1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十一年九月二十一日(土曜日)
午後一時四十一分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第四十五號
昭和二十一年九月二十一日
午後一時開議
第一 復興金融金庫法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 臨時物資需給調整法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 青年禁酒法案(林平馬君外十一名提出) 第一讀會
第四 農民組合法案(野溝勝君外三名提出) 第一讀會
第五 蠶絲業法の一部を改正する法律案(森幸太郎君外四名提出) 第一讀會
第六 遠洋漁業許可に關し聯合國最高司令官に對する感謝決議案
(田原春次君外十五名提出)
━━━━━━━━━━━━━
〔朗讀を省略した報告〕
一、昨二十日貴族院に於て本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した
東京都制の一部を改正する法律案
市制の一部を改正する法律案
町村制の一部を改正する法律案
府縣制の一部を改正する法律案
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案
勞働關係調整法案
一、議員から提出された議案は次の通りである
女子中等學校の養蠶教育實施に關する建議案
提出者 吉田セイ君
衆議院議員に拂下げジープの配給に關する建議案
提出者 吉田セイ君
終戰後判明せる戰歿者取扱に關する建議案
提出者 米山文子君
宇都宮專賣支局の地方局昇格に關する建議案
提出者
大島定吉君 山口好一君
金子益太郎君 杉田一郎君
高瀬傳君 戸叶里子君
船田享二君 江部順治君
菅又薫君 山口光一郎君
廣島、鳥取、島根三縣下連絡道路改修に關する建議案
提出者 佐伯忠義君
乳幼兒竝に妊産婦の榮養増進に關する建議案
提出者 竹内茂代君
苫小牧地方漁港修築に關する建議案
提出者
小川原政信君 地崎宇三郎君
椎熊三郎君 武田信之助君
勇拂原野開發に關する建議案
提出者
小川原政信君 地崎宇三郎君
椎熊三郎君 武田信之助君
大津漁港擴張に關する建議案
提出者 菊池豊君
鰯の頭部肥料に關する建議案
提出者 菊池豊君
長崎醫科大學緊急復興に關する建議案
提出者
小柳冨太郎君 本田英作君
西村久之君 本多市郎君
北れい吉君 久保猛夫君
北村徳太郎君 今村等君
婦人議員代表の感謝使節「アメリカ」派遣に關する建議案
提出者 吉田セイ君
食糧増配に關する建議案
提出者 宮澤才吉君
八幡濱市、長濱町間省營自動車運行實現に關する建議案
提出者
高橋英吉君 藥師神岩太郎君
馬越晃君 關谷勝利君
稻本早苗君 林田哲雄君
安平鹿一君 布利秋君
(以上九月二十日提出)
一、去十九日衆議院規則第十五條に依り議長に於て議席を次の通り指定した
一五六 生方大吉君
一、去十九日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
三一六 小柳冨太郎君
三二九 田万廣文君
三九三 佐竹晴記君
一、去十九日常任委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
建議委員
理事 大矢省三君(理事 須永好君去十一日死去に付其の補闕)
一、去十九日次の通り特別委員の異動があつた
自作農創設特別措置法案(政府提出)外一件委員
辭任 棚橋小虎君 補闕 高倉輝君
一、昨二十日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
四 安藤はつ君
九 秋田大助君
一三 大島多藏君
一五 北勝太郎君
一六 北政清君
一七 小西寅松君
一九 久芳庄二郎君
三七 笠井重治君
五三 圖司安正君
五八 山崎岩男君
六二 増井慶太郎君
六三 井上東治郎君
六五 喜多楢治郎君
七五 青木清左ヱ門君
八九 山田悟六君
九九 石黒武重君
一〇一 小坂善太郎君
一、昨二十日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
電氣事業法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)外一件委員
理事 岡部得三君(理事 天野久君昨二十日委員辭任に付其の補闕)
一、昨二十日次の通り特別委員の異動があつた
電氣事業法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)外一件委員
辭任 天野久君 補闕 岡部得三君
辭任 青木泰助君 補闕 川崎秀二君
自作農創設特別措置法案(政府提出)外一件委員
辭任 松澤一君 補闕 棚橋小虎君
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=0
-
001・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より會議を開きます、日程第一、復興金融金庫法案の第一讀會の續を開きます
委員長の報告を求めます──委員長高橋泰雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=1
-
002・会議録情報2
――――◇―――――
第一 復興金融金庫法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
―――――――――――――――――――――
報告書
一 復興金融金庫法案(政府提出)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年九月二十日
委員長 高橋泰雄
衆議院議長 山崎猛殿
―――――――――――――――――――――
報告書
一 復興金融金庫法案(政府提出)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年九月二十日
委員長 高橋泰雄
衆議院議長 山崎猛殿
―――――――――――――――――――――
〔高橋泰雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=2
-
003・高橋泰雄
○高橋泰雄君 只今議題となりました復興金融金庫法案の委員會に於ける經過竝に結果に付き御報告致します
〔原侑君「政府はどうした、所管大臣位出なければ止めろ」と呼ぶ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=3
-
004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 只今政府に要求中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=4
-
005・高橋泰雄
○高橋泰雄君(續) 此の法案は御承知のやうに戰後我が國の經濟界の混亂を防止し、一日も速かに民需生産の復興を圖つて、國民生活の安定を期しまする爲に整備再建せらるべき各種の企業の必要とする資金でありまして、而も一般の金融機關より致しましては其の供給を受けることが困難なる資金に對しまして、迅速に而も豐富に圓滑に資金の供給を圖らうとするのが、本法案の目的であります、委員會に於きましては先月の三十日以來今月の十二日に至りますまで、前後十囘餘り委員會を開催致しまして、委員と政府當局との間に熱心なる質疑應答が行はれたのであります、茲に其の大要を要約致しまして簡單に御報告を致したいと存じます
先づ第一に、復興金融金庫と既存の一般金融機關との關係の質疑であります、之に對して政府は、今後我が國經濟の復興を圖るに必要なる資金は、一般金融機關に於て進んで之を供給し、生産の促進を圖るべきことは當然でありますが、現在の經濟の状況に於きまして、企業の内容に依りましては、一般の金融機關では自己の危險負擔に於て融資し得ないやうな場合が相當に多いのでありまして、斯樣な場合に資金の圓滑なる供給を行ふ爲に、本金庫を設けた次第であるとの説明があつたのであります、其の次に此の金庫の運營と「インフレーション」との關係に關する質疑であります、政府は本金庫の資金の供給が「インフレーション」に重大なる關係があることを認識致しまして、他の産業政策と「マツチ」せしめつつ、物の面との見合ひに於て、資金の能率化を圖り「インフレ」を抑制することに遺憾なからしむる旨の答辯があつたのであります、第三には復興金融委員會の構成と其の運用の問題に付ての質疑であります、我が國經濟再建の重大なる使命を有する本金庫が、其の所期の目的を達成し、能く其の成果を擧げ得るや否やと云ふことは、一に懸つて復興金融委員會の構成如何にあると思ふが、政府の所見如何との質疑に對しまして、政府は此の委員會は金庫の運營に關しまして其の基本的方策を決定する外、常時金庫の業務に付て監督することを任務とする極めて重大なる機關でありますが故に、此の構成に付きましては非常に愼重なる態度を以て之に臨む、即ち會長には大藏大臣、副會長には安定本部長官、委員としては農林、商工兩大臣、日銀總裁、金融界から二名、産業界から三名と云ふ工合に、其の人選に付きましても、最も公正なる人を物色することに最善の努力を圖りつつある旨答辯があつたのであります、特に中小の企業に對しましては十分理解のある人物を銓衡致しまして、本委員會の民主的運營を期する旨の答辯がありました、此の點に付きまして多數の委員諸君から、政府に於ては此の委員の中に衆議院議員を加へる意思がないかと云ふ質疑が各委員から發せられたのであります、之に對して政府は、金庫と政治との直結致しますことは極めて注意を要することでありますが故に、議員の參加を求めると致しましても、それは從來議員から委員を採つて居りました舊來の方式に依ることなく、議員は「エキスパート」として之を採る考へである旨の答辯があつたのであります、更に昨日最後の懇談會に於きまして、大藏大臣は其の點を明確に致しまして、委員の數に於ても尚ほ多少の増員を考へて居る、又其の構成に關しましても、議會から成るべく多數の委員を參加せしむる意向である旨の言明があつたのであります、次に、中小の企業に對する融資に關する質問であります、之に對して政府は、中小の企業が今後日本經濟は核心をなすことを深く認識致しまして、中小の企業者に對しましては、金庫の中に特に融資相談部を設け、或は地方に一定の限度を委任致しまして、其の限度内の融資に付きましては其の地方限りで或る程度の裁量をなし得るやう措置致しまして、積極的に融資の便宜を圖りますると共に、是等中小商工業の振興を期する旨の答辯があつたのであります、それから次には、金融金庫の資本は百億圓と云ふことに相成つて居るのでありますが、資本金百億圓を以て致しましては、我が國經濟産業を根本的に變改再興すべき必要のある現状に於ては、而も物價の昂騰の實情に鑑みまして、甚だしく額が少な過ぎるではないかと云ふ質疑に對しまして、政府は現在我が國に於ける資材の状況等を勘案しつつ、一應の資金需要を求め計畫したものでありまして、計畫實行の上に尚ほ不足を生じました場合には、何時でも増資をすることが可能である旨の答辯があつたのであります
斯く致しまして質疑を終り討論に入りまして、自由黨の平岡良藏君、進歩黨の苫米地義三君、社會黨の町田三郎君、新政會の大津桂一君、無所屬倶樂部の福田繁芳君から、それぞれ各黨を代表致しまして原案贊成の意見が述べられたのであります、採決の結果本案は全會一致を以ちまして政府原案を可決した次第であります、以上簡單ながら御報告致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=5
-
006・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くや否やを御諮り致します、本案の第二讀會を開くに贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=6
-
007・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立多數、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=7
-
008・椎熊三郎
