1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年九月二十八日(土曜日)
午後一時三十四分開議
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議事日程 第四十七號
昭和二十一年九月二十八日
午後一時開議
第一 戰時補償特別措置法案(政府提出) 第一讀會
第二 金融機關再建整備法案(政府提出) 第一讀會
第三 特別和議法案(政府提出) 第一讀會
第四 大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出) 第一讀會
第五 厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出) 第一讀會
第六 恩給法臨時特例案(政府提出) 第一讀會
第七 貿易資金特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第八 農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)第一讀會の續(委員長報告)
第九 商工協同組合法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 石炭及コークス配給統制法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) 諸般の報告を致させます
〔書記官朗讀〕
一、本日政府から左の議案が提されました
企業再建整備法案
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=1
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002・会議録情報2
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである
戰時補償特別措置法案
金融機關再建整備法案
特別和議法案
大藏省預金部等損失特別處理法案
厚生年金保險法及び船員保險法特例案
恩給法臨時特例案
(以上九月二十七日提出)
一、昨二十七日貴族院に於て本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した
臨時物資需給調整法案
又同日同院に於て、本院から送付の次の政府提出案に對し承諾することを議決した旨、同院から通牒を受領した
昭和十九年度第一豫備金支出の件
昭和十九年度特別會計第一豫備金支出の件
昭和十九年度特別會計豫備費支出の件
昭和十九年度特別會計第二豫備金支出の件
昭和二十年度第二豫備金支出の件
昭和二十年度豫備金外支出の件
昭和二十年度特別會計第二豫備金支出の件
昭和二十年度特別會計豫備金外支出の件
昭和二十年度緊急財政處分に依る支出の件
昭和二十一年度第二豫備金支出の件
昭和二十一年度緊急財政處分に依る支出の件
昭和二十一年度緊急對策費第一豫備金支出の件}(承諾を求める件)
一、昨二十七日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
内閣事務官 平田敬一郎
同 橋本龍伍
第九十囘帝國議會政府委員被仰付
一、昨二十七日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
九 池上隆祐君
三四 笹本順造君
六八 武藤常介君
七四 早稻田柳右エ門君
八二 生方大吉君
一四一 岩本信行君
一四八 小柳冨太郎君
一五六 大谷瑩潤君
三〇八 武藤運十郎君
三一六 田中松月君
三六一 米山久君
三六二 酒井俊雄君
三六八 飯田義茂君
四四一 赤澤正道君
四四二 秋田大助君
一、昨二十七日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
食糧緊急措置令(承諾を求める件)委員
理事 佐竹晴記君(理事須永好君去十一日死去に付其の補闕)
一、昨二十七日次の通り特別委員の異動があつた
電氣事業法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)外一件委員
辭任 秋田大助君 補闕 丸山修一郎君
辭任 鹿島透君 補闕 秋田大助君
自作農創設特別措置法案(政府提出)外一件委員
辭任 青木清左ヱ門君 補闕 加藤高藏君
辭任 小笹耕作君 補闕 原健三郎君
辭任 江川爲信君 補闕 關根久藏君
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=2
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003・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より會議を開きます
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004・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第九を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=4
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005・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=5
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006・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第九、商工協同組合法案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──理事塚田十一郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=6
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007・会議録情報3
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第九 商工協同組合法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 商工協同組合法案(政府提出)
右は本院に於て別紙の通り修正すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年九月二十七日
委員長 竹田儀一
衆議院議長 山崎猛殿
〔別紙〕
商工協同組合法案の一部を次のやうに修正する。
第三十一條第二項の次に左の一項を加へる。
特別の理由があるときには、理事のうち二人以内を限り、前項に該當しない者のうちから、これを選任することができる。
同條第三項中「前項本文」を「第二項本文」に改める。
第七十條中「第三十一條第二項第三項、」を「第三十一條第二項乃至第四項、」に改める。
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〔塚田十一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=7
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008・塚田十一郎
○塚田十一郎君 只今議題に供せられて居ります商工協同組合法案に付きまして、委員長に代りまして、委員會に於ける審議の經過竝に結果に付て御報告申上げます
御承知の通り此の法律は、現行商工組合法に代るものでありまして、本法案に於きましては商工組合法を舊法と呼んで居るのであります、舊法は戰時中に制定せられたものでありまして、指導者原理に基く獨裁法であつたのでありますが、本法案は時代の要請に基き、組合をして眞に民主的な産業團體たらしめんとする意圖の下に、舊法に對して適當なる改正を加へられたものであります、説明の便宜の爲に、先づ本法案の内容を極く掻摘んで申上げます
商工協同組合は、一定の地域に於て商案、工業又は鑛業を營む者が、其の業種別に作ります團體であることは申すまでもありませぬが、之を設立せんとする場合には、先づ組合員にならうとする者が發起人となりまして、同じく組合員とならうとする同志を糾合致しまして、創立總會を開き、定款其の他必要事項を定め、行政官廳の認可を受けて成立するものであります、此の場合に定款に記載すべき事項は、法案第九條に規定されて居るのでありますが、同條には、特に組合定款は、組合が組合員の自由な意思に基き民主的に組織され且つ運營されるやうに出來て居けなければならないことを定めて居るのであります、組合の目的と致します所は、業者の緊密な結合に依りまして、組合員の事業の經營の合理化を圖るに必要な共同施設をなすと云ふことになつて居ります、而して此の目的の爲に、組合員の取扱品の共同仕入、保管、運搬、加工、販賣、檢査、組合員の事業に關する指導、研究、調査、組合員に對する事業資金の貸付、債務の保證、貯金の受入等を行ふことが出來るやうになつて居ります、又組合事業の一つと致しまして、商品券及び倉荷證券の發行が認められて居ります、組合は法律上人格を附與せられ、法人と認められて居ります、其の他一定事項の登記を必要とせられて居ります點、各組合員が一口以上の出資をなすことを必要とせられて居る點、意思決定の機關として組合員總會を有する點、業務執行の機關として理事、業務及び財産の監査機關と致しまして監事を有する點等、此の種一般の團體と何等異なる所がないのであります、特に注意を惹きます點は、組合員總會に於ける各組合員の議決權は、出資口數の如何に拘らず一人一個とせられて居る點、組合の經費は必ずしも組合の事業自體から生み出すことを本旨とせず、組合員に賦課徴收されることがある點等であります、其の他組合の解散、清算、合併等の點に付きましては、比較的商法上の商事會社に關するものに類似した諸規定が設けられて居るのであります、又商工協同組合の指導及び相互間の連絡を圖る目的を以て、全國に唯一つを限り、商工協同組合中央會の設立を認めて居ります、又中央會とは別個に、各業種別の聯合會が設立せられ得ることは、法案第七條に之を豫定して居る所であります、而して是等の組合又は中央會は、必ず其の名稱の中に協同組合なる文字を用ひることを必要とせられ、反面其の他のものは、其の名稱中に協同組合なる文字を用ひることを禁ぜられて居るのであります、本法律が制定せられます曉には、當然舊法は廢止されるのでありますが、舊法に依つて設定せられ、現存する統制組合及び商工組合中央會は、此の法律施行後三箇月を限つて尚ほ存續するものとされ、此の期間滿了の時に尚ほ存在する場合には、其の時に解散するものとされて居るのであります、又同じく舊法に依り設立され、現存する施設組合は、之を此の法律に依つて設立された商工協同組合と看做すことになつて居りまして、此の種の組合は、本法律施行後三箇月以内に定款の變更其の他必要な手續を行つて、行政官廳に認可申請をする必要があり、之を致しませぬと、其の三箇月の期間滿了の時に解散することになつて居るのであります、政府提出の資料に依りますと、本年三月末現在で此の種統制組合數は七千百六十三、施設組合數は五千二十、計一萬二千百八十三に達して居る由であります、以上が本法案の概要であります
本法案は、去る九月二十日委員會に於きまして、商工大臣より提案理由の説明がありまして、越えて九月二十三日より質疑應答に入り、囘を重ぬること四囘、昨日を以て其の審議を終了致したのであります、委員會に於きましての全般の空氣は、戰後産業の急速な振興を圖ります爲に、中小商工業を組織化致しまして、其の民主的な運營に依り、企業の合理化、能率化を促進せんとする本法案の根本趣旨には、格別の異論はなかつたのであります、唯本法の運營其の他中小企業の再建助成に關する具體的な方策と、中小企業の一般問題に關しましては、各委員より熱心な質問があり、之に對して政府側よりも詳細なる答辯がありまして、政府の中小企業の振興竝に之を通じて我が國産業の再建を行はんとする熱意は一應之を酌取ることが出來たのであります、以下三、四の點に付きまして質疑竝に應答の要旨を申上げます
先づ第一に、舊法に基く組合と、本法案に基く商工協同組合とは、如何なる點に於て相違するかと云ふ質問に對して、政府の答辯は、舊法に基く組合は、經濟事業と統制事業とを併せ行ふことが出來たのに對し、本法に基く組合は經濟事業のみを行ひ得るものであつて、統制事業は全く之を行ひ得ない點に相違があるとの答辯でありました、第二に、新組合が統制事業を行ひ得ないとすると、臨時物資需給調整法成立の曉に於ても、此の組合は物資の割當等の統制事業は之を行ひ得ないのではないかとの質問に對し、臨時物資需給調整法に依る統制機關たる、民主的に組織された産業團體の一つとして、本法案に依る組合も指定せられる可能性があること、其の場合には、統制の根據は同法に基く指定に依るものであるから、何等矛盾するものでないとの答辯がありました、第三に、本法案に基く組合が故らに協同組合なる名稱を用ひたのは、如何なる理由に依るものであるかとの質問に對して、商工協同組合の「協同」と云ふ文字は、單純に、組合の主たる事業が組合員の協同の施設をなすことにあることを示すだけであつて、所謂協同組合主義と云ふやうな「イデオロギー」とは何等關聯を有するものではない旨の答辯がありました、第四に、中小企業の振興助成の方策は、商工協同組合の設立を以て足るとは考へられないが、政府は其の他に如何なる具體案を用意又は構想して居るかとの質問に對し、中小企業の振興には、金融と資材の圓滑化が先決問題であると考へられるから、金融面に付ては復興金融金庫、或は商工組合中央金庫、興業銀行、勸業銀行、北海道拓殖銀行竝に是等のものの支店及び庶民金庫等を活用致しまして、從來最も難點とされて居つた窓口事務の簡易迅速化等を圖り、十分なる援助を行ふ、又資材面に於ては、産業設備營團を改組して、産業復興營團の如きものを設立し、設備の復興建設を援助すると共に、原料資材の入手に付ては、臨時物資需給調整法に基き、重點的に且つ公正に配給に努力すると共に、不足物資に付ては、輸入等の方法に依つて、出來る限り其の充足を圖る旨の答辯がありました、次に、中小企業の再建助成は極めて必要であるが、現下の困難なる失業問題の對策とも關聯して、無計畫、無秩序な中小企業の振興助成は、我が國人口の理想的再配分の觀點からして、相當に考慮すべき點があるのではないかとの質問に對して、其の點に付ては全く同感であるが、時代の要請に基き企業許可令も廢止になる今日、失業者が新しく中小企業、殊に小賣商賣に入つて行くことは、之を適當に抑制する方法がないのであるが、出來る限り他に適當な失業救濟の方途を開いて、間接的に之を抑制すると云ふ答辯以外に、何等積極的な對策が聽かれなかつたのは遺憾に存じた所であります、其の他中小企業の技術の向上の問題、中小企業と問屋の關聯の問題、百貨店、消費組合と中小企業との關係に付きまして、極めて有益にして熱心なる質疑應答が續けられたのでありますが、詳細は速記録に就て御承知願ひたいと存じます
斯くして討論に入りまして、自由黨、進歩黨、社會黨、協同民主黨、國民黨、無所屬倶樂部等を代表致します各委員より、それぞれ本法案の趣旨に對して贊成すると共に、本法の實施に當り、特に政府の指導運營其の宜しきを得るやう希望する旨の發言があつたのであります、唯政府原案に於きましては、理事に組合員以外の者を選任し得る途が設けられてありませぬので、組合が組合員の爲に各種の經濟行爲を營むことになつて居りまして、而も此の種の經濟行爲は今後質に於て複雜に、量に於て多大となります點等に鑑みて、廣く有爲なる人材を組合員外にも之を求めて、組合の理事者として招聘し、其の健全なる發展を期することは、組合事業の現段階に於て必要ではないかと云ふ觀點に立ちまして、組合員外の者を理事に選任し得る旨の規定を設けよと云ふ意見が、協同民主黨を除く各黨より提出せられました、之に對して協同民主黨より、斯樣な規定を設けることは、官僚古手の天降り人事を客認する隙を與へることになり、其の他再び往時の惡弊を繰返す處があるから、政府原案を可とし、修正を否とする旨の反對論があつたのであります、續いて採決に入りまして、前述の修正の趣旨に基き、原案の第三十一條第二項の次に「特別の理由があるときには理事のうち二人以内を限り、前項に該當しない者のうちからこれを選任することができる。」と云ふ一項を加へ、同條第三項中「前項本文」を「第二項本文」に、第七十條中「第三十一條第二項第三項、」を「第三十一條第二項乃至第四項、」に改める旨の修正案に付きましては、協同民主黨を除く全員一致で之を可決し、修正をした以外に付きましては、全員一致政府原案通り之を可決すべきものと決定致しました
最後に一言申上げたいと存じます、財閥巨大事業の解體、獨占的大事業の阻止等に依りまして、我が國の巨大産業は目下分解の過程にあることは明瞭であります、勿論此の事實を以て直ちに我が國の經濟が今後中小零細企業を中心とする小規模のもののみになつてしまふと考へるのは誤りでありますが、少くとも中小企業が我が國産業界に於て占める地位は、從來に比して遙かに重要性を帶びて來たことは否み得ない事實であります、過去に於て中小企業が問題になりましたのは、多くは經濟的、社會的、政治的にそれ等のものの救濟を如何にするかと云ふ政策問題としてであつたのであります、今後に於きましては、日本經濟の危局打開と、其の平和的財源の擔當者として、中小企業の適格性如何が一層重要且つ切實な問題となつて來るのであります、我が國在來の中小企業は、其の封建性、非能率性、營利性、非組織性、其の他幾多改革を要すべき問題を包藏して居るのであります、此の組織なき中小企業に組織を與へ、結集せられたる力に依つて事業の合理化、能率化を圖らんとする意圖に於て、本法案は確かに時代の要請に合致したものと言ひ得るのであります、之を第一段階として、逐次有效適切なる施策を適時に立案實行せられ、中小企業の健全なる發展の爲に、今後一層の努力を致されんことを切望する次第であります、之を以て報告を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=8
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009・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の委員長報告は修正でありますから、討論は便宜上第二讀會に於てなすことと致します、本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=9
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010・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決めました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=10
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011・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=11
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012・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=12
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013・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します、討論に入ります──太田鐵太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=13
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014・会議録情報4
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商工協同組合法 第二讀會
〔太田鐵太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=14
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015・太田鐵太郎
○太田鐵太郎君 私は協同民主黨を代表致しまして、今度の協同組合法案中、役員の選任の件に付て、組合員にあらざる者より選任することが出來るやうな修正を加へられた點に對しまして、反對するものであります、其の理由を極めて常識的に又現實的に申上げて見たいと存じます
協同組合員の中には、常務役員たるべき人を得ることが困難であると云ふ見地から修正を加へられたとのことであるが、極く卑近の例を一、二取上げまして、修正の理由にはならぬと云ふことを申上げたいと存じます、先づ第一に申上げたいことは、我が衆議院議員であります、解散後、推薦議員は全部政界より追放されました、其の追放された人々は、皆我が國の政治家を以て自他共に任じて居つたのでありまして、政界より此の人達の消えたことに付きましては、我が政界はどうなるかと云ふやうなことを、國民の中でも少なからず心配して居つた者があるのであります、いざ選擧となつて見ますれば、憂國の士が、我が國有史以來曾て見ざる程、十數倍も出、而して當選された各位は、再建日本を背負つて立つ諸法案を民主化し、平和國家を建設し、國民の希望に應へつつあるのであります、況して御婦人の代議士が多數の當選を見て、其の活動たるや、凡ゆる部面に目覺ましいものがあるのであります、斯かる點から觀じ來れば、新たに發足する此の協同組合員に、常務役員となるものなしとして──戰爭中、祕密主義であつた官僚の古手を持つて來て統制組合員たらしめ、不合理極まりなき事業の不利不便を敢てなし、極度に組合員を壓迫したる事實を否定することは絶對に見逃すことの出來ない所でありますが、此の時に當つて、我が協同組合に此の常務役員の出しやばる餘地を與へたる此の修正は、協同組合主義に反するのみならず、組合員の自尊心を傷つけ、自主的民主化の責任を無にすることになるのでありまして、商工協同組合主義の眞の目的達成を阻碍するものであるのであります、協同組合の興隆發展は、斯樣な状態では望み得られない結果となる處があるのでありますから、此の際斷然斯かる舊體制的勢力を排除して、以て委員長報告の修正の御取消を切望し、協同組合員をして其の責任の下に、民主化且つ合理的經營をなさしめ、商工業の發展に依り、經濟的に精神的に平和國家建設の一日も早からんことを祈念する次第であります、どうぞ各位に於かれましては、以上の次第でありまする故に、修正を否決せられ、是非政府原案に御贊成あらんことを御願ひ申上げまして、反對の理由と致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=15
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016・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本案の委員長報告に係る修正に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=16
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017・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立多數、仍て委員長の報告に係る修正は可決致しました(拍手)其の他は原案の通り御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=17
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018・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て其の他は原案の通り決しました、是にて本案の第二讀會は終了致しました
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019・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第三讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=19
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020・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=20
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021・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第三讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=21
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022・会議録情報5
