1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年九月三十日(月曜日)
午後二時十九分開議
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議事日程 第四十八號
昭和二十一年九月三十日
午後一時開議
第一 財産税法案(政府提出) 第一讀會
第二 財産税等收入金特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第三 企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出) 第一讀會
第四 貿易資金特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第五 産業復興營團法案(政府提出) 第一讀會
第六 恩給法臨時特例案(政府提出) 第一讀會
第七 農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 ソ聯領殘留同胞引揚促進に關する決議案(村島喜代君外二名提出)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである
産業復興營團法案
(以上九月二十八日提出)
財産税法案
財産税等收入金特別會計法案
(以上九月二十九日提出)
一、議員から提出された議案は次の通りである
ソ聯領殘留同胞引揚促進に關する決議案
提出者
村島喜代君 近藤鶴代君
澤田ひさ君
(以上九月二十八日提出)
一、去二十八日議長に於て次の委員を選定した戰時補償特別措置法案(政府提出)外五件委員
石原圓吉君 江藤夏雄君
大内一郎君 大塚甚之助君
花月純誠君 菊池長右エ門君
近藤鶴代君 坂本實君
田中重彌君 高橋英吉君
平岡良藏君 廣川弘禪君
本多市郎君 松永佛骨君
森曉君 天野久君
金光義邦君 喜多楢治郎君
北村徳太郎君 九鬼紋十郎君
小池新太郎君 小坂善太郎君
鈴木明良君 寺田榮吉君
苫米地義三君 舟崎由之君
武藤嘉一君 上田清次郎君
奧村又十郎君 川島金次君
澁谷昇次君 鈴木茂三郎君
田村定一君 中崎敏君
前田榮之助君 水谷長三郎君
森三樹二君 赤澤正道君
鹿島透君 木下榮君
駒井藤平君 三木武夫君
久保猛夫君 笹森順造君
穗積七郎君
一、去二十八日次の通り特別委員の異動があつた
自作農創設特別措置法案(政府提出)外一件委員
辭任 山口好一君 補闕 三ツ林幸三君
農民組合法案(野溝勝君外三名提出)委員
辭任 伊藤實雄君 補闕 中山榮一君
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より會議を開きます
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=1
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002・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際加藤勘十郎君提出、新聞通信放送勞働組合ゼネ・ストに關する緊急質問を許可せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=2
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003・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=3
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004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、政府は此の議事日程變更に同意せられました、仍て日程は變更せられました──新聞通信放送勞働組合ゼネ・ストに關する緊急質問を許可致します──提出者加藤勘十君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=4
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005・会議録情報2
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新聞通信放送勞働組合ゼネ・ストに關する緊急質問(加藤勘十君提出)
〔加藤勘十君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=5
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006・加藤勘十
○加藤勘十君 只今上程されました新聞通信放送勞働組合の「ゼネスト」の問題に對して、政府の所見を御伺ひ致します
新聞通信放送勞働組合は、來る十月五日を期して「ゼネスト」を全國一齊に斷行することを公表して、其の態度を明かにしたのであります、此の組合の全國一齋の「ゼネスト」の態度表明は、之に依つて測り知るべからざる社會不安の面を多くの人に與へたことは爭はれないと思ふのであります、今將に其の社會不安が招來されんとする状態にあります、此の情勢に對して政府はどのやうな態度、どのやうな方針を以て臨まれんとするのでありまするか、私は此の點を御伺ひ致したいと存じます、此の「ゼネスト」の主要目標が讀賣新聞社の爭議應援にあることは、組合側の公表に依つて明かなる點であります、新聞、通信、「ラジオ」等の「ゼネスト」を誘發せんとする讀賣新聞社の爭議が、どのやうな經過を辿つて茲に至つたかと云ふことに付きましては、日々の新聞が詳細に報道致して居りまするから、私が茲に附加へる必要はなからうと思ふのであります、又事態がここまで切迫した時機に於きまして、其の責任が會社側にあるか、或は從業員側にあるかと云ふやうな責任の所在を詮索して居る暇もないと存じます、要は如何にして此の「ゼネスト」を未然に防止することが出來るか、隨て之に伴つて起る社會不安を一掃することが出來るかと云ふ點にあると存じます、新聞紙の傳ふる所に依りますれば、或る閣僚は此の問題に關しまして、此の爭議は政府の關與する事業に起つた問題でないから、隨て關與する意思はない、又或る他の閣僚は、此の「ゼネスト」が政治的性質を持つた「ゼネスト」であるならば、斷乎嚴重なる處置を講ずる、斯う云ふやうなことを述べて居られるのであります、私は是等の點に付きまして、若し論議を致しますれば多くの論議するものを持つて居りまするが、今はさう云ふ時期でないと思ひまするから、一切の論議を避けます、唯是等の閣僚の言葉は、恐らくは閣僚個々の言葉と思ひまするが、政府は一體此の「ゼネラル・ストライキ」に依つて惹起されるであらうと思はれる社會不安の深刻なる樣相に付て、もつと眞劍に考慮をされて、どうすれば此のやうな社會不安を一掃することが出來るかと云ふことに、積極的な努力を拂つて貰ひたいと思ふのであります、先頃國鐵の一部に於て「ストライキ」が斷行されんと致しました時に、世間は騷然として社會不安を唱へ、如何にして之を未然に防止すべきかと云ふことに付て多くの論議がなされたのであります、國鐵の「ストライキ」が社會生活に取つて重要なる影響を持つこと、固より論議の餘地はありませぬ、それ故に私共は他の人々と同じやうに、それが速かに未然に防止されるやうに微力を注いだ次第でありまするが、幸ひに此の問題は、從業員諸君の謙讓なる心持と政府の努力に依つて解決を見たのであります、國鐵の「ストライキ」は、主として經濟的計畫の蹉跌であるとか、生活上の不便であるからと云ふ點から來た、現實に眼に見ることが出來る、形の上に現はれて居る社會不安であると言ふことが出來まするが、之に反して此の度の新聞等の「ゼネスト」は、形のない、眼に見えない社會不安でありまして、明かに人々の心理に動搖を起さしむるものでありまするが故に、其の深さが何處まで深まるか想像を許さないのであります
試みに今日の私共の社會生活に於て、新聞、通信、「ラジオ」の全然ない社會生活を考へて戴きたい、眼に見えない、形のない心理的不安でありますだけに、私はどう云ふやうな社會的動搖を人々が感ずるかも分らないと云ふことを知ることが出來るのであります、實は此のことに付きましては、曾て大正八年、東京市十五の日刊新聞社が、爭議の爲に四日間の「ストライキ」をやつたことがあります、私は當時組合關係者の一人として、此の爭議に携はつたのであります、當時の私共の實際に經驗した實例から申上げて見ましても、私は非常に大きな不定と動搖が社會的に見られたことを述べることが出來るのであります、然るに此の度の爭議は、組合の組織されて居りまする全國主要なる新聞殆ど全部が參加し、且つ通信も、「ラジオ」も參加して居るのであります、隨て其の社會的不安の深刻なる度合は、到底大正八年當時の状態とは比較にならないものがあると云ふことを我々は知らなければならぬと存じます、政府は此のやうな事態の推移に深甚なる注意を拂つて、豫測され得る社會不定の發生を未然に防止する爲に、積極的な態度に出て貰ひたいと存じます、政府は、或は先程申述べました閣僚の言葉にあつたやうに、政府が直接關與する事業でないからと云ふ消極的態度を御執りになる考へかも知れませぬが、それでは、豫測し得られる社會不安の發生を傍觀して居たと云ふ責任を免れないと存じます、又少くとも責任を囘避しようとする卑怯なる態度であると云ふ謗りをも免れないと存じます(拍手)
御承知のやうに「アメリカ」では、重大なる勞働爭議の發生致しました場合には、大統領自らが其の解決に乘出し、是が爲に閣僚を奔走せしめて居る實例を屡屡見るのであります、固より「アメリカ」と日本とは國情も違ひまするし、一樣には參らないやうに致しましても、私は、政府は直接乘出すべき法的根據がないからと言つて、此のやうな場合に決して傍觀して居るべきではないと存じます、政府は或は言ふかも知れませぬ、勞働委員會が構成され、其の委員會が一應の裁定を與へて居る、それ以上にはどうにも仕方がないと言ふのであるかも知れませぬが、如何にも勞働委員會は一應の裁定る致しました、併し御承知のやうに其の裁定案は餘りにも曖昧な點が多かつたのであります、それ故に此の裁定は遂に履行されませぬでした、此の裁定案が履行されなかつたと云ふことが問題を一層紛糾せしめ、事態をここにまで發展せしむるに至つたものであると言はなければならぬのであります、私は、政府が權力的手段に依つて勞資何れか一方に強壓を加へよと云ふことを言ふのでは斷じてありませぬ、新聞爭議に依つて發生する不安の重大性を勞資兩者に勸説して、兩者のさうした問題に對する責任の重大性を自覺させて、其の自覺の上に、從來兎角こだはり勝ちであつた面目と感情を乘越えて、お互ひの謙讓なる態度に依つて和協が出來るやうに、政府自らが勸告されることが必要ではないかと考へるのであります(拍手)さうして又斯うしたことこそが、勞資兩者に解決の端緒を與へるものではないかと存じます、それでも尚且つ其の何れかがさうした勸告に從はない、此の勸告を聽かないと云ふ場合に、本當に強い社會的、道義的な輿論が發生するに相違ないと私は考へます(拍手)私は斯う云ふ政府の態度こそが、豫測せられる社會不安の發生を未然に防止し得る最善の途であると信じます、私は、願はくは日本の爲に、我我國民の生活不安を一掃する爲に、政府が此の方法を選ばれんことを切望して已まないものでありまするが、此の點に對する政府の御所見はどうでありませうか、吉田總理大臣から御答へを御伺ひ致したいと存じます(拍手)
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=6
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007・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 御答へ致します、此の事件が「ゼネスト」に入らないやうにと云ふことは、切に政府も希望致しますが、勞働爭議は勞資兩者が自主的に解決すべきものであると信じ又之を政府と致しましては希望致します、隨て縷々御意見はありましたが、今日の場合、未だ此の事件に政府自ら介入して調停に乘出す時期にあらずと考へるものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=7
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008・加藤勘十
○加藤勘十君 只今の御答辯に對しては、御伺ひ致して置くことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=8
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009・山崎猛
○議長(山崎猛君) 日程第一乃至第三は、便宜上一括議題となすに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=9
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010・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、日程第一、財産税法案、日程第二、財産税等收入金特別會計法案、日程第三、企業整備資金措置法を廢止する等の法律案、右三案を一括して第一讀會を開きます──石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=10
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011・会議録情報3
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第一 財産税法案(政府提出) 第一讀會
第二 財産税等收入金特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第三 企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出) 第一讀會
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財産税法案
財産税法目次
第一章 總則
第二章 課税價格、免税點及び税率
第三章 財産の評價
第四章 申告
第五章 納付
第六章 課税價格の更正及び決定
第七章 審査、訴願及び行政訴訟
第八章 物納及び延納
第九章 雜則
第十章 罰則
第十一章 補則
財産税法
第一章 總則
第一條 左に掲げる者(その一般承繼人を含む。)は、この法律により、財産税を納める義務がある。
一 昭和二十一年三月三日午前零時(以下調査時期といふ。)において、この法律の施行地に住所を有し又は一年以上居所を有してゐた個人
二 前號の規定に該當しない個人で、調査時期においてこの法律の施行地に財産を有してゐたもの
前項に掲げる者の外、戸籍法の適用を受ける個人で、調査時期後二年以内に、この法律の施行地に住所を有し又は一年以上居所を有することとなつたもの(その一般承繼人を含む。)は、この法律により、財産税を納める義務がある。
第二條 財産税は、命令で定める外國人には、これを課さない。
第三條 民法第千五十一條に規定する法人(以下相續財團といふ。)で、調査時期において現に存したものについては、これを個人とみなして、この法律を適用する。
前項の規定の適用に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第四條 調査時期において、この法律の施行地に住所を有し又は一年以上居所を有してゐた個人で、戸籍法の適用を受けるものについては、調査時期において有してゐた財産の全部に對し、財産税を課する。
前項の規定に該當しない個人で、調査時期においてこの法律の施行地に財産を有してゐたものについては、調査時期においてこの法律の施行地に有してゐた財産に對し、財産税を課する。
第一項の規定に該當しない個人で、戸籍法の適用を受けるものが、調査時期後二年以内に、この法律の施行地に住所を有し又は一年以上居所を有することとなつた場合においては、前項の規定にかかはらず、調査時期において有してゐた財産の全部に對し、財産税を課する。
調査時期後この法律施行前に相續の開始があつた場合においては、被相續人が調査時期において有してゐた財産に對しては、相續人又は相續財團に、財産税を課する。
前項の場合において、被相續人が調査時期において有してゐた財産に對する財産税は、被相續人が第一項又は第三項の規定に該當する者であつたときは、調査時期において有してゐた財産の全部に對し、被相續人が第二項の規定に該當する者(第三項の規定に該當する者を除く。)であつたときは、調査時期においてこの法律の施行地に有してゐた財産に對し、これを課する。
第四項の規定により相續財團に財産税を課する場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第五條 左の各號に掲げる財産の所在は、當該各號に規定する場所による。
一 動産若しくは不動産又は不動産の上に存する權利については、その動産又は不動産の所在但し、船舶については、船籍の所在
二 鑛業權又は砂鑛權については、鑛區の所在
三 漁業權若しくは入漁權又は漁業權を目的とする權利については、漁場に最も近い沿岸の屬する市町村又はこれに相當する行政區劃
四 金融機關に對する預金、貯金、積金又は寄託金で命令で定めるものについては、その預金、貯金、積金又は寄託金をなした營業所又は事業所の所在
五 合同運用信託に關する權利については、その信託をなした營業所の所在
六 前各號の外、この法律の施行地に營業所又は事業所を有する個人の、その營業所又は事業所の權利については、その營業所又は事業所の所在
前項に掲げる財産以外の財産の所在は、權利者の住所の所在による。
第六條 調査時期において現に存した信託については、その時における受益者が、信託財産を有してゐたものとみなして、この法律を適用する。但し、合同運用信託については、その時における受益者が、信託に關する權利を有してゐたものとみなす。
前項の場合において、調査時期までに、元本若しくは收益の受益者がその元本若しくは收益を全然受けてゐなかつたとき、又は受益者が特定してゐなかつたとき若しくはまだ存在してゐなかつたときは、委託者又はその相續人を受益者とみなす。
前二項の場合において、受益者が二人以上あつたときは、これらの受益者が、各自その受くべき利益の價額の占める割合に應じて、信託財産又は信託に關する權利を有してゐたものとみなす。
第七條 調査時期において現に存した郵便年金契約で、その時までにまだ年金支拂事由が發生してゐなかつたもの又は調査時期において現に存した生命保險契約で、その時までにまだ保險事故が發生してゐなかつたものについては、契約者が、その契約に關する權利の全部を有してゐたものとみなして、この法律を適用する。但し、契約者が他人のために契約をなし、且つ、その他人が現實に掛金又は保險料の全部を負擔してゐた場合その他命令で定める場合については、命令で特別の定をなすことができる。
第八條 昭和二十年十一月十五日以後調査時期前に、贈與の契約とその履行とがあつた場合又は財産を留保する家督相續があつた場合においては、その贈與財産(その贈與財産に係る債務及び公租公課を含む。以下同じ。)又は相續財産(その相續に係る債務及び公租公課を含む。以下同じ。)は、命令の定めるところにより、調査時期において贈與者又は被相續人が、これを有してゐたものとみなして、この法律を適用する。
前項の規定は、同項に規定する贈與が國又は命令で定める公共團體に對する贈與、贈與財産の價額三千圓以下の贈與その他命令で定める贈與であつた場合及び同項に規定する相續が相續財産の價額一萬圓以下の相續であつた場合においては、これを適用しない。
第一項の期間内に著しく低い價額の對價で財産の讓渡の契約とその履行とがあつた場合においては、その對價の價額と契約の時における讓渡財産の時價との差額に相當する金額について、贈與があつたものとみなして、前二項の規定を適用する。
第九條 前條第一項の期間内に他人をして信託の利益を受くべき權利を有せしめ、且つ、同項の期間内に、その受益者をして元本若しくは利益の全部又は一部を受けしめたときは、信託の委託者を贈與者、受益者を受贈者とみなし、その信託の利益の價額に相當する金額の贈與があつたものとみなして、前條第一項及び同條第二項の規定を適用する。
前條第一項の期間内に契約期間の滿了する生命保險契約について、同項の期間内に契約者が保險金受取人を變更したとき(調査時期前にその契約の解除があつたときを除く。)は、生命保險契約の契約者を贈與者、變更後の保險金受取人を受贈者とみなし、その保險金額に相當する金額の贈與があつたものとみなして、前條第一項及び同條第二項の規定を適用する。
前條第一項の期間内に他人を年金受取人とし、且つ、同項の期間内に年金支拂事由が發生する郵便年金契約をなしたとき(調査時期前にその契約の解除があつたときを除く。)は、郵便年金契約者を贈與者、年金受取人を受贈者とみなし、その郵便年金契約に關する權利の價額に相當する金額の贈與があつたものとみなして、前條第一項及び同條第二項の規定を適用する。
前三項の規定は、前三項に規定する行爲が無償で行はれた場合又は著しく低い價額の對價で行はれた場合を除く外、これを適用しない。
第十條 左に掲げる財産については、財産税を課さない。
一 生活に通常必要な家具、什器、衣服その他の動産で、命令で定めるもの
二 墓所及び靈廟
三 簡易生命保險契約に關する權利
四 厚生年金保險法及び船員保險法に規定する年金又は一時金に關する權利竝びに共濟組合の支給する年金又は一時金に關する權利
五 戰爭又は災害に起因して死亡し又は傷痍を受け若しくは疾病に罹り、これに因り支給を受ける増加恩給その他これに準ずる年金で、命令で定めるものに關する權利
六 その他命令で定めるもの
第十一條 この法律において合同運用信託とは、信託會社(信託業務を兼營する銀行を含む。以下同じ。)が引き受けた金錢信託で、共同しない多數の委託者の信託財産を合同して運用するものをいふ。
この法律において同居家族とは、戸主及びこれと同居する家族又は戸主と別居して同居する二人以上の家族をいふ。
前項の場合において同居の事實の有無は、調査時期の現況による。但し、特別の事情がある場合については、命令で特別の定をなすことができる。
