1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
罹災都市借地借家臨時處理法案(政府提出、貴族院送付)
訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付)
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昭和二十一年八月五日(月曜日)午前十時二十六分開議
出席委員
委員長 本田英作君
理事 石原圓吉君 理事 鈴木仙八君
理事 林連君 理事 武藤運十郎君
九鬼紋十郎君 細川八十八君
金井芳次君 大矢省三君
鹿島透君 酒井俊雄君
中田榮太郎君
同月三日訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)及び辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付)の審査を本委員に付託せられた
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
出席政府委員
内閣事務官 財津吉文君
内務事務官 岩澤忠恭君
大藏政務次官 上塚司君
司法政務次官 古島義英君
司法事務官 奧野健一君
文部政務次官 長野長廣君
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本日の會議に付した議案
罹災都市借地借家臨時處理法案(政府提出、貴族院送付)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=0
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001・本田英作
○本田委員長 開會致します、此の際御報告致して置きます、去る三日の本會議に於て、本委員會に訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案及び辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案が併託致されましたから、此の際御報告致して置きます、一昨日に引續き質問を續行致します──酒井君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=1
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002・酒井俊雄
○酒井委員 次は鑑定委員會の組織權附に付きまして、少しく御伺ひをしたいと思ひます、尤も是等のことに付きましては、先般既に他から質問があつたやうでありまするが、重要なことでありまするので、重ねて御伺ひを致したいと思ひます、茲に鑑定委員會なるものが構成されまして、相當の權限を持つ譯でありまするが、其の委員會は、地方裁判所の所長が委員を任命すると云ふ建前になつて居ります、併し過去の斯うした委員會なり、各種のものに付て見まするのに、至つてどうも其の當を得なかつたやうな結果になつて居るのであります、それは結局裁判所の一長である所の裁判所長あたりが任命を致しますので、非常に見解が狹い、是は何も其の裁判所の長が、知識、識見が足らなくて見解が狹いと云ふことでなしに、時々轉任と云ふやうなことがございます、長く其の土地に馴染むと云ふことが割合少いので、さう云ふ人の個人の見立に依りまして委員を選ぶと云ふことは、どうも結果から見まして面白くない、他に相當適任の人があるのにと考へられるやうなことが、寧ろ多いのであります、さう云ふ意味から致しまして、其の土地に永續をして居りまする所の、相當の權威者と云ふやうな者も、此の委員の選定に當らせる、何等か茲に合議でも──大勢の人の力を集めて委員の選定に當らせる必要があるのぢやないかと思ひます、調停委員などに付きましても、他は知りませぬけれども、私共始終地元區にありまして見聞きして居りまするものに、至つてどうも情實關係が多いのであります、殊に裁判所が選任を致しまするので、又調停になつて事件の割當を致しますのも、裁判所の書記あたりが致しまするが、隨て費用稼ぎに出て來る、全く事件其のものは裁判所の判事の最後の意見に任せてしまつて、一向どうも無責任な、場當りな調停を致しまして、費用稼ぎを致します、さうして本當に職業的に、同時に三つも四つも事件を持ちまして、毎日々々出て來る、全く是等の者は職業であります、さう云ふ傾向が隨分多かつたのであります、斯う云ふ日當稼ぎに來ると云ふやうな者は、斯う云ふ時代になりまして、あの日當と云ふものが引合はなくなれば、今後は割當てられても出ないと云ふやうなことになつてしまふ、さう云ふやうな點を見ましても、洵に組織としては結構でありまするが、鑑定委員を選ぶと云ふことは、其の選ばれた人の如何に依りまして、此の運營が巧く行くか行かないかと云ふことになつてしまふ、今までの色々な委員なるものは、大體に於て形式上は立派に考へられ、立派に整つて組織立てられたのでありまするが、實質上はさう云ふ委員の選任が惡かつた、委員になつた人が惡かつた爲に、甚だどうも失敗の形であると云ふやうなことになつて居ると、私共は思つて居る、さう云ふ意味から致しまして、何とか此の委員選定の方法は、客觀的に見まして妥當なる人が選任されると云ふやうな、特別の方法を考へて貰ひたいと思ふのでありまするが、此の點に付て、政府當局に於かれましては何とか一考をされる御用意はないかと云ふことを承ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=2
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003・古島義英
○古島政府委員 鑑定委員會の組織に付きましては、全く重大なことであり殊に鑑定委員會は普通の場合と違ひまして、今までの人事調停、其の他の借地借家調停の委員とは違ひまして、斯う云ふ時代に於ける鑑定委員でありますから、餘程注意せねばならぬのであります、勿論此の鑑定委員は、私が申上げるまでもなく裁判所の一機關であります、諮問機關になつて居りますから、此の點に付ては、裁判所長と云ふものは餘程愼重な態度を以て選任せねばならぬと思ふのであります、幸ひに今囘此の法案が通過致しまして、此の鑑定委員を地方裁判所の所長が選任致します時には、先般も林君に申上げて置いたのでありますが、勿論辯護士會と云ふやうなものの意見も聽かねばならぬと思ふのであります、其の他法曹關係の意見等は十分斟酌を致しまして、萬遺漏のないやうな委員を選任致したいと存じて居ります、殊に只今酒井さんの御話のやうに、日當稼ぎをするとか、或は自分で強ひて何かの運動をした件數を殖やすとか、毎日出るやうなことにするとか云ふやうなことは、洵に忌むべきことでありまして、殊に此の間に情實が挟まると云ふやうなことになつて參りますれば、鑑定委員會の威信にも關することでありますから、其の點は十分注意致しまして、違算なきやうにやる積りであります、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=3
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004・酒井俊雄
○酒井委員 前々色々借地借家に付きましても、其の他人事に付きましても、調停委員なるものが出來て居りますが、是等の弊害の部面と云ふものに付ては、當局も十分御承知のことと思ひます、中には調停をやつて居る其の間、結局是は難しいから調停はどうも出來さうもないと云ふやうなことで、自分の知つてる方の當事者に對して辯護士の斡旋をしてやつて、辯護士と結託をして上前を刎ねる、かすり稼ぎをすると云ふやうな者も現にあつたやうであります、其の他洵に偏頗な、自分の知つてる者に非常に偏頗な取扱ひをやると云ふやうな、樣々な缺陷を持つて居ります、是は結局制度の罪ではなくて人の罪であります、其の衝に當る人の罪でありまするので、どうか此の鑑定委員の選任に當りましては、さうした弊害のないやうに、愼重なる方法を以て選任される御用意が願ひたいと思ふのであります
次に鑑定委員會の權限に付きまして……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=4
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005・本田英作
○本田委員長 一寸酒井君、發言中ですが、大藏政務次官が増税の方に行かなくてはならぬ關係があつて、大藏省關係は……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=5
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006・酒井俊雄
○酒井委員 簡單ですから、此の權限だけ御聽きします、鑑定委員會の意見は、結局どう云ふ風に採用され、或は不採用されるものか、詰り鑑定委員會の意見が、裁判所のなしまする裁判にどの程度の實質的な力を持つものかと云ふ、其の權限を一つ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=6
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007・古島義英
○古島政府委員 鑑定委員會は先程も申したやうに、裁判所の一諮問機關でありまするから、どうしても鑑定委員會の意見を聽かねばならぬと云ふ條項もあります、又場合に依れば、鑑定委員會の意見を必ずしも聽かぬでも判斷の出來る部分もあるのであります、主として法律關係等に付きましての判斷は、鑑定委員會の鑑定を聽きませぬでも、出來る部分が多分にあると存じます、若しくは適當な處分をすると云ふやうな意味合に於ける處分行爲の如きは、是は鑑定委員會の意見を聽かぬでも、十分裁判所だけで出來ることと思ふのであります、そこでどうしても鑑定委員會の意見を聽かねばならぬと云ふ部分は、條件に付て、所謂契約の内容條件に付ての協議が調はないと云ふやうな場合には、是は聽かねばならぬことである、所が其の鑑定委員會の決議に、裁判所が必ず拘束されるかと云ふと、必ずしも是は強制的に拘束されるものではないと思ふのであります、詰り言へば、判斷機關でなくて諮問機關なるが故に、其の決議を材料と致して、裁判所がそれを採り入れて、最後の判定をすれば宜いのでありまするから、權限と申しましても、其の契約内容、條件等が果して妥當であるか、妥當でないかと云ふことの判定を與へるだけの程度になりまして、それを採用するか採用しないかと云ふことは、最後の裁判所にあると云ふことは、法の精神上明かだと思ふのであります、從つて鑑定委員會の權限に於きましても、諮問された事項に向つての決定を與へる決議をすると云ふ程度になりまして、此の法の十九條の書き方、或は二十一條の、祕密にやつて意見だけ述べると云ふ意味合から見ると云ふと、さう云ふ風に斷定が出來ると信ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=7
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008・酒井俊雄
○酒井委員 十五條、十七條には鑑定委員會の意見を聽くことが條件とされて居るやうであります、其の他の條項の、當事者間に爭ひがあると云ふやうな場合にも、鑑定委員の意見を聽くことが出來るのか、さう云ふ場合には鑑定委員の意見を聽かないと云ふことになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=8
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009・古島義英
○古島政府委員 聽かねばならぬと云ふことは、借地借家の契約の内容に付ての時には、どうしても聽かねばならぬことに相成るのであります、簡單に申しますると、法律關係──其の借地の申入が正當であつたか、まあ正當と言ふと語弊がありますが、其の期間内にやられたものであるか、若しくは其の滅失したる家屋、若しくは除去されたる家屋に住んで居つた人であるか、其の後に家屋が建ててあるのであるかと云ふやうなことの判定の時には法律關係の部類に屬する部分は、必ずしも鑑定委員會の意見を聽きませぬでも宜しいと思ひます、若しくは先程申しました、既に受取つた金等に付て、之を適當な處分をする、詰り申せば、それを相殺の金圓にするとか、或は月賦拂にするとか、若しくは之に向つて擔保を供せさせると云ふやうな、既に不當な金を受取つた、其の金を處分等に付ての判斷等には、是は聽かぬのでも宜い方になると思ふのであります、併しながら、少くとも是が高いか安いかと云ふやうなことに付ては、是は當然聽かねばならぬことだと思ふのであります、即ち煎じ詰めて申しますると、法律上の關係に於ける紛爭は、聽かぬでも宜い部分が多分にあります、契約内容に付ての事項は、聽かねばならぬ部分が殆ど全部だと存じます、左樣なことに思召を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=9
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010・酒井俊雄