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商工協同組合法案 第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありませぬ、本案は第二讀會議決の通り確定致しました(拍手)
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=23
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024・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第十を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=24
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025・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=25
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026・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第十、石炭及コークス配給統制法の一部を改正する法律案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長長尾達生君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=26
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027・会議録情報6
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第十 石炭及コークス配給統制法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 石炭及コークス配給統制法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年九月二十七日
委員長 長尾達生
衆議院議長 山崎猛殿
附帶決議
一、政府は現行石炭配給機構たる日本石炭株式會社を解散し、十一月一日を斯して新なる民主的機構に基き配給を爲すべし
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〔長尾達生君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=27
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028・長尾達生
○長尾達生君 只今議題となりました石炭及コークス配給統制法の一部を改正する法律案に付きまして、委員會に於ける經過竝に是が結果を御報告申上げたいと思ひます
本案に對する質疑は、去る十八日より開始致しまして、昨二十七日午前中まで繼續致したのでありまするが、其の間極めて短時間ではありましたが、本案は敗戰の悲慘なる状態より起ち上らんとする日本經濟再建の原動力たる石炭問題でありまするだけに、本委員會に於きましては、各委員とも熱心に審議を盡され、政府當局との間に熱烈なる質疑應答が繰返されたのでありまするが、今其の要項に付きまして、極く概略を申上げます、本案は御承知の如く戰後産業再建の新事態に對應致しまして、石炭及び「コークス」の配給統制機關である日本石炭株式會社の運營を民主化すると共に、從來より行つて來ました配給統制に關する事項中、引續き實施する必要あるものを規定する爲に、本案が提出されたのでありまするが、先づ第一に現行石炭配給統制機構としての日本石炭株式會社は、非常に非民主的であるから、之を廢止して、新しい民主的機構に基いて配給をなす意向はないかとの委員の強烈なる質疑に對しまして、政府當局は、本改正案は新しい民主的機構に基く配給機關が出來るまでの繋ぎとして提出されたもので、日本石炭株式會社は近い内に解散したいと思つて居る、最近配給改善協議會を開いて善後策を講ずる意向で、之に依り配給機構の刷新を圖るが、失業者を出さないやうにする積りであるとの言明があつたのであります、それから配給改善協議會に於て、新機構の構想及び具體的「スタッフ」を決定する旨答辯がありました
次に石炭増産對策に付てでありまするが、先づ補給金制度をどうするかとの質疑に對しまして、四月から十月までは追加豫算に計上して増額支給する方針であるが、十一月からは廢止する方途の下に、肥料、瓦斯、鐵道、電氣、製鐵、其の他大口消費部門の補助、或は惡條件の炭礦の出炭助成を行なつて行くのが宜いのではないかとの觀點の下に、目下研究中であるとの答辯があつたのであります、更に勞務の問題に付きましては、勞働組合の方々が精神的に結ばれて行けば増産は可能と思ふが、賃金は能率給とし、増産報奬金制度を採用したいと思つて居る、又食糧は從來加配米などを完全に支給されなかつた所もあつたので、今囘は山元へ直送する主義を採りたいと思つて居るとの答辯があつたのであります、更に進みまして資金、設備の問題をどうするかと云ふ委員の質疑に對しまして、復興金融金庫と産業再建營團(假稱)に依つて行ふ旨の答辯がありました、それから資材、坑木の問題に付きましては、鐵鋼其の他の資材は、専門の工場より増産を圖つて配給する、坑木は國有林の拂下などを積極的に行ひ、其の用材と坑木との「バーター」制を採用するとの答辯があつたのであります、又鑛區制を撤廢し、之を國有とする意向はなきやとの委員の質問に對しまして、政局當局より、重要鑛物増産法に依り調査の上、鑛區の分割整理をやりたいと思つて居るが、鑛區の國有に付ては、將來の研究に俟つて決したい、若し國有にするとしても、先づ鑛區の分合整理を行つた方が宜いと思ふとの答辯があつたのであります、最後に新坑開發の問題に付ては、産業再建營團其の他に依る開發を企圖して居るが、兎に角民間所有者と手を握つてやつて行きたいとの政府當局よりの答辯があつたのであります
以上が本委員會に於て問題となりました質疑の概要でありまするが、此の外に石炭「コークス」の需給状況及び今後の見透し、石炭輸送の問題、賠償の問題、日本石炭株式會社の問題、石炭買戻し制の問題、炭價の問題、財産税に付ての鑛區評價の問題等、重要なる問題が種々詳細に亙つて質疑されました、詳細なる點に付きましては速記録に依つて御覽を願ひたいと思ふのでありまするが、商工大臣の、日本石炭株式會社解散其の他に關する重要なる確言に依つて、委員會は昨二十七日午前を以て質疑を終了致しました
討論に入りまして、討論に於きましては、自由黨を代表致しまして田中源三郎君より、「政府は現行石炭配給機構たる日本石炭株式會社を解散し、十一月一日を期して新なる民主的機構に基き配給を爲すべし」との附帶決議を附して原案に贊成の發言があり、次いで進歩黨を代表して鈴木周次郎君、社會黨を代表して伊藤卯四郎君、協同民主黨を代表して飯田義茂君、國民黨を代表して丸山修一郎君、無所屬倶樂部を代表致しまして福田繁芳君が各各各派を代表して、自由黨の田中君の附帶決議を附した原案に贊成の發言がありました、採決の結果、本案は附帶決議を附し、全會一致を以て原案の通り可決致しました(拍手)以上簡單に御報告を申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=28
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029・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=30
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031・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=31
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032・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=32
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033・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=33
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034・会議録情報7
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石炭及コークス配給統制法の一部を改正する法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=34
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035・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して委員長報告通り可決確定致しました(拍手)此の際商工大臣より發言を求められて居ります──星島商工大臣
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=35
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036・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 院議を尊重致しまして、日本石炭株式會社は之を十月中に解散の手續を執り、さうして石炭配給改善審議會の議を經まして、新たなる配給機構を作りたいと存じて居ります(拍手)
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=36
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037・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第一乃至第五の法案と共に、本日政府より提出の企業再建整備法案を一括議題となし、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=37
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038・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=38
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039・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て日程は變更せられました──日程第一、戰時補償特別措置法案、日程第二、金融機關再建整備法案、日程第三、特別和議法案、日程第四、大藏省預金部等損失特別處理法案、日程第五、厚生年金保險法及び船員保險法特例案、企業再建整備法案、右六案を一括して第一讀會を開きます──吉田内閣總理大臣 ――――◇―――――
第一 戰時補償特別措置法案(政府提出) 第一讀會
第二 金融機關再建整備法案(政府提出) 第一讀會
第三 特別和議法案(政府提出) 第一讀會
第四 大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出) 第一讀會
第五 厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出) 第一讀會
企業再建整備法案(政府提出) 第一讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=39
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040・会議録情報8
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戰時補償特別措置法案
戰時補償特別措置法目次
第一章 總則
第二章 課税價格、控除、免除及び税率
第三章 申告及び納付
第四章 課税價格の更正及び決定
第五章 審査、訴願及び行政訴訟
第六章 代位納付
第七章 雜則
第八章 罰則
第九章 補則
戰時補償特別措置法
第一章 總則
第一條 この法律において戰時補償請求權とは、政府に對する請求權及び特定機關(國の施策に協力する法人その他の團體で命令で定めるものをいふ。以下同じ。)に對する請求權(政府の財政的保障のある範圍内のものに限る。)で左に揚げるものをいふ。但し、政府又は特定機關の通常の業務に關して生じた請求權を除く。
一 辨濟期が昭和二十年八月十五日以前のもので、同日以前に決濟(辨濟、代物辨濟、相殺又は更改をいふ。以下同じ。)がなかつたもの(一部の決濟があつた場合には決濟があつた部分を除く。)及び同日以前に企業整備資金措置法第五條に規定する更改による決濟の方法(これらに準ずる決濟の方法で命令で定めるものを含む。)によつて決濟があつたもの(決濟のため設定された政府特殊借入金、債務者特殊借入金、特殊預金、特殊金錢信託その他命令で定める債權について、同日以前に償還、拂戻若しくは解除又は混同に因る消滅があつた金額に相當する部分を除く。)
二 辨濟期が昭和二十年八月十五日後のもので、同日以前に生じた損害若しくは損失(同日において現に存した契約に關し同日後に生じたものを含む。)又は同日以前になされた給付(同日において現に存した契約に因り、同日後になされたものを含む。)若しくは施設に因るもの
前項の政府とは、國、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團體をいふ。
第一項第一號の規定の適用については、政府特殊借入金の債權を銀行に讓渡して命令で定める預金を取得した者の當該預金につき、昭和二十年八月十五日以前に拂戻のあつた金額は、これを政府特殊借入金につき同日以前に償還のあつた金額とみなす。
第一項但書の通常の業務に關して生じた請求權の範圍は、命令でこれを定める。
第二條 この法律施行の際現に戰時補償請求權(金錢の給付を目的とするものに限る。以下第六十五條に規定する場合を除く外同じ。)を有し、又はこの法律施行前に戰時補償請求權について決濟を受けた者には、この法律により、戰時補償特別税を課する。
第三條 戰時補償特別税は、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團體には、これを課さない。
第四條 左に掲げる請求權については、戰時補償特別税を課さない。
一 國債、地方債及び特定機關の發行した債券の請求權
二 死亡又は傷害に關する保險金又は補償金の請求權
三 救恤制度に基き生ずる請求權
四 その他命令で定めるもの
第五條 戰時補償請求權について決濟を受けた者について、この法律施行前に相續の開始があつた場合においては、被相續人が戰時補償請求權について受けた決濟は、相續人がこれを受けたものとみなして、この法律を適用する。
第六條 戰時補償請求權について決濟を受けた法人が、この法律施行前に合併に因り消滅した場合においては、合併に因り消滅した法人が戰時補償請求權について受けた決濟は、合併後存續する法人又は合併に因り設立された法人が、これを受けたものとみなして、この法律を適用する。
戰時補償請求權について決濟を受けた甲法人が、この法律施行前に乙法人となつたときは、甲法人は合併に因り消滅した法人、乙法人は合併に因り設立された法人とみなして、前項の規定を適用する。
戰時補償請求權について決濟を受けた法人について、この法律施行前に分割があつた場合においては、命令の定めるところにより、分割に因り消滅した法人が戰時補償請求權について受けた決濟は、分割に因り設立された法人が、これを受けたものとみなして、この法律を適用する。
第七條 戰時補償請求權について決濟を受けた法人が、この法律施行前に解散に因り消滅した場合においては、その法人から政府特殊借入金(戰時補償請求權の決濟のため設定された政府特殊借入金で命令で定めるものをいふ。以下第四十五條及び第六十三條に規定する場合を除く外同じ。)の債權又は特殊預金等(戰時補償請求權の決濟のため設定された特殊預金、特殊金錢信託、債務者特殊借入金その他命令で定める債權をいふ。以下同じ。)の讓渡を受けた者が、その讓渡を受けた政府特殊借入金又い特殊預金等の金額の限度において、戰時補償請求權について決濟を受けたものとみなして、この法律を適用する。
第二章 課税價格、控除、免除及び税率
第八條 戰時補償特別税は、この法律施行の際現に存する戰時補償請求權の價格又はこの法律施行前に戰時補償請求權について決濟のあった金額を課税價格として、これを賦課する。
この法律施行の際現に存する戰時補償請求權の價額は、請求金額の確定してゐる請求權についてはその金額、請求金額の確定してゐない請求權については權利者の請求しようとする金額の全額による。
前項に規定するものを除く外、戰時補償請求權の價額又は戰時補償請求權について決濟のあつた金額の算定について必要な事項は、命令でこれを定める。
第九條 別表一、別表二又は別表三に掲げる請求權以外の戰時補償請求權については、この法律施行前に決濟のあつた金額(企業整備資金措置法第五條に規定する更改による決濟の方法によつて決濟があつた場合においては、この法律施行前に政府特殊借入金又は特殊預金等について償還、拂戻若しくは解除又は混同に因る消滅があつた金額に限る。)は、これを課税價格に算入しない。
第十條 別表一に掲げる請求權については、一請求權ごとに一萬圓が課税價格から控除される。
前項の規定は、別表一第十號に掲げる請求權については、課税價格のうち、この法律施行前に決濟がなかつた金額には、これを適用しない。
別表二に掲げる請求權については、左に掲げる金額が課税價格から控除される。
一 納税義務者が個人の場合においては 五萬圓
二 納税義務者が法人の場合においては 一請求權ごとに一萬圓
個人が別表二に掲げる請求權の二以上について戰時補償特別税を課せられる場合においては、その請求權の價額又はその請求權について決濟のあつた金額を合算し、その總額について、前項第一號の規定を適用する。
前四項の規定により、課税價格から控除される金額は、各納税義務者につき、その總額が十萬圓を超えることができない。
前項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
別表三に掲げる請求權については、五萬圓が課税價格から控除される。
第四項の規定は、個人又は法人が別表三に掲げる請求權の二以上について戰時補償特別税を課せられる場合に、これを準用する。
前二項の規定は、この法律施行の際現に別表一又は別表二に掲げる請求權を有し、又はこの法律施行前に別表一又は別表二に掲げる請求權について決濟を受けた者については、第一項乃至第六項の規定による控除金額の總額が五萬圓以下である場合に限り、これを適用する。この場合における前二項の規定による控除金額は、五萬圓から第一項乃至第六項の規定による控除金額の總額を控除した金額とする。
第五條又は第六條の場合において、課税價格から控除される金額の算定については、命令で第一項乃至前項の規定に對する特例を定めることができる。
戰時補償請求權の讓渡があつた場合において、課税價格から控除される金額の算定については、第一項乃至第九項の規定にかかはらず命令の定めるところによる。保險の目的の讓渡なくして保險契約に因り生じた權利の讓渡があつた場合において、課税價格から控除される金額の算定についてもまた同じ。
第一項乃至前項の規定は、戰時補償請求權で在外資産たるものには、これを適用しない。
第一項及び第三項第二號の一請求權竝びに前項の戰時補償請求權で在外資産たるものの意義は、命令でこれを定める。
第十一條 前條の規定は、第十四條に規定する申告期限内に同條の規定による申告書の提出がない場合には、これを適用しない。但し、課税價格が前條に規定する控除金額以下の場合においては、この法律施行前に戰時補償請求權について、金錢で支拂はれた、又は特殊預金等について拂戻、解除若しくは償還若しくは混同に因る消滅のあつた金額については、申告書の提出がない場合においても、同條の規定は、これを適用する。
前項但書に規定する場合を除く外、第十四條の規定による申告書の提出なくして、しかも前條の規定を適用すべき場合は命令でこれを定める。
第十二條 民法第三十四條の規定により設立した法人その他の營利を目的としない法人又は團體で命令で定めるものが、この法律施行の際現に別表二第一號に掲げる請求權を有し、又はこの法律施行前に同號に掲げる請求權について決濟を受けた場合においては、政府は、命令の定めるところにより、戰時補償特別税審査委員會の諮問を經て、戰時補償特別税を輕減又は免除することができる。
政府は前項の場合において、同項の規定による輕減又は免除に關する處分が確定するまで、命令の定めるところにより、税金の納付を猶豫することができる。
戰時補償特別税審査委員會に關する規程は、勅令でこれを定める。
第十三條 戰時補償特別税の税率は、百分の百とする。
第三章 申告及び納付
第十四條 納税義務者は、命令の定める日(以下一般申告期限といふ。)までに、命令の定めるところにより、課税價格その他必要な事項を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
納税義務者が左の各號の一に該當するときは、納税義務者は、命令の定めるところにより、當該各號の定める金融機關を經由して、(該當する金融機關が二以上ある場合においては當該金融機關を經由して各別に、)前項の申告書を提出しなければならない。この場合において、金融機關が申告書を受理したときは、その申告書は、同項の規定により政府に提出されたものとみなす。
一 この法律施行の際現に特殊預金等を有してゐる者であるときは、その特殊預金等の預入先の金融機關(特殊金錢信託については受託者たる金融機關、債務者特殊借入金については債務者たる金融機關をいふ。以下同じ。)
二 この法律施行前に政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を金融機關に讓渡した者であるときは、その讓渡先の金融機關
三 第三十四條第一項又は第二項の規定に該當する者であるときは、その者から債務の決濟を受けた金融機關
通信、交通その他の状況により、一般申告期限内にその申告書を提出することができない者の申告については、命令で特別の定をなすことができる。
この法律において金融機關とは、銀行、信託會社その他命令で定める法人をいふ。
第十五條 納税義務者は、命令の定めるところにより、前條の規定による申告期限内に、戰時補償特別税を納付しなければならない。
納税義務者が前條第二項の規定により申告書を提出したときは、同項に規定する金融機關は、納税義務者から戰時補償特別税を徴收し、一般申告期限の屬する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第十六條 第三十三條又は第三十四條に規定する場合においては、納税義務者が納付すべき税額は、課税價格について第十條乃至第十三條の規定を適用して算出した戰時補償特別税の額から、第三十三條又は第三十四條の規定により戰時補償特別税を納付する義務がある者が納付すべき税額を控除した金額とする。
第十七條 この法律施行の際現に納税義務者の有する戰時補償請求權は、戰時補償特別税額を限度として、第十四條の規定による申告書の提出と同時に、(同條に規定する申告期限内に同條の規定による申告書の提出のなかつた場合においては、同條に規定する申告期限の經過した時において、)消滅する。
前項の場合においては、その消滅した戰時補償請求權については、その消滅と同時に、戰時補償特別税の納付があつたものとみなす。
第十八條 第十五條の場合において、納税義務者がこの法律施行の際現に政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を有するときは、納税義務者は先づ、その政府特殊借入金の債權を政府に讓渡し、これを以て戰時補償特別税の納付に充て、又はその特殊預金等について、期限前の拂戻、解除若しくは償還を受け、これにより取得した金錢を以て戰時補償特別税を納付しなければならない。
第十九條 納税義務者が政府特殊借入金の債權を有する場合において、一般申告期限内に第十四條第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、政府は、一般申告期限の翌日に、その政府特殊借入金の債權を以て戰時補償特別税を徴收する。
納税義務者が、特殊預金等を有する場合において一般申告期限内に第十四條第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、特殊預金等の預入先の金融機關は、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、その特殊預金等について期限前の拂戻、解除又は償還をなし、これにより納税義務者が取得すべき金錢を以て戰時補償特別税を徴收し、一般申告期限の屬する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第二十條 前二條の規定は、政府特殊借入金の債權又は特殊預金等について擔保權(國税徴收法第三條に規定する擔保權を含む。以下同じ。)が存する場合又は強制執行手續、國税徴收法による強制徴收手續その他これらの手續に準ずるものが進行中である場合においても、その適用を妨げない。
