1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年八月十七日(土曜日)
午後三時三十四分開議
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議事日程 第二十九號
昭和二十一年八月十七日
午後一時開議
第一 臨時物資需給調整法案(政府提出) 第一讀會
第二 商工協同組合法案(政府提出) 第一讀會
第三 自作農創設特別措置法案(政府提出) 第一讀會
第四 農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 生活保護法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである
自作農創設特別措置法案
農地調整法の一部を改正する法律案
(以上八月十五日提出)
一、昨十六日貴族院に於て本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した
改定豫算に關する法律案
一、議員から提出された議案は次の通りである
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)に對する修正案
提出者
川島金次君 松永義雄君
馬匹組合法中改正法律案
提出者
佐伯忠義君 野溝勝君
鈴木周次郎君 小笠原八十美君
松浦東介君 小川原政信君
香川兼吉君
學校課外柔道練習許可に關する建議案
提出者
田原春次君 平野力三君
及川規君 布利秋君
農山漁村文化運動促進に關する建議案
提出者
成島勇君 平野力三君
北勝太郎君 野溝勝君
石黒武重君
族稱中士族平民の呼稱廢止に關する建議案
提出者 北村徳太郎君
私立大學復興に關する建議案
提出者 舟崎由之君
戰災圖書舘の復興促進に關する建議案
提出者
八坂善一郎君 金光義邦君
主要食糧の價格引上げに關する建議案
提出者
武藤常介君 加藤高藏君
宮原庄助君 鈴木明良君
小野瀬忠兵衞君
メートル法即時斷行及び度量衡法令改正に關する建議案
提出者
早稻田柳右ェ門君 井上知治君
八坂善一郎君 細田忠治郎君
津島文治君
私立中等學校恩給財團國庫補助金増額等に關する建議案
提出者
及川規君 廿日出厖君
杉本勝次君 松原一彦君
笹森順造君
高崎線大宮、高崎間電化に關する建議案
提出者
關根久藏君 宮前進君
瀧澤濱吉君 最上英子君
國會圖書館竝に議員會館建設に關する建議案
提出者
笠井重治君 石黒武重君
北れい吉君 大野伴睦君
鈴木義男君 森戸辰男君
田中萬逸君 吉田安君
山本實彦君 林平馬君
犬養健君
(以上八月十五日提出)
青年訓育に關する建議案
提出者
稻葉道意君 大野伴睦君
戰災死者慰靈塔建立費の國庫補助に關する建議案
提出者
大久保傳藏君 細川八十八君
松山農業專門學校の官立移管に關する建議案
提出者
藥師神岩太郎君 高橋英吉君
關谷勝利君 林田哲雄君
馬越晃君 稻本早苗君
淡路島の電氣供給確保に關する建議案
提出者 原健三郎君
栃木市外に官立の男女共學醫科大學設置に關する建議案
提出者
山口好一君 金子益太郎君
杉田一郎君 高瀬傳君
戸叶里子君 大島定吉君
船田享二君 江部順治君
菅又薫君 山口光一郎君
乳幼兒保育施設の整備擴充に關する建議案
提出者
村島喜代君 中山たま君
山下春江君 菅原エン君
森山ヨネ君 齋藤てい君
竹内歌子君 最上英子君
報徳道振興に關する建議案
提出者
圓谷光衞君 武田信之助君
麻生正藏君 原尻束君
平野八郎君 東隆君
山口光一郎君
四國循環鐵道中窪川、吉野生間建設工事促進に關する建議案
提出者
藥師神岩太郎君 高橋英吉君
關谷勝利君 馬越晃君
林田哲雄君 氏原一郎君
稻本早苗君 村上勇君
佐竹晴記君
九州四國鐵道連絡實現に關する建議案
提出者
藥師神岩太郎君 高橋英吉君
林田哲雄君 關谷勝利君
稻本早苗君 馬越晃君
村上勇君 氏原一郎君
佐竹晴記君 今村等君
田原春次君
愛媛縣肱川治水問題の根本的對策に關する建議案
提出者
高橋英吉君 藥師神岩太郎君
林田哲雄君 關谷勝利君
馬越晃君 稻本早苗君
村上勇君 佐竹晴記君
私學振興に關する建議案
提出者
武藤運十郎君 坂東幸太郎君
稲田直道君 伊藤郷一君
高場市に高等學校設置に關する建議案
提出者 武藤運十郎君
主食のパン食切換へに關する建議案
提出者 木村チヨ君
四國循環鐵道中宇和島市より高知縣宿毛、中村兩町經由江川崎に至る線新設に關する建議案
提出者
藥師神岩太郎君 高橋英吉君
關谷勝利君 林田哲雄君
馬越晃君 稲本早苗君
村上勇君 氏原一郎君
佐竹晴記君
(以上八月十六日提出)
一、議員から提出された質問主意書は次の通りである
緊急事件二法案に關する質問主意書
提出者 布利秋君
(以上八月十五日提出)
憲法改正に伴ふ諸法規改正に關する質問主意書
提出者 米山文子君
(以上八月十六日提出)
一、去十五日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
物價廳次長 工藤昭四郎
第九十囘帝國議會政府委員被仰付
(八月十四日附)
貿易廳長官 塚田公太
第九十囘帝國議會商工省所管事務政府委員被仰付(七月三十一日附)
一、去十五日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第三部選出
豫算委員 金光義邦君(鈴木明良君補闕)
第五部選出
豫算委員 犬養健君(青木泰助君補闕)
第五部選出
豫算委員 武田キヨ君(竹内茂代君補闕)
第七部選出
豫算委員 成島勇君(有馬英二君補闕)
