非ともその實を擧げなければならないと考へる。
第十三點 改正憲法は、すべての國民に對して、勤勞の權利を保障してゐる。かやうな基本的の人權について、いはゆる有産階級と然らざるものとを區別して考へることは正しくないと思ふ。
第十四點 改正案第十一條の精神を基調として、學校教育、社會教育その他あらゆる啓發手段を活用し今後一層國民道義の向上に努めたい。
第十五點 家族制度における封建的性格は、これを拂拭すべきことは勿論であるが、元來家族制度そのものと個人の權威尊重の原則とは、必ずしも兩立し得ないものとは考へてゐない。
第十六點 國民生活を維持するために戰爭をするといふ考へが全く誤りであることは申す迄もない。民生安定のための政策は、これとは別個に樹てられるべきことは當然であつて、その方策についての政府の所信は今期議會において各般の機會に表明したところにより御承知の通りである。
第十七點 憲法改正案が單なる法理の透徹に執著して立案されたものでないことは、今日迄の衆議院における政府の説明によつて充分了承されてゐることと信ずる。
第十八點 改正憲法の一般國民への滲透については、政府としては、萬遺憾なきを期する所存であるが、國民代表としてその審議に當られた議員各位においても、この點について、格段の努力を拂はれるものと期待してゐる。
第十九點 改正憲法は國民の聡明な政治的識見を基盤としてゐる。新憲法必然の結果として御懸念の如き弊害を生ずるものとは考へないが、國民の政治的水準の向上については、あらゆる努力を惜しまない所存である。
第二十點 文部行政の主任の國務大臣も、他の國務大臣と同樣國民代表機關たる國會によつて指名された内閣總理大臣が同じく國會の承認によつて、これを任命するものとすることが、最も妥當であると考へる。
第二十一點 憲法改正は、狹い枠の中において論ずべきでなく、高遠な考へ方から扱ふべきものであることは、いふまでもない。今議會における國務大臣の答辯が内閣の諒解に基くものであることは勿論である。なほ、憲法改正案に對する議會の修正權については屡屡明言した通りである。
右答辯する。
昭和二十一年八月六日
内閣總理大臣 吉田茂
大 藏 大 臣 石橋湛山
司 法 大 臣 木村篤太郎
文 部 大 臣 田中耕太郎
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帝國憲法改正案に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和二十一年七月一七日
提出者 大石ヨシエ
憲法改正案に關する質問注意書
第一點 日本國が獨立國たる事を闡明にし且つ自主的に平和を愛好し、世界の平和確立に寄與する事を明示すべきではないか。
現在聯合軍の占領下に在るとは謂ひながら、憲法は國の恆久的な根本法規であるから獨立國たる事に疑惑を持つが如き表現は避くべきである。前文第二項中「我等の安全と生存をあげて平和を愛する世界の諸國民の公正と信義に委ねようと決意した」及び第九條第二項は何れも受動的で自主性に乏しい。更に自主的に的確に平和の愛好、世界平和確立に寄與することを強調すべきはないか。
第二點 華族制度は直ちに之を廢止すべきであると考へるが如何。
華族制度は同じ榮典であつても他のものと異り最も封建的なものであつて、戰前に於ても一代華族論乃至は廢止論が一部に行はれた位で、總てのものが徹底的に民主化せられてヰる本案に於て、假令一代限りと謂ふも華族を存置することは急激なる改革を避けるのではなくて、これのみが取り殘される結果となり、他の根本的改正と調和が取れないと考へるが政府の所見如何。
第三點 國立輿論調査研究所を設置する考へはないか。
本案の特長の第一は國民の自由なる總意が一切の國權發動の基礎である事を規定したのに在ると考へるが、國民大衆の輿論を聞く爲に國會以外に國立輿論調査研究所を設ける考へはないか。
「アメリカ」合衆國に於て現に之を設けて成功をしてヰるのであるが、憲法の運用を現實に即せしめ國民の希望に合致して眞に日本の政治が民主化する爲には、是非之を必要とすると考へるが政府の所見如何。
第四點 家族制度改革の實施要領如何。
本案は家族制度を改革して封建的なところを一掃し、民主化を徹底せんとするに在ると考へるが、家族生活と云ふものが極めて保守的なものであり、本案に掲げられた理想と日本の現在の社會の實状とは相當大なる距りがある事を考へる時家族制度の改革は實現に非常な努力と長日月を要する事を覺悟せねばならぬ。之を一擧に理想を實現しようとすると空理、空論に終つて國民がついて來ず到る所家族生活の闇取引が行はれて折角の根本的改革が行はれなくなるが本件に關する限り政府は實施の方法、速度、限度等に關し法律以外に明確なる見解を表示すべきであると考へるが政府の所見如何。
第五點 母性の保護を憲法に明示するの意圖はないか。
男女平等でなければならぬと同時に又本質的な男女の差異は認めねばならぬ、其の最も大なるものは女は母たらねばならぬと云ふ事である。精神的に肉體的に經濟的に母たる事は女の非常な負擔である。眞に男女平等である爲には此の女の負擔を輕からしむる爲母性の保護に付て是非憲法に明示を要すると思ふが如何。
第六點 民主的文化國家建設の爲には兒童のみならず青年の一定年齡迄教育の義務を負はしむるを必要としないか。
之が爲本案第二十四條を改める意圖はないか。
第七點 現に神社の有する財産等は直に之を沒收するのか。
若し然りとすると改革が急激であつて人心に與へる影響も大きく色色弊害を生じて來ると考へるが之が實現に關する政府の考へ如何。
以上第一點第五點第七點は金森國務大臣、第二點は總理大臣、第三、第四點は内務大臣、第六點は文部大臣より夫々特に本會議場に於て口頭を以て御答辯を求む。
右質問する。
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昭和二十一年八月六日
内閣總理大臣 吉田茂
衆議院議長樋貝詮三殿
衆議院議員大石ヨシエ君提出帝國憲法改正案に關する質問に對し別紙答辯書を送付する。
〔別紙〕
衆議院議員大石ヨシエ君提出帝國憲法改正案に關する質問に對する答辯書
第一點 御指摘の箇所は、世界の恆久平和に率先挺身するための最も積極的な方法を規定したものであつて、前文末段の誓言と相俟つて表現は謙抑であるが、熱烈な氣魄がこもつてゐる。毫もわが國が獨立國たることに疑惑を來すが如き表現ではないと信ずる。
第二點 六月二十七日衆議院本會議における森戸辰男議員の質疑に對する答辯の通りである。
第三點 本改正案は、健全な議院内閣制の建設を以て國政の基本とする建前を採つてゐるのであるから、國民大衆の輿論を國會に正確に表現させ、それが國政に正しく反映すべきものと思ふが、政府としても夙に輿論調査の必要を認め、内閣に所要の職員を置き、現にこれを實施してゐる。今後その一層活溌な運營を期したいと思ふ。
第四點 家族制度改革の内容については、目下臨時法制調査會及び司法法制審議會において、鋭意研究中であり、從つて家族制度改革の實施要領についてもその研究と相俟つて、これを確定すべきものと考へるので、現在この點に關する政府の見解を公表するところまでに至つてゐない。
第五點 社會的、經濟的觀點において母性の保護を圖ることは固より望ましいと考へるが、憲法はその性質上、一切の望ましい事項をすべて巨細に網羅すると云ふやうなものではないと思ふ。母性保護の根本趣旨は第十二條及び第二十三條に包含されて居り、今後立法によつて具體化されて行くべきものと考へる。
第六點 青年教育の義務制に關しては近く發足を豫定せられてゐる教育刷新委員會において十分研究の上、教育界の輿論の動向をも參酌し、善處したいと思ふ、特に憲法において青年教育の義務制を規定する必要はないと考へてゐる。
第七點 神社の所有に屬する財産については、憲法改正案は何等觸れるところのないことはいふまでもない。神社が國家より貸與を受けてゐる土地等についてはその沿革等をも尊重して適當に處理すべく目下考究中である。
右答辯する。
昭和二十一年八月六日
内閣總理大臣 吉田茂
内 務 大 臣 大村清一
文 部 大 臣 田中耕太郎
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勞働關係調整法案に關する質問主意書
右成規に據り提出する。
昭和二十一年七月十七日
提出者 志賀義雄
勞働關係調整法案に關する質問主意書
一、日本民族當面の急務は、民主的經濟の建設、國際平和機構への加入を速に實現し、それによつて人民の生活の安定と向上をはかることが第一である。そのためには勞働組合が積極的に參加することなくしては、不可能である、その勞働組合の一層健全な發展を阻害する本法案は、政府において撤囘すべきである。
二、今日の基本的人權のなかには、勞働權のみならず、罷業權も含まれる。その罷業權を不當に制限する本法案は、ポツダム宣言第十條の規定に違反するのみならず、聯合軍最高司令部の方針指令にも違反する。
三、政府は、勞働者の權利を確認する勞働法をあとまはしにして、本法案を先に通過させようとするのは、勞働組合を官僚、財閥、大地主の利益のために窮屈な枠をはめ、その正當な機能を麻痺させようとするものである。
政府は財閥解體を遲延させながら、租税負擔を働く人々に重課しようとしてゐる。かうしたやりかたでは、勤勞者を死地におひこむだけである。我々は、基本的人權の制限禁止法案に絶對反對である。
四、アメリカその他の民主々義國のごとく人民が基本的人權を保障され、爭議にさいしても官憲の不當な干渉のない國では、勞働關係を調整する法律もある程度有效に活用され得るが、讀賣新聞爭議の本日(七月十六日)までの經過に鑑みても、官憲は、爭議團にたいして暴力干渉をおこなひ、勞働組合法を蹂躪する會社側の不法行爲を默認するのみならず、かへつてこれを擁護してゐる。
かかる官憲が本法を運用することとなれば、その結果勞働組合彈壓となることは、火を賭るよりもあきらかである。
五、北海道新聞爭議においても阿部社長は、不當馘首が勞働組合法に違反してゐることは、自分でも認めるがそれがどうしたと勞働組合の代表にむかつて放言してゐる。またあらゆる爭議においてみられるやうに、資本家側は、買收をもつて爭議團を切り崩すことを常態としてゐる。
六、勞働委員會が本法案に基いて、爭議の防止、斡旋、調停、仲裁に當ることとなるが、委員數の構成は、勞働組合側の不利なやうに仕組まれてゐる。第三者委員が多くは資本家側の利益を代表するものをもつて構成される事實がこれを證明する。また現在の勞働者側委員も、正當に勞働組合の代表をもつて構成されたものでない。
七、本法案作成にあたつた勞務法制審議會は、そのメンバーが追放に該當するため頻々と變更され、今後もその危險なしと斷言しがたい。從つて、本法案は常に勞働者側の不利になるやうに作成される傾向が強かつた。
八、斡旋員候補者は學識經驗を有するもののうち、勞働委員會から委囑されることになつてゐるが、それは主として資本家側の利益を代表するものに比重が大きくなることは、不可避である。勞働組合側の希望する斡旋員を選ぶ保障が全然缺けてゐる。
九、現業以外の官公吏の爭議行爲を禁止されてゐるが、彼等の收入は、一般にくらべて低いために頻々として涜職事件が起る。行政は腐敗し停頓する。故に彼等にも團結權と罷業權とを認むべきである。
十、公益事業の從業員はその爭議權を事實上殆ど骨拔きにされてゐる。彼等の收入も一般に較べて低い。調停のために三十日後でなければ爭議ができないとすれば、爭議團は、官憲の干渉と資本家の買收によつて切り崩され一種の戰鬪行爲ともいふべき爭議の好機を奪はれることとなる。
十一、政府は社會秩序保持の聲明によつて生産管理を否認したが、生産管理は爭議の一手段として法律上の事務管理を行ふに過ぎず、經營權および財産權を根本的に否認するものではない。今日の急務たる生産増強を資本家がサボタージュしてゐるので、勞働者側は事務管理としての生産管理を行ふのであつて、官公廳における業務管理も同樣である。これを行へば公衆の日常生活を毫も妨げることなくかへつて勞働者勤勞者の熱心な創意を生かすこととなる。一方では生産管理を否認し、他方では爭議權を制限否認することは、政府が自ら日本を破滅におとしいれるものである。