○椎熊三郎君 直ちに本案の第二讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=8
-
009・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=9
-
010・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=10
-
011・会議録情報3
――――◇―――――
復興金融金庫法案 第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=11
-
012・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありませぬから委員長報告通り決しました、是にて本案の第二讀會は終りました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=12
-
013・椎熊三郎
○椎熊三郎君 直ちに本案の第三讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=13
-
014・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=14
-
015・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第三讀會を開き議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=15
-
016・会議録情報4
――――◇―――――
復興金融金庫法案 第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=16
-
017・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありませぬから第二讀會議決の通り可決確定致しました──日程第二、臨時物資需給調整法案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長竹田儀一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=17
-
018・会議録情報5
――――◇―――――
第二 臨時物資需給調整法案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
―――――――――――――――――――――
報告書
一 臨時物資需給調整法案(政府提出)
右は本院に於て別紙の通り修正すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年九月二十日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 山崎猛殿
〔別紙〕
臨時物資需給調整法
第一條 主務大臣は、産業の囘復及び振興に關し、經濟安定本部總裁が定める基本的な政策及び計畫の實施を確保するために、左に掲げる事項に關して、必要な命令をなすことができる。
一 經濟安定本部總裁が定める方策に基く物資の割當又は配給
二 經濟安定本部總裁が定める方策に基く物資の生産(加工及び修理を含む。以下同じ。)
若しくは工事の施行又は物資の生産若しくは工事の施行の制限若しくは禁止
三 經濟安定本部總裁が定める方策に基く物資又は設備の讓渡、引渡又は貸與
政府は、勅令の定めるところにより、前項第二號又は第三號に掲げる事項に關する命令により生じた損失を補償する
第一項の規定による命令をなす場合における擔保權の處理その他必要な事項は、命令でこれを定める。
第二條 主務大臣は、前條第一項第一號の割當の實施について必要且つ適當と認めるときには、民主的に組織された産業團體に、その構成員の議決に基いて、その構成員及びその構成員以外の同業者で物資の割當を請求する者に對する物資の割當を行はせることができる。
前項の産業團體は、主務大臣が告示により、これを指定する。
前項の規定により指定された産業團體から、第一項の規定により物資の割當を受ける者で、その産業團體の行つた物資の割當の決定に不服のある者は、遲滯なくその旨を主務大臣に申し出ることができる。この場合には、主務大臣は、事案について公正な調査及び審議を行つた上、公益に適した決定をなすことを要する。
前項の決定にその産業團體が從はない場合又は第二項の規定により指定された産業團體の行ふ物資の割當を經濟安定本部總裁が定める方策に適合させるために必要がある場合には、主務大臣は、その産業團體に對して、その行ふ物資の割當の決定の變更を命ずることができる。
第三條 主務大臣は、第一條の規定の適用に關して必要な事項につき、關係者から報告を取り、又は當該官吏に必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前項の規定により、當該官吏に臨檢檢査させる場合には、その身分を示す證票を携帶させなければならない。
第四條 第一條第一項の規定にる命令に違反した者は、これを十年以下の懲役又は十萬圓以下の罰金に處する。
前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第五條 左の各號の一に該當する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千圓以下の罰金に處する。
一 第三條第一項の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
二 第三條第一項の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第六條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務に關して第四條第一項又は前條第一號の違反行爲をしたときには、行爲者を罰するの外、その法人又は人に對して各本條の罰金刑を科する。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律は、經濟安定本部の廢止の時に、その效力を失ふ。但し、その時までになした行爲に對する罰則の適用については、この法律は、その時以後もなほその效力を有する。
この法律の效力を失ふ際における損失の補償、擔保權の處理その他必要な事項に關する經過規定は、勅令でこれを定めることができる。
附帶決議
本法施行に關し運用の民主化を圖るため、兩院議員を主とする委員會を設け、重要事項は、その議を經るものとすること。
―――――――――――――――――――――
〔竹田儀一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=18
-
019・竹田儀一
○竹田儀一君 只今議題となりました臨時物資需給調整法案に關する委員會の審議の經過竝に結果に付て御報告申上げます
此の法律は今後各種物資の需給調整を實施して參ります際の基礎となる洵に重要な法律でありまして、而も其の内容は非常に簡單な構成を取つて居ります、さうして包括的な權限を政府に委任することと相成るのでありまして、本委員會に於ても、法案の内容及び其の運用の詳細に付て特に愼重な審議を續行して政府の企圖する所を追究致し、法案の通過は一時危ぶまれる状態にあつたのでございます、即ち委員會は九月五日に其の第一囘を開きましてから、同じく十三日まで前後八囘の長きに亙り開會致しまして、各委員より熱心なる御質問があり、之に對しまして、政府側よりも詳細な資料の配布があり、懇切な御答辯があつたのでございます、次に其の主なる質疑應答に付て申上げます
第一は先づ斯かる廣汎な委任立法は非民主主義的ではないかと云ふ各派を通じての痛烈なる御質問に對しては、政府側からは、現在の我が國經濟の状態に於て或る程度の經濟統制を實施することが、乏しい物資を國民全體に能ふ限り公平に、又各産業間に重點的に配分する上に是非必要であり、眞に已むを得ないものであると考へ、而も其の實施に付ては總て經濟安定本部の施策に基くことを要すると云ふ大きな枠に依つて制限を加へ、更に民主的組織を有する經濟安定會議の議に依つて、十分に民意を採入れた運營を行ふこととするから、民主主義の精神には合致すると、斯う云ふ旨の答辯があつたのでございます、第二は、何故に獨り物資に付てのみ包括的な委任立法を制定するのかと云ふ御質問、此の質問に對しましては、物資の需給は現在のやうに敗戰後の特殊な状況下にある輸出入關係にありますので、自主的な計畫を持ち得ない状態の下に於ては變轉常なく臨機應變に需給の調整を行ふ必要があるのみならず、各物資は其の數が非常に多く、又其の物資を繞る經濟上の條件は千差萬別であり、隨て其の生産及び配給の機構はそれぞれ特異性があり、具體的な細目に付ては省令に依つて規定するのが妥當である旨の御答辯があつたのでございます、第三に、此の法案と國家總動員法との性格の相違如何と云ふ御質問に對しましては、此の法案は安定本部總裁の定める方策に基く枠の中で實施されねばならないが、總動員法は直接政府が統制を行ふ權限がある點で差異があり、更に此の法案は物資の需給調整の面に限られて居るが、國家總動員法は國民經濟運營上必要な凡ゆる方面、例へば金融、勞務其の他凡ゆる部面にまで及び得る點が異なる旨の御答辯があつたのでございます、第四に、本法に依る物資の統制は如何なる範圍のものに付て行ふかと云ふ御質問に對しましては、政府側より差當り配給統制を實施する豫定の品目に付て資料の配付及び説明があり、又物資の生産命令に付ては、其の濫發は嚴に戒めるが、差當り鐵鋼等に付て其の必要があるのではないかと考へて居る旨の御答辯がございました、第五と致しまして、安定本部と各省との關係はどうかと云ふ御質問に對しては、此の點は具體的には未だ明白になつて居ないが、要するに安定本部は企業廳であつて、實施廳ではない、根本的な問題を決定して行くことにはなるが、若し安定本部と各省との間に意見の相違がある場合には、安定本部令に依りまして總裁たる總理大臣に命令權を與へてあるから、總裁たる總理大臣に於て其の間の調整を取つて行くことが可能である旨の御答辯があつたのであります、其の他命令事項となつて居る損失補償及び擔保權處理の内容、其の他法案の細目に付ての質疑應答があつたのみならず、現在及び將來に於ける物資需給の見透し及び今後の日本經濟再建の構想に付ても熱心な御論議が展開されたのであります、更に加へて石炭礦區國營の問題、鐵道、船舶の爭議問題等の當面の重要問題に付ても、關聯致しまして、切實なる御質疑が加へられたのであります
斯くの如く質疑應答がありまして、本月十三日質疑を打切り、當日直ちに全委員協議會を開催致しまして、本案の取扱に付て隔意なき懇談を致しました、申すまでもなく本案は本議會屈指の重要法案でありまして、議論百出致したのでありますが、我が國現下の經濟事情に於て、極めて乏しい資材を以て速かなる生産の再開を企圖致します爲には、暫定的に此の種法案の制定は萬已むを得ざるものとして認むることに決しましたが、第一、餘りに大幅な委任立法は、民主政治の根基を脅かすものではないか、第二、需給調整に急なるの餘り、人權蹂躙の謗りを免れざるにあらざるか、此の二點を匡救致すと云ふ意味に於て、之を主眼と致しまして、次に述べますやうな修正を致すこととなりました、此の修正は本月十四日より十八日に至るまで全委員苦心の結晶でありまして、十九日の理事會、二十日の全委員懇談會に於て全員一決、是が案文を作定致し、政府亦欣然として此の修正に應諾せられましたことは、啻に本委員會のみの欣びに止まらずして、我が國産業再建の爲に心私かに御同慶に堪へざる次第でありまして(拍手)此の場合、委員諸君の御苦心と政府の雅量ある態度に對し、謹んで敬意を表するものであります
