1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
臨時物資需給調整法案(政府提出)
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昭和二十一年九月七日(土曜日)午前十時三十九分開議
出席委員
委員長 竹田儀一君
理事 加藤一雄君 理事 小島徹三君
理事 塚田十一郎君 理事 原健三郎君
理事 宮前進君 理事 西村榮一君
理事 前田榮之助君 理事 石原登君
理事 疋田敏男君 理事 福田繁芳君
安部俊吾君 井田友平君
飯國壯三郎君 西村久之君
小野孝君 瀧澤脩作君
金光義邦君 鈴木明良君
金子益太郎君 加藤鐐造君
竹谷源太郎君 中崎敏君
山口靜江君 米山久君
河野金昇君 三木武夫君
戸叶里子君 布利秋君
出席國務大臣
商工大臣 星島二郎君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
商工事務官 吉田悌二郎君
商工事務官 玉置敬三君
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本日の會議に付した議案
臨時物資需給調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=0
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001・竹田儀一
○竹田委員長 會議を開きます──鈴木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=1
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002・鈴木明良
○鈴木(明)委員 安定本部長官に御尋ね致します、先づ第一番に經濟安定本部と各省との關係に付て御尋ね致します、經濟安定本部は各界の有識者に依つて構成されるとのことでありますが、其の構成員の顏觸れを見ると、聊か片手落の感があるやうに見受られます、要するに中小工業者の代表とか、或は勤勞者の代表と云ふやうなものが缺けて居はしないかと云ふ風に思はれるのであります、假令それ等の有識者に依つて基本的な政策を立案しても、各省に對して、曾て長官の答辯に依りますると命令權はないのだ、斯う云ふことになると、勿論安定本部の機構や人的措置も大切には相違ないが、是が過去に於ける企畫院や綜合計畫局のやうに、官僚的な機構に化してしまひはせぬか、要するに各省の諮問機關として、官僚大臣の失業救濟機關となるやうなことはないか、それに付ての長官の意見を發表されたい、同時に安定本部の緊急對策と恆久對策、それを具體的に闡明し、併せて各省に及ぼす影響と經濟安定會議との關係に付て、御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=2
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003・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ致します、各省と安定本部との關係はどうなるかと云ふ御尋ねでありますが、正直に申しますと、まだ大部曖昧模糊たるものがあります、と申しますのは安定本部の構想なるものが、日本の現在の憲法が豫想して居ります内閣の官制と、ぴつたり合つて居るかどうかと云ふに、私實はそれが必ずしも合つて居るとは申上げ兼ねる次第であります、詰り現在の憲法に於きましては、各國務大臣は單獨に輔弼の責に任じます譯でありますけれども、憲法上と云ふか、官制上、總理大臣必ずしも各省を指揮するとは申上げ兼ねるのではないかと思ひます、然るに安定本部の今度の官制に依りますと、從來の内閣官制と違ひまして、安定本部の總裁である總理大臣は、必要ある場合は各省大臣を指揮することが出來る、斯う書いてあるのであります、隨て憲法に基きます所の官制にさう書いてあるのでありますから、是は勿論何も憲法に牴觸でも何でもございませぬけれども、從來の内閣の官制と安定本部の關係致します限りに於ての官制と云ふものが、必ずしもぴつちり行つて居るかどうか、私は遺憾ながら能く其の邊が分らないのであります、但し新しい憲法に依りますと、總理大臣の各省大臣に對する指揮權が憲法上明瞭になつて居りますから、此の點はもう問題がないと思ひます、是は大變理窟めいたことで、私の專門外のことでありますから、若し此の答辯が間違つて居りましたら訂正したいと思ひます、豫め此の點御諒承願ひたいと思ひます、實際問題としては、やはり安定本部總裁たる内閣總理大臣の指揮權と云ふやうなもののやり方に對する、一つの新しい構想であると思ふのであります、隨て各省との關係に於て、さう云ふ點に付て多少の疑念があると云ふことは是はどうも仕樣がないのであります、併し各省との關係に於て、如何にして安定本部總裁たる總理大臣の職責が全う出來るかと云ふやうな機構に付ては、段々と整備されて居るのであります、一つの例を申上げますると、是は數日前の閣議で決定した問題でありますが、例へば本日問題になつて居りまする臨時物資需給調整に關係のありまするやうなことで、各省と安定本部との關係が如何相成るかと云ふやうな點に付きまして、方針が決定致した譯であります、安定本部は先づ緊急産業が何であるかと云ふことの選定を致します、物資需給の基本計畫及び各緊要産業に對する割當計畫の設定を致します、それから其の次には各省に於て行ふ各緊急産業に對する割當計畫實施をば監査致します、斯う云ふやうなことを致しまする爲に、安定本部の一部には格段なる擔當係りが置かれます、さうして之をやる爲には何時も申上げるやうに、單に官のみではありませぬ、民間からも、學者からも智能が、少數ではありますけれども集まりまして之を決定することに相成つて居ります、尚ほ是等の事項の決定に付きましては、關係各省と安定本部との間に連絡會議を設けまして、事務的にも絶へず連絡を致して居ります、併しながら各省の意見が色々に分れました際には、安定本部長官は之に裁定を加へます、斯う云ふことは實際には滅多にありませぬけれども、安定本部長官の定めましたことに付て尚ほ問題がありまする際には、官制に基きまして安定本部總裁たる内閣總理大臣は、各省の行ふ事業に對して、各省に對して必要なる事項を命ずる、斯う云ふ風に、例へば物資の統制等に付きましても致すことになつて居ります、隨て事務的にも絶へず各省との緊密な連絡を圖るが、尚ほ各省との間に異論のある問題は、安定本部が科學的にも、統計的にも、十分研究致しました其の結論に基きまして裁定を加へ、それでも尚ほ意見が合はぬやうな場合には、總裁が各省に對して之を命ずる、斯う云ふ風に運營されやうと思ひます、實は安定本部が動もすると唯從來の企畫廳、或は之に類似致しまする「ペーパープラン」を作つて各省の參考に供する、或は各省の諮問に應ずると云ふやうな形に墮するのではないか、洵に御心配御尤もでありますが、今囘は所謂從來色々の間違ひの因にもなり、多く朝野の恨みの因になつた官僚獨善にも墮せず、又一方徒らに策謀を致し、數字を羅列するだけの計畫廳に終るのでなくて、實際物資の割當配當等に付きましても、安定本部の研究及び其の結果が、各省の研究と相連絡致しまして、實行性のあるものに相成ることと存じて居ります、此の點に付きましては別に閣内誰も異存がない、斯かる方針に依つてやらうと云ふことに、既に決定致して居ります次第であります、是もまだ初めてのことでありますから、或は不手際があるかも知れませぬが、今御心配のやうな點は萬ないことと存じまする次第であります、それから又中小工業の代表が、果して安定會議の民主的の研究の機構に反映するだらうかと云ふ御心配、是も洵に御尤もであります、實は安定本部で私共が一番心配して居りますものは、企業整備をされました中小工業が、今度の補償打切の措置に依りまして相當甚大な打撃を受けるのであります、又從前は輸出工業の六割を占めるやうな中小工業が、東京、大阪、名古屋等の都會に相當ありましたものが、戰災の爲に災難を蒙りまして、是等の復興の爲には中々苦心を要する、一方問題は資金、資材でありますが、資材の點は只今申上げましたやうな機構に依りまして、全體の資材の需給計畫をば安定本部で握り、之を配給します際に相當の資材をば中小工業の方面に向けたいと考へて居る譯でありますが、金融などのことを考へますと、復興金融金庫が出來、是は組合を利用し、又商工組合中央金庫等の利用に依りまして萬全を期すると言ひますけれども、果して中小工業に復興資金が行渡るかどうかと云ふことは、實は私共の非常に惱んで居る點であるのでございます、然らば安定本部に具體的にどう云ふ策が今出來て居るかと言はれましても、是は實に大事な問題でありますので、中小工業に付ては各省で色々御心配はされて居りますけれども、之をやはり統一的に考へて各省の計畫して居る所を推進しまする爲に、安定本部内に中小工業の問題を取扱ふ一つの特別な機關を──是は如何なる形になりまするか、まだ御話を申上げるまでになつて居りませぬけれども、近く發足させたいと考へて居ります、斯う云ふやうな部門には勿論中小工業に對する理解もあり、又之を指導した經驗もあり、又中小工業の中にあつて、挺身して共同の爲に働いて居られたやうな方々も、是非とも入つて貰ひたいと考へて居ります、尚ほ今まで發表しました安定本部の人事の中には、只今も例へば勞働關係を代表する人達が入つて居らぬではないかと云ふやうな御尋ねもあり、是も私共は如何にしてさう云ふ方面に多年の御經驗のある人を安定本部に入つて戴くことにしたら宜いか、實は努力して居るのでありますが、正直に申しますと、何か安定本部は資本家の代表ではないかと云ふやうな一寸誤解がありましたり、或は何かそんな風なことの御懸念があつて、さう云ふ方面の人も指名して居るのですけれども躊躇される方もある、併し幸に數氏立派な方に御協力をして貰ふことが出來ようと思ひますので、是も遠からず安定本部の參與、部員等を段々と發表しますが、其の中にああ斯う云ふ人があつて宜かつたと云ふことを、必ずや皆樣が肯いて戴けると思ふのであります、甚だ率直なことを申上げまして、斯う云ふ御答辯が御滿足であるかどうか分りませぬが、ありの儘のことを申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=3
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004・鈴木明良
○鈴木(明)委員 只今の御説明に依りますと、安定本部はまだ確たる方針が定まつて居ないと云ふやうに私は伺つたのですが、さうすると此の安定本部が頗る不安定本部になる虞れがありはしないかと私は思ふ、此の點に付ては大英斷を以て急速に方針を發表されんことを望みます、尚ほ本會議に於きまして長官は、安定本部は命令權がないのだと云ふことを申されましたが、今日の新聞に依りますと、必要事項を命ずると發表になつて居るやうでありますが、何れが本當か、此の點を伺ひたいのであります、同時に安定本部と經濟安定會議との關係に付ても御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=4
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005・膳桂之助
○膳國務大臣 只今の御尋ね、或は本會議で私が若し左樣なことを申したら申し損ひであつたかも知れませぬ、私は本會議でも安定本部と各省との權限に付て、斯う云ふ風な意味で御答辯申上げた記憶があるのです、其の關係如何と云ふことに對しましては、斯う云ふ御尋ねのやうに思ひました、閣議と安定本部の計畫との關係はどうか、勿論閣議に掛けまして各省の間に十分の諒解を得て進めなければ實行出來ないのだ、併し各省の間に意見が分れたものがある場合には、安定本部の總裁である總理大臣は、當然官制に基く指揮權を行使して之を指揮命令するのだ、斯う明瞭に申上げた積りであつたのでありますが、若し私の從來の説明が曖昧でありましたならば、此の際重ねて左樣な意味に御諒承を願ひたいのであります、先程申上げました物資需給に關する問題でも、最近閣内での一つの決定にも、安定本部總裁たる内閣總理大臣は、各省の行ふ事項に付て必要のある場合には、關係各省大臣に必要な事項を命ずる、斯う云ふことをはっきりと定めて置きました次第でありまして、其の點はどうぞ御諒承を願ひたうございます、それから安定本部で色々方策がまだ定まらないのは甚だ不安定だと仰しやいますが、是は如何なる御批評を蒙つても致し方がない、甚だ恐縮でありますが、斯う云ふ風に御諒承が願ひたうございます、各省で、例へば物資の配給、需給の問題に付きましても、從來政府としましては各省の間に十分の研究もございます、又安定本部が出來まする前に、安定本部が出來たならば斯樣な風にと云ふやうな意味合の研究もございます、併しながら私自身、又安定本部の中樞部に於きましては、安定本部の根本方針はもう一度經濟の最近の變動、具體的に申しますると、度々申します通り補償打切から生じまする、各産業の間に生ずべき色色の凸凹、又賠償物資の撤去に伴ひまして出來まする、産業界の間の非常な不均衡、斯う云ふやうなものを眺めまして、目標はありますけれども、如何なる方面から如何やうに之を安定せる經濟状態に持つて行くかと云ふことは、從來の各省の研究だけではいけないので、茲に新しい一つの研究が必要