1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
臨時通貨法の一部を改正する法律案(政府提出)
軍人及び軍屬以外の者に交付された賜金國庫債券を無效とすることに關する法律案(政府提出)
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昭和二十一年七月二日(火曜日)午前十時二十分開議
出席委員
委員長代理 理事 荒船清十郎君
理事 八木佐太治君 理事 松永義雄君
小野眞次君 山田善三君
坪川信三君 中山たま君
島田晋作君 田村定一君
松永義雄君 原尻束君
坪井亀藏君 和崎ハル君
伊藤恭一君
七月一日委員石原登君及河野金昇君辭任に付其の補闕として原尻束君及坪井亀藏君を議長に於て選定した
出席國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 櫛田光男君
委員長の許可を得た出席者
青木清左ヱ門君
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本日の會議に付した議案
臨時通貨法の一部を改正する法律案(政府提出)
軍人及び軍屬以外の者に交付された賜金國庫債券を無效とすることに關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=0
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001・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 是より開會致します、先づ政府の説明を求めます——大藏政務次官上塚司君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=1
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002・上塚司
○上塚政府委員 本委員會に付託となりました臨時通貨法の一部を改正することに關する法律案外一法律案に付きまして、其の提案の理由を説明致します、現在主として流通して居ります小額通貨には、臨時通貨法に依る五十錢の小額紙幣と十錢、五錢及び一錢の臨時補助貨幣と、更に十錢及び五錢の日本銀行券があるのでありますが、其の中小額紙幣及び小額の日本銀行券は流通に不便であるのみならず、耐久期間の短い爲め、常時製造補給を必要とし、資材及び製造能力の點から相當の負擔となるのであります、更に其の圖案は曩に聯合軍最高司令部の覺書に依り禁止せられた題材を使用して居りますので、政府としましては可及的速かに是等の紙幣及び銀行券を囘收し、通貨制度を戰時の應急的體制から平時的體制へ復歸整備致したいのであります、是が爲め先ぞ第一に臨時通貨法に依る臨時補助貨幣に新たに五十錢を追加致したいのであります、更に同法に依る是等の補助貨幣及び小額紙幣は、今次戰爭終了後一年を經過した後は發行し得ないことになつて居るのでありますが、現在の素材需給状況から見まして、貨幣法に依る補助貨の製造發行は當分の間不可能と認められますので、今後も當分の間、臨時補助貨幣及び小額紙幣の發行を繼續し得ることとする必要があるのであります
次に昭和十五年法律第六十九號の規定に依り發行した公債で、軍人及び軍屬に交付されたもの以外のものを無效とすることに關する法律案に付きまして、其の提案の理由を御説明致します
昭和十五年法律第六十九號の規定に依り發行致しました公債、即ち賜金國庫債券の中、軍人及び軍屬に交付されたものに付きましては、曩に昨年十一月二十四日附聯合國最高司令部の指令に基きまして、本年二月二十七日勅令第百十二號に依り無效と致した次第でありまするが、本件實施の及ぼす社會的影響等、諸般の事情を勘案致しまして、本法案は軍人軍屬以外の者に交付されました賜金國庫債券も亦無效とするものであります、即ち一般文官等軍人軍屬以外の者に交付された場合に於きましても、賜金國庫債券は專ら戰爭の論功行賞として交付されたものであり、此の點文官恩給等のやうに官吏の生活を保障する爲め、平時に於ても支給されるものと本來其の性質を異にするものでありまするので、軍人軍屬以外の者に交付されました、賜金國庫債券を、今後尚ほ有效なるものとして存續せしめますることは、穩當を缺くものと認められる次第であります、仍て政府と致しましては、軍人軍屬に交付されました賜金國庫債券を無效と致しましたる今日、軍人軍屬以外の者に交付されましたものも亦無效と致さんとするものであります、何卒御審議の上速かに御贊成あらんことを御願ひ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=2
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003・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 是より質疑を許します、質疑は通告順に依りまして——坪井亀藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=3
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004・坪井亀藏
○坪井委員 補助貨幣及び小額紙幣及び小額の日本銀行券の發行でありまするが、是等は其の發行の主體に於て、日本銀行券を發行せねばならぬと云ふ理由は何處にあるか、之を一つ御伺ひ致したいと思ひます、尚ほ又新たに發行する臨時通貨に於きまして、其の五十錢と十錢でありまするが、斯うした終戰に於きまして、非常に總ての物が消耗されて居る時に、特に斯うした銅とか或は錫とか云つたやうな資材、戰後我が國の總ての凡ゆる増産の本をなす諸機械、或は是が資材として最も貴重なる物を、此の機會に於て之を通貨にすると云ふことはどうか、是は小額補助紙幣に於て之を發行する方が非常に國家としては——此の國家の再建をして行くと云ふ上に於て、物の増産をする上から見て、其の方が適當ではないかと云ふ風に私は率直に考へますので、之に付きまして大藏政務次官の其の理由を、なぜ斯うした素材を使はねばならぬか、其の方が宜いのだと云ふ其の理由を一つ御伺ひ致したい、私は此の過渡期に付ては、小額の紙幣で先づ間に合はして行くと云ふことの方が宜いやうに考へられます、以上二點を先に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=4
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005・上塚司
○上塚政府委員 第一點の方をもう一度仰しやつて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=5
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006・坪井亀藏
○坪井委員 第一點の方は補助貨幣、小額紙幣、小額の日本銀行券の發行がありますけれども、斯うした發行の場所が違つて居ると思ひます、之を政府に於て一元的にする方が總て宜いのではないか、なぜ此の日銀の小額券を發行せねばならぬか、其の理由を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=6
