1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
商工協同組合法案(政府提出)
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昭和二十一年九月二十六日(木曜日)午前十時二十四分開議
出席委員
委員長 竹田儀一君
理事 加藤一雄君 理事 小島徹三君
理事 塚田十一郎君 理事 原健三郎君
理事 宮前進君 理事 西村榮一君
理事 前田榮之助君 理事 川野芳滿君
理事 疋田敏男君 理事 福田繁芳君
安部俊吾君 井田友平君
飯國壯三郎君 西村久之君
厚東常吉君 田中源三郎君
田中實司君 瀧澤脩作君
山田善三君 馬越晃君
金光義邦君 九鬼紋十郎君
早稻田柳右衞門君 鈴木明良君
川崎秀二君 澤田ふさ君
金子益太郎君 竹谷源太郎君
中崎敏君 山口靜江君
加藤勘十君 東隆君
稻田健治君 駒井藤平君
伊藤恭一君 戸叶里子君
布利秋君
出席國務大臣
商工大臣 星島二郎君
出席政府委員
内閣事務官 橋井眞君
商工政務次官 小林かなえ君
商工參與官 小柴歌治君
商工事務官 吉田悌二郎君
商工事務官 松田太郎君
商工事務官 池田欽三郎君
商工事務官 小出榮一君
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本日の會議に付した議案
商工協同組合法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=0
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001・前田榮之助
○前田委員長代理 會議を開きます──布君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=1
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002・布利秋
○布委員 私の質問の申込みが凡そ順番も來て居ると思ひますので、組合に對しまする箇條書的な質問を一つ許して戴きたいと思ひますが如何ですか
〔委員長著席、前田委員長代理退席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=2
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003・竹田儀一
○竹田委員長 加藤一雄君に對する答辯が殘つて居りますから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=3
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004・池田欽三郎
○池田(欽)政府委員 先般加藤委員から御質問のございました石油の配給機構の問題でありまするが、將來の問題と致しまして、需給調整法が成立致しますれば、それに依りまして、原油に付きましては採掘權者から一手に原油會社が買取り、それを商工大臣の指示する方法に依りまして、それぞれ製油業者に配給する、さうしてそこで出來ましたものは、總て是れ亦商工大臣の指示に依りまして、石油配給會社に賣渡しまして、そこから政府の立てました計畫に依りまして、販賣業者を通じて消費者に流すと云ふやうな建前でやつて行きたい、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=4
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005・加藤一雄
○加藤(一)委員 其の場合に外國の原油が來ましたらどうなりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=5
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006・池田欽三郎
○池田(欽)政府委員 只今の所、原油の輸入に付きましては聯合軍の方に申請をしたのでありますが、現在の所其の輸入をしないと云ふやうなことに相成つて居るのであります、我が國の事情と致しまして、原油の輸入と云ふ問題は非常に重要でありますので、之には出來るだけの努力をしなければならぬと考へて居るのでありますが、假に原油が輸入されました場合にどうするかと云ふ問題に付きましては、現在貿易廳關係に出來て居ります所の輸入協會で扱ふか、或は又其の他の方法に依るか、其の時になりまして決定を致したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=6
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007・加藤一雄
○加藤(一)委員 それでは是は政府に大變な「ミス」があるやうに思ひます、僅か三十萬「キロ」の國内原油に對して、原油輸送株式會社を作らなければならぬ理由が何處にありますか、御答辯願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=7
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008・池田欽三郎
○池田(欽)政府委員 原油に付きまして、現在の生産量は御話のやうに二十五、六萬「キロ」、三十萬「キロ」弱でありますが、それは帝國石油で採掘して居るものが大部分であります、其の他に中小鑛業權者が採掘致します分も多少あるのでありますが、其の原油の配給を統制致しまして、横に流れないやうに、政府の計畫に從つて流れるやうに、一手に原油會社で買取ると云ふやうなことにしなければならぬと、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=8
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009・加藤一雄
○加藤(一)委員 左樣に考へることも考へられますが、今御提案になつて居る商工協同組合と云ふものは、何の爲に作つて居るのですか、もつと詳細に言ひますと、零細なる石油業者を商工協同組合法で組合を結成させる、横に流れぬ方法は民主的に何ぼでもあるではないか、何も戰時中に出來た型を其の儘踏襲して、原油輸送株式會社の如きものを今日置く必要は毛頭ないと思ふ、而も日本石炭が昨日の新聞に依れば、商工大臣は是は速かに廢めると仰しやつて居る、斯う云ふ御宣託が出て居る、然るに三十萬「キロ」に足らぬ石油を相手に、國内で原油輸送株式會社と云ふものを作られる、昔石油界に働いて居つた人間の失業救濟ならいざ知らず、それでなかつたら、此の原油輸送株式會社の如きは即日廢止して然るべきであると私は思ひますが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=9
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010・池田欽三郎
○池田(欽)政府委員 原油輸送會社は、御承知の通り戰時中原油の貯藏配給をすると云ふやうな目的を以て出來たのでありますが、終戰後は其の輸送方面を擔當致すものと致しまして、協同輸送會社、それから其の他の仕事を致します爲に協同企業と云ふ會社に分れたのでありますが、協同企業の會社に付きましては、戰時中の原油の貯藏と云ふ目的がなくなりましたので、それを解散することに致しまして、現在其の清算を進めて居りまして、近く其の手續が濟むものと考へて居るのであります、此の原油の輸送を致します面に付きましては、先程申しましたやうに、帝國石油其の他から出ますものを、從來一括して扱つて居りました經驗もあり、此の石油の統制も暫定的の措置でありますので、暫く此の機構を使ひますことが、仕事を「スムース」にやります上に於て適當ではないかと云ふやうなことに依りまして、現在さう云ふやうなことで以て進んで居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=10
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011・加藤一雄
○加藤(一)委員 もう一點御尋ね致します、私はどうもあなたの御説明に納得が行きませぬが、要するに石炭に對しても、商工大臣は昨日「コークス」石炭の委員會で重大發言をされて居る、油の問題に付きまして、政府が自ら計畫を立てて横流しを防ぐ方法は何ぼでもあると思ひます、左樣致しますれば非常に「スムース」に物が運んで、而も原價は安くなる、消費者が非常に便利をすると云ふことを御考へなされて然るべきものと思ひます、今の状態を見まして、石油統制配給株式會社が石油の關係を今日圓滑にやつて居ると思ひますとそれは大間違ひであります、聯合軍の作用が加はつて居るが故に旨く行つて居る、あんな厖大な組織で、日本の石油が旨く行くと思つたら大間違ひであります、あなた方が御案内の通り、「スタンダード」の組織を御覽になりますれば直ぐ御分りになりますが、「マネーヂャー」が居りまして、「タイプ」があり、電話がある、人が話をすると「タイプ」で直ぐ打つ、電話を掛ける、次席がそれを受次いで世界各國に資料を散布する、二人か三人で出來る譯であります、あの大きな厖大なる組織を以て廻つて居るのは聯合軍の作用であります、それを御考へになりますれば、原油輸送會社の如きは一日も早くなくして、經濟安定本部が出來るなり、そこで計畫立案をして、而も下部組織は民主的に組織せられたものでやつて行くのが、一番私は良い方法だと思ひます、何の爲に經濟安定本部を作るか、一體何の爲に商工協同組合法案を御出しになりまするか、少し御考へなさらぬと困ると思ひます、其の點は如何なものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=11
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012・池田欽三郎
○池田(欽)政府委員 先程申しましたやうに、横流れの防止と云ふことの爲に、原油會社で以て一手にやると云ふやうなことを考へて居るのでありますが、それは飽くまでも暫定的な方法でありまして、其の他の方法を以ちまして其の弊害も防げると云ふやうな目安も付きますれば、さう云ふ方法に付きましても研究を致して見たい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=12
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013・加藤一雄
○加藤(一)委員 然らば其の問題に付きましては是で質問を打切りますが、速かに石油の根本對策を立てられまして、將來國交が調整せられ、原油が外國から來るか來ないか分りませぬが、戴かなければ日本はやり切れませぬから、七つの石油會社も今日あるのでありまするから、其の方面に政府も努力せられると共に、それを勘案せられて、石油の配給其の他の機構を速かに、根本的に確立せられんことを希望致して置きます、次の議會に又質問致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=13
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014・池田欽三郎
○池田(欽)政府委員 石油の配給機構に付きましては、現在石油配給會社に付きまして色々批判も行はれて居るのでありまして、我々も十分それを承知致して居ります、其の機構なり陣容なり、又下部組織などに付きまして現在檢討を致して居るのであります、先般の總會に於きまして、一部陣容の更迭も見たのであります、又下部機構と致しまして、石販聯の支部と、それから石油配給統制會社の出張所との間の關係をどうするかと云ふ問題に付きましても、具體的にそれを取上げまして、只今折衝を致して居るのであります、又配給方法の民主化と云ふ點に付きましても、部門別の割當は商工省の方でやるのでありますが、其の際に十分需要方面の意見も聽いて、それを決めたいと考へて居ります、又地方に於きまして直接消費者への配分に付きましても、地方に配給協議會を作りまして、需要方面其の他の意見を十分聽きまして、民主的な方法に依りまして配給を致したい、斯樣に考へて居るのであります、御話の點は十分承りまして、其の改善を促進致したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=14
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015・加藤一雄
○加藤(一)委員 それから此の間の質問の中に、農山漁村の部面に七萬三千「キロ」御渡しになるかならぬか聽いて居りましたが、あれはどうなつて居りますか、配給「ルート」の關係で、工鑛業と農山漁村の關係の石油の配給は違つて居りませう、農林省は年額七萬三千「キロ」をやつて居りますね、あの點は爾今御續けになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=15
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016・池田欽三郎
○池田(欽)政府委員 農林水産用に付きましては、現在農林省と折衝致しまして、商工省の方で其の枠を決め、消費者向の割當は農林省の方でやつて居ると云ふやうなことになつて居るのでありますが、大體さう云ふやうなことでやつて行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=16
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017・加藤一雄
○加藤(一)委員 是で私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=17
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018・竹田儀一
○竹田委員長 加藤勘十君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=18
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019・加藤勘十
○加藤(勘)委員 私は主として中小工業──此の組合法は商工協同組合法となつて居りますが、商の方は暫く別にしまして、工業關係の事柄に付て御尋ねしたいと思ひます、第一點は、提案の御説明の中にもありましたやうに、戰後の經濟再建に對して、戰時中軍事的官僚的統制の爲に歪められた中小工業、戰災の爲に著しい災害を受けた中小工業、さうして戰後の日本經濟に占むる中小工業の重要性の故に、之を如何に正しい道に發達せしめるか、さうして又其の復興を、如何にすれば急速に自主的に行はしめることが出來るかと云ふ建前で、此の協同組合法案が立案されたものと思ふのでありますが、さうであるとするならば、實際の問題としては、一片の組合法が出來たと云ふだけでは、少しも其の復興を助成することにも、又正しい道に發達を促進することにもならないと思ふのであります、之に對して、政府はどう云ふ建前から具體的に方法を講ぜられるかと云ふことになれば、言ふまでもなく、中小工業の正しい發達と復興の爲に横はつて居る障碍が取除かれなければならぬと思ふのであります、障碍を取除くの途は、具體的にどの工業にはどう云ふ障碍があるか、又何を一番必要として居るかと云ふ觀點に立つて見られなければならぬと思ひまするが、私は其の點に付きまして、第一の點は、勿論工業の種類に依りまして樣々な障碍があると思ひますが、戰後の中小工業の復興の一番大きな障碍となつて居るものは、言ふまでもなく資材の不足、是が一番大きな問題だと思ふのであります、それから今一つは金融の關係だと思ひます、隨て私は此の際、其の二つの點を中心として御尋ね致したいと存じます、原料資材の不足は、絶對量が非常に不足して居ることは勿論言ふまでもありませぬが、非常に偏在して居ることも爭はれない事實であると思ひます、何れにしても、戰災に依つて多くの打撃を受けた日本の經濟界が、さうした材料の絶對量に於て乏しいと云ふことは、誰しもが得心が行くのでありますけれども、急速に絶對量の不足を補ふことが出來ないとするならば、現在偏在して居る資材原料を適當に配分することが一番大きな問題ぢやないかと思ひます、先般此の委員會で審議されました物資需給調整法も、專ら此の偏在資材を如何にして適正に生産面に配給するか、斯う云ふことに主力が注かれる性質のものだと思ふのであります、それと中小工業助成の問題とは密接な關聯があると思ひますが、此の點に付て先づ第一に、商工大臣はどう云ふ具體的な方法に依つて、偏在して居る原料、資材を適正に、生産設備を遊ばせないやうに配給すると云ふ方針を御持ちであるか、それを先づ御伺ひ致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=19
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020・星島二郎
○星島國務大臣 中小工業の振興を圖る爲には、加藤君仰せの通りに資材を潤澤ならしめ、同時に金融を圖ると云ふことが主たることと思ひますが、其の中でも金融方面に付きましては、今囘出來ました復興金融金庫、或は其の手足となつてやる商工組合の中央金庫、其の他其の末端の色々の機關が之を扱ふ、併しながらそれではまだ迚も足りませぬので、今囘産業設備營團が現存して居るので、之を改組して、産業復興營團と名前を變へて、平和型にして之を一つ十分活用して見たい、是は多分議會に間に合ふやうに御協贊を仰ぎたいと思つて居ります、それで關係筋と大體話が付いたのであります、もつと早く、此の法案の審議等と竝行して、此の委員會にでも御願ひしたい、斯樣に思つて居りましたが、もう少し間に合ひませぬ、若し出來るならば、今明日にもう一遍再努力致しまして、之を一つ御審議願ひたい、斯樣に思つて居る譯であります、是は色々な設備を持つて、今までは大きな工場に設備を作つて貸し與へると言ひますか、或る機關を通して、こちらが作つたのを向ふに最後に渡す、今度はさうでなしに、凡ゆる仕事が出來るやうに、小さな仕事も出來るやうに、貸工場も出來れば、或は機械工具を貸すことも出來ると云ふやうに、餘り囚はれないで凡ゆる仕事をして、助成すると云ふことをやつて見たい
それから資材の入手ですが、是は隱退藏を調べました所でもう凡そ見當が付いて居りますから、到底之を以て日本の再建を圖るやうな原料はないから、勢ひどうしても、日本の内地で生産出來ないものは輸入に仰がねばならない、輸入に付きましては凡その見當を付けまして、關係筋の方に懇請を致して居る譯であります、例へば鐵に致しましても「ゴム」に致しましても、其の他の原料資材に致しましても、殊に纖維の方面は相當數量──實は日本の力以上のものを今送つて貰つて、少し困つて居るやうな位にやつて居る譯であります、併し只今仰せのやうに、需給調整法等を十分活用致しまして、現在あるものも重點的に一つ考へてやつて行きたい、斯樣に考へて居る譯であります、殊に中小工業に付ては、單に抽象的に唯政府がやるのだと言つても仕樣がないから、實體的に助成する機關を作つてやりたい、是は今安定本部に作るが宜いか、商工省に作るが宜いか、もう少し相談が纒まつて居ませぬが、中小工業振興助成局──假稱ですが、さう云つた機關を設けまして個個の世話をしたい、勿論商工省自體が、工務局も凡ゆる局全部が今後は中小工業になるのでありますから、商工省自體が活動することが中小工業振興策と言はれぬことはないが、やはり仕事を分けまして、助成する爲の特殊機關を設けてやりたい、斯樣に考へて居るやうな譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=20
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021・加藤勘十
○加藤(勘)委員 一般的な概念としましては、只今商工大臣の御答辯は十分了解の出來る所でありますが、私は茲に現在手持資材の偏在して居る實情を、一例を擧げて見たい、商工省でも是は十分御承知のことと思ひます、其の前に、私の申上げた原料資材の絶對量の不足と云ふことは、重ねて申上げるまでもないことでありまするが、現在日本國内に手持されて居る原料材料は、國際關係が正常に復して、輸入が出來るまでの繋ぎとしての期間間に合ふか間に合はぬか、之を如何にして間に合はせるやうにするかと云ふことが主でありますが、茲に私の擧げまする例は、具體的に申上げますれば、尾西毛織物工業組合の例なんです、此の例に依りますと、四、五、六の三箇月間の配給割當は三百五十萬「ポンド」でありました、然るに其の配給された量は僅かに三〇%に過ぎない、而も其の持つて居る業者は、俗に五大紡績と言はれて居る日本毛織、大東紡、東洋紡、大日本紡、鐘紡、此の五大紡績が手持して居る原毛は、昨年十一月の發表に依れば十七萬六千俵で、此の十七萬六千俵の原毛が紡績されて絲になり、更に之に「スフ」なり絹なり混ぜて混紡されますれば、優に日本の現在ある紡績機を「フル」に運轉して、一箇年以上の原料であると云ふことは、專門家の詳細な計算に依つて明かな點であります、然るに今申しまするやうな、折角中小工業としての毛織物業──申上げるまでもなく尾西方面の毛織物業は、日本の毛織物工業の發生地でありまして、戰前に於ては輸出の八割近くを此の地方だけで擔任して居ると云ふ状態で、戰爭中は是等の業者も企業整備に遭つて多くの犧牲を拂ひ、現在では相當強固な業者だけが殘つて居る譯でありますが、其の設備を運轉するに付ても、割當の總量を貰つても尚且つ十分ではない、併しそれは當然我慢しなければならぬ所でありますから、我慢して居りますが、其の割當てられた量全部を貰つても尚ほ織物の機械が餘ると云ふ時、更に實際には三割しか與へられて居らぬと云ふことになりますと、本當の機械設備の操業状態と云ふものは二割位にしか當らない譯であります、後は皆遊んで居る譯であります、それならば外の方はどうかと申しますと、聞く所に依れば關東、關西の地方に對しては、割當量の六割位が配給されて居る、それから手持して居る此の五大紡績、外にまだ東亞紡とか大和業とがありますが、是等の紡績業者は、自分で絲を紡いで、之を原料として自分の工場だけは「フル」に運轉して居る、要するに大資本は何時でも自由に欲する儘に行ひ、さうして自分の都合に依つては何時でも中小企業を壓迫する、是は實例でありますが、而も是等の五大紡績、更に二つを加へた七つの毛織紡績の會社が持つて居る十七萬六千俵と云ふ原毛は、終戰の當時、どさくさ紛れに軍から拂下げた物が其の大部分を占めて居る、御承知のやうに原毛の公定價格の改訂に依りまして、殆ど十億近い利益を擧げて居ると云ふことであります、勿論此の中から調整金として政府に納めたものもありますが、兎も角是等の原料は、戰前自分達が輸入したものを持つて居つたと云ふものでなく、戰爭中軍が統制して居つたのを終戰のどさくさに紛れて拂下げて居る、元來ならば當然是は國家の手に所屬しなければならない性質のものであるのを、是等の大會社が軍との結託に於て拂下げて居る、而も今日原料が非常に不足して居る時に、之を獨占して居る、斯う云ふ状態は恐らく外の産業にもあると思ふ、私は外のことは能く知りませぬから尋ねませぬが、毛織物の實例に付ては今言ふやうな状態ですから、唯單に商工省に於て、今度の物資需給調整法を十分に活用されると言はれますが、斯うした面に對して、具體的にどのやうな活用をなさらうとするのであるか、其の具體的な方法を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=21
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022・星島二郎
○星島國務大臣 纖維の方面から考へますと、お蔭樣で終戰後相當數量の軍の物資がありましたので、是が取敢ず民需になりまして、占領軍の方も全部を民需に廻して宜しいと云ふ非常に寛大な處置に依りまして、取敢ず衣料問題の方は、他の食、住よりも稍稍落著いた状態にありますことは御同慶の至りであります、殊に其の中でも、之を見返り物資に相當大量出すやうにと云ふので、殊に向ふの注文が非常に急いだものでありますから、隨て平素の割當等から若干超越して、紡績を主にして一貫的に早くやらせる、それ以下のことは、義務を終つてしまへばそれは普通の「ルート」に流して、皆に公平な配給をすると云ふやうなことでやつて來て居るのでありますが、それが中々思ふやうに運ばない、其の爲にともすれば中小の人達から常に文句を受けて居ることは事實であります、私共此の點は非常に氣を付けてやりたいと思ひまして、殊に今日終戰後は、從來ありました上からの統制機關を廢めまして、纖維協會と云ふ下から盛り上つた一つの機關に依りまして、皆の賦課金に依り、皆の選出した役員に依つて出來た全體の協會が、按配を取つて行くことになつて居りますので、さう云ふ弊はないと思ひますが、併しながら尚ほ其の中心は、何と言ひましても紡績でありますから、つい今御話のやうなことがあるのだらうと思ひます、それ等は今後十分注意致しまして、公平に仕事を分配して、同じ設備があるならば、皆を活かして行くやうにしなければならぬと、斯樣に思つて居ります、一時偏在して居るものは十分今後調べまして、それは適當に仕事の分量を按配して、皆に分けるやうにして行かなければならぬと思つて居ります、丁度今纖維局長が出て居りますから、もう少し詳しい御答辯が出來るかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=22
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023・松田太郎
○松田(太)政府委員 只今大臣の御話で要點は盡きて居るのでありますが、もう少し最近の棉花の輸入等の實情、或は生産の實情等を補足的に申上げますならば、大體本年内に「アメリカ」の棉花の入つて參ります豫定數量は八十九萬俵になつて居ります、其の中で、既に今日現在に於きまして日本に著荷致しました數量が四十六萬俵になつて居ります、其の中國内で使つて宜しいと云ふ解除の許可を受けて居りますものが約十一萬二千俵ございます、此の中一萬九千俵が國内の需要に充てられることになつて居りまして、他は總て輸出に向けると云ふことに今話がなつて居るのであります、なぜさう云ふことになつて居るかと申しますと、今日聯合軍と致しましては、世界の衣類飢饉を一刻も早く救濟しなければならない、それに付ては今日殘つて居る、日本の纖維設備を極力活かして、之に依つて世界の衣類飢饉を救ひたい、斯う云ふ所に其の主眼があります爲に、將來の輸出と國内向けとの調整に付きましては勿論考へて貰ふことと思ひますけれども、取敢ず大部分は輸出の方に向けなくちやならぬ、而も急ぎます爲に、出來るだけ早くそれが仕上げられるやうにと云ふ情勢からして、今日に於きましては所謂紡績一貫作業をして居ります所で約六十工場、それから織布の專業者に於きまして約百工場を活用して、今の生産に進んで居るのであります、併しながら今日までの生産成績と云ふものは餘り芳ばしくないのでありまして、七月、八月の生産を加へまして約五萬九千五百梱と云ふものが生産されて居るやうな状況であります、併しながら是が隘路に付きましては、政府當局と致しましても出來るだけ之を打開し、又業界の方に於きましても一踏張りして貰つて、少くとも年内には更に三十萬梱位消化致したい、斯樣に考へて居ります、之には勿論紡績專業者だけで出來る仕事ではないのでありまして、中小の所謂專業の機屋さん、それから又最近聯合軍の方の要求もありまして、從來は生地の儘出して貰ひたいと云ふのが、最近之を染色して出して貰ひたいと云ふやうに變りまして、隨てさう云ふ意味に於きましては染色業者も大いに仕事が出來ることになつて參つたのであります、我々と致しましては、出來るだけ大業者も中小業者も、本當に棉花に依つて世界的に貢獻すると云ふ意味に於きましては、日本國民として名譽のあることであり、仕事の仕甲斐のあることでありますから、そこは出來るだけ均衡を保ちまして、中小商工業者も此の恩典に浴せないと云ふやうなことは絶對にないやう、其の點は十分聯合軍の方にも諒解を付けて貰ひまして、今後とも其の間の均衡は取つて參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=23
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024・加藤勘十
○加藤(勘)委員 只今纖維局長の御話を聽きますと、專ら棉花、棉紡に關することばかりでありましたが、私の御尋ねをして居るのは主として毛織工業に關する問題を御尋ねした譯であります、毛織の状況に付て御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=24
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025・松田太郎
○松田(太)政府委員 毛織の問題に付きましては、御承知のやうに、今日相當程度の、約十五、六萬俵の羊毛の「ストック」はあるのであります、併しながら其の中の大部分が所謂紡毛と云ふものでありまして、服地等に使ひまする梳毛關係は其の中の約三四萬俵程度のものであります、それで何とか梳毛に付きましても供給量を殖したいと云ふので、色々聯合軍等の方にも打合せをして居りまして、今日聯合軍の方と致しましては、濠洲等の羊毛に付て相當の數量、大體十一萬俵位は年間に入れても宜いやうな話も、實は内部的にございまして、隨ひましてさう云ふやうな問題も解決致しますならば、粗毛、紡毛を通じまして相當の量が國内に入つて來ることになるのであります、之に付きましては、今日までは或は石炭の問題でありますとか、或は輸出の計畫等の問題から致しまして、綿紡績に比べましては進捗致して居りませぬ、併しながら今申しましたやうな原料を向ふから入れて呉れるやうな曉に於きましては、恐らくそれに對する代金の決濟等の方法から致しましても、或は羊毛製品を輸出すると云ふやうなことも考へられて參りまするし、それから又、それに伴つて國内に對しましても、相當の量を國内配給にも廻して貰へるやうな時にもなつて來ると思ふのであります、さう云ふ場合に於きまして、特に名古屋方面の、所謂羊毛織物關係の一番の中心地でありますやうな所に對しまして、從來の希望、要望、或は期待と云ふものは非常に大きいのであります、それで今日動もしますと云ふと、羊毛に付きましても、綿紡績に於けると同じやうな問題がありまして、其の間の連絡と云ふものが、動もすれば不圓滑を來して居るやうなことがございましたのでありますが、其の點に付きましては、先般來纖維協會内部に於きまする羊毛部會と云ふ所に、所謂羊毛の紡績關係業者の方と、それから織布關係の業者も其の羊毛部會に今度一緒に入つて來ることになりまして、今の兩者の間に於ける、從來の色々氣まづい問題は、總て此の際きれいに解決すると云ふことに先般話もありまして、今日ございます「ストック」の處理に付きましても、又將來さう云ふものが入つて參りましたやうな場合に於きましても、先程綿紡績に付きまして織屋さんとの關係に付て、同じ方針の下に、之を善處して參る、又業界の方に於かれましても、さう云ふ氣持に最近はなつて參りましたと云ふことを御報告申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=25
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026・加藤勘十
○加藤(勘)委員 只今の御答へは、主として、今聯合國側と交渉して居る原毛の輸入が實現したならばと云ふ、將來の計畫に付ての御説明のやうでありましたが、私の御尋ねの焦點はさう云ふ所になくして、其の實現を見るまでの間の、日本の生産設備を如何に運轉するか、或る一方に於ては機械が遊んで居る、或る一方に於ては夜業までして居る、此のことは私は失業問題とも非常に大きな關聯を持つて來ると思ふのであります、自分が手持ちして居る原毛を、今申しますやうな理由に依つて、入手した原毛を、偶偶纖維協會に割當てて、是は恐らく商工省の方も此の割當に關與しておいでになられるが、割當てられたものを、多くの設備が遊んで居るにも拘らず、其の方には廻されないで、自分の方は夜業までしてやつて居る、此の偏頗な状態をどうするか、具體的な問題と云ふのは、之をどうするかと云ふ點にあるのでありまして、將來の計畫は、是は其の時になつて初めて色々考慮さるべきであるし、別箇に考ふべきである、其の原毛輸入が實現するまでの、日本の生産設備をどうしてさう云ふ偏頗な状態でなくして、全部が圓滑に運轉するやうに出來るか、斯う云ふことに付て、商工省はどう云ふ御考へであるか、之を御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=26
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027・松田太郎
