1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
罹災都市借地借家臨時處理法案(政府提出、貴族院送付)
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昭和二十一年八月一日(木曜日)午前十時四十分開議
出席委員
委員長 本田英作君
理事 石原圓吉君 理事 鈴木仙八君
理事 林連君 理事 武藤運十郎君
神田博君 廣川弘禪君
九鬼紋十郎君 細川八十八君
金井芳次君 大矢省三君
鹿島透君 酒井俊雄君
中田榮太郎君 小西寅松君
出席政府委員
内閣事務官 財津吉文君
内閣事務官 大橋武夫君
内閣事務官 中田政美君
大藏參與官 柴田兵一郎君
大藏事務官 野田卯一君
司法政務次官 古島義英君
委員長の許可を得た出席者
司法事務官 原増司君
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本日の會議に付した議案
罹災都市借地借家臨時處理法案(政府提出、貴族院送付)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=0
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001・本田英作
○本田委員長 開會致します、議事の順序に付て一應皆さんの御諒解を得て置きたいと思ひます、本會議のある日は午後休んで午前だけ、本會議のない時は、午前、午後質問を繼續したいと思ひます──是より通告順に依りまして質問を始めます──神田博君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=1
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002・神田博
○神田委員 罹災者の保護、都市復興の促進、或は土地建物に關する法律關係の整理調整等の立場から、殊に戰時立法でありました緊急措置法の廢止に伴ひまして、戰時罹災土地物件令の自然廢止になる關係上、本法律案を提出されました政府の意は諒とするものでありますが、都市復興に付きましては、特に特別都市計畫法を設けまして戰災都市の復興を圖るやうなことになつて居りまして、而も其の都市復興の所謂都市計畫法の特例に依りますと、戰災都市の土地區劃整理等に付きまして、相當な規定をされて居るのでありますが、未だ戰災都市に於きましては戰災復興計畫、土地の區劃整理等に付きましても、殆ど進捗して居らないと云ふやうな實情にあるやうであります、本法案を審議致すに付きましても、現在罹災都市がどう云ふやうな土地の區劃整理をやつて居るか、又戰災復興の計畫がどの程度進んで居るかと云ふことが、非常に重要な材料になることと思ふのであります、此の點に付きまして戰災復興院の御説明を御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=2
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003・大橋武夫
○大橋政府委員 戰災地の復興に關する都市計畫の進捗状況でございますが、前囘の關東震災の復舊の際に於きましては、地域が京濱地區に局限せられて居りました關係上、此の復興計畫は、政府の特に設けました復興局に於きまして、直接全部政府自身の手に依つて復興計畫の立案が行はれたのでございます、然るに今囘の戰災都市は、全國に非常に廣汎に分布致して居りまする關係上、今囘の復興計畫の立案に於きましては、前囘と同樣に直接政府の中央官廳に於て此の計畫を立案すると云ふことが困難でありますので、出來得る限り地方に於て都市計畫を立案させると云ふ方針に相成つて居る譯であります、此の點は昨年十二月の閣議に於きまして、戰災都市復興計畫と云ふものの基本方針を決定致しました、其の際に地方の復興計畫の立案に付きましては、地方廳竝に罹災都市を中心として、それぞれ其の地方々々の實情を基礎として之を立案して行く、さうして之に對して政府が都市計畫法の規定に依りまして、形式的に政府の決定として此の計畫を確定して行く、斯う云ふ運びを付けることに相成つたのでございます、此の趣旨は各地方々々の熱意を、都市計畫の促進と云ふことに反映致しますと同時に、都市計畫の内容自體に於きましても、出來得る限りそれぞれの地方的な特色を活かして行き、地方色豐かな都市計畫を拵へて行くと云ふ狙ひに相成つて居る譯であります、斯くの如く致しまして、中央當局と致しましては、地方廳乃至地方都市が都市計畫を調査決定致しますに付て、必要な標準的な規格を決めて指導をすると云ふことが、第一の任務であります、それから其の立案に當りまして、技術的、行政的な援助指導をして行くと云ふことが、中央の仕事に相成つて來た譯であります、斯くの如くに致しまして、昨年末以來各地方に於てそれぞれ研究調査された案が、都市計畫法に依る都市計畫として決定せられて參つて居るのでございますが、今日に於きましては、殆ど全國主要都市の大部分が其の計畫を持つて居るばかりでなく、行政的にも其の計畫を手續上決定致して居ります、唯二、三の府縣に於きましては、種々の事情から遲れて居る所がございます、靜岡縣下の各都市、廣島縣下の各都市、北海道の各都市の如き、又岩手縣下の各都市の如きは、目下の所まだ正式に都市計畫委員會に案が諮問される所まで參つて居りませぬが、併し實質的には、當局と地方と十分連絡を取りまして、略略本決まりに近い程度までの案を持つて居るやうな實情でございます、最も早く決定せられましたのは富山市及び高知市でございますが、是等の都市に於きましては、既に確定した街路計畫に基きまして、區劃整理も或る程度の案を持つて居ります、さうして今日區劃整理の方は、是は實施までに種々の設計に暇取りまするものでございますから、各都市ともそれぞれ設計を急いで居ると云ふやうな状況でございまして、設計が完了致しまするならば、其の計畫に依りまして出來るだけ速かに著手して行くと云ふ程度に相成つて居ります、勿論廣汎なる地域に亙りまする區劃整理の實施でございまするから、此の完了までには相當な年數を豫想しなければならぬのでございまして、順調に參りましても全都市の區劃整理が完了するまでには、五、六年は掛るのではないかと云ふ風に豫想を致して居るのでございます、勿論此の區劃整理に要する經費は極めて多額に上りまするし、之に對しましては相當高率なる國庫補助を支出することに相成つて居るのでございまするが、地方の實情は政府の支出の豫定よりも、更に「テンポ」を早めて區劃整理を進捗しなければならぬと云ふ風な状況に相成つて居りまするので、今後國庫補助は相當後年度に於きまして大幅に増額されなければ、今年度豫想せられて居るやうな程度では、中々今申上げましたやうな手數では進捗しないのぢやないかと云ふ風に考へて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=3
