1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年九月7日(土曜日)
午後二時二十五分開議
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議事日程 第四十一號
昭和二十一年九月七日
午後一時開議
第一 自作農創設特別措置法案(政府提出) 第一讀會
第二 農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律案(政府提出)第一讀會の續(委員長報告)
第四 地方競馬法案(小笠原八十美君外四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、去五日貴族院に於て本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した
商工經濟會法を廢止する法律案
工業所有權法戰時特例を廢止する法律案
生活保護法案
一、議員から提出された議案は次の通りである
四國循還國道速成に關する建議案
提出者 布利秋君
北郷、宮崎間鐵道速成に關する建議案
提出者
伊東岩男君 川野芳滿君
鹿島透君 川越博君
森由己雄君
宮崎縣下に於ける水害防除治水施設に關する建議案
提出者
伊東岩男君 川野芳滿君
鹿島透君 川越博君
森由己雄君
宮崎縣下に於ける漁港修築及び水産振興に關する建議案
提出者
伊東岩男君 川野芳滿君
鹿島透君 川越博君
森由己雄君
自動車の生産復興竝に運營に關する建議案
提出者 布利秋君
(以上九月五日提出)
平、小名濱鐵道線路決定及び工事促進に關する建議案
提出者
村井八郎君 太田秋之助君
星一君 山下春江君
鈴木周次郎君 林平馬君
荒木武行君 大内一郎君
加藤宗平君 中野寅吉君
圓谷光衞君
(以上九月六日提出)
一、去五日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
九七 荒木武行君
九八 大久保傳藏君
九九 青木清左ヱ門君
一〇〇 西山冨佐太君
一〇一 川崎秀二君
一、去五日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第九部選出請願委員 若林義孝君
一、去五日委員長理事互選の結果次の通り當選した
臨時物資需給調整法案(政府提出)
委員
委員長 竹田儀一君
理事
加藤一雄君 小島徹三君
塚田十一郎君 原健三郎君
宮前進君 西村榮一君
前田榮之助君 石原登君
疋田敏男君 福田繁芳君
電氣事業法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)外一件
委員
委員長 長尾達生君
理事
細田忠治郎君 綿貫佐民君
天野久君 山崎常吉君
一、去五日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第四部選出
請願委員 本多花子君(田中重彌君補闕)
第七部選出
請願委員 冨田ふさ君(松浦薫君補闕)
一、去五日次の通り特別委員の異動があつた
臨時物資需給調整法案(政府提出)
委員
辭任 田村定一君 補闕 加藤鐐造君
辭任 舟崎由之君 補闕 川崎秀二君
辭任 江藤夏雄君 補闕 西村久之君
電氣事業法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)外一件
委員
辭任 西村久之君 補闕 江藤夏雄君
一、昨六日常任委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
請願委員
理事 布利秋君(理事若林義孝君去五日委員辭任に付其の補闕)
一、昨六日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第九部選出
請願委員 和崎ハル君(若林義孝君補闕)
一、昨六日次の通り特別委員の異動があつた
復興金融金庫法案(政府提出)委員
辭任 小川一平君 補闕 大津桂一君
辭任 宮村又八君 補闕 島田晋作君
辭任 松本瀧藏君 補闕 竹山祐太郎君
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より會議を開きます
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=1
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002・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第三を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=2
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003・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=3
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004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第三、法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律案、此の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長坂東幸太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=4
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005・会議録情報2
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第三 法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律案(政府提出)第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律案(政府提出)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年九月五日
委員長 坂東幸太郎
衆議院議長 山崎猛殿
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〔坂東幸太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=5
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006・坂東幸太郎
○坂東幸太郎君 只今議題と相成りました法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律案の委員會に於ける審査の經過竝に結果を簡單に御報告申上げます
御承知の通り現在政府が國策の關係上、特殊銀行、會社、若しくは營團に對する所の援助の方法に三つございます、一つは政府の持株、貸金等に對する所の配當の免除、或は分配金の免除であります、第二は、政府の或る特殊法人の配當の確保であります、例へば年四分の確保に致しまするならば、足らない分には、一分でも二分でも補給すると云ふ所の方法、第三は特殊法人の債務に對する政府保證であります、此の三つの方法に依つて、政府は國策上の見地から特殊法人に對する援助を行つて居りました、然るに本年四月三日及び四日の聯合軍總司令部の指令に依りまして、此の複雜多岐なる財政援助の方法を打切つて、援助は須く補助金の一本を以てすべしと云ふ詳細なる指令が出たのであります、此の指令に基きまして政府が出しましたのが此の法律案であります、茲に於て政府は──此の法律案は三箇條ありますが、此の三箇條に依つて、今申しました三種類の制限をせんとするものであります、即ち第一の政府の自分の持株の配當免除の點に付て質問しますと、現在政府が持つて居りまする所の株金は三十八億圓、其の會社、法人の數は四十法人でありまして、其の公稱資本は六十八億圓、其の中政府は三十八億圓持つて居りますので、其の中で政府は三十億圓拂込んで居りますが、此の第一條に依つて政府は他の株主と同樣に配當金を受けることになつて、政府は有利になつて參ります、又第二條は、政府の現在の法人に對する配當率の補給、是は昭和十九年度には八千二百萬圓の補給をして居りますが、此の法律に依つて政府は補給が要りませぬから、政府は有利になつて參ります、又第三條の規定、即ち政府の保證、此の保證の金額は、現在百九十八億五千萬圓でございます、其の中の大きいものは興業銀行でありまして、六十七億圓の保證を政府はして居る、第二は戰時金融金庫であつて、三十七億圓の保證をし、又北支開發に對しては二十億圓、産業設備營團には十八億圓、日本發送電には十五億圓の債務の保證をして居ります、さうして此の保證は今後は致しませぬが、從來やつて居る保證はどうするかと云ふ質問に對して、政府が答へて申しますのには、此の百九十八億五千萬圓の借金の保證を政府自身で打切れば、或は主たる債務者たる法人が之を支拂能はざる場合には、是等の債權者は不測の損害を被るのでありますが、政府は今「マッカーサー」司令部と懇談して居りまして、其の情を知らない債權者が損害を受けないやうな方法を執るやうに、目下懇談進行中である、左樣な答辯をしたのでございます、然らば日本の政府は、是から國策上の見地からする事業に對して何等援助は出來ぬかと言ひますと、それは出來るのであります、それは聯合軍總司令部の方針は補助金一本を以て行ふべしとのことでありますから、今後斯かる場合には補助金の形式に依つてなすべきものであります、隨て現在昭和二十一年度の改定豫算に於きましても、其の線に沿うて、發送電に對しましては二千萬圓の補助金を交付し、又帝國石油に對しましては千八百萬圓を交付することになつて居ります、以上の如くでありまして、即ち複雜多岐なる援助を止めまして、補助金一本を以てやると云ふ方針になつたものと承知すべきであります、隨て此の法案に付きましては、内容に付ては別に反對する理由はありませぬけれども、今後、今申しました債務の保證打切りに對しましては相當研究の餘地があると思ひます、併し此の法案の關する限りは其の點までは論及しませぬでした、要するに此の法案は當然認めねばならぬと云ふ結論に達しました
是に於て去る五日愈愈討論に移りますると、自由黨代表の田中実司君、進歩黨代表の川崎秀二君、社會黨代表の山崎常吉君、又協同民主黨代表の東隆君から各各希望を述べ、又之に關聯する傾聽すべき意見を附せられまして、贊成の意を表せられました、原案に付て採決を行ひますと、總員起立、滿場一致を以て、政府原案通り可決確定になつたことを簡單ながら御報告申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=6
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007・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=7
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008・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=8
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009・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して委員長報告通り可決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=9
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010・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=10
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011・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=11
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012・会議録情報3
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法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=12
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013・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して委員長報告通り可決確定致しました(拍手)
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=13
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014・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第四を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=14
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015・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=15
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016・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、政府は此の議事日程變更に同意せられました、仍て日程の順序は變更せられました──、日程第四、地方競馬法案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長瀧澤濱吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=16
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017・会議録情報4
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第四 地方競馬法案(小笠原八十美君外四名提出)
第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一地方競馬法案(小笠原八十美君外四名提出)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年九月五日
委員長 瀧澤濱吉
衆議院議長 山崎猛殿
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〔瀧澤濱吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=17
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018・瀧澤濱吉
○瀧澤濱吉君 只今議題となりました、小笠原八十美君外四君提出に係る、地方競馬法案の委員會に於ける審議の經過竝に其の結果に付て簡單に御報告を申上げます
本法案は去月二十九日議長指名十八名の委員に付託せられ、同月三十一日委員長、理事の互選會を開き、九月二日及び五日の兩日に亙つて審議を致したのであります、即ち委員會を開くこと三囘、其の間質疑を行ふ者七名、審議の期間は短いものでありましたが、委員諸君は頗る熱心に愼重審議を盡されたのであります、詳細は速記録に付て御覽を戴くことと致しまして、今茲に質疑應答の主なる點を簡單に申上げます
先づ提案者小笠原八十美君より、提案理由の説明がありました、尚ほ小川原政信君より、本案に對する政府の所見を質しましたる所、和田農林大臣は日本の農業の弱點は無畜農業の點にある、將來は大いに畜類を入れて行くべきであり、此の點競馬は畜産振興上最も重要である、本案の趣旨には贊意を表するとの見解を披瀝せられました、又政府委員よりも地方競馬は主として産業用馬に依つて行はれるものであり、第二次馬政計畫に於ては百五十萬頭を目指して居るが、今の所百萬頭位の見込で、競馬に依つて産業用馬の増産が圖られることは洵に望ましいとの御答辯がございました、更に松本六太郎君よりの、政府の馬政に對する施策竝に豫算が洵に貧弱であるとの意見に對しまして、政府委員より此の點は洵に遺憾である、今後大いに努力するとの御答辯がございました、次に鈴木周次郎君より、賣得金の使途に關する質疑がなされましたに對し、和田農林大臣は賣得金は本案の目的として居る所に使ふべきであると答辯され、提案者小笠原八十美君よりも、農林大臣と同樣に考へるとの答辯がございました、又家畜飼料の件に付ての川野芳滿君の質疑に對しましては、其の大宗は國内自給にあり、當局は之に全面的に努力を注いで居るが、食糧緊迫の折柄、當面の急務として輸入に重點を置き、「マ」司令部に懇請し、本年十二月までに輸入を許可せられたるもの十一萬二千「トン」、明年度分は三十萬「トン」を懇請して居るとの答辯がございました、尚ほ開催地竝に開催の囘數の問題に對し、愼重審議が重ねられました
討論に入り、小川原政信君は自由黨を、鈴木周次郎君は進歩黨を、金井芳次君は社會黨を、松本六太郎君は協同民主黨を、菊池豐君は無所屬倶樂部をそれぞれ代表せられまして、原案に贊成の意を表明せられ、採決の結果、滿場一致原案通り可決致しました、之を以ちまして、各派協同提案になりました地方競馬法案の委員長報告を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=18
