1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
臨時物資需給調整法案(政府提出)
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昭和二十一年九月六日(金曜日)午前十時五十二分開議
出席委員
委員長 竹田儀一君
理事 加藤一雄君 理事 小島徹三君
理事 塚田十一郎君 理事 原健三郎君
理事 宮前進君 理事 西村榮一君
理事 前田榮之助君 理事 石原登君
理事 疋田敏男君 理事 福田繁芳君
安部俊吾君 井田友平君
西村久之君 小野眞次君
小野孝君 田中源三郎君
田中實司君 瀧澤脩作君
山田善三君 山木正一君
馬越晃君 金光義邦君
鈴木周次郎君 鈴木明良君
坪川信三君 寺田榮吉君
川崎秀二君 加藤勘十君
金子益太郎君 加藤鐐造君
竹谷源太郎君 中崎敏君
山口靜江君 米山久君
大宮伍三郎君 河野金昇君
三木武夫君 伊藤恭一君
池上隆祐君 戸叶里子君
布利秋君
九月五日委員舟崎由之君及び江藤夏雄君辭任に付其の補闕として川崎秀二君及び西村久之君を議長に於て選定した
出席國務大臣
司法大臣 木村篤太郎君
商工大臣 星島二郎君
運輸大臣 平塚常次郎君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
司法事務官 佐藤藤佐君
商工事務官 吉田悌二郎君
商工事務官 玉置敬三君
運輸政務次官 松田正一君
運輸次官 平山孝君
運輸事務官 滿尾君亮君
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本日の會議に付した議案
臨時物資需給調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=0
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001・竹田儀一
○竹田委員長 大變御待たせを致しました、是から會議を開きます、此の法案は相當重大な法案であると思ひますので、委員諸君には十分御質疑を盡されて結構であると思ひます、政府當局に於かれても親切丁寧に一つ御答辯を煩はしたいと思ひます、尚ほ資料は成べく早く御提出を希望致します、大分澤山御要求のやうでありますから──先づ政府の説明を求めます──星島商工大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=1
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002・星島二郎
○星島國務大臣 臨時物資需給調整法の提案理由に付きまして御説明申上げます、我が國の産業の現状を見ますと、戰災に因る工場設備の甚大な被害、各種設備の老朽荒廢、原材料、資材の不足、物價高に因る生産原價の昂騰、終戰に伴ふ産業秩序の混亂等、諸般の惡條件が競合致して居りますと共に、相次いで生起する勞働爭議に依る不安も加はりまして、凡ゆる努力にも拘らず、其の囘復は遺憾ながら滿足すべき歩調を示して居ない状況であります、即ち各種物資の基礎をなす石炭に付て見ましても、戰爭中は年間約五千萬「トン」前後、月間約四百萬「トン」の生産を見たのでありますが、終戰直後は五十萬「トン」臺まで落ち、今日漸く百六、七十萬「トン」臺まで漕ぎ付けたと云ふ状況であります、然るに現在の状況から見ましても、月間少くとも二百萬「トン」餘の石炭はどうしても必要であると認められるのであります、又鐵鋼に付て見ましても、石炭不足に惱まされて、一、四半期四、五十萬「トン」程度の需要に對し、六、七萬「トン」程度の生産しか期待出來ない情勢でありまして、基礎資材が此のやうな状態でありますから、之を原料、材料とする他の工業の生産力が未だ十分の囘復を示して居ないことは、自ら推知出來ることと存じます
他方戰爭に因つて極度に逼迫せしめられた國民生活は、終戰後益益其の困窮の度を加へ、社會秩序の維持の爲にも、其の乏しきを救ふと共に、少いながらも必需物資の適正な配分を確保しなければならないのであります
以上の點から考へまして、現在直面して居る經濟危局を克服して、産業の囘復及び振興を圖ります爲には、どうしても各産業の基礎資材、見返り物資、食糧其の他民生安定の爲め必要な物資に關しては、重點的な計畫生産を實施して行くと共に、此の計畫生産を完遂し、國民生活を安定させる爲に、物資の合理的な配分を行ふことが緊急なのでありまして、是が爲には、先づ物資の需給に關する基本的な綜合計畫を策定し、之に基き各種の施策を法的な裏付を以て、臨機應變に實施する必要があると考へるのであります、是が本法案を提出するに至つた所以でありまして、本法は此の經濟危機を克服する爲の已むを得ぬ、併し絶對に必要な臨時措置であると考へて居る次第であります
本法案は御覽の通り實體的な規定は第一條と第二條との二箇條に過ぎず、其の體裁は極めて簡單であります、先づ統制の範圍でありますが、第一條に規定して居るやうに、物資の割當又は配給、物資の生産若しくは工事の施行又は物資の生産若しくは工事の施行の制限若しくは禁止、物資又は設備の讓渡、引渡又は貸與、此の三つの項目に付て必要な命令をすることを其の内容として居るのであります
次に統制の實施に付きましては、本法は經濟民主化の理念に一貫して居るのであります、即ち本法に基く命令の發動は、總て經濟安定本部總裁が定めた方策に基くことを絶對の要件として居りますが、此の經濟安定本部は、經濟界、學界から現職の儘部長、部員を採用すると云ふ劃期的な方法を執つて居るのみならず、經濟界、政界、學界、勞働界、關係各省の權威者より成る、經濟安定會議に依つて、事を決して行くこととなつて居るのでありまして、民主的な官廳の典型たるの名に恥ぢぬものであると考へます、斯樣な經濟安定本部の運用に依りまして、戰時中に於けるやうな統制の弊を排除すると共に、原材料、資材に付ては、十分に民間の創意と經驗とを尊重する必要があり、民間の産業團體等を極力活用して行くことが適當であると考へまして、第二條の規定に依つて、民主的に組織せられた産業團體に對して、當該産業の運營に必要な物資の割當を、實施せしめる方針を闡明して居るのであります、尚ほ政府の産業團體に對する關係に付きましては、民間當事者の自主性と責任とを尊重し、戰時中の統制法規に見たやうな無用の干渉に陷らないやう、特に留意して居るのであります
尚ほ詳細に付きましては、御質問に應じて御説明申上げることと致しますが、何卒愼重御審議の上、御協贊あらんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=2
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003・竹田儀一
○竹田委員長 是より質疑に入ります──山本正一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=3
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004・山本正一
○山本(正)委員 膳國務大臣に御尋ね致します、本法の性格に付きましては、本會議及び委員會を通じて其の民主性を御説明になつて居られますが、果して民主的に行はれるかどうかと云ふことが質疑の重點であらうと考へるのであります、そこで此の法文の中、何處の部分に此の民主性を理解すべきものがあるか、一應概括的に御示しを願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=4
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005・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ申上げます、法文の中に現はれて居りまする箇所はさう澤山はございませぬ、でありまするが、先づ第一番に、第一條に於きまして、總て本法の運用の根本の方針は、經濟安定本部總裁が之を命令する、此の安定本部の總裁の命令の後ろには、是は經濟安定本部の官制が示して居るのでございますが、先程提案理由の中に商工大臣より縷縷御説明のありましたる通り、民主的の組織を持ちまする安定會議が之を裏付けるのでありまして、此の點に於て、先づ此の本法が從來の官僚統制に陷ることのなきを期しまする大きな一つの目標をば示して居ることでございます、それから其の次には、第二條にもございますやうに、民主的に組織されたる團體に依つて割當等の事項が實施せられる、從來の統制團體は、御承知の通り、會長なり或は其の會の首腦部の所謂統裁と言ひますか、極く軍國主義的な、又獨斷的な、全體主義的な組織に基きまする團體が、各種の統制を行つて居つたのでございますが、是はもう全部解散を命ぜられまして、來るべき團體は總て──此の法文にも現はれて居りまする通り、此の物資配給の運營に當る團體は、總て民主的に組織せられて居る團體、斯う云ふ根本の計畫に於きましても、又實際の配當の運營に當るものに於きましても、民主的の組織に基いたそれに依りまして實行する、此の邊に本法の精神が現はれて居るものと了承致して居る譯であります、どうぞ御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=5
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006・山本正一
○山本(正)委員 稍稍具體的に質疑を進めたいと思ひますが、第一條第二號、第三號に依る損失補償に付きましては、單に損失を補償すると云ふだけの規定であります、其の査定の方法に付ては勿論、査定に不服のある場合の處置に付ても何等規定する所がないのであります、是は丁度切捨御免のやうな觀を呈するのでありますが、此のやうな行き方で民主性を何處に理解されるのであるか、了解に苦しむのであります、御意見を求めたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=6
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007・膳桂之助
○膳國務大臣 此の法文から御覽になりますると、今の御質疑洵に御尤ものことと存ぜられます、損失補償をどんな標準でやるかと云ふことは、是は自ら、從來斯かる場合に適應されまする原則的の觀念、詰り通常生ずべき損失を補償するのだと云ふ概括的の觀念はございまするが、具體的に如何かと云ふ問題に付きましては、從來のやうな考へ方でもいけない點もあらうと思ひますので、是は法文には現はれて居りませぬが、實際の運營と致しましては、民意を十分に酌み入れるが如き委員會の組織でも之に附屬致しまして、所謂官の獨善に流れないやうな、さう云ふ用意を致したいと存じて居ります、又不服の申出等に付きましても、自ら之を諮問すべき──是がどう云ふ形になりますかは、まだ腹案が固まつて居りませぬけれども、何等かの形に於きまして、單に官の獨善的な判斷に基かないやうな用意を致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=7
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008・山本正一
○山本(正)委員 更に第一條三項には、擔保權の處理其の他必要な事項は命令で定めると云ふことになつて居るのであります、此の問題は擔保權利關係者に取りましては、非常に重大な事項であることは容易に了解されるのでありますが、是が單に命令に包括的に一任されて居ると云ふことは、非常に民主性の立場からは理解に苦しむ點であります、御見解を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=8
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009・膳桂之助