政府特殊借入金の債權について擔保權が存する場合において、第十八條又は前條第一項の規定によりその政府特殊借入金の債權が戰時補償特別税の納付に充てられたときは、その擔保權は、戰時補償特別税の納付と同時に、消滅する。
前二項に規定するものを除く外、前二條の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十一條 第十四條の規定による申告書を提出した者が、同條に規定する申告期限内に、戰時補償特別税を完納しなかつたときは、政府は、國税徴收法第九條の規定により、これを督促する。
前條の規定は、第十二條第二項の規定により徴收を猶豫された戰時補償特別税を、國税徴收法により、特殊預金等を以て徴收する場合について、これを準用する。
第二十二條 第十五條又は第十九條の場合において、金融機關が、別表一第十四號又は別表二第一號若しくは第二號に掲げる請求權の決濟に必要な資金を損害保險會社又は損害保險中央會に融通したため、貸付金の債權を有するときは、第十五條第二項又は第十九條第二項の規定により金融機關が納付すべき税額のうち當該請求權に對する税額に相當する金額の貸付金の債權は、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、消滅する。この場合においては、金融機關は、その消滅した貸付金の債權の金額に相當する税額について、第十五條第二項又は第十九條第二項の規定による税金納付の義務を免除される。
前項の規定は、金融機關が、別表三に掲げる請求權の決濟に必要な資金を國民更生金庫又は産業設備營團に融通したため、貸付金の債權を有する場合に、これを準用する。
前二項の場合においては、金融機關は、命令の定めるところにより、その消滅した貸付金の債權の金額その他必要な事項を政府に屆け出るとともに、損害保險會社若しくは損害保險中央會又は國民更生金庫若しくは産業設備營團にこれを通知しなければならない。
第二十三條 納税義務者が金錢を以て戰時補償特別税の全部又は一部を納付すべき場合において、その完納を困難とするときは、納税義務者は、戰時補償特別税の物納を申請し、又は擔保を提供してその延納を申請することができる。
前項の場合において、物納に充てることができる財産の種類その他物納に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第一項の場合において、延納の期間は、これを一般申告期限後二箇年以内とし、擔保の種類その他延納に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
政府は、第一項の申請があつた場合において、必要があると認めるときは、税金の納付を猶豫することができる。
第一項の規定により延納を許可された場合においては、當該延納税額については、命令の定めるところにより、命令の定める期間に應じ、當該税額に年百分の十の割合を乘じて算出した金額に相當する税額を加算して、これを納付しなければならない。
第二十四條 第五條の場合において、相續人が二人以上あつたときは、相續人は、相續財産の價額(相續に因り債務を承繼したときは、相續財産の價額からその債務の金額を控除した金額)のうち、各自その受けた利益の價額の占める割合に應じて戰時補償特別税を納付しなければならない。
前項の場合において、相續に因り承繼した債務の金額が相續財産の價額を超えてゐたときは、各相續人の納付すべき戰時補償特別税の税額は、命令の定めるところによる。
第二項の場合においては、相續人は、他の相續人の納付すべき戰時補償特別税について、連帶納付の責に任ずる。
第五條の場合において、その相續が財産を保留した家督相續であつたときは、被相續人は、相續人の納付すべき戰時補償特別税について、連帶納付の責に任ずる。
分割に因り設立された法人は、分割に因り設立された他の法人が、第六條第三項の規定により、納付すべき戰時補償特別税又は分割後存續する他の法人が、分割前に取得した戰時補償請求權につき、納付すべき戰時補償特別税について、連帶納付の責に任ずる。
第三項の規定は、戰時補償特別税のうち、政府特殊借入金の債權を以て納付すべき額及び特殊預金等につき期限前の拂戻、解除又は償還を受け、これにより取得した金錢を以て納付すべき額に相當するものについては、これを適用しない。
第二十五條 納税義務者は、戰時補償特別税を納付するため必要があるときは、命令の定めるところにより、命令で定める預金、貯金その他の債權の全部又は一部について、期限前の拂戻を請求し、又はこれらに關する契約を解除し、若しくは變更することができる。
前項の場合において、その契約の相手方が納税義務者に給付すべき金額その他必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十六條 第十四條第二項、第十五條第二項、第十九條第二項、第三十五條第二項、第三十六條第二項、第三十八條第二項及び第四十五條の規定の適用については、産業設備營團は、これを金融機關とみなす。
第四章 課税價格の更正及び決定
第二十七條 第十四條の規定による申告書が提出された場合において、その申告された課税價格が政府において調査した課税價格と異るときは、政府は、その調査により、その申告された課税價格を更正する。
政府は、納税義務があると認められる者が第十四條の規定による申告書を提出しなかつた場合においては、政府の調査により、その課税價格(第十七條の規定により消滅した戰時補償請求權の課税價格を除く。)を決定する。
政府は、前二項の規定による課税價格の更正又は決定後、その更正し又は決定した課税價格について脱漏があることを發見したときは、政府の調査により、その課税價格を更正することができる。
前三項の規定による課税價格の更正又は決定は、この法律施行後五年間に限り、これを行ふことができる。
第二十八條 政府は、前條の規定により、課税價格を更生し又は決定したときは、これを納税義務者に通知する。
この法律の施行地に住所及び居所又は營業所若しくは事務所を有しない納税義務者が納税管理人の申告をしてゐないときは、前項の通知に代へて公告をなすことができる。この場合において、公告の初日から七日を經過したときは、その通知があつたものとみなす。
第二十九條 政府は、第二十七條の規定により、課税價格を更正し又は決定した場合においては、前條の通知をなした日から一箇月後を納期限とし、その不足税額又はその決定による税額の戰時補償特別税を徴收する。
前項の場合において、第十九條の規定によつて徴收した税金があるときは、その税額は、前項の規定により徴收すべき戰時補償特別税の税額から、これを控除する。
第五章 審査、訴願及び行政訴訟
第三十條 納税義務者は、第二十七條の規定による課税價格の更正又は決定に對して異議があるときは、その通知を受けた日から一箇月以内に不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
政府は、前項の請求があつた場合においても、税金の徴收を猶豫しない。
第三十一條 政府は、前條第一項の請求があつたときは、これを決定し、納税義務者に通知しなければならない。
第三十二條 前條の決定に對し不服がある者は、訴願をなし又は行政裁判所に出訴することができる。
第六章 代位納付
第三十三條 納税義務者以外の者でこの法律施行の際現に政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を有するものは、その政府特殊借入金又は特殊預金等の金額を限度として、納税義務者に代位して戰時補償特別税を納付する義務がある。
前項の場合において、この法律施行の際現に納税義務者の有する政府特殊借入金の債權又は特殊預金等の金額と、納税義務者に代位して戰時補償特別税を納付する義務がある者(以下代位納付義務者といふ。)の有する政府特殊借入金の債權又は特殊預金等の金額との合計額が、課税價格につき第十條乃至第十三條の規定を適用して算出した戰時補償特別税の額を超える場合においては、代位納付義務者は、戰時補償特別税の額から納税義務者がこの法律施行の際現に有する政府特殊借入金の債權又は特殊預金等の金額を控除した金額について、戰時補償特別税を納付する義務がある。この場合において、代位納付義務者が二人以上あるときは、各代位納付義務者の納付すべき戰時補償特別税の税額は、命令の定めるところによる。
第三十四條 企業整備資金措置法第四條又は臨時資金調整法第十條の二の規定の適用があつた場合において、納税義務者が金融機關に對する債務を決濟することを理由として、戰時補償請求權について、企業整備資金措置法第五條に規定する更改による決濟の方法(これらに準ずる決濟の方法で命令で定めるものを含む。)以外の方法により決濟を受け、その金融機關に對する債務を決濟したときは、その金融機關は、決濟を受けた金額を限度として、納税義務者に代位して戰時補償特別税を納付する義務がある。
戰時補償請求權の決濟のため特殊預金等の設定を受けた者又はその特殊預金等の讓渡を受けた者が、この法律施行前に、金融機關に對する債務を決濟することを理由として、特殊預金等について、期限前の拂戻、解除若しくは償還を受け、その金融機關に對する債務を決濟し、又は金融機關に對する債務の決濟のため、特殊預金等をその金融機關に讓渡した場合においては、その金融機關は、決濟を受けた金額(その金融機關が當該特殊預金等を讓渡した場合においては、その讓渡した特殊預金等の金額を除く。)を限度として、納税義務者に代位して戰時補償特別税を納付する義務がある。
前條第一項の規定は、前項に規定する特殊預金等の讓渡を受けた金融機關については、これを適用しない。
前條第二項の規定は、第一項及び第二項の場合に、これを準用する。
第三十五條 代位納付義務者は、一般申告期限内に、命令の定めるところにより、第三十三條第一項に規定する政府特殊借入金の債權又は特殊預金等の金額、前條第一項又は第二項に規定する決濟を受けた金額その他必要な事項を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
この法律施行の際現に特殊預金等を有する代位納付義務者は、その特殊預金等の預入先の金融機關を經由して、前項の申告書を提出しなければならない。この場合において、預入先の金融機關が申告書を受理したときは、その申告書は、同項の規定により政府に提出されたものとみなす。
第十四條第三項の規定は、第一項の規定による申告について、これを準用する。
第三十六條 代位納付義務者は、命令の定めるところにより、前條の規定による申告期限内に、戰時補償特別税を納付しなければならない。
前項の場合において、代位納付義務者が前條第二項の規定により申告書を提出したときは、同項に規定する金融機關は、代位納付義務者から戰時補償特別税を徴收し、一般申告期限の屬する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第三十七條 第十條の規定は、納税義務者が第十四條の規定による申告書を提出しなかつた場合においても、代位納付義務者が第三十五條の規定による申告書を提出した場合においては、代位納付義務者の納付すべき戰時補償特別税の税額の計算について、これを適用する。
第三十八條 この法律施行の際現に政府特殊借入金の債權を有する代位納付義務者が一般申告期限内に第三十五條第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、政府は、一般申告期限の翌日に、その政府特殊借入金の債權を以て戰時補償特別税を徴收する。
この法律施行の際現に特殊預金等を有する代位納付義務者が一般申告期限内に第三十五條第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、その特殊預金等の預入先の金融機關は、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、その特殊預金等について期限前の拂戻、解除又は償還をなし、これにより代位納付義務者が取得すべき金錢を以て戰時補償特別税を徴收し、一般申告期限の屬する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第二十條第一項及び第二項の規定は、前二項の場合に、これを準用する。
前項に規定するものを除く外、第一項及び第二項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十九條 第三十六條又は前條の場合において、代位納付義務者が、別表一第十四號又は別表二第一號若しくは第二號に掲げる請求權の決濟に必要な資金を損害保險會社又は損害保險中央會に融通したため、貸付金の債權を有するときは、第三十六條第二項又は前條第二項の規定により代位納付義務者が納付すべき税額のうち當該請求權に對する税額に相當する金額の貸付金の債權は、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、消滅する。この場合においては、代位納付義務者は、その消滅した貸付金の債權の金額に相當する税額について、同條の規定による税金納付の義務を免除される。
前項の規定は、代位納付義務者が、別表三に掲げる請求權の決濟に必要な資金を國民更生金庫又は産業設備營團に融通したため、貸付金の債權を有する場合に、これを準用する。
前二項の場合においては、代位納付義務者は、命令の定めるところにより、その消滅した貸付金の債權の金額その他必要な事項を政府に屆け出るとともに、損害保險會社若しくは損害保險中央會又は國民更生金庫若しくは産業設備營團にこれを通知しなければならない。
第四十條 第十八條及び第二十一條の規定は、代位納付義務者の納付すべき戰時補償特別税について、これを準用する。
第二十二條の規定は、代位納付義務者が金融機關に特殊預金等を有する場合において、その特殊預金等の預入先の金融機關について、これを準用する。
前二章の規定は、代位納付義務者の納付すべき戰時補償特別税額の更正若しくは決定又は審査、訴願若しくは行政訴訟について、これを準用する。
第四十一條 第三十三條の規定により戰時補償特別税を納付した代位納付義務者が、戰時補償特別税の納付に充てた政府特殊借入金の債權又は戰時補償特別税を納付するため期限前の拂戻、解除若しくは償還を受けた特殊預金等を、納税義務者その他の者から有償で取得した者である場合においては、代位納付義務者は、その政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を讓渡した者に對し、命令の定めるところにより、その取得に要した對價に相當する金額の範圍内において、求償をなすことができる。
前項の場合において、讓渡人が求償に應じて履行したときは、當該讓渡人は、その政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を有償で取得した者である場合に限り、その政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を讓渡した者に對し、命令の定めるところにより、その取得に要した對價に相當する金額の範圍内において、求償をなすことができる。
前項の規定は、同項に規定する讓渡人以外の者でその政府特殊借入金の債權又は特殊預金等の讓渡したものが求償に應じて履行した場合について、これを準用する。
第一項の場合においては、代位納付義務者の有する政府特殊借入金の債權又は特殊預金等について存する擔保權は、同項の規定による求償權により、代位納付義務者が受くべきものに對しても、これを行ふことができる。
第四十二條 第三十四條の規定により戰時補償特別税を納付した代位納付義務者は、納税義務者その他同條に規定する債務の決濟をなした者に對し、命令の定めるところにより、その納付した税額の範圍内において求償をなすことができる。
前條第二項乃至第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第七章 雜則
第四十三條 納税義務者は、第三十三條又は第三十四條に規定する場合においては、命令の定めるところにより、課税價格その他必要な事項を代位納付義務者に通知しなければならない。
代位納付義務者は、命令の定めるところにより、第三十三條第一項に規定する政府特殊借入金又は特殊預金等の金額、第三十四條第一項又は第二項に規定する決濟を受けた金額その他必要な事項を納税義務者に通知しなければならない。
第四十四條 法人が解散した場合において、戰時補償特別税を完納しないで財餘財産の分配を終了したときは、その税金については、清算人は、連帶して納税の義務があるものとする。
第四十五條 金融機關が、第十九條第二項又は第三十六條第二項の規定により、その徴收した戰時補償特別税を政府に納付する場合において、金融上の都合により、金錢による納付を困難とするときは、命令の定めるところにより、金融機關は、政府に申請して、その有する政府特殊借入金の債權を政府に讓渡し、これを以て戰時補償特別税の納付に充てることができる。
第四十六條 命令で定める法人は、命令の定めるところにより、戰時補償請求權に關する調書を政府に提出しなければならない。
第四十七條 收税官吏は、戰時補償特別税に關する調査又は戰時補償特別税の徴收について必要があるときは、納税義務者若しくは納税義務者と認められる者又は代位納付義務者若しくは代位納付義務者と認められる者に質問し、又はその戰時補償請求權に關する帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
第四十八條 收税官吏は、戰時補償特別税に關する調査又は戰時補償特別税の徴收について必要があるときは、左に掲げる者に質問し、又はその戰時補償請求權に關する帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
一 第四十六條の規定に基く命令により調査を提出すべき者
二 納税義務者又は納税義務者と認められる者に對し、戰時補償請求權に關係のある財産を讓渡したと認められる者
三 納税義務者又は納税義務者と認められる者から、戰時補償請求權に關係のある財産を取得したと認められる者
第四十九條 收税官吏は、戰時補償特別税の調査に關し必要があるときは、官吏その他の公務員又は特定機關の職員であつた者で戰時補償請求權に關係のある事務に從事してゐたものに質問することができる。
政府は、戰時補償特別税の調査に關し必要があるときは、命令の定めるところにより、前項に規定する者の出頭を命ずることができる。
前項の規定による命令に從ひ出頭した者には、命令の定めるところにより、手當及び旅費を給する。
第五十條 戰時補償特別税は、個人についてはその住所地、この法律の施行地に住所のないときは居所地、法人についてはその本店又は主たる事務所の所在地をその納税地とする。但し、個人は、政府に申告して、居所地を納税地とすることができる。
この法律の施行地に住所及び居所のない個人又はこの法律の施行地に本店若しくは主たる事務所を有しない法人は、命令の定めるところにより、納税地を定めて政府に申告しなければならない。その申告のないときは、政府が、その納税地を指定する。
第五十一條 納税義務者若しくは代位納付義務者たる個人が納税地に現住しないとき、又は納税義務者若しくは代位納付義務者たる法人が納税地に營業所若しくは事務所を有しないときは、第十四條又は第三十五條の規定による申告書の提出その他戰時補償特別税に關する一切の事項を處理させるため、納税地に居住する者の中から納税管理人を定め、政府に申告しなければならない。納税義務者又は代位納付義務者たる個人がこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるとき竝びに納税義務者又は代位納付義務者たる法人が納税地に營業所又は事務所を有しないこととなるときもまた同じ。
第五十二條 都道府縣、市町村、その他の公共團體は、戰時補償特別税の附加税を課することができない。
第五十三條 納付義務者が讓渡を受けた戰時補償請求權(保險の目的の讓渡なくして讓渡を受けた保險契約に因り生じた權利に因るものを含む。)について戰時補償特別税を納付した場合又は第四十一條第一項乃至第三項竝びに第四十二條第一項及び第二項の規定により、求償に應じて履行した場合において、その戰時補償請求權が有償で取得したものであるときは、納税義務者は、讓渡人に對し、命令の定めるところにより、その取得に要した對價に相當する金額の範圍内において、求償をなすことができる。
第四十一條第二項乃至第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第五十四條 個人の所得税法による所得、營業税法による純益又は舊臨時利得税法による利益のうちに、事業の收益で戰時補償請求權に因るものが算入されてゐるときは、命令の定めるところにより、當該年分の所得税、營業税、營業税附加税又は臨時利得税の税額と當該年分の所得、純益又は利益の金額から當該事業の収益の金額を控除した金額により計算した所得税、營業税、營業税附加税又は臨時利得税の額との差額に相當する税額を、所得税、營業税、營業税附加税又は臨時利得税について免除する。
第五十五條 法人の法人税法による各事業年度の普通所得、營業税法による各事業年度の純益、舊臨時利得税法による利益又は特別法人税法による各事業年度の剩餘金のうちに、戰時補償請求權に因る益金が算入されてゐるときは、命令の定めるところにより、當該事業年度分の法人税、營業税、營業税附加税、臨時利得税又は特別法人税の税額と、當該事業年度の所得、純益、利益又は剩餘金から戰時補償請求權に因る益金を控除した金額により計算した法人税、營業税、營業税附加税、臨時利得税又は特別法人税の額との差額に相當する税額を、法人税、營業税、營業税附加税、臨時利得税又は特別法人税について免除する。
第五十六條 法人の納付すべき戰時補償特別税は、法人税法による各事業年度の普通所得、營業税法による各事業年度の純益又は特別法人税法よる各事業年度の剩餘金の計算上、これを損金に算入しない。
法人の資産(商品その他命令で定めるものを除く。)の評價換又は讓渡に因る益金、債務の消滅に因る益金、資本の減少に因る益金その他命令で定める益金については、その合計金額が戰時補償特別税額から戰時補償請求權に因る益金の額を控除した金額に達するまでの金額は、命令の定めるところにより、法人税法による各事業年度の普通所得、營業税法による各事業年度の純益又は特別法人税法による各事業年度の剩餘金の計算上、これを益金に算入しない。
前二項の規定の適用については、第五十三條第一項の規定により戰時補償請求權の讓渡人が求償される場合において、その求償される金額は、これを戰時補償特別税とみなす。
第五十七條 この法律施行前に相續の開始があつた場合において、相續財産(相續開始前一年以内に被相續人が贈與した財産を含む。以下同じ。)のうちに戰時補償請求權、政府特殊借入金の債權又は特殊預金等が含まれてゐたときは、命令の定めるところにより、當該相續税額と、當該相續税の課税價格から當該戰時補償請求權について課せられる戰時補償特別税額の全部又は一部を控除した金額によつて計算した相續税の額との差額を、當該相續税について免除する。
前項の規定は、この法律施行前に開始した相續の相續財産のうちに、政府特殊借入金の債權又は特殊預金等により取得した財産が含まれてゐた場合について、これを準用する。この場合において課税價格から控除する戰時補償特別税額は、その取得した財産の課税價格から當該戰時補償請求權について第十條の規定による控除金額を控除した金額を超えることができない。
第五十八條 この法律施行前に相續の開始があつた場合において、その相續財産につき生じた戰時補償請求權について戰時補償特別税が課せられたときは、當該相續について昭和二十年八月十五日後に納期限を定められた相續税に限り、命令の定めるところにより、當該戰時補償特別税額のうち命令で定める金額の、當該相續についての課税價格に對する割合を、當該相續税額に乘じて算出した金額を免除する。
第五十九條 改正前の戰時特殊損害保險法第十六條の規定(損害保險中央會法第五十六條の規定による改正前のものをいふ。)による戰爭保險の業務に關する保險會社に對する損失の補償については、第二十二條(第四十條において準用する場合を含む。)又は第三十九條の規定により消滅した貸付金の債權の金額に相當する金額を、その補償すべき損失の額から控除する。
第六十條 國、地方公共團體若しくは特定機關に對して土地若しくは建物(土地又は建物に定著する物を含む。以下本條中同じ。)又は鑛業權若しくは砂鑛權を讓渡し又は國、地方公共團體若しくは特定機關に土地若しくは建物を收用された場合において、その對價の請求權について戰時補償特別税を課せられたときは、國、地方公共團體又は特定機關は、この法律施行の際現に當該土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權を有する場合に限り、舊所有者又は舊鑛業權者若しくは舊砂鑛權者の請求により、當該土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權を、現状において、これらの者に對し、讓渡しなければならない。
前項の規定により土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權の讓渡を受けようとする者は、當該土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權の讓渡又は收用の對價の價格に相當する金額からその對價の請求權に課せられた戰時補償特別税額を控除した金額に相當する對價を、國、地方公共團體又は特定機關に支拂はなければならない。
