1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
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昭和二十一年八月八日(木曜日)午前十時二十六分開議
出席委員
委員長 稻田直道君
理事 伊藤郷一君 理事 左藤義詮君
理事 小池新太郎君 理事 森本義夫君
杉田一郎君 天野久君
菅原エン君 西山富佐太君
石川金次郎君 杉本勝次君
駒井藤平君 藤本虎喜君
井上赳君 近藤鶴代君
出席國務大臣
遞信大臣 一松定吉君
出席政府委員
遞信政務次官 中川重春君
遞信參與官 山村新治郎君
遞信事務官 渡邊音二郎君
遞信事務官 岡井彌三郎君
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本日の會議に付した議案
郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
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001・稻田直道
○稻田委員長 それでは是より會議を開きます、昨日の質疑に引續きまして、通告順に依りまして、杉本勝次君の質疑を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=1
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002・杉本勝次
○杉本委員 此の改正法律案が含む所の郵便貯金、簡易生命保險、郵便年金、此の三つの制度は、全國一萬三千餘の郵便局の窓口を通して、庶民階級の生活に深い係はりを持つものでありまして、其の社會的意義が重大であることは申すまでもありませぬ、此のことに付て先づ第一に私共關心事と致して居りました軍需補償の打切、或は在外投資の囘收不能に因る此の關係の損失額、又之を如何にして補填するか、其の影響を成べく預金者、契約者、加入者に波及させないやうにと云ふことに付ての、昨日左藤委員の御質問に對しまして、政府御當局の御説明は一應諒と致しました、唯其の御答辯の趣旨に付て感じましたことは、成べく此の預金者或は契約者に迷惑を掛けないやうにする爲に、又現在全國に亙つて電信、電話の復舊の爲には、此の遞信特別會計の收入だけでは、私は中々之を賄ふことが出來ないのではないかと云ふ感じが致しました、特別會計の性質からして、其の補填を一般會計に仰ぐと云ふことも、非常に困難であらうとは思ひますけれども、併し實際今日非常に破壞を受けて居る所の電信、電話の施設の復舊等は、此の特別會計自體の賄ひ得ない所であると云ふ風に私は實は感じました、昨日左藤委員の御質疑の後に、諄いやうでありますけれども、是等の點に付て一應遞信大臣から御説明を戴ければ幸ひであります
(委員長退席、左藤委員長代理著席)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=2
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003・一松定吉
○一松國務大臣 只今御質問の、最近御協贊を仰ぐことになつて居りまする金融措置、軍需補償打切等の關係が、成たけ簡易生命保險若しくは郵便年金、郵便貯金等の關係者に累の少く及ぶやうに、さうしてそれは庶民階級の生活を脅威することのないやうにと云ふ點は、昨日左藤委員の御質問に對しまして其の概要だけ私は考へを申上げて置いたのであります、此のことの詳細は何れ一兩日の中に御協贊を得べく、法律案として提案することになつて居りますから、それに依つて詳細のことは御諒承を願ひたいのでありますが、國庫の責任に於て郵便貯金、簡易生命保險、郵便年金と云ふやうなものが處理せらるるのでありますから、普通銀行の責任に比較致しまして、支拂能力と言ひますか、資産程度と言ひますか、さう云ふことが他の會社、銀行等に比較すれば確實でありまするが爲に、さう云ふ法律が出ましても民衆に及ぼす影響は至つて僅少であり、或は皆無であるかも知れぬ、斯樣に私は考へて居りますが、他の銀行關係、會社等は所謂負擔能力が、債權者に對して十分の支拂が出來ないとか、給付が出來ないとか、返還が出來ないとか云ふことに依つて、それ等關係者の債權者の地位にあります者は、甚大な打撃を受けることもあり得るのであります、國庫の責任に於て處理すべき立場にある遞信事務に關しまする債權者に付ては、さのみ損害は多大ではないと思ひますから其の邊は一つ御諒承を賜はりたい
今一つ電信、電話の復舊のことに付ての御質問のやうでありましたが、それは資材其の他の關係に於きまして非常なる損害を受けました今日、直ちに之を復舊して民衆の利便になるやうに、急速に處理すると云ふことは困難でありますけれども、二十一年度の豫算にも、さう云ふやうな復舊に關しまする資材の購入等に關しまする豫算も相當に計上してありまするし、又當局に於きましても出來得べき限りそれを急速に囘復し、整備して、民衆の爲に餘りに不利益にならないやうにしよう、斯う云ふ建前で今やつて居りまするから、左樣御諒承を賜はりたいのであります
それから通信特別會計と簡易生命又は郵便年金特別會計とは、是は別になつて居るのでありまするから、此の邊に付きまして詳細のことが若し御必要でありますれば、事務當局から御答へをすることに致さして戴きます、私の御答へと致しましては此の程度に止めますが、尚ほ必要でありますれば、事務當局から御質問の點に對する不足の點を答辯させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=3
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004・杉本勝次
○杉本委員 只今の御答へで十分であります
次に第一、第二封鎖預金の取扱ひが近く決定されるやうでありますが、此の第二封鎖勘定に入る郵便貯金勘定は大體どの程度に御見込でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=4
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005・岡井彌三郎
○岡井政府委員 昨日申上げましたやうな假定に立ちまして、郵便貯金が第二封鎖にどの位入るかと云ふことを御答へ申上げます、固より非常に莫大な口座を一々此の短い期間に調べると云ふことは不可能でありますので、大分に推計が入つて居りますことを豫め御諒承を願ひたいと思ひます、御手許に差上げて居ります郵便貯金法中改正法律案の要旨二十三頁に掲げてあります通り、郵便貯金の高額なものが非常に少いのでありまして、四千圓以上の額だけが千五百萬人、全體の〇・七七%となつて居ります、斯う云ふ風に高額預金者は非常に少ないのであります、それが若し昨日申しましたやうな三千圓を超すもの、而もそれが一世帶一萬五千圓以上、或は世帶員一人に付て四千圓以上、此の制限を超すもの、是だけが假に第二封鎖に入ると致しますれば、其の口座數約二十萬口座、金額に致しまして六億五千萬圓、一人に付きまして二口座以上を持つて居るものがありますので、此の點を考へますると、口座數に致しましては二十萬口座でありますが、人員に致しましては約十五萬人になる見當であります、さうして此の内には法人其の他の團體を含んで居ります、團體、法人などに付きましては色々特例が設けられることと思ひますので、本當の個人であつて第三封鎖勘定に入るのは、更に少くなる見込であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=5
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006・杉本勝次
○杉本委員 此の第二封鎖預金の中から一般の税金支拂は大藏大臣に於て認められるやに承りましたが、元來簡易生命保險或は郵便年金の掛金に付ては、特に第二封鎖の中から引出すことが出來ると云ふ風に、遞信省の方で大藏省に御折衝があつたのでせうか、或はさう云ふことは不可能でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=6
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007・岡井彌三郎
○岡井政府委員 未だ最後の所までは交渉をして居りませぬ今後御趣旨のやうな線に沿ひまして、大藏當局と交渉を進めて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=7
