1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
臨時物資需給調整法案(政府提出)
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昭和二十一年九月十日(火曜日)午前十時二十三分開議
出席委員
委員長 竹田儀一君
理事 加藤一雄君 理事 小島徹三君
理事 塚田十一郎君 理事 宮前進君
理事 西村榮一君 理事 前田榮之助君
理事 疋田敏男君 理事 福田繁芳君
安部俊吾君 井田友平君
西村久之君 厚東常吉君
小野孝君 田中實司君
山田善三君 磯崎貞序君
馬越晃君 金光義邦君
九鬼紋十郎君 鈴木周次郎君
川崎秀二君 田村定一君
金子益太郎君 竹谷源太郎君
中崎敏君 山口靜江君
米山久君 三木武夫君
赤澤正道君 伊藤恭一君
小坂善太郎君 戸叶里子君
布利秋君
九月十日委員池上隆祐君及び河野金昇君辭任に付其の補闕として小坂善太郎君及び稻田健治君を議長に於て選定した
出席國務大臣
商工大臣 星島二郎君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
商工事務官 吉田悌二郎君
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本日の會議に付した議案
臨時物資需給調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=0
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001・竹田儀一
○竹田委員長 會議を開きます──中崎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=1
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002・中崎敏
○中崎委員 日本經濟の再建は、生産の飛躍的増加と消費の規正竝に節約と、價格の適正と通貨價値の安定如何に掛つて居ると思ひます、而も是等の施策を有機的綜合的に、迅速果敢に斷行することに依つて、經濟安定本部の目的として居る所の産業の囘復及び振興を圖るべきものだと考へて居ります、即ち國民消費の規正と節約とは、戰時戰後を通じ極度まで是が實行されて居ります、國民は飢餓線上を彷徨して居る所の現状であるに拘らず、獨り國家の財政は放漫を極め、國民の血と汗の結晶である五百億の財産を、財産税の形に於て徴收し、之を本年度中に使ひ果すばかりでなく、尚ほ巨額の赤字公債を發行し、而も物資増産の前途に對しては、唯原料輸入に期待すると云ふ以外に見透しのないと云ふ現状にも拘らず、前記の如き莫大な金額を支出せんとして居る譯でございます、是等の問題に付きましては大藏大臣に追つて質問申上げたいと思ひまするが、斯くの如き前提の下に立つて膳國務大臣に御尋ねしたいと思ひます
先づ物價問題に付て御尋ねしたいと思ひます、戰時中に於て政府は低物價政策を以て、終始一貫した所の政策として參つた譯でございますが、此の低物價政策が見事に失敗することに依つて、今日の如き混亂を來す大きな力となつて居る譯であります、終始後に於きましては總花主義と申しまするか、まるきり無方針、無定見の下に物價の統制をして參つた譯でございまするが、是とても亦收拾することの出來ない所の物價状態を現出して居る譯であります、此の戰時中に於ける物價と云ふものは、主として商工省の物價局に於て行はれ、其の一部は農林省に於て取扱はれた問題ですが、是が物の面を離れて金融の面から統制せんとすると云ふ立場から、戰後に於て大藏省に其の物價局が移された譯でございます、是とてもやはり失敗をして參りまして、改めて茲に物價廳が出來まして、唯物の面ばかりでなく、金融の面に於ても綜合的に物價を取扱はうとする形となつて現はれた譯でありますが、是とても安定本部の物價に關する強力なる綜合的、計畫的施策の下に行はれる必要があると云ふことは、火を睹るよりも明かであります、所が今日依然として此の物價に關する所の機關が各省に跨つて居つて、一元的統制が十二分に行はれて居ないと云ふやうな状態に置かれて居る譯でありますが、之に對して安定本部長官としては今後如何なる方策に依つて、此の一元的物價統制を執つて行かれる方針であるかと云ふことを御聽きしたいと思ひます、先づ此の問題に付て伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=2
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003・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ致します、物價の問題に付きましては只今御質問にありますやうな憾みが從前あつたことは、私も率直に認めざるを得ないのであります、さう云ふやうな譯でありますので、今後單に物價が金融の方面ばかりでなく、物價を定めます上に裏付となるべき需給、此の面も見まして、此の需給に付きましても國内生産のみならず、尚ほ待つべき輸入物資等の方面も見まして、茲に新しい物價の水準をば定めたい、斯う考へて居る譯であります、從前は、今御話の通りの物價に關して、例へば鐵道運賃は鐵道省で單獨に御定めになる、又郵便料金は遞信省で定めると云ふやうな、同じ政府でありながら此の物價に對する考へが一つに纒まつて居らぬと云ふことの憾みがあつた譯でありますが、今囘物價廳が始まりまして、總ての物價に關することは、物價廳に於きまして統一的に考へると云ふことになつた譯であります、將來の物價政策、是は中々困難な問題である譯であります、まあ大體今の考へに於きましては、此の戰後の物價の色々な物價それ自身の動亂と云ひますか、凸凹と云ひますか、之をどう云ふ風に新しい水準に決めるかと云ふ問題でありますが尚ほそれに付きましては唯所謂お役所だけの考へでなく、物價廳に物價委員會なるものが置かれまして、之に付議致しまして物價政策の根本を決めたいと思ふのであります、是は私の私見と申すより外仕樣がないのであります、私の見る所では先づ日用品其の他の物價も、是からは供給の増加も見られますし、略略揃つて居るではないかと考へて居ります、併しながら一概に低物價と申しまして、不自然に既に或る經濟上の條件で定まるものを、一片の法令、一片の取締で之を引下げると云ふことの出來ないことは申すまでもないことであります、大體米の値段を中心としまする日用品の一連の「バランス」の取れた物價、之を先づ中心に致しまして、之に見合ひまする勞銀の水準、又一方には何を申しましても總ての物資の中心は石炭でありますので、此の石炭に付きましても、昨日も色々論議もありました補給金の問題もあり、色々の問題もございまするが、先づ不自然な價格の決定と云ふものは此の際考へ直す必要がある、そこで合理的な石炭の價格を定めまして、此の米價、勞銀の水準、石炭の價格、斯う云ふものが中心になりまして、新しい一つの「バランス」の取れた物價體系を作る、是は私見でありますが、期う云ふ考へを持つて居ります譯であります、尚ほ如何にして是が行はれるかと云ふやうなことに付きましては、是からも各省とも連絡を取りました施策に俟たなければならぬと存じますが、大體の構想を申上げますと斯くの如くであります
〔委員長退席加藤(一)委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=3
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004・中崎敏
○中崎委員 成程物價の新水準の決定は、非常に困難を伴ふと云ふことに付ては同感でありますけれども、幾ら困難であつても國家再建の上に於て一番大きな力を持つて居る所の此の物價の安定と云ふものは、一日も早く之を實現しなければならぬ譯であります、今膳長官の意見を承りますと、先づ米の値段を標準として賃金を定め、さうして石炭を中心として凡ゆる物資の標準を定めると云ふ風に受取れますが、石炭は一つの大きな工業生産に於ける所の原動力に違ひありませぬ、併し是と肩を竝べて電力と云ふやうな問題も考へられます、或は各産業にはそれぞれ主要な原料と云ふものが考へられる譯でありまして、是等の點に付ても需給の將來を相當に考へられまして、さうして其の上に安定した所の物價を定めらるべきものではないかと思ふ譯であります、更に此の比較的物價の安定状態にあつた所の戰爭直前の物價の指數、或は又今日に於ける所の時價をも相當重要な資料として、是等のものを綜合的に勘案して、物價の水準を決定さるべきものだと思ひます、例へば或る特殊な事情の下に現在製品の出廻りが惡いと言つても、其の物に對して若し國民生活の上に於て重要なものであると云ふならば、凡ゆる施策を之に傾けることに依つて、生産の増強も圖ることが出來ますし、或は又輸入物資を特に其の物に付て仰ぐことに依つて原料を供給し、其の必要製品の製造にも當ることが出來ますので、斯う云ふ風なことをも綜合的に勘案して、一つの安定した國民の之に頼るべき物價水準の決定を、一日も急いでやられる必要があると思ふ譯であります
次に御尋ねしたい點は、此の補償打切に伴ふ軍需會社資産の評價の問題もありますし、或は本法の第一條第二項に「政府は、勅令の定めるところにより、前項第二號又は第三號に掲げる事項に關する命令により生じた損失を補償する」、斯う云ふ點は物資又は設備の讓渡、引渡又は貸與と云ふやうな場合に起る問題でありまして、先づ政府の説明に依りますと、通常生ずる場合の損害を政府は補償するのだと云ふことを言うて居られますが、設備に付て通常生ずる場合の損害と云つても、どうも漠然としてはつきりしませぬので、斯くの如き場合に於ては、或は過般商工省に於て軍需會社の資産評價の場合に於て、時價を以て原則として評價する、それから時價を以て評價し難き資産に付ては、複成式評價方法を執ると云ふことを言つて居られますが、斯くの如き原則として時價に依るべきものであるのか、或は又膳長官が先程言はれましたやうに、今後安定した所の物價水準に依つて其の資産を評定することに依つて、それを標準として其の補償を定めるのであるか、或は又公定價格のあるものに付ては公定價格に依るべきものであるか、是等の點に付てはつきりした御答へを得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=4
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005・膳桂之助
○膳國務大臣 此の評價の問題は、實は御尋ねの最初にありました戰時補償打切に伴ひまして、企業再建整備の問題としまして、舊勘定から新勘定に渡す場合の資産の評價を如何にするかと云ふやうな問題に付きましては、今尚ほ關係方面とも色々協議中の問題もありますので、茲に其の問題に付て御答へ申上げる時期に到達致して居りませぬ、此の法律の第二項の評價の問題でありますが、之に付きましては只今申上げましたやうな、根本の企業再建に關しまする其の評價との見合の問題もございます、又直ちに或る水準を定めると云ふことに付きましては考ふべきことも多々ありますので、是は此の前も申上げましたやうに、評價に關しまする委員會は何れ之に附置せられると思ふのでありまして、實際是から定めらるべき或る標準も、自から研究もされますけれども、具體問題に付ては委員會で定める、斯う云ふ風に考へて居ります、評價問題に付きましては、其の根本問題に付て只今まだ研究中の問題でありますので、さう云ふことにも關係致しますので、此の際明白に御答へ出來ない點もありますが、惡しからず御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=5
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006・中崎敏
○中崎委員 然らば評價の問題に付きましては、近く提案されます筈の經濟再建整備法案其の他の審議の状況を見るまで、此の審議を待つて居るのでありますか、其の點に付て一言御聽き致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=6
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007・膳桂之助
○膳國務大臣 私の申しましたのは、此の評價の根本の問題に付て申上げたのでありますが、實は此の法律の第二項にあります問題は、企業の再建整備に關する評價とは、全然別箇に考へても差支へない問題でございまして、是は其の事件の起きましたる際其の時の──是は一寸私の説明が惡うございましたが、企業再建整備の評價の問題は、此の八月十一日に於きまする舊勘定と新勘定との分離、此の際に於ける評價の問題でありまするが、こちらの第二項の問題は、將來起きる或る時期に於ける問題でありまして、其の時の時價、設備等に於きましては、其の設備の原價及び使用に關する色々の費用、それ等を勘案致しまして、其の時の委員會の議に付して定めることでありまして、私の關聯して申上げましたことは、一寸訂正致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=7
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008・中崎敏
○中崎委員 評價に關する問題を原價でやると云ふのでありますけれども、原價は果して何時の時の原價であるのか、其の原價と云ふものに付て一つの標準を設けると云ふことが是非必要であります、苟くも此の個人の權利の消長に關する重要な事項は、其の原則を先づ此の法案の中に織込んで、さうして其の枠の範圍内に於て委員會に於て決定すべきものだと思ひまするので、其の評價に關する原則を先づ此の法案に織込むべきものではないかと思ひます、それに付ては先づ如何なる原則を以て此の補償の評價をするかと云ふことを、はつきりして置く必要があるのではないかと思ひます、此の點に付ての御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=8
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009・膳桂之助
○膳國務大臣 此の評價の問題は、其の具體的事項の起きましたる際、先程の御尋ねにもありまするやうな、通常生ずる損害と云ふことを標準としまして、如何なる損失の限度にするかと云ふ標準は、それぞれの主務大臣が大藏大臣と協議を致しました上に、其の基準を定めまして、此の委員會に付議して具體的の問題で決めると云ふことでございますが、大體物品等に付きましては、其の時の時價に依ると云ふことは、當然考へられることと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=9
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010・中崎敏
○中崎委員 今の問題に付ては釋然としませぬけれども、是は又何れ他の委員からも答辯の要求があると思ひますので、私は大體其の程度にして置きます
次に産業の囘復及び振興の爲には、物資の調整のみならず、通貨、物價、金融、勞務、輸送等に付ても同樣統制の必要があるのではないかと思ひます、然るに本法に於ては唯物資のみの統制をなさんとして居る譯でありますが、他のものに付ては如何なる取扱をなすかと云ふことに付ての方針を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=10
