1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
林業會法案(政府提出)
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昭和二十一年九月六日(金曜日)午前十時十五分開議
出席委員
委員長 森幸太郎君
理事 綿貫佐民君 理事 平野増吉君
理事 氏原一郎君
稻田直道君 大井直之助君
木島義夫君 小柳富太郎君
太田秋之助君 仲川房次郎君
本名武君 武藤常介君
永井勝次郎君 林田哲雄君
松澤一君 坪井龜藏君
的場金右衞門君 井出一太郎君
磯田正則君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
出席政府委員
農林技官 中尾勇君
農林事務官 平川守君
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本日の會議に付した議案
林業會法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=0
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001・森幸太郎
○森(幸)委員長 是より開會致します――本名君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=1
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002・本名武
○本名委員 昨日に引續きまして森林資源の培養に付て二、三御尋ね致します、簡單に伺ひますので、答辯は明快に御願ひ致したいと存じます、種苗の生産に付きましては先般氏原委員からも指摘されましたが、現在どのやうな積極的な方法を執つて居られるか、林業種苗法竝に施行令、施行規則に依りますと、非常に窮屈な而も非民主的な取扱をして居るやうでありますが、是等の法律を變更する御意思――民主化する御意思がないかどうか、それから官有林の苗圃は可なり計畫的に實施されて居るやうでありますが、今後の森林培養の點から考へまして、もつともつと積極化せねばならないと同時に、民有の苗圃の經營に對して政府はもつと積極的な助成をなさる御意思がないかどうか、之を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=2
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003・中尾勇
○中尾政府委員 種苗の養成は造林事業の根柢をなすものでありまするので、政府に於きましても特に此の點に力を入れて居るのであります、特に又戰時中民間苗圃の大部分、又國有の方もさうでありましたが、食糧事情の爲に農耕地に移動して行つたものが相當多數ありましたので、造林の五箇年計畫を實施をするに當りまして、此の苗圃の方も五箇年計畫を立て、又種子採取の方も五箇年の計畫を立てて實行することに致して居るのであります、國有林の方の苗圃の實施に付きましては、過般御答へ致したのでありますが、出來るだけ國有苗圃の活用を致しまして、國有林の苗圃の方で幼苗を養成致しまして、民間の方に――主として是は森林組合を對象に致して居るのでありますが、民間の方に幼苗の配付を致しまして、山木苗の養成をして貰ふ積りで、營林署の方の國有苗圃は既に其の準備に著手致して居るのであります、又種子の採取も、前申しました通りに、出來るだけ國に於て採取をして配付をすると云ふ考へで實行を致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=3
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004・本名武
○本名委員 次に保安林の現状に付て御尋ね致します、保安林は國土保安上適正な配置と育成が絶對必要であらうと思ひますが、現在に於ける其の實情はどのやうになつて居りますか、大體昭和十五、六年頃と思ひますが、二百餘萬町歩の面積を有して居たと記憶して居りますが、戰時中は此の編入解除を地方長官に委任されたことに依つて、多少の異動があらうと思ひます、立木は戰時中伐採をされて居ると思ひますが、現況を概略御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=4
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005・中尾勇
○中尾政府委員 保安林は、十六年度の統計でありますが、全國で二百十五萬町歩程の保安林があるのであります、只今御述べになりました通りに、戰時中に於きましては保安關係を十分考慮致しまして、保安關係の少い所の林分に付きましては、相當伐採も行はれましたし、又保安關係で支障のない所に付きましては、食糧事情の關係で開墾致した所も相當あるのであります、總體的に只今其の結果が取纒つて居らないのでありまするが、只今其の移動の状況、或は現況に付きまして調査中でありまして、何れはつきりすることと思ひます、戰時中に於きましては、保安林の編入解除と云ふものが餘り行はれなかつたやうに考へて居ります、唯保安林の儘伐採致し、又開墾して居る箇所は相當あるやうでありますから、先刻申上げましたやうに、只今實情の調査中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=5
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006・本名武
○本名委員 保安林の重要性は申上げるまでもないことでありまするが、此の點の培養に付きましても政府は積極的に努力せられんことを希望して置きます
次は五十町歩未滿の森林所有者は、森林組合令に依りまして大體に於て計畫されました施業案が實施されて居るとは思ひますが、是等は全民有林の大半を占めて居りますので、林政の上には影響が非常に大きいので、絶對重點的な施業案の實施を期せなければなりませぬが、一方五十町歩以上の森林所有者の施業案の實施状況はどのやうになつて居りますか、今後の森林行政の面から言ひましても、寧ろ此の五十町歩以上の大口森林所有者も、森林組合に加入せしめることに依つて一貫した森林の育成培養に當ることの方が適當ではないかと思ひます、之に付て御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=6
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007・中尾勇
○中尾政府委員 五十町歩以下の小面積の私有林の施業案に付きましては、先般も御答へ致しました通りに、昭和十四年から此の施業案の編成に著手したのでありますが、戰時中は勞務資材の關係で殆ど豫定通りの實行を見ませぬでした爲に、只今までに約三〇%、三百七十萬町歩程度の編成を了して居るのであります、それから五十町歩以上は單獨施業案を編成することに規定は相成つて居ります、又五十町歩以上のもので編成濟みが約百七十萬町歩程度あつたと存じますが、是等も、五十町歩でありましても御説の通り森林の合理的施業の面から申しますと、どうしましても面積は狹いやうに考へますし、只今に於きましても、森林組合の方の施業案と綜合致しまして經營して行く方が合理的と考へまして、五十町歩以上の施業案を編成して居ります、森林所有者に對しましても、森林組合に加入することを慫慂致しまして、只今の所大部分が森林組合に加入して居る實情に相成つて居ります、今後も五十町歩以上のものに付きましても、出來るだけ森林組合に加入して戴きまして、綜合的に施業をやつて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=7
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008・本名武
○本名委員 次は價格と規格の對策に付て伺ひたいのでありますが、是は主として經濟安定本部が主管されるのでありますが、此處に御見えになつて居りませぬので、是は省略致しまして、次に木材の需給計畫に付て若干御尋ね致したいと思ひます、經濟林力と需要量との大きな差のあることは、既に各委員から指摘されまして、それぞれ御意見を伺つたのでありますが、我々の心配致します所は、現在の戰災復興竝に引揚、復員者に對する住宅、或は學校建築の復興、是等の状況が遲々として進んで居りませぬ、併しながら何れは復興し、何れは建設しなければならないことなのでありますが、之に對して此の林力と需要量の差を、如何に具體的な方法を以て切詰めるかと云ふことの御意見が、今までは不徹底であつたやうでありますが、此の點に付てもう一度御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=8
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009・中尾勇
○中尾政府委員 木材の需給の關係でありますが、本年度の木材の生産目標は七千五百萬石餘に相成つて居ります、又供給豫定量は七千二百萬石餘に相成つて居るのであります、只今までの大體の實行状況を申上げますと、第一四半期に於きましては、前年同期と比べまして大體七四%程度の生産實績に相成つて居るのであります、數量で申上げますと千四百萬石程度であります、此の儘推移致しましては、此の七千五百萬石の確保は中々容易でない實情にあるのであります、併し政府と致しましては、極力努力致しまして、目標量だけの確保は致したい覺悟で、只今凡ゆる方策を講じて、努力を致して居る次第であります、配給の方も七千二百萬石の内、第一四半期の豫定の實行實績は大體五二%程度に相成つて居るのであります、其の中一般用材の建築材だけに付て申上げますと、七二%程度の實績を收めて居るやうな次第であります、所が戰災復興として要しまする木材の量は、戰災家屋、又強制疎開に依つて撤去されました家屋の復舊、其の他海外からの引揚同胞の住宅としての不足家屋と云ふやうなものまで合計致しますと、大體木材の所要量が、二億五千萬石近く要るのではないかと云ふ風に想像されるのでありますが、此の厖大な數量を賄ひますに、内地の森林から生産されます數量だけでは、どうしても需給の均衡を取ることは困難のやうに思料致されるのであります、で政府と致しましては、内地の方の森林を一面休養させる必要もありますし、一面又緊急需要の復興材の供給の點もありますので、内地の森林からの生産は極力努力致しまして増加を圖ると共に、一方外材の輸入が出來る情勢になりました場合は、外材を輸入致しまして、此の需給を充たして行きたいと云ふ考へを以ちまして、外材の輸入のことに付きましては、只今計畫を立て、まだ正式交渉も出來ませぬが、内内の交渉を致して居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=9
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010・本名武
○本名委員 次は土地と水の利用或は收用に付て伺ひたいと思ひます、森林法の第四章には、此の土地と水利に關する規定が設けられて居りますが、從來は大體に於て奧地の林産業を營みます場合には、折角森林所有者から適正な價格で立木を買取りまして、之を生産致すに當りましても、此の土地と水利の問題に付て非常なる阻碍を受け、而もとんでもない經費を課せられる場合が往々にしてあるのでありますが、之に對して、政府は此の森林法を活用致しまして、生産業者と所有者の間の摩擦を避けしめる爲に、適正な利用或は收用の方法を強化される御意思がないかどうかを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=10
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011・平川守
○平川政府委員 此の問題に關しまして、森林所有者或は土地所有者と生産者等の間の、錯綜したる利害關係がありまするので、之に付て現在行つて居りますやうな森林法の第四章の規定を、特に強化致すと云ふやうな考へはございませぬ、是の運用を適切に致しまして、關係者の間の調節を圖つて參ると云ふことに致すより、致し方がないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=11