十二、第三十條第二號および第三十四條の規定によれば、本法案の趣旨さへよく知らない多數の勞働組合や勞働者大衆は、詐術的に仲裁裁定に服從することを餘儀なくされ、みすみす不利に陷れられる場合が多い。法案にはさうした危險にたいする親切な注意が全く缺けてゐる。
十三、本法案は、近き將來に政府が強行しようとする産業整備を勞働者の犧牲において大量馘首をもつて實現するために提出した惡法である。
十四、要するに、本法案は、民族的危機を突破するためにすすんでその任務にあたらうとする勞働者大衆の組織を萎縮させ、彼等の權利を無視しようとするものであるから、共産黨議員はこれに絶對反對する。
右質問する。
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昭和二十一年八月六日
内閣總理大臣 吉田茂
衆議院議長樋貝詮三殿
衆議院議員志賀義雄君提出勞働關係調整法案に關する質問に對し別紙答辯書を送付する。
〔別紙〕
衆議院議員志賀義雄君提出勞働關係調整法案に關する質問主意書に對する答辯書
一、本法案は、第一條に於て明かに規定してゐる如く、勞働組合法と相俟つて、勞働爭議の豫防解決を圖り、産業の平和を維持し、以て經濟の興隆に寄與することを究極の目的としてゐるのであり、正に勞働組合の健全なる發展を圖らんとするものである。即ち、本法案は第一に勞働爭議の豫防解決は、當事者が自主的努力により之を爲すことを主眼とし、政府は之に對して援助を與へるに止まるものであり、絶對に干渉彈壓に亙るものではない。又調停仲裁の開始についても、當事者の合意に基くことを要件としてゐるのである。但し公益事業については、その重大性に鑑み、強制調停を認めてゐるが、これとても、その結果を強制するものでなく、單に勸告を爲すに止まるものである。第二に、公益事業については、いわゆる拔打爭議を禁止し現業以外の官公吏等につき、爭議行爲を禁止してゐるが、これは、國家公衆に爭議行爲發生に對處するの餘裕を與へると共に、國家機能の停止乃至破壞を防止せんとするものであり、公益擁護の爲の最小限度の制限といふべきである。右の如く本法案の内容は、勞働關係の調整に關する手續を規定すると共に最小限度に於いて公益との調和を圖らんとするものであり、勞働組合の健全なる發達を何等阻害するものではない。
二、凡そ、如何なる權利と雖も、無制限にこれを行使し得るものはない。權利の濫用に亙らざること、公序良俗に違反せざること等の制限は當然のことといはねばならぬ。本法案は、第四十條に於て、所謂爭議權を保護すると共に、一方公益事業、現業以外の官公吏等につき公益との調和を圖るため、最小限度の制限を規定してゐるのであつて、爭議權を不當に制限するものではない。
三、勞働(基準)法案より先に本法案を提出したのは、技術的に勞働(基準)法案提出準備に時間を要したことによるのであつて、何等他意あるものではない。而して本法案は何等一部の者の利益を擁護せんとするものではなく國民大衆の利益を擁護するものである。尚勞働(基準)法案については、目下著々準備を進めており、次の議會に提出する豫定である。
四、本法の運用は、主として勞働委員會が、これに當ることになるが、これについては近く委員の改選を實施し、民主的な構成を圖ることになつてゐる。又勞働省も近く設置の豫定であり、勞働行政運營の機構につき民主化を徹底することになつてゐる。
五、勞働行政機構の民主化と相俟つて勞働組合法の權威ある運用を確立したいと思ふ。
六、前述の如く勞働委員會の委員は、近く正規の手續に依り之を改選し、勞資雙方につき眞に、夫々を代表する委員を選出すると共に、第三者委員についても、雙方委員の同意に基き、之亦眞に公正なる委員を選出することになつてゐる。
七、本法案は、その立案の過程に於て所謂「公聽會」を開催し、勞働者側の意見も充分反映せしむるの途を講じたのであり、その内容が特に勞働者側に不利であるといふことは絶對にない。又今後共關係立法についてはこの方針で行きたいと思ふ。
八、前述の如く勞働委員會が公正なる構成を持つものであるから、斡旋員候補者を委囑する場合に質問の如き心配はない。又勞働委員會は近く民主的に改組することについては前述の通りである。
九、警察官吏、消防職員及監獄勤務者は、治安維持上重大なる職責を有するのであつて、團結權及爭議權を認めてゐない。又現業以外の官公吏等は、國家作用の擔當者であるのであつて爭議權は認めないこととした。この規定は、國家公益擁護の爲寧ろ當然のことであると思ふ。然し團結權乃至爭議權を禁止しその勞働條件の改善等につき自主的に之を獲得する機會を制限する譯であるから豫算等の許す範圍に於て出來得る限り待遇改善に努力し、不祥事件の發生等を見ない樣萬全の策を構ずる積りである。
十、公益事業につき所謂拔打爭議を禁止してゐるのは、當該事業の國家及國民の日常生活に對する重大なる性質に鑑みその爭議行爲發生に對しては、國家國民大衆が豫め之に對處することを得せしめ、又當事者に更に反省の機會を與へると共に、事の重大性に鑑み、調停案の作成に愼重ならしむることを目的としてゐるのである。尚前述の如く本法案は政府は苟も干渉に亙ること無き運用原理を規定致してゐるのであり、本法の公正なる運用と相俟つて、質問の如き心配はいらないと思ふ。
十一、生産管理の問題は、所有權乃至經營權と、勞働權乃至は爭議權との問題であると思ふ。而して民主主義の根本は、自己の權利は之を主張すると共に、他人の權利は之を尊重することにある。新憲法草案の精神も茲にある譯である。かかる根本理念よりして生産管理は、その結果の如何にかかはらず之を認める譯には行かぬ。先般發表された聯合軍總司令部經濟科學部聲明もかかる趣旨を闡明せるものである。
十二、質問の趣旨は、本法案の内容よりは寧ろ本法の周知徹底についてであらうと思ふ。之については、行政系統其の他を通じて出來るだけ本法の趣旨竝びに内容を徹底せしむる樣努力する。尚全國的勞働組合其の他の團體にあつても周知徹底につき協力を要望する。
十三、本法は元來勞働組合法と同時に制定せらるべき性質のものであり、又、關係者の間にもそう云ふ意見も強かつたのであるが、其れが同時に行はれなかつたのは單に事務的に間に合はなかつたと云ふにすぎない。從つて本法案提出に當つて質問の如き意圖は絶對にない。本法の精神が一部の利益を擁護するとか勞働者を壓迫するとか云ふことはないことは前述の通りである。
十四、要するに、本法案は勞働爭議を民主主義的に處理せんとするの外、何等他意なく公正なものと信ずる。
右答辯する。
昭和二十一年八月六日
厚生大臣 河合良成
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである
昭和二十一年度特別會計改定歳入歳出豫算案
(以上八月三日提出)
一、去三日貴族院に於て本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した
(第三號)昭和二十一年度歳入歳出總豫算追加案
(特第二號)昭和二十一年度特別會計歳入歳出豫算追加案
一、議員から提出された議案は次の通りである
戰爭傷病者救濟に關する建議案
提出者 吉田セイ君
豐岡、鳥取間鐵道電化急施に關する建議案
提出者
稻田直道君 飯國壯三郎君
小島徹三君
若櫻、八鹿間及び若櫻、新宮間鐵道建設に關する建議案
提出者
稻田直道君 小島徹三君
家事審判所設置に關する建議案
提出者 山下春江君
帶廣農業専門學校の官立大學昇格に關する建議案
提出者
小川原政信君 伊藤郷一君
松本六太郎君
北海道の開拓に伴ふ土地處分に關する建議案
提出者
武田信之助君 北勝太郎君
太田鐡太郎君 松本六太郎君
椎熊三郎君 地崎宇三郎君
本名武君 有馬英二君
永井勝次郎君
四國綜合大學設置に關する建議案
提出者
福田繁芳君 田萬廣文君
平野市太郎君 豐澤豐雄君
矢野庄太郎君
(以上八月三日提出)
宗教教育に關する建議案
提出者
地崎宇三郎君 左藤義詮君
大野伴睦君 田中萬逸君
犬養健君 山崎猛君
成島勇君 葉梨新五郎君
石井光次郎君 林連君
戰災孤兒の指導竝に救護に關する建議案
提出者 布利秋君
刑務所を戰災者住宅又はその他に轉換に關する建議案
提出者 布利秋君
日本競馬界民主化に關する建議案
提出者
寺島隆太郎君 鈴木明良君
平野増吉君 坪川信三君
(以上八月五日提出)
一、昨五日議長に於て撤囘を許可した議案は次の通りである
宗教教育に關する決議案
提出者
地崎宇三郎君 犬養健君
田中萬逸君 成島勇君
林連君
(以上七月十一日提出)
宗教教育に關する決議案
提出者
大野伴睦君 左藤義詮君
葉梨新五郎君 石井光次郎君
山崎猛君
(以上七月十七日提出)
戰爭傷病者救濟に關する建議案
提出者 吉田セイ君
(以上八月三日提出)
一、去三日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第六部選出
請願委員 大橋喜美君(大原博夫君補闕)
一、去三日議長に於て次の委員を選定した
商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出)外一件委員
安部俊吾君 井田友平君
小澤國治君 加藤一雄君
細田忠治郎君 山田善三君
馬越晃君 北村徳太郎君
村島喜代君 山田悟六君
海野三朗君 金子益太郎君
竹内克巳君 西村榮一君
駒井藤平君 藤本虎喜君
赤澤正道君 若林義孝君
郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)委員
伊藤郷一君 稻田直道君
木村公平君 古賀太郎君
左藤義詮君 杉田一郎君
天野久君 小池新太郎君
菅原エン君 西山冨佐太君
石川金次郎君 杉本勝次君
森三樹二君 森本義夫君
木下榮君 河野金昇君
井上赳君 近藤鶴代君
一、去三日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
生活保護法案(政府提出)委員
理事 長谷川保君(吉川兼光君去三日理事辭任に付其の補闕)
一、去三日次の通り特別委員の異動があつた
勞働關係調整法案(政府提出)委員
辭任 長尾達生君 補關 仲川房次郎君
一、昨五日委員長理事互選の結果次の通り當選した
商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出)外一件委員
委員長 北村徳太郎君
理事
細田忠治郎君 山田善三君
馬越晃君 西村榮一君
郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)委員
委員長 稻田直道君
理事
伊藤郷一君 左藤義詮君
小池新太郎君 森本義夫君
一、昨五日次の通り特別委員の異動があつた
勞働關係調整法案(政府提出)委員
辭任 赤松勇君 補關 荒畑勝三君
商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出)外一件委員
辭任 駒井藤平君 補關 木下榮君
辭任 藤本虎喜君 補關 河野金昇君
郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)委員
辭任 木下榮君 補關 駒井藤平君
辭任 河野金昇君 補關 藤本虎喜君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=2
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003・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きます、本日の日程に掲げました質問一乃至三は何れも政府より答辯書を受領致しました、仍て日程より之を省きます、日程第一、林業會法案の第一讀會を開きます──和田農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=3
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004・会議録情報3
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第一 林業會法案(政府提出)
第一讀會
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林業會法案
林業會法