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011・膳桂之助
○膳國務大臣 甚だ失禮でありますが、御尋ねの趣旨が一寸私にはつきりしなかつたのでありますが、…此の法律は物價のみに付ての統制を規定して居るものでありますが、其の外に或は資金其の他の問題を仰しやるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=11
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012・中崎敏
○中崎委員 さうなんです、安定本部令に依れば、金融、勞務、輸送等のことに關しても、やはり一つの計畫を策定して之を綜合的に實施すると云ふ風にありますが、此の法案は唯物資の需給面に付てのみ規定してあるので、其の他の面は今度は他の法令が出るのか、或は法令を出さぬで唯單に机上の計畫だけ立てるのかどうか、斯う云ふ問題に付て伺ひたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=12
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013・膳桂之助
○膳國務大臣 此の安定本部の關係しまする限りに於きましては、産業の再建復興に必要なる企業資金、此の問題をば綜合的に考へる譯でありますが、之に付きましては、別に法律を出すことを考へて居りませぬ、然らば如何樣にして運用するかと申しますと、既に議會に提出してあります、復興金融金庫、是が産業再建の金融の中核をなすものでありまするが、尚ほ産業資金としては單に是のみでなく、通常の金融機關に依る金融も當然考へられるのでありまして、斯樣な資金をば如何樣なる産業に、如何樣なる形で融通して行くかと云ふことは、實際問題として安定本部に於きまして、關係者と協議して一定の基準を作りまして、之を政府の方策として實行して貰ふ、さう云ふ風な實際の運用問題として取扱ひたいので、別に之に關して資金の統制法と云ふ意味合の法律を出すことは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=13
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014・中崎敏
○中崎委員 本法第一條第一項第二號に「物資の生産」云々とありまして、加工、修理等に付ての規定が何等ない、殊に部分品の製造などと云ふものは、産業振興の上に重要な役割をなすべきものでもあり、或は又修理の工作に付ても、適正に之をやらない爲に産業の振興が出來ないと云ふやうな場面もある譯でありますが、是等に付てはどう云ふ方法に依つて所期の目的を達せられんとするか、之を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=14
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015・膳桂之助
○膳國務大臣 其の點は政府委員の方から御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=15
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016・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 法案の第一條第一項第二號には「物資の生産」の下に括弧を付けてあつて、(加工及び修理を含む)と云ふことになつて居ります、此の「生産」と云ふ文字の中には、此の法律では加工の場合も修理の場合も含んで居る意味でございます、只今仰せのやうに、加工業なり、さう云ふ部品の製造業或は修理業などは産業の復興には最も必要なものでありますので、其の生産等に付ての特別な命令をなし得ることに致して居ります(「それが落ちて居りますよ」と呼ぶ者あり)それでは今の第一條第一項第二號の所を讀んで見ますと、「經濟安定本部總裁が定める方策に基く物資の生産」其處に括弧がございまして、(加工及び修理を含む。そこで丸を付けまして、以下同じである。)又丸を付けて括弧を閉ぢます、其の括弧が落ちて居るやうであります、正規の手續を執ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=16
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017・膳桂之助
○膳國務大臣 此の點に付きましては手續に粗漏があつたやうであります、能く政府に於きまして研究しまして重ねて申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=17
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018・中崎敏
○中崎委員 次の御尋ねを致します、本法第一條第二項の政府のなす損失補償に付て、政府が補償支出をするやうなことが生じた場合に於て、是は豫算外の支出として國庫の負擔となる契約として、議會の承認を經ることになるかと云ふことに付て一應御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=18
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019・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 是は補償する事態が起りましたならば豫算に計上することになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=19
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020・中崎敏
○中崎委員 此の安定本部の計畫が豫定通り巧く行かない場合に於て、安定本部と各省との間に責任のなすり合ひが出來やしないかと云ふことを考へて居りますが、此の點に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=20
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021・膳桂之助
○膳國務大臣 御懸念の點は萬なきを期して居りますと申しますのは、安定本部が本法の施行に關しましてやりますことと、各省でなしますことの間には、はつきりした區別があるのでありまして、安定本部では根本の産業別の物資の分け方を致しますが、それ以下の問題は各省で自主的に定められた團體との間に、然るべく割當配給をするのであります、成程各省が安定本部に對しまして希望しますが、其の希望と安定本部で定めますものとの間には、物資の少い際でありますから、割當てますものの間には喰違ひがありませうけれども、それは或る手續を經て確定して各省に割振る譯でありますので、其の間に別に權限の重複はない積りであります、と申しますのは數囘説明申上げます通り、安定本部は大體企畫を中心とする官廳でありまして、各省は其の企畫に基く實行廳であります、其の間には仕事の分擔が自ら定まつて居りまして、重復或は矛盾のやうなことはないやうに運用して參ります積りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=21
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022・中崎敏
○中崎委員 觀念的には、幾ら安定本部が根本の産業別割當を致しましても、やはり各廳との間に、さう云ふやうな權限の上の爭ひ、或は責任上の轉嫁をすると云ふことはあり得るものと考へますが、膳長官の御答辯に依つて、出來る限りさう云ふやうな問題が起らないやうに善處すると云ふやうに解釋して、此の問題に付ては是れ以上追及致しませぬ、次に經濟安定本部の物資統制の範圍はどう云ふものを差當りやらうとせられるか、或は近い將來に於てどう云ふものをやつて行く積りであるかを御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=22
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023・膳桂之助
○膳國務大臣 此の範圍は正確に申しますと、近く開かるべき安定會議で決定すべき問題でありまして、唯其の基を成します各省の計畫と云ふか、希望計畫と申しますか、さう云ふやうなものは、大體中心は商工省關係のものが多いのでありまして、過日參考資料として配付致しましたもの──其の通り安定會議で確定するや否やは私が申上げられませぬけれども、大體其の線に沿うて決定されるものと御諒承を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=23
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024・中崎敏
○中崎委員 農林省關係では斯う云ふものはあるかないかと云ふことを御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=24
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025・膳桂之助
○膳國務大臣 まだ御手許には差上げてございませぬけれども、やはり商工省關係のものと同樣に、農林省關係のものに付てもあるのでございます、尚ほ是は今資料を調製中のものもありますので、それ等と一緒に御手許に差上げたいと存じて居ります、中心のものは例へば木材、農機具、農業藥品、皮革、薪炭、藁工品等多々ございます、是も今申しますやうに、嚴格に申せば安定會議で統制の品目が決定するまでは、はつきりしたことは申上げられないのでありますけれども、商工省關係のものと同樣に一應豫定されたものはあるのでございまして、是は一兩日中に御手許へ差上げたいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=25
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026・中崎敏
○中崎委員 膳國務大臣に對する質疑は此の程度で取止めまして、あとは大藏大臣と商工大臣に御尋ね致したいのであります、委員長に於て此の點御取計らひ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=26
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027・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 承知しました──三木君、國務大臣に對する質疑を御續け下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=27
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028・三木武夫
○三木(武)委員 膳國務大臣は、戰時中は民間においでになつて、戰時統制が實に慘憺たる失敗であつたことは御承知になつて居られるだらうと思ひますが、日本の戰時統制の失敗を如何に反省して居られるか承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=28
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029・膳桂之助
○膳國務大臣 是は國家と致しまして、將來の爲め、と申しましても、平和日本に於きましては將來戰爭或は之に類似することは、もう豫想だにも許されることではありませぬけれども、何故に計畫經濟が失敗したかと云ふことに付きましては、深く反省もし研究もせなければならぬ問題であります、戰爭が意外な方面に發展し、當初計畫しました物の需要とは、まるきり速度に於ても量に於ても違ふ需要が出まして、其の間に生産の計畫と需要とが全然齟齬した、そこに物的に申せば根本の原因があらうと思ひますけれども、尚ほ何故に斯かる齟齬が出來たかと云ふ問題に付きましては、やはり從來の所謂統制經濟と申しますか、計畫經濟と云ふものに科學性がなかつたと云ふことが、第一番であらうかと私共には存ぜられます
〔加藤(一)委員長代理退席、委員長著席〕
最近に於きましても、私共實際安定本部の仕事を致しますのに、洵に基礎となるべき統計或は調査と云ふものが十分でない、甚だ殘念ながら現在さう云ふ方面に非常な苦痛を感じて居ると云ふことを申上げるを得ないのであります、斯う云ふやうな方面に於ける平生からの基礎的調査、及び科學的研究生と云ふ一つの事實に基く計畫がなくて、唯徒らに或る一つの目的に國民を引張つて行きます爲に、そこに希望的の數字と申しますか、希望的計畫と言ひますか、之を連ねまして、直ちにそれが實現出來るかのやうに速斷して國の進み方を決めたと云ふ點に、一つの大きな錯誤があつたのではないか、簡單に言葉を換へて申しますれば、所謂企畫性と申しますものが、科學的基礎の上に立たないものであつたと云ふことが第一番であらうかと存ぜられます、それからもう一つは、是は精神的方面にもなることでありますけれども、從來の計畫經濟が兎角人間性がなかつたのではないかと思ふのであります、例へば統制等に付きましても、一片の法令を出せば直ちに統制を行へるものと云ふことを前提とする、其の統制が、人間の本能と申しますか、本性と申しますか、之に合ふか合はないかと云ふことが深く考へられて居りませぬ、經濟の原則とも離れ、恰も水をば低きより高きに落すやうな不自然な計畫、何が其の因をなして居つたかと言ひますれば、或る一つの國家目的──非常に崇高なものではありますけれども、此の國家目的を達しまする爲に、やはり人間としての努力が必要であるに拘らず、謂はば神憑的な一つの掛聲でやつて行かうとする、極く卑近なことを申して居るのでありますけれども、例へば、よく言ふ利潤の否定と云ふやうな問題、利潤の追求と云ふやうな問題、總ての經濟活動に、一時的の興奮の場合は別としまして、やはり人間性を顧みますれば、そこに正當なる利潤と云ふものがありまして、此の正當なる利潤が各各の生活及び子孫の幸福の爲に當然見らるべきものだと云ふことは、人間性から見れば當然なのでありますけれども、何か國家の爲めと云ふやうな非常に大きな目標を掲げまして、恰も正當なる利潤の追求すらも罪惡であるかのやうな、又人間として當然考へてやるべき一つの性質をば、まるつきり無視するやうな統制が行はれたと云ふやうな、精神的方面に於きましても從來の統制經濟に根本的な誤りがあつたのではあるまいか、斯う云ふ風に私は民間に居りまして考へて居つた次第であります、要するに、從來の計畫經濟に科學性のないこと、又從來の計畫經濟が神憑り的であり、又觀念的であり、「イデオロギー」的であつて、人間性と云ふことを忘れて居つた、茲に計畫經濟の失敗の根本があるのではないかと私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=29