第二章 課税價格、免税點及び税率
第十二條 第四條第一項又は同條第三項の規定に該當する者については、調査時期において有してゐた財産(第十條に掲げる財産を除く。以下同じ。)の價額から、調査時期において現に存した債務(公租公課を含む。以下同じ。)の金額を控除した金額を、課税價格とする。
前項の場合において、同居家族のうちに、債務の金額が財産の價額を超過する者があるときは、その超過額を、命令の定めるところにより、他の一人又は數人の同居家族の財産の價額から控除して、その同居家族についての課税價格を算定する。
第十三條 第四條第二項の規定に該當する者(同條第三項の規定に該當する者を除く。以下制限納税義務者といふ。)については、調査時期においてこの法律の施行地に有してゐた財産の價額から、左の債務で調査時期において現に存したものの金額を控除した金額を、課税價格とする。
一 その財産に係る公租公課
二 その財産を目的とする留置權、特別の先取特權、質權又は抵當權で擔保される債務
三 前二號の外、その財産を取得、維持又は管理するために生じた債務
四 その財産に關する贈與の義務
五 前四號の外、その者が、調査時期において、この法律の施行地に營業所又は事業所を有してゐた場合においては、その營業所又は事業所の營業上又は事業上の債務
制限納税義務者で、調査時期において、この法律の施行地に住所を有し又は一年以上居所を有してゐたものについては、前項の規定にかかはらず、調査時期においてこの法律の施行地に有してゐた財産の價額から、前項に掲げる債務の金額及び左の債務で調査時期において現に存したものの金額の合計額を控除した金額を、課税價格とする。
一 前項第一號に掲げるもの以外の公租公課で、この法律の施行地で納付すべきもの
二 調査時期において、この法律の施行地に住所を有し又は一年以上居所を有してゐた個人に對する債務
三 調査時期において、この法律の施行地に營業所又は事業所を有してゐた法人に對する債務で、これらの營業所又は事業所との間に生じたもの
前條第二項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第十四條 前二條の規定により、その金額を控除すべき債務は、確實と認められるものに限る。
第十五條 左に掲げる金額は、課税價格の算定上、これを調査時期における財産の價額とみなす。
一 戰時補償特別措置法第四十一條、第四十二條又は第五十三條の規定により求償をなし得べき金額
二 調査時期前に納付した相續税につき、戰時補償特別措置法第五十七條又は第五十八條の規定により免除がなされる場合におけるその免除税額
第十六條 左に掲げる金額は、課税價格の算定上、これを調査時期における債務の金額とみなす。
一 不動産所得、乙種の配當利子所得、甲種若しくは乙種の事業所得、乙種の勤勞所得、山林の所得、乙種の退職所得又は清算取引所得に對する昭和二十一年分の分類所得税額、同年分の綜合所得税額及び同年分の臨時利得税額
二 戰時補償特別税額(戰時補償特別措置法第六十條の規定の適用を受ける場合については、命令で定める税額を除く。)
三 戰時補償特別措置法第四十一條、第四十二條又は第五十三條の規定により求償に應じて履行をなすべき債務の金額
調査時期において相續税納付の義務があつた場合において、戰時補償特別措置法第五十七條又は五十八條の規定により相續税を免除されるときは、調査時期における財産の價額から控除さるべき相續税額は、課税價格の算定上、その免除後の税額による。
第十七條 昭和二十年十一月十五日以後に贈與の契約がなされて、調査時期までにその履行がなかつた場合においては、贈與の義務の金額及び受贈の權利の價額は、課税價格の算定上、命令の定めるところにより、調査時期における贈與者又は受贈者の債務の金額又は財産の價額には、これを算入しない。
第八條第二項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
昭和二十年十一月十五日以後に著しく低い價額の對價で財産の讓渡の契約がなされて、調査時期までにその履行がなかつた場合においては、その對價の價額と契約の時における讓渡財産の時價との差額に相當する金額について、贈與の契約がなされたものとみなして、前二項の規定を適用する。
第十八條 戰爭又は災害に起因して死亡し又は傷痍を受け若しくは疾病に罹り、これに因り、調査時期前五年以内に、一時金たる恩給、扶助金、救恤金その他の給付で命令で定めるものの支給を受けることとなつた場合においては、命令の定めるところにより、その給付金額に相當する金額を、調査時期前にその給付を受けた者又は調査時期において現にその給付を受ける權利を有してゐた者について、課税價格から控除する。但し、その控除金額は、一萬圓を超えることができない。
第十九條 戰災者又は引揚者については、一人につき五千圓を、課税價格から控除する。
第十二條第二項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第一項の戰災者及び引揚者の範圍は、命令でこれを定める。
第二十條 前二條の規定は、制限納税義務者(調査時期において、この法律の施行地に住所を有し又は一年以上居所を有してゐた者を除く。)には、これを適用しない。
第二十一條 第十八條乃至前條の控除に關する規定は、第三十七條第一項又は第三十八條第一項に規定する申告書の提出期限までに、控除に關する明細書を添附した第三十七條第一項又は第三十八條第一項の規定による申告書の提出がない場合には、これを適用しない。第三十八條第一項第二號に掲げる事由に因り、第三十九條第一項の規定による申告書の修正をなすべき者につき、同項に規定する申告書の修正期限までに、控除に關する明細書を添附した同項の規定による申告書の修正がない場合もまた同じ。
前項の規定は、政府において已むを得ない事情があると認めるときは、これを適用しない。
第二十二條 課税價格(第十八條乃至前條の規定による控除をなす場合においては、控除後の價額をいふ。以下特別の定をなす場合を除く外同じ。)が十萬圓以下である場合においては、財産税を課さない。
同居家族については、課税價格を合算し、その總額について、前項の規定を適用する。但し、 第二十條に規定する制限納税義務者については、この限りでない。
第二十三條 財産税は、課税價格を左の各級に區分し、遞次に各税率を適用して、これを賦課する。
十萬圓を超える金額
百分の二十五
十一萬圓を超える金額
百分の三十
十二萬圓を超える金額
百分の三十五
十三萬圓を超える金額
百分の四十
十五萬圓を超える金額
百分の四十五
十七萬圓を超える金額
百分の五十
二十萬圓を超える金額
百分の五十五
三十萬圓を超える金額
百分の六十
五十萬圓を超える金額
百分の六十五
百萬圓を超える金額
百分の七十
百五十萬圓を超える金額
百分の七十五
三百萬圓を超える金額
百分の八十
五百萬圓を超える金額
百分の八十五
千五百萬圓を超える金額
百分の九十
前項の場合において、同居家族については、課税價格を合算し、その總額に對し、前項の規定を適用して算出した金額を各各その課税價格に按分して、各各その税額を定める。
第二十條の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第二十四條 第四條第四項の規定に該當する場合においては、命令の定めるところにより、被相續人の調査時期において有してゐた財産及び相續人の調査時期において有してゐた財産は、各各これを區分し、その各各について、第五條乃至前條の規定を適用して、その財産に對する財産税の額を算出し、その額の合計額を以て、相續人の納付すべき財産税額とする。
第三章 財産の評價
第二十五條 この法律の施行地にある土地又は家屋の價額は、その賃貸價格(地租法第八條又は家屋税法第六條に規定する賃貸價格をいふ。以下同じ。)に一定の倍數を乘じて算出した金額(命令で定める場合においては、命令で定める金額を加算した金額)による。
借地法に規定する借地權(以下借地權といふ。)の價額は、その目的となつてゐる土地の賃貸價格に一定の倍數を乘じて算出した金額による。
所有權以外の權利の目的となつてゐる土地又は家屋の價額は、その價額から當該權利の價額を控除した金額による。
第二十六條 前條第一項の一定の倍數は、命令で定める區域ごとに、その區域内において標準となるべき土地又は家屋について、取引價額を參酌して、政府において算定する價額の、その調査時期における賃貸價格に對する倍數に比準して、これを定める。
前條第二項の一定の倍數は、命令で定める區域ごとに、その區域内において標準となるべき借地權について、取引價額を參酌して、政府において算定する價額の、その借地權の目的となつてゐる土地の、その調査時期における賃貸價格に對する倍數に比準して、これを定める。
前二項の倍數は、命令の定めるところにより、政府において、不動産評價委員會に諮問して、これを定める。
第一項及び第二項の倍數を定めたときは、政府は、命令の定めるところにより、これを公告し、又はこれを記載した書類を縱覽に供する。
不動産評價委員會に關する規程は、勅令でこれを定める。
第二十七條 左に掲げる土地若しくはこれを目的とする借地權又は家屋の價額については、第二十五條第一項又は同條第二項の規定によらず、命令の定める價額による。
一 無租地、減租年期地及び免租年期地
二 鑛泉地、池沼、牧場及び雜種地
三 地租法第百二條の規定の適用を受ける土地
四 賃貸價格が設定されてゐない家屋
五 前各號の外、通常の土地又は家屋とその状況が著しく異る土地又は家屋
第二十八條 地上權(借地權たるものを除く。)及び永小作權の價額は、その目的となつてゐる土地の價額に命令で定める割合を乘じて算出した金額による。
第二十九條 命令で定める金融機關に對する預金、貯金及び積金その他これに準ずるものの價額は、調査時期における預金額、貯金額、積金の掛金額等による。
第三十條 公債(外貨債及び借入金を除く。)の價額は、その發行價格による。但し、利率四分以上の國債及び國債以外の公債で利率四分五厘以上のものの價額は、その發行價格、利率、償還期限を參酌して定めたものによる。
社債その他これに準ずる財産の價額は、命令の定めるところにより、その發行價格、當該法人の資産及び收益の状況等を參酌して定めたものによる。
株式その他の出資の價額は、命令の定めるところにより、その取引價額、當該法人の資産及び收益の状況、類似の他の法人の株式その他の出資の取引價額等を參酌して定めたものによる。
第一項但書及び前二項の價額は、命令の定めるところにより、政府において、株式等評價委員會に諮問して、これを定める。
第二十六條第四項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
株式等評價委員會に關する規程は、勅令でこれを定める。
第三十一條 調査時期において現に存した左に掲げる定期金の給付の契約で、その時までに定期金の給付事由が發生してゐたものに關する權利の價額は、左に掲げる金額による。
一 有期定期金については、殘存期間に受くべき給付金額に、その殘存期間に應じ、命令で定める割合を乘じて算出した金額但し、一年間に受くべき金額の二十倍を超えることができない。
二 無期定期金については、一年間に受くべき金額の二十倍に相當する金額
三 終身定期金については、一年間に受くべき金額に、目的とされた人の年齡に應じ、命令で定める倍數を乘じて算出した金額但し、一年間に受くべき金額の二十倍を超えることができない。
前項に規定する定期金の給付を受ける權利を有してゐた者が、調査時期後この法律施行前に死亡し、その給付が終了した場合においては、當該定期金の權利の價額は、前項の規定にかかはらず、その權利者が調査時期後給付を受けた又は受くべき金額(權利者の遺族が權利者の死亡に因り給付を受けるときは、その給付を受ける權利の價額を加算した金額)による。
前二項に定めるものの外、定期金に關する權利の價額の算定に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十二條 調査時期において現に存した郵便年金契約で、その時までにまだ年金支拂事由が發生してゐなかつたもの及び調査時期において現に存した生命保險契約で、その時までにまだ保險事故が發生してゐなかつたものに關する權利の價額は、調査時期までに拂ひ込まれた掛金又は保險料の合計額に、命令で定める割合を乘じて算出した金額による。
第三十三條 調査時期において物價統制令による統制額の定のあつた財産の價額は、その統制額を基準として命令で定める金額による。
調査時期後この法律施行前に、物價統制令により統制額をあらたに定め又は改訂した財産の價額は、その統制額を基準として命令で定める金額による。但し、その統制額をあらたに定め又は改訂する前に讓渡した財産については、この限りでない。
第三十四條 調査時期においてこの法律の施行地外にあつた財産その他命令で定める財産の價額及び命令で定める債務の金額については、諸般の状況を勘案し、その算定をなすことができることとなつた際に、命令でその算定方法を定める。
第三十五條 第二十五條乃至前條に定めるものを除く外、調査時期における財産の價額は、その時における時價により、調査時期における財産の價額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。
第三十六條 調査時期における財産のうち家庭用動産以外の財産の價額から、第十二條又は第十三條の規定により、債務の金額を控除した金額(以下一般財産の價額といふ。)が五十萬圓(同居家族については一般財産の價額の合計額が五十萬圓)以下の者については、その家庭用動産の價額は、前三條の規定にかかはらず、一般財産の價額に命令で定める割合を乘じて算出した金額によることができる。
家庭用動産の前三條の規定による價額が、前項の規定により算出した金額を一萬圓以上超過する場合においては、家庭用動産の價額は、前項の規定にかかはらず、前三條の規定による價額によらなければならない。
前二項の家庭用動産の範圍は、命令でこれを定める。
第四章 申告
第三十七條 第一條に規定する者(第二條に規定する者を除く。)は、課税價格(第十八條乃至第二十一條の規定による控除前の課税價格をいふ。)が十萬圓を超える場合(同居家族については、その合計額が十萬圓を超える場合を含む。)においては、命令で定める日(以下第三十七條の申告期限といふ。)までに、命令の定めるところにより、課税價格(第十八條乃至第二十一條の規定による控除後の課税價格をいふ。)その他必要な事項を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
前項の規定による申告書には、命令の定めるところにより、第十八條乃至第二十一條の規定による控除に關する明細書を添附しなければならない。
第三十四條に規定する財産の價額及び債務の金額については、同條の規定に基く命令の定めるところにより、その算定をなすことができることとなるまでは、これを除外して、第一項に規定する課税價格を算定しなければならない。
第三十八條 前條第一項に規定する申告書を提出しなかつた者について、第三十七條の申告期限後、左に掲げる事由に因り、課税價格(第十八條乃至第二十一條の規定による控除前の課税價格をいふ。)が十萬圓を超えることとなつた場合(同居家族については、その合計額が十萬圓を超えることとなつた場合を含む。)においては、第一條に規定する者(第二條に規定する者を除く。)は、命令で定める日(以下第三十八條の申告期限といふ。)までに、命令の定めるところにより、前條第一項に規定する申告書を政府に提出しなければならない。
一 前條第三項の規定により、課税價格の算定の際、除外された財産の價格及び債務の金額について、第三十四條の規定に基く命令の定めるところにより、その算定をなすことができることとなつたこと。
二 その者が第四條第三項の規定に該當することとなつたこと。
前條第二項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第三十九條 第三十七條第一項又は前條第一項の規定による申告書を提出した者について、第三十七條の申告期限後又は第三十八條の申告期限後、前條第一項に掲げる事由に因り課税價格が増加することとなつた場合においては、その者は、命令で定める日(以下第三十九條第一項の修正期限といふ。)までに、命令の定めるところにより、政府に申し出て、その申告書を修正しなければならない。
第三十七條第二項の規定は、前條第一項第二號に掲げる事由に因り、前項の規定により申告書を修正する場合について、これを準用する。
第一項に規定する場合を除く外、第三十七條第一項若しくは前條第一項の規定による申告書を提出した者又は第一項の規定により申告書を修正した者が、第三十七條の申告期限後若しくは第三十八條の申告期限後又は第三十九條第一項の修正期限後、その申告又は修正に係る課税價格について脱漏があることを發見したときは、直ちに政府に申し出て、その申告書を修正しなければならない。
第一項及び第二項の規定は、第四十六條の規定による課税價格の更正又は決定があつた者について、前條第一項に掲げる事由に因り課税價格が増加することとなつた場合における課税價格の修正について、これを準用する。
第三項の規定は、第四十六條の規定による課税價格の更正又は決定があつた者が、更正又は決定に係る課税價格について脱漏があることを發見した場合における課税價格の修正について、これを準用する。
第五章 納付
第四十條 左の各號に掲げる財産税は、當該各號に定める期限内に納付しなければならない。
一 第三十七條第一項の規定による申告書に記載された課税價格に對する財産税については、第三十七條の申告期限後一箇月
二 第三十七條の申告期限後又は第三十八條の申告期限後課税價格の申告書の提出があつた場合において、その申告書に記載された課税價格に對する財産税については、その申告書提出後一箇月
三 第三十八條の規定による申告書に記載された課税價格に對する財産税については、第三十八條の申告期限後一箇月
四 前條第一項の規定による申告書の修正又は同條第四項の規定による課税價格の修正があつた場合において、その修正に因り増加する税額に相當する財産税については、第三十九條第一項の修正期限後一箇月
五 前條第三項の規定による申告書の修正又は同條第五項の規定による課税價格の修正があつた場合において、その修正に因り増加する税額に相當する財産税については、その申告書の修正後又はその課税價格の修正後一箇月
納税義務者が、前項各號に掲げる財産税を、當該各號に定める期限内に完納しなかつたときは、政府は、國税徴收法第九條の規定により、これを督促する。
第四十一條 第四條第四項の規定に該當する場合において、その相續が戸主の死亡以外の原因に因る家督相續であるときは、被相續人は、命令の定めるところにより、同項の規定により相續人の納付すべき財産税について、連帶納付の責に任ずる。
第四條第四項の規定に該當する場合においては、國籍喪失に因る相續人又は限定承認をなした相續人は、相續に因つて得た財産の限度において、財産税納付の責に任ずる。
第四十二條 第六條第一項の規定の適用があつた場合においては、委託者は、命令の定めるところにより、受益者が納付すべき財産税額のうち、その課税價格中當該信託財産又は當該信託に關する權利の價額が占める割合に應じて按分した金額に相當する財産税について、連帶納付の責に任ずる。
第四十三條 第八條第一項の場合において、受贈者又は相續人は、命令の定めるところにより、贈與者又は被相續人の納付すべき財産税額のうち、その課税價格中同項に規定する贈與財産又は相續財産の價額が占める割合に應じて按分した金額に相當する財産税について、連帶納付の責に任ずる。
第八條第一項の場合において、贈與者又は被相續人が財産税を納付したときは、贈與者又は被相續人は、命令の定めるところにより、その納付した財産税額のうち、その課税價格中同項に規定する贈與財産又は相續財産の價額が占める割合に應じて按分した金額を、受贈者又は相續人に對して請求することができる。
昭和二十年十一月十五日以後調査時期前に贈與の契約がなされて、調査時期後その履行があつた場合において、贈與者が財産税を納付したときは、贈與者は、命令の定めるところにより、その納付した財産税額のうち、その課税價格中贈與財産の價額が占める割合に應じて按分した金額を、受贈者に對して請求することができる。
第四十四條 調査時期後贈與、遺贈又は寄附行爲に因る財産の移轉があつたときは、受贈者、受遺者又は寄附行爲に因り設立された財團法人は、命令の定めるところにより、その受けた利益の限度において、贈與者、遺贈者の相續人若しくは相續財團又は寄附行爲者が納付すべき財産税について、連帶納付の責に任ずる。
第八條第三項の規定は、前項の場合について、これを準用する。この場合において、同項中「第一項の期間内に」とあるのは、「調査時期後」、「前二項」とあるのは、「前項」と讀み替へるものとする。
第四十五條 納税義務者は、財産税を納付するため必要があるときは、命令の定めるところにより、命令で定める預金、貯金その他の債權の全部又は一部について、期限前の拂戻を請求し、又はこれらに關する契約を解除し、若しくは變更することができる。
前項の規定は、財産税につき連帶納付の責に任ずる者(國税徴收法第四條の三第一項但書の規定により財産税を徴收される者を含む。以下同じ。)について、これを準用する。
前二項の場合において、その契約の相手方が、納税義務者又は財産税につき連帶納付の責に任ずる者に給付すべき金額その他必要な事項は、命令でこれを定める。
第六章 課税價格の更正及び決定
第四十六條 第三十七條第一項若しくは第三十八條第一項の規定による申告書が提出された場合又は、第三十九條第一項若しくは同條第三項の規定による申告書の修正があつた場合において、申告又は修正に係る課税價格が、政府において調査した課税價格と異るときは、政府は、その調査により、財産調査委員會に諮問して、その課税價格を更正する。第三十九條第四項又は同條第五項の規定による課税價格の修正があつた場合において、修正に係る課税價格が、政府において調査した課税價格と異るときもまた同じ。
前項の規定は、第四十八條第一項の規定により、課税價格の更正の請求があつた場合について、これを準用する。
政府は、納税義務があると認められる者が第三十七條第一項又は第三十八條第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合においては、政府の調査により、財産調査委員會に諮問して、その課税價格を決定する。