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012・本名武
○本名委員 次は林業教育と林業に對する研究竝に文化的な林業政策に付て一、二御尋ねしたいと思ひます、林業教育に付きましては、既に政府當局の熱意ある御意見を承つて居りますので、非常に喜ぶものでありますが、唯林産物の利用の面に於きまして、生産技術と相俟つて非常に無駄のあることを我々は痛感致すのであります、即ち生産設備の進化なきことと、集約利用に科學性がないと云ふことであります、是は消費者の覺醒も勿論必要でありませうが、先づ是等の觀點から、研究機關を急速に設けることと、既存の官營研究機關を積極的に民間に開放致しまして、官民協力せる一大研究所を設置することが必要であらうと思ふのであります、更に又民間單獨の研究機關に對しましては、政府は積極的な助成を致しまして、此の木材の科學的加工の振興を圖る爲の十分なる研究を致させることが、急務の一つであらうと考へるのであります、從來の官營の林業試驗場などは、全く封建的な扱ひでありまして、我々民間を一歩も近付けないやうな研究のみを致して居つたのであります、是等に付ては速急に改革すべきであらうと思ひます、之に付て御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=12
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013・中尾勇
○中尾政府委員 生産技術の向上に付きましては、全く御説の通り更に考究を要する點が多々あるのでありまして、政府と致しましても、此の生産技術の向上に付きましては、只今色々と改良に努力致して居るのであります、御承知の通り、生産の方の面に付きましては、機械力の應用其の他色々あるのでありますが、現場に於きまする仕事關係に於きましては、御承知のやうな内地の山林の地形の關係もありまして、どうも思ふ通り進捗致して居ないのでありますが、併し特に國有林の方面に於きましては、生産關係の機械化に付きましても、只今出來るだけの努力は致して居るのであります、尚ほ運材其の他積込施設等に付きましても、機械化を圖るべく、關係方面とも協力致しまして、只今努力を致して居る次第であります、尚ほ生産力を最高度に發揮致します爲に、色々試驗研究も必要かと存じまして、此の點に付きましては、曩に何囘も大臣からも御答辯になりましたやうに、試驗研究機關の擴充に付きましても、政府と致しましては只今極力努力を致して居ります、又試驗場の運營に付きましても、從來御説のやうな色々遺憾の點もあつたかと思ひますが、今後は出來るだけ民間の方にも開放し、又協力して此の試驗の進行を圖りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=13
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014・本名武
○本名委員 次は文化的な林政政策に付て御尋ね致します、森林の愛護精神の涵養に付ては既に色々論ぜられました、勿論愛林思想の一般的な普及と云ふことは缺くべからざることであります、同時に觀光政策と森林に付て政府はどのやうに御考へになつて居られるかを伺ひたいと思ひます、即ち我が國は全土の約七割が森林地帶として、將來は正に東洋の庭園たらしめ、さうして此處に外人觀光客を誘致致しまして、經濟上にも、或は愛林思想の上からも、此の森林を利用することが最も必要であらうと考へられます、更に又本法案に關係致しまして、此の觀光團體を林業會に包含せしめまして、觀光政策と森林の行政とを一貫して、有機的に結付けて、兩政策を進展させると云ふ方法も一方法でないかと考へるのでありますが、之に對しての御意見を承りたいと思ひます、更に又保安林の中にあります衞生林、是等に付きましても、特に今後の都市復興計畫は、國土計畫の上から行きましても大いに檢討すべきであらうと思ひますが、是等に付ての御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=14
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015・平川守
○平川政府委員 森林の有する文化的な重要性に付きましては、御説の通りと存ずるのであります、固より戰時中、又今後も緊急の必要に依りまして、木材の生産は圖らなければなりませぬけれども、同時にさう云つた意味からの森林の保護と云ふことに付ても、十分力を盡さなければならぬと思ひます、或は衞生の見地、或は觀光と云ふやうな見地からも十分に考へまして、森林の補植を圖るやうに指導致したいと考へます、特に必要な場合に於きましては、保安林と云ふやうな制度もある譯であります、又觀光上特に重要な點に付きましては、國立公園と云ふやうな制度もありまして、是等に付ては森林の伐採に付ても特段の注意を拂ふことになつて居るのであります、尚ほ觀光團體を林業會の會員に入れてはどうかと云ふ點でございますが、此の林業に密接な關係を有する事業と致しましては、ここまで入れることは如何であらうか、別途此の方面に付て十分意見を微する機會はありますので、林業會の中に觀光事業團體を參加せしめると云ふことまでは考へて居りませぬが、他の方法に依りまして、十分此の方面とも連絡を取つて、遺憾なきを期したいと斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=15
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016・本名武
○本名委員 次に森林と食糧増産の關係でありますが、林産物の食糧化に付ては從來に於ても色々計畫があり、又一部實施されて居つたやうでありますが、先づ山野草の採集と是の粉食、或は纖維素の食用化と云ふことに、對して、政府は今後どのやうな方針を採られるか、又是等は今後も益益研究を深めまして、所謂森林生産物の科學化に依る食糧確保の一助たらしめる必要があらうと考へるのであります、殊に果樹の如き簡單に生長するものに對しては、色々な不都合はあるかも知れませぬが、之を適切に扱ひますなれば、一般造林と共に果樹林の造成も亦必要ではなからうかと考へます、之に付ては集荷其の他の方法に色々な不便があらうとは存じますが、林産業者と協力致しますならば、此の集荷に付ては案外容易に出來るのではないかと思ひます、以上簡單でありますが、之に付て御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=16
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017・平川守
○平川政府委員 山野草の粉食等に付ては、既に終戰直前から、食糧管理局方面に於きまして實行に移して居るのでありまして、之に付ては更に研究を進め、もう少し品質の優秀なものを作り出すと云ふ點に重點が置かれなければならぬと存ずるのであります、併しながら更に進んだ科學的の處理に依りまして、例へば現在やつて居ります團栗の如き、更に此の處理に付ての科學的研究が進みますれば、大量にあるものでありますから、食糧事情上非常に寄與する所が大きいのではないかと考へるのであります、又御話の果樹林等に付ても大いに力を注ぐべきものと考へまして、例へば栗の如き、里に近い所に於きましては相當に是が造林を圖つて、食糧に寄與せしめると云ふことが有力ではないかと考へて居るのであります、之に付ては既に若干營林局署等に命じまして、是が實施を圖らせて居るのであります、又其の外是は見返り物資等にも關係がありますが、椎茸の如き山地に於て生産する食糧に付ても、更に研究を進め、又普及をして參りたい、斯樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=17
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018・本名武
○本名委員 次は林業の金融對策でありますが、今日は大藏省關係の方が見えないで保留致したいと思ひます、次の勞働對策に付きましても、厚生省關係の方が見えないので留保致しますが、唯此の中、主管廳である農林當局と致しまして特に御考慮願ひたいことは、林業勞務者の特殊性に鑑みまして、政府は直接是等に福利厚生施設を講ずる御意思がないかどうかと云ふことであります、從來の所謂個人業者の手に依りましては、到底解決し得ない幾多の特殊な林業勞務者に對する施設を要するのでありますが、是等に付ての御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=18
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019・平川守
○平川政府委員 勞務者の福利施設に付きましては、政府と致しましても出來るだけ是が助成を考へて參りたいと存ずるのでありますが、特に直接民營事業關係に於きまして之に力を入れて貰ひまする爲に、今囘の林業會或は林産組合の共同施設と致しまして、此の方面の施設を充實して參りたい考へである譯であります、尚ほ災害等がありました場合に付きまして、勞働災害扶助法の適用を、林業勞務者にも致させるやうに本年から致しまして、是が普及を圖りつつありますことは、昨日も申上げた通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=19
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020・本名武
○本名委員 申上げるまでもなく、林業勞務者は兼業者が其の大半を占めて居るのでありますが、今般上程されんとして居ります自作農創設特別措置法や、農地調整法の一部改正に依りまして、所謂兼業勞働者、主として農民が多いのでありますが、是等と此の上程されんとする法律との關係に於て、今後林業勞務の獲得の上に支障或は變化を來すやうなことがないかどうか、之に付て御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=20
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021・平川守
○平川政府委員 農地調整法の關係に於きまして、農家の耕作所有面積に相當の影響があらうと云ふことは當然考へられるのでありますが、林業關係に從事致して居ります副業勞務者は、多く山村地方に居る譯でありまして、隨ひまして此の方面に於きましては、どう致しましても、一戸當りの耕地画積は調整をされましても、尚且つ比較的僅少ならざるを得ないだらうと云ふ風に考へられるのであります、此の山村方面に住居致します農民が、急速に所謂自作農として、山林勞働を兼業とする必要がなくなると云ふことは考へられないと思ひます、而も國内全體の人口、或は農業方面、林業方面の人口全體を考へて見ましても、是は益益殖えるばかりと大體想定されるのであります、今囘の農地調整法或は自作農の創設等の政策に依りまして、林業關係の副業勞務者が專業の農業化する、其の爲に林業勞務に支障を來すと云ふが如きことは、先づ心配なからうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=21
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022・本名武
○本名委員 次は資材對策でありますが、是は昨日も色々御説明を伺ひましたので省略致しまして、次に森林組合の經營の面に於きまして、時々此の森林組合が營利に傾きつつあると云ふやうなことを耳に致すのでありますが、組合と致しまして、其の組合を構成する組合員の利益は當然でありますが、組合自體が營利事業を營むことは法の六十三條に反することでありまして、是は相當の制約をなさるべきと考へますが、其のことよりも、森林法の中から森林組合に關することを削除致しまして、森林組合員の生産するものも一括して、此の林産組合に包括せしめるやうな團體法が欲しかつたのでありますが、何れ近く是等を理想とする所の團體法を制定されると云ふことでありましたが、其の制定に先だつて、先づ其のやうな森林法の改正をする御意思がないかどうかを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=22