○松田(太)政府委員 只今私が主として輸入羊毛等の將來に付ての話を重點に置いて申上げたので、洵に足らない所があつたと思ひますが、私は將來の問題に付ても、さう云ふ方針の下に、──現在あります羊毛に付て、先程來私が申上げたやうな經緯が、從來加藤さんの御話のやうに確かにありました、羊毛の織物業界からも、再三私の方にさう云ふ御話がありまして、それに付て先般來我々の方としても十分色色檢討致しまして、其の結果纖維協會内の、從來羊毛の紡績の部會と羊毛の織布の方の部會のそれぞれ二つに分れて居つたのを、それを先づ機構の問題からも一本に致しまして、尚ほ其の間出來るだけ羊毛紡績の方から出たものを、本當の機屋さんの方に廻すものに付ては、今御話のやうに、現に機屋さんの方は機械が遊んで居る、然るに紡績の方は、苦しいにも拘らず自分の方で之を全部使つてしまふと云ふやうな慊ひも、實はなきにしもあらずであつたのであります、其の點を調整して、今日に於きましては、順次羊毛紡績の專業者の方から、今の機屋さんの方に廻りつつあると云ふ實情になつて居りますから、其の點も段々と改良されて參りましたと云ふことを御報告申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=27
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028・加藤勘十
○加藤(勘)委員 今の纖維協會の組織が變更されて、内部統制がうまく行くと云ふことは非常に結構であり、又是非さうして戴かなければならぬと思ひますが、尚ほ聞く所に依りますと、四、五、六の三箇月間の割當に付て、今私が申上げたやうに、三〇%程度しか配給されて居ないばかりでなく、其の後の七、八、九の三箇月間の割當に付ても、前囘と殆んど同樣の状態になつて居る、さうすれば何時になつたならばさう云ふ圓滑な割當が實際上行はれるやうになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=28
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029・松田太郎
○松田(太)政府委員 其の點に付きましては、此の話を大體纒めましては、實は正直に申しまして七月の末から八月の初め頃に大體決めました爲に、或は七、八、九の間に於ては、四、五、六のやうな状況が殘つて居たかと思ひます、併し之に付ては此の間から色々話を致しまして、十月頃と云ふか、第三四半期以降に於ては、從來の状態を十分調整して參りたい、今斯う云ふ積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=29
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030・加藤勘十
○加藤(勘)委員 九月以降の問題は今後のことでありますから、此處で彼此れ言ふことは出來ぬと思ひますが、只今纖維局長の御説明で、是が實際は實現するやうに商工省としても努力願ひたい、此の點に付ては斯う云ふ希望を述べて置きます、もう一つ是も羊毛に關する問題でありますが、製品が非常に多く「ストック」されて居ると云ふこと、是は御承知だと思ひます、多くの商業倉庫には相當莫大な量が「ストック」されて居る、是は一體生産業者から、織物統制販賣會社ですか、織物統制會社に渡される、渡されたのが其の儘そこへ「ストック」されて、實際の配給面には上つて來ない、是は一つの價格の値上りを待つと云ふのか、或は政府の方針として、將來衣料切符でも出される時の準備をされると云ふのか、兎も角一方に於ては衣類がなくて困つて居ると云ふのに、一方では、聞く所に依ると或る會社の如きは、五十「ヤール」卷の物を五萬本から「ストック」して居ると云ふことも聞いて居るのですが、其の他のそれに類する會社も似たり寄つたりの數量を「ストック」して居る、是はまだ織物統制會社に渡つて居ない、生産會社の所有として倉庫に保管されて居ると云ふ實情でありますが、斯う云ふことは配給面と直接の關係を持つて來るのであります、私の今主として御尋ねするのは生産面のことでありますが、斯うした生産會社の手にある「ストック」が、軈て中小工業への一つの壓迫となつて現はれて來ると云ふことも、避け難い事實だと思ふのです、斯う云ふことに對して商工省ではどのやうに御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=30
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031・松田太郎
○松田(太)政府委員 只今の御話のやうに、現在羊毛製品の「ストック」と云ふものも或る程度ございます、是は御話のやうに生産會社に殘つて居ると云ふものもありますし、それから又織物統制會社に買入れて、そこでまだ荷捌きが付かずに殘つて居ると云ふものもございます、之に付きましては、一つには從來、先程御話のやうに、價格の問題等に付て、値上りを業界の方で待つて居つたと云ふ事實もあるやうでありますが、此の價格の問題に付きましては、先般既に解消致しまして、今日では極力之を早く織物統制會社の方に流すやうに、各地方廳の方にも御願ひをして、之の促進を致して居ります、それから又織物統制會社に入りました物に付きましては、どうしても中央の方に於て、例へば特に學校の先生でありますとか、それから或は引揚同胞の中でも非常に困つて居られる方であるとか、或は戰災等の爲に、非常に此の纖維製品類に困つて居られると云つた所に付て、特別に重點的に考へなければならぬと云ふやうな點に付きましては、中央に於て或る程度纏めて、之を其の方面に廻すやうに致して居りますが、何分にも全體の數量と云ふものが、國民全體に分けます上に於きましては非常に少いものでありますから、そこで之を本當に間違ひない、又横流れがせぬやうに之を流すと云ふことで、中央の方でも色々其の配給の上に付きましては、纖維協會の智慧も借りてやつて居る譯でありますが、それが今御話のやうに、輸送の關係でありますとか、色々な關係から致しまして、今日まだ最末端まで至つて居らぬと云ふことは、我々としても洵に遺憾に存じて居ります、今後は今御話のやうな點は十分考慮致しまして、早く必要な方面にさう云ふ物が流れるやうに、何時までもさう云ふ物を、生産業者の手に致しましても、統制機關の手に致しましても、殘して置くのが國家としての本意ではないのでありますから、それ付きましては、及ばずながら出來るだけの努力を致しまして、早く必要な方面に廻すやうに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=31
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032・加藤勘十
○加藤(勘)委員 其の必要な努力と云ふことですが、今までの政府の御答へは、何時も努力するとか、研究するとか、やるとか仰しやるが、其の具體的な努力の方法を御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=32
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033・松田太郎
○松田(太)政府委員 其の點に付きましては、只今の斯う云ふ工合にしたいと思つて居りますのは、どうしても中央で、或る程度調整しなければならぬと云ふものは中央でやりますけれども、昔のやうに何でも彼でも、配給計畫と云ふものは中央で總てをやると云ふことになりますと、どうしてもそこに時間的に申しまして「ギャップ」が生じ、又非常に遲れますので、今後はどうしても中央が或る程度全國的に見て、之を總括的に考へなければならぬ以外のものは、全部それぞれの物があります地方長官に之を配給を御任せをする、勿論其の時には先程申しましたやうに、或は引揚民であるとか、或は戰災者であるとか、さう云ふ時に困つて居られるやうな方に重點を置いて配給すると云ふ工合に、出來るだけさう云つたやうに、配給に付ては其の枠と云ふものを地方長官に與へまして、地方長官に於て、それぞれの地方々々の實情に應じた配給をして戴きたい、尚ほ物が或る地方ばかりに偏在して居ると云ふやうな場合には、商工省の一つの出店と云ひますか、地方商工局に於て其の地方に於ける調整をして貰ひたい、斯樣な方針で今後進めて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=33
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034・加藤勘十
○加藤(勘)委員 其の點は、さう云ふ風に具體的な方法を御示し下されば結構でありますが、さうしますと地方長官に此の配給を大體一任されると云ふことになると、織物統制會社、是は全國的のものであり、又地方には地方統制會社がある、府縣知事と云ふものは中央の織物統制會社には手が及ばない譯ですね、勢ひ地方的な統制會社になりますな、今仰しやるやうに物に依つては非常に地方に偏在して居つたものです、例へば今申したやうな毛織物の如きは、愛知縣には織物になつたものが相當あると思ふ、さうすると是等のものは、地方長官がどう云ふ率で、其の地方の織物統制會社の比率を御決めになるのでありませうか、それはやはり商工省の方針に依るのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=34
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035・松田太郎
○松田(太)政府委員 どう云ふ工合に各縣に割振るかと云ふことは、一應中央でやるのでありますが、其の場合に中央で、是は何の太郎兵衞にやれと云ふやうな、譬喩的に申しますならば、さう云ふ細かなことまで、從來は中央で動もすればやり勝ちであつたのでありますが、それを止めまして、枠だけを與へて、其の枠の範圍内に於て、地方長官に於て自由に必要な方面に廻して戴きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=35
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036・加藤勘十
○加藤(勘)委員 其の點はさう云ふ風に了解して置きます、其の次は生産者から消費者、此の間に織物統制會社は二段階ありますね、それでありますが、生産者の手に賣上代金が還元して來る順序、之を具體的に調べて見ますと、小賣業者若しくは小賣組合から、地方統制會社に賣上代金が還つて來るのは、現金で還つて來るらしいのです、是は小賣商組合の言明する所である、然るに地方統制會社から織物統制會社へは現金で還つて來るのか、或は封鎖小切手で還つて來るのか分りませぬが、織物統制會社から生産者の手に賣上代金が還元して來る場合には、中間價格の一割五分しか現金が渡されない、あとは皆封鎖小切手に依つて渡される、然るに今日の實情は、私が諄々しく申上げるまでもなく、生産業者が殆ど何を買ふにも、どんな副資材、副材料、石炭なら石炭を買ふに至るまで、現金でなければ買へない、斯う云ふ實情にありまする時に、販賣價格の一割五分しか現金で歸つて來ぬと云ふことでは、事實上資金に非常に窮屈を感じまして、勢ひ無理な金融をする、若しくは仕事を休むと云ふ二つの途を選ばなければならぬ結果になつてしまふのです、だから茲で御伺ひしたいのは、小賣商若しくは小賣組合から、地方統制會社に現金で還つて來たものが、地方統制會社から織物統制會社に渡される場合に現金で還つて來たものが、地方統制會社から織物統制會社に渡される場合に現金で渡されるのか、封鎖小切手で渡されるのか、又織物統制會社から生産者に渡される場合に、一割五分と云ふものは一體何を基準として算定されたのであるか、斯う云ふことに付て商工省が關與して居られますれば御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=36
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037・松田太郎
○松田(太)政府委員 只今の點の一割五分と云つた具體的の數字に付きましては、私今茲ではつきり記憶ございませぬが、大體の考へ方は斯う云ふ風に致して居ります、御話のやうに、是は大「メーカー」に致しましても、中小「メーカー」の方々に致しましても、今日色々の生産資材を、或は副資材、原料等を入手致すのに、現金がなくてお困りのことは洵に其の通りであります、それで私の方と致しましては、今日大藏省の方とも相談致しまして、さう云つた生産者に對する金融と云ふやうなことに付て、織統からさう云つた生産者に金を早く支拂つて上げられるやうに、織物統制會社に對して、紡織關係とか織機關係と云つたものに對して、相當の金融を興銀等からして貰ふやうに話を付けて居ります、其の中二割とか三割と云ふものは新圓で支拂つて貰ふやうに致して居ります、今御話の、そんなら織物統制會社と金融機關の關係に於きましては、どうかと云ふと恐らくは最終消費者から小賣商を通じ、地配を通じ、織統に金が段々下から入つて來ますものが、三箇月間位に大體見て居りまして、隨て織統と金融機關の間の金融の條件に付きましても、三箇月位を期間として、織統として生産者に早く金を廻すだけの、金額の融通に付ての話合ひを付けるやうに致して居ります、其の間今御話のやうに、下から段々と織統の方に金が廻つて參ります場合に、それが段々と新圓の方が減つて、封鎖の範圍が廣くなつて來ると云ふ御話であります、さう云ふ點も或る程度あるやうに私も聞いて居りますが、それは出來るだけ新圓で、其の各統制機關の必要な經費はそれだけ差引かねばなりませぬけれども、さうでない限りは、出來るだけ早く織統に新圓が囘收出來て、それに依つて金融機關との決濟も早く付けるやうにと云ふやうな方針の下に、今日指導致して居りますが、今御話のやうな點に付きましても、十分今後檢討致しまして、又さう云ふ方針で居りましても、さう云ふやうな問題があります場合には十分氣を付けて、今後我々の企圖致して居りますやうな方向に進んで參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=37
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038・竹田儀一
○竹田委員長 加藤君に御諮りしますが、商工大臣への御質問は大體ございますまいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=38
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039・加藤勘十
○加藤(勘)委員 纖維局長で宜しい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=39
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040・竹田儀一
○竹田委員長 さう致しますと、實は貴族院の審議の關係上商工大臣を要求して來て居るのですが、あなたの方の山口さんとか、中崎君などが商工大臣をと言つて居るのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=40
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041・加藤勘十
○加藤(勘)委員 それでは僕は讓ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=41
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042・竹田儀一
○竹田委員長 それでは途中ですが、さう云ふことにして貰ひませう──それでは山口靜江君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=42
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043・山口靜江
○山口(靜)委員 商工協同組合法に對しまして質問申上げたいと存じます、商工協同組合法に依りますと、其の目的は「組合員の事業の經營の合理化を圖るに必要な共同施設をなすこと」に相成つて居ります、尚ほ同法の提案されました理由は、中小企業を組織化し、其の自主的協同に依り企業の合理化を圖り、我が國産業の急速なる再建を圖る爲めと存ずる次第であります、開戰と同時に中小商工業は整備されまして、一部重點企業に集中され、企業の總てが軍需産業一色に塗上げられたのであります、それが爲に中小商工業に依ります平和産業は壞滅の状態にございます、戰前に於きまして、我が國の企業の中樞は中小商工業にあつたのであります、内地の需要は固より、輸出に至るまで驚くべき數字を示して居ります、勿論大企業家の手に依るものも相當ございましたが、之に對しましても下請業として、中小商業の力が寄つて大なるものであつたのでございます、結論と致しまして、中小商工業が我が國産業の基盤をなして居りましたことは、爭はれぬ事實でございます、故に我が國産業の促進に當りまして、中小企業に對して急速なる再建を圖ることは當然であります、併し政府は此の指導に對して萬全を期さなければならないと存ずるものでございます、先づ第一に資本主義的獨占企業、或は資本に依る「コンツエルン」の如き組織を避けまして、眞に中小企業者を民主的に組織致しまして、其の運營は計畫的に行はなければならぬと信ずるものでございます、第二に戰時に於ける統制に依り整備せられた業者、戰災を蒙りたるもの、軍需産業に轉換せるもの、應召に依り、或は外地に進出せるもの等等、再建を圖る中小企業者を考へなければなりませぬ、之に對しまして組織される商工協同組合は、戰時に於ける統制組合の如き排他的な指導精神を改めまして、新企業者の再建に便宜あらしめるやう、同組合の事業とは、共同施設其の他を社會的に運營致しまして、我が國産業の振興を促進致さなければなりませぬ、最後に最も重要な點でありますが、現在組織されて居ります團體は、本法の施行と同時に商工組合法廢止に伴ひ解體されることに相成つて居ります、舊法に依る團體は、戰時中已むを得ぬ事情に依りまして、平和文化國家建設の基礎をなす企業團體に適せざる指導精神に依つて、尚ほ今日繼續され、又一部解體して自主的な團體を組織せるものもありますが、それは單に看板の塗替へに過ぎないのであります、是等の團體の中には、其の内容に思はしからざるものもあるやに聞き及んで居るのでございます、折角政府が民主主義國家再建の爲に御提案になりました本法案も、從來の企業團體が協同織合の看板に塗替へられたのに等しい結果になりませぬやうに、舊法に依る組合竝に擬裝せる團體は、完全に解體整理を行はしめまして、本法に依る組合は全く新しい、一部有力者或は舊勢力の專横を避け、組合員の自由な意思に基き、民主的に組織され、且つ運用されるやうに希望するのでございます、政府提案の商工協同組合法中、特に以上の三點に對する趣旨を徹底せしめるやうに、之に對しまして御囘答を御願ひ致したい次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=43
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044・星島二郎
○星島國務大臣 本法提案の趣旨も、概ね今山口さんの御意見を含んだる御質問の通りでありまして、御質問の趣旨の通りますやうに運用して行きたい、例へば資本主義的な「コンツエルン」の如きは、今囘の「ポツダム」宣言受諾の精神から見ましても、無論當然排除さるべきでありますが、併し協同組合の目的とする所は、中小故に個々に分れて力弱い、それを纒める爲には從來のやうな行き方でなしに、所謂協同精神に依つて、組合の力に依つて、小さい力を總て纒めて、一つの共同施設或は協力體を作りたい、斯樣な趣旨でありますから、其の邊の所は十分御意見のやうに今後運ばれることと思ふのであります、さうして殊に戰災を受けた人、或は引揚同胞等の人が、自由に加入が出來て仕事の再建が出來、又新たに仕事が出來得るやうに、自由なる企業の下に總てが考へられる、其のか弱き人達を共に率ゐて起つ所に、此の協同組合の向ふ途があると思ふのであります、殊に只今仰せの如き、從來の唯看板の塗替に終つてはいけないと云ふので、今囘の法案は、普通から言ひますれば、從來の組合を唯形を變へて、さうして從來役員が任命であつたものが、或は選擧になつたり、或は從來の資産其の他を其の儘受繼げば、私はもう是の大部分はそれで宜い點も多いだらうと思ひます、中には間違つた意味の、戰時型の一つの指導者原理で以てやつて居つた組合もありまするから、唯看板だけを替へてしまひましても、其の儘精神が殘りますから、一應今囘は全部解散せしめて、さうして今度は全々新たに設立せしめると云ふ點も、只今御述べの點を十分に酌取つて出來た譯であります、併し私は政府の追放と同じやうに、ずつと末端の中小の所では、從順に戰時型になつて居つたので、今日平和になりますれば、頭さへ切替へて行けば、私はさう御心配になる點はない、一面から見れば、事務所も資産も其の儘受繼いで行つて宜いものも相當にあると思ひます、此の點は最初立案の時も議論があつたのでありまするが、只今仰せのやうに看板塗替の弊に陷つては、假令それが大部分でないにしても、惜しいことと思ひますので、すつかり之をやり變へて、全然新たなる組合の結成、斯樣なことになつた次第であります、大體只今の御主張の御意見のあつた所は、全部此の法律の目的とする所でありまして、又政府の運用に付きましても、十分御意見を尊重して今後處したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=44
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045・山口靜江
○山口(靜)委員 引續き御質問致します、商工協同組合法案中、第七十六條に付て御伺ひ致したいと存じます、同條に依りますと「舊法により設立され、この法律施行の際現に存する施設組合は、これをこの法律により設立された商工協同組合とみなす」とございますが、舊法に依る施設組合と本法に依る商工協同組合とは、内容に於きましては大同小異でありますから、便宜主義に依り其の儘移行せしめるやうに考へます、施設組合を初め現存する組合、其の他之に準ずる團體は、何れも戰時中戰爭遂行を目的とした指導精神を大なり小なり持つて居ると存ずるのでございます、又戰爭中は勿論、戰後に於ても、其の混亂時に思はしからぬ運營を致したものも多々あるやに聽及んで居ります、故に此の際折角日本産業建設の爲に、大きな希望と期待を掛けて發足致します商工協同組合は、舊法に依る組合竝に團體、及び終戰後便宜上作られた團體を整理せしめ、本法に依る組合に移行せしめることを禁じまして、本法の示すやうに、組合員の自由な意思に基き、民主的に組織されねばならないと存じます、仍て之に對しまして本法七十六條を適當に改める御意思がございませぬですか、其の點を御質問致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=45
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046・星島二郎
○星島國務大臣 一應御趣旨のやうな點も考へられるのでありますが、元來施設組合は御承知のやうに一種の共同施設のやうなものでありまして、成程戰時中から言ひますれば、國民全體が戰つたのでありますから、國民全部が追放さるべきであるが、心を改めて掛れば又全部が許される、斯う云ふ見地から、統制組合の方は相當戰時型に働いたのでありまするから、是は一つ追放致しまして、全部やり替へさす、けれども施設組合の程度は、其の末端の仕事をして居つたと云ふ程度に罪一等を減じて、さうして便宜から言ひましても、上から臨んだ統制方式も比較的少く、從來の施設組合に付きましては極めて自主的でありましたし、色々な點を勘案致しまして、そこまでやらぬで宜いだらう、斯樣な考へから、是は其の儘移行さすことに致した譯であります、別段之を修正してまでやることはなからう、此の中には、澤山の中一、二位は或は御説のやうなものがあつたかも知れませぬけれども、全體の便宜を考へ、手數を省きます爲に、斯樣な處置を執つた譯でありまして、出來ますならば此の通りでやつて行きたい、斯樣に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=46
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047・山口靜江
○山口(靜)委員 もう一つ質問させて戴きます、此の商工協同組合法が施行されます際に、舊法に依り設立されて居る組合の資産竝に負債の引繼を禁ずるやうな條項を、之に加へるやうな御意思はありませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=47
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048・星島二郎
○星島國務大臣 實は是は全部前のものは解散して、新たなものを設立する、斯樣な建前を執つて、看板塗替の氣持を一掃することが主であります、但し其の中の大半の幹部が迭り、新たなる選擧に依つて出た人が、同じやうな程度の仕事をなさる場合には、それ等のものは一應解散して、全部清算して、資産をそれぞれ出資者に返すと云ふやうなことをせぬでも、中には大多數の御意向に依つて、若し是が大部分其の儘受繼がれるやうなことがあれば、其の便宜を何も止める必要はない、出來たものが極めて民主的な形に於て出來ますれば、其の邊の便宜を圖つても宜い、斯樣な考へで居りますが、是は今後の運用に任せまして、看板塗替に依つて從來の統制者が其の儘──中には極めて立派な人があるから、再び當選されて其の首腦部になる人があるかも知れませぬが、まあ衆議院議員の選擧と縣會議員、町村會議員の選擧とが、若干其の追放の點に於きましても寛大でありますやうに、施設組合は其の儘で宜しい、それから統制組合に致しましても、今後改組されまして新たなものが出來た場合に、財産の處置や或は封鎖預金等の處置に付きましては、精々便宜を圖つてやりたい、斯樣に考へて居る譯であります、併し御説のやうな、看板塗替的な意味の援助は斷じて致さぬ、斯樣な考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=48
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049・山口靜江
○山口(靜)委員 只今何故にさう云ふやうな質問を申上げたかと申しますと、從來組合に參加致して居る方々の多くが、組合に依りまして何等かの恩恵を受くると云ふことは更に考へて居りませぬで、寧ろ役所の出店のやうな關係を持つて居りまして、組合に加入せざれば營業が出來ないから、已むを得ず加入をして居ると云ふやうな、義理で組合費を支拂つて居ると云ふやうな實情が多々ありました爲に、一部指導者の組合のやうな形になつて居りました、其の爲に、此の一部指導者の舊勢力を一掃しなければ、絶對に民主化を圖ることは出來ないと私は信じて居ります、故に從來の組合等に於きます負債竝に資産等の引繼をやりますと、其の舊いやはり一つの交渉と申しませうか、何か後腐れがございます爲に、どうしても民主化したものがここに設立されないのではないかと云ふ憂慮があるのではないかと存じまして、只今質問を申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=49
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050・星島二郎
○星島國務大臣 確かに御説のやうなことがあらうかと存ぜられます、そこで本當を言へば、同じ事務所で唯看板だけ協同組合と書換へたと云ふやうなことになるのでは、本當はいけないと思ふのでありますが、併しそれは極く特殊な例であつて、私は地方にありまする多くのものは必ずしもさうでない、同じ議事堂で、やはり憲法が變りますれば氣持が變つて參る譯でありまして、是にはやはり從來の考へ方が、逐次本當に民主的に總ての國民の氣持が變つて參りますれば、訓練されますれば、隨てさう云ふ點は漸次私は改善されると思ひます、併し此の塗替へと言ひますか、過渡期に當つてはまだまだ相當戰時型の氣持が失せませぬで、昨今統制會社其の他の點に付きましても、一應尚ほ理事者が取締役となりまして選擧に移りましたけれども、大半の職員或は其の他の氣持は、まだまだ戰時型が去りませぬ所は確かに見屆けるのでありまするが、併し漸次時が經ちまするし、又組織が變りますれば、やはり結果と致しましては自然と民主化されまして、それ等は寧ろ此の法の運用で、是は政府の方もうんと宣傳には努めますけれども、國民自らが、組合員自らが自覺して行かなければ、本當の目的は達せられぬと思ふ譯でありますが、併し只今御意見のやうな弊害のないやうに、精々努めて參りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=50
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051・山口靜江
○山口(靜)委員 私の考へと致しましては、どう致しましても舊法に依る組合で其の儘移行せしめることは、政府に於て如何なる監督或は調査の後に許可すると致しましても、本質に於ては中々難かしい問題だと存じますが、商工大臣に於きまして其のやうな御意見でありますならば、何卒愼重なる監督或は御調査の後許可下さいますやう、御願ひ致す次第であります、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=51
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052・星島二郎
○星島國務大臣 御趣旨は十分尊重致します、殊に法律の面から見ますれば、全然新しいものが出來る形になつて居りますから、唯實際面と致しましてさう云ふ結果があるだらうが、それに對しては十分善處したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=52
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053・井田友平
○井田委員 今の山口さんの質問に關聯して一寸…私も此の舊組合から資産を引繼ぐことは、非常に重大な問題だと思ふのですが、大體協同組合は、小さいものなり大きいものなりの、業態の相似た人が寄つて福利の施設をして行くと云ふのが一つの目的ですが、舊組合は全部を網羅致しまして、さうして是が統制の組合を作つて居つて、是はもう上から下まで全部の人が入つて居るので、結局此の資産を一度解散して、組合員に全部引渡して、さうして舊い組合を完全に解散しないことには、協同組合の精神はそこに現はれて來ないと思ひます、又實際に於て本法を作つた精神が全然現はれて來ない、大臣はどうも、餘り小さい末端の方は能く御知りにならぬから、今のやうな御答辯をなさるけれども、是は一番の急所ぢやないかと思ふのですが、此の點を一つ大臣に再考して戴きたいと云ふことを一應申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=53
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054・星島二郎
○星島國務大臣 施設組合は、先程御答辯しましたやうに大體引繼ぐことを原則として居りますけれども、統制組合は此の法律の建前は引繼がないのです、全然新たなものでやるのです、唯極めて圓滿に總てが行つて居る中に、今度出來上るものが、新しい參加者が比較的少くて、さうして同じものが出來上つたと云ふ場合には、必ずしもそれを排斥せぬでも宜いではないか、併しそれは何も政府が認めた譯ではないのであります、併し法律の建前は、全然別なものを作るのだと云ふことに徹底しなければならぬ、斯樣に思うて居ります、御意見は尊重してやります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=54
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055・井田友平
○井田委員 大臣が言ふのは、旨く行つたら宜いぢやないかと云はれましたけれども、大體舊い統制組合と云ふものは、一定地域の全部の、糞も味噌も皆一緒にしてやるのであります、是が協同組合で旨く行く譯がない、ですから、是は根本が旨く行く譯がないのですから、それを旨くやらせれば、必ず看板の塗替だけで、協同組合の精神はそこへ發露して來ない、ですから是は舊い統制組合を一度完全に解消するのには、どうしても資産、負債と云ふものを全部清算して、次の協同組合に引繼がせないと云ふことが、一番大事なものぢやないかと思ふのです、商工省で許可するしないと言つても、表向旨いものが來たら許可しない譯には行かないのですから、是は此の條項を我々委員會では是非入れて戴きたいと云ふ希望を持つて居るのですが、此の點商工大臣の御考へと根本的に違ふのですから、旨く行く譯がない、行くと云ふのは要するに看板の塗替で、何かそこに舊い指導者が、自己の有利な立場で組合を作らんが爲にやるのであつて、根本は旨く行く譯がない、是非其の點は商工大臣の御考へを變へて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=55
