1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
臨時物資需給調整法案(政府提出)
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昭和二十一年九月十二日(木曜日)午前十時十九分開議
出席委員
委員長 竹田儀一君
理事 加藤一雄君 理事 小島徹三君
理事 塚田十一郎君 理事 原健三郎君
理事 宮前進君 理事 西村榮一君
理事 前田榮之助君 理事 石原登君
理事 疋田敏男君 理事 福田繁芳君
安部俊吾君 井田友平君
西村久之君 厚東常吉君
小野孝君 田中源三郎君
田中實司君 瀧澤脩作君
金光義邦君 九鬼紋十郎君
鈴木明良君 坪川信三君
川崎秀二君 田村定一君
金子益太郎君 加藤鐐造君
竹谷源太郎君 中崎敏君
山口靜江君 加藤勘十君
稻田健治君 小坂善太郎君
戸叶里子君 布利秋君
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
商工大臣 星島二郎君
運輸大臣 平塚常次郎君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
農林事務官 山添利作君
商工事務官 吉田悌二郎君
商工事務官 鈴木重郎君
商工事務官 池田欽三郎君
石炭廳次長 岡松成大郎君
商工事務官 玉置敬三君
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本日の會議に付した議案
臨時物資需給調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=0
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001・竹田儀一
○竹田委員長 會議を開きます──吉田政府委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=1
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002・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 劈頭に御詑を申上げなければならぬことがございますので、一寸申上げます、本日正誤表を御手許へ委員課の方から御配りした筈でございますが、それは第一條の第一項第二號でございます、「經濟安定本部總裁が定める方策に基く物資の生産若しくは工事の施行」と云ふのがございますが、此の「生産」と云ふ字の下に括弧がございまして、約十字程入つて居つたのが、脱落を致したのでございます、生産の下に(加工及び修理を含む。以下同じ。)と云ふ字が入るのが脱落を致したのであります、斯う云ふことになりました原因を色々調べて見たのでございますが、結局係りの方の行違ひでございまして、洵に申譯ないことであると存じます、生産と云ふ言葉の意味の中には、斯う云ふ加工業或は修理業と云つたものも含むと云ふ解釋も、昔はあつた時代があるやうでございますが、若干疑義がございますので、茲に加工及び修理と云ふものをはつきり含むと云ふことを現はした意味でございます、最近の立法は確かなものは確かに書くことが親切である、親切な書き方をするのが原則と云ふことに取扱はれて居りますので、此の括弧を入れた方が宜しからうと云ふことで括弧が付けてあるのでございますが、途中印刷致しますまでに誤りまして之を脱落致しましたので、本日正誤の訂正を致した譯でございます、色々と手續の上に間違ひが出來まして、重要法案に重大な脱落がございましたことに對しましては、提出を致しました主務省と致しまして洵に申譯ないことでございまして、茲に謹んで御詫び申上げます
尚ほ序でに申上げますが、第三條の方の第二項にも同じやうな正誤がございまして、第二項に「關係官吏」と云ふ字がございますが、是は「當該官吏」の誤植でございまして、是は八月三十一日附でございましたか、公報に依りましてやはり訂正を致して居ります、是も念の爲に申上げて置きます、以上でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=2
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003・竹田儀一
○竹田委員長 引續き質疑を行ひます──小野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=3
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004・小野孝
○小野(孝)委員 私は統制經濟の基本的な問題に付て一、二御伺ひをした後に、本法案の實際に即して又二、三御尋ねしたいと思ひます、所謂統制經濟を旨くやつて行く爲には、過去に於て失敗した所謂戰時統制經濟と云ふものを、深く反省しつつ行はねばならぬと思ふのであります、戰時統制經濟はなぜ失敗したかと云ふ原因に付きましては、前に膳國務大臣は、科學性がなかつたこと、それから人間性がなかつたこと、此の二點を指摘されたのであります、私は其の外に、遺憾ながら我が日本國民が統制經濟が行はれる爲の社會的訓練が出來て居なかつたと云ふことと、それから統制經濟と云ふものは、當然に或る所に權力の集中を伴ふのでありますが、我が日本人は是も甚だ殘念であります、けれども、其の集中された權力の負託に堪へるだけの訓練が足りなかつたと云ふやうなことが、戰時統制經濟の失敗に終つた原因であると私は考へるのであります、此の中で最も致命的なことは、膳國務大臣が指摘されたやうに科學性がなかつたことであります、科學のない統制經濟と云ふことは殆ど考へられないことであります、然らばなぜ其の科學性を得られなかつたかと申しますと、是も國務大臣が指摘されましたやうに、我が國には仍て以て頼るべき所の精密な、正確な統計資料に缺いて居つたと云ふことであります、精密な統計資料なしに統制經濟をやると云ふことは、丁度杖を持たずに盲が街に飛出すのと同じで、是れ位危險なことはないのであります、是等のことを詳述する時間もありませぬから、私が茲で御尋ねしたいことは、昨年終戰と同時に、それまで辛うじて得た所の各種の統計資料其の他參考となるべきものを、一部心なき人々の指令に依つて破棄してしまつたやうに私は聞いて居るのでありますが、其の當時政府方面で用意して居つた所の、或は貯へた所の統計資料と云ふものを、どの程度まで破棄してしまつたのかと云ふ點を御伺ひしたいのであります、それから又もう一つは、其の後是等の統計資料がどの程度まで再び整備されて居るか、其の現状を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=4
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005・膳桂之助
○膳國務大臣 御尋ねの昨年終戰後に、殊に軍關係の方面に貴重な統計資料の集まつて居りましたものが、心なくも破棄されたことは事實のやうに承知して居りますけれども、私の方でどの程度までどう云ふものが破棄されたかと云ふことに付ては調べがございませぬ、それから尚ほ將來の經濟統制をやりますに付ての必要な資料は、勿論是は十全とは申されませぬけれども、現在各廳又民間等に於きまする諸種の資料を、出來るだけ利用致しますことに依りまして、差當りの計畫には著しい支障なく集め得られるのではないか、さう云ふ目標で折角統計其の他の調査資料の蒐集整備を致して居ります譯であります、御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=5
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006・小野孝
○小野(孝)委員 具體的に一、二御伺ひ致したいのでありますが、それでは企畫院から内閣調査局に移つた、要するに企畫院當時の書類で──斯う云ふ參考書類で安定本部に引繼がれたものがございますかどうか、それから商工省に御伺ひ致したいのは、商工省關係ではどの程度に統計資料を破棄し、又今日得て居られるか承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=6
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007・膳桂之助
○膳國務大臣 突然の御尋ねなので、私どう云ふ書類が企畫院當時のものが引繼がれて居るかと云ふことを、只今數字的に承知して居りませぬ、尚ほ能く取調べまして後の機會に御答へ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=7
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008・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 商工省は企畫院の仕事を受繼いで居つた譯でございますので、從來の物動計畫等は一應私共の方に軍需省として引繼いで居つた譯でございますが、是は先般、只今の御話のやうなことで一部破棄を致して居ります、只今殘つて居りますものはどの範圍か私共どうも正確に存じませぬが、是は取調べて又御答へ致します、尚ほ工場統計其の他のものは依然續いて居りまして、是等の資料は殘つて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=8
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009・小野孝
○小野(孝)委員 一應了承致しましたが、將來の問題に付て一點膳國務大臣の御答辯を承りたいのであります、先程も申しましたやうに、今後日本の經濟を再建致します爲には、何と申しましても之を科學的に行はねばならぬので、其の科學的な産業經濟に關する方策を立てて行く爲には、どうしても我が國の産業經濟の實體がどうなつて居るかと云ふ、其の實體を把握することなしには行はれないと思ふのであります、換言すれば統計資料の蒐集と云ふことが、今後の日本の産業經濟再建の爲に、先づ取上げられねばならぬ問題であると考へるのであります、此の點は膳國務大臣も考へて居られますやうで、先般も委員會で其の旨を述べられ、尚ほ經濟安定本部には統計研究會と云ふやうなものが出來たことも承つて居るのであります、併し私の考へに依れば、其の規模がまだそれでは到底足らぬと思ふのであります、此のことは眞面目に考へれば考へる程極めて重要な問題であつて、此のことに成功するか成功しないかが、將來の日本の産業經濟問題解決の鍵を握るのではないかしらと思ふのであります、假に我々が考へて居りまする所の自由主義的な經濟を行ふに致しましても、或は社會黨の諸君が考へて居られる所の社會主義的計畫經濟を行ふに致しましても、其の據り場である所の産業經濟に關する統計資料なしには行ひ得ないのであります、それで私は此の際思ひ切つた一つの大調査機關を設けて、其の規模は私の頭に描かれて居るものは極めて厖大な機構なのでありますが、さう云ふものを設けて、其處で我が國の産業經濟の實體を把握する御考へはないか、殊に今此の經濟産業に關する各種の統計資料を集める爲の厖大な機關を作ることは、今日當面の問題でありまする所の、知識階級の失業救濟の事業としても甚だ打つてつけのものなのでありまして、其のことをも併せ考へますと、私は今が此の經濟資料蒐集の絶好の機會ではないかと思ふのでありますが、政府に於てはさう云ふ大規模な機關を設けて經濟に關する調査に當らせる御考へがないかどうか、其の點を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=9
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010・膳桂之助
○膳國務大臣 只今御質問中にありました統計整備に關しまする御意見、全然御同感でありまして、私も安定本部の組織の始まりました最初から、此の統計の問題に付きまして、如何に之を整備すべきかと云ふことを苦心しました譯であります、今御尋ねの中にもありました、私が曾て述べました統計研究會が幸ひに組織せられまして、基礎的の問題に付ては研究を致して居ります、是等の所で或は大規模なる統計機關の設置と云ふやうなことも、論議の一つとなつて研究して戴いて居る譯であります、私、是も私見に亙りますけれども、適當の機會に相當規模の統計機關をば整備したい、其の爲に十分の努力を致したい、斯う考へて居ります、まだそれ等の内部の構想等に付きましては、今統計整備の爲の、先程申します委員會で研究して貰つて居りますので、此の際まだ申上げる譯にも參りませぬが、其の氣持のあることだけは申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=10
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011・小野孝
○小野(孝)委員 御話を承つたのでありますが、現今の知識階級の失業問題をも睨合せて、此の爲に格段の努力を致されんことを強く、要望致します
次に、是も科學性の問題でありますが、統制經濟を行つて行く爲には、勿論物動計畫と云ふものが作られると思ひますが、其の物動計畫の科學的な精密さが又統制經濟を失敗もさせ、成功もさせるのであります、私は過去の戰時統制經濟の跡を振返つて見ますと、科學的な精密な物動計畫と云ふものが、現状に於ては出來るかどうかと云ふことを非常に危ぶむのであります、之に對して膳國務大臣は如何なる方策を持つて居られるか、是は極めて困難なことであると思ひますが、此の點に對して先般も論議されました際に、膳國務大臣は、經濟安定本部が出來たから或る程度科學的にやれる、斯う云ふ御答辯があつたのでありますが、私は經濟安定本部が出來たから科學的に出來ると云ふやうに生易しいものではないと思ふのでありまして、此のことは既に戰時中も、企畫院が出來たならば、精密な、科學的な物動計畫が立つであらうと思つて企畫院を作つた所が、美事に失敗した、此のことは官廳をどう組織するかと云ふ問題ではないので、煎じ詰めれば、先程申上げました所の、精密な統計資料を握るか如何に懸つてる來のでありますが、此の物動計畫の精密さを期する爲に、どう云ふ御方策を持つて居られるか
それからもう一つ御伺ひ致したいのは、戰時中もさうでありましたが、今日もまだ所謂重要産業であるとか云ふ考へが拔け切れないのは、私をして言はしむるならば頗る殘念であります、産業と云ふものは凡ゆる産業が有機的に組立てられて、初めて一つの纒まつたものとして動くのであつて、其の中から特定の産業を引拔いて、重點産業とか、或は主産業とか稱して、之に資材を集中すると云ふやうなやり方は、全體の産業を伸張する所以では決してないのであります、私は此處で戰時統制經濟を批判するあれもありませぬが、戰時統制經濟が失敗した一つの大きな原因は、所謂五大産業と云ふものを定めて、それに資材勞力を集め過ぎた、其の爲に其の他の産業が衰微して、結局五大産業自らも衰微した、斯う思ふのであります、富士山の高いのは裾野があつて初めて高いのであります、其の裾野を刈つては富士山の高きを求め得ないのであります、隨て物動計畫と云ふものは凡ゆる産業を頭の中に入れて、其の有機的な繋がりを把握しなければならないと思ふのでありますが、是等の點に關して今後どう云ふ方策を以て進まんとして居られるのか、一應御伺ひ致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=11
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012・膳桂之助
○膳國務大臣 第一番の點でありますが、如何にして計畫經濟をば科學的に運行して參るか、是は從前の物動計畫等に於きまして、是が實際實行出來ないことになつたと云ふことは、一つには此の研究が官廳、所謂官吏の手にのみ行はれたと云ふ點もございますし、又一つには餘りに準戰時態勢、或は戰時態勢と號して、一つの戰爭に總ての經濟の統制を向けて行かうとする、そこに或る必要なものがありますと、實際上出來るか出來ないかと云ふことよりも、そこに強いて生産を持つて行かうとする無理の希望的計畫、此の希望的計畫が、配給計畫の實際の數字であるかのやうな形をなしまして、實際割當があつても實物が中々手に入らぬ、さう云ふやうな點に於て計畫が全然齟齬してしまつたと云ふやうなことも、見逃すべからざる點であらうと思ふのでありまして、是からは幸ひ戰時のやうな焦燥氣分で計畫經濟をする必要はございませぬ、又安定本部の色々物動計畫をやりまするには、官廳の今まで持つて居る優秀な、計畫性のある其の素質の上に加ふるのに、單に安定會議のみではありませぬで、平常斯う云ふ物動計畫等をやります人も民間の中からも、學者の中からも安定本部の部員として、日々立案研究に從事する人を相當參加して貰ふのでありまして、研究方法其のものが從前のやうな方法でなく運營して參りたい、斯樣にして參りますと、現實に近い、見込に齟齬の全然ないと云ふことは申されませぬけれども、齟齬が少い、又全體に於きまして、一方に偏ることのない綜合性のある研究が出來やうかと、其の積りで態勢を整へて居ります、左樣にどうぞ御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=12
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013・小野孝
○小野(孝)委員 此の問題は非常に抽象的な問題でありますから此の程度にして、次に物價の問題でございますが、是は此の委員會の席上でも屡屡取上げられた問題なのでありますから、私は違つた角度から一二だけ質疑致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=13
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014・竹田儀一
○竹田委員長 小野君、膳さんのが續きますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=14
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015・小野孝
○小野(孝)委員 此の點だけで宜しうございます、私は今日の物價問題で大切なことは、物價の所謂水準の問題よりも、物價體系の問題であらうと、考へて居るのでありますが、詳しく論ずることは避けまして、そこで御伺ひ致したいのは、戰時中から今日まで引續いて日本の物價體系を破つて參りました原因が色々あるのでありますが、其の中に付て此の物價體系を時々崩して參つたのは、政府の所謂補助金政策の變更であると思ふのであります、御承知の通りに昨年終戰後に、鐵其の他の生産補助費と云ふものを打切つた爲に、茲に日本の物價體系と云ふものは大きく崩壞したと私は考へて居るのであります、そこで、今後此の補助金政策と云ふものを果して續けて行くのか續けて行かないのか、此のことをはつきりしませぬと、其の度毎に日本の物價體系と云ふものはぐらぐらするのであります、膳國務大臣は物資の需給が「アンバランス」になつた爲に物價の體系が亂れたと申された、其のことも勿論言へるのでありますが、物價體系が崩れたが爲に物資の需給の「バランス」を失したと云ふ逆の場合も可なり多いのでありまして、隨て此の補助金政策と云ふものを確定しなければ、日本の物價體系と云ふものは安定しない、斯う考へるのでありますが、此の點に付て今後どう持つて行かれるのか、御方針を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=15
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016・膳桂之助
○膳國務大臣 物價の體系を整へます上に、從前補助金が非常に大きな役割をなして居つたのでありまするけれども、是も一概には申されませぬが、私共の考へます一つの物價水準に基く物價體系、此の下に於きましては出來るだけ正常な需要供給、それに基く一つの物價體系を作りたい、そこに不自然な補助金と云ふ一つの「クッション」を入れた物價の體系と云ふものは好ましくないのであります、方針としましては補助金に基く物價の調整と云ふことは致したくない、其の方面に向つて行きたい、但し從前も色々な方面に補助金の體系が執つてあります、急に何時から之を崩すと云ふことは、却つて物價の混亂を起すと云ふこともございますので、自ら其の順序も時もあらうと思ひますけれども、私共の考へて居りまする物價體系の中には、補助金と云ふ制度を考へざる裸の物價體系をば作りたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=16
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017・小野孝
○小野(孝)委員 次に伺ひたいのは、原價計算に依る生産費に依つて價格を決めて行く問題であります、物價體系を不自然なものにした一つの原因として、私は公定價格を定めます際に、何も彼も所謂原價計算に依る生産費を中心として定めて參つた點にあらうと思ふのであります、此のことは各産業の何と申しますか、操業度と申しますか、或は設備の稼働率とでも申しませうか、さう云ふものが平衡を保つて居る場合には、生産費を中心とする物價を形成致しましても、其の全體としての物價體系はさして不自然なものにはならぬかも知れませぬけれども、今日のやうに各産業の部門に依つて其の操業度が非常に違つて來ました際には、生産費に依つてのみ價格を定めますと、全體としての物價體系と云ふものが非常に不自然なものになると思ふのであります、將來は生産費だけでなしに、今膳さんの言はれるやうに物の需給の面をも睨み合せ、又其の物の效用と申しますか使用價値と申しますか、さう云ふ方面をも睨み合せて價格大系を整へて參らなければ、日本の物價體系と云ふものは何時まで經つても本當のものにはならぬのではないか、斯う云ふ風に考へられるのでありますが、此の生産費に依つて公定價格を定めて行くと云ふ方式を變へられる御考へはないかどうか、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=17
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018・膳桂之助
○膳國務大臣 物價の「バランス」を定めます基礎的の物資等に付きまして、又其の他の問題に付きましても、全然生産費を無視すると云ふことは、物價を定めまして生産の増強を圖る上に、果して如何かと存ぜられまするけれども、唯目前の變動極りなき經濟情勢に於きましての生産費のみに依つて物價の上下を圖ると云ふことは、今御意見の中にもありましたやうに、結局そこに物價の凸凹が出來ます、私共の考へて居りますのは、過日來申上げますやうに、或る主要の中心を考へまして、勿論生産費も考へ合せますけれども、寧ろ均勢の取れた、それに依つて自然の需給がなだらかに行はれるやうな、主導的の物價をそこに定めたい、斯う考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=18
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019・小野孝
○小野(孝)委員 さう云ふ自然な、なだらかに需給が行はれるやうな物價體系を、人爲を以て作り得るかどうかと云ふ點は、非常に私疑問に思ふのでありますが、此の點は討論に亙ることでありますから避けます
次にもう一點承つて置きたいことは、此の日本の物價體系と世界的な物價體系の間に、著しい食違ひがある譯でありますが、之を今後どう云ふ風にして調節して行くか、日本の物價水準と世界の物價水準との問題は、是は左程心配しなくても落著く所に落著くものであると思ひますから、此處では取上げませぬが、問題は日本の物價體系と外國の物價體系との著しく違つて居る場合に、貿易が再開された際に、其の物價體系の著しい差がどう云ふ風に現はれて來るかと云ふ問題であります、私は恐らく此の儘の姿で貿易が再開されて參りますならば、其の對内と對外との物價體系の差が原因しまして、日本の産業經濟と云ふものは再び大混亂を來すのではないかと云ふ風に考へるのであります、勿論貿易が再開されると申しましても、堰堤を切つて破つたやうに、どつと一時に貿易が出來ると云ふ風にも考へられませぬ、細々ながら段々太くなつて行く形で參ると考へますから、其の意味では其の兩物價體系の差違に基く混亂が或は少くて濟むかも知れませぬが、何れにしても貿易が再開された場合には、國内の物價體系と國外の物價體系が違つて居ると云ふことは、非常な問題になると私は思ふのであります、そこで其の際に處する方策を政府はどう云ふ風に考へて居られるか、私個人としては其の際に處する途として、政府に價格平衡資金制度と云ふやうなものを設けて、先づ所謂國内の物價體系を一應世界的な物價體系にまで編成替をしてしまふ、さうして其の凸凹を價格平衡資金の運用に依つて調整して行く、それから又貿易が開かれまして、外國の物資が入つて參ります際には、其の外國の物價體系と日本の物價體系との差を、やはり此の價格平衡資金の運用に依つて、調整して行くと云ふ方法を取るより外ないと思ふのでありますが、如何御考へでありますか、今の話をもう少し具體化しますと、例へば今日本では鐵が「トン」千三百圓から恐らく二千圓もしなければ駄目だと云ふやうなものを、二千圓で賣つて居つては日本の産業は伸びない、だからやはり是は價格平衡資金制度に依つて補助金制度を執つて行く、さうして將來外國から安い鐵が入つて參つた際には、急に安い鐵を賣る必要はないので、それに或る程度のものを背負はせて賣つて、平衡資金の赤字をそれに依つて埋合はして行くやうにしなければならぬと考へるのでありますが、此の國内の物價體系と海外の物價體系との差が貿易再開の際に日本の産業に及ぼす影響を、どう云ふ風に調節されるお積りでありますか、其の御考へを承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=19
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020・膳桂之助
○膳國務大臣 それ等の點は安定本部の是からの日本の經濟再建に關しまして課せられました大きな課題の一つだらうと思ひます、要するに將來國際的に從前のやうな自給自足的な考へでなく、世界が分業的な見地に立ちまして、再び自由交通の經濟が行はれる、それがどう云ふ風に行はれるかと云ふことに依つて大分違ふのでありますが、それ等の問題と、それに日本の貿易が如何なる形で、如何なる程度に於て參加することが許されるやと云ふ問題に依つて、應急に考へなければならぬ問題は違ふと思ひますけれども、日本の經濟再建に、日本が飽くまで總ての物資に付て自給自足で行くのだと云ふやうな頭で行きますと、そこに保護の問題に付て重大な問題があります、平和日本が再建されました場合に、勿論國内に維持すべき産業もありますけれども、世界の經濟の一員となりまして、世界がお互ひに分業的な觀念で産業の分布及び交易が行はれます場合の構想は、自ら違つたものも出て來ようと存ぜられるのであります、今日直ちにどう云ふ方策を執ると云ふことをまだ將來の條件の定まりませぬ中に申上げることは甚だ危險と存じまするけれども、是は安定本部に課せられました大きな一つの課題である、さう云ふ意味で研究の歩を進めたい、斯う云ふことを申上げたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=20
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021・小野孝
○小野(孝)委員 簡單に承つて置きますが、價格平衡資金制度と云ふものを考へて居られますかどうか、一言伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=21
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022・膳桂之助
○膳國務大臣 現在も或る程度さう云ふやうな制度が行はれて居る譯でありますけれども、それ等も將來の日本の經濟再建と、又海外の交易との關係に於きまして考慮すべき一つの問題だらうと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=22
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023・小野孝
○小野(孝)委員 膳國務大臣に對する質疑は是で終ります
次に商工大臣に一言だけ御伺ひして置きたいと思ひます、此の臨時物資需給調整法案の名前の問題でございますが、此の法案の提出を受けました時の我々の氣持は、臨時と云ふのは物資需給に掛かるのであつて、本則的には斯う云ふ統制經濟と云ふものは行はないのだ、物資需給調整をやるのだ、臨時だ、斯う云ふやうに了解致したのでありますが、本會議及び本委員會に於ける商工大臣の御答辯に依りますと、どうも此の臨時と云ふのは法案の方に掛るので、物資需給調整臨時法と云ふ風に御考へになつて、將來は物資需給をそれぞれの物資に關する單行法に依つて行はれるやの御意思があるやうに拜聽致したのであります、是はどう云ふ風に御考へになつて居りまするか、もう一度承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=23
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024・星島二郎
○星島國務大臣 まあ考へ方に依つては兩方に取つても宜いやうにも思はれます、それは大變急所を突かれたやうに思ふのでありますけれども、一面から見ますれば一年間では迚も是はいかぬだらう、斯樣に考へまして電氣事業、石炭、「コークス」の法律を別途に御協贊を願つて居りまするやうに、假に纖維を以て一つの例と致しますと、日本は原料の棉は殆ど全部輸入に仰がなければならぬ譯ですが、それは此の敗戰の姿から見ましてもここ三年五年は自由な所に持つて行かれぬと思ひますので、一定のものを入れた以上は一定のものは出すと云ふ條件が附きます場合には、どうしても或る程度まで強制的なことが必要なんであります、凡そさう云ふ見透しの付いた部分は次ぎ次ぎと此の單行法にして行けば非常に今言はれて居る弊害がなくなると思ふので申上げたのでありまして、或る點から見ますれば臨時を其の方にも付けたし、調整の意味から言ひましても臨時と云ふ意味を付けて兩方にどちらに付けても宜いやうに思ふのでありますけれども、確かに纖維、肥料、「ゴム」、殊に「ゴム」、纖維の如き外國から原料を仰ぐものは、私は將來やはり、單行法が宜いだらうと思ふ、そしてそれを段段揃へて行きますれば、此のものは今度適用する範圍が狹くなり、少くて濟みますから、其の方が餘程民主的だと斯樣に思つて居ります、それかと云つてもう爾今永久に日本はさう云ふ調子のものでやるのだと云ふやうな「イデオロギー」の下に行くのではないのですから、さう云ふ意味から云つて、今あなたの仰しやつた臨時と云ふのは成るべく兩方に取らして戴きたいと云ふやうに思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=24