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004・神田博
○神田委員 只今戰災復興院の政府委員の御答辯がございましたが、戰爭が終結して既に一箇年に垂んとして居るのであります、又今尚ほ計畫が確定して居らぬと云ふ數府縣の例を擧げて居つたやうでありますが、是等の府縣の戰災は、既に一箇年以上も經過して居るやうな實情であるのでありまして、著々と進行して居ると云ふ御言葉でありましたけれども、地方廳の連絡の關係でまだはつきりしたものが出來ないのか、或は又當該市町村の事務の澁滯に依るのか、或は又本省の方で色々と手續なり或は經費の都合でさう云ふことが遲れて居るのか、今擧げられた府縣の特殊な事情に依るものであるか、其の理由をもつと詳細に一つ御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=4
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005・大橋武夫
○大橋政府委員 此の計畫の遲延を致して居りまする府縣に於きましては、色々其の地方に依りまして事情があると思ひまするが、第一に豫想せられて居りまするのは、計畫を立案するに付ての技術者の不足と云ふ問題でございます、此の點に付きましては、當局と致しましても出來得る限り援助をすると云ふことに致しまして、地方で足りない技術者に對しては、中央から應援を派遣する等の方法に依りまして、目下督勵鞭撻を致して居る次第でございます、其の他地方廳及び都市との連絡、或は地方廳を通じての本省との連絡等は、交通機關の今日の實情等から見まして相當遲延を免れない部分もございますが、併し此の點も問題の重要性に鑑みまして、各都市とも殆ど書類の往復など使ひに依つてやつて居るやうな實情でございます、是れ亦出來得る限り促進するやうに努めて居るのでございます、先程も申述べました通り、是等の各地に於きましても、實質上の計畫は殆ど纒まつて居るのでございまして、之を急速に手續化する段階だけが殘つて居るのでございます、近近にそれぞれ確定するものと考へて居ります、今後とも出來得る限り促進すると云ふことが、戰災都市の復興の第一歩でございますから、此の點は特に關係者に對しても嚴重に留意させるやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=5
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006・神田博
○神田委員 どうも計畫が、「ペーパープラン」が出來ても法令的に確定して居らないと云ふことになりますと、當局は固より罹災民等に於きましても非常な不安が伴ふのであります、地方に依つては治安が相當深刻に惡くなつて居ると云ふやうな實情もあるのでありまして、出來得る限り早い機會に確定するやうに御進め願ひたいと思ひます次に御伺ひ致したいのは、昨日も石原議員からも御質問があつたのであります、それに對して司法省の政府委員から御答辯があり、今又戰災復興院の政府委員から一寸此の點に觸れられたやうでございますが、戰災地の復興と云ふことは、是は非常に大きな問題だと思ひます、今政府委員の御話にもありましたやうに、相當年月も掛るし、又莫大な資材と相當の勞力と云ふやうなものが伴つて參ると思ひます、之を戰災地の個有の財源で復興すると云ふやうなことでは、何時復興出來るか豫見出來ないと云ふやうな實情であります、昨日の司法政務次官の御答へに、罹災地復興の爲に罹災地復興法と云ふものを準備して居る、併し豫算の關係もあるし、將來具體的になつて説明したいがと云ふことでございましたが、政府に左樣な意がありますならば、尚ほ具體化するに若干の日がありましても、何か其の「アウトライン」だけでも結構でありますが、どう云ふやうな規模の、或はどう云ふ方向に依つて考へて居るのか、もつと詳細に御説明を願ひたい、是は戰災復興院からも見えて居られますが、司法政務次官からも、或は又大藏省の政府委員の方々からも、此の席上で出來るだけ肚を打割つた御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=6
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007・古島義英
○古島政府委員 私の方の關係から申しますると、必ずしも復興院の仕事が進捗致した後に此の法律を拵へると云ふ建前ではないのであります、此の法律を拵へて尚ほ其の用意を致して置く、復興院の方の復興計畫も一緒に、共に併行して進んで參る、そこで復興院の仕事が進捗致したに拘らず、法律的の關係で爭ひが起ると云ふやうなことがあつては相成らぬから、其の法律關係を明瞭に致したい、又紛爭があつた場合に、それを解決すべく道順を付けて行きたい、詰り復興計畫が一日も早く出來るやうにと云ふことの眞意もありまして、此の法律を提出致しました、兩々相俟つて行きたいと云ふ希望を致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=7
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008・大橋武夫
○大橋政府委員 復興院と致しましては罹災地の復興に關しまして、曩に御審議竝に御協贊を得ました特別都市計畫法でございます、特別都市計畫法に於きましては、地方團體に於て負擔する復興の經費に對しましては、出來得る限り高率の補助をすると云ふ趣旨を以て、國庫補助の規定を設けてございます、此の補助率に付きましては、特例を以て指定する豫定に相成つて居りまするが、其の際の委員會に於きましても申述べましたやうに、只今豫想致して居りまする補助率と致しましては、土地區劃整理事業に付きましては八割以内、街路に付きましては、廣幅員の街路に對しましては四分の三其の他の街路に對しては二分の一、水道に關しましては上水道が三分の一、下水道は三分の二と云ふ補助を致す豫定に相成つて居ります此の外に復興に關聯致しまして、將來提案を豫想されまする法律案と致しましては、市街地建築物法の改正でございます、市街地建築物法の改正と申しますのは、都市に於ける建築物の建設制限の強化、之に依りまして將來の災害を豫防する爲に、防火地區の規定を強化する、或は又將來の都市の土地の利用を合理化致しまする爲に、地域、地區に關する規定を改正すると云ふ風な點を豫想致して居るのであります、尚ほ此の外只今研究事項と致しましては、將來狹小なる宅地に鐵筋「コンクリート」の不燃建物を建てると云ふやうな場合に、土地の所有者に對して或る程度の制限をする、例へば鐵筋「コンクリート」の建物を建てようと云ふ場合に於きましては、周圍の土地をも纒めて、そこに一つの建物を建てることを認めると云ふ風なことも、此の防火的な面を促進すると云ふ意味に於きまして、必要な事項ではないかと考へられますので、只今研究を致して居る次第であります、其の他に現在の都市計畫法に於きまして、尚ほ此の機會に改正を必要とする事項もありまするので、此の點は内務者と協議の上、成案を得次第、恐らく次の議會あたりに御審議を御願ひすることに相成ると思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=8
