1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
臨時物資需給調整法案(政府提出)
商工協同組合法案(政府提出)
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昭和二十一年九月十三日(金曜日)午前十時二十三分開議
出席委員
委員長 竹田儀一君
理事 加藤一雄君 理事 小島徹三君
理事 塚田十一郎君 理事 原健三郎君
理事 宮前進君 理事 西村榮一君
理事 前田榮之助君 理事 石原登君
理事 疋田敏男君 理事 福田繁芳君
安部俊吾君 井田友平君
西村久之君 厚東常吉君
小野孝君 田中源三郎君
田中實司君 瀧澤脩作君
磯崎貞序君 金光義邦君
鈴木周次郎君 鈴木明良君
坪川信三君 寺田榮吉君
川崎秀二君 田村定一君
金子益太郎君 加藤鐐造君
竹谷源太郎君 中崎敏君
山口靜江君 加藤勘十君
大宮伍三郎君 稻田健治君
三木武夫君 伊藤恭一君
小坂善太郎君 戸叶里子君
布利秋君
九月十二日商工協同組合法案(政府提出)の審査を本委員に付託せられた
出席國務大臣
商工大臣 星島二郎君
運輸大臣 平塚常次郎君
大藏大臣 石橋湛山君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
物價廳次長 工藤昭四郎君
農林事務官 山添利作君
商工事務官 吉田悌二郎君
商工事務官 池田欽三郎君
商工事務官 玉置敬三君
運輸政務次官 松田正一君
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本日の會議に付した議案
臨時物資需給調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=0
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001・竹田儀一
○竹田委員長 會議を開きます──原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=1
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002・原健三郎
○原(健)委員 農林關係のことを御質問しますが、もう今日で質問を打切るさうですから、成べく簡單に要點だけを御尋ね致したいと思ふのであります
肥料のことでありますが、今日此の重要な肥料の生産を、生産の方は商工省でやつて居り、配給の方は農林省でやつて居る、此の兩方に分けて居るのは非常に不便であると思ふので、肥料の行政を一元化すべきであると私共は考へるのでありますが、それをやる意思があるかないか、大體内閣直屬の、假に名前を附するならば肥料廳と云ふやうなものでも置いてやる方が、遙かに肥料の増産が出來ると思ふが、どうであるか
それから最近閣議で決定したのか何處で決定したのかはつきり知らないのでありますが、日本肥料會社なるものを作つて、それに肥料の配給をなさしめると云ふことを決定したとか、しないと言つて居る、そして全國の農業會は之に猛然たる大反撃の運動をやつて居るのでありますが、斯う云ふ日本肥料會社なるものを故らに作つて、斯う云ふものに配給せしめる必要があると御考へであるかどうか、此の點一つ御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=2
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003・山添利作
○山添政府委員 肥料の行政機構は農林、商工に跨つて居りまして、只今御述べになりましたやうに配給は農林省、生産は商工省と、それ程も實ははつきりして居ない點がありまして、是は急速に肥料の増産を圖つて行くと云ふ上に於て非常に不便であります、又業者の方にも非常に迷惑を掛けて居るのであります、此の行政の調整に付きましては、目下政府部内で協議を致して居りますが、出來るだけ早い機會に、すつきりした行政機構に致したいと云ふので、檢討を進めて居ります、又日本肥料と云ふ會社を作つて、配給をやらせることを考へて居ると云ふ御話でございますが、是は現に日本肥料と云ふ會社がございまして、是が一手に統制配給を致して居るのでありまして、問題は其の日本肥料の行つて居ります配給機構を農業會系統に移すべしと云ふ議論と云ひますか、要望があるのであります、此の日本肥料の行つて居ります肥料の取扱に付きましては、日本肥料は今後肥料の製造と云ふ方面に向つて參り、配給面に付きましては新しい構想を以て處置をしたい、是は將來の問題でありますが、さう云ふ考へ方を持つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=3
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004・原健三郎
○原(健)委員 何時も政府の答辯を聽くと、我々の意見に贊成をして、さう云ふやうにやりたいとか、する積りであるとか、決意があるとか云ふことは度々聽くのでありますが、大體肥料の生産が非常に要望されて居る時に、どれ位の期間でどう云ふ風にやるか、さう云ふことをはつきり御聽きしたいのであります、日本肥料會社をして配給せしめないならせしめない、それには農業會をして配給せしむるならせしむる、或は別の機關を作るなら作る、同樣に肥料の關係の行政の一元化に付きましても、さう云ふ點をもう少し信念を持つて、具體的に誠意を示して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=4
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005・山添利作
○山添政府委員 行政の一元化問題に付きましては、目下安定本部を中心に致しまして至急檢討を進めることになつて居ります、之に付きましてはそれぞれの意見もあることでございますが、議論はもう出盡して居る積りであります、結局安定本部を中心に致しまして具體的に決定をすると云ふ段取になつて居ります、又配給の點を何時頃やるかと云ふことに付きましては、は日本肥料の方が近き將來に全面的に──全面的にと申しますとをかしいのでありますが、肥料の製造の方に向つて參る、又肥料の製造を助長するやうな方向に重點を置いて參る、さう云ふ時期とも睨み合せて致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=5
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006・原健三郎
○原(健)委員 急速に實現を望みたいと思ひます、次に農業會のことで御尋ねしたいのですが、今度農業協同組合法と云ふのが、次の議會にでも提出されると云ふことを聞いて居るのでありますが、其の組合法を作る上にも御參考にもして戴きたいし、又我々の希望を申述べたいのであります、それは今日農業會と云ふものは非常に色々議論の中心になつて居ります、善い部面もあるが、惡い部面もある、改良すべき點も多々あると云ふことは輿論となつて居ります、それで我々が考へるのは、どうも農業會の指導部面と經濟部面とが、一諸になつて居る所に非常に問題が複雜して居ると思ふのであります、御承知のやうに農業會の本當の仕事と云ふのは、指導部面にあると私は考へるのであります、所が此の頃になるとどうも經濟部面が──金が儲かるとか、どうやら色々な理由に依りまして經濟部面が非常に盛んになつて、寧ろ其の生産を増強すると云ふやうな指導部面の方が、壓迫されがちになつて居ると思ふのであります、例へて言へば養蠶組合があれば、養蠶の人は自分の組合のやうに思つて居ります、畜産の組合があれば、畜産關係の人は自分の組合のやうに思つて居る、それが農業會となつてしまつてからは、ぱあつと農業會が總てを掻廻して居つて、農業會と云ふものは供出のしつけ場所のやうな感じを持つて居る所が多分にあるのであります、それで要するに農業會は、儲かるやうな經濟部面にのみ力を入れがちの傾向が此の頃は多分にあるのであります、是は本末顛倒であると思ひます、今日私共が考へますのは經濟部面と指導部面と分けて、指導部面に重點を置くことが宜いと考へて居るものであります、それからさう云ふことは別言して見ると、最近は農業會は本來の使命の仕事から逸脱致しまして、例へば一般の藥品を賣つて居るとか、疊の表まで世話をする、或は雜誌のことをやるとか、農業會が農機具の生産、或は農業生産に直接關係のあることをやることから逸脱して、さう云ふやうな凡ゆる仕事までも抱へ込んで、而して一般の人の不便も顧みず、自分の仕事が殖えること、及び普通の言葉で言へば、儲かるやうな仕事を、あれもこれもと必要以上に抱へ込んで居るのは、我々は甚だ遺憾であると考へて居るが、此の點に付て所見を伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=6
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007・山添利作
○山添政府委員 農業會の仕事は、指導部面と經濟部面とが團體統合に依りまして合體致した結果、今日の形になつて居るのでございますが、之を元のやうに分けたらどうかと云ふ御意見でございます、併しながら是は合體致します前の歴史を見ましても明かなる如く、指導部面を經濟部面から分けましても、其の間農村に於て非常な對立を來たしますのみならず、又指導部面だけをやつて居りますと、其の指導も強力に出來ない、斯う云ふのが帝國農會の時分に於ける實情でございました、そこで農村の仕事と申しましても、是は御話のやうに技術の改善向上と云ふことに力を注ぐべきことは勿論でございますが、それと同時に農業生産物の販賣、又農業必需物資の購入、又農業金融と云ふやうな方面にも十分力を盡すべきでありまして、兩々の機能を一つの團體が致しますことに依りまして、調和のある事業の運營が出來るのでありまして、それを切離すと云ふことになりますれば、結局昔のやうな状態に立直つて、決して今御述べになりましたやうな指導部面が強化されると云ふことにはならないと思ひます、尤も指導部面は今後一層力を入れなければならぬ、而も今は物資等の不足或は供出と云ふやうな部面で、そちらの方に力が殆ど取られて居る云ふことは事實でございますが、今後指導部面を強化する、特に農業會を改組致しまして、下部の實行組合又町村の組合と云ふものに付きましては、之を生産の協同體として、活溌なる民主的な部面に於ける活動を致しますやうに仕向けて參ることが必要でありますし、又政府と致しましても技術振興施設と云ふ形を以ちまして、それ等の下部に於ける團體の技術的向上に對する發展指導と云ふことに付て努めて居るのでございます、今後は此の形で其の方は進めて參りたいと考へて居るのであります、又農業會が色々な仕事を、何も彼も取込んでしまつて却て其の能率が上らない、斯う云ふ點に付きましては、私共と致しましても同樣な感じを持つて居ります、併しながら是は戰爭中、又現在の物資窮屈な面に於きまして、凡ゆる小さなものまでも統制をされて居る、斯う云ふ現實の必要に基いてさう云ふことになつて居るのでございますから、それ等のことに付きましても農業會以外の、例へば藁工品等に付きまして、組合の業者を活用すると云ふやうな方途も、農業會の構成の中に講じて居るのでございますが、將來の方向と致しましては、之を重點的な部面に力瘤を入れて、十分農業會の持つて居る使命を果す──即ち農業用資材だとか、肥料、農機具、農藥、さう云ふやうな部面に、集約的に力を盡すべき方向に行くべきものだと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=7
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008・原健三郎
○原(健)委員 先程言ひましたのは、昔のやうに農業會を解體してしまへと云ふことを言つたのではありませぬ、誤解があるといけませぬが、私の言ひたいことは、農業會本來の使命である指導部面を主として、經濟部面は從──と言つては語弊があるかも知れませぬが、何と言ひましても指導部面が主であると云ふことを強調して置きたいのであります、もう一つ一例を以て言へば、農業會が色々なことをやつて居ることに對して、戰爭中なら已むを得ませぬが、是からの見透しとしては、何も彼も掻廻してやることに付ては少し檢討しなければならぬと云ふ、農政局長の御意見の通りやつて戴きたいと思ひます、一例を取つて申上げますと、藁工品には繩、莚、叺などがあります、私は最近是の増産に付て研究したのでありますが、此の藁工品が必要なことは、今更喋々するまでもないのであります、昭和十六年に繩、莚、叺などの合計は、枚貫單位で四億五千萬貫であつたのが、昨年は六分の一位になつて居る、それから又聯合國に引渡すべき物資が、千數百萬「トン」と見積りましても、之に要するものは枚貫單位にして約三億位要るのであります、二箇年計畫で之を實行しても、一箇年に一億五千萬貫要るのでありまして、非常な不足を致して居ります、斯う云ふものを今農業會が大體主としてやつて居りますが、之を其の儘放置すると、斯樣なものに依つて日本の生産や輸送が、非常に阻まれることを心配するのであります、不足になつた原因としては色々ありますが、最大の原因と云ふものは、やはり統制機關の不適格と機構の不備と云ふことにあらうと思ふのであります、それで今までのやうな農業會中心よりも、是から適當な業者が段々出て來るのでありますから、斯う云ふ仕事は宜しく業者に任せてやらした方が宜いと思ふのであります、例へば仲買人をして集荷せしめ、府縣に集め、更に中央聯合會に集める、又配給の面に致しますと、官民合同の全國需給協議會を作つて、そこを中心にしてやれと云ふやうに、農業會から離した方が、能率も上るし、能く集まるし、需要に應ずることも出來ると考へるのであります、最近私の聞く所に依りますと、農林省は藁工品の必要なことを非常に痛感されまして、唯値段を上げれば直ぐ是の増産が出來ると云ふ意思表示をしたと云ふことを聞いて居ります、農林省の意見に依ると價格を倍額、或は物に依つては三倍まで引上げたら、直ちに生産が増強されると云ふことを言うて居るさうでありますが、價格を二倍、三倍に上げることは「インフレ」を助長するだけである、私は生産費を償ふ程度の價格だけに上げれば宜いと思ふのであります、是は戰爭中なら一手に凡ゆるものをやるのも宜いのでありますが、最早戰爭も濟んだし、是等各業者には「エキスパート」もあるし、老舖もあるし、熟練堪能な人もあるのでありますから、斯う云ふ半官僚的になつて居る、農業會に、總てのことをやらすと云ふことはどうかと考へるのでありまして、其の藁工品に付ての所見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=8
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009・山添利作
○山添政府委員 藁工品は色々な原因から非常に減りまして、各方面に非常に影響を及ぼして居るのであります、そこで農林省と致しましては、肥料や鹽を特配致しますとかして、夏季増産と云ふ特別の増産運動を展開して參つたのでありますが、何しろ昨年度の凶作に依る藁の少かつたこと、或は肥料不足、或は農村に於て斯う云ふ細かいもので金の收入を圖ると云ふ氣分が稍稍薄らいで居る、斯う云ふ色々の原因から難かしい點があるのでありまして、是は今後特別に考へて行く必要があると思つて居ります、今御述べになりましたやうな事柄に付きましては、業者の人達が市町村の末端で農家を刺戟し、藁工品の生産、集荷の面に活躍して貰ふことは非常に必要であると考へて居ります、隨ひまして現在の統制機構を根本的に變へまして、新しく農業會系統、然らざる系統と云ふが如き二元化すると云ふことは避けまして、現在の統制形體を根幹として、其の内部に於て舊業者の人達の協力、活躍を御願ひ致したい、又其の爲には業者の團體の人と、農業會の人とのお互ひの協力關係が必要でありまして、農業會自身に於てもさう云ふ積りになり、又さう云ふことの爲に必要な豫算も計上致して居ります、又我々さう云ふ部面に關係して居る者も其の中に入りまして相談致して、さう云ふ方向でやるやうに現に致して居るのであります、此の統制形體を根本的に變へてしまふと云ふことは、現在考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=9
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010・原健三郎
○原(健)委員 御考へになつて居ないと云ふことでありますが、農業會は既に半役人的になつて來て居りまして、能率も低下し、不親切で、農家自身も相當反感を持つて居るやうな點も多分にあるのでありまして、私は農業會の發展の爲にも農業會關係の職員の人達は、大いに反省しなければならぬ點が多々あると考へます、それはそれと致しまして、斯う云ふ小さい藁工品のやうなものを、何も農業會が抱へ込んで居なくても、業者に之をやらせた方が宜いと思ひますが、其の點一つ御考慮を御願ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=10
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011・山添利作
○山添政府委員 業者の人に活躍をして貰ふことが増産の刺戟になると云ふことは十分分つて居り、其の方向で參りたいと考へて居るのでありますが、一般に集荷し、且つ之を配給する責任主體としての問題と致しましては、それは農業會の系統の責任と云ふことに致して置きますことが、適當であると考へて居るのでありまして、之を二元的な組織に致しますと其の間に又色々問題が發生し、特に現在のやうに非常に數量が少くなつて居ると云ふ事態に於ては、其の配給の部面が巧く行かないのぢやないかと云ふことも心配を致す次第であります、本統制の機關としては現在の形態に依る、而して其の運用に於て十分業者の人に活躍して貰ふ、斯う云ふ形で進みたいと云ふ考へで居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=11
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012・原健三郎
○原(健)委員 御趣旨は能く分るのでありますが、二元的にせずして、私の言ふのは業者だけに其の末端から中央の集荷まで全部やらす、それから配給の方は量が少いのでありますから、其の配給の方法に付ては官民合同の全國需給協議會と云ふものを作つて其處でやる、さうして農業會とは別個に手を放して是だけでやらして行く方が能率も上るし、餘計に増産も出來るし、是から先の見透しから行きましても此の方が將來性があると思ひますが、もう一度所見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=12
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013・山添利作
○山添政府委員 只今の状況に於きましては左樣に考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=13
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014・竹田儀一
○竹田委員長 中崎君、大藏大臣の御都合がありますので、恐れ入りますけれども、成べく簡單に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=14
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015・中崎敏
○中崎委員 私の質問は二三時間位御願ひしたいと思ひますが、時間の都合で一二の點しか質問出來ませぬが、何れ又後日の機會に大藏大臣に對しては色々質問したいと思ひます
經濟再建の上に於きましては財政の根本的整理と申しますか、徹底的に此の方面に「メス」を加へられて行きませぬければ、到底此の「インフレ」の問題に付ても解決が付きませぬ、更に又今後の計畫の上に於ても、大きなる支障を來すものと考へる譯でありますが、先づ來年度の新規事業に振り向けられる所の財源はどう云ふやうにされるか、或は又租税を増徴される意向があるかどうかと云ふことを御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=15
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016・石橋湛山
○石橋國務大臣 來年度は屡屡申上げましたやうに先づ歳出に於て思ひ切つた整理を行ふ積りであります、是はもうどうしてもそれをやらなければならないのでありますから、それをやる、歳入の方は大體私の今の希望としては税制の改正を急いでやります、是は政府だけでなく、是も屡屡申上げましたやうに、今其の法制を立案して居りますが、税制、財政の全般の調査會、それから是は財政の中には地方財政も含めて考へて戴かうと思ひます、税制調査會、是は無論地方税が關聯があります、それからもう一つは金融機關にも色々問題がありますが、此の三つが差詰大きな問題でありますから、之に付ては特に衆議院の方を中心にして調査會を作つて、今御尋ねの税制の問題に付ては──我々の意見も述べますが、調査會を中心にして纒めて戴きたい、其の上で其の全般が果して政府にやれるかやれぬか、是は分りませぬが、それを戴きまして其の上に來年度の税制を考へて行く、私の希望はさう云ふ譯でありますから、税制を相當に減税しなければならぬものもあるし、或は税率を變へなければならぬものもありますから、一語に増税と云ふ言葉では合はないのであります、併しさう云ふ風にして出來るだけ歳入を殖やす工夫をする、それから今の見透しでは經濟界の將來の生産がどうなるかと云ふ不安状態もありますが、豫期の如く農作物も良し、それに剌戟されて他の生産も起つて來ると云ふことであれば、現在の税制に於ても私は相當收入あるもの、斯う考へて居ります、普通歳入と歳出とを成べく「バランス」させたい、あとは今の生産に寄與するとか何とか、危險のない程度で必要があれば公債も發行する、斯う云ふ所謂健全財政主義で行きたいと思つて今計畫致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=16
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017・中崎敏
○中崎委員 其の點に付ては疑問が多多ありますが、時間の關係上、次の質問に移ります、我が黨の主張する如く、戰時公債を捧引するのでなければ、此の財政の整理は到底出來ないと考へて居るのであります、此の點に付ては豫ね豫ね大藏大臣の説明を聞いて居りますが、之に付て納得出來ない點が多々あります、それは姑く預かりと致しまして、先づ公債の利下の問題に付て御伺ひして見たいと思ひます、今の會計年度末には、公債は二千億を突破せんとし、其の金利は七十五億に垂んとして居る、之を思切つて利下することに依つて、此の整理をなすべきである、世上に於ては一般的に一分に金利を引下げるべしと聞いて居りますが、私は是と同じやうな構想觀念の下に、公債の利下を思切つてやるべきではないか、大藏大臣は、此の公債利下をやれば、一般金利水準に觸れるから、此の公債利下だけは考へられないと言つて居りますが、一般金利水準に觸れて惡いかと云ふ問題に付て、一應大藏大臣の説明を聽きたい、言ひ換れば一般預金の利子を引下げても宜いではないか、或は之に準じて貸金の「レート」を下げることに依つて産業の振興も出來ると考へられるので、全般の睨み合せをして、一面に金融機關を成立たせると共に、實際に此の公債の利拂の整理、財政の整理も行はれ、同時に産業界に於て是等の貸金利の引下に依つて事業の刺戟になる、斯う考へますが、此の點に付て大藏大臣の御説明を聽きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=17
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018・石橋湛山
○石橋國務大臣 金利の問題は、理論的にも實際的にも、非常にむづかしい事柄でありまして、中々容易のものではないのでありますが、要するに日本の現状及び近き將來に於てどれ程の金利であつたならば、資本蓄積が出來るか、斯う云ふことだと思ひます、無論「ソ」聯などがやつて居りますやうに、資本の蓄積を租税の形でやれば又別問題にならうかと思ひますが、兎角現在の大體の經濟組織で行くとすれば、各個人が資本をどれだけ貯蓄する、預金するか、斯う云ふ問題でありますから、それに障碍を來さないだけの金利はやはり與へる必要があるのではないか、斯う考へます、もう一つは是はすぐの問題ではありませぬが、屡屡話の出る所謂「クレヂット」と云ふやうなことになると、海外との關係に於ても又金利を考へなければならぬ、是はどうせ斯う云ふ所に、東洋方面、殊に敗戰後の日本に投資すると云ふことは危險を伴ふのでありますから、自然金利は高かるべきであります、但し米英の金利がどうなるか、今の所では低いのでありすから、向から「クレヂット」を入れるにしても、非常に金利を騰貴させなければならぬと云ふこともないかも知れませぬが、さう云ふことを勘案して今後の金利政策を考へなければならぬと存じます、隨て私の、普通の考へ方であれば、金利はどうも暫く高くなければならぬのではないかと云ふやうな感じを持つて居ります、隨て今後公債を發行すればやはりそれに繋がりを持つ過去の公債の金利だけを下げると云ふことになると、詰り公債に二重の公債が出來る、是は英國あたりのやうに、公債を資産家が世襲財産のやうに持つて呉れる「コンソル」見たいなものであれば、無論一般金利水準と關聯することでありますが、比較的低い金利でも、それが安全な資産であると云ふので、個人が持つて居て呉れると云ふことでありますと、處理が易しいのでありますが、以前の日本に於ては個人が持つ公債と云ふのは非常に少いのであります、隨つて過去の公債の利子を下げると云ふことになりますと、寧ろ其の場合には公債の總額を「カット」する方が弊害が少いのではないかと思ひます、併し「カット」するとなると、何時も申上げるやうに難かしい問題が起るのであります、私の今の考へでは現状に於て固めて行くのが一番宜いのではないかと思つて居ります、ですから私に若し公債をどうするかと御尋ね下されば、公債には手を付けない方針だと申上げる以外にはありませぬが、是も財政全般の問題でありますから、尚ほ一つ財政調査會等で、十分是等の點の利害得失を檢討して戴きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=18
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019・中崎敏
