1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
勞働關係調整法案(政府提出)
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昭和二十一年七月二十六日(金曜日)午前十時三十六分開議
出席委員
委員長 逢澤寛君
理事 瀧澤脩作君 理事 竹田儀一君
理事 岡部得三君 理事 古賀喜太郎君
理事 伊藤卯四郎君 理事 松岡駒吉君
今井はつ君 大内一郎君
杉田馨子君 原侑君
山本勝市君 川崎秀二君
橘直治君 赤松勇君
辻井民之助君 土井直作君
今村等君 山下榮二君
東隆君 木下榮君
藤井正男君 穗積七郎君
疋田敏男君
出席國務大臣
厚生大臣 河合良成君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
厚生政務次官 服部岩吉君
厚生參與官 佐藤久雄君
厚生事務官 吉武惠市君
厚生事務官 吉田忠一君
厚生事務官 富樫總一君
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本日の會議に付した議案
勞働關係調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=0
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001・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは前日に引續きまして是から會議を始めます──穗積七郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=1
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002・穗積七郎
○穗積委員 續いて少しく御尋ね致したいと思ひます、前會に於きまして私は此の法案が二つの點に於て特に缺陷を持つて居ると云ふことを指摘致しました、其の一つは勞働者の爭議權を統制するに拘らず、一方に於て勞働者の生産に對する發言權、或は生活保障の確立と云ふ點が確保されず致しまして、爭議權のみ之を統制しようとすることに第一の缺陷を感じ、第二は爭議行爲の制限乃至は禁止に於きまして、苛酷に過ぎると云ふ二點に於て御尋ね致した譯であります、第一の點に付きましては、本會議以來商工大臣或は厚生大臣に依つて色々な御答辯がなされまして、前會に於ける私の質問に對しまする厚生大臣の御話では、大體經營權と勞働權の接觸點と致しまして經營協議會なる機關が表現されて居る譯ですが、其の經營協議會の性格領域に付きまして、最初は政府に於きましては、勞働條件のみを大體取上げると云ふことを言はれ、次には生産計畫に勞働者も參加することが許さるべきであると云ふ御答次になり、前の機會に於きましては強制に依るにあらずんば、勞働者が經營權乃至は人事權に參加することも差支へないと云ふ所まで御答辯が發展して來たやうに思ひます、そこで去る十七日に中央勞働委員會の經營協議會指針と致しまして發表になつて居りまする内容に付て、最後の御答辯通りの御趣旨に即應して政府の方針に御考慮を願ふと云ふことで大體前段までの質疑應答は止まつて居つたと存じます、尚ほ生活に對しまする保障の確立に付ては、失業問題に對して深刻なる惱みを持つて居りながら、それに對する對策はまだ具體的に綜合的に出來上つて居らぬし、多少考へがあるが次の機會に其の説明をすると云ふことで、生活に對する保障の確立と云ふことは打切られて居る譯であります、そこで今日の質問はそれに續いて御尋ね致したいと思ふのでありす、實は昨日の政府の財政方針に依つて示されました如く、是は敗戰後の日本の經濟に於て當然でございますが、ここで經濟の大整理が行はれなければならない、さう云ふことになりますと金融に對しましては國家管理が強化されることが當然豫想される譯であります、資本に於きまする國家管理と云ふことが確立され一方勞働に於きまする或る意味に於ける國家統制と云ふものが確立されんと致し、勞働者の自發的なる運動である勞働組合運動の中に於きましても、英國等に於けると同じく、我が國に於きましても恐らく次には單なる賃金値上鬪爭と云ふことでなしに、そこから日本の經濟復興の爲の増産運動に轉換さるべきであると云ふことが豫想されるのであります、其の場合に於て中間の經營權のみが飽くまで絶對のものの如く固執して居らるる向きがあるが、是は私は少し錯覺ではないかと云ふ風に思ふのであります、私が經營權に付きまして特に勞働の主體的な參加と云ふことを主張致しますものは、觀念ではなしに、此の經濟整理以後今日直ちに我々が直面しなければならない日本の經濟の實情の中から私はそれを提案して居りまして、決して理想論として之を表現して居るのではないのであります、言ひ換へますならば、從來の經濟の建方に於きましては、資本を投下致しまして、其の資本が經營權を確保して居る、さうして其の經營權なるものは勞働權に優位するものであると云ふ考へ方でありますが、今日生産條件と云ふものは、即ち物的資源と云ふものは剥奪され、自由なる市場を制限されて居つて、而も金融も國家管理化されまして、さうして日本の生産復興に役立つ所の經營權とは一體何だと云ふことになりますと、私は經營權と云ふものに依つて主張されなければならない、言ひ換へるならば、經營權の自由が與へられることに依つて、國家の生産が復興すると云ふ其の經營權の自由の役割と云ふものは、日本に於きましては、具體的條件を甚だしく缺いて居ると思ふのであります、そこで日本の經濟復興は國家管理された金融から切離された經營者をも含む廣汎な勤勞の中にこそ經營の實體が移らなければならないと云ふ風に思ふののであります、さう云ふ意味に於て、今まで經營權と云ふ名前に依つて擁護さるべき利潤或は又創意の自由と云ふやうなものが、經營者、技術者を含めました職場の全勤勞者の組織と訓練の中にこそ私は經營の實體が移つて居ると云ふことを痛切に感ずるのでありますが、河合厚生大臣竝に其の外の政府閣僚は其の認識をどう云ふ風に御考へになつて、一體經營權絶對を飽くまで主張されるのか、私は其の點理解に苦しみますので、之を第一の質問の點と致したいと思ひます
それに關聯致しまして、第二は是は好む好まざるに拘らず、我が國の經濟整理後に於きましては、大體農業は中小自作農以下に分散されます、それから大資本は解體されます、それから金融資本は再整理されまして、生産企業の整備と共に、是は國家管理化される、全く是は地均しされてしまつた譯でありまして、日本の立場と云ふものは農業國と、もう一つは勤勞者國家に、國際經濟の中に於てはなり下つたと思ふのであります、其の地均しをされました後に、當然日本復興の場合に於ては二つの岐路に立ちます、一つは鎖國經濟で行くか、もう一つは國際經濟の中に進出するか、昨日の財政方針に依つても示されました如く、又國民全體が豫想する如く、國際經濟の方向に行くと云ふことになりますと、日本の經濟復興は言ふまでもなく日本の勞力と外國資本である、其の資本の日本内に於きます發言は──國家管理化されたる機關と云ふものは、特殊の金融機關と云ふことが考へられる譯であります、さうなりますと、此の場合に於て我が國に於きます生産經營權と云ふものが資本のみに依つて動かされると云ふことは、日本の經濟的獨立の爲に私は深刻なる問題であると思ふのであります、曾て私が滿洲に見學旅行致しました時に、其の代表的なる工業である昭和製鋼所に參りました時に、昭和製鋼所は日本の資本である、其の經營は日本が握つて居つたのであります、現場に行つて