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019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=19
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020・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=20
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021・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して委員長報告通り可決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=21
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022・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=23
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024・会議録情報5
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地方競馬法案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=24
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025・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決確定致しました(拍手)──日程第一及び第二は關聯せる議案でありますから、一括議題となすに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=25
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026・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、日程第一、自作農創設特別措置法案、日程第二、農地調整法の一部を改正する法律案、右兩案を一括して第一讀會を開きます──和田農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=26
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027・会議録情報6
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第一 自作農創設特別措置法案(政府提出) 第一讀會
第二 農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
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自作農創設特別措置法案
自作農創設特別措置法
第一條 この法律は、耕作者の地位を安定し、その勞働の成果を公正に享受させるため自作農を急速且つ廣汎に創設し、以て農業生産力の發展と農村における民主的傾向の促進を圖ることを目的とする。
第二條 この法律において農地とは、耕作の目的に供される土地をいふ。
この法律において、自作地とは、耕作の業務を營む者が所有權に基きその業務の目的に供してゐる農地をいひ、小作地とは、耕作の業務を營む者が貸借權、使用貸借による權利、永小作權、地上權又は質權に基きその業務の目的に供してゐる農地をいふ。
前項の規定の適用については、耕作の業務を營む者の同居の戸主若しくは家族又は耕作の業務を營む者の戸主若しくは家族で命令で定める特別の事由に因りその者と同居しなくなつたものが有する同項に掲げる權利は、これをその耕作の業務を營む者の有するものとみなす。
この法律において、自作農とは、自作地に就き耕作の業務を營む個人をいひ、小作農とは、小作地に就き耕作の業務を營む個人をいふ。
第三條 左に掲げる農地は、政府が、これを買收する。
一 農地の所有者がその住所のある市町村の區域(その隣接市町村の區域内の地域で市町村農地委員會が都道府縣農地委員會の承認を得て當該市町村の區域に準ずるものとして指定したものを含む。以下同じ。)外において所有する小作地
二 農地の所有者がその住所のある市町村の區域内において、北海道にあつては四町歩、都府縣にあつては中央農地委員會が都府縣別に定める面積を超える小作地を所有る場合、その面積を超える面積の當該區域内の小作地
三 農地の所有者がその住所のある市町村の區域内において所有する小作地の面積とその者の所有する自作地の面積の合計が、北海道にあつては十二町歩、都府縣にあつては中央農地委員會が都府縣別に定める面積を超えるときは、その面積を超える面積の當該區域内の小作地
前項第二號又は第三號に規定する都府縣別の面積は、その平均面積が同項第二號に規定するものにあつては概ね一町歩、同項第三號に規定するものにあつては概ね三町歩になるやうに、これを定めなければならない。
都道府縣農地委員會は、特に必要があると認めるときは、中央農地委員會の承認を得て、當該都道府縣の區域を二以上の區域に分け各區域別に第一項第二號又は第三號の都道府縣別の面積に代るべき面積を定めることができる。但し、各區域別の面積は、その平均面積が概ね同項第二號又は第三號の當該都道府縣別の面積になるやうに、これを定めなければならない。
第五條第七號に規定する農地で命令で定めるものの面積は、第一項第二號又は第三號に規定する小作地又は自作地の面積にこれを算入しない。
第一項の農地の外左に掲げる農地で、都道府縣農地委員會又は市町村農地委員會が、命令の定めるところにより、自作農の創設上政府において買收することを相當と認めたものは、政府が、これを買收する。
一 自作農でその者の營む耕作の業務が適正でないものの所有する自作地の面積が第一項第三號の面積を超える場合、當該面積を超える面積の自作地
二 自作地で當該自作地に就いての自作農以外の者が請負その他の契約に基き耕作の業務の目的に供してゐるもの
三 法人その他の團體でその營む耕作の業務が適正でないものの所有する自作地
四 法人其の他の團體の所有する小作地
五 農地で所有權その他の權原に基きこれを耕作することのできる者が現に耕作の目的に供してゐないもの
六 前各號に掲げるものを除く外農地でその所有者が市町村農地委員會に對し政府において買收すべき旨を申し出たもの
第四條 前條の規定の適用については、農地の所有者の同居の戸主若しくは家族又は農地の所有者の戸主若しくは家族で第二條第三項に規定する特別の事由に因りその者と同居しなくなつた者が當該農地の所有者の住所のある市町村の區域内において所有する農地は、これを當該農地の所有者の所有する農地とみなす。
前條第一項の規定の適用については、農地の所有者で第二條第三項に規定する特別の事由に因りその所有する農地のある市町村の區域内に住所を有しなくなつたものは、これを當該市町村の區域内に住所を有する者とみなす。
第五條 政府は、左の各號の一に該當する農地については、第三條の規定による買收をしない。
一 國又は公共團體が公共用又は公用に供してゐる農地
二 都道府縣、市町村、都道府縣農業會、市町村農業會、農事實行組合、農地開發營團その他命令で定める團體の所有する農地で自作農の創設又は共同耕作の目的に供するもの
三 試驗研究又は農事指導の目的に供してゐる農地で地方長官の指定したもの
四 都市計畫法第十二條第一項の規定による土地區劃整理を施行する土地又は都市計畫による同法第十六條第一項の施設に必要な土地の境域内にある農地で地方長官の指定する區域内にあるもの
五 近く土地使用の目的を變更することを相當とする農地で市町村農地委員會が都道府縣農地委員會の承認を得て指定したもの
六 自作農が疫病その他命令で定める事由に因つてその自作地に就き自ら耕作の業務を營むことができないため賃貸借又は使用貸借により一時當該自作地を他人の耕作の業務の目的に供した場合、市町村農地委員會が、その自作農が近く自作するものと認め、且つその自作を相當と認める當該農地
七 新開墾地、燒畑、切替畑等收穫の著しく不定な農地その他命令で定める農地で市町村農地委員會が政府において買收することを不相當と認めるもの
第六條 政府が第三條の規定による買收をするには、市町村農地委員會の定める農地買收計畫によらなければならない。
農地買收計畫においては、買收すべき農地竝びに買收の時期及び對價を定めなければならない。
前項の對價は、當該農地につき地租法による貸借價格があるときは、田にあつては當該賃貸價格に四十(農地調整法第六條の三第一項の規定により地方長官の定めた率があるときは、その率)、畑にあつては當該賃貸價格に四十八(同條同項の規定により地方長官の定めた率があるときは、その率)を乘じて得た額(同條同項の規定により地方長官の定めた額があるときは、その額)の範圍内においてこれを定め、當該農地につき地租法による賃貸價格がないときは、市町村農地委員會が地方長官の認可を受けて定めた額による。但し、特別の事情に因つて市町村農地委員會が地方長官の認可を受けて當該農地につき額を定めたときは、その額による。
市町村農地委員會は、農地買收計畫を定めるには、左の事項を勘案してこれをしなければならない。
一 自作農となるべき者の農地を買ひ受ける機會を公正にすること。
二 自作農となるべき者の耕作する農地を集團化し、且つ當該地方の状況に應じて當該農地につき田畑の割合を適正にすること。
市町村農地委員會は、農地買收計畫を定めたときは、遲滯なくその旨を公告し、且つ公告の日から十日間市役所又は町村役場において左の事項を記載した書類を縱覽に供しなければならない。
一 買收すべき農地の所有者の氏名又は名稱及び住所
二 買收すべき農地の所在、地番、地目(土地臺帳の地目が現況と異るときは、土地臺帳の地目及び現況による地目以下同じ。)及び面積
三 對價
四 買收の時期
第七條 前條の規定による農地買收計畫に定められた農地につき所有權を有する者は、當該農地買收計畫について異議があるときは、市町村農地委員會に對して異議を申し立てることができる。但し、同條第五項の縱覽期間を經過したときは、この限りでない。
市町村農地委員會は、前項の申立を受けたときは、前條第五項の縱覽期間滿了後二十日以内に決定をしなければならない。
前項の決定に對して不服ある申立人は、都道府縣農地委員會に訴願することができる。但し、同項の期間滿了後十日を經過したときは、此の限りでない。
都道府縣農地委員會は、前項の訴願を受理したときは、同項但書の期間滿了後二十日以内に裁決しなければならない。
第八條 第六條の規定による農地買收計畫につき同條第五項の期間内に前條第一項の規定による異議の申立がないとき、同項の規定による異議の申立があつた場合においてそのすべてについて同條第二項の規定による決定があり、且つ同條第三項但書の期間内に訴願の提起がなかつたとき、又は同項の規定による訴願の提起があつた場合においてそのすべてについて同條第四項の規定による裁決があつたときは、市町村農地委員會は、遲滯なく當該農地買收計畫について都道府縣農地委員會の承認を受けなければならない。
第九條 第三條の規定による買收は、地方長官が前條の規定による承認があつた農地買收計畫により當該農地の所有者に對し買收令書を交付して、これをしなければならない。但し、當該農地の所有者が知れないとき、その他令書の交付をすることができないときは、命令の定めるところにより、第二項各號に掲げる事項を公告し、令書の交付に代へることができる。
令書には、左の事項を記載しなければならない。
一 第六條第五項各號に掲げる事項
二 對價の支拂の方法及び時期
三 その他必要な事項
地方長官は、令書の交付又は第一項但書の公告をしたときは、遲滯なく令書の交付又は同項但書の公告の際における買收の目的たる農地につき先取特權、質權又は抵當權を有する者に對してこれを通知しなければならない。但し、先取特權、質權又は抵當權を有する者が知れないとき、その他通知をすることができないときは、命令の定めるところにより、公告をし、通知に代へることができる。
第十條 第三條、第六條及び前條の規定の適用については、農地の面積は、土地臺帳に登録した當該農地の地積による。但し、市町村農地委員會が當該農地につき土地臺帳に登録した地積を以てその面積とすることを著しく不相當と認め、別段の面積を定めたときは、當該農地については、その面積による。
第十一條 第六條乃至第九條の規定によりした手續その他の行爲は、第三條の規定により買收すべき農地の所有者、先取特權者、質權者又は抵當權者の承繼人に對してもその效力を有する。
第十二條 地方長官が第九條の規定による手續をしたときは、令書に記載し、又は同條第一項但書の規定により公告した買收の時期に、當該農地の所有權は、政府が、これを取得し、當該農地に關する權利は、消滅する。
前項の規定により政府が取得した農地につきその取得の當時賃借權、使用貸借による權利、永小作權、地上權又は地役權があるときは、その取得の時に當該權利を有する者のために從前と同一の條件を以て當該權利が設定されたものとみなす。但しその權利の存續期間は從前の權利の殘存期間とする。
前項の場合において、從前の權利の上に先取特權、質權又は抵當權があるときは、その先取特權、質權又は抵當權は、同項の規定により設定された權利の上にあるものとみなす。
第十三條 第三條の規定による農地の買收については、政府は、その對價を買收の時期における當該農地の所有者に支拂はなければならない。但し、當該農地の上に先取特權、質權又は抵當權がある場合において、當該權利を有する者の請求があるとき、又は當該權利を有する者が知れないときは、その對價を供託しなければならない。
當該農地の上に先取特權、質權又は抵當權を有する者は、前項の規定により供託した對價に對してその權利を行ふことができる。
政府は、第三條の規定により買收する農地の所有者に對して、その農地の面積(その農地の面積が同條第一項第三號の當該都道府縣別の面積又は同條第三項の規定により當該區域につき定められた當該都道府縣別の面積に代るべき面積を超えるときは、當該都道府縣別の面積又は當該都道府縣別の面積に代るべき面積)に應じて報償金を交付する。
前項の報償金の一段歩當りの額は、田にあつては二百二十圓、畑にあつては百三十圓を基準とし、當該農地の收量、位置その他の状況を參酌して、主務大臣が、これを定める。
第三項の規定の適用については、第十條の規定を準用する。
第十四條 第三條の規定により買收した農地の對價に對して不服ある者は、通常裁判所に出訴することができる。但し、令書の交付又は第九條第一項但書の公告のあつた後一箇月を經過したときは、この限りでない。
第十五條 第三條の規定により買收する農地に就き自作農となるべき者又は當該農地につき所有權その他の權利を有する者が左に掲げる農業用施設、土地又は建物を政府において買收すべき旨の申請をした場合において、市町村農地委員會がその申請を相當と認めたときは、政府は、これを買收する。
一 第三條の規定により買收する農地の利用上必要な農業用施設
二 第三條の規定により買收する農地に就き自作農となるべき者が、貸借權、使用貸借による權利若しくは永小作權を有する採草地、賃借權、使用貸借による權利若しくは地上權を有する宅地又は賃借權を有する建物
前項の場合には、第六條第一項第二項第五項、第七條乃至第十二條、第十三條第一項第二項及び前條の規定を準用する。
前項において準用する第六條第二項の對價は、採草地にあつては、命令の定めるところにより、當該採草地の近傍類似の農地の時價を參酌し、採草地以外のものにあつては時價を參酌してこれを定める。
第十六條 政府は、第三條の規定により買收した農地及び政府の所有に屬する農地で命令で定めるものを、命令の定めるところにより、その買收の時期において當該農地に就き耕作の業務を營む小作農その他命令で定める者で、自作農として農業に精進する見込のあるものに賣り渡す。
政府は、特別の事情があるときは、第三條の規定により買收した農地を市町村農業會その他命令で定める團體で自作農の創設の事業を行ふものに賣り渡すことができる。
第十七條 前條に規定する者で前條に規定する農地を買ひ受けようとするものは、市町村農地委員會に對してその申込をしなければならない。
第十八條 政府が第十六條の規定により賣渡をするには、市町村農地委員會の定める農地賣渡計畫によらなければならない。
農地賣渡計畫においては、賣り渡すべき農地竝びに賣渡の相手方、時期及び對價を定めなければならない。
前項の賣渡の相手方は、前條の規定による買受の申込をした者でなければならない。
市町村農地委員會は、農地賣渡計畫を定めたときは、遲滯なくその旨を公告し、且つ公告の日から十日間市役所又は町村役場において左の事項を記載した書類を縱覽に供しなければならない。
一 賣渡の相手方の氏名又は名稱及び住所
二 賣り渡すべき農地の所在、地番、地目及び面積
三 對價
四 賣渡の時期
農地賣渡計畫については、第八條の規定を準用する。この場合において、同條中「同條第五項」とあるのは、「第十八條第四項」と、「前條第一項」とあるのは、「第十九條第一項」と讀み替へるものとする。
第十九條 第十七條の規定による買受の申込をした者は、前條の規定による農地賣渡計畫について異議があるときは、市町村農地委員會に對して異議を申し立てることができる。但し、同條第四項の縱覽期間を經過したときは、この限りでない。
前項の場合には、第七條第二項乃至第四項の規定を準用する。この場合において、同條第二項中「前條第五項」とあるのは、「第十八條第四項」と讀み替へるものとする。
第二十條 第十六條の規定による賣渡は、地方長官が第十八條第五項において準用する第八條の規定による承認があつた農地賣渡計畫により賣渡の相手方に對し賣渡通知書を交付して、これをしなければならない。
通知書には、左の事項を記載しなければならない。
一 第十八條第四項各號に掲げる事項
二 對價の支拂の方法及び時期
三 その他必要な事項
第二十一條 前條の規定による賣渡通知書の交付があつたときは、その通知書に記載された賣渡の時期に、當該農地の所有權は、その通知書に記載された賣渡の相手方に移轉する。
