1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
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昭和二十一年八月九日(金曜日)午前十時九分開議
出席委員
委員長 稻田直道君
理事 伊藤郷一君 理事 左藤義詮君
理事 森本義夫君
木村公平君 古賀太郎君
天野久君 菅原エン君
西山冨佐太君 石川金次郎君
杉本勝次君 駒井藤平君
井上赳君 近藤鶴代君
出席國務大臣
遞信大臣 一松定吉君
出席政府委員
遞信政務次官 中川重春君
遞信參與官 山村新治郎君
遞信事務官 渡邊音二郎君
遞信事務官 岡井彌三郎君
委員長の許可を得た出席者
遞信事務官 牧光雄君
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本日の會議に付した議案
郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=0
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001・稻田直道
○稻田委員長 それでは前會に引續きまして石川金次郎君の質疑を許します――石川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=1
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002・石川金次郎
○石川委員 引續きまして削減期間に付て御伺ひして置きたいのであります、此の削減期間を二年に延長することに依りまして、削減額がどう云ふことになりますか、從來でありますと
〔委員長退席、左藤委員長代理著席〕
一年未滿が掛込保險料金の全額、一年と一年半は保險料金の半額と承つて居りましたが、二年延長することに依つてどう云ふことになつて參りますか御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=2
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003・岡井彌三郎
○岡井政府委員 只今の御質問は、今までですと一年以上では保險金額は半分でありましたが、二年にした場合其の額は幾らになるかと云ふ御質問でありましたが、それは同じことでありまして、一年以上は二分の一と云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=3
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004・石川金次郎
○石川委員 一年と二年との間は半額、斯う云ふことですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=4
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005・岡井彌三郎
○岡井政府委員 さうでございます、序でに昨日御質問がありまして明日調べて申上げますと申上げた點に付て申上げたいと存じます、削減期間に於ける死亡率の點に付きましては、最近のは取つて居りませぬ、最近のは戰死が大分入つて居りますから、却て削減期間に關係して申上げることは不適當だと思ひますから、それを除いて昭和十六年以前の削減期間内に於ける死亡率の模樣を申上げますが、それに依りますと、豫定死亡率に對する實際死亡率の割合は、一箇月以内は四三、二箇月以内では六五、三箇月で七八と段々殖えて參りまして、六箇月では一〇〇になります、七箇月では一〇一、是も段段殖えて參りまして十二箇月では一〇五になり、一年六箇月に於きましては一年と略略同じで一〇四、それから二年に於きましては少し減りまして一〇一になります、それから二年六箇月に於きましては一〇〇になります、二年九箇月に於きましては九六、ずつと減りまして四年では九三、五年目になりますと九〇、さう云ふやうになつて居ります、是で見ますと契約してから暫くの間、半年ばかりの間では、却て一般の豫定死亡率に對し實際死亡率の方が下廻はつて居ります、是は面接監査の上で、此の人は病弱者ではない、外見上さう見てやりますから、當分は死亡率が少い譯でありますが、それが實際に段々と健康體でなかつたと云ふことが現はれて參りますのは、六箇月乃至二年半、此の間に段々死ぬ者が多くなつて行く結果斯う云ふことになる譯でありますが、是で見ますと一般の死亡率は、昭和十九年に於きましては九二となつて居りますが、それに對しまして二年六箇月が一〇〇であります、二年六箇月の間を削減期間と致しましても、或は餘り不當ではないかとも思はれますが、何か其の邊の所は其の時の財政情勢と睨み合して或は一年半にし、或は二年にしと云ふ風にやつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=5
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006・石川金次郎
○石川委員 今聽きますと二年でありますと一〇一、殆ど一〇〇%を幾らも超えて居ないのでありますが、此の表に基きましても削減期間を延長しなければならぬと云ふことにはならぬと思ふが、さう云ふ譯ではないのでありますか、殆ど一%しか上つて來ないと云ふことでありまして、一年半までは上がるのでありますが、一年半以降は寧ろ減少の恰好にあるやうに、表が出來て居るのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=6
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007・岡井彌三郎
○岡井政府委員 最高が一年經過した所でありまして、それから段々、下つて居ると云ふことは御話の通りであります、併し段々下つて居りましても、尚且つ一般の死亡率よりは上廻はつて居ります、一般の死亡率と申しますと、先程申しました九二であります、それで事業の經營上から致しまして、豫定死亡率より實際死亡率が上廻はると云ふことは是は困る點でありまして、それに對して何等かの豫防手段を設けると云ふことは、是は自衞上當然のことであります、一〇〇より上廻はつて居ることが一であらうと二であらうと、之に對して何等かの措置を講ずると云ふことは已むを得ないことかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=7
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008・石川金次郎
○石川委員 尚ほ聽きたいのでありますが、削減期間の延長の理由と致しまして、被保險者の身體檢査を行はない、其の爲に保險金の最高を五千圓に引上げると、多くの弱體者が加入して來る危險がある、そこで事業經營の基礎を安固にする爲にと斯う言つて居るのでありますが、併し現在に於ても加入者は告知義務の責任を負つて居るのでありますから、局員が面接して、只今局長が仰しやつたやうに面接監査の方法をやつて居りますれば、斯う云ふ點に於て防止出來得るかと思はれるのであります、若し斯う云ふ點を嚴重にして、既往の病氣が結核である、或は中風に罹つて居るとか、癌であるとか云ふやうなことが告知されることに依つて、大體削減期間を延長しないでも、現在の儘でも加入させるか加入させないかと云ふことに依つて、やつて行けるぢやないかと思ふのであります、此の告知義務と面接監査の方法を適當に行はれて、告知義務の責任を果させないで、單に二箇年に延長すると云ふことは當を得たものであるかどうか、今までの告知義務の責任を履行させるに十分であつたかどうかを御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=8
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009・岡井彌三郎
○岡井政府委員 固より御説のやうに、契約に當りましては面接監査をやります、さうして又告知義務を契約者に課して居ります、併しながらそれはどうしても定期診査と云ふことと比べましては不十分であります、斯う云ふ告知義務を課す、或は面接監査をする、是だけでは不十分でありまして、其の上に削減期間を設けると云ふことは、無審査保險に付きましては是は他の例に見ましてもあります通り、已むを得ない處置であると思ひます、之を延長しますと云ひますのは、五千圓に上げました爲に、弱體者が今よりも一層入つて來る危險があると云ふことも理由の一つでありますが、其の上に昨日も申しました通り、經營状態が非常に惡いからして、少しでも經營状態を樂にすると云ふ意味もありまして、旁旁斯樣に致した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=9
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010・石川金次郎
○石川委員 經營の状態を考へて削減期間の延長の理由としたと致しますならば、私達が簡易生命保險の積立金の状態から見てみますならば、削減期間を延長せずとも大丈夫かとも思ひますが、此の數字的根據はどこにありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=10
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011・岡井彌三郎
○岡井政府委員 成程御話の通り、積立金は現在簡易保險に於ても五十何億でしたかあります、併し是は正確な計算に依りまして將來保險金を支拂ふ其の金に充當する爲に積立てて置くべき金でありまして、之に手を付けると云ふことは許されない、保險經營上許されないことである、經營上使つても宜い金と申しますれば、保險料から正確な計算に依りまして見積つた積立金を積立て、其の殘りでやらなければならない、是が保險經營上の原則であります、其の殘りが今年は非常に少くなつて、普通の手段で其の儘やつて居りましたのでは、昨日も申上げましたやうに、二億七千百萬圓の赤字が出る、之を何とかして克服しなければならぬのでありまして、色々なことをやります、内部整理もやります、其の他今年の四月から新契約に對するものも減らして居ります、又此の法律が通過致しますれば、それに依つて過去の長期契約まで減らさなければならぬと云ふ状態でありますので、削減期間を半箇年延長致しまして、それからも多少とも餘裕を付け、剩餘金を生み出すと云ふことは、事業經營上と致しましても許されて然るべきだと私共考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=11
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012・石川金次郎
○石川委員 其の點に付てもう一點伺ひますが、商法の六百六十三條に「保險金額支拂の義務及ひ保險料返還の義務は二年保險料支拂の義務は一年を經過したるときは時效に因りて消滅す」と云ふやうな、時效規定と云つて居りますが、それに依つて國庫の收入が幾らになるか、それを財源にして行つても尚且つ削減期間を延長しなければならないのかと云ふことを承りたい、此の額は莫大なものであると思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=12
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013・岡井彌三郎
○岡井政府委員 時效は戰時中非常に人手が不足致した爲に、事實上此の規定に依つてやつて居ります、若し斯う云ふ方面での剩餘があると致しましても、それは勿論計算に見込んだ上で、尚且つ赤字が出ると云ふことでありまして、私共と致しましては剩餘金を利益配當する譯ではなく、或は外の通信の爲などに流用すると云ふやうなことでもありませぬので、剩餘金があればそれは加入者の利益の爲に使ふと云ふことになつて居るから、全體としては削減期間を延長致しまして、其の爲に一部の加入者に不利益になりましても、其の金額だけは全體として他の加入者に及ぶ、斯う云ふ風に御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=13
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014・石川金次郎
○石川委員 削減期間の延長は働いて居る階級から見ますと非常に不利益ぢやないでせうか、一年半を經過致しますと貰へる金が二年經たなければ貰へないと云ふことになる、斯う云ふ場合削減期間を出來るだけ短縮してやると云ふことこそ、斯う云ふ經營に於ける本當の任務かと思ひますが、さう云ふ國庫に歸屬すべき財源があるに拘らず、其のやうなものを見逃して、削減期間の延長に依つて事業の經營をして行くと云ふことは、果して健實な保險經營の方法でせうか、從來一般國民は國家のやる仕事は斷じて危險がないと信じてやつて居ると思ひますが、此の點如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=14
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015・岡井彌三郎
○岡井政府委員 議論になつて恐れ入りますが、是は善意の加入者が過失に依つて其の債權を行使することが出來なかつたと云ふものでありますから、之を見逃すと云ふことは敢て不當ではないと思ひます、一方に於て削減期間内の死亡者に對して、保險金の全額を支拂はないと云ふことは保險契約者全體の利益の爲にどうしても必要であります、中には惡意を以て、自分は健康が惡く一年位で死ぬかも知れないと云ふことで、加入する者も相當ある譯であります、殊に金額が二千圓から五千圓に上りました此の機會に於て、さう云ふ者が簇出すると云ふことになりますと、是は他の善意の契約者に不利益を及ぼすと云ふ結果になります、それから削減期間内に於ける死亡に對して全額を支拂はぬと申しましても、是は勿論災害に依る死亡、傳染病に依る死亡などに對しては拂ふことになつて居りますので、假令半年延長致しましても、是が爲に契約者が困る、契約が少くなると云ふやうなことは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=15
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016・石川金次郎
○石川委員 此の削減期間の點は先ぞ保留して置きまして次に年金及び簡易保險、共通になつて現はれて參りました契約條項遡及の規定でございます、二十八條の二、年金に於ては二十二條の二でございますが、之に付て伺ひたいと思ひます、將來既存契約の效力をも變へるであらう斯う云ふ一つの制度は、可なり重大な制度だと思ふのでありますが、政府は將來簡易保險及び年金保險契約の内容を、どう云ふ既存契約の事項を變へなければならないのか、之に付てどう云ふ豫定をせられて居るか伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=16
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017・岡井彌三郎
○岡井政府委員 只今豫定して居りますのは、簡易保險に於きましては長期還付金であります、是は民間保險に於ける所謂利益配當に相當するものであります、郵便年金に於きましては長期年金の滿期返還、是だけでございます、それ以外は只今全然豫想致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=17
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018・石川金次郎
○石川委員 それを是正しなければ、所謂保險團體が經營出來ないと云ふ程度までになつて居るのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=18
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019・岡井彌三郎
○岡井政府委員 其の通りでございます、昨日も申上げました通り、簡易保險、郵便年金保險の積立金七十五億圓の中、五億三千四百萬圓と云ふものが海外投資になつて居ります、是は恐らく全額喪失の運命にあります、若し喪失されないとか、或は一部の喪失で濟めば是は結構でありまして、強ひて今申上げましたやうな手段は取らなくても宜いのでありますが、恐らく是は駄目になるかと思ひます、駄目になつた曉に於きましてはそれだけ穴が空く譯でありますが、是の補填策と致しまして是だけの不利益は契約者に忍んで貰はなければいけないと思ひます、斯樣な譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=19
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020・石川金次郎
○石川委員 さうすると政府が此の點に關して保險團體の損失は、個々の加入者の利益、個人利益と云ふものが犧牲にならなければならぬ、期う云ふ考へ方に立つて居る譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=20
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021・岡井彌三郎
○岡井政府委員 其の通りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=21
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022・石川金次郎
○石川委員 私はさう云ふ考へに贊成であります、私の考へ方は贊成でありますが、併し保險契約に於ける、或は年金契約に於ける所の權利は、申上げるまでもなく是は債權契約であります、片方の加入者から見れば債權、一つの財産權であります、財産權を侵さないと云ふことは、今度の新しい憲法で明瞭になるやうでありまして、侵す場合には法律で以て規定するのだ、此のやうに規定して居るのでありますが、此の一つの加入者の債權、所謂財産權を減縮する、財産價格を減少する、斯う云ふ時に於て政府の一方的な御考へに於て、一方的な行爲に於て之を減少することは妥當でせうか、之を一つ御伺ひ致して置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=22
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023・岡井彌三郎
○岡井政府委員 固よりさう云ふ權利を、政府の一方的行爲で變更すると云ふことは妥當でありませぬので、今囘の法律に委員會の議を經て變更することが出來ると云ふ二十二條の二、二十八條の二、是の改正案を出した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=23
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024・石川金次郎
