1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年八月八日(木曜日)
午後一時五十八分開議
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議事日程 第二十五號
昭和二十一年八月八日
午後一時開議
第一 林業會法案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
第二 宗教的情操教育に關する決議案(地崎宇三郎君外五名提出)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである
恩給法の一部を改正する法律案
(以上八月六日提出)
一、昨七日貴族院に於て本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した
政府出資特別會計法外二十一法令の廢止等に關する法律案
一、議員から提出された議案は次の通りである
宗教的情操教育に關する決議案
提出者
地崎宇三郎君 左藤義詮君
海野三朗君 井上徳命君
大谷瑩潤君 柏原義則君
熊本市より山鹿町を經由大牟田市に至る電車敷設に關する建議案
提出者 宮村又八君
(以上八月六日提出)
九州四國連絡鐵道速成に關する建議案
提出者
布利秋君 岡田勢一君
石原登君 森由己雄君
橋本二郎君 原尻束君
平野八郎君 大橋喜美君
藤本虎喜君 松原一彦君
福田繁芳君
國際客誘致施設準備に關する建議案
提出者 布利秋君
都市内燒墓地の文化施設轉換に關する建議案
提出者 布利秋君
川内川上流河川國營改修促進に關する建議案
提出者
上林山榮吉君 森由己雄君
二階堂進君 原捨思君
(以上八月七日提出)
一、去六日議長に於て撤囘を許可した議案は次の通りである
宗教教育に關する決議案
提出者
地崎宇三郎君 左藤義詮君
大野伴睦君 田中萬逸君
犬養健君 山崎猛君
成島勇君 葉梨新五郎君
石井光次郎君 林連君
(以上八月五日提出)
一、去六日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第七部選出建議委員 新妻イト君
一、去六日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)外二件委員
理事 八木佐太治君(飯島祐之君去六日理事辭任に付其の補闕)
一、去六日次の通り特別委員の異動があつた
食糧緊急措置令(承諾を求める件)
委員
辭任 氏原一郎君 補闕 平野市太郎君
辭任 田中健吉君 補闕 金子益太郎君
生活保護法案(政府提出)委員
辭任 澤田ひさ君 補闕 堂森芳夫君
辭任 松尾トシ君 補闕 山崎道子君
一、昨七日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
大藏事務官 河野通一
同 酒井俊彦
第九十囘帝國議會大藏省所管事務政府委員被仰付
一、昨七日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第六部選出豫算委員 岡田勢一君
第八部選出豫算委員 水谷長三郎君
一、昨七日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第七部選出
建議委員 中崎敏君(新妻イト君補闕)
一、昨七日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出外一件委員)
理事 海野三朗君(西村榮一君昨七日理事辭任に付其の補闕)
一、昨七日次の通り特別委員の異動があつた
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)外二件委員
辭任 飯田義茂君 補闕 太田鐵太郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きます、此の際食糧輸入に關し報告の爲め和田農林大臣より發言を求められて居ります──和田農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=1
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002・会議録情報2
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食糧輸入に關する和田國務大臣の報告
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=2
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003・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 輸入食糧の放出許可懇請に關しまして御報告申上げます
本食糧年度の危機突破の爲には、曩に本議場に於きまして御報告申上げました通り、國内の施策に於きまして國民の總てが其の全力を盡しますると共に、而も尚ほ不足しまする絶對量に付きましては、其の補填を聯合軍最高司令部に對しまして、輸入食糧の放出許可を懇請して參つたのでありますが、幸ひ最高司令部の極めて好意ある理解に依りまして、適時適所に必要としまする輸入食糧の放出許可を得ましたことは洵に感謝に堪へぬ次度であります(拍手)全國民の深く感激致して居る所でございます、既に八月上旬までに放出の許可を得ました輸入食糧の總量は、小麥、小麥粉、米、罐詰等を合しまして、米換算約三十一萬二千「トン」、即ち約二百六萬石でありまして、全く之に依りまして所謂中間端境期の危機は救はれたのでございます、而して今後尚ほ豫想せられまする食糧不足克服の爲には、現に國内に於きまして馬鈴薯及び麥の供出に付きまして懸命の努力を致して居り、更に目前の甘藷及び新米の供給確保に付きましても、各方面の協力を得まして、適切なる措置を講じたい所存でありまするが、而も尚ほ萬已むを得ませぬ絶對的不足量に付きましては、引續き最高司令部の援助を懇請致したいと存じて居りますが、差當り本八月分の不足補填の爲に十九萬五千「トン」、約百三十萬石の放出許可を懇請中でありまして、其の上旬分でありまする約四十二萬石に付きましては、既に去る三日許可がありまして、現に全國の二十三都道府縣に亙りまして配給中でございます、殘餘のものに付きましても、中旬、下旬の別に其の都度許可を得られる見込でございます、此處に重ねて最高司令部の厚意に對しまして衷心感謝の意を表しますと共に、政府に於きましては、國内施策の面に於きましても、今後尚ほ一層の國民の協力を得まして危機突破の爲に更に一段の努力を誓ひ、覺悟を新たにせんことを深く期する次第でございます、右御報告申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=3
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004・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 議事日程第一、林業會法案の第一讀會を開き、質疑を繼續致します──林田哲雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=4
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005・会議録情報3
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第一 林業會法案(政府提出)
第一讀會(前會の續)
〔林田哲雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=5
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006・林田哲雄
○林田哲雄君 私は日本社會黨を代表致しまして、聊か林業會の性格に付きまして質したいと存ずるのであります
日本木材株式會社、地方木材株式會社と、斯うして木材統制法と云ふものが官僚と木材資本家の巣窟となり、一つの營利會社と致しまして、戰時中森林組合、木材生産者を裸にし、木材製材加工業者を搾取して來たことは、既に前御二方の同僚に依つて殆ど完膚なきまでに糺彈されたことであります、私自身地木社の一從業員を強ひられた身を以て嘗めた體驗から告白申上げましても、あの木材統制なるものが眞の木材の生産の増強に何等致す所がないのみか、みすみす木材の生産を低下しつつあつたと云ふことを我々業者は異口同音に痛歎して居る所であります、逆算の形に於きまして木材生産業者の父祖傳來の山を裸にしてしまひ、又地木所屬各製材工場を彈壓し強壓致しまして、之を裸にし、さうして一營利會社をして是等の官僚の姨捨山ともなし、統制經濟に便乘した資本家の巨利を貧る所の殿堂と化して居つたのであります、私は之を繰返して申上げる必要を考へませぬ、同僚諸君の完膚なきまでの糺彈に依りまして、政府當局は既に十分御認識を持たれたことと思ふのでありまするが、「マッカーサー」元帥司令部の解散の命令に依りまして解散した筈の日木、地木が、今日木材生産組合として再組織されつつあると云ふ時、林業會法は林業會構成員の中に林産組合なるものを入れて居ると云ふことは、再び是等官僚、資本家の傀儡を此の林業會に僣入せしめる機會を與へて居るものではないかと云ふことを農林大臣に嚴密に質して置きたいと思ふのであります