○中崎委員 現に差迫つた問題は來年度から既に七十五億の利拂ひをしなければならぬと云ふ大問題があります、是は成程今言はれましたやうに、國際金利の問題とも關聯して考へることも一應は出來るかも知れませぬけれども、其の國際金利に對する所の日本の金融の結び付きと云ふものが、如何なる所に於て實際に行はれて居るのであるか、又どれ程日本の現在の苦しい状態が打開されるのであるかと云ふやうなことに付て考へて見ても、此の問題は直ちに考慮の必要はないのであつて、殊に大臣が先程言はれましたやうに、一般の蓄積の出來る範圍に於ての金利を考へなければならぬと言はれて居りますが、現在殆ど通貨と云ふものは各人に退藏されて居つて、金利と云ふものは問題にされて居らない、それよりも之を何とかされるのではないかと云ふ不安がある爲に、殆ど此の金と云ふものは、金利とは無關係に、實際に於て退藏されて居る状態を考へて見ても、金利と云ふものは問題ではない、金を預ける人は唯要するに自分の持つて居る金が安全に銀行或は政府に於て保證されるならば、喜んで預入をすると云ふことを考へなければならぬ、斯う云ふ意味に於て、現時の差迫つた状態に於て、唯さう云ふ風な將來の國際金融と云ふやうな場面まで考へて處理するよりも、寧ろ此の公債の根本的整理、更に七十五億の金利の整理と云ふ問題に重點を置くべきものだと考へて居ります、此の點に付て再度大藏大臣の説明を御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=19
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020・石橋湛山
○石橋國務大臣 國際金融へ結び付くかどうかと云ふことは無論今豫言は出來ませぬが、一般に信ぜられ、或は希望せられて居る如く、講和條約の出來るのもさう長い將來でないと致しますれば、同時に「ブレトン・ウッヅ」協定にも參加が出來ると云ふ時期も來るのではないかと思ひます、案外それは早い、明年度豫算を實行して居る間にさう云ふ事態も現れるのではないかと思ひますから、御説の如く今直ぐと云ふ問題ではございませぬが、やはり是も考慮をして置く必要があるのではないかと考へて居ります、それから蓄積の問題でありますが、是はもう仰しやる通り現状に於ては私も其の通りに思ひ、又其の通りに申して居ります、併し是は非常に變態でありまして、幸ひに現在の整理其の他の關係で金融機關も安定し、經濟の前途に對する或る程度の見透しが付くやうになりますと、やはり金利が相當ものを言ふて參ると思ひます、又貸出の方の問題もございまして、現に貸出の方は相當金利が上がる傾向を持つて居ります、それ等のことと睨み合せまして、金利の問題は尚ほ愼重に考慮したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=20
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021・中崎敏
○中崎委員 今の御囘答に對しては極めて不滿足でありますが、時間がありませぬので是れ以上此の問題に付ての檢討を續けようとは思ひませぬ、次に財界前途の見透しに付て質問致しますが、國民は焦躁の念を以て財界の前途に大きな關心を持つて居る譯であります、大藏大臣の見透しに依りますと、食糧品の價格も下り、物價も大體天井を打つたと、斯う云ふ風に言つて居られます、私も一般の人が考へるやうに通貨の増發が直ちに惡性の「インフレーション」を齎らすものとは考へませぬ、それは終戰後に於きましては小切手とか手形とか云ふ流通手段が、殆ど實際に行はれませぬで、貨幣一本に依つて行はれると云ふやうな状態に於きますれば、平常の状態よりも通貨の量が相當多く市場にあつても、決して妨げないと云ふやうなこと、或は又多額の新圓が退藏の形に於て第三國人、或は農漁村に於て、或は都會に於ける一部の人々に於て保有されて居ると云ふ現状が、惡性「インフレ」の一つの大きな潤滑材をなして居ると云ふことも考へられますので、現在の見透しに於ては必ずしも惡性「インフレ」を齎らすとは考へませぬが、今後政府に於て數百億増發される虞れのある紙幣に付て、言ひ換へれば本年末に於て九百五十億乃至一千億に及ぶであらうと想像する所の通貨に對して、何等大藏大臣としての説明を聞き得ない譯であります、現在に於ては成程或る安定の見透しが一應は付くとしても、今後に於て殆ど生産と關係なくして出される所の三百五十億、或は四百億近い所の通貨に對する作用に付て、どう云ふ風になるかと云ふ見透しを御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=21
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022・石橋湛山
○石橋國務大臣 紙幣の増發は、現在のやうに金融機關にまだ不安が殘つて居ります間は、中々退藏された物が囘流して來ないと思ひますので、どうしても金融機關に國民一般が信頼を持つやうに仕向ける必要があると考へて、現在其の措置を執りつつある譯であります、是は最近の極く僅かなことでありますが、日本銀行からの報告に依りますと、日本銀行の若しくは日本銀行支店長の責任として、新圓に付ては安心だ、決して之を又どう斯うすると云ふことはないと信ずるから、出來るだけ一つ預金をして呉れと、何と言ひますか、宣傳と言ふ程ではないかも知れませぬが、さう云ふ意向を各地方に傳へました所が、相當其の反響があつて新圓預金も殖える傾向があると云ふ報告をつい數日前に受けました、左樣な譯で何と言つても色々な點で不安を懷く、其の不安があるものですから其の不安から「デマ」などが起りまして、どうしても囘收が旨く行かないのでありますが、是は出來るだけ早い機會に左樣に「デマ」などが出ないやうに、又「デマ」ばかりでなく實際に安心が出來るやうな状態を作り上げて行きたい、さうすれば新しい紙幣の増發も斯樣に殖えもしませぬし、又一旦出た紙幣も囘收されると考へます、それから根本は何處にあるかと申せば、御話のやうに財政であります、財政から通貨の増發が止め度なしに出ると云ふことであれば、無論「インフレ」は防止出來ませぬ、それから財政からさう云ふものが出ないと云ふことになりますれば、必ず「インフレ」は防止出來ると信じます、是は唯信ずるばかりでなく過去の歴史の事實が示して居ります、そこで財政の問題でありますが、本年度の財政は御承知のやうに決して十分健全なるものとは言へませぬ、私が本會議でも申上げたやうに、財産税を使ふと云ふことは、全部ではありませぬが、或る意味に於て赤字公債を出すのと同じになると云ふことを申しましたやうに、さう云ふ點がある、但し私は實は其の點をあの際には強調し過ぎたかも知れませぬ、が同時に詰り所得税を取つたりなどで以て、政府の經費を支辨する場合とは影響が違ひますけれども、其の影響が違ふと云ふことを私は強調をして、實は私自ら戒め、又國民諸君にも財政に危險があると云ふことを知つて戴きたい、斯う云ふ色々の含みを持つて居つた譯でありますが、それが財産税であつても之を取つて、それを見返りにして紙幣を出しまして、政府の財政に使ふ場合でも、行きなり赤字公債を出すのとは、非常に影響が違ふと存じます、財産税がどれ程になるかと云ふことは、今數字は私から申上げ兼ねますけれども、兎に角第一次に於ては、其の財産税を納める方が預金なり何なりを持つて居れば、其の預金で出して貰ふと云ふこと、それから公債を出して貰ふ、物的不動産を出して貰ふと云ふやうな順序になる譯であります、ですから預金で收納されるものも相當の額に達すると思ひます、それから其の他有價證券もありませう、それから不動産で出されるものも、其の不動産の種類にも依りますけれども、大體收益があるものでありませうし、又收益がそれ程でなくとも、兎に角自分の財産をそれだけ出したのだと云ふ心理的影響もありまするから、私はそれ等の納税者の消費はやはり減ると思ひます、いきなり其の所得を懷ろから取つて使ふ程には影響がないかも知れないが、相當の影響はあると思ひますので、本年度の財政は、繰返して申しますやうに、普通歳入で悉く之を支辨することが出來ないと云ふ點に缺陷はありまするが、兎に角財産税が見返りになると云ふ點で、單なる赤字を出すこととは影響が遠ふ斯う思ひます、それから歳出の方も、是も最初申しましたやうに、成程あの中には失業救濟其の他のものが含まれて居ります、けれども是等も出來るだけ生産に寄與するやうに、例へば公共事業費の如きも隨分喧しい制限を設けて、三箇月毎に其の實績を調査して、實績の惡いものは廢める、又それに付ては其の仕事をやる場所の人、物等の存在を十分見極めてやると云ふ風な方法を執ることになつて居りまするから、歳出も私は無暗に通貨だけが飛び出すと云ふことは、是も勿論防がなければならぬし、又其の手段を執つて居ります、そんな譯でありますから、本年度の財政の施行が非常に「インフレ」を惡化すると云ふことは恐らくない、斯う云ふやうに思ふのであります、もう間もなく來年度の豫算でありまして、來年度の財政がどうなるかと云ふことが或る程度はつきりしますと、第一に是が心理的に非常な影響を齎します、であるから勝負は來年度の財政である、斯う云ふやうに考へて居りまして、來年度の財政は先程申上げましたやうに、是は極力健全主義の方に持つて行く、斯う云ふ風にやらざるを得ないのであるから、どうしても是はやる、斯う云ふ覺悟で計畫を致して居りますので、私は先づ財政上から今後「インフレ」が惡性になると云ふやうなことは防げるのではないか、又之をやるより外に行きやうがないのでありまするから、さう云ふ風にして行けば、世間で心配される「インフレ」が何處までも行くと云ふやうなことは必ず防げる、斯う云ふ風に確信して居ります、唯前に申上げましたやうに、今の所では金融機關等に對する信用が乏しいと云ふやうなことから、通貨はまだ暫く出るかも知れませぬ、幸に物價は通貨の増加とは必ずしも一致せずに、天候にも恵まれまして、七月以來は實際物價は低落しつつあるやうな譯であります、此の勢ひを外さずに善處したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=22
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023・中崎敏
○中崎委員 只今の問題に付て、もう一度御尋ねしますが、財産税がどう云ふ形に於て、どう云ふ方法に於て徴られるかと云ふことは、是はまだ法案が出て居りませぬので、之をはつきり檢討する機會はございませぬが、大體に於きまして、只今言はれましたやうに、其の財産税を引當てにした國庫の支出が、以前は大體赤字公債の發行と同じやうな作用をなすものであると云ふ答辯でありましたが、今囘は幾分か之を是正して居られるやうに感じます、所で殆ど此の財産税の多くの部分は第二封鎖竝に第一封鎖預金を以て支拂はれるものと思ひます、此の限度に於ては大藏大臣が何と言はれても赤字公債の發行と同じ結果を齎すものだと考へます、更に公債を以て支拂ふべき來年度に於きましても、一應此の公債は政府に於て償却されましても、之の見合になる所の支出と云ふものを考へなければなりませぬので、それに該當するものは日本銀行からの借入其の他の方法に依つて通貨の増發になつて現はれると云ふことは、火を睹るよりも明かだと思ひます、斯う云ふ意味に於て、或る特種の物納を以て支拂はれるもの以外に於ては、大體に於て赤字公債の發行と大した違ひはないものと私は確信致して居ります、其の點に付きまして大藏大臣の御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=23
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024・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは大體或る一面は其の通りなんであります、ですから其の點を私は警戒的に申したのでありまして、併しながら同時に、第一封鎖預金は言ふまでもありませぬが、第二封鎖預金に致しましても、それを持つて居る人が之を持つて居ると云ふことは、自然色々の形で流れ出す譯なのであります、ですから全然影響がない譯ぢやない、それから公債の場合は、個人が持つて居るのは何時も申上げるやうに非常に少うございますから、是はどれ程入つて來るか知れませぬけれども、私は大したものではないのではないかと思ふのであります、公債は若しそれを出される人があるとすれば、持つて居る人は別段之を擔保にして金融致して居る人も餘りないだらうと思ひますから、是は御話のやうに一方に於て公債を囘收し、一方に於て公債を出すと云ふやうな形になりませう、それから物的財産の方は先程申上げた通り、又御承認の通りであります、さう云ふ譯でありますから、本會議で説明の時にも、財産税に依つて財政を支辨すると云ふことは、決して全部ではないけれども、所得税などを徴つて使ふのとは非常に影響が違ふ、で財産税を徴つて使ふと云ふことは、其の或る部分は赤字公債を出すのと同じことになるから、其の意味に於て今年度の財政は確に危險があると云ふことを申上げた譯であります、けれども、「ストレート」に、全部を赤字公債で出すのとは非常に影響が違ふと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=24
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025・竹田儀一
○竹田委員長 どうでせう、まだ續きませうか、實は加藤勘十君が午後都合が惡いさうです、膳さんも都合が惡いさうです、加藤さんは一時間掛ると仰しやるのですが、是はどうせ財産税の法案も出ると思ひますけれども、其の時に御讓り願ふ譯に行かぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=25
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026・中崎敏
○中崎委員 財産税は私はやるかどうか分りませぬ、少し此の法案に關聯が薄いかとも思ひますけれども…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=26
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027・竹田儀一
○竹田委員長 成べく簡單に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=27
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028・中崎敏
○中崎委員 是れ一つだけ簡單にやります、退藏された通貨の囘收方法に付て、大藏大臣は何等具體的な策がないやうであります、更に今後増發される虞のある通貨に付ても同樣に考へらるる譯であります、私は此の退藏貨幣が、現在はまだ恐ろしい勢を持つては居ないけれども、丁度爆彈をあちらこちらにばら撒いて居る如きものであつて、何時是が爆發するかも知らぬと云ふやうな危險な存在であります、で私は此の爆彈は宜しく火藥庫か何かへ入れて、安全な方法にしなければならぬ譯であると思ひまするが、此の點に付ての私の具體策、或は大藏大臣の御意見に付ても、具體的に能く御聽きしたいと思ふ譯でありますが、時間の關係もありますので、十二分に此の點を檢討出來ませぬ、唯現在多數の金が第三國人或は農山漁村に於ける特殊の人々に集まつて居る譯でありまするが、富の分配を公平にする意味に於て、或は又大衆購買力がなくなつた爲に、現在の物價の値上りも或る程度食止められると云ふ風な實情に鑑みましても、此の大衆の犧牲に於て一部の人の持つて居る所の紙幣を平衡化する意味に於ても、新圓の再封鎖と言ひますか、或は引換と言ひますか、再整理をやられることが一應考へられる譯でありますが、此の點に付ては大藏大臣は再三之をやらないと云ふことは言明して居られます、併しどうも遺憾ながら我々の氣持に於ては、それでやり切れるのかと云ふ風な不安を持つて居る譯でありますので、此の點に付ては大藏大臣の資格ばかりでなく、所謂政府を代表した所の意見を以て、是が間違つたら腹を切るんだと云ふ固い信念の下に御答辯を願ひたいと思ひます、實は總理大臣にも其の點が御聽きしたい譯なんでございますけれども、丁度本日は見えて居りませぬし、大藏大臣に於て總理大臣に代つてと云ふ立場に於ての御囘答を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=28
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029・石橋湛山
○石橋國務大臣 無論政府は新圓に付ては現在執つて居ります政策を其の儘遂行する次第でありまして、御話のやうに之を囘收すると云ふ考へは毛頭持つて居りませぬ、其の理由は屡屡申上げましたから繰返す必要はないかと思ひますが、少くも現在の状態に於て、私の具體策がないと仰しやいますが、一番大きな具體策を打つて居るのでありまして、先程から申上げましたやうに、金融機關に自から是が囘收される方法を執る以外には根本策はない、それを途中で今の状態で追掛けまして、假に今年の二月のやうな處置を執りますれば、是は通貨に對する信用を益益失墜すると云ふ弊害を殘し、さうして又半年も經てば同じことを繰返さなければならぬと云ふやうになる危險がありますので、此の際はさう云ふことは致さないのが適當である、斯樣に現在政府は確信して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=29
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030・中崎敏
○中崎委員 それでは私の質問は是で打切ります、又後日質問の機會を與へられんことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=30
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031・竹田儀一
○竹田委員長 田村君に御願ひ致しますが、先程申しましたやうに、加藤さんも膳さんも午後は都合が惡いさうですから、どうぞ十分と云ふことで…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=31
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032・田村定一
○田村委員 承知しました、農政局長に御尋ね致します、時間が制限されて居りますから箇條的に簡單に質問致し、説明は申上げませぬ、本年度の收穫は五千九百萬石と言ひ、或は五千五百萬石と言ひ、色々な説があるのでありますが、無論昨年よりか可なり大幅な主食の收穫であると思ふのであります、政府はそれに依つて十一月より二合五勺の配給を斷行すると言つて居られるが、其の通り二合五勺の配給をせられるかどうか、御承知のやうに日本の勤勞階級、所謂「サラリーマン」でも、一日の最低「カロリー」は千六百八十「カロリー」必要として居ります、それは最低で自分の體を維持するだけの「カロリー」でなく、ぢり貧になつて行くやうな程度の最低「カロリー」である、其の千六百八十「カロリー」必要なものを、主食二合五勺の配給では御承知のやうに千二百五十「カロリー」、副食物を二百「カロリー」として千四百五十「カロリー」、隨て二百三十「カロリー」と云ふものが不足して來るのであります、さうすれば千六百八十「カロリー」に於てすらぢり貧になつて行く、隨て二百三十「カロリー」不足するならば、體は相當衰弱して行く状態になるのであります、二合五勺に於てすらさうでありますが、さうしますと日本人の體力は最低三合配給を斷行しなければ維持して行けないと私は思ふ、今日二合五勺の配給が假にされたとしても、恐らく闇の根絶は出來ないと思ふ、どうしても三合配給を斷行すべきであると思ふのでありますが、十一月から二合五勺の配給をするのだ、さうして又あと數箇月か二、三箇月經つて三合配給を斷行する見透しが付くか付かないか、永久に此の程度であるか、本年度の豐作に於てすら此の程度であるならば、日本人の體はぢり貧に倒れて行く状態になるのでありますが、農林省としてはどう云ふやうな御考へを持つて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=32
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033・山添利作
○山添政府委員 二合五勺に増配すると云ふ問題は、最終的に決まつた譯ではありませぬけれども、皆がさう云ふ期待を持つて居る、さう云ふことで準備されて居ります、そこで御話の三合配給まで持つて行かなければ足りないぢやないか、斯う云ふことであります、大體昔の状況で考へますと、只今千八百「カロリー」とか云ふ話がございましたが、國民一般の平均としまして二千「カロリー」、成年の中勞働者としては二千四百「カロリー」、斯う云ふものが所要量になつて居りますが、其のことを考へて見ますと、米で攝つて居りました今までの割合は、大體六割見當になつて居つたかと思ひます、さうして其の當時は酒を造るのに、米にして四百萬石も潰して、國民一人當りの米の消費量は一石若しくは一石一寸多い位の見當であつたのであります、所が此の主食が増配になりますと同時に、其の他の野菜でありますとか魚の方面であるとか云ふものも段々良くなつて行く、少くとも配給と云ふ點に於きましては主食が緩和されますに從つて、それ等の物の配給と云ふことも非常に「ルート」に乘り易い譯であります、さう云ふやうな事柄で段々改善されて行く、併し三合配給と云ふのは此の前の選擧の時からの輿論であることはもう承知して居りますけれども、偖て此の三合配給と云ふことは、是は數字的に、主食を米のみならず麥、芋を入れましても三合配給に持つて行くと云ふことは出來ないことであると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=33
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034・田村定一
○田村委員 さうすると我々日本人は恐らく本年度は最近に於ける最も豐作であると思つて居るのでありますが、我々國民としては今後相當政府の計畫する所の干拓或は開墾と云ふものを目指しても、恐らく三合配給と云ふことは夢見ることが出來ないと云ふ事態に考へられるのでありますか、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=34
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035・山添利作
○山添政府委員 是は今年非常に豐作でありまして、六千萬石前後と云ふことでございますが、大體日本の食糧事情と致しましては、御承知のやうに昭和の初め頃からずつと朝鮮臺灣を入れまして一千萬石も米を移入して居つたのであります、又戰爭中に於て段々此の方面の輸入が或る程度縮減されましたが、同時に外米に依存して居つたことも相當の量でありまして、南方米を輸入しましたことも、多い年には九百萬石から一千萬石になつた時期もあつたことは御承知の通りであります、又滿洲から大豆を初めと致しまして、其の他の雜穀等も入れて居つたことは是れ亦御承知の通りであります、隨て今年六千萬石の收穫があるからと云ひましても、相當多量の食糧を「アメリカ」に仰がなければならぬ状況にあることも是れ亦申すまでもないのであります、そこで此の當面何時になつたら所謂三合配給が出來るか、三合配給と云ふことは言換へて見れば統制せぬで宜しい、食糧を自由に食はして宜しい、斯う云ふ時代であるのでありますか、それが何時參るかと云ふことは、今明瞭に申上げる譯に行きませぬ、併し此の事柄は獨り農業生産だけに依つて達成し得ると云ふ風には、又近い將來にさう云ふ時期が來ると云ふことは、我々如何に努力を致しましてもそれは無理でありまして、どうしても海外から食糧を入れると云ふことが續くのであります、其の際に結局食糧を豐富に入れようと思ひますれば、それに對する見返り物資が必要である、斯う云ふ風に國全體としての産業の囘復と云ふことが前提になりまして、さうして出來るだけ早い機會に國内に於ける増産と相俟つて、價格統制と云ふ意味に於ける統制は續きましても、數量的に消費を規正すると云ふ意味の統制は、成べく早い機會に止めることが望ましい譯であります、是が何時であると言ふことは今非常に難かしい時でありまして、豫定を付けることは出來ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=35
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036・田村定一
○田村委員 簡單に申しますが、御承知のやうに産業界に於ても増配がなければ復興が出來ない、炭礦に於てもさう云ふことを言つて居る、産業の復興と云ふことは主食の増配にあるのであります、其の主食の増配なくしては、恐らく産業の復活は出來ない、併しながら産業の復活が出來なければ、當然さうした見返り物資も出來なければ、又將來日本が負擔しなければならない所の賠償金、是等に對して日本はどうするのか、さうすれば實際に於て日本國民が完全なる所の體力になるまでに、聯合軍を通じて相當それまでに──昨日金子君から申されたと思ふのでありますが、總ての物資、之を政府は何とかして手を打つて、日本人が安心して産業に從事するだけの食糧を確保しなければならぬ、主食がそれ程足りなければ副食物を以てする、此の副食物に對する所の政府の態度はどうであるか、それに對する所の「カロリー」を補ふだけの計畫を立てて居られるか、漁業方面に於てもさうである、色々な所の制限に依つて、漁業に從事しようとしても從事することが出來ないと云ふやうな事態である、主食が足らなければ當然副食物で補はなければならない、其の計畫が殆どないと思ふのでありますが、何を言つても日本は凡ゆる負擔をしなければならない、其の負擔を補ふには無論聯合軍の相當な援助を受けなければならない、それに對して政府は積極的に今日輸入の件に付て、相當な案を立てて居られると思ふのでありますが、それはやはり二合五勺程度の目標に運動して居られるのか、聯合軍に日本の食糧の事情、さうして「カロリー」の問題、人體に及ぼす影響と云ふことを相當數字的に擧げて頼めば、又將來もさうした賠償問題等を考へれば、輸入も出來るのではないか、我々は永久に主食を三合とか、我は自由に賣ると云ふことが出來ないと云ふことになれば、將來闇と云ふものは何時までも絶えぬ、其の見透しが政府に付かない、或は三合配給を斷行すると云ふことは、此處で發表しては聯合軍との色々な關係があると云ふことであれば別でありますけれども、さう云ふ見透しがないと云ふことであれば、殆ど國民はぢり貧で倒れて行くと云ふ事態になる、聯合軍との色々な交渉状況がどの程度まで行はれて居るか、御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=36
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037・山添利作
○山添政府委員 其の點に付きましては、私自身は實は詳細に存じて居りませぬ、と同時に又具體的の内容を政府と致しましては、發表しにくい點があると思ひます、それに致しましても、「アメリカ」當局に於きましては、非常に熱心にやつて貰ひ、わざわざ人が「ワシントン」まで行かれました、「ワシントン」では御承知のやうに、世界の食糧事情を賄つて居る譯であります、其の方面と熱心に折衝されたのでありまして、さう云ふ方の歸來を待つて、決定されると云ふことであると聞いて、居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=37
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038・田村定一
○田村委員 是で質問を止めますが、主食が足りなければ副食物で補ふと云ふ計畫を立てられんことを御願ひ致しまして打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=38
