1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○参議院議員選挙法案
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昭和二十一年十二月六日(金曜日)午前十時七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=0
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001・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 只今より參議院議員選擧法の特別委員會を開會致します、下條君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=1
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002・下條康麿
○下條康麿君 私は第二章、第四條參議院議員の年齡に付て御尋ね致したいと存じます、此の上院の年齡をどう定めるかと云ふことはなかなかむづかしい問題のやうに思ひまして、各國共必ずしも其の揆を一にして居らないのであります、大體衆議院の場合よりか相當年齡が高いことになつて居るのであります、過般本會議に於きまして、内務大臣から御説明の際にも衆議院の場合よりも五年高めてあると云ふことの御説明であつたやうであります、が我我は昨日來色々同僚各位から御意見、御質問があつた中にありましたが、全國一選擧區の場合に於きましては、どうしても餘りに漠として居りまして、まあ何等か其處に通俗に申しますと、枠と云ふものを嵌めて置く必要があると云ふ風に考へられる、色々法定推薦制度を制定したら宜いぢやないかと云ふやうな意見も出たのでありますが、私も其の説に贊成致しますが、併しながら若し法定推薦制度が法律として認められないならば、之に代るべき方法はないかと云ふ點から考へますと云ふと、それは正しく年齡を上げることではないか、斯樣に考へるのであります、それで法制調査會に於きましても、其の點は相當に考へられたのでありまして、最後の案と致しまして、四十歳以上と云ふことになつて居るのであります、其の當時の四十歳に引上げた理由としては、今申上げたやうな枠が推薦制度に依つて嵌められることが許されないのであるならば、せめて年齡に依つて知識經驗ある人を參議院議員に薦めたいと云ふ、斯う云ふ趣意であつたことは、其の當時、其の會に於ても宣告され、恐らく内務大臣に於かれても御承知のことであると思ひますが、さう云ふやうな意味であつたのを、四十歳から三十歳に下げた理由がどう云ふ譯でありまするか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=2
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003・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 參議院議員選擧法を立案するに當りましては、新憲法の條章に依つて基本的事項が段々決められて居りますので、參議院をして衆議院に對し特色あらしめる上に於きましては、結局主な點は、年齡と選擧區の構成と云ふ二つに歸著するやうに相成ると思ふのであります、故に此の年齡を適當に定めまして、衆議院に對し參議院の構成を異色あらしめると云ふことは、一つの要點でありますので、此の點に付きましては、政府としても十分研究を致したのであります、尚臨時法制調査會に於きましては、此の點に特に著目せられまして、御審議の結果之を四十歳にすると云ふことで御答申になりました事情も能く承知致して居ります、そこで愈愈法案を立案する時になりまして、法制審議會の四十歳を十分尊重して、之を取扱ひたいと云ふことで研究を進めたのでありますが、此の點に付きましては既に御承知でもございませうが、諸外國に於きましても第一院に對して第二院の被選擧年齡は何れも高くなつて居るのであります、一二事例を申上げて見ますると、チエツコに於きましては第一院が三十歳、第二院はそれから十五歳を高めた四十五歳になつて居ります、フランスに於きましては、第一院が二十五歳、第二院が同じく十五歳を高めまして四十歳になつて居ります、それからベルギーに於きましては、第一院が二十一歳、第二院が四十歳、それから米國に於きましては、是は第一院が二十五歳、第二院は五歳を高めて三十歳と云ふことに相成つて居ります、それから我が國の例と致しましては、貴族院議員の場合に於きまして、特に年齡を規定して居ります部分に於きましては、是は三十歳に相成つて居るのであります、尚又公選知事の選擧年齡は地方制度に於きまして三十歳と云ふやうな事例でございますが、此の點に付きまして法制審議會の四十歳は十分尊重すべきものと考へたのでありまするが、併し一面に於きましては、選擧人をして選擧をさせる場合に於きまして、餘りに年齡を高く決めることは却て選擧人を拘束すると云ふことにも相成りますし、尚年齡をどの程度に決めると云ふ點に付きましては是は結局腰だめ式なことでありまして、是でなければならぬと云ふ確實なる割出しも出來ないことであります、尚又關係方面に於きましても、年齡を餘り高く決めることは適當であるまいと云ふやうな勸告もあつた次第でありまして、一時三十五歳説も有力になつたのでありますが、我が國の既往の實例から申し、又現在衆議院議員候補者の選擧年齡が二十五歳以上となつて居ります所から、之に五年を加へた三十歳と致すのが諸般の情勢から適當であらうと云ふことに閣議が決定致した次第であります、而して此の年齡の點は確かに重要な點でございますが、併し選擧の實際から申しますと年齡を三十歳に決めたからと申しまして、參議院の性格から申して選擧の實際は法制調査會の御意見の如く四十歳以上の人が事實は多數當選されることになると思はれるのであります、現に年齡二十五歳を候補者の標準として居る衆議院議員の選擧に於きましても、最近の選擧に於きましては二十九歳以下の人が三人であります、それから三十歳乃至三十九歳の方が四十七人、四十歳以上の方が殘り四百十五人と云ふことに衆議院でも相成つて居ります、尚又所謂貴族院の多額議員に於きましては三十歳が制限されて居りまするが、實際に當選された時の平均年齡は五十歳を超えて居ると云ふやうな次第であります、それから尚斯う云ふ次第でありますので、假に年齡を三十歳としても實際選出される人は大部分四十歳以上五十歳と云ふやうなことになることは大勢上明かでございますが、若し之を四十歳に定めた場合に於きまして四十歳以下の人で參議院議員として非常に適格を持つて居る人があると云ふ場合に、此の選出を妨げることは却て宜しくないと云ふ有力な意見もある次第であります、私詳しく調べたことではございませぬが、思ひ附いた所に依りますと、イギリスに於きましてもあの小ピツトの如きは若年の時から内閣に列しまして、非常な功績を擧げられたこともあるのであります、さう云ふやうな人がありました場合に、年齡の制限に依つて參議院に入ることを妨げるやうなことは適當であるまいと云ふ有力な意見もございます、彼此考へ合せまして、標準と致しましては、衆議院の二十五歳に五歳を引上げまして三十歳とすることが適當であると云ふ結論に達しました次第であります、尚此のことは前にも申上げましたが、我が國の既往の例に於きまして、貴族院議員に年齡制限を設けます場合には、三十歳になつて居ると云ふやうな點が、我が國の慣行的になつて居る次第もございますので、是等の點から法律に於きましては三十歳と云ふことに決定を致しました次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=3
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004・下條康麿
○下條康麿君 段々御考を伺つたのでありますが、第一に各國の例を見ましても大體下院議員の年齡に對して十歳乃至十五歳位高い、十五歳高い所が多いやうでございます、それで現在衆議院議員の年齡が二十五歳ですから十五歳加へると四十歳になる、尚それをもう少し具體的に考へて見ますると、教育程度が、大學出身と云ふことを考へて見ますれば、大體二十四五歳位で卒業します、それから十年位は相當な經驗を積む期間であつて、其の後に比較的樞要な責任ある地位に就く、さうして其の以後に於て五年位經過した人が、最も經驗ある、責任を任せ得る人だと云ふ風に考へるのであります、現にベルギーの憲法の上院の規定を見ましても、ベルギーは四十歳でありまするが、或年限に付ては十年と云ふ規定がありますし、又或地位に就いてから五年と云ふ規定が相當にある、それ等を勘案致しますと云ふと、矢張り各國の例にあるやうに、下院議員に對して上院議員の年齡は矢張り十五歳位を加へることが最も妥當であると云ふ風に考へるのであります、只今アメリカの例を含んで仰しやつたやうに思ふのでございますが、アメリカは三十歳でありますが、併しアメリカの民主主義政治と、今日我々が認めて居る我が國の政治思想の段階は必ずしもアメリカの例に依ると云ふことが妥當かどうかと云ふ所は相當問題ぢやないかと思ふのであります、又御話の中に、餘り高く決めることはと云ふ御言葉がありましたが、四十歳は餘り高くはない、各國に其の例がある、又其の中には年齡を高めると候補者の選擇範圍が狹まると云ふことが御言葉の中にあつたのでありますが、それは確かに或程度さう云ふ風に考へられますが、併しながら現實問題として、四十歳以上の者が出るだらうと云ふことを豫想せられて居る考から見ますれば、矢張り四十歳と云ふことにして置いて、其の範圍で選ばせると云ふことが法の精神から言つても適當であると云ふ風に考へるのであります、是は先程申述べたやうに餘りに全國一選擧區が漠として捉へ所がないのであります、せめて此の程度の制限と云ふか枠を嵌めることに依つて、初めて健全なる第二院議員の選擧が行はれるのぢやないか、斯樣に考へるのでありまして、是は政府に於ても、もう一度御考へを願ひたいと思ふのでありますが、再度内務大臣に其の點に付て御考を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=4
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005・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今御述になりましたやうに諸外國の例に於きましても、衆議院議員候補者の選擧年齡と參議院のそれとの間に於きましては、相當の開きを持つて居ります事例も段々ございます、尚又法制調査會に於きましても、其の趣旨の御答申もあつたことでありまして、政府と致しましては、年齡を四十歳にすることに付きましては篤と其の御意見を尊重して考慮を致したことでございまするが、前に段々申上げましたやうな次第で、殊に我が國に於きましては、既に貴族院の構成をする上に於きまして長く年齡三十歳と云ふことを一つの基準にして居りまする先例もあることであります、尚又アメリカに於きましても、或は申上げなかつたですが、オランダ等に於きましても、上院の年齡を三十歳に致して居ると云ふやうなことであります、一面に於きまして、年齡を餘り高く決めることに依りまして、それより低い年齡層に於て第二院の議員としての適格を持つて居ると云ふ人を排斥するやうな結果に相成りますことは甚だ遺憾でもある、其のやうな次第で、政府としては此の點に付て十分愼重に研究を致しましたが、結局三十歳にすることが適當であると云ふ結論に達しまして、法案に其のやうに定めた次第であります、此の點は政府として熟慮の結果、三十歳と云ふことに致しましたので、其の點諒とせられまして、何卒愼重に御審議を御願ひ致したいと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=5
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006・下條康麿
○下條康麿君 能く三十歳にされた理由が分らないのでありますが、今御述になつた理由の中に、現在の貴族院議員の三十歳以上と云ふことがありますが、互選の方は別でありますが、勅選の關係でなります人は四十歳以下でなると云ふことは殆どないと思ひます、それから多額の方で三十歳の制限がありましても、事實は高い年齡になつて居りますが、それは選擧人、竝に被選擧資格を持つ者が全然制限選擧でありまして、所謂普通選擧でないのであります、全然例にならないのぢやないかと思ひます、要するに斯う云ふ問題は或程度腰だめでありますが、矢張り相當理由も立たなければならぬ、それから一面、將來は別として現在の國民の政治思想の状況と云ふことも勘案しますと、俄かに三十歳に低下すると云ふことは妥當でないと云ふ風に考へるのですが、併し一應政府の御意見だけは拜聽しましたから、此の點に關する質問は止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=6
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007・作間耕逸
○作間耕逸君 昨日吉田委員、其の他の方々の質問に對して内務大臣は、職能代表の長所は十分考慮して、全國一選擧區制の採用に依り、事實上之を活かす考であると云ふ御趣旨の答辯を承つたのであります、内相の御氣持は十分分つて居りまするし、又調査會の審議の上に於きましても、可なり此の點が檢討せられたことは推察せられるのでありまするが、私は此の有權者數との關係から考察して見まして、どうも實際的、具體的に職能代表の制が選擧運營の上に於て採入れられたとは認められないのであります、内務大臣が只今申上げましたやうな御答辯をなされました上からには、事實上、實際上選擧運營の上から、どう云ふやうに職能代表制を全國一選擧區制の上に採入れられたのでありまするか、之を具體的に伺ひたいと思ふのであります、只今私が申しました數の調査の上からと申上げまするのは、自由職業の中の主なるものとして、何時も例に出ますのが醫者と辯護士、處が、全國醫者の數を私は昨日、一萬五千乃至二萬と申上げましたのは全く私の思ひ違ひでありまして、是は最近の統計に依りますると、醫者の數は五萬六百、處が極く最近に、更に増加の傾向があつたと申すのでありまするから、是が先づ六萬と見て誤りはないと思ひます、六萬と致しますると、其の醫者全部を有權者であると致しまして、全國の參議院議員選擧有權者中三千萬、此の三千萬の千分の二、即ちコンマ二パーセントに相當致すのであります、それから全國選出の場合に於て參議院議員一名の當選得票は昨日内務大臣もドループ式計算法に依つて地方選出議員の場合は十八萬三千餘票、全國選出の場合は二十八萬三千餘票と御發表になりまして、大變有力なる指針を得たのであります、さうすると私が昨日申上げました毎日新聞の記事に係はる全國選出の場合約三十萬、地方府縣選出の場合約二十萬と知りました數字も、新聞記事としては大體誤りない、内相の正式に御發表になつた、數字と大體に於て一致を致すのであります、後は唯棄權者の見込み數の相違位なものであります、是は固より平均數でありまするから、實際の選擧の結果の各候補者の獲得投票と云ふものは無論違つて參ります、それは有力なる候補者が現はれまする程投票は其の人に集中し、他の候補者は其の影響として、比較的少い投票で出れる、是は固より當然のことであります、併しながら今此處で原則的に檢討致しまするには、どうしても内務大臣御發表の數字のこと、又新聞掲載の數字のこと、平均得點數に依る外はないのでありまするから、私は平均得點數を標準として申上げるのであります、さうすると全國の醫者が六萬、是が悉く有權者として投票を集中して、全國的の候補者一人に投票致しましても、僅かに一人の百分の二十、二割、一人の平均得點數が三十萬と致しますれば、僅かに其の二十パーセントに過ぎないのであります、辯護士に至つては更に其の十分の一、辯護士は醫者の十分の一です、是は私が專門の職業でありまするから能く存じて居ります、六千未滿です、假に最も多く見ても六千を超えることはありませぬ、さうすると丁度醫者の十分の一に過ぎないのですが、今醫者だけを例にして申上げます、辯護士は其の十分の一、其の一割と思召し下されば宜いのであります、さうすると之を全國選出參議院議員定數百人に比較して見ますると、百人の中の一人、其の一人の中の僅かに二割です、二十パーセント、さうすると全國の醫者が擧つて投票を集中して選擧せられても、一人の參議院議員を選出することは出來ないことになるのであります、僅かに一人の百分の二十の勢力しかないのであります、是が數字統計の上から考察致しますると、左樣な結果に相成るのでありまするが、内務大臣が職能代表制を實際上、事實上採入れられたのであると仰せられましたからには、其の如何なる方法、如何なる建前で御採入れになつたか、それを具體的に伺ひたい、斯う云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=7
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008・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 參議院議員選擧法の中に於きましては、職能代表制を研究致しました結果、法律上は採入れて居ないのであります、職能代表制は今度の參議院議員選擧法には採入れてない次第でございまするが、既に全國選出議員を設けましたことに依りまして、職能代表的な選出が實際上は可能性が出來て來たと云ふ趣旨に外ならないのであります、只今數字を以て御引例になりました醫師及び辯護士に付ての點でありまするが、醫師は假に六萬と致しまして、醫師の職能代表者を出すと致しましても、票數が非常に少ない、それは事實其の通りだと思ひます、併し實際の選擧に於きましては、醫師と云ふ全國的有力團體がありまして、さうして其處に醫師團體に於きまして、全國的なる人物を推薦されたと云ふことを假定致しますと、醫師の家族乃至は醫師と接觸のあります方面で、醫師の御推薦に依つて醫師以外の人もそれに同感を表して投票することもある譯であります、さう云ふやうな次第で候補者の如何に依りましては、醫師會の推薦をされる人が當選の榮を贏ると云ふ可能性は十分にあると思ひます、辯護士に於きましても同じく同樣であります、尚假に職能代表制を認めると致しまして、數千人しかない全國的の職能組織に對して一人乃至何人かの參議院議員を選び得ると云ふやうなことは、是は社會的の身分に依りまして、特に差別待遇をすることになりますから、新憲法の上に於きまして、さう云ふやうな職能代表制を盛り込むことは不可能であらうかと思ふのであります、要するに參議院議員選擧法案に於きましては、法律上職能代表は採用して居ないのであります、唯全國議員を認めますことに依りまして、職能的な選出方法も、事實上用ひ得ると云ふ可能性が出來て來ると云ふのに過ぎないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=8
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009・作間耕逸
○作間耕逸君 私も職能代表制が制度、法案の上に採入れられたと云ふことは決して申上げない、さう云ふことは、今大臣の仰せられる通りであつて私もそれは承知して居ります、唯大臣が職能代表の精神は、趣旨は、十分に尊重して、法文、制度の上には採上げないけれども、實際の運營上採上げて居るのであると云ふことは、是は御言明になつたのですから、實際問題、事實問題として御伺を致して居るのであります、決して法制の上から御伺ひ致して居るのではない、處が、只今の御答に依りますると、醫者が候補に推薦された場合に、醫者以外の投票がそれに加はるであらう、さうすると云ふと當選が出來得るかも知れない、斯う仰せられた、私共の職能代表と申すのは、職能を離れた個人の勢力に依つて獲得する投票は、職能代表的得票とは認められないのであります、それは候補者其の人にして適任でありますれば、醫者であらうとなからうと職業に關係なく集まる投票は、是は職能代表制の本旨に適ふ得票とは認められないのであります、而して自由職業の内最も主なる職業として、而して又數の上に於て比較的多きを占める職業として擧げられるのが醫者であります、其の醫者にしてさへもが、只今申上げるやうに定員百人の内の一人、其の一人の二十パーセントの勢力しか代表せしむることが出來ない、滿足に一人の代表者すら擧げることが出來ないと云ふ結果に相成りますれば、數字の上で、之が事實上にも實際上にも職能代表の趣旨が採入れられて居るとは認められないのであります、それから只今大臣の仰せに依りますれば、職能代表制を制度でなくとも、實際の上では之を認むると云ふことになれば、職業に依る差別待遇を認めることになつて、憲法の精神に副はないものである、或は解釋の上でさう云ふ御意見が立つかも知れませぬ、それならばそれで職能代表制は採入れたかつたんだけれども、併し之を採入れると云ふことになれば、憲法の精神に牴觸するので、採入れることが出來なかつたのであると云ふことを仰せに相成れば、我々も已むを得ず之を了解し得たかも知れませぬ、唯實際上職能代表制を其の趣旨を採入れたと仰せられまするから、それならばそれが實際上どう云ふやうな效果を現して居りますかと云ふことを伺つた趣旨でありまするけれども、大抵只今の御答辯で政府の懷いて居られる見解の一半は分りましたから、其の點の質問は是で一先づ打切つて置きますが、若し大臣の方で私の先程申上げました意見に對して答辯なさる思召があれば承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=9