ではあるまいか、殊に其の研究を基礎付けますものは、從來の日本の政策の缺點と言はれて居りますものは、兎角腰溜め式なものが隨分あるのでありまして、やはり色々の經濟再建に關することは、統計的又學問的の檢討が加へられる必要もございます、又官僚統制に流れない爲には、度々繰返して申しますやうに、之を民主的に再檢討する必要もある、更に根本方針を定める際には、やはり朝野の經驗者、又は各界の利害關係者、又輿論を代表するやうな、さう云ふ方面の人々からなる安定會議に一應之を曝しまして、彫琢を加へて戴いて、初めて日本再建の根本の方策の指針をば決めて參りたい、其の前に若し御示しするものがあるとしますれば、唯安定本部の長官である私の一個の私見に過ぎないもの、或は從來各省で作りましたものを、唯羅列したのに過ぎないものになるのでありまして、私共はもう少し掘下げたと申しますか、檢討を加へた──さうだからと云つて荏苒之に日を費す譯ではありませぬので、急いでそれ等の準備に只今懸命工作致して居る次第であります、今不安定に見える安定本部も、必ずや皆樣に安定感を與へるやうに、努力致したいと存じて居ります、それから安定會議はどう運營するかと云ふ御尋ねでありましたけれども、是も累次御話申上げますやうに、從來の會議とは少し方法を變へまして、多少人數は多くなりますけれども、現在の所では、是もまだ決定ではありませぬが、約六十人位の會議員となります、其の中の四分の三は民間の各界の人を以て之に充てる、殊に從來と違ひます點は、學者、輿論の代表及び勞働代表、さう云ふやうな部面の代表が加はることであらうと存じます、只今折角人選中であり、又色色手續を進めつつありますので、是も遠からず安定會議がどんなものであるかと云ふことを、皆樣が御覽下さり得るだらうと存じます、只今の所では何を申上げましても、安定本部が出來ましてからまだ一箇月そこそこでありまして、私共が決定しましたことを此の機會に、皆樣に御滿足が行くか行かぬか分りませぬけれども、或る程度までお目に掛けることの出來る段まで行つて居りませぬことは、重ね重ね私自身も遺憾と思ひまして、皆樣も必ずや是は御不滿足であらうと存じて居りますが、どうぞまだ安定本部は開業勿々である、それから安定本部が輕々に物を取扱ひたくなく考へて居る、さう云ふ點を一つ御諒承戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=5
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006・鈴木明良
○鈴木(明)委員 開業勿々の安定本部が、莫大なる豫算を計上して居るのであるが、何處を基準として計上したのであるか、又其の豫算の使途に付ては、どう云ふ風に今後使つて行くと云ふのか、其の點も併せて説明願ひたい、先程の安定會議の所に戻るのですが、安定會議には國會議員を入れる意思があるかどうか、其の點も闡明されたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=6
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007・膳桂之助
○膳國務大臣 言ひ漏らしまして、甚だ恐縮であります、勿論國會議員は貴衆兩院とも、相當の數の方に御加入を願ふ積りで居ります、是は當然のやうな氣持がしたものですから、申上げ損ひまして恐縮でありました
それから安定本部に莫大な豫算を持つて、之をどう使ふかと云ふことは、多分豫算の中に經濟安定費として五十五億の豫算の計上されて居ることだらうと存じます、是は經濟安定費とはなつて居りますが、實は公共事業の爲に使ひまする經費でございます、公共事業、之をどう云ふ方面に使ふかと云ひますると、是には斯う云ふ方針を執つて居るのであります、先づ第一番に生活必需物資竝に現下最も必要とする資材をば生産する、其の生産するに最も役立つものが第一、第二には之に依つて就業者を──詰り失業者と申してはいけないのでありますが、就業者を出來るだけ澤山吸收し得るもの、第三には斯う云ふ原材料の不足の際でありますから、出來るだけ少い材料を使つて、大きな效果の擧げ得る事業、斯う云ふやうな三つの點をば主眼と致しまして、安定本部に於て公共事業をば査定する、一定の基準を作成致しまして、之に基いて各省から公共事業として提出されました百數十億の事業をば査定致しました、既に査定は内部的には終つて居ります、關係方面と折角交渉中でありまして、此の議會に豫算が貴族院を通過する、無論其の以前に確定して、其の全貌が發表出來ると思ふのでありますが、大體是もまだ確定したものでありませぬから、或は多少の動きがあるかも知れませぬけれども、大體食糧増産關係のもの、住宅及び戰災地の整備關係のもの、治山、治水、主として治水ですが治山、治水關係のもの、港灣等、輸送を改善すべきもの、それから公共の建造物に對するもの、職業輔導其の他に關係しまするもの、是等に五十五億の豫算をば割り振りまして、一方には産業の開發に依りまして、急速に食糧其の他の物資の供給及び配給に便ならしめ、又他方には之に依りまして失業勞務者をば之に吸收したい、斯う考へまして、只今申上げますやうに大體私共の方の査定も濟み、各省との間の交渉も濟みまして、今之を最後に決定すべき段階に到達して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=7
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008・鈴木明良
○鈴木(明)委員 最後にもう一つ御尋ね致します、經濟安定本部は産業の囘復及び振興の爲に、基本的な綜合計畫を策定する機關でありまするから、眞の平和日本建設に對する愛國心と國民に幸福を與へ、民生安定を圖る爲の機關であると私は思ひます、若しさうであるとするならば、戰前の我が國の官廳の機構は、現在の半分程で十分間に合つて居たのであります、同時に其の人員に付ても同樣であります、然るに三分の一縮少された敗戰日本の現在、戰前の倍に値する官廳の官僚の増加、機構の増加、又最近の勞働省の設置等大分官僚は増加されると私は思ひます、官僚が増員されれば其の財源の捻出方法はやはり國民に掛つて來るのであります、國民生活の安定を目標にして居る長官の技術的措置を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=8
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009・膳桂之助
○膳國務大臣 安定本部が愈愈經濟再建の根本的諸方策の研究を進めます際に、最後の問題が今御尋ねの國家財政を如何にするかと云ふ問題にまでやはり參ります譯で、實はそこまで行かなければならぬ問題と思つて居ります、但しそれまでも經濟安定本部が手を伸ばしたいと申しますか、やるかどうかに付きましては、まだ是から研究の進捗を見なければ何とも申上げ兼ねる次第でありますが、官廳機構が、戰前よりも却て國内の領土も非常に減り、色色な仕事も減つて居るのに益益色々なものが殖えることは、是は中々重大な問題であります、實は是は私が申上げて宜いことかどうか分らないのでありますが、地方制度の改善等に關係も致します、又官廳機構の民主化と云ふ問題に關係しまして内閣の中にそれ等の改善の爲の研究もされるやに承つて居るのでありますが、今御質問の點、洵に御同樣心配すべきと申しますか、警戒すべきと申しますか、考へ直さなければならぬ點と存じますので、安定本部の仕事にそれがあるかどうか是は分りませぬけれども、安定本部の諸般の施策と竝行しまして、是が研究をされるではないかと私は豫測と申しますか、期待を致して居りまする次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=9
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010・鈴木明良
○鈴木(明)委員 あとは商工大臣に質問したいと思ひますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=10
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011・竹田儀一
○竹田委員長 貴族院の豫算分科へ行つて居りますから御留保願つて、あとで來られてから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=11
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012・鈴木明良
○鈴木(明)委員 長官が御答辯下されば、長官でも結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=12
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013・膳桂之助
○膳國務大臣 餘り細かいことは私、知りませぬから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=13
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014・竹田儀一
○竹田委員長 大臣がお見えにならなければいかぬやうであれば、もう少し後廻しにしては…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=14
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015・鈴木明良
○鈴木(明)委員 後廻しに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=15
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016・竹田儀一
○竹田委員長 西村さん発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=16
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017・西村榮一
○西村(榮)委員 私は本案を審議致す上に於きまして、先づ第一に我が國の産業を如何なる方向に持つて行くか、第二點は本法の内容それ自體、第三番目には本法の施行に關聯して、物價竝に通貨の安定施策に付きまして御質問申上げたいと思ふのであります、先程膳さんの率直な御答辯を承つて、立場の相違は兎も角も、私は一應の敬意を表します、私も社會黨の見解を述べつつ展開致して行くのでありまして、敢て三百代言的な擧足を取ることを致しませぬ、隨て御答辯も立場の相違はあれ、日本の産業を如何に再建して行くかと云ふ點に於て、率直な且つ御誠意ある御答辯を承りたいと思ひます
先づ順序として承りたいのは、去る三日の新聞に於て「マッカーサー」元帥が對日理事會に對して、炭礦の國有化案を審議なすことを提案せられたのであります
〔委員長退席、加藤(一)委員長代理著席〕
是は日本の産業の基本的な問題として極めて重要な問題であります、政府は之に對して、單に對日理事會の審議竝に其の結論を待つと云ふことでなしに、日本政府は此の問題に對して如何なる御見解を有せられるか一應承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=17
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018・膳桂之助
○膳國務大臣 此の問題に對して、是も率直に申上げますと、日本の政府として如何なる方針に行くか、態度を執るかと云ふことに付ては、まだ何等決定して居るものがございませぬ、或は石炭廳を主管する關係に於ける商工省としての御意見はあられませう、又安定本部としての研究はございます、併しながら中々此の問題は國内的ばかりではありませぬ、國際的にも機微な問題が包含されて居りますので、之に付て政府が如何樣に考へて居るかと云ふことを輕々に申上げるのは、甚だまだ其の時でないと思ひますので、此の問題は姑く一つ、どうぞ答辯を御猶豫願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=18
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019・西村榮一
○西村(榮)委員 石炭鑛業が、日本の基本産業の最も基本的立場に於ける重要性を考へて、是が國有國營を斷行して、技術の改善と經理の合理化を圖つてはどうかと云ふ日本社會黨の主張に對しまして、政府は他の重要産業と關聯して悉く民營論を主張せられて來たのであります、今「マッカーサー」元帥の對日理事會に對する提案に付ての答辯は保留せられると致しましても、從來の石炭竝に重要産業の國有國營の問題に對して、民營論を政府は主張せられて來たのであります、今日只今の政府の見解は、尚ほ石炭に對して民有論を主張せられ、從來の儘の形の經營形態を是なりと信ぜられて居る、或は客觀的な情勢の變化が、或は世界的な思想的な變化が、國有を是とする潮流にあると云ふことを再認識せられたのかどうか、「マッカーサー」元帥の對日理事會に對する御提案とは別に、現在の政府の之に對する御所見を承りたい、同時に若しも民有案が從來の儘の形態を繼續せられると致しまするならば、本年度の豫算に於ても二十二億の補給金を計上せられて居ります、或は又追加豫算として八億なり九億、本年度恐らく此の儘で行きまするならば、石炭だけで補給金を與ふるものは、五十億を超過すると推定するのであります、若しも民營が是なりと考へられるならば、此の補給金を日本の財政で永久に續けて行くことが出來るかどうか、又可能なりや否や、國際關係を考慮して十分御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=19