第一條 林業會は、會員が協同して、自主的に林業の改良發達竝びに林産物の生産の確保及び配給の適正を圖ることを目的とする。
この法律において、林業とは、森林の維持造成の事業及び林産物の生産又は販賣の事業をいひ、林産物とは、木材その他森林から産出する物で主務大臣の指定するものをいふ。
第二條 林業會は、都道府縣林業會及び日本林業會とする。
第三條 林業會は、法人とする。
第四條 林業會は、その目的を達するために、左の事業を行ふことができる。
一 林業の指導奬勵に關する施設
二 會員の林業の改良發達を圖るため必要な共同施設
三 林産物の檢査
四 林業に關する調査及び研究
五 前各號に掲げるものの外林業會の目的達成上必要な事業
林業會は、前項の事業の外、左の事業を行ふことができる。
一 政府の指示に基く林産物の生産及び配給に關する割當
二 林産物の價格統制に關する政府の施策に對する協力
三 政府の指示に基く林業に必要な物資の割當
第五條 都道府縣林業會の地區は、都道府縣の區域により、日本林業會の地區は、全國の區域による。
第六條 都道府縣林業會の名稱中には、都、道、府若しくは縣林業會なる文字を用ひ、日本林業會の名稱中には、日本林業會なる文字を用ひなければならない。
林業會でない者は、その名稱中に、前項に掲げる文字を用ひてはならない。
第七條 林業會は、勅令の定めるところにより、登記をしなければならない。
前項の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これを以て第三者に對抗することができない。
第八條 林業會(會員に出資をさせるものを除く。)には、法人税及び營業税を課さない。
會員に出資をさせる林業會(以下出資林業會といふ。)には、所得税、法人税及び營業税を課さない。
第九條 都道府縣林業會の會員たる資格を有する者は、左に掲げる者とする。
一 都道府縣の區域を地區とする森林組合聯合會
二 都道府縣の區域を地區とする林産組合
三 前二號に掲げる者を除く外林業を營む者若しくは林業に密接な關係を有する事業を營む者又はこれらの者の團體で定款で定めるもの
日本林業會の會員たる資格を有する者は、左に掲げる者とする。
一 都道府縣林業會
二 前號に掲げる者を除く外林業を營む者若しくは林業に密接な關係を有する事業を營む者又はこれらの者の團體で定款で定めるもの
第十條 都道府縣林業會を設立するには、命令の定めるところにより、前條第一項第一號に掲げる者の同意及び同項第二號に掲げる者の三分の二以上の同意を得て、創立總會を開き、定款その他設立に必要な事項を定め、行政官廳の認可を受けなければならない。
日本林業會を設立するには、命令の定めるところにより、前條第二項第一號に掲げる者の三分の二以上の同意を得て、創立總會を開き、定款その他設立に必要な事項を定め、行政官廳の認可を受けなければならない。
第十一條 林業會の定款には、左の事項を記載しなければならない。
一 目的及び事業
二 名稱
三 地區
四 事務所の所在地
五 會員に關する規定
六 經費の分擔の方法
七 會議に關する規定
八 役員に關する規定
九 業務の執行及び會計に關する規定
十 公告の方法
出資林業會の定款には、前項の事項の外、左の事項を記載しなければならない。
一 出資一口の金額及びその拂込の方法
二 剩餘金の處分及び損失の處理に關する規定
三 準備金の額及びその積立の方法
第十二條 林業會は、主たる事務所の所在地において、設立の登記をすることに因つて成立する。
第十三條 會員たる資格を有する者が林業會に加入しやうとするときは、林業會は、正當な理由がないのに、加入に困難な條件を附し、又はその加入を拒んではならない。
第十四條 林業會に、役員として理事及び監事を置く。
役員は、會員又は會員たる法人の業務を執行する役員の中から、總會において、これを選任する。但し、林業會設立當時の役員は、設立同意者又は設立同意者たる法人の業務を執行する役員の中から、創立總會において、これを選任する。
特別の事情があるときは、役員は、前項に該當しない者の中から、これを選任することができる。
第十五條 知事の任期は、三年とし、監事の任期は、二年とする、但し、定款で別段の定をすることができる。
役員は、任期中でも、總會において、これを解任することができる。
第十六條 林業會が理事と契約をするときは、監事が林業會を代表する。林業會と理事との訴訟についても、亦同樣とする。
第十七條 理事の全員が缺けたとき、又はその職務を行ふことができないときは、監事が、その職務を行ふ。但し、その期間は、三箇月を超えてはならない。
理事の職務を行ふ者がないときは、行政官廳は、假理事を選任し、理事の職務を行はせることができる。
第十八條 監事は、理事又は林業會の使用人と相兼ねてはならない。
第十九條 理事は、定款及び總會の議事録を各事務所に、會員名簿を主たる事務所に備へて置かなければならない。
會員名簿には、各會員について、左の事項を記載しなければならない。
一 氏名又は名稱及び住所
二 出資林業會にあたつては、出資日數及び出資各口の取得の年月日竝びに佛込濟出資額及びその佛込の年月日
會員及び林業會の債權者は、第一項に掲げる書類の閲覽を求めることができる。
第二十條 林業會の會員に對してする通知又は催告は、會員名簿に記載したその者の住所に、その者が別に通知又は催告を受ける場所を林業會に通知したときは、その場所に宛てることを以て足りる。
前項の通知又は催告は、通常到達すべきであつた時に、到達したものとみなす。
第二十一條 出資林業會の理事は、通常總會の會日から一週間前に、事業報告書、財産目録、貸借對照表および剩餘金處分案又は損失處理案を監事に提出し、且つ、これらを主たる事務所に備へて置かなければならない。
會員及び林業會の債權者は、前項に掲げる書類の閲覽を求めることができる。
第一項に掲げる書類を通常總會に提出するときは、監事の意見書を添附しなければならない。
第二十二條 林業會の總會は、議員及び特別議員で、これを組織する。
議員は、都道府縣林業會にあつては、會員たる森林組合聯合會若しくはその所屬組合の業務を執行する役員の中から、その聯合會の總會において、これを選任し、又は會員たる林産組合で第九條第一項第二號の資格を有するものの業務を執行する役員の中から、その組合が、これを選擧し、日本林業會にあつては、會員たる都道府縣林業會の業務を執行する役員の中から、會員たる都道府縣林業會が、これを選擧する。
特別議員は、第九條第一項第三號又は同條第二項第二號の會員たる資格を有する會員又は會員たる法人の業務を執行する役員及び林業に關し學識經驗のある者の中から、總會において、これを選任する。
第二十三條 理事は、少くとも毎事業年度一囘通常總會を招集しなければならない。
第二十四條 議員又は特別議員は、總議員及び總特別議員の五分の一以上の同意を得て、會議の目的たる事項及び招集の理由を記載した書面を理事に提出して、總會の招集を請求することができる。
理事が、前項の規定による請求があつた日から二週間以内に、正當な理由がないのに、總會招集の手續をしないときは、監事が、その總會を招集しなければならない。
第二十五條 左の事項は、總會の議決によらなければならない。
一 定款の變更
二 毎事業年度の事業記畫の設定及び變更
三 賦課金の賦課徴收方法
四 借入金の最高限度
五 事業報告書の承認
出資林業會にあつては、前項の事項の外、左の事項は、總會の議決によらなければならない。
一 財産目録及び貸借對照表の承認
二 剩餘金の處分及び損失の處理
第二十六條 議員及び特別議員は、總會において、各各一箇の議決權を有する。
第二十七條 總會の議事は、この法律又は定款に特別の定のある場合を除いては、出席者の議決權の過半數でこれを決し、可否同數のときは、議長の決するところによる。
第二十八條 左の事項は、總會を組織する者の半數以上が出席し、出席者の議決權の三分の二以上の多數による議決を必要とする。
一 定款の變更
二 理事又は監事の選任及び辭任
三 統制規程の設定、變更及び廢止
前項第一號の事項の決議は、行政官廳の認可を受けなければ、その效力を生じない。
第二十九條 會員は、總會の招集手續又はその議決の方法が法令又は定款に違反すると認めるときは、議決の日から一箇月以内に、その決議の取消を行政官廳に請求することができる。
第三十條 日本林業會に、林業委員會を置く。
林業委員會は、左に掲げる者の中から、日本林業會が定款の定めるところにより、選任した委員を以て、これを組織する。
一 林業會の業務を執行する役員
二 森林組合又は森林組合聯合會の業務を執行する役員
三 林産組合の業務を執行する役員
四 林業に密接な關係を有する事業を營む者又はその團體の業務を執行する役員
五 林業に關し學識經驗のある者
第三十一條 日本林業會は、林産物の生産、配給、消費及び價格に關する施策に關し、政府にその意見を述べることができる。
日本林業會は、前項の規定により意見を述べるには、豫め林業委員會に諮問しなければならない。
第三十二條 林産物の檢査を行ふ林業會には、檢査員を置かなければならない。
檢査員の選任及び解任は、行政官廳の許可を受けなければならない。
行政官廳は、必要があると認めるときは、檢査員を選任し、又は解任することができる。
第一項の林業會は、檢査員の服務に關する規程を定め、行政官廳の認可を受けなければならない。
第三十三條 林業會が第四條第二項の事業を行ふときは、統制規程を定めなければならない。
統制規程の設定、變更及び廢止は總會の議決によらなければならない。
第三十四條 林業會は、定款の定めるところにより、その會員に對して經費を賦課することができる。
林業會は、特に必要があるときは、定款の定めるところにより、その會員の全部又は一部に對して前項の規程による賦課金の外、特別の賦課金を課することができる。
第三十五條 林業會は、定款の定めるところにより、定款又は統制規程に違反した會員に對して過怠金を課することができる。
第三十六條 林業會の事業年度は、四月一日から翌年三月三十一日までとする。
第三十七條 第四條第一項第二號に掲げる事業を行ふ林業會は、定款の定めるところにより、會員に出資をさせることができる。
第三十八條 出資林業會の會員は、出資一口以上を有しなければならない。
出資一口の金額は、均一でなければならない。
第三十九條 出資林業會の會員の責任は、第三十四條の規定による經費負憺の外、その出資額を限度とする。
第四十條 會員は、出資の拂込について、相殺を以て出資林業會に對抗することができない。
第四十一條 會員、は出資林業會の承認を得なければ、その持分を讓り渡すことができない。
會員でない者が持分を讓り受けようとするときは、加入の例によらなければならない。
第四十二條 出資林業會の會員は、持分を共有してはならない。
第四十三條 出資林業會は、會員の持分を取得し、又は質權の目的として、これを受けてはならない。
第四十四條 出資林業會は、定款で定める額に達するまでは、毎事業年度の剩餘金の十分の一以上を準備金として積み立てなければならない。
前項の定款で定める準備金の額は、出資總額の二分の一を下つてはならない。
第一項の準備金は、損失の填補に充てる場合を除いては、これを使用してはならない。
第四十五條 出資林業會は損失を填補し、前條第一項の準備金を控除した後でなければ、剩餘金の配當をしてはならない。
剩餘金の配當に關する制限は、命令でこれを定める。
第四十六條 出資林業會は、定款の定めるところにより、會員が出資の拂込を終るまでは、會員に配當する剩餘金をその拂込に充てることができる。
第四十七條 會員に配當する剩餘金又は持分の計算については、計算の基礎となるべき金額について計算上不便な端數金額は、これを切り捨てることができる。
第四十八條 出資林業會は、出資一口の金額の減少を議決したときは、その議決の日から二週間以内に、財産目録及び貸借對照表を作らなければならない。
出資林業會は、前項の期間内に、その債權者に對して、異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を定款で定める方法に從つて公告し、且つ、知れてゐる債權者には、各別にこれを催告しなければならない。
前項の一定の期間は、一箇月を下つてはならない。