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010・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 全國選出議員を認めますことに依つて、職能代表的な選出方法が事實上行はれ得ると考へて居るのでありまするが、御引例になりましたやうな少數なる職能團體に於きましては、御趣旨のやうな所で職能代表を出すことは事實不可能であらうかと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=10
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011・作間耕逸
○作間耕逸君 それから私は昨日、參議院に政黨勢力が進出の是非、此の可否に付ては何等申上げない、是は當然の現象であらうと思ひます、唯政府が本案を審議せらるる上に於て、新しき參議院の人の構成の上に於て政黨の勢力が如何程進出して來るであらうか、反映して來るであらうかと云ふことを法制調査會等に於て御考慮になり御調になつたことがあるのかどうか、之を伺つたのであります、さうして同時に、あの最近行はれました衆議院議員總選擧の結果に依る當選代議士又は落選候補者、政黨所屬の得票數の集計、あの數字は私は個人の勢力に依る得票も相當混つて居るのであるから、あれを純粹の政黨の政治的の勢力の數とは認められない、内務省には、或は内閣の統計局には政黨の黨籍を有する所謂黨員の有權者數、若しくは黨員數と云ふものが、各政黨別に調べてあることであらうと思ひまするし、又或は集會結社法等に依つて屆出てあることであらうと存じまするから、之を伺つて置くことも本案審議の上に於て決して無用のことではない、寧ろ有力なる參考に値する、斯う信じて御願ひを致して置いた譯でありまするが、若し政府の方であれは衆議院議員總選擧の結果に依つてあの政黨所屬代議士及び候補者の得票數の集計に據つて居るのである、其の以外には政黨員の黨籍を有する者、若しくは有權者の統計と云ふものは別にないのだと云ふことであれば、それで仕方がありませぬ、結構であります、さう云ふ集計的數字がありまするかどうかと云ふことを御伺を致すのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=11
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012・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 昨日御要求のありました統計數字に付きましては、目下調査中でありまして、成るべく早い機會に出來るだけのものを御屆けしたいと考へて居りまするが、唯投票に於きまして、各政黨所屬の候補者に對しまして集りました票を集計致しまして、自由黨の候補者に對する投票が全國で何票になつたかと云ふ調は、是は可能でありまするが、政黨員が何處に如何なる投票をしたかと云ふことは全然分りませぬ、又之を分らす方法は投票の祕密を害しますから、出來ないことなのであります、尚又現在の我が國の政黨に於きまして黨員が何人あるかと云ふことに付きましては、今日の現状を調べると云ふことは刻々變化致して居りますから不可能でありまするが、過去の或時點を捉へまして、何等かの資料に依つて或程度のものが調べ得はせぬかと云ふことで、只今調査中であります、此の點は各黨員迄の數を屆け出ると云ふやうなことは、現在治安警察法も廢止されて居りますので分りませぬが、何等かの資料に依つて、或程度の趨勢を見るものが求められないかと云ふので、今調査中であります、成るべく早い機會にそれが出來ましたら御屆け申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=12
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013・作間耕逸
○作間耕逸君 誠に有難うございます、國務殊に御多端な場合に、餘計な御手數を煩すと云ふことは恐縮でありまするけれども、斯う云ふ機會に、政黨の參議院に及すべき將來の趨勢に對して、現在の勢力が數の上に於て如何に相成つて居るかと云ふことを知ることも亦必要のことと思ひまするから、敢て御願を致した次第であります、御好意は有難う存じます、それから昨日私は内閣總理大臣に御答辯を願ひたいと申上げて御伺ひ致しましたが、總理大臣が御出席ありませぬから、それでは其の代理の御積りで、齋藤國務大臣か、植原國務大臣の御答辯を御願したいと申上げて居りましたのは、貴族院議員中、所謂勅選議員、此の議員の勅選は、貴族院令に依つて、國家社會に對する功勞者表彰の一方式に相成つて居るのである、是は貴族院令に明文があります、處が、此の功勞表彰の途が貴族院の廢止と共に杜絶されると云ふことになりますと、之に代る表彰の方法が政府側に於て御考になつて居ることであらうか、是は本案審議に直接關係のないことでありまするけれども、貴族院が廢止せられて、參議院になる、制度が變る、而して參議院は全然さう云ふ制度を認められて居ない、是はもう性質上當然のことでありまするが、然らばそれに代つて、從來最も有力、有効なる表彰の方法として、勅選制度が貴族院令に認められて居りましたのが、それがなくなりまする以上、之に代る相當なる表彰の方法を政府は御考になつて居るかどうか、御考になつて居るとすれば、此の機會にそれを伺つて置きたい、此の答辯は、事の性質上、成るべく總理大臣の御答辯を御願する意味に於て、今日はまだ時間も早うございますから、後刻で宜しうございますが、是は改めて御出席を要求致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=13
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014・山地土佐太郎
○山地土佐太郎君 第四條の年齡のことに付きまして、先刻下條委員より詳細な質疑が行はれまするし、又内務大臣よりも懇切な御答辯がありましたが故に、成るべく重複の點を避けまして、唯二院制の特色を十分に發揮する上に於きましては、此の年齡の問題と云ふものは、誠に重要なる點と申上げることが御同感で、敢て詳しく説明を要する必要はないのであります、先に政府より屡屡之に對する御説明を伺ひますのに、現在の多額議員の如きも、先刻内務大臣の御答辯のやうに、實際は五十四歳になつて居る、故に三十歳としても事實は相當な年齡の人が出るだらうと、斯う云ふ御考を持つて居るやうでありまするけれども、私は地方選出議員は、實際問題として相當の年齡者が選出されるだらうと思ひます、併しながら全國選出議員の百名に付きましては、是は三十歳のやうな弱年の人が全國的に選出されると云ふことは困難であらうと思ひます、又全國選出はどうしても是は有力なる政黨、團體、斯う云ふやうなものに重きを置くやうになりますから、果して相當な人が出るかどうかと云ふことは誠に憂慮に堪へぬのであります、我が國も維新當時は三十歳前後の我々の先輩が非常に國家革新の爲に活躍をしましたけれども、是は封建時代の非常に混亂の時であつて、今日とは世界的の交渉も少し、非常に時勢が違つて居るのであります、今の三十歳と云ふ者は學校を卒業しても四五年位しか經過して居らぬのでありますから、先刻内務大臣の御述になつたやうに、非常に傑出した人が四十歳と之を假定しても、其の以下の人にさう云ふ人が出るかも分らない、さう云ふ人を阻むと云ふことは宜しくないと、斯う云ふ御答辯でありましたが、私はさう云ふ稀に見る傑出した人が出ましたならば、其の人は衆議院の方に出て宜いと思ふ、さう云ふ大政治家が出れば、衆議院の方へ二十五歳以上で出る途が開けて居ります、唯新憲法に於きまして、國會議員と云ふ者は非常なる權能を持つて居ります、現行憲法とは非常に差異がありますから、どうしても二院制の特色を發揮するに付ては、少くとも此の法制調査會に於ての原案の四十歳位でなければならぬと思ひます、之を此の法案に三十歳にしてあると云ふ其の色々の事情に付ては、私も窃かに知つて居ります、それに對して内務大臣の色々な御説明も御苦しいやうにも實は察せられます、併しながらどうしても此の參議院の本質、使命を十分に發揮するには、此の點はどうしてももう少し政府の意向を突込んで伺つて置きたいと思ふのであります、故に互選議員の如き百人、二百人の選擧人でない、さうして全國選出議員を送る爲には、どうしても三十歳では面白くないと思ふ此の點に付て、もう少し突込んだ大臣の御説明を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=14
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015・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 參議院議員の被選擧資格としての年齡に對しまする政府の見解は、大體只今申上げました通りでありますが、別にそれ以外に新しい理由が存しないと思ふのであります、前言を繰返すやうでありまするが、要するに此の年齡の問題に付きましては、實際問題と致しましては、既往の選擧の實例から申しましても、又今後選擧が行はれる場合に於きまして、參議院の性格に鑑みまして、實際の投票も、恐らく四十歳以上の人が大多數當選すると云ふやうな運營に相成ると思ふのであります、曩にも申上げましたが、衆議院議員の最近の實例に依りましても、大多數の人は四十歳乃至五十九歳、其の所で三百三十七人の當選があるのであります、斯う云ふやうな次第でありますので、實際の問題と致しましては、參議院議員選擧法に於きまして、三十歳或は四十歳と決めましても、參議院の性格に鑑みまして、相當高い年齡の方が大多數當選せらるることと信ずるのであります、之を立法上の問題と致しまして何處に決めるかと云ふことに付きましては、曩にも申上げましたやうに、我が國の既往の例も三十年となつて居ります、又學校の卒業年齡等もございまするから、一應三十歳に達しますれば、思慮分別も相當に出來る年齡に達して居るものとも認められます、尚又之を四十年に高めますと、豫てから申上げました如く、四十歳以下に於きまして、參議院議員としての非常な適格を有して居るやうな人の選出を妨げると云ふやうな結果にも相成ります、只今御尋の中に、さう云ふ人は衆議院に出たら宜しい、確かにさうも考へられますが、衆議院議員としての適格、參議院議員としての適格と云ふ上に於きましては、そこに兩院の性格上の相違もありまして、四十歳以下の人に於きましても、參議院議員としての適格を有する人が絶無ではない譯であります、此のやうな人は寧ろ參議院に出て貰つた方が宜いと云ふこともあり得る次第であります、其のやうな關係から致しまして、法律上は三十年と云ふ制限が適當であると云ふ結論に達しまして、本案を提出致しました次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=15
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016・山地土佐太郎
○山地土佐太郎君 凡そ法律を決める時には、事實が斯うであらうと云ふやうなことで決めるべきものぢやないと私は思ひます、私は法律學者でもなければ辯護士でもないのですから、能く分りませぬけれども、斯う云ふやうにして置いても實際は斯うであらうと云ふやうなことは、是はをかしいのぢやないかと思ふ、實際上斯う云ふ者が出て來る、實際上是位の者が出ると云ふことが、其の時勢々々に於ける所謂實際の問題であると思ふのですから、三十歳として置いても、實際は四十歳、五十歳の人が出るだらうと云ふやうな見解で年齡を下げると云ふやうなことはどうかと思ひます、此の年齡の問題に付ては、先程も申上げた通り、色々政府に於ても苦心をなされたと云ふことは、萬々承知致して居りますから、質疑は此の程度で打切りまして、又他の機會に於て申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=16
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017・松平親義
○子爵松平親義君 私は此の第二章の選擧權及び被選擧權の範圍に付きまして、少し伺ひたいのであります、此の第四條に「日本國民で年齡三十年以上の者は、参議院議員の被選擧權を有する。」と斯うなつて居りますが、此の「日本國民で」と云ふ言葉であります、が、此の新憲法の施行と關係したことでもあります、まだ施行せられませぬので、此の參議院法が矢張り憲法施行後に施行されるならば日本國民でも宜しいと思ひますけれども、是が憲法施行前に此の參議院法を施行すると云ふことになりますと、日本國民と云ふ言葉はをかしい言葉ではないかと思ふのであります、矢張り日本帝國臣民、現在の衆議院議員選擧法にある通りにして置かなければならぬと思ひます、それから尚日本國民とする以上は矢張り國籍法で今度の憲法の十條でありましたか、日本國民たるの要件は法律の定むる所に依ると云ふ規定がありますので、矢張りそれに合せて國民はどう云ふものを國民と云ふかと云ふことを謳つて置かなければいかぬぢやないかと云ふ考がしたのであります、尚現在は歸化人には被選擧權が與へられて居らないのでありますけれども、今度の衆議院議員の選擧、參議院議員の選擧には此の歸化人には被選擧權を與へられる御考へでありますか、どうですか、其の邊に付きまして、内務大臣の御考を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=17
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018・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 參議院議員選擧法案、第四條に日本國民と云ふ表現を致して居りますが、是は從來の法律に於きまして、帝國臣民と使つて居りました文字と同一内容を有する趣旨に於きまして、日本國民と云ふ表現を致したのであります、而して此の點に付きましては、曩の臨時議會に於きまして、地方制度の改正の際に於きましても、帝國臣民と云ふ表現を日本國民と云ふことに只今申上げました趣旨に於て、修正をされて居るのであります、而して新憲法に依りますれば、その十條に於て「日本國民たる要件は、法律でこれを定める。」と云ふことになつて居ります、併し其の新しい新立法が出來ます迄は、此の憲法に牴觸せざる限りは、從來の法律が依然效力を有することでありまして、現在の國籍法に依つて決められました帝國臣民が、此の日本臣民に相當すると云ふ解釋で宜しい積りで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=18
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019・松平親義
○子爵松平親義君 一應承りましたが、矢張り帝國臣民として置いた方が、間違ひないことではないかと思ひます、さうして後に至つて、之を又國民と改めた方が宜いぢやないかと云ふ氣がしたので伺つたのでありますが、一應それで解釋上理解出來ると思ひます、尚其の歸化人の點でありますが、是は將來どう云ふ風に考へられますか、今度の新憲法の精神から行けば、人種に依つて區別してはならないと云ふ關係もありますので、矢張り歸化人にも、被選擧權は之を與へると云ふのが正しい考へ方ではないかと思ふのでありますが、其の邊如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=19
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020・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 歸化人に付きましては、國籍法に於きまして帝國議會の議員と爲ることを得ずと云ふ規定がございますので、憲法施行後に於きましても、國籍法は效力を持つて居ります、之に依つて議員になることが出來ないと云ふ解釋であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=20
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021・松平親義
○子爵松平親義君 此の憲法の四十四條でありましたか、人種に依つて差別してはならないと云ふことに對しての其の關係はどうなりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=21
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022・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 此の憲法四十四條の、人種に依つて議員及び選擧人の資格は差別してはならないと云ふことに直接牴觸はしない解釋であります、唯新憲法の下に於きまして、國籍法をどのやうに改正するかと云ふ點に付きましては、只今御指摘の點も含めまして、愼重に考慮研究中でございまして、後日此の國籍法に於きまして、是等の點も考慮に入れまして、新憲法第十條に依る立法を致す際に、其の點を更に調整したいと考へて居ります、繰返して申上げますが、憲法四十四條には直接牴觸するとは考へてゐないのであります、即ち或國籍を持つて居る者と、他の國籍を持つて居る外國人に於きまして、差別待遇をすると云ふことは、是は憲法でいけませぬが、一應此處の人種と云ふことに依る規定には、直接突當らないと云ふ解釋で居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=22
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023・松平親義
○子爵松平親義君 分りました、尚其の點は國籍法に於きまして、一つ十分に研究をして見たいと思ひます、それから尚選擧權者の範圍竝に被選擧權者の範圍のことでありますが、此の間本會議でも大臣の御説明がありましたやうに、選擧權者の範圍は、現在の衆議院議員の選擧權の範圍よりも、更に一歩を進めたものであると云ふ御説明でありました、非常に範圍が廣くなつて居るのであります、而して被選擧權の範圍に於ても、矢張り此の第五條に制限をしてあるのみであつて、それ以外の、詰り破産者とか或は要救護者、それから刑餘者、さう云つたやうな、詰り今度の新法律に依つて選擧權を與へられた者は、同時に被選擧權も與へられると云ふことになつて居るのであります、非常に被選擧權者の範圍が廣くなつて居るのでありますが、參議院は申す迄もなく練熟、愼重、耐久の要素を茲に含めしめると云ふ趣旨から行きまして、まだ衆議院議員の方にさへ認めて居ない所の、或は選擧權の資格、又被選擧權の資格と云ふものを、衆議院よりも更に一歩を進めて、之を參議院に施すと云ふことは、まだ試驗の濟んで居らぬものをやると云ふことは、何か非常に、まあ餘りに勇敢過ぎると云ふやうな私は感じがするのでありまして、先づ衆議院に施して見る、參議院の方は、矢張りそこはもう少し制限をして置くと云ふことが宜いんぢやないか、せめてさう云ふ點に於て參議院と衆議院との差異が其處に出て來るやうに一つ工夫をすると云ふことが必要なんぢやないか、國民の自由の意思に任して、自由の氣持から自ら其處に兩院の差異が出て來るやうにしたいと云ふ政府の昨日からの御考へでありますけれども、矢張り唯國民の自由に之を任かすと云ふことは、勿論趣旨としては結構でありますけれども、政府としても自ら何か國民に指導的な立場に臨まれる以上は、もう少し積極的に國民の自由と云ふことを指導すると云ふ意味に於ては、斯う云ふ選擧權被選擧權の點に於て、もう少し制限をして置くと云ふことの方が穩當ではないかと云ふ感じがして居ります、是では餘りに自由過ぎる、衆議院議員よりも更に進めて選擧權被選擧權の範圍が擴まつて居ると云ふことは、餘りに行過ぎて居りやしないかと云ふ感じがして居ります、其の點に付きまして、内務大臣の御考を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=23