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009・神田博
○神田委員 復興院の只今の御説明のございました地方公共團體が戰災地の復興の爲に、一種の都市計畫を行ふ場合に、例へば土地區劃整理に付ては其の經費の八〇%の國庫の助成をやる、其の他各般の率を今御述べになつて居りますが、此の補助率は是は復興院の希望の案でありませうか、或は是は閣議で決まつて、將來斯樣にすると云ふ意味なのでありませうか、或は又之を法令化すると云ふ意味でありますか、そこをもう少しはつきりした御説明を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=9
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010・大橋武夫
○大橋政府委員 只今の補助率は、豫算に於て豫想せられて居る補助率でありまして、今後之を勅令に依つて規定をして行きたいと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=10
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011・神田博
○神田委員 私の伺ひたいのは、規定しようと思つたと云ふことが、既に閣議の諒解事項になつて居るか居ないか、詰り私共の氣持を率直に言ひますれば、斯樣な補助率を其の儘政府に於て──勿論豫算の許す限度と云ふものはありますが、政府の負擔と云ふことにはつきり考へて宜しいかどうかと云ふことなんであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=11
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012・大橋武夫
○大橋政府委員 此の補助率は先程申述べました通り、八割以内とか或は三分の二以内、二分の一以内と云ふ風な確定的な補助率には相成つて居りませぬ、併し豫算と致しましては、八割のものは八割、三分の二のものは三分の二と云ふことを豫定して今年度の豫算が編成せられて居ります、隨ひまして、今後に於きましても、此の率が維持され得るものと云ふ風に豫想致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=12
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013・神田博
○神田委員 大變諄いやうでありますが、從來の内務省の國土局の計畫に於きまする道路、港灣、其の他公共施設等に於きまして、或は都市計畫等に於きまして、地方行政廳或は市等の公共團體が諸般の計畫を致しまして、斯樣な補助率を計上された場合に、國庫が財政の都合だと云ふやうなことで、實際は支拂つて居らない例が非常に澤山あるのであります、是ははつきりした例を持つて居るのでありますが、今度の罹災都市の復興と云ふことは、先程も申上げましたやうに非常に大きな問題でありまして、所謂罹災都市等の自力に依つてやつて行くと云ふことは、殆ど不可能なことと考へられる譯であります、隨ひまして溺れる者藁をも掴む例でありまして、斯樣な率が發表或は又通知を戴きますれば、是は必ず補助あるものとして計畫を樹立することと思ひますので、政府當局に於きましても、是は十分留意して戴きまして、從來の所謂踏倒しと云ふやうな例のないやうにして戴きたいと思ひます
次に大藏省の政府委員が御見えになりましたので、先程一寸觸れたのでありますがもう一度申上げます、罹災都市の復興に付きましては、どうしても國の相當な助力に俟たなければ復興することは困難でありますので、是等に付ては政府に於ても、十分留意されて居ることと私は信じて居るのであります、昨日の司法政務次官の答辯の中に、政府は罹災地復興法と云ふものを準備して居る、是等の關係豫算等に付ても他日提出の豫定になつて居るので、其の際詳細に答辯したいと云ふことで、ありましたが、本法案の審議上、左樣な準備があると致しますれば、茲に一つ打まけて戴きまして、許せる範圍の御答辯、御説明を願ひまして、審議の進行の參考に致したい、斯樣に考へて居ります、どうか出來るだけ打割つたお肚で、御答へ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=13
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014・野田卯一
○野田政府委員 御答へ致しますが、戰災地の復興の問題に付きましては、政府側に於きましても非常に注意を拂つて居るのでありまして、御承知のやうに本年度の改定豫算に於きましては、戰災復興費と致しまして、大藏省所管に約二千二百萬圓と云ふ豫算が計上されて居るのであります、此の二千二百萬圓と云ふ金は、現在の日本の直面して居る復興事業から申しますと、非常に小さなものであります、是は此の外にもつと大きい計畫を持つて居るのでありますが、戰災地の復興計畫と云ふものを、本年は其の大部分を公共事業の一つとして、所謂經濟安定費の中から支辨すると云ふ考へを持つて居ります、隨ひまして經濟安定費が御承知の如く五十五億ある、其の中の一部から出されると云ふことに相成りますので、二千二百萬圓と云ふ金額だけが戰災復興費であると云ふ風に、御取りにならぬやうに御願ひしたいのであります、然らば五十五億の公共事業費、所謂經濟安定費、其の經費からどれだけ戰災復興の方面に向けられるかと云ふ數に付きましては、只今大藏省と經濟安定本部等と色々相談致して居りまして、まだはつきり定まらないと云ふやうな、状況になつて居ります、それから國庫から各地方の團體に對する補助でありますが、此の補助は本年度からは出來るだけ少くする、是は地方財政を打放すと云ふ意見ではなしに、出來るだけ財源を地方に與へて、國庫から直接補助をする形を成べく薄めて行かう、要するに地方の自治の確立と云ふ意味から、地方の財政を出來得る限り獨立して、自主性を持たせなければならぬと云ふ趣旨から致しまして、國庫から直接補助するものを減らす、或は其の率を下げると云ふ方向に向つて居るのであります、色々の災害の關係のものに付きましても下げて居るのでありますが、都市計畫の土地整理事業の補助と云ふものは、御承知の如く八割と云ふことになつて居りますが、是は斯う云ふ補助率の中では、只今の所殆ど例外的に最高になつて居る、斯う云ふ次第でありまして、此の方面に對して政府は特に意を用ひて居ると云ふ點は、十分御察しを願ひたいのであります、今後色々と戰災地の復興のことに付きましては問題が多うございます、各方面と協議を致しまして、出來るだけ適切なる方策を執つて參りたいと思つて居りますが、只今其の内容を此處で御話するまでには至つて居りませぬことを、御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=14