私は是等地木、日木の暴露は同僚諸君に讓りまして、林業會の建設的なる内容に付きまして政府の所信其の性格を明確に致したいと思ふのでありまするが、由來林業、農業、水産業は一體不可分の關係に立つて居るものでありまして、農民は直ちに漁民であり、林産木材生産業者である、此の意味に於きまして、林業會の内容も一般の農村經濟と密接不可分なる關係に於て之を考究しなければならないと云ふことを考へるのであります、我が國の農村經濟は終戰後、神武天皇建國當時の大八洲に八千萬人の大和民族が追込まれまして、さうして此の惠まれざる國内資源に依つて八千萬民族が如何にしてでも稼ぎ拔かなければならない立場に追込まれて居るのであります、此の意味に於きまして我々は、此の貧弱なる國内資源を以て、國民生活の確保の爲に火の玉となつて戰ひ、又軈て我が國が國際經濟場裡に立ちまして、其の強靭性を確立すると云ふことが喫緊の急務であると云ふことを考へるのであつて、其の刻下の國民の食糧危機を匡救し、さうして國民生活を安定し、續いて來るべき所の、即ち今日の非常經濟時局を打破致しました後に、豫想外に早く來るべきことを豫感される所の我が國の恐るべき農業恐慌──關税の障壁は撤廢されまして、諸外國の食糧を主とする所の物資の我が國への津浪、茲に我が國の經濟は非常經濟時局の反動と、此の自由貿易に依る所の恐ろしい農業恐慌、一大轉換期に立つて居ると云ふこと考へまする時に、我が國の農林水産業は今日の此の國民の食糧生活の危機を匡救すると共に、此の來るべき恐慌に對する強靭なる立體的なる經濟産業體制を確立すると云ふことが今日の重大なる責任であると考へるものであります、此の意味に於きまして今後の農林水産業は緊密なる綜合的關係に立ちまして、所謂立體的、社會主義的なる建設に邁進しなければならない、從來の素材を生産すると云ふ農林水産業は、是等の自家生産の素材を自己の手に依つて加工し、之を食糧化し、未利用資源を開發して國民食糧に充當し、又保存食糧を生産し、或は其の他の農産物或は林産加工に依りまして、外貨獲得、或は賠償金、國際貸借、信用確保の意味に於ける所の國際經濟に打つて出ると云ふ態勢を整へるべき意味に於きまして、今後の農林業は一體となつて其の産業の高度化と、さうして農村の工業化に依る所の農村經濟の高度化と云ふことが要求されて居るのであります、此の時我が國の農林水産業は緊密なる關聯の下に、さうした高度の産業へと進出することを要求されて居る、此の意味に於きまして、本林業會法も──今日農林省は農業協同組合法を考究されつつあると云ふことを承つて居りまするが、是と同時に水産協同組合法竝に林業協同組合法としての綜合的協同組合立法なくしては、斷じて此の立體的、社會主義的建設を見ることが出來ないと思ふのである、隨て林業會法は此の綜合的協同組合の立法と竝行すると共に、林業會は協同組合の形に於ける所の民主的、社會主義的なる建設でなくしては、斷じて意味を持たないものと私は確信するのであります、此の意味に於きまして此の林業會法、林業會なるものは、農林大臣の企圖せられて居る所は如何でありまするか、其の點の御所見を明かに致したいと思ふのであります、又必然的にさうした社會主義的、立體的なる協同組合の形に於ける所の林業會──農林經濟は、所謂其の生産者であり從業者である人的資源に於ける所の業務と生活の安定確保と云ふことは、是こそ其の生産意欲の昂揚の絶對條件でありまして、此のことは我々が農村の方面に於きまして叫びつつある、先づ凡ゆる部面に於ける所の税制、戰時中戰爭に勝たんが爲に軍閥の軍政の下、黙々として之を認めて來た所の今日の大衆課税の租税體系を根本的に覆し、先づ農林業に最も必要な地租、家屋税、或は今日全國に澎湃として反對を叫ばれて居ります所のあの勤勞所得税、或は事業所得税、或は其の他の大衆課税に於ける所の消費税、斯うした大衆課税の租税體制を根本的に覆す意思があるかないか、是なくして今日の増産意欲を期待することは、木に縁つて魚を求めるものと私は考へるのであります、此の點に對する政府の決意を伺ひたいと思ふのであります
尚ほ進んで農林業の密接不離なる山村に於きましては最も痛切に感じつつあることでありますが、今日の土地問題、最も零細農であり、零細地主である所の耕地反別の少い山村に於ける所の農村問題は、一層窮迫せるものがあるのでありまして、山村の農林業經濟を確立する爲には、何よりも先づ土地問題の解決、而も我々は林業に依る所の林産物の増産を計畫すると同時に、有效にして而も林業に適せざる所の山林に對しましては、是が計畫的な施業案に依りまして、著々として食糧増産の爲の開墾を實施しなければならない、戰時中に於きまして開墾或は陰伐りと云ふことが奬勵されましたけれども、我々は忠實にやつた、併しながら政府の御膝元の關東に我々參りまして、今尚ほ陰伐りと云ふことが殆んど見ることも出來なければ、我々が街道の名木或は神社佛閣の名木も伐採して戰場に送つたにも拘らず、此の膝元に於て到る處に街道の名木、神社佛閣の名木が殘存して居ると云ふことは、政府の認識如何を我々は疑ふものであります、斯うした意味に於きまして、絶對的であり、重點的なる山林の植林方策、さうして田畑の開墾方策と云ふものを樹立する、農民が開墾したい意圖を持つて居りましても、而もそれが林業上何等生産的でない土地でありながら、地主の所有權の絶對性の爲に、之を開墾することも出來なければ、又反面に於きまして戰時中に於ける所の軍用材の供出、或は松根油の採取に依る所の伐採、濫掘に依りまして、あの悲慘なる全國の風水害を見ながら、それに對して何等今尚ほ徹底せる治水、修築、或は徹底的なる植林の施業計畫を見ないと云ふことを我々は遺憾と存ずるのでありまして、是等の農山村に於ける所の土地問題の解決こそは──今農地制度の改革法律案が上程を見ると云ふことを承つて居りまするが、是が單に農地のみならず、山林に通ずる所の徹底せる全面的なる土地の開放を斷乎やるにあらざれば、農林業の増産に重大なる支障を來しつつあると云ふ事實に對しまして、農林大臣は如何に之を御覽になつて居るかと云ふことを質したいと思ふのであります
尚ほ木材生産に從業致します所の山村の伐出業者、山林の勞働者は同時に農民であり、而も是等の農民は二反百姓、三反百姓と云ふ零細農業を經營しながら僅かの生産に依つて供出もしなければならない、或は年貢も納めなければならない、保有米も欲しい、勘定合つて錢足らず、而も田畑は女子供に任せて置いて、さうして男は山林伐出しに稼がなければ一家の經濟も立つて行くことは出來ない、伐出勞働者の賃金は今日平均致しまして、二十圓臺を割つて居ると云ふ事實に鑑みまして、此の自由勞働者であり、雨が降れば仕事の出來ない屋外勞働者である山林伐出勞働者の賃金の値上げ、生活の安定こそ又根本的なる重大問題である(拍手)同時に山村に於ける所の食糧配給、是が一元でない所に依るものでありますが、山村民の食糧は、實に我々の見るに忍びないひどい物を食べて居ると云ふことを御認識願ひたいと思ふのであります、是が食糧の廣範圍なる一元的配給に依りまして、せめて山村にも麥、米の配給をもつと増額してやつて欲しい、又御承知の如く山へ仕事に出ますれば、茨が引掛り、木に引掛る、何等衣料品の配給のない今日、伐出勞働者は從來の手持ちの衣料品を持出して仕事に行かなければならない、いつそ今日の高物價の下に於ける所の衣料品を破いてしまふよりも、仕事に行かないで寢て居る方がましだと云ふ此の窮状を御認識下さるならば、何とか林業伐出勞働者に對して衣料品の特配の途はないものか(「ひやひや」)或は今日食鹽の問題に國民は困つて居りますが、海岸に遠い所の山村に於きましては、農業會が「ドラム」罐に海水を入れて「トラック」で運んで、農業會で共同製鹽をやつて居るやうな状態であります、其の反面に於きましては、海岸を持つ所の町村に於ては、或は終戰後陸海軍用地の開放に依る財務局の指示に依りまして、三井、三菱等、其の他財閥の自家製鹽の新設、或は地方有志資本家の營利的なる自家製鹽、是が莫大なる補助金を貰ひまして自家製鹽に從事して居りまするが、恐らく之を正當の配給「ルート」に流すよりも闇に流し、さうして蔭に流れて、海岸を持たない、自家製鹽をすることの出來ない方面に於ては、闇でなければ食鹽を手に入れることが出來ないと云ふ結果を來すことは明かな事實であります、今此の食糧と食鹽、最も重要な生活必需物資の上に於て、武田信玄と上杉謙信の實情を現出するであらうと云ふことを私は痛感致します時に、此の自家製鹽事業を資本家の營利に任さないで、非營利的なる農業會の一元的なる自家製鹽、さうして海岸を持つ所の町村と燃料との「リンク」に依つて、公平なる自家製鹽の配給を今日に於て樹立しなければ重大なる問題を惹起すると思ふのであります、或は木曾其の他の官林、御料林の多い所に於きましては、木材伐出勞働者であり、同時に農民である所の住民が總ての是等の官林或は御料林に燃料を取りに行くことも出來ないのであつて、毎年村から一人或は數名の刑法上の犧牲者を出して、國體的に竊盜に出掛けると云ふ窮状にあることを考へます時に、是等山林に對する入會權を確保すると云ふことは、同時に一石二鳥であつて、さうした山林の造成にもなると云ふことを我々は考へるのであります、是等の木材生産從業者の生活の安定、さうして其の民主的なる生産體制と、之を内容とする所の綜合的な協同組合組織に依る所の林業組織こそが、眞の山林政策の大道であると確信するのであります、此の點に付きまして農林大臣の所見を明かに承りたいと思ふのであります
以上の意味に於きまして、今囘立案されました所の林業會は必然的に從來の日木、地木を徹底的に排除すること、木材生産者たる森林組合の一元統制の下に製材工場を直營し、製材工場の從業員、木材生産者、木材伐出勞働者、之に木材消費者の代表者を加へたる所の委員會に依つて運營すべきであると私は確信するものであります、即ち木材生産者を中心とする生産、加工、配給への一貫作業に依る一元統制、茲に於てのみ林業會は眞に民主的な生産増強への軌道に乘ると云ふことを私は確信するのでありまして、斯うした内容に付て本法案は如何なる御意圖を包藏して居られるのかと云ふことを、其の構成分子に於て明かにして戴きたいのであります
最後に斯うした一元統制下に於ける林業は、必然的に大土地所有に依る一元的な専制と云ふことが考慮されるのでありまして、之に對しては少なくとも二十町歩以上の大山林所有に對しては不適正と認め、開放させる、先づ皇室の御料林は開放し、國有林を開放し、二十町歩以上の大山林所有を開放して、木材生産協同組合への現物出資として、木材生産協同組合の管理下にあるべき體制を執るべきものであると私は信ずるのであります、以上の數點に付て農林大臣の所見を明かにしたいと思ふのであります、以上を以て私の質問を終ります(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=6
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007・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 林田さんの御質問に御答へ致します、此の林業會法案は依然として日木社、地木社の再現であつて、官僚統制の再現ではないかと云ふ御質問でありますが、其の點に關しましては、先般本法案の提案理由に於て私が説明致しましたやうに、此の法案は森林所有者の組合である森林組合と、林産物の生産者である林産組合との協同に依りまして、自主的に統制して行くと云ふのでありまして、決して日木社、地木社竝に官僚統制の再現ではないと云ふことを御諒承願ひたいのであります
第二點の山村漁村の經濟の高度化の問題でありますが、是は御説のやうに、日本に於きまして山村と云ひますものは、一方に於ては農業を行ひ、一方に於ては山林の勞働に從事して其の生計を立てて居る人達が多いのであります、此の山村經濟の高度化と云ふことを、山林と云ふ方から眺めますならば、山林の包藏する資源を科學的に開發致しまして、そこに從事して居る人人の經濟を豐富ならしむると云ふことが必要であります、此の科學的な開發の點に付ては、例へば酵母菌に依る木材の蛋白化と云つた問題、其の他椎茸の生産、色々な點に付て科學の技術を採入れまして十分に資源の開發を圖つて居る次第であります
次に林産組合は同時に林業に從事して居る勞働者をも含めて之を構成すべきではないかと云ふ御意思のやうでありました、御承知のやうに日本の林業勞働者は、半分は農業に從事して、其の片手間に副業として山林勞働に從事して居ります、其の他の者が移動的に専業的に林業の勞働に從事して居ります、隨て之を専業の林業勞働者に付て地區的に把握することは中々困難であります、隨て縣なら縣と云ふものに大きく纒めまして、それ等の者の勞賃其の他の點に付て十分意見が述べられるやうなことを考へることが必要であります、此の林業會の組織に於ては一應勞働者は組織員には入れて居りませぬ、併し地方に於きまして林業會の構成としてそこに特別議員の制度がありますので、それ等のものに是等勞働者の代表者を特別議員に選ぶことも一方法かと考へますが、それ等の點は十分今後研究致して行きたい、斯樣に考へて居ります