○酒井委員 それでは大藏當局に對しまして少しくお尋ねしたいと思ひます、前の土曜日に色々應答をされた事柄に關するのであります、罹災者でありまして、本法案が法律になつた場合、此の法律に依つて所謂保護される適格罹災者は、罹災の當時家を借りて居りまして、さうして此の法律上の權利を持つて居る者、即ち此の條文の通り、此の法律實施の時から一箇年以内に適法に賃借の申出を致しまして、賃貸借契約が成立した場合を考へて見ますると、折角法律の上では土地の賃借を得、一應保護を得たと云ふことになりましても、賃借の時から半箇年間以内に、建物所有の目的で、其の土地の利用を始めなかつた場合には、結局是は解除されることになるのであります、所が、法律の建前と致しましては、已むを得ないことだと思ひますけれども、實質上から考へて見ますと、先日も申しましたやうに、罹災者の殆ど大部分は裸一貫、持つて居る動産などと云ふものは總て燒かれてしまひまして、多少の金のあつた者もあるかも知れませぬが、其の後の經濟界の「インフレ」的な状況に依りまして、全く金も使ひ果してしまつて、其の日の生活にも困ると云ふやうな者が、其の數に於て大部分であります、さう云ふ者に、半箇年以内に建物を建てる爲に其の實行に移らなかつたならば、解除になると云ふことでは、形の上からは保護をされますけれども、實質上からは是はもう無きも同然、寶の持腐れと云つたやうなことになつてしまふのであります、そこで、今さう云ふ罹災者の人々の經濟關係を見まするのに、彼等が持つて居る唯一の資産なるものは、彼の戰爭保險金であります、其の保險金が唯一の財産だと云ふ人が多いのであります、是は所謂特殊預金とされ、使ふことが出來なかつたので、已むを得ず殘つて居る、其の已むを得ず殘つたものが財産で、あとは全く裸一貫と云ふ状態の人が非常に多いのであります、私共も罹災をして同じ状態でありまして、當時から裸一貫にされ、苦しい生活を續けて來て居ります、保險金も、特殊預金にならなければいつか生活に振向けられて居つたのでありますが、特殊預金になつた爲に是は放つて居つたと云ふ大衆に取つては、命の綱の財産である、今度之に對して色々な制限が施されるのでありますが、斯う云ふものまでも無效にすると云ふやうなことになりましては、如何に斯う云ふ法律で、元の地に歸つて家を建てると云ふ權利を認めて貰ひました所が、空文に等しいものになる譯であります、大部分の人がさうなる譯であります、さう云ふ意味に於きまして、是はもう他の委員會、或は本會議あたりで質問が度々あつたことと思ひますが、特殊預金に對しまする處分は、一體どう云ふ風になされるものか、尚ほ一般的にはさう云ふ處分は仕方がないと致しましても、此の法律に依つて再び元住んだ所に戻つて家を建てることが出來ると云ふ適格者に對しては、何等か其の特殊預金を特別に或る程度認めて、さうして家を建てさせてやると云ふやうな、特別な方法は出來ないものか、此の二點に付て一寸承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=10
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011・上塚司
○上塚政府委員 御答へ致します、戰災者の家屋建設の資金として、戰災保險に掛けて居つた所の保險金をどうするかと云ふ御尋ねでございます、此の點に關しましては、まだ茲にはつきりと明言する許しを得て居りませぬけれども、概念を申上げますれば、或る一定の限度を設けて、それ以下の金額の保險金に對しては拂戻を認めることになつて居ります、其の限度は、一般庶民階級の保險金としては相當の額でありますから、大部分の人はそれに依つて救はれ得ると考へるのであります、隨て此の第七條にありまする、六箇月を經過しても正當の事由がなくて仕事を始めることが出來ないと云ふやうなことは、恐らく普通の人に於ては解消せらるるではないかと考へるのであります、又萬一それが遲れたと致しましても、其の遲れた事由に依つて着手することが出來ないのでありますから、此の第七條の規定が、罹災者に取つて無效になると云ふことはあるまいと考へて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=11
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012・酒井俊雄
○酒井委員 私の尋ね方が少し惡かつたと見えまして、御答へがぴつたりして居ないやうであります、結局大藏當局の仰しやるのは、零細な戰災保險金は拂つてやる、だから此の六箇月の期間内に間に合はせると云ふ御答へのやうでありますが、それは零細な保險金をも唯一の財産にして居るやうな者は、全然此の第六條の六箇月の期間内に、建物を建てることに著手すると云ふことは出來ない部類の人であると思ひます、坪三千圓も五千圓も、或は六千圓もと云ふやうな建物は、假令十坪の家にしても、中々出來つこないと私共思ふのであります、私が聽きましたのは、さうした一般的なことでなくて、特に建物を建て得る所の財力のある者、詰り特殊預金を多額に持つて居る、斯う云ふ者に對しては、何等か特別な方法で以て其の特殊預金を解除して、相當な額まで、特に罹災者でありまするから、それを助ける意味で之を支拂つてやると云ふ、特別な方法は考へられないかと云ふ意味の御尋ねであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=12
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013・上塚司
○上塚政府委員 或る一定額以上の保險金は當然凍結せられるのでありまして、あなたの仰しやる零細なと云ふのがどの程度でありますか、はつきりと私掴むことが出來ませぬけれども、恐らく今囘決まる所の或る一定の限度と云ふものは、保險を掛けた人々の大多數が、其の範圍の中に入るべき限度であると思ふのであります、特殊の大きな保險を掛けた人が、自分で大工の手を持ち、資材を持つて居るからして、餘計に掛けた部分を拂ひ出して、それを建たせようと云ふやうな、特殊の取扱は出來兼ねると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=13
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014・酒井俊雄
○酒井委員 是は私の黨の人から、特に尋ねて貰ひたいと云ふ注文付きの質問でありますが、私立學校などが罹災致しまして、保險には相當掛つて居る、併しながら御存じの通り私立學校の經營、大きな大學などは知りませぬが、中等私立學校などは、相當財源的には困難な状態にあるものでありまして、其の私立學校の財産の本である校舍、或は色々な器具、機械、斯う云ふものが烏有に歸した後は、到底保險金を別にしては再起の途がないと云ふのが大部分である状態であります、是は社會公共的なる事業であり、事教育に關する事業であります、罹災したが爲に私立學校が大部分閉鎖になつてしまふと云ふやうなことは、國家教育の上から見ましても一大問題だと思ふのでありまするが、さう云ふものの戰爭保險に付きましては、何か特別な御考慮が拂はるるのでございませうか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=14
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015・上塚司
○上塚政府委員 文教の忽せにすべからざることに付きましては、一昨日衆議院に於ける各派共同の提案に懸る文教再興の決議案に對しましても、全會一致を以て通過したやうな状態であります、現政府と致しましても、文教の再興に付ては最善の努力を拂つて居るやうな次第であります、隨て今御話の如く、罹災學校は其の復舊に付きましては非常に困つて居る、萬一保險金等が取れないと云ふことになりますと、復舊が難かしいことは御話の通りであります、斯くの如き教育施設の復舊等に關しましては、他と違つた取扱を致さなくちやならぬと云ふ考へを以ちまして、目下其の取扱方に付きまして專ら研究中であります、出來るだけ復興の出來るやうに、或は保險金を以てするか、他の方法を以てするか分りませぬが、努力を續けて居るやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=15
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016・酒井俊雄
○酒井委員 當局に於かれまして、尚ほ現在確定した所の案を御持ちにならぬかも分りませぬが、大體のことは恐らく決つて居られることと思ひまするが、復興は保險金なり或は他の何等かの補助金なりに依つて、必ず出來ると云ふことになりまするか、それは一寸難かしいと云ふことでありまするか、勿論五年十年後のことは別問題であります、學校の仕事は何時までも餘裕を持つ譯に行かない仕事であります、至急どちらかの方法で、必ず復舊の見透しは付くのか、付かないのか、どの程度まで政府で是が決まつて居るのか、御答辯願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=16
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017・上塚司
○上塚政府委員 今御趣旨に沿うて努力中であります、具體的なことを申上げる時期にはまだ達して居りませぬ、出來るならば今期議會に於て、さう云ふものの提案が出來るやうに致したいと云ふ考へを以て努力中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=17
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018・酒井俊雄
○酒井委員 大藏當局に對する御尋ねは此の程度で終ります
次に司法當局に御尋ね致したいのでありますが、先日の司法當局の御答辯では、此の法律が實施になるのは、大體十月一日からだと云ふことを聽きましたが、其の豫定に間違ひございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=18
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019・古島義英
○古島政府委員 御承知の通り國家總動員法が廢止になりまして、同法が廢に止なつた結果は、それに關しての勅令若くは非常處置、左樣なものが同廢止法の附則に依りまして、廢止の公布のありました後六箇月しか效力がないのであります、即ち前の物件令の如きは、本年の九月三十日で失效をすることになつて居ります、左樣な事情等もありますので、本法は御協贊を得まするならば、成べく早い機會に於て公布致したいと存じて居るのであります、假に此の法律に依る保護、物件令に依る保護、是が重複致すやうなことが起りましても、それは保護に於て重複致すのでありますから、相成るべく早く之を施行致したい、初めの間は九月中にも施行致したいと云ふ考へでありましたが、幾ら遲れましても十月の一日以後に致したくない、出來るだけ早くやりたいと云ふ希望を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=19
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020・酒井俊雄
○酒井委員 此の法律の適用地區は、もう既に決つて居るのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=20
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021・古島義英
○古島政府委員 どなたの質問でありましたか、恐らく石原さんの質問であつたと存じますが、此の地區は曾ての物件令に依る適用地區以外に、戰災地全部に及ぶのでありまして、而も戰災地の中で一部及ばぬ場所がありましても、それは町村の詰らない、僅かの部分と云ふやうなことであります、少くとも一千戸、二千戸と云ふやうな罹災地のある場所に於ては、全部之を適用致したいと云ふ希望を持つて居るのであります、御承知の通り舊物件令の六條の規定に依りますると、其の規定に依つて適用されて居る地區は、七十二地區になつて居るのであります、所が戰災中、相當數の罹災戸數や疎開戸數がありますので、本法の適用する區域はそれより非常に廣くなると思つて居るのであります、丁度昭和二十年の十一月十二日の閣議で是は出たのでありますが、其の閣議で諒解を得ました戰災を受けました戸數及び疎開戸數の總數の中、千乃至二千を超ゆる市町村及びそれに隣接する町村には、全部之を適用致したいと云ふ考へでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=21
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022・酒井俊雄
