1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年九月四日(水曜日)
午後一時二十五分開議
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議事日程 第三十九號
昭和二十一年九月四日
午後一時開議
一 國民健康保險に關する質問
(飯國壯三郎君外七名提出)
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第一 臨時物資需給調整法案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第二 商工協同組合法案(政府提出) 第一讀會
第三 電氣事業法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 石炭及コークス配給統制法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、議員から提出された議案は次の通りである
松山、伊豫小松間省營自動車運行に關する建議案
提出者
林田哲雄君 安平鹿一君
關谷勝利君 馬越晃君
高橋英吉君 稻本早苗君
布利秋君 藥師神岩太郎君
省營バス白城線運轉區間延長に關する建議案
提出者
平野増吉君 水口周平君
日比野民平君 坪川信三君
武藤嘉一君 綿貫佐民君
越美線速成に關する建議案
提出者
平野増吉君 水口周平君
日比野民平君 綿貫佐民君
坪川信三君 武藤嘉一君
(以上九月三日提出)
一、議員から提出された質問主意書は次の通りである
國民健康保險に關する質問主意書
提出者
飯國壯三郎君 大野伴睦君
田中萬逸君 西尾末廣君
松本六太郎君 鈴木彌五郎君
福田繁芳君 志賀義雄君
(以上九月三日提出)
一、昨三日特別委員委員長補闕選擧の結果次の通り當選した
復興金融金庫法案(政府提出)委員
委員長 高橋泰雄君(委員長松川昌藏君去二日委員辭任に付其の補闕)
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=0
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001・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是より會議を開きます、日程第一、臨時物資需給調整法案の前會の議事を繼續致します──疋田敏男君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=1
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002・会議録情報2
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第一 臨時物資需給調整法案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
〔疋田敏男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=2
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003・疋田敏男
○疋田敏男君 私は只今より新政會を代表致しまして、臨時物資需給調整法案に對する質疑を致したいと存じまするが、既に昨日各政黨の代表に依つて、總括的質問は呉越同舟的に十分論議せられたのでございまするし、私も亦同感でございまするが故に、本日は内容を極く切下げて、委員會的な質問を致して見たい下存じます次第でございます、政府に於かれましても、どうか之に對しまして、商工大臣、安定本部長官、農林大臣、大藏大臣の御答辯を御願ひ致します
政府の本法案提出の根本理由に付ては、各關係大臣は、總動員法のなくなつた現在、之に代るべきものとして本法案を作成したと御答へになり、或は經濟の民主化、經營の民主化の爲に本法案を作成した、戰時中の如き官僚統制は排除して本法を運用したいと答へられて居るのでありまするが、元來本法案は一種の全權委任立法でありまして、本立法の缺陷と申しまするものは、内容が非常に抽象的で、且つ官僚の獨善主義に陷り易い弊害があることであります、隨て政府が如何に民主的に本法を活用されても、戰爭と云ふ大きな痛手に四苦八苦致して居りまする日本と致しましては、有史以來の一大苦痛を是から嘗めなくてはならない實情に於きまして、安定本部に官僚陣が蟠居して居りまする限りは、關係大臣が如何に説明を加へられませうとも、内容は漠として掴みどころのない本法に於きましては、民主的とは反對の方向に進んで行く傾向を多分に持合せて居るのであります、隨て假令表面的には民主的に出來て居るやうに見受けられる點がありましても、又關係大臣から、無用の干渉は避けるから信頼して欲しいと云ふ御言葉がございましても、實質的には戰時色を再現するかの感を強く致しまするのみならず、本法の性質が、政府に對して白紙の委任状を渡す如き内容でありまする以上、そこに必然的に官僚統制の缺陷を暴露致しますることは、過去の幾多の實例より推して火を賭るよりも明かであります、殊に總動員法がなくなつたので、慌てて本法を作つたと云ふに至りましては、益益其の感を深くするものである、内閣が政黨内閣であり、安定本部が官僚陣の根城でありますに於ては、更に兩者の對立も想像が出來るのであります、本法立案の趣旨には敢て私反對を致すものではございませぬが、其の内容と其の運用に於て 大なる疑問を抱くものであります、政府が最初に立案致しましたものは、實に四十四箇條と附則からなる明細なるものでありまして、戰爭中に設定せられた統制團體、配給統制機關等を利用して之を行ふことになつて居り、其の點政府が頻りに辯明して居りまする、戰爭中のやうなことはやらない、官僚統制は排除すると云ふ御言葉とは、大いに相違する點を發見すると共に、主務大臣は是等の統制團體に對して、生産計畫の決定、生産の指示、物資の配當、注文の割當、物資又は設備の讓渡又は讓受け、消費に關する制限又は禁止、種類數量の機宜の指定等、實に其の範圍は廣汎に亙つて行はせることになつて居つたのであります、然るに今囘當議會に提出せられましたものは、驚く勿れ、四十四箇條が僅かの六箇條に縮小されて居るのであります、其の上に、其の内容が大々的に變更せられ、民主團體に與へられた權限は、本法に於きましては僅かに物資の配當の一點に止まり、其の他は總て、第一條に於て主務大臣が命令を下すことに一大改正が加へられたのであります、此の事實は、敢て私一人に止まらず、何人と雖も不思議の感を抱くことは當然であります、而も斯くの如き一大改革を加へられたる本法を以て、尚且つ民主的立法なりと説明する政府の眞意を、不幸にして私は判じ兼ねる次第であります、政府の此の改革の已むなきに至つた理由が那邊にございまするか、商工大臣の懇切なる御説明を戴きたいと存ずる次第であります
偖て本法の第二條に於きましては、前段は民主的に組織せられた産業團體の議決に基く物資の割當を認めて置きながら、後段に於ては民主的産業團體の行つた物資の割當の決定に不服のある者の申出に依つて、主務大臣が割當の變更を命ずることが出來るやうになつて居りますことは、民主的産業團體の議決と云ふ前提と大いに矛盾を來すのみならず、第一條の主務大臣の權限と併せて、往年の官僚統制の弊害を再現する虞が多分に包含されて居るのであります、政府の最初の立案は、明かに官僚陣と一脈通ずる所のある、而も官僚の古手が巣食つて居る戰時中の統制團體を利用して、思ひの儘に事を決する計畫であつたものが、統制團體に解散命令が下つたので、政府の最初の計畫は崩壞の已むなきに至り、急遽今囘の如き洵に漠とした、而も主務大臣に強力な命令權を與へたものに變更せられ、社會を胡麻化す爲に、民主的産業團體と云ふ文字と、物資の割當と云ふ文字とで、官僚獨善主義を「カモフラージ」し、民主的産業團體の文字に隱れて、官僚主義を濫用せんとして居るのではないかと疑はれる點があるのであります、幸ひに私の邪推と杞憂であらんことを祈る次第でありますが、本法案の性格的矛盾は其の儘日本の政治の貧困、經濟の矛盾を暴露するものと考へる次第であります、此の點に付き、商工大臣及び經濟安定本部長官の御所見を御伺ひ致したいのであります
更に第二條に於ける民主的産業團體に關しては、商工大臣の御説明がありましたが、今日はまだ完全無缺の民主的産業團體が日本に存在して居るとは信じられないのであります、若し政府が民主的産業團體が存在すると申されるならば、それは戰爭中に出來た統制團體の看板の塗替へか、若しくは粗製濫造の俄か團體に過ぎないのでありまして、民生安定と云ふ重要な任務を遂行させますには、聊か重荷ではあるまいかと存ずる次第であります、此の際眞に日本再建に貢獻すべき民主的産業團體の性格及び其の機構を明瞭にして、國民の得心する民主的産業團體の發生に、政府は進んで助力する御意思はございませぬかどうか、又農業會や食糧營團の如き非民主的組織に、一大改革を加へられる御意思はないかどうかを、商工大臣、農林大臣に御尋ねを致したいのであります
更に第三條に於て、主務大臣は其の官吏に、必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類其の他必要な物件を檢査させることが出來ることになつて居りまするが、此の場合に往々にして不正が發生し易いのであります、饗應或は贈賄の如き──是は噂でありまするけれども、東京の料亭は官吏と銀行員で滿員の時代が最近にあつたと云ふことであります、戰時中の監理官が、軍部と云ふ大きな力を背景として、其の支配下の會社、工場に對して、資材の割當を名目に色色のことを行つて散々に食ひ物にし、又會社、工場に於ても、食はれた代償として、資材の面で元を取つて居たと云ふことの事實は、既に政府に於かれても薄々御存じのことと存じます、本法に於て斯くの如きことが行はれてないと云ふことは、斷言することは出來ないのであります、第三條に於ては、先づ斯樣な弊害の起ることを想定して、政府は是が防止策を十分に講じて戴かねばならないのであります
又第五條の第一項に、報告をせず、又は虚僞の報告をした者は六箇月以下の懲役又は五千圓以下の罰金に處すると規定されて居りまするけれども、萬一檢査に行つた官吏が買收されて、之を幇助致しました場合には、第五條の罰則は此の官吏にも當然適用せられなければならぬと云ふ見解を持つて居りまするが、以上に對しまして商工大臣及び經濟安定本部長官の御意見を御伺ひ致したいのであります
偖て政府は第一條に於て、命令に依り生じた損失を補償すると言はれて居りまするが、此の損失の程度は、如何なる方法を以て御決定になる御考へでありまするか、過去に於ける政府のやり方から推察致しますると、滿足すべき解決は與へられないと考へる次第であります、又擔保權の處理に付ても、命令一本で簡單に片付けられることは、當事者に大きな不安を與へる因であると考へまするが、此の場合補償委員會とでも申すべきものを設けられて、相手に安心の行く解決方法を講ずる御意思はございませぬか、商工大臣に御尋ねを致します
又今囘の金融機關經理應急措置法に依つては、各方面に事業資金が涸渇致しまして、生産能力も非常に下り、新圓獲得に四苦八苦の場合でありまするから、新圓の入る方に物資を流し、其の爲に配給計畫に齟齬を來すと云ふことは、産業界の現状に於て起り得る事實であります、政府は此の點を如何に考慮せられて居りまするか、政府が損失を補償する場合に於ての支拂方法は、又總て從來の例から行きますならば、封鎖拂と存じます、此の場合新圓と封鎖では、同じ金額を戴きましても、今日の實情に於て其の價値に大いなる開きを生ずるのであります、政府は何かと申せば、民主的と云ふ御言葉を濫發せられまするが、斯樣な細かい所まで親心を用ひて、損失補償の件を考慮せられて居るでありませうか、例へば補償の半額は封鎖で拂ふが、半額は新圓を渡すと云ふやうな、温かい思ひやりの精神がございまするかどうか、此の點に付て商工大臣と大藏大臣の御考へを御尋ね致します
又第四條に於ける罰金十萬圓に付ても一言せなければならぬのでございます、即ち個人と云はず、會社と云はず、總て今日では預金は一萬五千圓の枠の中に追込められて居ると云ふ、洵に窮屈な實情であるのであります、然るに斯樣な時勢に於て、此の十萬圓の罰金は如何なる方法に依つて徴收せられる御考へでありまするか、或は第一封鎖からか、或は第二封鎖からか、私には不幸にして判斷が付き兼ねまするので、商工大臣竝に安定本部長官の御意見を御伺ひ致したいのであります(拍手)
偖て戰時中の國家總動員法第二十九條には、損失の補償に對しては總動員補償委員會の議を經ることとあり、又第五十條には、國家總動員法施行に關する重要事項に付き政府の諮問に應ずる爲め國家總動員審議會を置くとあり、是は貴衆兩院議員及び學識經驗者を以て組織せられて居たのであります、軍閥と官僚の跋扈して居りました戰時中に於てさへ、斯くの如き制度が設けられて居つたにも拘りませず、民主政治の行はれまする現在に於て、本法の中には貴衆兩院議員を中心とする委員會又は審議會の制度が設けられて居りませぬことは、實に時代に逆行する非民主的法案なりとの非難を受ける理由でありまして、又官僚獨善的惡法なりと斷定せられても已むを得ない次第であります(拍手)安定本部長官は、昨日の御答辯の中に、安定本部には、實業家、政治家、學者に依つて經濟安定會議が民主的に行はれることになつて居ると申されて居りまするが、私の只今申上げました會議は、本法運用上に必要な委員會又は審議會でございまして、安定本部長官の申された會議とは、組織竝に性格を異にするものであります、此の際政府は本法運用に關して、貴衆兩院議員を中心として委員會又は審議會を特別に設けられる御意思があるかどうか、自由自在に必要な命令を下すことの出來る本法に於て、此の制度の設けられて居りませぬことは、政府が何と辯解せられても、非民主的立法なりと斷ぜられても已むを得ないのでございます(拍手)曾て命令と服從と云ふ二つを武器とした軍隊と官僚が、日本を滅ぼしたことは、今尚ほ我々の心に消すことの出來ぬ一大痛恨事であります、今日我々は命令と云ふ言葉を一番恐れ、又一番憎んで居るものであります、然るに此の際命令と云ふ文字を用ひて居りまする所の本法の運用を政府が希望せられて居るのでありまするならば、貴衆兩議員を中心とする委員會又は審議會を本法の中に設けられることを絶對に必要の條件とするのであります、此の點に對して商工大臣竝に安定本部長官の御決心を御伺ひ致したいのであります
