1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
勞働關係調整法案(政府提出)
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昭和二十一年八月二日(金曜日)午前十時四十二分開議
出席委員
委員長 逢澤寛君
理事 江崎眞澄君 理事 瀧澤脩作君
理事 竹田儀一君 理事 岡部得三君
理事 古賀喜太郎君
今井はつ君 花月純誠君
原侑君 村上勇君
山田善三君 川崎秀二君
關谷勝利君 赤松勇君
辻井民之助君 土井直作君
山下榮二君 東隆君
木下榮君 藤井正男君
中野四郎君
八月一日委員安平鹿一君辭任に付其の補闕として中原健次君を議長に於て選定した
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
文部大臣 田中耕太郎君
商工大臣 星島二郎君
厚生大臣 河合良成君
運輸大臣 平塚常次郎君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
司法事務官 岡田善一君
厚生事務官 吉武惠市君
厚生事務官 富樫總一君
運輸事務官 加賀山之雄君
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本日の會議に付した議案
勞働關係調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=0
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001・逢澤寛
○逢澤委員長 是より會議を始めます、前日に引續きまして質問を保留して居ります赤松勇君に之を許します──赤松君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=1
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002・赤松勇
○赤松委員 私は前日に引續きまして膳國務大臣に政府の所信を御尋ねしたいと思ふのであります、先づ最初に御尋ねしたいことは終戰以來聯合國、就中「アメリカ」の日本の民主化に對する絶大なる理解と援助は、我々勞働階級と致しましては全く深甚の謝意を表するのであります、最近「アチソン」聲明を契機と致しまして、一般に恰も「マ」司令部は日本の勞働運動の民主化に一つの枠を嵌めるかの如き疑惧を持ち、或はそれを噂する者もあるのでありますけれども、私共の「マ」司令部に對する心からなる信頼と感謝の念はさう云ふ巷の噂に對しまして聊かも變る所はないのであります、政府は屡屡本勞調法は「マ」司令部との基本的諒解の下に提案されたのであると云ふことを言つて居るのでありますが、一體基本的な諒解とは何を意味するのであるか、其の内容に付きまして御尋ねしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=2
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003・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の赤松君の御尋ねでありますが、勞調法に付きましては、實は「マ」司部の方とも事前に打合せをしたと云ふことだけでございます、左樣御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=3
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004・赤松勇
○赤松委員 事前に打合せをしたと云ふことは即ち「マ」司令部の積極的な意圖が強く表明されて居ると解釋して宜しいでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=4
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005・吉武惠市
○吉武政府委員 今の赤松委員の言はれる何れとも私共は申上げ兼ねるのでありますが、併し内容に付きましては勞働顧問が十數名來られて居りまして色々指導を受けて居つたのであります、積極的にどうであつたかと云ふ點に付きましては私共として申上げ兼ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=5
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006・赤松勇
○赤松委員 十數名の顧問が來られて政府の申入れを諒解したのだと云ふ御話でありますが、私の聞く所に依りますれば、「マ」司令部が責任ある政府に對する諒解事項或は指示事項を致します場合には、我々日本人のやうに單に口先だけで言ふやうなことは考へられない、隨ひましてさう云ふ場合に例へば口先だけで打合せが出來たと云ふことは是は其の顧問個々の主觀的意圖でありまして、「マ」司令部それ自身の支配的見解であると云ふ風には我々には取れないのであります、若しもさう云ふ打合せを諒解したと云ふことの支配的な見解であるならば、當然それに對する「ステートメント」公文書を以て意思表示をされて居ると思ひますから、其の「ステートメント」を御發表願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=6
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007・吉武惠市
○吉武政府委員 司令部との關係に付きましては、正式に書面に依つて指示のある場合もありますし或は又口頭で指示のある場合もあり、其の點に付きましては一定の形式のみではないのであります、書面では別に戴いて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=7
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008・赤松勇
○赤松委員 書面で戴いて居ないと云ふことは畢竟するに「マ」司令部の個々の顧問の主觀的な打合せに過ぎないと思ふ、隨ひまして私共と致しましては、勞調法に關しましては政府の自主的見解の下に提案がなされ、それを受動的に諒解すると云ふのではなくて、唯政府の自主性を尊重して「マ」司令部は其の成行を見て居ると云ふ風に諒解して宜いと存じます、尚ほそれで質問を打切りまして、續いて膳國務大臣に御尋ねして見たいと思ふのでありますが、「アチソン」聲明は御承知の如く一部少數の暴力的な或は破壊的な大衆運動指導に對する警告でありまして是れ亦當然の警告であると私達は了承するのであります、先日も委員會に於きまして私は屡屡申上げました如く、我が國の勞働運動には暴力的な或は破壊的な大衆運動指導の支配的な傾向と云ふものは全然見受けられないのであります、隨ひまして私共の現在展開して居りまする勞働運動と云ふものは、勞働組合法に規定せられて居りまする所の團結權、罷業權の正當なる行使を妨げて居るものではない、即ち團結權、罷業權の正當なる行使の線に沿つて展開して居ると思ふのであります、隨ひまして此の勞調法が本委員會を通過し更に議會を通過致しまする時に、之に關聯して日本の勞働階級が勞調法反對の「ゼネスト」を敢行致しまする際に、當然團結權、罷業權は認められて居るのでありますが故に、之に對しまして政府は如何なる態度を以て御臨みになるのであるか、飽くまでも勞調法をさう云ふ社會的な危機の發生、即ち國家を二つに分裂するやうなさう云ふ危機を敢てしてまで本法案の議會通過を御望みになるのであるかどうか、特に私は其の「ゼネスト」の發生致しました場合の政府の御所信に付て御尋ねして見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=8
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009・膳桂之助
○膳國務大臣 只今の御質問に御答へ致します、一つ御斷り申上げて置きますが、只今の御質問は、「ゼネスト」が官吏間に起きた場合に政府は如何なる態度を以て之に酬ゆるかと云ふことが最後の骨子のやうでありますが、私さう云ふ方面に付て御答へする權限を持つて居りませぬ、私の職務は日本の經濟安定を圖りまする爲に如何なる方策をば樹つべきかと云ふことが私の本務であります、隨て其の答辯は然るべき主管の方面に一つ御傳へ致すことに致します、唯此の勞働關係調整法並に團結權及び罷業權の問題でありまするが、是は政府所管大臣其の他が數次聲明或は御答辯申上げて居りまする通り、成程勞働組合法に於きまして團結權及び罷業權は認められて居りまするが、是は他の總ての國の秩序、行政の根本、又總ての他の色々の權利を無視──無視と云ふ言葉は當りませぬかも知りませぬけれども、それ等を超越して、總ての權利に絶對に君臨する權利だとは考へて居りませぬ、やはり一方に團結權もあり罷業權もありまするけれども、それに對してはやはり國の秩序を維持する義務もありますし、又一つの産業から申しましても、やはり産業を經營する一つの經營の權利もあるのでありまして、お互ひの間の權利の濫用のないやうに調整する、是れ即ち勞働調整法の根本の趣旨と存ずるのでありまして、政府の見解としまして、今期出ました勞働調整法の根本趣旨は、之に依つて勞働權、團結權乃至罷業權に對して不當の彈壓をするものにあらずして團結權及び罷業權が正當な範圍で正當な秩序の下に、民主主義化を助長する爲に其の一つの途を與へて居る、さう云ふ趣旨の下に是が役立つ、又是非さうなくてはならぬ、斯樣に信じまするが故に提案になつたものと信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=9
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010・赤松勇
○赤松委員 然らば御尋ね致します、第一に自分は此の問題の所管外であるが故に答辯を避けたいと云ふことでありますが、少くとも經濟安定と云ふことは現在我が國に取りまして國策の基本であります、其の基本的な國策を遂行されそれ等の全面的な計畫を立てられ而も其の計畫を實施する參謀本部としての役割を演ぜられます膳國務大臣即ち經濟安定本部の長官が勞調法に關聯して起つて來る勞働者階級の發意に對しまして、自分は所管外であると言つて答辯を避けられることは、其の責任の所在を極めて瞹昧にするものであると思ふのであります、第二に、只今爭議權には絶對權と云ふものはないのである、爭議權は飽くまでも相對的なものであると云ふことを言はれたのでありますが、現在勞調法に對しまして、私共が之を拒否する爲に、自ら勞働組合法に依つて保障され或は「ポツダム」宣言に依つて保障されました基本的人權を尊重すると云ふ建前から、其の權利を行使することが果して國家の秩序を根本的に破壊するものでありませうか、斷じてさうではない、御承知の如く現在全國各地に於きましては、一方的に資本地の「ロックアウト」が盛んに行はれて居るのであります、資本家の企業權に當然伴ふ所の義務が一方的に抛擲されて居るのであります、それに對しましては政府は殆ど之に對する取締を行はうとしない、物資調整法に依りまして生産再開に關する代理行爲或は生産再開命令を發すると言はれたのでありますけれども、一體それ等の事實を外に致しまして、勞働階級にのみ其の團體權、罷業權を根本的に壓殺するが如き態度に出ると云ふことは、是は明白に「ポツダム」宣言に對する違反行爲である同時に又勞働階級の基本的な權利を否定するものであると思ふのであります、先日も内務大臣は「ストライキ」に對しては政府は絶對に干渉しない、所謂爭議權の尊重に關しまして、極めて理解ある明確な御答辯を本委員會に於て願つたのでありますが、膳國務大臣は内務大臣の御答辯と相反するが如き御答辯を只今なされたのであります、若しも現在の勞調法に反對して自ら有する爭議の權利を正しく行使致します場合、それが國家の秩序を破壊するものと致しますれば、さう云ふ行爲を誘發する所の政府の態度それ自身が國家の秩序を破壊するものではないかと考へるのであります、膳國務大臣は只今絶對的な爭議權と云ふものはあり得ない、相對的な意味に於て爭議權を認めると言はれたのでありますが、具體的に現在例へば國鐵に於て勞調法反對、運賃値上反對、馘首反對と云ふ三反綱領を掲げて、現在着々交渉から更に新しい重大なる鬪爭段階に入りつつあるのでありますけれども、それに對しまして、是は絶對的な爭議權の行使である、隨て國家の秩序を亂すものであると云ふ御見解を以て之に對處せられるのであるかどうか、此の點に關しましては私は膳國務大臣の御答辯を拔萃して全國の勞働委員に配付すると同時にそれぞれ關係方面にも其の御答辯を配付致しまして、更に勞働階級にもそれを配付致しまして政府の所信が斯くの如く二つに分れて居ると云ふ點、更に又勞働階級の權利である爭議權を膳國務大臣が否定したと云ふことの事實を愬へたいと思ふのでありまするが、それに對して確信を以て、信念を以て膳國務大臣は、現在具體的に展開されようとして居る所の其の爭議權の行使に對して、それを國家秩序の破壊である、或は非合法的な爭議であると云ふ御見解を御持ちになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=10
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011・膳桂之助
○膳國務大臣 只今は大變迷惑な質問を受けました、と申しますのは第一番には私は現實の問題に付ては何も答辯をする權限を持つて居りませぬ、隨て何か「ゼネスト」が起きんとする、之に對する取締はどうか、之を制限するや否やと云ふやうな具體問題に付ては、私は何等答辯を申上げた記憶がございませぬ、又私は先程も申しまする通り答辯する權限を持つて居りませぬ、或は爭議の起きた場合に之を取締るのか取締らないのか、それは内務大臣の御權限の中にありますので、私はそれと觸れて或は是と合ふか矛盾するか何か知りませぬが、之に關して何も申上げた記憶がございませぬ、私が先程申上げましたことは、一般的に申して勞働調整法が何か勞働權乃至組合罷業權の非常な侵害であるかのやうな意味合の御質問に拜聽致しましたので、それに對しまする從來政府が執つて來られた見解、それに私が同一であると云ふことを敷衍して申上げたに過ぎないのでありまして、私別に罷業權を否定したことも何もございませぬ、唯只今問題になつて居りまする此の勞働調整法の問題は、是は私の了解して居る所に依りますると、詰り罷業權が國家の國政に對し、又社會一般の公益に重大の利害のありまする問題に對して統制のある一つの爭議の制限をする、爭議權が無限に何の權利の上にも色々な問題の上にも絶對にあるのではなく、やはり一つの社會の秩序、國家の秩序、公益を尊重すると云ふ埒内で初めて認められる趣旨で其の意味で調整法の立案があるものと了解する、斯くの如きことを申上げたに過ぎないのでありまして、此の見解は私は「ポツダム」宣言にも決して違反する所以でもなければ、勞働組合法それ自身も無制限に公益をも構はず、又國家行政運行の阻止にも構はず、團結權或は爭議權が無制限に認められて居るとは私は考へて居りませぬ斯う云ふやうな趣旨を申上げた譯で、只今の御質問に對しましても左樣な意味で私の答辯が斯く斯くであつたと云ふことを御諒承下さるのは結構でありまするが、あなたが獨斷されたやうな意味で私は申した意味も毛頭ありませぬから、それは甚だ迷惑だと存じ、左樣に申上げる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=11
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012・赤松勇
○赤松委員 更に御尋ね致しまするが、然らば統制ある爭議行爲、即ち公益に反しない、或は秩序に反しない統制ある爭議行爲と云ふのは一體何でありませうか、其の定義を具體的に下して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=12
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013・膳桂之助
○膳國務大臣 現在勞働關係調整法案が其の内容として示してあるのが即ち今の御問ひに對する御答へであります、即ち官吏等が罷業をすると云ふことは國の要請を根本に破壊するものであるから是は差控へられたい、又交通、電氣其の他極く嚴正なる意味の公益事業之に對しては拔打的の爭議は公益に反するから、是は何と申しますか秩序ある或る一つの手續の後に於て爭議權の行使が願ひたい、斯う云ふやうな點に付て爭議權の一つの限界を作つて行かう、是が即ち今の御問ひに對する御答へになると思ひます、現在の法律に於ても先程何か全國の事業家の中に或は資本攻勢的の態度を取つて云々と云ふやうな假設の例を御述べになつて居りましたが、一般の産業に對する爭議權の權限は何も此の調整法の中で制限されるのではない、斯樣に私は承知致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=13
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014・赤松勇
○赤松委員 膳國務大臣は極めて抽象的な意味に於きまして、公益又は國家の秩序に反する爭議行爲に對しては、それを制限するものであると云ふことを申されたのであります、膳國務大臣に私は此の勞働關係調整法は現下の日本の客觀情勢の下に於て、斷じて妥當性を持つものでないと云ふことを再度申上げて見たいと思ふのでありますけれども、私の質問時間は一時間に制限されて居ります關係上其の根本的問題に關しまして再度繰返すことを止めます、唯一言明瞭に膳國務大臣に御尋ねして置きたいことは、現實に現在馘首反對の爭議が全面的に發生致しました際に經濟安定本部の長官として、之に對して如何なる所信を御持ちになるのであるかと云ふ一點を御尋ねして見たいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=14
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015・膳桂之助
○膳國務大臣 現實に或る法律が施行せられました結果、國内に或る不秩序が起きた場合に、是は經濟の安定に重大の關係があるから何かお前にも考へがあるだらう、此の問題は先程から屡々申上げます通り、私は日本全體の經濟安定に關する根本方策の審議立案等には關與致して居りますけれども、其の日本の秩序の維持の問題は、是は内務大臣の專管に屬して居りますので、私が今其の問題に對しては何等答辯を申上げる自由を持つて居りませぬ、尚ほそれに關聯して一言附加へて申上げて置きますが、此の勞働關係調整法の官吏の罷業權の制限竝に公益事業に對する罷業權の或る程度の制限、是が非常に勤勞大衆の憤懣を買つて居る、成程今新聞紙に見え、或は「デモンストレーション」に現はれる所は、左樣に私も客觀的に拜承するのでありますが、實は是は私は甚だ意外に存じて居ります所で、是は當局から此の法案の制定になりました事情等に付ては既に御説明のあつたことと思ひまするが、私は親しく自分自身で此の法案の立案の略略最初から關係して居りまするので、實は私此の問題に付て斯くの如き議論が勤勞大衆の間にあらうとは實は甚だ意外に存じて居りまする次第でありますと申しまするのは、爭議に付て一定の秩序を保つ必要のあると云ふことは勞働組合法立案の當時から既に言はれたのでありまして、私は御人を申すことを遠慮致しまするけれども、相當勞働問題に直接御關係の方、又勞働運動に非常な御同情のある方も、勞働組合法と勞働關係の調整に關する法律は同時に出なければ意味を成さないのだと云ふことに付ては相當強い御主張のあつたことと存じます、尚ほ其の後勞働關係調整法の立案に私も一人の委員として參與して居りましたけれども、其の問題が最後の決定の段階に至るまで、此の問題に付て勞働組合關係方面に全面的に御反對があるとは私共考へて居りませぬでした、此の爭議權の制限に付きましては、當時政府も非常な愼重の態度を執られまして、原案に付ては何等御指示がありませぬ、全く官吏の罷業權の制限及び公益事業の罷業權の制限に付きましては、勞働關係から出られました小委員と、事業關係から出ました小委員との意見の一致に依つて、初めて政府がそれならば制限することにしようと云ふ決意をしたと云ふ事實は、歴然たるものがあるのでありまして(拍手)實は此の問題が愈愈勞働關係の法制審議會に現はれました時に、勞働關係の委員諸君が初めて之に付て贊成でないかの如き意思の現はれましたことに付きましては、私共は實は非常に驚きまして、其の席上で私は深く遺憾の意を表したのでありまして、決して其の後の情勢がまあ色々變つたこともございませう、併しながら有體に申しますれば官吏の罷業權、公益事業の罷業權の制限の問題は、決して政府が、或は事業家側だけが強めて出來上つたものではない、斯う云ふことを皆樣はどうぞ一つ御記憶の中に新たにして置かれんことを切望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=15
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016・逢澤寛
