1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○参議院議員選擧法案
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昭和二十一年十二月五日(木曜日)午前十時十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=0
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001・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 開會致します、政府の御説明は此の際省略致しまして、直ちに質問に入ります、第一章總則、第一條、第二條を問題と致します、通告順に依りまして大河内子爵に御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=1
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002・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 私は總理に對して御質問を致したいので、總理の御出席の時に御願ひ致したうございます、但しさうすると一章が飛んで行つてしまふかも知れませぬが、其の時はどうぞ委員長の方で便宜を御取計らひを願ひます、假令二章へ入つてしまつてからでも一つ一章の質問を御許し下さるやうに御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=2
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003・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 大河内君は内務大臣には御質問ございませぬか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=3
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004・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 第一章は内務大臣に伺ひますが、先づ總理に伺つてからに致したいと思ひますので、それ迄留保して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=4
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005・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 小山君、小山君居ない、下條君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=5
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006・下條康麿
○下條康麿君 私參議院議員の定員に付きまして御尋ねしたいのであります、參議院議員の定員はどの位が適當かと云ふことはどうも合理的な根據を見出しにくいと思ひますが、大體各國の例を見ましても、上院の場合では少いと云ふことは昨日内務大臣の御説明になつた通りと思ひます、唯どの位にそれを決めるかと云ふ問題で、實は臨時法制調査會でも相當論議されて、三百名としたのでありますが、それが二百五十名となつて御提案になつて居りまするが、其の五十名を減らした理由が私には能く分らない、どう云ふ理由で御減らしになつたか、其の理由を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=6
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007・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 參議院議員の定員に付きましては、御話の如く之を何人に決めるかと云ふことに付きまして的確なる基準を求め難いのでありますが、唯概括的に申しまして衆議院議員の定員よりも相當之を減少すべきではないかと云ふのが、謂はば常識的な考へ方であります、併し一面に於きましては衆議院と參議院とは、そこに權能上の相違はございますけれども、實際の運用の上に於きましては、議事の進行上委員會を作ると云ふやうな場合に於きまして、他の諸外國に於けるが如く參議院議員の數を著しく減少致しますことは參議院の機能の發揮の上に於きまして障害があることが豫想せられますから、其の點から申しますと相當の多數を得なければならない、そこで臨時法制調査會に於きましては、之を三百人とすると云ふ御答申があつたのであります、此の問題に付きまして、政府に於きましては篤と考慮を致したのでありまするが、臨時法制調査會の答申に基きまして此の三百名を採ると致しまして、全國議員、地方議員に之を二分致しまして、百五十名づつと云ふことを一應考へたのでありまするが、さう云ふやうに割り振つて見ますると、全國議員に付きまして百五十名、地方議員に付きまして百五十名と云ふことに致しますると、全國議員に付きましては、選擧の實際に於きまして投票が一部に集中すると云ふやうなことがございまして、全國議員の選出議員で少數の方の投票で當選した場合に於きましては、地方議員の投票數よりも著しく票數が少くなると云ふことも豫想せられまして、其の點如何かと云ふやうな點もございます、それから尚是は感じでございますが、衆議院に對しまして三百名と致しますことは稍稍多いのではないかと云ふ議論もございまして、只今申しましたやうな點も考慮致し、全國議員は更に五十名を減じまして之を百名とする、さうして地方議員百五十名と致しますと、選擧の實際に於ける得票關係も相當に調整されるであらう、さうして又其のことに依りまして五十名だけを定員に於て減ずることになりまして、衆議院の四百六十餘名に對する二百五十名、又二百五十名の議員がございますれば、參議院の議事の上に於きましても支障はなからうと云ふやうな所で、結局に於きまして之を二百五十名とすると云ふことに政府に於きまして之を決定致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=7
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008・下條康麿
○下條康麿君 御趣旨は分りましたけれども、三百名では少し多過ぎると云ふ點は實際能く分らないのであります。三百名と法制調査會で決めました時の考へ方は大體衆議院の定員の約三分の二と云ふ一つの基準があつたのであります、其の基準に依りまして定められた三百名を五十名減らすと云ふ根據は私には能く呑み込めないのであります、今御話の中に此の二百五十名で議事の審議も、委員會等の關係から見ましても都合好く行くぢやないかと云ふ御意見でありましたが、今度の國會法の規定あたりを見ますと、常置委員の制度もありますし、色々の關係から見ましても、二百五十名では相當運營が困難ではないか、事故も生ずる場合も隨分ありますから、運營上支障があるのぢやないかと云ふことを氣遣ふのであります、それから又全國投票の場合の投票が一部に集結すると云ふこともあり得ることと思ひますけれども、併しながら全國投票で當選者を決める場合に於きましては、投票數が或府縣の地方選出議員の場合よりも、少かつたからと云ふことで、それで其の點を是正しなければならぬかどうか、其の點は相當疑問があるのぢやないかと云ふ風に考へます、併しながら一應御趣旨の點だけは了解致しました、次の問題として今御答になりました中にあつた問題でありますが、地方選出議員と全國選出議員との割合が百五十と百となつて居りまするが、私は寧ろ逆に全國選出議員の方を百五十にして、地方選出議員の方を百にすべきぢやないかと云ふ風な考を持つて居るのであります、と申しまするのは、大體國家の全般に關する大事を議する參議院でありまするから、其の議員は全國的に選出せらるべきことが是が原則ぢやないかと云ふ考を持つて居るのであります、併しながら又地方的の色彩も加味することが相當認められるのでありまして、其の意味に於きましては逆に主として全國選出議員を主にして地方選出議員を從として之に附加へることが他の點との關係、即ち衆議院との關係から見ましても妥當ではないかと考へるのであります、其の考へ方から見ますと、政府の御提案は逆になつて居る、此の點に付て御考を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=8
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009・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 御答を申上げます、下條議員の御考へ、確に是はさう云ふ考へ方も成り立ち得ると考へるのであります、政府が地方選出議員よりも全國議員を少く致しました趣旨は、學識經驗のある全國的な有力な議員を得ると云ふ點から見ますると、其の數が餘り多きよりも百人程度が其の趣旨に合ふ人を得るのに宜いであらう、餘りこれを擴げますことは學識經驗共に備はつた全國的な有力な議員を得る上に於てどうであらうかと云ふ點に考慮を拂ひまして、特に地方議員よりも全國議員を五十人だけ少くすると云ふことに致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=9
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010・下條康麿
○下條康麿君 學識經驗のある人を參議院議員に採りたいと云ふ御考からして全國選出の方へ主力を置くべきことも考へられると云ふ御答でありましたが、百名は出せるが百五十名は出せないと云ふこともないやうに思ふのであります、實際問題として日本の範圍内に於て百五十名位の全國議員が出ないと云ふことも考へられないと思ふのでありますが、さう云ふ點はどう云ふ風に御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=10
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011・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 全國選出議員がどのやうな方法に依つて選出されるであらうかと云ふ點に付きましては、是は必ずしも豫斷を許さないのでありますが、之を想像して見ますると、或は單獨で立候補すると云ふ場合もございませう、又全國議員として出る場合に於きましても、一地方に地盤を求めまして地方選出議員と同じやうな區域から出て來ると云ふやうな人も相當にあらうかと思ひます、尚又大多數の人は全國議員の趣旨に最も適合致しましたやうに全國を地盤として、又多くの場合に於きましては全國的な團體から推薦支持を受けまして、さうして全國からの得票で出て來る人もあり得ると思ふのであります、其の最後の場合は全國議員の選出方法として最も望ましい行き方だと思ひます、併し其のやうな場合に參らないで、一地方に根據を置いて出て、地方選出議員と殆ど實際上相違のないやうな選出方法が行はれると云ふことも豫想せられるのでありまして、それ等の點を彼此綜合して考へて見ますると、全國議員の數は餘り多くない方が全國議員の選出に相應はしい方法に依つて選出されるであらうと云ふやうな所を考慮致しまして、全國議員の定員は餘り多くない方が適當であらうと云ふやうに考へまして百人と云ふことに致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=11
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012・下條康麿
○下條康麿君 其の問題は意見の相違のやうになりますから其の程度に止めまして、尚關聯した定員の問題に付てもう一つ伺ひたいと思ひます、全國選出議員の場合に於きましては今御話のあつたやうに、或府縣を根據として其の府縣の投票に依つて當選する場合もありますが、全國的の組織若しくは數府縣に亙る組織網を持つて居る團體をバックとして出た場合には、割合容易に當選するのぢやないかと云ふやうに考へるのであります、そこでさう云ふ場合に於て有利な團體が多々あると思ふのでありますが、其の結果どう云ふことになるかと言ひますと、定員百名と致しましても、まあ是は選擧をやつて見ないと分りませぬが、左樣な全國組織網を持つた團體をバツクにした所から多數の議員が出る、百名と致しましてもさう云ふやうな種類の議員が或は相當多數出ると云ふことがありはしないかと云ふことを考へるのであります、さう云ふことはそれも出ることは適當だと思ふのでありますが、餘りにさう云ふものがさう云ふ種類に偏すると云ふことは、廣く學識經驗者を採入れようとする參議院の本質から見て面白くないことではないかと云ふやうに考へられるのでありまして、此の點に付きましてはどう云ふ風に考へて居られますか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=12
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013・大村清一
○國務大臣(大村清一君) ちよつと御尋の趣旨を呑み込み兼ねて居るかも知れませぬが、選擧の實際に付きましては豫測を許しませぬが、政府と致しましては全國的な支持を受け投票に依りまして當選をするのが全國議員の本體であらうと云ふやうに考へて居る、さうなりますと、これが餘り數が多くなりますると全國的な支持を受くることは困難である、寧ろ一府縣の地盤に依つて地方議員と同じやうな行き方に行つた方が當選がし易いと云ふやうな情勢が増加して參りますので、寧ろ全國議員の數は餘り多くない方が全國議員の趣旨に合つた選擧が實際に行はれるだらうと云ふやうに豫想を致して居る次第であります、尚又全國を一選擧區として國會議員を選擧すると云ふやうなことは、是は諸外國に於ても餘り例のないことでありまして、恐らく日本が最初の行き方だと思ふのであります、さう云ふやうな次第でありまして他に先例等もございませぬので、或は的確なる判斷を下すことは困難でございますが、全國議員と云ふやうな全國から選出すると云ふやうな場合に付きまして、此の數が餘り大きい場合に於きましては、先程來申上げますやうに全國選出議員とは申しながら、實質に於きましてはさうでないやうな選出法が行はれることがあり得る、其の定員が多いとさう云ふ傾向が一層強くなるのではないかと云ふやうに考へまして、特に百人と云ふやうに少い數の方を採用することに致した次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=13
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014・下條康麿
○下條康麿君 ちよつと内務大臣は私の質問と違つたことを答へられたのでありますが、私の御尋ねしたのは、地方都道府縣を地盤として出るやうな參議院議員もあり得る譯でありますが、全國に組織を持つて居るやうな團體、例へば具體的に申しますれば、勞働組合と云ふやうな其の他さう云ふやうな團體が其の組織の力に依つて多數の議員を參議院に送ることが可能ぢやないかと思ひます、それも必要と思ひます、併しながらさう云ふ一部の種類の議員だけが、餘計に參議院の議員の構成を占めると云ふことは、適當であるかどうかと云ふ問題であります、で、私のもつと具體的に御尋ね致しますと、百名と云ふ全國選出議員は唯百名と云ふことだけで宜いのか、或は内譯を種類に依つて多少限定する。斯う云ふ種類は何人とかと云ふ風に分けて置かないと、或種の議員だけが非常に餘計出て折角各方面の各界の、代表的の人を集めたいと云ふ趣意と合はないぢやないかと云ふことを心配するのであります、其の點を非常に心配して御尋ねして居るであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=14
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015・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 大變失禮致しました、ちよつと御尋の趣旨を呑み込み兼ねて居りましたが、全國選出議員の場合に於きまして、現に全國に亙りまして組織を持つて居ると云ふやうな場合に於きまして、それから推薦をし支持をする者が當選し易いと云ふことは、是は確かに豫想し得ることであります、併し新憲法に依りまして、兩議院を設け、而して參議院をして抑制機關としての機能を發揮させると云ふ、參議院の性格に相應はしい議員を選ぶと云ふことは、國民、特に有權者に課せられた責任でございます、此の點に付きましては輿論と申しますか、選擧人の自覺に俟ちまして、其處に參議院に議員として適當な者を選出する組織が、將來大いに發達しなければならぬものだと思ふのであります、而して是等の點に付きまして、何か法律的な所謂職能代表的な、適當な分布を得て選出されると云ふやうな、法律上の制限を設けますことは、`是は新憲法に於きまして自由選擧の選出の原則を明かに致して居ります以上、なかなか適當な立法の方法もないのでありまして、是は專ら國民の善處に俟つと云ふより外はないものと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=15
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016・下條康麿
○下條康麿君 御考は分りましたけれども、實際運用した結果、若し先程申述べたやうに、或一部の種類の議員が多數選出せられたと云ふことを考へますと、何等か立法上の手段が要るのではないかと云ふやうにも考へられるのでありまして、勿論選擧資格を制限すると云ふのではないので、茲にありまする定員は自由に定められ得るのでありまして、定員の範圍内に於て何か選出せらるべき議員の範圍に、制限を加へると云ふことも考へられるぢやないかと云ふ風に思はれるのであります、事實繰返して申しまするやうでありまするが、今後の選擧の運營上、國民の自由なる意思が適當に發揮せられれば、誠に結構でありますけれども、矢張り組織あり、系統ある所の團體と云ふのが、選擧の實際上極めて有利であることは疑のないことであります、さう云ふ方面から非常に多數の人が出ると云ふことは、是は議員の構成上、參議院の本質と致しましても甚だ適當でないやうに考へますが、私は斯う云ふ點は何か立法上手續が要るだらうと思ひますが、今適當な御考も伺ふことは出來ないと思ひますから此の程度で止めて置きます、私の質問は是で終りまます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=16
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017・松平親義
○子爵松平親義君 ちよつと委員長に伺ひたいのでありますが、章別に質疑をなされるやうな御話を伺ひましたが、私は章別にして質問致します前に、此の選擧法其のものの精神、考へ方に付きまして、總論的な事柄に付て御尋をしたいと思ふのでありますが、之を第一章の總則の質疑の折に、私の質問することを御許しを得られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=17
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018・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 是は總則としてありますから、間接にはそれにも關係があると思ひますから、只今御述べになつても宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=18
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019・松平親義
○子爵松平親義君 それぢや御願ひ致します、簡單に伺ひたいのでありますが、此の參議院の構成を考へる場合に於きましては、勿論衆議院と相對して兩々相俟つて考へて行かなければならないことは申す迄もないと思ひます、さうしまして當然そこに考へられることは、衆議院と同じものが茲に出來上ると云ふやうなことでは、勿論面白いことではないのでありまして、矢張りそこに兩院に自ら差異がなければならないと思ふのであります、其の差異をどこに置くかと云ふことに付きまして、昨日も本會議で御質疑がありまして、政府の御考のことも分つたのでありますが、どうも法文を拜見致しますと、差異と云ふものが年齡の點に於ての差異、或は選擧區に於ての差異、或は選擧方法に於ての差異と云ふ風に、差異のある程度は分りますけれども、併し斯う云ふ風な程度に於ての差異を附けたことに依つて參議院が果して衆議院とどの程度の差異が、實際の政治の運營の上に於て現れて來るかどうかと云ふことは、私は非常に疑はしく思ふのであります、先達ての憲法の審議の上に於きましても、色々と御考を伺ひましたのですが、只今此處に戴きました法制局として色々御考へになりました時の、參議院法の條項に於きましても、何か茲に推薦の候補者の方法を採ると云ふやうなことも、考へられて居つたやうに思ふのであります、處が推薦の方法は全然今度の選擧法には殘つて居りませぬ、何かそこに差異を附けるべく方法を考へて宜いぢやないかと思ふのであります、其の點に付て先づ一應伺つて、どう云ふ風な程度で果して宜しいものであるかと云ふことを伺ひたいと思ひます、内務大臣からでも、どなたからでも宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=19