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008・杉本勝次
○杉本委員 次に外地からの引揚者が内地に持つて參つて居ります郵便貯金通帳の點に付てであります、此處に實例として持つて參りましたのは、京城から引揚げて參りました私の從兄弟が持參したのであります
〔左藤委員長代理退席、委員長著席〕
其の餘白數枚を全く鋏で切取つて居るのであります、是は數日前引揚者團體全國聯合會の方々十數名が議院に陳情にお出でになつた時に、斯う云ふ例は他にも澤山ありますかと聽いたら、是は非常に多いと云ふ御答へでありました、或は強奪とか其の他の被害を免れる爲に靴の中に入れて來るので、出來るだけ重量も厚みも減らす爲めであつたのであらうと思ひます、表紙は固より附いて居りますけれども、後の餘白其の他はすつかり鋏で切取つてあります、斯うした破損或は毀損した通帳は、再發行しないと云ふ遞信省の取扱ひのやうであります、私の從弟の話では、内地の分は再發行出來るさうでありますが、外地から持つて歸つた分は、原簿が外地にある爲に、内地に於ての再發行は不可能であると云ふやうになつて居るさうでありますけれども、之に依つて困つて居る預金者が非常に多いやうであります、之に付て私思ひ起しますことは、曾て大正十二年の關東大震災の時に當時の犬養遞信大臣は、通帳が燒失した其の預金者の申告に基いて、所謂無制限の信用拂出を斷行せられた、多少虚僞の申告に基くものもあつたかと思ひますけれども、恐らく犬養遞信大臣に於てもそれは覺悟の前で、之に依つての政府の受ける損失と、全預金者に與へる利益との「バランス」を比べて見て、利益の方が遙かに大きいと云ふ御考へを以てさうした非常の措置を御執りになつたものと思ふ、是は後世の歴史に殘る善政であつたと私は思ふ、今日非常に氣の毒な状態にある引揚同胞に對して、之に做ふ措置、善處方を遞信大臣に特に御願ひ申上げたいと思ひます、此の通帳の如きは金融機關に依つての財産申告の證書が貼附致して居りまして、財産税徴收の場合の對象になると思ひますが、此の通帳からは一文も引出せないと云ふことであります、隨て斯うした場合の取扱に付て、特に證書の再發行をすると云ふことになりますれば一番宜いと思ふ、若しそれがどうしても出來ないと云ふことになれば、一應財産報告として其の取扱をして居るものでありますし、而も其の通帳に依つて引出しが不可能であると云ふことになると、是は空の財産になつて居りますから、財産報告の訂正をすべきかとも思ふ、私の申したことは不十分でありますけれども、それに付て一寸御尋ねします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=8
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009・岡井彌三郎
○岡井政府委員 只今の御話は外地からの引揚者の郵便貯金通帳の再發行の問題でありますが、是は今御話にもありました通り、何分にも原簿が外地にありますので、外地との交通關係が全く杜絶して居る今日と致しましては、原簿と通帳を對照することが全然出來ませぬので已むなく是等の通帳の毀損防止等に對する再度發行を通牒致して居らなかつたのでありますが、御話のやうに段段陳情もありますし、事情を聽いて見ますと非常にお氣の毒な方が多いと云ふ點に鑑みまして、特例と致しまして、先月何日でありましたかから、是等の通帳に對しまして特に原簿と對照しないで、其の人を信用して再度通帳を發行して宜しいと云ふことを通牒致しました、郵便局に依りましてはまだ其の通牒が屆いて居ない爲に御斷りして居る向きがあるのではないかと思ひますが、軈て是が屆きましたら御要望の點は解消されるのではないかと思ひます (拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=9
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010・杉本勝次
○杉本委員 只今の御答辯に對して心から感謝の意を表します
次に貯金局保管の貯金通帳原簿は、戰時中各地に分散保管されて居りました、例へば東京局のものは仙臺市にと云ふやうに、安全地に移されて居つたと思ふ、それがまだ元の所に返つて居らないかと思ふのであります、其の爲めか今日原簿に基く手續が非常に遲れる、例へば戰災の爲に通帳を燒失したものは再發行して戴いて、さうして財産申告等もしなければなりませぬが、是等の燒失したと云ふ證明のある通帳の分は、私の了解する所では、來年度十二月までに財産の申告をすると云ふことになつて居ると思ふ、併し其の再發行が非常に遲延して居りまして、多くの人が通帳のない爲に現在申告出來ないで居るやうに思ふ、又勿論利子の計算の如きも不能であると思ふ、是は郵便貯金の業務の關係では、今日大きな問題であらうと思ふ、尚ほ斯うした原簿が全國に亙つて戰時中全く無事であつたかどうか、併せて御示しを願ひたいと思ひます、若しそれが揃つて居なければ、それはどう處置するかと云ふことも御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=10
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011・岡井彌三郎
○岡井政府委員 御話の通り戰時中戰災を避けます爲に、大都市の原簿を各地に疎開致しまして、未だに復歸して居りませぬものが相當ございます、是は終戰後直ちに復歸の方針を決めまして鋭意實現に努力致して居るのでありますが、何分にも大都市に於きまする受入態勢、廳舍、人員などが不十分な爲に、今日まで相當數未だ復元しないで殘つて居るやうな状態であります、殊に東京と云ふやうな大都市に於きましては、食糧事情の爲に一般の轉入を禁止して居ると云ふやうな情勢に鑑みまして、中々復歸が急速に參らないのであります、併しながら如何に事情があると致しましても、原簿を其の手許に置かなければ仕事が非常に遲れる、御話のやうな通帳の再發行も利子の記入も非常に遲れて、利用者に非常な御迷惑を掛けて居ると云ふことでは困るのでありまして、是等の澁滯事務を一掃致します爲めにも、先決問題として原簿の復歸を圖らなければならぬと思ひまして、現在著々努力致して居ります、それから戰災に依りまして原簿が安全であつたかどうかと云ふ點でございまするが、殘念ながら決して安全でありませぬでした、其の當時原簿が約二億位でありましたが、其の中の四千八百萬、二八%と云ふものが、遺憾ながら燒失致しました、郵便貯金關係に於きましては、其の原簿が中心になつて仕事が運行するのでありますから、急速に原簿を復舊しなければならぬと云ふことは、勿論のことでありまして、終戰後直ちに之に著手致しまして、原簿の復舊を急いで居りますが、何分にも今申しましたやうな、四千八百萬と云ふ厖大な數量であり、多數の人を要します、又紙も要ると云ふやうな關係で、未だ原簿の復舊は半ばにも達して居りませぬ、併しながら今後に於きましても、全努力を集中致しまして、略略來年中には全部復舊を完了致したいと思つて居ります、原簿が燒失致して居りますが爲に、公衆にどう云ふ御迷惑を掛けて居るかと云ふ點に於きましては、先程申しましたやうに色々の公衆からの請求が捗らない、遲延すると云ふ點が主たるものでありまして、其の他公衆の基本金、詰りそれが爲に貯金の拂戻が出來ない、或は利子が拂へないと云ふ關係がございますので、多少遲れるだけで、結局は原簿の外に證據書類も多少殘つて居りますし、又公衆から通帳を差出して戴きますならばそれに依つて原簿を作り、それに依つて利子の計算をすると云ふ便法を講じてやつて居りますから、申しましたやうに色々な請求が遲延する、是は非常に相濟まぬと思つて居りますが、其の他の基本的の權利に付きましては、聊かも御迷惑を掛けて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=11
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012・杉本勝次
○杉本委員 諒承致しました
次に新圓の預金は、銀行預金と郵便貯金等を全部合はせて、大體四十億と云ふやうに承つて居ります、此の四十億の中、郵便貯金はどの位ありますか、御伺ひを致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=12
