1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年八月十五日(木曜日)
午後二時二十六分開議
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議事日程 第二十八號
昭和二十一年八月十五日
午後一時開議
第一 臨時物資需給調整法案(政府提出) 第一讀會
第二 商工協同組合法案(政府提出) 第一讀會
第三 郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 宗教的情操教育に關する決議案(地崎宇三郎君外五名提出)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、昨十四日貴族院に於て本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した
會社經理應急措置法案
金融機關經理應急措置法案
一、議員から提出された議案は次の通りである
遊興飮食税改廢に關する建議案
提出者
加藤一雄君 上林山榮吉君
石原圓吉君 田中善内君
磯崎貞序君 山本勝市君
中野寅吉君 村上勇君
山口喜久一郎君 武田キヨ君
若松、戸畑連絡海底隊道緊急實施に關する建議案
提出者
伊藤卯四郎君 岡部得三君
長尾達生君 松本七郎君
森林整備に關する建議案
提出者
宮澤才吉君 武藤常介君
配電事業東京都移管に關する建議案
提出者
本多市郎君 林連君
八代、人吉、吉松間鐵道電化促進に關する建議案
提出者
渕田長一郎君 坂田道太君
廣島縣に醫科大學設置に關する建議案
提出者 武田キヨ君
戰時徴傭滅失漁船の復舊對策に關する建議案
提出者
石原圓吉君 田中源三郎君
夏堀源三郎君 河原田巖君
菊地長右ェ門君 馬越晃君
原捨思君 林興一郎君
西村久之君
漁業保險制度新設に關する建議案
提出者
石原圓吉君 田中源三郎君
夏堀源三郎君 河原田巖君
菊地長右ェ門君 馬越晃君
原捨思君 林興一郎君
西村久之君
(以上八月十三日提出)
材料ゴム輸入促進に關する建議案
提出者
田中源三郎君 大野伴睦君
葉梨新五郎君 小峯柳多君
石井光次郎君
松山農業專門學校の官立移管に關する建議案
提出者
關谷勝利君 高橋英吉君
林田哲雄君 馬越晃君
藥師神岩太郎君 安平鹿一君
布利秋君 稻本早苗君
宮前進君
(以上八月十四日提出)
一、議員から提出された質問主意書は次の通りである
憲法改正に關聯する再質問主意書
提出者 布利秋君
(以上八月十三日提出)
一、去十三日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
二五 野本品吉君
二七 田中伊三次君
三一 井出一太郎君
六九 本名武君
七六 寺田榮吉君
一四二 廣川弘禪君
一四三 今井はつ君
一五〇 菊池長右ェ門君
一五一 武田信之助君
二九三 竹谷源太郎君
二九四 藤田榮君
三七二 赤松勇君
三四五 淺沼稻次郎君
一、去十三日議長に於て次の通り常任委員の辭任の許可があつた
第三部選出豫算委員 長尾達生君
第四部選出豫算委員 椎熊三郎君
第七部選出豫算委員 西山冨佐太君
第八部選出豫算委員 宮前進君
一、去十三日常任委員補闕選擧の結果次通り當選した
第四部選出
豫算委員 椎熊三郎君(北村徳太郎君補闕)
第七部選出
豫算委員 原健三郎君(平野増吉君補闕)
第九部選出
請願委員 冨吉榮二君(吉川兼光君補闕)
一、去十三日次の通り特別委員の異動があつた
會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)委員
辭任 島田晋作君 補闕 田原春次君
辭任 松本七郎君 補闕 正木清君
辭任 新妻イト君 補闕 山崎常吉君
辭任 林虎雄君 補闕 井上良次君
生活保護法案(政府提出)委員
辭任 竹内茂代君 補闕 今井はつ君
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)外二件委員
辭任 山下ツ子君 補闕 野村ミス君
一、昨十四日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第三部選出豫算委員 鈴木明良君
第五部選出豫算委員 青木泰助君
第五部選出豫算委員 竹内茂代君
第七部選出豫算委員 有馬英二君
第七部選出豫算委員 原健三郎君
第七部選出豫算委員 寺島隆太郎君
第八部選出豫算委員 川崎秀二君
第八部選出豫算委員 仲川房次郎君
一、昨十四日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第三部選出
豫算委員 鈴木明良君(長尾達生君補闕)
第四部選出
豫算委員 北村徳太郎君(椎熊三郎君補闕)
第七部選出
豫算委員 有馬英二君(西山冨佐太君補闕)
第八部選出
豫算委員 仲川房次郎君(宮前進君補闕)
一、昨十四日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
生活保護法案(政府提出)委員
理事 有馬英二君(原捨思君昨十四日理事辭任に付其の補闕)
一、昨十四日次の通り特別委員の異動があつた
勞働關係調整法案(政府提出)委員
辭任 穗積七郎君 補闕 野本品吉君
辭任 岡部得三君 補闕 原健三郎君
辭任 古賀喜太郎君 補闕 北村徳太郎君
辭任 關谷勝利君 補闕 天野久君
生活保護法案(政府提出)委員
辭任 中山たま君 補闕 山下春江君
辭任 竹内歌子君 補闕 菅原エン君
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)外二件委員
辭任 江川爲信君 補闕 寺田榮吉君
辭任 武藤嘉一君 補闕 寺島隆太郎君
郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)委員
辭任 井上赳君 補闕 丸山修一郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きます
諸君、本日は我が國が「ポツダム」宣言を受諾してより滿一年目に當ります、今や我々は速かに民主的且つ文化的國家を再建して、世界恆久平和確立の先驅者となるべく、國民擧げて奮起すべき秋であります、深き感慨を以て迎へた此の記念日に當り、我々議員は、全國民と共に新日本の建設に邁進せんことを期するものであります
〔拍手〕
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=1
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002・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第三を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=2
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003・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=3
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004・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第三、郵便貯金法等の一部を改正する法律案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長稻田直道君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=4
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005・会議録情報2
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第三 郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
右は本院に於て可決すべきものと議決した困つてここに報告する
昭和二十一年八月十四日
委員長 稻田直道
衆議院議長樋貝詮三殿
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〔稻田直道君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=5
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006・稻田直道
○稻田直道君 只今議題となりました郵便貯金法等の一部を改正する法律案の委員會に於ける審議の經過竝に結果を簡單に御報告申上げます、本委員會は去る五日參集致しまして、委員長竝に理事の互選の結果、委員長には不肖私が當選し、理事には伊藤郷一君、佐藤義詮君、小池新太郎君、森本義夫君の諸氏が當選致されました
先づ提案の趣旨に付きまして一松遞信大臣より詳細なる説明がありました後、改正法案の内容に付きまして、毎囘殆ど全員出席と云ふ非常に熱心なる態度を以て、五囘に亙り文字通り愼重審議を重ねたのでありまするが、それ等の詳細は速記録に讓りまして、茲には其の要點の二、三を御報告申上げます、即ち本改正案は、現下の經濟事情の激變に對應致しまして、國民生活の安定と、郵便事業の基礎の鞏固と、加入者大衆の利益擁護とを目的と致しまして、郵便貯金の最高額を五千圓から一萬圓に引上げ、同樣に簡易生命保險の二千圓を五千圓に、郵便年金の三千六百圓を六千圓に各各引上げますることと、又簡易生命保險事業は現在は政府事業でありますものを、今後は民營事業としても之を認めて行かうと云ふことと、又是と同時に簡易生命保險及び郵便年金事業經營を適正強化し、契約者大衆の利益擁護を期する爲に、簡易生命保險法中及び郵便年金法中の一部を改正し、簡易生命保險法に於ては其の長期還付金を、郵便年金法に於きましては、其の滿期返還金の制度を、それぞれ既往の契約にも遡つて之を廢止し得るやうに改正せんとするものであります
之に對して委員會に於きましては、各委員より預金部資金運用の現況竝に軍需補償打切りが契約者大衆に及ぼす影響と其の對策、長期還付金竝に滿期返還金廢止の理由及び其の影響、國營簡易保險と民營簡易保險との比較等に付き極めて適切眞劍なる質疑が行はれ、之に對しまして政府も亦刻下の經濟事情に即して事業の安定を圖りつつある實情を率直明快に答辯せられ、大體に於て本改正案の妥當なることを諒承したのであります、尚又速かに遞信事業の機構を囘復して其の迅速確實を期すべきこと、從業員の生活を向上すると共に執務の親切明朗を期すべきこと等に付き、種々の實例を擧げて當局の善處を要望致しましたに對しまして、遞信大臣は目下全力を擧げて遞信魂の昂揚を圖りつつあり、又議會が終了したならば自ら全國を行脚し、從業員と膝を交へて當局の衷情を披瀝し、以て遠からざる將來に於て必ずや國民の要望に應へんことを誓約せられたのであります、尚又此の國家多端の折柄、帝國議會の議員各位に對して從來のやうに電話の架設さへもなし得ざる現状を深く遺憾とせられ、何れ其の内に資材調達の出來次第に、是等のことも實現を圖りたいと云ふ旨の御話もありました、且又電報、速達の遲配、又は小包、爲替等の紛失した場合に於きましては、是が辨償をする規定のあることも國民に周知せしめ、旁旁遞信道徳の昂揚を圖りたい等、小さいことではありまするが、是れ亦本委員會の質問の成果であつたと思ひます、簡易生命保險竝に郵便年金事業の運營其の宜しきを得て、以て國民大衆の利益を忠實公正に擁護する目的を以ちまして、今後遞信省内に簡易生命保險及び郵便年金事業委員會なるものが設けられまするに付きましては、結局此の事業委員會の構成運用を民主的に適正強化せしむると云ふことが、蓋し最も重要なる事柄であると云ふことに各派委員の意見が一致致しましたので、此の總意を代表して特に不肖委員長より次の如く發言致しました、即ち此の事業委員會を最も民主的なるものとする爲に、該事業委員會の委員長は委員間の互選とすること、竝に委員の數を政府案は三十名以内でありましたものを四十名以内と致しまして、内關係官廳側から七名以内、衆議院議員側から十名以内、貴族院即ち將來の參議院側から五名以内、學識經驗者から七名以内、契約者代表から十一名以内とすること等に關しまして政府に注意的警告を致しました所、政府も之に對しましては贊成の意を表し、許さるる範圍に於て其の線に沿うて構成運用したいと云ふ旨の答辯があつたのであります
斯くして討論に入り、各派代表より異口同音に、現在の經濟状況に鑑みまして、此の改正案を妥當且つ已むを得ざる措置なりと致しまして之を認めまするが、飽くまでも事業委員會の運用を庶民大衆の利益を確保するやうに強化し、併せて郵便窓口の改善、電信、電話、郵便等の一日も速かなる囘復と向上とを嚴重に警告致しまして、原案贊成の旨を表明せられたのであります、而して採決の結果、滿場一致原案通り可決致しました次第でございます、此の段御報告を申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=6
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007・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=7