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023・平川守
○平川政府委員 現在森林組合の事業と致しまして、組合員の諸産物に關する共同の販賣加工等の事業を行ひ得ることになつて居るのでありますが、是は組合自體が營利を目的とすると云ふ譯でありませぬので、組合員の爲にする經濟事業と云ふことに相成る譯であります、御話の森林組合が營利に走つて居ると云ふ點に付きましては、具體的な事柄に付て判斷を致さなければならぬと思ひますが、現在の法規の認める範圍に於て森林組合が活動することは、是は認めて行かなければならぬと思ひます、尚ほ根本的な林業團體に關する法制の出來まする前に、是等の點に付ての森林法の改正を出すと云ふ考へはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=23
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024・本名武
○本名委員 次は從來古くから地方にありました森林會は、其の後どのやうな動きをして居りますか、法律があるからには存置することとは思ひますが、大體に於て性格は特殊な性格を持つて居るのでありますが、之を此の林業會法に包含せしむるやうな御意圖はないかどうかを御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=24
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025・平川守
○平川政府委員 地方森林會は保安林の編入解除、或は森林法上の各種の裁決を致す爲に特に設けられた機關でありまして、是等の事項が官僚獨善的に行はれることを防ぎます爲に作られました機關であります、隨ひまして今囘提案を致して居ります林産組合、或は林業會と云ふやうな、林業關係者の自主的な組織と云ふものとは性質を異に致しまするので、是を一つの法律に纒めることは困難でなからうか、是は只今申しましたやうな性質の會でありますから、一種の委員會のやうなものでありまして、是等の事件に付て其の都度仕事を致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=25
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026・本名武
○本名委員 次に官行斫伐に付て御伺ひ致したいのでありますが、此のことに付ては既に氏原委員も、必ずしも生産「コスト」が安くない官行事業を、今何で繼續しなければならないかと云ふことを指摘されましたが、私は官行事業に對する強力な反對の意見を持つ一人であります、森林の育成培養に付ての終局の理想と致しましては、今後は森林の伐採事業は或は國營に依ることが理想であるかも知れませぬが、現在の林産事情から申しましても、或は又官行事業其のものの内容から申しましても、實際現在行つて居りまする運營の内容から申しましても、必ずしも官行斫伐事業が理想のものであるとは考へられないのであります、此の一例を申上げますならば、官行斫伐事業の最も大きな目的と致します所の森林の育成と云ふことに於きましても、實際の事情は、育成にあらずして寧ろ濫伐、或は障碍となつて居る點が澤山あるのであります
〔委員長退席平野委員長代理著席〕
それは寧ろ民業よりも時間的に、或は量的に非常に無理をして居ると云ふことであります、此のやうな國營事業は私共は絶對贊成することは出來ないのであります、隨ひまして、官行斫伐事業は全面的に之を廢止致しまして、民間林産業者の創意と工夫に依つて生産を確保することの方がより合理的であると考へるのであります、此の點に付て御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=26
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027・中尾勇
○中尾政府委員 官行斫伐事業を施行致します本來の目的は、跡地更新が相當技術を要するやうな場所、或は又搬出の設備に就て、相當廣い區域に渉りまして綜合的に施設を要しますだけに、多額の費用を要すると云ふやうな場所で、民營に適しないと云ふやうな箇所を官行で致して來て居つたのであります、先刻御指摘になりました、官行斫伐をやるから山が荒れる、濫伐すると云ふやうな御話であります、此の點は戰時中に於て特に軍需材としての木材の利用、其の地の重要用途材の利用等の爲に、幾分施業案の豫定して居ります伐採歩合よりも餘計に伐採したやうな點もあつたかと思ひますが、戰後に於きましては、大體施業案の示す方針に基きまして、さう濫伐的のことは致さないで經營して行く方針で居ります、大體以上のやうな目的でやつて居りますが、更に戰時中緊急用途材の利用等の爲に伐採致しました箇所の中、立木處分に適するやうな所も多々あつたのでございますが、さう云ふ風に立木處分に適するやうな所は、今後は出來るだけ立木處分にして行きたいと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=27
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028・本名武
○本名委員 政府御當局の意圖される所は洵に理想でありまして、私共毛頭異議はないのでありますが、實際地方廳の是が實行に當りましては、必ずしもさう云ふやうな運營はされて居ないことを非常に遺憾に思ふのであります、例へば只今の御答辯の中に、民營に適せぬ場所を官行事業として行くと云ふ御話がありましたが、是は成程左樣な所もございませう、併しながら一例を北海道に取りますならば、林相と云ひ、或は距離と云ひ、一切が洵に理想的な場所のみを官行が行ひまして、奧地の不便な、而も木の惡い所は之を立木處分に致して居る所が大半を占めて居るのであります、此の點から申しましても、政府の意圖されることと實際行はれて居ることが相矛盾して居るのであります、それから戰時中と雖も、民營の所謂立木處分に依りまする生産事業には、濫伐もなければ或は粗末な伐り方も全然ありませぬ、併しながら官行の伐り方に於ては、戰前に於ても既に其のやうな荒つぽい、無駄の多い、勿體ない仕事を澤山やつて居るのであります、此の點が凡そ中央に於ては御分りにならない點でないかと思ひます,更に又ここで問題と致さなければならないことは、資材の配給、或は戰時中でありますが、勞務の獲得、其の他造材上必要な諸條件は先づ優先的に官が之を獲得する、特に戰時中は賃金の面に於きましては、凡ゆる醜い手段を講じまして、民營に對しては賃金違反を嚴重に申渡し、官行に於ては公然と闇賃金を支拂つて居つたと云ふ矛盾があります、是も國家事業として林産生産を確保する上に於て、絶對必要な爲に起きた現象であるかも知れませぬが、其のことに依つて既に多くの民營と官行との間に相剋摩擦が起き、何れの立場に於ても生産を減退するやうな現象が澤山生じて居るのであります、此の點を考へましても、政府の理想とする御方針を、完全に實行出來得るや否やと云ふことを再檢討なさいますと同時に、我々は何處までも此の官行事業の撤廢を希望致すものであります
それから條文に付て最後に一寸御伺ひ致したいのですが、第九條の第一項第三號及び第二項の第二號にある林産業を營む者の範圍に付てであります、即ち「前二號に掲げる者を除く外林業を營む者」と記されてありますが、是は大體大口所有者と承知して宜しうございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=28
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029・平川守
○平川政府委員 是は前二號の組合員になつて居ります以外の者があり得る譯であります、例へば或る地區に於て、林産組合がまだ出來て居らないと云ふやうな場合もあり得る譯でありまして、さう云ふ場合には、其の地區の林業を營む所謂林産業者は、直接に縣の林業會の會員となり得る、それから森林所有者に致しましても、森林組合に加入して居らない者とか、又或る時には森林組合が出來て居らない地區に居る森林所有者もあり得る譯であります、さう云ふ者を指した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=29
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030・本名武
○本名委員 次に第十四條の終りの方に「特別の事情があるときは」とありますが、此の特別の事情とはどう云ふ場合を豫想されて居るのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=30
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031・平川守
○平川政府委員 是は多くの場合に於ては、例へば事務の方を執行致します爲に、事務に練達な人を一人役員にする必要があると云ふ場合もあるかと思ひます、多くの場合役員は會員の方から出て參りますが、會の事務を運行するに不適當な人が出て來やうと思ひます、それで一人乃至二人位事務に練達な人を入れる場合には、會員以外からも出せると云ふ意味の規定であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=31
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032・本名武
○本名委員 こんなことは別に條文に規定しなくても、組合の運營の面に於て、特に役員と致さなくても出來ることではないかと思はれます
それから第二十二條第二項の議員のことでありますが、組合の事務を執行する役員も議員になることが出來るやうに規定されてあるが、さうすると會員にあらざる者、即ち森林所有者又は林産業者にあらざる者が會の議決權を持つと云ふことになりはしないかと思ふのでありまして、さう云ふ會員にあらざる、所謂森林所有者でもなければ、林産業者でもない者が會の議決權を持つと云ふことは、會の運營の民主化と云ふことに悖ることではないかと考へます、此の點に付て御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=32
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033・平川守
○平川政府委員 法文の上から申しますと、御話のやうな場合も出て參る譯でありますが、其の役員は結局總會で選任される譯であります、又其の議員は詰り役員の中から選任される譯であります、隨て數ある役員の中から、時に事務の方の人を代表議員に選ぶと云ふやうなことは自然行はれないことになりはしないかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=33
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034・本名武
○本名委員 次は第八十九條の企業許可關係のことであります、是は原則としては今後は何處までも自由であるべきであると我々は考へるのでありますが、政府に於ても此の點は暫定的な處置であると云ふことを言明して居られます、併し暫定的にしろ、先般もどなたからか指摘されましたが、地方に於きましては企業許可に對する色々な弊害が起きて居るのであります、隨て此の企業許可に付きましては、必ず地區組合の副申に依つて之を行ふと云ふことを、はつきり此の條文に現はして戴きたいと考へます、之に付ての御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=34
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035・平川守
○平川政府委員 地區組合の意見を徴すると云ふことは、地方長官の態度と致しまして、實際問題としては相當に行はれるだらうと考へまするが、併し規則の上に於て之を徴さなければならぬと云ふことになりますと、逆に新たに事業を始めようとする人が、既存の業者の意見の爲に入れないと云ふ弊害もあるのではないか、勿論業者の意見を十分に徴すると云ふことは官廳としては當然の態度と思ひます、併しそれかと言つてそれ等の人の意見に拘束されて、新しく入る人が不當な壓迫を受ける、さう云ふ意味に於て規則に於ては業者の意見を徴さなくとも宜いことにしたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=35
