1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
林業會法案(政府提出)
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昭和二十一年八月二十九日(木曜日)午前十時十九分開議
出席委員
委員長 森幸太郎君
理事 水口周平君 理事 綿貫佐民君
理事 平野増吉君 理事 氏原一郎君
大井直之助君 木島義夫君
武田信之助君 太田秋之助君
武藤常介君 永井勝次郎君
林田哲雄君 坪井龜藏君
井出一太郎君 磯田正則君
圖司安正君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
出席政府委員
農林參與官 鈴木強平君
農林技官 中尾勇君
農林事務官 平川守君
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本日の會議に付した議案
林業會法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=0
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001・森幸太郎
○森委員長 是より會議を開きます、質問を繼續致します——太田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=1
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002・太田秋之助
○太田(秋)委員 質問を繼續致します、御伺ひしたい點は、森林造成に對しまして、現在非常に苗木が一般に不足致して居るのであります、此の植林に必要なる所の苗木がないと云ふことは、大なる隘路になつて居ります、曩に政府は國有林苗圃を經營されて居つたのでありますが、其の當時は非常に優良なる苗木が出來まして、無論是は國有林野の造林に重點を置いたのでありますが、併し其の餘裕を民間の組合に拂下になることはどうでありませうか、從來苗圃と云ふものは縮小或は廢止されまして、今日行つて居る所は植林だけのやうであります、私は此の機會に之を政府が復活して苗圃地を盛んにやつて戴やたいと云ふことを政府に要望するのであります、此の苗圃が復活になれば、苗木が澤山出來ますので、民間の方に於きましても植林をするには非常に便宜が多いと思ふのであります、そこで幸に營林署は苗圃の敷地の適地を持つて居るのでありますから、之を復活して戴きたいと思ひますが、之に對して御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=2
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003・中尾勇
○中尾政府委員 御答へ致します、苗木の需給關係に付きましては、政府と致しましても非常に現状に付て憂慮致して居るのでありまして、其の對策と致しまして只今色々講じて居ります、御尋ねの苗木の養成を國有林苗圃でやることに付きましても、國有林の營林署の苗圃の活用も全面的に圖りまして、只今の計畫では播種は出來るだけ營林署でやりまして、さうして一年生として森林組合其の他に配付して行くやうな方法を採つて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=3
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004・太田秋之助
○太田(秋)委員 苗木のことに付きましては相當御配慮されると云ふことを承知致しました、次の質問は、幸に大臣もお見えになりましたから、植林事業に對する補助の點でございますが、政府は從來植林事業に對しましては資金の融通、利用等の途を講ぜられまして、それぞれ奬勵の方法を講ぜられて居るのであります、併し此の事業は非常に經費も經濟状態から眺めて多額を要すると云ふ點から、之を利用して居ると云ふ状況は、餘りにも不足でないかと云ふやうに私共は見受けて居るのであります、そこで現在政府の發表されて居る所の三億萬圓の造林證券と云ふやうなものの消化はどの程度までになつて居るか、此點を一つ伺つて置きたいと存じます、附加へて、此の補助政策を更に一歩進めて、從來のやうな簡易な手續を以て此の事業補助をなすと云ふ方法に改めて戴くならば、植林奬勵の上に非常に便利であると考へるのでありますが、此の點も補助政策の改善を圖ることに付てどう云ふやうな御所見でありますか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=4
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005・和田博雄
○和田國務大臣 數字の點は政府委員から御答へ致しますが、此の造林證券は御承知のやうに單價の點が今の事情に副はなくなつて來て居りましたので、先般之を引上げましてやつた譯であります、勿論さう致しますると、將來の問題としましては、三億圓と云ふ限度に於きましては是が非常に窮屈なものになつて參ると思ひますので、是等の點に付きましては、我々の方としましても十分事情を考慮しまして、將來改正するなり何なりしたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=5
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006・中尾勇
○中尾政府委員 造林證券の只今まで發行致しました額は、大體四百萬圓程度であります、額面としては其の倍額になるのでありますが、只今までの額は四百萬圓程度だと御承知願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=6
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007・太田秋之助
○太田(秋)委員 それでは次に移ります、是も重複する嫌ひがあるのですが、私も之に賛意を持つて居る一人として、多少重複は致しましても一言御伺ひして置きたいと思ひます、私は、行機構の改革を斷行して林政の一元化をやつて欲しいと云ふことを望んで居るのであります、私の望む所は、營林署と府縣山林課を合併一丸にすると云ふことでございます、さうして森林の造成利用處理、林産業の一貫性を基調とする所の施策の徹底を期するにある、斯う思ふのであります、之には、各地に政府が設けられてある所の營林署をして、萬般の民間團體の現地指導、或は督勵に當らしむると云ふことが頗る效果的であると私は考へるのであります、我が國の林政の進展を圖る爲には、どうしても現地指導と云ふことが望むべきことでありますので、此の點に付きましては各縣とも共通に要望されて居るのではないかと思ひます、是は昨日永井君の質問にもありまして、私も此の質問には同感の意を表して居る一人でありますが、此のことたるや、色々官制機構の關係上内務省との關係もあり、或は國有林野の奧地の資源開發と云ふこともありますし、又林産物の利用供給を今日急務とする段階に於きましては、或は之を急速に行ふことは不可能であると存じますので、此の點に付きましては將來に於きまして斯う云ふやうな機構に仕向けて行つて戴きたいと云ふことに付て、御研究を御願ひ致したいと思ふのであります、唯此の際私は更に要望して御願ひすることは、山林の面積の非常に多い府縣には山林課を現在設けて居りまして、山林課の方で色々の指導をやつて居りますが、是も事務的指導に流れまして、本當にまだ現地の指導と云ふものが行はれて居ない、技術家も足りませぬし、手も伸びて居りませぬ、斯う云ふ風な山林面積の多い都道府縣には、相當技術者も多く配置するの要があると思ふのであります、隨ひまして、現在の府縣の山林課を一歩進めて、之を山林部位にして、さうして部長級の方を置いて、其の下に植林課とか、苗圃課とか云ふやうな色々なものを置いて、全面的に強化して指導をして欲しいと云ふことを望むのであります、林産物の自主的統制を必要とする現在に於きましては、極めて此のことが必要だと考へるのであります、又終戰後の今日は、昨日も申上げましたが、伐採跡地の植林緑化と云ふことを、先決問題として取上げて欲しいと云ふことを重ねて要望するのでありますが、此の場合御伺ひすることは山林面積の多い府縣に對しては山林部を設けて、技術員を相當配置するの御考へがあるかどうか、此の點に付て御伺致ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=7