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056・星島二郎
○星島國務大臣 今一寸私の御答辯が誤解を受けたかも知れませぬが、引繼がないのです、法律の建前では全然引繼がないのですから、御心配はないのです、唯非常に圓滿に行つた場合は──要らぬことを言つたから誤解を招いたかも知れませぬけれども、全會一致的の空氣でやる場合は、何もそれを排斥する必要がない、是は併し法律で許す譯ではないのですから、自ら別個の御話です、井田君の御質問の通りで、左樣でございますと言つて答辯して宜いかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=56
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057・中崎敏
○中崎委員 私は極く簡單に商工大臣に御尋ね致します、最初配給部面の問題に關しまして一つ質問申上げます、肥料國家管理法案が政府に於て考慮中だと云ふことを傳へられて居ります、肥料の生産が重要であることは申すまでもありませぬが、本年の増産の報を入れまして、幾分か肥料に對する熱意が減退するやうでは、更に日本經濟再建の上に於て、大なる困難が起ることがありまするので、此の點に付ては一層の熱意を以てやつて戴くことは勿論でありまして、我が黨に於きましては、肥料の國營を主張して參つて居る譯でありまするが、政府に於ては、國家管理を以て之をやつて行くと云ふ方針のやうに考へて居ります
〔委員長退席、加藤(一)委員長代理著席〕
就きましては肥料の配給面に於きまして、日本肥料株式會社をして肥料を一手を買入れ、之を販賣せしめると云ふ風に一般には考へられて居るやうでございます、之に對しまして農業會と致しましては、自分の組織を末端まで持つて居る關係上、之を運用することに依つて今後の肥料の配給を一手に扱ひたいと云ふ風な、強力な反對と言ひますか、意見が茲に擡頭して居る譯でございまするが、此の點に對して、政府としてはどう云ふ風な方針を以て臨まれるのか、御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=57
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058・星島二郎
○星島國務大臣 肥料問題に付きましては、大體民間側の御意見、或は政黨各派の御意見は、大凡もう盡きて居るやうでございます、私は石炭問題に付きましても、丁度同樣、此の議會中凡ゆる方面の御意見を實は探つて居つたやうな譯であります、さうして其の粹を集めて最後に決定する所を、商工省としての肚は決めた譯でございますが、併し是は最後は、それぞれの委員會に諮つて最後の磨きを掛ける、斯樣な方針を執つて居る譯でありますが、肥料に付きましても同樣でありまして、大凡社會黨の意見、自由、進歩黨の意見、其の他民間諸團體、産業團體等の意見も大凡出盡しまして、肥料行政は斯くあるべきだと云ふ所に、大凡の項目に付きましては略略出盡したやうであります、そこで最後に、今度出來ました經濟安定本部の中に、肥料對策委員會と云ふやうなものが今設けられて居りまして、之に依つて最後的の決定をしたいと思つて居ります、現在の制度と致しましては、「イデオロギー」に囚はれず、何處までも増産第一主義でやつて行く、さうして世の中が落著いた所で徐ろに考へて行きたい、斯樣に思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=58
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059・中崎敏
○中崎委員 先程申しました中で、肥料の一手買取りを日本肥料會社でやらしめるか、或は農業會で以てやらしめるのが適當であるか、或は是等の兩方を取入れた方法に依つてやられる方針であるか、其の點を御答辯願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=59
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060・星島二郎
○星島國務大臣 農業會から今まで何百通と云ふ電報も受取つて居りますし、相當研究致して居りますが、今の所是は寧ろ農林省の所管で、商工者としては生産第一主義で分擔してやつて居る譯でありますが、將來の方向としては、今の日本肥料は寧ろ生産の方面に移つて貰ひたい、斯樣な考を以て進んで行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=60
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061・中崎敏
○中崎委員 次に中小商工業に關する施設の問題は、非常な熱意を以て議會各方面から叫ばれて居る譯でございますが、中小商工業を助長すると言ひましても、其の意味が極めて漠然として居りまして、どの範圍のものを中小商工業として御取上げになるのか、金融の面に於きましても、或は資材の面に於きましても、其の他の政府の凡ゆる施策と云ふものが、此の中小商工業の範圍がはつきりして居らなければ──其の實體がはつきりして居らなければ、到底其の結論、目的と云ふものが的確に得られないのではないかと思ふのでありますが、此の點に付て、もう少しはつきりした御考へを此の際御聽きしたい、例へば大工業とはどの範圍を以て大工業と見るか、中工業はどの範圍を以て見るか、小工業はどの範圍を以て見るか、大中小それぞれの状態が違ひます、或は資産の状態、營業の状態悉く違ひますので、是等を一括致しまして、唯中小商工業と云ふやうな概念の下に處理されるに於ては、實際適切なる施策が行はれないのではないかと思ひますが、此の點に付ての御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=61
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062・星島二郎
○星島國務大臣 此の間本會議で、福田君の御質問に對して、禪問答のやうなことを申上げて笑はれたのでありますが、大體是は難かしい一つの線でありまして、私は現在肥料とか、紡績とか、大きな重工業、或は輕工業にしましても、大資本でやつて居るものを全部取除けば、後は全部日本の仕事は中小工業だと考へて居ります、商工省の仕事は、全局を擧げて其のやることは中小工業の助成だと、斯樣に此の間も御答へしたのでありますが、併し司令部等に於きましても、一體どの程度以上はやらすまいと云ふやうな、一定の線を考へて居るのではないかと思ひます、一つの例と致しまして、今度岡山縣に出來て居ります三菱の飛行機工場、是は厖大なものでありますが、幸ひに七割位殘つて居ります、是は政府の所管として、全部民間に貸與へて宜いと云ふことになつて、其の貸與へる條件に、百人以内の勞務員を使ふ程度の工場と、斯う云ふことになつて居ります、一面中小工業を盛んにやれと云ふ激勵を受けて居りますので、ははあ、是は關係筋では中小工業とは百人以内の勞務者を持つて居る、其の程度の仕事を言ふのだなあと云ふことも想像出來るのであります、從來は五百人以下の勞務者でやつて居るものは中小工業の方に入れて居ります、併しながら今後の貧乏した日本に於ては、五百人位の仕事は寧ろ大工業と云ふやうな部に入るかも知れませぬ、大體の概念は、少くとも資本金ならば百萬圓以下、或は勞務員なをば百人以下と云ふやうなことが、法律の建前として必要になつて來るかも知れませぬが、兎に角我々と致しましては、全部が中小工業になつたのだと考へて、總てを、助成して行きたいと云ふことを以て、此の場合の答辯と御諒承願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=62
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063・中崎敏
○中崎委員 今の商工大臣の答辯に依りますと、中小工業を今後盛立てて行くと云ふ風なことで、全部の工場がさう云ふことになると云ふ建前ならば、唯國民を騙す言葉に過ぎないのではないかと考へまするし、實際の施策に於きましても、中小工業と云ふ風なもの、或は金融の面に於て、例へば今度の復興金融金庫の立場に於きましても、中小工業に對しては、あの豫定された資金の中の幾らを之に貸出しをするか、更に又資材の部面に於ても、中小工業に對しては如何なる部面に於て、どう云ふ範圍に於て盛立てるのかと云ふ問題を考へて見るに、必ず打突かる大きな問題だらうと思ひますので、此の問題に付ては速かに科學的な一つの定義と言ひますか、範疇を與へられまして、中小工業に適切なる施策を講ぜられんことを希望して已まないのであります
次に臨時物資需給調整法の時に於きまする政府の答辯は、重點配給に依りまして少い物資を賄つて行く、更に又産業の復興をやつて行くのだと云ふ御考へのやうでありますが、大體政府の考へて居られます重點物資の適用を受ける範圍と云ふものは、非常に大きな工業或は商業と云ふものを土臺として考へられて居るのではないか、本法で狙つて居る所の、中小商工業に依つて出來上りました商工協同組合法に對しては、如何なる方針を以て、如何なる基準を以て、如何なる範圍で實際の割當配給が與へられるのかどうかと云ふことを、少し具體的に説明して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=63
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064・星島二郎
○星島國務大臣 前段の中小工業に對する概念を明瞭にしないと、金融等に於ても云々との御意見は御尤もと存じます、是等は假に復興金融金庫でありますれば、それに參加されて居ります復興金融委員會と云ふものが、其の根本の方針を決めますから、其の場合には中小工業に主として重點を置いて、十分なる金融を圖ると云ふ場合には、必ず其の御意見が出ると思ひますから、其の時に善處したいと思ひます
それから今の問題に付きましては、假に一つの例を以て見ますれば、重點的に割當をするからと言ひましても、何も中小工業に關係せぬことはない、皆響いて來る譯でありまして、假に先程纖維局長が發表しましたやうに、今年度八十萬俵近い棉を入れる、其の中六割は見返り物資に使ふ、後は内地の民需にする、其の仕事はどうすると云ふやうな割り方を決めて行きまして、其の他は皆中小工業であります、其の紡績等を餘りにも一貫的にやり過ぎると、先程の御質問のやうに、加藤君のやうな問題も起りますから、十分に其の邊に按配しなければなりませぬが、總て末端に行きますれば、皆同じやうに私は響いて來ると思ひますから、需給調整法の重點割當なんかも、決して中小工業の方には關係ないことだと云ふ意味ぢやなしに、全部が關聯して居るやうに私は考へます、此の點も御諒解を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=64
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065・中崎敏
○中崎委員 今まで論議されました點は主として資材、金融、組織と云ふ風な方面から考へられた譯でございまするが、日本の中小工業を眞に發達させる爲には、商工業道徳の昂揚と云ふことは是非ともしなければならぬ點ぢやないかと思ひます、今まで市場に出て居る品物がさうでありまするが、買つて來て見ると値段が馬鹿に高いのであります、所が使つて見ると一遍に駄目になつてしまふと云ふ物が、あちらこちらに氾濫して居る状態であります、是は將來日本が又輸出する場合に、其の面を擔當する中小工業に期待する所は非常に大きい譯でございまするが、此の部面に於ても、やはり今のやうな觀念を持つて、昔は惡からう安からうだつたものが、今度は惡からう高からうと云ふ状態に於ては、到底世界的水準に立つた日本の商工業の發展は望み得ないと考へられます、是は將來の問題と致しましても、差迫つた現在の問題と致しましても、商工業道徳の昂揚は是非必要ではないかと考へます、之に對し此は組合の運用に依つて其の點を是正することは出來まするが、更に私は政府としましても、積極的に商工業道徳の昂揚に付て特に御配慮願ひたい、更に又此の協同組合法案の法規の中にも、製品の檢査と云ふ條項を差入れることに依つて、自發的に此の組合が製品を良心的に作つて行く途を聞く必要がないかと考へて居る譯でございまするが、此の點に付ての商工大臣の御意見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=65
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066・星島二郎
○星島國務大臣 洵に御意見御尤もで、私は殊に商工業者に付きましては、其の點に十分の意を用ひて行きたい、一種の精神運動を起さなければならぬ、是は日本が起上る根本だと私は思ふのであります、今の安からう惡からうが、高からう惡からうとなつたら大變なことだと思ひます、其の點は私は何も法律の力に依つてのみ、さう云ふことをやることは到底不可能と思ひますけれども、出來るならば是は刑法を改正してでも──一時日本で芯のない鉛筆を「エジプト」に送つて酷いことをやつた者がありますが、さう云ふ奴は國家を毒するのでありますから、嚴罰に處すると云ふ法律さへも私は制定すべきだ、斯樣な考へを以て御意見には最も共鳴するものであります、尚又協同組合の運用に付きましては、勿論私は今の檢査制度、それも自主的な、協同的な意味に於て組合檢査等は當然なされる譯でありますから、寧ろさう云ふことこそ、私は協同組合の狙ふ所だ、斯樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=66
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067・中崎敏
○中崎委員 それから技術の面に付て伺ひますが、技術方面の指導に付きましては、色々質疑應答があつたやうでありますが、私は更に手取早い意味に於て、工業試驗所の如きものを擴充することに依つて、絶えず此の中小商工業者、或は此の組合が之に相談を持掛けることに依つて、其の技術の指導を受けると云ふ風な機構にして貰ひたいと思ふのでありますが、此の點に付てどう考へて居られるか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=67
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068・星島二郎
○星島國務大臣 それも檢査所と同じやうに、一つ本當に、若し政府に機關があれば、近所の試驗所と組みませうし、或は協同組合が將來非常に發達したものが出來ますれば、組合自らが試驗所を設けられても結構だけれども、唯今日のやうに非常に財政の足らぬ時に、新らしい機關を中々設ける譯に行きませぬから、現在ありまする色々な機關を十分利用したい、さうして尚ほ足らぬ場合には、私がいつかも本會議で申したやうに、文部省の工業學校と組合つて行くことを考へて、是は今研究は依頼して居りますが、どう云ふ風に組合つて行くか、是は地方の特殊の産業、假に名古屋地方で陶器なら陶器の産業があれば、名古屋には必ず陶器に關する色々の試驗所、機關、教職員がある譯でありますから、さう云ふものを旨く組合すやうな方法、特に纖維の盛んな所、さう云ふ所にはそれぞれの工業學校がありますから、さう云ふものと取組んで──學校と云ふものは、必ずしも机の上で教へる行き方でない行き方を、今後やつたらどうかと云ふ考へ方を致しまして、丁度御意見のやうなことを、何か形で現はして行く爲に、協同組合を利用すると云ふことに持つて行つたらどうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=68
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069・中崎敏
○中崎委員 最後に、是は昨日も委員から質問であつた、商工會議所の人的構成の問題に付て御尋ねしますが、從來商工會議所は、財閥とか或は大工業か商人の代辯的の存在であつたのでございます、所が今日に於きまして、此の機構が改正されまして、新しく商工會議所が出來る譯でありますが、以前の人々が依然として大きな力を占めて居りまして、實際に於て我々の望んで居る中小商工業者の立場が取入れられると云ふ機構にはなつて居ないのではないか、寧ろ斯の如き機構は、中小商工業者を主とした機構に變つて來べきぢやないかと考へて居る譯でありまするが、それが昨今あちらこちらでもちらほら問題になつて居るやうでありますが、政府に於きましては、特に此の點に留意されまして、此の機構をして、眞に──今までのやうな封建的な或る一部の階級のみの利益代表機關であるが如き存在とならしめないやうな注意を御願ひしたい、斯う云ふやうに思つて居る譯でありますが、之に付て御意見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=69
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070・星島二郎
○星島國務大臣 御意見の通りに考へて居ります、それは一つはやはり國民自らが目覺めて、訓練されて來なければならぬ、併し將來大きな工業と云ふものは、實は先程申したやうに段々なくなるやうですから、私は現在の改組されました新しい商工會議所が出來る場合、大部聽きますれば中小工業者が其の儘入つて居る所もありますが、中には餘り「メンバー」が殖える場合、出來れば其の代表者が參加する、或は組合で以て參加すると云ふことも考へられます、それぞれ其の地方々々向き向きのものが出來て宜い、併し考へ方は、只今御意見のやうな調子に、一つ從來の型から離れて、本當に友愛の精神に滿ちたやうな、上下なしの出來方と云ふものを期待して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=70
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071・中崎敏
○中崎委員 有難うございました、之を以て商工大臣に對する質問を打切りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=71
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072・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 それでは金子さん澤田さんの商工大臣に對する御質問は午後大臣御出席の上でやつて戴くことにして、是で休みます、午後は一時から正確に會議を開きます
午後零時十六分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=72
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073・会議録情報2
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午後一時十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=73
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074・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 午前中に引續きまして會議を開きます──布君、纖維局長は直ぐ見えますから、課長で宜しい點を一つ…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=74
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075・布利秋
○布委員 私は特に平面的に御尋ねをしたいと思ひます、産業組合から協同組合法に移ります説明を色々今まで聽きましたけれども、はつきりと短い言葉で二つの姿を分けて戴けば、私達が他の人から聽かれても、自分自身で返答が出來るのですが、今までの御説明を頭の中に入れて置きますと、外から質問を受けても非常に答へがしにくいのです、どうか短い言葉で、産業組合から協同組合に移る其の性格の相違、どうして移らなければならなかつたか、それに變つたことを、一つ我々共に説明して戴くと大變便利だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=75
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076・小出榮一
○小出政府委員 産業組合法から始まりまして、各種の組合制度が其の間に發生致しまして、今度の商工協同組合に至つた譯でありますが、其の間の特に産業組合との關係に付きましての御尋ねであるやうに考へるのでありますが、御承知のやうに、産業組合法は明治三十年前後に發生致しました非常に古い制度でございまして、元來此の産業組合制度の狙ひと致して居りましたのは、産業と云ふ非常に廣い言葉が使はれて居ることからも分りますやうに、必ずしも農業團體に限らず、商業者でも工業者でも、凡そ産業關係のものならば此の産業組合を組織出來る、斯う云ふ建前になつたのでありまして、其の中には御承知のやうに信用組合、販賣組合、購買組合、利用組合と云ふ四種類の組合制度が入つて居りまして、大體略略此の協同組合的な思想の下に運營出來るやうになつて居つたのであります、所が實際上産業組合法の今日までの發達の歴史を見ますと、主として先づ是が農村地方に發達を致しまして、恰も産業組合と云ふものは農業團體であるかの如き沿革的な發達をして參りまして、自然産業組合法を所管致して居りまする官廳も、農林省が主として之に關係致しまして、商工省は殆ど關係しない、商業者、工業者の産業組合と云ふものは殆ど出來ませぬで、曾てずつと昔に軍の發註品等に關する下請工業の産業組合が、高知縣か何處かで出來たことがある位でありまして、殆ど商工業者には利用されなかつた、利用出來るやうな恰好になつて居つたにも拘らず、歴史的に是が農村だけに發達を致しましたので、産業組合は即ち農業團體である、斯う云ふ風な發達をして參りまして、自然商工省關係に於きましては、大正十四年に至りまして、工業組合が出來、昭和七年に至りまして商業組合と云ふ制度が出來ました、此の商業組合、工業組合を一緒に致しまして、昭和十八年、戰時中に現在の商工組合法が出來たのでございます、それを今囘商工組合法を廢止致しまして、之に代るものとして商工協同組合と云ふ制度を作る、歴史的な順序を申上げますれば、さう云ふ風なことになつて居るのでございます、然らば産業組合と商工協同組合とはどう云ふ點が違ふかと云ふことになりますると、其の目的から申しましても、先づ産業組合と云ふものは、組合員の産業、それから個々の組合員の經濟の發達と云ふ文字が使つてありますが、此の經濟の發達と云ふ意味は、家庭經濟、家計經濟と云ふ意味でありまして、詰り組合員の産業の合理化と云ふ風なことよりは、寧ろ日常消費生活の經濟上の、家計上の改善、家計上の利益を増進すると云ふ風な、極めて私的な考へ方に出發して居る色彩が強いのであります、之に反しまして、協同組合と云ふものは、やはり組合員個々の事業其のものの經營の合理化、それを通じまして全體としての商業なり工業の改善發達を圖つて行かうと云ふ風な狙ひが違つて居ります、さう云ふやうな點から致しまして、其の行ひまする事業等に付きましても、種々の點に於て相違がある譯であります、隨ひまして今囘新たに、略略其の根本精神に於ては、協同組合的な精神であると云ふ點で類似致して居りまするが、別個に商工協同組合と云ふものを新しい制度として設けることに致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=76
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077・布利秋
○布委員 今それを承りまして考へますことは、時の流れに迎合する、又それを利用すると云ふ建前を、私は古い産業組合が取つたものであると考へて居りましたらば、やはり考への通りになつた、それが看板塗替の言葉が激しいのでありますが、結局其處へ落着いて行く、何と申しても看板塗替にしかなりませぬ、さうすれば新産業組合と云ふやうな名前にして戴いた方が私は宜かつたらうと思ふ、茲に協同組合と云ふ別個の言葉を便はれたと云ふことは、やはり協同すると云ふことが時世の流れの文字であるからと云ふので、斯う云ふ文字を御使ひになつたのぢやないかと云ふ感じが起つて來るのであります、私共が心得て居りまする「コーペラティーヴ・ソサエテイ」と云ふものは御適用になつて居らぬ、「コーペラティーヴ・ソサエテイ」なるものが、日本で之を譯して産業協同組合となつて居るのですから、其の經濟公式論を外れてしまつて、時の流れと迎合して行く、利用して行かう、是ではやれぬから一つ此のものを作つて行かうと云ふのでないか、曩に商工大臣が申されたやうな、鉛筆の形をして居つても中に蕊がないと云ふのは、是は昔から日本の貿易品です、其の通り、是は鉛筆の蕊のない協同組合と云ふ名前だと私は思ふ、「コーペラティーヴ・ソサエテイ」なるものの經濟的な公式論と云ふものを離れて、之をおやりになると云ふ所に、もう既に看板塗替の、惡い言葉で言へば、まあ人が知らぬから胡麻化して置かうかと云ふ──商工省に於て「コーペラティーヴ・ソサイテイ」なるものの公式論を御承知でない筈はないのです、又實際云ふと、本は幾らもありますが、是は外國へ行つて──今は行かれませぬけれども、戰前でも行つて、「コーペラティーヴ・ソサイテイ」なるものを專門に、何處の國はどう云ふ風に使つて居るか「アメリカ」はどう云ふ風にそれを活用して居るか、運營の實體を十分に頭に入れてやらないと、唯あの公式論なるものを、活字の上のものだけを頭に入れたのでは、私は運營と活用に誤りを生ずると思ひます、けれどもそれさへも御入れになつて居らぬ、其の活字の上に現はれたものさへも御入れになつて居らぬ、運營などと云ふものは、それから先に起るのですが、其の大本になるものさへも頭に入れないで、さうして産業組合を、時の流行りだからと言うて、二、三十年前に之を使つて來た、それが今度は戰敗した國だから協同組合と云ふ名前なら宜からうと云ふやうな、思ひ付きで以ておやりになつた感じを私は受けざるを得ぬと云ふことになつて來る、さうすれば私は寧ろ斯う云ふ文字を御使ひにならぬ方か宜いと思ふ、「コーペラティーヴ・ソサイテイ」なるものに鉛筆の芯のないやうなことを、是は「コーペラティーヴ・ソサイテイ」だと、まあ言ひはされませぬ、けれども譯はそこへ行つて居ると思ふ、私は別に修正などと云ふことに對して強いことは申上げませぬが、そこは良心的な問題だらうと思ひます、それで看坂塗替と云ふ感じが起きて來るし、茲に此の法案の前途が心配される、此の點に付て小出さんから今話を聽いたのですから、今度は松田さんから一つ話を聽きたいと思ひますが、松田さんは實に懇切に、正直に熱を持つて、小出さんと同じに洵に能くものを知つて居られる、其の意味に於て、簡明に我々の分るやうに説明して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=77
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078・松田太郎
○松田(太)政府委員 協同組合の問題に付きまして、之を纖維の方の立場を考へて見ますと云ふと、御承知のやうに戰時中と申しますか、或は終戰後比較的最近までに於ける色々の情勢を考へて見ます場合に、業界の總意と申しますか、業界の眞の協力と申しますか、さう云つた業者の本當に活きた力なり、氣持と云ふものを守り立てて行くと云ふことが、當時の國家の已むを得ざる要請とは申すものの、兎角さう云ふ方が輕視されまして、自然總てが統制會社であるとか、或は同じ組合にしましても統制組合でありますとか、所謂當時の流行りの指導者原理的な考へ方に依つて運行されて參つて居つたのであります、併しそれに依つて此の戰時中に於きましても、正直に申しまして、十分な生産を擧げて居つたかどうかと云ふことは疑問でありますし、況や戰後に至りまして、本當に各業界の方方の創意なり、工夫なるものを十分活かして、さうして足らざるをお互ひに補ひ合つて生産に邁進して戴くなり、又さう云つたものを極力適切に配給の方に向けて行くと云ふやうなことを考へましても、どうしても茲にさう云つた方々の自由な氣持から、本當に一體になつて結合すると云ふやうな意味での組合と云ふものを作る必要があるのぢやないか、それが恐らく今度の協同組合を作られました一つの大きな精神的な氣持になつて居ると思ふのであります、特に今日財閥等の問題も非常に叫ばれて參りまして、先程來加藤委員からも御話がありましたやうに今後の日本の産業と云ふものを興して參ります爲には、飽くまで中小の工業者と云ふものを本當に守り立てる、又さうする以上は中小の工業者もお互ひに協力し合つて、或は共同施設を作るなり、或は原料其の他を一緒になつて買ふなり、又出來たものをそこで一緒になつて他の方に廻はすなり、さう云つたことを飽くまでして行くと云ふことが、又今日の情勢から見まして、中小工業者の本當の育成と申しますか、育成と云ふ言葉は失禮でありますが、寧ろ中小工業者の自發的な發展をして行かれる上に於て、政府が幾分なりとも御役に立つ行き方ぢやないかと、斯樣に考へて居りまして、是を纖維の方に考へましても、出來るだけ生産の方に從事せられて居りましたやうな從來の團體の方は、此の協同組合法案が通過されました曉に於きましては、一刻も速かに協同組合を設立して戴く、さうしてそこでそれぞれの自治性を發揮して戴いて、原料なり、資材なり、さう云ふものをお互ひの力に依つて確保し、又お互ひに融通し合ふと云ふやうな行き方で増産に勵んで戴いて、之を又纖維の問題に付て言ふならば、國民に配給します場合には、別に又配給機關と云ふものは考へて居りますが、飽くまでさう云ふ場合に、特に生産増強、或はそれに依つての中小工業者の御互ひの發展と云ふ點から、此の協同組合と云ふものを、出來ました曉に於きましては、我々としましても出來るだけ活用して參りたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=78
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079・布利秋
○布委員 此の法案は別に逐條審議がどうと云ふ必要もなく、重點は私は今申上げる所にあると思ふ、君は井田委員にしても、又山口委員にしても、今日午前中にそこに觸れて居る、其の他の委員の方もやはり之に觸れて居ると思ひますが、問題の核心と云ふものはそこにあると思ふ、それは自由意思を尊重するのですけれども、自由意思と云ふものが組合員のみの自由意思になつて居る、だから組合員以外の者の自由意思は入る道理がないと云ふことになる、組合の枠の中の自由意思と云ふことになつて居る、それは組合だから當然だ、併し其の枠の中にある組合の自由意思なるものも、正しい自由意思と慾の強い自由意思──己れを忘れた強慾なのも組合の自由意思なんだ、自由意思に任すと云ふ文字もありますし、合理化と云ふ文字も大分出て居りますが、合理化をすると云ふのは、是は抽象論です、さうするとやはり此の組合法案は私は非常に抽象的な法論にしか終らぬと思ふ、だから大なる財閥が潰れたと言はれますが、それは形の上に於ては潰れたが、それが分散して今日潰れては居らぬと私は思ふのです、是は考へ方だから違ひますけれども…、さうして中小の者に組合を作らせて行かせようとする、此の中小の中へ大財閥の分裂させた形のもの、而もそれは内實分裂して居ないのが、分裂の姿を以て此の組合員の中に入つて來て居る、それはもう財閥は潰れて小さくなつたのだからと言うて中に入られて居つても、事實上の大きな根元は消えて居りませぬ、さうするとどうなりますか、此の中小の狙ひは、結局大と云ふものとやはり提携して居る譯なのです、此處を一寸御考へにならぬといけない、「コーペラティーヴ・ソサエティ」でないと仰しやるなら構はない、「コーペラティーヴ・ソサエティ」の公式論だつたら駄目です、さう云ふものは「コーペラティーヴ・ソサエティ」にありませぬ、だから新産業でおやりになれば何も文句はないのです、どうしてこんな經濟公式論に由來のある文字を取られたか、大體之には資本金と云ふものが限度があります、其の限度などと云ふものは一つも私は見當らぬ、幾らでも伸びれば伸びる程宜い、「コーペラティーヴ・ソサエティ」なるものは、伸びることの出來ないやうにふん縛られて居り、資本金に限度がある、其の外にまだ限度があります、眞の中小工業を護る爲に相互扶助の爲にやつて居るのであつて、之には非常な緩みを持たせて居る、是が詰り資本の限定のないものは、何處まで肥るかと云ふことになる、初め「スタート」を切る時には中小で引摺つて行つても、事實は何處まで擴大して行くやら分らないものを、わざわざ知つて居つて御作りにおると云ふ商工省の御方の氣持が分らない、あなた方の方はさう云ふことを知り拔きなのですから、それに付て知り拔かれて居る人に、此の御返事をと言うても都合が惡いでせうけれども、併しなぜ限度を御決めになつて居らぬかと云ふことに對する御返事を一つ戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=79
