1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
林業會法案(政府提出)
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昭和二十一年九月三日(火曜日)午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 森幸太郎君
理事 水口周平君 理事 綿貫佐民君
理事 平野増吉君
稻田直道君 大井直之助君
木島義夫君 小柳冨太郎君
武田信之助君 小笹耕作君
本名武君 武藤常介君
町田三郎君 林田哲雄君
松澤一君 的場金右衞門君
飯田義茂君 井出一太郎君
磯田正則君 圖司安正君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
運輸大臣 平塚常次郎君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
農林參與官 鈴木強平君
農林技官 中尾勇君
農林事務官 平川守君
運輸事務官 滿尾君亮君
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本日の會議に付した議案
林業會法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=0
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001・森幸太郎
○森委員長 是より會議を開きます——武藤常介君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=1
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002・武藤常介
○武藤(常)委員 木材統制法を廢して、本法案を提出しました理由は何れにあるかと云ふことでこざいます、木材統制法は戰時中の法であるから、之を切替へると云ふ單なる意思より出でたのであるか、政府は過去の官僚統制に依る所の官僚主義を一擲致しまして、新憲法の精神に則つて業界を民主化すべきであらうと思ふのであります、此の見地より此の法案を檢討する時に、非常なる疑問を持つのであります、それは各所に現はれて居りまするが、其の一、二を取上げて申しますならば、林業會の加入は隨意であると云ふことであります、然るに加入の如何に拘らず、統制には服從しなければならぬと云ふことであります、此の加入の隨意と云ふことは一面洵に民主化されて居るやうに見えますが、加入しない者にも統制すると云ふことであり、加入しない者は、隨て發言權がなく、唯服從のみを強制せられると云ふことであります、是は決して私は民主的であると云ふことは出來ないと考へるのであります、是等の點から考へる時に、本法案は僞裝的民主主義化でないかと考へるのであります、之に對しまして農林大臣の所見を伺ひたいのであります
更に又伺ひたいのは、經濟安定本部の總務長官と致されまして、一般的に民主的統制方式と云ふものはどんな方式を今後御考へになつて居られるか、斯う云ふことでございます、木材に關する方面の經濟安定に關しましては、一體どう云ふ風な方式を御孰りになられるか、一體木材は他の一般の經濟と必ずしも一致しないことが多いのであります、是は過去の經驗から考へて見まして、さう云ふことになつて居ります、他の一般經濟は益益向上する時でも、運輸其の他の關係上から引合はないと云ふことになりますると、此の生産と云ふものが、そこでぴつたり絶えると云ふことが往々にあるのであります、斯う云ふことになりまするからして、今度の復興事業を目指して斯う云ふ問題が起りますると、是は實に重大な問題であると考へるのであります、所が先日の長官の御説明に依りますると、一年間經たなければしつかりした設計圖が出來ないと云ふ御話でございました、然らば木材の生産も、一年間は根本的な計畫を立てて、仕事をすると云ふことは出來ないやうな結果になるのであります、木材に關する限りは一日も早く明確なる所の方針を定められまして、之を指示して戴きませぬければ、木材の生産は一時非常な停頓に陷るのではないか、私は斯う云ふ風に考へます、段々伺ひますると、世間一般に、閣下は自由主義經濟の理念を御持ちになつて居られる、斯う云ふことを言はれて居りまするが、現在の日本の經濟、特に特殊性を持つて居ります所の木材の生産配給に關しまして、如何なる方式を御執りになられるか、之を御伺ひ致したいのであります、先づ第一に此の問題に付きまして總務長官に御答辯を戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=2
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003・和田博雄
○和田國務大臣 最初の御質問に對しまして私から御答へ致します、木材統制法を廢めまして、日木社、地木社を廢止して、此の林業會法案を提出致しました理由に付きましては、是は本會議及び當委員會に於て屡屡繰返して御説明申上げたのでありますが、結局戰事中行はれました日木、地木に依りまする統制と云ふ戰時統制を廢止しまして、林業に關係のありまする自治的な團體、言換へれば森林組合、それから今度此の法律に依つて林産業者を以て作ります林産組合等を以て日本林業會を作りまして、さうして、此の自治的に作つた團體に於て、森林の維持造成及び木材の配給等の的確を期して行くと云ふのが、此の法案を作つた主たる理由であります、勿論自治的に作られまする團體でありまするので、是は「コーオペラティヴ」の原理に從ひまして、加入團體は是は自由であります、併し此の加入の自由でありまする團體が、統制致さうとして居りまする仕事其のものは、是は日本の經濟及び日本全體の福利の爲に、非常に必要な公共的な大きな仕事なのでありまして、隨ひまして是は勿論自治的にやつて行きまする統制其のものに付ては、組合員にしか統制は及ばないのでありませうが、併し臨時物資需給調整法と云ふものが出來まするならば、其の限りに於ては、是は大きな見地から、組合員外の者にもやはり統制は及ぶと云ふことはあり得ると思ふのであります、是は丁度元自由經濟の時代に、重要産業統制法と云ふものがありまして、それで重要産業に對する一つの統制を行ひました時に、やつぱり員外統制と云ふことは其の場合と雖も行はれて來たのでありまして、是は統制をやつて行きまする主體は、成程何處までも自治的に組織された團體と云ふものに依つてやつて行くとしましても、統制其のもののやりまする仕事が、非常にさう云つた重要な仕事でありまするならば、公の仕事として統制目的を達しまする爲に、「アウトサイダー」もやはり或る程度統制に蹤いて行くと云ふことは、當然考へられることなんでありまして、唯之を以て僞裝的な法案だとは言へないのではないかと斯樣に思ふのでありまして、我々としましては、何處までも實際上森林組合でありますとか、又林産業組合でありますとかの當事者が、自ら進んで加入して戴きまして、さうして何處までもさう云ふやうに木材の生産配給の統制、適正化と云ふ大きな仕事を、十分自覺された人達に依つて、自主的に統制されて行くやうに致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=3
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004・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ致します、經濟本部で考へて居りまする民主的の方法に依りまする統制法は、如何なる方向に行くかと云ふことを先づ申上げたいと存じます、林業に關係しましては今囘御審議を願つて居りまする林業法が通過致しますれば、之に基く林業委員會の設置が豫定されて居る譯であります、安定本部の林産物に對しまする是からの統制は、立木にまでは及ばぬと思つて居りますけれども、是も亦今期の議會に既に提案されて居りまする臨時物資需給調整法が成立致しますると、經濟安定本部が全般的に諸物資の生産、割當、配給等の統制を致すことに相成るのであります、併し之を運用しまする際には、一は直接には只今申しました林業委員會に諮問致しまして、實際に即して統制の實際を行ふ積りでございます、尚ほ其の根本の問題と致しましては、全體の物資の需給計畫を如何にするかと云ふことは、是は經濟安定會議に付議して定める積りで居ります、此の經濟安定會議も林業委員會と同樣に、其の委員會の構成は官廳中心でありませぬので、殆ど主として民間の人を以て其の委員に充てて、審議の方法等に付きましても、從來の唯責任を糊塗するやうな會議の樣式を採らずに、本當に實際の意見を十分に反映せしむるやうな運用に致したいと存じて居ります