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013・岡井彌三郎
○岡井政府委員 是も私の方の全くの推算でありまして、計算することが不可能であります爲に、想像を交へた計算でありますが、それに依りますと七月末の總現在高五百十三億五千萬圓の中、封鎖預金が四百七十二億圓、全體の九二%、自由貯金が四十一億圓、全體の八%、斯樣になつて居ります、只今御話の郵便貯金も民間貯蓄銀行の預金も合はせて、自由貯金で四十一億圓でございまして、それと照し合はせて見ますと、少し計算が合はない譯でありますが、是は或は私の方の計算間違ひ、想像が入り過ぎた結果ぢやないかと思つて居ります、其の點は惡しからず御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=13
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014・杉本勝次
○杉本委員 私が今申しました郵便貯金、銀行預金合せて四十億と云ふ數字は、確實なものでありませぬから、私の方が間違つて居るかも知れませぬ
次に先般遞信大臣から言明せられました給與の改善と云ふのは、特定局にも及ぶものであるかどうかと云ふことを御伺ひ申上げます、先般遞信從業員組合から提出しました要望書の中に、特定局の廢止と云ふ一項目があつたと思ひます、特定局は謂はば個人經營であります爲に、一、二等郵便局の官營なるものに比べて、其の雇傭關係の如きは、謂はば封建的なるものを多く殘して居る、隨て是等を總て官營に移すべしと云ふのが、組合側の要望であつたと思ふのであります、給與の改善は特定局に及ぶかと云ふこと、それから特定局の廢止と云ふ從業員組合の要望に對しての、政府の御所見を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=14
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015・一松定吉
○一松國務大臣 四十萬從業員の待遇改善問題は、御承知の如く七月十六日を以て無事に解決致したのであります、而して其の待遇改善の及ぶ範圍如何と云ふことに對しましては、特定局の從業員もやはり遞信從業員でありますが故に、勿論是は其の範圍に及ぶものである、斯樣に御諒承を賜はりたい
それから特定局を廢するや否やと云ふ此の問題に對しましては、成程御示しの如く從業員の待遇改善に關しまする人々が、書面を以て、口頭を以て之を廢すべきものなりとの上申をして參つたことは事實であります、併しながらそれは遞信省と致しましては、只今之を廢する意思はございませぬ、のみならず彼等の言ふ廢止の理由と云ふことは、多く特定郵便局の中で、或る者が横暴なことをするのだとか、或は從業員を下婢家僕の如く之を使ふのだとか、或はそれ等の者に對する待遇が菲薄であるとか、或は局長が搾取をするのだとか云ふやうな事例を擧げて居りますが、一萬三千のさう云ふ特定郵便局の中には、多少さう云ふものもないでもありますまい、でございますから、さう云ふやうな惡い點は、之を何處までも是正致しまして、所謂特定郵便局の美點、特徴を十分發揮して、此の遞信行政の爲に十分なる協力を要望すると云ふことが、遞信省の方針でありますからして、只今の所では之を廢止すると云ふやうな考へは持つて居らずして、寧ろ其の惡い所を是正して、益益立派に之を助長發展せしむる、斯樣な考へを持つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=15
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016・杉本勝次
○杉本委員 次に從業員の待遇改善の問題に關聯して御伺ひ致します、過日通信料金の三倍値上が決定せられ、既に實施せられて居ります、是は資材の値上りとか、或は待遇改善の爲の經費に充てると云ふことが、主たる理由になつて居つたと了承致します、私は其の節の郵便法の改正委員會に出て居りませぬから、又其の後十分調査を盡して居ると云ふ譯でもありませぬから、間違つて居るかも分りませぬが、先般の通信料金の値上と云ふのは、本年の三月分に遡つて實施せられた一般官吏の待遇改善の場合の、第一臨時手當の財源を作ると云ふのが、目的ではなかつたかと思ふのであります、然るに其の後六月に第二臨時手當があり、更にそれは七月案に繰入れられまして、先月からの本格的な給與の改善が行はれて居ります、此の財源も先般の通信料金の値上に依つて賄ひ得るものであるかどうか、或は再び料金の引上を行はねばならないやうなことになりはせぬか、此の遞信省運輸省と云ふやうな事業官廳としましては、どうしても事業の經營を經濟的な基礎の上に乘せると云ふことが必要であります、値上をしても此の經費に追付かないと云ふやうなことは洵に不健全でありますけれども、今日の此の非常な場合に於ては非常に困難なことだらうと思ふ、先程申しました債權の問題、先般の通信料金の値上に依つて、今後の待遇と云ふことは維持せられるものであるか、此のことを御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=16
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017・一松定吉
○一松國務大臣 問題は郵便事務の遂行の結果、得る利益に依つて從業員等を十分に賄うて行き、尚ほ餘裕があれば業務の改善の爲に之を使ふと云ふことは、是は理想であります、御承知の如く物價が段々上つて參りまして、從前の如き待遇では、從業員も生活を脅かされると云ふやうな状況にあります爲に、必然的に待遇改善を叫んで參つたので、さう云ふ點は當局と致しましても十分其の要求を諒と致しまして、何とかして之を救援して一層仕事の爲に勵精して貰ひたい、斯う云ふ意味から色々考案を運らしました結果、結局待遇改善はやらう、之に付ては給與の値上もやらう、それに付て要る費用は何處から出るかと云ふことに付きましては、郵便料金の値上もしなければならぬだらう、物價が今日のやうに高くなつて、昔のやうに郵便料金の安い時の生活の水準に比べて、今では物價が非常に上つて居る、隨て料金も今よりは安いからと云ふ意味に於て、御協贊を經て郵便料金の値上を致したのであります、六月まで是で略略賄ふことが出來ましたが、七月以後は是で果して賄ひ得るや否やと云ふやうなことに付ては、十分に實績が現はれて居りませぬから分りませぬが、出來るならばさう云ふやうにして見たいと思ふのであります、足りない所はやはり他の方法に依つて、例へば一般會計から借入るとか、或は公債等の發行に依つて之を賄ふと云ふことをしなければならぬと考へて居ります
今後再び料金を値上するか否かと云ふ點に對しましては、只今の所考へて居りませぬ、物價等の變遷に依りまして、或は生活が一層の困難に陷つたとか云ふやうな特別の事情でもありますれば、是は其の時に考へなければなりませぬが、今の所では、さう云ふやうなことは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=17
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018・杉本勝次
○杉本委員 遞信省關係從業員の整理の問題、遞信大臣に於ては人員の整理と云ふことを御考へになつて居りますかどうか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=18
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019・一松定吉
○一松國務大臣 御承知の如く、遞信事務が今日では各方面とも非常に澁滯を來して居りまして、民衆の著しき非難を蒙つて居るのであります、斯う云ふ時に其の遠き原因を突き止めて見ますれば、所謂人的資源の缺乏と云ふこともあつたでありませう、併し昨年八月十五日以後の復員と同時に、出掛けて居りました者も段々内地に歸つて參りました、さう云ふやうな有能の人も澤山今遊んで居ると云ふやうな實情でありますから、成だけさう云ふ人を採り入れて、さうして事業の改善と云ふことに働いて貰ひたい、一面にはどうも技術が拙劣であり、或は遞信事務に不適任な人であるとか云ふやうな人は、是は罷めて貰ひたいと考へて居りますけれども、直ぐに今是等の人を整理して、さうして更に彼等の生活を脅威すると云ふやうなことは、遞信省としてはしない積りにして居ります、唯併しながら冗員を國家が養うて居ると云ふことは出來ませぬから、是等の者を整理する方法と致しましては、例へば他に轉業するとか、或は自分から辭めるとか、或は死亡したとか云ふやうな者があれば、さう云ふものを補充せずして、さうして出來るだけさう云ふ合理的な方法に依つて人員の整理をやらう、斯う云ふことは考へて居りますが、今大量的に、或る官廳の如く是だけのものを直ぐに整理しなければならぬと云ふやうなことは考へて居りませぬ、のみならず、復員等に於て有用な人士は之を採り入れ、さうして此の仕事の爲に民衆に多大の損害を與へ若しくは不快を與へて居ることを排除しよう、斯う云ふ考へを持つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=19