○逢澤委員長 赤松君に申上げますが、膳國務大臣に對する質疑は此の位で如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=16
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017・赤松勇
○赤松委員 いや、もう一點で終ります、私は只今、經濟安定本部長官に、又國務大臣に就任されましたる膳國務大臣が不誠意極まる、而も曾て我が國に於きまして勞働組合法案が出來上りまする時に、眞先に資本家陣營を代表されまして、勞働組合法の壓企を殺て、更に數十年間に亙りまして日本の勞働階級に挑戰して參られました其の長い間の「イデオロギー」が未だに全然拂拭されず、而も新しい事態に對處する政治的感覺が全然ないと云ふことに一驚を禁じ得ないのであります、私共は斯くの如き國務大臣、斯くの如き經濟安定本部長官が日本の基本的な安定經濟政策をおやりになると云ふことは、勞働階級の名に於て不信任を表明しますると同時に、甚だ迷惑に存ずる次第であります、特に私は新しく發生する、又は發生せんとする「ストライキ」に對しまして、其の所管事項を内務大臣に摺替へられましたと云ふことは、是は決して輕視すべきことではないと思ふのであります、根本的に申上げまするならば、内務大臣の所管に歸結、歸納されたと云ふことは、取も直さず「ストライキ」に對する政府の對處方針と云ふものが取締以外にないと云ふことをば暗默に表明されて居るものと思ふのであります、一體今日内務官僚如きものに依つて果して此の重大なる社會的危機に對處する基本的政策が執れるでありませうか、膳國務大臣は現在の社會的危機に臨む所の基本的な認識に於て缺くるものが甚だしいのであります、私は其の認識が如何に間違つて居るかと云ふことを、ここ數日間或は數十日間の中に具體的に膳國務大臣の前に其の事實を御披瀝する機會のあると云ふことをば、茲に強く強調して置きます
尚ほ一言申上げて置きまするが、只今極めて挑戰的に、勞働關係者の中に於て當初此の法案に對して贊成した者があると云ふことを言はれましたけれども、私はさう云ふ國務大臣の挑戰に對しましては、勞働階級の名に於きまして一言申上げて置きたいと思ふのであります、一體政府は勞働階級と一つの協調的な政策を次められまする場合に、日本の全勞働階級の眞實の代表者を御加へになつたでありませうか、勿論我々の同志の中から參加致しましたる代表者を私は言つて居るのではないのであります、それを勞働階級の代表でないと私は申して居るのではないのでありますけれども、例へば鐵道會議に現はれました官僚的な意圖を見ましても、あの鐵道會議の中に勞働組合の代表を僅か四名加へることに依つて、あの重大なる問題を一擧に決しようとしたではないか、膳國務大臣は長い間日本の勞働問題に關係をして居られまするけれども、さう云ふ勞働問題解決の際に當りまして、本當に勞働階級の聲を聽くやうに、是は政府自身もさうでありますが、勞働階級の眞實の聲を聽くやうな方策を講ぜられたのであるかどうか、私は遺憾ながら此の點に於きましては、政府は根本的に勞働階級を信頼しない、さう云ふ觀點に立脚しまして從來勞働政策を立つて來たのである、隨ひまして政府の勞働政策で一回でも成功した例がありますか、私は膳國務大臣が滔々として此處でさう云ふ問題に關しまして白々しい態度を以て我々に對して御答辯を願ふと云ふことは、甚だ憤懣に堪へないのであります、尚ほ一言申上げて置きまするが、假令私が當初勞調法に贊成を致しましても、私は社會黨の數十萬人の黨員の一人であります、又日本三百萬組織勞働者の一人であります、隨ひまして其の組織、其の機關に於きまして、勞調法反對──それは幾多の政治問題でありまして、勿論人間には樣々な考へ方がありますけれども、最後の決定は總て組織、機關に於てなされるのであります、恐らく政府の大臣閣下に致しましても、一つの問題に付きましてお互ひに見解が分れて居りましても、閣議に於て、或は省議に於て、或は議會に於て、決定されましたならば、やはり其の決定に對しては御服しになるでありませう、我々も同樣でありまして、一つの機關、組織に於て決定されましたならば、其の決定に服從するのは是れ亦當然の義務であります、隨ひまして、私は屡屡不愉快なことを聞くのでありますが、過日も三萬の勞働者大會の代表者が議會に陳情に參りました際に、やはり植原國務大臣は同樣なことを笑ひ話で申されましたので、私は其處で植原國務大臣に對して嚴重なる抗議をしたのでありますが、兎にも角にも私達の方で黨議若しくは組織機關に於て決定され、それが黨の決定又は勞働組合の決定として其の決定に服從を致しまして、其の決定に基いて行動すると云ふことは決して間違ひではない(「委員長、時間が經過したではないか、迷惑極まるぢやないか、時間を守れ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=17
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018・逢澤寛
○逢澤委員長 御靜かに……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=18
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019・赤松勇
○赤松委員 さう云ふ點に於て私は膳國務大臣の只今の御答辯に對しては甚だ不滿でありますと共に今後さう云ふやうな不眞面目な答辯をして戴かないやうに特に要求して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=19
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020・膳桂之助
○膳國務大臣 一寸私の申したことを訂正して置きたいと思ひます、私が勞働問題に對します現在の主管は厚生大臣と内務大臣と、斯う申上げた方が適當であつたと思ひますので、其の點は訂正致します、それから今の點でありますが、是は御意見のやうでありますから私長く申しませぬけれども、私經濟安定本部の總務長官に近く就任するとのことでありますが、私の心境は過去に私が私人としてどう云ふやうなことを申したか、又どう云ふことであつたかと云ふことと、私が公人として考へる場合とは截然と區別をして戴きたいと云ふことを此の前此の委員會の御席で申上げました、今は元と時勢が變つて居ります、假りに私に或る考へがあるとしましても、數年前の私の頭に考へて映つて居ります日本の現在及び是から來る社會情勢と、此の間には著しい違ひがあります、私安定本部長官として命を拜する積りになりました時に、總ての社會事象をば自分の氣持の中に何等前提もなく鏡のやうに映したいと云ふ覺悟で此の就任を御受けした譯であります、又そればかりではありませぬ、私は此の前も申上げたと思ひまするが、餘りに物を此の主義だ、あの主義だと片付けて、それで是からの經濟の安定は出來ないと思ひます、私は經濟の安定は國民生活の安定だと申上げました、此の線に沿ふ政策が眞に宜いことがありますれば、どう云ふ方の言ふ意味でも、どう云ふ主義の方の述べられる政策でも、之を十分に考慮するに吝でないのでありまして、どうぞ私人と公人とそこの間に區別のあることは皆樣がはつきりと御認識をして戴きたいと思ひます、一言釋明致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=20
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021・逢澤寛
○逢澤委員長 土井直作君に申上げます、膳國務大臣に對する簡單な御質問でしたら此の際許しますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=21
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022・土井直作
○土井委員 それでは極めて簡單に質問致します、膳國務大臣が經濟安定本部の長官として御就任になるのでありますが、此の經濟安定本部の役柄と云ふものは我が日本の國を起すか、或は又亡ぼすかと云ふやうな纒めて重大なる職責であると云ふことを考へるのであります、そこで經濟安定本部は綜括的に我が日本の産業復興の爲に努力をしなければならないのでありまするが、過般星島商工大臣が本會議に於て答辯として言つて居る所に依りますると、我が日本の生産設備約一千二百萬「トン」が賠償と致しまして海外に輸出さることになつて居るさうであります、現に經濟安定本部が我が日本に許されて居る範圍内に於ける所の生産設備に依つて、どの程度の勞働階級を收容なし、どの程度の國民生活の安定を圖ることが出來るか、此の點に付ての見透しを一應御聽かせ願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=22
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023・膳桂之助
○膳國務大臣 此の問題は結局國家の戰爭に關します國民の債權の打切をどの程度にするか、又我が國が賠償としてどう云ふ程度の設備其の他を提供しなければならないかと云ふ問題と、又將來どう云ふ程度の原料材料等に付きまして國際的に我が國への同情と申しますか、我が國が協力を願ひ得るか、是等の問題に絡み合はせまして、經濟安定本部では第一番に取上げて、深く研究しなければならない問題だらうと思つて居ります、但し差當り今回の種々の事情に依ります經濟の變動に基いて參りまする、或は外地から戻つて參りまするさう云ふ人達の問題に對しまする就職の問題、或は職業の配置の問題等に付きましての應急の施設はそれぞれ關係各省で策を練つて皆樣に色々後答辯申上げて居るのだらうと思ひます、私共の經濟安定本部で練りまするものは、兎に角是から長い間、少くとも此の何年間かの、其の間のことを大局的から研究して居りまするので、折角の御問ひでありまするけれども今何千何萬人に對してどう、何百萬人に對してどうと云ふことを私の口から御答へ申上げるのにはまだ少し時期が早過ぎると存じますので、御用捨願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=23
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024・土井直作
○土井委員 さう云ふことになりますならば、經濟安定本部はまだ發足して居らない状態であるが故に、現在の實情に於きましては、我が日本に於ける産業並に其の他の點に付ての見透しと云ふものは全然付かぬと云ふ風に拜承して差支へございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=24
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025・膳桂之助
○膳國務大臣 經濟安定本部としてはまだ付いて居ると申上げられませぬ、併し日本政府としては既に付いて居るものがあるが故に、各省大臣から御答へ申上げて居るのだと斯う御諒承願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=25
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026・土井直作
○土井委員 其の點に付きましては一應諒と致しまするが、次に私が質問したいと思ひますることは、膳國務大臣が當初此の會議の席上に於きまして、自分の考へて居る點は、今後の産業は國家社會、即ち日本民族の安寧幸福を齋す爲に總てが行はれなければならないと云ふことを御話になつて居つたのであります、さう云ふ點から考へまするならば、我々が今回勞調法を通じまして生産管理と云ふものが是が眞に我が日本の所謂民族の安寧秩序を破壊すると云ふことはどうしても考へられないのであります、斯う云ふ點から勞調法が全面的に全日本の勞働階級の名に依つて反對されて居ると云ふことは御承知の通りであります、そこで特に御伺ひしたいと思ひまする點は、膳國務大臣は生管に對する一つの見解と致しまして、過般「ラジオ」の對談會に於きまして生管と云ふものは丁度一家に譬へて見るならば主人を出し置いて、さうして女中が自分の家庭の一切を切盛するやうなものであると云ふことを發表して居られるのであります、私は斯う云ふ點に付きまして國務大臣は、例へば女中が主人を出し拔いて一切の家庭の處理をすると云ふやうな考へ方を現在でも果して持つて居るのかどうか、此の點を御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=26
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027・膳桂之助
○膳國務大臣 先日から數次申上げまするやうに、私の公人としての議會壇上に於ける答辯は、私が唯公人として考へ、公人として行つたことのみに限つて戴きたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=27
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028・土井直作
○土井委員 我々は固より國務大臣が公人として話した事柄に付てのみ其の責任の所在を問ふと云ふことは是は一應考へられる點であります、併しながら公人はやはり私人の延長でありまして、過去に於て行つて居る事柄、それ自體を全然無視致しまして論議をすると云ふことは考へられないのであります、此の意味に於きまして、要するに過去に於て行つた事柄を前提と致しまして、將來此の問題に付ての考へを問ふと云ふことは私は何等差支ないことであらうと斯樣に考へて居るのであります、そこで生管の問題に付てさう云ふやうな意見がありました、過般同僚議員である所の赤松君から質問がありましたやうに、例へば一家の主人が其の家庭を顧みずして自分が逃亡してしまふ、例へば正田製作所の如く從業員全體の意思を無視して、さうして何等それの善後措置も考へないで自分が姿を晦ますやうな場合に於きまして、已むを得ざる一つの結果として其の跡始末をする、言換へれば主人が女中や子供や其の他の者を顧みないで何處かへ雲隱れをすると云ふやうなことがありますれば、將來後に殘されて居る所の人々が其の一家の切廻しをする爲に其の處置をすると云ふことは極めて妥當なることで、さう云ふ場合であると云ふことを考へて居るのであります、生産管理の面に於きましても御承知の通り我々が一つの限界點を設けて之を許すべきであると云ふことを屡屡言つて居る點は、惡資本家、即ち責任を廻避するが如き資本家階級が存在しまする場合に於きましては、それに取つて代つて國家の生産を一日も忽せに出來ないと云ふ立場から、勞働階級が眞摯な氣持に於て生管をすると云ふことは當然な措置でなければならない、それを單に政府が畫一的に「ペーパー・プラン」で、其の事實を無視しまして生管に對して之を彈壓し、禁止すると云ふこと自體が、甚だ我々としては受取り難いのであります、斯るが故に、此の點に付きましては一應膳國務大臣としての──成程個人的な云々と云ふやうなことがありますけれども、實際的には私はさう云ふ觀點から生管の問題を論議して居るのでありまして、更に一應の御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=28
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029・膳桂之助
○膳國務大臣 私は自分の職務を今度拜命します時に深く考へたことがあります、と云ふことは兎に角經濟安定本部の長官としますると、事各省に亙つての調整をも掌るのであります、私の職務は重大であらうと思ひます、併しながら私は謙虚な氣持ちを持つて各省の施設を見て、其の間の國策としての統一と調整を圖るのが私の仕事なのでありまして、假に或る一省或る二省でやつて居りますることに對しまして、我が國務大臣としての見解がありましても、私は之を避けて申上げない積りで居ります、私が自分で今例を設けましたやうなことが果してあるのかないのか、あつたにしましても、どう云ふ風にすべきかと云ふことに付ては、それぞれ權限があり熱心に此の爲にやつて居られます各省の大臣及び其の下僚の方々があるのでありますから、其の人の權限にまで犯して私は申上げたくありませぬ、但し國務大臣を離れて膳桂之助の私見が御聽きになりたいと云ふことでありますれば、是は此の議政壇上の貴重な時間を使はずに、他の適當な、個人的に御話を申上げる機會があらうと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=29
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030・土井直作
○土井委員 經濟安定本部の長官と致しまして、綜合的に國家の施策を決定するのでありますが、聞く所に依りますと、政府の下に從事して居りまする各勞働階級に對しまして、大藏省では之に對する所の給與局か何かさう云ふやうなものを作らうと云ふやうな意圖があるやうに聞いて居るのであります、膳國務大臣と致しましては、全般的に國家經營に從事して居ります所の從業員諸君全體の待遇上の問題を、國策の見地から見まして、綜合的に、各省々々に分割されて居りますものを綜合致しまして、之を一つの例へば處遇委員會なり或は待遇委員會と云ふ風なものを將來作りまして、さうして官業に働いて居ります所の勞働者諸君或は職員官公吏に對する待遇上の均衡を圖り、全體の「バランス」を取ると云ふやうなことに對する何か適當な案を考へて居られるかどうか、此の點を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=30
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031・膳桂之助
○膳國務大臣 御意見の程は篤と拜聽致しまして、將來有力な參考資料と致します、併しながら其の點に付てはまだ何とも申上げる時期に參つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=31
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032・土井直作
○土井委員 尚ほ綜合的に斯う云ふやうな委員會等が作れらまする場合に於て、若し幸ひにして是が取上げられますならば、其の中には少くとも勞働階級の代表、言換れば國鐵の代表であるとか、或は遞信從業員組合の代表であるとか或は煙草勞働組合等の代表であるとか云ふやうな、總て勞働階級の代表者が此の構成される委員會の中に多分に入つて行くことが妥當だと私は思ひますが、さう云ふやうな場合に於て膳國務大臣は十分考慮する御意思を有して居られるかどうか、此の機會を通じて御伺ひして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=32
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033・膳桂之助
○膳國務大臣 此の一點だけは將來の問題ではないのでありますけれども、御答へ申上げて宜いだらうと思ひます、今までの日本の經濟は何と申しましても、資本がありました、又多かれ少かれ國内及び海外植民地等から確保出來ます天然資源がございました、之に對しまする勞働と申しまするか、勤勞の力と云ふものは色々の意味から言ひまして、資本及び資源と云ふやうなものの蔭に非常に小さく過小視された傾きがあつたと思ひます、併しながら是からの經濟の再建は、日本に何が殘つて居るか、所謂擬制資本は整理をされます、日本は植民地的保有がなくなつて居ります、是等の點から我が國の經濟の再建をなすべき天然資源は要するに國際間の同情と協力に依らなければ得られないことは申すまでもありませぬ、隨て是から日本の經濟再建に對しまする勞働と申しますか勤勞と申しますか、是は日本に幸ひ豊富にありまする水力電氣の淵源と共に日本の經濟の再建に大きな力が──寧ろ非常な大きい役割をして貰はなければならないのであります、隨て是から私の經濟の再建に關しまする色々なことを考へまする際には、其の面は今までの日本の經濟の經濟の考へ方と是からは相當違つて考へなければならないと私は存じて居ります、但し此の大きな勤勞の力が果して日本再建にどれだけ本當に役立つかと云ふ事は、勞働の規律と統制、秩序、是が前提でなければならぬと存ずるのであります、私は此の勞働關係調整法が實は以前から問題になつて居りますが、是が將來の經濟安定と云ふものにどう云ふ役割を直接するかどうかと云ふことを申すのではありませぬけれども、やはり本當に勞働、勤勞と云ふ面が産業の再建に力強く片棒どころか大變意味の大きい役割を果す爲には、そこに本當に落着いた冷靜な秩序と、それに基く本當に燃え上る勤勞意欲の本當の行くべき途の指示しがなければならぬと思ふので、其の點に於て將來私の考へまする凡ゆる機關に於て、勞働と云ふ方面が相當大きな役割を勤めるのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=33