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008・和田博雄
○和田國務大臣 太田さんの御意見洵に御尤もだと私は思ふのでありまして、從來やはり色々な行政に付きまして、我々の方としましても、例へば府縣に補助の職員を置きます場合に於きましても、非常に必要な府縣には、やはり其の必要さ、「ウエイト」を考へまして、人を澤山置くとか云ふやうなことを考へて居るのでありますが、御話のやうに、林政の方に於きましても、是は今差當り山林部を作ると云ふことは御確答致し兼ねますが、御希望のやうな點に副ひまして、我々の方としても今後色々な施設や人を置く場合には考へて、御話のやうに山林と云ふ非常に重要な點に於ては、十分人手の點に付ても遺漏のないやうに致したい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=8
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009・太田秋之助
○太田(秋)委員 次に農業水利改良事業の促進の問題でございます、此の點は昨日も若干申上げましたが、森林の荒廢に伴つて、水深の淺い河川は著しく水量が渇して來たのであります、是が農作物に及ぼす影響は實に甚大なるものがあります、此の水源涵養林を造るには相當年限を要します、應急對策としてはどうしても各河川或は溪流の適地を選んで、其處に相當なる貯水池を設置することが必要ではないか、と考へるのであります、今まで農林省が取上げてやつて戴いた所は、用水が潤澤になつて居る所が多々ありますが、私共の福島縣の常磐線の濱通りでありますが、是は阿武隈山系に屬しまして、非常に水源が淺いのであります、河川の河口から水源地まで十里から十四、五里、二十里の間であります、東京營林局管内としては寶庫とも言はれる土地でありますし、流域には汽車も通り、木の育ちも良い爲に、戰時中非常な伐採をされ、欅其の他を積出した爲に、此の邊はどの河川も渇水の程度を増して來て居る、其の爲め此の春は植付けも大分遲れ、減收は免れない、と云ふ箇所が出來て來て居ります、斯う云ふ方面には政府は積極的に貯水池を設置し、或は之を助成して貰ひたい、其の貯水池を設置するにも、今日の經濟状態では事業費が相當從來より高まつて居るし、勞務も地方に依つて供給事情が異ります、特に資材方面に付ては最も入手困難なのは「セメント」でございます、併し是は食糧増産に影響ある資材に關係ある問題ですから、特に御考慮を願ひ、高率な補助を與へて、速かに農業水利を達成するやうにして戴きたいことを要望して置きます、之に付て政府の御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=9
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010・和田博雄
○和田國務大臣 御話のやうに日本は實に河川が澤山あつて、又水利の點では、皮相な觀察をすると、或る意味からは惠まれて居るやうに見へるのでありますが、是は御承知のやうに縣々に依つて溜池を造りましたり、或はあなたの御話になりましたやうな貯水池を造つて、灌漑農業をやつて行つて居る、斯う云ふことでありますので、貯水の點に付ては、御意見のやうな希望は私も十分持つて居り、左樣に努力致したいと思ひます、唯御話の中にありましたやうに、最近の日本の實情では「セメント」が非常に少いのであります、殊に進駐軍關係の方面にも相當「セメント」が實は使用されて居る譯でありまして、内地で利用されます「セメント」は極めて微量でございますので、資材の點に付てさう云ふ事業の必要があるに拘らず、中々捗り難い點があります、さう云ふ點は今の日本の經濟が直面して居る資材面に於ける非常な隘路だらうと思ひますから、事業をやるに付ても、さう云つた資材の餘り要らない物をどうしても考へなければならぬと云ふやうな實情でありますので、御話の點は十分將來と雖も參考と致しまして、資材の面に於て、足らない中でも努力は致しまするが、さう云ふ面が窮屈でなくなつて來ますれば、我々としては益々貯水の問題に付きましては、水利の改良と云ふ點に付て御希望がありますやうな點を達成致すやうに努力したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=10
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011・太田秋之助
○太田(秋)委員 最後に地方木材會社解散に伴ふ經理状況のことでありますが、地方木材會社は政府の命令に依つてそれぞれ解散の申請をし、其の認可を受けて居るのもあり、申請中のものもあるやうであります、併し此の經理に付ては、去る八月十一日の金融機關經理措置令に基き、清算をなさんとする地木社が、從來金融機關に預金して居つたものは、今後第二封鎖になる、所謂舊勸定に含まれる現状であります、それが爲に解散手續が濟み、現在まで使つて居つた職員に退職手當を出さなければならぬし、一般の株主に對しては封鎖でも差支ないのでありますが、解散と同時に株主に拂戻をしなければなをぬ、其の支拂ひは第九條、第十三條、第十六條で、主務大臣の命令の定むる所に依つては出來る途も開けて居るやうに私共は考へるのでありますが、此の點此の經理を付けて、解散の事務を完結したいと云ふことを要望して居るのであります、此の點の指導方針はどう云ふ風にして地木社の解散の經理をさせて戴いて居るかは之を此の機會に伺つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=11
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012・平川守
○平川政府委員 其の問題に付きましては、極く最近各地木社の實情を持寄りまして、目下具體的に大藏省と折衝して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=12
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013・太田秋之助
○太田(秋)委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=13
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014・森幸太郎
○森委員長 林田君、おやりになりますか——坪井龜藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=14
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015・坪井亀藏
○坪井委員 林業會法案に付て質問を致したいと思ひます、其の一點は第一條に「林業會は、會員が協同して、自主的に林業の改良發達竝びに林産物の生産の確保及び配給の適正を圖ることを目的とする。」斯うありますが、目的は全く明文化されて居りましてはつきりとして居ります、私は是が實行に付きましては極めて困難だと思ふ、其の内容から見ますると、兩者相反する所の、即ち生産團體と林業者の團體が本當に一體となりまして、而も協同して、自主的に林業の改良發達及び林産物の生産確保、配給の適正はそんな簡單には出來得るものではないと思ひます、政府は如何にして是が目的の完遂を圖るか、政府に於きまして此の目的通り之を必ず實行させると云ふことに付きまして、先づ第一に御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=15
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016・平川守
○平川政府委員 先にも御答へ申上げましたやうに、此の林業會法の建前は、飽くまでも會員の自主的な活動と云ふことに依存を致して居るのであります、政府の方と致しまして林業の改良發達、或は林産物の生活の確保等に付きまして、固より色々な施策を講じて居りますけれども、併も現在の一般の情勢から申しまして、是は飽くまでも關係業者或は森林所有者等の自主的な活動に俟つ外はない、固より御話の如く此の兩者の間に於て、利害相反する場合もあるのでありますけれども、併し時として利害の反しまする此の兩者を、統合と申しますか、一堂に會するの機會を與へまして、さうして議論をすべきことは議論を致し、兩者お互ひに相寄つて初めて成立つ立場にもある譯でありますから、議論もあるかと思ひますけれども、併し結局に於て何等かの所に落著くのではないか、要するに此の兩者がばらばらに離れて、それぞれ自分の勝手なことを考へて居ると云ふことでは、どうしても林業の發達も林産物の生産確保も出來ないのであつて、此の兩者がお互ひに立場上爭ふべきことはありましても、そこに議を盡しまして結局に於て兩者が相寄つて、此の林業改良等の目的を達成する具體的な解決點を見出すと云ふやうな、自主的な活動に依存したいと云ふのが此の法案の建前であります、政府の方としては側面的に色色な助長政策は講じますけれども、併し此の法案の運用に於て、政府が非常に強く監督、或は非常に強く指導を致して、之に依つて目的を達成すると云ふやうな建前にはなつて居らぬのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=16