尚ほ根本的の是等安定本部の機構其のものも、實は從來の官廳とは其の類を異にするやうに考へ、現に其のやうに組織しつつあります、即ち部を設け班を設けるのでありまするが、其の部、班は時には官吏を以て其の長に充つることもありまするが、多くの場合には民間人を起用致しまして所謂「ワン・ダラー・マン」と申しますか、現職の儘國に奉ずる氣持を十分に發揮して貰ひまして、さうしてさう云ふ人を或は部長、或は部員として直接色々の立案に參畫して戴きます、尚ほ時としては民間人を參與と云ふやうな形で御願ひ致しまして、唯意見を聽くと云ふだけでありませぬので、實際の審議立案に、さう云ふやうな民間人の創意をば、十分に發揮せしめるやうな形で參る積りで、現に其の機構をば整備しつつありますので、斯樣な點から致しまして、今までのお役所式會議が、何となく一般の實際と足の著いて居らないやうな感のありましたやうなことも、ないやうな形に運用致したいと思ひます、斯樣な形式に於て、十分に民主的の色彩をば發揮させたいと存じて居りまする次第であります
次に安定本部が木材に付てどう云ふ點まで關與するのかと云ふことを申上げて、御答へを致したいと思ふのでありまするが、細かい實際の林業の内容まで、農林省で主管して現にやりつつあるやうなことまで、安定本部の手が及ぶ譯ではございませぬ、安定本部と致しましては先づ第一に林産物の生産、割當、配給、此の計畫をば致します、大きい全般的の日本の諸物資の配給計畫は安定會議に依つて定まりまするが、尚ほ林産物に關しましては先程申しまする林業委員會に付議して之を決定し、斯う云ふやうな方面で生産、割當、配給の部面をば關與致さしめる、尚ほもう一つの點は價格の點で關與致します、是は物價廳と安定本部とは一體をなすが如き機構を現に作つて居りまして、安定本部總務長官でありまする不肖が、同時に物價廳の長官を兼ねて居りまして、物價の問題、物價水準、又物價に依つて生産意欲を起すと云ふやうなことが、全國の産業の振興及び經濟の安定と云ふことと、矛盾のないやうな方策を執りたいと思ふのであります、斯樣な意味合から安定本部と物價廳とは密接な連絡を圖り此の方面で林産物の價格に付て適當なる統制をば加へて參りたいと思ふのであります
次にどうも安定本部の仕事は一年先でなければ完成しないのださうだ、それまで放つて置かれて困る、是は私が本會議に於て説明申上げました言葉が不十分であつたのだと思ひまするが、安定本部の仕事は補償打切りに伴ひまする日本の經濟の——何と申しますか整理、此の整理の中から起ち上る日本の諸産業、其の他此の敗戰に依りまして日本が東洋に於ける、各植民地に於ける天然資源を失ひましたこと、又國内の貧弱な天然資源をどう云ふ風にして之を動員して、殊に國外の力も借りて日本の經濟を再建するか、如何なる産業からどう云ふ風にと云ふやうな國家百年の大計は、安定本部の機關も一應一年と豫定されて居りまするので、其の間に完成したい、斯う云ふやうな意味でありまするが、緊急の措置と致しまする諸方策はもう日々とやつて居りますることで、若し今囘提案されて居りまする臨時物資需給調整法が通過致しまして、安定本部が根本の生産、割當、配給の指揮をしまする任務に當りますれば、早速其の方面は九月或は十月からの實際の物資の、今申す生産、割當、配給の統制のことに當ることに相成つて居りまする譯であります
偖て最後にお前は自由主義のやうな考へを持つて居るやうであるが、一體是から統制と云ふやうなことに付てどう考へるかと云ふやうな意味合の御尋ねと存じまするが、私は何時も申して居りまするやうに、日本經濟の再建は徒らに「イデオロギー」や主義から出發すべきものではない、此の際日本で經濟再建に必要な手とあらば、如何なる主義、如何なる學説、如何なる政策を執る方面の主張をされることでも、是が本當の日本の經濟再建に必要であるならば、敢然としてそれを採用すべきで、是が日本經濟再建の捷徑であると斯樣に考へて居ります、扨て木材の問題に付て考へますれば、戰災を受けた後の日本の木材の需要と云ふものは相當莫大であります、又之に對する供給は、國外からの供給も早急には十分に期待することも出來ませぬ、然るに一方需要は依然として以前よりも殖えて居る、斯う云ふやうな状態に當りましては、如何様に考へましても、やはりそこに需要と供給との間に統制の行はれると云ふことは已むを得ざる點であります、少くとも日本の經濟が安定しまするまでは、木材に關しては統制は已むを得ざることと私は承知致して居りまして、左樣な見地から、而も此の統制が戰時中にありましたやうに、徒らに「イデオロギー」から出て來る統制、統制せんが爲めの統制であつては相成らぬ、實情に即しまする統制で參りたいと存じて居ります、隨て統制の必要なきに至りますれば、私が任に在りますれば、喜んで統制は外して參りたいと思ひます、併しながら現在の状況から見ますれば、少くとも日本經濟の再建までは、木材の配給を自由に調整し得るまでは、統制は已むを得ざるものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=4
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005・武藤常介
○武藤(常)委員 只今兩大臣の御説明で、統制はどうしても置かなければならぬ、斯う云ふ風な御考へは私も實は同感であります、併し過日より農林大臣の御説明に、どこまでも民主的で而も自主的でなければならぬ、斯う云ふことを申されたのでありますが、只今の御話で大體其の精神は分りました、實は本案の内容を檢討して參りますと、相當御話とは矛盾の點があるやうに考へられるのであります、それも統制の上には已むを得ないと云ふやうな御考へがあるかも分りませぬが、私共としては民主的な而も自主的な統制としたならば、いま少し法案としても考へ方かあつたのではないか、斯う云ふ風に考へるのであります、即ちどう云ふことであるかと云ひますと、此の林業會の事業の第四條とか、或は林産組合の事業の第六十七條、此の兩條の第二項の、どちらも一號には「政府の指示に基く林産物の生産及び配給に關する割當」それから二號の「林産物の價格統制に關する政府の施策に對する協力」斯う云つたことを此の法案にまで載せなければならぬと云ふのは、少しくどうもどう云ふものであるか、此の建前の如きは、どうしても私の考へでは民主的でないやうな氣分がある、即ち過去の官治制度の延長を、我々に強く思はしむるものがあるのではないか、斯う云ふ風な感を抱かしめるのであります、一時評判が惡かつた木統法は廢止するが、名の變つたものを以つて之に代へて實質的には變りがないのではないか、斯う云ふ風に考へられるのであります、殊に私の考へますことは、最も重要な點である所の許可制の問題であります、木統法の非常に非難があつた幾つかの中の重要なものの一つとして、此の許可制の問題があつたらうと私は思ふのであります、斯う云ふ點を考へると、今度の法案に其の點を採り入れたと云ふことは、やはりそこに非常な疑問を持つのであります、實は之に付ては何か特別の理由があるのではないか、斯う云ふ風にも考へて實は本當の政府の肚のある所を、我々に聽かして貰ひたいと云ふやうな考へもあつたのであります、只今伺つたので大體は分りましたが、私の考へから申しまするならば、やはり民主的或は自主的と云ふ考へならば、此の許可制の如きは撤廢し、そして自由に生産させる、一體木材の生産と云ふことは、植林と伐採、搬出、製材と云ふやうなものは、是は實は切つても切れない關係にありますので、此の木材業を許可すると云ふことが、私は少しく理不盡のものがあるのではないかと考へるのであります、併しながらそれは統制上已むを得ないと云ふ御考へであるかも分りませぬが、寧ろ生産は自由にさせて、配給方面の統制でがつちり抑へて行くと云ふことにしても、其の前提である所の生産には自由を與へた方が、生産が圓滑に行くのではないか、斯う云ふ風に考へるのであります、之に關しまして農林大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=5