○石川委員 法律を見て參りますと、加入者の持つて居ります債權、所謂財産權はどのやうな變更を受けるかと云ふ限度は示されてなくて、此の事業委員會に任して居る、其の事業委員會が此の債權内容を變更して行く、斯う云ふ規定になつて現はれて居るのであります、非常に明確を缺いて居るのであります、而も此の財産の切捨てが、一番弱い勤勞者階級に向つて來たと云ふことは、是は甚だ私達は意に充たない心外な點があるのであります、若し局長の仰しやるやうに、已むを得ざる事情で法律に依つてやるならば保險契約、年金契約に於ける斯う云ふ從來の契約の或る點はいかぬと云ふことを、法律を以て明示すべきである、委員會に依つて將來非常な程度之をやると云ふことはどう云ふものでせう、其の點を御伺ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=24
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025・岡井彌三郎
○岡井政府委員 是亦議論になりまして恐れ入りますけれども、個々の加入者に取りましては損失でありますが、全體の加入者、保險團體の爲には、結局利益になる、それをやらなければ經營が出來なくなり、收拾が付かなくなると云ふ結果になるかも知れませぬから、それを救濟する爲にやる、斯う云ふ實質論からと、それからもう一つは、是は既に保險業法にもさう云ふ立法例がありまして、保險業法の第十條であつたと思ひますが、それにやはり大藏大臣の認可を得まして、定款其の他契約條項を變更することが出來る、斯樣な規定があります、さう云ふ立法例なども參酌致しまして、法制局其の他の關係の向きとも相談致しまして、敢て斯う云ふことは不適當でない、宜しいと云ふことでやつた譯であります、御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=25
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026・石川金次郎
○石川委員 保險團體全體の利益と云ふ名前に於て、個々の加入者の權利を縮減して參ります時には、是より以外に手がないと云ふことでなければならぬと思ふのであります、是より以外に手がないのかどうか、後で會計を整理して見まして、是れ以外に手があつた、斯う云ふ方法があつたのだと云ふことになりますと、是は勤勞階級の爲に、大變氣の毒なことになります、是れ以外に斷じて手がないかどうかと云ふことを承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=26
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027・岡井彌三郎
○岡井政府委員 是れ以上手があると致しますれば、それは保險經營内部のやり繰りでは、是は絶對にやつて行けないと云ふことは、今までも繰返し申上げた通りでありまして、此の上は一般會計から補償するより方法がない、所が現在の保險特別會計に於きましては、一般會計からの繰入れと云ふことは謳つて居りませぬ、以前はありましたけれども、途中に於て此の規定が除かれて居ります、でありますから形式上是は出來ない、併し實質的に考へまして、斯う云ふ豫想しない經營上の困難を救濟する爲に、改めて法規を改正して、一般會計から補償するやうにすれば、宜いではないか、斯う云ふ議論が生れて參る譯でありますが、之に對しましては、是れ亦實質的に考へまして、大體保險契約と云ふものは、是は任意の契約であつて、さうして政府は其の收入を以て支出を賄ふと云ふことが原則であります、でありますから加入者に對して非常な損害を及ぼすと云ふことでありますれば、是は勿論一般會計からの補償と云ふことも問題になりませうが、少しばかりの利益侵害、長期還付金に致しますれば、平均一契約に付て二十圓そこそこであります、此の位な損失なら一般會計からの補償と云ふやうなことをして特別會計の方を改正することなく、忍んで戴けるのではないだらうか、民間事業に於きましては、長期還付金に相當致しまする利益の配當金を疾に廢止して居りますのみならず、保險金額の削減と云ふことにまで及ぶかも知れないと云ふことまで言はれて居りまする現状に於きましては、假令官營であると雖も、又小口であると雖も、此の位の不利益を忍んで戴くのが至當ではないか、斯樣に實質的に考へまして、敢て特別會計を改正致しまして、一般會計から補償すると云ふ手段には出なかつた次第であります、所が是が更に損害が大きくなり、長期還付金の請求位ではいけないと云ふ事態が、假に將來發生すると致しますれば、其の時にはさう云ふ問題も起ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=27
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028・石川金次郎
○石川委員 簡易保險法第三條に依りますと、政府は保險契約者又は第三者の生死に關し保險金を支拂ふのだ、政府が支拂ふのだ、保險團體の財政の經理如何に拘らず云々、さう書いてあるのでありまして、國民としましては此の政府を信頼して入つて居るのだと思ひますが、非常に遺憾な點だと思ひます、此の點に付ては是だけにして置きます
もう一つ聽いて見ますが、簡易保險法中改正法律案要旨の第六表であります、それと簡易生命保險事業の現況と云ふ參考書との間には課目が違つて居るやうであります、違へても宜いかも知れませぬが、「株式」と云ふのは改正法律案要旨にはありますが、簡易生命保險事業の現況の方には「株式」と云ふものを書いて居りませぬ、「其の他の有價證券」と云ふのが株式に當ると云ふことに相成りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=28
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029・岡井彌三郎
○岡井政府委員 株式は「其の他の有價證券」の方へ入るのが正當であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=29
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030・石川金次郎
○石川委員 其の點は是で終ります、次に先づ郵便年金法中改正法律案要旨、簡易生命保險法中改正法律案要旨の第五表、第六表に付て伺ひます、此の中社債及び債券、株式、是等の中で今度の戰債補償打切に依つて、損失致しまする數がどれ程ありますか、過日自由黨の議員の方からは大藏省預金部に於ける状況を聽いた御質問がございましたが、直接積立金の運用に關しての御質問がなかつたやうであります、此の表に基きまして、此の表中損失に歸すべきものがどれ程あるか御伺ひして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=30
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031・岡井彌三郎
○岡井政府委員 果して是が損失に歸してしまふかどうかは是から分ることで、今未定でありますが、兎も角軍需補償打切に依つて影響する會社に投資致して居りまする額は、保險と年金と合せまして三億二千萬圓でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=31
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032・石川金次郎
○石川委員 簡易保險及び郵便年金の積立金の運用は契約者に對する貸付以外には停止せられてあるやうに承つて居りますが、併し此の資金が勤勞階級の蓄積した資金でございますが故に、勤勞階級の福祉の爲に之を活用せしめなければならぬことは申上げるまでもございませぬ、さう云ふ趣旨に於て從來も運用されて居つたやうでありますが、此の儘停止になつて居ることは不幸でありますが、此の停止解除の爲に遞信省はどのやうな御努力をなされて居るかどうかを伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=32
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033・岡井彌三郎
○岡井政府委員 御説のやうに簡易生命保險、郵便年金の積立金は一般加入者の利益の爲に投資しなければならぬのでありまして、それが契約者貸付を除く一般の投資が停止されて居ると云ふことは事業の爲に洵に遺憾だと思ひまして、是が解除方に付きましては、聯合軍司令部に對しまして極力懇請致したいと思つて居りますが、何分にも此の指令がありましたのが本年一月でありまして、是も正式の「ディレクティヴ」として出ましたので、之に對して正面から當ると云ふことは、却て實行上出來るものも出來なくすると云ふことも往々ありますので、之に對しましては今後情勢を見てやりたいと思ひますが、今の所正式に斯う云ふ手段を以てやつて居ると云ふことを申上げる程度には至つて居りませぬが、是は必ず近い將來に復活致したい、又致さなければならぬと斯う云ふ考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=33
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034・石川金次郎
○石川委員 契約者に對する所の貸付を中止する、廢めると云ふやうなことはありますまいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=34
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035・岡井彌三郎
○岡井政府委員 契約者に對する貸付を中止すると云ふやうなことは絶對にあり得ないと確信して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=35
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036・石川金次郎
○石川委員 今度は郵便貯金に關して一寸したことを御聽きして置きたいんですが、是も私は研究が濟みませぬから變な質問になるかも知れませぬが、郵便貯金法の十八條に依つて國庫に歸屬することになる郵便貯金乃至國債有價證券がある筈でありますが、從來は其の處置を御執りになつたか、執られたとしたら幾らの額があつたか、又其の額はどのやうに使はれてあるかを御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=36
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037・岡井彌三郎
○岡井政府委員 昭和十八年まで其の處置を執りましたが、昭和十九年以降は實は手不足の爲に、又原簿が燒失したと云ふことの爲に其の處置が濟んで居りませぬ、十八年までの状況を申上げますれば、昭和十四年度に於きまして百十四萬圓、十五年度が百四十六萬圓、十六年度が二百二十八萬圓、十七年度が百九十六萬圓、十八年度が百八十二萬圓、斯う云ふことになつて居ります、是は勿論預入者全體の利益の爲に使つて居ります一般の經費の中へ繰入れられまして、是が軈て預入者全體の利益の爲に使はれて居ると云ふ結果になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=37
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038・石川金次郎
○石川委員 一般預入者の利益の爲めの收入となるのですが、さうしますと國家の豫算關係に於てはどう云ふ項目に入つて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=38
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039・岡井彌三郎
○岡井政府委員 通信事業特別會計へ入つて居ります、さう云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=39
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040・石川金次郎
○石川委員 是は豫算の性質上通信事業特別會計に入るべき性質のものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=40
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041・岡井彌三郎
○岡井政府委員 豫算の性質上是が果して正當かどうかと云ふ點に付きましては、其の當局が居りませぬので、私から責任ある御答辯が出來ませぬが、後で調べまして御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=41
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042・石川金次郎
○石川委員 政府は郵便貯金、年金、簡易保險、是等に付きましての會計の状況、資産關係の状況、積立金運營の状況之に依る國家の收益と云ふことはございませぬでせうけれども、國家がどれだけの收入があつたか、詰り國案に歸屬せられたる所の財産事項等に付きまして、さう云ふやうな計算表を出來得るだけ近い機會に於て、國民に其の内容を知らしむると云ふ方針がないものでせうか、斯う云ふことを考へましたのは、改正憲法の八十七條に「内閣は國會及び國民に對し、定期に、少くとも毎年一囘、國の財政状況について報告」する、斯う云ふ規定がございますが、郵便貯金、年金、簡易保險が勤勞階級、私達が一生懸命になつて積立てたものでありまして、どのやうになつて居るのかと云ふことを知りたいのであります、そこで私共が曩に政府を信頼致しまして、御契約致しました權利が切捨にならうとして居る、御聽き致しますと、事業資金の運營に於きましても、三億數千萬圓の損失をして居る、それを咎めるのではございませぬ、なぜならば此の戰爭をやつたのでありますから、私は受けた損害を云々するのではございませぬけれども、財産の内容を御知らせ下さることが最も親切な方法だと存じますので、新しい憲法に依つて、法律に捉はれないで、さう云ふやうな方法を近々中におやりになる御方針はないかどうかを御聽きして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=42
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043・一松定吉
○一松國務大臣 只今御質問になりましたことは、果して法制上どうなつて居るか、私は調べて見なければ法律を基礎としての御答辯は致し兼ねるのですが、併しあなたの御質問の御趣旨は能く私分ります、何も是は法律に依らなければ出來ぬと云ふことはないのですからして、或は官報の一部に斯う云ふことになつて居ると云ふ状況を知らせると云ふことは、別に法律違反でも何でもない、さう云ふことは考慮致しまして、成べく實意に副うやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=43
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044・石川金次郎
○石川委員 是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=44
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045・左藤義詮
○左藤委員長代理 次の質問を許します、古賀太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=45
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046・古賀太郎
○古賀委員 簡易保險の増額に對しましては、民主的、特に農村方面に於きましては相當の加入者を増すことと思ひます、之に對しましては不肖大いに贊意を表します、出來得べくば最高一萬圓として尚ほ將來に於きましては簡易保險或は火災保險と云ふやうなものは、國家經營で國民の福利を増進せしむると云ふやうなことにやつて戴く御計畫は當局にはないか、尚又都市を離れた農村方面に於きましては、現在非常に郵便物或は電報の處理に於きまして困つて居ります、御當局に於きましては一町村に一箇所の郵便局設置の御意思がありや否やと云ふことを御問ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=46
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047・一松定吉
○一松國務大臣 古賀委員の第一の質問が一寸分りませぬでしたから、もう一度……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=47
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048・古賀太郎
○古賀委員 簡易保險の増額は非常に民主的、特に農漁村の方面に於きましては相當加入が増すことと思ひます、出來得べくは一萬圓位に増額して戴き、尚又今の生命保險或は火災保險等を、將來國家經營に依つて國民の福利を増進せしむる、國營に依つて斯樣な保險組織をやつて戴きたいと云ふ私の希望でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=48
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049・一松定吉
○一松國務大臣 簡易保險の最高制限額を五千圓では少いから、一萬圓位にしてはどうか、斯う云ふやうな御希望のやうですが、實は此の點に付きましては過般も申上げましたやうに、今までは政府が獨占して之をやつて居つたのでありますが、將來は政府獨占と云ふことを止めて、民間でもさせようかと云ふことに此の法案が通過すればなるのでありますから、さう致しますと民間業者を壓迫すると云ふやうなことになつても相濟まぬ譯であると云ふことで、是は大藏省方面や、其の他關係方面とも十分に考慮致しました結果、五千圓と云ふことに最高制限額を決めたのであります、併しあなたの仰しやるやうに、農漁村等に於て斯う云ふ方面を益益發達助長せしむると云ふことは、非常に宜いことであらうと思ひますが、今此の法案の改正に當つては、實はそこまで考へて居りませぬでして、五千圓に制限を致したのであります
それから、一町村に一集配局を設置するやうにしてはどうだ、斯う云ふやうな御意見でありますが、是は郵便を成たけ迅速且つ正確に集配すると云ふ建前から致しますれば、さう云ふやうなことが勿論理想でなければなりませぬ、併しながら是は豫算の關係上の都合もございますので、今遽かにあなたの御希望を滿たすと云ふことは出來ませぬが、徐々にさう云ふ方針に向つて進みたい、斯う云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=49
