1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年八月十三日(火曜日)
午後二時十三分開議
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議事日程 第二十七號
昭和二十一年八月十三日
午後一時開議
第一 會社經理應急措置法案(政府提出) (緊急事件)
第二 金融機關經理應急措置法案(政府提出) (緊急事件)
第三 商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
第四 工業所有權法戰時特例を廢止する法律案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
第五 罹災都市借地借家臨時處理法案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
第六 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
第七 辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 諸般の報告を致させます
〔書記官朗讀〕
一、昨十二日豫算委員長から次の要求書を受領した
要求書
一 昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算案
右は昭和二十一年七月二十四日に提出せられたるも昭和二十一年度特別會計改定歳入歳出豫算案が遲延して八月三日に提出せられたるため議院法第四十條第一項の期間内に審査終了の見込なきものと認めここに同條第三項により四日間の審査期間延長を要求する
昭和二十一年八月十二日
豫算委員長 矢野庄太郎
衆議院議長樋貝詮三殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=1
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002・会議録情報2
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〔朗讀を省略した報告〕
一、昨十二日政府から次の要求書を受領した
一、會社經理應急措置法案
一、金融機關經理應急措置法案
右議院法第二十七條但書及び第二十八條但書によつて議定せられたく要求致します。
昭和二十一年八月十二日
内閣總理大臣 吉田茂
衆議院議長樋貝詮三殿
一、政府から提出された議案は次の通りである
會社經理應急措置法案
金融機關經理應急措置法案
(以上八月十二日提出)
一、議員から提出された議案は次の通りである
國民優生法中に一條挿入に關する建議案
提出者 田中たつ君
豐後森、宮原間鐵道敷設速成に關する建議案
提出者
渕田長一郎君 坂田道太君
手取川改修工事促進に關する建議案
提出者 竹田儀一君
金澤市に北陸帝國大學設置に關する建議案
提出者
殿田孝次君 橘直治君
竹田儀一君 米山久君
綿貫佐民君 今井はつ君
麻生正藏君 坪井信三君
奧村又十郎君 稻田健治君
堂森芳夫君 中田榮太郎君
青木清左ヱ門君 五坪茂雄君
江川爲信君
國立輿論調査研究所設置に關する建議案
提出者 大石ヨシエ君
衆議院議員の宿舍たるバラツク建築に關する建議案
提出者 大石ヨシエ君
(以上八月十二日提出)
漁民協同組合法案
提出者
田原春次君 澁谷昇次君
吉川兼光君 奧村又十郎君
細田綱吉君
高松經濟専門學校の大學昇格に關する建議案
提出者
福田繁芳君 豊澤豊雄君
松浦薫君
民營バス事業と競合する省營バス事業對策に關する建議案
提出者
八坂善一郎君 大原博夫君
森崎了三君 河原田巖君
木下榮君
(以上八月十日提出)
一、去十日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
遞信事務官 大野勝三
同 小笠原光壽
第九十囘帝國議會遞信省所管事務政府委員被仰付
遞信事務官 小池行政
第九十囘帝國議會遞信省所管事務政府委員被免
一、去十日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第一部選出豫算委員 五坪茂雄君
第三部選出豫算委員 松原一彦君
第三部選出豫算委員 金光義邦君
第五部選出豫算委員 犬養健君
第五部選出請願委員 冨田ふき君
第六部選出豫算委員 中島茂喜君
第七部選出豫算委員 舟崎由之君
第七部選出豫算委員 成島勇君
第八部選出豫算委員 松川昌藏君
第八部選出豫算委員 細川八十八君
第九部選出豫算委員 藥師神岩太郎君
一、去十日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第三部選出
豫算委員 大宮伍三郎君(松本六太郎君補闕)
一、去十日議長に於て次の委員を選定した
恩給法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
磯崎貞序君 北浦圭太郎君
小島徹三君 坂田道太君
圓谷光衞君 亘四郎君
有馬英二君 小野瀬忠兵衞君
齋藤てい君 白井秀吉君
及川規君 冨吉榮二君
松尾とし君 森本義夫君
川越博君 平野八郎君
久芳庄二郎君 布利秋君
昭和十九年度第一豫備金支出の件(承諾を求める件)外十一件委員
菊池長右ェ門君 田中重彌君
高橋英吉君 瀧清麻吉君
本多市郎君 三ツ林幸三君
神戸眞君 宮原庄助君
最上英子君 山崎岩男君
鈴木茂三郎君 堤隆君
中崎敏君 松永義雄君
二階堂進君 藤井正男君
小川一平君 笠井重治君
一、去十日次の通り特別委員の異動があつた
會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)委員
辭任 太田秋之助君 補闕 椎熊三郎君
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)外三件委員
辭任 中田榮太郎君 補闕 石崎千松君
辭任 磯田正則君 補闕 伊藤幸太郎君
一、昨十二日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第四部選出豫算委員 北村徳太郎君
第七部選出豫算委員 平野増吉君
第九部選出請願委員 吉川兼光君
一、昨十二日委員長理事互選の結果次の通り當選した
恩給法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
委員長 北浦圭太郎君
理事
小島徹三君 坂田道太君
小野瀬忠兵衞君 冨吉榮二君
昭和十九年度第一豫備金支出の件
(承諾を求める件)外十一件委員
委員長 神戸眞君
理事
高橋英吉君 本多市郎君
山崎岩男君 松永義雄君
一、昨十二日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第一部選出
豫算委員 早川崇君(五坪茂雄君補闕)
第三部選出
豫算委員 中田榮太郎君(松原一彦君補闕)
第三部選出
豫算委員 長尾達生君(金光義邦君補闕)
第五部選出
豫算委員 青木泰助君(犬養健君補闕)
第五部選出
請願委員 中野寅吉君(冨田ふさ君補闕)
第六部選出
豫算委員 福田繁芳君(中島茂喜君補闕)
第七部選出
豫算委員 寺島隆太郎君(舟崎由之君補闕)
第七部選出
豫算委員 西山冨佐太君(成島勇君補闕)
第八部選出
豫算委員 石原圓吉君(松川昌藏君補闕)
第八部選出
豫算委員 川崎秀二君(細川八十八君補闕)
第九部選出
豫算委員 田中実司君(藥師神岩太郎君補闕)
一、昨十二日次の通り特別委員の異動があつた
罹災都市借地借家臨時處理法案(政府提出、貴族院送付)委員
辭任 有田二郎君 補闕 木村公平君
自動車交通事業法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
辭任 海野三朗君 補闕 川島金次君
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003・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きます、豫算委員長より申出の通り、豫算審査期間を四日間延長することに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=3
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004・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て左樣に決しました
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005・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第三及び第四の兩案を繰上げ一括上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=5
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006・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=6
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007・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第三、商工經濟會法を廢止する法律案、日程第四、工業所有權法戰時特例を廢止する法律案、右兩案を一括して第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長北村徳太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=7
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008・会議録情報3
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第三 商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
第四 工業所有權法戰時特例を廢止する法律案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月十日
委員長 北村徳太郎
衆議院議長樋貝詮三殿
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報告書
一 工業所有權法戰時特例を廢止する法律案(政府提出)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月十日
委員長 北村徳太郎
衆議院議長樋貝詮三殿
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〔北村徳太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=8
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009・北村徳太郎
○北村徳太郎君 本委員會に付託せられました商工經濟會法を廢止する法律案竝に工業所有權法戰時特例を廢止する法律案の審議の經過竝に結果を御報告申上げます
本件に付きましては委員會を開くこと四囘、各委員は終始極めて熱心に審議致したのであります、先づ商工大臣から兩法律案の提案理由に付て詳細なる説明があり、續いて質疑に入り、各委員から示唆に富んだ、又建設的なる意見を伴ふ傾聽すべき質疑がありましたが、其の詳細に付きましては之を速記録に讓ることに致しまして、此處では極めて簡單に要旨だけを申上げることに致したいと存じます、先づ商工行政の在り方が、依然として監督行政であるか、又は指導行政を以て一貫せんとするのであるかと云ふ根本理念から論旨を發展させ、我が國産業經濟の根幹たる商工、農業、水産の三大大系中、水産、農業は依然として法に基く團體としての存在を許し、濁り商工に關してのみ今囘特別法的の存在を認めないのは、如何なる理由に依るものであるかと云ふ質問が多く出たのであります、更に特に中小商工業の將來、又其の金融問題に亙り活溌なる質問が行はれ、商工經濟會法廢止後の團體の形態、新團體の運營方法、現在の商工經濟會解散の場合の財産の處分方法等に關して質疑應答があり、又工業所有權の公開、現行特許法中速かに改正を要する封建的規定の指摘、發明奬勵の具體的方策と發明の企業化、發明の工業化、發明家が動もすれば資本家の從屬的地位に立たしめられる幣害、發明家の保護、技術の尊重、技術家優遇等々の切實なる諸問題より、工業規格の統一、度量衡の統一等々、更に廣く纖維工業、石炭、鐵鋼、貿易等、商工行政全般に關しまして、熱心にして而も周到なる準備に基く質疑があり、是等に對しまして商工大臣及び政府委員よりそれぞれ答辯があつたのであります
斯くして討論に入りまして、先づ自由黨を代表して細田忠治郎君より商工經濟會法の廢止に關聯致しまして、本法の廢止は可なるも、新團體の結成に當つては租税公課の減免等の助成方策を講じ、既存の權利義務の承繼の手續を出來るだけ簡素ならしめ、又許可認可事項等は官僚的なる舊態を脱却すべき旨の希望があり、續いて進歩黨の九鬼紋十郎君、協同民主黨の河野金昇君より、政府側に對して、答辯の責任を負つて貰ひたい、單なる一片の答辯に終らしめないやうに答辯の責任を負はれんことを附言致しまして、原案に對して贊成の旨の發言がありました、斯くして採決に入り、全會一致を以て本案を原案通り可決することに贊成致したのであります、以上簡單でありますが御報告申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=9
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010・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 兩案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=10