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025・小野孝
○小野(孝)委員 是非善惡の問題は別としまして、政府の考へて居る所だけは伺ひましたので、商工大臣には是で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=25
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026・竹田儀一
○竹田委員長 次に田村定一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=26
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027・田村定一
○田村委員 私は順序は變更しますが、商工大臣に主として石炭の國營問題に付て簡單に要點だけを御尋ねして見たいと思ふのであります、先日我が黨の西村君より膳國務相に大體の意見を尋ねて居りますから、私は商工大臣に簡單に其の要點を御伺ひしたいのであります、石炭の國營論は無論我が黨の主張する所であり、又今日石炭が凡ゆる重要産業の原動力となることは私が申上げるまでもないのであります、隨て今日我が國は石炭と鐵に依つて國が再建出來るか出來ないかと云ふ所まで重要視されて居るのであります、其の石炭が今日なぜ出ないかと云ふことは色々な惡條件が具はつて居るのでありませうが、是は私が申上げるまでもなく戰時中の濫掘或は食糧の不足、或は勞務者の不足、其の他色々物資の不足等に依る大きな原因があると思ふのでありますが、併し今日石炭を採掘するに當つて可なり澤山の補給金と云ふものが出て居る、隨て今日の勞働者の一人の採掘能力は月五「トン」と云ふやうな箆棒な少額な數字が現はれて居るのであります、私は之を月に五「トン」一人の坑夫が直接掘つて、其の炭礦で採算が取れると云ふ所に大きな矛盾があるのではないかと思ふのであります、曾て補給金のない時代には無論十「トン」か十二、三「トン」掛つて居つた、それが今日五「トン」になつて其の炭礦が採算が取れると云ふことは、是は私が申上げるまでもなく凡ゆる物資の條件が備はつて居ないと云ふ點もあるのでありませうが、事業家の一つの「サボタージュ」の現はれであると私は言へると思ふのであります、理由は御承知の如く石炭は礦區が限られて居て掘れば段々其の掘る地域が小さくなつて來る、さうすれば今盛んに掘出して、補給金は貰つて居るけれども、何時如何なる名目の下に其の利益を取上げられるか分らないかと云ふやうな事態に當つて、今急いで掘らなくても我我は其の礦區を殘して置くことに依つて將來我々の見透しが付いて、利益を自分で處理することが出來るやうになつて、此の石炭を掘出したら宜いではないかと云ふやうな結果が、今日一人當り五「トン」と云ふ箆棒な少額の採炭量に落ちて居る、それに依つて採算が立つて行くと云ふことが私は奇現象であると思ふ、今日膳國務相は西村君の質問に對して、國營云々と云ふことは考へて居らないと云ふやうなことを言つて居られるのでありますが、私は此の一部の少數の人に個人經營で任せて置くと云ふことは、國家に大きな損失が出來て來る、斯う云ふ風に考へて居るのでありますが、今申上げました事業家は早く掘ることは自分の足を自分で食ふことになる、だから僅かな石炭を出して利益を得る順序に今日やつて居る、隨て又私は此の點を特に強調するのでありますが、各炭礦が持つて居る所の礦區と礦區との境が、約六十間でありますか、或は百二十間でありますか、其の間を空けて置かなければならないことになつて居る、然らば其の礦區境ひの石炭と云ふものは、甲乙兩方の炭礦共に採掘することが出來ない、然らば其處に殘る石炭と云ふものは莫大である、假に其の間を六十間置くとして今日は坪當り五「トン」の石炭が炭層三尺あれば出る、然らば平均五「トン」と致しましても、六十間でそれが假に二十町の礦區境があるとしたならば、甲乙兩炭礦に於て殘す所の石炭埋藏量は三十萬「トン」になる、是が日本各地に數百もある、之を此の儘放任して置くならば、其の石炭と云ふものは永久に採れなくなる、之を私は今から國家が凡ゆる手を打つて、礦區にしろ、さうして石炭採掘にしろ、國營に依つてさうした境の死藏礦區の石炭を掘出さなければならないと云ふやうに考へるのであります、色々まだ次に御尋ねしたいのでありますが、斯う云ふ點の死藏鑛區を一體商工大臣はどう云ふ風にするのか、將來とも之を其の儘放任して、一塊の石炭も採掘しないで置くのか、此の點を一つ御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=27
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028・星島二郎
○星島國務大臣 石炭の國有問題に付きましては、概ね議論が盡きて居るやうでありまして、無論國有としての良さは一面考へられます、只今仰せのやうな點、或は勞資の紛爭が減少するとか、資材が非常に計畫性を帶びて來ると云ふことは、私は考へられると思ふのであります、併しながら一面只で取上げる譯にも行きませず、非常に大きな數字になります、之を調査をして、一體評價を決めるだけでも大變なことでありますし、さう云ふことは十分研究の餘地が殘されて居りますが、國有の良さの一つ二つは、國有でなくても出來る、最近鑛業法の改正を致しまして、鑛區の管轄の分合を容易ならしめ、調整すると云ふやうなことは、是は今日のやうに、國營國有でなくても、國家管理をやりつつありまする現状から言ひますれば、是は私はやるべきだと思ふのです是等に付きましては十分委員會其の他を設けまして、今鑛業法を改正し、且つ本當の増産から言ひましても、手を著けるべき問題と思ひます、さりとて今之を國有にやると云ふことになりますれば、さうでなくても生産量の少い所に、非常な生産「サボ」のやうな氣配がある譯であります、それを一層酣にして、今日の急に洵に心配な點が出來ますから、私は増産第一主義で行くのだと云ふことを申上げて居る譯であります、そこで今補給金の問題が出ましたが、補給金は是は消費者の方の全體の物價政策其の他の方に影響を及ぼして居るから、多額のものを出して居るのでありまして、生産の方にどうしても已むを得ぬ程度のものは、是は買收價格を上げると云ふ問題が出來て來て居る譯でありまして、それが四月頃から赤字になつて、是は山々に依つて多少違ひませうが、全體としてどの方面から研究しましても赤字になつて居ることは確かでありますから、それが爲に勞資の方面から言ひますれば、私は非常に生産意欲を認めなければならぬ、さうして今囘の豫算に其の増額を希望致して居るやうな譯でありまするが、まだもう少し確定せぬ所がありますので、いつそのこと補給金制度其のものに、考へ方に於て非常な行詰りがあると思ひますから、國營の問題は偖て措いて、補給金の問題は來期からは何とか一つ變へなければならぬ、是は大藏大臣も非常に其の必要性を感じて居ります、是は獨り石炭のみならず、米に對しても同じやうな考へ方を持つて居る譯であります、一つ是は從來の行き方に囚はれないで、拔本的な考へ方に依つて行く、其の拔本的な考へ方から、いつそのこと國營にしてはと云ふ議論が出て居る、是は議論は出て來るのは當然だと思ふ、先般も極東委員會には英國の方でありましたか、話が出た譯でありますが、是は現在の日本の國情、石炭事情全部を調査した上で、次期の委員會に持越されて其の儘になつて居るのでありますから、次會に於きましても色色論議が出ると云ふことは當然だと思ひますが、今日の場合只今申上げたやうに當面増産第一主義で、さうして國有の御主張になる良さの點は、國有でなくても、今日出來るやうなものは、國家管理の點から言ひまして、或は鑛業法を改正し、或は其の他の法規に依りまして、今囘通りました石炭「コークス」等を運用する等に依りまして、國有の良い方面をどんどん實行して行く、斯樣にして行きたいと思ふやうな譯でありまして、補給金に付きましては必ず其の行き方を變へて行きたい、斯樣に思つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=28
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029・田村定一
○田村委員 商工大臣は石炭の増産第一主義で行かれる、無論今日は増産第一義でなくてはならないと思ふのであります、もう是れ以上國營云々と云ふことは幾ら言つても同しことでありますから繰返しませぬが、私は現實に炭鑛地帶に居り、さうした方面に關係もして居るのでありますが、一週間前にも私の國で炭礦の爭議が起きた、其の時に私は歸つて見たのでありますが、僅か千五百名の工員を擁する炭礦が、幾ら石炭を出して居るかと申しますと、一萬「トン」餘出して居るのであります、さうしますと一人平均約六、七「トン」になる譯でありますが、斯うした状態にある所の炭礦、六、七「トン」出して、而して今日の炭礦の利益はどうか、一萬「トン」の石炭を擧げて、素晴しく利益を取つて居る、是は一萬「トン」の石炭を出して、而して幾ら收入があるかと云ふことは、商工大臣は御考へになつて居る筈でありますが、其の千五百名の工員に拂ふ所の金は幾らかと云ふと、一人の平均賃金が一日二十七圓、月が八百圓幾らである、さうして見ますと一體商工大臣は、消耗品と云ふものはどれ位掛ると御考へになつて居るのでありますか、人件費が假に三十萬圓掛るとするならば、消耗品は幾ら位掛ると御思ひでありますか、一つ御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=29
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030・星島二郎
○星島國務大臣 私は山々に依つて多少の違つた點はあり得るかと思ひます、それで詳しい數字や其の他は、何れ又專門の人から御説明を致させます、私は今此處に手持の材料を持つて居りませぬが、今日の炭價と貨幣價格では、全體の山から言へば赤字になると云ふこと、是は公平なる工業會、最近出來ました色々な團體から陳情もありますし、色々な算盤を取つて見まして、左樣であることを大藏省も認めまして、今囘増額を認めて居る譯であります、又賃金等に付きましてはそれぞれ妥當なる方法に依つて行かなければならぬ、若し不都合な、一定の標準よりも無暗に下げたやうなことがありますれば、當然矯正して行かなければならぬことと思ふのであります、それ故に國有にしなければならぬと云ふ議論は別問題にしまして、今囘八月九州地方が我々の豫想の八十八萬「トン」を上越して、百二萬「トン」まで行つたと云ふ事情を、能く後から報告を聞きました所がやはり食糧が行つたのが一つと、今一つは是は日本の爲には出さなければならぬと云ふ自覺へ入つたのが本だと云ふことを、組合の代表者が一昨日來て色々話して呉れまして、私も感激して居るのでありまするが、やはり只今仰せのやうな算盤から見まして、非常な不自然なことがありますれば、是は一つ色々話合つて、爭議に至らぬまでに十分公正な扱ひをしなければならぬ、斯樣に思ふ譯であります、直接に此處には數字を持つて居りませぬけれども、全體から見ますれば、今日はさう云ふ勞働條件等には餘程是正されまして、或は時間制の如きに於きましても、相當考慮を拂はれて、全體が行つて居るやうに思ひますので、爾今條件に於きましても十分之を考へると共に、又勞務者の方にも、本當の意味に於て國家の爲に働いて貰ふ、それには又報ゆる途がある、斯う云ふ風に兩々相俟つた方式で、山の行政を扱つて行きたい、斯樣に思つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=30
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031・田村定一
○田村委員 石炭の増強の問題は色々ありますが、私は前申上げました通り、今日幾分か食糧其の他の關係もありますけれども、一面石炭國營論が出た場合に、炭礦聯が所謂事業家が擧つて反對聲明をなしたと云ふやうな點は、私は政府としても大いに其の裏を考へなければなるまいと思ふのであります、さう云ふ點から考へまして、今日の石炭の減少と云ふことは、前に申上げましたやうに、蛸ではないけれども、自分の足を食ふやうな状態になるから、時期を待つと云ふ傾向のあることを十分認めて戴きたい、之を凡ゆる點に於て是正されて行かなければならぬと思ふのであります、それと先程商工大臣は鑛業法を改正してと云ふやうな話がありましたが、是は常磐炭其の他にはないのでありますが、山口縣本山炭、或は又長崎、佐賀、此の附近には往々あるのでありますが、海底を採掘する炭坑に於ては、自己の所有鑛區が假に陸地から續いて千間なら千間ある、其處で現在百萬「トン」なら百萬「トン」の採掘をして居る鑛區がある、其の沖に乙が持つて居る鑛區がある、所が其の乙の持つて居る鑛區には、どうしても事業を著手することが出來ない、其の鑛區を、甲の持つて居る現在採掘して居る炭礦へ讓り渡すならば、其の炭礦は其の沖の鑛區へ向つて坑道を掘進することが出來るのでありますが、併しさうした過去の僅少なる鑛區税を掲げて、重要な其の鑛區を私して國家の爲に使用させまいとする一部の人が今日あることを見逃してはならぬ、石炭は御承知のやうに戰爭中濫掘で、近くはもう採る所はないやうになつて居る、どうしても沖或は遠距離に行かなければならぬのであります、さうした場合さう云ふ事業にも著手しない所の鑛區を持つて居る者が、箆棒な高い價格を要求する、さう云ふことに依つて其の甲の炭礦は結局二年、三年先、或は五箇年先の計畫と云ふものは立てられぬのであります、此の長崎縣或は山口縣に於ける所の海底採掘に對しての鑛區の再編成と云ふことを早くやらなければ、毎年々々此の石炭問題で苦しまなければならぬ、鑛區は前申上げました通り掘ればなくなるのであります、新しい所へ坑を開けなければならぬ、陸地ならば新しい所に坑を開けられるけれども、海底鑛區はさう云ふ譯には行かない、斯う云ふ死藏鑛區に對して、或は遊閑鑛區に對して商工大臣は鑛業法を改正されると言はれるが、早急にどう云ふ手で一體之を活かして行かうと云ふやうに考へて居られるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=31
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032・星島二郎
○星島國務大臣 是は何れ増産對策推進委員會と云ふものが最近設けられることになつて居りますので、其の委員會等にも諮問し、或は今囘協贊を仰ぐ石炭、「コークス」の法律の適用で行ければ行きますし、或はそれでもまだ折合が付かぬ場合には、此の需給調整法からでも適用出來ぬことはないと思ひますが、詰り此の鑛區の分合を容易ならしめる措置を致して行つて、さうして或るものに對しましては相當に國家が助成する、補給金をなくして、斯う云ふ必要な物資に對しましては、相當國家が他の意味に於て助成することが必要でありますから、切羽の新開に對しましては助成をするとか、或は鑛區の分合等に對して、若しそこに非常な無理がありますれば、それに對して調整する爲に國家が相當な金を持つとか、色々なことが考へられると思ひます、排水とか、通風とか、色々な點に付きましても、隣と隣との間に共通したる一つの施策を致しますれば、餘程其の邊が旨く行くだらうと思ひますので、最近重要鑛物増産法を適用することも出來ることになつて居る譯でありますから、凡ゆる點から考慮しまして、此の増産の推進委員會等に諮問致しまして、さうしてそれ等の法律の適用に依つて行きますれば、當面あなたの御希望のやうな點も必ずやらなければならぬ、それから一面所謂國有國營ではありませぬけれども、鐵道の如きは國家が經營して居る國有でありますが、鐵道自らが山を持つて居ります、斯う云ふものに對しましては、從來鐵道なんかの運賃の關係上、非常な補給金を出して居る譯ですが、斯う云ふものに對しましては自ら積極的に新鑛區を持つ、斯う云ふやうなことも考へられますし、色々さう云ふ點は是からの委員會に掛けまして、只今御意見のやうなことはどんどん調節してやつて行きたい、斯樣に思つて居る譯です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=32
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033・田村定一
○田村委員 私は色々な條件の下に於て國營論を主張したいのでありますが、無論意見の相違でありますから、是で石炭に關しては打切りますが、昨日でありましたか、一昨日でありましたか、日本の紡績業界のことに付て同僚議員から質問があつたのでありますが、私は無論衣食と云ふことに付て考へて居るのでありますが、纖維の問題は、我が國に於ては、あの廣大な地域を燒土と化し、而して相當の衣料を失ひ、今日著る物もないやうな事態になつて居るのでありますが、日本の外部から、所謂聯合軍の厚意に依つて見返物資になつて返るものとは言ひながら、米棉あたりが入つて來るのでありますが、過日商工大臣は三十萬「トン」か三十五萬「トン」と申して居られたのでありますが、一體日本紡績の能力はどの程度あるか、何萬程度の消化力があるか、其の點を一つ伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=33
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034・星島二郎
○星島國務大臣 一寸最近の詳しい數字は持合はせませぬが、大體事變前千二百萬錘あつたのですが、それが燒けたり、或は一部分外して東洋各地に持つて行く準備をして、港積みになつて運送しないで其の儘殘つて居つたものがありまして、彼此れ致しまして實動百萬錘、あと二百萬錘位は既に用意が出來て居るのでありますが、昨今は百萬錘が手一ぱいです、併し大方此の暮あたりまでには百五十萬錘位は動くと云ふ報告を先般得たのであります、此の數字は若干誤りがあるかも知れませぬが、百萬錘は動いて居ることは確かであります、是等のものが實動致しますれば、三十四萬「トン」の中、注文通りに仕事が出來る譯ですが、如何せん、先般來食糧不足の爲に、多くの女工さんが皆國に歸つて出て來ないと云ふやうなことになりして、今日は五割程度しか消化して居りませぬ、非常に心配しました、そこに又電力を少し制限しなければならぬ、又是が爲に困つて居りました所が、幸ひに電力は先般の雨で又元に歸りましたから、只今制限致して居りませぬ、食糧事情も、其の後内務、農林兩省から協力致しまして、其の方面には見返物資として大變必要だから、是は他の工業と同じ位に必要だからと云ふので手配を致しましたから、そろそろ仕事が元に復して行くだらうと思ひます、大體の見透しから行きますれば、將來三百五十萬錘位に仕上げて行く、或は四百萬錘程度までは關係筋も認めて呉れるだらう、斯樣な見透しを以て今努力して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=34
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035・田村定一
○田村委員 假に三百五十萬錘の機械が出來上るとして、それは一體何時頃に出來上つて、國民が待望して居る纖維の配給は大體何時頃から出來るか、其の見透しを大體國民にはつきりして置かなければ、今日實際に於て着る物のない國民が多數あるのであります、商工大臣にはつきりしたことを御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=35
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036・星島二郎
○星島國務大臣 それが全部稼動になりますのは何時頃かと云ふことは、大體の見透しは附いて居りまして、それに依つて計畫して居りますから、何れ纖維局長からは詳しい報告を致さすことが出來ると思ひます、併し大體五十點程度の衣料は本年用意して居りましたが、それは殊に農村方面に重點的に配給する爲にやりましたけれども、來年度は大體それに相當するものを用意出來て、發行することが出來るだらうと思つて居ります、だから私は衣食住の中で、先づ衣の部分の比較的恵まれて居るだらう、無論それは或る部分、殊に御婦人の人は非常に困つて居るさうでありますが、男子の方面は軍のものが餘つて居る爲に、是は先づ先づ食糧、住居等から比べまして難かしくないやうに考へて居ります、何れ時機を得まして精しい數字を御報告致すやうに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=36
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037・田村定一
○田村委員 今市中に纖維類が相當に氾濫して居る、隨て洋服地なんかでも二千圓から二千五百圓出せばあるやうな状態でありますが、今日店舗を構へ販賣して居る所の纖維類なんかは、是は自由販賣を認められるのか、或は又公定價格も何もなしで依然認められるのか、是等を正式な配給「ルート」へ廻されるのか、此の點を一つはつきりして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=37
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038・星島二郎
○星島國務大臣 終戰後一時軍の拂下品が闇に流れまして、それが今日出て居るのだと思ひます、隱退藏物資の摘發は二囘も之をやつたのでありますが、どうもまだ日本國民は實際正直でないやうで、我々もあれ程のことを宣傳し各方面の法律を嚴重にしながらも、まだ今日闇があると云ふことは──「デモクラシー」と云ふものはお互ひが率直に物事を全部打明けてこそ政治が出來るのが、如何に政府や議會が法律を作り、運用しましても、國民が不正直ではうまく行かない、相當數量が闇に流れて居ることは確かです、併しながら今の統制經濟で比較的先づ先づうまく行つて居るのは私は纖維方面だと思ふ、是は終戰後に於て、どさくさで流れた爲に、今亂れて居りますけれども、順次斯う云ふものは解決して居る、今日纖維は全く統制品でありまして、正當「ルート」があつてこそずつと流れて行くやうになつて居ります、それが或は非日本人の手に依り、色々な手を通しまして、今日實に極端なる闇値を以て賣買されて居ることは、遺憾の極みであります、之に對しては十分内務當局とも手を取合ひまして、之を正當「ルート」に早く返すやうに十分處置を執りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=38
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039・田村定一
○田村委員 諄いやうでありますが、さうした纖維類は出來るだけ早く正式「ルート」へ載せて貰ひたい、是は京都にしても、大阪にしても、或は商工大臣がおいでになる足元の東京に於ても、大きな百貨店が纖維類を堂々と販賣して居るやうな事態が見受けられるのであります、さうしたことを考へますれば、取締る或は正式「ルート」へ載せると云ふやうなことを言つて居られるけれども、現實に於て行はれて居ない、是等の點を一つ至急改善せられるやう特に御考慮を願つて、商工大臣に對する質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=39
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040・竹田儀一
○竹田委員長 竹谷君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=40
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041・竹谷源太郎
○竹谷委員 總理大臣に御意見を伺ひたいと思つて居りましたが御差支へのやうで商工大臣から代つて御答辯願ひたいと思ひます、やはり石炭に關する問題でありますが、考へて見まするに、今日の混亂をした經濟を安定する基本の方策に付ては色々ありませうけれども、結局物資の大生産、産業の囘復振興を圖るにあることは異論のない所であらうと思ひます、而して産業の囘復振興を圖る基礎的な問題は、是れ亦石炭の増産にあると言はなければならないと思ふのであります、鋼や其の他の資材がない爲に石炭が出ない又肥料がない爲に食糧が不足で、勞務者が十分働けないので石炭の生産が出來ない、又石炭がない爲に肥料も出來ないし、鋼も出來ないので隨て又石炭がなくなると云ふやうな風に、圓の中をぐるぐる廻りして居るのが現在の經濟界の状況であると思ふのであります、是では何時まで經つても此の慘憺たる現状から脱け出すことは出來ないと思ひます、渦卷の逆に逆渦卷にぐんぐん大きく伸びて行く爲にはどうしても此の圓の中を空廻りして居る所の産業界に外部から水を注さなければ、どうしても渦卷が取れないだらうと斷言せざるを得ませぬ、急速に産業の振興、物資の増産を圖る爲には九月十日の朝日新聞にも出て居りましたが、戰時中から炭礦に投入すべき鋼材を投入しなかつた總量が三十六萬「トン」とかに上ると云ふことを報道致して居りましたが、斯うした鋼材の不足、或は運搬機具とか選炭材、或は鋼管其の他の各種の礦山用機具機械、電線、さうした今急に日本で澤山作らうとしても出來ない、さうした資材を單に資材としてでなく出來るだけ製品として澤山輸入をして之に依つて急速に増産を圖らなければ何時までも國内で圓の中をぐるぐる廻つて居るだけに止まると思ふのであります、尚又此の石炭の増産に不可決の「トラック」其の他の運輸機關も左樣でありまするが、此の礦山用の鋼材、機具機械及び運輸機關等の大量急速なる輸入に付きまして、聯合軍司令部に懇請をして、さうして産業の再開を一日も速かならしめる外には急速に解決する方法はないのではないかと思ふのであります、隨て是非是は總理大臣に於て全力を盡して石炭増産の爲に此の緊急な手を大至急に打つて戴きたい、之に對する見返り資材等は足らないかも知れない、併し石炭が澤山出來ますれば見返り資材はどんどん生産されるのでありまして、立どころに御返しすることが出來ると思ふのであります、斯樣な現在の經濟界の混亂、産業の萎靡沈滯の状況にあつては何時までも聯合軍司令部の同情に御願ひして窮迫の状態を續け、何時までも御迷惑を掛けることにならうかと思ひます、出來るだけ自力で早く立上る爲に、石炭を増産する爲の資材を急速に輸入の出來るやうに政府は全力を擧げて御努力に相成る御意旨があるかどうか、之を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=41
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042・星島二郎
○星島國務大臣 洵に仰せの通りでありまして、當委員會等を通して其の聲が聯合軍にも傳はりますれば私は洵に好都合かと思ひます、事實仰せの通りでありまして、昨日も貿易廳長官をして聯合軍を訪問して、さう云ふ基礎資材をも一時入れて貰へぬか、本當を言へば石炭其のものを一時入れて下さいと是まで言つて居るのであります、それから勿論今仰せのやうに、礦山に必要なる色々な資材、それが今囘の軍需補償打切り等に依る財界の大整理に當面しまして色々な點に問題があります、現に桑名の東洋「ベアリング」に於ては石炭の專門の機械を造つて居ります、それ等が今度賠償の指定になつて居る、逸早く之を是非解除を願ひたい斯樣なことも既に手始めして居りますが、本當は貿易廳長官や商工大臣のみがやつても仕樣がないのでありますから、是は國家の大問題としまして總理大臣自からいや外務大臣として大いにやつて行くべきだ、斯う云ふ話が閣議でも出まして、總理は相當手を打たれると思ひます、議會に於きましても、さう云ふ聲を反映致しますれば、我々の仕事も非常にし易いのであります、さう云ふ意味に於きまして、只今の御質問に付きましては寧ろ感謝する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=42
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043・竹谷源太郎
○竹谷委員 力強い御答辯を戴きまして感謝に堪へませぬ、是非政府は全力を擧げて其の實現に邁進されんことを希望致します、尚ほ石炭に關して一二御尋ねを致しまするが、現在石炭の販賣價格は二百七十圓のやうでありますが、山元消費者價格が百圓になつて居るから百七十圓の補給金を出して居るやうに思ひます、然るに全國石炭鉱業會と言ひますか、あそこで三百七十圓位の生産費が要ると云ふことを申して居ります、さうしますと又百圓上げて二百七十圓補給金を出さなければならぬと云ふことになりましたならば、全般の石炭補給金に關する豫算を又倍額も増額しなければならぬ、斯う相成ると思ふのでありますが、此の點を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=43
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044・星島二郎
○星島國務大臣 仰せの通りでありまして、目下關係筋とも交渉して、大藏當局も兎に角今増産の爲に必要ならば金は厭はぬと云ふやうな氣構へでやつて居るのでありますが、併し果して其の數字が妥當なりや否や今考究中でありまして、相當大幅に上げなければ赤字になると云ふことはどうも事實らしいのであります、何れ其の金融が確定しました時に其の補給金の増額を御願ひしたい、併し是も極めて臨時的な、十月分まででありまして、十一月からは別な手で行きたいと斯樣に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=44
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045・竹谷源太郎