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017・坪井亀藏
○坪井委員 只今御伺ひしますと、兩者がお互ひに自主的に相寄つて、是が目的の完遂をしようと云ふのでありまするが、此の森林の生産者と企業者と云ふものは全く水と油でありまして、總て性格相反して居るのであります、本法に依りまして、斯う云ふ工合に性格の相反するものを一緒にして、決して私は此の目的完遂は出來ないと云ふことを斷言するものであります、何とならば過去に於きましても、此の木材統制法の不備と申しませうか、事業の完遂が出來なかつたと云ふことは私が申上げるまでもないのであります、過去に於きましても此の木材統制法中の第一條を見ますと「本法は木材(薪炭の用に供せらるるものを除く以下同じ)の生産を確保し其の需給の圓滑及價格の公正を圖ることを目的とす」とありますが、木材の生産確保も、需給の圓滑及び賃金の公正も出來ず、協定價格又は闇價格となり、本法の目的には相反し、木材生産者及び消費者は非常に迷惑を蒙つて來たのであります、是等の原因より致しまして、木材統制法の第一條の目的完遂が、全く戰爭中であつてさへも出來なかつたと云ふことは、唯一片の法律に依つて上から之を統制しようと致しましても出來ず、而も又自主的にと申しましても、兩者相容れざるものが一緒であつた爲に出來なかつたのは事實であります、然るに今回斯樣に性格の相反するものを一緒にして、而も自主的に之をやらせようと云ふ其のこと自體が無理であります
〔委員長退席、綿貫委員長代理著席〕
全く私は過去に於ける政府の是等の實現の出來なかつた責任に付きましては遺憾に存ずるものでございます、過去に於て此の統制法に依りまして生産者なり消費者にそれぞれ不平を與へ、生産者に對して供出意欲の減退をさせ、消費者に對しましても需給の圓滑を果せなかつたと云ふことが、此の統制法の惡法であつたことを現實に物語つて居る、今囘の林業會法も全く過去の地木社の看板の塗替へをしたものであることは私が申上げるまでもないのでありまして、私は過去の實例から見まして、生産者竝に消費者が納得の行くやうな森林行政、又現在數百萬戸の戰災家屋をして一日も早く復興せしむることは、此の法律に依つては到底出來ないと思ひますが、政府は之に對して如何なる見解を持たれて居るか、御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=17
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018・平川守
○平川政府委員 過去の木材統制法が、必ずしも十分なる效果を發揮し得なかつたと云ふことに付きましては、色々な原因があらうかと思ひます、例へば地木社或は日木社をして、總て一元的に生産集荷までも行はしめたと云ふやうなことも、多くの地方に對して是の圓滑なる生産配給を缺かしめる一つの原因であつたかとも思ふのであります、其の他價格の問題等色々の原因があらうかと思ふのであります、現在の情勢の下に於て斯樣な官治統制はいけないと云ふことで、之を發止致すことに致したのでありますが、然らば之に代るべきものとして、現在のやうな木材等の需給の状況の下に於きまして、何等かの形に於ける或る種の結制が必要であると云ふ場合に於きまして、之に代るべき機構として我々の考へ得る一番良い機構が、此の法案のやうな機構ではなからうか、固より此の法律が出來さへすれば、それで總てが圓滑に行くとは考へて居りませぬ、併し木材統制法を廢止し、日木、地木を廢止致しました場合に於きまして、何等か之に代るべき組織がなければ、木材の需給の圓滑を圖ることは出來ないと考へるのであります、さう云ふ意味に於きまして現在まで多年の經驗を有する關係業者の、自主的な團體をして之に當らしめると云ふことが、現在考へ得る一番好い方法ではなからうか、更に森林所有者との調和の問題に付きましては、是は一面に於て賣手と買手と云ふ形に於きまして、利害の相對する面が十分あるのであります、併し又一面に於きまして木材業者は森林業者から賣つて貰はなければ商賣にならない、森林所有者も木材業者に、適當な時期に於ては伐つて貰はなければ、是れ亦目的を達し難いのであります、其の間に於て利害の相對する面もありますけれども、又相扶け合はなければならぬ立場もある譯であります、隨ひまして此の兩者の間に於きましては相對立する議論もあらうかと思ひますけれども、結局に於て直ぐ結論が付き得るのではなからうか、それを唯一概に官治統制でやつて參りますのが、從來の木材統制のやり方でありますけれども、之をお互ひの關係者の間に於て議を決める機會を與へ、さうして自主的な一つの解決點を見出すことにしたいと云ふのが此の法案の考へ方であります、林業會に致しましても、先づ森林所有者と林産業者の代表が首位を占めますけれども、其の外に大きな需要者の團體の代表者でありますとか、又政府に對して林業會が色々な意見を具申しまする場合に於きましては、其を他の需要者團體の代表とか、或は消費者の立場を代表し得るやうな學識經驗者でありますとか、さう云ふ人々の意見も廣く容れまして、政府の施策に付て林業會が相當發言をする、斯う云ふやうにやれば、木材の需給を調和することも出來ると云ふやうなことに付ての、民間としての具體案が政府に出て參る譯であります、政府の方としましてもそれを十分に採り入れて施策を樹てると云ふことになりますれば、從來のやうな上の方から天降り的に案を押付けると云ふことによりは、餘程改善されるのではなからうかと考へて居るのであります、此の林業會の組織は、それの一つの組織機構と云ふことに考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=18
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019・坪井亀藏
○坪井委員 只今の此の林業會では以前の法案よりも餘程改良されて、而も民主的である、天降り的でない、下の聲を上に反映さして行くと云ふことになると申されたが、私は全く水と油は何處まで行つても水と油で、之を一緒にすると云ふことが、抑抑間違つて居るのであります、此の見地から見ますと結論的に生産者團體と消費者團體、消費者は言換へますれば企業者と申しても宜い、此の二本建で行かなかつたならば、決して最終の目的所謂森林の保護育成、一面に於きましては必需木材の増産確保、之が實行出來ないと云ふことを茲に痛感するものでありまして、尚ほ此の點に付て私は政府の御考へを御伺ひしたいと思ひます、現在に於きましては戰爭に依りまして數百萬戸の戰災家屋がありますが、之を國としてどう云ふ計畫を樹てて之を復興せしむるや、是が果して此の法に於て出來るか否か、而も自主的に、本當に生産者が喜んで之を旨く運用して行くかどうかと云ふことに、疑ひを持つものであります、隨て消費者も亦之に於ては現在相當惱まされて居る、實際家屋の建築が出來ないと云ふことは、全く價格に於きましても數倍の價格になり、尚又木材の生産者或は林業勞務者が、此の法案が出來た爲に、私は必ず又過去の木材統制法で行はれたやうな、馬鹿な、非常に窮境に陷ることを憂慮される時に、どうしても是は二本建で行くと云ふことでなければ、本法の趣旨に副はないと考へるのであります、茲に私の考へを率直に申上げまして政府の御所信を伺ひたいと思ひます、森林林事業の盛衰と云ふものは、國家の再建、國民生活に重大なる關係を及ぼし、即ち人類生活の三大要素中、住は一日も缺くべからざることは今更申述べるまでもないのであります、特に我が國は戰災の爲に數百萬戸の家屋を失ひ、是が復興は實に容易でないこと申すまでもないのであります、斯かる重大なる時局になりまして、林業會法の上程は洵に我が國再建と、國民生活安定の見地より意義深きものとは存じますが、斯かる重大なる使命を有する本法は、其の内容に於て十分研究し、此の本法をして意義あらしめなければならぬと存じます、然るに政府の今囘提出致しました此の林業會法は、從前の地木社の封建的性格を多分に盛込み、尚又何等改善されたる點を見出すことが困難であります、森林事業の改良發達は、本法に於ては望み得られぬことは申すまでもないのでありまして、却て本法に依り百害あつて一益なし、事業の發達を寧ふ阻害する危險が、多分に伴ふものであると云ふことを信ずるものであります、之を要するに本法は森林生産者竝に林業勞務者に對しては何等改善を加へることなく、却て閑却したる感多く、即ち生産者は本法に依り是れ亦統制的利潤を搾取せられつつある點、森林勞務者は專業勞務者として、常に企業者に壓迫と利潤搾取を常とせられた現状であることは、決して森林の改良發達には寄與出來ない、不可能であると考へるものであります、生産者團體即ち森林組合が、直接勞務者の實權を握り、勞務者の生活の安定を確保することが、森林行政の上にも最も必要なことと考へますが、現在は企業者が勞務者の實權を握り、利潤の搾取的行爲に依りまして勞務者の不平不滿が、延いては森林事業の一大不振をなすものと考へます、爲に私は少くとも此の際、森林事業の改良發達を願ふならば、二本建の所謂生産者團體と消費者團體に區分して立法を希望するのでありまして、全然最初から其の利潤、性格の相反する二團體の自主的統制運營などは、思ひも寄らざる考へ違ひだと思ふのでありまして、私は本法は政府に於ていま一應再檢討の必要を認めるものであります、生産者團體、即ち森林組合の擴充強化を圖らなければならぬ、併し從來の企業者が行つたやうな事業が、一切出來ることは疑ひませぬ、森林組合の發達に依つて生産者の恩惠となり、或は又延いて森林勞務者の恩惠となることは當然のことであります、一方消費者團體とか荷受の團體を擴充強化すれば、是れ即ち生産者團體より消費者團體へと、中間企業者即ち中間利潤の搾取を排除することが、今後に於て眞の森林行政、森林事業に對する見方で、是が實現こそ我國再建と國民生活の安定となるものにして、今更發達を阻碍する本法の上程こそ私の意思に反するものであつて、中間者を省くことに依りまして、森林事業の改良發達が出來るものと信ずるのであります、然るに昨日の政府委員の御答辯に依りますると、本法に依りまして、所謂森林の公有或は官有の拂下等は、成べく資力富み、信用のある者のみに之を拂下げるを可とすると云ふやうなことも伺つて居りまするが、斯かる資本主義或は又利潤搾取主義的企業者に、是等が過去に於て多く拂下げて居られるやうな、斯う云ふやうなことでありましては、到底私は此の森林事業の改良發達は出來ないと思ふ、是は其の山林の所在地である此の森林組合、所謂生産者團體に是等總てを拂下を致しまして、之を通しまして、さうして企業者に場合に依つては委託經營をさせると云ふのも可なり、或は設備が全部森林組合に於て出來ると云ふことに於ては、是等森林組合に於て一切を行ふと云ふことこそ、眞の生産者の擁護であり、尚又森林の改良發達を圖ると云ふ目的に副ひ得るものでありまして、今日事茲に至りました此の際に於ては、中間利潤搾取的行爲の企業者と云ふものは全く茲に排除すべきである、此の法案から見まして、私は茲に政府が斯うした見地から見まして、之を一つの此の法に於て自主的統制をさせようと云ふことこそ、全く非民主的であり、我國國家再建の前途を危くすると云ふことを痛感するものでありまして、洵に是は遺憾に存ずる次第であります、此の機會に於て政府は速かに是が立法を、生産者團體と消費者團體と二方面に亙つて立案されまして、茲に森林事業の發達をさして戴くと云ふことを切望すると同時に、之に對する政府の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=19
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020・平川守
○平川政府委員 森林組合に生産の方を一手に任したらどうかと云ふやうな御意見でありましたが、是はやはり現在の實情と云ふものを基礎にして考へる必要があると思ふのでありまして、森林組合は設立以後まだ比較的日が淺いのであります、地方に依りましては相當に實力を以て活躍を致して居る地方もございまするけれども、又可なりの地方に於きましては、未だ其の實力を持たず、之に一切を任せると云ふ所までは至つて居らぬ地方も可なりあると思ふのであります、此の木材の供給に致しましても、或は其の他の林産物の需給の状況に致しましても、逼迫致して居りまする際に、必ずしも實力を有して居らぬ者に一元的に總てを任せると云ふことは、是は却つて實情に即せぬのではなからうか、森林組合が實力を持ちます場合に於きましては、固より之を否定する者でありませぬのでありまして、現在の森林法に於きましても、森林組合は木材の生産或は製材と云ふやうなことまでも行ひ得ることになつて居るのであります、實力さへあれば、それを行はせることに決して反對ではないのであります、唯現在の全體の制度と致しまして考へまする場合に於きましては、實際に實力を持つて居りまする者を無視することは出來ませぬので、此の木林業者等林産業者の有する實力と云ふものをやはり取入れまして、是と森林組合との二本建に致し、其の兩者が離れ離れになつて居つては、木材の生産等もうまく參りませぬのでありますから、此の兩者の協調を圖ります爲に、林業會と云ふ機構を設けると云ふことに考へて居るのであります、現在の林産業或は狹く木材業者等の營んで居ります事業も、固より是は不必要なことをやつて居るのではないのであります、直接に消費者にとの話もございましたが、其の間に於て何人かが木材を生産し、之を輸送し、之を消費者に配給すると云ふ役目を營む人は、誰か必要なんであります、之を現在實力を持つてやつて居ります人々に任せて參ると云ふことが、實情に即するのではなからうかと思ふのであります、尚ほ消費者の立場と云ふものも、十分に此の林業會の意向に反映致させるやうな機構を考へて居りますることは、先程申上げました通りであります、多少意見が違ふかと思ひまするけれども、本案の如き行き方が最も現在の實情に即するだらうと云ふのが、政府の考へ方であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=20
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021・坪井亀藏
○坪井委員 尚ほ此の點に付ては重ねて私の質問を繰返すのでありまするが、今囘林業會が作られても、從來より種々改組せられまして、最後に此の地木社と云ふものが出來たのであつて、即ち地木社の内容は森林組合聯合會と木材株式會社が合同致しまして、各各其の二分の一づつの出資に依つて構成せられて、其の兩者は權利義務と云ふものが平等であつたのであります、然るに此の内容に於きましては、常に權利義務が平等であるにも拘らず、何時も此の所謂森林組合聯合會の方が下押しにされまして、尚ほ又木材株式會社の方が常に優勢であり、總てが統制に便乘されまして、常に山林の保護育成と云ふうなことを顧みなかつたのであります、山林を荒廢させるが儘に、所謂伐採し放題に終る主張を、此の木材業者の方から提案されて、尚ほ又此の戰爭の遂行の下に、全く荒廢さした其の山林を、如何にして保護育成するかと云ふやうな面に付て、全く此の地木社等は考へなかつたのでございます、斯樣なる見地から致しまして、結局茲に今日平和となり、我々國民は全く國家再建の上から致しまして、民生の安定をしようと云ふ上に於きましては、全く森林を愛護し、森林に依つて我々が全く此の國家の再建をし得ると云ふ上に立つた時に、本當に唯單なる斯うした一つの組合と云ふものでなく、國家再建の是が本であると云ふ見地から致しましては、全く國家自らが此の國土計畫を樹立し、之に對しまして結局此の森林行政の一大改革を行ひまして、さうして一方に於ては森林の保護育成を行ひ、國家自らが之を斷行する、尚又一面に於きましては、斯うした戰爭に依りまして戰災家屋の復舊促進と云ふやうな、此の大きな目的遂行に寄與すると云ふ上に立つことは、當然のことであらう、斯樣に考へます、唯是は過去に於ては政府に於ける木材統制組合を以て總てを代行致しましたが、過去に於ける失敗が現在全く取返しの付かざる現状にある時に於て、生産者、消費者、此の二本建に於て中間の企業者を茲に排除すると云ふことを政府が斷行しなかつたならば、政府が本法を茲に提案致しまして、兩者相寄つて茲に自主的統制を圖ると申しましても、何の意義もないと存ずるのであります、政府の提案された本法の内容は唯形式的な一つの作文化である、是に於ては實も花も結ばないと云ふことを私は信じて疑はない者であります、政府に於ては十二分に此の點を再考されまして本法に付ては愼重に考慮と研究を重ね、生産者竝に消費者の納得の行く、國家再建の趣意に副ふ方途を講ぜられんことを願ふと同時に、本法運營に對して將來必ず木材統制會社に於て波亂曲折、此の實行の出來なかつたことを繰返すと云ふ憂慮を、茲に深めるものに過ぎないのでありますが、是等に付て政府に於ては、決してさう云ふことはない、本法に依れば必ず國家を再建し、尚又生産者及び消費者が、必ず滿足し得ると云ふ確固たる信念がありますならば、御聽かせを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=21