前項の場合において國、地方公共團體又は特定機關が當該土地又は建物につき有益費を出したときは、舊所有者はその費用の額に相當する金額を、前項の金額に加算して支拂はなければならない。
第一項の規定により地方公共團體又は特定機關が土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權を舊所有者又は舊鑛業權者若しくは舊砂鑛權者に讓渡した場合においては、政府は、當該土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權の讓渡又は收用の對價の請求權に課せられた戰時補償特別税に相當する金額の全部又は一部を、地方公共團體又は特定機關に交付しなければならない。
第一項の規定により土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權の讓渡を受けようとする者は、一般申告期限後三箇月以内に、その旨を國、地方公共團體又は特定機關に申し出なければならない。
前項に規定するものを除く外、第一項乃至第四項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十一條 鑛業權又は砂鑛權が國、地方公共團體又は特定機關に讓渡された後に消滅した場合その他命令で定める場合において、その對價の請求權その他命令で定める請求權について、戰時補償特別税を課せられたときは、舊鑛業權者又は舊砂鑛權者は、鑛業法第三十三條の規定にかかはらず、前に鑛區又は砂鑛區の存した土地に關し、同一鑛物を目的とする鑛業又は同一砂鑛を目的とする砂鑛業の出願について優先權を有する。
鑛業又は砂鑛業の出願について前項の規定の適用を受けようとする者は、命令の定めるところにより、一般申告期限後三箇月以内に、政府に出願しなければならない。
前項に規定するものを除く外、第一項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十二條 雙務契約に因り生じた戰時補償請求權について戰時補償特別税を課せられた場合において、その戰時補償請求權の對價たる給付で、この法律施行前すでに履行されたものがあるときは、納税義務者は、前條に規定する場合を除く外、他の法令又は契約にかかはらず、戰時補償特別税の課税を理由として物の返還その他何等の請求をもなすことができない。
雙務契約に因り生じた戰時補償請求權について戰時補償特別税を課せられた場合においては、納税義務者は、他の法令又は契約にかかはらず、その戰時補償請求權の對價たる給付で、この法律施行の際にまだ履行されてゐないものについては、これを履行する必要がない。
納税義務者以外の者で最初に戰時補償請求權を取得したものは、第二項の規定の適用については、これを納税義務者とみなす。
第六十三條 戰時補償特別税の納税義務者又は代位納付義務者が戰時補償特別税の納付後において有する政府特殊借入金の債權(第十條の規定の適用の結果戰時補償特別税を納付しないこととなつた者の有するものを含む。)及び戰時補償特別税の納付の義務のない者が有する政府特殊借入金の債權は、命令の定めるところにより、これを當該債權の金額と同額の登録國債となすものとする。
第六十四條 政府は、命令の定めるところにより、戰時補償特別税の納付後において存する戰時補償請求權(第十條の規定の適用の結果戰時補償特別税を納付しないこととなつた者の有するものを含む。)で政府に對するものの決濟を、國債證券の交付により、行ふことができる。
前項の規定による決濟のため交付する國債證券の交付價格は、額面金額による。
政府は、第一項の請求權の決濟のため必要な金額を限り、公債を發行することができる。
第六十五條 この法律施行の際現に存する戰時補償請求權で金錢の給付以外の給付をその目的とするものは、この法律施行の日に、消滅する。
第六十六條 會社その他の法人が昭和二十年八月十五日以前においてなした資金の融通、有價證券の應募、引受若しくは買入又は債務の引受若しくは保證に因り生じた又は生ずべき損失で、政府において補填すべきものは、他の法令又は契約にかかはらず、これを補填しない。但し、命令で定めるものはこの限りでない。
第六十七條 政府が會社その他の法人のためになした保證(命令で定めるものを除く。)は、この法律施行の日において、その效力を失ふ。
第八章 罰則
第六十八條 詐欺その他不正の行爲により、戰時補償特別税を逋脱した者は、これを一年以下の懲役又は十萬圓以下の罰金に處する。
第六十九條 左の各號の一に該當する者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
一 正當の事由なくして第四十六條の調書を提出せず、または同條の調書に虚僞の記載をなしてこれを提出した者
二 第四十七條又は第四十八條の規定による帳簿書類その他の物件の檢査を拒み、妨げ又は忌避した者
三 前號の帳簿書類で虚僞の記載をなしたものを呈示した者
四 第四十七條、第四十八條又は第四十九條第一項の規定による收税官吏の質問に對し答辯をなさない者
五 前號の質問に對し虚僞の答辯をなした者
第七十條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に關して、第六十八條又は前條第一號若しくは第三號乃至第五號の違反行爲をなしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に對し、各本條の罰金刑を科する。
第七十一條 第六十八條の罪を犯した者には、刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及び第六十六條の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に處するときは、この限りでない。
第七十二條 第十四條又は第三十五條に規定する申告期限内に第十四條又は第三十五條の規定による申告書の提出を怠つた者は、これを五千圓以下の過料に處する。
第七十三條 第四十九條第二項の規定により出頭を命ぜられた者が、正當の事由なくして、出頭しないときは、これを千圓以下の過料に處する。
第九章 補則
第七十四條 皇室の財産に係る戰時補償請求權の特別措置に關し必要な事項は、この法律の定めるところに準じ、皇室令を以て、これを定める。
附 則
この法律の施行の期日は、勅令で、これを定める。
この法律は、本州、北海道、四國、九州及びその附屬島嶼(勅令で定める地域を除く。)に、これを施行する。
(別表一)
一 舊軍需會社法第十三條(同法に基く命令において準用する場合を含む。)の規定に基く補助金、損失補償金又は利益保證の請求權
二 舊國家總動員法第二十七條又は第二十八條の規定に基く補償金(別表二第三號に掲げるものを除く。)又は補助金の請求權
三 舊兵器等製造事業特別助成法第四條の規定に基く設備建設費の請求權
四 舊兵器等製造事業特別助成法第五條の規定に基く設備の買上代金請求權及びこれに代るべき請求權
五 舊防空法第十六條第二項の規定による補助金で工場の疎開に關するものの請求權及び工場の疎開に關する國のその他の補助金の請求權
六 政府(第一條第二項に規定する政府をいふ。以下別表中同じ。)に對する物資、勞務若しくは利益の供給又は政府の注文に係る仕事の完成に對する對價の請求權
七 政府に對する物資、勞務若しくは利益の供給又は政府の注文に係る仕事の完成に關する契約を政府が解除した場合の損害賠償請求權又は仕掛半製品のまま引き取つた場合その他これに準ずる場合の對價の請求權
八 政府に徴傭された船舶の原状囘復及び修理に關する費用の請求權
九 政府に對する損害賠償請求權で財産上の損害に因るもの(別表一のうち別號に掲げるもの及び別表二に掲げるものを除く。)
十 今次の戰爭の遂行に關して、政府が法令の特別の規定に基かずに處分をなしたことに因る損失補償請求權
十一 産業設備營團と事業者との間の設備建設契約に基く産業設備營團に對する設備建設費の請求權又は産業設備營團と事業者との間に設備建設契約の豫約がある場合において、事業者の建設した設備につき、産業設備營團が豫約を履行しないことに因る損害賠償請求權
十二 産業設備營團が終戰に因り、船舶、機械等の製造又は購入の契約を解除した場合の損害賠償請求權
十三 日本倉庫統制株式會社に對し倉庫用建築物を讓渡した場合の代金請求權(當該建築物が除却された場合のものに限る。)
十四 舊戰爭保險臨時措置法若しくは舊戰時特殊損害保險法又は、これらによる旨を定めた勅令(南洋群島戰爭保險臨時措置令を含む。)に基く戰爭保險契約による戰爭保險金の請求權で、この法律の施行地外にある財産を保險の目的とするもの
(別表二)
一 舊戰爭保險臨時措置法又は舊戰時特殊損害保險法に基く戰爭保險契約による戰爭保險金の請求權(別表一第十四號に掲げるものを除く。)
二 舊損害保險國營再保險法に基く勅令に掲げる戰爭保險金の請求權若しくは從前の損害保險中央會法第十八條第一項に掲げる海上保險金(木船保險の保險金を含む。)の請求權又は漁船保險法施行令第二條第二項に掲げる保險金の請求權
三 舊戰時海運管理令第二條の規定により使用された船舶の、戰爭に關する事故に因る損失に對する補償金の請求權
四 政府に徴傭された船舶の、戰爭に關する事故に因る損害賠償請求權
五 舊防空法第五條の五第二項の規定により指定された地區内に存する建築物(工事中のものを含む。以下同じ。)を除却する場合における補償金及び當該建築物(その存する土地を含む。)の賣買代金の請求權
(別表三)
國民更正金庫、産業設備營團、帝國鑛業開發株式會社又は日本石炭株式會社その他命令で定める者に對する請求權で企業整備に關するもの
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金融機關再建整備法案
金融機關再建整備法目次
第一章 總則
第二章 資産及び負債の調査
第三章 資産及び負債の評價
第四章 舊勘定の資産及び負債の移換
第五章 舊勘定の最終處理
第六章 整備の促進
第七章 決算の特例
第八章 監査及び監督
第九章 雜則
第十章 罰則
金融機關再建整備法
第一章 總則
第一條 この法律は、戰時補償の特別處理等に伴ひ金融機關に生ずべき損失を適正に處理し、國民生活の安定を確保し、金融機關の速かな再建整備を促進し、以て戰後經濟の安定及びその健全な發達を圖ることを目的とする。
第二條 この法律において、金融機關、指定時又は預金等とは、金融機關經理應急措置法に定める金融機關、指定時又は預金等をいふ。
この法律において、新勘定又は舊勘定とは、金融機關經理應急措置法第一條第一項の規定により設けられた新勘定又は舊勘定をいふ。
この法律において、經濟再建整備委員會とは、企業再建整備法に定める經濟再建整備委員會をいふ。
第三條 金融機關の舊勘定の資産及び負債は、金融機關經理應急措置法及びこの法律の定めるところにより、これを整理する。
第二章 資産及び負債の調査
第四條 金融機關の指定時における舊勘定の負債に關する債權者(その承繼人を含む。以下同じ。)で勅令で定めるものは、命令の定めるところにより、主務大臣の指定する日までに、その債權を當該金融機關に申し出なければならない。
前項の債權者が、同項の期限内に、その債權を申し出ない場合においては、その債權者は、舊勘定の整理から除斥される。
第一項の期日において知れてゐる債權者は、これを舊勘定の整理から除斥することができない。
第五條 金融機關の舊勘定の負債又は指定時における新勘定の負債のうちで、その債權につき異議のあるものその他不確定なものがあるときは、第七條の評價基準の決定されたものを除く外、その確定に至るまでは、金融機關は、命令で定める金額を、假にその負債の確定金額として、舊勘定の整理を行はなければならない。
第六條 金融機關は、命令の定めるところにより、指定時における新勘定及び舊勘定について、各勘定別に、財産目録及び貸借對照表竝びに資産及び負債の明細書を作成し、主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。
第三章 資産及び負債の評價
第七條 金融機關の舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債のうち、命令で定めるもの以外のものについては、評價基準が設けられる。
前項の評價基準は、暫定評價基準及び確定評價基準の二とし、命令で定めるところにより、主務大臣が經濟再建整備委員會の議を經て、これを決定する。
主務大臣は、暫定評價基準又は確定評價基準を決定したときは、これを公告する。
第八條 金融機關は、主務大臣の指定する時において、その時における舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債について、命令の定めるところにより、暫定評價基準による評價を行はなければならない。この場合において、その資産及び負債のうち確定評價基準の決定したものがあるときは、これについては、確定評價基準による評價を行はなければならない。
金融機關は、前項の評價を行つたときは、命令の定めるところにより、同項に掲げる資産及び負債について、各勘定別に財産目録、貸借對照表及び損益の計算書(損益の計算書は舊勘定の分に限る。)を作成し、主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。
第九條 金融機關は、前條第一項の評價を行つた後、各月末における舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債のうちに、その月末までに決定されてゐる確定評價基準による評價が行はれてゐないものがあるときは、その資産及び負債について、その月末において、確定評價基準による評價を行はなければならない。
第十條 金融機關は、指定時における新勘定の資産及び負債について、第八條第一項又は前條の評價を行つた結果、評價益が生じたときは、その評價益に相當する金額を新勘定の舊勘定に對する借として整理し、又、評價損が生じたときは、その評價損に相當する金額を新勘定の舊勘定に對する貸として整理する。
金融機關は、前項の場合においては、新勘定の舊勘定に對する借として整理すべき金額に相當する額は、これを舊勘定の評價益として整理し、又、新勘定の舊勘定に對する貸として整理すべき金額に相當する額は、これを舊勘定の評價損として整理する。
第十一條 金融機關は、舊勘定の資産及び負債について、第八條第一項又は第九條の評價を行つた結果、評價益が生じたときは、これを舊勘定の評價益として整理し、又、評價損が生じたときは、これを舊勘定の評價損として整理する。
第四章 舊勘定の資産及び負債の移換
第十二條 金融機關は、第五章に規定する場合を除く外、本章の定めるところにより、舊勘定の資産又は整理債務を移し換へることができる。
前項の整理債務とは、舊勘定に屬する債務(責任準備金及び支拂備金に關する債務を含む。)のうち、主務大臣の指定する債務(以下指定債務といふ。)以外のものをいふ。
第十三條 金融機關は、第八條第一項の評價が行はれる前においても、第一號の金額が第二號の金額を超え、且つ、その超過額の整理債務の金額に對する割合が主務大臣の指定する割合を超えるときは、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、その超過額の範圍内において、整理債務を舊勘定から新勘定に移すことができる。
一 舊勘定の資産の總額から主務大臣の指定する舊勘定の資産の金額を差し引いた殘額
二 資本(出資金、基金及び保險業法第六十五條の積立金を含む。以下同じ。)の金額の一割に相當する金額と、指定債務の金額と、舊勘定の新勘定に對する借があるときはその金額との合計額
前項の規定による主務大臣の認可があつたときは、その指定する時において、認可に係る整理債務は、新勘定に屬するものとする。
第一項の規定により舊勘定から新勘定に移した整理債務の金額に相當する金額は、これを舊勘定の新勘定に對する借として整理する。
金融機關は、第一項の規定による主務大臣の認可があつたときは、命令の定めるところにより、遲滯なくその旨を公告しなければならない。
第十四條 金融機關は、第八條第一項又は第九條の評價を行つた結果、第一號の金額が第二號の金額を超え、且つ、その超過額の整理債務の金額に對する割合が主務大臣の指定する割合を超えるときは、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、その超過額の範圍内において、整理債務を舊勘定から新勘定に移さなければならない。
一 舊勘定の資産(舊勘定の新勘定に對する貸があるときは、これを除く。)の評價額(確定評價基準があるものについては、確定評價基準により評價した金額を以て、その他のもののうち暫定評價基準があるものについては、暫定評價基準により評價した金額に對し主務大臣の指定する割合を乘じた金額を以て、各各評價額とする。)と、舊勘定の新勘定に對する貸があるときはその金額との合計額
二 前條第一項第二號に掲げる金額
前條第二項乃至第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第十五條 第四十條第一項又は第四十一條第一項の規定により新勘定の事業の全部若しくは一部を他の金融機關に讓渡し又は新勘定の保險契約の全部若しくは一部を他の金融機關に移轉した金融機關(以下舊金融機關といふ。)は、第八條第一項又は第九條の評價を行つた結果、前條第一項第一號の金額が同項第二號の金額(第四十二條第二項の規定により、又は前に本條第二項の規定により債務を負擔したときは、その金額を含む。)を超える場合において、その超過額の整理債務に對する割合が主務大臣の指定する割合を超えるときは、前條の規定にかかはらず、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、その超過額の範圍内において、整理債務を舊金融機關から新勘定の事業の全部若しくは一部の讓渡又は新勘定の保險契約の全部若しくは一部の移轉を受けた金融機關(以下新金融機關といふ。)に移すことができる。但し、新金融機關の同意を得なければならない。
前項の場合においては、舊金融機關は、命令の定めるところにより、新金融機關に移した整理債務の金額に相當する金額の債務を、新金融機關に對して負擔する。
銀行法等特例法第一條の規定は、命令の定めるところにより、第一項の規定により整理債務を移す場合に、これを準用する。
第十六條 金融機關は舊勘定の新勘定に對する借がある場合においては、命令の定めるところにより、その借の金額の範圍内において、舊勘定の資産のうち、第八條第一項又は第九條の規定により確定評價基準により評價したものを、その評價額を以て舊勘定から新勘定に移し、その評價額に相當する金額を、舊勘定の新勘定に對する借の金額から控除しなければならない。
前項の規定により、確定評價基準により評價した資産で命令で定めるものを舊勘定から新勘定に移す場合においては、金融機關は、主務大臣の承認を受けなければならない。
第十七條 第十五條第二項又は第四十二條第二項の規定により、舊金融機關が新金融機關に對し債務を負擔した場合において、舊金融機關に金融機關經理應急措置法第九條第一項の規定により、舊勘定に屬する現金(小切手を含む。)を生じたときは、舊金融機關は、同法第十條の規定にかかはらず、命令の定めるところにより、これを新金融機關に對する債務の辨濟に充てなければならない。
第十五條第二項又は第四十二條第二項の規定により、舊金融機關が新金融機關に對し債務を負擔した場合においては、舊金融機關は、前項に規定する場合の外、金融機關經理應急措置法第十六條本文及び前條の規定にかかはらず、命令の定めるところにより、その債務の金額の範圍内において、舊勘定の資産のうち、第八條第一項又は、第九條の規定により確定評價基準により評價したものを、その債務の辨濟に充てることができる。但し、新金融機關の同意を得なければならない。
第二項の場合においては、新金融機關は金融機關經理應急措置法第十七條本文の規定にかかはらず、辨濟を受けることができる。
第五章 舊勘定の最終處理
第十八條 金融機關は、左の各號の一に該當する場合においては、本章の定めるところにより、舊勘定の最終處理を行はなければならない。
一 第八條第一項の評價を行つた結果、同項の規定により主務大臣の指定する時の現在により、左のイに掲げる金額がロに掲げる金額を超える場合において、その超過額の舊勘定の資産の總額に對する割合が主務大臣の指定する場合を超えるとき
イ 舊勘定の第八條第一項の評價による評價益の額と、その他の益の額と、積立金(保險業法第六十五條の積立金を除く外、特別準備金その他名稱の如何を問はず積立金であるものを含む。以下同じ。)の額との合計額
ロ 舊勘定の第八條第一項の評價による評價損の額と、その他の損の額と、繰越損の額との合計額
二 舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債のうち命令で定めるものについて、確定評價基準が決定されたとき
第十九條 前條第一號に規定する場合において、舊勘定の第八條第一項の評價による評價益の額と、その他の益の額との合計額(以下暫定益の額といふ。)が、前條第一號のロに揚げる金額(以下暫定損の額といふ。)以上であるときは、金融機關は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、舊勘定の最終處理を完了しなければならない。この場合において、暫定益の額が暫定損の額を超えるときは、その超過額は、これを舊勘定の特別準備金として整理しなければならない。
第二十條 第十八條第一號に規定する場合において、暫定益の額が暫定損の額に不足するときは、金融機關は、左の各號に定める順序により、暫定損を填補しなければならない。
一 暫定損の額に對し、暫定益の額の全額を充當して填補する。
二 前號の規定の適用後における暫定損の殘額に對し、舊勘定の積立金を、特別準備金(金融機關經理應急措置法又はこの法律による特別準備金をいふ。以下同じ。)、退職積立金以外の任意積立金、退職積立金及び他の法令(金融機關經理應急措置法を除く。)による積立金の順序により、順次に取り崩して填補する。
前項第二號の場合において、同順位の積立金が二以上あるときは、均等の割合でこれを取り崩して填補する。
前二項の規定により暫定損の全額を填補したときは、金融機關は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、舊勘定の最終處理を完了しなければならない。
第二十一條 金融機關は、第十八條第二號の規定に該當する場合においては、同號の規定に該當するに至つた日の屬する月の月末における舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債について、命令の定めるところにより、各勘定別に、財産目録、貸借對照表及び損益の計算書(損益の計算書は舊勘定の分に限る。)を作成して、主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。
第二十二條 金融機關は、前條の規定により作成する舊勘定の財産目録、貸借對照表及び損益の計算書には、命令の定めるところにより、主務大臣の承認を受け、舊勘定の最終處理に必要な費用に充てるため、最終處理費引當金を計上するものとする。
第二十三條 第二十一條に規定する月の月末において、左の各號の一に該當する場合においては、金融機關は、命令の定めるところにより書面を以て主務大臣の認可を受け、舊勘定の最終處理を完了しなければならない。
一 確定益(舊勘定の第十條第二項及び第十一條の評價益及びその他の益を總稱する。以下同じ。)も、確定損(舊勘定の第十條第二項及び第十一條の評價損、繰越損及びその他の損を總稱する。以下同じ。)もないとき
二 確定益と確定損とがあつて、確定益の額と確定損の額とが同額であるとき
三 確定益があつて確定損がないとき
四 確定益と確定損とがあつて、確定益の額が確定損の額を超えるとき
前項第三號の場合における確定益の額、又は同項第四號の場合における確定益の額の確定損の額を超える額は、これを舊勘定の特別準備金として整理しなければならない。
第二十四條 第二十一條に規定する月の月末において、舊勘定に確定損があつて、確定益がないとき、又は確定損と確定益とがあつて確定損の額が確定益の額を超えるときは、金融機關は左の各號の順序により、確定損の整理負擔額を計算しなければならない。
一 確定益があるときは、確定損に對し、確定益の全額を充當するものとする。
二 確定益がないときは確定損の全額に對し、又、確定益があるときは前號の規定の適用後における確定損の殘額に對し、舊勘定の積立金を充當するものとする。
三 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、資本の金額の九割に相當する金額まで、株主(出資者、基金醵出者その他これに準ずるものを含む。以下同じ。)において確定損を負擔するものとする。
四 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務(第十三條第一項、第十四條第一項又は第十五條第一項の規定により舊勘定から新勘定又は新金融機關に移した分を含み、命令で定める分を除く「以下第二十五條まで同じ。)のうち、法人(法人でない社團又は財團を含む。以下同じ。)の預金等で一口五百萬圓を超えるものの、五百萬圓を越える部分の金額の七割に相當する金額まで、その預金等の債權者において確定損を負擔するものとする。