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036・本名武
○本名委員 新し い業者が壓迫を受ける爲に組合の副申を必要としないと云ふことは、逆に新しい人に企業を認めても宜いと考へられるのでありますが、實は弊害と申したのは其の點にあるのであります、限りある山林を無限の業者が買取りを希望致します時に、色々組合の内部に於て其の山の奪ひ合ひが生ずる、そこへ持つて行つて新しい業者が出來ると云ふことは、一面組合の運營の上に非常に摩擦を生ずることになるのであります、隨て何處までも此の新しい許可と云ふものは、組合の運營を中心として考へて、支障ない限り認可することが最も宜いのでありまして、官廳が勝手に認可すると云ふやうな制度は最も非民主的な方法でないかと思ひます、此の點に付てもう一度御意見を承はりたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=36
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037・平川守
○平川政府委員 本案の考へ方と致しまして、企業許可は出來得る限り速かに撤廢を致したい、寧ろ誰でも希望者が事業が出來る機會の來ることを希望致して居るのでありまして、其の經過的の措置と致しまして、自治統制を行ふ爲に此の條文を置いたのであります、隨ひまして只今御話のやうな、組合の存立の爲に逆に新しい企業の許可を制限する、組合の立場から云つて寧ろ制限的に出ると云ふことは、此の企業許可と云ふものを成べく早く撤廢致すと云ふ考へ方と、衝突を致すことになりはしないかと云ふ風に考へるのでありまして、出來得る限り早く自由に致したいと云ふ考へ方から致しまして、此の許可に付ては成べく拘束を少くして置きたいと云ふ考へ方であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=37
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038・本名武
○本名委員 次は第九十一條の社團法人日本林業會の權利義務の繼承に付て伺ひたいのであります、此の前の條文には、林産組合が既存の認可組合を繼承することが出來ると云ふことであります、洵に當然なことでありまして、私共は其の手續の簡易なことを喜ぶのでありますが、同時に社團法人日本林業會の繼承も、是は當然必要であらうと私は實は考へて居つたのでありますが、先般資料を拜見致しまして、社團法人日本林業會の内容を能く檢討致して見ました所が、どの角度から眺めましても、是は新しい林業會が繼承すべき理由がどこにも見出せない、先般の御答辯の中には、非常に便利だからと云ふやうな御話がありましたが、私は逆に之を繼承することは、新しく生れた林業會が非常に不便を感ずるのではないかと云ふ風に思はれるのでありますが、政府は法的な根據があつて之を繼承すべきものとしたのか、或は單に既存のものを繼承することが便宜であると云ふ點からのみ此の條文を作られたのか、もう一度御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=38
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039・平川守
○平川政府委員 現在の社團法人日本林業會と云ふものは、今囘の日本林業會とは性質は全く異りますけれども、併し元來是は日本の林業、殊に森林所有者と林産業者との調整、調和を圖り、それに依つて林業の改良發達、或は林産物の増産を圖ると云ふやうな目的に於ては似通つて居るのでありまして、是が爲に政府と致しましても相當額の助成を致しまして、事業を行はせて參つたのであります、さう云ふ意味に於きまして、今囘の日本林業會が成立致しまする場合に、折角政府が注ぎ込みました助成金を以て、相當の資産を有する日本林業會と云ふものを、財産的に解體を致して清算をして、又新たに資金を集めると云ふことよりは、現在持つて居る資産等を其の儘引繼ぐと云ふことの方が合理的であらうと云ふ意味に於て、此の條文を置いた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=39
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040・本名武
○本名委員 大體御説明は前から伺つたのと同じやうでありますが、先づ此の内容に付て政府はもう一度檢討して見る必要があらうと思ひます、此の厖大な決算書面に依る數字を眺める時に、今後の是等の經營が果して新しい林業會が快く引繼ぎ得るものであるかどうか、而も戰時中に假令政府の補助がありとは言へ、全く非民主的な動機から設立された林業會を、民主的であらねばならぬ新しい林業會に引繼ぐ理由は何處にも見當らないのであります、更に又資産を繼承することに依つて非常に便宜であると言はれるが、あの決算の内容から行きましても、資産の中には我々の簡單には了解出來ないやうな、或は又今後の經理に於て果して是等が解決、決濟出來得るかと云ふやうな疑問さへあるのであります、斯う云つた不明朗な氣分の下に置かれる社團法人日本林業會は、私は繼承するの必要はないと考へるのであります、之に付てもう一度伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=40
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041・平川守
○平川政府委員 現在の社團法人日本林業會は、終戰直前の頃に出來ましたものでありまして、其の後終戰と共に其の機構も改組致しまして、役員の選出方法なり、其の他定款を御覽願ひますと分りますやうに、頗る民主的に改組致して居るのであります、官廳の方は、之に對しましては特別に所謂官僚的な手を加へて居らないのでありまして、又其の仕事に致しましても、特に日木、地木の如きものとは違ひまして、所謂戰時中に官治統制式のものを行つたと云ふやうな性質のものではないのであります、又其の資産内容に付きましては、色々御疑問もあられるやうでありますが、政府と致しましては一應是の監査を致しまして、内容は宜しいと、斯樣に判斷を致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=41
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042・本名武
○本名委員 政府には御自信があるやうであります、私共は政府の御考へになる通りに圓滿に此の林業會が、社團法人日本林業會を引繼ぐことが出來るならば非常に幸ひと考へて居ります、併しながら一面、又我々の簡單に納得出來ないやうな點のあることを、非常に遺憾に存ずるのであります、此の點に付ては又後で詳しく御伺ひ致したいと思ひます、大變長い間私一人で時間を占領致しましたが、一應前に保留致しました分を除いて、是で一先づ質疑を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=42
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043・平野増吉
○平野委員長代理 通告順に依りまして的場君に質問を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=43
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044・的場金右衞門
○的場委員 私は大臣に二、三御尋ねしたいことがあるのでありますが、今日は御見えになりませぬでせうから、其の問題は後廻しにして、大臣に御尋ねする以外の問題に付て二、三御尋ね致します、是は前にも質問があつた問題でありますが、もう少し御伺ひしたいので、重なりますけれども御願ひ申上げます、種苗の問題であります、どなたか種苗を國營としてやる、林木の苗木を國營で育てる意思はないかと云ふやうな質問も前にあつたやうでありますが、私共が今日此の濫伐、過伐されました林地を元に復して、立派な林相を持てるやうに囘復致しますのには、非常な困難があるやうに思ふのであります、從前は農山村の人達は、山を育てる仕事を非常に樂しみに致しまして、犬も通らぬやうな藪を伐り拓いて、多年苦心努力をして苗木を育て、山を植込んで、毎年相當の手入をして、數十年掛つて立派な山に育て上げて來る、我が子を育てるやうに山を可愛がつて來たものであります、所が最近に至りまして實に亂暴に――私は鹿兒島でありますが、鹿兒島地方などは、軍隊が入り込みまして無茶苦茶に山を伐つて、山の中に兵舍を建てたり、木を伐つて捨てたり、無茶に陣地を拵へたりやつたので、數十年掛つて育て上げた山は、今は木を伐られただけでなしに、穿じくり返されて居る實情にあります、而も又之を賣買をするにしましても、林木の價格は非常に安いので、山の木を育てた人の取り分は非常に安くて、數十年も育て上げたものは實に安く買取られて、之を買つて商ひにする林産業者が過分な大儲けをすると云ふのが現状であります、隨て山を育てる者は、從前のやうに山を大事にする、山と云ふものが有難いものであると云ふやうな感じがなくなつて居ります、而も苗木の値段は一本が五十錢以上、良いものは一圓もする、斯う云ふ高い苗木を買うて、而も今無茶苦茶に荒された山を、元に復舊しようと云ふ意欲がなくなつて居る現状でございますから、私達は、此の際は一つ國の力で種なり苗木なりを育てて、無償で是等の荒された山に植ゑる、植ゑることは山の所有者が植ゑるにしても、苗木位は無償で提供すべきものではないかと思ひます、今は陸軍省や海軍省はないので、さう云ふ所へ文句を言つても仕方がございませぬから、農林省あたりで林木の苗木を育てて、無償で配給することが此の際最も必要なことであると思ふのであります、餘程奬勵を致して造林の意欲を昂揚することに努めませぬと、前のやうな速度では山は復舊をして行きませぬ、一面には山を伐る方は從前よりも多く必要とすることになつて居りますので、伐る方は多く、育てる方は進まないと云ふことになれば益益我が國の山は禿山になる、山が禿山になると云ふことは、其の爲に川が荒れ、美田が荒されることになります、今國有林野の中の、耕地に適當な所は之を開墾をして耕地にして、移住をすると云ふやうな御計畫に農林省はなつて居るやうでありますが、山の、耕地として不適當な所を開拓することよりも、現在美田である所を保護して行くことの方が大事ではないか、其の意味に於て、私共は成べく早く荒廢林を復舊しなければならない、其の爲に苗木を國營で育てて、無償で配付をして戴き、今補助になつて居る補助額は増額すると云つたやうなことにして、もう少し積極的に御考へ願ふ方が宜いのではないかと思ひます、種子だけは營林署の方でやらせるが、苗木は民間でやらせると云ふやうな御話のやうでありますが、此の點でもう少し――今年どうと云ふことが出來なければ、近い將來にさう云ふ風におやりになるやうな御意思はないものでありますか、御伺ひを致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=44
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045・中尾勇
○中尾政府委員 御意見は洵に御尤もと存ずるのでありますが、此の種苗の養成のことに付きましては、只今御話の點で一部御考へ違ひもあるやうでありますから、更に申上げますが、種子の方は、是も今早速、本年度から全部と云ふ譯ではありませぬが、出來るだけ國の方で之を採取して行きたいと云ふ考へは持つて居ります、尚ほ苗木の方は先般も申上げました通りに、一時に國營に直すと云ふことは非常に困難を伴ひますし、出來るだけのことを差當り實施しようと思ひまして、本年度から一年生として約三億萬本の數量を民間の方に委讓するやうな計畫を立てまして、是は早速營林署の方で實行することに致して居ります、種苗の方を全部國營にするかどうかと云ふことに付きましては、尚ほ今後相當研究してから決定致したいと考へて居ります
尚ほ樹苗の方の養成に付きましても、只今まで助成金を交付して居りますが、此の助成金の増加と云ひますか、高率助成のことに付きましても、更に研究を致して見たいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=45