第七部選出
豫算委員 平野増吉君(原健三郎君補闕)
第七部選出
豫算委員 舟崎由之君(寺島隆大郎君補闕)
第八部選出
豫算委員 細川八十八君(川崎秀二君補闕)
第八部選出
豫算委員 宮前進君(仲川房次郎君補闕)
一、去十五日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)委員
理事 田原春次君(理事島田晋作君去十三日委員辭任に付其の補闕)
一、去十五日次の通り特別委員の異動があつた東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)外三件委員
辭任 竹谷源太郎君 補闕 笠井重治君
會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)委員
辭任 竹谷源太郎君 補闕 中島茂喜君
勞働關係調整法案(政府提出)委員
辭任 藤田榮君 補闕 細迫兼光君
辭任 瀧澤脩作君 補闕 武田信之助君
辭任 山田善三君 補闕 木村公平君
生活保護法案(政府提出)委員
辭任 田中たつ君 補闕 木村チヨ君
昭和十九年度第一豫備金支出の件(承諾を求める件)外十一件委員
辭任 鈴木茂三郎君 補闕 町田三郎君
一、昨十六日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
商工事務官 玉置敬三
同 小出榮一
同 松尾金藏
第九十囘帝國議會商工省所管事務政府委員被仰付
大藏事務官 森永貞一郎
第九十囘帝國議會大藏省所管事務政府委員被仰付
一、昨十六日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
二八九 原侑君
二九三 松永佛骨君
二九五 竹谷源太郎君
一、昨十六日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第一部選出豫算委員 荒木武行君
第二部選出豫算委員 小澤國治君
第三部選出豫算委員 金光義邦君
第四部選出豫算委員 佐藤乕次郎君
第五部選出豫算委員 田中善内君
第七部選出豫算委員 舟崎由之君
第七部選出豫算委員 成島勇君
第七部選出豫算委員 平野増吉君
第八部選出豫算委員 細川八十八君
第八部選出豫算委員 森幸太郎君
一、昨十六日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
勞働關係調整法案(政府提出)委員
理事 原健三郎君(理事岡部得三君去十四日委員辭任に付其の補闕)
理事 川崎秀二君(理事古賀喜太郎君去十四日委員辭任に付其の補闕)
理事 武田信之助君(理事瀧澤脩作君去十五日委員辭任に付其の補闕)
一、昨十六日次の通り特別委員の異動があつた
帝國憲法改正案(政府提出)委員
辭任 左藤義詮君 補闕 高橋英吉君
勞働關係調整法案(政府提出)委員
辭任 北村徳太郎君 補闕 椎熊三郎君
辭任 天野久君 補闕 白井秀吉君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 是より會議を開きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=1
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002・会議録情報2
――――◇―――――
伏見宮博恭王殿下の薨去に對し弔詞奉呈の件(議長發議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=2
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003・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 此の際御諮りすることがあります、伏見宮博恭王殿下には、昨十六日薨去せられました、仍て議長は昨日參内致しまして、天機竝に御機嫌を奉伺致し、伏見宮家に弔意を表しました、就きましては本院は哀悼の意を表する爲め、弔詞を呈したいと存じます、其の文案を朗讀致します
衆議院は伏見宮博恭王殿下の薨去を哀悼し
謹みて弔詞を呈す
之に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=3
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004・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て其の通り決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=4
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005・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 議員河野密君より辭表が提出せられて居ります、之に付き御諮り致したいと思ひます、先づ其の辭表を朗讀致させます
〔書記官朗讀〕
辭職願
衆議院議員 河野密
右者今般都合に依り衆議院議員を辭職致度此段及御願候也
昭和二十一年八月十六日
右 河野密
衆議院議長樋貝詮三殿
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=5