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011・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て兩案の第二讀會を開くに決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=11
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012・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに兩案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して委員長報告の通り可決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=12
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013・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=13
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014・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに兩案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=14
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015・会議録情報4
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商工經濟會法を廢止する法律案
第二讀會(確定議)
工業所有權法戰時特例を廢止する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=15
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016・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して、兩案とも委員長報告通り可決確定致しました(拍手)
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017・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第五乃至第七の三案を繰上げ一括上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=17
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018・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=18
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019・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第五、罹災都市借地借家臨時處理法案、日程第六、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案、日程第七、辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案、右三案を一括して第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長本田英作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=19
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020・会議録情報5
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第五 罹災都市借地借家臨時處理法案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
第六 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
第七 辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 罹災都市借地借家臨時處理法案(政府提出、貴族院送付)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月十二日
委員長 本田英作
衆議院議長 樋貝詮三殿
附帶決議
一、本法は、罹災建物竝びに疎開建物の借主居住者等を保護することを目的とはしてをるけれども、自己建家のできるものだけが救はれる。政府は權利があつて力のない者のために、適切の對策を樹つべきこと。
二、政府は、都市計畫中不急のものは後廻しとし、先づ住むに家なき者のために、急速に居宅を與へるやう努力すること。
三、政府は、積極的に本法を活用し、戰災復興院、厚生省等の行政機關を動員し、裁判所鑑定委員會、調停委員會と協力し、戰災都市の復興、罹災者、疎開者、歸還者の保護に萬全を期すると共に、住宅營團の事業實施の實情をも檢討し、その促進の方法を講ずべきこと。
四、本法による事件に對する非訟事件手續は成るべく公開し、その證據は制限せず、自由且つ十分に立證させること。
五、鑑定委員及び調停委員には少くとも半數位の借地借家人たる居住者又は居住者の代表を選任參加せしめ、尚ほ復興關係の官吏も適宜參加せしめること。
六、本法の公示方法たる新聞廣告は、御座なりの廣告に了らぬやう活字の大きさ及び掲載紙面等を指示すること。
七、本法に關聯しての提訴又は調停の申立があつた場合には、裁判所は申立により一應の疏明を以つて無保證又は極めて小額の保證を立てしめ、所有權の移轉、賃借權の設定、借地權の讓渡、建物の建築等を禁止或ひは制限する等適切な假處分を簡易に許すこと。
八、本法に關する裁判、殊に無權限で罹災又は疎開土地を侵害してをる者に對する裁判は簡易迅速な方法でやるべきこと。
九、戰災保險金及び疎開補償金に對する課税については、住宅建築竝びに最低生活に必要な金額を免税點とし、自力建築、自力復興に必要な限度の封鎖引出しを認めること。
十、本法第二十九條第一項を善用し、戰災都市の荒廢地には農耕菜植を奬勵すること。
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報告書
一 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月十二日
委員長 本田英作
衆議院議長樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月十二日
委員長 本田英作
衆議院議長樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
〔本田英作君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=20
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021・本田英作
○本田英作君 只今上程になつて居りまする三法律案の委員會の經過及び結果を順次御報告申上げます
第一、罹災都市借地借家臨時處理法案、此の法案は大正十二年關東大震災に於ける借地借家關係の調整を目的として制定せられました借地借家臨時處理法竝に今次の戰爭に於ける空襲其の他の災害に因り被害を蒙りたる全國七十二の都市の借地關係を調整する爲め制定せられました戰時罹災土地物件令、此の一つの法律と一つの勅令とが九月三十日を以て效力がなくなりますから、此の法案が提出せられました譯であります、此の法律の狙ひは、濁り罹災土地に限らず、疎開跡地の借地借家關係をも調整しようと云ふのであり、又罹災土地又は疎開土地の當時の借家居住者に借地權を取得し得るの途を開くと共に、反面土地所有者又は借地權者の權利をも明確にし、仍て以て速かなる戰災都市の復興、戰災者の保護に任じようと云ふのであります
委員會は囘を重ぬること十囘、委員殆ど全部から重要にして適切なる質疑があり、政府委員からも懇切丁寧なる答辯がありましたが、是は會議録の御一覽を御願ひ致しまして、此處に一々報告することを省略致します、唯全委員の物足りなく思つた點は、終戰以來既にまる一年になるのでありますが、戰災都市の復興は遲々として進まないのであります、戰災者、疎開者の大部分は今でも安住の居宅を有しないのであります、然るに曩に本院を通過致しました特別都市計畫法は所謂百年の大計で、今日明日の間に合はない、却て現在ある家で其の法の實施の爲に解き崩さなければならぬと云ふやうなものもあるやうな譯でありまして、而も本案は司法省の立案に係りまして他省との關聯性に乏しく、自力更生の力ある者は權利の實行が出來るけれども、力のない者は權利の上に空しく眠らなければならぬと云ふやうな結果となるのであります、茲に於て委員會は全員一致を以て原案を可決すると共に、左の附帶決議を致しました、茲に附帶決議を申上げます
附帶決議
一、本法は、罹災建物竝びに疎開建物の借主居住者等を保護することを目的とはしてをるけれども、自己建家のできるものだけが救はれる。政府は權利があつて力のない者のために、適切の對策を樹つべきこと。
二、政府は、都市計畫中不急のものは後廻しとし、先づ住むに家なき者のために、急速に居宅を與へるやう努力すること。
三、政府は、積極的に本法を活用し、戰災復興院、厚生省等の行政機關を動員し、裁判所鑑定委員會、調停委員會と協力し、戰災都市の復興、罹災者、疎開者、歸還者の保護に萬全を期すると共に、住宅營團の事業實施の實情をも檢討し、その促進の方法を講ずべきこと。
四、本法による事件に對する非訟事件手續は成るべく公開し、その證據は制限せず、自由且つ十分に立證させること。
五、鑑定委員及び調停委員には少くとも半數位の借地借家人たる居住者又は居住者の代表を選任參加せしめ、尚ほ復興關係の官吏も適宜參加せしめること。
六、本法の公示方法たる新聞廣告は、御座なりの廣告に了らぬやう活字の大きさ及び掲載紙面等を指示すること。
七、本法に關聯しての提訴又は調停の申立があつた場合には、裁判所は申立により一應の疏明を以つて無保證又は極めて少額の保證を立てしめ、所有權の移轉、貸借權の設定、借地權の讓渡、建物の建築等を禁止或ひは制限する等適切な假處分を簡易に許すこと。
八、本法に關する裁判、殊に無權限で罹災又は疎開土地を侵害してをる者に對する裁判は簡易迅速な方法でやるべきこと。
九、戰災保險金及び疎開補償金に對する課税については、住宅建築竝びに最低生活に必要な金額を免税點とし、自力建築、自力復興に必要な限度の封鎖引出しを認めること。
十、本法第二十九條第一項を善用し、戰災都市の荒廢地には農耕菜植を奬勵すること。
以上の附帶決議に對しましても、委員會は全員一致を以て可決致しました此の段御報告致します
次に訴訟費用等臨時措置法案、此の法案は諸物價の暴騰に伴ひ民事訴訟費用、刑事訴訟費用、執達吏手數料等を値上する案でありまして、本格的改正法の發案實施せられるまで中間的に措置致さうと云ふ法律の趣旨であります、是れ亦質疑應答の末、委員會は全會一致を以て原案を可決致しました、詳しいことは何卒會議録を御覽を御願ひ致します
最後に辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案、本案は朝鮮引揚同胞辯護士の救濟が目的であります、其の數は辯護士として五十六人、試補として五人と云ふことであります、御承知の通りに臺灣及び關東州に於ては内地と同じやうな辯護士の資格になつて居るのでありまするが、朝鮮だけでは日本人辯護士には特別任用の途があつたのであります、其の人等を審査委員會の銓衡に掛けまして、特例として内地に於ても資格を與へようと云ふのが本法案の内容であります、本案も適切なる質疑應答の上、全會一致を以て原案を可決致しました、是れ亦詳しきことは會議録に讓ります、以上三法律案に付き甚だ簡單ながら御報告申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=21
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022・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 三案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=22
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023・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て三案の第二讀會を開くに決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=23
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024・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに三案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=24
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025・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=25
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026・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに三案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=26