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024・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今御尋になりました點は、確かに御尤もと考へる點もあるのでありまするが、此の公務員の選擧に付きましては、新憲法に於て成年者による普通選擧を保障すると云ふ大原則を掲げて居るのであります、是は非常に抽象的でございますので、選擧權を付與する上に於て必要なる制限を拒否して居るものでは固よりないのでありまするが、併し普通選擧は所謂制限選擧に對するものでありまして、制限選擧は成るべく其の制限を少く致しまして、普通選擧に近寄ると云ふ憲法上の一つの趣旨が明瞭に規定されて居ると思ふのであります、此の點に鑑みまして、既に地方制度に於きましても、新憲法の精神に成るべく適合せしむる如く、今囘の參議院議員の選擧權の擴張と同樣に取扱を致して居ります、又從來制限して居りました破産者或は救護者と云ふやうなものに付きましては、今日の社會状態から見ますると、經濟上の變動に依りまして、或は又補償打切り其の他の戰後の經濟の措置に依りまして、本人の責に歸すべからざる事由に依りまして破産者となり、或は要救護者となる、又一定の住居を有せざる者と云ふものに付きましても、本人の責に歸すべからざると云ふことで、さう云ふ立場に陷つた人も少くない筈であります、又是等の多くは經濟上の特殊の人でございまして、それ等の人が政治上の能力に於きまして、必ずしもどう斯うと云ふことは如何なものと考へられるやうな點もございます、選擧法の上の政治上の取扱と致しましては、是等に等しく選擧權を付與すると云ふことが、新憲法の精神にも合することと云ふやうに考へまして、參議院議員の選擧法の立案に當りまして、地方制度の擴張と同樣の取扱を致した次第であります、尚又刑餘者に付きましては、刑の執行を受け又は之を受くることなきに至りましてから、或は其の犯罪の種類に依りましては、一生涯、又一定年間選擧權を付與して居なかつたのでありまするが、此の點に付きましても、刑の執行中は參政權を付與しないことは當然でありまするが、刑の執行を終りました場合に於きましては、是は寧ろ一般國民と同樣に、選擧權を付與することが、新時代の考から申しまして適切であると云ふ所で之を擴張致したのであります、而して衆議院に與へざるものを參議院に進んで廣く與へることは行過ぎだと云ふ點は、確かに能く考慮しなければならぬ問題でございますが、政府は衆議院議員選擧法改正の最近の機會に於きまして、是等の制限は撤廢を致したいと云ふことに方針が決つて居りますので、恐らく遲くも來るべき通常議會迄には、參議院議員の選擧權の擴張と同一歩調のものを提案致しまして、其の實施を致したいと云ふやうに考へて居りますので、此の點は近く改正をされると云ふやうに御了承を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=24
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025・松平親義
○子爵松平親義君 戰爭の爲に罹災して住居を持たなくなつた者とか、或は特に救護を受けるやうな事情を生じて來た者に對しては、さう云ふやうな制限を附けることは面白くない、さう云ふ人は政治能力に於ては何等變つたものはないのだから、さう云ふ者に對しては矢張り選擧權を與へ、被選擧權を與へた方が宜いのだと云ふ御話でありました、誠にさうであると私も思ひますが、併しさう云ふ事柄であるならば、それは何も此の選擧法其のものの中に謳つて置く必要はないので、何かそれは特例を此の際設けて置けば宜いことではないか、原則的に考へる必要は私はないと思ふのであります、それから將來は衆議院の方の選擧に於ても斯う云ふ風にするのだから、其の邊に於て調整が十分出來ると思ふと云ふ御話でありました、併しながら參議院と衆議院とは昨日來の御意見に依つても、自ら其處に差異があるのでありますから、參議院と云ふものには、選擧權、又被選擧權を衆議院以上に其處に制限を設けると云ふことは、私は十分に考へられることであると思ふのであります、併し一應只今の内務大臣の御答辯は了承を致しました、それから尚第四條と、それから附則の第二條第二項に關係したことでありますが、皇族及び華族の戸主に對しては選擧權を特に與へると云ふことになつて居るのであります、併し此の皇族に對して選擧權を與へると云ふことは、是は誠に私變に思ふのであります、理窟から考へますと、今度の新憲法の精神に於ては、皇族にも選擧權を與へると云ふことは筋は通るやうに考へますが、又考へやうに依ると、國の象徴に密接な關係のある方々、斯う云ふ者は政黨政派から公正な立場にしよつちゆうおいでにならなければならぬ、丁度此の七條に、裁判官とか、檢察官、或は會計檢査官と云つたやうな者、是は被選擧權を有しない、詰り斯う云ふ者は政治の動きから超然として居らなければならぬと云ふ、其の考へ方を徹底するならば、矢張り皇族と云ふものも、是は選擧權も被選擧權も與へないと云ふことが、寧ろ常識上考へて宜いことではないかと思ふのであります、斯う云ふ方方が政黨の中に入られると云ふやうなことは、矢張り國の象徴と密接の關係のある方が相爭ふと云ふやうなことは面白くないのぢやないかと思ひますが、其の邊に付きましてはどう云ふ御考へでありますか、伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=25
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026・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 新憲法の趣旨に依りまして、新たに皇族に對しましては選擧權を有することに致しますことが適當であると云ふ見解で、此のやうな立案を致した次第であります、御話の如く、一國の象徴に最も近い所に居られる方に付きまして、十分考慮しなければならぬことでありまするが、選擧權、被選擧權を否認しますことは、寧ろ適當ではないと云ふやうに考へて居る次第であります、天皇及び攝政に付きましては、是は新憲法の趣旨から申しまして、選擧に係はらるることは適當でないと考へまするが、選擧權を行使され、被選擧權を有せらるることは、寧ろ新憲法の下に於きましては、皇族に於きましても當然のことであると云ふやうに政府は考へまして、之を立案致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=26
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027・松平親義
○子爵松平親義君 どうもはつきり伺へないのであります、此の第七條に、裁判官と云つた者も被選擧權を有しないと云ふことが書いてあります、又警察官吏、收税官吏、さう云つた者も被選擧權を有しない、是は當然なことであると思ふのでありまして、是から考へて行くと、矢張り皇族も第七條の精神と同じに、是は政治に超然として居られると云ふことが、私は寧ろ正しい考へ方ぢやないかと思ふのであります、もう一遍此の邊に付きまして、大臣の御考がどうして此の皇族に與へるかと云ふことの積極的な理由を伺ふことが出來れば仕合せに思ふのであります、それから序に伺つて置きたいのは、此の第七條にある制限でありますが、現在の衆議院の選擧法に於きましては、宮内官と云ふ者が此處に一つ入つて居るのでありますが、今度の參議院法に依りましては、此の宮内官を此處から除いてしまつてあるのでありますが、宮内官と云ふ者は今後に於ては被選擧權を有する、と云ふ風に解釋して宜しいのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=27
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028・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 新憲法の趣旨と致しましては、國民には等しく選擧權被選擧權を與へるのが趣旨でありますので、國民に對しまして、特別の制限を設けない方が、寧ろ適當であると云ふやうに考へて居る次第であります、尚草案の第七條の點でありまするが、是は是等の官吏の職務上の關係から、權力を行使すると云ふやうな關係にあります者は、被選擧權を與へざることが適當であると云ふ趣旨で、此の規定を設けて居るのでありまして、只今の皇族の場合とは自ら性質の違つた規定であると思ふのであります、それから尚御尋の宮内官は、別に制限を致さぬことに致しましたので、此の草案に於きましては、被選擧權を有することに相成る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=28
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029・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) もう宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=29
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030・松平親義
○子爵松平親義君 もう一遍伺つて置きますが、此の參議院の選擧法が施行になります時期が何時になりますか、それに依りましては、現在の貴族院議員と、それから參議院議員とが相兼ぬると云ふ形が出て來るのぢやないかと云ふ感じがしますが、さう云ふ參議院議員と貴族院議員が相兼ぬると云ふことは差支へないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=30
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031・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 新憲法の趣旨に依りますと、それ等は相兼ねることを得ないことが明瞭でございます、或は參議院議員の選擧が五月三日以前に行はれると思ふのでありますが、其の場合に於きましても、特に任期の起算、即ち職務を開始するのが、五月三日以後に相成つて居りまして、そこに實際上兼職をすることは出來ない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=31
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032・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 總理大臣が見えましたから、大河内君一つ御質問願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=32
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033・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 私は總理大臣に伺ふ前に、植原國務大臣に一つ伺つて置く必要があるから伺ひますが、植原國務大臣は、國務大臣として憲法の方に特に造詣の深い、殊に又多年在野政治家として、選擧のことには表裏とも御通曉の御方であります、それで今日の時勢、内外色々面倒のあることは能く承知して居ります、なかなかさう率直にもの事も動かないことも能く分つて居りますけれども、併し一應さう云ふことはよく私共分つて‥‥‥‥、ですから、さう其の理窟詰めのことは伺ふ考はない、寧ろ實情どう云ふ風に行くだらうかと云ふことを伺ひたい、先日植原國務大臣の御話では、全國選出議員の場合には、大勢のことだから買收も行はれなければ、戸別訪問もやつても何にもならぬ、さう云ふことは行はれるやうなことはない、成る程如何にも御尤もで流石に我々のやうな、ちつともさう云ふことに知識のないものに、新しい知識を與へられて蒙を啓いて戴いたのでありますが、私が考へて見ますと、どうも此の運動方法が、選擧運動が、此の全國選出議員になる人も出ませう、それぢや其の運動方法はどう云ふ形を執るか、演説會一點張で行くか、是も全國を演説して歩くことも出來ないし、どう云ふ運動方法になつて行くか、是は此の取締を決める、或はそれに對する事務を決める上に於て、さう云ふことは頭に置いておく必要もあるし、政府に於ても御研究になつたと思ふ、其の點で植原國務大臣は、殊に斯う云ふ實際の事情を御通曉でございますから、此の參議院議員の新しい選擧法に依りまして、選擧運動の形式がどう云ふ風に動いて行くだらうかと云ふ御見込を露骨に一つ伺ひたい、私は決して理論的なことを伺つて居る譯ぢやない、實際どんな風になるだらうかと云ふことを御見込を伺へば宜い、それから次に全國選出議員であります、之に付きましては先日來二樣の御意見が出て居る、全國選出議員であるから國士を選ぶことが出來る、地方で偉い人ばかりでなく、全國的に偉い、偉い傑出した人を出すことが出來る、それが長所であると云ふ一つの見方、そんなことを云つても總てのものが良いか惡いか分る譯ぢやないから、唯有名な人が出る、極端なことを言へば、常陸山や雲右衞門のやうな人が出るか分らないと云ふやうな御議論もあつた、大體如何でございませうか、植原大臣の熟練した御見解から言つて、此の全國選出議員と云ふやうな制度に依つて、善い分子が餘計出るでせうか、又惡いと云つちやをかしいが、不適任な分子が餘計出るやうでありますか、此の點は我々甚だ迷つて居る、一つ蒙を啓いて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=33
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034・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 大河内子爵から大變御面倒な御質問を受けまして、頗る恐縮致し居る譯であります、世界を通じて賢明なるものは政治上の豫言をすべからずと云ふことが原則であると思ひます、それにも拘らず、まだ日本でテストしたことのない選擧法に對して、其の見込がどうなるだらうかと云ふやうなことは、神ならぬ人間として、注意深い人間ならば答へないと云ふことが一番賢明かのやうにも思ひますが、昨日來地方選出議員と全國選出議員との間に色々の御意見がありました、政府と致しては矢張り議參院の性質に鑑みて、地方選出議員と全國選出議員と二本建に致した方が、參議院の構成に適ふ議院が出來るだらうと云ふ見解の下に、此の法案を提出したことは、内務大臣初め私共も出來るだけ御説明を申したやうな次第であります、そこで只今大河内子爵の御質問は、全國選擧區の選擧の場合に、實際どう云ふことが豫想されるかと云ふことの御質問であります、勿論政治的將來のことを豫言することは避けなければならぬことでありまするけれども、責任を以て一つの立法を致す以上は、其の結論に對して誤りであるか誤りでないかは將來のことで申上げることは出來ませぬが、少くも提案者の立場から致しまして、相當自分だけに其の説明が出來ることでなければ提案出來ないのでありますから、之に對して私がどう云ふ豫測を持つて居るかと云ふことを、私の考として申上げることを御許を願ひたいのであります、固より全國の選擧に至りました時には、如何なる日本で有名な人でも、全國民に名も知れたり、其の實力が分つて居ると云ふ人は乏しからうと思ひます、さう云ふ結果、或は子供迄知つて居る双葉山や雲右衞門のやうな人が出はせぬかと云ふことを懸念すると云ふ御説も御尤もだと思ひますが、私は第一に、全國選擧民の問題を考へる時に、まだ幼稚ではありまするが、第一日本の言論機關を信頼するものであります、地方選出の議員に付きましては、地方の新聞が相當に書きませうが、いざ參議院の選擧になりまして、全國を一選擧區としての選擧が始まる場合に於きましては、今日の言論機關は相當其の個人個人に對して正しい批判をするではなからうか、是は餘程全國民を導く力になる、其の點に於きまして、よもや双葉山や或は浪花節語りが出ると云ふやうなことはなからう、斯う一つ信じて居ります、もう一つは、全國大選擧區の場合に何が一番有力かと言へば、私は政黨が一番有力であると信じて居ります、で、其の點に付きましては、今迄の貴族院の多額議員の選擧や、色色貴族院の方で直接選擧の御經驗のない方が御考になるとは、少しく違つて居るのぢやないか、私共のやうな實際多年選擧の經驗を持つて居る者から考へますれば、何としても全國的に統一した所の一つの宣傳機關、或は津々浦浦の人迄も細かに手の屆くやうな機關を持つて居るものは、政黨であります、そこで政黨が必ず參議院の選擧に當つては、全國に對して一番信頼を得られる、全國民の投票を贏ると云ふ人を選ぶ爲に、政黨は可なり其の人選に苦心すると思ひます、從つて其の政黨で推薦する時には、地方的に推薦する人よりは、全國的に推薦する人に對して愼重な考慮を拂ふと共に、全國民の前に之を推薦候補として押出す場合に、全國民が是ならばと努めて納得し得る人を選ぶやうになるから、相當宜しい人選が出來はせぬかと、斯樣に考へて居ります、又實際我々は、職能代表と云ふものが議會制度の上に宜しいものか惡いものか、私はまだ判斷附きませぬ、イタリーに於て嘗て是が行はれたことは、惡い結果を持つて居ります、英米に於てはまだ職能代表と云ふものが宜しいものだと政治的に判斷されて居りませぬ、故に職能代表と云ふものが宜いか惡いかは、政治的にまだ私の判斷として結論に到達するだけに至つて居りませぬ、けれども、或特殊な職業に於て優れて居ります者は、どの方面に於ても私は優れて居ると思ひます、さう云ふ場合に全國の商工會議所と云ふやうなものは、成るべく商工業界に於ける信望の厚い人を出さうとして、色色御相談になつて、此の方面からも推薦されると思ひます、此の推薦が誰から見ましても立派な人である、是は過去の人でありまするけれども、亡くなられた例へば澁澤榮一さんの如き人が商工界から推薦されるとすると、頼まなんでも此の運動や之に對して共鳴する人は、全國に可なり多からうと思ひます、さう云ふ方面からも可なり立派な人が私は出ると思ひます、それから又先刻作間君が醫者は六萬人しかないから、それぢや職能代表でないぢやないかと云ふ御議論がありましたが、私は醫者であるからと言うて醫者だけの投票を得る積りならば、是は選擧にならぬと思ひます、それ故に醫者の方でも非常に全國に名聲のある醫者の方を、矢張り醫者の方面からも立派な參議院を作つて國政を批判することが必要だと御考になりまして、全國の醫師會が擧つて推薦する場合に於きましては、其の醫者に附隨して居る所の澤山の患者、澤山の其の人の人格や見識に對して尊敬して居る人がありますから、必ずや是等の人は相當當選圈内に入るべき投票を得られるものと思ひます、辯護士會にしても亦然り、それから特殊な技能、假に科學者でありますが、其の科學者でも例へば日本に於てエヂソンの如き立派な人があると、それを科學者が推薦にすると云ふ、さう云ふ場合に於ては私は可なり新聞が之に共鳴し、之に對して之を支持するばかりでなく、全國の輿論は自ら之に向つて投票するやうになると思ひます、又特別な事業の成功者、是も全國に鳴り亙るやうな人、假令さう云ふ人がなくても、其の道に練達堪能の人が全國に亙つて、あの人は科學界に於て立派な人だ、ああ云ふ人を政治上に出すことが