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039・竹田儀一
○竹田委員長 加藤勘十君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=39
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040・加藤勘十
○加藤(勘)委員 昨日も申上げましたやうに、私は途中から此の委員會に加はりましたので、私の質問しようとすることは既に同僚諸君に依つて御尋ねになつた點があり、其の點に付ては重複して御迷惑かとも存じまするが、併し又質問者の立つ立場に依つて、自ら角度も違つて來るかと思ひますから、暫く御諒承を願ひたいと思ひます
偖て第一に私の御尋ね致したいのは、本法の性格に付てであります、今日民主化の喧しく唱へられて居る時、さうして又日本は民主主義的に進む以外に途がないと云ふことは、今日の日本に與へられた至上命令であると思ふのです、此の民主化の時代に於て、それとは著しく逆行する、此のやうな一言で言へば獨裁的な委任法、僅か三條、四條の規定に依つて、國民生活の全般を規定するやうな、重要な内容を持つた法律が制定される
〔委員長 退席、小島委員長代理著席〕
本法の性格に付きましては、果して今日のやうな民主化の時代に、何が根柢となつて斯う云ふ法律を必要とするか、聞く所に依れば、總動員法が今月一ぱいで效力を失ふ、隨て政府としては尚ほ統制を繼續する必要があるが故に、總動員法に代る法律として、此の法律を制定しようと云ふ御意向かとも聞いて居りますが、總動員法に依る戰爭中の統制經濟、是は名は統制經濟であつても、私共の立場から言ふならば、本格的な統制經濟ではない、唯戰爭目的に闇雲に集中した一箇の暴力法律である、斯う考へて居ります、同樣にさう云ふ法律は、戰爭が終ると同時に當然廢止され、新しき民主化の本質に則つた計畫的な統制經濟を必要とする法案が、生れて來ることが必要であります、唯單にそれを繼承すると云ふやうな意味に於て本法が制定されることは、國民に取つても非常に不愉快でありますし、且つ國際的にも日本に尚且つ此のやうな獨裁的な委任法が制定されると云ふことは、面白からざる影響を與へるものと思ふのでありますが、先づ此の點に付て本法制定を必要とする理由と、それからもう一つは之を現實にどう云ふ場合に適用されやうとするのか、法律の草案の條文の規定に依りますれば、安定本部で決めた基本的な政策及び金融の實施に必要な場合、之を確保する爲に主務大臣が命令を發する場合に適用する、斯う云ふことが規定されて居るやうでありますが、それは一箇の文章でありまして、現實に此の法律が適用される場合を御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=40
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041・星島二郎
○星島國務大臣 一應法文の形から之を見ますれば、さう云ふ御觀察も御尤もだと思ひます、既に度々本會議竝に此の委員會に於ても其の論議が出たのでありまして、私自身も實は之を草案致します場合にも、非常に消極的であつたことは、實際事實であります、併し從來此の戰時型の統制は、今囘を以て愈愈打切らなければなりませぬ、故に全部野放しにして宜いかと言ひますと、御承知の如く此の物資の需給調整と云ふことは、野放しを許さない、そこで已むなく此の法案を出すことになつたのでありますが、併しそれに致しましても、石炭の「コークス」法を改正するとか、或は電氣事業法を今度改正を求めました如く、各品目々々に付て、一々一定の法律を作つて御協贊を仰いでやるのが、私は本筋だと思ひます、そこで用意が出來ますれば、次から次へと致したいのであります、併し中には輸入を仰ぐ物資もありまして、それが數量も決まらぬし、又品目が確定せぬと云ふやうなものもありますし、概括的に此のやうな法案を設けることが必要になつて來たのでありまして、そこで戰時型にならないやうに、指導者原理で以て押切ることが出來ないやうに、兩方面から押詰めて、是が形から言ふと一寸總動員法に似たやうな點があるのでありますけれども、あれとは似ても似付かない、只今も仰せのやうに、上の方に於て、安定本部會議に依つて、さうして總裁が最後に決定したものを以て政策と決める、其の會議の中には貴衆兩院議員は勿論のこと、學識經驗者其の他も入つて十分審議して最後に決めると云ふ風にして、決して獨裁的のことが出來ないやうになつて居るのが一點と、それから愈愈其の決まつたことを實行するに付きましての割當、配當等に付きましては、今度は自主的な、民主的な産業團體を指定してやらしめると云ふやうに又押へてありますので、迚もさう勝手には出來得られないやうになつて居りますから、法律の形式は一寸法三章的であり、如何にも委任立法のやうになつて居りまして、全體を通じてさう云ふ御疑念の出ることは當然と思ふのでありますが、此の法律は從來のやうな弊を除去し、已むない一つの法律として御願ひし、さうして是が立法を御協贊願ひましても、それぞれの纖維、「ゴム」は「ゴム」と、次々に用意を致した省令が段々出來ますれば、將來に於て凡そ當分の間──是は日本の經濟界を見まして、已むを得ぬ長期に亙ると思ふものがありますれば、電氣の如く、石炭の如く、是は單行法を總て作りますが、併し兎も角も一、二年やつて見よう、少くとも一年と云ふのを、此の安定會議すらも一應は一年と云ふ期限が附いて居りますから、是は單期間でやつて見よう、安定會議が若し延びるやうになりますれば、其の期間だけは延びると云ふやうになると思ひますが、一應此の法律を施行するに致しましても、此の一年の期限が濟みました時には考へ直す必要が起りますから、前の總動員法や其の他輸出等臨時措置法よりも、餘程是が違つて居る事實だけは御認めを願ひたい、斯樣に思つて立案したやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=41
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042・加藤勘十
○加藤(勘)委員 もう一つの問題の本當に適用される場合に付ては…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=42
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043・星島二郎
○星島國務大臣 例へば一つの例を以てしますれば、今後愈愈三十四萬「トン」なら三十四萬「トン」の棉が輸入されるから、それをどう云ふ風にして仕事をさすかと云ふことになります場合、茲に本法の適用を御願ひ致しまして、さうして纖維に關する一つの調整法規を省令でやりたいと思ひます、それを安定會議に掛けまして、さうして會議で決まつて、斯う云ふ方式で先づ纖維協會と云ふものを民主的に作らして、其の協會で立案さしたものを下部組織の方に段々流して行く、其の下部組織の中に民主的な産業團體が出來て居りますから、それを指定して、或は生産を割當てる、或は配給をせしめると云ふやうに、何れ個々のことが出來ると思ひますが、さう云ふ省令なり命令が必要になつて來た場合には、必ず安定本部の御諒解を得、決議を得てやることに相違ないと思ひます、だから、上に於きましては只今申したやうな安定本部會議の決議を得、下部組織に於てはそれぞれ出來ました民主的團體を指定致しまして、其の方に向つて割當、或は仕事をせしめる、肥料の例を以て言ひますれば、或る場合には、甲の會社では能率が惡い、乙の會社にもつと増産せしめる爲には、甲の會社の設備をこちらに讓る必要があると云ふことが、若し起つて來ますれば、此の法律の適用を受けてそこに讓渡が起つて來ると云ふことが出來る譯でありますが、大體其の適用の品目は、先般御配りしました品目が商工省限りのものとしてはあります、農林省關係にもあらうと思ひますが、御手許の方に差上げてありますから、それを御覽願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=43
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044・加藤勘十
○加藤(勘)委員 私共は、今日の日本の經濟再建に付きましては、名稱が經濟安定本部と付けられるか、經濟參謀本部と付けられるか、免も角一個の計畫性を持つた經濟復興の基礎的なものが考へられなければならぬと云ふことに付ては、同樣に考へて居ります、唯斯う云ふやうな法律がさう云ふ場合に果して必要であるかどうかと云ふ點でありますが、私は今御説明を御伺ひしまして此處で贊否の意見を述べようとは思はないのでありまして、唯疑義を疑義として御尋ねする程度に止めて置きますし、時間の關係もありますから其の點は止めまして、次に此の法律の運用に依つて、唯形式ではなく、本當に日本の經濟が復興出來ると信じておいでになるかどうか、之を私は一番眼目として御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=44
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045・星島二郎
○星島國務大臣 今日の基礎産業の部面は、少くとも此の法案の運用に依らなければ私は旨く行かぬことと思ひます、先づ第一が石炭がさうです、是はもうどしても需要供給の關係から言ひますれば非常な不足なんですから、それを重點的に配給を致します爲には、今囘出しました石炭「コークス」の法律案の改正を御願ひすると同じやうに、肥料に關しまして特別法規を實は此の議會に提出して御協贊を願ひたいと思つたのですけれども、どうしてもまだ準備が出來ませぬ、そこで、此の九月一ぱいで從來の法規がなくなりますので、さう云ふものを補はす爲には、どうしても此の法律に依つてやらなければならない、肥料の一種の國家管理に近いやうな方式をやります其の原動力は、此の法律に依つて裏付しなければならない、先程申しました纖維の如きもさうであります、纖維が日本の見返り物資としての最大のものである、今後の中小工業と云ひますか、全體から見ましても生産であつて、例へば今年五十五億圓前後のものを出しますが、此の中三十億圓以上は纖維でありますから、さう云ふものを規正して行きましては、是は國内の民需に充てる、是は國外に出すのだと云ふことを決めたりする、其の基本のものを何處でやるかと云ふと、之に依つてやらなければならぬ、私共どうも斯う云ふ法律は嫌ひなんでありますけれども、どうしても是は必要で已むを得ないんだと云ふ確信を以て、實は提案致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=45
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046・加藤勘十
○加藤(勘)委員 只今の御説明では、日本の工業生産の復興に付て、石炭とか纖維とか云ふものの例を御擧げになりましたが、それだけでは日本經濟全體の復興に關する政府の確信の程を御伺ひすることは出來ないと思ひます、勿論非常に煩多に亙りまする、而も相互に交錯して居る──昨日もどなたか同僚の方が重點主義と云ふことが間違ひであつたと言はれましたが、無論何處の國でもさうですが、經濟は全般的に相關聯して居る性質を持つて居りますから、基本的には固より産業の基礎となる基本産業が根柢になりますけれども、其の重要基本産業の根柢の上に、更に生産計畫と云ふものが明確に定められて、其の定められた計畫が實際に行はれる、唯單に數字の羅列では私は復興を確信すると云ふことにならぬと思ひます、色々昨日來政府から資料を戴きましたが、之を綿密に調査致しましても、是だけの數字からは、政府に日本の生産復興に關する確信の程を御伺ひすることが出來ぬのであります、私の希望致しました經濟安定本部の基本政策なり、其の計畫の全貌を示して戴くことが出來れば、それの全貌が實現の可能性ありや否やと云ふことが審議されて、初めて可能性あると云ふことになつて、確信を持つておいでになると云ふことを知ることが出來るのでありますけれども、遺憾ながらそれは海外から原料を輸入しなければならぬ關係で、さう云ふものの具體的なものが發表出來ぬ、隨て具體的な計畫の全貌を知ることが出來ぬと云ふことでありまするから是は已むを得ませぬが、併しながら私は本當を言へば、經濟安定本部から日本の現實の經濟思想の全貌を我々に示して戴きまして、之を斯うすれば實行が出來る、日本の總てを擧げての一大缺陷は、殊に目標を示し、目標に到達する過程が何時でも拔け勝なのです、我々は手段を拔きにした目標と云ふものは、唯單なる一箇の机上のものに過ぎぬと思ひますので、是は單り政府の態度ばかりではなく、我々の間に於ても過去に於てさうした多くの缺陷を持つて居りました、常に何時でも現實的である、現實的であると云ふことは、常に何時でも手段が一番大きく寫されて行く、其の手段を通じて目標が實現されると云ふことでなければならぬと思ふのでありまして、さう云ふ願から行けば、經濟の全貌が明かにされないと云ふこと、隨てそれに對してどうそれを實現するかと云ふ手段に付ても、何等示されて居りませぬと云ふことから、唯單に此の法律を實施しなければ、總てのことが出來ないと云ふ今の商工大臣の御説明は、一應心持の上に於ては能く分るのであります、併しそれだからと云つて、それで日本經濟の復興に付て政府が確信を持つて居ると云ふことにはどうしても受取り難いのでありますが、是も是れ以上私は突込んで議論しようと云ふ氣は一つも今日はありませぬから止めて置きます
次の質問、それは今の關係でありまするけれども、工業生産の復興が、實際の計畫は立てられて居るが、手段に缺ける所がある爲に出來にくいと云ふことは、是は朝野を擧げて總ての人が認めなければならぬ現實だと思ふのです、そこで其の困難な理由が一體どこにあるのか、復興を困難ならしむる理由が明かにされまして、之を除く具體的方策が立てられるならば、隨て生産復興は可能であると云ふことになるのでありますが、日本の工業生産の復興を困難ならしめて居る原因がどこにあると御認めになつて居りますか、それを御伺ひしたいと思ひます、是は綜合的なものですから、膳さんから御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=46
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047・膳桂之助
○膳國務大臣 日本の工業を再建振興します上に於て、どう云ふ點が困難であるか、是は産業の一々に付て見ましても其の困難の事情は違ふと思ひます、例へば石炭の問題が大變喧しうございますが、石炭の問題に付て見ますれば、或は石炭を増産するに必要な諸資材が不足であるとか、或は礦員の食糧が不足であるとか、或は杭木が足りぬとか、さう云ふやうな事情もありませう、又石炭に付ては戰時中非常な能率を發揮したやうに見えるのが、實は石炭の何と申しますか、更に掘進、新しい新興の用意もなかつたとか、或は資材の不足の爲に十分に保安設備が行はれず、山が荒んでしまつたとか、色色の事情もございませう、或は綿業の振興の問題に付きましても、原料棉は參つたが、扨て之を動かすべき工場の囘復が十分に行かぬ、之を修繕すべき資材が十分でない、又巨大な資金が要りますのに資金關係が十分でない、又勞務者も、從前は紡績女工の如きは非常に募集し易かつたものが、最近は食糧事情などが中心になり、殊に都會よりも農村の方が寧ろ生活が樂であると云ふやうになつて、人の手も集まりにくいとか、各各の事業に付て色々の事情もあらうと存じます、併し要するに一言にしてしますると、誤つた戰爭の爲に日本の原料、此の原料を入れるべき植民地的な所を失つてしまつた、又國内の重要な資材を生産すべきさう云ふ資源、例へば今の石炭の如きは一例でありますが、さう云ふものを荒してしまつた、又戰災に因つて工場が燒かれてしまつた、又最近の勞働問題が工場の經營を著しく困難ならしめて居る事情もあり、各種の事情が織込んで居るであらうと思ひます、要するに是からの經濟の再建、先程の御意見の中にもあられましたが、今日直ちに日本の經濟の再建、日本の工業の再建を斯くの如き順序に依つて、斯くの如き物を斯くの如くと云つたやうな「チヤート」を作つて、一覽的に必ず實行し得るやうなものを今作つて差出すと云ふことは到底不可能であります、何となりますれば、今申します通り資源の點に於きましても、到底日本の工業は日本の固有の資源のみを以てしては、經營出來ぬ、輸入材料に俟つべきものが多い、又日本の工場の設備、産業の是から維持して行きます限度に付きましても、賠償問題が一方にある、又補償打切に伴ふ諸種の經濟措置に依りまして、工業の内容に付きましても著しい變動が出來ます
〔小島委員長代理退席、委員長著席〕
斯樣な各種の内外の状況を考へまして、そこに是からの日本の工業──是は補償の問題も打切られると直ぐ見當が分る、又賠償打切に伴ふ經濟の色々な「バランス」も一通り過ぎて見る、又輸入物資等に付ても漸次見込が付いて來る、諸種のさう云ふ客觀的情勢の定まるのを待つて、それと見合ひつつ日本の工業の再建を、如何なる順序でどう云ふ風に立つべきかと云ふことが、經濟安定本部の設立せられました所以であります、まだ設立一箇月であります、若し經濟安定本部に斯くの如き案がござると言ひまして皆樣に御目に掛けたならば、是は甚だ心許ないことで、安定本部が出來て僅か一箇月間に作るとなれば、私の手許にも私の廳の事務官の作りました「チャート」を幾つか持つて居ります、さう云ふものを御目に掛けた所で希望論か、或は希望的數字の羅列か、作文に過ぎませぬ、安定本部は斯くの如き不安定な基礎に依りまして計畫を立てたくないのでありまして、それが爲には過般來色々申上げて居りますが、一方に日本の從來の統制經濟の誤りは、一つは腰溜的の、唯希望的の數字を竝べた、觀念的の作文の經濟計畫が禍ひをなして居ると云ふことは、數次に申上げたことでありまして、それが爲に經濟安定本部に於きましては、總ての計畫をば數字的、學問的の基礎の上に、科學的に立案しようと思ひまして、基礎の問題から掛つて居ります、さうかと言つて經濟安定本部の中で全部の調査資料、統計をば自分の手でやることは、出來ないことは分つて居ります、併しながら日本の從來の統計及び調査で以て利用し得べきものをば、之を學者の方々や實際家の檢討に依りまして、どう云ふ風に實際のものが利用出來るかと云ふ基礎の問題から、既に研究を始めて居ります、是が爲には大内兵衞博士をば會長としまする統計研究會をば部内に作りまして、色々の部門に分ち、四つの委員會に分けまして、基礎數字及び此の數字を、どう云ふ風に利用すべきかを綿密に研究致して居ります、又各省からの色々な從來の研究及び資料を集めまして、先づ基礎準備をば致して居ります、併し是等は一、二の官僚の頭や、數人の手ででつち上ぐべきものではありませぬ、國内の各方面の人士をば集めましたる經濟安定本部、此處で練る積りで居ります、尚ほ其の練る前に於きましても、經濟安定本部の機構は度々御説明申上げましたが、從來のやうな官僚のみで集まる役所ではありませぬ、此處に學者、實際家及び官吏、此の三つの者が組合はされまする所の一つの吏僚機構を作りまして、茲に各種の研究會、調査會、協議會等が安定會議の下に附屬されます、既に幾つかの會議が開かれて居ります、斯う云ふやうな所で出來るだけ衆智を集めまして、それと同時に今日本の經濟が動きつつありまする動靜も研究致して居ります、又將來講和會議の出來まする際に、日本が世界の經濟の中にどう云ふ位地を占めるかと云ふことも、綿密な用意の下に考慮を重ねなければなりませぬ、是等の順序を考へまして、急ぎはしますけれども、先程の御説にありましたやうな空想的な計畫ではありませぬで、科學的の的確な計畫を立てて、日本産業が是からどう云ふ方面に行くべきかを科學的に研究して、之を天下の衆智を集めた所で批判しを戴きまして決定致す積りでございまして、此の經濟安定本部が開かれましてまだ二週間、三週間、一箇月の間に御目に掛けますまでになりますのは、左樣な順序で致して居るからでございます、又先程の御尋ねの中に、此の法律だけで出來るのかと云ふことでございましたが、さうではありませぬ、經濟の安定を圖りまする施策は、單に物の動きの調整のみではありませぬ、色々の金融の方面にもあります、運輸の方面にも、物價の方面にも、勞務の方面にも、又根本からの生産の計畫、及び生産の増強の指導と云ふ方面にもございます、此の法律のみが經濟安定の唯一の基礎ではありませぬ、唯其の中の大きな部類、部面でありまして、何を申しましても戰後の不足な物資をば、最も重點的に有效的に働かせますのには、やはり從前とは違ふ角度ではありまするが、一つの計畫的な經濟の行はれる必要がございますので、此の法律の如き形に於きましては、商工大臣の御説明のやうに、又私共も好ましいこととは存じませぬ、併しながら此の經濟の動搖の際に色々な事象に應じられますやうに、此の短期間に臨時の法制の御協贊を煩はしまして、物の、資材の、或は設備の、さう云ふ需給の方面に遺憾ないやうに致したい、詰り是が經濟安定の多くの計畫の中の全部の裏付ではございますが、其の中の重要な基礎的の一つの柱とも致したい、斯う云ふ積りで御協資を煩はして居る次第でございます、甚だ説明を十分に申上げる時間もありませぬが、御諒承願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=47
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048・加藤勘十
○加藤(勘)委員 只今多くの御言葉を以て御説明になりましたが、私の質問致しまた要點とは少しく「ピント」が外れて居る御答へだと思ふのです、勿論經濟安定本部を中心として色々な御説明で、私の御伺ひしなかつたことも分つた點もありますが、私の御伺ひ致したいのは、此の生産復興を困難ならしめて居る原因の所在が何處にあるか、其の所在を探求することに依つて、斯うすれば是が除かれるのだ、斯う云ふ點でありまするが、其の點に付て私今日生産復興を困難ならしめて居ると見て居る要點を申上げますれば、第一には技術的な面に於ける障碍だと思ひます、第二には原料、材料の絶對量の不足と其の偏在にあると思ひます、第三には社會的原因にあると思ひます、大別しまして此の三つの原因がある、更に之を細かく分類して見ますれば、技術的障碍と言はれる中には、第一に何人にも考へられますことは、戰災に依り生産設備が失はれたと云ふこと、又戰爭中餘りに生産設備を酷使したり、或は補修を怠つたことに依つて、著しく生産力を減退して居る、又設備が或る物に於ては老衰して居るとか、是等のことが、私は技術的な障碍として算へ上げられるのではないかと思ふ、勿論先程國務大臣の言はれたやうに、個々の産業に付て見ますれば個々の特徴がありまして、或る生産部面には適用されても、他の生産部面には適用されないと云ふものもありませうが、日本經濟全般、日本の生産全般を概觀致しまする時に、私は技術的な障碍としては、今申上げたやうな點を指摘することが出來るのではないか、隨て如何にすれば之を補ふことが出來るかと云ふことが次に考へられると思ふのです
第二には原料材料の絶對量の不足、是は只今御説明にありましたことに依つても能く分りまするし、又何人も當然考へて居る點であります、此の原材料の絶對量の不足と云ふことが、如何に大きな生産復興の障碍をなして居るかと云ふことは、今更申上げるまでもないのでありまして、之を補ふの途は、一つは先づ基本産業、例へば今例に御引きになりましたやうに、石炭なら石炭と云ふ物を取上げて、是がどう云ふやうに充足されれば宜いか、又海外から輸入に俟たなければならない物に付ては、聯合國とのどう云ふ折衝に依つて、其の不足する原材料の輸入の方法を講ずるか、斯う云ふことが當然考へられなければならぬと思ふのであります、それから原料、材料の偏在と云ふことが當面の大きな問題だと思ひます、先程の商工大臣の御説明の中にもありましたが、私は若し日本の現在國内に手持されて居る原料、材料が適正に配給し直されますならば、まだここ一年やそこらの間、日本の生産設備を遊ばせなくとも、濟むのではないか、即ち原料が海外から輸入されるやうな時期に至るまで、偏在する原材料を適正に配給し直すことが出來るならば、其の期間中十分生産設備を運轉させることが出來るのではないか、現在實際に於きまして、原料が或る工場に於てはあり餘つて居る、あり餘つて居ると言ふと語弊がありますが、二年、三年分も殘つて居る、或は工場に於ては半年分か三月分しかない、斯う云ふやうなことは實際に我々が見る例であります、此のことはあの總動員法の適用下に於ける戰爭中に於ても見た實例なんです、私の主として言ひたいことは此の點でありますが、
〔委員長退席、小島委員長代理著席〕
戰爭と云ふやうな國家の運命を懸けた重大な目標の下に制定されたあの總動員法の下に於てすら、尚且つ物資の需給は圓滑を缺いて居つたのです、是は私共全然門外漢であつた者から申上げるよりもあなた方直接其の渦中においでになつた方の方が、遙かに能く實情に通じて居られると思ふ、如何に原材料の偏在の爲に、日本の軍需産業が大きな障碍を受けたかと云ふことは、今更申上げるまでもないと思ひます、戰爭、さう云ふ國家の運命を賭するやうな重大な目標の下に於てすら、尚且つ其の需給の圓滑を缺いて居つた、今日戰ひに敗れて、新しい立場から新しき日本を産み出す爲の經濟復興に當りまして、總動員法と更に類似の此の法律の適用に依つて、さう云ふ戰爭中の總動員法適用下に於ても、十分に目的を達することの出來なかつた偏在原材料の適正なる再配置が出來るかどうか、私は政府の政治力の問題だと思ふ、若し政府に政治力があるならば、或は斯う云ふ法律がなくとも旨く行くかも知れないし、又若し政府に政治力がなければ、如何に完全無缺なる法律が制定されましても、其の實現を見ることは非常に難かしいではないか、私が先程確信があるかどうかと云ふことを御尋ねしたのは主として此の點にあるのであります、此の點に付てどう御考へになりますか御伺ひしたいと思ひます
それから第三の社會的原因に付てであります、社會的原因として擧げられますことは、今御説明になりましたやうに第一に食糧事情を擧げることが出來ます、食糧事情の不圓滑の爲に勞働者の退職なり離職なりが行はれて、旨く勞働力の調整が出來ない、是も尤もだと思ひます、隨て此の點は何處に缺陷があるかと云ふことは自ら明瞭でありますから、是が補はれれば此の點は直ちに矯正出來ると思ひます、其の次は資本家の生産「サボタージユ」であります、資本家の生産「サボタージユ」の問題に付きましては色々議論がありませうが、私は戰に敗れた日本の國の將來の經濟的見透しが付かないと云ふこと、それから「インフレーション」が、大藏大臣は大體頭打ちだと仰せられて居りますけれども、尚ほどう云ふやうに展開して行くか分らないと云ふこと、そして又若し「インフレーション」が進行して行くとしますれば、困難な思ひをして物を造つて利益を受けるよりは、持つて居る手の原材料の値上りに依つて利益を受けた方が、遙かに金を儲けようと云ふ趣旨から行くならば、簡單であります、さう云ふことが勢ひ資本家とか生産擔當者をして仕事を躊躇せしめる、生産設備が整つて居り、原料材料が不足ながらも整つて居り、そして働くべき勞働者が存在して居るにも拘らず、尚且つ其の生産手段が十分に働かないと云ふことは、明かに資本家の生産「サボタージユ」の結果であると見ても差支へないと思ふのであります、もう一つ資本家が生産を遲疑して居る原因としては、言ふまでもなく利潤を追求することが、今日の經濟組織の主眼であります、利潤を追求することが經濟組織の主眼でありますならば、どう云ふ方法に依つてでも金が儲かれば宜しいと云ふことを考へられるのは、其の事業を擔當して居る人の從來の考へ方であります、さう云ふ考へ方を持つた人が、今申しますやうな諸他の經濟的見透しの困難や、或は「インフレーション」の展開に依る手持原材料の値上りに依つて利益を受けると云ふことを考へられることも當然であります、隨て斯う云ふことが、若し政府に於ても其の原因の所在が明かになると、私共の指摘するやうなことに御同意であるならば、私は此の原因をどうすれば除くことが出來るかと云ふことが、自らそこに生れて來ると思ふのであります、其の點に對しての御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=48