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020・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 參議院の選擧方法を定めるに當りましては、國會が兩院制度を採りました以上、御述の如く、參議院には參議院に相應はしい特色を持たせると云ふことが、是は絶對に必要なことでございますが、併し新憲法の審議決定に依りまして、參議院議員選擧法を立案するに當りましては、相當細部に亙りまして、憲法に於て其の基本が決められて居るのであります、其の決められました基本事項の制約内に於きまして、參議院の特色に相應はしい議員の選出方法を考へると致しまして、色々の點に付て調査研究も致し、工夫も致したのでありまするが、只今御述になりました推薦の方法の如きも、新憲法の基本條項と照し合せまして、そこで自由なる手腕を揮ふと云ふ餘地が殆どないやうな次第に相成つて居るのであります、昨日、本會議に於きましても一部御説明を申上げたのでありまするが、或は此の國會に於きまして參議院議員候補者を推薦をすると云ふことも、さう云ふ御意見が各方面にもあつたのでありまするが、若し衆議院で、參議院議員候補者を推薦をすると致しますると、參議院の獨立性と云ふものが非常に害される虞があるのであります、尚又參議院に於きまして推薦をすると致します、さう致しますと、是は所謂自薦の弊に陷りまして、是も適當でないと云ふことに相成るのであります、若し兩院で以て候補者を推薦すると云ふことになりますると、只今申上げました兩者の缺點を持つと云ふやすなことに相成るのであります、而して他に適當な推薦母體を求めると致しましても、どうもそこに適當な推薦母體を發見することが出來ないのであります、さうして此のやうな推薦制を採りますことは、有權者が、自分の適當だと信ずる候補者を選擧する上に於きまして、一つの制限を加へることになりまして、新憲法の趣旨であります所の所謂自由選擧の點に於きましても、段々疑問が生じて來ると云ふやうな次第でありまして、結局方法に於て適當のものが見付からぬ、又蹤しそこに適當な方法が見附かつた場合に於きまして、特定の候補者でなければ選擧が出來ないと云ふやうな建前を執ることは、新憲法の條章に照して如何なものであるかと云ふやうなことに逢著致しまして、遂に此の推薦制度と云ふことは、是は放棄するの已むを得ないやうな結果に相成つた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=20
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021・松平親義
○子爵松平親義君 只今推薦の方法に付て御話がありまして、是は憲法の精神に反するのではないか、自由なる國民の總意に依つて代表された選擧と云ふ點に付て疑問の點があると云ふ御話でありました、色々御苦心のことであらうと思ふのでありますが、併し又考へ樣に依れば、もう少し自由に考へて見るならば、今後折衷の制度にして、候補者の半數位は其の推薦で之をやり、あとの半數位は矢張り自由候補でやると云ふやうな方法にでもすれば、考へられないでもないのぢやないか、さうして推薦の母體は貴衆兩院で之を推薦すると云ふやうな折衷的な考へ方も考へられるのぢやないか、要するに推薦をすることに依つて參議院議員に相應はしい議員が其處に出て來る餘地があると思ふのであります、憲法の國會の章に於ての精神と云ふものは非常に理想主義的なものでありまして、既に民主主義の基盤と云ふものが日本の現在の社會に出來て居るならば兎も角として、今後之を我々の力で盛り立てて行かうといふ此の現在に於きまして、それを既にもう其の地盤が出來て居ると云ふことを前提しての上に於ける選擧を考へると云ふことは、餘りに理想に走り過ぎて居るのぢやないかと私は思ふのであります、矢張り現在の一面に於きましては理想的な考を持つと同時に、一面に於ては現實の社會の基盤を考へました時には、矢張り此の推薦をすることに依つて良い人が其處に得られる、參議院議員に相應はしい人を其處に得られる餘地があると思ふのでありまして、敢て推薦にしたからと云つて憲法の民主主義の精神に反するとも考へられないのであります、併し既に此の推薦制度に付ては疑問があるから、之を採用しなかつたのだと云ふ政府の御考へであるならば、それも一應の御考へであります、そこで更に私は伺ひたいのは、昨日も本會議で金森國務大臣から御答辯がありましたが、參議院の法律と云ふものは眞綿の法律だ、國民を金縛りに縛るやうなことはしたくない、鋼鐵の法律を作らずに眞綿の法律を作つて、さうして參議院議員にどう云ふ人間を出すかと云ふことに付ては自ら國民の良識と正しい國民の判斷に俟つより外はないのだと云ふ御話であります、是も一つの御考であると思ひますが、然らばさう云ふ風な考の下に、唯今後は國民が民主主義的な精神に目覺めて行くならば、自ら其處に參議院議員に相應はしい人間が出て來るのだらう、敢て之を法律で縛らずに、教育と云ふか、さう云ふ外の方面から國民を指導して行くことに依つて、自ら國民の正しい判斷に依つて、自然に參議院議員に相應はしい人が其處に出て來ることを期待するのだと云ふやうな御考へであるやうに思ふのであります、政府としてはさう云ふ風な御考の下にどう云ふ議員を出すかと云ふことに付ては、法律で全然之を取扱はないのだと云ふ御考へでありますか、さうして又さうであるとするならば、參議院議員に相應はしい人間を出すことに付ては、一體どう云ふ御考を御持ちになつておいでになりますか、其の邊に付ての御考を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=21
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022・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 此の參議院議員として相應はしい議員を選出する爲に於きましては、可能な限度に於きまして參議院議員選擧法に於て或程度の規正をすることは是は望ましいことと考へるのであります、先程來御説明を申上げましたやうに、新憲法に於きまして參議院議員の選擧法の在り方に付きましては、基本的事項が規定をされて居りますので、其の基本的事項の制約の範圍内に於きまして立法を致しますると、茲に提出しました法案の程度が可能にして適當なものと云ふ結論に達して居る次第であります、而して此の參議院議員法が成立した曉に於きまして、此の法律の運用に依りまして、實際上參議院として相應はしい議員を得るやうに政府としても努めなければなりませぬ、又國民と致しましても選擧權の行使に際しまして、憲法及び選擧法乃至此の制度の要求して居る所に合致した者を選出する如く努力しなければならぬものと考へるのであります、從つて昨日金森國務大臣から御答がございましたやうに政府と致しましては必要なる程度の立法は致しますが、それから先は國民竝に政府の運用宜しきを得て、其の趣旨を達すると云ふことに致すべきであると考へて居ります、今後政府と致しましても其の線に沿ひまして運用上十分注意を致して參る積りで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=22
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023・松平親義
○子爵松平親義君 只今の御話に依りますと、矢張り新憲法の條項に制約を受けるので、此の程度の立法しか出來ないんだ、是以上は一に運用に依つて正しい參議院の姿を現はして行きたいんだと云ふ御話であります、併し果してそれだけで、運用に依つてと云ふ漠然たることで、此の參議院が立派に出來上るかどうかと云ふことは非常に怪しいと思ふのであります、矢張りそこは運用と云ふことになるかも知れませぬが、教育の力、國民に對する政治思想を普及すると云ふやうなことも大切な一つの事柄になると思ふのであります、さうして矢張り憲法の精神に反しない範圍に於て、或程度の矢張り法律的な措置もそこに私は講じて行かなければ、本當の立派な姿のものは私は出來ない、運用と言ひますが、其の運用と云ふことは、矢張りそこに一つの法律的な措置を私は必要とすると思ふのであります、さうして此の選擧法其のものに於きましては、是以上の規定が出來ないと致しましても、此の度提出されることになつて居ります國會法あたりに於きまして、自らそこに又憲法の範圍に於ての參議院と云ふものの權限、或は運用の方法と云つたやうなものは國會法に規定をされると思ひますが、さう云ふやうな時に、矢張り此の參議院と云ふものの性格を能く考へて、衆議院と自ら異なつた、そこに運用の仕方が出來るやうにして行く、さう云ふ點に於て自ら兩院に差異を附けて行くと云ふことも亦出來ると思ふのであります、さう云ふ風なことで、又任期の問題に付きましても、矢張り是は參議院法の中にありますが、任期の六年と云ふやうなことも、或は此の際もう少し之を延ばす、或は九年位にすると云ふやうなことも考へられないではないと思ふのであります、まあ選擧法の中で一番衆議院と差異のある點、差異と云ふか、衆議院との價値ある差異と云ふものは、私は任期であると思ひます、此の任期を長くすることに依つて、自ら其處に熟練、愼重、耐久の要素が生れて來ると思ふのでありまして、斯う云ふ點に於ても是は考へられはしないかと私は思ふのであります、さう云ふ風な譯で兩院に差異を附けると云ふやうなことは、まだ參議院法に於ては此の程度の差異しか出來ないかも知れませぬ、併し任期の點に於ては私は出來ると思ひます、其の點は如何に御考になつて居られますか、それから尚國會法あたりに於きまして兩院の權限と云ふやうな點に付て自ら‥‥自らでありませぬ、兩院の權限に付て茲に差異を設けて置くと云ふことに依つて、選擧民としてはそこに參議院と衆議院との權限上の差異と云ふやうなものに眼を著けまして、自ら參議院には斯う云ふ人を出したい、衆議院には斯う云ふ人を出したいと云つたやうなことの判斷がそこに附いて來て、自ら違つた人がそこに出て來ると云ふやうなことも私は考へられると思ふのであります、其の點に付てもう一遍大臣の御答辯を伺ひたと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=23
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024・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今御話のありました如く、參議院が任期が衆議院より長い、尚又半數づつ交代を致します、さう云ふやうな建前に依りまして、參議院の性格が衆議院の抑制機關としての作用をする上に於きまして、大變宜しい結果を生むであらうと云ふことは考へられることであります、此の點に付きましては新憲法に於て十分御研究になり、確か四十六條に於きまして「參議院議員の任期は、六年とし三年ごとに議員の半數を改選する」と云ふことに明定せられて居りますので、是は參議院議員選擧法に於きまして更に取扱ふ一つの内容に確定されて居る次第であります、更に參議院を衆議院に對しまして特色あらしめるに付きましては、其の他の憲法の規定竝に參議院議員選擧法案に於て法定を致すと云ふことの外に於きまして、御話の如く或は政治教育に依り、或は又健全なる政黨の發達に依り、乃至は國民の民主主義的な自覺に依りまして、選擧民が自由なる意思の表明に依りまして、參議院議員に相應はしい議員を選ぶと云ふことに自覺が、教育或は政黨の發達其の他のことに依りまして行はれまするならば、將來に於きまして參議院の性格に相應はしい議員が選ばれるものと考へられるのであります、又國民と致しまして、政府と致しまして其の方向に向つて努力をすることが我が國の民主政治の發達の上に甚だ必要のことと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=24
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025・松平親義
○子爵松平親義君 大體政府の御考も分りましたので、唯私、今任期の問題を申しましたが、御話の通り私が思ひ違ひをして居りました、是は憲法で規定して居りますから、私が間違つたことを申上げます、唯將來に於て、或は此の任期と云ふものは長くする必要が考へられることは考へられると思ふのであります、矢張り唯將來自然に國民の良識の發達を俟つて、此の參議院議員を立派に育てると云ふことでなく、私は此の際さう云ふ風な自然の將來の國民の良識を俟つと云ふことの外に、矢張り法律上の措置を講じて、此の際兩院に出來るだけ差異を附けると云ふことを私は希望致して居るのであります、私の質問は是で打切つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=25
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026・吉田久
○吉田久君 私は昨日の本會議に於きまして内務大臣が本案提出の理由を御説明に相成りました、其の御説明に基いて更に政府の御所見を伺ひたいのでありますが、それに付きましては只今松平子爵からして御述べになりましたことにちよつと觸れて居るのでありまして、或は重複する點があるかも知れないと思ふのでありますが、其の點はどうか御寛容を御願ひ致して置きます、昨日の本會議に於きまして内務大臣は本案提出の理由と致しまして、被選擧權の制限、參議院議員の被選擧資格の制限を附けると云ふことは、新憲法の精神に副はないものである、であるからして、法規の上では其の制限を附けないことが宜しいのであると云ふやうな趣旨の御説明があつたのであります、併し新憲法の四十四條の但書に於きましては、人種、信條、性別、社會的身分、門地、教育、財産又は收入によつて選擧人及び披選擧人に差別をしてはならないと云ふ枠を設けて居るだけでありまして、從つて其の枠に觸れない限りは被選擧資格に制限を加へましても、それは憲法の精神に反するものであるとは言へないと思ふのであります、で私は被選擧資格に制限を加へると云ふことは、參議院の特異性を付與することに必要であると云ふ考を持つて居るのであります、參議院に特異性を持たせる必要があると云ふことは、是はもう何人も異論のない所でありまして、二院制を認める以上は不可缺の要素であると信じます、而して參議院の特異性に付きましては、衆議院の行過ぎた議決に付て反省を求める、之を抑制するやうに善導する働きに求むべきであると思ふのであります、而して其の働きを發揮させるのには衆議院とは異なる所の知識經驗者を以て參議院を構成せしめなければならないことは言ふ迄もありませぬ、此の點も亦恐らく異論のない所であると存ずるのであります、然るに衆議院とは異なる知識經驗者を網羅するのに付ては、本案のやうに唯衆議院の被選擧年齡二十五歳を三十歳に上げると云ふことだけでは其の目的を達し得ないと思ひます、でありますから、結局する所は、選擧人の自覺に俟たなければならないと云ふことになるやうでありまするが、現在の選擧界では選擧人に此の自覺を求め得ないと存じます、此の自覺を選擧人に持たせるには須く政治教育に俟たなければならぬのでありまするが、五年や十年では到底それは庶幾されませぬ、此の點に關しまして内務大臣は實際の運用に依つて按排すると云ふことを本會議では申されましたし、又金森國務大臣は鋼鐵製の規定を廢めて、柔軟性のある所の眞綿の規定を以てするのであると云ふことを申されました、併し只今松平子爵からも御尋がありましたが、實際の運用と云ふことはどう云ふことを意味するのであるか、私は政府に於て持たれて居る所の具體的の方法に付て承りたいのであります、惟ふに是は政治力を以て民衆をして參議院の本質を了解せしむるやうに指導すると云ふことになるのではないかと思ひまするが、此の指導がなかなか實際的には望み得ないと思ひます、で、是は矢張り法律で規定を設けて置きまして、一般國民に此の枠を、指針を示して、此の線に沿ふて選擧權を行へと云ふことにして置かなければならないと思ふのであります、然らば新憲法の規定する所の被選擧制限の枠に觸れないで法律を拵へるとしたならばどう云ふことになるかと云ふと、第一には職能團體の推擧する所の候補者に付て選擧權を行はしめる案である、是は是迄にも度々識者に依つて言ひ古されて居ることでありまして、政府に於きましても、十分此の點に付ては御考慮になつて居ることと推測するのでありまするが、此の點に付きまして内務大臣は昨日も本會議で、現在では職能團體と云ふものは不完全である、であるからして、それを通しての選擧方法を行はしめると云ふことは、選擧權を行はしめると云ふことは適當でないと云ふことで、此の案を否定せられたのであります、併しながら職能團體は之を整備することはさ程の難事ではないと思ふのであります、具體的に申しますれば、商工業者にはそれぞれの組合があります、漁業者には漁業組合があります、勞働者には勞働組合がある、醫師には醫師會、辯護士には辯護士會、又は學界にも學校の聯盟が出來て、團體が出來る機運に向つて居る現状でありまするから、其の職能團體を作ると云ふことはむづかしくないと思ふのであります、學生であるとか、教員であるとかと云ふ者には、其の團體を利用して代表者を拵へさせれば宜からう、斯樣に考へます、さうしますると云ふと、殘るのは無職者でありまするが、今後は無職者は到底生存して行けない状態でありまするから、何等かの職業に就かなければならぬと云ふことにならうと思ひます、又選擧權を行使するのに付て、孰れかの職能團體に歸屬せしむると云ふことにするのも一策であります、斯樣に觀じ來りますると、職能團體の整備と云ふことはむづかしくないと思ひまするので、此の際之を整備しまして、適當に其の團體を作らせたらばどうだ、而して其の團體に依つて候補者を擧げさせるやうにしたらばどうかと云ふことを私は更に政府に御意向を求めたいのであります、此の職能代表者に依る所の選擧が、參議院議員に知識經驗者を網羅するのに相應しい方法であると考へますし、又憲法四十四條但書の枠にも觸れないことになると存じまするので、どうか政府に於きましても、今一應考へ直して戴く餘地が出來ないものであらうかどうかと云ふことを本員は御伺ひ致したいのであります、どうも本案のやうな法律が世の中に出まして、それに依つて此の參議院の議員が拵へ上げられると云ふことになりましても、其の拵へ上げられたる所の議員と云ふものは、結局衆議院議員の燒き直しである、複製に止まると云うても宜からうと思ふ、却て衆議院よりは一層質の惡い議員と云ふものが拵へられるのではないかと云ふことを本員は憂へて居るのであります、聞く所に依りますと云ふと、早くも此の參議院議員の候補者の名乘りを擧げた者の中で、自分は選擧費用に百萬圓を投ずる、自分は二百萬圓を投ずると豪語して居る者があるやに聞いて居ります、百萬、二百萬と云ふやうな巨費を投じて議員になる者に祿な者はありませぬ、左樣な者には到底此の參議院を託することは出來ないと思ふのであります、尚其の外に本案に依りますと云ふと、選擧運動は原則として自由であると云ふ建前が執られて居る、であるからして、戸別訪問可なり、又事務所の設置も自由である、ビラの撒布も自由である、さう云ふ風になつて參りますると云ふと、此の選擧運動に付きましては、可なりの巨額の運動費用が要ると想像されるのであります、又さうなつて參りますると云ふと、此の參議院の選擧に付ては、衆議院以上の巨額の運動費を要すると云ふことは、是は當然豫想されて宜からうと思ふのであります、一體選擧に付きまして巨額の運動費を要すると云ふことは、是は議會政治を毒する根本であります、でありまするから、選擧法と致しましては、成るべく此の議員候補者に金を使はせないと云ふ方法を採らなければならない、然るに本案に於きましては、少くも參議院の議員選擧に付きましては、巨額の費用がなければ運動が出來ないと云ふ風に出來上つて居る、是は甚だ法律と致しまして遺憾であると本員は考へて居るのであります、尤も選擧費用の制限に付きましては、法律の上では其の制限があります、併しながら此の制限は有名無實のものであると云ふことは、實際の實情を知つて居る者は何人も否定することの出來ない事柄であります、私は判事在職中に制限費用超過と云ふ理由で選擧の當選を無效とする訴訟を二、三取扱ひましたが、其の結果は孰れも證據が擧らぬと云ふことで原告の敗訴になつて居ります、其の事由にも色々ありますが、第三者運動と云ふやうなことが其の主なる訟議の事由になるやうであります、第三者運動‥‥‥候補者と意思を通じないで爲したる第三者運動に於ては、其の運動の費用は選擧費に加算しないと云ふことになつて居りまする爲に、此の第三者運動は選擧候補者と意思を通じて爲さないものであると云ふやうな拔け道が出來まして、常に制限費用超過と云ふ事實が證明されないと云ふことで、訴訟では敗けると云ふことに落ち着くやうであります、左樣な次第でありまして、此の法律の上で選擧費用を制限して居る、其の制限した範圍内に於て選擧運動が出來るのだと云ふやうなことは、全く是は机上の論でありまして、實際には適用致しませぬ、のみならず現在の高物價の時代に於きまして選擧運動をすると云ふことは、是はもう竝々ならない苦心と費用を要すると云ふことは誰人も異論のない所であると私は考へて居るのであります、左樣な次第でありまして、本案の建前が選擧運動を自由にして、さうして選擧人に巨額の金を使はせることが出來る餘地を與へる、從つて議員候補者になる者は、巨額の金を持たなければ候補者に立てないと云ふ實情に置いて、さうして選擧をさせると云ふことだけでも、其の結果は想ひ知られると云ふことを私は申上げたいのであります、それから次に選擧の方法と致しまして、只今内務大臣からも御説明がありましたが、貴衆兩院に依つて推擧せられた候補者に付て選擧をさせると云ふ方法であります、此の點に付きましても只今内務大臣の御説明があり、又昨日の本會議でも御説明がありましたが、衆議院から推擧させると云ふことになると、參議院の獨立を害する、參議院を衆議院の下風に置き、其の權威をも殺ぐことになると云ふこと、又參議院自身をして推擧せしむると云ふことは、是は自薦の弊に陷ると云ふことの爲に、此の方法も餘り面白くないのだ、政府に於ては考へたけれども、其の方法を採らなかつたのだと云ふことであります、一應御尤もであります、御尤もでありまするが、參議院は新憲法の上に於きましては衆議院よりも其の權限に於て非常に弱い、見方に依りますと、參議院は衆議院の下位にあると言うても宜からうと思ふのであります、でありまするから、其の上位にある衆議院、其の衆議院議員は國民の公選に依つて選擧せられて居る議員でありますから、其の議員の合意に基いて參議院の候補者を推薦せしむる、推擧せしむると云ふことは、私はどうもさう參議院の獨立性を害すると云ふことに解釋しなくても宜いのぢやなからうか、又其の推擧の下に選擧させて出來た議員と云ふものは、本案の建前其の儘からして選出せられた議員よりは私は質の良いものが得られると思ふのであります、本案のやうな建前から選出せられた議員よりは、假令多少權威問題もありませうが、併しながら衆議院の推擧した議員に付て選擧をさせると云ふ結果が良い結果が得られる、質の良い議員が得られると云ふことから致しまして、所謂利害較量の點からして、其の兩院議員の推擧に依る選擧と云ふことも亦大いに考へて宜しいのではないか、斯樣に考へて居ります、而して此の選擧方法は憲法四十四條の但書の枠にも觸れないと考へます、又四十三條に規定して居る全國民を代表する所の選擧された議員であると云ふことにも又妨げないと存ずるのであります、私は繰り返して申上げまするが、本案が其の儘成法と相成りまして、世の中に出て、それに基いて參議院が出來ると云ふことは、如何にしても參議院議員の質を低下させて、參議院を本來の面目に於て構成する所の所以でないと云ふことを心配する餘り、只今の所見を述べて御參考に供する次第であります、要するに私が政府當局に御伺ひ致したい點は、選擧資格を制限すると云ふことが新憲法の精神に反すると云ふ建前から本案が出來て居るとするならば、此の御考は御直しになる餘地はあるのではなからうかと云ふ點、もう一つは選擧方法に付きまして、本案に依る所の選擧方法に付て實際の運營に俟つ、其の運營と云ふことの具體的の方法如何と云ふことに付て取敢ず御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=26