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080・小出榮一
○小出政府委員 商工協同組合の根本精神と申しますか、其の趣旨は、申すまでもなく中小の業者を主眼と致しまして、中小の工業者の一人々々では極めて不合理な經營形態になつて居りまするものを、共同の力を合せることに依りまして、大規模の經營者が持つて居りますのと同じ經營の合理性を與へようと云ふ所が、其の主たる狙ひでございまして、御話のやうな協同組合精神と云ふやうな基礎に一應立合致して居る譯でありまして、組合の名稱等に於きましても、さう云ふ風な趣旨から致しまして協同と云ふ文字を使つたのでございますが、御指摘のやうに、終戰後に於きまして財閥の解體、軍需産業の消滅に伴ひまして、大企業者と云ふものが段々解體せられて來る、隨ひまして今後日本經濟の中堅と申しまするか、中核を成すものは中小商工業であると云ふことは、殆ど常識の如く言はれて居るのでありまするが、其の際に我々と致しましても十分警戒して居りまする點は、單に大企業者、大財閥がなくなつて、其の代りに中小商工業が之に代つて登場するのだと云ふ風な、單純な考へ方を持つて居る譯ではないのでありまして、其の際に御話のやうに、一應大企業の形態は形の上に於てはなくなりまするけれども、實は分散致しまして中小の段階に下つて來て、大企業者自らが中小の段階に下りて來て、中小商工業を壓迫すると云ふ風な虞が尚ほ今日全然ないではないと考へられます、隨ひまして今後協同組合の組織等の中に、さう云つた財閥の解體せられて居りまするけれども、實質上繋がりのあるやうな勢力が協同組合の中に支配的になつて來ると云ふことは、當然協同組合の運營上十分注意しなければならない點でありまして、政府と致しましても、協同組合の設立の意義から、或は定款、事業の運營等に付きましては十分意を用ひまして、再びさう云ふ風な弊害が起らないやうに致したいと考へて居ります、尚ほ法律の上に於きまして、組合自身の資本金額の制限がないと云ふ點に付きまして御質問でありまするが、是は大體組合の事業運營に依りまして、それぞれ業種別に色々の事業を行ひまするし、それに要しまする資金の内容なり、金額等に付きましても、各種の團體があらうと思ひまするので、之に付きまして劃一的な最高の基準を設けると云ふことは寧ろ不適當で、組合の自由なる活動を妨げる虞がある、斯樣に考へまして、資本金額等に付ては別に制限を設けて居りませぬ、併しながら若しも協同組合が非常に巨大なる──恰も曾ての財閥の如き巨大なる企業形態になる虞が──さう云ふことはないと思ひまするが、萬一さう云ふ風な發展形態を示して參りました場合には、最早是は協同組合の本來の精神を逸脱するものでありまして、さう云ふ場合に於きましては、之に對しまして他の何等かの方法に依りまして、適當なる「コントロール」を加へたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=80
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081・布利秋
○布委員 其の點極めて明白になりました、唯まだ頭に入りませぬのは、山口委員の質問や、井田君の關聯質問と同じことになりますが、詰り法律で形のみを變へて居りますけれども、まだ後に大部殘物が殘つて居ると思ふのです、是は書面ではどうにでもなるが、人間が實際に變つたのではない、そこに大きな「ハンディキヤップ」がある、幾ら自治的に自治的にと言はれても、組合の中に同じ筍が出て來る、是が皆戰爭の失敗に關係のある人、之を新しく綺麗に外形を整へて貰ひたいと云ふのが、私は皆の肚の中の念願であらうと實は思ふのです、昨日の質問のやうに、轉廢業者はもう金を貰つたのだ、そんな者は組合に入つて來ては困る、外地から歸つて來た者も入られは困る、斯う云ふ説まで出たやうですが、私は其の時外に出て居たので、小出政府委員の答へられることを聞かなかつたけれども、ほんの一口で宜いから、外地から歸つて來た悲慘な姿の者、「サーベル」の力で泣くに泣かれず止めさせられた者、一方では止めなかつた者が如何に今日幸福な生活を獨占して居るか、此の大きな凸凹に對してどう御考へになるかと云ふことと、斯樣な所謂弱者に對して加入が出來るか出來ぬか、之をはつきり言つて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=81
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082・小出榮一
○小出政府委員 山口委員の御質問に對して、前に御答へ致しました問題に關聯する譯でございますが、御話のやうに戰時中に轉廢業致しました者、又今般終戰後新たに外地から引揚げて來ました方々に對しましては、現在殘存して居る業者の組織して居ります組合が、其の組合員としての資格を持つて居るにも拘らず加入を拒むと云ふやうな、不當な加入の拒否は認めない方針であります、隨て協同組合なり、現在の組合に於きましても同樣でありますが、苟くも組合員としての資格を十分に持つて居ります以上は、當然其の組合に對しまして、何等正當の理由なきに拘らず、加入を拒むと云ふやうな事態のないやうに、十分に監督を致して參りたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=82
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083・布利秋
○布委員 兎に角統制が惡かつた爲に今後心配する點が多いのであります、事實是からおやりになるにしても、やはり古い姿は出て來ますから、惡いものはやはり承繼いで行かれるものと、私共は想像でなく、實際的の感じを持つて居る、一例を申上げますと、革は統制されて居て非常に窮屈で、其の爲に革物は實に高い、靴でも何でも生活の道理に合はない値段です、所が私が二十三日に或る場所へ調べたいことがあつて行きましたが、革が澤山或る所へ流れて居る、是は内緒々々と云ふことになつて居るが、此の人の目に付かない所へ流れて居るのが莫大なものです、さうして是は「ボール」とか、「フット・ボール」とか運動器具として出て居る、統制も宜しいが、斯樣に止めてあるのに流れて行くのは、なぜかと云ふと、やはり需要供給の關係上幾らでも賣れるからです、それが何處から出るかと云ふと、革統制會から横に流れて居る、だから需要者が多ければ、如何にして統制された革を上手に流すかと云ふことに知慧を絞り拔く、一定の制限を受けて居る器具に向つてどんどん流れて居る、此の實態──又運動でもしなければ、今日其の憂憤を其の儘に抑へられぬから、「ベース・ボール」や、「フット・ボール」をやる青年の立場も氣の毒ではありますが、併し此の革の枠と云ふものから滑つて行く其の、有樣と云ふものは、御承知であらうと思ひますが如何ですか、或は大目に見て居られるのかも知れない、斯う云ふやうな譯でありますから、統制から新しくここに誘はれて來たと云ふ觀念を持つて、厭やな氣持になるのは已むを得ないと思ひます、だからそこを骨を折つて戴きたいと云ふ譯です、併し是は鼠のやうなものですから、到底之を征伐することは出來ないかも知れない、それは無理であらうけれども、出來るだけ其の鼠を征伐することに心から努力して戴きたい、事實を言ふと、此の前私は大きな聲を出して言ひましたけれども、是はやはり商工省に責任があります、實際商工省が統制で旨い飯を食ひ過ぎたと云ふことになる、併し私は小出さんとか、池田さんのやうな立派な人格者の前でさう云ふことを言ふのではありませぬ、外にはさう云ふ人格を持たない人が實際ある、其の爲にあなた方のやうな正しい人までが辛い思ひをしなければならぬ、さうして又斯う云ふことが形を變へて續くだらうと思ふからこそ、此の反對が多いと云ふことになる、併し是は心理學的な問題ですから、別に大したことはありませぬけれども、單に斯う思ふとか、斯う云ふ意見を持つて居るとか云ふのでなく、今度は此の協同組合法案を、昔のやうなものにはしないで正しくやるのだと云ふことをはつきり御約束なり、御聲明して戴くことは出來ないものかと思ふ、其の上で我我は之に贊成をして行きたいと思ふのですが、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=83
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084・小此木歌治
○小此木政府委員 只今の御質問は至極御尤もと存じます、唯固く約束をしろと云ふ御話でありますが、現在の心境と致しましては、布さんの御發言を愼重に伺つて置くと云ふ程度に於て御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=84
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085・布利秋
○布委員 それでは餘裕を御持ちになるのですから、結局取締にも餘裕を持つておやりになるものと思ふ、結り協同組合法案なるものに種々なる發生物がある、副作用物がある時にも、餘裕繹々たる取締で向ふと云ふ御聲明のやうに思はれますから、私共は其の御誠意を肚に滲み込ませることは出來ないと云ふことを申上げます、即ち政府の御答辯は、我々の腑に落ちないどころでなく、非常に弛みのあるものであつて、今後の取締に對して御自信がない、信念がないと云ふ風に私は受取りますが、それで宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=85
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086・小此木歌治
○小此木政府委員 御答へ致します、取締關係に於ては、御言葉の如く嚴重に取締ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=86
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087・布利秋
○布委員 今度は嚴重に取締ると言明して戴きましたので、それを信頼して御禮を申上げます
次に申上げたいことは、今度の農地法案で當然田舍が分裂をする形になります、さうすると青年達は、今度の新家族法と相照し合はせて田舍に居ても詰らぬから都會へ都會へと出て來る、結局都會の方が優勝劣敗、弱肉強食で、腕を揮ふのに揮ひ甲斐があると云ふことになつて、其處へ沒入して行かうと云ふので、大阪なり東京あたりへ出て來る、さうすると組合と云ふものがあつて中々仕事が出來ない、其の場合實績を持たなければ入れないと云ふ、「サーベル」時代のやうな建前を繼續されたのでは、腕のある青年は仕事が出來ないで沈沒しなければならぬことになるが、それ等の新しく事業を始める青年のことに付て、どう御考へになつて居るか伺つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=87
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088・小出榮一
○小出政府委員 今後に於きましては、其の營業に付て從來全然實績を持つて居ない、或は經驗のない人で、さう云ふ事業を始める場合に於きましても、營業の自由と云ふか、營業を開始することに付きまして、根本的には何等の制限をしないと云ふのが經濟民主化の原則でありまして、如何なる人と雖も自由にそれぞれ自分の思ふ事業を開始することが出來る建前になる譯であります、さうして例へば農村方面から新たに都會に入つて來られた方々が、工業なり商業に付て特定の事業を開始されます場合、それに關して何等かの協同組合がありまする場合に於きましては、其の協同組合の定款に書いてある組合員の資格と全く同じ營業を開始し、其の營業者としての資格を持つて居ります場合に於きましては、此の人を、正當の理由なくして其の組合に加入することを拒むことは出來ないと云ふことは、先程轉廢業者なり、或は外地引揚者の問題に付きまして御答へ致しました關係と、全く同じでありまして、假令農村から新たに入つて來て、新たに事業を始めた人でありましても、苟くも組合員としての資格を具備致して居ります以上は、之を不當に其の加入を拒むことは出來ない建前になつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=88
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089・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 此の際一寸御諮り致しますが、同僚議員の質問に重複するやうな關係のものは、質疑應答を極く簡單に願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=89
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090・布利秋
○布委員 宜しうございます、もうあと二つばかりであります、是は第三國人であります、第三國人と言つても澤山あります、日本に近い所の第三國人、それから「ノルウェー」方面でも第三國は第三國であります、それで第三國人が投資をして居ると云ふ場合に、やはり入りますか、それから日本人を頭に立てて、其の内側に第三國人を含まれて居つて、實勢力を持つて居ると云ふものがありますが、是も組合に入り得るかと云ふことを一つ承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=90
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091・小出榮一
○小出政府委員 現在所謂第三國人の關係の方々が、今御話のやうに自分の名義に依つて事業を營み、或は單に資本だけを貸して、日本人の名義で仕事をして居ると云ふ風な關係の實例が、各方面にあると承知致して居ります、其の場合に於きまして、之を協同組合の組合員に加入せしめることが出來るかどうかと云ふ御質問のやうに承つたのでありますが、此の場合に付きましても、やはり原則と致しましては、苟くも組合員の資格を持つて居ります以上は、例へば纖維製品の小賣業なら小賣業と云ふものが、組合員の資格をなして居る場合に於て、其の纖維製品の小賣業を、假令第三國人でありましても、其の小賣業を營んで居ります以上は、やはり其の組合員としての資格を持つて居る譯であります、之に付きまして其の加入を不當に拒むことは出來ない、斯樣に考へて居るのであります、唯場合に依りまして定款の規定に依りまして、例へば日本人の經營する──詰り日本人以外の國籍の人の營む事業に付きましては、組合員としての資格を其の中に入れないと云ふ風な、何等かの制限を設けることは出來るかどうかと云ふやうな問題に付きましては、問題が相當具體的になつて參りますし、又重要な問題も其の間に起つて來るかと思ひますが、必ずしもさう云ふ規定を置くことが出來ないと云ふやうには考へて居ないのであります、本當に利害關係の密接な人だけが組合を作ると云ふのが、協同組合の本質でもありますので、若しどうしても第三國人を入れたくないと云ふ風な氣持の人だけが集つて組合を作ると云ふことであれば、それに相應するやうな定款規定を設けることも、必ずしも不可能ではない、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=91
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092・布利秋
○布委員 それでは商工省の建前からの分を、二つだけ聽いて置きたいのであります、事務簡素化と云ふことを、幾ら叫んでも簡素化になれなかつた、其の爲に負けました、それで一番書類の重複しますものは商工省、次は農林省、之を簡素化々々々と言ひますが、今後の再建經濟に向つて行く時に、本當にどの程度まで事務を簡素化されるか、十枚書類を作らなければいかぬ所を三枚で片付ける、例へば判を十付かなければならぬ所を二つで宜しいと云ふやうな、商工省關係の全面的に亙る再建に對してどう改革をされる御積りであるか、從來の通りに、書類を澤山重複したものを出さなければいけないのか、是は事務的な建前になりますけれども、是がやはり經濟再建に重大なる關聯を持つて居りますから、一寸之を御聽きして置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=92
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093・小此木歌治
○小此木政府委員 事務の簡素化に付きましては、出來得る限り簡單な方法を講じたい、具體的の點に付きましては只今一寸申上兼ねますが、出來得る限り簡單な方法を講ずる、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=93
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094・布利秋
○布委員 御答へを受けましたが、實際其の方を今研究されつつありませうか、唯考へて胸に持つて居られるだけでありませうか、それを御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=94
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095・小此木歌治
○小此木政府委員 研究を進めつつあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=95
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096・布利秋
○布委員 それではあと一つ殘りましたのは、今までの事實は、何をするにしましても、農林省關係は別として、商工省關係が主ですが、何でも鑑札がなければいかぬ、鑑札本位である、私も世界中の事業を調べて見たこともありますが、是程鑑札々々と云ふ國はない、此の新時代に則すると言はれるならば、其の實證として、鑑札を少し緩めて自由にされるのが本當ではないかと思ふ、殊に商工關係の鑑札でも、警察に御任せになつて居るものもある、だから警察で下しますものは更に難かしくなる、さう云ふ内務省に關係のあるものは商工省へ一度御戻しになる考へはないか、さう云ふ點も、突然の質問であるから御用意がないかも知れないが、優秀な頭を持たれた政府委員三名御揃へであるから、是は御協議にならぬでも、頭の中から湧出る儘御答へを願ふのが私の質問の最後であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=96
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097・小出榮一
○小出政府委員 御質問の鑑札と云ふ御言葉の意味は、或は取違へて居ると思ひますが、例へば營業の免許證と云ふやうなものに付きまして、色々商工省が許可制度を布いて居るものもありますし、或は場合に依り内務省關係の地方廳なり或は警察の手に依りまして、色々の鑑札が必要であると云ふ風なものが相當ございます、併しながら商工省なり農林省關係に於きましては、今後は營業の自由と云ふ原則に則りまして、例へば先般も御話致しましたやうに國家總動員法の廢止に伴ひまして、營業の免許制度の根據法でありました企業許可令も、今月一杯で其の效力を失ひまして、來月からは商工業關係に付きましては、營業と云ふものは原則として全く自由になります、隨ひまして色々免許證と云ふやうなものもなくなりまして、從來のやうな煩雜さと云ふものは、少くとも其の面から省かれるものと思つて居ります、それから御話の内務省關係でやつて居る、主として地方廳なり、或は警察がやつて居ります鑑札でございますが、是は例へば風呂屋であるとか、床屋であるとか、乃至は露店商と云ふ風な、どちらかと申しますれば警察取締或は衞生上の見地でありますとか、或は治安上の見地、風紀上の見地と云ふやうな、主として内務省の御立場から取締つて居られるやうなものでございまして、之を商工省に吸收すると云ふことは、必ずしも適當ではない、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=97
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098・布利秋
○布委員 是で私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=98
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099・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 加藤勘十君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=99
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100・加藤勘十
○加藤(勘)委員 纖維局長の答辯の途中で私外に讓りまして、半分聽き掛けて終つたのですが、御答へになりました生産業者に對する織統からの現金支拂の點ですが、先程の御言葉に依りますと、工業銀行から織統に融資をするやうにして、そこから出來るだけ多く拂はせるやうにすると云ふ、斯う云ふ御言葉でありましたが、其の出來るだけ多くと云ふのは、正確には固より御答へはむづかしいと思ひますけれども、現在の一割五分よりどの位多くなると云ふ御見込ですか、それは分りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=100
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101・松田太郎
○松田政府委員 現在の一割五分と云ふのは、先程も一寸御話申しましたやうに、私一寸はつきり致して居りませぬのでありますが、それは拂ひます、詰り封鎖と新圓との割合が、一割五分、斯う云ふ意味ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=101
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102・加藤勘十
○加藤(勘)委員 さうぢやなくて、總額の一割五分詰り共同販賣に依つてそれが假に十と云ふものならば、其の一割五分と云ふ意味なのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=102
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103・松田太郎
○松田政府委員 勿論此の生産者の方から、織統の方に出來上りました製品を買上げまして、それの代金支拂がありますから、是は飽くまでそれに「マッチ」した所の代金を拂はなければならぬことは當然のことでありまして、隨て今の御話の一割五分と云ふ點は、私としては寧ろ意外に思ふのでありまして此の點は尚ほ能く實情を調べまして、さう云ふやうな生産業者に於て非常に困るやうなことがあつては、増産の上に非常な支障を來しますから、さう云ふことは出來るだけ避けるやうに、十分調べまして善處致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=103
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104・加藤勘十
○加藤(勘)委員 非常な滿足すべき御答へを得ましたが、更に念を入れて置きますれば、先程申しますやうに、小賣商から配給會社には現金で拂はれて居ることは、調べた結果明瞭なのです、會社から織統に對する支拂がどうなつて居るかと云ふことが分らないのであります、此處で封鎖で拂はれて居るのか、或は現金で拂はれて居るのか、何處かで摺替へられて居る譯である、さう云ふことを能く御調べ下さつて、出來るだけ、現金で小賣商から還元したものならば、當然生産者の手にも還元されるやうに努力して戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=104
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105・松田太郎
○松田政府委員 今の御話を大體推察致しまするに、消費者から小賣商には勿論是は現金で拂ひまして、小賣商から更に地配、それから織統に行く場合に、順次最初は新圓で入つたものが、隨て新圓で中央機關まで行かなくちやならぬものが、段々と新圓と封鎖の割合が多くなつて來て、結局統制組合なり、織統なり、さう云つた中央機關に入る時には新圓が入つて來ない、隨て織統としても、生産者の方に中々新圓が拂へなくて困ると云ふやうな意味の御質問かと思ふのですが、さう云ふ御質問に付きまして、從來動もすれば段段上の段階に行くに連れまして、封鎖で支拂ふやうな場合があつたやうであります、之に付きましては、少くとも各統制機關に於て必要な經費、是は勿論別の問題でありますが、本當に其の上々の機關に拂はなければならぬものは、出來るだけ新圓で中央の統制機關が吸收出來るやうにして、先程申しましたやうに、其の間には約三箇月掛りますから、最初の流れ水としまして、織統其の他中央統制機關から、生産者の方に、出來るだけ金融を便にする、又其の中に於きましても、出來るだけの範圍に於て新圓が生産者の手に入るやうに、金融機關から金融をして貰ふやうに織統と話を付けて居るのであります、隨て今後は成べくさう云ふことがありませぬやうに、又不當なる理由でさう云ふことがあります場合は、絶對に用赦せず、其の點をはつきりしまして、御要望のやうに進めて行きたいと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=105
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106・加藤勘十
○加藤(勘)委員 其の點は現實を十分に御調査願ひまして、御言葉の通りに御處置願ひたいと思ひます
第二の御質問は、輸出關係が現在非常に制限下にありまして、總てが窮屈であるからあれ是言はれませぬが、近い將來に輸出の關係も何れ正常關係に復すると思はれます、其の場合に日本の中小工業、殊に羊毛工業に於きましては、御承知の通り愛知縣は、戰前に於て、先程も申しました通り、七割乃至八割の實力を持つて居つた、現在に於きましても羊毛原料の消費高は、日本全國の六〇%に達して居る有數なる毛織物地帶と云ふことが出來る譯であります、其の殆と全部と言つても宜いものが中小工業の手に依つて行はれて居る譯であります、今度の協同組合法に依りますと、前からの現在の統制組合、若しくは施設組合もさうですが、原料の共同購入であるとか、製品の共同販賣であるとか、檢査其の他各種の施設がある譯でありますが、總ての組合が同一の「レベル」に完備したものとは言はれませぬが、若し十分に完備した組合がありまして、其の能力ありと云ふことになつた場合に、此の協同組合は、輸出組合に、協同組合として直接參加出來るかどうか、又是非さうあることが非常に業者を刺戟することになるし、製品の技術の發達に貢獻するやうになると思ひます、此の點に付ての御考へを御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=106
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107・松田太郎
○松田政府委員 纖維工業關係に於きます將來の見透しと致しまして、輸出の方の關係は、將來益益盛んになるであらうと云ふやうな、先づ第一の御前提の御質問でありますが、此の問題に付きましては、色々聯合軍の方の、纖維關係の非常な認識を持たれた經濟顧問の方がありまして、さう云ふ方達と數囘に亙りまして、色々さう云ふ問題に付て話をして居りますが、寧ろさう云ふ人々の話では、恐らく此の二年乃至三年間先きと云ふものは、世界全體に非常に衣料と云ふものは潤澤になると思ふ、隨て日本としては今の中に出來るだけ輸出をするやうにして、それに必要なる食糧其の他のものを入れるし、日本としてどうしても貢獻しなければならぬやうな地域に對しては、將來の輸出と云ふ點から言つても、此の際大いに勉強して呉れと云ふやうな、寧ろ向ふからさう云ふやうな強い希望がある位でありまして、此の纖維産業の將來と云ふ點から申しましたならば、此の輸出と云ふものを益益盛んにしまして、戰前のやうな時代が我々としましては一日も早く參ることを希望して居るのであります、さう云ふ場合に、勿論羊毛の問題に付きましては、午前中にも御話しましたやうな、原料の供給等の問題とも關聯して來る問題でありますが、當然輸出の方に向けなければならない問題と私は考へて居るのであります、勿論日本の國内衣料需給から申しまして、或る程度のものは勿論國内の皆樣方にも御分けするやうに、我々としてはしなければならぬ、併し同時に輸出の面に付きましても、是は考へなければならぬと思つて居ります、又さうせざるを得ぬことにもなると思つて居ります、其の場合に、何と申しましても、此の羊毛工業の方に於きましては、綿紡績其の他の工業とは相當業態も違つて居りまして、所謂中小の工業の方が、戰前に於きましても非常な力を持ち、又日本の貿易の上に非常な貢獻をして來られて居ると云ふことは、是は事實の問題であります、隨ひまして經驗の點から申しましても、又其の設備等の問題から申しましても、本當に之を兩者相俟つて活かして行くだけの力は十分にあると私は信じて居ります、特に愛知方面の、一宮を中心と致しましたやうな、ああ云つた毛織産業の非常に盛んな所に於きましては、特に然りと私は信じて居るのであります、隨ひまして今後其の輸出の大いに盛んになるに連れ、又其の計畫が聯合軍に認められます限りに於きましては、我々はさう云つた方面の、本當に力を持ち、技倆を持つて居られる方に、大いに手傳つて戴きたい、寧ろさう云ふ方々こそ從來にも増して一層品質の向上を圖り、成程日本の製品は、斯う云ふ原料を使つても尚且つ斯う云ふ立派なものが出來ると云ふやうな、本當に日本の羊毛工業と云ふものの誇りを世界に示して戴く位の氣構で、一つやつて戴きたいと思ふ、唯輸出をして貰ひたいと云ふ意味でなしに、寧ろ進んで當然輸出をせざるを得ないと云ふやうな所にまで進んで行つて戴きたいと思ふのであります、併しさう云ふ場合に、其の協同組合を恐らく作つて戴いた方が宜いと思ふのでありますが、さう云ふ場合に協同組合として輸出組合等に入つてやつて戴く方が、本當に輸出と生産との間の關聯性が密接に行くと云ふやうなことでありますならば、其の方の關係の筋にも其の點を話しまして、さう云ふ點は十分連絡が執られるやうに、言換へれば、さう云つた關係の方々が、本當に自分の造つたものを輸出し易いやうな組織に進んで行けるやうに、我々と致しましても十分考慮したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=107
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108・加藤一雄
○加藤(一)政府委員 只今の局長の御言葉で大體要領は能く分りましたが、第一段の輸出品に對する技術の練磨、發達と云ふ點でありますが、是は私が申上げるまでもなく、當局に於て十分御諒承のことと思ひますが、戰前に於ける實績から見ましても、毛織物生産の輸出高は、綿絲布、生絲に次ぐ重要な輸出品であつた、さうして技術の面に於きましても、最初日本に羊毛工業が起つた當時から比べますれば、殆ど格段の技術的な發達を見て居る、是も御承知の通りだと思ふのです、戰前の當時に於きましては、もう殆ど英國製品の壘にまで及ばうとする程に、技術的に高級化して居したことも御承知の通りだと思ふのであります、是が戰爭の爲に一應技術の減退を見たと云ふ杞憂はありますが、併し戰後の此の事業を復興さして、日本の經濟再建に貢獻しようとする業者の意氣込みは、技術の面に於きましても、當局の御心配される以上に自ら心配をしまして、どうすれば技術的な向上を圖ることが出來るか、世界の市場に日本商品を競爭せしめて、決して恥づかしくないものを造り出したい、斯う云ふことは非常に強く業者が念願して居る所でありまして、此の點に付ては、私は戰前の實績から見ても大體心配はない、業者の自負心と云ふものに十分な信頼を拂つて宜しいと思ふのであります、第二段の輸出業の問題になりますと現在の所では今申上げましたやうに色々な制限を置かれて居りますので、隨て輸出者の團體も可なり制限が加へられて居るやうであります、之に今直ぐに參加すると云ふことは困難でありませうが、もう少しく羊毛製品が輸出をしなけれはならぬ段階になり、又それだけの技術を持ち、何處から見ても堂々たる國際商品として成立ち得ると云ふものが、實際に此の協同組合を通して出來る段階になつた時に、今仰しやつたやうに、是が中間業者の手を排して直接輸出を扱ふことになれば、非常に大きな刺戟になると思ふのであります、さう云ふ刺戟は、言ふまでもなく、技術の面に於きましても、生産の總量の面に於きましても、優秀な結果を招來することは言ふまでもない話でありますから、其の場合に今御述べになりましたやうに、十分にさうなり得るやうに努力して戴くことを希望致して置きたいと思ひます