偖て今や全國民は食糧問題に全神經を尖らして居りまするが、安定本部に於ては、二十一年産米、甘藷の標準買入賣渡價格、供出奬勵金、價格差補給金の決定を行はれる筈でありまするが、昨年藷類統制會社を通じて甘藷の取扱を致しました、其の結果として甘藷の收穫十五億貫に對しまして、正式配給は僅か三億貫であります、其の他は三億貫が種藷であり、四億貫が腐敗であり、五億貫は闇賣と云ふ實情であります、此の事實は農林大臣も御存じではなかつたのでありますか、十五億貫の藷は、米に換算を致しますると實に六百萬石に相當致します、隨て只今の状況を米の數字で申しまするならば、百六十萬石の米を腐らし、二百萬石の米を闇に流して、僅かに百二十萬石の米を國民に配給したと云ふ計算になるのであります、食糧危機を叫び、前澁澤大藏大臣は一千萬人の餓死者が出ると絶叫せられた時に於て、尚且つ斯くの如き醜態を演じて居るのでありまするが、本年の如く豐年を豫想せられまする時に於て、甘藷に對しましては、昨年以上の失敗なきかを憂ふるものであります、衣食住の安定を叫ばれる安定本部長官は、此の場合安定本部の機構及び本法を、食糧對策に對して如何に運營せられる御積りでありまするか、具體的に説明をして戴きたいのであります、併せて農林大臣の御意見も伺ひたいのであります
飯を腹一ぱい食はせれば、「インフレ」の問題も、日本復興工作も、總てすらすらと解決すると云ふのが、私の持論でありまするが、政府の百萬遍の説法や、山程の法律よりも、農林大臣がたつた一言主食の増配を仄めかされたことで、闇物價はどんどん下り、先日も新潟から態々米を東京に持參致しまして、一升七十圓で賣らうと致しましたが、買手がなくて、すごすご持つて歸つた事實を一週間前に私は見て居ります、昨今米價問題に付ても、安定本部、大藏省、農林省の間で意地の張合ひをやつて居られると云ふことでありまするが、此の詰らぬ突張り合ひが、農林大臣と衆議院の食糧對策委員會の紳士協約を打破つてしまつたかのやうな状況があると私は聞いて居りまするが、洵に遺憾に存ずる次第であります、開店勿々の安定本部の鼻息が此の調子でありまする以上は、本法を安定本部に與へました場合は、衆議院對政府對安定本部の間に、常にごたごたが絶えぬやうな氣が致します(拍手)官僚の強力な本陣と化する虞のある經濟安定本部を、斯樣に私は警戒して居るのであります、農林大臣でさへも頭を抑へ付けられた強大な安定本部に、本法を此の儘與へることは、恰も子供に刄物を與へたも同樣で、洵に物騷千萬であります、此の點商工大臣、安定本部長官、農林大臣竝に大藏大臣の御意見を御伺ひ致したいのであります
日本産業の再建は、日本の電化、即ち日本唯一無限の動力資源である水力電氣の發展活用に俟つのみと私は信じます、又此の電力の活用には、當然電氣機械が必要であり、電氣機械には、其の心臟ともなるべき珪素鋼板が絶對に必要であります、然るに日本に於ける珪素鋼板の生産は、日鐵八幡工場と川崎重工業でありましたが、近來生産頗る振はず、加ふるに石炭不足と機械の故障で、需要を滿たすことが出來ないと云ふ實情であります、斯くて現在では、進駐軍關係の電氣機械の生産にさへも支障を來して居りまするのみならず、日本に於て使用致しまする電氣機械の生産にも、支障を來して居る有樣でありまして、是は延いては「ポツダム」宣言にも不忠實となると共に、日本産業再建に一大支障を來す憂ひがあるのでございます、然るに現状に於ける珪素鋼板の需要は、一箇月千五百「トン」乃至二千「トン」でありまするが、日本に於ける生産高は、僅かに五、六百「トン」に過ぎぬ有樣であります、此の際政府の大英斷を以て、外國から不足の分を速かに輸入するか、或は日本に於ける生産を増加させる方法を執るかの、二つより途はないのでございまするが、是は非常に今後の日本の産業界に重大な影響がございまするので、安定本部長官竝に商工大臣の特に親切なる御答辯と、御方針を御伺ひ致したいのであります
結論と致しまして、政府は今や勞働關係調整法に依つて、全勤勞者を壓殺せんとして居ります、又只今は本法に依つて、日本の全産業を悉く官僚と特權階級の手下に?き集めて、思ひの儘に官僚統制を再演しようと計畫して居るもののやうに考へられるのであります、隨て本法こそ、實に日本産業活殺の鍵とも稱すべきものであります、此の際政府は宜しく熟慮の上にも熟慮せられ、議會を尊重せられ、民主的産業團體と貴衆兩院議員中心の委員會又は審議會を主體と致しまする、眞に國民大衆の歡迎する民主的物資需給調整の使命を達成し得るものに、本法を大改革せられ、特に第一條、第二條に對しては、官僚獨善の疑ひを一掃せられ、民主的假面をかなぐり棄てて、事務的にも、技術的にも、國家再建、産業復興に益すると共に、國民を愛する法規たらしめんことを政府當局に特に切望致しまして、私の質問を終る次第であります(拍手)
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=3
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004・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 昨日此の席より同僚議員の方に御答辯申した如く、率直に言ひますれば、必ずしも氣持の好い法律ではないかも知れませぬ、そこで之を只今仰せの如く、官僚化しないやうに十分の心配りをして實施を致したいと思ひます、如何せん、今日の物資需給の面から見ますと、餘りにも不均衡でありますので、つい先般までありました輸入の措置令、是は七月十五日で切れてしまひますし、又今日總ての統制の根幹を成して居る法律も、九月一ぱいで失效する譯でありますから、何とかしなければならぬので、先程仰せの如く、相當念入りの法律を實は作つて見たのでありますけれども、色々な關係で是は出すことが出來ないので、此のやうな法律になつた譯であります、そこで成程民主化と云ふ言葉は唯言葉だけでは實行出來ませぬ、所謂官民共に唯一時の言葉だけではなしに、平素から訓練を致して之に向はなければなりませぬので、民主的團體を指定すると法律にありますが、此の團體も、團體自らが眞に民主的にならなければならぬと思ひます、併し是も一朝一夕に、即座になり得ぬので、只今仰せのやうに、從來戰時中の色色の統制に參加して居つた人が、唯機構を變へて、形だけは民主化されたと云ふものも相當あらうと思ひますけれども、やはり組織をさう致しますれば、加入も脱退も自由となり、而も從來は官廳で任命して居つた役員が、全部選擧に依つて出て來るやうになりますれば、私は段々とそれが本當の民主化になつて來ると思ひますから、さう云ふものを一つ指定を致しまして、共共に訓練を致しまして、相戒めつつ之を實施致したい、斯樣に思つて居りますが故に、只今仰せのやうな官僚化は、本當に之を排撃しつつ進行して行きたいと思ひます、損失補償の如きも、官僚の獨斷で決めることなくして、出來ますことならば、是は委員會を設けまして、仰せのやうな調子の決定をして戴きたいと思ひます、又臨檢等に付きまして、帳簿の檢査等で非常な弊害が從來あつたことも聞及んで居りますが、是等に付きましても十分に留意を致して行きたいと思ひます
全體を通じまして只今の御質問と言ふか、御所見と言ひますか、本當に已むを得ない法律であるが、之を一つ官僚化、獨善化を排して、立派にやつて退けるやうにと云ふことでありますが、成べく是は短期間で止めたい、さうして一應此の下に色色な命令、省令が出て來て、纖維は纖維、鐵鋼は鐵鋼と、凡そ是が出揃つた所で、將來は之を法律に變へて、皆樣の御協贊を仰ぐ時があらう、斯樣に思つて居ります、詰り之を實施するのは成べく短い期間にしたい、本日御協贊を仰がんとする電氣、石炭、「コークス」の如き、斯う云ふ特別の法規が全部ありますれば、斯う云ふ法律は要らないのでありまして、成べく斯う云ふ方針に進んで行きたい、斯樣に思つて居る次第であります、御指摘の珪素鋼板は仰せの通りでありまして、今囘特別の輸入を懇請中であります、落ちて居る所がありますれば、何れ又委員會に於て御答辯をしたいと思ひます
〔國務大臣膳桂之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=4
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005・膳桂之助
○國務大臣(膳桂之助君) 只今の御質問の中に、相變らず本法の運用が官僚獨善に流れるのではないかと云ふ御心配、從前の戰時諸法規が如何に軍の下に官僚式に運營されたかと云ふことを想起致しますれば、洵に御心配御尤もと存ずる次第であります、只今商工大臣の御答へにありました通りに私も感じて居るのでありまして、本法の運營に付きましては文字通りの民主的統制の行はれるやうに、努力致したいと考へて居る譯であります、安定本部の組織及び安定會議の組織運營等に付きましては、昨日縷縷申上げましたので重ねて此の席から申上げませぬが、左樣な點に付きましては御懸念のないやうに十分なる努力を拂ふ積りで居ります
尚ほ御尋ねの中に法律第二條で割當の變更命令を出す、是も官僚獨善的ではあるまいか、斯う云ふ御指摘でございました、物資の配給は、根本の産業別の割當は、安定本部の定める方針に依りまして致すのでありますが、業界に於きまする割當配給は、民主的に組織せられました團體それ自體が行ふのでありまして、從來の例にもよく見るのでありますが、兎角民間の團體は、お互ひに勢力の均衡と言ひますか、何かやはり徹底しない關係がありまして、ともすれば總花式に資材を分けて、帶に短し襷に長しと云ふやうな、不徹底な資材の配給のあるやうな場合もあります、是等不足の資材を活用する爲に、どうしても重點的な配給をする必要のあります際に、さう云ふやうな場合があつては因るので、左樣な場合を豫想しまして、監督の爲の、謂はば睨みの爲にある規定でありまして、是が本當に民主的な組織で活用されます團體に、決して濫用さるべきものでないと云ふことを申上げて置きたいと存ずる、謂はば是も傳家の寶刀の一つであると御諒承願ひたいのであります
檢査の際の職權濫用の問題、或は罰金をどうして納めるかと云ふやうな問題、又米、甘藷等の配給の實際を如何にするやと云ふやうな問題に付きましては、安定本部は、昨日も申上げました通り企畫廳でありまして、本法に基きまする物の配給の實際を掌る實行廳ではありませぬので、それぞれの主管の大臣各位から御答へがある方が適切と思ひまするから、私から申上げることを御容赦願ひたいと存じます
最後に安定本部委員會の問題に付ても、貴衆兩院を中心とする委員會を作つて、本法を運用するのが適當ではないか、斯う云ふ仰せでありましたが、本法の考へ方は貴衆兩院もあり、尚ほ實際家も入れ、輿論の代表者も入れ、學者も入れると云ふやうな組織でやる方が民主的であると、斯う考へましたので、經濟安定會議は左樣な構想の下に作られて居るのでありまして、若し此の他に別な委員會、總括的な本法運用の委員會を作りますと、屋上屋を重ねることになるのではないかと思ふのでありまして、此の點は如何かと存ぜられます
次に安定本部と政府と何か對立でもするやうなことがありまして、茲に何か三角的の對立關係でも起るのではないかと云ふやうな御心配があられましたが、安定本部も閣内の一つの機構であります、安定本部の總裁は總理大臣でありますから、自ら内閣の統制と、安定本部の獻策と申しますか、研究の結果とは、一つの頭に渾然と融和されまして、別に矛盾のない適用が行はれるのではないかと考へて居ります、此の點に付ては、御心配のやうなことは萬なきものと信じて居る次第であります、御答へ申上げます
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=5
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006・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 私には何か新圓拂の問題に付て御尋ねがあり、もう一つは、能く分りませぬでしたが、安定本部が官僚化すると云ふやうなことで何か御尋ねがあつたやうであります、新圓拂のことは、御言葉のやうに、之に依つて色々不便或は不都合を來して居る向きがあると存じます、それは其の實際の場合に當つて適當に處理することに致して居りますから、左樣御承知を願ひます
安定本部のことに付ては、今膳國務大臣から御答へした所で盡きて居ると思ひます、別段閣内に安定本部とどうとか──新聞には色々ありますが、新聞必ずしも事實を正しく現はして居る譯ではありませぬ、安定本部は大いに強化して貰ひたいと私は考へて居ります、又是が官僚の巣窟になることもないと思ひます、又官僚などと云ふものは、そんなに恐れることもないと考へます、言ふことを聽かなかつたら、踏み潰して行けば宜いのであります、餘り官僚々々と言ふ必要はないだらうと私は感じて居る譯であります(拍手)
〔政府委員大石倫治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=6
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007・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 疋田君よりの御尋ねの第一は、食糧營團の改善に關する意見はどうかと云ふ御尋ねでありました、食糧營團はそれぞれ活動致して居りますが、まだ多少は弊害も世間から指摘せられて居ります、運用上不便且つ不利の點がございますれば、之を改善致したいと存じて居ります
第二點は米と甘藷の配給に付てでありますが、それは大抵新聞に於て書かれて居る通りでありまして、本年は幸ひに豐作で、米の供出量も前年に比較致しまして増加致したのであります、又馬鈴薯は兎に角と致しまして、甘藷は是れ亦非常な豐作と認められて居りますから、米第一主義に依りまして、甘藷は之に補充的の配給を致すことに相成るのであります
次に米價問題に關して、經濟安定本部の關係、或は議會の食糧對策委員會の關係に付て御話がございましたが、農林省と致しましては、紳士的協約を破つたと云ふやうなことは斷じてありませぬ、米價及び配給價格に關しまして、或る具體的の拘束を受くべきやうな事柄は、食糧對策委員會との間にないのであります、又安定本部の權力が非常に強くなつて、其の壓迫を受けて行くならば、將來も安定本部に依つて左右せらるるであらうと云ふやうな御心配があつたやうでありますが、左樣な御心配は御無用に願ひたいと存じます、農林省と致しましては、此の食糧管理法の建前から致しまして、生産費を「カバー」すると云ふ點に重點がございますから、此の度の米價を決めますに付きまして、之を基準として、經濟安定本部との交渉、諒解等も得たのでありまして、之に依つて對立をするとか、或は其の壓迫を受けて困ると云ふやうなことは斷じてございませぬから、此の點御安心を願ひたいと存じます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=7