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034・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは土井君、此の程度に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=34
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035・原侑
○原(侑)委員 議事進行に付て發言を御許し願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=35
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036・逢澤寛
○逢澤委員長 簡單に御願ひ致します──原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=36
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037・原侑
○原(侑)委員 先般より赤松君其の他の長い質問があつて洵に他の人達が迷惑をすると云ふので、委員長を初め理事會を開かれて、一人一時間と云ふことに決定したのでありますが、本日聽いて居りますと、やはり時間を經過致しまして、洵に無秩序極まると私は考へるのであります、我々もまだ質問をようしないで待つて居るのであります、唯一人獨斷的ではいかぬと思ひます、委員が質問すべきものはどの位の時間に於て質問すると云ふことは委員長に報告して、當り勝手に質問をされることは我我甚だ迷惑に感ずるのであります、而も假想まで考へる、實現されるかされぬかは別であるが斯う云ふものが起つて來た場合にはと云ふやうな假想をやる、或は時代的な一つの豫言になるが如く質問をやられると云ふことは、我々洵に迷惑をするのであります、我々は國家對策を此處に於て練るのであります、しつかりした態度を以て、一つ國策を互ひに審議致すと云ふ態度に依つて進行して戴きたいと思ふのであります、唯區々たる一小部分を捉へて、さうして政府委員の一つの失言を取り、或は何かの缺點があればと云ふやうな質問の如きは、私は國策を審議する上に付ては洵に遺憾に存ずる次第であります、而も理事會で決定せられたことをなぜ委員長は行はれないか、茲に委員長の御反省を願ひたいと思ひます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=37
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038・逢澤寛
○逢澤委員長 時間を勵行するやうに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=38
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039・辻井民之助
○辻井委員 一寸議事進行に付て……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=39
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040・逢澤寛
○逢澤委員長 辻井君、簡單に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=40
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041・辻井民之助
○辻井委員 今原君から議事進行に付ての御發言がありましたが、或る程度に於ては私も贊成致します、成べく簡潔に要領を得て短い時間に切上げるやうに、無制限に何時までも續ける譯に行かないのであるから、此の點は同意致しますが、併し一時間と云ふのは絶對的な制限ではないと思ひます、成べく一時間と云ふ申合はせが出來たのであります、必ずしもそれに囚はれる必要はないと思ひます、殊に此の法案は申すまでもなく、爭議の制限に該當する官公吏或は公益事業の從業員だけに付て見ても百五十萬、延いて是等は何れも全國的な組合に關係して居るのであるから、殆ど全勤勞階級が之に重大關心を持ち、又擧つて反對をして居るものであります、それだけに是等の階級をば色々な形で代表して居る赤松君や我々に取つては、實に豫算案以上の重大問題であります、十分に質す所は質し、徹底するまで質問をしなければ、是等多くの大衆に對しても我々は申譯がない、政府に於かれましても、はつきり態度を表明する機會をば持たれる方が却て得策ではないかと考へます、斯う云ふ重大問題でありますから、二、三日の中に必ずしも切上げる必要はない、必要があれば、多少時間が經過しても之をうるさく制限する必要はなからうかと思ひますから、皆が努めて成べく一時間でやると云ふ態度を持ちつつ、場合に依れば多少の超過は委員長に於て適當に御計らひ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=41
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042・逢澤寛
○逢澤委員長 委員長に於て大體常識を加へましてやりたいと思ひます、成たけ簡單に御願ひします、運輸大臣に對する質問から御願ひします──赤松君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=42
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043・赤松勇
○赤松委員 今朝からの私の質問は……(「討論をやつてるのか」と呼ぶ者あり)僕の今朝からの質問は討論か発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=43
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044・逢澤寛
○逢澤委員長 私語を禁じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=44
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045・赤松勇
○赤松委員 時計を計つて見た所が、十二分です、極めて簡潔です、而も膳國務大臣の答辯が非常に長い、其の點を混同しないで下さい
私は只今から運輸大臣に對して質疑を續行致します、實は本日十時から原宿の國鐵勞働組合に於て全國の鬪爭委員會が開催されて居ります、此の質疑に關して非常な關心を持つて居りまする關係上、運輸大臣の極めて誠意ある御答辯を御願ひしたいと思ひます、今囘の國鐵の大量整理に關して、現業員を整理しなければならぬ所の其の具體的基礎と云ふものは一體何處に置かれて居るのであるか、鐵道省自身が示しました大量整理の根據は、昭和十一年の統計數字を基礎にして居るのであります、昭和十一年度の統計數字を基礎にして昭和二十一年度の而も長期の戰爭の過程を經た現在の國鐵に對して、其の數字を基礎に大量の整理を行ふと云ふことは極めて暴擧であります、私は此の具體的な資料を持つて居るのでありますが、一體運輸大臣は如何なる統計に基き、又何年度の統計に基いて大量整理をおやりになるかと云ふことを一應御尋ねして見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=45
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046・平塚常次郎
○平塚國務大臣 人の整理の問題でありますが、國有鐵道と致しましては、現在從業員が五十五萬人居ります、更に復員其の他が歸つて參りますると、本年の暮には恐らく六十一萬に達するものと考へて居ります、さうして現在の鐵道の輸送力から言ひまして、果して何人の從業員があれば運營がうまく行くかと申しますと、大體四十七、八萬人ありますれば完全に動くことになるのであります、隨ひまして此の六十一萬人と云ふものは約十二萬人餘りの過剩人員が居ると云ふことであります、之を如何にするかと云ふことであります、若しも資材なり石炭が十分にありまするならば、もつと輸送力も殖えますし、隨て人の使ひ方もあるのでありますが、遺憾ながら今日の状態では急速にそこまで行かぬものと思ひます、隨て不必要なものを大勢抱へ込んで居ると云ふことは、國有鐵道でありまする關係から行きまして、やはり其の費用と云ふものは國民の負擔になるのであります、隨ひましてどうしても此の際人員の整理をしなければならぬのであります、又一方鐵道と致しまして收支計算のことを一寸申述べて見たいと思ひますが……(赤松委員「それは又後で伺ひます」)さう云ふことからして、どうしても整理が必要であるのであります、それで第一回の整理と致しましては、大體七萬五千人程度の整理をして行きたいと云ふ考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=46
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047・赤松勇
○赤松委員 私の質問に對する的外れの答辯を戴いたのでありますが、私は其の七萬何千人の過剩人員、所謂過剩と云ふことが何に依つて過剩と言はれるのであるか、一體どう云ふ事實を基礎にして過剩と言はれるのであるか、即ち先程運輸大臣が言はれましたやうに、所謂大量馘首、大量整理をやらなければならぬ其の具體的な事實、基礎、それは何に基いてさう云ふ判定を下したのであるか、何から割出したのであるかと云ふことを御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=47
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048・平塚常次郎
○平塚國務大臣 御承知の通り、戰爭中非常な輸送力が必要であつたので、平時より非常に大きな從業員を要求されて居つたのであります、それが戰爭中必要であつた、終戰後の今日それだけの人の必要がないと云ふことでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=48
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049・赤松勇
○赤松委員 極めて簡潔なる御答辯を戴きまして、能く分りました、戰時中は非常に厖大な人員を要して居つたが、戰爭が終つたので、人員が過剩になつたのだと仰しやるのでありますが、私は只今運輸大臣の御答辯になりました其の御答辯と、事務當局が具體的事實に基かずして、所謂昭和十一年の統計數字を基礎にして、今回の整理を行はうとして居ると云ふ所に大きな「ギャップ」を見出すのでありますが、第一に私は御尋ねしたいのであります、一體戰爭中に厖大な人員を要して居つたが、戰爭が終つたからそれが過剩になつたと仰しやるのでありますけれども、現在品川の工場に於きましては、三月、四月、五月と漸次不良貨車、或は客車が激増致しまして、五月に至りましては、窓硝子及び座席がない爲に動かない車が五十六輛、更に輸軸がなくて動かないのが十五輛、ばね製造關係がなくて動かないのが四輛、此の車が動きまするならば、一日約七千人の人員を輸送することが出來るのであります、是が現在品川の工場に於きまして資材が足らないのと同樣に人員が足らないので、此の修理が出來ないと云ふ事實があるのであります、私は此處に詳細なる記録を持つて居りますが、更に眼を轉じまして之を市ヶ谷の驛に見てみたいと思ひます、市ヶ谷驛に於きましては當局の指示に依りまして、從來三十二名使つて居りましたのを、今囘二十四名に減らすのでありまして、其の中小荷物係と云ふのが全然なくなつてしまふのであります、私は今度の整理が如何に暴擧であるかと云ふことの一つの事實を提供して見たいと思ひます、尤も斯う申しますならば、運輸大臣はそれは市ヶ谷驛のみの現象であると云ふ風に言はれると思ふのでありますが、私は決して市ヶ谷だけの現象ではないと思ふ、更に新橋に於きましても、或は品川に於きましても、蒲田に於きましても、横濱に於きましても、各主要驛に於きまする所の數を現在持つて居ります、市ヶ谷の例を擧げて見ますると、市ヶ谷に於きましては從來使つて居りました三十二人の人員を二十四人に減らすと、一人で九百五人を受持たなければならぬと云ふことになるのであります、それも便所へも行かず、飯も食はずに高速八時間勞働制に致しまして、一時間一人で百十二人受持たなければならぬのであります、即ち一分に約二人を擔當しなければならぬと云ふ状態であります、今度の整理が如何に無理であるかと云ふことは、例へば出札係の例を一つ申上げますると、御承知の如く出札係は徹夜でやつて居ります、此の出札係が一日市ヶ谷驛に於て取扱ふ件數は一千百七十件、是が高速八時間勞働に致しまして一時間七十三枚の切符を賣るのであります、更に一分間に割ると一、二枚の切符を賣るのであります、此の一分一、二枚の切符を賣るのでありますけれども、是が例へば追徴金或は拂戻などが澤山あります、尚ほ不正乘車の數は實に厖大な數字に上つて居りまして、此の連中の整理もやらなければならぬと云うことになるのであります、又小荷物係でありますが、小荷物係は從來一人で四十四件取扱つて居ります、此の小荷物係がなくなりますると、勢ひ他の方から之を補充しなければならぬと云ふことになる、斯う云ふやうな現在八時間勞働制に致しましても、斯くの如き過重なる勞働強化を行はなければならぬ、それにも拘らず此の人員をば更に縮減すると云ふことの必要が一體何處にある、單に運輸大臣が之を戰時中厖大なる人員を要して居つたが、戰爭が終つたので其の過剩人員を切捨てるのだ、斯う云ふ風に仰しやると致しますならば、此の統計數字が示して居りまする事實は、運輸大臣のさう云ふ御答辯を根本的に覆すものであると思ふのであります、併しながら國鐵の大量馘首は別個の意味に於て必要であると云ふことになりまするならば、又問題は別でありますけれども、現在の國鐵の状態は──更に私は北海道から九州まで全部現場調査をやることになつて居りますが、此の東京都周邊に於ける一つの事實を見ましても、決して人員は過剩でない、寧ろ人員が足りないで困つて居ると云ふ現状であります、之に對する運輸大臣の御答辯を戴きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=49
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050・平塚常次郎
○平塚國務大臣 御説の通り部分的に過剩でない所も勿論ございます、所謂是は輸送力の減退しない所には更に人を殖やす場合もあると思ひますが、國有鐵道全體から見ますると、やはり多いと云ふことになつて居ります、今日でも線路に關係する勞務者が不足で困つて居ります、併し一方に於て各驛に居ります者は相當餘つて居る處もあるのであります、例へば赤松君の言はれた通り、東京附近の非常に輸送が雜沓するやうな驛に於きましては、恐らく減らないだらうと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=50
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051・赤松勇
○赤松委員 昨日の東京新聞に於ても書いて居りましたが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=51
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052・逢澤寛
○逢澤委員長 赤松君、成たけ簡潔に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=52
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053・赤松勇
○赤松委員 更に論旨を進めまして、運輸大臣に御尋ねしたい、鐵道の現在の支出が八十一億、營業收益が五十四億、二十七億不足と云ふことになつて居るのであります、當局は十三億の赤字を十月から値上すると十五億増收になると云ふ、所が二十七億の赤字は決して是は人件費が其の「パーセンテージ」の多くを占めて居るのではないのであります、殆ど物件費、工事費が厖大なる數字を占めて居るのであります、而も私が特に遺憾に堪へない點は、國鐵は現在是等の物件費、或は工事費を資材の面から削減緊縮を策さうとはして居ない、舊態依然でありまして、國鐵の高級官僚は退職致しまするや、是等の國鐵の周圍に鈴なりにぶら下つて居る、そして國鐵の生血を吸つて居る、例へば土木建築請負業或は國鐵電氣土木工業、其の他澤山の「トンネル」會社がありますが、それ等の「トンネル」會社が國鐵の必要とする所の經費の非常に大きな割合りを食つて居ると云ふ事實があるのであります、若しさう云ふ赤字を埋め合はせると云ふ意味に於きまして、國鐵の大量の整理をする、或は運賃の値上を必要とすると云ふならば、先づ運輸大臣は國鐵の周圍に鈴なりになつて居る多くの「トンネル」會社、或は「トンネル」會社を通じて國鐵の生血を吸つて居る是等國鐵の外郭組織に對しまして徹底的な緊縮整理を行つて、其の上に立つて、從業員に對する對策を御發表になることが妥當なやり方ではないかと思ふのであります、一體それ等の「トンネル」會社に對しまして、運輸大臣はどう云ふ御考へを持ち、又それ等に對する整理方針に關しましては、どのやうな方策を御持ちになつて居るかを御尋ねしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=53
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054・平塚常次郎
○平塚國務大臣 鐵道の經營に付きましては、今日の時代に於て考へなければならぬことは、民主的の經營をせなければならぬと思つて居ります、鐵道運賃の値上と同時に其の職員の整理を行ひ、一方に於て民主的に國有鐵道の經營をして行かなければならぬと云ふ方針の下に、何等かそこに障碍があるならば之を排除しまして、國民環視の下に只今御話の「トンネル」會社のやうな存在が不都合だと云ふことならば改めなければならぬと思ひます、併しながら國有鐵道は何でも自分一人でやる譯に行かぬのでありまして、車を新しく作る、發動機を作る、と云ふやうなことまでも國有鐵道は直接やつて居りませぬ、さう云ふものが「トンネル」會社だと云ふ考へを私は持つて居りませぬ、併しながら若しそこに缺陷があつたならば、勿論改める積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=54
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055・赤松勇
○赤松委員 缺陷があるならば改めると云ふのでなく、先づさう云ふものに最初に手を著けて、やるべきことを行つて、然る後に運賃の値上或は整理が客觀的に妥當であるかないかと云ふことの基本的な政策を決めなければならぬと思ふ
時間がありませぬから、更に私は次に進めまするが、大體鐵道が特別會計の枠内に於て此の赤字を論ずるから間違つて居る、今日國鐵が多くの赤字を出して居る原因は色々あるのであります、私は其の點に詳細な資料を持つて居るのでありますが、それは避けます、唯一言申上げて置きたいことは、戰爭中に鐵道特別會計中から七億五千萬圓を一般會計にやつて居るのであります、所謂戰爭に依つて受けましたる被害が今日國鐵の大きな赤字の原因をなして居ると思ひます、隨ひまして其の戰爭の被害に依つて生じた赤字であるならば、之を國庫に於て負擔するのが、即ち一般會計に於て之を解決することが妥當なるやり方ではないかと思ふのであります
次いで私は御尋ね致しまするが、鐵道運賃の値上は直ちに生産費の値上となり、同時にそれが一般物價を吊上げる、惡性「インフレーション」の大きな一つの拍車になると思ふのであります、隨ひましてそれはどのやうな形を取らうとも意識すると否とに拘らず、是等の運賃の値上は、結果に於きましては一般國民の負擔となり、同時に又其の一般國民の負擔が「インフレ」の波を潜つて、二重三重に負擔されて行くことは言ふまでもないことであります、さう云ふ「インフレ」の拍車になるやうな運賃値上をすることは、中小商工業者は現在どのやうな状態にあるかと云ふことは御承知の通りでありますが、特に中小商工業者に對する影響は非常に甚大であります、而も政府は當面の失業を救濟すると云ふことを、そして又失業者を出しても、それを合理的に救濟すると云ふことに重點を置いて、此の社會的危機を突破しなければならぬと言つて居るのでありますが、一體國營事業であり、政府事業である國鐵自らが十萬に垂んとする厖大なる失業者を作ると云ふこと、而も打つべき手を打たずして、やるべきことをやらずに、眞先に其の一切の犧牲を從業員大衆に轉嫁することは不當なりと思ふのであります、又其の馘首の對象となつて居る少年及び婦女子、是等に對する馘首の理由と致しましては、是等の人々が素質體力が低下して居る、又同時に是等の人々が一家の支柱をなして居ないと云ふ理由を以て、解雇の對象にして居るのでありますけれども、是等の婦女子及び少年の素質體力の低下致しましたのは一體其の責任は誰にあるのか、此の責任は戰爭中散々酷使を致しました國鐵自身にあるのぢやないか、之に對して十分なる素質の工場を圖る爲の教育、或は體力向上の爲の勞働條件を作つてやらなかつた國鐵に責任があると同時に、政府自身が當然負はなければならない所の責任だと思ひます、若し國鐵がさう云ふ理由を以て、是等の青少年或は婦女子を馘首せんとするならば、全國的にやはり青少年婦女子に對するさう云ふ理由を妥當なりとしての大量馘首が勃發することは火を睹るよりも明かであると思ひます、運輸大臣御承知の如く、現在の國鐵從業員の一般年齡に付て全國の統計を見ますと、茲に其の數字があるのでありますが……