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046・的場金右衞門
○的場委員 今日、林木の最も運輸の便利な里山と云ひますか、山麓地帶の森林が非常に無理に伐採をされて居りますのに、一面奧地林の方は立派な木があつても、是は活用が出來ない事情にございます、是は林道がない、交通の便利が惡いと云ふやうなことで、或る地方は非常に過伐が行はれて、林地が荒廢して居るのに、或る地方には折角立派な木がありますけれども、其の林木が腐れ果てて居ると云ふ實情にあることは、御承知の通りでありますが、此の奧地林を或る程度利用することに依つて、今荒廢し掛けて居る山麓地帶の山を、急に元に復さすことが出來るであらうと思ひます、或る程度便利な地帶の林地を休養させる意味に於て、奧地林の活用を此の際やらなければ、過伐になつて居る、荒廢して居る林地は、常に益益荒廢させなければならないやうな實情にあるのではないかと思ひますが、此の奧地林の利用をする爲に、林道と云ふものが、もう少し國で御考へ願はなければならない問題だらうと思ひます、此のことに付ては御計畫もあることと思ひますが、此の際一つ、今までのやうなやり口でなしに、日本の山の全體を立派にすると云ふ意味に於て、奧地林の活用、其の爲の林道、或は「レール」を敷いて「トロッコ」で引出すやうな、林道、其の他の設備を良くすると云ふことに、もう少し國として力を入れられる必要があると思ふのであります、之に付てはどう云ふ御計畫で進んで居られるのか、其の邊の所を一つ御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=46
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047・中尾勇
○中尾政府委員 御意見洵に御尤もと存ずる次第でありますが、政府に於きましても、此の奧地林分の開發に付きましては、本年度から相當の事業を豫定致しまして、既に實行中であるのであります、里山の荒廢に付きましては、是は戰時中の厖大なる利用を充足致します爲に、而も戰時中で勞務或は運搬力の低下と云ふやうな關係もあり、一方戰爭遂行上急速に賄はなければならないと云ふやうな關係で、里山の方が相當に過伐になつて居るのは御説の通りであります、そこで本年度から、政府に於きましては奧地林分の開發に主力を置きまして、特に林道網の完成を圖ることに努力を致して居りますが、其の中でも特に此の奧地林分の開發に努力を致して居るのであります、豫算的に申上げましても、國有林、民有林を通じまして、林道で約二億萬圓以上の經費の豫算を計上致して居るのであります、其の中奧地林分の方は國有林で約五百六十「キロ」、民有林で千七百二十四「キロ」の延長を豫定して居りまして、此の經費も約八千五百萬圓程度のものを以て、奧地林分の開發に著手致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=47
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048・的場金右衞門
○的場委員 次に御伺ひ致しますことは、材木の價格の問題でありますが、林木は値段が安過ぎて、木材は高過ぎると云ふのが今日の現状であります、此の山に育つて居る木は非常に安く買はれて、戰災都市の復興に使つて居る木材が非常に高い値段で扱はれて居ると云ふ、其の中間の經緯はどう云ふ風になつて居るものでございますか、素材、製材の各一石當りの値段も、私共承知しませぬから御示し願ひたいと思ひますが、さう云ふ農村、山村に於ける山を育てた人達は、現在の林木の價格は、此の木はどれだけの價値のあるものであり、之を製材すればどれだけの材木が出來、値段のものになるのかと云ふ、さう云ふ知識がないのであります、其の無知なる農村人を宜いことにして、今までの森林業者と云ふものが、無謀なる利潤を取つて林木を取扱つて居ると云ふことが、私共は我が國の山を良くする上に非常な障得となつて居ると思ひますので、どう云ふ取扱ひになつてさう云ふことになるのか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=48
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049・中尾勇
○中尾政府委員 價格は大體杉で、一番只今教量の多く取扱はれて居る六寸、七寸と云ふ寸形のものでありますが、其の長さ十二尺のもので只今公定價格は六十一圓位に相成つて居るのであります、製材は約百十圓程度に相成つて居るのであります、此の價格の基礎と致しましては、價格計算上私等が考へて居ります、立木の値段と云ふものは、大體先づ二十四、五圓程度に計算は致して居るのであります、只今御話の公用材等に使はれて居る價格は、只今申上げました價格よりも遙に高い闇價格の取引ぢやないかと云ふ風に考へられるのであります、立木の價格を決定致しますのは、只今の所は使用價格から逆算致しまして、立木の價格を出すことに相成つて居るのでありますが、色々之には議論もありますし、又幾分缺點もあるかと思ひますが、此の立木の價格の決定に付きましては、只今色々と考慮を致して居るのであります、何と申しましても、日本のやうな地形の複雜な林地に於きまして、此の立木の適正價格を決めることは非常に技術的に困難を伴ひますので、中々容易ではないと思ふのでありますけれども、只今色々考慮を致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=49
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050・的場金右衞門
○的場委員 是は私共の考へでございますが、先程も申上げますやうに、木を育てた人が、自分の木の價値をどれだけの價値あるものであるかと云ふことの計算が出來ないのが現状でごさいます、だから何とかして各各が己の山の木の値打を知ることが出來るやうな指導をしなければならぬと思ひます、今日まで材木の檢査をすることだけはやつて居りますが、さう云つた造林家の指導と云ふことは――樹を植える指導はやつたかも知れないが、出來たものの處分の方法なり、値段をどう云ふ風に積るべきものであるか、其の自分の育てた山が幾らの價値のあるものであるかと云つたやうなことの指導は極めて不徹底で、寧ろなされて居ないのが現状であります、私共は出來たものの檢査などは止めても宜いから、さう云ふことにもう少し國が力を入れて御指導になることの方が、山の復興に最も貢獻するのではないかと思ふのであります、今此處に出て居ります法律も、山の木を育てる者を保護し指導する組合になれば宜いけれども、育つた木を取扱ふ營業者を保護するやうな法律になるのであつたら、我々は絶對に反對をしなければならぬと考へるのでありますが、さう云ふ造林を行ふ者、山の木を育てる者を保護し、指導し、奬勵するやうなことに付て、國はどう云ふ御考へを御持ちであり、御計畫になつて居るのであるか、其の點を一つ教へて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=50
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051・中尾勇
○中尾政府委員 只今御尋ねの指導のことに付きましては、從來とも營林局等に於きまして、民有林の營林指導と致しまして、色々な材積の調査もし、又價格の決定もするやうなことに致しまして、指導は致して來たのでありますが、戰時中相當多忙を極めました爲に、最近では中々思ふ通り指導も行つて居ないことと思ひます、併し本案が通過致しました曉は、本案に於ても此の價格の統制等の役目を持つて居りますし、林業會或は森林組合等の活動に依りまして、此の價格の方に付ての指導も致すやうに指導して行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=51
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052・的場金右衞門
○的場委員 其の御指導はやはり營林署を以て行はさせる御豫定なのですか、組合、團體等をして何か組織的に指導の方法を御執りになるのでありますか、或は又縣廳を通じて役所で御指導になるのですか、其の邊の御考へを御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=52
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053・中尾勇
○中尾政府委員 只今も申上げました通りに、營林署に於て指導致すのは勿論でありますが、更に縣に於ても指導致すことと思ひますし、更に又新しく出來ます團體の林業會竝に森林組合、森林組合聯合會と云ふ方に於きまして、此の價格の指導を致させるやうに指導して行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=53
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054・的場金右衞門
○的場委員 從來も形の上ではさう云ふ指導をなすことにはなつて居ると思ひます、けれどもさう云ふことには殆ど手が付かない、是は戰爭前に於ても戰爭後に於ても同樣であります、是は營林署の方の指導にしても、縣廳の指導にしても、團體の指導も同樣でありますが、殆ど其の名のみであつて、實際指導には手は付いて居ない、だからもう少し徹底した指導をしますのには、今までの御考へでなしに、少し變つた點に重點を置く御考へを以て御指導を願はなければ、營林署がやることが當り前になつて居るし、縣廳がやることも當り前になつて居るけれども、其の當り前になつて居ることが實行されないから何にもならないので、此の點は一つもう少し徹底的に御考へになることを御願ひ申上げる次第であります、そして今度出來ます團體にも、さう云ふ方面のことを重點にして、造林家の保護、造林家の指導奬勵と云ふことに重點を置くべきものであると云ふことを、私共は考へて居る次第であります
其の次に御伺ひ致しますことは、大臣の指定されますものは是は何々でございますか、既に御教へを戴いたかも知れませぬが、私毎日出ることが出來ませぬでしたので、大臣の指定されるものの種目を御教へ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=54
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055・平野増吉
○平野委員長代理 的場さんに申上げますが、もう其の點は既に何囘も質問があつて、速記録が早く御手許に渡らないので己むを得ませぬが、或は御缺席になつて居つて御分りにならないかも知れませぬが、兎に角十分に質問濟みであります、併し折角の御質問ですから許しますから、どうぞ御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=55
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056・平川守
○平川政府委員 差當りは、此處にあります木材以外に指定するものと致しましては考へて居りませぬが、薪炭に付きましては、特に出來得る限り早い機會に是が指定を致すやうに致したい、併し之に付きましては尚ほ色々問題もありますので、關係方面と十分打合せを致しました上で致したい、斯樣に考へて居ります、其の他の各種の特殊な林産物がございます、竹材であるとか、椎茸であるとか、色々なものがございます、是等に付きましては、現在の所直ちに指定する考へはございませぬが、將來の研究に俟つて、逐次必要に應じて指定も致したいと云ふことに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=56
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057・的場金右衞門