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027・会議録情報6
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罹災都市借地借家臨時處理法案
第二讀會(確定議)
訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)
辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=27
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028・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して、三案とも委員長報告通り可決確定致しました(拍手)日程第一及び第二の兩案に對しては、政府より議院法第二十七條但書竝に第二十八條但書に依る要求がありました、仍て委員に付託せず、且つ讀會の順序を省略することに致します、兩案は之を一括して議題となすに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=28
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029・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て日程第一、會社經理應急措置法案、日程第二、金融機關經理應急措置法案、右兩案を一括して議題と致します──石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=29
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030・会議録情報7
――――◇―――――
第一 會社經理應急措置法案(政府提出) (緊急事件)
第二 金融機關經理應急措置法案(政府提出) (緊急事件)
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會社經理應急措置法案
經理應急措置法
第一條 この法律で特別經理會社とは、左に掲げる會社(金融機關經理應急措置法第二十七條第一號に掲げる金融機關及び昭和二十年大藏、外務、内務、司法省令第一號第一條に規定する指定機關を除く。以下同じ。)をいふ。
一、昭和二十一年八月十一日午前零時(以下指定時といふ。)において、戰時補償金等の交付を受け、若しくはその交付を受ける權利を有し、又は在外資産を有する資本金(出資總額、株金總額又は出資總額及び株金總額の合計額をいふ。以下同じ。)二十萬圓以上の會社。但し、主務大臣の指定する會社及び戰時補償金等の交付を受けた金額又は會社の貸借對照表の資産の部に計上した戰時補償金等の請求權及び在外資産の合計額が、指定時現在において、命令の定めるところにより計算した積立金の額及び財産目録に記載した動産、不動産、債權その他の財産の指定時における價額(株式會社、株式合資會社又は有限會社の營業用の固定財産及び取引所の相場のある有價證券については、商法第二百八十五條又は同法第四百五十八條第二項若しくは有限會社法第四十六條第一項において準用する商法第二百八十五條に定める價額を超えることができない。)が、當該財産目録に記載した價額を超える場合におけるその超過額の合計額を超えず、且つ債務超過又は支拂不能に陷る虞のない會社であつて、主務大臣の認可を受けたものを除く。
二 左の各號の一に該當する會社であつて、主務大臣の指定を受けたもの
イ 戰時補償金等の交付を受け、若しくはその交付を受ける權利を有し、又は在外資産を有する會社であつて、指定時において資本金二十萬圓未滿のもの
ロ この法律施行後、債權の取立が著しく困難となつたことその他の事由により、會社の資産の價額が減少したため、債務超過又は支拂不能に陷る虞のある會社
ハ その所有する株式、出資證券又は社債の價額が、この法律施行後、著しく下落し、又はこれを處分することが困難となつたため、債務超過又は支拂不能に陷る虞のある會社
前項第一號但書の規定によつて、主務大臣の認可を受けようとする會社は、命令の定めるところにより、この法律施行後二箇月以内に、文書を以て、主務大臣にその旨を申請しなければならない。
第一項第二號の指定を受けようとする會社は、命令の定めるところにより、この法律施行後二箇月以内に、文書を以て、主務大臣にその旨を申請しなければならない。
特別の事由があると認められる場合においては、主務大臣は、前二項の期間經過後にされた申請についても、認可又は指定をすることができる。
主務大臣は、第一項第一號但書の指定若しくは認可又は同項第二號の指定をしたときには、直ちにその旨を告示する。
資本金二十萬圓以上の會社であつて、戰時補償金等の交付を受けたことがなく、若しくはその交付を受ける權利を有せず、又は在外資産を有しないものは、この法律施行の日から三週間以内に、特別經理會社でない旨を主務大臣に届け出るとともに、その旨を公告しなければならない。
第二條 前條第一項第一號但書に該當する會社が、同條第二項の規定による認可の申請をしない場合には、當該會社に對し、指定時において拂込株金額若しくは拂込出資金額の十分の一以上に當る債權を有する者、指定時において出資金額が資本金の十分の一以上に當る社員又は指定時において資本金の十分の一以上に當る株式を有する株主は、同項の期間經過後二十日以内に、會社に對して、同項の申請をするべき旨を請求することができる。
前項の規定は、前條第一項第二號イ乃至ハに該當する會社が、同條第三項の規定による指定の申請をしない場合に、これを準用する。
前二項の請求があつた場合には、會社は、直ちに前條第二項又は第三項の規定に準じて、認可又は指定の申請をしなければならない。
第三條 會社は、第一條第一項第一號但書の指定若しくは認可又は同項第二號の指定を受けたときには、本店の所在地においては二週間以内に、支店の所在地においては三週間以内に、登記をしなければならない。
第一條第六項の會社は、この法律施行の日から、本店の所在地においては、二週間以内に支店の所在地においては三週間以内に、特別經理會社でない旨の登記をしなければならない。
第四條 指定時以前の原因に基いて生じた第一條第一項第二號の指定を受けた會社に對する債權について、指定時から同號の指定のあるまでにされた辨濟その他債權を消滅させる行爲(免除を除く。)は、これを無效とする。但し、第十四條第一項但書に規定する債權については、この限りでない。
前項の規定は第三者の權利を害することができない。
第一項の會社が、指定時から第一條第一項第二號の指定あるまでにした不動産又は重要な財産の讓渡は、これを無效とする。
前項の場合において、讓受人の權利は、指定時以前の原因に基いて生じた債權とみなす。
第五條 特別經理會社は、遲滯なく、指定時現在における財産目録、貸借對照表、動産、不動産、債權その他の財産及び債務に關する明細書竝びに指定時を含む事業年度開始の日から指定時に至るまでの損益計算書を作成しなければならない。
第六條 特別經理會社に特別管理人を置く。
第七條 特別經理會社には、指定時において、新勘定及び舊勘定を設ける。
特別經理會社の第五條の財産目録に記載した動産、不動産、債權その他の財産(以下會社財産といふ。)は、命令の定めるところにより、會社の目的たる現に行つてゐる事業の繼續及び戰後産業の囘復振興に必要なものを、指定時において、新勘定に所屬せしめ、新勘定に所屬せしめた會社財産以外の會社財産を、指定時において、舊勘定に所屬せしめる。
前項の規定によつて新勘定に所屬せしめる會社財産の範圍は、命令の定めるところにより、特別管理人がこれを決定する。
指定時後、會社の計算は、新勘定と舊勘定とに區分經理しなければならない。
第二項の規定によつて新勘定に所屬せしむべき會社財産を有しない會社及び清算又は破算手續中の會社には、第一項の規定にかかはらず、舊勘定のみを設ける。
第一項乃至第四項の規定は、前項の會社において、新勘定及舊勘定を設ける必要が生じ、特別管理人の決定があつた場合に、これを準用する。
舊勘定に所屬する會社財産のうちで、あらたに新勘定に所屬せしめることを必要とするものを生じたときには、特別管理人の決定に基いて、これを新勘定に振り替へることができる。この場合においては、當該會社財産は、新勘定に振り替へられた日において、新勘定に所屬せしめられたものとする。
特別經理會社は、新勘定舊勘定毎に、帳簿を作成し、前各項の規定によつて、新勘定又は舊勘定に所屬する會社財産を明確にしなければならない。
第八條 特別經理會社は、前條第三項の決定に基いて、新勘定舊勘定毎に、會社財産の明細書を作成し、命令の定めるところにより、特別管理人の承認を受けなければならない。
前項の規定によつて特別管理人の承認を受けた舊勘定に所屬する會社財産の明細書は、特別管理人の承認を受けた日から二週間以内に、公證人の認證を受けなければならない。
特別の事由があるときには、主務大臣は、特別經理會社の申請により、前項の期間を延長することができる。
第二項の認證を受けなければ、前條第三項の決定は、その效力を生じない。
前條第七項の規定によつて、新勘定及び舊勘定に所屬する會社財産に變更のあつた場合においては、舊勘定から新勘定に繰り替へられた會社財産について、前四項の規定を準用する。
特別經理會社は、舊勘定に所屬する會社財産であつて、登記又は登録のあるものについては、舊勘定に所屬する旨の登記又は登録をしなければ、舊勘定に所屬することを以て第三者に對抗することができない。
前項の規定の適用を受けない特別經理會社の財産であつて、新勘定又は舊勘定のいづれに屬するか分明でないものは、新勘定に所屬するものと推定する。
前七項の規定は、舊勘定のみを設ける會社に對しては、これを適用しない。
第九條 第七條第一項の規定によつて、會社財産を新勘定及び舊勘定に區分經理した場合においては、舊勘定の貸借對照表の資産の部に、新勘定に對する未整理受取勘定を設けて、これに新勘定に所屬せしめた會社財産の第五條の財産目録に記載した價額と同じ金額を計上し、新勘定の貸借對照表の負債の部に、舊勘定に對する未整理支拂勘定を設けて、同一金額を計上するものとする。
前項の規定は、第七條第七項の場合に、これを準用する。
第十條 特別經理會社は、毎月末における新勘定の貸借對照表の負債の部の未整理支拂勘定に計上した金額に命令の定める率を乘じて得た金額と同じ金額を、翌月の初めに新勘定から舊勘定に繰り入れなければならない。
月の途中において、新勘定の貸借對照表の負債の部の未整理支拂勘定に計上した金額に増加又は減少のあつた場合においては、前月末における未整理支拂勘定に計上した金額に對して、前項の規定を適用して計算した金額に、未整理支拂勘定に増加又は減少のあつた日の翌日からその月の末日迄の日割を以て、當該増加額又は減少額につき前項の金額を計算し、これを加算又は控除したものを以て前項に規定する繰入金額とする。
第十一條 特別經理會社は、指定時後の原因に基いて生じた收入及び支出を、新勘定の收入及び支出として、經理しなければならない。
特別經理會社は、指定時以前の原因に基いて生じた收入及び支出を、舊勘定の收入及び支出として、經理しなければならない。
指定時後に退職した者に對する退職金その他指定時の前後に渉る事項に係る收入及び支出に關しては、前二項の規定にかかはらず、命令により特別の定をなすことができる。
舊勘定に所屬する會社財産の管理に要する支出は、第一項の規定にかかはらず、舊勘定の支出として、これを經理しなければならない。
特別經理會社が、指定時後舊勘定に所屬する財産の果實として收取した財産財産及び舊勘定に所屬する財産の處分の對價として取得した財産その他命令で定めるものは、第一項の規定にかかはらず、これを舊勘定に所屬せしめる。
第十二條 指定時以前の原因に基いて生じた特別經理會社に對する債權(以下舊債權といふ。)の先取特權、質權又は抵當權であつて、新勘定に所屬する會社財産の上に存するものは、命令により定める場合を除くの外、當該會社財産を新勘定に所屬せしめた日に、當該會社財産につき消滅する。
新勘定に所屬する會社財産が、鐵道財團、工場財團、鑛業財團、軌道財團、運河財團、漁業財團又は自動車交通事業財團に屬してゐる場合には、命令により定める場合を除くの外、當該會社財産を新勘定に所屬せしめる日において、當該財團から除かれ、當該財團に屬さないことになつたものとする。
特別經理會社の新舊勘定併合の時から、第一項の債權の先取特權、質權又は抵當權は、同項の財産について消滅せず、及び第二項の財産は、當該財團から除かれなかつたものとみなす。但し、第一項の規定によつて、これらの權利が消滅した後、當該會社財産について、これらの權利の行使を妨げる擔保權が生じた場合又は當該會社財産が當該會社以外の者の所有に歸した場合においては、この限りでない。
前項但書の場合においては、當該會社は、法令の定めるところにより、同項の債權を有する者が、當該會社からその債權の辨濟を受けることができる金額を供託しなければならない。
前項の債權を有する者は、前項の供託金に對して、先取特權、質權又は抵當權を有する者として、その權利を行ふことができる。
第十三條 指定時後の原因に基いて生じた特別經理會社に對する債權(舊勘定に所屬する財産の管理のために生じた債權を除く。以下新債權といふ。)については、舊勘定に所屬する財産に對して、強制執行、假差押又は假處分をすることができない。
第十四條 舊債權(命令で定める債權を含む。)については、辨濟をなし、又は辨濟を受けその他これを消滅させる行爲(免除を除く。)をすることができない。但し、金錢その他物若しくは有價證券の引渡を目的とする債權以外の債權又は金錢以外の物の引渡を目的とする債權であつて、その給付が特別經理會社の現に行つてゐる通常の業務に屬し、且つ新勘定の計算において履行できるもの竝びに左に掲げるものについては、この限りでない。
一 國又は都道府縣その他の地方公共團體に對する公租公課その他命令で定めるこれに準ずる債權