最後に林野の所有の形態でありますが、山林は二つに分けて考へなければならないと思ひます、一つは農村の所謂里山と云ふか、農村の近くの山であります、一つは農村から離れた大きな山であります、農村に近接して居る所謂里山に於ては、言ふまでもなく其の近接の人達の利益を考へることは最も必要でございまするで、是等のものに付きましては、或は農村の燃料の資源でありまするとか、木工の材料でありまするとか、其の他肥料の資源、家畜の爲の飼料と云ふやうに、農業經濟と密接に結付いた點が多いのでありますので、それ等の觀點から是等のものの所有と云ふことに付ては、或は之を小所有にし、或は部落の共同にすると云ふことが考へられると思ふのであります、併し一面に於きまして多くの奧山は治水、治山と云ひますか、水を治め其の他國土保安の上に非常に重要な關係を持つて居るのでありまして、是等のものに付きましては、小さく分れた所有の形態と云ふものは到底經營して行くことが出來ないのであります、隨ひまして是等のものに付きましては、寧ろ多くの資本をそこに要するのでございまするし、又公の利益に關係する所が非常に多いのでございまするので、やはり國家的な見地から之を統制して行くことが私は必要ではないか、斯樣に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=7
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008・林田哲雄
○林田哲雄君 何れ委員會に於て詳細は御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=8
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009・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 香川兼吉君
〔香川兼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=9
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010・香川兼吉
○香川兼吉君 私は協同民主黨を代表致しまして、今囘御提案に相成りましたる林業會法案に付きまして若干の質疑を致さんとするものであります
先づ私は此の場合議長に質して戴きたい點は、先日の本會議にも、更に本日の本會議に於きましても總理大臣の御出席はありませぬ、私は先日通告を致したのでありますが、成程色々の事情がありませう、併しながら苟くも現在の森林事業なるものは、先日も平野議員に依つて御話がありましたが、社會の利源にして、所謂國土の大本であります、而して國土の表徴であると共に民族を哺む實に重大なる意義を持つて居る問題であります(拍手)然るに政府自らが輕視せられて居ると云ふことは甚だ遺憾である、私は此の議場を通されまして、總理大臣が如何なる理由を以て御出席がないか、宜しく御辨明を要求するものであります
先づ劈頭に當りまして御伺ひを致して置きたい點は、我が國の森林問題に對しまして、國際資源管理の聲があるが、此の點はどうかと云ふことを私は總理に伺ひたいのであります、敗戰日本今後の森林資源は、日本政府獨自の施策で取扱はれるものと思はれなく、世界五十箇國の資源に付きまして管理企畫する國際資源管理局に於て最後的施策を決定するにあらずやと云ふ聲を仄聞致して居るのであります、是は我が國國勢の振興上竝に森林行政確立の上に重大なる問題であります、此の場合若し總理大臣が居られなければ、副總理の方に於て是等の見透し等も、承はることが出來るならば洵に幸ひとするものであります
次に御伺ひ申上げたい點は、日木、地木の解體に際しまして政府が御執りなつて居る處置に付て少しく御尋ねを申上げたい、政府は曩に財閥の解體に當りまして、御承知の如く直ちに管理委員會を設けられまして、之を管理に付されました、然るに今囘日木、地木に對しましては、何等之に關與することなく放任して置かれて居ると云ふ點であります、凡そ戰時立法中に於きまして、所謂惡法の標本とされたる木材統制法の下に割據しまして、而も獨善であり、横暴の限りを盡したる日木、地木であります、而も多大なる「トンネル」料を取り、社會の非難が此の一點に集まつて、而も日木、地木を排撃致して居つたことは申上げるまでもないのであります、戰時官僚統制の故を以ちまして、即ち「マッカーサー」の支持に依りまして是が解體を命ぜられ、而も六月二十六日政府が之に解散命令を出して居る、然るに其の後に於て是等の會社は無責任にも其の儘に置かれて居ると云ふのでありますが、私の問はんとする所の理由は何處にあるかと申しますると、實は解散を命ぜられたる是等の地木、日木が──あの昨年の八月十五日の終戰の勅語を戴いたる當時に於ける軍の混亂せる醜行其のものの行爲が──軍の一部の醜行其のものの行爲が、地木、日木の現在の會社其のものに行はれて居ると云ふ事實を聞いて居るのであります(拍手)是は先日の本會議に於きまして司法大臣は、地木、日木の不正問題は耳に致して致ると云ふことを言明致して居る點に於ても明かであります、私は是等の問題を何が故に政府が無關心に而も放任をせられて居つたかと云ふ──凡そ財閥と雖も大小には變りはありませぬ、大財閥は管理委員會に付し、地木、日木と稱するけれども、是等は即ち官僚統制の下の眞に財閥に比すべき所の存在價値があるものであります、何故に此の會社に對して放任をせられて居つたか、それが爲に一部分の者が即ち資本の逃避をやるとか、或は財産の何ものかを云々するとか云ふ醜行爲が行はれて居ると云ふ結果は、一體誰がどう云ふ損失に相成るのでありませか、大衆の迷惑は此の上もありませぬ、斯くの如き状況を現出せしめたと云ふことは、即ち政府の怠慢にあるのではないか、宜しく此の管理に付せざる理由を明かにし、而して今後此の會社に對する所の十分なる監視をし、而も整理に對しては明確に致しまして、此の状況を國民に御愬へを願ひたい(拍手)是は取りも直さず、即ち一面に於て「マッカーサー」に對する所の日本政府の忠實なる所以であると思ふ、願はくは此の點に付て明確なる辨明を要求するものであります
次に第三點であります、今囘の林業會法案の内容に付きまして檢討を致したのでありますが、私は限りなき失望と不安を感ぜざるを得なかつたのであります、何となれば森林の根本施策に於ける綜合性なく、且つ推進力に多大なる缺陷がありまして、此の法案を以てすれば眞に百年の大計を誤ることを惧れる者であります(拍手)一昨日の本會議、更に只今の御話に依りましても、實に此の林業會法案の内容に付て非常なる不安を持つのであります、私は之を率直に申上げますならば、本法案は所謂解體致して居りまする日木、地木の援助救濟であると共に、正に林業會社の救濟、更に木材に關係する業界の救濟法案なりと指摘しても憚らないのであります、此の點は農林大臣は能く御聽取を願つて置きたい、以下私は之に付きまして前門の虎を防いだが後門の狼の恐ろしいと云ふことに付て、十分本案に解剖の「メス」を入れて批判を加へ、當局の反省を求めんとするものであります
第一は農相は御説明に於きまして、本案は森林の維持造成が出來ると強調されて居ります、果して御説の如く維持造成の完璧が期せられるものであるか、私は非常に疑問と致して居るのであります、先づ本案の構成分子であります所の一方は、即ち森林法に基く森林組合であります、森林組合は御承知の如く追補責任であります組合でありまして、機動性が乏しく且つ強制力が至つて微弱であります、且つ施業案の實施に對しても如何なる成績を以て今日なされて居るかと云ふことは此處に説明するまでもありませぬ、而も是等の森林組合をして維持造成を期待し、而も森林の培養に資することが出來ると云ふことは私は非常に疑問と致すのであります、特に今日の森林組合に對して何等の機動性も持たせず、強制力も持たせずして、而して今日林業會の一構成分子として置かれたと云ふことは甚だ遺憾に堪へないのであります、そこで此の一方に於きまする林業組合でありますが、是は即ち官僚統制たる遺物の今尚ほ存する企業許可令の下に、木材、製材竝に企業資本家を取入れまして、而も其の半面に於て、先程申しました覆面せる日木、地木社の殘黨が之に加はらんとするが如き情勢下にあるのであります、而も是は眞に構成する其の者が先づ以て純眞なる木材業者の即ち塊りであります、而して林業に携はる者と雖も、企業許可がありますが故に、是等の事業をする者も之に加はることが出來得ない一つの戰時官僚統制の遺物がここに殘つて居る、是が即ち今日の林産組合の正體であるのであります、第三には森林組合は農民層であると共に、林産組合は先程も申すやうに商人の結集であります、昔から農民、商人と云ふものに付きましては是は中々難かしい經濟的の觀點を異に致しまして、所謂利害を異にして參つたのであります、此の一方の農民層と、一方の商工業と云ふものをがつちりと組んで果して此の法案がやつて行けるかどうかと云ふ點に非常なる疑問を持つて居るのであります、第四は、森林行政中に於て重大なる關係を有する國策中の國策と言はれて居ります薪炭と云ふものを除外なされたと云ふことはどう云ふ譯か、薪炭と云ふものを除外して、而も薪炭は戰時中、否戰後の今日に於きましても、一年の需要量二億萬石を潰さうと云ふ、森林行政に於ては實に重大なる所の問題であります、此の薪炭と云ふものを除外せられたる原因は何處にあるか、私は此の薪炭を伴はざる所の林業政策と云ふものは、今後推進を致して參る上に於て實に重大なる暗礁に乘上げるものでありまして、是非とも是は共に進んで行かなければならぬものであると思ふのでありますが、此の點に對する所の理由と今後の方針に付て承りたいのであります、更に森林資源の培養に對しまして、伐ることにのみ此の法案は中心を置いて、培養を致す育成に對しては單に森林組合と云ふもののみを根柢と致して居る、或る人に言はすならば、此の法案は寧ろ林業會法案と云ふよりも、木材業法案と云ふ方が當つて居るのではないかと批評する人さへあるのであります(拍手)
次に治山治水に對しまして、是等は何等の綜合性を持つて居りませぬ、今日の治山治水の問題こそ實に重大なる問題であります、何故に治山治水に對して之を取入れなかつたかと云ふ點、第七點と致しましては本案の第九十一條に於きまして「社團法人日本林業會は、日本林業會成立の時に解散するものとし、その權利義務は、日本林業會においてこれを承繼する」と謳はれて居る點であります、即ち愈愈地木、日木が解體をして、今度農林業會が出來た場合には無條件で、借金があらうが、資産があらうが、之を直ちに持つて行つて此の中に入らうと云ふ問題であります、是は法文に示されて居る、私は靜かに考へまする時に、此の社團法人日本林業會なるものは、やはり是も戰時中に出來たる所の會社であります、何故に綺麗さつぱりと之を解體して、明朗の裡に之に參畫が出來なかつたかと云ふ點であります(拍手)是は私は重大なる問題と思ひます、何故に其の儘之を繼承するか、借金があらうが何があらうが、權利義務を以てそこに加盟しなければならぬ、加盟せしめ得ると云ふ法文を作つた是等の原因を明かにして戴きたい(拍手)