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007・櫛田光男
○櫛田政府委員 只今の御質問の第一點に付て私から御説明申上げます、現在の小額通貨が仰しやいました通り十錢、五錢に付ては日本銀行券が出て居ります、其の他硬貨として十錢、五錢、一錢がございます、其の他古いもので五十錢其の他も大體囘收濟みになつて居ります、それから五十錢の紙幣は政府紙幣と相成つて居ります、何故之を統一しないかと云ふ御尋ねなのでありますが、此の臨時通貨法に依りまして發行致されて居りまする補助貨幣、それから政府紙幣の方の小額紙幣は、全部政府が發行致すことになつて居ります、それから日本銀行の十錢、五錢は日本銀行法に基きまして銀行券として發行致して居る譯であります、大體日本銀行法を作りました當初に於きまして、斯う云ふ意見が其の當時ありました、詰り紙幣と申しますと、銀行券と申しますと、紙の形で發行される通貨は、日本銀行券に全部逐次統一して行く方が宜しいのではないか、斯う云ふ意見がございました、それから補助貨の方、硬貨の方は、是は一定の素材の方に、何と申しますか貨幣形態に直しまして、素材價値よりも名目價値の方がずつと高くなる譯でございますので、斯う云つた點に付ては、政府に於て依然發行する方が宜いのではないか、硬貨の分に付ては政府、紙の分に付ては日本銀行と云ふ風にやつて行くのが宜しいのではないかと云ふ議論がありました、所が其の後小額紙幣の中、五十錢が政府の紙幣として出されて居りましたのでありますが、戰爭中でありましたので、既に其の豫算と云ひ、紙と云ひ、其の他が大量に用意致されて居つた譯でありますから、之を急激に乘換へますなら、能率其の他の點に於て不便であるのであります、それで從來五十錢の紙幣は其の儘と致しまして、新たに十錢と五錢の小額紙幣を出さねばならぬやうな事態に當面致しました時に、日本銀行券と致しまして出しましたやうな次第になりました、隨て今小額通貨が、政府と日本銀行と二つに分れて出て居るやうな恰好になつた譯であります、それで今後は段段どう云ふやうになつて行くかと申しますると、現在の小額紙幣の五十錢でありますが、先程政務次官から提案理由の御説明がありました中にございましたやうに、司令部から禁止せられました所の、例へば靖國神社とか斯う云つたやうな圖案が使つてありますので、今後之を増刷發行致して行きますことは出來ないやうなことに、實はなつて來た譯であります、と同時に此の紙の方を使つて居りますと、御承知のやうに取扱ひが非常に不便でありますし、磨滅も早い、隨て大體一年か二年位でぼろぼろになつてしまひます、頻繁に之を取換へなければなりませぬので、其のやうな點から言ひますと、紙の方が却て經濟的に費用の點から見て、國家的に見て損になる、それで出來れば硬貨、金屬貨幣の方に補助貨を換へます方が持運びに便でありますし、磨滅其の他の點から言ひましても、長持ちがすることは分り切つたことでありますので、出來るだけ早くそれに乘換へたい、斯う云ふ風に豫ね豫ね思つて居つたのでありますが、戰爭中は御承知のやうに、金屬は殆ど之を他の用途殊に戰爭目的に使ひます、殊に「ニッケル」とか、錫でありますとか、中々出來なくなりました、「アルミ」の如きものは殆ど使へないやうな状況になつた譯であります、それで使へませぬので、已むを得ず紙を使ひました譯であります、今度終戰に相成りましてから、金屬に若干の餘裕が出來て來た譯であります、貨幣法に於きましては銀貨でありますとか、或は青銅貨と云ふことがはつきり決められて居る譯でありますが、銀貨とか斯う云つたものは、既に貴金屬と致しまして聯合軍の管理に屬して居りまして、今使へない状況にございます、それから「アルミ」は今後の日本と致しましては、「アルミ」の製造自體に非常な制限を加へられますので、之を材料として取ることも不適當であります、さう云ふ譯で色色考へたのでありますが、黄銅と申しますか、通稱眞鍮であります、是が彈殼——彈の「ケース」とか、さう云ふ關係で終戰後非常に大量のものが餘つたやうであります、之を若干貨幣の方に振向けますることは、色々金屬に對する各種の需要が逼迫致して居りまするが、眞鍮に關する限りは若干の餘裕があると云ふ風なことに相成りまして、之を以ちまして新たに五十錢の貨幣を造りまして、從來の政府紙幣である五十錢を、漸次之を以て代替して行く方が凡ゆる點から見て宜しい、斯う云ふのでありまして、五十錢を今度の通貨法の中に入れますることを御提案申上げました次第であります、大體第一の點に付きましては現在日本銀行と政府の兩方のことになりますが、それは先程申上げましたやうな沿革を以ちまして來て居ります、今後は此の金屬貨幣が出來ますれば、金屬貨幣で以て小額通貨の方を中心に持つて行きたいと云ふ風に私共は考へて居ります
それから第二の御質問の眞鍮の點に付きましては、終戰後の状況に依りまして、眞鍮に關する限りは需給状態は若干之を貨幣の方に廻しましても、それ程不都合でないと云ふことになりまして、斯樣なことになりました譯であります、御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=7
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008・坪井亀藏
○坪井委員 只今の御説は、將來は成べく政府に是等を統一しようと云ふ御意思のあることは窺はれる譯でありますが、是は當然政府に統一をさるべきであると私は考へて居りますので、是非之を一元的統一——此の補助貨幣竝に小額紙幣、日銀券と云ふものは總て是は政府でやるべきだと云ふことを考へて居る爲に、統一願ひたいと云ふ希望を附加へて御尋ねした譯であります、其の次に私の質問申上げた此の今の素材の不足して居る時に、總ての國家再建をするのには、色々斯うした素材が必要だ、特に農村方面の農機具を作りましても、重要な部分の合金とか、或は磨滅する所にはどうしても合金が必要であります、それすらもやはり物をやらなくては農機具を作つて呉れないと云ふ現状にある爲に、斯うした貴重なものを都合が好いから便利だからと云ふことで行くよりも、先づ國家の再建が出來てから——多少不便であつても先づ此の小額紙幣に依つて暫く苦痛をしても、不便はあつても、それに依つて行ひ、何とか生産能力が出來てから逐次變へて行くと云ふことの方が、私は非常に國家の總ての消耗を再建すると云ふ大きな生産的見地から質問申上げたのであつて、便不便から之をする、勿論其の方が便利でありませうけれども、私と致しましてはさうした素材が若し餘裕があるなら、之を生産方面の素材に——之を機械器具方面に振向けて貰ひたいと云ふ意味を強く持ちまして、茲に質問したのであります、之に付きましてさうした便不便から必要であるか、それともさうした増産方面の機械其の他に振向けると云ふことが必要であるか、之に付て何か一つ御考へを御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=8
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009・上塚司