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020・膳桂之助
○膳國務大臣 此の問題を日本政府の決定的な意見なりとして申上げることは、先程も申上げまするやうに、まだ其の段階になつて居りませぬから、一つ御猶豫と云ふか御容赦を願ひたいのでありまするが、安定本部長官としてどんな風に此の問題を考へて居るかと云ふやうなことに付ては、是は聊か申上げて宜いのではないかと思ふのであります、但し斯う云ふ私見の、まだ公に安定本部として決まつて居りませぬ問題を私が申上げますのは、甚だ自分の快しとしない所でありまして、又安定本部として決定しました際には、何時でも私の今日申上げました前言を取消しますから、どうぞさう云ふ留保附で一つ私の率直な、此の問題に對しまする研究すべき點をば二、三申上げまして──是は政府の意見として申上げますよりも、此の石炭の問題は、承りますれば衆議院の各派に於かせられましても、黨派を超越して此の問題の解決の爲に邁進しようと云ふ非常な強い、又日本の政府としては何よりも有難い御協力を得やうとして居るのでありますので、私の申上げますることは、共同の是から研究すべき一つの事項であると云ふ位の思召で、率直に私が申上げますことをば御聽取り願ひたいのであります
先づ第一番に、是も國際的のことを申すのではありませぬけれども、何か石炭礦の國有と云ふか、是が世界の大勢であるかのやうな御意見のやうでありましたが、是れ亦色々見解もございませう、併し私共の非常な不完全な研究ではございまするけれども、「イギリス」に於きまする炭礦國有になりました所以は、多少炭礦の事情等が違ふ點があるのではないか、例へて見れば非常な小炭礦が分立して、數千に上る炭礦業があり、又此の間の鑛區の錯綜と云ふか、又土地の所有權と採掘權との錯綜した關係、色々な點に於きまして、是が日本に取つて見ますると、重要な鑛山は、十數箇、非常に數が多いと言つても、千は算しないで或は二、三百あたりではないか、私も甚だ知識が朦朧でありますけれども、又經營の規模等に於きましても、「イギリス」が炭礦を國有にした社會情勢竝に礦山其のものの態樣も少し違ふ事情があるのではあるまいかと存ぜられます、併し是は別問題としまして、第一番に國内問題として考へたいのは、それでは現在なぜ日本の炭礦問題が起きたかと申しますと、皆樣も既に御承知で居らせられると思ひますが、日本の總ての工業の本である石炭の産出が思ふやうでなく、其の上に持つて來て非常に生産費が掛かるので、既に豫算でも先程御指摘のありました通り、相當の之に補給金を出すにあらざれば石炭の經營が困難だ、斯う云ふ事情にありますから、此の上國庫が石炭の補給金が出せないとすると、茲に石炭業に對してどう云ふ風にしたならば宜いかと云ふことが考へられて居りますので、此の現象を直ちに民營であるからさう云ふ現象が出來て來るのだ、國有にすれば問題が解消するんだと一概に言はれるのは、非常な實際を超越した、理論の飛躍だと考へられます、私も石炭のことは實は素人なのでありますが、私共の研究、役所の研究に依りますると、數量問題も伴ひますけれども、現在の問題は一番は炭礦問題から出て居ると思ひます、數量の少いと云ふことが、炭價が非常に騰貴して居る原因であると云ふことも言はれます、又なぜ石炭が出來ないかと言へば、是は現在の石炭の所謂鑛業主、礦山の經營が惡いから、私利私慾に趨るからと云ふやうな意味では全くないやうであります、根本の原因は此の戰爭開始後──兎に角從前の普通の石炭の經營であれば、山の保全或は新坑道の掘進とか云ふやうな將來に備へることをしまして、又石炭業に對しては鐵材のみにしても六、七萬「トン」の供給があつて、坑内の諸施設の維持には事缺かないのであります、而も石炭業は、昭和四、五年頃の石炭業ばかりではありませぬけれども、財界不況に伴ふ所謂産業合理化、斯う云ふ波を受けて石炭業が非常な合理化をして居つたのであります
〔委員長著席加藤(一)委員長代理退席〕
偶偶事變が起り戰爭が起きたのでありますが、一時五千何百萬「トン」と云ふやうな多量が掘れましたのは、從前粒粒辛苦して礦山の經營の合理化をした、是は民營の非常に良い所でありました、所が戰爭が始まりますと、目前の必要に迫られて、一方の將來の構へなどは構はず、何でも石炭を掘出せ、謂はば山を荒してしまつた、加ふるに鐵鋼材其の他の資材は戰爭目的の爲に他に流用されまして、それで適當な礦山の掘進とか或は維持とか云ふ方面の資料が參りませぬ、坑内の色々な諸機械等も荒れるが儘、酷使するが儘に過ぎ去つたのでありまして、要するに今日石炭の増産の出來ないと云ふことは、根本の原因は經營が惡かつたと云ふよりも、無理な戰爭をした爲に、山を荒らすことを政府が命令したと云ふことにあるだらうと思ひます、是が根本だと思ひます、現在に於きましては或は坑木の問題であるとか、坑夫諸君の日用品供給の不足問題、食糧問題等多々あります、併しながら著しく目に付くものは、五千數百萬「トン」生産した時と殆ど變りのない礦山に居ります人數で、今日では其の半分の生産も出來ないと云ふ現象であります、是は一方には現在の礦山も、或る方面では非常に能く坑夫諸君が勉強して居るが、或る地方に行きますと一日に三時間か四時間しか働いて戴けないのだと云ふやうな恨みを言つて居る所もあります、併し是も掘下げて研究して見ますれば、やはり食糧の配給が不十分であり、其の食糧不安の爲に買出しをするとか諸般の事情もある、勿論之には或る一部の思想もあるかと云ふことも、是は否み難い事實だらうと思ふのでありますが、此の事は申しませぬ、兎に角物的にも人的にも此の減産を來すべき諸般の事情があるのでありまして、之を一概に炭礦の經營が、炭礦主の所謂私益追求であるとか或は云々と云ふやうな、詰り民營に基く弊害とのみ、之を斷じ得ないものがあらうと思ひます、又炭價問題に於ても左樣であります、今日の炭價の昂騰を來して居ります原因は、諸原料、諸材料と同時に、賃金の異常な昂騰にあるのでありまして、決して石炭の山の民營に基く原因ではないのであります、食糧の不足から來る所の賃金の異常な昂騰、是は勞働方面にも、事業方面にも其の責があるのではありませぬ、何れも是は無理な戰爭をした結果に基くものでありまして、生産數量の少いと云ふことが生産費を異常に昂騰せしめる、併し又茲に、若し日本の經濟に通常の需要供給の理論が適用されるものとするならば、經費の掛つたものは掛つたで處分されてこそ、そこに合理的な經營が行はれるのでありますが、一方には經費が掛つても其の生産費を償はないもので買却すべく餘儀なくされて居る、是も已むを得ずさう云ふ状態になつて居りまするが、さう云ふやうな事情は、是は決して民營の方針が惡かつたからだと一概に斷ずべからざるものがありまして、現在の生産數量の上らないこと、竝に經費の高く掛ることを以て、直ちに民業の弊害なりと言ふことの出來ないものがあるのではないかと存ぜられるのであります、一方又國營と申しますと、何かそこに少しも利潤追求が入らないで、一つの理想的な制度のやうに思へるのでありますが、偖て官營國有となると誰がやるのかと云ふことになりますが、何と申しましても是は官吏が經營すると云ふことを考へざるを得ないのであります、又或は何か委員會制度が何かのやうなものが管理すると云ふことも、理論的には考へられるかも知れませぬけれども、實際の管理の衝に當りますものはやはり是は皆樣から絶えず非難攻撃を受けて居ります官僚の一部分が、之に當ることにならうと思ふのであります、日本の所謂官僚が果して能率的であるか、或は經費の節約が出來るか、合理的の經營が出來るかと云ふことは、是は私政府の一員として洵に申しにくいのですが、私豫て民間に居ります時から、やはり日本の官業制度と云ふものは、根本的に之を考へ直さなければならぬ、是は大變な道樂息子を抱えることになつてしまうと云ふことを考へて居つた譯であります、理論は兎に角として、國有と云ふことは即ち官營であり、官營であれば從來我が國で行はれて居る鐵道、電信、電話と云ふものと、「アメリカ」其の他で行はれて居ります所謂國有と云ふものと、其の何れが能率的であるかと云ふことを比較致しまして、直ちに一飛びに國有になすべしと云ふ議論は甚だ危險なことでありまして、是から經濟諸統制が強化するに連れて、從前のやうな資本主義形態の經營組織其の儘で宜いとは決して考へて居るのではありませぬ、是等は大いに修正すべきと云ひますか、考へ直すべき點があると思ひます、石炭問題も國内問題として今日生産數量が少い、又炭價が非常に高く國の補給金が多い、之をどうにかしなければならぬと云ふやうな問題を眼前に見まして、そこで是は世界の大勢であるからと言つて、直ちに官營國有を論ずると云ふことは、少しまだ研究をすべき問題がそこに多々殘つて居るのではないかと思ひます、併し是は政府の意見ではございませぬ、偶偶安定本部總務長官であります私の私見でありますので、後に修正すべきことがありますれば修正を致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=20
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021・西村榮一
○西村(榮)委員 只今膳國務大臣から、英國の例を引かれて我が國との比較をなされたのでありますが、英國が一九一八年勞働黨が其の綱領として揚げましたものは、肉體及び精神の成果を發揮する爲に、而して其の成果を可及的公平に分配する爲に、我等は生産手段として國有化の全産業及び事業は、之を國民全體の管理に移すことを認める、而して其の國有化の目標は、炭礦の技術的再編成を斷行し、生産力を高めるにあり、且つ賃金補助の解決に當るものなり、斯う云ふことが目標とせられて居るのであります、是が今次戰爭後、英國勞働黨が石炭業を國有に致しました眞の目的であります、而して其の目的とする所は即ち炭礦技術の再編成、賃金補助の解決であつたのであります、此の英國の問題は戰勝國家たる英國の問題と云ふより、其の技術的再編成と賃金問題の解決と云ふことは、我が國の炭礦業に取つてはより非常性を持つて居り、重大性を持つて來て居るのであります、只今膳國務大臣は大體個人の意見として、炭礦のみならず全産業の民營の長所を指摘せられました、將來多少修正せられることがあるかも知れませぬが、現在の考へと致しましては商工大臣竝に安定本部長官、總理大臣其の他の經濟閣僚の主要なる方々が、之に對して民營論を主張せられると云ふことに、私は解釋しても誤りはないと思ふのであります、唯只今御指摘になつた炭礦とは少し違うけれども、國務大臣に一言反省を促して置きたいことは、國營の缺陷を指摘せられて民營の長所を擧げられました、之に對しては私極めて同感である、併し國務大臣が國營の缺陷として擧げられた中に、もつと重大な一つの誤謬が含まれて居る、それは國營事業の中に、鐵道、通信、電話を擧げられたが、是は「サービス」業である、一定の料金を貰つて「サービス」する事業であります、所が石炭、化學工業其の他は、是は生産業であります、生産業に於ける國營と、「サービス」業に於ける國營とは、其の經營の方針は自ら異ならざるを得ないのであります、私は先程國務大臣が、社會黨が各黨との共同でと云ふことを仰しやつたのであるが、社會黨は明かに違ふ見解を一昨日發表致して居るのであります、それは石炭は國有國營に依る國家管理を斷行すること、礦區を整理統合すること、炭價の國家補償を打切ること、等々を列記致しまして國有國營の必要なる所以を一昨日の新聞に各黨と竝べて發表致して居ります、茲に新しき生産事業に於ける國營の形態と方法と云ふものを、自ら「サービス」業と區別致しまして、生産に對しては民業の有する努力と創意工夫を織入れて、そこに官業と雖も價格と賃金と一定の利潤の調和の上に立つて、其の業務全體の創意、工夫、努力、奮勵に對して、新しき報酬制度を設けなければならぬのではないかと思ふのであります、一例を言へば此の問題の解決が新しい國營事業を與へるのだ、從來謂ふ「サービス」業の國營を、其の儘鵜呑みにして移植して來たのが日本の國營事業者でありまして、此の「サービス」業だけの缺陷を捉へて、生産業の新しき踏出しに對する同じ杞憂を抱かれると云ふことは、國營反對論として其の根據を失ふものであると私は思ふのであります、只今國務大臣が假令個人の立場から申されても、石炭業に對する國營是か民營是かと云ふ態度は保留されました、私は其の御氣持を了解致します、併し内閣全體の從來の御意見、施策、悉く是は民營を是として居られたのであります、私は膳國務大臣竝に竹田委員長に御願ひしたい、若しも對日理事會に於て我が國の産業の基本的動脈たる石炭が、國有國營が是なりと決定されたる時には、吉田内閣の經濟政策に於ては、根本的な變革を來さざるを得ないのであります、然らば其の場合に於て内閣は如何にして政治的責任を執られるか、竹田委員長を通じ、直接吉田内閣總理大臣から其の點に付て御答辯を伺ひたいと思ふ、之を御願ひして置きたい、今保留されましたから、石炭の問題は保留して次に移ります