○酒井委員 最後に、是は御答辯を戴けるかどうか分りませぬが、私共小さな政黨でありますが、此の法案全部を眺めて見まして、客觀的に又正しく眺めて見まして、形式的には一應罹災者の保護と云ふことは整つて盛られて居りますが、實質上に付て見ますと、全く是は單なる空文に歸する、都市復興の促進と云ふ點に付きましても、此の法案では其の目的を達する部分が、一體どの程度あるかとまで考へられます、唯此の法案が果すであらう其の目的は、土地建物に關する法律關係を一應整理することだけは、是で其の目的を達することが出來ると思ひます、罹災者に對する保護なんと云ふ點に付きましては、昨日も私が色々な觀點から御尋ねを致したのでありまするが、結局政府當局に於かれては、金のある者、物を持つて居る連中は助けてやるが、實力のない者、金のない者、物を持たない者、さう云ふ者を救ふ法律ぢやない、さう云ふ目的は此の法律は持つて居ない、斯う云ふ答辯でありましたが、是は私は時代に反する考へであり、以ての外の考へであると思ふので、事實此の法律は條文だけでは、罹災を致しました所の大衆の八割、九割までは絶對に救はれないのであります、外に何か方法を考へて戴けないかと云へば、一向誠意ある御答辯を得られない、結局此の條文だけが物を言ふと云ふことになりますれば、金のない者、物のない者、是が假に都市へ轉入が許されて、賃借權が此の條文に依つて保護されて成立したと致しましても、半年以内に家を造る爲に著手する、引續いて建物を完成すると云ふやうな力のある者が、幾人あるかと私は言ひたいのであります、斯う云ふ事實は政府當局も能く御存じのことであります、御存じのことでありながら、力のない者は仕方がないと云ふやうなことで、此の罹災者保護なんと云ふ目的を掲げることが、私は以ての外だと思ふのであります、極端に言へが、是は寧ろ國民大衆を瞞著するものだとまで、私は言ひ切ることが出來ると思ひます、尚ほ此の法律の建前から致しましても、他に保護の途がない譯ぢやない、先日も御尋ねを致しましたやうに、永年父祖の時代から其の家に住み、其の家に住んだが故に其の土地的な値打、其の家の値打と云ふものに依つて生きて來た無形的な財産と云ふものが、そこに存した筈である、それが烏有に歸したのである、さうして地主の側から申しますれば、其の無形的な權利を自分が買取して、此の土地を何とか利用すると云ふことになれば、相當な金を出さなければならぬ筈である、不可抗力に依つて、結局罹災者は其の無形的な權利を失つたのであるが、地主側から言へば、えらい厄介の附著して居つた權利が取り拂はれたのである、だからさう云ふ無形的な權利、而も其の暖簾に附著した所の暖簾金と云ふやうな特殊的なものでなくて、場所的な、客觀的な、無形の權利と云ふものがある譯である、其の範圍に於ては、地主或は借地人、斯う云ふ者に買取るの義務を一つ認めたらどうかと云ふ御尋ねをしたのに對しても、何等どうも考慮の餘地もない程あつさりと、さう云ふことは考へて居ないと云ふことでありますが、眞に今罹災を致しまして、家を失つて居る者の其の生き方、金もなければ衣類什器もない、食ふに食がないと云ふ哀れな状態であります、一般の人々も、あの戰災の當時は同情の餘り家の一間を貸したり、離れを貸したりしたのでありまするが、其の後日が經つに從ひまして、而も一年も經つた今日、已むを得ず、他へ疎開して同居をして居る罹災者の人々の生活を見ますると、嫌はれ、迫害され、全く氣の毒な状態にあるのであります、さう云ふ姿を政府當局は知られない筈はないのであります、此の法案が罹災者保護の其の目的を眞先に掲げた以上、實質上に其の罹災者の保護がなされると云ふ建前の下に御考慮を願はなければ、結局是はさう云ふ方面に於ては一つの空文に過ぎないと私は考へるのであります、此の法律の條件の通り、借りてから半年以内に建物を建てることに著手し、引續いて之を完成するやうな力のある者が幾人あるか、さう云ふ點に於きまして、私共は此の形式的な條文、此の法案、之に付てはどうしても不滿足の意を表せざるを得ないのであります、勿論政府當局に於ても、此の罹災者大衆を救ふと云ふことに全然御考へがない譯ではないでありませうが、私共に言はせますると、是は少し不遜に當るかも分りませぬが、官僚の排撃を叫びながら、知らず識らずの中に官僚的な立法をなし、官僚的な政治をなすと云ふことが何度も繰返されて來ました、是は日本の政治の歴史上の事實でありますが、今も尚ほ民主主義を唱へ、民主政治を口にしながら、やはり斯うした國民大衆の保護と云ふやうな點になると骨拔きになる、形式だけの法案を茲に作り上げる、何と之を見ましても、客觀的に見ました場合に、私は大衆罹災者に取つて、是は單なる高嶺の花と申しますか、手折ることの出來ないものに過ぎないと私は考へるのであります、どうかさう云ふ點に於きまして、政府當局は何とか之に實質的な效果を持たせるやうな御考慮を拂つて戴きたいと思ふのであります、御答辯が願へることならば、御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=22
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023・古島義英
○古島政府委員 酒井さんに大分御叱りを受けまして、洵に恐縮であります、併しながら酒井さんも御承知の通り、法律は萬能膏ではないのであります、一目的を立ててやつて全體が救濟出來ることになれば、法律が幾本にも分れる必要はなくなるのであります、一本で助かるやうな法律がありますれば、それ程結構なことはありませぬが、殘念ながら今日の知識の程度では、到底さう云ふことは企圖出來ないのであります、本法案が金持のみを救ふのである、若しくは建てる資力を有する者のみを救濟するのであると云ふやうなことを、政府委員が答へたと云ふことを仰せになりましたが、左樣な答へは一度も致したことはありませぬ、疎開して他に行つて居る者が轉入した場合にどうだと言はれるから、轉入する方法等は他に講じて戴いて、轉入して參つたがこつちで家屋を建てることが出來ないと云ふやうな場合には、本法が活動をするのだ、又こちらに居りまして、假設建設物を拵へまして、それに辛うじて住んで居つたが、今度それが取拂はれて、更に又他の疎開先、替地等に行つて建てられた場合等も、是も假想を致して、其の救濟の策も講じて居ります、若しくは又疎開する資金もなし、こちらで假設建設物も建てることが出來なくて、全く戰爭當時のあの防空壕の中に辛うじて棲息致して居ると云ふやうな、本當の下積み階級の人達の、其の窮境まで察しまして、其の人達が替地若しくは自分の借りて居る土地に家屋を建設する場合には、それに向つて借入を申込めば優先的に借りることが出來ると云ふやうな、左樣な階級の人までも救濟出來るやうに、是は考慮致して居るのであります、言葉を換へて申しますると、本法の立案は、大きく言ふならば、衣食住中の柱に付ての窮境を救濟しようと云ふのが本法の目的であります、食の問題、衣の問題、或は其の他の醫療の問題と云ふやうな、戰災者の困窮致して居りまする萬般のことを、此の一本の法律で救濟するのでないと云ふことは御承知の通りであります、然らば此の法律を以て全部の戰災者が救濟出來るかと云へば、勿論是は申上げるまでもない、救濟することが出來ないのは當然でありますが、それは法律の狙ひではないのであります、詰り住の問題に付て、之を解決致したいと云ふ希望を持つて居るのであります、而も先般酒井さんが御質問の際、暖簾等のことに付ては更に考へないではないか、或は老舖のことに付ては更に考へないではないかと云ふことでありますが、考へないことはありませぬ、此の法律を能く讀んで戴けば、どの部類にかそこは出て居ります、まあこんなことは私が諄く申す必要はありませぬが、例へて申しますると、此の十六條の場合に於ても、是は末項に書いてありますが、此の協議の調はなかつたと云ふやうな場合に於てはどうするかと云ふと、「土地又は建物の状況、借主又は讓受人の職業その他一切の事情を斟酌して、」と云ふ其の中の職業の如きは、現に店のことも考へ、其の人の老舖である、暖簾であると云ふことも考へて、而も之を斟酌して割當をすると云ふ所まで、細かい所に注意をしてやつて居るのであります、斯樣な事情で、之を以て全部を救濟すると云ふことは、是は期待することが餘り大きいのであります、此の法律は全く無駄になるかと云ふと、無駄どころではありませぬ、若し戰時立法でありました今の戰災地の戰時罹災土地物件令が效力を失すると云ふことになつて、それが目の前に見えて居るのであつて之をどうするかと云ふ問題が焦眉の急であります、僅か一箇月先には是が失效するのである、然らば折角今度は假設建設物を拵へた戰災者、若しくは壕に住んで居ると云ふやうな此の憐れむべき戰災者をどうするかと云ふことを、先づ決著しなければならぬのであります、さうして、而も遠くに疎開を致し若しくは避難を致して居る人達が、愈愈戰爭が濟んだ、暫く經つたと云ふので、こちらへ歸つて來て、さあ建てる場所がないと云ふやうなことがあつては大變である、其の人達も追々歸るだらう、歸ることになれば之も救濟してやらなければならぬと云ふことで、そこに著目して本案を拵へたのでありまして、どうか此の法律が萬能膏のやうであつて、一切合財是で救濟すると云ふやうな大きな御期待は、どうも望んで戴くには參りませぬが、少くとも住關係に於ては相當程度に於て救濟し得られるものと存じますので、左樣御諒承の上に御協贊願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=23
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024・本田英作
○本田委員長 酒井君、一寸御注意ではなくて御相談ですが、是れ以上は意見の相違と云ふことになりはしないかと思ふし、本案に付ては希望條件と云ふやうなことも御協議したいと思ひますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=24
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025・酒井俊雄
○酒井委員 一言だけで終ります、全く私から言はせますると、的外れの御答辯だと思ひます、此の法案の條文の實質上の恩惠を浴することの出來る力のある者に付ては、此の條文は十分保護をして呉れます、洵に結構な法案でありまするが、力のない者に對しましては空文に等しいと私は申上げた譯で、而も萬能膏と言はれますが、是は萬能膏を要求して居るものでなし、さう云ふ御答辯を御願ひしたものではないのでありまして、第七條の關係のみに付て見ましても、此の第七條の規定がある以上、六箇月の期間が條件となつて居る、さう云ふ條件がある以上、力のない者に取りましては此の條件を充たすこれが出來ないのであります、だから此の七條の範圍を、此の條件の範圍内のことでも宜しい、條件を充たすことの出來ない者には、而も長年住んで大なる權利を失つた者に對しては、地主はそれだけの得をするのである、借地權者もそれだけの得をするのであるから、買取りの權利を認めてやる、或は他に何等か建物の建つやうな方法でも考へてやるとか、さう云ふ條項を一條加へるとか、何とか云ふことで、救濟が出來る範圍のことを私は御願ひして居る、罹災者全部何でも救つてしまへと云ふやうなことを御尋ねして居るのではないのでありまして、今の十六條か何かの例を引いて、之に依つても暖簾の權利と云ふものが考へられて居るぢやないか、是はやはり法律の適用を實質的に受けることの出來る力のある者に對しては是で宜い、斯う云ふことになる、力のない者に付て見ますと、十六條に付ては私は同じことであると思ふ、力のない者は、如何なる權利を保證して貰つた所が何にもならぬのだから、形式上保證した以上、實質上之に伴ふやうに、せめて買取請求權位は認めてやつたらどうかと云ふことを、御尋ねした譯であります、而も戰災者の保護と云ふことを、此の立法の目的の第一に掲げて居る、其の第一に掲げて居られることが實質上十分でない、寧ろ殆ど骨拔きだと考へまするので、御尋ねしたのであります、土地建物に關する法律關係の整理と云ふことは、最初申上げましたやうに是で結構でありませう、私は只今の政府當局の御答辯には滿足するものではありませぬが、委員長の仰せの通り、是れ以上やりますると押問答になりまするので、是で私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=25
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026・本田英作
○本田委員長 武藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=26
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027・武藤運十郎
○武藤(運)委員 大藏大臣に一點だけ御伺ひします、只今酒井さんから御尋ねになりました戰爭保險のことに關聯をするのでありまするけれども、新聞紙の傳ふる所に依りますると、戰爭保險を或る程度認めるのは個人だけであつて、法人は全部打切つてしまふと云ふやうなことを聞いて居ります、例へば個人は五萬圓まで認めてそれ以上は打切る、法人は全部打切つてしまふ、斯う云ふ風に見えて居るやうでありますけれども、法人と個人とを區別致しますのでせうか、又致しますに付きましては、どう云ふ觀點から致しますのでせうか、大きい軍需會社と云ふ風な法人は別と致しまして、御承知の通り、東京其の他の都市に於きましては、僅かに、三千圓或は一、二萬圓の資本金の合名會社、合資會社と云ふ風なものが澤山ございまして、さう云ふものが一軒なり二軒なり家を持つて居るのもあります、それから又家主に讓渡して居りますもので二、三十軒、或るは百軒と云ふ風な家を持つて居ります合名會社、合資會社と云ふ風なものもあつて、それが燒けて同じやうに、戰爭保險を取つて居ると思ふのでありますが、同族だけで出來て居ります合名、合資と云ふやうな、二千圓、三千圓或は一、二萬圓の資本の名目だけに過ぎないやうな法人に付きましては、殆ど個人と差別すべき理由がないやうに考へられます、それから私は原則として家主を認めるものではありませぬけれども、零細な居住者に全部の家の復興を任せると云ふことも中々困難であると思ひますので、此の際家主の持つて居ります家を建てる技術、管理する技術、さう云ふものを國家的に統制しつつ利用することも、復興の爲の一つの方法ではないかと考へるのでありますけれども、左樣なものに付ては、若しそれが法人であつて合名會社、合資會社と云ふやうな場合には、やはり是は打切つてしまつて、全部戰爭保險金と云ふものは認めないことに致しますものかどうか、御伺ひをしたいのであります
それから先程家の出來る程度は認めて、それ以上は凍結をすると云ふやうな御答辯がありましたけれども、凍結と云ふのは舊勘定か何かにして動かさないやうにするのでせうか、それとも取るものは取り、拂ふものは拂ふと云ふ譯で、課税と云ふ形式で五萬圓なら五萬圓以上のものは課税として取つて、もうなくなつてしまふのでありませうか、此の點を御伺ひしたいのであります、それから殘る一定額の五萬圓なら五萬圓と云ふものは、是は封鎖貯金になりますものでせうか、現金で支拂出しが出來るものになりますでせうか、それから假に凍結されるとしますならば、其の凍結された金額を擔保として、建物の建築、生活、さう云ふ風な特殊なものに付きましては特別な金融が出來るものであるかどうか、是だけのことを御答へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=27