二 指定時以前に確定した給料その他命令で定める定期的給與の債權
三 從業員の預かり金その他これに準ずる債權(命令で定める制限を超えないものに限る。)
四 指定時以前に確定した退職金その他命令で定める臨時的給與の債權(命令で定める制限を超えないものに限る。)
五 會社の通常の業務の運營に伴ふ千圓未滿の債權
六 その他命令を以て定める債權
特別經理會社は、前項各號に掲げる債權については、これを舊勘定から辨濟することができない場合に限り、特別管理人の承認を受けて、第九條の規定によつて設けた新勘定の貸借對照表の負債の部の未整理支拂勘定に計上した金額の限度において、これを新勘定から辨濟することができる。
舊勘定に所屬する財産の管理のために生じた債權についても前項と同樣である。但し、この場合においては、命令の定めるところにより、主務大臣の承認を受けなければならない。
第一項第二號乃至第六號の債權及び前項の債權については、新勘定に所屬する財産に對して、強制執行、假差押又は假處分をすることができない。
第二項及び第三項の場合においては、新勘定から辨濟した金額と同じ金額を、舊勘定の貸借對照表の資産の部の未整理受取勘定に計上した金額及び新勘定の貸借對照表の負債の部の未整理支拂勘定に計上した金額から、夫夫減額しなければならない。
第十五條 特別經理會社については、破算の宣告をすることができない。
特別經理會社の解散、合併、組織變更又は資本(出資金を含む。)の増加若しくは減少に關する總社員の同意、株主總會の決議又は社員總會の決議は、その效力を生じない。但し、特別の事由により主務大臣の承認を受けた場合においては、この限りでない。
特別經理會社になつたものの財産に對し、既にされた強制執行、假差押若しくは假處分又は競賣法による競賣手續は、その會社が特別經理會社である間、これを中止する。但し、その財産が新勘定に所屬することとなつたときには、これらの手續は、この法律の適用の限度において、その效力を失ふ。
第十六條 特別經理會社は、會社の事業年度毎に、新勘定舊勘定各別に、財産目録、貸借對照表及び損益計算書を作成しなければならない。
商法中財産目録、貸借對照表及び損益計算書に關する規定は、前項に掲げる書類に、これを準用する。
新勘定において生じた各事業年度の利益金額及び損失金額は、新勘定において、次の事業年度に繰り越さなければならない。
他の法令又は定款の定にかかはらず、特別經理會社の指定時を含む事業年度は、指定時に終了するものとし、これに續く期間は、次期の事業年度に屬するものとする。
指定時に終了する事業年度において生じた利益は、他の法令又は定款の定にかかはらず、これを積み立てなければならない。
第十七條 特別經理會社は、命令で定める場合を除くの外、取締役その他當該會社の業務を執行する役員のうちから二人、及び當該會社の舊債權を有する者(法人である場合においては、その代表者)のうちから二人の特別管理人を選任しなければならない。
前項の特別管理人の選任につき、時期、方法その他必要な事項は、命令の定めるところによる。
第一項の規定による最初の特別管理人の全員が選任されたときには、特別經理會社は、本店の所在地においては二週間以内に、支店の所在地においては三週間以内に、特別管理人の住所及び氏名竝びに當該會社との關係を登記しなければならない。
商法第六十七條の規定は、前項の登記にこれを準用する。
特別經理會社は、特別管理人の選任があつたときから二週間以内に、前二項の登記をしなければならない事項を、主務大臣に届け出なければならない。
第十八條 特別管理人は、主務大臣がこれを監督する。
特別管理人の報酬その他特別管理人の職務に關し必要な事項は、命令で、これを定める。
第十九條 特別管理人が、第七條第三項の規定による會社財産の範圍の決定、第十四條第二項及び第三項の規定に依る辨濟に對する承認、第二十一條第一項の規定による管理についての決定、第二十二條第一項の規定による處分に對する承認及び第二十三條第二項の規定による同意をするときには、その過半數を以て、これを決する。但し、可否の意見が同數の場合には、特別管理人の申請により、主務大臣がこれを裁定する。
第二十條 主務大臣は、特別管理人が法令又は主務大臣の命令に違反したとき、公益を害する行爲をしたとき、又は特別管理人を不適當と認めるときには、これを解任することができる。
第二十一條 特別經理會社の業務を執行する役員は、舊勘定に所屬する財産の處分、保全その他の管理につて、特別管理人の決定するところに從はなければならない。
特別管理人は、舊勘定に所屬する財産の處分、保全その他の管理について、特別經理會社の業務を執行する役員を監督する。
第二十二條 特別經理會社は、會社財産及び指定時後取得した舊勘定に所屬する財産を讓渡し、貸與し又は質權若しくは抵當權の目的としようとするときには、命令で定める場合を除くの外、特別管理人(特別管理人の選任されてゐないときには主務大臣)の承認を受けなければならない。
前項の規定は、第十四條第一項但書の規定の適用を妨げない。
第一項の規定によつて特別管理人の承認を受けないで、會社財産及び指定時後取得した舊勘定に所屬する財産を處分した場合においては、その處分は、これを無效とする。但し、その處分の無效は、これを以て善意の第三者に對抗することができない。
第二十三條 特別經理會社の株式を讓渡しようとする者は、當該會社に對して、承認を求めなければならない。
前項の場合において、會社が承認しようとするときには、特別管理人の同意を得なければならない。商法第七十三條(同法第百四十七條において準用する場合を含む。)若しくは第百五十四條又は有限會社法第十九條第一項の規定によつて、持分の讓渡について承諾しようとするとき又は承諾の決議をしようとするときも同樣である。
第一項の規定による承認を受けずに行はれた株式の讓渡は、會社に對して、その效力を生じない。
第二十四條 特別經理會社の舊勘定に所屬する債權については、第十四條第一項但書各號及び第二項後段に規定する債權を除き、その權利を行使できる日から一箇月以内は、時效が完成しない。
第二十五條 主務大臣は、必要があると認めるときには、特別經理會社に對して、監督上必要な命令をすることができる。
主務大臣は、この法律の施行に關し、必要があると認めるときには、業務及び財産の状況に關して報告をさせ、又は當該官吏に帳簿、書類その他の物件を檢査させることができる。
主務大臣は、前項の規定によつて、當該官吏に檢査をさせるときには、命令の定めるところにより、その身分を示す證票を携帶させなければならない。
第二十六條 主務大臣は、この法律に定める職權の一部を、地方の官衙の長をして行はしめることができる。
第二十七條 主務大臣は、命令の定めるところにより、この法律の施行に關する事務の一部を日本銀行をして取り扱はせることができる。
第二十八條 左の場合においては、その行爲をした會社の代表者、代理人、使用人その他の從業者は、これを三年以下の懲役又は三萬圓以下の罰金に處する。
一 第一條第二項又は第三項の規定による文書に、虚僞の記載をしたとき
二 第二條第三項の規定による認可又は指定の申請を怠つたとき
三 第七條第八項の規定に違反して帳簿を作成せず、又は帳簿に虚僞の記載をしたとき
四 第八條第二項又は第五項の規定に違反して明細書について公證人の認證を受けず、又は虚僞の記載をした明細書について公證人の認證を受けたとき
五 第十四條第一項の規定に違反して辨濟その他債權を消滅させる行爲をしたとき
六 第十四條第二項又は第三項の規定による特別管理人の承認又は主務大臣の承認を受けないで辨濟をしたとき
七 第二十一條の規定による財産の處分、保全その他の管理について特別管理人の決定に從はなかつたとき
八 第二十二條第一項の規定による特別管理人(特別管理人が選任されてゐないときには主務大臣)の承認を受けないで財産を處分したとき
第二十九條 第十四條第一項の規定に違反して辨濟を受けその他債權を消滅させる行爲をした者は、これを三年以下の懲役又は三萬圓以下の罰金に處する。
第三十條 特別管理人が、その職務に關して、賄賂を收受し、要求し又は約束したときには、これを三年以下の懲役又は三千圓以下の罰金に處する。
前項の賄賂を供與し又はその申込若しくは約束をした者も同樣である。
第三十一條 左の場合においては、その行爲をした特別經理會社の代表者、社員、代理人、使用人その他の從業者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
一 第五條の規定による書類の作成を怠り、又は虚僞の記載をしたとき
二 第十七條第五項の規定による届出をせず、又は虚僞の届出をしたとき
三 特別管理人の選任を怠つたとき
四 第二十三條第二項の規定による特別管理人の同意を得ないで、株式又は持分の讓渡を承認又は承諾若しくは承諾の決議に贊成したとき
第三十二條 第二十五條第二項の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。同項による檢査を拒み、妨げ又は忌避した者も同樣である。
第三十三條 犯人又は情を知る第三者の收受した賄賂は、これを沒收する、その全部又は一部を沒收することができないときには、その價額を追徴する。
第三十四條 法人の代表者、法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に關して、第二十八條、第二十九條、第三十一條又は第三十二條前段の違反行爲をしたときには、行爲者を罰する外、その法人又は人に對しても、各本條の罰金刑を科する。
第三十五條 左の場合においては、會社の取締役その他これに準ずる者は、これを三千圓以下の過料に處する。
一 この法律又はこの法律に基いて發する命令に違反して登記を怠つたとき
二 第一條第六項の規定による届出若しくは公告をせず、又は虚僞の届出若しくは公告をしたとき
三 第二十五條第一項の規定による主務大臣の命令に違反したとき
第三十六條 第二十八條乃至前條の規定は、第一條第一項第一號但書の規定による指定又は認可があつた場合には、その指定又は認可があつたときまでの行爲に對しては、指定又は認可の後でも、なほこれを適用する。
第三十七條 この法律のうち戰時補償金等及び在外資産の範圍については、命令でこれを定める。
第三十八條 特別經理會社が、特別經理會社となつたときから、三箇月以内に、法令の定める企業に關する整備計畫を主務大臣に提出しない場合その他法令の定める事由に該當する場合においては、當該會社に對して、この法律の適用は解除される。
前項の規定による解除に關し、新勘定及び舊勘定の併合その他これに伴ふ必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十九條 この法律のうち必要な規定は、命令の定めるところによつて、特別經理會社以外のものに對し、これを準用することができる。
第二十八條乃至第三十六條の規定は、前項において準用する場合に、これを適用する。但し、同條中會社又は特別經理會社とあるのは、前項の特別經理會社以外のものとし、同條に掲げる條項は、前項の規定によつて準用される場合の條項を含むものとする。
第四十條 この法律に定めるものの外、登記その他に關し必要な事項は、命令の定めるところによる。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
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金融機關經理應急措置法案
金融機關經理應急措置法
第一條 金融機關には、この法律により、昭和二十一年八月十一日午前零時(以下指定時といふ。)において、新勘定及び舊勘定が設けられる。
金融機關の資産及び負債は、この法律の定めるところにより、新勘定又は舊勘定に屬する。
第二條 金融機關の指定時における資産及び負債のうち、左に掲げるものは、新勘定に屬する。
一 資 産
イ 現 金
ロ 國債及び地方債
ハ 國又は地方公共團體に對する金錢債權で國債及び地方債以外のもの
ニ 日本銀行、金融機關又は保險事業を營む組合に對する資産(金融機關の發行する債券及び手形、小切手その他これに準ずる資産で命令で定めるものについては、第三條又は第四條の規定による措置をなしたものに限る。)
ホ その他主務大臣の指定する資産
二 負 債
イ 命令で定める預金等
ロ 國又は地方公共團體の公租公課
ハ 日本銀行、金融機關又は保險事業を營む組合に對する負債で預金等以外のもの(金融機關の發行する債券及び手形、小切手その他これに準ずる負債で命令で定めるものについては、その權利者たる金融機關から第三條又は第四條の規定により請求又は通知を受けたものに限る。)
ニ その他主務大臣の指定する負債
前項に規定する資産又は負債のうち、主務大臣の指定するものは、同項の規定にかかはらず、舊勘定に屬する。
第三條 日本銀行、金融機關及び保險事業を營む組合は、指定時においてその有する金融債券(金融機關の發行する債券をいふ。以下同じ。)で命令で定めるものについては、左の各號の區分に從ひ、その定める措置をしなければならない。
一 指定時において社債等登録法により登録されてゐる金融債券については、昭和二十一年八月三十一日までに、その債務者たる金融機關に對し、書面を以てその種類及び金額を通知すること。
二 指定時において社債等登録法により登録されてゐない金融債券については、昭和二十一年九月十日までに、同法により登録した上その債務者たる金融機關に對し、書面を以てその種類及び金額を通知すること。
第四條 日本銀行、金融機關及び主務大臣の指定する者は、その指定時において有する日本銀行、金融機關又は主務大臣の指定する者に對する手形等の資産(手形、小切手その他これに準ずる資産で命令で定めるものをいふ。以下同じ。)については、昭和二十一年八月三十一日までに、その債務者(手形及び小切手の支拂人を含む。)に對し、その辨濟の請求をなし又は書面を以てその種類及び金額を通知しなければならない。
第五條 金融機關の指定時における資産及び負債のうち、第二條の規定により新勘定に屬するもの以外のものは、舊勘定に屬する。
第六條 信託會社、保險會社、生命保險中央會、損害保險中央會、地方農業會その他命令で定める金融機關の指定時における資産及び負債の新勘定又は舊勘定への所屬については、命令で第二條及び前條の規定の特例を設けることができる。