只今膳國務大臣は、石炭の國營と云ふものは世界的潮流ではないと云ふことを申されたのでありますが、私は一應石炭に例を取つたに過ぎないのであります、我が國が戰時經濟から平和經濟に切換へる爲には、強力なる國家の計畫性が要ると私は思ふのでありますが、安定本部長官は如何なる御見解ですか、私が只今申しましたやうに、戰時經濟から平和經濟に我が國の經濟性格を切換へる爲には、強力なる國家の計畫性が要ると思ひました所以のものは、何人も是は肯定せられ、且又從來指摘せられて參りました資源の絶對的な不足であります、第二には賠償金の支拂と國家再建に對して、知識、筋肉の勤勞階級即ち國民の勤勞體制の確立がなければならぬ、第三番目には此の國家の産業政策に、高度なる計畫性を必要とすると云ふことは世界的趨勢であります、賢明な安定本部長官は既に御承知であらうと思ひますが、十八世紀の産業革命は、東西の經濟的な「バランス」を破つたのであります、今度の戰爭の結果現はれたものは、政治的には世界の單一化であり、産業的には各國分業制度に進みつつあるのであります、我が國も晩かれ早かれ「ブレトン・ウッヅ」協定に加盟を懇請致しまして、國際間の支援の下に、我が國の經濟は再建して行かなければならないのであります、然りと致しますならば米國と政治的、經濟的な特殊關係の下に、我が國は世界經濟の一環としての與へられた分業的な任務を遂行しなければならないと思ふのであります、是が世界經濟に於ける戰後の大變革であります、而して我が國の置かれた地位であります、既に貿易は國家の計畫經濟に置かれて居ります、此の情勢に於て私は否でも應でも、從來と違つた高度の國家の計畫性が、全産業の部面に亙つて必要だと思ふのでありますが、安定本部長官は之に對して如何なる見解を持つて居られるか、率直に承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=21
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022・膳桂之助
○膳國務大臣 只今の御質問、又隨分御意見のありました點に付きまして、私は安定本部としても申上げることが出來ようと思ひますが、此の戰敗日本の經濟の再建に對しまして、此の資材の供給の不自由の點からも考へまして、此の資金の限られたるものを最も有效に使ふと云ふやうな點からも考へまして、又徒らに放任して置きますると、職を離れたる人達の生活の上にも由々しい問題があると云ふやうな點に鑑みまして、寧ろ戰時中よりも一層強い國家の企畫性が、各産業に亙つて考へられることの必要に付きましても全く御同感であります、直ぐさう云ふことを利用して言ふのではありませぬが、法案の形に於ては非常に不滿の點もございませう、又私共も之を最善なりとは信じないのでありますけれども、今囘非常に國家の計畫性を強調した此の臨時物資需給調整法なども斯う云ふ形で皆さんに御協贊を願ふのも、其の考への一つの現はれと申上げて宜いのでありますが、是は何か言葉尻を利用して便乘したやうな形になるので甚だ恐縮であります、但し國家の企畫性と又國營と云ふ問題とは結び付かないのではないかと存ぜられます、私は民間にありまする時から、日本の戰前からの國民の指導の誤りと云ふことは勿論ありますけれども、經濟方面に於ける多くの齟齬失敗は、結局官が一方には私益と云ふものをなくすと云ふやうな非常に美はしい名前、又一方には企業の公共性と云ふやうな大きな御題目、斯う云ふやうなものに便乘しまして、直ちにそれをば民業はいけないから、國有國營にしようと云ふやうな觀念から出まして、諸産業を國營に移さうとした一番大きな誤りの根本は電力國營でありまして、國營にはならなかつたけれども電力の統制をやつた、私は電力のことは餘り知りませぬけれども、若しあれが以前のやうな民營の儘に任されて居つて、戰爭が始まつたあの當初の一年間、電力の新しい創設が殆ど怠業状態にあつたと云ふやうなことがなかつたならばあの戰爭中の動力の問題は餘程解決されて居つたと思ひます、成程今の電力問題は是は官營ではありませぬけれども、殆ど國有國營に近い形の變つたものでありまして、是は一つの例でありますが、其の他諸般の經濟上の施策に於きましても、官自ら之を取つて實際にやらうとした所に根本の誤りがあるのであります、私は政府の産業の企畫性は、飽くまで之を強固にしなければならぬと思ひますけれども、實際是の實行は官自らすると云ふことは大變な間違ひが出來やせぬか、又從前の誤りを繰返しはせぬかと云ふことを憂ふる者なのでありまして、是も片言隻句を捉へまして、西村委員の御等ねに對しまして甚だ失禮でありまするけれども、私先に國有官營、詰り官營のいけない例を、一つの「サービス」業としての鐵道及び電話等に取つて申上げたのでありまして、是は國民の目の前にまざまざと暴されて居りますから申上げたのでありますけれども、例へば最も生産性のあるべき今の電力問題でも、然りであります、私は曾て八幡の製鐵所に四年間居りました、如何に製鐵事業と云ふものが、一方には官業の爲に伸びたのであります、けれども、本當に非能率的のものであるかと云ふことを、沁々感得して參りました、八幡には二瀬炭礦と云ふ國有炭山があります、此の炭山は能率に於きましても、勞働者の待遇に於きましても、附近の私有炭山に殘念ながら絶えず負けて居ります、何處に斯う云ふ問題が起きて來るのであらうか、私は一つにはやはり日本の國民性が、外國で以て國有などをやります場合に完全にやりますのに、まだ國民の訓練がそこまで行かないのぢやないか、責任感と申しますか詰り自分の計算でない場合に、自分の計算であるよりも以上に、之に熱心に、忠誠に盡すと云ふ國民性が、日本人に染み渡つて居つたならば、ああ云ふ失敗は繰返さなかつたであらうと思ふのでありますが、遺憾ながらどうも日本人の國民性が、自分の事業として盡す努力、又官業等に於て之に從事して居りまする人達の氣持、之に果してどう云ふ風な優劣差別が見られるであらうか、尚ほ是は同じ政府部内のやりましたことで、批評してはいけないのでありますが、最近に於て最も顯著な例は、船舶運營會の運營であります、斯くの如き非能率な、斯くの如き他力本願的な運營と云ふものは、曾て如何なる産業にも起らなかつた一つの大きな例だらうと思ふのでありまして、私は先づ色々な問題の國有問題を研究します際には、假に國有になりました場合も、或は國有民營と云ふ形もありませう、國有官營と云ふ形もありませう、色々の形がありませうけれども、日本の從來の苦き經驗に鑑みまして、果してどう云ふ風な形で取れば、其の國有の美點が發揮出來るかと云ふことを研究しないと、唯理論的に、或は「イデオロギー」的に國有宜しとしても、果して之を日本で實施すべきや否やと云ふことに付ては、考へさせられる點が多々あるのではないか、少くとも事經濟安定本部に關係します場合に於きましては、私共は單純に理論的に宜しとするが故に、之に贊成することは出來ないのでありまして、やはり私共の豫て申上げまする科學的の研究と申しますか、我々は過去の實績、日本人の國民性、色々の角度から見まして、此の問題は愼重に研究したいと思ふのでありまして、直ちに安定本部が此の問題に付て、如何樣に考へて居るかと云ふことに付ては、まだ私見であると云ふこと以上には私は申せないので、何卒惡しからず御諒承願ひたいのであります、甚だ言葉が過ぎたかも知れませぬが、惡しからず御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=22
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023・西村榮一
○西村(榮)委員 只今膳國務大臣は高度の計畫經濟が國家再建の爲に必要だと云ふことは御認めになつたのであります、唯其の際に國營に對しては御反對のやうでありました、私はさう解釋致します、反對の根據は依然として非能率、經營の不合理と云ふ點にあるやうであります、其の實行の任に當る者が、それは官吏なるが故にと云ふ風でありましたが、私も是れ亦國務大臣が杞憂される、御心配される點と同感でありまして、私自身が多年實業界にあつて、其のことを痛感して來たのであります、けれども只今理論的に國營論には贊成出來ないと云ふ御話がありました、私は二十年の長きに亙つて自分で工場を經營して來た、實業界に身を置いて、而して國家的立場に立つて、從來の國營の缺陷をどう克服して、新しい飛躍的經濟態勢に發展せしむるかと云ふことに付て、實は微力ながら研究して來たのであります、隨て膳國務大臣とは別な觀點に於て、科學的な國家計畫經濟案と云ふものを、我が日本社會黨は持つて居るのでありますが、それを申上げると長くなりますから省略致します、唯一點國務大臣が今御述べになつた思想的、「イデオロギー」的立場に囚はれずにと云ふ御話でありましたが、是が抑抑今日の日本の經濟的な混亂を招いた根本原因であると思ふのであります、私は本論の核心に入りませう、此の法案それ自體に見ましても、私は茲に之を協贊することに躊躇を感ずることは、依然として此の法案の背後に、敗戰經濟の潜在意識が盛られて居る、賢明なる國務大臣あたりは、既に十分其の點は御認識だと思ふのでありますが、戰時統制經濟は何が故に失敗したか、是は過去に於ける自由主義經濟の上に新しき時代の要請に應じまして、戰時計畫經濟を實行したのであります、隨て自由主義經濟の特徴と云ふものは、自由奔放なる創意と、自分のものとして奮勵努力する所に、自由主義經濟の長所があります、然るに其の利潤經濟の基盤の上に、戰時經濟を實行致したものでありまするから、其の實行の方法は凡ゆる法令の濫發になりまして、遂に自由主義經濟の長所を剥奪致しまして、戰時經濟の目的を達せずして敗戰經濟となつたのであります、英國竝に米國は、經濟は奉仕と能率を至上の目的とするものなりとの見解を以て、經濟の根本性格は奉仕と能率であると云ふ立場を取りまして、戰時經濟に貢獻したのであります、然るに日本は十九世紀自由主義經濟、利潤經濟其の儘にして、其の基礎の上に新しき「イデオローギー」の下に「ドイツ」流統制經濟、「ロシヤ」流統制計畫經濟、之を持つて來て、自由主義經濟を雁字絡めに縛り上げた結果、何等其の爲に生産さずして、遂に崩壞經濟となつたのであります、然るに此の法文を見まするならば、依然として其の「イデオロギー」が殘つて居るのであります、私は之に非常なる不安を感ずるのでありまして、「アメリカ」、「イギリス」の經濟は、奉仕と能率であると云ふことを根本原則と致して居ります、日本には日本の特徴がある、先程膳國務大臣は、日本人の長所と特徴を活かす經濟と言はれたのでありますが、私は極めて同感であります、中國には中國の歴史と特徴のある經濟がある、「ロシヤ」にもある、併しそれは世界經濟の大勢に順應しつつ自國の經濟を活かす所に、初めて爲政者としての賢明なる政治經濟指導の能力があるのでありまして、敗戰經濟其の儘にして、依然として外國の飜譯經濟を其の儘持つて來ると云ふことは、平和産業再建の上に極めて危險ではないか、特に解決しなければならない問題は幾多あるのでありまするが、根本的に申しまするならば、日本の新しい産業は國家計畫經濟に對し、而も物價と賃金と利潤の相互の立場を尊重して、さうして其の對立を社會的立場から調和を圖つて、新しき經濟性格と云ふものが盛られなければならないのでありまして、それには知識、筋肉の勤勞階級の總動員、是は取りも直さず社會主義計畫經濟であります、私は日本の再建は戰時經濟の誤りを根本的に是正して、新しく企業家、技術者、勞働者、其の他一切の筋肉、知識の勤勞階級を總動員、國民皆勞體制の確立と云ふことと、其の乏しき資源と人間を、有效適切に配置する所の國家の計畫經濟と云ふものが、新しき日本再建の經濟指導力として必要だと思ふのであります、前半の國家計畫性に於ては御承認された膳さんが、從來の官業の失敗を擧げて、新しき社會主義と申しますか、社會主義的計畫經濟、知識、筋肉の總動員と云ふ此の立場を無視して、新しく此の法案を運用されようと致しましても、それは私は不可能だと思ふのであります、膳國務大臣は、此の法案を以て、新しき國家計畫經濟の實行を有效適切に運用される所の自信があるか、即ち從來の失敗の儘其の儘持つて行つて、自由主義經濟の上に、新しき平和國家建設の計畫經濟を其の儘遂行されても、尚ほ行き得る自信があるかどうか、今日の假初の答辯ではなしに、あなたが五年、十年の後まで生きられて、而も今日の非常時の國務大臣としての良心的立場から、後世の歴史的の御答辯を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=23
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024・膳桂之助