私は以上の七點に於て林業會法案の内容を檢討しましたが、實に滿身創痍であります、氣息奄々であります(拍手)此の法案を以てして今日此の重大なる日本林業の完成を期し、而して日本國土の培養の上に果して資することが出來るか、洵に遺憾な點であります、是に於て農林大臣は是は暫定法案なりと言はれるかも分りませぬ、併し今日は正に林業會こそ重大なる竿頭に立つて居ります、今日の一日こそ明年に對する幾らになるか、實に重要なる價値ある今日であります、左樣な悠長な時でない、そこで私は最後に特に農林大臣に此の點を提言するのでありまするが、以上申上げた點を十分に勘案して──今日我が國の現状に於て林業に關係する法案は五つあります、林業種笛法、薪炭需給調整法、或は森林法、更に森林資源造成法と、今囘出來る即ち此の林業會法の五つであります、此の五つを今日織込みまして綜合的に──先程林田さんからも御話がありましたが、要するに之を綜合的に致しまして協同組合の主義を十分に採入れまして、相互ひに助け合ひ、而して綜合施策を以て今日の林業會の完成を期することを提言するのであります(拍手)是は私は決して反對をせんが爲に反對をし、野黨なるが故に反對せんとするものではありませぬ、今日の此の國情こそ實に重大なる竿頭に立つて居りますので、憂國の至情抑へ難く之を申上げて居る點であります、どうか願くば此の點を十分御考慮に入れまして、來るべき議會には綜合的の本當の理想的な、而も非民主的なる今日の政策を排撃致しまして、民主的な政策をここに織込んで、來るべき議會には綜合的の森林協同組合法案を提案すると云ふことを明言を願ひたいのであります(拍手)實は今日承りますと、近く商工協同組合法案が提出せられると云ふことであります、私は農林大臣は實に民主的な本當に今日の時代が要求して居る人物である(「お世辭を言ふな」と呼ぶ者あり)然るに商工の組合に先んじられ、而も曩には農村の協同組合法案を提出すると云ふ話であつたが、是も尻込みの状況である、私は今一段、十分時代の實相を達觀せられまして、さうして綜合的の協合組合法案を提出せられんことを、茲に宜しく御聲明を願つて置くものであります
第四に於きまして今日の森林の情勢を總括致しまして伺ひますると、非常に戰時中に多くの森林が伐り盡されまして、先般來の質問にも現はれて居りましたが、少くも民有林或は國有林を綜合致しまして、二百萬町歩と言ひ、二百五十萬町歩と云ふものは荒廢に歸して居ります、之を如何にするかと云ふ問題に付て先日も農林大臣よりの御答辯がありました、非常に意を強く致して居りますが、私は茲に御尋ねを致さんとするものは、一體政府の御施策は洵に結構ではありまするけれども、此の御施策に副ふ所の結論が得られるかどうかと云ふ問題であります、それは此の多くの荒廢に對する培養の點でありまするけれども、本年の一月一日に於きまして、森林資源造成法を實施されまして、さうして政府が戰時中に於ける犧牲山林を救濟せられて居ります、所で是は驚くことには、此の證券制度に依りまする造林公債に依る費用と云ふものは洵に低率であります、是は時間がありませぬから簡單に申上げるのでありますが、一町歩に對する百圓、下刈が百四十圓、是は松でありますが、一町歩に僅かに二百四十圓の状況であります、政府の此の案に於きまして、二十年度に於きましては、十四萬何がしと云ふものが此の造成案の計畫になつて居りまするけれども、僅かに五萬町歩も消化が出來ない状況であります、少くも是の二十倍乃至二十五倍の費用は要るでありませう、之に對しては折角作られた所の森林資源造成法に對して、是等の費用に付ては十五倍乃至二十倍若しくは三十倍に引上げられまして、而して今日の、特に植林に對する政府の御方針に協力せしめ得ることが最も必要なりと存じまするが、之に對する所の當局の御方針と決意を承つて置きます
次に森林に對する教育に付きまして至極簡單に御尋ねを申上げて置きたいと存じますが、我が國の森林に對しまして一般國民の教育は至つて幼稚であると察するものであります、何となれば、木に親しみ、山を愛する精神はありと雖も、其の實は少いと申しますることは、世界の中に於て山火事の多いのは日本が一番だと云ふことを聞いて居るのであります、今日は一木一草たりとも大切に致さなければなりませぬ、而して斯う云ふ時に當りまして、私は木を粗末にする、之を毀損する、さうして荒れて居る所に於きましては一本でも植ヱて行かなければならぬ、是は公民教育に依つてやらなければならぬと思ふのであります、此の點に付きましては十分愛林思想を教育の面に織込んで、さうして木の貴いことを十分認識を願はなければならぬ、一體空氣の大切なことは知りつつも、それを考へないと同じことに、木の大切なことは知りつつも、教育の面に於て十分徹底して居らなければ分らないと思ふのであります、願はくば此の點に付ては十分教學の上に織込みまして、さうして政府は曩に小學校竝に中學校等に於て學校の營繕林を造られて居る、洵に結構であります、實務教育をやらせる上に於て結構でありまして、將來此の營繕林に付ては如何なる方針も持つて進まれるか、更に營繕林を造られる場合には多額なる助成をして、而して是等の實務教育を徹底すると共に、而も森林の大切なることと共に、實際の實利を以て國家に貢獻し得る素地を作る上に自ら範を垂れることが必要であると思ふのでありますが、是に於きまして此の點に對する文部大臣の御所見を承つて置くものであります
最後に私は治山治水の國土計畫に付て少しく御尋ねを申上げて見たいと思ふのであります、水を治める者は能く國を治めると云ふ言葉がありますが、要するに水を治めると云ふことは山を治めると云ふことでありす、山を治めることは木を植えることであります、是は能く御存じのことと思ふのでありますが、戰爭中に於て濫伐、過伐が加へられまして、而も今日は民有林に於ては百二十萬町歩、國有林に於ては百萬町歩と稱し、百二十萬町歩と稱し、さうして禿山、裸峯が相連りまして、全く憐れなる實相、荒廢を致して居る現實であります、搗て、加へまして、戰時中に松の根まで掘りまして赤肌が出て居る、是が爲に少しの雨が降つた場合に於きましても直ちに大きな水が出まして、半分の雨に依つて從來の倍以上の水が出ると云ふやうな状況下にあることは申上げるまでもありませぬ、是は昨年の十月に發生を致したるあの關西、關東を中心とする二十府縣下に於て出ました災害に依つても明かでありますが、而もあの災害に於きまして、田畑の荒廢が六萬八千町歩、林野の崩壞が四萬町歩、人畜、家屋等を毀損した其の額は驚くなかれ昨年の調査では二十億圓の損害だと言はれて居ります、斯う云ふやうな國土の上に一雨降るならば、いつ何時今後の災害があるかも測り知れないのであります、然るに現在の政府が此の治山治水に對してどう云ふやうな政治を執つて居られるかと云ふことを御尋ねしたいのであります、即ち私が調べた點でありまするが、政府の此の山林に對する、否、治山治水に對する方針と云ふものに付ては、山嶽砂防と溪谷砂防と云ふものが此の水を治める上には最も必要である、然るに此の治山治水の點に於て十分なる方針なく、而も山腹の砂防に付ては農林省が之を管轄し、溪流に付ては内務省が之を擔當致して居る現實であります、斯う云ふやうな結果から、一昨日の本會議に於きまする政府の御答辯には、内務大臣は之に對して協力をすると云ふことを申された、非常に私は意を強く致して居るものでありますが、協力すると云ふのでは、成程上の方では左樣なることが出來るかも分らぬけれども、溪流砂防と云ふものと山腹砂防と云ふもの、溪流と山腹と云ふものの境界は頗る至難であります、斯う云ふ結果が從來でも仕事の上に於て或は縄張爭ひをし、或は割據主義を以ちまして、其の時機を逸して居つた點があつたのであります、此の場合に私は、特に全國に於て此の崩壞に瀬せんとして居りまする林野が澤山あり、更に一朝豪雨の場合に於ては、或は山が崩れる、或は護岸が流れて、遂には大きなる災害を來すると云ふやうな現在の段階にありまする時に當つて、斯樣に兩方に分れて云云すると云ふことでは實際に於ける問題の解決は出來ない、そこで是は私は一例を取りますが、特に國帑を傾倒致しまして治山治水を今にして行はずんば重大な問題でありまして、實は明治四十三年桂内閣の當時に於て關東を襲つたる大洪水の時に、内閣は根本的の治水對策を樹て、臨時治水調査局を設けられて、さうして當時に於きまする所の重大問題を解決致したと云ふことを聞いて居ります、更に米國に於ては歐洲戰後に參りました不景氣時代に於て、國内の砂防と云ふものに付ては徹底的に失業者を收容して國土の培養に務められたと云ふことを聞いて居るのですが、今一方に於て山が崩れ、將に非常なる危機に當面して居るのであるが、一方に於て戰後に於ける所の失業者が澤山出て居ります、是に於て私は先日來厚生大臣は此の點に於きまして失業者の救濟問題を御話がありましたが、日本政府に於きまして宜しく今日の現状を達觀し、治山治水の大則に則つて國土計畫を樹てられて、さうして此の失業者を以て、今日の國力を傾倒して、治山治水の完璧を期せられんことを私は提言するものであります、之をなさずして今日の國土の培養何れにありやと私は申上げたい、どうか此の點に付きまして宜しく當局は意を用ひられ、最善を盡して此の國土計畫を樹立されんことを欲求するものでありますが、之に對して私は大きな問題でありますから、總理大臣と思ひますが、特に關係大臣の内務大臣、更に農林大臣、特に私は此の點に於て商工大臣に關聯を致しまするから御話を申上げて置きたいことは、砂防事業に對しまして、どうも商務局が資材の配給に對しては獨善的の嫌ひがある、今將に崩壞せんとする砂防工事をなさんとする場合に於きまして是等の點を要求するが、どうも均霑主義を以てやられて居る、此の資材に付ては「セメント」或は「ガソリン」、木材、鐵と云ふものがあります、此の木材の點でありますが、どうも木材の配給に付きましても均霑主義を持つて居られる、成程均霑主義は結構であります、併しながら今將に火が付いて燃えんとして居る時には消さなければなりませぬ、最も必要なる點に付ては、時に依るならば私は木材の配給の點も、商工省に於ては所謂重點主義を以て救濟することが必要な點も多々あらうと思ひますが、唯機械的に均霑主義にやれば宜しいと云ふやうな結果が、時期を逸して大害を招く虞があるのであります、此の點に付きまして、宜しく商工省に於ては然るべく今後の政治のうえに織込みまして、誤らざる政治を御執り下されんことを希望するものであります、以上が私の質問でありまするが、森林問題は詳く申上げるやうでありますけれども、今日の國政の進展上實に重大なる問題であります、此の點に付て願はくは眞劍に私の質疑に答辯せられんことを御願ひして降壇するものであります(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=10