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022・平川守
○平川政府委員 戰災復興とか、山林の造成と云ふやうな國家復興上の重要なる事業に付ては、固より政府の方に於ても色々な施策を講じまして、造林其の他に對しましても、大きな國帑を費してやつて參ると云ふ計畫は致して居ります、唯是と同時に之に關する直接の關係業者である森林所有者、及び森林に依つて恩惠を受け、之に依つて業を營んで居る林産業者が、協力一致して國家復興の國策の第一線に立つ其の爲の機構として、是等兩者の協力の機構として林業會を作つて參らうと云ふのであります、御話の如く此の兩者は必ずしも全面的に一致するものではありませぬ、時として水と油の立場に立つこともあると思ひます、併し林産業者は森林の造成に付ても、同時に非常に大きな關心を持つて居ります、現に各地の木材業者其の他の林産業者に於て、森林の造成に對して援助をしようと云つたやうな運動もある位でありまして、相當の關心を持つて居る森林が涸渇して參れば、當然其の事業に影響を來す譯であります、唯一面に於て、例へば價格とか、生産數量と云ふ問題に付て、意見の對立する場合もあらうかと思ひます、根本的な森林の造成、或は戰災復興等の爲の増産に付ては、森林所有者も林産業者も、必ずや意見が一致することと思ふのであります、唯其の具體的な數量の本年度に於ける割當、或は價格と云ふことに付て意見が違ふ場合があらうかと思ひます、其の場合は兩者が能く話合ひをして、其の協議に依つて定まつた所を政府に具申し、政府も出來るだけそれを採り入れて具體的に進むと云ふやうになつて居りますから、御話の如き摩擦が經過的に起ると云ふことは考へられますけれども、併し究局に於て必ず兩者の意見が何等かの調和を見て、國家復興の見地より見て、森林所有者或は林産業者の立場から、最も調和の取れた具體案と云ふものが出來ると云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=22
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023・坪井亀藏
○坪井委員 從來の經驗に依りまして府縣の林業會が經濟行爲を行はず、總て經濟行爲は町村林業組合に行はしめる方が效果的と考へますが、政府としてはどう云ふ考へを持たれて居るか御伺ひ致したい、尚ほ各府縣に「ブロック」的に數箇の森林組合を組織して、之を統一して府縣林業聯合會とすることを可なりと考へますが、是等に對する政府の考へを承りたいと思ひます、尚ほ府縣の林業會は林業行政に重點を拂ひ、林業組合の活動に遺憾なきを期せしめることが最も大切と考へますが、政府は如何にして是が實現を圖る考へでありますか、以上の點に付て御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=23
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024・平川守
○平川政府委員 林業會、林産組合の經濟行爲に付ては、先般も御答致しましたやうに、多くの場合に於ては各單位組合が最も活溌に動くものであらうと思ひます、唯特殊のもの、或は數量に付て、或は特殊の經濟行爲、例へば共同の保管、加工とか云ふ行爲に付て、府縣單位のものも之を行ひ得る方が便利であらうと思ふ、詰り組合員全體が考へて、是だけの範圍の事業は經濟行爲であるが、府縣單位の組合が行ふ方が宜からうと云ふやうな總會の決議があれば、それは行ひ得るやうに、法制としては致して置いた方が宜からうと考へるのでありまして、實際の運用に於ては、經濟行爲の主なるものは、下級單位の組合が行ふことになると思ひます、それから各府縣「ブロック」の組合、或は林業會を作ることに付てはどうかと云ふ御話でありますが、之に付ては別に政府の方として、どう云ふ風にした方が宜いと云ふ指圖は致さない積りであります、各府縣の任意の御希望に依りましてお作りになることでありますれば、それは差支ありませぬ、唯此の法制に申します林業會は、道府縣林業會及び日本林業會と云ふことになつて居りまして、此の法制に基いた林業會を府縣「ブロック」に作ることは法制上出來ないのであります、任意に御集まりになることは差支ないと思ひます、殊に林産組合に付ては、別に地域の制限はありませぬ、次に府縣林業會は指導と云ふことに重點を置くべきではないかと云ふ御話でありますが、是は因よりさう云ふことになると思ひます、主として各下級或は單位である組合に對する指導が重點にならうかと思ひます、唯同時に現在の經濟情勢の下に於きまして、自主的統制を行ふ必要がありますので、此の範圍に於て政府の施策に協力して、林産物の自主統制に關する事業を行ふと云ふことが、第四條の第二項の方で掲げてある譯であります、本來の事業と致しましては指導と云ふことが重點であらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=24
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025・坪井亀藏
○坪井委員 今回提案されました林業會法は、公益的性格を有する林業組合の性格が少しも現はれずに、從來通りの地木社の性格に比較して、何等變つたことがないことは洵に遺憾に存ずるのであります、政府は如何にして此の林業會の性格を、公益性を有する林業會たらしむるか、政府の所見を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=25
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026・平川守
○平川政府委員 從來の地木社とは本質的に違ふのでありまして、此の法の目的の所に致しましても、或は事業の所に致しましても、是は何れも國家的に見て重要な目的を達成する爲の機構であると云ふことが、極めてはつきりして居ると思ふのであります、さうして事業の所を御覽になりましても、亦さう云ふことの爲に各種の、或は免税と云ふやうな特典も與へて居りますし、又他に紛らはしい名前のものを作つてはいかぬと云ふ制限規定もありますし、會員の總會の議決等に對しましても、或る程度の制約を加へて居ります、又特別の場合には官廳の方が色々な監督を加へると云ふことも規定して居る譯でありまして、是等の條文を綜合的に御覽下されば、此の林業會の性格が公益的な目的を持つた、公共的な性質を持つた團體であると云ふことが、極めて明瞭であると思ふのであります
〔綿貫委員長代理退席、水口委員長代理着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=26
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027・坪井亀藏
○坪井委員 木炭の生産關係團體と致しましては、系統農業會、森林組合、系統帝國燃料株式會社、系統企業製炭者の四系統團體がありまして、林産組合に統一することが非常な面倒と危險を伴ふのではないかと考へますが、政府の考へを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=27
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028・中尾勇
○中尾政府委員 薪炭關係のものを此の林業會に參加させるかどうかに付きましては、今までに御答辯申した次第でありまするが、只今御話になりました薪炭の生産關係、或は配給の方の關係等に付きまして只今色々研究も進め、又相談を進めて居るのであります、其の相談の上に指定を致したいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=28
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029・坪井亀藏