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028・上塚司
○上塚政府委員 御答へ致します、戰災保險の支拂に付て、個人と會社と區別するかどうかと云ふ御尋ねでありますが、此の點に付きましては、色々新聞等にも發表されて居ります、支拂の限度等に付ても發表されて居りますけれども、まだ政府としてはそこに觸れる譯には參らぬのであります、極めて近い機會に法案として是は議會に提出されると思ひますけれども、まだ只今發表する域に達して居りませぬ、御諒承願ひます
それから新勘定と舊勘定に分けて、新勘定に入つた殘りのもの、詰り舊勘定と云ふものは總て凍結かと云ふ御尋ねでありまするが、舊勘定に屬するものに付きましては、其の時までに期限の參りました税金の支拂は之を認めることになつて居ります、第三の新勘定に入つたものは封鎖で渡すか、或は現金で渡すかと云ふ御尋ねでありますが、是は財界整理の一段落を見ました上は、一日も速かに新勘定と舊勘定との區別を無くして、新圓一本にする考へであります、其の時期に至りますれば封鎖も勿論解けることに相成るのであります、併し其の時期がいつであるかと云ふことに付ては、只今茲に申上げることは出來ませぬ、第四の凍結のものを擔保として金融することが出來るかと云ふ御尋ねでありますが、是は出來ませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=28
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029・武藤運十郎
○武藤(運)委員 第一點の法人と個人とを別にするかどうかと云ふことに付て、まだ御答辯の域に達して居ないと云ふことでございますが、先程申したやうに、機械的に唯法人と個人とを區別して、法人は打切りにすべきではないと云ふやうに考へますので、此の點に付きましては、どうか十分御考慮を願ひたいと云ふことを申上げまして、此の質問は打切ります、それから舊勘定になつたものに付て、支拂期が到來した税金は之を認めると云ふ御答辯でございましたが、さうなりますると、私の伺ひました凍結した分に付て、百「パーセント」の税を課けて打切と同じ效果を税に依つて擧げると云ふ御趣旨なのでせうか、それとも別に支拂期の到來した税金に付ては、其の中幾分でもあれば、其の中から支拂を認める、併し殘りも豫想は出來ると云ふ御考へでせうか、其の點だけ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=29
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030・上塚司
○上塚政府委員 私間違へて居りまして、封鎖特殊預金の殘額は税金を拂ふことは出來ませぬ、殘つたものは百「パーセント」の課税になります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=30
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031・本田英作
○本田委員長 それでは大矢省三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=31
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032・大矢省三
○大矢委員 多分同僚から御質問があつたと思ひまするが、折角の此の保護法を骨拔きにして居る箇條は第二條の第三項の但書であります、「土地所有者は、建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合」、是は是で宜いのですが、「正當な事由があるのでなければ、第一項の申出を拒絶することができない」、是が折角の此の法律を骨拔きにしてしまつて居ります、そこで此の正當な事由と云ふことをもつと具體的に──此の法律に若し表はさないならば、司法省の方で、是れ是れのものは正當の事由である、是れ以外のものは拒否することが出來ないと云ふものを、具體的に箇條書にして、此の機會に出す意思があるか、ないか、此の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=32
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033・古島義英
○古島政府委員 第二條の第三項が却つて此の法律を骨拔きにすると云ふ御言葉でございますが、それどころではないのであります、斯う申しますると、或は御氣持が惡いかも分らぬのでありますが、實際から申しますと、此の條項に依りまして借地の申入れをされた者が斷ることの出來ないことを明かに致したのであります、即ち正當な理由がないと勝手に斷ることが出來ない、原則としては其の儘申込に應じなければならぬ、殊にそれどころではなく、默つて居つた時には申込が直ちに效力を生ずると云ふことさへも決めて居るのでありまして、此の條項に依つて却つて活かすと云ふ目標を付けて居るのであります、それから正當な事由を悉く假想し得るものは列擧しろと云ふことでありまするが、御承知の通り、總ての法律上の、離婚問題に致しましても、離縁問題に致しましても、數多例示は致してあります、數多例示は致しましても、どうしても萬般のことは例示が出來ないので、其の最後には其の他正當の理由と、斯うやる外は法律の建前としては行かぬのであります、又今日豫想致したことが、其の後になつて豫想外のことが出て參るかも分らぬのでありますから、立法當時に於て是が正當なりと信じたもの、又正當ならずと信じたものも、時の情勢に依つてそれが正當に變つて來ると云ふことも、なきにしもあらずであります、そこで例示は一、二をやつて、後は正當の理由と言ふことに致しまして、法律に彈力性を持たせると云ふことが、却つて法律を活かす所以であると存じまして、斯樣な條項に致したいのであります、左樣御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=33
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034・大矢省三
○大矢委員 それは見解の相違であります、是は今日まで法律の適用を致します場合に、取扱者が必ず地主或は家主に有利に之を解釋して居ります、是は具體的に言ひますならば、例へば明渡しを申込む時に、自分の親戚を入れるとか、或は分居をさすとか言つたやうな、色々な理由を付けてそれを拒絶する、或は明渡しをすると云ふことになるので、明かに斯う云ふ場合には拒絶して宜しいと云ふことがなければ、此の解釋と云ふものを、取扱の解釋として色々に解釋する、殊に借地人、借家人と云ふものは、永い間の慣習に依りまして、お上には努めて厄介を掛けまい、さう云ふ爭ひをしまいと云ふ所に日本の美風がありまして、裁判所に厄介を掛けることを非常に嫌ふのでありますが、之を裁判所に持つて行つて、正當の理由を述べるとすれば、一方が述べれば爭はなければならない、其の點を明白にして置けば、借りるとか借りないとか、拒絶出來るとか云ふことが直ぐ分るけれども、此の正當な理由と云ふのは、先程申しまするやうに、其の人々の地代、或は其の環境、立場と云ふものに依つて皆違ふ、隨て之に依つて折角保護された者も、借地或は借家が其の人々に十分保護されないと云ふ結果になると私は思ひますが、それ以上は意見の相違で、寧ろ私共は是があるからいけないのだ、斯う云ふ風に解釋して居るのでありまして、私は是れ以上問ひませぬ
次に此の法律が十一月一日から施行されると云ふことでありますが、國家總動員法に依る家賃地代の統制が九月三十日消滅される、是が若し消滅した時には、私が想像するのに、數倍の値上を今虎視眈々として地主なり、或は家主が計畫して居ると既に言つて來て居る、之に對する對策が果してあるかないか、是も一つ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=34
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035・古島義英
○古島政府委員 御説の通りであります、實際地代家賃の統制令がなくなると云ふことになれば、或は急激なる値上等も豫想が出來るのであります、是は社會政策上到底許す譯には參らぬのでありますから、之に對しては適當な處置を執らぬばならぬと云ふことは、申すまでもないことであります、本法を成案するに當りましても、其の點は十分心の中に刻み込みまして成案してあるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=35
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036・大矢省三
○大矢委員 此の爲に今現存して居る所の借地借家調定法、あれをうんと活用するか、或は又本法に鑑定委員會と云ふものがありますが、さう云ふものを學校單位か、或は大都市の區を單位として、其處に出張所を設ける、一々それに諮つてでなければ上げられないと云ふやうな、一つの法令でも出すか、或はさう云ふ現存して居る機關を活用すると云ふ意思があるかないか、一つ御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=36
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037・古島義英
○古島政府委員 今囘憲法改正になりますれば、簡易裁判所を拵へまして、若しくは簡易裁判所の一部と致して、巡囘裁判所と云ふやうなことも考へて居るのであります、左樣なことが出來ませぬ時代に於きましても、曾て色々の調停を出張所に於てやりました如く、大體に於ては一箇所に纏めずに、出張所毎に處置すると云ふやうなことに運用致して參りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=37
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038・大矢省三
○大矢委員 それでは最後に伺ひます、今現に復興の途上にあつて、地主が不在の爲無斷で建てて居る家が相當あります、殊にそれは盛り場に多いのであつて、最近闇市場の取締の爲に、其の家屋の撤去も警察から命じて居る、東京は御存知の通り葦簾でやつて居りまするけれども、大阪方面には立派な建築が建つて居る、勿論是は地主の承諾したものもあり、或は不承諾のものもあります、殊に營利を目的とした、非常に惡質な、故意に無斷で建てたものもある、併し長らく其處に住んで居つて、地主が居らない爲に善意で其處に立派な住居を構へて一家住んで居る、是が撤去を命ぜられて、闇市場の取締と關聯して住居を脅かされる、勿論是は法律から見ますならば違法かも知れませぬが、法律上の手續なくして、警察が權力を以てそれを明渡さす、或は取壞しを命ずるとか、應じない場合には何等かの手段に出ると思ひますが、さう云ふ非常に緊迫した實情にあるのが大阪の現状であります、之に對して一體どう云ふ風な考へなり、處置を執られるか、是は常識で考へれば、判決を持たずにさう云ふことは出來ないと思ひますけれども、今日の官憲が闇市場を取締ることと、家と同一に考へて處理されたのでは、それは非常な迷惑です、又折角其處に莫大な費用を掛けて建築された借家人が追出されることになりますから、現状の儘で賃貸借が出來る、今日までの既存の建物は之を認められると云ふことになるかならぬかと云ふことも、併せて伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=38
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039・古島義英
○古島政府委員 洵に是は社會情勢から申しまして忽せにならぬ問題であります、此の委員會が僅かに十八名の委員會でありましても、大矢さんのやうな御考へを持つて居る方もあります、さればと云つて、さう云ふ無權限で建てたものは甚だ怪しからぬと云ふ御意見の方もあります、僅かの方でありましても、どうして之を救濟すべきかと云ふ立場と、一方はそれに依つて難儀を受けて居る者を如何にして救濟すべきかと云ふ立場とありますが、斯うなりますると何れにも見えるのであります、即ち何等の權利なくして建てて居る者があり、地主なり、其の借地人の方から見まするならば、是はどうしても、強制力を以てしても即時に撤廢して貰はねばならぬと云ふ立場になります、一方では折角無い資材を集めて、其處に左樣な假設建築物を拵へたと云ふことになれば、一日も長く之を使用したいと云ふのが人情であります、併し其の兩方の利益を考へて見ました時に、實際の權利なくして建てたと云ふものは、腕づくで之を毀すと云ふことは、どうしても出來ませぬ、結局は、洵に面倒いことではありますが、酒井さんの御心配なさつたやうに、やはり裁判所の手續を經るなり、或は調停の手續を經るなりして、面倒でも左樣にして取拂ふより外出來ぬと思ふ、併しながら、今の警察署に於て之を取拂ふと云ふことは、行政處分として取拂ふと云ふのでありまして、地主の立場、借地人の立場等から之を取ると云ふことは出來ますまいが、行政處分で行くと云ふならば、是は法律の範圍内に於てお互ひが權利を有するのでありますから、其の行政處分等にやられることは又別個の問題だと思ひます、其の時に如何にして對抗するかと云ふことは、又別個に考へねばならぬ問題でありまして、本法の狙ひではないのであります、併しながらそれの爭ひの起つた時に、それもやはり本法案では、同樣の意味に於て調停の對象にもなれば、又裁判をして貰ふ對象にも相成ることと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=39