納税義務者が、第七十三條に規定する納税管理人の申告をなさないで、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、前三項の規定にかかはらず、政府は、その調査により、その課税價格を更正し又は決定することができる。
政府は、前四項の規定による課税價格の更正又は決定後、その更正し又は決定した課税價格について脱漏があることを發見したときは、政府の調査により、財産調査委員會に諮問して、その課税價格を更正することができる。
前五項の規定による課税價格の更正又は決定は、この法律施行後五年間に限り、これを行ふことができる。
財産調査委員會に關する規程は、勅令でこれを定める。
第四十七條 第三十七條第三項の規定により、課税價格の算定の際除外された財産の價額及び債務の金額については、第三十四條の規定に基く命令の定めるところにより、その算定をなすことができることとなるまでは、政府は、これを除外して、前條の規定による課税價格の更正又は決定をしなければならない。
第四十八條 第三十七條第一項若しくは第三十八條第一項の規定による申告書を提出した者、第三十九條第一項若しくは同條第三項の規定により申告書を修正した者又は同條第四項若しくは同條第五項の規定により課税價格を修正した者が、その課税價格が過大であつたことを發見したときは、第三十七條の申告期限後若しくは第三十八條の申告期限後、第三十九條第一項の修正期限後若しくは同條第三項の規定による申告書の修正後又は同條第四項若しくは同條第五項の規定による課税價格の修正後一箇月間を限り、政府に對し、その課税價格の更生を請求することができる。
前項の請求があつた場合においても、政府は、税金の徴收を猶豫しない。
第四十九條 政府は、第四十六條の規定により、課税價格を更生し又は決定したときは、これを納税義務者に通知する。
政府は、前條第一項の請求があつた場合において、その請求を理由なしと認めるときは、その請求をなした者に、その旨を通知する。
この法律の施行地に住所及び居所を有しない個人が、第七十三條に規定する納税管理人の申告をしてゐないときは、前二項の通知に代へて公告をすることができる。この場合において、公告の初日から七日を經過したときは、その通知があつたものとみなす。
第五十條 政府は、第四十六條の規定により課税價格を更生し又は決定した場合においては、前條第一項の通知をなした日から一箇月後を納期限として、その追徴税額(その不足税額又はその決定による税額をいふ。以下同じ。)を徴收する。但し、第四十六條第四項に規定にする場合においては直ちに追徴税額を徴收する。
第七章 審査、訴願及び行政訴訟
第五十一條 納税義務者は、第四十九條第一項の規定により政府の通知した課税價格又は第六十七條第一項の規定により政府の通知した税額に對して異議があるときは、通知を受けた日から一箇月以内に不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
前項の規定は、第四十九條第二項の規定による政府の通知に對し納税義務者に異議のある場合について、これを準用する。
第一項(前項において準用する場合を含む。)の請求があつた場合においても、政府は、税金の徴收を猶豫しない。
第五十二條 政府は、前條第一項(同條第二項において準用する場合を含む。)の請求があつたときは、財産審査委員會に諮問して、これを決定し、納税義務者に通知しなければならない。
財産審査委員會に關する規程は、勅令でこれを定める。
第五十三條 第五十一條第一項(同條第二項において準用する場合を含む。)の請求があつた場合において、評價について、納税義務者に異議のある財産が、納税義務者の所有に屬してゐるときは、命令の定めるところにより、政府は、當該財産の全部又は一部について、審査の請求の際納税義務者の申し立てた價額に相當する對價を以て、これを政府に讓渡すべきことを、納税義務者に命ずることができる。
前項の規定により當該財産が政府に讓渡されたときは、當該財産の價額については、納税義務者の申し立てた價額により、審査の決定があつたものとみなす。
前項の讓渡に對する對價の支拂は、國債證券の交付により、これをなすことができる。
前項の規定により交付する國債證券の交付價格は、大藏大臣がこれを定める。
第五十四條 第五十二條の決定に對し不服がある者は、訴願をなし、又は行政裁判所に出訴することができる。
第八章 物納及び延納
第五十五條 調査時期における財産のうちに、金融機關經理應急措置法により、金融機關の舊勘定に屬することとなつた預金、貯金その他の債權で命令で定めるもの(以下舊勘定預金等といふ。)に相當すると認められる財産(以下舊勘定財産といふ。)があるときは、納税義務者は、その納付すべき財産税額と、課税價格から舊勘定財産の價額を控除した金額により計算した財産税の額との差額に相當する税額について、舊勘定預金等による納付を申請することができる。
財産税につき連帶納付の責に任ずる者が、當該財産税に關する舊勘定財産に相當する舊勘定預金等を有するときは、その者は、命令の定めるところにより、舊勘定預金等による納付を申請することができる。
前二項の舊勘定財産の範圍その他前二項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
第五十六條 前條に規定する場合を除く外、納税義務者は、その納付すべき財産税額のうち、金錢で納付することを困難とする金額について、物納(舊勘定預金等による納付を除く。以下同じ。)を申請することができる。
前項の規定は、財産税につき連帶納付の責に任ずる者について、これを準用する。
前二項の場合において、物納に充てることができる財産の種類その他物納に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第五十七條 前條第一項の場合において、財産税の物納を困難とする特別の事由があるときは、納税義務者は、物納を困難とする金額を限度として、擔保を提供し、その延納を申請することができる。
前項の場合において、延納の期間は、これを第四十條第一項各號に掲げる期限後又は第五十條に規定する納期限後一年以内とし、已むを得ないと認められる場合においては、二年以内とすることができる。
前項に定めるものを除く外、擔保の種類その他延納に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第五十八條 政府は、前三條の規定により、財産税の舊勘定預金等による納付、物納又は延納の申請があつた場合において、必要があると認めるときは、税金の納付を猶豫することができる。
第五十九條 第五十五條第一項若しくは同條第二項又は第五十六條第一項若しくは同條第二項の規定の適用を受けて納付した財産税につき過誤納があつた場合の還付に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第九章 雜則
第六十條 納税義務者が、災害に因り著しく資力を喪失して、納税困難と認められるときは、政府は、命令の定めるところにより、財産税を輕減し又は免除することができる。
政府は、前項の場合において、同項の規定による輕減又は免除に關する處分が確定するまで、税金の徴收を猶豫することができる。
第六十一條 納税義務者の舊勘定財産に相當する舊勘定預金等について、金融機關再建整備法による舊勘定の最終處理の結果、その債權の全部又は一部が消滅した場合における財産税の課税に關し必要な措置は、勅令の定めるところによる。
第六十二條 第三十七條第一項又は第三十八條第一項の規定による申告書を提出した納税義務者で、その申告書に記載された課税價格が五十萬圓を超えるものについては、政府は、第三十七條の申告期限後又は第三十八條の申告期限後四箇月以内に、申告書の記載に從ひ、氏名、課税價格、税額竝びにその財産及び債務に關する事項を公告する。
前項の規定による公告に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十三條 納税義務者の提出した申告書又は課税價格の更正、決定若しくは修正に關する書類を閲覽しようとする者は、命令の定めるところにより、政府に、その閲覽を請求することができる。
第六十四條 納税義務があると認められる者が申告書を提出しなかつた事實又は課税價格に脱漏があると認められる事實を、政府に報告した者がある場合において、政府がその報告に因つて課税價格を決定し又は更正したときは、政府は、命令の定めるところにより、その報告者に對し、課税價格の決定又は更正に因り、徴收することができた税額の百分の二十五以下に相當する金額を、報償金として交付することができる。但し、報償金の金額は十萬圓を超えることができない。
前項の規定は、その報告をなした者が官吏又は待遇官吏であるときは、これを適用しない。その報告が官吏若しくは待遇官吏の知得した事實、公務員(官吏及び待遇官吏を除く。)の職務上知得した事實、又は不法の行爲に因り知得した事實に基くものである場合もまた同じ。
第六十五條 納税義務者は、第四十條第一項第二號又は同項第五號に掲げる財産税については、同項當該各號に掲げる期限内に、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、當該税額に年百分の十の割合を乘じて算出した金額に相當する税額を加算して納付しなければならない。
第四十條第二項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第一項の規定は、政府が、第五十條の規定による追徴税額又は第五十七條第一項の規定による延納税額に相當する財産税を徴收する場合について、これを準用する。
第六十六條 第四十條第一項第二號若しくは同項第五號に掲げる財産税の納付があつた場合又は第五十條の規定による追徴税額に相當する財産税を徴收することとなつた場合においては、第三十七條の申告期限内若しくは第三十八條の申告期限内に申告書の提出がなかつたこと、第三十九條第一項の修正期限内に申告書の修正若しくは課税價格の修正がなかつたこと又は納税義務者の申告若しくは修正した課税價格が政府の調査した課税價格と異ることについて已むを得ない事由があると認められる場合を除く外、政府は、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、當該税額に一箇月を經過するごとに百分の五の割合を乘じて算出した金額に相當する税額の財産税を追徴する。但し、この金額は、當該税額に百分の五十を乘じて算出した金額を超えることができない。
前項の規定により追徴する税額については、第五十七條第一項の規定は、これを適用しない。
第六十七條 政府は、前條第一項の規定により追徴する税額を決定したときは、これを納税義務者に通知する。
第四十九條第三項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第六十八條 株式會社以外の法人で出資證券を發行しないものは、命令の定めるところにより、調査時期における出資について、出資者別の調書を政府に提出しなければならない。
年金たる恩給又はこれに準ずる給付の支拂をなす者は、命令の定めるところにより、調査時期におけるその給付の債務について、受給者別の調書を政府に提出しなければならない。
信託會社は、命令の定めるところにより、調査時期における金錢信託及び有價證券信託以外の信託について、受益者別の調書を政府に提出しなければならない。
保險會社は、命令の定めるところにより、昭和二十年三月三日から調査時期までの間に契約をなした動産を目的とする損害保險契約について、契約者別の調書を政府に提出しなければならない。
前三項に規定するものを除く外、法人は、命令の定めるところにより、調査時期における命令で定める債務について、債權者別の調書を政府に提出しなければならない。
第六十九條 法人税又は特別法人税を課せられる法人は、命令の定めるところにより、命令で定める日における資産及び負債に關する明細書その他株式その他の出資の價額の算定上必要な事項を記載した書類を、政府に提出しなければならない。
第七十條 收税官吏は、財産税に關する調査又は財産税の徴收について必要があるときは、左に掲げる者に質問し又はその財産若しくはその財産に關する帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
一 納税義務者又は納税義務があると認められる者
二 第六十八條の調書又は前條の明細書若しくは書類を提出しなければならない者
三 納税義務者又は納税義務があると認められる者に對し、債權若しくは債務を有してゐたと認められる者又は債權若しくは債務を有すると認められる者
四 納税義務者又は納税義務があると認められる者が、出資者であつたと認められる法人又は出資者であると認められる法人
五 納税義務者又は納税義務があると認められる者に對し、財産を讓渡したと認められる者又は財産を讓渡する義務があると認められる者
六 納税義務者又は納税義務があると認められる者から、財産を取得したと認められる者又は財産を取得する權利があると認められる者
七 納税義務者又は納税義務があると認められる者の財産を、保管したと認められる者又は保管すると認められる者
八 納税義務者又は納税義務があると認められる者が、その營業又は事業に關し加入してゐたと認められる團體又は加入してゐると認められる團體
第七十一條 收税官吏は、財産税に關する調査又は財産税の徴收について必要があるときは、公證人の作成した證書の原本及びその附屬書類竝びに法令により公證人の調製した帳簿を閲覽し、又はその内容について公證人に質問することができる。
第七十二條 財産税は、納税義務者の住所地、この法律の施行地に住所のないときは居所地をその納税地とする。但し、納税義務者は、政府に申告して、居所地を納税地とすることができる。
この法律の施行地に住所及び居所のない納税義務者は、命令の定めるところにより、納税地を定めて政府に申告しなければならない。その申告のないときは、政府が、その納税地を指定する。
第七十三條 納税義務者が、納税地に現住しないときは、この法律による申告書の提出その他財産税に關する一切の事項を處理させるため、納税地に居住する者のうちから納税管理人を定め、政府に申告しなければならない。納税義務者が、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときもまた同じ。
第七十四條 同族會社の昭和二十年十一月十五日以後の行爲又は計算で、その株主若しくは社員又はこれと親族、使用人等特殊の關係がある者について、課税價格を減少せしめると認められるものがあつた場合においては、政府は、課税價格の更正又は決定に際し、その行爲又は計算にかかはらず、その認めるところにより、課税價格を算定することができる。
前項の同族會社とは、法人税法第十七條第三項に規定する法人をいふ。
第七十五條 都道府縣、市町村その他の公共團體は、財産税の附加税を課することができない。
第十章 罰則
第七十六條 詐僞その他不正の行爲により財産税を逋脱した者は、これを三年以下の懲役又はその逋脱した税金の三倍以下に相當する罰金又は科料に處する。
前項の罰金は千圓を下ることができない。
第一項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちにその課税價格を決定し、その税金を徴收する。
第七十七條 左の各號の一に該當する者は、一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
一 正當の事由なくして、第六十八條の調書、又は第六十九條の明細書若しくは書類を提出せず、又はその調書、又は明細書若しくは書類に虚僞の記載をなして、これを提出した者
二 第七十條の規定による財産又はその財産に關する帳簿書類その他の物件の檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者
三 前號の帳簿書類で虚僞の記載をなしたものを呈示した者
四 第七十條の規定による收税官吏の質問に對し答辯をなさない者
五 前號の質問に對し虚僞の答辯をなした者
第七十八條 財産税に關する調査、評價若しくは審査の事務に從事してゐる者又はこれに從事してゐた者が、その調査、評價又は審査に關して知得した祕密を漏泄し、又は竊用したときは、これを二年以下の懲役又は二萬圓以下の罰金に處する。
第七十九條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に關して、第七十六條又は第七十七條第一號若しくは同條第三號乃至第五號の違反行爲をなしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に對し、各本條の罰金刑を科する。
第八十條 他人の財産税について、政府に對し、第六十四條に掲げる事實に關する虚僞の報告をなした者は、これを三年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
第八十一條 第七十六條第一項の罪を犯した者には、刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及び第六十六條の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に處するときは、この限りでない。
第十一章 補則
第八十二條 皇室の財産に對する財産税に關し必要な事項は、この法律の定めるところに準じ、皇室令を以て、これを定める。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
この法律は、本州、北海道、四國、九州及びその附屬島嶼(勅令で定める地域を除く。)にこれを施行する。
納税義務者が、財産税の納付に關し立木を讓渡した場合(立木を伐採して讓渡した場合を含む。)又は立木を財産税の物納に充てた場合においては、命令の定めるところにより、納税義務者の調査時期における財産の價額のうちその讓渡し又は物納に充てた立木の價額が占める割合を、財産税額に乘じて算出した金額を、所得税法による山林の所得から控除する。
前項の規定は、財産税につき連帶納付の責に任ずる者について、これを準用する。
調査時期後この法律施行前に開始した相續については、財産税額は、命令の定めるところにより、相續税法第三條又は第三條の二に掲げる公課とみなす。
金融緊急措置令の一部を次のやうに改正する。
第三條第一項に次の但書を加へる。
但し財産税法第五十五條の規定に依り同條第一項に規定する舊勘定預金等を以て財産税を納付する場合其の他命令を以て定むる場合は此の限に在らず
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財産税等收入金特別會計法案
財産税等收入金特別會計法
第一條 財産税法及び戰時補償特別措置法に基く收入金に關する會計は、これを特別とし、一般の歳入歳出と區分して經理する。
財産税法及び戰時補償特別措置法に基いて收納する國債(政府特殊借入金を含む。以下同じ。)以外の物納の財産(以下物納財産といふ。)、財産税法に基いて讓り受ける財産(以下讓受財産といふ。)及び財産税法に基いて收納する金融機關經理應急措置法により金融機關の舊勘定の負債に屬することとなつた預金その他の債權(以下舊勘定預金等といふ。)は、これをこの會計の所屬とする。
第二條 この會計においては、財産税及び戰時補償特別税の收入金、物納財産及び讓受財産から生ずる收入金竝びにこれらの財産の處分に因る收入金、舊勘定預金等の拂戻金、公債募集金、借入金竝びに附屬雜收入を以てその歳入とし、一般會計又は國債整理基金特別會計への繰入金、地方公共團體又は特定機關への交付金、公債及び借入金の償還金及び利子、財産税及び戰時補償特別税の還付金その他の諸費を以てその歳出とする。
財産税及び戰時補償特別税の國債による收納の額は、これをこの會計の歳入とみなし、第三條第一項の規定による國債の所屬換の額は、これをこの會計の歳出及び國債整理基金特別會計の歳入とみなし、又、同條第三項の規定による當該國債の償却の額は、これを國債整理基金特別會計の歳出とみなして、整理するものとする。
第三條 この會計において、財産税及び戰時補償特別税を國債を以て收納した場合においては、その收納價額を以て、當該國債を國債整理基金特別會計の所屬に移さなければならない。
前項の規定により國債を國債整理基金特別會計の所屬に移した場合においては、國債整理基金特別會計法第二條第一項の規定により、一般會計から當該國債の收納價格に相當する額の國債元金償還資金の繰入があつたものとみなす。
國債整理基金特別會計で第一項の國債を受け入れた場合においては、直ちに、當該國債を償却しなければならない。
第四條 この會計に屬する經費を支辨するため必要があるときは、政府は、この會計の負擔において公債を發行し又は借入金をたすことができる。但し、公債又は借入金の額は、この會計に屬する資産(現金及び讓受財産を除き財産税及び戰時補償特別税の延納許可額を含む。)の現在額に七割五分の割合を乘じて算出した額を超えてはならない。
讓受財産の對價として國債を交付するため必要があるときは、政府は、前項の規定による外、この會計の負擔において公債を發行することができる。
物納財産の處分に因る收入金及び舊勘定預金等の拂戻金は、先づ、當該收入の收納の時に存する第一項の公債又は借入金の償還に充て、讓受財産の處分に因る收入金は、これを先づ、前項の公債の償還に充てるものとする。
第五條 この會計で支拂上現金に餘裕があるときは、これを大藏省預金部に預け入れることができる。
第六條 この會計において決算上剩餘を生じたときは、これを翌年度の歳入に繰り入れる。
第七條 政府は、毎年この會計の歳入歳出豫算を調製して、歳入歳出の總豫算とともに、これを帝國議會に提出する。
前項の歳入歳出豫算には、當該年度及び前年度における財産税及び戰時補償特別税の徴收豫定表竝びに物納財産、讓受財産及び舊勘定預金等の處分豫定表を添附しなければならない。
第八條 この會計の收入支出に關する規程は、勅令でこれを定める。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
この會計は、昭和二十六年度限り、これを廢止するものとする。
國有財産法の一部を次のやうに改正する。