あと二、三條文に付て聽きたいことがありますが、是は明日何れ金融關係のことに付て聽きますから、纖維局長でなくても、他の商工省の方で結構ですから、明日御伺ひすることにして、今日は是で止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=108
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109・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 それでは此の後早稻田柳右衞門君に御願ひ致しますが、商工大臣が二時半頃に此處に參るさうでありますから、參りましたら、金子益太郎君と澤田久子君が質問通告順になつて居りますので、其の間の繋ぎで一つ御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=109
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110・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 私は本法の運營に付て具體的な質疑を試みたいと存じますが、只今繋ぎでと云ふ話もありますので、具體的事項を御尋ねする前に、總括的な問題を二、三御尋ねしたいと思ひます、或は他の委員から質疑がありまして、若干重複する點があるかも知れませぬが、成べく重複を避けて御尋ねをしたいと存じます
最初に御尋ねしたいと存じますのは、罹災組合の復興に付てであります、政府の資料に依りますれば、全國一萬四千の組合の中で、罹災したものが三千七百四十六組合の多きに上つて居り、其の中復興見込のないものが二百八十三組合に及んで居つて、其の出資額は罹災組合全部で三億六千萬圓となつて居ると發表致されて居りますが、此の復興途上にある各組合が、最近行はれた金融措置、特に補償打切りの爲に大きな影響を蒙りまして、折角再建せんとした組合の事業が、其の運營がどうにもならないやうに相成つて居ります、是等組合は何れも公益法人である關係上、一般社會に及ぼす影響も多いと存じますが、是等に對して政府は特別の救濟策を講ずる御考へがあるかどうか、之に對處する政府の方途を先づ承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=110
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111・小出榮一
○小出政府委員 今御指摘の通り、現在の商工組合法に基く統制組合なり、施設組合の中で、戰時中に大體三割程度のものが罹災を致して居るのでありまして、是等の組合の復興は、組合員個々の營業の方と同樣に急速に之を促進しなければならぬ問題だと考へて居りますが、今御話の通り、丁度是等の組合が新しい組合に移行しようと云ふ過渡期に於きまして、今の金融措置の問題が起りました爲に非常な難局に逢著致して居りまして、組合の方々は勿論色々御不滿であらうと思ひますけれども、政府と致しましても、何とか金融なり各種の方面に於て特別の御計らひをしたい、斯樣な念願の下に折衝致して居りますけれども、中々まだ急速に解決に至らない點があるのを非常に遺憾に思つて居ります、唯少くとも戰災保險金と云ふ風な問題に付きましての最小限度の救濟措置と云ふものは、是は一般の原則と同じやうに是非考慮しなければならぬ、例へば五萬圓なら五萬圓と云ふやうな限度に於て、極く零細なものは出來るだけ救つて行きたい、斯樣に考へて居ります、それから例へば第二封鎖預金を、公益團體と云ふ風な名目の下に第一封鎖預金の方に切替へて行く、第二封鎖預金の總額の半額までは第一封鎖預金の方に、最高百萬圓を限度として切替へると云ふやうな途もありますが、此の金融措置の中に言つて居ります公益團體の中に、少くとも統制組合は公法人としての性格を持つて居りまして、非常に公益的な事業を行つて居りますので、何とか此の公益團體の中に解釋上入れる余地はないものかと云ふやうなことに付きまして、色々苦慮致しまして、大藏省方面とも相談したのでありますが、今度の封鎖の措置は、何と申しましても公益團體と云ふものの解釋を極度に制限致しまして、例へば慈善團體であるとか、或は病院とか學校と云ふ風な本當の嚴密な意味に於ける公益團體に制限を致しまして、それに依りましてやはり第二封鎖預金に手を著けると云ふことは、結局一般の零細な預金者に非常な迷惑を及ぼすと云ふ結果にもなりますので、さう云ふ見地から假に民法上の公益法人でありましても、公益法人であるが故に公益團體と云ふ中には當然に入ると云ふ解釋にはしない、斯う云ふことになつて居りまして、甚だ遺憾ながら、統制組合等も今申しました公益團體の中には入らない、斯う云ふことになつて居ります、隨ひまして其の封鎖上の處置に付きましても非常に困難な問題があるのでありまして、政府と致しましても、是等の金融措置に對處致しまして、出來るだけの御便宜を圖りたいと考へて居りますけれども、只今の所はまだ其の程度のことになつて居ります、勿論今後組合員個々の事業が著々と復興致しまするやうなことになつて參りますれば、それ等の組合員が構成して居ります、組合の事務所なり、或は共同施設の復興と云ふことに付きましても、出來るだけ資材なり金融上の御便宜は圖りたいと存じて居りますが、只今特別の措置をするだけの手段を持合はせて居ないやうな状況でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=111
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112・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 政府の御説明に依つて其の苦衷は御察し致します、隨て此の問題に對して追究は致しませぬが、併し戰後日本の再建に當りましては、中小商工業の振興に依ります所が非常に多いと云ふことは、私が今更言ふまでもありませぬが、是が建全なる發達は先づ以て金融問題が一番大切であり、今日是が一番隘路に相成つて居ることは當然でありますが、併し政府が今仰しやつたやうに、是が方途がないと云つて手を拱いて居ると云ふことになりますれば、折角中小商工業の建全なる發達に依つて國家を再建しようと云ふ門出に、一つの難點が生ずる譯であります、せめて私は政府が復興金融金庫の活用に依つて、是が隘路の打開に當つて戴きたいと存じます、先般來の御説明に依りますれば復興金融金庫の資金を商工中央金庫に流し入れて、さうして救濟をする、斯う云ふなうな御説明があつたやうに存じまするが、私は更に復興金融金庫の資金を、商工中央金庫のみならず、地方に於ける市街地信用組合の活動に依つて緩和することが望ましいのであります、何となれば地方に於ける市街地信用組合は非常に地方事情を能く知つて居る、特殊事情に精通致して居りまして、中小商工業者の特異性を把握致して居る關係上、地方産業と直結することが出來、是が活用に依つて復興再建に裨益する所が多いと存じます、願くは斯う云ふ關係から商工中央金庫のみならず、地方の市街地信用組合を復興金融金庫の代行機關にして、さうして中小商工業の振興を圖られたい、斯樣に念願して居るものでありまするが、之に對する當局の御見解を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=112
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113・小出榮一
○小出政府委員 金融の問題は御話の通り中小企業、特に戰災等に依りまして足場を失ひました企業者の立直りの意味に於きまして、最も重要な問題でありまして、今般の金融措置に關聯する問題に付きましては、先程御答へ致しましたやうな状況でございまするが、御指摘の通り復興金融金庫を大いに活用すると云ふことに付きましては、全く其の方針で今後も參りたい、斯樣に考へて居る譯でありまして、最初は復興金融金庫の中に中小工業分と致しまして、十億圓なら十億圓と云ふ風な特別な枠を設けまして、其の分だけは中小商工業に對する金融分と致しまして、別枠を設けると云ふ風なことも考へたのでありまするが寧ろ枠を設けないで、自由に彈力性のある融通をした方が宜いと云ふ考へ方もありまして、只今の所さう云ふ枠は設けて居りませぬが、復興金融金庫の運營の中心は、飽くまでも中小企業の振興と云ふ所に非常な重點を置いて行くことになつて居ります、それに關聯致しまして商工組合中央金庫或は其の支店、出張所と云ふものも復興金融金庫の代行機關として活用することになつて居ります、今御話の市街地信用組合を活用すると云ふことも全く同感でございます、市街地信用組合は主として都市の中小商工業者、或は一般消費生活者を對象として居ります、市街地信用組合が非常に有利な點は、預金の吸收が非常に簡便に出來まして、資金が潤澤であると云ふ所にありまして、商工組合中央金庫は現状に於きましては比較的預金の吸收が捗々しくないやうな状況でございまして、資金の潤澤と云ふ點に於て缺ける所がございますので、取敢ず市街地信用組合を商工組合中央金庫に連結をすると云ふことに付きまして、大藏省と話合を進めまして、其の第一段として、市街地信用組合が商工組合中央金庫に預金が出來ると云ふ途を開くことに致しました、是は大藏省令の施行規則の改正に依りまして出來る問題でありますので、近く具體化することと思ひまぬ、それに依りまして市街地信用組合の採つて居ります預金の吸收力と云ふものを活用致しまして、商工組合中央金庫の資金を潤澤にし、それを通じて中小企業者に對する金融を促進する、斯樣に考へて居ります、市街地信用組合復興と金融金庫との代行關係の問題に付きましては、尚ほ十分に大藏省と相談をして見たいと、只今考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=113
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114・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 中小商工業者の金融に付ては尚ほ御尋ねしたいことがありますが、所管が違ひますので此の程度にしまして、次は戰後に於ける中小商工業者の復興對策でございます、先般商工者に於て發表されました戰後中小商工業復興對策要綱の中に、今後の中小商工業を問屋に結付け、資材或は金融を問屋に供給せしむる方針であると云ふことが記載されて居りまするが、是は往年の問屋資本に中小工業者が隷屬的地位に置かれた事態と同じやうになつて參りまして、企業の獨立性を失ふやうな虞があるやうに存じます、此の點に付ては他の委員からの質疑に對して、大體は當局の意のある所を諒と致して居りまするが、尚ほ地方に於ては此の點を非常に心痛致して居る向が多いのであります、此の問題に付て當局の考へて居る所を、具體的に一般中小商工業者に滲透するやうに御説明を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=114
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115・小出榮一
○小出政府委員 所謂製造問屋の復活の問題でございますが、戰時中の各種の企業整備は、主として生産者から直接消費者へと云ふ風な方針の下に整備を行ひましたので、中間にあります各種の問屋なり、卸賣と云ふやうな方は殆ど整理をせられまして、壞滅状態に瀕して居つたのでありますが、戰後の復興に於きまして、是等の製造問屋を合理的に活用して行くと云ふことも、やはり一つの重要な復興の要件であらう、斯う云ふやうな意味に於きまして、健全なる問屋の復活を期待致しまして、若しさう云ふ風な健全な問屋が復活しました場合には、之に對して資材、資金を集中し、其の問屋を通じて其の問屋に關係して居りまする中小商工業者を潤して行く、斯う云ふ風な途も考へられる、斯う云ふ意味での要綱は全く草案でありまするが、要綱が出來て居つたのでございまして、必ずしも其の問屋制度のみを中心として、今後の中小商工業制度の復活を問屋制度一色に依つて塗潰すと云ふやうな考へ方ではないのであります、尚ほ其の場合に於きまして、今御指摘になりましたやうに、此の問屋制度の復活が、單なる昔の所謂製造問屋の復活と云ふことの繰返しであつてはならない、斯う云ふ點に付きましては十分に警戒を致して居るのでありまして、昔の中小商工業者が問屋に隷屬致しまして、主として其の問屋の持つて居りまする金融の力に依りまして其の支配を受ける、隨て非常な惡條件の下に、問屋の言ふ儘になつて居つたと云ふやうなことが今後繰返へされますと、結局日本の中小工業の製品の品質の低下、或は勞働條件の劣惡と云ふやうな、各種の問題を發生致しますので、結局健全な中小工業の振興にはならないと考へます、そこでさう云つた昔の古い型の問屋制度の復活と云ふことは、全然期待致して居ないのでありまして、其の爲には問屋と、其の問屋から注文を貰つて製造致して居ります中小工業者が、一緒に協同組合を作ると云ふやうなことが、一つの非常に新しい形體として考へられるのであります、其の場合に於ては、問屋も中小工業者も組合員としては全く同等の地位に立ちまして、其の發言權も一人一票で總會で議決すると云ふやうなことになりますので、是等の點から致しまして、問屋の勢力と云ふものが不當に伸びて來ることを或る程度抑制出來ると云ふ風にも考へまして、寧ろ協同組合の活用に依りまして問屋制の長所を生かし、且つ其の弊害を豫防して行くことが出來るのではないか、斯樣な意味に於きまして健全なる問屋制の復活と云ふことを期待致して居るやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=115
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116・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 次はやはり金融に關係致して居りますが、戰時中にそれぞれ商工企業の企業整備を行はれまして、是等轉廢業者に對して殘存業者から共助金を出して居る、此の額は政府の説明書にもある如く、相當の額に上つて居りますが、是が償還方法に付ては今日各種統制の枠が漸次外され、さうして轉廢業した人も新しく開業し得る段階に相成りまして、相當償還するのに困難を感じて居る業者が非常に多いのであります、是が措置に付きましては、豫算委員會に於て誰かの質問に對して大臣の答辯があつたやうでありますが、どうもはつきりしないと云ふので、地方に於ては非常に問題にして居ります、出來れば是は免除するとか、或は輕減するとかと云ふ臨時措置が執られて然るべきものだと私共考へて居りますが、之に對する政府當局の所見を拜聽致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=116
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117・小出榮一
○小出政府委員 戰時中に行はれました企業整備に關聯致しまして、轉廢業致しました人達に對しまして、殘りました同業者の方々が、例へば組合とか統制會と云ふものを單位と致しまして、轉廢業者の營業權を買取つてやる、暖簾代を補償すると云ふ意味に於きまして、相當多額の共助資金を出したのであります、其の共助金を出す財源と致しまして、國民更生金庫、或は市中銀行から相當の借入金を致して居ります、其の問題が今の御話の償還の問題に關聯して來る譯でありますが、御話の通り終戰後色々の經濟上の條件が變つて參りました、組合と致しまして償還能力の點に於きまして色々な變化を來して居るのが實情でございます、そこで之に對しまして、斯う云つた戰時中の處置に對する跡始末を成べく早く解決致しまして、さうして中小商工業者が新しく再出發が速かに出來ますやうに、早く此の共助資金の借入金に對する償還の措置を解決したい、斯う云ふ氣持を以て、政府と致しましては先般國民更生金庫の理事長を會長と致します委員會を設けまして、企業整備共助資金整理審査會と云ふ名前の審査會を設けまして、業種毎に終戰後の状況を十分に調査致しまして、果してどの程度の償還能力があるかと云ふことに付て調査し、速かに此の共助資金の借入金の解決を圖りたいと考へて居るのであります、此の委員會は、六月でありましたか、第一囘の總會を開きまして、爾後業種別に調査を進めまして、大體業種別調査は完了致しました、此の調査の結果に基きまして、中には御話のやうに償還能力が全然なくなつた、或は全然償還の見込がないと云ふこともございませうし、或は物價の變動等に依りまして、商品の値上りと云ふやうなことから、償還能力が逆に殖えたと云ふやうな業種もあるのであります、そこで償還能力の十分ありますやうな業種に付きましては、寧ろ此の際繰上償還をさせまして、例へば昭和二十五年と云ふやうな長い期限のものは、例へば來年中に其の債務を片附けると云ふやうなことに依りまして、早く鳧を付けて戴く、之に反して償還能力の非常に減少致しましたものに付きましては、先づ其の債務の輕減或は免除をすると云ふやうなことを考へて居るのであります、其の債務の輕減の方法と致しましては、例へば償還期限を延長して、昭和二十五年までと云ふのを逆に昭和二十七年までと云ふことにするとか、或は中間に一年なり二年の中間据置期間を設けるとか云ふやうなことに依りまして、債務の輕減を圖る、更に極端な場合に於きましては、到底どう云ふ手を打つても借金を返す見込がないと云ふことが明白でありまするやうな業種に付きましては、全額債務の免除をする、或は一部分の免除をすると云ふやうなことに依りまして、兎も角早く此の共助資金の解決を圖りたいと云ふことで、只今準備を致して居ります、何れ業種別の具體的な方針が決りました場合には、それぞれ其の業界の方々に通告を致しまして、國民更生金庫との關係を結末をつける豫定でございます、今申上げましたのは國民更生金庫からの借入金だけの問題でございまして、一般の市中銀行などの關係に付きましては手を觸れて居りませぬ、と申しますものは、市中銀行からの借入金は割合に總額に於て少ないと云ふことと、それから市中銀行との間には平素から色々の取引關係かありまして、それぞれ適當に既に銀行との間に話合がついて居るのが多いやうてございますので、政府と致しまして御世話を申上げるのは、國民更生金庫からの借入金だけに限りまして、さう云ふ處置を現在執りつつあるやうな状況でごさいます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=117
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118・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 只今詳細な御説明を伺つて諒とする點が多いのでありますが、只今御説明の中にありました償還能力のあるものからは償還させる、償還能力のないものは免除する措置を早急に執ると云ふ御説でありましたが、最近物價の値上りに依りまして差益金等が生じて居る所が相當あるのであります、是等の値段の向上に依る差益金等は當然償還資金に充當して然るべきものではないかと思つて居ります、所が之を長く組合なり個々の手許に置きますれば、段々なくなるのでありますから、至急さうしたものを更生金庫への充當資金に繰入れるのだと云ふやうな緊急方途を講じて戴きたい、斯う思つて居るのであります、それから政府は、政府の徴收するものに對しては非常に嚴重であるが、支拂ふものに對しては補償の打切りなどと申されて、支拂はれぬと云ふやうな聲が高いのでありまするが、是等と睨み合せまして、既に償還能力を失つたものに對しては、調査とか何とか長引かせることは却て人心を惡化させることに相成るかと存じますので、至急一つ地方廳あたりで調査の上、免除すると云ふやうな方途を講じて戴くことが出來れば、大變結構だと思ひます、強く其の點を希望申上げて置く次第であります、次はやはり戰後に於ける中小商工業者の復興對策の一つでありますが、最近一般に失業者が非常に殖えて參つたのであります、今日の失業者は段々都市に流れまして、今後尚ほ續出の傾向にありますが、是等の人々は、軈て開設に非常に安易であり、容易であると云ふ小賣業の面に進出されることが豫想されて居りまするが、併し今日の如き物資の少ない日本に於きまして、是れ以上小賣業者の殖えると云ふことは、軈て共倒れになることであり、消費者にも惡い影響を及ぼすかと存じます、此の問題に對して、政府は失業者の商業層への流入に對して如何なる御考へを持つて居られるか、伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=118
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119・小出榮一
○小出政府委員 我が國の商業、殊に小賣業の實情を見ますると、御話の通り極めて零細な資本で、殆ど何等の設備なしに簡便に開業が出來ると云ふやうなことから致しまして、外國の例に較べますと、絶對數に於きましても、特に工業關係の生産人口との比率に於きまして、非常に小賣業者なり商業者の數が多過ぎる、又終戰後に於ても、戰時中一時非常に減少して居りましたものが、再び續々と増加しつつあると云ふのは、確かに御話の通りの實情であらうと考へるのであります、而も從來から小賣業者と云ふものが、何時までも零細な慘めな生活、經營状態の儘に殘つて居りましたのは、主として今申しました簡便なる開業と云ふやうな關係から致しまして、純然たる素人なり、或は失業者が續々と商業人口の中に流れ込みまして、それが數年にして失敗をして、再び失業者の方面に流れ込んで行く、謂はば次から次へと半失業者の「プール」を成して居るかの如き觀を呈して居つたのが、結局健全なる小賣業者と云ふものが、何時までも基礎的に固まつて來ない根本原因であつたと思ひます、そこで之に對しまして執るべき方策と致しまして、色々のことが考へられるのでありますが、根本的には小賣業界の中に餘り種々雜多の分子が簡單に流れ込んで來ないやうに、之を抑制すると云ふ方法が一つ考へられます、それからもう一つは、出來るだけ他の方面に産業を起しまして、小賣業者の方に流れ込むべき人口を、事前に他の方面に吸收すると云ふことが考へられる、大體二つのことが考へられるのであります、其の前の方の點に付きましては、結局營業の免許制と云ふ風なことでも實施致しませぬ限りは、到底小賣業界へ流れ込むことを強制的に阻止する方法はないかと考へます、併しながら今日の營業自由の原則から申しますと、さう云ふ廣汎な營業許可制と云ふものは今後と雖も考へる餘地はないのであります、隨ひましてどうしても第二段の措置、即ち主として生産の向上、中小工業を初め生産關係の振興と云ふことに依りまして、出來るだけ人口を生産關係へ吸收すると云ふ以外に方法はなからうかと考へて居ります、さう云ふ意味に於きまして、今後も出來るだけ中小工業の振興、其の他生産一般の振興に付きまして努力を致したいと考へて居ります、尚ほ第一段の營業の免許制と云ふ風な廣汎なものは考へませぬけれども、例へば露店商と云ふ風なものを考へて見ました場合に於きまして、先般露店の取締を嚴重に行つたのでありますが、今後も大體露店に付きましては一定の場所と區域と云ふものを限定致しまして、露店商の組合を結成させまして、之に對しまして、各地方廳から免許證、露店出店の許可證と云ふやうなものを與へまして、其の許可證を持つて居る者てなければ其の場所に店を出すことが出來ない、斯う云ふ風な取締方針を行つて居ります、而も其の許可證を與へますに當りましては、先づ第一に專門の商業者、即ち餅屋は餅屋でありまして、昔立派な店舖を持つて營業して居つた者が、戰災の爲に店舖を失つたと云ふやうな人が、已むを得ず露店になつて居ると云ふのが、大體從來の露店商の五割位を占めて居ります、隨ひましてさう云ふやうな人達を優先的に許可を致しまして、それに次ぎましては大體引揚者でありますとか云ふやうな、本當に事情已むを得ない人達に限定致しまして、單なる復員者、それが全然素人であつて、他に十分働けるだけの能力を持つて居ながら露店になると云ふ風な人達は、出來るだけ之を抑制すると云ふ風な方針に依りまして、露店の復興に付きましては大體抑制的な方法を講じて居るやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=119
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120・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 將來中小商工業の再建を圖る基盤として、本法の改正の如き組合組織も勿論必要でありますが、併し現在及び將來とも、中小企業を壓迫するやうな原因を取除かなければ、此の問題は解決しないと思ひます、隨て只今のやうな失業問題を御尋ねした譯でありまするが、其の他斯うした取除かなければならないやうな問題があるのであります、私は以下二、三例を擧げて當局の意見を伺つて置きたいと思ひます、其の一つは、百貨店の資本的進出に依りまする中小商工業者の保護對策であります、第二點は、最近消費組合の設立が各所に行はれて居ります、是と中小商工業者との調整方法如何、更に農村物資の配給を、農業關係團體に於て一元化するやうな企てがあるやうに聞いて居りまするが、若し然りとするならば、其の方法如何、それから日用品等の中には第三號物資と稱しまして、限界價格制度に依るものが澤山ありまするが、此の制度は中小商工業者に粗惡品の製造を慫慂し、粗惡品の横行をさせるやうな結果になるやに考へて居りまするが、是等に對する御方針はどうか、斯う云ふやうな諸點に付て御答辯を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=120
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121・小出榮一
○小出政府委員 第一點の百貨店の進出に對しまする中小商工業者の保護の問題でありますが、百貨店に對する對策と致しましては、既に戰前から百貨店が非常な大規模な資本に依りまして、小規模の商工業者を壓迫すると云ふ虞が出て參りました、殊に百貨店の營業政策が極端に走りまして、所謂囮政策と云ふ風なこと、濫賣と云ふやうな極端なことまで起りましたので、此の百貨店を抑制致しまして、小賣業者を保護する目的を以ちまして、百貨店法と云ふ法律が昭和十二年か三年だつたと思ひまするが、制定されたのであります、此の法律は現在まで現に存續致して居るのでございます、此の百貨店法の狙ひと致しまするのは、百貨店がそれ以上全然進出出來ないやうに、百貨店が新たに支店なり出張所を設ける場合、或は出張販賣をすると云ふやうな場合は、總て許可制度に致しまして、賣場の面積を擴張する場合にも一一許可が要る、其の許可と云ふのは禁止を意味するのでありまして、許可をしない爲の許可制度と云ふものを布きまして、百貨店の進出を抑制して參つたのであります、所が戰時中に於きまして、百貨店は寧ろ百貨店營業としてよりは、其の厖大なる「ビルディング」を軍需産業或は他の統制團體の事務所に提供すると云を風な方面に轉換致しまして、恰も貸「ビルディング」の如き營業形態に戰時中は半ば轉換を致して居つたのでありますが、是は戰爭終結に依りまして、再び本來の百貨店營業に立戻ると云ふことが現状でございます、そこで今後に於ける百貨店の動きでございまするが、政府と致しましては、百貨店と云ふものは、やはり一つの重要なる小賣業の形態であり、且つ最も合理化された形態でありまして、丸公其の他の經濟道徳の面から申しましても、比較的闇取引の少い業界ではなからうかと考へまして、百貨店を一概に壓迫をすると云ふことは考へて居りませぬ、併しながら不當に百貨店が小賣業界に進出致しまして、小賣業者に對しまして、例へば濫賣と云ふ風な極めて下當な競爭手段に依りまして、是と對抗して來ると云ふ風な事態が起りました場合には、之に對しまして十分抑制の途を講じたいと思つて居ります、其の方法と致しましては、先程から申しましたやうに、百貨店法の運營に依りまして、十分に其の抑制が出來るものと考へて居ります
第二は消費組合の問題でありますが、終戰後に於きまして消費組合が各地に發生致しまして、色々の種類の消費組合が出來て居ります、結局現在出來て居ります消費組合の主たる狙ひは、主として食糧品の配給でありまして、食糧品の配給と云ふ面から考へますと、消費組合はやはり一つの配給機關であると、斯う云ふ風に私は考へて居る譯であります、そこで是等の消費組合と一般の專門の商業者との關係をどうするかと云ふことに付きましては、是が配給機關の一形態であると云ふ風に考へました場合に於きましては、此の消費組合に依るべきか或は專門の小賣業者に依るべきかと云ふことに付きましては、原則として消費者の選擇に任せる、言ひ換へますれば消費者の配給機關と云ふものは消費者の利益の爲に存在すべきものでありまするからして、消費者の方が公平に見まして、消費組合の方が良いと云ふ場合には、必ずしも消費組合を拒否して行くべきものではないと考へて居ります、言ひ換へますれば、消費組合と專門業者との間の公正なる自由競爭に任せまして、消費者の選擇に依るのは自由競爭と申しますか、さう云ふ考へ方で行きたいと思つて居ります、但し其の場合に於きまして、消費者と云ふのは必ずしも色々の點に於て專門の知識を持つて居りませぬので、或る程度の指導方針を御示ししたいと思つて居ります、其の指導方針と致しましては、一般の小賣業者に依らないで消費組合を活用した方が宜しいと考へられるやうな各種の條件を考へて見ますならば、第一に一般の小賣業者よりは配給値段の點に於て比較的低廉であるとか、或は少くとも一般商店で買ふ値段と同じであると云ふやうなこと、それから商品を集めて來る能力が相當にあると云ふこと、隨て繼續的に相當事業の出來る見込あるものでなければならないと思ふのであります、尚ほ商品を保管する設備でありますとか、或は運搬する設備でありますとか、或は事業を運營する資金の面等に於きまして、相當しつかりした基礎のあるものでありませぬと、結局消費者に迷惑を掛けることになりまして、現在各地に發生して居りまする消費組合の實情を見ますと、必ずしも成功して居るものは澤山ある譯ではないのでありまして、寧ろ却て商品の値段が高かつたり、或は商品を集めて來る能力がない爲に、「ブローカー」の所に行つて色々中間搾取をされたりする事態が却て多いのでありまして、是等はやはり消費組合と云ふものを全面的に之を配給組織とするには、まだ十分なる條件を具へて居ない例であらうと考へるのであります、要するにさう云ふやうな指導方針の下に、本當に消費組合の方が消費者の爲になると考へられる場合に限りまして消費組合を、認めたいと思ひます、尚ほ之を更に具體的に申しますれば、消費組合の中には色々の種類がございまして、先づ第一に地域的の消費組合と云ふものが考へられます、我々の家庭を單位と致しまして、隣組等を單位と致しまして出來て居りまする普通の消費組合、是は地域毎の消費組合でありまして、之に付きましては今のやうな條件の下に認めて行きたいと思ひまするが、之に反しまして炭礦、各地方官廳或は商店のないやうな隔絶した地方に於ける工場地帶と云ふやうな所で出來て居りまする消費組合は、謂はば職域的であり、且又地域的の消費組合でありますが、さう云ふやうな場合に於きましては、商店を利用する途がございませぬので、寧ろ消費組合を積極的に活用すべきではないかと考へて居ります、それから純然たる職域的の消費組合、官廳會社等に出來て居りまする消費組合は、是は一般家庭配給の外に更に之に附加へて特別な配給を受けると云ふ風な關係のものでございますので、之はやはり別個の存在理由のあるものとして、其の健全なる發達は之を十分に期待して居るやうな次第でございます、大體消費組合に付きましてはさう云ふ風な方針で行きたいと思ひます、それから第三の御尋ねの、農村物資の配給の問題でございますが、農村に於ける物資の配給に付きましては、大體に於て是は農林省との御關聯もある譯でありますが、商工省と致しましては大體次のやうに考へて居る次第でございます、原則と致しましては、農村に於ける物資の配給に付きましては農業會系統が扱ふものと、商店が扱ふものと二種類ある譯ですが、農業會が扱ふべき物資と致しましては、例へば農業生産に直接必要なる、所謂農業生産用の生産資材、肥料であるとか、農機具であるとか、云ふ風な生産資材に寧ろ限定すべきものでありまして、それ以上進みまして作業用の物資、例へば地下足袋とか作業衣とか云ふ風な作業用の物資とか、或は更に進みまして、日常の生活必需品、或は單なる日用品、化粧品と云ふ風なものに付きましては、寧ろ專門の商業者をして配給せしめるのが原則であらうと思ひます、併しながら若し農業會の系統に於て配給をすることが必要であると考へられまする場合に於きましても、其の現物は配給系統、それから物資の割當系統と云ふものを區別致しまして、例へば作業衣なり地下足袋の配給を致しまする場合に、どの府縣のどの農業會に幾ら配給すると云ふ數量的の割當は、是は全國農業會、道府縣農業會、市町村農業會と云ふ風に、系統的に農業會の方で割當をして戴くことは結構でありまするが、實際の地下足袋なり作業衣の現物の配給は、少くとも中央から各府縣までは、やはり纖維製品なら纖維製品の統制會社の系統を通じて流すべきでありまして、最後の末端の市町村に於ける現物の配給に付きましては、是は先程申しました消費者の聲と云ふものを中心に致しまして、農業會が宜いか、商業者が宜いかと云ふことに付きましては、消費者である農民の聲に任ぜる、斯う云ふ風な建前で行きたいと思つて居ります、但し以上は原則でございまして、此の外に例外と致しまして、例へば臨時的に米の供出と云ふ風な緊急な食糧問題に關聯致しました問題が起りました場合に、其の米の供出の見返り物資と致しまして、作業衣を配給すると云ふやうな場合に於きましては、極めて臨時的なものであり、且つ數量は限定されて居りますので、數量を限定致しまして、且つ臨時的のものとして、現物を農業會に扱はせると云ふことも、是は例外的には已むを得ないのではないか、斯樣に考へて居ります