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008・疋田敏男
○疋田敏男君 只今の各關係大臣の御答辯を以て必ずしも滿足を致すものではございませぬが、後日の委員會に讓ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=8
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009・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 田中伊三次君
〔田中伊三次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=9
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010・田中伊三次
○田中伊三次君 私は無所屬倶樂部を代表して本法案に付て二、三の質疑を致したいと存じます、第一に此の法案第三條は、新憲法、政府提出第三十二條、我が衆議院修正案第三十五條に直接違反をするものであると云ふ見解の下に、内閣總理大臣がおいでにならぬやうだから、木村司法大臣、當面の關係を持つ膳國務大臣の御所見を質して置きたいと存じます
本案の第三條は、行政官廳が必要ありと認めた時は、事業現場に現はれて臨檢、檢査を行ふことが出來ると云ふ規定であります、新憲法草案第三十二條の内容は、既に御承知の如くに居宅の浸入を禁ずるのみならず、其の居宅内にある所持品の搜索、押收を嚴に禁ずると云ふのが、新憲法草案第三十二條の明文の規定する所でございます、唯、茲に私も聊か政府の心が分らぬではないと思ふことは、本法案第三條には「臨檢」と云ふ言葉、「檢査」と云ふ言葉が使はれて居る、而して新憲法の方では居宅の「浸入」と云ふ言葉、持物、所持品の「押收」「搜索」と云ふ言葉が使はれて居る、隨て此の用ひられて居ります用語の表面から簡單に觀察を致しますと、或は本法案に規定してあることと、新憲法の内容とは、抵觸せざるものであるが如くに考へられ、誤解をなされたことが、或はあらうかと思ふ、併しながら能く仔細に之を觀察して見ると、一體檢査をするのに、國民の居宅、其の居住に浸入せずして、臨檢が出來るか、人の家を臨檢すると云ふ場合に、居宅浸入と云ふ行爲なくして臨檢が行へるか、併し非常に奇妙な人間が居りまして、假に望遠鏡ででも臨檢をすると云ふのならば、是は話は別である、即ち臨檢と云ふ觀念の中には、現場に臨んで、現場に侵入すると云ふ觀念、其の行爲を含むのである、隨て本法案第三條の臨檢を行はんと致します場合、之を行つた場合は、何時でも當然直ちに浸入と云ふ行爲を行ふことになるのでありまして、是は新憲法第三十二條の明文に直接牴觸することを免れない結論となる、又今一つの規定は檢査であります、新憲法は規定を以て之を嚴禁して居ります、本人の所持品の搜索、押收、何處に所持品があるかを搜索をして、之を手に取つて押收すると云ふことなしに、一體檢査と云ふことが行ひ得るか、搜索、押收なき檢査、こんなことは電話ででも檢査をしなければ出來ない、即ち本法案の所謂檢査と云ふ觀念の中には、新憲法が嚴禁をして居る、所持品、書類其の他の持物の押收、搜索と云ふ觀念、竝に此の觀念に從つた行爲を悉く包含して餘す所はない、さうすれば、用ひてある言葉が違つても、此の法案の第三條に用ひてある臨檢、檢査と云ふ言葉は、それを行ふことは、新憲法草案に直ちに牴觸するではないか、私は此の法案の全部が新憲法に牴觸するなどと云ふやうなことは申さない、第三條と云ふ條項が部分的に牴觸をする、之を押切る、斯う云ふことになりますならば、軈ては改正案第七十七條に基きまして、最高裁判所が無效の宣告を行ふ、此の無效の宣告の結果は、改正案第九十四條に依り、一部的、部分的無效たるを免れざる結果を來すのではなからうかと考へるのであります(拍手)或は政府は新憲法第二十八條と云ふ條文に基いて、此の規定は差支へないと云ふ見解を持つかも分らぬ、第二十八條の規定は、何人も法律の定める手續に依らなければ、其の生命、自由を奪はれ、其の他の刑罰を科せられることはないと云ふ規定でございます、刑罰を科するには、必ず法律規定に基くべしと云ふ規定であります、私が御尋ねを申して居るのは、此の第三條に違反をしたる者に刑罰を科する場合に、其の刑罰が違反であると云ふ所論は致して居ない、臨檢、檢査を行ふこと其のこと、行爲其のこと、之を規定すること其のことが違憲立法であるのではないかと云ふことを言つて居るのであつて、第二十八條の憲法草案の規定と云ふものは、刑罰法規に關する基本原則を定めたもので、臨檢、檢査と云ふことに何の關係もない、無關係の規定であります、又政府は或は犯罪搜査の規定である、新憲法第三十二條は犯罪を搜査する時の規定であつて、本案の如き行政上の都合のある場合は別論だなどと云ふ見解を持つて居られることがないとも言へないが、行政上の都合で人の居住に浸入をし、持物の押收、搜索が自由奔放に行はれて居るのは、現行憲法の建前である、現行憲法は新憲法と似た規定は持つて居りますけれども、之と異なる所は、説明を必要としないのでありますが、法律を以てすれば侵害が出來る、色色な法律を作つて、憲法の明文は空文となつて居るのが事實である
〔副議長退席、議長著席〕
新憲法は、法律を以てしても永久に犯すことの出來ないものとして、國權上國民の持つべき自由、權利として是等の事柄を嚴禁する、即ち永久不可侵の自由、權利としての規定を持つて居る所に、新憲法が現行憲法に比べて異なる所がある譯であります、それであるから、さう云ふ言ひ分は立たぬ、犯罪搜査の場合に於てさへ禁じてあることを、一行政官廳の都合などと云ふ口實の下に勝手に人の家に侵入して臨檢したり、持物を搜索、押收して、檢査を行ふと云ふやうな、ふしだらなことがあるべきものではない、斷じて許すべからざる新憲法の禁止する所と私は認めるのであります、又政府は或は第三條の規定を能く讀んで見ると、身分證明と云ふ變なものが持たしてある、或は身分證明が持たしてあるから司法官憲の發する令状と同じものだと云ふ考へを持つかも知れない、併し私は此處で明瞭に致して置きたいと思ふことは、行政官廳は司法機關としての司法官憲ではない、行政機關の發する所の身分證明の如きものを、憲法が司法官憲の發すべきことを命じて居る令状と同一視すると云ふやうな觀察は、非常に間違つた觀察であつて、三權分立主義を壞すものであると論斷をして憚らない、司法官憲の發する令状を持つて行かなければ出來ないことを、行政官廳が自分で勝手に拵へた身分證明書を以て人の居宅に自由に入る、斯う云ふことは斷じて許すべきではない、斯う云ふ御考へが假にもあるとするならば此の壇上に於て答辯の中でなさらぬが宜しい、又或は政府は此の第三條は傳家の寶刀であつて、滅多に使はぬ法規であると云ふが如きことを仰しやるかも知れないが、滅多に使ふか使はぬかは所論の對象になつて居らない、使ふ使はざるに拘らず、斯かる内容を規定する立法行爲自體が新憲法の違憲ではないかと云ふことが私の申して居る所論でありまして、傳家の寶刀か何か知らぬが、斯う云ふことを作ることそれ自體がいけないと云ふことが、私の見る所でございます、憲法草案は國會議員、國務大臣、最高裁判所其の他の官吏公吏は何等の事柄にこだはることなく、總ての心持を公平に致しまして、此の新憲法の精神を本當に守らなければならないと云ふことの注意的規定を設けて居る譯であります、政府は此の私の所見を能く御考慮になりまして、強ひて此の所論に對しても言ひ逃れをしようとか、何か言ひ分を立てようとか云つた御考へでなく、過ちは訂正をする餘地が殘されて居ることでありますから、有體の御所見を伺つて置きたいと思ふのでございます
第二に少し方面を改めまして聽きたいことは、經濟安定本部と内閣官房審議室との關係でございます、私は實は此の内閣官房審議室と云ふやうなものは、經濟安定本部の組織法である經濟安定本部令と云ふものが公布施行に入りましたならば、此の審議室の官制なるものは廢止をせられるか、改正せられるか、所詮改廢は免れないものと見て居つたのだが、安定本部令が施行になりましても依然として改廢が行はれない、即ち現在の我が國の官制上の制度の下に於きましては、經濟安定施策に關する基本方針を決定する爲に、只今出來ました經濟安定本部の外に、内閣官房審議室と云ふものが二重に現存することは、兩者の官制の内容が規定をして居る通りであります、何故斯う云ふものを並立さして置くのか、之を伺つて置きたい、是は總理に伺ひたいのだが、總理がおいでにならないから、先づ膳國務大臣にでも、答辯を願ひたいと思ひます、どう云ふ譯で斯う云ふものを並立さして置くのか、それでなくても複雜極まる機構が雨後の筍のやうに出て來る時に、斯う云ふものを置いておく必要がないではないか、私が思ふのは、今までの内閣官房審議室の持つて居つた綜合計畫としての企畫立案の權能と云ふものは、本部令の第一條に基きまして、經濟安定に關する部分だけに付ては、安定本部に移管をされるものだと私は思ふのでありますが、果して左樣になると致しますと、内閣審議室の持つて居る權限と云ふものは、ボーツとした言葉で言表はして見ると、最早文化面に關する企畫立案の權限だけしか殘らぬことになるのではないか、そこで其の文化面に關する企畫立案と云つたやうなものは、文化面を専門に擔當する専門行政官廳たる各省其の他の現業官廳に之を委ねるが宜しい、そんなものだけを何も内閣でやることは要らないではないか、斯う云ふ風に私は考へる、廢止すべきものは此の際廢止せねばいかぬ、併し飽くまでも殘して置きたいと云ふならば、改正存置の意向を持つならば、改正存置をしたる後は兩者の運營を如何なる區分の下に行つて行くものであるか、此のことを併せて聽いて置きたいと思ひます
第三に伺ひたいと思ふことは經濟安定本部と内閣の閣議との關係が明瞭でない、經濟安定本部は其の本部令の第一條に書いてあります如くに、經濟安定施策に關する基本的方策を決定することとなつて居ります、其の基本方策を經濟安定本部が策定をすると此の臨時物資需給調整法案に基きまして、現業官廳が其の策定の通りに實現に移して行くことになる、さうすると國務大臣と云ふものは何處で關係を持つのか、現行憲法があるのであります、新憲法時代にはまだなつて居らぬ、現行憲法に基けば各國務大臣は國務の全般に關して各別に天皇輔弼の責に任じて居るのであります、成程經濟安定本部の總裁は内閣總理大臣が勤めて居る、經濟安定本部の總務長官なるものは國務大臣が勤めて居る、經濟安定本部長官たる國務大臣、總裁たる内閣總理大臣、此の兩者は、經濟安定に關する基本政策の策定と云ふ重大なる國務に付て自ら「タッチ」が出來る譯であるが、それ以外の國務大臣は、一體何處で關係を持つのか、天皇輔弼の責任を盡す根據は何處に發見をするのか、根據なくして輔弼が勤まるか、私は之を伺つて置きたい、要らぬことを言ふやうであるが、私の見る所では經濟安定本部と云ふものは、經濟安定に關する基本方策の立案計畫をして、其の案文だけを作る、作つた案文を内閣に報告をする、内閣は之を受けて審議の結果閣議で決定をする、之に基いて各現業官廳が實施に移して行くと云ふことになつて、初めて内閣と云ふものを構成して居る各國務大臣、今言つた兩者の國務大臣を除く他の國務大臣も、此の基本政策の策定と云ふ國務に「タッチ」することが出來ることになつて、隨て、天皇輔弼の任務を盡す根據がここで發見をせられるのであります、さう云ふことをやらないで、經濟安定本部が上の方に居つて、或る事を決定する、決定に基いて現業官廳が之を實施に移す、是では國務大臣が居つても居らなくても宜いと云ふことになるのではないか、獨善専行と云ふ言葉は使ひたくないのだが、經濟安定本部は一體どう云ふやり方をする考へで居るのか、一人々々の國務大臣を無視してはいかぬ、各國務大臣各別に國務の全般に關して輔弼の任に當るのが、現行憲法の建前である、他を無視することは許されない、現行憲法ある以上は、此の點を明瞭にして貰ひたいと思ふのであります
第四に伺ひたいことは、昨日質問應答のあつたことと似て居るが、私はもう一つはつきりせぬから御尋ねして置きたいと思ふのです、此の經濟安定本部と各省との關聯と云ふものは一體どうする考へなのか、此の間からも既に新米價問題に關して、安定本部と農林當局との間に、聊か對立抗爭に似たる姿が現はれて居ると私は見て居る、是は此の點をはつきりして置かぬと、斯う云ふことが今後もどんどん出來て來る、各省と云ふものと安定本部と云ふものが如何なる關係にあるか、之を膳國務大臣に言はすと、極く簡單に言ふのであります、我々の方は企畫立案の官廳でございます、他は實施をする現業官廳でございます、關係ははつきりして居ります、斯う言ふのだが、さう云ふ關係でははつきりしない、そんな簡單な物の觀察では、今後に於ける現業官廳たる各省其の他の官廳と、内閣竝に安定本部との間に、先程の疋田君の御話にもあつたやうに、軋轢抗爭を根絶することは不可能である、一體其の企畫立案を行ひます場合に、各省には各省の意向がある、經濟安定本部と云ふものは今初めて出來た、此の經濟安定本部の取扱ふ仕事の内容、行政事務の内容と云ふものは、今日までは各省に分屬せしめられて居つた、各省が今日まで持つて居つたのでありますから、意見と云ふものがなければならぬ、又之を實施に移すのは、各各の現業官廳が自ら實施に當る譯でありますから、現業官廳たる各省の意見、或は物價廳であるとか、或は貿易廳であるとか云つたやうな各省以外の官廳、其の官廳の意向と云ふものは、どの程度に一體取上げて、之を基準にして企畫立案を行ふ考へか、そんなものは放つて置いて、超然としたる立場に於ての綜合立案計畫を行つて御覽に入れると云ふ意向であるのか、それともさうでない、他の現業官廳の意向を取入れると云ふのか、取入れるのなら、如何なる態度で現業官廳の意向を取入れるのか、具體的の例を申上げなければ分らないから申すのですが、例へば一省だけが所管して居ります一省専管の事項の如きものは、此の一省の意向其のものに重點を置いて、之を企畫立案の基本態度としなければいけないのではないか、又二省以上に亙つて居ります共同管掌の事項、此の二省以上に亙る共管事項の如きものは、寧ろ、斯う云ふ場合には、經濟安定本部獨自の見解に「ウエート」を置いて、之に重點を置いて立案計畫を行つて宜しいのではないか、今言つたのは私の見る一つの見解でございますが、現業官廳の意向は、斯う云ふ場合に斯う云ふ程度に重きを置く、我々の安定本部の方は、斯かる場合に斯かる程度に於て企畫立案の態度を決めるのだと云ふことを、鮮明に此の席に於て公示されて置かれないことには、依然として此の現業官廳との軋轢抗爭は根絶出來ない、そんなことはないと言明しても、それは信用が出來ぬ、何故信用が出來ぬかと言へば、今までの専門の企畫官廳たるものの歴史を見れば直ぐに分る、遠くは資源局、調査局、更に企畫廳、企畫院の如き、内閣參事官室、内閣綜合計畫局、内閣調査局、現にあります所の内閣官房審議室の如き、是れ何れも専門官廳、企畫立案ばかりを専門に行つた企畫専門官廳と名付けて宜しい、企畫立案官廳でございます、此の官廳は何れの内閣が現はれても、色々な新規な構想を凝して、新たなるものに改組して作り直して行つたのでありますが、どの内閣もどの内閣も例外なく、専門企畫官廳と現業官廳の間に於ける軋轢抗爭を遂に除去するの努力效を奏さず、國力増大の爲に、生産増強の爲にと思つて拵へた綜合立案の専門企畫官廳ありたるが故に、遺憾ながら軋轢抗爭が阻碍を致しまして、國力の減退を來し、生産力の増進を妨げるが如きことが絶無ではなかつたことは洵に遺憾である、僅か一年の間に活躍をなさしめようと云ふ經濟安定本部が、再び過去の是等の官廳が嘗めた苦き經驗を重ねるが如きことがあつては、國家再建の上に重大な影響を及ぼすことになるのではなからうかと私は考へる、隨て此の點に付て明瞭にして戴きたいと私は思ふのであります