五 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務のうち、法人の預金等で一口百萬圓を超えるものの、百萬圓を越え五百萬圓以下の部分の金額の五割に相當する金額まで、その預金等の債權者において確定損を負擔するものとする。
六 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務のうち、法人の預金等で一口十萬圓を超えるものの、十萬圓を越え百萬圓以下の部分の金額の三割に相當する金額まで、その預金等の債權者において確定損を負擔するものとする。
七 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務のうち、前三號の規定の適用後における法人の預金等の殘額と、その他の整理債務の金額との七割に相當する金額まで、整理債務の債權者において確定損を負擔するものとする。
八 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、第三號の規定の適用後における資本の殘額に相當する金額まで、株主において確定損を負擔するものとする。
九 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、第七號の規定の適用後における整理債務の殘額に相當する金額まで、整理債務の債權者において確定損を負擔するものとする。
十 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、指定債務(命令で定めるものを除く。)の全額まで、指定債務の債權者において、命令で定める順序により、確定損を負擔するものとする。
前項第三號又は第八號の場合における各株主の負擔額は、その所有する株式(出資及び基金を含む。以下同じ。)の金額に應じて均等とする。金融機關が數種の株式を發行してゐる場合においてもまた同じ。
第二十五條 前條の規定により算出した確定損の整理負擔額の處理のため金融機關は、左の各號の定める措置をなさなければならない。
一 前條第一項第一號の場合においては、確定損の額から確定益の額を差し引く。
二 前條第一項第二號の場合においては、舊勘定の積立金を、特別準備金、退職積立金以外の任意準備金、退職積立金及び他の法令(金融機關經理應急措置法を除く。)による積立金の順序により、順次に取り崩す。
三 前條第一項第三號乃至第八號の場合においては、資本に未拂込金があるときは、勅令の定めるところにより拂込をなさしめた後、又資本に未拂込金がないときは直ちに、前號の措置をなした上、同條第一項第三號又は第八號の規定により株主が負擔すべき金額の合計金額だけ資本を減少する。但し、第二十六條に規定する場合は、この限りではない。
第二十條第二項の規定は、前項第二號の場合に、これを準用する。
前條第一項第四號乃至第十號の場合においては、整理債務又は指定債務の債權は、當該各號の規定によりこれらの債務の債權者が確定損を負擔すべき金額に相當する金額だけ、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日において消滅する。
前項の場合においては、保險會社、生命保險中央會又は損害保險中央會の舊勘定に屬する責任準備金又は支拂備金に對應する保險金(年金を含む。以下同じ。)の債權は、責任準備金又は支拂備金に關する權利の消滅の割合と同一の割合により、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日において消滅する。
第一項第三號の規定による拂込の場合に關しては、他の法令又は定款にかかはらず、勅令で特別の定をなすことができる。
第二十六條 第二十四條第一項第八號の規定により、株主が資本の全額に相當する金額の確定損を負擔しなければならないときは、金融機關は、第二十七條第一項の認可を受けた後(第三十三條第一項の規定により補償を受くべきときは、その補償を受けた後)、遲滯なく舊勘定の資産と、確定損を負擔しない整理債務又は指定債務があるときはその整理債務又は指定債務とを舊勘定から新勘定に移さなければならない。舊勘定の新勘定に對する借は、この措置と同時に消滅する。
前項の場合においては、金融機關は、同項の措置をなした後、主務大臣の指定する日までに、新勘定の事業の全部を他の金融機關に讓渡し、又は新勘定の保險契約の全部を他の金融機關に移轉しなければならない。
金融機關は、前項の讓渡又は移轉について對價を取得した場合においては(第三十三條第一項の規定による政府の補償があつたときは、先づ、その額まで、これを政府に納付し、なほ殘額があるときは)、命令の定めるところにより、これを處分しなければならない。
金融機關は、第二項の期限内に新勘定の事業の全部の讓渡又は新勘定の保險契約の全部の移轉を終つたときはその讓渡又は移轉を終つた日において、又、同項の期限内にその讓渡又は移轉を終らなかつたときは同項の期限を經過した日において解散する。この場合においては、新勘定及び舊勘定の區分は、解散の日において消滅する。
第三項の規定は、前項の規定による解散の場合に、これを準用する。
前項に定めるものを除く外、第四項の規定による解散の場合に關し必要な事項は、他の法令にかかはらず、命令でこれを定める。
第二十四條第一項第八號の規定により、舊金融機關の株主が資本の全額に相當する金額の確定損を負擔しなければならない場合において、第十五條第二項又は第四十二條第二項の規定により、舊金融機關が新金融機關に對し負擔した債務があるときは、舊金融機關は、第一項の措置をなす前に、命令の定めるところにより、先づ、舊勘定の資産をその債務の辨濟に充てなければならない。但し、現金(小切手を含む。)以外の資産を債務の辨濟に充てるには、新金融機關の同意を得なければならない。
銀行法等特例法第一條の規定は、命令の定めるところにより、第二項の規定による事業の讓渡の場合に、これを準用する。
第二十七條 金融機關の取締役又はこれに準ずる者(以下理事機關といふ。)は、第二十四條第一項に規定する場合においては、命令の定めるところにより、最終處理方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。
前項の場合において、當該金融機關について、第四十七條の監査委員があるときは、理事機關は、前項の規定による認可の申請前、豫め最終處理方法書につき、その承認を受けなければならない。
第二十八條 金融機關の理事機關は、前條第一項の規定による認可があつたときは、舊勘定の最終處理を行ふべき旨を公告し、最終處理方法書及び第二十一條の書類を本店又は主たる事務所及び支店又は從たる事務所に備へ置かなければならない。
金融機關の株主及び舊勘定の負債に關する債權者は、營業時間内、何時でも前項に掲げる書類を閲覽することができる。
第二十九條 金融機關は、第二十七條第一項の認可を受けたときは、最終處理方法書に定めるところにより、遲滯なく、舊勘定の最終處理を行はなければならない。
第三十條 第二十七條第一項の認可があつた後、舊勘定の最終處理の完了までに、舊勘定の資産若しくは負債又は指定時における新勘定の資産若しくは負債について、舊勘定の最終處理の結果に影響を及ぼすべき變更を生じたときは、金融機關の理事機關は、その變更に基いて、最終處理方法書を改訂しなければならない。
第二十七條乃至前條の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第三十一條 第二十七條第一項の認可があつたときは、金融機關が舊勘定の最終處理を行ふためになす資本の減少、定款の變更その他の手續については、他の法令又は定款にかかはらず、株主總會若しくはこれに準ずるものの決議又は政府の認可等は、これを必要としない。
商法第三百八十條の規定は、前項の資本の減少については、これを適用しない。
第一項の資本の減少については、資本の減少の日から命令で定める日までの間を限り、他の法令中資本又は株式の金額の制限に關する規定は、これを適用しない。
前三項に定めるものを除く外、第一項の資本の減少に關し必要な事項については、他の法令又は定款にかかはらず、命令で特別の定をなすことができる。
第三十二條 前條第一項の資本の減少の結果、金融機關の債券の發行又は資金の借入若しくは融通の額が、他の法令に規定する債券の發行又は資金の借入若しくは融通に關する制限額を超えるに至つた場合においては、當該資本の減少の際現に存する債券又は資金の借入若しくは融通(その更改に因る債權又は債務を含む。)に限り、他の法令中これらの債權又は債務の金額の制限に關する規定は、これを適用しない。
第三十三條 第二十四條第一項の規定により、確定損の整理負擔額を計算するもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額は、命令の定めるところにより、政府において、これを補償する。但し、その補償の金額は、勅令で定める金額を限度とする。
政府は、前項の補償の決濟を、國債證券の交付により行ふことができる。
前項の規定による決濟のため交付する國債證券の交付價格は、大藏大臣がこれを定める。
政府は、第一項の補償債務の辨濟のため必要な金額を限り公債を發行することができる。
金融機關が前章に定めるところにより、整理債務を舊勘定から新勘定又は新金融機關に移した場合においては、第一項の規定は、これを適用しない。
第一項の規定による政府の補償の金額は、大藏省預金部等損失特別處理法による補償金の額と合計し、百億圓(第二十六條第三項その他の規定により政府に納付した金額があるときは、その額を加算した金額)を限度とする。
第三十四條 金融機關は、舊勘定の最終處理を完了したときは、遲滯なくその旨を公告しなければならない。
金融機關の新勘定及び舊勘定の區分は、前項の公告(二囘以上公告をなしたときは最初の公告)の日において消滅する。
金融機關は、第一項の公告をなしたときは、その公告(二囘以上公告をなしたときは最初の公告)の後、本店又は主たる事務所の所在地においては二週間以内に、又支店又は從たる事務所の所在地においては三週間以内に、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の登記をしなければならない。
前項の登記に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十五條 第四條第一項の規定により債權の申出をなすべき債權者でその申出をしなかつたものが、同項の期限後新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日までにその債權を申し出たときは、第十九條若しくは第二十三條に規定する場合又は第二十條第一項第二號若しくは第二十五條第一項第二號の規定の適用後なほ舊勘定の積立金が殘る場合に限り、舊勘定の積立金の金額の範圍内において、その債權の金額に應じ均等の割合で、その債權の辨濟を、金融機關に請求することができる。
前項の場合においては、金融機關は、債權者に對し、その債權の辨濟の請求ができる金額を通知しなければならない。
第四條第一項の規定により申出をなすべき債權で、同項の期限までにその申出のなかつたものは、第一項の規定により辨濟の請求ができる金額を除く外、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日において消滅する。
第一項の場合においては、金融機關は、他の法令又は定款にかかはらず、同項の規定により辨濟の請求を受くべき金額だけ、積立金を、退職積立金以外の任意積立金、退職積立金及び他の法令による積立金の順次により、順次に取り崩すことができる。
第二十條第二項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第三十六條 金融機關の舊勘定の負債又は指定時における新勘定の負債に關する債權(責任準備金及び支拂備金に關する權利を含む。以下第三十七條まで同じ。)で、舊勘定の最終處理の完了の際不確定であつたものが、舊勘定の最終處理の完了後確定したときは、金融機關の理事機關は、その確定の結果に基いて、第二十四條の規定に準じ、當該債權が確定損を負擔すべきであつた金額を計算し、その金額を當該債權者(責任準備金及び支拂備金に關する權利者を含む。以下第三十八條まで同じ。)に通知しなければならない。
前項の場合においては、當該債權は、同項の規定による通知のあつた時において、その通知に係る金額だけ消滅する。
第二十五條第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第三十七條 第二十四條第一項第四號乃至第八號の規定により、金融機關の整理債務の債權者において舊勘定の確定損を負擔した場合において、新勘定及び舊勘定の區分の消滅後、當該金融機關に屬する資産で命令で定めるもののうち、前に舊勘定に屬してゐたものにつき、第八條第一項又は第九條の規定による評價額に比し、價額の増加があつたとき、又はその資産を處分して得た對價が第八條第一項又は第九條の規定による評價額を超えたときは、その増價額又は處分益の額に相當する金額については、當該金融機關は、他の法令にかかはらず、命令の定めるところにより、これを處分しなければならない。
金融機關の舊勘定の負債又は指定時における新勘定の負債に關する債權のうち、舊勘定の最終處理の完了の際不確定であつたものが、舊勘定の最終處理の完了後、初から存在しなかつたものと確定した場合における第一號の金額の處分、又はその確定した金額が第五條の規定に基く命令で定める金額よりも少ない場合における第一號の金額から第二號の金額を差し引いた殘額の處分についても、また前項に同じ。
一 その負債に關する債權について、第五條の規定に基く命令で定める金額に對する第二十四條第一項第四號乃至第十號の規定の適用後における殘額
二 その負債に關する債權について、確定した金額に對する前條第一項の規定の適用後における殘額
第三十八條 舊勘定の最終處理が完了したときは、債權者及び株主の權利は、最終處理方法書の定めるところによつて確定する。但し、第三十六條の場合においては、當該債權者の權利は、同條の定めるところによつて確定する。
舊勘定の整理が法令に違反して、債權者又は株主に損害を及ぼしたときは、當該金融機關の理事機關は、當該金融機關と連帶してその損害を賠償しなければならない。但し、當該理事機關で、その業務の執行について過失がなかつた者については、この限りではない。
前項の規定は、第二十六條第四項の場合における清算に關する清算人の責任について、これを準用する。
第一項(前項において準用する場合を含む。)の損害賠償の請求權は、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日から五年を經過したときは、時效に因つて消滅する。
第六章 整備の促進
第三十九條 第二十五條第一項第三號の規定により、金融機關が資本の減少を行はなければならない場合においては、その理事機關は、命令の定めるところにより、舊勘定の最終處理の完了後における當該金融機關の事業に關し整備計畫書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。
前項の規定による整備計畫書の認可があつた場合において、金融機關が主務大臣の指定する日までに、前項の整備計畫書に定める整備計畫を實行することができなかつたときは、その理事機關は、遲滯なくその旨を、書面を以て主務大臣に屆け出なければならない。
第四十條 金融機關は、指定時における新勘定の資産及び負債のうち命令で定めるものについて確定評價基準が決定し、且つ、新勘定の舊勘定に對する借がない場合に限り、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、新勘定の事業の全部若しくは一部を他の金融機關に讓渡し、又は新勘定の保險契約の全部若しくは一部を他の金融機關に移轉することができる。
前項の規定による認可があつたときは、同一の事項については、同時に他の法令による認可等があつたものとみなす。
第四十一條 主務大臣は、金融機關の整備を促進するため必要があるときは、經濟再建整備委員會の議を經て、新勘定及び舊勘定の區分の存する金融機關に對し、新勘定の事業の全部若しくは一部を他の金融機關に讓渡し、又は新勘定の保險契約の全部若しくは一部を他の金融機關に移轉すべきことを命ずることができる。
主務大臣は金融機關の舊勘定の最終處理の完了後における事業の状況により、特に必要があると認めるときは、他の法令に規定する場合を除く外、經濟再建整備委員會の議を經て、新勘定及び舊勘定の區分の消滅した金融機關に對し、合併若しくは資本の増加を命じ、その事業の全部若しくは一部を他の金融機關に讓渡すべきことを命じ、又はその保險契約の全部若しくは一部を他の金融機關に移轉すべきことを命ずることができる。
第一項又は前項の規定による主務大臣の命令があつた場合において、命令を受けた日から六箇月以内に、その命令に係る事項に關する契約が成立せず、又は資本の増加に關する株主總會その他これに準ずるものの決議がなかつたときは、命令を受けた金融機關の理事機關は、遲滯なくその旨を、書面を以て主務大臣に屆け出なければならない。
第四十二條 第四十條第一項又は前條第一項若しくは第二項の規定により、金融機關が合併、事業の讓渡又は保險契約の移轉をなす場合においては、當該金融機關は、その合併、事業の讓渡又は保險契約の移轉の相手方を、新勘定及び舊勘定の區分の存しない金融機關(金融機關經理應急措置法第二十七條第二號の金融機關の場合においては、相手方たる者は當該金融機關と同種の法人で金融機關たるもの以外のものを含む。)のうちから選ばなければならない。
第四十條第一項又は前條第一項の場合において、舊金融機關に舊勘定の新勘定に對する借があるときは、命令の定めるところにより、新金融機關に對して、その借の金額に相當する金額(事業の一部を讓渡し又は保險契約の一部を移轉した場合においては、借の金額のうち、その讓渡に係る事業又は移轉に係る保險契約に關する部分とし、又、事業の讓渡又は保險契約の移轉の對價があるときは、その對價の金額を控除したものとする。)の債務を負擔する。
銀行法等特例法第一條の規定は、命令の定めるところにより、第四十條第一項又は前條第一項若しくは第二項の規定により合併又は事業の讓渡をなす場合に、これを準用する。
前三項に定めるものを除く外、第四十條第一項又は前條第一項若しくは第二項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第四十三條 主務大臣は、金融機關の整備を促進するため必要があるときは、金融機關に對し、命令の定めるところにより、事業費の支出その他經理に關し必要な事項を命ずることができる。
第七章 決算の特例
第四十四條 金融機關の決算は、當該金融機關に新勘定及び舊勘定の區分の存する間は、新勘定及び舊勘定について、各別に、これを行はなければならない。
他の法令の適用のため必要な金融機關の財産目録、貸借對照表、損益計算書その他の商業帳簿及び營業に關する書類に關しては、命令の定めるところによる。
第四十五條 金融機關は、毎事業年度において、新勘定又は舊勘定に利益金を生じたときは、他の法令又は定款にかかはらず、これを當該勘定の特別準備金として積み立てなければならない。
金融機關は、毎事業年度において、新勘定又は舊勘定に缺損を生じたときは、當該勘定の特別準備金を取り崩して填補し、なほ不足があるときは、これを當該勘定別に繰り越さなければならない。
第四十六條 金融機關の新勘定及び舊勘定の區分が消滅したときは、他の法令又は定款にかかはらず、その區分の消滅した日を含む事業年度は、その區分の消滅した日までで終了するものとし、その事業年度に續く事業年度は、命令で定める日で終了するものとする。
金融機關の新勘定及び舊勘定の區分の消滅の際、現に新勘定又は舊勘定に特別準備金がある場合において、當該金融機關に、商法第二百八十八條第一項の準備金(その他の法令によるこれに準ずる準備金を含む。以下法定準備金といふ。)があるときは、當該特別準備金は、法定準備金に併せられ、又、法定準備金がないときは、當該特別準備金が、そのまま法定準備金となるものとする。
第八章 監査及び監督
第四十七條 金融機關の舊勘定の整理の適正を圖るため必要があるときは、經濟再建整備委員會は、主務大臣の認可を受け、當該金融機關について、その債權者その他の利害關係人(國、公共團體その他の法人である場合においては、代表者その他の職員)のうちから、五人以内の監査委員を選任することができる。
主務大臣は、金融機關の舊勘定の整理の適正を圖るため必要があるときは、經濟再建整備委員會に對し、當該金融機關につき監査委員を選任すべきことを命ずることができる。
金融機關の監査委員は、當該金融機關の役員と相兼ねることができない。
第四十八條 監査委員は、金融機關の舊勘定の整理を監査することをその職務とする。
監査委員は、前項に規定する職務を行ふため、何時でも金融機關の理事機關に對し舊勘定の整理に關する報告を求め、又は、舊勘定の整理の状況を調査することができる。
監査委員の職務及び權限は、第二十七條第二項及び前二項に規定するものを除く外、勅令でこれを定める。
第四十九條 經濟再建整備委員會は、主務大臣の認可を受け、監査委員を解任することができる。
主務大臣は、必要があるときは、經濟再建整備委員會に對し、監査委員を解任すべきことを命ずることができる。
第五十條 主務大臣は、金融機關の役員が金融機關經理應急措置法若しくはこの法律又はこれに基く命令若しくは處分に違反したときは、金融機關に對し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。
主務大臣は、金融機關の役員の行爲が公益を害する虞があると認めるときは、當該役員に對し、その職務の執行を停止すべきことを命ずることができる。
主務大臣は、必要があるときは、經濟再建整備委員會の議を經て、金融機關に對し前項の規定により職務の執行を停止した役員を解任すべきことを命ずることができる。
第五十一條 主務大臣は、この法律の施行に關し必要があるときは、金融機關に對し、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、この法律の施行に關し必要があるときは、金融機關をしてその業務及び財産の状況に關して報告せしめ、又は當該官吏をして帳簿、書類その他の物件を調査せしめることができる。
主務大臣は、前項の規定により、當該官吏をして檢査せしめるときは、その身分を示す證票を携帶せしめなければならない。
第九章 雜則
第五十二條 金融機關經理應急措置法第十四條の規定は、第十條第一項、第十三條第三項(第十四條第二項において準用する場合を含む。)又は第十六條第一項の規定により、新勘定の舊勘定に對する貸又は借として整理さるべき金額について、これを準用する。
第五十三條 金融機關の新勘定又は舊勘定の資産で暫定評價基準又は確定評價基準により評價したものを財産目録に記載する場合においては、その價額については、商法第二百 八十五條(保險業法第六十七條において準用する場合を含む。)の規定は、これを適用しない。
第五十四條 金融機關經理應急措置法第十八條第二項の規定により中止された金融機關の財産に對する強制執行、假差押若しくは假處分又は競賣法による競賣手續は、その財産が新勘定に屬するに至つたとき、又は新勘定及び舊勘定の區分が消滅したときは、その日からこれを續行する。但し、新勘定及び舊勘定の區分の消滅前においては、その債權に關する債務の全部又は一部が舊勘定に屬する間は、この限りではない。
第五十五條 金融機關の新勘定及び舊勘定の區分が消滅するまでは、その金融機關に對して破産の宣告、整理開始の命令又は和議開始の決定をなすことができない。
金融機關の新勘定について支拂不能又は債務超過の事實が生じた場合における措置については、勅令の定めるところによる。
金融機關の新勘定及び舊勘定の區分の消滅後においては、その金融機關には、金融機關經理應急措置法第二十二條第二項の規定は、これを適用しない。
第五十六條 舊勘定に屬する責任準備金に對應する生命保險金に關する保險契約(以下舊生命保險契約といふ。)につき指定時後拂ひ込まれた保險料のうち、第二十五條第四項の規定により債權の消滅した生命保險金の部分に對應するものについては、その保險契約をなした生命保險會社又は生命保險中央會(以下生命保險會社等といふ。)は、命令の定めるところにより、當該保險契約者との間に保險契約が現に存する場合においては、これを當該保險契約の保險料に充當するものとし、保險料に充當してなほ殘額がある場合又は當該保險契約者との間に現に保險契約が存しない場合においては、これを當該保險契約者に返濟しなければならない。
新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日までに、舊生命保險契約について保險事故が發生した場合において、金融機關經理應急措置法第二十四條第一項の規定により拂ひ込むことを要しなかつた保險料で拂ひ込まれなかつたものがあるときは、生命保險會社等は、命令の定めるところにより、その支拂ふべき生命保險金の額からその保險料に相當する金額を控除した殘額を、保險金受取人に交付する。
第五十七條 地方農業會、市街地信用組合その他命令で定める金融機關の會員(組合員その他これに準ずるものを含む。以下本條中同じ。)で出資の義務を有するもののうち、指定時にまでに出資をしてゐないもの及び指定時後出資の義務を有する會員となるものは、當該金融機關に新勘定及び舊勘定の區分が存する間に限り、命令で定めるところにより、出資の拂込に代へ、これに相當する金額の保證金を拂ひ込まなければならない。