第二十八條の二 財産税法及戰時補償特別措置法に依り收納したる財産は第五條又は第十六條の規定に拘らず之を讓與し又は勅令を以て定むる場合の外之を無償にて貸付することを得ず
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企業整備資金措置法を廢止する等の法律案
第一條 企業整備資金措置法は、これを廢止する。
第二條 臨時資金調整法の一部を次のやうに改正する。
第十條の二 削除
第十條の十二第三項中「、營業税法及臨時利得税法」を「及營業税法」に「、營業税及臨時利得税」を「及營業税」に、「、營業税法に依る純益及臨時利得税法に依る利益」を「及營業税法に依る純益」に改める。
第十八條第二號を次のやうに改める。
二 削除
第三條 日本勸業銀行法の一部を次のやうに改正する。
第三十四條第一項中「十五倍」を「二十倍」に改める。
第四條 生命保險中央會法の一部を次のやうに改正する。
第二十四條第一項中「受くることを得」を「受け若は生命保險會社に保險契約を移轉することを得」に改める。
附 則
第五條 この法律は、公布の日から、これを施行する。
第六條 企業整備資金措置法(以下舊法といふ。)第三條の規定による命令若しくは舊法第四條の規定に基いて設定された特殊預金、特殊金錢信託、債務者特殊借入金、戰時金融金庫特殊借入金若しくは政府特殊借入金又は舊法第六條第三項(舊法第七條第二項及び第九條第二項において準用する場合を含む。)の規定による命令に基いて融通された資金については、舊法は、この法律施行後においても、なほその效力を有する。
第七條 舊法第二條第一項、第十三條第一項若しくは第四項又は第二十四條第二項の規定に基いてなされた損失の補償、補助金の交付又は債務の保證の契約については、舊法は、この法律施行後においても、命令の定めるところにより、なほその效力を有する。
第八條 舊法第十九條第一項に規定する會社が、同項の規定による命令に基いてなした資産の信託又は資産の管理の委託、同條第四項の規定による命令に基いてなした役員の數の減少及び當該會社につき、同條第五項の規定に基き、株主總會又は社員總會の招集に關し別段の定をなした勅令については、舊法は、當該資産の信託又は資産の管理の委託の契約の終了するまでは、なほその效力を有する。
第九條 舊法第二十條に規定する會社が、同條の規定に基き、其の經理についてなすことができる必要な措置については、この法律施行の日の屬する事業年度の分の經理に限り、舊法は、なほその效力を有する。
第十條 舊法第二十三條第二項の規定により、裁判所の許可を受けた法人財産の換價その他の處分及び殘餘財産の分配については、舊法は、この法律施行後においても、なほその效力を有する。
第十一條 從前の臨時資金調整法第十條の二第一項の規定による命令又は從前の同條第二項の規定に基いて設定された特殊預金、特殊金錢信託若しくは政府特殊借入金については、なほ從前の例による。この場合において、從前の同條第三項において準用される範圍内においては、舊法第六條乃至第十六條及び第二十八條の規定は、この法律施行後においても、なほその效力を有する。
第十二條 從前の臨時資金調整法第十條の十二第一項の規定による證票を發賣する法人が、臨時利得税を課せられるべきものであつたときは、同項の賣得金、當籖金竝びに從前の同條第二項の經費及び納付金に關する舊臨時利得税法による利益の計算については、なほ從前の例による。
第十三條 この法律施行前(舊法及び從前の臨時資金調整法第十條の二の規定が效力を有する場合においては、その效力を有する間)になした行爲に關する罰則の適用については、この法律施行後(舊法及び從前の臨時資金調整法第十條の二の規定が効力を有する場合においては、その效力消滅後)においても、なほ舊法及び從前の臨時資金調整法の例による。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=11
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012・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題となりました財産税法案、財産税等收入金特別會計法案及び企業整備資金措置法を廢止する等の法律案に付きまして、提案の理由を御説明申上げます
先づ財産税法案でございますが、本法案は終戰處理に必要な國庫收入を確保し、且つ戰時補償特別税と併せまして、戰後財政の負擔を輕減し、其の基礎を確立する爲め、個人の財産に付き、高率の累進課税に依る財産税を課さうとするものであります、本年度の財政需要は相當巨額に達して居りまして、遺憾ながら此の支出を、國民の經常所得を税源と致します收入を以て賄ひ得られないことは御承知の通りでございます、さればとて此の歳入缺陷を純然たる赤字公債を以て補填致しますことも、亦如何に危險であるかは申すまでもありませぬ、是れ即ち國民の財産を税源とする財産税に、本年度財政の財源の一部を求めんとする次第であります、財産税を以て財政支出を賄ひますことが、決して理想的の方法でないことは、曩に私が本院に於て強調した次第であります、政府はここに深く思ひを致しまして、嚴に歳出の效果を鑑査して之を統制し、以て其の財源より來る缺陷を補ふ積りでございます、併しさうは申しましても、財産税は勿論赤字公債とは違ひます、財産税の課徴は、假令所得税の課徴程には效果がないに致しましても、やはり直接或は間接に國民の消費を抑制致します、是れ財産税を以て本年度財政支出の一部の財源とする所以でございます、曩に前内閣に於きましては、法人戰時利得税及び個人財産増加税を創設致しまして、之に依つて主として戰時利得を徴收し、又個人及び法人に對する財産税を設けまして、之に依り所謂擬制資本の處理、戰後財政の再建等を圖る構想の下に、財産税等三つの新税法案要綱を作りまして、之を發表致したのであります、併し現内閣は、其の後に於ける内外情勢の變化と、又實行上の確實性とに顧みまして、別に戰時補償特別税を設けまして、同時に財産税に對しては根本的修正を施した次第であります、即ち政府は、一方に於て戰時補償請求權に對しては、一定限度の控除金額を除いて、百「パーセント」の税率に依る戰時補償特別税の課税を致しました、其の代りに法人戰時利得税、法人財産増加税及び法人財産税は之を取止めまして、財産税は個人財産税のみと致しました、さうして戰時補償特別税及び個人財産税の兩税に依りまして、約千百億圓の課税を行はんとするものであります
次に財産税法案の内容に付き其の大要を申上げます、第一に財産税は、昭和二十一年三月三日午前零時を調査時期と致しまして、此の調査時期に此の法律の施行地に住所を有し、又は一年以上居所を有して居た個人、調査時期に此の法律の施行地に財産を有して居た個人、及び戸籍法の適用を受ける個人で、調査時期後二年以内に此の法律の施行地に住所を有し、又は一年以上居所を有することとなつた者を納税義務者と致します、是等の納税義務者の中で、戸籍法の適用を受ける個人でありまして、調査時期に於て此の法律の施行地に住所を有し、又は一年以上居所を有して居た者、及び二年以内に此の法律の施行地に住所を有し、又は一年以上居所を有することになつた者に付きましては、調査時期に於ける財産の全部に對し課税することと致しました、以上の外の個人に付きましては、此の法律の施行地にある財産のみに對し課税を致すのであります、併し生活に通常必要な家具、什器、衣服等に付きましては、其の性質上非課税として居ります
次に財産税の課税價格は、以上に申上げました非課税財産を除いた調査時期に於ける財産の價格から債務の金額を控除した金額に依ることと致して居りますが、此の課税價格の計算に當りましては、昭和二十一年分の賦課課税に依る所得税及び臨時利得税竝に戰時補償特別税等は、調査時期に於ける債務と看做します外、昭和二十年十一月十五日以後調査時期までに贈與等がなされた場合には、其の贈與財産等は、贈與者等の財産と看做しまして課税する措置を講ずる次第であります、更に是等の課税價格から、戰災者及び引揚者に限りまして、一人に付き五千圓控除することと致します、更に戰爭又は災害に起因する死亡、傷害等に依り支給を受けた一時金等に付きましては、一萬圓を限度として、其の給付金額を課税價格から控除致します
次に免税點及び税率でございますが、免税點に付きましては、現在の國民生活の實情、物價事情及び本税の目的等に顧みまして、之を十萬圓と致すことが適當と認めまして、斯樣に致したのであります、又税率に付きましては、同樣の考慮の結果、十萬圓を超え十一萬圓以下の金額に付き百分の二十五、それから最高千五百萬圓を超える金額に付きましては百分の九十に至る累進税率を設けることと致した次第であります
次に財産の評價であります、土地又は家屋に付きましては、取引價格等を標準としまして、賃貸價格に一定の倍數を乘じて算出した金額に依ることと致します、又公債は原則として發行價格に依ると共に、株式出資、社債等の價格に付きましては、戰時補償特別課税後の實情に應じまして、政府に於て適正なる評價を致す措置を致します、尚ほ不動産、株式等の評價に付きましては、評價委員會を設置し、廣く一般の意見を參酌して、其の評價の適正を期することと致します
次に申告及び納付であります、從來の政府に依る賦課徴收の方法に代へまして、納税者は自己の申告した課税價格に依つて税金を納付することと致します、若し申告がないか、又は申告された課税價格が、政府の調査と異なる時に限りまして、政府に於て課税價格を更正又は決定して、税金を追徴することと致したのであります
次に財産税の納付に付きましては、金錢等で納付することを困難と致す額に付きましては、國債其の他金錢以外の財産に依る物納を認めます、更に物納を困難とする場合には、相當の利子を附しまして、最長二年以内の延納を認めることと致します、又調査時期に於ける財産中に、舊勘定預金等となつたものがあります場合には、當該財産に對する税額は、舊勘定預金等で納付することが出來る措置を講じて居ります、尚ほ政府に於て課税價格の更正又は決定をなす場合には、課税の適正公平を期する爲め、豫め財産調査委員會に諮問して其の意見を徴することと致して居ります
次に本税の重要性に顧みまして、第三者が他人の財産税に關して政府に報告を致しました場合には、其の報告に依つて追徴が出來ることと相成つた税額の中、一定額以下を其の報告者に報償金として交付することが出來ることに致しました、それと同時に逋脱犯等に對する罰則に付きましては、相當之を強化することと致した次第であります
最後に、財産税は皇室の財産に對しても課税せられることとなつて居ります、之に付きまして必要な事項は、本法案に準じまして皇室令を以て之を定めることとなつて居ります
以上申述べました所に依り、免税點を十萬圓と致しました場合の財産税の收入は、概ね四百三十五億圓となる見込であります、此の程度の收入は、終戰處理、戰後復興等の爲め此の際是非とも必要とする所でありまして、隨て萬一實際の收入額が見込額に比しまして著しく不足するやうな場合には、更に五萬圓以上十萬圓未滿のものに付きましても、改めて財産税を課する必要を生ずる場合もあらうと存ずる次第であります
財産税法案の大要は以上の通りでありますが、曩に經常税に付きまして相當の増税を行ひまして、又今囘戰時補償特別税の課税を行ひます、其の上に更に本税に依つて個人財産に對して高率な課税を行ひますことは、敗戰後の我が國民に對しては非常な負擔でありますが、終戰後の事態を處理し、急速に新日本の再建、國民生活の安定を圖る爲には、眞に已むを得ない次第でありまして、政府は本税の實施に付きまして、國民各位の深き理解と協力とに期待致しますると共に、税務機構を整備し、適實公正な税務の運營に付きまして、凡ゆる努力を盡したいと考へて居る次第でございます、以上を以ちまして財産税法案の提案理由の説明を終ります
次に財産税等收入金特別會計法案に付て申上げますが、目下本院に於て御審議を願つて居ります戰時補償特別措置法案、及び只今上程となりまし財産税法案に基きまして收納致しまする財産税及び戰時補償特別税は、何れも特別の收入金であります關係上、之に關する歳入歳出を一括經理致しまして、其の明確を期することが適當であると考へられます、仍て是が爲め特別會計を設置致したいと存ずる次第であります、是が財産税等收入金特別會計法案を提出した理由でございます
次に企業整備資金措置法を廢止する等の法律案に付きまして御説明を申上げます、企業整備資金措置法は、戰時に際しまして企業整備の促進を圖り、浮動購買力の發生を防止し、國家經濟の秩序を維持する目的を以ちまして制定せられたものであります、隨て戰爭の終結に伴ひまして、既に其の存在を不適當とするに至りましたのみでなく、更に金融緊急措置令が實施致され、又今囘の戰時補償の處理、及び之に伴ふ一聯の政策の實施に依りまして、最早全く其の存在の理由を失ふに至つたのであります、仍て此の際之を廢止することと致したのであります
次に臨時資金調整法第十條の二の規定は、企業整備關係以外の金錢債務の決濟に付きまして、企業整備資金措置法の規定を準用致して居つたのでありますが、企業整備資金措置法の廢止と同樣の理由に依りまして、是れ亦削除致したいのであります
次に日本勸業銀行の今後の事業遂行上、勸業債券の發行限度を擴張する必要がありますので、日本勸業銀行法の一部を改正致しますると共に、生命保險中央會の現状に鑑みまして、生命保險中央會法の一部を改正することと致したのであります、以上を以ちまして企業整備資金措置法を廢止する等の法律案の提案理由の説明を終ります、以上財産税法案外二件に付き申上げた次第でありますが、何卒御審議の上速かに御協贊を賜はらんことを御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=12
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013・山崎猛
○議長(山崎猛君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
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014・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第一乃至第三の三案は、一括して政府提出、戰時補償特別措置法案外五件委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=14
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015・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=15
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016・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第四、貿易資金特別會計法案の第一讀會を開きます──石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=16
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017・会議録情報4
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第四 貿易資金特別會計法案(政府提出) 第一讀會
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貿易資金特別會計法案
貿易資金特別會計法
第一條 貿易資金を置き、その歳入歳出は、これを一般の會計と區分して、特別會計を設置する。
第二條 貿易資金は、昭和二十年法律第五十三號第二條の規定による貿易資金を以て、これに充てる。
貿易資金に不足を生じたときは、政府は、この會計の負擔で大藏省預金部又は日本銀行から借入金をして、一時これを補足することができる。但し、その金額は、五十億圓を超えることはできない。
前項の借入金は、一年以内にこれを償還するものとする。
第三條 貿易資金は、これを貿易物資及びその取引に基く請求權に運用するの外勅令の定めるものに運用することができる。
政府は、貿易資金の運用に關する事務を、日本銀行に取り扱はせることができる。
第四條 貿易資金の運用によつて、利益を生じたときは、これを翌年度の歳入に繰り入れ、損失を生じたときは、これを翌年度の歳出を以て補填する。
第五條 この會計においては、前條の規定による運用益金、第六條の規定による借入金、第七條の規定による一般會計からの繰入金及び附屬雜收入を以てその歳入とし、命令で定める貿易物資の管理及び處分に要する特別經費、事務取扱費、資金運用手數料、第六條の規定による借入金の償還金、第七條の規定による一般會計への繰入金、借入金の利子、前條の規定による資金補填金及び附屬諸費を以てその歳出とする。
第六條 この會計で、前條に規定する貿易物資の管理及び處分に要する特別經費、事務取扱費、資金運用手數料、借入金の利子及び附屬諸費を支辨するため必要があるときは、政府は、同會計の負擔で大藏省預金部又は日本銀行から借入金をすることができる。
前項の借入金は、一年以内にこれを償還するものとする。
第七條 この會計において、損益計算上過剩を生じたときは、これを一般會計の歳入に繰り入れ、不足を生じたときは、これを一般會計の歳出を以て補填する。
第八條 政府は、毎年この會計の歳入歳出豫算を調製して、歳入歳出の總豫算とともに、これを帝國議會に提出しなければならない。
前項の歳入歳出豫算には、貿易資金の當該年度の運用計畫表及び貿易資金の前年度の豫定損益計算表を添附するものとする。
第九條 この會計の收入支出竝びに第四條の規定運用による利益又は損失及び第七條の規定による過剩又は不足の計算に關する規程は、勅令を以てこれを定める。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
昭和二十年法律第五十三號は、これを廢止する。
前項の法律廢止の際、同法の貿易資金に關する權利義務は、これをこの會計に歸屬せしめ、同法廢止の際、現に存する同法第三條第一項の規定による借入金は、これを第二條第二項の規定による借入金でこの法律施行の日に借り入れたものとみなす。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=17
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018・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題となりました貿易資金特別會計法案提出の理由を申上げます、現在政府で行つて居ります貿易の經理に付きましては、昨年十二月に貿易資金設置に關する法律を制定致しまして、貿易資金を設け、輸出物資の買入及び輸入物資の賣拂等を此の資金の運用として行ひました、之に伴ふ歳入歳出は、爲替交易調整特別會計の所屬と致したのであります、今囘貿易に關する經理を一層圓滑に致しますると共に、其の明確を期する爲め、從來の貿易資金設置に關する法律を此の際廢止致しまして、新たに獨立の特別會計を設置致し、貿易の運營を一層圓滑にするのを適當と認めまして、茲に此の法律案を提出致しました次第であります、何卒御審議の上速かに御協贊を賜はらんことを御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=18
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019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 質疑の通告があります、順次之を許します──栗山長次郎君
〔栗山長次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=19
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020・栗山長次郎
○栗山長次郎君 貿易問題は、本案の上程に依りまして、今期議會に於ける單獨審議案件となつたのであります、敗戰後の日本に取りまして、同胞八千萬の生活に關係の深い經濟活動が、而も食糧の需給をも含めて貿易と云ふ名稱の下に、各國と連繋運營致し得るやうになりましたことは、洵に曉の空を望む感があるのでございます、隨て私は貿易政策を背景とする觀點から、本案に付ての質疑を致したく存ずるのであります
現在の日本に許されて居ります輸出及び輸入は、特殊樣式に依る運營でありまして、さうであればこそ、本案の如き特別會計制度の必要が起つたことは、私も十分に承知致して居ります、併しながら終戰後一箇年餘を經過した世界經濟の推移と、聯合軍の厚意ある理解に依つて、我が方から輸出なし得る限度までは、我が方への輸入が漸次可能になりつつありますし、輸出量を増しますことは、軈て輸入の量を増す所以であることを思ひますに付け、輸出振興の意味が一段と高まり、之に對する政府の具體策に多大の期待が懸つて來るのであると存じます、そこで第一の眼目は、輸出の總數量を増加することにあると信ずるのでありますが、政府は生絲、纖維製品、茶、除蟲菊、陶器、漆器、眞珠、工藝品などを初め、輸出品に關し如何樣なる振興策を執りつつあられますか、特に生絲は戰前の輸出量が五十有餘萬俵でありましたのに、現在では僅かに其の一割内外に集荷が激減致して居ります、斯樣なことであつては、生絲が將來とも輸出の大宗であらうことを思ひますに付け、之に關する輸出量の確保竝に將來の増産計畫は、國民の最大關心事たらざるを得ないと思ふのでありますが、斯う云ふ點をも含めた總括的實行方針を示されたいのであります
次に輸出品の改良乃至は新局面打開の爲め、我が國民の長所に則り、創意と工夫に依る新規格品の出現を冀ふこと切なるものがあるのでありますが、それには先方の好みを知り、當方の持ち味を活かす具體的の手引が必要でありますから、過般發表されました貿易館の設置の如きは、機宜の處置と思ひますけれども、其の運營に當つては、是非とも逞しい創造力を加へ、同時に民間の知識經驗を活用することが望ましいのであります、又價格の變動を顧慮するの餘り、十分なる能力があつても、實行を躊躇して居る製造家が澤山あると思ふのでありますが、是が國として奬勵すべき製品であります限り、政府に於ては或る程度まで企業の「リスク」を引受けても、安心して製造に從事し得るやう措置することが肝要であらうと存じます、是等の點に付ては何れも政府に於て相當の御考へがあらうと思ひますので、此の際其の輪郭を明かにせられたいのであります