第五に伺つて置きたいと思ふことは、生産「サボ」に關する事柄竝に生産管理に關する事柄であります、生産「サボ」が發生をしても、内閣は生産「サボ」をぢつと見て居ると云ふやうなことをするやうでは、生産管理が違法だなどと言つて生産管理を禁止する資格などはないものと言はなければならぬ、假に生産「サボ」が起つて、生産力が減退すると認めた場合に、「サボ」が起れば生産減退は當然でありますが、さう認められた時には、直ちに其の生産を向上せしむるの具體的方策を政府が決定しなければならぬ、例へば斯う云ふ場合に、言うて聞かしても聞かぬ時は、當該生産の責任者にあらざる第三者に對して、當該生産を實施すべしと云ふが如きことを命令することが出來なければならぬ、第三者に對する生産命令を出し、而して生産「サボ」を是正して、刻下の生産増強に貢獻をすると云ふことが行はるべきであります、斯う云ふ場合にも、本法案第一條に基く生産命令として出すことが出來るとの考へか、之を聽いて置きたい、それから生産管理と云ふことが行はれた場合、私は生産管理なるものは違法となる場合あり、違法とならざる場合ありと云ふ觀察をする、それは新憲法法案第十一條に基き、公共の福祉を阻碍すると考へる場合は禁止すべきものであり、然らざる場合は之を許すべきものである、生産「サボ」を政府其のものが適當に處置することが不可能である、其の能力のないやうな場合があれば、直ちに生産管理はやつて宜しいと云ふ見解を持つて居る、併しさう云ふ私の見解は茲では別問題でごさいますが、其の生産管理と云ふことが行はれました場合に、政府の現在の言ひ分から言ふと、生産管理は禁止する、斯う云ふのだが、一體禁止の根據は何處に存するのか、又本法案第一條に基いて、生産に關する命令として生産管理を禁止すると云ふことを行ふことが出來ると政府は考へて居るかどうか、生産「サボ」の場合に、第三者に生産を移す命令が出せるか、生産管理の場合に、此の法案第一條に依つて、生産管理禁止命令を出すこと可能なりや、此の二點に付て伺ふと共に、さうだと若し政府が言ふならば、此の場合に事實の認定と云ふことは如何なる基準に基いてするか、茲に生産「サボ」あり、茲に生産管理ありと認定する事實の認定をどうするか、竝に之に對する政府の採らんとする基本對策は、如何樣にする考へであるかと云ふことに付て、是は主として膳國務大臣と併せて河合厚生大臣に御尋ねして置きたい
第六に、恆久的な産業復興對策と云ふものと、應急の食糧對策、失業對策、都市復興對策などの緊急應急の民生安定對策と云ふ、此の二つの對策を經濟安定本部が取扱ふことになつて居ります、是は官制に書いてある所であります、一體此の場合に恆久的な産業對策に重點を置かんとすると、應急の民生對策が疎かになる、失業對策、復興對策、食糧對策等、應急策に重點を置かんと欲するならば、恆久的な比較的長期を要するにあらざれば完遂することの出來ない、幾多の産業復興對策が十分とならざる虞がある、是はどちらに「ウエート」を置いて立案企畫をするのか、之を明瞭にして置きたいと思ふのであります、之をはつきりすると云ふことでなかつたならば、任かすことが出來ない、どちらに「ウエート」を置く考へであるかと云ふことを安定本部の長官に明瞭にして置いて貰ひたい、斯う云ふことを私が諄く申します所以は、經濟安定本部の組織法たる本部令の第一條を讀んで見ると、緊急のものもやるのだが、恆久的のものもやるのだ、斯う云ふことになつて居る、さうして而も安定本部の生命はたつた一年であると言ふ、一年間に恆久的對策と應急的對策の兩方をやつて、實を結ぶことが出來るかと云ふことが私の疑念とする所、ここに考へを置いて御答へを願ひたい
それから第七點として、終戰當時の軍保有の特殊物資と云ふもの、例へば、鐵とか、輕金屬とか、油とか、食糧とか、衣料とか云ふ軍需特殊物件と云ふものが、段々と日が經つに從つて散逸をして居る、さうしてそれが闇に流れて居ることを我々は目撃する、是は一體保管の状態はどうして居るか、量はどの位あつたものか、其の後、政府發表後に於てどう云ふ物がどれだけ殖えて居るか、之を明かにしなければならぬ、同時にそれを明かにするだけでなしに、經濟安定本部が出來たならば、どの官廳が保管をして居りまする軍需物資も全部悉くを擧げて、此の經濟安定本部の産業復興、民生安定の對策に付ての企畫立案の上に之を乘せて行かなければいかぬ、安定本部の企畫立案の内容の中に之を乘せて行くと云ふことにならなければならぬ、之をする考へありや否や、依然として散逸して闇に流れて行くのを放つて置いて見て居るのかどうか、此の點を明瞭にして置きたいと思ひます
第八に今一つ聽きたいことは、産業復興と云ふことが此の法案の目的であることになつて居るが、産業復興とは、言ふまでもなく日本の現況では、基本産業の振興と云ふことが其の根本のものである、而して其の基本産業の振興とは、一言にして盡せば、基本物資が充足されることにならなければ、基本産業の振興などは出來ぬ、而も基本物資と算へられる物の中には、現況に照らして見ると、急速には國内で生産することのどうしても出來ない部門の基本物資が多數にある、輸入をすれば簡單だが、國内生産は不可能だと云ふものがある、是がなければ基本産業の振興をなすこと能はず、基本産業の復興を不可能ならしむる斯くの如きものが澤山あるが、斯う云ふ基本物資の中で、國内生産の不可能なるものに付て、政府は輸入に仰ぐと云ふ措置に付ては如何なる抱負と御考へを持つて居られるか、是は貿易廳の所管關係に於ては、星島商工大臣より、安定本部の關係に於かれては、質問は簡單にして置きますが、膳國務大臣より詳しく伺ひたいと思ふ
第九として最後に一つを伺つて止めますが、本案第一條第一項第一號乃至第三號、此處に記載してあります物資の範圍、工事の範圍、設備の範圍と云ふものが明瞭でない、此は昨日穩かならぬことを大臣の口から聽いて遺憾に思つたのだが、此の條文に書いて居る物資の範圍如何と云ふことをどなたからか御質疑なさつた、之に對し、それは安定本部が委員會を拵へて決めるのだと云ふ御答へであつた、さう云ふ横著な答へを政府がしても宜いか、經濟安定本部令の條章を見ると、物資の生産、配給、消費と云ふことが書いてあり、如何なる物資に付ての生産、配給、消費を行ふのかと云ふことの規定がない、此の法案にも何等の法規がない、法規の上、官制の上で何一つとして、此の物資は安定本部で扱ふのだ、此の物資は安定本部では扱へませぬと云ふ、限界區別を規定したる法規が絶無である、此の状態にして置いて、俺の思ふ時に、俺が思ふ物資に付て取扱をするのだと云つた態度を執るから、官僚獨善になる虞がないかと突込まれるのであります、是は質疑をする方が當り前で、はつきり答辯をせぬ政府が間違つて居る、私が聽きたいことは、委員會が勝手に決めると云ふなら決めて宜からう、併し改めて尋ねるが、其の委員會が自己の意向で、自己が勝手に、物資の範圍、工事施行の範圍、設備の範圍を決めて行くと言ふが、其の根據は何處にあるか、法律に基く根據ありや、せめて官制に基く權能でもあるのか、權限なくして勝手にやる、是れ獨善である、權能の根據なくして取扱をする、是れ専斷であり、専行である、獨善専行を防ぐ爲の新憲法と云ふものを自分が此の間作つたではないか、法案を簡單にすることも宜しい、諄い法案より簡單明瞭の法案の方が望ましい、是は宜しい、併し簡單にも限りがある、何千何萬とある物資に付て、之を取扱ふ根據を示して居らぬと云ふが如きは、何事か、こんなことは立案者の頭では不思議でもなく、をかしくもなかつたのか、役人が物資の範圍を決めるのは俺の勝手である、工事の範圍を役人が決めるのは當然である、斯う云ふことを考へる頭があつたから、此の權限の根據なるものに氣付かずして、簡單明瞭に斯う云ふ法案を作つて、此の議會で胡麻化しの答辯をして居るのではないかと私は思ふが、さう云ふことは許されない、斷じていけない、政府はどう云ふ考へであるか、法規の根據なくしてやると云ふならば、其の點を明瞭にして貰ひたい、抽象的で理屈を言ふだけでは相濟まぬと思ふから、具體的に言うて置くが、先づ第一に石炭はどうする、電氣はどうする、瓦斯はどうする、又新聞竝に雜誌出版の用紙はどうするのだ、此の中用紙を除く瓦斯、電氣、石炭に關しては、それぞれ別個の法律がある、是等の法律を改正する意向があるのかどうか、此の法案にも書いてないが、此の別個の法規に各各此の内容に相應はしい事柄を規定をして、而して後に是等の物資を經濟安定本部が取扱ふと云ふことにする意向かどうか、それとも是は別の取扱をするのかどうか、殊に此の用紙などに付ては、私は嚴重に言ひたいと思ふのでありますが、聞く所に依ると内閣に移管をして、内閣で用紙の割當配給をするとのことである、只今膳國務大臣の意向を聽いて居ると、産業別の割當は安定本部が行ひます、各産業部門内の業者に對する配給は、民主的に組織された産業團體に行はせますと云ふことを只今仰しやつた、さうして置きながら出版用紙に關する限り内閣に移管をして、情報局の古手の役人、内務省檢閲官の古手の役人を連れて來て、之を委員として行ふと聞及ぶのであるが、こんなことは一體どのやうな考へでやるのか、自分の言つて居ることと反對ではないか、なぜ民主的に組織されたる産業團體を新たに生み、新たなる産業團體の手に依つてなぜやることにしないか、なぜ文化の「バロメーター」とも言ふべき用紙だけを特に内閣が握らうとするのか、さう云ふけちな考へは宜くない(拍手)甚だ料簡の宜くないことである、商工省が一生懸命に用紙の割當配給に苦勞をして居ることも知らないで、商工省から取上げて、内閣に持つて行つてやると云ふことは、本法案で行はんとするやり方とは反對ではないか、さう云ふやり方をして居るやうでは、安心をして此の法案に協贊を與へて、經濟安定本部に總てを任すと云ふことは出來ぬ、まあ大變言葉は強かつたのでありますが、眞に私は之を思ふので質疑をするのであるから、質疑は簡單だが、答辯の方はしつかりとやらぬといかぬ(笑聲)それから私は再び自席から發言をしない、再び自席から發言を差控へますから、其の積りで丁寧なる御答へを煩はしたいと存じます(拍手)
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=10
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011・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 只今の田中君の御質問に御答へ致します、本法案第三條の臨檢、檢査は、本人の承諾の下に行はれることを豫想して居るのであります、隨て本人が正當な理由で之を拒み得る場合があります、萬一正當の理由なくして臨檢檢査を拒んだ場合には、本法案第五條の第二號の規定に依つて處罰すると云ふことになつて居るのであります、隨て本人を強制の下に、本人の意思を無視して臨檢、檢査を行ふと云ふ趣旨ではないのであります、而して憲法草案第三十二條に申しまする押收、搜索は、犯罪のあつた場合を豫想して居るのであります、是は法律家でいらせられる田中君の恐らく御研究のことと存じます、即ち犯人又は證據品を發見する爲に、刑事手續上相手方の意思を無視して之を強行する場合の規定であるのであります、其の實際の取扱と致しましては、御承知の通り家宅搜索と云ふことがあるのであります、申すまでもなく家宅搜索は、時として家中隈なく搜索するのであります、隨て斯樣な事柄は種々な弊害を生ずる、仍て改正憲法草案第三十二條に依りまして、是等のことをやるのには必ず司法官憲の令状を發せなければならぬ、是が我々の基本的人權を保護しようと云ふ憲法の精神なのであります、隨ひまして本法案第三條の臨檢、檢査とは、全然其の性質を異にして居るのであります、申すまでもなく此の法案第三條の臨檢、檢査は、其の目的が物資の需給に付きまして統制を圓滑ならしめる爲に行はれる一つの行政目的の爲である、犯罪搜査の爲では全然ない、此の法案を御覽下さいますれば極めて明瞭でありまするが、平穩裡に之をやらうとするのであります、改正憲法草案第三十二條の押收、搜索と云ふやうな、個人の意思を無視して強制的にやらうと云ふ場合とは、其の性質を全然異にして居るのであります、隨ひまして此の第三條は、決して改正憲法草案第三十二條の規定と矛盾するものではないと云ふことを私は申上げます
〔國務大臣膳桂之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=11
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012・膳桂之助
○國務大臣(膳桂之助君) 只今の御尋ね中に、法案第三條のことに付て私にも御尋ねがございましたが、司法大臣の御言葉以上に何も申上げることもございませぬ
次に内閣審議室と安定本部の關係に付ての御尋ねでございますが、内閣審議室は經濟問題にのみ限らず、各省に亙る問題、全般の問題に付て、總理大臣の下に各省の連絡の問題を研究して居るのでありまして、經濟安定本部が是からやりますることも、從前は此の審議室で取扱つて居りました、併しながら經濟安定本部のやつて居りまする仕事以外にも、各省の連絡事務の樞要な事項があるのでありまして、是は經濟安定本部で處理するのを適當とせざる事項もありますので、其の部分をば殘しまして、現在尚ほ内閣審議室が存續して居るのでございます、隨て安定本部と内閣審議室で取扱ひまする事項は性質を異にして居りまして、聊かの矛盾もなく、重複もないことに相成つて居ります