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020・杉本勝次
○杉本委員 此の法律案は元は三つの法律であつた、其の三つの法律の改正をして、一本としたものでやると云ふことに付ては、法制的取扱として固より差支はないのでありますけれども、斯くすることが非常に便宜でありますか、一應御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=20
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021・一松定吉
○一松國務大臣 是は便宜と云ふこともありませうし、御協贊を經るに付て、斯う云ふ法案を別々に出して數囘の説明をし、數囘の委員會を開くと云ふやうなことよりも、斯う云ふやうに一括して、お互ひ牽聯のあることでありますから、一つの委員會に於て合併して御審議を願ふことが寧ろ便宜であらうと云ふやうなことの考へが一つ、それから斯う云ふ事例は今まで戰爭中に澤山——一つの法案で多くの法律を改正したりするやうな例が澤山ありました、それに依つて斯樣な取扱を致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=21
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022・杉本勝次
○杉本委員 郵便年金に付きまして、特別返還金の制度は止めると云ふことであります、斯う云ふ業務に私は素人でありますから間違つて居るかも知れませぬが、それは恩給の打切りとか、或は軍人遺族扶助料の打切りと云ふやうなものと同じ性質の、例へば軍關係のものであるから打切ると云ふやうなことでありますか、隨て關係方面の指示と云ふものが之にあるのでありますか、若しさう云ふ事情でないのであるならば、今日遺族等は非常に生活に困窮して居るのでありますから、さうした打切りを此の際すると云ふことは不適當ではあるまいかと云ふ感じを持つのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=22
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023・岡井彌三郎
○岡井政府委員 特別返還金を廢止致しましたのは、今後さう云ふ事例が起らない、詰り是は戰爭中の特例でありますから、今後さう云ふ事例が起らないと云ふことで廢止致したのであります、前の繼續中の年金に付きまして、之を廢止すると云ふ意味ではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=23
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024・杉本勝次
○杉本委員 了承致しました、それから郵便貯金の非常に便利な點は、最近四月以後少し變更されたと思ひますが、受付局以外に於ても自由に引出が出來る、此の四月から受付局以外の局では一世帶一箇月五百圓以内、斯う云ふ制限が付いたと思ひます、是は郵便貯金通帳を盜まれたとか云ふやうな場合の非常な危險——何處でも取れると云ふことであると、さう云ふ場合に非常に危險がありますから、さう云ふ危險を幾らか少くすると云ふ趣旨ではないかと思ふ、是まで盜難等不正な手段に依つて引出されたと云ふことは、どの程度のものが近年に於てありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=24
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025・岡井彌三郎
○岡井政府委員 御尋ねの最近に於きまする、貯金關係の犯罪數でありますが、手許に持つて居りまする資料は、爲替貯金併せた部外者の犯罪、其の詳しい内譯は持つて參りませぬでしたがそれに依りますと、昭和十六年度には人員に致しまして七百七十三人、金額に致しまして二十八萬四千圓、十七年度が六百七十二人の四十四萬二千圓、十八年度が一千二百六十二人の四十八萬七千圓、十九年度が五百十五人の八萬七千四百六十圓、斯うなつて居ります、傾向と致しましては部外者の犯罪も段々と殖ゑて參つて居りまするが、唯十八年度の千二百人に比べまして十九年度が五百十五名でありますから、半分以下に減つて居るので奇異な現象を呈して居ります、是は十九年度と云ひますと戰爭末期でありまして、非常に人員不足であるし、空襲に依り簡略な手續を到る處やつたと云ふやうな關係で、犯罪が假令ありましても、それを調査すると云ふことに多少遺漏がありました結果、是が發見が遲れて居る結果、此の統計が表はれたのではないかと思ひます、傾向と致しましては段段殖ゑて參つて居ります、二十年度以降はまだ統計が出來て居りませぬが、最近は非常に殖ゑて參つて居る状態であります、さう致しまして此の中の約半數と云ふものは、貯金通帳の竊取若しくは拾得に依りまして、貯金を詐取する犯罪になつて居りまするが、さうした關係から見まして、戰時中、全國何處ででも無制限に貯金を拂戻すと云ふあの制度は、公衆に對しましては非常に便利でありましたと同時に、非常に歡迎された譯でありますが、犯罪防止上から言ひますると、非常に困つたことでありまして、最近に於きましても各遞信局から、恐らく全國何處ででも無制限に拂ふと云ふことにした結果であらうと思ふが、どうも大口の犯罪が殖ゑて困るから何とか處置をして貰ひたいと云ふ要望がありますので、御話には四月とありましたけれども、七月一日から現に公衆に對しては折角の便利を又改めて取止めると云ふことで、不本意ではありましたけれども、已むを得ずやつたやうな次第であります、尚ほ是は事業の自衞上と云ふばかりでなく、預入者に取りましても、只今申上げましたやうに、犯罪の半分と云ふものは拾つたり盜んだり致しました貯金通帳に依る詐取でありますから、是は預入者自身に取りまして非常な迷惑だと云ふやうな意味で事業自身の自衞上と云ふことと同時に、預入者の保護と云ふ立場、兩方の觀點から致しまして現在のやうな制度に致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=25
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026・杉本勝次
○杉本委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=26
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027・稻田直道
○稻田委員長 それでは次はやはり通告順に依りまして、杉田一郎君に質疑を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=27
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028・杉田一郎
○杉田(一)委員 大體御提案になりました法律案に付きましては、是は殆ど論議の餘地のない、寧ろ事務的の問題と思ひまするので、私は簡單に二、三質問して見たいと思ひます、第一番に御伺ひしたいことは、此の事業委員會の構成でありまするが、只今配付になりました案を見ますると關係官吏の委員の數と云ふものが七名、是は餘りに多いのぢやないか、斯う思ひますのと、もう一つは此の遞信大臣の指定する團體が、簡易生命保險又は郵便年金の契約者の代表者として推薦した者と云ひますが、此の團體と云ふものは如何なる團體を指したものであるか、尚ほ此の團體の代表者が九名以内と云ふことでありますならば、一人でも二人でも宜いと云ふことになるのであります、是は何人と云ふことにはつきり限定した方が宜いと私は考へます、尚ほ學識經驗者と云ふことを言つて居られますが、此の學識經驗者は七名以内と云ふことになつて居ります、是は貴衆兩院議員の「バランス」から見まして、數が少し多いのぢやないか、斯う考へますので、寧ろ學識經驗者をもう少し減らしまして、貴衆兩院議員の方を多くすると云ふやうなことが適當ぢやないか、斯う考へますが、大臣の御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=28