○膳國務大臣 大變難かしいことになりまして、甚だ答辯がしにくいのでありますが、私は高度の計畫性と申しますことと、それから後の産業の──何と言ふか、社會主義的經營と申しますか、自由主義的經營と申しますか、理論で申しますと大變斯う食違ひがあるやうでありますけれども、もう斯う云ふやうな場面に追ひ詰められた日本と致しましては、具體的のことを申しましても、やはり如何に産業の公共性を力調せられましても、人間がやはり生きんとする欲望と言ひますか、子孫を愛好する欲望と言ひますか、やはり張合を持つて仕事をすると云ふことを考へます以上は、總ての國民が公僕であると云ふやうな觀念でやれと言つても、中々難かしいのではないか、是も私は餘りよく存じませぬけれども、「レーニン」が初め「ボルシェヴィズム」の國家を作つた時に、やはり社會主義の一番の中心は、能力に應じて働いて、必要に應じて分配する、是が社會主義の目標と言ひますか、方針と言ふか──と云ふやうな意味のことを言はれたさうでありますが、やはり能力に應じて働いて、結局働く者も働かない者も、怠ける者も勉強する者も、必要に應じて分配されるのでは張合がなくなつてしまふと云ふやうな點で、何か聞けば、新經濟政策とか、新々經濟政策とか、やはり後には能力に應じて働いて、結局能率に依つて分配すると云ふ制度が加味されなければ、人間は動かなかつた、やはり是等が人間社會の眞理になるのであつて、結局資本主義、自由主義の經濟と言つても、自由奔放のことは許されるのではありませぬ、自ら利潤に付ての制限も出れば、又利潤の分配などに付きましても、結局資本に配當を多くして、勞働に分配を少くすると云ふことが出來る譯ではありませぬ、結局實際どんなにしましても、斯う云ふ經濟段階で今の儘であれば、どう云ふ主義、「イデオロギー」であらうとも、看板は違つても中身はやはり同じやうなことをすることになつてしまふではないか、要するに是からの日本經濟の建直しは、それでは「イデオロギー」を高く掲げて國民を率ヰて行くのか、人心の機微を狙つて人に本當に創造意欲を働かして貰ふのかと云ふ點に、我々は考へざるを得ないと思ふのでありまして、只今の私に對します御質問、中々難かしい問題でありますが、私はやはり此の經濟安定の方策を立てます際には、上には儼然たる國家の計畫、産業の計畫性の枠は作る、其の枠の中では、自由主義經濟と言つても、社會主義經濟と言つても、實質上はやはり人心の機微を捉へて、茲に本當の勞働精神、本當の勤勞精神と云ふものを盛り上らせるより外はない、此の盛り上がる勤勞精神とても、唯一時的に興奮させるやうな、一つの何と申しますか、主義に依る興奮と云ひますか、さう云ふものが果して永續きするかどうか、やはり經濟安定の最終の目的である日常兎に角張合のある生活、又働けば働いただけの報いのある生活、斯う云ふものを保障するのでなければ、徒らに美辭麗句を連ねても、看板が良くとも、本當の經濟の再建が出來ないのだ、やはり日本の經濟再建を狙ひます際には、私は何時も申します通り、主義、「イデオロギー」と云ふよりも、寧ろ今ありの儘の日本人、ありの儘の日本人の心理、ありの儘の日本人の教育の程度、社會性の程度、それ等を考へまして、神樣を引張つて來るのではなく、人間を引張つて居る人間の經濟としての畫策を致したいのでありまして、斯う云ふ物資需給調整法を作つて、是が破綻することなきやと云ふやうな御尋ねであつたと思ひますけれども、やはり上には兎に角國家の企畫性を強くした枠を嵌めまして、其の下の活動は、やはり今の實際に應じました人情と申しますか、社會現象と云ひますか、之を捉へた政策を行ふと云ふことが最も有效であり、總ての國民の訓練、或は國民の民主化と云ふやうな問題、是の訓練の進化に伴ひまして日本の經濟が伴つて行くべきである、今日民主化々々々と云ひましても、是から民主化の訓練が必要であらう、もう民主化が出來上つたのだと云ふやうな形を眼の前に描いて、直ちに國民がそれに追付いて行けるのだと云ふことを前提として、若し此の經濟の再建を行ひますならば、結局戰時中に兎に角えらい作文やら、又大きな看板で、空疎な一つの所謂滅私奉公心を──唯大きな看板です、實體は之に伴はなかつたと云ふやうな心配が出來るのではあるまいか、枠は飽くまで企畫性を持たせるが、是の實施に當りましては、此の法律に付て言ひますれば、やはり枠の大きいものは第一條で決めますが、此の實施は、段々民主化精神の訓練と共に、發達して參ります民主的に組織されました團體の活用に依りまして運用して參りますれば、此の法律の運營が、戰時中に上から下まで、所謂官僚の細かい重箱の隅を楊枝で突つ付くやうな統制でなくて、大きい枠を國が握り、あとは自治的の運營に任せると云ふ方法で進んで參りますれば、從來のやうな失敗を繰返すことは先づないのではないかと存ぜられます、御滿足が行きますかどうか分りませぬが、斯樣に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=24
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025・西村榮一
○西村(榮)委員 長くなるのですが、膳國務大臣は午後から出席して貰へますか、貰へなければ今簡單にやります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=25
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026・膳桂之助
○膳國務大臣 甚だ恐縮ですけれども、安定本部で午後から國外關係の問題がありまして…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=26
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027・竹田儀一
○竹田委員長 一寸國外關係でどうしても午後は出られないさうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=27
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028・西村榮一
○西村(榮)委員 それでは只今の御答辯に對して一言だけ申上げて置きませう、膳さんは自由主義經濟の特徴を述べることには深い御研究をなさつて居られるやうであるが、社會主義經濟の本質に付ての御研究はないやうであります、是から一つ御研究を願ひたい、と申しますることは──是は膳さん皮肉ぢやないのです──能力に應じて働き、勞働に應じて支給すると云ふことは、是は社會主義の原則なんです、日本が曾てやつて來た社會主義と言ふか、統制經濟と云ふものは、是は囚人經濟です、一定の人を無理やりに引張つて行くと云ふ囚人經濟です、新しい社會主義原則は一定の正しい利潤を認めます、同時に其の人の創意、努力、工夫を認めます、それに對する無制限的な報酬を認めます、唯從來のやうな財閥的機構と、金融資本のからくりに依つて人を搾取すると云ふことを禁じて居るのでありまして、知識、筋肉の正當なる努力と奮鬪に對しては、資本主義と別な意味に於て、それよりも多くの無制限的な報酬を與へるものが社會主義である、而も日本經濟は、利潤と、勞賃と、價格の調和の上に立つて、新しい經濟性格が立てらるべきものであると云ふことが、日本社會黨の提唱する社會主義の原則であります、共産黨とは違ふかも知れませぬ、此の點は明かに認識して戴かないと、其の誤れる觀念から見て、あなたが從來の利潤經濟と云ふもの一本槍で突張つて行つたのでは、將來の日本經濟の爲に不幸を招來すると思ひます、是はあなたの言葉尻を捉へるのではありませぬが、其の認識を深めて戴かないと安定本部長官の地位は勤まらないと思ふ、此の點を御願ひして置きたい、まだ述べたいことがありますが、皆さんもお腹が減つて居るやうでありますし、午後から安定本部長官に出席して戴きたいのでありますが、出席出來なければ是から本論に入るのですが、出席の時に又やりませう、保留して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=28
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029・竹田儀一
○竹田委員長 保留願つて、午後は商工大臣がおいでのやうでありますから、商工大臣に對する質問を願ひます、一時まで休憩致します
午後零時十三分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=29
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030・会議録情報2
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午後一時四十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=30
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031・竹田儀一
○竹田委員長 引續き會議を開きます──鈴木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=31
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032・鈴木明良
○鈴木(明)委員 商工大臣に御尋ね致します、第一點としまして軈て六百億に垂んとする此の新圓の放出に依つて、新圓は偏在して居ります、同時に物資も偏在して居ります、眞面目なる勤勞階級のみが困つて居つて、一部の闇商人とか、或は映畫館とか、漁村、さう云つたものに新圓も物資も共に偏在して居りまして、洵に私は心配に堪へないのであります、殊に中國人、朝鮮人、或は臺灣人と云ふやうな方面へは莫大なる新圓を放出して、而も彼等は我が國の國債とか、或は株券とか、其の他凡ゆる物資の買ひ漁りを實施して居る現状であります、此の者に對して政府は必要なる命令を出す權限があるかどうか、どう云ふ風に其の者を處置して行くかと云ふ點に付て、商工大臣から御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=32
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033・星島二郎
○星島國務大臣 仰せの通りに最近の實情は、兎もすれば非日本人に非常に、金の面から、物の面から見ましても、敗戰後の虚に乘ぜられたやうな感がないでもありませぬ、既に朝鮮出身の方に對しては、日本人と同樣なる扱ひをして宜しいと云ふことの原則の承認を得まして、是は社會秩序保持の點から申しましても、既に其の通り扱つて居るのでありますが、中國の人は聯合國の人として臨んで居る方でありまして、此の人に對しては必ずしもまだ結論を見出して居りませぬ、併しながら今囘の金融措置及び補償打切に依る點に付て、色々の問題が起つた場合にも、是は中國人のみならず、歐米の人に對しても同じやうな考へでやつて宜しい、斯樣な諒解を與へられて居りますので、今此處で明言するとつい誤解が起るから控へますが、多分御尋ねの趣旨の通りになし得る、又政府と致しましてはさうありたい、斯樣に努力して行く積りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=33
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034・鈴木明良
○鈴木(明)委員 産業の囘復及び振興に關しては、其の第一の重大なる支障を來して居る補償打切に伴ふ穴埋め、此の順序に付て御尋ね致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=34
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035・星島二郎
○星島國務大臣 御尋ねのことに對しては既に大體原案は出來て、早く協贊を仰ぎたいと思つて居るのでありますが、尚を一二の點に付て未確定のもので關係筋との交渉もありますので、どうもまだ發表の時機ではないのでありますが、是は早晩發表出來ると思つて居ります、それは無論議會の協贊を求めて後やるべきことでありますから、もう一寸の所御許しを戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=35
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036・鈴木明良
○鈴木(明)委員 次に生産の命令を受けた産業團體が、物資の割當又は配給を受ける場合、必要なる資金、勞働力は何處から來るのでありますか、今日の現状に於ては新圓でなければ必要な物資の購入は望めぬと思はれます、其の場合の處置及び生産の調和の補償は何處でするのでありませうか、具體的に御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=36
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037・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 新しく仕事を致しまするには、仰せの通り新しい資金を注入する必要があるのであります、隨ひまして之に付きましては復興金庫の作用に依りまして特別な資金を流し出すのでございますが、先づ原則と致しましては普通の金融機關の資金を流し、更にそれでは融資が非常に困難であるものに付きまして、初めて復興資金と云ふものを流す建前になつて居ります、資金の流し方に付きましては大體關係各省の者、及び民間の方々の協議會組織に依りまして、此の必要性を査定して流す譯でございまして、中央地方にそれぞれの連絡協議會を設けまして、そこに資金の必要な方から申出を戴きまして、内容を審査致しまして、新しい産業を發足するに必要であるかどうかを判定して決定することになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=37