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050・古賀太郎
○古賀委員 承知致しました、私は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=50
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051・左藤義詮
○左藤委員長代理 駒井藤平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=51
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052・駒井藤平
○駒井委員 大臣に於かれましては御就任早々重大なる問題が勃發致しましたが、英斷を以て善處されまして、非常に都合好く明朗に、且つ兩方共喜ばしい解決を得まして、洵に喜んで居る次第であります、尚ほ今後とも御努力あらんことを御願ひ致す次第であります、私、二三、簡單に御尋ね致したいのであります、先づ第一に簡易保險の第二條を削除せられまして民間にも許す、斯う云ふことに相成つて居るのであります、民間に許す範圍は既設業者に優先權があるのでありますか、又新しい者、或は此の間から色々の諸君から御話がありましたが、戰災者或は海外から戻つて來られた人達が寄り合つて堅實な會社を拵へる、それに對して先づ救濟の意味と、且つ失業の關係もありまするし、さう云ふ人達にも許す御意思ありや否や、それを先づ先に大臣に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=52
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053・一松定吉
○一松國務大臣 簡易生命保險法の第二條を削除致しました結果、簡易生命保險は保險會社に於て之を營むことが出來るやうになつたことは、只今駒井委員の御質問の通りであります、其の時に簡易生命保險を優先的に許すか許さぬかと云ふやうな趣旨の御質問のやうでありますが、是は第二條を削除致しました結果、此の簡易生命保險と云ふのを保險會社が許す、許さぬに拘らず、當然に之を營むことが出來るのである、優先とか優先でないと云ふことでなく、當然是が出來ると云ふことは第二條を削除した結果、さう云ふやうな解釋になるのであります、左樣御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=53
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054・駒井藤平
○駒井委員 新設會社はどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=54
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055・一松定吉
○一松國務大臣 それは保險會社と云ふものが創立の手續に依りまして創立せられたる以上は、當然出來る、創立手續は商法の規定に依ることであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=55
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056・駒井藤平
○駒井委員 それに付てでありますが、此の簡易保險が一般保險會社に許されると云ふことになりますと、勢ひ郵便局で取扱つて居ります簡易保險と勸誘競爭が起つて來る、斯う云ふことは當然のことと思はれます、從來保險を奬勵致しますのに、色々事業に依る利益を配當すると云ふやうなことになつて來て居るのでありまするが、それが戰災の爲に遞信省として、又特別會計にも缺損を生じて居ると云ふやうなことになつて居りますが、果して民間と競爭し得るや否や、それから今一つは民間の勸誘が非常に周到にやられることは當然のことと思ひます、今までは遞信省の官營と云ふので、信頼し、又之に優る所があつたのでありますが、さうすると今後はどう云ふ點に遞信省の簡易保險は特異性があるか、其の特異性に付て御考へになつて居るか、斯う云ふことを一寸御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=56
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057・一松定吉
○一松國務大臣 簡易保險の制度が之を創設後、今日まで輝かしき發展を致しましたことは、詰り此の方面に付きまして遞信省が餘程の力を用ひた結果であると同時に、國民の遞信省の此の行爲に對しまする信頼の結果事茲に至つたことは言ふまでもありませぬ、然らば民營に之を移した時に、民營との競爭が果してどうだらうか、或は民營の方が打勝つやうなことになりはしないだらうかと云ふやうな御心配のやうでありますが、是は結局國民の信頼感と云ふことが第一に考へられなければならぬと思ふのであります、苟くも國家が其の事務の一部として行つて居ると云ふ以上は是は間違ひがあるまい、さう云ふやうな信頼感が民間會社よりも強ければ、郵便局に對する、簡易生命保險と云ふものが、段々助長發展すると云ふことになるでありませうし、どうも政府のやり方は何して居るか分らぬと云ふやうなことになれば、さう云ふ信頼が薄くなる譯でありますから、民間の會社の方の業績が發展することにならうと思ふのであります、此の點は結局「サービス」の問題、信用の問題と云ふことに依つて岐れようと思ふと同時に、今一つは保險會社が全國至る所に本店、支店を設けて、郵便局と競爭してやると云ふことは出來ないやうに思はれるのでありますから、さう云ふ所謂郵便局の存置の場所が、是は普通の保險會社より數が多い、全國各地に行渡つて居ると云ふやうな所から、吸收する方法が便利であると云ふことに於ても、普通の會社よりも有利ではなからうか、又一つは郵便の取立、若しくは配達と云ふやうな、地理に非常に明るいやうな人が、其の餘暇を見て斯う云ふやうなことを勸誘すると云ふことになりますれば、人員の勸誘費用と云ふやうなものも、他の普通會社よりも僅かで濟むのではなからうか、色々なことで必ずしも私は普通保險會社と競爭して負けることはない、斯樣に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=57
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058・駒井藤平
○駒井委員 どうしても競爭は免れぬと思ふのでありますが、只今やつて居りますやうに、割當責任額と云ふものが、各局に振向けられて、其の契約獲得に非常に勉強し、奬勵して居ると云ふやうな次第であります、一方に競爭が出來れば割當額を獲得するのに、奬勵にも色々困難が起つて來ます、斯う云ふことは當然のことと考へますが、寧ろ是は民營にして、さうすれば隨て保險料率も低下して、國民全體から言へば寧ろ其の方が可なりと感ずるのでありますが、大臣に於きまして簡易保險を民營に移すと云ふやうな御考へがあるかないか、それを一つ御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=58
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059・一松定吉
○一松國務大臣 成程民營にすると云ふことも一應考へられるのでありますが、簡易生命保險と云ふものは、國家が利益を得ようと云ふ目的で創設したものではありませぬで、零細な金を以て國民の生活安定の一資料にしようと云ふ趣旨の下に拵へたものでありまして、利益とか云ふ目的よりも、今申上げるやうな趣旨に副つた目的の方が多いのでありますから、さう云ふ方面から致しますれば、何も民間の會社と競爭しなければならぬと云ふことにはならぬので、そればかりではありませぬ、今御示しのやうに民間會社の方に任した方が、却て宜いのぢやなからうかと云ふやうな御説も御尤ものやうではありますけれども、實際に之を經營して參ります上から致しますと、經費等は却て民間會社の方が多く支出せられて居ると云ふことは、今日までの實績に徴して明かになつて居るのでございます、それ等の實績が若し御希望でありまするならば、事務當局から其の實績を數字に依つて申上げても宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=59
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060・駒井藤平
○駒井委員 御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=60
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061・岡井彌三郎
○岡井政府委員 收入保險料に對しまする事業費の割合を簡易保險と民營とを比較して申上げますが、昭和十九年度に於きまする收入保險料に對する事業費の割合は簡易保險に於きましては一割三分一厘になつて居ります、之に對しまして民營の總平均は一割五分一厘となつて居ります、丁度二分方民營の方が高くなつて居ります、御承知のやうに簡易保險は小口で且つ集金をするのにも拘らず、經費が却て安いと云ふことは、是は簡易保險に於きましては全國一萬三千の既設の郵便局、既に居りまする從業員、之を利用して居るが爲に斯う云ふ結果が出るのぢやないかと思ひまして、其の點に於きましても、簡易保險と申しますやうな小口の、而も集金すると云ふ手數の掛る保險は、民營では恐らく成立つて行かない、現在の通りの保險料を以て致しましてはやつて行けない、どうしても官營の方が都合が宜いのである、隨ひまして將來獨占を廢止したと致しましても、事實上に於きましては競爭が起り、それが爲に簡易保險が打撃を蒙ることは、私共と致しましては先づ先づないものと斯樣に信じて居るやうな譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=61
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062・駒井藤平
○駒井委員 そこで簡易保險の長期還付金に付て御尋ね致したい、只今では從業員に割當てられました責任數を獲得する爲に、非常に熱心に之を奬勵致して居ります、併し他の保險會社の利率などから考へますと、一寸是の歩合が惡くなつて居るやうであります、それに付て是までは長期還付表と云ふものを以て、民間に是れ是れの利益があるからと云つて、勸誘の一方法として示して居つたのでありますが、是れからは其の利益金が年々減つて來ると云ふやうに想像致して居るのであります、果してさう云ふことになりますれば、從來勸誘に説明して居つたことが、其の儘やれるかどうか、或は又御當局から斯う云ふ方法で勸誘しろ、他の保險會社と利率に於てもさう大した差はないと云ふやうな御示しが、近い内にあるのであるかどうかと云ふことを、一寸御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=62
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063・岡井彌三郎
○岡井政府委員 御説のやうに將來長期還付金がなくなりますと――將來ではありませぬ、是は今年の四月から新規契約に付ては約束をして居りませぬ、さう云ふことになりますと、御説の如く募集上非常に不利になります、併し是は民間との比較に於きましては必ずしもさうではないのでありまして、民間に於きましても、既に簡易保險に相當致します利益配當は止めて居ります、さうして單に保險金だけを比べました場合、民間の保險と簡易保險と、どちらが有利であるかと云ふ點に付きましては、只今申上げましたやうに、こちらの方が事業費が非常に安いと云ふ關係があります、運用利廻の點に於て、民營の方が多少高率に廻つて居ると云ふ點はありますけれども、それを差引きましても、尚且つ保險金其のものを比較致しました場合は、會社に依りまして例外はありますけれども、概して平均的に申しますれば、簡易保險の方が有利になつて居りますから、募集上、民間との比較と云ふ點に於きましては、不利はないと思ひます、唯絶對的には長期還付金がなくなつたと云ふ點に對しましては、不利であることは免れぬと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=63
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064・駒井藤平
○駒井委員 次に郵便年金に付て御尋ね致したいと思ひます、此の郵便年金の契約金の支拂が、現在は新圓又は封鎖預金でも宜いと云ふことになつて居るのでありますが、今囘政府が出される金融措置法で、棚上げされた封鎖預金で支拂をすることが出來るかどうか、是は重大な問題だと思ふのでありますが、大臣に於ては如何樣に御考へになつて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=64
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065・一松定吉
○一松國務大臣 實はまだ其の點決まつて居りませぬ、今其の筋と折衝致して居ります、それは決まり次第相當の手續に依つて、皆樣方に御報告するやうな手配を執ることにならうと思ひます、左樣御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=65
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066・駒井藤平
○駒井委員 まだ決まつて居ないやうでありますが、是非是は封鎖預金で支拂が出來得られるやうになさることが、又して貰ふことがずつと便利である、又年金に加入したいと云ふ實際を私聽いて見ますと、それは困ると云ふことになつて居るのでありますから、是非ともそれが適用されるやうに善處されんことを希望致して置きます
それから特定局のことに付て御尋ね致します、先般も特定局の改善手配などに付て色々御尋ね致したのでありますが、現今從業員組合と其の特定局長との間に、何か妙な摩擦があると云ふやうなことを聞いて居るのでありますが、其の邊遞信當局として御聞きの點があれば承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=66
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067・一松定吉
○一松國務大臣 特定郵便局と特定郵便局從業員との間に摩擦のあると云ふことは、一部にさう云ふことのあることは私も承知して居ります、全國一萬三千の特定局の總てに、さう云ふことのあると云ふ事實はございませぬ、唯ほんの一部、而もそれはどう云ふことから左樣な摩擦を生じたかと言ひますと、例へば其の特定郵便局長の家族が、其の從業員に向つて、自分の宅の使用人であるかの如く之を私事の用事を言ひ付ける、或は掃除をさせる、或はさう云ふ郵便局長の子供が、此の家は自分の家だ、お前は家に雇はれて居る者だと云ふやうな詰らないことを言うて、從業員の感情を害せしめたとか、或は官から支給された給與額の中を局長が搾取するとか、或は從業員は何時までも斯う云ふやうな境遇に置かれては、出世の見込がないと云ふやうなことの爲に、特定局廢止運動をするとか、或は改善運動をするとか云ふやうなことが今行はれて居ります、私の所にもさう云ふ陳情が數囘參りました、色々特定局長竝に從業員兩方面からそれ等の點を調査研究もして見ました、所が今申上げますやうに、一部の特定局長の中でさう云ふ不心得な行動を執る者もなきにしもあらずであります、故にさう云ふ點は何處までも之を是正して、本當に國家の公器として奉仕的精神を以て働くやうに仕向けて、其の惡い所は是正する、善い所は助長する、斯う云ふやうな考へを以て今臨んで居ります、さう云ふことを、此の特定局の從業員の諸君に能く話を致しますと、それを納得して歸る從業員もございます、又自分の主張が是なりと信じて、何處までもそれを主張すると云ふ從業員もございますが、要するに突詰めて見ますと、自分等が他の普通郵便局員よりも待遇が薄いのだ、或は蔑視されるのだ、或は自分等の出世の途が開けて居ないのだと云ふやうなことが理由であるやうに思はれるのでございます、故にさう云ふ點は成るたけ改善致しまして、進路が開けるやうに、若しくは待遇を他の普通郵便局と同じやうに改善するやうに、或は郵便局長の家族等に、さう云ふ不都合のないやうに深甚の注意を拂ひまして、斯くの如き不幸不滿のないやうにしよう、斯う云ふ考へを持つて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=67
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068・駒井藤平
○駒井委員 只今大臣からの御話に依りますと、一部にさう云ふことがあることを聞いて居ると云ふことでありますが、是はほんの一部分であつて、それは大臣の仰しやるやうに、實際特定局の係員の方と局長との間柄は一段と密になつて居ることは、是は事實であります、併し家庭に於て色々下女代りにすると云ふことは、是は恐らく想像でありまするが、最近此の特定局の局長會の方から聞いた話なのですが、大臣に於かせられては、從業員から猛烈なる色々な陳情もあり、それを容れて居られる、さうして尚且つ團體の力を以て何かと要求すると云ふやうなことからして、特定局の局長の優遇改善と云ふやうなことに、何等まだ御手が伸びて居らぬと云ふやうなことであるが、是はさうした從業員の一部の人の叫びであつて、大部分はさうでもない、此の特定局の局長と係員總てが、寧ろ家庭的に普通局より密にやつて居るのだ、それで局長の優遇改善と云ふやうなことには何等まだ御發表がない、特に特定局の局長は、物心總ての點から非常に――局員にしましても或はあり合せのもので間に合せると云ふやうなことで、普通のなし得られぬ程所謂親密にやつて戴いて居る、併し一部のさうした妙な叫び、それを大臣は氣にして居るが、特定局は非常に困つて居ると云ふことであり、物心兩面に於ても、何等まだ改善の方法に著手して居られぬと云ふやうなことを聞いて居るのでありますが、果してさうでありまするか、若しさうであるとすれば、速かに優遇改善と云ふことを、實際に現はれてやつて戴きたいと思ふのでありますが、大臣の御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=68
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069・一松定吉