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040・大矢省三
○大矢委員 是で私の質問は打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=40
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041・本田英作
○本田委員長 それでは午後一時半から續行することに致しまして、休憩致します
午後零時二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=41
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042・会議録情報2
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午後一時四十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=42
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043・本田英作
○本田委員長 開會致します、午前に引續き質問を續行致します──石原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=43
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044・石原圓吉
○石原(圓)委員 便宜上内務大臣に御願ひ致したいと思ひます、過日本會議で私共質問を致しましたが、其の質問の第五項は斯う云ふことになつて居るのであります、質問の第五、敗戰後に於て我が國は財閥の解體、大地主の分解等、民主主義實現の爲め必要なる凡ゆる方途が講ぜられて居るのであつて、又一方巨大なる住宅、土地を抱へた大地主的存在が其の儘であれば、他面には住むべき土地なき憐れなる罹災者もあるのでありますが故に、土地の所有面積に一定の限度を付しては如何と存ずるものでありますが、之に對する御所見を伺ひたい、斯う云ふ質問を發して置いたのでありまして、是は東京のやうな大都市に於て、大きな土地、大きな建物を所有して居るものを適當に小さく切つて、さうして土地のない、敷地のない者に與へ、又建物も同時に分割する、分割すると申しますのは、一つの家へ何家族かを差當り入れると云ふやうなことで緩和したらどうか、斯う云ふ意見であります、之に對して一應承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=44
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045・大村清一
○大村國務大臣 只今御尋ねの、土地の所有面積の限度を決めると云ふ問題に付きましては、一般的にまだ政府として方針を決めたものがないのであります、唯御承知のやうに、農地に付きましては、關係筋とも政府が打合せまして、近く農地調整法でありますか、其の改正案を提出致しまして、農地に付ては、只今御述べのやうな趣旨に依つての、所有の限界が決まることになりまして、其の案の御審議を仰ぐやうになる筈であります、其の他の一般土地に付きましては、まだそこまで政府として手が及んで居りませぬ、今後大いに研究しなければならぬ問題だと存じます、次に建物の問題でありますが、是は戰災復興院に於きまして、罹災者等の住居問題を解決する上に方途を講じて居るのであります、併し是とても一定の廣さ以上を持つて居りまする建物に付きましては、所有者から申告をさせまして、それに他の住宅に困つて居る者を同居させると云ふ、居住權の問題だけでありまして、所有限度と云ふ所までは及んで居りませぬ、詳細は私承知致して居りませぬが、其の措置は東京に於きましても既に實行中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=45
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046・石原圓吉
○石原(圓)委員 此の問題は希望と致しまして、大都市の住宅緩和の上から、唯都市の美觀と云ふやうな點を損じない範圍で、出來得る限り小切りに切つて困つて居る人達に安住の地を與へるやうにして戴くことを、特に希望申上げて置きます
次に私の主として御尋ねしたいのは、伊勢宇治山田に於きまする神宮聖地計畫の關係が今後どうなるのであるか、借地借家の此の法案の出るに當つて承つて置きたいと思ふのであります、御承知の如く、宇治山田市は戰爭中にも聖地としての大計畫が實行に移されて、建設事務所等を置いて著々戰爭中に拘らずやつて居つたのであります、然る所終戰後忽ち取止めになつて、今後どう云ふことになるか、地元民も全然見當が付かないのであります、而も鐵道の驛を變更するとか、神宮の宮域に接近した住宅を取拂ふとか、道路を二十四間乃至二十間等の廣い道路にするとか、市區改正、神宮と驛との交通路、其の他神宮宮域の擴張と云ふものが、可なり巨大な豫算で實行されて、既に終戰前後に神宮の宮域の側近の住宅は取拂はれて、土地は空襲でやられたのやら、其の區別が分らないやうな状態の下に置かれて居るのであります、是等のものはどう云ふことに處理されるのであらうかと云ふことが、市を通じて縣民一般の疑問になつて居るのでありますが、之に對する大體の御方針と云ふものを、先づ承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=46
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047・大村清一
○大村國務大臣 宇治山田の所謂聖地計畫に付きましては、終戰前に於きまして國庫からの特別の援助に依りまして、色々の計畫が立てられ、是が實施を見つつあつたのでありますが、終戰と相成りまして、御承知のやうな國家神道に對する聯合國の指令に依りまして、神社に對して國家から特別の保護をすることは取止めると云ふ、已むを得ざることに相成つたのであります、之に伴ひまして、神宮所在の理由を以ちまして、國庫が特別の補助を與へて、都市計畫等の聖地計畫を遂行することは出來ないことに相成りまして、事業の中斷に依つて宇治山田の地元市及び市民に、非常な迷惑と失望とを與へたことは甚だ遺憾でありますが、事情已むを得ないことと存ずるのであります、併し宇治山田市は我が國の國柄から致しまして、今後と雖も國民文化の中心地として立つて行くことは疑ひのないことでありまして、此の見地より其の更生を圖つて行きたいものと考へて居るのであります、さうして此の都市は自然の風光にも惠まれ、所謂觀光都市としても相當の條件を具へて居るのでありますから、今後一般の都市計畫の範圍内に於きまして、文化都市と申しますか、或は美觀都市と申しますか、さう云ふ點に重點を置いて、今までの既定計畫に再檢討を加へまして、終戰後の事態に即應するやうに、計畫を要すれば改訂をして、さうして文化都市、美觀都市乃至は觀光都市としての面目を發揮させるやうに致したいと思ふのであります、尚ほ其の都市計畫の遂行に付きましては、地元の市及び市民とも能く御相談をし、適切なるものを得て、之を實行させるやうに致したい、又それに付きましては、一般都市計畫の線に沿ひまして、政府としても十分力を盡したいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=47
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048・石原圓吉
○石原(圓)委員 内務大臣の意の在る所を拜聽致しまして、聊か安堵するものでありまするが、宇治山田市は、終戰前後に於きまして、既に近い將來の市區改正聖地計畫の實行を確信しまして、さうして此の機會に道幅を廣くするとか、宮域を擴げるとか、其の他の施設を要する所の住宅、人家は疎開をする方が宜しい、さう云ふやうな意も含まれまして、過大なる疎開をやつたのでありまして、其の上に、空襲の爲に宇治山田の約六割以上は灰燼に歸して居つたのでありまして、現在でも聖地計畫と罹災者の住宅との關係がどうなるか、道路として擴張さるべき部門がどうなるか、さう云ふやうな點を取纏めまして、本格的な計畫が樹たないのであります、隨て市民は非常に意氣鎖沈を致し、今後の方向に迷つて居る實情であります、而も此の神社に對する國の機構が變り、さう云ふやうな點から、さなきだに宇治山田市民、三重縣民一般は皇祖皇宗の在します神宮に對する將來を非常に危惧して居る次第であります、どうか聖地計畫の跡始末と睨み合しまして、日本の聖地としての尊嚴を維持し、將來國民の崇拜の的となるべき此の國民の觀念としては、敗戰の如何に拘らず變らないのであつて、又變つてはいけないのであつて、政府に於ても變るべきやうな何程かの影響も與へてはいけないと思ふのでありまして、さう云ふ點に付きましては、特別なる御考慮、御研究を仰いで、急速に是が復興を圖るやうに、特に御願ひを致したいのであります、殊に宇治山田には所謂皇室に對し、又皇祖皇宗に對して最も思想的な本源をなすべき教育を與へると云ふ建前から、神宮皇學館なるものが建設されまして、國民全體は非常に其の點を歡喜して、日本の思想の源泉となるべきものであると云ふ考へ方で、大なる期待と信頼を持つて居つたのでありまするが、終戰と同時に神宮皇學館が廢校になりまして、其の爲に、是は獨り所在地の宇治山田市のみならず、國民全體が大いに考へなければならぬことであると私共は思ふのであります、假令進駐軍の御意向がどうであらうと、日本の國民が皇祖皇宗を尊敬し、又皇國精神と云ふものの今後の強調を圖ると云ふことは、是は大切なことでありまして、之に對する所の根源をなすべき教育機關が、私の見る所では風聲鶴唳のやうなことで止まつたやうなことではないかと思ふのであります、昔私の縣では本居宣長先生あり、加茂眞淵先生、是は私の縣ではありませけぬれども、平田篤胤先生、あの人々は皇國精神の強調の爲に、一身を賭して國民を指導したのでありまするが、今日敗戰の聲に怯へて、皇學館大學を經營して居つた館長初め、皇國精神を戰爭前後に大いに強調して居つた學者其の他が、聲を潛めて、何等皇國精神に對する指導的な言説も行動も現はれないと云ふことは、洵に私共は遺憾千萬なことであると思ふのでありまして、内務省、文部省に於ては、特に御考へを願ひたいと思ふのであります、信仰は國民の自由でありまして、特に我々國民の大本である所の皇室、之に關聯を持つ所の皇國精神の涵養、其の教育に當る所の機關、是等のことは戰爭の勝つ負けるに拘らない問題であると、私共思ふのであります、仍て皇學館大學其のものが、其の儘復活することに支障があるならば、それに代る所の何等かの、國家の思想の源泉となり、指導となるべき機關を宇治山田市に設置をして貰ひたい、斯う云ふ希望を持つて居るのでありまして、之に對する内務大臣竝に文部當局の御意向のある所を一應御聽かせ願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=48
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049・大村清一
○大村國務大臣 終戰後の今日の事態に於きましては、神宮と國家との關係は斷切らざるを得ないことに相成つたのであります、併し神宮を國民が尊崇し、崇敬することは、固より國民の自由でありまして、又殆ど全部の國民の神宮に對する崇敬心は、終戰前と後との間に何等の相違はない、今日に於ては一層其の崇敬の度を増して居るとも考へられるのでありまして、此の神宮を崇め奉ると云ふ國民の誠心に依りまして、今後長く宇治山田市は聖地としての性格を持ち續けるものと確信致して居るのであります、只今御述べの如く、終戰前後の事情の變轉に依りまして、宇治山田の市民、又市は非常な迷惑をされて居ることであります、此の點に付きましては、新事態に即應するやうに計畫を再檢討致しまして、今日の事態を基礎として、今後宇治山田市の都市計畫を促進して行くやうに、市當局及び縣當局とも内務省は協力致したいと考へて居るのであります、尚ほ神宮皇學館大學が廢止になりましたのも、國費で大學を維持することが出來ないことになりまして、已むを得ず之を廢止されたと聞いて居ります、之を或は神宮に於て經營する、乃至は神宮を崇敬する一般國民の手に依つて經營することは何等差支へのないことでありまして、私廢止の聲を聞きました時分に、さう云ふやうなことに相成らぬものか、どこか篤志家は現はれぬものかと云ふやうなことを、實は心待ちに待つた一人であります、事態が安定して參り、又國民の神宮に對する崇敬心が段々甦つて旺盛になつて參りましたならば、此の學校を復活致しまして、或は神宮で御經營になる、乃至は國民の手に依つて之を再興することも固より可能なことでありまして、唯從來のやうに、國費で以て之を維持經營することだけが、出來なくなつたと云ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=49
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050・長野長廣