今修正の内容を申上げますと、御手許に配付致されました修正案と御對照願ひたいのでありますが、第一點は、經濟安定本部總裁と主務大臣との關係を明確にする爲め、主務大臣は第一條に掲げる事項に關し命令を發する場合には、經濟安定本部總裁の同意を得ることを要するとした點でありまして、斯くすることに依つて、主務大臣の專斷で命令を發することなく、經濟安定會議を中核とする最も民主的な官廳である經濟安定本部に於て、本法の運用に付ても各省の施策を綜合的に調整することを、法文の上に明かに致した次第でございます、第二點と致しましては、第一條の命令の發動に當つて、官廳側の恣意に依つて不平等な取扱をせぬやう、同樣の條件の下にあるものに差別なく適用されるものと致しまして、其の公正な運用を期した次第でございます、第三點は第一條第一項各號の命令の内容をなす事項に付ても、政府の原案では多少不備な點もあると考へまして、檢討の上、物資の使用の制限又は禁止の命令及び物資の出荷の命令を加へて、命令事項の整理を實施致しますると共に、物資の割當及び配給の命令以外の事項は特に其の運用を慎重に行ふ必要があると考へまして、其の範圍を供給の特に不足する物資と云ふことに致しました、尚ほ設備の讓渡命令に付ては、單に設備と云ふだけでは其の範圍が廣きに失すると存じまして、遊休設備に其の範圍を限定することとした次第であります、第四點と致しましては、損失補償に關する事項は、物資の生産又は出荷に關する命令及び工事の施行に關する命令に付ては、積極命令のみに限定するのが妥當だと考へて、其の旨の修正を加へたのでございます、第五點として、第二條關係の問題ですが、産業團體を物資の割當に付て活用する點であります、此の點に付ては單に民主的に、自治的に組織されたと云ふだけでは、産業團體の性格がはつきりしませぬので、勅令で具體的に其の要件を示し、産業界の向ふべき方向を明確に指導する措置を執ると共に、割當に不服ある者の不服申立に付ては、主務大臣が一々之を裁くことは煩雜であるばかりでなく、運用の妥當、圓滑も期し得ないと考へまして、物資需給調停委員會なるものを設けまして、其の決定を仰がして行くことと致したのであります、第六點と致しましては、報告聽取及び臨檢檢査に關する第三條の内容が、戰時統制經濟實施中の各法規と同樣の規定となつて居りまして、相手方、場所、事項等の要件が明確にされて居りませぬので、之を具體的に規定致し、必要已むを得ぬ最小限度の場合にのみ實施し得るやう其の規定を改正致したのでございます、最後に第七點と致しまして、本法の有效期限の問題でありますが、原案のやうに經濟安定本部廢止の時に其の效力を失ふものと致しますと、安定本部の存續期間は一應一箇年となつては居りますが、其の存續期間が延長されるであらうことは、今日の經濟状態の下に於ては當然に豫想される所でありますので、昭和二十三年四月一日又は經濟安定本部廢止の時か、何れか早い時に其の效力を失ふものとして、本法は長くとも今後一年半以上は存續し得ぬこととし、本法案の終期を明確化するやうに規定致したのであります
以上のやうな修正案を各派共同提案として塚田十一郎君より御説明になりますと共に、又各派共同提案として加藤勘十君より、本法施行に關し、運用の民主化を圖る爲め、兩院議員を主とする委員會を設け、重要事項は其の議を經るものとすることと云ふ附帶決議を付することを御提案致されたのでございます、之に對しまして、政府側を代表して星島商工大臣から、修正案及び附帶決議に付て同意する旨の御發言があつた後、討論に入つたのであります、先づ自由黨を代表して加藤一雄君より、修正案及び附帶決議案に付て贊成であるが、本法實施に當る官吏は民主的に統制を實施するやう心すべく、且つ政治的な責任をはつきり執つて行くやうにしなければならぬとの希望意見の開陳があり、次に進歩黨を代表して川崎秀二君より、同じく修正案及び附帶決議に贊成意見の表明があり、安定本部に強力な權限を與へて各省の繩張を撤廢することは贊成であるが、官僚化に陷らぬやう留意すべく、安定會議は貴衆兩院議員を中心として構成し、國民の聲を反映したものとすべしの御意見がありました、次いで社會黨を代表せられまして加藤鐐造君より、同じく修正案及び附帶決議に御贊成の旨の表明があり、戰時統制經濟の失敗は資本主義を基盤とする官僚統制にあつた點を反省すべしとの強き御意見があり、次いで協同民主黨を代表して石原登君より、同じく修正案及び附帶決議に付て贊成するも、其の運用に付ては末端に於て誤つた運用を行はぬやう嚴に戒しむべしとの御意見があり、更に新政會を代表して伊藤恭一君より、修正案及び附帶決議に付て贊成であるが、今後の經濟運營は其の統計其の他の資料を公表して實施すべしとの御意見があり、最後に無所屬倶樂部を代表して福田繁芳君より、星島、膳兩大臣の御活躍に期待して修正案及び附帶決議に贊成する旨の御發言があり、討論を終つたのでございます、續いて採決に入り、修正案及び修正案以外の部分竝に附帶決議に付て總員一致贊成せられました、更に附帶決議に付て委員長から、物資調定委員會の人員は三十名程度とし、成べく衆議院議員を多く入れるべき旨及び安定會議の構成員にも成べく衆議院議員を多數選任すべき旨の希望を申述べ、膳國務大臣より、與ふ限り其の趣旨を尊重する旨の御答辯があつたのであります
最後に本委員會を通じましての空氣を申上げますれば、本法案は今日各般の經濟状況より見まして已むを得ざる法案とは認めまするが、如何にも法三章の簡單なるものでありまして、大幅なる委任立法であり、是が通過を見ました場合、戰時中の總動員法の運營に於て見ました如き惡弊を惹起するにあらずやとの感を抱かしめるのであります、故に委員會は各派共同の上、現状に於きまして可能なる範圍の最善を盡すと云ふ意味に於きまして、前申述べましたやうな修正を致した次第でございます、尚ほ此の法律を實施の際、其の運營に關し星島商工大臣竝に膳國務大臣は、必ず總動員法の轍を履むことなく、飽くまでも民主的に運營致すと云ふことを言明せられたのであります、委員會と致しましては、兩相の誠意に深く信頼を致し、其の運營に萬過ちなからんことを切に期待致すものであります、殊に此の運營に付き、國民大衆の輿論を反映せしむべく、安定會議竝に物資需給調定委員會に成べく多數の本院議員を御選定あらんことを希望したるに對し、兩相より誠意ある御答辯を戴き、委員會は釋然として起立總員を以て可決致したのでございます、以上委員會の經過竝に結果を御報告申上げる次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=19
-
020・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くや否やを御諮り致します、本案の第二讀會を開くに贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=20
-
021・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立多數、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=21
-
022・椎熊三郎
○椎熊三郎君 直ちに本案の第二讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=22
-
023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=23
-
024・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=24
-
025・会議録情報6
――――◇―――――
臨時物資需給調整法案 第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=25
-
026・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありませぬから委員長報告通り決しました、是にて本案の第二讀會は終りました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=26
-
027・椎熊三郎
○椎熊三郎君 直ちに本案の第三讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=27
-
028・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議がありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=28
-
029・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第三讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=29
-
030・会議録情報7
――――◇―――――
臨時物資需給調整法案 第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=30
-
031・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありませぬから第二讀會議決の通り確定致しました(拍手)
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=31
-
032・椎熊三郎
○椎熊三郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第六を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=32
-
033・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=33
-
034・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第六、遠洋漁業許可に關し聯合國最高司令官に對する感謝決議案を議題と致します、提出者の趣旨辨明を許します──提出者田原春次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=34
-
035・会議録情報8
――――◇―――――
第六 遠洋漁業許可に關し聯合國最高司令官に對する感謝決議案
(田原春次君外十五各提出)
―――――――――――――――――――――
遠洋漁業許可に關し聯合國最高司令官に對する感謝決議案
遠洋漁業許可に關し聯合國最高司令官に對する感謝決議
先に聯合國最高司令官が我が國未曾有の食糧危機打開のため、かつを、まぐろ等の遠洋漁業臨時復活を許し、更に今度、南極捕鯨に關し、特別許可を與へられたことは、米本國よりの輸入食糧放出許可と共に全國民の感謝感激にたへない所である。終戰後休止の状態にあつたこれら漁業が復活し、その魚油魚肉等をもつて、我が國民の榮養を補益するならば、憂慮すべき饑餓も幸に防止し得ると確信されるのである。
ここに衆議院は、特に院議をもつて、聯合國最高司令官に對し、深甚なる感謝の意を表する次第である。
右決議する。
―――――――――――――――――――――
〔田原春次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=35
-
036・田原春次
○田原春次君 茲に各派共同提案の遠洋漁業許可に關し聯合國最高司令官に對する感謝決議案を上程するに當りまして、私が其の説明を致すこととなりました、先づ最初に其の案文を讀みますが、訂正する所がありますから、それを最初に申上げて置きます、第五行目終りの方の「確信されるものである」となつて居りますが、是は口語體でありますから、「確信されるのである」と「も」の字を削ることに致します
先に聯合國最高司令官が我が國未曾有の食糧危機打開のため、かつを、まぐろ等の遠洋漁業臨時復活を許し、更に今度、南極捕鯨に關し、特別許可を與へられたことは、米本國よりの輸入食糧放出許可と共に全國民の感謝感激にたへない所である。終戰後休止の状態にあつたこれら漁業が復活し、その魚油魚肉等をもつて、我が國民の榮養を補益するならば、憂慮すべき饑餓も幸に防止し得ると確信されるのである。ここに衆議院は、特に院議をもつて、聯合國最高司令官に對し、深甚なる感謝の意を表する次第である。
右決議する。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=36
-
037・会議録情報9
―――――――――――――――――――――
〔拍 手〕