○竹谷委員 左樣に石炭補給金を毎月上げて行くやうでは、到底是は止め度がないことでありますが、私も亦田村君、西村君と同樣に石炭炭礦の國營を提唱したいと思ふ、而して全炭礦を國營にすると云ふことは事務的にも中々急速には參らないと思ひます、隨て私は三井三菱或は北海道炭礦汽船と此の三社、是は今までの統計に依りますと全國の全石炭の總産額の四分の一から二分の一に達する生産を上げて居る優秀な炭礦であります、併しながら先程田村君からも御話申上げましたやうに、どうも大資本家は十分に金があるので、自分の營利に都合の好いやうに山を掘つて行く今日の状態で言へば、石炭を掘つて金が儲かりましても、是等に對しては莫大な税金が課かる、又金で持つて居つても何時新圓が駄目になるかも知れぬ、他の有價物を買つて置かうと思つても、中々適當なものがない、買へば又それには課税なり沒收的な課税があると云ふやうなことで、富を貯蓄する方法がありませぬから、それには一番安全な山の下五百「メートル」なり、千「メートル」なり、千五百「メートル」なり地下へ藏つて置くことが、一番資本家としては安全な貯蓄の方法であります、又採算が非常に採れて儲かる時に出來るだけ「コスト」の高い切羽を掘つて行く、それから又非常に不景氣になつて炭價が安くなる、惡い山を掘つたのでは採算が採れないと云ふ時には、良い山をちよこちよこ掘る、斯樣に何百年の先を考へてやつて行くのが資本家の、大炭礦業者のやり口でありますが、是は北海道でも、山口縣でも、又九州でも同じことであらうと思ひます、然るに此の度三井三菱等は財閥解體に依つて是等の會社はそれぞれ獨立礦となるのでありますから、好い機會である、之を國營に移して國でやつたらどうか、是は決して心配することはないと思ひます、隨て今の補給金問題でも直ちに解決しますし、又弱小炭に付ては是は掘らなければ損する、掘らなければ食へないから是は放つて置きます、是は先程申しました資本家のやうな意味の掘り方を致さぬ、之に付ては國營と併せて國で以て炭礦を模範的に經營させる、其の經營の仕方、技術を十分傳授を致しまして中小炭礦等の採炭方法を向上させますれば、日本全體としての出炭量は見る見る中に激増するだらうと思ふのであります、餘談になりますけれども、炭礦業者は歎いて居る、日本では鑛山專門學校なり、或は採鑛冶金方面に優秀な人が行かない、それで優秀な技術者がない、又資力がない爲に立派な機械を据付けられない、之に對して「アメリカ」では炭礦夫一人當り、是は戰前ですが、一日五「トン」づつ出炭するのに、日本は其の當時一日〇、五「トン」出炭出來る山は非常に優秀である、現に現在に於きましては計算して見ますと、〇・一七「トン」〇・二「トン」にもならぬ程度の出炭量であります、戰爭中は〇・四「トン」乃至五「トン」まで出た年もありますけれども、現状に於ては一日に〇・一七「トン」位の生産に過ぎない、此の點は先程田村君も御指摘に相成つたと思ふのであります、それにはどうしても技術を向上する、機械力も利用する、經營を合理化し、さうして勞働者の經營參加に依つて生産意欲を大いに増大すると云ふことが大切な問題であります、是非此の三井、三菱、北海道炭礦汽船の三社位でも財閥解體の機會を捉へて國營に移して、模範的な炭礦經營をやつたらどうか、斯樣に考へるのでありますが、御意見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=45
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046・星島二郎
○星島國務大臣 國營論は暫くお預けに願つて此の委員會等を設けられましたならば、十分國營の良さを取入れて行きたいと思ひます、現に先程申したやうに鐵道の如きは自ら今三萬「トン」程度掘れる山を持つて居りまして、是等が段々話が付けば相當國有の程度まで、或はあなたの御指摘になつたやうな程度のことは出來ると思ひます、折角あなたの御主張のある所はやつて見て、それで非常に效果があれば又考へることも出來ませう、私は「イデオロギー」で反對とか贊成とか云ふのではなくして、現在は石炭第一主義で、今國有論を振翳してやれば、それが影響して色々な問題を起します、私はそれを惧れて居ります、其の議論は或は部門は出來るものはやつても宜からうと云ふやうなことも考へられますし、一番急ぐのは此の委員會で先程田村君の御話のやうに鑛區の分合整理、斯う云ふものに付ては一つ──是にしてもやると云ふことになつたならば、それ自體が非常な問題を起して一面から言へば脅威を感ずる人があるかも知れませぬけれども、此の程度は私は鑛業法を改正するなり、其の範圍に於て是非手を著けて國家の爲にやつて參りたい斯樣に思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=46
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047・竹谷源太郎
○竹谷委員 炭礦のことは其の程度に致しまして、此の臨時物資需給調整法の第二條に「民主的に組織された産業團體」と云ふ言葉があります、是は主として商工省に關係する所が多いかと思ひますが、此の民主的と云ふ文句が入りましたけれども相變らず從來の統制會とか或は統制組合とかと其の實體が同じに相成るのぢやないかと思ひます、此の民主的産業團體の構想はどう云ふやうなものであるか、單に賦課金を平等にするとか、或は加入が隨意だと申しても、結局資本の大きいものは其の團體に於て實質的に大きな力を持つて居り、自分の都合の好いやうに其の産業團體を左右すると云ふ結果に相成るのではないか、是等の點を大いに杞憂せられるのでありまして、政府の御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=47
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048・星島二郎
○星島國務大臣 形の上に於ては確かに民主主義の形は取られます、選擧に依つて役員を選ぶ、或は加入脱退が隨意であるとか、色々なことが言はれますが、併しながら實は同じ業界で全部人間が入替る譯でありませぬ、御懸念のある點は私共もさう思ひます、併し妙なもので、組織が變ると、或る時間が經ちますと放つては置かない、必ず或る程度までは藉すに時日を與へれば、本當の民主化が段々行はれて來ると思ひます、一擧に全部此の法律の施行と同時に、すつかり今までと違つたものになるかと云へば、中々さうは行かぬ點も懸念致しますけれども、やはり制度が變りますれば、私は追々にさうなると云ふことを確信致し、又さうなることに指導して行きたいと思ひます、又日本人は、此處が缺點で長所だと思ひますが、からつと變れば、是は司令部の方でも追放關係で非常に惧れて居るやうでありますけれども、本當にお互ひの國民は變つて居る、此の變つたことを思へば、大した追放令はなくても民主化すると私は信ずるものであります、さう云つた意味で政治的にもさうでありますが、況して此の業界に於きましては、少し形を變へますれば氣持が變つて參りますから、大體私は行けるものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=48
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049・竹田儀一
○竹田委員長 井田君の商工大臣に對する御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=49
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050・井田友平
○井田委員 私は商工大臣に對して極く簡單に御尋ね致します、今後の日本の産業は中小工業を中核にして推し進めて行く、斯う云ふ御言葉は再々商工大臣から伺つて居るのでありますが、今日手許に戴きました此の表は、昭和十七年の表であります、是は戰災前の表でありまして、はつきりしないのでありますが、大都市の戰災に依りまして、中小工業者と云ふものは殆ど全部が戰災に遭つてしまつた、終戰後復興途中にありまして金の封鎖、それから特殊預金の棒引と云ふやうな問題に逢著して、殆ど金融の面で戰災に遭つた中小工業者は、立往生をして居ると云ふ状態になつて居るのであります、此の中小工業者を囘復と云ひますか、振興させるのには、唯一の復興金融の融資より外にないと思ふのでありますが、之に對してどう云ふ方法で融資をするか、或は設備の方面へするとか、或は運轉の方面にするとか、或は融資をする工場の選擇、さう云ふ職業別に依つて之を選擇するとか、或は規模に依つて選擇するとか、斯う云つた點を伺つて見たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=50
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051・星島二郎
○星島國務大臣 仰せの通りに都會地、殊に戰災地は大變な被害でありますから、中々私は復興が困難なことだと思ひます、そこで金融方面等に付きましては、只今仰せのやうに復興金融を使ふ、所が復興金融は兎もすれば大口になりまして、小廻はりが效かないと思ひます、そこで復興金融から流れて來る金を足手として、商工組合中央金庫を通して、それから今囘出來る──以前のもので言ひますれば統制組合或は商工組合でありますが、是が改組になりまして協同組合が出來ますれば、對人信用、役員間の相互の契約で以て、何か簡單に金が流れて行くやうにしなければならぬ、斯樣なことを考へて居ります、又從來のそれぞれ取引の關係のある普通銀行とも、新しい勘定に於きましては成べく中小工業の方に金を廻はすと云ふことも、是は日銀當局も其の氣で居りますから、それぞれ其の地方々々に應じた、假に或る縣は二十、或る縣は十と固まつて居りますから、其の業態々々に應じて、其の方へ融資をせしめると云ふやうなこともやらなければならぬと考へて居るのであります、其の外に、まだそれでも手が足りぬと思ひますし、旨く行かぬと思ひますので、幸ひに商工省關係に産業設備營團と更正金庫があります、是も今度の整理に引掛りまして、第二會社的なものになるのでありますが、併しまだ相當資本を持つて居ります、之に新しい資本を注入しまして、只今關係筋の諒解も得て居りますから、大藏省當局と話をして、是は復興金融金庫とは別に、産業設備營團は戰時中は大きな設備をやつて居たのでありますが、小さな設備、或は轉換工場の如きは小さくして貸工場と云ふ形に出來ぬこともない、更生金庫の如きは從來は企業整備の爲に使つたものでありますが、逆に中小の企業復興の爲に、丁度逆な仕事をして行くと云ふやうなことも考へて宜いのぢやないか、或は今囘賠償關係其の他整理の爲に、現に今日朝も私は聞いたのでありますが、或る大きな相當な會社が、色々な部品を投賣りして居ると云ふやうなことである、又之を多少纒めて買ふ人が出て來たと云ふやうなことも聞いて居りますが、さう云ふものを政府が初めから相當助成しまして、社團法人か財團法人か、或は一時の協會でも宜しいが、さう云ふやうなものに依りまして、色々な機械設備、工具等を適當な所へ廻はす、是が整理の爲に二束三文に賣られて屑になると云ふことは惜しいことでありますから、さう云ふことに付ては今折角研究中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=51
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052・井田友平
○井田委員 復興金融に付ては初め本會議での説明に依ると、中小工業者にも相當融資すると云ふ御話でしたが、最近大藏省方面の意向を聞くと、大口のものだけに行くと云ふやうな話も聞いて居るのでありますが、どうもそれでは實際今の商工大臣の仰せの、中小工業を中核として産業を進めて行くと云ふことは、一寸困難ではないか、斯う思ふのであります、どうぞさう云ふ點をしつかり商工大臣に希望して置きます、斯う云ふ方面にも相當な額が流れて復興の出來るやうに希望して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=52
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053・竹田儀一
○竹田委員長 原健三郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=53
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054・原健三郎
○原(健)委員 極く簡單に質問致します、申すまでもないことですが、今文化國家を日本で建設しなければならぬと云ふことを言はれて居る、是は異論のない所であります、併しそれを作るには、私は先般豫算委員會の分科會でも申上げたのでありますが、何と致しましても其の一番重要な役割をなすのは新聞であり、雜誌であり、書籍の出版であると思ふのであります、然るに其の新聞や雜誌の出版をなす本をなす所の紙の生産が、依然として擧つて居ない、紙がなくては斯う云ふものの機能を十分に發揮することが出來ないことは、申すまでもない所であります、さうして現在此の紙の生産額は、戰前の大體四分の一位に落ちた儘になつて居ります、それで私は政府に重ねて一つ強く御聽きしたいのは、之の増産の具體策は如何なるものであるか、議會始まつて以來でもそれを言はれてから既に大分日が經つて居るが、どれ程進捗して居るのであるか、是から先の見透し、施策、或は輸入の點等々、一つ明確な御答辯を御願ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=54
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055・星島二郎
○星島國務大臣 仰せの如く紙は文化の中心とも言つて宜い位であります、殊に長い間耳を蔽はれ目を蔽はれて居つた關係上、終戰後最も要求して居ります方面は、紙を通じて色々なことを施設すると云ふことであります、私は商工省纖維局の一紙業課で、紙を扱ふ行政をやつて居るのは少し荷が重いと云ふやうな見地から、先般も内閣に文化委員會と云ふものを設けて、其の委員會で根本方針を決めて貰ひたい、斯樣なことを閣議に持出しまして諒解を得たのでありますが、議會始まつたばかりでありまして、色々混雜の所で中中思ふやうに行かないのであります、ともすれば昔の情報局等を再び復活するのではないかと云ふ誤解も招きまして、非常な迷惑を致したのでありますが、決してさう云ふ意味でなしに、お互ひに渇する者が水を飮みたいやうな氣持で紙に接して居ることは、私自身も能く理解出來るものでありますから、さう云ふ意味に於て經濟安定本部は是れ程皆が紙を欲するのに、其の僅かの紙を分け合ふ爲の喧嘩を止めて、もつと紙を作つたらどうかと云ふのが本音なのであります、そこでそれには「パルプ」の製造を殖やさなければならぬ、隨て樺太を失ひ北海道も思ふやうに行かない今日、木材の割當が一體どれだけ出來るのか、是は今までの製紙會社が今度の賠償に對してどうしても是だけは殘して貰ひたいと云ふやうなことも考へなくちやならぬので、さう云ふ熱意を持つて居ると云ふことを申上げて、今日數字を以て此の邊まで行けるのだと云ふやうなことは申上げ兼ねますが、併し安定本部まで話を持出しまして或る程度の増産の要求をして居ると云ふことを以て御答辯とさして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=55
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056・原健三郎
○原(健)委員 御答辯の熱意あることは私も能く分るのでありますが、少くとも今日の新聞を見て一日にあの二頁の新聞では、どうも文化國家、文化國家と言ひましても口だけで御話にならないのであります、大體新聞を四頁位にする見込は何時頃でありますか、其の點を御聽き致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=56
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057・星島二郎
○星島國務大臣 其の點は紙其のものは「カナダ」などで澤山出來て居ると云ふ話を聽いて居りますので、他の見返り物資を十分造り出しましたら相當輸入を仰いでも、私は之を欲しいと思つて居ります、それで成べく早く四頁に致したいと努力して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=57
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058・原健三郎
○原(健)委員 それでは新聞四頁は至急に出來ると云ふやうな、さう云ふ積りで聽いて置きます
それから内閣に文化委員會と云ふものを作られて色々やられることに閣議の承認を得て居ると云ふ御話でありましたが、併し情報局の二の舞をやるのではないかと云ふ横槍も入つて居るさうでありますが、私共の考へと致しましては是非内閣にさう云ふものを作つて、昔の情報局とは違つた意味に於ける見地から機能を發揮して戴きたいと思ふのでありまして、其の閣議決定には贊意を表するものであります、然るにどうも色々な事情で實現しないのでありますが、之を一日も早く實現されますやうに要望するのであります
それから新聞と雜誌の用紙の割當委員と云ふものが出來たと云ふことでありますが、其の文化委員會と、用紙割當委員會との關係はどうであるか、若し用紙割當委員會が内閣に直屬するものならば其の構成をどう云ふやうにして居られるか、更に新聞、雜誌、書藉の紙は此の臨時物資需給調整法の對象になるのであるか、ならないのであるか、此の點御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=58
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059・星島二郎
○星島國務大臣 其の文化委員會は私が熱望して概ね諒解を得て居るのでありまして、其の實現は「ラジオ」の關係「フイルム」の關係の部面で急速に運びませぬが、取敢えず私自身が所管して居ります紙の問題は直ぐ運び得る譯でありまして、目下色々と進められて居る譯であります、大體の所管から言ひますれば内閣の中の委員會で大筋を決めて、實施は商工省がやつて行く、斯樣なことになるだらうと思ひます、それから紙も勿論此の需給調整法の對象として考へられます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=59
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060・原健三郎
○原(健)委員 其の文化委員會と、用紙の割當委員會と云ふのは別のものになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=60
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061・星島二郎
○星島國務大臣 別のものでございます、其の範圍の中の一部分として考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=61
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062・原健三郎
○原(健)委員 それは一體何時頃出來る見込みでありませうか、出來るならば急速を要する問題でありまして、色色な議論もありますが、私は政府は宜しく其く所信に向つて邁進せられんことを望むものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=62
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063・星島二郎
○星島國務大臣 成べく早くやりたいと思ひます、大體七、九の割當は間に合ひませぬので、十月分の割當からさう云ふ方面で考究されて結論を得たいと斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=63
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064・滝澤脩作
○滝澤(脩)委員 私は希望だけ申述べて置きたいと思ひます、本委員會は既に十日に近い日程を費しまして、各委員の方々より凡ゆる角度から質問應答が行はれ、既に論議し盡されて居るものと思ひますので、本法施行に當つての私の希望を一點申述べさして戴きたいと思ふのであります、中小工業の再建が物資の需給に重點を置くと云ふことは、是は勿論でありますが、其の配給の方法であります、政府に於きましては既に其の配給の方法も御定めであるやうに見受けられるのでありますが、之を戰時中の重點的配給の問題に倣つて戴きまして、重點配給にして戴きたいと私は考へて居るものであります、其の業種別と、そして生産種目に對するものでありますが、御承知の通り日常必需品の製造工場、食糧増産に對する所の肥料、農機具の製造工場、尚又見返品に要ります所の各種の製造工場に對しまして、其の重點順位を決定して戴きたいと思ふのであります、是は商工大臣御出席なされて居りますが、各關係大臣へは委員長より特に御願ひをして戴きたいと思ひます、尚又物資の配給が圓滑でありましても、私勤勞者の配置と云ふことが非常に問題になるのでありまして、其の重點配置を那邊に置いて行つて戴けますか、此の邊特に厚生大臣に對して申出て戴きますやうに御願ひ致したいと存ずるのであります
序でに一言委員長に御願ひ致したいと思ひますが、既に大分論議も盡されて居りますので、質疑を打切つて戴きまして、次の日程へ御入りになつて戴きますことを、私は希望するのでありますが、皆さんに御諮り願へませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=64
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065・竹田儀一
○竹田委員長 まだ殘つて居るやうですから、もう少し續けたいと思ひます、御希望は傾聽して置きます、是にて休憩致しまして、午後一時より開會致します
午後零時十二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=65
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066・会議録情報2
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午後一時十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=66
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067・竹田儀一
○竹田委員長 引續き會議を開きます──原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=67
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068・原健三郎
○原(健)委員 私の御尋ねしたいことは經濟安定本部會議の構成は大體六十名位で其の四分の一に當る十五名が官吏であとは民間の學識經驗者其の他色色な人を以て充てると云ふことでありますが、其の十五名の官吏の中にはどう云ふ「ポスト」の人が入りますか、之を一度御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=68
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069・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ致しますが、官吏として當然安定會議に入りますものは内務大臣、大藏大臣、司法大臣、農林大臣、商工大臣、厚生大臣、運輸大臣、遞信大臣、經濟安定本部總務長官、内閣總理大臣の指名する國務大臣、内閣書記官長、内閣副書記官長、法制局長官、物價廳長官及び終戰連絡中央事務局總裁、斯う云ふことに相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=69
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070・原健三郎
○原(健)委員 それから其の經濟安定本部會議と云ふものを常置して會議を開いて重要なる基本的な政策及び計畫を確保する爲に物資割當配給を協議されると云ふことであります、此の會議はどう云ふ風に開くのであるか、毎日開くのであるか、一週間に一囘開くのであるか、年々一囘開くのであるか、其の點を御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=70
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071・膳桂之助
○膳國務大臣 是はやつて見て議事規則或は運營規則等が出來ましてから自ら決まることでありますけれども、只今の考へではさう毎日續けてやる譯ではありませぬが、此の會議に付せられます事項は自ら大別して二つにならうと思ひます、日本の經濟安定に必要なる方策、根本問題に付ての研究を致します其の部面と、それから例へば此の法律に基きます運營、之を付議しますやうな場合其の他緊急の問題に付ての方針を定める場合と、斯う云ふ風な大體付議される事項は二つに總括されると思ひますが、場合に依りますれば大きな問題が出ます際には毎日一週間或は二週間續けてやる場合もございませうし、或は一日を以て足るやうな場合もありませうし、一寸之を今から豫定は致し兼ねる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=71
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072・原健三郎
○原(健)委員 それでは必要に應じて屡屡開くと了承して宜しいことだらうと思ひますが、或る所で聞くと初めは屡屡やるが、あとになると一年に四囘位しか開かぬと云ふ説をなす者もありますが、さうであると甚だ以て形式的だけは斯う云ふ會議を聞いても、實質的には根本は決まつたからあとは其の儘にして置くと云ふやうなことになると、表面や名目上は斯う云ふ民主的な會議を通してやると言ひましても、實質的には如何はしいものであると思ひますが、其の點は成るべく屡屡開いて世の物議を買はぬやうにして戴きたいと思ふのであります
それから御聽きしたいことは、此の經濟安定本部會議には勿論衆議院議員も貴族院議員も入ると云ふことを承つたのでありますが、もう一つは是とは別個に眞に民主的にする爲に、衆議院議員を以て作る別個の委員會のやうなものも作つて重要なる方策の決定或は緊急なる方策の決定其の他の審議に當らして、經濟安定本部會議と兩々相俟つてやるのも一方策ではないかと考へられるのでありますが、さう云ふ點に付てどう云ふ御見解を持つて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=72
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073・膳桂之助
○膳國務大臣 只今考へて居ります此の委員會は、全體の問題としては今問題になつて居ります安定會議と、それから問題になりました補償の問題、或は割當の決定に對する不服の問題等に對しまして、やはり民主的な委員會をそれぞれ持つて所管大臣がものを決めまする前の諮問機關と致したいと思ひますけれども、本法施行に付きまする一般問題に付ては、此の安定會議の外に兩院議員のみを以てする委員會を作ると云ふことはまだ構想致して居りませぬ、兩院議員も相當數此の安定會議に入られるのでありまして、此の會議の中に一つの小委員會と申しますか特別委員會と申しますか、本法運用に關する事項を主として審議願ひまする特別委員會を設けまして、そこに於て本法に關する運用の問題を特に優先的に研究して、それを安定會議の全體の問題にするか、或は安定會議から委任されて、さう云ふ特別委員會で研究する、さう云ふやうなことは考へて居りまするけれども、同樣の目的を以てする二つの委員會を竝べてやると云ふことは如何なものでありませうか、只今の所ではまださう云ふことは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=73
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074・原健三郎
○原(健)委員 それでは貴衆兩院議員は六十名の中で何名位入れられる御考へであらうか、或は其の他業界とか言論會とか學識經驗ありと云ふやうな人達も入るのでありますが、それと貴衆兩院議員との數の割振りは大體どのやうになつて居るでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=74
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075・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ申上げます、其の點に付きましては、今關係の向と相談を申上げて居りますのて、此の際申上げると却て差支へが出來るといけませぬので、控へさして戴きたいと思ひますが、尚ほ此の委員會の中には貴衆兩院議員と云ふ資格に於て御加はりを願ひます方々の外にも、或は職能的の代表とし、或は輿論を代表すると言ひますか、勞働階級を代表すると言ひますか、さう云ふやうな意味合ひに於きまして加入を願ふ方もありまするので、貴衆兩院に席を置いて會議に入られる方も相當數になると云ふ見込であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=75
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076・原健三郎
○原(健)委員 それからもう一つ簡單に御尋したいのでありますが、此の調整法案の第一條第一號には此の損失の補償と云ふのがなくて、第二號第三號にあるのであります、物資の割當又は配給を致しましても、是が正しく割當や配給があれば損失はないのでありますが、是が誤つて必要以上のものを割當てられたり、其の他二つのものだけで以て制限を付けると云ふ場合に、甲が割當が多くて乙が少い場合には非常に損失を招くことがあるのは當然であります、第二號及び第三號の場合に損失の補償をして置いて、第一號の物資の配給又は割當の場合に損失の補償を認めて居ないと云ふのはどう云ふ譯でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=76
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077・膳桂之助