前項の保證金の拂込をなした者は、資金の貸付、施設の利用その他當該金融機關の會員の受ける利益に關する他の法令の規定の適用については、出資をなしたものとみなす。
前項に定めるものを除く外、第一項の規定による保證金の拂込をなした者に關し、必要な事項は、命令でこれを定める。
第五十八條 金融機關で昭和二十年大藏 外務 内務 司法省令第一號別表に掲げるものの舊勘定の整理及びその者の債權又は債務の處理については、勅令で特別の定をなすことができる。
第五十九條 第二十五條第三項若しくは第四項又は第三十六條第二項若しくは第三項の規定により、金融機關の整理債務又は指定債務の債權の全部又は一部が消滅した場合において、當該金融機關の發行に係る債券その他命令で定める證券の引換その他に關し必要な事項は、命令でこれを定める。金融機關經理應急措置法第二十條の金融債券の引換その他當該債券に關し必要な事項についてもまた同じ。
第六十條 舊金融機關が、この法律の定めるところにより、新金融機關に對し、不動産、有價證券その他の資産を讓渡する場合においては、その讓渡に關する證書及び帳簿に關しては、印紙税は、これを課さない。
第六十一條 この法律に規定する主務大臣の職權の一部は、命令の定めるところにより、これを地方官衙の長をして行はしめることができる。
第六十二條 金融機關經理應急措置法及びこの法律に規定するものの外、戰時補償の特別處理等に伴ひ金融機關に生ずべき損失の處理及び金融機關の再建整備に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十章 罰則
第六十三條 左の場合においては、その行爲をなした金融機關の代表者、代理人、使用人その他の從業者は、これを三年以下の懲役又は三萬圓以下の罰金に處する。
一 第十三條第一項又は第十五條第一項の規定による認可の申請書に虚僞の記載をなして提出したとき
二 第十四條第一項、第十九條、第二十條第三項又は第二十三條第一項の規定に違反して認可の申請を怠り、又はその認可の申請書に虚僞の記載をなして提出したとき
三 第二十六條第三項(同條第五項において準用する場合を含む。)の規定に基く命令に違反して同項に規定する對價の處分を怠り、又はその處分をなしたとき
四 第二十六條第六項の規定による命令に違反したとき
五 第二十七條第一項(第三十條第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して最終處理方法書の認可の申請を怠り、又は虚僞の記載をなした最終處理方法書を提出して認可の申請をなしたとき
六 第二十七條第二項(第三十條第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して監査委員の承認を受けることを怠り、又は虚僞の記載をなした最終處理方法書につき監査委員の承認を受けたとき
七 第二十九條(第三十條第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して最終處理方法書に定めるところによる舊勘定の最終處理を行はないとき
八 第三十七條第一項の規定による命令に違反して増價額又は處分益の額の處分を怠り、又はその處分をなしたとき
九 第三十七條第二項の規定による命令に違反して同項に規定する金額の處分を怠り、又はその處分をなしたとき
第六十四條 監査委員がその職務に關して、賄賂を收受し、要求し、又は約束したときは、これを三年以下の懲役又は三千圓以下の罰金に處する。
前項の賄賂を供與し、又はその申込若しくは約束をなした者もまた前項に同じ。
犯人又は情を知る第三者の收受した賄賂は、これを沒收する。その全部又は一部を沒收することができないときは、その價額を追徴する。
第六十五條 左の場合においては、その行爲をなした金融機關の代表者、代理人、使用人その他の從業者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
一 第六條の規定に違反して財産目録、貸借對照表若しくは資産及び負債の明細書の提出を怠り、又は虚僞の記載をなした財産目録、貸借對照表若しくは資産及び負債の明細書を提出したとき
二 第八條第二項又は第二十一條の規定に違反して財産目録、貸借對照表若しくは損益の計算書の提出を怠り、又は虚僞の記載をなした財産目録、貸借對照表若しくは損益の計算書を提出したとき
三 第三十九條第一項の規定に違反して整備計畫書の認可の申請を怠つたとき
四 第四十三條の規定による命令に違反したとき
五 第五十條第一項又は第三項の規定による命令に違反して役員の解任の手續をなさなかつたとき
六 第五十一條第二項の規定による報告を怠り、又は虚僞の報告をなしたとき
第六十六條 第五十條第二項の規定による命令に違反して職務の執行を停止しない者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
第六十七條 第五十一條第二項の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
第六十八條 第五十九條の規定による命令に違反した者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
第六十九條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に關し、第六十三條、第六十五條又は前條の違反行爲をなしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に對し、各本條の罰金刑を科する。
第七十條 左の場合においては、金融機關の理事機關は、これを五千圓以下の過料に處する。
一 第十三條第四項(第十四條第二項において準用する場合を含む。)又は第三十四條第一項に規定する公告を怠り、又は不正の公告をなしたとき
二 第十七條第一項若しくは第二項又は第二十六條第七項の規定に違反して舊勘定の資産を債務の辨濟に充てることを怠つたとき
三 第二十八條第一項の規定に違反して公告を怠り、書類を備へ置かず、若しくは虚僞の記載をなした書類を備へ置き、又は同條第二項の規定に違反して正當の事由なくして書類の閲覽を拒んだとき
四 第三十四條第三項に規定する登記を怠つたとき
五 第三十六條第一項の規定に違反して通知を怠り、又は虚僞の通知をなしたとき
六 第三十九條第二項の規定に違反して屆出を怠り、又は虚僞の屆出をなしたとき
七 第四十一條第一項の規定による命令に違反して事業の讓渡又は保險契約の移轉に必要な手續をなさなかつたとき
八 第四十一條第二項の規定による命令に違反して合併若しくは資本の増加、事業の讓渡又は保險契約の移轉に必要な手續をなさなかつたとき
九 第四十一條第三項の規定に違反して屆出を怠り、又は虚僞の屆出をなしたとき
十 第四十五條第一項の規定に違反して特別準備金を積み立てず、又は同條第二項の規定に違反して特別準備金を取り崩したとき
十一 第四十八條第二項の規定による報告を怠り、若しくは虚僞の報告をなし、又は同項に規定する調査を妨げたとき
十二 第五十一條第一項の規定による命令に違反したとき
附 則
この法律の施行の期日は、勅令でこれを定める。
戰時補償特別措置法第十五條第二項、第十九條第二項、第三十六條第二項又は第三十八條第二項の規定により金融機關が戰時補償特別税として徴收した金錢(證券を以て徴收した場合における證券を含む。)及びその徴收した戰時補償特別税を政府に納付すべき義務、同法第三十四條の規定により納税義務者に代位して戰時補償特別税を納付すべき義務竝びに同法第四十一條、第四十二條又は第五十三條の規定により求償をなす權利及び求償に應じて履行をなすべき債務その他命令で定める財産上の權利及び義務は、金融機關經理應急措置法第九條第二項の規定にかかはらず、當該金融機關の舊勘定に屬する。
金融機關經理應急措置法の一部を次のやうに改正する。
第二十五條第一項中「指定時においてその新勘定に屬する責任準備金に對應する保險金額と新契約の保險金額との合計額」を「新契約の保險金額」に改める。
第二十七條第一號中「及び市街地信用組合」を「、市街地信用組合及び産業組合(産業組合法第一條第一項第一號に掲げる事項のみを目的とするものに限る。)」に改める。
租税特別措置法の一部を次のやうに改正する。
第十八條第四號中「會社」を「法人」に、「資本増加」を「資本(出資又は基金を含む。)の増加」に、「株金」を「株金(出資金又は基金を含む。)」に改める。
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特別和議法案
特別和議法
第一條 この法律は、今囘の戰時補償に關する特別措置に關聯して經濟上多大の損失を受ける債務者のため、その損失を債權者及び債務者間に衡平に分擔させ、以て個人生活の安定又は健全な法人事業の維持を圖ることを目的とする。
第二條 前條に規定する債務者は、破産の原因たる事實のある場合、破産の原因たる事實のある疑のある場合又は破産の原因たる事實の生ずる虞のある場合には、特別和議開始の申立をすることができる。
第三條 特別和議開始の申立及び和議開始又は破産の申立があつたときは、和議手續又は破産手續は、これを中止する。
第四條 特別和議開始の申立があつたときは、特別和議債權につき、債務者の財産に對し、強制執行、假差押、假處分又は競賣法による競賣をなすことができず、又、既になされてゐる強制執行、假差押、假處分又は競賣法による競賣手續については、裁判所は申立により又は職權を以てその中止を命ずることができる。
特別和議開始前特別和議債權につき債務者の財産に對しなした競賣法による競賣手續については、和議法第四十條第二項の規定を準用する。
第五條 特別和議の條件が各特別和議債權者について平等でないときでも、裁判所は、債權の額、債權發生の時期、擔保權の有無、戰時補償特別措置法の施行に因つて生じた諸般の事情等を斟酌し、債權者間に差等があつても衡平を害しないものと認めるときは、特別和議開始の決定又は特別和議認可の決定をすることができる。
第六條 左の債權は、これを特別和議債權としない。
一 給料その他の定期的給與の債權(命令で定める限度を超える部分を除く。)
二 事務員、雇人等からの預り金その他これに準ずる債權(命令で定める限度を超える部分を除く。)
三 退職金その他の臨時的給與の債權(命令で定める限度を超える部分を除く。)
四 法令の規定に基いてなされる業務上の傷病又は死亡に因る扶助の債權(命令で定める限度を超える部分を除く。)
五 一口千圓未滿の債權
前項の債權は、第十四條において準用する和議法第五十六條の規定の適用については、これを一般の先取特權のある債權とみなす。
第七條 破産の場合において別除權を行ふことのできる權利を有する者の當該權利に係る債權は、その全額につき、これを特別和議債權とする。
第八條 裁判所は、事情により、自ら勸解をなし、又は適當と認める者に勸解をさせることができる。
前項の場合においては、裁判所は、必要と認めるときは、第十四條において準用する和議法第五十九條第二號の期間を伸長することができる。
第一項後段の規定により勸解をなした者には、勅令で定める額の旅費、日當及び止宿料を支給する。
第九條 債務者は、債權者集會において、特別和議債權につき意見を述べなければならない。裁判所は、債務者の述べた異議を債權表に記載しなければならない。
特別和議債權者は、特別和議認可の決定が確定した後、債務者が債權者集會において異議を述べなかつた債權につき、債務者の財産に對し債權表の記載に基いて強制執行をすることができる。この場合には、民事訴訟法第六編の規定を準用する。
第十條 裁判所は、必要があると認めるときは、債權者及び債務者の利益を著しく害せず、且つ特別和議の成立を容易ならしめるものと認める場合に限り、債權者集會において、管財人及び整理委員の意見を聽き、職權を以て特別和議の條件を變更することができる。
第十一條 債權者集會において特別和議を可決するには、議決權を行ふことのできる出席特別和議債權者の過半數でその債權額が屆出をした特別和議債權者の總債權の半額を超える者の同意があれば足りる。
債權者集會においては、特別和議債權者は、決議の目的たる特別和議の條件につき、書面を以て同意を表はすことができる。この場合においては、その債權者は、前項の規定の適用については、これを出席特別和議債權者とみなす。
第十二條 裁判所は、特別和議の條件が、衡平で、且つ特別和議債權者の一般の利益に合致するものと認めるときは、債權者集會において特別和議を否決したときでも、管財人及び整理委員の意見を聽き、特別和議認可の決定をすることができる。特別和議の手續又は決議が法律の規定に反し、且つその欠缺が追完することのできない場合、債權者集會が特別和議に關する決議をしなかつた場合及び債權者集會が成立しなかつた場合にも、また同樣である。
第十三條 特別和議認可の決定が確定したときは、第三條の規定により手續を中止した和議又は破産の申立及び第四條の規定により中止した強制執行、假差押、假處分又は競賣法による競賣手續は、その效力を失ふ。
第十四條 特別和議については、この法律に別段の定のない限り、和議法の規定を準用する。但し、同法第九條、第十六條及び第六十四條の規定、同法第五十七條の規定中破産法第三百四十二條の規定を準用する部分竝びに和議法第六十二條の規定中破産法第三百三十條の規定を準用する部分は、この限りではない。
第十五條 この法律は、金融機關經理應急措置法に規定する金融機關、會社經理應急措置法に規定する特別經理會社及び同法第三十九條第一項の特別經理會社以外のものにはこれを適用しない。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
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大藏省預金部等損失特別處理法案
大藏省預金部等損失特別處理法
第一條 政府は、命令の定めるところにより、金融機關經理應急措置法に定める指定時(以下指定時といふ。)における預金部資金に屬する運用資産を評價する。
第二條 前條の規定による評價により評價損を生じた場合において、評價益があるときは、政府は、先づ、その評價益を以て評價損を填補する。
第三條 前條によるもなほ評價損の殘額があるときは、その殘額に對し、政府は、大藏省預金部特別會計の積立金(同會計の昭和二十年度の決算上生ずべき剩餘を含む。以下同じ。)をその全額まで充當して評價損を填補する。
第四條 前條によるもなほ評價損の殘額があるときは、政府は、一般會計から大藏省預金部に、評價損の殘額に相當する金額の範圍内において勅令で定める金額の補償金を繰り入れる。
第五條 前條の規定による補償金の金額が、同條の評價損の殘額より少ないときは、指定時における郵便貯金のうち命令で定めるものの債權は、その差額に相當する金額の範圍内において、勅令の定めるところにより、消滅する。
第六條 前五條の規定は、指定時における簡易生命保險及郵便年金特別會計法による積立金の運用資産の評價及びその評價損の處理竝びに郵便年金の債權に關する措置について、これを準用する。この場合において第三條の規定により評價損の填補に充てるため使用さるべき積立金は、その總額から責任準備金及び支拂備金の額を控除した殘額に相當する金額の積立金に限る。
第七條 指定時において現に存する大藏省預金部特別會計の積立金は、大藏省預金部特別會計法第四條第二項の規定にかかはらず、これを以て同會計の決算上の不足を補足することができない。
指定時において現に存する簡易生命保險及郵便年金特別會計法による積立金のうち、責任準備金及び支拂備金の額を控除した殘額に相當する金額の積立金は、同法第七條第二項の規定にかかはらず、これを以て歳計の不足を補足することができない。
第八條 預金部預金の支拂のため必要があるときは、政府は、大藏省預金部特別會計の負擔において、借入金をなすことができる。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
大藏省預金部特別會計法の一部を次のやうに改正する。
第二條中「運用利殖金」の下に「、借入金」を、「營繕費」の下に、「、借入金償還金、借入金利子」を加へる。
第四條の二 本會計に屬する經費及減價償却金を支辨する爲不足あるときは本會計の負擔に於て借入金を爲すことを得
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厚生年金保險法及び船員保險法特例案
厚生年金保險法及び船員保險法特例
厚生年金保險法第四十八條第一項本文及び船員保險法第四十六條第一項本文の規定による脱退手當金は、當分の間、被保險者の資格を喪失した後一年を經過しない場合においても、これを支給する。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
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企業再建整備法案
企業再建整備法目次
第一章 總則
第二章 特別損失
第三章 整備計畫の立案
第四章 整備計畫の實行
第五章 舊勘定及び新勘定の併合
第六章 經濟再建整備委員會
第七章 雜則
第八章 罰則
企業再建整備法
第一章 總則
第一條 この法律は、會社經理應急措置法の適用を受けるものについて、戰時補償特別税を課せられること等に因り生じた損失を適正に處理し、その速かな再建整備を促進し、以て産業の健全な囘復及び振興を圖ることを目的とする。
第二條 この法律で、特別經理會社、指定時、在外資産、會社財産、舊勘定、新勘定又は特別管理人といふのは、會社經理應急措置法の特別經理會社、指定時、在外資産、會社財産、舊勘定、新勘定又は特別管理人をいふ。
第二章 特別損失
第三條 特別經理會社である株式會社(以下特別經理株式會社といふ。)は命令の定めるところにより、指定時現在で、左の計算をしなければならない。
一 左の各號に掲げる額(計算の際、額が確定してゐないものについては、その豫想額)の金額を合計する。
イ 戰時補償特別税を課せられることに因り生ずる損失額
ロ 在外資産についての損失額
ハ 會社經理應急措置法第五條の財産目録(以下財産目録といふ。)に記載した金融機關に對する預貯金等が金融緊急措置令施行規則第一條の三の規定により第二封鎖預金等となり、支拂を受けることが不能となることに因り生ずる損失額
ニ 前各號に掲げるものを除くの外、終戰又は戰時補償特別措置法の施行に伴ひ生ずる損失額
ホ 會社經理特別措置令第二條第三號、企業整備資金措置法施行令第六條第三號竝びに商法第二百八十六條、第二百八十七條及び第二百九十一條第三項の規定により、會社經理應急措置法法第五條の貸借對照表(本條中以下貸借對照表といふ。)の資産の部に計上した金額の合計額
ヘ 貸借對照表の資産の部に計上した指定時を以て終了する事業年度の缺損及び繰越缺損の額
ト 前各號に掲げるものを除くの外、指定時後舊勘定及び新勘定の併合(舊勘定のみを設ける特別經理株式會社については、舊勘定の廢止。以下同じ。)の時までに舊勘定に生ずる總損金の額
チ その他命令を以て定める額
二 左の各號に掲げる額(計算の際、額が確定してゐないものについては、その豫想額)の金額を合計する。
イ 貸借對照表の負債の部に計上した指定時を以て終了する事業年度の利益金及び繰越利益金の額
ロ 貸借對照表の負債の部に計上した積立金で、命令を以て定めるものの額
ハ 指定時後舊勘定及び新勘定の併合の時までに舊勘定に生ずる總益金の額
二 その他命令を以て定める額
第四條 前條第一號の規定による合計金額が同條第二號の規定による合計金額を超える場合における超過額は、これを特別損失の額といふ。
第三章 整備計畫の立案
第五條 資本金百萬圓以上の特別經理株式會社、昭和二十年勅令第六百五十七號第一條の二の規定による指定會社である特別經理株式會社及び第七條第二號の規定により舊債權の負擔額の計算をなし、第八條の規定により會社財産につき評價換をなし又は第三十四條第一項の規定による處理をなす特別經理株式會社の特別管理人は、命令の定めるところにより、整備計畫を立案し、命令の定める期間内に、主務大臣の認可を申請しなければならない。
昭和二十年勅令第六百五十七號第一條の二の規定による指定會社である特別經理株式會社及び昭和二十一年商工文部省令第一號第一條第一項の規定による經營者又は昭和二十一年運輸省令第三十二號第一條第一項の規定による經營者等である特別經理株式會社が、その整備計畫に、これらの法令に基いて認可を受けなければならない事項について定をなす場合の前項の規定による認可の申請は、これらの法令の適用については、これを、これらの法令に基く認可の申請とする。
第六條 整備計畫には、命令の定めるところにより、左に掲げる事項に關して定をなさなければならない。
一 會社の存續又は解散の別
二 存續する場合には、整備計畫を行ふに當つて、商法の會社の整理によるか、否かの別
三 存續する場合には、今後の會社の事業計畫及び資金計畫竝びに役員の氏名
四 解散する場合には、解散の時期及び清算又は特別清算の何れの手續によるかの別
五 合併する場合には、合併の相手方、方法及び期限
六 合併に因り會社を設立する場合には、その會社の事業計畫及び資金計畫竝びに株主、役員及び債權者の氏名又は、名稱
七 その營業の經營の全部若しくは一部を委任し、又はその資産の全部若しくは一部を賃貸し、出資し、若しくは讓渡すべき會社を新たに設立する場合には、その計畫の大要、株主及び役員の氏名又は名稱、第十條の規定による債務の承繼に關する事項竝びに株式の賣出その他處分に關する事項
八 舊勘定に所屬する資産の處分の方法に關する事項
九 前二號に係るものの外、資産の處分の方法に關する事項
十 特別損失の額、特別損失を負擔する知れたる債權の總額及び特別損失を負擔する知れたる債權の總額と第七條の規定により舊債權の負擔額として計算する額との割合竝びに第八條の規定による評價換に關する事項
十一 會社經理應急措置法第十四條第一項の舊債權(同項但書の債權を除く。以下同じ。)についての條件の變更に關する事項
十二 未拂込株金の拂込に關する事項
十三 第十一條の規定による株式の發行に關する事項
十四 第十三條の規定による議決權の制限に關する事項
十五 第二十四條乃至第二十六條の規定による利益の歸屬に關する事項
十六 第三十四條第一項の規定による繰越缺損としての處理に關する事項
十七 第三十四條第二項の規定による資本の減少に關する事項
十八 整備計畫を行ふについての計畫に關する事項
十九 その他命令の定める事項
第七條 特別經理株式會社は、特別損失の額について、左の順序により、その負擔額を計算しなければならない。
一 特別損失の額について、資本金の額の十分の九に相當する額(資本金が十萬圓を超え五十萬圓未滿の特別經理株式會社については資本金の額から五萬圓を控除した額、資本金が十萬圓以下の特別經理株式會社については資本金の額の二分の一)まで、株主の負擔額として、これを計算する。
二 前號によるもなほ特別損失の額が殘るときには、その殘額は、會社經理應急措置法第十四條第一項の舊債權のうち知れたる債權(以下知れたる特別損失負擔債權といふ。)の額の十分の七に達するまで、知れたる特別損失負擔債權の債權者の負擔額として、これを計算する。
三 前號によるもなほ特別損失の額が殘るときには、その殘額は、資本金の額の十分の一に相當する額(資本金が十萬圓を超え五十萬圓未滿の特別經理株式會社については五萬圓、資本金が十萬圓以下の特別經理株式會社については資本金の額の二分の一)まで、株主の負擔額として、これを計算する。
四 前號によるもなほ特別損失の額が殘るときには、その殘額は、知れたる特別損失負擔債權の額の十分の三に達するまで、知れたる特別損失負擔債權の債權者の負擔額として、これを計算する。
第八條 特別經理株式會社の特別管理人は、會社財産についての命令を以て定める評價換を行はうとするときには、これを整備計畫に定めなければならない。
前項の規定による命令を以て定める評價換に關しては、他の法令の規定又は定款の定は、これを適用しない。
第一項の規定により評價換を行ふ場合には、その評價換によつて生じた益金は、特別損失の計算については、これを第三條第二號の合計金額に加算しなければならない。
第九條 特別經理株式會社は、命令の定めるところにより、第三條及び第七條の規定による計算を明かならしめる書類を作成し、特別管理人の承認を受けなければならない。
前項の會社は、命令の定めるところにより、遲滯なく、同項の承認を受けた書類を當該會社の知れたる債權者に提出すると共に、公告をなし、且つその書類を本店及び支店に備へ置き、利害關係人の閲覽に供しなければならない。
第一項の會社は、前項の規定により知れたる債權者に提出する書類には、第一項の承認を受けたことを證明する書類竝びに前條の規定による評價換を行ふ場合にはその評價換を行はずしてなした第三條及び第七條の規定による計算を明かならしめる書類を添附しなければならない。
第十條 特別經理株式會社が、新勘定に所屬する資産の全部又は一部を出資する場合においては、その出資を受ける者は、命令の定めるところにより、指定時後特別經理株式會社の新勘定の負擔となつた債務を承繼する。
前項の債務の承繼については整備計畫において、これを定めなければならない。
第十一條 整備計畫に議決權のない株式であつて議決權のある株式に轉換することを請求することができるものを發行することを定めた場合には、當該會社については、商法第二百四十二條第二項の規定は、これを適用しない。
前項の場合における轉換の請求の期間については、命令を以てこれを定める。
第十二條 整備計畫の定めるところによつてなす未拂込株金の拂込の場合に關しては、他の法令又は定款にかかはらず、命令を以て別段の定をなすことができる。