○膳國務大臣 實は其の點に付ては、私は就任日淺く、研究が淺いので、誤つたことを申上げるといけませぬから、御許しを得て政府委員から申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=9
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010・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 擔保權其の他の權利が其の物の上に付いて居ります場合に、其の物を讓渡致します、又設備を讓渡致しますやうなことが起つた場合に、是等の權利を必要に應じまして消滅する場合があるのであります、さう云ふ場合に善處致します爲に、特別な勅令を設けて、勅令に依つて其の事項を定めたいと考へて居ります、勅令の要網に付きましては少し長くなりますので、別に文書に書きましたものを御配り致しまして御覽を願ひたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=10
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011・山本正一
○山本(正)委員 一々條文自體を指摘致しませぬが産業團體の決定する物資割當の決定に不服がある場合は、之を大臣に申立てると云ふことが規定されて居ります、要するに産業團體の物資割當の決定と云ふものは、命令であるよりも比較的民主的になつて居ると云ふことが理解されるのであります、民主的な機關に依る所の決定に對してすら、不服申立の途が開かれて居る、而も其の内容は物資の割當が多いか少いかと云ふ問題であります、一面財産の讓渡引渡、貸與と云ふやうな統一的な重大な財産權の處分、それに伴ふ擔保權利者の重大な權利の決定と云ふものが、全く命令に包括して委任されて居る、而も其の決定に對しては何等不服の申立の途も開かれて居ないと云ふことは、是はどう云ふ見解に基くものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=11
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012・膳桂之助
○膳國務大臣 此の點に付きましても答辯に誤りがあつてはいけませぬから、政府委員に代つて答辯せしめます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=12
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013・玉置敬三
○玉置政府委員 産業團體の不服でございますが、是は從來一率に實績でやるとか云ふやうな點もありまして、必ずしも政府の方針なり或は經濟の實態に即應しない場合がございますので、此の點に付きまして、其の不服を申出られる實情に即して判斷すべき要素が殘つて居るのであります、其の點に付て戰時中或は實績主義とか云ふやうな簡單な要素で一率に割當てた、斯う云ふ點に付きましては、實情に即した割當が出來るやうにやつて行く、それから擔保權の方に付きましては、是は大體に於きましては、其の當該業者間に於きまして協議決定して出すと云ふのが原則でありまして、其の決定に色々中味が纒まらないと云ふやうな場合に於きましては、是は主務大臣に申出る、主務大臣はそれに基きまして、色々決定をして行く、斯う云ふ順序になると思ひまするが、擔保權の問題に付きましては、詳細命令に掲げて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=13
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014・山本正一
○山本(正)委員 どうも御説明の趣旨がはつきり了解出來ない點があるのでありまぬが、國務大臣及び政府委員の御答への要旨は、是等不十分な點、言ひ換へれば、損失補償問題に付ては極めて民主的な組織に依つて、其の査定に參加させると云ふ御用意があると云ふことと、了解して宜しいのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=14
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015・膳桂之助
○膳國務大臣 左樣に御諒解願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=15
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016・山本正一
○山本(正)委員 先刻政府委員の方から、刷物にして廻はすと申された資料、其の他只今の補償に關する査定委員會の資料のやうなものは、此の委員會繼續中に提出なさる御見込でございませうか、又さうすることを希望するのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=16
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017・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 大體の要綱も出來て居りますから、次囘の委員會に提出するやうに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=17
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018・山本正一
○山本(正)委員 第二條の三項に於きましては、物資割當の決定に不服のある者は主務大臣にそれを申出ることが出來ることを規定して居ります、其の場合に主務大臣は其の不服に對して適正な審査をして大臣自身之を決定すると云ふ風になつて居るのであります、隨て民主的に決定されたものも、終局的には主務大臣が實際上の決定權を持つて居ると云ふ結論になるのであります、是は甚だ民主的な行き方として理解に苦しむ點であります、御見解は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=18
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019・膳桂之助
○膳國務大臣 形の上から考へますると、洵に御質問御尤もでありまするけれども、實は物資の需給の状況を見ますると、何れ總ての物は足りないのであります、又此の物資の割當を受けんとする者は相當多いのであります、茲に民主的に決定をさせるのでありまするけれども、既往の諸經濟團體の實際等を見ますると、私共の懸念を致しまする所は、どうも動もすると、一つの例を申しますると、總花式に流れる、或は何か其の團體の有力者の方に、不公平に物の割當があると云ふやうなことも、全く心配のない譯でもありませぬ、民主的に定める其の形に付て、或はどう云ふ風な決定方法を執るか、全體の意見の多數に依ると云ふことも民主的でありませうけれども、實際の配給に當りましては、斯の如きことも實際に遠いので、或は或る委員なり、或る機關に割當を委任すると云ふやうな場合もあり得ると思ひます、其の際に好ましからぬ標準で、或は國の全體の物資の需給、言葉を換へて言へば、此の點だけはやはり物資の割當に重きをなすだらうと思ひますることは、是から經濟の囘復の爲にはやはり重點主義を執つて、どう云ふ重點産業に、又其の重點産業中にもどう云ふ重點を置くべき工場、事業場に優先的に割當をすべきかと云ふことは、相當少い物資を活用する上に付て、重大な問題であらうと思ひます、其の際に、徒らに情實に流れ、或は一種の誤つた民主的の空氣と云ふやうなものに是が行はれた場合には、そこに反省を促すべき場合もあらうと思ひます、さう云ふ際に、勿論割當等に付きましては適當な指導を主務官廳に於てなすことと思ひますけれども、誤つた際には之を正しき道に引戻す、其の爲にも不服の申立があり、其の際に監督官廳の裁定が、其の實は民主的には決定された形を取つて居りながら、經濟の復興に好ましからぬやうな割當を是正すべき場合もあらうと思ひますので、是は形の上に於ては民主的でないやうに見えますけれども、實は經濟復興上已むを得ざるの措置であり、又是が本當の民主的の經濟復興に資する所以にもならうかと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=19
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020・山本正一
○山本(正)委員 今御話の趣旨は了解されるのでありますが、法案に現はれて居りまするやうに、産業團體の構成員が、一面には個人として物資の割當を團體に對して請求することが出來るのであります、其の場合を考へて見ますと、自分の請求した事柄に對しまして、他面では團體の構成員として其の請求を自分で審査決定すると云ふことになつて居ります、今大臣の申されまするのは、産業團體の決定と云ふものが、政府の意圖する所に反する場合があることを惧れて居られるのでありますが、此の構成員が一面に於ては構成員として割當を審査決定する、他面に於ては自分が個人として其の團體に物資の割當の請求が出來る、特に是は其の構成員が其の團體の中に於て有力な存在であると云ふ場合には、非常に査定と云ふものが公平を缺きはせぬかと云ふ虞が十分あらうと思ふのであります、此の點は只今大臣の憂へられて居る所と其の規定とは、全く矛盾するかのやうに思ふのでありますが、御見解如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=20
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021・膳桂之助
○膳國務大臣 査定に對しまする異議のありまする場合には、色々ございませうが、私は一つの場合を豫想しまして御答へ申上げたやうな譯でありまして、此の團體に割當てる際に斯う云ふ場合も勿論あらうと思ひます、自分で割當を受けたい者が公平なる團體の査定に依つて割當を受けなかつた、さう云ふものが不服を申立てる場合も勿論あらうと思ひますので、さう云ふやうな際に、兎に角割當が果して公平に、而も足りない物質割當の全體目的に適當するや否やを再確認すると云ふやうな意味に於きまして、經濟團體の自主的活動を、公正に運營する裏付けの爲の裁定と云ふ場合もあり得るかと存ぜられますので、此の點が此の不服申立及び其の裁定と云ふことの制度が、民主化的の運營に矛盾があるとも存ぜられないではないか、斯う存じますが、如何なものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=21
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022・山本正一
○山本(正)委員 私の求めんとする重點は、産業團體の構成員が一面に於ては個人として請求をする、他面に於ては其の自己の請求に對して團體の構成員として割當の審査に參加する、是が決定の公正を害する虞がないかと云ふ點をもう一度承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=22
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023・膳桂之助