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030・三木武夫
○三木(武)委員 色々言はれたのでありますが、要するに、科學的根據に立つて經濟の實情を把握しないで、權力を持つた官僚統制の失敗であると云ふ風に取れるのでありますが、さうして見ると、其の餘りにも貴重な日本の戰時統制の反省が、此の臨時物資需給調整法の中に一體何處に現はれて居るか、此の餘りにも貴重な日本の失敗の教訓が、一つの反省の形となつて何處に織込まれて居るか、又民主的に組織された産業團體云々と云ふやうな言葉はありますが、此の立法は總動員法或は輸出入臨時措置法等と殆ど變りないではないか、單に民主的に組織せられた産業團體云々と云ふやうな反省の程度で宜いのであるか、運用の點に於て其の教訓を活かすのか、それが此の法案の中に、何處に深刻な反省の形になつて現はれて居るのか承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=30
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031・膳桂之助
○膳國務大臣 只今私の申しましたやうな點が、此の法律には相當考へられて居ると存じます、先づ第一番に、此の統制經濟の科學性の問題であります、從前の物資の配給統制の根本の誤りは、先程申します通り、希望的の數字が先になりまして、果してそれが現實に供給出來るや否や、又假に生産が其の點に達しましても、運輸其の他の配給の途が付いて居るかどうかと云ふやうなことに付きましては、是は色々戰時中の急を要する問題もありますからでもありますが、要するにそこに何等科學的の基礎のないと申しますか、計畫が科學性を缺いて居つたと存ぜられるのであります、かるが故に、今囘は經濟安定本部が出來まして、各省區々でなく、又腰だめでなく、茲に一つの基礎のある計畫の上に立つて行きたい、是が過去に於て嘗めました苦い經驗を繰返さないと云ふことの用意の一つであります、それからもう一つの點は、人間性に反した、所謂神憑り的の官僚統制でないと云ふ點は、此の法律に現はれて居ります所では、總ての統制の計畫、實際に當りましては人の納得する、誰もが喜んで之に加はつて協力をし得る形を取る、茲に統制經濟の人間性を現はす、それは此の自主的に運營されます團體、及び此の團體と協力します官廳の、何と申しますか、要するに國民生活の安定と云ふ所に、最後の目標を置きます自主的の運用、是が此の計畫の中に現はれて居りまして、戰爭中の統制經濟と、今度此の物資需給調整法に現はれます統制經濟とは異なり、其の根本の思想及び運用に於きましては、曾て嘗めました苦い經驗を繰返さないやうな用意が考へられて居るのではないか、斯樣に存ぜられます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=31
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032・三木武夫
○三木(武)委員 盛んに本法に依る物資の統制は科學性の上に立脚すると言はれるのですが、然らば物資の統制は、物資の需給計畫、或は資金計畫、物價問題等、綜合的な各種の國家の經濟政策と、國家の財政政策から生れ出て來る一つの基本政策が出て來なければならぬのでありますが、まださう云ふものは殆ど御示しにならないで、是から經濟安定會議を開いてやるのだと云ふことでありますが、日本の經濟政策方向と云ふものをきちんと決めて、計畫經濟の軌道に乘せて、而も經濟の實體を完全に把握して行かなければ、科學性は生れて來ないと思ふのですが、どう云ふ點に付て從來の統制經濟と比較して科學性の新機軸を見出さうとされて居るのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=32
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033・膳桂之助
○膳國務大臣 別に新しい機軸と申しましても、既に經濟現象は繰返されて居るものでありまして、茲に全く破天荒な、前人未踏な方策があるとも存ぜられませぬ、現在日本の物資の供給及び需要──供給の面に於きましては、國内生産及び是から計畫されます輸入計畫、是等を見合ひまして、今御意見の中にもありましたやうな、是が單純に物の方面ばかりでなく、國家の財政とも、又他の諸方策とも關聯性を持ちました其の計畫の上に、物資の統制其の他を行ふ、茲に私が科學性と申しますものが出て來ると思ふのであります、それではそれを示せ、或は斯う仰しやられるかも知れませぬけれども、是等を纒めるのが經濟安定本部の最後の目標でありまして、經濟安定本部の存立期間中に、斯う云ふやうな根本的計畫を樹立することに努める──努めつつある、まだ是が全貌をお目に掛ける時期ではありませぬが、今既に著手しつつある問題でありまして、其の問題に付きましては何時か本會議でも申上げましたが、漸次其の全貌が段々お目に掛け得られる時期が來つつあると存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=33
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034・三木武夫
○三木(武)委員 其の全貌が段々明かになりつつあると云ふことでありますが、昨日の商工大臣の御話の中にも、本法で主として急速に適用を考へて居るのは、肥料、鐵等であると云ふやうな御話で、最近に於て政府も鐵、肥料、工業鹽、「ソーダ」等の六品目でありましたか、日本の重點的基本物資として、急速に是が生産増強をなすべき物資を御決定になつたやうでありますが、物が足りないから物資需給調整をやるのだと云ふことでは、一つのじり貧政策であつて、是は戰爭中の統制經濟と同じ結果になる、基本物資に付ては此の程度まで生産を増強したいのだと云ふ一應の目安があつて、其の爲に物資の需給調整が必要だと云ふことならば、一應の筋道が通ると思ひますが、唯物資が不足して居るから需給調整をやる必要があると云ふやうなことでは、さう云ふ消極的な意味では、殆ど生産配給に亙つて、何でも出來ると云ふやうな厖大な權力を持つて本法に協贊すべきかどうか疑問とするので、一應目安があつて、其の爲に物資の需給調整が必要だと云ふことでなければならぬ、此の法案を提出する意味はそれでなければならぬと思ひますが、基本物資としてはどの程度の生産目安を考へて居りますか、是は何箇年に亙ると云ふやうな年度計畫的なものは無理でありませうが、少くとも一年度に於ける基本物資に對する生産の目標は何處へ置いて居るか、御示しになつて然るべきであると私は思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=34
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035・膳桂之助
○膳國務大臣 安定本部の關係します物資に關する部面は、單に此の臨時物資需給調整法だけではございませぬ、併し此の法律で賄つて行く方面は、生産と云ふやうな方面よりも、寧ろ割當、配給とか云ふ點に重點があるのでありまするが、基礎的必需物資の増産をどう云ふ風にして行くかと云ふことは、是は此の法律を離れまして、安定本部が關係各省と現に努力し、是からも努力せんとする所なのでありまして、各各のものに付ての目標、是もまだ各省の御研究はあらうと存じますが、まだ安定本部で全般的に綜合的に研究しましたものは、今さう云ふものの研究中でありまして、唯個々の物資で各省の主管して居りますものに付て、現在まで立つて居ります目標に付ては、是は自ら各省の方面から御答へを或は申上げられるのではないかと思ひますが、經濟安定本部に關しまする限りは、未だ御答へ申上げますやうな段階に入つて居りませぬことを申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=35
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036・三木武夫
○三木(武)委員 商工省は基本物資に付て何か目標が立つて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=36
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037・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 御話の通りに今日に於きましては、一日も早く基本物資に付きまして生産計畫を立てなければならぬことと考へます、併しながら石炭等に付きましては既に發表したものがございます、基礎中の基礎の物資でございますから、石炭等に付ては既に發表した計畫がございますが、其の他の重要物資に付きましても、何とか案を立てねばいかぬのでございますが、只今私共が一番此の計畫を立てまするに困難を感じて居りますることは、原材料の輸入が確定して居らぬことでございます、御承知の通り只今の我が國は、貿易は聯合軍の管理下にございまして、輸入等に付きましては我が國の政府としましては立て得ない状況でございます、隨ひまして現在ある國内の資源だけを以てすればどれ位と云ふ見當は付くのでございますが、それ以上に私共としては來年度以降に於ては、やはり相當原材料を入れて戴きまして、或る増産を計畫したい、斯う云ふことでございまして、さう云ふ見地からの計畫はまだ立つて居りませぬ、其の點を御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=37
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038・三木武夫
○三木(武)委員 經濟安定本部は差當り一年と云ふことになつて居りますが、どうもさう云ふ態度ではとても一年と云ふやうな短期間に、國民の期待するやうな日本の産業復興の計畫は立たないのではないか、餘程全力を擧げなければ、全く失望する結果になるのではないかと思ふのでありますが、日本の産業復興計畫を立てる場合に、軈て日本も國際經濟の一環として世界經濟の中に加入を許される時期が來ると思ふ、膳國務大臣は經濟安定本部の長官として、最近第二次世界大戰後の世界經濟の傾向が「ブレトン・ウッヅ」協定にも現はれる如く、意識的に「アメリカ」を中心として世界經濟が運營調整をされる傾向が、非常に顯著であると思ふのであります、隨て將來の世界産業の構成としては、産業の國際的分業と云ふ傾向を看取することが出來るのであります、斯う云ふ戰後に於ける世界經濟の動向と、日本産業復興との關聯を、どう云ふ風に膳國務大臣は御考へになつて居るのでありますか、經濟安定本部の長官としては一應の御見解がなければならぬと思ふ、それに付て承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=38
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039・膳桂之助
○膳國務大臣 御尤もな御意見でありまして、日本の經濟再建、是は鎖國的な日本の自給自足經濟を目標とすべきものでなく、我が國が世界經濟の一環に溶け込んで、日本の經濟が其の上に發足しなければならぬと云ふことは當然なことであります、唯將來の問題は格別としまして、現在の日本經濟再建の問題から考へて見ますると、まだ講和條約の成立しませぬ今日、まだ日本が世界の聯合にも加入出來ませぬ今日、又將來どう云ふ形で日本が世界の通商の中に加はり得るかと云ふことの限度も分りませぬし、今日直ちにさう云ふことを豫斷しまして、日本の經濟再建と其の點をば結び付けて申上げる、或は考へると云ふことは洵に困難なことでございます、只今御引用になりました「ブレトン・ウッヅ」の協定などに付きましても、斯う云ふ世界爲替資金の協定が出來まして、日本も此の中に加はりまして、平常的な輸入輸出の出來まするやうな時期の一日も早く來らんことを希望するのでありますが、何を申しましてもまだ此の問題を、或る目標を決めて日本が取扱ふと云ふことに付きましては洵に困難があります、併しながら講和の問題も或は案外早いのではないかと云ふやうな見方も、又希望もありまして、恐らく經濟安定本部が其の存立の期間に於きまして目標をば色々の觀點から定めることの出來まする時には、恐らく將來日本が世界貿易の中に、どう云ふ位置で加はり得るかと云ふことに付きましても、やはりそこに目標も付け得るかと存じますが、何を致しましても今日の有樣に於きましては、日本の經濟再建に直ちに實行出來る一つの計畫として之を結付けると云ふことに付きましては、種々難點のあることも御諒察下さることと存ずるのであります、併しながら日本の經濟再建は、日本の自給自足經濟で行けないのである、やはり一つの大きな世界の需給の中に割込んでの日本の經濟の安定を圖るべきであると云ふことは、是は申上げるまでもないことと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=39
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040・三木武夫
○三木(武)委員 今日の日本に、直ちにさう云ふ世界經濟の一環として加入を許されると云ふことが出來ないことは當然でありますが、其の傾向に世界の經濟が動いて居ると云ふ觀點から、日本經濟再建を考へなければならぬと云ふことを私は申上げた譯であります、更に色々承つて見たけれども、重要基本物資の一つの生産計畫もまだ立つて居ない、一切が是からだ、私は大體一つの目安が立つて、其の目安を實現する爲に本法が必要だと云ふやうな意味から之を議會に御提出になつたのだと思ひますが、一切のものは是から決めて行くのだと云ふので、非常に失望を致すのでありますが、一切是から經濟安定會議と申しますか、之に掛けることになる、其の經濟安定會議は一つの會議の形式であつて、色々民間の方々も入つて、從來の官僚統制の弊害を之に依つて是正しようと云ふ考へであられることは分るのでありますが、此の經濟安定會議と云ふものは、基本的な政策を會議に掛けて決定するのか、恐らく主務大臣の必要な命令と云ふものは、一般省令の形と行政處分命令と、二つの形が出ることが豫想されるのですが、さう云ふものを此の安定會議に付議して、經濟安定本部の議決を經て、安定本部總裁が主務大臣に之を明示するのか、安定會議と云ふものが一般的な、基本的な政策だけを決めるのか、經濟安定會議の具體的な運營と云ふものに付て承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=40
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041・膳桂之助
○膳國務大臣 安定本部の施策に於て、根本的の問題と應急的施策の問題と二つ同時にやつて居りますると同じやうに、安定會議に付議します問題は、日本の將來の經濟安定に關しまする根本の方針に付ての問題も付議せられまするし、又同時に一つの應急的の問題も之に付議せられると存じます、例へば今御審査を願つて居ります、此の法律に基きます所の、安定本部總裁の定めます基準も、出來得る限り早い機會に於きまして、其の統制の範圍及び方法等に付きまして之を付議したいと思ひます、斯う云ふ場合には、根本の問題に關聯はありますけれども、應急の問題として付議せられると存じます、是から色々の問題も、左樣に根本問題の研究と、應急施策の是非に付きましての諮問と、兩樣に運營されるのではないかと想像して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=41