○長野政府委員 文部省の側からも一寸御答と致します、國民の崇敬の中樞でありますし、又民族の崇敬の中樞でありまする神宮の今日の御状態、竝に之を全國民に代つて御讓りになつて居らるる所の市民の方々に思ひを及ぼしまする時に、實に感慨無量のものがあります、只今の神宮皇學館大學の問題でございまするが、是は昨年の十二月に司令部の方から廢止を命ぜられて居る次第でありまして、政教分離の原則に基きまして、已むを得ないことでございます、併しながら他の佛教關係の大學との關係と同じ如くに、之を私立の經營として神官養成をすると云ふことならば、何等差支へない譯でございます、茲に一道の光明が我々に見えて居る次第でございます、現に國學院大學の神道部の如きは其の一例であります、文部省と致しましても、それ等の點に勘案を致しまして宇治山田の市民の方々、竝に國内の有志の方々とも將來聯關を執つて、然るべき方途に出る機會もあるではないかと考へて居る次第であります、是等に付きましては、更に愼重研究を致しまして、御期待に副ふやうに致したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=50
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051・石原圓吉
○石原(圓)委員 先づ内務大臣に御希望を申上げます、私は只今の御説明に依りまして、大體の御方針は了解を致しましたが、是が實現の速かならんことを切に希望致します、茲に一つ特に御願ひしたいことは、内閣が更迭をする度に、前大臣は悉く御禮參拜に伊勢神宮に參られたのであります、又新任された大臣は、悉く新任の御奉告に參拜をされたのであります、此のことを復活して戴きたい、是は進駐軍や其の他に遠慮の要らぬことでありまして、所謂皇祖に對する信仰であります、此の大臣が伊勢大廟に敬意を表すると云ふことに於て、國民全體の方向を強調すると私は思ふのであります、而も政府の實現した明治以來の此の顯著なる實例を、敗戰に依つてなくすると云ふことは、國民に對しても相濟まぬことであり、又國家の將來に對しても非常なる影響を持つものと思ひますので、殊に關係の深い内務大臣、文部大臣等が、先づ伊勢神宮に御奉告の參拜をされると云ふ先例を復活して戴きたいと云ふことを、強い意味に於て御希望を申上げて置きます
次に皇學館大學でありまするが、是は進駐軍の命令ならば已むを得ないと思ふのであります、國民の手に於てするか、或は國の手に於てするか、兩者の協力に於てするか、兎に角あそこには一つの文化的な、皇學館大學に代る所の施設を、是非とも實現するやうに御配慮が願ひたい、近時私共の憂へる點は、國民の思想的、素行的動向であります、殊に若い婦人の動向に對しては甚だ憂ふべきものがあるのであります、仍て伊勢神宮は所謂天照大神樣に因みましても、あそこに女子教育の最高機關を、官民何れかの手に依るか、官と民との協力に依るか、急速に實現するやうに御配慮の程を、切に御願ひをする次第であります、此のことに依つて私は日本の今の現實、悲しむべき状況にある所の婦人の素行其の他に對して、大いに指針を與へ得るものと信ずるのでありまして、國家將來の爲に特に此のことを御希望申上げる次第であります
次に神宮御造營のことであります、是は來る二十四年が式年の年でありまして、政府に於ては其の施設を繼續してやつて居られましたが、本年で其の經費を打切られて、御取止めになると云ふ御方針のやうであります、是も皇學館大學の廢止と略略同じ理由に依るものかと察せられますが、御承知のやうに、三千年來大廟の二十一年目毎の御造營と云ふものは、國民崇拜の的となつて、さうしてあの行事が日本の國民をどれだけ緊張せしめ、信仰を高めたかと云ふことは、申すまでもないのでありまして、それを今囘政府竝に皇室等の御方針に依りまして、國の事業としてはやらないと云ふことの已むを得ない状態と致しましても、それに代る方法の御指示であるとか、御指導であるとか、私共の希望と致しましては、是非とも二十一年目毎の此の式年は實現するやうに、御配慮を仰ぎたいと思ふのであります、私が説明するまでもなく、神宮の建物は全部白木であります、木曾の山より伐り下げて來た所の檜、杉に依る所の白木造りでありまして、永く保存は出來ないのであります、萬一雨漏りがあつたり、其の他神宮の尊嚴を汚すやうなことがあつては、是は國民に對する大變な問題であると思ふのでありまして、之に對する所の御意見なり、御方針なりを承つて、已むを得ないものならば、私共が民間に於て是が實現を圖ると云ふことに努力を致したいのでありまして、又其の實現には、政府自ら出來ない場合には、閣僚と云ふ個人的な御助力、御援助に依りまして、是非とも實現を期したいと思ふのであります、之に對しても御意見のある所を承つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=51
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052・長野長廣
○長野政府委員 御答へ致します、初めの御希望の點でございますが、大臣が任官と同時に、從來の如く神宮參詣をなすべきではないかと云ふことでありますが、御承知の通り、司令部の方からの特別なる命令に依りまして、官公吏は公の資格で新任の奉告其の他參拜をなすことは出來ないことになつて居るのでございます、此の點はどうか御諒察を願ひたいと思ひます
尚ほ最初申上げましたやうに、神宮皇學館大學の如きものを、官の施設として行ふことは出來ないのでございますから、之に付きましては、やはり私立として今後相當の考慮を拂ふべきものと思ひます
それから神宮御造營の點に付きましては、御承知のやうに、神社は宗教法人として發足を致しまして、而して今日公の援助なり又は公的の要素の導入は嚴に避けなければならないことと存じます、又新憲法草案にも、明かに政教分離の方針を示して居るのであります、隨て神宮に於きましても、一般の宗教團體と同樣の立場に於て施設經營を致す外はないと存するのであります、即ち今後國家よりの支援が出來なくなつたのでありますから、神宮御自身で造營するより他はないと存じます、先程内務大臣からも御答辯のありましたやうな意味に於きまして、今後適切なる方圖に依りて、國民の至誠を發露すべきものではないか、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=52
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053・石原圓吉
○石原(圓)委員 聖地計畫に關すること、皇學館大學に關すること、竝に御造營に關することに付きましての、内務大臣竝に文部政務次官の御意見のある所は有難く拜聽しました、能く了解を致しました、私の述べましたことに付きましては、意は足らないかも分りませぬけれども、要するに進駐軍に反撥的な心持で是が實現をしたいと云ふ氣分は毫末もないのであります、其の進駐軍の諒解の下に、諒解する範圍に於て、民主的なる最も時代に適切する、今後の日本の國の將來の國民の爲に最も必要なりとする施設をやつて戴きたい、それに對しては、現在の場合では國民の手に於てやらなければならぬことが多分でありまして、此の事は非常なる努力を要することであり、又多額の費用が伴ふことでありまして、政府等に依つてやる場合は是は心配はないのでありまするけれども、民間でやる場合には、金を集むることは容易でありましても、其の仕事を首腦者となつてやる人の人格であるとか、經歴であるとか云ふことに大なる影響を持ちまして、それで出來得ることも出來ないと云ふやうなことが杞憂されるのでありまして、さう云ふことの爲に是が遲れることは、非常なる國家の不利益であると考へまするので、どうか個人的に此の問題に對して十分の御考慮を仰いで、さうして此の伊勢大廟、所謂聖地の總ての計畫に付ては、特別なる御考慮を仰ぎたいのであります、此の希望を申上げて、此の問題に對する私の質問を終りたいと思ひます、何卒特別なる御高配を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=53
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054・長野長廣
○長野政府委員 赤誠の溢れた御意見を拜聽しまして、洵に御同感に堪へない所であります、就きましては、もう一つ此處に附加へて申上げて置きたいと思ひますことは、神宮の崇敬者である所の國民が、自發的に淨財を出すことは差支へないのでありまして、茲に委員の特に御力説になりました民主的な出方と云ふことを考へますと、奉贊會と云つた、御主張の如き各種の條件を備へた團體を作りまして、此の團體が中樞となつて、資金を集めまして、そして此の團體で造營することは許されて居る次第でございます、どうか是等も御參考の上で、御趣旨のやうな純正な、烈々たる氣持が此の方面に現はれて來ることを期待するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=54
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055・石原圓吉
○石原(圓)委員 洵に御同情溢るる御説を伺ひまして、感激に堪へないのであります、實は奉贊會とは申しませぬけれども、一つの期成同盟會的のものでやりたいと云ふ説はあるのでありますけれども、日本の國の國民性として、例へば奉贊會の總裁であるとか、會長であとか云ふ人は、或は宮樣であるとか、又政治的にも其の他にも國民の崇拜の的となるべき人格を備へて居られる方々に、其の中心となつて戴く必要があるのでありますが、現在の状態に於きまして、さう云ふ適當な人は澤山ありましても、先づ御承諾が仰ぎにくいと云ふやうな事情に察しられる點がありますので、さう云ふ首腦部の人的機構に非常に惱みを生じて居る次第であります、どうか斯う云ふことに付きましても、他の機會に於て十分の御指導なり御協贊を御願ひしたいと思ひます、私は他に少し質問したいことがありますけれども、それは保留をさして戴いて、是で一應打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=55
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056・本田英作
○本田委員長 鹿島君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=56
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057・鹿島透
○鹿島委員 私は主として市街地建築物法と本法案の關係に付て聽きたいと思つたのでありますが、今日はお見えになつて居りませぬから、後で伺ふことに致します、新しく所謂國土計畫的な立場から、生産の再編成、或は文化の地方分散と云ふやうなことは極めて必要でありまして、さう云つたやうなことも先達て政府當局から御伺ひしたのでありますが、特に大都市で戰災に罹りました大學、專門學校、さう云つたものを地方の中小都市、さう云つた方面に此の際移すと云ふことが、極めて時宜を得た問題ぢやないか、そんな風に考へて居る譯でありますが、先日も御當局の方から、非公式にさう云つたことも伺つた譯でありますけれども、文部省の方で是等に付て何か具體的な方策を講ぜられつつあるかどうか、段々東京方面の復興計畫等を新聞等で見ましても、やはり前と同じやうに、學校を殘してやつて行かうと云ふやうなことも現はれて居りまが、私は此の際でありますから、寧ろ將來のことも色々考へ合せまして、地方の事情に合ふやうな、又都會に必ずしも置かぬで宜いと云つたやうな文化施設は、此の際一つ地方に移して戴くと云つたやうなことが望ましいと思ひますけれども、之に付て文部御當局の御所見を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=57
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058・長野長廣
○長野政府委員 學校其の他文化機關の地方分散と云ふことに付きましては、從來と趣きを異にしまして、成べく地方に其の分散を實現すると云ふ建前に付きましては、新しい教育行政の立場から、重きを置いて考へなくてはならぬことと存じます、併しながら、申すまでもなく學校は其の所在の土地との關係、詰り學校の校風と申しますか、大切な條件と云ふものが、土地と非常に結ばれて居る場合もあるのであります、隨ひまして、必ず之を地方に分散すると云ふやうな原則的なことは申し兼ねますけれども、出來る限り地方に分散すべきものであると云ふことは、茲に御答へをして差支へないと思ひます、稍稍明瞭を缺いて居るやうに御聽取りかも知れませぬけれども、既設の學校に付きましては、是れ以上具體的に當る以前に御答への方法もないやうに思ひます、それから今後出來ます學校に付きましては、殆ど原則的に地方に分散すべきものであると、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=58
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059・鹿島透
○鹿島委員 大體了承しましたが、唯併し、現在大都市に在る學校を、其の儘そつくり地方に持つて行くと云ふことは中々困難でございますけれども、其の分校を作ると云つたやうなことは、是は學校經營から申しましても、又文化の地方分散と云ふ點から申しましても、尚ほ行ふ方面から申しましても、やり易いのぢやないか、こんなことも考へて居りまして、それ等に付ても一つ大學、專門學校等に幾らかこちらを縮小せしめまして、さうして地方に其の分校を作つて、そちらを充實して行くと云つたやうなことも御考への上、御勸奬を御願ひしたいと云ふことを希望申上げて置きます