第七條 金融機關の指定時における新勘定に屬する負債の總額が新勘定に屬する資産の總額を超えるときは、その超過額は、これを新勘定の舊勘定に對する貸として整理する。
金融機關の指定時における新勘定に屬する負債の總額が新勘定に屬する資産の總額に不足するときは、その不足額は、これを新勘定の舊勘定に對する借として整理する。
第八條 金融機關は、指定時における新勘定に屬する資産について目録を作成し、命令で定める日までに、公證人の認證を受けなければならない。
公證人法中商法第百六十七條の規定による定款の認證に關する規定(公證人法第六十二條の二を除く。)は前項に規定する目録の認證について、これを準用する。
第九條 金融機關の舊勘定の屬する資産又は負債に關し指定時後生ずる財産上の權利及び義務は、命令で定めるものを除いては、舊勘定に屬する。
金融機關の指定時後生ずる財産上の權利及び義務のうち、前項の規定により舊勘定に屬するもの以外のものは、新勘定に屬する。
金融機關の指定時後生ずる役員及び職員その他の使用人に對する給與の債務の新勘定又は舊勘定への所屬については、命令の定めるところによる。
第十條 前條第一項の規定により、金融機關の舊勘定に屬する現金(小切手を含む。)は、命令の定めるところにより、これを舊勘定から新勘定に移し、その金額に相當する金額は、これを新勘定の舊勘定に對する借として整理する。
第十一條 金融機關が新勘定の業務を營むため舊勘定に屬する資産を使用し又は消費したときは、命令の定めるところにより、その對價に相當する金額を、新勘定の舊勘定に對する借として整理する。
第十二條 第九條第三項に規定する給與の支出金額は、命令の定めるところにより、これを新勘定の舊勘定に對する貸として整理する。
第十三條 金融機關は、第十六條但書の規定に基いて舊勘定に屬する債務の辨濟をなす場合においては、命令で特別の定をなす場合を除いては、その辨濟に必要な資金を新勘定から舊勘定に移し、舊勘定からその債務の辨濟に充てるために、これを支出する。この場合においては、その移した資金に相當する金額は、これを新勘定の舊勘定に對する貸として整理する。
第十四條 第七條、第十條、第十一條、第十二條又は前條の規定により新勘定の舊勘定に對する貸又は借として整理さるべき金額については、差引計算をした殘額を新勘定の舊勘定に對する貸又は借として整理する。
第七條、第十條、第十一條、第十二條又は前條の規定による新勘定の舊勘定に對する貸又は借(前項の規定の適用がある場合には、同項の規定を適用した結果生ずる貸又は借)の金額には、命令の定めるところにより、利息に相當する金額を加算して整理する。
第十五條 金融機關の資産のうち、新勘定又は舊勘定のいづれに屬するか分明でないものは、舊勘定に屬するものと推定する。
第十六條 金融機關は、舊勘定に屬する債務の辨濟又は舊勘定に屬する資産の處分をなすことができない。但し、命令の定める場合は、この限りでない。
第十七條 金融機關の舊勘定に屬する負債に關する權利者は、新勘定に屬する資産及び舊勘定に屬する資産のいづれについても、辨濟を受け又は金融機關の債務を消滅させる行爲(免除を除く。)をなすことができない。但し、前條但書の規定に基いて舊勘定に屬する債務の辨濟又は舊勘定に屬する資産の處分をなす場合において、舊勘定に屬する資産については、この限りでない。
第十八條 金融機關の舊勘定に屬する財産に對しては、強制執行、假差押若しくは假處分又は競賣法による競賣手續は、これをなすことができない。
金融機關の財産に對し既になされた強制執行、假差押若しくは假處分又は競賣手續は、これを中止する。
前二項の規定は、第十六條但書の規定に基いて、舊勘定に屬する債務の辨濟又は舊勘定に屬する「資産の處分をなす場合において、舊勘定に屬する」財産についてなすときは、これを適用しない。
第十九條 金融機關の新勘定に屬する負債に關する權利者は、舊勘定に屬する資産については、辨濟を受け又は金融機關の債務を消滅させる行爲(免除を除く。)をなすことができない。
第二十條 日本銀行、金融機關及び保險事業を營む組合の指定時において有する金融債券で第三條の規定による通知のあつたものについては、命令で定める日まで、社債等登録法による登録の抹消又は變更を請求することができない。
第二十一條 日本銀行、金融機關又は主務大臣の指定する者に對する手形等の資産で、日本銀行、金融機關又は主務大臣の指定する者が指定時において有するものについては、辨濟を受ける場合を除いては、主務大臣の認可を受けなければ、讓渡、讓受その他一切の處分をなすことができない。
第二十二條 金融機關については、別に法律で定めるまでは、破産の宣告をなすことができない。
金融機關の解散、合併、分割、組織變更又は資本(出資金及び基金を含む。)の増加若しくは減少は、他の法令に基く命令に因る場合を除いては、主務大臣の認可を受けなければ、その效力を生じない。
前項の規定による認可があつたときは、同一の事項については、同時に他の法令による認可等があつたものとみなす。
第二十三條 金融機關の舊勘定に屬する債務については、その債權は、その權利の行使ができることとなつた日から一箇月以内は、時效が完成しない。
第二十四條 生命保險會社又は生命保險中央會の舊勘定に屬する責任準備金に對應する生命保險金の部分(以下舊生命保險金といふ。)について、契約者が、指定時後拂込期日の到來する保險料を、命令の定める日まで拂ひ込まない場合においても、その舊生命保險金の保險契約は、一切變更を生じない。
舊生命保險金の保險契約については、保險契約の解除又は保險金額の減少その他の保險契約の條件の變更若しくは保險約款に基く貸付の請求は、これをなすことができない。
第二十五條 損害保險會社又は損害保險中央會(以下損害保險會社等といふ。)の舊勘定に屬する責任準備金に對應する損害保險金に關する保險契約(以下舊契約といふ。)について、指定時後二箇月以内に、舊契約と保險の目的及び保險者を同じくする保險契約(以下新契約といふ。)が成立した場合においては、その損害保險會社等は、先づ、指定時においてその新勘定に屬する責任準備金に對應する損害保險金に關する保險契約と新契約とに基いて損害を負擔し、その負擔額が損害の全部を填補するに足りないときは、舊契約に基いて、その保險金額が指定時においてその新勘定に屬する責任準備金に對應する保險金額と新契約の保險金額との合計額を超える金額を限度として、命令の定めるところにより損害を負擔する。
前項の規定により新契約が成立した場合においては、舊契約の契約者に對しては、その損害保險會社等は、命令の定めるところにより、舊契約の保險料の一部を返還する。
第二十六條 金融機關の事業年度については、他の法令又は定款にかかはらず、その指定時を含む事業年度は、指定時までで終了するものとし、その事業年度に續く事業年度は、命令で特別の定をなす場合を除いては、昭和二十二年三月三十一日で終了するものとする。
指定時までで終了する事業年度について、利益又は剩餘金を生じたときは、他の法例又は定款にかかはらず、これを特別準備金として積み立て、缺損を生じたときは、これを繰り越さなければならない。
第二十七條 この法律において、金融機關とは、左に掲げる者(この法律施行前既に解散した者及び主務大臣の指定する者を除く。)をいふ。
一 銀行(日本銀行を除く。)信託會社、保險會社、無盡會社、戰時金融金庫、南方開發金庫、外資金庫、農林中央金庫、商工組合中央金庫、恩給金庫、庶民金庫、國民更生金庫、生命保險中央會、損害保險中央會、地方農業會及び市街地信用組合
二 都道府縣水産業會、漁業會その他業として預金等の受入をなすことができる組合で指定時において預金等の金錢債務を有するもの
第二十八條 前條第二號に掲げる金融機關は、この法律施行の日から二週間以内に、主務大臣に對して、指定時において預金等の金錢債務を有した旨の届出をしなければならない。
前條第二號に掲げる金融機關は、主たる事務所の所在地においてはこの法律施行の日から二週間以内に、從たる事務所の所在地においてはこの法律施行の日から三週間以内に、この法律の規定による金融機關である旨の登記をしなければならない。
前項の登記に關して必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十九條 この法律において、預金等とは、預金その他の金融業務上の債務で命令で定めるものをいふ。
第三十條 金融機關の業務又は財産に關し作成する帳簿は、その記載事項が新勘定又は舊勘定のいづれに關するかの區分を明らかにして、これを整理しなければならない。
第三十一條 この法律は、他の法令により金融機關に二以上の勘定があるときは、その各勘定について、これを適用する。
第三十二條 この法律の施行地内に本店又は主たる事務所を有する金融機關が、この法律の施行地外に支店又は從たる事務所を有するときは、その支店又は從たる事務所に係る資産及び負債を除いて、この法律を適用する。
この法律の施行地外に本店又は主たる事務所を有する金融機關が、この法律の施行地内に支店又は從たる事務所を有するときは、この法律の適用については、その支店又は從たる事務所を以て、(支店又は從たる事務所が二以上あるときは、他の法令にかかはらず、これを合せて、)一の金融機關とみなす。
前二項の場合において、この法律の施行地内にある店舖又は事務所のこの法律の施行地外にある店舖又は事務所に對する貸又は借があるときは、金融機關は、その貸又は借を舊勘定に屬する資産又は負債として整理するものとする。
第三十三條 この法律に規定するものの外、金融機關の新勘定及び舊勘定の分離等に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十四條 左の場合においては、その行爲をなした日本銀行、金融機關又は保險事業を營む組合の代表者、代理人、使用人その他の從業者は、これを三年以下の懲役又は三萬圓以下の罰金に處する。
一 第三條又は第四條の規定による通知の書面に虚僞の記載をなしたとき
二 第八條第一項の規定による認證を受けることを怠り、又は虚僞の記載をなした目録について認證を受けたとき
三 第十六條の規定に違反したとき
四 第二十條の規定に違反したとき
第三十五條 第四條の規定により主務大臣の指定する者が、同條の規定による通知の書面に虚僞の記載をなしたときは、これを三年以下の懲役又は三萬圓以下の罰金に處する。
第三十六條 左の各號の一に該當する者は、これを三年以下の懲役又は三萬圓以下の罰金に處する。
一 第十七條の規定に違反した者
二 第十九條の規定に違反した者
三 第二十一條の規定に違反した者
第三十七條 第三十條の規定に違反した場合においては、その行爲をなした金融機關の代表者、代理人、使用人その他の從業者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
第三十八條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に關し第三十四條乃至前條の違反行爲をなしたときは、行爲者を罰するの外、その法人又は人に對し、各本條の罰金刑を科する。
第三十九條 左の場合においては、金融機關の代表者は、これを三千圓以下の過料に處する。
一 第二十八條第一項に規定する届出を怠つたとき
二 第二十八條第二項に規定する登記を怠つたとき
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
第十六條乃至第二十一條の規定は、指定時後の行爲に、これを適用する。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=30
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031・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題となりました會社經理應急措置法案及び金融機關經理應急措置法案に付て其の提案の理由を御説明申上げます
終戰後の我が國經濟の再建途上に於きまして、所謂戰時補償をどのやうに處理するかと云ふ問題は最も重要な課題の一つでありましたことは申上げるまでもありませぬ、隨ひまして政府は去る五月下旬、組閣後直ちに此の問題の研究に著手致しました、幾つかの案を作りまして財政經濟の凡ゆる角度から愼重なる檢討を加へたのであります、併しながら何分にも戰時補償の金額は數百億圓と云ふ極めて厖大なものでありますので、之を全額約束通りに政府が支拂ひますことは、遺憾ながら財政の現状の許さざる所でございます、勿論其の支拂は國債を以て致すことも出來ますが、併し其の場合には厖大なる國民負擔を後代に貽すばかりでなく、現在既に過大であるとの批評もございます名目上の貨幣的資産を、更に不當に膨脹せしめることともなるのであります、併しさうかと申しまして之を遽かに打切りますことは、國家の約束を破棄する次第でありますし、又是が事業界竝に金融界の全般に及ぼす影響は深刻且つ廣汎なものがございまして、其の結果は更に一般國民の生活にも少からざる打撃を與ふる懸念があるのであります、仍て政府は是等の各般の事情を愼重に考慮致しました結果、經濟秩序及び金融秩序の保持と國民生活の安定に付きまして細心の注意を拂ひますと同時に、課税の方法に依りまして實質的には戰時補償を大幅に打切ることが、此の際最も公正にして且つ國家永遠の福利を齎す所以だと云ふ結論に到達致しました
今其の趣旨に基きまして其の措置の全貌を簡單に申上げますと、先づ軍需補償、戰爭保險金などの所謂戰時補償請求權に付きましては、一定の例外を除きまして、税率十割の戰時補償特別税を課することに致しまして、實質的に之を大幅に打切ることに致すのであります、尚ほ此の課税は一定期日以後に既に支拂が濟んだものにも及ぶのであります