見ますと、滿人の勞働者が、技術的にも思想的にも或る程度向上致しまして、例へば薄ものの口取りをやつて居る、六「ミリ」以下の丸棒の引拔きの口取を滿人の勞働者がやる程度に、技術的に成長致して居ります、其の技術的に成長致しました勞働者は、固より意識的にも成長を致して居ります、此の場合はつきり致しましたことは、資本と勞働と云ふものが經營權を中心に致しまして、全く劃然と對立し、或は選別されて居ることは、是は國内に於ける階級問題だけでなしに同時に滿洲に於きまして、民族間の對立の溝を作る現實の姿であつたのであります、是からの日本の復興がさう云ふ形で、農業國であり、勤勞國家として立つ場合に、外國資本の力を借りなければならぬことは當然でありますが、それに依つてのみ日本の經營の總てが指導されると云ふことは、日本の經濟の將來の爲に採らざる所である、のみならず、若し其の純粹な形、曾て滿洲の昭和製鋼所に於けるやうに、資本と勞働者との關係が、經營權を境として截然と區別されて居ると云ふならば、是は「アメリカ」なり「ロシア」なり、或は其の他の戰勝國からの資本が投下されました時に、此の經營權を中心に致しまして、日本は茲で日本の國民と外國との民族的な融合と云ふことが非常に不可能になると考へるのであります、そこで私は日本の經營權と云ふものは國家管理化されました金融と、勞働自身に於きましても、自發的乃至は此の法案に意圖されて居る如く國家意思に依つて統制され、國家の生産を主として勞働者の權利竝に義務を行つて行くと云ふ方向に向ふ時に、經營權のみが其の中間にありまして、茲で絶對權を主張して居ると云ふ、取殘されたる自由と經濟的錯覺を殘して居りますならば、私は今申しましたやうな意味で生産の昂揚はあり得ないと思ふ又茲で外國資本と民族的な勞働力との對立すら喚び起す原因になると云ふ意味に於きまして、私は經營權の問題を特に深刻に取上げて居るのであります、其の意味に於て前會に於きまして河合厚生大臣は、其の經營首腦者は、他から強制された形に依るにあらざれば、勞働者の經營權乃至は人事權への介入は非合法ではない、差支へない、經營協議會に於ても此の點は彈壓する意思はないと云ふことを明言されたのでありますが、重ねて私は其の二つの立場に立ちまして、勞働權と經營權をなぜさう二元的に考へられて、勞働に對してのみ統制或は限界を置かねばならないか、經營權に對しては之に限界を置かないと云ふ御考へを一つ明確に承りたいと思ふのであります、重ねてそれに關聯致して御尋ね致したいことは、是から恐らくは此の法案に於て──法案が通りましたならば、此の法律に於て、又膳安定本部長官は爭議の休戰と云ふことを宣告されて居るのでありますが、さう云ふ雰圍氣の中に於て勞働者の爭議權と云ふものは恐らくは是から政治的に法律的に多くの制限を受けて行くと思ふのでありますが、其の時に利潤に對する制限と、經營權に對する國家管理の表現と致しまして、利潤に對する休戰と云ふものを政府は考へて居られるかどうか其の點も併せて御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=2
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003・河合良成
○河合國務大臣 只今途中から參りましたので、始めの方は一寸聞洩らした點もあつたかも知れませぬが、大體の御質問の御趣旨を了承致しましたので御答へ致しますが、是は穗積君の只今の御意見御尤もの點もありますので、私も或る程度までは賛意を表するものであります、唯問題は、やはり二つに分けて御考へを願はないといかぬのぢやないか、と申すのは、只今の社會秩序に於て經營權と云ふものと勞働權と云ふものとどう云ふやうに取扱ふのが適當であるかと云ふ問題と、もう一つは、長い將來に於て、是はどう云ふ風に轉化すべきものであらう、どう云ふ風に轉化したら宜からう、それに向つてどう云ふ政策を執つて行つたら宜からうと云ふ二つの問題に分けて御考へを願はなくてはならぬ、今の御質問は此の二つの點が一緒に縄のやうになつて居るので、一寸どうかと思はれる點があつたと云ふことをはつきり私は申上げます、それは今までの「リベラル」な經濟組織に於きましては、經營權と勞働權と云ふものを截然と分けて居る、と云ふのは、「マネージメント」の方法として、株式會社なら株式會社と云ふものは、商法に認められた權利を持ち、さうしてそれを經營して居るのであり、それに勞働者が協力して仕事をして居る、勞働の面から仕事をして居る、此の組合せに依つて、今日の經濟が出來上り、今日の經濟秩序が出來て居るのです、其の點に向つてそれを平面的に御考へ願ひたい、それに向つて其の柵を超えてやると云ふことは宜くないと云ふことであります、決して私は將來の理想に向つてどう斯うと批評して居るのではない、現實の問題を捉へて言つて居ると云ふことになりますると、問題は相當はつきりして來るのであります、それで今資本家と勞働者と言はれますが、今日は資本家と勞働者と云ふよりも、資本と經營が相當分離して、御承知の通り經營者と云ふ一つの階級と云ふか、勤勞者の一部が經營者となつて居ると云ふ方が適切でせう、殊に財閥解體の今日に於ては毎日目睹される事實である、併し經營者と云ふものと勞働者と云ふものとの二本建を認めて行くことは長い將來に於てどうか、と云ふことになると自ら別問題になります、今日に於ては斯う云ふ状態に於て總ての社會秩序が保たれて居るから、茲に一つの劃然たる線を引く、未來永劫其の線を引くと云ふことではないと云ふことを申上げたい、さうすると將來に付てどうなる、是は人間の考へ方は色々あると思ひます、日本の將來に付きましても、只今は、日本と云ふものは農業者と勤勞者の國家になると云ふやうな御話でありました、私は必ずしもさうは思はぬ茲に「ドレード」と云ふ非常に大きな問題がある、殊に海に依つて育つて來た日本は中々之に大きな分野を持つて居ると思ひます、それから中小工業ばかりになるかと云ふとさうではない、相當の「マスプロ」も必要である、或は又海外に對する經營と云ふやうなことになるかも知れませぬ、平和時代になれば日本人本來の力でどう云ふ點に展開するとも限りませぬから、必ずしも農業本位になり、又勤勞者だけの國になると云ふことは斷定出來ませぬ、併し日本全體の文化水準を高め、生活水準を高めるのにどれが宜いかと云ふことにも自ら議論があることと私は考へて居ります、それ故此の問題に付きましては一概に茲に斷定する譯に行きませぬけれども、兎も角も此の勞働權と云ふものは長い封建制度乃至封建制度の餘波を受けた長い間の歴史の關係に於て一種の壓迫を蒙つて居る、それを先づ解放して、經營權なり資本權と云ふものと──資本權と云ふものの下にあると云ふ御話であつたのですが、決してさう云ふ意味でなく、對立的に之を先づ認めるのが今日の目標であると思ひます、今後更に二つの關係に於てどう云ふ展開を見せるかと云ふことに付ては、將來の思想になる此の將來の思想に向つて、例へばそれは法律なり立法なりの理想の上に於て幾らかそこに傾向を持たして行くと云ふことは、是はお互に考へべきことであり、私共は私共の見解を持つて居ります、併しながら此の調整法と云ふものは、もつと現實の問題である、もつと平面的の問題であると云ふ風に御考へ下さるならば、私の經營權と勞働權との間に截然と一線を劃すると云ふことを御諒承願へることと思ひます