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049・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ致します、現在生産の起らざる原因としまして技術の方面、資材の方面、又勞務の關係或は事業家の經營意欲の問題等に付て御議論がございましたが、私も大體に於きまして同じやうな考へを持つて居ります、勿論設備及び技術の缺如と云ひますか、缺損と云ひますか、此の點は中中さう簡單に參らぬと思ひますけれども、今囘例へば一つの例を申しますれば、補償物資が撤去されまして、其の後設備がちぐはぐになりましたやうな場合、是は本法の第一條第一項の三號に當りますが、さう云ふやうな場合に設備の融通等を考へて運用されるのであります、日本の技術の指導と云ふやうな面は、さう一朝にしていかぬと思ひますけれども、勿論大いに努めなければならぬ點であります、又資材の偏在の點でありますが、是は二樣の方面で自然と參つて行けると思ふのでありますが、安定本部は企畫の廳でありまして、實施の官廳でありませぬから、手づからではありませぬけれども、只今御指摘のやうに資材の偏在のあることは事實と存じます、從前も戰時中に査察其の他の方法に依りまして資材の偏在を矯正しようとしましたけれども、成功しなかつたことも事實のやうであります、此の點はやはり缺乏せる資材をば、重點産業に集中すると云ふ見地から申しましても、何とかしなければならぬ問題で、是も實際の法律の適用としましては、一條の一項の三號が其の場合に活用されるのでありますが、如何なる組織的な方法でやるかと云ふことに付きましては、私共の方でも各省と相俟つて、どう云ふ風に行けるかと云ふ構想を練つて居ります
それから第三の勞務の問題でありますが、現在のやうに一方に生産意欲がありながら、此の生産意欲が徒らに社會の一部の思想の爲に本當に發揮されない状態は、大いに心配しなければならぬ問題と思ひます、一方勞働に對しまする保護の諸法制の完備と相俟ちまして、一つの勞働の面に於きましても、やはり勞働の意義と云ふか、責任と云ひますか、秩序と云ひますか、さう云ふ方面はやはり之に關係しまする諸方面と協力致しまして、本當に勞働力が發揮出來ますやうな方面に付て、是は協力して御相談すると云ふか、でつち上げなければならない是れからの重要の問題だと思ひます、安定本部の仕事の中にも如何にしてそれが成立たせ得るかと云ふことは、大きい一つの部門と考へて居ります
最後に事業家の所謂「サボタージユ」の問題でありますが、是は色々捉へて見ますと、唯單純に利益追求、材料値上りを待つてやらないと云ふ風な非難を受けるやうな場合もあり、中には勞働爭議がある爲にうるさいので、もう仕事を止めてしまはうと云ふ横著なのもありますが、私の見聞から幾つかの例を調べて見ましても、單純に解釋と申しますか、何と申しますか、批判し去り得ない部門もありますので、是は今度補償打切に伴ひまして、工場の整備が大々的に行はれました其の際に、新勘定と舊勘定の分離、新勘定の方には其の工場の本來の生産に必要なる設備及び材料等が分類されて、其の工場が本當に働くに必要でないやうな物資が、自然と舊勘定に於て舊債の返濟、其の他の爲に處分されるやうなことになりまして、是は此の法律に關係はありませぬけれども、今囘の補償打切に伴ひまする企業整備の法制が出來ますと、それの適用中に、果して生産「サボ」なりや否やと云ふやうな事情も、拔本的に判明して參ると思ひます、是は是等の法制の運用と一諸に、さう云ふ弊害がありますものは之を矯めて行くと云ふことに、お互ひに努力しなければならぬかと思ひます
〔小島委員長代理退席、委員長著席〕
まあ是等に付きましては、色々の經濟上の事情もありませうから、一言にして批判し去り得ないと思ひますけれども、若し故意に仰しやるやうな「サボ」なんかがあるとするならば、第一項の第二號を適用するとか、或は其の所有する設備、或は資材等に於て、第三號に依りまして有用に轉換せしめ得るとか、此の法律の適用に依りましても、若干の補正が出來ようと思ひます、併しながら何を申しましても、敗戰後の此の片輪の日本の産業を直して行きますのには、一服の藥で起死囘生のやうなものがあらうとも存ぜられませぬ、色々の實際問題を、色々な法制の力を併せてやつて行きます内に建直すより已むを得ないと、斯樣に存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=49
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050・加藤勘十
○加藤(勘)委員 私の御尋ねしました日本の生産復興に關する問題に付ては、それを困難ならしめて居る原因の所在に付ては大體御同感の意を表されましたが、どうすれば其の原因を除却することが出來るかと云ふことに付ては、或るものに付ては御説明があり、或るものに付ては御説明がありませぬでした、私共も原因を指摘する以上は、當然如何にすればそれ等の原因を除却することが出來るかと云ふことに付て一個の見解を持つて居りますが、それは私共の意見になりますかを止めて置きます
次に御尋ねしたいことは、日本經濟の再建に付きまして、是は好むと好まざるに拘らず、嚴密なる生産と消費の均衡に基く計畫經濟でなければならぬと云ふことは、何人と雖も承認せざるを得ない點だと思ひます、現に吉田内閣に於きましても、經濟安定本部が構成されようとする時、現在は資本家陣營に於ての有力な選手である繕さんが總務長官におなりになりましたが、最初安定本部の總務長官を吉田内閣が御求めにならうとした時は、繕さんとは凡そ對蹠的な立場にある社會主義學者の集團でありました、其の中かに適任者を御求めにならうとしたのであります、是は吉田内閣が社會主義的政策を實現されようとする爲に、或は計畫されようとする爲に御求めになつたのか、或は無意識の間に、今日さうした風潮でなければ人心を把握し、或は安定せしめることが出來ぬと御考へになつた結果か、それは私共には能く分りませぬが何れにしましても社會主義學者の「グループ」から經濟安定本部の總裁に次ぐ總務長官の地位を御求めにならうとした點に、私共から見れば純粹に資本家政府だと思つて居ります吉田内閣に於てすらも、尚且つ此のやうな「ゼスチュア」と云ふか、態度と云ふか、或は眞劍と云ふか、兎に角御執りにならなければならなかつたと云ふ所に、如何に今日社會主義的政策、或は之を社會主義と云ふ言葉を嫌つて、社會政策と云ふ言葉だけを御用ひになる方もあるかと存じますが、さう云ふ用語の問題は大したことでない、何れにしても具體的な計畫的經濟、是が必要であるが故に、經濟安定本部も、隨て其の具體的計畫經濟を御立てになる中心であると思ひますが、さう云ふ點から見ましても私は少くとも、生産に當る重要なる生産手段と云ふものは、どうしても社會主義的な立場に立たなければ、本當の生産全般の復興は困難でないかと思ふのであります、さう云ふ點から私は少くとも重要な基本産業の或る種のものに付ては、第一に利潤追求の觀念を排すること、如何に社會的に必要でありましても──先程石炭の例を御擧げになり、他にも石炭の問題は屡屡取上げられて居りますが、石炭のやうな重要基本産業が、資本家の金を儲けると云ふことを主眼として經營されて居ります以上は、金が儲からぬ場合に資本家に、それでも仕事をやれと云ふ譯には行かない、勢ひ現在見て居りますやうな、今年度の豫算に於きましても、二十億以上の補助金が與へられて居ると云ふやうな實情でありまして、政府の補助金で資本家の採算が辻褄を合はして居ると云ふ状態であります、此の間大藏大臣の説明に依りますれば、將來は此の補助金、助成金の問題に付ては別途に考へると云ふことでありましたが、其の別途の内容は分りませぬが、若し石炭生産に對する補助金が何等かの形に於て打切られると云ふことにやりますれば、今日の經濟條件の下に於きましては、私は石炭は恐らく生産が停頓してしまふに相違ないと思ふのであります、勿論個々の炭礦に付て見ますれば、優秀にして近代的な設備を持つたものもあるししますから、一概に全部が全部赤字になるとばかりは限らぬでありませうが、さう云ふ個々の問題は別として全體的に見れば、どうしても利益のない所、將來の見透しのない所に、今の資本主義經營の下に於て、事業經營を要請することは、國家の權力を以てしても私は不可能だと思ひます、然らば其の石炭が、日本の經濟復興、生産復興にそんなやうな調子で宜いのかと云ふことになれば、それは絶對に許されないことであります、隨てどうしても石炭と云ふものがなくてはならぬ、なくてはならぬが利益が擧らなければ資本家は之を營まない、そこで私は斯う云ふ基本産業は、利潤の觀念に依つて經營されるのではなく、社會的生産に應じて生産をする、固より社會主義經濟、即ち國有社會化された經營に置きましても、平常時に於ては其の事業自身が自主的に、獨自に經營出來ることが本旨でありまするけれども、併し社會的必要のある場合には、例へばどんなに損失をしても、それは國家が負擔すると云ふ意味に於て、必要度に應じる生産が圖られなければ、私は經濟全般の計畫を立てることが出來ないと思ひます、是は獨り石炭に付てばかりでありませぬ、水力に付ても同樣のことが言へると思ひます、其の他の生産財の生産に當る其の原料となるものはさうでなければならぬと思ふのでありまするが、第一に今申しますやうに利潤追求の觀念を排して、社會的必要に基く計畫的な生産が行はれなければならないと思ふと云ふこと、それから二番目には未利用の生産手段、是は工場設備なんかに於きましても、現在遊休設備がある、それから又炭礦なんかに於きますれば、未開發鑛區がある、是は現在試掘權に依つて、鑛業權者に所有されて居る、今日のやうな經濟條件の下に於きまして、恐らく何處の炭礦と雖も、國家の現實の經濟上の保護がなければ、未開發鑛區を開發しようと云ふやうな心掛を持つ炭礦會社の一つもないと思ひます、一方に於ては石炭は足らない、現在作業を進行しつつある炭礦は中々利益の關係から出來ない、而も將來石炭が相當量を絶對に必要とすると云ふ場合に於きましても、未開發鑛區が其の儘にされて居つたのではどうにもならない、斯う云ふ未開發鑛區を開發するとか、或は遊休設備を社會的必要に應じて稼動せしめると云ふことは、どうしても私は國有社會化された計畫性の下に行はれなければ困難だと思ひます、第三は現在あります中小工業の社會化であります、日本の中小工業が日本産業に占むる比率は戰前若しくは戰爭中に於ても相當の比重を持つて居つたことも是れ亦常識として何人にも知られて居る所であります、商工省から御示しになりました資料に依つても、數字的にも明白にそれは出て居ります、殊に財閥解體に依つて綜合投資資本がなくなると云ふことになりますれば、先程商工大臣も仰しやつたやうに、重工業部面よりも纖維工業が今後の日本工業再建の中樞にならなければならぬと云ふ點から見まして──勿論纖維工業と雖も大資本の大工場生産に依るものも澤山ありますが、併し中小工場の持つて居る比重と云ふものは相當大きいのであります、又是等中小工業には得てして封建的な多くの殘滓を持つて居るのであります、斯う云ふ封建的な残滓を一掃し、此の小さい一つ一つで見れば殆ど經濟單位として問題にならぬやうな中小工業を、一つの組合に組織せしめて社會的に一經濟單位とする、勿論此の委員會に併託されました協同組合法案はさう云ふことを狙つておいでになると思ひます、何れ協同組合法案が審議される時に疑義は疑義として御尋ねしたいと思ひますが、さう云ふ小さな、而も日本工業に重要な比重を占めて居る是等の中小工業を、一定の條件の下に經濟單位として社會化して行く、斯う云ふことも亦明かに計畫性に基かなければ中々難かしいと思ひます、そこで斯う云ふ點を考へて見ましても、それから又其の次には、今の儘て經濟再建が斯う云ふ重要基本産業にも圖られることになるとしますれば、勢ひ是等に對する投資の關係が商業資本的になつて、生産資本家を苦しめることになる危險が多分にあると私は思ふのです、此の點に付ては意見の相違になるといけませぬから、私は意見には亙らぬ積りでありますが、さう云ふ諸々の條件に付て見ましても、又先程申上げましたやうな國内に於ける生産再建の障碍となる技術的な、或は社會的な原因を排除して行くに付ても、私はどうしても社會主義的計畫經濟制に基く生産形態が採られなければならぬと思ひます、もう一つ此の點に付て特に私共の立場から、再建に付て非常な大きな疑義を持つて居りますことは、近頃外國資本を容易に導入しようと云ふ意見が聞かされるのであります、もう既に或る場合には何々會社に於て又何々事業に於てどうだと云ふやうな、半ば具體性を持つたやうな噂まで聞えるのであります、そこで外國資本の問題であります、勿論原料や材料を海外から輸入しなければならぬ、併し日本には之に對する適當な反對給付としての見返り物資が乏しいと云ふ場合には、勢ひ原料、材料の形に於て外國資本の援助を受けなければなりませぬが、さう云ふ意味に於て私は外國資本が日本生産の復興に入れられると云ふことは當然だと思ひます、又或る程度は已むを得ぬことだと思ひます、併し若しさうでなくして唯單に外國資本を日本の産業に導き入れる、殊に先般來新聞に報道されましたやうな所謂彈丸列車を外國資本に依つて建設しよう、勿論是も觀方に依れば必ずしも金が來るのではない、「レール」なり機關車なり、さう云ふものに依つて輸入されることになるでありませうが、斯う云ふ彈丸列車の資本を若し輸入しようと云ふ考へ方で、日本經濟の再建を外國資本の手に依存することになれば、私は日本經濟の再建は全然別な方面に行つてしまふ虞れが多分にあると思ひます、私共は飽くまでも小さくなれば小さくなつた生産を中心として、日本獨自の復興を圖らなければならない、若し日本が外國資本を容易に導入することに依つて、半殖民地的な形態になると云ふことになれば、私は日本の經濟復興は結局外國資本を受入れようとする中間的な支那の言葉で云へば買辨資本的と云ふか、高利貸資本の形態に變つて、眞面目な生産の復興が非常に困難である何でも外國の商品を賣捌く市場に轉家される、又外國に對する金利支拂の爲に、日本の生産は結局外國資本の利潤の爲に生産すると云ふことになつてしまふ危檢が多分にあると思ふ、況んや鐵道であるとか、土地であるとか云ふものに、外國資本が導入されると云ふことは、私は軈ては其の國の政治的支配權にまで干渉を受けることになる虞れが、外國の今までの殖民地に於ける實情から、容易に想像出來るのであります、さう云ふ點から等しく外國資本の力を借りなければならぬと云ふ、言葉の形の上に於ては同じでありますが、内容に於ては非常に違ふと云ふ點に付て、政府はどのやうに御考へになつて居りますか、一應其の點に付て御伺ひしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=50
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051・膳桂之助
○膳國務大臣 御尋ねの點に私から御答へするのが不適當な問題もありますので、私が自分の安定本部に關係あると思ふ點だけに付て御答へ申上げます、第一番の點は是からの計畫經濟に、殊に重要産業に付ては利潤追求と云ふ觀念を入れてはいかぬ、國營で行くのが本筋ではないかと云ふ御意見のやうに拜聽致したのでありますが、安定本部が是から經濟の再建を圖る際には、何時も申上げで居りますが、私共は唯一つの理念や「イデオロギー」だけでものを推論したくない、現在の日本が、どうなるのだ、今日本は別に完全な、社會主義の完成された國家の形態でも、産業の形態でもありませぬ、又共産主義の形の今の經濟組織でもありませぬ、やはり何を申しましても所謂資本主義と稱するものが、社會政策的か社會主義的かに修正された形だと云ふことが、現在の意味の姿であります、之に出發をしなければならぬことが一つであります、もう一つは現在の經濟再建に何が必要か、從前、先程御指摘になつた、權力に依る戰爭中の計畫經濟之を批評すれば極度の國家社會主義と申しても宜いだらうと思ひます、是で何が誤らしたかと云ふに、是は此の前或る質問に申上げたのでありますが、人間性を缺いて居る點が從來の統制經濟の誤りである、利潤追求と色々仰しやいますが、人が自分の生活を營むと云ふ目的の爲に正當な利潤を得る、是は當然のことであります、子孫の爲にものを考へる、限度はありますが、是も當然のことであります、人間性を捨てなくて、神樣であるかのやうな氣持が總ての人に持つて貰へると思つて、其の基礎の上にやつたと云ふことが、從前の利潤追求の排斥と云ふやうな「スローガン」で、何かしら一つの窮屈な、而も實態に於ては、大いに滅私奉公のやうな顏をして居りながら、内心は非常な利潤追求と云ふことをやつて居る、さう云ふ觀念論が一番誤つて居ると思ふ、私は何時でも申すのでありますが、今の日本はもう瀕死の病人で死にさうなのである、耳許に來て斯う云ふ藥が良いと、幾ら藥の講釋をしても、又治療法の講釋をしても、病理學の講釋をしても、何にもならないと思ふ、今の日本は漢方醫でも宜い、西洋の醫術でも宜い、本當に日本の經濟を建直せる藥があるならば、私は漢方醫でも西洋醫でも宜いと思ふ、そこで日本のやりたいのは、觀念には囚はれたくない、假に共産主義と言はれて居る説でも、好いものがあつたら採つて行つたら宜いではないか、ですからそこで唯利潤追求がいかぬと云ふ原則から出て、それで國營が宜いと云ふのにも、遽かに私共は贊同し難い、國營と云ふことは非常に宜いことのやうでありますけれども、其の蔭には此の前に申しました官吏がやると云ふことが、どうしても必然的な條件なので、官營が如何に非能率であるかと云ふことはもう實例を示して居るので、私共は實際に付て觀念を離れたい、今の事業に必要なのは、一面物を生産するのが必要なのである、實を言へば生産するには結局數字の公式で言へば、終ひの結果が多いのが宜い、詰り分子を大きくするか、分母を大きくするかと云ふことの答への、「イクオール」の次の答への數字を大きくするには、分子を大きくするか、分母を大きくするかと云ふ問題で、私共は今分配の問題を考へ、構成の問題を考へるよりも、先つ生産を少しでも殖やすと云ふ方面を考へる方が宜いぢやないか、それには生産意欲を正しく指導するのが宜いではないか、斯う考へまして、私は安定本部の施策には一つの或る狹まつた理論でなく、本當に今日本は死に掛けた病人なのですから、耳許で唯色々な理論を言つたつて病氣は治らないので、本當に效く藥を飮ませるやうに之をやつて行きたい、隨て國營が宜いか惡いかと云ふ問題は觀念的には決めずに、一一の其の仕事に付て、本當にそれが直ぐ實行出來るものならばやつても宜いではないかと思ふのでありますが、私はさう云ふやうな氣持で、安定本部は物の研究をして參りたい、斯う存じて居ります
次に未利用資源の御説、私も御同感のことが多いのでありますが、是は一寸略させて戴きます
次に中小工業の問題でありますが、中小工業の社會化と云ふことが、私にはまだ能く分りませぬけれども、少くとも私共經濟安定本部が、今經濟の民主化と云ふ問題をば一つの課題として取上げつつあります、此の中には財閥の解體に伴ふ後の株式の問題などもありますけれども、世間では今の御説のやうに、中小工業と云ふものを、本當の日本の中堅産業として盛立てて行く、是は日本の重大な問題だと思ひます、是等に付ては餘り長くなりますから申上げることを略しまするが、本當に私共が研究して參らなければならぬ點であらうと存じます
次の金融資本が是等の經濟形態に、又從前のやうな産業家を壓倒するやうな力を持つてはならぬと云ふこと、私は多く御同感であります
次に外資輸入の問題でありますが、是も色々考へやうもございますけれども、日本が立直りますのに獨力で出來ないと云ふことは、もう申上げるまでもないことでありまして、是が自由に物の買へるやうな資金の形態で、外から「クレヂット」を設定するとか、金を借りるとか云ふやうな問題と、物資を入れるかと云ふやうな問題、考へやうに依れば違ふとも言へ、似たやうなこともあるのでありますが、如何なる形態で日本が外國の經濟の力を借り得るかと云ふことも、是も一つの公式的に考へを決めると云ふことは困難で、やはり是からの經濟の動き、殊に日本がどう云ふ風に世界經濟の貿易の中に、お仲間入が出來るかと云ふことに考へ合せて考へて行くべき問題かと、斯樣に存ぜられます、御所論の多くの點に付きましては、御同感の所も多いと思ひますけれども、間々全く考への違ふ所もあります、率直に申上げました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=51
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052・加藤勘十
○加藤(勘)委員 只今の御答へどうしても「ピント」が合はぬ、是は仕方がない、立場の相違ですから仕方がありませぬが、併し社會主義と云ふものに對する世間一般の、今日尚且つ持つて居られる誤解を其の儘、膳さんも御持ちになつて居ると云ふことは、少くとも經濟安定本部の中心として、今後新しき日本經濟の計畫を立てられようとする時、其の偏見は私は捨てて戴きたいと思ひます私共の立場から現實の總ての缺陷を見まする場合に、勢ひ是れ是れの方法に依るの外には途がないのではないかと、社會主義の立場に立てば、恰も總てのものを人間性を失はしめた、或る場合には神聖化したものにしてしまふ、そして口で言つて居ることと實際に利潤追求をして居ることとは違ふと云ふやうなことと、それからもう一つは、國營になれば勢ひ官僚經營になる、斯う云ふ點が一番誤解をしておいでになります中心のやうでありますが、私共の唱ふる重要産業の國有は、單なる國有にして、今政府が經營して居りますやうな、或は鐵道であるとか、或は專賣事業であるとか、或は通信事業であるとか云ふやうな、所謂官僚經營に任さうと云ふのではないのです、今日の鐵道にしましても、通信機關の國營にしても、專賣事業の國營にしても、決して是は本當の意味に於ての國有社會化の精神に於て行はれて居るのでなく、偶偶資本が個人資本であるか國家資本であるかと云ふだけの相違で、依然として其の經營の主眼は營利主義、詰り資本主義の觀念に基いて行はれて居るのであります、私共は決して政府と觀念論で、社會主義がどうとか、資本主義がどうとか、さう云ふ觀念論で爭ふなんと云ふ考へは今も持つて居りませぬ、唯現實の計畫を立てるのにどの方式を選ぶか、其の選ばれた形が果して是が社會主義的のものであるか、資本主義的のものであるかと云ふ判斷をするに過ぎない、さう云ふ場合に今の形から行きますれば、どう云ふ形が形成されたにしても、其の根幹に流るるものは利潤追求の觀念である、勿論私共社會黨と雖も全部の生産を──ここまで極端な誤解は今日では餘程なくなつたやうでありますが、一部に尚ほ極端な誤解を持つて居る人かある、社會主義と云へば、何か持つて居るものは全部持つて行かれてしまつて、何もかも劃一的に平等的にやられてしまふのではないか、斯う云ふ誤解を持つて居られる人がありますが、さう云ふやうな素朴な誤解に對しては別としまして、少くとも社會主義とは何かしら生産に對する人の創意を失はしめると云ふやうな、大きな誤解があると私は思ひますが、さう云ふ考へ方を持つて居る人が相當にあると思ふのです、私共から言はしむるならば、計畫的な經濟に基いて、其の計畫の範圍内に於て、自由に個人の創意を發揮せしめると云ふ點に於ては、今日のやうに一部に如何に優秀なる發明意欲がありましても、經濟と云ふ觀念の爲に抑制されて、其の個人の發明創意と云ふものが發現出來ない又事業經營に付ても同樣であります、さう云ふ場合に是等の個人の創意を、自由に發揚せしめると云ふことが、社會主義經濟の本旨であると云ふことを篤と此の際御諒承願ひたいのであります、さう云ふ意味から私共の申上げることは、決してそんな觀念論を申上げて居るのではなく、先程も申しまするやうに兎に角實際問題として、此の政府が社會主義的な方策を選ばれるか、選ばれぬかは別として、兎に角社會主義の經濟意見を持つた人を持つて來ようとされた其の一點を見ましても、私はさう云ふことが人人の間に浸透して居る、今までのやうな觀念に基く形では、それは資本主義的であるか「フアッショ」的であるかは姑く別にしまして、兎も角もさう云ふ觀念に基く形態に於ては、それが飽和點に達して居る、或る一定の限度に達して居る、そこからは新しいものが生れて來なければならぬと、是は先程膳さんは、修正された社會政策であるか、資本主義であるか、さう云ふ言葉は問はぬと仰しやいましたが、私は其の、どうしても今までの形で行くなくなつたと云ふ所に、次の時代への移り變りの變化があると思ふのであります、其の變化を稱して──我々は今勿論今日の日本が社會主義の國たなんとは夢にも思つて居りませぬ、若し日本が社會主義の國であるならば、我々は何も議論することがないのであります、さうでないが故に新日本の建設に付て、どう云ふ方策が一番正しく日本の國を成長せしめるか、此の一點に付て色々考へられるが故に、我々は之をやるには此の考へでなければいかぬと云ふことから、社會主義の意見を申述べる譯であります、さう云ふ點から見まして、膳さんの御答辯は私共甚だ意に滿たぬのでありますけれども、是から先は意見になりますから是も遠慮して置きます、最早時間もありませぬから、先程申しましたやうに贊否の意見は何れ此の質疑が終りました後に、各黨で決められると存じまするから其の際に讓りますが、唯此の機會に一つ私共がどう云ふ考への下に此のやうな質問を發したか、此の點を明かにして置きたいと思ひます、それは一口に申しますれば、社會主義的な經濟再建に付て政府はどう思はれるか、斯う云ふ質問でありまするが、是は今の膳さんの御答へで略略知ることが出來ましたから、強ひて御答へを求めようとは思ひませぬ、唯私共としては、第一に社會主義的經濟再建に對して、反對論としで我々が耳に聞く所のものを指摘して、それが如何に誤解に基くものであるかと云ふことを明かにしたい
第一は社會主義に對する誤解が依然として殘つて居ることは今申上げた通りです、まだ都會地に於きましてはそれ程ではありませぬが、農村に行く程相當強い誤謬が殘つて居ります、是は社會主義に對する正しい理解が缺けて居ると云ふ點ばかりではありませぬ、御承知の通り日本に社會主義運動が起りまして以來、古く言へば明治二十年以前、新しい形に於きましても大正年代からでありますが、其の間、時の政權を中心とした支配者は、如何に社會主義と云ふものを一般大衆に誤解せしめるやうに宣傳是れ努められたかと云ふことは御承知の通りであります、又時には權力に依つて彈壓されたことも御承知の通りであります、さう云ふことから社會主義と言へば何か恐しいものであると云ふやうな觀念が、強く廣く植付けられたことも御承知の通りであります、所が漸く今度戰爭に負けたことに依つて、初めて成程社會主義者が言つて居つたことは本當だわい、斯う云ふことが相當廣く浸透して來たが、是は今度の選擧に於きまして社會黨が社會主義を眞向に振翳して、現在の勢力を占めたことに依つて明かである、勿論國民の大多數がさうであるとは申しませぬが、過去に比べたならば如何に多く、廣く、正しく理解されるやうになつたかと云ふことが證明されますが、尚ほ強く誤解が殘つて居る、だから其の誤解が不知不識の間に、政治家の間にも政府の間にも染つて、尚ほ經濟政策に付て、社會主義經濟政策を唱へると、何かしら異端者であるかの如く、何か別の觀念に依つて觀念を弄ぶものであるが如くに、錯覺に依つて色々と議論が派生的に生れて來ると云ふことは、社會主義としては、又私共としては本當に宣傳が足りないと云ふ點から、私共自身反省もし、又今後宣傳に努めなければならぬと思ひます、さう云ふ點が一つであります