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011・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 大分多岐に亙りました御質問でございますので、簡單に御答辯致したいと思ひます、第一點であります森林に付て國際的な管理をする意思があるかと云ふことでございますが、只今さう云ふことは聞いて居りませぬ
第二點の日木社の解體に付ては、財閥解體と同樣の管理方式を執つたらどうかと云ふことでございますが、日木社及び地木社は御存じのやうに株主の大多數が森林所有者であり、或は木材業者でありまして、一部の少數の者が株を持つて居りますやうな財閥とは異なるのであります、唯之を解散させますのは、其の事業が獨占的でありますので、又特權的な性格を持つて居りますので之を解散せしめるのでございまして、随ひまして財閥解體と同樣の方式を執る考へはございませぬ、唯地木社等の解散に付きまして御話のやうな不正がありまするならば、私共は十分それを監督して行くことに付きましては吝ではないのであります
それから恆久法なりや暫定法なりやと云ふやうな御質問でありますが、此の法の目的と致します所は、屡屡御説明致しましたやうに、森林の所有者の團體と、それから業者の團體と、林産物の業者の團體との協力に依りまして、木材の生産配給を民主的に統制して行かうと云ふのでございます、此の方向は將來と雖も此の木材關係及び森林關係が末端から消費者、生産者から消費者に至ります間に、それぞれの段階があります以上は、此の兩者の協力に俟つと云ふことは必要でございますので、此の方向に於ては變りはないのでありまして、其の他の點に付きましては相當の是正を致しますれば、本法の趣旨とする所を以て將來の立法の中心となすことが出來る、斯樣に考へて居る次第でございます
それから社團法人日本林業會との關係でございますが、是は今囘の林業會が出來ました場合に於きましては、社團法人である日本林業會は解散をするのが當然でございます、併し此の林業の指導督勵に當つて居りまする所の林業會に財産がありまするならば、それを、同樣の趣旨でありまする所の今度の法律に依りまする林業會に承繼せしめることは適當と考へましたので、あのやうな條項を入れた譯でございます
それから薪炭を除いた理由はどうかと云ふのでございますが、薪炭に付きましては、御承知のやうに現在農業會と薪炭關係の業者との間の協調に依つて行はれて居るのでありまして、差當り本法は木材と云ふものを考へて立案致したのでございます、併し將來農業會其の他の方面の話合ひが付きまして、業者側の希望がありますならば、之を其の點に付ては考へて見たいと思つて居るのであります、併し今囘は差當りは薪炭を除いた譯でございます
治山治水の問題に付きましては本議場に於きまして屡屡御答へ致しましたやうに、本年度に於きましては約一億圓の豫算を計上致しまして、四十七萬町歩、五箇年計畫に於きまして民有林、國有林を合せまして二百七十二萬町歩の造林計畫を立てて居る次第でございます、第三期の治水事業に付きましては、目下根本的な調査を致す考へでございまして、其の十分なる調査に基きまして、根本的なる第三期の治水計畫を樹てたいと考へて居る次第でございます
森林組合の強化の點でございますが、我々と致しましても勿論森林組合が強化されまして、生産、集荷、配給をやりますことは望む所でございますが、現在に於きまする森林組合の實力は、必ずしも全部が全部それをなし得る状態ではないのであります、随ひまして現在の木材の集荷配給が圓滑に行きます爲には、それぞれの實力に從ひまして、其の兩者の協力に依つてやることが適當と考へまして本林業會法案を作つた譯であります、森林組合は現在に於きましても或る程度の統制力を持つて居るのでございまして、現在我我と致しましては、森林組合に於ける技術員の設置其の他の指導奬勵機關を設けまして、是が實質的に働き得まするやうに強化策を講じて居るのでございまするが、尚ほ其の他の點に付きましては十分將來と雖も考へて行きたいと思つて居る次第でございます
それから林業關係の法律が澤山あるが、それを整理したらどうかと云ふことでございますが、是等の法の整理に付きましては、別途研究致したいと考へて居る次第でございます、以上大體私の答辯を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=11
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012・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 香川君に申上げます、總理大臣は目下豫算委員會の方に出席中でありまして席が外せないとのことであります、特に總理大臣に御質疑の部分が殘つて居りますものに付きましては、適當の機會に答辯を願ふことに致したいと思ひます
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=12
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013・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 御答へ申上げます、林業の振興が國家百年の大計であることは申すまでもありませぬ、教育も亦國家百年の大計でありますから、随て教育の面に於きまして林業を奬勵し、林業技術者の養成に力を用ひましたり、又先程御指摘がありましたやうに、森林愛護の精神を普通教育に於きまして、特に公民教育の方面に於て徹底致しますことに、今後一層の努力を拂ひたいと存ずる次第であります
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=13
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014・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 國土計畫に付ての御尋ねでございますが、政府は終戰後の新事態に即應致しまして、國土計畫上遺憾なきを期する爲に、近く國土計畫の審議に關する機關を作りまして、十分調査審議をする豫定で居ります
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=14
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015・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 御質問の最後に私を指摘しての御尋ねでありましたが、實は私意外に考へます、商工省と致しましては重點配給と申しますより、超重點配給でやつて居りますので、少し均霑せよと云ふ言葉を豫期して居りましたが、今後需給調整法等の法案を御協贊願ひまして、此の非常時局に對しまして已むなきことながら均霑主義ぢやなしに、超重點配給をやつて行くことを御許し願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=15
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016・香川兼吉
○香川兼吉君 私は農林大臣の御答辯には非常に不滿足の點もありますが、之を以ちまして質疑を打切り、あとの點は委員會に讓ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=16
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017・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 仲子隆君
〔仲子隆君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=17
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018・仲子隆
○仲子隆君 本法案に付て既に四人の方々が質問されましたが、私は新政會を代表致しまして若干の御伺ひを致します
本案が制定せられました理由に付て總て疑がある、表面提案御説明の如く洵に結構な理由が掲げられ、又第一條或は第六十六條に於て明かでございまするが、結局是は木材統制法の引込みが付かない、或は賣買業者である獨專者達の始末が付かない、其の爲に出るのではないかと總てに疑はれて居るやうでございます、此の地木の裏等に付ては、既に多數の質問がございましたから、餘り述べる必要はないのではありまするが、結局統制法を笠に着て不正なる行動が行はれる、其の結果森林所有者を強制し、或は威嚇し、場合に依つては警察官を派遣し、斯くの如きことをして木材を強奪し、之に依つて多大の富を作る、或は浪費をなしたと云ふ疑ひが各方面にあるからだと思ふのであります、元來地木の組織は縣の官僚の古い人が其の主になり、所謂從來の山師が之を取卷いて行はれたものであるが故に、其の組織の上に於て、或は働きの上に於て、若干の不正或はひどい不正が各所に於て行はれた、其の横流し、價格の違反、或は頻りに宴會を催して浪費をしたと云ふやうなことがあると考へられるのであります、殊に昨年十一月以來、地木は其の價格の値上、或は解散氣構へ等に對して、從來購入して居る所の優良なる森林を自ら分けて取り、骨を後に殘した、そこで今日赤字がある、之を日木に併合した時に、帳面の上に於ては七千萬圓の收入があるが、地木の赤字を補ふ時には一千萬圓になるであらう、斯う云ふのが農林省の見解でありますが、現に七千萬圓と云ふものがあり、之を分けて地木に與へると云ふが如きは、先般或る人は之を泥坊に追錢と言つたのでありまするが、我々は事實如何なる財産があるか知らないけれども、兎に角斯くの如き不正があつたと云ふことは考へられる、今日新たに出て來る此の林業會法に於て、再び浮び出て來る所のもの、即ち先の亡靈が又此處に出て來るのではないかと云ふ國民の疑ひがあるのであります、自治的統制團體にすることは洵に結構であるが、尚ほ多數の疑ひがあるならば、本案は今少し詳しい説明があるまで其の決定を止め、或は必要に應じては、農林省は本案を御取下になつたら如何かと思ふのであります、森林組合及び其の聨合會があり、或は林産業者があると云ふならば、之に十分なる援助を與へて強化し、整備監督して、國民に必要なる木材を供出せしめる、國家の將來に必要なる木材を生産せしめる、更に不足ならば、從來行はれて居る官行斫伐を盛んにして目的を達成すれば宜い、敢て此の際林業會及び林産組合と云ふものを設ける必要はないのではないかと思ふのであります