それから最後に膳國務大臣の爭議の休戰と云ふことに對して御尋ねでありました、是は膳君に聽いて見ぬと分りませぬが、私も新聞では拜承しました、是は勿論獨斷的に斯うと云ふことではなく、勞資の間に十分協議を遂げて、國家の爲め──國家の爲めと云ふよりも、補償打切と云ふことになりますかどうか知らぬが、此の問題に關聯しまして、非常な混亂、非常な整理の時期に入るならば、其の時にはお互に斯うするのが一つの方法でなからうかと云ふ一つの示唆に止まるのだと私は考へて居ります、其の時に利潤の點に對してどうかと云ふことは、そこまでも膳君が考へて居るかどうか分りませぬが、今日は樞軸工業と申しませうか、重要工業と申しませうかさう云ふものを中心にしての利潤と云ふものは、御承知の通り、殆んどありませぬ、寧ろ取引面とか享樂面などの事業には相當の利潤はあり得るのですけれども、生産面の、さうしてそれが基本的の生産面の事業には殆んど利潤と云ふ問題はないので、是は其の面に付て言へば問題にならないのであります、と云ふ風に私は實際の上に於て觀察して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=3
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004・穗積七郎
○穗積委員 それは將來の問題であるとして外らされましたが、私は其の點は認識が違ふと云へばそれまででありますので、敢て是以上揚足取りをするやうなことは致しませぬが、私は今日勞働に對する自主的乃至は國家意思に依る或る程度の國家の名に依る統制、それから資本に於きましては、言ふまでもなく現にそれが昨日財政方針で聲明されまして、將來の問題ではなしに今日現實の問題となつて居るのであります、而も恐らくは此の秋を境と致しまして、私が申しました事柄と云ふものは、もう明白の現實となつて否でも應でも現はれて來ると云ふ認識を持つて、私は今日の現實の問題として今申しました經營權乃至は利潤に對する國家的な統制或は制限を問題にして居るのであります、成程利潤に付きましては今日の資材或は物價、勞力等の惡條件の下に於きまして、一部の闇屋の如く利潤を上げて居る工業と云ふものはなからうかと思ひまするが、是からは明治初年の如く、昨日の財政方針でも示された如く、或る程度自由主義經濟と云ふよりは、是から逆に國家的な保護政策として、恐らくは行はれるに違ひないと思ふのであります、現に其の方向が示されつつあると私は思ふのでありますが、次の整理に於て首を馘る其の時期に、損をして居るのは勞働者だけではない、事業主も儲かつて居らぬと云ふことを私は言つて居るのではないのであります、もう少し經濟と云ふものの流れを一つの流れとして見ますならば、茲に一つの不均衡な大きな問題がある、其の意味に於きましては、日本が國際的な經濟の舞臺に出た時ではなしに、起ち上るまでの間は、少くとも利潤に對しましても國家的なる意思に依る統制、乃至は自發的な統制でなければならぬと云ふ風に私は考へるのであります、其の點に付て、私の認識に依れば之を勞働根本法に於て、生産の中に於ける勞働の位置と云ふものを、而も此の勞働と云ふものが生産の手段でなしに主體としての位置と云ふものを制定すべき時期であると云ふ風に認識するのでありますが、河合厚生大臣はそこまで認識して居らぬと云ふことでありまして、法律の上にはそれを明文化されないと言はれるのでありますが、それでは一歩讓つたと致しまして、茲で經營協議會の指導を中心と致しまして行政的な指導と云ふものに依つて大體の方向が決まると思ひますが、今後の經營協議會を中心に致しました經營權と勞働權の一體的なる、而も勞働の生産への主體的參加と云ふものを大體次に我々の向ふべき方向として御考へになつて、經營協議會の指導に御善處が願ひたいと思ひます、さうして利潤の問題に付きましても、實は御答辯も御避けになつたやうでありますが、私が申しましたのは、首を馘る時に、儲かつて居らぬ會社であるから一方に首を馘り、或は馘られた勞働者が爭議を中止すると云ふ場合に、會社も經營の面に於ては大して儲かつて居らぬから五分々々だと云ふことで私は經營權問題を取上げたのではなく、是から日本の經濟が立ち直る時期までの間を長く指して居るのでありますが、其の點はどう云ふ風に御考へになつて居りますか、先程申ました通りに、其の經營の利潤と云ふものが、統制されたる資本の力に依り、又國家保護の下に、而も勞働に於ては自發的なる勞働運動乃至は斯う云ふ法律に依る爭議權と云ふものが或る程度國家公共の名に依つて抑止されて、保護されようとして居るに拘らず、其の經營、又利潤のみが其の自由の絶對を主張すると云ふことはあり得ざることだと云ふことを、今後の問題として御尋ね致したのであります、此の點其の含みでもう一度御答辯を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=4
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005・河合良成
○河合國務大臣 今日の問題に付ては先程御答へした通りでありまするが、日本の將來の産業がどう云ふ形になつて行くかと云ふことは今之を豫定することは非常に困難な問題であります、御承知の通りに補償打切りなどと云ふ問題と關聯しまして、どう云ふ線に付て立て直しをして行くか、それは色色昨日の大藏大臣の演説にも其の片鱗が見えますが、主としてやはり今日の物資の不足及び是から起るべき勞力の過剩、それから「インフレ」を中心にした物價問題、生活問題と云ふものを如何に切拔けるかと云ふことが中心になつて居るのでありまして、其の後の日本建設と云ふものをどう見て行くかと云ふ所までははつきりした見透しがまだ付かぬと云ふのが本當だと思ひます、私個人に申しますれば、私は相當樂觀視して居ります、と言ふのは昨日の豫算にも御覽の通りに、大體あの赤字と云ふものは何に基くかと云ふことはもうはつきり分つて居る、租税もあれだけ取り、收入もそれだけある國富も國防と云ふものに費用が全然なくなつた今日、非常に負擔は輕くなつて居る、さうして日本の物資と云ふものは大體是は不完全でありながら、戰爭と云ふものの爲に非常に減つたのであつて、戰爭のない今日に於ては、食糧問題に於てやはり約八割の自給力があります、さうして、滿洲との問題なども將來やはり國際自由に依つて貿易が出來るものだと見ますれば、滿洲の大豆、今までは年に大豆及び大豆粕に於て千萬石位の補給を受けて居つたと云ふやうな事情であります、向ふは大きな農産物の寶庫でありますから、日本の國際的自由進出と云ふことが樂になりましたならば、それ位のものは買へるものだと思ひます、南の米もあれだけのものでありますから、日本の食糧問題に付ては前途さう不安は要らぬ、さうして見ますれば、あとは生活水準の問題、寧ろ文化の問題になる、そして、其の國際的輸入を仰ぐ位の物資、生糸其の他の物資は勿論出來得る、唯「ポピュレーション」の問題に付て、人口過剩と云ふものは、是は大きな線に於て免るべからざる所でありますが、斯う云ふ問題に付ても平和國際條約が出來ますれば、又自ら途も開けて來ると思ひます、さう云ふ風にして相當樂觀の感じで考へますれば、一體世界に於ける平和日本としてどう云ふ態度が宜いか、之を利潤制限的に行つて、さうして勞働者の分配問題を考慮して行くと云ふ點が宜いか、或は積極的に、積極的富と云ふものを海外其の他から得て、さうして日本全體を豊かにして行く言葉を換へると、古い「イギリス」あたりの學説の「ウエージ・バンド」自體を非常に増加して行つて、さうしてお互ひの分配を豊かにして行くと云ふ途を採つて行くが宜いかと云ふやうなことに、非常な困難な問題があると思ふ、それから利潤をどうするか、利潤を勞働者を對象にして之を必ず制限して行くかと云ふ御尋ねに對しては、私は明答出來ませぬ、却て其の富の「アキュムレーション」が非常に多くなると云ふことが勞働者の利益だと云ふやうな國際情勢にならぬとも限らないと云ふことで、それに對する私の明白な言責は一寸申上げる譯に行きませぬ、御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=5