〔加(藤一)委員長代理退席、委員長著席〕
又贊際の取扱も斯う云ふ風に致して居る譯であります
それから最後に第四點と致しまして、日用品の中の所謂第三號物資に付ての限界價格の問題でありますが、是が中小工業者に非常な不利を齎すものでありまして、粗惡品のみが横行するやうな結果にならないかと云ふことでありますが、此の限界價格制度は尚ほ今後も之を維持して行く方針でございまして、兎に角現在の考へ方と致しましては、消費者の需要と云ふことを重點と致して居りますので、出來るだけ安い値段で物資を早く豐富に市場に出すと云ふことを主眼と致しまして、此の爲には第三號物資に付ての限界價格制度に依りまして、製造業者の爲に中小工業者が或る程度は壓迫されるかも知れないのでありますが、之に對する緩和策と致しましては、先般商業組合中央會をして、業種別に取纒めて申請をさせまして、組合員に一定の現金融資をすると云ふやうな取計ひを致しまして、中小工業者が十分に物資を吸收出來るやうに圖つて居るのでございます、さう致しまして此の價格統制の枠の中で、それ等の業者の自由競爭が出來ると云ふことを狙つて居るのでございます、尚ほ各製品に付ての價格査定制度と云ふものが整備されつつあるのでありまして、粗惡品を不合格とするか、或は非常に安い値段で販賣をさせると云ふやうなことに付きまして、取締を嚴重に致します爲め、今後或る程度粗惡品は十分に措置出來るのではないか、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=121
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122・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 大體諒と致しましたので、次へ移ります
戰時中に出來た戰時統制規則に基きまして、統制會社、統制組合が澤山出來、是が漸次改廢されつつあるのでありますが、併し現在の段階に於きましては、既に之を廢止し、或は改正しても宜いやうなものが澤山ある、是は勿論當局に於ても御氣付きと存じますが、有害無益な斯うした團體は一日も早く拂拭することが、國民生活を安定せしめることに相成ると思ひます、今後斯うした統制會社、或は統制組合に對する當局の指導方針を承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=122
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123・松田太郎
○松田(太)政府委員 統制會社なり、統制組合に付きまして、戰時中にそれが行つて居りました企業が、今日の實情から申しまして極めて不合理な、實情に副はない形態になつて居りますものが相當にありますことは、御話の通りであります、隨ひまして是等の既に必要のなくなつたもの、或は改正すべきもの、改善すべきものに付きましては、其の都度之に手を付けて行くと云ふやうな方針で、從來も進んで居りまして、統制會等に付きましても、既に逸早く解散をして、統制會が統制組合になつたり、或は單なる任意的な協會になつたのも相當にございますし、又統制會社に付きましても、統制會社令の改正に依りまして、統制會社が簡便に普通の株式會社になると云ふやうな途も開きます、又國家總動員法の廢止に伴ひまして、統制會社令其のものが消滅致しますので、其の制度其のものもなくなると云ふやうな關係になりますし、統制組合に付きましても、今度の組合法の施行で全面的に廢止になりますので、隨ひまして今度の臨時物資需給統制法の施行を契機と致しまして、業種別に新しい統制機構と云ふものを確立致しまして、それに合ふやうに速かに改組致したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=123
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124・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 少し重複した問題であるやうでありますから、省略致しまして、本案運營に付ての具體的事項に付て數點御尋ねをしたいと思ひます、本案に依る協同組合の名稱でありますが、此の名稱を專用する制限に付て何等規定されて居ないやうであります、例へば僅か數名の組合で設立したものを何か協同組合と稱し、或は東京のやうな大都市に於て、大多數の業者に依つて出來るものも何々協同組合と稱することになつた場合、此の爲に相互間に極めて矛盾したものが生れ出て來るやうに考へます、何故本法には斯うした名稱の專用に關しての保護規定を設けなかつたか、其の理由を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=124
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125・松田太郎
○松田(太)政府委員 商工協同組合の名稱の專用に付きましては、第三條に規定がありまして、「商工協同組合は、その名稱の中に組合の事業に應じて、商、工若しくは鑛又はこれらの二以上を冠する業協同組合といふ文字を用ひなければならない。商工協同組合でないものは、その名稱の中に、前項に掲げる文字を用ひてはならない。」
斯う云ふ規定がございまして、最小限度名稱の專用に關する保護規定はあるのであります、唯御話のやうに、法律自體が同一業種の組合が多數出來る場合に、其の間に混同を生じないかと云ふ御話でございますが、之に付きましては組合の定款を認可致します場合に、其の組合の名稱に付きましては行政指導に依りまして、組合の個別性を明かにするやうな名稱を指導的に付けさせて行きたい、斯樣に考へて居りまして、出來るだけ名稱の重複を生じないやうな措置を講じて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=125
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126・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 第三條に規定されて居るので支障はないと云ふ御説明でありますが、從來の組合法には行政措置を規定して居つたやうに記憶致して居ります、今後自由に各地に同じやうな組的が簇生することを前提として考へた場合を、何等か行政措置を講ずることの出來るやうに規定して置かない場合は、政府に於ても非常に支障を來すと思ひます、只今の御説では、認可或は許可に當つて適當な勘案を加へると云ふ御説でありまするが、併し認可許可以外の認意組合がどんどん出來て、例へて申しまするならば、協同組合と云ふ文字を用ひなくとも、之に類似した名前を用ひるものも考へられます、斯う云ふ場合に行政措置を講ぜられるやうにして置かないと、今後取締に、或は運營にも非常に支障を來すと思ひます、此の點當局の確答を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=126
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127・小出榮一
○小出政府委員 協同組合法に依る協同組合でないものが、之に類似の名稱を使ふと云ふことは勿論豫想されまするが、少くとも第三條の規定に依りまして、業協同組合、少くとも協同組合と云ふ文字を用ひることは出來ない譯であります、少くとも其の部分に於きまして是が商工協同組合法に依る協同組合かどうかと云ふ判別は付くと思ひます、併し若し非常に紛らはしいやうな文字を使ふ任意組合がありまして、それが經濟上同じやうな取引關係に於て第三者に迷惑を及ぼすやうなことがありますると云ふと、結局是は法制に根據がございませぬけれども、それぞれ地方長官なり出先の監督官廳に於きまして、行政指導に依つてそれを措置して行く以外に方法がないのではないかと考へます、又實際問題と致しまして、それに依つて大體解決が出來るのではないか、斯樣に思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=127
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128・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 當局は總て認可、許可に依つて本法の取締をすると云ふことを御方針として仰しやるやうでありますが、自主的に今後運營されんければならぬ時代に相成りました今日、認可、許可に對しても相當問題が起つて來ると思ひます、此の際認可、許可に對する當局の所信を拜聽して置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=128
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129・小出榮一
○小出政府委員 今度の商工協同組合法に依りまして認可、許可を致すべき事項は非常に限定されて居りまして、組合の設立と解散、それから定款に關する認可がございまして、あとは商品券の發行とか商工證券の發行とか、主として取締技術上第三者に迷惑を及ぼすやうな事項に關してのみ許可、認可制度を執つて居るのであります、而も其の許可、認可に當りましては、從前のやうな官廳の自由裁量と云ふ餘地は全然殘して居ないのでありまして、先般も御答へ申しましたやうに、法律の第五十二條に於きまして、明文を設けまして、此の法律に基いて許可、認可の申請がありました場合には、行政官廳は法令違反とか或は公益侵害とか云ふやうな事實がない限りは、許可、認可を拒むことが出來ない、斯う云ふやうな明文を設けまして、法令違反とか公益侵害と云ふ事態が起らない限りは、行政官廳は許可、認可をしなければならぬ、斯う云ふ制限を自ら設けて居る譯でありまして、之に依つて行政官廳は、曾つての自由裁量で許可したりしなかつたりすると云ふ弊害が起らないやうにする途を講じて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=129
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130・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 只今御説明にありましたやうに、自由裁量に依つて許可、認可が出來ないと云ふことに相成りますれば、餘程詳細な點まで規定して置かないと、將來お困りになる場合が多いと思ひます、私はさうした觀點から、寧ろ許可、認可の制度は當局が之を持つことなくして、地方に許可、認可の審議會或は委員會と云ふものを構成致しまして、是等に其の許可、認可の可否を諮問して、是が答申に依つて許可、認可をすると云ふやうな方途を考へて置く方が時代に適應して居る、斯樣に考へますが、さう云ふ御考へがあるかないか、斯う云ふ點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=130
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131・小出榮一
○小出政府委員 協同組合は其の本質から申しまして、利害關係が共通の同業者が、自由に結合してお互ひに共同事業を行ふと云ふのが主眼でありまするので、廣く第三者なり關係方面の意向を參酌して、許可すべきか否かを審議をすべき團體としては、其の性格に於て多少適當でないものがあるのではないか、斯樣に考へます、隨ひまして、やはり是は最小限度行政官廳の許可を以て足りるものでありまして、それ以上特別に必要はないのではないか、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=131
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132・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 是は見解の相違となりまするが、私は寧ろ總て地方長官なり、或は政府が認可、許可の權を持つと云ふことは時代錯誤でありまして、此の規定の中にもあります商工組合中央會の如き機關、是は何れも各都府縣に支部を持つて居ります、地方の事情にも能く通曉致して居ります、斯う云ふ機關に委任をして、さうして許可、認可の可否を決することが時代的ではないか、斯う思つて居りますが、是は見解の相違でありますので、此の程度で止めて置きまして、次の問題を二、三御伺ひしたいと思ひます
次は本法に依りまして總代制を認めない、斯う云ふことになつて居ります、無論今度の組合が總代制を選ばなかつたと云ふことには何か原因があると思ひますが、大きな組合に於きましては、やはり總代制を設けて置かないのは非常に不利、不便である、斯樣に考へますが、當局の所見如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=132
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133・小出榮一
○小出政府委員 御話の通り、今度の組合法に於きましては、從來の組合法にありましたやうな總代會の規定を設けて居ないのでございますが、總代と云ふ制度が從來必要でありましたのは、非常に多人數の組合員である場合に於て、多勢の人が集まるのは不便でありますので、其の中から總代を選ぶと云ふのが從來の慣例であつたのでございますが、協同組合になりますと、大體全國的な非常に厖大な組合と云ふものも殆ど豫想されませぬし、大體小人數の人が自由に集まると云ふのが大部分であると考へられます、さう云ふ風な實際上の問題もございますが、其の外に總代と云ふものを地域別なり、或は業種別に設けると云ふことになりますと、此の總代になつた人が、兎角所謂「ボス」的と申しますか、一部の組合員の方々の專制的な行爲に依りまして、組合員全體の總意に基く民主的な運營を阻碍する虞がある、斯う云ふ風な見地から總代會制を採りませず、原則として總て總會に依つて運營する、斯う云ふ風に致した譯であります、唯實際問題としましては、誰か自分の代りの者が總代に出て行つて、發言をすると云ふやうなことが實際上ないと云ふことは、非常に不便であると云ふ事態も相當にあらうかと思ひます、其の場合の不便を解決する方法としては、代理人に依る代理議決と云ふ制度が開かれて居りますので、代理權の自由なる運營に依りまして、それ等の不便は事實上解決されるものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=133
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134・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 總代制に關する問題も、やはり見解の相違でありまするが、私は今後任意に作られる組合は、小さいもののみを政府は豫想されて居りますが、寧ろ大きな組合が出來るのではないかと考へて居ります、斯うした場合を想像致しますれば、總代制を設けて置くことが妥當ではないかと考へて居りますので、將來此の點御檢討を戴きたいと思ひます
次は組合の責任でありますが、本法に依る組合は總て有限責任と相成つて居ります、併し是も保證責任、或は無限責任の組合を作り得る規定を設けて置くことが妥當でないかと考へますが、從來の組合と變つて、さうした規定を設けなかつた理由如何、それからもう一つ組合の役員でありますが、從來の組合は、組合員中に適當な者のない場合、組合員外から任用することを許されて居りましたが、本法に於きましてはさうした制度がない、之をなくした理由如何、此の二點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=134
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135・小出榮一
○小出政府委員 第一點の組合の責任の問題でございまするが、現在の商工組合法に於きましても有限責任でございまして、保證責任或は無限責任と云ふ風な責任制度も併せて持つて居りますものは、産業組合法に其の例がある譯であります、商工協同組合は組合員の密接なる人的結合を基礎として居りますけれども、やはり商業者、工業者等の業者の事業團體であります、隨ひまして産業組合のやうな、主として地域的な結合を基礎として居るものとも違ひまするし、又合名會社のやうな、血縁的な人的結合を致して居るものとも違ひまして、所謂「ゲゼルシャフト」的とでも申しますやうな色彩を持つて居りますので、是は有限責任制が一番適當であらうと考へたのであります、過去の實績を見ましても、曾て出來て居りました工業組合法に於ては、有限責任の外に保證責任と云ふ制度を認めて居つたのでありますが、實際出來ました組合の状況を見ますと、保證責任の組合は全體の四%に過ぎなかつた、又産業組合に於ける實績を見ましても、必ずしも無限責任、保證責任と云ふことは其の運營上適當でないやうに考へられて居りまして、最近出來ます組合制度は總て有限責任制に據つて居りますので、今度も其の例に傚つた譯でございます
第二點の員外役員を認めないのは甚だ不便であると云ふ御話、是は一應御尤もと思ひますが、今度の協同組合は統制組合とは異りまして、業者の自主的な結合でありまして、お互ひ同志が手を繋いで、お互ひの間から役員を出すと云ふのが主體であります、若し特別な專門的知識或は技術を活用したいと云ふ場合に於きましては、それ等の知識なり技術を持つて居る人を事務局なり或は委員會なりに吸收して之を活用する途もあらうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=135
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136・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 今の員外役員の問題でありますが、今後組合が自治的に、民主的に運營するやうに相成りますれば、特に專門的知識を持つて居る人を必要とするやうに考へます、組合員は各各自分の自家營業を持つて居ります、隨て組合に專念することが出來ませぬので、斯うした場合專門家を役員に採用致しまして、專心組合の運營に當らせることが健全なる發達を促すことに相成ると思ひます、此の點重ねて見解を承ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=136
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137・小出榮一
○小出政府委員 重ねての御質問でございまするが、員外役員を認めなかつた點に付きましては、先程申上げましたやうに協同組合の本質から申しまして、協同組合の性格は、本當に利害關係の共通な人がお互ひの自由な結合に依つて、力を協せて事業を運營すると云ふ所が主眼でありますので、關係のない第三者の方を組合の自治機關に加へ、それに依つて始めて組合の運營が巧く行くと云ふのでは、本當の意味に於ける協同組合としての條件を具へて居ないものと考へなければならないのでございまして、若しどうしてもさう云風な組合員各自が忙しいと云ふやうな事態等に依りまして、事實上專門的な事務を扱へない場合に於きましては、特別な、所謂事務局とでも申しますか、役員の長なり、或は技術の長と云ふ資格に依りまして、之を活用すれば宜しい譯でございます、從來の統制組合と云ふ風なものを考へますと、統制と云ふものは第三者的な立場から必ずしも組合員の利害と共通でない、相反する事業も行はなければなをぬのであります、斯う云ふ場合には、寧ろ第三者を役員に加へて置くことが便利であつたが、今度の協同組合は統制を行はない、專らお互ひ同志の利益を増進すると云ふことが主眼でありますので、お互ひの間からのみ代表者を出すと云ふのが當然の結論であらう、斯樣に考へる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=137
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138・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 どうも此の問題は納得し難い點があります、今承つて居りますと、協同組合は本質からどうもさう云ふことは出來ぬと、斯う仰しやるのでありますが、併し私は協同組合なるものの本質が、實際分らぬ、鵺的の存在であつて、どうもどう掴んで宜いか、實は其の判斷に苦しんで居る譯であります、それでは此の本質から承りますが、今度の此の商工協同組合は法律上所謂公益法人であるか、又は營利法人であるか、或は別個の法人であるか、さう云ふ點を一つ承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=138
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139・小出榮一
○小出政府委員 商工協同組合は、民法上の所謂公益法人、營利法人と云ふ區別から申しますれば、組合員のお互ひの共通の利益を増進すると云ふ點が主眼でありまして、組合員以外の廣く一般の公益の爲に存在するものではありませぬので、公益法人と云ふ範疇の中には入らないと考へます、併しながらさうかと申しまして、組合の行ひまする事業は營利を目的として居るものではありませぬ、組合自身で儲けようと云ふやうな狙ひで以て組合事業を行ふのではありませぬので、營利法人ではない譯であります、隨ひまして、公益法人にも營利法人にも屬しない、從來學者の間に於て能く言はれて居ります中間法人と云ふ性質のものでありまして、此の點に於きましては、現在の商工組合法に依る施設組合、或は元の商業組合、工業組合と云ふやうなものも、法律的に喧しく申しますれば、中間法人と云ふやうな解釋になつて居るやうに考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=139
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140・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 本法に依る組合は、別個の法人であると、斯樣に御答辯戴きましたが、此の別個の法人とは、私能く其の核心を把握することが出來ませぬが、全條文を判讀致しますると、多分に協同組合主義を觸れて居るやうな點が多いのでありますが、一體此の法案を御作りになるに付きましては、協同組合主義の示唆を受けて御作りになつたのか、或は商工省に於て、獨創的の觀點から別個の法人として御作成になつたか、甚だ恐縮でありますが、御參考の爲に承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=140
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141・小出榮一
○小出政府委員 協同組合と云ふ名稱の問題から、色々此の協同組合の本質に關しまして、議論がなされて居る譯でありますが、實は政府と致しましては、協同組合主義と云ふ風な特別の主義を掲げまして、其の協同組合主義に基いで斯う云ふ協同組合法を立案したと云ふ風な關係ではありませぬので廣く協同組合主義と言はれます中にも、論ずる人に依つて色々考へも違つて來るかと思ひますが、此の制度を社會全般に押擴げまして、所謂組合國家と云ふやうな、協同組合思想を全面的に經濟社會組合の根柢に置いて、それを前提として斯う云ふ法律を立案したと云ふ風な關係ではないのでありまして、唯中小商工業の振興を圖ります上に於きましては、零細なる業者の協同の力を協せて、協同で事業を行ひ、それに依つて大企業の持つて居ります經營の合理性を享有して行くと云ふ點が、中小商工業經營の根幹であらうと云ふやうに考へて、唯其の面に於て考へて居るに過ぎないのであります、廣く協同組合原理と云ふ風な、「イデオロギー」的な考へ方から出發して居るものではないことを御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=141
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142・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 一體協同組合主義は資本主義に立つて居るのか、或は社會主義の上に立つて居るのか、資本主義を肯定するのか、否定するのかと云ふやうな問題に付ても、實は伺ひたいのであり、又工業の方は別としまして、商業に於きましては、協同組合主義に依る指導方針は營利を否定して居る
〔委員長退席、加藤(一)委員長代理着席〕
併し本法に依る指導方針は營利を認めて居ると云ふやうな點が、非常に矛盾があるやうに存じまするが、併し其の問題で時間を取るのは大變恐縮でありますので、此の問題は是で打切り、尚ほ御尋ねしたいことが澤山ありますが、商工大臣に御尋ねなさる先約もありますので、私は一應是で中斷致しまして、他の委員の方の質疑を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=142
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143・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 それでは澤田ひさ君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=143
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144・澤田ひさ
○澤田委員 私は商工協同組合と云ふ名を聽きましても、洵に和やかな結構な立法だと云ふので、非常に贊意を表して居る一人なのでございます、何となれば、協同組合と申しまするのは、どなたがどのやうに仰しやいましても、其の精神に於きまして、愛の精神と、多數の人間が協力して行くと云ふ此の精神を持たずしては、決して發達し得るものではないのであります、其の意味に於きまして、現在敗戰後の日本の國民は、世界の國々に比べまして、洵に御恥しい次第でございますけれども、道義の頽廢未だ曾て歴史に見ざる所の荒れ切つた精神になつて居りますので、一體此の荒れ切つた日本の人間の精神を「カバー」して行きます點に於ては、協同組合法に依るより外に途はないかと考へるのでございます、又中小商工業者に於きましても、あの戰時中に於て、總動員法であるとか、又企業許可令であるとか云ふやうな、非常に窮屈な目に遭ひまして、今日漸く解放はされましたけれども、其の方方が多くは戰災に遭ひまして、一人立ちで行くことの出來ない商工者がございますが、此の方々も御多聞に漏れず、非常に自己の利益のみを考へまして、協同の精神と云ふやうなものに缺けた人のみ寄つて居られますので、先づ此の精神を植付けたなれば、隨分正しい、立派なものになるのではないかと考へるのでございます、凡そ日本の商人は、諸外國に比べまして、嘘を吐くことを目標として只今までして居りましたが、外國では商人程正しい、嘘を吐かない、約束をきつちり守るものはないとなつて居ります、所謂紳士は「ビジネス」となつて居るのに、我が日本の商人は商業を一つの方便と云ふやうに考へられたか、嘘があつても是は商人であるから已むを得ないと、斯う云ふ風に考へて居ります所へ、只今物資不足に依りますのと、金融難とに依りまして、其の精神が非常に尖鋭化致して居りますので、之を愛と協力の精神に依つて、商工協同組合法案をやらされますれば、洵に立派な商工者になると考へられるのでありますけれども、只今までの政府の方々の御答辯を聽いて見ますと、愛に立脚して之をなさつたと考へて居られる方々が、御一人もいらつしやらないのを洵に遺憾とする次第でございます、英國の「ランカシヤ」の生活協同組合と云はず、「ドイツ」の「ライハイゼン」のあの農業協同組合と云はず、其の悉くが愛と協力の精神に依つて今日まで發達なし、世界の模範たる所の地位を取つて居るのでありますが、我が日本は、なぜ此の立法せられた方々が此の精神になつて居られなかつたか、同時にあの「フインランド」が五箇年間そ聯に對しまして戰ひ切つた其の原因は何かと申しますと、協同組合の精神が一つと、今一つは「ルーテル」のあの宗教教會の精神との二つであつたのでございます、此の二つに依つて「ソ」聯にどんどんと抗し切つたのでありますが、我が國には左樣なものは遺憾ながら一つもありませぬ、今日日本の農村に於ける産業組合と申しましても、實に其の精神の水準と云ふものは低いものでございますから、此の何にも協同精神とか、愛の精神とか云ふものを知らない所の商工者に向つて、之を實施する上に於きまして、どう云ふ風に教育の方法をなさるや、是が第一に質疑をして、皆さんから御答辯を得たい點と、又之を立法化するに付きましても、其の施行に當つて、「ロツチデール」の經濟鐵則に依つて之を施行せられるのかどうか、或は資本主義を「カバー」する爲に此の法律を使はれるのかと云ふことを、商工大臣から御答辯願ひたい次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=144
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145・星島二郎
○星島國務大臣 澤田女史の御言葉は、洵に私共さうありたいと思ふ譯でありまして、實は此の協同と云ふ文字を使ふ場合に、若し私一人に此の名前を付けることを許されるならば、私は友愛と云ふ字を付けたかも知れぬ、斯樣に思ふ位でありますから、其の言葉が現はす如く、あなたの仰せの通りな氣持でなければ、如何に法律が出來ましても、如何に組合が出來ましても、私はうまく行かぬだらう、斯樣な心配を持つて居るのであります、實際仰せの如く日本が起ち上る爲には、先づ僞りを言はない、さうして友愛の精神に燃えて、互に協力し合ふと云ふことから發足しなければ、如何な統制をやりましても、闇があり、さうして自己本位のことばかりやつて居つたのでは、正味の仕事は出來ない譯でありまして、只今仰せの數々は、全部其のやうな氣持を以て行かなくては本當の仕事は出來ないものだ、そこで私と致しましては、協同組合の根本精神が如何なる原理から來るかは別として、宜いことは全部之を採入れて行きたい、日本には日本流の精神もありませうし、外國には外國の色々な精神がありませうが、凡ゆるものを之に採入れて、要することはお互に眞に友愛の精神に燃え、協同の精神に燃えて、共々に起ち上り、援け合ふと云ふ所で、此の仕事の運用をやつて行きたいと云ふ根本精神に外ならぬのでありますから、只今の御説は全部私は受け容れて參りたい、斯樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=145
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146・澤田ひさ
○澤田委員 私の意見と商工大臣の御意見が圖らずも一致したことを、私喜びますので、現在の商工大臣に信任致しまして、此の商工協同組合法は完全に、立派に支持せられるだらうと思ひますので、商工大臣に對しての質問は是で打切ります