今期議會に於きまして、既に我々は外米、外麥の輸入放出に關しまして、感謝決議案を可決して居るのであります、然るに又、略略同じやうな性質と見られまする遠洋漁業に關しまして特に感謝をすると云ふことは、一つの新しい意義を我々は認めるからであります、それは外米、外麥放出は物の輸入の許可でありまして、之に對しましては、代償物として十二億圓相當のものを私共は交換的に差上げる譯であります、勿論此の儘放置して居つたならば、恐らく一千萬人からの饑餓の危險があると言はれた時でありましたので、非常に其の御厚意を感謝したのでありますが、今度の遠洋漁業竝に南極捕鯨の許可は、前の物ではなくて、職場の復活を與へられたのであります、是は我々の持てる船、全國の經驗ある漁師の技術、度胸等に依りまして、太洋に乘出し、自らの計算と判斷に依つて必要と思はれる漁獲をするのでありまして、即ち此の事は、近く開かれるであらうと豫想されまする講和會議の前に、一つの職場の許可があつたと云ふことは非常に大きな意義があると云ふので、私共は特に此の點を重要視し、感謝をするのであります(拍手)
農林省の發表に依りますと、遠洋漁業の臨時許可に依りまして、大體七月以後毎月五千「トン」以上の増獲になる計算であります、又八月六日附で許可になつて居りまする南極捕鯨事業は、今年は樣々な準備の爲に僅かに二箇船隊しか用意は出來ませぬが、十一月上旬に内地を立ちまして、十二月から來年の三月まで南方で大活躍をすることに依りまして、凡そ鯨二千頭の漁獲を豫定されて居るのであります、是等の増獲竝に漁獲に依りまして齎されまする魚肉や魚油に依つて、我々の不足して居りまする蛋白、脂肪等を供給され、又肥料なり或は藥品等にそれ等のものが利用されると云ふことは、非常に我々としては感謝をしなければならぬと思ふのでありまして、茲に本感謝決議案の重點がある譯でございます、恐らく遠洋漁業竝に南極捕鯨業に從事致しまする漁民、其の家族竝に是等を齎しました後の製造加工、運輸等に從事致しまする人々竝に其の家族、斯う云ふ人々が、今まで謂はば、休眠状態にあつたのが、復活したのでありますから、凡そ二十萬人に相當致します人々の生活の基礎が之に依つて始まるのであります、是れ亦大きな意義を持つて居ると思ふのでありますが、更に特に我々が日夜心配して居りまする引揚同胞の職業展開としての水産業の將來を考へて見ます、今日引揚同胞約四百五十萬歸つて來て居りますが、何れも海外に於きまして相當有力なる地位を持つて居られましたる實業家、或は會社員、或は各種の自營業者でありましたのが、敗戰と共に一切の動産も不動産も全部凍結され、着の身着の儘で歸つて居るのであります、續々歸りつつあります、此の中には沖繩縣出身の方々で、南方に居られました引揚漁民約五萬が全國各地に居られますが、未だに之に對しましては色々な規定──戰時統制の殘りでありまする中央水産團體令等の制約を受けまして、十分に漁民として活動することも出來ませぬ、更に一般の四百五十萬の引揚同胞の中で、色色職業の斡旋なり、集團歸農なり、其の經驗を活かされまして、日本本土に於て生活の更生を求めて居りますが、さなきだに失業者の多い今日、中々さう云ふ引揚同胞の方々の全部が御滿足の行くやうな仕事が今直ちに見付からないので、此の院内に特設してありまする、凡そ三百名の議員諸君に依つて出來て居りまする同胞救援議員聯盟に於きましても、色々な對策を立て、連日政府側とも會談をし、又引揚同胞代表とも會談して居りますが、容易に其の人々の生活更生の途は見付からないのであります、此の際是等四百四、五十萬の引揚同胞の中で、例へば年齡十八歳から三十四、五歳までの青壯年、特に身體の強く海に乘出して自分の新生涯を水産日本の建設の上に見付けようと云ふ意氣と用意のある人々は、此の際此の水産業の復活を契機と致しまして、漁民に仕立てて行きまするならば、百萬人位の人々が新しく漁民として海に進出する餘地は十分今後期待出來ると我我は思ふのでありまして、此處にも今囘の遠洋漁業の許可に關する國内失業問題の對策、引揚同胞の更生策の一環として非常に重要なる意義を發見する譯であります(拍手)
更に從來兎角毛嫌ひをされて居りました日本の遠洋漁業、例へば國際捕鯨條約の違反であるとか、國際膃肭臍條約の違反とか、色々な違反がありまして、多少海外の競爭國から非難を受けて居つたのでありましたが、此の職場の復活を契機と致しまして友愛と信義を固く守りまして、平和的に再建日本の上に寄與する水産日本を建設するのであると云ふ信念を持つて從事員が努力致しますることに依つて、漸次國際的な信用を高め、復活し、期待を掛けられて行くならば、今日まだ許可にはなつて居りませぬけれども、北洋漁業に關しましても、十分許可なり、或は借區の出來る可能性があると私は確信するのであります(拍手)御承知の如く世界の魚の九八%は北洋にあります、戰前「ノールウエー」「イギリス」「アメリカ」「ロシヤ」中國竝に日本、六大漁業國が相競爭致しまして、一箇年の魚の總水揚は二千萬「トン」近くありますが、其の中我が日本だけで三分の一の七百萬「トン」を獲得して居つたのであります、斷然水産に於ては世界一等國であつたのであります、此の日本が水産日本として再發足する機會を今與へられ、信義を守り、漸次信用を囘復することに依りまして、鰹、鮪のみならず鮭、鱒、鰊等北方にありまする魚族に對しまして、進出の機會を早められますることを此の機會に期待し、此の決議案の通過を私共は願つて居る次第でございます、以上簡單でございまするが、本決議案の趣旨を辨明致しました、願はくは全議員諸君の御贊成を得まして、通過させて戴きたいのでございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=37
-
038・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より討論に入ります、順次發言を許します──西村久之君
〔西村久之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=38
-
039・西村久之
○西村久之君 私は日本自由黨を代表致しまして、只今上程中の感謝決議案に贊意を表するものであります
戰前日本の水産は世界に冠たるものがあり、我が水産人の遠洋海洋方面の活躍振りは列國の齊しく認むる所であつたのでありまするが、戰時中は惡條件に阻まれまして出漁が困難となり、終戰間際に於きましては、沿岸漁業を殘しまして、殆ど其の影を潛めたるの感を深く致したのであります、剩へ戰後國内の食糧事情は窮迫を告げまして、農産物の不足を蛋白質榮養素に富む鮮魚介に依つて補給し、國民の榮養を確保する必要に迫られましたが、肝腎の出漁用漁船は、戰時中損耗が甚だしく、修理に幾多の困難が伴うたのでありまするけれども、全國の水産關係業者は萬難を排しまして、不完全ではありまするが出漁の準備を整へ、一方政府を鞭撻致しまして、漁區の擴張或は漁業用燃料増配を念願中であつたのでありまするが、逸早く聯合軍に於きましては此の點に意を留められまして、昨年の十二月二十一日に漁業用の燃料配給の許可を受けたのであります、月を逐ひまして増配を重ねられ、八月、九月の如きに於きましては、漁區擴張に伴ひまする所の燃料の追加増配までもして戴くと云ふやうな、其の御厚意は至れり盡せりの感があるのでありまして、我等水産國民と致しまして、衷心より敬意と感謝の誠を捧ぐるものでございます(拍手)尚ほ本年の六月二十二日には、邦人船の出漁漁區の狹溢を感じられまして、從來の倍以上となる漁區の擴張を許可するなど周到なる措置に依つて、水産關係者、否國民全般の受けまする所の恩恵たるや、蓋し今後甚大なるものありと言うても過言でないと存ずるのであります、即ち擴張を受けましたる所の漁業たる東海方面の「トロール」漁業、機船底曳網漁業の漁獲物は、大衆魚を土臺とするのでありまして、いそ、ぐち、はも、或はひらめと云ふやうな、大衆的國民に必要缺くべからざる所の魚族を漁獲する有望なる魚場であるのであります、太平洋方面の鰹、鮪漁場は、釣漁業或は網漁業として是れ亦有望な漁場であるのであります、此の兩漁場に於て活躍する日本水産人の意氣は、今正に天を衝くものがあると信じて疑ひませぬ、斯う云ふことを考へまする際に、私共國民は司令部の厚意に對しまして深甚なる敬意を表し、御同慶の至りに堪へないものであるのであります(拍手)
然るに日本政府は過去に於きまして餘りにも水産に對する所の關心が薄く、本年度の豫算を見ましても、如實に其の不認識振りを發揮致して居るのであります(「ひやひや」)併しながら數次に亙ります所の聯合軍司令部の此の御厚意に對しましては、何としても政府は相當なる追加豫算を計上して、食糧解決の重大な役割を果すべき水産物の急速なる増産を期し、且そ水産立國の根本對策を確立して、以て國富の増進を圖り、今後の方針に一新機軸を劃して、聯合軍の厚意に應ふべきであるのであります(拍手)我等國民も亦全力を注ぎまして、魚類の増産に挺身すべきだと信ずる次第でございます
茲に「マッカーサー」司令部の厚意に感謝の意を表し、併せて今後再度の漁區擴張の御許しを願ふと同時に、南洋方面に出漁致しまする所の邦人船に對しまして、適當な箇所へ避難港の設置の許可をして戴くことを切望して已まないのでありますが、簡單でありますが之を以て本案贊成の言葉と致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=39
-
040・山崎猛
○議長(山崎猛君) 原捨思君
〔原捨思君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=40
-
041・原捨思
○原捨思君 私は日本進歩黨を代表致しまして、只今上程されました感謝決議案に對して贊成の意を表さんとするものであります
狹い領土に厖大な人口を賄つて行かなければならぬ我が國に取つて、唯一つの救ひの途は廣漠涯しない海洋であると私は固く信ずるものであります(拍手)即ち敗戰後極度に逼迫した我が國の食糧事情は、幸ひにして聯合軍の絶大なる厚意に依つて辛うじて其の危機を切拔けつつある状況でありまして、甚だ寒心に堪へない所であります、而して又國土の半減と海外引揚に依る人口の増大に思ひを致す時、將來之に伴ふ主要食糧の窮迫打開と、國民體位の維持向上を期する爲には、先づ何よりも水産資源確保の根本對策を樹立して、更に一層の理解と援助を聯合軍に懇請せねばならぬと考へるものであります(拍手)抑抑我が國に於ける動物蛋白質の供給は、畜産蛋白に依存し得ない國情として、當然其の九割は水産蛋白を以て賄はれて來たのであります、而して其の戰前に於ける供給量は、年額十四億四千萬貫を産し、漁獲高に於て斷然世界一を誇つたのでありますが、其の當時に於てすら尚且つ國民榮養必需量に對して僅かに二分の一の、九「グラム」しか補給し得なかつたのであります、況んや敗戰に依つて操業海區を縮小され、それに加へて船舶、資材等の著しき不足を來して居りまする今日、國民の體位を維持するに足る水産蛋白の供給は、極めて困難なる實情にあるのであります、のみならず我が國の沿岸漁業資源は、戰前に於て既に年々漸減の一路を辿つて來て居つたのでありまして、漁業法の保護取締に依つて、辛うじて全漁獲高の六割程度を維持して參つたのであります、是等の實情から致しまして、今後に於ては絶對に漁區の擴張か若しくは制限の撤廢が許可されて、公海に於ける遠洋漁業の復活を見ない限り、忽ち資源の涸渇を來すことは極めて近い將來に直面しなければならない問題であります、斯樣な觀點から致しまして、今後に於ける我が國の水産業は、特に遠洋漁業に重點が置かれなければならないことは明かな事實であります、故に我々は速かに公海に於ける海洋資源の開放を望んで已まないものがあつたのであります、此の秋に方り聯合軍に於ては、水産業の増産と利用が我が國民の生活に根本的な重大役割を果すことに鑑みて、最も即效的な方法として、縮減された漁區の擴張と、南氷洋の捕鯨出漁を許可されましたことは、洵に理解ある措置として、全國民は勿論、全國漁業者の齊しく滿腔の敬意と感謝を捧げる所であります(拍手)即ち此の絶大なる厚意に應へる途は、言ふまでもなく最大の成果を收めることでありまして、それが爲には、官民共に我が海洋漁業の重要性を認識して、是が躍進に一層の積極的努力を傾注せねばならぬ次第であります