前項の規定により取得した農地の對價については、第十四條の規定を準用する。
第二十二條 第十六條の規定による賣渡があつた農地につき第十二條第二項の規定により設定された權利がある場合において、その權利を有する者が當該農地の賣渡の相手方でないときは、當該權利(當該權利が地役權であるときは、市町村農地委員會が當該農地を耕作することの妨げになるものと認定した地役權に限る。)は、當該農地の賣渡の時期に消滅する。
政府は、前項の規定により消滅する權利を有する者に對してその權利の消滅に因つて生じた損失を補償しなければならない。但し、その者が第六條第五項の規定による公告のあつた後第十二條第一項の規定により消滅した權利を取得した者であるときは、この限りでない。
前項の規定により補償すべき損失は第一項の規定による權利の消滅に因つて通常生ずべき損失とする。
第二項の補償金額は、市町村農地委員會が、地方長官の認可を受けてこれを決定する。
市町村農地委員會は、前項の補償金額を決定したときは、遲帶なく第二項の規定により補償を受くべき者に對してこれを通知しなければならない。
第四項の補償金額の決定に對して不服ある者は、通常裁判所に出訴することができる。但し、前項の通知を受けた日から二十日を經過したときはこの限りでない。
第一項の規定により消滅する權利の上に先取特權、質權又は抵當權があるときは、第十三條第一項及び第二項の規定を準用する。
第二十三條 政府が第十六條の規定により農地を賣り渡す場合において、自作農の創設を適正に行ふため特に必要があるときは、市町村農地委員會は、地目、面積、等位等が當該農地と近似する小作地と當該農地との交換に關し、當該小作地の所有者に對して、必要な事項を指示することができる。
前項の指示は、交換により當該小作地の所有者の取得すべき農地及び政府の取得すべき農地についてその所在、地番、地目及び面積を定めて、これをしなければならない。
第一項の規定による指示を受けた者は、その指示を受けた日から十日以内に當該指示に係る交換に關して市町村農地委員會と協議しなければならない。
前項の場合において、協議が調はないとき、又は協議をすることができないときは、市町村農地委員會は、都道府縣農地委員會の裁定の申請をすることができる。
前項の規定による裁定があつたときは、その定めるところにより、交換の契約が成立したものとみなす。
第二十四條 前條の規定による交換においては、同條第三項の協議又は同條第四項の裁定において定められた日に農地の所有權の移轉の效力が、生ずるものとする。
前項の規定による所有權の移轉の際當該小作地の上にある先取特權、質權又は抵當權は、當該小作地の所有者が交換に因り取得した農地の上にあるものとする。
第二十五條 政府が第十六條の規定により農地を賣り渡す場合において、自作農の創設を適正に行ふため特に必要があるときは、市町村農地委員會は、政府の賣り渡すべき農地につき賃借權又は永小作權を有する者及び地目、面積、等位等が當該農地と近似する農地で政府の買收しないものにつき賃借權又は永小作權を有する者に對して當該賃借權又は永小作權の交換に關し必要な事項を指示することができる。
前項の指示は、交換に因り移轉すべき賃借權又は永小作權の目的たる農地の所在、地番、地目及び面積を定めて、これをしなければならない。
第一項の規定による交換については、賃借權又は永小作權の移轉は、民法第二百七十二條但書及び第六百十二條の規定にかかはらず、これをすることができる。
市町村農地委員會が第一項の指示をしたときは、遲滯なくその旨を當該指示に係る農地の所有者及び所有者でない賃貸人に通知しなければならない。
前項の通知を受けた者は、第一項の指示に異議があるときは、市町村農地委員會に異議を申し立てることができる。但し、前項の通知を受けた日から十日を經過したときは、この限りでない。
第一項の規定による交換には、第二十三條第三項乃至第五項及び前條の規定を準用する。この場合においては、第二十三條第三項中「市町村農地委員會と協議し」とあるのは、「協議し」と、同條第四項中「市町村農地委員會は、都道府縣農地委員會の裁定」とあるのは、「第一項の指示を受けた者は、市町村農地委員會の裁定」と讀み替へるものとする。
第二十六條 第十六條の規定により賣り渡した農地の對價の支拂は、支拂期間三十年(据置期間を含む。)以内、年利三分二厘の均等年賦支拂の方法によるものとする。但し、當該農地を買ひ受けた者の申出のあるときは、その對價の全部又は一部につき一時支拂の方法によるものとする。
第二十七條 第十六條の規定により賣り渡した農地の對價を命令で定める支拂の方法により支拂ふものとした場合における年賦金額と當該農地の公租公課の金額の合計額が當該農地の通常收穫物の價額の一定の割合を超えるときは、政府は、當該農地の對價の支拂につき年賦金額を減免し、年賦金額の支拂を猶豫し、その他對價の支拂に關する負擔を輕減するため、必要な措置を講じなければならない。
前項の一定の割合は、中央農地委員會が、これを定める。但し、三分の一を超えてはならない。
前項に規定するものの外第一項の規定の施行に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十八條 第十六條の規定による農地の賣渡を受けた者又はその相續人が當該農地についての自作をやめようとするときは、政府は、命令の定めるところにより、その者に對して當該農地を買ひ取るべきことを申し入れなければならない。
前項の申入があつたときは、その時にその申入において定めた條件によつて當該農地の賣買が成立する。この場合における當該農地の對價には、第六條第三項の規定を準用する。
第二十九條 第十六條の規定により農地の賣渡を受けた者で命令で定めるものは、第十五條の規定により政府が買收した農業用施設、土地又は建物を買ひ受けようとするときは、市町村農地委員會に對して申込をしなければならない。
第十五條の規定により政府が買收した農業用施設、土地又は建物の賣渡については、第十六條、第十八條乃至第二十二條及び第二十六條の規定を準用する。この場合において、第十八條第三項中「前條」とあり、又は第十九條第一項中「第十七條」とあるのは、「第二十九條第一項」と讀み替へるものとする。
第三十條 政府は、自作農を創設するため必要があるときは、左に掲げるものを買收することができる。
一 農地以外の土地で農地の開發に供しようとするもの
二 政府の所有に屬する土地で農地の開發に供しようとするものに關する所有權及び擔保權以外の權利
三 第一號又は前號の土地附近の農地で當該土地と併せて開發するのを相當とするもの
四 第一號又は第二號の土地の上にある立木又は建物その他の工作物
五 漁業權
六 水の使用に關する權利
七 開發後における第一號又は第二號の土地の利用上必要な土地、立木又は建物その他の工作物
前項第六號又は第七號に掲げるものは、政府が、これを使用することができる。
第三十一條 政府が前條の規定による買收又は使用をするには、都道府縣農地委員會が命令の定めるところにより定める未墾地買收計畫によらなければならない。
未墾地買收計畫においては、買收し、又は使用すべき土地、權利、立木、建物その他の工作物、買收の時期又は使用の時期及び期間竝びに對價を定めなければならない。
前項の對價を定める場合には、農地にあつては、第六條第三項の規定を準用し、農地以外の土地にあつては、命令の定めるところにより、當該土地の近傍類似の農地の時價を參酌し、土地以外のものにあつては、時價を參酌する。この場合において、同項中「市町村農地委員會」とあるのは、「都道府縣農地委員會」と讀み替へるものとする。
都道府縣農地委員會は、未墾地買收計畫を定めたときは、遲滯なくその旨を公告し、且つ公告の日から十日間前條の規定により買收し、又は使用すべきものの所在地の市役所又は町村役場において左の事項を記載した書類を縱覽に供しなければならない。
一 買收し、又は使用すべき土地、權利、立木又は工作物の所有者の氏名又は名稱及び住所
二 買收し、又は使用すべき土地については、その所在、地番、地目及び面積、權利については、その種類、立木については、その樹種、數量及び所在の場所、工作物については、その種類及び所在の場所
三 對價
四 買收の時期又は使用の時期及び期間
未墾地買收計畫については、第七條及び第八條の規定を準用する。この場合において、これらの規定中「市町村農地委員會」とあるのは、「都道府縣農地委員會」と、「都道府縣農地委員會」とあるのは、「地方長官」と、第七條第一項及び第八條中「同條第五項」とあり、又は第七條第二項中「前條第五項」とあるのは、「第三十一條第四項」と、第八條中「承認」とあるのは、「認可」と讀み替へるものとする。
第三十二條 都道府縣農地委員會は、前條の規定による未墾地買收計畫を定めるため必要があるときは、その委員又は委員會の事務に從事する者に、他人の土地に立ち入つて、測量し、檢査し、又は測量若しくは檢査の障害となる物を移轉し、若しくは除却させることができる。但し、これに因つて生じた損害は、これを補償しなければならない。
政府が第三十條の規定による買收又は使用をするため必要がある場合には、前項の規定を準用する。この場合において、同項の規定中「その委員又は委員會の事務に從事する者」とあるのは、「當該官吏」と讀み替へるものとする。
第三十三條 政府は、第三十條の規定による買收又は使用に係る土地(同條第一項第二號に規定する土地を含む。)又は工作物にある物件の所有者又は占有者に、その物件を收去させることができる。
前項の場合において、當該物件を收去することに因つて當該物件を從來用ひた目的に供することができないときは、當該物件の所有者は、命令の定めるところにより、政府に對してその買收を請求することができる。
前項に規定する買收の對價は、地方長官が、時價を參酌してこれを定める。
第二項に規定する買收については、第九條、第十一條、第十二條第一項、第十三條第一項第二項及び第十四條の規定を準用する。この場合において、第九條第二項第一號中「第六條第五項各號」とあるのは、「第三十一條第四項各號」と、第十一條中「第六條乃至第九條」とあるのは、「第三十三條第四項において準用する第九條」と讀み替へるものとする。
第三十四條 第三十條の規定による買收又は使用については、第九條乃至第十一條、第十二條第一項、第十三條第一項第二項及び第十四條の規定を準用する。この場合において、第九條第二項第一號中「第六條第五項各號」とあるのは「第三十一條第四項各號」と第十一條中「第六條乃至第九條」とあるのは、「第三十一條第一項乃至第四項(第三十八條第二項において準用する場合を含む。)若しくは同條第一項、第三十一條第五項若しくは第三十八條第二項において準用する第七條及び第八條竝びに第三十四條において準用する第九條」と讀み替へるものとし、第十條中「市町村農地委員會」とあるのは、當該買收が第三十八條に規定するものである場合を除いて、「都道府縣農地委員會」と讀み替へるものとする。
第三十五條 政府が第三十條第二項の規定により、權利、土地、立木又は工作物を使用する場合においては、前條において準用する第九條第一項の令書に記載し、又は同項但書の規定により公告した使用の時期に、政府は、當該權利、土地、立木又は工作物の使用權を取得し、當該權利又は當該土地、立木若しくは工作物に關する權利は、使用の期間その行使を停止される。但し、使用を妨げないものは、この限りでない。
第三十六條 第三十條第二項の規定による權利、土地、立木若しくは工作物の使用が三年以上に亙るとき、又はその使用に因つて當該權利、土地、立木若しくは工作物を從來用ひた目的に供することが著しく困難となるときは、當該權利を有する者又は當該土地、立木若しくは工作物の所有者は、命令の定めるところにより、政府に對して當該權利又は土地、立木若しくは工作物の買收を請求することができる。
前項に規定する買收の對價は、地方長官が、これを定める。
第一項の場合には、第三十一條第三項前段及び第三十三條第四項の規定を準用する。この場合において、第三十一條第三項前段において準用する第六條第三項但書中「市町村農地委員會が地方長官の認可を受けて」とあるのは、「地方長官が」と讀み替へるものとする。
第三十七條 政府は、第三十條の規定により土地の買收をする場合において、特に必要があるときは、その買收の當時當該土地に關し所有權、賃借權、使用貸借による權利、永小作權、地上權又は入會權を有する者に對し當該土地に代るべき土地として賣り渡し、又は賃貸するため必要な他の土地(當該土地の上にある立木を含む。)を買收し、又は使用することができる。
前項の場合には、第三十一條乃至前條の規定を準用する。
第三十八條 政府が第三十條第一項の規定による買收をする場合において、その買收に係る同項第一號の土地の面積が主務大臣の定める面積を超えないときは、政府は、第三十一條第一項の規定にかかはらず、市町村農地委員會の定める未墾地買收計畫により第三十條第一項の規定による買收をすることができる。
前項の場合には、第七條、第八條、第三十一條第二項第三項前段第四項及び第三十二條第一項の規定を準用する。この場合において、第七條第一項及び第八條中「同條第五項」とあり、又は第七條第二項中「前條第五項」とあるのは、「第三十一條第四項」と、第三十一條第四項及び第三十二條第一項中「都道府縣農地委員會」とあるのは、「市町村農地委員會」と讀み替へるものとする。
第三十九條 政府は、第三十二條第一項(同條第二項、第三十七條第二項及び前條第二項において準用する場合を含む。)の規定による行爲、第三十三條第一項(第三十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による收去、第三十三條第四項(第三十六條第三項及び第三十七條第二項において準用する場合を含む。)若しくは第三十四條(第三十七條第二項において準用する場合を含む。)において準用する第十二條第一項の規定による權利の消滅又は第三十五條(第三十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による權利の行使の停止に因つて生じた損失を補償しなければならない。
第三十二條第一項(同條第二項、第三十七條第二項及び前條第二項において準用する場合を含む。)の規定による行爲に係る補償の場合を除いて、前項の規定による補償を受けるべき者は、第三十條若しくは第三十七條の規定による買收若しくは使用又は第三十三條第二項(第三十七條第二項において準用する場合を含む。)若しくは第三十六條第一項(第三十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による買收の場合にあつては當該土地、權利又は立木、工作物その他の物件に關し所有權及び擔保權以外の權利を有した者、第三十三條第一項(第三十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による收去の場合にあつては、當該物件に關し擔保權以外の權利を有した者に限る。但し、その者が第三十一條第四項(第三十七條第二項及び前條第二項において準用する場合を含む。)の規定による公告のあつた後當該權利を取得した者であるときは、この限りでない。
第一項の補償金額については、第二十二條第三項乃至第七項の規定を準用する、この場合において、「市町村農地委員會」とあるのは、第三十二條第二項(第三十七條第二項において準用する場合を含む。)において準用する同條第一項の規定による行爲、第三十三條第一項(第三十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による收去又は第三十三條第二項若しくは第三十六條第一項(第三十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による買收に係る補償については、「地方長官」と、その他の補償については、前條の規定による買收に係る場合を除いて、「都道府縣農地委員會」と讀み替へるものとする。
第四十條 第三十條の規定により政府が買收した土地又は同條第一項第二號に規定する土地の開發については、他の法令中命令で定める制限又は禁止の規定は、これを適用しない。
第四十一條 政府は、第三十條第一項の規定により買收した土地(同條第一項第二號に規定する土地を含む。)、權利、立木若しくは工作物又は同條第二項の規定により使用した權利、土地、立木若しくは工作物を自作農として農業に精進し得る見込のある者その他命令で定める者に賣り渡し、又は賃貸することができる。
前項の規定による賣渡又は賃貸については、第十七條、第十八條第一項乃至第三項第五項、第二十條、第二十一條及び第二十六條の規定を準用する。この場合において、第三十一條の規定による未墾地買收計畫により買收し、又は使用した土地(第三十條第一項第二號に規定する土地を含む。)權利、立木若しくは工作物の賣渡又は賃貸については、第十七條及び第十八條第一項竝びに同條第五項において準用する第八條中「市町村農地委員會」とあるのは、「都道府縣農地委員會」と、「都道府縣農地委員會の承認」とあるのは、「地方長官の認可」と讀み替へるものとする。
第一項の規定により第三十條第一項第一號乃至第三號に規定する土地を賣り渡す場合には、前項において準用する規定の外、第二十七條及び第二十八條の規定を準用する。
第四十二條 第六條第五項(第十五條第二項において準用する場合を含む。)又は第三十一條第四項(第三十七條第二項及び第三十八條第二項において準用する場合を含む。)の規定による公告のあつた後は、當該買收計畫において定められた土地、農業用施設、工作物又は立木に關する權利を有する者は、買收又は使用に支障を及ぼす虞のない場合を除いて、地方長官の許可を受けなければ、當該土地の形質を變更し、又は當該農業用施設、工作物若しくは立木を損壞し、若しくは收去してはならない。
第四十三條 第三條、第十五條、第三十條、第三十三條第二項、第三十六條又は第三十七條の規定により買收し、又は使用する土地、權利又は立木、工作物その他の物件の對價、第十三條第三項に規定する報償金及び第二十二條第二項又は第三十九條第一項の規定による補償金は、三十年以内に償還すべき證券を以てこれを交付することができる。
前項の規定により交付するため、政府は、必要な額を限度として證券を發行することができる。