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027・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 新憲法が實施致されますると、申上げまする迄もなく、國會は國權の最高機關となり、國の唯一の立法機關となりまして、我が國の政治上、最高の地位を占めることになるのであります、而して將來の我が國政は、總て國會から發すると云ふことに相成りまして、國政上誠に重要な機關に相成るのでありまして、其の國會を構成する衆議院議員及び參議院議員に、其の兩院の性格に最も適合した人を選ぶと云ふことは、我が國の將來の政治を左右することでありますので、國民は此の點に絶大の關心を以て、適材を選出すると云ふことに努めなければならぬことは申す迄もないことでございます、從ひまして今後の政治教育に於きまして、又政治運動に於きまして、又國民が國民としての嗜みに於きましても、此の點に付きまして多大の關心を持ち、努力をしなければならぬことでございます、故に政府と致しましても、此の點に付きましては、大なる關心を持ちまして、將來の國政の運營の上に十分努力をしなければならぬことと考へて居るのであります、私が、憲法及び選擧法の條章以外に、運用に依つて完きを期すると申上げて居ります趣旨は、此の點に外ならない次第であります、次に職能代表の點に付きまして、段々御意見を承つたのでありますが、此の點に付きましては、選擧法案立案に際しまして、政府に於きましても十分研究も致し、考慮も致したのでございまするが、曩にも御説明申上げました如く、衆議院が推薦をすると云ふことに相成りますると、參議院の獨立性を害する虞がございますので、是は採用することが出來ないと云ふ結論に到達致したのであります、又參議院が推薦を致しますことも、所謂自薦の弊に陷る虞がございますので、是も採用をすることは出來ないと云ふ結論に達したのであります、それから他に適當な推薦母體を求めると云ふことに付きましても、段々研究致したのでありまするが、結局適當のものを發見することが出來なかつたのであります、斯う云ふやうな次第でありますと同時に、民主主義に立脚致しますると、國民の自由に表明された意思を尊重すると云ふ建前を執るべきでございます、其の見地から申しますると、是等の推薦方法は、此の民主主義の基本原則の上から、能く反省しなければならぬと云ふ點もございまして、結局此の推薦に依る方法は之を放棄するの外はないと云ふ結論に達しました次第であります、尚職能代表の點に付きましては、是は我が國に於きまして、職能組織が十分に發達致して居りまするならば、此の憲法第四十三條に於ける「兩議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。」と云ふ精神に合ふ次第だと考へられますが、我が國の職能組織は未だ發達が不十分でございまして、憲法の原則を充足するだけの組織になつて居らぬと云ふ結論に達しましたので、職能代表制を法制上採用することは不可能であると云ふ結論に達したのであります、唯此の職能代表制に付きましては、參議院の性格から考へまして、捨て難い長所がございます、又衆議院及び貴族院に於きましても、新憲法の御議決に際して、職能代表の如きものを參議院議員選擧法に於て十分考慮して見るべきだと云ふ附帶決議もございます、それ等の點も考慮を致しまして、政府と致しましては全國一選擧區とする全國選出議員を設ける、さうして事實上の推薦支持に依りまして、職能代表的な全國的の人物が選擧せられる方法を事實上採用しようと云ふことに致した次第であります、言葉を換へて申しますると、職能代表制は選擧法の内容として、法定は致しませぬが、全國一選擧區の議員を選ぶ方法を設けまして、事實上の作用に依りまして、職能代表制の長所を採入れた積りで居るのであります、それから憲法第四十四條の但書に付きまして御見解がございましたが、是は具體的に如何なる選擧方法を採るかと云ふことに依りまして、四十四條の但書の精神に反するや否やと云ふことが決つて來る問題でありまして、抽象的には論ぜられない問題だと思ひます、選擧方法を法定すると致しまして、其の法定しました事項と此の四十四條但書とを相對照致しまして、そこに判斷しなければならぬ問題だと思ふのでありますが、先程來御説明を申上げましたやうに、多くの構想は此の四十四條但書の精神に反するやうな結果に相成るものが多いやうに考へて居る次第であります、それから次に選擧運動を自由に致しました點に付ての御話がございましたが、選擧運動は實際に適實なる制限を致しませぬと、それは空文に終つてしまふ虞が多いのであります、選擧運動の費用の制限の如きも經濟事情の變化がございますと、或時期に於きましては適實でございましても、實際と非常に懸け離れましては、それが空文に歸する、從つて取締りの效果も擧らぬと云ふやうな、事態もございます、尚一面に於きましては、選擧運動に付きまして、色々とむづかしい制限をしますると、選擧をして暗いものに致します、それから又選擧には近寄らぬ方が宜しいと云ふやうな、全國民を政治に參加させると云ふ建前から申しまして、選擧運動の制限が餘りに窮屈になりますると、國民をして政治から遠ざからせると云ふやうな惡結果にも相成ることであります、成るべく選擧は明朗闊達にする、國民が進んで選擧に參加すると云ふ氣風な振作すべきものと考へるのでありまするが、選擧運動の制限の致し方に依りましては、そこに面白からぬ結果を來す虞もあるのであります、我が國に於きましては選擧界を肅清する意味に於きまして、選擧運動の制限を段々致して來て居りまするが、今日の段階に於きましては、只今申上げました趣旨に於きまして、反省を加ふべき事項が段段あるやうに考へらるるのであります、そこで參議院議員の選擧法の立案に際しましては、寧ろ態度を變へまして、選擧運動は成るべく自由にすると云ふ立場を執る段階に達したと云ふやうに考へまして、出來るだけ之を自由に致さうと云ふことに致したのであります、併し如何に自由に致すと致しましても、買收でありますとか、若しくは選擧妨害の如き所謂惡質犯罪は、是は嚴重に取締らなければならぬことは申す迄もございませぬ、尚又費用の制限を撤廢致しましたからと申しまして、所謂金權候補が續々として當選を致し、有能達識の人は引込んでしまふと云ふやうなことがあつてはならないことは申す迄もないことでございまするが、之に付きまして選擧運動の費用に關しまして、收入、支出を適期に公開を致しまして、選擧人の健全なる常識に信頼致しまして、單に金權候補であると云ふやうな者に對しましては、進んでそれを排斥して、議員としての最適格を有する人に、進んで投票をすると云ふ所へ進む、費用の公開制を實施致しまして、健全なる選擧人の判斷に俟つと云ふ態度で進みたいと考へて居る次第であります、尚選擧運動の際に於きまして、ビラを極端に、不必要に掲出をする、板壁に持つて行きまして、一枚のビラを貼つて置けば分るものを、そこに數十枚のビラをべたべたと貼ると云ふやうな點につきましては、世間にも段々非難があることでございますので、今囘の改正選擧法に於きましても、ビラに付きましては適度の制限を附することに相成つて居ります、或はお答へ漏れの點があるかと存じますが、以上お答を申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=27
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028・吉田久
○吉田久君 御説明に依つて、當局の御趣旨は一應了承致しました、只今御説明の中に、全國を選擧區とする選擧制と、參議院議員の素質に關する關聯する御説明がございましたが、是は又後に選擧區の所で卑見を述べたいと存じます、それからもう一つ先程申述べるのを落しましたが、この職能代表等の案に付て、それを採用すると云ふと選擧の自由と云ふものが害されることになる、選擧の自由と云ふものは新憲法の信條として居る所のものであるから、之に觸れるやうな制度は採用することが出來ないと云ふやうな趣意の御説明があつたのでありますが、私の考へる所に依りますと、選擧の自由と云ふことは、選擧權を行使する爲の自由でありまして、被選擧資格を制限する、特に法律の規定を以て制限すると云ふこととは、直接の係り合ひがないのぢやないかと私は考へて居るのであります。之をどうも混同されますと云ふと、被選擧資格を制限すると云ふことは、矢張り新憲法の精神に副はないと云ふ誤解を生ずることにも相成ると思ふのであります、是は法律の解釋でありまするが、私は左樣に考へて居るのであります、選擧の自由と云ふことは、選擧人の側からの選擧權を行使するに付ての自由を保障して居るのであつて、被選擧資格を法律の規定で適當に制限すると云ふことは一向差支へない、殊に憲法の第四十四條の但書は、それに付ての枠を設けて居るだけで、其の枠に觸れない限りに於ては被選擧資格を法律の規定で制限することは一向法律上差支へないものであつて、決して新憲法の精神にも趣旨にも背くものではないと云ふことを確信して居るのであります、此の點に付てはどうも内務當局、内務大臣の御意見がまだ少し腑に落ちないのでありますが、重ねて御答は願はなくても宜しうございます、是から後に又論ずる機會に、其の趣旨を敷衍して當局の御意見を承はれればそれで結構であります、それからもう一つ、先程申上げました中で、申落して置きましたことを補つて置きたいのは、此の參議院議員の選擧に付きましても、國民の自覺に俟たなければならない、どう云ふ議員を選出するのが相應はしいのであるか、詰り衆議院議員を選擧する心構へと、參議院議員を選擧する所の心構へとに於て、異なる所の知識經驗を持たなければならぬと云ふことになるのでありまするが、是は私は現在の選擧民に望むことが出來ない、斯樣に考へて居るのであります、成程是から政治教育が進みまして、選擧民の政治知識が向上致しました場合に於ては別でありますが、現在の選擧民の心理竝に心構へから致しまして、此の兩者を分けて、さうして投票せよと云ふことは、是はとても實際的に行はれるものぢやない、衆議院議員の選擧に付てもさう云ふ感があるのであります、私自身衆議院議員の選擧をする場合に於きましても、此の候補者は一體どう云ふ風な候補者であるかと云ふやうなことを了解することはなかなかむづかしいのであります、左樣な譯で、稍稍衆議院議員の選擧の場合に於きましても御座なりに終ることが少くないのであります、是は私一個の私見ではない、選擧界を通じて、特に地方民を通じての最も大なる缺點であると考へて居るのでありまするが、左樣な状態に於きまして、此の衆議院議員の選擧の方法と、參議院議員の選擧の方法とを截然と區別して、斯う云ふ心構へを以て參議院議員は選擧しなければならぬのだと云ふことを選擧民に求むると云ふことは、實際問題として是は正當でないと云ふことが私の申上げました趣旨であるのであります、それだけ附加へて置きます、別に御答辯は要りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=28
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029・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 是にて通告は終りましたが、第二章に付きまして、尚御發言がある方はどうぞ御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=29
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030・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 私一つ内務大臣に御確めして置きたい、さつきから推薦選擧の話が出まして、憲法との關係に付て色々議論がありましたが、實は憲法の時も大分面倒であつた、それで念の爲に政府の解釋を伺つて置きたいのでありますが、推薦選擧、例へば衆議院なら衆議院、何處でも宜いが、參議院なら參議院で或候補者を推薦してやる場合に、是だけの人が候補者になる、是以外に投票した人は無駄なんだと云ふやうな推薦も一つの推薦、或は推薦は衆議院なら衆議院ですると云ふことになるが、それを何も衆議院なり、參議院なり、或は外の團體からでも宜いが、推薦した人に限らず、誰でも構はず、それから推薦はする、推薦はしてそれ以外の人でも投票して宜いと云ふやうな、二つの場合がある、其の外にも色々想像すればありませうが、今の御話だと云ふと、推薦選擧必ずしも憲法に反しないやうな風にも取られる、其の點は政府の御見解は如何であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=30
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031・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 大河内子爵に御答へ致します、先刻から色々推薦のことに付て伺つて居りますが、内務大臣の答辯が政府の答辯として、宜いと思ひますが、唯法律で推薦の形を決めますと云ふと、四十三條と、四十四條の規定に障ると思ひます、國民全體が選擧すると云ふ形でありますから、國民全體が選擧する形にして置かなければ、此の人間だけが參議院の候補者となり得るものだと云ふ制限を附ければ、差別になりますから、それはいかぬと思ひますが、若し學士會の人が、此の方を推薦すると全國に推薦して名を出すことは、是は自由と思ひます、選擧する人は、其の人に對して御隨意になされば宜い、又商工會議所が商工會議所のどなたかを推薦して、是は參議院の候補者にしたいと御推薦なさることは御隨意と思ひます、法律で決めることは、其の人に限定することになります、誰でも特別な關係のある人が其の人を出したいと思つて、其の人を推薦することは、是は少しも限定する譯でない、誰でもやり得ることでありますから、是は全般に國民が選擧する意味にもなりますので、職業別の此の職業の人を參議院の議員候補者として、選擧出來ると云ふ法律で形を執りましたならば、それは憲法の精神に反すると思ひます、併し自由黨の人が自由黨の此の人を推薦すると云ふことも、商工會議所の人が、此の人を推薦すると云ふことも、石屋の組合の人が此の人を推薦すると云ふことも、それは御隨意に出來ることであつて、更に其の憲法の原則に觸れて居るものでないと思ひます、其の點をはつきり御了解になりますれば、先刻來の職業別の御説も大分解消するぢやなからうかと思ひます、だから御推薦は各自でなさるのは御隨意であります、如何なる團體であらうとも、如何なる職業であらうとも、但し決して之を法律で限定することは出來ぬ、斯う云ふことに御了解願ひたいと思ひます、それからさつき戸別訪問や、序でありますが、選擧費用のことを色々御議論があつたやうですけれども、全國を選擧區とする場合に、選擧費用を幾ら使つたとしても、私は效果がないと思ひます、選擧の御經驗がある方ならば、金で全國の選擧を左右するなどと云ふことは、是はもう絶對に出來ないことで、之を自由にして置くこと程使へない、制限すれば、其の制限の限度迄使ふと云ふことになる、又小さな選擧が行はれる場合に於ても、全縣下に亙つて戸別訪問で選擧の效果を擧げると云ふことも不可能なことであります、選擧の御經驗を御持ちになれば是ははつきりすることで、戸別訪問も金も自由にすること程、さう云ふ弊害がなくなることで、之を局限すること程弊害が起ることだと、私共選擧の實驗に照して左樣に考へて居ります、成るべく斯う云ふ制限を取る程本當に宜い選擧が出來ると思ひます、御參考迄に申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=31
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032・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 私の質問に御答へ下さつて大變明瞭になりまして、有難うございました、こんな場合があるかないか存じませぬが、念の爲に私伺つて置きたいのでありますが、法律の上で推薦團體を決める、兎に角衆議院なら衆議院で相當の候補者を出して、候補者は或團體から推薦されると云ふことを法律を以て認める、併し選擧民としちや何もそれに括られることはないので、それ以外の人を書いたのでも差支へない斯う云ふことも想像されるのでありますが、さう云ふ場合は憲法上の解釋は如何ですか、それは憲法に觸れないと承知して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=32
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033・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 法律で推薦の母體を決めることは、矢張り憲法の精神に觸れると思ひます、御自由になさることは宜いけれども、法律で決めることは差別になります、參議院を年齡で三十と決めるのは宜いのですけれども、特別の團體、特別の職業に對して、是が參議院の候補者たるべしと決めて、それを國民の選擧民に問ふことは限定することになりますから、それは憲法の精神に觸ると思ひます、御隨意に推薦なさるのは構はぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=33
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034・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 取締りの御話が植原國務大臣から出まして、私此の際一つ御確めして置きたい、寛大になつたりしたことは私大變宜いと思ひます、一向選擧にも何にも關係ございませぬが、何かまるで候補者を泥棒扱にして、あんなに細かい規定をして、やれ是だけ金を使つちやいけないの、戸別訪問は惡いの、何だの彼だのと云ふことを衆議院に規定して居るのさへ、如何にも面白くないと始終考へて居る、併しまあ衆議院のことですから、貴族院としちや御遠慮した方が宜からうと思つて別に申しもしませぬでしたが、今度參議院を見ますると、非常に寛大な法が出來て來た、如何でせうか、衆議院の選擧法も或時期に改正されやうと思ひますが、矢張り同じやうな歩調を大體取られることでございませうか、事務の規定とか、或は取締の規定とか、罰則の規定とか云ふやうなことも、矢張り此の參議院法が基本になりまして、さうして衆議院が改正される場合には、政府の意向としては、外から何が出て來るかそれは別の話ですが、政府の意向としては大體之に依つてやつて行かう、參衆兩院は同じ歩調を取つて其の點に付て行くものだ、大體斯う承知して宜しうございますか、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=34
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035・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 選擧制度に付きましては、一部の點でございますが、地方制度に於きまして新しい立て方を致したものがございます、尚又參議院議員選擧法に於きましても、今度新しい行き方を採用致して居ります、是等のことは衆議院議員選擧、參議院の選擧、又地方選擧も通じまして、國民の扱ひ方も統一した方が宜しうございますし、又新時代に合ふやうな選擧方法は成るべく共通的に處理した方が適當であらうと考へて居りますので、衆議院議員の選擧法の改正の機會に、地方制度及び參議院選擧法に依りまして新しい方法を採り入れましたものは、それと同樣の規定を將來に於きまして衆議院議員選擧法で致したいと云ふやうに、政府は考へて居る次第であります委員長(伯爵林博太郎君) 吉田君、何か、簡單なら宜しうございますが、それでなければ、午後一時から願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=35