○一松國務大臣 只今駒井君の御質問は大變事實に反するのでございます、從業員の中で特定局廢止の運動で私に數囘面談した者があります、其の度毎に今私が申上げましたやうな趣旨を能く懇篤に話をして聽かせまして、さうして彼等をして其の誤れることを寧ろ自覺させるやうな方法を執つて居るのであります、特定郵便局長の待遇改善問題に關しましては、過般上野の精養軒に於きまして、それ等の各聯合の局長諸君が集まりまして、さう云ふ點に付て論議を致したやうでありますが、其の席にも私は出ました、さうして全國一萬三千の特定局の局長諸君はどうかと云ふと、一部の者を除く外は、犧牲的精神を以て國家の爲に奉仕して居ると云ふやうなことを寧ろ私は慫慂致しました、然るにそれ等の人に對する待遇改善と云ふことが、物質方面でなくて、心的方面、精神方面の待遇改善と云ふことにも一つ努力しなければならぬ、大いに諸君の御努力を希ふ、自分としては何處までも其の美點を發揮して、通信行政の爲に御盡瘁あらんことを、特に希望すると云ふ意見を實は述べたのであります、其の時に特定局長諸君も非常に滿足せられまして、是非一つさうして戴きたい、のみならず月に一囘位は我々が集まつて大臣と懇談出來るやうな機會を作つて戴きたいとまで要求せられて居るのであります、さう云ふ事情でございまして、私は特定局を廢止しようと云ふやうな考へは勿論なきのみならず、今申しましたやうに色々な弊害の伴うて居ることは之を是正して、さうして眞に其の美點を發揮して、通信行政の爲に一層の努力を盡して貰ひたい、斯樣な考へを持つて居るのでありまするから、精神方面の待遇改善、物的方面の待遇改善と云ふことも私は考へ、今其の線に沿うて調査を進めて居る時代でございますから、左樣御諒承を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=69
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070・駒井藤平
○駒井委員 能く分りました、次に御尋ね致したいのは、此の普通局と特定局との人員配置の問題でありますが、特定局で假に五十人でやつて居つたものが、それが普通局に變ると事業面に於て何等大した相違でないのに、人員が倍加されると云ふやうな實情になつて居るやうでありまするが、是はどうも相互間に於て妙に感ぜられるのでありますが、特定局であれば五十人で濟むが、普通局であれば倍加して行く、冗員が出來てもさう云ふ風な配置をすると云ふ風に相成つて居るやうに聞いて居るのでありますが、果して事實はどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=70
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071・岡井彌三郎
○岡井政府委員 御話の如く事實上に於きましては、特定局から普通局になりました其の途端に何割か人が殖えると云ふことになります、是は定員算出の基礎に於きましては、普通局と特定局と何等變りはないのであります、寧ろ特定局は取扱部數は少いけれども、今までは定率――從業員の給料でありますが、迚も低くかつた、隨て能率も惡いと云ふやうな點を加味しまして、定率算出上は有利にして居つたのであります、隨て絶對數に於きまして普通局と特定局とは變ると云ふ譯はないのでありますが、唯昇格致しますと普通局になります、さうしてそれには色々監督要員が新たに出來ます、主事であるとか、課長であるとか、或は監視員であるとか、斯う云ふ風な監督要員が出來ます爲に何割か殖える、從來斯う云ふ傾向があつたのでありますが、併し其の理由の如何を問はず、今まで特定局で其の人間でやつて居つたのを、普通局になつた爲に殖えると云ふことは、特定局に對する思想上の影響と云ふことも面白くないのであります、將來に於きましては昇格に伴ふ増員と云ふことは、出來るだけ差控へたいと思つて居ります
〔左藤委員長代理退席、委員長著席〕
寧ろ平生から特定局に對して普通局に昇格しないでも、監督要員と云ふやうなものを、普通局と同じやうに配置して置くべきである、隨て昇格になりましても其の儘の人間でやつて行けるやうに致したい、斯う云ふ方針でやつて行つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=71
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072・駒井藤平
○駒井委員 どうかさう云ふ方針でやつて戴きたいと考へます
次に特定局の從業員が改正に依つて事務官になつたやうであります、又普通局の者が遞信局の方にも進み得るやうな御制度にもなつたやうに聞いて居るのでありますが、併し此の普通當該局長が、從業員會の推薦に依つて直ちにさうした轉勤の出來ると云ふやうなことに聞いて居るのであります、是は妙なことのやうに私は考へるのでありますが、そんな事實があるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=72
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073・岡井彌三郎
○岡井政府委員 是は從來と雖も普通局と特定局間、或は普通局と遞信局間、遞信局と特定局間の轉勤と云ふことはございました、今も其の點に於ては變りはありませぬ、それから從業員會の推薦に依つてさう云ふ場合に轉勤するかどうかを決めると云ふやうな御話であつたやうに思ひますが、さう云ふことは正式に認めて居りませぬ、從業員會に對しましては正式に人事權までを委ねて居ると云ふやうなことは、現在の所遞信省に於てはやつて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=73
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074・駒井藤平
○駒井委員 次に特定局を獨立官廳として認めることが出來るか、又局長が出して居ります土地、家屋等を政府に於て買上げて、貸下すると云ふやうな御意思はないか、之を一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=74
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075・岡井彌三郎
○岡井政府委員 特定局は勿論昔から獨立官廳でございまして、其の點に於きまして普通局とは性格上何等異なる點はございませぬ、それから特定局の局舍を現在局長の提供と云ふことになつて居りますが、將來之を國家が買收するなり、或は國家が借上げるなり致しまして、直轄にする考へはないかと云ふ趣旨の御質問でありましたが、方針と致しましてはさう云ふ風に進みたいと思つて居ります、澤山の金も掛りますので、急速には實現致しませぬが、將來の理想と致しましては、其の方向に向つて進みたいと斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=75
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076・駒井藤平
○駒井委員 次に特定局長の身分でありますが、是は普通官吏と同樣な御取扱に相成る意思ありや否や、大臣に御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=76
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077・一松定吉
○一松國務大臣 實は私能く分らぬのですが、今事務當局に聽いて見ますと、やはり是は官吏ではある、所謂判任官、但し俸給のない手當を給與して居る判任官、でございますから、俸給は、官吏俸給令に依つて支給はされて居りませぬけれども、性質はやはり判任官、でございますから位階勲等とか云ふものは、其の年數に應じて今までは位階も勲等もそれぞれ下賜されて居る、さう云ふことでありまするし、其の判任官を或は所謂奏任官、今日の二級官と云ふものに引上げるかどうかと云ふことに付きましては、それは優秀な者であれば、勿論それを三級官から二級官に引上げると云ふことは、是は當然しなければならぬことであります、のみならず今日では二級官になつて居る者も相當數あるさうであります、さう云ふ意味に於きまして待遇は他の普通官吏と何等違つた所はありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=77
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078・駒井藤平
○駒井委員 無輪是は請負事業になつて居るから、俸給其の他が普通官吏と同等にいかぬ、それは承知致して居ります、唯身分上の關係で大分違つて居るやうに聞いて居るのです、例へば普通の判任官として永年居れば官等級が上つて行くと云ふやうなことが、普通官吏と局長と違つて居る、斯う云ふ風に聞いて居るのですが、果してどうなつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=78
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079・一松定吉
○一松國務大臣 違つて居る所は今申上げましたやうな俸給と云ふものを支給されて居ないと云ふことと、隨て恩給制度の適用を受けて居ない、斯う云ふやうなことであります、其の以外の詳細な點は今茲に詳かに致して居りませぬが、詳細な點が御必要でありますれば、事務當局から答へさせて宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=79
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080・岡井彌三郎
○岡井政府委員 只今大臣が御答へになりました通り、恩給は付きませぬ、其の他普通の官吏ですと俸給、特定局長は手當でありますが、其の額の比較に於きましても、特定局長の手當の方が非常に少いのであります、是は併し制度上少くても仕方がないやうな制度になつて居りますが爲に少いのであります、然らば制度上少くて宜いと云ふ理由はどうかと申しますと、特定局長は手當だけで其の局を經營し、又生活を維持して居るのではございませぬ、此の點に於きまして全く普通の官吏とは違ふのであります、手當の外に無集配局でありますれば、人件費から雜費總て渡し切りでありますので、其の渡し切りの剩餘は自分の收得にして宜しい、集配局でありますれば、人件費は直轄になつて居りますが、雜費と保險、年金の取扱、是は依然として渡し切りでありますので、其の中から多少の餘裕が生れて參りますから、それ等を手當と合せて局の經營をし、又自分の生活を維持する、斯う云ふ仕組になつて居りますので、普通の官吏の俸給と比べまして、手當なども少いことは致し方ない、斯樣に思つて居ります、尤も今は御話のやうに物價が非常に高くなつて居ります、其の關係に於きまして、渡し切りの中から生れる剩餘が少くなる、赤字になると云ふ現状ではありますが、是は併し將來は是正されなければならぬと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=80
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081・一松定吉
○一松國務大臣 段々細かい點に入つたやうでございますが、普通の官吏と何處が違ふかと云ふ點は、先刻申しましたやうに、一方は俸給を取り、一方は俸給を取らぬで手當を貰つて居る、一方は恩給があるが、一方は恩給がない、さう云ふやうなことはどうかと云ふと、不利益のやうでありますが、今度利益の點から言ひますと、例へば簡易生命保險の勸誘などに對する費用等に付ても、事務費と云ふやうなものを特別に受取りまして、それを法律に於て定められた一定の限度に於て特定局の局長は之を取得することが出來ると云ふやうな點、是は所謂普通局長より利益な點があると云ふやうなことも考へられるのであります、判任官若しくは奏任官でありますからして、若し職務に關して不正なことがあれば、涜職罪或は背任罪が成立する、是は當然普通の官吏と同じやうに取扱はれるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=81
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082・駒井藤平
○駒井委員 能く了承致しました、次に年金の最高を制限されて居ります、三千六百圓を六千圓にして居りますが、是は餘りに制限が低いではないかと思ひます、又もう一つは假に一箇所で最高を契約して、又次の村の局でも契約を結ぶ、斯う云ふ場合には何ぼでも行けるやうになりますから、制限されても同じことだと思ひますが、其の點如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=82
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083・一松定吉
○一松國務大臣 金額を六千圓と決めたのは低いぢやないかと云ふ御話でございますが、成程之を一萬圓に上げても、二萬圓に上げても、それは色々な民間の經齊状態から見れば、是は數に法理なしで、結構でありますが、先づ此の程度が宜からうと云ふことで六千圓と云ふことに決めたのであります、其の次には郵便局を變へて同一人が、幾つも幾つも口を拵へると云ふことは宜いぢないか、出來るかと云ふ御話でございますが、それは出來ない、やはり一人の人でありますと、郵便局を變へても合計額六千圓と云ふことを超過は出來ないと云ふことに、現行法ではなるのであります、併し今あなたの御説のやうに郵便局を變へたら宜いぢやないかと云ふことも一つ考へられるのです、必ずしも、それが不都合と云ふことも考へて居りませぬが、現行法ではさう云ふやうになつて居ると云ふことに於て御諒承を賜りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=83
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084・駒井藤平
○駒井委員 制限されても今申しますやうに、實際今郵便局を變へて居れば制限も何もない、十口入れば六千圓と云ふやうな振合になるのでありますが、年金は生命保險の方と違つて、大した損害と云ふやうなことに相成らぬやうに承知して居るのであります、簡易保險の方でありますが、是は九州の方の郵便局で一つ、或は又遠方で一つと云ふやうに、二箇所あつた場合に、法律は其の限度よりやらないやうに定められて居りまするが、事實上二つ貰つて居つたと云ふやうなことも聞いて居ります、さうしたことはどう云ふ風に是正されますか、或は又さう云ふことをどう云ふ方面で探知し、又調査しようと云ふことをして居られるのか、其のことを一つ承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=84
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085・一松定吉
○一松國務大臣 簡易生命もやはり現行法では一人一口より入れない、最高制限額が今度改正になりますと五千圓と云ふことになるのでありますから、一人の人が數箇所に契約を致しました時、其の合計額が五千圓を超えなければ數箇所でも結構なんです、若し超えることになりますと、其の以上のことは契約出來ないのですから、勿論無效になると云ふことになる、それを局員をだますからして、さう云ふ契約をさせると云ふことになれば、是は刑法上の問題も起るので、現行法では出來ませぬ、左樣御諒承を願ひたい
それから今一つ附加へて申上げますが、先刻の民間の簡易生命保險と郵便局の簡易生命保險との利害得失、どちらが國民の信用を得て其の營業が盛んになるかと云ふ一理由と致しまして、簡易生命の方は、簡易生命保險法の第十五條に依りまして、詐欺と云ふ點のない限りは、身體檢査と云ふものを省略してやりませぬから、さう云ふ點が普通の保險會社よりも有效であります、身體檢査をして入るのでは、とても俺の方の子供は病弱だから保險契約をして呉れぬだらうと云ふ心配のある者でも、郵便局の簡易保險でありますと、詐欺行爲のない限りは身體檢査をしないのですから、さう云ふ新契約が容易に成立することが出來る、斯う云ふ利益もありますから、さう云ふ點を狙つて、民間の保險會社よりも郵便局の保險の方に向つて契約する者が多いだらう、斯う云ふことも一つの狙ひであらう、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=85
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086・駒井藤平
○駒井委員 前段に年金の最高制限を考へられたら宜いだらうと云ふことを申上げた、それと同時に封鎖預金も其の支拂に充當することが出來得るやうに善處せられたい、斯う云ふことも願つて置いたのであります、普通局にしても特定局にしても、隨分零細な金を貯金させる、又保險を加入させるに致しましても、餘程努力して居る、又一面是が貯蓄奬勵にもなるししますからして、是は是非共封鎖預金で年金の方をもう少し制限を上げて行く、又實際、局さへ變へれば年金の方は支障がないやうに思つて居ります、さうすると制限と云ふものは何等の效果がない、斯う云ふやうに考へて居ります、又一面、貯金奬勵をして金を國民大衆から集めると云ふそれだけではなく、不時にも郵便局から貸出すと云ふことを取扱はれたらどうか、と申しますのは、普通、町村に致しましても、起債にしても大きいものは直ぐに出來ますが、小さい入用な金が不時に出來て來る、さう云ふ場合に、貯金或は簡易保險をして居つて、急に斯う云ふ金が要るのだ、而も是は公共的に要るのだと云ふやうなことの起つた時に、簡易に窓口からでもそれを擔保として貸し得られる、斯う云ふ方法にされると國民大衆に非常に便利にもなる、又さうしたことが庶民階級の方の金融を圓滑にすると云ふ風に私は考へて居るのでありますが、大臣は將來に於てさう云ふ風なことをなさる御考へありや否や、一言伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=86
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087・一松定吉
○一松國務大臣 郵便年金の拂込を封鎖預金でする、或は簡易生命保險の拂込を封鎖預金ですると云ふやうなことに付て考慮してはどうかと云ふ御意見であります、是は今度の第一封鎖預金、第二封鎖預金と云ふことが愈愈實施になると云ふことになりますれば、今の政府の建前としましては、例へば色々な税金等を納付するには封鎖預金で宜しいと云ふやうなことにすることが、民衆の利益であらうと云ふことを考へて居りまして、さう云ふことは今關係方面と折衝中でございますから、是は何れ不日それが決まらうと思ひます、さう云ふことが決まれば、今あなたの例に御引きになつた年金の拂込であるとか、或は簡易生命保險の拂込と云ふやうなことにもさう云ふ封鎖預金を以て拂込が出來ると云ふことにした方が勿論宜いと思ふ、新圓の五百圓と云ふことで生活が困つて居ると云ふ時に、新圓で拂込まなければならぬと云ふことはどうも不合理だと思ひますから、多分さう云ふ點は御意思に副ふやうに取扱が出來やうと思ひます、是は近い内に決まることでありますから、其の點は一つ左樣御諒承願ひたいのであります