更に以上と呼應して、日本品に對する各國からの需要を、多面多角的に誘發する情勢の展開を希望致したいのであります、是は勿論關係方面の諒解を俟つべきものでありませうが、既に米國を初め、朝鮮、中國、「ソ」聯などとは、若干の取引がありますし、濠州は羊毛、「インド」は棉花に依る對日「バーター」の開始を希望するやに取沙汰されて居る程でありますから、各國からの日本品購入委員の來訪を待ち、彼我經濟の交流を深める將來性を等閑に付してはならぬと存じます、時恰も「シンガポール」、「マレー」、香港、「ビルマ」、「セイロン」、「ボルネオ」あたりの代表が東京に來訪し、司令部との間に打合せが行はれたかに報ぜられて居ります、商工大臣から此の邊の御見透しが伺へれば仕合せであると存じます、資源の乏しい日本に取りまして、食糧、原棉、油、工業鹽、鐵材、是等を初め、原料資材の輸入を俟つて、我が國の最小限度の經濟は成立つのであると存じます、そこで世界何れの主要國よりも人口の密度が高く、所謂人口は過剩、勞働力が餘つて、之を生産化するに窮する我が國に取りましては、資源の豐かな国々から原料の融通を受けて、加工賃稼ぎの幅を廣く開けなければならぬと存じます、日本の勞働力と他國の資源とを組合はせ、利用價値の高い加工品を造つて、之を世界に送りますことは、啻に日本民族の生きる途であるばかりでなく、人類の福祉に貢獻する所以でありまして、是こそ平和日本に課せられた經濟的使命であると申しても過言でなからうと存じます(拍手)是等の點が、政府の心構へを承りたい第二段でございます
而して私は以下第三段として、貿易の機構、運用計畫等に付き質したいのであります、昨年十月九日附の聯合軍司令部の指令に依り、貿易を管理すべき國家機關たる貿易廳が創設されたのでありまして、本年四月三日附の指令は、更に貿易廳を以て日本政府を代表する、全貿易業務の専管機關として之を公認したのでありますから、日本の貿易は貿易廳の専管する國營となつたのであります、本法案に基く豫算案に添付さるべき運用計畫の豫定する輸出、輸入の計數は、次年度分を取つて見ますと、各各二百億圓内外に上る由であります、此の數字が多いことは、輸出入品の總量が多いことを意味するのでありますから、此の場合輸出入品が豫定される如くに、國内市場に於て公定價格に依り買上げ、若しくは拂下げられます限り、日本經濟は本業に伴ふ計畫數字の多額に上ることを歡迎こそすれ、拒むべき理由はないのであります、殊に纖維品だけでも約八十億圓に上ると云ふことを參酌致しますならば、二百億圓は寧ろ少きに過ぎるものとも考へられるのでありますが、唯茲に吟味を要します點は、歳出と睨み合はす爲に歳入に於てなされんと致して居る大藏省預金部又は日本銀行からの借入金であります、即ち輸出せんが爲に國内に於て買上げられまする總額から、輸入したものを國内に拂下げる總額を差引いた帳尻であります、勿論通常の貿易でありますれば、斯う云ふ「マイナス」帳尻などと云ふものは、ある筈はないのでありますが、目下の運營は、外貨に對しては不即不離であり、所謂請求權を殘す特殊貿易であつて、而もそれがお役人のする國營であります爲に、此の「マイナス」の帳尻は、單なる國内現象として、動ともすれば放漫に流れる懸念があります、國營貿易が所謂役人仕事に化してしまひますならば、從來の經驗に徴して、放漫に流れる懸念は遺憾ながら益益濃厚であらうと存じます、而も其の「マイナス」帳尻は、結局國民負擔以外の何ものでもないのでありますから、議會は之に十分なる檢討を加へる當然の責務を有するものと存じます、政府は無論之に對し善處されるであらうと存じますが、商工大臣竝に大藏大臣の御考へを承つて置きたいものであります
私共は輸出の振興を期し、輸入の決濟能力を増すことに依りまして、「アメリカ」の厚意を受けて主食糧の危機を切拔けました後には、例へば待望されて居ります砂糖の輸入なども實現して、國民の榮養表に糖分の一項が追加されることなど、明るい將來を想像することも出來ますが、茲に靜思自戒すべき點は、「メード・イン・ジャパン」と銘打つた商品が、世界各國の人々に如何なる感情を以て迎へられるかと云ふ點であります、戰爭の齎した不幸な結果の中、此の苦惱は最大不幸事の一つであると存じます、私共の努力は絶間なく積まれなければなりませぬ、懺悔の日本が世界に送る輸出品は、贖罪の輸出品でなければなりませぬ、懺悔と努力の結晶たる、良心的な輸出品が、日本の港を離れて海外に使ひ致します時、歩一歩「メード・イン・ジャパン」に好い響きが籠つて來るものと存じます、之を思ふに付けましても、國營貿易の責務は重且つ大であると言はねばなりませぬ、商工大臣の御感想と御方針を承りたいと存じます
平和會議の開催は豫想外に早くならうと言はれ、隨て日本の國際聯合加入も近い將來であらうと報ぜられて居ります、是は政府も國民も齊しく胸中深く望む所でありまして、戰爭抛棄の日本に取り、政治上の安全保障は、國際聯合への加盟に依つてのみ求められるのであります、然らば資源が乏しく、人口が多い日本に取り、經濟上の安全保障とでも言ふべきものを何處に求むべきでありませうか、其の一つは──全部とは申しませぬ、「ブレトン・ウッヅ」協定への加盟であると存じます、同協定は、國際經濟交流の均衡發展を圖り、以て加盟各國經濟の向上を招來せんとする國際經濟機構であります、政府は是への加盟を構想するに當りまして、如何なる心構へと準備をなされつつありますか、大藏大臣の御經綸を承りたく存じます
惟ふに日本經濟に於ける貿易の比重は大であります、國民生活の幅と深さは、貿易の幅と深さに依存すると申しても過言ではありますまい、而も其の貿易が今の所純然たる國營であります、隨て對外關係と竝行して、國内機構の整備擴充が要望されるのであります、政府は貿易機構を再檢討し、現在の配給委員會と云ふが如き部分的なものに止めずして、運營全般に及ぶ貿易審議會又は貿易委員會の如きものを設けて、もつと學識經驗者を廣く包容し、國民の代表たる衆議院議員あたりをも參畫せしめて、極力機構の民主化と實際化を圖り、一面に於ては大局的見地からの運營を期すると共に、他面に於ては巨額の貿易計畫が、年に一度か二度突如として國民の前に現はれて來る入道雲の如きやうなものとすることなく、自ら機會を設けて之に關する國民の理解を深め、國民を親しましめ、軈て時機到來の際は、滯りなく正常貿易へ移行することが出來るやう勘案すべきであると思ひますが、商工大臣の御意向を承りたく存じます、以上を以て自由黨を代表する私の質疑を終ります(拍手)
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=20
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021・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 栗山君の貿易に關する御造詣深い御議論を承りまして、其の總ての御議論は、全部之を採用して行きたいと斯樣に考へる次第でありまするが、殊に今日敗戰後の日本は、不幸にも貿易を一元的に國家管理でやらなければならない、是は已むを得ない事情でありまするが、一刻も早く是から離れて、自由なる溌刺たる貿易に移らなければならぬ、併しながらここ一、二年の間、少くとも此の敗戰後の渾沌たる時に於きましては、私は昨年十月九日に制定されました聯合軍の今日の行き方は、最も日本に取つて仕合せであつたと、斯樣に信ずるものであります、仰せの如く、八千萬近い此の國民が貧乏し切つて、總てのものが奪はれて、是から起ち上つて、戰爭を抛棄した以上は、何に依つてやつて行くかと言へば、此の八千萬の國民が總動員で働いて、さうして見返り品を造つて、食糧或は原料の不足の物を補ふべく輸入すると云ふこと以外には、私は國の建前はないと思ふのであります(拍手)さう云ふ見地から致しまして、今日貿易廳は實は官廳ではありますけれども、前垂掛けの官廳であつて欲しいと考へて、其の長官も態々實業界の方、多年の經驗のある方を入れて、お役所仕事でないやうにやつて行きたい、斯樣に心掛けて居る次第であります(拍手)今囘此の貿易特別會計に於きまして、若干商賣らしい商賣が出來る譯でありまするが、何と申しましても、今栗山君御指摘の如く、日本は多くの原料を輸入に仰いで、之を商品化致しまして、見返りとして出す外ないのでありますが、それには先づ以て重工業方面は駄目でありますから、主として輕工業を中心にやらなくちやならない、殊に今年度の貿易の「バランス」を見ましても、生絲竝に纖維製品が其の王座でありまするが、生絲は戰爭中桑を引拔いて、只今御指摘のやうに五十何萬俵も出して居りましたものが、今年度は全部出しましても十六萬俵以外には出ない、それを出したのでは織物業者が困りますから、少しでも殘して織物にして出さして貰ひたいと只今懇請中でありますが、之を復舊致しまするのには、三箇年計畫を以て致しましても、二十萬俵以上出すことは中々困難かと思ふのでありますが、是は農林當局と調子を合せまして、一生懸命やつて居る次第であります、其の他自轉車、或は只今御指摘の諸物品に致しましても、今日お互ひが戰後眞に凡ゆる惡條件を克服して、而も此の勞働問題を眞に調整致しまして、見返り物資を一品でも多く出して行きたい、斯樣に思うて居る譯であります、それに付きまして、只今仰せの如く日本は、ともすれば從來「メード・イン・ジャパン」は安い、其の代り惡いであつた、是は昨今の勞働問題其の他から見ますと、高い、惡いになるかも知れない虞があるのでありまして、斯樣になつたのでは大變なことでありますから、今に心致しまして、殊に從來ありましたやうな粗惡品を越しまして、詐欺に近いやうなことをして一時の儲けをする、斯樣なことをやる場合には、斷乎として刑罰を以て臨む程の準備を致したいと考へて居るのであります(拍手)尚ほ只今の貿易は、一元的に、唯日本で造りましたものは日本の丸公で貿易廳が買上げまして、輸出入共に貿易廳自らが仕事は出來ませぬから、他に今日約七十四の輸出入に關する團體を作らせまして、それを通じてやらせて居るのでありまするが、本當を言ひますと、丸公に囚はれて、十分賣れるものを必ずしもさう安くする必要もないかも知れませぬけれども、併し今日はここでさう御心配のやうな損失は起らぬだらうと思ひますことは、造りましたものは貿易廳で買上げて之を向ふへ出しまして、輸入したものは「ドル」の相場で之を計算致しまするから、必ずしも從來の普通の貿易の如き、そこに「スペキュレーション」はない譯でありますから、大きな損失はなく、唯火災とか或は盜難其の他の點は十分注意致しまして、損失を起さない方針であります、併し此の點に付きましては、或は大藏大臣より御答辯があるかも知れませぬ
尚ほ最後に御指摘のありました、何とかして日本の貿易をお役所仕事でないやうに──民間の衆智を集めた今の七十四の團體の色々の方々の援助もありますけれども、尚ほ綜合的な分別を運らす爲に、今日と雖も或は顧問制或は參與制はありますけれども、十分にまだ活用致して居りませぬ、御注意に依りまして、或は貿易振興審議會と云つたやうなものでも設けまして、十分民間の衆智を集めて、大いに貿易の振興を圖つて行きたい、斯樣に考へて居る次第であります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=21
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022・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 栗山君の御質問に對しては、只今商工大臣から大體答辯がありましたから、私から多く附加へる必要はないと思ひます、唯貿易の收支尻に依つて損失の起る場合であります、是も商工大臣の御話のやうに、現在の機構に於ては、大いなる損失が起ると云ふことはあり得ないと思ひます、唯其の時々に於ては、輸出金額の方が大きく──是は國内圓で建てたばかりでありますが、國内に於て輸出品を買上げた金額、即ち支出が多く、輸出したものを賣拂つた金額の方が少い、或は其の逆の場合、左樣な常に時の食違ひが相當ありますから、日本銀行等から或る程度の金融を行ふ必要は常に起ると思ひますが、併し全體としての收支は大體償ふべきものと考へますし、又是からの經理の方法、詰り輸入品の賣却其の他に依りまして、損失が起ることのないやうな經理の方法を立てるやうに、只今致して居る次第であります
それから「ブレトン・ウッヅ」協定に參加する用意の問題でありますが、是は度々申上げましたやうに、日本も軈て國際經濟に自由に參加致す時期が參ると思ひます、其の場合には言ふまでもなく、「ブレトン・ウッヅ]協定に參加を致さなければならないのでありまして、現在日本の經濟の種々なる整理を急いで居りますのも、一面から言へば「ブレトン・ウッヅ」協定への參加の準備と見らるる次第でありまして、政府としては此のことを常に念頭に置いて施策致して居る次第でありますから、御諒承を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 栗山君、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=23
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024・栗山長次郎
○栗山長次郎君 質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=24
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025・山崎猛
○議長(山崎猛君) 原尻束君
〔原尻束君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=25
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026・原尻束
○原尻束君 協同民主黨を代表致しまして、極く簡單に要點のみを申述べて、貿易資金特別會計法に付て暫くの間關係大臣に質問を致します
第一點は商工大臣と農林大臣に質問を致します、今次世界大戰後、國際經濟の最も顯著なる動向として、「ブレトン・ウッヅ」協定等に見るが如く、世界經濟が一つのものとして意識的に運營される所の傾向がありまして、産業は或る程度世界分業的傾向にあるのでありますが、將來日本の産業計畫竝に貿易計畫は、此の世界的動向に對して如何なる觀察を下して居らるるか、政府の所信を質したいのであります
第二點は商工大臣と運輸大臣に質問を致しますが、今囘聯合軍が出來得る限り早く日本の貿易再開を許したいと云ふ意向は、國民の齊しく感激に堪へざる所であります、政府は其の場合日本の貿易機構をどう考へて居られるか、又どう云ふ形で貿易を行つて行かうとするのか承つて置きたいのであります、又船舶等は如何なる程度に用意があるか
第三點は大藏大臣、商工大臣へ質問致しますが、「ドイツ」でなくても、如何なる國でも、大戰後の「インフレーション」激化は、原則となつて居るのでありまして、世界戰爭史が之を證明して居ります、日本が果して此の原則を破ることが出來るかどうか、而も戰爭經濟から平和經濟への轉換期、即ち閉鎖經濟より開放經濟への移動期たる貿易再開の時期は、「インフレ」激化の契機となるのであるが、政府は十分なる自信があるか、又爲替價格に對する政府の見透しはどうか、又貿易の相手の國は何れの國々であるか
第四點は農林大臣、商工大臣に質問致しますが、國際貿易を再開する以上、貿易資金があつても頼りにはならないのであります、必ず輸入に對應する所の見返り物資の用意が必要であるが、此の見返り物資に對する所の政府の具體的用意を承りたいのであります、政府は農村工業として時計の製造を、又轉換工場には自動車の工業等を奬勵して居るやうでありますが、是が果して我が國の科學技術の程度に於て、「アメリカ」を初め他の國々と競爭が出來ると御考へであるか
第五點は農林大臣に質問致しますが、現在の所、輸入必需品として先づ第一に食糧を擧げなければならない、次に燐酸肥料の素である燐礦石、加里肥料、棉花、羊毛、砂糖、「ゴム」、石油、鐵、等々であります、見渡す所何れも絶對必要なものでありますが、此の中食糧だけは、肥料が十分に出來、科學技術の進歩が出來ましたならば、増産の餘地は十分あるのであります、見返り物資の不足して居る今日として、早急に此の食糧の自給自足の方策を要望するものであります、政府が打算的になれば、農民も打算的にならなければならない、農民が「ポケット」に算盤を入れて飛び廻るやうになれば、食糧の増産は覺付かないのであります、既に大都市附近の農民は、相當に功利的となつて居るのでありますが、政府の農民指導の方向の分岐點は、正に此の貿易上に於ける所の農産物取扱の方法如何にあると思ふのであります、之に對する農林大臣の所見を承ります
今一つは、食糧を他に依存する程辛いことはない、是は全國民が十分に體驗した筈であります、寧ろ自殺した方が宜いと言つて、自殺者が相當にあるのであります、國に三年の貯へなきは國其の國にあらずと言はれて居ります、是は戰爭とは別問題でありまして、生きんとする者の本能であるのであります、少くとも一箇年の食糧は、それぞれ貯へて置くことが本能に合する譯であります、蟻や蜜蜂も半年分の食糧は貯へて居るのであります、それは原始動物ではないかと云ふ説もありませうが、我々は文化人の眞似をして、現在の如き苦しみを強ひてせなけはばならないことはないのであります、農林大臣は、從來でも一千萬石の不足があつたから已むを得ないではないかと仰しやるでありませうが、それは從來農政を顧みず、農民の教養を顧みなかつた爲に、農業技術は原始的の状態を續けて居るのであります、一昨日も決議されました通り、科學技術の進歩の必要が茲にあるのであります、「アメリカ」合衆國が特別の恩情を垂れ下さつたことは、洵に國民として感銘して居るのであります
先日小田原に二宮尊徳先生の百六十年生誕記念講演會がありました、之に進駐軍の「インボーデン」少佐が見えて、其の時の講演の一部に曰く、日本に食糧が足らない時はいつでも送つて上げますが、日本には二宮尊徳先生の如き偉い方があつたのだから、此の教へに依つて、一日も早く日本が食糧自給の出來る國になることを期待して居ると言はれたのであります、我々は斯くの如きことを外國の人から指摘され、尚ほ國民は一人當り七畝十五歩の耕地を持ちながら食糧の不足と云ふことは、指導者として洵にお恥かしい話と言はなければならぬのでありますが、農林大臣は如何なる所見ありや(「ヒヤヒヤ」「同感々々」と呼ぶ者あり)
次は、總理大臣は御差支へで、御諒承願ひたいと云ふことでありますが、其の代りがなければ諒承が出來ないのであります、どなたか出來る方から御答へを戴きたいのであります、食糧自給自足の方針に關する本員の質問に對しまして、日本としては他日國權を囘復し、獨立を囘復した場合には、有無相通ずることに依つて足らざる食糧は補ふ云々と御答辯になつて居ります、是は尤もらしい御答辯でありまするけれども、此の言葉の中に、出來得る限り自給自足の方針ではあるがと云ふことで、食糧自給に對する所の積極性を見出すことを得なかつたことは、總理大臣が食糧増産を農民に要求される程度は斯くの如き程度のものかと考へられて、本員の頗る遺憾とする所であります、貿易の再開されんとするに當り、食糧自給自足の方針は、施政の根本方針に觸れるが故に、敢て總理大臣の所見を承りたいのでありますが、どなたか代理の方から必ず御答辯を御願ひします
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=26
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027・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 原尻君の只今の御質問に對しましては、大體に於きまして先程栗山君に御答へしたもので、貿易の根本に關することは御答辯とし得るかと思ふのでありますが、殊に日本の貿易の根本基調と言ひますか──是は總理大臣の答辯も兼ねたことにして置きますが、自給自足であつて欲しいのですけれども、餘りそれに囚はれては、今日は最早新憲法に依つて所謂「アウタルキー」政策を心配する必要はないのでありますから、假に一反の畑で以て小麥の穫れる量と、若し之に桑を植ゑて、其の桑に依つて生絲が二反分も三反分も取れるならば、私は寧ろ其の方が宜いぢやないか、斯樣な考へ方を以て、商工當局と致しましては、少くとも見返り物資をうんと稼いで貰ひたい、斯樣な考へを持つて居る次第であります、只今如何なる方針を以て貿易廳は進むか、貿易は只今殘念なことに國家管理的な、國營的なことをやつて居りますが、之を行く行くは外さなければならないと云ふことは、先程も栗山君に御答辯した通りであります、其の他「インフレ」對策、或は農村の問題に付ては、他の閣僚、或は政務官より御答へすることと思ひますけれども、商工當局と致しましては、特に此の貿易の振興に依りまして、さうして日本の不足したる物資、原料を入れまして、食糧にしろ、原料にしましても、うんと入れて貰つてこそ、そこに平和的な日本の將來の安全性があるのではないか、從來のやうな所謂軍國主義的な自給自足主義をやりますならば、そこに無理が起り、平和的でなくなるのであります、寧ろ原料を入れて下さいと云ふ所に、日本の將來の平和的安全性がある、私は先づ貿易の振興策と致しましては、其の考へを以て指導して來て居るやうな次第であります(拍手)
〔政府委員大石倫治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=27
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028・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 只今原尻君より農林大臣に御質問がございましたが、大臣は今已むを得ざる用事がありまして出席出來ませぬので、私より答辯を致したいと思ひます
農産貿易に關する用意ありや、又其の具體的説明を求められたのでありますが、現在に於きまして、貿易品として、又輸入見返り品として重要なる役割を持つて居りますのは、申すまでもなく生糸でございます、それに續いて茶であります、尚ほ戰前に於きましては水産物、或は蜜柑であるとか、其の他幾多の農産物が輸出せられて居つたのであります、隨て貿易が完全に復活を致して參りますれば、是等の點に付てはよく貿易廳とも協調をし、又農林省と致しましても大いに輸出品の奬勵増産を致して、其の目的を達したいと思つて居るのであります