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036・吉田久
○吉田久君 簡單です、只今植原國務相から御説明のありました點に付て、ちよつと私の意見を述べさして戴きたいのでありますが、推薦制を選擧法に採入れると云ふことは、憲法四十四條の但書の差別と云ふことに抵觸すると云ふ御意見でありましたが、併し此の但書では「人種、信條、性別、社會的身分、門地、教育、財産又は收入によつて差別してはならない。」と云ふことを規定して居るのでありまして、推薦と云ふことは、各團體に於て推薦せられた者を議員たるの資格によると云ふことは、私は此の但書の孰れにも該當しない、斯樣に考へて居るのでありますが、此の點は如何なものでありませうか、人種に依る差別でもなければ、信條に依る差別でもなければ、性別に依る差別でもない、又社會的身分、門地、教育、財産又は收入でもない、その差別待遇が、矢張り推薦制に依る爲に選擧公營の規定に觸れると、斯う言はれるのでありますが、私ちよつと了解出來ないのであります、又憲法の四十三條に「兩議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する」と云ふことを規定致して居りますが、此の規定にも、此の推薦制に依る所が何か牴觸すると云ふやうな御意見であつたやうであります、併しさう致しますと、此の法律の上で議員候補者と云ふものを決めまして、其の候補者以外の者に投票しても、それは投票にならない、投票たるの效力を生じないと云ふことに法律で規定すると云ふことも亦、此の四十三條の規定に反することになりはせぬかと思ふ、私は事實議員候補者を法律の規定で設けるのは、善いか惡いかは隨分問題だらうと思ひますが、併し現行法は議員候補者と云ふものを法律で決めまして、其の候補者以外の者に投票しても、それは投票にならぬ、無效な票であると云ふことになつて居るのであります、此の點は矢張り、植原國務相の御意見に依りますと、四十三條の規定に牴觸する無效な票と、それ自體なりはせぬかと思ふのであります、それでありますから、被選擧資格を法律で制限すると云ふことは、是は四十三條及び四十四條の但書を除いては、別に考慮して宜しい、之をごつちやにして論ぜられると云ふことは如何なものであらうかと云ふことを私は考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=36
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037・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 第四十三條「兩議院は、全國民と代表する選擧された議員でこれを組織する。」、で、年齡を三十歳と定めることは全般的でありますが、併し法律で或特定なる人以外に參議院の議員候補者になれないと云ふ場合には、全國民を代表する意思に副はないと思ひます、で、隨意に、任意に民間の團體が特定な候補者を推薦することは、是は御隨意です、個人が、自分が參議院の候補者となつて參出ると云ふ意味と同一であります、併し法律で此の人のみが參議院の候補者として立てられるものだと限定すれば、全國民を正しく代表して選擧されると云ふ議員にはならないのではありますまいか、左樣な意味に於て、特定の團體、特定の人を法律を以て推薦候補と定めて、それを國民に向つて選擧せしむると云ふことは、此の規定の精神にも反するし、又差別と云ふ、此處の規定が人種とか、信條、性別、社會的身分、門地、教育、財産、收入とありますけれども、まあ社會的の一つの差別になりは致しますまいか、是は唯箇條書にして居るのみで、或候補者に對して差別をして、其の候補者のみに限定して、それに向つて國民に投表せよと云ふことは、全般の國民の意思を正しく代表せしむると云ふことと根本の精神に於て相容れないものがあると解釋するのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=37
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038・田所美治
○田所美治君 通告を致して置きましたが、二三分御尋ね致して見たいと思ひます、内務大臣の御説明で大體了解致しましたが、それから今の植原國務大臣からも仰せられましたが、法律で決めて推薦すると云ふことになると選擧の自由を妨害する、斯う云ふ御話がありましたが、内務大臣から又法律にはそれを規定せぬけれども、運用上から推薦と云ふことを奬勵すると云ふか、推薦で以てヒントを與へて行くと云ふやうな、斯う云ふやうな御話があつたのでありますが、第一に伺ひたいのは、法律で決めると云ふことは、まあ或は命令で決めても宜いかも知れませぬが、植原國務大臣の御話では、或者に限定して、二倍にするとか、三倍にするとか、此の者の中で選べと云ふことに限定をすると云ふことは、選擧の自由に支障がある、それに違ひないだらうと思ひます、制限的、制約的になりますから‥‥、が其の推薦以外にも推薦は全國的に練達堪能とか、或は知名の者であるとか云ふ者を、實は數千萬の人間は知りませぬ、それ故に推薦と云ふもので一つヒントを與へる、全國の者に選擧する參考の資料を與へる、斯う云ふことにもなると云ふことを考へれば、椎薦もなかなか意義を持つて來るだらうと思ふのであります、全國の選擧と云ふことになりますと云ふと、なかなか津々浦々で誰を選んで宜いかと云ふことが分らない、斯う云ふのが一つの障碍であらうと思ふのでありますが、それに付て、どうしても推薦と云ふことの參考資料を與へぬといけまい、さうでないと、何人を選んで宜いか分らないと云ふ者が澤山あるだらうと思ひます、まだ今日普通選擧の發達しない場合に於ても、過日やりました總選擧の場合に於ても、さう云ふ事實が澤山あつたのでありますが、それは限定的でなくして、ヒントを興へて、さうして其の以外にも自由に選擧し得る、限定的でなくして、推薦の者以外に各自が自由で、推薦以外に斯う云ふ知名の者が漏れて居る、斯う云ふ場合にはそれを選擧して差支ない、斯う云ふ方法で、或は法律に書いても宜いかも知れませぬが、法律に書かないでも、さう云ふ推薦の仕方は如何であるか、御考になつて居りますか、斯う伺つて見たいと思ふのであります、それから内務大臣は法規ではやらぬけれども、運用の上に付て各種團體に呼び掛けると云ふ譯になりませうが、團體に成るべく推薦せい、職能的の代表と云ふことも考へて居るから、さう云ふ意味に於て、參議院をして十分有意義なものにしたい、斯う云ふ意味で各種の團體に御呼び掛けにでもなる、法律、命令では書かないけれども、或は内務大臣から地方へ公告すると云ふやうな意味でおやりになるのでありますか、又それ等に呼び掛けると云ふことになれば、どう云ふ團體を目指しておやりになるのであるか、大小、種類如何に拘らず、廣く團體、個人にも推薦を大いにやる、斯う云ふ意味に於ておやりになるのであるか、植原國務大臣は其處迄の御話がなくして、自由に推薦をすることは宜い、今の丁度衆議院議員の場合のやうに隨意にやる、斯う云ふことは一向選擧の自由も拘束しないし、それをやつて宜いのだ、差支ないのだ、斯う云ふ御話がありましたが、内務大臣は法規ではやらぬけれども、運用上で一つそれと同じやうな推薦方法を考へて居る、斯う云ふことでありますが、もう少しく具體的に伺ふことが、出來れば、それも伺つて見たいと思ひます、私は、限定的でなくして、一つでなくても宜しうございませう、推薦の母體が澤山ある、それを限定しないで、限定以外の者、其處で推薦した者以外にも個人が選び得る、何もそんなものは參考にしないでやる、俺の方が能く知つて居るのだ、斯う云ふ意味でやつても、一向憲法の自由選擧の趣旨には背くまいかと思ふのであります、それも御考になりましたか、序にそれも御答を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=38
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039・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 一定數の候補者は何かの推薦團體に據つた候補者と云ふことを法定致し、尚其の際に於きまして、法定外の人も選擧人が自由に選擧出來ると云ふ方法は、實は考へて見たのであります、併し是は其の推薦團體を法律で以て決めまして、其處で何がしかの數を推薦をすると云ふことになりますると、是は選擧の上に於きましては、法的團體で推薦をされました人と然らざる者との間に、選擧上に於きまして有利不利の關係は必ず生ずると思ふのであります、さう云ふやうなことを法律で決めますことは、憲法の條章に直ちに牴觸すると云ふことには、或は相成らぬかも存じませぬが、新憲法の精神から申しまして、自由選擧の原則を貫く必要があると考へますので、それは採ることが少くとも不適當であると云ふ結論に達した次第であります、次に職能代表制の長所を選擧の實際に採入れる爲に、全國一選擧區制を採用したことは申上げたのでありまするが、政府と致しましては、全國一選擧區制を採用致しました曉に於きまして、政府から、職能團體から推薦をするやうなことを積極的に勸奬する意思は持つて居りませぬ、是は自然の民間の動きに委せることが適當であると存じて居る次第であります、我が國の選擧の實際に於きましても、或は政友會公認、民政黨公認と云ふやうな實際の推薦が行はれた事例もございます、現にさう云ふやうな動きはあると思ひます、全國一選擧區制を取つて置きますならば、或は醫師、辯護土、或は政黨乃至は勞働團體等に於きまして、實際の作用として事實上の推薦支持の運動が展開されると思ふのであります、其の事實上の推薦は、例へば全國的の或種の團體に於きまして推薦をされました參議院議員候補者があると致しまするならば、參議院の經歴公報に於きまして、全國的團體の推薦と云ふことの登載を請求せられますならば、此の經歴公報に固より載せて宜いことと思ふのであります、其のことに依りまして全國民に於て、どう云ふ團體の推薦支持がある候補者であるかと云ふことは周知させる方途は講ずる積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=39
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040・田所美治
○田所美治君 一應了承致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=40
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041・秋田三一
○秋田三一君 先程内務大臣から選擧の自由の精神に付て、此の參議院議員選擧法に現れたものを、將來衆議院議員選擧法の改正せらるる場合に適用する考であると云ふお話でありますが、近く知事の選擧、又地方議員の改選が行はれますが、此の選擧費用を無制限にした、是も一つの選擧の自由でありますが、此の精神を矢張り知事選擧竝に地方議員選擧にも御適用になる御考へでありますか、承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=41
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042・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 地方制度の改正の當時に於きましては、衆議院議員の選擧に於きまして、選擧運動の費用を制限した下で總選擧を行つたのであります、其のやうな進み方になつて居りましたので、府縣知事の公選の場合に於きましても、衆議院議員選擧に傚ひまして選擧運動の費用の制限を設けて居ります、故に近く行はるべき公選に際しましては、費用の制限は其の儘で執行致す所存で居ります、將來の問題と致しましては、曩にお答を申上げましたやうに、地方選擧に於きましても、衆議院議員及び參議院議員の選擧の場合と同樣な方法に改めた方が適當ではないかと云ふやうに考へて居ります、尚此の點に付きましては事將來に屬しますので能く研究は致しますが、只今の處、一應衆議院も參議院も選擧運動の費用を制限をしないと云ふことに決りますならば、將來は知事の公選に於ても同樣に致した方が宜いのではないかと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=42
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043・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 午後一時半、開會を致します、只今より休憩致します
午後零時十四分休憩
――――◇―――――
午後一時四十二分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=43
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044・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 是より午前に引續きまして會議を開きます、下條君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=44
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045・下條康麿
○下條康麿君 第一章に關しまして、資料の提出を御願ひ致したいと思ひます、それは第一條第二項に、各都道府縣に於ける各議員の數が別表に依つて定まることになつて居りますが、別表を決められました根據を數的に御示し願ひたいと思ひます、それは後からで宜しうございますから、何か印刷にでもして戴きます、多分偶數にする關係上、先づ最初に二名づつ各府縣に配當して、その殘の定員を人口に依つて配分したことと思ひますが、是は何時の現在の人口であるか、さうして具體的に何縣が定員が何人であるか、恐らく偶數の關係で端數があつて、切上げ切下げのことがあるだらうと思ひますが、さう云ふ點も見たいと思ひます、それから、其の當該都道府縣に付きましては、重要な問題でありますから一應計算の基礎を書面に依つて御提出願ひたいと思ひます‥‥、委員長、何か配布になつて居るやうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=45
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046・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) ああそうですか、それでは小山君、まだ來て居りませぬね、それでは永井君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=46
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047・永井松三
○永井松三君 今朝質疑をされた同僚委員の一部も、又之に對しての内務大臣の御答辯と云ひ、共に參議院の理想的構成を主張するの念に出づるものであると云ふことは明かであります、どちらも十分に滿足をして居られない情勢は明かに認められるのであります、處で此の政府提案は、又それに對しての質疑をされました委員も、選擧方法を直接選擧に限つて進んで居らるるのでありますが、尚茲に間接選擧の方法もあつて、或は之に依つて御互が苦しんで居ります隘路を通ることが出來るのであるかとも考へられるのであります、臨時法制調査會の決定にも直接選擧と云ふことになつて居るのであります、政府案又然りであるのでありますが、此の直接選擧を採つて其の外の選擧即ち間接選擧を採らなかつたと云ふ理由を、審議進行上の參考に伺ひたいと思ふのであります、御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=47
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048・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 參議院の選擧に付きまして、間接選擧のことに付きましても段々研究考慮を致したのでございます、而して此の間接選擧法を採りますことは、新憲法の四十三條の「兩議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。」と云ふ趣旨に必ずしも反するものとも考へられないのであります、之に牴觸する譯ではございませぬので、間接選擧の方法を考究する餘地はあると考へまして色色研究をしたのでありまするが、併し間接選擧の方法に依りまして民意を代表するに適當な方法を案出することが實際問題として困難であります、アメリカには間接選擧を採つて居りまする面もございまするが、是等も段々實際を見ますると、政黨の發達に依りまして名は間接選擧でありまするが、餘程實體は異つた所に行つて居るのであります、其の他間接選擧の方法として適當なるものを發見することが困難だと云ふ結論に達したのであります、そこで間接選擧の方法を捨てまして、直接選擧の方法に依ると云ふことに決しまして、只今申述べました新憲法四十三條を讀み返しますると、此の立法の精神には直接選擧に依つた方が直截明瞭で適當だと云ふやうな感じも致すのであります、結局是は間接選擧の名案がありますれば、採用することは憲法上も差支ないことと考へまするが、そこに名案を見出し兼ねたと云ふ次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=48
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049・永井松三
○永井松三君 本員も同じく憲法の精神には背馳して居るものでないと云ふ風に考へましたからして只今伺つたのであります、政府の御意向も伺つて居ります、只今は質疑に止めまして、尚修正等の機會に於ての本員の意見を述べますのはそれに讓りまして、質疑は之に止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=49
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050・川村竹治
○川村竹治君 私は一つ政府委員に伺ひたいのですが、地方選出、議員と全國選出議員と二つに分けてある、是は恐らく法制調査會に於ても二種に分けて置いた、それに依つたものと思ひまするが、併し此の法制調査會等で二つに分けた趣意は、此の全國選出議員は或る推薦の制度に依つてやらうと云ふ構想の下に於て是が出來た、然るに同じく國民の直接選擧と云ふことになりますると云ふと、此の二つを區別する必要がないと思ふのですが、政府の御意見は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=50
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051・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 臨時法制調査會又世論に於きましても、全國選出議員は何等か適當な候補者の推薦制度を伴はせると云ふ議論は段々あるのであります、臨時法制調査會に於きましても、其の點に付て段々御研究になつたやうでありますが、結局答申は推薦制を伴はない御答申に相成つた次第でございます、而して此の全國選出議員に付きまして何等か適當なる推薦制に付きましては、政府に於きましても、段々研究を致したのでありますが、先程來申上げますやうな經緯で、遂に是は法定をすることは適當でないと云ふ結論に達しました、提案もそれを伴つて居ない次第であります、尚全國選出議員と地方選出議員とに區分することに提案致して居る理由は、午前にも一寸觸れたことでありますが、議員の選出方法に於きまして全國一選擧區の方法を採つて居る例ば諸外國にも其の例は殆ど見當らないのであります、唯ドイツに於きまして其の例があるやに聞いて居るのでありますが、是とても比例代表制を入れます際に於きまする過程としまして採つて居るのでありまして、我が國の如き單純なる全國一選擧區制と云ふものは、殆ど諸外國にも其の實例がないのであります、他國が全國一選擧區制を採らないところでも明かな如く、此の第二院の構成に於きましては、地方の選擧區に依つて選出されると云ふのが先づ常例になつて居る譯であります、而して參議院の構成を致します上に於きまして、或程度の人數を地方選擧區から選出をして所謂地域代表的な分子を加へると云ふことも、是は望ましい廉もございます、從ひまして、地方選擧區制を當初は一應半數と考へたのでありますが、結局に於きまして、百五十人は一般の例に倣ひまして地方選擧區から選出する、殘りの百人を全國選擧區から選出することに致しまして、さうして制度の上には明定致して居りませぬが、實際の運用に依りまして、事實上の推薦と云ふことに依りまして職能代表的な長所をも採入れる、又全國一選擧區制に依りまして學識經驗共に優れた全國的な有力な議員を選ぶことが參議院の構成上適當であると云ふことで、地方選出議員、全國選出議員の兩方を採り入れることに決した次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=51
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052・川村竹治
○川村竹治君 地方選出議員は衆議院に代表されて居ると云ふ是で十分だと思ひます、參議院は參議院の本質に從つた議員を選ぶことが必要である、從つて其の地方選出議員と云ふものは其の意義を失つて居ると思ふ、從つて是は一つにしてしまふ方が宜い、參議院議員數は二百五十名なら二百五十名、三百名なら三百名、之を同じ選擧方法に依つてやつたら宜いと思ふ、それに依つてやつたらどうかと思ふ、地方選出議員と云ふものは存在の意義ないと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=52