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006・穗積七郎
○穗積委員 河合厚生大臣初め經濟閣僚は、今日日本の非常な「エキスパート」であるにも拘らず、見透しが立たぬと云ふ辯明で、御意見を率直に伺ふことが出來ないのを殘念に思つて居ります、併しながら此の問題は、實は今議會開會の直後に於きまして、社會黨初め其の他の質問者から、政府の性格として最も御聽き致したい所でありましたが、御答へ戴くことが出來ぬと云ふことであるならば、他日又個人的に御教へを戴くことに致しまして、此處での質問は、見透しが立たぬから答へられぬと云ふことで打切つて置きます、唯一つ殘る問題は、私が先程申しましたやうに、食糧其の他に付ても、御同樣さう悲觀的にばかり見て居りませぬが、日本の經濟復興の場合に於ける失業問題と外國資本と日本の勞働力との關係と云ふものは、實は深刻に考へて居ります、外國資本が如何なる産業に入り、勞働との結合──經營權を中心にして勞働との結合がどう云ふ形でなされるかと云ふことは、日本の勞働者に取りまして深刻な問題であり、次の國際的な平和機構建設の爲にも、ここの性格に依つて問題は決つて來ることとすら私は思ひますので、其の點に對する政府の御認識を、全國の勞働者に安心を與へる意味に於て一寸御尋ね致して置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=6
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007・河合良成
○河合國務大臣 外國資本がどう云ふ状態に於て日本に入つて來るかと云ふ問題、それに付て私は此處で穗積さんの質問の趣旨を具體的に取上げて、斯う云ふ御質問の趣旨だらうと云ふことを明瞭にして御答へ申上げることは多少憚りますが、御趣旨の點は私も分ります、外國資本、現に日本にある外國資本と云ふ問題も相當重要であり、將來日本に入るだらうと思はれる外國資本、それと經營權との問題と云ふことになりますと、色色事國際關係にも影響を及ぼす問題でありまするし、それに向つて色々な推定を下して、今答辯するのはどうかと思ふので、茲では申上げないことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=7
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008・穗積七郎
○穗積委員 政府の高等の政策であつて、日本の爲に事前に方針を立てぬ方が宜いと云ふことでありますが、私は寧ろ逆に考へるのであつて、此の問題を明確にして置くことが口に平和主義を唱へ、或は勤勞文化國家の建設と云ふことを言つても、言ふことだけでなしに、實を示すか示さないかと云ふことは、ここで決まるのぢやないかと云ふ風に思つて居ります、今までの帝國主義的な資本と、後進國の勤勞との結合方式と云ふものが、若し茲で繰返されますならば、是は言ふべくして國際平和關係と云ふものは不可能ではないか、さう云ふ意味に於て私は、先程河合厚生大臣も其の點を明確に御認識になりました如く、曾ての戰前までに於ける經營權の實體と云ふもの、即ち經營權と云ふものの實體は資本或は勤勞者でありますが、私は資本が國家化された後の經營權の問題と云ふものを職場全體の勤勞者に、依つて、是が運營されると云ふ形が次の外國資本と日本の勤勞とが最も合理的に、最も平和的に結合し得る唯一の方法であり、同時に日本の經濟の民主化を計り得、同時に其の植民地化を防ぎまする中心であると私は思ふので、其の態度を明確にして掛かることが一番必要であると思ふのであります、曾て「ドイツ」は敗戰後、米英の資本を自分が起ち上る爲に之を使つたのであります、借りた其の資本の力に依つて、逆に是等の國を打つ方向へ其の經濟獨立と云ふものを使つて行つた譯でありまするが、それを日本が一體どう云ふ風に是から考へて居るかと云ふことが、即ち外國資本と日本の勞働との結合の方針を、經營權の問題を處理することに依つて、茲で一つの新しい融合に依る平和的經營方針と云ふものを專明されることが、私は本當に日本の勞働者に安心を與へ、國家の生産に向つて、自發的に其の意思と能力を發現し得る唯一の途であると存じますし、同時に外國資本に對しても合理的な一つの安心感と、平和主義の實證を示す唯一の途であると思ひますので、私は此の點は今の所政府として纒つた答辯をすることが出來ないと云ふことであるならば、急速に之に對しまして閣議を統一されまして、積極的なる此の方針を内外に向つて宣明されることが、日本經濟建設の中心問題であることを私の河合厚生大臣に對しまする經營權問題の質問は打切つて置きたいと存じます
續いて御尋ね致すべきことは、即ち勞働爭議權が制限乃至は統制されながら、勞働者の生活權が擁護されて居らない、それは二つに現はれますが、一つは失業問題であり、一つは生活保護の問題に付きましては、次の議會に政府は之に對して用意を持つて進む積りであると云ふ御話であります、失業問題に對しましては、凡そ二億を超えまする失業復興の爲の歳出として豫想されるものが昨日の總豫算の中に含まれて居る譯でありますが、それが一體どう云ふ形で行はれるかと云ふことが實は問題であります、其のことをはつきりせずして爭議の休戰のみ宣言すると云ふことは一體どう云ふ所に狙ひがあるのか、私には理解に苦しむのであります、政府が若し本當に良心的であつて、此の法案が勞働者彈壓の爲めでないと言はれるならば、そして同時に日本の經濟建設は金融資本の力ではなしに、勞働の力であると云ふことの正確な自覺を持たれるならば、其の失業問題並に勞働者の生活確立と云ふことを先づ宣言されて、然る後に其の基礎の上に立つて産業の平和並に爭議の休戰と云ふことを提案さるべきでありまして、其の言葉を發せられました膳國務大臣が御見えになりましたが、私は其の言葉が一方的に發せらる其の意圖を了解に苦しむ次第であります、そこで失業問題に對しては、今度の企業整備に因つて不可避的に出て來る失業問題に對しては先づ特別の補償制度を考へたいと云ふ前會に於ける河合厚生大臣の答辯でありました、其の後に於ける失業對策に付きましては、是は深刻なる問題であつて、我々の今苦慮して居る所であつて、纒つた形に於ては十分なる説明をすることが出來ぬ、或は時間がないとか云ふ御答へであつたと思ひますが、其の點に付きまして膳國務大臣或は河合厚生大臣、どちらからでも結構でございますが、時間を節約する爲に何れからか御答辯願ひたいと思ひます、即ち今後の指導に於きまして、此の法案に現れて居る如く勞働爭議を抑制し或は統制すると云ふ意圖であり、爭議の休戰を宣言しようぢやないかと云ふ御意圖の一方に於て、失業問題を一體どう云ふ風に處理されて行くかと云ふことを御尋ねして置きたいのであります、質問の要點は、どう云ふ風に御指導になり、さうしてそこから出て來ます不可避的の失業對策をどう云ふ風に御考へになつて居るか、是が若し出來ませぬならば、茲に問題にして居る就業して居ります勞働者の爭議を取締りましても、失業者の大群と云ふものが事業主どころか、國家に對して爭議を起すと私は思ふのであります、日本の經濟的、政治的危機は正にここにある、此の失業者をどうするかと云ふことが此の法案の精神が活きるか死ぬかと云ふことになるのであります、其の失業者の國家に對する爭議をどう云ふ風に御考へになつて居られるか、其の點を安心の出來るやうに御答辯を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=8