○的場委員 此の指定の問題に付ては、前に色々質問があつたことも幾らか承知も致して居りますが、私共少し考へが違ひますので、私共の考へを申上げて御參考に資したいと思ひます、薪炭は成べく早い機會に指定をすると云ふ政府の方針のやうでございますが、私共は薪炭に付ては其の指定をお急ぎになる必要はちつとも認めて居りませぬ、薪炭、特に木炭に付きましては、木炭の製造は專門家の木炭業者が製造するものもございますけれども、農村の人達が、山に近い農村は耕地が狹いので、農耕だけを以てしては生活は出來ないのであります、そこで山に近い農村の人達は、半分は田畑に依つて衣食をし、半分は山林に依つて其の生計を營んで居るのであります、其の半分農耕に依り、半分山林業に依つて生計を營む山に近い農村の人達は、木炭を製造する者が其の大部分であります、隨て此の農村の人達の製造する木炭も、其の儘放置して置く譯に行きませぬので、其の地方々々の農業會は多年倉庫を作つたり、道を開いたりして、出來ました木炭が停車場に下るやうな道路を開鑿し、或は倉庫を作つて、多年之には苦心努力を致しまして、今日さしたる不都合のないやうに木炭は取扱はれて居ると思ひます、又薪に致しましても、道なき所に道を開け、輸送が出來るやうに致しまして、町の方に薪炭を運ぶやうにして居るのは、是は農業會が從來農會時代よりやつた、農村團體が取扱つて來て居るのでございますから、それを今更別な團體の方へ持つて行かなくとも、私は宜いだらうと思ひます、多年道路を造つたり倉庫を造つたりして苦心したものを、今もぎ取られるやうにして別な團體へ持つて行かれることは、私は從來取扱つた農村團體は困るだらう、斯う考へて居るのでありますから、薪炭に付ては其の取扱を御急ぎにならなくても、もう少し能く研究して戴いて、場所に依つては從來の團體に扱はした方が便利であるし、統制が能く執れるのではないかと思ふのでありますが、其の點如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=57
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058・平川守
○平川政府委員 さう云ふ各種の問題があります爲に、薪炭に付きましては尚ほ留保をすると云ふ態度を執つた譯であります、併しながら薪炭が林産物の最も重要なるものの一つであると云ふことは疑ひないのでありまして、一面に於て企業的に製炭を致して居るのもある譯であります、又原木の問題に致しましても、何等か他との調整を圖る必要があるのでありますから、御話の如く、從來扱つて居りました農業會を今直ちに是から引離して、副業製炭の今まで之を他に扱はせると云ふやうなことは考へて居りませぬ、唯重要なる林産物の一つである所の薪炭と云ふものに付て、是が原木の所有者又是が生産者と云ふものの間の調整を圖る、又他の林産物の生産との調整を圖ると云ふやうなことは、何等かの形に於てすべきことであらうと考へますので、御話のやうな點も十分考慮致しまして、各方面との十分の諒解を遂げました上で、非難のないやうな方法に於て本法に參加せしめたい、斯樣に考へるのでありまして、本法に假に指定をせられたと致しましても、現在農業會の扱つて居ります副業製炭事業が、他の團體に移つてしまふと云ふことにはならないのであります、例へば農業會がそれ自體として林業會に參加すると云ふやうな方法も考へられるのでありますが、是が參加の具體的方法に付きましては、色々と方法がある譯であります、それ等の點に付て十分關係の方面と協議を致しまして、意見の一致を見ました上で指定を致したい、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=58
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059・的場金右衞門
○的場委員 大變御親切な御考へのやうでございますので、私共も一應安心を致す次第でありますが、特に半分農耕半分山で暮す農村地帶と云ふものに付ては,中央に於ては認識が薄いやうであります、でありますから地方の實情がはつきりしないことが大變多いだらうと思ひますので、是等の問題に付ては、地方の者の意見も御聽き下さるやうな組織に依つて、一つ御檢討願ひたいと思ひます、地方の實情が分らないで、中央で御考へになつたことだけで御取扱ひになりますと、寧ろ良くしようとしたことが、角を矯めて牛を殺すやうな結果になることを惧れますので、諄いやうでございますが、特に御願ひを申上げて置きます、さうして地元の者が林道が荒れれば林道を改修し、便利の惡い所でも之を開いて、薪炭が里へ出るやうな工夫をし、努力する、それを十分認めてやつて戴けるやうに御願ひしなければならぬと思ひますので、附加へて御願ひを申上げたのであります
次に此の問題も或は論議されたことかとも思ひますけれども、特に私共の地方に關係が深いので御尋ね致したいと思ひますが、今農林省に於きましては、國有林野の中に開拓地を設けて、農耕適地に付ては之を拂下げて、外地引揚同胞等を此處へ移住せしめて、農耕のことに當らせようとなさつて居る、所が農耕適地だけは先づ拂下げて戴けるとしても、農業と云ふものは唯田圃と畑さへあれば出來るものではございませぬ、薪炭を採取する林野も、草を採る採草地も、田畑に伴つてなければならぬのでありますが、是は拂下を御願ひしますと、田になり畑になると云ふ所だけは拂下が認められても、山として或る程度なければ農村の生活が困難なのに、山として取つて置く部分の拂下が出來ないとか、採草地として取つて置く部分が認められないと云ふことになりますと、折角外地引揚同胞などが山の開墾地へ參りましても、生活に非常に支障がございまして、苦しみが更に重ねられなければならない憐むべき状態なのでございますから、此の點を御考慮になりまして、耕地以外の林地竝に採草地を同樣に拂下げることを地方へ指示願ひたい、是は營林署あたりでは、どうも自分が從來育てた丁寧にして來た林地でございますから、之を民有にすることは少し苦しいでせう、可愛い我が子を手放すやうな氣がしまして、地方の出先の營林署あたりの係官としては、それを手放すことにはどうも贊成出來ない、是は耕地となる所でも同じでありますが、どうも煩惱が切れないと云ふやうな實情にありますので、其の邊の所を何とか適當に御遠慮戴いて、地方へ御指示下さるやうに致したいと思ふのであります、其の點はどう云ふ風になつて居りますか御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=59
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060・中尾勇
○中尾政府委員 國有林を開墾致します場合に、附屬地として薪炭林或は採草地の開放を考へよと云ふ御趣旨は御尤と思ひます、此の開墾地以外の薪炭林或は採草地として開放致しますことは、政府と致しましても考慮を致して居るのであります、唯開墾適地は拂下と云ふものを致しますが、其の附屬地である今の薪炭林、採草地と云ふやうなものは、之を各戸に別々に分けますと、面積が非常に小面積になりまして、經營上如何かと考へられる點もありますので,此の點はやはり國有として、唯其の部分を薪炭或は採草地として共用せしめるやうな方法を執つて行きたいと云ふ風に考へて居ります、但し場所に依りまして、或は將來拂下を適當とする場所も出來て來るかと思ひますが、國有林の内部に開墾を致しまするやうな場合には、只今申上げましたやうな共用の方法で出來るだけ廣く共用せしめて、開墾者の生活維持に資したいと云ふ風に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=60
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061・的場金右衞門
○的場委員 是は私共の希望通りに出來ないかも知れませぬが、個人有として不適當なるものは部落有或は市町村有として、國有林野でないことにして、人民の手へ御返し願ふことの方が工合が宜いと考へるのであります、左樣な風に出來るだけ御取扱ひ下さることを御願ひしたいと思ふのであります
更にもう一つ之に關聯して御伺ひ致すのでありますが、今日の國有林野と云ふものは明治二十年頃、人民の山であつたものも、人民の自由に處理して居つた原野も地權設定の時に、當時の人達が、税金が恐ろしく高く課かるやうな「デマ」の爲に、税金が恐ろしいので總て國有にした地方が多いのであります、隨て地方に依つては、己の宅地周りから總て之を國有として今日まで續いて居ります、宅地まで國有の中にある所があります、斯う云ふ所は此の際、其の附近の麓山の林地も原野も、それに附隨する田畑も、其の附近の住民へ拂下げられる方が適當ではないか、今日は農地法も制定されまして、今まで所有して居つた地主の土地も之を耕作農民に與へんとして居る時であります、それなのに國有林野が部落の中まで入り込んで來て居るとか、或は周圍が全部個人有である、其の眞中へ國有林野があると云つたやうな、其の附近の住民に對しては同情すべき事情にある所が非常に多い、是は此の際農地法制定と同時に、國有林野を整理致しまして、其の附近の住民の手に返すべきであると考へますが、之に付ては如何樣な御考へになつて居りますか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=61
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062・平川守
○平川政府委員 御話の如く、國有林の中に於て國有林の經營と云ふことを必ずしも必要としないやうな、或は寧ろ部落の有に歸せしめた方が適當であるやうなものも相當にあらうかと思ひますが、之に付きましては、曾て林野の整理をやつたこともあるのでありますが、更に近い機會に於きまして整備を致す必要があらうと存じて居ります、唯此の問題は非常に色々な複雜な問題を孕んで參りますので、一般的に、簡單に斯う云ふことをやると云ふことを、今直ちには行へないのでありますけれども、一定の制度を立てまして、さうして林野の整備をやることは、是は必要であらうと思ひます、成べく早い機會にやりたいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=62
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063・平野増吉
○平野委員長代理 是にて暫時休憩致します、午後三時再開致します
午後零時五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=63
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064・会議録情報2
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午後三時十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=64
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065・森幸太郎
○森委員長 休憩前に引續き、是より會議を開きます、質疑を繼續致します――的場君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=65
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066・的場金右衞門
○的場委員 午前に大體質問させて戴いたのでありますが、大臣が御見えになつたやうでありますから、今少し根本の問題に付て一つ二つ御伺ひを致したいと思ひます、治山の問題は國土保安の上に非常に大事な問題であつて、山を治めることに依つて川も或は田畑も保つことが出來るので、其の點に付てはどなたも御意見は同じやうに拜承して居つたのであります、所が此の田畑或は河川の復舊工事の方は、非常に目立つので直ぐ手が著いて、復舊工事に國費も相當投じて戴いて、復舊が早いやうでございますが、山の災害復舊が遲々として進まないので、更に又其の次の雨季には、川が氾濫をして堤防を壞し、美田を埋めると云ふ現象を繰返して居る實情であります、是は山の方は山の關係の役所で、川の方は川の關係の役所で別々に扱つて居られる、さう云ふ所で一つは違ひが多いのではないかと考へます、私共の地方では、昭和十三年の大水害の山崩れの山地の砂防工事や、押流された土地の植林等は、今日に至るも其の儘に相成つて居る、所が幾度か其の下流の河川改修なり、堤防の復舊工事なり、壞れた道路や橋の復舊なりは行はれますけれども、上流の山奧の方が巧く復舊をしませぬので、少しの雨で又再び非常な災害を受けると云ふやうなことを繰返して居りますから、根本は下流の堤防を拵へることよりも、上流の山崩れの跡の砂防工事なり植林の方なりを急がなければならぬものではないかと私共は考へて居るのであります、さう云ふ意味に於て、私共は此の國土保安に關係する總てを一貫して、關聯付けて取扱をするやうなことに役所の機構を御變へになつたらどんなものであるか、斯う云ふことを考へて居るのでありますが、それに付て大臣の御考を御伺ひする譯であります、現在ある役所の中で、巧く連絡が付いて行けばそれでも宜いやうなものでありますが、私共は一つの機構の中で、山奧のことから海のことまで一貫した治山治水、國土保安のことが考へられ、手が著けられるやうにすることの方が、工合宜く行くのではないかと、斯樣に考へて居るのであります、其の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=66