内務大臣に對して御伺ひしたいことは、統制法關係のものが非常に多數の違反をなした、行政官吏は其の監督の任務不十分であつたとか、或は日木、地木或は其の關係者が多數の不正をなしたと言はれるのでありますが、それに對して如何なる犯罪件數があり、其の實情、統計等を御示し下さるならば仕合せであると思ひます、殊に闇値に對して強硬なる御處斷が行はれるのであるかどうか、今日食糧の闇屋とか或は戰爭犯罪人等に對して、相當強烈な追放其の他の處分が行はれて居りますが、此の陰に居て大きな利殖を占めた林産業者の不正、或は其の關係者の不正と云ふものが有耶無耶の中に置かれ、或は又林業法を通して浮び出ると云ふことであれば、國家の將來の爲に甚だ憂ふるものであります(拍手)不正が關係方面から指摘されると云ふことに依つて、仕樣なしに此の法案が出ると云ふことであるならば、是は國家として洵に見識のないことであります、曾ては哀龍の袖に隱れとか、虎の威を籍ると云ふ言葉があつたのでありますが、又何ものかを籍りて我々議會に押付けやうとされるものと考へられても致し方がないのではないかと思ふのであります
次に政府の林業政策に付て御伺ひしたいのでありますが、消費者に過大なる負擔を課し、木材は入手出來ない、生産者には過少なる報償を與へると云ふことに依つて、是まで生産と供出の意欲を衰へしめた、之を適正にすることが仕事である、國家の將來の必要なる木材、現下の必要に應じて最も活溌に材木を動かすことが國家の政策である筈であります、滿洲事變以來權力に依つて伐り取られ、十六年五月統制法が出てからも計畫的に伐り取られ、昨年十一月以來は混亂の状態にあります、本法に依つて自治に任す、斯う云ふ方針のやうに承つて居りまするが、今後の政府の政策を本法に依つて出て來る所の自治に任されたのであつては、將來の國家の木材政策が洵に怪しいものになりはしないかと思ひます、森林の造成或は保護等に付ては詳しく御話もありましたが、統制に關する問題、所謂價格統制に關する問題、本年三月に定められて、其の後のことは省に於ては如何にすべきか研究中だと言はれて居ります、今日冬が近付く前に、罹災者等は木材を手に入れることに慌てふためいて居る時に、尚ほ公定は研究中であると云ふやうなことでは間に合はぬと思ひます、又需給の一例に付て申しましても、罹災戸數二百數十萬に對して必要なる木材を一戸當り十五坪とすれば一億二千萬石要ると云ふ統計でありますが、本年復興院關係で考へられて居るのは僅かに十二萬五千戸に對する木材である、罹災戸數の二十分の一にしか相當しないやうに考へられます、斯くの如きことで全國多數の戰災者が此の冬如何に困難に遭遇するか、私は昨冬六疊一間の小屋の中に蚊帳を吊つて、炬達に病人を寢せ、降る雪を避けたことを想ひまして、今日の多數の人達が非常に困難をして居る、是は需給統制に關する政府の方針が十分立つて居らないことに基因するものではないかと思ひます
次に價格のことに付て、闇取引が今日行はれて居る、政府も御承認のやうに、鐵道輸送に依り東京都内に入る木材の六割は闇取引である、其の他のものが住宅營團或は其の他に依るものである、斯う云ふことを聞きますと、自治に任してしまうならば尚ほ當分の内惡魔は跳梁し、國民は正當なる價格を以て木材を入手することは困難であると考へます、之に對する政府の政策を承りたいのであります
次に法規の整理統一のことでありますが、前の議員に依つても聽かれたことである、森林法第十九條の地方森林會なるものがあります、昨年設立された林業會なるものがあります、斯う云ふものと、此の法典に依つて定められるものとの關係がはつきり致さない、又本法が單獨に提出せられることに依つて、從來出て居る所の多數の法規は皆舊式統制主義時代の法規であり、前質問者の聽かれた如くに、修正削除で傷だらけの法典であり、多數の法規が不統一で百面相をなして居る、今度の自治自由なる組織が出來て、之を受取つた場合には、お化けみたやうな多數の法典に、間違つて居つても不當であつても從はなければならないと云ふことになると思ひます、尚ほ本法内に定められてある第一條第二項の、主務大臣に於て定むべき林産物の範圍、木材とは何か、木材及び其の他と言つても、木材の中の單板、「ベニヤ」板、床板、仕組板、樽板其の他仕組建築材と云ふもの、或は木炭、薪、竹材、杉檜皮、是等のものに付てはつきりしなければ、本法案は審議が困難であると思ひます、或は八條又は七十條に規定してある所の税の免除をするものであるか、林産組合の如きは營業を行ふべきであるに拘らず、法人税、所得税、營業税がそれぞれの形に於て免除せられると云ふことは、是はどう云ふ意味のものであるか疑ひを持つのであります
次に科學的研究の指導計畫は如何であるか、森林の造成法、製材方法、保管、運輸の方法、即ち道路を作り、或は汽車、船等に依つて運搬する、或は配給の方法、加工利用の方法、又は森林の未利用資源と云ふやうなものが考へられるに付て、是までの林業は自然的、習慣的な舊式の方法で行はれて居る、今日早急に必要なる建築等も從來とは其の樣式を變へるものであり、土建其の他に於ても作業方式を常に變へるものであります、新しい機械が入り、用具を輸入すると云ふことになれば、動力、電力等の利用、機械の利用、今日の各種藥品を利用して、昔からの自然の方法に依る林産物の處理に付て科學的研究指導が必要である、之に對して未だ内容が示されて居らぬ、豫算にも其の點が明かでないのでありますが、舊式方法に依る木材の規格、鞘とか、石とか云ふこと、寸法の問題、是等を統一し、能率的な、科學的なるものにし、文化水準の高い今日、或は將來に對して一層精密なる研究、十分なる指導の必要であることを考へるのであります、之に對して政府の御方針はないか
尚ほ付隨致しまして、先に質問があつて御答へがないのでありますが、森林所有權に關する制度は農地法の如く行はれるのであるかどうか、社寺關係の國有林、保管林と云ふものがありますが、是は今度の憲法に關係を以ちまして如何に處理せられるものでありますか、以上の要點を擧げまして質問致します(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=18
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019・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 御答へ致します、本法制定の目的は今まで御説明申上げましたやうに、森林所有者と、それから林産業者との協同の力に依つて木材の生産配給を自治的に統制すると云ふのでありまして、官僚の統制を復活すると云ふことではありませぬ、それから政府の林業政策の點に付きましては、先の質問者の方に御答へ致しましたやうに、過伐、増伐に對しましては、五箇年の計畫を立てまして、伐採の跡地であるとか、無立木地の大部分を緑地化する方針であることを御諒承願ひたいと思ふのであります
それから課税の免除でありますが、是は林業會が營利團體でございませぬ故に免除されて居るのであります、それから山林にも亦農地と同じやうに所有の制限を設けるかと云ふ御尋ねでありますが、此の點は設ける意思はございませぬ、それから社寺の保管林でありますが、是は從來の色々の關係もありまするので、境内地の必要な限度に於きましては之を社寺に讓渡致しまするし、又其の他の保管林に付きましても、從來の社寺が持つて居りました點等を尊重して適當に處分致したい、斯樣に考へて居る次第であります
それから森林又は木材關係法規の整理統一の問題でありますが、是は森林に關する法規は、森林行政が非常に古くから行はれて居りまする關係上、色々の歴史を持つて居りまするし、それから又多岐に亙つて居るのでございまするが、まだ整理し得る問題もあると思ひまするので、是は研究の上適當に處理致したいと思ひます
それから自主統制の方式の問題でございまするが、是は林業會でありまするとか、林産組合でありまするとか、森林組合と云ふやうな團體に依りまして、生産なり配給の割當をやりまして、さうして之を自治的に行はせるのであります、併し勿論政府が今度出しまする所の需給調整法に依りまして、必要がありますればそれに依つて裏打をして行くと云ふことは勿論致す考へでありますが、何處までも民意を尊重してやつて行くと云ふ積りであります、是は自治的の統制でありまするので、此の林業團體の組織員と云ふものは、やはり自分達が自主的にやつて行くと云ふことで十分自覺されまして、此の政府の施策に協力し、統制の實を擧げて行くやうに努めて戴きたいと思ふのであります、價格の點に付きましては、是は御説のやうに木材が基本的な物資でありまして、其の影響する所は非常に大きくございまするので、他の物價との關係を考へまして、適當に是は決めたいと研究致して居る次第であります
それから林業竝に林産物に付ての科學的な研究でありますが、是は御説の點は全く同感でありまして、差詰め林業試驗場の再建の爲に四百萬圓の豫算を計上して支出を致す豫定でございまするが、又民間の研究機關の動員に付きましても十分考慮致す考へでございます、簡單でござりまするが、大體以上で御答へ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=19
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020・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 仲子君に申上げます、内務大臣は今急に用事が出來まして、一寸席を外しましたが、是で宜しうございまかす発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=20
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021・仲子隆
○仲子隆君 政府委員か誰か代つて説明は出來ませぬか、内務省關係の政府委員が來て居られませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=21
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022・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 先程の御質問の點は司法大臣の管轄でせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=22
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023・仲子隆
○仲子隆君 後來の法規にある所では内務大臣の管轄と思ひますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=23
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024・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) それでは後刻それに對する御答辯をすることに致しまして…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=24
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025・仲子隆