○上塚政府委員 先程理財局長から申上げました通り、小額紙幣は元來非常に耐久力が短かいのです、其の結果紙幣の磨滅破損と云ふのが激しいのでありますから、度々印刷をする必要がある、其の手數を省く爲に硬貨に變へたいと云ふのが、今囘硬貨に變へる所の趣旨の一つであります、而も軍需方面の要望が段々少くなつて、眞鑄の供給状態も餘程緩和されて來た此の際に於て、出來るだけ硬貨に變へたいと云ふことでありまして、農村へ出す所の農機具の問題とは別に考へて、斯樣に決定したやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=9
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010・坪井亀藏
○坪井委員 其の點は了承致しました、次に政府としては今度斯うした措置に依りまして、通貨を茲に新造すると云ふことを決意された譯でありますが、實際今の總ての物價面から見まして、果して此の通貨が國民に取りまして、現在の物の賣買に付てどの位役立つて居るか、恐らく物は一つの物を買つても單位が五圓以下のものは殆どない、今少くとも殆ど總ての物は一圓以上になつて、それより安いものは殆どない、して見ると此の煩を省く上に於て、五十錢、十錢或は五錢と云つたやうな小額券と云ふものは、是は寧ろ私は今の現状では殆ど役立つて居らぬ、斯う云ふやうに考へて居る、今の物價から比較して斯う考へるのでありますが、併し政府は成べく是は小額にして置いて、やはり「インフレ」を防止しようと云ふ政策を持つて居るとは思ひますけれども、それは今の實情に即して居らぬと思ふ、是等に付て「インフレ」と此の小額紙幣と、斯うした貨幣に付ての關係を現實の問題としてどう考へて居るか、私としては殆ど現在に於ては、是は非常に造る手數が掛り、尚ほ又實際の運用面に於て役立つて居らぬと思ふ、併しながらやはり一圓或は五圓、十圓と云つたやうな段々大きな紙幣或は貨幣なれば、結局單位が大きくなつて行くから、「インフレ」を助長する虞があると言はれるけれども、どうも現状としては、我々として斯うした補助貨幣或は補助紙幣、日銀券と云ふものは殆ど役立つて居らぬと考へますが、私と致しましては所謂政府の施策宜しきを得れば、決して此の前の封鎖のやうな大失敗はしなかつたのではないか、斯樣に考へて居る譯であります、結局其の貨幣を巧く活かして使ふと云ふ點から見て、私は現在五十錢以下のものは全く死んで居るやうに考へる、將來之をどう云ふ工合に「インフレ」と結び付けて活かして行くかと云ふことを一つ御聽かせ願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=10
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011・上塚司
○上塚政府委員 今坪井君の御質問に依りますと、小額紙幣は餘り使はれて居ないと思ふがと云ふ御話でありましたが、統計を見てみますと十錢、五錢の小額紙幣は非常に需要が増額致して居ります、殊に五十錢は過去五箇年位の間に三倍近くの流通を致して居ります、殊に金融緊急措置令が出まして以來、五圓紙幣を急速に無效と致しました結果、五十錢の紙幣が非常に需要を増加して來たのであります、現在は相當に役立つて市中に使はれて居ると思ふのであります、併し是は明年度以後に於きまして、出來るだけ囘收する考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=11
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012・坪井亀藏
○坪井委員 只今の御話に依りますと、非常に五十錢は統計的にも多く使はれるやうになつた、使つて居ると言はれますが、是は五圓を止めて五十錢を多く放出したからである、所謂使ふのではなくて使はしめたと云ふ現状にあるのである、實際私共が日常使ふのには五圓も欲しい、何とか五圓を殖やして貰ひたい、或は一圓紙幣も殖やして貰ひたい、一圓五十錢の買物をする時でも三枚出さなくてはいかぬ、五圓では五十錢を十枚數へなくてはいかぬと云ふのであるから、五圓又は少くとも一圓を多く出して欲しい、それから五十錢の方は一圓の半數、即ち一圓五十錢とか二圓五十錢とか云ふことになりますから、殆ど是は一圓紙幣の半分又は三分の一もあれば用が足りるのではないか、現在の状態から見てさう云ふ風に考へる、そこで「インフレ」問題に一切觸れて居らぬが、やはり私は基準と云ふものを五錢、十錢、或は五十錢と云ふ小額のものに置けば、隨て政府は「インフレ」と云ふものが防止されるから是が必要だとして居るのではないかと云ふ考へもあります、其の爲に結局單位を大きくして置けば大きく使はれるから、「インフレ」になるのではないかと云ふ考へを持つ爲に、其の點を御伺ひしたのでありますが、此の「インフレ」關係に對する小額紙幣、貨幣がどんな影響と言ひますか、關係を持つて居るかと云ふことを先程御尋ねしたが、まだ其の御囘答がない、少くとも私は統計上多く使はれて居るのでなくて、出したから已むを得ず使つて居るのであつて、是は實際國民の間に於て非常に不便を感じて居る、少くとも五十錢をもつと減らして、一圓紙幣、五圓紙幣を使つた方が宜いではないか、斯う私の見解では考へられるが、此の點如何に政府としては考へられますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=12
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013・櫛田光男
○櫛田政府委員 私から御答へ申上げます只今の五十錢の小額紙幣の流通状況は、御手許にございまする補助貨幣、小額紙幣、小額日本銀行券流通高調と云ふ表がございますが、そこにある通りでありまして、五月末に於きまして五十錢の小額紙幣は九億八千八百萬圓、約十億圓に近い數字を現に示して居ります、此の理由に付きましては、只今御指摘になりました通り或は五圓、或は一圓、さう云ふものが少い爲に五十錢の需要が殖えて居るのであつて、實際は五十錢の需要がそれ程ないのだ、斯う云ふ風な御意見もございました、確かにさう云ふ點も私はあらうとも存じて居りますが、同時に五十錢に對して需要がありますことも事實でありまして、色々な意味で何圓五十錢とか云ふやうな半端な値段と申しますか、寧ろそれが正常の値段として付いて居るのも相當にあらうと思ふのであります、隨ひまして此の九億八千八百萬圓と云ふ需要が、色々な意味に於きましてやはり本當の需要になつて居るのだと云ふことを、私共發行當局と致しましては見ざるを得ないのでありまして、是の需要がありますに拘らず、それを減らして行くとか、或は別の方に置き換へると云ふやうなことをやつて行きますことは、却て事實に合はない、歪められたことになるのぢやないかと存じまして、此の小額通貨の發行自體に付ては色々な計畫を立てて居りますが、此の數字と云ふものを睨んで居る譯でごさいます、只今御指摘のありましたやうな問題は、別に日本銀行の印刷計畫の問題になつて參ります、五圓とか一圓とか申しますものも、相當刷ることに致して居ります、是は又印刷を致します場合に日本銀行券、詰り何と申しますか、圓以上のものに相成