抑抑我が國の遠洋漁業は、明治三十一年遠洋漁業奬勵法が制定されて以來、政府は海外に漁業練習生を派遣して先進國の漁法を輸入し、或は又奬勵金の交付等に依つて専ら斯業の發展に力を致されました結果、明治三十八年漸く「アメリカ」の「ユニオン」會社製電氣著火發動機が靜岡、鹿兒島の二縣に輸入されまして、茲に初めて動力付漁船の出現を見たのであります、期せずして鳥取、北海道が之に續き、忽ちにして動力漁船が全國に普及し、「トロール」、捕鯨、遠洋鰹、鮪漁業等が相次いで勃興するに至つた次第であります、尚ほ此の間我が近海に於ける「アメリカ」の海獺船の目覺ましい活躍や、又幾多の我々の先輩が水産立國を叫び、我が國の人口問題、食糧問題解決の爲に、或は北洋に、或は遙か南方の洋上に悲壯な活躍を展開したことなども、我が國の遠洋漁業の發展に寄與する所多大であつたと考へるものであります、又南氷洋捕鯨業に致しましても、昭和九年外國母船を購入して出漁して以來僅かに三、四年にして、國産の母船を以て五船團を増加し、一躍世界第三位の捕鯨國として國際漁場に躍進するに至つた次第であります、而も我が捕鯨業は、他國に於ける如く乘組員を外國人に依存する必要もなく、全く洋々たる發達を遂げて來ました、此の一事こそは、海國日本人の漁業に對する特性を遺憾なく發揮したものと言つて敢て過言でないと考へるものであります(拍手)斯くの如き漁業に適合したる國民性に加ふるに、今少しく政府の積極的政策を以て致しまするならば、其の前途たるや、假令國土は半減したと雖も、國民の標準蛋白必需量の十七「グラム」を充す爲に、戰前に倍加する増産を期待することは必ずしも至難でないと信ずるものであります(拍手)併しながら是が爲には當面の障碍たる水産行政機構の刷新強化を斷行して、聯合軍の熱意に應へ得る態勢を備へて、而して水産業の劃期的振興を圖ることこそ、今日此の聯合軍の厚意に報いる唯一の途であると固く信ずる次第であります(拍手)茲に併せて政府の善處を切に要望して已まない次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=41
-
042・山崎猛
○議長(山崎猛君) 宇田國榮君
〔宇田國榮君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=42
-
043・宇田國榮
○宇田國榮君 私は協同民主黨を代表致しまして、只今上程に相成りました感謝決議案に對して贊成演説をなす次第であります
御承知の通り敗戰國日本は、朝鮮、臺灣、南樺太、南洋を喪失致しまして舊版圖面積の四四%を失ふに至つたのであります、而も中國、滿州の舊勢力より驅逐されまして、今日我が日本は洵に領土狹小にして、人口過剩の状態であります、而も其の人口の密度たるや、世界各國に其の比を見ざる状態でありまして、茲に重大なる人口、食糧問題の解決が横たはつて居るのであります、然らば此の一大難關たる所の人口、食糧問題を解決するには、結局は我が日本に於ては民主政治の再建と國土開發に營々たる努力を致し、而して世界に信用を囘復しなければならぬのでありまして、此の人口、食糧問題の解決には、海外移住と云ふ問題が起つて來るのでありますけれども、現下の國情に於ては遺憾ながらなし得ないのでありまするが故に、どうしても原始産業たる所の農業立國か、或は此の水産立國に俟たなければならぬと云ふことは言を俟たないのであります、然らば其の水産立國は、所謂我が日本と致しましては、四圍海に恵まれ、而も船員として、漁夫として、海國男子としての特殊性を持つて居りますが故に、洵に意を強く致して居る次第でありまして、今囘「マッカーサー」元帥が、我が日本に對しまする御厚意と御配意に依りまして、鰹、鮪の遠洋漁業の臨時復活を許可されましたことは、洵に感激に堪へない次第でありまして、此の際政府も國民も深く聯合軍最高司令官に感謝すると共に、勇を鼓舞して魚類の獲得に邁進しなければならぬと思ふ次第であります
次に漁區擴張に對して離すべからざる所の條件と致しまして、造船と漁網と重油其の他の資材を如何にして確保するか、殊に船舶の如きは、戰時中に於ては蟹工船、捕鯨船の如きは優秀船を二十六萬「トン」も有して居つたのでありますけれども、戰爭に依つて次から次に撃沈されまして、僅か三萬「トン」に過ぎない状態になつたのであります、其の後鋭意政府に於かれましても、國民に於かれましても、渾身の力を以て造船に邁進されて居るのでありますけれども、今後一層此の造船計畫に邁進しなければならぬと云ふことを期待して已まない次第であります
更に御承知の通り我が國の水産額は半ば北洋漁業及び捕鯨漁業に依るものでありまして、斯かる種類の漁業を維持する爲には、造船などの關聨産業を起すと云ふことは今申した次第でありますが、更に漁獲高の増加に寄與し、一面漁港施設の改善を圖り、貯藏輸送の條件を考慮し、又一面水産物加工業の振興、即ち可及的高度の製品加工に努力しなければならないと思ふ次第であります、漁獲高増加の爲には、深海に於ける所の漁場の開拓、淺海に於ける所の貝類の養殖等、新しき水産技術の發達など、速かに應用しなければならぬと思ふ次第であります、水産業の經營の面に於ても、農業及び中小工業の如く半封建的な氣分が殘存して居る次第でありますから、斯かる關係の生産に付ても考慮しなければならぬ問題でありまして、更に行政的措置としては、府縣境界の存在は、漁業を細分化し、合理的なる經營を阻碍するのでありますから、水産業振興の見地から、府縣の障壁を打破する行政的措置が必要であると云ふことを斷言して憚らぬのであります、尚ほ遠洋漁業の振興策としての基地の島嶼、所謂島の入りと云ふものが重大でありますが故に、聯合國の厚意に依つて、此の島嶼と云ふことに對して最大なる關心を持たなければならぬと思ふのであります、尚ほ水産業の發達は食生活の改善に寄與する所が大でありまして、先程から同僚議員からも縷縷述べられましたが、此の問題は又如何なる形に於て能率的榮養吸收として利用するか、是は魚類の科學的處理法の研究に俟たなければならないのであります、日本人の食糧は從來から主として植物に依存し、動物性食物の攝取が必要とされて居るのでありまして、「アメリカ」人の如きは、蛋白質の五〇%乃至六〇%を動物性食物から得て居るのでありますが、之に反しまして我が日本人は、遺憾ながら一三%内外の状態であります、而も農村に於ては一%乃至七%の状態でありまして、是ではどうしても今後の榮養の合理化に於きましても、又米、麥、大豆の節約から言ひましても、主食の節約から申しましても、榮養の合理化と云ふことに今後心掛けねばならぬと固く信じて疑はない次第であります、斯く致しまして攝取食糧の合理化を圖り、米麥類の節約に資し、同時に食生活の改善を期さなければならぬと思ふ次第であります
曩に我が國未曾有の食糧難打開の爲め、「マッカーサー元帥」は米本國よりの主要食糧輸入を許可に相成り、今又漁區擴張を許可され、現下の窮迫せる食糧事情に對しまして、日本國民は生活の曙光と前途に希望を持つに至りました、之に依り假令敗戰國とは言へ、國民亦規律と秩序と、さうして義務を忠實に履行すると固く信ずる次第であります、思へば戰災者の不自由なる生活、復員竝に引揚同胞の困苦缺乏、洵に想像以上のものがありますが、御厚意と御同情に依る漁區擴張は、深刻なる失業者問題、食糧確保の線からも、暗黒の中に燦たる光明を放ち得たと言ひ得るのでありまして、日本人も、森羅萬象が刻一刻進展するやうに、其の思想も行動も、新たなる構想の下に平和主義に徹し、民主主義的再建に努力するのであります、日本經濟の暗澹たる現状、狹小にして資源乏しき國土に八千萬の人口を抱へ、先づ生きんが爲の苦鬪の中から、御厚意に依る食糧及び魚類の安全感に希望を持つた日本人が、隨喜の涙を流しつつ感謝感激の生活より報恩の生活へ、報恩の生活から努力の生活へ、而して此の「マ」元帥に感謝の辭を送り、同時に「マ」元帥の御多幸と御健勝を祈つて、私の演説を是で終る次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=43
-
044・山崎猛
○議長(山崎猛君) 大津桂一君
〔大津桂一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=44
-
045・大津桂一
○大津桂一君 私は新政會を代表致しまして、今囘上程致されました決議案に對し贊成の意を表明するものであります
其の第一の理由は、再建の途上に於ける我が國と致しまして最も緊急を要する問題は食糧問題であります、殊に此の食糧危機の打開の方策は、其の最も急を要する問題であると信ずるのであります、之に關しましては曩に聯合國最高司令官に於て輸入食糧放出の許可を與へられ、今又遠洋漁業の臨時復活竝に南洋捕鯨に關する特別の許可を與へられましたことは、我が國の食糧問題解決の上に洵に感謝感激に堪へない所であるのであります、又人口の密度が高く、耕地の狹い我が國に取りましては、食糧を農業にのみ依存する譯には參りませぬ、どうしても其の一を漁業に求めなければならぬことは多言を要しない所であるのであります、斯樣な意味合から、今囘の漁區擴張の措置は、是れ亦感謝に堪へないものがあるのであります、次に蛋白質の補給の點から考へまする時に、是が補給は我が國の現状に於ては極めて困難なる状況にあるのであります、是が魚類に其の給源を求むることが出來ると致しまするならば、國民の榮養を改善し、體位の向上を圖る上から考へまして、洵に慶びに堪へない次第であります、第四に考へられますことは、水産業は、勿論工業の振興、失業救濟の立場から考へまして、資源の開發、各種産業の復興に資すること極めて大なるものあるを痛感する次第であるのであります
私は斯樣な四つの觀點から、本案に贊成を致すものでありまするが、茲に考へられることは、此の厚意に對して政府は萬全の處置を講じて、水産日本の再建に最大の努力を拂はるることを切望して已まぬのであります、最後に私は聯合國最高司令官に對して、滿腔の感謝と敬意とを表しまして、私の所見を打切ることに致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=45
-
046・山崎猛
○議長(山崎猛君) 柏原義則君
〔柏原義則君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=46
-
047・柏原義則
○柏原義則君 私は無所屬倶樂部の全員を代表致しまして、本決議案に對しまして贊意を表するものであります
偖て我が民族は、世界民族中で最も魚を好む民族であります、而も魚を獲ることが最も上手な民族であると思ふのであります、而して戰前に於きましては、日本水産が世界の水産界に洵に華々しい雄飛をしたことは氣持の好い記憶でありまして、今囘聯合國より遠洋漁業の許可を與へられましたことは、食糧問題に對して洵に嬉しい限りでありますが、更に此の遠洋漁業が日本水産の世界的進出の一段階に達しまして、戰後に於ける世界經濟再建の一環の中に食込み得ましたことは、何とも言へぬ喜びを感ずるのであります、考へて見ますと、此の水産の發達と云ふものは、他の重工業、化學工業と違ひまして、如何に發達しましても、戰爭を惹き起す危險は極めて少いのであります、而も我が大和民族が海國男兒としての本領を發揮する上に於きまして、是れ程良いものはないと思ふのであります、曾て南極の捕鯨場に於きまして、我が日本の捕鯨隊が先輩國である「ノルウェー」「イギリス」の捕鯨隊と競爭致しまして、實に優秀な成績を示した、考へて見ますると、遠洋漁業は我が大和民族に與へられました所の民族的適材適所の有難い處置であつたと思ふのであります、太平洋の沿岸各地に於て、我が大和民族が漁業の上に於て、優秀な技倆と實績を擧げて居ることは申すまでもありませぬが、「アメリカ」の「サンペドロ」に參りましたら、洵に美しい漁港、立派な船、之を日本人が造り、日本人が操作し、西洋人を下に使つて働いて居つたのは此處だけであつたと思ふのでありますが、斯う云ふ意味から申しましても、我が大和民族は、魚を獲る上に於ては、他の如何なる民族にも負けないと思ふのであります、唯心配なことは、遠洋漁業に參りまして、日本人が亂暴に魚を獲る、規則も踏み破つて無茶苦茶にやる、是で各方面から非難攻撃があつたやうでありますが、曾て私は「カナダ」の「フレザー」河の鮭の漁場を見たことがありますが、日本人は小さくても大きくても、制限の時間も無視してどんどん獲りますので、洵に嚴しい規則が設けられました、何「インチ」以下の魚を獲つたら「ピストル」で打殺されるとか、網を入れる時分には、朝の八時の喇叭が鳴つたならば一齋に網を入れる、次の喇叭が鳴つたならば、魚を獲つて居ても、それを抛り出して網を揚げなければならぬ、日本人が規則を餘り無視しますから、日本人向きの一つの嚴重な統制規則が生れて居るのを見たのであります、今度南方に參りましても同樣であると思ひます、外國の監督官が乘つて指圖するであらうと思ひますが、此の國際信義を十分守つて戴きたい、大體日本人は魚を獲ることが上手であります、眞劍にやれば、世界の如何なる民族よりも上手なのであります、眞面目にやるならば、一方北氷洋も日本人がやれば、安く獲つて、おいしい魚を世界の市場に手渡すことが出來るのでありますから、魚は日本人に任した、斯う云ふ所まで漕ぎ付ける爲には、遠洋漁業に對しても色々な方面の躾とか、或は國際的な知識とか、信念とか、信義を重んずる、斯う云ふ方面の教育を施して、立派な遠洋漁業隊を組織して、成程と感心して貰ふやうな遠洋漁業振りをやるやうに、政府に御監督を願ひたいと思ふのであります(拍手)而もさうした遠洋漁業でありますが、日本經濟再建の上に於きまして、紡績も非常に大事でありますが、續いて日本水産が日本經濟再建の上に持つ役割は洵に大きなものがあると思ふのであります、斯う云ふ意味に於きまして、現在の農林省の水産局の機構では餘りに小さいやうに思ふのであります、もつと之を擴充するなり、欲を言へば水産省、出來なければ水産廳位を作りまして、もつと其の役所には權限も殖やし、人も殖やして行く、現在の所でありましたならば、漁船一つにしましても船舶運營會が握つて居る、それでなしに、斯う云ふ重大な産業でありますので、船舶のやうなものは水産省とか水産廳が握つてどんどんやれるやうにする、一艘の漁船を造るにも、地方では五つも六つもお役所をぐるぐる廻らなければならぬ、それから東京に行つて、又十幾つかの書類を持つて廻つて、數箇月經つて許可して貰ふ、こんなことでは、折角遠洋漁業の權利を許可されましても、中々魚は我々の口に入らない、聯合國の漁業課長の「フィードラ」中佐は度々新聞で述べて居りますが、遠洋漁業を許可したのに、一向日本の魚の値は下らないではないか、貧乏人は食へないではないか、折角許可しても許可だけで、一向效果が上らないではないかと云ふことを度々新聞で發表して居られますが、早く其の方面の役所の手續なども簡單にして、早く船を造つて、兎も角一般大衆が魚を食へるやうな手配を眞劍に政府當局にやつて戴く、それを御願ひしまして、私の贊成演説を終ることと致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=47
-
048・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本案に贊成の諸君の起立を求めます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=48
-
049・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立總員、仍て本案は全會一致可決致しました──日程第三、青年禁酒法案の第一讀會を開きます、提出者の趣旨辯明を許します──提出者竹内茂代君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=49
-
050・会議録情報10
――――◇―――――
第三 青年禁酒法案(林平馬君外十一名提出) 第一讀會
―――――――――――――――――――――
青年禁酒法案
青年禁酒法
第一條 この法律で青年とは、二十年以上二十五年未滿の者をいふ。
第二條 青年は酒類を飮用することができない。
營業者でその業態上酒類を販賣又は供與する者は青年の飮用に供することを知つて、酒類を販賣又は供與することができない。
第三條 警察官署は、前條第一項の規定に違反した者に戒告を爲すことができる。
第四條 青年がその飮用に供する目的で所有又は所持する酒類及びその器具は行政の處分でこれを沒收し又は廢棄その他の必要な處置をすることができる。
第五條 第三條の戒告を受くること三囘に及び、なほ第二條第一項の規定に違反した者は科料に處する。
第二條第二項の規定に違反した者は科料に處する。
第六條 營業者が未成年者又は禁治産者であるときは、この法律で適用する罰則はこれを法定代理人に適用する。但し、その營業に關し成年者と同一の能力を有する未成年者はこの限りでない。
營業者はその代理人、戸主、家族、同居者、雇人その他の從業者がその業務に關し、この法律に違反したときは、自己の指揮に依らないものとして、處罰を免れることができない。
明治三十三年法律第五十二號は、この法律に依る犯罪にこれを準用する。
附 則
この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、この法律施行の時既に滿二十年を趣えたる者に關しては、この法律を適用しない。
―――――――――――――――――――――
〔竹内茂代君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=50
-
051・竹内茂代
○竹内茂代君 只今上程になりました青年禁酒法に付て、其の理由を御説明申上げます
私は今囘初めて此の議會に臨んだのでございますが、前から此の議院内に禁酒の行はれて居りますことを見まして、不思議の感に打たれたのでございます、なぜなれば一般の外に居ります人は、特別な人を除きましては、昔から政治と云ふものはお酒と非常に縁故のあるもので、お酒を飮みながら相談すると云つたやうな印象を持つて居りまして、私も其の一人だつたのでございます(發言する者あり)議院内に酒のないと云ふことは、殆んど外に知られて居りませぬ、而も是は既に十五年前、昭和七年八月に各派の協議會の申合せで、院内に酒を入れないと云ふことを決議されたと云ふことでございます、但し儀禮は此の限りにあらず、此嚴肅な事實を一般國民には能く知らせなければならない、知らないで居る人があるなら、惜しいことだと思ひます、此の院内の禁酒と云ふことは、酒の害を認められたからであると思ひますが(發言する者あり)若し昔の人の言ふやうに…
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=51
-
052・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=52
-
053・竹内茂代
○竹内茂代君(續) 酒が百藥の長であるならば、それは率先して飮まなければなりませぬけれども、決してさうでないことを認められたのだと思ひます、今年は少し違ひますけれども、從來議員となる方は、大抵四十の年を越しまして、所謂惑はざる年齡に達した人でありましたが、さう云ふ人達にさへ禁酒の必要を認められたとしますなら(「ノーノー」)まだ發育盛りの青年には一層禁酒が必要であると云ふことになると思ひます(拍手)青年の體は二十四、五歳頃に發育が完成致します、酒を飮むと云ふ習慣も亦此の頃に覺えるのでございます、澤山お酒を飮むことの素質は、二十四、五歳までに出來るのでございますから、此の頃に禁酒を致しますれば、體を害ふやうな大酒家にはならないと思ひます(拍手)斯うした發育期にございます青年に對して、「アルコール」の毒は胃病も起し、肝臟、心臟、大切な臟器に病を起します(發言する者あり)專ら神經組織と血管を侵しますから、飮み續けますと腦を害して、折角の青年達の精神の發達を妨げます、つい血管硬化も起すと云ふやうなことになります、又青年時代に酒に親しみますと、恐るべき性病に罹る機會が自然に多くなります、さうして青年時代に罹つた性病と酒の中毒に依つて、四十二、三歳頃になりますと、所謂人生の働き盛り、お役所であれば局長、課長級、或は會社の重役、何々會の幹部になつた其の頃に、腦溢血を起したり、麻痺病と云ふ精神病──精神病の一〇%を占めます麻痺病になつたりして、折角の秀才が手腕家でも何でも、癈人となつた例は決して少くありませぬ、又酒の害は、發狂はしないまでも、社會の治安を脅かしたり、道義の頽廢、失業、生活難、犯罪の増加、さう云ふ社會問題の原因になることは周知の事實でございます
酒と作業能率の關係を見ますると、澤山研究はされて居りますが、數字等のことは省略致しまして、先づ勞働力に及ぼす影響に付て二、三例を申しますと、米國の「フーヴァー」氏は一〇%の損失を算へて居ります、英國の勞働大臣「スノーデン」氏は一五%の損失と言つて居ります、我が國の三井炭礦で調べたものでは、禁酒に依つて二五%採炭の率が増したと言つて居ります、一杯機嫌で能率を擧げようとしたことは、昔の爆彈三勇士時代の遺物で、一杯機嫌では能率が擧らないと云ふことは、今囘の戰爭でいやと云ふ程經驗して居ります(拍手)特に學業に志す大學生は、其の道の蘊奧を究むべき大切な使命を帶びて居ります、又女子は此の年頃に、結婚、姙娠、育兒と云ふ民族育成の重任を負つて居るのでございます、酒の子孫に及ぼす影響は、御存じの通り胚種細胞を侵すのでございますから、兩親の何れが酒に親しみましても、異常兒、不具者、精神薄弱者、不良兒、精神病者などが多く産まれるのでございます、學究をするにも、勤勞をするにも、母性の任務にも大切な身體に、お酒を澤山飮むと云ふことは性病に罹ると云ふことと共に、個人は固より民族の發展に重大な損失を蒙ります、今日は日本再建の力は青年の力に俟つ所が頗る大きいと思ひます、此の際青年男女はせめて二十五歳まで、飮酒も不健全な娯樂も忘れて、國家再建の完成まで懸命に努力して戴きたい、是は全國の母の切なる願ひでございます(拍手)此の際青年禁酒法が實現しないやうでは、日本再建も覺束ないと存じます
一方我が國の食糧事情を顧みますれば、主食物から酒を釀造すると云ふゆとりもなくなつて、本年六月から釀造が休止になつて居ります、ですから今あるお酒は、今どうしても飮まなければならない人の需要を充すに足りない情勢と伺つて居ります、ここで二十歳になつた百二十萬の男女青年が、新しく酒を飮むとなりますと、酒量は益益不足致しまして、自然に密造、密賣買の犯罪を釀すやうになります、或る釀造家が話して居りましたことに、今年の密造に用ふる米は凡そ二百萬石に及ぶと云ふことであります、素人造りの不良の酒が飮まれたり、其の他粗惡な色色な酒が現はれ、「メチール・アルコール」の中毒で死んだり、「フーゼル」油で健康を害したと云ふやうなことは甚だ憂ふべきことでありますが、是は一度お酒に慣れますと、飮まずに居られないで、どんなものでも飮むと云ふことから起つて參ります、我が國の未成年禁酒法は、二十歳未滿の青少年をお酒の害から護るのでございますが、更に心身の發育期にある二十五歳までの青年をも酒の害から護つて、體力の増強、精神の健剛、さうして日本民族の優生を圖りたい、是が本案提出の所以でございます、此の青年禁酒法は二十五歳までとなつて居りますが、今直ぐに二十五歳までの青年に酒を飮むなと云ふのではなくて、今まで未成年で酒を飮まなかつた人、詰り來年二十歳になると云ふ人から始めて、順に移つて行くのでございますから、二十五歳になつてお酒を飮んで居る人に、急にお止めなさいと言ふのではないのであります、又禁酒法は、未成年禁酒法でも青年禁酒法でも、御神酒を飮むとか、三々九度の盃に使ふお酒とか、商賣の利酒とか云ふやうなものは差支へないと云ふことは、大正十一年未成年禁酒法が出來た時に、内務大臣から地方長官に御達しがありまして、心得て居る筈であります、尚ほ本法には罰則があると云ふことを心配なさる方がありますが、それは警官から戒告を受けまして、三度同じ戒告を受けて聽かない時に科料に處せられると云ふ、極めて輕い罰則でございます、又「アメリカ」の禁酒法が撤廢になつたと云ふことで、禁酒法は失敗だと云ふので本法に比較するのは誤りと思ひます、なぜなら「アメリカ」の禁酒法は、既にお酒に親しんだ大人に對して、法律の力ではどうすることも出來ない所謂お酒に慣れた人の禁酒でございますから、其の法律に從へない、隨て密造や不正や違反が甚だ多くなつて到頭廢止になつたことは、皆樣御承知の通りでございます、私の茲に申上げます禁酒法は、全くまだ酒の味を知らない青年を、二十五歳までお酒に親しませない方法で、米國のとは違ふのでございますから、どうぞ之を御諒承願ひます
今年から選擧權が二十歳で與へられたと云ふことで、青年が急に大人になつた譯でございますが、生理的には心身の發育が急に二十歳に完成すると云ふ風に變つた譯ではございませぬ、ですから選擧權と飮酒權とは別々に考へて戴いた方が宜いと思ひます、そこで私は本法が通れば、國家が禁酒青年に對しては、酒の代りに食糧の充實、清涼飮料の配給、お菓子の特配、健全娯樂の普及と云ふやうな必要な施設をなすべきであると思ひます、家庭に於ては母親の協力に俟ちまして、青年を正しい生活に向はせ、さうして國家再建の爲に働くやうに致したいと存じます、以上極めて簡單でございますが、此の諸點を御諒察下さつて、本案御審議の上どうぞ其の通過に御贊同あらんことを御願ひ致します(拍手)
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=53
-
054・椎熊三郎