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042・三木武夫
○三木(武)委員 私の御尋ねしたのは、必要な命令と云ふのは、一般省令の形と行政處分命令の形として出る、之を一々經濟安定會議に掛けて、其の議決を經るのかどうかと云ふことを御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=42
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043・膳桂之助
○膳國務大臣 安定會議には、根本の方針と言ひますか、趣旨を決定して貰ふのでありまして、其の趣旨に基きます細目は是は、各主務大臣が定め、或は處分的の命令をなすので、安定會議に掛けますものは手續の末に至るまでの細かいものを掛けるのでなく、根本の方針が掛けられるのだ、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=43
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044・三木武夫
○三木(武)委員 御承知の如く本會議、委員會を通じて、是が往年の總動員法と變らない、殆ど戰時中の統制經濟の失敗の反省の跡が、現はれて居ないと云ふことが、各委員が今日まで論議を重ねられた焦點であります、之に對して、其の反省の形として、從來のやうな各省の腰だけに依つてやるのでなく、經濟安定會議と云ふものに、統制の一つの民主的な新しい形式の手段を御置きになつて居ります、然るに今承つて見ると、根本的なことだけを決めて、一般省令や行政處分命令と云ふやうなものは、各省或は經濟安定本部で決めると云ふ話でありますが、御承知のやうに本法は行政處分命令として何でも出來ることになつて居る、生産の禁止も出來れば、設備の讓渡も出來れば、之を他人に貸與することも出來るのであつて、生産活殺自在の、行政處分命令に依つて出す權限を主務大臣が持つ譯であります、さう云ふことに對しても、經濟安定會議でなく、各省或は經濟安定本部で決めて、形は本部總裁が之を命令する形になるかも知れないが、實權は結局役所が握つて行く譯です、斯かる生産配給に對して白紙委任状のやうな權限を、經濟安定會議の議も經ないで政府に渡せと云ふことは、全く國家の建前の變つた戰後の日本に於て、何等議會の立法的な手續も執らないで、斯う云ふ厖大な權限を政府が持つと云ふことが、民主的な今日の時代要請から許されると膳國務大臣は御考へになつて居るかどうか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=44
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045・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ致します、安定會議に掛かる問題は、根本と云ひましても、要するに統制の種類、範圍及び方法、兎に角若し法律を出すならば、其の法律中に書くべきやうな事項は、是は安定會議に掛けて決定したい、それを私は根本の問題と申すのであります、隨て各省で出します省令、或は實際上の處分命令等、法律で定むべきやうな問題をば勝手に出すのだ、斯うは私共考へて居りませぬ、尚ほ安定會議に掛けます問題も、安定本部に關する限りは原案を作ると申しますか、諮問案を作ると言ひますか、安定會議の所謂幹事役をやります、其の組織も、從來の所謂官僚と言はれるお役人の方々ばかりでなく、實際の問題を能く諒解して居る當業者の中から、部員を選び、又參與を選び、其の人達の參劃しました實際的知識を取入れたものに依つて、或は原案を作るとか、或は安定會議のお手傳ひをしまして、決定すべき色々の案を作製するとか、所謂從來お役所でやつて居たことも安定本部でやります、而してそれには從來ないやうな民主的方法が執られまして、戰時中に行はれましたやうな、人間性を無視した官僚統制の謗りを受けるやうな事務の取扱ひはなくなることを期する積りで居りますので、只今の御懸念は御尤もでありますけれども、其の點は從前と違つたものと御考へが願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=45
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046・三木武夫
○三木(武)委員 重ねて申上げますが、安定會議と云ふものは、色々基本的なものを掛けるのだと云ふことを言はれますが、本法第一條第一項、二項三項を見ると、是は一つ行政處分命令で、生産に對しても、配給に對しても制限、禁止、讓渡、何でも出來る基本法である、斯う云ふ大きな權限を政府が持つことを議會に求めて居るのでありますが、是が行政處分命令や一般省令の形で、何時でも主務大臣が出せると云ふことに對し、我々は非常に不安を感じて居るのでありますが、其の不安を感じて居ることに對して、政府は經濟安定本部と云ふ民間の「エキスパート」を入れたものにそれを付議して、其の意見を聽くのだと云ふけれども、それは基本的なもので、行政處分命令なんかは之に掛けない、若し經濟安定會議に掛ると云ふことでも、此のやうな厖大な權限を政府に渡すと云ふことに付ては、私は色々異論があるのであります、それにしても政府の唯一の民主的な方法として口にして居る經濟安定會議にも掛けないで、役所でやるのだ、さう云ふことで斯くの如き法案を議會に提出すると云ふことが、果して時代の要請に合ふ民主的な方法か、議會の立法權を尊重する所以か、それに付て重ねて膳國務大臣の御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=46
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047・膳桂之助
○膳國務大臣 重ねて御答へ申上げます、此の法文を見ますと、第一條の二項、三項には生産の制限であるとか、生産命令であるとか、又諸物件の讓渡を命ずると云ふやうな、非常な強權發動のことを書いてありますが、本法の主たる目的としますものは、第一項の割當及び配給と云ふ點にあります、例へば生産方面に付て申しますれば、生産命令を出してやると云ふやうなことは、拙劣中の最も拙劣なものだと思ひますので、業者の生産意欲を減退せしめないやうな方面に政府が努力をして生産せしめる、又設備其の他の讓渡とか引渡、貸與と云ふやうな問題も出來るだけ自然的に行はれるやうなことをしなければならぬのでありまして、此の二項、三項に書いてありますことは、國家の緊急の需要に應じようとするのに、どうしても應じないやうな場合の、謂はば傳家の寶刀的な規定としてありますもので、絶えず是が茶飯事のやうに行はれるとも考へて居らないのであります、尚ほ是が運用に付きましても、勝手に各省が處分命令或は省令を出しまして、斬捨御免と言ひますか、さう云ふ風に之を運營されたら大變だと云ふ只今の御懸念は洵に御尤もであります、斯う云ふやうな規定を如何なる場合に適用すべきかと云ふやうなことは、やはり安定會議で根本原則をば定めて置きまして、是が濫用に陷らぬことを期したいと考へて居るのであります、斯う云ふやうな包括的な、非常に廣い委任權限を頂戴致すやうな法律は、私共も決して之を喜んで居ると云ふ意味ではありませぬので、色々の内外の情勢から、已むを得ずして斯くの如き緊急の處置としましての法律を立案せざるを得ない譯でありまして、是が運營に付きましては、單に口先ばかり民主的にやるとか何とか云ふのでありませぬで、實際の運用は此の法律の濫用のないやうに、十分努めて參りたいと思ふ次第でありまして、其の點はどうぞ御諒察を願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=47
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048・三木武夫
○三木(武)委員 濫用はしないと云ふことでありますが、斯うして一つの立法手續を執られる以上は、使はうと思へば使へるのでありまして、我々はそれを單に經濟安定會議の基本的な議決を經てとか云ふ、膳さんの御言葉でなしに、省令或は行政處分命令に對しては、別途に國民の納得の行く、從來の戰時統制經濟にあつたやうな弊害を繰返すと云ふ不安を國民に與へない、別の方途を政府は講ずべきである、此の程度では戰時統制の再現であると云ふ不安を拂拭することは出來ない、膳國務大臣の御答辯に拘らず、左樣な印象を我々は持つて居る、是は研究を要望するのであります、大體に於て第一條第二項、三項と云ふものは、傳家の寶刀で、殆ど使はないだらうと云ふのですが、併し斯うして置いた以上は、經濟安定本部も一箇年と云ふ──まあ是は延長になるのでありませうが──計畫であるし、商工大臣の御話の通り、大體の基本として特に力を入れるのは、差當り鐵、肥料だと云ふ御話であつた、殊に鐵は日鐵を中心として集中生産が行はれて居る實情でありますが、之を設けたことは肥料、鐵に對して二項、三項を適用する意志なのか、全然之を使はぬと云ふのならば、斯う云ふ立法をする必要もなからうと思ひますが、限られた期間にやるのでありますから、何等か之を必要とした理由があるのではないか、政府の御答辯を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=48
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049・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ申上げますが、此の物資調整が單に鐵鋼、肥料と云ふもののみを目標として居る意味では決してありませぬ、是から色々輸出の見返品として、最も重大な役割をしまする綿業に付きましても、又總ての經濟復興の本となりまする木材などの如きものもございまするし、兎に角又工業の方面に於きましても各種の製品、「セメント」にしましても、御手許に差上げました表で御覽下さつても分りますやうに、現在も統制中のものに、尚ほ統制を加へたいと云ふ希望のあります品目、及び業態と云ふものは相當に廣いのでありまして、或る定まつたもののみで考へることは洵に困難なのであります、それから又二項、三項の規定も是はさう絶えず運用さるべき規定とも存ぜられませぬけれども、考へて見ますると、新しく是から起きるのではないかと云ふやうな諸情勢の中には、例へば是から賠償物資として幾つかの工場施設が撤去せられます、其の殘つた施設の中には、單獨では施設として十分に働かないと云ふやうな場合もあり、其の際には當業者の間に能く話をさせまして、此の殘つたものが一つの一貫した施設として又復舊出來るやうに、さう云ふやうな場合には此の設備の讓渡、或は貸與と云ふやうな問題も起きることも豫想せられます、併し是もいきなり命令を以てやるべきことではないので、當然斯う云ふものが適用されます前には、是等同業の團體の間にも其の問題を協議をする、諮問すると云ふ形も執られるでありませう、又安定本部其のものに於ても何時も繰返して申しますやうに、總てのことに付きましては、本部内の協議に於ても一方には當業者の團體に諮問する、又それに參加を求めて協議をすると云ふやうな、實際的の方面に於ては所謂官廳獨善に流れるやうなことのないやうな用意をする譯でありますけれども、さればとて此の規定がないと、やはり動かない場合も出て參りますので、そこで濫用すべきものではありませぬけれども、やはり規定としては最後の締括りを付けます爲には、やはり此の豫斷すべからざる經濟の動搖の際には、どう云ふ支障が起らぬとも限らないので、其の用意は一應させて戴きませぬと、此の緊急變化の多い場合に、臨機の處置が中中執りにくくなりますが故に、其の邊の事情もどうぞ一つ御諒承願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=49
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050・三木武夫
○三木(武)委員 商工大臣が鐵、肥料と言はれたのは、生産統制と云ふことに付て差當り考へて居ると云ふ意味であると思ひましたので、私の御尋ねして居るのは、さう云ふ差當りの生産統制の目標になる基本産業の緊急生産の爲に、此の二項、三項を必要とするかどうかと云ふことを御尋ねするのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=50
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051・星島二郎
○星島國務大臣 全體の趣旨から言へば、膳國務大臣の御答辯の通りでありますが、目前と致しまして早速本法を實施する時に、取敢ず考へられますのは今御指摘のやうな譯で、肥料或は鐵、「セメント」等に於てもやらなければならぬと考へる譯であります、差當りは肥料を第一に直ぐ之を適用してやらなければならぬ、斯樣な意味で、肥料のみ緊急にやると云ふことは、考へて居りませぬけれども、左樣に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=51
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052・三木武夫
○三木(武)委員 それではなくて此の二項、三項と云ふものを拵へたのは、其の基本産業に對して、例へば日鐵に見るやうな鐵の集中的生産等をやる時の用意なのか、斯う云ふのは餘り使はないのだと云ふことであれば、此の第一條の必要な命令と云ふのは、どう云ふ目的を持つて居るのかと云ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=52
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053・星島二郎
○星島國務大臣 鐵の問題で少し具體的になつて來ましたが、日鐵は一つの會社になつて居りますから、會社の生産政策と致しまして、會社内で決めれば決まることで、必ずしも此の法律は必要としないのであります、それよりも不足物資に付きまして、それを最も有效に使ふ爲には、自然此の法律に依つてやつて行かなければ出來ないやうな状態が起る、それから國家管理とまで行きませぬけれども、國家管理に近いやうな肥料行政から言ひましても、特殊な設備を──甲の設備を乙に向けると云ふやうな場合には、之を使はなければ出來ぬことになりますから、さう云ふ點で考へられるのでありまして、一番好い例は肥料なんであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=53