○膳國務大臣 どうも此の點は、團體を民主的に運營する場合には已むを得ないのではないかと思ひます、と申しますのは、さらばとて團體員が自主的に決定する際に、まるきり第三者的の機關で裁定して貰へば宜しい譯でありますけれども、さうしますると官僚に代るべき民僚の心配が相當ありますので、最も經濟の統制を良くやりますこはやはり是から當業者と申しますか、實際經濟の企業に當ります者の道義心に愬へると云ひますか、そこに私と公との區別をすべき訓練がなければ、到底此の色々の經濟機關の自主的の運營が出來ないのではないかと思ふので、どうもさう云ふ懸念も十分にございますけれども、やはり段々所謂民主的の訓練が重なるに連れまして、一人の人が自分は利害關係者として割當を要求するが、又公正なる裁決をなすべき裁定機關と申しますか、此の割當機關の當事者としては自から公平な考へも持ち得る、さう云ふ訓練はやはりどうしてもやらなければならぬことと存じますので、是は事實問題として、結局産業の統制を、若し官僚統制でなく、本當の自治統制でやつて行く爲には、そこに道義心の昂揚と云ひますか、訓練と云ひますか、是非とも是が伴ふべきものと存ぜられます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=23
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024・山本正一
○山本(正)委員 第二條五項の方に於きましては、産業團體の物資割當決定に付て、主務大臣は變更を命ずることが出來る規定になつて居るのであります、是は一面民主性と云ふものが之に依つて理解に苦しむと同時に、今まで膳國務大臣の述べられた産業團體に對する信頼性と云ふものから見ますと、非常に了解に苦しむ所が多いのでありますが、御見解如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=24
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025・膳桂之助
○膳國務大臣 其の點が先に御質問の不服の申立に對しまする主務大臣の裁定の場合もあると云ふことを、私が申上げました場合の一つに當ると思ふのであります、同じことを繰返すやうになつて恐縮でありますけれども、先程も私が懸念があると申しました通り、自治的統制の間には、今私が希望的に申上げましたやうな道義心の昂揚と云ひますか、さう云ふやうな點の訓練の出來ないと云ふ場合もございませうし、さうでなくも、動もすれば其の團體が先程申しました通り總花式の割當をする、或は好ましからぬ方面に或る種の勢力が働いた爲に物資の割當が行く、殊に最近はさう云ふやうな心配も絶無でもありませぬ、さう云ふ際に本當に少い資材をば、最も有益に活用しますやうに割當をさせる爲には、或る場合には組合の自治的決議も、是はいけないとして變更を命じて、資材の活用の爲には重點主義を執つて、重點工業、重點工場に之を向けろと云ふやうな指揮をする必要も出て參らうと思ひますので、勿論是は稀な場合で、絶えず運用さるべきではありませぬけれども、やはり現在の物資需給の數量的状況から申しますと、左樣な點の用意が必要と存ぜられますので、此の規定を置きました次第で、是あるが爲に折角一方に民主的の活動をやりながら、官僚的に干渉しようと云ふ意思では毛頭ないことを御諒承願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=25
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026・山本正一
○山本(正)委員 本法の附則を見ますと、此の法律が效力を失ふ際に於ける損失補償の問題、擔保權處理の問題、其の他必要な事項は勅令で定めると云ふことにならうと思ひますが、此の勅令と云ふのは凡そ何時頃御示しになる御用意がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=26
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027・膳桂之助
○膳國務大臣 私の承知しないこともございますので、御許しを得て政府委員より答辯させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=27
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028・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 附則の末項の規定は、第二項と同じやうに丁度此の法律が效力を失ひました場合に、其の法律に依つてやりました罰則等の適用に付ては、尚ほ其の法律が其の時以後に效力を有すると同じやうに、此の損失補償其の他の規定が勅令を以て定められる譯であります、さう云ふ場合に於ても此の效力を存續せしむる必要がございますので、之を勅令を以て定める斯う云ふ意味でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=28
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029・山本正一
○山本(正)委員 本法の民主性と云ふことに付きましては御説明と私と著しく見解の違ふ點があるのでありますが、是は此の程度に止めます、それから本法と改正憲法との關係に付て御尋ねを申上げたいのでありますが、本法は改正憲法が實施されるまでは、改正憲法の精神と云ふものはさう深く參酌する必要がないと云ふ見解で施行されるのでありますか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=29
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030・膳桂之助
○膳國務大臣 本法は無論憲法の改正を前提として考へられて居るものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=30
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031・山本正一
○山本(正)委員 私も其の點は御答への趣旨と同樣に考へて居るのでありますが、其の場合に本法は公共の福祉を増進する爲に立法されて居ると云ふことは、何人も異論のない所でありますが、此の公共の福祉の爲にする場合でありましても、本法の如く包括的に漠然と基本的な人權の侵害、又は制限が委任されると云ふことは、改正憲法の趣旨に反するものではなからうかと思ふのであります、其の點如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=31
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032・膳桂之助
○膳國務大臣 此の點に付きましては、本會議に於きまして商工大臣も率直に御答へを申上げたと思ふのでありますが、出來ますならば斯くの如き形の法律は出したくないと云ふことは、私も全く同感でございます、併しながら何と云ひますか、此の動搖して居ります現在の企業の整備とか色々の問題の起きまする際、實は相當長い條文のものも一應研究したのでありますけれども、やはり意を盡さざることもあり、又經濟上の變化が可及的な法制としまして考へ、中々準備が、間に合はないと云ふことも正直ございました、又一方には御承知の通り總動員法の諸令の有效期間も、既に今月で盡きなんとして居ります、さうかと云ひましてやはり物資の不足のものをば、どう云ふ風に有效的に使ふか、斯う云ふやうな臨機の措置も必要とせられますので、本法の如き形で出來ますることは、是も有體に正直に申上げますれば、好ましい形とは存ぜられませぬ、併しながら現下の經濟上の必要を充しまする爲には、臨時の立法としまして斯くの如き形を取るの已むを得ない事情にありましたことをば、御諒承を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=32
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033・山本正一
○山本(正)委員 其のことは本會議以來承つて居ることであります、私の之を申上げんとする趣旨は、此のやうな措置の必要であると云ふことは能く了解されるのでありますが、一面此の改正憲法の精神と云ふものを國民に能く理解徹底させると云ふことは、今の急務中の急務であります、其の矢先に本法が此の儘施行されると云ふ場合を考へて見ますと、憲法が如何に基本的な人權を懇篤に規定せられましても、其の端から斯くの如き漠然と、包括的に侵害又は制限を受けると云ふやうな事實を示すことは、改正憲法に對する國民の信頼を非常に害ひはせぬかと云ふことを憂ふるのであります、本法の要請する根本と云ふものは、其の必要を我我も認めて居るのでありますから、唯其の運用に當りましてさう云ふ誤解を與へないやうに、缺陷を殘さないやうに、少くとも各關係法令と云ふものは此の委員會の進行の初期に當つて、其の全貌を提出されることを私は要望したいのであります、之に付て所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=33
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034・膳桂之助
○膳國務大臣 本法が國民の基本的權利をば侵害すると云ふやうな場面に付きましては、出來るだけ斯樣な實際のなきを期して居るのであります、本法の規定しまするものは、假りに之を詳細に書きましても、色々の手續の點に亙りまする部分もございまするが、根本はやはり足りない資材をば如何に有效に使用するかと云ふ所にありまして、一方人民の所有權、是は極めて尊重さるべきものであり、侵害さるべきものではありませぬけれども、やはり國家再建と云ふやうな大きい目的に、個人或は私的團體の持つて居りまする物資が、全體の經濟再建の爲に、公の爲に活用さるべきであると云ふ途を開いて置くことは、必ずしも私權を侵害して居ると云ふ見地からばかりは考へられないのであります、やはり其の點に一つの生産資材の公益性と申しますか、社會性と申しますか、さう云ふやうな點も考へ得られるのぢやないかと思ひます、本法の一見私權の相當甚大な侵害であるかのやうに見えますものも、實は新憲法の目的とする所も、やはり此の國家の生産材の問題と申しますか、社會化と申しますか、公用化と申しますか、さう云ふ點を考へますことが、必ずしも其の點に於て憲法の精神を蹂躪して居るとも申されないのではないかと考へて居ります、是れ亦見解、見方の違ひと仰せられるかも知れませぬが、…是も如何なものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=34
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035・山本正一
○山本(正)委員 其の點は趣旨は能く諒解されて居るのでありますが、法律の表現に於て甚だしく缺陷ありと云ふ點は私留保致します、其の點は諒承を願ひます
それから經濟安定本部の構想に於きまして、國民の生活標準をどの點に置いて居りますか伺つて見たいと思ひます、生浩必需物資の銘柄であるとか、分量であるとか、或はそれに對する價格、特に五百圓生活と云ふ制限生活は、將來も其の意味に於て持續されるものであるかどうかを併せて伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=35
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036・膳桂之助