續いて私物調の折に一遍聽いて戴きたかつたのでございますが、私其の折は委員でございませぬでしたので、膳國務大臣のお代りの方に一寸伺ひたい次第でございます、先づ今日引揚者、災害者に取りまして、最も痛切に感じられまする問題は、何と申しましても住宅の問題なんでございます、此の住宅の問題に對しまして、私が過ぐる二日に、復興局の安岡住宅課長と住宅問題に付て對談放送を致しまして、其の内容を聽かして戴きましたのでございますが、只今日本に家をざつと四百萬軒建てなければならないさうでございます、之を二十箇年計畫と致しまして、一年二十五萬軒づつ建てると云ふ方策ださうでございますが、先づ今年としては、それの半分の十二萬五千軒を建てると安岡住宅課長が申して居られましたが、それに付きまして、あの今までの古い官僚式の住宅營團を以て、此の住宅の設計或は建てる任務を負はされましては、迚も一般民衆は喜んで之を引受けられないのでございます、どうしても之を急いで、而も民主的にやらせますに當つては、少くとも生活協同組合と云ふものを拵へて、其の生活協同組合の一編に住宅協同組合を拵へまして、今までございました年賦償還で支拂つて、三十年二十年の後に、小さいながらも樂しい我が家となる方向に之を變へて戴くべく、材料をどしどしと、あの重要物資調整令の名に依つて此の住宅法に依る住宅組合に廻して戴きたいと考へるのでございます、其の序にもう一言申して置きますが、其の家賃がどれだけであるかと申しますと、政府が半分負擔を致しまして、百二、三十圓はどうしても家賃を取らなければならない、と復興局で申されますが、僅か五百圓の新圓生活に百二、三十圓も家賃の住宅費に取られまして、どうして俸給生活者や勞働者の生活がなし得られやうかと考へられますので、どうしても、始末致しましても、始末仕甲斐のありまする所の、自分の家賃がてらに納めたものが、最後は我家になると云ふ方策を執られては如何と思ひますが、之を國務大臣に代つて答辯を願ひたい次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=146
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147・橋井眞
○橋井政府委員 御答へ申上げます、經濟安定本部に於きまして、只今色々な資材の調査を致しますと共に、是と絡みまして、我が國民生活の安定、又日本國民經濟の長い眼を以て致しまする再建設と云ふことに付きまして、全般に思ひを運らしまして、色々經濟計畫の樹立に勵んで居る譯でございます、で當然其の一部分と致しまして、其の重要なことと考へまして、此の住宅の問題も取扱つて居ります、之に關しましては、先刻仰せられました通り、直接に之を擔當致します御役所がございますので、そちらの計畫を十分に尊重しつつ、それに必要と致しまする資材の點、それから家賃其の他の點等も種々考究致して居りまして、要は出來るだけ早く戰災者の方々に、家が建つて供給されますやうに、そして其の家賃に付きましても、又戰災者其の他の家屋の終局的な入手等に付きましても、銘々のそれ等の方々が一番仕合せになりますやうに致したいと云ふ方向で、研究を進めて居ります、唯御承知の通り、只今の我が國は非常に資材が苦しうございます、迚も我が國だけで十分に供給の出來ないと思へるやうなものもございまするし、又半面食糧其の他、差當りどうしても先づ優先的に供給しなければならぬものが、住宅と絡んで、是亦相當量の資材其の他を要求致して居る、斯う云ふ實情もございます、仰せのやうな趣旨も十分に酌みまして、只今今後の具體的な數字的な經濟計畫を立てまして、逐次政府各部門に於て實行に移す、斯う云ふやうな方向に向いて居る譯でごさいます、御質問の御趣旨洵に御尤もと存じますので、十分にそれ等の計畫に採入れて攻究致して行きたい、斯う考へる次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=147
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148・澤田ひさ
○澤田委員 洵に熱意ある御答辯を戴きまして、私感謝する次第でございます、尚ほ附言して申上げますが、どうぞ一日も早く多數の家を御建設になつて、假令少數づつでも安堵して入つたと云ふ引揚者、罹災者の喜びを見られんことを、伏して御願ひする次第でございます
次に大藏省政府委員はいらつしやいませぬでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=148
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149・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=149
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150・澤田ひさ
○澤田委員 それでは安定本部の方々を通じて、大藏省に御願ひしたいことがあるのでございます、それは、私先日一寸田舍の方に參りまして調べました所、只今此の商工協同組合法案が出ますので、引揚者の方々が、小さいながらに此の協同組合を拵へまして、さうして元の生活の位置に歸りたい爲に、あの生活保護法にごさいまする生業資金を庶民金庫から借受けようと努力致されまするし、又縣も非常に誠意を持つて是の斡旋に努められたのでございますけれども、悲しいことに、お金を三千圓出しまするに當つて、一人前僅か現金で六百圓、あとの二千四百圓は封鎖小切手を以て此の生業資金に當てられますので、其の引揚者の方々が、是ではどうしても設備することも出來ないので、錢が自由にならないので、商賣にあり付くことも、協同組合に加入することも出來ないと言つて、非常に不自由がつて歎いて居られますので、色々金融處置令の御都合もごさいませうけれども、大藏當局はどうか此の際此の引揚者の方々に限つて、封鎖と云ふことを解いて、現金にして、あの生業資金を貸與へて戴くことを、私罹災者に代つて此の際御願ひして置く次第なんでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=150
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151・星島二郎
○星島國務大臣 只今澤田さんの御話は御尤もと思ひます、又先般直接引揚者の團體からもさう云ふ陳情がありましたので、今大藏當局と致しましても考慮を拂ひつつあることであります、殊にそれ等の人が一つの組合を結成されまして、さうして其の組合が出來た上に於きましては、何を仕事をされるか、其の仕事の種類如何に依つては、十分縣當局を通して御指導申上げて、若し資金が足らなかつたならば、或は地方の普通銀行を通して、或はそれでもいかぬ場合には、今囘出來ました復興金融金庫を通しまして、十分の御援助を申上げるやうに致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=151
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152・澤田ひさ
○澤田委員 洵にどの質問に對しましても、熱意ある御答辯を戴きまして、政府諸公に對して感謝する次第でございますが、今一つ商工大臣に伺ひたい問題を思ひ付いたのでございます、それは貿易の問題でございます、私が只今まで調べて見ますると、商工省貿易廳と云ふものは非常に民主化されまして、さうして、此の協同組合の精神にも非常に近い所の行ひを皆さんなさるのでございますが、肝腎の、あの輸出を致しまする輸出協會と云ふものがございまして、其の輸出協會の一部々々に何々協會、何々協會と取入れまして、其の人々が今までの所謂資本主義時代の繩張りと申しませうか、權力家ばかりが寄りまして、只今日本が見返り品として出さなければならぬ品物、戰前に於きまして、どんどん諸外國が喜んで之を買入れて居りました品物を、再び輸出しようと考へましても、貿易協會、所謂何々協會と云ふ名の下に、協會に入つて居ない者を此の中に入れないやうにして居られるのが、現在の貿易協會の例でございますが、是も何とか只今の協同組合の愛の精神とか、又民主政治の新しい商業道徳を商工省から御吹込になつて、誰にでも正しく日本の爲になり、延いては世界人類の爲になる所の生産品が出來たならば、斯樣な門戸を拵へず致しまして、開放的に海外に出るやうに御勘考下さるやうに行かないものでございませうか、伺ふ次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=152
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153・星島二郎
○星島國務大臣 悲しいことに、今貿易はまだ自由に許されませぬので、貿易廳を設けまして、日本から出すものは全部それを通して出すやうになつて居りますし、或は又向ふから入るものは、聯合軍の許可を得て入れると云ふことになつて居りますので、甚だ窮屈になつて居りますが、是は併しながら一時のことであつて、必ず將來貿易は個人々々の貿易で、唯國家は其の色々な御世話をする、御斡旋をすると云ふ程度のことで、早く之に行かなければならぬことは、是は司令部の方でも既に原則は認めて居る譯です、併し現在はまだ其の運びに至つて居りませぬ、けれども貿易其のものは所謂普通の官廳仕事であつてはならぬと思ひますので、長官の如きは特に民間から特別任用で入つて居りますし、或は貿易廳の人の中には、多く民間人を起用致して居ります關係上、只今御褒めの御言葉のやうに、稍稍官廳染みて居ない譯で、まあ大きな商館の積りでやつて戴きたいと云ふことを、私も常に申して居るのでありますが、それでも其の下部機構と致しまして、只今仰せのやうな色々な種類のものを集めて出すのには、やはり或る程度の統制を要しますので、急いで出したり、或は一定の規格を決めて集めたり致しますに付きましては、自然一つの協會とか、或は會社を作らせまして、其の團體を通じて若干の統制を加へて居りますので、貿易廳として國家管理のやうなことをやつて行きます間は、或る程度まで已むを得ぬかと思ひます、併し品物を作つたり致しますに付きましては、其の末端の方は全然自由でありますが、其の役に當つて居る者、或は其の任に當つて居る協會の人達が、繩張りを持つて居るやうな弊害もあらうかと思ひますので、成べく今後さう云ふ弊害のないやうにしなければならぬ、又全然自由にすることは當分許されないのでありますから、是は已むを得ぬことだと思ひますが、併し御期待に副ふやうに、一日も早く全く自由の所へ持つて行きたい、斯樣に思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=153
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154・澤田ひさ
○澤田委員 私が先程から申しました質問に對して、非常に御理解を以て皆樣仰しやつて戴きましたので、洵に諒とする次第でございます、私此の質問を打切るのでございますが、質問を打切るに際して、一言附言して申上げたいことは、只今の政府諸公、洵に眞面目に、而も正しく愛の精神を推進して行かれるやうに考へまして喜ぶのでございますが、少くとも此の愛の精神を資本主義再建の爲に使用されることでなく致しまして、資本主義より社會へ移りまする過程の問題として、此の協同組合法で非常に民衆に柔かく「カバー」せられんことを切望致しまして、私の質問を打切る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=154
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155・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 次に質問留保になつて居ります山口靜江君に許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=155
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156・山口靜江
○山口(靜)委員 先程、私が只今質問致します問題を、同僚議員の方に依つて商工大臣に質問されて居りました、私は膳國務大臣の御考へが伺ひたいと存じますので、代理の方に御囘答願ひたいと存じます、膳國務大臣が、先般の臨時物資需給調整法案委員會に於きまして、日本經濟の再建には中小工業に重點を置くと申され、且つ安定本部と致しましては、財閥「トラスト」の解體と共に、中小工業を如何に建直すかを、我が國産業民主化の問題の一つと考へ、中小工業の技術指導、資金供與、勞働問題の觀點から、安定本部に其の專門機關を設けて研究中であるとのことでありますが、其の中で資金供與に對しまして、商工協同組合法との關係を明かにして戴きたいと存ずるのであります、中小工業が我が國産業の基礎を成して居つたと云ふことは、今更重ねて申上げるまでもございませぬ、其の中小工業者が今日如何なる状態に置かれて居りますかと申しますと、戰爭中企業整備の爲に、設備の一切を供出致しまして、特殊預金に廻つて居るのでございます、此の特殊預金は打切られて居ります、第二には戰災に依る設備一切を失つて居ります、第三には平和産業の設備を軍需産業に轉換せしめて居ります、第四には戰爭中設備一切を、山中其の他空襲に安全な地帶に疎開せしめたるも、今日工場立地の條件に對して不適當の爲に、未だに放置せられて居るやうな状態でございます、其の他色々と事情に妨げられまして、容易に生産活動が開始されぬ状態でございます、此の中小工業を活動せしめるには、何と申しましても第一が經濟問題であると存じます、商工協同組合法案中、第三章事業中、第十二條第二項に、「事業資金の貸付」竝に「組合員のためにするその事業上の債務の保證」を行ふことが出來るやうになつて居りますが、其の資金の對象は何處にあるのでございませうか、又復興金融金庫が融資するに當りては、それを明かにし、又政府の助成金の制度を設ける意思がございますならば、それを明かにして戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=156
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157・橋井眞
○橋井政府委員 御答へ申上げます、復興金融金庫が目下に於ける中小商工業の所要資金の供給に當ることは言ふまでもないのでございまして、其の場合に協同組合は、或は復興金融金庫の代理店とし、又は其の他之に對する協力機關と致しまして、最大限度に中小商工業に對しまして必要なる資金が供給されますやうに、活動すると云ふことを第一の狙ひに致して居ります、同時に協同組合は、それ自體の事業と致しまして資金供給の仕事がございますので、從來の商工組合等が致しましたと同じやうに、又此の際に於きましてはそれ以上の活溌さを以て、單なる代理店等ではなくして、組合自體の仕事と致しまして、資金の供給の事業を行ふ、其の爲には從來の例に依りますれば、組合に對して低利資金を供給致しますとか、さう云ふ問題が今後起つて來ることと考へて居る譯でございます、尚ほ組合法に依りますと、保證の仕事をすると云ふのも、御指摘の通りでありまして、當然此の際に於ける復興金融の必要上、其の機能も大いに活溌に行はれると云ふことを豫想致して居る譯であります、金融の外に、尚ほ補助金其の他の助成が考へられて居るかと云ふことでございまするが、譬へて見ますと、此の際設備を買ひたいけれども容易く手に入らないと云ふ場合に、他にあります設備を之に供給する機關を設けることとか、又設備を造りまして之を中小工業者に貸與へますやうな機能を、そこに併せて營ませますこととか、是等現物を以てする助成の方法も必要であると考へまする譯でありまして、出來るならばそれを早く實行に移したいと云ふ肚で、政府部内で研究致して居ります
〔加藤(一)委員長代理退席、宮前委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=157
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158・山口靜江
○山口(靜)委員 有難うございました、是で私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=158
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159・宮前進
○宮前委員長代理 加藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=159
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160・加藤一雄
○加藤(一)委員 先日本席に於て商工大臣に御伺ひしたのでありますが、「ブレトン・ウッヅ」協定に鑑みて日本が國際經濟社會に復歸することは勿論でありまして、其の場合に全爲替本位制を採擇することも申すまでもない事實と私は考へて居ります、左樣致しますと、何と申しても一番重要な問題が日本の物價水準をどこの線に置いて國を開くかと云ふことであると考へるのであります、折角今日物價廳が新設せられて、日本全國の物價を一元統合せられる譯でありますから、行く行く國際關係の再開に當つても、物價の水準をどこに置くかと云ふことも今念頭に置かれまして、日本の物價を創設せられること勿論と考へて居ります、此の意味に於て、經濟安定本部乃至は物價廳は如何なる方針で臨んで居られますか、一應承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=160
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161・橋井眞
○橋井政府委員 將來「ブレトン・ウッヅ」協定に參加することは、當然我々の目標として持たねばならない所であることは、御指摘の通りであります、其の場合に國際通貨として如何なる水準が保たるべきかと云ふことは、只今の所率直に申して見當が付かない譯でございますが、兎に角國内に於ける其の場合の物價水準の高い低いが、決定された國際物價水準に相當な影響のあるであらうと云ふことも御指摘の通りと思ふのであります、政府と致しましては御承知の通り物價を出來るだけ公正に、又非常に急激なる不安定の上昇のないやうに安定せしめたい、斯う云ふ趣旨で色々の施策を考究致して居る譯でありますが、今後の物價の決め方の狙ひと致しましては、米とか石炭其の他の基礎資材、斯う云ふものに基準を置いて、全體的に體系のある物價體系を作り上げる、是は必ずしも只今のよりは低いと云ふ譯には相成らぬでせうけれども、一遍決めた以上は、之を飽くまで維持して行きたいと云ふ方針を執つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=161
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162・加藤一雄
○加藤(一)委員 先日も商工大臣は、今橋井政府委員が御話になつたやうに、米、石炭、其の他を中心に日本の物價を建設するのだと云ふ御話でありましたが、國内的には左樣なことで物價水準は一應安定すると思ひますけれども、日本が世界の檜舞臺に活躍を許されたと考へる時に、世界關係から考へれば、今日決めた物價水準が毀されることは必然と考へますので、其の點一應御所見を承つて置きたいと思ひます
〔宮前委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=162
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163・橋井眞
○橋井政府委員 只今の物價の決め方は、御承知の通り國内に於て或る程度の生産を飽くまでも確保する、其の爲の頭と云ふものがございまして、又それには假令物價を低く決めましても、他面に生産を確保する爲に補償金等を多額に出すと云ふことも出來ないやうな事情がございまして、現行の物價が決り、又決まらんとしつつある、斯う云ふ状況でございます、さうなりました結果が國際的に餘りに高いものであると云ふことになりますと、御指摘のやうな事情が出て來ると思ふのでありますが、是はもう一つ先程申上げました爲替の換算率と云ふやうな問題も殘つて居りますし、又今後さう云ふ場合に、色々決り方に依りまして善處致さなければならぬ點もあらうかと思ふのでございます、兎に角只今の所では、現行のやうなやり方を執るより外に仕方がないと言ひますと、洵に智慧のない話のやうに御聽取りになるかも知れませぬが、正直の所其のやうに考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=163
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164・加藤一雄
○加藤(一)委員 左樣に致しますと、どうも我々國民と致しましては不安で困るのですが、從來の日本で物を考へ、又施策するに當りましても、どうも其の場限りの考へ方が多いのでありまして、膳國務大臣は屡屡本議場に於きましても、本會議に於きましても、物價廳は新設せられた、經濟安定本部は今日創設せられたのだから、只今計畫立案中と云ふやうな御話があるのであります、先般も本會議で、私は商工大臣其の他に質問致しました中にも書いてございまするが、大體現在の機構は太政官布告以來出來た機構と云ふことは、日本國民誰一人知らぬ者はありませぬ、官廳機構は時に變遷興廢はありましたが、一貫して今日まで來て居る、如何に日本が戰爭に負けたからと云つて、今日機關が新しく出來たからと云ふ理由を以て、物價に對する根本方策もなければ、經濟安定本部の物價の割當、産業の再編成に對する基本方策もなかつたと云ふことは、是は話が一寸私は分りにくいのです、商工大臣は機構改革以來商工大臣としてあるのですから、商工省の政策は經濟安定本部の政策になることは分り切つて居る話なのです、それがならぬと云ふなら、經濟安定本部は商工省方面から人員を取る必要は毛頭なからう、取る以上は商工省の政策を經濟安定本部の政策になさる、さう考へて參りますれば、物價廳の政策と致しましても、從來の軌を踏まずに、眼を世界に向けて、「ブレトン・ウッヅ」協定に於ては、復興開發銀行又は國際金融機關は、爲替取決めに對しては中心的になつて、爲替の關係をはつきりしようとまで聲明して居る譯ですが、日本に對する圓の關係など、私は今からでも聯合軍と交通を密にして居りますれば、片鱗でも分ると斯う思ふのです、若し國を開いた其の時に米價切下をやらなければならぬと云ふことになれば、大變なことになり、民心は政府に付かぬ、斯うなりますれば折角の復興も物價の面から又崩れて來る、之を私は懸念するが故に、私の質問の神髓に觸れて、もう少しはつきりしたことを御返答願ひたい、今出來なければ明朝でも宜しうございますから、膳國務大臣が此の場に御臨席になつて、懇切丁寧に其の面を國民の前に御闡明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=164
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165・橋井眞
○橋井政府委員 申上け方が惡かつたと思ひますが、物價を決めます場合、將來は當然「ブレトン・ウッヅ」協定にも參加すると云ふことを頭に置いて、國際的な見地からも、出來るだけ健康な物價水準を保つことは非常に重要な要素として考へて居ります、是は當然なことでございまして、今後物價基準を決め、價格體系を作つて行く場合にも、十分に其の點は考慮して行きたい、斯う云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=165
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166・加藤一雄
○加藤(一)委員 橋井君は能く御存じの筈と思ふのです、日支事變中に實施した、圓系物資の爲替差に基く調整要領を御作りになつたのはあなた一人である、今のやうな状態でなく、國が開けた場合、外國の力が日本を壓倒した時に如何樣になるかと云ふことは、火を睹るより明かなことであるから、經濟安定本部が出來た以上は、あの當時のことを能く考へ、日本の行末がはつきりするやうな對策を、心の底から揮ひ出さないと、其の悔ひ百年に貽ると云ふことを申して居るのであります、若しあなたが御答へ出來なければ、今晩歸られて、當時を囘想して國務大臣に能く御話して戴いて、はつきりとした御答辯が願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=166
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167・橋井眞
○橋井政府委員 實は私爲替差損の要領を作る時には、其の事務は擔當致して居りませぬでした、併し事情其の他を能く承知して居りますことは、御指摘の通りであります、それ等の點を考へ、日本の今後の立場を能く考へて行くべきであると言はれることも、洵に御尤もと思ひます、御趣旨は十分に膳國務大臣竝に物價廳に傳へまして、今後左樣な點遺漏のないやうに致して行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=167
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168・加藤一雄
○加藤(一)委員 私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=168
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169・竹田儀一
○竹田委員長 早稻田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=169
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170・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 それでは先程の續きである本案に對する具體的な問題に付て、尚ほ數點御尋ね致したいと思ひます、本法に依りますれば、組合の金融事業を行ふ場合は他の事業と併せて行はなければならないと云ふことに解釋致して居りまするが、今後組合の健全な發達を圖る場合に於て、金融事業の必要面が非常に多い、隨て手形の割引とか、小切手の業務を扱ふとか云ふやうな仕事も行はねばならぬやうな事態が多いと思ひますが、本法に於て、なぜさうした點を考慮に入れられなかつたかと云ふ點を承りたいと思ひます
〔竹田委員長退席、加藤(一)委員長代理著席〕
それから更に商品券の發行とか、或はそれに附隨する色々な證券の發行と云ふことに付ても、政府の御考へを承つて置きたいと思ひます
次に本法施行後に於て、統制組合は何れも解散をしなければならぬことになつて居ります、併し從來の例に依りましても、移行手續、解散手續は相當うるさいものでありまして、組合當局の非常に困る面であります、是が爲に理事者は相當頭を痛めまするが、施設組合は其の儘移行が出來ると云ふのに、統制組合のみはさうした便法が設けられなかつたことを甚だ遺憾と致しますので、出來れば組合の議決に依りまして、舊組合の財産は總て新しい組合に讓渡する、營業全部も是と同じやうに讓渡すると云ふやうな議決をした場合、其の權利義務を包括的に讓り渡すことが出來るかどうか、さうした便法を考慮せられて居るかどうかと云ふ問題に付て承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=170
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171・小出榮一
○小出政府委員 只今御尋ねの數點に付て御答へを致します、最初の組合の金融事業の點でありますが、御話の通り是は經濟事業の附帶事業として認めて居りまして、金融事業だけを行ふ所謂金融組合的なものは認めて居ないのであります、是は協同組合の目的から申しまして、組合員の事業の經營の合理化と云ふことが主眼であり、色々な經濟事業を行ふことが目的でありまして、其の經濟事業を更に強化して行くと云ふやうな意味から、金融事業も併せて行ふことが出來ると云ふやうに致したのでありまして、金融だけを專ら專門に行ふ組合としては、現在既に市街地信用組合と云ふ制度もありますので、是等の制度との競合なり、重複を避けると云ふ意味に於きましても、金融事業を附帶事業と致したのであります、尚ほさう云ふやうな關係から致しまして、信用組合とか、市街地信用組合と云ふやうな金融組合ではございませぬので、小切手業務であるとか、或は手形の割引と云ふやうな所までは、まだ行くのは適當ではないのではないかと考へて、其の點までは金融事業の中に含めないことに致したのでございます
それから商品券でございますが、是は法文にございまするやうに、行政官廳の許可に依つて商品券の發行が出來ることになつて居りまするが、是は業種別の組合、或は地域別の組合乃至は聯合形態の組合等、色々組合の形態があると思ひますが、組合の形態に依つて商品券の發行を制限しようと云ふやうなことは考へて居りませぬ、唯御承知のやうに、商品券取締法と云ふやうな別箇の見地からする法律もございまして、是が恰も紙幣類似證券の如き形に於て轉々流通することは、各種の弊害も起りまするので、さう云ふ面から致しまして、個々の組合の實情に即しまして、商品券の許可、不許可を決定して參りたいと考へて居ります
それから組合の施行後に於ける經過規定の問題と關聯致しまして、施設組合は其の儘移行出來るけれども、統制組合は其の儘移行出來ないのは甚だ不便ではないかと云ふ御話でございました、洵に御話の通り不便ではございまするけれども、統制組合は戰時中の統制團體でございまして、今度の協同組合とは全く其の性質が異つて居ります、隨ひまして先程も他の委員の方から御話がありましたやうに、統制組合が單に看板を塗替へて名目的な改組だけを行ふと云ふことは、戰時中の色々な滓を今後に殘す、隨て色んな弊害がそこから起つて來るのではないかと云ふ御話もございました位でありまして、やはり一且統制組合は全部解散致しまして、新たに別箇の見地から協同組合を設立すると云ふのが、是がやはり協同組合の行き方である、斯樣に考へまして、多少の不便を忍びまして統制組合は解散することに致したのでございます、併しながら今御話のやうに、解散を致して清算に入れる譯でございますが、若し大體に於て同じ「メンバー」で以て、同じやうな内容の組合を別箇に協同組合として作りたいと云ふ場合に於きまして、是等の組合員の總意に基きまして、前の組合の財産關係を次の組合に讓渡すると云ふことが、若し全體の總意として決められますならば、それは必ずしも此の法律に於きましては之を制限する譯ではございませぬ、さう云ふことは事實上の問題と致しまして出來るのではないか、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=171
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172・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 早稻田君に御相談致します、膳國務大臣に御質問がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=172
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173・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 あります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=173
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174・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 それではどうぞ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=174
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175・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 それから本法第三十二條に「理事又は監事は、任期中であつても、總會において、これを解任することができる。」斯うなつて居りますが、斯うした場合理事又は監事は之に依つて被る精神上、物質上の影響が大きいと思ひますが、損害賠償を請求し得るかどうか、斯う云ふのであります、それから第三十三條の、組合と理事との契約とは如何なる範圍を言ふか、之を明かにして置いて戴きたいと思ひます、それから第四十條「代理人は、組合員でなけれはならない。」斯うなつて居りますが、是は本法に依る組合の性格から申しますれば、家族又は使用人等を代理させることが實際上必要であり、妥當するではないか、斯樣に考へます、此の三點に付ての御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=175