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015・神田博
○神田委員 只今の大藏政府委員の御説明に依りますと、自治權の擴充をする地方公共團體には、出來るだけ特別の財源を與へて、政府の助成と云ふものは少くして行きたい、此の點に付きましては、私も理論上贊成であるのであります、地方が自治權を自治團體として十分發達させて行くと云ふことに付きましては、十分なる地方自治に必要な財源を供與されて行くことが一番宜しいのでありますが、併し罹災都市のことに付きましては、地方公共團體の責任に歸すべき理由に依つて生じましたものではないのでありまして、是は非常に特例に依るのでありますから、斯樣な特例のものに付きましては、今の原則を當嵌めて行く、原則を頭の中に入れて行くと云ふことが、私非常に心配なのでありまして、後段でも其の點は御説明もあつたやうでありますが、罹災都市の復興と云ふことに付きましては、特に十分留意して戴きたい、日本が平和的、文化的な民主的な國家を再建する、是が今日の日本の行くべき理想でありますが、現在のやうな荒涼たる燒野原、或は壕舍や雨が降れば直ぐ漏る、風が吹けば直ぐ破損すると云ふやうな「バラック」の生活、或は又今日のやうな飢餓と窮乏の中から民主主義が健全に育成され、發達しき行くと云ふことには相成らぬと思ふのであります、日本が平和的、文化的な「デモクラシー」の國家を建設すると云ふことになりまするには、どうしても生活の中心であります所の住宅の問題と云ふものを十分考へて行かなければならない、今申上げたやうな状態に於ては、どうしても新しい文化が生れて來ない、寧ろ退歩する虞があるのぢやないか、隨て戰災地の復興に付きましては、應急的としては現状も亦忍ばなければならぬと思ひまするが、速かに文化的な都市を建設して行かなければならない、文化的な都市を建設するには、是は戰爭と云ふ大きな原因が都市の破壞になつたのでありまして、都市の住民の責任に歸すべき理由はないのであります、政府に於きましては其の點を十分御考慮とは思ひまするが、深甚なる考慮を拂ひまして、出來るだけ速かに一つ復興さして戴きたい
尚ほ此の機會に大藏省政府委員から御伺ひ致したいのであります、是は戰災復興院の方にも關係致すのでありまして、御答辯を煩はしたいと思ひますが、今のやうな「バラック」、家族の數も考慮に入れない、或は又諸般の條件も考慮しないで、唯一律に制限坪數に追ひやられる、さうして又制限の範圍の金より支出をさせない、斯う云ふやうなことでは、個人の創意と工夫と云ふものが出て來ないのみならず、其の家屋の利用と云ふ點から考へましても、非常な不公平の問題が起きて居るのぢやないかと思ふのであります、是等の點に付きましては本會議に於きましても大藏大臣は、預金の引出に付てはG・H・Qの關係であるから致し方ないのだと云ふやうな御答辯でありました、それ等の點に付ては私共も十分其の通りであると云ふことは、想像に難からないのでありますけれども、併し聯合軍最高司令部に於きましては、日本の文化的建設に十分なる寄與をすると云ふことが、大きな使命であると云ふことに承知致して居りますので、政府に於ては十分連絡を取られまして、さうして速かに罹災者が和やかな生活を營むやうな方法に持つて行くやうに努力するのが、當然のことではないか、斯樣に私考へるのであります、隨ひまして速かに現在のやうな窮屈な──唯私は制限を直ちに撤廢せいと云ふ譯ではありませぬが、原則には必ず例外がある譯であります、例外があつて初めて原則であると云ふことが言ひ得る譯でありますから、是等の點に付きましては十分留意して戴きたい、一體現状のやうなことで國民を追ひやつて置くと云ふことは、本當に政府が國民を愛して居るかどうか、國民を國民として取扱つて居るかどうかと云ふことに付てまで疑ひを持たれると云ふやうな、罹災者の聲もある譯でありまして、此の點に付きまして唯G・H・Qがさう言ふからと云ふやうな御答辯では、我々一寸納得し難いのであります、實は私も罹災者の一人でありますが、今日のやうな状態に於きましては、滿足し得ない所の者が大半を占めて居ると云ふことを、十分御承知とは思ひますが、此の點に付きまして一つ政府委員の眞劍な御説明を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=15
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016・野田卯一
○野田政府委員 只今神田さんの御指摘の點は非常に御尤もだと思ひます、「バラック」、所謂簡易住宅と言つて居る「バラック」のことでありますが、見るからに非常に脆弱な、全く實際嵐でもありますと直ぐに傷む、ああ云ふ住宅に長く住まはせると云ふことは、迚も出來ないと考へて居ります、もつと恆久的な、もつとしつかりした建築を致しまして、住宅を完備する、政府としては大體其の方向に向つて研究して居ります、特に戰災復興院の方では「コンクリート」の家を建てると云ふことに非常に熱心になつて居りまして、經費の點から申しましても、木材で建てるのと「コンクリート」で建てるのとでは甚だしい徑庭がないので、出來るだけ其の方面に向つて努力して行きたいと考へて居りますが、問題の「セメント」がどの程度手に入りますか、此の「セメント」を極力確保して、さうして一軒でも餘計に「コンクリート」のしつかりした家を建てると云ふ方向に行きたいと思ひます、御承知のやうに「セメント」が、本年度の「セメント」の需給計畫に依りますと、進駐軍關係に於て非常に澤山取られ、一般の日本側の需要を充し得る數量が非常に制限されて居る、斯う云ふ實情であります、石炭事情も非常に窮屈でありますが、是は大藏省ばかりの問題でなしに、政府全體に於きまして、石炭を極力掘つて少しでも「セメント」を殖やし、それを住宅の方へ向けたい、斯う云ふ熱意を持つて盛んに仕事をして居ります、今後大藏省、戰災復興院、經濟安定本部其の他と能く相談致しまして、出來るだけ御趣旨に副ふやうに參りたいと思ひます、又司令部との關係に於きましても、色々と困難なる點がございますけれども、十分こちらの方の立場、或はこちらの方の一般の事情も述べまして善處して行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=16