前二項の規定により交付する證券の交付價格は、時價を參酌して大藏大臣が、これを定める。
第二項の證券に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第四十四條 第三條、第十五條、第三十條第一項、第三十三條第二項、第三十六條若しくは第三十七條の規定による買收、第十六條(第二十九條第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十一條の規定による賣渡若しくは賃貸、第二十三條若しくは第二十五條の規定による交換又は第二十八條第一項(第四十一條第三項において準用する場合を含む。)の規定による買取をする場合における登記は、勅令の定めるところによる。
第四十五條 主務大臣又は地方長官は、必要があると認めるときは、農地その他の土地又は物件に關し必要な報告を徴することができる。
第四十六條 政府が、第三條、第十五條、第三十條、第三十三條第二項、第三十六條又は第三十七條の規定により買收し、又は使用する土地、權利又は立木、工作物その他の物件の管理に關する主務大臣の權限の一部は、命令の定めるところにより、市町村長、市町村農地委員會その他命令で定めるものにこれを行はせることができる。
第四十七條 主務大臣又は地方長官は、自作農の創設上特に必要があると認めるときは、この法律により市町村農地委員會の權限に屬させた事項を都道府縣農地委員會に處理させることができる。
前項の場合には、同項の規定により都道府縣農地委員會に處理させる事項に關しては、この法律により都道府縣農地委員會の權限に屬させた事項は、地方長官が、これを處理し、この法律により市町村農地委員會に對してすべき異議の申立は、都道府縣農地委員會に對し、都道府縣農地委員會に對してすべき訴願の提起は、地方長官に對してこれをするものとする。
主務大臣は、自作農の創設上特に必要があると認めるときは、この法律により都道府縣農地委員會の權限に屬させた事項を地方長官又は中央農地委員會に處理させることができる。
前項の場合には、同項の規定により地方長官又は中央農地委員會に處理させる事項に關しては、この法律により地方長官の權限に屬させた事項は、主務大臣が、これを處理し、この法律により都道府縣農地委員會に對してすべき異議の申立は、地方長官又は中央農地委員會に對し、地方長官に對してすべき訴願の提起は、主務大臣に對してこれをするものとする。
第四十八條 この法律中市町村農地委員會に關する規定は、地區農地委員會の設けられてゐる市町村の地區にあつては、地區農地委員會にこれを適用する。この場合において、第三條第一項中「市町村の區域」とあるのは、「地區農地委員會の設けられてゐる地區」と、同項第一號中「隣接市町村の區域」とあるのは、「隣接市町村の區域内の地域又は他の地區農地委員會の設けられてゐる地區で當該地區に隣接する地區」と讀み替へるものとする。
第四十九條 この法律中町村又は町村長に關する規定は、町村の事務の全部又は役場事務を共同處理する町村組合のある地にあつては町村組合又は組合管理者に、町村制を施行しない地にあつてはこれに準ずるものに、市又は市長に關する規定は、東京都の區のある區域、京都市、大阪市、横濱市、名古屋市及び神戸市にあつては地方長官の指定する區又は區長にこれを適用する。
第五十條 左の各號の一に該當する者は、これを六箇月以下の懲役又は五百圓以下の罰金に處する。
一 第三十二條第二項(第三十七條第二項において準用する場合を含む。)において準用する第三十二條第一項の規定による當該官吏の測量、檢査、移轉又は除却を拒み、妨げ又は忌避した者
二 第四十二條の規定に違反した者
三 第四十五條の規定に違反して、報告を怠り、又は虚僞の報告をした者
第五十一條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從事者が、その法人又は人の業務に關し前條第二號又は第三號の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に對して同條の罰金刑を科する。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
第三條第一項の規定による農地の買收については、市町村農地委員會は、相當と認めるときは、命令の定めるところにより、昭和二十年十一月二十三日現在における事實に基いて第六條の規定による農地買收計畫を定めることができる。
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農地調整法の一部を改正する法律案
農地調整法の一部を次のやうに改正する。
第一條 本法は耕作者の地位の安定及農業生産力の維持増進を圖る爲農地關係の調整を爲すを以て目的とす
第四條 農地の所有權、賃借權、地上權其の他の權利の設定又は移轉は命令の定むる所に依り當事者に於て地方長官の許可又は市町村農地委員會の承認を受くるに非ざれば之を爲すことを得ず
前項の許可又は承認には條件を附することを得
第一項の許可又は承認を受けずして爲したる行爲は其の效力を生ぜず
第四條の二乃至第五條を削る。
第六條中第二號及び第三號を削り、第四號を第二號とし、以下順次二號づつ繰り上げ、同條を第五條とする。
第六條 農地の所有者、賃借人、永小作人其の他權原に基き農地を耕作することを得る者其の農地を耕作以外の目的に供せんとするときは命令の定むる所に依り地方長官の許可を受くべし
前項の許可には條件を附することを得
第七條第一項及び第二項中「第四條第一項又は第六條の」を「命令を以て定むる」に改める。
第七條の二を削る。
第九條第一項及び第三項中「解約」の上に「解除若は」を、同項の次に左の一項を加へる。
前項の承認を受けずして爲したる行爲は其の效力を生ぜず
第九條の八を第九條の九とする。
第九條の八 小作料の額が田に在りては通常收穫せらるる米の價額、畑に在りては通常收穫せらるる主作物の價額の一定割合に相當する額を超ゆるときは農地の賃借人又は永小作人は當該農地の賃貸人又は所有者に對し其の一定割合に相當する額に至る迄小作料の減額を請求することを得
前項の一定割合は中央農地委員會の定むる基準に從ひ都道府縣農地委員會之を定む但し田に在りては二割五分、畑に在りては一割五分を超ゆることを得ず
前項に規定するものの外第一項の規定の施行に關し必要なる事項は命令を以て之を定む
中央農地委員會に關する規程は勅令を以て之を定む
第九條の十 耕作の目的に供する爲にする農地の賃貸借又は永小作に付ては書面に依り小作料の額、支拂條件及減免條件、賃貸借又は永小作の存續期間、敷金、修繕費、用排水費及有益費の負擔其の他賃貸借又は永小作の内容を明ならしむべし
第十五條第二項第一號中「本法」の下に「其の他の法律」を加へる。
第十五條の二 市町村農地委員會は會長及委員を以て之を組織す
會長は委員に於て互選し其の選に當りたる者を以て之に充つ但し委員に於て會長を互選すること能はざるときは第八項の規程に依り選任せられたる委員の中より地方長官の選任したる者を以て之に充つ
委員は左の各號の區分に從ひ各號の一に該當し被選擧權を有する者に就き當該各號に該當し選擧權を有する者の選擧したる者を以て之に充つ
一 耕作の業務を營む者にして農地を所有せざるもの又は耕作の業務を營む農地の面積が其の所有する農地の面積の二倍を超ゆるもの
二 農地の所有者にして其の所有する農地に付耕作の業務を營まざるもの又は其の所有する農地の面積が耕作の業務を營む農地の面積の二倍を超ゆるもの
三 耕作の業務を營み且農地を所有する者にして前二號に該當せざるもの
前項の規定の適用に付ては耕作の業務を營む者の同居の戸主若は家族又は耕作の業務を營む者の戸主若は家族にして命令を以て定むる特別の事由に因り其の者と同居せざるに至りたるものの所有する農地は之を當該耕作の業務を營む者の所有する農地と看做す
第三項の規定の適用に付ては同項各號の一に當該する者の同居の戸主又は家族は之を當該各號に該當する者と看做す
第三項の規定に依り選擧せらるべき委員の定數は同項第一號の區分に屬する者に在りては五人、同項第二號の區分に屬する者に在りては三人、同項第三號の區分に屬する者に在りては二人とす
地方長官必要ありと認むるときは特定の市町村農地委員會に付第三項の規定に依り選擧せらるべき委員の定數を増加することを得此の場合に於ては同項第一號の區分に屬する者に就き増加すべき委員の定數は同項第二號及第三號の區分に屬する者に就き増加すべき委員の定數の合計と等しきことを要し且増加すべき委員の定數の合計は十人を超ゆることを得ず
地方長官必要ありと認むるときは第三項の規定に依り選擧せらるる委員の外三人を限り委員を選任することを得
前項の委員を選任するには第三項の規定に依り選擧せられたる總委員の同意あることを要す但し第二項但書の規定に依り會長に充つべき委員を選任せんとするときは此の限に在らず
委員は名譽職とす
第十五條の三 市町村の區域内に住所を有し命令を以て定むる面積の農地に付耕作の業務を營む者若は當該市町村の區域内に於て命令を以て定むる面積の農地を所有する者又は此等の者の同居の戸主若は家族は市町村農地委員會の委員の選擧權及被選擧權を有す
前條第四項の規定は前項の場合に之を準用す
第十五條の四 左に掲ぐる者は選擧權及被選擧權を有せず
一 未成年者
二 禁治産者
三 六年の懲役又は禁錮以上の刑に處せられたる者
四 六年未滿の懲役又は禁錮の刑に處せられ其の刑の執行を終り又は執行を受くることなきに至る迄の者
左に掲ぐる者は被選擧權を有せず
一 準禁治産者
二 破産者にして復權を得ざるもの
第十五條の六第三項但書中「未成年者及禁治産者に在りては法定代理人、」及び同條第四項を削る。
第十五條の九第一項中「一年」を「二年」に改め、同項但書を削り、同項の次に左の三項を加へる。
第十五條の二第三項各號の區分の一に屬し選擧權を有する者は當該區分に屬し選擧權を有する者の二分の一以上の同意を得て當該區分に屬する者に就き同項の規定に依り選擧せられたる委員の全員の改選を市町村長に請求することを得地方長官は特別の事由あるときは第十五條の二第八項の規定に依り選任したる委員を解任することを得
第十五條の二第九項本文の規定は前項の場合に之を準用す
第十五條の十中「又は其の屬したる第十五條の二第三項の區分に屬せざるに至りたるとき」を削る。
第十五條の十一に左の二項を加へる。
市町村農地委員會の會議は公開す會長は議事録を作成し之を縱覽に供すべし
第十五條の十三第二項第一號中「本法」の下に「其の他の法律」を加へる。
第十五條の十四第三項を次のやうに改める。
委員は左に掲ぐる者を以て之に充つ
一 第十五條の二第三項の規定に依り同項第一號の區分に屬する者に就き選擧せられたる委員に於て互選し其の選に當りたる者 十人
二 第十五條の二第三項の規定に依り同項第二號の區分に屬する者に就き選擧せられたる委員に於て互選し其の選に當りたる者 六人
三 第十五條の二第三項の規定に依り同項第三號の區分に屬する者に就き選擧せられたる委員に於て互選し其の選に當りたる者 四人
四 學識經驗ある者の中より主務大臣の選任したる者 五人乃至十人
第十五條の十五 第十五條の二第十項、第十五條の六乃至第十五條の八、第十五條の九第一項乃至第三項第五項第六項及第十五條の十乃至第十五條の十二の規定は都道府縣農地委員會に之を準用す但し第十五條の九第二項中市町村長とあるは地方長官、同條第三項中地方長官とあるは主務大臣、第十五條の二第八項とあるは第十五條の十四第三項第四號とす
第十五條の十六中「委員をして」を「委員若は委員會の事務に從事する者をして」に改める。
第十六條第一號中「第四條第一項の團體が第三條又は第四條第一項」を「第七條」に、同條第二號及び第三號中「第四條第一項又は第六條」を「第七條」に改める。
第十七條の二 第十五條の二第三項各號の區分の何れかに付被選擧權者の數同條第六項に規定する定數に滿たざる市町村に設置せらるべき市町村農地委員會に關しては勅令の定むる所に依り特例を設くることを得
特別の事情ある市町村には勅令の定むる所に依り市町村農地委員會を置かざることを得此の場合に於ては本法に依り市町村農地委員會の權限に屬せしめたる事項は當該市町村の隣接市町村に設置せられたる市町村農地委員會にして地方長官の指定するもの之を處理す
地方長官特に必要ありと認むるときは命令の定むる所に依り市町村の區域を二以上の地區に分ち市町村農地委員會に代へ各地區に地區農地委員會を置くことを得
本法中市町村農地委員會に關する規定は第二項の規定を除くの外前項の地區農地委員會に之を適用す
第十七條の三第一項中「町村又は町村長に關する規定は」の下に「町村組合にして町村の事務の全部又は役場事務を共同處理するものの存する地に在りては町村組合又は組合管理者に、」を加へ、同條第二項を削る。
第十七條の四中「第六條の二第一項」の上に「第四條、」を加へ、「第九條の八」を「第九條の九」に改める。
第十七條の五中第二號を第三號とし、第一號を第二號とし、同條に第一號として左の一號を加へる。
一 第六條の規定に違反したる者
第十七條の六中「前條第一號若は第二號」を「前條第一號、第二號若は第三號」に改める。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
第四條の改正規定は、この法律施行前從前の第六條第三號の規定により從前の第五條の規定による認可を受けないでした農地に關する契約で當該契約に係る權利の設定又は移轉に關する登記及び當該農地の引渡のいづれもが完了してゐないものについてもこれを適用する。
この法律施行後勅令で定める時期までは、第九條第三項の規定中「市町村農地委員會の承認」とあるのは、「地方長官の許可」と、同條第四項の改正規定中「承認」とあるのは、「許可」と讀み替へるものとする。
登録税法の一部を次のやうに改正する。
第十九條第八號の二中「第四條、第六條」を「第七條」に改め、同條第九號中「第六條」を「第七條」に改め、「若は第四條」及び「第四條、」を削り、同條第九號の二中「第四條の團體か同法第三條又は第四條」を「第七條」に、同條第九號の三及び第十二號中「第四條、第六條」を「第七條」に改める。
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〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=27
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028・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 只今議題になりました自作農創設特別措置法案及び農地調整法中改正法律案に付きまして、其の提案の理由の大體を御説明申上げます
今日我が國の當面致して居りまする最大の問題は、「ポツダム」宣言の趣旨に則りまして、國内の各分野に於きまする民主化を促進致しまするのみならず、此の基盤の上に生産を再開致し、社會的な生産力を増強致しまして、民主的日本再建の方途に遺憾なからしむることであると存ずる次第であります、洵に社會的生産力の増大なくしては、日本の民主主義も其の豐かなる實を結ぶことは出來ないと考へるものでござりまする、斯く考へて見まする時に、我が國の産業の構造に於きまして、其の基盤を成しまする所の農業に致しまして、假に其の生産力の發展が停滯致し、さうして低く、其の構造が依然として近代化されずして止まりまするならば、再建日本の基盤は洵に脆弱でございまして、隨ひまして日本の民主主義の發展も亦いびつにならざるを得ないと信ずるものでございます、此の結果を避けまする爲には、農業制度の基本を成しまする所の農地制度の根本的な改革を不可缺の條件と致すのでございます、即ち農地の所有、分配、利用の關係を合理化することに依りまして、耕作する農民の手に餘剩の蓄積の餘地を與へ、此の蓄積されたる餘剩を其の經營に再び投資することに依りまして、農業の近代化と、社會的生産力發展の途を開きまして、農村の民主化を促進することこそ、鞏固なる地盤の上に民主主義的日本を再建するの途であると考へるものであります、此の觀點から致しまして、政府は去る第八十九囘臨時議會に、自作農の創設の強化、小作料の金納化及び農地委員會の民主化竝に強化を内容と致しまする、一聯の農地制度の改革を致しまする所の農地調整法改正法律案を提出致しまして、是が成立を見たのでございまするが、其の實施後の諸情勢の推移と變遷とは、より完全なる農地改革を必要とするに至つたのでございます、されば第一次農地改革を更に愼重に檢討致しまして、此の基本線に沿ひまして、其の強化徹底を圖つて參ることに致したのでございます、即ち第二次の農地改革に依りまして、我が國の小作地の大半は、國家自らの手に依りまして、短期間に、強力に、且つ公正に農民に開放をされまするのみならず、分散致して居りまする現在の我が國の耕地は、交換分合の方法に依りまして集團化せられることに依りまして、經營の合理化は期待せられますると共に、未墾地に付きましても、國家自身が迅速に之を取得致しまして、之を開發し、其の途を開いて、既墾地の開放と相俟ちまして、農地改革の效果を全うすることと致したのでございます
斯く致しまして、今囘の第二次農地制度の改革に依りまして、我が國農村社會の構成は變貌するに至りまして、自作農でありまする所の中小農民が、其の構成の主流を成すに至るでありませう、勿論此の農地制度の改革の結果を以ちまして、直ちに我が國農村の民主化が成れりと即斷するものではございませぬ、併しながら今囘の農地制度改革に依りまして、彼等の地位は強化せられ、彼等は其の公正なる勞働の成果を享受致しまして、其の生産方法を近代化し得るの道を開かれますると共に、民主的な教養を身に付け得るの機會を得ましたことは、明日の明朗なる農村發展の基礎を確立するに至つたと信ずるものでございます、斯かる發展性に富みました、變貌致しました民主的農村の基盤の上にのみ、壯麗なる平和日本の再建は可能であると確信致すのであります、是が今囘第二次農地制度改革を實施致しまする爲に必要でありまする所の、自作農創設特別措置法案及び農地調整法中改正法律案を提出致しましたる所以でございます、以下兩法案の主要なる内容に付きまして、其の概要を御説明致したいと存じます
先づ自作農創設特別措置法案の内容に付てでございまするが、第一は自作農の創設に必要でありまする所の農地は、農地委員會の計畫に從ひまして、國家が自ら土地所有者から強制的に買收を行ひまして、之を自作農となるべき者に賣渡すことに致したのでございます