それから郵便貯金若しくは郵便年金、或は簡易生命保險等の通帳、或は關係書類と云ふやうなものを提出して、之に依つて今急速に是だけの金が要るから貸して呉れないかと云ふやうな制度を、將來設ける考へがあるかどうかと云ふことに關しましては、是も面白い御考へ付だと思ふ、郵便貯金等の通帳さへ持つて行けば金が借りられる、今までの制度では五十錢だけ殘せばあとは引出すことが出來ると云ふやうなことに依つて、民間の需要に應ずるやうな制度があるのでありますが、國が非常に手數の掛らない、而も後日返還を受くることに確實性を持つて居ると云ふやうな方法で致しますれば、そんなに私は弊害はないと思ひますから、是は一つ十分研究して見まして、さう云ふやうなことが非常に宜からうと云ふことでありますれば、又一つ法案でも提出致しまして、御協贊を得ると云ふことに致さうと思ふのですが、只今の所では考へて居りませぬ、研究してさう云ふ御趣旨に從ふやうなことが必要だと思ひますれば、一つそれも大いにやつて見たい、斯う云ふやうに思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=87
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088・駒井藤平
○駒井委員 只今大臣は考へて置くと云ふことでありますが、是は貯金の方は抑せのやうに五十錢殘すとそつくり出せるが、年金と云ふ方に對しては借りるのに一寸工合が惡いと云ふことを聞いて居ります、隨て其の年金の通帳を擔保として、金を融通して貰へると云ふやうなことになれば、年金の入り手も多いと云ふやうなことに實際なるだらうと思ひますので、此の點一つ十二分に御考へ願つて、御實施を願ひたいと思ひます、私の質問は是で大體終りです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=88
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089・一松定吉
○一松國務大臣 今の駒井君の御質問の所謂貸付金と云ふのは、今事務當局から聞きますと、現に貸付けて居るさうです、郵便貯金に付ては貸付と云ふことはせぬで、拂戻と云ふことになりますが、それ以外のものに付ては個人貸付と云ふものを、年金の方も保險の方もやつて居るさうであります、先刻申しましたのは取消します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=89
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090・稻田直道
○稻田委員長 十二時にあと十分でありますから、菅原さんの御質問が若し濟まぬでしたら午後に廻はしまして、是より菅原エンさんに質問を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=90
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091・菅原エン
○菅原委員 私のは極く簡單な質問でございます、私は女子從業員に付きまして御伺ひ致したいのでございます、保險支局、貯金支局などに於きまして、女子從業員は其の事務の性質上、男子よりは能率の良い仕事をして居る譯だと思ひますが、如何でございませうか、其の點を御伺ひ申したいのでございます、現在男の從業員との間には、初任給竝に昇給の途に於きまして、又官吏任用の途などに於きまして、待遇に於て相當の開きがあるやうに聞いて居りますが、實際はどれ程の差があるのでございませうか、御伺ひ申したいのでございます、女子の方が色々な意味に於きまして、「サービス」の點に於ては男子よりも適當であると現に言はれて居ります、電話事務員などは此の際男女の差別を撤廢して下さる御用意がおありでございませうか、御伺ひ申したいのでございます、私は遞信省では先づ此の電話事務の領域から、男女同一待遇の原則が實現されて欲しいと存じて居るのでございます、それから特定郵便局の局長は、女でも可能性があるものでございませうか、如何でございませうか
それから只今戴きました郵便、電報などの事故の原因と其の對策を一寸拜見致しますと、食糧難が第一の原因となつて居るやうに考へられるのでございます、昨日は杉田委員の御質問に對しまする大臣の御答辯の中に、不眞面目な者は斷じて處罰すると云ふやうな御言葉があつたのでございます、國敗れたりとは申しながら、そんなに自暴自棄の儘に道義は廢れるものではございませぬ、是は食糧の問題さへ解決致しましたならば、何とかなると思ふ次第でございます
上大臣に於かれまして下從業員の怠慢を責め、罪を御責めになりますのに、どうぞ慈悲の光を持つて戴きたいのでございます、夫の怠慢、父の怠慢の蔭に泣く家庭人と云ふものを能く御考へ下さいまして、家庭の内情を能く御調査の上に、どんなことでも御處罰遊ばして戴くことに御願ひ申す次第でございますが、大臣の御心境を御伺ひ申したうございます、是だけでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=91
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092・一松定吉
○一松國務大臣 能率がどう云ふやうになつて居るかと云ふことは、是は能く分りませぬので、事務當局から御答へさせることに致します
待遇の點に對しましては、從來は男子に比較して或は低率であつたかも分りませぬ、併しながら是は今菅原委員の申されましたやうに、男子と女子と區別すべきものでないことは明かであります、殊に改正憲法等から見ましても、此の區別をすると云うやうなことは、是は封建的思想でありますから、斯う云ふことは勿論是正しなければなりませぬ、「サービス」は女子の方が男子よりも好いと云ふことは、是は普通考へられるのであります、所が好いことは普通であるが、併しながら必ずしも女子が好いとは言へない、郵便局の窓口だとか或は電話の交換手とか云ふやうなものが、劍突くを食はして見たり、或は知らぬ顏をすると云ふやうなことがありまして、是も一つの民衆の非難の的になつて居る、結局人の問題で、男子も善い人は善いし惡い人は惡い、女子も善い人は善いし惡い人は惡いと云ふのですから、女子の「サービス」が男子よりも好いと云ふことは普通には言へませう、けれども必ずしもさうとは言へないのでありますから、さう云ふことは男子も女子も惡いことは改めて戴かなければならぬ、斯う云ふことが私の主張です
それから特定郵便局長に女子を認めるかと云ふこと、是は認めて居るのです、でありますから、さう云ふやうな適格者がありますれば、續々さう云ふやうな人に國家の爲に働いて貰ひたい、斯う思つて居りますから、どうかさう云ふ適當な人がありましたら、御推薦を願へば私の方でも考慮致します
それから今日非常に徳義が頽廢化して、詰り例を擧げまするならば、昨日問題になりました郵便物の遲配だとか電報の遲配、或は書留郵便の拔取だとか小包郵便の拔取、或は紛失だとか云ふやうなことは、多くどう云ふ所から來るかと云ふ點に付きましては、本日事務當局から御手許に廻はしました書類に依つても、色々其の原因が明かになつて居ります、成程食糧難と云ふことは其の最大の原因の一つをなして居りませう、それと同時に此の道徳の頽廢と云ふことが、必ずしも食糧難ばかりではないと思ひます、是は教育の方面からも考へなければなりませぬし、又戰爭の結果、人心が非常に弛癈したと云ふやうなことも考へられるのでありまして、色々な原因がありませう、色々な原因がありませうが、さう云ふ原因が事務を執る上に於て民衆に不利益を與へる、或は不便を與へる、或は不快を與へるとか云ふやうなことになりますと、是はどうしても改めて行かなければならぬのであります、然るにも拘らずさう云ふ點を無視して、今日官紀綱紀の肅正が喧しい時に、道徳の頽廢を是正しなければならぬと云ふ聲が喧しい時に、特に遞信從業員に對しては色々な非難攻撃のある時に、身分をも省みず、自分の不都合なことを棚に上げて、昨日例に引かれましたやうな風に、水撒きをして居る所に郵便物を抛り込んで、郵便物が濡れたと言つて小言を言へば、二時間も坐り込んで女を相手にやかましく怒鳴り付けたと云ふやうな人の如きは、是はどうしても改めて貰はなければならぬのでありますから、さう云ふやうな所謂見るに見兼ねるやうな、特に人道に外れたやうな從業員は、是は遠慮なく馘首する、斯う云ふことであるのでありまして、今の女子が不適格であるが故に云々と云ふことではありませぬ、だから正しい人は正しく、能く働いて戴く人には働いて戴く、信賞必罰を明かにしよう、斯う云ふ意味でございますから、左樣御諒承を願ひたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=92
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093・岡井彌三郎
○岡井政府委員 男女の能率の差でありまするが、是は勿論一概には申されませぬ、例へて申しますれば電話の交換の如き、是は日本に於きましては現在女子が專門でやつて居ります、能率の點に於きましても、「サービス」の點に於きましても、男では到底やつて行けないと思ひます、之に反しまして郵便局に於きまする行嚢の取扱であるとか、或は小包の配達と云ふやうな肉體的の勞働を要するものに於きましては、是は勿論男の方が能率が好いことは申すまでもないのであります、私の方の關係と致しまして簡易保險局或は貯金支局などに於きまする計算事務、或は保險事務、之に付きましては私共の考へと致しましては甲乙はない、全く同じである樣に思つて居ります、唯監督者としての適格に關しましては、是は長年の習慣もありませうし、そんな關係ぢやないかと思ひまするが、今の所監督者と致しましては女より男の方が適當して居る、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=93
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094・菅原エン
○菅原委員 只今の御答辯は洵に有難いものでありまして感謝致します、以上を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=94
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095・稻田直道
○稻田委員長 午前中は之を以て質問を中止致しまして、午後一時より引續いて續行致します、一時まで暫時休憩致します
午後零時二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=95
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096・会議録情報2
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午後一時十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=96
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097・稻田直道
○稻田委員長 休憩前に引續き是より會議を開きます――井上赳君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=97
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098・井上赳
○井上(赳)委員 私は新政會に居ります關係上、此の中に居ります二十名ばかりの教育者出身の代表の意思を主として申上げ二、三承りたいと思ひます、特に郵便貯金のことでありますが、是は國民の道義心、特に貯蓄心と云つたやうな方面と非常に深い關係があることであると思ふのであります、當局の御説明にもありましたが、明治初年から最低受入額を三錢から十錢にし、又三錢に戻して、それが昭和になつて五十錢になつた、其の間には恐らく貯蓄の爲に相當の御苦心もあつたことと思ひますが、元來が宵越しの金は使はないと云ふやうな江戸つ子を中心としまして、下戸の建てたる藏はなしと云ふやうな關西人の言葉もあります、貯蓄心は非常に乏しかつたことであると思ひます、それに對して在來遞信省は非常に貯蓄と云ふことを御奬勵になり、特に學校教育を通じ、社會教育を通じて、貯蓄と云ふことを教育的に御奬勵になつたやうに私は記憶致して居ります、教育者の連中は總てさう云ふ點で、學童なり或は青年なりを指導して居つたと云ふ記憶を持つて居るのでありますが、此の貯蓄奬勵が、結局戰時中に何十億、何百億と云つた貯蓄目標を常に克服して來たと云ふ結果を見、效果が大きかつたと私は思ふのであります、斯う云ふ貯蓄心の昂揚と云ふやうなことは、在來遞信省としておやりになつたことでありますが、今後も之をおやりになるのでありませうか、どうでありませうか、此の點を一つ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=98
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099・一松定吉
○一松國務大臣 井上委員の御説明の如く、下戸の建てたる藏はなし、或は宵越しの金は使はない、宵越しの金を使はないと云ふ意味は、御承知の通りに、もう何でも彼でも儲けたら直ぐ之を浪費してしまふと云ふ意味でありまして、貯蓄とは反對の態度であるのでありますが、下戸の建てたる藏はない、酒を飮まないと云うて辛棒したからと云つて、必ずしも金が溜らぬと云ふやうな、色々な蓄財の方面に關係しての俗言があることは、今御示しの通りでありますが、何れに致しましても國民が貯蓄心を養成して、不時の災難に備へると云ふことは、是は道徳の上からしても大いに立派なことであるし、國民が生活を維持する上に於ても、必要缺くべからさることであらと思ふのであります、斯う云ふ意味に於きまして、從來遞信省は學童に對して貯蓄の奬勵をするとか、或は學童を通じて家庭に對して貯蓄奬勵の風を吹込ませると云ふやうな、色々な手を講じたことでありませう、斯う云ふことは教育方面からも非常に結構なことでありますし、遞信省と致しましては國民をして貯蓄心を涵養せしむる、不時の用に供するやうな準備をさせると云ふ方面から致しまして、此の郵便年金だとか、或は簡易生命保險だとか、或は郵便貯金とか云ふやうなことを奬勵したのは、御示しの通りでありまして、將來とてもやはりさう云ふ方針を以て進みたいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=99
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100・井上赳
○井上(赳)委員 私も同感であります、特に貯蓄と云ふことで教育をすると云ふことは、教育の中の實に大事な部面でないかと思ふのであります、唯敗戰以來、今年の金融緊急非常措置令に依りまして、舊圓の大部分が封鎖になります、さう云つたやうなこと、及び「インフレ」の上から生活が非常に苦しくなつたと云ふ關係上、私共の考へます所では今日國民の貯蓄心と云ふものは、殆ど崩壞してしまつたと言つても宜いのぢやないか、私共多少手分けを致しまして、それぞれ郵便局に付て調べて見たのでありまするが、舊圓封鎖以來と云ふものは、東京などは固よりのこと、地方の農村などに於きましても、貯金の預入と云ふものは全くなくなつてしまつた、極く最近大藏大臣が新圓は絶對に封鎖しないと云ふやうなことを御發表になりましてから、預入が多少見えて來た、それは一體どう云ふ連中がやつて居るかと申しますと、主として料理店と進駐軍の看板書きである、一般大衆に至りましては貯金どころか、其の月の生活費の補填の爲の預金の引出しと云ふことで、汲々として居ります、それももう大體此の附近の郵便局に付て聞きますと、貯金も底を突いてしまつたと云つた状態にあるやうであります、是は凡そ私共の勤勞階級から申しますと、常識で判斷しても分る所でございますが、詰りあれ程まで養はれた貯蓄心が、結局生活の不安定及び財政の危機と云つたやうなことから、すつかり吹つ飛んでしまつたと云ふ風に私共は感ずるのでありますが、此の點は當局は如何御感じになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=100
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101・一松定吉
○一松國務大臣 終戰後我が國民の貯蓄心の影響と云ふことに關しましては、只今御示しの通りのやうな結果を招來して居ることを、私は甚だ遺憾に思うて居ります、其の動機原因が何處にあるかと云ふことに對しましては、色々ございませうが、國民の間に政府の施策に付て信用を置かないのだ、我我が是は自由に引出すことが出來るのだと思うた自由預金が、政府の一方的考へに依つて、俄かに封鎖されて出すことが出來ないやうになると云ふやうなことがあることに依つて、國民は常に不安に驅られる、斯う云ふことでは自分は折角貯蓄して置きながら、其の貯蓄を必要に應じて使ふことが出來ない、是では困るから、もう貯蓄するよりも現金を持つて居る方が宜しいと云ふやうな考へから、新圓が多く入る者でも貯蓄せずして、新圓の儘に之を貯蓄して置くと云ふやうな弊風が、近頃盛んに行はれて居るやうに聞いて居ります、又貯金をして居る者が封鎖されて、それが爲に一箇月の生活が五百圓生活だ、それ以上に金は使へない、封鎖で出すことが出來ないと云ふことであれば、何時金が要るかも知れないから、不時の用に供する爲には、自分がそれだけの現金を持つて居なければならぬと云ふやうなことの爲に、貯蓄と云ふことが段々少くなつてしまつた、それが爲に貯蓄心と云ふものが大いに破壞されて居る今日では、一體どうすれば宜いか、斯う云ふやうなことに對しまして私は井上委員と全く同感です、之に付きましては大藏大臣が數囘聲明致しましたやうに、新圓は斷じて之を封鎖しないのだ、あなた方が必要に應じて此の新圓を出すと云ふことに付ては、封鎖も何もしないのだと云ふ聲明を出しました爲に、多少それが緩和せられて手許に貯藏して居るものを銀行、郵便局に預けると云ふことになつたのも事實です、是は即ち政府の諸施策に對する國民の信用の如何に係るのでありまして、さう云ふやうな點に付きましては、政府と致しまして大いに之を是正して、政府の言動は國民に絶對的の信用を有しなければならぬと云ふやうな考へを以て政を行はなければならぬと思うて居る次第であります、又さう云ふ意味に於きまして、政府の信用を維持する上からも、政府の聲明は必ず之を實行する、さうして國民に常に安心感を與へる、斯う云ふことに依つて國民も喜んで蓄財と云ふことに向つて、其の意氣を益益發揚して行くことが出來る、之に依つて手許に持つて居る新圓を、銀行なり郵便局にどしどし預ける、斯う云ふやうに仕向けて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=101
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102・井上赳