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029・一松定吉
○一松國務大臣 御手許に配付致しました之にもありまする通り、是は勅令案でございまするから、あなたの御主張のやうに、之を一つ斯う云ふやうにしやうぢやないかと云ふことで、勅令ぢやないのですから、どうでも出來るのです、唯事務當局と致しまして、昨日左藤委員の剴切なる御質問がありました爲に、之を急遽作製して御參考に供したので、此の學識經驗ある者七名以内とありまするのは、貴衆兩院議員の七名の外にも、貴衆兩院議員で學識經驗ある者として是は採用することが出來るのみならず、今までして居つたことですから、今あなたの御説のやうに貴衆兩院議員に關係ある者を此の七人の中から四人なら四人を採つて、貴衆兩院議員が全部で十一人になると云ふことも出來ます、大概今までは、委員の選び方はさう云ふやうなことになつて居ります、だからして之を七人以内とするのを、もう少し少くして、貴衆兩院議員をもつと多くしてはどうか、それでも宜しいのです、要は唯此の委員會に依つて、昨日私が御答へしたやうに、預金者の爲に非常に不利益にならないやうに、又國家が斯う云ふ時には是だけの損害を蒙ると云ふことは、國家危急存亡の秋であるが故にと云ふやうな場合が、若しあつたと假定すればさう云ふ時には預金者の利害を外にしてでも、國家の爲に圖らなければならぬと云ふやうなことを決めるやうな、最も權威ある委員會に致したいのでありまするから、さう云ふ意味に於きまして、一方の爲に依怙贔屓するとか、一方の爲に不利益を圖つて、一方の爲に利益を圖る、さう云ふことをしようと云ふやうな人は、勿論此の中に選擇して委員になつて戴くと云ふことは好ましからないことであります、あなたの仰しやるやうに、此の七人以内と云ふのを五人以内でも宜しうございます、或は貴族院衆議院の人數を三人以内四人以内とあるのを、もう少し殖やしても宜しうございます、是は一つ事務當局と後で御懇談願へば、如何樣でも取計らひますから左樣御諒承を願ひたい、以内としたのは宜しくないぢやないかと仰しやいましたが、是はやはり以内の方が宜うございませう、合計三十人と云ふことで總數が決まつて居るのですから、此の三十人も三十人ときちんとするのでなく、三十人以内、時には二十八人の時もありませう、それを三人、四人、七人と決めて置くよりも、彈力性を持たして置く方が、委員の選定に於て都合が好い、斯う云ふ意味でしたので、是も如何樣にでも御相談に應じますから、更に御意見があれば御意見を承つて此の委員會で公式に決めて戴いても宜ければ、或は濟んだ後に懇談的に御話し下すつて決めても宜しい、如何樣にでも私共取計らひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=29
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030・杉田一郎
○杉田(一)委員 團體と云ふのは如何なる團體を指すのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=30
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031・岡井彌三郎
○岡井政府委員 先づ農業會、或は商業團體、工業團體と云ふ風な職能團體を之に致したいと考へて居ります、さう致しまして具體的にどう云ふ團體にするかと云ふやうなことに付きましては、是から簡易保險、郵便年金の加入状況と云ふやうなものを調べまして、其の他尚ほ各方面の御意見も聽きました上で、然るべき團體を決めたいと思ひます、尚ほ其の前に官廳側は多過ぎはしないか、官司が多過すぎはしないかと云ふ御質問でありましたが、私共の方と致しましては、此の官廳の中には關係官廳を一應網羅致したいと思ひまして、さう致しますが爲には、數が七名ありませぬとどうしても足りませぬので、斯樣に致したやうな譯でありまして、其の豫定して居ります官廳と致しましては遞信、大藏、内務、厚生、司法、農林、商工がそれぞれ各各の立場から致しまして、どうしてもそれ等の官廳の官吏が入つた方が都合が宜い、斯樣に信じましたが爲に之を網羅し、隨て其の數を七人と致したやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=31
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032・杉田一郎
○杉田(一)委員 大臣の御説明に依りまして諒承故しました、唯此の際一言申上げて置きたい、斯うした委員會の從來の構成方法から見ますると、動ともすると古手の官吏を起用したがる、さうしてそれに依つて自分の都合の好いやうな運營をして居ると云ふ傾きが從來あつたのであります、大臣に於かれましては非常に民主的な御方でありますから、さう云ふことは飽くまでも、少くとも此の事業委員會に於きましては、一般大衆の利益になるやうな、爲になるやうな方針の人選をなされることと思ひますけれども、從來の傾きはさうした傾向がありました、一つ是は釋迦に説法かも知れませぬけれども、念の爲に要望して置く次第であります、成べく之を不公平のない、本當に大衆的關係を持つ者から選んで貰ひたい、斯う云ふことを申上げて置きます、尚ほ私の御聽きしたいことは、昨日來の大臣の御答辯を聽きますと、此の遞信業務の改革と云ふことに對しましては、非常な熱意を御持ちであられます、此の熟意には私は昨日來實は敬服して居るのでありまするが、大臣の昨日の御答辯に依りまして、此の遞信業務の凡ゆる期待に對しましては、今少しの時日を籍して呉れと云ふやうな御話であります、併しながら大臣の熱意がどうあらうとも、現在の状況から見ますと、私は果して大臣の熱意が下一般從業員にまで何時徹底するか、今少しの間と申しますけれども、現在一般大衆の非難の的となつて居ります所の此の遞信業務の實状に對しまして、如何なる方法を以て大臣は之を改善整備するか、勿論物資の面もありますけれども、先づ以て從業員、人其のものの問題であると思ふのであります、現に昨日私の留守宅に郵便物の配達が集配人からありました、玄關を掃除した水の上に投げて行つたので、婆やが世迷ひごとを言ふと、威猛高になつて、それを約三十分に亙つて女ばかりでありましたから、まるで脅迫的言辭を弄して、玄關に水を打つて置くのが惡いのだと云ふことで、玄關に坐り込んで色色な文句を言つて居る、是は一端でありますけれども、實際さうしたやうな現在從業員其のものが、何か餘りに行き過ぎた社會的思想に捉はれまして、どうも甚だ荒んで居る、尚ほ私は是は自分としては大事な問題であつたのでありますが、南方から重傷を負つて歸還した伜が參りますので、何時に東京驛に著くと云ふ電報が向ふから來るのを待つて居つたのであります、所が昨晩の九時三十八分に芝局で受理して居りますが、目と鼻の先にあります私の家に、今朝九時少し過ぎであつたか、私の出掛けの時に配達になつた、電報は至急電報でありますけれども、今は夜分は配達しないことになつて居りますのかどうか、さう云ふことは恐らく私は夜分でも夜動手當をやつてちやんと其の人員が整備してあると思ふのであります、併し現實の事實に於てはやはり翌日の朝になつて、宜い按排の時に配達しよう、斯う云ふ風な面が一般大衆には非常に今怨嗟の的になつて居る、殊に私は簡易保險局の側に居りますから分りますが、先づ私がこちらに出て參りますのは九時ですが、電車から下りるあの從業員が大體九時頃は最高潮である、偶偶私が午前十一時半につい此の間歸りますと、十一時半にはぞろぞろとあの中の橋停留場から乘る、さうしますと、それは一つの例に過ぎないのですが、簡易保險局の從業員は出勤致しまして約一時間か一時間半しか仕事をしない、反面にはどうかと云ふと、待遇改善は人並に叫ぶ、是は嘘でありませぬから、若しお暇がありましたならば、一寸でも宜しいから、あの中の橋に行つて、十一時半に立つて居て御覽なさい、ぞろぞろと御歸りになる、而も私彼處に參りまして、さうして受付に竝んで居りますと、澤山竝んで居る、十二時までは仕事をして呉れるのかと思ふと、澤山