次に食糧の自給策に關する御尋ねでありますが、固より國内に於て自給を致しますることは是も望ましきことでございます、併しながら國土の狹き我が國に於きまして、殊に海外より數百萬の歸還者を收容し、人口稠密、耕地少き斯樣な日本に於きましては、直ちに自給自足の途を講じましても、完全に之を達成することの出來ないことは、原尻君に於きましても能く御承知のことと存じます、唯御話の如く此の指導、所謂科學の進歩、或は肥料の増産、耕地の擴張、幾多の關係に依りまして、多年研究をし、それに對する對策が充實、確立致しますれば、必ずしも食糧の自給不可能なりとは申されないのでありますけれども、やはり從來とても外國より主要食糧の輸入を仰ぎまして、其の不足を補つて參つたのであります、殊に朝鮮、臺灣の如きを失ひましては、我が國が如何に科學力を用ひましても、或は肥料が充實致しましても、直ちに自足自給の實を擧ぐることは困難であると思ひますから、輸入食糧に對する見返り品の生産、是は最も必要でありまして、此の貿易と食糧とを睨み合せて、漸次我が國が安全なる國民生活の遂げられるやうに致したいと存ずる次第であります、從來或は農林省の計畫宜しきを得ず、指導宜しきを得ないが爲に、自給自足が出來なかつたと云ふやうな點に付きましては、或は戰爭であるとか色々な關係上、必ずしも完璧であつたとは申されませぬ、それ等の缺點短所は將來大いに補つて參りたいと存ずる次第であります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=28
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029・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 「インフレーション」に對する御質問の部分に御答へ致します、御質問に依りますと、戰後には「インフレーション」が起るのが原則である、「ドイツ」の場合の如き左樣であるが、我が國に於ては其の原則を破る自信があるかと云ふやうな意味の御質問であつたやうに思ひます、如何にも戰爭中及び戰後に於きまして、何がしかの「インフレーション」が起ると云ふことは、殆ど原則的な事實であります、併しながら非常な「インフレーション」が起ると云ふことは、必ずしも原則ではないと考へるのでありまして、第一次世界大戰後の「ドイツ」の場合も、一九二三年の一月に、若しも「ルール」占領と云ふ政治的事件が起らなかつたならば、あの天文學的數字の「インフレーション」は發生せずに濟んだらうと思ふのであります、一九二二年までは、「インフレーション」はありましたが、それは緩漫なものでありました、斯樣な譯でありまして、戰後に必ずしも天文學的數字の「インフレーション」が起ると云ふことはないと考へて居るのであります、日本に於ても現在既に「インフレーション」が戰時中から今日に掛けて起つて居るのであります、此の程度の「インフレーション」は既に起つたものでありますから、是は已むを得ませぬが、今後甚だしい「インフレーション」が起るか起らないかと云ふことは、いつも申上げます通り、今後の財政如何でありまして、若しも來年度の財政が非常な赤字になつて參ると云ふことでありまするならば、是は「インフレーション」が相當懸念されるのであります、隨て政府としましては、本年度の財政を實施致します場合に於ても、又明年度の豫算を編成する場合に於きましても、其のことを十分考へまして、甚だしき「インフレーション」が起るが如き財政處理は致さない覺悟で居りますから、隨て此の上の「インフレーション」は起らない、起さない、斯樣に確信して居る譯であります
尚ほ爲替相場に付ての御質問もあつたのでありますが、是はいつ國際經濟に自由に參加し、所謂「ブレトン・ウッヅ」協定に入るかと云ふやうなことは分りませぬが、蓋し左樣に甚だ遠いことではないと存じます、それまでに日本の國内の經濟を安定させ、物價を安定させると云ふことでありまして、今日の場合に於ては、物價は御承知のやうに稍稍最近下りつつあると思ひますけれども、さればとて日本の物價水準が何處にあるかと云ふこともはつきり致さない譯であります、此の物價水準がはつきり致しまして、さうして或る安定點を得ますれば、同時に又海外に於ける物價も──今「アメリカ」等に於ても動いて居ります、非常な強い動きをして居りまして、相當騰貴するのではないかと考へられるのであります、假に來年なら來年の或る時期に「ブレトン・ウッヅ」協定に參加する時期が來ると致しましたならば、其の時の日本の物價と、其の時の「アメリカ」其の他の外國との物價の比較に依つて、爲替相場は定まるのでありまして、それまで今日に於て、幾ら幾らの爲替相場と云ふことは、日本の事情の上からも申せませぬが、又海外の事情が定まりませぬから、はつきりしたことは申上げられませぬ、唯繰返して申しますが、日本の物價は今日の程度以上に甚だしく上らずに濟むものと考へて居りますから、爲替相場が何ぼに定まりましても、日本の國内經濟への影響は──其の時の爲替相場の如何に依りまして、日本の國内經濟に惡影響を及ぼすが如きことはないものと信じて居る次第であります、以上簡單でありますが御答へ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) 原尻君、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=30
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031・原尻束
○原尻束君 總理大臣の代理答辯として商工大臣がされたやうでありますが、其の御言葉の中に、食糧は輸入するから心配ないと云ふことで、私共農民指導の任に當るものは、非常に責任が輕くなりまして、有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=31
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032・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是にて質問は終了致しました、本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
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033・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名二十七名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=33
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034・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=34
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035・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第五、産業復興營團法案の第一讀會を開きます──星島商工大臣
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第五 産業復興營團法案(政府提出) 第一讀會
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産業復興營團法案
産業復興營團法
第一章 總則
第一條 産業復興營團は、經濟安定本部總裁の定める基本的な産業政策及び産業計畫に從ひ、産業設備又は資材の整備又は活用を圖り、以て産業の速かな復興を促進することを目的とする。
産業復興營團は、法人とする。
第二條 産業復興營團は、主たる事務所を東京都に置く。
産業復興營團は、主務大臣の認可を受けて、必要の地に從たる事務所を設けることができる。
第三條 産業復興營團の資本金は、二億圓とする。
第四條 政府は、二億圓を産業復興營團に出資しなければならない。
第五條 産業復興營團は、定款を以て、左の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名稱
三 事務所の所在地
四 資本金額に關する事項
五 役員に關する事項
六 業務及びその執行に關する事項
七 會計に關する事項
八 公告の方法
定款は、主務大臣の認可を受けて、これを變更することができる。
第六條 産業復興營團は、勅令の定めるところにより、登記しなければならない。
前項の規定によつて登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これを以て第三者に對抗することができない。
第七條 産業復興營團には、所得税、法人税及び營業税を課さない。
都道府縣、市町村その他これに準ずるものは、産業復興營團の事業に對しては、地方税を課することができない。但し、特別の事情に基いて、内務大臣及び大藏大臣の認可を受けた場合にはこの限りでない。
第八條 産業復興營團が第十五條第一號又は第二號の業務のため、不動産に關する權利の取得又は所有權の保存について登記を受けた場合には、その登録税の額は、不動産の價格の千分の一・五とする。
第九條 産業復興營團について解散を必要とする事由が發生した場合において、その處置については、別に法律でこれを定める。
「民法第四十四條、第五十條、第五十四條及び第五十七條竝びに非訟事件手續法第三十五條第一項の規定は、産業復興營團にこれを準用する。」
第十條 産業復興營團でない者は、産業復興營團又はこれに類似する名稱を用ひることができない。
第二章 役員
第十一條 産業復興營團に、役員として、理事長副理事長各一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
理事長は、産業復興營團を代表し、その業務を總理する。
副理事長は、定款の定めるところにより、産業復興營團を代表し、理事長を輔佐して産業復興營團の業務を掌理し、理事長に事故のあるときにはその職務を代理し、理事長が缺員のときにはその職務を行ふ。
理事は、定款の定めるところにより、産業復興營團を代表し、理事長及び副理事長を輔佐して産業復興營團の業務を掌理し、理事長及び副理事長に事故のあるときにはその職務を代理し、理事長及び副理事長が缺員のときにはその職務を行ふ。
監事は、産業復興營團の業務を監査する。
第十二條 理事長、副理事長、理事及び監事は、政府がこれを任命する。
理事長、副理事長及び理事の任期は三年、監事の任期は二年とする。
第十三條 理事長、副理事長及び理事は、定款の定めるところにより、主たる事務所又は從たる事務所の業務に關して一切の裁判上又は裁判外の行爲をする權限を有する代理人を選任することができる。
第十四條 理事長、副理事長及び理事は、他の職業に從事することができない。
第三章 業務
第十五條 産業復興營團は、經濟安定本部總裁の定める基本的な産業政策及び産業計畫に基いて主務大臣のなす指導及び監督に從ひ、左の業務を行ふ。
一 經濟安定本部總裁が定める方策に基く産業設備の建設及びその貸付又は賣渡
二 經濟安定本部總裁が定める方策に基く産業設備又は資材の買受及びその貸付又は賣渡
三 經濟安定本部總裁が定める方策に基く産業設備營團の所有する産業設備又は資材の貸付先又は賣渡先の決定
第十六條 産業復興營團は、業務開始の際、業務の方法を定めて、主務大臣の認可を受けなければならない。これを變更しようとするときも同樣である。
第十七條 産業復興營團は、毎事業年度の初において事業計畫を定め、主務大臣の認可を受けなければならない。これを變更しようとするときも同樣である。
第十八條 産業復興營團が第十五條に規定する業務を行ふため必要とする資金は、復興金融金庫から、その融資に關する規定に從つて融通を受けなければならない。
産業復興營團は、前項の規定にかかはらず、復興金融金庫の承認を受けて、復興金融金庫以外の者から資金の融通を受けることができる。
産業復興營團は、昭和二十三年四月一日以後、あらたに前二項に規定する資金の融通を求めることができない。
第四章 會計
第十九條 産業復興營團の事業年度は、毎年四月から翌年三月までとする。
第二十條 産業復興營團は、毎事業年度に財産目録、貸借對照表及び損益計算書を作成し、毎事業年度經過後二箇月以内に、これを主務大臣に提出して承認を受けなければならない。
産業復興營團は、前項の規定による承認を受けたときには、その財産目録、貸借對照表及び損益計算書を公告し、且つこれを定款とともに、各事務所に備へて置かなければならない。
第二十一條 産業復興營團が剩餘金を處分しようとするときには、主務大臣の承認を受けなければならない。
第五章 監督
第二十二條 主務大臣は、必要があると認めるときには、産業復興營團に對して、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、必要があると認めるときには、産業復興營團又は産業復興營團から産業設備若しくは資材の貸付を受ける者に對して、報告をさせ、又は當該官吏に、必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前項の規定により、當該官吏に臨檢檢査させる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す證票を携帶させなければならない。
第二十三條 産業復興營團は、役員の給與に關する規程を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを變更しようとするときも同樣である。
産業復興營團は、前項の認可を受けたときには、その旨及び當該規程の内容を公告しなければならない。
第二十四條 政府の、産業復興營團の役員が法令若しくは定款又はこの法律に基いてなす命令に違反し、又は公益を害する行爲をしたときには、これを解任することができる。
第六章 罰則
第二十五條 第二十二條第二項の規定に違反して報告をせず、若しくは虚僞の報告をし、又は檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを六箇月以下の懲役又は五千圓以下の罰金に處する。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務に關して第二十二條第二項の規定に違反して報告をせず、又は虚僞の報告をしたときには、行爲者を罰する外、その法人又は人に對しても前項の罰金刑を科する。
第二十六條 左の場合においては、産業復興營團の理事長、副理事長、理事又は監事は、これを五千圓以下の過料に處する。
一 この法律によつて主務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合においてその認可又は承認を受けなかつたとき。
二 この法律に規定されてゐない業務を行つたとき。
三 第二十二條第一項に規定する主務大臣の監督上の命令に違反したとき。
第二十七條 左の場合においては、産業復興營團の理事長、副理事長、理事又は監事は、これを二千五百圓以下の過料に處する。
一 この法律又はこの法律に基いて發する勅令に違反して登記をすることを怠つたとき。
二 第二十條第二項の規定に違反して、書類を備へて置かないとき又はその書類に不正の記載をしたとき。
三 第二十條第二項又は第二十三條第二項の規定による公告をすることを怠り、又は不正の公告をしたとき。
第二十八條 第十條の規定に違反して、産業復興營團又はこれに類似する名稱を用ひた者は、これを一萬圓以下の過料に處する
附 則
第二十九條 この法律施行の期日は、各規定について、勅令でこれを定める。
第三十條 産業設備營團法(以下舊法といふ。)は、これを廢止する。但し、産業設備營團の清算について、及び舊法廢止前に舊法に基いてなした行爲に關する罰則の適用については、舊法は、その廢止後もなほその效力を有する。
第三十一條 産業設備營團は、舊法廢止の時において、解散する。
産業設備營團の清算は、産業復興營團理事長が、その清算人となり、これを行ふ。
産業設備營團に、會社經理應急措置法又は企業再建整備法の規定を準用した場合において必要があるときは、準用した會社經理應急措置法又は企業再建整備法の規定につき、勅令で別段の定をなすことができる。
前二項に定めるものの外、産業設備營團の清算に關し必要な事項は、勅令でこれを定める。
第三十二條 政府は、設立委員を命じて、産業復興營團の設立に關する事務を處理させる。
第三十三條 設立委員は、定款を作成して、主務大臣の認可を受けなければならない。
前項の認可があつたときには、設立委員は、遲滯なく出資の拂込を稟請しなければならない。
第三十四條 出資の拂込があつたときには、設立委員は、遲滯なくその事務を産業復興營團理事長に引き繼がなければならない。
理事長が前項の事務の引繼を受けたときには、理事長、副理事長、理事及び監事の全員は、遲滯なく設立の登記をしなければならない。
産業復興營團は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三十五條 産業復興營團でない者で、この法律施行の際現に産業復興營團又はこれに類似する名稱を用ひてゐるものについては、この法律施行後六箇月を限り、第十條の規定を適用しない。
第三十六條 登録税法の一部を、次のやうに改正する。
第十九條第七號中「産業設備營團、」の下に「産業復興營團、」を、「産業設備營團法、」の下に「産業復興營團法、」を加へる。
第三十七條 印紙税法の一部を、次のやうに改正する。
第五條第六號の五の次に、左の一號を加へる。
六の五の二 産業復興營團の業務に關する證書帳簿
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〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=35
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036・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 産業復興營團法案の提案理由を御説明致します
戰後に於ける産業の速かな復興は、當面焦眉の急務でありますが、多年の戰爭經濟に伴ひまする民需生産の全面的な衰退、竝に廣範圍に亙る産業施設の戰災等に依りまして、當面緊要な生産の達成を圖りまする爲にも、産業設備の補修、改造、復舊、更新等、是が整備竝に擴充を急速に必要と致す實情にあるのであります、一面軍需産業等に殘存致して居りまする産業設備及び資材に付きましては、其の大部分が必ずしも未だ十分活用の途を講じては居ない現状でありまして、是等の設備、資材に付きましては、其の活用配分等の爲め、強力な操作を行ふことが必要と考へられます、然るに是等の設備資材の整備活用は、現下の經濟情勢下に於きましては、必ずしも企業の自發的な創意活動のみに俟つことを許さざる實情が見受けられるのでありまして、特に財閥の解體等に依る大企業の倒壞の後を承けまして、健全且つ清新な中小企業の出現を育成致しまする爲には、竝に強力なる産業振興の方途を講ずる必要があるのであります、仍て是が爲め一方に精密且つ果斷の政策及び計畫を策定致しますると共に、此の方策を擔つて産業設備の整備活用に挺身すべき機關を創設致し、以て必要とせられる産業振興方策の具體的な實現を期したいと存ずる次第であります
茲に提案致しましたる産業復興營團法案は、専ら右の趣旨を體しまして、戰時經濟の終結に伴ひ一應任務を完了致しました産業設備營團は、之を整理解散致しますると共に新たに之に代へて産業復興營團を設立致し、以て戰時補償特別措置法等、別に提案致しました一聯の特別措置に伴ふ經濟界整理の後を承けまして、産業の復興助成を圖らしめようとするものであります、即ち産業復興營團は、事業者に於て建設改修等を行ふことの著しく困難な産業設備を建設致し、之を適當なる企業者に貸付けて運營を行はしめ、以て生産の振興達成を圖りますると共に、經濟界の整理に伴つて、多量の放出が豫想せられまする遊休産業設備資材を吸收しまして、是が效率的且つ計畫的な配分を行ふ等、産業設備及び資材の綜合的な調整と其の活用を圖ることを目的とするものであります、産業復興營團の是等の業務は、經濟安定本部總裁の定めます所の基本的な政策及び計畫の線に從つて、専ら産業設備及び資材の面に於て、強力なる國家的機關として、政策の遂行に協力せしめることを目的として行はれるものでありまして、曩に御贊同を得ました所の金融面に於ける復興金融金庫の活動と相俟つて、戰後産業の復興に對する雙輪の役割を演ずるものと期待して居るのでありまして、本産業復興營團の出立と、其の實效のある活動の一日も早く開始せられることを希望致して居る次第であります、會期迫つた此の際に此の法案を出しまして洵に恐縮でございますけれども、御審議の上御協贊あらんことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=36
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037・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
─────────────────────発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=37
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038・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は政府提出、貿易資金特別會計法案委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=38
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039・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=39
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040・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第六、恩給法臨時特例案の第一讀會を開きます──入江法制局長官
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第六 恩給法臨時特例案(政府提出) 第一讀會
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恩給法臨時特例案
恩給法臨時特例
第一條 恩給法第十八條の規定の適用については、當分の間、同條中「百分の二」とあるのは、「二百分の一」、「百分の一」とあるのは、「四百分の一」、「二百分の一」とあるのは、「八百分の一」と讀み替へるものとする。
恩給法第五十九條の規定の適用については、當分の間、同條中「百分の一」又は「百分の二」とあるのは、「二百分の一」と讀み替へるものとする。
第二條 恩給法第五十八條第一項第四號の規定による普通恩給の停止については、當分の間同號の規定にかかはらず、恩給年額が千圓以上で、その恩給外の所得の年額が一萬圓を超える者について、左の區分によつて、これを行ふ。
一 恩給年額と恩給外の所得の年額との合計額が一萬二千圓以下であるときは、一萬一千圓を超える金額の一割五分の金額に相當する金額。但し、恩給の支給額は、年額千圓を下ることはない。
二 恩給年額と恩給外の所得の年額との合計額が一萬二千圓を超え一萬五千圓以下であるときは、一萬一千圓を超え一萬二千圓以下の金額の一割五分の金額と一萬二千圓を超える金額の二割の金額との合計額に相當する金額。但し、恩給の支給額は、年額千圓を下ることはなく、その停止年額は、恩給年額の二割を超えることはない。
三 恩給年額と恩給外の所得の年額との合計額が一萬五千圓を超え二萬圓以下であるときは、一萬一千圓を超え一萬二千圓以下の金額の一割五分の金額と一萬二千圓を超え一萬五千圓以下の金額の二割の金額と一萬五千圓を超える金額の二割五分の金額との合計額に相當する金額。但し、恩給の支給額は、年額千圓を下ることはなく、その停止年額は、恩給年額の二割五分を超えることはない。
四 恩給年額と恩給外の所得の年額との合計額が二萬圓を超えるときは、一萬一千圓を超え一萬二千圓以下の金額の一割五分の金額と一萬二千圓を超え一萬五千圓以下の金額の二割の金額と一萬五千圓を超え二萬圓以下の金額の二割五分の金額と二萬圓を超える金額の三割の金額との合計額に相當する金額。但し、恩給の支給額は、年額千圓を下ることはなく、その停止年額は恩給年額の三割を超えることはない。
第三條 普通恩給の年額又は一時恩給若しくは一時扶助料の金額は、當分の間、退職又は死亡當時の俸給の額にかかはらず、別表第一號表に掲げる給與俸給の額に夫夫對應する假定俸給額によつて、これを、計算する。
第四條 恩給法第六十五條の規定の適用については、當分の間、同法別表第二號表にかかはらず、別表第二號表による。
第五條 恩給法第六十五條の二の規定の適用については、當分の間、同法別表第三號表にかかはらず、別表第三號表による。
恩給法第六十五條の二第一項但書の規定の適用については、當分の間、同項但書中「十分の七・五」とあるのは、「十分の七・九」と讀み替へるものとする。
第六條 恩給法第七十五條の規定の適用については、當分の間、同法別表第五號表にかかはらず、別表第四號表に、同法別表第六號表にかかはらず、別表第五號表に、同法別表第七號表にかかはらず、別表第六號表に、同法別表第八號表にかかはらず、別表第七號表による。
附 則
第七條 この法律は、昭和二十一年七月一日から、これを適用する。
第八條 昭和二十一年六月三十日までに給與事由の生じた増加恩給(昭和二十一年勅令第六十八號第五條に規定するものを除く)若しくは傷病年金又は恩給法第七十五條第一項第二號乃至第四號に規定する場合の扶助料を受ける者には、當分の間、昭和二十一年七月分以降、その恩給年額の三十五割に相當する年額を支給する。
第九條 昭和二十一年六月三十日までに退職して、増加恩給又は傷病年金を受けた者が、再就職し、同年七月一日以後退職した場合に、恩給法第五十五條又は第五十五條の二の規定を適用するについては、當分の間、同法第五十五條第二項各號中に「差額」とあるのは、差額の三十五割に相當する額とする。
第十條 この法律の適用を受ける恩給の額の計算については、昭和七年法律第十三號は、これを適用しない。
第十一條 昭和二十一年勅令第四百三十五號附則第四項の官吏に、この法律を適用するについては、勅令で、特別の定をなすことができる。
第十二條 この法律の施行に關して必要な事項は、勅令で、これを定める。
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〔政府委員入江俊郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=40
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041・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 只今議題となりました恩給法臨時特例に關する法律案に付き、其の提案理由を御説明申上げます
終戰後の事態に即應致しまして、恩給法の規定を整備する爲に、曩に恩給法の一部を改正する法律案を本議會に提出し、既に其の協贊を經たのでありまするが、最近更に官吏俸給令、所得税等に改正が加へられました結果、是等に關聯のある恩給法の諸規定に付きまして、若干の臨時的措置を講ずる必要を生ずるに至つたのでありまして、茲に急遽此の法案を提出することと相成つた次第であります
此の法案に依りまして恩給法に特例を認めようと致しまする事項は、大略次の三點であります、即ち其の一つは、官吏俸給令の改正に依る本俸増額に拘りませず、一般恩給金額及び國庫納金額を、原則として從來の程度に止めようとするものであります、即ち今囘官吏俸給令が改正せられましたる結果、從來臨時手當、物價手當等の名目を以て支給して居りましたるものを、本俸に繰入れることと致しましたる爲に、本俸の増額を來すこととなつたのでありまするが、抑抑恩給の金額は、原則として退職當時の俸給を基準として定められ、國庫納金の額も、在職中の俸給を基準として算出することとなつて居りまする爲め、之を其の儘に致します時は、當然に恩給金額竝に國庫納金の額等に増加を來すこととなる譯であります、然るに財政的見地其の他より考へまするに、恩給の金額を俸給の増加に伴つて今直ちに當然増額致しますることは、どうも適當とは認められませぬので、是は今後の各種の情勢と睨み合せ、速かに檢討することと致しまして、此の際としては、引續き從來程度の金額を支給することに止めることと致しました、是が爲め恩給の基準となる退職當時の俸給に付きましては、假定俸給を設けることとし、同樣に國庫納金に付きましても、原則として從來程度の額を維持するやう臨時的措置を講じて居るのであります、唯監獄、警察職員及び國民學校等の教職員に付きましては、其の給與の改善に伴ひまして、國庫納金に關する從來の一般文官との差等を撤廢して、一律に文官竝みと致したのであります、此の法案の第一條及び第三條は、以上の點に付ての特例に關する規定であります
改正の度二點は、公務、傷病關係の恩給、即ち増加恩給、傷病年金及び公務傷病に起因して死亡した者の遺族に對する扶助料の増額の點であります、第一に述べました通りの事情から、一般的に恩給の金額を從來通り据置くことと致したのでありまするけれども、公務の爲め傷病に斃れ退官、退職した者、及び公務に起因して死亡した受給者の遺族に付きましては、昨今の會社事情から見て、一般の恩給受給者に比較して、其の生活上の苦痛は特に甚だしいものがあると考へられ、一般に恩給の金額改訂の時期まで猶豫することは洵に忍び難い事情にありますので、是等の恩給に限りまして、特に臨時増額の措置を講ずることと致したのでありまして、此の法案の第四條乃至第六條及び附則第八條が此の點に關する規定であります
改正の第三點は、所謂高額所得者の恩給停止に關する特例でありまして、現行恩給法に依りますると、恩給年額が千圓以上で、恩給外の所得が年に四千圓を超える者に付きましては、其の合算額の多寡に應じて、恩給年額の中一定の割合の金額の支給を停止することとなつて居るのでありまするが、恩給外の所得の年額を四千圓と致して居りまする現行法は、所得税法の綜合所得税の免税點が三千圓であることに照應して居るのであります、即ち此の所得の調査は、全國の税務署に於て行ふことになつて居りまする關係上、綜合所得税の免税點以下の所得者に付きましては、事實上調査が極めて困難になると云ふことに依るものであります、然るに最近綜合所得税の免税點が三千圓から一萬圓に引上げられることとなりました爲に、現行法の儘では四千圓以上一萬圓以下の所得者に付きまして、恩給停止の措置を講ずることが實際上不可能の状態となりましたばかりでなく、又斯かる免税點の引上を必要とする實質上の理由にも照應致しまして、恩給停止の所謂高額所得者の範圍に付き檢討を加ふることを適當と認めたのであります、仍て此の際多額所得者の停止は、恩給年額が一千圓以上で、恩給外の所得が一萬圓を超える者に付てのみ、之を行ふことと致したのであります、此の法案の第二條が此の點に關する規定でありまして、此の特例は、本年七月分以降の支給に付て適用することと致して居ります、以上が此の法案を本議會に提出致します理由の概略であります、何卒御審議の上速かに御協贊あらんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=41
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042・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=42
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043・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は政府提出、貿易資金特別會計法案委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=43
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044・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=44
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045・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第七、農林中央金庫法の一部を改正する法律案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──理事馬越晃君
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第七 農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年九月二十七日
委員長成島勇
衆議院議長山崎猛殿
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〔馬越晃君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=45
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046・馬越晃
○馬越晃君 本委員會に付託せられました農林中央金庫法の一部を改正する法律案の審議の經過竝に結果に付きまして御報告申上げます
〔議長退席、副議長著席〕
本案に付きましては、八月二十三日以後八囘に亙つて愼重審議致したのでございます、先ず劈頭農林大臣より次の如き要旨の提案理由の説明がございました、即ちそれに依りますと、此の改正の要點は四つでございまして、第一は蠶絲業の振興に資する爲め蠶絲業の會、蠶絲協同組合に對して金庫の出資者たるの資格を附與し、第二に長期年賦貸付限度に關する制限を撤廢して、農村に於ける生産力の向上に資し、第三に戰時金融金庫を貸付先より削除し、第四に農林水産業及び其の關聯事業を營む法人に對して中期貸付をなすの途を開いて、それ等事業の振興に資したことでございます
次に主なる質疑應答を申上げますと、次の如くでございます、先づ第一に農林金融のあり方に關して政府の所見が質されたのでございました、政府當局より、我が國農業及び農村の特殊性よりして組合金融の重大性を詳しく述べ、今後此の特性を益益發揮する如く指導致したい旨の答辯がございました、又農林中央金庫の民主化が論ぜられ、役員の政府任命の點、政府出資の點等に付て眞摯なる檢討が行はれたのでございますが、政府當局より、農林中央金庫の現機構の歴史的性格に付ての説明があり、是が改革に關しては、將來金融機構一般の改革に關聯せしめ、其の際に解決したき旨の答辯がございました、更に現在農林中央金庫の資金の地方還元が不十分である旨の質問がございましたが、之に對しては當局より、從來とても地方に資金の需要がある場合には、決して是への融通を抑へるやうなことはしなかつたが、將來は更に各方面と緊密なる連絡を執つて、地方に於ける生産力の發展、文化の向上を圖る爲に、積極的に融通なさしめるやうに致したい旨の答辯がございました、次に餘裕金の運用としての中期貸付に付きましては、愼重を期する要があるから運用委員會と云ふやうなものを設けては如何との意見がございまして、政府當局より、運用委員會の如き諮問機關の設置に付ては、其の趣旨に贊成であり、考慮したいとの答辯がなされたのであります、尚ほ中期貸付の貸付先に付ての質問があり、之に對しては、差當り農地開發營團、肥料會社、漁業關係法人を豫想して居るとの答辯がありました、最後に、本法案に關聯して肥料の生産事情に關して質問がございましたが、之に對して政府より、近く經濟安定本部に肥料に關する調査會を設置すること、本年度上半期の生産實績が豫定計畫に達しなかつたことは洵に遺憾であつて、將來生産確保に一層努力したい旨の答辯がありました、尚ほ詳細は速記録に讓ることと致します
續いて討論に入つたのでありますが、先づ日本自由黨を代表して坂本委員から、次の希望意見を附して原案に贊意を表せられました、其の一は、本改正に依る長期貸付を行ふに當つては、一般金融機關との間に摩擦のないやうに洋意すること、其の二は、役員の選任を、民主的に廣く人材を求める方法に改めること、其の三は、長期貸付に付ては擔保を徴する等堅實なる方法に依ること、以上であります、日本進歩黨を代表して苫米地委員から、次の希望意見を附して原案に贊意を表せられました、其の一は、餘裕金運用に對する制限が緩和されるに付ては、其の適正を期する爲め運用委員會と云ふやうな諮問機關を設けること、其の二は、先の見透し不明の新企業に對する投資は之を避けること、其の三は、役員の陣容を民主化すること、以上であります、日本社會黨代表の佐竹委員も、亦三點の希望意見を附して原案に贊成されました、即ち第一は、改正法に依る融資が適正且つ有効に行はれるやう、政府の監督を嚴にすること、第二は、肥料國營準備會を速かに構成し、國營の方向に向はしむるが如く措置すること、第三は、米價を速かに決定すると共に、是と均衡を得るやう肥料の値下を斷行すること、以上であります、協同民主黨を代表して米倉委員から、是も三點の希望意見を附して原案贊成の意見を表明せられました、即ち第一は、農林中央金庫に對する政府の出資金は全部民間團體に移讓すること、其の二は、役員の政府任命制を改め、組織員に依る選擧等に依つて決定するやう考慮すること、其の三は、復興金融金庫が肥料企業に對し投資するとすれば、中央金庫の投資に付ても、政府は復興金融金庫に對すると同樣の責任を持つべきであること、國民黨代表の野本委員からは、次の希望意見を述べられ、原案に贊意を表せられました、其の一は、中央金庫の運營の全般に民主的方法を採用すること、其の二は、農地制度の革新に伴ひ、自作農の育成發達の爲め、中央金庫の本來的使命の積極的發揮を希望すること、無所屬倶樂部代表北委員からは、次の希望條件を附して原案に贊意を表せられました、其の一は、役員の政府任命制を所屬團體に依る選擧制に改めること、其の二は、肥料會社に對する融資の如き、所屬團體以外への融資は、國家の要請に基くものであるから、之に對しては政府が保證すべきであること、其の三は、肥料會社への融資は、日本肥料株式會社を通ずる又貸しの方法を廢し、直接肥料工業會社へ融通すること、以上を以て討論を打切り採決を致しました所、全員一致を以て原案通り可決せられたのでございます、簡單ではございますが、以上を以て委員會の報告と致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=46
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047・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=47
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048・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
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049・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=49
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050・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=50
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051・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します
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農林中央金庫法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=51
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052・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決確定致しました(拍手)日程第八、ソ聯邦殘留同胞引揚促進に關する決議案を議題と致します、提出者の趣旨辯明を許します──提出者村島喜代君
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第八 ソ聯邦殘留同胞引揚促進に關する決議案(村島喜代君外二名提出)
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ソ聯邦殘留同胞引揚促進に關する決議案
ソ聯邦殘留同胞引揚促進に關する決議
九月二十六日マッカーサー司令部の發表に依れば、ソ聯邦管下に抑留中の兵士竝びに邦人の送還が十月より開始される旨承り、誠に暗黒より光明を得た感じが致します。
關係家族竝びに國民は、永い間どれ程此の報道に接する日を待ち佗びたことでございませう。ソ聯當局の好意とマッカーサー司令部の御盡力に就いては衷心より感謝の外はございません。然し靜かに考へますと、發表された數字に基く程度では、百數十萬以上の殘留兵士竝びに同胞の引揚が完了されますことは、幾年先になるか心許ない限りでございます。
依つて政府は更に一層誠意と努力を傾注し、關係諸國の格段の配慮を懇請し、極めて短い期間に於いて、總ての殘留者が祖國の父母や妻子のもとに歸還できまするやう最善の努力を拂はるべきだと存じます。
右決議致します。
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〔村島喜代君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=52
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053・村島喜代
○村島喜代君 私は只今各黨の共同提案として提出されました「ソ」聯邦殘留同胞引揚促進に關する決議案の趣旨辯明を簡單に致したいと思ひます(拍手)先づ案文を朗讀致します
九月二十六日マッカーサー司令部の發表に依れば、ソ聯邦管下に抑留中の兵士竝びに邦人の送還が十月より開始される旨承り、誠に暗黒より光明を得た感じが致します。
關係家族竝びに國民は長い間どれ程此の報道に接する日を待ち佗びたことでございませう。ソ聯當局の好意とマッカーサー司令部の御盡力に就いては衷心より感謝の外はございません。然し靜かに考へますと、發表された數字に基く程度では、百數十萬以上の殘留兵士竝びに同胞の引揚が完了されますことは、幾年先になるか心許ない限りでございます。
依つて政府は更に一層誠意と努力を傾注し、關係諸國の格段の配慮を懇請し、極めて短かい期間に於いて、總ての殘留者が祖國の父母や妻子のもとに歸還できまするやう最善の努力を拂はるべきだと存じます。
右決議致します。(拍手)