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006・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、第四條と六十七條の二項のそれでありますが、是は武藤さん御承知のやうに、日本の經濟と云ふものは、只今は終戰後の混亂の時期から早く安定した所に再建致したい、斯う云ふことであるのであります、さうしますると、凡ゆる基礎的の資材に付きましては、是は其處にどうしても無駄がありませぬやうに、又其の供給された物が、必要な面に現實に使はれて行くと云ふことに、工夫を致さなければならないのであります、所がそれを今のやうな事情に於て完全な自由放任に致しますならば、是は「フリー・コンペティション」の惡い面だけが、實は出て來る虞が多分にあるのでありまして、さう云ふ風な方面から考へまして、今のやうな需給の均衡が取れない、而も日本の經濟の基礎を固めると云ふ、大きな日本全體としての目標がありまする時に於きましては、そこに大きな立場から、政府が基本的な必要の物に付ては統制を行つて行くと云ふことは已むを得ないのであります、そして行つていつて生産の基礎及び經濟の基礎が固まつて、安定と云ふことが出來た時に、さう云つたやうな意味で行はれた統制と云ふものは、段々自然に無くなつて行くと云ふやうに、日本の經濟と云ふものを發展させて行くべきだと思ふのであります、隨て此の林業會が行ひまする例へば四條の一、二なんかの統制も、實はさう云ふ意味に於ける統制なのであります、是は何と致しましても今の段階に於きましては必要であると思ふのであります、隨て此の規定を置いてありまするからと云つて、林業會其のものの行ひまする事柄が、前の地木なり、日木なりの行つたと同じやうに、單なる統制の爲の官治統制と、斯う御考へを願はないやうに御願ひ致したいのであります
それから許可制度を置きましたのも、是は一つには終戰後色々の事情もあるのでありまして、又一つには經濟安定本部が出來まして、日本全體の經濟安定の企畫に當つて行きまする點から言ひましても、又今囘是等の木材なんかに付きまして、所謂自主的な統制を行ふ爲に組織を作つてやると云ふ、さう云ふ點から考へて見ましても、自由にどんどん色々な惡い企業が實際上出て來まして、事實原料なり材料なり、何なりが非常に少いにも拘らず、それを實際奪ひ合ひをすると云ふやうなことがありますれば、其の方面から來る實際の色々な勞力なり、資金なり、資材なり、さう云つたやうな社會的の損失は、私は相當なものであらうと思ふのであります、勿論許可制度に致しましたからと言つて、何も既存のものの特權を擁護すると云ふ意味では毛頭ないのでありまして、要は統制を行つて行きまする上に於て、實際上乏しい資源を使つて行くのに、無駄のないやうにすると云ふ點にだけあるのでありまして、隨て必要なものは許可をどんどんして行くのであります、又此の許可制度が出來ましたのは、此の委員會に於ても屡屡御説明申上げましたやうに、臨時的なものでありまして、大體經濟安定本部を存續する期間、自主的な統制の必要である爲に置いて居るのだと云ふことなのでございますので、左樣御諒承を御願ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=6
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007・武藤常介
○武藤(常)委員 只今大臣の御説明で大體了承致しました、實は許可制の問題と、加入しない者の官治統制と云ふことは、形の上から考へますと非常に非民主的なことでありまして、是はどうも宜しくない、斯う云ふ風な考へも持つたのでありまするが、木材の特殊性、又現状から考へて見まして、是は已むを得ないことであらうと思ひまして、大臣の御意見に同意を表する次第であります、次に統制の行過ぎの點でございまするが、先般總理大臣は豫算總會に於きまして、計畫經濟の行過ぎは自由經濟で補ひ、自由經濟の行過ぎは計畫經濟で補ふと申されましたが、實際としては蓋し已むを得ないことと存ずるのであります、此の點から木材の統制を檢討する時に、過去に於ては非常に實際に副はなかつたものがあると考へるのであります、昨年の十一月政府は木統法は非常に評判が惡いから、之を廢止し自主的に任せると云つたやうな、恰も統制を廢止するかの如き感を懷かしめたのであります、其の爲に地木社の木材は一體どうなるのかと云ふ矢先に、此の地木社の木材全部を日木社に賣波せと云ふやうな命令が出ました、而して又約一週間位の間に價格が二倍程度に引上げられたのであります、爲に全國の木材生産配給は混亂に陷つたのであります、實は今尚ほ其の状態を脱し得ないと私は考へて居るのであります、一體政府が斯かる措置を執ると云ふやうなことは、私から申しますならば、木材生産の實態を把握して居ない、世評に惑はされて居るのではないか、眞の木材の生産配給の事情を能く知つて居ない、木材生産の困難性を知らない結果から、斯う云ふことが起つて來るのではないか、斯う云ふ風に私は考へるのであります、一體木材の生産は公定價格が上つたから、俄かにそれに相應はしい所の經費を掛けて生産すると云ふことでないことは、是は明瞭なことでありまするが、殊に木材生産と云ふのは非常に長歳月を要しまするので、價格の公定と云ふものを俄かに變へたから、それに依つて、それに相應はしい生産をするのではありませぬで、價格が上るまでには、過去に於て數箇月、もう既に經費を投じて生産して居るのであります、それが俄かに今日限りの生産は全部元の價格で日木に引渡せ、斯う云つたやうな措置を執ると云ふことは、是は木材生産の實情を知らなかつたのである、斯う云ふ風に私は考へるのであります、木材需給の實情から申しますならば、戰爭の始まつた當時、昭和十五、六年頃の状態は、或は統制をしなくも宜かつたのではないか、自由に生産させ、自由に配給させても、其の當時の情勢は需要を充たすことが出來たのである、然るに戰爭も酣になり、終戰の前後になりますと、需要高が非常な厖大な數に上りまして、御承知のやうに二百四、五十萬戸の戰災家屋の復舊と云ふやうなことになりますと、木材は實に厖大なものであります、少くとも是には年數億の供給を必要とするのであります、然るに生産は種々な諸條件が非常に逼迫を告げまして、極度にまで追込まれて居るのでありますから、やつと六、七千萬石程度の生産であります、隨て之を如何なる方向に、如何なる種類に重點を置いて配給するかと云ふことは、中々容易でないのでありまして、茲に統制の必要が多分にあつたのであります、斯かる時期に統制法規のやうな聲明を出されたのでありまするから、其の弊害の起つて來ることは當然と言はねばならぬと考へるのであります、爲に政府の企圖する方面への木材は、十分に配給されなかつたことは蓋し當然なことであつたらうと私は思ふのであります、私は皮肉のやうでありまするが、政府が斯かる手を打つたのは何か事情があつた爲ではないかと想像せられるのであります、世論が之に對して相當喧ましかつたのであります、實は斯う云ふ機會に遠慮なく斯う云ふ事情があるとすれば、御聽かせを願ひたい、斯う云ふ風に考へて居るのでありますが、是等の點から考へて見る時に、木材の統制と云ふことは非常に難かしいもので、非常な手加減を要するものであると云ふことを私は考へまして、之を十分考慮に入れて居て戴きませぬならば困る、斯う云ふ風に考へるのであります、之を機械的に一概に簡單に統制を強行することに於ては、生産の諸條件である所の、或は食糧の配給、或は資材の點から、或は持に運搬の點から、生産は不能に陷るやうなことがあるのではないかと考へるのであります、御承知のやうに、木材は立木の價格よりも運賃の方が、非常な經費に上ることは御承知の通りでありまするが、殊に今日の如き運賃が非常に上つて參つて居ります時には、是は餘程そこに價格の統制と云ふ點