第四十九條 債權者が、前條第二項の一定の期間内に異議を述べなかつたときは、出資一口の金額の減少を承認したものとみなす。
債權者が異議を述べたときは、出資林業會は、辨濟し、若しくは相當の擔保を供し、又は債權者に辨濟を受けさせることを目的として、信託會社若しくは信託業務を營む銀行に相當の財産を信託しなければならない。
第五十條 會員は、定款の定めるところにより、一定の期間前に豫告し、事業年度の終において脱退することができる。
前項の豫告期間は、一年を超えてはならない。
第五十一條 會員は、左の事由に因つて脱退する。
一 會員たる資格の喪失
二 死亡又は法人の解散
三 破産
四 禁治産
五 除名
第五十二條 除名の事由は、定款でこれを定める。
除名は、總會の議決による。但し、除名した會員に、その旨を通知しなければ、これを以てその會員に對抗することができない。
前項の議決には、第二十八條第一項の規定を準用する。
第五十三條 出資林業會の會員が脱退したときは、定款の定めるところにより、その持分の全部又は一部の拂戻を請求することができる。
前項の持分は、脱退した事業年度の終における當該出資林業會の財産によつて、これを定める。
第五十四條 前條第二項の規定により持分の計算をするにあたり、出資林業會の財産を以てその債務を完濟するに足りないときは、當該出資林業會は、脱退した會員に對して、その負擔に歸すべき損失額の拂込を請求することができる。
第五十五條 前二條の請求權は、二年間これを行はないときは、時效に因つて消滅する。
第五十六條 脱退した會員が出資林業會に對する債務を完濟するまでは、出資林業會は、その持分の拂戻を停止することができる。
第五十七條 出資林業會の會員は、定款の定めるところにより、その出資口數を減少することができる。
前項の場合には、第五十三條乃至第五十五條の規定を準用する。
第五十八條 行政官廳は、必要があると認めるときは、林業會に對して、監督上必要な命令を發し、又は處分をすることができる。
第五十九條 行政官廳は、必要があると認めるときは、林業會からその事業に關して報告を徴し、又は該當官吏に、林業會の事務所、事業場その他の場所に臨檢し、業務の状況又は帳簿書類、設備その他の物件を檢査させることができる。
第六十條 林業會の事業若しくは財産の状況によつてその事業の繼續が困難であるとき、又は林業會の決議若しくは役員の行爲が、法令、法令に基いてする行政官廳の處分若しくは定款に違反し、若しくは公益を害し、若しくは害する虞があるときは、行政官廳は、その決議を取り消し、役員の改選を命じ、林業會の事業を停止し、又はその解散を命ずることができる。
第六十一條 林業會は、左の事由に因つて解散する。
一 總會の議決
二 前條の規定による解散の命令
三 會員が一人になつたこと
四 破産
前項第一號の總會の議決には、第二十八條第一項の規定を準用する。
第六十二條 清算人は、就職の後遅滯なく、林業會の財産の現況を調査し、財産目録及び貸借對照表を作り、財産處分の方法を定め、これを總會に提出して、その承認を求めなければならない。
第六十三條 清算人は、林業會の債務を辨濟した後でなければ、林業會の財産を處分してはならない。
第六十四條 清算事務が終つたときは、清算人は、遅滯なく決算報告書を作り、これを總會に提出して、その承認を求めなければならない。
第六十五條 林業會には、民法第四十四條第一項、第五十條、第五十二條第二項、第五十三條乃至第五十五條、第五十九條、第六十一條第一項、第六十二條、第六十四條、第六十六條、第七十條、第七十三條乃至第七十六條及び第七十八條乃至第八十三條竝びに非訟事件手續法第三十五條第二項、第三十六條、第三十七條の二、第百三十五條の二十五第二項第三項、第百三十六條第一項、第百三十七條及び第百三十八條の規定を準用する。
第六十六條 林産組合は、組合員が協同して、自主的に林産物の生産又は販賣の事業(以下林産業といふ。)の改良發達竝びに林産物の生産の確保及び配給の適正を圖ることを目的とする。
第六十七條 林産組合は、その目的を達するために、左の事業を行ふことができる。
一 林産業の指導奬勵に關する施設
二 組合員の生産し、又は販賣する林産物の加工、運搬、保管又は販賣
三 組合員の林産業に必要な物資の供給又は資産の貸付
四 前二號に掲げるものを除く外組合員の林産業に必要な共同設備の設置その他組合員の林産業に關する共同施設
五 前各號に掲げるものの外組合の目的達成上必要な事業
林産組合は、前項の事業の外、左の事業を行ふことができる。
一 政府の指示に基く林産物の生産及び配給に關する割當
二 林産物の價格統制に關する政府の施策に對する協力
三 政府の指示に基く林産業に必要な物資の割當
第六十八條 林産組合は、組合員の林産業の種類別に、これを設立するものとする。但し、特別の事情があるときは、二種以上の林産業につき、これを設立することができる。
第六十九條 林産組合は、その名稱中に、林産組合なる文字を用ひなければならない。
林産組合でない者は、その名稱中に、林産組合なる文字を用ひてはならない。
第七十條 林産組合には、營業税を課さない。
第七十一條 林産組合の組合員たる資格を有する者は、左に掲げる者とする。
一 林産業を營む者又はその團體
二 林産業に密接な關係を有する事業を營む者又はその團體で定款で定めるもの
第七十二條 林産業を設立するには、豫め地區を定め、命令の定めるところにより、その地區内において前條第一號の組合員たる資格を有する者の三分の二以上の同意を得て、創立總會を開き、定款その他設立に必要な事項を定め、行政官廳の許可を受けなければならない。但し、組合員たる資格を有する者の林産業の種類が二以上であるときは、各各その三分の二以上の同意を得なければならない。
第七十三條 第六十七條第一項第二號乃至第四號に掲げる事業を行ふ林産組合は、定款の定めるところにより、組合員に出資させることができる。
第七十四條 組合員は、總會において各各一箇の議決權を有する。但し、前條の規定により組合員に出資をさせる林産組合(以下出資林産組合といふ。)においては、定款の定めるところにより、一人につき、議決權總數の十分の三を超えない範圍内において、出資口數に應じ、二箇以上の議決權を有せしめることができる。
第七十五條 定款の變更が、地區の擴張又は縮少に關するものであるときは、第二十八條第一項の規定による議決の外、地區の擴張に因りあらたに第七十一條第一號の組合員たる資格を有するに至る者の三分の二以上、又は地區の縮少に因りその組合員でなくなる者の三分の二以上の同意を必要とする。
第七十六條 林産組合は、左の事由に因つて解散する。
一 總會の議決
二 組合の合併
三 第八十二條において準用する第六十條の規定による解散の命令
四 組合員が一人になつたこと
五 破産
前項第一號の總會の議決には、第二十八條第一項の規定を準用する。
第七十七條 林産組合が合併しようとするときは、總會において合併を議決しなければならない。
前項の總會の議決には、第二十八條第一項の規定を準用する。
合併は行政官廳の認可を受けなければ、その效力を生じない。
第七十八條 出資林産組合の合併には、第四十八條及び第四十九條の規定を準用する。
第七十九條 合併に因つて林産組合を設立するには、各林産組合の總會において組合員の中から選任した者が共同して、定款を作成し、理事及び監事を選任し、その他設立に必要な行爲をしなければならない。
前項の總會における選任には、第二十八條第一項の規定を準用する。
第八十條 林産組合の合併は、合併後存續する組合又は合併に因つて設立する組合が、その主たる事務所の所在地において、變更又は設立の登記をすることに因つて、その效力を生ずる。
第八十一條 合併後存續する林産組合又は合併に因つて設立した林産組合は、合併に因つて消滅した林産組合の權利義務(當該林産組合がその行ふ事業に關し、行政官廳の許可、認可その他の處分に基いて有する權利義務を含む。)を承繼する。
第八十二條 林産組合には、第三條、第七條、第十一條乃至第二十一條、第二十三條乃至第二十五條、第二十七條乃至第二十九條、第三十三條乃至第三十六條、第三十八條乃至第六十條及び第六十二條乃至第六十五條の規定を準用する。但し、第二十四條第一項中「議員又は特別議員」とあるのは「組合員」と、「總議員及び總特別議員」とあるのは、「總組合員」と、第三十三條中「第四條第二項」とあるのは、「第六十七條第二項」と讀み替へるものとする。
第八十三條 第五十九條(前條において準用する場合を含む。)の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、これを千圓以下の罰金に處する。
第八十四條 林業會又は林産組合が、この法律若しくはこの法律に基いて發する命令又はこれに基いてする行政官廳の處分に違反したときは、理事、監事、清算人又は第十七條(第八十二條において準用する場合を含む。)の規定による理事の職務を行ふ者を五千圓以下の過料に處する。
第八十五條 第六條第二項又は第六十九條第二項の規定に違反した者は、これを千圓以下の過料に處する。
附 則
第八十六條 この法律施行の期日は、各規定について、勅令でこれを定める。
第八十七條 木材統制法は、これを廢止する。
第八十八條 日本木材株式會社及び地方木材株式會社(前條の規定施行前に解散したものを除く。)は、同條の規定施行の際解散する。
前項の規定により解散した會社の清算については、商法第四百二十一條第一項但書の規定中「二月」とあるのは、「三週間」と讀み替へるものとする。
前項に規定するものの外、第一項の規定により解散した會社の清算に關し必要な事項は、勅令でこれを定める。
日本木材株式會社又は地方木材株式會社で前條の規定施行の際現に清算中のものについては、前二項の規定を準用する。
第八十九條 木材統制法第六條、第七條及び第三十八條の規定竝びに第四十條乃至第四十二條中第六條の規定による命令の違反に關する部分の規定は、第八十七條の規定施行後でも勅令で定める期間を限り、同條の規定にかかはらず、なほその效力を有する。
第九十條 第八十七條の規定施行前(前條の場合には、同條の勅令で定める期間内)にした行爲に關する罰則の適用については、第八十七條の規定施行後(前條の場合には、同條の勅令で定める期間經過後)でも、なほ從前の例による。
第九十一條 日本林業會が成立したときは、社團法人日本林業會(昭和二十年五月三十一日にその設立の許可を受けたものをいふ。以下同じ。)は、日本林業會成立の時に解散するものとし、その權利義務(社團法人日本林業會がその行ふ事業に關し行政官廳の許可、認可その他の處分に基いて有する權利義務を含む。)は、日本林業會においてこれを承繼する。この場合には、社團法人日本林業會には、他の法令中清算に關する規定は、これを適用しない。
第九十二條 日本林業會が、前條の規定により承繼した不動産に關する權利の取得につき登記を受けるときは、その登録税の額は、不動産の價格の千分の四とする。但し、登録税法により算出した登録税の額がこの法律により算出した税額より少いときは、その額による。
第九十三條 日本林業會が第九十一條の規定により承繼した財産は、特別法人税法による剩餘金の計算上これを益金に算入しない。
第九十四條 商工組合法により設立された林産業に關する商工組合で行政官廳の指定するもの(以下指定組合といふ。)は、命令の定めるところにより、總會の決議を以て、林業組合と爲ることができる。
前項の場合には、第十二條の規定を準用する。
前項において準用する第十二條の規定による林産組合の成立に因つて、當該指定組合は、これに吸收されるものとし、當該指定組合の權利義務(當該指定組合がその行ふ事業に關し行政官廳の許可、認可その他の處分に基いて有する權利義務を含む。)は、林産組合において、これを承繼する。
第二項において準用する第十二條の規定により指定組合が林産組合と爲つたときは、指定組合の組合員の出資は、當該林産組合に對する出資とみなす。
前項の場合において、指定組合に對する出資の持分の上に存在する質權は、林産組合に對する出資の持分の上に存在する。
第三項の場合には、第九十二條の規定を準用する。
第九十五條 前條第二項において準用する第十二條の規定により、指定組合が林産組合と爲つたときは、所得税法、法人税法及び臨時利得税法又は特別法人税法の適用に關しては、當該指定組合は、これを合併に因つて消滅した法人又は特別の法人とみなし、當該林産組合は、これを合併に因つて設立した法人とみなす。