りますと、相當高級な印刷を致さなければならぬと云ふ關係がございます、と云つて錢單位の小額通貨の方を粗末な印刷をすると云ふ譯ではございませぬが、やはり一工程殖やすとか、二工程殖やすとか云ふ手數を掛けたものに相成つて來る譯でありまして、非常に總體的に見ますと手間が掛つて、案外に五十錢を刷つた方が宜いか、或は一圓を刷つた方が宜いか、或は便宜の點から言ひますと、一圓の方がもう少し多い方が宜いと思はれる所があつても、絶對の量を造る場合に、生産の部面から申しますと、五十錢の方が宜かつたと云ふ場合がありまして、今御指摘のやうなことになつた譯でございます、そこを能く御諒承願ひたいと思ふのでありますが、尚ほ仰しやいます通り「インフレ」との關係に於て、五十錢と云ふ通貨を活かすやうな工合に、出來るだけの施策をしろと云ふ點は、全然御同意申上げたいと思ふのであります、出來るだけさう云つた「ライン」で、五十錢を今後とも發行して行きます以上は、それが國民經濟の中で非常に重大な役割を占めて、其の本來の目的を達し得られますやうに、色々な點でやつて行きたいと考へて居ります、又さう行くことを希望して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=13
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014・坪井亀藏
○坪井委員 只今御囘答を得まして、其の點は諒承しましたが是は唯單に今囘の臨時通貨に於て、特に十錢、五十錢と云ふものを増額すると云ふことが必要であるとするならば、當然のことではありまするが、斯うした總ての通貨は、一貫性を持つて居るものでありまして、隨て政府と致しましては此の「インフレ」から見ましても、之に現在の物の價格と云ふものから見ると、私が先に言つたやうに殆ど役立つて居らない、五十錢以下と云ふものが殆ど役立つて居らないやうに考へられます、併し是は成べく「インフレ」を防止すると云ふ施策を、政府に於て執られることは當然のことと存じまするが、一貫して貨幣と云ふものに一大關係を付けてやると云ふには百圓或は二百圓、或は千圓と云つたやうな大きな紙幣になるのでありまして、取引の單位、賣買の單位と云ふものが、今の物價から見ますると、十圓、百圓、千圓と云ふものが非常に多く使はれて居りまするが、「インフレ」を一つ通貨に於て抑制しようと云ふならば、成べく是等の額の多いものは之を引下げてしまふ、之に依つて幾分「インフレ」防止にもなりはしないか、結局通貨は一貫性を持つべきだと、斯う私は考へます、唯五十錢が困つたから五十錢を殖やす、十錢が困つたから十錢を殖やすのだと云つた、單なる臨時的にのみ行ふべきではなく、政府としては一貫性を以て、總ての通貨に付て考へるべきだ、又それが爲に「インフレ」に對しまして、成べく百圓、二百圓、或は千圓と云つたやうな大きい額のものは之を引下げる意思ありや否や、之を引下げることに依つて、相當支出の面に於て、所謂使ふ上に於て活かして使へるぢやないか、已むを得ず大きいものがあれば、どうしても手に餘計持つて居れば出してしまふ、餘計使ふ、又餘計出れば隨て「インフレ」となる、此の點を一つ一貫性を以ちまして、將來どう云ふ通貨の統一を圖つて行くか、或は發行して行くかと云ふことに付て、今日の此の臨時通貨と關聯致しまして、一貫性を持つた將來の方針、尚又「インフレ」に對しましての大藏大臣の御所見を拜聽致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=14
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015・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 此の際一寸申上げます、大藏大臣が十一時十分までに次の會場へ行かなければなりませぬので、大藏大臣に對しまする質問を先に御願ひしたいと思ひます、隨ひまして時間がありませぬから、どうぞ要旨だけ述べて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=15
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016・石橋湛山
○石橋國務大臣 實は御質問を途中から伺ひまして、はつきりしない點があるかとも思ひますが、無論「インフレ」の防止には通貨の側面の工作を要しますので、御話のやうに通貨の中の五十錢とか一圓とか云ふものを切離しては考へられませぬから、全體としての通貨發行高と云ふものに付ての施策を執らなければならぬと思ひます、併し唯物價の全體の水準を下げると云ふ意味だけが所謂「インフレ」對策であるならば、通貨を引締めればそれで事柄が濟む譯でありますが、今日の場合は此の物價騰貴が、一面に於て飢饉物價となつて居る状況でありますから、私は無論通貨を放漫にして宜いと云ふ譯ではないのでありますが、どうしても生産の方を第一に考へなければいかぬ、全體の水準が下りましても、今のやうな生産の状況でありますと、其の下つた水準の中で、食糧が高いとか何が高いとか云ふ、詰り各個人の國民の收入も減る、其の收入が減ると同時に、物價も下るでありませうけれども、やはり其の收入に比較すれば高い物價になる、斯う云ふ結果を今日の場合は來すと考へて居ります、ですから私が本會議等で増産の方を第一に努めないと、今日の「インフレ」の防止は困難だと申上げました理由は、そこにある、平時非常に景氣の好い場合に起つて居る「インフレ」と、今日の「インフレ」とでは、其の對策を多少異にしなければならぬ、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=16
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017・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 昨日坪川君から特に大藏大臣に對して質疑の通告があります、其の際時間がありませぬので、坪川君に發言を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=17
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018・坪川信三
○坪川委員 御多用中大藏大臣の御出席を煩しまして洵に恐縮でございます、極く簡單に根本的なる問題に付きまして、短く御尋ねを致したいと思ひますから、御諒承願ひたいと思ひます
通貨膨脹が四百二十五億圓を突破して居ります現在、問題は通貨の流通よりも、放出されましたる通貨が出つ放しで、所謂金融機關に還流しないことであります、又流通速度が非常に増しつつあることであります、更に通貨の偏在も亦注目すべきものであります、即ち都市に近接した農村方面とか、或は生活必需物資の製造販賣業者などに集中致しまして、他の方面には通貨飢饉とも云ふべき現象を起して居るのであります、此の點に付きまして通貨に對する信用の動搖、或は物資の不足と値上りが根本的原因をなして居ると思ひます、私は此の通貨の信用囘復が、先決問題になるのだと思ひますが、之に對する大藏大臣の御方策如何、例へて申すならば所謂富籤とか、或は寶籤のやうなものの活用、或は其の他の方法で、資金の吸收方策を終るかどうかと云ふことを、御尋ね致したいのであります、是が第一點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=18