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067・和田博雄
○和田國務大臣 河川の改修と砂防工事などの間の連絡が中々巧く行かぬ、又山の中に行けば或る點に於ては是が一致せぬ、斯う云ふ點もあつたのは事實でありまして、それ等の點に付て現在行政廳の所管が異つて居ります爲に、從來色々の缺點があつたと云ふことに付ては、色々の方から御批判を受けて居る譯でありますが、是はさう云ふことのないやうに、實際計畫が統一的に立てられて行きまするならば、其の後の連絡と云ふことは是は割合やり宜いことであるのでありまして、どう云ふ仕方で其の實際をやつて行くか、例へば現在の儘ても事實上兩者が十分連絡を取つて行きまするならば、事實と問題が解決する部分が、相當あるのではないかと思ふのでありますが、尚ほさう云ふ點に付ては、今後ともさう云ふことのありませぬやうに、是は十分機構其のもののみならずやり方に付ても、適當に善處するやうに研究致して見たいと、斯う考へて居るやうな次第てあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=67
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068・的場金右衞門
○的場委員 常に現場を見て居ります私共から考へますと、何處の役所でも、自分の受持の所は非常に熱心にやつて戴きますけれども、餘所の役所の分野の所へは、氣が付ても、さう餘計なことも、言へないと云ふのが實情であらうと思ひます、それはもう已むを得ないことでありまして、人の分野の所まで餘計な口を叩いたり、出過ぎたことを言つたりするやうなことは、誰がやつても遠慮をせざるを得ないのでございますから、さう云ふ所に遠慮のないやうな機構にして戴けば、私は巧く行くのではないかと思ひます、此の點に付ては更に適當に御考へを願ひたいと思ひます、同時に國として――山の問題、川の問題は、地方では財政上の關係もありまして、中々地方だけでは思ふやうに行かない、非常に困難の伴ふことでありますから、國の力を以て相當施設して戴かなければならないことが多からうと思ひます、今申上げますやうな山の關係、川の關係、それに繋がる海の關係、是は山が壞れて川が淺くなり、堤防が壞れ、同時に土砂が流れて海が淺くなつて港が用を爲さなくなるとか、魚介或は海藻等の繁殖が出來なくなつて、濱邊の漁民が困る、農民だけではない、國全體に繋がる非常に大事なことであるが,其の大本は山であると云ふことを考へますと、山の方は非常に大事であるのに、其の大本の山の方が今日まで疎んぜられて居つたと云ふことは事實であります、それでありますから、私達は山を立派に治めることに依つて川が治まり、海が治まるのだと云ふことが事實でありますならば、其のことを立派にやつて行くやうな役所の機構にして戴きたい、又研究機關等も、美田の中に米を作る方法、立派な畑に薯を作る方法は研究されて居りますが、其の美田を保護して行くのにはどうすれば宜いかと云つたやうな意味から、山のこと、川のことを一貫して研究するやうな、それを指導するやうな機關をも政府に於て設置して戴きたい、唯單に枝先の、米が斯うすれば宜く出來ると云ふやうなことでなしに、根本の山の關係、川の關係、更に海のことも併せ研究するやうな機關を、國で施設して戴きたいと考へて居るのでありますが、さう云ふことに付て何か御考へになり、或は又今後の御方針でもございましたならば、御聽かせを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=68
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069・和田博雄
○和田國務大臣 御意見は御尤もなことだと思ふのであります、例へば一つの川が流れて居る、其の川に付て凡ゆる視角から、此の川と云ふものが持つ所の經濟的な、或は文化的な、又社會的な色々な影響と云ふものを究めて、さうしてそれを綜合的なそれぞれの必要な施設に移して行くと云ふ事柄は、實際上非常に必要だと思ふのでありまして、例へば利根川なら利根川と云ふものを取りましても、農業の方の見地からも、又商工業の方の見地からも、又漁業の方面からも見て、綜合された行政を擔當の分野に於てやつて行くと云ふことにすれば、非常に宜いと思ふのでありまして、それ等の點に付ては、將來の問題として何等か一つ研究して見たい、斯う考へて居る次第であります、それから河川改修と例へば用排水の土木工事の間の問題に付きましても、農林省と内務省との間で、實際的に河川改修をやる點に付て、農業用水の方と十分連絡を執つて系統ある行政が行はれれば、それはどちらか事務的に分擔して居りましても巧く行く譯でありますが、そこが從來とも「セクショナリズム」と云ふか、協調が足りなかつたと云ふか,色々な非難があつた譯であります、斯う云ふ行政面に於ける今後の統一調整と云ふ事柄は、唯單に林政の方だけでなく、今後官吏制度、行政制度、其の他が相當變つて行くことが豫想される時期でございますので、さう云つた際に、十分我々としては實現するやうに研究を怠らない積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=69
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070・的場金右衞門
○的場委員 今の問題で、山に關係することと、普通一般の農業に關係することと併せ研究するやうな機關に付ては、どんな風に大臣は御考へになりますか、必要性を御認めになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=70
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071・和田博雄
○和田國務大臣 是は必要であることは言ふまでもないのでありまして、例へば今度農林省に農業綜合研究所が出來ますし、片方では開拓研究所が出來る譯でありますが、それ等の點から考へても、それは唯農業は農業だけを研究して居れば宜いのではなくて、山との關聯も當然考へるべきで、さう云つた山と農業と云ふものとの不可分の關係等に付て、綜合的に研究して行くことが必要であることは、私共全く同感でありまして、今後はさう云つた點に付て、十分綜合性を保たせて行くことでないといけないのではないか、斯う思ふのであります、問題は片方が前提になり片方が結論になると云ふものでなくて、お互ひに相互に關聯し合つて居る問題なので、さう云つた點に付て、農林省としても十分調査したり、研究したりする積りで居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=71
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072・的場金右衞門
○的場委員 更に此の問題に付て御願ひを申上げて置きたいのでありますが、從來、國民一般の常識から申しましても、海の問題や耕地の問題、或は川の問題等に付ては常識が發達して居りましたが、山の問題は國民一般からも忘れられ、或は常識的にも缺如して居る點が非常に多いと思ひます、隨て私達は、國民學校の教育と云ふやうなことに付ても、山と云ふものを相當多く教材に採入れて扱つて戴くやうな風に御願ひしたい、さう云ふことも考へて居る次第であります、更に又國の色々な施設に付ても、山の方は稍稍取殘されて居るやうな面も多いやうでありますから、今言つたやうなことを御願ひする次第であります、更に一つ御檢討を御願ひして置きます
それから次の問題、法文の中に含まつて居ないことですが、もう一つ御尋ね致したいのであります、林業の從事者に對して色々な物資の特配があります、是は普通の製炭業者とか、木材業者と云つたやうな、木を伐り出すとか、炭を燒くと云つたやうな方面には、或る程度地下足袋が廻つたり、酒類が特配になつたりして居りますが、山を育てて造林すると云ふ勞務者に對しては、加配、特配と云ふものが忘れられて居るやうに思ひます、是はお忘れになつて居るのではないか、末端の取扱が間違つて居るのか、中央の方でお忘れになつて居るのか、之を一つ伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=72
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073・和田博雄
○和田國務大臣 勞務加配の點に付きましては、御承知のやうに本年度は極めて食糧事情が窮屈でごさいましたので、色々と必要なものは澤山あるのでありますが、それ等のものにも十分廻り兼ねる、而も從來重點的に配給して居つたものに付ても、整理して數量を制限しなければならなかつたやうな事情がございましたので、御話の造林の方面に付ても實は參つて居ないのであります
〔委員長退席、平野委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=73
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074・的場金右衞門
○的場委員 それで能く分りましたが、實は是は少々地下足袋が配給になるとか、或る程度の酒が特配になるとか云つたやうなことは、大した問題ではないのでありますが、山は我々が育てたのではないか、此の山を是まで育てるのには四十年、五十年の苦勞をして來たのである、此の生みの親たる我我が、又次の山を育てる爲に此の勞苦を日々重ねて居るのに對して何等の恩惠もないのに、唯木を伐つたり、炭を燒く者には地下足袋や酒を呉れたりすると云ふことは、甚だ不都合であると云ふやうな感情になりまして、山主――と云つても百姓傍ら僅か一段か二段持つて居る山ですから、大した山主ではないのですが、さう云ふ連中は、自分が山を育つて、それを賣つて炭にし、或は木材にして居る、所が自分で炭にして居る人にはさう云ふものがあるが、餘所の人に炭にして貰ふと地下足袋一つ貰へない、所が藪を拂つて木を植ゑ、木を育てる所にこそ地下足袋のやうなものは必要があるのであつて、大森林の中へ行つて、藪もない所で炭を燒くのには地下足袋は要らぬのぢやないかと云ふやうなことで、感情を害する關係がありますので、やらないならばどちらもやらないやうにして、下さるものならば兩方忘れないやうにして下さることを、是は地方民として御願ひを申上げて置きます
それから法案の内容に付て二、三御伺ひ致したいのであります、第四條の第一項第二號の「共同施設」と云ふのは、具體的に何を御考へになつて居るでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=74
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075・平川守
○平川政府委員 是は林業會が、例へば技術者の養成をする爲に施設を設けますとか、或は共同保管の爲の施設を設けますとか、共同研究の爲の施設を設けますとか云ふやうなこともあらうと思ひます、それから場合に依りましては、一部資材の配給までも扱ふ場合もあらうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=75
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076・的場金右衞門