第二に買收の對象でありまする所の農地は、不在地主の所有しまする農地は勿論、在村地主の所有する小作地に付きまして、從來は全國平均五町歩までの保有が認められて居たのでございましたが、今囘は内地では概ね一町歩、北海道では四町歩に引下げまして、之を超える小作地全部約二百萬町歩を買收することに致したのでございます、併しながら自作地に付きましては、從來通り原則として買收を致さないことと致して居るのでございます、國家は此の買收しました小作地に、概ね二箇年間に自作農を創設致す所存であります
第三に、農地の買收價格は現行通りでありますが、農地の買收を受けました地主に對しましては、一定面積を限度と致しまして、現行通りの額の報償金を交付することに致して居るのでございます、唯買收代價の支拂に付きましては、現下の金融事情に鑑みまして、農地證券の交付に依ることと致しました
第四に農地を買受けた農民は、其の可能の限度で農地代價を一時拂ひ致し、其の殘額は低利で年賦の長期の償還の途を確保されて居りますると共に、將來經濟事情の激變に依りまして、假に農産物の價格が低落致すやうな場合がございましても、其の年賦償還は土地の購入者に取りまして過大の負擔となることのありませぬやうに、政府に於て之を減免致しまする保障をも與へて居る次第でございます、又未墾地に付きましても、既墾地に準じまして之を買收することと致して居るのでございます
次に農地調整法中の改正法律案に付きましては、第一番に、自作農創設特別措置法案の制定に照應致しまして、自作農創設の事業の實際に當りまする農地委員會の構成を民主的に改組致しまして、土地所有者と小作人と同數を以て組織することに致して居るのであります
第二番目に、自作農創設事業の圓滑な實施を圖りますると共に、將來農地の兼併を防止致しまする爲に、農地の移動の統制及び小作地取上の制限を一層強化することと致したのでござります
第三番目には、右自作農創設に關しまする措置と相俟ちまして、殘存しまする小作關係に付きましても、小作料の最高額の制限でありますとか、小作契約の文書に依る締結でありまするとか、必要なる措置を講じまして、小作關係の適正と、小作人の地位の向上とを圖ることに致して居るのでございます、以上が兩法案の主要なる内容でござります、何卒愼重御審議の上速かに御協贊あらんことを御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=28
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029・山崎猛
○議長(山崎猛君) 質疑の通告があります、順次之を許します──森幸太郎君
〔森幸太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=29
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030・森幸太郎
○森幸太郎君 只今上程になりました農地調整法一部改正法律案、自作農創設特別措置法案の二案に付きまして、質問を致したいと思ふのであります
此の二法案は、引つ括めて農地改正法と世間では稱へられつ居るのでありますが、此の改正法案が新聞等に傳はりますると、全國民が、敢て農村のみならず、此の法案の將來に付て非常なる心配を致して居るのであります、此の法案は、今囘當議會に提案されました憲法改正法案に次ぐべき重大なる法案と私は考へるのであります、敗戰の日本が今や起ち上らんとする、此の我が國の基盤をなす所の農村が、此の法案に依つて根本的に改革せらるるのであります、全國民は此の法案の審議の情勢に付きまして、耳を聳てて居ることと存ずるのでありますが、私は此の議會を通じまして、此の法案が政府の意圖して居ります所の、眞に農村の再建に其の成績を擧げるかどうかと云ふことを一面疑ふ點があるのであります、抑抑此の農地調整法と云ふものは、諸君も御承知の通りに昭和十三年四月に初めて發布せられたのであります、是は支那事變が勃發致しまして正に一年、農村に於きましては、軍事に或は工場に其の勞力を捧げまして、農村は勞力の缺乏に依つて非常なる苦難に陷りまして、戰時中食糧増産の最も大なるにも拘はりませず、あちらにもこちらにも不耕作の土地が生ずるやうになつたのであります、此の場合に於て、政府は農地調整法を施行致しまして、さうして兵役其の他特別の事由に依つて自耕作不能、管理不能の場合は、市町村其の他適當なる團體が管理を引受け、保護、利用又は買取り、自作農創定其の他農地調整に副ふやうに處理せしめたのであります、又町村は此の法律の下に、自作農創定の爲め土地を所有し、貸付する場合、認可を得て讓渡又は使用收益の權利の約定を協議する、土地處分には農地委員會に通知せしむること、自作農創定地の處分を自由になさしむること、小作權の確保、小作爭議の解決を積極的になすこと、農地利用關係に農地委員會の調査をなさしむること、委員會に依り自作農創設維持、開墾、交換分合、小作調停等を自治的に處理せしむることを此の農地調整法で決めたのであります、其の當時有馬國務大臣は、政府の政策は現状に餘り懸け離れた政策を立てると云ふことは決して宜いことではない、斯う云ふ氣持を、此の農地調整法の制定に當つて政府は明かに致したのであります、而して此の戰爭は遂に敗戰を以て結末を致したのでありまするが、是が爲に我が國内の事情は一變致しまして、昭和二十年の十二月に此の農地調整法の一部が改正されたのであります、此の改正せられましたる所の農地調整法は、地主小作間の互讓相助の精神に則つて、地主小作者の地位の安定、生産力の維持増進、經濟の更生、平和保持の目的に依り調整をなし、生産力の發展と農村民主化の基礎を確立する、是が改正農地調整法の目的と致して居る所であります、而して其の行はんとする法の内容に於きましては、自作農の創定を強化促進し、農地の移動の制限統制、農地價格の統制、小作料の金納化、農地委員會の刷新、此の五つの項目を掲げて居るのであります、然るに今囘提案されましたる所の農地調整法中改正法律案の目的とする所は、只今和田國務大臣が説明せられました如く、耕作者の地位の安定及び農業生産力の維持を圖る爲め、農地關係の調整をなすことを目的とせられまして、從來の農地調整法と全く其の行き方を變へて居るのであります、私は今囘此の農地調整法一部改正法律案と云ふ此の提案よりも、根本的に農地調整法と云ふものを御出しになつたらどうかと云ふことを考へさせられるのであります、而して本法案の提出の動機に付て政府の所信を質したいと思ふのであります
昭和二十年十二月七日より、只今行はれて居りまする所の農地調整法は、此の議會に於て委員會が開かれて居つたのであります、二十年十二月七日に初めて本議會に於て委員會が開かれて、さうして其の改正法律案が特別委員會に依つて審議されて居りましたが、十二月九日に當つて聯合軍司令部より覺書が交付されたのであります、此の覺書は洵に抽象的なものでありまするけれども、特に五つの項目を掲げて居ります、それには極端なる零細農業の形態であること、又日本の農業者が小作料の重壓に苦しんで居ること、高率の金利の爲に負債に苦しんで居ること、政府の政策が商工業者よりも農業者に對して重壓的であること、農民の利害を無視せる所の政府の權力的統制があること、以上五項目を擧げて之に對處すべく命ぜられてあります、さうして其の具體的對策と致しまして、不在地主より耕作者に對する土地所有權の移讓、耕作せざる所有者より農地を適正價格を以て買取る制度、耕作者收入に相應せる年賦償還に依る小作人の農地買取り制度、小作人が自作農化したる場合に再び小作人に轉落せざる保障をする爲の制度、此の四つを掲げて、以上の覺書は交付されたのでありますが、右は二十一年三月十五日まで──本年の三月十五日までに對策を提出すべく命ぜられてあります、特に此の保障策には、次の條項が條件とされて指令されたのであります、第一に適正利率に依る長期及び短期の信用の普及及び確保、第二に加工、配給業者の搾取に對する保護手段、第三に農産物の價格の安定策、第四に技術の啓發普及策、第五には農村組合運動の釀成竝に奬勵計畫、之に對して三月十五日、日本政府は囘答文と共に、第八十九議會に於て決議せられたる所の農地調整法を提出せられたものであります、之に關し聯合國司令部に於ては、其の文書に付て、A項、不在地主より耕作者に對する土地所有權の移動、B項、不耕作地主より農地を適正價格にて買取る制度、C項、小作者收入に相應せる年賦償還に依る小作人の農地買收制、及び地主より小作人への土地移讓に關することに付て不滿足であるからと、更に指令されたのであります、以上の事實に對しまして、少しく政府の所信を質したいと思ふのであります、聯合軍は九月の初めに進駐したのであります、さうして直ちに國勢の調査に著手致したものでありますが、十二月九日附を以て日本政府に覺書を交付されたことは、固より勝れたる所の科學の調査に依つて聯合軍がやられたこととは思ひまするけれども、日本政府より提出せられたる相當の資料を本に參考とせられたことも私は事實であると存じます、覺書A項、B項、C項は、現實と相當の差ある決斷と我々は考へるのでありますが、日本政府は本議會に對して、聯合軍に提出せられた所の資料を參考に提出せられんことを要求するものであります
次に、二十年十二月九日の指令は絶對のものと思惟致しますけれども、日本政府は全面的に之を、適正なる觀察に基いて立案せられたと承認せられるものでありますか
次に政府は、三月十五日囘答文の序説に於て、高率なる現物小作料と遺制的小作關係に支配されて居る爲に、經營の合理化は阻碍せられ、農民所得を常に低位ならしめて居る、此のことが一方に農民の貧窮を齎すと共に、他方地主的土地所有を有利ならしめ、農民の寄生地主化を齎したと報告をして居ります、政府は右の事實を何れの點に於て認められましたか、明示されんことを要求するものであります、尚ほ十二月九日の覺書に指令されて居る所の、農産物價の安定、技術の啓發普及、加工配給業者の搾取に對する保護政策と云ふことを司令部は命令して居るのでありますが、是等に對して如何なる處置を御執りになつたか、明かに致されんことを要求するものであります
二十年十二月政府の制定せる農地調整法の改正は、自作農創設強化と小作關係の合理化を經緯として樹立せられたものでありまして、之に依つて耕作人の地位の安定と、農業經營の近代化を齎し、農業生産力の正常なる發展と農村の民主化を圖る爲め、現段階に於ける農地改革の最も適正な合理的な手段となるであらうと、日本政府は聲明致して居ります、果して政府は此の確信を今尚ほ抂げずにおいでになりますか、御伺ひ致したいのであります
政府は事變の發生に依つて、其の處置として本法を制定し、更に戰爭の終結に至つて、生産力の發展と農村民主化の基礎確立を目的として改正法を制定せられたものでありますが、先程も申しました通り、今次の改正は從來の立案の精神と根本的に相違致して居ります、個人的所有權に對して、強權の發動に依つて之を買收し、農政上一大革命をなすものと考へられます、農村の平和は攪亂せられ、果して生産力の發展、民主化を期し得るものとなされるか、政府は、此の土地の強制買收は、將に制定されんと致す所の憲法草案第二十七條の第二項を適用し得ると御考へになつて居りますか、我が國の農業經營は、由來家族的な農業經營であります、家族の勞力が即ち此の農業經營の基礎を成して居つたのでありまするから、家族勞働力の消長は即ち耕作面積の増減となります、自作、小作は常に變轉致しまして、世襲的なる所の、又封建的なる所の僅少なる地主を除いては、絶對に三世相襲の地主として認められるものはないのであります、概ね小さい地主であります、決して搾取的に地主として今日まで存在したものはないと考へるのでありますが(「ノーノー」)政府の所見如何
次に政府は我が國の農村の實情を考察して、將來農村に收容する人口をどの程度に考へて居られるのでありませうか、敗戰の結果、滿洲を、朝鮮を、臺灣を閉め出された日本と致しましては、此の人口の増加率を持つ我が國民と致しまして、此の狹き國土に於て將來増大する人口に對して、農村は此の人口を養ふだけの力がどの程度まであると農相は御考へになつて居るのであるか、農家一戸當りの耕作面積は現在九反八畝歩であります、將來適正農家と致して、適正農家の規模をどの程度に農林大臣は御定めになつて居るか、人口は増加して、耕地は減少する、又今囘の農地調整法の實施に當りまして、今囘新しくされたる所の憲法に依つて、家族制度の變化が、又是れ自然の結果となることを我々は認めるのであります、一町歩の土地を所有致しましたものが、此の家族の平等なる權利を認める上に於て、其の分配の爲に、耕作者として將來立つことの出來得ないやうな境遇に立至りはしないかと云ふことを心配するのでありますが、此の點に對して農林大臣は如何に御考へになつて居るのであるか
又新興地主に對して司令部は特に指令を致して居るのであります、取得せられたる所の全農地の賣却又は處分を日本政府に禁止する權限を持つ本計畫に依り、土地を購入する小作人は、償還期間三十年の間、其の土地を賣却し又は其の他處分することが出來ない、但し政府が土地の賣却又は處分を正當と認むる時は此の限りではないと制約されて居るのであります、此の命令を政府は必ず遵守し得る所の確信を御持ちになつて居るか
次に政府は小作料を金納に改められて居るのでありまするが、小作料を適正なる價格として如何に御考へになつて居らるるか、又土地の買收地代であります、田地を四十倍とし、畑を四十八倍と致しました此の計算は、慥か和田國務大臣が松村農林大臣の下に居られた時に計出提案された數字と考へるのでありますが、今日の場合に於て尚ほ此の四十倍若しくは四十八倍と云ふものが適正であると御考へになつて居るか、此の點も御尋ね致して置きたいと思ひます
次に本法案の執行に伴ひまして、農村の今までのやうな美しき淳風美俗は地を拂ふではないかと思はれるのであります(「ノーノー」)殊に不耕作地主と致しまして、今日まで地方自治に非常に貢獻を致して居る所の階級があるのであります、例へば町村長の如き、或は部落會長の如き、或は農業會の役職員の如き、農耕を捨てて地方自治體の爲に獻身的に活動して居つて呉れる所の階級があるのであります、是等の人人が此の不耕作地主として處置される場合に於ては、其の人一代の問題ではない、將來に繋がる問題でありますが爲に、地方的指導階級として獻身的に働いて居つた今までの是等の人々が、非常なる迷惑を來し、今までの如くに地方自治體の爲に働いて呉れないことになりはしないかと云ふ心配があるのであります(「心配無用」と呼ぶ者あり)此の點に付て政府の所信を聽きたいのであります
又農産物の價格の安定は、既に司令部よりも條件として附せられたのでありますが、平和國家建設の上に於きまして、交易を開始する立場になりました時の我が國の農産物價の安定であります、三年、五年、十年の將來の見透しをすることは誰しも困難ではありますけれども、自由貿易を許され得るやうな時期に際して、此の農産物の價格に對して如何に處置されんと今より考へられて居るのか、是は平和が克服して對等の條約を結び得る所の位置を許されるまでに、既に我々は考へて置かなければならぬ問題と思ふのであります、主要食糧の輸入將に目前に迫つて居る時に、農産物價に對する政府の所信を承りたいのであります
次に特に此の際申上げたいことは、今囘の議會に於て我々の審議致しますることと、政府との間に於て、國民諸君の窺ひ知ることの出來得ない部面があることは皆樣御承知と思ひます、なぜ今少しく政府は勇敢に考へないのであらうか、又衆議院はなぜ今少し徹底して考へて呉れないだらうかと云ふ所の疑問を國民が持つて居られることは事實であります、そこで本法案に對して一言政府の責任を質して置きたいことは、本法案は國際的な關係の重大なる法案であります、既に「マッカーサー」司令部は、進駐一箇年を迎へて、日本の民主主義政治が著々と其の緒に就いて居る、此の農村問題に付ても今や劃期的な進歩をなしつつあると、此の法案の成立に對して一片の支持を示されてあります、又五月二十九日より開かれたる所の對日理事會に於ても、此の法案と同じやうな氣持に於て色々討議されて居ります、之に依つて國民は此の農地調整法が我が國の農村の事情を根本的に變革するものなりと云ふ考へを以て、非常な注意を致して居ることは申上げるまでもないのであります、此の法案を我々議會が御預り致しまして、今日より審議を進める上に於て、政府は我々議會の審議權を何處まで尊重される態勢を御整へになつて居るか、若しも此の法案が我々の一片の審議をも具現さすことを許さなかつたならば、我々今後日を重ねて審議することは所謂徒勞であります、寧ろ「ポツダム」宣言受諾に伴ふ所の緊急勅令を以ておやりになれば宜しいのである
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=30
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031・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=31
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032・森幸太郎
○森幸太郎君(續) 我々は此の審議を開くに當つて政府の態勢を明かにして置く必要があるのであります、以上此の法案に對しまして根本的な理念に付て政府の所信を質した次第であります
尚ほ最後に一言大藏大臣に御尋ね致したいことは、將に提案されんとして居りまする財産税に對しまして、此の農地法に於ては賃貸價格の田は四十倍、畑は四十八倍を以て評價されるのであります、此の價格を大藏省は財産税捕税の基準として容認されるかどうかと云ふ問題であります、今日まで大藏當局、所謂税務署のやつて居りますることは、土地價格に於て三色にも、四色にも現はれて居つた事實があるのであります、今囘財産税が全國的に課せられる、其の土地の捕税基礎が、此の農地法に定めて居る所の四十倍若しくは四十八倍の比率に依つて容認されるか否や、此の點を附加へて御尋ね致したいと思ふのであります、以上で私の質問を終りたいと思ひます(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=32