の人を竝ばして置いて、十一時になるとぴたつともう扱ひませぬ、それならば前以て受付は十一時までですと云ふことを言つて呉れれば、何も十二時まで竝んで居なくても宜いのですが、十一時までだと言つて十二時、近くになつてから追ひ返してしまふ、斯う云ふ風な大臣の本當に昨日來の御答辯の御熱意に對しまして、而も從業員と云ふものは一つも其の意を酌んで居ない、是はどう云ふ所に起因するかと云ふと、或る課長級の者が私に言つた言葉に、從業員の色色な係の者が來て、今日は何々「メーデー」の相談會だから暇を呉れ、若しもやらぬと言ふと、五人も六人も押掛けて來て、理窟を言ふから、仕方なしに暇をやるのだと云ふやうに、上に立つ者が既に下の者に嘗められて居る、其の嘗められて居る原因は何處にあるかと云ふと、郵便物の遞送の其の袋の中に、馬鈴薯を入れて上の者が運ばせると云ふやうなことが原因して居るので、餘り壓力を加へられない、是は名古屋にありました事實であります、郵便遞送袋の中に馬鈴薯を入れて課長の所に運んで居る、斯う云ふことがありますから、上はどうしても下に對して苛酷なことが言へない、隨て是が段々鼬ごつこで上に行つて、結局大臣のあの昨日來の改善の熱意と云ふものが阻碍される、斯う考へます、就きましては大臣は是が改善に對しては今暫く時日を藉せと申しますが、どう云ふ決意を以て、どう云ふ方法を以てやりますか、一刻も早く大衆は是が改善を圖つて貰ひたい、勿論物資の面に於ては色々な問題がありますけれども、是は已むを得ないと致して、昨日來人的資源に不足があると云ふことを申しましたが、是も只今の御答辯で復員者も澤山あります、大臣は人員の大量馘首をしないと申されました、時局柄大臣の思ひやりと云ふことは酌みますけれども、併しながら現在の此の國家情勢から見まして、唯思ひやりを以てのみ是が改善されるものではないと考へます、就きましては結婚する者もありませうし、病氣になつて退職する者もありませうし、色々な都合で退職する者もありませうけれども、唯自然的陶汰に任せては、只今申上げたやうな從業員其の者に惡い傾向があるのでありますから、是は出來ませぬ、實際の面からするならば、現在義務を果さず、責任を果さずして、唯權利のみを主張すると云ふ此の惡い傾向に對して、大臣は寧ろ出勤、缺勤を嚴重にして、斷乎として義務を果さない者、怠る者に對しては、之を馘首する、所謂大量馘首にあらずして、其の者を馘首すると云ふことにして行つたならば、大臣の理想も實現するのではないかと考へますが、之に對する大臣の心構へを一つ御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=32
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033・一松定吉
○一松國務大臣 只今杉田委員の御質問は私は一々之を認めます、あなたの例を御引きになりました御宅に配達した郵便配達夫が、偶偶水撒きをして其の漏れた地面の上に郵便物を投げ込んで、さうしてそれに小言を言はれたからと云うて、二時間も坐り込んで膝詰談判をして女子供を馬鹿にして暴言を吐いたと云ふが如きことは、私は以ての外だと思ひます、さう云ふやうな者があるから、遞信省の信用とか威信とか云ふものをまるで沒却してしまふので、國民が遞信省に對して信任をしないと云ふことになるのであります、それを私は非常に殘念に思うて居ります、さう云ふやうな者は直ちに取調べて、適當な處分を致すと云ふことを茲にあなたに御約束を致します、そればかりではありませぬ、今あなたの仰せになつたやうな、何處其處の橋の所に立つて見よ、斯樣々々だと云ふことは、其の橋に限りませぬ、全國の出勤、退廳をする從業員等を調べて見るに、例へば八時の出勤時間であるのに、出勤時間を過ぎてのろのろ登廳して居る、或は十二時の退廳時間であるのに、もう十一時頃からぼつぼつ歸り支度をして居ると云ふやうなことは、實に不都合千萬だと私は思ふ、そればかりではありませぬ、出勤してそれから今度茶を飮み、新聞を見、或は官報でも見て、さうして居るとそれが十時、十一時になる、一寸机の上に何か仕事を出して十分か二十分かやつて、あとは雜談に耽つて歸ると云ふやうなこともあるやうに私は見受ける、さう云ふやうなことでは幾ら大臣が改善を圖らうとし、又局課長が之を是正しようとしても、中々是は出來ませぬ、勿論私が整理しないと云ふ意味は、さう云ふ者までも整理しないと云ふ意味ではありませぬ、今冗員があるからと云ふことで、唯冗員と云ふことを理由にして、直ぐに之を何萬人か、何千人か罷めさせると云ふことはしないと云ふことでありまして、今あなたの仰せになつたやうな、本當に業務に不熱心であり、遞信省の信用、名譽を傷つけると云ふやうな所業のある者に對しては、斷乎として之を處斷する、斯う云ふ決意を私は持つて居ります、私が今暫く藉すに時日を以てして戴きたいと申上げたのは、今日言うて今日から直ちに末端にまで私の趣意が徹底して、直ぐに是正出來ると云ふ譯ではない、今日さう云ふやうな處置に出ても、末端まで行くに付ては少くとも五日、一週間、十日は掛るから、さう云ふことが徹底浸潤した時に、初めて私の考へて居る效果が現はれるのだから、それまで御待ちを願ひたい、斯う云ふ意味で申上げたのであります、今あなたの例に御引きになりましたやうなことは、私をして言はしむれば、全國到る處にある、斯樣に私は睨んで居る、ですからして然らば之をどう是正するかと云ふことに付きましては、今あなたの仰せになりましたやうに、出勤簿とか退廳簿とか云ふものを調べて整理して、斯う云ふことに依つて勉、不勉を調査し、或は配達等に付ても、それが非常に速かに配達された、或は配達されなければならぬのに、數日間の時間を要したと云ふやうなことを、相當な調査の方法を設けて之を調査して、さうして信賞必罰の實を擧げて、此の信用の囘復を圖らう、斯う云ふことで私は今局課長諸君と膝を突き合はして斯う云ふ點に付て協力をし、相談をして之を實行に移すべく努力して居る、斯樣に申上げたのであります、左樣に御諒承を賜りたいと存じます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=33
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034・杉田一郎
○杉田(一)委員 只今大臣の御答辯を承りまして、私洵に感謝に堪へない所でありまして、もう一つ御聽きしたいことは——是は大臣でなくても構ひませぬ、特定郵便局の問題に付て先程同僚より御質問がありました、此の特定郵便局の問題に付きましては種々論議し盡されたと考へて居りますが、私は之を逆の方面から見て一つ質問して見たいと思ひます
第一に特定郵便局が請負制度であると云ふことの爲に、それが局長の一つの特權となつて、從來此の特定郵便局に勤めて居る者は、先づ以て生きた親爺の棄てどころと云ふやうな工合で、洵に薄給でも勤まると云ふやうな人間を網羅して居る、のみならず私は田舍でありますが、集配と集金とを同時にやる爲に、中々集配の方が巧く行かない、集配を巧くやらうとすると集金が巧く行かない、而もそれに對する一件何がしかの手數料は、殆ど其の三分の二は局長に壟斷される、聞いて見るとさう云ふ譯です、それで一箇年間の特定郵便局長の收入は、箪易保險竝に郵便年金の手數料、それから集金手數料竝に印紙、切手、端書、さうしたものの賣上から見て——表面では洵に少いのでありますが、其の實收と云ふものは町村に至りますと非常に多いのであります、是は大藏省關係になりまするが、何處へ行きましても特定郵便局に對する所得税と云ふものは私は日本一の脱税だと思ひます、殆ど是は限られた表面の局長の手當だけが載せられて居りまして、其の實所謂今申したやうな凡ゆる角度から入つて來る手數料と云ふものは所得に換算されて居ない、斯うしたことから、殊に此の特定郵便局長と云ふ者は地方に於ける素封家が多い、之に付きまして殆ど局長と云ふものは其の職に携はつて居るものはない、毎日事務員に任せ切りで、殆ど何も知らない、唯局に出て居るのは監督官が檢査に來た時だけ、其の時は唯御馳走すればそれで澤山だと云ふやうなことで、特定郵便局を廢せと云ふやうな問題もさう云ふ所から來て居るのではないかと私は思ふのであります、是は所謂特定局を設置して置くならば、もう少し遞信省としての監査を嚴重にする必要があると思ふ、今まで局長さんは先づ御馳走するだけが職務である、又地方に來る監察官と云ふものは、御馳走を食べればそれで濟むと云ふやうな傾向が全國的に行はれて居る、斯うしたことでは遞信業務の改善と云ふことは出來ないと思ひますので、斯う云ふことに付きましては一つ特段の改善を要求する必要があると思ひますので、此の點を御伺ひ致します、私の質問は甚だ簡單でありますが、以上を以て終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=34