第九十六條 林産組合が第九十四條第三項の規定により承繼した財産については、法人税法による所得、臨時利得税法による利益又は特別法人税法による剩餘金の計算上これを益金に算入しない。
第九十七條 第六條又は第六十九條の規定施行の際、現に第六條第一項又は第六十九條第一項に掲げる文字をその名稱中に用ひてゐる者は、これらの規定施行後六箇月以内にその名稱を變更しなければならない。
第八十五條の規定は、前項の期間内には、同項の者にこれを適用しない。
第九十八條 特別法人税法の一部を次のやうに改正する。
第二條第五號の二の次に左の一號を加へる。
五の三 都道府縣林業會及日本林業會(所屬の會員をして出資を爲さしめざるものを除く)
第九十九條 登録税法の一部を次のやうに改正する。
第十九條第七號中「水産業團體、」の下に「林業會、」を「水産業團體法、」の下に「林業會法、」を加へる。
第百條 印紙税法の一部を次のやうに改正する。
第四條第一項第十二號中「蠶絲業會、」の下に「林産組合、林業會、」を加へる。
第百一條 農林中央金庫法の一部を次のやうに改正する。
第五條第一項中「森林組合、」の下に「林業會、林業組合、」を加へる。
第百二條 この法律に規定するものの外、この法律の施行に關し必要な規定は、勅令でこれを定める。
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〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=4
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005・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 只今上程になりました林業會法案に付きまして提案の理由を御説明申上げます
戰時中に於きまして木材、薪炭等の需要の増加に伴ひまして、山林を過伐致したのであります、是が復舊は國土保安及び森林資源維持造成の見地から考へまして頗る緊要の問題と存ずるのであります、而も他面に於きましては戰災の復興でありまするとか、産業の再建の爲でありまするとか、木材其の他林産物に對しまする需要は戰時に劣らない程多量に上つて居る状態でございまして、之に對しましては、凡ゆる隘路を克服致しまして、生産に努めますると共に、其の生産物の適正なる配給を圖りますることが極めて必要と考へるのでございます、而して右の如き森林の維持造成、林産物の生産の確保及び配給の適正等を圖りまする爲には、政府に於きまして行政上諸般の施設を行ふべきは固より當然のことでございまするが、之と相俟ちまして民間當業者に於きまして其の自主的團結の力に依りまして、是が推進を圖りますることが最も必要と存ずる次第でございます、特に林業の特質に鑑みまする時に、森林の所有者と木材業者、製材業者等の林産關係業者との協力提携を強化致しますることが最も必要でございまして、是が爲には特種の團體機構を必要と致すのでございます、而して斯かる民間の團體と致しまして、從來森林所有者に付きましては既に森林法に基きまする森林組合がありまして、逐年整備發達を見つつあるのでございまするが、木材業者、製材業者等に付きましては、昭和十六年木材統制法の制定以來、是等の業者を統合整理致しまして、地方木材會社及び日本木材會社と致しまして、之をして一元的に木材の生産配給に當らしめました關係上、未だ自治的團體の成立を見るに至つて居ないのでございます、併しながら木材の生産配給に付きまして、斯かる會社をして之に當らしむることは現在の事態に即應しないと考へられまするので、此の際木材統制法を撤廢致し、地方木材會社及び日本木材會社は之を解散せしむると共に、關係業者をして之に代るべき自主的な團體でありまする林産組合を組織せしめまして、此の林産組合をして木材生産配給等の自治的統制の實施に當らしめたいと考へるのでございます、而して森林所有者と生産配給業者との協力提携に付きましては、森林所有者の團體でありまする森林組合と、生産配給業者の團體でありまする林産組合とを以て、府縣及び全國單位に林業會を結成せしめまして、之をして政府の施策に協力し、森林の維持造成と、林産物の生活配給の自治的統制に當らしむることと致したいと存ずるのでございます
之を要しまするに本案は木材統制法を廢止致しまして、林産關係業者の自主的團體でありまする林産組合の結成を促進致しますると共に、之と森林組合との協力團體でありまする林業會の組織を促しまして、其の活動に依りまして森林の維持造成、林産物の生産確保及び配給の適正を圖らんとするものでございます、何卒御審議の上速かに協贊を與へられんことを御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=5
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006・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 質疑の通告があります、順次之を許します──綿貫佐民君
〔綿貫佐民君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=6
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007・綿貫佐民
○綿貫佐民君 私は只今提案に相成りましたる林業會社法案に付きまして若干の質問を行ひたいと存じます、關係大臣より明確なる御答辯あらんことを前以て要求する次第であります
第一は林政統一に關する問題であります、國敗れて山河在りと申しまするが、我々は今其の現實に直面を致して居るのでありまして、山河こそは我々に殘された唯一無二の資源であり、國家再建の原動力であるのであります、即ち山林は木材、薪炭其の他の林産物の生産資源でありますると共に、灌漑竝に發電の源泉をなすものでございまして、實に民生安定の基盤でありまする衣食住の根源をなしますることは勿論、産業の復興發展上重要な地位を占めるのみならず、精神文化の眞髓を發揚致しまして、世界人類の和平幸福の増進を圖る上にも、重大なる役割を有するものでありますることは、今更喋々論ずるまでもない所であります、隨ひまして森林の取扱に關しましては、單に森林自體の觀點からのみ考慮を加へたのでは正鵠を期し得ないと存じます、宜しく都市、農耕地、牧野、林地等を綜合致しまして、其の綜合した下に於て國土計畫の見地から計畫的に森林の徹底的緑化竝に其の合理的高度利用を考へまして、森林の直接及び間接效用に付て十分に其の目的を果させるやうに致さなければなりませぬ、而して是が爲には先づ以て林政の拔本的改革を斷行して、現在各省に分割所管されて居りまする所の森林行政を統合し、一省の所管たらしむべきであると存じまするが、政府に其の用意ありや否やを伺ひたいのであります、又植林、荒廢地竝に雪害地の復舊、砂防、發電、交通、運輸等に對しまする各省の割據獨善主義を排し、眞に一貫したる所の施策の下に強力なる森林行政の運營をなすことが極めて肝要であると信ずるのであります、特に内務、農林兩行政の調整を必要と考へるのでありまするが、兩大臣は此の點如何に御考へであるかを伺ひたいのであります
尚ほ殊に私は奧地林分の開發と道路網の再編實施の要を痛感致して居るものであります、即ち搬出の比較的便利な林分は戰時中に於て伐採し盡されましたので、戰後經營上不可缺な所の木材其の他の林産物の生産竝に農耕地の開拓、發電等は、勢ひ奧地林分地帶の開發に俟たなければならぬ所の状態でありまするが、是が爲には此の際公共事業費の思ひ切つた振向けに依りまして、新規幹線林道の大規模なる開發を斷行すると共に、既設林道との關聯は勿論のこと、國縣道、町村道、鐵道、軌道、流送路等との關係をも併せた全體的な道路網計畫を樹立致しまして、奧地林分の開發と發電計畫に遺憾なきを期すると共に、國土計畫に合しましたる交通網の完成を期するの要切なるものがあると信ずるのでありまするが、關係各省の大臣は此の點に付て如何に考へられるや、率直なる御意見を拜承致したいのであります
第二點は森林の資源造成に關する點であります、國土計畫的觀點から見まして、將來森林立地と致しまして保存育成せらるべき土地に付ては、其の經濟的林分たると非經濟的林分たるとを問はず、是が徹底的緑化を圖ると共に、其の合理的高度利用を圖つて行かなければならぬのであります、是は上述の通りでございますが、戰時中森林法の規正事項を無視した所の部面が非常に多かつた爲に、現在經濟林分は勿論、非經濟林分に至るまで甚だしく荒廢状態に陷つて居るのであります、國敗れて殘されたる唯一の資源である所の此の山林の荒廢状況を見まする時、邦家將來の爲め洵に寒心に堪へざるものがあるのであります、殊に民有林に關しましては戰爭に依って非常に無理なる伐採を強ひられ、其の間に拂つた所の犧牲は實に重且つ大なるものがあるのであります、斯くの如き事態に對しまして、國家として速かに適切なる施策を立て、其の復舊緑化を圖ると共に、戰時中に林業家の拂つたる大なる犧牲に對しまして、何等か酬いる所がなければ相成らぬと信ずるのであります、是が應急對策と致しましては、差當り現行森林資源造成法の造林費用を此の際思切つて大幅に引上げ、實費清算に依る所の助成をなすことが最も急務であると考へまするが、當局の所見を御伺ひしたいのであります、又今囘豫算の上に計上されました所の公共事業費の相當部分を造林費用に振向けて、荒廢緊急復舊の一助とすることも、應急對策としては極めて剴切なりと存ずるのでありますが、當局の所見を伺ひたいのであります、又林産物に對して需要者が此の林産物から受けた所の利益を返すこと、即ち受益者負擔金を徴し、之を森林の育成費に充當し、以て荒廢致して居りまする林分を復舊培養せしむることが是れ亦肝要なりと考へまするが、當局の所信を伺ひたいものであります
尚ほ森林の國家性竝に其の特殊性から見まして、是が事業資金の金融關係は、商業金融などとは同一に律することは出來ないことは勿論、農業金融とも全然其の撥を異にするものであります、仍て森林の金融に關しましては、宜しく國家百年の計に備へ、速かに森林造成保存の爲に、積極的に低利且つ長期の金融に應ずることを目的と致します所の特別金融機關を確立するの要切なるものありと考へまするが、當局に其の用意ありや否やを伺ふものであります