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006・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 河野密君の辭職を許可するに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=6
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007・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て許可するに決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=7
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008・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際椎熊三郎君提出、密航取締竝に治安維持に關する緊急質問を許可せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=8
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009・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=9
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010・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます──政府は此の議事日程變更に同意せられました、仍て日程は變更せられました、密航取締竝に治安維持に關する緊急質問を許可致します──提出者椎熊三郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=10
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011・会議録情報3
――――◇―――――
密航取締竝に治安維持に關する緊急質問(椎熊三郎君提出)
〔椎熊三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=11
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012・椎熊三郎
○椎熊三郎君 諸君、私は茲に日本領域内に於ける最近の新たなる事態に對して、治安維持の處置に付て政府の所信を質さんとするものでございます
惟ふに過去に於ける日本の警察行政、治安維持の状況に付きましては、彼此れ非難される所もございましたが、特高警察の如きを除きましては、概ね一般警察官の綱紀は嚴守せられ、特に治安警察の實績を相當擧げて來ましたことは、何人も認める所であらうと存じます、然るに終戰後日本の警察の状況は如何でございませうか、洵に思ひ半ばに過ぐるものがあると思ふのであります、勿論敗戰の「シヨック」を受けて、日本人は一樣に虚脱の状態にあつたことは無理からぬことではございまするが、現下の警察力は餘りにも無力である、此の無力なる状態は一體何と云ふことか、警察の民主化とは警察の無力化ではない(拍手)殊に終戰當時まで日本に在住し、日本人として生活して居つた臺灣人、朝鮮人、是等が終戰と同時に、恰も戰勝國民の如き態度をなし、其の特殊なる地位、立場を惡用して、我が日本の秩序と法規を無視し、傍若無人の振舞を敢てなし來つたことは、實に我等の默視する能はざる所であります(拍手)曩に本議場に於て治安維持に關する緊急質問がありまして、政府當局は之に對して斷乎たる決意を示されたのであります、最近に至りましては一たび歸國したる彼等、特に朝鮮人の如きは、更に集團的に或る種の組織力を以て、再び日本に密航潛入せんとする者が、日を逐うて其の數を増加し、九州、山陰方面に於きましては、其の數實に數萬に及ぶと聞き及んで居るのであります、而も彼等は日本警察力の微弱に乘じて、兇器を携へ、徒黨を組み、驚くべき兇惡性を發揮して、當該住民の生活を脅かすこと實に言語に絶するものがあると聞いて居ります(拍手)而も尚ほ恐るべきは是のみに止まりませぬ、彼等の中には「コレラ」、「チフス」、赤痢等の保菌者が多數あつて、是が内地に傳播されて、今や内地に於きましては各所に夥しき罹病者を出して居る事實があります、政府は此の状況を何と見らるるのか、而して此の状況に對して如何なる處置を執られて居るのでございませうか、此の際此の實情を詳細に承り、併せて政府の所信を質したいのであります
次に今尚ほ内地にあつて外國人たる特殊の地位を惡用し、警察力の無力化に乘じて、凡ゆる不法を敢てする多數の者のあることは、既に諸君も御承知でございませう、我々は遺憾ながら敗戰國民ではありまするが、終戰の瞬間まで同胞として、共に此の國の秩序の下に生活して居つた者が、直ちに變つて恰も戰勝國民の如く、而も勝手に鐵道などに專用車などと云ふ貼紙を附したり、或は他の日本人の乘客を輕蔑壓迫し、見るに堪へざる兇暴なる振舞を以て凡ゆる惡虐行動に出でて居ると云ふ事實は、全く驚くべきものがございます(拍手)諸君、此の朝鮮人、臺灣人等の最近までの見るに堪へざる此の行動は、敗戰の苦しみに喘ぎ來つた我等に取りましては、正に全身の血液が逆流するの感情を持つのであります(拍手)而して彼等は其の特殊な立場に依つて、警察力の及ばざる點あるを利用して闇取引をなし、日本の