○膳國務大臣 二號、三號の場合は所有者が或は生産しようと云ふ者が自己の計畫中にないことをば命ずる場合でありまして、本人の計畫豫定以外のことに或る行爲を命ずるのでありますから、其の間に損失の出ると云ふことは豫想せられるのでありますが、第一號の場合に於きましては、──生産を命令すると云ふことは二號以下にはありますが、一號の場合は既に現存した當然供出さるべき物資をば通常の價格に於て割當をし、配當をするのでありまして、其の間には別に損失と云ふ觀念が出る場合はないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=77
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078・原健三郎
○原(健)委員 私の質疑は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=78
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079・竹田儀一
○竹田委員長 それでは田村君、御留保になつて居る分を御尋ね下さい──田村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=79
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080・田村定一
○田村委員 膳國務相に御尋ねして見たいと思ひますが、此の法案は日本再建に必要なる物資の生産増強の爲め或は業者の整理或は物資の需給調整の必要上出たものであると思ふのでありますが、私は此の法案は戰時中多くの中小商工業者を犧牲にして大資本家に集中的に有利に導いた國家總動員法の延長であることは勿論云ふまでもないと思ひますが、斯かる軍國主義的時代の封建的法案であるものを、民主的に再建されやうとする日本の現在の情勢に於て、而も國民の所有權を絶對に左右し得る重要法案である、其の重要なる法案が僅か一箇年か或は又短期間を目標に之を計畫發案されたかの如く政府は言つて居られるのでありますが、そんな短期間に終るとは、恐らく政府も思つて居られないであらうし、又我々議員も國民もさう云ふことは思つて居ないのであります、御承知の如く終戰後大財閥の解體命令が出されたのでありますが、又是と繋りを持ち、又之に洩れた所の一部のさうした資本家は本法の施行と相俟つて、戰時中行はれたやうな弱き中小商工業者を犧牲にして、一方的に集中的な事業計畫をして居ると思はれるのであります、今囘軍需補償が打切られた上又新たに作られるであらう或は又實施されるであらう所の復興金融金庫法案、是等に對して先程商工大臣からもどなたかの質問に對して御答辯になつたのでありますが、小口の業者には、殆ど中小商工業には、貸付けない、恐らく大口だけであらうと云ふことを言はれて居つたのであります、此の事實を見ても、此の物資需給調整法案、復興金融金庫法案と相竝んで對照して見ましても、本法案が一部の財閥の爲に或は強力なる所のさうした資本家の爲に貸與されて、一部の少數者が利益を得、大多數の者が恐らく犧牲に供されるであらうと云ふことは、是は誰も否定することが出來ないと思ふのであります、隨て又此の法を運用するに付て、同僚各議員からの質問に對して膳國務相は民主的に之を行ふのだと云ふことを言つて居られるのでありますが、私は此の法を運用する人は、本當に過去に於て又將來に於て民主的に行ひ得らるる人物であるかどうとか云ふことを考へなければならぬと思ふ、而も之を構成する人員は、私ははつきり申上げますが、膳國務相は資本家の「チャンピオン」である、隨てさうした人々の一派に依つて構成され、それが運用される、總ての事項が本當に民主的に行はれるかどうかと云ふことを我々は疑ふものであります、隨て膳國務相が經濟安定本部の長官に就任されると云ふ報が一たび全國各地に傳はると、凡ゆる方面から反對の聲が上つたと云ふことは、膳國務相のさうした過去に於ける所の地位が、やはり將來に於て一方的に此の法を──口に如何に民主的と叫んで居られても、運用されるに當つては一方的であると云ふことを全國民が見逃して居ないのであります、さうしたことを考へると、今日此の法案が實施されるに當つては、我々は、膳長官がさうした過去の資本主義の命脈を引延ばさうとする保守的な人である、民主日本の進歩に對して「ブレーキ」役を勤めるものであると云ふことを知るが故に、如何に何と言はれても民主的に此の法案が實施されるとは思はれないのであります、然らば民主的と云ふ言葉を盛んに言はれるのでありますが、民主的々々々と云ふことは、言葉は簡單に言ひ得られる、併し過去に戰時中大政翼贊會が生れて下意上達と云ふやうなことを盛んに言つて居つたのでありますが、本當に民主的に行ふならば、凡ゆる組合、凡ゆる識者の意見を本當に聽き、其處で決定したことは、膳國務相ははつきりと法文の上に現はし、或は又其の他手續上の實施に當つて之を活かし得る自信があるかどうか、又民主的にと云ふのでありますが、先程來原君も申して居つたやうでありますけれども、民主的にしても其の民主的構成が本當にどの程度から盛上つて來るものか、從來の戰時中の統制組合のやうなものを利用して、過去に甘い汁を吸つた所の人々をやはり構成分子として之を民主的と稱するのか、或は絶對的に根本から洗ひ變へて、さうして組織をやり變へる、さう云ふ民主的と云ふものの本當の構成を私は先づ御尋ねしたいと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=80
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081・膳桂之助
○膳國務大臣 中小工業を犧牲にすることに依り、徒らに大資本の保護になる心配はないかと云ふやうな御疑念の下に御質問があつたやうに存ぜられます、先づそれより前に、私が世間の一部で何か資本家の「チヤンピオン」とか云ふやうな意味の評を蒙つて居るが故に、ものが公平に行へぬだらう、斯う云ふやうな御批評がありました、是は質問者の主觀的な御批評でありませうから、別に辯解は言ひませぬ、決して世間はさう狹くもありませぬ、何かさう云ふやうな意味合のことを言はれぬ一部の人士もあられますけれども、私の所へ參ります中小商工業者、農民、色々な方面からの色々な陳情書或は激勵の辭と云ふやうなものの中には、相當私に依つて民主的の經濟再建が行はれ得ると云ふやうな信頼の下に參つて居る聲もありますので、一部の聲だけをどう斯う申しても仕樣がないと思ひます、假にさう云ふことがありましても、是からの日本の再建を論じます際に、唯或る斯う云ふものが斯う言ふと云ふやうな札を付けた、一つの何と言ひますか、前提の下に國事を論じたくないと存じます、それから果してどう云ふ構想──民主的に本法及び安定本部の運營が出來る自信があるか、自信があります、あるが故にやつて居るのであります、と申しますのは、中小工業の問題は、唯一般に中小工業と言ひましても、何處に目標を置くか、是は戰時中今の御言葉にあるやうな、目的の爲に企業整備を行はれまして、今日は殆ど壞滅の状態にある實情でありますが、是が本當の復興を圖りますには、先づ設備、資材、さう云ふ方面からの世話もし、又一方には技術の指導の必要もある、又特に必要なのは金融の部面でございます、經濟安定本部の職能の中には本法に依りまして此の資材をば必要な部面に割當配給すると云ふ權限を與へられると思ひまするが、同時に金融等の問題に付きましても、或る意味の各省の間を統一しまする一つの指揮權と云ひますか、斯う云ふものが安定本部總裁には與へられて居るのでありまして、目下如何樣に産業復興資金を、何と言ふか、割當配給でありますが、どう云ふ方面へどうと云ふやうな問題に付きましても、各省との間に協議を重ねて居ります譯であります、そこで安定本部自ら推進役となりまして、中小工業──商工業の問題でありますと商工省が直接の責任主管省でございますが、尚ほ勞務の方面もあり資材の方面もあり金融の方面もありますので、各省と密接な連絡の下に、一つの決まつた體系を形作る「プログラム」の上に中小工業の眞の復興を考へて居ります、其の爲に安定本部内には既に其の準備協議會とも申すべきものが作られて居ります、既に著手して居るのでありまして、徒らに經濟再建と云うことが、今の御疑念にありましたやうな大資本の擁護に終ると云ふことのない實を擧げたい爲に、折角努力を致して居ります、本法を運用しまするに於きましても、如何にして民主的にやるかと云ふことに付きましては、再三申上げましたから、繰返して申上げませぬが、兎に角所謂官僚の統制にあらず、眞に民間の意思をば、單に安定會議のみならず、日常の立案、施策の上にも反映しまするやうに、各界、各方面の方を或は部員とし、或は參與とし、或は囑託、顧問と致しまして、統制の實が、戰時中のやうな官僚統制と言ひますか、さう云ふものに流れないやうな用意をば十分致したい、斯う考へて居りますので、どうぞ其の點は從前と違ふ統制が行ひ得るものになると御信じ下さることを切に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=81
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082・田村定一
○田村委員 色々御親切な御答辯がありましたが、私達は過去に於けるさうした構成人員に依つて法の運用が或る一部に委任されたと云ふことを懸念して今の質問をした譯でありますけれども、無論我が黨として果して本案が適當であるか、適當でないかと云ふことは、又同僚諸君の質問の展開を俟つて決めるのでありますが、此の法を假に運用するとするならば、本當に民の聲を聽かれて實施されるやうに、又我々は國民と共に之を監視する積りであります
次に御伺ひしたいのは、斯うした法案が上程される、又されるであらうと云ふことを豫期して今日一部の業者間には或る株式會社を第三國人の名義に取替へる、或は又物資を第三國人の名義にすると云ふ事態が、相當行はれて居るやうに聞及ぶのでありますが、非日本人が持つて居る物資或は法人關係のものに對して、政府はどう云ふ風な目的で進められるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=82
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083・膳桂之助
○膳國務大臣 外國法人であれば是は問題が別でありますが、併し其の間に於きましても此の法律は屬地主義で施行されるものと思ひますので、御懸念の點は心配ないと存じます、殊に只今御心配になられましたのは、斯う云ふ企業補償打切に伴ひます經濟界の動搖に乘じまして、第三國人が株式をば買占めると云ふやうなことに依つて、其の會社が本法の適用外に出るのであるまいかと云ふ御心配ございますが、別に株式はどの手に渡りましても、法人は日本の法律に基く日本法人でありますので、當然本法の適用がございまするし、假に實質に其の工場の經營權がどう云ふ風に移らうとも、其の工場なり材料を持つて居る所がやはり日本の會社であり、日本の領土内にある場合に於きましては、本法は心配なく適用されると存じますので、其の點は御懸念はないと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=83
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084・田村定一
○田村委員 さうしますと、假に個人經營の工場でありましても、買占めた場合に、それが國家に必要であると云ふ時には、やはり之を此の本案に依つて適正化すると云ふことが出來ると云ふ風に解して宜い譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=84
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085・膳桂之助
○膳國務大臣 本法は屬地主義に適用されると思ひますので、今の御尋ねの通りと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=85
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086・田村定一
○田村委員 次に移りますが、是は戰災地の復興住宅の問題でありますが、復興院總裁にも關係あり、又總務長官にも關係がありますので、總務長官の御意見を承るのでありますが、今日空襲に因る日本の被害は、私が申上げるまでもなく二百五十萬戸と稱せられて居りますが、それが今日復興住宅は遲遲として捗らない、無論地方自治體が主體となり、或は又個人が主體となつて、住宅の建設に努力して居るのでありますが、新圓の封鎖或は資金封鎖と云ふやうな關係上、思ふやうに住宅が出來ない、隨て地方としても政府の助力を俟たなければ、恐らく住宅の建設復興と云ふことは、困難な状態にあるのでありますが、最近政府が計畫せられて居る所の復興住宅に對する所の補助と云ふことでありますが、此の補助を支給するに當つて、聞く所に依りますれば、六大都市とか八大都市に限られて居ると云ふことを聞いて居りますが、それは事實でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=86
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087・膳桂之助
○膳國務大臣 今囘の豫算の中に、經濟安定費として組まれて居りまする五十五億圓、是は此の前も此の委員會で御説明申上げた積りでありまするが、要するに公共事業に對しまする國の直接の費用及び補助費であります、今御尋ねの件も此の中に相當額含まれて居るのであります、私細かいことを存じませぬから、果して其の戰災復舊の事業費が、六大都市のみに限られて居つたのか、もう少し廣いのか、何れ調べまして御答へ申上げることに致します、一寸私其の詳細を存じませぬ、唯一言申上げますが、實は國民の住生活は、經濟安定の將來の根本問題の一つとしまして、實は食生活の改善、住生活の改善、是は大きい問題として、私の方で研究に著手して居ります、併しながら是は一方から申せば、日本は餘りに住居が木材に頼り過ぎると云ふ點もある、やはり將來の問題としましては、住生活を根本的に考へ直す時機に到達して居るのではないか、と申すのは、現在の木材の供給状況から考へますれば、二十年、三十年の内に此の住宅の、只今仰せられました二百五十萬戸の住宅の囘復は、到底見込もありませぬので、之を個人の建築のみに任せて置きましては、一部の人には行きますけれども、中々行き渡りませぬので、一つの公共事業としての別の構想が必要ではないかと考へて居りまして、是が安定本部の根本的の研究の一つに致しまして、研究に著手致して居ります、關係がありますので申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=87
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088・田村定一
○田村委員 今長官の御説明に依りますと、其の五十五億圓か幾らの中にさうしたものも含まれて居るやうに考へる、利用方法は六大都市か否かと云ふことははつきりしない、今分つて居らないと云ふ御答辯であるやうに聽いたでありますが、若しさうした經費があるとするならば、之を六大都市或は又八大都市に限られた都市に限定することが正しいか、又各戰災都市の人口或は又戰災戸數に按分して、之を各縣、各都市へ振當てることが妥當であるかと云ふことを一つ御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=88
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089・膳桂之助
○膳國務大臣 財源に限りがありますので、餘り薄く總花主義になりますと、どちらの目的にも帶に短し襷に長しと云ふ問題になりますので、私共の方で公共事業の費用を査定します際には、或る一定の標準を作りまして、やはり或る期間に物が完成すると云ふことを標準に致して、査定して居りますので、只今のやうな總花主義にやることは考へて居りませぬ、併し決定はして居りますけれども、六大都市に限つて行つて居つたのかどうか、其の邊の細かい數字は只今持つて居りませぬから、重ねて調べて申上げます、既に是は決定して居る問題であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=89
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090・田村定一
○田村委員 決定して居ると云ふことが、第一私はお上の決定であつて、本當に各戰災都市の、或は市町村長の聲を御聽きになつたのではないと思ふ、第一さうした經濟安定本部の費用に於てすら、民主的に行はれて居ないと云ふことを我々は言ひ得るのであります、今日無論何れの都市も、戰災都市は住宅難に困つて居るのであります、況してや凡ゆる産業の生産地、今日色色な「セメント」、肥料、又石炭、凡ゆる部面の生産地が爆撃されて燒土と化して居る、隨てさうした生産工場が殘つて、住宅街が燒かれて居る、斯うした場合にはどうしてもさうした重要産業に必要な地帶には住宅を何よりも率先して建てなければならない事態が日本全國に多々あると思ふのであります、さう云ふことを考慮されずして、唯都市が大きいからと云ふ點に於て、其處へ集中的に持つて行かれるやうな決め方は私はどうかと思ふ、今日經濟安定本部の使命はさうした點を「バランス」を取り、而して經濟安定の、或は日本再建の大きな役割を果さなければならないと思ふのでありますが、さうした割當に於て僅かな少數都市に、帶に短し襷に長しと斯う云ふやうに言つて居られるけれども、實際に必要に迫られて居る、本當に生産地帶に必要なことを調査されてやらなければならないと思ふのでありますが、さう云ふ點は考慮に入れてないやうに見受けるのでありますが、其の割當はあなたが就任されてから出來たのではないのでありますか、就任以前に出來たのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=90
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091・膳桂之助
○膳國務大臣 公共事業に對します割當を如何なる順序にやるかと云ふことは、私が就任しましてから一定の標準を決めまして、關係方面とも協議をしまして、それに依つて實際上割振つて居ります、尚ほ戰災復興に關しまするものを一部の都市に限局して居ると云ふ意味では決してありませぬ、唯財源が限られて居りますので、之を日本全國に按分しますれば、殆ど何等の事業も出來ないやうな非常な僅かのものになりますので、必要の緩急、戰災復興の如きは例へば六大都市、大都會に於きましては復興が甚だ遲々たるものがあるのでありますが、中小都市には自ら復興も自然的に出來て來る部分もあります、少い豫算をば大きな需要に充すのでありますから、丁度物資統制に於きまして僅かな物を澤山な需要に統制を以て重點主義に一つ再建目的に合ふやうに分ちまするやうに、やはり方針と致しましては重點主義に漸次急のものより必要の緩のものに及ぶ、是が適切と思ひまして、左樣の標準を安定本部で定めまして、安定本部で分けました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=91
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092・田村定一
○田村委員 是は幾ら言つても話は盡きないのでありまするが、是は先刻も申しましたが、唯私が一つ擧げた實例に於ても民主的に決定されて居らないと云ふことは、恐らく各縣或は市町村、戰災都市の各都市の關係者がさうした割當に當つて、或は又復興問題に關しての意見を徴せられたことは私はないと思ふ、唯經濟安定本部だけで決められる、經濟安定本部の構成員が都會にばかり住んで居られる人であつたならばさう云ふことを考へられるかも知れないが、他都市のさうした生産に重要な面のある所は、相當今後に於て、或は其の内に於て、又將來に於て考慮されなければならないと思ふ、私は六大都市だけが生産の重要地帶ぢやないと思ふ、實際に先程も言ひましたやうに、工場地帶は殘つて居る、生産面の事業場は殘つて居るが、住宅は全部やられて居ると云つた時には、増産をしなければならないと云ふ建前ならば、當然さうした方面に住宅を私は急ぐべきであると思ふ、又もう一つ御尋ね致したいのでありますが、若しさうした面に於て今日經濟安定本部で決められた其の枠が限定されて外せないと云ふ場合に於て、軍需工場或は又其の他が爆撃され、又は終戰後工場が閉鎖して居る、或は又再起不能になつて居る、斯う云ふ土地に相當な社宅が殘つて居る、是は各地で調べられたら分るのでありますが、此の社宅を戰災都市の市町村へ優先的に配置する、所謂讓渡すると云ふことを私は經濟安定本部で斡旋せられることが適當であると思ふが、さう云ふことが出來るかどうか、又今日さうした工場面に於て放棄されて居る社宅が一體誰の手にあるのか、假に一例を申上げますならば、山口縣に於ては光工廠の社宅が何百と空いて居る、斯う云ふものは一體誰の手に移つて居るか、是はさうした市町村へ讓渡出來るか出來ないかと云ふ點を御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=92
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093・膳桂之助
○膳國務大臣 只今の御考へは、此の住宅難の際に、有閑住宅をば必要に迫られて居る面に移すと云ふ非常に面白い、と申しては甚だ失禮であります、けれども、一つの考ふべき御考へだと存じます、唯安定本部でまだそこまでやつて居りませぬけれども、先程も申しました通り、安定本部の仕事の一つとして國民生活に必要な住宅政策の問題も、關聯して國民生活の安定の上に考へべきこととして考へて居ります、其の時の尊重すべき一つの案として考へて見たいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=93
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094・田村定一
○田村委員 色々質問したいのでありますが、時間も制限がございますので私は是で打切りますが、唯最後に國務大臣に御希望申して置きますことは、さうした有閑住宅が既に澤山あるのであります、其の點を一つ至急に考慮されて、善處されんことを希望して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=94
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095・竹田儀一
○竹田委員長 金子君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=95
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096・金子益太郎
○金子委員 最初に、今度の需給調整法案に依りますと、凡ゆる物資の、特に重要な物資の生産配給及び其の加工が安定本部に移されると云ふことになるのでありますが、其の安定本部の行き方やり方と、更に本會議に上程されて軈て此の委員會に移されます所の商工協同組合との關係はどう云ふ風な關係に相成りまするや、一つ御伺ひしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=96
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097・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 此の物資需給調整法は其の名前の示します通りに、物資の流れ方を規正する法律でございます、商工協同組合法は主として中小商工業の組織化の法律でございます、隨ひまして、中小商工業者が協同組合を組織することに依りまして其の企業で共通なもの、共同施設を設けますとか、或は原材料を共同購入致しますとか、或は製品を共同販賣致しますとか、或はさう云ふ事業と共に資金の融通を受けるとか云ふことに依りまして、其の共同の力で業界の改善を圖つて行く、自分の事業の改善を圖つて行く、斯う云ふ點に協同組合法の目的があるのであります、併しながらさう云ふ仕事と共に、中小商工業者の方が其の資材受入れの道を此の法律に依つて得ることも出來るのであります、即ち中小商工業者の方に物資を、流します場合に、協同組合を此の第二條の産業團體に指定致しまして流すことも考へられるのであります、但し其の場合に於きましては、やはり他の業界を改善する共同事業と云ふものがありまして、協同組合としての資格があるものを協同組合として認めまして、之に併せて物資の需給の仕事も第二條に依つて權限を與へる、斯う云ふ形になるのでありまして、唯第二條の割當をするだけの協同組合と云ふのは是は認められないのではないかと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=97
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098・金子益太郎
○金子委員 次に終戰後に於ける日本の再建と云ふものが、産業の再建と云ふ所に大きな基礎があることは私が多く言はなくても、各委員の方からも質問され、安定本部の長官の膳さんからも御答辯がありましたので、多くは申上げる必要はないと思ひます、唯、將來、又現在に於きましても、日本の産業を再建するに當りまして、日本の力即ち自給自足では到底不可能であると云ふ風なことが度々政府當局の方からも言明されて居るのでありますが、自給自足が不可能でありますれば、是はどうしても聯合國側の方の資本の導入に依らなければ再建が出來ないと云ふ結論に入つて來るのでありますが、早急の産業再建にしても、將來に於ける日本産業の再建に致しましても、一體どの程度の外資と云ふものが導入されれば早急に産業の再建が出來、且つ將來日本が世界に於ける經濟の分業を分擔するに當りましても、一つの獨立國家、文化國家としての體面を保ち得る産業再建の基礎をなし得るか、どの程度の外資と云ふものの導入が必要であるかと云ふことの御見透しが若しございますれば、大臣から御聽かせ願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=98
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099・膳桂之助
○膳國務大臣 正直に申しますと、さう云ふ見透しを附ける爲にも安定本部が出來た、斯う申上げて宜いことでありまして、是は是からの日本の差當りの問題を申しましても、賠償の工場が指定されて持つて行かれる、其の後に國内の資材がどう云ふ風に需給が出來るか、不足の部分がどうか、色々なことの見合ひ、又是から賠償に關する國費の支出もございます、色々な財政面からも見まして、そこで二年先、三年先、五年先と段々に年次的の日本の産業再建竝に財政の計畫が立ちまして、全體の見合ひが出來ましてから、どんな風な物或は金に於て國外からの援助を乞ふことを必要とするかと云ふことが定まるのでありまして、今日直ちに是れ是れの金額があれば復興出來ると云ふやうな早い見透しは中々困難と存ぜられます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=99
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100・金子益太郎
○金子委員 先程石炭の問題が出た時に、現在の状態では石炭の増産と云ふものは到底早急に期待し得られない、其の爲に資材の點、特に直ちに使ひ得る完成品の援助を聯合國に仰ぐべく努力中だ、斯う申されて居りますが、然らば日本産業の動力である所の石炭の再建に際しまして、聯合國からどの程度の資材の援助を仰げば日本石炭の増産が可能になるものであるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=100
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101・膳桂之助
○膳國務大臣 目下日本が必要とする資材、是は或る一定の標準を作りまして聯合國の方に輸入方を懇請致して居ります、是は今御尋ねのやうな日本の産業の應急の復興に差當り必要な物資を種々調査致しまして目下交渉中でありますが、少し交渉の微妙な點に亙りますので、是れ是れのものを是れ是れだけと云ふやうなことは將來の協議に差支へが出來ますので遠慮さして戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=101
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102・金子益太郎
○金子委員 其の點は、聯合國との交渉に微妙な點があるのでと仰しやいますから、深く御聽き致さないことに致しまして、假に、日本が左樣な早急な援助を仰いで稍稍立直る、其の立直りの上に基礎を置いて金なり物なりの更に大きい援助を仰がなければならない、斯う仰しやいますが、然らば日本産業の是から國際場裡に於ける建直しに際しまして、若し將來金なり物で援助を仰ぐ、他の言葉で言ひますならば外國資本が導入される場合には、如何なる産業の部面にさうしたものを仰ぐことになるのであるか、どう云ふ産業部面に外資の導入を必要とするかと云ふ御見透しに付て御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=102
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103・膳桂之助
○膳國務大臣 是等も是からの事情の變化に伴ひまして自ら決定さるべきものでありまして、差當りの所は金よりも差當りの入用の物に付ての援助を懇請して居りますが、是等の再建の方策が定まりますると共に、物か金か、又どう云ふやうな方面かと云ふことが自ら定まつて參りますが、今日からの豫想は直ちには申上げ兼ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=103
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104・金子益太郎