第二には社會主義者は現在の經濟機構に對しては批判や討論はするけれども、建設的な構想を持つて居らぬ、斯う云ふ意見を屡屡聞くのであります、御承知の通り、社會主義の意見は現在の資本主義制度其のものの批判から生れて來たのであります、隨つて我々は決して木に竹を接いだやうに、資本主義經濟から社會主義經濟が一足跳びに出來る、又違つた性質のものが生れて來ると、そんな夢見たやうなことを考へて居るのではないのでありまして、當然是は資本主義と云ふものが封建制度の後を引繼いで、歴史的に一定の役割をちやんと果して居る、此の資本主義の發展は國々に依つて多少の條件が違ひますが、資本主義が其の國に於て其の人口を十分に養ふことが出來れば、まだ資本主義は發展の餘地があるし、存續の意義がある、併し段々押詰つて、其の形ではどうしても一定の人口を養つて行くことが出來ない、其の國の内部矛盾が擴大して來てどうにもならぬ、社會秩序は維持出來ぬと云ふことになれば、勢ひ好むと好まざるとに拘らず次の時代に移らなければならぬ、さう云ふことを綿密に科學的に檢討したのが社會主義の意見でありまして、隨つて木に竹を接いだやうに、忽然として社會主義經濟形態は生れるのでなく、資本主義の地盤の上に社會主義經濟の形が生れて來るのでありますから、此の點に對する批判も、唯批判だけでなく當然其の批判は、即ち軈てそれが建設と同意義のものである、私共は何時でも現在の資本主義經濟機構の中から社會主義經濟機構を建設する建設的意圖を持つて居ります、併し尚ほさう云ふ非常に大きな誤解と言ひますか、非難があります、それも我々としては非常に殘念でありますけれども、尚ほ現在の所は已むを得ない
第三番には、社會主義の基礎勢力である勞働者階級が全體としてまだ新しい經濟組織を擔當するだけの訓練を經て居ない、又總ての點に於て未成熟である、斯う云ふ非難であります、是は總て此の非難は我々も受けなければなりませぬが、之に付ては色々な原因がありませう、今日まで實際勞働者が經營に參畫すると云ふやうなことは、戰爭前には夢にも考へられなかつたことであります、辛うじて或は工場委員會とか、或は團體契約とか云ふことに依つて、人員のほんの一部に關與する者にありましても、經營の面に、人事の面に、全面的に勞働者が「タッチ」すると云ふやうなことは夢にも考へられなかつた、全然一箇の賃金奴隷として、勞働が商品として扱はれて來た、其の商品の賣取りとしてしか存在しなかつた勞働者に其の經驗がないと云ふこと、總ての點が未成熟であると云ふ非難が浴せられるのは、一面から言へば已むを得ないことでありますが、一面から言へばさう云ふ非難を浴せる人それ自體が、勞働者をして末成熟、不訓練の状態に置いておいたのであります、今後は此の民主化の時代に適應するが如く、本當に個人の人格を基調として、お互に相手の立場を理解して尊重しつつ、勞働者に於ても經濟機構に關與して、其の能力を持つて居ることが實際に示されると思ふのでありますが、全體として言はれた場合に、尚ほ訓練が足らない、未成熟であると云ふことは我々は甘んじて其の非難は受けます、同時に我々はだからと言つてそれに甘んじて居るのではなく、今申上げたやうに當然我々は、努めて何時でも經濟經營の擔當に當ることが出來るやうに努めたいと思ふのであります、大體さう云ふ點に於て、尚ほ幾つかの點に付て御質問致したいし、それから條文の具體的な點に付ても御尋ねしたい何箇所かを指摘して置きましたが、時間もありませぬし、既に他の御方も御聽きになることと存じますので、私は大體此のやうに私の疑義を申上げまして、是で私の質問を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=52
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053・竹田儀一
○竹田委員長 膳國務大臣に御相談致しますが、川崎秀二君、加藤鐐造君外まだ三、四名あります、あなたは午後何か御差支へのやうでありますが、全部あなたへの御要求がありますし、大分委員諸君も御勉強でございますから、一時四十分から開いて一、二時間で濟むと思ひますが、御臨席願へませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=53
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054・膳桂之助
○膳國務大臣 一寸已むを得ない用事がありますので、二時位から御願ひ出來ますまいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=54
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055・竹田儀一
○竹田委員長 承知致しました、それでは二時から開くことに致しまして、暫時休憩致します
午後一時一分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=55
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056・会議録情報2
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午後二時五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=56
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057・竹田儀一
○竹田委員長 會議を開きます──井田友平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=57
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058・井田友平
○井田委員 私は吉田政府委員に一寸伺ひたいのですが、此の頂戴しました書類の中に、統制の枠に入れて統制したいと云ふ物の表があります、私は便宜上資源工業と製品工業とに分けて御伺ひ致したいと思ひます、此の資源工業の方には大體重要なものが含まれて居るやうで、製品工業の方には日用品が極く少數列記してあるやうですが、是だけ統制しようと云ふ御積りか、或は是は唯單に斯う書いただけで、まだ此の外にあるのですか、之を一寸御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=58
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059・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 此の日用品の關係の品物の方が少くて、基礎的な方面の品物を澤山擧げて居りますのは御詁の通りであります、是は此の需給調整の適用を致しまして、法規の裏付に依つて需給調整をやつて行かうと思ひまする品物を、茲に擧げた譯でございます、主として先づ原材料の方に強力なる統制をやつて行かうと云ふ意味でございまして、加工致します所の日用品工業等に於きましては、最小限のものを此の法規の適用の下に作つて行く、それ以外のものは原材料の配給はするけれども、大體製造に付ては自治統制の各組合と云ふものがございますので、其の組合の自治統制に之を御願ひする、斯う云ふ建前で此の品目の表からは澤山のものが落ちて居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=59
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060・井田友平
○井田委員 其の點は分りました、すると大體此處に擧げて居るものだけは強力に統制して、後は自治統制に任せる、斯う解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=60
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061・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 左樣でございます、若し其の統制が自治統制で不十分である場合には、此の統制の中に改めて採り入れると云ふ譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=61
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062・井田友平
○井田委員 分りました、それから配給の表の一番下に入つて居る配給協議會と云ふものがございますが、是はどう云ふ組織で御作りになるのですか、眞中の段にある會社に隷屬させる協議會ですか、或は末端の配給を受ける所の組合と云ふやうなものに隷屬させるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=62
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063・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 配給のやり方に付きまして、二色考へて居ります、一つは統制會社、從來は統制會社と申しましたが、最近は之を普通の株式會社に組織變更を致して居りますが、さう云ふ會社に一手買取を致しまして、さうしてそれを又一手に販賣する斯う云ふ配給の機構のやり方を考へて居るのが一つでございます、其の次の配給の方法と致しまして、配給協議會と云ふ形を取つて居るものがあるのでございます、配給協議會の方は、是は色々物に依つて違ひます譯でありますが、通常の場合はさう云ふ品物を生産する方方を勿論入れますし、其の外に配給關係の業者、又物に依つては消費者も入れまして、一つの所謂協議會を作りまして、そこで其の品物を何處に幾ら廻はすかと云ふ配給の割當と申しますか、どの工場の製品をどの消費工場に廻はすかと云ふ割當と申しますか、物の流れ方を指圖する譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=63
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064・井田友平
○井田委員 さうすると結局指導と云ふことは、管理役でもどつちでも宜いのでありますが、配給協議會の世話役と云ふものは主管者でやるのですか、どう云ふ方面でやるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=64
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065・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 先程説明が少し足りませぬでしたので補つて置きます、第二條に於きます産業團體、是は各同業者の團體でございますが、是は其の團體の所屬の會員に企業別の割當をする譯でございます、其の割當が決まりますと、一方配給の方の團體、物が實際流れて參ります方の團體に於きましては、其の割當に基きまして、例へば「セメント」なら「セメント」に例を取りますれば、或る機械なら機械の産業團體へ「セメント」の割當を致しますと、例へば秩父「セメント」の「セメント」をどの工場へ幾ふ、又小野田「セメント」の「セメント」を幾ら、合計一千「トン」としますれば合計一千「トン」渡す、斯う云ふことを配給協議會で物の流れを示す譯であります、隨ひまして此の配給協議會の「メンバー」は、今申しましたやうに生産業者の方、或は中繼を致して居ります問屋業者の方、又場合に依りましては消費者の代表も入れまして組織されて居るのでありまして、是は專ら名前の通り協議會でございまして、其の流れは同業者の方々の自治的統制に依る物の流れを示す譯であります、輸送の方面其の他色々考へまして、經濟上最も有利な流し方をする、斯う云ふ考へ方でありまして、一般的な指導と致しましてはそれぞれの主務大臣が致す譯でありますが、實際の仕事の衝に當られますものは其の協議會を組織して居る「メンバー」の方、及び「メンバー」の方の選擧された機關、斯う云ふものが實際の仕事をする譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=65
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066・井田友平
○井田委員 從來統制の缺陷として、配給された資材を、目的の物へ使用せずして非常に横流れした、是は戰時中も斯う云ふ弊害は非常に多かつたのであります、今後は特に是が多いのぢやないか、何故ならば戰時中よりは今の方が非常に物が高い、目的の用途に使つて仕事をして利潤を擧げるよりも、材料其の物で流した方が非常に利益があると云ふことは、もうはつきりして居るので、斯う云ふ經濟状態から言ひますれば益益其の傾向はひどくなるのではないか、そこでそれを完全に防止して目的の用途に使用させると云ふ方面のことは、是は何處にもある譯であります、自治的統制と云ふことを今仰しやいましたが、業者の自治的統制と云ひますと、さう云ふ面が非常に澤山出て來るのではないかと思ひますが、是は主に何處の機關で之をおやりになる積りか、自治統制なら自治的統制の中に斯う云つたやうな機構を作るのか、一寸伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=66
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067・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 先づ此の法律の適用されて居る産業に付て申しますと、大體原材料を割當てます場合に、どう云ふものを幾ら造るか、一萬「トン」の鐵なら鐵を配給する、斯う云ふ割當を考へて行きたいと思ひます、隨ひまして其の目的の物を造らぬ、例へば他に寧ろ儲かる物があります爲に、割當の目的であります所の品物を造らぬと云ふ場合が起るかも知れませぬが、さう云ふ場合に於きましては、次の機會に於きまする割當を減すとか、何とか云ふやうな、やはり一種のそれに對する制裁を考へまして、目的の物を造るやうにれい行して行きたい思ひます、唯其の狙つて居りまするものが、現在の需給關係から申しまして特に緊要なものであります場合に於て、其の原材料を他に横流しをすると云ふやうな虞のありまする場合は、是は所謂第二號の生産命令と云ふ形で命令を致す譯であります、それから自治統制でやつて居るものに付てはどうするかと云ふ御尋ねでありまするが、是もやはり自治統制ではございまするけれども、一應は原材料を割當てまする場合にどう云ふものを幾ら造ると云ふ豫定を致しまして、割當を致して參る積りでありまして、同じやうに目的のものが出來ぬ場合には、次の機會に於ける割當を調整すると云ふことで參りたいと考へて居ります、さうしてそれが旨く行かぬ場合は更に此の需給調整法を適用致しまして、其の割當を權威付ける、斯う云ふことに致して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=67
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068・井田友平
○井田委員 其の儘にして置けば旨く行かないと云ふことは當然なのでありますが、旨く行かぬ場合には此の調整法を適用する、斯う仰しやるのであるけれども、無暗に此の法をやたらに擴げて適用されると、やはり戰時統制のやうな總て皆強力な枠の中へ入れてしまふ、斯うなつて來ると結局又そこに非常な弊害が出て來て、生産意欲がなくなるとか色々弊害は出て來るのです、結局此の統制がさう云ふ風に、今の目的以外に餘り手を擴げれば必ず失敗する、斯う云ふことを我々は憂へるのですが、何等かそこにあなた方の方で、自治的にやらせるならやらせる方はあると思ふ、結局重點的に此の製品は此の工場でやらせるとか何とか指定と云ふことにして、良心的に目的に向つてやらせる、誓つて變なことをしないと云ふやうな工場を選定して、さうしてそれをやると云ふやうな方法もあるし、又其の自治的統制機關の中に、材料は幾ら入つて幾ら造つたと云ふやうな組織を作るとか何とか、さう云ふ方法でやつたならば出來るのではないか、餘り調整法をやたらに擴げると云ふことは、我々は必ず是が假に施行されるとしても、非常に反對なんです、だからさう云ふものを使はずして、完全に重要な資材が國民生活の上に現はれると云ふやうな方法を十分考へてやつて貰ひたい、斯う云ふことを申上げて置きます、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=68
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069・竹田儀一
○竹田委員長 厚東君、一寸注意致しますが、疋田君竝に小野君からの御發言のこともありまするし、成るべく質問はだぶらないやうに御願ひ致します──厚東君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=69
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070・厚東常吉
○厚東委員 私は極く簡單に膳國務相に質問致しますが、過日十日でありましたか、同僚議員から地代家賃統制を繼續するかと云ふことに付きまして質問がありましたが、之を繼續すると云ふ御答辯があり、新聞にも出て居りました、繼續なさると致しますれば、現在の儘の法律で繼續なさる御積りでありまするか、其の内容は大いに御改めになるのでありまするか、之を一應御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=70
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071・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ申上げます、只今私不用意に此の規定の内容のものを持參致しませぬ、丁度物價廳の次長もG・H・Qとの已むない交渉の爲に出られませぬが、大體の考へは斯樣であります、丁度地代及び家賃に關する統制の規則も、今月一杯で有效の期限が切れますので、尚ほ引續き統制の枠を、多少の變化はありますが、大體從前と同じやうな筆法で參りたいと思つて居ります、其の形式は實は物價令が「ポツダム」宣言に基きます聯合軍の指令に基いての規定でありますから、それと同じやうな形に行くのか、或は立法手段に依るのかと云ふ手續問題に付て、まだ多少の疑義がありますので、研究を致して居るのでありますが、何れ來月一日から有效になりますやうな風に、從前に引續いて之を施行して參りたいと思つて居ります、勿論中央で全部の家賃、地代をば規定する譯でありませぬで、それぞれ物價廳の地方支所、さう云ふやうなものが、各各地方廳と協力をしまして、現實問題に付て統制をするやうな仕組で立案して居りますから、御諒承を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=71
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072・厚東常吉
○厚東委員 あの法案は主として惡地主、惡家主を取締る法令であるのでありますが、主としてそれを取締る法ならば、あの法を繼續なさらずに、それのみ別に作られたらどうかと云ふ考へを持つて居るのであります、實は戰時中は軍閥、官僚の横暴の爲に、自分が法律を作つて居つて軍閥、官僚は一つも守らなかつた、さうして國民を非常に傷めたものであります、あの法律を御續けになると云ふことになりますると、善良なる國民が非常な迷惑をするのであります、善良なる國民と云ふのは、我々の地方にも澤山ありますけれども、日支事變前に貸した家賃で今尚ほ家を貸して居るのであります、例へば十二坪の建物が建具、建付から風呂まで付いて居りまして、六圓から五圓五十錢で貸して居る家主が澤山あるのであります、此の頃六坪二合五勺の家が約五千圓掛ります、家賃は疊建具もなく、縁りは板張りのものが三十圓もして居ると云ふことを聞いて居ります、又建築費も一萬圓も二萬圓も掛る時でありますが、其の善良なる家主は九、一八の禁止に掛りました以前に家を貸して居つて、今尚ほ此の法が切れるのを待つて居るのであります、さう云ふ者はあの法が繼續致しますと救ふことは出來ないのであります、それは婦人が多いし、眞面目に法律を守つた者が之に掛つて居る、又あの法律が出て之に掛る、若し是が出て家賃が少し上げられると云ふことになりましても、其の手續が實に素晴しいものであります、少々の手續では其の値が上げられない、市役所を經由し、縣廳に行きまして、縣廳から又こちらへ來たりして、迚も婦人などの力では値が上げられないのでありまして、あの法律の續く以上は、あの法律の中にはさう云ふ者を救ふことはないのでありますから、それでは眞面目な國の法律を守つた者は非常に迷惑をし、守らなかつた者は非常に利益をする、實は斯う云ふ懸隔を來たすのであります、でありますからあの法律は御止めになりまして、惡地主、惡家主の取締だけなら、別にそれに然るべき所の法律を御拵へになつては如何でありますか、之に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=72
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073・膳桂之助
○膳國務大臣 私が從前に引續いてと申しましたのは、地代及び家賃の統制を引續いてやる、斯う云ふ意味に御諒承を願ひたい、勿論九、一八の時分からの諸物價の騰貴其の他に見合ひまして、正當な家賃地代の改訂のあるのは當然のことであります、色々な機會を利用しまして、非合法な不當な家賃及び地代竝に之に關聯して、諸種の名目を以ちまして料金を取ると云ふやうなものを取締る精神なのでありまして、時勢の變化にも拘らず之を九、一八に釘付をして、徒に正當な正直な人を困らせるやうな意味合の考へは持つて居りませぬ、此の統制は續けるけれども内容に於ては餘程變つて運用されることと御諒承願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=73
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074・厚東常吉
○厚東委員 從來官僚統制の弊害に斯う云ふことがあるのです、宅地の坪の賃貸價格を政府が一圓二十錢なら一圓二十錢に決めて居りまして、或る事情の下に四十錢位で貸して居るのであります、四十錢で貸して居りますから、物が高くなつたから八十錢位に値を上げて呉れないかと云ふと、値上げをさせない、政府は賃貸價格を一圓二十錢として税金を取つて、貸す方の人は四十錢のものを六十錢、七十錢に上げて呉れと云つても許可しないと云ふやうな例が實際にある、我々も其の害を蒙つて居るのでありますが、政府は坪一圓二十錢の賃貸價格を決めて居つて課税をして來る、其の一圓二十錢も許可も何もあつたものぢやない、許可を取つて然るべきもので許可の手續を致しましても、九、一八の條例がある爲に上げさせて呉れないと云ふことがありまするが、今後は賃貸價格より以上に行く所もあるかも知れない、時勢が變りましたから、先づ以て私は賃貸價格で貸すとか何とか云ふ政府の設定した賃貸價格で貸す所には、許可とか何とか云ふものは要らないと云ふことにする、許可を取ると云ふことが既に宜しうないから、此の法は存續なさるに致しましても届出主義でやつて、届出たものが適法でない場合は説諭するとか、或は罰するとか云ふやうなことにする、從來のやうに許可制では婦人や何かに非常に迷惑を掛ける、色々な書類が要つて、書類を作るにしても少々の金では書類が出來ぬのでありますから、さう云ふことを除去する御考へはありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=74
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075・膳桂之助
○膳國務大臣 只今御指摘になりました手續が煩瑣であるとか、或は正當なる地代及び家賃の自然的の昂騰に對して、適當に之を抑へると云ふことなきを期したいと思ひます、尚ほ手續等に付きましては、出來るだけ只今御指摘のありました弊のありまする所は矯めたいと存じます、併し此の家屋の拂底して居ります際に、敷金、家賃なども全法的なものでなくして別の名目で相當の惡徳をなす向きもなきにしもあらずとは多く聞く所でありまして、直ちに許可認可の枠を外すことはいかぬかと存ぜられますので、まだそこまでの踏切りには行つて居りませぬ、併しながら之に無理のない運用を致したい、斯樣に思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=75
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076・厚東常吉
○厚東委員 それでは私御參考までに申上げて置きます、大正十一年の風水害以來、五圓五十錢、六圓と云つたやうな家賃で澤山貸して居る人は、今以て修理も何も出來ない、其の儘持つて居るやうな次第で、瓦一枚で六圓も十圓もする、大工を雇つても、六圓の家賃なら一年で七十二圓でありますが、七十二圓の錢が一日で大工や左官に要つてしまふので非常に困つて居る、だから法律を改正なさると同時に、九、一八の規則を立派に守つてここまでやつて來た諸君に對しましては、政府に於きましても善良の思想を涵養させる爲に、それ等の家賃は十圓以下は何倍、二十圓以下は何倍、三十圓以下は何倍、四十圓以下は何倍、先づ五十圓までの程度に區切つて上げる、價格も從來のを補ふ爲にしつかり上げてやらねば、到底此の拂底して居る所の住宅を建設することは出來ない、私等の地方では住宅は澤山出來ますが、どう云ふ所に出來ぬ所の癌があるかと申しますと、此の頃臺所が一つと云ふのは非常に嫌ふ、臺所さへ別に出來れば、住宅は一軒で五軒も十軒も出來る、臺所と雪隱が一個であると云ふことで、非常に住宅難に困つて居るが、之を拵へるにしても大變な金が掛る、それを一一許可を取らねば家賃が上げられぬとか、出來ぬとか云ふことで、私の地方は住宅難に陷つて居りますから、斯う云ふことも一つ御勘案になりまして、適當なる案が出來んことを希望致します、私は是にて終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=76
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077・竹田儀一
○竹田委員長 川崎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=77
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078・川崎秀二