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008・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
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009・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して委員長報告通り可決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=9
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010・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=10
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011・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=11
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012・会議録情報3
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郵便貯金法等の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=12
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013・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して委員長報告通り可決確定致しました(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=13
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014・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第四を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=14
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015・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=15
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016・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、政府は此の議事日程變更に同意せられました、仍て日程の順序は變更せられました──日程第四、宗教的情操教育に關する決議案、之を議題と致します、提出者の趣旨辯明を許します──提出者地崎宇三郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=16
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017・会議録情報4
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第四 宗教的情操教育に關する決議案(地崎宇三郎君外五名提出)
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宗教的情操教育に關する決議案
宗教的情操教育に關する決議
永久に戰爭を放棄し、國民の安全と生存をあげて世界の公正と信義に委ねようと決議したわれらは、「戰爭は罪惡である」といふ信念を以て、世界恆久平和運動を展開しなければならない。そのためには宗教的自覺による四海同胞、隣人愛、社會奉仕の思想を普及徹底させると共に、宗教的情操の陶冶を尊重せしめ、以て道義の昂揚と文化の向上を期さなければならない。
右決議する。
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〔地崎宇三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=17
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018・地崎宇三郎
○地崎宇三郎君 終戰後一箇年を迎へまして、世界的恆久平和の提唱を主眼と致します宗教的情操教育に關します決議案を測らずも上程せられましたことは、實に意義深いものがあると思ふのであります(拍手)昨年の今日陛下の御放送を涙と共に拜承致しましたことを想ひ起しまして、私は感慨無量なるものがあります、あの時受けました「シヨック」は、我が大和民族の歴史の續く限り、永遠に忘れ難いものであります(拍手)あの時の感慨を胸に、世界恆久平和運動を提唱し、内には鬪爭を絶滅して、此の戰爭に犠牲になられました方、或は我々の祖先に報い、後世の子孫に一日も早く主權の囘復することを努めねばならぬと思ふのであります、私は提案者の一人と致しまして、先づ決議案を朗讀致します
宗教的情操教育に關する決議
永久に戰爭を放棄し、國民の安全と生存をあげて世界の公正と信義に委ねようと決議したわれらは、「戰爭は罪惡である」といふ信念を以て、世界恆久平和運動を展開しなければならない。そのためには宗教的自覺による四海同胞、隣人愛、社會奉仕の思想を普及徹底させると共に、宗教的情操の陶冶を尊重せしめ、以て道義の昂揚と文化の向上を期さなければならない。
右決議する。
〔拍手〕
昔から衣食足つて禮節を知ると言はれて居るのでありますが、今日の世相に於て、果していつの日に衣食が十分であるかは豫想し得ない所でありますが、だからと言つて此の儘に過して宜いとは考へられないのであります、衣食の不自由の下にも道義心涵を養するの運動を起さなくては、目指す日本の再建は到底不可能であります、そこに敗戰日本の苦しみと困難があるのでありますが、我々は此の障碍をどうしても突破するの勇氣を持たねばなりませぬ、元來人間は自由を欲し、幸福を願はないものは誰一人もないのでありますが、共同の生活をするに從つて、色々な制約を受けざるを得ないのでありまして、茲に民族としての規律も出來、共同の目的も持ち、又種族の繁榮の爲には、時に共同の防禦も必要になつて來るのであります、唯茲に注意すべきことは、自己の欲望を望む餘りに他人の利益を妨げて顧みないことの善惡であります、多數の爲に自己の欲望を制御すると云ふことは、どうしてもなさねばなりませぬ、何人も是は否定致しませぬ、即ち利己主義は個人ばかりでなしに、社會的にも國際的にも許さないことでありますが、事態は之に反して國内的にも國際的にも其の現はれがないとは言はれないのであります、此の自我性の肯定、極端なる利己主義の主張こそは人類の惱みであり、之を救はんとして古來幾多の聖賢が色々な角度から教へを遺して居るのであります、私の信じます、所に依れば、釋迦は慈悲を、又は無我を「クリスト」は愛を、孔孟は仁を、我が皇室は「兄弟に友に」と教へて居るのでありますが、何れも愛を隣に及ぼすことを目的としたに相違ありませぬ、私は之を宗教的自覺に依る同胞思想と申すのであります、殊に教育勅語中の「兄弟に友に」と云ふ御言葉は、眼前の肉親の兄弟のみを指すのではありませぬ、我々日本人は皆血の繋がりに於て、或は輪廻の思想に於て皆親子兄弟であります、又世界の人々は聖徳太子の言はれる一如思想からしても皆親子兄弟であると云ふ意味であるのであります、「よもの海みなはらからと思ふ世になど波風のたちさわぐらむ」、明治陛下の御製は明かに此の四海同胞の精神を表はして居るものであります(拍手)是こそ平和愛好の大文字であると思ふのであります、是が軍部の短見に依つて、其の專横に依つて、此の平和愛好の精神を世界から誤解されるに至りましたことは、洵に殘念至極のことであります、我等は此の誤りを深く自省して、戰爭は罪惡なりと云ふ理念に基いて世界恆久平和運動を提唱するものであります
古今幾千萬の哲理が説かれましても、愛を隣に及ぼす、此の友愛の眞理程、總ての宗教を貫いて、更に我々の政治、文化、經濟の實生活に處して重要なものは絶對にないと私は信ずるのであります、此の宗教的自覺に依り利己主義を克服して、利他主義に到るべき思想が、何故一般に普及徹底しなかつたであらうか、是は明治の初年に物質文明の吸收に急であつて、教育の根本に宗教を採入れることを忘れた、或は故意に之に觸れることを避けた結果であります、現代大部分の人は宗教的感覺がなくなつて思ります、甚だしきに至つては無宗教を誇る人さへ出て來たのであります、魂のない人が國の中央を堂々と濶歩して居るのでありますが、之を國内誰一人として怪しまず、歎く者がなかつたと云ふことは、文教の府に在る人ばかりでなしに、世の有識者諸君の責任であらうと思ふのであります、若し今囘の憲法改正草案の如く、國及び其の公共機關は如何なる宗教教育も行つてはならないと漫然と之を規定するやうなことがあつては、過去の過ちの如く、觸らぬ神に祟りなしと云ふやうな態度になり勝ちでありまして、最も重要な宗教的情操教育を失ふ憂があるのであります、此の條項は、明瞭に一宗一派に偏つた教義を教へてはならないと規定するか、或は斯かる意味である旨の解釋を後世の爲に誤りなきやう明確にして置くべきであると思ふのであります
私は戰爭を起した原因は、戰爭又は鬪爭を生存の手段と考へたことである、其の根本は國民全般に宗教的自覺がなくなつたことであり、且つ戰爭は罪惡だと云ふことに目覺めなかつたからであると信ずるのであります、是が今次の戰爭を惹起したものであり、戰爭中皇軍の名に恥ぢる行爲をなさしめたものであります、又終戰後の無秩序、道義の頽廢、或は不公平なる食糧の配給等は、皆宗教的自覺がなくなつたからだと言つても差支へないと思ふのであります、今こそ全國の宗教家諸君は起ち上らねばなりませぬ、さうして古い傳統の伽藍から街頭に進出せねばなりませぬ、忘れられた、眠つて居る魂を搖り起し、人間本來の持つて居る愛の心を隣りへ浸み潤す運動を始めねばなりませぬ、又日本再建の基礎が教育家にあることは言ふまでもなく、教育家の任務は正に重大であります、教育家諸君の教育に對する熱情の中に、宗教的感覺に依る隣人愛の精神、道義心を盛込んで、隣人を愛する心は軈て同胞を愛し、軈て全世界の人類を殘らず愛するまでに育て上げて戴きたいと思ふのであります(拍手)此の思想の下に、全人類は同じ階の下に立つて差別なく平等の立場で拜し合ひ、眞に心から手を握り合ふでありませう、國際的には、經濟の面に於て民族の生存に絶對に必要なものは快く分ち與へられるでありませう、それは戰爭誘發の最大原因をなすからであります、眞の自由と平等とは、無我の境地に到達した時にのみ展開せられるものであることは、個人も國家も同じであります、此の思想は、軈て人爲的國境を越えて、世界國家論にまで進展して止まないものであらうことを私は豫言して憚りませぬ(拍手)
今議會に於て審議せられて居ります憲法改正案中に、戰爭を抛棄するの條項があります、是は我が國立國の根本方針であり、國際的にも最も重要なことであります、此の論議の中に若し自衞權を主張し、武力がなくなつたから已むを得ないと云ふやうな感を抱かしめるやうなことがあつては、由々しい大事でありまして、戰爭は如何なる理由であらうとも、神佛の好み給ふ所でなく、最も大きな罪惡であります、此の理念に徹するのでなくては、世界に恆久平和は絶對に到來致しませぬ、此の戰爭は罪惡なりと云ふ信念があつて初めて戰爭抛棄の意義が明確になり、日本の大理想が中外に闡明せられるのであり、此の運動を日本より提唱することに依つて、平和は日本より來ると云ふ感を抱かしめた時に、初めて武力を棄てた日本が眞に生きるの途が開かれたと言つて宜いと思ふのであります(拍手)此の裏付けなくしては、徒らに弱者の悲鳴とより響かないでありませう、併し現實に於ては一國が他國を壓倒するやうな武力を持つた場合、或は數國の武裝均衡が保たれた場合は、一時的な平和はあります、併し壓力に依る平和は、眞に萬國を滿足せしめる筈がないのであります、劔を執る者は劔もて滅ぶとは聖書に教へられて居る通りであります、世界恆久平和の道は只一つ、萬國民が無差別平等の立場で、戰爭は罪惡なりと云ふ自覺の下に祈願する外はないのであります、此の理念は宗教的自覺に依つて最も能く理解し得るものでありますから、私共日本人は此の信念に基いて、之を國是として國内的に實踐し、國際的にも同憂の人々と共に理想完成に努めねばなりませぬ、歐洲の政治情勢を見ても、其の何れの國に於ても、祖國再建の主流をなすものは宗教的政黨であると云ふことに注目を拂はねばなりませぬ、又世界の凡ゆる場面に於て、同じ民主主義でありながら、自由主義の個人性と社會主義の平等性の對立を見られるのでありますが、此の解決こそは世界史的課題でありまして、此の媒介として宗教が考へられます、宗教は自我を自主的に否定する、其のことに依つて自由の個人性と社會の平等性は合致統一せられるのであります(拍手)我が進歩黨は此の原理に則つて、唯心的香りの高い愛を浸潤せしめる方策、即ち友愛の連帶性を社會、政治、文化、經濟の上に制度の裏付けをしつつ實現せんとする社會連帶主義を主張するのであります、此の理念の下に於て日本は再建せられ、建國以來一貫した平和欲求の理想が達せられ、又之を冀つて已まない皇室の尊嚴が歪められずに全世界の人々に理解せられるであらうことを私は信じて疑ひませぬ、政府は宜しく宗教家、教育家の奮起を促し、宗教的自覺に依る隣人愛、無我の思想を普及徹底させて、教育の根本に宗教的情操を採り入れられんことを望んで已まないものであります(拍手)各位の御贊同を希望致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=18