闇取引の根源は正に今日の此の不逞なる朝鮮人などが中心になつて居ると云ふことは、今日の日本の商業取引、社會生活の上に及ぼす影響は驚くべきものがあるのであります、或は禁制品を大道に於て密賣し、或は露店を占據して、警察力を侮辱しつつ白晝公然と取引をなしつつあるが如きは、斷じて私共は無視することは出來ませぬ(拍手)而も彼等は外國人たるの立場に依つて、營業は悉く無税でございます、諸君、内務大臣は、殊に朝鮮人等の營業許可に對しては、日本人よりも便宜を與へて居るが如き感を呈せられる今までの状況を何と見るか、而も此の無税をなぜ取締らぬのか、さうして取締る意思があるのか、取締るとしても、「ポツダム」宣言受諾の日本が、之に裁判權を加へるの力ありや否や、此の問題に付ては政府の責任ある御答辯を御願ひしたい(拍手)若し此の問題を此の儘にして放置するならば、正に南方方面に於ける所の華僑の勢力の如く、日本の中小商業權と云ふものは恐らく彼等の手に掌握せらるるのではないかと云ふ憂ひさへある(拍手)今や五百億を超える日本の新圓の其の三分の一は、恐らく彼等の手に握られて居るのではないかと云ふ噂さへあるのでございます、若し夫れ此の噂にして眞實ならば、日本の微弱なる商業者は、無税にして外國人たる立場を以てなす所の此の朝鮮人、臺灣人の行動には、商取引としては敵はない、現に神戸、大阪の如きは、既に露店商人、飮食店は悉く臺灣人、朝鮮人に依つて掌握されて居ると云ふ此の事實を内務當局は何と見られますか、諸君、今にして政府は儼然たる態度を示すにあらずんば、洵に由々しき問題が惹起するであらうことを私は惧れます(拍手)政府は之に對して如何なる處置をなさんとするのでありますか、明確なる御答辯を要求致します
惟ふに治安の確保は、現状の如き警察力を以てしては非常に困難でございませう、併し如何に困難なりと雖も、目下の状況を此の儘放置すると云ふことは絶對に許されませぬ、政府は現在の警察力の状況を明かにし、之に對する所信を明示せられんことを望みます、政府は最近治安關係閣僚の懇談會なるものを開いたと云ふことを承つて居ります、其の結論は如何なるものでございましたでせうか、治安維持の第一線に立つ者、即ち警察官の待遇改善の如きは、固より即決すべきであつて當然でございませう、關係閣僚の之に對する御意見も承りたい、今日社會不安の眞つ只中にあつて日夜治安の維持に挺身されつつある者の生命と生活は、國家的に絶對に保障せられねばなら と私は信じます(拍手)而して民主化されたる我が國の警察官は、先づ第一に教養を高め、常識を養ひ、眞に國民の公僕たるの範を示すべきであらうと私は存じます、隨て民主化されたる警察官は、人權を尊重し、科學的方法に依り、或は機械力に依り、より能率的にして文化的なる警察力の發展を希望して已まぬものでございます
以上聊か私見を申述べまして、最近に於ける特殊の事態、即ち朝鮮人の密航問題、病毒の傳播、闇取引の取締、租税問題等詳細なる説明を伺ひ、而して政府の所信を此の席上に於て明確に御述べあらんことを私は希望致します、即ち政府は此の際率直に事態を闡明し、我々國民の安心するに足る御答辯あらんことを希望致しまして降壇する次第であります(拍手)
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=12
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013・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今椎熊君より我が國の治安状態の現状に鑑みまして、熱誠なる、又痛烈なる緊急質問がございまして、其の御述べになりましたことに對しましては、政府殊に治安の責任者と致しまして深く同感の意を表するものであります
御述べになりました如く、昨年終戰後の國内の變動期に際しまして、警察も確かに所謂虚脱状態に陷りまして、十分其の機能を發揮し得なかつたことのありましたことは、洵に遺憾でありますが之を否認する譯には參らなかつたと思ふのであります、併し其の後漸次警察力を囘復致しまして、段々軌道に乘つて參り、近時の警察對象は中々生命の危險も度々あると云ふことでございますが、全警察官は敢然として危急に赴くと云ふ精神力を囘復致しまして、一意奉公の誠を效すと云ふことになりつつありますことは、聊か意を強うするに足ることと信じて居る次第であります
各方面に亙りまして御質疑があつたのでありますが、先づ密入國の問題に付きまして御報告を致し、政府の決意を申述べたいと思ひます、最近西日本の鳥取、島根、山口、福岡、佐賀、長崎の各縣沿岸に亙りまして、終戰後歸鮮致しました者等の中で、密かに機帆船等に便乘致しまして、分散的に若しくは集團的に本邦内に潛入を企てる者が少くないのであります、本年四月には其の數五百餘人でありましたものが、五月、六月と漸増致しまして、七月に至りましては實に八千九百餘人に及ぶと云ふ有樣であります、關係地方官民の努力に依リ、凡そ其の八割は檢擧致して居りますが、其の二割は逃走を致して居ると云ふ状況であります、尚ほ他に密かに潛入を致し、統計の數字に上らぬ者もある見込でありまして、それ等の者は本邦各地に分散して、不堅實なる闇の生活を營み、治安攪亂の禍因となる虞が多大であります、加之是等密航朝鮮人の中には、「コレラ」を持つて入つて來ると云ふ危險が昨今頗る大きいのでありまして、現に發見致しましたものだけでも、六月以降に於きまして眞性「コレラ」が五十人、疑似其の他のものが十人、合計六十人と云ふ状況でありまして、保健衞生上より見ましても、國民に多大の脅威を與へて居る次第であります、斯樣に朝鮮人の密入國の問題は洵に困つた憂慮すべき大問題であり、而も一刻も放置することを許されぬ事柄でありますので、現地の警察當局は、警防團員竝に其の他一般民衆の協力も得まして、極力其の發見檢擧に努めて居る次第でありますが、必ずしもそれが完全に行つて居るとは申上げられない實情であります、故に其の根本對策と致しまして、政府は各省相協力致しまして、水上警察の擴充、海上哨戒の整備、密航者取締法令の確立等速急に必要なる諸方策をも講じまして、本問題を憂慮せられる各位竝に國民の期待に副ふやう誓つて努力を致し、遺憾なきを期する決心であります