次に安定本部と各省の關係、又各省との間に摩擦なきやと云ふことの御尋ねがございました、是は各省の主管事項は各各定まつて居りましても、其の間に重複のこともありますれば、雙方關係して居ることもありますので、自然と問題が各省間の協議に俟つことの多いのは、どう云ふ風に官制を定めましても、是は當然起ることであります、但し經濟安定本部は、從前各省間で共通の問題、殊にそれが經濟再建に關する問題で、主管が多方面に交錯して居りまするが爲に、一定の方策が立ちにくい、或は同じやうな目的に行くものでも、取扱の事項に依つて各省方針を異にする、さう云ふやうなものがあつては相成りませぬので、それ等の間の統一を圖り、そこに綜合的計畫性を與へられて、さう云ふ政策を定めるのが經濟安定本部の一つの仕事であります、單にそれに止まらず、尚ほ積極的に綜合的計畫を定めることは當然でありますが、さう云ふやうな意味合で安定本部が働きまするので、從前の各省間の色々意見の一致せざる所、或は政策の不一致をば安定本部が茲に統一調整をすると云ふ働きをしますので、從前のやうな内閣の各省間の縺れた問題も、安定本部の存在に依つて是が滑かに運用することが出來るやうに期待されて居るのであります、軋轢を作るのではなくて、軋轢を緩和すると云ふ役に大いに立つものと考へて居ります、尚ほ安定本部の研究しまする其の研究方法は、別に各省の外に屋上屋を重ねるのではありませぬで、各省の研究調査、各省の智能、總てを綜合しまして、そこに一つの中核となる生命を與へるのであります、研究しました結果、各省の間と意見の交錯のある場合は勿論でありますが、斯かる場合は安定本部長官は安定本部總裁たる總理大臣に具申致しまして、安定本部總裁である内閣總理大臣の決定を各省に指揮命令することが出來るのであります、隨て其の間に不統一は避けられるのであります、但し斯くの如きことは──濫りに各省の間にさう意見の對立を殘した儘で總理大臣の決裁を仰ぐと云ふやうなことは、實際には避くべきことでありまして、實際の運用に當りましては、各省の間に隔意なき協議と連絡が行はれまして、其の上に立てたる方策に付て、最後の確乎たる斷は、安定本部總裁であり總理大臣である首相が之を定めることとなつて居ります、隨て各省の間に御心配のやうな軋轢や對立はない積りであります、勿論人のやることでありますから、あるかも知れませぬが、それは努めてお互ひに避くべきこととして努力すべきことは當然と存じます
それから生産「サボ」のあつた場合に本法を適用するや否やと云ふ問題でありますが、本法第一條の第二號の生産命令は、斯くの如きことを豫想も致して居ります、尚ほ斯う云ふやうなことの運用に付きましては、實行廳でありまする厚生大臣の方から御答辯を御願ひした方が適當であらうと存じます
それから安定本部では根本方策を中心とするや、緊急對策をば重しとするやと云ふやうな御尋ねがございましたが、是は昨日も御答へ申上げました通りで、緊急對策を講じつ、恆久對策を講じて行くのだと云ふことを申上げました、安定本部の存續期間は必ずしも一年とは官制に書いてございませぬ、但し是は臨時の設置であることは確かであります、併し私共大いに勉強致しまして、此の存續期間中に、應急對策と共に恆久對策をば立てて行きたいと存じて居ります
それから次に輸入物資の問題に付ての御意見がございましたが、此の物資の足りませぬ時に日本の經濟の再建を致しまするに、輸入物資に俟たなければならぬことは申上げるまでもないことでありまして、從前各省に於きましても、生活安定の爲の生活必需品、又輸出物資の生産に必要な材料等に付きましては、聯合國の厚意に依りまして相當の輸入を仰ぎつつもありまするし、尚ほ是が輸入方を懇請して居ると云ふことは、度々御説明のあつたことと存じまするので、皆樣も御承知の通りであります、安定本部も是と協力致しまして、經濟再建に必要なる諸物資の輸入等に付きましては、出來る限りの努力を以て聯合國の厚意に縋りまして、以て民生の安定、又之を期する爲の經濟再建に資したいと折角努力致して居る次第でございます
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=12
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013・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 生産管理と本法との關係に付て御尋ねになりましたが、其の中で私の所管に關する限度に於て御答へ致します
生産管理が正當でないと云ふのは、是は端的に言へば、財産權不可侵と云ふ憲法の原則もありまして、財産權を侵犯するから生産管理はいけないのだと云ふことなのであります、それで財産權の侵犯は、多くの場合には刑事上の問題を伴ひます、併し絶對に刑事上の問題は何時でも伴ふと云ふ譯でも觀念上ないかも知れませぬ、併しながら少くとも所有權侵犯、財産權侵犯と云ふ民事上の問題は伴ふと考へます、即ち公法上の違法であるか、或は民事上の少くとも不當であると言ふことが出來ると思ひまするから、其の意味に於て正當ならずと解釋する譯であります、併しながら此の最後の決定は裁判所の決定でありまして、政府は行政權の施行上一應さう云ふ風に解釋をするのであります、そこで問題は此の法律でそれを禁止出來るかと云ふ御話でありまするが、先程申した財産權の侵犯と云ふことが基調になつて居りまするから、主として問題は治安の面からの問題でありまして、さう云ふ必要上禁止するならば禁止をすると云ふことでありまして、此の法律が端的にそれを禁止すると云ふことではないと思つて居ります、併し此の法律の趣旨である所の、經濟安定本部總裁が定める基本的な政策及び計畫の實施を確保する爲に必要だと云ふことになれば、是はさう云ふ意味に於て禁止は出來ぬことはないと思ひます、併し此の法律の豫想した所は、主として經營者側に對することでありまするから、生産管理と云ふものは、經營者側を離れた時には、此の法律の適用はないものだらうと私は解釋致します
それからもう一つ生産を、生産「サボ」の時に命じ得るかどうかと云ふことでありますが、是は此の法律に依つて、只今膳國務大臣の囘答と同樣に生産を命ずることが出來る、生産「サボ」をして生産を阻碍する、生産を阻碍すれば、此の第一條の目的に合致せぬ場合が多いから、それは出來るのだ、さう云ふ風に解釋致します、私の關係する範圍内に於て説明を終ります
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=13
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014・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 終戰後色色な物資のありましたことに付きましては、昨日も加藤君でありましたか石原君でしたかの御問ひに對しまして御答へ致したのでありますが、相當の數量はありまして、それが特殊物件となつて、今日大體は最早正當「ルート」に配給濟になつて居ると思ひます、若干の物は尚ほ殘つて居るかも知れませぬが、是等は概ね隱退藏物資等の全部のものと合せまして、今後の經濟安定本部の議に掛つてそれぞれ處理されることと思ふのであります、數字等は此處にありますけれども、昨日の速記録に載つて居りますから、重複を避けたいと思ひます
尚ほ只今の御尋ねの中で紙に關する問題は、餘程の誤解がありますから、丁度此の機會に説明さして戴きたいと思ひます、私は新聞、雜誌、出版等の用紙の配給は、是こそ極めて民主的な形に、納得の行くやうな方法に於て配給されなければならぬ、他の物資も勿論さうでありますけれども、斯かるものは特に其の意を用ひなければならぬ、斯樣に考へまして、或は是と似たもので──今我々は目先の食ふに困つて居る、色色生産に困つて居るから、議會の聲は餘り文化方面にないのであります、そこでそろそろ貴衆兩院の中に文化に關する議論がもつと盛んになりまして、其の結果或は文化委員會とか云つたやうなものが、内閣若しくは兩院内に設けられまして、それに依つて根本的なる問題を決めて、其の結論として、現業廳である商工省は紙を扱ひ、或は電波に付ては「ラヂオ」を遞信省が扱ふ、或は映畫等の問題もそれぞれ所管の省に於てやる、斯う云ふことが必要であると云ふ前提から、此の紙の問題を取上げたことがあるのであります、勿論紙の配給の實施は商工省自ら今日も致し、將來も致す譯でありますが、其の基本を内閣で決めて貰ひたい、是がつい間違へられまして、舊情報局の復活、戰時中あつたやうな思想の統一とか、干渉のやうなことにそれを復活するのではないかとの疑ひが若干あつたことは甚だ遺憾でありまして、私の企てんとする所とは概ね反對な方向であります、爾今、只今御尋ねの趣旨は十分尊重致しまして、善處致したいと思ひます(拍手)まだ是は總てが未決定でありますから、其の邊は十分善處致します、唯紙の問題は一時内閣の方で私の希望を取上げて下さいまして、さう云ふ根本方針を決めようと云ふことだけが閣議で諒解を得たのでありますが、今後に於きまして、それをもつと明朗に措置して行きたい、斯樣に考へて居る次第であります
尚ほ生産「サボ」に關しましては、先般各商工局地域に於きまして生産監査委員會を設けまして、それに於て當該地區に於ける生産状況を監査して、さうして特に生産「サボ」の幣を發見します時は、其の委員會には勞働組合の代表者をも加へ、生産責任者も加へ、學識經驗者をも加へた其の委員會に於きまして決定を致したい、さうして之を「サボ」と認むると云ふやうなことをやつて行きたい、斯樣な構想を持つて居るやうな譯であります、併し直接此の法律とは關係はありませぬので、此の法律から行きますれば、命令は只今膳國務大臣が仰せられたやうに出來ますけれども、それは實に當該生産の緊要なるものに限つてやる譯でありまして、直接に生産「サボ」に關して命令を發すると云ふ意味とは、少し其の邊に懸け離れた事情がある譯でありまするから、其の邊を御諒承願ひたいと存じます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=14
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015・田中伊三次
○田中伊三次君 重ねて質疑を致しませぬが、答辯漏れがあります、私が非常に重點を置いて質疑をした中に、内閣の閣議と安定本部との關係如何と云ふことに付て質疑をして居る譯であります、大體私は内閣總理大臣に出席を求めてある、既に數日前である、内閣總理大臣が出られないならば、内閣總理大臣に代るべき他の國務大臣が出て、斯う云ふ重要問題に付ては答辯をなさることが、我が院議を尊重する所以と思ふ、一體衆議院に提案をして居る所の法案に付て審議が行はれて居るに拘らず、内閣總理大臣が出席を求められて登場しない、之に代るべき者が之に代つて答辯をしないと云ふが如きは、今後に於ける惡例を貽す虞があると思ふのであります、膳國務大臣から、此の點に關して能く御考への上で御答辯を戴きたいと思ひます
〔國務大臣膳桂之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=15
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016・膳桂之助
○國務大臣(膳桂之助君) 答辯漏れがありましたので、御答へを重ねて致します、勿論安定本部が研究しましたものも閣議に掛けて、閣僚の意見を交換し、茲に決定を求むることは當然であります、但し意見の不一致がありました際に、安定本部總裁としての御考へは別に出來得ることと存じます、其の際に安定本部の總裁である總理大臣は、各省に指揮命令することが出來るのでありまして、其の間には一點の疑義もないと存じます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=16
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017・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是にて質疑は終了致しました、本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
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018・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名四十五名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=18
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019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動機に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=19
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020・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました
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021・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 此の際飯國壯三郎君外七名提出の國民健康保險に關する質問を許可せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=21
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022・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、質問一、國民健康保險に關する質問を許可致します──提出者飯國壯三郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=23
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024・会議録情報3
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一 國民健康保險に關する質問
(飯國壯三郎君外七名提出)
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國民健康保險に關する質問主意書右成規に據り提出候也
昭和二十一年九月三日
提出者 飯國壯三郎外七名
國民健康保險に關する質問主
意書
國民健康保險制度は昭和十三年一般庶民大衆の傷病の危險を保障し、療養と靜養の機會を與へ、經濟的負擔を輕減し、其の生活の安定を期すると共に、健康の保持増進を圖るを目的として創定せられたるに拘らず、財政難と事業難の爲め維持經營困難を極めつつありて、我が國民健康保險上前途寒心に堪へざるものあり。