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033・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 只今の御質問に對しまして簡單に御答へ致します、順序が多少狂ふかも知れませぬが、其の點は御諒承を願ひます
第一點は十二月九日の聯合軍司令部の農地改革に付ての覺書の前文等を正當と認めるかと云ふことでございますが、是等に付きましては、聯合軍司令部に於きましても凡ゆる方面から資料を蒐集し、又農林省方面からも資料を出しまして、其の資料に基きましての認定でございますので、出ました數字を如何に認定するかは、聯合軍司令部に於きまする全き自由でありまして、多少見解を異にする點がありましても、それに對しましては、我々としては唯多少の意見が違ふと言ふより外は致し方ないのであります、勿論此の前文に付きましては、此の前文の書かれました前提となりますものには、或は日本の恐慌時代の考へが可なり入つて居るとは思ふのでございます、併し是はそれ等の事實を基礎としての色々の認定でございますので、唯さうであると言ふより外には致し方がないのであります
三月十五日農林省が聯合軍司令部に出しました報告の前文に於て、日本の物納小作料が高く、其の高い物納小作料の爲に經營に殘るべき餘剩が少く、隨て農民の地位がいつまでも不安定な状態にあると云ふ點を指摘して居る點に付ての御答へでございますが、私はやはり日本の物納小作料は高かつたと思ひます、不合理な點が多々あつたと思ふのであります、是は事實として認めざるを得ないのであります、何となれば外國とは色々の事情が違ふと致しましても、僅か一町、二町の土地を持つて、而もそれで其の小作料の上に生産が出來て行つたと云ふ状態は、どうしてもそこに何等か不合理な點がやはりあつたと認めざるを得ないのであります、唯私は是等の點を日本の現實として認め、其の現實に即して日本の農村を眞に民主化して、明るい立派な農村にすると云ふことに思ひを致すべきだと考へて居るのであります
第三點の農地改革の正當性に付きましては、是は此の前農地制度の改革を出しました時の考へと變つて居りませぬ、やはり日本の農村を民主化し、且つ日本の社會を眞に民主化された社會に致します爲には、どうしても其の一つの必要な條件として、農地改革は行ふべきものであると考へて居るのであります、而も此の農地改革は、現在の日本の現實と歴史とを十分我々と致しましては考察した上での農地改革であると信じて居る次第でございます
其の次は中小地主の搾取を認めるや否やの點でございまするが、是は日本の農地の一番大きな問題は、外國に於けるが如く大地主の存在にはあらずして、不耕作の中小地主の存在にあると云ふ點にあるのであります、是は一面から言ひますれば、日本の土地飢饉を示す現象でもあり、凡ゆる問題が茲に表現されて居るのでございますから、此の不耕作中小地主の問題を解決せずして、日本の農地制度の改革はあり得ないのであります(拍手)
次に人口包容力の點でございますが、是は日本の農村を、今囘の農地制度の改革に依りまして民主化し得るの途を開きましても、唯それだけに依りまして、日本の農村に於ける人口の包容力が急に殖えると云ふことは言へないのでありまして、是は農地制度の改革と共に農業經營を改善致しまして、或は協同的な組織を入れ、或は機械を導入し、或は家畜を導入して、其の生産力自體を高めることに依りますと同時に、又工業一般の發達と關係せしめて考へることに依つて、初めて人口包容力を云々し得るのでございます、併し現在の状況に於きましては、日本の農業部面に於ける人口包容力を、或る程度に於ては考へなければならぬと思ふのであります、開墾を致しまして、其處に人口の包容を考へて居るのも其の一つの現はれであります
次に適正規模と今囘の農地制度の改革、殊に自作農創設との關係でございまするが、今囘の農地改革の主眼とします所は、小作地二百萬町歩を三百萬人の小作人に開放致すと云ふ點が、一つの大きな主眼となつて居るのでございまするが、之を行ひまするには、勿論國家が之を一手に買收致し、又交換分合に依る集團化も行はれますので、出來得る限り其の規模に於ても適正なるやうに致したいと考へて居る次第でございますが、此の點に付きましては、片方の目的との關聯もございまするので、適正規模農家其のものを徹底的に創設すると云ふことには參らないのでありまして、是は今囘の農地の改革に依りまして土地均分を行ひました後の問題として出て來る次第でございます、此の點に付きましては、將來に於ける日本の過小農家の處理の問題と關聯致しまして、政府に於ては、之に付ての適切なる處理を講ずる積りで居る譯でございます
次に家族制度との關係でございまするが、今囘憲法改正に依りまして、民法上の家と云ふものはなくなるのでございまするが、併し協同體としての結付きはそこにあるのでございまして、假令憲法改正に依つて民法上の所謂家族制度がなくなりましても、日本に於きまして、具體的な協同的な結付きを主に致しました、家族勞力を主に致した所の農業經營と云ふものは、依然として存在して行くことであると考へて居ります
それから次は、三十年間に亙つて、自作農地となりました其の農地の處分は制限せられることになつて居るのでございまするが、是は自作農の創定を行ひまする上に於きましては當然のことでございまして、自作農の創定として國家が小作人に賣渡しましたる土地を、小作人が直ちに自由に處分出來るやうな状態に放置しまするならば、自作農創定の目的は直ぐに失はれてしまふのでございまするから、是が制限を置くことは、各國の例を見ましても、自作農創定制度の不可缺な要件でございまして、此の點に付ては異論はないのであります、併し此の三十年間に亙つて、自作農が小作農に轉落するのを防ぎ得る自信ありや否やと云ふ御話でございまするが、本制度に於きましては其の點を十分考へまして、小作人は現在の小作料と、それに公租公課とを加へたものを支拂ふことに依つて、小作農になり得ると云ふ點を考へまして、農地價格と云ふものを決定致し、且つ今囘の法律の改正に依りまして、將來經濟事情の變動に依りまして農産物が如何に下落致しましても、其の收益の三分の一を、若しも年賦償還金と公租公課を加へたものが超えますならば、國家は之を減少するの方法の規定を設けて居るのであります、尚且つ不作其の他の災害に因りまして、或は耕地が流失致したやうな場合に於きましては、年賦金を免ずるの方法をも講じて居るのでございまして、其の方面より致しまして自作農の轉落を防いで居るのでございます、併し是は一つには此の法文のみならず、將來は自作小作を含めました經營部面の改善、其の他國家に依りまする所の適當なる保護施設に依りまして、自作農の轉落を防ぐべきである、斯樣に考へて居る次第でございます、小作料はどの程度が適正であるかの問題は、是は其の土地其の時の條件に依つて異なるのでございまして、何「パーセント」が適正小作料であるかは、そこに凡ゆる疑惑を招く虞がありまするので、其の點に付ての御答へは避けたいと思ふのであります
土地價格が適正なりや否やの點でございまするが、是は御承知のやうに今囘の農地制度の改革は、前の農地制度の改革と同じやうに、小作人に土地を與へ、其の自作人となれる者が、永き將來に亙つて自作農として之を經營し得ると云ふ建前から致して居るのでございまするから、土地價格が餘りに高ければ、其の目的を達しないのであります、隨ひまして現在の小作料に相當する所の價格を支拂ふことに依つて自作人たり得ると云ふ觀點より致しまして、土地の標準價格を決めて居るのでございます、殊にさう云ふ見地から採りました所の土地價格でございますので、之を「インフレ」の現在の傾向に追隨して變更することは出來ないのでございまするし、又不適當であると考へるのであります
次に今囘の農地改革に依りまして、農村の從來の地主は崩壞致し、大きな地主がなくなり、又地主として存在して居つた者がなくなりまするが故に、農村の指導者層は變るではないか、其の變ることに依つて農村は困つて居るのではないかと云ふ御話でございますが、從來農村の指導者として働いて居られました方々も、やはり其の人達の人格識見に依ることが主なのでございまして、我々は今後は眞に耕作する中小農民の中から、本當の新しい指導者が出ますることを期待致しまするが故に(拍手)此の點に對しましては、餘り悲觀的な考へは持つて居ないのでございます
最後に議會の審議權の問題でございまするが、是は勿論議會が審議權を持つて居りますることは言ふまでもございませぬ、併し「ポツダム」宣言に依りまする日本の民主主義化は、是は國家の責務でもございまするので、内外に於きまするそれ等の事情は、十分御考慮致されんことを御願ひ致す次第でございます、大略以上を以ちまして私の御答へを終ります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=33
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034・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 御尋ねは財産税の問題でありまするが、本法第六條の價格に依りまして財産税は課けられることになります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=34
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035・森幸太郎
○森幸太郎君 農林大臣の答辯は甚だ不滿足であります、併しながら次の機會に讓りまして、本日は此の程度に止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=35
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036・山崎猛
○議長(山崎猛君) 寺島隆太郎君
〔寺島隆太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=36
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037・寺島隆太郎
○寺島隆太郎君 諸君、長く我が國農村に於ける封建的因習として指摘せられて參りました農地の問題は、今や本案に依つて一應解決を見んと致して居るのであります、私は吉田内閣の勇斷と、和田農相の熱意に對しては、一片の謝意を全國の農村民と共に捧ぐるに吝かではないのであります(拍手)併しながら詳細に本案を檢討致します時に、政府は我が國社會制度、經濟制度の根本的革命を齎すべき重要問題解決に當つて、果して各方面への影響を十分考慮し、其の用意に萬全を期したと言ひ難き憾みを存するのであります、仍て私は本案竝に本案に關聯する數箇の重要問題に付て、政府當局の明瞭なる御答辯を促さんとするものであります(拍手)
〔議長退席、副議長著席〕
先づ第一點として御伺ひ致したい點は、今後の農村竝に農家の經營指導方式如何の問題であります、政府は今般復興國土五箇年計畫を發表せられ、來るべき産業界の配分と、人口問題の骨格とを示されたのであります、仍て我我は祖國再建の上に我が農村の占むべき分野と任務とを見出し得たのでありまするが、顧みて此の國土計畫其のものは、内容極めて杜撰にして、特に農政の部面と照し合して見まする時に、幾多の矛盾、遊離を指摘し得るのでありまするが、内務當局は果して本案策定に當り、農林御當局と愼重なる打合せの下に立案せられたりや否や、御伺ひ致したいのであります(拍手)諸君、零細なる國土に八千萬の國民を養ひ、其の内五千萬人を直接扶養しなければならない我が農村、其の至難な業が果して可能なりや否やの事實は、一に經營の指導、合理化が遂行せられるか否かに懸つて居るのであります(拍手)隨て今後の農政の重點は、今までの試驗場的な技術指導から一轉して、綜合的な經營指導に向つて勵まれなければならないのであります、再建國土五箇年計畫に於て、五箇年後の祖國の穀物の生産目標を七千萬石と規定し、其の經營方針に付ては、主として五箇年間に新たに干拓せらるべき百六十五萬町歩の土地の生産效率に期待致して居ると謳つて居るのでありまするが、其のこと自體に多くの矛盾を包藏するのみならず、吾人をして言はしむれば、尚ほ適正現有農家に對ましては、土地の生産性向上に對する指導が採り入れられなければならないと共に、條件の極めて劣惡なる土地や開墾地、開拓地等に於ては、勞働の生産性向上の爲に、勇敢に機械力、畜力を採入れ、酪農其の他の産業との組合せをなすと共に、更に飛躍致して、個々の農家の作業場が、大なる工場の一部分であるが如き、立體的に計畫せられたる、「エンジニーア」を配して行はれるやうな高度の農村工業を持込むことなくしては、荒蕪地に補助金さへ與へれば茲に美田忽ち成ると考へるが如きは、肇國以來の不毛の土地に對して、理想農村を描く痴人の夢であると言はざるを得ない(拍手)今日歸農者は固より、新たに自作農として出發せんとする地主の諸君も、彼等が眞に熟農として再起せんとするに足る自信の持てる指導が示されて居らない爲に、今日地主は時世の推移に悄然としてうなだれ、小作人は、巧妙なる地主の土地取上げに惻然として脅え、開拓民に至つては、鍬を抱へて不毛の土地に歎息久しく致して居るの現實であります、是は何れも彼等が家を構へ、妻を養ひ、子を哺くみ、以て獨立營生の營みを續けるに足る經營指導が行はれて居らない爲であります、農林當局の今日までの指導は、一個の遊戯でしかなかつたとより考へられないのであります、殷鑑遠からず、經濟更生計畫の名の下に投じ込まれたる莫大の費用は、今日何處にありやと指摘致したいのであります、さればこそ私共は、此の新しき事態に即應する農村の經營形態を如何に考ふべきや、而して如何なる方針に依つて之を指導するかの具體的措置に付て、第一點として農林大臣に承りたいのであります(拍手)
第二點に於て質したいことは、森君も只今指摘せられたる適正規模農地保障の問題であります、本案に依れば、從來地代の名の下に地主に捧げられた生産者の分け前は、耕作者に還元せられる點、一個の特色と進歩とを認むるものでありますが、今日本案に依つて解放救濟されんとする小農、特に小作農民の念願は、食ふに足らない此の狹い國土の上に齷齪致して居る現状から一刻も早く脱して、安心して生きて行くことの出來る耕地を欲して居るのであります、嘗て「デンマーク」が他國に先んじて自作農の創設を行つた時にも、最低一「ヘクタール」と規定致し「ドイツ」が世襲農場法を制定致しました時にも、最高百二十五「ヘクタール」を以て抑へ、最低農家の維持經營が可能なる面積を保障致して居るのでありまするが、何故和田農相は、謂ふ所の勇斷的措置を本法に示しながら、只今森議員の質疑に答へられた如くに、之を單に交換分合に依る運用宜しき事實を以て、適正規模農家が恰も與へられるが如き錯覺を以て此の議場を切拔けんとするのか、何故法の一條として我等の農民の前に端的なる規定を致す用意がないのであらうか、私は第二點に御尋ね申上げたいのであります(拍手)
第三點に、本案が他日運用せられます場合に、現實農村との間に生ずる幾つかの憂慮せられる問題に付て御尋ね申したいのであります、第一は、耕地の分配論上に介在する數箇の問題であります、我が國特殊の「アジア」的原始農業形態の所産である小作農を解放し、國家に依つて土地の合理的再配分をなすことは、本案の中心的使命と致す所でありまするが、本案に依れば餘りにも實績に拘泥致します結果、茲に精農と雖も思ふ土地を得ること能はず、反面惰農も亦實績を有すれば耕地を與へられることに相成りまする結果、そこに不完全利用の土地の發生を憂ふるものであります、彼の「ワイマール」憲法に、所有權は義務を負ふべしと規定致して居るのでありますが、是れ千古に渝らざる鐵則であります、されば土地は之を最も愛し、生産效率を擧げ、責任を負ふ者に優先して與へられなければならないと信じまするが、政府は本案自體に包藏する惰農温存の矛盾を、如何なる措置を以て克服する用意ありやを伺ひたい(拍手)
次に本案遂行の結果は、必然土地を持つ農民と、土地を與へられざる農民と劃然と區別せられ、其の結果土地を有せざる農民は、軈て再び農奴的存在となつて、茲に封建制度が、民主的なるべき農村に再び發生するにあらざるやの懸念あり、之を如何なる措置を以て農林大臣は克服せられる考へなりや(拍手)
又農村の將來に於て、深刻な土地飢饉の下に耕地細分化の問題が、全農家經濟の基底を搖ぶるに至ることと信ずるのでありまするが、特に改正憲法草案政府案第二十二條竝に民法改正草案の指向する所に依れば、男女兩性の本質的平等が、土地財産の上に如何に及ぼされるかと云ふ點に疑義を持つのであります、木村司法大臣は本議會に於て、斯かる場合には特別の措置をなす用意ある旨を言明せられたるも、それは如何なる措置、如何なる方法、例へば世襲相續法乃至は家産法の如き法的措置に依つて克服する考へであるかどうか、其の法的措置を明瞭に、本案審議の第一段階に於て示されたのであります(拍手)
私は第二に、農地の團體管理、農民組合に依る團體協約、農地委員會の運用措置如何の問題の一聯を御尋ね申したいのであります、今や敗戰の結果生じた夥しき失業群は、歸農の形を取つて、さなきだに狹い耕地に殺倒致して居るのでありまするが、其の際是等農家の技術を向上させ、當然存在を豫想せられる兼業農家の生産效率を向上せしむるの一方法として、農地團體管理に關する制度上の確立を認むるものでありまするが、之に對する當局の御用意を承りたいのであります
尚ほ私は小作地に對しましては、小作人を中心としたる、最も民主的なる農民組合の發達を促し、此の農民組合と團體協約を結ばしむることが、即ち農村民主化上、必須の一要件であると信ずるも、之に對する政府當局の用意如何
序に此の際農地委員會に付て申上げたいのであります、委員會の構成こそ本法の死命を制するものであります、之に所謂農村「ボス」の介在を許すが如きことあつては、本法の革命的意圖は畫餅に歸するものと言はなければなりませぬ(拍手)其の際私は、然らば委員會構成に當つては、農村に介在せる半農半商的な經濟「ボス」は固より、民主の名に隱れて蠢動せんとする政治「ボス」も、徹底的に追放しなければならないと思ふ(拍手)當局の用意を承りたいのであります
第三に、私は、開墾開拓上の若干の問題に付て承りたいのであります、今後五箇年間に百六十五萬町歩の開墾開拓をなすに當つて、政府は先づ十六億八千萬圓の價額を投じて、百七萬九千五百町歩の山林原野の買入を企圖致して居ると承るのでありますが、山林原野は從來投機の對象として、買入が極めて困難を豫想せられるも、二箇年を以て之を完遂する自信政府にありや否やを尋ねたいのであります(拍手)