次に此の戰時補償特別税の實施に依りまして、企業竝に之と密接不可分の關係にある金融機關が蒙る重大の影響に對處しまして、企業及び金融機關の再建整備を秩序能く且つ合理的に實施する爲め、それぞれ必要なる措置を講じます、更に是等企業及び金融機關の再建整備を圓滑且つ迅速に處理致すと共に、戰時補償特別税の實施に伴ふ事業界及び金融界の混亂を未然に防止し、今後の經濟再建の爲め必要なる業務を平靜圓滑に遂行出來ますやうに致さねばなりませぬ、仍て政府は其の目的の下に、會社其の他の企業及び金融機關の經理に關しまして、それぞれ必要なる應急の措置を講ずる法律案を用意致しました、又個人及び公益法人に付きましても、戰時補償特別税の實施に依りまして、不當に蒙る影響を防止致す爲に必要なる善後處置の法案を御審議願ふことに致して居ります、更に又今次の此の一聯の措置に依りまして、金融機關の融資活動が或は沈滯を致し、或は生産金融の梗寒等を招來する虞もございますので、之に對しましては、謂はば政府の代行機關として、平和産業の復興竝に國民生活の安定の爲め必要なる資金を供給する復興金融機關を既に暫定的に設けて居りますが、更に之を正式に設立する豫定でございます、是等の措置に付きましては、其の成案を得次第法律案として逐次速かに本議會に提出致す譯でありますが、先づ其の中に於きまして、最も緊急を要する企業及び金融機關の經理に關する應急措置として、會社經理應急措置法及び金融機關經理應急措置法案を茲に御審議を願ふ次第でございます
先づ會社經理應急措置法案に付て申上げますが、前に申述べました如く、戰時補償特別税の課税に伴ひまして、多くの企業は直接間接大いなる損失を蒙ることと相成ります、此の損失を合理的に處理し、經濟の根本的な再建整備を圖ります爲には、相當の期間を必要と致します、此の過渡期に於きまして、經濟界が徒らに動搖混亂を續けますことは、其の後の經濟再建を圓滑且つ迅速に實現せしめる爲に、非常な支障を來す次第であります、又其の間必要な民需生産の活溌なる活動を阻碍する虞も亦なしと致しませぬ、仍て是等の障碍を排除致しまして、必要な民需生産の繼續を可能ならしめる爲め、企業をして過去に於ける一切の債權債務の關係に煩はされることなく、活溌なる事業活動を續行せしめ得るが如き措置を講じまして、以て産業の囘復振興を容易ならしめますと共に、企業の整備を圓滑迅速且つ公正に行はしめる必要がございます、本法案は此の目的を以て、會社の經理を一定期日に於て新舊の兩勘定に分離致しまして、爾後の民需生産の遂行に必要な會社の財産を新勘定に移し替へまして、新勘定に依つて從來の事業を繼續せしめますと共に、舊勘定に屬する資産に付きましては、戰時補償税の課税等に伴ひまして、特別の損失を受くる場合に之を合理的に處理し、會社の整備再建が完了致しますまで、暫く公正且つ嚴格に之を管理するのでございます
以下本法案の内容の主なる點を簡單に申上げます、先づ第一に軍需補償、戰爭保險金等、所謂戰時補償請求權を有する會社等で、今囘の課税に伴ふ措置の結果、債務超過又は支拂不能に陷る虞のあります會社は、之を特別經理會社と稱します、さうして指定時、即ち本年八月十一日午前零時現在に於きまして打切り決算を行はしめます、さうして會社の財産及び爾後の經理を新舊の兩勘定に區分致すのであります、其の新勘定と申します中には、今後の事業の繼續、戰後産業の囘復振興に必要な動産、不動産、債權、其の他の財産を屬せしめるのでありますが、其の各個の場合にどんな財産を新勘定に所屬せしめるかと云ふことは、後に申上げます特別管理人が、實情に應じて之を決定する次第でございます
次に舊勘定に屬する會社財産に付きましては、是が散佚致したり、或は不當な處分が行はれたり致しまして、其の爲め債權者の利益を不當に害することを防止致す爲に、指定時前の原因に基いて生じました特別經理會社に對する債權は、之を辨濟し又は辨濟を受けることは、若干の例外を除きまして、原則として出來ないことに致したのであります、他方新勘定に付きましては、指定時以後事業の繼續に伴ふ債權債務關係には何等制限を加へないことと致したのでありますが、唯指定時後の原因に基いて生じました債權に付きましては、舊勘定に屬する會社資産に對し、強制執行、假差押等は行ふことが出來ないことに致しました
次に新勘定に依りまして會社が事業を活溌に遂行致しますのには、所要の資金が圓滑に供給されますことが特に緊要でありますが、是が爲には本法案は、若し新勘定に所屬する會社財産に指定時前の原因に基いて生じた債權の抵當權、質權又は先取特權が設定されて居ります時には、是等の擔保權は一應消滅することと致したのであります
次に本法の適用を受ける會社に付きましては、新勘定に屬せしむべき會社財産の決定、舊勘定に屬する會社財産の保全處分等に關し、企業の健全なる運營と、一般債權者の保護を圖る必要がございますので、會社の業務を執行する役員及び債權者中から特別管理人を選任致しまして、以上に關する重要事項の處理等に當らしめることと致したのであります、尚ほ此の法律の中、必要なる規定は命令の定むる所に依りまして、會社以外の營團等にも適用することが出來ることと致してあります
以上は、會社經理應急措置法案でありますが、次に金融機關經理應急措置法案に付きましては、前にも申述べました如く、戰時補償特別税法が實施されますと、企業に對し大いなる影響を及ぼしまして、延いて是等の會社と密接不可分の關係にあります金融機關が、其の經理上重大なる影響を蒙ることは免れませぬ、之に對處致しまして、必要なる金融機關の債權整備を圓滑且つ迅速に處理致しますと共に、戰時補償特別税の實施に伴ふ事業界及び金融界の混亂を未然に防止致しまして、業界をして平靜且つ圓滑の裡に其の業務を遂行せしむる必要があります、本法案は此の目的を以ちまして、前述致しました企業に於けると同樣に、金融機關にも亦新勘定と舊勘定を設けることと致したのであります、さうして健全且つ確實なる資産及び一定範圍の負債は、之を新勘定に所屬致させます、今後の業務は其の新勘定を以て支障なく遂行致さしめると共に、不確實なる資産及び一般の負債は舊勘定に所屬せしめまして、之を急速に整理致すのであります、此の新勘定の中には、自由預金及び一定額以下の封鎖預金等を加へまして、さうして今次の措置に依りまして金融機關の蒙る影響の如何に拘らず、絶對に是等の支拂を確保し、國民生活の安定と、社會秩序の維持とを圖らうと考へるのであります、御承知の如く一昨八月十一日を以ちまして、金融緊急措置令施行規則の一部を改正致しまして、從來の封鎖預金等を第一封鎖預金等及び第二封鎖預金等の二種に區分致したのでありますが、此の第一封鎖預金等は自由預金等と共に之を新勘定に移しまして、政府に於て其の支拂を保證するのであります、而して殘りの第二封鎖預金等に付きましては、是は舊勘定に屬せしめ、當該金融機關の整理の結果、其の支拂額を確定するまでは、原則として其の支拂を認めないこととするのであります
以下此の法案に付きまして尚ほ其の内容の主なる點を申上げますと、先づ第一に金融機關には指定時、即ち昭和二十一年八月十一日午前零時現在を以て新勘定及び舊勘定を設けまして、資産及び負債はそれぞれ新勘定及び舊勘定に屬せしめられることになるのであります、新勘定に屬する資産と致しましては、現金、國債、地方債、金融機關等に對する金錢債權等の確實健全な資産でありまして、負債の方では自由預金等及び前に申述べました所の第一封鎖預金等の外、公租公課の類、金融機關等に對する金錢債務等其の支拂を保證せらるべきもの、又は之に準ずべきものであります、新勘定に屬する資産及び負債以外の資産及び負債、例へば一般の貸付金或は第二封鎖預金等は一切舊勘定に屬することと相成るのであります、尚ほ指定時以後生ずる財産上の權利義務の中舊勘定に屬する資産又は負債に關して生ずるものは、原則として舊勘定に歸屬致し、それ以外のものは、新勘定に歸屬することとなるのであります
以上申述べました所に依りまして、金融機關の資産及び負債はそれぞれ新勘定及び舊勘定に屬せしめられ、金融機關は新勘定に依つて其の業務を行ひます、そこで自由預金、第一封鎖預金等は其の支拂を確保せらるることとなりますと共に、舊勘定に屬する資産及び負債は逐次整理されることとなるのでございます
次に舊勘定に屬する資産及び負債は、近く提案致します金融機關の再建整備に關する法律案に依りまして整理せられることと相成りますので、舊勘定に對する債權者の利益を詐害するやうな虞のある行爲は、一切之を停止せしむるやうな必要があります、隨ひまして今後舊勘定に於きましては、特別の例外の場合を除きまして、其の債務を辨濟又は資産の處分をなすことが出來ないことと致したのであります、又舊勘定に對する債權者等が新勘定又は舊勘定に屬する資産に付て勝手に辨濟を受けたり、相殺に依つて債務を消滅させることは隱當を缺きますので、斯かる行爲も亦之を禁止することと致したのであります、隨ひまして叉舊勘定に屬する資産に對しましては、強制執行、假差押又は假處分をなすことが出來ないことと致したのであります
以上の外保險會社等に付きましては、其の資産、負債の新舊勘定への所屬に關しまして、命令を以て前に申述べました所に對する特例を設け得ることと致しました、又舊勘定に屬すベき保險契約に關しましても、若干の特例を設けることと致したのであります
又金融機關の決算に付きましては、昭和二十一年八月十一日までを以て一事業年度として打切り決算をなします等、決算に關する特例を設けることと致した次第であります
以上會社經理應急措置法案竝に金融機關經理應急措置法案に付て其の大要を御説明申上げた次第であります、最後に一言附加へますが、今囘の戰時補償の打切りは、各般の關聯措置にも拘らず、其の國民經濟に及ぼす影響は場合に依りましては相當深刻のものがあるかと考へます、即ち戰時補償の打切りは、當然事業界、金融界、延いては預金者、一般債權者等に打撃を與へます、勿論現に生産活動を營み、又は將來の平和産業の建設に必要なる企業に對しましては、今囘の措置が直接の打撃を與へることはないと考へます、隨て今囘の措置の爲に特に離職者を生ずると云ふ如きこともない筈であります、併し從來不健全なる經營状態にありました企業は、今囘の措置を機會に致しまして、其の整理が促進されることは豫想される所でございます、併しながら此の際種種なる困難はございましても、思ひ切つた措置を斷行することは時勢の必須の要請でありまして、若し此の際躊躇して之を行はず、尋常の手段に依りまして當面を糊塗するに於きましては、禍根を後代に貽し、遂に戰後經濟の再建も之を期し得ざるに至ることを惧るるのであります、政府と致しましては茲に思ひを致しまして、眞に堪へ難きを忍んで今囘の措置を斷行することと致した次第であります、終戰以來我々國民が歩いて來た道は決して安易なものではありませぬ、前途も亦苦難に滿ちたものと考へます、併しながら此の苦難を克服して初めて平和日本再建の大目的が達成せられるので、而して前途には大いなる希望が輝いて居ると存じます
以上縷縷申述べましたが、本日上程されました會社經理應急措置法案及び金融機關經理應急措置法案は、何れも戰時補償特別課税の實施に伴ふ企業界竝に金融界等の混亂を未然に防止し、企業竝に金融機關の根本的再建整備を圖る爲め緊急を要するものでありますので、何卒至急御審議の上、速かに御協贊あらんことを切にお願ひ致す次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=31
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032・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 討論の通告があります、順次之を許します──徳田球一君
〔徳田球一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=32
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033・徳田球一
○徳田球一君 私は日本共産黨を代表致しまして、議題になつて居る二つの法案に對しまして、徹底的に反對せんとするものであります
軍需補償の打切り、擬制資本を徹底的に整理する、さうして此の基礎の下に日本經濟を再建せんとすることは、我が黨の豫ね豫ね主張して居る所であります、併しながら是は勞働者、農民及び其の他の人民諸君の手に依つてなされなければ、到底不可能のことと存ずるのであります、然るに本法案に依りますと、此の整備は主として獨占資本家を強化する目的に使はれて居るのであります、此の整理の實際の任務に當りますのは金融資本家、企業家であるのでありますが、企業家は債務者である、獨占金融資本家は債權者であるのでありますから、必然企業家は之に頭が上らないのである、然るに勞働者諸君は何等之に關知する所なく、隨て總ては獨占金融資本家の言ふ儘にならざるを得ないのである、我我は現在に於て最も必要とする所は、財閥を粉碎し、之を徹底的に解體することであるのでありますが、本案に依りますと却て是等財閥を再び強化することになると思ふのである、斯かる如き政策を行へば、經濟活動は獨占金融資本の利益と其の意圖に左右せられざるを得なくなるのであります、斯かる結果は失業者は増大し、勞働組合は骨拔きとなり、之を御用組合化さうとすることになるのである、斯かる結果は勞働の強化となり、勞働條件は益益低下し、今や我が民族は體力に於て、智力に於て、益益衰頽しつつあるに拘らず、斯かる政策を用ひれば、民族は破滅するの已むなきに至るのである、更に「インフレーション」を増強し、生産活動を萎靡せしめ、益益人民の窮乏を深化せざるを得ない状態に陷れるでありませう、是等は何等擬制資本を切捨てるのではなく、財産税として取上げたものを、再び資本家の手に落さうとするものでありますから、「インフレーション」は益益増大することは當然である、又生産を増加する爲には、勞働者は一層生産に吸收しなければならないのに、數百萬の勞働者を失業の巷に追ひ出さうとする此の計畫、それは生産の増大はおろか、生産は益益萎縮せざるを得ないのである、斯くして「インフレーション」は増大し、生産活動は益益萎縮し、人民の窮乏は益益深化せざるを得ないのである、更に重大な問題は、斯かる整理方針を以てすれば外國資本を導入し、外國商品へ日本市場を明渡すことになる、斯かる結果は植民地的超過利潤を追求せらるるの已むなきに至らしむるのである、斯くして我が民族は半植民地化の苦惱に泣き、茲に植民地的奴隸に堕落せざるを得ない状態に陷るのである、我我は斯かる政策を以てすば、經濟の再建はおろか、數箇月にして再び「インフレーション」は増大し、國民は負擔に苦しみ、此の經濟界の危機は愈愈益益増大し、再び一大手術をなさざるを得ない状態に至ると思ふのである、故に此の際斯かる法案を廢して、勞働者農民の手に依つて、人民の手に依つて、凡ゆる過去の犯罪的な擬制資本を掃蕩する政策を執る、之に任すことが當然であると思ひますので、我我は此の法案に反對するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=33