〔發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=55
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056・逢澤寛
○逢澤委員長 私語を禁じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=56
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057・赤松勇
○赤松委員 此の數字に依りますと、非常に從業員自身が年を取つて居る、或は非常に若い、中間層がないのであります、隨ひまして今青少年を馘首致しますと、次の國鐵は一體誰が背負つて立つのであるか、結局從業員は老人ばかりが殘るやうな結果になるのであります、隨てさう云ふ意味からしましても、さう云ふ大量馘首を避けまして、別個の方法に於きまして國鐵の赤字克服に御專念なさることが我が國現下の客觀的情勢よりして極めて必要ではないかと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=57
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058・平塚常次郎
○平塚國務大臣 御意見は洵に參考になりましたが、今度の整理はまだ具體的に決定して居らぬのでありまして、一應案を立てて是から十分檢討して、其の上で實施する積りであります、鐵道が損が行つたから、困るから人を整理すると云ふことだけではないのであります、鐵道の經營を民主的、合理的にしまするには、先程申しましたやうに、やはり剩員は整理をしなければならぬ、是がやはり合理的に民主的に經營する一つのものであります、其のことに依つて赤字を埋めるなどと云ふことは、それも幾らかあるでせうけれども、鐵道の赤字と云ふものは非常に厖大であります、どうしてこんなに赤字が出るかと申しますると、鐵道の運賃は今年の三月多少上つて居ります、上つて居りますけれども、上る前の鐵道運賃は非常に安かつたのであります、さうして其の後、本年三月以後の物價の上り方と云ふものは、例へば石炭にしても本年三月末まで國有鐵道の使つて居た石炭は「トン」二十一圓であつたが、今は公定價格百五十圓で、それを實際鐵道が消費するには百八十圓に該當して居る、此の石炭の値鞘だけでも十億以上になつて居ります、それから鐵道從業員の收入と云ふものは三月以後三倍になつて居ります、或は鐵鋼にしても七倍も八倍もになつて居る、さうして運賃は大體据置きになつて居ります、是はどの角度から、素人が計算しても明かなことであります、併し此の赤字が多いから從業員を整理すると云ふことにはならぬのでありまして、先程申上げましたやうに民主的に、合理的に經營をすることが當然であるのでありまして、其の一端として從業員の整理を幾らか行はなければならぬと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=58
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059・赤松勇
○赤松委員 運輸大臣に對する質問は此の程度で打切りますが、私は此の質問が終りました後、國鐵の全國鬪爭委員會に臨むのであります委員會に於きましては恐らく値上反對、大量馘首反對、勞調法反對の三綱領を掲げて大臣との具體的な折衝に移ると思ひますが、此の勞調法と關聯して、大量馘首の問題に付ては、運輸大臣は其の及ぼす社會的影響を十分御考慮下さいまして、御善處下さらんことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=59
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060・逢澤寛
○逢澤委員長 商工大臣に對する赤松君の質疑は二時頃極く短時間だけ御許ししますから……それでは午前中の質疑は之を以て終りまして、午後一時半から繼續することに致します、暫時休憩致します
午後零時十五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=60
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061・会議録情報2
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午後一時五十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=61
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062・逢澤寛
○逢澤委員長 午前に引續き是より會議を始めます──辻井民之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=62
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063・辻井民之助
○辻井委員 私は厚生大臣に生産管理外一件に付て成べく簡單に御伺ひしたいと思ひます、先づ最初に先達てから厚生大臣、又商工大臣から屡屡企業權と勞働權の二本建と云ふ言葉をば承つて居るのであります、企業權と勞働權の限界と云つたやうな點に付て、簡單に一應御説明をば得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=63
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064・河合良成
○河合國務大臣 企業權と勞働權との限界と云ふ御尋ねでありましたが、是は申すまでもなく企業權と云ふのは財産權から發して居りまして、それに對してやはり企業の指揮命令が中心になつた觀念だと思ひます、勞働權と云ふのは、それに對してやはり勞働を提供して仕事をして行くことでありますから、自らそこに性質の差があるさう云ふ風に考へて居ります、限界をはつきりすると云ふよりも、どう云ふ點にそれは融合性を持つて居るか、調和性を持つて居るかと云ふ點が問題になるのではないかと思ひます、だから今はつきりした限界を示せと言はれれば、性質が違つて居ると申すより外はないのではないかと思ひますが、御尋ねに應じて又申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=64
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065・辻井民之助
○辻井委員 大體私もさう云ふやうに考へて居ります、所が我が國の勞働組合は、最近よく勞働委員なんかで組合を認めるか認めぬかと云ふ場合に問題になるのでありますが、勞働組合に職員も勞働者と一本になつて組織されて居ると云ふ場合もあれば、又二本建で職員組合と勞働組合とが併立をし、それが提携して御互に運動して居ると云ふやうな形を執つて居るものもあります、要するに職員の多くが組合に澤山加盟して居る「アメリカ」などに於きましては、勞働組合は純勞働者と申しまするか今の大臣の御言葉の指揮命令の下に勞力を提供すると云ふ機械的な勞務に從事して居る者のみに依つて組織されて居るのでありまするが、日本ではさうではなしに、職員も加盟して居る、所が職員の中には、例へば部長とか或は課長とかになりますると、所謂企業面に參畫して居る、指揮命令の系統に屬して居る者が少くないのであります、是が勞働組合に相當多數に加盟して居ることは大臣も十分に御承知になつて居ると思ひます、所が此の勞調法でも、勞働爭議の手段として合法性をば認めて居られまする罷業或は怠業と云ふ場合には、此の指揮命令の系統に屬して居る部長或は課長までが其の罷業に參加して居る、或は怠業に參加すると云ふことになれば、是は所謂企業面の指揮命令に反抗して居る譯なのであります、曩に例に出て居りました膳國務大臣の所謂女中が勝手に主人の命令を肯かずに云々と云ふ言葉があつたのでありますが、それも同じことであります、最高の指揮者の命令に反して職場を放棄し、或は正常の作業をば阻害すると云ふのが取りも直さず勞働爭議であり、怠業であります、命令に反抗してやる、さうして正常な企業或は事業の運行をば阻害する、是は明らかに勞働爭議であると思ひます、所が生産管理はどうかと申せば、私は此の點で勞働爭議も「ストライキ」或は怠業と何等變りがないと思ふのであります、何處に區別があるか、都の從業員組合が行ひました業務管理は、決して業務管理ではないと云ふ見解を取られて居りまするが上からの命令を受けず、勝手に職場をば放棄するとか、或は罷業はしなかつたけれども、命令が中斷されて、勝手に業務をば運行して來て居るのであります、隨て唯暴力を伴うたり、脅迫を伴ふと云ふことはなかつたけれども、明かに上からの命令が中斷されて、勝手に、命令なくして業務をば運行して居たのであります、此の點に於て業務管理と罷業或は怠業との相違は唯生産をば放棄し、或はそれをば阻害するか、或は命令に服從せずして生産を續けるかの一點になるのではないかと思ひます、當局は此の點どう御考へになるか、先づ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=65
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066・河合良成
○河合國務大臣 職員が勞働組合に加入する問題に付きましては、其の限度は是は「アメリカ」などと日本の現状と相當の相違のあることは私も認めます、是はどちらが宜いのか、又法律の解釋はどこらあたりが妥當かと云ふことに付きましては、自然是は裁判所の裁判の判例其の他に依つて自ら茲に一つの觀念が出來て來るものだと私は考へて居ります、其の點に關聯して、職員の混つた怠業とか「ストライキ」は、生産管理と殆ど變らぬぢやないかと云ふやうな御話でありましたが、それは私根本的に違ふと思ひます、と云ふのはやはり命令權とか指揮權と云ふものは、是は命令權指揮權自體と、それに關係し、それに屬して、末端に仕事をさせると云ふこととは、是は考へを別にしなくちやならぬ指揮命令の權力と、指揮命令を實行する其の一つの機關と申しますか、さう云ふものとは自ら區別をしなくちやならぬのであります、生産管理と云ふものは指揮命令權自體を排除する形になるのです、結局企業者の企業自體を排除す、る形になります、其の點に於て根本的の問題、それから其の末端の職員が其の組合の中へ入る入らぬの問題は、是は本質の問題でありませぬ、さう云ふ事實があるからと云つて、生産管理と云ふものは適法だと云ふ風に私は見ることは出來ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=66
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067・辻井民之助
○辻井委員 此の職員の中に前申上げましたやうに相當多くの明かに指揮命令の系統に屬して居る者が含まれて居る、是は爭はれぬ事實でありまして、例へば遞信從業員の組合なんかに於きましても、是は非常に難かしい問題で、截然と區別をすると云ふ譯に行かぬのであります、例へば三等郵便局の局長でありましても、是は職員ではないかと思ふのであります、もう少し大きな局になりましても、例へば東京都全體の遞信管轄の問題になりますれば、是は各局の局長までが組合に參加しても宜い、是は利益代表ではないと云ふやうな解釋を一般に採られて居る、銀行や會社にしましても、一支店だけを取れば、支店長は、是は利益代表であるが、併し全體を見た場合には是は必ずしも利益代表ではない、支配人とか或は專務とかが利益代表であつて、其の下に付く支店長は利益代表ではないと云ふ風に見られて居るのでありまするが、一支店だけに組合が出來た場合には、やはり支店長が利益代表だと云ふやうな解釋が今日一般に行はれて居ると思ひます、斯樣に指揮命令の系統に屬して居るか否かと云ふことは、決してはつきり區別することが出來ない、此の指揮命令の系統に屬して居る者が、場合に依れば「ストライキ」もやつて居るのであります、又怠業もやると云ふことであれば、「ストライキ」も怠業も明かに企業權を侵して居ると私は考へるのであります、其の指揮命令の系統に勤務して居ながら、それから逸脱して、さうして勝手に職場を抛棄するとか、或は持場を抛棄するのでありますから、是は明かに指揮命令の系統に屬して居る者が、企業者に向つて服從しないと云ふ結果になつて居るのであります、是は普通の常識で言へば明かに企業權を侵して居ると私は思ふのであります、所が「ストライキ」或は「サボタージュ」と生産管理の違ふ點は唯仕事をしないか、生産を續けるかの一點以外に、私は何等そこに區別がないと思ふ、此の點今の御答辯で私はどうもはつきりしないので、もう少しはつきりした御答辯をば得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=67
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068・河合良成
○河合國務大臣 企業權の指揮命令の屆く範圍と言ひますれば、それは其の産業自體全般に屆きますから、さうなれば勞働者、勤勞者皆それはやはり企業權の範圍が屆くものであります、さうだから阻害する、阻害せぬと云ふ言葉に御考へになるなら、端的に言へば一寸企業權を奪ふことになる、企業權自體の問題です、魂を奪ふと云ふやうな風に御考へになれば、さうすれば此の區別ははつきり付くと思ひます、私にははつきり分つて居る積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=68
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069・辻井民之助
○辻井委員 どうも今の御説明では一向はつきりしないのでありまするが、此の點は是れ位に打切りまして、更に進んで私が申したやうに、「ストライキ」とか、怠業とか云ふものは、要するに指揮命令の系統に屬して居る者は固より、一般の勞働者或は普通の職員に致しましても、之を若し勞働爭議でなしにやりましたならば、命令に服さずに職場を抛棄する、或は仕事をば怠けると云ふことで、是は明かに懲戒解雇になるべき行爲であります、所が是が勞働爭議の手段となりますると、そこに合法性が認められるのであるが、私は必ずしも「ストライキ」や或は怠業が一般の社會常識から考へても、どう云ふ點から考へても、何等合法的或は合理的な行為ではないと思ひます、併しそれが勞働爭議に於て、勞働者が自分等の生活權を護る爲の團體的な手段となる場合には、是は合法性が認められるのであります、さうすれば生産管理も同じであります、それからもう一つは斯樣に合法性が認められるに至つたのは、是は「アメリカ」や「イギリス」のやうな資本主義が正常に發達した國に於て、職場を抛棄し或は怠業すれば、資本家に取つては非常な打撃を與へることが出來る、又産業の上に縱令數日間或は長期に亙つて生産をば停止せしめると云ふやうなことがありましても、別に國家に對してそれ程重大な影響を與へないと云うやうな、正常な資本主義の發達過程にある國に於て認められて來た所の是は爭議手段であります、然るに我が國に於ては、屡屡此處でも問題になつて居りまするやうに、現在職場を抛棄し、或は職場に居つても怠業をやつて正常な勞働をしないと云ふやうなことになりまするならば、是は一刻を爭ふ産業の復興の上に重大な惡影響を及ぼす、若し是が擴大して行きまするならば、國の運命にも拘はる、斯う云ふ客觀的な情勢の下に於ける日本の勞働運動の爭議手段としては、仕事も休まず、或る程度資本家に向つて威壓を加へることが出來る、斯樣な方法として、既に歐米の勞働運動が「ストライキ」怠業と云ふやうな爭議手段をば發達さして來たやうに、終戰後の短い期間に、もう事實生産管理と云ふ爭議手段が發達して來た譯であります、先達てからの生産管理に付ての質問の中には、生産管理は資本家の生産「サボ」に對して對抗する方法である、又生産管理をやつても生産は決して落ちない、寧ろ能率が上つて居ると云ふやうな意見が屡屡出たのでありまするが、私は是は根本的な問題ではないと思ふ、自分の正當な生活權を擁護し、主張をば通す爲の爭議手段として生産管理をやるのでありまするが、何も必ずしも生産が上らなくても宜いのであります、場合に依れば生産が落ちても差支へない、從來通りの生産が上つて居つても宜い、寧ろ落ちても私は決して差支へないと思ふ、唯それに對して多少さう云ふ行過ぎもありましたが、暴力が伴ふ、脅迫が伴ふと云ふやうなことがあれば、是は此の點に對しては徹底的な御取締があつて差支へないと思ひます、併し正常な作業と事業の運行と殆ど變りがない勤務を致して居りまする以上は、何等是は刑法上の問題に問はれる理由はないのであります、「ストライキ」は既に命令に反抗して職場を抛棄したり怠けるのである、それと較べますれば命令に服從せずして、そして命令が中斷されてそれぞれ其の持場にあつて平生通りの作業を續ける或は業務を續けると云ふのであるならば、何處に「ストライキ」や怠業と生産管理とを區別する必要があるか、一方を抑へる必要があるか、日本の斯う云ふ特殊な客觀的情勢の下に於ては、寧ろ勞働者の爭議手段として現在では是が殆ど唯一の爭議手段と思ひますが、之を抑へるならば、全く勞働者は手も足も剥ぎ取られてしまふ譯であります、私は何處に「ストライキ」や怠業と生産管理との間に、現在の産業復興を急務とする日本に取つて、それ程之を否認しなければならぬやうな根據があるか、此の點が先達てからの御説明に依つても全然納得が行かないのであります、此の點をもう少し明かにして貰ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=69
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070・河合良成
○河合國務大臣 度々申上げます通り、生産管理はいかぬのです、今御話の通り、企業と云ふものは殆ど一つの有機體と云つて宜い位であります、企業權と云ふもの、其の指揮命令權は全體の企業に亙つて、そこで業務の正常なる運營もあれば、生産の工程もある、一つの工場なら工場を例に取つて見れば、是には企業權は充滿して居る、企業の指揮權が充滿して居るそこで「ストライキ」や「サボタージュ」或は其の正常なる運營を害しても宜しいと云ふことだけは害するものを「サボタージュ」、「ストライキ」と云ふのであるなら、勿論勞働者も企業指揮權の下に働いて居る一つの部分であつて、そこまでは法規で認めて居るが、併し企業權自體を奪つてはいかぬ、それはなぜかと云ふと、是は憲法にも明示されて居る、日本の法制は全部さうである、それであるからそれ自體を奪つてはいけない、だから私は魂と申しました、極く抽象的に言つた言葉であるが、それを取つてはいかぬ、是は他人のものである、他人の權利である、自分の權利でない、それは二本建になつて居る法制であるが故に、若し國がそれを取つても宜いやうな國になつたならば宜いが、今の日本の建て方はさうでないから、さう云ふことで私ははつきり致すと思ひます、之を逆に御考へになつて見れば宜い、それではもう思ふやうに行かぬから、今度は企業者はお前等勝手にしろとなつて、合意でなく、任意に「ストライキ」をやる人が皆企業を奪つたらどうなりますか、日本と云ふものはどうなるか、一體秩序が保てませうか、それは明瞭な事實です、其の秩序を保たなければならぬから、假にそれをやつた爲に生産が暫定的に増加するとか、せぬとか、さう云ふ問題があつてもそれは小さい問題です、國家全體として見て、國家の秩序を保つて行かなければならぬ、併しながら生産「サボ」が怪しからぬ、若しさう云ふことの爲に國家の生産が衰へ、それが企業家の過失である故意であるとか云ふやうな場合には、進んで國家がさう云ふ風に命令して、生産「サボ」を抑へようではないか、其の法律は近い中に出します、さう云ふやうに申上げて居るのでありまして、私は逆に御考へになつて見たならば、日本の國がどうなるか、其の點に付ては司令部の見解も新聞でも御承知の通り、はつきり我々に指導方針を與へて居ります、それに隨て私共ははつきり國家の政策を實行して行く譯であります、さう云ふ風に御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=70
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071・辻井民之助