○井上(赳)委員 洵に私共同感でございます、大臣の思召はどうかさう云つた態度で政治の上に現はして戴きたいと思ふのでありますが、唯吉田首相が施政方針に於かれまして、國民道義の頽廢は過去長年に亙る教育の積弊に依ると云ふことを仰しやつたのであります、國民教育の頽廢を、結局過去の教育が背負つてしまつたと云ふやうな感を、速記録を讀んで見ましても深くするのであります、此の點は今仰しやつた御話とは一寸合はぬやうに思ふ、併し私は何も開き直つて閣内の不一致とは申しませぬ、今大臣の仰しやつたことに付きましては同感であります、斯う云ふ風に國民道義の頽廢が、斯う云つた國民の貯蓄心の場合と同樣、結局何から起つたか、是は種々の複雜な原因があることでありまして、勿論教育の仕方も宜くなかつたと云ふことがあると思ひますけれども、實際支那事變以來の長い間、惡政が積つて此の結果を招來したものと、斯う私は斷言せざるを得ないのであります、固より複雜でありますからして、或は敗けた爲に國民が希望を失つたと云ふこともございませうし、又生活の困難、財政の危機と云つたやうな色々な複雜なことがあるのでありますが、結局はそれは何かと言へば、長い間の惡政の結果であると云ふことに私は歸著すると思ふのであります、國民道義の頽廢は、結局一口に言ひますれば騙されたと云ふ國民の感情の表現、即ちそれは政治への不信ではないか、斯う私は考へるのであります、そこで私は此の際、何は偖て措きましても、政府の御經營になる事業、殊にそれが國民の私經濟に關係の深いものに對しましては、深甚の考慮を拂つて戴きたいと思ふのであります、是は勿論遞信省の御所管でありませぬから、此處で申上げるのは的外れかも知れませぬけれども、やはり同じ閣僚であらせられるのでありますから、斯う云ふ聲も聽いて置いて戴きたいのであります、それは戰時以來屡屡値上げされました鐵道の運賃が、今年の三月になりまして一躍二倍半に上り、更に四箇月ならずして又上げられると云つたやうな状態にあるであります、遞信省としましても郵便料の値上と云ふやうなことを御計畫になり、是は議會の協贊を經て先日それが實施されたのであります、其の他煙草が續々と値上げされる、勿論是は課税と云ふやうなことも含まつて居りますから、問題は多少違ふかも知れませぬけれども、兎に角政府のされることは率先して續續御上げになる、私は今郷里で、戰時以來十圓の家に入つて居ります、家賃十圓を拂つて居ります、十圓は實に安いとは思ひながら、統制に掛つて居るのでありますから、家主も上げると云ふことは申しませぬ、所で今年の四月でありましたか、此の久しい間何も言はなかつた家主が、突然、今度から二十五圓に上げて戴きたい、斯う云ふことを申して來たのであります、それはをかしいぢやないか、成程氣の毒だけれども、今そんなことをすれば君も僕も罰せられるぢやないか、斯う云ふことを申しました所、いやそれはさうであるけれども、何としても政府の鐵道が一躍二倍半に上つたと云ふのならば、國民としてなぜ二倍半に上げて惡いのですか、斯う云ふことを申したのであります、勿論それは抑へては置きましたけれども、國民の感情はここであらうと思ふのであります、斯う云ふ不平は色々な點で非常に多からうと思ふのであります、政府は斯う云つたものを値上げなさるのに、今の物價水準に合せれば是が當然だ、まだ安過ぎるのだと云ふやうなことを御理由になさる、けれども、やはり政治をなさる方は、所謂天下の憂ひに先んじて憂へ天下の樂しみに後れて樂しむと云つた御心掛が必要でなからうか、若し安いものを値上するならば、先づ民間から上げさせて、政府は最後に上げると云ふ態度でなければならぬと思ふ、それが一方は統制に掛けて居つて、一方は率先して役所から上げるのだ、斯う云ふ態度が國民の道徳の頽廢と云ふことを大いに促して居ると私は思ふのであります、之を民主主義政治の立場から申しますれば、結局國民の生存權或は生活權と云ふものを政府はどこまでも擁護して行く、それにもつと政治家は敏感にならなくてはならぬと私は考へるのであります、私は第一次歐洲大戰直後英國に行きました時に、びつくり致しましたことは、英國は戰時中からずつと續いて汽車の時間割は一切變更しない、汽車の時間割をなぜ變更しないかと云ふことを大使館に就いて聽きました所が、いや英國では結局それだけ人民の權利が進んで居るのである、どの汽車に依つて「ロンドン」の何處へ何時間で行く所に自分は住居して居るのである、隨て汽車の時間を變更すると、其の「ロンドン」の眞ん中へ行く時間が變つて來ます、是は結局國民の權利を侵害することになる、さう云ふ意味で決して汽車の時間割は變更しない、斯う云つたやうなことを聞いたのであります、國民の生存權と云ふやうなことが敏感に政治の上に現はれて居る、斯う云つたやうなことが、私は今後の民主主義の政治では大事な點であると思ふ、政治が道義を基盤として行はれなければならぬと云ふことは、茲にあると私は信ずるのでありますが、斯う云ふ點は大臣は御認め下さるでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=102
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103・一松定吉
○一松國務大臣 國民道義の頽廢が國民教育の低下にあるのだと云ふやうなことが、今日人々の口にせられて居ると云ふが如きことは甚だ遺憾である、國民道徳の頽廢は、教育にもあらうが、其の他色々な動機原因があるやうに思ふがと云ふ御意見は私御尤もだと思ふ、私も井上委員と同一に考へて居りまして、教育ばかりが今日國民の道義の頽廢の責任を負はなければならぬと云ふことではありますまい、それは又此の食糧の缺乏であるとか、それに原因して色々な買出しだとか、或は買出しの取締だとか、或は闇の横行だとか、或は物資の缺乏だとか、或は政府の施策の時々の變更だとか云ふやうな、正直な者が馬鹿らしい、正直でない者でなければ、結局我々の生活は維持が出來ぬのだ、人はどうでも俺さへ宜ければ宜いと云ふ心から、斯う云ふ道徳、道義が頽廢せられたことであらうと私は思ふ、殊に東條内閣と云ふか、特に指定するのは惡いですけれども、此の太平洋戰爭の動機とか、原因とか云ふことに對する國民を指導した政府の態度、或は戰勝の結果に付て國民に對する告知の方法の正しからざることとか、終戰後の今日に於て、其の戰爭當時の政府のやり方が全く國民をぺてんに掛けて居つたやうなことが、自然に各方面から集結せられて、國民道徳と云ふものが非常に惡くなつたことであらうと私は思ふのですが、斯う云ふ點に付きましては、政府としても國民としても、一刻も早く斯くの如き道義の頽廢を是正して、本當に日本は昔から言ふ所謂東洋の君子國と言はれたやうな國に之を持直さなければ、國際信義の上に於ても、亦將來他國家の仲間入をする上に於ても、民族として甚だ不都合であり、甚だ面白からぬ行爲であると云ふことは、誰も考へて居る通りであります、それ等の點に對しまして、鐵道が運賃を再三値上したとか、又郵便料金の値上だとか、煙草の値上だとか、酒の値上だとか、諸物價の値上に對して、政府が物の上るに從つて、政府の經營して居る事業に對する値上が頻りに行はれて居ると云ふことで面白くないぢやないか、私其の通りに思うて居ります、併しながら是は所謂物價がさう云ふやうに段々上つて行き、國民の生活が窮乏し、一面官廳に奉職して居る從業員の食生活が非常に窮迫されて來るやうなことになれば、やはり待遇を改善して、從業員の諸君が安んじて其の職務に從事することが出來るやうにしなければ、此の仕事の能率は上りませぬ、例へば私の方の遞信省の仕事と致しましても、色々民衆から非難攻撃されて居りまするが、其の動機原因を調べて見ますると、色々原因もありませうが、生活の不安と云ふやうなことが其の動機の最大原因をなすものであると思はれるのであります、斯う云ふ時に、從業員が、我々は少しも生活には困らないのだ、子供や家族が病氣病難の時には入院させて其の病氣を直すことが出來るのだ、我我は家に居なくても、家は家族が守つて、兎に角生活には困らぬのだと云ふ、希望と考へを持たすれば、心にゆとりが出來まして、業務に熱中することが出來るやうに思ふのであります、所がさう云ふ點に付きましては、やはり物價の値上に從つて待遇改善の爲に、色々政府經營事業の賃金とか、物價の値上と云ふことは已むを得ないことと思ひまするが、唯あなたの仰せのやうに再三再四之を上げると云ふことは宜くないぢやないか、御尤もであります、出來ますならばさう云ふことをせずして之を國債に仰ぐと云ふことも必要でありませうが、併しそれも程度がありまするから、必ずしも國債だけに依つて此の國家の支出の不十分な所を補ふと云ふ譯に行きませぬものですから、やはり斯う云ふ値上等に依つて、其の缺陷を補填すると云ふ立場になるのでありますから、此の邊は一つ御諒解賜はりまして、唯無定見にどしどし値上をして國民を苦しめると云ふことの惡政であることは是は言ふまでもございませぬ、あなたの御引用になりました家賃値上の問題でありますが、統制令等の問題がありまして、今から三年も前に契約して入れてあつた其の家賃を、いつまでも上げることが出來ない、然るに物價は段々上つて行く家は修繕して呉れ、壘は破れた雨漏りはする、直して呉れと云ふ、それでは家賃は上げて呉れるかと云ふと家賃は上げられないと云ふことで、結局貸してある家は朽廢に任かせると云ふやうなことで、今日何としたら宜いであらうかと云ふやうなことは、家を借してやる人及び借りて居る人の間に、常に問題になつて居るのであります、是等の點に付きましては、何とか之を一つ考慮して、其の統制を解くやうにするとか、或は統制を解かなければ、國家が其の家主に對して多少でも補助を與へ、家賃は値上しないやうにするとか、何とか双方の間に都合の好いやうな施策を取らなければならぬのではないかと思ふのでありますが、何分今は御承知のやうに、各方面に向つて色々改善しなければならぬことが多いが爲に、今はそこまで手が屆いて居ないやうであります、是は統制法規と云ふものも大いに研究調査の上に、解くべきものは解くと云ふことにしなければならぬと思ふのであります、あなたの最後の汽車時間の變更問題に付きましては、是は我が國に於きましても「イギリス」の其のもののやうに斯くありたいのであります、何分戰災の爲に汽車線路若しくは貨車等の潰滅、或は朽廢、人手不足と云ふやうなことの爲に、已むを得ず時間を時々變更する、是は私の方の所管ではございませぬけれども、さう云ふやうなことは甚だ面白くないことでありますが、御承知の通り、日本の汽車と云ふものは、世界のどの國に於ても日本の汽車のやうに時間が正確で、發著が間違はぬ所はない、斯う云ふやうに思うて居りまして、私も世界を一周致しました時に、特に日本の汽車時間の正確なことに非常に誇りを持つたのでありますが、最近の汽車と云ふものは乘つたら何時間遲れるか、大阪から東京に著くまでに辨當を持たぬで宜かつたが、二日分位は辨當を持たなければ、いつ著くか分らぬと云ふやうな不都合なことで、斯う云ふことに向つて、幸ひに終戰後に於きまして、聯合國も日本の囘復と云ふことに向つては、深甚の協力をして戴いて居るやうでありますから、今後もそれ等の協力を得て、成るたけ速かに囘復出來るやうに、只今より色々施策を練つて居りますので、どうか御協力を御願ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=103
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104・井上赳
○井上(赳)委員 勿論待遇改善で已むなく上げなければならぬと云ふことは能く分つて居ります、唯政府が上げる前に民間のものがさう云ふ不都合がないやうにと云ふやうな御配慮が、もつと欲しいのではないかと云ふことを私は感ずるのであります、併しながら汽車賃も上げ、家賃も上げられると又困ります、若しどうしても待遇改善等で上げなければならぬ關係ならば、或は此の一年間位は寧ろ一般會計かを繰入れても待遇改善をなさつて、其の後に値上げをすると云ふことに行かぬものか、さう云ふやうにいつも民間より後から行くと云ふ考へ方で、斯う云ふものが實施されなければならぬのではないかと私は思ふのです、勿論今度の年金、簡易保險金等を色々値上げすると云ふことは、決して汽車賃と同一のものぢやありませぬ、是は自由のことで、強制される問題でありませぬから、別問題ではありますけれども、一般勤勞大衆の聲を受けて申しますると、多少類似した所があるやうに私は思ふのであります、それはどう云ふ點か、やはり國民心理の問題を政治家は捉まへなくてはならぬと思ふのであります、先程から申しました通り、今日ではもう俺は貯金どころか引出さなければ食へぬのぢやないか、貯金などは殆ど國民の中から無關心になつて居る今日――引出し以外は殆ど無關心であります、斯う云ふ時代に此の貯金の最高額を一萬圓にするとか、或は預入れ高を五十錢から一圓に引上げるとか、其の他簡易保險、年金の問題であるとか、是は一般大衆から申しますと、今日一體政府は何の必要があつて斯う云ふことを考へたのか、俺等に關係はないぢやないか、殆ど政府も議會も無用なことをやつて居ると云ふ風な印象を與へて居る向もあるのであります、勿論立入つて色々御話を承れば、斯うやつた方が宜いと云ふ點もはつきり分るのでありますが、斯う云ふ點が若しありまするならば、或は新聞を通じてでも、國民に能く分らせると云ふことが必要ぢやなからうか、斯う思ふのであります、今度の豫算案に依りますと、國民學校の教師でありますが、是が大いに優遇される、一體どの位上るのか、具體的な面を調べて見ますと、本俸百五十圓の教師が、家族が四人あつて大都市に生活して居れば一箇月千百六圓貰へる、月收が千百六圓になります、年收收入から申しますと一萬三千二百七十二圓と云つたやうな、今まで小學校の教師など夢にも見なかつた俸給を貰へることになるのであります、併し又之を一面から見ますと、之に分類所得税を取られ、綜合所得税を取られ、府縣税、市税も取られ、附加税も取られる、さうして家族の一人が中等學校の教育を受けて居ると、一體此の教師の生活はどうか、是も色々今研究をして居る所でありますが、結局家族一人百圓の生活が出來るだらうかと云ふやうな所にまで、又話は元へ戻つてしまふのであります、今度率先して優遇されたと云ふ國民學校の教師がそれなのであります、遞信省の職員其の他從業員の優遇と云ふやうなことが出來たとしてどうなりますか、私はまだ調べても見ませぬけれども、要するに都會の方の配給は、配給だけでも一人當り月二百圓乃至二百五十圓、田舍の方で百圓乃至百五十圓と云ふ生活費が今日掛かる、闇で買ひますればまだまだ是れどころではありませぬが、幾ら優遇された所で、結局は赤字の生活をしなければならぬのであります、さう云ふ所に結著は來るやうであります、さう致しますと一體今後貯金と云ふやうなものはここ暫く誰が貯金をするか、國民のどう云ふ層が貯金をするのか、斯う云ふことに疑ひを持つのであります、其の點一體どう云ふ所に目安を持つて居るか、どう云ふ人間が貯金をするか、若し其の見透しが分つて居たらどなたからでも承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=104
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105・一松定吉
○一松國務大臣 先づ郵便貯金法、若しくは簡易生命保險法、郵便年金法、斯う云ふものを何の爲に改正するのか、一體改正する必要があるのかと云ふやうな點に對しましては、是は提案理由を御説明申上げました時に、其の大要を申上げたことに依つて御諒承を賜はりたいのであります、それから額の最高制限額、最低額を改正して額を増額致しましたことは、是も亦、此の提案理由の説明の時に申上げたやうなことでありまして、詰り近來では農漁山村方面に於て、隨分新圓が澤山貯藏されて居るやうなことも、色々な方面に依つて之を承知致して居るのであります、さう云ふやうな人々の新圓の退藏と云ふやうなことを、之をやはり貯蓄として出して戴くと云ふやうなことも非常に宜いことであると同時に、さう云ふことに依つて、一面貯蓄心を涵養すると云ふことにもなりまして、所謂一石二鳥と云ふやうなことも狙つて居るのであります、斯う云ふやうなことから考へますと、必ずしも貯蓄を誰がするか、する者はないぢやないかと云ふやうな非難は、直ちに當らないのぢやないかと私は思ふのであります、又待遇改善に付きまして、國民學校の先生が百何十圓のものが千何百圓になると云ふやうなことは、あなたの御質問の通りでありまして、國民學校の先生に限りませぬ、官廳に就職して居ります、總ての官吏、雇傭者、斯う云ふやうな人が皆待遇の改善をやる、御承知の七月案と云ふやうなものが新聞に謳はれて居るのであります、斯う云ふやうなことも、近い内に之を實施しようと云ふやうな勅令がもう近日の内に出ることになつて居ります、是と同時に官吏でないやうな者、地方の公吏と云ふやうな人々に對しましても、同じやうな待遇をしよう、そればかりではありませぬ、代議士諸君に對しても、時間と勞力と費用とを使つて、長い間地方から東京に御上京になつて居つて、さうして日夜刻苦精勵して、國家の爲に奉公せられて居る方に對する待遇などと云ふものが、今日甚だしく菲薄である、是も何とかしなければならぬ、大いに待遇を改善しなければならぬと云ふことが、只今政府部内に於て明かにされて居りまして、近い内に法律案として出ることにならうと思ふのであります、さう云ふやうな譯でありまして、然らばと云つて待遇改善に依つて増額されました金が、悉く是が使はれてしまふと云ふことではないのであります、暫くの間は新圓生活、一箇月五百圓生活、代議士諸君は一日四十圓、月千二百圓と云ふものが新圓で出されると云ふことになつて居りますが、それ以外の金はやはり封鎖預金の方へ封鎖されると云ふやうなことで、是がやはり一つの貯蓄の方法に相成ると思ひます、斯う云ふやうな方法に依りまして、殊に今日は貨幣の價値が安くなつて居りますが、併しながら新圓等が澤山農漁山村等に出廻つて居りますので、斯う云ふやうな方面からもやはり相當な貯蓄が出來やうと思ひますから、斯う云ふやうな法案を出して貯蓄を奬勵することは、意味をなさんではないかと云ふやうな御非難は、どうかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=105
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106・稻田直道
○稻田委員長 井上さんに申上げますが、質問のやり方が非常に詳しいやうでございますが、成べく要點に付て御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=106
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107・井上赳
○井上(赳)委員 承知致しました――全く御同感であります、さうすれば結局農村漁村目當てと云ふことである、それは私も大體さうであらうと思つたのであります、最後に一つ御願ひがあるのであります、今度は最低の預入れ五十錢を一圓にすると云ふことであります、是は事業費が非常に節約される、其の他色々面倒な手數が省けるだらうと思ふのでありますが、併しながら今後又教育の面に貯金と云ふやうなことが取入れられ、貯金に依つて教育すると云ふやうなことが必ずあると云ふことを考へますと、最低の預入れ五十錢と云ふものはここ暫く活かして置いて戴けないか、是は私共教育代表者の全體の希望であります、それを一寸御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=107
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108・一松定吉
○一松國務大臣 御質問の要旨は、郵便貯金の最低五十錢を一圓に引上げたと云ふことはどうも少し行き過ぎであるから、五十錢を其の儘にして存置して戴きたい、斯う云ふやうな御趣旨のやうでありますが、それは成程さう云ふ見方もあらうと思ふのであります、併し今日の貨幣價値から致しますれば、總てのものが一山十圓で、十圓以下のものはないと云ふ時です、新聞を買つても、一枚十五錢と云ふのが近頃は段々二十錢になり三十錢になる、靴磨きも元五錢も出せば磨けたものが二圓出さなければ磨けないと云ふやうな工合ですから、五十錢と云ふことを餘りに是は高いものだと云ふ風に見ないやうに思つて居りまして、五十錢を一圓に上げたからと云つて、さのみ弊害はないやうに思つて斯う云ふことにしたのであります、其の點に付ては何分御諒承願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=108