次に第三國人に依りまして、或は闇市場に於ける各種の好ましからざる行爲が頻々として行はれて居ること、或は列車の中に於ける暴状、不正乘車、是等見るに忍びざる行爲に付きましては、國民齊しく不快とせられ、又是が我が國の治安を攪亂する一つの重大な要素であると云ふ點に於きまして、多大の憂慮を寄せられて居りますことは、私共洵に恐縮に存じて居る所であります、幸ひにして列車の暴状に付きましても、數次の嚴重なる取締に依りまして、逐次改善を致して居ることは明かであります、此の點に付きましては更に鐵道警察力の整備と云ふやうなことも致しまして、列車内に於ける暴状は斷然之を根絶すると云ふ所まで、取締を強化する決心で居ります
尚又露店の暴状に付きましては、豫て相當の取締は致して居つたのでありますが、八月一日を期しまして斷乎たる取締をすると云ふ方針を確立致しまして、東京、大阪其の他の大都市を初め、逐次地方に亙るまで取締の徹底を期して居りますが、其の實績は幸ひにして豫期以上の效果を收めて居ると申上げて毫も差支ないと思ふのであります、今後一層取締を嚴にし──又一面に於きましては所謂青空市場のなくなりました爲に、一般民衆に與ふる不便を救ふ、乃至は戰災者、歸還者其の他洵に氣の毒な人々が、青空市場に於て生計を立てて居ると云ふことも少くないのであります、是等の人々に對しましても適切なる方途を講じまして、闇市場と云ふやうな不法な商賣でなく、正業に依りまして生計を立てる、又一般民衆も闇市場に依らずして、公正なる市場から需要品を容易に買ひ得ると云ふ所に目標を置きまして、各省協力致し、それ等の施策と相俟ちまして、闇取引の根絶を期することに邁進する決心で居ります
尚ほ第三國人の課税問題、又取締の徹底問題に付きましては、今日只今の所に於きましては、裁判管轄の點に於きまして結論に達して居ない點がありますが、此の點に付きましては目下政府に於きまして極力解決に努力を致して居ります、速かに是が解決を致しまして、第三國人は我が國民と同等の機會に惠まれまして、公正なる營業取引を致すことにすることが絶對的に必要でありますので、政府と致しましては、此の點に付きまして深甚の考慮と遺憾なき努力を致しまして、國民の御期待に副ふやうに努める決心であります
尚ほ今日の警察力は、其の對象と致して居りまする警察事故と對比致しまして、必ずしも十分でないと云ふやうな感はない譯ではございませぬが、併し日本の治安の維持は、今日に於きましては日本警察の雙肩に懸つて居ることは申すまでもないことでありまして、全警察力を動員致しまして、彼等の國民に對する忠誠心に俟ちまして、凡ゆる努力を致しまして、國民の御期待に副ふ如く極力努める積りで居ります
尚又我が國の治安問題は日本政府の責任でございまして、進駐軍の關せられる所ではないのでありまするが、進駐軍に於きましても、我が國の治安の紊れますことは、其の進駐軍の安全にも關する點に於きまして、共通の利害がある所であります故に、進駐軍に於かれましては、常に陰に隱れて適切なる勸告と注意と支援とを與へられて居るのでありまして、此の點に付きましては私共常々衷心より感謝を致して居る所であります、是等の點から考慮致しまして、必ずしも十分ならずと云ふ感なきにあらずでありますが、併し私の信ずる所に依りますれば、現下の約九萬の警察力に依りまして、日本の治安は逐次改善をされまして、國民の御期待に副ふだけのものに打立てることが出來ると云ふ深き確信を持つて居る次第であります
尚ほ此の席に於きまして警察官の苦心と努力に付て御同情を賜はりましたことに付きましては、深甚の謝意を表する次第であります(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=13
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014・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の椎熊君の御質問に御答へ致します、朝鮮からの密航者の持つて參りまする病毒は、「チフス」、赤痢等も多少ありますけれども、問題の中心は「コレラ」なんであります、それで上海からの復員の時に浦賀へ來ました「コレラ」の病毒に付きましては、是はもう全防疫員の獻身的努力に依りまして、御承知の通りに全く終熄致しました、聯合國側の視察者からも特別な賞辭を贈られて居るやうなことであります、所が今度は南鮮に非常に「コレラ」が猖獗して居ります、それで只今までの結果に依りますと、病毒の齎された件數が五十九件、患者數が二百九十五名であります、是は浦賀の場合と違ひまして、中々密航者が捕まらない、直接上陸して參るやうな人員が多いので、非常に防疫に骨が折れる實情であります、それで密航者を捕へたものは、舞鶴、仙崎、佐世保の三檢疫所へ持つて行つて直ちに檢疫致しますし、又上陸した密航者は、其の發見地附近に留置場を作りまして、其處で檢疫致して居る次第でありまして、全防疫陣を擧げて涙ぐましい獻身的努力を致して居る次第であります、併し問題は上陸者の範圍が廣汎に亙りますので、非常に骨が折れるのであります、それで唯今後は船艇を増加し、さうして取締を嚴にしまして、勿論警察力と力を協せまして完全なる防疫をやりたい、殊に一般の水上警察等に付ては舟艇等の相當の取締を──大きな船など造れぬのでありますが、防疫の方面からどうしても「コレラ」が上陸しては堪らぬのでありますから、之をやると云ふことには相當力を入れてやると云ふ確信を持つて居ります、此の面に於て今計畫をして居る最中であります、左樣御承知を願ひます(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=14