○川崎委員 是は物價廳の次長に御尋ねを致したかつたので、膳さんに御尋ねするのは少し門違ひと思ふのでありますが、先般實施されて居つた飮食品の丸公の問題であります、飮食税の引上問題と併行して、先頃議會で附帶決議を致しました新丸公の實施に付ては、其の後どう云ふことになつて居るか御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=78
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079・膳桂之助
○膳國務大臣 飮食税の免税限度が上りました、それと相關聯しまして此の料理代の標準の改訂と云ふ問題がありまして、深く考究するのでありますが、實は正直に申しますと、多少事務の打合せの手續に不十分の點がありまして、税法の改正と同時に是が改正されて施行されなかつたのは、大變手續上遺憾に思つて居ります、目下一定の標準の下に、大體五十圓まで制限をば引上げたい、是も考へやうに依りますると、或は東京、大阪と云ふやうな都會に於ては適當でありまするけれども、地方的には或は如何かと云ふやうな問題もあつて、地方的に之を決めようかと云ふ考へも持つて居るのでありますが、是も色々の物價問題と同じやうに、諒解を求める必要の向きもありますので、今それ等の標準と共に打合せ中であります、尚ほ考へと致しましては、大體諸物價の見合等から思ひまして、只今申上げましたやうに修正するのが適當ではないか、斯う云ふ考へで目下研究中と申しますか、手續を致して居ります、御諒承願ひたう存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=79
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080・川崎秀二
○川崎委員 短く切つて御答辯を願ひたいと思ひます、私も少しづつ申上げます、實施は概ね何時頃になる見透しでありますか、又今率直に内部事情を申されたけれども、私は大體それを想像して居つた、一箇月も前から院議で決まつて居るものを、「マッカーサー」司令部と折衝中等と云ふことに藉口して、事實は最近司令部方面と折衝を開始したと云ふやうに、是はもう事實確證を握つて居るのですが、其の點に關する大臣の忌憚なき意見を私は聽きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=80
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081・膳桂之助
○膳國務大臣 役所の手續にも打合せに十分でない點もありまして、思つたよりも後れて居りますことは事實であります、併し只今申上げましたやうに折角手續中でありまして、近く決定しようと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=81
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082・川崎秀二
○川崎委員 其の間の經緯に亙つて一つ重大な見逃すべからざることがあるのであります、是は私は現場に居りませぬでしたし、其の後人の風聞に依つて傳はつて居ることでありますから、ここで斷言は致しませぬ、先般同僚の者が本會議の席上で失言致して居りますので、私は用心をして申上げたいのでありますが、物價廳の極めて重要な地位にある人が、料理店飮食業者が早く之を實施して欲しいと云ふ陳情を致した場合──是は正確に申上げたいと思ふのですが、近頃政黨などと云ふやうなやかましいものが出て洵に困つたものだ、大藏大臣があのやうな新丸公の改訂を言つたが爲に、其の方面に於ても困つて居ると同時に、政黨側から頻りに斯う云ふ問題に付て運動があるので、實は非常に弱つて居るのだ、實際の物價水準から言へば、是は上げられないのが本當だと云ふやうなことを言明したことがあると我々は聞いて居るのでありますが、大臣に於てはさう云ふことを知つて居られるかどうか、又風聞でもさう云ふことは聞かれて是正をされたことがあるかどうか、廳内のことでありますが、忌憚なく御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=82
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083・膳桂之助
○膳國務大臣 何も今仰せのやうなことは風聞にも、又直接にも實は承つたことがございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=83
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084・川崎秀二
○川崎委員 院議を尊重しない役人が今日居ると云ふことは、洵に民主主義の政治下に於て遺憾千萬だと思つて居るのであります、是から段々私が檢討致さんと致して居ります需給調整法案其のものも、委員の皆さんが異口同音に言はれたやうに、官僚獨善の案ではないかと云ふのと同時に、今私が申上げたやうな事實が現にあつたと云ふことを、是は皆さんの前に公開致しても差支へないのではないかと考へて居るのであります
本論に入ります、此の法案が委員會に掛けられまして以來、殆ど全部の委員から申されましたことは、此の法案が總動員法の民主的僞裝ではないかと云ふ意見でありますが、それを兎や角申すのではありませぬ、そこで其の是正の仕方を我々は何處へ求めなければならぬかと云ことで、今や之を修正するか、或は無修正で通すにしても、どう云ふ所へ結論を持つて行くかと云ふことにあるのではないかと思ふのであります、そこで經濟安定本部の總裁は、此の法案第一條に依ると、必要な命令をなすことが出來る、而して政府の屡屡の答辯に依りますると、割當等臨時物資需給調整法案に於ける重要事務は、各省に於て原案を作製するやうであります、斯くの如くなりますれば、往年に於きまする資源局或は企畫院等に見られた所の、内閣機關各省との摩擦相剋は免れぬ所ではないかと考へるのであります、是では全く安定本部が愈愈政策を實行する段取となつて、其の醜状を天下に曝すのではないかと、甚だ其の成行を憂へざるを得ないのであります、屡屡委員の質問に答へられて曰く、經濟安定會議の外には物資需給調整審議會と云ふやうな、過小なるもとを設けないと云ふことを言はれて居るのでありますが、どうしても私は此の官僚獨善の統制と云ふものを補正して行く機關が必要だ、而もそれは法令を出す度に、其の事前に知つて居る所の委員會が必要だと云ふことを強く申上げたいのであります、今日只今委員會の空氣が、壓倒的に物資需給調整委員會と云ふやうな此の法案と「フオロー」するやうな、本當にくつ付いて行くやうな委員會の設立を要望して居るに拘らず、今日尚ほ否認されるものであるかどうか、さう云ふ氣持が政府にないものであるかどうかと云ふことを伺つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=84
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085・膳桂之助
○膳國務大臣 本法を民主的に運用するに付きましては、色々の方面からも御安心の行くやうな途を執りたいと思つて居ります、今御尋ねになりましたやうな、本法に直接に「フオロー」する特別な委員會制度を作りまして、之を運用してはどうかと云ふ御意見、左樣にも考へて宜いと存じます、唯安定會議と云ふものが既に豫定されて、もう決定的の事實となつてあるのでございまして、或は之に屋上屋を重ねるのではないかと云ふやうな心配も出來るのでありまして、率直に私の希望と申しますか、考へを申上げますならば、此の安定本部と云ふものに、議會關係の御方々の御參加も願ふのでありまして、是が今御話のやうな一つの働きがなし得れば、所謂屋上屋と云ふやうな、何と申しますか、譏りも免れ得られるのではないかと存ずるのであります、併し此の問題は、要するに此の立法それ自身が甚だ無理なものでもあり、何と申しますか、通常の形でありませぬので、尚ほ其の點に付ては、十分考へて見たいと、斯樣に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=85
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086・川崎秀二
○川崎委員 其のやうな委員會の設立も考へられると云ふ御答辯がありましたので、私は此の經濟安定本部の權限として、此の間大臣も言明され、又新聞が之を觀測をして居つた權限が非常に廣汎な範圍に亙るので、物資需給基本計畫竝に業種別需給計畫の決定と云ふやうな面に此の新しく設けらるべき委員會が「フル・パーセント」の活動をするやうに考へられたら宜いのぢやないか、經濟安定會議で根本策を決めて、それに從つてやると云ふやうな御答辯で今まではあつたのでありますが、さうすると、實際命令を出す場合には、事前に斯う云ふやうな命令が出るんだと云ふことを、的確に安定會議が知り得ない場合が私はあると思ふ、そこで斯う云ふことを私は申上げたことを御諒承願ひたいと思ひます、そこで今度は、本法案の第二條の「民主的に組織された産業團體に、その構成員の議決に基いて」と云ふことがあります、議決に基いて物資の割當をすると云ふのでありますが、割當の時期を異に致しますと數百、或は數千に及ぶ各種物資の割當を致す場合に、其の都度構成員の議決を要することになりますと、其の職務と云ふものは極めて繁雜になりまして、且つ時期を失することが非常に多いと私は思ふのであります、そこで此の構成員の議決と云ふものの内容を、茲で分柝をしなければならないと思ひますが、大臣が考へて居られる構成員の議決と云ふものは、一年に一囘位當つてやる議決で宜いのか、或は其の都度やることであるか、其の輪廓を明かにして貰ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=86
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087・膳桂之助
○膳國務大臣 此の團體の運營は專ら主務大臣がそれぞれ運用して戴きますので、私から申上げるより政府委員から御答辯申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=87
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088・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 第二條の其の構成員の議決に基いてと云ふ言葉の實行の方法でございますが、只今仰せの通りに毎月々々斯う云ふ議決を繰返して居りましては、此の全國から集まつて來る方々に大變なことでありますので、やはり是は割當の基準と云ふものを決めて置いて戴きまして、それを議決して戴く、斯う云ふことに致したいと思つて居ります、其の基準が非常に立ちにくい時に於きましては、少數の委員制度と云つたやうなもので割當をするやうな、大體の基本的なことを御決めになることを、此の議決と云ふことでやつて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=88
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089・川崎秀二
○川崎委員 さうしますと、此の物資調整法の狽ひとする所は、官僚統制を脱却して、成べくは民主的に組織された産業團體の自治的な解決に俟ちたいと云ふことが、私は狙ひであると云ふやうに解釋を致して居るものでありますから、それは獨り配給割當と云ふやうな部面のみではなく、會社、工場の生産計畫と云ふものも、産業團體に逐次移行して行くことを考へられて居るかどうか、其の點を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=89
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090・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 物資需給調整法の狙つて居りますることは、經濟安定本部が基本的な計畫を作るのであります、隨ひまして此の計畫には恐らく、例を擧げますれば、鐵を幾ら位作ると云ふことが、計畫の内容をなすのであらうと思ふのであります、之を工場別に幾ら作つて行くかと云ふことは、原則的には勿論、其の産業團體の御調査に依つて、最も能率的に時代を背景として作つて行くことにならうと思ひますので、基本的な計畫を實施すると云ふ方法でございますれば、當然産業團體が之を決めて行くものであると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=90
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091・川崎秀二
○川崎委員 只今の御答辯に關する限りは滿足を致したのでありますが、此の法案は非常に官僚統制の嫌ひがあると云ふことを言はれて居ります、原因はやはり今申された所の産業團體が自主的にものを解決して行く、其の能力を今後は信頼して行くかどうかと云ふことと、それから又議會の「タッチ」と云ふものに對して、大幅な權限を持たすかどうかと云ふことに、此の法案の民主的な解決の方途が一に懸つて居ると私は思つて居る、此の法案は、私をして言はせれば、全く日本の内幕其の儘を表現して居る議會に於て、是は同僚諸君と共に卑下を致すのでありますが、豫算總會其の他に於て、財政竝に經濟知識に關する洵に貧弱なことを露呈したと、今度の議會は批評されて居ります、其の批評は私共は今日は甘受をしなければならぬ部面もある、又經濟團體の方には、實際には實體を把握して居りながら、之を政治的に解決する途を知らずして、政治部門に於ける所の活動が足りない、其の間隙に乘じて、彼等が行政的な力だけではなしに、政治的な力と又經濟實體の方の兩方持つたやうな顏をしてのさばつて居るのが、此の物資需給調整法の現はれた姿ではないかと私は正直に申上げるとさう云ふ風に考へて居るのであります、其の時期が長ければ長い程、私は日本の不幸は増すと云ふ風に考へて居ります、隨て此の物資需給調整法と云ふものが、相當長く此の儘の形で續くと云ふことは、是れ亦同時に日本の不幸であると云ふ風に考へて居りますが、大臣はさう云ふ點に對してどう云ふ構想を持つて、又考へを持たれて居るか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=91
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092・膳桂之助
○膳國務大臣 毎々申上げますやうに、現在の經濟事象を見まして、まあ已むを得ず斯くの如き形の法律の御協贊を願ひます譯で、私共の考へで經濟安定が出來ますれば、一體物の需給の統制などと云ふことは、まあ出來るだけ早く必要のないものから外して行くのが宜いと思ふ、さうかと言ひまして、此の一兩年中に全部の斯う云ふ物資の調整の統制を外すと云ふ譯にも無論行きませぬので、安定本部の存在して居りまする或る短い期間、此のやうなものの施行を御許しを願つて、尚ほ其の後は、何時も商工大臣も私も御答辯申上げますやうに、それぞれの物資の種類、それから又統制の方法に依りまして、石炭及び「コークス」の統制法の如き單獨法を出して、若し統制を必要とするならば、それに基いて統制を行ひたい、斯くの如き法律は出來るだけ早く形を變へて參りたい、本當の臨時の立法であると云ふ風に御諒承を願ひたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=92
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093・川崎秀二
○川崎委員 膳國務大臣に對する質問を終るに當りまして、私は先般來膳國務大臣は本會議竝に委員會に於て、極めて率直に意見を吐露されまして、殆ど資本家の「チヤンピオン」であるとか、或は從來の膳氏に對する觀念を以て我々の同僚が臨んで居ることを遺憾と思つて居ります、實際問題として日本の産業を如何にして囘復するかと云ふことに對する計畫的「プラン」と云ふものが、一番大切であらうと思ふ、其の人が過去に於て資本主義の「ライン」にあつたか、或は社會主義の「ライン」にあつたかと云ふことは別問題として、實際の經濟の土臺と云ふものを把握して、之を解決して行くことの信念と學理を持つた人が、今日は一番重要ではないかと考へて居る、先程社會黨の加藤勘十氏は、此の安定本部長官の候補を決める場合に、社會主義者の尻を追廻したと云ふやうなことを言はれたけれども、其の社會主義者と見られた人が、事實は最近の座談會に於て、今の經濟を建直して行くには、獨り資本主義と云ふやうな觀念、或は社會主義と云ふやうな觀念では駄目だと其の人は妙なことを言ふ、資本主義が半分で社會主義が半分と云ふやうなことを言つて、今日理論的な陳營から反撃されて居るけれども、實際に日本經濟の實體を握つて居るさう云ふ社會主義的な觀急を持つかの如く見られた人々の考へ方と云ふものが、今日は變つて來て居ります、私はさう云ふ意味に於て膳國務大臣の建鬪を切に祈りまして、商工大臣に對する質問は留保致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=93
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094・竹田儀一
○竹田委員長 金子君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=94
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095・金子益太郎
○金子(益)委員 安定本部の膳さんに御伺ひ致します、兎も角占領地下にあつて、而も敗戰の憂目を見て居る日本の産業再建と言ひ、經濟の安定を期すと云ふことは、是は只今の委員の方が仰せになつたやうに、社會主義で行くか、資本主義で行くかと云ふことは別として、兎も角重大な問題であり困難な問題であると考へて居ます、そこで凡ゆる産業の再建に際しましても、又經濟安定を圖るに付きましても、其の一番根據となるものは食物の問題ではないかと考へて居りますが、特に六月、七月、八月の食糧危機が、辛うじて突破出來たと云ふことは私も喜んで居りますが、最近地方に歸りまして農民諸君の痛切な叫びを聞きますと、早場米を出しながらも、一體今年の米價はどう云ふことになるだらうかと云ふことに對しまして、非常な心配をして居るのが實情であります、此の際に當りまして過日政府が米價一石六百圓と云ふやうなことを決定したと傳へられ、其の後に於て決定したのではないと云ふ風に言明せられて居りますが、此の六百圓説が本當であるか、ないかは別と致しまして、兎も角あれを發表する時に、各新聞社の方の報道に依りますと、農林省は勿論のこと、商工省、經濟安定本部も之に參劃して、六百圓説と云ふものを編出したと云ふやうな報道があつたのであります、凡ゆる物價と睨み合せて考へましても、米價の問題は非常に重要であります、そこで經濟安定に關し、産業再建に關しまして重要な役割を持つ經濟安定本部と致しまして、今日の米價をどの程度に落著けることが妥當なものか、一日も早く之を發表して農民諸君に安心を與へ、其の生産意欲又供出意欲と云ふものを旺盛にせしむることが緊急の事柄ではないかと、私は考へて居るのでありますが、農民の氣持も一つ御察し下さいまして、經濟安定本部と致しましては、どの程度に一體米價を落著ければ諸物價と平衡が取れて、而も農民諸君を滿足せしめ、且又消費者階級にも餘りに負擔を負はせない、値段になると云ふことを、一つ全日本の産業再建、經濟安定に一番重要な役割を持たれる所の、經濟安定本部から見た米價の問題に對しまして、一つ輪郭だけでも御話を願ひたいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=95
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096・膳桂之助
○膳國務大臣 正直に申しますが、米價問題に付ては經濟安定本部として色色所見もございますけれども、今此の問題が將に決定にならんとして居る時でありまして、他の何れかの機會に申させて戴きたいと思ひます、色々なことに支障を生ずる心配がありますので本日は御容赦を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=96
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097・竹田儀一
○竹田委員長 此の場合運輸大臣から、本日開かれて居る唯一の委員會と云ふので、特に緊急の御發言があるさうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=97
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098・平塚常次郎
○平塚國務大臣 國有鐵道の爭議に付ては、長い間國民に御心配を掛けて居つたのでありますが、幸にして昨晩から連續的に會議を致しまして、双方の面目の立つ範圍に於て協定が成立致しました(拍手)唯委員會で決定を見たのでありまして、更に委員は鬪爭委員會に掛けて之を決定して、初めて本極りになるのでありますが、大體に於て鬪爭委員會が之を承認すると云ふ内容であります、昨日社會黨からも白紙に還つてと云ふ御話もあつた、又從業員も一切を取消して白紙に戻れと云ふ要求であつたのでありますけれども、昨日の議會なり、又政府の方針は、何處までも經營の合理化をすると云ふ方針の變更はないと云ふことを、強く聲明して居つたのであります、隨て私共の考へた通り、大體に於てあちらの顏も立ちまするし、私共の主張も容れられたのでありまして、直ちに「ゼネスト」も全國的に取消すことに相成つたのであります、此の機會に此の席を拜借して、長い間御心配を掛けましたことに對しまして、厚く感謝の意を表する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=98
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099・金子益太郎
○金子(益)委員 只今の膳國務大臣の御話では、近く決定されるから御容赦を願ひたいと云ふ御話でありますが、では大體此の議會開會中位までに、此の問題が解決付く見透しでありすか、或はもつと早急に其の問題が解決付く見透しでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=99
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100・膳桂之助
○膳國務大臣 目下折角各方面と折衝中でありまして、近く決定するものと存じて居ります、唯何時と云ふことは申上げ兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=100
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101・金子益太郎
○金子(益)委員 そこでもう一つ聽きたいことがあります、先程農林省の方の方の御話に依りますと、三合配給は中々困難であると云ふことに對しまして、其の見透しに付きましては我々に安心を與へる見透しが傳へられて居りますけれども、勿論米を輸入しなければ三合程度に行かぬと云ふことは我々も知つて居りますが、併し實際の問題から言ひまして、此の問題は唯單に數字の下から算盤を彈いて居らないで、一つの大きな政治的手腕を發揮致しまして、與へるべきものを與へ、十二分に食べさして、十分に活動さして、増産に邁進させると云ふことが必要ではないかと思ふのであります、而も本年に於きましても、兎も角足らないで到る處で遲配缺配と云ふことが行はれて居る、併し闇で買出しに參りますれば、或る程度までは食べて居られると云ふ實情を見ましても、そこに何等かの政治的な手を打ちますなれば、本年の米の供出の問題にも關聯致しまして、或る程度、三合程度までは行くのではないかと考へて居ります、さう云ふ意味に於て一つ大膽率直な政府の政治的手段、手と云ふものを打ちますならば、三合配給は可能ではないかとも考へて居りますが、併しそれが聯合國の方面との色々な關係上、今後の食糧の輸入問題に關聯致しまして、さう云ふことは言明出來ないと致しますならば、例へば斯う云ふ點に一つ安心をさせて戴きたい、それは米を輸入して戴くならば大體三合の配給は出來るのではないか、では其の三合配給程度までになる輸入米を、いつの頃までに入らせるやうな見返り物資が出來るものであるか、勿論見返り物資が出來なければ米が十二分に入つて來ないとは考へて居りますが、併し兎も角三合程度のものを食べさせて貰はなければ、十二分なる活動は出來ないと云ふことは、是はもう事實であります、でありますから此の三合配給に至るまでの外米輸入、それに對する見返り物資の生産は、一體いつの頃、來年の春頃までには其の見返り物資が出來て、さうした物の入る見込が付いて居りますか、又其の計畫でおやりになつて居るか、それを一つ聽かせて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=101
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102・膳桂之助
○膳國務大臣 一寸速記を止めて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=102
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103・竹田儀一
○竹田委員長 速記を止めて…
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=103
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104・竹田儀一
○竹田委員長 速記を始めて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=104
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105・膳桂之助
○膳國務大臣 安定本部としましては、食糧問題は非常に重大であります、只今御尋ねのやうに、兎に角、日本で三合の米を得ることが困難なのか、是では永い間食糧問題を解決し得ないぢやないかと云ふことは、全く御同感であります、是は政府の全體の人は違ふかも知れませぬが、安定本部の構想の中の一つとして、日本の食生活を變へなくてはいけないのだと云ふ考へを持つて居ります、どうせ日本の人口は八千萬人です、之に四合、年に一石の米が必要だとすれば八千萬石要るので、此の國土の中で出來る筈はない、餘りに、何と言ひますか、少し言葉が下品ですけれども、胃擴張性の滿腹感ばかりを考へる日本の食糧生活と云ふものは、もう改めなければならぬのぢやないか、寧ろもう米は三千萬石でも四千萬石でも宜いのだと云ふ食生活に、一時には參りませぬけれども、努力する必要があるのではないか、我々に何よりの示唆を與へたものは、あの進駐軍の食糧であります、あの中に含水炭素と云ふものがどれだけあるか、もうあれで十分なんだ、あれで日本の俘虜も、海外で俘虜生活をして居る間に相當の滿腹感以上の榮養を攝つて居るのでありまして、是からの日本人の食生活は此の狹い國土に多勢の人口を抱へて、山の上まで開墾して水田を造つた所で、到底米で滿腹感を得る食生活は與へられない、又さう云ふ胃擴張的な滿腹感ばかりをあてにする食生活は情ないので、是よりも質の食生活に導いて行く必要があるのではないか、實は安定本部の中でもさう云ふ考へもありまして、折角是から研究しようと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=105