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053・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 參議院の性格は如何であるべきかと云ふ點に付きましては、色々議論のある所と存じまするが、併し兩院制を採用します上から申しまして、審議を繰返しまして、そこに愼重なる審議をすると云ふ面も、たしかに見逃すべからざる一つの作用でございまして、參議院に於て審議をする際に於きまして、地方の實情に精通して居る議員が加はつて居ることも望ましいことだと考へるのであります、其の意味に於きまして、地方選出議員が參議院の構成の中に加へられると云ふことは、政府は必要であると云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=53
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054・淺井清
○淺井清君 只今川村議員の御質疑に關聯致しまして御伺ひを致したいと存じます、只今内務大臣の御答辯に依りますると、此の全國一選擧區の議員選出と云ふことは、各國の例に於ても稀なることでございますし、又只今御氣付になりましたドイツのワイマール憲法時代の全國一選擧區の制度と云ふのは、全然是とは違つて居りまして、唯比例代表の結果を集積する爲に全國を一選擧區と認めたものでございます、此の新らしい試みを爲されようとするに當りまして、内務大臣は、此の全國一選擧區の選擧を、支障なくおやりになる御確信がおありでございますか、先づ内務大臣に御伺ひを致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=54
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055・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 仰せの如く全國一選擧區の選擧と云ふのは、我が國に於ても固より經驗を持つて居りませぬ、諸外國に於きましても實例が乏しいのであります、又全國一選擧區の選擧を執行致すと致しまして、我が國の國情に鑑みまして、是はさう簡單にやれるものでない、極めて困難なことであると考へまして、此の點に付きましては十分愼重なる檢討を遂げたのでございます、併し參議院の其の性格に適する議員を選出する上から申しまして、又一つには、憲法審議の際に於きまする兩院の御意向に徴しまして、全國選出議員の制度を採り入れることは民意であると考へまして、此の點に付きまして十分愼重に考慮致したのでありますが、そこに困難と繁雜な點はたしかにあるのでありますが、併し選擧の我が國の實際に於きまして、兎も角も其の難關を克服して選擧は執行出來ると云ふ結論に達しましたので、そこで此の全國一選擧區制を採ることに致した次第であります、而して之が難點に付きましては、若し茲に連記制の如きものを採ると致しますと、非常に煩瑣が増すのでありますが、單記制、單記投票でございますと、比較的早い時期に全國的の集計を爲し得るのであります、精細に取調べました結果、大凡選擧の日から二十日間の日數がありますならば、大體正確に集計を致しまして、其の結果當選人を定めることが可能だと云ふ結論に達して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=55
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056・淺井清
○淺井清君 只今内務大臣の御答辯に依りますと非常に困難が伴ふと云ふ御話でございまするが、さう云ふ困難を克服しても之をおやりになると云ふことは、是は政治の上に於て一つの試みを爲さることであり、冒險を爲さることであらうと存じます、一體政治と云ふものは其のやうな試みや冒險をしても敢てすべきものであるかどうかと云ふ點に付きまして、私は根本的な疑問を持つ者でございます、それは只今此の席上で申述べるべきことではないと存じますが、唯其の全國一選擧區の選擧に付て、我國政界の長老であり、又多年選擧に御習熟になつて居りまする植原、齋藤兩國務大臣が幸ひ御出席でありますから、兩國務大臣は此の全國一選擧區の選擧がうまく行はれると云ふことに付て御確信がおありであらうかどうかを御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=56
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057・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 淺井君の御質問に御答へ致します、其の前に尚ちよつと申添へて置いた方が宜からうと思ふことは、地方選出議員と全國選出議員の此の區別を附けたことでありますが、先刻川村委員からも一つにしてはどうかと云ふやうな意味を含んだ御尋もありましたが、成るべく國民を代表する多方面を網羅致した方が宜しい、二百五十人の議員を選出するに致しましても、此の方法が違へば方法の違ふだけ違つた方面の人を選出する機會は幾分より多くならうと思ひます、さう云ふやうな建前から地方議員と全國選出議員との區別を設けたと云ふことを御了解下さることも亦一つの考へ方だと思ひます、さうして全國選出の議員の選擧がうまく行はれるかと云ふことでありまするが、内務大臣が周到なる調査を致して行はれると云ふ結論に到達致したのであるから、私共行はれると云ふ確信を持つて居るのであります、さうして行はれると同時に、矢張り此の兩建で參りますることが、法制審議會に於ける委員方の色々の御意見を綜合して見ましても、亦衆議院などに現れました各方面の御意見を伺つて見ましても、全國一選擧區の議員を出した方が宜しい、それが一つの參議院構成に意味あることだと云ふ御意見が多數のやうに看取されたのであります、斯う云ふ場合に於きまして、何れも新しい試みであります參議院自體と云ふものが、今迄の貴族院と其の權限に於ても構成の方法に於ても選擧の方法に於ても全く違ふのでありまして、新しい試みに違ひありませぬが、新しい試みに對しては先づ出來るだけ國論の趨く所に從ふと云ふことが政府としてやるべきことではなからうか、さう云ふ意味に於きまして地方選出議員、全國選出議員、此の兩建にすることが多くの方々の浮び出でました所の御議論を能く反映せしめるものだと云ふ確信の下に、政府は此の兩建に致し、全國の選擧に付きましても豫定通りに行はれると云ふ確信の下に之を提案したことを御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=57
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058・淺井清
○淺井清君 齋藤國務大臣の御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=58
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059・齋藤隆夫
○國務大臣(齋藤隆夫君) 全国一選擧區と云ふことは色々私も考へて見たのであります、實は是が起りました因でありますが、憲法を審議せられる其の際に當りまして參議院のことが問題になりまして、參議院議員の候補者を衆議院若しくは貴族院に於て決めると云ふやうな議論が現れて居ります、初めの時には參議院議員の定數は三百名と云ふ工合になつて居りましたから、それに倍の六百名の候補者を衆議院に於て決めて、それに向つて全國の有權者が投票すると云ふやうな議が起つたやうに拜聽して居ります、現に全國一選擧區と云ふことは、此の推薦候補と云ふことが因になつて現れて來たやうに私は考へて居ります、處が其の推薦選擧と云ふことは、憲法の條文に照しましても、亦實際のことを考へましても、なかなか行はれない、斯う私は考へまして、推薦選擧と云ふことに付ては反對をして居つたのであります、是が因となつて現れた全國一選擧區でございますが、其の因の推薦選擧と云ふことがなくなりました以上は、自然全國一選擧區と云ふことも立消えになるのぢやないか、斯う私は考へて居りました所が、なかなか實際はさうぢやない、法制調査會に於きましてもさう云ふことが因になつたのではないかと思ひますが、段々と此の關係が深くなりまして、到頭全國一選擧區と云ふことに決められたのであります、私は法制調査會の委員でございませぬが、最後の委員會に出席致しまして私個人の意見を述べて置きました、全國一選擧區と云ふことに付ては選擧の實際に徴してなかなかむづかしいから、自分は之に付ては反對すると云ふ意見を述べましたけれども、併し是は私一個の意見でございまして、多數の意見に依つてさう決められた以上は、それに服從をしなければならぬと云ふことは是は當り前でありますから、色々内務當局とも相談致しました所が、隨分むづかしいことではあるけれども、不可能のことではない、やれば出來ると言ふのでありますから、政府の提案として現れました以上は、私は閣僚の一人と致しまして此の案を支持する外に途がないのでありますから、其の點は惡しからず御了承を願つて置きます、決りました以上は成るべく是が全国一選擧區の趣旨に基いて、大過なく、圓滿に施行せられむことを期待して居ります、之を以て御答と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=59
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060・淺井清
○淺井清君 私の質疑を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=60
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061・山田三良
○山田三良君 此の參議院議員選擧法に付きましては、私は憲法の改正案の御提出前に、既に參議院議員選擧法案を政府が急いで御提出になるやうに希望して置つたのであります、又憲法改正案の審議に際しましても重ねて希望したのでありますが、それは丁度今日さう云ふ問題に到着しますやうに、此の規定の如何に依りましては、どうしても憲法其のものを改めなければならない、と云ふ必要に迫られると云ふ虞がありましたから、それを希望したのでありましたが、不幸にして果して我々の豫想した如くに、提出せられました參議院法は憲法の規定に依つて制約せられ、是より外に動く途がないと云ふ土壇場になつて、今では斯う云ふ法案より外ない、斯うして御提出になつたのでありまして、從つて色色の御方から議論がありましたやうに、參議院法に相應はしい、望ましい議員を選出する方法は、實はなくなつてしまつたのである、それは我々のもともとの希望は、憲法を修正して、參議院法は參議院組織に關して、衆議院と違ふ選擧規定を設け得るやうにしたいと思つて居りました、それが憲法に依つてさう出來なくなりました、其處に全國民から選擧せられたると云ふ規定に嵌められてしまつたのでありますから、今日はさう云ふことは勿論言ふことはもう出來なくなつた、然らば參議院法はどうするか、斯う云ふことに付きまして、我々も内閣の法制調査會にに關係して居つたのでありますが、其の中出來るならば半數は前の勅選に當るやうな意味で、内閣總理大臣とか、衆議院議員とか、或は參議院議員が相集つて、其の候補者の倍數位を指定して、其の候補者に基いて全國的に選擧する、斯う云ふ意味から半數は各府縣、半數は全國一般、斯う云ふ風に甲乙二種の議員が參議院法の構成に望ましいと云ふことで出發致しました。さう云ふ考が法制審議會の大多數の意見でありまして、さう云ふ風に中間報告でなつたのであります、是でどうしてもさう云ふ風にして貰ひたいと云ふ考も今以て持つて居りますが、それが政府に於きまして色々關係方面とも交渉せられました結果が、さうすれば被選擧人の資格の制限と云ふことになりまして、それは面白くないと云ふので、斯う云ふ方面の交渉がうまく成り立たないと云ふことから、半數の候補者の倍數を推薦すると云ふことが、遂に法制審議會に於て其の議題から除かれなくてはならなくなつてしまつたのであります、今から思ひますれば齋藤國務大臣の御意見が御尤もであつたのでありまして、私はさう云ふ風にならなかつたことを甚だ遺憾に思ふ次第であります、根本の推薦と云ふことがなくなつたのでありますから、其の際に既に甲乙二種の議員に區別する必要がなくなつた、今になつて見ますと、何を苦しんで全國一般に一部分の者を選擧區域を擴大するか、斯う云ふことでは意味が全くないのであります、之を内務當局に於きまして、又他の御方に於きましても、全國一般に一選擧區としても可能である、色々困難を冒しても出來る、其處迄御苦心になつたことは誠に敬服の至りでありますが、それは選擧が唯可能であると云ふことを言はれるだけであります、全國一般にしても、選擧が兎も角も困難であるけれども、色色困難を克服して投票が出來るやうにして置いて、可能である‥‥、(拍手)其の事が果して參議院の議員の候補者を得る目的に可能であるかどうかと云ふことは、今の御考の中にはなつて居らぬと思ふ、何となれば、さう云ふ候補者を全國をして選ばしむる爲には、或る一定の候補者を推薦して、それに依つてとなりますから目的を達成する、それがなくなれば、齋藤國務大臣の屡屡熱心に説明されましたやうに、全國一般に亙つてどんな候補者が學識經驗あるか分らぬのであります、是は絶對不可能であります、さうしますと云ふと、推薦者がなければ其の目的は達せられないのでありますから、そこで今淺井委員の言はれますやうに、其の困難を克服して迄も無理にそこ迄する必要はないのでありますから、是は根本的の出發點の基礎が變つて來たのでありますから、私は法制審議會の決議がさういふ報告で出て居りますけれども、其の際に既に改まるべき筈であつたのが、推薦がなくなつたにも拘らず、最初推薦のある時の考が唯報告になつたと云ふことであります、政府に於かれましては其の點を御考へになりますれば、各府縣のみにして、全國の一般的のものの區別を廢せられて然るべきであつたのでありませうが、それを政府は又審議會の報告を尊重せられまして、無理に困難を冒して斯う云ふ風になつたのだらうと思はれます、此の表を見ましても、各府縣には、多い所は八名、少い所には二名の選擧であります、更に百名を超えました所で、多い所は十名、少い所は四名位になつて濟むのでありますから、何もこんな二通りに區別する必要は今日はない、又さうなれば衆議院との差が段々となくなると云ふ虞がありますが、元來なくなつて居るのです、既に員數に於て此の原案が改正され、年齡に於きまして四十歳として衆議院の被選擧權とは異つて居りましたが、僅かに三十五歳と五歳の差、年齡の五歳の差は何の重きを成しますか、大したことではありませぬ、して見ますれば、員數が衆議院より非常に少くなつて居ると云ふ點に於て相違があるだけである、果して二百五十名で參議院の職能を全うすることが出來るかどうかと云ふことは、大いなる疑問でありますが、今それだけの數しかない、是だけの差違を以てするならば、私は殊更に各府縣と全國一般に分けられる必要はない譯でありますから、先づ川村委員の御質問になつたやうに、是は一つにして各府縣を一區として選擧せられると云ふ、齋藤國務大臣が屡屡熱心に言はれたことは、御尤もなことと今日は深くさう信ずる次第でありますが、政府に於きましても之を研究されて、尚御再考になる御考が、あるかないかを御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=61
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062・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 全國選出議員の問題でありまするが、政府は此の點に付きまして、段々研究を致しました結果、參議院の構成上に於きまして、全國選出議員を存置することが適當であると云ふ結論に達して居る次第であります、色々の事情で法律の上で推薦制を明定することは致さないことになつたのでありまするが、全國選出議員を存置致しまするならば、法律外の事實上の問題と致しまして、そこに有力團體から推薦支持をすると云ふやうなことが、政治の動きと致しまして必ず起ることであります、さうして其のやうな信頼すべき團體から推薦された人に對して、選擧人が判斷をすると云ふ機會も出て來る譯であります、之に依りまして‥‥‥新憲法の審議の際に、多數の議員の各位の御意見だと政府は考へて居るのでありまするが、社會各部門、各職域の知識經驗ある全國的人物が推薦されることが、期待されるのであります、若し全國選出議員を認めないと云ふことに致しますると、衆議院議員と非常に似通つた選擧方法になりますので、參議院の性格を衆議院と異つたものとすると云ふ上に於きまして適當でない、寧ろ全國選出議員を入れる所に參議院の特質を認める一つの大きな條件があると云ふやうに考へて居る次第であります、要するに政府と致しましては、曩に植原國務相からも御話もありました次第でありまするが、全國選出議員制を併用することが適當であると云ふやうに結論に達して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=62
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063・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 山田君、もう宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=63
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064・山田三良
○山田三良君 私はあとは討論になりますから、意見の相違ですから、質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=64
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065・小山完吾
○小山完吾君 本日午前、私は矢張り公務を以て差支へまして出ませんでしたので、如何なる質問が出まして、如何なる御答辯がありましたか存じませぬから、若し重複するやうでございましたならば、何卒御容赦を皆さんに御願ひ致したいと思ひます、そこで私の伺ひたいのは、參議院の議員たる者の資質とか、或は參議員を職能の目的として居ると云ふやうなことに付きましては、是はもう政治學の一頁を讀んで居る者なら能く御存じのことですから、私は今更申上げる必要はないと思ひます、唯併し其の目的を達するに付て如何なる選擧方法を採つたら宜しいかと云ふことが問題であるのでございまするが、是が不幸にして‥‥‥私は不幸にしてと敢て申すのでありますが、私共の協贊した憲法ではあるのですが、是は餘儀ない色々な事情を以て、四十三條と云ふものを其の儘通過致したのであります、其の四十三條に依つて、人民の代表者としての選擧に依つて、謂はば端的な言葉を以てすれば、人民の直接選擧に依つて出た參議院議員と云ふことであるのですから、是はどう云ふことを考へて見たところで、其の選擧する人の判斷、若しくは其の選擧する人の知識の程度に依つて、選ばれて出て來るのですから致し方がない、併しながら其の間に立つて我々は最善を盡すより外にないと考へます、恐らく政府が此の問題に付て御苦心になつたのも其の點であらうと思ひまして、此の委員會に於ての審議の重點は選擧法と云ふことに先づあるものだらうと私は考へる、そこで伺ひたいことは、一體政府は衆議院議員選擧法と云ふものをどうなさる積りか、現在の選擧法を以て滿足して居られるのであるか、私の卑見を以て致しますれば、此の前の衆議院議員選擧法と云ふものは失敗であります、あれはその當時協贊したる人々、竝に提出されたる政府、それぞれ御考があつたと考へまするが、私共多年の政治の經驗を以てすれば、此の大選擧區で連記投票なんと云ふことは最も惡法であると私は思ふ、此の大選擧區と云ふことに付ては既に我が日本に於ては經驗もあることで、私共も現に其の經驗を經て來て居るのであります、さうして其の大選擧區の目的とする所は成るべく中央的の人を出したいと云ふことから出發して居つたのでありまするけれども、選擧の實際に於ては、何にも效能もなくして徒に選擧と云ふものの投票の腐敗を來すと云ふことに陷つてしまつて、さうして實際に於ては矢張り小選擧區、中選擧區のやうな形になつて、甚だ結果は宜しくなかつた、そこで一度一番初めの小選擧區に始まり、大選擧區、續いて其の二つの經驗に依つて中選擧區が一番宜からうと云ふことで、中選擧區になつた、此の中選擧區の制度と云ふものは比較的私は前の二つの選擧方法よりも宜かつたと、私共政治以外に居つて政治の經驗を持ち知識を持つて居る者が見てさう思つたのであります、然る處、先達て終戰後の議會に於て忽卒の際に、どう云ふ考であつたか、殆ど忽忙の間にあの選擧法と云ふものを改正してしまつて、是は甚ださう申上げては遺憾でありますが、幣原内閣の失政の一つと言つて私は宜いと思つて居る、恐らく幣原國務相に於ても今日それを御認めになつて居ると思ひます、此の選擧法をどうするか、此の選擧法と參議院選擧法と云ふものは、同じく人民の直接選擧に依つて成るものである故に、此の兩者を併せ考へると云ふことは、此の參議院法を研究する上に於て非常に關係を持つて居ることと思ひます、そこで政府はどうなさる積りか、私の卑見を以てすれば、是は衆議院議員選擧法と云ふものは中選擧區制にして、さうして單記投票でやるが一番宜いと思つて居るのです、之を近い將來に於て御改正になる考がないかあるか、それから第二には全國的の人物、只今も内務大臣の御説明の中には、全國的の大家と廣く認めて居られる處の知識經驗を持つて居る人を出す主義と云ふことでありますが、是は選擧の實際を知らざる所の机上の空論で、斯んな方法に依つて全國的の參議院として適當な人物を選ぶことは不可能であります、實際に於ては恐らく是は