○坪井委員 林業法に林業を營む系統農業會があるにも拘らず、之を除外致しましたのは如何なる理由がありますか、將來は之を二本建で行ふ意思があるか、ないか、明瞭に御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=29
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030・平川守
○平川政府委員 林業會の構成分子と致しましては主として林業を營んで居りまするものを要一の會員と考へたのであります、隨て森林組合の聯合會、或は府縣單位の林産組合は、是は本來林業を營む目的を以て、又林業を主として營んで居るものの團體でありますから、是は本來の林業會の會員と云ふことに致したのであります、併し其の外のものでありまして林業を營んで居るもの、又は林業に密接な關係を持つて居ります事業を營むものの團體と云ふものは、定款の定めに依りまして其の外の會員として入り得る譯であります、農業會の如きは本來林業を營むことを目的と致して居るものでありませぬから、本來の會員としては考へて居ないのであります、具體的に條文で申しますれば、第九條の第一號、第二號の會員とは考へて居ないのであります、併し場合に依りましては第三號に依りまして會員にすることが出來る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=30
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031・坪井亀藏
○坪井委員 政府は林業の改良發達に對しましてどの位の豫算を以て行ふや、其の豫算たるや洵に貧弱であると存じます、森林の保護育成には不十分だと考へますが、今後追加等に於てどの位の増額をするか、之に付きまして御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=31
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032・中尾勇
○中尾政府委員 御答へ致します、山林局の總體の豫算と致しまして約十一億圓程度あるのであります、其の大體の内譯を申上げますと、造林の方は此の前も申上げました通りに、約九千萬圓近くに相成つて居ります、尚ほ林道の方に於きまして約二億圓程度に相成つて居ります、それから今の治水方面で約一億圓に相成つて居ります、其の外に其の殘りの大部分は今の斫伐事業の方の經費になつて居るのであります、其の金額は大體六億八千萬圓近くに相成つて居ります、以上のやうな情勢でありまして、造林費が總體に比べまして非常に少い結果に相成つて居りまするが、此の前も御説明申上げました通りに、造林の方の今年度豫定の四十七萬町歩の中約二十八萬町歩、是は證券に依る助成の分でありまして、此の方の助成は此の前も申上げました通りに、來年度の豫算で支拂ふことに相成るのであります、で本年度の助成の分と致しましては、一般助成の分で約十四萬四千町歩の造林を豫定致して居るのであります、此の方の金額は豫算が千六百萬圓に相成つて居りますが、是では實行不可能と存じまして、只今豫算の増額を交渉中であります、約六千二百萬圓程度の増額を要求致して居る次第であります、大體以上であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=32
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033・坪井亀藏
○坪井委員 只今豫算を御伺ひして、數字に付ては了解した譯でありますが、私は我が國國家再建と國民生活安定と云ふ見地から致しますると、衣食住の三者の中、此の住に付きましては、全く斯うした生活の要素の其の本をなす森林改良事業に付ては、政府が總てを補償するのだ、斯樣に考へた時には、大藏省の鼻息を窺つて豫算があるとかないとか云ふことに拘泥せずに、根本的に是だけの木材がなければ戰災復興は出來ない、尚ほ其の必要缺くべからざるものは、どうしても山林業者に供出して貰ふのだ、而も價格の面に於て非常に安い、又協定價格と云ふことを申されるが、之を飜つて見ますると、各地各樣である、而も其の大半を占むる運賃と云ふやうなものにも非常に差が多いのであります、隨て消費者に渡るまでに於ては、相當大幅な價格の開きを見て居るのであります、生産者に對しての此の手取金は非常に少く、而も消費者に對し配給される價格と云ふものは非常に高い、石當り素材に付ては僅かに四、五十圓のものが約十倍以上にも達して居る、此の現状ではどうしても戰災都市の復興は出來ないと考へる者であります、此の時に於て宜しく此の材木の價格の引上をするか、或は又政府に於て此の收支償はざる所の生産者に對しまして價格補給をする、此の途を講ぜなかつたならば、決して戰災都市の復興は急速に出來ないと思ふ、少くとも政府は米麥甘藷の主要食糧に付ては相當の補償をされ、奬勵金、或は補給金を出すであらう、私の見方からすると、恐らく本年度に於ても、米だけに付ても百億以上になるのではないかと想像されるのであります、然るに我が國二千數百萬町歩に對する山林の改良發達、尚又戰災都市復興、復舊に大きな關係を持つて居る此の材木に付て、斯樣な僅かな豫算を以て到底復興は出來ないと云ふことを確信する者であります、此の時に於て政府は尚ほ豫算に再檢討を加へて、追加等に於て生産者が納得し、是ならば收支償ふと云ふことになるまで、政府に於て助成又は補給の途を講ずる、尚ほ一面に於ては價格の適正化を圖ると云ふことを、政府に於て急速に實現せしむるやうに、追加豫算は直ちに上程されて、食に次ぐに住であると云ふ大乘的見地から、大藏省の査定豫算に拘泥せずに、眞に我が國の林業をして全く其の改良發達の目的に副はしむるやうに、政府としてはやつて貰ひたい、政府に確乎不拔の豫算に對する信念ありや否やと云ふことを御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=33
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034・中尾勇
○中尾政府委員 木材の適正價格決定のことに付きましては、前にも申上げました通り、此の價格の決定は經濟安定本部の方で、他の重要物資の價格と睨み合せて、一貫的に決定されることと相成つて居るのでありまするけれども、此の木材の價格に付きましては、先般來御話の通り、木材と云ふ特殊性のものでもありますので、當局としては十分經濟安定本部の方にも具申もし、又努力も致す積りであります、尚又此の價格の決定に付きましては、今回出來まする日本林業會の方に於ても、十分協力せられることに相成つて居るのであります、それから此の豫算の方の増額のことに付てでありますが、現在の豫算で十分實行が出來ないやうな場面に立至つた場合には、此の豫算の増額に付きましては、飽くまで努力致す覺悟であります、尚ほ此の助成或は補給金の問題でありますが、是は司令部の方の指示もあつたかと思ひますが、本年度より此の助成と補給金の方は、一部殘つて居るのもありますが、大部分が此の停止の憂目にあつて居りますので、此の點は中々困難かと存じますが、尚ほ研究を致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=34
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035・坪井亀藏
○坪井委員 製材事業に付ては林業會が行ひ、資金は町村農業會が出せば結構だと考へます、業者が製材事業を行ふ場合は、却て生産者の利益がなくなり、林業の改良發達は生産者に重點を置き、生産者が恩惠を受けなければ、將來林業の改良發達は決して行はれないと考へます、製材は山間地に於て行ふことが最も適當とされ、而も山間には水車も行はれるのでありますが、併し電力を引込むと云ふことになると、引込の設備費其の他種々不利不便が伴ふので、現在までは山林に於ては電力の原動力は持つて居つても、此の電力は殆ど都市に使用され、其の山林地元である——發電設備のある地元に於ては、是が利用が極めて少かつたと云ふことは、色々配電設備等の關係より、費用の點から見まして制限を加へられ、是等の電力利用が山間等に於て出來なかつたのであります、今後現地に於ける森林組合等に於て製材を行ふと云ふことを、急速にやらせることが必要だと考へますが、是等に對して配電設備、或は製材に對する設備助成、或は配電會社に對して容易に之を行はしめると云ふやうなことにしなくては、眞に其の目的は達し得ないと思ひます、素材で之を出せば運搬から見ましても、其の積載量は製品の二分の一も積めないと云ふ状態に相成つて居ります、隨て運賃等が、素材で出せば石當りに對しまして倍以上の運賃の嵩みをする、之を製品にして必需者に運搬すると云ふことになれば、自から其の間の利益と云ふものも生産者の方面に來る、生産者が製材事業まで行へば、運賃等が生産者の方に於て非常に輕減されて來、隨て生産者の手取金も多くなり、延いては地方林業會の發達にもなる、斯う云ふことを考へました時に、政府に於かれましては今までの斯かる設備、或は又是等現地に於て、而も森林組合等に於て行はせると云ふ具體的の政府の施策、或は是等の助成の途、或は配電會社等に向つて如何なる指示を致しまして、急速に是が設備をせしめ得るやと云ふことに付ての、御用意がありますならば伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=35