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015・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第五を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=15
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016・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=16
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017・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第五、生活保護法案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長庄司一郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=17
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018・会議録情報4
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第五 生活保護法案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 生活保護法案(政府提出)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月十五日
委員長 庄司一郎
衆議院議長樋貝詮三殿
附帶決議
一、民生委員の國家待遇を厚くし、其の手當を相當額に増額すべし。
尚其の任期は二箇年とすべし。
二、民生對策上、中央、地方に效果的なる委員會を設け、本法運營上の萬全を期せられ度し。
三、民生委員の銓衡方法を民主化し、町内會長、部落會長、引揚同胞總代、社會事業關係者、要保護者中よりも銓衡せられ度し。
四、都、道府縣の銓衡委員會には、多分に地方議員を參加せしめられ度し。
五、本法を中心に、社會事業法、司法保護事業法等の調整を圖り且つ國民保險組合の改善、失業保險の創設に前進すべし。
六、生業扶助一人當りの扶助額を増額すると共に、施設費に付ても相當額を増額せしめられ度し。
七、國立病院、結核療養所等の收容者等に對しても、本法に依る生活保護の愛の手を伸べられ度し。
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〔庄司一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=18
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019・庄司一郎
○庄司一郎君 只今上程されました生活保護法案に付きまして、委員會の審議の經過竝に其の結果に付きまして簡單に御報告を申上げたいと思ひます
本法案は先月十七日に本會議に上程され、即日二十七名よりなる委員會に御付託を受けたのであります、委員會に於きましては現在の社會情勢下に於ける本法案の重要性に鑑みまして、先月十九日より十有三囘に亙つて愼重なる審議を遂げたのであります、其の間數囘の懇談會をも加へ、而も此の二十七名の委員中に於て發言を求められました委員各位は二十三名でございます、更に委員外の發言の志願者として、議員柄澤と志子君の御發言を御許し致しました、而して一昨十五日に其の審議を終了致した次第であります
本法に付きましては、去る本會議に於きまして政府より一應の説明があつたのでありますが、要するに現在の社會情勢下に惱む多數の生活困難者に對しまして、國家が無差別平等に其の最低生活を保障し、社會の福祉を増進する爲に、從來の救護法、母子保護法、軍事扶助法、戰時災害保護法、醫療保護法等に代つて茲に新たに制定せられんとするものなのであります、以下委員會の審議に於ける主なる質疑應答の若干を申上げたいと思ひます、第一には、現情勢に對處すべき社會事業に關する政府の根本的所信に付ての質問がありました、之に對し吉田内閣總理大臣より政府としては經濟安定や就業對策に關して極力努力する、他面生活困難者に對する保護救濟、特に其の最低生活の保護に付て大いに意を用ひ、十分出來るだけのことを致す積りである旨の答辯があつたのであります、第二には、本法律案の根本的精神如何、即ち本法は慈惠的或は恩惠的な立場から作られたものであるかどうか、或は國民の最低生活保障に關する國家の責任と義務的觀念から發したものであるかどうかとの質問に對しましては、政府より本法は道徳的に人道主義に出でたものであるけれども、之を法律的に見るならば、國家の責任と義務觀念の上に立脚するものであつて、決して彼の慈惠的な見地に立つて居るものではない旨の答辯があつたのであります、次に、果して然らば國民の最低生活の保障を國家の義務的觀念に基いて行はうとするものであることを、本法の中に明記すべき筈ではないかとの質問に對しましては、政府より只今帝國議會に於て審議中の帝國憲法改正案第二十三條に照せば、それは當然過ぎる程當然なことであるから、特に其のことを明記する必要はないと考へて居る旨の答辯があつたのであります、次に、本法の保護機關たる市町村長を補助する所の民生委員には、適材を得ることが最も大切である、民生委員に其の人を得なければならない、斯樣に考へるが、其の人選には特段なる所の意を用ひる必要があると思ふが、是等に對する政府の對策如何との質問に對しまして、政府よりは、市町村毎に設けらるる豫定である民生委員推薦委員會等を十分活用して、出來るだけ民主的に眞の適材を得ることに極力相努める旨の答辯がございました、次に、本法の如き國民生活に直接關係を持つ法律を、より效果的に運用して參る爲には、先づ官民協力の態勢を確立して、力を協せて推進する必要があると思ふが、それ等に對する對策如何との質問がございました、之に對しまして政府よりは、中央社會事業委員會と地方社會事業委員會等を刷新活用するの外、民間の社會施設、我が國獨特の民生委員等の積極的協力を求めて、眞に官民協力の實を擧げ、以て御趣旨に副ふ方針である旨の答辯がございました、次に、本法に依る保護は、例へば六大都市等に於ては、假に五人世帶に付て言ふならば三百圓程度しか豫算がないと云ふやうなことではあるが、それで實際上五人の家族の生活が出來得ると政府は考へて居るか、又本法の施行に要する豫算は約三十億であると聞いて居るが、此の後の情勢等を豫想する時に於て、果して其の程度で足りると政府は考へて居るかどうか、斯樣な質問に對しまして、政府から、右の三百圓は一應の基準であるから、困窮の實情に應じて必要なる額を支給するものである又三十億の豫算は補充費であるから、此の後必要に應じて豫備費或は追加豫算等を以て本法施行に萬全を期する用意が十分あるとの答辯がございました、次に、本法に依る保護も、徒らに生活費の支給のみに止まつては消極的に墮する虞があるから、寧ろ生業に就かしめること、即ち生業扶助を重視することが眞に民生安定に資する所以ではないかとの質問に對しまして、政府からは全く御同感である、本法の生業扶助の運用には特段の工夫を凝らして效果を擧げることに努力する外、新たに海外同胞引揚者、戰災者其の他に對して、庶民金庫を利用して、一世帶三千圓の生業資金の貸付を極めて容易に行ふこととしたのであるとの答辯があつたのであります、次に本法との關聯事項に付ての質問と致しましては、本法は國、都道府縣、市町村等の費用を以て國民の最低生活を保障しようとするものであるが、此の後の社會政策の理想形態としては、寧ろ廣汎な社會保險を實施し、國民相互扶助の力に依つて生活を確保して行くべきではないかとの質問に對しまして、政府は目下社會保險制度調査會を設けて、折角鋭意研究中である旨の答辯があつたのであります、次に、現下に於ける國民健康保險制度は、醫療費等の昂騰に依り殆ど全國的に壊滅の危機に瀕して居るが、何とか之を速かに建直して行く所の方策を講ずべきではないかと云ふ熱烈なる各委員の要望に對し、政府から、目下豫算上の必要措置等に付て折衝中であるが、組合自體の經理の合理化に付ても指導を加へたいとの答辯があつたのであります、次に、海外よりの引揚者、戰災者、寡婦、孤兒、傷痍者等の保護に關しては、一般の温かい愛の手を差伸べる必要があるのではないか、更に又浮浪兒、闇の女等の防止救濟等に政府は急速に全力を擧げなければならないのではないか、是等に對する政府の對策如何との質問に對しまして、政府からは、是等の實情に即應して色々諸對策を講じては居るが、更に本法に依る保護を積極的に加へて參る外、適當なる收容所或は母子「ホーム」其の他各般の措置を講じて、極力努力する方針であるとの答辯があつたのであります、更に又本法に依れば、生活困難者の子弟の教育費は、義務教育である所の國民學校程度までしか其の教育費を出せない建前になつて居る、そこで教育の機會均等を與へる爲に、優秀なる所の子弟に對しては、中等學校以上への進學と門戸開放をも可能ならしむる方策を執るべきではないかとの質問に對し、政府から、大日本育英會、同胞援護會其の他諸々の施設の活用等と相俟つて出來得る限り其の趣旨に副ふ旨の答辯がございました
以上委員會に於ける主なる質問應答の概略を申上げたのでありますが、審議を通して各委員の熱烈なる要望を結集し、本法此の後の運用の效果發揚に資する爲め、數箇條から成る附帶決議を行ふことと致しました、左の通り委員會は附帶決議致しました次第であります
附帶決議
一、民生委員の國家待遇を厚くし、其の手當を相當に増額すべし。尚其の任期は二箇年とすべし。
二、民生對策上、中央、地方に效果的なる委員會を設け、本法運營上の萬全を期せられ度し。
三、民生委員の銓衡方法を民主化し、町内會長、部落會長、引揚同胞總代、社會事業關係者、要保護者中よりも銓衡せられ度し。
四、都、道府縣の銓衡委員會には、多分に地方議員を參加せしめられ度し。
五、本法を中心に、社會事業法、司法保護事業法等の調整を圖り且つ國民健康保險組合の改善、失業保險の創設に前進すべし。
六、生業扶助の一人當りの扶助額を増額すると共に、施設費に付ても相當額を増額せしめられ度し。