○金子委員 どう云ふやうな産業部面に物なり或は金なりの援助を仰がなければならないかと云ふことに付きまして、今の御答辯ではさつぱり明瞭にならないのでありますが、少くとも日本産業が將來どう云ふ風に行くべきかと云ふことに對しまして一つの見透しを持つと云ふことは、現在の日本の凡ゆる産業の條件と云ふものを基礎に置きますならば、大體に於て將來の見透しと云ふものも付くのではないかと思ふのであります、御分りにならないと云ふならば是は甚だ心細い話でありますが、併し一つ眞劍に考へて戴きたいことは、日本産業の動力である石炭が早急に増産されなければ日本産業が潰滅の危機に瀕すると云ふことも多く言はれて居るのでありますが、此の石炭の増産に對しましても、早急に今申上げましたやうな、例へば金なり物資の援助を仰がなければ石炭の増産は期待し得られない、斯う私共は考へて居りまするが、政府當局は、聯合國に對しまして石炭の増産に早急に必要なる物資の援助を仰ぎ、若しそれが出來なかつた場合はどうするか、若し其の物資の援助を懇請して出來なかつた場合でも、尚ほ其の他の方法を以て日本の産業を潰滅に歸せしめない所の石炭増産の方策を立て得るかどうか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=104
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105・膳桂之助
○膳國務大臣 私が、將來の資材及び資金の輸入の計畫に付て全般的のものは段々と定まる、斯うは申上げましたが、御尋ねはさう云ふ點でなくて、差當り重點を置いて再建をせねばならぬ、増産を圖らなければならぬ、さう云ふ産業に付ての資材の手當をどうして居るかと云ふ方面に重點が置かれて居るやうでありますが、何を申しましても、第一番に差當り必要な振興を要する産業は石炭工業であり、又人造肥料、化學肥料の製造の業であり、鐵道又は通信等の恢復に要する資材であると云ふことは、もう勿論申上げるまでもないことでありまして、續いては日本の見返り物資として、最も重要な地位を占めまする綿業の如きであり、尚ほ製鐵業、「セメント」、木材等唯應急に此の振興の必要のあるもので、又さう云ふものに對しましては、政府は折角是等の緊急の必要な資材に付きましては、先程申します通り、聯合國の好意に縋りまして、輸入を懇請して居る譯でありますが、入らなかつた場合はどうするかと云ふことを御尋ねでありますが、どうも入らなかつた場合は、現在我々が國内で此の需給を調整し得るものであれば、其の調整し得る資材を優先順位にさう云ふ方面に配給致しまして、出來る限り資材の缺乏の爲に基礎的の産業の振興の弛まないやうに努めるより外はないと、斯う申上げる外はありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=105
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106・金子益太郎
○金子委員 勿論輸入を懇請致しまして、それが許可されなかつた場合は、今御答辯になつたやうな方法で努力を傾けるより外方法はないでありませう、併し私は一番最初に聽いたことは、將來日本の産業を再建するに當つて、要するに物なり金なりの導入が、輸入が、どの程度になるかと云ふことと、若しさう云つたことをやる場合には、一體どう云ふ産業部面に重點的に、言葉を換へるならば、どう云ふ重點産業に外國資本の導入と、又資材の導入が必要かと云ふことを御聽きして居るのでありますが、長官がどうもそれが御見透しが付かないと云ふ御答辯ですが、大體の見透しと云ふものが御付きにならないものでせうか
〔委員長退席、宮前委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=106
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107・膳桂之助
○膳國務大臣 差當り資金の供給を仰ぐと云ふことは困難と存ぜられます、そこで資材のものとしての供給をば懇請して居るのでありますが、是は或る目標を定めまして、緊急の必要なものに付て相當の數量のものの輸入をば懇請して居る譯であります、其の内容等に付きましては、先程申します通り、協議のまだ過程にありますので、此の席で發表申上げる譯にも參りませぬ、左樣御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=107
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108・金子益太郎
○金子委員 是は最近に於ける所の石炭國有の問題と關聯して居るのでありますが、勿論是が國有になるか、ならないか、させられるかどうかと云ふこともまだはつきり分らない時でありますから、どうかと思ふのでありますが假に對日理事會に於きまして、日本の炭礦を國有としなければいかぬと云ふやうな方向に向つて參ります時に、さう云ふ時には、一體政府は其の對日理事會の勸告案に從つて炭礦國有の線に從つて行く御考へで居られませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=108
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109・膳桂之助
○膳國務大臣 此の問題に付きましては、商工大臣が過日此の席上で御答へがあつたのでありますが、對日理事會で石炭の國有問題を國有問題として取上げたと云ふやうなことは承知致して居りませぬ、石炭の國有問題と云ふやうなこと、竝に此の補給金の問題等に付て將來どうすれば宜いのかと云ふ風な意味合の何か協議事項があつたと云ふことでありますが、政府は別に此の點に付きまして、將來石炭を國有にさせるぞと云ふやうなことをば暗示されるやうな何等の指圖も受けて居る譯ではありませぬ、隨て全然まだない問題に付きまして、今假想的に茲に斯うだああだと云ふことは申上げ兼ねると存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=109
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110・金子益太郎
○金子委員 假想的な問題で御答へは出來ないと云ふことでありますから、其の點は是れ以上申しませぬ、今日の新聞を見ますと、石炭の補償金制度は近く止めまして、何か新しい別の方法でやると云ふやうなことが報道されて居りますが、補償金制度を止めまして別の方法をやる、其の別の方法とは一體どう云ふ方法でおやりなさるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=110
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111・膳桂之助
○膳國務大臣 補償金制度がうまくないと云ふことは、大藏大臣から色々な委員會で御述べになつて居られるやうでありますが、安定本部の關する限りに於きましても、此の補償金制度に依つて本當の物價政策が行はれずに、そこに假裝的と云ひますか、言葉は不適當でありますが、若し擬制資本を打切ると云ふことがありますならば、擬制的物價を有して置くと云ふことが經濟安定の根本策に合はないと云ふやうな考へもありますので、此の補給金制度を二重物價の一つの緩衝地帶として置くと云ふやうな制度は、物價政策の上から言ひましても、今後漸次廢止さるべきものと私共は考へて居ります、石炭の補給金に付きましては、慥か十月一杯で其の補給金がなくなつて、別の制度を考へられると云ふことになつて居るのだらうと思ひますが、是は石炭の價格と云ふやうな問題に絡んで決定さるべき問題であり、一方には又石炭の増産と云ふことに重大なる關係のあることでありますので、政府の各方面で折角研究中であります、隨て今日斯う斯うであると云ふことをまだ申上げるまでになつて居らぬと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=111
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112・金子益太郎
○金子委員 此の十一月と申しますと、只今も九月の十二日になりまして間もない譯です、一體さう云つたやうな問題に對しましては、大臣から、祕密にしないで、増産の出來るやうな案であれば、其の大綱でも御示しなさいまして、今日の炭礦業者にしても、或は又從事の勞働組合の方々に致しましても、十二分に増産に從へるやう、業者も亦勞働組合も非常なる生産意欲が起るやうな若し案を立案中でありましたならば、其の立案の内容の明細な點は別と致しまして、斯う云つたやうな方法で行くなれば石炭増産は可能であらう、補償金は止めても、斯うした方策で行くなれば確かに増産は出來ると政府は信じて居る、斯う云ふことを一つ御示しになつた方が、却て今日の業者に致しましても、又それに從事する所の勞働組合の方々に致しましても、非常な明るい氣持を以て將來に向つて邁進出來るのぢやないか、細かい點は結構でありますから、大體の方向を一つ御示し下さいますなれば、其の時になつてばさつとやるよりかも、今から大體其の方向が分りましたらば、其の方向に從つて業者も又組合の方々も努力が出來るのではないかと思ふのであります、例へば今日あたりの新聞を見ましても、石炭に對する報奬金制度は廢めて別な方法が採られる、斯う云ふことがありましたならば、一體別な方法とはどう云ふことだらうと云ふ色々な不安がみんなに持たれるのではないか、さう云ふ不安を持たせると云ふことは、私は増産上芳しくないことだと思ひます、ですから細かい點はどうあらうとも、大體明るい氣持を起させる案でありましたならば、其の方向だけでも御示しを願つて、炭礦に關係ある方々の生産意欲を催さして戴けば大變結構であると思ふのでありますが、一つ大體の傾向で結構でありますから御話を願ひたいと存じます
〔宮前委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=112
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113・膳桂之助
○膳國務大臣 此の問題は本院の中でも各派共通に石炭増産に關しまする對策委員會の設けもあられて、政府と協力して此の問題の解決に當り、非常に政府も感謝して居る譯でありますが、斯う云ふ問題の解決に際しましては、是は我が國の差當りの經濟再建の第一歩の踏み出しで、相當色々な點に困難な情勢もありますので、折角今各方面で研究して居ります、まだ其の片鱗も實は申上げるまでの機會になつて居りませぬ、只今の御話のやうな斯う云ふ問題はもう輪郭が出來て初めから打明けて相談するのが然るべし、其の通りに存じて居りまして、私安定本部と致しましても、さう云ふ風な時期が出來るだけ早く來るやうに推進致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=113
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114・金子益太郎
○金子委員 各派との關係もあります所なので御話が出來ないと云ふ御答辯であります、其の點は御察し致しまして、では大體其の話が纒まつて全貌が分るのは、何時頃になつたならば、一體御分りになるのでせうか、成たけ是は早い方が宜いと思ふのでありますけれども、一つ御知らせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=114
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115・膳桂之助
○膳國務大臣 出來るだけ早い方が宜いと云ふ積りで推進致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=115
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116・金子益太郎
○金子委員 大體早い方が宜いのでありますが、何時頃になるものかと云ふ御答へが、早い方が宜いと云ふのでは、是は水掛論になりますから、是非一つ一日も早く此の全貌を國民に打明けまして、そして之に對して全力を擧げて戴くやうに政府當局の御努力の程を御願ひして置きます
次に現在中小工業が各方面の工場で動いて居ります、動いて居りますが、此の工場が動いて居ると云ふ一つの原因は、其の資材の點に於て、手持品があつた、又自分になければ他の手持品を融通して貰つてやつて居ると云ふやうな状況でありまして、此の手持品が漸次缺乏しつつあります、一體今日の日本の中小工業が動いて居る所の現状が手持品で動いて居る、此の手持品が大體涸渇し始まつた、政府の方で考へて御調査や何かになつて居るでせうけれども、今日の動いて居る工場が手持品を何處まで補給出來るか、政府の御調査に依つて今動いて居る工場が、どうにか斯うにか、あつちからかこつちからか、安定本部の方からも色々な指圖や配給、さうしたものを受けまして、どの程度動いて行けるか、今年一ぱい動けるのか、或は又來年の六月頃までに其の手持品を使ひ切つてしまふのか、或は又一年後までも、どうにか斯うにか今日動いて居る工場が動き得る程度の資材が今日日本にあるのかどうか、之を一つ御聽かせ願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=116
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117・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 中小工業の方が今日主として其の手持ち資材で物を造つて居られますことは仰せの通りでございます、新しい割當と申しましてもさう澤山のものはございませぬから、主として從來持つて居られました手持のものを使つて營業をやつて居られることは御説の通りでございます、而も其の材料が段々減つて參りまして、どの工場も恐らく半年位、精々長くて一年位のものを御持ちになつて居るやうなことも伺つて居ります、唯是で御終ひかと申しますと、大分現在ありまする隱退藏物資と致しまして、最近政府等の調査致しましたものの中には、適寸でない爲に使へないものもございます、之を再壓延致しまして、適寸のものに致しますると、相當是が所謂原材料として直ぐ使へる形になるのでございますが、只今は石炭がございませぬ爲に之を熔かすことが出來ない、從つて目の前に「スクラップ」等も澤山ございますが、之を活用出來ない状況にあります、隨ひまして今後は石炭の生産が増加致しますれば、斯う云ふものを再壓延致しまして、適當な原材料、所謂直ぐ使へる原材料に代へまして供給をして行く、之を通常の配給「ルート」に乘せて配給をして行くと云ふことで、或る程度「ストック」の減ることを「カバー」出來ることであらうと考へます、併しながら絶對的にはさう殖えませぬので、どうしても今後新しい生産を殖やし、又物に依りましては輸入を懇請致しまして、海外からの補給で補つて行く、斯う云ふことで一般の資材の補給を付けて行く、斯うなることであらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=117
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118・金子益太郎
○金子委員 只今の御話を聽いて悲觀するやうな、或は又出來ますなれば非常に結構だと云ふやうな感じがするのでありますけれども、實際適寸でない爲に使へない、それを伸銅すれば使へると云ふことは、實際我々も能く工場の事情を見まして承知して居るのでありますが、是も結局石炭の問題に依存するのであります、愈愈適當なる材料がなくなりまして、其の適當ならざるものを伸銅し直せば又工場が續行出來る、さう云ふ時に尚且つ石炭の供給が十分でなくして、熔かし伸銅し得られないと云ふやうな状況に陷りましたならば、日本の中小工業は正に壞滅に陷つてしまふのではないかと私は實は憂へて居る次第であります、そこで現在の手持品を使ひ終る頃までに石炭の増産が出來、其の適寸でないものを適當な寸法に直し得られる見透しが御付きになりますかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=118
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119・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 只今の適寸のものに直すことに間に合ふかどうかと云ふ御尋ねでございますが、之は一に石炭の増産の問題に懸つて居ることと存じます、幸ひに致しまして最近石炭の増産は非常に順調のやうでございますので、漸次之を鐵鋼の方に廻して行くことが可能であると考へて居ります、今日までは主として進駐軍の用途、或は肥料の方面等に重點的に石炭の配給が廻はつて居つたのでございまするが、餘裕が出來れば先づ第一に鐵鋼方面、其の他金屬、非鐵金屬方面等に廻はしたい積りでございますから、今後の増産の分は相當に之に廻はるものと見て居ります、唯此の意味に於きまして、最大の問題と致しましては、色々北海道の煖厨房の問題等もございまして、さう急には行きませぬが、逐次増産の部分は第二年度位から此の方に廻はるのでないかと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=119
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120・金子益太郎
○金子委員 さうしますると云ふと、石炭の増産が順調に行つて居るから、中小工業者の運轉上に於て穴が開かないと解釋して結構ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=120
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121・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 中小工業者の原材料と申しますと色々ございますが、私は鐵鋼だけ今申上げたのでございますが、鐵鋼に付ては何とか穴が開かないやうに努力したいと考へて居ります、其の他の纖維或は皮革「ゴム」、資材は色々中小工業のものにもございますが、是等は主として輸入に俟つものでございまして、國内では何とも出來ないものでございますから、是は成べく輸入を懇請して早く物が入るやうに努力したいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=121
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122・金子益太郎
○金子委員 次に御伺ひしたいのは、今日本の銅の問題はどう云ふ風になつて居るでせうか、日本の産業再建の上から言つて銅の占める位置、且又其の量、是は増産に向ふべきか縮小に向ふべきか御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=122
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123・池田欽三郎
○池田(欽)政府委員 銅の問題でありまするが、全般需要量を申しますと、年間約五、六萬「トン」の銅が要るのであります、之に對しまして生産状況はどう云ふ風になつて居るかと申しますと、終戰後激減致したのでありまするが、逐次増加して參りまして、八月の如きは二千「トン」を超えまして、今年度は大體目標を二萬五千「トン」に置いて居るのでありますが、此の調子で行けば石炭の入手が大體豫定通り行きますれば、目標を達し得ると云ふことになつて居るのであります、隨ひまして此の需要六萬「トン」ばかりに對しまして供給量は二萬四、五千「トン」で其の差額をどうするかと云ふ問題でありますが、之に付きましては、現在手持ちと致しまして故銅が數萬「トン」ございます、それから電氣銅も約三萬「トン」前後の保有を致して居りまして、隨ひまして伸銅品關係に付きましては、此の故銅を活用致しまして製品に當てると云ふことに致して居りまして、大體需要の方は賄つて行けると思ひます、唯電氣銅の方に付きましては若干不足するのでありまして、此の電線銅を原料と致して作ります所の電線の如きは、相當不足するのではないかと考へて居ります、殊に進駐軍用關係と致しまして、相當電線を要しまするので、此の點を考へまして電氣銅の輸入と云ふ問題は將來懇請しなければならぬと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=123
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124・金子益太郎
○金子委員 さうしますると云ふと、銅は別にあり餘つて仕方がないと云ふ譯ではないのですね──さう致しますと、最近秋田縣邊りの小坂鑛山或は尾去澤、花岡と云ふやうな鑛山に於きましては、事業の縮小を今やつて居り、其の爲に矢業者が續出して居ると云ふやうな状況に今直面して居るのでありますが、一體銅が左樣にあり餘るものではない、十分でないと云ふことが分りつつ各銅山が事業の縮小をやつて失業者を出して居ると云ふことを政府當局はどう云ふ風に御考へになつて居るか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=124
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125・池田欽三郎
○池田(欽)政府委員 秋田縣にありまする小坂鑛山或は尾去澤鑛山に於きましては、現在完全操業をして居ないのでありまして、是は主として金屬精錬用の石炭「コークス」が十分手に入りませぬので、或は一爐作業、半爐作業と云ふやうなことを致して居りますので、現在多少の剩員を持つて居る、斯樣に考へて居ります、それに依りまして現在或る程度の整理を致して居るのだと承知致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=125
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126・竹田儀一
○竹田委員長 竹谷君御留保になつて居る膳國務大臣に對する御質疑を許可致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=126
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127・竹谷源太郎
○竹谷委員 先日某委員の質問に對しまして、膳國務大臣は内閣總理大臣の各省大臣に對する指揮命令の權能は官制の結果であると答へて居られるのであります、是はどうもはつきりして置かなければならぬと思ひますが、現行憲法の第五十五條に依ると、「國務大臣は天皇を輔弼し其の責に任す」とあつて現行内閣官制の第二條に「内閣總理大臣は各大臣の首班として機務を奏宣し旨を承けて行政各部の統一を保持す」とあり、第三條に「内閣總理大臣は須要と認むるときは行政各部の處分は命令を又中止せしめ勅裁を待つことを得」とありまして、是は内閣總理大臣は各省大臣の上級官廳ではないと云ふことが現行憲法では明かであると思ふのでございます、そこで現行憲法で經濟安定本部令と云ふ官制が出來たとすれば、是は違憲と申さなければならないと思ふのであります、だから官制の結果内閣總理大臣が各省大臣に對し指揮命令權を持つて居ると、斯うは言へないと思ふのでありますが、此の點は尚ほ改正憲法案の第七十二條に「内閣總理大臣は、内閣を代表して議案を國會に提出し、一般國務及び外交關係について國會に報告し竝びに行政各部を指揮監督する。」とありまして、現行憲法の第五十五條とは全然其の趣旨も違ひ、内閣總理大臣は各省大臣の指揮監督すると云ふことが見えるのであります、此の點はつきりして置かなければならぬと思ふのでありますが、膳國務大臣の御所見を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=127
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128・膳桂之助
○膳國務大臣 只今御指摘になりました内閣の官制と同じ勅令で官制が定まつて經濟安定本部が出來て居るのでありまして、やはり是は一つの内閣官制の一部分と解釋せられるのであります、其の内閣官制に依りますと、總理大臣は安定本部の事務を行ふに付て必要ある時は關係各省大臣に對して必要な事項を命ずることが出來る、やはり此の勅令も現行憲法に基いて發せられたものでありまして、一般の内閣官制に於きましては、内閣總理大臣は各省をば指揮することはあり得ないのであります、今御言ひになつた通りでありますが、經濟安定本部の事務に付きましては、憲法に基きまする特別の官制がありまして、各省大臣をば指揮することが出來ると相成つて居るのでありまして、是も憲法に基いた官制でありまして、違憲とは存じて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=128
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129・竹谷源太郎
○竹谷委員 無論現行内閣官制が足らないから勅令として本部令があることは私も同感に思ひますが、唯現行憲法の建前から言ひすと、國務各大臣が天皇を直接輔弼するのであつて、内閣總理大臣の監督の下に、其の指揮命令の下に輔弼するのではないと思ふのであります、隨て現行憲法から内閣に經濟安定本部令と云ふものが直接出來得る筈はない、斯う考へます、私は寧ろ「ポツダム」宣言に基く聯合軍最高司令官の日本管理に關する命令の結果出て來るものだと思ひます、此の私の見解が違ふかどうか御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=129
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130・膳桂之助
○膳國務大臣 内閣總理大臣が各省大臣を指揮することが出來るかと云ふやうなことに付きましては、慥か曾ても斯う云ふやうな特別官制が出來るかどうかと云ふことに付て憲法の解釋に付てはやはり御説のやうな意見もあり、又現在の安定本部令のやうなものが、憲法に合法的なものであると云ふ解釋、兩樣の解釋があつて爭はれたやうな事實もあるやに承知して居るのでありますが、現内閣は斯う云ふ特別の内閣官制に除外例と申しますか、斯う云ふ官制は違憲にあらず、左樣な見解を採用しまして此の本部令が出來ました譯であります、別に現在の政府は「ポツダム」宣言に基きます「ディレクティヴ」をば、安定本部に付きましては何も受取つて居りませぬ、政府獨自の一つの國内立法と致しまして勅令で定まりましたものと承知致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=130
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131・竹谷源太郎
○竹谷委員 是は從來の政府としての解釋から申しましても、學説も殆ど異論がなく總理大臣は各省大臣を直接指揮監督はしはい、若し其の必要がある場合には、現行内閣官制第三條にもある通り、必要な場合には其の事務を一時停止して勅裁を仰ぐと云ふことの建前から見ましても、是は明かであると思ひます、どうも今の膳國務大臣の御意見では私は承服し兼ねるのでありますが、此の點は此の程度で打切りまして第二の問題に移ります
經濟安定本部令の第一條に物資の生産配給及び消費、勞務、物價、金融、輸送等に關する經濟安定の緊急施策に付て企畫立案云々と云ふ、此の經濟安定をすると云ふことが、經濟安定本部の使命であるやうに承知するのでありますが、此の經濟安定と云ふのは經濟上の如何なる問題に付て安定を策定するのであるか、先般來各委員から種々の角度から質問があつたに拘らずどうもはつきり致して居りませぬ、併しながら此の經濟安定の問題に對する經濟上の如何なる方向に付て安定を策定するのか、是だけは分つて居られると思ひますが、御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=131
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132・膳桂之助
○膳國務大臣 極く簡單に申しますと、現在の經濟が戰後の影響を受けまして色々の混亂、非常の事態を呈して居ります、之をば正常の物資の方面から申しますれば需要と供給とが相適合しまして、國民が其の日其の日をば、生を安んずる如き經濟状態に持つて行く、是が經濟安定の目標であり、又經濟安定方策が如何なる方面に行くべきかと云ふことを示す根本の道筋と考へる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=132
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133・竹谷源太郎