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019・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 質疑の通告があります、之を許します──細迫兼光君
〔細迫兼光君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=19
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020・細迫兼光
○細迫兼光君 上程せられました此の案に付きまして二、三質問を試みたいと思ひます
提案者の御心持は非常に能く分るのでありまするが、之を此の形に於て衆議院が今日決議をすると云ふことに付て若干の質問を持つのであります、此の決議案を見ますれば、世界恆久平和運動を起す、宗教的情操の陶冶を尊重せしめる、唯決議のし放しと云ふやうなことは、是は固より排斥しなければならぬことでありまして、必ずや具體的なことを考へて居られ、此の實效の擧ることを希望して居られると思ふのでありまするが、果して何人に、どう云ふ方法で世界恆久平和運動を展開させようとなさつて居るのか、宗教的情操の陶治を誰に如何なる方法に依つてさせようとして居るのか、只今の御提案の趣旨辯明に依りますと、元の古い案を又復活、内容として居られる、私は元の古い案に於きましては、之を政府鞭撻の意味の決議であると看做して、又それは教育家、宗教家を動員すると云ふことに──奮起を促すと云ふことに非常な疑問を持つたのでありまするが、此の新しい、今日上程せられました議案に於きましては、それ等の文句が取拂はれて居りますので、私は此の點に關する質疑はしない積りで居つたのでありますが、今日御説明を聽きますれば、やはり政府當局は宗教家、教育家の奮起を促す云々と申されて居るのであります、此の決議案は政府に對する要望、宗教家、教育家の奮起を促さしむと、斯う云ふ趣旨のものであるやうであります、果して然らば教育家を奮起させて教育家にどうさせようとするのでありますか、教育家に教壇に於て如何なることを説かしめようとなさるのであるか、一宗一派に偏らない宗教教育と云ふことを言はれますけれども、教壇の教師が一宗一派に偏らない宗教情操教育をなすと云ふことが果して可能であるかと云ふことを具體的に考へて御覽なさい、果して「キリスト」教或は「マホメット」教、或は天理教或は佛教──佛教にも色々宗派がありませう、或は神道に於きまして、それを萬遍なく公平に一宗一派に偏らないと云ふ、言葉通りに是が具體化されることを我々は豫期出來ないのであります、其處を如何に混ぜて行かうとなさるのであるか、私の疑問と致す所であります、教育家を奮起せしめて宗教的情操の教育をさせると云ふ決議を致しまして、文部當局が之に應じて起つて、大いに之を激勵なされても、末端に行きますれば如何なる誤解が生じないとも限らない、宗教情操教育を徹底させようとしますれば、教壇に起つた教職員は何か其の宗教の一宗一派に徹底した教育がなされなければ、其處から教育的情操──戰爭を防止する、戰爭に反對すると云ふやうな熱意に燃えた行動に出られぬ、世界同胞でなくちやならぬ、四海同胞でなくちやならぬ、戰爭は罪惡だと云ふやうなことに依りまして、戰爭反對と云ふやうな熱情を起しますのには、宗教の徹底的な自覺、斯う云ふことが行はれなくちやならぬ、それを徹底させる爲には、萬遍なく「キリスト」教も、「マホメット」教も、佛教も、神道も、天理教も皆と云ふ譯には行かないので、必ずや一宗一派に偏つた──深くならうと思へば必ず偏つたことが行はれる、是は新しい憲法に於ける精神に反するのであります、さう云ふ結果を招きはしないかと云ふことを惧れるのであります、此の點に付ての御囘答を御願ひ致したいと思ひます
もう一つは我々は曩に此の議場に於きまして文教再建の決議を致しまして、今茲に宗教的情操教育の決議を致さうとするのであります、決議の輕重に差はありませぬ、即ち文教再建の決議に於て我々が強調しました其の一項は、科學的教育の劃期的振興と云ふことを申して居るのであります、今又是と竝びまして宗教的情操陶冶の尊重を決議しようとして居るのであります、今我々は果してどちらに重點を置くべきか、或は雙方とも重要だらう、斯う仰しやるかも知れませぬが、私の考へに依りますれば、寧ろ此の際我々が曩に決議しました科學的な教育の劃期的振興こそは、強調せんとするならば此の際強調せられねばならぬものではないかと思ふのであります、我々は戰爭中餘りにも宗教的に──之を宗教的なものと申しますれば、そんなものは宗教ぢやないと云ふ異論が出るか知れませぬが、觀念的な宗教に似たやうな教育なり宣傳なりが横行した、是が寧ろ非常に惡かつたのぢやないか、八紘一宇、或は神風が吹くと云ふやうな直接の情操に、感情に愬へる方法、それがいけなかつたのではないか、もつと我我は科學的にはつきりした物の見方、斯う云ふことを此の際強調しなければいけなかつたのではあるまいか、果して進んで宗教的情操の昂揚、陶冶、尊重と云ふことが、恆久的世界平和の確保にそれ程有力なものであらうか、是が又私の一つの疑問とする所であります、成程宗教家の説かれまする所は四海同胞であり、或は隣人愛であり、社會奉仕の觀念であることを屡屡聞きます、併しながらそれが果して戰爭を防止して世界恆久平和を確立する、其の爲にどれ程の力を持つであらうか、是は過去のことから又實證致さなければならぬと思ふのでありますが、過去に於て果して戰爭を防止する力を持つたであらうか、宗教情操の教育を一般に徹底しまして、どの程度に徹底せられるであらうか、今日宗教的な情操を徹底的に持つて居られると看做される方は宗教家でありますが、其の宗教家が果して戰爭中戰爭防止の爲に一體何をなさつたか、私は不幸にして戰爭反對、戰爭は罪惡であると云ふことを大衆に宣傳して、此の戰爭を一日も早く止めると云ふことの努力をなさつたことを寡聞にして聞かないことを情なく思ふのであります(拍手)一般の國民に宗教的な情操を徹底せしめて、今日名僧知識は日本にも澤山あるであらうが、其の名僧知識の域にまで高める、深めることが果して出來るであらうか、其の名僧知識の宗教界の諸君は、戰爭中に果して戰爭防止、戰爭反對に如何なる熱情を發揮せられたであらうか、私も勿論自らを責めて居るのであります、他人のことを申すのではありませぬ、私自身が反省して居るのであります、併しながら私は宗教的な情操から戰爭に反對せられたことの或る事例も知つて居ります、例へば日露戰爭を前にしまして、萬朝報に居りました内村鑑三、此の人は「キリスト」教からの宗教的な熱情からでありませう、非常に戰爭反對を絶叫せられて、爲に追はれて非常な迫害を受けられたのであります、併しながら單に宗教的熱情に依つた人だけではない、同じく萬朝報に其の時内村鑑三氏と共に筆を執つて居られた人に、幸徳秋水或は堺枯川と云ふやうな人の顏も見られるのであります、果して宗教的熱情のみが戰爭を防止し戰爭に反對する力ではあり得ないのであります、或は又私は非常な隣人愛、社會奉仕の精神の發露を色々實見しました、例へば上海に於て包圍せられまして、居留地が非常に苦しんだ其の一つの事實は糞尿攻めであります、人糞を取除ける人が居ない、其の時に起つて汚い仕事に奉仕せられたのは天理教の信者の方でありました、非常な清い姿でありました、或は又戰爭中私の居りました附近の炭坑に、天理教の集團奉仕隊が營々として働きに來られました、是が最も成績の良い團體でありましたことは感激致したのであります、併しながらそれは成程隣人愛であり、社會奉仕の信念の發露でありましたらうが、併しそれは決して戰爭を防止する方向に向つての隣人愛、社會奉仕ではなかつたのであります、斯うして見て來ますれば、宗教的情操の徹底的な教育と云ふことがどれ程力を持ち得るか、私は非常に疑問に思ふのであります、寧ろ此の際強調する點は、科學的な教育の劃期的な振興、曩に我々が決議致しました、其の決議をこそ、大きく太く此處に強調して行くべきではないか、それと同じ「レベル」に於て宗教的情操教育と云ふものを此處に我々は決議すべきではないか、斯樣な意見を持つのであります─────────────────私は宗教的情操の教育と云ふことを茲に強調するよりも、寧ろ科學的な教育の振興を強調し、又根本的には─────────────────民主的な組織をがつちり今日から築いて行くことこそが、最も急いで完成しなければならぬことではないかと思ふのであります、敢て提案者の御説明を御願ひする所以であります(拍手)
〔地崎宇三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=20
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021・地崎宇三郎
○地崎宇三郎君 只今の細迫氏の御質疑に對しまして私の見解を申上げます、衆議院が敢て斯う云ふ決議をすることの必要がないではないかと云ふ御質問に對しましては、私は衆議院は國民の總意を集めて居る所であるからして、衆議院の決議は國民斯くあるべしと決議された場合には、國民大衆の行く道を指すものであるから絶對に必要だと云ふ意味で提議したものであります
第二に此の決議のし放しではいけないのではないか、どうして世界恆久平和運動を展開するかと云ふ御質問に對しましては、私は内には隣人愛の精神に依る爭ひをなくする拜み合ひの運動を展開しようと志すのであります、國外には宗教心の高い各國の人々と共に、平和會議は無差別平等に開かるべきであると云ふ運動を展開しようとするのであります、之には宗教的方法が最も良いと考へて居ります
第三の宗教家、教育家をどう奮起せしむるかと云ふ御話でありますが、政府竝に衆議院議員諸君の應援を得て、其の郷黨に於て宗教家竝に教育家の奮起を御願ひしたい、宗教家、教育家は此の運動には喜んで御贊成になるであらうと私は思ふのであります(拍手)
第四は、眞面目な、熱烈な宗教家が眞の…
〔發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=21
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022・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に──靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=22
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023・地崎宇三郎
○地崎宇三郎君(續) 教育の中に宗教心を盛り込んで行くことが必要でないと云ふ御考への方は別と致しまして、人間の生活の中に信仰を持つことは絶對に必要であると考へるのであります(拍手)勿論少くも宗教的情操を持つことが必要だと云ふことは大體意義のないことと思ふのであります、然らば宗教家の人達は、今までの教育の中に宗教的情操教育のなかつたことが誤りであると云ふことには御氣付きになると思ふのでありますから、此の教材等の御選擇には十分に御注意になることと思ふのであります、一例を擧げますと、黒住教の教祖は、椅子に腰を掛けて御立ちになる場合に、有難うございますと唱へて歸られるのでありますが、是れ程立派な精神はないのであります、併し是が必ずしも黒住教の宣傳ではなくて、宗教的情操教育に是れ程立派な言葉はないのであります、でありますから、唯一つのことを言つたからと云つて、必ずしも私は一宗一派に限るとは言はないのであります、さうして此の一つのことが全部の宗教に通曉するものだと私は考へて居ります
〔發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=23
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024・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=24
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025・地崎宇三郎
○地崎宇三郎君(續) それから宗教的情操教育より科學教育と云ふことの御話がありましたが、私と雖も科學教育を尊重しないと云ふ言ひ方をして居るのではありませぬ、科學は最も尊重致します、併し宗教的情操教育を持つと云ふことが、より以上人間の魂の糧でありますから、大事だと私は申上げて居るのであります(拍手)