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054・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 補足して申上げます、肥料は勿論重要な緊急物資でございますから、ものに依りまして或は生産を命令することもございませうし、又賠償等に依りまして殘りました、設備を、一部讓渡を命令する場合もあるかと思ひます、又生産の方は物資の生産を命令致しますのには、集中生産と云ふ風なことは考へて居りませぬ、取敢ず茲で考へて居りますことは、需要に對しまして供給が非常に足りませぬのでありますが、最も必要とするものを作らして行くと云ふ爲に、品種を指定して生産を命令することもあるのであります、昨日も申上げましたやうに、最近の建築其の他の關係で薄板が非常に鐵板としては必要なのでありますが、此の生産が非常に少いのであります、さう云ふ場合に厚板よりも薄板を餘計作れと云ふことも命令することがあるのでありまして、需要に應ずるやうに生産を向けて行く爲に、此の規定を使ふことがあると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=54
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055・竹田儀一
○竹田委員長 それでは馬越君の質問は簡單ださうですから、此の際之を許可致します──馬越君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=55
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056・馬越晃
○馬越委員 安定本部長に御尋ね致します、本日の新聞に依りますと、安定本部の總裁は各省大臣に必要な命令を發することが出來ると云ふことが新聞に出て居りましたが、之に對しまする御考へは如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=56
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057・膳桂之助
○膳國務大臣 安定本部に關します官制でございますが、之に今の點が明瞭に書いてありますし、安定本部の色々の事項を書いてあります、其の第一條に「前項の事務を行ふために、特に必要があるときは、内閣總理大臣は、關係各省大臣に對して、必要な事項を命ずることができる」此の必要な事項を命令することが出來る内閣總理大臣は安定本部の總裁である、其の資格を兼ねて居るのでありまして、今の御尋ねにありまする通り、安定本部のやりますことは平生各省と密接な連絡を取りまして、異議なき所にものを纏めてやるのが勿論原則でありまして、左樣にしなければ物が圓滿に動きませぬ、併しながらやはり最後に、若し各省と不幸にして意見を一にしないやうな場合がありますれば、安定本部の總裁でありまする内閣總理大臣は其の認定に依りまして、是が安定策に必要だと御認めになりました場合には各省を指揮する、斯う云ふことに相成つて居ります、多分本日の新聞は何かさう云ふやうなことが敷衍されて書いてあつたのかも知れませぬが、其の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=57
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058・馬越晃
○馬越委員 然らば安定本部總裁として各省大臣に命令するのではなくて、總理大臣として命令をするものと、斯樣に考へて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=58
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059・膳桂之助
○膳國務大臣 内閣總理大臣は安定本部の總裁でありまして、事實上安定本部の總裁として御考へになり、命令する場合には總理大臣として命令される、併し同じ人でありますので、其の間に別に不可分の關係がないと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=59
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060・馬越晃
○馬越委員 それでは別に法的根據と云ふものはないのですか、安定本部總裁が各省大臣に必要な命令を下し得ると云ふ法律根據と云ふものはない譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=60
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061・膳桂之助
○膳國務大臣 それが詰り此の官制でありまして、官制に依つて定まるのでありまして、官制に依りますると、安定本部の總裁は總理大臣が之に當ると云ふことが官制に書いてあります譯で、即ち安定本部の總裁と内閣總理大臣と云ふのは官制上同一人でありますので、其の間の命令關係は、安定本部の施策、それを是なりとしますれば、安定本部の總裁である總理大臣が内閣各省を指揮命令する斯う云ふ風になつて居りまして、其の間に矛盾はないやうに存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=61
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062・馬越晃
○馬越委員 割當をするのでありますが、併し今までの實際問題と致しまして、割當はせられたが、實際の現物と云ふものは、中々手に入らなかつた、所謂紙上の計畫に過ぎなかつたと云ふ謗りが多分にあつたのであります、將來安定本部に於かれましては、斯くの如き謗りのないやうにする爲には、如何なる根據を以て是が割當に當らんとせられて居るか、之に付て御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=62
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063・膳桂之助
○膳國務大臣 先程も御尋ねがありました中に戰時中の日本の統制經濟が失敗した其の原因が何處にあるだらうと云ふやうな御尋ねに對しまして、私は從來の統制經濟の缺陷の一つは科學性を缺いて居る、言葉を今の御尋ねの問題に當嵌めて申上げますと、正確なる一つの調査統計と云ふものを持たずにやつて居つたと云ふ所に──又紙がありましたけれどもそれは徒らに希望的統計であつた、此處に間違ひがあると云ふことを申上げたのでありますが、安定本部の是からやらうとする資材の割當に付きましては、各省に或は直接に、其の使用工場に付て、現實に生産し得る實際的の數字の調査を致しまして、之を本にして、唯希望的數字或は單に机上の割當ばかりで、實際の配給の「ルート」と云ふやうなものと睨み合せた計畫のないやうなものはやらないやうに、詰り割當があり配給があります場合には、其の割當を受けた機關には必ず實物の配給の參りますやうに、計畫を具體的な眞實性のあるものと致したい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=63
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064・馬越晃
○馬越委員 今次の戰爭の敗因は幾らもありますけれども、其の中で最も大きな原因は、我が國は總ての統計に對して非常に不確實であつた、正確な統計を握ることが出來なかつたと云ふことが、敗因の一つを成して居る、斯樣にも考へられるのでありますが、今後に於きまして確實なる統計を握ると云ふことに對しまする御方針は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=64
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065・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ申上げます、安定本部が始まりまして第一番に私が努力致しましたのは、實は其の點であります、勿論安定本部の始まる前に、内閣の審議室に統計の整備の爲の委員會がございまして、是は今安定本部の一つの重要の機關として入つて居るのでありまするが、大内兵衞博士を會長と申しますか、委員長と致しまして、各省及び官民の統計、之を集大成致しまして、之に學術的の見解を加へて之を訂正すると言ひますか、修正すると言ひますか、さう云ふやうな方面に、今四つの分科會を作りまして、統計の改善及び實際の集計と云ふものに當つて貰つて居ります、之に入つて居る顏觸れは、日本の統計に關しまする學者及び官民の權威が、殆ど網羅されて居ると申上げても過言でないと思つて居ります、現にそれの成果であります第一に、日本の經濟の將來をどう見るかと云ふことの一番大事な問題は、一體日本の消費人口をどう見るかと云ふことでありまして、此の點は經濟安定本部の發足の第一の基準であります、長い間斯う云ふ方々を煩はしまして研究しました結果は、本年以降昭和二十五年までの人口の増減の、無論推定でありますけれども、相當學術的根據のあるものが出來まして、既に世上にも發表したやうな譯で、私の方に直接統計局のやうなものを附置する考へは持つて居りませぬけれども、現在利用し得ます官民、各省及び各機關の統計を活用致しまして、それに學術的の「メス」を加へまして標準と致したい、其の點は私共の仕事の根柢と存じまして、其の形を整へて居りまする次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=65
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066・馬越晃
○馬越委員 第一條の末項に何々の施行に關する命令に依り生じた損失を補償すると云ふことが書かれてあるのでありますが、若し政府の損失補償と云ふことに付きまして不服のありました場合には、其の設備の讓渡又は引渡をさせられた者は、之に對して異議の申立てをなす方法が殘されて居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=66
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067・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 此の損失補償を致します場合に於きましては、損失補償委員會と申しまする官民各方面の專門家の方の委員會に依りまして、損失の額を決する譯でありますから、其の内容は非常に公平なものに出來て居ると考へますので、之に異議の申立てをする途は開いてありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=67
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068・竹田儀一
○竹田委員長 馬越君宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=68
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069・馬越晃
○馬越委員 それでは安定本部に關しまする質疑は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=69
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070・竹田儀一
○竹田委員長 それでは是で休憩致しますが、一時から二時まで商工大臣が空いて居るさうでありますから、其の間中崎君、馬越君の御質疑を繼續致します、二時から先は色々な都合で散會致したいと思つて居ります、一時に正確に始めたいと思ひます、暫時休憩致します
午後零時十二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=70
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071・会議録情報2
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午後一時三十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=71
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072・竹田儀一
○竹田委員長 會議を始めます──馬越君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=72
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073・馬越晃
○馬越委員 それでは商工省關係の質問を致したいと思ひます、本質問は色色な關係がありますので、若し委員長に於て、之を速記録には載せない方が宜いと御考へになられました時は、適當に御處理願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=73
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074・竹田儀一
○竹田委員長 承知しました──速記を止めて下さい
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=74
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075・竹田儀一
○竹田委員長 それでは速記を始めて…馬越君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=75
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076・馬越晃
○馬越委員 本案が提出されるに至りますまでの色々な經過に付ては、能く了解致しました、偖て第二條の中段にありまする「物資の割當の決定に不服のある者は遲滯なくその旨を主務大臣に申し出ることができる」斯う云ふことになつて居りますが、是は物資の割當は、必ずしも總ての當業者が滿足の行くやうに割當てられると云ふことは殆どあり得ないことであらう、又總ての者が多少の不服がある所に、公正な割當が出來るのではないか、斯樣にも又考へられるのであります、それに一々不服がある者の申出を取上げて居つた場合には、非常に時機を失する虞がありはしないか、斯樣に考へますが、之に付きまして當局は如何に御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=76
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077・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 仰せの通り物資能力に付きまして、個々の業者と云ふものは其の産業の實態を知らぬ方も隨分ございます、從て自分の方に割當てて貰つた量が少いと云ふやうな不平もあらうと思ひます、一々さう云ふ場合に其の不服を取上げて居つては、主務大臣も是は大變な仕事であらうと思ひますが、大體は基準を其の團體毎に作つて戴くやうに御願ひしたいと思つて居ります、例へば設備能力とか色々な基準を作つて戴きまして、是は原則的に公開されるものでございますから、其の基準に照し合せて、自分の方が多いか少いかと云ふことはそれで見て、戴きたいと思ひます