第三點、日本木材竝に地方木材兩會社の解體と其の經過措置に付て伺ひたいのであります、戰時立法中惡法の標本とも稱すべきものは木材統制法であることは世間周知の事實であります、此の惡法の實行機關でありまする所の國策會社、即ち日木竝に地木兩社は、法的の權力の下に一手に買收販賣を行ひ、正に統制と企業との兩刀使ひであり、獨占的であつて獨善、横暴、不正、怠慢の限りを盡し、其の不當利得たる所謂「トンネル」料の如きも、販賣價格の二割乃至三割に相當致し、又需要者が發注致しましてから生産工場に仕切書の廻るまでには數箇月を要し、之を短縮致さんと致しますならば、手段の限りを盡さなければ其の目的を達し得ない状態であります、尚ほ甚だしきに至りましては、生産の三分の一程度を軍需工場其の他の正規の「ルート」に供給し、殘餘の三分の二程度は闇から闇へと流し(拍手)少きも數十萬、數百萬、多きは數千萬の闇太りをなしたる者すらあると聞くのであります(拍手)其の結果生産は減退し、闇は横行し、統制「ルート」には流れず、市場には板一枚もなく、不安は増すのみであります、政府が戰災家屋三十萬戸の計畫を立て、早や一年に垂んとする今日、戰災地の姿は如何であるか、戰災後一箇年半以上も經つた今日、戰災者一千數百萬人の同胞は何處に住まつて居るか、鐵道の枕木は腐朽して運行は危險の状態にあり、又坑木不足に依つて採炭意の如くならず、我が國産業の源泉たり、心臟たる所の石炭の生産や、交通運輸の運行を阻碍せるは、此の兩者の罪惡に起因するものであつて、其の罪萬死に値するものであると信ずるものであります(拍手)政府は其の眞相を如何に把握し、之に如何に對處せんとするかを伺ひたいのであります、然るに政府は此の獨善的な兩者の政治的壓力に押されて國民の苦難を顧みず、之を排撃せざるのみか、寧ろ之を擁護せんとして昨年末に公定の倍額値上を行ひ、全國手持品の格差を日木に保管させ、日木、地木の解體の共助金及び赤字補填に充てんとするに至りましては、洵に言語同斷の極みであります(拍手)全く泥棒に追錢の感を深くするものでありますが、其の眞相竝に政府の責任を追究するものであります(拍手)さりながら政府も澎湃たる民主化の世潮に鑑み、林業界のみを何時までも舊殻の中に棲息せしむることを得ず、今囘此暴力統制の基本である天下の惡法を葬り去り、之に代る民主的運營を目的とすると稱する本法案の提出を見るに至つたのでありますが、此の惡法の生んだ不良兒たる日本木材竝に地木兩社の葬儀の出し方が問題であります、若し誤つて死を裝うて假死状態にあるものを水葬などにするやうなことがありましては、再び生き返り、姿を變へて跳梁する虞が多分にあるのであります(拍手)故に其の解散に付ては國民齊した多大の關心を持つて居るものでありまして、政府は地木社をして遲くも本年中に資産の清算を完了せしむる意圖のやうでありまするが、其の前後に於ける木材の生産減退防止を理由として總ての資産を分散せしめず、一乃至數箇の會社又は組合に移譲するやう指示したとのことでありますが、若し果して然らば是は明かに換骨奪胎を意味するものでありまして、兩社陣營の人々は看板を塗り替へ、有利な條件の下に再び登場し、今度は官許の下、天下晴れて横暴獨善の限りを盡し、業界を汚濁し、生産を阻碍し、消費者を苦しめ、祖國日本の復興を遲延せしめることを私は衷心より憂ふるものであります、政府は何を苦しんで第二會社類似の新會社の設立を從慂するものでありませうか、甚だ了解に苦しむ所でありまして、其の理由を承りたい、私を以て致しますならば、寧ろ此の際施設は、強制取上げをされた憐れな舊業者へ、又立木は舊所有主へそれぞれ買戻さしめ、又「ストック」品は戰災復興材として優先的に之を處分せしむべきであると存じます(拍手)斯くして地木社系統を徹底的に追放して、林業會への參加をも除外しなければならぬと存じます(拍手)斯くしてこそ初めて眞に業者は本然の姿に立還り、生産増強に挺身することが出來ると信ずるのでありますが、政府の確固たる所信を伺ひたいのであります(拍手)
尚ほ彼等は清算に當り、終戰當時に於ける軍用品持逃げの故知に做ひ、火事泥的に行掛けの駄賃稼ぎをなし、最後まで私腹を肥やす虞ありと見る向きも相當あるのでありますから、政府は清算事務に對し嚴重なる監督をなす責任を有するは勿論のこと、會社成立以來今日に至るまでの會社の内容に付き徹底的取調を行ひ、世の疑雲を一掃すべきであると存ずるのでありまするが、司法大臣は之に對して如何樣に御考へであるか、是非とも斷行されんことを要望致します(拍手)又清算人は株主總會で決定致すべきでありまするのに、政府は之を無視して、少數而も特定の人物を指示するやに聞くのであります、若し是が事實でありと致しますならば、甚だ奇怪なことであります、其の理由を示されんことを要望する者であります(拍手)
最後に本決案作成の趣旨其の他に付てであります、本法案は恆久法であるか臨時法であるかが第一點であります、本法案は林業に關する自治的な團體の結成を促進し、其の活動に依つて林業の發達竝に林産物の生産の増強及び配給の適正を期し、産業復興及び民生の安定を圖ると云ふ效能書でありますが、其の内容を檢討しますれば、國民怨嗟の的であります所の木材統制法と殆ど選ぶ所がなく、木材統制の惡法に依つて恨み骨髓に徹した苦い經驗を持つ國民が、此の法律の内容を知る時は、前門の虎後門の狼の感を深くすることは明かな所であります(拍手)政府は果して本法案を以て民主的、自治的運營が行はれ、生産が増強されるものと確信するや否や、恐らく過渡的便法であつて、輿論に聽き、是が修正をなすの用意あるのもと信じまするが、政府の所見を伺ひたいのであります(拍手)
尚ほ本法案の審議上特に重要なりと信じまする數點に付て御伺ひ致します、第一は林業會、林産組合、森林組合は屋上屋を架するものでありますが、之を如何に按配せんとするのでありませうか、又森林組合と林業會を如何に指導し、如何に調和し、如何に協力せしめんとするか、其の方途如何を伺ひたいのであります、又林業會には當然勞務者を參加せしむべきであり、是れなくしては絶對に生産の増強はあり得ないのでありますが、此の點如何に御取扱に相成るかを伺ひたいのであります
第二は木材生産に對する強權的措置に關するのものであります、即ち木材生産の不振は機械的統制即ち官僚統制の弊に基因する所が大であります、即ち各種の現實な經濟條件を無視して、唯單に強權發動に依つて所期の目的を達成せんとするが如きは、木に縁つて魚を求めるの類であると存ずるのであります(拍手)然るに政府は戰時中の失敗を今尚ほ改めようとせず、臨時物資需給調整法に基く強權に依つて措置せんとするもののやうでありますが、果して然りと致しまするならば時代錯誤も甚だしきものと言ふべきでありますが、政府の眞意奈邊にありやを伺ひたいのであります
第三に木材及び立木の協定價格設定に關する件であります、木材生産の不振は、逆算形式に依る價格方式を採用して居る點に其の根本の原因があると思ひます、即ち現在の方式に依りまする時は、現行公定價格に依り計算するに於ては、山元の立木價格は零以下「マイナス」となり、又逆に立木を其のあるべき價格で評價するに於きましては、木材の生産費がなくなつてしまふことになるのであります(「其の通り」拍手)仍て此の際逆算形式に依る價格方式は一擲して、協定價格制を採用し、且つ立木に對しても是が協定價格を設定するの措置を講ずることが、生産を基礎付ける第一義なりと信ずるのでありますが、政府の所見を伺ひたいのであります、尚ほ應急措置として木材、薪炭の價格を相當額に引上げ、一般物資の値段との均衡を取らしむる必要ありと信じまするが、當局の意見を伺ひます
第四は木材の需給方式に付てであります、日木社、地木社等に依る所謂買取販賣制が木材生産阻碍の大なる原因の一つであります、新機構に依る需給方式に於ては宜しく此の點を一新致さねばなりませぬ、即ち生産者が消費者と直接話合つて、取引を定めて行くと云ふやうな方式を採用することが必要であると存じまするが、政府は新機構の運營に當つて、如何なる木材需給方式を採らんとするかを伺ひたいのであります
第五は本法に於ける林産物とは如何なる種類のものであるか、明かに御示しを願ひたい、薪炭の重要性は今更論を俟たぬ所でありますが、何故林産物として薪炭を指定しないのであるか、其の理由如何を伺ひたい、又政府は帝國薪炭會社を初め中間搾取機關を廢すると共に、薪炭の統制を撤廢せしむることが生産増強の唯一の途であると存じますが、此の點如何に考へるかを伺ひたい
第六は、企業許可制度竝に府縣「ブロック」制を撤廢することが、生産増強と配給の圓滑とを期する上に於て最も肝要なりと信ずるのでありますが、政府は尚ほ之を存置せんとするは如何なる理由に依るかを伺ひたい
第七點は國有林、御料林に對し、國家の需要と云ふ觀點から如何なる措置を執るか、又國有林と民有林とは斫伐上均衡を失して居る現状であつて、國有林は徹底的に斫伐すべきものであると思ひまするが、之に對する政府の施策を如何にするか、之を御伺ひすると共に、國有林の立木製品の特賣制度竝に拂下方法及び國有林特別會計設置に關し、特に此の點は大藏大臣に對して其の意見を御伺ひ致したいのであります
第八點は林業及び林産物の試驗研究機關の擴充と、特に林業教育の振興に付て文部大臣は如何なる抱負を有せられるや、方針を承りたい
最後に木材需給に關する件であります、木材は戰前に於てすら樺太材、滿洲材の移入、外材の輸入を仰いで、仍て以て漸く需給の調整を圖つて來たのでありまするが、今や是等のものは一切杜絶したのみならず、内地山林は戰時中の濫伐に依つて、奧地以外の森林は殆ど伐り盡され、地木社の怠慢、惡政策等も原因致しまして、現在如何なる方策を講じましても年産恐らく五、六千萬石を出でないことは明かであります、然るに其の需要は一般民需以外に戰災復興、進駐軍の住宅、兵舍の建設、「パルプ」材、賠償機械類の荷造り用材等にも莫大なる量を要し、其の需要高は恐らく一年一億數千萬石にも及び、其の生産は僅かに其の半ばにも及ばないものと存ずるのであります、斯くの如き有樣で戰災者の期待に副ひ、進駐軍の要請に應ずることが出來るかどうか、洵に寒心に堪へない次第であります、政府は其の不足分を如何にするかが問題であります、御料林、國有林の大量拂下、伐採や、外材輸入の途を講ずることも當然の處置であらうかと存じまするが、政府は如何なる成算と用意ありや、又國民の必需物資としての重要なる薪炭の需給に付ても、先の見透しは洵に寒心に堪へないものがあると存じまするが、政府は國民に對して安堵せしむるだけの用意ありや否や、此の點を伺ひたい、以上を以ちまして、私の質疑を終りまするが、關係各大臣よりの御答辯を承りたいと存じます(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=7
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008・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 色々の點に亙りましての只今の御質問に御答へ致します、多少聞落しがありましたならば、後から追加致すことに致しますから御諒承を御願ひ致します
第一點は林政統一の問題でございまするが、内地及び北海道の林政が、緊密な連絡の下に、又統一ある方針の下に、綜合的、計畫的に運營されますることは、今後の日本の森林資源の造成の點から見ましても、又林地の開發、薪炭其の他の需給の調整の點から言ひましても極めて必要な點と考へまするので、此の點に付きましては、我々の方と致しましては、十分綜合調整が出來まするやうな機構を考へますると共に大過なく此の點をやつて行きたいと目下研究致して居ります、御趣旨の點は十分諒承致しまして、我々も同感でござりまするので、此の方向に一歩を進めるやうに努力致したい、斯樣に考へて居ります
それから奧地林分の開發の點でございまするが、奧地林分の開發に付きましては極めて急務であると考へまするので、本年度以降國有林に付きましては八箇年計畫を以ちまして林道幹線六千七百「キロ」を、民有林に付きましては十箇年計畫を以ちまして一萬七千八百「キロ」の建設を計畫中でございます、之に付きましては經費を豫算として計上致して居る次第でございます
それから造林其の他の點に付て御答へ致します、造林に付きましては、御承知のやうに戰爭中甚だ日本の森林は荒れたのであります、隨ひまして本年度と致しましては約四十七萬町歩の造林を實施致す豫定になつて居るのでございまして、今後五箇年間に國有林、民有林合せまして二百七十二萬町歩の造林を遂行致したいと思ひまして、計畫を樹てて居る譯であります、本年度と致しましては約九千萬圓の費用を投じまして、四十七萬町歩の造林を致す計畫でございます。
それから公共事業の中に造林其の他の點を十分考へて居るかと云ふことでございますが、此の點に付きましては、造林の點につきまして公共事業の中に組入れて居るのでございます、是は何れ公共事業の全般が明かになりました時には明かになりますことと存じます
それから金融の點でございますが、森林金融に付きましては從來勸銀其の他農林中央金庫に於きまして、勸銀に於きましては約二、三千萬圓、中央金庫に於きましては約八億圓ばかりのものが融通が行はれて居つたのでございますが、本法に於きまして林業會又は林産組合も農林中央金庫に加入出來るやうに致しまして、中央金庫の活用に依りまして御趣旨の點を達成するやうに致したいと考へて居ります
それから地木社の財産處分の點でございますが、地木社、日木社に付きまして從來色々の批評があつた譯でありまして、我々と致しましても其の批判を謙虚な氣持ちで聽いて居るのでありますが、唯日木社、地木社も戰時中はやはり或る役割を果したことだけは公平に認めてやつて宜いと思ふのであります、地木社、日木社の財産處分に付きまして、御指摘のやうな新しい會社に引繼ぎを行はしめますることは、地方の實情に應じまして例外的に認めた所でございまして、地木社の生産設備等は原所有者に返還せしむるの方針を執つて居る次第でございます
それから清算人は株主總會に於て選任致すことになつて居ります