○辻井委員 今の厚生大臣の御答辯は私には詭辯としか取れないのであります、凡ゆる多くの産業に於て一齋に全部が生産管理をやる是は要するに一つの政治的な「ストライキ」があるのと同じやうに是は政治的な生産管理であります、是こそ「イタリア」に於て行はれた工場占領と何等變りがない、現在行つて居るものは、或は賃金の値上であるとか、或は勞働時間の短縮であるとか、或は經營協議會の設置と云ふやうな、具體的な生活權擁護の爲の勞働條件維持改善のはつきりした目的をば持つてやつて居るのであります、若し是が政治的な目的の爲に一齋に生産管理を行ふと云ふやうなことがあれば、如何なる彈壓を加へても敢て差支へない、是は單に生産管理だけではないのであります、「ストライキ」にしても私は變りはないと思ひます、政治的な目的を持つてやるのと、「インフレ」の爲に追詰められた者の最低生活を守る爲に、一定の要求を出してやる、此の已むに已まれない所の生産管理をばごつちやにして威かすが如きことを仰せになるのは、私は怪しからぬと思ひます、併し是れ以上追求しても始まらぬと思ひますから、此の點は是で打切ります
次に御尋ね致したいと思ひまする點は、是も屡屡此の委員會で厚生大臣竝に先程商工大臣などからも承つて居ります政府の統一した御意見のやうでありますが、此の勞働關係調整法が決して資本家を利するとか、勞働者を抑へるとか云ふやうな、一方的な目的を持つて居るものではないと云ふことを屡屡言明されて居るのであります、當局の意圖されて居る目的はさうであるかも知れない、併し此の一方を利するのではないと云ふ其の意圖は、事實の上には決して現はれて居ないと思ふ、さうして又是れ程はつきりしたことがなぜ全國の勞働者に分らないのか、其の點が殘念であると云ふやうな言葉も屡屡伺はれるのでありますが全國の勤勞階級は決して馬鹿や氣狂ひばかりではないのでありまして、常識で誰にでも分ることが分らずに、わざわざ全國から東京へ絶えず代表が反對の陳情に參つて居ります、又數日前には數千の關係組合の者が此の議事堂のぐるりへ示威運動を行つて居る、決して譯もなしに斯樣なことをやる筈がないのであります此の猛烈に反對運動をやる裏には、相當の理由があればこそだと云ふ點をなぜ御考へにならないのか、我々の方では此の點を非常に殘念に考へて居るのであります、現在此の調整法に勤勞階級が反對するのは内容にも固より反對でありまするが、それと同時に之を御出しになつた意圖が、要するに勞働階級に對する反動、攻撃であると云ふやうに一般の勤勞階級は理解して居る、現在の日本を再建する爲には、どうしても勤勞階級が奮ひ起つて生産に挺身しなければならぬのであります、其の爲には度々厚生大臣も申されて居るやうに、全國の全勤勞階級と、それから企業の面に於ける資本家或は使用人とが、お互ひに同一の立場に立ち、同一の實力を以て其の上で手を握り合ひ、協力してこの圓滿に産業の復興が出來るのであります、然るに我が國の現状はどうかと申せば、終戰までは彈壓に彈壓を被つて、勞働組合は滿足な發達もしない終ひで、戰爭が起ると悉く解散せしめられてしまつた、終戰以來約一年足らずの間に漸く政治的自由を得て組合は發達して參つたのでありますが、併し現在の勞働組合の状態は頗る病弱な状態である、言論も自由になり、結社も自由になつたから、燎原の火の如く組合は數の上では發達はして參りましたが、まだ其の内容に至つては非常に弱い状態にある、此の勞働者とさうして資本家側とを比べまするならば、資本家側では戰爭前から凡ゆる封建的、獨裁的な方法に依つて勞働者を搾取し、或は彈壓するのに掛つて來た、斯う云ふ點では資本家側では至れり盡せりであります、此の資本家側に對抗をして、最低生活を守り、自分の自由を守つて、對等の地位に立つて産業復興に協力する爲には、もっともっと勤勞階級を育成する必要がある、勞働組合を發達せしむる必要があるのであります、其の爲には先づ勞働省を早く設置をする、さうして勞働階級の福利の爲に、又其の育成の爲に專任に力瘤を入れる、又勞働者が安樂に働き得るやうに或は勞働保護法、、或は勞働法と云ふやうなものを早く制定をする、一方資本家側の無茶な、時局を認識しない態度に對しましては、生産「サボ」の徹底的な取締をやる、生産命令を出すと云ふやうな資本家側にも相當徹底したことをやる、さうしてもつと勞働者、勤勞階級の組織の状態を高めるやうに協力をして、其の上で、尚ほ無理解に、無自覺に、勞働者が國家の基礎を危くするやうな、官吏や公吏或は公益事業に從事して居る者が「ストライキ」をやると云ふやうなことであるならば、幾ら之に彈壓を加へられましても、我々は何等之に反對する理由を持たぬのであります、然るに今申上げたやうに此の弱い、まだ病弱の状態にある勞働組合、或は勤勞階級の状態に對して、打つべき手は十分打たない、さうして漸く發達した組合に對して、是は決して一方を抑へる爲ではないと言はれて居るが、此の間中から……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=71
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072・逢澤寛
○逢澤委員長 辻井君に注意致しますが、其の點はもう屡屡問題になつて居るのですから、成たけ簡單に、あなたの時間も相當經つて居りますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=72
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073・辻井民之助
○辻井委員 内務大臣にも、司法大臣にも承つたのでありますが、團結權、罷業權を奪ひながら、それに代る何等の施策も御持ちになつて居らぬ、唯天降り的に成べく給與を良くするやうに考慮しようと思ふと云ふやうな程度でありまして、何等民主的に今後豫想され得る生活費の暴騰に對して、對處する爲の何等の施策も御持ちになつて居ない、罷業權或は團結權を奪はれるならば、今日までの例から見まして、必ず置去りにされて、給與の問題にしましても其の他の待遇も良くならないのは明かであります、然るに之に何等の施策も施さずして、さうして是等のものを奪うてしまふ、さうして唯一の爭議手段たる生産管理は非合法であると云ふやうな態度を示される、是では勞働階級が、公平とか何とか言はれても、明かに反動攻勢と考へるのは當然であると思ひます、私等も幾ら質問を續けても、今までの當局の言明に依りましては、此の考へを何等改めることが出來ない、此の點どう御考へになつて居るか、私は最後に是だけ御伺ひしたいと思ひます、勞働者は非常に弱い状態にあるから、もっともっと育成しなければならぬのであります、それをやる間三月や半期此の勞調法が遲れた所で、國家が動搖するのどうのと云ふ心配はない、既に幾箇年か是なくして大した支障もなく來て居る、斯樣なものを出す前に、もつと當局は勤勞階級を納得さすやうな、心とか魂とか云ふことを申されたのでありますが、彼等の心にぴつたりと食ひ入るやうな、彼等の納得するやうな態度をなぜ御執りにならぬか、全國の勤勞階級が、斯樣に猛烈に反對するのは、要するに納得が行かないからであります、決して馬鹿でも氣狂ひばかりでもない、相當な理由があればこそである、納得せしめずに、無理に押通すならば、必ず私は「ゼネラル・ストライキ」が起るかどうか知らないが、必ず何等かの反動がそこに起りまして、産業復興の上に重大な支障は私は免れぬと思ふのであります、此の點に付て私は最後に大臣の明快な御答辯を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=73
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074・河合良成
○河合國務大臣 勞働運動特に勞働組合の健全なる發達を希望し、それに向つて出來るだけのことを致します政府の方針は、もう度々申上げた通りでありまして、唯組合の健全なる發達を希望して居る譯であります、それが横へ外れては困るのであります、又國家全體の秩序の上から必要なことは、自ら制限も加はつて來ると思ひます、結局申せば勞働者の健全なる自覺と云ふことの線に向つて、健全なる發達を期待して居る次第であります、それで勞働調整法の目的は言ふまでもなく、國家の現状から照らしまして、爭議と云ふものを出來るだけ未然に防止すると云ふことと、公益の維持と云ふ二點に盡きるのでありまして、度々申上げました通りに、資本家を擁護するとか、勞働階級を彈壓するとか云ふやうなことは、夢想だにせざる所であります、此の點ははつきりどうぞ御諒解を願ひたいと思ひます
それから勞働保護法の問題、生産「サボ」の抑止に關する問題、勞働省設置のやうな問題は、着々進めて居ります、左樣御承知願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=74
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075・辻井民之助
○辻井委員 要するに幾度承つても、罷業權を奪ひ或は爭議權を制限する以上は、罷業を未然に防ぐ其の源を防止すると云ふ爲に、一般の拔打の罷業の出來る、爭議の出來る勞働者或は職員と異なる何等かの施策位は講ずべきであります、それを先づ行ふべきであります、然るに幾ら承つても、さう云ふ點に付て何等の考慮が拂はれて居ないのであります、刑務所に勤める者とか、或は司法官でありますとか、公共事業に從事する者に、賃金の値上などの問題が起つて來れば、それが延いては爭議になるのであります、之を未然に防ぐ爲に此の勞調法には、斡旋とか何とか云ふのがありますが、是は既に問題が起つてからの問題であります、斯う云ふ問題を起さぬ爲の、何等の施策も御持ちになつて居ないのであります、此の點を私は聽くのでありますが、何等さう云ふ施策を御持ちにならぬ、是では反動攻勢として反對するのは決して無理もないのであります、政治と云ふものは、唯理屈だけで押付けたのでは、是は政治ではない、納得さして行くのが、私は本當の政治であらうと思ひます、決して獨斷的に一方を抑壓すべきものではない、理解しないのが惡いと云ふやうなことでは、政治と申すことは出來ないのではないかと思ひます、是れ以上御質問をしても無駄であると思ひますから、私は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=75
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076・逢澤寛
○逢澤委員長 土井君に御諮り致します、内務大臣が見えて居りますから、順序は村上君になつて居りますが、折角内務大臣が御見え下さつて居りますから、あなたに許します、成たけ簡單に……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=76
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077・土井直作
○土井委員 大村内務大臣に二、三極めて簡單に質疑を申上げたいと思ふのでありますが、勞働組合法の第一條に依りますると、勞働者が團體協約權を結ぶことが當然の權利として認められて居るのでありまするが、特に此の場合に御聽きしたい點は、内務省管轄に於きまする所の各府縣、之に從事して居りまする官吏の勞働組合が、若し團體交渉權を要求致しまする場合に於て、其の對象となりまする所のもの、例へば内務省關係ならば内務大臣が其の代表になるべきであるのか、或は府縣の場合に於ては府縣知事が其の代表として責任の地位に立つのであるか、なぜ斯う云ふ點を質問するかと言ひまするならば、地方自治體である所の市町村に於きまして、過般横濱市の從業員組合の諸君が團體協約權締結の要求を提出したのであります、當時横濱市長の半井氏は團體交渉の相手方として自分が擔當することは適當でない、少くも團體交渉權の相手方として、市を代表する者は市會議員であると云ふ立場を執つたのであります、其の爲にかなり長い間紛爭致しまして、殊に半井市長は、當時市會が若し此の問題に付て自分を責任者として交渉の締結に當れと云ふ命令があるならばやるけれども、市長自身としては責任を持つ譯に行かとぬ云ふやうな言辭を弄して居つたのであります、さう云ふ觀點から致しまするならば、産業又は公營事業等に於きまする所の團體協約の相手方を明確に此の際して置いて戴くことが極めて妥當であると考へますので、之に對する見解を御聽き申上げたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=77
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078・大村清一
○大村國務大臣 勞働運動或は勞働爭議、要するに勞働行政上の問題に付きましては、私から此處で申上げるまでもなく、今日厚生省が所管されて居ることでありまして、只今の御尋ねに付きましては、法律關係の主管でございませぬので、直ちにはつきりとした御答辯を申上げることは困難でありまするが、御引例になりました横濱市の實例の如きは、團體交渉權の相手は市長であると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=78
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079・土井直作
○土井委員 私は勞働行政の問題に付ては、厚生大臣が全面的に責任を持つと云ふことだけは十分承知して居つたのでありまするが、併し内務大臣管轄下に於ける總ての問題に付きましては、是は内務大臣の主管に屬すべきであらう、斯樣に考へて居つたのであります、例へば國鐵の問題は運輸大臣が大體勞働行政の面に直接今當つて居るやうであります、或は又遞信の場合に於きましては、一松遞信大臣が之に當つて居るのであります、さう云ふ關係から致しまして、之を御聽きしたのでありまするが、若し勞働行政全般に對しまして、厚生大臣が其の衝に當つて、官吏全體の問題に付て當つて行くと云うことでありますならば、改めて厚生大臣に御聽きするやうに致しまして、内務大臣に對する質問を私は打切りたいと思ひます、尚ほ順序の關係で、村上同僚議員に讓つて戴きましたので、村上議員がやりまして後、厚生大臣に引續いて其の問題に付て御質問致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=79
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080・大村清一
○大村國務大臣 今御述べになりましたことに付きまして、私の申上げやうが足りませぬから補足致して置きます、固より内務省の關係に於て團體交渉の問題が起るやうな場合に於きましては、内務大臣が其の責任者になる場合もあらうと思ひます、さう云ふ場合に於きましては能く勞働行政の主管者とも打合せて、間違ひのないやうに運營は致して參ります、其の下で固より内務大臣に責任のある場合には、十分責任を執つて當る積りで居ります、其のやうに御承知願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=80
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081・土井直作
○土井委員 然らば其の點に付て御聽き申上げたいのでありますが、内務大臣が自分の主管して居る行政面に於て起つて來る問題に付て、適當に責任を持つて處理される、固より其の處理に對しては、それぞれ關係方面との打合せをして、萬遺漏のないやうにすると云ふ堅實なる御當辯を受けたのであります、そこで勞働組合法の第二十三條に、一つの工場に於て從業員が四分の三以上の決議を以て事を行ふ場合に於きましては、それが全般に適用されると云ふことになつて居ります、假に一つの例でありまするが、或る縣に於きまして、其の縣に働いて居りまする官吏の諸君が從業員組合を作りまして、「クローズド・ショップ」を締結致した、斯う云ふ場合に於きまして、此の「クローズド・ショップ」を勞働組合の工場と致しまして、若し勞働組合が其の同じ從業員の中に於て組合を攪亂し、或は組合の目的に反するやうな行爲があつた場合に、之を除名する場合があるのであります、其の除名が四分の三以上の贊成を得て決定されました場合、勞働組合が除名した場合に、政府はそれ等の除名されました官吏の解雇を斷行するやうなことが出來るかどうか、やる意思があるかどうか、さう云ふ點を一應御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=81
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082・富樫總一
○富樫政府委員 極めて技術的の問題のやうでありますので、私から答辯さして戴きます、尚ほ御質問の趣旨に違ひましたら、改めて御質問に依つて更に御答辯致します、御承知の通り「クローズド・ショップ」の協定に付ての法律上の解釋は非常に困難な問題になつて居ります、根本的に申しますると、團結權の自由と云ふことは團結する自由と脱退の自由と云ふやうな積極消極兩面の自由がある譯でありまして、隨ひまして組合員でないからあれを解雇すると云ふやうなことは、組合員であるが故に、解雇しちやいかぬと云ふことと同じやうに言へるのではないかと云ふやうなことからして、一面に於きましては「クローズド・ショップ」の協定に於きまして、組合員でない者を解雇すると云ふ勞働協約が無效であるかどうかと云ふことは、極めて有力に反對論があるやうに承知して居ります、併しながら現在の勞働組合法に於きましての大體の解釋は、此のやうな次に申述べます限度に於て「クローズド・ショップ」の協定は有效であると云ふやうに解釋して居ります、と申しますのは「クローズド・ショップ」の協定は使用者側と組合との約束でございます、隨て使用主は組合に對して組合員でない者を解雇する、斯う云ふ約束をする譯です、隨て組合から除名された者は、使用主は組合に對して解雇する義務を持つ、其の義務を遂行する爲には、解雇は合法的な手續を履まなければ其の義務の履行が出來ない、斯う云ふことになる譯です、そこで一般の民間に於きまして、民法の雇傭契約の關係で解雇致しまする場合には民法の規定に依りまして、或は十四日の豫告期間とか、それ相當の正當な理由に依りまして之を解雇する、官吏の場合に於きましても、さう云ふ解雇と云ふものに對する關係に於きましては、解雇の合法的な手續を經て之を解雇しなければならぬ譯である、其の手續を經ずして之を解雇すれば、是は違法の解雇と云ふことで損害賠償とか色々な問題が派生する譯であります、隨ひまして民間の場合に於きましても、役所關係に於きましても、「クローズド・ショップ」の協定を締結致します場合には、使用者側に於きまして合法的に解雇し得ると云ふ條件、さう云ふことを頭に置いて締結する必要がある譯であります、でありますから一般に官吏の場合に於きましては組合とさう云ふ約束を致しましても、實際の場合に於て組合から大多數の決議で除名になつたと云ひましても、官吏法上之を合法的に解雇し得るかどうかと云ふことは、必ずしも不可能とは考へませぬけれども、實際問題として非常に困難な問題になると思ひます、隨ひまして官吏關係に於きましては、最初から「クローズド・ショップ」の協定を結ぶと云うことが元々無理になる、斯う云つたことになると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=82
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083・土井直作
○土井委員 只今の答辯に依りますと、どうもはつきりして居るやうな居ないやうな憾みがあるのであります、私特に官吏の問題を擧げましたので非常に當局が答辯に困窮して居るのではないかと思いますが、假に民間の工場の場合の例を擧げて見ますならば、之を戰爭以前に於きまする所の「クローズド・ショップ」の工場であります、所謂團體協約權を締結した工場に於きまして、勞働組合から除名された場合に於きましては直ちに會社が之に對して解雇をすると云ふことが既定の事實として行はれて居るのであります、固より解雇を致します場合に於て工場法の示す所の豫告手當の十四日分であるとか、退職手當とか、さう云ふものは當然支給されなければならないのであります、唯「クローズド・ショップ」工場をなぜ締結するか、即ち團體協約權が法的に勞働組合法の第一條に掲げられて居る理由と云ふものは、其の工場の安寧秩序を維持する、又二つも三つも團體が存在すると云ふことは生産に非常に影響すると云ふ觀點から「クローズド・ショップ」の工場と云ふものが行はれて居る、例へば勞働協約の問題に付ても、四分の三以上の贊成を得て協約をし、其の條件が施行されますならば、殘餘の四分の一のものも此の恩典に浴することは言ふまでもない所である、所が此の「クローズド・ショップ」の工場に於きまして、例へば二つの團體が出來る、其の場合一方が、所謂二つの團體を作らうとする意圖があつて、既存の勞働團體に對して少數の人々が「フラクション」の運動をやる、即ち其の組合の秩序を破壊すると云ふやうなことを考へまして、組合が除名處分をする、さう云ふ場合直ちに會社は之を解雇すると云ふ、此の建前を執らなければ勞働組合の完全なる組織を守つて行くことが出來ないのであります、でありますから、官吏の場合に於ても、縣廳に於て、縣知事が其の縣に働いて居る官吏の職員組合、之と「クローズド・ショップ」所謂團體協約權を結びます場合に於きまして、此の組合の方針、或は運動の内容其の他に對しまして、之を破壊し、或は統制を紊亂すると云ふやうな場合がありましたならば、之に對して組合は默視することは出來ませぬから、結局除名すると云ふ場合が出來て來る、其の場合、官公署としては組合の除名直ちに官吏の解雇と云ふことは出來ないと云ふことになつたら、「クローズド・ショップ」の意義と云ふものは全く失はれて行くのではないか、此の點は將來團體協約權と云ふものに一定の指針を與へるものであるから、是は内務大臣の所管でなければ厚生大臣から、「クローズド・ショップ」と云ふものの權限、それから四分の三以上の者に依つて除名を勸告した場合の處置、之に對する合法性をもう少し的確に御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=83