結果から見れば、何右衞門、雲右衞門、奈良丸、或は文藝の大家にしても通俗大家、女子供が知つて居る人が出て來るか、然らざれば、百萬、二百萬の金を積んで、唯虚榮を積んで居る所の如何はしい人物が出て來ることは疑ひないと思ひます、是は此の參議院法を審議する上に當つて、此の問題は重大な問題でありますから、私は篤と委員諸君に於ても御考を願ひたいと、政府に質問すると同時に此の問題を提出致して置くのであります、そこで或は中央の人物を、全國的に知られたる人物を出すと云ふ目的を以てしたならば、職能代表と云ふやうなことが幾分か採り入れられるであらうと云ふ御考があるやうですが、是も空論です、是も憲法が既に改正されて、民主的政治の根據と云ふものは各地方の地盤から築き上げられてあると云ふ事實を知らない、是は議論で、苟も醫者にした處で或は辯護士にした處で、或は藥劑師にした處で、又外の商業會議所のやうなものにした處で、是は何れも地方から固つて中央に統一されて居つて中央が定めた候補者を必ず地方の人が知つて居ると想像することは、是は實際の知識を有せざる所の考と私は思ふ、そこで私の考をして、お前はどう考へて居るかと云ふことを言ふと、是は政府の御答辯の參考に申すのですが、私は是は矢張り府縣に任せるが宜しい、府縣一選擧區と云ふことにするが宜しい、さうして中選擧區と單記投票で行くが宜しい、然らば衆議院とどう云ふ違いがあるのかと云ふことを御尋ねになるに違ひない、それは選擧する人は同じ人間でも、選擧するモチーフ、選擧する考は各各違はなければならない、若し國民が、即ち選擧人が其の考へがないものとあなた方が斷定するならば、どだい選擧と云ふものは初めからありはしない、何の效能もないと云ふことになる、それで地域を然らば、何故限るかと云ふと、是は地域の代表者を出すと云ふ趣意のものではない、衆議院と云ふものはイギリスあたりの先進國の例に依つても、地域と云ふことに離るべからざる關係を持つて發達して來て居ると云ふ制度であると云ふことは、是は私の申す迄もない所でありまするが、參議院と云ふものはさう云ふ地域的代表と云ふものに付ては、アメリカとか、或は地方自治の非常に發達して居る國の州とかと云ふやうなものから見ると、其の州を代表すると云ふ意味があるから、それは地域的代表と云ふ色彩も其の選ぶ考の中に必ず加はるものでありまするけれども、我が日本の參議院と云ふものは、そんなものぢやない、寧ろ中央的に公平な、國政の全般から見て斯くあるべきものと云ふ判斷力を持つて居る所の資格を備へて居る人を選ぶと云ふことであるのでありますから、それならば人を鑑別する最も便利を持つて居る所の方法に依つて選ぶより他にしやうがない、それは或は何かと云ふと、中央ではそれは雲右衞門とか、常陸山とか、双葉山とかと云ふ者は分るでせうが、例へば憲法の學に付て斯う云ふ考へを持つて居る、或は斯う云ふ經驗を持つて居る、帝國大學の憲法學者は必ずしも適當なる憲法學者とは言へない、或は觸接して見て、其の上で以てあの人の考へは斯うだと云ふことは、廣く日本全體の人が選ぶよりは、地域の狹い所に於て之を見る方が判別し易いと云ふことになる、或は又斯う云ふことを言はれるだらう、そんな狹い所では人材が得られない、地方では地方的になつてしまふと云ふけれども、我々國民は一人々々が郷里を持つて居ない人と云ふものはありはしない、皆郷里を持つて居る、第一の郷里がなければ第二の郷里を皆持つて居る、さうして其の地方の人達が見て、是は此の方の點に於て優れて居るから帝國議會の參議院議員として適當な人であると言つて、其の人を候補者に押立て、又其の人は其の後援に依つて候補者に立つて國政の上に貢獻しようと云ふ考で出て來るから、一向中央的人物を出すと云ふ邪魔にならない、寧ろ中央的人物を出すと云ふ一つの最も便利な方法になる、ですからどの點から見たつて、唯虚名を賣つて廣くマスに知られて居る人が良いと云ふやうな、そんな浮いた考で以て此の大切な選擧を定められては堪らないと思ふ、現に或縣に於て、此の度選擧權が擴張されて二十歳以上の婦人は皆同樣に選擧權を持つと云ふ結果として、先達つての衆議院議員の選擧に於て如何なる現象を我々は見て居るか、或縣の如きに於ては女の名前と同じやうな名前を書いて居つた爲に、多數の女は皆女だと思つて入れて居る、それで共産黨は當選して居ると云ふやうな事實がある、斯う云ふことを若し私が申上げたならば、それは僅かの無學な女がやつたのだらうと言はれるが、驚くべき哉、我が貴族院に於ても衆議院に於てもあれは男であつたかと云ふ人は幾らもあるのです、さう云ふ状態の下に全國から百人出す、必ず中央的な人物、國政に必要なる人物が出る、或は職能代表が出ると云ふさう云ふ輕薄な議論に行くものではないと信じます、之に付て私は質問を申上げたいのは、大體内務大臣の御考は説明に依つて分つて居りますが、植原國務大臣、齋藤國務大臣は、私は若い時から非常に能く存じ上げて居る、而して憲法の發達の上に、憲政の上に非常な貢献を爲し、經驗も積んで居られると云ふことも亦私は知つて居る、さうして其の考の傾向も私は存じて居るが、斯う云ふ案を御出しになつて、是で心から御贊成になつて居るか否かと云ふことを、其の良心に照したる御返事を伺ひたいと思ふ、斯んなものを唯お附合で通過してやると云ふ、さう云ふ輕薄な小さなものでないのですから、私は眞劍に之を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=65
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066・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 小山さんの御尋ねに先づ私から御答を申上げます、國會を構成致します衆議院及び參議院の選擧法は、同時に御審議を願つた方が適當であらうと考へまして、衆議院議員選擧法の改正に付きましても研究を進めて居つたのでございますが、此の點に付きましては、尚未だ此のやうな提案をしたら宜からうと云ふ政府に於きまして最後の結論に達するに至つて居りませぬ、又もう一つは、今囘の臨時議會は最も必要な憲法附屬の諸法律を御審議願ふと云ふ點に重點を置いて居りますので、衆議院議員選擧法を併せて提出することも、重要法案多きに過ぎると云ふやうな點も考慮致しまして、今期の議會には遂に政府案として衆議院議員選擧法の改正案を提出するに至らなかつたのでありますが、速かに研究を進めまして結論を得て、次の通常議會には遲くも改正案を提出したい心組を持つて居ります、尚只今御意見を加へて御質問もあつたやうに拜聽するのでありますが、政府と致しましても、御意見の如く中選擧區、單記制に改むべしと云ふ意見が段段有力になりつつある點に於きましては、多大の關心を持つて居る次第でありまして、まだ決定は致して居りませぬが、改正案に於きましては其の線に沿つて結論を得るに至るであらうと云ふやうに、私は豫想して居るのであります、又其のやうなことに相成りますれば、參議院の地方選出議員と衆議院議員の選出方法に於きまして截然異なる所がはつきりとして來るのでありまして、參議院議員の選擧方法と睨み合せましても、其の行き方が適當ではないかと云ふやうに考へて居る次第であります、それから全國議員の點に付きまして御意見を混へた御尋があつたと思ふのでありますが、曩にも説明を致しました如く、政府と致しましては、全國選出議員を加へることが參議院の構成上に適當であらうと云ふ結論に達して居る次第であります、小山さんの御述べになりました如く、假令地方の議員選出に於きまして衆議院議員の選出方法と全く同じでありましても、選擧人が參議院に議員を送る場合と衆議院に議員を送る場合とに於きましては、其の兩院の性格の相違に立脚致しまして適正な投票が行はれるべきであります、又そこに期待を持つ點に付きましては私も全然御同感でございますが、全國選出議員に付きましても、單に藝能の方面から著名な人を選擧すると云ふやうなことは、是は民主政治の發達の上には面白くないことでありまして、國民が主權を持つに至りました時期に於きましては、そこに自ら選擧人に於きましても自覺が起ることと思ひます、又起らなければならぬと思ふのであります、尚全國選出議員の實際に於きましては、御述べになりました如く郷里其の他に地盤を求めまして、地方選出議員と殆ど同樣な所から出て來る人も相當數あるでございませうが、併し一面に於きましては、全國的な信頼すべき有力團體に依つて推薦支持をされました人に對しまして、そこに國民が投票を致し、さうして全國的な知識經驗のある有力な全國的人物の選出される機會も確かにある、是は必ず期待し得る所と政府は信じて居る次第であります、各方面の人材を網羅すると云ふ趣旨から申しますと、又參議院の性格上全國的人物を其の中に包含すると云ふ趣旨から申しましても、全國選出議員を併せ持つと云ふことが必要なりと考へて居る次第であります、小山さんの御説に對しましては傾聽すべき點が多々あるのでありまするが、政府の見解を此の際一應申上げて置く次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=66
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067・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 法案に對しましては、内務大臣の御答で盡きて居ると思ひますけれども、小山議員から特に名を指して所見を述べろと云ふことでありましたから、それに對して御答へすることを御許を願ひたいのであります、小山議員の御陳述になりました選擧に對する御所見に對しては、大部分私御同意を申せることが多いのであります、唯茲に提案されて居ります所の參議院の問題を考慮するに付きましては、何としても御考慮を願はなければならないことは、既に通過致して居ります所の新憲法に於て制約されて居る、此の一つの事實を認識して掛らなければならない、又同時に色々の關係筋の方面に於ても註文がある、斯う云ふことをも認めて掛らなければならないのでありますし、又實際斯樣に評することは如何かと思ひますけれども、日本全體の國民もまだ民主主義と云ふものに私は徹底して居らぬと思ふ、それが爲に色々の方面で未經驗のことに對しては種々なる意見が續出する、政府と致しましては前段申上げました所の大きな二つの制約と、もう一つ非常な賢明な御意見もあり、又私共未熟でありますけれでも多年の經驗に照して是が一番理想的であると思ふことも、民主主義と云ふ立場から申しますれば、多數の御意見を一應採擇して、其の實行を期さなければならないと云ふ立場に置かれてあると云ふことも御了承を願ひたいのであります、さう云ふ建前に於きまして茲に提案されて居るものを考へまする時に、參議院の議員には成るべく政治上の練達堪能の士を求むるばかりでなく、實際政治的の餘り野心がなく、本當に國家、國民のことを考へまする有らゆる方面の人を網羅することが出來ますれば、一番理想であります、さう云ふ建前から致しまする時に、各府縣に於ける地方選出議員だけに限るが宜しいか、或はそれと違つた一つの選出方法を以て違つた方面の代表者をそれに包容することが宜しいのではないかと云ふことも考へて見なければならないのであります、成程一地方の選擧に致しますれば、選擧の手數は樂であります、全國の選出と云ふ場合に於ては、先刻小山議員が述べられた如くなかなか全國民が政治的に練達堪能であるやうな人の名を承知して居るかと言へば、之を承知することの困難であることも私共分らないことはありませぬけれども、地方選擧と全國的の選擧と二つに區分することに依つて、幾分同一選擧區よりは、違つた選擧區に於て、違つた方法に依つて、違つた部類の人が得られると云ふことの事實を否定することは出來ないのであります、左樣な立場から申しますれば、地方的の選出の議員を一部採る、全國的の選出の議員を一部採る、其の全國的の人の選擧に付きましては、小山議員の言はれる如く浪花節語りとか或は相撲取りとか、或は役者と云ふ者が全國民の一番廣く知つて居る人であるかも知れませぬ、却つて本當に國家有用の材、政治的の達見者が全國民に能く行亙つて居らないかも知れませぬけれども、それは御同樣に努めなければならない、御同樣に努めますれば地方的の選出する議員と全國的の選出する議員と、幾分其の間に差別の生ずることを否定する譯には行かぬと思ひます、又上手にやると云ふ一つの條件が附くことは甚だ遺憾でありますが、よく國民を指導して、さうして法的に斯樣な人をと言つて推薦をすることは出來ませぬけれども、學者は學者方面に於て、法律家は法律方面に於て、政治家は政治方面に於て、實業家は實業家方面に於てそれぞれの或種の團體があります、或種の連絡がありますから、それ等の方が推薦して、さうしてそれ等に對して投票するやうに、唯政府だけに委せて置かないで、御同樣に御努め下さつたならば、強ち此の全國選出の議員と云ふ者が地方選出の議員に勝つた者が出ないと云ふことは斷定出來まいと思ふのであります、斯う云ふ見地から致しまして、前段申しました二つの制約の外に、法制審議會の御意見も全國選擧區が宜からうと云ふ答申もありました、又衆議院などに於ける多くの人々の意見を徴しましても、唯一本建よりは兩建でやつて見た方が宜からうと云ふ御意見もありました、私の理想を直ちに政治の上に實現出來るものとすれば、それも宜しいのでありまするけれども、責任を持つ政府、而も民主政治の主義に立脚してやりまする時には、孰れか國論の嚮ふ處、又法制審議會等の答申等をも無視することは出來ないのでありますから、左樣な點を考慮致しまする時に、此の二本建と云ふことも不可能なことではない、一本建よりは比較的違つた所の種類のもの‥‥上手に指導しますればナシヨナル・フレームといふか、全國的の名聲ある所の政治家、學者、法律家、或は醫者其の他の方面に於て特殊の議員が選出出來るものではなからうかと感ずるのであります、左樣な意味に於て一選擧區の方法に委せるよりは、地方と全國との二本建に致すことも、參議院を構成する上に於て一つの有力な考へ方ではなからうかと思つて、先づ先づ現段階に於ては政府の提案のものが宜からうと存じて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=67
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068・小山完吾
○小山完吾君 齋藤さんはどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=68
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069・齋藤隆夫
○國務大臣(齋藤隆夫君) 小出君が御話になりました所の衆議院の選擧區のことでありまするが、是は全然同感であります、前議會に於て幣原内閣からして大選擧區の連記投票と云ふ提議が出まして、是は政府で出した所が、之に贊成するかしないかと云ふことは議會の權能でありまするからして、議會はそれを蹴つてしまへば宜かつたのでありますけれども、どうも其の時の議會はあれを蹴ることもせずして一遍行ひました所が、非常な不成績で、幣原内閣と議會とが連帶して此の責任を負ふべきものであると思ひます、それ故に一囘の選擧に依つて經驗致しました結果、此の選擧區制をば變へると云ふ趣旨を以て、昨今自由黨、進歩黨が共同致しまして、小山君の御意見のやうな、暫く行はれて居りました中選擧區を土臺として單記投票と云ふことで、議院提出案として此の議會に出すやうでありまするからして、何れ是は成立することと思ひます、それからして參議院の選擧の全國一選擧區のことでありまするが、是は小山君が御出でになりまする前に私がちよつと意見を述べて置きました、是は色々事情がありまして斯う云ふ結果になつたのでありますからして、其の結果に付て私自身の私見を述べることは全然致しませぬ、今日は私見を述べるべき場合でないと思ひまするからして、色々な意見を綜合致しまして、大選擧區ではない、全國一選擧區と云ふ、世界にも例がない、殊に日本に於ては初めての試みでございまするが、どう云ふ結果が起るか分りませぬが、色々各方面のことをば考へて、利もあれば害もございませうが、法制審議會の議を經て政府の提案となつて現はれました以上は、我々は一致して此の案の通ることをば希望して居ります、其の外の私見に付きましては一切申して居りませぬからして、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=69
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070・小山完吾
○小山完吾君 只今三大臣の御答辯を伺つたのでありますが、之に對して私の意見を申述べると云ふことは聊か討論になるのですけれども、甚だ恐縮でございますが、併し疑を解く上に多少の討論に類することは御許し下さらなければ、納得の行くやうな審議は出來ませぬから、それで又申上げるのでありますが、先刻伺ひました植原國務大臣の御答辯に依ると云ふと、憲法の制約があるから致し方がないと云ふことに非常に重點を置かれての御説明でありますが、それは私も先刻申上げた通り、既に制約があるので、其の制約内で工夫をすると云ふことより外に致し方がないと云ふことは私もちやんと承知して居ることであります、其の範圍内に於て爲せるだけのことを爲したいと云ふこと、此の全國から百名を選ぶと云ふことは、是は制約の問題に何も關係のないことであります、四十三條にああ決つて居たからと言つて、全國の一つの選擧區にしなければならぬと云ふやうな制約はありはしない、それは何か植原國務大臣の御考違ひだと思ひます、それですからそれはどうも‥‥‥或はもう一つの理由として非常に色々な事情があると云ふことであります、其の事情は餘り私も明かにすることを欲しない事情だと思ひますから、それに付ては伺ひませぬが、民主主義に徹底する爲に法制審議會の審議に掛けて、内閣の多數が言つたからさう云ふことにしたと云ふ御話でありますが、斯んな民主主義と云ふものはありはしない、一體法制審議會と云ふものは政府の設けた法制審議會である、政府は國の政治の責任を以て、自分の信ずる所に依つて國民を指導する立場にあるもので、法制審議會がどう決めても、そんな法制審議會に對して、何故政府は自分の所信に愬へて自分の目的を達する審議をしないか、そんなことは説明にならない、それから民主主義と云ふものは多數の人の説にコンポートして行くのが民主主義だと云ふやうな御話でありましたが、民主主義に依つて若し政權を固執すると云ふことがなかつたら民主主義のリーダーズとしての値打はありはしない、苟くも政界の表に立つて、政界の指導者として立つ以上は、自分の考は斯うだと云ふ明かな意見を持つて爭つて、それを容れなければ進退を賭してもやるべきものである、苟くも憲法の運用の上に非常に大きな關係を持つて居る所の參議院と云ふものを決めるに當つて、閣僚の多數が斯う言つたから俺は同意したとか、民主主義は協和して行くのが民主主義であるとか、或は法制審議會が決めたのはそれだからと云ふやうな御話は、私としては承服出來ない、それから又貴族院に於ては‥‥‥貴族院ばかりではない、世間に於ては、政黨と云ふものは大層毛嫌ひして、政黨は私でもするやうなことを言ふ、政黨は參議院の選擧に關係すると云ふことは宜くないやうに言はれますが、私はそんな考には全然反對して居るのであつて(拍手)政黨の働きがなくて憲法政治と云ふものは行へはしません、是は‥‥‥、それ故に政黨の任務と云ふものは重大になつて、政黨はそれ故に自重しなければならぬと云ふことになり、責任を取つて國政に參與しなければならぬと云ふことになる、政黨と云ふものは獨り政府を持つて居る所のものが國家に貢獻して居るのぢやない、反對黨も‥‥‥、イギリスの所謂ヒズ・マジエステイース・オポジシヨン、陛下の反對黨である、此の二つがあつて國政が運用されて行くのです、政黨と云ふものがあつて國の政治を亂すと云ふやうなこと、そんなことに耳を傾けない、恐らく參議院の候補者を定めるに當つても、政黨が自重して最も參議院に相應しい候補者を立てるならば、衆議院と同じ選擧法に依つても、或程度參議院と云ふものの性格を充たすに足りる人が選ばれるだらうと私は思ひます、政黨の任務と云ふものは是より益益増大して參つて、若し政黨がしつかりして居つたならば、或はそんな雲右衞門とか何右衞門と云ふものは出ないかも知れない、併しながら唯日本の現状に於て、日本の民度に於て、まだそこ迄至つて居ないので、政黨が幾ら盡力しても、何しろ二十歳になつたばかりの女、私から言へば子供と云ふやうな人達がどんどん投票するのですから、論より證據、さう云ふ結果が衆議院に現れたぢやありませぬか、是は民主主義は多數に依つてやるんだと云ふことの上から唯立論されるけれども、同時に政治家たる者は一世を指導し、民主主義の眞隨に近付くやうに努力しなくちやならぬ、此の參議院の選擧法を設けた上に於ては、私は努力は認められない、甚だ殘念に思ふのですが、是だけ申上げて、もう此の問題は打切るの外はないのですが、まだ御答辯があるなら伺ひたいと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=70
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071・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 私に對して意見の喰ひ違ひのやうですが、小山議員の御述べになつた大體のことは私同感であります、政黨が議會政治の中心にならなければならないと云ふことは、昨日御不在か如何か存じませぬが、昨日の秋田議員の本會議に於ける質問に對して相當はつきりと私の所見を申上げて置いた筈であります、誤解のないやうに一つ御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=71
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072・平塚廣義