次に昨年の價格引上に際しまして問題があつたと云ふことでございますが、地木社、日木社の手持材は、原則としまして原價で住宅營團其の他に引渡を致したのでございまして、地木社の手持の立木は原所有者に返還する等の方法を執りました譯でございます
此の法案に依るのは屋上屋を重ぬるものではないかと云ふことでございますが、是は提案の理由に於きまして説明申上げましたやうに、森林所有者の團體であります森林組合と、林産業者であります林産業組合との協力を俟ちまして、お互ひに協力して貰ひまして、さうして木材の生産配給を行つて行かうと云ふ趣旨でございますので、協力の態勢であるのでございまして、屋上屋とはならないと、斯樣に考へて居る次第であります
それから勞務者を此の林業會法案の組織の中に入れたら宜いではないかと云ふ御尋ねでありますが、此の點に付きましては將來の問題と致しまして研究致して見たいと思ひます、殊に森林の勞働者の特異な状態に稽へまして、相當な困難もあると思ひますので、今囘に於きましては是は直接には入つて居りませぬが、將來の問題としては十分研究致したいと、左樣に考へて居る次第でございます
それから、強權の發動と云ふことでございますが、是は強權發動をするのではございませぬで、提案趣旨に於て説明申上げましたやうに、此の木材の生産配給の確保に付きましては、何處までも極力民間の自主的な總意に俟つて行ひたい、斯う云ふ考へ方でございまして、民間の意向を無視して命令を發動することは考へては居りませぬ
それから企業の許可に付きましては、是は一時統制の撤廢と云ふことに依りまして、甚だ木材業界が亂脈に流れたのでございまして、其の點から考へまして、暫定的に今暫く企業の許可は繼續して行きたい、斯樣に考へて居る次第でございます
それから國有林の斫伐の點でございますが、此の點が民有林の斫伐との均衡が取れて居るか居ないかと云ふ御問ひでございますが、國有林に付きましては、戰爭中に於きましても十分な増伐をやつたのでございまして、決して民有林に對しまして均衡が取れて居ない状態ではございませぬ、國有林は戰前と比較致しまして大體一四七%位の増伐になつて居りますが、民有林と雖も略略同じ「パーセンテージ」になつて居るのでございます
それから研究機關の點でござりまするが、是は將來日本の森林の維持育成をやりまするし、又木材の供給其の他を確保致しまする爲には、どうしてもそこに農業の方で言ひますれば、反當收量を上げると云つたやうなことが必要でございまするので、此の點に付きましては現在ありまする研究機關を十分に擴充致しまするのみならず、研究機關に付ては特に意を用ひまして、領土を失ひ、資源の少くなりました此の日本の森林に付ての増産を圖つて行きたいと、斯新に考へて居る次第であります
最後は木材の需給の問題でございますが、御承知のやうに日本の森林の資源は、戰前に於きましては六十五億萬石と云ふものが、大體森林の資源の蓄積として稱へらして居つたのでございまするが、戰爭中過大に過伐致しまして、今の所約六十億萬石位が蓄積として殘つて居ると思ふのであります、そして戰爭中は約一億萬石の需要が年々あったのでございまして、それに對しまして、戰爭中は兎にも角にも其の需要を充たすだけの増伐を致し、其の結果可なり濫伐になつたのでございまするが、現在と雖も重要に於きましては約一億萬石はあるのであります、併し是は供給の方が迚もそこまでは參りませぬ、隨ひまして此の需要を本年度は一應七千二百萬石と削減致しまして、それの供給確保に努めて居るのでございます、併し戰前に於きまする日本の木材の需給は、さう云ふ多くの蓄積があり、且又可なりの木材の伐採があつたにも拘らず、外國から一千萬石の輸入を仰いで居つたのでございます、又殊に樺太を失ひました以上、相當の輸入が減つて來るのでございますので、供給面は苦しくなつて來るのでございます、隨ひまして此の點に於きましては、我々と致しましては、今申しましたやうに、一面日本の現在の森林の増産と維持とを圖りまして、供給を長く育成致しますると共に、足りませぬ所は、是は輸入に俟つのが必要かと思ふのでございまするが、差當り需要の點に於きまして或る程度の規正を加へると云ふ方法を執つて居ります、輸入の點に付きましては見返り物資等の關係で、多少困難がございまするので、今年はさう云ふやうな點に於て需給の規正と云ふことを行つて參りたいと思つて、計畫を致した譯でございます、大體以上で盡きたと思ふのでございまするが、尚ほ御答へ漏れがありまするならば追加致したいと思ふのでございます(拍手)
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=8
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009・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 森林行政、就中砂防、治水、利水の問題に付きましては、關係各廳の間に密接な連絡協調を保ちまして、其の事業計畫を樹て、是が事業の執行に當つて居る次第でありますが、今後に於きましては一層連繋を密接にして、遺憾なきを期して行きたい方針であります
次に道路に關しましては國道府縣道等、既に綜合的計畫が樹立されて居る次第でありまして、是が改修に付きましては、計畫された道路網の中から重要なものを採り上げ、著々改修を實行して居る次第であります(拍手)
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=9
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010・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 綿貫君に御答へ致します、木材統制以來統制會社の關係者の不正行爲は屡屡耳にしたことは事實であります、洵に遺憾であります、司法當局と致しましては、各地の檢事局に對して、それ等の不正行爲を芟除すべく、檢察と處斷に十分なる注意を拂つて居るのであります、先般も統制機關の關係者の不正行爲に對しては、嚴重に之を搜査處分すべく訓令を發したやうな次第であります、將來若し木材統制會社の役員にして不正行爲があつたやうな事實を發見致しますれば、十分に之を檢擧處斷すべき決意を持つて居ると云ふことを茲に表明致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=10
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011・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 綿貫君宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=11
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012・綿貫佐民
○綿貫佐民君 文部大臣の答辯がありませぬ、又農林大臣の答辯にも漏れた點が二、三あります、殊に要點を外して居る點があり、私と見解の相違點も多々ありますが、時間の關係もありますから、他の機會に讓ると致しまして、之を以て打切つて置きます、答辯も其の時求めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=12
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013・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 平野増吉君
〔平野増吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=13
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014・平野増吉
○平野増吉君 私は本日茲に上程されました林業會法案に關して、極めて重要な點を政府に質問致すものであります
先ず林業に對する政府所見を質し、其の根本政策を内閣總理大臣に御尋ね致さんとする次第であります、敗戰後の我が國は、領土は縮小せられ、海外よりの物資輸入も極めて困難となりました今日、國力の囘復は容易なことではありませぬ、此の秋に當りまして我が國は如何なる方面に生産の資源を求めるかと云ふことが最も重要なる問題であると信ずるものであります、私の見る所では、之を國内の山林に求めること極めて大なるものありと思ふのであります、抑抑我が國の山林は國土の面積の三分の二を占めて居ります、即ち約六割七分は山林であります、此の山林の負ふ所の使命は極めて重大なるものであります、先ず第一に山林は國民の衣食住と絶對不可分の關係にあることは御存知であらうと信じます、住宅の建築、家具、什器は言ふに及ばず燃料の資源、工業資材、鐵道の車輛、枕木、電柱及び鑛山の坑木、船舶の建造、衣料の纖維及び紙の原料等、一々枚擧に遑ないのであります、更に一層重要なるものは水源の涵養であります、元來山林は貯水池の用をなすものでありまして、其の山林から流出づる水に依りまして、國民の主食たる米を作る所の灌漑の用をなし、又水力電氣の電源となり、舟筏の航行、魚族の繁殖、都市の上水道の水源、又一面には氣候の調節をなし、國民の情操を養ふ等、山林の持つ使命は實に重大なものであります、之を一言に要約致しまするならば、山林なくして國民は一日も生活し得ないのであります、而して一朝山林が荒廢に歸する其の時に當りましては、是は眞に國の滅びる時であると信じます
偖て我が國の現状を見ますると、國は狹く人口は多く、物資は極めて窮乏して居ります(「眞面目にやれ」と呼ぶ者あり)眞面目にやります、しつかりやるからしつかり聽いて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=14
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015・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 私語を禁じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=15
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016・平野増吉
○平野増吉君(續) 此の際敗戰後の新日本建設に缺くべからざる所の山林に關して、政府が一朝其の政策を誤り、なすべき施設を怠るならば、其の結果は實に驚くべきものがあります、即ち戰時中に於て、無謀にも此の貴重なる山林は濫伐に濫伐を重ね、爲に國土は將に荒廢に歸せんとする現状であります(「笑はないでやれ」と呼ぶ者あり)笑はしちやいけませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=16
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017・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 平野君、私語をせずにどんどん進行して下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=17
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018・平野増吉
○平野増吉君(續) 諸君、山林が一たび荒廢に歸せんか、水害は立ちどころに起ります、田畑は押流され、人畜は死傷し、交通は破壞せられ、更に水源は涸渇して灌漑を不能ならしめるものであります
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=18
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019・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=19
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020・平野増吉