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038・鈴木明良
○鈴木(明)委員 次に御伺ひ致したい點は、經濟安定本部總裁が定める方策に基く物資又は設備の讓渡、引渡、又は貸與の命令に依り生ずる損失を補償するのは當然であると思ふ、其の補償の捻出方法及び財政に與へる影響に付て、それを緩和する爲の技術的措置如何と云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=38
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039・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 需給調整法第一條第三號に依りまして、主務大臣が物資又は設備の讓渡、貸與等を命ずることに依りまして損失が生じました場合は、御手許に別途御配り致してございまするが、損失補償に關しまする勅令を作つて之に依つて運用する積りでございます、補償の範圍は通常生ずべき損失と云ふことになつて居りまして、其の基準の決定は、主務大臣と大藏大臣が協議致しまして、其の内容を、特に補償委員會とでも稱すべき委員會を設けまして、そこに諮問致して決定する譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=39
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040・鈴木明良
○鈴木(明)委員 尚ほ此の問題に關聯しまして、大部分の企業が軍需補償を受けて居る場合、ここで心配になるのは軍需補償打切の今日、企業家と金融機關との關係に於て、相當複雜なる問題が起きて居るのであります、例へば具體的の場合として、物資又は設備を擔保として融資を受けて居る、それが二重三重の擔保である、而も物資又は設備の實際の價格より多額に融資を受けて居る場合、其の損失を補償する額は、融資を受けて居る額を補償する考へか、それとも時價に見積つて補償する考へか、萬一時價に見積つて補償する場合、融資を受けて居る機關に對する債權は如何樣に處置して呉れるものであるか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=40
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041・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 擔保權等がございまして、而もそれが二重三重の擔保に入つて居るものを讓渡するやうな場合に於きましては、一應損失の内容に付きまして、擔保權をどう處理するかと云ふことに付きましては、當事者間に於て協議を御願ひする建前になつて居ります、色々な理由、色々な原因から致しまして、さう云ふ債權債務が起つて居るのでございますから、其の事情々々に依りまして、解決案を、當事者間に於て御協議を願ふことに致して居ります、さうして其の御協議がどうしても相調はぬと云ふ場合には、主務大臣或は其の指定する官吏、主として是は地方的に解決出來るやうな小さい企業に付きましては、府縣知事等を指定する譯でございまするが、さう云ふ方々の御裁定に俟つことにして居る譯でございます、尚ほ其の裁定を致しまするのは、勿論官廳だけの獨自の考へでは複雜な問題を解決するに適しませぬので、先程の補償委員會と同じやうな委員會に諮問致しまして、只今のやうな複雜な問題に付ては、具體的な事情に即するやうに解決致したいと考へて居ります、一般的に只今のやうな紛爭が起る場合にどうするかと云ふ御尋ねでありますが、それは一般的には申上げにくいことであらうと思ひますので、具體的の事例に依りまして此の補償委員會の意見に依つて、現實の解決を圖つて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=41
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042・鈴木明良
○鈴木(明)委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=42
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043・竹田儀一
○竹田委員長 西村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=43
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044・西村榮一
○西村(榮)委員 私は主として本案は膳國務大臣に御答辯を煩はしたいと思つて居つたのでありますが、膳さんが御出席ないので、極く簡單に商工大臣に條文の不明な點だけを御尋ね致したいと思ひます、先程商工大臣が御留守でありましたけれども、本案の基本的性格をなす國家計畫經濟に對しましては、膳國務大臣も國家は高度な計畫性を必要とすると云ふことを言明されたのであります、唯それは私共の見解から申しますならば、知識筋肉の勤勞階級を中心とする所謂十九世紀社會主義を清算し、封建的資本主義を清算して、世界革命の主體勢力は、科學の振興とそれを推進する者が勤勞階級であると云ふ立場から、社會主義的資本、社會主義的國家計畫經濟を主張したのであります、それに對して膳國務大臣からは、認識の缺如から具體的な御答辯を承ることは出來なかつたのでありますが、今商工大臣に御尋ねしたいと思ひますことは、戰時統制經濟の失敗は、結論から言へば自由主義經濟の特徴を生かし得なかつた、と共に其の基盤の缺如は、戰時統制經濟が崩壊經濟となつて敗戰を招來したと申したのであります、それと同じ性格が本案の中に盛られて居るのではないか、一例を本案の條文に照して申しませう、本案の第三條の中に、主務大臣は官吏をして各業務を臨檢し、帳簿書類其の他必要な時に、檢査させると云ふことが書いてあります、私は是は「イデオロギー」の立場から申すのではないのでありまして、具體的に産業の實體から考へて見まして其の事業を具體的に監督する者は一體誰か、それは需要家であります、自由主義經濟の一大特長は、直接間接に需要家が其の企業を監督して來たのであります、價格の面に、或は購買力の點に、其の品質と價格と其の業務それ自體に對する努力は、需要家が之を監視して來たのであります、然るに戰時統制經濟の一大失敗は、何等其の業務に關係のない官吏、軍人が之を監督して來た所に、監督の實の入らない、即ち痒い所に手の屈かないと云ふ風な親切の不足と、之を監視する能力の缺除が戰時經濟を失敗せしめた一つの原因である、然るに其の性格が同じやうに茲に含まれて居る、國家計畫經濟の一大缺陷と私共が考へて居りますものは、先程膳國務大臣の答辯の要點ではなくして、實に國家計畫經濟が深甚な考慮を拂はなければならぬことは、其の業務は誰が監督するかと云ふことの一點であります、然るに本法を見ますると、第三條には相變らず官吏が之を監督する、斯う云ふ風なことになつて居りまするが、是は戰時計畫經濟の最も弱點たるものを其の儘踏襲して居るのであります、私は官僚の能力と官僚の從來の道徳性を以て、國家計畫經濟に對する反對論の主張を能く聽くのでありますが、それは人柄でなくして制度であります、そこで新しき斯う云ふ風な大きな法案をこなして之を有效に運用して行く爲には、其の缺陷を是正せねばならぬが、其の是正の方法はどうされるか、是は如何に否定されても國家計畫經濟に於ける大きな獨裁權を持つて居るのでありますから、戰時經濟が其の失敗を繰返しました、それを再び繰返さうとする、其の缺陷をどうして補つて行かれるか、商工大臣の御答辯を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=44
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045・星島二郎
○星島國務大臣 理論的には西村君の仰せのやうな議論は立つことと思ふのであります、併し此の戰時中の統制經濟は、全部が失敗ではないのです、中には概ね成功して居る業種もあるのであります、それ等に依つて今囘の此の運用に非常に誤りなきを期したいと思ひますことは、上と下との兩方面から之を一つ規制して行きたい、上の部面に於きましては之に決められてありまする所謂安定本部總裁が決める──安定本部總裁は非常な議論があつて、此の安定會議に於きまして五對五と云ふ時になつたならば、或は之を決裁するの權能は會議の形體上あり得ることはありますが、まあさう云ふことは採らないで、殆ど議が熟した所で、物を確定すると云ふ方面に行きますれば、其の安定會議の中には商工大臣も農林大臣に大藏大臣も居りまするが、それ以外に所謂學識經驗者、殊に兩院を代表する意味に於ての人も居りまして、其の會議に於て根本の計畫の決定を致す、だから戰時中のやうな獨裁的な、所謂指導者原理的なことはなくて濟む、此の點が餘程前の點とは違ふだらうと思ひまするし、さうしてそれを實施する部面に付きましては、此の法文にありまするやうに、民主的なる團體を通して總てのことを實施する、無論大きな割當等は直接主務大臣に於てやるやうになつて居りますけれども、それも概ね民主的なる──假に例を引きますれば、石炭なら石炭の礦業會、或は纖維なら纖維業會と云ふやうなものが、段段と現在民主的に、形はなつて來ましたが、もつと之を訓練して、本當に民主的なものになりますれば、それ等に諮問しつつ總ての方策を決めて、其の方策の下に實施を、それぞれ其の配下の所謂指定された團體に持つて行つて仕事をさせますれば、運營上此の戰時中やつたやうな大きな誤りはなしに行けるだらうと斯樣な考へを以て、私は此の法案を審議する際に於て考へて居る譯でありますが、殊に之を扱ふ官廳の心構へを、從來とは──私は急に斯う云ふ時世になつたから總てが變つたとは申しませぬけれども、本來の總ての政治の運用の根本が變つて來ました今日に於ては、どうも戰時中のやうな弊害は萬なからうと斯樣に思ひます、併し御趣旨のやうな點は十分參考とし、又さう云ふ弊に陷つてはならぬことを希念致しまして、是は法三章であるだけに、運用に非常に力瘤を入れなければなりませぬので、其の運用の點に於きまして心掛けて行きたいと斯樣に思ふ譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=45
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046・西村榮一
○西村(榮)委員 戰時經濟が成功して居ると云ふことは、是は少し私は腑に落ちませぬ、併し此の議論をして居ると長くなりますし、どつちかと云ふと、私は星島さんは議論の相手として少しあなたの顏を見ると苦手であります(笑聲)併し之に付ては私は別の機會に申上げたいと思ひます、併し結論──結論ではなしに、私は先程御質問申上げた代案を示しますると、此の新しき産業を監督して、さうして新しき憲法の性格に從つて、政治と生産と、國家の企畫とを有機的に結び付ける方法と云ふものは、私は帝國議會の補助機關として、或は其の下の諮問會議として、國家最高經濟會議と云ふ風なものを創設せられて、其の中に經濟的叡智と良識とを吸收されて、それが企畫立案されたものが帝國議會の承認を得て、各省大臣が主宰せられると云を風になすつたらどうかと思ふのですが、商工大臣の御所見はどうですか、言ひ換へて見ますると──分りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=46
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047・星島二郎
○星島國務大臣 先程私の答辯致しました中、多少の誤解を招いてはいけませぬから、戰時中の統制經濟は成功したと私は申したのではないのです、中には一、二宜く行つたものもある、だからそれは大いに參考とする、採り上げるに足ると、斯う云ふ意味で申上げたので、其の點を只今仰せのやうな最高經濟會議のやうな、詰り經濟參謀本部とか云ふやうに考へられるやうなもの──今囘の安定本部の安定會議と云ふものは、稍稍其の思想を採り入れたものでありますが、併し尚ほ是は經濟安定だけではいかぬ、少くとも政治機構、或は文化政策、凡ゆる方面に、殊に國土計畫の如きは、先般も内務省の一國土局に於きまして數字を出して皆を迷はして居るのでありますが、ああ云ふものこそ仰せのやうな斯う云ふ會議を作つて、それに依つて本當に再建日本の大方針を確立して、其の方針には貴衆兩院は勿論のこと、各方面の衆智を選つて、根本方針を決めまして、さうしてやると云ふことは私は最も宜いことであると思ふのであります、或は閣僚の中にも此の會議をやるべしと云ふことを、非常に熱心に唱道される方も居られるのでありまして、殊に依つたならば斯う云ふことが實現するかも知れぬのでありまして、西村君のやうな實に造詣の深い方が斯う云ふ會議に臨んで、此の委員會よりもさう云ふ所で大いに一つ…(笑聲)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=47