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036・中尾勇
○中尾政府委員 製材事業を出來るだけ山床近くでやりますことは、御説の通り運搬費の節減から申しましても、極めて結構なことと思ふのでありますが、此の製材場を設置致しますには、色々の立地の條件を考へて見なければならないと思ふのであります、所謂今後搬出せられます原木の關係、現在企業致して居ります工業との關係と云ふ風に、色々の點を考慮致しまして設置しなければならぬと思ふのでありまして、それ等の條件を考慮致しまして、必要な箇所には今後も設置して行くことと相成ると存ずるのであります、唯之を森林組合にやらせるか、或は林産業者にやらせるかと云ふ點に付きましては、是は政府として指示は致しませぬが、其の組合或は縣の林業會で、適當と思ふ者にやらせることと存ずるのであります、尚ほ此の設備に對する助成のことは只今考へては居りませぬ、又配電會社のことも特に政府から指示を發すると云ふやうなことは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=36
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037・坪井亀藏
○坪井委員 政府は米材の輸入を計畫せられて居るやうに伺つて居りますが、私は國内の木材の需給調整を第一主義と致しまして、十二分に國内に於て努力して、其の不足の場合に於て輸入を圖るべきだと考へますが、政府は是が具體的に、國内の自給が不可能であるかどうかと云ふことに付て御説明を願ひたいと思ひます、私の考へと致しましては國内自給にて出來るだけの努力を致したならば、必ず是は國内自給が出來る、斯う考へるものでありますが、政府に是が根本的需給計畫がありましたならば御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=37
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038・中尾勇
○中尾政府委員 需給計畫の概要に付て御説明を申上げます、本年度の木材の生産目標は七千五百萬石になつて居りまして、其の中本年度配給致します需給計畫は七千二百萬石と相成つて居るのであります、生産は七千五百萬石の豫定を致して居るのでありますが、實は前年度の状況を見ましても、前年度は一億數百萬石の目標に對しまして、三月末で六千五百萬石の實績を得たのに過ぎなかつたのであります、尚ほ前年度は終戰の當時色々社會的經濟的の混亂もあり、是等の爲に其の生産に付ては停頓の状態にありまして、只今申しました六千五百萬石の實績を示すに過ぎなかつたのでありますが、更に昭和十三年頃の國内に於きます生産の状況、或は本年度になりましてから、色々生産條件の惡化と云ふやうな點を綜合して考へて見ますと、本年度の七千五百萬石の生産目標を確保致すことは、只今の所非常に至難ではないかと云ふ風に考へられるのであります、本年度の第一四半期に於きます生産状況を申しますと、大體二十年度の同期の實績に比べまして七四%の實績を示したに過ぎないのであります、材積で申しますと、大體一千四百萬石程度の生産に相成つて居ります、尚ほ本年度になりましてからの第一四半期の配給状況を申しますと、配給状況は豫定量に對しまして五二%程度に過ぎない状況に相成つて居ります、以上申述べましたやうに、本年度になりましてからの生産の状況、配給の状況も、豫定に比べまして遙かに低位にある情勢でありまして、中々此の木材の需給の状況は憂慮すべき状態にあるのでありまして、政府と致しましては此の際七千五百萬の目標に對しまして、飽くまで確保すべく只今努力を致して居る次第であります、以上のやうな情勢に依りまして、本年度假令七千五百萬石を確保することが出來るに致しましても、此の復舊用材に充當出來る材積は、本年度の状況から申上げますと、千二百萬石程度にしかならないのであります、尤も本年度は船舶用材等の用途材があります爲に、一般復興に向けます部分が少くなつて居るのでありますが、只今の状況では千二百萬石に過ぎない状況であります、來年度からのことを考へて見ましても、更にまだ數字ははつきり致しませぬが、賠償物資の包裝用材として、相當莫大な發注が來るのではないかと云ふ風に考へられまするし、旁々國内に於ける復舊用材に振向ける分が、やはり來年度に於きましても、一千萬石そこそこではなからうかと云ふ風に考へられる次第であります、さう云ふ關係にあります爲に、實は當局に於きましても、此の外材輸入のことに付きまして、色々考究もし、又計畫も致して居るのであります、此の點に付きましては見返り物資の關係は或は輸送船腹等の關係もありまして、まだ具體的に正式に交渉するまでには至つて居りませぬ、唯腹案を持つて居るだけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=38
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039・坪井亀藏
○坪井委員 戰前に於きまして米材の輸入に付きましては、恐らく「アメリカ」で米材を買入れた場合に於ては、早ければ三月位で内地に是が、到達して居つた、然るに内地の山の買付に依りましては、買付てから少くとも一年或は一年半經たなければ、需要者にまで搬出が出來なかつたのであります、斯樣なる我が國の此の木材に對します所の何と申しませうか、放漫的な、實に手緩い搬出振りと申しませうか、過去に於てもさうした事實があつたことは、私が申上げるまでもないのであります、戰爭中に於ても船を造る、其の他色々供木等に於きましても、是れ亦あれ程急いで居つたにも拘らず、一年或は二年放任して置いて、而も路傍にありまして直ちに搬出が出來る所にあるのでさへも、さうした年數が經つて居つた、而も腐らせて、是があとでは何の使用も出來ない、而も尚又現在に於きましては、全く二年或は三年前の素材が、殆ど腐つて居ると云ふやうな森林地帶も澤山あるやうに聞いて居ります、是等を其の儘にして置いて、尚ほ茲に急速にと云ふことで、所謂進駐軍の素材なども割當が一時に來まして、現在地方の木材業者と云ふものが、非常に狼狽をして居る現状でございます、今まで戰爭中に於て手の近い、伐採の出來る所を全部伐採致しまして、今回奧地に入つて、さうして不利不便な所で之を伐採すると云ふやうな時に於ては、私は必ず昨今までのやうな實收を得ると云ふことは困難だと思ひます、餘程政府に於きましては是等に對します所の道路の復興、河川の改修、或は又林道、索道等を、一日も早く復舊又は新設致しまして、而も亦是等山間奧地に對しましても、所謂森林事業の改良發達をさせるには、如何に重點を置くか、如何にしたならば、「アメリカ」から持つて來るのにも三月で來べきものが、日本で一年半も二年も經つのか、此の缺陷を如何にして補ふか、改めるかと云ふことが、私は大きな問題だ、斯う考へるのであります、唯一片の法律或は規則に依つて、其の儘放置すれば過去を繰返すに過ぎない、現實の問題として全く今都市に於ては木材を希望して居るのであります、是等は全く緩漫と申しますか、過去に於ける此の事實から見ますと、私は前途を憂慮するものであります、之を政府は如何にして極く短時日の中に、年月でなくて時日の中に、之を所謂生産者から消費者まで搬出せしめるかと云ふ實行の時に今はなつて居る、數字、計畫は洵に容易いことである、之を實現させると云ふことは極めて至難のことだ、斯う考へるのであります、政府は必ず此の計畫に對して、自信を以て此の計畫通りの數字を搬出し得るか否かと云ふことに付ての、政府の確固たる御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=39