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019・石橋湛山
○石橋國務大臣 通貨が出つ放しで廻流をしないと云ふことは、御説の通りであります、それから流通速度のことは、實は十分の調査も行屆かない譯でありますが、案外退藏をされて居る部分もありますので、流通速度は案外低いのではないかとも思つて居るのであります、併し何れにしても通貨が出つ放しで、銀行に廻流しないと云ふことは、非常に不健全なことでありまして、退藏されて居るにしても、通貨に對する信用と云ふよりは、通貨には寧ろまだ信用があるのでありますが、政府が今後何をするか分らぬと云ふやうな不安から、退藏されて居るのではないかと思ひます、そこでさう云ふことに付ては、例へば新圓に付ては絶對に封鎖しないと云ふことを我々は言明して居る譯でありますが、まだそれが國民の間に十分徹底せず信ぜられないことを遺憾と致しますが、是は一面に於て經濟界の整理を相當に行ひまして、或は金融機關等の信用も十分確立致しまして、同時に、今御話の寶籤等ばかりでなく、もつと預貯金を吸收する方策を強力に金融機關等を動員してやつて行きたい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=19
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020・坪川信三
○坪川委員 大臣が屡次に亙りまして發表なさつて居られます談話等を拜見致して居りますと、「インフレ」對策、通貨膨脹に關して重要なことは、生産を増強し且つ前途に對する國民の不安感を除去するにあると云ふことをいつも仰しやつて居られますが、之に對して私は大藏大臣に異論を挿む者ではありませぬが、換言すれば、均衡を失ひ又支離滅裂になつて居ります、日本の經濟を如何に又再び健全なる有機的なる國民經濟に復舊するか、其の方策如何でありまして、自由放任に依りまして生産の増強を望むことは可能であるかも知れませぬが、併し時が掛ると思ひます、私は日本の「インフレ」は時を待ち切れない程切迫して居るものと思ひます、此の不可避的な「インフレ」を最小限度に御止め戴くには商品の流通を増加するにありますが、現實に於ては生産は一向に再開されて居りませぬ、さうして私は此の生産に關しましても生産出來得ない、状況になつて居るのではないかと思ひます、例へて申したならば、其の理由と致しましては、企業もまだ徹底的に整理されて居ないと云ふこと、或は原料とか資源が極度に枯渇して居ると云ふこと、或は金融制度がまだ徹底的に改革されて居ない、斯う云ふやうな面から致しまして一向生産と云ふものは上らないのぢやないか、又一方では日銀券がもう四百五十億圓を突破して居ると云ふやうなことになつて居ります、又一方に於ては米の遲配は一箇月以上にも上つて居る、國民の大多數は闇物資を買つて居る、此の闇物資を買つて五百圓生活は營み得ないのであります、更に運賃とか煙草とか或は郵便、總てのものが値上つて居りまして、家賃とか月謝とか或は醫療などが封鎖支拂を許されましても、國民の五百圓生活は可能でないのであります、之に對して國民の生活を保障する爲の愼重なる大藏大臣の根本的なる御考へを承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=20
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021・石橋湛山
○石橋國務大臣 中々大問題でありまして、時間が非常に少くて十分の御答が致し兼ねるのでありますが、今の生産を増さなければ「インフレ」の防止が出來ないと申しましたことは、先程も一寸申上げたやうに、今日の「インフレ」の形は、生産が非常に増加して其の上に通貨が膨脹したと云ふのでなく、種々なる物が不足して物價が高いと云ふ面が非常に多いのでありますから、單に通貨の收縮だけでは旨く行きませぬので、どうしても生産の増強を第一の條件にしなければならぬと考へますが、御話の通り生産を再開することは困難でもある、其の困難の證據は今まで遲遲として進まないことでありますが、兎も角も大藏省關係の問題としては、御話の中にもありましたやうに、現在の企業の經理面の整理、金融機關の整理、それ等のことをやりまして、さうして企業が經理上から再出發することの出來る基礎を一つ速かに作りたいと今努力して居ります、尚ほ資材等のことも、是は言ふまでもないことで、敗戰後の今日不足であることは勿論でありますが、併し現在國内にありますものでも、本當に經理面が整理されて各企業が活動出來るやうになれば、或る程度の繋ぎの資材は相當にあるのではないか、其の内に貿易も出來る譯でありますから、其の方面からの處置も執れるのではないか、其の點は決して樂觀ではありませぬが、やれる方策は必ずある、斯う云ふ風に信じて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=21
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022・坪川信三
○坪川委員 大臣非常に御急ぎのやうでありますから、之に付て關聯的な質問は止しまして、最後に一點だけ御伺ひしたいのでありますが、所謂此の新圓が放出されまして、日本の經濟の復興は唯徒らに遲延し、更に企業、銀行等の大量の破産が現出しまして、日本の經濟は深刻なる恐慌を來す虞があると思ひます、此のやうに越え難い所の、何か知れない矛盾と云ひますか、苦惱と云ひますか、此の中にありまして大藏大臣は、利潤とか或は生産手段に對しまして、所謂私有を或る程度無視しても企業とか或は金融の徹底的整理を急速に且つ計畫的に御進めになりますやうな御考へがあるかどうかと云ふことを最後に御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=22
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023・石橋湛山
○石橋國務大臣 私は今の所では私有財産を無視すると云ふ所までには考へて居りませぬが、無論企業に依りましては、例へば或る程度まで國家管理を必要とする、さうしなければ増産は出來ないと云ふやうなものは其の程度まで進んで結構だと考へて居ります、それから此の企業の經理上の整理或は金融機關等の整理は、是は成べく早い機會に徹底的に行ひたい、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=23
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024・坪川信三
○坪川委員 是で一應打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=24