〔委員長退席、加藤(一)委員長代理著席〕
尚ほ不服のある方は一應は産業團體の方に申出られまして、自分の方がどうして少いかと云ふことを見て戴いて、それでも自分は不當に扱はれて居ると云ふ方だけ主務大臣に御申出を戴く、さうすれば此の運用はさう困難なことにならぬのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=77
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078・馬越晃
○馬越委員 さう致しますると、結局不平がある者が其の旨を申出ても、其の割當を訂正すると云ふ趣旨ではないのであつて、其の不服も申出でた者に其の割當に對して納得をさす、斯う云ふことが主になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=78
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079・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 さう云ふ譯ではございませぬ、割當が其の基準と違つ居ります爲に、實際本當に其の基準に依れば割當てねばならない數量よりも少いと云ふことがはつきり分りました場合には、基準通りに主務大臣が改めて割當を變更するのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=79
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080・馬越晃
○馬越委員 私はどうも此の點が非常に面白くないと思ふのでありますが、元々此の産業團體の業者が、集まつて、さうして民主的に割當てた其の結果に不服がある、それで不服を申出た者に對しては、場合に依つては又訂正をしようと云ふことになるのですが、訂正をしますと又それに對して不服な者が、其の訂正の結果生じて來ると云ふことになり易いと思ふのであります、さうしますと折角急を要する割當と云ふものが非常に時日を取ると云ふ結果になりますが、寧ろ此の第二條では根本が民主的に割當てられると云ふことになつて居るのでありますから、斯うした決定に不服がある者は其の旨を申出でよと云ふやうな規定を、殊更に設ける必要はないのではないか、斯樣に考へるのでありますが、之に對する御所見は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=80
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081・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 仰せの通りに通常の場合於きましては、産業團體と云ふものは其の産業の内容を能く知つて居るのでございますから、間違ひのない統制を行はれるものと考へて居ります、併しながら從來の例に微しましても、特殊の理事者の方などが、自分の方へ少し餘計に割當を致しましたとか、或は其の團體員に對する調査が不十分な爲に、割當が實際に上げるべきものより少かつたと云ふやうな例があつたのでございます、さう云ふ場合には、やはり主務大臣と云ふものは之を訂正し得る途を保留して置きたいと云ふのが、此の規定の内容でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=81
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082・馬越晃
○馬越委員 それでは方向を轉じまして、今囘の賠償指定工場の諸施設が撤去せられました後に於きまする我が國の生産力と云ふものは、戰前に比較致しまして、軍備に關するものは除きまして、其の他のものはどの位の比率のものが殘るやうになるのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=82
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083・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 御手許に御配り致しました資料に大體生産能力が書いてございます、勿論是は生産能力でございまして、我が國の現状と致しましては、原材料の關係で、其の全部の能力が差當り動かぬのではないかと思ひますので、將來は少くとも其の線までは一日も早く復舊致したい、斯樣に考へて居りますが、當分は、例へば石炭が足りない、或は鋼材が足りない、或は鹽の輸入が來ないと云ふやうなことの爲に、此の能力全部が動くと云ふことではございませぬ、是は恐らく經濟安定本部等に於かれて、全般的な施策の中に包含して、此の能力の復活に努力されることであらうと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=83
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084・馬越晃
○馬越委員 私は特に纖維工業に付て御伺ひしたいと思ひます、今囘米國方面から棉花の輸入を仰ぐことになつて居りますが、此の輸入の大半は輸出向に振當てられて、其の一部が内國需要に充てられると云ふことを聞いて居るのであります、其の内地需要に充てられます棉花に依つて、或は紡績業となり、或は綿織物となるのでありますが、是は一體どの位の程度のものが國内へ廻はされるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=84
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085・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 國内に使用を認められました綿絲を造り、綿製品を造る譯でありますが、今日まで許されましたものは大部分輸出用の綿絲であります、國内に許されましたものは、專ら生産用に使ひます色々な綿製品だけに付て使用を認められましたが、國内の普通の衣料用としては現在許されて居りませぬ、恐らく將來は段々許されて來ると思ひますが、今日まではまだ國民衣料用の棉花は使用致されて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=85
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086・馬越晃
○馬越委員 國民生活の三大要素であります衣食住の問題の中で、食の問題は漸くにして或る程度緩和され、國民も亦安堵の胸を撫で下して居るやうな現状にあります、其の三つの中の一つであります衣料は、國民が今最も窮乏致して居りますものでありますが、それが單なる生産の原料としてのみの分が配給されるのであつて、眞に國民の衣料として用ひられる分が、殆ど皆無の状態にあると云ふことは、洵に國民生活を安定ならしめることにはならないのでありますが、之に對する政府の御見透しに付て、此の席上に於て御發表願へれば仕合せだと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=86
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087・星島二郎
○星島國務大臣 數字は其の後多少の出入りはありましたけれども、現在どの新聞で見ましても相當數量が入荷しましたやうであります、最初の計畫では三十四五萬「トン」を輸入して貰ふ、さうして其の中二十萬「トン」は國内で民需用に充てる、斯樣な約束で實は入れて貰つたのでありますが、其の後實は計畫が變りまして、現在までは六割までが輸出向になる、是は日本の見返り物資が外にないからです、是は絹もさう出ませぬし、之を以て充てなければ食糧其の他の原料が買へませぬものですから、特にさう云ふ數字になつて來ました、それから一つは東亞諸國の他の所が非常に缺乏して居るものですから、まだ日本は比較的軍需品の拂下品等の特殊物件としてありましたものを、全部民需品に流すことを占領軍は許して呉れましたので、是は非常に有難い譯で、どつちかと言ふと衣の問題は困つた中から言ひますれば食糧程は困らなかつた、今婦人用のものは非常に困つて居りますが、兎も角も裸でなしに暮して行けると云ふのは、他の國に比して比較的宜いのぢやないかと思ひます、併し是は長續きする譯ではありませぬで、本年度も衣料切符を一應刷つたのでありますが、配付致しませぬで、重點的に各食料品等を供出する方に流しまして、一般民需には點數を出さなかつた譯であります、併し次年度は五十點見當のものは出し得ると思ふ、出し得ると云ふことは今申した約二十萬「トン」以下のものを、現在來て居りますものの大凡の約束を果してしまひまして、是が出てしまひますれば其の次は必ず民需向のものをするのだ、斯う云ふ約束が固く出來て居りますから、あとの樂しみがある譯であります、今の所では織物までは行きますが、それに皆出てしまふのであります、是からあと造る分は、確かに民需に廻し得る譯であります、只今局長から申されましたやうに、漁網とか生産の方に廻はすものは、取敢ず民需用に廻はしましたけれども、一般の衣類の方に於きますものは、先づ輸入の半分位のものは使へるのだ、それから國内の軍の餘つたものがありますから、さう云ふものを向けて行きますれば、來年度は大體衣料切符は出し得るだらう斯う云ふ見當でありますから、先づ衣食住は衣から解決したのだと云ふことを、一昨日も此處で申したやうな次第であります、さう心配はない、又日本の纖維業者も相當部分の仕事は繼續して行けるものだと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=87
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088・馬越晃
○馬越委員 最後に、軍放出の衣料は主として男子の需要には或る程度充されましたが、婦女子に付ては殆ど效果はなかつたと思ひます、出來ますならば本委員會の席上に於きまして、衣料切符は何時頃發行され、而もそれが使用し得る時期は何時か、此の點に付て御明示を願へれば幸ひと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=88
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089・星島二郎
○星島國務大臣 何れ是は當該局長から詳しいことを後程御答へさせると思ひますが、今年度も大體行けると思つて、衣料切符まで印刷して持つて居りますが、私の所への報告は來年度は必ず之を使ふことが出來る、只今仰せのやうに男子の方は大抵廻つて居りますが、女子の方は甚だ少くて、氣の毒でありますから、さう云ふ方面、特に兒童用等のものは、必ず或る程度まで配給出來るやうに致したいと思つて居ります、其の數量其の他は今此處で數字的に御説明出來ませぬから、何れ後程數字を以て其の經過を御報告致させることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=89
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090・馬越晃
○馬越委員 私の質問はあと大藏、農林關係でありますから是で一應打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=90
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091・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 商工大臣は二時十五分頃まで御出席と云ふことでありますから、それまでもう暫く質疑を續行致します──中崎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=91
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092・中崎敏
○中崎委員 膳さんは本會議に於て物資の割當又は配給の根本問題は、安定本部に於ける委員會に、さうして商工省に於て委員會を設けると云ふことは、屋上屋を架す慊ひがあるから、俄かに贊成出來ぬと云ふ答辯をして居りますが、星島商工大臣は本委員會に於て、商工省内に委員會を設置することも考へて居ると言はれたやうであります、或は又昨日當りの御答辯では、各産業別團體に對して、事前に割當配給問題に付て諮問すると云ふことを言つて居るやうでありまして、必ずしも此の間の關係が一貫して居ないやうに思はれますが、此の點に付てはつきりした御答辯を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=92
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093・星島二郎
○星島國務大臣 何分此の議會始まつてから、此の法案が出來まして、まだ膳さんの方と微細な點の打合せが十分行かぬので、或は答辯に多少の矛盾が出來たかも知れませぬが、左樣に膳さんが仰せられたにしましても、大體原案は商工省は商工省、農林省は農林省でそれそれ案を作り、其の際或る種類別に付ては特別の委員會を設ける制度がありますから、其の制度に依つて行くでありませうし、又委員會を設けずにそれぞれ民間の統制團體がありますから、それに諮問して原案が出來る、それを以て、斯う云ふものを作つて欲しいと安定本部に持つて行く、或は安定本部で積極的に斯うやれと云ふのがありますれば別でありまして、さう云ふ場合には膳さんの委員會──どう云ふ風に仰しやつたかも知りませぬが、今日の安定本部の部會は相當多數でありまして、凡ゆる階層から出ますので、それで紙の部會とか色々の部會が出來ますが、そこで精査したものを全體の會議に掛けて結論を得るのだ、斯樣に私は想像致して居りますから、或は部會のやうなものを委員會と仰しやつたのかも知れぬと思つて居りますが、さうすると我々の方から持つて行つたものを原案化する場合には、之を部會に掛けて、全體に掛けて結論を得てそれを實行する、斯う云ふのです、如何にも矛盾したやうにも取られますけれども、多分さう云ふ程度で行けるものだらうと私は睨んで居ります、併し愈愈實際になりますと、多少の食違ひが出來るかも知れませぬが、此の報告を骨子と致しまして、其の邊は運用上、屋上屋にならぬやうにやつて行きたいと思ふのです、併し成べくさう云ふ弊害をなくして行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=93
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094・中崎敏