○平塚廣義君 私は矢張り法制調査會の委員でありましたので、先刻來先輩各位の色々の御意見、御質問に付きましては、私も多少意見を持つて居るのでありまするが、又調査會に於きましても一二申上げたのでありまするから、此の際念の爲に御伺ひを致して置きたいと思ふのであります、それは只今小山委員から縷縷御意見がありました通りに、法制調査會の席上に於きましても、地方の選出議員、それから全國を一選擧區と致しまする所の選出の議員と云ふ點に付きまして色色の論議があつたのでありまするが、私は自分の各種の選擧に携つた實際上の行政上の經驗から致しまして、どうも全國一選擧區としての選擧と云ふことは、實際に於て非常な困難が伴ふのみならず、之を極端に申しますれば、或地方々々に固まつて、さうして是が一つの小選擧區、或は中選擧區位の選擧區に分れて、さうして競爭をすると云ふ結果を招來するだらう、又其の間に於きましては、政黨も之に加はりまして、政黨より公選をすると云ふやうなことも起りませうし、色々の問題から考へますると云ふと、如何にも此の全國一選擧區と云ふことは困難である、實效がないと云ふことを私も信じて居つた者でありまするので、此の點に付きましては、齋藤國務大臣があの調査會に於て熱心に御述べになりました點に私も贊成を致しました次第でありまするが、それに關しまして、寧ろ然らば、何か政府に於てどう云ふやうな要素を取つて、さうして之に參議院の性格を與へるかと云ふ點に付て、何か御意見があるか、政府の意見でなくとも已むを得ませぬから、憲法の説明に當られました所の金森國務大臣の御意見としてでも宜しいから、其の意見があるならば發表して貰ひたいと云ふことを私は要求致したのであります、其の時に於きまして金森國務大臣は、參議院は參議院として、全國的の特質ある要素を備へしむるやうにすることは望ましいことであると云ふことを述べられたことと記憶致して居るのであります、それより色々の經緯がありましたが、茲に今囘提案せられました此の案を見ますると、百名は全國を一選擧區とした所の選擧と云ふことに相成つて居るのでありまするので、今申述べましたやうな疑問は私が再び起すやうな次第であります、併し兩國務大臣の色色の御説明もありまするから、意見としては色々申述べることを先づ此の際に於きましては差控へる次第でありまするが、唯内務大臣に御伺を致して置きたいことは、此の終戰直前に行はれました所の地方總監のあの制度、あれは一つの行政區劃でも何でないのでありまするけれども、地方々々、州別、道別と申しまするか、或は地方に依つての區別を立てまして、經濟上其の他の方面に於て關係のある、關東でありまするとか、北陸でありまするとか、九州でありまするとか、四國でありまするとか、北海道と云ふやうな方面に、八つか九つの地方總監の制度を布かれたことがありまするが、ああ云ふやうな一つの選擧區を拵へて、さうして之に依うて選擧をすると云ふやうなことになりましたならば、一府縣に於て選出を致しまするよりも、餘程程度の違つた、又先刻私が申述べましたやうな特殊な、尚變つた所の、新し味のある、又練達堪能の士が選出せらるる、候補に出ると云ふやうなこともあり得るんだと云ふ風に考へまするので、私は今日に於きましても、ああ云ふやうな制度が出來まするならば、斯う云ふことの考へる餘地があつたのではなからうかと云ふことを感ずる次第であります、さう致しまして、今囘御提出の此の選擧法を見ますると云ふと、此の選擧法の選擧の投票區でありまするとか、色々の選擧手續が、各地方の總監組織のあの時代に之を當嵌めて見ましても、殆ど是と同樣な組織にやりますれば出來得ると云ふ風にも考へらるるのであります、一つの行政區域と云ふ風に定めませぬでも出來得ると云ふやうにちよつと考へらるるのであふます、就きましては道制等の點に付て衆議院あたりで質問もあつたやうでありまして、之に對しては内務大臣も答辯をなさつて居られますから其の問題は別と致しまして、今申述べましたやうなあの地方總監の制度を土臺としたことに付て、選擧方法に付て、内務省として御研究になつたことがございますかどうか、又それは斯う云ふ風な缺點があると云ふやうなことを御調査になつたことがありますかどうか、此の點を此の際一つ念の爲に御伺を致して置きたいと思ひます、私も小山委員の申述べられました通り、推薦と云ふ方面に於きましては、政黨が公認をしてやると云ふやうな是迄多年日本に於てやつて居りました此の制度は、今日の此の新憲法に於きましても當然發達し、さうして其の弊害は弊害として矯正して行く、日本國民は之を育て上げて行く、一體となつて行くと云ふやうに進むべきものであると私も信じて居る者でありますが、今申しました所の一つの日本を一定のブロツクに割つて、さうして選擧區を拵へて、練達堪能の方々を、或は特殊の知識、有爲の知識を持つて居らるる人の進出するやうな選擧區を拵へて、組織を作つたらどうかと云ふやうにも考へられますので、是等に對して内務省に於て御調べになつた點がありましたならば、又御意見がございましたら、此の際に御伺を致して置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=72
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073・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 曾て地方總監の管轄區域が全國に布かれて居つたのでありますが、今日に於きましては、地方行政事務局が大體其の總監府の區域を繼承致して居りまして、行政上に於きまして一つの區域が出來て居る譯であります、又其の區域は或程度の慣行も出來まして、一つの纏りと云ふことも或程度成立致して居るのであります、故に此の參議院議員の選擧區を考慮致します場合に於きまして、府縣よりも更に大きく致しまして、地方行政事務局の區域に依る選擧、まあ謂はば大々選擧區とでも申しますか、大々選擧區を構成したらどうかと云ふことに付きましては、一應固より考慮は致して見たのであります、唯曩に小山議員からも御話のありましたやうに、實際の選擧運動を最も有效に展開すると云ふ點から考へますと、衆議院議員の選擧に於ける大選擧區と雖も、府縣に依りましては區域の全體に有效なる選擧運動が展開されなくて、實際の選擧運動の立場から考へますると、中選擧區位が實際に適當なりと云ふのが是が選擧に通曉せられて居る人の定説であらうかと思ふのであります、さう致しますると、曩に御説明を申上げましたと思ひまするが、全國を一選擧區に依つて立候補する人も、實際上は中選擧區と云ふ所に立ちまして、有效なる選擧運動を展開する人も相當にあらうかと思ふのであります、さうなりますと、大選擧區と雖も選擧の實際運動には適當でないと云ふことに相成りますれば、大々選擧區は一層選擧の實際と合致しないものになると云ふ缺點があると思ふのであります、其のやうな全國一選擧區制を採りましても、所謂中選擧區に立脚したる選擧運動が相當數展開せられるだらうと思ふのでありまするが、それにも拘らず全國一選擧區制を採用せむと致しまする趣旨は、全國的組織に依りまして推薦支持をせられます所の全國的人物の選出の可能性がございますので、そこを狙つての全國一選擧區制は確に支持する理由があると云ふやうに考へて參りますると、地方行政事務局の如き、餘り固つてゐない區域を基準と致しました選擧區を採ると云ふことに於きましては、全國的人物を擧げる上に於て必ずしも適切でない、寧ろ全國一選擧區として全國的人物を擧げる所に著眼をした方が宜しいと云ふことになりまして、地方行政事務局の如き大々選擧區は、之を放棄したのであります、尤も是は議論の立て方に依りますれば大々選擧區も成立つかも知れませぬ、又成立つと致しますれば、選擧事務の處理の上に於きましては、大なる支障なく行ふことが出來ると云ふ、選擧事務の點からは其のやうな結論を得て居るやうな次第であります、要するに大々選擧區制に付きましては、只今申上げますやうな理由で之を採用せざる方が宜からうと云ふことに相成つた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=73
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074・平塚廣義
○平塚廣義君 内務大臣の御説明は能く了解致しました、尚調査會の席上に於て色々論議の結果、ああ云ふ答申があつたと云ふことに付きましては、他の方面に於きまして、年齡の點などにも關聯したものがございまするので、選擧權の資格の年齡に關した問題もございまするので、此の際に於きましては、只今内務大臣の御説明に依つて先づ以て私は自分の質問を一旦打切つて置く次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=74
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075・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 第一章に付きまして他に御質問ございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=75
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076・松平親義
○子爵松平親義君 簡單でございますからちよつと伺つて置きたいと思ひますが、先程來段々お話がありましたですが、結局先程のお話に依りますと、兩院の性質の相違と云ふことに著眼して、國民が各自の自由なる判斷に依つて議員を選ぶと云ふことになると思ふのでありますが、其の兩院の性格の相違と云ふことを考へた場合に、一體それではどう云ふことが性格の相違であるかと云ふことになりますと、又果してどう云ふ點に性格の相違があるかと云ふことが、非常に判斷が出來ないのであります、それで構成の點から考へましても、先程御話がありましたやうに、全國選出のものと、それから地方選出のものと二つありますが、其の地方選出のものに於きましては、殆ど現在の衆議院と何等變らない形になる虞があるのぢやないかと私は考へます、それから其の權限の方に於きましても、是は憲法に於きまして澤山規定がしてありますけれども、是も其の議院それ自身の權限に差異があると云ふよりも、兩院が相交渉する面に於て權限の差を置いたと云ふことは、是は憲法の審議の際に政府の御答辯があつたのであります、權限其のものは、兩院の相交渉する面に於て差異を持たしたのだ、兩院の審議其のものに於ては大體權限の差異はないのであります、さう云ふ點から考へましても、それぢや兩院の性格が果して何處で違つて來るか、其の性格の相違を國民の判斷に求めると云つても、其の判斷を求める根據がなかなかないと私は斯う思ふのであります、それで政府は斯う云ふことはお考になりましたか、どうですか、伺つて見たいと思ひますのは、地域代表と云ふことが衆議院の方の地域代表とは違ひまして、先程も一寸御質問がありましたが、勿論日本は聯邦國ではありませぬが、將來段々地方分權に向つて行くと、地方の一つの團體の力と云ふものを認めて行くと云ふ政治の所謂地方分權の行き方をして行くのでありますから、其の觀點に於て地方の團體其のものを代表する‥‥‥是はアメリカのやうな國とは同一に論ぜられないにしても、兎に角地方團體と云ふものの代表制を其處に認めると云ふ意味に於て、此の參議院に各府縣の代表を入れると云ふやうなことは‥‥‥全くそれのみに依つて參議院を構成すると云ふことは又問題があると思ひますが、尠くとも參議院の性格の中に府縣代表と云ふ意味を加味すると云ふことは考へられるのではないかと思ふのでありまするが、内務大臣に於かれまして其の點に於て御考がございましたでせうか、どうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=76
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077・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 外國の第二院に付きましては、州を代表するとか、地域を代表すると云ふやうな考へ方があるかと思ふのでありまするが、我國の參議院に於きましては、地域代表と云ふ意味の思想は、是は採ることが出來ないものと思ふのであります、唯地域代表的性質と云ふやうなことを私も時々申上げて居りますが、是は地方の事情に詳しい人に出て貰ふと云ふ趣旨で申上げて居るのでありまして、此の點に付きましては、私から申上げる迄もなく、憲法第十五條に於きまして「すべて公務員は」‥‥‥之には議員も固より含んで居るものと思ふのでありますが、「すべて公務員は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と云ふやうなことで徹底して貰ふことが新憲法の趣旨とする所と政府は考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=77
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078・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 別に第一章に付て御質問ございませぬければ、第二章に入ります、大河内君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=78
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079・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 私は第八條の意味で甚だ妙なことを伺ふのですが、「衆議院議員と兼ねることのできない職」とはどう云ふものであるか、一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=79
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080・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 甚だ相濟みませぬが、ちよつと説明員が參つて居りませぬので、關係法令を持參して居りませぬから、後で御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=80
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081・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 それでは其の時は其の時として伺ひますが、此の中に行政官が入つて居りませうか、入つて居りますまいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=81
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082・宮内乾
○政府委員(宮内乾君) 内務省の方の關係官が只今居りませぬから、私から便宜御答へ申上げます、衆議院議員選擧法を御覽になりますと、「官吏及待遇官吏ハ左ニ掲クル者ヲ除クノ外在職中議員ト相兼ヌルコトラ得ス」斯う云ふことになつて居ります、是は只今の十條でございますが、其の中に拾ひ上げられて居りますものは、此の列記してあるのは大體常識的に世間で申します 政務官と云ふことになります、政務官以外の官吏及び待遇官吏は衆議院議員と相兼ねることが出來ない、從つて矢張り參議院議員とも相兼ねることが出來ない、斯う云ふ意味に御了承願ひたいのであります、其の先に第十一條として、地方議會の議員が矢張り「衆議院議員ト相兼ヌルコトヲ得ス」と云ふ規定がございまして、從ひまして是も矢張り參議院議員と相兼ねることが出來ない、斯う云ふ風に御讀み願ひたいのであります、尚申添へて置きますが、衆議院議員と參議院議員が相兼ねることが出來ないことは憲法の明文にございます、參議院議員選擧法で特に繰返す必要はございませぬので、選擧法の方には書いてありませぬ、衆議院議員選擧法と同じ方法を參議院議員選擧法の中に書いてある、斯う云ふ風に御了承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=82
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083・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 それは變ですね、何故質問したかと云ふと、此の七條は要らないと思ふが、どうして斯う云ふ七條を御書きになつたのか、今の説明ならば七條は要らないことになりはしませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=83
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084・宮内乾
○政府委員(宮内乾君) 御答へ申上げます、是も全く只今の衆議院議員選擧法の第九條と同じことであります、是は「相兼ヌルコトヲ得ス」でございませぬで、「被選擧權ヲ有セス」、斯う相成つて居ります、在職中は只今の條文に書いてあります官吏は全然當選することが出來ないのであります、それから前の「相兼ヌルコトヲ得ス」の方は、當選致すことは出來るのであります、當選致しますれば、何れか一を辭さなければならぬ、前に書いてあります在職の宮内官とか、判事とか斯う云ふものになりますと、是は今の衆議院議員選擧法でありますが、此の方で申上げますれば、在職の宮内官吏、判事、それから會計檢査官、收税官吏、警察官吏と云ふやうなものは、全然被選擧權が初めからございませぬ、立法の理由は、斯う云ふものは被選擧權を持たすと云ふと、現實の行政からどうも選擧に不當の勢力を及ぼす虞がある、從つて初めから被選擧權をなくしてある、從つて當選は出來ぬと云ふことになります、それから只今の最初に御指摘の「相兼ヌルコトヲ得ス」の方は、當選は出來る、併しどちらかを辭しなければならない、官吏を辭するか、それでなければ當選を辭するか、どちらかを辭しなければならない、斯う云ふ風に御了承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=84
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085・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 大變よく判りました、私甚だ法制に通曉しないものですから、詰らぬことを申上げて誠に皆樣に御迷惑を申上げて、此の點相濟みませぬ、唯私がさう云ふことを前提とした意味は、内務大臣に伺ひますが、議員の兼職、詰り現實に申上げれば、參議院議員の兼職と云ふものは、從來非常な弊害があるのです、行政官との兼任はまあまだ比較的害が少かつた、一番惡かつたのは各省の囑託です、何の意味か分らないが、ああ云ふものが出て來て居る、それでもう初めああ云ふ人達の‥‥‥、今の貴族院議員には一人もさう云ふ方はおいでになりませぬ、是は昔話ですが、さう云ふものが一時流行した時代と云ふものは、殆ど先生達は議員なんだか政府の機關なんだか譯が分らない、非常なそこに言ふべからざる弊害が漂つて來て居る、それからそれとは能く似たものが、是も今日おいでになりませぬが、特殊銀行や何かの重役です、是は初めから申上げねば相成らないので、詰り官僚政府が貴族院を操縱する目的を以て、貴族院議員の或人達を官吏に登用したものです、それで東京府知事とかそんなものにして、方々の知事などにして居つた、是も無論さう云ふ意味では非常な弊害があるから、それは官吏としちや御辭めになつたんですが、扨て今度は特殊銀行の地位を以つて釣つたんです、それを詰り御用議員にして、さうして貴族院を引張つて行く、一體貴族院の選擧法が惡いのですから、貴族院選擧法と云ふものは、あれは‥‥、貴族院の選擧法ぢやない、互選議員の選擧法、あれは二三人の人でどんなことでも出來るやうな建前になつて居りますから、其の二三人を引張つて置いて、さうして其の人間に横暴さへさせればどんなことでも出來る、さう云ふ選擧法ですから二三人を引張つて置けば宜いのです、それに以て行つて特殊銀行の何か相當な地位を喰はして置く、非常な弊害があるのだ、それはしまひに大臣病とか何とか出ましたが、是は別問題で、大臣病の弊は姑く別に見まして、さう云ふのでなく、歳費以外に或人間に月給か何かをやつて居る、何かと云ふと、忙しい人間なんだから月給を貰ふのは當り前だと云ふやうなこと迄言ふ人がある、それで實に弊と云つたものは夥しいものです、それは能く待合政治と云ふものがありまして、御馳走なんかして居る者がありましたけれども、まだまだ其の方が宜いのです、現實に年金みたいなものをさう云ふ方法でやるなんと云ふことは甚だ宜くない、それで將來參議院になりますれば、どう云ふ風な方法になりますか知りませぬけれども、少しは、成るべくならば、そんな流弊を此の貴族院から承繼ぎたくない、又始めないとも限らない、此の政府はおやりになりますまいが、將來は何とも知れませぬ、是は制度の上でさつぱりとさう云ふやうなものは、どう書いて宜いかそれは知りませぬ、それは書きやうがむづかしいかも知らぬが、政府なり或は特殊銀行、或は政府の機關、特殊會社、或は政府關係の筋から金を貰つて居る者は一切參議院議員にはなれない、なるやうな場合には、さう云ふものは辭してしまへ、斯う云ふやうなこと位はあつて宜からうと思ひます、是は今度の參議院と云ふものは、昔の參議院と違ひまして、會期も長く、先づ一年を通じて仕事をしなければならぬ建前にあるのですから、外の餘計な事などしないでも宜いと思ふ、參議院議員になつた以上は、一意專心參議院の仕事をするが宜い、それでこそ參議院の權威がある、參議院の議員が外へ行つて月給など貰つて居つちや良い參議院にはなれない、幾ら選擧法が良くても、參議院の議員がそんな考ぢや、幾ら法律を良くしても駄目だ、參議院自身も考へなければならぬ、外へ行つて月給を貰はうなんてそんな考ぢや、とても公平なことは出來ず、權威も何もあつたもんぢやない、是は寧ろ範圍を御擴げになつて、さう云ふ政府關係のものに或關係を持つて居る者は總て御排除になつたらどうか、衆議院の方にはさう云ふ規定もあるやに私も聞いて居ります、はつきりしないけれども‥‥、ないかも知れないが、一時まあそんなことがあつたと言つて、是は少し無理だと思つたけれども、特殊會社の重役などを兼ねた方が重役を御辭しになつた、併し衆議院と參議院とは又事が違ひますから、同じやうには行きませぬけれども、衆議院は暫く別として、參議院關係に於ては斯う云ふものは此の際一掃される必要があるだらうと思ふ、内務大臣、政府はさう云ふことも御調査になりましたでせうか、又其の邊に付ての御考を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=85