第十三條 特別經理株式會社が、第六條第七號の規定による會社(以下第二會社といふ。)の株式の相當多數を當該會社その他の者が所有する場合に、その議決權を受託機關を設けてこれに行使せしめ、その他議決權の行使の制限をしようとするときには、整備計畫にその旨を定めなければならない。
第十四條 特別經理株式會社の特別管理人は、第五條第一項の規定による認可を申請したときには、遲滯なく第六條第十號に掲げる事項を公告し、且つ當該整備計畫を記載した書類を當該會社の本店及び支店に備へ置き、利害關係人の閲覽に供しなければならない。
株主及び債權者は、當該整備計畫に定める事項に意義があれば、前項の規定による公告の日から一箇月以内に、事由を具して主務大臣にその旨を申し出ることができる。
第十五條 主務大臣は、第五條第一項の規定による申請があつた場合には、當該整備計畫が適正でその實行に支障がなく、且つ公益に反しないか否かを審査し、前條第二項の期間經過後文書によつて認可又は不認可の處分をなす。
主務大臣は、前條第二項の規定による申出のあつた場合において必要があると認めるときには、整備計畫に定める事項を變更して認可することができる。
主務大臣は、前項の規定により整備計畫に定める事項を變更して認可したとき、前條第二項の規定による異義を採用しなかつたとき、又は不認可の處分をなしたときには、第一項の規定による認可又は不認可の文書に、その理由を附記することを要する。
第十六條 第五條第一項の規定により認可を申請した特別經理株式會社の特別管理人は、前條第一項の規定により不認可の處分を受けた場合には、同條第三項の規定により不認可の文書に附記された理由に基き、當該整備計畫に所要の修正を加へ、不認可の處分の日から一箇月以内にあらためて第五條第一項の規定による認可を申請しなければならない。
第十七條 主務大臣は、第五條第一項の規定の適用を受ける特別經理株式會社の特別管理人が同項の命令の定める期間内又は前條の期間内に整備計畫の認可を申請しない場合及びふたたび整備計畫の不認可の處分を受けた場合には、當該會社に對しその解散を命ずることができる。
前項の規定による命令を受けた特別經理株式會社は、同項の規定による命令に因り解散する。
第十八條 特別經理株式會社の特別管理人は第十五條第一項又は第二項の規定による認可があつた場合には、命令の定めるところにより、遲滯なく第六條第十號に掲げる事項を公告し、且つ認可を受けた整備計畫(以下決定整備計畫といふ。)を記載した書類を當該會社の本店及び支店に備へ置き、利害關係人の閲覽に供しなければならない。
第十九條 會社經理應急措置法第十四條第一項の舊債權は、決定整備計畫に定める第六條第十號の割合を乘じた額に相當する額だけ、第十五條第一項又は第二項の規定による認可を受けた日に消滅し、その債權の額は、その認可に因り確定する。
前項の場合においては、社債の種類竝びに留置權、先取特權、質權及び抵當權の有無にかかはらず、すべての債權者の負擔の比率は、平等とする。
第二十條 已むを得ない事由により、決定整備計畫に定める事項(前條の規定による債權の消滅及び確定に關する事項を除く。)を變更する必要を生じたときには、特別管理人は、命令の定めるところにより、命令の定める期間内に、決定整備計畫を變更し、主務大臣の認可を申請しなければならない。但し、命令の定める場合はこの限りではない。
第十四條乃至第十八條の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第二十一條 第五條第一項の規定の適用を受ける特別經理株式會社以外の特別經理株式會社の特別管理人は、必要があると認めるときには整備計畫を立案し、命令の定めるところにより、主務大臣の認可を申請することができる。
第五條第二項、第十四條、第十五條、第十八條及び前條の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第一項の規定により認可の申請をなした特別經理株式會社の特別管理人は、前項において準用する第十五條第一項の規定により不認可の處分を受けた場合においては、前項において準用する第十五條第三項の規定により不認可の文書に附記された理由に基いて、當該整備計畫に所要の修正を加へ、不認可の處分の日から一箇月以内に、あらためて第一項の規定による認可を申請することができる。
第四章 整備計畫の實行
第二十二條 特別經理株式會社の特別管理人が、第十五條第一項又は第二項の規定(第二十條第二項及び前條第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)による認可を受けたときには、當該會社は、決定整備計畫に從ひ遲滯なく整備を行はなければならない。
第二十三條 主務大臣は、商法の會社の整理又は特別清算の手續による旨の定のある整備計畫を認可したときには、その旨を裁判所に通告することを要する。
前項の規定による通告は、決定整備計畫の定めるところに從ひ、會社の整理又は特別清算の開始の通告とみなす。
第二十四條 特別經理株式會社は、決定整備計畫の定めるところに從ひ、第六條第七號乃至第九號に定める會社の資産を處分する場合において處分益又は處分損を生じたときは、命令の定めるところにより、その處分益又は處分損を夫々假勘定として貸借對照表の負債の部又は資産の部に計上しなければならない。
第二十五條 特別經理株式會社は、決定整備計畫に定めた特別損失の額が増減した場合においては、命令の定めるところにより、その増加額又は減少額を夫々假勘定として貸借對照表の負債の部又は資産の部に計上しなければならない。
第二十六條 特別經理株式會社は、前二條の規定により、假勘定として經理すべき額が確定した時において、當該假勘定として負債の部又は資産の部に計上した額の合計差引計算をなし、負債の部に計上した額の合計金額が資産の部に計上した額の合計金額を超える場合においては、その超過額に相當する金額を決定整備計畫に定める方法により、第十九條の規定により消滅した債權の額の限度において、會社經理應急措置法第十四條第一項の舊債權に歸屬せしめなければならない。
特別經理株式會社は、前項の規定による假勘定の合計差引計算の結果、負債の部に計上した額の合計金額が資産の部に計上した額の合計金額を超える場合において、その超過額から同項の規定により債權者に歸屬せしめる額を控除してなほ殘額があるときは、その殘額を假勘定の額の確定した日の屬する事業年度の益金として經理し、、負債の部に計上した額の合計金額が資産の部に計上した額の合計金額に滿たない場合においては、その不足額を假勘定の額の確定した日の屬する事業年度の損金として經理しなければならない。
第二十七條 決定整備計畫に定める事項については、行政官廳の認可、許可、免許その他の處分を要する旨を規定する他の法令(昭和二十年勅令第六百五十七號、昭和二十一年商工文部省令第一號及び昭和二十一年運輸省令第三十二號を除く。)の規定はこれを適用しない。
第二十八條 特別經理株式會社は、決定整備計畫に定める資産の處分を行ふについては、工場抵當法第十三條第二項若しくは第十四條第二項の規定(鑛業抵當法第三條及び漁業財團抵當法第六條において準用する場合を含む。)鐵道抵當法第四條若しくは第二十條の規定(明治四十二年法律第二十八號第一條及び運河法第十三條において準用する明治四十二年法律第二十八號第一條において準用する場合を含む。)及び自動車交通事業法第四十四條の規定にかかはらず、これを行ふことができる。
前項の規定は、新勘定に屬する會社の資産については、これを適用しない。
特別經理株式會社は、決定整備計畫に定める資産の處分を行ふについては、會社經理應急措置法第二十二條の規定、物資の配給の統制に關する法令の規定、定款の定又は既存の契約の條項にかかはらず、これを行ふことができる。
前項の場合においては、資産の處分の相手方の行爲についても、決定整備計畫に定める事項については、物資の配給の統制に關する法令の規定は、これを適用しない。
第二十九條 特別經理株式會社は、決定整備計畫に定める事項については、法令の規定又は定款の定にかかはらず、株主總會又は社債權者集會の決議を經ることを要しない。
第十三條の規定による決定整備計畫の定は、第二會社の株主である特別經理株式會社以外の者をも拘束する。
第三十條 整備計畫の認可があつたときには、會社經理應急措置法第十五條第三項の規定によつて中止した強制執行、假差押若しくは假處分又は競賣法による競賣手續は、決定整備計畫の實行に牴觸しないものはこれを續行し、牴觸するものは決定整備計畫の認可の時からその效力を失ふ。
前項の規定より效力を失つた強制執行、假差押若しくは假處分又は競賣法による競賣手續の費用の負擔については、命令を以て、これを定める。
第三十一條 特別經理株式會社が、決定整備計畫に定めるところにより、第二會社を設立する場合においては、商法第百六十五條、第百七十三條、第百八十一條、第百八十四條第二項及び第百八十五條乃至第百八十七條の規定は、これを適用しない。但し、決定整備計畫に定めた方針を變更しない範圍の定款の變更については、この限りでない。
第三十二條 特別經理株式會社は、命令の定めるところにより決定整備計畫に定める解散の事由に因り解散する。
第三十三條 決定整備計畫に從つてなす特別經理株式會社の行爲については、民法第四百二十四條の規定は、これを適用しない。
第三十四條 特別經理株式會社は、命令を以て定める場合には、整備計畫の定めるところに從ひ、特別損失の全部又は一部を繰越缺損として處理することができる。
第五條第一項の規定による認可を申請し特別損失の額の全部を繰越缺損として處理する旨を定めた整備計畫の認可のあつた場合を除くの外、特別經理株式會社は、決定整備計畫に定める特別損失の額から會社經理應急措置法第十四條第一項の舊債權の負擔額として計算した額と前項の規定により繰越缺損として處理する額との合計額を控除した額を下らない額の資本を、減少しなければならない。
前項の場合においては、商法第二百二條第二項の規定は、これを適用しない。
第二項の規定による資本の減少により、株式の金額が商法第二百二條第二項に規定する金額を下る場合においては、特別經理株式會社は資本減少の登記の日から一年以内に、同法第三百七十七條乃至第三百七十九條の規定に準じ、株式の併合をなし、株式の金額を同法第二百二條第二項に規定する金額以上に上せなければならない。
特別經理株式會社は、その株式の金額を商法第二百二條第二項に規定する金額以上に上せなければ、その資本を増加することができない。
特別經理株式會社が第二項の規定により、資本を減少する場合においては、その登記の日から一年を限り資本金額の制限に關する他の法令の規定は、これを適用しない。
第二項の規定により株式の金額が商法第二百二條第二項に規定する金額を下る場合においては、第三項の規定により同法第二百二條第二項に規定する金額以上に上せられない間において行はれた當該株式の讓渡は、命令の定める場合を除くの外、その效力を生じない。
第二項の規定による資本の減少に關し必要な事項は、命令を以て、これを定める。
第五章 舊勘定及び新勘定の併合
第三十五條 第二十一條第一項に掲げる特別經理株式會社でその特別管理人が整備計畫を提出しないものは、命令の定めるところにより、命令の定める期間内に、舊勘定及び新勘定の併合について、主務大臣の認可を申請しなければならない。
前項の規定により認可を申請する場合には、特別經理株式會社は、命令の定めるところにより、第三條及び第七條第一號の規定による計算を明かならしめる書類を作成し、特別管理人の承認を受けなければならない。
第九條第二項、第十四條第二項及び第十五條第二項の規定は、前二項の場合に、これを準用する。
第一項の規定の適用を受ける特別經理株式會社が同項の命令の定める期間内に同項の認可を申請しない場合には、主務大臣は、當該會社に對し、期限を定めて第一項の規定による認可の申請をなすべきことを命ずることができる。
前項の規定による命令を受けた特別經理株式會社が同項の期限までに第一項の規定による認可の申請をしなかつた場合には、當該會社は、その期限到來の日に解散するものとする。
第三十六條 特別經理株式會社の舊勘定及び新勘定は、左に掲げる日に併合するものとする。
一 特別管理人が第十五條第一項又は第二項の規定による認可を受けた特別經理株式會社においては、その認可を受けた日、但し、決定整備計畫において、第二會社を設立し、又は新勘定に所屬する會社財産で決定整備計畫に定める相當部分を出資し、讓渡し、賃貸し、若しくはその營業で決定整備計畫に定める相當部分の經營を委任する旨を定める場合においては、第二會社の設立の登記をした日又は決定整備計畫に從ひ出資、讓渡、賃貸若しくは營業の經營の委任をした日(これらの日が二以上あるときはその最も遲き日)
二 第五條第一項の規定により整備計畫の認可を申請しなければならない特別經理株式會社の特別管理人が、同項の規定により命令の定める期間内に認可を申請しなかつた場合においては、その期間滿了の日
三 第十六條の規定によりあらためて整備計畫の認可を申請しなければならない特別經理株式會社の特別管理人が同條の規定により、命令の定める期間内に認可を申請しなかつた場合においては、その期間滿了の日
四 第二十一條第三項の規定によりあらためて整備計畫の認可を申請することができる特別經理株式會社の特別管理人が、同項に定める期間内に認可を申請しなかつた場合においては、その期間滿了の日
五 第十六條又は第二十一條第三項の規定によりあらためて整備計畫の認可を申請した特別經理株式會社の特別管理人が、不認可の處分を受けた場合においては、その不認可の處分を受けた日
六 前條第一項の規定による認可を受けた特別經理株式會社においては、その認可を受けた日
七 前條第六項の規定の適用を受ける特別經理株式會社においては、その解散の日
特別經理株式會社は、前項の規定により舊勘定及び新勘定の併合があつた後においても、第二十四條乃至第二十六條の規定による經理に係る資産については、特別の帳簿を作成し、その他の資産との區別を明確にしておかなければならない。
第三十七條 特別經理株式會社は、舊勘定及び新勘定の併合があつたときには、遲滯なくその旨を公告し、本店の所在地においては二週間以内に、支店の所在地においては三週間以内に、舊勘定及び新勘定の併合の登記をなし、且つ會社經理應急措置法第八條第六項の規定による登記又は登録を抹消しなければならない。
前項の規定によつて登記しなければならない事項は、登記の後でなければ第三者に對抗できない。
第三十八條 會社經理應急措置法第七條乃至第十一條、第十三條乃至第十五條、第十六條第一項乃至第三項及び第五項、第十九條竝びに第二十一條乃至第二十三條の規定は、第三十六條第一項第一號の特別經理株式會社について、舊勘定及び新勘定の併合の日から、これを適用しない。
第三十九條 第八條の規定による命令を以て定める評價により附せられた價額は、當該財産については、これを商法第二百八十五條に定める取得價額若しくは製作價額又は平均價額とみなす。
第八條の規定による評價換に係る營業用の固定財産の償却、その他に關し必要な事項は、命令を以てこれを定める。
第八條の規定による評價換に伴ふ利益は、命令の定めるところにより、法人税法による所得、營業税法による純益の計算上これを益金に算入しない。
第四十條 特別經理株式會社が第十五條の規定による認可を受けたときには、財産目録に記載した價額は、會社經理應急措置法第九條及び第十條第一項の規定の適用については、當該會社財産を新勘定に所屬せしめた日において第八條の規定による評價換の額にあらためられたものとする。
第四十一條 特別經理株式會社(決定整備計畫の實行により特別經理株式會社が消滅する場合においては、命令の定める者)は、命令の定めるところにより、決定整備計畫の全部の實行を終つたときには、遲滯なく主務大臣にその旨を報告し、命令の定めるところにより、公告しなければならない。
主務大臣は、前項の規定による整備計畫の全部の實行を終つた旨の報告を受ける以前において、整備計畫の迅速且つ公正な實行を確保するため、必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、特別經理株式會社が、決定整備計畫に違反した行爲をしたときには、これを取消すことができる。
特別經理株式會社の利害關係人は、特別經理株式會社に對して、整備計畫の迅速且つ公正な實行を確保するため、必要な措置を要求し、又は主務大臣に對して、前二項の規定による主務大臣の命令を申請することができる。
第四十二條 會社經理應急措置法は、第三十六條第一項第一號の特別經理株式會社については、前條第一項の規定による實行を終つた日から、其の他の特別經理株式會社については舊勘定及び新勘定の併合の日からこれを適用しない。但し、その日までになした行爲に對する罰則については、この限りでない。
特別經理株式會社は、前項に規定する日から、本店の所在地においては二週間以内に、支店の所在地においては三週間以内に、會社經理應急措置法第十七條第三項の登記を抹消し、資本金が二十萬圓未滿の特別經理株式會社は、同法第三條第一項の登記を抹消しなければならない。
第四十三條 主務大臣は、特別經理株式會社、その債權者その他の者が特別經理株式會社又は第二會社の株式を取得して、當該會社の經營を支配する虞がある場合において、必要があると認めるときには、當該株式の所有者に對し、必要な事項を指示して株式の讓渡を命じ、又は當該株式の議決權の行使を命令の定める者に委任すべきことを命ずることができる。
第六章 經濟再建整備委員會
第四十四條 この法律の圓滑な運營を圖るため、經濟再建整備委員會を置く。
第四十五條 主務大臣は、この法律の運營に關し、重要な事項の決定をなす場合、第十五條第一項又は第二項の規定による認可、第十七條第一項又は第四十三條の規定による命令及び第四十七條の規定による裁定をなす場合には、經濟再建整備委員會に諮問することを要する。
第四十六條 この法律に定めるものの外、經濟再建整備委員會に關し必要な事項は、勅令でこれを定める。
第七章 雜則
第四十七條 特別管理人が此の法律による職權を行ふについては、その過半數を以てこれを決する。但し、可否の意見が同數の場合には、特別管理人の申請により、主務大臣がこれを裁定する。
第四十八條 主務大臣は、特別經理株式會社がこの法律施行の日(この法律施行後會社經理應急措置法第一條第一項第二號の指定を受けた特別經理株式會社については、その指定の日とする。以下同じ。)前四箇月以内に公正なる再建整備を妨げることを知つてなした行爲があるときには、この法律施行の日から一年を限り、これを取消すことができる。
第四十九條 主務大臣は、必要があると認めるときには、特別經理株式會社に對して、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、この法律の施行に關し必要があると認めるときには、關係者から報告をとり、又は當該官吏に、必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類をその他必要な物件を檢査させることができる。
前項の規定により、當該官吏に臨檢檢査させる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す證票を携帶させなければならない。
第五十條 主務大臣は、この法律に規定する職權の一部を地方官衙の長をして行はせることができる。
第五十一條 主務大臣は、命令の定めるところにより、この法律の施行に關する事務の一部を、日本銀行をして取り扱はせることができる。
第五十二條 この法律の中必要な規定は、命令の定めるところにより、左に掲げるものに、これを準用する。
一 株式會社以外の特別經理會社
二 特別經理會社以外のもので會社經理應急措置法の準用を受けるもの
前項の規定によりこの法律の規定を準用するにつき必要な事項に關しては、命令で特別の定をすることができる。
第五十三條 特別經理株式會社が、第三條、第七條若しくは第二十四條乃至第二十六條の規定に違反し、又は不正の評價をなし、債權者又は株主に損害を及ぼしたときには、當該會社の業務を執行する役員、清算人、商法第三百九十八條の管理人若しくは破産管財人又は特別管理人は、當該會社と連帶してその損害を賠償しなければならない。但し、業務を執行する役員等で、第三條、第七條若しくは第二十四條乃至第二十六條の計算又は第八條の評價換に關し過失がなかつた者については、この限りではない。
前項の損害賠償の請求權は、第十五條第一項又は第二項の規定による認可の日から五年を經過した時、時效によつて消滅する。
第五十四條 破産手續中の特別經理株式會社については、この法律の適用に關し、命令を以て特別の定をなすことができる。
第五十五條 この法律に定めるものの外、登記その他企業の再建整備に關し必要な事項は、命令の定めるところによる。
第八章 罰則
第五十六條 左の各號の一に該當する者は、これを三年以下の懲役又は三萬圓以下の罰金に處する。
一 第三條及び第七條の規定による計算を明かならしめる書類に虚僞の記載をした者
二 第六條第十號に掲げる事項を定める整備計畫の書類に虚僞の記載をした者
三 決定整備計畫に違反して整備を實行した者
四 第四十三條の規定による命令に違反した者
第五十七條 左の各號の一に該當する者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
一 第四十一條第二項の規定による命令に違反した者
二 第四十九條第二項の規定による報告を怠り、又は虚僞の報告をした者
三 正當な事由がなく第四十九條第二項の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第五十八條 特別管理人が第五條第一項、第十六條又は第二十條第一項の規定に違反して、認可の申請を怠つたときには、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
第五十九條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務又は財産に關して第五十六條又は第五十七條第一號若しくは第二號の違反行爲をしたときには、行爲者を罰する外、その法人又は人に對しても、各本條の罰金刑を科する。
第六十條 左の場合においては、その行爲をなした特別經理株式會社の取締役その他これに準ずる者又は特別管理人は、これを五千圓以下の過料に處する。
一 第九條第二項、第十四條第一項若しくは第十八條(第二十條第二項及び第二十一條第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)第三十七條第一項又は第四十一條第一項の規定による公告をせず、又は虚僞の公告をしたとき
二 第九條第二項、第十四條第一項又は第十八條の規定に違反して書類を備へ置かず、又は正當の事由なくして書類の閲覽を拒んだとき
三 第九條第一項又は第三十五條第二項の規定に違反して特別管理人の承認を受けなかつたとき
四 この法律又はこの法律に基いて發する命令に違反して登記又は登録を怠つたとき
五 第三十四條第四項又は第五項の規定に違反して株式の併合をなさず、又は資本の増加をしたとき
六 第三十九條第二項の規定に基いて發する命令又は第四十九條第一項の規定による命令に違反したとき
七 第四十一條第一項の規定による報告を怠つたとき
第六十一條 第五十六條乃至前條の規定は、第五十二條の場合に、これを適用する。但し第六十條中特別經理株式會社とあるのは、第五十四條の規定による特別經理株式會社以外のものとする。
附 則
この法律の施行の期日は、勅令でこれを定める
會社經理應急措置法の一部を左のやうに改正する。
第一條第一項第一號中「財産目録に記載した動産、不動産、債權その他の財産の指定時における價額(株式會社、株式合資會社又は有限會社の營業用の固定財産及び取引所の相場のある有價證券については、商法第二百八十五條又は同法第四百五十八條第二項若しくは有限會社法第四十六條第一項において準用する商法第二百八十五條に定める價額を超えることができない。)が當該財産目録に記載した價額を超える場合におけるその超過額」を「貸借對照表に記載した指定時を以て終了する事業年度の利益金額」に改める。
第四條第一項中「第一條第一項第二號」を「第一條第一項第一號本文の會社又は同項第二號」に、「同號」を「この法律施行の日前まで又は同項第二號」に改め、同條第三項中「指定時から」の下に「この法律施行の日前まで又は」を加へる。
第八條の二 特別經理會社が新勘定に所屬せしめた會社財産のうちで舊勘定に所屬せしめることを必要とするものを生じたときには、特別管理人の決定に基き主務大臣の認可を受け、これを舊勘定に振り替へることができる。この場合においては、當該會社財産は、舊勘定に振り替へられた日において、舊勘定に所屬せしめられたものとし、第十四條第五項の規定を準用する。
第八條第一項乃至第四項及び第六項の規定は、新勘定から舊勘定に振り替へた會社財産についてこれを準用する。
第三十八條 削除
第三十九條第二項中「前項において」を「前二項において」に、「前項の特別經理會社以外のもの」を「第一項の特別經理會社以外のもの又は前項の會社その他のもの」に、「前項の規定」を「前二項の規定」に改め、同條第一項の次に左の一項を加へる。
この法律のうち必要な規定は、命令の定めるところによつて、命令の定める日以後命令の定める損失に因り債務超過又は支拂不能に陷る虞のある會社その他のものに對し、これを準用することができる。
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〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=40