次に國土局長に御伺ひしたいと思ひますが、現在大都市の罹災者が地方の中小都市、或は農村方面に疎開をして居りまして、只今の所では轉入制限に依つて入つて來ることが出來ぬ状況にあります、轉入制限も何時か解かれるのでありますが、遲くとも此の法案實施一年以内には解かれるか、或は緩和されるものと云ふ風に考へて居りますが、併し又出來ましても、一齊に其の儘歸つて來ましたのでは、從前見たやうに過大人口になつて來るのでありますから、是は出來れば、やはり地方に是等の者を落著かせることが大事ではないかと考へて居ります、それに付ては、やはり地方の戰災を受けた都市、其處に家を造らうと思ひましても中々困難が伴ひますので、非戰災都市、即ち生産都市、或は農村方面にそれ等の者を落著かせる爲に、何等かの方法を講ずる必要はありはしないか、さう致しますと、地方の實情から申上げますと、又他に臨時建築制限令と云ふのがありまして、木造建物の住宅、店舖等の制限がございます、是では大都市の中に造る場合には、現在十五坪までは何とかやつて行けるのでありますけれども、地方の實際の聲を聽きますと、十五坪位では仕方がない、造るならばもう少し立派な、しつかりしたものを造つて、そこに落著きたいと云ふ希望があるのであります、私は非戰災都市、農村のことを申上げましても、決して是は戰災都市のことを輕んずる譯ではないのでありまして、本當に戰災都市の復興を順調にやつて行く爲には、どうしても戰災に罹らなかつた方面も、此の際手を入れると云ふことが極めて必要であると考へて居るのであります、此の前の特別都市計畫法にしても、今囘の此の法案にしましても、戰災地、それのみを扱つて居りまして、地方の生産都市なり、農村のことは餘り考へて居ない、是はどうしても、やはり戰災地を復興する爲に片手落ではないか、斯う云ふ氣持が致すのでありますが、それ等に付て國土局長の御考へを御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=59
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060・長野長廣
○長野政府委員 一寸御希望の點で、地方に分教場を作つてはどうか、斯う云ふ御感想でしたか、御質問でしたかはつきり分りませぬけれども、是は非常に重要な點と思ひますから、一寸御答へを申上げて置きます、人口の地方分布の點から考へますと、地域的から云へば北海道であるとか、九州であるとか、或は又各府縣で申しますと山地帶、斯う云ふ所は尚ほ人口稀薄でありまして、出來得る限り斯う云つた方面に人口を植付けると云ふことは、非常に必要だと思ひますし、隨て此の方面の文化的開發と云ふことは、相當考慮されなければならぬと思ひます、一面大學等の立場から申しますと、やはり地方的に關聯を持ちまして、演習林と申しますか、農場と申しますか、其の他各般の意味に於て、地方に教場を設けて、教育の普及を圖ると云ふことも必要と思ひますし、殊に最近生活難の爲に、學生が都會へ出て來ることが困難であります、隨て專門學校、大學等を成るべく地方に均霑する方法を執りまして、遠く遊學する必要のないことにすることも、目今緊急の要務ではないかと思ひます、是等の點等を勘案致しまして、分教場を地方に造ると云ふことは、相當考慮されなければならぬと存じて居ります、何れ何等かの機會に於て具現さるることと思つて居りまするが、何卒是等の點に付ても、各位の御援助を願はなければならぬと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=60
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061・岩澤忠恭
○岩澤政府委員 御答へ致します、戰災地に於ける都市の轉入に付きましては、御存じの通りに九月三十日まで抑制を致しまして、今後それを又食糧事情に依りまして持續するか、或はそれで一應打切るかと云ふことは、今後の情勢に俟たなければはつきり申上げることは出來ないと思ひます、尚ほ此の戰災地の復興、即ち今後に於ける都市の膨脹を如何に抑止するかと云ふことは、我々衝に當つて居る者は相當考へなければならぬ問題であると思ひます、唯此の抑制を解きますと、やはり都市集中主義に陷りまして、昔ながらの過大都市と云ふものが、當然生じて來る虞が多分にありまするから、或る面に於ては、即ち現在農村方面或は又非戰災都市に疎開して居る者を定住さすと云ふことを、此の際國としても執らなければならないと存じます、其の爲にやはり農村方面とか、或は非戰災地の中小都市の文化なり、或は教育方面の復舊と云ふものを十分織込みまして、又農村方面に付きましては、輕工業なり、或は簡單な其の附近に於ける天然資材を利用するやうな工業を興すと云ふやうにすれば、自づと農村或は中小都市に人口が全部疎散して、そして此の大都市の過大人口が當然防げるのではないかと云ふことを考へて居るのであります、此の問題に付ては、唯單に一局部に之を限定することが出來ませぬから、今私の所と致しましては、國土計畫の見地から、全國に付て折角調査中でありますから、何れ具體的に決りましたならば、又御報告する機會があるだらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=61
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062・鹿島透
○鹿島委員 文化機關の地方分散に付て、政務次官から懇切に御答辯がございました、どうかさう云ふ工合に今後御指導を御願ひしたい、尚ほ非戰災都市の對策に付ても、只今御答辯がありましたが、成だけ早く何等かの方法を講じて戴かなければならぬのであります、さうでありませぬとやはり結局此の轉入制限令が解かれましたならば、恐らく又前のやうになりまして、さうして、さうなると今後大都市が近代的な本當の文化都市として、或は生産都市として圓滿に立つて行きませぬから、それ等に付ても、成だけ早く御考へを決められて、實施されるやうに御願ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=62
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063・本田英作
○本田委員長 金井君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=63
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064・金井芳次
○金井委員 御承知の通り戰災都市に於ては、借地權或は借家權の問題が非常に多いのでありますが、特に疎開建物をやられた場所に於ては、現に私共も其の弱つて居る一人でありますが、強制疎開を喰ひまして、さうして我々は何れかに轉居致すのでありますが、其の際、當時の状況は成べく澤山疎開さすことが必要に迫られて居つた事情から、不必要な所と今日考へられる所が疎開されて居ります、其處は現在──横濱市のやうな所では大體燒け盡して居りますので、強制疎開地になつた所が今日繁華街になつて居るのであります、さうして其處に或は劇場が建ち、或は商店が建つて居るのでありますが、最近横濱市は之に對して立退を命ずるやうな状態にあるのであります、或は使用を阻止すると云ふやうな状態にあるのであります、さうしますると、現に立派な民衆娯樂場が出來、或は商店街が出來て居るものが、現在如何にすべきか迷つて居るのです、さうした問題に對しても、此の法では何處にそれが當嵌るか、さう云ふことを一應御聞かせを願ひたい
それから第二點は、横濱市は新橋と同じやうに露店商が相當數出來たのであります、露店商街は非常に繁榮地に出來て居ります、隨て其の繁榮地の路傍に出來て居るのでありまするから、實際は人間の通る所へ一杯に立てて居ります、さうすると、其の裏にあるのが燒けてしまつた借地權者の持つて居る土地であります、そこで家を建てようにも門口を取る所がないのであります、それを退いて呉れと言つた所で、御承知の通り露店商は一面には任侠であり、一面には中々相當な強者でございますので、結局家が建てられぬと云ふ事情にあるのが多いのであります、所が元元露天商と云ふものの許可權と云ふものは警察が中心であります、でありまするから、警察が之を取締つて居る場合ならば適當な處置が出來たのでありますが、現在は露天商を許可するのは區役所若しくは市役所でやることになつて居るのであります、隨て警察には今まで關係があつたが、今日では關係がない、さうして事情──所謂治安其の他の内面的な事情を知らざる所の、市役所あたりが勝手に許すものでありますから、斯うして問題が起きて居るのであります、斯うした場合に於ける借地權を有效に行使する方法を、一體何處に求むるか、一應此の二點を御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=64
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065・古島義英
○古島政府委員 只今の疎開地に對する法的根據は、第九條を御覽になれば分ります、第九條に依つて「疎開建物が除却された當時におけるその敷地の借地權者、その當時借地權以外の權利に基いてその敷地にその建物を所有してゐた者、及びその當時におけるその建物の借主については前七條の規定を準用する」と云ふことに書いてありますので、大體は此の九條に於てやり得られると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=65
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066・金井芳次
○金井委員 さうしますと、市役所から假に立退きを命ぜられても居り得るのですか、只今の答辯は誤解されて居る、強制疎開を喰つた其處へ私共が行つて居るのではない、即ち他の人が行つて其處に劇場を建て、其處に商店街が出來て居る譯です、さうして借地權者は事實上元は我々であつた、強制疎開だから市が管理して居つた、管理して居る市は、こんなに早く戰爭が濟むとは思はなかつたので、貸してしまつた、さうして、それは何時でも必要な場合には返すと云ふ條件は付いて居りますけれども、事實は半永久のものが建つて居る譯です、そこでそれを今立退けと言うた所で、立退くことは容易なことではないと思ふ、さう云ふ場合には、此の法令は何處を適用するか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=66
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067・古島義英
○古島政府委員 成程建物を強制疎開にされた場所は、御承知でもありませうが、其の空地を買取つた場所もあり、買取らずに寧ろ其の儘借受けて居る所があります、又借受けも出來ずに曖昧の中にある部分が多少あるかも知れぬと思ひます、此の買取りました場合、若しくは借受けしました場合には、其の借地權は全部法規の書類が取つてある筈であります、即ち借地權者と云ふ者はなくなつて居るのであります、そこで今度は其の借地權のない場所に何人かが自由に建物を拵へた、若しくは露店を拵へたと云ふやうな時には、是は只今讀みました但しの方に入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=67
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068・金井芳次
○金井委員 許可は得て居るのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=68
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069・古島義英
○古島政府委員 許可を得て居れば、それは一時使用の許可をされたのでありませう、許可を取消されてなくんば明渡しはされぬ筈です、取消もせずに、使用を許して居つて明渡しと云ふことを致す筈はない、但しそこに紛爭がある場合は、公共團體等の土地、若しくは公共團體が借用して居る土地と居る土地と云ふ時には、此の後段の規定が適用されますから、此の法律の面から見ますと、一向爭は起らぬことと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=69
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070・金井芳次
○金井委員 今御聽きしたのでは私はまだ腑に落ちないのですが、市それ自體は前所有主にそれを賣渡しをしようとして居るのです、さう云ふ場合に、現在市から一應借りて居つたが、之を市が前所有主に賣渡す場合に、日立ちにしないと品物の値が違つて來ます、隨て否でも應でも之を立たすことが市に取つて必要であらうと考へる、さう云ふ場合に、立たされたのでは此の人達は困るのだから、之を擁護する規定はないのですか、其の點を一つ御尋ねしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=70
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071・古島義英
○古島政府委員 勿論買收致しました土地、若しくは市其の他の公共團體の借りて居る土地が不用になりますと、之を賣戻した所もあります、若しくは借りて居つた土地は返した所もあります、そこで返した土地、若しくは賣戻した土地に對して、何人かがそれを占有して居ると云ふ場合に於ては、是は本件では前の權利、消失當時に於ける借地權と云ふものはないのであります、詰り抛棄をさせて居りますから、其の貸付けたことに於て使用なり或は借地權なりが起つて來るのであります、其の前の關係はないと云ふことになります、其の公共團體と個人との間に於ける使用貸借、若しくは賃貸借に於ける法律問題、唯個人に戻してしまつて、何等の權利なく使用を致したと云ふことになれば、是は勿論不法占據になります、何等の權利を有しないのだと云ふことになりまして、法律の保護の對象にはならぬのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=71
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072・金井芳次