○中崎委員 安定本部に於きましては、根本的な問題を取上げて居るのでありますが、是が商工省、主務省へ來ました場合に於きましては、更に其の割當、配給に關する問題が、具體的に今度は此の團體に對して幾ら、今度は斯う云ふものに對して幾らと云ふ風な、具體的な割當決定をされる譯であります、其の具體的の各割當に對しては、産業團體の自主的立場を尊重してやつて行かれると云ふことでありまするが、更に細かく考へて見ますと、各産業團體の中に於きましても、又其の細分された所の各業種の中に、色々な問題が出て來る譯でありまして、斯う云ふやうなものの鹽梅に關する根本問題は、やはり商工省内に於ける特別委員會に掛けて戴く必要があるのではないかと思ひます、或は安定本部へ御出しになる所の案の立案に對しても、唯單に諮問すると云ふ風な程度でなしに、積極的に一つの計畫に參與せしむると云ふやうな形を取る場合に於ては、やはり此の種の委員會と云ふものが必要ではないかと思ひますので、此の委員會の構成竝に運用に付ては、格別の御考慮を御拂ひを願ひたい、斯う云ふやうに考へて居る譯であります
次に安定本部で取扱ふ物資は、先づ相當に重要な物資を取扱ふ譯でありまして、殊に是が愈愈廣い範圍にまで亙りまするのには、相當の期間を要するものと認められるのでありますが、其の間に於ける物資の割當、配給竝に其の根本計畫の策定に關しては、各主務大臣としてはどう云ふ風な取扱ひをされるかと云ふことを御聽き致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=94
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095・星島二郎
○星島國務大臣 最初の御意見は御意見のやうに成べくやつて行きたいと思ひます、或る品目、業種に付きましては、豫め委員會がなくても、其の業種別團體の意見を尊重して基準を決めるのですから、一旦基準が決まりますれば、後は度々會議をする必要はないと思ひますので、「スムース」に行けると思ひます、御趣旨に副ふやうにやつて行きたいと考へて居ります
それから今の御話は大體に於きまして、平素から其の業態々々に依つて、一定の特別委員のやうなものがあつて行くことも、或は品別には現在既にあるのもあるでせうが、意見を聽いてやつて居ります、それを正式な委員會としてやつて行きますかどうか、紙の如きは其の一例でありますが、今度あれが内閣の方に移つて正式な會になりますけれども、詰り民間團體の意見を徴して、其の結果に依つてそれぞれの實務をやる、大體安定本部會議の如きは企畫院みたいのもの、參謀本部みたいのもので、其の實施等をやるのが商工省なり農林省でありまして、基本さへ安定本部會議で決めて呉れて一つの方針が決まりますれば、其の實際は商工省なら商工省でやる譯ですから、努めて御意見のやうな調子に運用して行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=95
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096・中崎敏
○中崎委員 終戰後に於きまして軍需物資の相當の量が民間に流れて居る、殊に又當局に於ては之を一つの正確な「ルート」に移されまして、今日の工業と云ふものが之に依つて支へられて居ると云ふ風な現状にある譯でありますが、是等の原材料と雖も今日に於ては相當に隱退藏されて居る、而もさうした原材料と云ふものが大部分輸入に仰がなければならぬと云ふやうな状態に於ては、今後の工業生産の確立の上に於て大きな支障を來すものと思はれますが、是等の點に付て、今後主として國民生活安定の上に於ける主要産業部面に付て、どう云ふ風な見透しを持つて居られるかをざつと御話願ひたいと思ひます
〔加藤(一)委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=96
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097・星島二郎
○星島國務大臣 御承知のやうに相當の數量があつたことは確かでございます、併しそれが中々全部の報告はないものですから、隱退藏物資の法律案を出すやうな實に醜態を演じて居る譯ですが、現在に於きましても私は相當あらうと思ひます、だから其のある物が愈愈調査面に載りまして、さうして計畫を立てる譯です、假りに「ゴム」を一つ例に採りますれば、生「ゴム」が一萬「トン」位はあつた、さうすると、それは向ふの方で要求がありまして出してしまへと云ふので先般出してしまつた、今度は國内に生「ゴム」がなくなつてしまつた、さうすると月二、三千「トン」づつ輸入して欲しいと云ふ懇請を出す譯でありまして、さうすると斯う云ふ場合には一體幾らの「ゴム」が日本の民需産業、平和産業用として要るのだと云ふ計畫を立てまして、それにはどうしても生「ゴム」が二、三千「トン」は要るのだと云ふ計畫を立てますから、假にそれが輸入の懇請を得ましたならば、それはどう云ふ方面のどう云ふ業種別には──自轉車の「タイヤー」には何「トン」、自動車の「タイヤー」の方には何「トン」、或は玩具には何「トン」、醫療品にはどう云ふ風にと割當をします、ですから今はまだ安定本部の會議が實施されて居りませぬから、我々の所で唯所要の數量を豫定しまして、月三千「トン」位は輸入が欲しいと云ふので懇請した譯であります、今後に於きましてはそれが數字的に、安定本部會議へ懸かつて決められた數字が、若し假りに輸入を仰いだ際には、其の割當は斯う云ふ基準でやると云ふことを決めて行くやうになつて行きます、さう云ふ形を採つて今後行く譯ですが、大體醫療品、其の他「アルミニウム」とか輕金屬──此の終戰後の隱匿物資に付ては尚ほ届出をせぬ人があるかも知れませぬけれども、大體の數量の所は分つた譯です、だから現在の分と將來輸入を仰ぐ分の豫想と、彼此れ致しました案が出來て、それがそれぞれ業態に分れて按分されて、割當なり配給される、斯樣になつて行くものと思ひます、仰せのやうに現在の手持の凡ゆる物資と云ふものは、全部一應帳面の上で明瞭になつた部分は、計畫の上に載せられる譯であります、それ等に付ての計畫は何れ政府委員からでも、鐵は斯う云ふ風になつて居るとか、纖維は斯う云ふ風になつて居ると云ふことを、それぞれ御説明をする機會を作つても宜しいと思ひます、まあ一つの例を「ゴム」に取りますれば斯樣になつて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=97
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098・中崎敏
○中崎委員 重要物資の中で油脂と工業鹽に付て御尋ねをします、油脂は今日に於て國内的に非常に逼迫して居るやうでございます、是は南方方面から椰子油の輸入其の他に依つて、若し輸入の許可さへ得られれば、或は見返り物資さへあれば相當に輸入し得ると思ひますが、此の點に付てと、更に工業鹽は我が化學工業振興の上に於て是非とも必要なものでありまするが、是が非常に少い爲に過去の化學工業が十分に動き得ないと云ふやうな状態にありますが、此の點に付てもざつとした見透しを御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=98
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099・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 御尋ねの品物は、將來我が國の輸出品としても非常に重要な原料であります、石鹸、食料鹽其の他色々ございます、又工業鹽等も苛性曹達、曹達灰等も必要なものであります、隨ひまして目下米國に對して色々懇請中のものでございます、數量等に對してはまだ確定致して居りませぬ、輸入の時期等も確定致して居りませぬが、我が國と致しましては將來の輸出品を賄ひます爲に、見返り物資として若干のものを輸出する必要から致しまして、どうしても輸入して戴きたいと云ふ懇請を致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=99
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100・中崎敏
○中崎委員 先程の委員から質問があつたことでありまするが、産業別團體に對する割當の基準でございます、是は各事業に依つて多少趣きが違ひまするが、大體に於て先づ設備、能力、技術、それ等の實績は考慮されるかと思ふのであります、大體斯う云ふ類のものは各産業に付て、普遍的に考へられる問題ではないかと考へます、斯う云ふやうな一つの基準を主務省に於て立てて、それを業者の團體に示して、其の範圍内に於て各業者の團體が、適宜其の物資の配給割當をすると云ふ風な方向に持つて行かなければいかぬかどうか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=100
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101・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 此の産業團體が各會員に割當てます基準は、只今仰せの通りに一番基準になりますものは、設備がはつきり致して居りますものでは設備、能力が一番宜からうと考へて居ります、併しながら設備能力だけではいかぬのでありまして、同じ設備を使ひましても非常に「コスト」を安く造られる工場もありまするし、又非常に能率の惡い使ひやうをされる工場もあるのであります、今後は能率の良い工場に對しては、若干づづ割當を殖して行くと云ふ風な途も開いて行きたいと考へて居ります、戰時中の統制が兎角さう云ふことに非常に、何と申しますか、例外を認めることを致しませぬで、唯一本の設備、能力なら、設備、能力だけを取つて割當を致して居りましたやうな時代とは變りまして、段々將來生産が伸びて行く統制でございますから、伸ばし方に付ての考慮を拂ひます基準と致しまして、さう云ふ能率の良い工場に殖して行くと云ふ風なことを考へて行きたいと思つて居ります、唯産業に依りまして色々基準の状況が違ひますので、一般的の基準と云ふものは中々作りにくからうと考へます、各産業團體毎に御研究を願ひまして其の宜しいものを商工省其の他農林省等に於きまして、他の團體、他の類似の團體の方に例を取つて御示しを致しまして御指導をする、斯う云ふやうなことでやつて見たいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=101
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102・中崎敏
○中崎委員 只今「コスト」の問題が出た譯でありますが、斯う云ふ風な重要物資に付きましては、大體に公定價格を以て規定されるものと思ひます、其の公定價格の範圍内に於て生産するものであれば差支へないのぢやないかと云ふ風に考へられます、此の點如何ですか、或は公定價格がなく自由價格に依つて競爭させると云ふ方法ならば、又さう云ふ意味もある、大體工場に依つて先づ生産の條件を縛ると云ふことになれば、「コスト」を下げると云ふことに依つて其の工場は特別に利益をすると云ふことは考へられますが、之を割當の基準として云々すると云ふことはどうかと考へられるのです、此の點御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=102
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103・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 勿論此の公定價格制度は當分物價を維持致します爲に維持されることであらうと考へて居ります、併しながら能率の良い惡いと申しましたのは、公定價格に直接關係のあると云ふことではございませぬので、例へば同じ原料十「トン」なら十「トン」の油脂から、石鹸を幾ら造るかと云ふこともございます、又例へば片方は一萬「トン」、片方は一萬五千「トン」を造ると云つた場合には、澤山造る方に、詰り能率の良い方に材料を割當てる、さう云ふ意味での能率の良い工場に對しまして、若干づつ「ボーナス」を出して行く基準を作つたらどうだらうか、斯う云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=103
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104・中崎敏
○中崎委員 次の問題は少し商工業者のことに關する問題もありますので、次に商工大臣の見えるまで留保したいと思ふのですが、どう云ふものでせうか、大體政府委員に對する質問は此の程度で止めたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=104
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105・竹田儀一
○竹田委員長 米山さん、やはり大臣の御出席を待ちますか、政府委員が居られますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=105
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106・米山久
○米山(久)委員 政府委員で宜しうございます、本案に付きまして二、三具體的なことに付て御尋ね致したいと思ひます、曾てなかつた惡法でありました國家總動員法に依りまして、全く犧牲となりました中小工業者には、それこそ父祖傳來の命賭けで守つて參りました事業や暖簾と云ふものも總て取上げられて、殆ど機械的に整理統合せられたのでございます、業を失ひました中小工業者は、終戰の今日と雖も尚且つ虚脱、自失の状態を容易に取戻し得ない實情にあるのであります、成程中小工業の過去の經營形態には、幾多の改善すべき餘地があることは十分認めるものであります、併し是が多年歴史的發展の過程を經て來た我が國の國情に於きましては、茲に我が國獨自の特色があるのであつて、是が過去の我が國産業の基盤をなして來たものとも思へるのであります、隨て此の特色を今後如何に生かし且つ如何に活用なさるか、此の課題は本案を運營する上に、一つの重大な問題だと考へるのであります、隨て以上の見地に立ちまして、現下殆ど無方針の状態にある中小商工業者を、政府は如何なる方途に依つて起上らせようとなさるのか、極く具體的に指導育成の御方針を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=106