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017・中田政美
○中田政府委員 應急「バラック」の建築に付きましては、只今五十平方「メートル」に制限を致して居ります、是は御承知の通り、建築資材が我が國に於ては非常に涸渇して居りまして、今後假建築なり或は本建築をやるに付きましても、中々重大問題が潛んで居る譯です、又鐵筋「コンクリート」に致しましても、「セメント」なり鐵材なり、中々是亦其の生産に隘路がある譯でありまして、是等を勘案致しますと、どうしても今日の制限程度で、兎に角應急の「バラック」で我慢をして戴く以外には途がない、其の十五坪の家すら取得することの出來ない人が多々あると云ふやうな譯でありまして、現在あの建築制限令で御辛抱を願ふことに致して居ります、勿論是は逐次本建築に參りますれば、其の都市に相應じたそれぞれの見地から見た所の建築の規格が設けられることと思ひますので、今の所は出來るだけあれで御辛抱を願はなければならぬ、尚ほ昨年以來政府に於きまして試作致しました所の所謂越冬住宅、六坪餘の、極めて粗雜な住宅の供給に付きましては、色々と非難を受けて居ると云ふことでございますが、是は元々文字通り冬を越すと云ふ、極めて急場凌ぎの施設でございまして、固より設計者と致しましても、あれで十分と云ふ譯ては決してないのでございます、やつて見ました結果からしましても、どうも之に對しては國民が歡迎しないと云ふやうな苦い經驗を持ちましたので、當二十一年度に於きましては、大體の所十二坪位の庶民住宅を供給すべく、財政方面とそれぞれ折衝中でございまして、之に對しては相當な助成の途も考へまして、自分で家を建てるだけの資力のない、所謂賃借をせなければならぬと云ふ階級に對しては、出來るだけ其の負擔の出來る程度の、低廉な家賃の住宅を供給したい、而も昨年の越冬住宅のやうな粗雜でないものを供給したい、此の方針の下に鋭意努力して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=17
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018・神田博
○神田委員 只今大藏省政府委員竝に戰災復興院の政府委員の方々から、色色資材の入手の困難であるとか、或は又諸般の關係で、戰災住宅の建築が現實に於ては非常に滿足の行かない點のあることを遺憾とする御答辯でございましたが、私の考へを以ちますと、勿論石炭の關係に於きましては大藏省政府委員の御話の通り、非常に石炭の出廻りの惡いことは、私も他の關係して居ります事業に依つて承知致して居ります、隨ひまして石炭が非常に出廻りが惡くて、其の爲に「セメント」に廻はる量が又極めて乏しい、而も其の廻はつた「セメント」が進駐軍關係に廻はさなければならないので、住宅の建設にどうしても廻はれない、此の事情を承知致して居ります、私が御尋ね致しましたのは、左樣な實情は私も十分承知して居るのでありまして、其の承知して居る上で尚ほ更に政府の努力を切望して已まない、言換へますると、まだ日本の國力と云ひますか、建築の力と云ひますか、左樣な點に付きましては政府の計算よりも私はあるのではないか、斯う云ふ考へを持つて居るのであります、其の力があるのであるが、力を出し切る方法に於きまして、政府の統制の枠が非常に畫一的な、嚴重な枠になつて居りますので、罹災民の、或は又罹災民の建築等を擔當して居ります業者の創意と工夫が現はれないのではないか、若し此の業者の創意と工夫なり、或は罹災民の努力と云ふものが伴ひますならば、まだ建築の線が上昇する、斯樣に考へて居りまして、さう云ふ意味で御尋ねを申上げたいのであります、くどいやうでありますが、勿論戰災に遭つて居りますのと、最近の高物價の爲に罹災民は非常に困つて居るのでありますが、併し何を措きましても、如何なる工面を致しましても、日日の住居だけは──勿論當今のことでありますから十分な住宅と云ふことは誰も考へて居りませぬ、唯當分我慢の出來るやうな住宅を建てたいと云ふことが精一ぱいの念願なのでありまして、此の念願を叶へてやると云ふことが必要ではないのか、一方に於ては大きな住宅に入つて居る、或は又惠まれた生活をして居る、戰爭の被害を自分が一人で受けたと云ふやうな非常に困難な状態に立つて居る、而も家を建つべき資力と云ふものが封鎖をされて居る、又今まで日本の美徳とされて居りました所の隣保共助の精神と云ひますか、相扶けると云ふ其の方面の助力も、封鎖されて居る關係上資金が廻はつて來ない、此の點を何とか政府が親心を示して、さうして協力が出來るやうにしたらどうか、斯う云ふことを御尋ね致した譯であります、政府の御持ちになつて居りまする計畫の材料は、概ね地方廳なり或は又其の他の方面の材料だらうと思ふのでありますが、私共野に居りまして、此の建築の状況、或は又建築の資材──主として木材に相成るのでありますが、此の點に付きましてもう少し弛めて戴く、資金の關係も弛めて戴く、さうして戴きましたならば、自分の資力、或は自分の友人なり親族なり其の他の同情に依つて、尚ほ一層盛上つて來る建築が出來て來るのではないか、皆で負擔し合ふやうな建築の線に持つて行きたい斯う云ふことを念願して居るのでありまして、此の點に付きまして重ねて御尋ね致しましても、或は御答へが困難でありますれば致し方ないのでありますが、もつと罹災民に付きまして、劃一的でない温い所を示して戴きたい、斯う云ふことを御尋ねした譯であります、御答へして戴けますれば好都合と思ひまするが、御答へ戴けなければ他の問題に移りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=18
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019・神田博
○神田政府委員 只今の御話で御趣旨がはつきり致したのでありますが、住宅の復興と申しますか、建設に業者の創意工夫を用ひる、罹災者自らが出來るやうに努力する爲に、此の方面に於て色々と支障になつて居るものを極力緩和する、或はそれを援助して行く、さう云ふことは御尤もなことだと思ひます、さうして我々財務に關係して居る者としましては、出來るだけ御趣旨に副ふやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=19
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020・神田博