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009・河合良成
○河合國務大臣 失業對策に付てどうするかと云ふ御尋ねでございましたが、是は今まで本會議其の他の機會に於ても私の考へを申述べて置きました通り、今度の失業と云ふものは全く偶發的の敗戰と云ふ事實、それに因つて軍需工業が崩壊し、軍隊が解放され、引揚民が多數歸つて來たと云ふやうな原因が中心になりまして、偶發的に起つた失業だと云ふ風に解釋致して居ります、さうして昭和六年七年頃の失業、勿論規模は小さうございましたあの當時の状態と考へて見ますと非常な差がある、あの昭和六、七年の頃は、御記憶の方もございませうが、物が非常に餘計出來過ぎまして、例へば一例を申しますと、信州の松本へお婆さんが繭を擔いで賣りに來た、さうしたら繭が一貫目僅か三圓にしか賣れないので、其の繭を川に投じて氣が狂つたと云ふやうな浮説などが世の中に出たやうな状態で「アメリカ」では小麥に「アニリン」を掛けたとか、「ブラジル」では「コーヒー」を燒いたとか云ふやうな、世界的に物資過剩に依つて職がなくなつたと云ふ状態であります、其の時の議論の中心は兎も角「デフレーション」に向つて通貨を増發して、土木でも、植林でも、河川でも何でも宜い、仕事を與へろと云ふ叫びが御承知の通り非常に起つたと云ふやうなことを、私共鮮かに當時のことを記憶して居ります、今日はそれと全く事情が變りまして、御承知の通りに非常な物の不足の状態であります、そこへ斯う云ふ偶發的に人が非常に多くなつた、勞力が餘つて來たと云ふ状態で、更にそこへ御承知の物が足らぬから「インフレーション」で生活難が起ると云ふので非常に困難である、困難であるけれども、昨日大藏大臣の本會議に於ける敗政演説の如く、是は勞力を巧く轉用して、さうして物の生産方面に使へば日本は大丈夫浮ぶのだ、立派にやつて行けるのだと云ふことが、今政府の考へて居る中心問題になつて居ります勿論それは戰爭に依つて機械は壊され、工場は壊されて、「ドイツ」の第一次「ヨーロッパ」戰爭終戰後の状態とは自ら違つて居る、だから是は中々復活せぬだらうと云ふ危惧の念も一面にはあります、あるけれども、又「ドイツ」の第一次「ヨーロッパ」戰爭後の状態と大いに違ふのは、あれは御承知の通り國際的關係、即ち爲替關係と云ふものが自由になつて居りました、私は丁度其の「インフレーシッン」の起きる初めに「ドイツ」に居りましたが、それは丁度米袋の底が拔けたやうな状態で、物は「ハンガー・エキスポート」で外へ流れる、さうして外國の資金がどんどん來て、「ドイツ」の不動産なり工場なりを取つてしまふと云ふやうな激しい状態でありました、さう云ふことと今日の日本の状態とは又自から非常に根本的に違つた點があるので、日本の今日の「インフレーション」と云ふものは是は「ハンガー・クライシス」である、飢餓恐慌である、決して是は眞の所謂「インフレーション」ではないと云ふことの政府は確信を持つて居ります、そこでそれに向つて失業對策の線を總て考へて行かなくてはならぬと云ふ考へで居ります、それではどうするかと云ひますると、第一番は出來るだけ失業者を生産に向けて行くと云ふことであります、唯金をやつて生活をさせてやると云ふことでは困る、出來るだけ生産に向けて行く、さうして又出來るだけ地域的配分と云ふことを考へて行くと云ふことに重點を置いて失業對策を具體的に立てて居ります、それで六十億の公共事業費は勿論のことでありますが、昨日の石橋藏相の説明の如く、其の他豫算面に於ても事實上失業對策に用ひられるであらうと思ふ費用は相當の額に上つて居ります、そこでそれをどう云ふ風にするかと云ひますと、生産と云ひましても御承知の通りの状況だから直接生産もあり間接生産もある、それが都市と田舍とに分布されて居る、例へば道路とか或は河川とか、或は治水、植林、斯う云ふ問題は勿論直接間接に生産に量大な影響を持つ、殊に農耕地の開發と云ふ問題は言ふまでもなく非常に重大でありますが、此の面に向つてやる、是は從來やつて來た途でありますが、之に付ても出來るだけ生産を重點的に考へて行く、併しそれでは足りませぬ、やはり戰災地の復興、或は戰災地の整理も相當考へなくてはならない、それから都會を中心にしました機動的の公共事業と云ふやうなものも考へて行かなくてはなりませぬ、何と言ふか、計畫的に大きな都會地中心に機動的に「ピック、アップ」するやうな公共事業を考へなければならぬ、又補導施設共同作業場と云ふやうな點も勿論考へて行かなくてはならぬ、斯う云ふ點に付て相當大きな計畫を以てやつて行く、一つの例はやはり中小工の工場「アパート」と云ふやうな施設などもしてやるさう云ふ點に付て只今實は心膽を碎いて計畫を考へて居る最中であります又一面中小工の方面には十分な金融を與へて、日本の將來の工業の根幹となる中小工の復活と云ふことに對して特別の施設をしなければならぬと思ひます、それから肥料とか石炭の増産に向つて力を入れるべきことは言ふまでもないことである、さう云ふ結局從來と同じ型の失業對策と都市中心に於ける特別な性格を持つた失業對策、物の増産面、産業面の復活と云ふことを目標にした増産計畫、之に依つて結果としては失業對策になるのですが、さう云ふ線に沿うて實は目下考へて居ります是は勿論政府だけの力で行かぬことでありまして、國民擧つて日本再建の爲に働かなければならぬ問題であると思つて居ります、そこへ御承知の通り補償打切りの問題を中心としまして、企業整備と云ふことが横から入つて來る譯であります、是は言ふまでもなく失業問題に拍車を掛ける、恐らく數十萬の失業者が之に依つて生じませう、それで勞働爭議の問題も或は一つの性格の變換を來たすかも知れない、今までは賃金の値上と云ふことが中心の勞働爭議でありましたけれども、此の次には片方には工場閉鎖と云ふことが起きますさうして賃金と云ふ面は「インフレーション」の程度の面との睨み合ひの問題になりますから、是はどう云ふことになるかと云ふことは、はつきりした豫測を申上げる譯に行かぬが、少くとも解雇手當の問題が一つの大きな中心問題になるさう云ふやうに爭議の性質と云ふか勞働運動の性格が多少違つて來る點がありはせぬか、さう云ふ問題に對してどう云ふ方法を執るかと云ふ問題に付ては、昨日も本會議で答辯致しました通り、解雇手當と云ふものに對して何等かの施策をやるべきでないかと云ふことで、只今具體的に考慮して居るやうな次第であります、左樣にどうか御承知を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=9
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010・逢澤寛
○逢澤委員長 穗積君、膳國務大臣が見えて居りますから、國務大臣に對する質疑を……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=10
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011・穗積七郎