一、大藏大臣は右健康保險國庫補助金を増額する意思ありや否や
二、厚生大臣は社會政策の一環として此の國民保險制度を強化し、複雜多岐なる各種保險制度を、國民健康保險を中心として統合整理するの意思ありや否や
三、醫療藥品、衞生材料等の確保を圖ると共に、社會保險診療の實績を基準とする配給の實現を期するの意思ありや否や
右及質問候也
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〔飯國壯三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=24
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025・飯國壯三郎
○飯國壯三郎君 私は本院各黨を代表致しまして、國民健康保險制度の刷新に付て、厚生大臣竝に大藏大臣に質問を致したいと思ひます
國民健康保險制度は、昭和十三年一般庶民大衆の傷病の危險を保障し、療養と靜養の機會を與へ、經濟的負擔を輕減し、其の生活の安定を期すると共に、又健康の保持増進を圖ることを目的と致しまして、創立せられたものでありまして、現在に於ては組合數全國に於て一萬三百を超え、被保險者數實に四千百萬人に垂んとする社會厚生施設として、我が國最大の國民的組織であるのであります、國民生活の苦惱兪兪深刻化しつつある敗戰の今日、當組合の責務たるや洵に重大であると存ずるのであります、然るに實情は、殆ど例外なく財政難と事業難の爲め、其の維持經營は困難を極め、今や存續か解散かの岐路に立つて居り、其の果すべき機能を最高度に發揮すべき今日に於て、動搖沈滯を極めて居ると云ふ事實は、國家の再建の途上に於て實に憂ふべき事象であると言はなければなりませぬ、是に於てか本制度刷新強化の聲は、日を逐うて熾烈化致しまして、今や無視することの出來ない全國的運動として展開され、全國町村長、町内會幹部、組合當局者等を代表者として、本議會に提出せられたる請願正に四十件に達し、紹介議員亦各所屬政黨を網羅して六十名に及び、又建議案として、自由、進歩兩黨及び社會黨所屬各各全議員の贊成に依つて提出されて居ることは既に御承知の通りであります、然るに政府當局より、本問題の取扱に對し、未だ的確にして明瞭なる御意見の開陳なきは、此の上もなき遺憾に存ずる次第であります(拍手)民主主義議會政治が國民の政治であり、國民の爲の政治であるならば、政府は澎湃として盛上つた此の大きな輿論の叫びと熱烈なる欲求に對し、須らく速かに其の態度を明確にし、以て民心の赴く所を明示せられんことを切望するものであります(拍手)
私が本日兩大臣に特に質問せんとする所以も全く茲にあるのでありまして、御答辯を得んとする事項も、右多數の請願及び建議案に於て皆揆を一にして要望して居る其の諸事項に付てであります、即ち大藏大臣に對しましては、國民健康保險國庫補助金を本年度より劃期的に増額せられ、以て組合の現状を救濟し、是が健全なる發達育成を圖らるる意思ありや否や、若し増額せらるるとすれば、其の金額と方法を明瞭に御示しを願ひたいのであります
厚生大臣に對しましては、第一に今後益益高度化すべき社會政策の一環として、此の國民健康保險制度を發達強化せしむる熱意を有せらるるや否や、其の爲に既に國民の間に支配的である所の、現行の複雜多岐なる各種社會保險制度を國民健康保險を中心として統合整理する意思と決意がおありであるかどうか(拍手)
第二に國民健康保險の診療を擔當する現行社會保險醫制度を再檢討し、其の合理化を圖る御意思ありや否や、即ち現行の國民健康保險に對し、一部保險醫の非協力が問題となり、組合事業の健全なる發達を阻碍して居ると云ふ聲が高いのでありますが、元來病む者のあることに依つて成立つ醫業と、病まざることに依つて國民生活を改善しようとする社會保險と、其の間に勢ひ本質的に摩擦が生じようとするのは理の當然ではないかと思ふのであります、之を矯正致しますには、組合が其の直營の診療機關を急速に且つ組織的に施設し、開業醫と二本建と致しまして、それぞれ其の特色を生かして、事業の圓滿なる運行を圖るやう改善せらるべきだと考へて居るのでありますが、大臣の之に對する御意向を承りたいのであります
第三に醫療藥品、衞生材料等の確保を圖ると共に、社會保險診療の實績を基準とする配給の實現を急速に圖らるる御意思があるかどうか、特に組合直營の診療機關に對して、配給の確保を講ぜられる御意向があるかどうか、以上の三點を厚生大臣に御尋ね致します
右の各事項は既に請願委員會に於て、或は建議委員會に於て、各提案者より説明し盡されて居ると思ひますので、私は茲に其の重複の煩を避けたいと思ふのでありますが、特に此ノ機會に強調して置きたいと思ひますことは、國民健康保險組合が、組合員の相互扶助、共存共榮の立場から自主的に運營されなければならぬことは當然であります、併しながら他面醫療の改善乃至國民の健康の保持、勤勞力の保全尊重が國家の責任に於てなされなければならないことは、曩に政府當局が辯明されて居る所を見ても明かであります、特に現状の如く、正直なる一般庶民は「インフレ」の波に揉まれ、日々の生活苦に呻吟して居る時、政府は一段の關心と責任を以て、醫療の社會化、民主化と、國民の健康保持に一層の努力を傾倒せらるべきの時であると確信するものであります、國民健康保險組合は元來任意設立せしめる形式になつて居りますが、地方長官の必要と認める場合は強制設立も可能でありまして、爲に事實は彼の戰時下の強力な政治力の下に、半ば強制的に指導設立せられたものが非常に多いのであります、又設立當時は、組合事務費の三分の一、即ち約三三%位の國庫補助が支給せられて居つたのでありますが、昭和十九年に於ては二四%に低下し、昭和二十一年度、即ち本年度は、療養の給付豫定額十六億七千七百萬圓に對し、政府補助豫定額七千六百萬圓は、實に事業費の僅か五%の計算となつて居ります、爲に終戰後の「インフレ」の急調の下に、組合診療費の値上を主因とする諸經費の膨脹は、昭和十九年度世帶一戸當りの保險料十九圓七十六錢が、本年度に於ては一躍其の約十倍に相當する百八十三圓に急騰することとなり、斯くて全國組合は崩壞の運命に曝されるに至つたのであります、國民健康保險制度は、昭和十三年、時の政府が其の抱懷する社會的理想顯現の爲に、進歩的に之を制定し、是が實施に當つては前述の如く半ば強制的に指導設立せしめられ、又本案が付議せられた第七十三囘帝國議會に於て、我が衆議院は、政府は將來國庫補助金を増額し、國民健康保險組合の普及促進を圖るべしとする附帶決議を附して、是が協贊をなして居るのであります、斯かる歴史を有し、我が國最大の國民的組織として今日の大を成したるに拘らず、如何に國事多難、財政逼迫せりとは言へ、斯かる熾烈なる國民的要請を無視し、又院議をも尊重せず、其の最も機能を發揮活用すべき重大なる今日に於て之を見殺しとし、解散の憂目に曝らし、正直にして眞面目なる庶民大衆を、飢餓線上より更に醫療の機會を奪ひ、以て生存すら不安なる泥濘の中に追ひ落さんとすることは、我等國民の代表者として斷じて默視し得ざる所であります(拍手)生命を保持し、一日も長く生を保たんとするは、人間の本能であり、人類の欲求であります、然るに貧しきが故に天壽を全うし得ない者がありとすれば、正しきが故に生存の不安ありとする者があるとすれば、之に勝る人生の不幸と人類の悲劇はないのであります(「ひやひや」)貧しきも富めるも、共に醫療に對する機會均等を與へられ、傷病に對する安全の保障が確保せられてこそ、勤勞大衆の生産意欲は揚り、新生日本の建設の「リズム」は高らかに奏でられるでありませう(拍手)此ノ意味に於て、國民健康保險制度の拔本的な強化刷新と、組合の濶達なる積極的運營こそ、食糧對策と共に政府の重要なる施策の一つでなければならないと存じます、又新憲法法案の精神章條に照らしましても、大いに是が擴大強化を圖らなければならないと信じます、然るに本問題の取扱の經過を見ますと、率直に申上げまして、政府當局に熱意が足らないのではないかとの疑ひなきを得ないのは甚だ殘念至極であります、元來如何にも尤もな理由を附して、自己の新しい企畫を主張強制し、自らはそれを功績として他に榮轉し、後繼者は是が遂行に一貫性と熱意を缺き、新たに自己の施策を案出強行して敢て顧みないと云ふのが、戰時中中央地方を通じまして、軍閥官僚の惡弊の最大なるものの一つとして、常に國民から非難されて居つたことは、政黨に籍を有せらるる大藏、厚生兩大臣の既に熟知せられて居ることと存ずるのであります、本制度も斯かる思想、陋習の犧牲とならざるやう、十分の御戒心を以て、國家及び國民の爲め是が健全なる育成を御願ひしたいと思ふのであります、以上を以ちまして、兩關係大臣の誠意ある御答辯を承りたいと存じます(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=25
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026・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の御尋ねに御答へ致します、私は元來國營醫業の擴張論者でありますから、私個人として此ノ健康保險組合問題には十分な理解を持つて居る積りであります、又本議院に於ける御意思も大體分つて居りますから、豫て要求のあります健康保險組合に對する補助金の増額は、其の金額は定めて居りませぬでしたが、了承を致して居りました、但し健康保險組合の實情は、非常に優秀な組合があり、又さうでないのもあるやうに見受けます、又今までの補助金の給與の仕方が、果して宜かつたかどうかと云ふことにも私には多少の疑問があります、健康保險組合の今後の發展に十分な、何と申しますか筋金を入れて欲しい、さう云ふことを以て厚生省と交渉致しまして、今後の保險組合の經營に付きまして、厚生省から具體的な色色な御保證を得ましたので、非常に私として感謝しまして、最近に至りまして補助金の増額を決定致しました、是は追加豫算に計上致しますから、未だ御審議を煩はす段取になつて居りませぬ、隨て豫算提出前に金額を申すことも如何かと思ひますけれども、大體一億五千萬圓程度の追加豫算を計上致す考へを持つて居りますから、左樣に御諒承を願ひます(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=26
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027・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今國民健康保險に對する非常な御熱意のある御質問に接しまして、又私の手許にも實は千數百通の電報を受取つて居るやうな次第でありまして、澎湃たる國民の輿論の前に、私共は今までのやり方の餘り巧くなかつたことは甚だ慚愧に堪へないと共に、將來に向つて力強くやると云ふことの決意を皆さんの前に表明する次第であります(拍手)只今は又大藏大臣から、一億五千萬圓の追加豫算の御承諾の聲明を得まして、愈愈勇氣百倍でやる積りであります
現状を申しますと、先程御質問にありました通り段々増加しまして、昭和十九年には三億圓ばかりの事業費でありましたが、二十年には五億圓、今年度には二十億圓位になりまして、其の中の十五億圓位は診療費に使ふ積りで居ります、中々保險制度としては大きな分野を占める仕事になりつつあります、それで大體是は申すまでもなく社會保險の一環を成すものでありまして、此の社會保險全體の體系に付きましては、只今熱心に社會保險調査會に於て調査して居りますが、段々失業保險其の他の成案も出來ますので、出來るだけ早く、出來次第のものから、次期議會には間に合ひませぬが、暮の議會に提案する積りで居ります、さうして其の中に勿論此の國民健康保險を太き線とし、之を母體としまして、醫療普及の面に於ける疫病保險として、之を根柢にして行きたいと云ふ考へで居ります、此の制度は各國にも稀な特長を持つて居る制度でありまして、是はどうしても強力に發展さして行かなければならぬと云ふ考へで居ります、具體的の方法としましてはやはり現行の地域的組合制度を強化しまして、さうして各種の保險を適當に之に統合整理致す積りであります、又直營診療所の不足と云ふことが非常に問題になつて居るやうでありますが、是は從來の方針から一歩進めまして、必要な場所には適當に直營診療所を設ける方針に致します、但し各地の事情がありますから、各府縣に委員會を設けて、其の議を經て作ると云ふ考へであります、尚ほ補助金の増額、交付の方法等に付きましても改善致しまして、只今は被保險者數を基準として居りますが、今後は保險の給付費を基準として補助費を給付する見込であります、又御尋ねの醫療藥品とか、衞生材料の點でありますが、是は只今全體に於て不足の状況でありまして、此の原料の輸入及び製品の輸入を只今懇請致して居りまして、是が出來ますれば相當の程度に於て増加することと思ひます、併し其の分け方に付きまして、只今御指摘の組合の事業と云ふものを基準にして分ける、此の組合の事業だけで分けましては、一般の開業の方にも差支へますので、出來るだけ此の組合の事業の大きさと云ふものを參酌しまして、適當に配分致す積りであります
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028・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第三及び第四の兩案を繰上げ一括上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=28
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029・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第三、電氣事業法の一部を改正する法律案、日程第四、石炭及コークス配給統制法の一部を改正する法律案、右兩案を一括して第一讀會を開きます──星島商工大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=30
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031・会議録情報4