○的場委員 經濟施設の方はどうでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=76
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077・平川守
○平川政府委員 林業會は主と致しましては指導に重點を置くことになると思ひますけれども、併し場合に依りましては經濟的の事業も出資等の方法に依りまして行ひ得る譯であります、さう云ふ場合には、之に伴ふ共同施設も行ひ得る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=77
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078・的場金右衞門
○的場委員 それから第四條に第五號まで目的があつて、其の後に第二項に「左の事業を行ふことができる。」として、三つの事柄が別に切離して、附則のやうにしてございますが、是はどうした理由で斯うしたのでせうか、是はずつと同じやうな目的にした方が宜いぢやないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=78
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079・平川守
○平川政府委員 此の第一項の方の事業は、林業會の恆久的な事業と云ふことになる譯であります、第二項の方は、差當り暫くの間林産物等に付きまして何等かの形の統制が必要である、隨て林業會をして自主的統制を行はしめると云ふ建前を執つて居りますので、將來統制と云ふものがなくなりますれば要らないことになる譯で、さう云ふ意味に於て、稍稍臨時的な意味を持つて居りますから、別項に致した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=79
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080・的場金右衞門
○的場委員 第九條の終ひの方の「林業に密接な關係を有する事業を營む者」と云ふのは、何を御考へになつて居るのでございませうか、勞務者等御考へになつて居るのですか、どうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=80
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081・平川守
○平川政府委員 是は主と致しましては林産物、例へば木材に付て申しますれば、之の利用を致します土建でありますとか、或は木工でありますとか、さう云ふやうな主として需要者の關係を考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=81
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082・的場金右衞門
○的場委員 此の林業の從事者、勞務者の個人とか或は又代表者は、會員としては宜くないのであるか、之を會員として發言權を持たしむる御意思はないのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=82
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083・平川守
○平川政府委員 此の林業會法は、從來の事業の經營者を對象と致しまして、是の自主的な團結と云ふことを考へたのでありまして、隨て林業に密接な關係を有する事業を營む者と云ふことになつて居るのでありまして、勞務者に付きましては、將來の問題として尚ほ研究を致したい、差當り勞務者に付きましては、都道府縣林業會に於きまして特別議員と云ふやうな制度がございますので、之に勞務方面の經驗者と云ふやうな者を參加せしめると云ふやうなことで、林業會に對する發言の機會を與へて行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=83
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084・的場金右衞門
○的場委員 第八條の免税の關係は、林業會は法人税及び營業税を免税されることになつて居りますが、農業會等は一部税金があるやうですが、是も農林省としては農業會の税金も廢止される御意思があるのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=84
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085・平川守
○平川政府委員 此の程度の税金は、農業會の方にも免除になつて居るのと調子を合せて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=85
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086・的場金右衞門
○的場委員 第十四條の終ひの方に「特別の事情があるときは、役員は、前項に該當しない者の中から、これを選任することができる。」となつて居りますが、特別な事情と云ふのはどう云ふ事情を指して居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=86
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087・平川守
○平川政府委員 是は主として役員の中に事務に堪能な者を入れる必要がある場合があらう、普通の役員は會員の中から選ぶ、或は會員たる法人の業務を執行する役員の中から選ぶ譯でありますが、特に會の事務を運行せしめる上に於て、そこに練達堪能なる者を役員に選ぶ必要があらうと云ふ風に考へた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=87
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088・的場金右衞門
○的場委員 第七十一條の第二號の「密接な關係を有する事業を營む者」はどんな者でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=88
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089・平川守
○平川政府委員 是も先程の林業會と同じやうな、林産物の需要者關係を考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=89
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090・的場金右衞門
○的場委員 私が御聽きしたいことは大體終つた譯でありますが、政府委員の方々は大變親切に御説明戴きまして、洵に有難うございました、此の林業の問題は林業の問題だけでなしに、他との關聯が非常に大きいのでございますから、今後の外地引揚者、或は戰災者等、今日職なくして困つて居る戰爭犠牲者達も多數ありますが、此の山に依つて救はれる場合が非常に多いと思ひますので、是等の關係に付ては更に御配慮願つて、救はれない者を山に依つて救ふやうな途も御考へ願ふやうに御願ひ致したいと思ひます、今朝は大臣はおいででありませぬでしたけれども、此の問題に付ては色々と御願ひも致した譯であります、折角外地引揚者等を、農林省の指導奬勵に依つて山地開拓、耕地の適地となる所に開拓移民と云ふやうなことで移しましても、是は唯田畑だけあつても農業が出來ないので、相當の山もなければ生活は出來ませぬし、採草地もなければ生活は出來ない、農業の經營が出來ないのですから、それ等の點に付ては更に親切なる御配慮を願ふことに致したい、もう一つは麓林、部落附近の山地で國有林になつて居る所は民有に還して戴いて、其の附近の住民が樂に生活の出來るやうに保護して戴く、宅地までも國有になつて居るやうな氣の毒な地方が相當に多いと云ふことを御諒解願つて、耕地を此の際小作農の手に戻すと云ふ、それよりももつと大事なことが國有林野に多數あると云ふことを御諒承願つて、善處して戴くことを御願ひ致したいと思ひます、大臣が御見えになりましたから、掻摘んで附言致しまして御願ひ申上げて、私の質問を終ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=90
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091・平野増吉
○平野委員長代理 太田秋之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=91
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092・太田秋之助
○太田(秋)委員 私は大臣が御見えになりましたので、緊急の問題に付きまして特に大臣の御配慮を御願ひしたいのであります、其の點は、木統法が廢止されたと同樣な今日の状態にあつて、各府縣に於ては、林業會法と云ふやうな新しい法文が出されたことは結構でありますが、其の間は何れも大體地區生産組合聯合會と云ふやうなものを以て統制をして、今日政府の指示に依る所の役目を勤めて居るのであります、隨て今日では進駐軍用の宿舍、兵舍の用材等も、其の聯合會或は地區生産組合に依つて之を生産して、供出割當を出して居るのであります、殊に私の縣は福島縣でありますが、今日陳情に參りましたのは常磐炭田の坑木の問題でございますが、是が非常に今不足を告げて居るので、最大急行を以て各地で積出しをして居るのであります、然るに此の資金が非常に行惱んで居るのであります、と云ふことは御承知の通り、八月十一日の金融機關の整備應急措置に依りまして、爾來預金と云ふものは第一封鎖が第二封鎖になりまして、各聯合會にした所で、生産組合にした所で、僅かの金は認められますけれども、大部分の預金は第二封鎖の方に凍結された形になつて居るのであります、隨て七月分の坑木の支拂九十五萬圓を拂はなければ、到底後の輸送も出來ないし、日に日に拂ふ所の林業勞働者の支拂にも困る、それで此の第二封鎖を速かに解除して、第一封鎖に廻して戴きたいと云ふことに付きまして、本日陳情書を持つて、知事の證明したものを持つて、陳情員が先程まで來て居りました、大藏當局、殊に銀行局長に此のことを御願ひした所が、是は中々難かしいと云ふやうな御話もありましたが、是が難かしいと云ふことになれば、大藏大臣は常に我が國の産業の復興はどうしても石炭の増産に依らなくてはならぬと云ふことを仰しやつて居りますが、今石炭を掘るには坑木がなくては迚も出來ない、さうすると其の増産は出來なくなると云ふ問題に歸著するのであります、木材の生産其の他の監督、割當は農林省が責任を持つてやつて居ることになるが、此の生産方面の大隘路になる問題であります、之を大臣から特に一つ大藏當局に協議をして、目の前に生産する所の石炭用の坑木、或は進駐軍用材として出す木材、是等を第二封鎖として凍結して置くことは、生産を「ストップ」する、之を一日も早く解除する、審査委員會に掛けて決定して、封鎖解除をして戴きたいと云ふことを、緊急の願ひとして此の機會に御願ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=92
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093・和田博雄
○和田國務大臣 只今の點に付ては私は今初めて聽きました、十分事情を調べまして、大藏當局に申して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=93
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094・平野増吉
○平野委員長代理 本日は此の程度で散會致します、明日は午前十時から開會致します
午後三時四十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X01419460906&spkNum=94
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