最後に宗教的情操を陶冶して戰爭を防ぎ得るかと云ふ御質問に對して御答へ申上げます、私は過般北海道の札幌市で進駐軍の兵隊さんの訪問を受けたのでありますが、其の人に私は質問を致しました、あなたは戰爭中人を殺したかと聽きましたら、其の人は涙を零して、俺は母親の言ふことを聽かずして、硫黄島で自分の鐵砲に依つて一人の人を殺したことを殘念に思ふと云ふ話をしたのであります、私は其の話を聽いて、日本の母は果してさう云ふ教育をして居るか、さう云ふ宗教的情操教育をして居るか、斯うすることが眞に私は平和を欲求する運動を作る基底を成すものだと信じて居るからであります、大體私の答辯を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=25
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026・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より討論に入ります、順次發言を許します──稻葉道意君
〔稻葉道意君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=26
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027・稻葉道意
○稻葉道意君 私は日本自由黨を代表致しまして只今御提案になりました地崎君の御案に贊成をするものであります、以下極めて簡單に自分の所信を申述べまして御清聽を煩はしたいと存じます
其の前に當りまして、私は私の所論を裏付ける目的を以ちまして、昨年の十二月二十五日、即ち「クリスマス」を迎へますに當つて、「アメリカ」の大統領「トルーマン」氏が演説を行ひました、其の新聞を私は此處に所持致して居りますので、煩を厭はず其の儘讀上げて、御清聽を願ひたいと存じます、「長い恐怖の數年間、戰爭に倦み疲れた世界が待ち焦れて居た「クリスマス」が、今や平和と共に訪れたのである、我々は平和、愛、慈善を説く「クリスト」の教へを思ひ出す、余は今日山上の垂訓の教へを通じて解決出來ないやうな問題が、米國に又世界にあるとは信じない、我々は征服された敵國と共に、世界の恆久的平和確立の爲め努力せねばならぬ、平和に於て勝利を得ることは、武器を手にしてするのと劣らず困難なことである、國家が劔を擧げて戰ふことも止めねばならないし、又是れ以上戰爭と云ふものを學ぶこともないやうにせねばならぬ、斯かる眞の平和が早晩訪れる時、初めて此の世の王國は名實共に神の王國となり、其の國に臨むものは永遠に王者の王たり得るであらう」、斯う云ふ言葉であります
諸君、今日我が國は有史以來の最大難關に逢著して居るのであります、而して、凡ゆる社會の方面に於て非常な貧困を告げ、窮乏を告げて居ることは、私が今更呶々するまでもない、食糧問題に、或は住宅問題に、或は衣料の問題に、凡ゆる方面に於きまして、我が國は本當に今どん底の苦しみに喘ぎ廻つて居るのであります、之を何とかして救ひたいと云ふことの爲に、政府當路者は勿論、我々も諸君と共々に日夜此の暑さと戰ひつつ、國策の爲に努力を捧げつつ參つて居るのであります、併しながら諸君、私は此の百般の政策、百般の政綱も、若し人々の魂と云ふものに眞の光りを與へなければ、それは恰も荒れ切つた畑に、田圃に、無暗に種を播くと同樣でありまして、要するにさうした政綱政策と云ふものは、徒勞に歸するより外はないと信ずるものであります(拍手)此の意味に於きまして、百の政綱、千の政策に先行致しまして、それより先づ先に、國民の魂に永遠の光、無限の惠みと云ふものを與へると云ふことが、是が先決問題でなければならぬと信ずるものであります(拍手)宗教情操と申しますと、何事かむづかしいやうに考へられたり、或は大層むづかしい宗教哲學や神學でも引張り出さなければ、解決の出來ないことのやうに考へる人がありますけれども、私は左樣に考へて居りませぬ、一言にして申せば、色々な宗旨、宗派は違ひましても、宗教の根本理念と云ふものは何だ、要するに我々人類が本當に虔ましやかに跪いて、或る見えない永遠の無限の絶大に跪くと云ふことが、即ち本當の宗教情操である、そこから日常の生活が色々に割出されて參る、滲んで參ります、我々の祖先は、少くとも明治御一新までの祖先は其の道を歩いて參つたのであります、諸君を前にして甚だ失禮な例を採るやうでありますが、例へば我が國に普請と云ふ言葉があります、建築を普請と申します、文字の上から眺めまして、どうしてああ云ふ言葉が建築と云ふ意味になるか、是は普く諸々の力を請ふ、斯う云ふ、經典の中にあります言葉を取つて、さうして普請と申したのであります、即ち一軒の家を建てますに付ては、大工さんも來なければならぬ、左官屋さんも要る、或は御手傳ひも要る、凡ゆる力の綜合が一つの建築になる、即ち一軒の家は、俺の力で俺が勝手に建てたのではない、凡ゆる力が寄り集まつて、其處に一軒の雨露を凌ぐべき家が出來たのである、さう云ふことを考へる時に、自分の獨力でやつたと云ふ考へを拂拭致しまして、所謂俺がと云ふ考へを止めて、そこに本當に此の一軒の家を拜む、總ての力に跪くと云ふ喜びがあるのであります(拍手)一事が萬事でありまして、我々の祖先は食物を拜み、食物に敬語を付け、日用品を拜んで其の日を暮した、是が即ち所謂宗教情操でありまして、之を若しむづかしく申しますならば、即ち事々物々總ての物の上に唯物的な眺め方をしないで、それ自體の上に永遠なる絶大と云ふことを認めることが、是が本當の宗教的情操であります、斯う云ふ麗はしい生活、本當に潤ひのある生活を我々の祖先は營んで參つたのであります、私は此の不幸のどん底に落ち込んだ我が日本を救ふには、此の祖先の歩んだ道、此の潤ひのある生活を、我々の魂の上にもう一遍蘇へらせると云ふことが、是が本當に我が國を再建させる所の唯一の第一の道である、斯樣に信ずるのであります(拍手)此の意味に於きまして、今囘地崎君初め五名の方が御提案になりました進歩黨の此の御提案には、私は衷心から自由黨を代表して贊成致すものであります、甚だ簡單でありますが、願はくは政府或は議員各位に御協力を願つて、是が實現致すやうに御骨折り願ひたいことを切に御願ひ致す次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=27
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028・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 井上徳命君
〔井上徳命君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=28
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029・井上徳命
○井上徳命君 私は協同民主黨を代表して、只今提案せられました宗教的情操教育に關する決議案に對し、衷心より贊意を表するものであります(拍手)何となれば今次の大戰に依つて、我が國民は總て齊しく、戰爭は悲慘なる罪惡であると云ふことを痛感したのであります、而して今や私共は戰ひに敗れたと云ふ悲しみよりも、戰爭を犯したと云ふ罪過に對して、心から懺悔しなくてはならないと思ふのであります(拍手)茲に於て一體何が斯くの如き戰ひに驅り立てたか、又驅り立てられたかと云ふことを靜かに顧みる時、是れ全く我が國の文化が、明治以來唯外形的な物質文化の模倣に過ぎずして、内容の豐かな獨創的な物質文化と精神文化とが渾然一體となつて、物心一如のさうした世界を實現することが出來なかつたからだと思ふのであります(拍手)歐米諸國に於ては忙はしき物質文化の日常生活の間にも、日曜日は國民的宗教日として、朝まだきより教會の鐘の音に誘はれて一堂に集まり、日頃の生活の疲れと汚れとを心から慰められ清められて居つたのに反し、我が國民は果して此の日曜日を如何に過して來たかを思ふ時、洵に思ひ半ばに過ぐるものがあるのであります、而も今次の戰ひとなりまするや、各國共に宗教は益益國民生活の中に要求されたにも拘らず、我が國に於ては寧ろ宗教は惡用されて、彼の「ミレー」の名畫晩鐘を想はしむる、朝な夕な嫋々たる餘韻の裡に久しきに亙つて無言の宗教的情操を養ひ來つた梵鐘、其の他宗教的儀禮に最も必要な品々に至るまで供出を強制され、且つ之を破壞して戰爭の具に供せらるることが平然として行はれたるが如き、心ある者に取つては實に忍び難いものがあつたのであります、剩へ今日まで處分されずに殘存せる梵鐘其の他のものが、未だ還付されずに居るものが多いと云ふことを承つて居りまするが、信仰深い民衆の心の寂しさを思ふ時に、一刻も早く返還の處置を執られんことを政府に要望する次第であります
彼を思ひ此を考ふる時、我が國の國民生活に於ては、宗教を一國文化の内容として極めて重要なものであると云ふことが認識されて居なかつたのではなからうかと思ふのであります、隨て終戰後の今日、私共が日夜見聞する世相の數々、實に道義地に墮ち、國民は愈愈其の生活を自分自ら窮乏と業苦の底に追込みつつある感が深いのであります
飜つて考へますれば、我が國に於て最も文化の華やかなりし聖徳太子の飛鳥時代、續いて奈良朝、平安朝時代に於て、聖僧世に輩出して教化を當時の國民生活の上に及ぼした精神的業績の偉大であつたことを思ふ時、今少しく我が國の爲政者、指導者又は宗教家の中に、眞に宗教を尊重し、眞に國を愛する者があつたならば、我が國は或は戰はずして優に歐米諸國と同等の地位に伍することが出來たに相違ないと思ふのであります(拍手)此の際私は宗教を信ずる者の一人として、特に自ら深く懺悔と慚愧に堪へない次第であります、抑抑宗教本然の姿は、永遠の平和なる世界を欣求し、人類の幸福を祈念し、慈愛と懺悔と情と感謝とを以て人間生活の基調とするものであります、隨て宗教的情操は一國文化の要素の一つであると言ふよりも、寧ろ一切文化の基盤を成して居るものと言つても敢て過言ではないと信じます(拍手)
昨日「マッカーサー」元帥は、全軍に與ふる布告の中の一節に、「此の八月十四日の日は單なる勝利の日ではない、それは感謝の日であり、敬虔に頭を垂れ、民主主義的信念を持つ我々が、平和は庶民から生れ、庶民に依つて樹立された政府に依つて獲得され、維持され得るものであることを世界に示したことを神に感謝する日なのである」と申して居られます(拍手)昨夜の吉田首相の國民に告ぐるの「ラジオ」放送と思ひ比べまする時に、一種言ひ知れぬ感激に打たれるのであります、吉田首相は如何なる宗教的信仰を持つて居られるかは存じませぬけれども、どうか温かき敬虔な信仰より生れ出づる懺悔と感謝とを以て、戰ひを抛棄した平和道義の新しき日本の建設に、全責任を以て勇往邁進せられんことを心から冀ふ次第であります(拍手)
最後に私は政府に對し、今後如何なる宗教も自由に活發に、國民文化の中に其の精神的榮養を供給し得る如き政策を樹立し、今一段と敬虔なる宗教的情操と教養とを養ひ得る機會と便宜とを與ふる政策の實行を切望して、私の贊成演説を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=29
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030・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 笹森順造君
〔笹森順造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=30
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031・笹森順造
○笹森順造君 宗教的情操教育に關する決議案に對しまして、新政會を代表致しまして贊成の意を表させて戴きます