○椎熊三郎君 本案は議長指名二十七名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=54
-
055・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=55
-
056・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第四、農民組合法案の第一讀會を開きます、提出者の趣旨辯明を許します──提出者野溝勝君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=56
-
057・会議録情報11
――――◇―――――
第四 農民組合法案(野溝勝君外三名提出) 第一讀會
―――――――――――――――――――――
農民組合法案
農民組合法
第一章 總 則
第一條 この法律は、團結權の保障及び團體交渉權の保護助成によつて、農民の地位の向上を圖り經濟の興隆に寄與することを目的とする。
刑法第三十五條の規定は、農民組合の團體交渉その他の行爲であつて、前項に揚げる目的を達成するためになした正當なものにつき適用あるものとする。
第二條 この法律において農民組合とは、農民が主體となつて自主的に耕作權の確立その他農業生産諸條件を改善し、經濟的竝びに社會的地位の向上を圖ることを主なる目的として組織する團體をいふ。
第三條 この法律において農民とは、自己又はその家族が耕種、養畜又は養蠶の業務(これらに附隨する業務を含む)に從事するもの及び農業勞働者をいふ。
第二章 農民組合の設立
第四條 農民組合の地區は、市區町村の區域による。但し、特別の事情がある場合には市區町村の區域による必要がない。
字その他これに準ずる區域には班を設けることができる。
第五條 農民組合は、同一市區町村内の農民五分の一以上でなければこれを組織することができない。
第三條に該當しない地主又は不在地主若しくはそれらの者の利益を代表すると認められるものは農民組合に加入することができない。
農民でない者であつても組合の承認があつたときは組合に加入することができる。
第六條 農民組合は、正當の理由なくして農民の組合加入に困難な條件を附し、又は加入を拒んではならない。
第七條 農民組合は、組合員の居住する市區町村名を冠して農民組合と稱し、その事務所は當該市區町村内に設ける。
第八條 發起人は、規約を制定し組合員を募集して書面による加入、申込人の員數に發起人を加へて當該市區町村内の農民の五分の一以上に達したときは、速かに設立總會を招集しなければならない。
第九條 規約には少なくとも左の事項を記載しなければならない。
一 名稱
二 事務所の所在地
三 法人である組合にあつては法人であること
四 目的及び事業
五 組合員に關する規定
六 會議に關する規定
七 代表者その他役員に關する規定
八 組合費その他會計に關する規定
九 規約の變更に關する規定
第十條 規約が法令に違反するときは、命令の定めるところによつて行政官廳はその變更を命ずることができる。
第十一條 設立總會の完了したときは組合は成立する。組合が成立したときは命令の定めるところによつて、二週間以内に規約、役員の氏名及び住所を行政官廳に屆けなければならない。
第三章 農民組合の管理及び解散
第十二條 農民組合の事務所には、規約、組合員名簿及び會計に關する帳簿を備へ付けなければならない。
組合員は何時でも前項に掲げた書類の閲覽を求めることができる。
第十三條 農民組合の代表者又は農民組合の委任を受けたものは、組合又は組合員のために小作團體協約の締結、その他の事項に關し交渉する權限がある。
第十四條 地主は、農民が農民組合の組合員であるとの故を以て小作契約を解除し、その他これに對して不利益なる取扱をしてはならない。
第十五條 地主は、小作爭議行爲であつて正當なものに因り損害を受けたとの故を以て農民組合又はその組合に對して賠償を請求することはできない。
第十六條 農民組合は、共濟事業その他福利事業のため特設した基金を他の目的に流用しようとするときは、總會の決議を經なければならない。
第十七條 農民組合は左の事由で解散する。
一 規約で定めた解散事由の發生
二 破産
三 組合員四分の三以上の多數による總會の決議
四 第十八條の規定による解散處分
五 合併
六 組合員が七人未滿になつたとき
第十八條 農民組合が屡屡法令に違反し秩序を紊したときは裁判所は農民組合の解散をなすことができる。但し、農民組合中央會ある場合にはその申立がなければならない。
前項の場合における手續に關して必要な事項は命令でこれを定める。
第十九條 農民組合はその主な事務所の所在地において登記をなすによつて法人となる。
この法律の規定するものの外農民組合の登記に關し必要な事項は命令でこれを定める。
農民組合に關して登記しなければならない事項は、登記の後でなければこれを以て第三者に對抗することができない。
第二十條 民法第四十三條、第四十四條、第五十條、第五十二條乃至第五十九條及び第七十二條乃至第八十二條竝びに非訟事件手續法第三十五條、第三十六條、第三十七條の二、第百三十六條第一項、第百三十七條及び第百三十八條の規定は、法人たる農民組合にこれを準用する。
第二十一條 法人たる農民組合には、命令の定めるところによつて所得税及び法人税を課さない。
第四章 農民組合聯合會
第二十二條 都道府縣内の農民組合は、農民組合聯合會を組織することができる。
第二十三條 農民組合聯合會の名稱にはその都道府縣名を冠し、事務所はその都道府縣内に置く。
第二十四條 農民組合聯合會を設立しようとするときは、命令の定めるところによつて、その都道府縣内の農民組合二分の一以上の同意を得て設立總會を開き、規約その他設立に必要な事項を定める。
第二十五條 農民組合聯合會は、主な事業所所在地において設立の登記をなすことによつて成立する。
第二十六條 第五條第三項、第九條、第十二條、第十三條、第十五條乃至第二十一條(但し第十七條第五號、第六號を除く)の規定は農民組合聯合會にこれを準用する。
第五章 農民組合中央會
第二十七條 全國の農民組合聯合會は、農民組合中央會を組織する。
第二十八條 中央會は日本農民組合中央會と稱し、主な事務所を東京に置く。
第二十九條 第二十四條及び第二十五條の規定は中央會の設立についてこれを準用する。
第三十條 第五條第三項、第十二條、第十三條、第十五條乃至第十七條(但し第五號、第六號を除く)第十九條乃至第二十一條の規定は農民組合中央會にこれを準用する。
第六章 罰 則
第三十一條 第十四條の違反があつた場合においては、その行爲をなしたものを六箇月以下の禁錮又は五百圓以下の罰金に處する。
前項の罪は農民組合聯合會の請求を俟つてこれを論ずる。
第三十二條 左の場合においては農民組合又は聯合會若しくは中央會の代理者又は清算人を五十圓以下の過料に處する。
一 第十二條の規定に違反して書類の備へ付けをなさないとき
二 この法律又はこの法律に基いて發する命令による登記をなすことを怠つたとき
三 第二十條において準用する民法第七十九條又は第八十一條の規定に違反して公告をなさないか、又は不正の公告をなしたとき
四 第二十條において準用する民法第八十一條の規定に違反して破産宣告の請求をなさないとき
五 第二十條において準用する民法第八十二條及び非訟事件手續法第三十六條の規定による裁判所の檢査を妨げたとき
附 則
この法律施行の際、現に存する農民組合聯合會及び中央會は本法施行の日に設立總會を完了したものとみなす。但し、その規約がこの法律に牴觸する場合には、本法施行の日から一箇月以内にこれを改訂しなければならない。
登録税法の一部を次のやうに改正する。
第十九條第七號中「勞働組合」を「勞働組合、農民組合、農民組合聯合會、農民組合中央會」「勞働組合法」を「勞働組合法、農民組合法」に改める。
―――――――――――――――――――――
〔野溝勝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=57
-
058・野溝勝
○野溝勝君 只今提案になりました農民組合法案に對しまして、提案者の一人である私から其の理由を説明致したいと存じます
曩に政府から提案されました農地制度の改革關係法案の趣旨は、働く農民に勞働の成果を公正に享受させることと、農村の民主化を圖ることと、農業生産力の増強を期することを目的として居つたのであります、其の目的達成の爲には、眞の民主的な團體の裏付が絶對必要であると云ふやうなことも述べられて居つたのでございます、農村の半封建性を拂拭致しまして、働く農民が自主的に農村を指導する爲には、無力なる個々の農民が、團結と協同に依りまして農業經營に挺身することが緊要であります、僞裝と矛盾を包藏せる現下の非民主的の農業組織は之を改廢致しまして、農業生産力を新たなる生産樣式に依つて高度化すこと乃至は促進せしむること、農業をして、近代性と合理性を保有する日本經濟構造を建設する所の擔ひ手たらしむることが必要であると思ひます、農民生活と農村の文化は、斯かる經濟構造の建設の擔ひ手たらしむる農民組織ががつちりと出來た時に、初めてそれが確立するのもだと思ふのであります、隨て此の方面への道を遮斷せんとするやうな、從來の農業組織に依る專制と搾取とに抗議致しまして、隷屬と不安と無智とを一掃し、以て農村の民主化の徹底を期せんとするものであります、幸ひ我が國農村に於ける唯一の民主的團體であります日本農民組合が全國的な組織を持つて居りますので、之を中心に致しまして、農村に組織されて居りまする所の群小幾つかの單位組合、是等を全部整備する爲に、茲に法定化する必要から本法案を提出した次第であります
以下内容に付きまして主なる點を簡單に申上げたいと存じます、本法案の内容は大體六つに分けてあるのであります、第一は總則、第二は目的及び事業、第三は組合員の資格、第四は組合の設立、第五は組合の管理、第六は組合の系列であります、先づ第一の總則の點に於て申上げますならば、現存の農民組合は、實質上全國的に於ける最大農村組織でございます、本法制定の場合には、最大唯一の日本農民組合を考慮の對象とすることは當然でありますが、現在及び將來に亙りまして、群小の農民團體、是等を日本農民組合に包容し得るとは考へられませぬし、又將來群小單位の農民團體が簇生することも考へなければならないのであります、斯樣な雜多な農民組合を其の儘野放しにして置くと云ふことになりますると、今囘政府から提案になりました農地制度の根本的改革を行ふ上に於きましても、其の裏付となるべき所の農民組織でありまする農民組合が、色々な意味に於て其の性格の相違を來す虞がありますので、日本農民組合を中心と致しました其の他の單位農民組合に付ても、一定の規格を附することが必要ではないか、斯樣に思ふ次第であります、さうして尚ほ總則の點で特に強く謳つてある點は、立法として主に農民の團結權と團體交渉權を保障すべく強調してある點でございます
次に第二、目的及び事業の點でございますが、組合法に於て最も重大なことは目的と事業とでございます、特に目的の如何は團體の生命をも規定すべきことになりますので、農民組合の主なる目的と致しましては、土地制度の根本的改革と、耕作權の確立にあることは勿論でございますが、本法案の目的は更に之を廣範圍に擴大致しまして、各個の組合が其の土地の事情に依りまして、其の經濟的、社會的問題をも目標としてやることを目的としてあるのでございます、尚ほ事業と致しましては、日本の農業を近代化する爲に、其の目標と致しまして太い線を引き、其の太い線に沿つて、事業などに於きましても、各組合が自主的にそれを取上げてやることが出來るやうになつて居るのでございます