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025・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 坪井君——簡單に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=25
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026・坪井亀藏
○坪井委員 簡單に致します、大藏大臣に御尋ね致します、通貨の膨脹に依る惡性「インフレ」が非常に増し、國民の恐怖の的となつて居ります、此の前の封鎖は全く大失敗であつたと國民又我々は考へて居ります、之に付きまして先程大藏大臣は、新圓封鎖はやらない方針だがまだ一般によく知られて居らぬぢやないかと言はれましたが、私は、此の前はなぜ失敗したかと云ふ原因は、是は財産税の發表を早くした爲に資本家は殆ど封鎖前に物に換へてしまつた、物を買占めた、隨て物がなくなつて、今度は封鎖をしてから物の價格が數培に上つて、新圓で物を賣つた、結局資本家がそれに依つて多くの利潤を得た、財産税の對象も、殆ど現金の大半は物になつて居つたから、つい根據を失つてしまつて居る、隨て其の物が金になつた新圓に於て又特定者が物の買占をやつて「インフレ」に拍車を掛けて居る現状ぢやないか、どうしても此の「インフレ」防止、國民生活の安定をする上に於ては是は今一度再封鎖を斷行することが私は必要であると思ふが、大臣としては是はやらぬやうに言はれて居りますが、私はどうしても是はもう一度再封鎖をしなかつたならば決して此の惡性「インフレ」を防ぐと云ふことは出來ないと思ふ、併し大臣の見解は、之をやれば結局資金の放出が出來なくなり、生産が非常に減退をして、其の影響が大きいではないか、もう少し各機關の整備をしてからと云ふ風に窺はれて居りますけれども、さう云ふ點であるならば、私共此の増産資金はどしどし一つ或る限度を逸脱しても放出願ひたい、さうして生活に必要なる生産に付ては限度を大幅に一つ引上げて行つて此の放出を願ふことが全く生産の増強になり國民生活の安定になる、一面に於て「インフレ」と云ふものに付きましても、今一度再封鎖をやると云ふことが必要だ、斯う私は考へます、此の點に付て御所見を伺ひたいと思ひます、尚又……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=26
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027・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 時間がないやうですが、大臣の答辯はそれだけではいけませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=27
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028・坪井亀藏
○坪井委員 それでは以上にして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=28
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029・石橋湛山
○石橋國務大臣 御言葉でありますが、現在の新圓を再封鎖する、さうして又新しい封鎖預金を作ると云ふことは、是は恐らく其の弊害の方が多いだらうと私は考へて居るのであります、それよりはもつと他方の整理を致しまして、自然さうすれば通貨と云ふものも減つて參る筈でありますから、先づ經濟界全體の整理を進行させまして、新圓と云ふものに付ての流通が滑らかになるやうな方策を講じて行きたいと考へて居る次第であります、さう云ふ御言葉のやうな再封鎖説があるものですから、色々恐怖も與へるでありませうが、私はさう致さずにやはり通常の銀行其の他の金融機關の活動に依つて、之を吸收する方法がある、斯う云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=29
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030・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 大臣に一言申上げて置きますが、何に致しましても僅か十五分では本委員會の委員の御質問がどうも極めて時間がないので出來ないと思ふのですが、次會には是非もう少し時間を藉して戴きまするやうに御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=30
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031・坪井亀藏
○坪井委員 大臣がどうしても他に用があると云ふことですから、次官に御尋ね致したいと思ひます、只今大臣も申されて居るやうに、どうしても現在は通貨の膨脹よりも物を増産させると云ふことが必要だ、之に依つてやはり安定をして行かうと云ふ御見解のやうでありますが、私共現在のやうな資金の封鎖されて居る、特に一般國民一箇月一人百圓を以て封鎖支拂が出來る譯ですが、農家に此の百圓が認められて居らないと云ふやうな現状であつては、増産に一大支障を來す、總て農機具、或は家畜、或は肥料、飼料、斯うしたものを買ふ上に於ても非常に農家としては不便を感じて居りますので、結局是が通貨と云ふものに大關係を持ちますので、特に農村に於ては現金收入が非常に少い、尚又配給される物資は一般同樣に購入して行かなければならぬ、斯う云ふ時に於て是は少くとも農家にも同じやうに封鎖支拂を認めて貰ひたいと思ふが、此の意思ありや否や
次に政府は對鎖支拂に依りまして増産資金と云ふものは、それぞれの國家再建に重要なる資金に付ては、尚ほ再檢討を加へて其の限度を大幅に引上げる意思ありや否や、是が唯口で色々大臣始め増産が先だと言はれましても、實際に於てそれを放出して枠を外して貰はなければ増産が出來ないと云ふ現状に在る時に、それを大幅にやる意思ありや否や、例を擧げれば鷄に餌を呉れずに卵を産めと言ふ如き言辭ではどうも我々は物足らない、本當に増産或は生産を必要とする其の資金であるならば、大幅に必要缺くべからざる範圍に於て限度を引上げて貰ふ、之に付て意思ありや否やと云ふことを御尋ね致したいと思ひます
尚ほ政府は政府自ら直營して居る事業其の他に於きまして勞働賃金とか色色大幅に引上げをして行く、之に依つて資金がどんどん放出される、隨て此の放出された金に依つて、尚又生活必需品の購入に伴ふ「インフレ」は益益日を逐つて激化して行くと云ふ現状に在る、政府自らが「インフレ」の範を示すと云ふことは、何と申しませうか、五百圓の限度を決めて置きながら、如何に待遇を改善しても、それ以上は使へぬのではないかと私は考へます、結局眞に一人百圓、一箇月五百圓と云ふ限度が實際に必要なものであるならば——國民の生活の安定と云ふ點から見れば、實際是では安定して居らぬと思ふ、赤字だけのものは、どうしても待遇改善と相俟つて五百圓の限度を殖して貰はなければ、現在國民生活の安定が出來ない、實際五百圓でやれぬものをやれと言ふのは、是は無理を強ひるものであると私は考へます、此の通貨に付て此の限度を政府に於て愼重に考へられて居るか否か、又將来どう云ふ方針で之を處理して行くかと云ふことに付て御伺ひ致したいと思ひます、大體以上であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=31