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084・河合良成
○河合國務大臣 「スクローズド・ショップ」の問題に付きましては大體慣例に依つて大體の限度を決めて行く積りであります、只今の所、立法技術に於て其の限界を明示すると云ふ考へを持つて居りませぬ、唯官廳の問題に關聯しました「クローズド・ショップ」の問題は、官吏と云ふものの雇傭契約の性質と一般民間の雇傭契約の性質との間には差異があると私は考へますので、一般民間では差支へないことも、官吏の社會ではさうは行かぬと云ふやうな事例があるやうに私は解釋して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=84
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085・大村清一
○大村國務大臣 勞働法規の詳細な點に付きましては私詳しいことを存じませぬので起りました具體的な場合に付ては厚生省と能く打合せまして誤りなきを期して行きたいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=85
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086・土井直作
○土井委員 只今の御答辯ではどうも私滿足の行かない點があるのでありますが、政府當局として此の點に付ての答辯に非常に苦心の點があると思ひますので、私は特に斯う云ふことだけを申上げて置きたいと思ひます、勞働運動の健全なる發達を冀ふ立場でありますならば、此の問題を明確に致して置くと云ふことが日本の産業復興の爲に極めて重要であると云ふことを御考へ願ひたいのであります、例へば特殊なる團體が特に「フラクション」的な運動を繼續する場合、健全なる勞働組合の「クローズド・ショップ」の工場としての確立性が缺けてしまひますことは、將來の日本の産業に一大瑕瑾を貽すと考へて居りますので、適當な機會に政府の意見を統一して戴きまして、他日、書面でも宜しうございますから、適當な機會に御答辯を願ひたいと思ひます
更に厚生大臣に伺ひたいのでありますが、勞働關係調整法が上程されましてから後、非常な勢を以て勞働團體が之に反對をして居るのであります、此の反對の理由に付きましては此の委員會に於て同僚各位から色々な角度に於て論議されて居りますので、此の際申述べることは避けたいと思ひます、唯反對が斯く猛烈に行はれて居ると云ふ此の事實の上に立ちまして斯う云ふ案を押切つて制定致しましても、運營に果して十分なる自信を持ち得るかどうかと云ふことが非常に疑問であります、此の點に付て河合厚生大臣の確信のある語答辯を願ひたいと思ひます
尚ほ是は假想を以て質問したと云ふ事柄であります、假想を以て質問してはと云ふ御議論もありますが、我々は萬一のことを考へてさう云ふことがないことを希望しながら、一言意見を申述べるのであります、言ひ換へまするならば此の法案が萬一通過致します場合に於て、全國的に官業勞働者の「ゼネスト」が行はれる、或は民間業者の「ゼネスト」が行はれると云ふやうな場合がありますならば、是は國家の爲に洵に由々しき問題であります、現に製鐵産業勞働組合に於きましては、此の五日を期しまして全國的に一日の「ゼネスト」をやれと云ふ指令を出して居ります、河合厚生大臣は斯う云ふ點に付て十分御考へを持つてやつて居られるかどうか、此の點を先づ第一番に御伺ひ申上げたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=86
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087・河合良成
○河合國務大臣 此の法律の出來ました後の運營に付ての御尋ねでありますが、是は勿論萬全を圖りまして、遺漏なきを期して居るのであります、さうして特に此の問題は、問題の性質上官廳は積極的に問題に關與することを出來るだけ避ける立場になつて居ります、さうして勞働委員會が中心になつて此の問題を處理する形を取つて居ります、さうして勞働委員會は申すまでもなく各勞働組合、經營者側及び一般社會の代表を以てやつて居るのであります、尚ほ勞働委員會の構成に付きましては、御承知のやうな事情で間に合ひませぬので、暫定的の方法を執つて居りますが、目下勞働委員會に其の案を指示して居ります、それが決まり次第、早速、正規の軌道に乘つた勞働委員會を結成しまして、さうして勞働者側の意向も十分之に反映させまして、運營の萬全を期したいと考へて居ります
それから「ゼネスト」が起ればどうするかと云ふ御尋ねでありましたが、私は是は社會の事實でありますから、どう云ふ風にどうなつて來るかと云ふことに付ては、神樣でなくちや分りませぬ、分らぬけれども、此の法律の爲に「ゼネスト」が起きると云ふことは、私共の頭ではどうしても考へられない、斯う申しまするのは、今の勞調法は勞働者を壓迫して居るのではない、此の法律を制定なさつた御關係の御方々は能く知り拔いておいででありませうが、當時は公聽會にも聽き、勞働者の意向も聽き、是は元々政府は何の指示もして居りませぬ、勞務法制調査會などで小委員も作つて、民間の意向で出來上つたものを、政府がGHQと一字一句よく御相談して、さうして、此處へ出して居るだけのことでありまして、元々政府が「イニシアティーヴ」を取つたものではありませぬ、なぜ是が御分り願へぬのかと云ふことに對して、非常に殘念に思つて居る次第であります、と申しますのは、是はもう全く「ストライキ」の豫防と、それともう一つ公益上困るからで、此の二つ以外に全くない、どうして是が御分りにならぬのか、私は段々心の中で分つて呉れるものと思ひます、日本の方なら分つて呉れる筈です、此の問題の爲に私は「ゼネスト」が起るとは考へられませぬ、色々な問題がありますが、併し此の國家非常の興亡の岐るる秋、殊に増産は一刻も忽せに出來ぬ時に、日本國民としてそれを自覺して下さるならば、さう云ふ「ゼネスト」の如き行爲は恐らく起きぬと云ふ確信を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=87
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088・土井直作
○土井委員 本案が勞働階級の全面的反對を受けて居るのでありますが、特に小さな問題で恐縮ですが、此の案が提出されるに至りまして、資本家階級の團體から何か反對の陳情なり、意見なりを提出したことがあるかどうか、さう云ふ點を御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=88
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089・吉武惠市
○吉武政府委員 別にございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=89
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090・土井直作
○土井委員 大體資本家階級から反對の聲がないと云ふことと、一方勞働團體が反對して居ると云ふことに依つて、勞調法の性格と云ふものが明確になつたと私は考へるので、之に對して特に質問致しませぬ
次に勞調法第一條に「經濟の興隆に寄與することを目的とする」と云ふことがありますが、此の「經濟の興隆」經濟と云ふ問題に付きまして特に厚生大臣は、之を在來の資本主義的經濟の興隆を指して居るのか、或は又他に例へば社會主義的な或は共産主義的な、或は其の他の經濟機構を目指して居るのか、現段階の經濟機構と云ふものは一體どう云ふ所の性格を有して居るのか、其の點に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=90
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091・河合良成
○河合國務大臣 一寸私御質問の趣旨が分りませぬでしたが、もう一度どうぞ……其の「イズム」と云ふことはどう云ふやうに結付けるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=91
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092・土井直作
○土井委員 第一條の中に「經濟の興隆に寄與する」と云ふことを書いてありまするが、此の經濟機構と云ふものは、現段階の經濟機構を指して居ることは言ふまでもないと私は思つて居りまするが、現段階の經濟機構は資本主義的なる經濟機構と認定すべきであるのか、或は又さうでないかと云ふ點を伺ひたいのであります、尚ほ敷衍して申しますならば、御承知の通り我が日本の經濟と云ふものは是は「マッカーサー」司令部の制約に會ひまして、將來自由主義の資本主義經濟に依つて發展すると云ふことでは、國民の生活の安定をなすと云ふことが不可能である、勢ひ是は好むと好まざるとに拘らず、社會主義的なる經濟組織に進んで行かなければならないと云ふことを考へて居るのでのであります、我々は左樣に考へて居る、而して勞調法の第一條の「經濟の興隆」と云ふことは、今日の資本主義的經濟の段階から將來社會主義的なる經濟の段階に發展する所の一つの見透しを持つての所謂「經濟の興隆」と云ふことを此の條文の中に加へて居るのかどうかと云ふことを御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=92
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093・河合良成
○河合國務大臣 此の「經濟の興隆」と云ふことは、現在の興隆を意味するのでありますから、此の第一條の「經濟の興隆」と云ふことに付ては今の御趣旨と同樣、何も問題はないのであります、唯御質問の趣旨は現段階の經濟は、是は資本主義か、社會主義か、共産主義かと云ふ御尋ねと拜承して宜しうございますか、それなら其の問題は各自の見る所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=93
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094・土井直作
○土井委員 見解の相違と云ふ言葉に依つて逃げられたのでありますが、是は見解の相違以上に議論致しましても、單に時間を費やすだけでありますから、私は其の點に付ては是で止めて置きます
次に御伺ひ致したいと思ひますことは「公益事業」の内容の問題であります、條文に依りますと、公益事業を可なりの範圍に於て言つて居りますが、特に私が御伺ひしたいと思ひますのは、「ストライキ」の制限をされて居ります公益事業中に於て、へ例ば「運輸事業」の範圍であります、此の運輸事業の範圍と云ふものは是は言ふまでもなく國鐵から小運搬業にまで及ぼすのでありますか、例へば民間に於ける運輸事業ではあるけれども、公益に反しないやうな小運輸送であるとか、或は船舶海上小運送と云ふやうなものまでも、此の公益事業に入り、爭議の制限を受けなければならないのかどうか、此の點に付て御回答を願ひます
尚ほ其の次に同じやうな問題でありますが、「醫療又は公衆衞生の事業」と云ふことを言つて居りますが、此の醫療の中に於きましても、例へば民間に於きまして衞生消毒其の他の事業が行はれて居る、或は民間の療養所等が行はれて居る、單にそれは「ストライキ」をやりますことの爲に、左程公益に影響のないやうな場合等があるが、是等をどの範圍までどう云ふ風に規定付けて居るか、細かい問題でありますが、一應内容的に御伺ひして置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=94
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095・吉武惠市
○吉武政府委員 今の御尋ねの公益事業の運輸事業に付ての範圍でありますが、是は汽車とか軌道、船舶等に依る運輸であります、隨ひまして今御話の小運送も之に直接關係ある小運送は之に包含されると思ひます、個々の一々の細かい點に付きましては、やはり具體的に段々と慣例に依つて明確にして行く外はないかと思つて居ります
それから今の醫療又は公衆衞生に付きましては、公立のものばかりではありませぬ、民間の療養所、病院等も勿論入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=95
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096・逢澤寛
○逢澤委員長 土井君に申上げますが、司法省に對する質問が今後ありますか、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=96
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097・土井直作
○土井委員 あります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=97
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098・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは局長が見えて居りますからどうぞそれを一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=98
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099・土井直作
○土井委員 司法省の方に御伺ひしたいのでありますが、勞調法から申しますならば、官公吏の人々は大體勞働組合を結成することも出來なければ又「ストライキ」をなすことも禁止されて居るのであります、前々から同僚議員等に依つてそれぞれ論議されて居りますが、要するに官公吏の諸君から基本的人權である所謂勞働組合を作る權利又は爭議を行ふ權利を剥奪致します限りに於きましては、是等の人々に對する生活の保障、言ひ換へれば爭議を起さないで宜しいやうな状態にまですることが妥當ではないかと云ふことを主張して居る、之に對して當局は出來るだけさう云ふ趣旨に副ふべく努力して居ると言ふて居ります、是は經濟的關係ではないのでありますが、是等の人々の所謂禁止されて居ることから關係して、其の身分に對する保障が確立されない憾みが多分にあるのであります、斯う云ふ場合の處置を一體どうするかと云ふことに付てであります、特に私は具體的な問題として申上げて見たいと思ふことは、官僚は非常に階級的觀念に強いのであります、位階動等を持ち、或は其の他の點から官吏として使はれて居る、下扱の者に對しましては之を奴隸視し、或は蔑視する憾みが多分に存在して居ると云ふことだけは言ひ得るのであります、具體的な例を申上げるならば、高知刑務所に於ける問題であります、高知刑務所に於て看守諸君が自分達の待遇を改善することの爲に、それぞれ要求書を提出して居るのであります、所が此の要求書を提出致しました指導的地位に立つて居つた看守に對しまして解雇を斷行して居るのであります、斯う云ふ點から考へますならば、官吏の所謂生活權の本障と云ふことは全く蹂躪されて居るのであります、私の手許に參つて居る書類に依りますれば、高知刑務所の看守の人々が、全體が團結致しまして配給の公平を主張して居ります、それは終戰後に於きまして日章飛行基地から受領致しました軍の米を幹部が一斗、一般職員には五升しか配給して居らなかつた、又人格の尊重と云ふ點に於て所長が職員に對しまして人格を尊重せず、恰もそれが受刑者同樣に考へ、所嫌はず何等の理由もなくして之を叱責したり、或は侮辱したりするやうな場合がある、或は又宿直の施設の改善等に付きましても、看守の休憩所、夜勤宿直舍などは山賊小屋のやうであります、又蒲團などは全く受刑者と同じやうな、取扱ひを受けて居る、更に宿直室の電燈であるとか、設備であるとかは數年來破壊された儘である、或は窓硝子が殆どなくなつて居つて、寒風が、どんどん侵入して來る、之に對しましても十分な設備をしない、風邪を引く者などが出來る、斯う云ふ點などを考慮の中に入れまして是の改善方を要求しました所が、之に對しまして當局は高松刑務所として出來るだけ要望に副ふやうにと云ふ答辯がありましたが、上司の方に持つて行くに從ひまして、其の點が薄くなりまして、遂に斯う云ふことを持出しました所の一看守に對しましては解雇を斷行したのであります、是が高知方面に於ける新聞等に於て、暄しく論議されて居る事柄であります、私は此の點を司法大臣に質問して居りまする理由は、斯う云ふ巡査だとか、看守だとか云ふ弱い、又階級的に非常に段階のあります所の者が、其の自らの生活を擁護する爲に、今言ひましたやうな形に於て問題を起しますると、其の生活の基礎になります職業を奪つてしまふと云ふやうなことを致しますことは、看守であるとか、巡査であるとか云ふやうな人人に團結權を與へないで置いて、爭議權を與へないで置いて、自由自在に馘首すると云ふやうなことは人權の蹂躙ではないか、斯う考へるのであります、此の點に付ての明快なる御答辯が願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=99
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100・岡田善一
○岡田政府委員 只今の御質問に付て御答辯申上げます、只今は高知刑務所に於ける島崎看守の問題を引例されました、刑務官吏などが勞働組合を結成出來ない、さう云ふ弱い立場にある者が、それでは生活の保障とか、或は改善とかに非常な支障を來たすではないかと云ふ御趣旨のやうに承つたのであります、先づ島崎を解雇致しました理由に付て申上げたいと存じます、實は只今の御質問では島崎が待遇改善を叫んで起つたと言はれましたが、島崎看守を解雇致しましたのは、決して本人が待遇改善要求をしたからと云ふ理由ではございませぬ、寧ろ本人が軍隊生活の氣風を未だ拂拭致しませぬ、動もすれば看守部長以上の監督者を輕視致しまして、又監督者の無能無理解を放言致しまして、一部不平分子を糾合すると云ふやうな言動が現はれまして、勤務上不適當なりと考へまして解雇致した次第であります、只今の御質問では刑務官吏などはそれでは結局困るぢやないかと云ふ御趣旨でございましたけれども、行刑關係と致しましても出來るだけ下級の官吏の要望に副ふやうに下情を上通させると云ふ考への下に、在來からございました職員會議を更に活用して行く、又各階級の代表者を選んで會議を作つて行く、殊に只今御尋ねのやうに、配給物資などに付きまして色々誤解なり或は不公平なりを生ずる虞がございますので、其の點に付きましては特に本年の一月に通牒を出しまして、職員の福利施設の役職員に付ては、各階級より委員を選び、特に公平無私なる人材を配置すること、或は職員への配給の目的を以て他より食物の獲得をしたる場合に於ても、前記協同會若しくは消費組合に於て品目、數量を明かにし、公正に配給することなどと云ふ風な趣旨を申傳へまして、出來るだけ下の職員の方々の利益を圖つて行きたいと云ふ風に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=100
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101・土井直作
○土井委員 只今島崎看守に對する馘首は、上司に對しそれぞれ反抗的態度云々と云ふことでありますが、得てして官吏の場合に於きまして、例へば色々な問題を爭議的形態、或は上司に反抗的な形に於て行ふ、斯う云ふ場合に於ては、何時でも馘首をなし得ると云ふことになりますならば、一つの待遇改善の問題を取上げる場合に於ても、其の待遇改善と云ふのは、必ず上司に對して反對的の立場を執ると云ふのは當然であります、殊に問題が起つて此の直後解雇すると云ふのは、少くとも此の爭議と關聯してやつたと見られても、答辯の餘地が私はないのではないか、眞に其の人が辭めなければなない、罷めさせなければならないと云ふ理由があるならば、時機を選ぶべきである、或は又之を輿論に愬へて、十分納得するやうにしなければならない筈である、所が所聞紙上等に傳はります所に依りますならば、悉く其の刑務所長の態度と云ふものを難詰して居ります、無論是は新聞に書いてあることでありますから、私はそれを正しく妥當な批判だと云ふ風に全面的には申しませぬが、少くとも新聞の立場と云ふものは、公平にものを取扱ふのが新聞の使命であります、此の新聞が高松刑務所の所長が行ひました今度の馘首問題と云ふものは、極めて不當なものであると云ふ此の立場に立つて、總ての者が論陣を張つて居る所から見ますならば、此の内容は推して知るべきものがあるのではないかと私は考へるのであります、斯う云ふやうな待遇改善とか、或は物資の配給に對して、上司の方が餘計取り過ぎて居る、下級官吏に對して少いと云ふやうなことを持出せば、勢ひ上司に對して反抗的の態度にならざるを得ないのは、萬巳を得ざる立場ではないか、さう云ふことに對して一々解雇されると云ふことならば、基本的な生活權なく人權を全く蹂躙するものである、多くの場合に於て、官吏の場合に於ては斯う云ふことが屡屡行はれて居ると云ふことであります、是は速かに解雇を取消し、復職せしめる、若しくは其の人が眞に復員軍人であつて又復員軍人と書いてあります、此の人は大體に於て昭和十一年の四月に看守を拜命して、昭和十二年の八月に應召して昭和二十年の十月に復員して來て居るのであります、斯う云ふ長い間帝國の軍人として從軍して居つて、而も昭和二十年の十月に復員して來て居る、此の人が直ぐ此の間解雇された、半歳も出ない中に解雇されると云ふことが一體善いことか惡いことか、此の紛爭を中心にして解雇すると云ふのは以ての外であります、而も此の人の行動と云ふのは、昭和十一年に就職して十二年に是が應召されて居る、さうして二十年の十月に歸つて來て居る、其の間に於て屡屡と云ふ言葉は、結局此の問題を通じて起つた問題だと私は思ふのであります、さう云ふ詭辯を弄すると云ふことは、司法當局の所謂頑冥固陋なる態度であると思ふのであります、速かに是は解雇を取消すべきであると考へて居りますが、それに對してどう考へるか、責任のある御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=101
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102・岡田善一
○岡田政府委員 只今の島崎看守の解雇問題に付きまして、待遇改善を叫んだが爲にと云ふことでございますが、其の理由に付きましては、新聞は兎も角と致しまして、私の方の立場と致しましては、只今申しましたやうな理由であります、唯今後斯樣な誤解を受けないやうに、十分に御趣旨を了承致しまして、遺憾のないやうにして參りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=102
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103・土井直作
○土井委員 先程の解雇の理由は極めて抽象的でありますが、恐らく當局に對しましては詳細なる報告が參つて居ると思ひますが、其の書面に依る報告を今此の席上で發表して戴かないでも宜しうございますが、あとで高松刑務所長から司法當局に報告されて居ります内容を、具體的に詳細に御知らせを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=103
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104・岡田善一
○岡田政府委員 調査の上御回答申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=104
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105・逢澤寛
○逢澤委員長 司法省に對する質問は是で濟みましたか──土井君に一寸御諮り致します、大變あなたに御迷惑ですが、關聯質問としまして、瀧澤脩作君が文部大臣に對する質問をずつと前から待つて居ります、文部大臣多忙な所をおいで下さつて居りますから一寸御許しを願ひます──瀧澤脩作君に御許し致します、出來るだけ簡單に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=105
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106・滝澤脩作
○滝澤(脩)委員 文部大臣に御尋ねを致したいと思ひます、先般文部大臣に於かれましては本法に非常に關係が深い勞働者教育と云ふことに付きまして、青年學校を中等學校に早く直結したい、そして勤勞者教育の徹底を期して行きたい、斯う云ふ風に仰しやつて居つたやうであります此の勤勞者教育に付きましては他の教育方法をも御考へ戴きたいと思ふのであります、御承知の通り戰時中の勤勞者教育は青年學校に重きを置いて居りまして、徳育と云ふものを主體とする公民教育でなければならなかつたのであります、それが而も軍事教育の多分に織込んだ青年學校教育であつたのでありまして、其の徳育教育も終戰と共に消えてしまつたのであります、そして再建日本の第一條件であります所の生産の増強を阻碍致します所の道義の廢頽と云ふ恐ろしいものが唯一つだけ殘されて居ります、政府が今から行はれんと致しまする勤勞者に施す教育方針は、此の廢頽の極に達して居りまする道義を昂揚に導く點に對して自信がありますか否か、且つ其の方法を御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=106
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107・田中耕太郎
○田中國務大臣 只今御指摘になりましたやうに、今日の青年教育と云ふものが甚だ内容のない、謂はば虚脱状態になつて居りまして殊に地方の青年學校は軍事教練の機關のやうになつて居りまして、此の軍事教練が今日なくなつたのでありますからして、全くないやうな状態になつて居り、殘るものは道義の頽廢だけだと云ふやうな御觀察、大いに中つて居ると存じます、此の状態をどう云ふやうにして改めたが宜いかと云ふことに付きましては、文部當局と致しましては常に苦慮致して居る次第であります、制度論からしましては青年學校制度を再檢討致しまして色々關係者の間、又一般の輿論と致しましても實に澤山の意見が出て居りますので、さう云ふ意見を考慮致しまして尚ほ「アメリカ」側から殘して行かれました教育使節團の報告書と云ふやうなものも參考にし且つ最近發足することになつて居ります教育刷新委員會で十分檢討致して善處致したい、實は早急にやりたいと存じて居る次第でございます、それから道義の頽廢をどう云ふ風に是正して參るかと云ふ問題でございますが、頽廢は極めて速かに、急「テンポ」に參りますが、併しながら之を元に戻すと云ふことは非常に忍耐強い努力を要することでありまして、是は教育、政治、總ての面から努力しなければならないことであります、此の公民教育の精神が何處に置かれ、どう云ふ風にして努力すべきかと云ふことに歸着するのでありまして、此の點はどうしても從來の道徳と云ふものに對する觀念を是正して掛らなければならないと存じます、從來の名ばかりの形式主義に流れた所の道徳を尚ほ一層内面的に良心的のものにすると云ふことが第一に肝要なことであると存じます、それからもう一つは單に自己の變動し易い、堕落し易い良心のみに頼つてはいけない、茲に古今東西を通じて渝らない正邪善惡の基準があると云ふことを大いに強調しなければならぬと思ひます、第二點に於て從來甚だ道義と云ふものが「ルーズ」になつて居ると云ふことを我々は痛感して居るのであります、此の點は學校教育に於て、社會教育に於て大いに強調し、殊に此の宗教教育の重要性を認めまして、憲法の許す範圍内に於て徹底的に凡ゆる方面から道義の頽廢を是正し、眞に眞理を愛し、平和を愛する國民に仕立てなければならぬと云ふ風に存じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=107
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108・滝澤脩作
○滝澤(脩)委員 明快な御答辯を戴きまして、又宗教教育に付ても御答辯を戴きましたが、之を具體的に現はして戴きたいと思ひますので──御承知でもあります通り宗教は各家庭の奧深くまで侵入致しまして、道義の最も根源であります所の方面に働き掛けるものであります、御承知でもあります通り、我が國に於ては神社は宗教團體に移り變つて參つたのであります、尚ほ昔より殘つて居ります所の神道、佛教等に於きましては、我々生活して居ります所の一番大切な祖先と子孫に對する所の信念を植付けて居るのであります、此の邊を宜しく御考へ下さいまして一日も早く家庭の奧深く滲込みます所の宗教の活發なる活動をして戴きたいと思ふのであります、之に付て大臣に於かれましては何か具體的な御方策を御持ちでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=108
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109・田中耕太郎
○田中國務大臣 此の宗教教育を徹底させますことに付きましてはやはり新たに制定せらるべき憲法との關係に於きまして、相當「デリケート」な問題があると存じます、併しながら從來我が國に於きまして宗教は餘り重んぜられず、又更に寧ろ國家との關係に於て彈壓せられ、抑壓せられて居つたやうな觀がございました、今後に於きましては各宗教とも或は神社、神道までも宗教として自由を得ることになつた譯であります、隨て溌刺たる生命を各宗教が發展させると云ふことは大いに期待出來ることと存じます、隨てさう云ふ意味に於きまして各宗教が一種の社會教育として、只今御話がありましたやうに家庭の内部まで滲込むやうな風に段々なつて行くのではないかと存じますが、併し特に文部省と致しましては學校教育の方面に於きましても、或は教科書の内容に乾燥無味でない本當の宗教的偉人の傳であるとか、或は逸話であるとか云ふやうなものも採入れたり、或は又宗教的の特色を持つて居る學校の個性を大いに助長する、從來のやうに彈壓しないのみか助長的の方針を執るとか、是は私立學校全體に對する政策としてでございますが、好意的にさう云ふ方面を助長するとか或は又各官立學校なり或は公立學校に於きましても、科外として宗教方面の權威ある人々の御話を學生生徒に聽かせんとか云ふやうな方面に於て大いに便宜を圖りたい、まだ色色考へますれば方策もあるかと存じますが、只今思ひ付いて居りますものはさう云ふやうな方向で參りたいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=109
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110・滝澤脩作
○滝澤(脩)委員 只今の御答辯を戴きました中に地方の學識經驗ある人から御話を聽くとか、教へて戴くと云ふやうな御言葉がありましたが、之を一つ勤勞者教育にうんと利用して戴きたいと思ふのであります、現在の中小工業の勤勞者、青年徒輩は地方の青年學校へも通つて居りませぬ、さうして工場としても事業場としても何等教育施設はありませぬ、特に異郷の地から引揚げて歸られた方とか、或は戰災の爲に國へ歸つて居られる御方とか、斯う云つた御方の中に多數の學識經驗を持つて居られる方が居られます、此の方達を文部省の囑託と致しましてでも工場等に派遣され、さうして勤勞者教育の徹底を期すると云つたやうな御考へはありませぬか、若しあるとするならば早急に御實施が願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=110
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111・田中耕太郎
○田中國務大臣 中央或は地方の宗教家の方々を動員して、それ等の方々に御願ひ致しまして各學校なり或は地方の青年等に對し、又工場等に於きましても有益なる訓話を御願ひすると云ふやうなことは非常に意義あることと存じます、唯之を囑託として御願ひすると云ふことは憲法の規定と色々睨み合はせて考へまして、或は各宗教宗派の間の公平を守ると云ふやうなことでありますならば差支へないではないかとも存じますが、さう云ふ點は十分考慮致しまして、兎に角名義は別問題と致しまして實質を此の方向にやつて行きたいと云ふ風に存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=111
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112・滝澤脩作
○滝澤(脩)委員 色々御説明を戴いて有難うございました、之を以て文部大臣への質問を打切ります
次に厚生大臣に對して一言だけ御尋ねさせて戴きたいと思ひます、厚生大臣に於かれては失業對策と増産の爲に補導所と云ふものを現在相當作つて居られるやうであります、全國の補導所は相當の數に上つて居るやうでありますが一層茲に失業者が續出して來る、之に對して失業對策として萬全な措置を講じつつあると云ふやうな御言葉でありましたが、此の補導所を完全なものにして戴きたいと私は思ひます、それに付て現在厚生省に於て補導所に對する所の御考へが那邊にあるか、御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=112
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113・河合良成
○河合國務大臣 補導所は只今の状態に於ても、或る程度までやつて居りますけれども、今御示しの通りに、失業對策と關聯して餘程之を強化したい積りで居ります、其の數の如きも、只今正確なことを記憶しませぬが、千數百のものを作りたいと云ふ氣持で居ります、さうして豫算も只今大藏省と折衝中でありますが、二億圓餘りのものは之に投じたいと考へて居ります、六十億の公共事業費と云ふものがありますが、此の補導所の如き事業は何處の失業對策の計畫を見ても、やはり立派な公共事業の部類に入つて居ります、殊に只今の日本の失業對策の性格は度度申上げますが如くに、昭和六、七年、「アメリカ」、「イギリス」で申しますと、一九三〇年から三四、五年あたりの失業對策とは餘程性格が違つて居りまして、どうしても増産面に行かなくてはならないと云ふことに非常に大きな特徴があります、隨て補導所に於て或は大工であるとか、或は石炭の先山をやるとか、其の外建築の部類、造船の部類とか色々其の目標目標に應じて補導所を作り、さうして、補導所を作り、さうして之に數箇月の教養を施して、それを實社會に直ぐ出して失業救濟旁旁生産の増強、能率増進と云ふ面を圖つて行くと云ふ點に只今の計畫を進めて居る所であります、必ず御期待に副ふことが出來ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=113
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114・滝澤脩作
○滝澤(脩)委員 もう一つ御尋ね致したいと思います、洵に結構なことでありますが、偖て從來此の補導所の設備と補導所員の待遇と云ふことに付ては非常に低位なものがあつたのであります、此の點に付て先づ設備も相當にして戴かなければなりませぬが、補導所員の待遇に付ては普通官吏並の昇給或は手當と云つたやうな方面のものが戴けるかどうか、どう云ふ御考へであるか、其の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=114
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115・河合良成
○河合國務大臣 設備の點に付ては只今資材不足の現状でありますから、出來るだけ既設設備を利用してやつて行く、新規の建築などは成べくやらないで、出來るだけ既設設備を利用すると云ふ點に重點を置いて居ります、それから機械其の他の點に付ては、遊休機械などを巧く轉用して其の目的を達して行くと云ふ考へで居ります、補導所員の待遇問題に付ては勿論只今の官吏の俸給の増加などに伴ひまして、相當のことも致して行きまするし、又是もやはり普通の官吏と大差ない状況に置きませぬと、旨く行かぬことは能く承知して居りまするから、出來るだけ待遇の改善と云ふことも圖つて行く積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=115
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116・滝澤脩作
○滝澤(脩)委員 どうも有難うございました、是で私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=116
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117・逢澤寛
○逢澤委員長 大變土井君に御迷惑でありました──土井君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=117
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118・土井直作
○土井委員 法案第八條の末尾に公益事業に對する所の規定、例へば委員會に於て贊成を得ることが出來れば、一年以内に限つて之を公益事業として指定することが出來ることになつて居りますが、此の場合に於て、例へば將來我が日本の産業上に於て極めて重要な地位を占めるであらうと思ひます所の紡織産業のやうな場合に於ても見樣に依つて、例へば見返り物資を生産する立場に於て之を強ひて公益事業と看做せば看做せるやうな場合もあり得ると思ふのでありますが、公益事業として將來取扱はれます産業の範圍と云ふものに付て、大體の「アウトライン」が決まつて居るならば、此の際御答へ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=118
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119・吉武惠市
○吉武政府委員 此の第八條に掲げて居ります公益事業の範圍は、後の條文に關係して居るやうに、第三十七條等の拔打爭議の制限と云ふことに重大な關係がある譯であります、隨て其の趣旨から之を考へなければならないと思ふのであります、是に於ても公衆の日常生活に缺くことの出來ないと云ふ一つの枠がある譯であります、隨て此の第二項に依て指定をする場合に於ても、「業務の停廢が國民經濟を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業」と云ふやうになつて居るのであります、今御指摘になつたやうな紡績などは豫定致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=119
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120・土井直作
○土井委員 更に細かい問題で恐縮でありますが、一年以内の期間を限つて公益事業とすることが委員會に於ての決定に依れば出來るのであるが、例へば一年間指定致して、それから後又必要ある場合に更新することが出來るのかどうか、言換へますれば、期間の點、例へば十二月三十一日が滿一年の指定期間であつた、所がそれを一日措いて、或は二日措いて翌年の一月の二日なり、三日なりに公益事業として指定することになれば公益事業は一年以内の期間と云ふことに限定されて居るが、二日か三日で以て更に一年と云ふことになると、永久的にさう云ふことが起り得る可能性もあると思ひますが、之に對する見解を御聽き致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=120
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121・吉武惠市
○吉武政府委員 是は例外として擴張する譯でありますので、一應一年と云ふことにして、隨て一年經つて尚ほ必要あれば更新することも出來ます、それは其の時の事情に依つて勞働委員會が判斷して決めることであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=121
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122・逢澤寛
○逢澤委員長 土井君に一寸御諮り致しますが、厚生大臣が豫算委員會の方に御用がありますので、二三十分間駄目でせうが、政府委員の方で答辯をして戴いて居つてそれで又歸つて來られて答辯をして戴くことにしては……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=122
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123・土井直作
○土井委員 政府委員だけで宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=123
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124・逢澤寛