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034・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 大野伴睦君
〔大野伴睦君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=34
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035・大野伴睦
○大野伴睦君 諸君、私は日本自由黨を代表致しまして、會社經理應急措置法案及び金融機關經理應急措置法案に對しまして、聊か所見を申上げたいと存じます
所謂軍需補償處理の問題は、終戰後の我が國經濟に取つて是が解決を迫られて居る最も重要な問題の一つであることは、今更申上げるまでもありませぬ、之を何れの方向で解決するに致しましても、相當の無理があり、色々の摩擦や副作用を伴ふことは明かであります、問題は此の副作用を最小限度に止める爲には、何れの方途を勝れりとするかに懸つて居ると存じます(拍手)政府に於ては、此の度軍需補償は原則的には百「パーセント」の特別課税を行ふことに依つて、事實上之を打切ることに決定して、其の善後措置として、金融緊急措置の改正、企業者及び金融機關の應急措置等の一聯の施策を實行しようと云ふのでありまするが、終戰後の我が國の經濟及び金融の現状から見まするならば、軍需補償の支拂をすることは、現在の經濟國力では差當り消化困難である、徒らに過剩購買力を追加する結果、金融情勢を惡化せしめることは明かであります、又此の問題を未解決の儘放任致しまする時は、日本經濟の再建復興を阻碍することも亦明瞭でありませう、隨て此の際此の問題を根本的に解決しようとする政府の決斷に付ては、原則的には之を諒とするものであります(拍手)併しながら之には種々の副作用が随伴して起つて來ることは言ふまでもありませぬ、政府に於ても萬全の措置を講ずるであらうと存じまするが、特に若干の希望意見を申述べて、更に注意を喚起致したいと存じます
第一は過渡期に於ける金融の混亂、特に事業金融の梗塞に付てであります、大藏大臣は現在の經濟情勢を飢餓恐慌と言つて居られるが、所謂飢餓恐慌の時代には何を措いても生産の増強が第一の要諦であると存じます(拍手)斯かる際に今囘の如き措置を行へば、必ずや極度の金融梗塞状態に陷り、生産意欲は阻碍せられ、現在最も必要とする物の増産とは全く正反對の事態を招來する虞が多いのであります、特に中小企業に於て此の感が一層深いと存じます、政府としては此の點に付き十分思ひ切つた施策を實行することが肝要であると存じます
第二は企業從業員の勞務對策、失業對策の問題であります、今囘の措置に依つて企業の經理には可なり大きな影響を受け、差當り給與の支拂に支障を生ずる場合もあるでありませうし、又相當多くの企業が整理を餘儀なくせられる結果、多數の失業者も出來て來ることと考へられまするが、是等失業者への退職金の支拂、及び失業者の生産部内への合理的受入れ態勢の整備強化に付て、格別の配慮を煩はしたいと思ふのであります
第三は預金吸收運動の積極的展開であります、今囘の措置に依つて實際上は一般大衆預金には殆ど影響がないと致しましても、所謂預金者心理には重大な惡影響を及ぼすのでありまして、從來と雖も極めて不振であつた貯蓄の吸收は、今後愈愈困難の度を加へるものと考へられます、若し此の儘放置するならば、金融界は極めて憂慮すべき事態に陷ると存じます、政府は通貨及び信用の基礎を鞏固ならしめると共に、信を國民に厚くし、貯蓄吸收の増強に格別の工夫を講ぜられたいのであります(拍手)
最後に政府は今囘の措置に伴ふ經過的且つ消極的應急措置のみに沒頭することなく、經濟再建の恆久的積極策に付て自信のある方針を確定し、速かに是が實現を圖られたいのであります(拍手)軍需補償の處理は、其の打切りを以て目的とせられるのではないのでありまして、光明ある新日本經濟の復興發展を目標とすべきであると信じます、本日提案になりました會社經理應急措置法案及び金融機關經理應急措置法案に關しましては、以上四點に付き強く之を要望する次第であります
尚ほ特に強調致したいことは、最近に於ける政府の金融施策は極めて姑息的であつて、謂はば國民の懷ろを探るが如きことが屡屡行はれたのであります(拍手)斯くの如き行爲を繰返すに於ては、政府は國民の信を繋ぐ能はず、政府の企圖する國民經濟の安定の如きも庶幾すべからざること明瞭であると存じます、政府が今囘斷乎として一聯の決定的大施策を斷行する以上、斯かる國民の財布を探し廻るが如きことは、今後絶對に是なきものとの前提にあらざれば、斯かる施策は理論上許されざるものと信ずるのであります、私は此の信念を前提とし且つ條件と致しまして、本案に對し自由黨を代表して贊意を表するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=35
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036・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 田中萬逸君
〔田中萬逸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=36
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037・田中萬逸
○田中萬逸君 私は日本進歩黨を代表致しまして、只今議題に供された會社經理應急措置法案竝に金融機關經理應急措置法案、此の兩案に對しまして贊成の意を表するものであります(拍手)
數百億圓の巨額に上る軍需補償、戰爭保險金等、所謂戰時補償を如何に處理すべきかは、終戰後に於ける我が國經濟の再建と生産の増強に至大の關係を有する現下最大の重要問題でありまして、全國民は齊しく甚大なる關心を以て其の成行を注視して居つたのであります、然る所今囘政府に於ては愈愈是が根本的處理を斷行することを決意せられ、戰時補償は特別の課税に依つて原則として之を打切ることとなし、之に關連して企業及び金融機關の再建整備、整備途上に於ける企業及び金融機關の經理應急措置、個人及び公益法人に關する措置、復興金融に關する措置等、一聯の強力なる綜合的施策を決定するに至つたのでありまするが、是は終戰後御存じの如く其の基盤が著しく縮小致したる上に、更に今後賠償其の他巨額の負擔を擔ふべき我が國經濟界の當然辿らねばならぬ必然の筋道であると考ふるのでありまして、而も事態は急迫し、徒らに遷延を許さざる今日、政府が敢然之を斷行せんとする決意の程を大いに諒とするものであります(拍手) 言ふまでもなく今次の戰時補償打切りの各方面に及ぼす影響は、幾多の關聯せる措置にも拘らず、場合に依りましては相當深刻なる結果を生み、會社、金融機關を初め、或は一般預金者、債權者等、打撃を受くる者も決して少くはなく、又企業の整備に伴ふ已むを得ざる結果と致しまして、不幸なる離職者も相當生ずることと豫想せらるるのでありまして、斯かる方面に對しましては洵に深甚なる同情を禁じ得ざるものがあります、されば政府に於ても是等に對して各般の對策を構ずべき用意が既に整つて居るとは承つて居りまするが、民主日本再建の途上、特に眞摯質實なる處置を講ぜられ、政府怨嗟の民衆の叫びが耳を擘き胸を刺すが如き事象が萬々是れなきやう深沈大慮せらるると同時に、當面の金融對策、勞働對策竝に離職者に對する退職資金等、是等支給の確保等に付ては細心周到なる注意の下に萬全の上にも萬全を期し、此の轉換期に於て聊かたりとも混亂を生じ、紛糾を招き、斷じて今次措置の根本目的たる經濟の再建を一日、否一刻たりとも阻碍するが如き事態を現出せざるやう、十分の注意を以て臨まれんことを深く切望する次第であります(拍手) 今次の措置は戰後經濟再建の出發點として、國民としても敢て其の負擔を甘受致し、其の目的の貫徹せらるることに全力を擧げて協力を惜しまない覺悟が必要であると信じます(拍手) 同時に私は國民を代表致して、政府當局が今後の經濟再建に關し、單に整理と云ふが如き消極的の面のみに止まらず、進んで積極的なる建設的の面に於ても確乎不拔の綜合的施策を迅速に確立實施せられ、平和新日本の建設が一日も速かに完成せられるやう、不退轉の決意を以て此の重大危機を突破克服すべく、更に一段の努力を拂はれんことを熱望して已みませぬ(拍手)
終りに臨んで重ねて一言を致します、本日茲に提案致されました會社經理應急措置法案及び金融機關經理應急措置法案の兩案は、何れも今次の一聯の措置に於ける應急措置と致し、緊急措く能はざるものでありまするが故に、茲に民主日本再建の基盤を確立すべき目的の下に、本案に對し贊成の意を表して此の壇を降らんと欲するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=37
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038・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 鈴木茂三郎君
〔鈴木茂三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=38
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039・鈴木茂三郎
○鈴木茂三郎君 本日茲に上程されました二つの經理應急措置に關する法案は、政府が昨日國民の前に明かにされました補償打切り竝に經濟再建に關する聲明に從つて、今後引續き提案される所の所謂軍需補償の打切りと、財界整理に關する一聯の重要諸法案なる戰時補償特別税、企業金融の再建整備法案、或は復興金融金庫法案、是等の施策の前提をなすものでありまして、政府は只今それ等の施策の全貌に關しまして、我々の前に明かにされましたが故に、私は日本社會黨を代表致しまして、本案竝に一聯の諸法案に依る政府の施策たる軍需補償の打切り竝に財界の整理に關する我が黨の根本的態度を此の機會に先づ明確に致しまして、本案に對する態度を決定致したいと存ずるものであります
第一に軍需補償打切り竝に財界整理に關する問題に付きましては、「マッカーサー」司令部に依つて招聘されて來朝の上、日本の經濟情勢を視察されて作成されたと推察される所の「レオ・チャーン」氏の整理案なるものが、權威を以て國民の間に傳へられて居るやうでございます、我々は此の「レオ・チャーン」氏案の具體的な一々に付て窺ひ知ることは出來ませぬが、「チャーン」氏案の原則は、戰爭に依つて發生したる政府に對する凡ゆる個人及び企業の全請求權を、課税の方式に依つて打切り、實質的には之を破棄すると云ふ徹底的なものでありまして、軍需補償の打切り竝に大口の軍事公債の棒引に關しましては、軍需資本家に戰時利得を吐出させ、又「インフレ」の惡性化を防ぎ、且つ又財政經濟の再建の爲に之を必須條件なりと主張して參りました我が黨は、當然「チャーン」氏案の此の原則に一致するものがあるのでございます、然るに政府今囘の措置は、資本家と共に今日まで軍需補償の打切りに極力反對をされて參りましたが、漸く内外の情勢に促迫されて、已むなく軍需補償の打切りと財界整理の肚を御決めになつたやうでございます(拍手)併しそれは權威ある「チャーン」氏案の如き全請求權の破棄と云ふのでなく、大幅に打切ると云ふ程度のものでございますが、我々は政府が小口の預金であるとか、小口の戰災保險などに對しまして考慮を拂はれたことに對して、敬意を表するに吝なるものではございませぬ、併しながら所謂「チャーン」氏案の原則とは似ても似付かぬものであることは、私が次に申上げる理由に依つて明瞭であると存ずるものであります
申上げるまでもなく全請求權の破棄とか、大幅の打切りと云ふ意味は、戰爭に依つて發生した所の不良資産を資本家の負擔に於て整理すると云ふことでございます、然るに政府今囘の措置は、一方に於ては軍需補償の打切り、他方に於ては資産を時價で評價する、資本家の間には昭和十四年或は帳簿價格の三倍半に引上げて呉れと云ふ要求さへございますが、兎も角政府は時價に依つて資産を再評價することを聲明されて居ります、さう致しますと、片方に於て軍需補償を切りながら、切つたものだけを資産評價に於て引上げて行くと云ふ、何等徹底せる所の整理とはならない、今日まで資本家が所謂濟し崩しに整理する─「インフレーション」を發展させて、長い間に次第に働く人達、國民の上に此の犧牲を投げ掛けて行くと云ふ所の、濟し崩しの整理案以外のものではないのであります、併しまだ是だけでなくて、今後整理を要する所の問題は、賠償に關する問題或は軍事公債の問題、舊勘定の第二封鎖預金の問題或は新圓の「インフレ」に對する問題等、今後財界の整理を要する問題は極めて澤山あるのでありますが、斯樣な第二、第三の整理がどうしても不可避でありまするのに、今後此の問題が同じやうに當然資本家の負擔すべきものを、國民の背中に轉嫁するやうな整理の行はれることに對しましては、我が黨は斷乎たる決意を以て之に反對せんとするものでございます(拍手)