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032・上塚司
○上塚政府委員 御質問の第一の農家の生活資金のことでありますが、是は五百圓の枠内に總ての人々を置くと云ふことは非常に無理だと思ひます、併し農村に於きまして特に認めなかつたのは、都會地方とは違つて多少の食糧を持つて居りますし、現金に付ても幾らか餘裕を持ち得ると考へて左樣に決定した次第であります、肥料とか或は其の他の特殊のものに付きましては封鎖支拂を認めて居るのであります、出來るだけさう云ふ意味に於て緩和したいと云ふ考へを持つて居ります
第二の増産資金に付ての封鎖拂を出來るだけ緩和して貰ひたいと云ふ御話でありますが、之に付きましては最近も通牒を出しました通りに、生産資金に付きましては貸出と云ふ方法を採りまして、其の生産が産業の發展の上に大いに必要だと云ふものに付きましては、特に寛大なる方法を以て銀行をして貸出さしむると云ふ手段を採つて居るのであります、それに依つて大體資金の需要に應ずることが出來ると考へて居ります
第三の勞働賃銀の放出が「インフレ」を増す原因になつて居りはしないかと云ふ御尋ねでありましたが、是は勞働者の働きに依つてどんどん生産が増して來ると云ふことになりますれば「インフレ」の原因にはならないと思ひます、結局は其の勞働賃銀が直ぐ物に生産せられて行くかどうかと云ふことに懸るとさう考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=32
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033・坪井亀藏
○坪井委員 先程の第一點の御答へでありますが、農家は色々現金が入るものとして、一般とは違つて封鎖支拂が認められないと云ふ御話でありますが、現在の生活から見ますと、農家は殆ど供出を公定價格で致しまして、食して後の殘りは販賣するものは僅かでありまして、殆どないのが通例であります、さうした現状から見て農家自體に於きましても教育或は其の他色色——最近は變つて月謝其の他も封鎖支拂を解かれたやうであるますが、さうしたことは微々たるものであつて、私の申上げるのは肥料は先程勿論宜いと言はれますが、農機具或は家畜と云つたもの——馬一匹買ふにしても一萬圓出さないと現在は買へない、或は牛の七、八千圓であるとか或は「リヤカー」の四、五千圓であるとか云つたやうに、簡單な農機具を買ふ場合に於ても或は又家畜を買ふ場合に於ても非常な金が要る、斯うした物を農家は自分の金を持つて居りながら貸付に依つて、所謂借金で之をやつて行くと云ふやうなことは、是は合法的でないと思ふ、一般の企業にさうした方法を採ると言はれるならば兎に角、農村にはさうした方法では拙いと思ひます、金を持つて居る農村であるのだから、所謂食糧増産を目指す時に於ては、それに必要缺くべからざるものに付ては當然封鎖支拂を解いて戴く、枠を外して貰ふと云ふことが當然のことだと私は考へます、是は政府は御認識がないと云ふか、見解が餘りにも——唯聲を聞いただけでやれ農家は闇をやるから金が入るのだと云ふやうなことで、單純に考へられまするが、農村としては大迷惑をする、増産ばかりではなく、供出に對しても是等のことが非常に影響を齎して居る、戰爭中農村は全く供出攻めに遭つて居る、尚ほ今後もどうしても農民の道義に愬へて之を供出さして行かうと云ふ時に於て、前申したやうなことは非常に精神を沈帶させる大きな原因になりますので、是非とも生活費に付きましても一般並にして貰ひたい、尚ほ又さうした主要なる農具等の資金は是非とも之を御認め願ふやうに政府としてやつて貰ひたい、是は必ずさうしなくてはならないものだと私は痛感して居ります、是等の點に付て御答へ願へるなら御伺ひしたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=33
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034・上塚司
○上塚政府委員 今御話の農業資金の中で牛馬等の買入れに要する資金に付きましては農林省の方と今話を致しまして、其の全額でなくとも慥か半分位は現金に依つて支拂の出來るやうに決定致したと考へて居ります
それから農機具に付てはまだはつきりしたことはありませぬが、何れさう云ふことに付きましても、農林省と十分に打合せを致しまして出來るだけ御希望に副ふやうに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=34
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035・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 坪井君に申上げますが、御質疑はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=35
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036・坪井亀藏
○坪井委員 以上です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=36
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037・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 次に通告順に依りまして田村定一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=37
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038・田村定一