尚ほ私は瘠薄荒凉の新耕地に、無一物無資力の新開拓者が入植して、取るに足らざる補助金を與へられ、それを以て、補助金さへ與へれば新農村が建設出來ると云ふ政府の方針を直ちに打破して戴いて、入植者が焦眉の急を告げて居る營農の生活援護の問題に付て、是が全體の開拓推進の成果如何に及ぼす問題なるを以て、改めて營農援護の問題に付て承りたいのであります
次に日本の農業は、山林竝に漁業權と一體不可分の關係に於て存在致すのであります、然るに本案に依れば、是等との關聯は極めて明瞭を缺いて居るのでありまするが、如何樣なる關聯を持たしむる御積りなりや、更に又他日山林竝に漁業權の兩者に對して、我が農地法案の如き革命的措置を講ずる準備を政府は有して居るか否かを明かにせられたいのであります(拍手)
更に開拓行政に付て、北海道廳は内務省、而して内地は農林省之を所管致し、甚だしく農政の一元化を妨げて居りまするが、之に對して開拓行政一元化上、農林大臣、内務大臣それぞれより御見解を承りたいのであります
第四點に私は農工調整の問題に付て承りたいのであります、今後の我が農村は大いに科學性を採入れ、謂ふ所の多角經營に依つて收入の増加を圖らなければならぬことは勿論でありまするが、是は斷じて彼の農家の現金收入を目途として企てられたる經濟更生計畫の一環たる、副業奬勵の如きものであつてはならない、堂々と其の製品が、世界の「マーケット」に其の存在を主張し得る程度の工業を農村に興さなければならないと考へるのであります、諸君、我が農村は此の美しい環境と、而して純朴なる精神を基盤と致し、其の出來た製品を全世界の平和なる家庭に送つて、一つには今次の戰ひの償ひと、二つには祖國の民主化が、最も明瞭に五千萬の人口を包藏する我が農村に於て著實に行はれて居る現状の姿を、聲なき聲を以て世界の大衆に應ふるの絶好機なりと信ずるものであります、然らば斯かる觀點より、如何なる農工一如の御用意を政府は有するや、私は其の生産效果を幾許に期待し、而して是が現實農村に、何れの時期を以て齒車の展開を切り始むるやの時期に付ても農林大臣に御尋ね致したいのであります
尚ほ工場の地方分散に付て、先般内務省發表の再建國土五箇年計畫と、商工省從來の發表とは、甚だしく懸隔を生じて居るのでありますが、此の時此の際、一括して工場地方分散竝に是が農村工業との關聯に付て、商工大臣の御意見を承りたいのであります
第五點、本案が、激動する經濟界の動向に最も周到なる用意を以て企てられたるや否や、吾人の最も心を寒くする點であります、想ひ起せば半年以前の本院に、第一次改正案が上程せられました際も、我等が先輩議員より、此の點を鋭く追究する所あつたのでありますが、當局の御答辯は何れも、經濟の前途深憂に値せず、愼重に其の運營に當ると言ひながら、其の後數箇月を出でずして、今や「インフレーション」の波は止むること能はざる状態にありますることは、何人よりも政府が最も能く御承知の一點であります、現に一箇五圓の梨は、僅か二箱を以て一反の美田を購ふに足り、一升八十圓の落花生は、一斗足らずを以て一反の畑と交換し得るのであります、斯かる事實が公然と半ば認められて居ることを考へますと、通貨とは凡そ激動常なきものである以上に於ては、他日國内外の情勢一變せば、「デフレーション」に財界が立向はざると云ふことは、何人と雖も保證し難き事實であります、此の激動する通貨を以て、絶對的安定性を有する土地を、而も三十年の長きに亙つて收用するが如きは、恰も値打を失ひたること古新聞紙の如き通貨を以て、祖先相傳の美田を手放さしむる結果にならないか、「デフレーション」が深刻に到來の曉は、如何に農相が減免の規定を設くると雖も、小作人階級に莫大な借財を背負はしめ、以て精神的痛苦を與へる結果にならないか、私は社會革命に固より犧牲は避けられないと信ずる、又避けるべきでないと信ずる、併しながら御聖旨は、乏しきを分てと言ふ、現内閣は友愛を基調とすると言ふ、されば私は將來經濟轉變著しき時には、一定の物價指數を基準として、地主に對しても小作人に對しても措置することが、最も圓滑に本案を運用するものなりと信ずるのであります(拍手)石橋大藏大臣の所見を伺ひたいのであります
私は第六點に、農村經濟の協同化と、農村社會政策の徹底に付て御尋ね申したいのであります、今日敗戰の結果食糧飢饉の事實を以て、一部農村には「インフレーション」の渦高き波が立つて居ることは事實でありまするが、將來生産が再開し、外國食糧が自由に流れ込み、内地に流れ始める其の時に於て、農村の不況は火を睹るよりも明かなる事實であると斷定致すのであります、其の時には、恐らく一町未滿の食へない自作農家を全國的に創設して、農村の經濟活動は全面的に低下する虞を有するのであります、來るべき世界不況の一環として立つ日本、日本不況の最前衞に押出さるべき我が農村、之を防ぐの途は、一に最も民主的なるべき經濟協同化が、最初の最大案なりと信ずるものであります(拍手)本案に先行して、最も民主的なる協同組合法の設定を吾人が要求する所以も、亦此處に存在するのであります、併しながら政府は今議會に協同組合法案を提案すると我々に内示し、而も其の案を見れば、極めて封建的殘滓の色濃きものがあつたのでありますが、院内外の空氣の險惡を察してか、之を忽ち引込めてしまつたのであります(拍手)私は全國耕作農民の失望が如何に大きかつたかを考へる時に、其の眞相を農林大臣の口に依つて答辯せられたいのであります、と共に他日協同組合法案を立案せられる場合に於ては、現在の農村に蟠つて居る因習を勇敢に切捨てて、新たに清新の天地に、「コオペレート」の殿堂を築くの概ありや否や、和田農林大臣の抱負と氣魄とを尋ねたい
次に、本案の如き所有權上の一新革命を齎す重大問題を圓滿に進捗せしめるが爲には、特に徹底した社會政策の採擇を條件とするのであります、殆ど農家の收入が一定し、且つ低下した曉に於ては、農村の文化は荒廢し、而して生活頽廢を見るに至りますことは、私の申上げるまでもない自明の理であります、例へば農村子弟の教育や、或は醫療の費用等は、それを求めんとするも途なきに至ることが考へられるのであります、而も是は生活保護法の一片の空文を以て、斷じて充さるべきものではないのでございます、政府は經濟上の一革命に費したる努力を、何故に農村文化の向上と、農村文化の振興との兩面に向つて傾注しないのであるかと私は言ひたいのであります(拍手)今や現實の農村は、唐突なる民主の夜明に、殆ど自制心を失ひ、昏迷の状態に立至つて居るのであります、隨て茲に清新な文化的、社會政策的指導の必要を認めるものでございますが、現實の農村は、當局の措置極めて怠慢なるを尻目に、名を農村民主化に藉り、名を農村文化に求めて、俗惡なる都會の官能的享樂文化が横行致して居るのであります、此の事實を政府は何と見るや、將來又地理的、經濟的事情に依つて、農村子弟が高等教育から閉め出されることがあるならば、獨り農村は健全なる指導者を失ふのみならず、都會との間に再び封建遺制の復活をすら指摘し得るのでございます、農村子弟の教育に對して、國家は教育の地方分散と關聯し、如何なる對策を現實に用意せらるるや、私は現に草深き田舍の農夫が、農夫の生涯を終るに當つて、何等一滴の文化、一片の醫療をも受くることなく死んで居る事實を見逃して、農林當局は口にのみ農村民主化を叫ぶのだと言はざるを得ないのであります(拍手)醫療の公平なる分配、農村娯樂、農村文化、一聯の關係に於て、農林大臣、文部大臣、厚生大臣の御所見を伺ひたいのであります
最後に本案提出の政府に對して警告を發し、且つ御尋ね申上げたい一點がございます、即ち來るべき世界農業に於ける我が農村のあり方であり、且つ其の生きる途でございます、世界大戰の慘禍は、全民族、全國民の臺所を脅かしては居りますが、戰爭と食糧の關係は、終戰の翌年には餓死者を出す、其の翌年に至らば需給辛うじて足りる、三年目に至らば穀物過剩を見るに至るべしとは、千古に言ひ慣らされたる定則であります、今次大戰に於ても此の事實は例外でなく、農業は凡ゆる産業の中にあつて、最も早い立直りを示して居るのであります、戰前農業は、食糧は、世界的に一定した産業であり、安定した製品であることを考へます時に於て、朝鮮、臺灣に殘されたる過剩米穀の問題、「タイ」「ビルマ」、佛印に殘されて居る生産「コスト」の安い米、日本農業の據つて立つ存在は、其の過小なる耕地に餘りにも過大なる勞力を注ぎ込むことに依つて、辛うじて維持し得るのだと云ふ定則から考へて、而も又近き將來日本經濟が「ブレトン・ウッヅ」協定に加入して、世界交易の無碍なる流れの一環として起つ日のことを考へますと、私は此の時此の一點を機軸として、日本農村の崩壞することを心密かに憂ふるものであります(拍手)それを、主要食糧を統制せしむべし、關税障壁に依るべしと言へるが如きは、洵に是は時代逆行の甚だしき暴論であります、殷鑑遠からず、事實は英帝國に於ける穀物條例の廢止が、一朝にして英國の農業を滅ぼし去つた事實を考へますと、餘りにも明かなる教訓を我々に與へて居るのであります(拍手)天下を憂ふる政治が禍來るに先だつて憂ふるならば、此の日の農業の相貌を今日に於て豫想しなければならないのでありますが、和田農林大臣は過日の豫算總會の席上に於て、我が進歩黨犬養總務會長の問に答へて、寧ろ是は樂觀的態度を執つて宜しいと言へるが如き御言葉であつたのでありますが、私は斷じて此の農相の御答辯のみを以てして、將來日本の農村が安全なるものであるとは言切れないのであります(拍手)農村の最も古識として知られて居ります土方成美博士は、其の著に於て、「日本農業の存在は、實に日本人の日本内地米に對する異常なる好みの上から、初めて存續が主張せられるのだ」と規定し、農相の無二の友人と承る東畑精一教授も、亦其の著に於て「日本農業の眞の姿は、外國農業との比較に依つて求められるものではない、日本國内の他の産業との比率に依つて求められるものである」と云ふ御所論を下し、是が今日まで學界の定説をなして居るのでありますが、遺憾ながら今日に於て是が通用しなくなつた事實は、我々の日常一椀の食事に之を眺めて明かであります、我等が濠洲の小麥に依つて生活を支へ、「オーストラリア」の罐詰に依つて空腹を癒して居る現状を考へます時、最早斯かる日本の農業の畸型的孤立状態、世界農業と無關係で存在出來ない事實を、何よりも雄辨に物語つて居るものと言はなければならないのであります(拍手)私はされば此の世界農業から孤立せんとする日本農業の畸型状態を、和田農林大臣は如何に勇敢に切開せられ、新農業確立への新方途を、如何に今日に於て農村に求められるか、和田農相の見透しと和田農相の考へて居られる抱負と其の構想と、而して全體的に如何に農村に向つて試みられるであらうかと云ふ情熱を、此の議政壇上を通じて全國の農村民に示されることを御願ひ致したいのであります(拍手)
以上私は七點十數項目に亙りまして、農相、商相、内相、法相、藏相、厚相、文相よりそれぞれ御答辯を煩はしたいのでございます、之を以て私の質疑を終ります(拍手)
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=37
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038・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 甚だ多岐に亙りました只今の御質問に付て御答へ致します
第一番目は、此の農地制度の改革をやりましても、それのみを以て日本の農業の生産力は高まるものではなく、寧ろ其の生産の方法、經營の指導の如何にあるのではないかとの御尋ねでありまするが、是は極めて難かしい、又根本的な問題であると思ひます、我々が此の農地制度の改革を企てましたのも、日本の農業の生産力を高めまする上に於きましては、現在の生産の仕方に於て行はれて居りまする其の農業がありまする所の其の豫見の一つて、而も根本的な豫見の一つを變化することに依りまして、農民自體がそこに經營の中に餘剩を生ずる餘地を生じまするが故に、其の面からして新しい生産の仕方を執り得る希望を抱かす、又其の途を開くと云ふ所に一つの觀點があつたのであります、私は只今提案理由を御説明致しました時にも其の點に觸れて居つたのであります、此の農業經營を如何に導いて行くかの問題は、今後に於きまする所の日本の農業科學、農業技術の發達とも亦相關聯する所でございまして、是等の點に付きましては、我々と致しましては、現在存しまする所の農林省の農事試驗場、其の他今囘新たに出來まする所の農業綜合研究所等に依りまして、凡ゆる觀點から十分科學的な檢討を致しまして、是が目的を達成致したいと思ふのであります、今囘の豫算に於きましても、八千萬圓の豫算を計上致しまして、農業技術の滲透に付きましての一つの施設を致しまして、今後土地改革の行はれました此の基盤の上に、現在ありまする優秀なる技術を農業の經營の中に採入れまするやうに施設して實行致して居るのでございます
第二點は今囘の農地改革と適正規模の創設との問題でございますが、是は森さんの御質問に御答へ致した所でございまするが、此の農地改革の目的が、御説明致しましたやうに小作農に土地を與へ、之を自作農にすることでございまするが、其の指向する方向は勿論農業の近代化であり、能率の増進であることには間違ひはないのであります、唯現在に於きまして問題なのは、如何なる條件の下に小作農を自作農たらしむるかと云ふことなのでございまして、今日の農業經營の規模を見ますると、領土は狹くなり、人口の殖えた、此の人口の壓力の關係に依りまして、寧ろ零細化の危險さへあるのでございます、此の點に付きましては、私は今囘の農地制度の改革に依りまして自作農を創定致しまする點に付ては、十分適正規模と云ふ目標を追ふべく努力は致すのでございますが、之を以て直ちに全部を適正化すると云ふことは到底不可能なのであります、是は後に御答へ致します過小農の問題の處理と關聯致しまして、其の御答へに代へたいと思ふのであります
第三點は、本農地改革に依つて惰農に土地を與へると云ふことにもならないかと云ふことでございまするが、是は第一次の農地改革の場合に於きまして縷々御説明致しましたやうに、當局の方針と致しましては、自ら農業に精進致し、農民として立つて行く者に土地を與へると云ふ方針には變りないのであります、又土地を與へられざる者と、土地を與へられたる者との間の不均衡を如何にするかとの御質問でございましたが、是は今囘の農地改革に依りましても、小作地は殘るのでございます、此の殘存しまする小作地に付きましては、其の小作關係を適正化することに依りまして、例へば小作料の最高限度を決め、又小作契約を文書に依つて締結致し、小作關係を明瞭ならしむること等に依りまして、小作人の地位の安定を期して行きたい、斯樣に考へて居る次第でございます
それから今囘の憲法改正に依りまする相續等の關係と、此の農地制度との關係に付ての御質問でございますが、是は均分相續の制度に依りまして農地が細分化されますことは、是は農政の見地から致しまして別途適當な處置を講じたい、斯樣に考へて居るのであります、是は今後の農政の問題と致しまして我々の方と致しましても研究をし適當なる處置を致したい、斯樣に考へる次第でございます
次に御質問になりましたのは、團體の土地管理と、農民組合等に依りまする團體協約の問題でございます、現在の農地制度の改革に於きまして、此の問題を如何に解決したかと申しますと、團體協約は是は取つて居りませぬ、併しながら農地委員會が小作料の基準を決めました時には、それが團體協約的な意味を持ちまして、其の基準に違つた小作契約をすることは出來ないやうに致しまして、小作料の統制を致して居る次第であります、團體協約の問題は、勿論現在の日本の農村に於きまして、又今後の農村に於きまして、小作地が殘ります以上、そこに農民組合の發達を見まするならば、將來の問題と致しましては當然起るべき問題であると思ひます、併しながら現在の此の農地制度の改革に於きましては、只今申しましたやうな解決の方法を執つた次第でございます
次に農地の團體管理の問題でございまするが、是も將來日本の農業經營を現在の零細なる經營に放置することなく、其の生産力を高めて行きます上に於きましては、必然的に生ずる問題であると思ひます、是は殊に今囘の農地制度の改革に依りましても、尚ほ存續致します過小農の生産力を高めて行く問題と致しまして、今後制定すべき協同組合と俟ちまして、此の問題は處理致して行きたいと存ずる次第であります
次に農地委員會の構成の問題でございましたが、農地委員會の構成に付きましては、御意見の如く、農村に於きまする所謂「ボス」が入つて來ることは出來るだけ避けなければなりませぬ、隨ひまして農村の農地委員會の構成は、今囘は自作小作を同數と致しまして、そこに前の農地委員會よりもより民主的な方式を執つた次第でございます
次に開墾を二箇年に實行する所の自信ありやとの問題でございますが、是は開墾に付きましては、未開墾地を一定の計畫に從ひまして、而も是は十分に調査を致し、専門家の意見を聽きました上で、開拓委員會なり、農地委員會なりの決定に依りまして、開墾適地を買收致しまして、其の買收は出來るだけ早くやりまして、計畫の通りに是非實行致すやうに努力致したい、斯樣に考へて居る次第でございます
次に山林、漁業權と農業との關係でございますが、是は御承知のやうに日本の土地面積の中、六三%が既に山林でありますので、日本の農業は又それが灌漑農業でありまする關係上、水とは切つても切れない關係にある農業であるので、山林と云ふものが農業と不可分の關係にありますることは言ふまでもないのであります、隨ひまして農業を考へます場合に、我々と致しましては農民の生活に即して同時に山林を考へて居るのであります、例へば農民の必要としまする所の薪炭、或は下草等に付きましては、常に農業の見地からも考へて居るのでございますが、今囘の農地改革の場合に於きましては、開墾の場合に於きまして、開墾を致しまして、其處に定著致しまして營農致しまする者が、其の經營上必ず必要でありまする所の山林、牧草地に付きましては、是は未墾地と致しまして、同時に國が買收致すことの出來るやうに致したのでございます、漁業權に付きましても、未墾地の開發に付きまして、又是は干拓其の他の點に付きまして必要なる限度に於て、漁業權の處理を考へた次第でございます