必要だと云ふことになりますれば、其の人は全國的にかなり支持を受けると思ひます、さう云ふやうな關係で、特に職能代表と云ふ窮屈な法律上の規定を詳しく作らないでも、其の道に練達堪能な人で、全國に名聲を博して居るやうな人を各政黨が拾ひ、各商工業者、實業家、技術家、學者、醫師、辯護士會と、斯う云ふものが拾ひ集めてそれが推薦する、それが全國に亙つて之を支持すると云ふ場合に於ては、餘程全國的に宜い資格のある人が選出出來るのではなからうか、此の點に於て地方の選出する議員と矢張り形の違つた人、素質の違つた人が出ると云ふやうに私共は考へて居ります、勿論之を私が考へまするには、相當高く日本の言論機關を評價致します、民主主義の下に於て、今日の新聞記者の方も責任を持つて、之が第一の日本の參議院の選擧であると云ふ場合に、まさか無責任な行動をなさるまい、可なり強い批判をなさつて下さるだらう、其の、批判は全國津々浦々に傳つて可なり好い國民の投票を得るのぢやないか、さう云ふ場合に、三千萬の人に向つて戸別訪問するなどと云ふことは思ひも寄らざること、金の力で之を動かさうなどと云ふことは想像も附かないこと、大河内子爵も御承知でありませうが、金の力はあるやうで、案外ないもので、今のやうな選擧でない、もつと直接國税十圓位の時の衆議院の選擧に、其の當時、今の金額に致しましたならば三千萬圓になるか、三百萬圓になるか知らぬが、馬越恭平氏が三十五萬圓使つて、岡山縣で選擧を爭つたけれども、見事に敗北したと云ふやうな例も日本の政治史上にあることで、此の參議院の選擧に、全國だから大いに特別な理由で金が儲かつて居るから、之をばら撒いて一つやらうと云ふやうなことは、私は決して成功しないと思ふ、それ迄日本の國民を見くびらなくても宜いぢやないかと思ひます、さうして全國に向つて演説するとか、全國に向つて宣傳をすることは出來ますまいが、私は少くも大都會に於ては新聞社が催して、さうして全國に向つて立つて居りまする候補者の政見を聽くとか、其の人物批評をするとか云ふやうな計畫が自ら出て來て、ポスターに依らず宣傳ビラに依らずして、相當言論機關が成るべく國民に正しい批判を求める爲に、それ等の候補者を集めて其の政見を聽くとか云ふやうなことも出來ると思ひます、主として言論機關を通じて選擧すると云ふことと、其の人の平素の社會的の信用と、其の人の徳望に依つて、其の同志が全國に亙る假令顔を見たことがなくも、大概其の道の人は判斷が出來るものでありますから、醫師は醫師、辯護士は辯護士、實業家は實業家、學者は學者、有らゆる方面に於て相當の判斷が下されるではなからうか、勿論初めてのことで分りませぬけれども、左樣な點に於て、地方選擧と全國選擧と相當隔りがあつて、先づ參議院に對して、地方的の方よりは全國的の方の方が、間違へばそつがあるかも知れませぬが、まあ大體に於て御立派な方が得られるではなからうかと考へて居る次第であります、斯樣に申上げることは、唯私の愚見でありますが、折角の御尋ねでありますから、御參考迄に申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=34
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035・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 大變明朗な、又能く分り易く御盡し下さいましたことは、我々何も選擧などに知識も經驗もない者にも、大變能く理解をされまして誠に有難うございます、殊に言論機關が之に協力されると云ふやうなことは成る程是非必要なことで、是はちよつと私も氣が附きませぬでしたが、討論の方法の如きものは最も好い方法だ、是等の方法を色々利用して一度やつて見る、結果は兎に角として、國民は必ず國家の參議院として適當な人に對して投票するだけの、それだけの忠誠の念は持つて居る、それだけの心はあるものだ、斯う前提として進むべきものと私も思ひます、それで其の點は深く植原國務大臣の只今の御説明に對して感謝致します、それで次に、それを前提と致しました上で總理大臣に御尋を致したい、先日來、總理大臣此處においでございませぬでしたが、昨日以來の論議が一つの問題に集中されたのは何かと云ふと、參議院議員と云ふものは練熟耐久の士を以て出さなければならぬが、斯う云つた選擧法で出來るのだらうか、見たところどうも衆議院と餘り變つても居ないやうだし、年齡は三十だと云ふ、今迄のとちつとも變らない、今迄は色々選擧權、被選擧權の制限があつたから、そんなことで宜いが、俄かにさうでないのに、同じやうに採入れると云ふやうなことで、一向參議院らしい人を選擧するやうな制度が此の上に現れて居ない、之を何とかしたらどうだと云ふことが昨日來非常に問題になつて、そして實は政府の方も十分な御滿足なことでもないらしい、それから、聽いた我我はちつとも實は確信がない、制度の上から、是は制度の上からで實際は別の話ですが、確信が附かない、それで實は其の點非常に、我々まだ五里霧中にある状態なんでございますが、政府の方はそれと致しまして其の方は伺ひませぬが、段々皆樣方の質問應答の工合を伺つて見ますると云ふと、是は此の參議院議員の選出方法と云ふものは容易なことぢやない、それで作間委員に對する御答に依つても、十萬票位取らなければちよつと當選はむづかしい、安全を云へば一方は十八萬、一方は二十八萬と云ふやうなことです、さあさうなると云ふと、是はどうしても團體の力を借りなければ仕事は出來ない、唯飛び出して見たところで、どうすることも出來ない、又團體の力を借りないで個人で出て見たところで、必ずそれは後援團が出來て來る、それでなければやれるものでありませぬ、僅か百人か二百人の選擧民の所なら自分が飛び出して行つてやつても人が皆知つて居りますからして、東京ぢや誰が偉いかと云ふやうなことは分つて居るからそれで出て來ますけれども、斯う十八萬票も二十八萬票も取らなければならぬのでは、必ず團體の力に依る外仕方がない、而して團體の力に依ると云ふことになりますと、何に依るか、先程以來職能代表の話が出ましたが、私も職能代表は無理だと思ひます、茲に憲法にちやんと書いてある通り、「公務員は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」若し之を職能代表にしておやりになつたら農業會から出た者は農業者の代表になつてしまふ、商工業から出た者は商工業者の代表になつてしまふ、勞働組合から出た者は勞働組合の代表になつてしまふ、それだけのことで全部の代表者にならない、法律と云ふものは、私は法律を存じませぬからそれは何とも申しませぬけれども、全體の奉仕者たる性質とはまるで違つて來る、若し各方面の長老が推されて出ると云ふことは、是は好ましいことであります、さうしてそれぢやさう云ふ勞働組合なり、商工會議所なり、或は農會なりが此の選擧の中に投じて來ることが好いか惡いか、推薦する位はそれで宜いけれども、投じて來るのは好いか惡いか、私は是は好くないことと思ひます、ああ云ふ機關は何處迄も專門家として立つべきで、農でも商工でも勞働でも何でも、勤勞の方でも、それは專門家と云ふ立場から何處迄も經濟團體として行くべきものである、是が政爭の中に飛び込んで來ると云ふやうなことは怪しからぬことである、現に軍閥が政治に干與した爲に日本を亡ぼし、引倒して居る、今でも閥は起り掛けて居る、是は皆樣御承知でせう、軍閥は倒れたけれども、勞農閥が起り掛けて居る、若し下手に職能代表でもやらうものなら參議院は勞農代表の巣になつてしまふ、ストライキのリーダーが一番先に飛び出して來る、危いことは、さう云ふことはすべきことでない、勞働組合なり農會なりは經濟團體として何處迄も立つべきものである、下手をやらうものなら衆議院の方が右に引張り、參議院は左に引張るやうなことが起り掛けて居る、それぢや團體として何が殘るかと云ふと好むと好まざるとに拘らず、政黨の力に依るより仕方がない、是は植原大臣が度々御力説になり、昨日小山委員からもさう云ふ御話がありました、私も全然之に共鳴する者であります、此の時代に、斯う云ふ大きな選擧法を作つて置いて政黨を排撃したら何をやるか、後は誰がやる、やる者がない、それから經濟界の色々な團體を政爭に導いて行くと云ふことは以ての外で、排撃しなければならぬ、個人で飛び出して見ても出來るものぢやない、好むと好まざるに拘らず政黨に據つて出る外に仕方がない、仕方がないではない、さうすべきだと私は思ふ、それで是は自由黨總裁としての吉田さんに伺ふのぢやなく、自由黨がどうなさいますとか、さう云ふことを伺ふのでない、併し參議院の選擧法を提案された以上は、之に對して政黨がどう云ふ風に動くものであるかと云ふことは是は御研究になつて置かなければならぬことだと思ふ、又御研究になつたことと信ずるのであります、それで私は伺ふのでありますが、私は政黨が好むと好まざるとに拘らず參議院の選擧に對しては、良くするも、建てようと伏せようと俺の責任だ、政黨の奮發一つでどうにも行くものであると云ふだけの重大の責任を政黨が感じなければならぬ、是でなければ政黨たる資格は私はないと思ふ、外の參與團體や何か、そんなものに行くべきものでない、政黨としてどこ迄も背負つて立つ、立派な參議院議員を竝べて出してやると云ふだけのことは政黨として考へられなければならぬことだと思ふ、それで其の點に付て總理は如何に御考になりますか、是は決して政黨の總裁として伺ふのではないことは呉々も申上げる、憲法の精神から云つて、私は斯うあるべきものだらうと思ふから、それで伺ふのです、それで果してさうだと云ふことであれば、今日の政黨をどう御覽になるか、政黨は果して參議院の議員たるに適するだけの人を鑑別するだけの明ありや否や、或は明があつたところで、外の不純な勢力から推されて、或は政黨に金を出して見たり、或は色々な縁故情實の者を連れて來て見たりして、さうして甚だしきは能く世間で謂ふやうに、衆議院で志を得なかつた人を連れて來て見たりと云ふやうなことをして、參議院の性質を打壞すやうなことがあつては大變だ、參議院は人で行くものだ、植原國務大臣の御話になつた通りだ、一時衆議院がずつと進んで來た時に、ちよつと斯う云ふことがあるよと、斯う注意するだけの役目だ、それ以上はすべきでない、此の間も御話のやうに、政黨と云ふものは惡いことをするものだから、其の時にこつちで叩いてやる、これは大間違ひだ、參議院はそんなことではどうなる、參議院はどこ迄も政黨の親友になり、相依り相扶けて行くべきものだ、そんな裁判官のやうな冷酷な態度を執るべきでない、無論長く貴族院が昔やつたやうに、政黨をまるで逆賊扱ひ、逆賊扱ひと言つてはひどいか、異端者扱ひにしたのは實に怪しからぬことだ、これは參議院としてはどこ迄も政黨の親友として、さうして政黨中心、總て政治の中心は政黨にあると云ふことを確立することに向つて力を注がなければなりませぬが、さあ、さう云ふ風な人を出すだけの、政黨が爲すやうに持つて行けるだらうか、どうだらうか、是は私は決して今の政黨が良いとか、惡いとか言ふのではありませぬ、全然政黨に付ては知識がない人間でありますが、併し吉田總理が此の案を御提案になるに付ては、さう云ふ實情を無論御研究になつたと思ひますが、其の點如何に御考になつて居りますか、それを伺ひます、それから假令さう云ふ風に政黨が希望したところで、政黨が力がなければ駄目だ、政黨が力がなくて、赤に押されて見たり、或はフアツシヨに押されて見たり、或は妙な不純な勢力に押されて見たりするやうなことでは駄目だ、背負つて立つ、斯う云ふ案を出した以上、是は好むと好まざるとに拘らず政黨が背負はなければならぬ、政黨が背負はなければならぬ以上は、どこ迄も政黨がそれだけの力を持たなければならぬ、果してそれだけの力があると御認めになりますか、私は實は伺ひたい、それで念の爲に御斷り申して置きますが、憲法の改正の問題としては、それは政黨以外の人から出す、或は勅選で出すと云ふ風なことも一つの方法だらうと思ふ、それで私は寧ろ此の憲法は今の日本の民度には良過ぎます、民主主義が十分理解して居られない此の日本に、斯う云ふやうな良い憲法を引出したのは、まるで子供に正宗の名刀を持たしたやうなものですよと云ふことを繰返し繰返し述べて居る、併し憲法が斯う決つてしまつた以上、是は仕樣がない、何でも彼でも、正宗の刀を否でも應でも振り廻さなければなりませぬ、さう云ふ意味で御尋ねするのです、今の憲法の下では、憲法が別ならそれは別の話、今の憲法の下では、好むと好まざるとに拘らず、政黨の責任と云ふものは非常に重いものと思ひますから、此の點に付て總理の御考を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=35
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036・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 大河内子爵に御答を申します、政黨としまして、參議院の地位、權限、性質等に考へて見て、政黨として無論之を最も重要なる機關として考へるだらうと思ひます、從つて其の議員の選擧に付ては、政黨として最も重きを置いて考へ、又其の人選に付て、輕々しく人選をするが如きことは、政黨の利害の上から考へて見て出來ないことではないか、其の人選宜しきを得ず、其の顔觸れが宜しきを得ないと云ふことになれば、自然政黨の信用に關係致しまするから、議員の選出に付ては、或は議員候補の銓衡に付きましては、政黨として十分愼重に考へるであらうと私は考へるのであります、又政府としても、或は自由黨の總裁と致しましても、斯くありたいと私は考へ、又希望するのでありますが、實際の動きに付てどうであるか、現在の政黨が如何と云ふやうなことに付きましては、私が御答へ致すよりは植原國務大臣なり、齋藤國務大臣なり、政黨に經驗のある國務大臣に對して御質問を願ひたいと思ひますが、私は唯常識と希望とから考へて見まして、現在の政黨と雖も、參議院の議員候補の顔觸れに付ては、十分政黨の利害、或は信用、名譽の上から考へて見て、愼重に銓衡致すであらうと考へもし、又希望も致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=36
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037・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 それでは能く御趣旨の次第は分りました、私の言ふことは能く御分り下すつて、其の線に向つて御進み下さることと存じます、誠に其の點は喜んで居ります、次に伺ひたいことは、それでは政黨としては如何なる銓衡の方法を御執りになるか、例へば政黨として相當の銓衡委員を設けて、さうして相當の人を出すと云ふこともあるでありませう、又外に色々な方法もあらうと思ひます、此のことは政黨自身のことでありまして、さうして此處で伺ふのは甚だ宜くないかとも存じますけれども、併し實際の動きとして、斯う云ふ風にでもやつたら宜からうぢやないかと云ふやうな御氣附の所でもございましたらば承つて置きたいと思ひます、尚只今總理の仰しやいましたやうに、齋藤、植原兩大臣から、尚能く聽くやうにと云ふ御話がございましたから、只今の總理の御話に付きまして、選擧に於て最も御經驗も深い、又今日政界の權威者であられる所の兩大臣から尚御説を伺ふことを得れば、大變仕合せでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=37
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038・齋藤隆夫
○國務大臣(齋藤隆夫君) 大河内さんからして色々御説を承りましたが、先づ最初に一言致して置きたいことがありまするが、今度の參議院議員選擧法でありまするが、是はもう既に十分御承知の通りに、憲法の條文がああ云ふ風に決つて居りまするからして、此の線に沿うて立案するより外に途がないのであります、さうして憲法の條文は衆議院も參議院も、共に全國民を代表する議員を以て組織すると云ふやうなことになつて居りまして、是は普通選擧に依つて全國民が選擧するのでありまして、是以外に出ることは出來ないのであります、運用方法と致しましては、なかなか是は複雜して居ります、只今政黨の御話がありましたが、政黨もまだ迚も我々の理想のやうに發達して居りませぬ、けれども、結局政黨政治にならねばならぬのであります、民主政治は即ち政黨政治でありますから、好むと好まざるとに拘らず政黨政治になります、民主政治の本家本元でありまする所のアメリカでもイギリスでも、御承知の通りの政黨政治でありまして、我々の目指す所も矢張り其處にあるのであります、併し今日の處、まだなかなか日本の政黨も其處迄は發達して居りませぬのみならず、日本の選擧界も非常に複雜して居りまして、政黨だけの勢力に依つて選擧界を支配することが出來ないのであります、是は現に此の春の選擧を見ましても、政黨に所屬せられる所の多數の議員が當選して居りますが、是が即ち爭ふことの出來ない證據であります、今度の參議院議員の選擧に當りましては、政黨は政黨として最善の努力をするでありませう、即ち政黨の機關を通して最善の候補者を選定するのでありまするが、此の候補者が悉く當選するに決つたことはありませぬ、政黨以外の候補者も、政黨の候補者に優る所の候補者が出て來るかも知れませぬからして、どの候補者が良いかと云ふことは、是は國民が判斷するより外にないのでありまするからして、政黨としては十分に最善の努力をするでありませうが、衆議院に限らず、參議院に限らず、今度の日本の選擧界は政黨のみに依つて占領されると思ひますことは、まだまだ私は時期が早いと思ひます、併し重ねて申しまするが、我我はそれを目指して進まねばなりませぬ、從つて今度の選擧法を施行するに當りまして、參議院の選擧を行ひまするに當りましても、結果から見まするならば、政黨に所屬する者、政黨に所屬せざる者、まちまちの當選者が現れて來るであらうことと思ひます、それからして序に全國一選擧區を背景として現れまする所の候補者は、一體どう云ふやうな工合に運動をするのであるかと申しますると云ふと、是は全國一選擧區と云うた處で、全國に亙つて運動をすることが出來ないのは、是は當り前でありまして、例へば麹町に居られる所の人が全國的の候補者となつて立たれる時に、どう云ふ工合に運動をするか、詰り大體麹町を第一の根據と致します、自分の居る所に近い所を根據として、段々と周圍の地域に向つて運動せられるだらうと思ひます、併し其の運動は全國に跨つて運動することは出來ませぬからして、何ぼ運動せられた處で、大體東京都以内に限られて居つて、東京都を外にして茨城縣へ行つたり、神奈川縣へ行つたり、群馬縣へ行つて運動せられるやうな餘裕はありませぬ、況や長崎へ行つたり、北海道へ行つて運動することは出來ないのでありますからして、結局私の見る所に依りますれば、全國的の候補者も、或は地方的の候補者も、運動せられると云ふことは同じだらうと思ひます、唯茲に餘裕のあるのは、全國的の候補者は東京都内に於て運動せられるけれども、其の投票が東京都以外からして幾ら集つて來るか分りませぬ、集つて來た所が是は極めて僅かであつて九牛の一毛に過ぎませぬ、それに依つて當落を決定すると云ふやうなことは私恐らくなからうと思ひます、結局全國一選擧區の候補者も地方的の候補者も運動する區域は殆ど同じことだらうと思ひます、茲に於て此の二つの選擧區が如何に働くかと云ふことは事實に於て既に證據立てられて來るだらうと思ひます、又實際からして見ますると、どうも漠たる全國一選擧區の候補者になるよりか大多數の人はもう府縣單位の候補者になられるだらうと思ひます、それが投票の上に於きましても選擧の上に於きましても比較的確實でありまするからして、其の方の候補者が多くして、全國的の候補者と云ふものは私は誠に少いだらうと思ひます、之に依つて全國的に知名の人が出られるか出られないかと云ふことは、是は其の時の模樣に依つて決るでありませうが、全國的であるからと言つて必ずしも立派な人が當選する、或は地方的であるからと言つて比較的詰らぬ人が當選すると云ふやうな結果は私は出て來ないだらうと思ひます、斯う云ふことでありますからして、政黨に關する御尋に付きましては、まだまだ日本は政黨は未熟でありまするからして、段々と良く政黨を拵へまして政黨政治の實を擧げたいと、斯う云ふ我々は希望を以ちまして政界に處して居るやうな次第であります、之を御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=38