○膳國務大臣 正直に申しますと中々むづかしい御尋ねであります、現在の物資の供給の状況から見ますると、我が國の左右し得る資源は、國民の希望する生活水準を供給するには到底足りないものであることは申すまでもないことであります、經濟安定本部で、例へば國民に對する食物の「カロリー」を今どれだけをどうであるとか、又住居に付てはどうだ、衣料に付てはどうだと云ふことは、今日直ちにさう云ふものを用意してはございませぬ、併しながら安定本部の出來ました大きな目的の根本は、丁度今御尋ねのやうな點に付きまして、我が國民が衣食住の面に於きまして、又文化生活の方面に於きまして、少くとも言葉は惡うございませうけれども、生きる價値のある、生きる樂しみのある水準にまで持つて行くやうな經濟方策を樹立すると云ふことをば、考へて居る譯であります、今日どう云ふ物資が、どう云ふ場合に、一人當りどうと云ふやうな細かい數字を今申上げる用意を持つて居りませぬけれども、例へば食の方面に付きましても、今日の如く國民擧つて天候を見ては食生活を心配して居るやうなことのない食生活、徒らに量にのみ頼らないで、質に於て人間に必要な榮養の足りるやうな食生活、又其の年の豐凶に勿論左右されますけれども、數年間の間の平準を用意することの出來るやうな食生活、又衣の方面に於きましても、從前のやうな所謂國民が洋服と和服の二重生活を是から持續すると云ふやうなことは、衣料の原料の供給状況から見まして、是は到底維持は出來ませぬけれども、兎に角國民が品位のある服裝が、出來、寒暑の凌ぎを十分に出來得るやうな水準に足るべき衣生活、又住の方面に付きましても、中々現在の木材事情に於きましては、果して戰前の状態にまで國民の住生活を持つて來ると云ふことは、中々困難なことであります、恐らく是からも、住生活に付ては木材のみに頼らざる、新しい住の生活樣式が考慮せらるべきだと思ひます、安定本部が悉く是等の問題を解決し盡すと云ふことを、自慢に申上げるのは少し僭越と思ひます、併しながら安定本部の總ての施策は、差當りの問題は經濟の復興にあり、産業の振興にありまするけれども、究極の目的は今御尋ねのありました點、恐らく御承知になりたいと思はれまする點、さう云ふ點までに國民の衣食住、及び文化生活の水準をば持つて行きたい、之を目標にして私共は折角研究を致したいと思ふのであります、今日直ちに其の數字を申上げることの出來ないことは甚だ殘念であります、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=36
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037・山本正一
○山本(正)委員 具體的な御説明は困難かも知れませぬが、五百圓の制限生活と云ふものは將來も尚ほ持續なさる御方針でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=37
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038・膳桂之助
○膳國務大臣 是も要するに既に定まり、是から定めんとする物價水準と云ふやうな問題に依つて決定される問題でありまして、是は多く將來に研究さるべき事項がありまするけれども、現在政府の考へて居りまする所では、やはり五百圓の生活水準が多分維持出來るものと考へて畫策を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=38
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039・山本正一
○山本(正)委員 最後にもう一言御伺ひ致します、工業の將來に付てどう云ふ構想を持つて居られまするか、是は餘り廣汎なものでなくて結構でありますが、例へば、自動車と云ふものは今後の工業計畫に入つて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=39
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040・膳桂之助
○膳國務大臣 商工當局の政府委員から御答へを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=40
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041・竹田儀一
○竹田委員長 山本君に御諮り致しますが、もう一遍御述べ下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=41
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042・山本正一
○山本(正)委員 工業計畫の輪廓を…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=42
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043・膳桂之助
○膳國務大臣 全般の問題に付て御答へ申上げますが、自動車工業が如何に相成るかと云ふやうな問題に付きましては、私よりも政府委員から御答へ申上げる方が宜いのだと思ひますが、是から如何に工業の振興を圖るべきか、是から先の、久しい先の問題は別と致しまして、差當り誰しも先づ第一に考へますものは、總ての産業の本は石炭工業であることは申上げるまでもない、先づ石炭に所要の増産が擧げられる、此の事に日本の經濟安定の工業對策が、先づ集中されると云ふことは申上げるまでもないことであります、偖て産業の個々のものに致しますれば、やはり先づ第一番に考へを致さなくてはならぬものは、國民の生活の安定に資すべき産業に力を盡すこと、其の一つの最も好い例は肥料工業であらうと思ひます、それから尚ほ現在不足の物資をば充足する爲には、如何にしても輸出見返品として、又將來外國から輸入物資の代貨となるべきものをば作りまする其の工業に力を注ぐ、原始産業と云つても餘り原始産業ではいけないかも知れませぬが、其の方から例を申しますれば蠶糸業である、又外國から輸入した資材に依つて、大いに日本として是からやらなくちやならぬことは綿業であることも申上げるまでもないことであります、又之に附隨しまして中小工業の振興と云ふことが、日本の産業の復興と云ふ上から申しましても、又日本の健全なる中堅階級の育成と云ふ點から申しましても大事であると云ふことは申上げるまでもないことであります、又此の中小商工業の所産品が、從來輸出物資として、戰時に於きましては國の輸出品の約六十「パーセント」を占めて居つたと云ふことも、既に公知のことであります、自ら雜貨其の他にも及びまするけれども、斯う云ふ方面も緊急復興を奬勵すべき部門であることは申上げるまでもないことであります、又將來に亙りまする本當の日本の經濟の再建に必要な基礎物資を作るべき所謂鐵鑛産業、基礎的工業──鐵の方面に於きましても、或は「セメント」其の他の日本經濟の根本をなすべき資材の生産、斯う云ふ方面にも、此の賠償物資の撤廢、それから又補償打切に伴ふ諸般の整理が行はれますれば、是等のものに對しましても、資材、金融其の他の點から致しまして、政府は各省擧つて力を協せまして、斯う云ふやうな産業の方面に、先づ力を注がれると云ふことが自然のことのやうに存ぜられます、尚ほそれ等の細かい──細かいと申しますが、順序其の他に付きましては、情勢の變化はありますけれども、大體の見當は私共は左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=43
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044・山本正一
○山本(正)委員 自轉車、時計、通信器具と云ふものの販賣路は相當廣いやうに聞及んで居るのでありますが、特に是は貿易品として大いに保護奬勵を加へる必要があるのではないかと思ひますが、御見解を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=44
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045・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 只今仰せになりましたやうな機械關係の割合に精密度の高い工業、或は從來我が國が工業市場に出して居りました商品、自轉車と云つたやうなものは、勿論將來有望の輸出品でありまして、我が國と致しましては、極力此の方の生産にも努力致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=45
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046・山本正一
○山本(正)委員 それに十分なる保護を加へると云ふことに付て、少し具體的の構想がおありでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=46
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047・星島二郎
○星島國務大臣 大體の大綱を私より申上げたいと思ひます、日本工業の將來の在り方と云ふものが、どうあるべきかと云ふ御質問だらうと思ひますが、只今膳國務大臣より御話された如く、現在「G・H・Q」の方面の關係もありまして、先程あなたが御指摘の自動車の如きは、今日は乘用車は許されて居らない、貨車の製造は、一定の範圍で──一寸數字は忘れましたが、許されて居ります、そこで商工當局と致しましては、大體重工業其の他大工業と云ふもの──肥料とか或は纖維の如きは、工業であるけれども、相當大きな資本、大きい流れ作業としてやるのでありますから、斯う云ふものは別として、大體中小工業に落ちる、中小工業とは何ぞやと言へば、少くとも五百人位の工員を要する程度の仕事と云ふやうなものになつて來る譯でありまして、一番數字の上りますものは、何と申しましても纖維だらうと思ひます、それから只今御指摘の自轉車工業の如きは、昭和十一年頃の、詰り事變前の統計から見ましても、是は又相當に生産を上げて行かなければならぬ、是はやはり中小工業の何千と云ふやうな勞務員を要しないで、それぞれ部分的な製造を致しまして、そして最後にそれを綜合的に扱ふ組合の如きものを以て之を調節して行くと云ふやうな考へ方で行きますならば、相當な仕事が出來るかと思ひます、そこで纖維の次に金屬と致しましては、大體今日の所色々賠償物資を撤去されますけれども、最後は少くとも三百萬「トン」程度のものは殘る譯でありますから、其の範圍に於きまして、將來日本の基本産業の色色な部面を考へて行きたい、鑄物に致しましても、鍍金工業に致しましても、機械器具の工業に致しましても、成べく原料を少くして、さうして日本人に合ふやうな時計製造、寫眞機の製造、農業用の器具機械、それから只今申した自轉車の如き、或は陶器──是は日本の非常に得意な事業でありまして、窯業は凡ゆる面から見まして、是はさう大きな仕事でなくても、個々の産地に於きまして比較的中小以下で出來ると思ひますから、是は相當發達をさして行きたい、或は化學工業部面に於ては石鹸とか、塗料、「セルロイド」の製造と云ふやうなものは、やはり事變前に於て、例へば石鹸を以て見ますと、一億圓の中九千萬圓までが中小工業でやつて居つたのでありまして、斯う云ふ方面には十分力を致して助成して行きたい、又木製品の製造、或は食料品で言ひますれば罐詰の製造、其の他竹製品、紙製品と云ふやうなもの、又「マッチ」の製造と云ふやうなものに對しましては、個々區々な發達になりますと、其の間に社會の水準に負ける虞がありまかすら、此の點に付ては協同組合を助成致しまして、組合の力に依つて全體的な一つの規格を持たす、檢査に依つて粗製濫造を抑へる、さうして金融方面は商工中央金庫、或は今囘出來ます復興金庫を通しまして、十分彼等を助成して行きたいと云ふやうな構想を以ちまして、今後の日本の工業の發達を期して行きたい、復興を期して行きたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=47
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048・山本正一
○山本(正)委員 膳國務大臣に對する質疑は是で終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=48