次に山林の開放でございますが、是は國有林に付きましては、今囘現在の實情に應じまして、大約九萬町歩の開墾豫定地を設定致しまして、之を開放する計畫であるのであります、併しながら尚ほ能く調査致しまして、寧ろ山林として使ひまするよりも、開墾致しまして農地として使ひますることが、國土保安の點から言ひましても支障のないものに付きましては、是は出來るだけ開放致しまして、國民の福利の向上を圖りたいと考へて居る次第でございます、北海道の開拓の一元化に付きましては、是は現在に於きましては内務省と十分連絡を執つて致して居るのでありまするが、此の點に付きましては今後十分に研究致しまして、善處致したいと存ずる次第であります
次は農村工業と農工一如の問題でございますが、私は農村工業を、現在のやうな日本の農村の實情からは二つの觀點より考へて居るのであります、一つは所謂工業の地方分散と云ふことを企てまして、農業部面に於きまする所の餘剩の勞力と云ふものを其處に收容する、即ち農村と結付いた所の工業を其處に設定すると云ふことであります、例へば農機具工場の如きも、現在に於きましては、寧ろ農村と接著して初めて其の好き效果を得るやうな部面が相當多いのであります、是等の點から其の問題を一つは考へて行きたいと思ふのであります、もう一つは、農山村に於て生産しまする所の生産物の價値を高め、一面に於きましては、農家に於ける餘剩の勞力を吸收すると云ふ觀點から農村工業と云ふものを考へて行きたいと思ひます、是等の二方面から致しまして、現在の日本の農村に存在しまする所の過小農を、どうしても一部は此の方法に依りまして解消致しまして、さうして出來るだけそこに適正なる規模の農家と云ふものを設定して行くと云ふ方法が執らるべきだと考へるのであります、是は何處の國に於きましても、過小農の問題は、一つには農業それ自體から生ずる所の所得と、農業以外から生ずる所の所得とを「プラス」致しまして、其の合計した所得が、所謂其の社會に於ける一般水準の所得に達するやうな方法を以て之を處理致しますることと、一つにはそこに存しまする所の過剩なる者を農業外部に吸收致しまして、殘れる者の農業所得を高めることに依りまして此の問題は解決して行く、此の二つの方法しかないのであります、我々は此の方法として、具體的には農村工業と農業自體の生産力の發展とに依つて解決致して行きたい、斯樣に考へて居る次第でございます(拍手)
次に世界の經濟に於ける日本農業のあり方でございますが、是は言ふまでもなく將來日本は孤立しては存續致すことは出來ませぬ、どうしても世界の經濟に於ける一環と致しまして、日本の農業も亦存立せざるを得ないのであります、併しながら私は唯徒らに、將來世界の仲間に入りました場合に於きまする、又來るべき恐慌に付ての悲觀にのみ沈湎することは出來ないのであります、何となれば日本の農業は、是は細かに分折して見ますれば極めて多面なる農業なのであります、戰爭以前に於きまする日本の農業を考へて見ましても、そこに養蠶あり、又其の他の輸出農産物は多かつたのであります、現在養蠶でありまするとか、其の他茶の如きは、是は性質上世界的な貿易品であり、且つ日本の農業としては十分採入れて行き得る所のものなのであります、且つ北海道の農業自體を考へて見ましても、是は世界の農業又は世界の市場と結付いた農業であつたと私は思ふのであります、
今後日本の農業は、日本人が持ちまする所の、又將來大いに努めなければなりませぬ所の、多角的なる所の水準を高めることに依りまして、日本の農業も亦之を多角型化し、世界市場と結ぶことに依りまして、市場が大きくなればなるだけ經濟と云ふものは圓滑になると云ふ經濟の一般的な原則の線に從ひまして、私は日本の農業は將來どうしても指導して行かなければならないと思ふのであります、勿論今後起つて來ますことの豫想されまする戰後に於ける世界農業の生産力の發展に依る過剩生産に對しましては、今から常に其のことを頭に置きまして、現實に行ひます所の色々の農業の施設に付て、常に其のことを頭に置きながら農民の指導、農業經營の組織化、農村の組織化を行つて行かうと、斯樣に考へて居る次第であります、是は我々が外界の豫見に對して適應する一つの方法であると同時に、又我々は外界の豫見を變化しつつ、新しい歴史を作つて行くものであると、斯樣に考へるのであります、
次に經濟的變動と、小作農が自作農になつての問題でございましたが、是は日本の經濟が停滯することなく、將來に於て變化すべきことは、又發展すべきことは、我々は之を心から希求するものであります、其の經濟的變動に對しまして、自作農が能く獨立の農民として、獨立の企業者として之に對處し得るかどうかは、一つには自作農になりました其の人達の努力にも依ることであり、又一つには之に對しまする國家的な施設にも依ることでございまして、其の國家的な施設に付きましては、私が森さんの御質問に對しまして御答へ致した所であります、小作人が自作農となりましたそれ等の者の努力とは、それ等の者が協同の組織を作りまして、經營部面に於ける改善を行ひ、經營の「コスト」を下げ、以て經濟的な競爭に耐へ得るの地盤を作ることであると、斯樣に考へるのであります
最後に農村文化の點に付きまして、私に關係する限りに於て御答へ致したいと思ひます、私は農業政策の今後のあり方は、農業に於きまする所得と、農業以外に於きまする所得との均衡と云ふことが、其の大きな一つの目標であると思ふのであります、それは言換へますれば、農村も亦、其の時代に於て與へられた一般の水準の文化を享有し得べき所の力を持ち得るやうになると云ふことであると思ふのであります(拍手)其の點を考へて見まする時に、現在の農村に於きましては、此の「インフレ」下に於けるに拘らず、文化の面に於て都會の面より劣つて居ることは、是は萬人の認めざるを得ない所だらうと思ひます(拍手)此の點に付きまして、私は農村の文化の問題に付きましては、十分に今後ともに色々の施設を考へまして、是非とも農村に於て無醫村も存在せず、又農民が民主的な教養を身に付け得ますやうな各種の施設を具體的に施設して行きたい、斯樣に考へて居る次第であります、簡單でありますが私の御答辯と致します(拍手)
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=38
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039・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 農村工業の問題に付きましては、只今和田農林大臣より御答へになつた趣旨は全然私も同感であります、唯別な觀點から一、二言申上げますれば、日本の將來は、少くとも大きな企業はなくなりました關係上、中小工業と云ふよりも、もう一歩小さくなつて、家庭工業其のものも振興しなければならぬ譯でありまして、それには比較的日本は慣れて居る關係上、色々な意味に於きまして工作は出來ることと思ひますので、將來都會に對しましても、此の戰爭の後を全部昔通りに復舊する等の觀念を廢めまして、適當に分散したる人員が農村にありまして、農閑時を利用して、工業方面の仕事をすることも宜しい、けれども所謂農村工業と云ふものが、唯農閑時に工業をすると云ふことよりも、もう一歩進んで、農村の中に専門的な工場を點々分散せしめると云ふことは、勞務者の健康に付きましても、凡ゆる點から見まして私は將來に考慮すべきことと思ひます、殊に中小工業に於きましては、其の見地から、廣く農村工業と云ふものの從來の觀念から一歩進めた基準に於きまして指導して行きたいと、斯樣に考へて居る譯でありまして、從來の所謂農業、工業の入亂れたる形に於きまして、將來日本が厖大な人口を此の狹い國土に於て養つて行く爲には、從來と變つた考へ方を以て、今和田農林大臣が述べられたと同じやうな心構へを以ちまして、工業に於きましても互ひに相牽聯して考察して行きたい、斯樣に考へて居る次第であります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=39
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040・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 長期の債權債務が、貨幣價値の變動に依つて、或は意外な損失を蒙り、或は意外な利益を得ると云ふことは免れない點であります、但し本法案に於ては、土地を買受けた人達に付ては其の償還に付て中中手厚い保護が加はつて居りまして、萬一農産物の値段が下る、さうして買受代金の年賦金と公租公課とを合せたものが、而も全體の收入の三分の一までにならない、即ち三分の一を超えると云ふことは絶對にない、それより以下の割合で委員會が決定をして、若しそれを超えれば、年賦金を負けてやるとか、或は延ばすとか云ふやうな保護が付いて居ります、さうかと言つて、反對に今度は農産物の價格が上つて、利益のある場合に、餘計に取ると云ふことはないのでありますから、此の點は他にこんな例があるかどうかと思はれる程の手厚い保護が加はつて居ります、唯農地を賣つた人達は、一部現金で貰へますが、大部分は農地證券で貰ふ、併しながら之には左樣な保護が加はつて居りませぬから、若し今後長い間に物價が騰貴し、或は下落すると云ふ時には、其の損失或は利益は其の儘受けなければなりませぬ、但し斯う云ふ長期の證券に對して、物價指數とか何とか云ふものに依つて、將來の物價騰落を調節するやうにと云ふ案は今まで隨分ありますが、實際に於ては中々實行困難であります、今囘の場合に於ても、遺憾ながら農地證券に對して左樣な保護を加へることは出來ない譯でありまして、隨て左樣な處置が執られて居りませぬ、左樣に御諒承願ひます
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=40
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041・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 過日新聞紙に掲載せられました國土計畫案は、内務省國土局の持つ試案が一部發表されたものであります、是は各廳から資料を蒐集致しまして、之に基き一應取纒めたものでありまして、試案其のものに付きましては關係各省の協議を遂げたものではないのであります、隨て之を各専門の面から見ますれば、不備の點があり、杜撰な所もあると思ふのであります、此の點に付きましては各方面から御批判を仰ぎ、案の完璧を期したいと考へて居る次第でございます、尚ほ國土計畫其のものの正式の策定に付きましては、政府に於きまして近く國土審議會とも言ふべき委員會を組織致しまして、朝野の御意見を結集致しまして、再建日本に最も適應したる國土計畫案を得たいものと考へまして、其の方途を只今進めて居る次第であります
次に北海道の拓殖行政に付きましては、北海道の特殊性に基きまして、北海道長官をして統一的に其の仕事を推進せしめて居るのでありまするが、現在の拓殖計畫は、恰も本年を以ちまして最終年度に相成るのであります、明年度以降に付きましては、新情勢に即應致しまして、適切な計畫を新たに立てなければならぬと考へて居る次第であります、就きましては其の際農林行政等とも能く調和し得る案を立てまして、是が實行方法に付きましても、今日の事態に即するやうな計畫を立てなければならぬと考へて居る次第でありまして、何れ此の問題に付きましても關係調査會を設けまして、誤りなきを期する方針で居る次第であります
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=41
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042・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今寺島君から、世界的に食糧の過剩が來るかも知れぬ、さう云ふ時には日本にさう云ふ波が何時押寄せて來るかも知れぬ、又物價と云ふものはどんな風に動いて、通貨の價値がどう云ふ風になるかも知れぬと云ふやうな意味に關聯した御質問がありましたが、私は是は御尤もな御質問と思ひます、さう云ふ場合に農村に對してどうするかと云ふ問題は、只今農林大臣の御話のやうに農村工業をうんと實行しまして、是で勞力面の彈力を持たせる、是は言ふまでもなく重大なことでありますが、もう一つはどうしても社會政策をしつかり實行しまして、さう云ふ場合に於て農村にとんでもない失業等が起きないやう、しつかり此の社會政策で補ひを付けると云ふことがどうしても必要だと思ひます、是は農村改革を今度斷行する場合に於て、必ず此の二つのことは豫想して十分手當をしなくちやならぬと云ふ考へで居ります、それで御承知の通りに憲法では、健康にして文化的なる最低生活を保障されることになります、一方國防費などがなくなりまするから、どうしてもさう云ふ金を社會政策面、特に農村の方に向けまして、さうして國防の代りに、國民最低生活の防波堤にすると云ふやうなことをどうしてもやらなくちやならぬ、それには第一はやはり醫療の普及の問題であります、是は無醫村をなくすると云ふことは勿論のこと、綜合病院を農村、漁村等に置きまして、さうして病院を出來るだけ公開しまして、診療所も公營的のものを隨分作つて行く、又國民健康保險も一層増強して、さうして之を醫療普及の第一線とする、尚ほ又農民の榮養の問題でありますが、特に蛋白質の問題或は或る種の「ヴィタミン」の問題、斯う云ふ面にも餘程科學的の措置を講じて、さうして社會政策の徹底と云ふことをやらなくちやならぬと云ふ信念で居ります(拍手)
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=42
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043・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 都會の不健全な卑俗的、官能的な娯樂を排斥して、健康な又溌刺たる農村の文化を昂揚しなければならないが、其の具體策如何と云ふ御質問でございました、具體策と致しましては、例へば各農村、各村々に公民館を普及、充實、振興致しますと共に、又巡囘映畫だとか、演劇だとか、音樂、講演或は圖書、印刷物等の普及の世話を燒きまして、さう云ふ色々な方法で徹底的に致したいと思ひます、特に社會教育と云ふことが今後學校教育と竝んで、或はそれ以上に重要になつて參りますが、此の社會教育の對象は、大部分は農村であると云ふ風に理解して居る次第であります、一般的に尚ほ青年學校の充實と云ふことも極めて必要でありまして、此の改革充實に付きましては、目下鋭意考へて居りまして、教育刷新委員會にも諮つて即急に實行したいと思つて居ります、根本的態度と致しましては、從來の天降り的、官僚的な思想や、文化統制と云ふ方法を以て臨むべきではないので、是は詰り民間識者と緊密なる連絡を取りまして、協力致しまして實行致したいと思ひます、要しまするのに、農村の文化は全日本の文化と言つても宜いのであります、又農村の教育は全日本の教育と言つても宜いのでありますから、政府と致しましては、農村の文化及び教育に渾身の努力を傾けたいと思つて居る次第であります、之を以て御答辯と致します(拍手)
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=43
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044・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 農地の零細分割化は、是は農業政策上十分防止しなければならぬと云ふことは全く御同感であります、然らば改正憲法草案二十二條との關係はどうなるかと云ふことに付て申上げますると、只今臨時法制調査會で審議中の民法改正案要綱に依りますと、相續人は各各協議を以て、相續人の一人に遺産である農地を信託經營させることも出來るのであります、又其の人一人に歸屬させることも出來るやうになるのであります、尚ほ被相續人は、遺留分の規定に反しない限りに於きまして、相續人の一人に遺産である農地を歸屬せしめることも出來るやうになるのであります、尚ほ被相續人は遺言を以て、遺産である農地を一定の期間分割することを禁止することも出來る、又裁判所に於て之を禁止することを命ずることも出來ると云ふやうな構想の下に、今立案されて居りますから、是等の點を勘考致しますると、或る程度までは農地の零細分割化を防止し得ることとなると固く信じて居ります、尚ほ特別法の制定に付きましては十分考慮致したいと存じて居ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=44
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045・寺島隆太郎
○寺島隆太郎君 殘餘の質疑は委員會に讓りまして、私の質疑は之を以て打切ります
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046・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 兩案に對する殘餘の質疑を延期し、次會に之を繼續することとし、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=46
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047・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=47
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048・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は之を以て散會致します
午後四時五十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04219460907&spkNum=48
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