第二には、只今申しましたやうに水膨れを十分整理しない結果、今後の生産は高い資本の「コスト」で安い生産「コスト」に引下げて品物を作らうと致します爲には、資本家階級は働く人達を少くして、人員を整理して、少しでも餘計働かせると云ふ方面に、所謂重い勞働を勤勞階級の上に振掛けて來ることは當然でございます(「ノーノー」)それと同時に軍需補償とは何の關係もない所の銀行會社の企業が、此の財界の整理に便乘致しまして同じやうに合理化を目指して即ち人を減して餘計働かせることを主眼とする資本家的合理化を目指して、此の機會に凡ゆる方面に於て人員の整理が行はれるであらうと云ふことが極めて憂慮せられて居るのでございます(拍手)人員の整理に關しまして、私共は所謂軍需補償の整理に藉口を致しまして此の際人員を整理せんとする方策に對して反對を致すものでございますが、已むなく整理致すと致しましても、出來得るだけ勞働時間を短く致しまして、働く人達を澤山使ふやうに致しまして失業者を少くする、さうして斯樣な方面に政府をして出來得るだけ最善の努力をせしめなければならない、それと同時に失業者に對しまする政府の受入態勢が、只今まで凡ゆる機會に於て論議、審議された形跡を願みまして、政府は失業問題に對しましては極めて無計畫であり、又不十分である、而も政府の誠實を疑はしむるものがございますが故に、私は此の機會に於て失業問題の前途が極めて重大なるものであることを政府に警告せんとするものでございます、失業救濟の事業に致しましても、道路を直したりするやうな單なる失業救濟でなくて、我我は生産を再建致しまして、此の生産點に出來得るだけ失業者を就業せしめるやうな積極的な計畫の樹立を政府に要求致すものでございます、或は又已むなく出た失業者に對しまして、政府は解雇手當を三箇月、大體今月は實收入の一月分を與へて、來月は幾らか減らして、次の三月目はもつと減らして、僅かに三箇月に足りない所の退職手當を拂つて解雇しようと云ふ腹案を持つて居られるやうに承知致して居りますが、我々は斯くの如き解雇手當の僅少なるに對して反對を致します、又解雇手當に關しましては、凡ゆる經理に優先致しまして、若し資本家側に於て支拂ふことが出來ないやうな場合には、政府に於て之を負擔する用意を持たなければならないと存ずるのでございます(拍手)
第三には政府の是から提案せんとする全貌に從つて、其の一つ一つに付て大まかに檢討致しますると、政府の財界整理案は極めて資本家的臭味を蔽ひ隱すことの出來ないものでございます、例へば同じ預金に致しましても、一世帶で各銀行の一つづつに付て一萬五千圓づつ第一封鎖に入れると云ふやうなことでは、最近財産税の問題以來凡ゆる金持は出來得るだけ預金を分散致しまして、保護される所の一萬五千圓以内の預金者の中に何れも隱れて居ります(拍手)我々は斯くの如く大資本家が我々の一萬五千圓の中に入り込んで來たものまでを救濟せんとする、一世帶に付き各銀行毎に一萬五千圓と云ふやうな政府案に對しては反對しなければならないと存ずるのでございます(拍手)或は又如何なる場合に於きましても、今日まで會社の整理、銀行の整理に當りましては、株主が未拂込を徴收して之を整理に當て、特に金融機關の場合に於きましては、預金者に對する銀行重役の責任上私財を提供致しましたことは、今日までの金融恐慌の歴史に於て明かな所でございます、斯樣に此の整理案は極めて資本家的臭味のあるものであるに拘らず、一方に於て此の一萬五千圓の第一封鎖であつても、銀行が整理を致しまして支拂へない場合には、政府は此の支拂までも保證せんと致して居るやうでございます、此の結果は結局致しますると、煎じ詰めて參りますると、所謂財閥の五大銀行に於て一萬五千圓以下の預金の支拂が出來ないことになるやうでございまするから、畢竟する所政府の此の預金に對する支拂の保證は、財閥の五大銀行に對する預金の支拂を保證する以外の何ものでもないと信ずるものでございます(拍手)我々は斯樣な場合は金融手帳に依つて處理される一つの方法を見出さなければならないと存じます
〔「小兒病的だ」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=39
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040・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=40
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041・鈴木茂三郎
○鈴木茂三郎君(續) 然るに一方に於きまして、今日まで軍需補償打切りに反對を致して參りました所の政府は、財産税一本を其の方策と致して居りましたが、財産税に關しましては、今囘軍需補償の打切りを致したと云ふことに依つて、一千億圓の豫定に對して五百五十億圓を免除致しまして、所謂法人會社に對しましては財産税を免除することに致しましたことは、極めて會社を擁護する所の偏頗な處置なりと斷ぜざるを得ないものでございます(拍手)
第四は軍事公債の問題でございます、一方に於きましては政府は軍需補償を打切る、戰災の保險に一定額以上を課税する、預金は封鎖する、或は又大陸から引揚げて參りました所の我々の同胞に對しては、或は復員の兵士に對しては、之を放置して顧みる所がない、或は又此の戰爭の爲に百十萬人の我々の若き同胞が戰死を致して居ります、或は又勤勞階級の中には、預金や貯金或は保險と云ふやうなものさへ持たない所の多數の是等の人達が、今囘の財界整理の餘波を受けて犧牲を負擔しなければならぬと云ふやうな事態にあるに拘らず、軍需補償と性質を同じく致します所の軍事公債に對して、何等之に手を著けないだけでなく、所謂五大銀行を保護する爲には國債の利拂までもするやうなことを致しますことに對して、我々は斯かる政府の銀行擁護の偏頗な處置に對して反對を致すものでございます、政府は軍事公債の打切りは預金の支拂に支障を來すと云ふ、極めて立派な名前に藉口して辯解を致して居ります、併しながら古い勘定の預金は今日完全に封鎖されて居り、新しい勘定の預金も、或は又新圓も、滔々たる新圓の「インフレーション」に依つて其の紙幣の價値は下落しつつあります、少しも政府に依つて預金の保護はされて居らない、且つ支拂の保證に充てると云ふ所の多額の軍事公債に對しまして、政府の今日の計畫に依りますると、是等の軍事公債の元利拂を得るや否やと云ふことに對する、何等の計畫的財政方針を持つて居らないのでございます、支拂ふことの出來ない軍事公債を、支拂ひ得るかの如く國民の前に宣傳致しますことは、是は國民を欺瞞するものでございまして、今日本當に國民の預金を擁護せんとするには、資本家が金庫の中で温めて居る所の、戰爭の産物である軍事公債を保護することではなくて、國民の貯金を、國民の新圓を、滔々たる新圓の「インフレーション」から護り、お互ひの預金が只にならないやうに、先づ新圓の「インフレ」に對する防止を行ふことが、私は今日何よりの急務なりと信ずるものであります
最後に中小商工業の問題に付きまして、財界の整理の餘波を多く受けるものは中小商工業資本であることは、自由黨、進歩黨の諸君も御認めになつて居るやうでございます、我々は是等の中小商工業が──一面に於ては金融に付て戰災に因つて擔保物件さへなくなつて居る是等の中小商工業者が、實質的に再建し得るやうな融資の具體的な方法を講じ、同時に全國の遊休施設や或は又民間の持つて居る資材を國家の管理に移しまして、物の方面からも是等の中小商工業に對しまして出來るだけの協力を與へ、内示を與へ、技術者の總動員を行つて、出來るだけ産業の技術的進歩を圖らなければならないと存じて居るものでございます、私は斯樣な政府の今囘提案せんとする一聯の諸法案に對しまする我が社會黨の根本的な見解を表明致したのでございますが、我々は斯かる根本的見解の上に立つて、今後續いて提案されて參ります所の一聯の諸法案に對しまして、是等の本格的施策に對して、私が只今申上げました根本的態度の上に立つて、峻嚴なる、嚴肅なる檢討を加へんとするものでございます、日本社會黨儼として存する限り、斯くの如き資本家的な財界整理案を我々の議會を易々と通過させることは斷じて不可能であります(拍手)
併しながら今日茲に提案をされました所の二つの法案は、政府が是から提案を致す所の本格的な諸法案の前提をなすものでございまして、其の豫備的なものでございまして、財界の整理と軍需補償の打切りの徹底を所期致しまする私共は、此の際斯かる豫備的なものは事情已むを得ないものと致しまして茲に承認し、次の此の豫備的な法案に續いて提案されて參ります所の一聯の資本家的な財界整理案に對して、我我は峻嚴なる、嚴肅なる檢討を加へることを茲に聲明致しまして、本案に對する態度──贊意を表するものでございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=41
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042・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 駒井藤平君
〔駒井藤平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=42
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043・駒井藤平
○駒井藤平君 私は協同民主黨を代表致しまして、只今上程されました會社經理應急措置法案、金融機關經理措置法案、此の二案に對しまして希望を述べて、原案に贊意を表するものであります(拍手)
元來「インフレ」對策と致しまして世界各國が執り來つた政策は、大別して二つあると思ふのであります、其の一つは「インフレ」と云ふ、謂はば脂肪過多症に比すべきものを、物理的療法と云つたやうな方法で治さうとするものであつて、或る程度「インフレ」を昴進させ、諸物價が戰前相場の幾倍かの所で大體均衡を保つ潮時を見計らひまして、金本位其の他確實なる貨幣制度に復歸することを機會に、所謂平價切下げを斷行して脂肪肥りを治す方法であるのであります、世界の多くの國は此の謂はば内科的療法に依りましてやつたのでありまするが、此の問題は心臟が持ち堪へるかどうかと云ふ點にあるのであります、第二の療法は謂はば外科手術に依る方法であつて、脂肪過多の局所々々に付て手術を行ふのであるが、其の方法は其の手術を行ふ際に、成べく痛みを少くする、其の爲には、麻醉劑を用ひる要あるは勿論、其の出血に對しましても、身體を持ち堪へるやうに、輸血其の他の周到の用意をして置くことが肝要であります、さもなければ手術は手際好く完全にやつたが、患者は死んでしまふと云ふやうな虞があるからであります(拍手)石橋藏相は平素の御持論からして、我々は藏相に密かに第一の内科的療法に出られるであらうこととのみ期待して居つたのでありまするが、入閣後種々の御事情から、遽かに外科的手術に出られる御決心をなされて、一兩日前の金融緊急措置令の改正となり、本日の提案となつたものと推察致すのでありますが、從來此の方法に依つた諸國は、比較的領土廣大、物資豐富と云ふ惠まれた環境にあり、所謂輸血の途も容易に得られるのであるが、敗戰の結果、今日の我が國情は全然是と趣きを異にして居ります、隨て一度手術を誤つて多量の出血をするやうなことがあれば、囘復絶望とまで行かずとも容易ならぬものがある、我々は密かに危惧する次第であります、かるが故に我々は黨派的立場を超越致しまして、石橋國手の手術の成功を祈ると共に、苟且にも一旦手術に取掛る以上、其の間過ちを出來るだけ少くする爲に必要な忠言と助力を惜しまない積りであります(拍手)差當り萬一の場合必要な輸血の準備として、海外に「クレヂット」を設定せられる等、必要物資の供給を受ける途を開かれる等のこともしなければならぬと考へます、「クレヂット」に付て序でながら申上げますが、數日前の「スターズ・エンド・ストライプス」に依りますと、最近日本及び朝鮮に對する必需物資の輸入の爲に五千五百萬「ドル」、内三千萬「ドル」は日本の「クレヂット」が設定せられたとの「ワシントン」電報が掲載されて居るのであります、其の「クレヂット」の期間は三十年とあるが、斯かる長期となつては假令廻傳「クレヂット」と致しましでも、餘りに少額であると思ひますが、何れにせよ祖國の經濟復興の爲には斯かる方法を十分に利用あらんことを切望して已まぬのであります
又國内にありましては、解體後の舊財閥の事業中、國民生活に必要なる物資の生産に關する部分を、資本家も勤勞者も渾然一體化した、我々の所謂協同主義經營に依つて迅速且つ圓滿に増産を期すると共に、之に依つて更に農業、林業、水産業等の増産に必要なる物資の供給に萬遺憾なきを期せらるると同時に、國民生活上必要なる物資の配給に當りましては、輸送の圓滑を圖ると共に、配給機構の整備、就中隣組、町内會等の經濟活動を協同組合化することに依つて、當局の取締と相呼應し、横流れ、闇行爲等の絶滅を期されることが肝要と思ふが、是等の點に關する所の政府の水も洩らさぬ用意が必要であると私は強調するものであります(拍手)苟且にも新經濟下に於ては、正直者が馬鹿にされ、闇行爲や日稼ぎをする人々が俄が成金となり、脂肪過多症治療の結果、身體の一部に脂肪が偏在して妙な畸形態が出來、一般大衆は爲に苦しむと云ふことにならないやうに、萬全の策を講ぜられることを切望致す次第であります、萬一斯かる謂はば瘤の出來た場合に、是が治療に思切つた手術に出られる覺悟と用意を今日より整へて置かれて、以て世道人心の頽廢を防がれんことを切望して已まないのであります
最後に今一點希望致したいことは、一萬五千圓以内に於てなした銀行への預貯金──偶然か或は早耳であつたか、さうした人が非常に有利であつたと云ふやうな不公平が現はれて居るのであります、是等を公平に處置し、特に善處せられんことを希望して本案に贊意を表するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=43
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044・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是にて討論は終局致しました、兩案を一括して採決致します、兩案に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=44
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045・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 起立多數、仍て兩案は可決致しました(拍手)是にて議事日程は議了致しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後三時五十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02819460813&spkNum=45
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