○金井委員 分りました、それでは内務大臣に御伺ひ致しますが、露店商の許可權を市あたりにおやらせになるやうにした根據、それからそれに依る弊害に付ては、まだ御認めになつて居りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=72
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073・大村清一
○大村國務大臣 私餘り事情を明かにして居ないのでありますが、疎開地は是は市が疎開をさせて居るのでありますから、恐らくは市の所有、若しくは市の使用權が出來て居るだらうと思ひます、其の市の所有權又は使用權に依つて、露店を作る場所の使用許可を區役所から得て居るもの、斯樣に私は思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=73
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074・金井芳次
○金井委員 さうではない、許可權を市に扱はすやうに現在では法令上なつて居る、警察は之に關與せぬことになつて居る、從來は警察が之を許可した、それを今日では關與せずに市にやらすことにして居る、是は法令上なつて居ります、もう一つ是は當然御考へ願ひたいのは、さうした都市に於ける借地借家の問題を通じて紛爭が起つた場合には、結局借地借家人組合と云ふものが、其の自己の權利の防衞の爲に、或は生活權擁護の爲に、私は必然的に組織されると思ひます、所が今日私共神奈川縣で色々と經驗を致して居ることは、正當なる權利を主張するとか、或はそれが爲に凡ゆる手段を講じて集會をする場合に、警察は之に對して集會を認めない、却つて妨害するが如き行動があつたのであります、私は之に對して、大臣は所謂集會の自由を認める、結社の自由を認めると云ふことを常に言はれて居りますから、さう云ふことはあり得ないと考へたのでありますが、其の一例を申上げて、私は取締に付ての大臣の方針をもう一度御伺ひしたいと思ひます、それは神奈川縣に於ける東秦野、北秦野一帶に於ける所の約二千戸の農民の問題であります、此の二千戸の農民が、戰災の當時に於きまして倉庫が燒かれたり、或は供出した所の麥が如何はしい方面に參つてもいかぬと云ふので、供出を命ぜられると同時に、直ちに一應農業會に出したのでありますが、所が農業會はさう云ふ理由からして自家保管を命じたのであります、でありますから、二千戸の農民は自らの家に其の麥を持つて歸つた、所が、大臣は神奈川縣を御承知でありますが、秦野と云ふ所は藷と麥以外は穫れる所ではありませぬ、それで麥、藷を供出して參りますれば、還元麥を貰はなければ生活の出來ない所であります、所が一年經つても其の麥の供出の催促をしない、隨て鼻先には常に來る所の還元麥と同じやうなものが保管されて居る、還元麥を請求するよりも鼻先の麥を食つた方が宜い、そこで還元麥を請求せずして、自家保管の麥を食べた、さうして約二千戸の人間でありますから、人口にして、假に五人とすれば一萬人であります、此の人々が食べたのですから相當量食べて居ります、即ち其の數量は五千何百俵に及んで居るのであります、所で一體自家保管を命じて一年も經つたなら、當然金を拂つて呉れて居る筈ですが、拂つて呉れて居らぬ、是は私は本當の供出にはならぬと思ふ、唯供出麥をする場合には檢査證があります、其の檢査證を貼つて自分の所に置くことになつて居りますが、其の檢査もしませぬから、檢査證を何俵だからお前の所は何枚と云ふので置いて行つただけでありまして、檢査をして居らぬ、其の檢査證は机の抽斗の中にあるのだが、一年も經つと百姓のことだから殆どなくなつて居る、それが問題になつたので、警察署で喚び、檢事局で喚ぶ、假に五人にすれば一萬人、三人にしても六千人の大多數の人間が、兎に角食つた、だから今度の生産麥では綜合供出になるから、馬鈴薯で之を出すから、何とか穩便にして呉れと云ふ話を警察部長にも再三した、さうして其の供出をさすやうな會合を開きたいから、何とか君の方でも一つ踏張つてて呉れぬかと言つて頼みに參りましても秦野の警察署では其の集合すらやらせなかつた、一方では農繁期に掛かりどんどん引張つた、現在では七十人に近い人間が或は即決を食ひ、或は何萬圓と云ふ苛酷な罰金を食つて居ります、私は何故其の時に我々の言ふやうな集會をさして、さうして逸早く供出せしめるやうな方法をせぬか、同時に苛酷なる行動を執つて罰金を食はすことのみに依つて供出が滿足に行くか、我々は直ちに部落會を開きまして、麥一粒でも量り殘らないやうに供出せしめました、それは新麥を混へてやつたのであります、さう云ふやうにやつて居るに拘らず、集會の自由を認めない、是は私が直接交渉したこともありますから間違ひない、斯う云ふやうなことが依然として今日行はれて居ることは、私は甚だ不愉快に感じて居ると同時に、而も司法當局に御願ひしたいのは、百姓が兎に角還元米も貰つて居らぬ、金も一部は貰つて居る人もありませうが、全部は貰つて居らぬ、而も立派に證書が殘つて居る、それを破棄した、破つて食べたやうなことを警察ははつきり書かして居ります、明かに殘つて居るものが澤山あるから、證據として御見せしても宜しい、斯う云ふやうなことが現在尚ほ行はれて居ることは、警察の民主化であり得ない、司法官の民主化であり得ない、此の二つのことに對して報告がありましたかどうか、一應御伺ひ致します、報告がないとしたら、直ちに取寄せて、適當な政治的な解決をなして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=74
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075・大村清一
○大村國務大臣 只今御尋ねになりました點は、私まだ報告を聽いて居りませぬ、至急に一つ取調べまして、次の機會に御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=75
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076・古島義英
○古島政府委員 甚だ驚くべきことを承つたのであります、其事實に付きましては、まだ司法省の方には報告が來て居りませぬが、能く調査を致しまして、後の機會に御答辯申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=76
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077・金井芳次
○金井委員 次に御尋ね致したいのは鑑定委員と申すか、最後に之を色々と決定なさる立場の人、此の銓衡に對しては、此の間も同僚議員から御尋ねがあつたのでありますが、唯裁判所に之を任かすと云ふことは、どうしても昔の儘であると私は考へます、此の間次官は民主的になさると仰しやつて居りましたが、然らば民主的な鑑定委員を作ると云ふことは、如何なる具體的なる方法を以てなされるか、其の具體的な方法を一つ御示しを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=77
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078・古島義英
○古島政府委員 鑑定委員の構成に付ては、實際の案件として大分問題のある所であります、鑑定委員の選任を一度誤りますれば、其の決裁は殆ど信を置くに足りなくなるのでありますから、司法當局と致せば、其の選任こそ餘程愼重にやらねばならぬと思つて居ります、如何にして大衆の心持を汲んでやれるやうなものが出せるかと申せば、今日に於て具體的に申せば、各辯護士會の意見等を參考に供し、若しくは其の方の推薦等も待つてやると云ふことも、一つの方法だらうと思ひます、若しくは其の他に信頼するに足るやうな團體でもありますれば、其の方面の意見等も參酌致しまして、之を推薦し、指名すると云ふことも一方法だらうと思ひますが、何れに致しましても、地方裁判所長が此の鑑定委員を選任するに付きましては、十分にさう云ふ氣持を取入れて、獨斷專行を避けて、相成べくは意見を聽けるだけ聽いて選任する方法が宜からうと思ひます、此の方法でやらせるやうにこちらも亦考慮致す積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=78
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079・金井芳次
○金井委員 嘗て調停委員を作る場合でも其の方法だつたのです、所が結果に於ては圖らざる人が選ばれて圖らざる結果になつて居る、次官の御方針なり御考へは以て宜しとするのでありますが、事實はさうは相參つて居りませぬ、即ち嘗ては市役所であるとか、縣であるとか、或は商工團體であるとか、色々な方面に御問合せになつて、それ等の推薦者の中から裁判所に於て選んで居つたことは能く存じて居ります、私自身も市の方から推薦された經驗を持つて居ります、さう云ふ工合に致しまして、其の結果は決して宜くなかつたことは、過去に於てお互ひ苦い經驗を嘗めて居ると思つて居ります、隨てさう云ふやうな氣持でやるのだと云つても、一遍さう云ふ惡い經驗を經て居るのでありますから、もつと具體的な、民主的銓衡方法を願はぬと、今の御答辯では承服し兼ねると思ひます、さう云ふ抽象的な論でなくして具體的に斯かる團體、斯かる構成の、斯う云ふものの中から選ばした方が宜いぢやないかと云ふことを、もう少し具體的に御考へ願つて、今度の委員會の時で宜しうございますから、御示し願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=79
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080・古島義英
○古島政府委員 御尤もの御言葉でありますが、斯う云ふ團體から採るのだ、ああ云ふ團體から採るのだと限定をすることの方が、却て局限されることだと思ふのであります、やはり選任すべき對象は廣い範圍に求めたが宜いと思ひます、唯選任するに當りまして愼重を缺いた譯ではありますまいが、間々御述べのやうな例があつたと云ふことも聞いて居りますが、鑑定委員會に付きましては、勿論他も大體はさうでありますが、萬一左樣なことでもあり、誤つて面白からざる者を選任すると云ふやうなことが、萬に一つないと云ふことは保證出來ませぬ、そこで毎年之を選任すると云ふことに致しまして、間違ひのあつた場合には、僅か一年だけで之が改訂出來ると云ふことで、防いで行きたい積りであります、其の他如何樣な點から、如何樣な「グループ」から其の委員を採るかと云ふ具體的な、固まつたことは餘り言はぬ方が宜いと思ふのであります、廣い範圍から採ると云ふことにして置いて、愼重に採らねばならぬ、嘗ての經驗に徴して十分愼重にしろと云ふことが、一番宜いと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=80
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081・金井芳次
○金井委員 大體の方向は分りました、唯申上げて置きたいのは、さうしたものを作り上げて、其の結果が惡かつた、惡いことがある場合に、一年で區切るから良い者が出來るやうに改められる、然らば其の銓衡を誤つた責任は誰が一體取るか、即ち銓衡すると云ふ一つの權限を行ふ以上は、銓衡を誤つた場合に、唯過ちであるから變へると云ふだけでは濟まぬ、即ち自らの行爲をなす場合は、其の行爲を裏付けは義務でなければならぬが、其の誤つた場合に對しての責任は一體誰が取るのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=81
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082・古島義英
○古島政府委員 誤つたと申しましても、私の申上げるのは、或は其の委員の行動が刑辟に觸れるやうな行動を取る、或は又鑑定委員として公正を破る點から見て、許すことの出來ないと云ふやうな重大なる缺點のある者を選んだと云ふことならば、是は選任した者は當然責任がありませう、併し其の責任の限度が、如何なる程度に於て責任を負ふかと云ふことは、私の言明の限りではありませぬが、道徳上もさう云ふ刑辟に觸れるやうなこと、先程酒井さんの例に引きましたやうな、さう云ふ誤つたことが假にあると致せば、是は一大事であります、さうでなく、もう少し結構な人を出したかつたのだが、是では少し足らぬと云ふ程度のものならば、是は選任者に何等責めを負はせる必要はなからうと思ひます、そこは言はず語らずの間に責任者は分ることと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=82
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083・金井芳次
○金井委員 先程私が農村の問題で御質問申上げた點に對しての御報告を俟ちまして、再質問を許して戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=83
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084・本田英作
○本田委員長 本日は是にて散會致します、明日は午前十時から開會致します
午後三時十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013794X00519460805&spkNum=84
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