○竹谷委員 凡そ現在の混亂した經濟界の安定をするには、國家財政を安定することと國民の經濟生活を安定することと、さうして産業界と言ひますか、事業界と言ひますか、經濟界の安定と云ふやうな方面であらうと思ひます、是等の方面に對する一連の經濟政策に付ては、石橋大藏大臣は、國家財政に付ては赤字財政を以て益益財政を不安定にして居る、通貨に付ては預金の封鎖なり、或は新圓の發行、新圓の使用期限の制限と云ふやうな「デマ」に對しては左樣なことはないと言つて居りますが、兎に角國家の財政金融政策が、益益貨幣の信用を失墜せしめて居る現状であります、それで國民は安んじて財産を保有して居ることが出來ない、經濟の不安定は蓋し政府の國民大衆の利益を顧みない所の經濟政策に由來して居るのではないか、斯う言つても過言ではないかと思ふのであります、私の考へる所では現在の混亂した經濟の安定は煎じ詰めますと物價の安定或は通貨の安定と云ひますか、是と物資の生産増大、此の二つに歸著すると思ふのであります、それで政府も物價廳を設定して物價の安定を圖らんとし、又只今提案されて居る臨時物資需給調整法を作つて物資の大増産を目論んで居る、此の點から考へましても、生産の増大と物價の安定と云ふことが、經濟安定の根本的な最大の眼目であると考へて宜しいのではないかと思ひます、面して此の二つの大問題は御互ひに非常に緊密な關聯を持つて居つて、車の兩輪の如く、片方だけ安定して片方が安定しなければ駄目である、物價が安定しなければ生産の再開も望めない、物資の生産が増大しなければ「インフレ」は止まらないと云ふ現状であります、此の二つの非常に困難なる問題に付きまして、どうも現在までの委員會の進行中、我々の首肯し得べき政策を國務大臣から發表されないのは、甚だ遺憾であります、經濟安定本部は只今問題に致しました内閣總理大臣の經濟安定に對する各省大臣に對する指揮命令權から申しましても、大藏大臣なり或は商工、農林其の他經濟大臣を指揮監督する所の權能を有して居るのありますから、是等の各省の財政經濟政策に關しまして、其の意圖とする基本的企畫の大體の方向だけでも、今此の委員會で我々は承知致したいと思ふのでありますが、まだ經濟安定本部は我々に示すべき此の企畫の方向がないとしますならば、私見を申上げて政府の御所見を承りたいと思ひます、私の郷里は宮城縣でありますが、此の宮城縣に明治年間に一代で千萬長者になつた齋藤善右衞門と申す人がありました、彼は大正十三年に齋藤報恩會──三井報恩會などは之を眞似たのでありまして、此の齋藤報恩會なるものを作る時に挨拶をして言つたのであります、自分は經濟的に悟を開いた、富豪が財産を所有すると云ふ考へは、是は富豪の迷ひである、本常に考へて見ると富豪が財産を所有すると云ふことは、所有ではなくて管理權を單に持つて居るに過ぎない、然らば所有者は誰かと申しますと、それは天地神佛、天皇衆生──衆生と云ふのは是は人民のことであらうと思ひます、天地神佛天皇衆生である、それで富豪は管理權の受任者に過ぎない、管理權を行使することを委託されたものに過ぎない、仍て管理能力のある者は其の能力を有する間だけは管理する、而して能力を失ふか、或は四圍の事情がそれを許さない場合には、管理權を喪失すべきである、自分の子孫は財産を無くなしても宜しいし、又無くなさなくても宜しい、唯自分の子孫を此の報恩會の理事長にだけはして呉れと云ふやうなことを挨拶に申したさうであります、偖て此の日本の現状は大敗北を喫したのであつて、凡ゆる方面で大破産をして居ります、それで徹底的に之を清算して新しい建設に向はなければならないと思ふ、戰爭中までの指導者は總退陣をして憲法の革命的な改正に依つて、金森國務大臣は何と説明致しませうとも、統治權の總攬者も變更した、政治上社會上の凡ゆる特權はなくなつた、貴族、皇族も減る、貴族の既得權は消滅するのであります、斯う云ふやうな場合に經濟上の既得權に付ては、大財閥が瓦解しただけで、經濟上の既得權益と云ふものは其の儘で殘つて居る、此の際財産上の既得權益を絶滅してこそ、平等自由の新しい民主社會が建設出來るものであると共に、此の基礎の上にこそ、初めて逞ましい經濟再建が期待されると思ふのであります、然るに政府は厭々ながら土地分配に手を著けたり、或は軍需補償の打切りをやり、財産税の徴收をしようとして舊圓の封鎖をやる、斯う云ふ風に段々色々な經濟施策をやつて居りますが、結局破産の日本經濟を救ふ爲には、公債償還の打切りもしなければなりますまい、又在外資産なり或は賠償其の他政府の債務は、全面的に不拂に決定して行くに相違ないと私は想定をする、斯うなつて來ますると、現在山林とか、或は戰債にも賠償物にも定されなかつた工場、事業場、其の他の財産のみが殘つてしまふ、さうして一方復員者、外地よりの引揚者或は戰災者、其の他戰爭に依る犧牲者及び經濟混亂に依つて犧牲者となつて居る所の、一般の勤勞大衆の苦しみに拘らず、不當に値上りした財産を所有すると云ふことは、是は到底公平な原則から言つて許されない、隨て結局今殘つて居りまする山林とか事業場、工場、其の他價値のある動産と云ふやうなものは、國家が之を沒收するか、或は沒收的な課税をしなければ社會は許さないと思ふのであります、それで先程も申しますやうに齋藤善右衞門老の言ふやうに、此の所有權は管理權に過ぎない、今は管理權を奉還すべき時に逢著して居るのではないかと思ふ、是等に對して政府が次々と間を置いて此の大課税をやつたり或は沒收的な徴税をやつたり、封鎖をやつたり、斯う云ふことを時間を置いてやつて行く位なら、一擧に私有財産を全部國有に移して、速かに經濟を安定しますと共に、銀行家や資本家や、或は早耳筋とか或は狡い闇屋などの一聯のものが、政府の經濟政策の間隙を縫つて、經濟界の變動に乘じて利益を受けて、不當な不勞所得を積んで行くと云ふ此の不正義は防止すべきであると思ふのであります、結局さうなりますと我々の身廻品とか或は家具、必要ならば生活に最小限度の住宅、是等を除いては工場の店舖も、土地も、擧げて國有として、之を從來の管理者をして賃貸料を支拂はして管理せしめる、土地家屋に付きましては、賃貸價格は徴税の必要上出來て居りまするが、其の他のものに付きましても其の賃貸價格の調査と云ふものは割合に簡單であらうと思ふ、所得税とか、營業税とか其の他の萬般の税の徴税事務に比較しまするならば、技術的にも、事務的にも、是等の負擔は重いものではありませぬ、さうしますと私有財産を全部國有に移した其の品物を又國民に管理さす、其の管理さす爲の賃貸料を取るとしますと、幾ら取ると云ふことは中々算定が難かしいのであります、是は一寸私は勘定して見たのでありますが、土地に付ては昭和十七年一月一日現在で、所謂地租を取る土地の賃貸價格は十五億一千萬圓でありました、是は田畑が其の半分を占めて居ります、一段歩の賃貸價格は十七圓九十五錢と云ふことになつて居る、收穫に對する現行の田畑の小作料は、收穫に對して二割五分以内と云ふことになつて居りますが、假に最高の二割五分ぢやなしに、二割だけ賃貸料を取るとしますと、一段歩から二石取れると假定して、石六百圓と云ふことに今度決まりさうでありますから、一段歩から千二百圓の收穫がある、是の二割であるから二百四十圓の賃貸料です、さうしますと、現在課税の標準になつて居ります、十七圓九十五錢六厘、十七倍になつて居りますから、賃貸價格總額の十五億一千萬圓の十七倍の二百五十六億七千萬圓と云ふものが、土地に對する國家の收入となつて現はれると思ふのであります、又家屋に付ては家屋税の賃貸價格は、昭和十七年に十九億七千二百萬圓でありましたが、之を非常に安く見まして、住宅の其の半分の十億圓であります、假に其の倍の二十億にすると店舖とか、工場とか、倉庫とか斯う云ふものが十億圓ありますが、是が十倍としますると百億と云ふことになる、家屋から百二十億の賃貸料が取れる、鑛區税と云ふものがあります、けれども、是は賃貸價がございませぬ、是は昭和十六年には慥か一千萬圓位の税があつたのですが、假に之を百倍の鑛區賃貸料と見ましても二十億圓になります、以上の土地と家屋と鑛區に對する賃貸料だけで、約四百億圓の國家牧入が現はれる、此の外に色色な機械設備とか、動産とか、或は權利、營業權と云ふやうなものの賃貸料を加へますならば、多分六百億から一千億位の國家財政牧入があると云ふことになる、之を土臺にしてそれに加へれば、全然赤字財政と云ふものではない、全部現なまで國民から收入して來る所の收入で以て支出が出來る譯であります、斯うすれば「インフレ」は絶對に起らないし、通貨は政府の期するやうに決まりますし、又物價の公定も確實になる、斯う云ふ風にしまして、我我は負けたのでありますから、一つ此の際全部此の頃の「ラジオ」で言ふ「スポーツ」の歌見たやうに、同一の「スタートライン」に立つて、一齊に日本人は起上つてどんどん駈け出す、働く者はどんどん貯蓄を殖やして宜しい、どうしても働けない病氣其の他の事情に依る者に對しては、生活保護法で十分保護してやる、斯う云ふ風にしてやると皆勇み立つて、皆公平でありますから國民は一生懸命勉強すると思ふのであります、さうして貯蓄が増大すれば、其の貯蓄を以て政府から財産を買戻す、斯う云ふ風にして日本を再建して行つたらどうか、是は資本主義の「チヤンピオン」の膳國務大臣から見ましても、最も歡迎すべき方策ではないか(笑聲)資本主義自由經濟をうんとやらせる爲には、是が最も良い方策ぢやないかと思ふのであります、之を下手に資本主義を温存しようとして色々な手を打つた所で、結局はどん詰りに行くに決まつて居る、それならば此の際全部今までの分を御破算にして、さうして「スタートライン」を一緒にして皆國民は一齊に駈け出す、斯う云ふ風にすれば宜いのぢやないか、我々は敗戰の代償として此の既得權益の絶滅をして、平等の社會を建設して行つたならば、是こそ敗戰と云ふことは日本に取つて非常に幸福を齎らすことになると思ふのであります、甚だ私見を申上げて恐縮でありますが、どうも今日の状態では國民は堪らない、何時になつても混亂をして、經濟上の安定感と云ふものは何處にも得られない、土地を持つても駄目、金を持つても何時封鎖されるか分らぬ、財産を持つて居れば課税される、一體どうしたら宜いか分らない、一生懸命働いて貯蓄したら宜いのか皆迷つて居る、金でも買はふかと云ふので闇で買はうと思つても中々其の金もない、國民は物を造るよりも物の闇賣買をやつて、多少でも利鞘を稼いで暮して行く、物を造つても將來どう云ふ風に賣れるか分らない、斯う云つた經濟不安定の状態では、絶對に生産は再開されないと思ふのであります、之を一つ全部清算をしてさうして縷縷申述べたやうな方策で行つたらどうか、御所見を伺ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=133
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134・膳桂之助
○膳國務大臣 縷縷御述べになられました御構想、一つの參考御意見として拜聽致します、唯、現在の國民の不安は色々の點にありますけれども、御説にもありましたやうな、物價の不安定、生活物資の入手困難と云ふことが總ての國民の不安であり、色々の闇其の他の不公平の起る因であります、私共の見解に依りますと既に物價は頭打ちして居ると思ひます、又食糧の不安は、幸ひに、將來の世界の食物の供給の増加と云ふやうな點で、漸次安定して參ると思ひますので、是から政府のやりまする諸般の施設と相俟ちまして人心の安定を見得る、又左樣に努めたいと考へて居ります、只今御説のやうな、或は社會主義乃至共産主義的な、一切の私有財産及び一切の産業資本總てを國有乃至公有にして、平等の所で「スタート」せしむべし、恰も國民全部を國家の資本主義の下に、賃銀勞働者に化せしめるやうな御構想、是は御意見ではありまするが、左樣なことで果して出來ますかどうか、私には承服し得ないこともありますが、是も議論になりますので、御説として拜聽して置くと云ふことで答辯に代へたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=134
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135・竹谷源太郎
○竹谷委員 決して是は國家の賃銀勞働者に陷るものでも何でもない、皆が一緒に自分等で計畫して色々經營して行くと云ふ建前であると思ひます、此の點は所見が全然違ふのであります、尚ほ是は、共産主義とか社會主義とか云ふのでなく、新しいより宜い資本主義を作る上から言つても私は宜いのぢやないかと思ふのであります、十分一つ革新的な經濟安定施策を樹立せられんことを切望致します、次に、政府は物價廳に依つて物價を公定する、尚ほ此の法律に依りまして經濟産業の統制を行ふと云ふのでありますが、戰時中の經濟統制の實績を我々は檢討しなくてはならないと思ふのであります、經濟統制の始まつた昭和十三年中に於ける僅か四箇月間の違反件數が四萬七千六百九十五件、違反者數が四萬五千七百七十七人に達して居る、昭和十四年、十五年、十六年等の違反件數に付ては、内務省の事務當局に警察檢擧の數を聽きましたが、是は燒いてしまつて資料がないと云ふことでありますが、私の記憶する所では確かに一年に五萬件から二十萬件以上に上つて居つたと思ふ、之を見ても自由競爭と云ふものは、政府の經濟の計畫的施策を如何に侵犯してしまふか、破壞してしまふかと云ふことを示して居ると思ふのであります、膳國務大臣は計畫經濟とも云ふべき統制をやるのだと言つて居りますけれども、戰時中の經濟統制と實質に於て何等異る所のない此の法律のやうな統制經濟は、成功の見込は殆どないと言はざるを得ないと思ふのであります、到底組織されたる計畫經濟とは雲泥の相違がある統制經濟であつて、是等の統制經濟が、石橋財政の行ふ所の資本家と、闇屋を利益する一聯の經濟政策と、之に依つて戰時統制に等しい經濟統制をして、一般勤勞大衆に對して敗戰の犧牲と苦役を與へ、さうして銀行屋や資本家に天國を與へるやうな政策になることを惧れるのであります、而も本法第一條の委任立法は、國民生活なり或は經濟界に、無限にして廣汎な權能を與へることになるのでありまして、他の憲法なり法律で保障された國民の權利自由を侵害する虞が多分にある、戰時中のやうな斯うした結果を招來するやうな心配はないかどうか、其の御意見と御信念を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=135
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136・膳桂之助
○膳國務大臣 其の點に付きましてはもう此の委員會の初日から縷縷繰返して申上げた所でありまして、戰時中の統制が人間性を無視した統制であつた、統制を破る者の多いのは、結局煩多なる統制、又必要以上の統制の爲の統制、人間離れした統制、斯う云ふことをやりましたのが失敗の一つの原因であらうと存じます、今囘の統制は、統制の爲の統制ではないのであります、出來るだけ斯う云ふ統制は止めたいのでありますが、實際の必要から已むを得ざるに出る一時的の統制でありまして、漸次統制の必要のないものはどんどん統制の枠を外しまして、自由にして行きたいと考へて居る譯であります、運營等に付きましても、只今のやうな御心配のないやうに最善を努むると云ふことは既に縷縷申上げましたので、重ねて繰返すことは御許し願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=136
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137・竹谷源太郎
○竹谷委員 私は最後にもう一點御尋ねします、經濟安定本部令の第一條に勞務と云ふ言葉がございますが、此の勞務と云ふことに付ては物資需給調整法には全然規定がありませぬ、でありますから此の勞務に關する所の何等かの計畫或は決定は其の中に見ることと思ひますが、是は單に失業等に關する措置を指すのであるか、それとも勞働者の罷業權の各種の自由や權利を侵害するやうなことになることは、戰爭中の國家總動員法の人的關係の規定にあるやうな、さうしたものに關係を絶對に持たないのか、それを承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=137
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138・膳桂之助
○膳國務大臣 勞働に關する具體的の個々の問題全部に安定本部が關與する意味合ではありませぬ、唯經濟の再建復興に關係します一聯の施策に關聯のありまする其の部面に付きまして、勞務の問題も取扱ふと云ふ意味でありまして、例へば是から企業再建の爲に勞務の統制、或は勞務の配置等に必要な問題は關與致しまするが、具體的の個々の只今御指摘のありましたやうな問題に、一々安定本部が關與することを意味して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=138
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139・竹谷源太郎
○竹谷委員 其の勞務の統制は、所謂強制を含まない、勸奬程度のものであるか、それとも或はお前は何處へ行け、何處へ割當てると云ふやうなことになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=139
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140・膳桂之助
○膳國務大臣 別に勞務に付て從來のやうな徴用とか、或は勞務の配置とか云ふやうなものを強權的に計畫をする考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=140
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141・竹田儀一
○竹田委員長 加藤勘十君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=141
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142・加藤勘十
○加藤(勘)委員 私は實は先程から此の委員會に加はりましたので、私の御尋ねしようと思ひますことは他の同僚委員諸君に依つて多く御尋ね濟みのことだらうとは思ひますが、多少重複する點がありましても、法案の重要性に鑑みて刻明に御説明を願ひたいと思ひます、其の前に、當然是は物資需給の媒介としてなくてならない輸送機關の問題に付きまして、現在船舶業界に於て從業員の「ストライキ」が起つて居る、更に新聞紙の報ずる所に依れば、陸上輸送の根幹である鐵道に於ても、一部ではあるが、近く「ストライキ」が行はれようと云ふ聲明が從業員から發しられて居る、若し、海上輸送の根幹である船舶、陸上輸送の根幹である鐵道に於て、從業員が爭議の手段として輸送機關を停止したならば、當然私は需給の根本に狂ひを生ずると思ふのであります、此のやうな重大な物資需給に關係のある輸送機關の爭議の問題に付きまして、直接所管の運輸大臣竝に總理大臣は、數日前新聞紙に、此の問題に對して政府は重大なる關心を持つて居ると云ふ談話を御發表になつて居るのであります、就きましては今度の事ここに至るまでの經過に付きまして、一通り御説明を願つて、其の御説明に基き、又私共の得て居る若干の知識に基いて御質問を申上げたいと思ひますから、經過の概要を御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=142
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143・小野孝
○小野(孝)委員 議事進行に付て…只今の問題は本日の本會議に掛りまして、只今の運輸大臣の答辯があつたばかりと思ひます、同じことを此の委員會で又蒸し返すことは議事進行上面白くないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=143
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144・加藤勘十
○加藤(勘)委員 本會議の御説明がどうあらうとも、苟くも物資需給の問題に密接な關係のある輸送機關に關する問題に付て、此の物資需給の問題を審議する委員會に於て、其の重大な輸送機關に關する問題を質問してはならぬと云ふ馬鹿なことはないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=144
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145・竹田儀一
○竹田委員長 それでは運輸大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=145
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146・平塚常次郎
○平塚國務大臣 今日までの爭議の經過を申上げて見たいと思ひます、先づ海員の關係でありまするが、海員の方は今月の上旬に神戸に於て評議員會を開いて、從來の懸案を解決しなければならないと云ふことが協議せられ、其の結果組合長が斯う云ふ大きな問題であるから、直接運輸省と船舶運營會との交渉で當るべきものである、又「ゼネスト」へ入る場合でもやはり組合長に一任すべきものであると云ふやうなことが會議に依つて纒まつて、當局に鬪爭委員長竝に海員組合長が來られた譯であります、そこで直接の交渉と致しましては運營會が當るのでありますが、事が非常に重要な事柄でありまするから、運輸省からも局長が參加しまして、さうして八日に大體海員の整理は協議會を作つて協議して行かうぢやないかと云ふことになり、又給料改善に付きましては、船員の低い方は相當に上げることが正しいと云ふので、是も結局は妥結致しまして、兩者間に於て協定書を作成し、それで九日の午前十時半に大臣立會の上で調印をすると云ふ運びにまで行つたのであります、然るに其の晩になりますと、東京に居つた鬪爭委員會の方々、此の案に對して服從する譯に行かぬと云ふことになつて、相當込合つた結果と致しまして、更に組合長と相談をすることになつたのでありますが、九日になりまして組合長も、折角決めたことだけれどもまだ納得が行かぬと云ふならば、もう一遍自分が行つて打開の途を聞きたいと思ふからと云ふことで、組合長が其の衝に當られた譯であります、然るに九日の晩遲くまで掛りましたけれども、到頭意見の一致を見ないで、鬪爭委員長の名に於て、各地の支部に「ゼネスト」に入ると云ふ指令があつたのであります、又組合長は「ゼネスト」をすると云ふやうな指令は、組合長の責任に於て行ふべきものである、自分は斯う云ふ敗戰日本の復興途上にある我我として、斯う云ふ隱かでないことは反對だと云ふけれども、一方的にさう云ふ指令を出した以上は、自分も出さざるを得ないと云ふので、「ゼネスト」には組合長としては絶對に反對だと云ふことを、又自分も各機關に電報したのであります、さうして到頭十日から「ゼネスト」に入つたのでありますけれども、各地方の今日までの情報を綜合致しますると、大體に於て組合長支持が多數であります、新聞には非常に大幅に「ゼネスト」に入つたと傳へて居りますけれども、今日晝まで入つた情報でありますと、實際に出帆準備が出來て居つて出て行かない船は、全國に二十隻よりありませぬ、併し是は更に日が經つてどんなことになりますか想像は付きませぬが、全部の船がここで「ゼネスト」に入りますると、加藤君の御質問のやうに、是は重要物資の輸送、其の他國民生活の上にも大きな影響を受けることは當然でありまするので、私と致しましては、何れにしましてもお互に組合がそこで二つに割れて爭つて居ると云ふことは好ましくないのでありまして、或は第三者を入れて此の協定をやり直して行かなければならぬと、現在はさう云ふ考へを持つて居ります、「ゼネスト」が擴大されないことを希望して、防げるだけ防ぐ考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=146
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147・加藤勘十
○加藤(勘)委員 交渉が開始されてから今日の事態を惹起すに至るまでの事務的な折衝の概要は、只今の御答辯で了承することが出來ました、私の主として御尋ね致したいのは、さうした事務的折衝の面ではなくして、どうして斯う云ふ事態が發生するに至つたか、即ち言葉を換へて申しますれば、爭議の原因となつたものは何處にあるかと云ふ點に付てでありますが、是は大體新聞等の報道に依りましても、一般に報知されて居ることでありますから、今特に此處で大臣の御説明を俟たなくても、一通りは分つて居るやうでありますけれども、尚ほ詳細な、例へば船舶の消失隻數、それに乘組んで居つた船員の數、さう云ふ點に於て實際にどれだけの過剩人員を生ずるに至つたか、正確な數字は私共まだ承知して居りませぬ、出來ればさう云ふ點も御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=147
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148・平塚常次郎
○平塚國務大臣 船員が非常に動搖したと云ふことは、非常に過剩船員が多いと云ふことで、軈て首を馘られるのではないかと云ふ心配が、お互ひにある譯なのでありますが、内容を申上げますると、現在海員は五萬三千人居ります、さうして日本の船舶は僅かに今「デット・ウエート」で百二十萬「トン」以内であります、之に乘り組んで居ります者が約二萬四千人、それから「アメリカ」から借りました、所謂復員歸還の輸送に使はれて居る船舶に乘組んで居る船員が一萬四千人ございます、合計三萬八千人だけが先づ船に乘つて居るのであります、あとの一萬五千人は豫備員として運營會の所謂國家の補償に依つて養つて居るのであります、是が現状であります私共は之に早く氣が付いたのでありますけれども、日本の海員と云ふものは軍人以上に大きな犧牲を拂つて居ります、一遍助かつても又出て行く、本當に惡戰苦鬪して居るのでありますから、運營會と致しましても、運輸省と致しましても、是等の船員はどうしても保護しなければならないぢやないかと云ふので、凡ゆる手を盡して居るのであります、唯船員から見ますると、歸還輸送も恐らく本年中に大部分を終つてしまふ、さうして「アメリカ」の船が歸ると又更に人が餘る、さうなるとどうせそこで大きな失業者を出すことになると云ふことを惧れて居るのであります、私共それに氣が付いて居りますから、一方に於て例へば失業者にならぬやうに沈沒船の引揚であるとか、或は政府の──軍の施設である各地の工廠等の、機械の分解であるとか、取壞しであるとか云ふやうな、海の關係の方に出來るだけ一つ使はうぢやないか、それから若い海員のまだ熟練して居らない海員が相當に多い、此の中少くも五千人位は高等商船なり、地方商船の學校が澤山運輸省の所管になつて居ります、此處に無理であらうけれども五千人位收容して、さうして將來の日本海運の再建の爲に、技能のある船員を養成しようぢやないか、斯う云ふやうな考へを持つて居ります、又それも組合にも傳へて居るのであります、唯如何にしても多いものですから、多分馘になるだらうと云ふ心配から來て居るので、是は何ともそれには觸れて居らぬのでありますけれども、向ふはさうぢやないかと想像して、一人でも餘計首を馘つてはいかぬと云ふ要求が、趣旨の一つになつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=148
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149・加藤勘十
○加藤(勘)委員 さうしますと、商船學校其の他のさう云ふ學校教育施設に收容されまする五千人を除きまして、只今仰しやつたやうな、海上諸設備の取壞しとかに收容されまする豫定人員はどれ位でせうか、今御説明になりました其の豫備員と稱する一萬五千、又復員船乘組員が、復員が完了すれば一萬四千人程過剩を來すと云ふことが、非常に船員に不安を起さして居る、又さう云ふことに對してはまだ解雇整理と云ふことは口にはせぬ、當局としては船員の戰爭中に於ける國家に盡した功績に鑑みて、出來るだけ保護しなければならぬと云ふことから、失業者を出さないやうに努める爲に、今色々御説明になりました其の學校關係に、將來の優秀な船員を作る爲に、青年連中を其處に收容すると云ふ人員は、約五千人と云ふことを御説明になりましたが、其の他の施設に收容し得られる人員は略略どの位でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=149
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150・平塚常次郎
○平塚國務大臣 まだ具體的になつて居りませぬが、船員と云ふものは全部政府の徴用になつて居りまして、運營會が預かつて居りまして私の役所は直接ではありませぬ、併し私の方の指導方針としては、さう云ふことで行くと云ふことでやつて居りますので、具體的に結局五千人學校へ入れると、差引一萬人だけはどうしても餘る、其の中には老齡の方もありますし、又病氣して居る方もありますので、さう云ふ者をあらひざらひしてどの位餘るか、其の殘つた者を先程申したやうに、沈沒船の引揚や方々に斡旋しよう、斯う云ふ方針であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=150
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151・加藤勘十
○加藤(勘)委員 さう致しますと、現在まだ徴用が斷たれて居らぬと云ふことを聞いて居りましたが、さうですね──それで只今御説明のやうに、其の内船舶運營會で預かつて居ると云ふか、管理して居ると云ふか、兎も角管理されて居る一萬五千人の豫備員の内、略略五千人位の若い人は學校關係に收容出來るし、其の他の一萬人の内、老齡其の他自然退職者があるから、さう云ふものを除いた殘餘のものは、海上諸施設の取壞しとか何とか云ふものに收容したい、斯う云ふ御意向でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=151
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152・平塚常次郎
○平塚國務大臣 大體さう云ふ意向であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=152
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153・加藤勘十
○加藤(勘)委員 私は船員と云ふものが戰爭中に國家に盡した功績、それは今運輸大臣も御述べになりました通りだと思ふのです、軍人にあらざる軍屬としての船員が戰爭中どんなに危險を冒して支配者の命ずる儘に國家に奉仕したかと云ふことは、今更議論の餘地はないと思ひます、さう云ふ國家の非常時に、自分の意思に合ふか合はぬかは別として、兎も角戰爭と云ふ目的遂行の爲に、全身を盡して多くの同僚が命の犧牲を拂ひ、殘つた船員の中でも、私共の聞いて居る中でも何人かの多くの人が二度三度、甚だしきは四度も泳いで來た人すらもある程に、獻身的に努力をして來たことは、もう隱れもない事實だと思ふのであります、斯うした人々が戰爭が濟んで船がなくなつて、要するに職場がなくなつた、職場がなくなつたから最早必要がなくなるから當然首を馘られるだらうと云ふ不安の念を起さしむるに付ては、若し今、運輸大臣が御説明になりましたやうな親切な諸施設が船員諸君に徹底して、少くとも現在の一萬五千人の豫備員竝に復員完了後に於て──何時完了するかは別として、復員完了後に於て、現在復員船に乘つて居る一萬四千の從業員の人々に對して、出來るだけさう云ふ職を離れしむるやうな心配を掛けない、出來るだけ當局に於て仕事を與へて失業の不安をなからしむると云ふことが滲透して居りましたならば、私は今度の斯う云ふやうな事態が容易く起るとは思はれないのです、茲に今日御説明になつたやうなことか、組合の交渉委員を通して、組合員にも十分通達されて居ると云ふ御説明でありましたが、どうして是が一般の從業員に滲透しなかつたのでせうか、そこは御分りになりませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=153
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154・平塚常次郎