等に對しましては、周到なる考へを廻らしませぬならば木材の生産は停頓する、斯う云ふ風に考へるのであります、後程輸送の問題で伺ひたいと思ふのでありますが、今囘段々伺ひますると、運賃が四倍に決定したと云ふ話でありますが、之に對しまして將來の見込みと云ふものが一體どう云ふことであるか、斯う云ふことも考へて伺つて置きませぬならば、生産には著手出來ない、兎に角斯う云ふ點から考へて見まして、木材を機械的に簡單に統制すると云ふことは非常に問題である、斯う云ふ風に實は考へて居るのであります、殊に價格の點でございますが、木材業は今日の状態から申しますならば、どうも擴大生産なんと云ふことは迚も出來ないので、再生産も或は不可能の状態ではないか、斯う云ふ風にも考へて居るのであります、其の原因は何であるかと申しますならば、價格の改訂が非常に遲れると云ふことでございます、公定價格が決定される前に生産諸費が非常に上つて參りまして、公定價格から非常な距離が出來てしまふのでありまするが、斯う云ふことになりまするが、斯う云ふことになりますと、木材の生産は一時止める外はないと云ふことになるのであります、公定價格を從來のやうな方法でなく、協定價格を決定するやうな方法で進んで戴きませぬならば、順調に木材の生産を進めることは出來ないのではないかと考へるのであります、併し段段伺ひますとやはり公定價格は實施されると云ふことでありまするが、只今總務長官殿の御話に依りますと、十分民間の意向を體して實際に即した所の統制を行ふのだ、此の御言葉は至極私共結構なことであると考へまするが、どうも從來の状態から考へますると、此の價格等の問題で隨分民間から意見を具申致しましても、それは必ず採用されるやうになつて居りまするが、其の實現が非常に日月を要しまして、公定が殆ど用をなさないやうな實情にあるのであります、斯う云ふ點から考へて見まして、此の價格の問題に付きましては、特別なる考慮が必要ではないか、斯う云ふ風に考へるのであります
それから今一つ重大な問題は最近の新紙幣と封鎖預金の問題であります、現在進駐軍の材料等を出して居りまするが、八割は封鎖で參りまして後の二割が新紙幣である、併し一方買入の方はどうであるかと申すならば、全額新紙幣でなければ立木の入手は出來ないと云ふやうな状態になつて居りまして、是等の問題から立木の買入と云ふことは一時全く頓挫致して居ります、現在の各縣の生産は恐らくは地木社自體の買入の殘材の處理であらうと云ふことを考へる時に、近き將來に一旦木材の生産杜絶と云ふやうな時期が到來するのではないかと考へられるのであります、是等の點から考へると茲に又一つの問題が起つて參りますことは、今囘の經濟の問題から資金の調達と云ふことに、非常な問題が起つて參るのでありまするが、是等に對しまして政府と致しましては、如何なる御指導をされるか、之に依つて此の木材の生産の増減は決定されるであらう、斯う云ふやうなことも考へられるのであります、是等の點に付きまして農林大臣と、經濟安定本部總務長官の御意見を伺つて置きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=7
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008・和田博雄
○和田國務大臣 從來の統制のやり方に付きましては、是は今言はれましたやうに私も其の點は全く改むべきことだと思つて居ります、殊に農産物、農業關係のものは全く時を必要とするものでありまして、價格の決定が遲れれば遲れる程、折角妥當な價格が決まつたものが、もう決まつた時には餘り效果がないと云ふことがありましては、折角の勞苦が無駄になるのでありまして、それ等の點は十分今後は安定本部の方で注意して戴けるものだと思つて居ります、唯從來各省がぽかぽかと、それぞれの立場から價格を決めて行きまして、非常に其の間に不合理が起つたと云ふ點はあつたと思ふのであります、さう云ふ點を本當に改めて、日本の經濟の安定が、やはりきちんとした計畫に從つて、色々な施策が打たれると云ふ必要の爲に、茲に安定本部が出來たやうな譯でありまして、斯う云ふ點に付きましても凡ゆる面から檢討致しまして、公的な價格を、基本的な物資に付ては決めて行かれるやうになるのだと思ふのであります、例へば鋼材が知らない内にぽかんと上つた爲に、又外のそれを使つて居る色々なものを上げなければならないと云ふやうな、經濟的の色々な矛盾が起らないやうに、はつきりとした價格政策と云ふものが、今後は安定本都で執られて行くべきだと思ふ譯であります
それから新圓の點でありますが、是は御話の點十分此方と致しましても御聽きして置きまして、今後大藏省ともそれ等の點に付て色々交渉致したいと思ふのでありますが、今までの所唯運送賃であるとか、勞賃であるとか、それ等のものを色々考慮致しまして、大體木材の價格の二割と云ふものに付ては新圓を出して貰つて居る譯でありますが、是は色々な事情もございますので、それ等の點に付ては又大藏省などとも、十分な交渉を致して行きたい、斯樣に考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=8
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009・膳桂之助
○膳國務大臣 只今の御尋ねの中、統制の仕方の問題に付きましては農林大臣の御答へになられました通りに考へて居ります、尚ほ色々御述べになられました林産品の通常の農産物と違ふやうな點、況や外の一般の工業製品などとも違ふ特殊な性質があります點などに付きましては、十分注意致したいと存じて居ります、色々御質問の中に述べられました御意見は、私是から自分の施策を考へます中に十分と考慮を加へたい、さう存じて居ります、それから價格の問題でありますが、此の價格の決定が兎角遲延勝ちであつたと云ふやうな問題、是も只今農林大臣の仰せられましたやうに、從來は物價を規定するのが各主管々々々の所で區々であつて、其の爲に非常な凸凹が出來て、今まで均齊の取れたものが破れると云ふやうなこともございました、又一つには最近經濟事情が急に變化致しまするので、物價の改訂が中々追つ付かぬと云ふやうな事情もあらうと思ひますが、今度物價廳が特に擴大されまして、相當強く權限を持つやうになりましたことは、一には各諸物價の間の不均衡をなからしむることであり、又一つには經濟の安定を圖ると共に、即ち物價の變動を必要とする事情を出來るだけ少くしつつ物價の何と申しますか平準を圖ると云ふ點に重點が置かれまするので、是は將來の運用の問題でありまして、今から大きいことも申上げることは出來ないかも知れまぬせけれども、從前とは其の間に餘程物價の決定等に付きましては違つて參る、斯う申上げて宜いかと思ふのであります、それから又木材の如きは組合で丸公を作らなくも、標定價格で間に合ふではないかと云ふやうな御意見のやうに拜承致しましたが、此の點は如何かと存ぜられます、私は木材が色々の天然の條件に依りまして樣々な態樣で出來まして、工業製品の如き一來の規格に依つて生産出來ますものでもありませぬから、細かく各種の材質、寸法等に付て規定する、公定相場を作ると云ふことは如何かと思ひます、私は林産物等に付きましては、成るべく或る標準のものに付て丸公を定めるとか、標準物に付て丸公を定めて、殊に品種の特殊なるもの、或は需給の量の少いもの等に付きましては、或は公定價格を標準としての標定價格に依らしめると云ふのが、實際に適するのではないかと云ふやうにも考へて居りまするが、まだ是も實際の問題に當つて見ませぬと確たることは申上げられませぬ、私は林産物、殊に木材の價格に付きましては、左樣な方針が宜しいのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=9
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010・武藤常介
○武藤(常)委員 只今長官の御話で公定價格の問題は御意見承知致しました、返す返すも申上げるやうでありますが、木材の公定價格は特殊な形に於て決定されると云ふ御話でありますが、是は形は如何樣でも結構でありまするが、木材の特殊性を考慮せられまして、まあ我々の常用語で申しまするならば、協定價格的のものを何處までも採用して參りませぬならば、木材の生産は停頓を來たすであらうと云ふことを、御考へ置きを願ひたいと存ずるのであります