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106・竹田儀一
○竹田委員長 金子君、あなたの御質問も時間を超過して居るやうですが、尚ほ加藤鐐造君の質問に食ひ込みますから、簡單に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=106
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107・金子益太郎
○金子(益)委員 只今膳さんの非常に誠意のある、又示唆に富んだ御答辯を得まして非常に心強く思つて居ります、私共も實は米ばかり食べることはいけない、そこで農業に於ても多角經營、或は又畜産農業と云ふものを非常に盛んにしなければいかぬと云ふのは、さう云ふ意味を含んでのことで、今農村方面に於ても其の問題で驅け廻つて居りますが、それは別と致しまして、是は農林省の方に御願ひしたいのですが、居られませぬから、安定本部の方に一つ御願ひして置きたいと思ひます、大膽率直に申しますれば、今年の藷は輸送關係から半分腐ります、是は過日農林大臣が此の席に於きましても、隘路は輸送關係である、併し此の點に對しては萬遺漏ない對策を執ると言明して居りますが、是れ亦最近各方面の農民組合の發會式や何かに參りまして、實際の實情から見ますとどんどん積んで居ります、茨城地方では澱粉が少くて水分が大部分を占めて居りますが、斯う云ふものが何千俵となく今積重つて居ります、所が其の藷が何時一體發送されるのか一つも今見透しが付いて居ない、付いて居るかも知れませぬけれども、付いたと致しましても十日か十五日經つて付きますれば藷は腐つてしまひます、實際藷の問題は早急に解決しませぬならば、相當數量の藷と云ふものは腐つてしまひます、茲で私は政府に御願ひして置きたいことは、只今縣「ブロック」に致しましても、例へば茨城縣、栃木縣、群馬縣、千葉縣、斯う云つた方面の薩摩藷の一番供出の盛んな時を見計らひまして、一週間なり或は十日間なり輸送機關を甘藷の輸送に集中する、消費地に藷の山を築く、各家庭に之を與へますれば各家庭は之を切つて乾して取つて置くとか、或は又其の他の加工を致しまして、之を貯蓄するのでありますけれども、之を農村の農業倉庫或は其の他の倉庫に積んで置くと、特に又停車場などに積んで置きますれば、雨が降つて、去年の如くに下からからどんどん腐つてしまひます、之をしないやうに今年は一つ甘藷の非常輸送週間と云ふものを計畫致しまして、さうして今言つたやうに一週間なり十日間なり、重要ならざる輸送方面は一時止めても藷の非常輸送を致しまして、足らざる所の食糧の補給を致したならばどうかと實は考へて居るのでありますが、此の儘で居りますれば誰が何と申しませうとも、大増産を致して居ります所の藷の約半分と云ふものが腐ります、腐らせないと云ふやうなことを政府は言つて居りますけれども、續々と腐つて參ります、ですから此の輸送の問題に關しまして、一つ大膽なる手を打つて戴きたい、さう致しますれば都會に於て、各地方の消費地と云ふものが非常な食糧に對する安全感を持つて、闇買ひが出て參りませぬし、闇買ひが出て參らなければ、それだけ作業者が十二分に力が盡せる譯であります、藷でも結構だと皆叫んで居るのであります、此の藷が非常に増産ですから、此の増産した藷を腐らせない爲に、非常輸送と云ふものを御計畫なさつて戴きたいと思ふのでさりますが、政府は之に對しまして、特に經濟安定本部と致しまして──安定本部だけに御願ひすることはどうかと思ひますけれども、之を一つ是非とも計畫して戴きたいと思ふのでありますが如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=107
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108・膳桂之助
○膳國務大臣 御同感であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=108
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109・竹田儀一
○竹田委員長 加藤鐐造君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=109
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110・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 本委員會を通じて産業の振興の基本的な方策と云ふものを、私共は遂に聞くことは出來ませぬでした、結局我々は白紙委任状に判を捺すことになりますが、私は其の點に付て甚だ納得致し難い氣持があるのであります、本日實は膳國務相に、もう一度其の基本的な問題に付て御伺ひ致す積りで居りましたが、午前中に我が黨の加藤勘十君から詳細な質問がありましたので、重複致しますから其の點は省略致しますが、唯一言此の際發言して置きたいことは、先程川崎君から、所謂社會黨は社會主義公式論を振廻はぬと云ふ御意見がございましたが、私共は決してさうした公式論に捉はれて主張して居るのではないことは、我々が繰返し質問しました過程に於きまして、知る人は知つて戴けると思ふのであります、即ち資本主義經濟の缺陷、資本主義經濟の行き詰りと云ふもの、今日日本の再建を致すに付きまして、何故社會主義經濟でなければいけないかと云ふことは、既に十分申述べた通りであります、先程膳國務相は出來るだけ統制の枠を外したいと云ふことを仰しやいました、若し政府が今日心からさう云ふ氣持を持つておいでになると致しまするならば──單に自由黨、進歩黨に對する「ゼスチュア」に過ぎないのならば何をか言はんやでありますが、心からさう云ふ氣持を以て、日木の産業の再建を致さうとなさいまするならば、私はそれは不可能であると云ふことを、一言此の際申上げて置きたいと思ふのであります、其の點に付きましては十分心して、日本の産業の再建に付て計畫を樹てて戴きたいと云ふことを、膳國務相に私は強く要求致して置くのでございます、質問は申上げませぬが其の點は強く希望致して置きます
それから商工大臣に對しまして時間の關係がありますので極めて簡單に重要な二三の點を質問致して見たいと思ひますが、第一は賠償物資の撤去の問題であります、既に賠償物資の物件の内容も發表されましたし、政府も既に其の豫算も概算でありませうけれども發表になりました、是は第一に賠償の物資の撤去と云ふ問題の目的が、那邊にあるかと云ふことをはつきりして戴かなければならないと思ふのであります、聯合國側は日本の平和經濟を維持して行く上に於て必要な施設を殘して、後は撤去すると言つて居ります、さう致しますると是は單に日本の戰力を殺ぐと云ふ目的のみであるか、或は撤去してそれを聯合國側に持つて行つて活用する目的であるか、此の點をはつきりして戴かないと、此の賠償の問題が明瞭になりませぬので、一應それを御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=110
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111・星島二郎
○星島國務大臣 賠償の問題に付きましては、曩に「ポーレー」大使が日本に見えられて、其の當時の聲明もありまするし、又其の後諸種の情報に依つて察しまするのに、只今仰せの如き目的を以て、全く日本の平和的民衆生活に必要な産業に關するものは決して潰す譯ではない、斯樣なことを度々聲明されて居る譯であります、併し一面撤去の精神から言ひますれば、賠償と云ふことは、詰り此の賠償と云ふ文字を解釋しますれば、やはり只今仰せの後者とも考へられますが、併しあの飛行機の製造工場、兵器工場全部が徹去される所を見ますれば、それ等を以て賠償の金に代へて他に持つて行くと云ふ目的ではなくして、一面兵器の製造等の虞れがある、或は將來戰爭を誘致すると云ふやうな虞れがあるものは、撤去の中へ加へられる所を見ますれば、是は「ポーレー」大使が言はれたことではありませぬけれども、大體今私は全く兩方の意味が加はつて居るものだと、斯う解釋しながら之に臨んで然るべきであると思ひます、そこで本當に將來日本の平和産業に困るものがある、一時時計の工場は兵器をやつて居つて、是が兵器をやつて居つたからと言つて全部取外せと云ふことであつては、洵に時計の如きは平和産業であり殊に是は日本人には向いた工業であると思ひますが、斯う云ふものは是非殘して欲しいと云ふことで、正面から懇請を致して居るやうな譯でありまして、大體に於きましての線は、常識的に考へましても兩方の意味があると考へて居ります、線は何處までも日本の産業を潰す意味ではないと考へて居ります、濃硫酸製造と普通の稀硫酸の製造に於ても區別が設けられてあるのを見ますと、濃硫酸は薄めれば直ぐ稀硫酸になる譯であります、是は肥料の製造には直ぐ要るのでありますが、今囘濃硫酸の方は全部撤去を命ぜられて居ります、是等は如何にも火藥等の製造に、餘りにも近く利用されると云ふやうなことを以て危惧して居るのではないか知らんと、斯う云ふ風に自分は忖度して居るのであります、併し是は餘りにも嚴し過ぎ、肥料の生産に困りますから、或る部面に付ては少し寛大に願ひたいと、斯樣に懇請を今致して居るやうな譯であります、左樣御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=111
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112・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 日本の經濟再建に必要なものは懇請して出來るだけ存置するやうにしたい、其の努力をすると云ふ商工大臣の御言葉は非常に頼もしく感ずる譯でございます、是非それを一つ政府當局は熱意を持つてやつて戴きたいと思ひます、例へば日本が單に經濟力の囘復を圖るのみでなくして、文化國家を建設する上から考へましても、製鐵設備を五割以上失ふと云ふのであります、成程製鐵設備は軍需産業と關係の深いものでありまするけれども、併しながら今私の申しましたやうな建前から日本の産業再建の上からも必要な計畫を立てて、出來るだけ存置し得るやうな努力をして貰ひたい、其の理由は、先程の商工大臣の御答辯で分りましたが、撤去物資は必ずしも聯合側へ特つて行つて活用する目的ではないと云ふやうな御話でございました、さう致しますると、結局製鐵の設備は消えてなくなつてしまふ、假に又活用する目的であると致しましても、恐らく持つて行く先は中華民國であらうと思ひまするけれども、現在の日本の製鐵設備を中華民國へ持つて行きましても、直ちにそれが向ふで活用されるかどうかと云ふことは甚だ疑問であります
〔竹田委員長退席、加藤(一)委員長代理著席〕
さう云ふ場合に此の設備を存置して、製品にして聯合國側へ渡すと云ふやうな契約も、非常に困難でありませうが、出來ないこともないと思ふのであります、私はさう云ふ點で、必要な設備は指定された中からも、出來るだけ存置し得るやうな努力を願ひたいと思ひます
次に所謂賠償物資の撤去と云ふことは、實に大きな事業であります、政府も其の經費四百億と既に發表されて居りまするが、其の撤去の仕方に依つては、之を單に叩き毀すだけならばそれ程費用は掛らないでありまうけれども、之を其の儘何處へ持つて行つても直ちに使用出來るやうに撤去しようとするならば、高度な技術と非常なる經費が要ると思ふのであります、恐らく政府の見積りの四百億を、今日の物價水準から行けば遙かに突破すると思ふのであります、さうすると、是が一つの大きな「インフレ」助長の原因となることは申すまでもないのであります、そこで私は政府にはつきりと御伺ひ致したいことは、此の撤去作業を行ふに付て或は是は先程議會に於ても、豫算に於て既に盛られました所の、進駐軍の爲の土建事業に付ても等しく云はれることでありますが、其の工事の請負と云ふことを如何なる形に於てやるかと云ふことであります、之を從來のやうな放漫なる請負制度に依つて行ふのであつたならば、是は實に厖大なる費用が要るのである、殊に事業の技術のない者が、何等かの政治的な工作を以て請負の權利を取得する、其の下に下請が出來、又其の下に下請が出來ると云ふことになりますると、實に厖大なる經費が要ると思ふのであります、政府當局は今日の請負業者の利得と云ふものが、どの程度のものであるかと云ふことを御存じであるかどうか、今日何れの請負に致しましても、請負業者の利得と云ふものは、其の請負金額の過半數を占めて居るのであります、さう云ふ實情から見ますると、從來のやうな放漫な請負制度でやつたならば、是は實に國家の一大損失となるのでありますから、是は實際に技術能力を持つた者が直接請負ふ、斯う云ふ行き方でなければならないと思ひますが、此の點政府の御方針を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=112
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113・星島二郎
○星島國務大臣 撤去の點に付きましては、仰せのやうに大變な木材も要るし、色々な梱包資材にも困ります、或は若干の失業救濟にはなるかも知れませぬが、まだ最後の線は決まりませぬけれども、一時九百萬「トン」と云ふやうなことも推定せられたのでありまして、之を懇請致しまして、多少少くなりましても、是が迚も半分になると云ふやうなことはないと思ひます、それにしても、一「トン」一萬圓も掛るかも知れないと云ふやうな話もある、或は今のやうな物價水準であると、現在豫想して居る以上になるのではないかと心配致して居るのであります、隨て是が惡性「インフレ」の助長になると云ふやうなことも考へられますので、努めてさう云ふ方面の方策を講じなければならぬ、厚生省の失業對策と──失業して國家の保護法で以て養ふやうな人が果して働けるかどうか疑問でありますけれども、兎に角其の邊まで考へて之に善處しなければなりませぬ、尚又G・H・Qの方から日本の請負制度其の他に對して、改組をすべき色々な注文も來て居りますので、それ等に對して善處して、從來の良さとそれから從來の弊害と、兩方を能く考へて將來に臨みたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=113
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114・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 尚ほ産業の振興に付て具體的な色々な面を捉へて質問致したいと思ひますが、それを一々申上げる時間がありませぬから、唯一、二だけ例を擧げ、今日の統制經濟と云ふものが非常に馳緩して居ると云ふことに付て御檢討を願ひたいと思ひます
一つの例を申上げますと、石炭が足りない、其の爲に産業の振興が出來ないと云ふことが今議會を通じての問題であります、所が石炭が無駄に使はれて居る、或は是が重要でない部面に使はれて居ると云ふやうな幾多の例があるのであります、一つの例を取つて見ると、今日硝子工業と云ふものは我々の豫想以上に相當囘復して居る、所が其の製品を見ると食器類、化粧品の容器と云ふやうなものが多い、實際に今日困つて居る板硝子、或は工業資材としての硝子の生産が行はれて居ない、勿論食器類、化粧品の容器も必要でありませうけれども、斯う云ふものは戰時中は例へば陶磁器其の他の代替品の生産で間に合はせて居たのでありますから、國内資源のない時、硝子工業の如きはやはり板硝子、或は工業資材方面に重點的に生産を行はせなければならぬと考へますが、此の點に付て政府はどう云ふ御見解を持つて居られますか、伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=114
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115・星島二郎
○星島國務大臣 仰せの如く諸物資に付ては本法を十分適用して重點的に考へなければなりませぬ、所がそれが行過ぎると又弊害もあります、そこで今丁度前の統制型と新しい自覺したる統制型の切替時でありますから、或は若干敏活を缺くやうなこともあらうと思ひます、是は或る程度已むを得ませぬが、努めて戰時型から脱却して、本當に民主的な創意に依る方法に依つて統制をする、私は此の法律の名前にしても統制と云ふことを避けて調整と云ふ文字を用ひた、是は英文に譯せば何れにしても「コントロール」に相違ないのでありますが、是はさう云ふ意味からでありますから、一寸そこに間ぬるい感じがあられると思ふのでありますけれども、今後お互ひが眞に目覺めて、例へば石炭に致しましても無暗に配炭の取合をやつたりするよりも、先づ一「トン」でも、一「スコップ」の燃し方でも注意して、其の能率を出すと云ふやうな所まで皆が目覺めなければならぬのですが、今日は其の邊が非常に誤つて居るやうに私は思ひますので、是は國民全體が今日のやうな場合──に勞働爭議や「ゼネスト」などがなしに濟んで洵に安心しましたが、全體が嘘を言はぬと、それから本當に物を節約してやることとか、全部が奮ひ起つやうな氣持になるやうに精神作興をすることが、私は政治の先決間題だと思ふのであります、法律などは其の末である、斯樣に考へて居るのであります、只今申されたやうに、日本が將來見返り物資と致しましても「ガラス」の如きは必要であり、目下の戰災復興の爲には最も必要でありますから、是等に付きましても極めて重點的に考へて善處したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=115
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116・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 加藤君に御相談致しますが、持時間も經過致しましたが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=116
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117・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私も他に用事がありますから、省略して最後に一つだけ御伺ひ致します、是は實は大藏大臣に御伺ひしたいと思つて居りましたがおいでになりませぬすで、商工大臣に御伺ひ致します、今日新圓が偏在して居りまして、非常に經濟の再建を妨げて居ることは申すまでもないのでありますが、企業を行ふに當りまして新圓を通してするのと、借入に依る正直な業者との間に、大きな「ハンディ・キヤップ」があると思ふのであります、具體的に申しますと、今日封鎖小切手の百五十圓が現金百圓に換へられると云ふやうな状態で、非常にそこに正直な企業家を不當に壓迫するやうなことになつて居る、此の點に對して政府は──商工大臣に對して伺ひたいことは、中小企業家の金融に對して何か特別な考慮を拂はないと、正直な企業家と云ふものは立つて行けない、此の點を御伺ひたいと思ひます、それからもう一つ是と關聯した問題でありますが、此の新圓が現在第三國人の手に相當多額に入つて居ると云ふことは想像し得ると思ふのであります、今日は是等の第三國人は、單に闇の「ブローカー」をやつて居る程度であらうと思ひますけれども、是が一度日本の産業の面、企業の面に進出して參りましたならば、非常に重大な問題であると思ふのであります、此の點に付て政府はどう云ふ風に御考へになつて居るか御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=117
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118・星島二郎
○星島國務大臣 新圓でなくては中小企業の方が餘程仕事がしにくいだらうと云ふことは御察しの通りでありますが、一面から言へばやはり新圓の信用を繋いで財界の整理が出來、それが新圓主義と云ふことになつて行けば、是は平價の切下論も能くありますが、大體三割乃至それ以上で封鎖と差が付く云ふことが事實上にあるらしいのであります、是は困つたやうなものの、一面から見れば、それも新圓の信用を保持する一つの行き方だらうと云ふやうに考へます、大藏大臣が新圓は何處までも再封鎖とかさう云ふことをしないで、新圓一本で行くと、そんなことを言へば言ふ程誤解を招いて、やはり相當階級の人に傳はつて居ることは甚だ遺憾でありますけれども、是は事實を以て見なければ仕樣がないと思ひます、そこで中小工業方面に對しましては此の新圓が相當流れて行かなければ仕事は出來ぬだらう、何を一つ買ふのにも皆新圓でやられて居りますから、政府に於ても大體小賣方面に流れて來る新圓の何「パーセント」かは必ず生産方面に廻るやうに、それそれ處置を致して居る譯であります、基本産業にしても、假に石炭にしても、何「パーセント」かは新圓で拂へ、斯う云ふやうな調子でやつて居ります、殊に中小工業に對する貸出、今度出來ます復興金融金庫から色々末端の機關を通して出しますものは、皆自由貯金であり、新圓である譯でありますから、斯う云ふ方面には十分氣を配つてやる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=118
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119・加藤一雄
○加藤(一)委員 新圓を出來るだけ真面目な事業家に廻す方法を講じて居ると言はれますが、今商工大臣の仰しやつた所謂或る程度新圓で拂ふと云ふやり方は、結局新圓「ブローカー」と云ふものが跋扈する、所謂封鎖小切手を新圓に換へる場合に、先程申しましたやうな割合で今日盛んに換へられて居る、さう云ふ風で新圓の「ブローカー」と云ふものが跋扈することになりまして、決して業者に對し是は好い影響を致して居りませぬ、さう云ふ點は如何に考へられますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=119
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120・星島二郎
○星島國務大臣 新圓の價値を尊重する所に一種の狙ひがあると申上げたのでありまして、若干そこに「ブローカー」も出て來ませう、又非日本人の跋扈は夥しいと云ふことでありますが、併し是も推定であつて、案外想像する程多くないのではないかとも思ひます、勿論之に對しては十分に警戒を加へて行かなければなりませぬ、そこで中小工業に對する新圓の政策は、私は大藏大臣の方にも又閣議に於ても要望して居りますことは、早く財産税を徴る、それから早く此の整理を終つて、さうして新圓も封鎖もない所に成べく早く持つて行く、それまでは當然私はさう云ふことはあると思ひますが、大きな枠から見ますれば、之を取急いで年内位に整理を終つて、やはり來春あたりからは新圓、舊圓のない所に持つて行くのが本筋である、是は一つ是非其の邊まで早く進行して參りたい、斯樣に思ひます、それ以外は末梢の小さな政策になつて、大した問題ではないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=120
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121・川崎秀二
○川崎委員 留保致して居りました商工大臣に對する質問を私は四時までに幕を下すことに致しまして、簡單に伺ひます、第一に伺ひたいことは石炭の價格差補給金打切りの問題であります、一昨日大藏大臣は記者團會見に於て此のことを言明されましたし、昨日午前中の會議に於て商工大臣は之を裏付けられました、然らば其の後の増産對策はどう云ふ線でやるのか、商工大臣は屡屡今囘の石炭國營化の問題が非常に「センセーショナル」に取扱はして、各方面に迷惑を及ぼしたと云ふことを言つて居られる、併し此の問題ははつきりして置かなければならぬのでありますが、今後の増産對策に付て別途の方法と云ふのは如何なる方法であるか、此の際言明が出來れば御言明を戴きたい、又言明することが出來ないと云ふならば、考へられる方途として、どのやうな方途を考へられて居るかと云ふことだけでも此の際御示し願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=121
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122・星島二郎
○星島國務大臣 増産對策と補給金の問題は、無論關聯致しますけれども、必ずしも増産對策の爲に補給金の制度を考慮すると云ふこととは一寸違ふと思ひます、補給金の制度は、物價の中で石炭なり米と云ふものは餘りにも色色の方面に影響がありますので、消費者の爲にと言ひますか、消費價格と言ひますか、補給金制度でやつて居るので、山元の方は算盤が合へば宜い譯でありますから、所謂石炭の買入價格を若干上げることに依つて、今の赤字を補填させようと云ふ程度の問題が今起つて居るのでありまして、補給金は米と云ひ石炭と云ひ、商工省の如きは九十何「パーセント」が殆ど其の方の金で、本省自らの經費は僅かなものであると云ふことになつて居るのでございますが、餘りにも不自然である、そこで全體から言ひまして、國家の補助金、助成金制度と云ふものは、必ずしも宜い制度ではないから、之を再檢討しよう、然らばどうするかと言へば、それは率直に言へばまだ結論が付いて居ないのであります、安定本部會議に附しまして、十分之を一つ檢討して結論を見なければなりませぬが、何れにしても今算盤では合はないのですから、補給金を出さなかつたならば、全部之を消費者の負擔にするかと云ふことに付ては非常な問題でありませう、併しながら大口の消費者、即ち鐵道であるとか或は瓦斯會社とか、斯う云ふものに一定の助成をして──鐵道省は國家のものですから助成をする必要はないと思ひますが、赤字の補填を認めると云ふことになればそれで宜いと思ひます
〔加藤(一)委員長代理退席、竹田委員長著席〕
それで行くのが宜いか或はそれとも本當に石炭を今少しく澤山出るやうに致して、助成の仕方を補給金でやらないで、或は坑木を、或は運搬の爲に、或は切羽を開く爲に、其の他等々のことを助成して行くと云ふやうな行き方もどうであらうか、色々なことが考へられるのでありますが、新しい山を開く場合には是だけのことをしてやる、或は條件の惡い山に對しては、斯うしてやると云ふやうなこと、さう云ふ行き方で若干考へられて居りますので、之を專門の委員會に掛けまして、最後の結論を得て、さうして兎に角十月終りまでは仕樣がありませぬから今の儘でやりますが、十一月からは其の新方式で一つやつて見たいと云ふことを今考へて居る譯であります、議會が忙しくて結論を得ませぬが、議會が終りましたら早々結論を得まして、皆樣と御相談をすることが出來ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=122