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049・竹田儀一
○竹田委員長 山本君、一寸御諮り致しますが、運輸大臣は午後から據どころない御用件があるさうですから、若し他の大臣の御質問にお移りになるのであれば引續いて運輸大臣に對する質疑を御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=49
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050・山本正一
○山本(正)委員 商工大臣に對する質疑はもう二、二分で終りますから續行したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=50
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051・竹田儀一
○竹田委員長 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=51
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052・山本正一
○山本(正)委員 それでは商工大臣に御質問申上げますが、第二條にある「民主的に組織された産業團體」と云ふものは、具體的にはどう云ふ團體でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=52
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053・星島二郎
○星島國務大臣 是は加入脱退が自由であり、さうして其の幹部となるべき役員が、選擧に依つて出來ると云ふことが原則中の原則であります、假に一つの豫想した團體で申しますならば、今日出來て居る纖維協會或は鐵鋼、石炭礦業會とか云つたものは、民主的團體に改組されて居りますから認めることが出來ます、尚ほ今囘提案致しました協同組合法に依つて出來る所の組合の中には、民主的團體に副ふ一つの組織が私は生れて來るものと豫想致して居ります、だから本質から言ひますと、さう云ふ形態を備へ、それから從來戰時中にありました型からすつかり脱却して──一度に直ぐ氣持が直らないと云ふことは、丁度、今日政治が直ぐ民主的にならぬのと同じやうなものであります、併しそれは將來馴れて來ますれば十分期待出來ると思ひます、大體さう云ふことを豫想して民主的團體を對象として考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=53
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054・山本正一
○山本(正)委員 此の法律が施行される場合、産業團體は直ぐに指定なさる譯でありますが、既に商工省に於ては銓衡に著手されて居るやうに伺つて居ります、若しさう云ふ御用意がありますならば審議の資料として御提出を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=54
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055・星島二郎
○星島國務大臣 まだ確定はして居りませぬけれども、只今も例示しましたやうに、石炭礦業會とか或は纖維協會と云つたものは、凡そ其の範圍に入るものだと考へて、現に從來の統制會と云ふやうなものは止めて、新しき團體に移行して實際上運營して居りますから、隨て指定されるものと思ひますが、此の委員會の繼續する間に大體のことは申上げることが出來ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=55
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056・山本正一
○山本(正)委員 商工關係の質問は是で打切りまして、次に運輸大臣に御伺ひ致します、此の法案は産業の囘復及び振興を圖ることを目的とするものでありますが、其の産業の囘復振興に即應して、運輸計畫の概要を、極く大雜把で結構ですから御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=56
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057・平塚常次郎
○平塚國務大臣 我が國の産業の囘復振興の爲には、運輸省の持つて居る役割は非常に大きいのでありまして、一日も速かに輸送力を囘復したいと思つて居ります、併し何しろ御承知の通り非常に大きな戰災を受けて居りますので、出來るだけ計畫的に復興に當つて居ります、先づ第一番に輸送力の増強に使はれて行く戰災の復興に對しましては、所謂戰前の状態になるまでには相當の年月が要るのでありますが、輸送計畫の戰前に近い所まで行きますには、是から約一年半乃至二年は掛かるものと思つて居りまして、主として輸送面に力を入れて復興を圖つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=57
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058・山本正一
○山本(正)委員 先月來國民が非常な關心を寄せて居る國鐵爭議の現在の状態と、將來の見透しに付て伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=58
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059・平塚常次郎
○平塚國務大臣 國鐵の爭議に付きましては、八月二十日から二十五日まで當局と國鐵總聯合の幹部十名ばかりと連日に亙つて協議を致しまして、大體當事者間に妥結の出來る點まで協議が進行したのであります、然るに總聯合に於ては其の交渉の經過に對しまして拒絶して來て居るのであります、拒絶はして來て居りますけれども、まだ會議が繼續されて居ります、新聞で御覽の通り、昨日と今日、山田に於て從業員組員の大會を開いて居りますが、此の結果がどう云ふことになつて參りますか、何れ從業員組合の代表者が戻つて來ると思ひます、我々と致しましては交渉が敢て決裂したのでない、續行中でありますから、是等の幹部が歸つて來ますれば、改めて交渉に入る積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=59
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060・山本正一
○山本(正)委員 政府は曩に彈丸列車の計畫を立てまして一部其の工事の施行に著手した儘戰爭に持越して居るのであります、是は此の輸送計畫の中、最も重要な位置に於て考慮する必要があるのではないかと思ひますが、尚ほ之を此の際繼續する御意思がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=60
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061・平塚常次郎
○平塚國務大臣 是は戰前に所謂大陸政策からして、あの大きな輸送力を保持する必要があると云ふことで計畫されたのであります、計畫を立てて著手して間もなく戰爭になりまして、直ちに是は中止されて居ります、著手しましても極く小部分でありますので、其の儘停頓の状態でありますが、將來に對しましては是は餘程先へ行つて考へ直さなければならぬと思つて居ります、現在ではあの計畫を遂行すると云ふ考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=61
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062・山本正一
○山本(正)委員 戰時中地方鐵道を軍事上の必要から相當多く強制的に買上げて居るのでありますが、其の結果が地方の産業の開發振興を非常に阻碍して居るのであります、當局は此の際之を民間に拂下げて、昔日のやうな地方の産業開發振興に役立たせる御意思がありますか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=62
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063・平塚常次郎
○平塚國務大臣 地方鐵道及び軌道はやはり相當な戰災を受けて居りまして、目下業者は頻りに囘復に掛つて居ります、買收した國有鐵道の一部を民間に拂下げると云ふことは考へて居りませぬ、併しながら民間に必要な新線に對しましては、國有鐵道の幹線でない限り許して行く方針であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=63
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064・山本正一
○山本(正)委員 聯合軍方面から相當數の「トラック」が運輸省に拂下があるかのやうに承つて居るのであります、其の問題に付きまして民間の「トラック」輸送業者は、是非是は一つ民間の輸送業者の方に廻はして貰ひたい、此の拂下を受けたものを省營にされると云ふことは、非常に民業を壓迫するものであると云ふ陳情が非常に多いのでありますが、常局は之に付てどう云ふ風に御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=64
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065・平塚常次郎
○平塚國務大臣 拂下自動車に付きましては、目下懇請中でありまして決定を見て居らぬのでありますが、私共と致しましては「トラック」輸送に對しましては民間に力を付けて、成べく省營でやることは避けて居るのであります、今囘の此の拂下自動車は、色々受入態勢に付て、又拂下の條件もありまするので、我々の希望通り直ちに行ふことは困難な情勢にあるのであります、併しながらまだ輸入と云ふものが許されて居らぬのでありまして、茲に明瞭に御答へすることは出來ぬのでございますけれども、どうも關係方面の交渉は中々「デリケート」の問題がありまして、決まらぬ中に私共の考へを申述べることは此の際差控へたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=65
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066・山本正一
○山本(正)委員 運輸大臣に對する質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=66
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067・竹田儀一
○竹田委員長 それでは午後一時から開きます、是にて休憩致します
午後零時四分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=67
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068・会議録情報2
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午後一時十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=68
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069・竹田儀一