尚ほ次に此の木材の増産の三大要件とでも申しますものは、恐らくは供木の問題、輸送の問題、それから價格の三點にあると私は考へるのであります、價格の點に付ては只今質疑應答があつた通りでありますが、供木に關しまして最も關係の深いのは森林組合でございます、森林組合と戰災復興と云ふことは、非常に重大な關係に置かれて居ると思ふのであります、元來森林組合は戰時下或は今日のやうに急迫する所の戰災復興を目指して計畫された所の組合ではないのであります、專ら森林育成維持を主眼として出發せられた組合であります、隨て過去の實績より考へて見まして、果して今後國家の方針に即して、立木の供出を順調に進めることが出來るか、又森林組合としても實は組合内に重大な問題があらうと思ひます、其の一つは何であるかと申しますれば、伐採後の跡地の處理の問題、それから立木を入手するのに貨幣價値の問題、非常に困難な問題が其の中にありまするが、兎にも角にも立木の供出は森林組合が擔當しなければならず、此の森林組合にしろ、戰時中のやうな強制的でなく、木材の供給を擔當さして行くのに果して是が順調に進み得るものか、斯う云ふ風な疑問を私は持つて居るのでありますが、農林省として此の方策が最早立つて居るのであるかどうか、現在の輸送陣の聞係等から考へて見ますと、原木は或は無代價でも收支償はぬと云ふやうな状態にまでなつて參りました、併し最近財産税に依つて森林が幾らか處分されるのではないかと云ふやうなことも多少は考へられますが、併し此の莫大なる所の需要を充足して參りますのに、果して此の森林組合が能く其の責務を全うし得るかどうか、斯う云ふやうなことを私は考へまして、政府の之に對する方針を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=10
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011・鈴木強平
○鈴木(強)政府委員 只今御質問の點は、本當に此の林業會法が運用出來るか出來ないか、懸つて茲にあると思ひます、如何にして供木をするか、此の爲には林業會法を作るに當りまして、立木の消費者である森林組合と林産物の關係者と、共に手を握つて行かなくてはならぬと云ふ問題が茲にあるのであります、どうしても戰後の日本の經濟を建てる爲には業者一體になりまして、一日も早く戰後經營の出來るやうな方向に進まなければならぬと思ひます、先づそれには勿論生産的に日本經濟の再建を圖らなければなりませぬが、第二に價格の問題であるかと思ひます、適正なる價格に依つて再生産の出來るやうな過程、御説のやうに後の植林の關係其の他を勘案しまして、價格に於ても引合ふ、又是等に付きましても他の物價の關係もありますので、先づ林道を開設しなくてはならぬかと思ひます、或は治水事業を起す、斯く致しまして適正なる價格でも出し得ると云ふやうな觀點が、重要であると考へます、政府に於きましても勿論國有林は十分なる賣拂の出來るやうにしたいと思ひます、所謂收穫に關する臨時の特例、或は國有林の賣拂ひに關する特例を出しまして、持つて居りますものは全部一應は賣拂ひの對象になる、又賣拂ひの事務に付きましても極めて簡素な方法を執りまして、どのやうな林群も一應は賣拂ひの對象になり得る、斯樣に致しまして、民間業者共々、供木の出來るやうな方向に努力して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=11
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012・武藤常介
○武藤(常)委員 尚ほ森林組合其の他に關しまして伺ひたいことがございますが、大臣の御都合もありませうから、それは後に廻しまして、輸送關係に付て伺ひたいと思ひます、木材生産配給の如何は、實に輸送に懸つて居ると私は考へるのであります、林産物は其の扱ひの困難性に依り、他の物資よりも實際に當る輸送業者から嫌はれ、一日延びとなり勝である、殊に山間の惡路地帶に於て著しい、然るに今日の現状からするならば、斯かる地帶でなければ森林は最早木材として利用されるやうなものがない状態であります、又木材運搬には相當の技術が必要であります、隨て木材運輸業の方は專屬的でなければ其の能率が上らないのであります、馬力の如きは專屬と臨時では其の差が非常にありまして、臨時的のものでは専屬的のものの半分位しか實際出來ない状態であります、是等の爲に木材の生産を阻碍せらるることは實に大なるものがあるのであります、之を解決するのには、實は度々問題となつて居りまするが、此の解決は運輸當局の考へ一つに依つて私は出來るであらうと思ふのであります、結論的に申しますならば、運送業統制に關することになるのでありまして、之に對し統制の爲の統制を廢して、實際に即することが必要ではないか、輸送の能率を向上せしめることに依つて、生産の可能性が決定せらるるのでありまして、私は木材の供出の如何は、大部分輸送に懸つて居ると思ふ、先般も度々戰災復興の出來ないのは木材に責任があるのであると申されて居りますが、其の話の中に或は山に、或は土場に、或は工場に木材は山積して居る、併しながらそれが需要地に運搬出來ない爲に十分に利用せられない、斯う云ふことが事實あるのでありまして、實際細かな問題になりまするが、木材の輸送と云ふものは非常に複雜でありまして、置場との關係上非常に澤山集めてから運搬することになりますと、其の積み方、操作等に依りまして非常な能率に妨害を與へる、成べく森林から搬出されたならば、餘り溜らない中に搬出する、斯う云ふことでございまするが、統制になりましてからは配車が困難な爲に、澤山溜らないと配車しない、斯う云ふ風な關係上、自動車が何臺も行つて一度に積まうと云ふ時には一日に四囘歩ける所が二囘しか出來なかつた、或は細い道に參りますと自動車の操車、或は馬車で參りますならば馬車の操作の爲に、殆ど半日を費してしまふ、斯う云ふ風なことで自動車竝に馬車の統制と云ふことは、木材生産には非常な妨害になつて居る、然らば之をどう云ふ風にするかと云ふことでありますが、戰時中出來た自動車の統制會社、之を敢て今廢止せよとは申しませぬけれども、是と切離して業者に自動車の自家用を持たせると云ふことが、最も大切であると考へるのであります、事實木材生産業者に自家用を持たせることに依つて、能率の向上は儼然たるものがあると私は思ひます、是なくしては木材の生産は矢張り順調に進まないと考へるのでありますが、實は昨年ですか、一昨年ですか、山林局からは各業者が自動車を持つやうにと云ふことを、縣に通牒を發せられて居るやうであります、併しながら縣に於てはそれぞれの統制がありまして、之を業者に持たせることは拒絶されて居ります、斯樣な状態から輸送の點に於て非常な頓挫を來し、度々問題になつて居りますやうに、木材は伐出はされたが、土場で腐つて居ると云ふやうな状態が相當現出致して居るのであります、是等の點から考へまして私は統制を絶對に廢せと云ふのではありませぬが、飽くまでも自家用の許可を、積極的に運輸省が奬勵せらるることが、此の復興に最も裨益するのではないであらうかと考へるのであります、之に付きまして運輸大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=12
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013・平塚常次郎