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123・川崎秀二
○川崎委員 さうすると經濟安定會議に掛けて、十月中には次の増産對策に付ては決定をすると云ふことでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=123
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124・星島二郎
○星島國務大臣 經濟安定會議には勿論掛ると思ひますが、其の前に之に對しては特別な増産推進委員會と云ふものが設けられることになつて居りまして、それ等に諮問致しまして原案を得たい、斯樣に考へて居ります、其の原案は又經濟安定會議に掛けて實施に移したいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=124
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125・川崎秀二
○川崎委員 先頃來開かれました對日理事會に、洵に突如として石炭の國有化問題と云ふものが掛けられた、併し果して商工大臣は、石炭を國有化すべきことを本旨として、司令部から對日理事會に提出されたやうに思はれて居るか、或は現在の補給金制度と云ふものが實際の増産對策になつて居らない、此の面を改良する爲に、一つの試案として國有化と云ふ方向に進んで行くか、或は此の際思切つて他の方策を用ひると云ふことに對する一つの提議であつたか、どちらのやうに御解釋をなさいますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=125
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126・星島二郎
○星島國務大臣 當時新聞にも若干其の内容が洩れて居りますが、國有と云ふやうなことは、一つの考へ方として、英國の國有もどの程度の國有であるか、國有國營であるか、全部さうであるかどうか、能く分らぬ點もありますが、兎も角日本のやり方を見ると、政府の補給金と云ふものは、非常な多額を要して居るので、是れ程助成するにはもつと考へ方を變へて行かなくちやならぬのぢやないか、英國では國有をやつたが、日本にはどうであるかと云ふやうな言葉が、議論の際に或る委員の人から出たさうでありますが、決して司令部自らが發案をして、國有の是非を委員會に掛けたと云ふやうなことはないやうであります、それは確かの筋から情報を得て居ります、又我々も二日に一遍位は石炭問題に付て司令部の經濟科學部の方と折衝をして居りますが、補給金は不自然だ、是は何とか解決しようと云ふことが論議の種になつて居りますから、只今私がざつと申上げたやうなことと餘り──多分是は公開されて居ると思ひますが、詳しい情報は當時何か印刷物に依つて見たことがあるやうに思ひますので、此の際申上げた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=126
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127・川崎秀二
○川崎委員 私も其の正式なものは見たことがないので、新聞で承知する以外にないのでありますが、席上「アメリカ」の經濟科學局の「リデー」と云ふ人が、非常に此の問題に付て言はれたやうであります、之に對して「イギリス」の「マクマホン・ボール」と云ふ代表から、もつと資料が欲しい、日本の石炭の増産はまだ企畫の範圍を出て居ないと云ふやうなことから、意外にも「イギリス」の代表から、自國の例から行けば直接國營に進むべき考へ方を持つて居られるかの如く見られる人々が、逆な反問をされて居るので、私は是は少しく「ジヤーナリズム」が「センセーショナル」に取扱ひ過ぎて居つたのではないかと考へて居つた、所が本日商工大臣の御話で、大體了とすることが出來ました、そこで私は此の方面では素人でありますが、「イギリス」の炭礦國有と云ふことと、日本の現在に於ける石炭の國有問題とは、可なり距離がありはしないかと云ふことを考へるのであります、私見を申すならば、第一に「イギリス」の炭礦は數十年に亙つて炭礦が錯綜をして、又非常に炭礦の層も厚く、又今度の歐洲大戰後に於ける石炭の輸出が必要であると云ふ關係から、どうしても國營に進まなければならない必然的な傾向があつたと私は思ふのであります、之に反して日本の石炭鉱業界が面して居る一番大きな問題は、何としても増産をしなければならぬと云ふことであります、何とかして産業再建の爲の石炭を出さなければならぬと云ふことが問題であつて、其の爲に補給金の問題が一番焦點になつて來た譯であります、日本に於て若し炭礦を直ぐ國營に致しましても、其の過程に起つて來る色々な難關は、寧ろ今日之を斷行することに依つて「プラス」する面より、「マイナス」になる面の方が多いのではないかと私は考へる、先頃來本委員會に於て社會黨の諸君から、頻りに石炭國營の問題が擧げられたのでありますが、私は是等の點から、今日日本の石炭問題は寧ろ強力な國家管理を斷行して、其の下に於ける所の民營の正しい發展を考ふべき段階にあると思ふのであります、國營必ずしも増産にならずと云ふ所信を披瀝された商工大臣は、此の點に關してどう云ふ風に御考へになつて居られるか、御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=127
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128・星島二郎
○星島國務大臣 此の問題に付きましては、私は本會義に於きましても水谷君の御質問に御答辯致し、又當委員會に於きましても度々申上げて居ります通り、政府と致しましては暫く増産第一主義で進みたい、併しながら今日の石炭の問題は、其の管理方式から言ひましても、殆ど國有に近いやうな所にまで參つて居ります、西村君や加藤君の御所論を聽きますと、我々が理解して居つた社會主義と云ふものが最近に於ては餘程修正されて、資本主義修正と云ふやうな所に隨分接近したやうにも考へられるのであります、我々は所謂「イデオロギー」に囚はれないで、或る部面に於きまして礦區の調整等を致しますれば、殆ど國有の方策に近い所まで持つて行くことが出來ませうし、さう云ふ點から言へば、大分政府も國有化したと云ふやうな批評も受けるかも知れませぬ、けれども今は増産本位でありまして、今國有にすれば代償を拂はなければならぬ、賠償とか補償打切りとか言つて居る時に、石炭山にそれ等の色々なことをやりまして、それ自體から色々混亂致しますよりも、暫く三千萬「トン」以上も平均に出るやうになりますまで、國有なんか考へないで、兎に角増産第一で進んで行きたいと、斯樣に言明致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=128
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129・川崎秀二
○川崎委員 最後に希望を述べまして終ります、「イギリス」の勞働黨は三十年來此の石炭國有の問題に付て、野に在つても、又朝に在つても鬪つて來て居る、小規模經營の改善を實現することが勞働黨の大きな目標であつたのでありますが、日本に於てはまだ是等の機運も熟さず、今商工大臣が言はれたやうに、何としても今日は國家管理を強力にして行く段階であると云ふことは、私も亦左樣に思ふのであります、商工大臣は本會議、委員會を通じて極めて率直に、且つ我々の意のある所と表裏一體の言明をなされて居ることは感謝に堪へませぬが、實施に當りましては、力強く又具體的に實際の經濟を把握して、此の段階を眞に産業再建の曙光たらしむるやうに御努力あらんことを切望して私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=129
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130・竹田儀一
○竹田委員長 稻田健治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=130
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131・稻田健治
○稻田(健)委員 私も時間の關係で簡單に申上げますが、膳國務大臣は本日先程から、石炭の國營に關しまして、官吏に全部を任すことは宜いことではないと仰しやつたのであります、私も同感であります、併しながら過去に於きまして總動員法と云ふ法律がありまして、之に據る官吏の獨善の結果、敗戰に導いたのであります、今又それと同樣な法律が出まして、此の法律がなければ政治が行はれないと云ふが如きは、再び茲に官僚獨善に陷るのではないかと云ふことを憂ふるものであります、此の點に付きまして御答辯を願ひたいのであります
更に本法案が食糧の増産に最も關係の多い肥料の増産に適用されると云ふことを聽いたのでありますが、果して此の法案に依つてどう云ふ方法で肥料の増産を期せられるのか、斯う云ふ點であります、引續いて其の増産の目標額と云ふものはどれだけか、一年に幾ら、又幾らまで増産すれば廢めるか、それは何年後のことであるか、それから其の増産されました肥料の次年度の配給時期、是も一つ伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=131
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132・膳桂之助
○膳國務大臣 一寸初めの御質問が聽取れなかつたのでありますが、一方に於て私が官僚に依る運營──國營と云ふ問題に非常に大きな、何と言ひますか、缺點があると言つて居るのに、本法は官僚獨善の風を貽すやうに見えるが、其の間に矛盾はないかと云ふ意味の御尋ねだと思ひます、是も屡屡申上げますやうに、本法は形は官が之を實施するやうでありますけれども、其の官と申しますものが、從前の構想に依りまする統制の場合と全く違ひまして、何時も説明の出ます安定本部の會議に於きます決定の方法、又安定本部の色々の立案等の際に當ります者が、純然たる官吏でありませぬで、官吏と民間人と學者と云ふやうな人達の、極く民主的な研究を本にしての運營であると云ふことも申上げ、又實際の運營が從來の指導者原理に依る組合のやうなものでなくて、本當の民主的の團體であると云ふやうな意味合で、形は官の統制のやうに見えますけれども、内容は全く違つて居るものだ、斯う何時も申上げたのでありますが、詳細は申上げませぬ、左樣な意味に御諒承が願ひたうございます
又肥料の増産が本法に依つてどう云ふ風に運營せられるかと云ふ問題でありますが、今政府は本法を直ちに使用しまして、生産命令を出して生産の増加を圖ると云ふことは、策の得たものとも思つて居りませぬ、要するに本法の精神は含みますけれども、増産に付ては資材、設備、資金等、各種の方面からの便宜を與へまして、業者及び勞務者の生産意欲の増加──旺盛なる生産意欲と色々な便宜供與に依りまして生産の増加を圖りたい、併しながら若し其の點に付て、或は今度の賠償等に依つて、設備の一部分が取除かれて、設備が跛になるやうな場合には、本法第一條第一項第三號の命令を適用しまして、設備の讓渡等を命ずる場合もございませうし、又生産命令を出すのに支障のあります場合には、本法の第一條第一項第二號の生産命令に依る場合もありませうが、生産の方面には強權發動でなく、成べく今の技術上の奬勵に依りまして行きたい、出來ましたものに付ては、第一號に基きまして適當なる配給計畫をば立てたい、斯う云ふ風に考へて居ります
尚ほどう云ふ工場でどう云ふ風に生産の増強が出來るか、其の數字等のことに付ては、私其の一部門の細かいことは承知致して居りませぬ、又他日の機會に專門の政府委員に、それぞれ説明して戴くやうに御願ひしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=132
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133・稻田健治
○稻田(健)委員 日本に於きましては窒素肥料が少くとも二百萬「トン」位必安なのであります、今日日本で製造して居るのは僅かに其の五分の一であります、更に又燐酸肥料でありますが、是は殆ど出來て居ないのであります、外國から輸入する見込もあるのか、ないのか、此の點も一つ承りたいのであります、加里肥料に付きましては二十五萬「トン」位必要な所に持つて行つて、僅かに其の一割位しか日本にないのでありますが、さう云ふ點に付きましても今後此の法令に基いて──此の法令が外國にまで及んで外國から輸入出來るかどうか、若し出來るものとすれば、聯合國に要請しますれば、どの位の量が本年度に於て外國から輸入されますか、是も承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=133
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134・膳桂之助
○膳國務大臣 今の肥料の輸出入等の數字的の説明は、私材料を持參して居りませぬので説明を申上げられませぬが、他の機會に於きまして適當なる政府委員から御答へ申上げるやうにしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=134
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135・稻田健治
○稻田(健)委員 是は農林省に屬して居ることかも知れませぬので、それでは已むを得ませぬが、茲に一つ──是も大藏省に屬することかも知れませぬが、安定本部と關聯して居りますので、御伺ひして置くのであります、終戰後鹽が非常に不足しましたので、國民が惱んだのであります、之に付きまして政府は製鹽業者に對しましては、其の設備費の金額を補助してやらうと云ふので奬勵されたのであります、國民はそれを眞面目に受取りまして、海岸の津々浦々に電氣製鹽とか、其の他の方法に依りまして製鹽事業が始まつたのであります、之に依つて非常に多くの國民が助かつて居ることは事實であります、最近是等の事業に對しまして約束に近い所の補助指令が行つたのであります、にも拘らず、指令が來て居るけれども、言を左右にして現金の支拂をしないと云ふ反面に、何か最近出來ました安定本部が之を諒解を與へぬから支拂が出來ぬのであると云ふことがあるのでありますが、此の點も一つ當局から承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=135
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136・膳桂之助
○膳國務大臣 左樣なことに付ては安定本部が關與したこともなく、又何も問題を聞いても居りませぬ、何かと間違ひかも知れませぬ、尚ほ今の御問ひのことは能く大藏省の政府委員に尋ねて、適當の機會に御答へ申上げるやうにしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=136
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137・稻田健治
○稻田(健)委員 非常に私の聽きたい所が聽けないので殘念であります、四條から六條の罰則でありますが、此の罰則を擧げますると非常に官吏が國民を信じ切れないのであります、國民に信を置かない政治であると云ふことは非常に不可能でありますので…
〔私語する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=137
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138・竹田儀一
○竹田委員長 私語を禁じます、稻田君續けて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=138
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139・稻田健治
○稻田委員 官吏が國民を信じて貰ひたいのであります、さうして人の人格を重んじなければなりませぬ、例へて申しますと風呂屋に參りましてあの風呂屋の看板を見ます時に、男女の區別が書いてあります、あの場合男と云ふと誰でも男と云ふ待遇で、「ルンペン」と同等の資格で入らなければならない、女の場合は大臣の奧樣でも、女と云ふ待遇で「ルンペン」の女と共に入らなければならぬ、此の場合もう少し國民の人格を尊重されまして、男と云ふのを紳士と云ひ、女と云ふのを淑女と書いたら、「ルンペン」でも紳士としての待遇を受けて其處に入るので、自ら態度も愼んで紳士の態度を執らなければならぬやうになる、又淑女と書いた風呂に於ては「ルンペン」の女でも淑女と云ふ待遇を受けるので、態度も改めなければならぬと云ふことになる、政府は其の點に付て官僚獨善と言はうか、依然として罰するとか、十年以下の懲役とか、十萬圓以下の罰金とか云ふことで、半恐喝的に、さうして國民を非常に疑つて居ることは洵に遺憾であります、斯う云ふことをもう少し御改めになる御意思があるかどうか承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=139
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140・星島二郎
○星島國務大臣 御趣旨は私も同感であります、罰則で以て、刑罰主義で以て世の中は律したくないのであります、其の代り日本の刑法の良さは、實際に執行猶豫と云ふこともありますし、減刑もありますし、假出獄もありますし、そんなことで可成り發達して居る現在であります、唯如何せん日本には、如何に闇が多いか、如何に不正直の者が多いか、是等に對しては一面斯う云ふもので以てやると云ふことは、或は一つの行き方かも知れませぬ、併し是は從來の法律技術と言ひますか、他の法律でも既に斯う云ふやうな程度になつて居るとしますれば、それとの均衡上、やはり此の程度で宜からうと云ふこともありますので、單に此の法律だけから考へますと如何にも是は重さうに見える譯でありますが、それでも恐れずやる奴があるのであります、併しながら御趣旨に於きましては、所謂刑罰主義で以て斯う云ふものに臨むと云ふことはいかぬことであります、何處までも國民は紳士であり淑女であると云ふ考へで行くべきであると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=140
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141・稻田健治
○稻田(健)委員 能く分りました、今日は官僚獨善政治の時代と變りまして、民主主義的の政治に移つたのであります、然らば官僚が此の臨時物資需給調整法を運用するに當りまして誤まつた場合、官吏に何か之に對する處罰をする法があるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=141
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142・星島二郎
○星島國務大臣 此の法律の實施は全部官僚でやる譯ではありませぬし、一面色々な委員會が上下にある譯であります、又民主主義的團體と云ふものは、全部民間の人になつた譯であります、唯基本の行き方を此の法律で施行すると云ふ譯であります、而も尚ほ誤があれば、是は斷乎として或は官吏服務紀律がありますし、或は憲法に依つて行く法律もありますし、或は刑法に依つて行く法律もありますし、それ等で以てどしどし處罰して行くやうにしなければならぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=142
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143・稻田健治
○稻田(健)委員 此の臨時物資需給調整法と云ふのは、今度日本で初めて行はれたのでありますが、先に聯合國の側にも之に似た所の法令があると云ふことでありましたが、其の點如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=143
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144・星島二郎
○星島國務大臣 此の法律は言葉から言へば初めてでありますが、必ずしもさうではありませぬ、之に似たやうなものは從來輸出入臨時措置法等澤山なものがあります、其の中最も似て多少非でありますけれども、稍稍體裁を同じうするものが所謂動員法であります、今囘平和時になつて初めて出まする所謂白紙委任状式なものと云ふ御説がありましたが、是は今囘初めてであります、或は聯合國の方を調べませぬのではつきりは分りませぬが、併し相當之に似たやうなものは、何處の國にも非常な需給の不均衡がありますし、不均衡は如何に物資豐富な「アメリカ」と雖も、是は調べたことではありませぬが、あることだと思ひます、是は大體相談して來て居るものでありますから、多分あることだらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=144
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145・稻田健治
○稻田(健)委員 私は過去に於きまして統制經濟が「ドイツ」のものを其の儘日本が丸呑みした、其の結果敗戰に導き、國民が餓死線上を彷ひ、今日又「インフレ」に惱んで居るのでありますが、此の臨時物資調整法に於きましても、外部のものを若し眞似られる場合に於きましても、丸呑みをしないやうにして戴きたい、私等のお爺さんの頃に初めて「バナナ」と云ふものが輸入されたさうであります、あれはちよん髷のお爺さんが、ちよん髷に鬢附を付けてやつて居た人に、「バナナ」は榮養價値のあるものでござると云ふて丸呑みした、それでそつと噛んで呑んだ、所が筋が殘つた、是は筋の多いものでござる、又澤山食つて下痢をした、「バナナ」と云ふものは通じ藥でござると云つて感心したと云ふ話がある、若し之を西洋のものだ、舶來品だと云つて丸呑みにして、國民全體が下痢をしないやうに、皮を剥いて要らぬ所は捨てて、適當の所だけ食はせるやうに御願ひしたい、更に序ででありますが、此の法令でも、又其の他の民間に對する福利的な法令は十分注意して貰ひたい、官吏は、例へば沙漠の河のやうに、上流の方は非常に廣いけれども、下流に行つて其の河はなくなつてしまふ、末端の官吏の所に行くと、ちつとも法の恩恵に浴せない關係になつて居る、所が過去に於ける官僚の時代今日又或る種の命令になりますと、上流は非常に狹い、水は非常に少いのでありますけれども、下流に行くに從つて、河は廣く水量も多くなつて居るのであります、斯う云ふことは大いに愼んで貰ひたい、斯う云ふことを御願するのであります
更に又今日日本は非常な「インフレ」に惱んで居る、どうかして元の日本にしたいと云ふので、國民擧げて努力して居りますが、之に似寄つた問題で、昭和の五、六年に非常に米價が下落して、其の當時の政府は元の價格を維持したい、今度のは下げなければならないのだが、此の時は上げたいと云つたのであります、今と逆でありますが、其の時に何が斯くせしめたか、それは餘りにも食糧品を増産したからである、其の多い部分だけを太平洋に持つて行つて捨てたならば、元の價格が維持出來ると云ふ結論になりまして、それは實際捨てたか捨てぬか知りませぬが、東京灣口まで持つて行つたと云ふ話を聞いて居ります、私は之と思ひ合はせまして今日尚ほ日本が元の價格を望んで居るが、どうして斯うなつたかと云ふ時に、私は最も餘るものは役人であると思ふのであります、官吏が最も餘る、事變前の役人の數と今日の數とを御調べになつた時に、二倍或は三倍になつて居る、さうすれば餘る役人を太平洋の眞中に、米と一諸に捨てると云ふことは穩やかでありませぬし、捨てる譯にも行きませぬが、何とか之を處分せられて戰前の數にせられたならば日本の「インフレ」と云ふものは防止せられると思ふ、本當にそれこそ安定のある所の生活が出來るのであります、今此の儘で如何にされましても、安定法ぢやなく不安定法ぢやないか、斯樣に考へるのでございますが、此の點に付きまして大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=145
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146・星島二郎
○星島國務大臣 色々御説を面白く拜聽致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=146
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147・竹田儀一
○竹田委員長 質疑は全部終了致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=147
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148・西村榮一
○西村(榮)委員 質疑が終了したら討論に入ることを動議として提出致します、理由は本朝から質問の形に於て川崎君が既に討論に入つて居る、私は自由、進歩黨の立場としての御説を能く拜聽致しました、社會黨は引續き議事進行に名を藉りて申上げようと思つたけれども、是は當然討論に入つたものだと思つて、私は討論の機會を待つて居つた、私の方の意見は全員其の方針で居ります、既にそれで討論に御入りになつたかどうか…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=148
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149・竹田儀一
○竹田委員長 御諮りする前に川崎君の御質疑中不穩當のことがあれば委員長に於て適當に處理致したいと思ひますから左樣御承知を願ひます、只今の御動議はどうか本委員會を圓滿に運營致します爲に御撤囘せられんことを切に御願ひ致します、若し不穩當な點があれば、私に於て適當に處置致しますから、是非御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=149
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150・西村榮一
○西村(榮)委員 委員長の苦衷を諒察致しまして、互讓の精神を以て撤囘致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=150
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151・竹田儀一
○竹田委員長 有難うございます、就きましては次囘の委員會は公報を以て御通知致すことに致します、是にて散會致します
午後四時十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X00819460913&spkNum=151
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