○竹田委員長 それでは午前中に引續き會議を開きます──山本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=69
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070・山本正一
○山本(正)委員 司法大臣に本法の罰則と現行刑法との關係を御伺ひ致します、本法の事犯と刑法事犯とが、手段と結果の關係にある場合には如何になるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=70
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071・木村篤太郎
○木村國務大臣 御答へ致します、本法違反の罪と刑事犯とが、手段と結果が相關聯した場合どうかと云ふ御質問であります、實際問題として恐らく斯樣なことは起らないと考へて居ります、併し萬々一左樣な場合が起つたと假定致しますと、御承知の通り刑法第五十四條一項後段の規定に依りまして、重きに依つて處斷されることに相成らうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=71
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072・山本正一
○山本(正)委員 公務員が本法違反者と共同正犯又は從犯の關係にある場合の處斷はどうなりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=72
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073・木村篤太郎
○木村國務大臣 勿論共犯、從犯の關係が成立致しますると、公務員も罰せられることと考へて居ります、例へば公務員が、業者或は業者の團體が調査をする場合に、或は虚僞の報告をしたり、報告を怠つたりと云ふやうな場合の正犯關係に於きましては、勿論罰せられることは當然のことであります、共犯關係に於ても罰せられます、此の場合に萬一涜職等の事實が發見致されますると、是れ亦刑法に基きまして涜職罪として罰せられるのは當然であらうかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=73
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074・山本正一
○山本(正)委員 本法に依りまして、物資又は設備の讓渡、引渡又は貸與の命令を受ける場合が規定されて居りますが、其の場合の所有權若しくは占有權の移轉の形式と云ふものは、命令が送達されることに依つて當然それ等の權利が移轉されるのであるか、或は所有權、占有權の一般の移轉方式を必要とするものでありますか、此の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=74
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075・木村篤太郎
○木村國務大臣 極めて適切な御質問かと思ひます、此の法の第一條第一項第三號に規定の物資又は設備の讓渡、引渡又は貸與、是は一般の從來の統制法規に基きまする場合と同じやうに、命令自體に依つて直ちに所有權又は占有權の移轉、其の他の法律關係がそこに發生するものではないのでありまして、命令の内容に從つた義務が詰りそこに生ずる譯であります、別に所有權又は占有權の移轉は、それぞれ法規の手續に依つて行はれることと御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=75
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076・山本正一
○山本(正)委員 稍稍間接的な問題でありますけれども、内容が本法と關係がありますので、此の場合御尋ねをして置きたいと思ひます、裁判、殊に豫審と刑事裁判が最近甚だしく遲延致します爲に、國民の關係者の生活と云ふものが、非常なる脅威を受けて居るのでありまして、此のことは地方の農業、漁業、要するに現地産業の囘復、振興が非常に阻碍されて居るのであります、之に付きまして、當局の見解と對策とを伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=76
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077・木村篤太郎
○木村國務大臣 是れ亦目下我が國に於きまする司法制度其の他に付て、洵に適切な御質問だと思ひます、此の機會に於て多少其の問題に觸れさして戴きたいと思ひます、御承知の通り何としても個人の人權擁護から申しまして、事件は迅速機敏に處理しなければ相成らぬのであります、從來動もすれば豫審で事件が非常に遲れて居る、國民に多大な迷惑を掛けて居ると云ふ事情に付きましては私固より存じて居ります、私、司法當局を拜命致しまして、日夜其の點に付て實は苦慮して居るのであります、併しながら中々思ふ通りに行かない、と申上げるのは、實は全國に於きまして戰災に依つて燒失致しました裁判所は、五十六箇所の多數に及んで居るのであります、それと共に判事、檢事の住宅が、是れ亦多數燒失致しまして、其の間に非常な難澁を極めて居る、一例を申上げますと、私檢事總長在職中に甲府へ參りました、甲府ではどう云ふことをやつて居るかと申しますと、是は御承知の通り裁判所職員の住宅も燒け、刑務所も燒けた、そこで警察の武道道場の一部を借り、又裁判所は圖書館の一部を借りて居る、そこから約十町も隔たつて居りますお寺の一部を借りて居る、私偶偶其のお寺の一部の法廷を見に參りました時に恐ろしくなつた、それが爲に法廷が開かれない、又刑務所から被者を裁判所の法廷に連れて來るのに、御承知の通り自動車も何もない、而も編笠すらない、被疑者が白晝看守人の護送の下に、面を曝して町を歩かなければならぬと云ふ實に氣の毒な状態である、斯樣なことで新憲法が實施されても本當に人權擁護が出來るであらうか、勿論被告と云ふものは一應犯罪の嫌疑がある者でありますが、是もやはり國民の一人であります、此の人達に對しても人間として相當なことをしなければならぬ我々は義務があるのであります、そこで如何にすれば斯樣な醜態を一日も早く是正し得られるかと云ふことに付きまして、私は全力を擧げて大藏當局にも交渉致しまして、幸ひ大藏當局の方でも、又政府の外の閣僚に於きましても十分此の點は諒解されまして、相當とは申上げ兼ねまするが、現國家財政から申しますると、同情ある豫算も取れて來たやうな譯であります、隨ひまして急速に裁判所の復興其の他に付て、私は國民の或る程度の御滿足は得られることになるのではなからうかと考へて居ります、而して山本委員も御承知の通り、事件を迅速果斷に處理して行くと云ふことは、何としても人の問題であります、實は先月中旬に於きましても、全國の院長、檢事長會同をやりまして、此の點に付ての各判事、檢事の覺醒を促したのであります、昨日も全國の裁判所長會議をやりましたが、其の點全力を擧げて迅速な處理に當られたい、又判檢事の教養に付て、私は唯法律技術を習得するだけではいけないのである、人を取調べ人を裁くに於ては、人間としての十分なる教養が必要である、此の點に於て將來の判檢事の修業と云ふことに付ても我々考へて居ります、私就任以來司法研修所と云ふものを設けまして、裁判所の判檢事の修養の一助とするべく今努力して居ります、斯樣な次第で物的方面から、又精神的方面からも國民の期待に副ふべく努力致して居りますが、中々思ふやうに參りませぬ、殊に山本委員の御指摘になりました未決勾留の迅速なる保釋制度の活用と云ふことに付きましては、何としても是は考慮しなければならぬ、それで假釋放の制度などは私は十分活用して行きたいと思ふ
もう一つの問題は人員の不足であります、御承知の通り今春行政整理がありまして、裁判所に於きましても多數の判檢事が行政整理に依つて罷めたのであります、又G項該當者として、優秀な檢事が最近に職を退かなければならぬことになつた、それ等の關係上非常に今人員不足に苦しんで居るのでありますが、幸ひ南方或は滿洲方面から復員者が今續々歸つて居ります、之を復職せしめまして手不足の裁判所、檢事局へ配置を致し、さうして事件の迅速なる處理に當らせよう、斯う考へて居ります、現段階に於きましては洵に申譯ありませぬが、出來得るだけの努力を拂ひまして、一日も早く事件の迅速なる處理、未決勾留の少からんことを期待致して居る次第であります、左樣御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=77
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078・山本正一
○山本(正)委員 司法大臣から非常に懇篤な御方針を伺ひまして、甚だ意を強うするのでありますが、今の人員の不足の問題は、私承知致す限りに於きましては、檢事は左程でありませぬが、判事、書記の面に於て著しい傾向を見受けて居るのであります、現に私が實情を承知して居ります某裁判所の實例を申しますと、昨年十二月現在の定員で實に當時の四十倍以上に相當する被告事件を擔當して居るのであります、而も其の人員と云ふのが文字通り疲勞困憊致しまして、病者に次ぐ病者、もう此の状態と云ふものは最早人道問題として考慮せねばならぬ段階に入つて居ると思ふのであります、勿論大臣適切なる御配慮のことと存じますが、此の際急速に此の事件を處理するに必要なる限度の増員をやつて戴きまして、それ等係官の人の面に於て、事件の處理の面を圖られたいと考へて居るのであります、もう一つは大臣も今御説明の中に觸れられて居るのでありますが、昨年暮以來本年のここ數箇月の状況に於きましては、豫審の勾留事件と云ふものが非常に殖えて居るのであります、此の被告の如きは勾留訊問を受けた儘、少くとも數十日、長い者に至りましては數箇月間、何の取調べもなしに放置されて居ると云ふ實情であります、刑事の公判被告に於きましても、短くして數箇月、長い者は一年二年にも近付くと云ふ者が決して稀ではないのであります、是は基本的人權を尊重しなければならぬ現在の事情から見まして、私は非常に遺憾だと思ふのであります、勿論豫審の未決勾留の如きは、中には必要眞に已むを得ざる事情のものもあることは事實でありますが、大多數の者はそれ程の必要はないのであります、司法官は非常に熱心にやつて居られることは能く承知して居りますが、中には餘り熱心過ぎまして、本來は自由の位置に於て審理を進めなければならぬ、逃走、證據湮滅の虞ある場合に限つて、例外として之を勾留にするのでありますが、此の原則と例外を顛倒致して、原則的に何でも兎に角未決勾留し、例外的に之を保釋すると云ふ傾向が見受けられるのであります、此の點は裁判を迅速に進行する方途と致しまして、急速に是は御處置を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=78
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079・木村篤太郎
○木村國務大臣 十分に其の點は考慮致しまして、善處致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=79
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080・山本正一
○山本(正)委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=80
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081・布利秋