○穗積委員 河合厚生大臣の御答辯に感謝致します、私の此の問題に付ての質問は是で打切りますが唯一九二三年英國に於て行つた所の遊ばして喰はすと云ふ失業保險制度と云ふものは今日の日本に於ては成立たぬと思ひます、生産に裏付けられた失業對策と云ふものを是非實施して戴かなければならぬ、其の點に付て希望を申上げます、今の御話に依りますとまだ對策が決つて居らぬと云ふことでありますが、之に付ては色々是から一方に於て生産計畫を立てながら一方に於て「デフレ」政策、低物價政策をやらなければならぬ、其の上三方に於て社會施設をしなければならぬと云ふ矛盾がありますから、それを生活保護、勞働保護と云ふやうに一つ一つ色々な形で行はずに、現在までありまする民間の諸々の保險會社、是は莫大な資金を持つて居りますが、之を全部國有化して、それから政府並に遞信省に於て行はれて居ります年金制度其の他の社會施設の基金がありますが、是も全部一本にして失業だけでなく、傷害、疾病、老癈疾も纒めました綜合的な國民保險の制度を設ける、是は勞働者失業者の生産性を高めることと、もう一つは勞働者が物貰ひ的な根性から自主的に起ち上る精神を鼓舞する爲に、其の意味に於て共助的に保險を一本にして、國營に依つて綜合的な社會保險と云ふものを打立てて行く、本年度の豫算に於ては二百幾らかの金が失業對策費として使はれるものがありますが此の豫算が一體永續性があるのかそこで私は其の基金で將來の日本經濟復興の爲の、基礎開發の爲の生産業を營んで行くと云ふ綜合社會保險制度を一つの試案として御考慮願ひたいと云ふことを申上げて打切ります
膳國務大臣に御尋ね致したいのは、大體今までの話で御分りになつたと思ひますが、勞働爭議を統制する或は休戰すると云ふ一方に於ては勞働者の生活問題乃至は生産に對する發言權と云ふものが確立されなければならぬと思ひますが、偶偶膳國務大臣は由來我が國に於きまする勞働運動又は勞働立法抑壓の爲の「チヤンピオン」として鬪つて來られた方でありますので其の「チヤンピオン」である膳國務大臣が而も内閣の運命を超越致しました綜合的な經濟參謀本部ともあるべき所に來られ、發聲第一が日本の生産復興の生産構想の御話でなしに、勞働爭議休戰と云ふことを宣言されたと云ふことに對しまして今までの閣下の御經歴から、全國の勞働者乃至は勞働運動指導者と云ふものは其の言が一體何を意味して居られるか、一體今日の勞働者の立場、生産者の立場を如何に認識して居られるかと云ふことを危惧を持つて、此の法案より以上に關心を持つて居るのであります、其の意味に於て是から起きまする勞働爭議乃至は失業問題に對しましてどう云ふ御認識を持つて居られるのか、此の法案と即應致しまして重大なる關係がありますので、安定本部長官としての答辯を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=11
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012・膳桂之助
○膳國務大臣 只今穗積君委員の御尋ねに對しまして御答へ申上げますが、實は私はまだ御答へする資格がないかも知れませぬ、と申しまするのは、國務大臣としての親任は拜受したのでありますが、まだ經濟安定本部の官制も公布されて居りませぬし、私まだ其の地位に居りませぬ、隨て私が安定本部長官と云ふ意味での御答が申上げられないのであります、又此厚生省の主管の問題は河合厚生大臣から縷縷御答へがございまして御諒承に相成つたやうに御見受申上げるのであります、但し少し此の邊が或は善いのか惡いのか分りませぬけれども、私が偶偶國務大臣就任の際に申しました話を御引用になりましての御尋ねでありますので、唯私のあの際にああ云ふことを申しました氣持を申上げると云ふことは、必ずしも私の現在の越權行爲でもないと存じますし、御許しを得まして一言述べさして戴きたいと存じます、唯先に一つ皆樣に御諒承を願ひたいと思ひますことは、私は豫て斯う云ふ信念を持つて居ります、よく政治的の方面に經歴のある方は曾て十年前或は五年前或は責任のある地位でない前に、個人的の意見として色々述べましたこと等に何か非常な拘束を感じられるやうな風に、又それが一つの政治道徳であると云ふ風に御考へになられて居る向が多いと存じます、私は政治家でも何でもございませぬ、偶偶一實業人が國家緊急の際に、お前は徴用された積りで出て來いと云ふ御召に依りまして出て來ましたのでありまして、私は何等政治家でもございませぬ、併し私は今のやうな考へは非常に此の變轉萬化、中々一つの思想や一つの主義からばかり出ることで世の中の事象が片付けられるものでない、斯う云ふ時に若しさう云ふやうな拘束が政治的或は社會的にありとするならば、是は非常な無物が起きて、本當の變化しつつある經濟現象に對する適當な政治が出來ないものと存じます、どうぞ皆樣が私の以前どう云ふ言動があつたか、どう云ふ意見を述べたかと云ふこと、私は自分個人としては自分の信念の動かざるものもあり、併し或は自分の信念の誤りを自ら正す意味に於きまして絶えず研究をして居る問題もございますが、私の是からの問題もございますので一言申上げて置きますが、私は一國の國政に參與する場合、唯一家言或は一個の私見に囚はれて居るべきものでない、是は政治的生涯を送る者のすることでない、是は私の確信であります、人に依つて色々御考へも違ひませう、隨ひまして私を批判して戴きます場合には、どうぞ私の是から爲しますこと、是から言ひますこと、是等に付ての私の責任を御問ひ下さいませ、併し個人としてのことはどうだと仰せられれば喜んで私は私の過去の問題に付ても申上げます、之を先に一言申上げて置きます
偖て次に將來の方策はどうかと云ふやうな問題に付きましては、實はまだ經濟安定本部は發足して居りませぬ、此の經濟安定本部は皆樣も既に御案内であらせられます通り、各省當局と違ひまして、日本の經濟安定に關する各廳各省の間の色々の施策の矛盾のないやうに統一性綜合性のあるやうに調整すると云ふことが主たる目的でありますので、隨てまだ發足しない經濟安定本部が將來どう云ふ政策を執るかと云ふことに付ては私何も申上げることがないのであります、偖て御尋ねのことに對して御答へ申上げることになつたのですが、新聞の報道が何か見出しには勞資休戰と云ふやうなことが大きい見出しの内寄になつたやうでありますが、あれは御質問があつて、後で一寸私が一例に申したことで、私があの時に申しました趣旨を改めて申しますと、今私が申しました經濟安定本部のやうな職責と申しますか、使命に付て御答へ申上げました次に私の考へる經濟安定は動もすると世間では何か經濟安定と云ふと銀行金融財閥を救濟する案ではないか、産業資本を援助する問題ではないが、何か是が國民生活に關係かあるかと云ふやうな風の御叱りと言ひますか御批評があるやうでありますが、是は大變な誤解でありまして、私が考へまする經濟の安定は、要するに國民生活の安定であり、國民生活の安定を圖りまするのには、やはり國に産業なしには居られませぬ、又金融組織は單に産業を興す元であるばかりでありませぬ、國民の生活が之に依存して居る、自分の現在の勞働の結果勤勞の結果をば此の金融機關に依つて長く自分及び自分の子孫の生活資料にする爲に之を寄託するもので、重大なるが故に先づ産業組織の問題を考へ、金融機關の問題を考へるのでありまするが、是は目的ではなくて、窮極は國民生活の安定を圖ると云ふことにあるのだと云ふことは申上げるまでもないと思ひます、唯從來我が國の政治家が執られました政策は、何か産業政策と申しますると、或は是が國家目的だ、お國の爲だと言ひ、何かお國の爲と云ふことが人民生活の幸福安寧と云ふことと全然遊離した觀念であるかの如く言はれた、それが證據には、さう云ふ際に、國民の相互が自分の生活及び自分の子孫のことを言ふと、あれは私利私慾に走るのだとか云つて恰も非國民であるかのやうな簡單な片付け方をして、何か知らぬが國家目的と云ふやうな大きな人の爭へないやうな看板を掲げて、其の言葉の魔術で輿論も世間の考へもぐつと引張つた、何か國家目的を果す爲には個人の幸福などは當然犧牲にされて宜いのだと云