○逢澤委員長 他にもまだ質問者もありますので、大臣に關する事項は、大臣が戻られてからして戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=124
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125・土井直作
○土井委員 二十三條の二項に依りますと「調停委員會は、使用者を代表する委員及び勞働者を代表する委員が出席しなければ、會議を開くことはできない。」と云ふことになつて居りますが、例へば公益事業のやうな場合に於て、調停すると云ふ場合に於きまして、若し調停委員の一方が消極的反對の立場から、故意に出席しなと云ふやうな場合の措置は、一體どう云ふ風に執られる積りであるか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=125
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126・富樫總一
○富樫政府委員 調停委員の中、一方が缺席致しますれば、ここに書いてある通り調停委員會は流會になる譯であります、さう云ふ事態が御話のやうな事情で何回招集しても工合が惡いと云ふやうな見透しが付きますれば、調停委員の人選替へをやることに形式上なると思ひますが、併し實際問題として、勞働委員會と云ふものは、或は勞働委員會の委員と云ふものは、公正な調停に付て審議に當ると云ふ義務を持つて居るから、初めから審議を忌避すると云ふやうなことはあり得ないと私共信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=126
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127・土井直作
○土井委員 固より私も初めから是等の人々が出席しないと云ふことは考へて居らないのであります、唯公益事業でありますから、或る一定期間だけは「ストライキ」を拔打的にやることが出來ませぬから、或る期間が限られて居るのであります、例へば此の法案に依れば三十日と云ふことになつて居ります、そこで一回々々の委員會に於きましては、それぞれ出まするけれども、利害關係が非常に隔たつて居る、或は又委員會に出席することが、一方が考へて全面的に不可能だと云ふやうな場合がありまするならば、勢ひ消極的な反對の立場に於て出席しないと云ふ場合があり得ると思ふ、さう云ふ場合に於きまする措置に明確さがなければ、委員會が流れてしまつて、期間が三十日まで來てしまふ、さうして「ストライキ」をやり得ると云ふことになれば、此の調停の趣旨に反すると云ふ現象も生れて來ることも考へなければならない、さう云ふ點に付てはどうかと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=127
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128・吉武惠市
○吉武政府委員 今の御話のやうなことがないとも限りませぬけれども、大體爭議と云ふものは一つの條件を主張して、それが容れられない時に起る問題でありますから、調停も双方の意見を公正に納まるやうに持つて行かなければならぬと思ひます、極端な例を取るならば、調停が一方的であるならば、それは片方も不滿であらうし、隨て今御話になりましたやうなことも起らないとも限りませぬけれども、そこに公正に調停委員會が動きますならば──若し爭議する方に於て、初めから主張はしたけれども、それは問題でないのだ、唯爭ふだけだと云ふことであれば、是は何をか言はんやでありますが、主張を貫徹すると云ふことであれば、其の主張を合理的に取上げて解決すると云ふことはないのではないかと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=128
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129・土井直作
○土井委員 今の問題は其の程度にして、次に御伺ひ致したいことは、過般膳國務大臣に御尋ね申上げた所が、經濟安定本部が發足してない關係から、責任を以て答辯することは出來ないと云ふことで逃げられたのであります、それは特に國營事業に從事する勞働者、官公吏に對しまする所の待遇上の問題であります、御承知の通り國營事業に從事する所の官吏の諸君は、「ストライキ」を禁止されて居るのであります、而も是等の所謂官吏の中には、是は極めて露骨な、率直な意見でありますが、役得と云ふものが相當あるのであります、假りに鐵道の場合に於ては、鐵道の官吏或は從業員は全部只で何處へでも乘つて行けると云ふ特典があるのであります、今日のやうな鐵道運賃の非常に高い時に於ては、此の役得は厖大なるものになつて居ることは想像に難くないのであります、殊に買出し其の他に於て極めて利便を得て居ると云ふことが考へられるのであります、所が遞信省等に働いて居る諸君は、私は餘り詳しく知りませぬが、役得はなささうに考へられる、專賣局に働いて居る人に於てもさうであります、斯う云ふことは、待遇上に於ける表面賃金の上から見れば平等化されて居るが、役得上から見れば、極めて不平等なる形があると云ふことが考へられるのであります、そこで官吏に對しまする是等のものの全體を考へまして、綜合的に官吏に對する所の待遇の改善とか、調査とか、研究とか云ふものは、恐らく經濟安定本部に於てやつて行かれるのではないかと考へて居るのでありますが、膳國務大臣は明快なる答辯を避けられて居つたのであります、そこで厚生省と致しまして、其の所管事務である是等の人々の待遇上の問題に付ての「アンバランス」を是正するやうなことに付ての何か適當な對策を御持ちになつて居るか、此の點を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=129
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130・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の御意見は、御尤もな御意見だと思つて居ります、其の點に付きましては、政府と致しましても、先般大藏省内に給與局を設置致しまして、從來主計局の一課の一部門に於て取扱つて居りましたものが、一躍一つの局を作つて各官廳間のさう云ふ給與の調整なり或は又待遇上の改善に付て專ら干渉すると云ふ機構が出來た位であります、併し是は役所の機構でありまして、是等に付て所謂官吏其の他の意見が反映するやうな方法を考へることは、至極く必要なことであらうと存じて居りまして、我々も又それに努力致したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=130
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131・土井直作
○土井委員 大藏省に給與局が設けられたと云ふことに付て私も其の點に付て研究したのでありますが、更に之を役所全體と致しまして、纒つたものとして所遇局とか、所遇委員會と云ふものを作る必要があるのではないか、又其の委員會を構成する上に於ても、此給與局の中には勞働階級、例へばそれぞれの各省内に於て構成されて居ります所の官吏の組合の代表者が參加して居るかどうか、此の點を聽きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=131
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132・吉武惠市
○吉武政府委員 今申しました給與局と云ふのは、是は役所の機構でありますので、さう云ふ組合の幹部を入れるかどうかと云ふ組織ではありませぬ、只今の御主張になりましたのは、さう云ふ所で決める場合に、組合其の他の意見が反映するやうな方法を講じたらどうかと云ふ御趣旨であらうと思ひます、それは別途さう云ふ意見が反映するやうな方法を考へれば宜いことでありまして、給與局の中に必ずしも入れる必要はないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=132
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133・土井直作
○土井委員 給與局が最も公正妥當なる官吏の待遇問題を決定することの爲に、別に委員會を構成すると云ふやうな意圖があるかどうか、それから若しさうした委員會を作る場合に於きましては、單にそれに關聯ある所の從業員、或は官吏の組合の代表者のみを入れると云ふことでなくて、もっと違つた角度から、即ち全國的な勞働團體の代表者なり、或は又別に第三者的な學識經驗ある者等を入れまして、公正妥當なる所の委員會の構成に依つて、官吏の待遇問題に付て、少くも官吏の諸君が「ストライキ」をやることが出來ないと云ふ立場に置かれて居ることを考へまして、極めて公正に官吏の身分を保障する、生活權を確保すると云ふ立場が必要でないか、御承知の通り今までの官吏と云ふものは所謂官吏と云ふ一つの名稱に依つて、それが爲に安い所の賃金と、惡い所の待遇に甘んずることになつて居つたのであります、典型的に其の點は日本の官吏が國家に大いに貢獻して居つたと云ふことが言ひ得るのでありますが、併し將來は官吏と雖も一般の人々と同等の待遇、或は同等以上の待遇をしなければならぬと云ふことは當然であります、斯う云ふ建前から考へまして下級官吏諸君に對する待遇上の問題に付きましては、公正妥當なる委員會を作りまして其の決定を參酌して行く、内閣の下に或は處遇委員會なり、或は待遇委員會なり、斯う云ふものを作つて、之に依つて問題の決定を見て行く必要があると思ひます、此の點に對する見解を御聞かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=133
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134・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の御意見極めて貴重な御意見であると存じまして、私共も十分參考に致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=134
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135・土井直作
○土井委員 尚ほ御質問致したい點がありまするが、大藏省關係のものが二、三殘つて居る程度でありますので、ひと先づ厚生省に對する質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=135
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136・逢澤寛
○逢澤委員長 村上君に御諮り致します、簡單でありますれば繼續して戴きたいと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=136
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137・村上勇
○村上委員 簡單であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=137
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138・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは御繼續願ひたいと思ひます、大臣に對する答辯が必要でありましたら大臣が戻られますから其の際やつて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=138
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139・村上勇
○村上委員 本案に付きましては、各委員から大變熱心に論議が繰返へされたのでありますから、私は簡單に二、三の點に付て政府に御尋ねを致したいと思ひます、先づ其の第一は、本會議に於ける文部大臣の御説明の中に、教育者は其の職務の性格に鑑みて罷業を行ふことは好ましくない、唯之を法律に其のことを規定することは適當ならずとして、政府は本法に於ける爭議禁止の業務の項から除外して、教育者の自肅に俟つことにしたとのことであります、同樣なことは官公吏に付きましても言ひ得ると私は思ひます、即ち官公吏に付ても、官公吏自身の自肅に依つて爭議を避けることとして、本法の禁止業務の項から削除することが適當であると思ふが如何でせうか、此のことを主張する他の理由は、假に法律に依つて爭議を禁止したと致しましても、事實上「サボタージュ」を行ふことになれば、どうにもならぬのであります、況して官公吏の「サボタージュ」は其の仕事の性質上中々認識することが出來難いからであります
第二は本案制定は一方的であると稱える反對論者の聲に呼應致しまして、此の聲に依つて起ち上る從業者の、所謂勞働者の精神的影響に付てどう云ふ御考へを持つて居られるか
第三は企業者、即ち經營者と從業者との間には、從來の感覺に依りますれば唯單に一本の線を引いて居つたと云ふ位でなくて、洵に深い溝で隔てられて居たやうに思ふのであります、此の溝を埋め戻して、厚生大臣の言はれましたやうに一本の線にする爲には、共濟勞資の精神的結合を圖らなければならぬと思ひます、此の點に付きまして企業者の經營方針も相當切換へなければならないと思ひますが、政府當局は如何なる御考へを持つて居られませうか、固より企業の運營には、選擧の場合に於ける如き多數決主義の觀念を持込むことは間違ひであります、企業に於ける經營者と從業者の立場に自ら秩序がなければならないことは世界何れの國に於きましても同樣であります、隨て經營者は指導的立場に立つて全責任を負ふ義務があります、從業者は此の指導の下に働く責任を負ふ者であります、此の意味に於きまして、所謂生産管理は企業の秩序を破るが故に私は贊成出來難いのであります、併しながら單に秩序を立てると云ふことだけでは十分ではありませぬ、兩者は常に一體的平等感を味はひつつ仕事をするのでなければなりませぬ、此の點を忘れては如何なる法規も産業の平和的發展を實現することは出來ないのであります、私の體驗に依りますれば、爭議の絶無を圖り生産の増強を圖る爲には、經營者の指導が人格的にも亦道徳的にも尊敬すべきか否かに依つて決まると思ひます(ひやひや、「其の通り」と呼ぶ者あり)我々日本人は血の氣は多いが情には洵に脆いものであります、故に經營者は從業者との間に常に温かい血の通ひを持たなければなりませぬ、特に經營者の常佳坐臥銘記すべきことは、從業者の幸福の爲には自己の身命を賭しても敢て辭せぬ覺悟がなければならないのであります、そこには如何なる法案も一片の反古に等しいものではないかと私は思ふのであります、私は二十年來經營者の立場から常に數百數千の勞働者を指導して來ましたが、只今まで一回も爭議もなく小さな口論の如きものも何もありませぬ、常に和氣靄々として今日に至つて居りますが、此のことは極く簡單であります、決して自慢すべきものではないでせうが、私は日夜神に感謝し、從業者に感謝する、それは主從の深い縁であると云ふことは、此の廣い世の中に何かの因縁でなければ結ぶことの出來ないものであると思ふからであります、隨て山の臨時小屋の中でも彼等に敷くべき疊がなくて板の間で寢る時には私も其の板の間で寢る、彼等に吊るべき蚊帳がない時には自分も蚊に食はれて寢ると云ふやうな氣持で、或る者が病氣になれば自分の肉親のやうな氣持でお世話をする、斯う云ふ常に温かい血の通ひと強い結合さへあれば、絶對に爭議など起るものではありませぬ、經營に參加せずとも、生産管理をしなくても、從業員は自分の從事して居る仕事に付ては、其の經濟状態は大體に知つて居ります、併しながら經營者が個人的欲望に汲々として、從業者の幸福を顧みず經營を續けて居る場合には、必然的に爭議も起りませう、併し其の場合にどんな立派な強い法律がありまして、之を調整出來たとしましても、それは唯一時的の痛みを抑へた「モルヒネ」注射の役にしかならないと私は思ひます、其の次に來る最も恐るべき勞働「サボ」を拂拭することは到底出來ないのであります、故に私は爭議を未然に防ぐ爲には企業者の道議的、人格的經營方針を喚起せしめなければ再建日本の平和的産業の發展は期し得られないと思ひます、以上三つの點に付きまして政府當局の御考へを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=139
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140・吉武惠市
○吉武政府委員 御答へを申上げます、第一點の教職員に付て爭議權を奪はないで專ら自肅に俟つことにしたと云ふ文部大臣の御答辯であつたが、一般官吏に付ても同樣に考へたらどうかと云ふ御話でありますが、實は官吏の爭議權に付て制限を加へましたのは、屡屡申しましたやうに國家の行政、司法重要な國務の遂行に支障があつてはならないと云ふ所で公共の爲に已むを得ず設けた制限であります、教育も其の性質上重要ではありまするけれども、若し假に教育事務が一時停頓致しましても、それは國家の國務の遂行が直ちにどうなると云ふ譯ではございませぬ、此の爭議權は新憲法に於ても認められて居る所でありまして、出來るだけ制限は少くしたいのが趣旨でありますので、教育者に付ては制限を設けなかつたのであります、此の點は多少性質を異に致して居りますので御諒承を戴きたいと思ひます
第二に、本案に勞働者が反對をして居るのだが勞働者に與へる影響はどうかと云ふ御質問でございます、是は厚生大臣も屡屡申して居りますやうに、私共と致しましては實は甚だ遺憾に存じて居ります、此の法律は今勞働組合あたりで唱へられて居る如く決して彈壓の法律であるとは存じませぬ、是は先般山下委員から御質問がありました時も私が屡屡御話申しましたやうに、本法律の建前は、爭議が起つた時如何にして之を公正に解決をするかと云ふ一つの仕組を考へて居るのであります、其の外は公益事業に付て拔打爭議をさせないやうにと云ふことと、今御話の官吏に付て爭議の制限をしただけであります、一般の勞働者に付ては制限をして居ないのであります、併しながら是が趣旨の徹底を缺いて居る爲か全面的に此の法律が彈壓であるかの如き印象を與へられて居りますことは私共の趣旨の徹底を缺いた爲と存じて居りますが、本案に付きましては今後機會ある毎に其の趣旨を闡明に致しまするならば、必ずや勞働者の間に諒解して戴けるものと私共は信じて居る次第であります
第三の、從前の經營者が動もすれば自己本位に陷つて相手方の人格を認めない、企業權と勞働權との間は唯一線あるのみではない、深い溝があつたやうであると屡屡御話がありました、私共さう云ふ點がなかつたとは存じませぬ、企業權と勞働權との關係に付きましては、是亦厚生大臣が屡屡述べて居られまするので茲に私は繰返したくございませぬが、只今委員の御話の如く、今後の産業が企業者と勞働者とが相協力して行かなければならぬと云ふことは御話の通りであります、私共全く同感であります、終戰後やはりさう云ふ輿論が一般にありまして、産業民主化の聲が高く、現在數多く經營協議會なるものが設けられて既に行はれつつあります、是等の經營協議會に於て事業主が勤勞者の創意を十分に汲入れ、さうして一體となつて企業を運營されんことを私は衷心より希望する次第であります、尚ほ經營に當つて經營者が道義の上に立ち、さうして勤勞者の人格を認めて行かなければならぬと云ふことに付きましては是亦私共も全く同感でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=140
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141・村上勇
○村上委員 有難うございました、之を以て打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=141
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142・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは今日は此の位にして閉會致したいと思ひまするが、此の際委員諸君に一言申上げて置きたいと思ひます、大體質疑者の通告はもう三、四殘つて居ります、關聯質問も三、四あります、隨ひまして來る五日の月曜日を以て大體質疑は打切りたいと思ひます、是は先般の理事會での申合せが恰も實現するやうになつて居ります、質疑の通告と云ひ、關聯質問の殘り數と云ひさうなつて居ります、隨て各黨派に於かせられましては質問者の方々を是非五日には出席して戴くやうに御願ひ致します、御出席がありませぬと機會を失ふことになりますから、特に各黨派のお方に御願ひ致して置きたいと思ひます、本日は之を以て散會致します
午後四時八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00819460802&spkNum=142
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