○布委員 審理します上に、議事進行に關して私一寸申上げたいと思つて發言した譯でありますが、此の臨時物資の調整法に關係のないことは、結局話される程時間が經ちますから、本問題に關する話らして、どしどし進行をさして戴かなければ、委員としても時間を潰すのみでありますから、どうか其の邊能く處理して戴きたいことを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=81
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082・竹田儀一
○竹田委員長 承知しました、布君の議事進行に關する御發言は御尤もだと思ひますから、成べく左樣に取計らひたいと思ひます──鈴木明良君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=82
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083・鈴木明良
○鈴木(明)委員 此の法律案の僅か六箇條のことに亙つて能く調べて見ますと、凡そ民主主義に生れ代る平和日本として、我々の想像だにせざる官僚統制の枠が、再び再建日本の増産と生産再開とを妨げんとするやうに思はれるのであります、それで私は政府に對して嚴重なる警告を發せざるを得ないのであります、私は其の第一の質問と致しまして本法案と國家總動員法と根本的の性格の相違があるかどうか、若しあるとするならば、如何なる點が違つて居るか、又本法案は從來の官僚主體の統制と何等變つて居ないと思はれるが、政府の所信を闡明にされたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=83
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084・星島二郎
○星島國務大臣 形から見ますと一寸さう云ふやうな懸念があることを、私も草案に當ります時に考へたのであります、併し總動員法は御承知の如く戰爭遂行の爲の必要上、上から臨むことばかりでありますから、總動員法を讀むと之と非常に違ふことが自ら發見出來ると思ひます、唯是も所謂超非常時と云ひますか、總動員法がなくなつて若干それを補ふ爲の法律である所に、そこに何か似通つた所があつてはならぬ、其の點は極力避けねばならぬ、そこで總動員法を見ますと、何でも政府は出來たのでありますが、それは此の法律で見ますれば、第一、安定本部會議の議を經なければ何事も出來ぬことになつて居ります、而も其の安定本部會議の中には、少數であるけれども衆議院代表者が入られる譯ですから、さう云ふ點から無暗なことはやらせぬと云ふことも出來ますし、それから愈愈本當に實行する場合は、自主的な民主團體を通して色々仕事をすると云ふやうに、總動員法と非常に違ふ所がありますから、其の點を一つ御諒解を願ひたいと思ひます、一寸形から見ますとさう云ふ虞がありますので、是は可なり私も頭痛の種に病んだのでありますけれども、今の場合やらなければ仕樣がないですから、御尋ねのやうな精神は毛頭起さぬやうに、凡ゆる面から見て極めて民主的に之を實行して行く、斯う云ふやうにして行きたいと思つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=84
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085・鈴木明良
○鈴木(明)委員 そこで政府は民主的統制の主體、機構方式を確立する意思と用意があるかどうか、若しあるとするならば具體的に其の方法を説明されたいのであります、要するに本法案は國家總動員法の廢止に依つて、提出されたもののやうに思はれるのであります、是は單に國家總動員法の蒸返しとならなければ宜いと思ふのであります、又何等の變りばえのないものである、幾ら慾目に見ましても、民主主義の線に副うたものとは思はれないのであります、此の點に付て所信と其の具體的説明を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=85
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086・星島二郎
○星島國務大臣 さう云ふ御懸念が外觀的に見えることは御尤もの點もありますが、總動員法は勞務其の他一切のものがやれたのでありますが、是は單に物資だけであります、而も物資の調整を圖る爲めの命令其の他は、全部安定本部會議の議を經なければ、而も議を經るに付ては先程申したやうな順序を履んでやる、それを實施するに付ての割當配當等は、其の實行は民主的な團體を通してやることになつて居りますから、若干總動員法のやうな匂ひが外觀的にありますけれども、其の點は全部排除されて居りますから、それは御安心願ひたいと思ひます、殊に構成等に付きましては、總ての機關が民主的になる譯です、今如何なるものが民主的團體なりや等のことに付きましては、一つ具體的に例示しまして、御覽に入れ得る、斯樣に思ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=86
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087・鈴木明良
○鈴木(明)委員 此の法案第一條に、「主務大臣は、産業の囘復及び振興に關し、經濟安定本部總裁が定める基本的な政策及び計畫の實施を確保するために」云々とあります、此處で問題となるのは經濟安定本部其のものが計畫統制機關として民主主義的立案をしたとしても、其の執行機關たる各省が、官僚的運營をなす懸念が十分あるやうに見受けられます、且つ其の執行の實權は主務大臣にあるのでありますから、經濟安定本部は單なる綜合計畫機關から逆轉して、關係各省の諮問機關化する虞が多分にあります、隨て本法案の運營も亦官僚化されることは疑ひないと思ふのであります、遂には先程申しましたやうに國家總動員法の如く、官僚獨善の權力的命令とならなければ宜いと心配して居るのであります
次に第二條に於ても、昭和十二年に施行されたる輸出入品等に關する臨時措置に關する法律と同樣に、必要且つ適當と認める時は、民主的に組織されたる産業團體に物資の割當を行はせる、斯くの如く主務大臣が必要且つ適當と認める時はと、特殊の場合として限定し、其の時に限り、主務大臣の指定せる産業團體に割當決定をなさしめる權限を與へて居るのである、隨て原則としては、從來の主務官廳及び各統制機關が行つて來た官僚統制と、何等の相違なきものと思はれるのであります、是では從來の一方的な官僚權力的統制方式を一歩も出て居ないことが明かとなります、唯僅かに民主的に組織されたる、而も主務大臣指定の産業團體に限り物資割當の權利を與へると云ふ點に、若干の民主的色彩を著けただけであります、更に此の條文には、物資の割當を受けるもので、産業團體の割當の決定に不服のある場合には、主務大臣に申告の權利が保留されて居るが、主務官廳等の割當の不服に對しては、何等申告の保留及は保護法の明記がないのも、私は官僚獨善の傾向は免れないものと思ふのであります、私は寧ろそれ以上の權力主義的な、法律萬能主義的法律と言はざるを得ないのであります、最後の一線に於ては必ず官僚の牙城を護り拔くと云ふ舊態依然たる原則を、なぜ此の際改めようとしないのか、左樣なことで平和日本の建設、民主主義日本の建設は斷じて行はれないものと思ひます、曾て我々八千萬同胞の總員は、政府の數限りない不渡りの配給切符を掴まされて、凡ゆる慘苦の連續を嘗めさせられたのであります、吾々は耐へ難きを耐へ、忍び難きを忍んで、國家總動員法と云ふ惡法に金縛りに縛られて、無條件降伏をせざるを得なかつたのであります、更に今日の現状を見ても、政府は低物價政策を言ひ、國民に五百圓生活を強制して、眞面目なる國民を塗炭の苦しみに陷れながら、一方には税收入乃至赤字補填を口實に、政府專管の煙草、郵便、鐵道運賃の値上を何囘でも政府は平氣で實施をして居る、更に國民怨嗟の聲を餘所に平然と値上を續けやうとして居るのは、私は無謀も甚だしきものと言はざるを得ないのであります、是こそ政府の官僚統制方式の實體であります、洵に遺憾千萬であります、斯かる官僚統制の失敗は既に試驗濟みであります、又ぞろ失敗するに決まつて居る官僚統制を繰返す如き愚をなすのであるが、若し再びやるとするならば、又々物資は雲隱れとなり、闇取引を奬勵する結果となり、徒らに經濟違反の罪人を作るのみであつて、經濟界は愈愈混亂其の極に達し、私は破綻あるのみであると思ひます、此の冷嚴なる事實の前に、政府は舊來の陋習を打破し、官僚統制の方式を一擲して、民主的統制の方向に、大英斷を以て民主日本建設の爲に、一大役割を果す十分なる用意と其の準備があるかどうか、此の點に付て御伺ひ致したいのであります、且又第二條の物資割當の實施のみでなく、全般に亙つて民主的な機構、主體、運營方式に付て明文化する意思があるかどうか、尚又斯かる法律を提出する場合には、少くとも斯くの如き簡單なる官治一本の法に對しては、運用を規定する一切の施行法令をも併せて提出すべきであると思ふが、政府の所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=87
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088・星島二郎
○星島國務大臣 御懸念のある點に付きましては一應肯けます、私も總動員法が議會を通つた時には、是で議會は終つたのだと云ふやうなことを最も痛切に感じた一人でありますから、それが今當局者として斯かる法案を出しますに付ては、自分は躊躇に躊躇を致しまして之に當つた譯でありますが、只今のやうな御懸念は萬なからんことを期します、殊に度々申した如く、安定本部と云ふものは、今の所期限は先づ一年であります、安定本部が若し延長されても、是がさう永久的にあるものとは思ひませぬ、假に延長されることになれば、其の時には又皆樣の御協贊を求めて、之に代るべき案で考へられる譯ですから、僅か此の一年の間、而も安定本部の會議の議を經て總裁が命ずる其の施策と云ふものは──其の總裁を支持して居るのは政黨であります、政黨は政務調査會を持つて居るのでありますから、さう云ふ政黨を控へた現在の内閣の總理大臣が、安定本部總裁として施策を決定する、其の決定機關には尚ほ少數ながらも兩院の代表者が參加して居る、其の會議の議を經てやることになつて居ります、さうして尚ほ之を實行するに付ては念には念を入れて行く、そこで今御示しのやうに、纖維は纖維、鐵鑛は鐵鑛──石炭は今囘一つの獨立法案を出しましたが、ずつと品目別けに致しまして、若し出來るならば全部を法律化したら宜いと思ふ、或は將來それが必要かも知れませぬ、是が將來數年に亙りずつと物資需給調整が必要ならば、個々の、纖維は纖維、凡ゆるものに付て數多くの法案を出したら宜い、唯如何せん、今日は貿易は管理でありまして、何時どう云ふものが要請に依つて入るかも知れませぬ、さう云ふものの爲に豫め備へることが必要なのでありまして、此の法案を出した譯であります、併し其の運用に當つては、長い間の習慣があるし、日本人がまだ眞の「デモクラシー」を理解せぬ其の關係から、ともすれば只今御意見のやうな結果があるかも知れませぬが、十分それに留意をして參りたい、それで假に一つの例を引きますれば、纖維は纖維の省令を決め──現在も纖維に關する一つの規則がありますが、是等は多く民主化の出來た團體、假に纖維協會等に諮問を致しまして、最後の決定をする、若しさう云ふ民主的な團體がないならば、臨時に其の業界を代表し、或は官民の知識を網羅した委員會を作りまして、それで最後の決定をして、其の出來たものを、各主管大臣の所で作りました案を最後に安定本部會議に諮つて、さうして是の實行をやつて行く、斯樣な風にして行きますれば、總動員法で拔打御免でやつた此の戰爭中とは、是はすつかり内容も變り、實體も變つた氣持でやつて行ける、私は斯樣に思ひます、併し何時か本會議でも申したやうに、一面から言へば民主政治と云ふものは、人間を信頼して任す政治でなくてはならない、それは期限が付くものであれば、強ひて法律の條項で一々書かぬでも、惡ければ取替へると云ふ權限さへあれば、私は或る程度までは此の委任の形式は、是は決して非民主的なものではない、斯樣な信念を持つて居る者でありますから、つい要らぬ例を以て此の間も御答へしたのでありますが、只今御質問の、殊に御意見の趣旨に付きましては、從來餘りにも色々な弊害がありましたから、十分留意を致して行くことは當然であります、此の法案の中に左樣な風に盛られて居りますので、民主的な諮問團體のないやうな業種に付きましては、或は商工省は商工省、農林省は農林省、それぞれ此の實施に當つて委員會を設けて、さうして其の議を經て最後に決めると云ふ所まで、十分手厚く扱つて行きたい、斯樣に思つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=88