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040・中尾勇
○中尾政府委員 只今御述べになりました滯貨材が相當あると云ふ點は、洵に私等も遺憾に存じて居ります、是は戰爭中から勞務の不足或は小運送の逼迫の爲に、山元或は中間渡場に相當滯貨を來して來るのであります、此の滯貨の一掃に付きましては、政府としては小運送力の擴充其の他に付きまして、相當努力も致して居ります、併し小運送の方の關係であります今の「トラック」の關係、油の關係、或は又荷車運搬に要します馬糧の關係、何れも困難な問題でありまして、中々思ふ通りには行かないのでありますが、是等の確保の點に付きましては、今までも相當努力は致しましたが、今後も一層努力を致しまして、小運送力の増強に努め、滯貨の一掃を圖る積りであります、尚ほ御承知の通り木材は形量としても相當大きいものであり、且又重量としても非常に重たいものでありますし、それに只今申しましたやうな小運送或は大輸送等の關係で、山元で伐採致しましてから消費者の手許に渡りますまで、相當の期間を要して居るのであります、早くて大體三箇月、或は五箇月と云ふ期間は、どうしても現在の日本の山の状態、或は運搬の關係から見まして、掛ることと思ふのであります、併し是等のことに付きましても、林道の改修は勿論、其の他の搬出の設備の改善を致しまして、出來るだけ生産から消費までの時日を短縮するやうに、政府と致しましては指導をして行きたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=40
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041・坪井亀藏
○坪井委員 森林事業の改良發達を行ふには、森林伐採前に於ての所謂植林計畫、此の準備がなければ、到底森林事業の改良發達は出來ないと思ひます、先程種苗に付ては政府は相當計畫をされて居ると申しますが、兎角計畫倒れでありまして、中々此の實行も困難なことが多いと存じます、私は天龍沿岸の西岸でありますが、年々天龍川が氾濫する、而も昨年の如きも數十町歩に及ぶ美田が、此の氾濫の爲に一大水害を被つて、數箇村の者が之に付きましては家を流し、或は田畑を流しまして、塗炭の苦しみをしたことは事實であります、今日より六十數年前、金原明善翁があの天龍川の上流に於きまして、所謂治水事業、之に挺身されまして、其の間は非常に天龍川の氾濫も少かつたのでありますが、最近此の濫伐に依りまして、斯うした河川の氾濫と云ふ事實を數回繰返すに至つたことは、全く森林の植林計畫なくして此の濫伐をしたと云ふ結果が、茲に現はれて參つたのであります、今後御料林或は國有林或は民有林に致しましても、餘程治山治水と云ふ點に付ては十二分に考慮を拂はれまして、而も民有林は少い爲に、是は家寶として中々其の伐採等に付ては相當躊躇もして居るが、所謂一大御料林の如き或は又國有林の如きに付きましては、政府が相當大きな面積に對しましての伐採等を許可すると云ふことに依りまして、非常に其の水下に居る所の良民が苦しんで居ると云ふ例は、單り天龍川流域だけではないと思ふ、全國には相當此の實例があると存じます、私は此の點に付ては呉々も政府に於て、十二分に一つ此の伐採に付て、さうした氾濫の憂をなからしむるやうに注意されると同時に、而も此の大森林伐採に付きましては、其の直前に於て植林の準備が出來得るや否やの見透しの立つた後に伐採をすると云ふまでに行かなくては、我が國の荒廢したる此の山林の眞の改良發達は出來ない、先程の種苗其の他に付きまして色々準備があると申されますが、少くとも五十年、六十年——其の木を伐るには僅か半年か一年、而も其の苗木は是亦二年三年或は四年經たなければ出來ませぬ、少くとも今から計畫したのでは、四年先きでなければ植林事業が行はれないのであります、どうか政府に於かれましては是等に付て遺憾なきを期するやうに一段の御努力を願ひたい、尚又色々過去に於ける例を見ますと、河川は内務省に屬して居る、或は道路は内務省に屬して居る、或は府縣に屬して居る、或は運輸の面に付ては運輸省に屬して居る、てんでんばらばら勝手な行き方で、而も斯うした急速を要する復興をされる時に、何一つ纒まつた所謂實績を得ることは到底出來得ないのであります、私は此の山林事業を致す上に付ては、將來は一元的に、而も計畫的に總て此の目的を達成し得るやうな施策を政府に於て樹立し、是が實現を希望するものであります
以上述べましたやうに、私は何處までも是は一片の作文、或は一つの森林法と云ふ此の法に拘泥せず、其の法の運營は人を得ると云ふことにあるのであつて、其の法の運營に當りましては十二分に愼重に考へられまして、良き人を得、一旦此處に法を提案する以上は、何處までも初志を斷行すると云ふ決意を促したいと考へるものであります、色々本法に對する内容に付て檢討を致しました時に、洵に私は本法が一時的措置であつて、恒久的措置法案でないと斯う考へるものであります、私個人から申しますれば、本案に付ては全く意思に相反するものがあると云ふことを茲に申述べたい、斯樣に考へるものであります、政府と致しましては、國家再建の上から見て、如何に山林事業が重大なる役割を持つて居るかと云ふことを十二分に檢討されまして、此の法案の内容に付きまして、尚又是が運用に付きましても萬遺憾なきを期せられたい、斯樣に意見を申上げると同時に、政府の之に對する最後的の御信念を尚ほ一つ伺つて、私の質問を總括的に茲に終りに致したい、本案の逐條的或は箇條的な質問は今後に讓つて、本日は以上を以ちまして私の質問を一時打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=41
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042・中尾勇
○中尾政府委員 日本の再建上、林業業界に課せられました問題は、極めて重大であることは御承知の通りであります、此の林業業界に要請せられて居ります所の問題は、戰爭中に相當過伐になりました結果、非常に森林資源が涸渇して居る、又非常に濫伐の結果林地が荒廢して居る、是等に對する對策を講じますのは勿論でありますが、更に差當つた問題と致しまして、戰災地の復興を急速にやらなければならない、又全國民の民生安定の爲には、どうしても必要な木材は或は薪炭と云ふものの確保を圖らなければならないと云ふやうな、色々重要なる要請をせられて居るのであります、此の際此の林業業界に關係のありますものは、打つて一丸となつて此の諸問題の解決に努力致さなければならないと考へて居る次第であります、さう云ふ意味合ひに於きまして、先刻來此の植林計畫と云ふやうなものも、伐採前に決めて置けと云ふ御話も色々ありましたが、植林計畫は勿論、幼苗の計畫或は種子の採取に付きましても、政府と致しましては五箇年間計畫を樹立致しまして、其の實行の完璧を期して努力を致して居るのであります、尚又戰爭中の過伐に依りまして、色々林地の荒廢を來して居ります箇處に對しまする治水事業、或は災害地の災害防止の施設の事業等に致しましても、從來實行致して居りました事業に更に檢討を加へまして、更に擴大強化して、而も速急に實施致したいと云ふ考へを持つて居るのであります、此の點に付きましても戰爭中に伐り荒されまして、林地にも相當の變化を來して居ると考へられますので、只今其の林地の實體を把握致します爲に、全國に亙つて調査を致して居ります、其の調査の結果に基きまして、劃期的な計畫を樹てて實行致して行きたいと云ふ風に、只今考へて居る次第であります、尚ほ本法案のことでありまするが、本法案が通過致しました後の實施に當りまして、色々の御注意の點も十分考慮致しまして、圓滑に實施され、而も此の法案の目的を達成致します爲に、政府と致しましては飽くまで努力を致す考であります、尚ほ差當つての重要問題であります木材の確保に付きましては、更に森林所有者、又林産業者の協力提携を圖りまして、此の増産に付きましても、尚ほ一層の努力を圖りたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=42
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043・綿貫佐民
○綿貫委員長代理 本日は此の程度に致しまして、次會は明日の午前十時から開會致したいと思ひます、本日は是で散會致します
午後零時十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00819460829&spkNum=43
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