ふやうな觀念を與へて引張つて來た、是が日本の從來の根本の誤りなんだらうと思ひます、私の信念に依りますると、國家の目的と云ふこと、國家の隆昌を圖ると云ふことは、要するに國民の安寧幸福、無論精神的もありますけれども、主として物質的に、何等自分の生活に苦慮せず、永遠子孫共に業に樂み得ることを圖ると云ふこと、併し是も一時目的先のことでありませぬ、永遠の國民の幸福を圖ること、是が國家の總ての目的の中心でありまして、隨て經濟を安定と云ふことも要するに茲に「ピント」が合はなければ全然問題にならない、斯う私は思ふ次第であります、隨て私は其の點を申しました、偖て現在の經濟危機の問題、是から起るべき色々な勞資間の問題は、只今河合厚生大臣の御述べになられました通り、どう考へましても、是は工場の待遇が惡いから、或は勞資間の關係が惡いからと云ふだけの問題ではございませぬ、隨て此の問題は、一つには、斯う云ふやうな日本の敗戰と云ふ結果に基きまする責任と言へば、國家全體の責任になりまする問題を、お互ひにどう片付けるかと云ふ問題である、又此の解決は單に勞資間だけでは片付きませぬ、隨て一方には生活、物價の問題もありまするし物資の供給の問題もございます、さう云ふやうな所で解決される、即ち形は所謂勞資問題と見えまするけれども、是は單純の勞資問題ではない、隨て是からの經濟安定を策するには、所謂日常鬪爭であるとか何とか云ふやうなさう云ふ鬪爭的な觀念は全然捨ててしまつて、何と申しまするか、事業に關係する勞と資と、言葉は適切とは思ひませぬ、經營者と從業者、それに第三者が加はりまして、解雇手當の問題はどう云ふやうにするか……(「委員長注意せぬか、政策を述べなければ駄目だ」と呼ぶ者あり)一寸御待ち下さい、是等の問題をどう片付けるかと云ふこと、それを審議してこそ初めて經濟再建が出來るのだ、斯う云ふ意味で、私は勞資の間に戰ひと云ふやうな觀念があつてはならぬと云ふ意味に於ける勞資休戰と云ふ言葉を、不適當な言葉とは存じましたが用ひた譯であります、どうぞ左樣に御諒承願ひたい、偖て今の政策の問題でありまするが、是は河合厚生大臣が縷縷御述べになられました通り、厚生省として既に考へ從來政府として考へられた問題は説明申上げ盡して居ると思ひますが、將來どう行くかと云ふことは、實は私の頭には個人的意見はございます、併し個人的意見は此の際申上げるのはまだ不適當と思ひますので、愈愈經濟安定本部が發足致しまして、此處で綜合的國策の研究が進むに應じまして、御要求がなくとも喜んで凡ゆる機會に申上げて御批判を願ひたいと存じます、御諒承を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=12
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013・穗積七郎
○穗積委員 長官と致しましては答辯する時期でないと云ふことでありますので、質問を打切りたいと思ひます、唯此の法案の討議ばかりでなく、一般の勞働者に取りまして重大な點と思ひますので、二つの點だけ申上げて置きますが長官は官制にも出て居らぬし、議會でも答辯出來ぬと言はれましたが、あの新聞で談話されたことは長官となることを豫定されて發言されたのでありますから、今後發言を愼んで戴きたいと云ふことを是非御願ひ致します、それから、今も御話の中にも出ましたが、今後の勞働政策は、緊密に生産政策と結合致して不可分一體でありますので、其の性格に於きましては、勞働爭議の休戰を宣する以上は、一方に於きまして、勞働者に經營に對する發言權を許すか、然らずんば經營權乃至は利潤權の休戰をも宣しなければ今後の勞働爭議休戰の條理が立たぬ、勞働者が納得しないと云ふことを私は長官に對して希望致しまして又次の機會に正式の質問することに致しまして今日の、質問は打切りたいと思ひます
最後に河合厚生大臣に御尋ね致しますが、私が提起致して置きました二つの問題の中最後の一つであります、即ち此の法案の缺陷の第二の點は、勞働爭議行爲の制限乃至禁止が酷に過ぎると云ふことであります、之に付きましては前質問者に依つて幾多繰返されましたので、私は此の中で唯一點だけ指摘して御質問致したいと思ひますが、それは一般官公吏の爭議の禁止でございます、是は言ふまでもなく勞働組合法に於きまして大體團結權即ち勞働組合結成が認められた官吏に相當するものでありますが、大體勞働法に於きまする官僚の分け方が三つになつて居つて、一つは警察官其の他、一つは一般行政官吏、もう一つは現業員と云ふ、やはり準官吏的のものでありますが、此の三つに分けまして、最初の警察官其の他は團結權も爭議權も認められて居らぬ、一番こちらの現業員は團結權も爭議權も認められて居る、さうして中間の一般行政官吏が團結權のみ認められて爭議權が認められて居らぬと云ふことでありますが、是は本會議に於ても御説明がありましたが、團結權を認めて置いて爭議權を認めない、官僚が爭議をやつてはいかぬと云ふならば、なぜ一體團結權も警察官と同じやうに禁止にならないか、團結權を認めて置いて爭議權を禁止すると云ふ以上は、納得の行く説明を先づ政府側からして戴きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=13
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014・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の御話のやうに、警察官吏、消防職員、監獄勤務者に付きましては團結權も爭議權も禁止して居ります、是は其の職務の性質上團結權も適當でないと云ふことで禁止致して居るのであります、一般の官公吏に付きましては、團結權は許されて居りまして、爭議行爲を禁止して居るのであります、隨ひまして、團結權を許されて居りますから、待遇改善其の他に付て組合として意見主張をすることは許されて居るのであります、唯それが國家の行政或は司法事務の停廢、其の他支障を來す行爲をしてはいけないと云ふ制限を付けて居るのであります
それから一般の官公吏でありましても、國鐵でありますとか、或は公共團體の電車其の他の所謂公企業に於ける現業でありまするが是は勿論一般官吏に付て組合團結權を認めると同樣認めて居るのであります、それは國が鐵道を動かしましても、會社が鐵道を動かしましても、其の企業自體の本質から申しますれば同じことであります、會社であるから爭議權を認め國家なり公共團體が經營するから之を認めぬと云ふ譯に參りませぬので、之に付きましては一般と同樣に實質的に之を取扱つて居るのであります、唯此の現業員に付きまして公益事業に關聯が多いのでありますから、之に付きましては拔打ち爭議を制限して居ります、爭議行爲其のものを制限して居るのではないことは御承知のことと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=14
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015・穗積七郎
○穗積委員 私の質問の中心は……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=15
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016・逢澤寛
○逢澤委員長 まだありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=16
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017・穗積七郎