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039・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 大河内子爵に御答へ致します、地方に出る參議院議員の候補者と、私は全國的の候補者とは自ら違ふと思ひます、地方に關係のありますはつきりとしたまあ好い言葉でないかも知れぬが、地盤を持つて居ると思はれる方は地方を選擇しませう、其の以外にも私は全國的に出て國家の爲に働かうと云ふ方が相當あらうと思ひます、又政黨の方から申しますれば、其の場合となつて見なければ分りませぬけれども、相當有力な方、何れの方面から見ましても有力な方であり全國的の名聲もある、さうして政治的の見識且經驗、練達堪能な士であるといふやうな方を政黨と致しては成るべくお勸めして出て戴くと云ふことになると思ひます、さうしなければ政黨も將來の發達を期することも出來ないし、參議院の機能をも十分發揮せしむることは出來ない、齋藤君の申される通り、今日の日本の政黨は未熟であります、決して私共の理想の範圍に達して居るものでありませぬけれども、兎に角左樣に申して捨てて置く譯には行かない現實は現實と致しまして、此の現實の有らゆる方面に現はれる社會の實相を捉へて、さうして一番政黨の伸び得る途、言葉を換へて言へば、政黨の伸び得る途と言ひましたならば、過去の政黨に囚はれて居る方は政黨に野心の爲に投じられるでありませうけれども、私共左樣に考へて居りませぬ、政黨は自分の國家に對する主義、主張を實現する爲に政權を取らなければならないと考へることもありませうけれども、目標とする所は國家國民の爲に活動するものでなければならない、さう云ふ立場から言ひますれば、有らゆる方面に於て私は必ず政黨は、全國的に矢張り此の方ならば一地方に限らず投票を取り得ると思ふやうな方を、御出掛になる方は成るべく政黨に協力して戴く、又さう云ふ方でない方は政黨の方から進んで勸誘して御出掛を願ふ方もあらうと思ひます、又色々の職能的の方面で御推薦する方もありませう、但し其の方が唯醫師會の方或は辯護士會の方で御推薦なすつても、或は實業界の方で御推薦なすつても、其の單獨の力に依つては全國的に投票を集められないと云ふ方は必ず政黨と歩調を合せて、政黨の援助を求める方も出來て來やうと思ひます、又さう云ふ方面の方に對して政黨の方から一手、手を伸べて御後援申せば當選すると云ふやうな方も出やうと思ひます、そこで自ら地方を地盤として立ちます者と、中央を土臺として全國に向つて出る方と、自ら其の時に至つたら區別が立つぢやなからうか、さうして其の立つた中で政黨はどの方面の方であらうとも、立派な方であるならば成るべく其の方と協力して、黨に入る入らないに拘らず、出るやうに努めて行かなければ本當の政治的の勢力を、理想の上に立つて國家の運營に當ることは出來ぬと思ひます、さう云ふやうな結果に必ずなると云ふやうに私は考へて居ります、次に、立ちました序に、先刻作間君から總理に向つての御質問がありましたが、勅選議員は貴族院に功勞があつて出たので、今其の功勞があつた者も、貴族院が新憲法に依つて終るのだから、其の機會に表彰してはどうだとか云ふやうな御意見もあつたやうに思ひますが、(「さうぢやない」と呼ぶ者あり)勅選は其の人の功勞を表彰する意味に於て勅選にされたのではありませぬ、勅選には、銓衡する時に國家に功勞あつた者であると云ふことも考慮は致しますけれども、それよりは寧ろ國政に參與して其の人の持つ練達堪能のお力を國政に現して戴きたい、斯う云ふ意味で勅選の銓衡をするので、勅選を銓衡するのは、其の人の功勞を表彰する意味ではないのでありますから、其の趣意をはつきり御了承を願つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=39
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040・作間耕逸
○作間耕逸君 大河内子爵の御發言が終つてから、午後でも宜しうございます、留保して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=40
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041・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 只今各大臣から大變御丁寧な御答辯で、詰り我々の心配する所と同じことだと云ふことが能く分りました、私はもう本來から政黨は政治の中心でなければいかぬ、健全なる政黨が出來て國民の意思を代表し、さうして是が政治の原動力となれば危險思想なんぞは飛んでしまふ、それで赤などの働く餘地はない、ゼネストなど起りつこない、此の點に於て、どうも國民の自覺が十分でないものだから、政黨がそれ程に、我々が期待する程に行つて居ないのは誠に遺憾です、それに斯う云ふむづかしい憲法をそれに仕掛けたものですから、脊負はしたものですから容易ぢやないと云ふことは能く御察しして居ります、併し何分にも繰返します通り、此の通りの憲法の状態、選擧法の状態では、出來ないながらも全力を注いで之をやるより仕方がなからうと思ひます、只今の御答辯に依りまして、其の點は能へ私も了解が出來ましたから、此の上は十分の實績を御擧げになつて戴きたいと思ひます、是で總理大臣竝に兩大臣に對する質問は止めて置きますが、實は其の間にちよつと私が氣が附いて來たのは、選擧運動の方法が言論機關に依ると云ふことです、是は大變宜いことで、全國一區と云ふことになれば、言論機關が餘程活躍しなければいけまいと思ふ、斯う云ふやうな選擧運動の方法に付きましては、此の際は何ですが、後に選擧運動の所がございますから、其の所へ參りまして又伺ふことに致します、私の質問は是で止めて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=41
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042・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 午後一時三十分開會致します、休憩致します
午後零時三十二分休憩
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午後一時三十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=42
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043・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) それでは開會致します、織田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=43
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044・織田信恒
○子爵織田信恒君 私は先程下條竝に山地委員から御質問になりました年齡の問題に關聯致しまして御伺ひ致したいと思ふのであります、無論重複を避けまして、今迄の御質問等で觸れて居らなかつた點だけを御伺ひ致す積りで居ります、此の年齡の問題は、今囘の參議院法を審議するに當つては愼重に審議されねばならない重要な點だらうと私は思つて居るのでございます、先づ之を伺ひます前に、私の考へて居りまする質問を致しまする態度に付て申上げるのでありまするが、此の參議院法と此の度の新憲法との關係を考へて見ますると、新憲法に於きましては第四十三條に‥‥四十三條かと思ひましたが、第四十三條に於て、衆議院、參議院兩方に通じての枠を一つ嵌めて居る譯であります、處が此の參議院の構成、其の他の性能に付きましては、他の條章と云ふものが最初から衆議院と差別的な、不平等的な條章がそこに澤山あるのであります、參議院と云ふものが衆議院と異つた性格はそれ以外の條章總てを綜合して考へまして、明確に茲に差別待遇が出來て居るのであります、そこに參議院の異色を發見して來なければいけないのであつて、衆議院の方の附帶決議の中にも特色を見付けて貰ひたいと云ふ注文があそこに付いて居るのであります、そこで私の考へまするのは、第四十三條を、嚴格にあれを解釋しまして、あれにウエートを置きますと、極端に言ふと衆議院と參議院の差別が非常に少くなり、拘束されなくなつて參ります、併しながら參議院と云ふものが衆議院に對しての特色を發揮する他の條章から歸納致しまして、特色を發揮させねばなりませぬ、どうしても第四十三條に對しては歸納的な解釋、歸納的な態度を以て臨むのが穩當であると斯う私思ふのであります、私は法律上のことは能く存じませぬが、第四十三條の解釋は所謂英米法の精神に依つて演繹的でなしに歸納的に、あの條章に歸屬するやうに、實際を中心として考へて行くのが宜い考へ方ではないのか、自然將來此の參議院法が改正されまして、それが憲法違反なりやどうかと云ふ判定は、最高裁判所が今度はするのだらうと思ふのであります、でありまするから此の參議院法と云ふものが將來改正される場面を想像するに付けましても、歸納的な裕りを置きませぬと、其の時憲法違反なりやと云ふ問題と云ふものが非常に議論が紛糾する虞があるのであります、私は其の點に付て將來の爲にも新しい參議院を運營されて行く上に付て、どうしても不便なものを發見されて法律を改正される、其の時には餘り演繹的な從來の歐洲大陸的な解釋よりも、寧ろ英米法的な歸納的な解釋法に依つて憲法違反なりや否やと云ふ判斷を下されるやうにせねば實際の運營が窮屈になつてしまふのぢやないかと思ふのであります、今度の參議院法を御提出になりました政府御當局に於きましても、詰りそこの立場に非常な矛盾があるので非常に御苦心があるのだらうと思ふのであります、私が御質問致します時の氣持と致しましても、演繹的でなしに寧ろ歸納的に見て運營上最も良いのはどうしたら出來るんだらうと云ふやうな、さう云ふやうな氣持で御伺するのが此の參議院法に對する深切な態度ではあるまいかと斯う思ふのでありまして、さう云ふ意味で御伺ひ致しますから、其の點を前以て申上げて置きます、そこで新しく出來まする参議院が衆議院と特色をどうして持たせたら、どう云ふやうにしたらば特色を持たせることが出來るかと云ふことは、矢張り一應四十三條の精神から眺めて見ますると、矢張り被選擧權の‥‥選擧權の方でなく、被選擧權の場面に於て或制限を加へる、斯う云ふ行き方以外に特色を持たせる方法はないのだらう、そこで被選擧權の方面に差別を付けて考へて行くと云ふと、今迄質問者の御議論になりますやうに、此の年齡と云ふものは重要な一つのポイントになると思ふのであります、でありますから、此の年齡と云ふものは唯數字的な簡單なものとして見ないで、茲にもつと熱心に、深切に此の年齡と云ふものを御熟考を願つて置いた方が宜いのぢやないかと思ひます、大體此の參議院法は、運營方面で以つて適當な道を考へて行かねばならいなのぢやないかと、思つて居ります、此の度の原案にもありますやうに、參議院の議員の性格を、半ば以上は地方別に出させる、其の後は全國的に出させる、是は又一つの宜い考へだらうと思ひます、そこで此の地方別に出て來る議員の方々は、年齡が三十と云ふことに致しまして、是は參議院としても、或程度矢張り年の若い人も包容して置くことが、思想的に、將來の參議院と衆議院と結ぶ點から言つても宜しいことだと思ひますから、此の地方的に出て來る年齡を三十として置きますることは、是は必ずしも私惡いことでないと思つて居ります、併し此の地方別に出て來るのはどうしても一般論としましては、矢張り地域代表の性格がそれに認められるのであります、矢張り其の地方々々の利害と云ふものを最も熱心に主張される方が、是等に依つて代表されて來るのだらうと思ひます、其の時に後に殘りました全國的の此の百名の議員と云ふものが、其の意見を、全體の奉仕者と云ふ立場から其の意見を纏めて、以て全般的に廣く之を纏めて行くと云ふ作用が、必ず將來そこに行はれなければならないだらうと思ふのであります、さう云ふやうなことを考へますと、年齡は地域別の方は三十でありましても、全國一般的の年齡は、それは又別に上げて私は宜いのではないか、假に地域別の方は滿三十歳以上としましたならば、全國的の方を四十歳にして、斯う云ふ風にして分けることに於て、却て最初から二つの種類を分けた、詰り全國的と地域的に分けました其の精神に却て添ふのではないか、殊に今迄の御議論を承つて居りますと、審議會等に於ては、四十歳と云ふ數字が最初出て居つたやうであります、是も唯腰だめと言へば腰だめかも知れまぬせが、矢張り常識的の根據から四十歳と云ふことが主張されたのだらうと思ひます、政府御當局も是には十分なる敬意を拂つて、愼重考慮されたと云ふので、此の四十歳と云ふものは必ずしも空漠たる數字ではなく、相當日本の慣習其の他から見た、廣い常識の上に立つた數字が自らそこに初め出たのだらうと思ひます、是は根據のない數字では私はないと思ひます、自然此の四十歳と云ふ數字を、唯無意味に三十歳に全部引下げると云ふことは、果して妥當かどうか、唯此の地域別と、詰り地方別と全國的との二つに議員が分れる、是は日本獨特の新しい制度だと思ひます、其の新しい制度に伴つて年齡も別々に御考になると云ふことは一向差支へないことで、或は其の方が非常に面白い一つの制度を世界に向つて日本が試みると云ふ、劃期的な制度であるまいかと私は考へるのであります、それで矢張り練達堪能の士を求め、又地域的に色々意見が相分れた時に、參議院の内部に於て運營上又全般的に綜合的にそれを纏めて行かれる作用等などを想像して見ますと、全國的の議員の年齡は地方的のものより十歳上げまして四十歳、斯う云ふやうに考へることは私は決して不自然でもなく相當理由が其處にあるものだと思ひます、政府御當局の御意見は如何でありますか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=44
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045・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今御質問になりますに付ての前提と申しますか、態度と云ふ點に付て御述になりましたことに關聯致しまして私の方からも一言申述べて置きたいと思ふのであります、參議院議員の選擧を如何にするか、是は參議院の性格に鑑みまして、衆議院議員とは特質のある者を選ぶ何等かの形式方法を案出すべきものだと考へまして、又世間にも或は職能代表制を採るべし、又適當なる推薦制を考慮すべしと云ふ御意見も段々ございましたので、此の問題は立案に當りましては、十分考慮の上に考慮を重ねた次第であります、而して其の態度と致しましても、職能代表制なり、推薦制なりが憲法の條章に違反をするや否やと云ふやうなことは先づ最初に於ては考へませぬで、適當なる職能代表制、或は推薦制が考案せられまするならば、其の適當なる案が出來ました上で、是は憲法の條章と照し合せまして、其處に牴觸するやうな廉ありと致しますならば、其の所に調整を加へ何とかして職能代表制、推薦制を出來上るやうに考へて行きたいと云ふ態度で、實は立案に際しては其のやうな行き方で考究を進めたのでありますが、先に御説明を申上げましたやうに、職能代表制は色々考案を致しましたが、職能組織の發達が十分でありませぬ我が國に於きましては、結局職能代表制として是ならば宜からうと云ふ案を得ることが出來なかつたのであります、さうして不完全なる職能組織の上に於きまして、強ひて職能代表制を採用すると云ふことに致しますと、新憲法の精神に副はざる點が廣く現はれて參りまして、それは結局に於きまして採用することが出來ないと云ふ結論に達しました次第であります、又推薦制に付きましても、職能代表制と同樣に、色色考案を致して見ましたが、案其のものに内在致して居ります所の缺點がございまして、結局採用が困難であると云ふ結論に達しまして、之を新憲法の精神に照して見ますと、矢張り推薦制は良い案がございませぬので、之を捨てて見ますると、新憲法の精神から見ますと、之を捨てました立法の方がすつきりすると云ふやうな次第でございまして、御尋になりました心持と同樣の心持を持ちまして、何とかして參議院を特色あらしめるやうに努力を致した次第でございます、併し其の努力は結果に於きまして酬ゐられないと云ふやうな結果になりました次第でございます、次に御尋になりました地方選出議員と全國選出議員とに於きまして被選擧資格の年齡に區別を設けてはどうかと云ふ點でございますが、實は此の參議院議員選擧法の立案に當りまして、全國議員、地方議員と云ふ二つに區分を致します以上、選擧の手續等に於きまして或程度の差を設けなければならぬことは當然でございまするが、此の兩者に區別しますに伴ひまして必然的に差別をしなければならぬ取扱は致したのでありまするが、併し態度と致しましては、出來るだけ兩者の議員の取扱は可能の最大限度に於きまして同一に扱ふことが適當であると云ふ政府の見解の下に、總ての立案が其の線に沿うてなされて居ると思ふのであります或は選擧運動及び其の費用に對しまして、又選擧公營の點に付きましても、必要の最小限度の差別扱ひは致して居りまするが、成るべく是は同一にした方が宜しいのではないかといふ見地から此の立案を致して居ります、年齡の點に付きましても、地方議員と全國議員との間に於きまして、被選擧資格に差別を致しますことは適當でなからう、是は一律に扱つた方が宜しいといふ見解を以ちまして之を立案致した次第であります、只今織田子爵から御發言になりました考へ方も確かに成り立ち得る問題だと思ひまするが、政府の立案の態度は只今申しますやうな次第でありまして、從つて年齡の點に於きましては兩者を區別しないといふことに致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=45
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046・織田信恒
○子爵織田信恒君 細々と御説明戴きまして誠に有難うございました、今の年齡の點に付きましては政府の御方針を能く了解致しました、唯私の申上げて居りますのは、政府の御立場も十分分りまするが、私は又運營上の立場からして却て其の方が面白い運營が將來に行はれるのぢやないか、好い結果がそれから生まれるのぢやないかといふ想像に過ぎないのであつて、果して結果がどうなりますかと云ふ自信迄持つて居りませぬので、強ひて申上げることは是以上私には出來ませぬのでありますが、唯どうしても參議院の方の制度は運營と云ふのに重點を置いて考へた方が宜いだらう、それに付てはさつき申しましたやうな差別を付けた方が運營上却て妙味が出て來るのぢやないか、面白い我々の希望して居るやうな結果に近いものが却てその方から出て來るのぢやあるまいかといふ豫想を唯持つて居るのであります、或は是は政府の見解の相違に相成るかと思ひまするので、それ以上の御質問は申上げませぬが、年齡の問題に付ては私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=46
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047・作間耕逸