第三が一番問題の點だと思ひます、組合員の資格の點でございます、今囘の土地改革法案が若し通過致したと致しまするならば、日本に於ける耕作關係の樣相と云ふものは一變する譯になつて來ます、大地主と云ふものはなくなります、結局三町歩の耕作地を認めると云ふこと、一町歩の小作地を許すと云ふ點にありますが、三町歩の耕作地を認めると云ふことになりますると、日本の農業面積、耕地面積を嚴密に檢討して見る場合に──農家の戸數と對比して見る場合に、三町歩の耕作面積を保有すると云ふことは、恐らく日本の農業經營から言ひまして、相當問題になつて來ると思ふのでございます、仍て今囘の土地制度の改革後に於ける耕作農民の地位は、一應常識的に見るならば、普遍化されるが如く見えますが、茲に私は問題が生起する虞があると思ふのでございます、なぜかならば地主階級は耕作農民の稱號を得る譯でございます、所謂三町歩の耕作者と云ふことになるのでございます、して見ると、今までの農村に於ける支配勢力と云ふものは、非民主的なる地主階級に依つて壟斷されて居つた、然るに今囘は大地主と云ふものはなくなつたのでございますが、併し依然として其の大地主階級は三町歩の耕作者としての地位を獲得致しまして、農村に於ては耕作せぬ地主と云ふものが茲に出來ることになるのでございます、斯樣な場合に、折角農地改革に依つて農村を民主化せんとする際に、此の非民主的なる思想を以て地主農民が農村に於ける耕作農民としての地位を得、耕作者の指導をなさんとするが如きことがあるとするならば、却て農村の民主化を傷つけるものでございまして、斯樣な點に付きましては十分警戒をしなければならぬのでございます、仍て組合員の資格構成に於きましては、本法で言ふ組合員としての農民とは、原則的に自家勞力を以て農業を經營する者を農民組合の資格者と規定致しまして、内容的には、農民とは自己又は其の家族が耕作、養畜又は養蠶の業務に從事する者及び農業勞働者に限定した點でございます、仍て地主又は農業勞働者を使用する不勞の自作農は、組合員の資格なきものと規定した點でございます
第四に於きましては組合の設立でございます、單位農民組合は、原則として市區町村を區域として設立することに致しました、單位組合の組合員數は、市區町村の農民五分の一以上を必要とすることに致しました
第五、組合の管理でございます、組合の管理に付きましては、組合の團結權と團體交渉權を確立することにしたのでございます、團體交渉權としては、組合代表者又は農民組合の委任者が、地主又は地主團體と土地問題、小作問題に付て交渉をするやうに交渉權を確定する、即ち團結權の保障をするのであります、此の點は私委員會に於きまして詳細に申上げたいと思ふのでございますが、農民組合の組織の代表者竝に委任を受けた代表者と云ふものは、當然組合員の權利を代表し、又は委任をして之に當るべきことは當然であり、又是は認めて貰はなければならぬと云ふ點でございます、御承知の如く勞働組合法に於きましては、團體協約權乃至は團體權を認めて居るのでございます、仍て農民組合法に於きましても、當然團結權を承認することが妥當だと思ふのでございます
第六は組合の系列でございますが、單位組合は、都道府縣を區域と致しまして聯合會を組織することになつて居ります、聯合會は中央會を組織することになつて居るのでございます、所謂「ピラミッド」三段階に依つて組織する建前を執つて居ります、併し此の聯合會の構成の場合に於きましては、單位組合──都道府縣内に於ける農民組合の單位組合ですが、單位組合の二分の一以上を必要とすることになつて居ります、仍て今日の農業會のやうな非民主的團體の組織構成でなく、飽くまでも民主的な建前を執る組織を方針として居る次第でございます、大體以上が概略本法案の骨子でございまして、詳細に亙りましては、委員會に於きまして十分質疑に應じたいと思ひます、宜しく愼重審議の上、日本農村民主化の爲め御贊成あらんことを御願ひ致しまして、私の提案理由の説明を終ります(拍手)
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=58
-
059・椎熊三郎
○椎熊三郎君 本案は議長指名二十七名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=59
-
060・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=60
-
061・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第五、蠶絲業法の一部を改正する法律案の第一讀會を開きます、提出者の趣旨辯明を許します──提出者森幸太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=61
-
062・会議録情報12
――――◇―――――
第五 蠶絲業法の一部を改正する法律案(森幸太郎君外四名提出)
第一讀會
―――――――――――――――――――――
蠶絲業法の一部を改正する法律案
蠶絲業法の一部を次のやうに改正する。
第二十一條第一項中「蠶絲業者」の下に「又は其の團體」を加へ「其の」を削る。
第二十八條の二蠶絲協同組合は其の聯合會を組織することを得
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
この法律の施行に關し必要な規定は、勅令でこれを定める。
―――――――――――――――――――――
〔森幸太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=62
-
063・森幸太郎
○森幸太郎君 只今上程に相成りました蠶絲業法の一部を改正する法律案に付きまして、提案の趣旨辯明を致したいと存じます
本法案は、現在施行されて居りまする蠶絲業法の一部を次の通りに改正致したいと存ずるのであります、第二十一條第一項中、「蠶絲業者」の下に「又は其の團體」を加へ、「其の」を削るのであります、第二十八條の次に第二十八條の二を設けまして、「蠶絲協同組合は其の聯合會を組織することを得」、附則としまして、「この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。」「この法律の施行に關し必要な規定は、勅令でこれを定める。」、條文は極めて簡單であるのであります、聊か提案の趣旨を申述べたいと存じます
御承知の通り蠶絲業と云ふものは我が國に古くより行はれて居りまして、世界に於きましても蠶絲業國として我が日本は先進國「イタリー」を凌ぎ、中華民國に對しても決して讓らない所の立派な發達を致して居つたのでありまするが、戰爭の爲に此の蠶絲業が根本的に破壞せられまして、全く今日では舊態を認め得ないのであります、我が敗戰日本が再び起ち上るに於きましては、先づ第一に今日問題と致されて居るのは食糧の問題であります、又工業の發達に依つて我々の生活必需品の生産を要求されてあるのであります、飜つて我が國の現状を考へますのに、資源に乏しく、食糧の確保に付きましても聯合國に對して非常なる御厄介を掛けて居るのであります、而も工業を發達せしめんと致しましても、原料市場を持たない我が日本と致しましては、是れ亦聯合國の厄介に預からなければならない状態にあるのであります、而して我が國は食糧確保と同時に、一日も早く生活必需品を生産致しまして、一日も早く起ち上らなければならないのでありますが、今申しました如くに、此の生活必需品を生産する原料市場すら聯合國の御厄介にならなければならぬ今日の情勢であることを考へて見ますと、何に依つて聯合國に之を要請することが出來るかと云ふ問題であります、即ち昔我が國の蠶絲業は、我が國の富は此の小さき繭の中に籠つて居ると云ふ氣持で大事に考へられて居りました、此の養蠶は今や日本再建の鍵を握ると言つても差支へないと思ふのであります(拍手)即ち今日全國に、蠶絲業に關して獨立なる省を設けよ、或は蠶絲廳を設置せよと云ふ聲があるのも亦故ある次第であると存ずるのであります、而して政府は此の蠶絲業に對して五箇年計畫を發表致したのであります、此の蠶絲業が戰爭の爲に如何に歪曲されたかと云ふことは、諸君の御承知の通りであります、終戰後政府が此の蠶絲業の復興を極度に擴張致さんとして立てましたのが五箇年計畫であるのであります、今から考へて見ますと、十年前には我が國の桑園は七十萬町歩あつたのであります、それが食糧増産の爲に十五萬町歩に今減つて居るのであります、此の場合政府が立てました五箇年計畫は、桑園に於きまして此の十五萬町歩を、二十六年度に於て二十七萬町歩に上げんと致して居るのであります、又絹絲の生産額に於きましても、現在十五萬五千俵を二十一年度に豫想されて居るのでありますが、之を二十六年度に二十七萬五千七百俵に上げんと致して居るのであります、又現在桑園一反歩當りの收繭量は約十貫匁目位なものであります、之を十六貫匁目まで引上げんと政府は考へて居るのであります、此の考へ方を我々は決して惡いとは思ひませぬ、併し政府は曾て此の蠶絲業の維持の爲に、或は擴張の爲に相當の計畫を立てたのであります、昭和十六年度に於きましても千五百萬石の繭をどうでも斯うでも生産しなければならぬと云ふやうな、色々な計畫を蠶絲業者總動員して立てたのであります、けれども却て生産額は減じたのであります、政府は何時も計畫倒れに終つてしまふのであります、それは政府が五箇年計畫を立てましたけれども、二十一年度の豫算にどれだけの金を此の蠶絲業の爲に使つて居りますか、又今日のやうな此の業の機構に於きましては、此の政府の五箇年計畫を實現することは到底出來得ないと私は考へるのであります、なぜならば戰爭中政府が施策の便宜の爲に、政治運用の便宜の爲に、總ての團體を統合致したのであります、さうして國家目的と云ふ所謂強權の發動に便宜を與へるべき組織を作つて參りました、さうして蠶絲業の如きも農業會に之を包含致しまして、今や農業會の一部分を成して居るやうな微々たる状態であります、農業會の幹部の方が蠶絲業に對してどれだけの理解があるか、又蠶絲業の技術者であつた者が其の地位を奪はれて、殆ど蠶絲業の技術的發達はないのであります、こんな状態に於て唯五箇年計畫だけ立てて、果して是が遂行出來るでありませうか、政府が此の五箇年計畫を立てたことに依つて、政府の要請するやうに收繭額が殖え、さうして「アメリカ」に對して五箇年後に二十七萬俵の輸出を見ることが出來ると思ひますることは、不可能なことと考へるのであります、どうすれば宜いか、即ち本日此の改正法律案を出しましたのも茲に其の意味があるのであります、現在の蠶絲業法は本年の一月より施行されたのでありますが、蠶絲業協同組合は個人の經營を認めて居りまして、團體の組織を認めて居らないのであります、それでありますから、此の法案の一部改正に依りまして、養蠶實行組合を基盤として郡市町村に於て蠶絲協同組合の聯合會を作り、都道府縣の聯合會を作り、さうして全國的に都道府縣聯合會を作つて、現在あります蠶絲業會と結付ける、所謂縱の一貫したる所の組織體に改めて、養蠶業者だけが自治的に此の蠶絲業の重大問題に對して努力して行く、さうして政府の施策に協力して行くと云ふことに致しますれば、政府の五箇年計畫も亦實現の可能性がある、斯樣に考へる譯であります、即ち現在に於きましては、業者のみの組織を認めて團體の組織を認めて居らないのであります、本法に對して此の一部を改正致しますことに依つて、先程申しました一貫したる所の蠶絲業の機構を作ることが出來るのでありまして、食糧の不足或は原料資材の不足を聯合國の御厄介になつて居る其の見返り物資の生産には、どうしても蠶絲業會の組織に依らなければならない、斯樣に考へるのであります、此の養蠶、絹絲は、申上げるまでもなく、ぴんからきりまで我が國産であります、他のものの如くに外國から原料を貰つて、それを加工して外國へ返すと云ふやうな、手間賃貰ひの仕事ではないのであります、ぴんからきりまで國産であつて、本當の見返り物資として此の生絲、絹織物と云ふものが意義深いことを考へます時に、日本再建の場合には、此の蠶絲業を措いて他にないと考へる譯であります、どうぞ日本の事情を察知せられまして、本法案の一部を改正することに依つて日本再建の途が開けることと考へる譯でありますから、滿場の御贊成を得たいと存ずる次第であります(拍手)
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=63
-
064・椎熊三郎
○椎熊三郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=64
-
065・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=65
-
066・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、是にて議事日程は議了致しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後三時五十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04619460921&spkNum=66
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。