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109・井上赳
○井上(赳)委員 一寸簡單に申上げたからなんでございませうが、勿論此の物價が此の通り何時までも上りつ放しで居るかどうかも分りませぬ、それから又教育の上から、若し子供に貯金をさすと云ふやうなことになりますと、一家の中に三人子供が居る、それなら三人同じやうに五十錢宛やらすと云ふやうなことですと、まあ棄てるやうな金でも掛けてやらうと云ふことにもなります、是が倍額になれば三圓になる、兄弟の數に依つては五圓になると云つたやうなこともあると思ひます、さう云ふ意味でここ暫く五十錢を保留して置いて戴けないか、斯う云ふ希望なのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=109
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110・一松定吉
○一松國務大臣 そこはまあ御意見の相違とでも答へる外は一寸ありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=110
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111・井上赳
○井上(赳)委員 是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=111
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112・稻田直道
○稻田委員長 次は近藤鶴代君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=112
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113・近藤鶴代
○近藤委員 本案に對しまして重要な問題に付きましての御質疑は、同僚委員の方々から十分盡されたやうな感じが致します、私は此の好機に唯小さいことではございますが、五つ六つ御尋ねを致したいと存じます、第一番目に簡易保險の業績であります、身體檢査をしない爲に、他の一般の保險との間にどれ位死亡率の相違がございますか、又戰爭の爲にどれ位死亡率が上昇して居りますか、尚ほ現在の食糧難其の他の事情の爲に、將來、死亡率が相當上昇する虞はないでございませうか、此の點に付きましての實情と御考へを伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=113
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114・岡井彌三郎
○岡井政府委員 民間との死亡率の差に付きましては後程御答へ致します、戰爭に依りましてどれ位保險金額を支拂はなければならなかつたかと云ふことに付きまして御答へしますが、それは戰爭が始まりましてから二十年度までに於きまして約五十七萬件、金額に致しまして一億六千萬圓を支拂つて居ります、それから戰死を含めた死亡率と、さうでない死亡率との差を申上げますが、餘り古いことは省略致します、又最近のものも是れ亦統計がありませぬので、一應昭和十八年度を御參考の爲に一例として申上げますと、昭和十八年度に於きまする戰死を含む死亡率が、〇・〇一〇二六となつて居りますが、戰死を含まない死亡率、詰り今申しました死亡率から戰死關係を除きました死亡率、是は〇・〇〇九九三、斯樣になつて居ります、民間との死亡率の比較は一寸古うございますが、昭和十七年を申上げますと、簡易保險に於ける死亡率は〇・〇一一六二、之に對しまして、普通保險の死亡率は〇・〇〇八九九、斯樣に多少の差が出て來て居ります、それから申落しましたが、將來はどうなるか、詰り食糧不足の爲の榮養失調に基因する死亡が殖えやしないか、隨てそれが爲に經營が益益困難になりはしないかと云ふやうな御趣旨の御質問であつたと思ひますが、其の點は實は私共と致しましても心配致して居ります、今後の食糧事情の如何に依りましては、さう云ふ危險が多分にある、併し果して數字的にどう云ふ風になるかと云ふことを豫想致すことは勿論出來ぬのでありますが、唯私共と致しましては、是れ以上に食糧事情が一層窮迫して參りますれば、それが爲の死亡も殖えるし、隨て死亡率が殖え、計算の基礎が危くなつて、經營が益益困難になると云ふことだけは、常に心配致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=114
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115・近藤鶴代
○近藤委員 第二の問題と致しまして、小兒保險の制限が撤廢されましたことは洵に結構なことでありますが、現在六歳末滿の小兒と、それ以上のものとの死亡率がどれ位違つて居りますか、又日本再建の唯一の希望でございます小兒の死亡率を少くする爲に、簡易保險の經營者でいらつしやられます遞信省と致しまして、厚生省などと連絡して何等かの努力をなさいます御意思がございますかどうか、此の點に付きまして御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=115
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116・岡井彌三郎
○岡井政府委員 小兒の死亡率でありますが、六歳以下と六歳以上の死亡率の比較を申上げますならば――是は後に讓りまして、それより先に小兒の健康状態を良くする爲に、厚生省邊りと連絡を取つて如何なることをして居るか、斯う云ふことに付て申上げますならば、御承知の通り簡易保險の事業に於きましては、以前は健康相談所と云ふものは、全國に三百二十何箇所ありまして、是が獨り小兒だけではありませぬ、全體の加入者の健康増進と云ふことに付て大いに寄與して居つたのでありますが、是が昭和十九年に、戰爭中國策として國營の醫療施設を統一的に運營する、其の方針の爲に厚生省に移管になりまして、只今厚生省でやつて居ります、實際に於ては厚生省は更に縣に移管しまして、縣に於きまして保健所と云ふもので、被保險者の爲の健康増進施設をやつて居ります、それに對しましては簡易保險事業からは、年々三百萬圓の金を厚生省へ渡してやつて居るのであります、厚生省は其の金でさう云ふ施設をやつて居る譯であります、又簡易保險事業自體と致しましても、只今數十萬圓の豫算を以ちまして、巡囘相談と云ふのをやつて居りますが、是れ亦獨り小兒のみならず、一般の加入者の健康増進、體位向上と云ふことに對しまして、多少の寄與を致して居る譯であります、將來どうするかと云ふことに付きましては、只今申上げましたやうな、厚生省で遞信省から委託を受けてやつて居ると云ふ形は變則でありまして、事業の爲から申しますれば、以前のやうに此の事業を經營する者自體が、同時に此の施設も經營するのが本則であり、事業の發展の爲に良いことだと信じて居りますので、將來機會がありましたならば、厚生省から更にこちらへ移管を受けまして、元々通りこちらでやりたいと考へて居ります、六歳以下の死亡率それ以上の者の死亡率を申上げますと、小兒に付きましては生れた時が一番死亡率が高い譯であります、それから段々下りまして、普通の状態になる譯でありますが、生れた最初の死亡率は〇・一六三〇七五となつて居りますが、是が段々下りまして四歳では〇・〇一四五八〇、五歳では〇・〇一〇一五三、六歳では〇・〇〇七四九九、七歳になりますると更に下りまして〇・〇〇五九五二、八歳では〇・〇〇五〇九一、九歳になりますと〇・〇〇四八三、斯樣にずつと下つて來て參ります、以上であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=116
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117・近藤鶴代
○近藤委員 一般的のこと以外に、格別に小兒の爲に保健的な御考へはおありでございませぬのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=117
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118・岡井彌三郎
○岡井政府委員 只今の所では特に小兒に限つてと云ふことは考へて居りませぬ、先づ一般的に一般加入者の健康増進と云ふことに更に努力致しまして、其の上で小兒に付て特になすべきことがありましたならば、其の方にまで手を伸ばして行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=118
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119・近藤鶴代
○近藤委員 只今御話のございましたやうに、簡易保險加入者の爲に健康相談所を開設して、多大の便益を與へて居られましたのも、最近厚生省の方に移つたと云ふ御話でございます、それに付きまして、厚生省の方では大約六百萬圓の支出をせられるかのやうに伺つて居つたのでありますが、それに致しましても極めて少額でございまして、十分其の目的を達し得ないのではないかと懸念致されるのでございます、民間保險會社に於きましても、病院の經營其の他色々な點に相當力を盡して居りますのに、國營保險に於きまして此のやうに不熱心であると云ふことは、申譯ないのではないかと存じます、厚生省關係の健康保險などに於きましても、近頃醫師の不親切であるとか、或は不誠意、時としては現金とか或は色々な物資でも持つて行かなければ、碌々診察もして呉れないと云つたやうな事情の時に、弱者の立場にあります受診者が、精神的に或は肉體的に受けます打撃は、相當大きいものがあるのではないかと存じます、國民道義頽廢の大きい原因の一つも、やはり斯う云ふ部面にも原因があるのではないかと云ふことを否定出來ないのでございます、新圓生活に於きまして色々困ることが極めて多い中にも、格別健康の問題が大きな負擔、苦痛となつて居ります現状に於きましては、特に一般大衆の生活向上を目標と致します簡易保險事業として、是非強力なる保健施設を擴充して戴きたいと云ふことを申上げたいと存じます、其の邊の御考へに付きまして御伺ひ致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=119
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120・一松定吉
○一松國務大臣 只今の御意見は御尤もだと私考へて居ります、保險事業方面から見ましても、成だけ死亡率の少くなることが必要であることは言ふまでもありませぬが、國民の人口増加策と云ふ方面から見ましても、健康保持と云ふ方面から見ましても、所謂厚生施設を充實して、國民をして一層強健に、一層長生きをするやうに、さうして國家の爲に働くことの出來るやうに施設を充實すると云ふことは、是はもう必要缺くべからざることであると思ひますから、其の點に關しましては厚生省方面とも緊密の連絡を取りまして、さう云ふ點に付ては一層の努力をすると云ふことを以て御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=120
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121・近藤鶴代
○近藤委員 次に簡易保險の積立金の運用に付て一寸御尋ね申上げたいと思ひます、昭和二十一年五月の此の册子の中に出て居ります三十七頁の事業別公共團體等放資状況の欄を見まして感じたのでございますけれども、是は戰爭中だつたから已むを得ないとは存ずるのでございますが、積立金の性質から申しまして、其の費途の「パーセンテージ」が極めて當を得ないやうな感じが致すのでございます、是は戰爭前の割當を私存じませぬのでございますけれども、大體茲で御伺ひ出來ないものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=121
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122・岡井彌三郎
○岡井政府委員 積立金の放資割合でございますね――戰爭前も餘り變つて居りませぬですが、唯戰爭中は御承知の通り國債が澤山出ましたので、其の引受の爲に國債に廻る分が非常に殖えたと云ふことは言へますが、其の他の分野の放資先と云ふものは、只今正確なる數字は持つて居りませぬけれども、戰爭前も大體此の通りになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=122
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123・近藤鶴代
○近藤委員 私共の常識から致しますと、此の割當は社會事業施設とか、或は保健衞生施設、教育施設、其の邊の所までは大體肯けるのでございますけれども、それ以外のことに付きましての放資の割合が大變多いやうに思ひますし、就中保健衞生施設にもつともつと重點を御置きになるべき性質のものではないか、或は又社會事業の部面にももつと澤山の「パーセンテージ」を御充てになるのが至當ではないかと云ふ風に考へるのでございますけれども、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=123
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124・岡井彌三郎
○岡井政府委員 全く御説の通りでありまして、今後は社會事業方面、保健衞生施設方面へもつと澤山の投資をすべきだと思ひます、唯以前にはさう云ふ施設が餘り國家としてありませぬものでありますから、隨て資金の需要がなかつた結果斯うなつて居るのでありまして、今後さう云ふ風な需要がありました場合には、其の方面に持つて行きたいと思ひます、唯茲で御斷りして置きたいことは、今年の一月から簡易保險、郵便年金の積立金は總て預金部に預け入れる、直接私共で流用すると云ふことが停止されて居りますので、此の停止が解除されました曉に於きましては、只今御話のありましたやうな趣旨に於きまして運用を致して行きたいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=124
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125・近藤鶴代
○近藤委員 若し停止期間が過ぎました場合、只今仰せになりましたやうに、出來るだけ重點をさう云ふ方面に御置きになつて戴きたいと云ふことを旁旁御願ひ申上げたいと存じます、次は一昨日以來問題になつて居ります電報や速達の遲延でございますが、當局の御熱心なる御努力にも拘らず、中々其の機能の囘復せられませぬことは大變遺憾でございます、是は今日色々刷物を拜見致しまして、其の原因とか或は對策に付きまして一應了承致したのでありますが、私考へるのに、郵便物遲延の大きい原因の一つは、聯合軍側の檢閲を受けると云ふ點にもあるのではないかと存じますが、内容檢閲の必要性を、戰爭中と終戰後の今日と比較致しました場合、恐らく問題にならぬのでないかと存ずるのであります、既に終戰後一箇年にも及びました今日と致しましては、當局に於かせられまして一應其の間の實情と云ふことに付て關係方面に折衝致され、事情に依つては之を撤廢して戴くやう御努力が願へないものでございませうか、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=125
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126・一松定吉
○一松國務大臣 電報電信等に對しまする遲配問題に付きましては、前囘以來屡屡申上げた通りでありまして、本日も皆樣の御手許に御配りしました郵便電報の事故原因と其の對策と云ふ刷物に依つても御諒承願つたことと思ふのでありますが、聯合國の郵便物檢閲と云ふことが一つの遲配の原因になりはしないかと云ふ點に付きましては、色々見方もございませうが、今公の席で責任ある私から其の點を明かにすることは少し差控へたいと思ひます、檢閲問題に對しまして、遞信當局として聯合國の方へ交渉して、出來る限り之を簡略にし、若しくは廢めて貰ふやうにと云ふ點に對しましても、實は考へて居ないことはありませぬ、私が就任以前此の點に付て實は交渉したこともあるらしい、所が其の點に對しましては所謂「ポツダム」宣言を無條件に受諾した、今日の我が國と致しましては、是れ以上のことを私が御答へが出來ないことを遺憾に思つて居ります、其の邊は惡からず御諒承を賜はりたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=126
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127・近藤鶴代
○近藤委員 速達が遲延した場合には郵便規則第九條に依り速達料を還付する、電報の場合にも電報規則第四十五條に同樣の規定があると存じて居ります、所が實際はそれが殆ど行はれて居りませぬし、又それに對して民衆は此のやうな規定のあることさへも忘れて、それがどれ程業務上にさへ差支へを來しましても、唯泣寢入りになつてしまつて、半面には遞信省に對する不平を高めて居ると云つたやうな實情でございます、若し色々と當局で御努力下さいましても、中々郵便物の配達が、或る程度の機能の囘復に手間が要るものと致しますならば、一應極端なことを申しますならば、速達などと云ふやうな御取扱は御見合せになつて戴いたら如何かとさへ存じます、併しながらさう致しませぬまでも、どうか斯う云ふ規定があると云ふことを、例へば郵便局の窓口とか、或は新聞、「ラジオ」を通じまして一般の民衆にも能く認識させますやう處置して戴きたいと思ひます、さうして檢閲を受けない郵便物の理由のない遲延に對しましては、當局として規定通り料金の返還をどんどんして戴くやうに御願ひしたいのであります、斯うすることに依つて小さいことではございますが、民衆の當然の權利が主張せられ、又それが酬いられ、一面從業員の責任觀念をも強められ、延いては郵便物遲延がなくなることに依つて、國民に非常に明るさと心強さを與へる、又凡ゆる生産方面を圓滑にすることにも、大きな力があるのではないかと存じますが、此の點に付ての當局の御考へは如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=127
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128・一松定吉