○仲子隆君 それでは宜しうございます、以上で私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=25
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026・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 伊藤實雄君
〔伊藤實雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=26
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027・伊藤實雄
○伊藤實雄君 私は無所屬倶樂部を代表致しまして、本案に付きまして數點に亙つて關係大臣の所見を承りたいと存ずるのであります、而も先日來本案に付きましては色々な角度から御質問があつたのでありますが、私は實際に第一線に於て働きましたる此の事實より、只今上程中の本案が無意味である、此のことに付て主務大臣の所見を御伺ひ致したいと存ずるのであります
先づ第一點は只今上程になつて居りまする所の林業會法案に依りますと、縣森聯と林産組合との合體である、換言すれば現在あります所の木材統制法と何等變つたものではないと、斯樣に考へざるを得ないのであります、政府は昨年十二月、木材統制會社の運營方法が惡いのか、將又是が不必要と思はれたのか分りませぬが、縣森聯をして木材需給の權利を地方長官の命に依つて代行致さしめたのであります、茲に於て縣森聯と致しましては孜々營々として木材需給の完璧を期しまして、現在木材に於ては左樣な非難を受けないのが現状であるのであります、然らば木材統制會社、所謂地木はどのやうな仕事を致して居るか、此の點を檢討すれば、只今統制會社が原木を買ひますには一石當りに付て二十五圓が仲値であります、之を生産組合が買ひまして、伐採致して運賃を付けて地木に出す、運賃等算入致しまして大體七十圓程度になるので、十圓の利潤を見まして八十圓で地木へ賣出す、地木は此の八十圓に對して概ね三十圓の製材賃を掛けまして百十圓でありますが、是は製材すれば五分止りになつて來る、隨て二百十圓乃至二十圓であつたものを、現在木材價格が御承知の如く殆ど悉く三百圓以上であります、即ち財閥に近い所のあの業者と役人の古手の作つた所の此の統制會社が、朝九時に出て夕方三時半に歸つて、さうして一石に付て百圓ばかり儲けて居ると云ふのが現在の地木のやり方であります(拍手)是に於て所有者でありまする所の農家に於きましては、一本が二十五圓、所謂一石の木を作らうとすれば、如何に土地の良い所でありましても少くとも三十年を要しますが、三十年を要したる所の此の大切な木一本と、木材會社が一瞬にして儲ける所の利益を比較檢討致します時に、何と其の利潤の三分の一にも相當しないと云ふことになりますから、山林所有者は木材を賣ることを非常に惜んで來て居るのが現状であるのであります、隨ひまして私は農林大臣に御尋ね致したいことは、斯樣な我々と致しましては考ふべからざる不當な利益を取つて居る所のあの木材統制株式會社の如きものを、又名前を變へて林業會として御出しになる其の趣旨は何處にあるか、我々お互ひに考へまするに、此の百圓と云ふ利潤を半分は山林所有者に與へ、半分を受配給者に與へましたならば、初めて物價の低下を期し得られ、而して所有者も喜んで原木を出して行くのではないか、さうして初めて茲に木材の需給關係の完璧を期することが出來るのではないかと考へるのであります、併しながら先日來の御答辯に依ると、是は自主的にとか何とか申されるけれども、森林組合員である所の所有者は殆どの方が農家であります、併しながら林産組合であります方は一つの商賣人である、して見れば商賣人と云ふものはどうしても大衆、農民より利口である、是に於て官憲と手を握りまして、從來の木材統制株式會社の如く我々所有者、農民を徹底的に壓倒すると云ふことは、明かな事實であると確信して疑はないのであります、之を強ひて農林大臣は此の木材統制會社と同じやうなものを作らうとされる所見に付て、今一入御親切に、我々が納得行くまでに御説明の程を切に懇願して巳みませぬ
第二點は薪炭問題でありますが、是は林産物の決め樣が私は惡いと思ふ、只今の法令に依りますと、林産物とは木材其の他森林から産出するもので主務大臣の指定するものと書いてある、森林組合が單位々々の森林組合に對して木を伐採させて、之を焚物にしたら何が故に是は林産物でないのか、斯う云ふことを主務大臣に於て決定すると云ふ、左樣な必要が何處にあるか、隨ひまして薪炭問題に付て現在の事情を見ますと、私の出身の廣島縣に於て、是は私が目の前に見て居りますから申上げるのでありますが、現在廣島に於ては尺二の二號と云ふ薪、即ち一尺二寸で二尺五寸の繩を二廻りでありますから、一廻りが一尺二寸五分、直徑四寸、是ればかりの薪一把の配給價格二圓七十五錢であります、此の二圓七十五錢を、燃料統制配給會社がなんと驚く勿れ七十五錢取つて居る、さうして木炭事務所が七十錢取つて居る、生産者に對しては半分に足りない一圓三十錢しか拂つて居らぬ、是で以て薪炭の出よう筈がない、而も是が遠方に行くなら宜いのでありますが──遠方と近い所に依つて運賃が「プール」計算で統制會社の利益が違ふのでありませうから、遠方ならまだ宜いが、廣島縣の例を見ますと、此の薪を十五里も二十里も持つて行くのぢやない、遠くて五里か三里である、そこで我々が常に目撃することは、町内配給の場合非常に生産者に不安な考へを持たせる、どう云ふことになるかと云ふと、單位森林組合が、やれ薪を出せ、薪を出せと請求する、さうして集荷の命令の時に持つて行きます、持つて行きますると、是は代金が一圓三十錢である、隣の方は之を配給を受けられる、持つて行つたものを直ぐ持つて歸つて、あの統制會社の帳面を通すのみに於て、なんと一圓三十錢が、一圓四十五錢手數料を取られて二圓七十五錢で配給されて居るのが現状であると思ふのであります(拍手)斯樣な燃料配給統制組合と云ふものは、正しく其の仕事は縣森聯に代配給の權利を與へるものであると私は信じて疑ひませぬ、即ち縣森聯は森林所有者の保護團體である、我々農民である所の森林所有者を援ける所の團體である、之に依つて斯樣な代行配給を致した時に初めて森林所有者の爲に行ひ、それが隨て配給の完璧を期するものだと私は信じて疑はない次第なのであります
尚ほ御伺ひ申上げたきことは、政府の木炭事務所と云ふものが薪一把に付てなんと七十錢を取つて居る、而もそれは配給價格二圓七十五錢の薪で以て七十錢も取つて居る、此の金は一體どうするのであるか、此のことに付て詳細なる御答辯を御願ひ申上げたいのであります
其の次には統制會社の問題でありまして、一寸話が横になると皆樣仰しやるかも知れませぬが、暫く時間を與へ給はりまして、一般配給會社、配給組合のことに付て農林大臣に御尋ねを申上げたいと思つて居ります、只今戰爭の遺物として殘つて居る統制組合、就中藷類統制會社を見ますと、現在は主要食糧とあつて、非常に生産増強の意味から或は生産奬勵金とか、或は二重價格制の如きことを布いて居られまするから、私は之を目のあたり見ることは出來ませぬが、一昨年、生産奬勵金のない時、二重價格制のない時を見まするに、我々が農家に對して供出を御願ひ申上げましたのは一貫當り二十二錢である、さうして我々町村長竝に農業會長は、やれ出せと言つて厭な顏をされて御願ひ申上げ、一生懸命汗と膏を以て百姓に御願ひを申上げて、二十二錢で集めた藷を直ちに食糧營團に持つて行く、食糧營團では直ちに之を配給して、其の配給の跡をずつと見ますと、一番難儀をしました所の町村農業會は一貫目に付て一錢五厘の口錢であります、此の一錢五厘は農家に戻つて來る、農業會に戻つて來る、是は五錢でも宜い、併しながら我々が集めて食糧營團に持つて行つて、直ちに配給をさして、唯我々の報告に依つて帳面を通す所のあの藷類統制株式會社は、なんと驚く勿れ二十二錢から七錢取つて居る、二十二錢に對して七錢取つて居る、食糧營團は二錢五厘取つて、之を一錢五厘、二錢五厘、七錢と取つて三十三錢で配給した、一番多く取つた所のあの統制會社は何等苦勞もしない、帳面をずらずらとやつて三時半に歸る、さうして七錢取つて居る、さうして人に惡口を言はれて、外道などと言はれる農業會長、町村長の方は、是は個人で取るのではない、農家の保護團體であるから農家の收入になる、是がなんと一錢五厘である、農家の立場を考へて見ますると、あの四月から温床を作つて藷苗を作る、五月の雨を狙つて藷を植付け、夏の肥培管理、さうして秋に之を掘りまして、やれ供出と云ふので俵を工面し、叺を買ひ歩いて、十五貫入の叺がなんと一圓五十錢、縄を買ふと二圓、さう致しますと一貫匁に付て十二、三錢に付くぢやないか、二十二錢はほんの少しのやうに見えるけれども、農家の本當に取ります一貫匁の値段は十錢にも足らぬ、之を以て出せと言つてもどうして出ますか、作れと言つたつて作る譯はない、此の統制組合が七錢取ると云ふことがはつきり分つて、尚更農家としては此の統制組合の不要なることを感じたのであります、斯樣な戰時下に於きまする所の遺物である要らざる統制組合が、或は帝國薪炭株式會社ですか、まあ數へれば數限りありませぬ、こんなものは直ちに全面的に廢止致して貰ひたいと存ずるのでありまするが、之に對して農林大臣は如何やうに考へて居られるか、農林大臣の御所見を承りたいと存ずるのであります
其の次に林業會法に戻りますが、若し本法を施行致しまするとするならば、是は先日來農林大臣の仰しやる如く、強制的なる所の設立ではない、自主的なる設立と仰しやるけれどもが、若し自主的で之を設立せんと致します時に於て、縣森聯と致しましては、現在縣森聯が木材需給關係を扱つて居るではないか、此の儘で宜いのではないか、我々は絶對に林業會を作らない、林業會法に依る所の林業會を作らないとなつたら、一體農林大臣は如何に處置相成るや
尚ほ更に表決權問題でありますが、表決權に付きましては、勿論農林省と致しましては縣森聯が一、林産組合が一だから雙方より同數の議員を出して表決すると仰しやるでありませう、併しながら林産組合なるものは森林所有者の何百分の一に相當して居る、而もそれは生活に苦勞のない方である、少數の此の勢力家を助けて、多數の農民である所の森林所有者を壓倒せんとするが如き、同數なる所の議員を以て決定されることは、正に森林所有者の彈壓である、茲に於て森林所有者は木材統制會社と同じやうな憂き目に遭はなければならぬと云ふことを私は憂慮致して居るものであります、此の表決問題に付きましては農林當局は如何に御考へになつて居られるか、當局の御所信を御伺ひ致したいのであります