冬も間近になつて參りました昨今、殊に私共の日夜心を傷めて居りますことは、「ソ」聯邦管下にある邦人抑留者及び在留民の一日も早い引揚に關してでございます、親の子を、子の親を、兄弟姉妹の同胞を思ふ切なる情は、今更贅言を要するまでもないのでございます、最近全國津々浦々に於ける歸還促進運動の愈愈熾烈になつて參りましたことは、理の當然でございませう、幸にして總司令部「スポークスマン」の二十六日の聲明に依りますれば、「ソ」聯邦地區にある日本將兵竝に一般日本人送還に關する總司令部と對日理事會「ソ」聯邦代表部との間の協議は、二十六日「ソ」聯邦政府より本問題に關し總司令部と右の協議を行ふ權限を與へられたと云ふ、「ソ」聯邦代表「デレヴィヤンコ」中將よりの通告に依つて再開されたと云ふことでございます、更にA・P報道に依りますと、「ソ」聯邦政府は、二十六日對日理事會「ソ」聯邦代表「デレヴィヤンコ」中將に對し、目下「ソ」聯邦地域内に抑留中の日本人引揚問題に關して交渉を再開するやうに訓電を發したと云ふことでございます、之に依りますと、「ソ」聯邦と致しましては、東部「シベリヤ」の港から一箇月一萬人乃至一萬五千人、南樺太から七千人乃至一萬人づつを來月初めから開始する豫定のやうでございます、所で現在「ソ」聯邦管下に約百四十萬人の邦人が抑留されて居ると目されて居ります、只今申しましたやうな速度を以て致しましては、最小限度今後五箇年の歳月を要することとなりませう、是等の未歸還者の家族達の焦慮はどんなものでございませうか、昨今の冷氣を迎へます折柄、考へますれば唯涙あるのみでございます(拍手)それ故私達は誠意の限りを盡して、更に「ソ」聯邦の厚意に依り、今日までの各引揚同胞の歸還の速度と同樣の處置を願ふことが出來得ますならば、北方の曠野や、孤島にある者の家族は、嘸心が落著くことでございませう(拍手)政府は以上のやうな實情に格段の意を注いで戴きたい、さうして厚意ある「マ」司令部の措置に對しましては、感謝の意を表はすと共に、引揚者に對しましては受入態勢に十分力を注がれて、不平不滿のないやうに萬全の策を講じて戴きたいと思ひます(拍手)
一方遺家族に對する援護の手は、それは一應厚生大臣其の他の大臣の數囘に亙る答辯はございましたが、此の大臣の言明が末端にまで滲透致して居りますか否か、社會一般は甚だ疑問と不安とを抱いて居ることを能く御承知を願ひたいのであります(拍手)
最後に、再度私は血を同じく致します骨肉の熱情と、七千萬同胞の代表としての責任とから、此の歸還促進方を切に切に熱望致します次第でございます(拍手)簡單ではございますが、之を以て決議案を提出するに至りました理由と致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=53
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054・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是より討論に入ります、順次發言を許します──近藤鶴代君
〔近藤鶴代君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=54
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055・近藤鶴代
○近藤鶴代君 曾て平家物語を讀みました時、鬼界ケ島に唯一人殘された俊寛僧都の心境を思ひまして、どうしても涙の止まらなかつたことがございます、同じ罪を負うた同僚二人は、赦されて故郷へ都へ歸つて行きますのに、此の涯知らぬ荒磯に老ひ朽ちねばならないことは、何と云ふ悲慘な運命でございましたでせう、「ソ」聯、聯合國御當局の温かい御同情に依りまして、南から、中國から、續々と引揚げて還られます方々を迎へるに付けましても、今尚ほ生死の消息さへも分らない、北方に殘留する同胞の上を偲びまして、洵に腸を斷たれるやうな思ひが致すのでございます(拍手)
一部戰犯者を除きましては、大部分は軍閥陰謀の犧牲となつて、恐ろしい戰爭に驅り立てられた、洵に憐むべき人々でございます(拍手)終戰と同時に迷ひの夢から覺め、平和誠實の人類の一員として、正しい生活に入りたいと云ふ其の願望さへも果されず、今尚ほ異國の空に─夢を結ばなければならないと云ふことは、餘りにも痛ましい悲劇ではございますまいか(拍手)「シベリア」の冬が如何に激しく、千島の寒氣が如何ばかり堪へ難いものであるか、異域にある身の辛さを思ひます時、或は又引揚を終る日までに世を呪ひ、氣が狂ひ、癈人の運命を辿らなければならない者が出來るのではないかと云ふことに想ひ到ります時、胸も塞がる思ひが致すのでございます、敗戰の不如意の生活の中に、父が、母が、兄弟が、或は我が子が還つて居て呉れたならばと願ふ遺家族の氣持もさることではございますけれども、三年、五年、七年相見ぬ我が子、我が家、我が家族の上に樣々の思ひを馳せて居るであらう殘留者の心境を思ひます時、私は同胞引揚を開始されたと云ふ喜びと共に、其の完了の日が何時であるかと云ふことに、聊か焦燥を感じないでは居られないのでございます
戰爭抛棄を誓ひました新憲法の下に、全國民は五體を投出して懺悔更生に努力を致して居ります、而も「ポツダム」宣言受諾の其の瞬間から、戰爭はもう終つたのでございます、永久に終つたのでございます、全日本の母の涙を、妻の涙を、いぢらしい幼兒の涙を代表致しまして、世界の愛と正義とに愬へたいと思ひます、大地に伏して歎願致したいと思ひます(拍手)戰雲晴れた地球の上には、國際聯合の黎明の輝く人類の上には、一人でも怨みや呪ひが殘つてはならないと存じます(拍手)正義と愛との力に依つて、一日も早く總ての殘留同胞を俊寛の運命から救つて戴きたうございます、政府は此の際此の機會に、勇氣と信念を持つて、罪なき同胞を速かに祖國の家庭に歸らしむるやう最善の努力を拂はなければなりませぬ、至誠は能く岩をも貫く、私は茲に全身全靈を籠めて祈願しつつ、自由黨を代表致しまして心から此の決議案に贊成致す次第でございます
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=55
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056・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 澤田ひさ君
〔澤田ひさ君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=56
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057・澤田ひさ
○澤田ひさ君 私は社會黨を代表致しまして、本決議案に贊成するものでございます
洵に敗戰は歴史的な悲劇を生むものでございます、此の悲劇を身を以ちまして體驗致しましたものは、銃後を護りまする所の母であり、又妻であつたのでございます、世に燒野の雉子、夜の鶴と云ふ言葉がございますが、況して人間の母心は、這へば起て、起てば歩めの親心、愛しい可愛いで一人前に育て上げました其の子供を、又一家の杖とも柱とも頼みました所の其の夫を、往時の軍閥は必勝の信念を持たせまして、我々婦人の手から此の愛しいものの一切を奪ひ去つたのでございます、さうしてあの廣い戰域に於きまして、幾多の血を流し、幾多の犠牲を出しましたことでございませう、此の惱みは、夫を軍の場に立て、我が子を一線に送り出した者でなければ味はふことの出來ない、悲しみと苦しみなのでございます(拍手)
終戰になつて早や一年、各家庭に於きまして、此の思ひに依つて早く夫が歸らないか、我が子が歸らないかと待ち焦れる所の未復員家族は、どれだけ多數ありますことでございませう、私の息子も、一昨年の十二月其の最後の手紙を寄越しまして、以來杳として行方が分らず致しまして、生死の程さへ分らない次第なのでございます、洵に御恥づかしい話でございまするけれども、蟋蟀が鳴き夜寒を覺えまする此の秋になつて參りますと、我が子の上に思ひを寄せまして、半夜は涙に暮れる夜があるのでございます(拍手)此の母心、此の母の悲しい心を皆樣どうか御想像下さいませ、又妻に於きましては、夫が出征以來いたいけな子供を抱へまして、或は夫の老父母に仕へまして、さうして此の押寄せる生活苦と健氣にも鬪つて居られる次第でございます、別けて幼き子供が、近所隣のお父さんが歸つていらつしやいますと、母さん僕のお父さんはなぜ歸らないの、と泣いてせがまれる、其の幼兒の頭を撫でては、もう今直ぐよとは申しましたものの、どうすることも出來ない胸を抑へて居られる所の妻の心も、どうか御察しが願ひたいのでございます(拍手)斯く私達が叫びます中に、幾多の家族がございますか知れないのでございます、此の多數の未復員の家族の方々は、私達を通じ、或は議會を通じまして、一日も早く歸國せられまするやうにと、歎願が山と積まれて居る次第でございますが、別けて私達が、あの「ソ」聯に居られまする所の在留邦人及び軍人軍屬の越冬問題を考へますると、身も心も堪へられない次第でございます、茲に各政黨は、黨派を超えまして一致團結せられまして、是が促進運動に努力して戴きますることは、洵に未復員家庭と致しまして心強いのでございますが、どうぞ今後も皆樣、此の只今の團結の精神を御忘れなく、一日も早く歸國せられるやう、政府竝に聯合軍司令部に御努力を請願下さらんことを、遺家族に代りまして御願ひする次第でございます、私は茲に全國の未復員遺家族の思ひを代表致しまして、本決議案に贊成致しました次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=57
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058・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 大橋喜美君
〔大橋喜美君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=58
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059・大橋喜美
○大橋喜美君 去る二十四日、集團引揚孤兒が、幼き胸にそれぞれの遺骨を抱いて歸つて參りましたことに付きまして、私共はどんなにか戰爭の罪を憎まずには居られなかつたでせう、洵に此の度の戰爭は日本の大きな誤りでございました、此の犧牲者の數知れない悲劇に、私共は胸を幾度か痛めたことでございませう、皆帝國主義戰爭の生んだお氣の毒な犧牲者でございます、併し國民の大多數が、帝國主義の何であるか、資本主義の何であるか、侵略主義の何であるかを知つて居るでせうか、唯默々として平和の生活を切開かんが爲に、國内に又國外に營々として働いたのでございます、日本人は元々平和愛好者でございます、貧しい領土の上に、恵まれぬ環境と條件の下に、三伏までも額に汗して働く國民でございます、其の姿にどうして戰爭を好む民族の姿がございませうか、國民大衆の胸の中に宿して居るのは、平和愛好の精神のみでございます、其の平和愛好の精神を言ひ切るだけの強い自主性を持ちませぬでした爲に、又其の精神を指導する代表者がなかつたことが、今度の悲劇の因でございます、易々と軍閥の指導に依つて、望まざる方向に導かれてしまつたのでございます、素朴な國民の胸に宿るものは、平和愛好の精神だけでございます、民族主義の下に自由を取戻し、自主性を高めましたならば、再び此のやうな戰爭は繰返すことはないと思ひます(拍手)
多くの犧牲者を出し、總てのものを失ひました今は、精神的にも私共は總ての誤れるものを棄て去り、面目一新、總てを洗ひ去つて新たなる境地に立つて、純心無垢、無著無臭、絶對無の境地から精進しようとして居ります、さうして世界平和の先駈けとして、新たなる世界の希望と光明と幸福とを求めようとして居ります、戰後の深刻悲慘なる窮乏の中から、一刻も早く世界の先進平和國として起ち上らん爲には、凡ゆる鬪爭を排し、凡ゆる階級的對立を排撃し、總ての者が協調しなければならないのでございます(拍手)四分五裂した世の中を統一綜合しまして、魂のある、血の通ふ、生きた政治をしたいのでございます、謙虚にして勤勉な日本人の共同生活體として、相協力して愛の國、文化の國を作りたい、是が日本の母の切實なる願ひでございます、(拍手)其の願ひが、あの戰爭抛棄の宣言の憲法となつたものと思ひます、「ポツダム」宣言の中にも、日本の降伏後は日本人が祖國に於て平和的生活を營むことを許される旨が書いてあります、「アメリカ」に於ては、日本の此の精神を諒と致しまして、南朝鮮、中華民國、南方方面の同胞の引揚の爲に、絶大なる御盡力を下さいまして、思ひ掛けず急速に捗りました、私共は熱き感謝に暮れて居りますが、此の上は冬を前に致しまして、北方「ソ」聯領内の同胞の、一日も早き引揚を御願ひを致したいのでございます
私共は平和愛好の精神を世界の母に愬へまして、熱き同情に御縋りし、一日も早く引揚の完了致しますことを願つて居ります、吉田總理大臣を初め、閣僚の方々も、如何に此の問題に付きましては御心配のことかと存じますが、私共も共々に聯合軍の厚意ある處置を御願ひ致しまして、夜を日に繼いでも一日も早き引揚の完了を御願ひ致したいと存じて居ります、以上協同民主黨を代表致しまして、引揚促進の贊成の辭と致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=59
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060・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 田中たつ君
〔田中たつ君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=60
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061・田中たつ
○田中たつ君 私は此の同胞引揚促進に關する決議案に對しまして、國民黨を代表致しまして心より贊成の意を表し、併せて愚見を述べさせて戴きます
在外同胞引揚促進に關する決議案は、既に六月二十九日本院の院議に依り滿場一致にて可決し、其の後聯合軍司令部の、洵に同情ある人道的立場に立つての御取計らひに依り、「ソ」聯占預地に於ける同胞を除いては、當初の豫定よりも遙かに短期間に引揚を完了しつつありますことは、我が國民齊しく心より感謝の涙を捧げて居る所でございます(拍手)然るに殘念ながら「ソ」聯占預地に於ける我等の同胞は、百數十萬人の多數に上つて居りますのに、未だに引揚を見ないことは洵に遺憾なことと思ひます(拍手)而も終戰後再び襲ひ來る冬の「ソ」聯占預地に於ける酷寒は、日本にある者の到底想像の及ぶ所ではありませぬ、零下何十度と云ふ寒さの中に、私達の同胞は如何に暮すことでございませうか、世界は今や擧げて平和の恩恵に浴さんと致して居る秋、我等の同胞の、祖國を遠く離れた異境の空での辛勞を想へば、私共涙なくしては居られませぬ、幸ひに新聞報道竝に議會に於ける吉田總理の答辯に依りますれば、「ソ」聯占領地の在外同胞も、近く引揚が開始せられるとのことでありますが、政府に於ても、正當なる平和的主張には、何等顧慮することはないのであります、大いに積極的に、是等同胞の引揚が一日も速かに完了し、私達日本國民が一人殘らず、與に倶に手を携へて平和日本建設の大事業に邁進出來るやう、最善の努力を拂はれんことを此の際特に要望致しまして、私の贊成意見に代へさして戴きます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=61
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062・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 松谷天光光君
〔松谷天光光君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=62
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063・松谷天光光
○松谷天光光君 我々は戰災者として、裸一貫、丸裸で、飢餓と「インフレ」の嵐の中に放り出されたのであります、併し我々の此の毎日の苦痛にも増して、尚且つ更に一層の同情すべき環境に喘ぎつつある戰爭犧牲者は、鮮滿の曠野に取殘されて居る同胞の人々であります、既に聯合國最高司令部の厚意に依つて、南の島々からは、日毎に同胞が復員して居られまするが、如何なる理由でありませうか、「ソ」聯地域からは、復員も、邦人の引揚も、未だ開始されて居らぬ状態であります、其處に取殘されて居ります人々は、曾ての帝國主義的大陸政策の意圖を夢にも知らずして、之に踊らされた所の人々であり、或は否應なしに戰爭に驅り立てられた人々が、大多數を占めて居るのでありまして、是等の人々こそ、戰爭の挑發者でもなければ、敗戰の責任者でもなく、况んや戰爭を食ひ物にして金を儲けた人々でもありませぬ、此の人々こそ、名實共に戰爭の生んだ犧牲者であります(拍手)斯かる人々を長く異境に放置することは、我々の忍び難い最大の苦痛であります、それ等の人人は、千鳥の端に於て、或は滿洲の曠野に於て、斷腸の思ひを以て祖國の運命を憂ひ、出來得るならば一日も早く、否一刻も早く、祖國再建に雄々しく參加したいと焦慮して居られるでありませう、飜つて國内には、是等生死不明の同胞の家族の方々が、到る處の都市農村に充ち滿ちて居ります、さうして是等の人々は、親を思ひ、子を尋ね、兄弟を待佗びて、今や殆ど人生への希望さへも失ひ、中には一路死を選んで行かんとする母や子のあることを思ひますれば、眞に涙なしには語れぬものがあります(拍手)然るに去る二十六日「マッカーサー」司令部の發表に依りますれば、「ソ」聯地域からの送還に關する交渉が再開されたと云ふ吉報に接したのであります、將に來らんとする零下何十度と云ふ朔北の寒氣こそ、是等の人々の生命を左右する所の一大脅威であります、願はくば今日只今に於て、此の脅威よりの救出に萬全の對策を講じなければならないと考へるのであります、民主主義の基底は人格の尊重であります、我々は何千萬圓を費して建造した一隻の軍艦を失ふより、尊い一人の人命を失ふことをより悲しまねばなりませぬ(拍手)殊に今日に於きまして一個の人命を失ふことは、平和國家再建の礎を一つ失ふことであります、勿論民主國家の崇高なる理想、即ち基本的人權の尊重に對して早くより高度なる認識を抱いて居られます英、米、「ソ」聯、中華の諸國に依りまして、構成せられて居りまする對日理事會に於きましては、既に人道主義に立脚せられたる送還對策を、著々として實施せられつつあることを信じて疑はぬものではありますが、敗戰既に一年を經過致しました今日、未だに「ソ」聯地域からの送還が開始されて居らないと云ふことは、是は畢竟我々の誠意と熱意に缺くる所があることを自覺致しまして、更に一段と祖國の民主主義化の徹底に付て反省致しますと同時に、更に一段の熱と誠を加へ、心血を吐露致しまして、管理國理事者の理解と斡旋に對して愬へたいのであります、斯く盡すべきことを盡しまするならば、同胞救出の我々の悲願も、亦必ずや達成されることを固く信じて疑はぬのであります(拍手)私共無所屬倶樂部全員は、本決議案の目的達成の爲に全能力を傾注すべきことを茲に誓ふものであります、以上簡單ながら、無所屬倶樂部を代表致しまして、本決議案に贊成の意を表する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=63
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064・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本案に贊成の諸君の起立を求めます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=64
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065・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 起立總員、仍て本案は全會一致可決致されました
〔拍 手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=65
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066・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 此の際政府より發言を求められて居ります──幣原國務大臣
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=66
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067・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今此の決議案が成立致しました機會に於きまして、一言申上げたいことがございます
此の決議案の御趣旨竝に是の提出者、贊成者の方々が眞心を籠めて只今御話になりました御趣旨は、私は一々深い感動を以て拜聽致したのであります(拍手)南方地方に殘留致して居りまする我が官民は、近頃續々歸還致して參りまするのに、北方地方に殘留致して居りまする我が官民の歸還が大分遲れることになりました、他の南方地方よりは、今年一ぱいには此の引揚が完了する筈になつて居りまするに拘らず、北方地方は尚ほ著しく遲れるやうに見えるのであります、就きましては、其の殘留して居られる人の御家族、骨肉の方々が、日夜御無事を祈つて居られ、一日も速かに歸つて來られることを待佗びて居られる御心情は、私にも能く了解せられます、就きましては、何とかして其の目的が達せられまするやうに、政府も豫て心掛けて居たのでありまするが、近頃「ソ」聯政府當局の厚意に依りまして、此の北方に殘留して居つた人の歸還も、先づ一縷の光明が見えて來たのであります(拍手)併しながら是は只今仰せられました如く、既に發表せられたる人員の數だけに依りますと、此の歸還の完了が大分遲れるやうに見えます、之に付きましては私等は、皆樣の御述べになりました御趣旨がどうか徹底せられまするやうに、政府と致しまして出來るだけの力は盡す積りで居ります、最善の努力を致します、是だけ一言申上げて置きます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=67
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068・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是にて議事日程は議了致しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後四時五十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04919460930&spkNum=68
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