○穗積委員 御答辨次第で直ぐ濟みます、一般行政官吏が團結權を認められて、爭議權の行使が認められて居らぬと云ふことだけを問題にして居るのであつて、言ひ換へれば一般行政官吏も爭議權を認めるべきであると私は主張する意味に於て質問して居ります、言ひ換へますならば二つの點が、理由として擧げられたやうでありますが、爭議權は認められて居るが爭議權の行使が認められて居らぬ、勞働爭議行爲の發現が認められて居らぬと云ふことでありますが、是は解釋の仕樣に依つては爭議權がないと同じことであります、是は後に御尋ね致しますが、私が問題にして居るのはなぜ一體爭議權が禁止されて居るか、爭議權の發現が禁止されて居る理由は、一般に勞働爭議を官吏が先頭に立つてやると云ふことは社會風潮に及ぼす影響が惡いと云ふことと、もう一つはそれが公共の事務に參加して居るからいけないのだと云ふことであります、さうであるならば一般の風潮に惡いと云ふならば教員と一體何處が違ふか、教員は一般に爭議をやることが許されて居る、場合に依つてやる其のことが一般風潮に及ぼす影響と云ふものは、寧ろ官僚が爭議を起す場合よりも影響が大きいと思ひます
それから公共の施設でありますが、若し公共の事業であるならば其の公益事業の中に於きまして斯う云ふやうな爭議行爲の制限がなされて居りますので、之に依つて十分其の緩和は出來ると思ふに拘らず、爭議權の發動が全面的に封鎖されて居ると云ふことは一體どう云ふことであるか、さうなれば官吏は教員よりは自肅の能力が足りない、劣等國民であると云ふことが自認されなければ、官吏の爭議權が許されなくて教員だけが許されて居ると云ふことにはならぬと思ひます、私は其の點に於ては特に官吏だけが教員よりは自肅能力なり自覺が足りないとは決して思はない、信頼して、此の際爭議權をも認めたらどうかと思ひます殊に河合厚生大臣も役人の飯を食はれたことがある、私も聊か見習の頃飯を食つたことがありますが今日の官僚體制と云ふものは、敗戰後に於ても更に其の雰圍氣と云ふものは舊態依然たるもので、職員組合の爭議權が認められることに依つて此の官僚界に於ける封建性なり惰氣が悉く一掃されるとは思ひませぬが、併しながら、是も一つの大きな役割を果すものであると信じますが故に、私は是の禁止は是非外して戴きたい、今の吉武政府委員の御答辯と云ふものは公益事業にしましても、或は一般を風潮に影響を及ぼす點から見ましても、自肅能力の點から言ひましても、教員と區別すべき理由は更にないと思ふのでありますが、其の點を重ねて御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=17
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018・河合良成
○河合國務大臣 只今の御質問に御答へ致しますが、此の官吏の爭議行爲を認めないと云ふことに付きまして、只今二つの理由を御擧げになつたやうですが、第一の理由、即ち風潮の問題と云ふものは理由として考へて居りませぬ、第二の點だけです、第二の點は、言ふまでもなくやはり今日の社會制度では、政府の官吏と云ふものは公共の福祉と云ふものに最も重大なる關係がある、是は人間の神經系統のやうなものだと前に御答へしたことがありますが、さう云ふものでありまして、是は公益の中でも最も「トップ」を切つたものであると云ふことは疑ひない、それだから「トップ」を切つたものと「トップ」を切らぬものとの間に差別を付けて行くと云ふことは考へ得ることです、其の考へでやつて居る譯です、勿論個人の自由はあるのですから、其の面も勿論考慮しますが、それと是と彼此照らし合はせて、秤がこちらに重く掛つて來るのだと御諒承願ひますそれから又官僚制度改革に付てと云ふ目的的の御話がありましたが是は一つの御考へとして拜承致す者であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=18
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019・穗積七郎
○穗積委員 大體御尋ねの論旨は分つたと思ひますので、是れ以上議論を致しませぬが、私は其の政府の御答辯の根據は理論的に洵に薄弱である、私は飽くまで此の爭議權の禁止は解除すべきものだと云ふ主張を持ち續けて居るであると云ふことを申上げて質問を打切ります
あと唯一つ之に關聯して伺ひたいことは、公益事業でございますが、公益事業に於けるものと警察官は爭議權を制限されて居りますそして此の場合に今吉武政府委員が御答辨になりました如く、爭議權は禁止されて居らぬ、制限されて居ると云ふことでありますが、其の時は爭議權を詰り行ふことが出來る譯であります、問題は是が制限されたり禁止される理由が七條でありましたか、勞働爭議の爲に業務の正常なる運營を阻害するからいけないのであつて、それ以外の要求、生活改善の爲の要求或は職場改善の爲の要求と云ふものは出して宜いものだと思ひます、さうであるならば、此の法律の上に於ては斯う云ふ七條で言はれて居る爭議行爲だけを問題にして居るのであるから、それ以外のことは問題にしないと言はれるでありませうが、併しそれだけの親切心があるならば、之に補則なら補則を加へて、正常なる業務を繼續しながら、一方に於て此の社會の言葉で言へば、爭議までいかない、紛議の状態に於ける要求の出し方をして、其の要求を中央勞働委員會なり或は特別の勞働委員會に提出して、其の第三者の審判を俟つと云ふ風にして爭議權を行使する方法に於てなぜ御考へにならなかつたか、或は公益事業では通告後三十日を過ぎれば行はれる譯ですが、三十日間は行へぬ、此の行へぬ期間に於ては今の業務を正常に續けながら行ふ爭ひの方法を取上げて之を條文の上で明記して一つの合法的な道を開いて置くことが必要であり、親切であると思ひます、是が立法の目的に合致したことである、斯う云ふ手續に於て此の要求が處理される、さうでありませぬと、要求致しましても茲で謂ふ勞働爭議以外だと云ふことで中央勞働委員會で取上げられないし、又調停にもなりませぬし、野垂れ死でありますので、之を是非取上げて戴きたいと思ふのであります、是が最後の私の質問であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=19
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020・河合良成
○河合國務大臣 爭議と紛議との間の問題になりますと、是は中々程度問題になるやうな虞もあります、爭議はいかぬと云ふのでございますが、此の紛議までは大いに宜しいと云ふやうなことはやはり法律として書く譯にはいかぬ、爭議がいかなければそれに最も近いものは餘り好ましくないのですから、それはどうも積極的にそこまで法律で規定する考へはありまぬせ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=20
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021・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは本日は之を以て散會致します
午後零時一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00519460726&spkNum=21
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