○作間耕逸君 此の法案と職能代表制との關係に付きまして、内務大臣の、參議院制度として成文の上には採入れなかつたのである、唯運營上實際的技術的には職能代表の趣旨を尊重して之を採入れたのであると云ふ御答辯は一應理解致したのであります、處で然らば此の運營上、實際に於て技術に於て如何樣に御採入になつたかと云ふことの御尋に對しまして植原國務大臣は‥‥‥‥‥‥私は植原國務大臣に御質問申上げたのではないのでありまするが、植原國務相から進んで、それは職業團體の中でも全國的に偉い大人物の候補を立てれば、職業團體の票は勿論其の他の投票も自然に集つて矢張り選出の目的を達するのではないか、斯う云ふ趣旨の御説明があつたのであります、けれども私共の是迄信じて居ります、理解して居ります職能代表と云ふのは、同種の職務、職業にある者が團體的に組合的に其の代表的發言權を參議院に得る爲に、或は代表的發言權を參議院に得せしむる爲に其の團體、組合だけで選擧上有效なる活動が爲し得らるる關係を指して居るのであります、全國的に社會的に大人物を立ててそれで投票が自然に集ると云ふことであるならば、それは何も職業關係の問題ぢやない、特定の職業人たることを要しない、誰でもさう云ふ人物を候補に立てれば當選の目的は達し得るのであります、處が若し職業團體或は職業組合中にそれに適當なる人物が見出だされなかつたとしますると、其の團體は幾ら有權者が多くとも、其の組合が幾ら有權者が多くとも、遂に一人の代表者を出だすことが出來ない、從つて參議院に對して代表的に何等の發言權をも持つ譯には行かないのであります、さう云ふ御説明のやうな關係は私共の今迄理解して居る職能代表とは其の趣旨を異に致して居るのであります、それでは私共から見ますれば職能代表制を事實上實際上に於て採入れられたと御認め申すことが出來ない、政府は潔くそれは採入れなかつたのである、制度の上に於ては勿論、運營上に於ても採入れなかつたのであると云ふ御答辯であれば、我々又何をか言はむや、それ以上は決して彼此れ追求致しませぬ、處が採入れて居ると仰しやるから、自然斯う云ふ質問が出るのであります、此の點に付て植原國務大臣再度の御説明を御願ひしたいので、私は同大臣に對して質問をする次第であります、それから今一つの問題は私は從來貴族院令に依る議員の勅任は學識の外國家に功勞ある者が勅任せられて居る、所謂勅選議員、是は表向き無論位階勳等授爵等とは違ひまするから、表彰と云ふことは成る程制度の上又明文の上には現れて居りませぬ、けれども、實際上、政治上是が其の功勞に報ゆる一種の國家の特殊的待遇であつたことは爭へない、植原國務大臣は、是は將來選任後に於て國家の爲に働かせる制度だ、斯う云ふやうに御説明になりましたけれども、働かせる制度ならば、年齡等を御構ひなく、健康等を御構ひなく、八十歳以上の老人に對しても新たに勅任せられて、又平生病氣勝ちで引込んで居られる不健康の人も構はず、唯閲歴だけを見て勅選をせられて居る、若し國家の爲に將來働かせる積りであるならば、それ以下に於て、年も若いし、活動力のある人を御選び下さる筈であるが、實際は過去の閲歴に重きを置いて、即ち國家の功勞に重きを置いて勅選されて居るのであります、であるから私は是は政治的に實際的に見ますれば、矢張り功勞に對する國家の一つの特殊の待遇である、若し表彰と云ふことが表向き現れて居なければ獎勵である、國家の其の人に對する感謝であると言つても宜しいのである、處で今度貴族院令が廢止され、貴族院もなくなります、新しき參議院ではもう制度の上で斯う云ふことは全然認められないのである、是はもう當然の結果であります、然らば之に代る國家社會に功勞のある者を、之に代る方法に付て政府は御考慮になつて居られるかどうか、之を伺つたのであります、然るに私は特に申上げなければならぬのは、植原國務大臣は、貴族院もなくなるのであるから、此の勅選議員に對して、何等か爰で表彰の途があるかないかと云ふやうに誤解して居られる、私共苟くも左樣な卑しいさもしい心で申上げる趣旨では毛頭ないのであります、其の邊の誤解のないやうに御願ひ致します、將來國家に功勞のある者を待遇せられる上に於て、貴族院の勅任はなくなる、參議院にはさう云ふ制度は認められぬ、然らばそれに代る他に適當な方法に付て御考になつて居るのであるかどうか、是は我々の爲に申上げるのぢやない、是から一般の將來の爲に申上げる次第であります、どうか此の質問の趣旨を誤解されずに御答辯を願ひます、此の第二の問題は事の性質上、總理大臣の御説明を御願して置いたのでありますが、然るに時間の關係上、齋藤國務大臣、植原國務大臣が、大河内子爵に對する御答辯の間に御引揚げになつた、そこで別に急ぐ問題でありませぬから、次の機會に於て總理大臣の御自身の、御答辯を御願ひ致したいと思ふのでありまするが、植原國務大臣が御出席になつて居られ、總理大臣に代つて其の責任に於て、答辯しても宜しいと云ふのであれば承ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=47
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048・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 作間君の御質疑に御答へ致します、第一の御質問は作間君の御考では、職域に對する代表と云ふことは、其の同一な職業のみに關して居る人が其の代表者を出すのでなければ職能代表でないと解釋して居る、其の意味でどうかと云ふ御質問のやうであります、若しさう云ふ極く局限した職能代表でありますれば、さう云ふ方を參議院の中の組織の中に入れることが、果して政治上強い意味があることがどうかと云ふことに付て、未だ非常な研究の餘地があることと存じます、職能代表と云ふこと、其の事の政治的の意義さへ、必ずしもそれが國家の爲に宜しいものだと云ふことすら、はつきりした根據を持つことが出來ないと申したい状態であります、從つてさう云ふやうなことを考へたこともありませぬし、若し假に作間君が仰しやるやうな職能代表が宜しいと致しましても、日本の現状に於ては左樣な方法を採用しても、さう云ふ職能を代表するやうな、總ての制度が出來て居らぬと思ひます、左樣なことは實際の問題として、今の日本の状態から考へられないことぢやないかと思ひます、若しさう云ふことを考へて參議院を作るとしたならば、現在提出されて居る此の法案に其のことが實現されるやうに考へられることさへも疑問だと思つて居ります、第二の御質疑でありますが、若し私が誤解がありましたならば、其の點は正しますが、現在の貴族院議員の勅選に付きましても、必ずしも其の人の功勞を表彰する意味で勅選されて居るのではないと思ひます、勿論貴族院に勅選されるやうな方は、總ての閲歴にしても御立派な方であり、社會國家に對しても功勞のある方であらうと思ひますが、貴族院に勅選する目的は表彰の意義でない、其の多年に蘊蓄あるところの政治的經驗や知識、それを國家の爲に政治的に有效に働かして戴きたいと云ふことが勅選の趣意であると思ふ、勿論其の中にそれだけの閲歴を持つて居る人でありますからして、功勞のことも幾らか考の指標とはなりませうが、それが中心でないと云ふことを御承知置き願ひたいと思ひます、尚今迄は何れに致せ、さう云ふ國家或は社會に功勞のあつたやうな人の、尚知識經驗を用ひる爲に、又一面に於ては社會から見れば、之を功勞の表彰と思はれるやうな、勅選と云ふ方法もあつたが、貴族院もなくなると、だからして將來さう云ふ人のことに對して、政府では考へて居るかと云ふ御質問でありますが、新しい憲法の第三章の、國民の權利義務と云ふ規定の中の、十四條の三項にもさう云ふ國家に特殊な功勞でもあつたやうな方の、榮典の授與等に對しては將來大いに研究して、然るべく途を講ずるやうにすべきであると云ふ規定もありますので、政府ではさう云ふことに付きまして、新しい憲法の下に左樣な事の期待を致して宜しいかと、目下折角研究考慮中であることを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=48
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049・作間耕逸
○作間耕逸君 御説明の趣旨が能く分りました、それで理解が行きました、唯此の際大村内務、植原國務兩大臣に申上げたいことは、職能代表の制度は唯選擧の場合のみでない、要するに代表する議員を選出し得るか否かの問題ではない、それは勿論選擧の場合に大いなる關係がありまするが、參議院制度の成立の後に於て、國民の發言權が、職能的、團體的發言權が、全然參議院の中で封ぜられる、此の參議院の運營に關しても御考慮願ひたい、唯單に選擧の時に代表的候補者、代表的議員を出し得るか、ばかりの問題ではないのであります、參議院成立後其の運營、大切なる國家的運營の上に於て、職能を代表する發言權と云ふものが、全く機會を失ひ封ぜられてしまふ、此の意味に於ても職能代表と云ふものは、非常な影響を及すものではないか、議院成立後の政治上の運營と云ふことに付ても、此の上ながら十分御考慮を願つて置きたいと云ふことだけを申上げまして、私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=49
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050・吉田久
○吉田久君 本員は本日は本案の第三條に規定致して居りまする、參議院の選擧權者の年齡に付て先づ御伺を致したいのであります、本案は第三條に於て衆議院議員の選擧權を有する者と、參議院議員の選擧權を有する者とを同樣に致して居るのであります、從つて衆議院議員の選擧法の下に於きましては、現行の選擧法の下に於きましては、其の選擧權者の年齡が二十歳に相成つて居ります、でありまするから此の年齡が變らない限りは、參議院の選擧權者の年齡も亦二十歳と云ふことに相成るのであります、處が二十歳に達した青年の選擧權者と云ふものは、各選擧區に於きましても相當多數を占めて居るのでありまするが、此の二十歳に達した青年の男女に依りまして、參議院と衆議院とが、其の職能に於て異るものあることを認識致しまして、其の選擧權を間違ひなく行使して過ちがないであらうかどうかと云ふことに付ては甚だ疑はしいのであります、二十歳に達した青年の男女と云ふ者は、まだ世の中のことは能く分つて居らないのであります、其の分つて居らない所の若輩、青年に付きましては、今申しました參議院の議員と衆議院の議員との職能の異るものあることを認識して、それに付て適當なる分別を付けると云ふことはどうもむづかしいと思ふのであります、此の分別が付きますのは三十位にならなければ起り得ないのではないかと本員は考へます、そこで政府は二十歳の衆議院の選擧年齡を、參議院の選擧年齡に付ては今少し引上げる意思はないかどうかと云ふことを先づ御伺するのであります、尚もう一つ三條に關聯致しまして御伺ひ致したいことは、參議院の選擧權を有する者は、參議院議員の職能を能く理解致しまして、其の議員には衆議院議員よりも知識經驗を有する所の練達堪能の士を選出しなければならぬ、從つて選擧民と致しましては其の心構を以て其の選擧權を行使すべきものと思ふのであります、此の點に付て繰返して申上げまするが、社會の各階級からして參議院議員たる任に堪へる所のエキスパートを選出するのには、私が昨日述べました職能代表制か若しくは推薦制を採入れることが絶對に必要であると私は確信致して居るのであります、此の點に付きまして只今内務大臣等より御答辯がありました、政府の御苦心の程は十分了察致して居るのでありまするが、事は參議院の成立に關する所の重要な瀬戸際のことでありまするから、私の思つて居る所を忌憚なく申上げまして、更に一段の御考を願ひたいのであります、而して此の點に付きまして政府當局の説明を承つて見ますと云ふと、昨日の委員會に於きましては内務大臣は、職能代表制と云ひ推薦制と云ひ、何れもそれが新憲法に牴觸して違法なものであると云ふことは言はれないのであります、唯植原國務相は、新憲法の四十四條の但書の趣旨に反するものであると云ふ風に御意見を述べられました、法律解釋のことでありまするからして、それは意見の相違であると言はれればそれ迄でありますが、私は職能代表制と云ひ推薦制と云ひ、何れも四十四條の但書に規定する所の事項には牴觸して居らないと考へて居るのであります、然るに植原國務相は、同條に規定して居る所の各事項を擴張的に解釋せられまして、同條の其の但書に牴觸すると云ふことを言はれるのであります、參議院には特段なる所の知識經驗者を綱羅しなければならなぬと云ふやうなことに付ては、政府の御考も我々の考も少しも相違する所はないのであります、四十四條の但書に於きましては「人種、信條、性別、社會的身分、門地、教育、財産又は收入によつて差別してはならない」と云ふことだけを規定して居るのであります、でありますから私は是等の事項に職能代表制若しくは推薦制は何れも當つて居らぬと思ふのであります、然るに本日の内務大臣の御説明を承りますと、作間委員の質問に對しまして、辯護士團から辯護士を推薦する、醫師團からして或醫師を推薦すると云ふことは、是は四十四條の社會的身分に依つて差別を付けることになるのであつて、憲法の規定に牴觸すると云ふことを言はれましたのであります、併しながら所謂身分と云ふものと職業と云ふものとは是は觀念が違ふのであります、身分と申しますれば、從來華族であるとか士族であるとか平民であるとか云ふ社會的の地位に付て用ゐられて居つた所のものである、處が職業は申す迄もなく生活の資料を得る爲に業として爲す所の一團の行爲を言ふのでありまして、此の二つのものは明かに法制の上に於きましても區別せられて居るのであります、四十四條の但書は、社會的の身分に依つて差別をしてはならないと云ふことははつきり規定されては居りまするが、職業に依つて區別してはならないと云ふことは少しも申して居らないのであります、之を混同されまして、地位と身分と職業とは同一のものであると云ふ御解釋からして、解釋と云ふのは私は擴張解釋であると思ひまするが、推薦制及び職能代表制が四十四條の但書に牴觸するものであると云ふ御論であるのであります、左樣に論ぜられまするが、私は今申しましたやうに身分と職業とは違ふのである、四十四條の但書は、社會的の身分を云爲して差別待遇をしてはならぬと云ふことを戒めて居るだけであつて、職業に依つて區別を設ける、職業に依つて被選擧資格に制限を加へると云ふことは、同條の敢て規定する所ではないと思ふのであります、詰り同條は、是々の事柄に依つて差別してはならないと云ふ風に個別的に規定して居るのでありまして、之を廣く解釋致しまして、憲法の趣旨に牴觸すると云ふやうな御論は、兎に角職能代表制及び推薦制を眞に採用して、さうして立派な參議院を作ると云ふ御考の下に於ては、私は考へられないことであると存じて居るのであります、參議院なんと云ふものの存在はどうでも宜しいと云ふやうな御考が、或は其の根抵に濳んで居るのではなからうかと云ふことを祕かに考へて居る次第であります、左樣な次第で四十四條の但書は職業だけは除いて居る、之を除いて居るのは矢張り此の職能代表は差支ないと云ふ趣意であると解釋するのが寧ろ相當であると思ふのであります、御承知の通りに、英國に於きましては學校の此の團體を認めて居りまするが、是は矢張り一種の職能團體と云うて差支ないと思ひます、左樣な譯合で、私は此の四十四條の但書の適用に付て餘り擴張的な解釋をなされないのが宜は、いのではあるまいか、擴張的に解釋しまして、四十四條の此の適用を認める必要は毛頭ないと思ふのであります、で參議院には特別なる所の知識經驗者を網羅する爲に職能代表制が必要であると云ふことになりましたならば、是は矢張り嚴格に解釋して、それは憲法の規定に牴觸するものではないと解釋致しまして、之を採入れると云ふことが相當であると思ふのであります、でありまするから私は職能代表制及び推薦制を採入れると云ふことは、決して憲法の規定に牴觸する違法のものではないと云ふ考を持つて居るのであります、參議院などはあつてもなくてもどうでも宜いものだ、なきがしろのものであると云ふならば別でありまするが、苟くも此の二院制度を採用致しまして、參議院と云ふものは議會政治の運營の上から致しまして、必要なる議政機關であると云ふことを認める以上は右の但書の此の解釋に付ても、其の心持を採入れて、寧ろ違法ではない、憲法の規定には牴觸するものではないと考慮すべきであると考へます、而して推薦制と言ひ、職能代表制と言ひ、何れも被選擧資格の制限に關するものでありまして、此の制限の下に候補者となつた者の爲に全國民は選擧をするのであります、でありまするから、私の考では四十三條の規定にも牴觸しないと思ふのであります、憲法四十三條は「兩議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。」と規定して居ります、此の規定は兩議院の組織構成を規定したものでありまして、之を組織構成する所の議員は、全國民に依つて選擧せられた議員でなければならぬぞと云ふことを規定してあるのであります、全國民に依つて選擧せられた議員は、即ち全國民を代表するものであります、推薦制に依る所の選擧と言ひ、又職能代表制に依る所の選擧と申しましても、其の立てた候補者に向つては全國民が選擧をするのであります、選擧權を行ふのである、其の結果當選したる所の議員は、參議院に致しましても、衆議院に致しましても、各院を構成するのでありますから、此の故に四十三條の規定にも私は牴觸しないと思ふのであります、ちよつと序でありまするから推薦制に付て一言致して置きますが、此の推薦制に付きましては、前にも裁判例がございまして、東條内閣時代に、所謂此の推薦制の下に選擧が行はれた、此の選擧が違法であるかどうかと云ふことに付きまして、大審院に選擧無效の訴訟が運ばれたのであります、私は判事在職中に此の訴訟を受理して‥‥是は鹿兒島縣に起りました選擧訴訟でありまするが、此の鹿兒島縣に於て推薦制の下に行はれて居つた選擧は、是は推薦制と云ふものは衆議院議員選擧法の認めざる運動方法である、法律の認めない運動方法を利用して勝手に拵へて、さうして政府が徹底的に組織的に選擧權の行使を彈壓して大干渉を行つたのであります、故に大審院に於きましては、此の選擧訴訟は、是は八十一條に牴觸する所の違法な選擧であると云ふ故を以て、當選無効、選擧無効の判決を下したのであります、でありまするから、推薦制と云ふものが此の判決に依つて否定せられたと云ふことを直ちに受容れて、推薦制に依る所の選擧と云ふものは許されないのであると云ふ風に考へて戴いては困るのであります、此の判決に於て選擧は無効であつたと云ふことを認めた趣旨は、何處迄も現行衆議院議員選擧法の下に於て認めない運動方法に依つて選擧を行つた、而も其の選擧の執行たるや、實に徹底的に干渉した惡虐なものであつたと云ふ理由に據つたのでありまして、推薦制其のものの可否を決めたものではないのであります、でありまするから、今度の改正法に依しまして、參議院議員選擧法が推薦制を採つたと致しましても、法律に於て之を適當なる選擧方法として受容れる以上は、決して私は違法でない、又前に大審院の示された此の選擧判決に決して牴觸するものでないと云ふことを一言申上げて置きます、それから職能代表制を實行することは、現在の職能組織が非常に不完全であると云ふことで内務大臣は其の實行を阻止せられて居るのでありまするが、其の實行は難事でないと云ふこと、むづかしいことでないと云ふことは、是は私が昨日縷縷申上げた通りであります、特に本日申上げて置きたいのは、此の職能代表と地域代表との關係であります、職能代表と云ふのは、職能團體を土臺と致しまして候補者を決める方法であります、處が地域代表の方は、地域を土臺として候補者を決める所の方法でありまして、何れも選擧の方法に關するものであつて、選擧の實體に關するものではないのであります、職能團體を土臺として選出せられた議員も、其の議員は職能團體の代表者たるに止まらないで、議員になつた以上は全國民の代表者となるのであります、此の點に付て先程大河内子爵からして、全國選擧區の可否に付て、全國的に‥‥全國を背景として候補に立つ所の者は、團體の力を用ひなければならぬと云ふことを述べられました、是は私も同感でありまするが、併しながら同子爵は、或職域から代表せられた者は其の職域の代表者であつて、外の代表者ではない、詰り全國的の代表者にはならないのであると云ふ御意見を述べられましたが、私は是は如何なものであらうかと存ずるのであります、若し其の論を推進めますると、東京都から選出せられた議員は東京都の代表者であつて全國民の代表者ではないことになります、併しながら、さう云ふものではないと思ふ、東京都から選出せられた者も議員になつたならば、それは全國民の代表者になるのであります、それと同じやうなことが職能代表に付ても十分言へるのである、例へば醫師團體から擧げられて議員になつたものも、單に醫學上醫業のことに付てのみ發言權を有するのではない、其の外のことに付きましても無論發言權を有するのである、又ヴオートも行へるのであります、左樣に考へて來ますと云ふと、職能代表者に依る所の選出議員と云ふものは、矢張り全部の奉仕者でありまして、一部の奉仕者ではないのでありますから、其の點に於て決して憲法の規定に牴觸するものではないのであります、憲法の趣旨にも反するものではないと云ふことを申上げて置きたい、私は左樣な考へ方から致しまして、參議院の選擧方法に付ては是非此の職能代表者、若しくは推薦制の制度を採入れることに付て御熟考を願ひたいと云ふのが私の念願であります、私は此の兩制度の何れかを採入れることに依つて、參議院が衆議院と異る所の特殊性を持つ所の議員を以て組織せられることに相成ると云ふことを確信して居るが爲であります、私は昨夜學界に