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176・小出榮一
○小出政府委員 第三十二條に於きまして、組合の役員、商工協同組合の理事なり監事を任期中に於きまして總會で解任致しました場合に、其の解任された役員が損害賠償の請求が出來るかどうかと云ふ御尋ねでございまするが、此の役員を選任するに當りましても、やはり總會で選任を致したのでありまして、組合員全體の意思に基きまして、其の人を理事なり監事に御願ひをしたと云ふことは、其の人に理事なり監事としての職責を委任したと見られますので、法律上は一種の委任契約と云ふ風に解釋するのが適當であると思ひます、隨ひまして之を逆に解任致します場合の損害賠償の請求權に付きましても、法律上の所謂契約解除の場合に於ける損害賠償の請求權と云ふものの一般原則に依りまして解決することが出來ると考へます、隨ひまして契約解除の場合も、一般原則に依りまして、委任契約の解除に基く損害賠償の請求權が發生する譯であります、それから第三十三號の組合と理事との契約の範圍でございますが、是は具體的に色々な場合が考へられまするが、苟も經濟的な利害の相反するやうな契約…之に付きましては、總ての契約は其の中に包括される、斯樣に考へます、それから第四十條の家族であるとか、或は使用人と云ふやうなものを代理人とすることが實際上便宜でもあり必要ではないかと云ふことでありまするが、是は成程それ等の家族なり使用人を代理人とすることが出來ますれば、非常に便利な場合もあらうかと考へられまするが、協同組合の精神から考へまして、組合員自體のお亙ひの密接な結合と云ふことが強く要求せられて居りまする以上は、やはり組合員お互ひの間から代理人を出すのが適當でありまして、又技術的に見ましても、家族、使用人の範圍に付ても色々の疑義を生じますし、それ等の制限を何處に置くかと云ふやうな技術的な點等も考慮致しますれば、必ずしもそこまで代理人の範圍を擴げることは適切でないと考へられますので、代理人は組合員に限定した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=176
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177・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 細かい問題で恐縮ではございますが、現在統制を行つて居る組合等が解散を致しまして、新しく本法に依る組合の出來るまでの間、若干の間隙を生じますが、さう云ふ場合統制品の配給、或は是が處理に對しての色々な手續等は、如何なる方法を執つたら宜いかと云ふ點であります、それから今日統制を致して居ります組合に於きましては、先程申しましたやうに轉廢業をした人が非常に多い、是等が終戰と同時に組合に復歸したいと云ふ申出が非常に多い譯であります、是等をさうした統制を現に行ひつつある團體に加入させること、異存はないのでありまするが、統制品の割當等には非常に煩雜な問題が生ずると思ひます、それで是等の處理方法を伺つて置きたいと思ひます、更に本法に依ると本法の構成組合員は何々業を行ふ者、斯うなつて居りますが、工場の支店であるとか、出張所と云ふやうなものは、組合員として加入せしめることが出來るかどうか、それから露店商とか或は青空市場等に出店を出して居るやうな場合、之を組合員として加入せしめることが出來るかどうか、斯う云ふ點、それから更に本法の第九條に、組合の事業として、組合員の營業に對する取締も行ひ得るやうに解し得る點がありますが、此の取締に付ての當局の所見、それから過怠金等に付ての御考へを承つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=177
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178・小出榮一
○小出政府委員 第一の御尋ねの、斯樣な統制機構の處理の問題でございますが、現在統制組合の中には、相當多數のものが物資の統制機關として尚且つ活用されて居るのでございまして、是等の統制組合が解散をして、次に協同組合が出來るまでの間に「ギヤップ」を生じまして、統制機關と云ふものが其の間に混亂をする處はないかと云ふ、洵に御尤もな御尋ねでございます、今後臨時物資需給調整法が來月から施行になると假定致しまして、此の法律に基きまして、業種別にどう云ふ風な統制機構を作つて行くかと云ふことに付きましての案が、既に大體出來て居る譯でございます、之に基きまして、其の統制機構の中にどう云ふ風に組合なり、或は會社なり、或は其の他の團體を織込んで行くかと云ふ構想が出來る譯でございますので、大體其の構想に基きまして、若し今後も統制組合に代るべき協同組合を統制團として活用したいと云ふ必要がある場合に於きましては、豫め協同組合の設立を──是は強制することは出來ないのでありますけれども、業界との話合に依つて促進致しまして、統制組合が出來るまでに協同組合を作つて、さうして統制組合が解散する場合にそれに移行すると云ふことも出來る譯であります、と申しますのは、此の法律が施行になりましてから、尚ほ三箇月間は統制組合の存續する猶豫期間を置いてありますのて、法律施行と同時に統制組合が全部なくなる譯ではございませぬので、其の三箇月の猶豫期間の間に於て、次の組織に對する移行の準備が出來ることになつて居ります、實際はさう云ふ風な方法で解決は出來ると考へて居ります
第二の轉廢業者の問題でありますが、是も現在統制組合は總て當然加入になつて居りまして、假に轉廢業者が再び昔の營業に戻つて事業を始めました場合には、當然是は組合員としての資格を持ちます以上、組合員としなければならない、と申しますよりは、もう組合員になつてしまふのであります、今後の協同組合に於きましては、加入、脱退が自由であります關係上、或るものを入れ、或るものを入れないと云ふやうな事態が起つて來る虞があるのでありますが、先程も他の委員の方の御質問に御答へ致しましたやうに、組合員としての資格を持つて居りまする以上は、不當に加入を拒むことは出來ないのでありまして、轉廢業者と雖も其の中に包攝をしなければならないのであります、唯其の場合に、それに依つて非常に少い物資の割當等に困難な事態を生ずる譯でありますが、是等に付ては事實上其の割當の適正と申しますか、或は能率の高いものに重點的な割當をすると云ふやうに、各種の條件を勘案して、具體的に解決する以外に方法はないのではないか、斯樣に考へます
それから第七條の「行ふ者」と云ふ營業の意味でございますが、御尋ねの工場、支店、出張所と云ふやうなものは獨立の人格を持つて居ない譯でありますので、是で申しまする獨立した組合員としての資格を持つことは出來ないと解釋して居ります
それから露店商或は青空市場の出店者と云ふやうな者が、組合の設立が出來るかと云ふことでありますが、是は露店商でありましても、或は青空市場の出店者でありましても、組合の定款の決め方に依りまして、組合員としての資格を具備しまする以上は、當然に協同組合の設立は可能であります
それから最後に組合の事業と致しまして、取締でございますが、今度の協同組合は協同施設が中心でありまして、組合員の營業に關する取締と云ふやうなことは原則として出來ないことになつて居りまず、唯檢査事業と云ふやうなことを行ひます場合に於きましては、其の檢査の目的を達するに必要な最小限度の自主的な取締と云ふ程度のことは出來ると考へて居ります、それから尚ほ過怠金と云ふことが問題でございますが、假に組合が色々定款に決めて居りますやうなことに、組合員が違反をすると云ふやうなことが起りました場合に於きましては、違反者に對する制裁と致しまして過怠金を課けると云ふことは、是は定款に於て規定をすれば出來ると云ふやうに解釋致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=178
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179・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 只今最初の一點に付ての御答へを拜聽致しますれば、統制を行つて居る組合が解散した場合に、三箇月間の猶豫期間があるから、其の間に本法に依る組合を作つて之に仕事をさせるから支障はないと云ふ御答へ御尤もでございます、併し此處で更に此の問題に付て御尋ねしたいことは、先程御説明の中にもありましたやうに、本法に依る組合を、臨時物資需給調整法に基いて發せられる命令に依る指定機關に指定されるやうな場合が多いと推定されます、併し加入、脱退の任意な組合を、さうした、指定機關に指定することに付て缺陷はないか、斯う云ふことを實は杞憂するのであります、此の點更に御考へを承りたいと思ひます
それからもう一つは、業者が指定せられた期間内、三箇月と云ふ猶豫期間中に、幸ひに當局の希望されるやうな組合を作れば結構でありますが、作らなかつた場合、統制事業を行ふことが出來ないやうになる場合も推定されます、斯う云ふ場合本法には強制設立の方法がありませぬ、若し當局の御考へのやうであるならば、先程御尋ねしました消費組合の如きは一つの資格を有するやうに存じますが、此の消費組合が相寄つて協同組合を作ることが出來るかどうか、此の點伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=179
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180・小出榮一
○小出政府委員 統制機關として現在指定を受けて居ります統制組合が解散を致しまして、假に協同組合が臨時物資需給調整法に依る統制機構の一つとして指定されました場合に、加入、脱退が非常に自由であります爲に、統制の效力が確保出來ないのではないかと云ふやうな御話でありまして、其の點の御心配は洵に御尤もでありますが、若し或る協同組合が非常に「アウト・サイダー」が多いとか、或は其の組織機構がしつかり出來て居ないとか、事業の運營も極めて適正に行つて居ないと云ふやうな場合でありますれば、勿論さう云ふ組合は統制機構としての指定を受ける資格はない譯でありまして、さう云ふものは事實上に於て指定しないことになると思ひます、併し協同組合の如く加入、脱退が任意でありましても、殆ど大部分の人、或は全部の人が協同組合に一致して入らうと云ふ場合も相當にあらうと思ひますので、さう云ふ場合に於ては、現在の統制組合と同じやうな統制の效果を擧げ得るのではないか、さう云ふ場合に於ては、進んで協同組合を活用して差支へないと考へる次第であります、それから全然統制組合も解散し、協同組合も出來ないと云ふやうな状態が出て來た場合にはどうするかと云ふ御話でありますが、勿論さう云ふ場合も考へられるのでございますけれども、併し其の場合に於きましても、政府の方から強制的に此の協同組合を設立させることは勿論不可能でありまして、其の場合には、どうしても何等かの統制機構が必要であると考へられます場合には、或は任意團體と云ふ方法もありますし、或は會社組織と云ふやうなことも考へられますし、結局他の組織に依つて運營する以外に方法はないのでございまして、此の組合法に依つて強制的に組合を作らせると云ふことは、勿論是は協同組合の本質から申して出來ない譯であります、併し大體に於て業界の動向を察知致しますれば、統制をすることが明かである物資に付きましては、恐らく其の業界の方から、逸早く自發的な結合をされるものと期待して居りまして、實際問題としては、さう云ふやうな空白状態は先づ起らないのではないか、斯樣に考へて居ります
それから最後に先程の第七條の「行ふ者」の解釋の一つと致しまして、消費組合はどうかと云ふ御話でありますが、此の「行ふ者」と書きまして、特に營む者と云ふ言葉を使ひませぬでした意味は、營む者と書きますと、所謂營業者、普通の商業者、工業者だけに限定されますので、之を更に廣く致しまして、營利事業として行ふ者以外の、營利を目的としないけれども、其の行ひまする事業は、一般の營業者と經濟的に同一な事業を行つて居りますやうな團體、それも此の中に含めて考へて居ります、隨て御指摘のやうに、消費組合が此の協同組合を設立すると云ふことは、理論上は出來ることになる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=180
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181・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 大變御親切な御答辯を戴きまして感謝致して居りますが、運營上もう一つ二つだけ伺つて置きます、第二十條の組合の吸收合併の場合でも、此の出資は一口金額が均一でなければならぬかどうかと云ふ點、それから未成年者、禁治産者、或は妻とか、外國人と云ふやうな者が營業を行つて居る場合に、是が加入を拒む旨を定款の規定に入れると致しましたならば、是は有效であるかどうか、斯う云ふ點であります、それから今後此の問題は非常に重要になつて來る點が多いと存じますが、從來の商工組合中央會、今度の協同組合中央會でありますが、是が主體となつて自治的に色々な仕事を委任されるやうな場合が多いと思ひます、今後此の協同組合中央會に對する助成方法如何、此の三點を伺つて、具體的事項に對する質疑を終りたいと思ひます、其の點だけ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=181
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182・小出榮一
○小出政府委員 第二十一條に於きまして、組合の吸收合併の場合でありますが、此の場合に於きましても出資一口の金額は均一でなければならないかと云ふ問題であります、それは御話の通り、組合の吸收合併の場合に於きましても、出資一口の金額は均一を要すると云ふ原則に變りはないのであります、唯其の場合に於きまして、具體的には出資一口の金額の減少と云ふ事態が分合的に起つて來る譯でございますが、之に付きましては、其の場合の債權者を保護する規定としまして、特に第五十五條の第二項に於きまして、「第四十四條及第四十五條の規定は、商工協同組合の合併の場合にこれを準用する」と云ふ規定を設けまして、即ち出資一口の金額の減少の場合の手續を準用致しまして、債權者の保護を圖つて居る譯でございます、それから次に第七條の資格の點でございまするが、未成年者、禁治産者、或は妻、外國人と云ふ者が組合員となれるかどうかと云ふ風な問題、或はそれ等の者を除外するやうな定款の規定が出來るかどうか、是は有效であるかどうかと云ふ御尋ねでございますが、禁治産に付きましては、禁治産は當然脱退の理由になつて居ります關係上、禁治産者は組合員になることは出來ないと解釋しなければなりませぬ、併しながら、未成年者、妻、外國人と云ふものが、自分で事業を行つて居ります限りは、それは組合員となることが勿論出來る譯でございます、そこで、若しそれ等の人達を定款の規定で以て、特に未成年者を除外するとか、或は妻を除外すると云ふ風なことを書きました場合に、それが有效か無效かと云ふことになりますと、それは無效ではないのでありまして、さう云ふ規定も出來る譯であります、併しながら、是は多くの場合に於きまして甚だ適當でない規定になる場合が多からうと思ひますので、さう云ふ場合には具體的な問題として、適當か適當でないかと云ふことを能く判斷して參りたいと考へて居ります
それから最後に、商工協同組合中央會に對する助成でございますが、之に付きましては、現在既に商工組合中央會に對しまして、其の事務費、事業費等に付きまして、相當の補助金を出して居ります、本年度に於きまして、相當財政状態も苦しくなつて參りましたにも拘らず、特に中央會の存在を認めまして、之に對しましては尚ほ引續き補助金を出して居りますが、今後此の中央會と略略同じ性格を持つて居ります商工協同組合中央會に對しましても、財政の事情の許す限り、補助金其の他の助成の途を講じて參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=182
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183・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 長時間に亙つて極めて懇切丁寧な御説明を戴きまして、深く感謝致します、御説明の線に沿つて、今後之が運營を圓滑になさしめるやうに、私共も善處するに大いに得る所があつたことを有難く存じます
次に商工大臣其の他に御尋ねしたい點が二、三ありますが、時間の關係もありますので、後に讓りまして、經濟安定本部の大臣の御見えにならぬのは寂しい譯ですが、代人が御越しのやうですから、一、二點伺ひたいと思ひます
第一番は、經濟界の安定に當りまして、精神的に最も必要なのは經濟道義の昂揚であり商工道徳の復元であると存じます、終戰後、經濟道義が非常に頽廢致しまして、闇商人、或は惡徳商人の跋扈は、全中小商工業者の信用に大きな影響を齎らし、一般から顰蹙をされて居る點も多いのでありますが、實際は善良なる信用ある商工業者は手を引きまして、何等商工活動を致して居ないと云ふのが本當ぢやないかと私は存じます、隨て安定本部に於かれては、之れが對策に色々御研究を願つて居るやうでありまするが、一日も早く惡徳商人を一掃して、本當に堅實なる眞面目なる考へを持つ眞正な自由主義、民主主義の發達に寄與せしむるやうに、施策を講ぜられなければならぬと存じます、新日本の經濟建設に當りましては、私は商工道義の昂揚が先づ一番大事だ、斯樣に考へて居りますが、經濟安定本部の之に對する所見竝に對策を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=183
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184・橋井眞
○橋井政府委員 經濟安定に付きまして、特に經濟道義の昂揚、商工道徳の復元と云ふ精神面の考慮か重要であると御指摘になりましたことは、洵に御尤もと存ずるのであります、此の點に付きましては、各般の經濟政策を行ひます場合に、種々考慮に加へつつありますと共に、元來是は國民の道徳全般の問題、社會秩序の問題でございますので、併せて政府全體としても十分に考慮して、又凡ゆる努力を盡して行くべきものと考へて居る譯であります、例へて言ひますと、闇の問題に致しましても、第一には經濟統制のやり方に付きまして、闇をする人が得をし、信用のある關係業者が手を引いて居らなければならぬと云ふやうなやり方を採らない經濟統制を致すと同時に、反面に於きましては、警察等に於きまして、又出來れば社會全體の空氣と致しまして、斯かる惡徳なる業者を根絶する方向に向くやうに致したい、斯う考へる譯であります、其の他工業生産に付きましても、例へば物の品質に致しましても、亦價格其の他に付きましても、納期其の他に付きましても、凡ゆる方面で道義の問題がございますが、要は、正直な者が決して損をしない、信用のある業者が眞面目にやつて行けば、必ず原材料も手に入るし、又十分の販路も得られるし、正しい利得が獲得出來る、是が根本と考へまして、今後凡ゆる方面で經濟の復興開發を考へる、又各般の經濟部門の運營を致します場合に、さう云ふ趣旨で經濟の計畫なり政策なりを、關係各省と協力して立てて、又必ず實行して行きたい、斯う云ふ心組みで居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=184
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185・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 只今の御答へは抽象的で、私は滿足をすることは出來ませぬが、さう望むのが敗戰の今日無理かも知れませぬ、併し折角經濟安定本部が出來た以上は、一つがつちり尻を落著けて、さうして先程申しましたやうに、正直な眞面目な商工業人が活躍出來るやうな施策を、具體的に一日も早く作られまして、さうして經濟界の安定を圖るやうにして欲しいと私は思ひます、別に大きな問題を望む譯ではありませぬが、手近な問題で澤山あります、具體的に例を擧げることは時間が掛りますので省略致しますが、金融問題にしても、住宅の問題、店舖の問題、或は商取引の關係に付きましても、政府が示唆し打つ手は澤山ある譯ですから、是等を一つ緊急に確立願ひたい、政府が垂範されるならば、眞面目な商人が喜んで協力を惜まないと私は信じて居ります、どうかさう云ふ點を御考慮願ひたいと思ひます、それからもう一つ序に伺つて置きたいと思ひますのは、我が國の將來は、好むと好まないとに拘らず中小商工業を中心として推進せんければならぬ事態になつて居り、是は内外一般の齊しく認めて居る所でありますが、政府は屡屡之を聲明して居ながら、どうも其の施策の跡を見ますと、戰時中と寸毫も變つて居ないやうな面があります、例へて申しますならば、今尚ほ、經濟安定本部に於ても、或は商工省に於ても、大工場、大企業中心主義を繼續して居るやうな面が多いのであります、財閥は解體され、さうした大工場主義、大資本主義と云ふものは拂拭されつつある折柄、私は非常に遺憾だと思ふ、今後經濟安定本部に於ては、さうした從來の考へ方をさつぱり拂拭して、眞に中小商工業を中心とした施策を立てて貰ひたい、口で言ふだけでは何にもならぬと思ひます、口では立派に、今後は中小商工業を基盤とせんければならぬと言つて居ながら、實際やつて居ることは大工場、大資本を對象としたことが多い、斯う云ふ感じを抱く者は獨り私のみではないと思ひまするが、どうか一つ今後の施策をなさる場合には、さう云ふ點に十分御留意を戴きたいと存じます、之に對して御所見を伺つて置くことにしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=185
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186・橋井眞
○橋井政府委員 我が國經濟の將來の中樞が、中小商工業に重點を置く形で必ず進んで行くと云ふことに付きましては、御指摘の通りでございますので、實は既に中小工業等に付きましては、關係各省、又民間の有識經驗者を以て組織致します内部的な協議會を作りまして、種々具體的な政策の檢討に入つて居ります、其の場合に、從來に於きますやうに、大工業は儼然として存在し、それは日本の産業の中心である、中小工業の對策は寧ろ社會的な見地であるとか、或は輸出工業に對する見地だけから考へて行くのであると云ふやうな、一部に於てありましたやうな、偏つた考へ方は致して行かない積りでありますし、只今の所其のやうに動いて居ります、今後に於ける中小商工業のあり方を見ますと、當然大工業、殊に大資本は解體致します、又大工場の相當多くの部分が賠償で撤去致されます、其の後で中小商工業がしつかりやつて行かなければならないので、例へば、そこで扱つて行く重要な品目別に付て、技術の問題、又勞働の問題、品目別の品質なり、販路なりの問題、又資金の問題、是等の業者の組織の問題等の全面を通じまして、思ひ切つた施策を打つて行く、さう云ふ方向を以ちまして、只今折角具體策の檢討を致して居ります、又逐次決まりましたものは、全體が出來るのを待つと云ふやうな生温い考へは致しませぬで、どんどん實行に移したい、斯う云ふ方向であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=186
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187・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 只今の御説明を承つて大變意を強うする次第であります、尚ほ商工大臣竝に商工省の工務局長に、陶磁器産業の復興、陶磁器試驗場の擴充等に付て承りたいと存じますが、お顏も見えないし、時間も參りましたので、本日は是で打切つて、尚ほ此の問題に付ては明日又發言を御許し願ふやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=187
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188・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 早稻田君に御相談致しますが、明日午前中に終りたいのですが、あとまだ六人質問者が居るのです、本日で質問を打切る譯に參りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=188
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189・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 陶磁器關係はどなたも御存じない方ばかりでございますが、どうでございますか、陶磁器産業の復興に付て全面的に──是は加藤さんも御存じのやうに、私共地元の生命だから、眞劍に承りたいと思つて居るのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=189
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190・橋井眞
○橋井政府委員 陶磁器關係でしたら私も可なり知つて居りますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=190
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191・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 實は廣く承りたいのですが、それぢや簡單に濟ませたいと思ひます、陶磁器産業の復興に付てでございますが、戰前に於きましては、我が國輸出品の王座を占めまして、世界市場に活躍を致して居りました陶磁器でありますが、戰後に於きましては食糧の見返り物資であるとか、或は復興用の建設資材であるとか、戰災者及び引揚者用の生活用品であるとか云ふやうな、緊急不可缺な物を造りまして、國内需要を充して居る譯でございます、併し戰爭中に、此の陶磁器産業は平和産業であると云ふので、其の一部は滿洲或は支那に移駐をされまして、殘餘の分に對しては軍需産業に變革の餘儀ない次第になりまして、殆ど壊滅状態にある譯であります、併し只今申上げたやうに、見返り物資としても、或は國内需要の面から考へましても、陶磁器産業の復興が必要であることは言を俟たぬのであります、商工省に於ても、今般省内に窯業課を設置せられまして、窯業對策を樹立されることになつた熱意は大いに多と致します、併し形だけでは是は何にもならぬ譯でありまして、眞に窯業の發達に貢獻願はなければならぬと存じて居ります、此の復興に付ては、先づ生地の製造工場或は原材料其の他大體地元──國内で間に合ふものばかりでありまするが、要は石炭が足りないと云ふことで、此の問題は難かしい問題であります、一時に澤山戴きたいとは申しませぬが、地元で間に合ふ亞炭であるとか、或は木材燃料、竹材と云つたやうなもので間に合せては居りますが、尚ほ若干の石炭を必要とし、副資材を必要と致して居ります、斯う云ふものに對しても、既に日陶其の他からそれぞれ商工省へ申請をして居るやうであります、併し遲々として御返事もなければ、又はつきりした施策も與へて戴けない、斯う云ふ現状でありますが、此の陶磁器業界を高度に發達せしむる當局の所見如何、斯う云ふ點を伺つて置きます、それから陶磁器指導機關としての陶磁器試驗所と云ふのがあります、此の試驗所は現在京都にありまして、愛知縣の瀬戸市に支所がある譯でありますが、瀬戸物の本場である愛知縣、岐阜縣地方に此の試驗所を置くことが妥當ではないかと考へます、瀬戸の試驗所を擴充強化して、そして之を獨立した試驗所にする、斯う云ふやうなことに地元の業者は熱望致して居ります、細かい問題に付ては又日を改めて伺ふことにしまして、本日は此の二點、即ち陶磁器産業振興に付ての御所見如何、それから陶磁器試驗所獨立に付ての御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=191
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192・橋井眞
○橋井政府委員 それでは安定本部と致しましての意見を申上げます、我が輸出品の最も重要な點を占めて居りました陶磁器工業が、同時に見返り品として以外に、復興用に、又戰災者、引揚者用、其の他に非常に重要な地位を占めて居りますことは仰せの通りでございます、又戰爭中是等の陶磁器工業は、或は輸出が止まつて居り、又國内的にも民需が軍需に壓倒された關係で、本來の非常に盛んであつた姿を失つてしまつた遺憾な状態になつて居ると云ふことも、御指摘の通りでございます、元來陶磁器は、殆んど總てが我が國の中で出來る原材料を以ちまして、勝れた我が國の技術を以て外國にも雄飛すると云ふ本質を持つて居るものであり、又國民の日常生活の最も重要なものでありますことに鑑みまして、現下に於ける復興上最も重要なものとして考へるべきものの一つであることは申すまでもないと思ふのであります、唯非常に遺憾なことは、原料である、燃料、御指摘のありました石炭が、終戰以來特に我が國に於て不足でございまして、陶磁器に一番大事な原料の配給が、それだけの重要性にも拘らず、只今十分でない、此の點に問題がある譯であります、石炭の需給状況は御承知の通りでございまして、現在輸送を維持し、又缺くべからざる肥料業でありますとか、或は或る程度の對外的負擔でありますとか、其の地の産業等に少しづつ行くだけであつて、何處も十分でないと云ふのが實情でございます、商工省石炭廳を中心と致しまして、折角努力の結果、又産業關係の勞資兩方の非常な努力の結果、石炭の生産は御承知の通り近時非常に上りつつあります、其の出て來ます結果を見ますと、輸送の面はまだまだ殖さなければなりませぬけれども、併し今後は産業面に對する石炭の配給は、明るい將來を見透して宜からう、斯う思ふのであります、其の場合に、當然陶磁器に對する石炭の配給は、先づ見返り品から始まりまして、逐次復興用又國民生活用等に付きましても、豐かになると云ふことを私共期待致して居るのであります、同時に御承知の通り、戰前に於きましては陶磁器の燃料と致しましては或る程度電氣も使ひ、又相當に重油を用ひて居つた譯であります、戰爭中重油が供給出來なかつた爲に、色々苦心をして石炭系統に替へたやうなものもございますので、今後は石炭以外にさう云ふ燃料の供給力と見合せを致しまして、やはり幅の廣い熱源を考慮することも必要ではないかと考へられまして、それ等の點も燃料の供給計畫と併せまして、考究して行きたいと云ふ風に考へて居る譯でございます
次に陶磁器試驗所でございますが、京都にあります他に、瀬戸物の重點である瀬戸に御承知の通り支所がございまして、過去十何年に亙りまして、非常に業績を擧げて參つて來た譯でございますが、愛知、岐阜、即ち中部日本に於ける最大の陶磁器生産地に於きまして、更に基礎を固めた試驗所が必要であると云ふ御趣旨は、洵に御尤もと存じます、唯國家の經費の關係、其の他全體的な見地もございますので、それ等の點を能く見合致しまして、御質問の御趣旨を考究致したい、斯う考へて居る譯でございます、以上簡單に御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=192
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193・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 陶磁器の特殊性に付て、非常に認識のあらせられる含みのある御答辯を戴きまして、感謝致して居ります、折角今後陶磁器産業の開發に付て、熱意を持つて御指導と御善處あらんことを只管御願ひ致しまして、私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=193
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194・加藤一雄
○加藤(一)委員長代理 本日は是にて散會致します、明日は午前十時より開會致します
午後五時十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013743X01219460926&spkNum=194
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