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035・山村新治郎
○山村政府委員 只今の御意見洵に御尤もであります、特定郵便局の善さも惡さも、今までの仕來りに於きまして色々の點があつたと思ひますが、其の善さは十分活かしまして、只今御指摘の缺點等に付きましては嚴重なる檢査を致しまして、それが改善を心掛けて參りたいと思ふ次第であります、宜しく願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=35
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036・渡邊音二郎
○渡邊(音)政府委員 先程杉田委員から至急電報を深夜配達致しませぬで、翌日配達致しましたと云ふ事實を御指摘になりまして、大變恐縮に存じます、是は制度としては、至急電報は夜間と雖も配達することになつて居ります、事實を取調べまして、十分御注意の點は徹底させる積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=36
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037・杉本勝次
○杉本委員 此處へ持つて來て居ります、今朝配達になつたのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=37
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038・渡邊音二郎
○渡邊(音)政府委員 分りました、尚ほ電報の遲達誤謬の問題で、郵便法の改正委員會でも香川委員、天野委員から御小言がありまして、大臣からも熱心なる對策の御答辯があつたのであります、委員會の委員の言葉は出來る機會に全管内の從業員に通知してあります、郵便法の改正委員會の當日の審議模樣は「プリント」に致しまして、其のものを配りまして、もう恐らく近い管内の各局には要旨が全部到達して居る筈であります、尚ほ偶偶全國の遞信局管理部の電信課長及び電信關係者の會合もやりまして、大臣の政治的御立場も此の次の議會までに何とか致さなければ申譯ないのであつて、我々事務當局としても是非やりたいと云ふことを十分に徹底さして置きましたから、併せて御報告申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=38
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039・稻田直道
○稻田委員長 杉田委員、もう濟みましたか——次は石川金次郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=39
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040・石川金次郎
○石川(金)委員 先づ私は改正條文を中心として御伺ひしたいと思ひますが、簡易生命保險法中の改正案であります、貯金の最高限度を一萬圓としなかつた理由、どうして五千圓に切つたかと云ふ點を御伺ひしたいのであります、五千圓にした理由と致しまして、政府が此の要綱に書いてあるのを見ますと、物價が騰貴した、貨幣價値が落ちて來た、生活安定確保の爲に本來の制度の機能を十分發揮することが出來ないから五千圓に増額したのだ、斯う云ふやうに言つて居ります、一面又事業費の低減を圖る、其の爲に五千圓と限度を見たやうでありますが、若しも現在の經濟状態を見まするならば、最高をもつと一萬圓となさる方が事業費の低減にもなり、現在の社會状態にも合するものではないかと存じますが、五千圓と限度を切りました事情を御聽きしたいのであります、さうして獨占規定であります所の第二條を廢止したことが、民間業者の要請に應へたと斯う仰しやつて居るのでありますが、其の五千圓と限度を切りましたことに付きましても、民間業者から何等かの要求があつたのか、要望があつたのか、此の點を先づ御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=40
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041・岡井彌三郎
○岡井政府委員 御説のやうに、現在の經濟情勢から致しますれば、簡易保險を單に二千圓から五千圓に引上げたに止まると云ふことは不滿足である、もう少し上げるべきであつたかと思ひます、併しながら當局と致しましては、元來此の簡易保險と云ふものは庶民階級の小口保險であるとか、民間に於て營業政策上取扱ふことを歡迎しないのを取扱ふ、斯う云ふ趣旨に於きまして出發し、其の後も其の方針を踏襲して來て居ると云ふ譯でありまして、最高金額を引上げますることに依りまして民間の分野にまで侵入する、壓迫すると云ふことは制度本來の趣旨ではないのであります、隨ひまして金額制限引上に付きましては、固より其の時の經濟情勢に適應せしむると云ふことも大事でありますが、其の外に之に依つて民營事業を壓迫してはならないと云ふことも、已むを得ず考慮しなければならぬ次第であります、然らば五千圓なれば壓迫しない、假に一萬圓に致しますれば壓迫する、斯う云ふことが果して宜いかどうかと云ふ點になりますと、民營保險を監督致して居りまするのは御承知のやうに大藏省でありまして、隨ひまして民營に關する十分の資料を私共は持つて居りませぬ、故に壓迫するかどうかと云ふことに付きましては、主として大藏省の意見を徴したのであります、其の意見に依りますれば、民營の保險は最近に於て段々平均金額が高くなつて居る傾向にあるけれども、併しながら未だ二十年度に於きまする平均金額は八千五、六百圓である、平均が斯うでありますから、千圓以下の保險金と云ふものは、今に於きましても民間に於きまして續々契約をして居る、此の現状に照して、假に簡易保險が一萬圓になりました場合には民間に相當の影響がある、是では困ると云ふ大藏省の意見でありましたので、私共と致しましては遺憾ながら之を承服せざるを得なかつた次第であります、尚又もう一つの事情と致しましては、簡易保險は御承知の通り無審査であります、餘り金額が高くなりますと其の間に弱體者が入つて來る危險が相當あります、金額別死亡率、是の最近の統計は取つて居りませぬが、十七年度の統計に依りますれば、平均額四百圓以下八一%——八一%と申しますのは豫定死亡率に對する實際死亡率の割合であります、是が八一であります、それが六百圓になりますと百になります、千圓になりますと是が百四になる、斯う云ふ状況でありまして、金額が高くなればなる程死亡率が多くなると云ふことから考へまして、餘りに金額を引上げますれば死亡率が變つて參り、隨て計算の基礎に狂ひが出て經營上困ると云ふ問題もあります、併しながら此の問題は、五千圓になれば死亡率の點で安心だが、一萬圓になれば不安心だと云ふ的確な計數が出た譯ではありませぬが、常識上金額が高くなれば死亡率が上ると云ふことから、最高制限と云ふものは其の方面からも制限されると云ふことを申上げたのであります、さう云ふことから五千圓と致したやうな譯であります、民間から直接さう云ふ要望があつたかどうかと云ふ御尋ねでありますが、是は陳情書が參つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=41
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042・石川金次郎
○石川委員 最高限度を五千圓に高めますと、收支計算に依りますと三十億の保險料金が入つて來ると云ふことが現はれて居ります、此のやうな金が入つて參りますと事業を非常に擴張しなければならぬと思ひますが、此の事業の爲に人員を増加する必要はないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=42
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043・岡井彌三郎