○平野増吉君(續) 又昨年の食糧の大減收の原因の一つは、水害の頻發──全國致る處の田畑が浸水を致しました、之に因ることは何人も認めざるを得ない、更に近年政府が開墾に力を盡すと雖も、毎年開墾に依つて得たる所の面積よりも、水害に依つて失ふ所の耕地面積の方が遙かに多いと云ふことは統計が之を示して居ります(拍手)斯かる事情にも拘らず、歴代の政府は治山と治水の行政に冷淡であつて、其の成績の擧らざることは洵に遺憾な次第であります、支那事變以來約十年間に亙り、我が國の山林は、木材及び薪炭の増産にのみ沒頭し、植林を顧みるの遑なく、濫伐に濫伐を重ねて、今や全國到る處の山林は荒廢の極に達して居ります、都會の生活に慣るる人々は山林に對する知識と認識が乏しい、殊に此處においでの内閣諸公などに於ては、山林に足を入れられる機會が乏しい爲に、或は理解が足りないかと云ふことを憂慮するものであります(拍手)私が茲に政府に御尋ねを致します要點を是から申述べます、是は前置きであります(笑聲)
今や再建日本の起ち上るべき資源を求むべき唯一の山林の現状斯くの如くなるに拘らず、今年も明年も年々引續き木材竝に薪炭の絶對必要量は供給せねばならないのであります、其の絶對必要と云ふ數字は、概算に致しまして一箇年の立木に於て一億五千萬石、是は材木に切りますると丁度半分の七千五百萬石になります、是が最小限度絶對必要なりと信じます、此の外に薪炭が約二億石、是だけ要ります、そこで我が國の山林の現在の蓄積量はどれだけあるか、戰前に於て百億石ありましたものが、樺太、朝鮮、臺灣を失ひました今日に於ては六十二、三億石よりないのであります、其の中約三割は伐ることが出來ない、伐採し得る可能のものは四十二、三億石しかないのであります、所が是だけしかない所で以て、一箇年にどれだけの木が成長致しますか、之を農林省に就て調べて見ますと、一箇年約一億五千萬石と稱せられて居ります、そこへ持つて來て薪炭に二億、木材に一億五千萬石、計三億五千萬石の木材を、毎年立木を伐採致しまするならば、今後二十一箇年にして日本の山が大體丸坊主になると云ふ計算が出るのであります(拍手)是が私の今日政府に御尋ねせんとする要點であります、今や我が國の山林は全く休養しなければならぬ時代に入つて居る、即ち戰時中濫伐を重ねた結果休養しなければならぬ、今日此の現状に對して、若し山林の伐採を中止致しまするならば、復興を初め凡ゆる國家の産業の資源を得る途がない、どうしても伐らなければならぬ、伐れば今言ふやうな次第で二十數年にして日本の山林は丸坊主になる、政府はどう云ふ計畫を以て將來に之を備へるか、是が私が政府に御尋ねせんとする所である、即ち私の憂ふる所は、伐るに伐られない、行くに行かれない日本の行詰つた此の山林の現状を斯くの如くに致しました根本の原因は何處にあるか、私は前に綿貫君から質問を致されました、政府に要請致されました林業の行政機構の一元化と云ふことが、是に於て絶對必要なりと云ふ結論に達するのであります、即ち日本の山林行政を掌る所の農林省の山林局、我が國の國土の七割を占める所の此の廣大なる面積を支配し、而も是れ程國民生活に重大な關係を持つて居る山林を支配するのに、僅かに農林省の一部の山林局、是だけの役所で之を支配して居る、而も日本の山林の行政官廳は、北海道は内務省の管轄であります、内地に於ては一面には宮内省の管轄があり、一面には文部省の管轄があり、一面には運輸省の管轄がある、斯う云つたやうに各省の管轄に割據して居りまして、一つも統一がない、それ故に日本の農林省の山林局なるものは極めて微力な爲に、如何なる場合でも日本の山林に關する所の施設經營に對して豫算を請求する場合に、大藏省の一局長の一喝に會つて一つも豫算が貰へない爲に、今日逐に此の日本の山林をどうすることも出來ないで、あるものを居食ひして來たのが日本の現状であります、今や此の山林が荒廢してしまへば、國土は完全に滅びる、是が私の憂慮に堪へない點であります、之を政府は如何に考へて居られるか、之に對して此の吉田内閣がどう云ふことを考へて居られるかと云ふことを私が今日まで檢討致しますと、今年度の造林費として最近農林大臣が豫算總會に於て説明された所に依ると、僅かに一箇年一億圓の經費を計上して居ると云ふだけである、斯樣なことで日本の國土の三分の二の面積の將に荒發せんとする此の山林を造成することがどうして出來ませう、私は此の點に付て政府の所見を伺ひたい
それで以上述べましたことに付て私は要約して政府に質問の要點を申上げます、政府は私の申述べまする此の山林の重要性を認識し且つ肯定せらるるならば、次の通常議會までに──此の「ヂレンマ」に掛つて居る日本の林政に對し、山林の將來に對し、如何なる政策を以て國民に對して安心を與へられるか、之をはつきりと次の議會までに政府の政策を示して、さうして議會に相談をして貰ひたい、各政黨に於てはそれまでに各政務調査會に於て之に對する相當の案を具して、政府に相談をせられることは勿論でありまするが、先ず責任者として政府は之に對して次の議會までに立派な成案を具して、さうして國民の前に之を示す義務があると云ふことを申して、私は政府の所見を質したいのであります
それから次に私の御尋ねしようと思ふことは、本日上程されました此の林業會法案に付て、政府の此の法案を提案せられました動機と竝に立法の精神を御尋ね致したいのであります、動機と云ふことは大體分つて居りますが、改めて農林大臣から伺ひたい、其の意味は──是は意味があるのです、どう云ふ譯で之を御尋ねするかと言ふと、木材統制法をどうして急に廢止することになつたのであるか、而して日本、地木を廢めることになつた、随てそれが動機で此の法律を作ることになつたと、斯う説明されましたが、もう一つ私は之に付て御伺ひしたい、そこに至るまでの動機を御尋ね致したい、而して此の林業會法案の精神、是が私の御尋ねの要點であります、木材統制法を廢止しなければならぬ、而して日木、地木を解散しなければならぬ、さう言つて置いて、再び此の法律案で日木、地木と同じやうなものが生れてはならないと云ふことを私共は信ずるものであります、でありますから、此の立法の精神は、さう云ふものが生れてはならないと云ふ考へで御作りになつたのか、或はさう云ふやうなものを又作らうと云ふことで御作りになつたのか、此の點を御尋ねするのであります、それから尚ほ私は造林計畫に付て御尋ねをする積りでありましたが、是は委員會で御尋ねすることに致しまして、議事の進行上私は此の程度で打切つて置きます
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=20
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021・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今平野君より先づ總理大臣に御質問があつたのでありまするが、首相は只今他に避くべからざる御用事がありまして出席せられませぬ、私でも宜しければ簡單に答辯を申上げます
林業問題は只今御話の如く國民生活と極めて實質的な關係、影響を持つものであります、平野君が此の見地に立つて切言せられました御趣旨は洵に私も御同感に存じます、林業は單に木材に對する目前の需要供給の關係のみを見て經營せらるべきものではありませぬ、別に遠い將來の見透し竝に國民全體、社會の大體に亙る重要なる利害、殊に治山、治水の問題とも關聯して考究し、周到なる用意と計畫とを要するものであります、私の知る限りに於きましては、政府は從來斯かる事態の重要性を深く認識致しまして、鋭意其の畫策考究に當つて居たのでありますが、尚ほ只今平野君の御演説中、種々の方向に付て我々の注意を促され、少からざる參考の資料を與へられましたことは私の感謝する所であります、尚ほ詳細のことは農林の同僚より御答へ申上げます(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=21
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022・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 平野さんの御質問に御答へを申上げます、森林が人生の凡ゆる點から見まして非常に必要でありますこと、殊に日本のやうに六割三分が森林でありますやうな國柄に於きましては、國家の永遠の運命と云ふ點から言ひましても、森林が極めて必要であると云ふ點に付きましては全く御同感であります、其の森林が御説のやうに戰時中非常に荒れたのでございます、其の點に付きましては、私が先程の綿貫さんの御質問に御答へ致しましたやうに、此の荒れた森林を一刻も早く計畫的に囘復致しまして、國土を保全すると云ふ點に付きましては、政府と致しましても十分の努力を致して居るのであります、随ひまして差當りは只今御説明致しましたやうに、四十七萬町歩の造林計畫を致して居るのでございますが、此の點に付きましては二百七十二萬歩と云ふ將來出て來ます民有林、國有林の伐採跡地の造林に付きまして、是は五箇年計畫を以て遂行致す考へで居るのでございます、又林政に付きまして根本的な國策の樹立に付て、政府の方に於て何か考へがあるかと云ふ御話でございますが、我々としましては、此の點に付きまして朝野の識者、權威者を網羅致しました何か機關を作りまして、茲に根本的な國策の樹立を致しまして、之を實施に移しまして、森林の維持造成に是非努めたいと考へて居る次第であります
それから今囘の林業會法の出來ました動機に付ての御尋ねでございましたが、是は先般聯合軍司令部から、地木社、日木社を解散致しまして、それに代るべき自治的な團體を作れと云ふ指令が參つたのでございます、我々としましては、其の趣旨とする所を取入れまして之を作つたのでございますが、此の本當の精神は、私が提案理由に於て説明申上げましたやうに、森林の所有者と林産物の業者との協力に依りまして、今緊急の必要であります所の木材の生産配給の適正を期すると云ふ所にあるのでございまして、決して之を以て日木社、地木社の再生を圖つて居るのではないのであります、さう云つた目的は全然ないことを御諒承を願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=22
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023・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 平野君宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=23
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024・平野増吉
○平野増吉君 詳細は委員會で御尋ねすることに致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=24
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025・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案に對する殘餘の質疑は延期し、次會に之を繼續することとし、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=25
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026・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=26
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027・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後二時四十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02519460806&spkNum=27
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