○平塚國務大臣 木材は食糧、石炭に次ぐ重要物資でありまして、運輸省と致しましては、非常に力を入れて居るのであります、木材の出ないのは輸送の關係だと言ひますると、勿論さう云ふ點もあるだらうと思ひますが、私の見る所でしますと、土場から驛まで來て居るものは運べないことはないのであります、現在でも相當輸送力を持つて居ります、唯土場から驛まで出る間の「トラック」の不足な爲に出ないと云ふことは相當にあるのではないか、併しながら是は從來の業者、木材を運んで居つた業者と云ふものが、其の仕事を擔當しなければならぬと思ふのであります、勿論業者に對しましても重要物資搬出の爲には、多少許して居りまするけれども、大體自動車の生産が十分ないのと、燃料の不足などの關係で、自家用に多く出す譯に行かないのでありまして、どうしても全國にある從來の業者に重點を置いて運ばせると云ふことでなければならぬと思ふのであります、非常に其の點は困難な場合もあるかと思ひますけれども、今まで搬出して居る實績がある以上、多少車も殖えて居りまするから、減ると云ふことは私はあり得ないと思つて居ります、又鐵道に關しましては先程申上げましたやうに、輸送力を持つて居ることは事實であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=13
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014・武藤常介
○武藤(常)委員 運輸大臣は現在の統制を此の儘で何處までも御進めになると云ふやうな御考へのやうに伺ひましたが、御承知の通りあの輸送統制會社は戰時中に出來たものでありまして、例へば地木社は非常に非難の的になつたが、あの戰時中に於ける所の役目は相當果した、而も重點的に仕事を果したので、寧ろ爾餘の需要者から非難が多かつた爲に、地木社は非常に評判が惡かつたと云ふやうなことで今度解散の命令が下つた、斯う云ふ風な状態でありまするが、あの自動車の統制會社もやはり戰時中に出來たものであります、而も是れ亦戰時中には相當の役目を果したとは存じまするが、やはり戰爭が終りました今日の此の生産には、實際に即しない部面も相當あるのでありまして、寧ろ民主的な見地からやはり生産業者に自家用を持たせると云ふことが、契緊の要務であると私は考へるのであります、是れなくしては輸送は十分に行かないと考へて居りますが、若し斯樣な状態の爲に木材が或は土場に腐つて居るとか、或は山に腐つて居るとか云ふやうなことになりますならば、是は由々しき大問題でありまするので、寧ろあの會社の解散を、私は要求は致しませぬが——飽くまでも此の自家用を奬勵なさると云ふことが、國家經濟の爲に非常な利益である、斯う云ふ風に考へるのであります、尚ほ只今鐵道輸送の關係が出ましたから、是れ亦伺ひたいのでありますが、現在の運送店の状態であります、是が一驛一店主義の爲に、驛に依つて非常に扱ひに差がある、一方の驛に於ては誠意を以て非常に能く成績を擧げて居るが、一方の驛の運送店は殆ど問題にならぬ、斯う云ふ風な状態が現出致して居ります、最近業者から愬へられたのに依りますと、或る驛の一箇月の積載が十九車、一方の驛の一店の扱ひが十一車、十一車の積載料と十九車の積載料が同料であると云ふやうなことで、業者が非常に悲鳴を擧げて居りましたが、斯樣な状態が各所に現出致して居るのであります、是なども餘程今後日本の經濟上に、十分考慮に入れて是正せなければならぬことではないか、斯う云ふ風に考へるのであります、木材は確かに只今御言葉のやうに、驛に出れば何とか彼とか搬出になりますので、木材の輸送から其の運送店の方面を、それ程私は茲で強調して申上げるのではありませぬが、どうしても「トラック」だけは木材の生産業者には自家用を許すと云ふことを、是は絶對的に必要なものであると私は強調致したいのであります、何か輸送業者はやはり會社の經濟的な考へから、飽くまでも運輸省に迫つて、現状維持と云ふことを御主張になつて居るでありませうが、是は本當に國家經濟の上から考へますならば重大問題でありますので、運輸大臣の特段なる御考慮を煩はしたいと考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=14
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015・平塚常次郎
○平塚國務大臣 此の自動車組合と云ふものは戰時中統合させましたので、政府としても是は相當責任がありませう、私と致しましては、ああ云ふ大きな統合會社が縣に二つ三つあつて、其の會社が自動車を運營して行くと云ふことは適當でないと考へて居るのであります、唯非常に無理な統合をして居る爲に、急激に之を解體すると云ふことは事實上困難でありますが、併し時間があれば是は戰爭前のやうな形になるのが當然であるのであります、さうしませぬ以上は輸送力の増強は出來ないと思ふのであります、唯現在あれを構はぬで、物を動かす者に自家用を許すと云ふことは、是は少し無理だと思つて居ります、出來るだけ早い機會にあの統合體を解いて、さうして地方的に活動の出來るやうな形を取らなければいかぬ、斯う考へて居る次第であります、何れに致しましても、此の自動車の生産が思はしくないのでありまして、急激に輸送力を殖やすと云ふことは困難でありますから、どうしても現在の業者をして此の運搬に努力させる以外に途がないのではないかと考へて居ります、一方鐵道の方は多少何處かで停頓して居る所はありませうけれども、是はどうも私も方々汽車へ乘つて見て、材木が山程あつてどうして運ばないのか、必ずしも鐵道の輸送力がないばかりではないやうに伺つて居るのであります、例へば進駐軍の材木を運べとか、或は復興院關係の木材を運べと云ふやうに鐵道の方に指圖がありますと、それはもう非常に圓滑に運ばれて居るのであります、是は重要物資でありますので、農林省の方とも能く連絡を執つて、木材の輸送に力を注ぎたいと思つて居ります、今日でも國有鐵道の復舊は比較的早いのであります、殊に貨物列車に對しましては、まだ相當に増發の可能性があるのでありますが、今問題になつて居る石炭が思ふやうに、鐵道の要求するだけのものが入りませぬ爲に、急激に輸送力を殖やすと云ふことは困難かも知れませぬけれども、多少今日あたりから石炭が殖えると云ふ豫想を持つて居ります、隨て鐵道の石炭も多く取れるのではないかと思ひます、さうなりますと貨車の輸送がずつと殖えると云ふ見透しを持つて居ります、何れにしましても是は重要物資でありますので、御質問のやうに本當に運輸省が力を入れて、此の木材を輸送しなければならぬと云ふことは十分考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=15
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016・武藤常介
○武藤(常)委員 只今の此の統制會社の件でございまするが、是は尚ほ今後改めねばならぬと云ふことには、大體私共の考へを酌んで戴いて居るやうでありまするが、尚ほ進んで、例へば木材業者のやうなものに運ばせると云ふやうなことは、尚ほ相當考慮の餘地がある、斯う云ふ風な御考へのやうでございましたが、實は細かなことを大臣に御話すると云ふことはどうかと考へますが、木材輸送の實態と云ふものを、どうもおえらい方は御承知にならないで居られると云ふやうなことを、常に我々業界では非常に遺憾と致して居るのであります、木材の生産詰り森林から搬出致しまして、それを自動車に依つて運搬致すのでありまするが、非常な大企業、大森林になりますると、搬出の木材置場即ち我々が言ふ土場と云ふものが相當の面積を取つて居ります、所が多くの縣では實は小さな森林が集まつて大量になりますので、隨て此の木材の置場、所謂土場と云ふものは何れも小さいのであります、小さい處に木材を出すので、輸送の方から見ると餘り溜まつて居ない、後でも宜いのぢやないかと云ふので、一日逃れに自動車の方ではそれを見送つてしまふと云ふ傾向になります、なぜさう云ふ結果になるかと申しますならば、木材の運搬と云ふことは非常に困難で、自動車の運轉手、助手も、一番嫌ふのであります、一日延びに見送りまするからして、其の結果は土場が塞がつて、山から搬出が出來ないと云ふ支障が次々に起つて參ります、斯樣なことは極めて小さい問題のやうでありますが、何れの箇所も斯樣な状態でありますので、假に一日置きに送るとするならば、生産の半年分しか搬出が出來ないと云ふ結果になりますので、此の運搬問題は實に容易でない問題であります、然らば之を個人に持たせると、どうしてさう云ふ違ひが出來るかと申しますならば、木材專業の自動車ならば其の積み方に於ても非常に技術的に進んで居ります、さうして又當然是は自分等の責務であると云ふので、もう締めて其の運搬に從事致して居ります、隨て能率も勿論上ります、又それを見送つて次の日に送ると云ふやうなことはありませぬ、他の容易な運搬のみに進むと云ふことは出來得ないのでありまして、是はどうしても專門の木材輸送の自動車がなければならぬ、それにはやはり自家用を持たせないならば實績が上らない、斯う云ふ結果になりますので、此の點は一つ篤と運輸大臣の御考慮を煩はしたい、私は切に此の點大臣の御研究を御願ひしたいと存ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=16