○田村委員 私の聽かんとする所は坪井君に依つて大半聽かれたのでありますが、私が第一番に御聽きしたいのは、先程政務次官でありますか、今の通貨五十錢、十錢を今度拵へるに當つて、重要資源である眞鍮其の他が相當豐富にあると云ふ風に言はれたと思ふのであります、私は今日眞鍮其の他が産業上なくてはならぬことは無論政府と同感でありますが、此の五十錢、十錢の通貨を發行されるに當つて幾らの推定量が要るか、又今日多分にあると申されました眞鍮其の他が日本にどれ位あるか、推定量で宜しうございますから御聽きしたいのと、隨て私は工業地帶に居りますが、石炭其の他に必要なる所の機械器具を拵へるに當つて、眞鍮類が足りないと云つて盛んに悲鳴を上げて居るのであります、さうした點から考へまして、先程大藏大臣も今日の「インフレ」を防止するのは産業の増産にあると云ふことを言はれたやうでありますが、さうした資材がなくして重要産業の根源をなす石炭が今日取れない、其の原因は幾つもありますが、さうした資材難にも原因するのでありますが、若しさうした眞鍮類が相當數量あるとするならば、それを重要産業に御廻しになる意思があるかどうか、今の五十錢、十錢の通貨を何年掛りでどれ位御拵へになるのか、其の量と、それに關聯して今日百圓、十圓或は二百圓と云ふ紙幣が發行されて居るのでありますが、是等が今日の新聞を見ますと四百二十幾億放出されて居ると云ふ風に出て居つたのであるますが、舊圓封鎖と同時に新圓拂出に當つて本當に新しい札が出たのもあり、又御承知のやうに證紙で之を補つて居ると云ふ關係上、今日尚ほ其の證紙が貼附してある爲に往々にして證紙を失つたり或は色々の取引に於て國民は其の證紙を數へる度に非常に苦勞して居る、其の證紙を貼つた金を一體何時頃までに新圓と取換へるのであるか、急速にやるとすれば何時頃までにそれが完了する見込みかと云ふことが第一點、それから今の坪井君の申されて居つた勞働者或は「サラリーマン」諸君の五百圓生活でありますが、是は政府の言に依りましても、無論我々の考へでも、色々「インフレ」の助長になると云ふことが原則であるかの如くに見えるのでありますが、今日本當に五百圓の新圓で生活が出來るかどうかと云ふことは、政府當局でも御自身に體驗になつて居ると思ふのであります、今日勞働者諸君が五百圓の新圓を貰ふ、隨て家族三人居つて五百圓しか入らないと云ふ場合には、事實上生活は出來ないのであります、隨て色々な點に於て不便を感じ、假に私自身は今日戰災後商賣して居ない、さうすると五百圓しか實際に於て出せないと云つた場合、五百圓では實際にやつて行けないと云ふ現實の問題として、私はさうした現實に家族が三人も四人も居つて一人しか働けない人に對しては、或は又五百圓しか出せないと云ふやうな者に對しては特殊扱ひをする意思が政府にあるかないかと云ふことと、もう一つは戰災者であります、戰災者でも今日職を失ひ或は色々商賣を失つて居る、隨て幾分か溜めて置いた所の金を五百圓宛出して商賣しようにも、或は何も資金がないと云ふやうなことで、ぢり貧で結局なくなつてしまふと云ふやうな状態があり、又戰災者に幾分かの金が、著物を買ふとか或は又家財道具を買ふ場合に於て出せることになつては居るものの、事實上今日の物價高では、政府の指令して居る通りでは買へない状態なのであります、現實に東京はどうか知りませぬが、私の方の土地でも今年の冬なんかは浴衣で越した人間も相當居るのであります、總ての配給物には最近では現金を出すことが出來るやうになつて居るのでありますが、其の配給と云つても微々たるものである、さう云つた點に於て必要缺くべからざる戰災者に對しては、相當大幅に資金を封鎖預金から政府は出して貰ひたいと思ふが、さう云ふ意思は全然あるかないかと云ふ點、以上を御聽きして見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=38
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039・上塚司
○上塚政府委員 今の第一の御質問の眞鍮の所要量に付きましては、今ちよつと書類に依つて調べまして、御返答致します
それから銀行券の證紙の問題でありますが、是は出來るだけ早く證紙の紙幣を囘收して一元に致したいと云ふ考へを持つて居りますが、只今の所では八、九月頃には囘收を終りたいと云ふ考へで居ります
それから第三の職のない人に對する五百圓以上の封鎖の解除でありますが、是は其の人々の事情に應じまして御相談に應じてそれぞれ決定致して居りますが、出來るだけ戰災者等に付ても、引出して、商賣でもすると云ふやうな場合には、其の事情を承りまして、其の場合々々に依つて決定して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=39
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040・田村定一
○田村委員 政務次官の御答へに依ると、戰災に遭つた者は其の生活の程度に依つて或は出せる、或は商賣も其の場合に依つて相談に應ずると云ふやうなことを今言つて居られたやうでありますが、地方の金融機關、或は又さうした方法は我々はつきり知らない、國民も無論知らないと思ふのでありますが、さう云ふ便法がありますれば、地方の金融機關或は又其の他の機關を通じて宜しく國民に御指導を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=40
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041・櫛田光男
○櫛田政府委員 先程の所要眞鍮量の問題に付てでありますが、大體本年度に於ては約三億圓の五十錢を造る計畫で居ります、それに必要な眞鍮が約二千「トン」に相成ります、是は造幣局で既に手當濟みなのでありますが、關係方面、それから或は商工省でありますか、さう云ふ方面と十分に相談して、全體の經濟の枠の中で、是は大丈夫であると云ふことで、それだけを造幣局の方で今用意して居る、斯樣になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=41
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042・田村定一
○田村委員 私が伺つたのは結局今の眞鍮などは無論大藏省關係ではないかも知れぬが、さうした重要産業に必要缺くべからざるものである、隨て「インフレ」を防止するにしても現在の産業を勃興させる其の根源をなす石炭關係の方面に於ては、さうした資材がなくて困つて居ると云ふ點を御認識になつて、各方面とも御相談の上、餘つて居ればそれをさう云ふ重要方面に廻して貰ひたいと云ふことの希望を申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=42
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043・坪川信三
○坪川委員 本日は是にて質疑を打切られまして散會し、明三日午前十時より再び質疑を續行致されんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=43
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044・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 坪川君の御意見に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=44
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045・荒舩清十郎
○荒舩委員長代理 それでは是にて散會致しまして、明三日午前十時開會、質疑を續行致したいと思ひます
午前十一時三十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013737X00219460702&spkNum=45
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