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048・西村榮一
○西村(榮)委員 どうもそんなことを言はれると困るのですが、私は今星島さんからさう云ふ御答辯を承つて、實はそれが經濟安定本部の機構に關するので、私は是は膳さんに質問しようと思つたのですが、商工大臣に關係する事項だけ御質問します、經濟安定本部に關することで、私結論から申しますると、經濟安定本部は失敗すると見て居る、是は私は半年後明かに私の主張が勝利を得ると思ふ、其の失敗の原因は、此の安定本部は各省で揉み潰すです、所謂八掛みたやうなことを言ひますが…、若しも此の經濟安定本部が何れかの指導國家に依つて示唆されて作られたものであると致しまするならば、其の我が國を指導して下さる國は、「アジア」的政治性格に對する認識と云ふものが、少し稀薄であると申さざるを得ない、曾て日本に於て内閣調査局が出來、企畫院が出來、是等悉く日本に於て失敗し、「アメリカ」に於て經濟安定本部と申しまするか、戰時經濟局と云ふものが成功しながら、我が國だけが失敗したと云ふことは、是は「アジア」的政治性格に基くものであるのであります、此の「アジア」的政治性格とは何ぞやと云ふことを申上げることは本日省きまするが、是は議會でも其の他に於ても論議されて居りまする各省の性格で、今日の凡ゆる弊害として暴露されて居るものであります、此の「アジア」的政治性格から來て、經濟安定本部と云ふものは私は各省で揉み潰してしまふと思ふ、茲に日本の經濟が此の安定本部に大なる期待を掛けて、之を中心として行くと云ふことであるならば、又半年足踏みをせざるを得ない、之を私は惧れるのであります、此のことは私の推定でありまするから商工大臣は能く御考へ下すつて、揉み潰してしまふものならば、能く關係當局の諒解を求めて早く潰してしまふ方が宜い、育てて行くならば、又さう云ふ風な「アジア」的政治性格の上に能く考慮して、別個な歩み方をしなければ是は育たないのでありまして、それが育たなかつたら、其の被害者は膳さんが首を馘られて辭めると云ふことに止らないで、日本の産業復興が是が爲に半年足踏みをする重大な問題であることを御考へ願ひたい、問題は此の法文に付て御尋ね致しますが、第一條に産業の囘復竝に振興に關してと云ふことがあるのでありますが、是は如何なる産業の範圍を指されるか、其の産業の輪廓を示して戴きたい、戰時法の獨裁法と言はれる國家總勤員法に於きましても、斯う云ふ風な目的が書いてあります、「戰時に際し國防目的達成の爲國の全力を最も有效に發揮せしむる樣人的及物的資源を統制運用」すると、其の目的と方法の大綱を示して居るのであります、そこで戰時總動員法案は、統制に掛ける品目と事業の範圍を示して居りまして、是だけが戰時統制で、後は自由であると云ふことを明確にして居ります、私は此の點を明確にする必要があるのではないか、と同時に此處には漠として産業の振興囘復と云ふことに書いてあるのでありまするが、條文の中で官業は一體どうなるか、此の條文から行きますれば、官業も當然此の統制の中に入るやうに解釋出來て來ますが、官業も其の強制の範圍に入ると云ふことであれば、それは安定本部と現業官廳との間はどう云ふ風な關聯を持つものであるか、以上二點を取敢へず御質問致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=48
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049・星島二郎
○星島國務大臣 經濟安定本部の將來は、今の御豫言のやうな結果に終らないやうに一つ旨く按配したいと思ひます、實際の所打明けて申しますと、少し問題が難かしくなると何でも安定本部に持つて行くと云ふ傾向が若干ありますが、併し今少しく各省と安定本部の線は明瞭ではありませぬ、是は運營の上に今少しく明瞭にする必要があらうと思ひますが、安定本部と云ふものが力強くなり過ぎますと、總てのことが經濟安定本部でやつてしまへるやうな傾向にもあります、其の邊の線は明瞭にしなければなりませぬが、今日の場合は寧ろ揉み合ふと云ふよりも、少し難かしい問題を安定本部に持つて行き過ぎる傾向があると思ひます、併し今少しく是はやりやうに依つては非常に良い結果にならうと思ひますので、先づ一年と云ふ期限を設けたのも、若干さう云ふ含みもあるのでありまして、是は旨く行つたら續けてやるが、若し拙く行つたら一年ぽつきりと云ふやうなことで、若干期限を短くした所は多少御意見のやうな點もあつて、一應今まで日本に慣れない行き方を試みて見ようと云ふ點もあつて一年の期限に致しました、而して此の日本の將來を見ますれば、此の臨時物資需給調整をも、此の一年だけで濟むと云ふことは到底豫想出來ませぬ、だから若し安定本部が一年で本當に廢めることになれば、直ぐそれに代るべき法律を議會の協贊を求めなければならぬことになるだらう、斯樣に思ふ譯でありますが、仰せのやうな豫言に當らぬやうに、精々旨く努力して行きたいと思ひます
尚ほ第二問の目的と致しましては、取敢へず基礎産業を先づ主體に考へまして、それから分れて行きます中小工業の方面へ伸びて行くのでありますが、取敢へず肥料とか、鐵とか、石炭とか──石炭は別な獨立した法律が出ましたら、大體之に近いやうなものであります、更に纖維と云ふ風に伸して行きまして、それをずつと中小の工業部面までに漸次及ぼして行きたい、必要に應じてやつて行きたい、斯樣に考へて居る譯であります、尚ほ官業は直接本部からは適用致しませぬが、全體の計畫に付きましては互ひに關聯がある譯でありますから、歩調を合はして共々協力して行きたい、斯樣な考へでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=49
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050・西村榮一
○西村(榮)委員 細目に亙つては機會を改めて同僚から御質問申上げることと思ひますから、私は省きます、唯一つ質問漏れがありますからそれに付て伺ひますが、此の物資調整案の品目、事業、輪廓を、戰時總動員法に做つて、否それを平和的にしたもので、もつと明確に輪廓を御示しになる御意思があるかどうか、本委員會終了までにどう云ふ品目と事業と云ふやうなものを…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=50
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051・星島二郎
○星島國務大臣 商工省關係の品目に付ては、大體月曜日あたりにはそれを御示し致したいと思ひますが、尚ほ農林當局其の他にもそれぞれ相談して、全部取揃へて御出ししたい、斯樣に思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=51
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052・西村榮一
○西村(榮)委員 私は膳さんの御意見竝に星島さんの只今の御答辯から歸納致しまして、まだ腑に落ちないのであります、何となれば此の臨時物資需給調整案、之を見まするならば、此の出づる思想的源泉と云ふものは、戰時計畫經濟以外には一歩も出て居りませぬ、別な觀點から、裏から引くり返して見ますならば、此の産業の性格と云ふものは自給自足の體制以外には一歩も出て居りませぬ、戰時經濟から平和産業への切替はなされて居ないのであります、申上げるまでもなく自給自足經濟の發展する所は資源の獲得であります、資源の獲得は必然的に各國共帝國主義的な方針を執らざるを得ないのであります、此の臨時物資調整案に盛られる思想的な匂ひと云ふものが、自給自足の經濟それ以外に一歩も出て居ないと云ふことは、私は憲法を以て平和を宣言し、再び戰をしないと云ふことを宣言した日本の産業性格の上に於て、洵に遺憾だと思ふのであります、戰時物動計畫の一九三〇年型が、日本の經濟の將來の姿であると致しますならば、是は大いに考へ直さなければならぬと思ひます、今申しましたことは極めて抽象的で御分りにくいかも知れませぬが、私は平和産業に一、二の例を取りませう、戰時に興つて來た事業に例を取りますと、若干誤解を生ずる點がありますから、平和産業に基礎を置きますならば、此の法案だけでなしに、先程商工大臣が仰しやつた纖維工業、化學工業──我が國の纖維工業が世界に第一位を獲得しました原因は、主として業者の業務に對する努力が二〇%と、八〇%は奴隷的な低賃金であります、それが今度勞働憲章或は勞働者の自覺に依りまして、日本紡績の一大據點たる所の有利な低賃金と云ふものが排除せられた、之に取つて代るべき有力なる武器はと申しますならば、紡績事業の合理的經營と、科學技術の大量の採り入れでなければならないのでありますが、商工省竝に安定本部の指導方針と云ふものは、それに對する何等の方針を示されて居ないのであります、若しも科學技術と經營の合理化と云ふものが取上げられますならば、商工省竝に安定本部が貿易上の「バランス」、日本の國民を養ふ所の食糧物資輸入の代金として、そこに産業の重點を掲げられて居ると致しますならば、其の計畫は實を結びませぬ、或は化學工業に於ても、今日世界的に染料は不足して居ります、棉花三十六萬「トン」の輸入を聯合軍がやつて呉れましても、それを染出す染料は一體どうして商工省は補給されるか、「アメリカ」に於ても染料は不足と聞いて居る、「アジア」に於て技術的にも染料生産能力のあるものは日本だけでありまして、其の染料は日本の技術から行きますならば、約十倍、二十倍の利益を見られるのであります、是は國營に依つてやりましても民營にしましても、其の經營宜しきを得れば利益を得るのであります、斯う云ふやうな平和産業に對する切替が一つもない、原料を何處に求めると云ふことは之には明かにして居りませぬが、此の間からの性格を見まするならば、依然として戰時物動計畫を一九三〇年に縮めたに過ぎないのが、平和國家に於ける物動計畫であると申さねばならぬのであります、私は虚心坦懷に申しますならば、どうか斯う云ふ風な點を切替へて、平和産業に對する指導を、日本政府は權威を以て發揮される必要があるのではないか、之に對する商工大臣の御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=52
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053・星島二郎
○星島國務大臣 此の法律の型が戰時型を脱しないと云ふ御批判は一面當つて居ると思ひます、強ひて言へば敗戰型或は非常時突破型とも言へるかも知れませぬ、原料其の他、殊に纖維工業の如きは輸入を前提として行く譯でありますから、必ずしも所謂戰時型ではありませぬけれども、今日貿易が占領治下に於て國家管理にある間は、どうしても今の御批判の調子を拔けることは出來ぬと思ひます、唯今後お互ひの努力に依りまして相當の輸入を得られます時には、或は多少戰時型より離れた行き方もなし得ることと思ふのであります、併し御指摘の如く纖維産業の如き往年世界に覇をなしたと言ひますのも、一面に於ては御批判の如き奴隷的な勞働に從事した爲になつた部分も相當あらうと思ひます、併し今後それは民主的日本になつた時になされることではありませぬ、或は最低賃金の制定される時期もありませうし、色々な點に於きまして搾取的な形態に於て日本の纖維産業の發達は望まれませぬ、さりとて社會の水準に全部を合はしては、此の敗戰の日本は立ち行きませぬから、そこは私は相當鹽梅致しまして、日本の國内の「バランス」から言ひますれば、勞働者に對しては世界的に公正な待遇を致しましても、私は所謂世界の水準から申して十分競爭に堪へ得る、斯う云ふ觀念から、日本の將來のさう云ふ産業方面に對して悲觀を持たないのであります、假に世界と同じ水準に屆いた時には、お互ひの手先の器用な此の技術を働かせ、同時に御指摘のやうな科學的指導宜しきを得ますならば、私は決して負けはせぬと云ふ考へから、さう云ふ點は從來の弊に陷ることなく、而も早く此の平和型に切替へるべく努力致さなければならぬと思ひます、只今の御意見は非常に示唆深い點と思ひまして、私共十分それは心して進みたいと存ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=53
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054・西村榮一