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017・平塚常次郎
○平塚國務大臣 木材業者が自家用を持つと云ふことはもう宜いと決まつて居るのであります、唯配給が思ふやうにならぬのでありまして、假に多少生産して居るものを全國的に分けましても、極めて僅かなものであります、でありまするから、今の場合と致しましては、どうしても過去に於て所謂其の仕事をして居つた、實績を持つて居る業者があるのでありまするから、此の業者と木材業者と能く連繋を保つて、當分我慢して行かなければならぬと思ふのであります、是は獨り木材ばかりでありませぬ、大體纒まつたものを生産して居る産業は、悉く自家用自動車を要求して居るのであります、戰爭中それ等のものが全部統合體になつてしまつたのでありまして、之を解いて自家用にばらばらにすると云ふことは、容易なことではないだらうと思ふのであります、併し木材の輸送の爲には、業者が自家用を持つて居ると云ふことが理想であり、又能率的であります、其の點は十分私も了解して居りまするが、結局は生産がもつと殖えない限りには、中々そこまで手が伸びない、其の間は從來の業者をして運搬せしむると云ふことに、木材業者の方も努力して戴きたいと思ふのであります、勿論自家用を殖やす方が一番能率的であることは十分認識して居ります、生産が殖えますれば多少自家用の方にも廻したいと云ふ考へは持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=17
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018・武藤常介
○武藤(常)委員 只今の運輸大臣の御答辯で私非常に意を強う致しました、やはり專屬的であれば、能率の五割増はどうですか、少くも三割以上の能率を上げると云ふことは確信して居ります、然るに車の關係で自家用を持たせることは當分困難である、是は御尤もなことでありまして、運輸省が現在の統制會社を解散させると云ふことでなければ、それは不可能であらうと思ひます、私段々伺ひますと、今度進駐軍から一萬臺の「トラック」が拂下になるさうでありますが、極めて是は好機會でありまして、殊に木材の生産が十分でない、特に運送が十分でない爲に後れて居ると云ふ一般の世評のある場合に、之を木材輸送に振向けると云ふことこそ機宜の處置であらうと考へたのでありまして、是非今度拂下げられます自動車の全部とは申上げられませぬが、大部分を木材輸送の、而も生産業者に配車して戴きたい、斯う云ふことを私此の際に特に大臣に御願ひ致して置きたいのですが、之に對する大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=18
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019・平塚常次郎
○平塚國務大臣 輸入のことを計畫して居りますけれども、是はまだ懇請中でありまするので、内容を申上げますると、折角圓滑に交渉して居るのに支障があつてはいけませぬので、斯う云ふことは過去に於ても非常に禍ひをなしたのでありまして、今日はここで輸入車に對しては答辯を差控へたいと思つて居ります、どうぞ御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=19
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020・武藤常介
○武藤(常)委員 只今進駐軍關係の拂下の問題はここで御答辯が出來ないと言はれる、是は極めて御尤もなことでありますので、私最後までそれを御伺ひ致したいとは存じませぬ、併しながら一番復興に支障をして居る所の木材輸送でありますので、さう云ふことがありました場合には、優先的に十分之に對しまして御盡力を御願ひして已まないのであります
次に生産諸條件に關する點でございますが、從來の生産上最も支障を來しましたことは資材の配給の點であります、是は前にも委員から述べられたのでありまして、之に對する大臣の答辯もありましたから、私は重複するので差控へたいと考へまするが、唯一點、從來木材の順位が低い爲に、資材の配給が十分でない、是は成程戰時中に於ては已むを得なかつたかも分りませぬが、今日一番の問題は戰災の復興でありまして、戰災の復興の重點は木材に懸つて居るのであります、斯樣な點から考へて見まして、木材は位置を轉倒して考へて戴けませぬならば、やはり木材生産に非常な支障を來すのではないか、斯う云ふ風に考へるのであります、それから尚ほ先般資材、食糧等の配給に關しまして、どなたからでしたか御話が出ましたが、一般民間の生産と營林局關係の生産では、資材の配給に差がありはせぬかと云ふやうなことが事實問題になりましたが、今日はいざ知らず、戰時中は其の差が非常に多かつた、詰り營林局方面の生産に對しては、物資、食糧、酒等の配給が相當多量にあつたが、一般民間には殆ど配給にならなかつた、斯う云ふ風なことがあつたやうに記憶して居りますが、過去は私は問ひませぬ、今後はさうした區別の大いやうに特に御配慮を願ひたい、此の機會に御願ひして置く次第であります
尚ほ最後に統制に對する官吏の心構へのことでございます、之を私が申上げることは或は失禮のやうになるかも分りませぬが、此の機會に私は特に申上げて置きたいと存ずるのであります、是は官治統制の場合でもさうでありましたが、殊に民治統制に對する場合は最も大切なことであると考へます、眞に必要なる指導督勵は、我々は決して排斥するものではありませぬ、然るに從來は容喙すべからざる場合に、餘計なお節介をしたり、さうかと思ふと、必要な指導監督を怠つたりすることに依つて、非常な妨害になることがあるのであります、從來の官治統制等の因習があることでありますから、中々之を改めると云ふことは、私は容易でないと考へまするが、十分吏僚の刷新を圖る必要があると考へるのであります、勿論さう申しましても、新時代に副ふべく百八十度の轉換をなし得る性格のものは是は別である、唯無暗に形式に流れて、人事の異動を行つて、其の爲に實は總て勝手が分らないと云ふやうな爲に、其の中に研究研究で日を送つて、緊急な用に應ずることが出來ないと云ふやうなことでも、是れ亦非常に困るのであります、是等の點から考へて見まして、十分適材適所主義を遺憾なく發揮せられんことを要望致して居るのであります、大臣と致しましては是等の方面に對しましては、十分御考へになつて居ることと存じまするが、此の機會に御所見を御伺ひしたいと存ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=20
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021・和田博雄
○和田國務大臣 御答致します、木材が基本的な物資でありまして、鐵とか石炭なんかと實際上は比肩し得る程の重要な基本的な資材であると云ふ認識は、一般世間の人は私は餘り深く考へて居ないのぢやないかと思ふのであります、此の點は我々の生活の上から言つても、又經濟全體の上から言つても、木材其の物は單なる消費材ではなくして、有力な生産材であるので、基本的な鐵や石炭にも匹敵すべきものだと私自身は考へて居るのでありまして、是等の事柄はやはり十分一般の人達にも此の認識を強める必要があると思ひます、そこで私は此の前どなたかの御質問に御答へ致しましたやうに、やはり木材と云ふものは國として基本的な資材と云ふ認識の上に立つて、木材生産の爲に必要な色々な點に付て諸方策を講ずべきであり、又今後はさう云ふやうに講じて行きたいと考へて居る次第でありまして、其の點に付ては今後とも、私と致しましては出來るだけの努力を致したいと思ひます