教育と宗教との關係に付きましては、其の國々は各各の立場に依つて獨自の解釋を持ち、又方針を持つて居るのであります、日本の國に於きましても、御案内の通りに明治三十二年の文部大臣の訓令第十二號に依りまして、法令に依る學校は學科課程外に於きましても宗教の教養を教へ、又は教授をなしてはならないと言う禁遏的なものであつたのであります、是は一面に於て道理のあつたことであります、多くの異なつた宗教宗派を持つて居りまする國として、官公立の學校其の他に於て、教育の面に特別なる色彩の宗教を奬めるが如きことがあつてはならないと云ふことが其の原則であつたでありませう、所が是が爲に我が國に於ける所の兒童或は學生の教育に對しまして、宗教情操の涵養其のものまで不必要であるが如き状況に、長い間日本の教育が導かれて參りましたのが明治、大正、昭和の實情であります、昭和の年代に入りましてから、宗教情操の涵養が國民に必要であると云ふことを痛切に感じました多くの教育家が起ちまして、度々建議を致しました結果、多分昭和九年か十年だつたと覺えて居りまするが、文部次官の名を以ちまして、宗教情操の涵養を是非しなければならないと云ふことを國民一般に傳へたのであります、而して此の戰爭の後に先程申上げました訓令の十二號が取去られて、日本の國に於て宗教情操の必要なることが認められ、之を斯く信じまする所の學校に於きましては、特に私立學校に於て此の自由が認められることになつたのであります、是は洵に日本の國が現状に於て又將來に於て、大切なる一つの教育の方向を示したものと信ずるのであります(拍手)先程來提案者の思想を伺ひましても洵に御尤もであります、此の宗教情操涵養に關しましては、或る論者は特殊なる宗教を傳道するにあらずんば涵養出來ないと云ふやうなことを考へて居るのは洵に誤つた考へと思ひます(拍手)我々は宗教を、宗教的情操を教へる爲に、宗教の持つて居りまする教理、他の宗教の持つて居ります所の教義、是等を參考とし、或は之を渉獵──拾ひ取りまして教へることが決して一つの教派を信仰せしむる所以ではない、國民自身の宗教情操を涵養せしむる所以であります、此の意味に於きまして、單に私立學校のみならず、官公立の學校に於きましても、宗教情操涵養に關しましては今後力を籠めまして日本の文化の基調となし、或は又道徳の昂揚の基を茲に見出し、或は又社會奉仕の原動力となし、或は又國際平和の大いなる協同の力となさうとするのは洵に容易なるものと信ずるのであります、特に我々が世界の公正なる判斷に我等の安全を委ねようと云ふ此の場合に、我々自身が正しい宗教情操の涵養に依つて國民を養成すると共に、又我等が軈て入るでありませう所の國際の他の世界に於ても、同じく此の宗教情操の涵養を以て茲に普遍的なるものに於て一致する喜びが必ず來なければならぬと思ふのであります(拍手)成程宗教其のものは、果して世界から戰爭をなくするに如何程の力があつたかと云ふことを反省しまする時に、或る論者の申しまするやうに遺憾なる點がないでもありませぬ、今後恐らくは同樣でありませう、併しながら我等の努力は不斷に續けられなければならぬのであります(拍手)戰爭前に、日本の國と相手國となりました所の國の代表者が、特に宗教を信ずるが故に、互ひに此の戰爭を起さしめざる期待の下に交驩をして、日本の國から彼の國に渡り、彼の國の宗教家が又日本の國へ來つて、此の悲慘なる事實を未然に防がうとしたことのありますることは、知る方々の十分御承知のことであります(拍手)而して其の方々が如何にも殘念に思ひまして、日本の國を最後に引揚げまする時に、事態が如何になりましても、總ての紛爭を超越した普遍的なる眞理體には必ず結ばうと云ふことを申して居つたのであります(拍手)此のものは今後に於ても同樣になるのでありませう、斯う云ふ意味に於きまして、國内に於ても國外に於ても、此の宗教情操を涵養すると云ふことに大いに力を捧げたい、斯かる意味に於きまして御提案に對しましては滿幅の贊意を表したい、斯くして政府に於きましても、或は又其の他の必要なる機關に於きましても、此の問題を採上げて目的を達せられるやうに希望しながら、重ねて本案に對する贊成の意を表するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=31
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032・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 柏原義則君
〔柏原義則君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=32
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033・柏原義則
○柏原義則君 私の發言の時間は十分以内であります、偖て私は無所屬倶樂部の反對者一名を除きまして、あとの全部を代表致しまして(笑聲、拍手)本決議案に對し心からなる贊意を表すると共に、更に私は本決議案が一片の空念佛に終ることなく、是が必ず政府の施策の上に現はれ、相當な實績が擧げられるやう政府當局の御努力を望むと共に、私も亦之に向つて大いに努力致さんとするものであります(拍手)
今や我が國民は敗戰の苦痛を深刻に味はつて居るのであります、而も其の苦痛の度合は益益深さを増して行くものと思ふのであります、現在食ふに食なく、住むに家なく、働くに職なき同胞は巷に氾濫致しまして、道義は廢れ、洵に涙なくしては眺められない慘憺たる敗戰の世相を示して參りました、私は一個の宗教家として、此の受難の同胞に勇氣と光明を與へるべく辻説法をしたり、講演をやつて居りましたが、此の民族的惱みはお説教位では片付かぬのであります、直接國民の生活を支配する所の強力なる政治力に依らざれば問題の解決は出來ぬと思つて、私は政治生活に入りましたが、併し此の政治も亦烈々たる同胞愛に燃ゆる所の宗教的信念の裏付けがなかつたならば、形式主義、要領主義、官僚主義に陷つて、塗炭の苦しみにある所の民衆の苦痛を救ひ上げると云ふことは到底困難であらうと考へるのであります(拍手)思へば我が民族は受難の民族であります、軍閥、官僚に誤られまして、徹底敗戰の結果惱み苦しみながらも、新しき道を求めつつ荊の道を歩んで居るのが我が民族の現状であります、此の苦難の中にありながらも、新日本建設の基礎は固められつつあるのであります、而して我が國民は世界に向つて戰爭の抛棄を宣言し、自ら進んで世界平和の礎石たらんとして居るのであります、是は考へ方に依りましては實に偉大なる宣言であります、世界人類に對する實に偉大なる宣言であります(拍手)是も敗戰が其の動機をなすものでありませうが、兎にも角にも此の悲壯なる所の先覺者としての自覺と決心は、何は兎もあれ究極に於ては宗教に其の基礎を持たなければならぬと私は信ずるのであります(拍手)
日本の平和主義が自律的、宗教的基礎を持たずして、徒らなる御都合主義、便宜主義に終るならば、我が民族の文化的發展は到底望み得ないと私は思ふのであります(拍手)今や原子科學の扉が開かれまして、世界の列強も亦武器を執つての戰ひを斷念しなければならぬ時代に到達しつつあるが如く思はれますが、さりながら日本を除く世界の國々が果して將來戰爭は絶對にやらぬとは豫斷し難き情勢にある今日、我が大和民族の前途は洵に多事多難、恰も宗教の開祖が新しき道を拓くに當つて嘗めたが如き苦難の道程を我々民族は通らざるを得ない状態にあると私は思ふのであります、是に於て我々國民は、鞏固なる信念を以て凡ゆる苦難を忍びつつ平和日本の建設より更に世界平和への大道を、裸の儘で力強く歩んで行かなければならぬ宿命を持つことになつたのであります
偖て新日本の建設は、日本の青年層の奮起に俟たなければならぬことは明かなことでありますが、其の青年層の大部分が復員軍人であります、是は我が民族の中堅をなすものでありまして、肉體的にも、精神的にも、素質の上に於きましては、優れた人達の集まりであると私は思ふのであります、所が是等の人達は、中には失業者が非常に多い、仕事があれば兎も角として、仕事がない爲に悶々の日を送り、軈ては精神的に腐つて來、自暴自棄になる、私は優秀なる青年が廢れ行く世相を眺めまして、實に堪へられない氣持になるのでありますが、今や民族下降の風潮は實に恐るべきものがあるのであります、世界平和の礎石たらんとする高邁なる理想に對して、現實は餘りにも慘めであります、是に於て失業救濟の問題こそ民族の興亡を賭するの重大問題となるのであります、政府は失業救濟の爲に六十億の公共事業を計畫して居られますが、之に依つて物質的に失業者を救濟すると共に、生産の擴充を圖ると云ふことも極めて大事なことでありますが、其の實施に當つては極めて民主的に、且つ失業者の人格を尊重し、同胞愛に燃ゆる宗教的信念を以て之に當つて戴きたいと私は希望するものであります(拍手)
更に私は教育家、宗教家、社會改良家の手に依る所の復員軍人の再教育に關する施策の樹立を要望するものであります、純情なる青年は、軍隊に入りまして眞面目に軍國主義の教育を受けて、頭が固まつて居りましたが、敗戰と同時に思想的に大混亂に陷り、或は思想的に虚脱状態になり、或る者は軍國主義の殘滓より未だ拔切らずに苦しんで居ります、又裏切られた氣持の上から、極度に反政府的になつて居る者もある、或る者は却て頑固な愛國主義者になつて居る、勿論思想の自由の許されて居る今日、如何なる思想を抱くも自由ではありませうが、私は教育家とか、或は宗教家とか、或は社會改良家の手に依りまして、此の復員軍人に民主主義的な、平和主義的な一つの再教育を施して貰つて、而もそれに宗教的信念を與へ、彼等の思想と感情を整理致しまして、道議の昂揚と文化水準の向上を圖り、同胞愛の自覺の上に立つて、何でも俺は起ち上るのだと云ふが如き、生産意欲を旺盛ならしむるが如き精神的陶冶を施す必要があると私は思ふのであります(拍手)特に此の復員軍人の再教育の問題は、愼重に内外の情勢を考慮に入れて樹立すべきものでありませうが、是が實施に當りましては、民主主義的に、社會改良家或は教育者、宗教家、凡ゆる者が、色々な組織を以て之をやるのが最も適當であると信ずる、而して再教育を受けた者は日本再建の上に十分の働きの出來るやうな方途を講ずることが肝腎であらうと思ふのであります
最後に、我が國は最も惡い條件の下に日本再建が行はれんとして居るのであります、此の國歩艱難の秋に於きまして、政府は教育者、宗教家、社會改良家、是等の人が十分に日本再建に向つて働いて、宗教的情操を國民の間に十分滲透させるやうな方策の樹立を望みまして、私の贊成演説を終るのであります(拍手)
終りに一言細迫君に一寸御答へ致します、一つの學校で一宗派を説いたならば不公平になると云ふ、そこは教育者を信用して貰つたら宜しい、教育者には相當の識見がありますから、例へて言へば歴史に奈良の大佛さんが出て來る、ここまで説いたら宗教教育になるかならぬか、そこまで神經過敏になつたら教育は出來ぬのであります(「其の通り」)茶の湯を説いた時分には禪宗が出ても差支へないのであります、又本當に宗教心のある者が、宗教を強制するのではなくして、熱烈なる人類愛の立場、人類愛から滲み出て、自然の中に子供に感化を及ぼすやうなことは、最もあつて欲しいのであります(拍手)何もそんなに窮屈に考へなくても宜い、其の次に宗教を觀念論々々々と言ひますが、何も神や佛の觀念論を抱いて信者になつた人はないのであります、共産黨が「パン」を呉れて喜ぶ、是も感情である、又親が死んで泣く、是も感情であります、又偉大なる宗教家に接して、そこに非常なる尊敬的な、宗教的な感情が湧いて來る、是は觀念ではない、生きた事實であります、實際の宗教生活と云ふものは、優れたる教師教祖の人格に觸れて湧き上る所の感情であります、それを土臺として出來て居るのが宗教であります、決して左樣な觀念論とか、夢のやうな話ぢやないのであります(拍手)殊に私は思ふ、科學と宗教はさう矛盾するものではない、科學と宗教は矛盾するやうに考へて居りますが、私は洵に羨ましい立派な光景を見たことがある、「ニューヨーク」の「カトリック」の或る教會で、電髮を掛けた近代娘が「マドンナ」の尊像の前に跪いて祈りを捧げて居る、其の像の膝の所には、恰も公衆電話のお金入れ口位のものが一寸附いて居る、其の小さな孔の中に二十五「セント」の銀貨を抛り込むと、「パイプ」を傳はつてばしやばしやと御賽錢箱に落ち込む、如何にも科學的、機械的でありますが、さう云ふことをやりながらも、あの「アメリカ」の近代娘が、電髮を掛けて、お化粧して、靜かに「マリア」に祈りを捧げて居る、設備は科學的でありますけれども、彼の女の祈る姿は實に宗教的であります、科學の宗教を洵に麗はしいと思つたことがある、決してそんな御心配はないと思ひます、以上を以て私の贊成演説を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=33
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034・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本案に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=34
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035・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 起立多數、仍て本案は可決されました(拍手)──此の際文部大臣より發言を求められて居ります──田中文部大臣
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=35
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036・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 終戰第一周年の今日、宗教的情操教育に關する決議が成立致しましたことは洵に意義深いことでありまして、之に付て我々は深く感銘致します次第であります
凡そ内外の宗教でありまして、人類愛の實踐と世界平和の實現とを熱望致さないものは稀有であります、實に宗教こそは、道徳に生命を、人類に希望を政治に理想を、世界に平和を與へるものであります(拍手)趣旨辯明の中で承りましたやうに、過去に於ける民族的、或は個人的利己主義を克服致しまして、國家社會を此の滔々たる道義頽廢の濁流から救濟致します爲には、根本に於きまして、我が教育の中に宗教的情操教育を滲透せしめる以外に、一層有效且つ一層徹底致しました方法のないことを痛感致します(「ひやひや」、拍手)加之現在行はれつつあります所の此の政治的變革と、憲法改正案に嚴かに宣明せられて居ります所の永久戰爭抛棄の決意こそは、洵に我が國民が體驗致しました所の、過去に對する最も率直にして、最も謙虚なる宗教的「コンヴァーション」の心持に基いて居るものでありまして(拍手)其の深刻なる意味を今日國民に理解せしめますことは、それ自體が既に國民に對する何にも優る、生きた、最も具體的な宗教情操教育と認められ得るのであります(拍手)
政府としましては、宗教家其の他の協力を得まして、改正憲法の規定の許す限り、或は學校教育に、或は社會教育に、或は教科書を通じ、或は講演、講義、其の他適當なる方法に依りまして、御決議の精神を教育の各方面に生かしまして、以て我が教育に於て民主主義的、平和主義的精神を具體化することに萬全の努力を致します覺悟であります(拍手)左樣にしまして、戰爭抛棄が單なる口頭禪に止まらず、眞に我が全國の肺腑から出ました所の敬虔なる願ひ、變ることのない信念であることを表明致したく、固く決意致して居ります次第であります、之を以ちまして私の發言を終ることに致します(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=36
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037・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 此の際暫時休憩せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=37
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038・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=38
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039・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て暫時休憩致します
午後三時五十九分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=39
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040・会議録情報5
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午後五時二十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=40
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041・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 休憩前に引續き會議を開きます
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=41
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042・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際政府提出、所得税法の一部を改正をする等の法律案、臨時租税措置法を改正する法律案及び地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案の三案を一括議題となし、委員長の報告を求め、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=42
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043・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=43
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044・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て日程は變更せられました、所得税法の一部を改正する等の法律案、臨時租税措置法を改正する法律案、地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案、右三案を一括して第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長苫米地義三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=44
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045・会議録情報6
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所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
右は本院に於て別紙の通り修正すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月十五日
委員長 苫米地義三
衆議院議長樋貝詮三殿
〔別紙〕
所得税法の一部を改正する等の法律案の一部を次のやうに修正する。
第十七條中遊興飮食税法第二條を改正する規定の次に次のやうに加へる。
第三條中「十圓」を「三十圓」に、「十二圓」を「十五圓」に、「二十圓」を「四十圓」に改める。
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報告書
一 臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月十五日
委員長 苫米地義三
衆議院議長樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 地方税及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
右は本院に於て別紙の通り修正すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月十五日
委員長 苫米地義三
衆議院議長樋貝詮三殿
〔別紙〕
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案の一部を次のやうに修正する。
地方分與税法第二條第二項の改正規定中「百分の三十・四二」を「百分の三十四・七九」に改める。
同法第六條第一項の改正規定中「百分の三十・四二」を「百分の三十四・七九に改める。
同法第四十七條第三項の改正規定中「百分の三十・四二」を「百分の三十四・七九」に、「昭和二十一年度に於ては百分の三十九・五一、昭和二十二年度に於ては百分の三十一・四二」を「昭和二十一年度に於ては百分の四十二・一六、昭和二十二年度に於ては百分の三十五・九四」に改める。
同法第四十八條第三項の改正規定中「百分の三十・四二」を「百分の三十四・七九」に、「昭和二十三年度分に付ては百分の三十・四三」を「昭和二十三年度分に付ては百分の三十二・四七」に改める。
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〔苫米地義三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=45
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046・苫米地義三
○苫米地義三君 所得税法の一部を改正する等の法律案、臨時租税措置法を改正する法律案、地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案、右三案の審議に當りました特別委員會の經過竝に結果を御報告申上げます
委員會を開催すること八囘、委員の質疑を致しました者十九名、各委員と政府側との間に熱心なる質疑應答を重ね、愼重なる審議を進めまして其の論議を盡したのでありますが、其の中主なる點を擧げまするならば、租税の體系整備、徴税の簡素化、負擔の公正及び財政の確立等から見て、現行税制を根本的に改革すべしと云ふ委員側の意見に對しましては、政府に於ても其の必要を認め、何れも適當なる委員會を設けて研究したしとの答辯がありました、第二、所得税調査委員の存廢に關しまする委員側の質疑に對しましては、政府は所得税調査委員の存置は必要を認めるが、其の機構等には改善を要すること、又將來は申告制度の研究をも併せ考慮したしとの答辯あり、第三には勤勞所得の税率を百分の十八より百分の二十に引上げたのは不當ではないか、又基礎控除を五百圓生活に合せるやう之を五百圓としてはどうかと云ふ委員側の質疑に對しては、勤勞所得の控除額を從來の五十圓から二百圓に引上げた爲め、年收二萬圓以内の勤勞者には寧ろ相當の輕減になつたこと、又免税點を五百圓とする時には、其の所得税は四分の一乃至五分の一に減じて、財政上到底實施致し難しとの答辯、第四、歳入増加、「インフレ」防止の方法として、地方團體に對しても富籤發行をなさしむる意思ありやとの質疑に對しましては、政府に於ても其の意思ありとの答辯、第五、酒類の專賣を實施しては如何との質疑に對しましては、政府は酒の變質性、取扱の困難性等に依りまして、現在の所、專賣の意思なしとの答辯、第六、濁酒密造防止の爲め、農村に於て米の供出が完遂されました時には委託釀造を認めてはどうかと云ふ質疑に對しましては、政府は供米良好にて食糧問題に支障がなければ之を考慮しても差支へないと云ふ答辯、第七、戰災地の擔税力が減退して居ります情勢に鑑みまして、課税の輕減を行ふべしと云ふ委員側の意見に對しましては、政府は地方の實情に應じ、地方分與税に於て適宜考慮すると云ふ答辯、第八は、地方警察費及び國民教育費は全額を國庫負擔にしてはどうかと云ふ委員側の質疑に對しては、政府は現在通り地方、國庫雙方にて分擔することを妥當なりと認めると云ふ答辯、第九は、地方分與税中還付税、即ち地租、家屋、營業三税は地方に委讓すべしとの委員側の意見に對しては、政府に於ても大體贊意を表し、何れ税制改革の際之を考慮すべしとの答辯、第十、闇取引の所得に對して課税するやとの質疑に對しては、政府は所得其のものに對し課税するものであるから、若し該所得が闇取引に依ると判明した場合は之を返還する、即ち法制的には課税せずとの答辯、第十一、遊興飮食税は内外人平等に課税を行ふやとの質疑に對しては、政府は課税には差別を設けない、脱税行爲に對しては嚴重取締る、又遊興飮食税は之を廢止すべしと云ふ委員側の意見に對しましては、租税減收の立場上直ちに之を全廢することは困難であるけれども、税制改革の際考慮したしとの答辯がありまして、全部の質疑を終了致しました
續いて討論に移りまして、先づ自由黨の殿田孝次君より、遊興飮食税及び地方分與税に關する修正案の提出と其の説明があり、又社會黨の川島金次君より所得税に關する修正案の提出及び説明があり、尚ほ自由黨の修正案に對する贊成意見の陳述があり、續いて社會黨の玉井潤次君より補足的意見の陳述、又進歩黨の宮澤才吉君、協同民主黨の原尻束君、新政會の増井慶太郎君より、それぞれ自由黨の修正意見に對する贊成意見の陳述がありました、續いて採決に入りまして、先づ所得税法の一部を改正する等の法律案を議題とし、社會黨の修正案、即ち勤勞所得に對する基礎控除額二千四百圓を六千圓に引上げること、勤勞所得に對する税率の引上げを見合せ、現行通り百分の十八に据置くこと等に付て可否を諮りました所、贊成者少數にて否決となりました、次に自由黨の修正案、即ち遊興飮食税の免税點を引上げ、飮食の料金の現行十圓未滿を三十圓未滿に、洋式旅館の料金の現行十二圓未滿を十五圓未滿に、和式旅館の料金の現行二十圓未滿を四十圓未滿に改めることに付て可否を諮りました所、全員一致可決となりました、自由黨の修正部分を除きたる部分も亦全員一致可決となりました、次に臨時租税措置法を改正する法律案を議題とし、是れ亦全員一致可決致しました、更に地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案を議題として、自由黨の修正案、即ち遊興飮食税の免税點の引上げに對應し地方分與税の税收を確保する爲め、配付税の繰入率を引上げ、之に伴ひ地方團體に分與すべき分與率を引上げることに付きまして可否を諮りました所、全員一致可決となりました、自由黨の修正部分を除きたる部分も亦全員一致可決となりました、之に對し大藏大臣より、委員會の修正決議は之を尊重すると云ふ發言がございました、尚ほ自由黨及び社會黨より、税制の根本的整理の斷行、内外人を通ずる課税の嚴正、遊興飮食税の撤廢、農業所得に對する適正公平なる課税、税務の民主化等に關し希望條件の意見陳述があり、大藏大臣及び内務大臣よりそれぞれ善處する旨の發言がございました、右委員會の經過竝に結果を御報告申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=46
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047・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 三案中先づ所得税法の一部を改正する等の法律案の審議に入ります、本案に對しては川島金次君外一名より成規に依り修正案が提出せられて居りますから、討論は便宜上第二讀會に於て修正案の趣旨辯明を聽きたる上、之をなすことと致します、本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=47