○西村(榮)委員 先程商工大臣は、貿易の自由がないと云ふことを言はれたのでありますが、私其の苦衷は能く諒察致します、併し少くとも政治家が今日の東亞全局の物資の需給と、我が國の指導國家である「アメリカ」の中に何が過剩し、何が不足して居るかと云ふ風な點を政治的眼孔を以て見られるならば、私は貿易の問題は解決出來るのではないかと思ふのであります、例へて見ますならば今日我が國に燃料が不足して居ると能く言はれます、先程私は染料の問題を取上げました、併し燃料は「ボルネオ」「スマトラ」では今日買手がなくて海に流して居る、而も日本の製油技術は世界的に認められて居る所でありまして、其の製油施設は日本に餘つて居ります、「タンカー」も餘つて居ります、そこで是等の餘つて居るものを、南方の原住民が好む何かの品物と交換を聯合國に懇請致しますならば、占領政策の上に於て、必ずや私は好意ある取扱ひをされるのではないか、斯う云ふ點を政治的に見て對策を立てられる必要があるのではないかと私は思ふのであります、併し私は其の點は別に御質問申上げようとは思ひませぬ、唯最後に商工大臣に、是は主として大藏大臣に御質問することでありますが、物の面に關する點だけ、商工大臣に本日御問ひして置きたいと思ひます、今日の日本は、古き經濟體制から新しき經濟體制に切替へなければならぬと云ふことは論ずるまでもありませぬ、而も此の動搖と切替の混亂期に乘じて、經濟の實勢力は移動して參りまして、先程同僚議員から其の具體的な一つの現はれとして、通貨の問題を論ぜられました、今日新圓六百億が發行されて居りまするが、其の六百億の新圓の中に、特殊銀行、普通銀行其の他の預貯金へ戻つて參りましたのは約三分の一であります、あとは農村漁村に退藏されて居ることと、日本人にあらざる第三國人に所有せられて居るのであります、是は商工大臣は所管が違ふから御氣付にならぬかも知れませぬが、一つの例を申上げますと、其の新圓で公債を買つたと致しますならば、其の公債は今百圓の額面が三十圓、四十圓であります、それは將來額面通り第三國人には支拂はねばならぬ義務があります、通貨の移動は延いて生産實體の移動になつて參ります、私は茲に通貨政策の根本的な、政治的に見なければならぬ問題があるのぢやないかと思ふのであります、變に話が飛びまするが、私は通貨が商工省の所管に於て重要なる「ポイント」をなすものであると申上げましたのは、第一次歐洲大戰後に於ける「ドイツ」の「インフレーション」の過程に於て、どう云ふ風な現象が起きたかと申しますならば、「ドイツ」第一次「インフレーション」の隱れたる特質は、あの「インフレーション」の過程に於て、通貨が「ドイツ」以外の第三國人に握られたと云ふことであります、主として「ユダヤ」人に握られたと云ふことであります、そこで「ドイツ」民族資本が蹶起致しました、「ナチス」を使つて蹶起した、私は通貨政策を一たび誤まるならば、日本の反動勢力が擡頭すると云ふことを惧るるの餘り、茲に商工大臣の深甚なる御考慮を煩はすのでありまして、單に是は大藏省だけの所管ではございませぬ、隨て此の古い經濟體制から新しい經濟體制に切替へる通貨政策と云ふものは、どう云ふ風な性格と觀點で商工大臣はおやりになるか、同時に此の臨時物資の厖大なる法案を出されて、之を運用して、將來日本の産業を新しき方向に持つて行かうとされるのでありまするか、其の通貨政策を一たび誤まりまするならば、私は其の目的は達せられないと思ふ、同時に現在の通貨は通貨の數量で操作するには、最早段階を飛躍致しまして、通貨を數量的に操作することの出來ない段階であります、是は詳しく大藏大臣と意見を鬪はしたいと思ふのでありますけれども、唯それが商工行政に關聯する所は、物價の安定と通貨の安定がなければ、如何なる名案を持つて來られましても、其の目的は達せられないのであります、此の古い體制から新しき體制に切替へる産業の此の隙間を、どう云ふ風な通貨政策で切拔けようとするか、相變らず從來通りの通貨政策、即ち金本位制にあらざる、或は「ドイツ」流の管理通貨にあらざる新しき通貨政策と云ふものが、日本に生れなければならないと私は思ふのでありまするが、從來通りの通貨政策で切拔けられるかどうか、一應御所見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=54
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055・星島二郎
○星島國務大臣 甚だ難問題でありますが、併し此の難問題を解決しなければ日本の再建は出來ないと思ひます、私は今日の通貨問題に對しまして──通貨問題と申しますか、或は物價問題に對しまして、今日のありの儘の姿では甚だ懸念が多いと心配致して居るものでありますが、何しろ今將に斷行せんとする、又現に斷行しつつある一切の補償打切り、或は預貯金等の整理、其の他の惡材料を一渡り全部出し拔きまして、さうして此の議會後に於て之を成べく速かに實施して、一通りの整理が出來ました所で、私は一つの案が生れて來るものと思ひます、今日の如く銀行なり、或は政府に對する通貨に關する信用と云ひますか、さう云ふものが薄らいだ時に、大藏大臣或は政府が聲を嗄して、今後新圓に對しては手を付けぬと言へば言ふ程、一種の不安を持つと云ふ今日の人心では、中々思ふ通りに參りませぬが、現在出て居ります、或は是から後に御協贊を仰ぎたいと思ふ凡ゆる整理案、七つ、八つありますが、全部のものを早く實施致しまして、其の後に於きまして是が餘りに「デフレ」にならぬ程度で、良い按配になることを期待して居るのであります、尚ほ併し其の點に於てもどうしても防ぎ切れぬと云ふやうな場合が起りました時には、是は何れ安定本部の會議になることと思ひますが、私一個の私案と致しましては、往年「ドイツ」が、或は外國爲替を中心として「レンテン・マルク」をやつたやうな調子に、日本と致しましては今外國爲替の關係はありませぬから、或は物價指數と相應じたる一つの新圓價安定法でも協贊を願はなければならぬと云ふやうなことがあるかも知れませぬ、併し是は單なる私一個の全然私案でありますけれども、併しまだそこまでやらぬでも、是だけの總ての惡材料を出し拔いて、さうして勇敢に一つ再建の爲に整理を致しました後に於ては、私は今日のやうなことはないだらう、或る程度までは必ず曙光を見出し得る、斯樣な考へで居る譯でありまするが、併し御造詣の深い西村君の御意見非常に御尤もな點もありますので、今後政府は一層──さう云ふことを心配するが故に安定本部も作り、或は物價廳もわざわざ安定本部長官が兼任して居る所に、それだけの懸念を致して居るやうな譯でありまして、衆議院其の他の衆智を集めた一つの仕組を以ちまして之に對處したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=55
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056・西村榮一
○西村(榮)委員 星島さんとは議論がしにくいのでそろそろ切上げますが、唯私は商工大臣竝に商工省の各位に希望を申述べて質問の補足を致したい、率直に言へば商工省は大藏省に押へられるなと云ふことです、私は此處に大藏大臣が居られれば率直に申します、日本の産業の再建は、少くとも産業と勤勞階級を中心としなければならぬのであつて、金融が其の支配者であつてはならない、金融が産業に對する忠實な下僕の地位に下らなければ日本の再建は成立ちませぬ、金融資本が依然として封建的資本主義の如く其の王座を占めるのでありまするならば、日本の再建と云ふものは覺束ないのみならず、日本産業と云ふものは歴史に逆行して參ります、そこで問題は只今通貨の問題に付て、商工大臣は非常に御心配になつて居るやうでありまするが、私は其の大藏省に押へられるなと云ふ主張の裏付けとして、新しき通貨政策と云ふものの一例を申して置きませう、私は日本の通貨政策は金に基礎を置くことは出來ないと云ふことを申しました、同時に「ドイツ」流覇道政治の管理通貨であつてはならぬと云ふことを申しました、そこで「アジア」的な政治性格と、資源の乏しい敗戰經濟から起ち上る此の日本の經濟性格に立脚し、而も日本の通貨が第三國人に逃げて、それが將來の反動政治の基礎にならないやうに、反動勢力の此の基盤をも奪つた新しき通貨政策と云ふものが、私は遺憾ながら此の切替の動搖期だけは、非常通貨の發行が必要だと思ひます、其の非常通貨の發行はどう云ふ形でやるかと申しまするならば、私は假に之を生産通貨と生活通貨の二種類に分けたらどうかと思ふ、生産上に要する通貨は、是は一九三〇年から三五年當時の通貨の發行最高限度は、二十三億から七億と私は記憶して居るのでありまするが、此の二十三億から七億に現在の物價指數を掛けたものが、生産通貨の最高發行限度であります、さうしてそれは生産だけに流用する、さうして後の國民生活は大體生活通貨と云ふものを發行致しまして、それは昭和二十一年度に於ける國民の個人所得の總額に、大體廻轉數二箇月なり三箇月なりを考慮致しまして、最高の發行指數と云ふものを考へる、そこで問題は其の生活通貨に對して、月に千圓の收入も十萬圓の收入も、其人の努力と創意工夫、勤勞に於ては等差を設ける、併し其の生活通貨は、知識、筋肉の「ルート」を通らなければ發行しないと云ふ建前になりますならば、新しき通貨の問題は解決出來ない、是は私は生産を刺戟する所以ではないと思ふ、詳しいことを私は大藏大臣と所見を鬪はしますが、商工大臣に希望するのは、只今通貨の問題で御苦心になつて居りましたから、其の點に於てさう云ふ風な通貨を、商工省は生産振興策として御考へになつたらどうか、さうしないと今のやうに、先程同僚の中からも御話がありましたが、二十二億の石炭補給金、是は三十億五十億出しても何にもなりませぬ、それよりも拔本的な通貨政策と云ふものを、そこに重點を置いて御考へになりますならば、將來の産業政策の基盤がそこに出來上るのではないか、さうして通貨が第三國に逃げないと云ふやうな點を、一つ商工省に於ては産業政策の立場から、さうした國民全部が働き得る國民皆勞の體制の確立と云ふ觀點から考慮せられてはどうか、細目の技術的な點に於ては、大藏省と大藏大臣に私は御聽きしたいと思ふのでありますが、商工大臣に希望を申述べれば、さう云ふ點を御考慮になつてはどうか、單にここに盛られただけではなしに、將來の世界産業の革命の主體、推進力と云ふものは科學であると云ふ點を考へますならば、商工省はもつと科學技術の温存と、將來の振興に付て深甚なる對策を講ぜられる必要がないか、此の二點を質問傍傍希望を申上げて、商工大臣に對する質問を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=56
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057・星島二郎
○星島國務大臣 産業が金融資本の奴隷化しないやうにと云ふ、深い御同情のある言葉を戴きまして感謝する次第でございます、例へば今囘出ました復興金融金庫法の如き、やはり共管を主張してそれが容れられて居りますのは、概ねさう云ふ御意見のやうな趣旨に副つてやつて居る譯でありまして、從來の弊害に染まないやうに、殊に補償打切等に於きまして債權者の地位が強くなりますので、それ等に對して産業の主體を成すものが金融資本の奴隷化しないやうに心掛けて行きたいと思ひます、尚ほ只今の通貨政策に對する新しい御著想は、洵に敬意を拂つて之を謹聽致して研究の資料と致すことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=57
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058・西村榮一
○西村(榮)委員 是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=58
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059・竹田儀一
○竹田委員長 諸君に御諮り致します、實は貴族院の豫算分科會から、商工大臣に對して討論採決に入るから一寸出席を願ひたいと云ふ御要求がありましたのと、委員諸君の中に農地法案に御關係の諸君が多いので、西村君の御質問が濟み次第、本日は此の程度で散會したいと云ふことで各派理事の御諒解を得たのであります、然る所商工大臣は貴族院へおいでになる必要はなくなつたのでありますが、農地法案は本會に掛つて居ると思ひます、各位の御意見通りに致します、續行致して宜しいと云ふことであれば續行しますし、本日は此の程度で打切つた方が宜しいと云ふことであれば打切ります
〔「打切つて下さい」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=59
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060・竹田儀一
○竹田委員長 それでは本日は此の程度で打切ります、明後日午前十時より開會致します、本日は散會致します
午後二時四十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=60
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061・会議録情報3
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〔參照〕
臨時物資需給調整法案委員會要求參考資料
十一、輸入食糧の價格表及び放出物資の價格表
十二、米國に於ける食糧及び生活必需物資の價格の調査資料
十三、商業者數(大別したる業種別)
十四、各國の國民と商業者の比率表
十五、國内、中小工業者數、從業員數(五名以下一〇名まで、二〇名まで、三〇名まで、五〇名まで、一〇〇名まで、二〇〇名まで、三〇〇名まで五〇〇名まで)各表発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00319460907&spkNum=61
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