それから國有林と民有林に對しまする配給物資の不公正と云ふことでありますが、是は事實上私餘りさう云ふことはなかつたのではないかと思ひます、唯配給の經路が違つて居つたやうな關係もありまして、片方はすらすらと行き、片方はさう行かなかつたと云ふやうなことが、或はあつたかも知れませぬが、尚ほさう云つた點に付きましては、勿論さう云ふ疑惑が起りませぬやうに、さう云ふことのないやうに致すことは當然でございます
それから官吏の心構への問題でありますが、是は御話のやうにやはり官吏と致しましては、國民の公僕であると云ふ信念に徹しまして、威武に屈せず利益に流れず公平なる、且つ十分公僕たることを自覺して、そして才能の限りを盡して仕事をやつて行くやうに、今後は官吏自らもさう云ふ方面に努力をし、又訓練をして行くべきだと思ふのであります、それと同時に私は望むらくは、民主的な社會になりまして自治的な統制が行はれるやうになるのでありますから、其の際には民間の者も官尊民卑と云ふ日本人の頭の髓まで滲み込んで居るものを拂拭致しまして、やはり他人の良い所は之を尊重し、人格を尊重し、又自らもさう云ふ自治的な統制を行つて行きます上に於きましては、謂はば公僕たるの面も十分ある譯でありますので、是等の點に付て今まで非難がありましたやうに、民間の者が統制權を握ると官吏よりも寧ろ惡かつたと云ふやうな非難のないやうに、御互ひに努めて行くべきだと考へて居る次第でありまして、事實さう云ふやうになりませぬならば、是は如何に組織を民主的にしましても、實際上の民主主義と云ふものは、日本では行はれないと云ふことになるのでありまして、其の點に付きましては御話のやうに、官吏としましての心構へに付ても、十分今後は努めて參る積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=21
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022・武藤常介
○武藤(常)委員 只今農林大臣の資材配給に對する今後の御方針に付ては、私了承致しました、尚ほ人事の問題に付きまして、官吏ばかり責めて民間が事實統制に當つた場合に、横暴な、寧ろ反對の結果を來すことがあつてはいかぬと云ふ御警告でございます、是は我々と致しましても當然十分考へねばならぬし、又是は政府の監督に關する部面も十分あらうと思ひますので、お互ひに協調し合つて、而も最も今後困難な部面に對しましては、民主的に共共協力して進まねばならぬと存ずるのであります、是は今後お互ひに心すべきことであらうと思ひます、寧ろ我々と致しましては左樣に考へて居ります
次に伺ひたいのは、先程森林組合の供木に對する責任の問題を申上げましたが、それと同時に森林組合の困難な仕事の一つは伐採跡地の植林の問題であらうと思ひます、是が完遂出來ませぬならば、やはり森林組合としても其の職責を果すことが出來ない、隨て國家の要請に應ずる所の供木も完遂出來ない、斯う云ふことになるだらうと思ひます、立木の供出と最も關係の深いのは、何と云つても私は伐採跡地の植林の問題であると思ふのであります、隨分是は前の委員に依つても述べられてありますので、私は此の機會にそれは差控へたいと考へまするが、唯之に對しまして一點私の考へを申上げて、そして大臣の御所見を伺ひたいと存ずるのであります、從來の植林に對する所の考へ方は、所謂最近に於きまする森林資源造成法案に依りまして、低率の補助を事實致して居りますが、今日の如き經濟状態になりましては、最早あの方法も極めて面倒である、而して今日の状態から申しましたならば、あれを利用する人が果して何人あるかと云ふことであります、是は相當額を上せるばかりでなく、方法等も考へないならば、實際利用者が少いやうな結果になりはしないか、利用者の少い結果はやはり此の植林が十分に行かなかつたと云ふことになりはしないか、斯う云ふ風に考へるのであります、是よりももつと考へねばならぬことは、植林に對する一般の認識であります、即ち過去は山林所有者に重點を置いたのでありまするが、其の考へ方は最早根本的に改めねばならぬ、即ち植林は總て國家の爲の植林であると云ふ考へ方であります、此の戰災復舊の爲の木材は莫大なる量を要することは明かであります、之を植林家、即ち山林所有者に任せると云ふやうなことであつたならば、其の結果來たるものは旱魃である、或は洪水である、是が交交參りまして耕地を失ひ、其の結果は國民を饑餓に陷らしむると云ふことは口を揃へて謂はれて居る所であります、此の點から考へて耕地の爲の植林である、取りも直さず是は國家百年の仕事であると云ふことを深く認識しなければならぬと考へるのであります、從來のやうに植林に多額の補助をして、一定の面積と一定の豫算とを計上して其の目的を達しようと云ふやうなことでは、眞の植林計畫は所謂畫餠に終つてしまふのではないかと私は考へるのであります、寧ろ認識を改めて、一歩進んで政府が此の植林を行ふ、御承知のやうに農地法に依つて耕地を分配すると云ふことと森林の分配と云ふことは、全く意義が違ふのでありませう、併しながら世の中には森林の分配と云ふことを口にする者がないでもありませぬ、さう云ふ關係上、森林の所有者は果して自分が植林して、此の植林が自分の爲になるかどうかと云ふやうなことを考へる時に、今日のやうな困難の状態に於て植林するのでは、寧ろ植林しない方が宜しい、斯う云ふやうな状態になつて、植林は遂に捨てられるのではないかと私は考へるのであります、斯樣に考へますと、植林の前途は確かに私は暗膽たるものがあるではないか、寧ろ國家が國家の手に依つて植林を致しまして、其の管理は山林の所有者が行ふ、そして成育して、將來其の山林を處分する場合に、其の經費を差引くと云ふやうな形で實行しないならば、政府は大分立派な植林の計畫を立てて居りますが、私はあの何分の一しか出來ないのではないかと非常に心配に堪へないのであります、是等に關しまして植林に對する大臣の考へを伺ひたいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=22
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023・和田博雄
○和田國務大臣 御意見は私非常に御尤もな所があると思ひます、殊に森林を失ひまして今日、私的の所有、其の跡の利用と森林其ものが持つて居りまする國家的な公な形と言ひすか、さう云ふものとの關係なのでありまして、それを造林と云ふ形と、唯私的な所有者の自由にそこを任せずに、個人としては中中出來にくい所を國家が出て行つて、國全體の資源を造成する、斯う云ふ意味で造林をやる、斯う云ふ御話でありまして、私非常に御尤もな所があると思ひます、それ等の點に付きましては、我々の方も此の戰爭中濫伐された土地、或は今後木材の大きな需要に從つて伐つて行きます跡地の造林に付ては、どうしても之を全部縁地化されなければならぬ、是は國土の保安の上から申しても、全く御話のやうに憂ふべき事象が出て來るのでありまして、御意見の點は十分考へまして、適當に研究して參りたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=23
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024・武藤常介
○武藤(常)委員 まだ色々伺ひたいこともありますが、私の質問は是で一應打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=24
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025・森幸太郎
○森委員長 本日は此の程度に致しまして、次囘は明四日午前十時より開會致すことに致します、本日は是で散會致します
午後零時十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01119460903&spkNum=25
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