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086・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 新憲法に依りまして國會は國權の最高機關に相成つて、參りまして、其の議員の職責は極めて重大になつて參りました、又會期等も國會法に依りまして、現在よりも相當長くなることは必至であるやうであります、從ひまして國會議員となられました方が新たに他の特殊會社等の職に就かれることは、事實上困難にならうと思ふのであります、尚國會法に於きましてもそれ等の點を考慮しまして、聞く所に依りますと、官吏としては最高の待遇をすると云ふことも法律上確保されるやうなこともございますので、それ等と相俟ちまして、實際の問題と致しまして、從來のやうな他の有給職と議員となつて居る人が兼ねると云ふやうなことは、實際問題として起らないと思ふのであります、又國會の議員の重要性から考へれば、其處に自肅作用も起ることと思ひますので、其の邊まで法律で以て制限をすると云ふことは、其の必要がないであらうと云ふやうに考へて居る次第であります、尚現在も衆議院議員に付きまして、只今御話のやうな種類の兼職禁止の規定はございませぬ、尚此處で附加へて申上げて置きたいと思ひますることは、國會議員が實業界其の他の方面から立候補して當選される、其のやうな場合に於きまして、實際上の經驗、知識を多分に持つて居られますることは、國會の運營上に於きましても望ましいことでありますので、是は議員の職務と同立する限りは、必ずしも有業者の方が立候補されて、當選されて、其の業務を放棄されなければならぬと云ふことは考へなくて宜いのではないか、是は行過ぎではないかと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=86
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087・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 運用に俟つ、自肅に俟つと云ふやうに仰しやいますけれども、少し是は買被つた話だと私は思ふ、先程も御話が出たやうに、民主主義はまだ日本に徹底して居りませぬので、法制と人間の實際と大分段が離れて、人間がもう少し民主主義を理解することが出來れば、實は選擧法で先つきのやうな御議論がなくたつて濟んで行く、國民が民主主義が分らないものだから、どうしても法制の力に依らなければならぬと云ふので、ああ云ふ風な熱心な議論が戰はされて、どちらも不滿足だと云ふやうな結果になつてしまつて居るやうな譯なんで、斯う云ふ規定も如何でせうか、さう云ふ兼職禁止と云ふことが宜いのだとすれば‥‥、衆議院に付ては暫く申しませぬ、是は私が申すべき次第ぢやありませぬが、參議院に付ては相當に御考になつて御設けになつた方が‥‥、法律で設ける必要がありはしませぬか、設けずに自肅で行かうと云ふのは少し進み過ぎた、少し買ひ被つた方法ではないかと思ひますが、其の邊如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=87
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088・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 其の點に付きましては考究致して見たのでありまするが、參議院議員となつた方が絶對に他の報酬のある業務に從事することが出來ないと云ふやうな兼職禁止は少し行過ぎであり、又實業界から立候補されまして、參議院議員に當選された場合に於きまして、其の實業と兩立する限りは、實業にも携つて居らるることが寧ろ望ましいと云ふやうな點もあるやうな次第でありまして、其の邊の立法上の問題に於きましても難點もございます、參議院議員に當選された人が特に政府との關係に於きまして特殊會社の有給職と兼ねられると云ふやうなことは、是は運用に依つて行くことでもありますし、又議員の職責が重加されました新憲法時代に於きましては、そこに自から自肅の機運も起ることと思ひます、又曩にも申上げましたやうに、官吏としての最高の給與を受けると云ふ保障もあること等から、立法手段に依らずして適當に是は解決されるものと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=88
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089・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 先程の御話のやうに‥‥‥‥‥私ちよつと申上げ樣が惡かつたのですが、實業界から立候補して、何も政府と關係のない、自分で商賣をやつて居るやうな人が參議院議員に出てはいけない、そんなことを決して申す譯ではありませぬ、政府と關係のある仕事を申すので、それで只今の御説明で段々に事情も分つて來ましたけれども、まだ少し私が解し兼ねる點があるが、それはそれとして、私の趣旨は能く御了解下すつて、政府は御認め下すつた、少くも此のことは將來は御研究を願ひたいし、又是は内務大臣に申上げるのは如何かと思ひますが、少くも政府自身としては、是は新憲法施行の際に重大なことですから申上げるので、之を切り捨てて、さう云ふやうな關係はすつかり綺麗にしてしまふ、詰りどつちか罷めさせてしまふと云ふやうな態度にお出になつたならば‥‥‥‥是は一つ一つ指摘すればさう云ふ者は幾らも出て來る、どつちか罷めさせてしまふと云ふやうなことを、立法の方法がいけなければ、政府が進んで自肅されるやうな態度にお出になつたら如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=89
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090・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今御述べの點は政府として十分考慮致しまして善處する積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=90
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091・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) もう宜しうございますか、大河内君‥‥‥それでは作間君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=91
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092・作間耕逸
○作間耕逸君 私は參議院議員の選擧權、即ち有權者の方面に關聯して内務大臣に御伺ひを致したいと思います、私は參議院の政黨化の是非に付ては此處で論議致しませぬ、唯參議院成立の曉に於て、其の人的構成の上は現段階に於ける政黨の勢力が事實上、實際上、どれだけ反映するのであらうかと云ふことは、矢張り豫め之を考察して置くことが本案審議の上に於て決して無用ではなからうと存じます、そこで本案の原案を法制審議會等に於て御討議の際、現在我が國の政黨員‥‥‥即ち人口は七千三百萬、其の中、先づ有效投票が三千萬、之を全國選出の場合に於ては當選圈の得票は三十萬、地方府縣選出の場合に於ては二十萬と大體目せられて居るのであります、然らば本案審議の上に於て、實際政黨に黨籍を有して居る有權者の投票が、如何に選擧を通じて參議院の人的構成の上に反映するであらうかと云ふことは、御考になり御調べになつたことがありませうか、之を具體的に申上げますれば、現在に於ける我が各政黨の黨籍を有する有權者の數も大體に於て御調べになつて、其の材料を用意せられたことがありませうか、或は衆議院總選擧の場合に於て、當選議員又は落選候補者、此の獲得したる投票數を政黨別に合計すれば、それで各政黨の有效投票、即ち數の上に於ける勢力は凡そ分るではないかと云ふ云ふやうな見方がありませうけれども、私はあの當選議員又は落選候補者の得票と云ふものは、必ずしもそれが其の所屬政黨の勢力に依る投票ばかりとも認められないのであります、其の一例を申上げますれば、齋藤國務大臣は今春の衆議院總選擧に於て我が國第二位かの多大の得票を得られたのであります。併しながらあれは齋藤代議士所屬の進歩黨の得票ばかりが集まつた譯では無論ない、齋藤國務大臣が衆議院議員として嘗て院内に於て光彩ある言動を執られましたが爲に、それに共感、共鳴する選擧民多數の投票が期せずして集まつたのである、要するに是は齋藤君個人の御徳であつて、あの得票が總て進歩黨の有權者の集計であるとは認められないのであります、でありまするから、さう云ふ數字を集計したる結果を以て、私は政黨の現實的勢力とは認めない、一體斯う云ふやうな案を御起案なさる場合に於ては、我が國政黨の現實的勢力、選擧投票の上に現はるべき數字的勢力を一つの有力なる材料として用意し、考慮せられ、又考察せられて居らなければならぬ筈であらうと存じます、多分其の材料は現はれて居り、御調べが出來て居ると信じまするが故に、最近に於ける我が國各政黨の所屬有權者數、之を政府はどう御調になり、どう御認めになつて居りまするか、其の點を伺ひたいのですが、事は數字に關する問題でありまするから、御即答を願ふことは無理かも知れませぬ、それなれば又次會でも宜しいのであります、併しながら私はさう云ふ御用意が出來て居るか、さう云ふことを材料に供せられたかどうか、審議會に於て、或は内務省に於て、さう云ふ材料の御用意が出來て居つたかどうかと云ふことだけは、本日承ることが出來れば承りたい、其の材料に上つたる數字は、是は本日御即答は出來なければ次會で結構であります、更に此の參議院の選擧に付て、職能代表の選出は之を法文の上では具體化しなかつたけれども、其の精神に於て實際上、事實上、之を採入れたものであると云ふことを政府は屡屡御説明になつて居るのである、政府の御思召はそれに違ひないと思ふ、其の趣旨は私共も同感であります、處が只今申上げまする通り、參議院議員の當選圈數、當選圈得票は全國的には三十萬、地方的には二十萬、是は信用ある毎日新聞の發表でありまするから、私は此の數字を其の儘承認致します、全國から出て百人の當選者の中に加はるには、三十萬の有效投票を獲得しなければならない、又地方府縣で出て、さうして當選圈に入るには二十萬の投票を獲得しなければならない、さうすると云ふと、職能代表的關係がどの程度に於て之に現れて來るかと云ふことを考へますると云ふと、能く各位が職能代表の御説を述べられる場合に、其の例として、醫者、辯護士、自由職業を擧げられるのであります、假に其の内、辯護士を取上げて見ますと、全國於ける辯護土の總數は僅かに五千五百、六千に足らないのです、さうすると云ふと、三十萬の得票を必要とする其の中に、假に辯護士が候補に立つても、其の同業同職の關係上、職能代表的得票は僅かに三萬三千、百分の二、二分にしか足りないのです、私は現在に於ける醫師の數を今諳記して居りませんけれども、恐らく一萬五千乃至二萬程度ではなからうかと思ひます、さうすると云ふと、是が全國當選圈得票の一人當りの五分乃至五分強にしか滿たない、政府は職能代表關係を採入れて居ると仰せられまする以上は、さう云ふ數字的統計に付ても一應考慮されたに相違ないと思ふのであります、是は今御即答を承る次第ではありませぬが、事が數字に關しまするので、是は委員長にも御願ひ致して置きますが、資料を要求致したいのです、即ち職業別の有權者統計數、是も職業はもう其の種類が多くして、迚も擧げ切れますまいから、此の國事多端の折柄、左樣な無理な御願ひは致しませぬが、普通有りふれたる職業に付て、其の總括的有權者の數が分れば結構、分らなければ單なる自由業者の數だけでも宜しいのであります、併しながら私は敢て申上げます、此の頃は官廳の統計がなかなか緻密に行はれて居る、それは町會、部落會を經て、さうして隣組に可なりの面倒な表が時々配布せられて、之に皆、職業、年齡、性別、總てを書き出せと云ふことで、私共は一年に二度も三度もそんなことをさせられて居ります、あの統計と云ふものは、是は内務省の御管轄ではないかも知れませぬ、内閣の統計局の御管轄かも知れぬけれども、集計されて居る筈です、であるから、少しく御苦勞を下されば、統計は直ちに御提出下さるやうに、間に合つて居るのではないでせうか、若しそれがなかなか容易なことぢやないと仰せられれば、私共はここ數年隨分隣組を經てむづかしい表を出した、それが何の甲斐があつたかと云ふことを申上げたくなるのであります、そこで甚だ御手數でありますけれども、ありふれた職業で宜しうございます、職業全體には及びませぬ。知れれば有權者の數、知れなければ全體の人數で宜しうございます、之を資料として次囘迄に御提出下さらむことを御願ひ致します、それから是は序でに立ちました場合でありますから、是は一體總則に於て申上ぐべきことですけれども、さうして是は總理大臣へ御尋ね致したいこと若しくは賞勳局總裁に御尋ね致したいことですけれども、今日は總理大臣も御見えになつて居りませぬし、彼處に有力なる國務大臣が二人出ておいでになりますから、齋藤さんでも植原さんでもどちらでも宜しうございますが、御伺ひ致したいのは、現在の貴族院には勿論勅選議員がある、此の勅選議員はあの貴族院令に依つて國會の功勞者も選任下さることになつて居る、學識ある者に付ては是は參議院議員の候補に立つて大いに當選される可能性が多いかも知れませぬ、けれども單に國家に功勞ある者は、是はどうも參議院議員にならうたつて、少數の人は親讓りの財産があるので結構でせうけれども、さう云う用意のない方はなかなか貰ひ金の俸給や恩給ぢや迚も參議院議員候補に立つことは出來ないのであります、さうすると政府は、と云ふよりは寧ろ國家は何を以て此の功勞に報いむとせらるるか、貴族院がなくなり、樞密院は勿論なくなり、又華族制度はなくなり、それから位階も官吏でない限りは今迄は貰へない、殘る所は僅かに勳章あるだけでありまするが、此の勳章が甚だ何でありますが、近來頗る光彩を失つて居るのであります、のみならず此の頃は敗戰以後の日本に於ては是が戴けるのか戴けないのか、其の邊も我我には少し分らなくなつたのであります、さうすると社會に立つて産業、文化等の爲に非常に盡された有力なる顯著なる功勞者が將來出來た場合に、まあ文化人ならば文化勳章と云ふ特別な待遇がある、けれども政府は是等の人に對して只今申上げましたやうな從來の表彰方法と云ふものは全くなくなつてしまつた、文化人は宜うございます、文化勳章と云ふ一種特別の名譽あるああ云ふものを戴ける望みがあります、けれども實業界、産業界、さう云ふ社會に馳驅し活動して多年苦勞して、さうしてそれが民生の上に貢獻多大な者があつた場合、將來どう云ふ方法で政府は之を表彰せられるのであらうか、無論是等の人には何とか藍綬褒章とか紺綬褒章とか云ふやうな褒章もあるやうですけれども、肝腎の本物の勳章でさへ影が薄くなつた現在に於て、あんな褒章なんかでは迚もそれは表彰の實が擧がるものぢやない、今後政府は是等の人を待遇せられ、優遇せられる上に於てどう云ふ方式を御採りになるか、是は本案の審議に直接關係はありませぬけれども、今や貴族院と茲で告別しなければならぬ場合、矢張り本案の審議に關聯して一應一つ總理大臣の御意見を伺つて置きたいのですが、總理大臣がおいでにならぬから、齋藤さんでも植原さんでも、是は國務大臣に總理大臣の代理として、名代として御答を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=92
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093・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 私に關係して居ります所を先づ御答へ申上げます、立憲政治、殊に新憲法に依る政治が行はれますに當りましては、必ず之に政黨政治が入つて來ると云ふことは、是は必至のことでありまして、我我は健全なる政黨の發達に依りまして新憲法が十分に活用せらることを希ふ次第であります、從ひまして參議院に於きましても政黨所屬の人が段々議員になられることは當然豫期して居ることであります、從ひまして此の點に付きまして、政黨が參議院に入る點のことに付きまして何等深き研究は致して居りませぬ、參議院に政黨の入ることは當然だと考へて居る次第であります、尚先般執行せられました衆議院議員の選擧の結果に依りまして、政黨所屬の候補者に集りました得票數は、茲に持つて來て居りませぬが、集計したものがありますから、後刻資料として御廻ししたいと考へて居ります、尚參議院議員の選擧に當りまして、實際どの程度の得票があつたらば當選を贏ち得るかと云ふ點に付きまして、某新聞に出て居つたと云ふ數字を御示しになつたのでありますが、是は選擧の實際に依りまして、どの程度に候補者が立つかと云ふことに依りまして餘程數字は動いて來るのであります、私は此の理論は存じませぬが、ドループ式計算法と云ふのがございまして、是は當選確實なる者の得票見込數を、數學的に絶對外れないと云ふ計算式があるのであります、其の理論は私はむづかしくて分りませぬ、それと其の計算法に依つたものの數字を御參考に申上げて見ますと、地方選出議員に付きましては、全國平均で十八萬三千十四票取つて居れば、絶對に落ちないと云ふ數字であります、それから全國選出議員に付きましては、第一期百人を選出する場合に於きましては二十八萬三千五百十五票と云ふのが、是が數學上間違のない確實得票數ださうであります、新聞の記事は、恐らく此の邊の所から出て居るのではないかと思ふのでありますが、今迄の我が國に於ける立候補の模樣、殊に最近に於ける衆議院議員の選擧に於きましては、候補が非常に濫立致しまして、ああ云ふやうな傾向を考慮致しますと、第一囘の選擧に於きましては、全國選出議員も、地方選出議員も、凡そ十萬票位で、其の内外で當選が可能ではないかと云ふやうに豫想を致して居ります、尤も全國選出議員に付きましては、投票が一方に集中すると云ふやうな傾向が顯著に現はれますれば、更に十萬票を下つても當選が可能だと云ふことが起ると思ひます、先づ大體の見當は、地方選出議員も全國選出議員も第一囘の選擧に於ては十萬票内外、計算に依りますると地方選出議員は七萬五千票位でも當選するのではないかと云ふやうな點は、一應研究して見たことがあるのでありますので御參考に申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=93
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094・作間耕逸
○作間耕逸君 今の問題に關聯してもう少し‥‥‥‥発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=94
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095・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 作間君に申上げますが、もう四時を過ぎましたから、今朝申上げました通り、若し何ならば明朝御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=95
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096・作間耕逸
○作間耕逸君 さう云ふことに御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=96
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097・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) それでは本日は此の程度で散會致しまして、明日午前十時開會致します
午後四時十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=97
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098・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 伯爵 林博太郎君
副委員長 男爵 高木喜寛君
委員
公爵 桂廣太郎君
侯爵 細川護立君
伯爵 橋本實斐君
子爵 大河内輝耕君
子爵 秋元春朝君
子爵 三島通陽君
子爵 水野勝邦君
子爵 松平親義君
山田三良君
桑木嚴翼君
平塚廣義君
永井松三君
吉田久君
下條康麿君
川村竹治君
男爵 伊江朝助君
男爵 松田正之君
男爵 肝付兼英君
男爵 松平齊光君
男爵 小原謙太郎君
大木操君
田所美治君
松本學君
結城安次君
三橋四郎次君
小山完吾君
山地土佐太郎君
作間耕逸君
松岡潤吉君
秋田三一君
淺井清君
國務大臣
内務大臣 大村清一君
國務大臣 齋藤隆夫君
遞信大臣 一松定吉君
國務大臣 植原悦二郎君
政府委員
法制局事務官 宮内乾君
内務事務官 郡祐一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00219461205&spkNum=98
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