○一松國務大臣 其の點に付きましては實は過般貴族院に於きましても、それが丁度問題に取上げられました、私御質問の御趣旨御尤もと思つて居るのであります、實はあなたの御示しの如く、速達郵便に付きまして若し郵便物が遲配致しましたやうな場合には、御示しのやうに郵便規則第九條第一項第三號に依りまして、料金を返すと云ふ規定があるのであります、之に依りますると、郵便局の過失に依つて速達として取扱つたものが其の取扱をしなかつた、又は普通の郵便より遲れたと云ふ場合には速達料は返す、斯う云ふ規定がある、電報に對しましても今御示しのやうに四十五條に依りまして、電報に關する料金に付て電報を取扱ひまする當局に於て、過失其の他の理由に依つて其の電報が遲れた、或は送達されなかつたと云ふやうな時には、其の電報料を返すと云ふ規定があるのであります、是はあなたの仰せのやうに、民衆は多く之を知らないやうに私も思ふ、でございますから成たけ民衆に之を知らせるやうにと云ふことを當局に注意致しまして、係の方で既に電報の方に對しましては、窓口に其のことをちやんと貼出しまして、若し遲れた時分には御申出に依つて直ちに御返しするからと云つて貼出しをもう致しました郵便の速達の方に對しましてもさう云ふ風にすることを今手配中でありまして、斯う云ふことが民衆一般に知れ渡りまして、さう云ふことに對して料金の返還を請求して來る方がありますれば、局と致しましては進んで之を御返しする、斯う云ふやうな處置を執ります、但しさう云ふことが出來ないやうであれば、此の際一つ速達とか急報とか云ふものは廢めてはどうだと云ふことに對しましては、實は甚だ恐縮でありますが、成るたけ民衆の便宜を圖りまして、一層速達とか急報とか云ふものを多く取扱つて、成るべく民衆に利便を與へたいと云ふことが、遞信省の私共の理想として居るのでありますから、今までの惡い所を是正して、さう云ふ制度は益益發達助長せしむるやうにと、斯樣に努めたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=128
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129・近藤鶴代
○近藤委員 最後にもう一つ申上げたいと存じます、是も現下の問題となつて居ります小包や爲替の紛失拔取に付てでございますが、當然の辨償規定があつてもそれが實行されて居らない爲に、惡事を募らせる傾向があると思ひます、此のやうな不正を絶滅して、遞信省の信用を高めるやう善處して戴きたいと存じます、さうして安心して小包が發送出來ると云ふことに依りまして、交通の緩和にも幾らか役立つのではないかと存じます、敗戰後狂ひに狂つた社會情勢を建直す爲には、何か一つでも、どんな小さいことでも、兎に角戰爭前の規則正しい形に蘇へらせると云ふことにあるのではないかと存じます、何よりも手始めに先づ總ての郵便物を戰爭前に復歸すると云ふ意氣込みを以て、凡ゆる手段を御盡し下さいますやう、尚又一般民衆に最もお馴染の深い官廳に致しまして、從業員を民主化された温い應對、殊に女子事務員に對する其の方面の御躾を強力に御願ひ致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=129
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130・一松定吉
○一松國務大臣 書留郵便の在中爲替等の拔取り、若しくは小包郵便の在中品拔取りと云ふやうなことが頻々として行はれて居りまして、それが常に問題になつて居りますることは、遞信當局と致しまして洵に遺憾に存ずる所であります、さう云ふやうな不都合を急速に是正して、あなたの仰せになりましたやうに、以前遞信省が民衆の偉大なる信用を博して居つた當時に引戻す、否それよりも尚ほ多くの信用を獲得するやうな方法を講ずると云ふことは、私が遞信大臣就任以來日夜其の點に付て苦心し、事務當局とも、毎日のやうに其の謀を運らして居る次第でございます、例へばさう云ふやうなことがあつたならば、直ちに係官を派遣して徹底的に其の事情を取調べて、假借する所なく、さう云ふ惡質な者は嚴罰に處す、但し何も彼も嚴罰にすると云ふ意味ではなくて、所謂一面には又涙を以て處遇しなければならないやうな犯人もございませうから、さう云ふ點に對しましては相當なことをして、所謂恩威竝に行はれると云ふやうな方法を執り一面には一罰百戒と云ふことに依つて實績を擧げたい、斯う云ふことで今專らさう云ふ方面に力を盡して居るのでございます、それと同時に從業員の態度に對しまする不遜の態度に付ては、昨日も本日の午前中も問題になりましたやうに、近來非常にさう云ふことが言はれて居りまして、現に私共が郵便局に出掛けて行つて、電報用紙を呉れとか、或は爲替の依頼状を呉れとか云ふことを頼んでも、まるで木で鼻を括つたやうな態度を往々見受けられるのでありまして、斯う云ふ態度に接すると云ふことは、多數の民衆が常に不快に思つて居るので、是は色々原因もありませうが、兎に角さう云ふ不心得を是正して、何も金の要らないことですから、温情味を以て、それ等の人に接觸すると云ふことが、一つの「サービス」であり、一つの信用を囘復する方法でありますから、さう云ふ點に對しましては、急速に之を是正しなければならぬと云ふことも考へまして、毎度此のことを係の方に命じて居るのであります、本日も斯う云ふことがあつてはいけないから、急に之を改善するやうにやれと云ふことを命じまして、極く最近、或は今明日にでも局長課長會議を開きまして、どうすれば宜いかと云ふことに付ての善後處置を急速に立てまして、之を實地に移すことに致して居ります、又議會が濟みますれば、私自身が日本國中行脚致しまして、北條時頼、水戸光圀のやうな態度を以て是正しようと實は考へて居るのであります、どうか左樣御諒承願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=130
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131・稻田直道
○稻田委員長 近藤君もう濟みましたか――次は森本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=131
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132・森本義夫
○森本委員 簡易生命保險法の改正に依りまして、保險金の削減期間が、從來一年六箇月であつたものが今後二年になると云ふことであります、此の爲に多少なりとも國民は今後不利の立場に置かれるのであります、併し事業經營の基礎の安固を圖ると云ふ文句を使つて此處に説明も出て居りまするが、單に其の位でなくして、更に昨日かの説明を承りますと、經營事業費の赤字も相當に出て居ると云ふことであります、斯う云つたやうな事業を經營する場合に赤字が出れば何で埋める、斯う詳細に算盤を取つてのことでありませうし、而して一年六箇月を今後二年にすると云ふことになりますれば、それに依つて大體どの位――大見當の見積りに過ぎないとは思ひまするが、どの位「セーヴ」することが出來るかと云ふことが、若し分りましたならば御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=132
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133・岡井彌三郎
○岡井政府委員 御話の通り全く大雜把な見當でありますが、一箇年八百萬圓と豫定致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=133
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134・森本義夫
○森本委員 次に何と申しましても此の法律案で一番改正の大きな問題は、郵便年金法の第二十二條の二、簡易生命保險法の第二十八條の二であらうと思つて居ります、此の兩規定に關しまして石川委員から、一體此の規定の中にある委員會は、取敢へずどう云ふことを審議して決定して行かうとする積りであるかと云ふことの御尋ねがありました際に、當局者は長期還付金及び年金の滿期返還金を廢止することを、現在考へて居られると言つたのでありますが、此の二つの處理に依りましてどの位の金が産み出し得るものでありますか、尚又昨日の説明にありましたが、積立金の融資方法には色々な方法がありませうが、融資の一つと致しまして在外投資したものもありませうし、又軍需關係もありませう、而も今日に於きましては囘收不能だと見込まれるものもあると存じます、此の囘收不能とも見られる軍需關係及び在外投資は、昨日七億とか八億とか一寸伺つたやうに思ひますが、念の爲に此の額も一つ御教へ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=134
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135・岡井彌三郎
○岡井政府委員 保險の方の長期還付金、年金の方の滿期返還金を削減致しますことに依つて見て參ります經費は、一箇年三千萬圓であります、之を終局に於きましては累計が八億圓になるのであります、第二の御尋の在外投資額は五億三千四百萬圓、軍需補償打切りに依りまして、或は影響を蒙ることあるべき會社への投資が三億二千萬圓でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=135
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136・森本義夫
○森本委員 先程も一寸申上げましたが、何と言ひましても二十二條の二、二十八條の二と云ふものは大きな規定でありまするが、此の規定の附則も勿論付いて居ります、此の規定を一應眺めますると、どんなことでもやれるのだ、而も過去に遡つて契約の條項を變更することも勝手にやれる、斯う云ふことになる、此の説明を承りますると其の中味もぼつぼつ分つて參りまするが、是から行きますと、是はどえらい規定と言はなければならぬ、其の中味を決定するものは誰かと云ふと、遞信大臣の監督に屬する何とか云ふ長たらしい名前の委員會であつて、是がどんどん決めて行けると云ふことになりますと、是は法理上から考へましても、其のことはどうであらうかと判斷に苦しむのであります、寧ろ私は今局長の言はれましたやう、特殊の事項に付て差當り是れ是れをやらせる積りだと云ふならば、茲に明文として置かれるならば問題ないと思ひます、包括的に委員會でどんなことでもやると云ふやうな此の規定の書き方でどうであらうか、而もそれは過去の個人の權利に屬するものまでも遡及的にやると云ふことは、どうであらうか、特殊なものを、是非やりたいと思ふものを茲に列擧すると云ふやうな御考へはないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=136
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137・一松定吉
○一松國務大臣 御尤もの御質問であると思ふのです、其の點に對しましては保險業法の第十條に、やはり此の保險契約の變更をなすことの出來る規定があるのであります、丁度只今御示しの二十二條の二、二十八條にさう云ふ點が記載されて居りませぬから、只今のやうな御質問を受けるのは御尤もであらうと思ひます、でございまするが、それ等の點に對しましては、其の御疑念を一掃致しまする爲に、一つ勅令にさう云ふことを明かに致しまして、成たけ今の御疑念の起らないやうな風に規定致します、さうして御趣旨に副ふやうにして、此の委員會を活用して萬遺憾なきを期したい、斯樣に考へて居ります、一つ左樣御諒承を賜はりたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=137
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138・森本義夫
○森本委員 今保險業法の第十條にある定款の變更とか、契約條項の改正とか、或は變更とか云ふことは、大藏大臣の許可を得れば出來るかも分りませぬ、私は保險業法は何年に成立つたか知りませぬ、今の所それで宜いかも知れませぬ、併しながら憲法が改正せられんとして居り、政府の豫定では來年の二月には實現しようとして居る、實現致しました時には、今の勅令なんと云ふものもなくなるでありませうが、其の憲法の中には個人の財産權を尊重すると云ふ條項がありまして、其の條項に反するものは、今後全部法律か何かでなければやれないと云ふことになるだらうと思ひます、さう致しますと今の保險業法に致しましても、憲法が實施された場合には、其の法律は憲法に牴觸するのであるから、我々は認めないと云ふ訴訟も當然起るかと存じます、斯う云ふ點に付て、私は此の規定が餘りに包括的である爲に、非常に不安を持つ、こんなことまで今やれるのか、今現に憲法の實施が眼前に見えて居る、それを承知して居つて、之を勅令に委任して行くことが出來るかと云ふことに付て考へさせられるのであります、此の點に付てどう云ふ御考へか……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=138
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139・一松定吉
○一松國務大臣 憲法草案の第十二條竝に第二十七條等に依りまして、財産權を侵してはならない、或は個人の生命、自由、幸福追求に對する國民の權利に付ては、最大の尊重を必要とすると云ふ所から參りますれば、今の契約を變更することはいけないと云ふやうな御趣旨は、御尤もな御質問のやうであるのでありますが、何も二十二條竝に二十八條と云ふものは、財産權を侵害すると云ふ意味ではありませぬで、場合に依れば、其の財産權を保護する必要のある場合にも、やはり二十二條、二十八條の二條が適用されるのであります、又國家の危急存亡に關するやうな場合に、其の契約をいつまでも變更することが出來ぬと云ふやうなことは、必ずしも憲法の規定に違反しない、斯樣に私は思ふのであります、要は此の委員會の運用如何に依つて、さう云ふ侵害をされるとか、されぬとか云ふことが分れるのではないかと思ひます、其の委員會の運用に依りましては、只今申上げましたやうに勅令に依つて其の事實を明かにして、運用上個人の財産を侵害すると云ふやうなことに付ての協議は出來ない、又協議する場合に於ては、それ相當の理由があつて、是ならば憲法に違反しないと云ふやうな趣旨に於て、之を運用すると云ふことを明にすれば、必ずしも憲法違反にはならぬ、斯樣な考へを實は持つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=139
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140・森本義夫
○森本委員 今遞信大臣の前半の説明、即ち憲法は個人の財産の保護もしようし、又憲法の規定は確かに國民の利益の爲に考へられたものでありまするが、併し國民の利益の爲に考へられたものであるだけに、今後國民の利益に重大なる影警を及ぼす場合、而も其の影響が惡い、即ち財産權其の他の利益を幾らでも縮小すると云ふやうな場合には、必ず法律の規定に依るべきものである、斯う考へられる譯であります、そこで私は先程申しましたやうに、何か此の委員會に於て決め得るものを此の法律の中に頭を出して置けば、其のことを委員會に依つて決めると云ふことは、少しも憲法違反云々の問題を考へなくて濟むと思ひますけれども、唯委員會と云ふものは、どう云ふことを決めるか、どう云ふことを審議するかと云ふことが分らない、政府當局者の意見のみに依つて、事態の變更とか、事情の變更とか云ふことのみに依つて、どんどん其の委員會が決めて行くと云ふことになりますると、そこに憲法違反の問題も起りはしないか、斯う考へられる譯であります、此の點に付て、何か御説明がございましたら承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=140
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141・岡井彌三郎
○岡井政府委員 御説の通り、出來ますならば事項を局定致しまして、法律に是れ是れの事項を特例に依つて變へることが出來ずと斯樣に致したいのでありますが、唯法律の建前と致しまして、只今問題になつて居りまする長期還付金とか、滿期返還金、是は特に規定して居りますことで、之を法律で引上げて侵害さすとか云ふことは、餘りにも法文の體裁と致しましてもをかしい話であります、又是だけに限り或る特定のものを變更する毎に法律を改正しなければいかぬと云ふことも餘り窮屈である、それは實際に於て、變更する場合は委員會が愼重に考へて適當にやれば宜いのでありまして、具體的の事實の場合に、總て法律でやると云ふことは、從來の例から見ましても、假令新憲法が改正になりましても、是は多少無理ではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=141
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142・森本義夫
○森本委員 色々議論して居ると際限もありませぬので、此處で一應打切つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=142
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143・稻田直道
○稻田委員長 それでは政府委員の答辯の殘りがあるさうでありますから、石川君に對する答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=143
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144・岡井彌三郎
○岡井政府委員 郵便貯金法第十八條にあります貯金の沒入金を、通信事業特別會計に編入して居る根據如何と云ふことでございますが、御許しを得まして説明員から説明致させたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=144
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145・牧光雄
○牧説明員 通信事業特別會計法に郵便貯金事業が通信事業の範圍であると云ふことが規定せられて居ります、さうして沒入金も貯金事業運營に伴ふ收入の一種だと考へまして通信事業の歳入にして居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=145
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146・稻田直道
○稻田委員長 それでは各委員諸君竝に政府に於かれましては別に御發言はありませぬか――ないと認めまして本日は之を以て會議を打切りまして、次會の會議の豫定は月曜日の午後一時と内定して置きます、委細は公報を以て御知らせ致します、本日は之を以て散會致します
午後二時五十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00419460809&spkNum=146
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