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107・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 中小工業が我が國の從來の産業の形態の中樞でありましたことは御説の通りでございます、是が戰爭の終結に依りまして大工業の方面が財閥解體、賠償設備の撤去等に依りまして、更に中小工業の仲間入をするものが大分出來て來ると云ふ状況でございまして、今後は中小工業と云ふ形が、我が國の本當に大部分の事業の形になるのではないかと思ひます、隨ひまして中小工業と云ふものを育成致しますことが我が國の産業の發展をする大きな目標であると考へるのでございます、中小工業の中には、只今仰せの通り其の業態自體の持つて居ります幾多の缺陷があり、資力の薄弱なることから致しまする金融力の弱いと云ふ點、或は設備を十分造り得ないと云ふ點、又原材料などを有利に購入が出來ないと云つたやうな點、色々な小さい工業としての缺陷を持つて居る譯でございますが、勿論さう云ふ形に於ては、今後我が國の中小工業と云ふものは發展し得ないのでございまして、之を是正致します爲には、どうしても之を組織化をする必要があるのでございます、別途本議會に提出する豫定になつて居ります商工協同組合と云ふものはやはりそれが狙ひでありまして、中小工業自身が持つて居ります缺陷を是正をする爲に、協同の組織體を作つて行つて、其の組織の力で金融の方面なり、或は資本の方面なり、設備の方面なり、經營の方面なり、凡ゆる方面に亙つての缺陷を除却する爲に、協同の力を以て各種の施設をして行くと云ふことを狙ひに致して居ります、政府は此の組合を全國的に擴めまして、中小工業の組織化に依つて先づ缺陷の第一歩の改善を致したいと考へて居ります、次に此の組合に對しまして特別な資金の融通と云ふことが必要でございまして、多勢の方が寄つて組織化を致されました其の組織に對して、信用力が殖えて來る譯でございますが、之に對しまして金融の流し方と云ふことが又考へられるのであります、之に付きましては從來とも商工組合中央金庫と云ふものがございして、其の組合に對する金融の特別機關として設けられて居るのでございますが、是も成るべく早い機會に於きまして内容を更に充實致しまして、組合を通じての金融と云ふことに、全力を盡して參りたいと考へて居るのでございます
最後に資材の關係でございますが、現在は御承知の通り終戰後大分各種統制も弛みまして、又原料資材の生産も急激に減少を致して居りまして、中小工業の方に廻ります所の資材も不十分であるかと存じます、隨ひまして之に對する資材の供給と云ふことが、中小工業を起ち上らせる先づ第一の要件でございますが、此の物資需給調整法もさう云ふ意味に於きまして、原材料關係の工業を、一日も早く起ち上らせると云ふことを狙つて居りますが、是が延いて中小工業の消費されます所の資材を供給する源になるのでございます、さう云ふ意味で一日も早く基礎的な工業が能ふ限りの能力を發揮致しまして、茲に相當の鐵鋼なり「セメント」なり、化學製品なり、原材料を生産致しますことに依りまして、中小工業の原材料を賄つて行く、斯う云ふことになさねばならぬのでございます、又勿論我が國のさう云ふ原材料の生産能力は、賠償設備の撤去等に依りまして、從來の能力から申しますと大分減つて居ります、隨ひましてそれだけ現在の能力だけを以ては、中々需要全部を充し得ないのではないかと思ひますが、其の足らぬ點はやはり輸入に俟つの外ないかとも考へて居ります、さうして其の取敢ずの大きな問題は、輸出用の見返物資の生産でございます、今後の輸出品──過去に於てもさうでございましたが、中小工業の手に成るものが輸出品の中の過半數を占めて居つたのでございます、今後に於きましても纖維製品なり、陶磁器なり、「ゴム」製品なり、「マッチ」石鹸と云つたやうな、色々有望な輸出品がございます、或は時計なり、自轉車なり、色々機械に關係のものもございますが、是は主として中小工業の形に於て經營せられて居るのでございます、斯う云ふ輸出品を作ります中小工業の原材料、斯う云ふものは、取敢ずの間は少くとも海外から原材料を輸入して戴きまして、之を加工することに依つて輸出品を作つて行く、斯う云ふことに致したいと思ひます、さう云ふ原材料が相當中小工業を潤ほす、其の分け方は此の物資需給調整法の「バック」を受まけして、援護を受けまして、各團體を通じて中小工業者に割當配給をして行く、斯う云ふことに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=107
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108・米山久
○米山(久)委員 次に政府は民主的に組織された産業團體の運營に付て、組織された産業團體に依つて行くやうな御話を伺つて居るのでございますけれども、此の組織された産業團體の運營は、人の問題になる、戰時中所謂經濟翼贊會と言ふべき商工經濟會は横の關係であり、又統制會は縱の關係をなして來たのでありますが、是等の團體の廢止後、新組織の動向を見ますと、曾ての統合の際に、無理無體にやつた其の當時の反民主團體の殘存が、今尚ほ強く殘つて居りまして、單に看板の塗替へに過ぎないと云ふやうな所もあるのであります、内容は依然として反民主的殘存勢力の維持に吸々たるものがあるのであります、私は敢て以上の舊勢力が、戰時中なした業蹟を云々するのではありませぬが、終戰後の今日、未だ民主的方向に進んで居ないと云ふ事實を指摘したいと思ふ、是は要するに今後の經濟諸團體を構成する人、別けても幹部の人の問題であつて、曾ての官僚との抱合に依つて、所謂虎の威を借つて私利を恣にした甘味を忘れられないと云ふ民間人が、今尚ほ頭を切替へず、一應陣容が一新された役人と手を握つて、又もや曾ての惡弊を繰返すやうになるならば、茲に本案運營の上に大きな弊害が起るのぢやないかと云ふことを恐れます、政府は此の點に付て如何に考へられるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=108
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109・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 此の需給調整法に於きましては、産業團體の内容に付きましては、格別の色々な細かい規定を致さぬ建前を執つて居ります、併しながら實際問題として、産業團體の中には、最近大部組織替へを致して居りますが、其の幹部等が從來幹部であつた方が入つて居られるものも見受けられるやうでございます、併しながら是等の幹部の方は、所謂民主的に組織されたと云ふ言葉にも現れて居りますやうに、總會に於きまして會員の總意に依つて選出せられたものでございますので、若し其の方が不適當な行動をされると云ふことであれば、更に總會に依つて之を解任をして戴くより仕方がないかと考へて居ります、一般の空氣を、改組された後の産業團體の空氣を伺つて見ると、大分戰爭中の氣分と違つて、會員の方が自由に發言せられまして、其の自由な發言の下に色々な施策を考へて居られるやうでありまして、今後の運營はさう云ふ自由な氣分に依つて、新しい民主的な氣持を、運用の上に現はして行かれることと思ひますので、現在さう云ふ舊來の幹部の方が殘つて居られる所も、恐らくさう不便なしに動いて居るのではないかと考へられます、尤も追放令に該當する方は、漸次さう云ふ團體から退いて戴いて居るのでございまして、今殘つて居られます方は、恐らくそれに該當しない方で、總會の選擧に依つて選ばれた方であらうと考へて居りますので、逐次さう云ふ點は改善されて行くのぢやないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=109
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110・米山久
○米山(久)委員 次に本案の審議をなす必要上、物的、心的動員計畫に付て質問致したいと思ひます、それは現下我が國に於て食糧問題に次ぐ重大な問題としては、海外から引揚げて來る同胞と、戰災者の援護の問題だと思ひます、政府は生活保護法に依つて、種々手を盡されて居ることは勿論のことでありますが、著のみ著の儘で歸られた引揚者、又は特に慘憺たる戰災者には、自力更生と云つても容易ならざる現状を見ます時に、政府には此の際救護の域に止まらず、是等の人々に對して社會主義的企業形態、具體的に申しますならば國營の色彩を持つた協同組合でありますが、之を積極的に助成し、特定の事業をなさしめ、是等の人人の勞務を吸收して、且つ其の企業の利潤を以て、更に是等の戰災犧性者の救護の資金に充てるならば、單に一時的に與へられた救護資金ではなく、永久的に循環性を持ち、究極に於ては是等の方々の自力更生を最も安全に、而も最も短期になし遂げ得るものであるかと思ふのでありますが、此の點に於て特に政府の御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=110
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111・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 戰災者の方、或は海外から引揚げられました方が、今日非常に困窮して居られますことは、洵に同情に堪へないのでございます、さう云ふ方々を、生産の中へ取入れまして、さう云ふ方御自身の生活を御助けすることの外に、同時に又之を生産力の方に活用して行くと云ふことは、今日最も必要なことであると考へて居ります、是は商工省の所管ではございませぬが、厚生省の方に於かれましても、さう云ふ方々の爲に授産の施設等を考へられまして、此の議會に提出されたものの中にも、さう云ふ御考へがあるやに伺つて居ります、商工省と致しましてはさう云ふ方々に對しまして、出來るだけ資材の御面倒を見ろと云ふことであらうと思ひますが、資材の許す限りさう云ふ方の生業の爲に之を流すと云ふことを考へて參りたいと考へて居ります、又特に海外等に於て物を造る方の經驗のある方の經驗を活かすことは、將來の産業の發展の上から申しましても非常に重要なことであり、必要なことでございますので、特にさう云ふ方々に對しましては、出來るならば中小工業の團體、協同組合等に御加入を願ひまして、其の協同的な力に依つて之を救ひ上げて行くと云ふことをも考へて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=111
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112・米山久
○米山(久)委員 それに付きまして引揚者と戰爭犧牲者の生活状態の調査とか、或は技術性能の調査が眞先に必要と思ふのでありますが、此の點に付ての調査の具體的な計畫があるならば御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=112
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113・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 只今商工省の方には其の調査の計畫はございませぬ、或は厚生省の方に何かさう云ふ御調査があるのかも知れませぬが、私の方では只今計畫致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=113
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114・米山久
○米山(久)委員 是非其の性能調査と云ふことをして戴きたいと云ふことを希望致して置きます
次に現在各會社は物資資材を持つて居るのでありますが、此の會社の大部分は軍需補償打切に伴つて、整理される會社であります、此の際に調査すれば、持つて居る資材が全部分ると思ふのであります、特定の鐵であるとか石炭などの基本的な資材が一應供出されて、詰り「プール」して置いて、それを新しく生産計畫を立てて行く方面へ、重點的に割當てられる御考へはないか、具體的な一例を申上げますと、米棉の輸入で、最近紡績の方が色々日限附きで以て、見返り物資の生産を急がれて居るのでございますが、此の間私が見て參りました工場では、二交代制にして一生懸命やつて居るのでありますけれども、一週間に二日休んで居ると云の状態であります、それは石炭の不足から來ると云ふやうな状態でございますので、對外關係の日限のある生産面の活動を十分ならしめる爲にも、何とかして斯う云つた資材を、重點的に、さう云つた方面へ廻はす必要があるのではないか、さうして刻下の生産面を圓滑ならしめるべきではないかと思ひます、又女工さんの状態を眺めて見ますと、御飯を戴いて一、二時間は非常に能率が擧がるのでありますけれども、それから後は能率が非常に低下する、日曜日に外へ出て遊ばすと、其の後一、二日は、外へ出て何か食べて來るから能率は擧るが、後は擧らない、斯う云ふことを考へますと、何と云つても食物の重點的な割當を、斯うした工場に働く人達に廻はさなければならぬと云ふことを痛感するのでございますが、それに付て政府の御考へを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=114
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115・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 今囘軍需補償の打切に伴ひまして、企業を止めまする、所謂整理を致しまする會社が相當出來ることと存じます、又賠償に依る設備等の撤去に依りまして、今後操業が出來なくなつて、其の資材が餘つて來ると云ふものも出て來るものと考へます、さう云ふ資材に付きましては、整理計畫の中にさう云ふ資材の處分に付て一々立案して戴きまして、原材料の部分に付きましては、之を統制團體の方へ全部引繼いで戴くやうに御願ひを致して居ります、統制團體、配給團體の方に入れまして、之を普通の産業團體の割當に依つて、一般に重點配給をして行く、斯う云ふことに致す豫定でございます
それから只今の紡績會社が、石炭が足らぬ爲に休んで居ると云ふ御話でございまして、最近石炭が十分に廻はつて居りませぬ、八月は若干豫定よりも上廻はりましたけれども、過去に於ける生産は豫定よりも若干づつ減つて居りまして、配給等も十分でございませぬ、隨て場所に依りましてはさう云ふ工場が起つて居るかと思ひます、此の際出來るだけ石炭の増産に努力致しまして、之を補はねばいかぬのでございますが、只今整理會社等にありまする石炭と云ふものは、大部分使ひまして、恐らく石炭だけに付てはそれを御廻はしする程の數量はないかと考へて居ります
又さう云ふ輸出品を造つて居ります工場に對する食糧の加配の問題、是は洵に重大な問題でございまして、豫て農林當局とも折衝を致して居りましたが、最近漸く話が纒まりまして、若干の加配をして戴くやうに手續が進んで居ります、近く實現することと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=115
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116・米山久
○米山(久)委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=116
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117・竹田儀一
○竹田委員長 それでは本日は此の程度に止めまして、明日は午前十時より開會致します、本日は是にて散會致します
午後二時三十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00519460910&spkNum=117
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