於ける二三の友人と此の參議院法案を論じたのでありまするが、其の席に於きましても、皆異口同音に現在のやうな此の參議院法案では、是は詰らない、是は決して面白くないと云ふことに付て少しも異論がなかつたのであります、參議院選擧法に職能代表制、若しくは推薦制を採入れることの必要であると云ふことは、最早常識的であると私は言うて差支ないと考へます、左樣な次第でありまするからして、尚一應政府當局に於きましても、此の兩制度をどうかして何等かの方法に依つて採入れることに一つ御考を直して戴きたい、從來の意見、其の他色々な御事情もあると思ひまするが、良いことは良いと認めなければなるまい、之を無理に押切りまして、何處迄も原案で法律にしてしまはなければならぬと云ふことは、如何にも此の參議院を構成することに付て遺憾千萬なことであると云ふことを私は深憂致して居りまするが爲に、敢て諄々しいことではありまするが、今申述べたことを御耳に達するやうな次第であります、私は以上の見方からして、どうか此の兩制度に付ての御考慮を更に煩はしたいと云ふことを希望するものであります、が何れに致しましても、參議院議員の選擧權を行使するものは、參議院議員が衆議院議員よりは異る所の智能經驗を持つて居る所の練達堪能の士を目標として、其の選擧權を行はなければならぬと云ふことは、是は必要なことであらうと思ふのであります、此のことは矢張り三條の第二項とでも致しまして明文の上に表して選擧民に其の選擧の心構へを與へると云ふことが最も必要でないかと考へて居ります、左樣な意味に於きまして、三條の二項でも其の外の場所にでも宜しうございますが、參議院議員の選擧權を行使するものは、斯う云ふ風な心構へを以て選擧權を行使しなければならぬのだと云ふことを明文に設けて戴きたいと云ふのが私の考であります、此の點に付て政府は如何なる御考を持つて居りまするか、承りたいのであります、第三には四條の關係になるのでありますが、四條は私の考へる所に依りますと、被選擧資格の制限を規定したものであると思ふのであります、それに付ては前に申述べましたやうに、衆議院の被選擧者年齡の二十五歳を五歳増した三十歳としただけでは到底此の參議院を組織する所の立派な資格を持つて居る議員は得られないと考へるのであります、最低の年齡を三十歳と致しますると云ふと、三十歳に達した者は參議院議員になることが出來ると云ふことを豫想しなければなりませぬが、此の年齡に達した者を果して智能經驗に於て練達堪能の士と一般的に言ふことが出來るであらうかどうかと云ふことを私は憂ひます、先程内務大臣の説明に依りますと云ふと、英國の事例をお引きになりまして、三十歳未滿でも練達堪能の智能者を得られると云ふことを申されましたが、是はもう天才的の人でありまして、斯う云ふ風な人を標準に選擧年齡を決めると云ふことは私はいけないと思ふのであります、此の點に付ては山地委員からも其の點を指摘せられた通りであると考へます、左樣な譯で、尚それから内務大臣は衆議院議員の平均年齡等を引用せられまして三十歳にすれば宜いのだと云ふことを言はれましたが、此の衆議院議員の素質と、それから參議院議員の素質とが違ふのであると云ふことに考へ及びましたならば、衆議院議員の平均年齡と云ふものは決して參議院議員の平均年齡には當らないと見なければならぬと思ふ、それから又多額納税者に付きましては、法律の上では三十歳と云ふことになつて居るけれども、實際の多額納税議員は五十歳以上であると云ふことを述べられました、彼等は參議院法に於て三十歳にして置いても實際は矢張り五十、六十の人が選擧せらるることになるのだと云ふ御趣旨であつたやうでありまするが、此の多額納税者の議員と云ふ者は是は財産家であります、財産家はなかなか自分の伜に早く家督を讓ることは爲さらないのが普通であります、でありますから、多額納税議員として當選せられる人は勿論五十、六十の人が當選になるのは當り前であります、此の多額納税議員の年齡を御引例になりまして、參議院の選擧年齡も三十歳にして置けば宜しいと云ふやうな論は是亦私は當らぬと考へて居るのであります、左樣な次第でありまして、午前中には下條委員からも此の點を御質問に相成つたと思ひますが、私はどうしても此の參議院を組織する所の資格ある議員の年齡と致しましては、法制調査會に於て採擇せられた、四十歳位にして置くのが最も宜いのではないかと考へるのであります、此の點に付ては午前中にも政府當局から御答辯がございましたが、尚私の申上げたことに付て御意見がありましたならば、承ることを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=50
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051・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 參議院議員の選擧權者の年齡に付てでございますが、二十歳を以てしては、參議院議員としての適格を確認するだけの知識經驗が不十分であるから、之を高めたらどうかと云ふ趣旨の御尋でございますが、公務員の選擧に付きまして如何なる方法を採るべきか、又年齡は如何なる所に限界を置いたら宜いかと云ふ點に付きましては、是は新憲法の御審議の際に、兩院に於て御論議の上、十五條第三項に持つて參りまして、「成年者による普通選擧を保障する」と云ふことに相成りましたので、之に依りまして法律的には解決をされて居ることでありまして、參議院議員選擧法に於きまして、成年者と云ふ以外に定めることは出來ないと云ふ關係になつて居ると考へるのであります、唯我が國の國民の状況と致しまして、二十歳程度の者に選擧權を與へましては、それが十分な行使が出來ないと云ふ心配は確かにあると思ひます、是は今後教育に依り、又學校教育に依り、社會教育に依り、或は又政治訓練に依りまして、選擧に對しまして、完全なる選擧權の行使が出來るやうには大いに努力をしなければならぬ點であることは、私も誠に御同感に存ずるのであります、次に此の作間議員の御質問の際、憲法四十四條但し書を引きまして、例へば辯護士の職能團體に對しまして、一定數の參議院議員の定員を割ると云ふやうなことを致しますと、社會的身分と云ふ點に牴觸するではないかと云ふやうに申上げたのでありますが、此の點は御指摘の如く、尚私と致しましても、能く考慮致さなければ、直ちに社會的身分に牴觸すると言ふのは、或は行き過ぎではないかと云ふやうに考へますので、此の答辯は茲に撤囘を致します、唯全國的に數千乃至一萬と云ふ少數の職域組織に對しまして、法律を以てそこに一人の參議院議員を割振ると云ふやうな行き方は、是は適當でないと云ふことは、法律の何處に牴觸すると云ふことがないに致しましても、矢張り適當でないと云ふやうに信じて居る次第であります、次に被選擧年齡に付きましては、段々御尋がありますし、又政府の三十年と立案を致しました趣旨は、段々御答へ申上げて置いた通りでありまするが、唯之を四十歳に引上げると致しましても、四十歳に達した人に悉く被選擧權を與へると致しまして、其の人が總て練達堪能だと云ふことは固より申されぬのであります、又四十歳以下の者に於きましても悉く練達堪能の者でないとも言ひ切れないのでありまして、是は結局多數の被選擧權者の中から選擧に依りまして最も練達堪能の士を選ぶと云ふ所に選擧の實がある譯でありまして、其のやうに考へて參りまするならば、之を三十年に致しましたことも強ちいけないと云ふ譯には參らないと考へて居る次第であります、それから次に參議院議員選擧法の適當の場所に於きまして選擧人が如何なる議員を選擧すべきかと云ふ一つの據るべき條文を明記したらどうかと云ふ御意見でございますが、此の點に付きましては如何なる人が參議院議員として適格を有して居るものかと云ふ點に付きましては、大體の定論はございまするが、之を偖條文に表示すると致しますと、そこに多大の困難があると思ひます、是は學説に於きましても、實際に於きましても、色々議論の存する所でありまして、一致したる明文を求めることが非常に困難であると思ひます、斯う云ふやうな點は立法上に於て常に考へられることでありますが、そこに越ゆべからざる困難がありますので、其の邊は全法文の中に含んで居りまする法意に依りまして、學説其の他に於て論定されると云ふ所に委ねて置くことが通例であるやうに考へるのでありまして、政府と致しまして今直ちに茲に明文を以て參議院議員を選ぶべき基準を明記すると云ふことに付きましては、餘程是は困難さが伴つて居りますので、直ちに明記すると云ふやうには申上兼ねる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=51
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052・吉田久
○吉田久君 私は繰返して申上げることは致しませぬ、質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=52
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053・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 只今吉田君から私の質問に付て内容に觸れて御話がございました、丁度好い機會でございますから、それに付て政府の御考をもう少し的確にして置く必要があらうと思ひます、吉田君の御議論を反駁する譯でも何でもございませぬ、職能代表を今日本に出すと云ふことは、決して全部の奉仕者であると云ふやうな作用はなすことは出來ない、少し考へて見れば分ることで、若しも勞働組合の代表者を此處へ出して、參議院に列せしむるとか、衆議院に列せしむるとか云ふことにすれば、何しろ勞働者が宜ければそれで宜い、それは決して惡いことをするとは申しませぬ、其の人達が惡いことをする、そんなことを言ふのぢやない、又勞農が惡いと云ふのぢやない、併し勞農者さへ宜ければ宜い、斯う云ふ行動をとるに決つて居る、農業者から代表を出して御覽なさい、必ず農業者さへ宜ければそれで宜い、斯う云ふ行動をとるのは決つて居る、外國の例は私はどうか存じませぬが日本でやればきつとさうなります、それで全部の奉仕者であると云ふことを決めてある憲法の趣旨に反する、私が申しますのは其のことなんである、職能代表と云ふのは非常な危險な制度です、偏せしむる、そしてしまひには軍閥の跋扈と同じやうな結果に結局持つて行つてしまふ、今日本は何に踏掛つて居るか、勞農戰線に踏掛つて居る、之に落つこちて行くに決つて居ります、私はそれを言ふのです、憲法はさう云ふことは望んでは居りませぬ、一部の者の奉仕者ではない、全部の者の奉仕者であると云ふことを希望して居る、少くとも職能代表と云ふものは日本では駄目である、そんなことをやつたら決して、自分はどう云ふ職能の者であると云ふことを自覺して、さうして全體に對して奉仕すると云ふ、そんなことに行くものぢやない、一生懸命に自分の職業にばかりこびりついて行くに決つて居る、それを私は申します、それで結局さう云ふ點から言つて、憲法の精神とは是は相容れないものである、そんなことをして行くよりも、全體の奉仕者としてやる途は幾らもある、推薦制は良いか惡いか別にしまして、假に良いとしまして、推薦制ならば、成る程全部の奉仕者になるかも知れませぬ、是は差支ない、政治が偏る程恐いことはない、政治が偏つたから日本が滅びてしまつた、今だつて偏り掛けて居るのだ、それを私は申して居る、實に危險な状態です、今のゼネストの樣子はどうでせう、職能代表にして御覽なさい、そんなことばかり始終起つて來る、あつちへ引つぱり、こつちへ引つぱり、何處へ行くか分らない、日本の特有の事情もそんなことだと私は考へる、そんな所からして、餘程そこの所は警戒を要する、斯う云ふ意味で私は御尋したのです、それなら地域代表だつて同じぢやないかと仰しやるけれども、それは自治制と云ふものがちやんと立つて居つて、中央の行政と地方の行政とはつきり岐れて居る、兩方の兼職は嚴禁してある、今度の法律にだつて止めてある、だから兩方混同されないやうにそこは考へてやつてある、今の職能代表とは丸で違ふ、其の意味で私は質問をした、それで私は法律論は存じませぬけれども、亦法律論は私はやる必要もないと思ふ、兎に角全體の奉仕者であると云ふ意味と、其の趣旨には相容れない結果を生ずる、斯う云ふ意味に於て先程述べたのです、それで今私の名前を指して御述でございますから誤解があつても困る、殊に政府に誤解されちや困りますから、さう云ふ意味を述べて、そして大村内務大臣から、甚だ御迷惑ですけれども何かに付けて御批判、御答を得れば大變仕合せだと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=53
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054・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 參議院議員選擧法立案に當りまして、職能代表制を考慮すべしと云ふ意見は、段々有力にございましたので、此の點に付きましては、政府は多大の關心を以て研究を致したのでございまするが、我が國に於きましては職能組織が、職能代表制を採用する程度に發達致して居りませぬ、將來に於きましてどう云ふ歸趨を取りますか分りませぬが、現状に於きましては、到底參議院議員選擧法の中に職能代表制を採入れることは不可能であると云ふ結論に達しまして、之を法定することを捨てたのであります、此の點は再三御説明を申上げましたことでありますが、更に進みまして、職能代表制を若し採るとすれば、日本の現状に於きまして政治上どうなるかと云ふ點の御尋であります、此の點に付きましては、職能代表制を、先に申しますやうな經緯で捨てましたので、之を採ることが政治上に如何なる影響を及すかと云ふ點に付きましては、政府部内に於きまして、深く之を論議致しまして結論を得た譯ではございませぬ、從つて申上げますことは、私の一個の見解になるかと思いまするが、是は職能代表制をどのやうに採るかと云ふことに依つて決まることでありまするが、若し現在の如き勞働者團體或は農業者團體、商工業者團體と云ふやうな程度のものを取りまして、現在の勢力に依りましてそこに職能代表制を布くと致しますると、大河内子爵の御意見の如く、政治上公平に意見を國會に反映すると云ふことに相成り兼ねますから、從つて政治上思はしからざる結果を招來する危險が多分にあるやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=54
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055・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 小山君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=55
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056・小山完吾
○小山完吾君 私の申上げますことは、實は第一章に關聯致して居りまして、其の第一章に付きましては、昨日私の存じよりは一應申上げて、又御意見も伺つて、それ以上はと思つて居つたのでありますが、午前大河内子爵より植原國務大臣竝に齋藤國務相に御尋になつた其の御答辯の中に、齋藤國務大臣の御答辯は、結論としてよりも、其の御心持は私は了承致します、植原國務大臣の御答辯は、質問者たる所の大河内子爵は既に御滿足になつて居りまするけれども、之を伺つて居りまして、私は更に疑問を生じて、私の意見を述べて見て、討論に類するやうな形になつて甚だ恐縮でありますが、抑抑全國に亙つての選擧をすると云ふことと、地域的にすると云ふ、此の二つの問題に付ては、參議院の制度に審議するに當つての最も重要なる問題で、恐らく憲法第四十三條に既にああ規定されてある以上は、もう此の選擧の方法より外に私はないと思ふ、此の問題が討議されて得心が行く迄に議されれば、他のことはもう大したことではないと思つて居るのでございますから、重複を厭はず申上げまして、甚だ恐縮でございますが、暫く時間を貸して戴きます、最も簡單に申上げます、そこで植原國務大臣の政黨觀に付ては私も固より同感であります、併し全國の參議院の候補者を選定するに當つて、政黨が自重し、本當に國家の利害と云ふものを考へてやれば先づ間違ひはなからうと云ふことでありました、候補者を定める點に付ては、恐らくそれはそれで宜からうと思ひます、候補者を定めると云ふことは、中央の政黨の本部で或は定め得ると思ひますが、併し問題は其の定めた候補者を實現して選擧に掛けてどう云ふ風に之が選ばれるかと云ふことが問題だ、申上げる迄もなく政黨の組織と云ふものは中央から地方に及んで居るものではないのです、地方から政黨に及んで居る、殊に人事の問題に付ては最も地方的のものであります、政策と云ふ點に於きましては、中央の政黨の組織に於て、政務調査に掛けて其の綱領、政策を決定し、其の決定されたる政策に依つて天下に説を質すと云ふことでありまするから、極端に言へば誰を出しても宜しいのです、自由黨の政綱を贊成するか、或は社會黨の政綱を贊成するかと云ふことで極端に言へば、エーかビーか人は誰でも宜いと云ふ位なものなのです、之が政黨政治と云ふものの眞髓であるのです、併し參議院と云ふものはさうは行かぬ、參議院は唯甲か乙かと云ふことで決定するものではなくして全體の國家政治の上から見て其の判斷をする、殊に、ちよつと待て國民熱してゐやしないかと、左樣なことをすることに付ては、個々の人々の人選を最も愼重にしなければならぬ、そんなことは申す迄もなく誰でも知つて居る位な簡單な話ですから、是も詳しく申上げる必要はありませぬ、そこで政黨が例へば全國から選ばれる所の參議院議員と云ふものが百名ありとすると、其の候補者を百名と定めますか、或は二百名と定めますか、恐らく百名ありとすれば、百名以下に定めると云ふことはない、必ず百名以上に定めるに決つて居る、處が政黨が國家全體の上から見て、是は適任者で參議院議員として是非出て欲しいと云ふ人は恐らく地方に於てもちやんと眼を著けて居る、其の點に參りますと、同じ政黨の働きでも、中央の働きと、地方の働きと違ふ、と云ふのは地方の人と云ふのは矢張り人と云ふものに眼を著けて、是は例へば埼玉縣なら埼玉縣、長野縣なら長野縣の出身者であり、さうして是は中央に於て是だけの働きをして居る、さうして其の縣の事柄に付ては何かと其の人の厄介になつて居る、其の人のアドヴアイスを受けたことがあるとか、其の人の助力を借りたことがあると云ふやうなことが、其の人を銓衡する上に於て働いて居つて、大概中央で以て相當な仕事をして居る人であれば、地方に關係を持つて居る、そこで地方民が候補者を定めるに當つて、唯黨本位で自分の都合の好い人を選ぶ、甚だ惡い例ですけれども例へば地方の政黨支部に金を出す人とか、衆議院議員を選ぶ時に黨費をこつそり澤山呉れた金持だから之を參議院に出さう、斯う考へて見た所で、地方には自ら産業系統もあれば農業系統もあり、又職業系統もありして、大抵其の一縣下に於て信用のある人と云ふものは恐らくさう澤山はありはしない、そこで政黨が若し唯自分に金を餘計出す人であるから、其の人を適任者でなくても、是は此の頃の戰時成金であるとか、ぼろい儲けをして金を澤山持つて居るから、此の人から金を澤山貰ふと云ふやうな、假にさう云ふ不純な心を持つて候補者を決めると云ふことになれば、もう其の地方的の信用と云ふものは自から衰へてしまつて、そんな政黨は其の地方では少くとも支持を受けないと云ふことになるですから地方に於ての政黨支部に於て、自分の縣から出す參議院議員の候補者を定めると云ふ時には自からそこにそれ等の輿論を斟酌し、又自分の黨派の都合と云ふことも考へて候補者を定めるだらうと思ひます、だから此の點に於ては先づさう不都合な候補者は出て來ないと私は思ふ、唯中央で抽象的に偉い人と集めて、假に適當なる候補者を、黨の中心點に於て定めて見た處で、それを今度選擧の實際に移すと云ふことになると云ふと、どう云ふ働が一體出て來るか、其の百人の候補者の中各各何れ郷關、郷里を持つて居る者が澤山ありませうが、午前に齋藤國務大臣の御説明の中にもあつた通り、凡そ人の推薦ありとするも、自ら買つて出て、俺が候補者だと云つて、三十萬、二十萬の投票を集めようとするには、どうしたつて是は根據地がなければ出來ない相談である、その人がもし餘り地方に遠い人であつて、中央にばかり居つて、中央にのみ勢力がある人とすれば、恐らく東京を根據としてやるより外に仕樣がない、東京を根據として見た處で、幸に東京で三十萬の投票が得られれば宜いが、三十萬、二十萬の投票を得ると云ふことは、なかなか困難のことである、そこで何處か全國の中に支持者を得なければならぬですが、偖百人の假に候補者を、自由黨なり進歩黨が定めた處で、其の百人の割振りが、全國に向つてどう働きませうか、其の地方の人は黨の中心、中央部で以て定めたのだから、この人に必ず入れると云ふことを考へると云ふことは、是はもう實際に遠いこと甚しきものである、それで先刻植原國務相は非常に其の選擧と云ふものを、あつさりしたもののやうに御説明になつて、黨で決めたものは、其の黨派は必ず地方に於ても入れるだらう、それ故非常に有力だと云ふやうなお話でありましたが、それは植原國務相の多年の御經驗としては餘に淡白なお話で、選擧の實際と云ふものはそんなものぢやありませぬ、だから私の恐れる所は、どうして一體其の中央で定めた所の候補者と云ふ者を、選擧に移して、それが當選すると云ふことの實現を見るか、僅に二十日やそこらで以て全國に其の人を知らし、個人的に二十萬、三十萬の投票を得ると云ふことは、なかなかむづかしい話、茲に至つて、然らばどうなるかと云へば、全國に細胞組織を持つて居る者は必ず勝つに決つて居る、或は勞働黨とか或は何々黨と云ふ名を指す迄もなく、全國に固い團結を持ち、固い組織を持つて居る者は必ず出る、それで單記でありまするから、最高點の者から取ると云ふことになれば、中央のキヤンデイデート、候補者の推薦なんと云ふものは、そんなに有力なものでないと云ふことに歸着するのであります、新聞が又之を批判するからして、非常に有力だと云つて、之も大河内子爵は御滿足になつたやうでありますけれども、私の懸念する所は、私は新聞に付ては些か經驗を持つて居りますが、殊に今日の新聞がそんな個人的批判なんと云ふことは決してしやしませぬ、一頁や二頁の新聞でそんなことを書くスペースはありませぬ、又そんな個人的のことを今報道して居るやうな時節でもないですから、それは迚もむつかしい、そこで一體植原國務大臣は、先刻非常に譯なく全國の投票と云ふものが出來るだらうと云ふやうなお話でありますが、そんなにうまく行きますかと云ふことを、もう一遍伺つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=56