○岡井政府委員 保險料が多くなると收入が多くなると云ふことは件數が殖えると云ふことではないのでありまして、件數は今まで通りと見積つて御參考に掲げてある數字が出て居るのでありまして、件數が殖えないに拘らず人を殖やすと云ふことはありませぬ、保險收入が殖えると云ふことの爲には、人員は増加致さない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=43
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044・石川金次郎
○石川委員 從來郵便局の局員などに是等の仕事を兼ねさせて居つたのでありますが、是は其のやうな方法に依つて、時間外の勤務などに依つて、保險及び年金の事業を運營されて行くと云ふ御方針ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=44
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045・岡井彌三郎
○岡井政府委員 保險、年金の取扱に付きましては、普通局に於きましては定員を配置して居ります、外交員と云ひますか民間の外交員、所謂募集して居る人でありますが、是も不十分でありますが配置して居りますから、勤務時間外に於てまで募集して行かなければならぬと云ふことは、制度上はないのであります、唯熱心の餘りと云ひますか、又目標額をどうしても達成する爲には、時間内だけ働いて居つたのでは出來ないと云ふやうな意味もありまして、時間外に於ても募集して廻つて居ると云ふやうな場合があるのではないかと思ひます、特定局に於きましては定員でなく取扱料を支給致して居ります、其の取扱料の範圍内に於て、局長の責任に於て、從業員を採用し、それに給料を拂つて募集竝に維持に從事させて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=45
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046・石川金次郎
○石川委員 次に保險金の削減期間の延長であります、延長致しました理由に依りますと、身體檢査をしないで加入せしめる、其の爲の危險防止の爲に延長するのだと云ふことになつて居りますが、之に對しては先程説明がありましたが、一年半を經過して二年までの間に死亡した率の統計がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=46
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047・岡井彌三郎
○岡井政府委員 只今是は拵へて居りませぬ、御必要でございましたら作成して提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=47
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048・石川金次郎
○石川委員 是は國民一般の保險でありまして、之を二年に延長致しましたのは、斯うしなければどうしても經營が成立たぬのだと云ふ、其の點をもう少し御説明願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=48
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049・岡井彌三郎
○岡井政府委員 從來に於きましては、昨日も申上げました通り、簡易保險事業は經營状態が良好でありました、年々相當の收益も出して居りました、それが爲に削減期間を一年半として、それ以上の死亡した人に對して直ちに全額の保險金を拂つても十分やつて行けたのでありますが、昨日申上げました通り、二十一年度に入りまして果然經營状態が非常に惡くなりまして、之を自然の状態に放置致しますれば二億七千萬圓赤字が出る、斯う云ふ窮境に立至つたので、出來るだけ經費も節約し又支拂ふべき金額も少くする、斯うしなければやつて行けない状態なのでございます、尚ほ二年に致しますのは今度が初めてではなく、ずつと前は暫くの間二年でありましたが、經營状態が非常に良好になりましたので、一年半にしても十分やつて行けると云ふので、途中で一年半に致したのであります、今囘更に經營状態が惡化して來たので、之を元に戻さうと云ふのであります、又民間の經營で簡易保險と似たやうな興亞保險、是は現在に至るまで二年となつて居ります、それとの權衡に於ても二年とすることは、決して不當ではなからうと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=49
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050・石川金次郎
○石川委員 二十一年の經營状態が非常に危險に陷つた爲めと云ふことでございますが、此の危險状態と云ふのは二十一年特有のものではないでせうか、二十二、三、四に於て更に平常の通り囘復するとすれば、是は二年に延長しなくても出來るのではないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=50
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051・岡井彌三郎
○岡井政府委員 是は本年限りの現象ではございませぬ、一番困難なのは勿論今年であります、來年からは多少餘裕が出來て參ります、餘裕と申しましても、赤字が少くなると云ふ意味の餘裕でありますが、今後少くも四、五年間は現在の赤字が黒字に轉ずると云ふことは遺憾ながらあり得ない譯であります、そこで此の四、五年經つて財政状態に餘裕が出來ました時には、一年半に之を還元すると云ふことも當然考慮しなければならぬと思ひますが、差當り此の四、五年はさう云ふ見込は遺憾ながらないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=51
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052・石川金次郎
○石川委員 其の點はそれだけに致しまして、次に年金制度及び簡易保險制度に新しく條項を加へ、既往契約内容の變更に對して、遡及して效果を及ぼさうと云ふ所の規定でありますが、八條の二、此の條文を活用して、現在既に簡易保險に加入して居ります者にも、遡源期間を延長させようと云ふ御考へがあるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=52
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053・岡井彌三郎
○岡井政府委員 遡源期間に付きましては契約條項變更の此の條文の適用はありませぬ、隨て既往の契約に付て、遡源期間を遡ることはありませぬ、それは此の附則に書いてある通り此の法律施行前の保險契約に付ては此の第四條の二、第八條、第二十三條第二項の改正規定に拘らず從前の規定に依る、之に依つて遡源期間に付ては既存契約に遡及しない、斯う云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=53
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054・稻田直道
○稻田委員長 石川委員に御諮り致します、尚ほ質問が十分以上ありますれば次會に御讓り願へませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=54
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055・石川金次郎
○石川委員 次會に致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=55
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056・稻田直道
○稻田委員長 それでは本日の質問は之を以て打切りまして、明日は午前午後を通じて成べく會議を開きたいと思ひますが、追て公報を以て御通知致します、本日は之を以て散會致します
午後零時六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00319460808&spkNum=56
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