○神田委員 色々罹災都市借地借家法の本論に入る前に關聯した事柄を御伺ひして時間を御取り致しましたが、是から此の處理法のことに付きまして二三御尋ね致したいと思ひます、先程申上げましたやうに、斯樣な環境下に於きまして、此の借地借家臨時處理法を提案されまする政府の御氣持は十分諒と致すのでありまして、本案に付きましては私共十分檢討致しまして、速かに罹災民の紛爭等の解決に資したい、斯う云ふ風に念願するのであります、此の第二條の第一項でございますが「罹災建物が滅失した當時におけるその建物の借主は、その建物の敷地又はその換地に借地權の存しない場合には、その土地の所有者に對し、この法律施行の日から一箇年以内に建物所有の目的で賃借の申出をすることによつて、他の者に優先して、相當な借地條件で、その土地を賃借することができる」但書もありますが、斯うなつて居ります、此の點でございますが、賃借の申込が出來る敷地と申しまするのは、どの範圍を言ふのでありませうか、假に例を取りますると、從來の敷地が廣かつた、二つにも三つにも分割して家を建てることが出來る程の土地であつた場合、此の全部の土地に申込みの權利があるのか、地主は從來の大きさの家を建てられるだけの土地を區分すると云ふやうなことが出來るのか出來ないのか、是は借りる方も貸す方も色色問題が出て來ると思ひますので、政府委員のはつきりした御答辯を御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=20
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021・古島義英
○古島政府委員 滅失した家屋の其の敷地を借りるに當りましては何等の制限がないのであります、今の建築物取締法に依つて何坪以下の家屋すら建てられぬことになつて居りますが、さう云ふことには何等の關係なく、全部申込みが出來る譯であります、但し全部申込めますが、罹災當時に於ける其の借主と云ふことになつて居りますから、其の點は御認めを願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=21
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022・神田博
○神田委員 能く分りました、さう致しますと此の第二條の所謂賃借權と云ふものが成立して居ると思ふのであります、是は讓渡の對象になるかどうか御伺ひ致したいのであります、若しそれが出來るとすれば、所有者の同意が要るのか要らないのか、併せて御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=22
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023・古島義英
○古島政府委員 此の第二條の借地の申出は借地權の存しない場合に限るのであります、借地權のあります時には讓渡の申込が出來る、此の場合は借地權がない所有者に申込むと云ふことになつて居りますから、別に議論は起らないことと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=23
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024・神田博
○神田委員 私の御尋ねの仕方が惡かつたのかも知れませぬから、もう一度御尋ね致します、借地權は勿論自分ならば借りられるが、併し借地權の讓渡は出來ないと云ふ風に解釋する譯でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=24
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025・古島義英
○古島政府委員 神田さんの御質問は、此の第二條に依つて借地の申出を致した人が借地權を取得した、其の借地權は讓渡出來るかと云ふことの御質問でありますが、若しそれであつたとすれば、それは借地法の規定に依ることになりますから、勿論自己の取得したる借地權は讓渡することが出來ることになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=25
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026・神田博
○神田委員 能く分りました、次にもう一つ御伺ひ致します、第二條の三項でありますが、「土地所有者は、建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合その他正當な事由があるのでなければ、第一項の申出を拒絶することができない。」此の「正當な事由」と云ふことでありますが、例を取つて申上げますと、土地所有者は建物所有の目的で自ら使用する場合なのか、又は自分で建物さへ建てればそれで宜いのか、此の一點と、もう一つは土地所有者の事情で他に賣りたい、借地權があつたら賣れないから斷りたい、斯う云ふことも含むのか、もう一つ住宅を建てて居たのであつたが、今度は商店を作る、斯う云ふやうな場合に、正當な事由と致しまして斷られるのであるか斷られないのであるか、此の三點を私は正當の事由になるかならぬかと云ふことの例と致しまして御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=26
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027・古島義英
○古島政府委員 第二條の第三項は正當な事由の一例示に過ぎないのでありまして、自ら使用すると云ふ一例示であります、他にも正當な事由と云ふものは、何程もあることと思ひます、自ら之を使用すると云ふことは、讀んで字の如く、自分で之に家屋を建てると云ふことになるのであります、但し自分で建てた家屋は、又別の規定に依つて、其の家屋に優先的に借入を申込む者があると云ふことを豫想せねばならぬのでありますが、兎に角其の敷地を自ら使ふと云ふことが此の一例示の一つであります、其の他にも正當な事由は何程もあることと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=27
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028・神田博
○神田委員 さう致しますと、此の第三項の「正當な事由」と云ふことは、只今の政府委員の御答辯に依りますと、勿論正當な事由は澤山ある場合があると思ふのでありますが、私が今例を擧げたやうな場合に斷られる對象になるかならぬかと云ふことでありますが、それで具體的に實は御尋ね致したのであります、住宅を建てて、それを商店を作つたのだと言つた場合に、それは斷る目的でさう云ふことをやらぬとも限らぬ譯でありまして、それは正當な事由になる、貸したくないから商店に變へたと云ふことは、此の本法から云ふと、それが正當なる事由になると云ふことになる、をかしなことになりはしないかと思ひますが、是は具體的な例ですが如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=28