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第三 電氣事業法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 石炭及コークス配給統制法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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電氣事業法の一部を改正する法律案
電氣事業法の一部を、次のやうに改正する。
第一條第二號及び第三號を次のやうに改める。
二 前號の事業に電氣を供給する事業
第十五條の二 電氣を使用する爲の器具、機械其の他電氣用品の效用の増進又は危險の防止に關する事項は命令を以て之を定む
第十五條の三 主務大臣は電氣の需給を調節する爲必要ありと認むる場合に於ては電氣事業者又は電氣使用者に對し地域、用途又は其の他の事項を指定して電氣の供給若は使用を制限し又は其の制限の爲必要なる措置を命ずることを得
第十六條第二項、第二十一條及び第二十六條の二第一項中「第一條第一號又は第三號の」を削る。
第十七條第二項を同條第三項とし、同條第一項中「電氣事業者」を「第一條第二號の電氣事業者」に改め、同項を第二項とし、同條第一項として左の一項を加へる。
主務大臣は第一條第一號の電氣事業者の電氣料金を決定す
第十八條 第一條第一號の電氣事業會社の資本金額の變更及利益金の處分の決議は主務大臣の認可を受くるに非ざれば其の效力を生ぜず
前項の電氣事業會社の取締役及監査役の選任は主務大臣の認可を受くるに非ざれば其の效力を生ぜず
第十九條 電氣事業會社の社債權者は當該會社の財産に付他の債權者に先ちて自己の債權の辨濟を受くる權利を有す
前項の先取特權の順位は民法上の一般の先取特權に次ぐ
第二十四條 主務大臣は公益上必要ありと認むる場合に於ては電氣設備の效用を増進し又は電氣の需給を調節する爲電氣事業者又は第三十條第一項の規定に依る電氣施設者に對し左の事項を命ぜることを得
一 電氣工作物の施設、變更、共用若は貸借又は工事に關する期間の伸縮
二 電氣の生産、供給、受入又は託送
前項の命令に因り必要を生じたる工事費用の負擔其の他の事項は關係電氣事業者又は第三十條第一項の規定に依る電氣施設者間の協議に依る協議調はず又は協議を爲すこと能はざるときは主務大臣之を裁定す
第二十五條の二 電氣事業者は命令の定むる所に依り主務大臣の認可を受くるに非ざれば事業設備を讓渡し又は所有權以外の權利の目的と爲すことを得ず
第二十九條第一項中「第一條第一號又は第三號の事業」を「電氣事業」に改める。
第三十一條第二項中「及第三十五條乃至第三十八條」を「第三十四條乃至第三十七條、第三十九條及第四十條」に改める。
第三十二條 主務大臣の諮問に應じ又は其の諮問を俟たずして電氣事業に關する重要事項を調査審議する爲中央電氣委員會を置く
中央電氣委員會は電氣事業に關する事項に付關係大臣に建議することを得
主務大臣は發電及送電の豫定計畫若は電氣料金に關する事項の決定又は第十五條の三、第二十四條第一項、第二十六條の二第一項若は第二十八條第一項の規定に依る命令若は處分にして重要なるものに付ては中央電氣委員會の議を經べし
第三十二條の二 中央電氣委員會は電氣事業者(法人なるときは其の代表者)、電氣事業從業者、電氣使用者(法人なるときは其の代表者)、貴族院議員、衆議院議員、學識經驗者及關係各廳官吏の中より命ぜられたる委員竝に委員の互選に依る委員長を以て之を組織す
中央電氣委員會には専門委員其の他必要なる職員を置くことを得
第三十二條の三 地方に於ける電氣の需給の調節、電氣の普及又は電氣施設若は電氣供給業務の改善其の他電氣事業の運營に關し行政官廳の諮問に應ずる爲地方電氣委員會を置く
第三十二條の四 中央電氣委員會又は地方電氣委員會は電氣事業者に對し必要なる資料の提供又は閲覽を求むることを得
第三十二條の五 前四條に定むるものの外中央電氣委員會及地方電氣委員會に關する事項は勅令を以て之を定む
第三十四條 第三條第一項の規定に違反し許可を受けずして電氣事業を營みたる者は五千圓以下の罰金に處す
第三十五條 左の各號の一に該當する者は三千圓以下の罰金に處す
一 第三條第二項の規定に依る認可を受けずして同條第一項の書類に掲ぐる事項中重要なるものを變更したる者
二 第十六條第一項の規定に依る認可を受けずして供給事業の全部又は一部を休止し又は廢止したる者
三 第二十五條第一項の規定に依る認可を受けずして事業の全部又は一部を讓渡したる者
四 第二十六條の規定に依る認可を受けずして合併を爲したる者
五 第二十六條の二第一項の規定に依る命令に違反したる者
第三十六條 左の各號の一に該當する者は千圓以下の罰金に處す
一 第五條の規定に依る認可を受けずして工事を施行し又は電氣工作物を使用したる者
二 第十三條、第十五條の二若は第三十條第一項の規定に基きて發する命令又は第十七條第三項、第二十三條第二項若は第二十四條第一項の規定に依る命令に違反したる者
三 第十五條第一項の規定に違反して電氣の供給を拒みたる者
四 第十五條の三の規定に依る制限又は命令に違反したる者
五 第十七條第二項の規定に依る認可を受けずして電氣料金其の他供給條件を設定し又は變更したる者
六 第二十一條の規定に依る認可を受けずして他の事業を營みたる者
七 第二十五條の二の規定に依る認可を受けずして事業設備を讓渡し又は所有權以外の權利の目的と爲したる者
第三十七條 第二十三條第一項の規定に依る檢査を拒み、妨げ若は忌避し又は報告を爲さず若は虚僞の報告を爲したる者は五百圓以下の罰金に處す
第三十八條 電氣事業者の承諾を得ずして濫に電氣工作物の施設を變更したる者は五百圓以下の罰金又は科料に處す
第三十九條 法人又は人は其の代理人、戸主、家族、同居者、雇人其の他の從業者が其の法人又は人の業務に關し第三十四條乃至第三十六條又は第三十七條後段の違反行爲を爲したるときは自己の指揮に出でざるの故を以て其の處罰を免かるることを得ず
第四十條 第三十四條乃至第三十六條及第三十七條後段の罰則は其の者が法人なるときは取締役其の他の法人の業務を執行する役員に、未成年者又は禁治産者なるときは其の法定代理人に之を適用す但し營業に關し成年者と同一の能力を有する未成年者に付ては此の限に在らず
附 則
この法律施行の期日は、各規定について、勅令でこれを定める。
この法律施行前になした從前の規定に基く行爲に對する罰則の適用については、從前の規定は、なほその效力を有する。
この法律施行前に從前の第十九條の規定により拂ひ込んだ株金額を超えて募集した社債については、當分の間商法第二百九十七條の規定を適用しない。
電力管理法の一部を次のやうに改正する。
第五條 削除
配電統制令は、これを廢止する。
配電統制令廢止前に、同令による配電事業の統制のためにする經營を目的とする株式會社は、株式總會の決議により、主務大臣の認可を受け、その會社が、配電事業の統制のためにする經營を目的としない電氣事業會社となるについて必要な定款の變更その他の手續をすることができる。
前項の決議は、商法第三百四十三條の規定によらなければ、これをなすことができない。
第六項の認可を受けようとするときは、認可申請書に株主總會の議事録の謄本を添へなければならない。
配電統制令による配電事業の統制のためにする經營を目的とする株式會社(第六項の規定により、配電事業の統制のためにする經營を目的としない電氣事業會社となつたものを含む。以下配電株式會社といふ。)の、同令第二條第二項又は第二十六條第一項の規定による出資又は讓渡をなした者に對する一定金額の支拂及び配電株式會社に對する法人税の輕減については、同令第三十四條の規定は、この法律施行後も、なほその效力を有する。
工場財團、鐵道財團又は軌道財團に屬するもので、配電統制令第四十五條の規定により、原財團に屬するものとされたものについては、同條の規定は、この法律施行後も、なほその效力を有する。
配電統制令第四十六條第一項の規定により供託した擔保及び同條第二項の質權については、同條の規定は、この法律施行後も、なほその效力を有する。
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石炭及コークス配給統制法の一部を改正する法律案
石炭及コークス配給統制法の一部を次のやうに改正する。
第一條中「、輸入業者及移入業者」を「及輸入業者」に、「輸入若は移入」を「若は輸入」に、「輸入業者又は移入業者」を「又は輸入業者」に、「輸入又は移入」を「又は輸入」に改める。
第二條第一項中「、移入業者」を削る。
第五條中「若は移入業者」を削る。
第十二條第一項を次のやうに改め、同條第二項を削る。
社長、副社長及理事は株主總會に於て之を選任し主務大臣の認可を受くるものとし其の任期を四年とす
第十四條第一項中「輸入、移出及移入」を「及輸入」に改める。
第十五條 日本石炭株式會社は主務大臣の認可を受け販賣の目的を以て日本石炭株式會社より石炭又はコークスを買入るる者を指定することを得
日本石炭株式會社及前項の規定に依り指定せられたる者(以下指定販賣機關と稱す)以外の者は販賣の目的を以て石炭若はコークスを買入れ又は之を賣渡すことを得ず
但し命令を以て定むる場合は此の限に在らず
石炭又はコークスを使用する者は日本石炭株式會社及指定販賣機關以外の者より石炭又はコークスを讓受くることを得ず但し命令を以て定むる場合は此の限に在らず
第十五條の二第一項中「若は移入業者」を削り、同條を第十五條の五とする。
第十五條の二 日本石炭株式會社は命令の定むる所に依り主務大臣の認可を受け指定販賣機關に對し石炭又はコークスの販賣に關し必要なる事項を指示することを得
主務大臣は石炭又はコークスの配給の圓滑又は價格の公正を圖る爲必要ありと認むるときは指定販賣機關に對し前項の指示に從ふべきことを命ずることを得
第十五條の三 主務大臣は石炭又はコークスの需給調整上特に必要ありと認むるときは石炭又はコークスを販賣する者に對し石炭又はコークスの販賣に關し必要なる事項を命ずることを得
第十五條の四 主務大臣は石炭又はコークスの需給調整上特に必要ありと認むるときは石炭又はコークスを使用する者に對し石炭又はコークスの使用に關し必要なる事項を命ずることを得
第二十三條の二を削る。
第二十六條 主務大臣は命令の定むる所に依り本法に依る職權の一部を地方長官其の他地方官衙の長をして行はしむることを得
第二十七條 主務大臣必要ありと認むるときは日本石炭株式會社より其の業務及財産の状況に關し報告を徴し又は當該官吏をして其の事業所其の他の場所に臨檢し業務の状況若は金庫、帳簿書類其の他の物件を檢査せしむることを得
前項の規定に依り當該官吏をして臨檢檢査せしむる場合に於ては命令の定むる所に依り其の身分を示す證票を携帶せしむべし
第二十八條第二項中「若は公益を害すと認むるとき又は事業の經營上役員を不適當なりと認むるとき」を「又は公益を害すと認るとき」に改める。
第三十條 左の各號の一に該當する者は五年以下の懲役又は五萬圓以下の罰金に處す但し犯罪に係る石炭又はコークスの價格の三倍が五萬圓を超ゆるときは罰金を當該價格の三倍以下とす
一 第一條又は第十五條第二項若は第三項の規定に違反したる者
二 第十五條の二第二項、第十五條の三又は第十五條の四の規定に依る命令に違反したる者
前項の罪を犯したる者には情状に因り懲役及罰金を併科することを得
第三十二條 左の各號の一に該當する者は六月以下の懲役又は五千圓以下の罰金に處す
一 第五條、第十五條の五第一項又は第二十七條第一項の規定に依る報告を爲さず又は虚僞の報告を爲したる者
二 第五條、第十五條の五第二項又は第二十七條第一項の規定に依る檢査を拒み、妨げ又は忌避したる者
第三十八條の二 本州、北海道、四國、九州及此等の附屬島嶼と此等の地域以外の地域との間に於て行はるる石炭又はコークスの取引其の他に依る移動は本法の適用に付ては之を輸出又は輸入とす
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律施行後一箇月以内に、第十二條第一項の改正規定により、株主總會において社長及び副社長を選任しなければならない。
この法律施行の際、現に日本石炭株式會社の社長及び副社長の職にある者については、前項の規定により社長及び副社長が選任せられ、主務大臣の認可があるまでの期間は、從前の例による。
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〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=31
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032・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 只今議題になりました電氣事業法の一部を改正する法律案の趣旨を簡單に御説明申上げます
國家總動員法に基く配電統制令及び電力調整令の二勅令は、來る十月一日より失效することとなりますので、其の中今後も存置するを適當と認められる規定を電氣事業法中に織込むと同時に、新たに電氣委員會に關する規定を設ける爲め、電氣事業法を改正せんとするものであります、其の要點を申上げますれば、次の通りであります
第一は配電統制令に規定せられた配電會社に關する規定の一部を電氣事業法中に追加しようとする點であります、配電會社は今後も獨占的公益事業として存續せしめる必要がありますので、政府の之に對する監督及び保護に遺憾なきを期する爲め、電氣事業法に必要なる改正を加へんとするのであります
第二は電力調整令中の必要な規定を織込む點であります、最近電力の需要は急激に増加致しまして、渇水期に於きましては、渇水の程度及び發電用石炭の入手状況如何に依つては、相當の電力消費制限をする必要があるのであります、我が國の水力發電の出力は、渇水期と豐水期とに依り著しい差があります關係上、今後も渇水期には電力制限を行はねばならない場合が多いと豫想されますので、今囘電氣事業法を改正し、電力の消費及び供給制限に關する規定を設けようとするのであります
第三は電氣委員會の設置に關する點であります、電氣事業は公益事業として直接國民生活に對し、又基礎産業として廣く各種の産業に對し至大の關係を持つて居るのでありますから、電氣事業に關する重要事項に付ては、電氣に關係ある各方面の意見を十分に反映せしめる必要がありますので、此の際從來の電力審議會及び電力調整委員會を廢止して、新たに中央地方に電氣委員會を設け、今後新しい見地より電力問題を審議する機關として活用して參りたいと考へるのであります、以上電氣事業法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を終ります、何卒御審議の上速かに御協贊あらんことを切望致します