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048・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=48
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049・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=49
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050・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=50
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051・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します、此の際修正案の趣旨辯明を許します──松永義雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=51
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052・会議録情報7
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所得税法の一部を改正する等の法律案 第二讀會
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所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)に對する修正案(川島金次君外一名提出)
所得税法の一部を改正する等の法律案の一部を次のやうに修正する。
第一條の所得税法第十二條を改正する規定の次に次のやうに加へる。
第十六條第一項中「二千四百圓」を「六千圓」に改める。
第十七條第二項中「二千四百圓」を「六千圓」に改める。
第一條の所得税法第二十一條第一項を改正する規定中第三號丙種及び第四號を次のやうに改める。
第三 事業所得
丙種 百分の十八
第四 勤勞所得 百分の十八
第一條の所得税法第二十二條第二項を改正する規定中「百分の三十」を「百分の二十八」に改める。
第一條の所得税法第七十二條第二項を改正する規定を削る。
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〔松永義雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=52
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053・松永義雄
○松永義雄君 只今議題となりました所得税法の一部を改正する等の法律案に對する社會黨の修正案に付きまして、其の趣旨を辯明致したいと思ひます、先づ以て修正の要旨を朗讀致します
所得税法の一部を改正する等の法律案の一部を次のやうに修正する。
第一條の所得税法第十二條を改正する規定の次に次のやうに加へる。
第十六條第一項中「二千四百圓」を「六千圓」に改める。
第十七條第二項中「二千四百圓」を「六千圓」に改める。
第一條の所得税法第二十一條第一項を改正する規定中第三號丙種及び第四號を次のやうに改める。
第三 事業所得
丙種 百分の十八
第四 勤勞所得 百分の十八
第一條の所得税法第二十二條第二項を改正する規定中「百分の三十」を「百分の二十八」に改める。
第一條の所得税法第七十二條第二項を改正する規定を削る。
本修正案の要旨を説明致しますと、二千四百圓を六千圓に改めると云ふことは、即ち甲種勤勞所得に對する基礎控除額の引上げ及び丙種事業所得に對する基礎控除額の引上げをなすものであります、即ち俗に謂ふ所の五百圓生活以下の者に對しては免税をなさんとするものであります、更に事業所得丙種百分の十八は、政府案に對して現行法通りに止め置かんとするものであります、丙種とは日傭勞働者の所得を意味するものであります、更に勤勞所得百分の十八と云ふことは、是れ亦現行法通り留め置いて、政府案の百分の二十に反對しようと云ふものであります、其の他日本の外に居住せられて居る日本の會社の重役に對して課税する率を百分の三十を百分の二十八に改め、更に又丙種事業者の税率を据置く爲の結果整理する必要を認めまして、茲に削つた規定のことに付て御説明を申上げた譯であります
即ち我々は何が故に此の修正案を提出するに至りましたかと云ふことでありまするが、其の理由には三つを先づ數へることが出來ると思ふのであります、其の一つは物價の點であります、其の第二は勞働者の生産力の問題であります、第三には税の公正均衡を期しなければならぬと云ふことであります、第一の物價のことでありまするが、昭和五年、即ち滿洲事變以前の昭和五年に於きましては、我々無産黨の者と雖も、どうにかして場末の豚かつ位は食べられたものであります、所が現在我々は百圓札一枚をひけらかして見た所で、果して何處に豚かつが存在して居るかと云ふことであります、思ふに昭和五年に於きまして公債が約六十六億圓に過ぎなかつた、然るに終戰當時に於きましては公債の額は千二百億圓に及んで居りまして、約二十倍と云ふ莫大な額に達して居るのであります、即ち歴代の政府は此の莫大なる公債を發行して、さうして紙幣を濫發致しまして、日本にあるありと凡ゆる物資を徴發して之を使ひ捨ててしまつたのであります、尚ほ又勞働者の勞力を奪ひ上げまして、さうして物の面の消費と勞働力、即ち生産力の削減から致しまして、茲に我々の目の前にある所の物の不足と云ふことが、今日我々が生活に惱んで居ると云ふ重大な理由になつて居ると云ふことは申すまでもないのであります、我々は家を建てよう、雨露を防がうと思つて、あの粗末な「バラック」建てを建てようと思ひましても、僅かな保險金では迚も足りないのである、而も雨が降つた時に、我々が傘を差さうと思つて洋傘一本を買つても五百圓と云つた高い値段を呈して居る、此の五百圓と云つた生活と云ふものが、僅かに洋傘一本の値段にも及ばないと云ふことが、即ち現状であるのであります、故に私は此の物價の點から見ましても、どうしても五百圓の收入ではやり切れぬと云ふ時に、其の五百圓に對しても所得税を取り、更に市民税を取り、縣民税を取るやうなことがあつたのでは、勤勞階級の諸君は益益其の生活に惱むと云ふことは、はつきりした事實であるのであります(拍手)
更に第二の理由の生産力の問題であります、大藏大臣は、屡屡惡性「インフレ」の解決の爲には生産を増大すれば宜いんだ、さうして生産を増大する爲に著々仕事に掛つて居られると云ふことを申されて居る、其のことは恐らくは三歳の兒童も知る所でありませうけれども、其の生産力の基盤となる勞働者が十分の生産力を發揮することがなければ、生産の出來ないことは當然のことなんであります、然らば即ち其の勞働者の生産力と云ふものを維持し、且つ發展さして行かう爲には、朝早く家を出て一日働いて歸つて來る、家では女房が夕餉の膳を備へて待つて居る、一夜ぐつすり寢込んで、翌日は元氣好く出られると云ふことが必要であることは申すまでもない、俗に謂ふ所の體力の囘復、精神力の囘復、勞働力の再生産と云ふものがなければ決して生産は増大しないのであります(拍手)然るに政府は五百圓生活で以てすらも今日やり切れない所に持つて來て、更に其の上税金を課けて五百圓から差引かうと云ふやうなことは、生産を増大すべき所の勞働者の生産力を削減するものであつて、斷じて反對しなければならぬのであります(拍手)即ち生産力の點から見ましても、此の五百圓に對する所得税と云ふものはどうしても除かなければならぬと云ふことを考へて居るのであります
第三は租税の均衡を得て居らぬ、公正を得て居らぬと云ふ點でありますが、是は誰しもが知つて居ります通りに、勤勞所得税は其の源泉に於て納税することになつて居る、源泉に於て納税する場合は現金を以てすると云ふことは言ふまでもない、所が事業所得の中の工場主は、其の税金を納めるのに封鎖預金を以てすることが出來るのであります、即ち勞働者は折角賃金を貰つても其の儘現金を取られてしまふのでありますから、それだけ購買力を失つてしまふ結果になる、然るに工場主の方に於きましては、商賣の金が入つて來る、其の現金は必ずしも納める必要はなくして、封鎖預金から納めると云ふことは、即ち眠れる封鎖預金の眼を覺ますものでありまして、同じ屋根の中に住んで居て、同じやうに働いて居る所の勞働者と工場主とが、其の納税の金に付て不公平な取扱を受けて居ると云ふことは斷じて反對しなければならぬのであります(拍手)
其の他申上ぐべき理由は多々あるのでございますが、斯くの如きは要するに今日國債が莫大なる額に達して居ると云ふ點に押へることが出來やしないかと思ふのであります、過日、本議會に於きまして、金融機關其の他の再建整備の爲に金融機關經理應急措置法と云ふ法律が可決致されました、さうして民間側に對しては、會社と言はず銀行と言はず整備を命じまして、俗に謂ふ所の第二會社を起すとか、或は第二銀行を起すとか云ふことが傳へられて居るのでありますが、其のことはしなければならぬからして政府はしたものであらうと思ふのでありますが、所がさう云ふことを命令して居る所の政府自體が、果してどう云ふやうな貸借對照表を持ち、どうして債權債務を負うて居るかと云ふことをはつきり致さなければならぬと思ふのであります、政府は宜しく政府の金庫を打ちまけて、さうして政府は是れ是れになつて居る、政府の借金は千四百億圓近くになつて居る、然るに國民から上げられる所の税金は是れ位にしか過ぎない、迚も政府はやり切れぬと言つて、自ら債權者會議でも起して然るべきであると私は思ふのである、所が政府は今の所其の公債の處理に付ては色々之を避けんとするやうな答辯をせられて居るのであります、併しながら我々は政府自體が其の債權債務を公開されて見た所で、決して我々は國家に對して破産宣告を申請しようとするものではありませぬ、政府自ら國家の債權債務を綺麗にして、さつぱり出直しておいでになれば、其の時は我々民衆は喜んで、必要とあれば再び國家に對してお金を御貸し申上げることが出來る、或は又税金を喜んで納めることが出來るのであります、併し我々は茲に我々の戰後の財政政策に付て改めて申上げようとするのではなくして、此處に私が説明を致して居ります所の所得税法の修正案の理由に於て、公債の處理を先づ以てなさなければならぬものであると云ふことを私は附加へて居るに過ぎないのであります、要は先程説明申上げました三つの理由からだけでも、我々は我々の提案して居る所の五百圓生活に對しては免税しなければならぬ、更に又其の他の勤勞者階級に對しては現行法通り百分の十八に止めて置く方が至當であると云ふことを申上げたのであります、甚だ簡單で要を盡さなかつたのでありますが、其の理由を述べまして、説明に代へたいと存ずるのであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=53
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054・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 討論に入ります──小川原政信君
〔小川原政信君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=54
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055・小川原政信
○小川原政信君 私は日本自由黨を代表致しまして、此の際一言申述べまして、各位のお耳を汚さんとするものでございます、暫時の間御清聽を煩はします
我が黨と致しましては、常に課税對象と致しまして、財閥であるとか、或は物持階級であるとか、是等に對しては出來得る限り課税率を重く致しまして、勤勞階級に對しては出來得る限り課税率を輕減すると云ふ根本方針の下に、絶えず税の衡平、適正化、將又税の民主化と云ふことに重點を置きまして、政府の提案を檢討致したのであります、只今社會黨の御提案の修正案は、勤勞所得及び丙種の事業所得に對する基礎控除額現行月二百圓を、五百圓に引上げようとされる、尚ほ現行税率百分の十八を百分の二十に引上げんとせられる政府原案に對し、税率の引上を見合せて百分の十八に据置かんと主張せられるのであります、自由黨としては之に反對を表明せざるを得ないのであります、我々委員會に於て問ふべきものは問ひ、質すべきものは遺憾なく之を質したのでありますが、其の結果と致しまして茲に其の四、五の理由を申述べようとするものであります