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029・古島義英
○古島政府委員 特に斷ると云ふやうな心持で拵へると云ふことは惡いことであります、所がさうでなくて住宅向きの場所ではあるが、併し土地の状況に依つて商店でやつた方が都合が好いと云ふことを考へて商店にすると云ふことは、是は土地の利用上當然やれることでありまして、別に制限する規定はなからうと思ひます、御質問のやうに斷る積りで居て之をやつたと云ふことになれば、是は惡いことでありますが、さうでなくんば一向差支へないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=29
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030・原増司
○原説明員 一寸只今の御答辯に補足致したいと存じます、それは此の三項に申しまする「建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合」と申しますのは、獨り土地所有者の立場ばかりを考へるのではございませぬで、申込をなした者の此の必要度と申しますか、兩者を睨み合せて決することになるのでございますから、一概に今委員の御尋ねになつた場合、斷ることが出來るか出來ぬかと云ふことは申上げ兼ねる實情もございすので、そこに此の法案の狙ひもある譯でございますから、さう云ふやうに御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=30
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031・神田博
○神田委員 大體是はあとで色々運用の規定もございますからさう云つた批判も出來得ると思ひますが、先程例に擧げました土地所有者の事情で他に賣りたい、賣るから貸さないのだと云ふやうなことは、正當な事由として想像されたのでせうか、それを一つ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=31
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032・原増司
○原説明員 是は「建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合」でございますからして、此の所有者が建物所有の目的で使はねばなりませぬから、賣る場合、建物を自身が持たないで他に賣らうとする場合は當然含まれませぬ、隨て正當な事由にならないものと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=32
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033・神田博
○神田委員 一寸まだ私了解しにくいのでありますが、私の御尋ね致しましたのは、土地所有の目的ではないのでありまして、何等かの目的で其の土地の所有者が土地を賣りたい、土地を賣る都合上──例へば貸すと云ふことになると、其の爲に賣ることが支障を生ずると云ふやうな場合、是は一般通念と致しまして想像出來ると思ひますが、さう云ふ場合にもやはり後段の「その他正當な事由」と云ふことの拒絶の理由になるか、斯う云ふことを御尋ねしたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=33
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034・原増司
○原説明員 例示されました「建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合」は勿論一つの例示には過ぎませぬけれども、大體に於てそれは一つの基準を示して居るものと存じます、隨て今御話になつたやうな場合は、勿論此の例示された場合と違ふのではありますけれども、同じ趣旨から申しまして、さう云ふ目的下に賣るのだと云ふことは、正當な事由にならない場合が非常に多からうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=34
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035・神田博
○神田委員 是は今の御答辯で大體私も了承致したのでありますが、結局何と言ひますか、借り主と貸す方との色色の罹災までの、或は罹災後の感情なり、或は又其の他の理由で起る問題があると思ひますが、土地を賣るからと云ふことだけの理由で貸さないと云ふことになりますと、是は非常な大きな問題になります、賣るにはやはり買手を必要とする譯でありますから、一般商品と違ひましてさう直ぐ右から左に、賣れる場合もあるが、多くの場合は賣れないことも相當出來る譯であります、努力すれば土地は捌けるかも知れませぬが、唯放つて置いては賣れない場合もあります、場所に依りけりでありますけれども、さう云ふ場合に、是は勿論箇々の事情で、あとの委員會等がございますから、そこで判定して戴くことと思ひますが、「正當な事由」の解釋に付て、何か基準を決めると云ふことも難かしいことと思ひます、全國的に都市が殆どやられて居る實情でありますから、色々な「トラブル」が起るのではないだらうか、「正當な事由」と云ふことを出來るだけ此處ではつきり御説明願ひたいと思つて實は私一二の例を擧げた譯でございます、本法案の起草に當りましては豫想されました中で、どう云ふものが正當な事由であつたかと云ふことを御説明願へますれば、非常に參考になると思ひますが、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=35
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036・古島義英
○古島政府委員 神田さんの御質問の要旨は、能く御心持は分りました、若し其の土地の上に上物があれば、土地を賣るのに簡便に賣れない、若しくは又値好く賣れないと云ふ危險がありますので、其の場合には賣らうとする者は貸さずに置いた方が賣り易いと云ふ希望があるので、それが正當の事由になるかと云ふ御考へかと存じます、それは私の方から考へると、どうしても正當な事由にならぬのです、是はもう明かにならぬと私は存じます、而も若し賣ると云ふやうなことの希望の爲に、申込を拒絶すると云ふやうなことになりますれば、此の法案全體が全く面白くなくなつてしまふのであります、さう云ふ場合でも賃借の申出を致した其の後に於て、若しくは其の當時に於て、若しくは此の法律の施行後に於て、之を昭和二十一年の七月一日以後五箇年間は、借りた者は之に對抗が出來る所の堅い法律を設けて置きます以上は、賣ることを希望して其の事由に依つて之を拒絶すると云ふことは絶對に相成らぬことと信じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=36