○平塚國務大臣 そこに私もさう云ふ感じはありますが、而も此の組合長だけで話をしまして、どうも一方的だと云ふことがあつてはいかぬと云ふので、鬪爭委員長まで加へて、さうして決めたことが、非常に好い結果を得たいと云ふので、私共の方の船員局長は非常に船員を可愛がる、より以上に私を責めるので、私もそれに動かされて居つた、それの肩を叩いて、まあ好かつたと云つて、八日の晩に決まつたのでありますから、私も翌日欣んで調印しようと思つて行つた所が、がらつと崩れてしまつて、さうして此の鬪爭委員長が九日になつて自分の自ら指令を出さなければならぬやうな立場に追込まれたと云ふことは、私の耳に入つた範圍ですと、やはり外部からの強い刺戟を受けた結果、やらざるを得ないやうになつたのではないかと想像して居るのです、併し是は想像ですから、私は餘り此處で申上げたくないのであります、さう云ふことはない筈なのに、萬全の策を講じてそこまで行つた、洵に宜く行つたと思つたのが、こんなことになつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=154
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155・加藤勘十
○加藤(勘)委員 大臣も色々な御想像を御話になりましたが、私共も實際先程御説明を聞いて居つて、それが一般從業員に徹底して居るならば、失業の不安は一應ない譯なんですから、斯う云ふ問題は起るとは考へられない、外部の勢力と云ふものがどう云ふ勢力かは知りませぬが、此處で私は自分の理屈を述べるのを甚だ恐縮だから遠慮したいと思ひまするけれども、よく「ゼネスト」「ゼネスト」と云ふ言葉が使はれて居ります、併し私は船員の一人殘らずが「ストライキ」に參加しても、是は決して「ゼネスト」だとは思はない、經濟的要求で戰つて居る以上は、それは大きな「ストライキ」ではあると云ふことは云はれますけれども、「ゼネスト」ではない、「ゼネスト」と云ふものは言ふまでもなく政治的性質を持つたものであります、或る意味から行くならば、革命の一つの暴力手段とも見れる譯なんですから、私共は容易に「ゼネスト」と云ふ言葉を使ひたくありませぬ、私個人としては殆ど使つて居りませぬ、併しながら新聞紙其の他で常識的に、大きい爭議は直きに「ゼネスト」「ゼネスト」と云ふ言葉が使はれて居りますが、今度の船員の爭議に付きましても、若し船舶運營會關係以外の近海航路であるとか、沿岸の輸送に當る機帆船、さう云ふものが同情罷業に出ると云ふならば、私は小さくとも「ゼネスト」的性格を持つて居ると思ふ、さう云ふ意味で「ゼネスト」と云ふ言葉が使はれまするならば、其の「ゼネスト」と云ふ性質を十分に究明して、何處にさう云ふ「ゼネスト」を發生せしめるやうな原因があるかと云ふことを探究して、御互ひにさう云ふ原因を取除くことに努力しなければならぬと思ひます、我々は今日の敗戰日本の經濟再建に付きまして或は政府當局とは意見を異にし、見る所を異にして居るかも知れませぬが、少くとも現在の日本は平和的手段に於て此のことをなし得ると云ふ確信の上に立つ點に於ては、恐らく政府もさう云ふ風に見て居るのではないかと思ひます、「ゼネスト」と云ふ手段に依つて問題は少しも解決に向はぬと私は思ひます、そこでさう云ふ問題は是非とも原因を究明して、一日も早く問題を解決するやうに持つて行かなければならぬと思ひます、其の點に付て先程大臣は、第三者でも入れて話を進めなければならぬではないかと思つて居ると言はれましたが、其のことに付て何か御用意がありませうかどうか、御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=155
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156・平塚常次郎
○平塚國務大臣 是はどうしても大きな爭ひでないと私は思つて居るのでありますので、唯色々な第三者の動きや、一寸した刺戟からそこまで行つて居ると思ふのであります、運輸省と致しましては、船員に非常に重點を置いて居ります、船員の失業對策委員會も作つて居ります、さうして船が非常に減つて居りますので、どうしても失業者が出るのだが、それを何處へどうするのだと云ふ委員會も作つて居ります、又其の外に船員の勞働委員會を、末弘さんが委員長になつて、是も持つて居りまするので、早速船に關する重大問題でありますから、昨日委員會を開いて戴いた、さうして必要に應じて勞働委員會が中に入つて戴いても宜い、委員會の方でも此の儘で行くことはいかぬから、中に入る用意もあると云ふことも仰しやつては居りますが、今非常に激昂して居る時に、末弘さんが入つて混亂してもいかぬから、一兩日模樣を見た上で考へ直さう、斯う云ふ御答へであつたさうです、どうしても當事者の間ですと、同じ人が始終やつて居りまするから、多少感情的に走る虞もありまするし、此の際船と云はず、國鐵の方も成べく第三者に入つて貰つて、さうして最初からさう云ふ協議に入つて行つたらどうかと云ふ考へを持つて居りまして、兩方とも私の方から一つさう云ふ働きを掛けて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=156
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157・加藤勘十
○加藤(勘)委員 船員の「ストライキ」の問題に付きましては、只今の大臣の御言葉を其の儘急速に一つ實行に移して戴いて、一時も早く問題が圓滿に解決するやうに努めて戴きたい、斯う云ふことを希望致しまして、此の點は打切ります
同樣な問題でありますが、鐵道從業員の問題に付て御伺ひしたいと思ひます、鐵道從業員の方は先程本會議に於ても若干の御説がありましたが、鐵道の職員諸君、從業員諸君の組合の内部關係がどうある、斯うあると云ふことは、我々に取つて大した問題でないのであります、縱んば一部分にしろ鐵道が「ストライキ」に入ると云ふやうなことになる其の事自身が、非常に大きな問題であります、隨て之を未然に防止する手段があるならば、我々は凡ゆる手段を盡して之を未然に防止するやうに努めなければならぬと思ふのでありますが、其の點に付て何か當局に於ては御考へを御持ちであるかどうかを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=157
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158・平塚常次郎
○平塚國務大臣 是も船員の方と同じでありまして、私は斯う云つたやうな爭議にまで行かないやうにと考へて、鐵道の合理的經營に付て、どうしても或る程度まで整理しなければならぬのではないかと云ふことで案を作つて居つた所が、偶偶組合の方からそれを見せろ、斯う言つたので、私の方が先程本會議で内容を申上げましたやうに、非常に人間が多くなつて居るし、若い子供が多いから、まあ大體七萬五千位整理しないと困る、あとは成べく失業者は出したくないのだと言つて内容を出して見せて相談したら、七萬五千人馘りと云つて一方的に發表されましたものですから──是は實際を申しますと、整理の方法としては我々としても一寸やり損つたと思つて居ります、併し起きてしまつたことは仕方がありませぬが、是も理論的にぼかすのも如何かと思ひますが、實際はさう多勢でなくても宜いのであります、併し斯う云ふ社會情勢から云つて、失業者を多く出すことは何と云つても好ましくないのでありまして、出來るだけ定員を殖して、今まで時十時間も十二時間も働いて居つたものを、八時間勞働に直して行く、是は私の方だけではない、從業員組合と相談して、何處の驛のどう云ふ所にどれだけ要ると云ふことを細かに檢討して、表を作つて、出て來た數字が四十八萬であつた、私の方は專門で普段やつて居ますから、大體四十八萬、斯う云ふ報告を受けて居つた、是では組合に歸つて行けぬ、どうも困るから、もう二萬人殖せ、それも宜いだらう、あと辭める人でも、怠けて居る者も居るし、身體の惡い人もあり、年の行つた者もある、だからさう云つた者から整理して行かうぢやないか、さうして成べく失業者を出さないやうに、他に何處か世話をしようぢやないか、鐵道の關係は大きいですから…さう云ふことで是も船と同じやうに文書まで交換したので、先づ先づ宜かつたと思つたのですが、やはりそれを直ぐ報告したら、鬪爭委員會で蹴飛ばしてしまつた、それから直ぐやつたばかりぢやないかと言つた、是は政府の一方的な發表ぢやないか、さうぢやない、君達はあれだけ五日間協議したから一方的ぢやない、一方的ぢやないと云ふことは認めた、唯今是は返事は出來ない多勢の人が反對して居るから、まあ暫く協議は止めやうと言つて、伊勢の大會まで持つて行つたのですが、それはもう過去のことであつて、どう言はれやうがそれは殘つたものを相手にして相談しようぢやないかと言つてこちらから呼びを掛けた、それで今日からやつて居るのです、それで何とか纒めなければならぬと思ふのですが、船の方と違つて、何せ人が非常に多いものですから、整理を止めろと言つても、どうも政府と致しましては、方針だけは變へられない、併し整理と言つていきなり整理に行くのではないから、合理的に經營するのに其の途上で整理が必要になつた、整理の方は從である、合理的に經營すると云ふことが主であると云ふ建前で、唯之をどうするすると言つて論議しないで行かうではないかと云ふので、今日も直ぐ前から、同じやうなことであつても經營の合理化に付て話をして、さうして妥結しようぢやないか、こちらの組合でも幹部が我々の方へ持つて來て言つて居りませぬけれども、お互ひに同僚間で言ひ合つて居るのを見ますと、困つたものだ餘り外部の刺戟を受け過ぎた、どうも拔いた刀の納め場所がないと云ふ立場に居ると云ふのであります、でありますから、本當は出來るならば、第三者が入つて貰ふ方が宜いと私は思つて居ります、先般も松岡さんに日本の勞働總聯合と言ひますか、それに鐵道が入つて居ないのだから、將來やはり斯う云ふものは自主的にあなたの方の組合に收容して貰つて、さうして斯う云ふ事件が起きた時に、あなたが表面に立つてやつて呉れるやうになると我々も助かるがなあ、併しそれは將來の問題であるが、現實の問題としては、又中に入つてやつて貰ふ時が來るかも知れぬと言つて一寸話をしたことがありますが、どなたが一番宜いか我々も十分檢討して、さうして今日中に意見が纒まらないならば、誰か第三者を煩はして交渉を重ねて行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=158
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159・加藤勘十
○加藤(勘)委員 實は私は此の問題に付きましては、多少私個人としての見解も持つて居りますが、さう云ふ個人的な見解は一切拔きにしまして、唯現實當面の如何にして「ストライキ」の發生を未然に防止するかと云ふ點に付きまして、政府の立場で努力されるであらうし、又我々は我々の立場に於て社會不安を一掃すると云ふ點に於て協力しなければならぬ、斯う云ふ點から色々御質問して居る譯であります、只今の人員の數なんかの點に付きましても大體聽いて居ることでありますが、更に一年に二萬人前後の自然退職者が出ると云ふことは、それは事實でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=159
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160・平塚常次郎
○平塚國務大臣 自然退職も勿論あります、それは凡そ二萬人と計算して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=160
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161・加藤勘十
○加藤(勘)委員 私は鐵道の經營の合理化の爲に、どうしても過剩人員を若干整理しなければならぬと云ふ鐵道當局の御意向に對しては、現在の鐵道の經營が資本家的な立場に立つての經營方針を執つて居る限り、それは避け難いことであらうと思ひます、併しながら今日の社會情勢を見ますれば何人にも明かである通り、屡屡議會に於て厚生大臣が御説明になつて居る所に依つても、能く分りまするが、戰災に依つて多くの生産設備が損傷を受けて居る、軍隊から何百萬と云ふ多くの若き人が復員して完全に職を求め得ない、在外同胞數百萬と云ふ多數の者が内地に歸還して、是れ亦職を得られない實情にある、さうした失業若しくは半失業の状態にある日本の人口の總數は、厚生大臣の説明に依つても正確には分つて居らぬやうであります、恐らく是は何人にも正確には分つて居ないだらうと思ひます、概算して五百萬前後を數へられる、勿論純粹失業者と云ふものは何人あるか、半失業者が何人あるかが分らぬにしましても、概算五百萬前後の失業若しくは半失業の状態にあると想像し得られるのであります、是が爲に政府は今年度の豫算に於きましても、失業對策の費用として相營多額の經費を投じて居られるのであります、政府が成程現業──鐵道であるとか遞信であるとか云ふ事業を營んで居られまする時、其の事業が平常の場合であれば、成るたけ赤字を出さないやうに、自主的に經營が出來て行くと云ふことが建前でなければならない、是は私共が社會主義的政策として重要産業の國有を主張する場合でも、其の事業が自主的に經營されて行くと云ふことが建前でなければならぬのでありまするから、或る程度事業の合理化を圖つて、多くの利益を擧げないまでも、赤字を出さないやうに經營を續けて行くと云ふことが必要でありまするが、今日の如きは非常の場合だと思ひます、思想的には今更言ふまでもなく、舊來の一切の現象に對する認識は變つて來なければならぬ、社會の事態は同一であつても認識は全く違つた觀點に立たなければならないと云ふやうに、人の思想に於て心理的に大きな動搖を來して居る時、現實には今申しまするやうに何百萬人と云ふ大量の失業者が國内に溢れて居る、之を如何に第一に生産面に吸收するか、生産面に吸收するに付きましても、現在の日本の生産設備は大體戰前の二割五分乃至三割までないと云ふやうな貧弱な生産設備の部面に、多くの失業者を吸收すると云ふことには中々なつて來ない、隨て其の他の第二次的な生産手段としての、或は開墾であるとか、或は産業道路の改修であるとか、さう云ふ方面に吸收すると云ふ必要が起つて來る譯であります、何れにしましても戰前に比べて二割五分乃至は三割足らずの生産設備に於て、今後の八百萬の人口を養つて行かなければならぬと云ふことになりますれば、私は此の日本經濟を持續して行く爲には、勢ひ生産手段に多くの期待を掛けることが出來なくして、寧ろ生産手段を運用する勞働者の勤勞意欲と云ふものが、非常に大きな力を持つて來るのであります、勞働者の勤勞意欲が根幹になつて、經濟再建が圖られなければならぬと思ふのであります、今までの資本主義が正常に發展して行きつつある其の過程に於ける經濟恐慌の現象としての失業者の發生のやうな場合には、或る一定の時期を待てば再び此の失業者を産業面に吸收すると云ふことも出來ますけれども、今日の日本の現状に於きましてはさう云ふことはここ暫くは望み難いことであると思ふのであります、勢ひ僅かに生産手段を以て豐富な生産を求めようとするならば、どうしても勞働者の勤勞意欲と云ふものが、以前の時代と較べたならば餘程高く、大きく評價されなければならぬと思ふのであります、併しながら勞働者の生産意欲と云ふものは、生活の安定があつて初めて昂まつて來ることは、先般來の食糧不安に依つて、如何に勞働者の生産意欲が、阻まれたか、此の一現象を見ましても其のことは明瞭に言へると思ふのであります、さう云ふ場合に食糧の不安以上に失業の不安、勞働者は申すまでもなく自分の勞働力以外には生活手段を持たない人々であります、自分の勞働力以外には生活手段を持たない勞働者が、當然働く意思を抛棄すれば自ら死を求めるものであります、隨て勞働者は自分の健康である限りは、決して働くと云ふ意思を抛棄するものではないと思ひます、勞働者が働く意思を十分に持ち、さうして働く健康を持つて居るにも拘らず、是等の健康なる勞働意欲の強い勞働者を働かしめる職場がないと云ふことは、何と言うても其の社會の一つの大きな矛盾であり缺陷であると言はなければならぬのであります、さう云ふ點から私は斯う云ふ社會に内在する矛盾、缺陷から、其の時代の生産關係と云ふものが人口を全部養ふことが出來るか出來ぬかと云ふ判斷をして、當然若し人口を養ふことが出來ぬとすれば、何等かの方法に依つて生産關係が變らなければならぬ、斯う云ふことを唱へて居るのでありますが、私は今此の場合に於てそれを申上げようと云ふのではありませぬ、それは何れ後に本論の質問に入つた時に少し申述べたいと思ひますから今は申述べませぬが、要するに鐵道從業員の諸君が今馘られては困る、普通の場合ですと、他に、先般大臣も凡ゆる方向に職業を斡旋して、出來るだけ失業をなくするやうに努めると云ふことを仰しやいましたが、口ではさう云ふことが言はれましても、現實の失業者の氾濫する社會情勢の下に於きましては、私は中々新しい職業を求めることは難かしいと思ふ、殊に鐵道と云ふ特殊な仕事に從事して居られた人が、直ちに他に行つてそれと同じ熟練を要する仕事に就くと云ふことは難かしいのでありますから、勢ひそこでは若し職業を求められたにしても、生活條件の或る程度の低下を避けることは出來ぬと思ひます、さう云ふ場合には勿論私は、國家が其の生活の最小限を保障しなければならぬと思ひますが、其の前にさう云ふ失業者が多く氾濫して居る現實から、國營事業は或る時には損をしても、國家全體の立場から行くならば、自分の企業の中から失業者を出さないと云ふことが第一であると共に、出來れば更に私は時間を短縮して、所謂完全雇傭の形式に於てでも、多くの外部の失業者を救濟する位の任務を持つのが國營事業の本旨だと思ふのであります、隨て私は事業整理の建前から行けば、若干の整理人員を出すことは已むを得ぬと仰しやいましたが、そこは一つ能く國家全體の建前に立つて考へて戴けば、多くの失業者が街頭に氾濫して居る事實を一方に見ながら、又しても國家事業から失業者を其の仲間に加へると云ふことは、果してどう云ふものでありませうか、でありますから私はさう云ふ點に付きましても、私共鐵道に付ては殆ど知識がないと云つても宜いのでありますが、私共の聽き得た若干の知識の上から行きましても、尚ほ相當に話を進めて行く餘地はあると思ふのであります、時間の點に付ても、或は職場の再編成に依りましても、先程大臣は二萬人位それで吸收することが出來るから、七萬五千の中二萬は引けると云ふことを仰しやつて居りましたが、さう云ふことをもう少し現實に、現場に於て探査されましたならば、尚ほ多少の整理も、さう云ふ意味の再整理も出來ると思ふ、何も仕事から失業させるばかりが整理の途ではないと思ふのであります、殊に鐵道の現場の人達から聽いて見ますと、私は先日も東海道線の或る中位の驛に參りまして、其處の驛長さんに會つて驛の模樣を詳しく聽きました、勿論中都市の驛長さんでありますから、身分は昔の高等官の人だと思ふのであります、其の人の言つて居る所に依つても、自分の驛に現在配置されて居る定員から見て、是れ以上にどんなことがあつても切詰めることは出來ぬ、實際整理される運輸本省の人達は、現場に付ての認識が足らないと云ふことを言つて居りました、若し必要があるならば驛の名前なり、驛長さんの名前を擧げても宜いのでありますが、尚ほもう一つ私は小さい驛に付て聽いて見ました、其處でも現在割當定員は二十七名であるが、若し一人、二人が病氣其の他の事故で休んだならば、其の日の仕事にも支障を生ずる状態であつて、而も其の驛に四人の整理人員が内通されて居ると云ふことを言つて居りました、嘘か本當か知りませぬが、私に言つた所ではさう云ふことを言つて居つたのであります、要するに現状をもう少し首腦部に於て正しく認識されましたならば、もつと人員再配置の問題に付て、考慮する餘地が出て來るのではないか、或は鐵道の國家事業の建前から言つて、時間などの問題に付ても、もう少し考慮する餘地、或は是は永久的と云ふことなら別でありませうが、日本の經濟再建が完全に目鼻が付くまでは、一時的の非常手段として相當時間を短縮して、そこに過剩員を吸收するばかりでなく、寧ろ外部からすらも失業者を吸收する手段を執る位の、積極的に失業對策の一翼を鐵道當事者が擔任すると云ふ位の氣魄を以てやられるならば、失業對策に關する國家の大きな役割を果すことになつて、それだけ社會不安を除去することになると思ふのであります、斯う云ふことに付て尚ほ大臣が船の場合と同じやうに、或は第三者を入れて話が進められるならばと云ふ御話もありました、それはどう云ふ譯でありますか、内容に付ては先程御話の程度では能く分りませぬが、何れにしても大臣も爭議が具體的に「ストライキ」と云ふ手段に訴へられる前に防止することが出來れば、之に越したことはなからうと御考へだらうと思ひますから、其の考へに於ては私共も變りはないと思ひますが、十分に此の點に付て尚ほ私共の意見を、斯うした委員會の席上に於て申上げにくい點もありますから、今日四時に、社會黨は委員を選んで大臣と、それから總理大臣と二人の方に會ふことになつて居りまして、總理大臣とは時間の打合せが濟みましたので、其の方で御話したいと思ひますから、一應私の質問は此の點で打切つて置きやす、それから後の本案に付ての質疑が殘つて居るのですが、丁度今四時で、總理大臣と會ふことになつて居りますから、質問を留保して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=161
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162・竹田儀一
○竹田委員長 田村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=162
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163・田村定一
○田村委員 私は時間の關係上内務大臣に率直に質問致しますから御答辯を御願ひ致したいと思ひます、是は食糧問題と關聯があるのでありまして、總理大臣が御出席がありませぬから、簡單に内務大臣に御尋ねして見たいことは、最近終戰と共に朝鮮人は相當歸國したかの如く見えたのでありままが、私は山口縣に住んで居る關係上、山口縣或は又北九州方面に逆入して來る鮮人が、日に日に増加して居るのを見るのであります、隨て是等の朝鮮人は一定の仕事もなく、又一定の食糧の配給と云ふやうなことも無論ないのであります、隨て是等何萬と云ふ數字に上るであらう朝鮮人が食糧を買漁ると云ふやうなこと、或は又闇「ブローカー」と云ふことの中心になつて居る、今日主食の増配が叫ばれ、東京方面でも相當食糧の價格が下つて居る今日、高圓寺邊りでは六十圓なら闇屋で十分米が買へると云ふやうな、大都市ですら其の位の價格に下つて居るのに、山口縣或は北九州方面、例へば福岡縣では四、五日前のことでありますが、一升百二、三十圓して居る、山口縣で八十圓ばかりして居ると云ふやうな事態を我々が考へますと、今日日本の食糧對策、或は又色々な點に於て相當な支障を來すのではないかと云ふことを見受けるのであります、隨て此の密航鮮人に對する所の取締或は法規と云ふものは、今日どう云ふ方法になつて居るか、又それに對する所の内務大臣として對策はどう云ふ風に持つて居られるかと云ふことと、もう一つは朝鮮人が最近團體を組んで、御承知の如く朝鮮人聯盟、或は又朝鮮人青年聯盟と云ふやうなものを拵へて、各地に於て日本人を捕へ、色々な難癖を付けて事務所に引張り込んで「リンチ」を加へると云ふやうなことが、九州方面でも盛んに行はれて居り、山口縣でも行はれて居るのでありますが、是等に付ての日本政府の立場、或は執るべき態度、或は日本人としてどう云ふ態度で之に臨んだら宜いかと云ふことを、はつきり國民に知らして貰ひたいと思ふのであります、終戰と共に敗戰の痛手を受けた日本人は、第三國人或は非日本人が行ふことに對して、常に泣寢入して居るやうな事態が多いのであります、でありますから此の點に付て日本人はさう云ふ場合にはどう云ふ對策をしたら宜いかと云ふ方途を示して貰ひたいのと、之に關聯して今の中華人に對しても、日本人は是等の亂暴に對してどう云ふ方法をしたら宜いのか、政府はどう云ふ取締をして居るのかと云ふことを、はつきり此の際明示して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=163
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164・大村清一
○大村國務大臣 終戰後朝鮮人は段々歸國を致した者もあるのでありますが、本年の三月の末に一齊調査を致しました結果に依りますと、在留朝鮮人は六十五萬と云ふことになつて居ります、其の中で大部分の者は歸鮮希望の者でありましたので、關係筋とも打合せまして、特に彼等の送還計畫も立てまして、大體希望者を本年の九月一杯には之を送還をすると云ふことで進んで居つたのであります、然るに其の後朝鮮本國の事情、殊に「コレラ」の蔓延と云ふやうなことがありまして、一時送還輸送を中止致し、本年の十一月までには、全部の送還を終ると云ふことに計畫を變更した次第であります、而して今までの送還を致しました者は五萬程度であります、而して在留朝鮮人の悉くが惡いと云ふことは固よりございませぬ、其の中には善良な朝鮮人もありまして、日本に於きまして平和的生活を營み、善良なる國民に伍して行きたいと云ふ人も多數あることは勿論でありますが、併し又他の面に於きまして、或は終戰前に於ける朝鮮人に對する處分に不滿を持ちまして、謂はば其の仕返しをすると云ふやうな氣持のある者もないではありませぬ、終戰後の我が國の混亂状態に乘じまして、其の間に不正不義を働くと云ふ者も少からずあつたのでありまして、國民は是が爲に非常な不安と不滿とを抱いたのであります、是は洵に尤もなことと考へるのであります、故に警察と致しましては斷乎たる取締方針は、ずつと堅持して來て居つたのでありますが、警察力に於きましても過去に於て必ずしも十分なものがありませぬ、又終戰直後に於きましては其の取締方針に付きましてもはつきりしない所もございまして、思はしく進んで居なかつたことも、率直に是認しなければならぬのでありますが、併し今日に於きましては總ての關係が極めて明瞭になりました、又警察力も漸次囘復致しまして、不良な朝鮮人に對しまする取締に付ては段々と徹底するやうになりまして、餘程關係は改善して居るのであります、唯御話の如く、最近に於きまして密入國者が激増する傾向であります、七月の調査に依りますと、凡そ長崎から敦賀まで位の沿岸各地に對しまして、極めて熾烈なる密入國が展開致して居るのであります、其の數は統計に上りましたものが月に凡そ八千人であります、其の内の一割乃至二割程度のものは結局逮捕するに至つて居りませぬ、八、九割の者は之ら逮捕致しまして、進駐軍に引渡し、進駐軍の手に依りまして本國に強制送還を致して居るのであります、併し八千人と申しましても、是は數字に上つた者でありますから、夜陰密かに入國を企てる者に於きましては、可なりの統計の數字に上らない者もあることを推測されるのでありまして、御話の如く昨今の情勢では月々一萬人内外の密入國者があると云ふやうに考へて居る次第であります、併し之に對しましては御話の如く、其のやうな密入國者が成功致しまして、日本の社會に濳り込むと云ふことは、色々の面に於きまして非常な支障を來すのであります、密入國者は申すまでもなく悉く闇の生活でなければ生きて行かれないのでありまして、食糧の配給も受ける譯に參りませぬ、其の他凡ゆる生活が闇の生活である、闇の生活には不正が伴ふと云ふことは是は必然でございまして、是が我が國内の治安を亂す禍因になることは、火を賭るよりも明かなことでありますので、關係地方に於きましては、全警察力を盡して、其の密入國の取締に懸命の努力を致して居ります、尚ほ警察力が密入國の取締の上に十分ならざる所に於きましては、特に民間から警察補助員の應援を受けまして、其の力の足らざる所を補ふと云ふやうなことに付きまして、各府縣に於きましてそれぞれの事情に應じまして、出來るだけの措置を講じて居るのであります、尚ほ又一面に於きましては、是は海岸線を警備致しまして、其處で密入國者を待つて居つて捕へると云ふこととは如何にも非能率なのでありまして、出來得まするならば快速艦艇を以ちまして、密航船を拿捕する、若し更に進んで可能でありまするならば、密出國を取締ると云ふ所まで徹底しなけれは、此の勢ひを阻止することは甚だ困難でございますので、是等の點に付きましては、今日の我が國だけの力で之を解決することが困難でございます、故に此の點に付きましても聯合國の支援も懇請致して居る次第であります、尚ほ言ひ落しましたが、此の朝鮮人の密入國と云ふ問題は、我が國の社會治安の上に非常に憂慮すべき支障でありまするのみならす、朝鮮内に「コレラ」が蔓延致して居りますので、密入國者が「コレラ」の帶菌者として──他の傳染病も持つて參りますが、最も憂慮されるのは「コレラ」でございます、こちらに入國しました者の中で、既に相當眞性「コレラ」の發生した者があるのであります、此のことは國民の衞生の上に於きまして重大問題でありますのみならず、又進駐軍に對しましても甚だ憂慮すべきことがあるのであります、故に此の點に付きましては厚生省に於きましても、懸命の努力を防疫に捧げて居るやうな次第でございます、併し何れに致せ、密入國を根絶すると云ふことに全力を盡さなければならぬのであります、而して今日までに於きましては、地方の警察力に於きまして萬全の措置を講じて居るのでありまするが、それだけでは不十分でございますので、政府と致しましても、密入國の取締に對しまして、相當思ひ切つた措置を講ずる、經費も之に投ずると云ふ必要がございますので、十分事態を研究致しまして、必要なる豫算と措置とを講ずると云ふことに努めまして、近く必要なる追加豫算も議會の御協贊を經るやうに、提出を致す運びに相成つて居ります、此のやうに進んで居りますので、更に今までやつて居りましたやうに、只今申しますやうな措置を加へまして、密入國者の根絶の上に十分努力を致す積りであります
次に朝鮮人の取締に付ての問題でございますが、是は今日に於きましては、違法不法の行爲を致します、朝鮮人に對しましては、全く日本人と同樣に斷乎之を取締る、不正の朝鮮人を逮捕致しましたならば、日本の裁判權に依りまして之を處斷すると云ふ關係は、是は明瞭に相成つて居ることでありまして、現に其の線に沿ひまして處置を致して居る次第であります
尚ほ御尋ねになりました臺灣人に關してでございますが、臺灣人は日本人、朝鮮人と同樣に、不正不法行為は取締ることに相成つて居るのでございますが、最近に至りまして、其の裁判權の問題に付きまして疑義を生じて參りまして、其の限度に於きまして朝鮮人と稍稍趣きを異に致して居りますが、此の疑問の問題に付きましては、外務省に於きまして急速に此の問題を解決すべく努力中であります、近く此の問題ははつきりとした結論を得ることと考へて居る次第であります