尚ほ續きまして植林問題に付て御尋ね申上げまするが、戰時非常伐採に依る所の植林必要總面積は只今百萬町歩位であらうと聞いて居ります、此の戰時非常伐採と云ふものは國が命令を以て伐採らした筈の山である、隨て國家は之に植林する所の義務がある、併しながら所有權が各各にあるのでありますから、全額國が補助せよとは私は申しませぬ、本年植林事業に對しまして幸ひに一町歩當り一千四百四十圓植林費を見られまして、其の半額補助に御決定になりまして、七百二十圓の補助になりましたことは、我々が御當局に敬意を表する譯でありますが、只今一町歩の植林に對しましては最低二千圓を要する、して見れば本年度改定豫算に於て昨年の三百六十圓を千四百四十圓に改め、茲に七百二十圓の補助金を貰ひましても、尚ほ千三百圓を森林所有者は出さなければならぬ、併しながら現在のあの新圓の不自由なる時に於て、森林所有者は一町歩千三百圓を出すことは出來難い、尚ほ加之山林と云ふものは御承知の如く本年植林を致しまして、最低二十五年しなくては收入のあるものではありませぬ、隨ひまして此の植林問題に付きましては私は常に思ふのでありまするが、自作農創設の如く低利で長期の資金貸付の方法は御考へがあるのかないのか、之に付て大藏大臣の將來の此の計畫に付ての詳細なる御所見を承りたいのであります
尚ほ此の施業計畫に付きましては、一昨日の農林大臣の御話では二百何十萬町歩あるが、之に對して本年は四十何萬町歩やる、而も一億に足らない所の補助金であると仰しやいましたが、一體政府は現在の苗木は幾らである、勞働賃金は幾らと計算をして居られるか、政府の植林に對する詳細なる計畫を茲に御發表あらんことを切に御願ひ申して置きます、尚且斯うすることに依つて農家は初めて愛林の念を深く致しまして、以て一日も速かに植林を致さなくちやならぬと勵んで、植林に懸命なる努力を致します時に於て、初めて此の山林が繁茂致しまして、耕地に最も必要なる所の水利の便を得ることも大である、又水害の時に於きまして耕地が荒れないと云ふ所の、水害を免れることにも亦大なる威力を持つて居るのであります、是に於て農林大臣は我々三千萬の農民が唯一人の親として仰いで居り、頼んで居る所の大臣である、どうぞ三千萬農民の親として、此の三千萬農民を可愛がつてやる此の心に於て眞劍に御考へになりまして、以上五つの點に付きまして明確なる御答辯を御願ひ申上げたいと存ずるのであります(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=27
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028・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 伊藤さんの御質問に御答へ致します、此の林業會が統制會社に結局變るやうなものではないかと云ふ御尋ねでありまするが、是はさうではありませぬ、此の林業會は統制會社のやうに一手買取を行ふのではないのでありまして、何處までも森林所有者の團體でありまする森林組合と、それから業者の團體でありまする林産組合とがお互ひに話合つて、納得づくで統制をして行かうと云ふのでありまして、木材統制會社のやうに一手買取販賣をやるやうな特權的なものではないのであります、隨ひまして此の兩者は本質的に違ふのでございますから、左樣に御諒承を御願ひ致します
それから戰時中に出來ました統制會社一般の廢止の問題でありまするが、是は私が豫算總會に於て屡屡御答へ致しましたやうに、一般論としましては、統制會社であるからと云つて直ぐ廢止しろと云ふことは私は即斷だと思ふのであります、それぞれの機關に於きましてはそれぞれの機能があるのでありまして、其の機能を誰が行つた方が國家的に見てより良いかと云ふ觀點から私は判斷すべきものである、斯樣に思ひます、併し御指摘のやうな藷類統制會社に於きましては、是は私は廢止すべきものである、斯樣に考へて居ります(拍手)隨ひまして農林省關係のものに於きましては、十分實績を檢討致しまして、私は廢止するか廢止しないかを決定致したい、斯樣に考へて居ります、農業會がそれに代つてより良いものであると云ふ一般論は必ずしも成立たないのであります、此の點は十分に現實を見まして、觀念に趨ることなくやつて行きたいと私は考へて居ります(拍手)
それから此の林業會に於きましては、強制設立の制度は認めて居りませぬ、併し此の林業會の結成に付きましては、森林所有者の方に於きましても、又林産關係業者の方に於きましても要望があるのでありまして、我々は其の要望に應へて是が事實結成されることを確信致して居ります、隨ひまして若しもどうしても結成しないと云ふことになりますれば、自主的に統制すると云ふことは其の縣では出來ないのであります、私は是は日本の木材界及び森林業者の爲に甚だ悲しむ者であります、民主的な政治になりまするならば、宜しく自覺を致しまして、凡ゆる總ての批判は批判として、積極的に自主的に問題の解決に乘出すべきものであると私は確信を致します(拍手)
それから林業會の總會に於ける表決權の問題でありますが、是は定款等の規定に依つて、林産組合側の議員と森林組合側の議員とは同數と致すことにして、其の間の調整は圖つて行きたい、斯樣に考へて居ります
森林組合が生産から集荷、配給までを一元的に十分實力を持つてやりますことに付きましては、私は極めて喜ぶべきことと思つて居ります、併し現在の森林組合の總てがさうであるとは言はないのでありまして、此の差迫つた木材の生産、集荷、配給をやる爲には、それぞれの實力に應じて其の間の協調を以て此の問題に善處して行くことが適切であると考へますので、本林業會法案に依つて其の點を善處せんとしたのであります
それから政府の此の薪炭賣買價格に關する「マージン」の問題でありますが、是は政府が買上げまして、それから發驛までに行きまする所の小運送賃が主なるものでありまして、此の昂騰の爲に、特別會計は此の程度の「マージン」を以てしては實際經費の負擔が困難な状況なのであります、さうして又消費地に於ける燃料配給統制組合の「マージン」も、亦同樣に引取配給の小運送費の昂騰の爲に一見多額の「マージン」と見られまするが、併し之を以てしても中々組合員の所得は多くない状況でありまして、其の點に付きましては政府として十分に監督を致して居るのであります、細かい數字に付きましては、私は委員會等に於て發表致しまして御檢討を御願ひ致したいと思ひます、我々は勿論生産者と云ふものが國民所得の上に於きまして適正なる配分を持つことは此の上もなく願ふことでございまするが、併し國民經濟は單に生産者のみならず、又配給者、消費者の全體が形成致して居るのでございまするが故に、是が循環を圓滑ならしめまする爲には、それぞれの分野に於て其の機能に從つて、適正なる所得を各各が得て圓滿にやつて行くことが一番宜いと思ふのであります、勿論中間の業者が生産者を搾取するが如きことがありまするならば、監督官廰である我々と致しましては十分其の點を注意致す考へで居るのであります、以上大體御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=28
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029・伊藤實雄
○伊藤實雄君 農林大臣の御答辯に對しましては、私合點の行かぬ點がありまするから、是は委員會に於て御尋ねを申上げます、但し植林事業に對しまする所有者負擔の莫大な金額を長期低利の貸付方法、金融面に付て大藏大臣の御所信を伺ひたいと思ひます──大藏省の政府委員はいらつしやいませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=29
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030・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 居ります──上塚政府委員
〔政府委員上塚司君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=30
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031・上塚司
○政府委員(上塚司君) 植林が刻下喫緊の事業でありますることは言を俟たない所であります、之に關しましては農林當局に於て十分の努力を致して居られることであります、而して只今御尋ねの長期貸付のことに付きましては既に農林方面に關する金融機關、即ち勸銀、農林中央金庫等の機關がありまして、之を通じて出來るだけ御趣旨に副ふやうに致したいと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=31
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032・伊藤實雄
○伊藤實雄君 以上で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=32
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033・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是にて質疑は終了致しました、本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=33
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034・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名二十七名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=34
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035・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=35
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036・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=36
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037・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の日程を延期し、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=37
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038・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=38
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039・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後四時九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02619460808&spkNum=39
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