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037・神田博
○神田委員 只今の政務次官の御説明を伺ひまして、私も非常に安心致した譯でございます、左樣なことが起ることを實は惧れて居つたのでありまして、只今の御解釋通り正當な事由として認めないと云ふことでありますれば、私の心配が杞憂に終る譯でございますから、非常に安心致しました
次に御伺ひ致したいことは第十四條でございます、第十四條の「罹災建物が滅失し、又は疎開建物が除却された當時におけるその建物の借主は、その建物の敷地又はその換地に、その建物が滅失し、又は除却された後、その借主以外の者により、最初に築造された建物について、その完成前賃借の申出をすることによつて、他の者に優先して、相當な借家條件で、その建物を賃借することができる。」是は大變結構な規定でありますが、此の點に付ても少し心配がありますから、御尋ね申上げたいと思ひます、例へば、罹災建物が滅失し、疎開建物が除却された當時に於ける其の建物の借主は、其の建物の敷地又は換地に最初に築造された建物に付て優先的に賃借することが出來るやうになつて居りますが、建物の種類が變つて、住宅が商店のやうなものになつたりした場合、或は換地にまで其の權利を認めるのかどうか、建物の種類が變つて住宅が商店になつた、又換地されて居つた其の換地まで此の權利が行くのかどうか、もう一つ御尋ね致したいと存じますが、之を先に御答へ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=37
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038・古島義英
○古島政府委員 此の法律の建前は居住者、借地人と云ふやうな者を保護する建前から出來て居るのであります、そこで燒失當時の土地に如何樣な家屋を建てましても、是は其の當時居住して居つた者ならば借地の申出が出來る、又換地の場合に於ても、換地先に於て此の土地の換地だと云ふことが明瞭であるならば、其處に建てた者に向つては勿論借家の申出が出來る、而も自分の住んで居つた家は如何樣な「バラック」でありましても、今後出來た家が鐵筋「コンクリート」の家であつても、之を禁止する條項はないと思ふのであります、法律の精神から申しましても、其の換地の上に最初に建てた家屋であるならば、どのやうな家屋であつても申出を致して一向差支へない、それは有效であると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=38
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039・神田博
○神田委員 只今の司法政務次官の御答辯に依り、非常に安心致しました、どうか將來ともさう云ふ方針で運用されんことを切望致します
もう一つ簡單に御尋ね致します、第二十七條の「この法律を適用する地區は、勅令でこれを定める。」斯うございまするが、是は今後廢止になります戰時罹災土地物件令の通りであるかどうかと云ふことを御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=39
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040・古島義英
○古島政府委員 此の法律を適用する區域は罹災都市でありますから、必ずしも全然物件令と一致するかどうかと云ふことは、是は保證出來ませぬ、此の物件令の方で申しますると、まだ其の他の土地も含まれることになりますから、是は戰災都市でない所には、適用されぬことになるであらうと思ひますが、其の範圍等は此の明文の通り勅令で一々之を指定することになつて居ります、左樣御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=40
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041・原増司
○原説明員 只今政府委員から御話がありました點に付て少し補足して申上げたいと存じます、御承知のやうに物件令は終戰當時まで七十二の地區に適用されて居つて、本法は提案趣旨にもございましたやうに、物件令の跡始末をする必要上當然其の七十二の地區には適用致されます、併しながら罹災都市として考へられるのは其の七十二地區に限らず、昨年十一月閣議の諒解事項となつた罹災都市が百十九と數へられたのでございます、其の大部分は只今申しました七十二の地區を含んで居りますけれども、此の百十九の都市の中、中には鹿兒島縣の或る村の如きものも入つて居りますが、斯う云ふのは法律の性質上除外するとしても、大體に於て此の百十九の都市の中、罹災戸數竝に疎開戸數が多數に亙る都市、及び其の隣接の町村に適用する豫定でございます、唯其の百十九の都市の中には、所謂罹災の都市ばかりを入れて居りますが、其の他に本法は第九條に於て疎開も取扱ふ關係上、或は疎開家屋は非常に多かつたが、併し戰災はなかつたと云ふ都市に於きましては、其の百十九に含まれて居りませぬけれども、疎開跡地の關係上、或は百十九以外にもさう云ふ都市が考慮されるかと存じますが、大體に於て只今申上げた範圍に於て、適用される豫定であると御諒解願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=41
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042・神田博
○神田委員 私が御尋ね致したいと思ひますことは、大體以上でございます、何れ又他に關聯質問でもありました場合、或は遂條等の場合に尚ほ詳しく御伺ひする機會があるかと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=42
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043・本田英作
○本田委員長 本日は此の程度に止めまして、明日午前十時から開くことに致します、是にて散會致します
午前十一時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00219460801&spkNum=43
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