七、國立病院、結核療養所等の收容者等に對しれも、本法に依る生活保護の愛の手を伸べられ度し。
以上の如き經過を以ちまして討論に入つたのでございます、討論に於きましては、自由黨の小柳冨太郎君、進歩黨の有馬英二君は、それぞれ附帶決議の勵行を強調されつつ原案に御贊成をなされました、社會黨の長谷川保君は、本法が國民の最低生活に關する法律であることを明かにする爲に、第一條の「この法律は、生活の保護を要する状態にある者の生活を、國が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して、社會の福祉を増進することを目的とする。」と云ふ規定を、「この法律は、生活の保護を要する状態にある者の生活を、國が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して、その最低生活を保障し、社會の福祉を増進することを目的とする。」と改むべしとの修正動議を御提出に相成りました、協同黨の川越博君、新政會の木村チヨ君は、同じく附帶決議を強調されつつ原案に贊成をされました、無所屬の松谷天光光君は、長谷川保君の修正動議に對して贊成なる旨の發言をなされたのであります、そこで長谷川保君提出の修正動議に付きまして先づ採決を行ひました所、贊成者少數の爲に否決されました、次いで第一條を原案通り可決すべきやに付て採決致しました所、贊成者大多數にて可決されました、次いで第二條以下第四十七條まで全條文を原案通り可決すべきやに付て採決を致しました所、全員一致にて贊成可決された次第でございます、以上を以ちまして委員會の審議の經過及び其の結果に關する御報告として、之を以て終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=19
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020・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=20
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021・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
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022・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=22
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023・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
(「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=23
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024・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=24
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025・会議録情報5
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生活保護法案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=25
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026・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決確定致しました(拍手)此の際一言致します、細迫兼光君より、一昨日の本會議に於ける同君の發言中、不穩當なる箇所があるとのことで、同君より取消の申出がありましたから、議長に於て速記録を調査の上、適當の處置を執ることと致します、左樣御諒承を願ひます(拍手)
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027・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の日程を延期し、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=27
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028・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=28
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029・樋貝詮三
○議長(樋貝詮三君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後四時二十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03019460817&spkNum=29
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