基礎控除額を引上げることに依る其の減税額は、平年度に於て約三十九億の巨額に達します、又税率を据置くと云ふ減收額は、平年度に於て五億數千萬圓に上るのであると推算を致します、合計致しまして四十四億以上に上るので、本年度の歳出歳入五百六十億に對し、赤字二百五十五億を財産税其の他より填補せねばならぬと云ふ敗戰國財政の現状である時に、四十四億と云ふ巨額の財源を何處から求めるかと云ふことが論點であります、勤勞大衆を擁護せんとする我々の熱意は、決して社會黨の各位の人後に落ちないものであると云ふことを御記憶願ひたいのであります、公債の利拂を停止して、其の減税額を填補すれば宜しいではないかと言はれますが、それは財政の根本を研究し、社會的現状を調査し、さうして實行するにあらざれば、一片の思ひ付きでは實行が出來ない、責任ある政治家の執るべき態度ではないと云ふことを申述べて置きたいのであります(拍手)
第一には、世界の敗戰國は皆同一に敗戰國財政經濟の苦杯を嘗めて居るのであります、我が國も亦終戰後漸く一箇年、未だ講和條約も終らず、國家財政の整理體系が整備して居らぬのであります、此の時に當つて便宜主義的に、甲の收入を乙に振向け、乙の收入を丙に當嵌めると云ふが如きは姑息主義的でありまして、敗戰財政の危機を切拔ける方途でもなく、苟くも財政家の執るべき態度ではないのであります(拍手)而して國家百年の憾みを子孫に貽すのみで、百害あつて一利なしと云ふ結果を招來するのであります(拍手)
第二には國家財政の根本原理から考察致しまして、軍需公債の利拂を停止するか否かと云ふことは、財政上の來竝に經濟界に至大なる所の刺戟を與へる重大問題で、篤と考慮して決定すべき案件で、爲政者の輕々に口にすべき問題ではない、殊に勤勞所得税の輕減とは全く別箇の問題で、勤勞所得の減税に振向けねばならぬと云ふ理論は成立たぬのであります(拍手)
第三には軍事公債の九三%程度は、金融機關及び預金部の所得する所で、實は昭和二十一年四月に於て、政府の預金部預金五百六十二億、市町村農業會より三百二十八億、合計九百億に垂んとする額の利拂は、大衆の預金、貯金の見返り資産でありまして、國債の利拂を停止することは、大衆の預金、貯金に對して收益源泉を剥奪する結果に陷り、甚だ恐るべきことであります、此の中には可憐なる國民學校の兒童の貯金もあり、又お盆の休みも休まず、草刈りをした娘の貯金も含まれて居る、生産力を増大すると述べられましたが、生産力を増大するどころか、却て事業が萎靡沈滯すると云ふ虞のあるものであります(拍手)愼重に檢討せねば却て贔負の引倒しになることで、是は承知を致さねばならぬことであります、思はざるも甚だしき惡政と私は斷じて憚らぬのであります(拍手)
第四、思ふに租税は廣く國民が其の分に應じて納税すべきもので、國民大多數の應分の負擔に依つて支持される所の財政こそは最も健實な財政であると言はねばならぬ、勤勞所得は其の性質上、資産所得又は事業所得よりは其の擔税力が輕減されてあることは歴然とした事實で、税率も亦最も低く定めて居る外に、基礎控除額を最も多額とし、其の外扶養家族月一人に付き二圓を六圓に引上げ、努めて擔税の衡平を圖つて居る次第でありますから、前申されました所の擔税の不衡平であると云ふことにはならぬのであります、基礎控除額に付ては、從來月五十圓であつたものが、最近の物價、賃金等諸般の事情と睨み合せて、去る三月より約四倍の二百圓に引上げられましたので、昭和二十年度に於て所得金額五千圓の分類所得、綜合所得合せて八百十六圓の納税者が、改正税法に依る時は、分類、綜合兩所得を合せまして二百三十二圓となり、納税額が一躍五百八十一圓の減税で、七一%の低率を示すものであります、勤勞所得者と雖も此の程度の納税は又已むを得ざるものと私は考へるのであります(拍手)
第五、現下の物價、賃金等の事情に即しまして、勤勞者の生活には最も同情を禁じ得ないものがあります、豫てより總理大臣も大藏大臣も、度々國民の最低生活を保障せんとして聯合軍に食糧の輸入を請ひ、封鎖預金の再封鎖を斷行し、一面には俸給者に對して俸給竝に諸手當の増額支給をなさんとして、それぞれ豫算に計上し、絶えず勤勞者に對して考慮を拂つて居りますが、新圓生活の五百圓の枠は必ずしも最低生活費と云ふ譯ではないので、新圓支拂額の統制上の限界線であるから、直ちに基礎控除を五百圓に引上げなければならぬと云ふ結論には達しないのであります(拍手)特に敗戰日本の再建を圖り、一日も早く國民生活の安定を確保し、國民經濟の立直りを促進せしむるには、耐へ難きを耐へ、忍び難きを忍び、國民一致協力して頑張り拔かねばならないのであります、殊に新憲法に國民は納税の義務があると云ふ一項を挿入しましたのも、我れ人共に納税の義務を全からしめんと云ふ、如何にも日本らしい責任感を表明して居るもので、其の公正なる態度には敬服せざるを得ないのであります、此の意味に於て資産所得七%程度、事業所得四%程度、其の他の所得もそれぞれ税率引上が行はれる時、勤勞所得者に對する二%程度の税率の引上も、洵に已むを得ざる次第と考へねばならぬ
最後に政府に對して一言附加致したいのであります、御承知の通り我が國は、終戰後財政及び經濟界が混亂に混亂を重ね、未だ財政體系が確立致して居らないことは、洵に遺憾でありますので、政府は言明せられて居る通り速かに税制の根本改革を斷行して、健全財政竝に經濟界を順調に誘導して、國民生活の安定を一刻も早く確立せられんことを切望して已まないものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=55
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056・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是にて討論は終局致しました、是より採決に入りますが、其の順序は先づ本案に對する川島金次君外一名提出の修正案に付き採決し、次に委員長の報告に係る修正に付き採決し、最後に委員長の報告に係る修正を除きたる原案に付き採決することと致します──採決致します、川島君外一名提出の修正案に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=56
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057・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 起立少數、仍て修正案は否決されました──次に本案の委員長報告に係る修正に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=57
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058・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 起立多數(拍手)仍て委員長の報告に係る修正は可決されました(拍手)──其の他の原案に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=58
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059・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 起立多數(拍手)仍て其の他は原案の通り決しました是にて本案の第二讀會は終了致しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=59
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060・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第三讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=60
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061・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=61
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062・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第三讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=62
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063・会議録情報8
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所得税法の一部を改正する等の法律案 第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=63
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064・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 別に御發議もありませぬ、本案は第二讀會議決の通り確定致しました(拍手)
是より臨時租税措置法を改正する法律案、地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案の審議に入ります、兩案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=64
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065・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て兩案の第二讀會を開くに決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=65
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066・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに兩案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り議決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=66
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067・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=67
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068・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに兩案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=68
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069・会議録情報9
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臨時租税措置法を改正する法律案
第二讀會(確定議)
地方税及び地方分與税法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=69
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070・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して、臨時租税措置法を改正する法律案は委員長報告通り可決、地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案は委員長報告通り修正議決せられました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=70
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071・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の日程は延期し、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=71
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072・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=72
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073・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後六時十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X02919460815&spkNum=73
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