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057・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 小山君の御質問にお答へ致します、私も全國の選擧がさう簡單に行くなどとは考へて居りませぬ、多分私の言葉の使ひ方が惡くて左樣な印象を與へたとすれば誠に遺憾千萬でありますが、頗る困難だと思ひます、殊に經驗のないことでありますから、それを正しい方向に導いて、出來るだけ良い方に投票せしめようとすると云ふことは、非常な苦心だと思ひます、殊に政黨もまだ能く訓練されて居りませぬ、殆ど政黨も七八年の間解消されて、現在の政黨は生れ變つたのではありまするけれども、最近出來たばかりだから、なかなか津々浦々迄は其の支部も多くは出來て居りませぬ、是は比較的の問題であります、で比較的に、全國に何者が一番行き渡つた網を持つて居るかと言へば、政黨が持つて居る、又選擧に對して何事が一般的の關心をより多く持つかといふと、政黨が持つて居る、そこで政黨の主義、政策は中央で作つて、それが全國に普及される、選擧は地方的であると云ふ御説も御尤もでありますが、それを考へるに付て斯う云ふことも一つ考へたい、此の參議院の選擧が、地區別と、全國的と別々の日に行はれるか、是が同日に行はれるかと云ふことも餘程相違を來すことであります、後には如何樣になるか分りませぬが、現在の此の參議院法が通過致しまして、さうして新憲法が効力を發する五月三日前に參議院の成立することを希望すると考へますれば、之を二囘に區別して致すと云ふことは事實上出來ないと思ひます、殊に市町村の選擧もあり、縣知事の選擧もあり、縣會議員の選擧もあると云ふ譯で、此の三四箇月に連續的に選擧を行はなければならないことになりますから、一利一害、色々のことはありませうけれども、先づ大體に於て此の參議院法が通過致しまして、次の選擧を致す時には、地區別のものと、全國的のものと同日に致さなければならぬと云ふことにならうと思ひます、さうすると、地區別の場合に於ては、其の地方々々で可なり有力な候補者を取つて行くと思ひます、さう小山君の御説の通りに、なかなか口で申しましても、參議院に出る、又出ようとする人、又實際出て、誰の眼から見ましても適任者だと云ふ者は、さう何處にもざらにあるものぢやありませぬ、假に此の參議院の法律が通過致すと假定致します、三大都市は別でありますが、大縣と思はれる縣でも、大體四名の參議院の候補者が出ます、さうすると、それは少なくも倍としても八名の地方的の候補者は出ると、斯う假定しなければならぬ、或はそれだけないかも知れませぬ、或縣に於ては四名の定員の所に四名しかない所もありませうし、四名の所に六名の所もありませう、さう云ふ人が多く地方的の投票を取ることになるものと思ふ、そこで政黨が程宜く宣傳して‥‥どの政黨と言ひませぬが、程宜く宣傳すると云ふことを、出來ないながらも新しい試みで、本當に國家の爲、參議院の爲を思ふならば、出來るだけ努力を致さなければならぬ、さうすると中央で全國的に立てたと云ふ人も、地方的に立つて居る人と幾らか違つた色で選擧民に映る、其の選擧民は地方的の人に一票持ち、中央から出る人に一票持つと云ふことになりましたならば、割合に非常な困難もありませうけれども、中央で推薦する所の全國の人に對して、或程度なかなか一地方に於て壓倒的の投票を取れるとは思ひませぬけれども、全國に亙つて可なり政黨が努力致しましたならば、全國に於て、相當の散票が得られるぢやなからうか、斯う考へます、勿論其の人が特殊の一地方に於て地盤があつて御活動なさるのは結構だが、さう云ふことが假にあるとすれば、是が地域別と全國的と一緒に行はれる場合を考へますれば、地區別の人はどの方にしても、自ら進んで出ようとする人は、成るべく同じ參議院に出るならば、地區別であらうと、全國的であらうと、比較的安全な地方を求めることになると、地區別の場所で地區別に投票を取られる人は多く得られるぢやなからうかと、斯う考へることが現状に於て正當ではなからうか、そこで政黨のものが全國的のものを、又其の全國的の方は或は商工業の方に於ても、或は特別の其の人の御職業柄に於ても、全國の關係があると思ひます、さう云ふ風にして又新聞も御説の通り、是は私よりもつとより多く新聞界、言論界に御經驗のある小山君のことを、言葉を返すのではありませぬが、さう新聞が、成るほど今日の紙面で、今日の状態ではさう宣傳は出來ますまいけれども、先づ全國的の候補者が場面に出ました時は、それに對して多少新聞を讀む人には、先づ或程度のどちらが有力で、どちらが參議院議員として能く國家に貢献を爲し得るかと云ふ位の、全國民が二十日の間に、其のヒントを得られる位の報道はされると、其の位に言論機關を信じて私は宜いぢやなからうか、又今日ではラヂオもあります、ラヂオも可なり選擧の場合に利用されると思ひます、又利用しなければならぬと思ひます、さうして是等が全國的の候補者に對して、相當の宣傳を致し、又候補者自身も有らゆる方面で努力をされ、又全國に亙つて相當の方であれば、友人や知己も御ありでありませうし、又學會の方でありまするならば、帝大系統の學生は、全國的に各方面に亙つて出て居る、有力な方で此の方が宜いと思つたならば、學校の出身者は學生達も各各縁故を辿つて、私は應援し、之を助けると思ひます、決して唯全國の選擧が樂に、簡單に出來るなどとは考へて居りませぬ、頗る複雜な困難なことであるけれども、今日の事情、兎に角憲法に對して第一の制限があり、さうして又關係方面の色々のことがあつて、どうもさう云ふ抑制もあつて、茲に二つの違つた地區別と全國別とを採用しなければならぬ事情にもなつた、從つて之を實行する上に於ては、全國民に此の參議院法案が通りましたならば、政府としても、又貴族院の皆樣方も、自分は今度の參議院には關係がないと云ふことでなく、皆樣方も亦必ずや本當に新しい憲法に對して、參議院の出發として御努力下さる、新聞もさう頼りにはならないけれども、相當に正しい方向に見て戴くことが出來る、國民をそれ程輕く扱はなんでも、之を相當信頼して宜しい、ラヂオも動く、斯う云ふ一切の、學校關係も、其の人の事業關係も、全國に亙つて動くと云ふ場合に於きましては、或程度の地區別の人と全國的の人と、區別の付くやうな選擧が行はれはせぬかと、少くもさう云ふことも半面に於て私が希望して居りますが故に、希望を含んで、結局私の言葉が希望の爲に強くなるかも知れませぬが、樂觀は致さないが、或程度行ける、尚先刻吉田さんの御質問の中に、特に私でなく、大體は内務大臣が微に入り細に亙つて御答になつたから宜いと思ひますが、衆議院の議員の選擧資格と參議院とを同じにすれば、どうも參議院の目的を達する議員が選ばれないではないかと云ふやうな御議論もあつたやうでありますが、憲法の精神に依つて、此の兩者を區別することも私は出來ぬと思ひます、日本の國民が衆議院議員を選擧するだけの資格のある者が、參議院の選擧をする資格が缺けて居るなどと云ふ見方考へ方は、少し是は日本の國民に對して相濟まない考へ方ぢやなからうか、衆議院の選擧權を持つてなし得るものならば、參議院の選擧に對しても正しい考を持つてやると見まして、左樣な希望を以て新憲法の運用を指導して行くことが、正しいことではありますまいか、誠に言葉の足りないことも色々ありませうが、輕くは視て居らない、併し色々の方面から見て、私は今の實情で出來上つたものを宜くしたい、一部希望を以て左樣に努力を致さなければならぬと云ふ考で申して居ることを、御了承願ひたいこ思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=57
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058・小山完吾
○小山完吾君 大變に細かい御説明を承つたのでありますが、私はそれで滿足と云ふよりも、さう云ふ御希望でおやりになつて居るのでございませうかと云ふだけの意味を以て了承致すのであります、併しながら冷嚴な現實と云ふものは如何に働くか、全國を一選擧區として選擧を行ふと云ふことは、未だ曾つてない事柄であるのみならず、其の選擧の本質と云ふものは、其の國國の政治的センス、ポリテイカル・センスと云ふのですか、政治的知識の度合に依つて違ふのですから、是は致し方がないので、立法するに當つては、其の民度と云ふことを斟酌して考へるより外に最善の方法はないので、政府はさう云ふ點に付て私と少し違つた考を持つて御進みになつて居ると云ふことだけを、私は是だけの問答を重ねて、其の結論を得て私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=58
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059・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 他に御發言がございませぬければ、第三章に入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=59
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060・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 只今のにちよつと、小山君から私の質問に關聯致してではないが、まあ或點は關聯をして御尋がございまして、一々申すのも大變でございますから止めますが、私の質問致したいのは、是は植原國務大臣に伺ひますが、私の質問の要點は、先程も能く述べた積りでございましたが、餘計なことを申したもんですから、滿足だの不滿足だのと云ふことになつたので、私が何も政治上の經驗もなし選擧の經驗もございませぬから、皆さんの御意見に對して不滿足だの滿足だのと云ふことは、一つもございませぬ、御深切な御教へに對して謹んで承つて、皆樣方の驥尾に附して努力をしたい、斯う言ふより外に希望はないのでありますが、唯私の切に希望致した先程の質問の要點と云ふのは斯うなんです、詰り政黨と云ふものは非常な責任の重いものだ、私共から考へれば、政黨と云ふものは國家を脊負つて立たなければ、ならぬ、今の是は伺ひ違ひかも知れませぬが、大變困難なことで、政黨が頑張つてみた處で、十分に行きやしないぢやないかと云ふやうなこともおありになりませうけれども、それは私の存じないことで、それは私のやうな政界のことを知らぬ者ですから、どうだか分りませぬが、兎に角色々の方面から考へて、政黨の働く場所は此處にある、今日政局を脊負つて立つ、尠くとも此の參議院の改選に對しては、何處迄も責任として脊負つて立たなければならぬ政黨である、外の問題でない、さう云ふ意味で私は御尋した、それで誤解があるといけませぬから、植原國務大臣に今一應伺ひたい、御困難は非常にございませう、私共のやうな素人ですら非常な困難だと云ふことは存じて居ります、分ります、それは色々な選擧の工合や政界の運動から見て、分つて居る、困難でさへなければ、日本はこんなに潰れることはない、それは厄介なことは分り切つた話である、分り切つた話でありますけれども、如何にむづかしい仕事と言つてみても、政黨が政黨として打つて出た以上は、どんなむづかしい仕事でもそれだけの肚がなければいかぬ、それは社會に立つ政黨の義務である、やりにくいかも知れぬ、むづかしいかも知れぬ、國民が自覺して居ないから、むづかしいかも知れない、新聞紙が紙面が足りないから、十分な宣傳もしないから、むづかしいかも知れぬ、或は地方の地盤の方が中央の人間を出すよりも重いから、引摺られるやうなことになるかも知れない、色々の困難があるかも知れぬが、そんな困難は困難として、何處迄も政黨としては俺が之をやる、何處迄も參議院として立派な人間を一つ出してやると云ふだけの肚が政黨になければならぬ、此の點に付て私は吉田さん、總理でもあられ、又自由黨の總裁でもあられる、自由黨總裁として伺つたのでありませぬが、さう云ふやうな地位を持つて居られる方に對して、御尋した譯であります、それで今一應誤解があるといけませぬから、植原國務大臣に御確め致しますが、定めし御困難でありませうけれども、是非共此の選擧は、參議院の選擧に付ては困難のあることは分り切つて居りますが、政黨としては全責任を持つて當つて戴きたいと思ひます、誤解があるといけませぬから、度々になりますけれども、今一應御確めして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=60
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061・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 大河内子爵の御質疑に對して御答へしますが、其の前に一言申上げたいことは、此の憲法が宜く行くか、此の提案された參議院法が本當に二院制度の必要と二院制度の職責を完うするかと云ふことは、一に國民の政治的自覺と責任に依ることだと思ひます、其の立場から考へますと、實際まだ民主主義に徹底して居らない國民と致しまして、責任を持つて考へる時には、非常に心細く感ずることもあります、若し唯戰爭に負けない國で、日本獨自の立場で憲法を改正すると致して、二院制度を作ると致しましたならば、日本の國情からまだ從來の如き勅選の一部を殘すことは、或は望ましいことであるかとも思ひますけれども、殘念ながら負けた國、有らゆる點で制約を受けて居る國、其の立場を考へまして、既に皆樣方の御贊同を得て公布されました此の憲法を、日本國民の今日の政治知識と國民の自覺とに依つて何處迄も有終の美を濟すやうに、新しい強い出發をなさせなければならないと云ふことを微力ながら私共痛感致して居る者であります、左樣な立場から致しまして色々の缺點を御指摘下さつて、さうして此の法の運用に指針を與へて下さることに付ては感謝に堪へませぬ、けれども先刻來申上げて參りました通り、何と言つても二院制度の運用を完うするには、政黨が主となつて行くより致し方がない、又國民が政黨を信頼して、さうして政黨を助けて行くやうにして行かなければならない、斯樣な立場で全國に比較的網を持つて居る政黨が身を賭してやつたらば、又愼重にやつたらば、比較的全國に亙つて信頼を擔へるやうな候補者も選べはせぬか、其の方々を是非當選せしむるやうに有らゆる言論機關、有らゆる通信機關、ラジオの如きもの、又國民の目に寫る如何樣なものでも、假令映畫のやうなものでも、如何樣なものでもそこに心を協はせてやるやうに致したならば相當の效果は得られる、左樣なことを得たいと思ふ、私共政黨に席を置く者、大河内子爵の御言葉迄もなく、總てのもの又未熟であります、決して理想のものでない、日本の今日の民度、政治思想、慣習、有らゆる社會制度に全部適合するものとは申されませぬけれども、斯樣な日本の内外に亙る國情に依りまして、何と致しても最善の努力を以て、より良き效果を治めるといふ方向に向つて努力するより致し方がないと思つて、其の考で政黨員は居ることだけを申上げて御了解を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=61
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062・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 大變明快な御答で有難うございました、私はむづかしいとか、易しいとか云ふことを伺つて居るよりも、それよりも政黨の意氣込みを伺ひたかつた、それが主であつた、只今植原大臣からは、萬難を排してもやるべきものだ、斯う云ふ風に承りましたから、それで私の其の點の、全體の滿足とか、不滿足は別として、其の點に於ては確かに私は滿足致します、是は植原大臣の、植原大臣は無論只今政府を代表しての御答でございますから兎や角申す迄もございませぬが、此處においでになる總理は勿論のこと、おいでになるとならぬとに拘らず、苟くも政黨に籍を連ねて居られる大臣諸公、さうでなくても閣僚として席を連ねて居る御方々は皆其の御考で參議院の選擧に御盡力下さる、斯う私は了解して私の質問を止めて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=62
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063・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 明日午前十時開會致します、本日は是で散會を致します
午後三時四十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=63
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064・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 伯爵 林博太郎君
副委員長 男爵 高木喜寛君
委員
公爵 桂廣太郎君
侯爵 細川護立君
侯爵 中山輔親君
伯爵 橋本實斐君
子爵 大河内輝耕君
子爵 織田信恒君
子爵 三島通陽君
子爵 水野勝邦君
子爵 松平親義君
山田三良君
桑木嚴翼君
平塚廣義君
永井松三君
吉田久君
下條康麿君
男爵 伊江朝助君
男爵 松田正之君
男爵 肝付兼英君
男爵 松平齊光君
男爵 小原謙太郎君
大木操君
松本學君
結城安次君
三橋四郎次君
小山完吾君
山地土佐太郎君
作間耕逸君
松岡潤吉君
秋田三一君
淺井清君
國務大臣
内閣總理大臣兼外務大臣 吉田茂君
内務大臣 大村清一君
國務大臣 齋藤隆夫君
國務大臣 植原悦二郎君
政府委員
法制局事務官 宮内乾君
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 鈴木俊一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00319461206&spkNum=64
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