次に石炭及コークス配給統制法中改正法律案の提案理由を御説明致します、石炭及び「コークス」の配給に關しましては、石炭及コークス配給統制法に基き、全國一手元賣機關たる日本石炭株式會社をして是が統制を行はしめて參つたのでありますが、戰後産業再建の基盤たる石炭及び「コークス」の重要性と、其の需給關係逼迫の實情に鑑みて、配給統制の必要は愈愈加重せられ、且つは戰後の新事態に對處すべき諸般の必要が生じましたので、本法に一部の改正を加へんとするものであります
改正の要點を申上げますと、第一は産業民主化の精神に即應する爲の改正でありまして、即ち先づ日本石炭株式會社の社長及び副社長の政府任命を止め、株主總會に於て之を選任したる後、主務大臣の認可を受くることと致しました、次に同樣の趣旨から、社長の所謂原案執行權に關する戰時中の特別規定を削除し、又役員の解任に關する主務大臣の權限中、解任の理由たるべき事項を著しく限定致しました、又同社に對する監理官の制度をも併せ廢止して居ります
第二は國家總動員法に基いて制定せられた石炭配給調整規則及びコークス配給調整規則を此の際廢止し、法令を簡略化すると共に、配給統制に關する基本事項を本法中に網羅せん爲の改正であります、之に依り日本石炭株式會社は、石炭及び「コークス」の下請販賣機關を指定し得ることとなりました、隨て日本石炭株式會社と本指定に依る地方販賣機關以外は、原則として石炭又は「コークス」の販賣をなし得ないことは現在通りであります、尚ほ右に附帶致しまして、行政官廳は需給調整の必要上、石炭又は「コークス」を販賣する者、又は其の使用者に對し必要な命令をなし得ることと致して居ります、他に若干罰則の改正及び法文上の整理がありますが、大要叙上の趣旨に於て本法を改正し、石炭及び「コークス」配給統制の使命達成に遺憾なきを期せんとする次第であります、何卒御審議の上御協贊あらんことを希望致します
尚ほ此ノ機會に私として甚だ嬉しい御報告をさして戴きたいと思ひます、一「トン」でも多かれと願ふ此の石炭が、毎年八月は二割方減産するのが例であるに拘らず、今囘は所定の百六十五萬「トン」を突破致しまして、百七十七萬「トン」、殊に九州は八十八萬二千「トン」の豫定の所が、百一萬九百「トン」を出しました、本日極東委員會に於きましても、石炭問題の重要性を取上げて、委員會で審議された此の時に、本日午後此の入電を得ましたので、取敢ず嬉しさの餘り報告申上げます、殊に是は主として七月下旬より配給されました特配の食糧、此の食糧が九州地方に參りまするや、九州の勞働組合は感謝決議を齎して、他の一般に缺配がある時に、此の山に斯かる尊い食糧を加配されたことに付きましては、此の上は時間を延ばしてでも必ず増産致しますと、二人の代表者が商工省に參りまして、實に私は、昨今色々悲しむべき問題が多い時に、非常な感激を致した次第であります、此の結果が此の數字となつて現はれた次第で、特に此の機會に御報告申上げる次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=32
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033・山崎猛
○議長(山崎猛君) 質疑の通告があります、之を許します──山崎常吉君
〔山崎常吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=33
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034・山崎常吉
○山崎常吉君 私は只今御提案になりました議案の中、電氣事業の一部を改正する法律案に付きまして、日本社會黨を代表致しまして其の質疑を行ひたいと思ひます
本法案は電氣事業法の一部を改正すると云ふ法律案でありますけれども、私は此の電氣事業法の骨子に觸れて二、三質問を申上げて見たいと思ひます、此の電氣事業は、我が國の事業の中でも最も重要なる事業であることは申上げるまでもございませぬ、内容に付きましても數點に亙つて御尋ねして見たいと思ひますけれども、時間が許されませぬので、簡單に四、五點を質問の骨子として、詳細は委員會に於て質問をしたいと考へて居ります
先づ第一點は、改めて申上げるまでもなく、今石炭の問題が非常に重要性を帶びて取上げられ、是が研究に全力が盡されて居るのであります、此の石炭と電氣事業、是は改めて言ふまでもなく大きな不可分の關係を持つて居ることは申上げるまでもございませぬ、此の石炭に依つて電氣が發生せられ、又水力に依つて電氣が發生せられる、私は水力と石炭の問題に付きまして御尋ねして見たいと思ひます、我が國の石炭がこんなに重要であり、此の我が國の石炭の埋藏量が一體何時まで續くかと云ふことに付きましては、限度がある筈なのです、水力に至りましては、天然資源の開發、此の開發の宜しきを得れば何時までも續く事業であることは申上げるまでもございませぬ、にも拘らず、御承知の如くに我が國に於きましては、水力發電の事業がそんなに進んで居ないのぢやないかと云ふことが考へられるぢやないでせうか、私は、水力發電の實情は、朝鮮、滿洲方面を視察して參りましたが、是なるかなと云ふやうな感じがしたのであります、我が國は申上げるまでもなく高山を控へまして、水力發電に付きましては最も惠まれた實情にあるに拘らず、此の發電が有效に開發せられないのを遺憾に思つて居るものでございます、此の點に著眼を致しまして、水力發電を有效に開發致しますならば、我が國の石炭の前途に對しましても相當の壽命を續けることも出來ませう、且つ又渇水時に於ける農耕に對します所の水の利用も、之に依つて達することも出來ませう、又之には食糧増産の一つと致しまして、養魚場の設備も之に依つて附隨することが出來ませう、斯樣な有利な天然資源に惠まれて居りながら、なぜ我が國は此の天然資源を有效に取入れないかと云ふ點を遺憾に思つて居るものでございますが、當局に於きましては此の水力發電に對しましてどう云ふやうな御考へを持つて居られるか、之を實行する考へなきや如何と云ふことが先づ御尋ねをする第一點でございます
次に電力の國營を實施する考へはないかと云ふ點でございます、只今申上げました如く電力事業の重要性に鑑みまして、之を營利事業家に任して置くべきぢやなく、國家が之を最も公益に有效に進めて行くと云ふことに、私は重點を置かねばならぬのではないかと云ふことを痛切に感ずるのであります、思ひますのに、現在の電氣事業の實情を見ます時に、日本發送電株式會社に其の經營を任せ、各地に九箇所の發送電の子會社を持つて居りますが、其の單價の實情は區々であると考へられます、或は電力料金が區々である、今や電力事業は、國民生活と、離れることの出來ない密接な事業であることは言ふまでもございませぬ、斯樣な事業を營利に任せて置くのぢやなくて、國家が經營すべきぢやないか、國營に移すべきぢやないかと云ふことが考へられたのでございます、此の點は當局は如何なる考へを持つて居られるかと云ふのが第二點でございます
更に電力料金の値上をする考へはないかと云ふことであります、此の點に於きましても、現在の物價水準から考へます場合に、先づ電力料金が一番安い、併し此の點は電燈料の問題其の他に付きまして、直ちに國民生活に影響を及ぼす問題でございますが、現在の社會情勢に於きましては、實は電力料金を上げた位で、生活にそんなに影響を來さない所の水準にあると云ふことは申上げるまでもない、所が是が逆に現在の實情に於きましては、電燈配電の不整備の結果時々消燈を來します、それが爲に全國民は非常に難儀をして居ることは申上げるまでもないことであります、即ち「トランス」の不完全の結果、數時間も數日間も電燈が消えまして、結局どうすることも出來ない、是が爲に蝋燭を一本買へば何圓もすると云ふやうな、斯樣な實情の下に點燈者は非常に惱んで居るのでございます、私は總て電燈事業、電力事業の完備を期しますのには、電力料金の値上を致しまして、電燈設備の完備を圖らねばならぬぢやないかと云ふやうなことも、議論の一つとして考へられるのではないかと思ひますが、現在の場合、當局は電力料金を値上することが良いか惡いかと云ふことは別と致しまして、電力料金に對しましての方針はどう云ふやうな工合に考へて居るかと云ことを御尋ね致したいと思ひます(「社會黨はそれで宜いのか」「共産黨はどうだ」と呼ぶ者あり)電燈料金の値上のみではございませぬ、電力料金の値上をするのが土臺であります、此の點は一應御諒承に預かりたいと思ひます、私は電力料金の値上が社會主義に反するものとは考へませぬ、是は深く研究して見る必要がございます
次に御尋ねしたいと思ひますのは、先程商工大臣より御説明になりました如くに、今度電力協議會と云ふものを廢しまして、中央に電力委員會を設け、地方に電力委員會を設けると云ふことの發表がありました、我々が戴いて居る所の議案の中にもそれが出て居りますが、是が果して民主的の委員會になり得る性質のものであるかどうかと云ふことも、私共は怪しまざるを得ないのであります、やはり此の電力委員會が、現在の現業員を基礎に致しまして、それから一般民間から加へると云ふことでありますならば、今までの委員會と大差はないと思ひます、寧ろそれよりは惡を招くやうな結果になりはせぬかと思ひます、其の理由は現在の發送電株式會社の中にも、それから地方發送電の中にも、相當に戰犯者が居ることが考へられるのでございます、此の委員會が出來ると致しますなれば、左樣な今の發送電内に居る戰犯者を除外しての委員會を作らなければならぬと思ひます、其の點に對しましての心構へを私は十分御尋ね致したいと思ひます
次に技術者の養成に付てでございます、聞く所に依りますと、現在の電力事業の中に、又日本發送電の中に、電氣事業に對する所の優れた技能者が少いことを遺憾とするの歎きがございます、之に付きまして私は、斯樣な時局に於きまして、茲に大量の技術者を養成する必要がありはせぬかと思ひます、斯樣な點に付きまして大體御尋ね致したいのでございますが、他の部分に付きましては委員會に於て十分御尋ね申上げたいと思ひます、以上の點に付て一應御説明を願ひます
〔國務大臣星島二郡君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=34
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035・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 水力開發の重要なことは、山崎さん御指摘の通りでありまして、我が國の包藏水力は御承知の如く約二千萬「キロワット」でありますが、其の中約六百萬「キロワット」が今日まで開發されて居りまして、尚ほ千四百萬「キロワット」は殘されて居ります、之を成べく速かに、而も全國綜合的な計畫の下に開發をしたいと思ひまして、本年度に於きまして七箇所の地點を選んで、貯水池の建設の準備命令を發した次第であります、併し之を以て足れりとせず、殊に石炭不足の今日、石炭に代るに電力を以て諸産業をやりたいと思ひますので、電力委員會も開き、尚ほ政府部内に於きましても十分の準備を致しまして、此の水力の徹底的なる開發を致したい、斯樣に考へて居る次第であります(拍手)就きましては、電氣の經營は殆ど今日國營に近い、強い國家管理をやつて居りますので、殆ど國營と同じやうな所に來て居りますので、之を國有に一歩進んでするか、それは財政上餘程檢討すべき點がありますので、殊に今日の如き財界不安定の時期に於きましては、愼重を期したい、斯樣に考へて居る次第であります(拍手)
料金問題に付きましては、御理解のある御質問を得まして、是は適正なる價格を見出して行きたいと思ひます、殊に大口の電力料金等に付きましては、關係地域に多少の差異があるとは思ひまするが、十分其の點は考慮して、將來適正を期したいと思ふ次第であります
又委員會の民主化は、御指摘のやうに本當に民主的なことにしなければなりませず、殊に戰犯者等を包含せない意味で、十分氣を付けて參りたいと思ひます
又電氣に關する「エンジニア」の養成は御指摘の通りでありまして、殊に日本としては將來斯かる方面に付きましては、十分の意を用ひて其の養成を期したいと存ずる次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=35
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036・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是にて質疑は終了致しました、各案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=36
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037・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第三及び第四の兩案を一括して議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=37
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038・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=38
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039・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=39
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040・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の日程を延期し本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=40
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041・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=41
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042・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後四時三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04019460904&spkNum=42
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