尚ほ中國人に付きましては、是は聯合國人に對する日本の裁判權に付きましては、或る制限のあることが聯合國より指令をされて居るのでありまして、一口に申しますと、中國人に對しましては日本政府に完全なる裁判權がない譯であります、其の内容に付きましては民事事件、刑事事件等に於きまして、多少の相違があるのでありまするが、要するに完全なる裁判權がないと云ふことは、是れ亦はつきりと決まつて居る所であります、併し臺灣人て在留を致して居ります者は、現に凡そ八千人位に過ぎないのであります、又中國人に於きましては只今數字を持つて居りませぬが、それよりずつと人數が少いのであります、而して先にも朝鮮人の時に申上げましたと同樣に、中國人、臺灣人悉く惡い譯では固よりないのでございまして、問題は六十萬人と云ふ大數に上つて居ります朝鮮人が、治安面に於きまして最も重大な關係があるのであります、其の朝鮮人に對しましては、先程來説明申上げます如く、日本警察に於きまして不正不義は斷乎取締ると云ふ方針で進んで居ります、又そこに何等の支障も障害もないことでございますので、今後一層取締を嚴に致しまして、社會不安の禍因を芟除すると云ふことには、極力努力を致す積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=164
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165・田村定一
○田村委員 朝鮮人のさうした人々が全部が全部と云ふ譯ではありませぬが、中にはさうした團體を利用して、日本人に色々な「リンチ」を加へる、或は難癖を付けて脅喝すると云ふ事態が、頻々として行はれて居るのであります、私は朝鮮人聯盟と云ふやうなものが不當なものであり、さうしたものを背景して色々なことをすると云ふやうなことがある場合には、内務大臣に於て解散權があるかどうかと云ふ點を聽きたいのと、中國人或は臺灣人──是は私も過日汽車の中で、中國人と席の問題て喧嘩をしたのでありますが、無論私は一歩も讓ふず、相手が手を振上げた場合それを引つたくつてやつたのであります、一歩も讓らなかつたのでありますが、さうした場合に、車中或は電車の中に於て、中國人なるが故に色々な難癖を付けて座席を取る、或は汽車から引摺り下して色々な暴力を加へると云ふ點に付て、今日申上げました通り、日本人は敗けたが故に手も足も出ないと云ふ考へを、國民全體が持つて居ると思ふのであります、斯う云ふ場合に幾ら毆ふれても蹴ふれても默つて居るのか、或は自分がそれに對抗する力があつたならば、相手を毆り飛ばして宜いのか、さうした場合に國際問題が起るかどうかと云ふことを、はつきり國民に知らせて置きたい、其の點内務大臣の責任ある御答辯を御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=165
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166・大村清一
○大村國務大臣 朝鮮人が團體的に行動して、そこに暴力行爲があると云ふことは、固よりり斷乎取締つて宜しいことであります、又或る種の團體が不正なことをやりました場合に於きまして、團體其のものを解散し得るかどうかと云ふ問題でありますが、是は多くの場合に於きましては、さう云ふ不生な行爲をすることを目的としての團體は、先づあり得ないことでありまして、それ等の不正行爲其のものは取締の對象になりますが、組合其のものを直ちに解散することには參り兼ねると存じます、尚ほ車中等に於きまして日本の社會に於きましては、日本人も、朝鮮人も、臺灣人も、全く平等の立場に於て平和なる生活を共にすることでありますから、そこに甲乙のないことは固より説明するまでもないと考へるのであります、相手方が不法行爲を致しました場合に於きまして、こちらで仕返し的にやると云ふことの問題に付きましては、是は法律上はさう云ふ暴力行爲は官憲に依つて取締ると云ふことで、そこに直ちに個人が仕返しをすると云ふことは宜くないことと思ふのであります、併し我々の社會生活に於きまして、必ずしも其の理窟通りには行かないことがあります、日本人として常に卑屈な能度で居ると云ふことは、結局社會生活の上に於きまして結果が惡くなると思ひますので、私は其の場合に於きましては、國民の健全なる常識に愬へまして、もう少し毅然たる態度で進んで貰ひたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=166
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167・田村定一
○田村委員 私の聽かんとしたことに對して大體御答辯があつたのであります、第三國人或は非日本人に對する質問は是で打切ります、序でありますから内務大臣に御尋ね致しますが、先月でありましたか、先々月でありましたか、山口縣地方に於ては警察官が各家庭を、五、六名づつ團體行動を以て隱匿物資の摘發と云ふのでありますか、供出を完了した農家、或は都市に於ては町内悉く疊から押込、物置等全部調べる、又或る地方に於ては、一部の町の有力者のみを調べると云ふ風にして、どう云ふ標準か知りませぬが、米なら米を二斗以上所有して居つた者は、全部公定價格で買上げたと云ふやうな事態があるのでありますが、二斗と云ふ基準は一體何處から出たのか、斯う云ふ命令は山口縣だけに當局は出されたのか、各地ともやつて居られるのか、或は中央地方を問はず知名の士だけをやると云ふならば、大藏大臣、内務大臣、農林大臣の家もさう云ふ風にやられたのか、此の二斗の基準は一體何處から割出されたのか、十人の所も二斗以上は取上げてしまふ、一人の者も二斗以上取上げてしまふと云ふことは私は大きな問題であると思ふ、是は山口縣だけに限られたことであるかどうか、内務大臣の御意向を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=167
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168・大村清一
○大村國務大臣 隱匿物資の摘發に付きましては、個人生活の祕密なり安全と云ふことは、十分保障する前提の下に、行過ぎのないやうに戒めて來て居るのであります、隨て隱匿物資を摘發する場合に於きましては、確實なる證據があると云ふことでなければ、個人の私宅に入つてまで搜査することは、一般的に認めて居ないことでありまして、是は大體全國此の方針を遵守して居るやうに考へて居るのであります、只今山口縣の例に付て御話のありました點は、私初めて聽くことでありまして、是は極めて顯著な事例ではないかと思ひます、尚ほ二斗以上の基準と云ふのも私了解が付き兼ねますので、其の點は早速實情を調べました上で御答へ申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=168
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169・小野孝
○小野(孝)委員 私の殘つた質疑は極めて事務的な點でありますが、第一に御伺ひ致したいのは、物資の割當及び配給等生産命令の關係であります、此の委員會で商工大臣が答へられた所に依りますと、第一條、第一項第二號の生産命令と云ふものは、原則としては出さない方針である、或は石炭であるとか、鐵であるとか、基礎物資に付てはあるかも知れぬが、全般的にはやらない、斯う云ふ御答辯であつたのでありますが、生産命令と云ふものは伴はないで、物資の割當及び配給が圓滑に行はれるかどうか、頗る疑問に思ふのであります、其の割當を行ふ物資が所謂最終製品であります場合には、まださしたる不都合はちいかとも考へますが、其の割當配給する物資が原料又は材料である場合には、當然其の原料又は材料の配給を受けて、他の製品を作る者に對しては、是れ是れの物資を以て是れ是れのものを生産すべしと云ふことにしなければ、配給は圓滑に進まないと思ふのでありますが、此の點に付て如何御考へですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=169
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170・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 仰せの通りに強制力を持たなければ、最後的の效果は期し得ないのでございますが、大體は原材料を割當てまする基礎が、どう云ふものを幾ら作るかと云ふ大體の希望を取りまして、それに依つて需要を算定致しまして割當する譯でございますから、大體の生産内容と云ふものは、業者の方々には御分りの筈でございます、一面此の生産命令と申しまするものは、大抵は此の資材の割當、生産の割當が規定される譯でありますけれども、其の他にも色々な生産上の原因がございます爲に、資金の關係、勞務の關係、色々な關係がございまして、唯生産命令だけで效果を發生するものとも思ひませぬので、是は餘程重要な物資だけに限る、斯う云ふ風に商工大臣が御答へになつたのであらうと存じます、さう云ふものと致しまして、例へば肥料でありますとか、鐵鑛でありますとか云ふ、極く重要な基礎的なものに付ては此の命令を以て發することがある、斯う云ふ風に申されたのであらうと考へます、普通は割當を致しまする場合に、どう云ふものを豫定して割當をする、斯う云ふことも可能でございますので、割當の基準と致しまして、どう云ふものを作るものとして之を割當すると云ふ割當の方法も考へられますので、第一項の割當で大體の生産は確保されるものと豫想して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=170
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171・小野孝
○小野(孝)委員 實際上解決付くだらうと云ふ御答辯ですが、今一つの例を取つて申しますと、例へば銅の配給統制をやります場合に、銅を電線製造業者に配給する、其の際には勿論其の電氣銅を以て、何々工場の配電線を作ると云ふ意圖の下に、電線製造業者に銅が配給されるものと思ふのでありまするが、單なる配給割當でありますと、惡意の電線製造業者があつて、割當を受けた電氣銅で、然るべき他の製品を作つて他に廻してしまつても、之を縛る途がないのぢやないか、斯う云ふことは電線ばかりぢやありませぬが、今の場合などは屡屡行はれることなので、之を縛つて行かねば意圖した方向に物が流れないのぢやないか、斯う云ふ風に考へますが如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=171
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172・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 只今のやうな一つの例、電線と云ふ重要な物資に付きましてはそれが安定本部の方策に基く事業であります場合に於ては、第二號の生産命令を發し得るものと考へます、併しながら先程申しまするやうに、通常は何處其處の會社に納める電線を作る爲の銅一「トン」を配給する、斯う云ふ割當を致しまして、之に違反した場合には次の割當を或る程度調整する、斯う云ふことも出來まするので、原則と致しましては通常の場合には、唯さう云ふ條件付の割當と云ふことで、第一項の割當は實行して參りたいと思ひます、要するに第二號の生産命令は、特に重要なものだけに付て發する積りで規定致して居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=172
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173・小野孝
○小野(孝)委員 是も此の委員會で屡屡問題になつたのでありますが、經濟安定本部と各主管官廳間の關係、及び民間産業關係と云ふものが、まだ少し曖昧な點がありますので、事務的で宜しうございますから、一例を銑鐵の場合に取つて、鐵計畫がどの省のどの課でどう云ふやうに計畫されて、それがどう云ふやうに實施されて行くのかと云ふ、其の經路を、出來るだけ簡單で宜しうございますから、一つ御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=173
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174・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 假に銑鐵の例を御取りになりましたが、銑鐵に付きましては生産は全部商工省の所管でございまするから、其の生産竝に取得の状況等は商工省に全部集まります、隨ひまして供給力が幾らあるかは商工省で分る譯でございます、尚ほ輸送等の問題もございますが、是も運輸省と連絡しまして、商工省にどれ位の輸送力を、銑鐵に對して廻して貰へるかと云ふことも分る譯であります、之を需要部門にどう云ふやうに割當てるかと申しますると、大體は先づ商工省内に於きましては、省内の各局が銑鐵の需要を各需要者から取りまして、それを商務局の需給課に持つて參りまして、そこで按配を致します、又一面農林省或は運輸省、其の他産業を主管せられる官廳がございますが、そこに於て銑鐵の需要と云ふものは、それぞれの所管の立場から需要を御取りになりまして、其の需要額を査定されて、今後は是は安定本部の方へ御出しになると思ひますが、今日までは商工省の需給課の方に御出しになつて、そこで査定をして、今日御手許に御配りしました月別の計畫が出來て居ります、是は今後安定本部に御出しになるのであります、商工省は供給力を一方安定本部に御報告申上げまして、安定本部の係の方で其の査定をして、其の最後的の部門別の割當が出來ることだらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=174
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175・小野孝
○小野(孝)委員 其の先の詰り産業團體の方に行つて、實際に現物が各工場に入る所まで御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=175
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176・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 物資需給計畫と云ふものは、さう云ふことで恐らくは安定會議に掛りまして最後的に決まる譯でございまするが、さう致しますると、部門別の割當の大枠が決まる譯であります、各省大臣は其の枠の中で、それぞれの所管の産業に割當をする譯であります、割當をする中には主務大臣直接割當をするものもあらうかと思ひます、民間でおやりになりますものは、産業團體のあるものは産業團體を通じて割當を致すのであます、産業團體別に主務大臣が銑鐵を區分致しまして、甲の産業團體は是だけ何「トン」、乙は何「トン」と云ふことを査定して、其の割當を受けた産業團體は、其の割當の範圍内に於て其の基準を作つて戴いて、其の基準に依つて各企業別の割當を致す譯であります、其の割當を致したものは團體に依つて、或は割當證明書となりませうし、或は其の他割當切符となつて、切符の配給を受けて鐵鋼販にそれを貰ひに行く、斯う云ふ建前になるのだらうと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=176
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177・小野孝
○小野(孝)委員 其の點は一應了承して、次に此處に民主的に組織された産業團體と云ふことでありますが、産業團體と云ふのは、今まであつたやうな意味での産業團體で、其の範圍、數と云ふものは變りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=177
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178・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 若干の變更があつたものもあるやうでありますが、大體は從來ありました數とさう違はない數が豫定されて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=178
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179・小野孝
○小野(孝)委員 さう致しますと、一例を鐵鋼關係に取りまして、鐵鋼協議會でありませうが、鐵鋼製品關係等では漏れて居るものもあるが、從來の機構にあつた下部機構と云ふものは、どう云ふやうに整理されて行く考へでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=179
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180・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 下部機構と云ふやうなことはありませぬが、二次製品の關係でございますれば、釘、針金、亞鉛鐵板、さう云ふものに付きましては別にやはり協議會を作りまして、配給協議會から割當して參りたい、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=180
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181・小野孝
○小野(孝)委員 さうしますと、其のものは各製品別に出來ると云ふ風に考へて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=181
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182・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 是は御手許に配りました表にございまするやうに、釘、針金、鐵線、是は一つの統制團體を作る、亞鉛鐵板は別に一つの統制團體を作る、さう云ふ積りで此の表は出來て居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=182
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183・小野孝
○小野(孝)委員 さうしますと鐵の場合を取つて甚だ何ですが、鐵の場合も、鐵鋼製品と云ふやうなもので是から拔けて居るものもあるのですが、さうしますと、それは統制しないと云ふのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=183
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184・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 勿論小さい色々な鐵の關係の業者の方が居られます、是は併し大體只今の考へでは、それぞれの團體は作つて戴きまするけれども、需給調整法の適用を受けずに、自治統制で大體やつて行きたい、其の團體に御流しを致しまするが、自治統制でやつて行きたい、斯う云ふ豫定であります、併しながら全部統制機構を御作りを願ひませぬと、資材の配給が圓滑に參りませぬので、さう云ふ基礎的な重要なものに付きましては、法の「バック」を致しまして統制を致して參りますが、其の他のものに付ては大體自治統制を致して參りたい、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=184
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185・小野孝
○小野(孝)委員 其の鐵鋼製品の中でも重要なものは統制するのだ、重要でないものは自治統制で此の枠から外して行くのだと云ふ所に、私は理論的にも一貫しない所があるし、實際問題として非常に困る所が出て來るのぢやないか、斯う思ふのであります、而も鐵鋼製品に付て言ふと、釘、針金、鐵線だけは一つにしてやる、亞鉛鐵板は一つにしてやる、後は一應自治統制のやうな形で此の需給調整の枠から外して行くと云ふことになると、例へば「ケーブル」はどうなるのか、或は「ミルボール」はどうなるのか、可なり大きいものもあるのです、さう云ふものは此の枠から外してしまふ、さうして鐵全體のものとしては統制にする、又製品の中でも一部を統制するとなると、其の間に非常な不都合を生ずると思ふのですが、其の邊を如何に御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=185
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186・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 只今御話のやうに、其の範圍が非常に線が引きにくいのでございますが、私共の考へでは、成べく此の法規統制の範圍を重要なものだけに限ると云ふ意味で、此の品物を制限して居るのでございまして、更に之を擴張致しまする必要が出來ました場合は、之を擴張致しまして、之に追加をして行く、斯う云ふ考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=186
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187・小野孝
○小野(孝)委員 其の點で重大な御考慮を願はなければならぬと思ひますが、先般總括的な質問の時に申上げましたやうに、釘、針金、鐵線が重要で、「シヤベル」「スコップ」が重要でないと云ふ理窟はないのであります、問題は釘、針金、鐵線どの位に對して、「シヤベル」「スコップ」がどの位、其の適正の比率は何處にあるかと云ふことを發見するのであつて、釘、針金、鐵線が必要で、「シヤベル」「スコップ」が必要でない、必要度が薄い、斯う云ふことになると、石炭の方で「スコップ」がなくて石炭が出なくなる、斯う云ふことになるから、其の點は十分御考慮を願ひたいと云ふことを要望致します
次に地方的に小さな業者が存在して居るものの團體と云ふものをどう云ふ風にやつて行かれるか、是は産業團體と云ふものを飽くまでも縱の系列で最後まで貫き通すのか、或は小さな部分に付ては、地域的な産業團體と云ふやうなものを形成して行く御考へがあるのかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=187
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188・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 只今地方的な小さい産業に付ての割當をどうするかと云ふ御質問でございますが、是は先程も申しまするやうに、原則としてやはり自治統制に御願ひしたいと考へて居ります、唯其の物が文化的に非常に重要なものであつて、所謂全國的にもやはり統制力を加へて行かなければならぬと云ふやうな場合には、單に地方と云ふことの見地ばかりでなく、全國的に見て重要だと云ふ見地から致しまして、此の調整法の適用をして參りたい、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=188
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189・小野孝
○小野(孝)委員 そこで重ねて諄いやうでありますが、要するに此の物資調整法で調整して行くものは重要なものである、自治統制に任せるものは重要度が低いものだ、斯う云ふ印象が一般的に強まると、又其の間に物の「バランス」と云ふものが採れなくなつて、其のことが日本の産業に非常に影響する所が多いと云ふことを私は心配するのでありますから、此の法に依つて統制するものは重要なもので、此の法に依らないで自治統制して參るものは重要度がないものだと云ふ頭は、お役所の人自らも之を一掃して戴きたいと云ふことなんであります(拍手)
次に御伺ひ致したいことは、第二條に、所謂民主的に組織された産業團體に、主務大臣は物資の割當を行はせることが出來る、斯う書いてあるのであります、此の邊が或る見る眼を以てすると、どうも官僚統制と云ふものがちらちら覗かれる、民主主義の衣の下から、やはり鎧がちらちら見えると云ふやうな印象を與へる所だらうと思ふのであります、私は、やらせるのならば、やらせることを得位なことでなしに、綺麗さつぱり、物資の割當は民主的に組織された産業團體に行はせると、斯う云ふ風にしてしまふことが望ましいと思ふのであります、さう云ふやうな御考へがありませぬか、殊に割當を行はせることが出來ると云ふ風にして置かなければならぬ積極的な理由があるのかどうか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=189
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190・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 氣持から申しますと、決してさう云ふ考へではないのでございます、唯此の書方が主務大臣と書き出して居りますので、受權を致しました主務大臣が、受權を受けたと云ふ形で、出來ると云ふ字を使つて居りますが、第一條の場合に於きましても、やはり主務大臣は命令が出來ると云ふ受權の表現の方法でございまして、氣持から申しまするならば、決して役所が斯う云ふ權限を持つて居ると云ふことをひけらかす意味ではありませぬ、專らさう云ふ團體に御任せをすると云ふ氣持でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=190
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191・小野孝
○小野(孝)委員 其の點は甚だ我が意を得たる御答辯を得て感謝致します
次に是は小さいことでございますが、第二條第二項の物資の割當、産業團體の行つた物資の割當の決定に不服の者は、一々主務大臣に申出ると、主務大臣が是れ是れの手續を執つて、産業團體の決定を覆すと云ふことでは、實際問題としては事柄が進まないのぢやないか、恐らく今日物資の割當を受けて、是で十分でございます、洵に有難うございましたと言ふ人は餘りない、殆ど全部が全部不服だらうと思はれる、それが一々其の不服だと云ふことを主務大臣、商工大臣に申出て、主務大臣が然るべき手續を執つてそれを決定し直すと云ふことでは、實際問題として私は品物が動かなくなる、斯う云ふこともやはり任せるなら任せるで、産業團體と云ふものを信用して、之に任してしまつたらと、斯う思ふのでありますが、其の點如何に御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=191
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192・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 仰せの通り任してしまふのでございます、唯偶偶非常に不公平なことが行はれた場合に對する是は救濟の規定でございます、さう云ふ場合にさう云ふ不公平な取扱を受けた方が何處にも申出る餘地がない、斯う云ふことは一面又何と申しますか不公平なことでございまするので、やはりさう云ふ場合には途を開けて置く必要があると考へるのでございます、唯只今仰せのやうに、非常に澤山の方が不平を持たれまして、一々商工大臣に不平を申出られますることは大變なことと考へます、隨て此の規定の運用を致しまする場合には、豫め産業團體に再調査を願ひまして、納得の行くやうな同意をして戴く積りでございます、然る上でどうしても承服出來ぬと云ふやうな場合に主務大臣が出て行く、斯う云ふやうなことで運用を致して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=192
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193・小野孝
○小野(孝)委員 もう一點細かい問題でありますが、第二條の第一項に歸つて參りまして工合が惡いのですが、其の中に、割當をやる場合には「民主的に組織された産業團體に、その構成員の議決に基いて」と居ふ言葉が使つてあります、是が又私は實際問題として非常に困るのぢやないかと思ふ、其の四半期毎に割當がある度に、而も物資は一つばかりでないので、數百種類となく扱はなければならぬ物資の割當を決めるのに、一々構成員の議決に基いて割當を決めると云ふことは、事實上不可能であらうと思ふのであります、此の意味は協同組合の場合には、定款なり何なりで、其の割當の方法に付ては、何か構成員と云ふやうなものに任せると云ふことを、概括的に議決して行くと云ふことで宜いのかどうか、其の點を伺ひます
〔委員長退席、原(健)委員長代理著著〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=193
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194・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 仰せの通りでございます、其の都度一々議決を經ると云ふことは大變な手數でございます、殊に組合員などが非常に多いやうな場合に於ては、殊更大變なことでございます、隨ひまして割當の基準と云ふものだけを決めて置いて戴きまして、毎月々の割當、或は四半期毎の割當に付きましては、特別な專門の委員なり、或は特別な理事に御委任を願ひまして其の實行の任に當らせる、斯う云ふことで結構であらうと思ひます、基準だけを此の議決に於て決めて戴ければ、それで結構だらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=194
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195・小野孝
○小野(孝)委員 私の質問は一應之を以て打切ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=195
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196・原健三郎
○原(健)委員長代理 それでは是で散會しまして、明日午前十時から開會致します
午後四時五十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00719460912&spkNum=196
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