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089・鈴木明良
○鈴木(明)委員 只今の商工大臣の御説明に依りまして、色々御決意の程は喜ばしいのであります、更に私は一歩進んで言ふならば、此の法案の提出を肯定し得るやうな場合として、再建日本の一大設計圖が必要でないか、斯かる一大設計圖の裏付けなしに法文のみの提出は私は亂暴も甚だしいと思ふのであります此の點に付ての御意見を承ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=89
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090・星島二郎
○星島國務大臣 其の設計圖と云ひますのは、大體對象と致しまする日本の農業、商業、工業等の大凡の見透しと言ひまするか、計畫と云ふやうなもので、どうしても物資需給調整上此の法律がなくてはやつて行かれないと云ふやうなものは、それぞれ或は書面に依りまして御示しすることもあると思ひますが、又一つの例と致しまして、省令では此のやうな方針でやつて行くと云ふやうなことも、現在大體決められてあるものがあります、大體月曜日頃までには斯う云ふ樣子で行くからと云ふものを纒めまして、十分御諒解を得た上で進んで行きたい、斯樣に思つて居ります、尚ほ只今の大きな設計と云ふものは、實はやはり經濟安定本部が生れたばかりでありまして、さうして安定本部が何處までどう云ふ仕事をするかと云ふ點さへも、今正に決めつつあるやうな譯であります、併しながら大凡の線は先程も申し、本日午前にも申上げたやうに、商工省から言ひますならば、纖維に付きましては斯う云ふ方針でやつて行くとか、或は自動車工業に對しては斯う云ふ方針で行くとか、「ゴム」に對しては斯う云ふ方針で行くのだと云ふことは、主管省としては言へますが、それに對しての最後の裏付と云ふものは、やはり安定本部會議で決定される譯です、併し何と致しましても相當な輸入原料を仰いで、それを此の法律の適用に依つて按配して、中小工業を盛んにして行くと云ふ所に持つて行くのでありますから、隨て此の法律は本當を言へば、私は安定本部が作つて出すのが本當だと思ひます、併し安定本部が出來ない前に此の施策が始まりましたから、一番關係の深い商工省が主管をして立案をし斯う云つた提案を致したやうな譯であります、隨て今御尋ねの根本的なことは、少くとも次の臨時議會邊りまでには、凡その線を決めて發表する時もあらうと思ひます、隨て是等に付ては寧ろ積極的に政黨側としても意見を出して載いて之を安定本部に反映をして戴きたい、斯樣に思つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=90
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091・鈴木明良
○鈴木(明)委員 速かに闡明されんことを切望致します
次に民主的なる物資割當の方法として如何なる用意があるか、又産業團體が割當を決定する際、如何なる方法に基くものであるか、其の點に付て承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=91
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092・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 物資の需給計畫は、大體安定本部に於て部門の別割當を決定して行くやうなことになるものと存じます、産業部門別に安定本部で決められましたものを、主務大臣が實行致す譯でありまして、其の際に於ては原則として、其の産業を組織する團體が總括幾らと云ふ數量を貰ひまして、之を安定本部に於けるやはり方策に依りまして、重點的に配給案を作つて貰ふことになつて居ります、其の際に於ては、大體其の統制團體の議決に基きまして割當の基準と云ふものを作つて戴きます、それに依つて運營をして行くと云ふやうなことで、各企業に對する割當を實行する豫定で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=92
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093・鈴木明良
○鈴木(明)委員 次に配給統制を民主的に實施する方策、及び從來の配給統制機關との關係は如何樣にする考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=93
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094・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 是れ亦具體的の例は後程の資料で御説明申上げたいと思ひますが、抽象的に申しますと、配給統制を致しますのには、其のものに依りまして多少づづ統制の方式を異にするものと考へます、非常に製造家も多いし消費者も多いと云ふ場合に於きましては、一手買取、一手販賣と云ふ形の統制機構、今日までは統制會社と云ふ形でやつて參りましたが、さう云ふものを通常の株式會社に改變を致しまして、其の仕事に當らせることも考へて居ります、併しながら製造業者が割合に少い場合とか、或は消費する方が割合に少い、需要者が少いと云ふやうな場合に於きましては、さう云ふ方々の團體の配給指示と云ふことで、配給の割當を致して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=94
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095・鈴木明良
○鈴木(明)委員 先程膳國務大臣から、産業團體に配給する場合と、個人に配給する場合と重複しやしないかと云ふ同僚からの質問に對して、重複するのは已むを得ないと云ふ御答辯でありまたが、さうすると結局顏の利く者が配給を澤山取ると云ふ結果に陷りまして、物資の獲得競爭が起きやしないか、それに對する技術的の措置を御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=95
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096・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 御話のやうな場合が起り得ることも豫想し得るのでございます、隨ひまして第二條第三項の業者其の他からの不服の訴と云ふものは、さう云ふ場合に利用されるものと考へて居ります、役員の方が特に自分の企業に對して餘計に割當を取る、或は特別の關係のある方に餘計に割當をすると云ふやうなことが起る譯であります、さう云ふ場合を是正する爲に、主務大臣が公益に適した決定をすると云ふ規定を設けて、さう云ふ際に主として之を發動するものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=96
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097・鈴木明良
○鈴木(明)委員 そこで民主的に組織されたる産業團體の問題となるのであります、是は主務大臣の告示に依つて指定されるとあるが、産業團體の認可の基準、資格、及び現在の各統制機關との關係は如何樣に處置せんとするのか、御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=97
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098・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 此の民主的に組織された團體の資格の問題でございますが、此の資格の認定に付きましては、實は色々細かい手續を法律に規定すると云ふことを考へたこともあるのであります、併しさう云ふ團體に付きましては一々細かく政府が干渉するなり、或は批評すると云ふことをする必要はないのであつて、寧ろ民主的に、本當の民間の必要に應じて統制團體を作つた方が宜からうと云ふ考へを以ちまして、法律には特別の色々の手續規定を取止めまして、唯第二條にありますやうに、其の統制團體の内容が民主的であると云ふことだけで、之に割當權を認めて行くのが宜しからう、斯う云ふことになつた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=98
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099・竹田儀一
○竹田委員長 鈴木君に御諮り致しますが、今理事會で理事の方々がそれぞれ御相談致しまして、色々の都合上二時で打切りたいと云ふことに決まつたのであります、若し短かければ引續き御質問下さつても宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=99
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100・鈴木明良
○鈴木(明)委員 それではここで止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=100
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101・竹田儀一
○竹田委員長 それでは本日は此の程度で散會を致しまして、明七日午前十時から開會致します
午後二時散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=101
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102・会議録情報3
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〔參照〕
臨時物資需給調整法案委員會要求資料
一、經濟安定本部の基本的政策及び計畫の全貌
二、本法によつて規定される「物資」全般の生産消費、貯藏(ストック)の統計及び終戰後の趨勢
三、前掲「物資」の生産設備の現状及び賠償設備撤收後の設備能力
四、前掲設備能力と戰前との比較、主要物資については各社別豫想企業整備後の生産能力の豫想
五、産業團體の現状(組織機能、人的機構)
六、現在の各「物資」配給るーとの現状
七、今後一ヶ年間に於ける原料資材の輸入可能豫想量(品種別)
八、現在の各「物資」割當の現況
九、戰時中の「臨時物資輸出品等に關する法律」に基く物資移動の状況
十、各「物資」別の生産高、供給高、消費高、「ストック」に關する諸資料発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00219460906&spkNum=102
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