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041・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 只今議題となりました戰時補償特別措置法案等一聯の法律案に付て、其の提案の理由を説明致します
終戰後の我が國經濟の再建の途上に於て、所謂戰時補償を如何に處理するかが最も重要なる問題であります、戰時中國民に公約した補償、契約した代金支拂等を打切ることは、洵に忍びない所でありますが、數百億圓に及ぶ戰時補償を、此の際全額を支拂ふことは、戰後の經濟財政の到底許す所ではないのであります、竝に於きまして政府は現に直面して居る内外各般の事情を考慮致し、愼重なる檢討を加へました結果、課税の方法に依り之を打切ることが、我が國經濟再建の爲にも、又國民生活安定の爲にも最も適切であり、且つ永遠の福利を齎す所以と考へまして、戰時補償の打切り竝に之に續く經濟界再建整備に關し、此の度一聯の法律案を提出致しました次第であります、今囘の措置は、謂はば重大なる病根に對して思切つた切開手術を行ひ、依つて以て我が國經濟の急速なる復興安定を圖らんとするものであります、健全なる生産活動は、此の措置を執ることに依つてのみ促進せらるるものと信ずるのであります、而して今囘の措置に當つては、各般の點に於て成べく無理を少くして目的を達することを期するのであります、併しながら直接間接其の國民經濟に及ぼす影響、特に各個人經濟に及ぼす影響は甚大深刻なるものがありますることは明瞭であります、是は洵に懸念に堪へない所であります、之を忍んで、我が國民經濟の將來の爲め此の際之を斷行するにあらずんば、國民經濟の建直しはそれだけ遲れ、平和日本の明るい將來はそれだけ遠くなるのであります、政府は竝に思ひを致しまして、今囘の措置を斷行することに決した次第であります、之を發足點と致し、引續いて經濟再建の施策を強力に實行して行く積りで居ります、尚ほ財産税法も以上の諸措置と關聯を致すものでありますが故に、引續き議會に提出する筈であります、而して此の財産税法の提案に依つて、再建に必要なる非常時的法案は總て出盡す次第であります、幸ひに國民諸君が、何故斯かる非常措置を今日我が國が必要とするかの理由を深く諒解せられ、其の理解協力の下に其の趣旨目的を徹底致したいものであると考へるのであります、是が完全に實行せらるる曉には、恰も颱風一過、我が國の經濟界は明朗化することが必然であると信ずるのであります、尚ほ世上我が國の財政經濟の前途に不安を抱き、巷間種々の流言風説をなし、或は、現金を預貯金することを躊躇する等の向きがあると聞きますが、斯かる懸念は全く理由のないことであります、發行せる通貨を再び封鎖し、或は金融機關の預貯金等に對し、更に新たなる措置を行ふが如きことは絶對にないのであります(拍手)
各法律案の内容等に付きましては主務大臣より説明致しますが、各位に於かれましても、以上の趣旨を御諒解下すつて十分御審議の上御協贊あらんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=41
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042・山崎猛
○議長(山崎猛君) 膳國務大臣
〔國務大臣膳桂之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=42
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043・膳桂之助
○國務大臣(膳桂之助君) 只今上程されました戰時補償特別措置法案、企業再建整備法案、金融機關再建整備法案、大藏省預金部等損失特別處理法案、特別和議法案竝に厚生年金保險法および船員保險法特例案等に付きましては、其の提案の理由は只今内閣總理大臣から説明せられました、私は聊か之に敷衍を致します
政府と致しましては、假令原因が戰爭に基くものであると致しましても、國民に對して約束致しました補償や、國民から提供を受けました物資施設等の代金の支拂を打切り、又場合に依りましては、既に支拂つたものの代金をも取戻しますと云ふやうなことは、愼重に考へなければならないものと思つて居るのであります、隨ひまして政府に於きましては、組閣以來直ちに此の補償打切りの問題の研究に著手致したのであります、十分なる檢討を加へて參つたのであります、此の處置の爲には、考へ方と致しましては、補償或は軍需品の代金等の支拂は先づ之を實行致しまして、其の代りに多くの財産税を増徴する案も考へられます、又補償や軍需品代金等の支拂は之を打切りまして、其の代りに財産税による徴收は普通の額に止めると云ふやうな案も考へられるのであります、前者は比較的負擔の公平を期し得るやうにも考へられますが、果して一千數百億圓にも上るやうな多額の財算税が、完全に徴し得るや否かに付きましては、聊か不安があります、後者の案は、動もすると負擔の公平を失ふと云ふ憂ひはございまするが、比較的確實性が多く、而も之に依つて措置の迅速處理をば期し得る有利の點もあるのであります、政府は此の二つの案に付きまして種々檢討を重ねました結果、此の際財政經濟の健全を圖ることを第一義と致しますると共に、尚ほ我が國が直面しまする内外の情景に鑑みまして、後者の案を斷行することに決意を致した次第なのであります
我が國産業經濟の現状を見まするに、戰爭により既に厖大なる資材と生産力とを消耗致しまして、其の上に敗戰に依り廣汎なる資源と市場とを失したにも拘らず、名目上の資産のみは、徒らに産業界、經濟界の中に膨脹した儘で殘存して居るのであります、斯かる状態を其の儘に放置致しますることは、企業の堅實化を圖ることの出來ないのみならず、惡性「インフレーション」の阻止をも困難とさせ、結局戰後經濟の速かなる再建を齎す所以でないと考へるのであります、仍て政府は是等の各般の事情を愼重に考慮致しました結果、戰後財政の確立、企業の再建の前提と致しまして、此の際幾多の困難を排除致しまして補償打切りを斷行し、今後の我が國經濟の健全なる發達の基礎を固めることを決意致した次第でございます、以上申述べました理由に依りまして戰時補償特別措置法案を提案し、且つ補償打切りに引續いて經濟界の再建整備を圖ると共に、打切りの影響を適切に處理致す爲に、企業再建整備法案、金融機關再建整備法案、特別和議法案其の他一聯の法案をば立案致しました次第であります、以下各法案に付て其の内容の概要を御説明申上げます
先づ戰時補償特別措置法案でございますが、今囘の補償打切り措置の根幹を成すものは、戰時補償請求權に對し之に課税致すことであります、終戰以來補償打切りの問題が喧しく朝野に論ぜられて參りましたが、其の内容は、大體に於きまして軍需會社に對しまする補償打切りと云ふものが多かつたと存じます、併しながら政府が今囘執らんとする措置は、單に是のみに止まりませぬ、要するに苟くも戰爭に起因して發生致しました請求權は、原則として總て之を打切ると云ふことであります、其の請求權には、政府に對しまするものは勿論でありまするが、地方公共團體に對するものもあり、又産業設備營團、國民更正金庫、損害保險中央會のやうな、國の施策に協力する特定機關に對するものも含んで居るのであります、而して戰時補償請求權の範圍は、戰爭に起因して發生した所の政府、地方公共團體、又は右に申しましたやうな特定機關に對する請求權でありまして、其の支拂期日が昭和二十年八月十五日以前に到來して居りますが、同日までに支拂の濟んで居なかつたもの、竝に請求權の發生した原因が、昭和二十年八月十五日以前に生じた損害や、引渡された物資や、施行された工事等に基くものでありまして、其の支拂期日が昭和二十年八月十六日以後に到來致しまするもの、是が總て含まれて居るのでございます、竝に支拂が濟んで居ると斯う申しますのは、現金に依る支拂が濟んで居ると云ふことの意味でありまして、特殊借入金や特殊預金等の形に於て支拂はれたものは、昭和二十年八月十五日以前に、解除等に依つて現金化されたもの、又は混同に依つて消滅しましたものでなければ、支拂濟とは認められないのであります
以上のやうに戰時補償請求權の範圍は非常に廣汎に亙るのでありまして、政府等の通常の業務に關して發生した請求權は、是は含まれては居りませぬ、又例外として、人道的の見地に基いて、戰爭死亡傷害保險に基く保險金や、軍事扶助の扶助料等は除かれて居りますけれども、其の他の請求權は全部打切りの對象に相成るものであります、隨て軍需會社等に對しても補償金を打切る外に、納入物資の代金等も打切られます、土木請負業者等の工事代金のやうなものも、課税に依つて取戻されます、又陸海軍に納入した物資の代金は打切られますが、其の中には、地方の農事實行組合のやうなものが納めたる馬糧用の雜穀や、薪炭や、松根油等の代金等も含まれるのであります、又沈沒した船舶に對する保險金の補償金も打切られますが、是は何千「トン」、何萬「トン」と申す大きな船舶もありまするけれども、二十「トン」、三十「トン」の漁船も含まれるのであります、其の他企業整備の補償金も打切られます、建物疎開の補償金も打切られます、戰爭保險金のやうなものも打切りの範圍に入るのであります
以上のやうな次第で、補償打切りの影響は國民各層に亙り其の範圍は相當廣汎に及ぶのでありまするが、政府は一般の個人や中小商工業者の受けます影響を出來得る限り緩和致したいと考へまして、控除の金額に付て特に考慮を拂ひました、即ち控除金額と致しましては、原則として、一請求權毎に一萬圓が課税の對象價格から控除せられるのでありますが、個人の戰爭保險金や、個人、法人の企業整備補償金に付きましては、各人毎に五萬圓が控除せられることに致しました、但し控除の總額は、全體を通じまして一個人又は一法人毎に十萬圓を超えることは出來ないやうになつて居るのであります、而して戰時補償請求權の中には、金錢の給付を其の目的とするものと、金錢以外の給付を其の目的とするものとの二種類ございますが、前者は課税の方法に依つて打切られ、後者は本法施行の日に之を消滅せしむることに致したのであります、尚又銀行等資金融通令に基く命令融資などに因ります損失の補償、竝に社債等の元利保證に付きましては、まだ請求權が具體的に發生して居りませぬから、課税の對象にはなりませぬが、本法に依つて將來之を打切ることに致したのであります、尚ほ戰時補償請求權の打切りをば課税の形に依りまして措置致すことに致しました理由は、此の方法に依ることが比較的正確を期することが出來るので、最も適當と考へたからであります、本税の税率は百分の百であります、要するに戰時補償請求權の金額から控除金額を差引いた殘額は、全部課税に依つて打切り或は取戻されることになるのであります
次に申告及び納付に付きましては、從來の賦課課税の方法に依らずに、新たに申告納税の方法に依ることと致した次第であります、尚ほ地方公共團體には、本税の課税を免除することになつて居りまする外、公益法人等に付きましては、一定の條件の下に税の輕減又は免除を圖ることになつて居ります
次に企業再建整備法案に付て聊か説明致します、政府は曩に御協贊を得て企業經理應急措置法を制定致しまして、本法施行までの準備を致して參つたのでありまするが、同法の適用を受ける特別經理會社の本格的な再建整備を行はんが爲に、茲に本法案を立案致しました次第であります、企業は補償打切りの措置の影響を最も直接に蒙むるものでありますが、本法は此の企業の損失を適正に處理致しますると共に、所謂擬制資本の切捨てを斷行し、現實に有效な資産内容と釣合の取れた資本の下に、健全な經營形態を有せしめ、先づ經理面からする産業再建への基礎を確立せんとするものであります、勿論現下の生産不振の原因は、或は食糧問題、或は勞働問題等に基因する所も少くはありませぬ、尚又賠償や將來の貿易の見透しが困難でありますから、我が國將來の産業の性格、規模、構造等も明瞭なる認識を得られませぬこと等、資金、資材面以外にも、根本的な諸種の問題を包藏致して居るのであります、而も是等の問題の中には、單に我が國の力ばかりでは解決し得ない性質のものもありまして、政府と致しましては、常に聯合國の好意ある理解を懇請して、是が解決に努力して居るものもありまするが、我が國自體で解決し得る問題の中では、先づ企業の經理面の問題を解決するのが本案の目的でありまして、隨て此の措置のみに依つて、企業の本格的再建が行はれ得る譯ではありませぬが、先づ是が其の前提ともなるべき不可缺の要件と信ずるものであります
本法案の内容の第一點は、補償打切り等に伴ひまして、企業に生ずる特別損失を如何やうに負擔するかと云ふ負擔方法であります、此の特別損失は、其の大部分が經營者の責任のみに歸すべからざる外部の原因に基くものでありますから、其の損失は單に企業者のみに負はせるべきものではありませぬ、隨て出資者も債權者も公平な割合に負擔をすべきものと考へます、是が爲に商法の原則には依りませぬで、次のやうな順序で特別損失をば鎖却せしむるやうに致しました、即ち先づ第一に、繰越益金及び積立金は全額まで其の鎖却に充てさせます、次に資産の再評價が許されまする場合には、其の評價益の全額まで、其の次には資本金の九割まで、其の次には外部債權の七割まで、次には殘りの資本金の全額まで、次には殘る外部債權の全額まで、斯樣な順序で損失の鎖却を致させるのでありまするが、資本金の小さい會社に付きましては、特例を設けまして、資本金の負擔すべき割合を五割の程度に止めることに致して居ります、又資産の再評價は、整備計畫に記載して、主務大臣の認可を受けて初めて之を行ふのであります、又繰越益金、積立金及び再評價益まで損失の鎖却に充てまして尚ほ鎖却し切れないで、資本金に負擔が及ぶ場合には、勿論未拂込金の徴收を致させるのであります
内容の第二の點は、整備計畫の立案及び認可に付てであります、企業の再建整備は、企業と債權者との緊密な協力と理解の下に於て初めて圓滿に行はれるのでありまして、企業と債權者との代表者から成る特別管理人をして整備計畫を立案せしめ、主務大臣の認可を受けしめることと致しました、整備計畫に記載すべき事項は、會社の存續するや否や、解散するや否や、合併、減資、第二會社の設立、特別損失の額及び其の負擔方法、命令で許された範圍の資産の再評價、未拂込株金の徴收に關する事項等を定めしめるものであります
本法案の内容の第三の點は、整備計畫の實行に付てであります、會社は整備計畫の認可を受けた時には、其の計畫に從つて遲滯なく整備を行ふことを要するのでありまして、之を圓滑に行はしめる爲に、商法、財團抵當法等の諸法令や、定款の規定や、既存の契約の如何に拘らず、會社は特定の認可されました事項を行ふことが出來ることと相成つて居るのであります
又本法案の内容の第四の點は、經濟再建整備委員會に關してであります、本法の圓滑なる運營を圖る爲め、各界から人物を選びまして、經濟再建整備委員會を設けまして、本法に依りまする重要な處分又は命令をなすに當りましては、此の委員會に諮問することと致し、又此の委員會からも重要問題に付ての建議をさせることと致して居るのであります
次に金融機關再建整備法案に付て説明致します、補償打切り等に依りまして企業の蒙りまする巨額の損失に對應致しまして、金融機關に於きましても少からざる損失を負擔することは避け難いのであります、此の金融機關の蒙るべき損失を其の儘放置致しますならば、信用機構を根柢から動搖せしめまして、國民生活の不安を増大し、産業復興を阻碍するに至る憂が多いのであります、曩に實施せられました金融機關經理應急措置法及び金融緊急措置の改正は、金融界の混亂を未然に防止する爲の應急の措置であつたのでありまして、此の準備に基いて本法を制定實施せんとするものであります、金融機關としましては、其の再建を圖り、將來の積極的發展を期する爲め、先づ其の生ずべき損失を迅速適確に處理致すことが必要であります、此の場合株主に於きましても、預金者、保險契約者等の債權者に於きましても、經濟再建の國家的要請の前に、其の負擔力に應じて共同して損失を分擔することは、蓋し已むを得ざる次第であります、併しながら今次の特別損失の性質等に鑑みまして、且つは金融機關の特性として、預金者、保險契約者等多數の債權者を擁し、其の利害得失が直接に國民の各階層に懸つて居る點を考慮致しますならば、預金、保險契約等の中、國民生活の安定を確保する爲め最低限度の必要のあるものに付きましては、其の支拂を確保する適當なる措置を講ずる必要があるのであります
以下本法案に付て其の内容の主なる點を説明致しますると、先づ第一に、金融機關の損失の處理の前提と致しまして、新勘定及び舊勘定の資産及び負債の状況を調査確定し、爾後の整理の基礎と致しますると共に、之を一定の評價基準に依りまして評價致すのであります、此の評價基準は、暫定評價基準と確定評價基準の二つと致します、先づ暫定評價基準に依る評價に依りまして、其の次に逐次決定を見るべき確定評價基準に依る評價に依りまして、二段に分けて其の進捗を圖る方針でありまするが、此の評價基準は、主務大臣が經濟再建整備委員會の議を經て之を決定することと相成つて居ります
第二の點は、資産を暫定評價基準及び逐次決定されます確定評價基準に依り評價致しました結果、其の内容が概ね良好なりとの見透しの付いた場合に於きましては、徒らに整理の完了を待つことなく、整理過程の中途にありましても、隨時舊勘定の資産及び預金等の一部分を新勘定に移すことを得させまして、預金者等の便益に供し、且つは新營業の活動力の強化を圖ることを考慮致して居るのであります
次に舊勘定の整理を可及的に速かに完了致しまする爲に、最初に暫定評價基準に依つて資産の評價をした結果、其の内容が良好であることが確實となりました場合に於きましでは、爾後の手續を要せずして、直ちに舊勘定の最終處理を完了し得るやうに措置致したのでありまするが、其の他の場合に於きましては、整理實施の爲め必要なる部分の資産の評價の確定を待つて、初めて舊勘定の最終處理を行ふことと致したのであります、此の場合究極に於きまして、舊勘定が利益となる場合に於きましては、直ちに舊勘定の最終處理は完了致すのでありまするが、若し損失となります場合に於きましては、債權者、株主等の利害關係人間に於ける損失負擔の割合を公正妥當ならしめ、且つ整理の實施を適確迅速ならしめまする爲に、其の負擔の方法を、次に申しまするやうな順序に相定めたのであります、即ち先づ評價益の全額まで損失を負擔させます、次に積立金の全額まで、次に資本金の九割まで、次には法人の預金等の中、五百萬圓を超える多額の部分の七割、百萬圓を超ゑ五百萬圓以下の部分の五割、十萬圓を超え百萬圓以下の部分の三割まで、次に法人の預金等の殘額及び其の他の整理債務の七割まで、其の次に殘りの資本金の全額まで、次に殘りの整理債務の全額まで、次に指定債務の全額まで、以上の順序で損失の負擔をせしむるのであります、而して減資の必要のありまする場合には、損失負擔の爲め必要とする金額だけ未拂込金を徴收させるのであります
尚ほ是と同時に舊勘定の債權も負擔額に相當する金額だけ消滅し、新勘定及び舊勘定の區分の消滅に際して、舊勘定は充實せる資産内容を以て新勘定の營業と合一するやうに致すのであります、尚ほ損失負擔の爲に資本金の全額を喪失します場合には、所謂第二銀行等を設立致しまして、新勘定の事業は之に讓渡する等の方法に依つて解散することと致したのでありまするが、此の場合前に述べました順序に依つて損失を負擔して、尚ほ損失が殘る時に初めて政府が之を補償することと致したのであります、是は新舊勘定分離に際し、優先的に新勘定に屬することとなつて居りました所の自由預金、第一封鎖預金等の債務の支拂を確保する爲に致すのであります
次に金融機關は舊勘定の整理手續中に於きましても、一定條件の下に第二銀行等を設立することが出來、又は資産内容の堅實な他の金融機關に新勘定の事業を讓渡することが出來ることと致しまして、整備の促進を圖りました外、金融機關の整備を促進する爲め必要のある場合には、主務大臣は金融機關の合併、資本の増加、事業の讓渡等を命じ得ることと致しまして、金融機關の債權の整備の迅速を期して居る次第でございます
次に大藏省預金部等損失特別處理法案に付て説明を申上げます、今囘の戰時補償特別措置等に伴ひまして、郵便貯金、簡易生命保險及び郵便年金の制度に依つて吸收致しました資金を運用して保有して居りました資産に付きましても、相當の損失が生ずるのであります、此の損失額は先に述べました一般の民間の金融機關の例に倣ひまして、先づ評價益、積立金と云ふやうな順序に依つて補填を致しまして、尚ほ殘存する額に付きましては、適當なる基準に依つて一般會計から補償金を受入れると共に、状況に依りましては、一部は是等資金の債權者をして負擔せしむる等、國民生活の安定を確保しつつ適正な處理を行ふ爲め、本法案を制定せんとするものでございます
次に特別和議法案に付て説明申上げます、今囘の戰時補償特別措置に關連致しまして、直接に補償打切りの結果として、又間接に預金の打切り、取引先の債務打切り、又は債務履行不能等の結果と致しまして、經濟上多大の損失を受けて破産に瀕する個人、公益法人等が出來て參ります、是等を放置して破産せしめることは、今囘の措置の性質上穩當ではありませぬので、其のものの債權者にも損失をば適當に分擔させまして、個人生活の安定又は健全なる法人事業の維持を圖り、以て今囘の諸施策の圓滿な遂行を期することが本法案の目的とする所であります、其の方法と致しましては、右のやうな債務者を救濟する爲め裁判所が關與致しまして、其の債權者等との間に、期限の猶豫、分割辨濟、債權の一部抛棄其の他を内容と致しまする和議を成立させることを内容とする特別和議制度を創設することと致しました、其の手續は原則として現行和議制度に準ずるものでありまするが、和議の成立を促進し、其の内容を衡平妥當ならしむる爲に種々の特例を設けてあります、尚ほ此の措置は會社經理應急措置法及び金融機關經理應急措置法の適用のない債務者のみを對象として實施するものであります
最後に厚生年金保險法及び船員保險法特例案に付て説明を申上げます、終戰後に於ける失業問題は極めて重大でありまして、政府は鋭意産業の復興を圖ると共に、公共事業を實施致しまして、是等の解決に努力致して居ります、失業者の増大は洵に悲しむべきことでありまするが、今囘の戰時補償特別措置に關連致しまして、或る程度の離職者の生ずることは蓋し已むを得ないことと存じます、此の場合に於きまして、現行の厚生年金保險法及び船員保險法に依りますると、脱退手當金の支給を受ける爲には、離職後一年を經過しなければならないことに相成つて居るのでありまするが、是は今囘の措置の性質上適當でありませぬ、離職後直ちに支給の出來るやうに致しまするのが本法案の目的とする所であります
以上述べました所に依りまして、上程せられました六法案の説明を終了させて戴きます、先にも申述べました通り、今囘の措置は、我が國經濟を再建する爲に是非其の實行を期さなければならないものであります、之に依つて一時は國民各層に相當な影響を與へることにならうと存じますが、輝かしい將來の日を迎へる爲の已むを得ない措置として、國民全部の協力を得て、所期の目的を達成することを願つて已まない次第であります、何卒愼重御審議の上、速かに御協贊を賜はらんことを御願ひ申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=43
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044・山崎猛
○議長(山崎猛君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
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045・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第一乃至第五及び政府提出、企業再建整備法案の六案を一括して、議長指名四十五名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=45
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046・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=46
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047・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました
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048・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の日程は之を延期し、明後三十日定刻より特に本會議を開き、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=48
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049・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=49
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050・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後二時五十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04819460928&spkNum=50
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