1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○参議院議員選挙法案
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昭和二十一年十二月十一日(水曜日)
午前十時十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=0
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001・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 只今より参議院議員選挙法案の特別委員會を開會致します、皆樣に御諮を致します、質問の方も大分進行致して居りますのでありますから、此の際、重要な問題が三四件ありますので、懇談會に入つて十分議論を鬪はしては如何かと思ひますが、御諮り致します
〔「贊成」「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=1
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002・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 御異議ございませぬければ、只今より懇談會に入ります
午前十時十二分懇談會に移る
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午前十時三十三分懇談會を終る発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=2
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003・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 是にて懇談會を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=3
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004・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 總理が御忙しい處を態々御出席下さいまして誠に有難う存じます、又委員長も此の機會に私に質問を御許し下すつて是亦感謝致します、私は此の前質問致しましたのですが、十分にまだ政府の仰しやることが熟しても居らず、皆樣の御論議もどう云ふ風になりますか、樣子が分りませぬでしたが、私は或程度迄で質問を實は打切つたのであります、段々茲に樣子を見て見ると、どうも此の案に付ては益益事柄が結著することがむづかしくなつてしまつた、露骨に申上げると、政府の方に於ても大分異論も御ありになる方もあり、それから委員の方の御論議を伺つて見ても、どうも一々御尤もなんで、私が此處で伺つて居つてどうも是が宜うございますと申上げるやうなことも出來ない、一應の理窟はあると云ふことは分りますが、どうもはつきりしない、結局まあ政府の意見を煎じ詰めて見ると、斯う云ふ所に歸著するらしい、此の案は成程缺點もあるだらう、併しながら國民が能く民主主義に目覺めて、參議院議員選擧法の主たる所を理解して善處したならば良い參議院議員が出來るだらう、參議院らしい參議院が出來るだらう、是がどうも政府で御結著になつたやうな御考ぢやないかと云ふやうに思ふのですが、さう云ふ風に決めてしまつても惡いので、一應總理に御伺したい、私はもう少し政府に踏み込んで貰ひたい、此の案は缺點が多いでせう、政府も缺點が多いと御認めになる、何しろ此の新しい憲法でああ枠を決められた以上、民主主義に目覺めない國民に斯う云ふ憲法を與へて、さうしてうまく振廻せるか振廻せないかと云ふことに付て政府も多大の疑念を御持ちになることは無理はございませぬけれども、それぢや我々の職責も濟まなければ、政府の職責も濟まない、政府としては何時も有力な政黨を御持ちのことですから、何も政黨でどうするとか、或は政府が干渉するなどと云ふことは、是は絶對に避けなければなりませぬし、何も政府が公平な選擧が行はれるやうに、一方には政黨を率ひて居るから、政黨に對して政黨の主張を何處迄も貫徹すると云ふことは、是は差支ないことになります、さう云ふ堂々たる立憲的な態度を以て善處される、さうして我々が希望するやうな、委員の方が全部希望して居られるやうな參議院議員らしい議員を出とす云ふことに、政府がやるだけの御覺悟がありますか、私は理窟よりも政府の意氣込みを伺ひたい、何所迄も踏込んでやるか、それとも政府としてはさう云ふことに餘り携はらない、さうして國民の爲す所に任せる、國民が善處して目が覺めたら能く行くだらうし、目が覺めなければ拙く行くだらう是は國民のする所であつて、政府としてはそれだけのことは今の憲法の許す限り、最善のものと認める選擧法を出すより致し方がない、さう云ふ考でありますか、其の政府の腰の入れ方を一つ伺ひたい、何所迄おやりになるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=4
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005・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 大河内子爵に御答へ致しますが、政府の腰の入れ方は是だと云ふことを具體的に申上げることも出來ない、併し今日の我々の覺悟と致しましては、憲法の、民主主義憲法の眞意等に付ては十分日本國の津々浦々迄徹底致しますやうにしたい、具體的方法と致しますと貴族院、衆議院其の他學者等の有識者を動員致しまして、新憲法の意義及び民主主義の如何なるものであるかと云ふことを先づ第一に國民に徹底するやうに運動を致したい、さう云ふことに致して、昨日でありますが貴衆兩院の諸君にも御集りを願つて、將來の運動等に付て協議を致したやうな譯で、政府と致しましては十分憲法の眞意及び民主主義に付ては國民の納得の行くやうに、又國民が之に協力して、此の憲法の精神を徹底せしむるやうに協力せしめたいと考へて、既に運動に著手致して居ります、又各府縣知事其の他の地方官にも内務大臣から相當に、其の機會毎に適當な訓令を出して居ることと考へますが、何れにしても民主主義を徹底せしむる爲に、出來るだけのことを致したいと云ふ考で、又其の措置も講じて居ります、そこで參議院議員の選擧方法等に付て今御指摘のことがありましたが、何分日本としては新しい制度でありまして、參議院の制度なるものは、外國には既に其の例があり、又多年の經驗もありませうが、日本に於きましては全く新しい制度であります爲に、此度の參議院の選擧法等に依つて御話のやうに、又我々が希望致しますやうに、參議院が參議院としての職責を十分盡し得るやうな組織になつたかならないか、是は其の職責を盡すやうにありたいと考へて選擧法を拵へて居りますが、果して其の希望通りに參るか參らないか、是は經驗のないことでありますから、唯議論の餘地はありますけれども、偖、日本に於て實施した結果が斯うなつたと云ふ具體的の事實を御示しすることは現に出來ないやうな状態でありまして、多少議論流れになるかも分りませぬが、政府と致しましては飽く迄も參議院は參議院としての職責を盡し得るやうな、又發揮し得るやうな構成にしたいと切に考へて居る譯であります、腰の入れ方と申して具體的に斯う云ふ今御話することは、氣持だけなら問題ないのでありましてむづかしくありませぬが、決して輕々に考へて居るものではないと云ふことを御了承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=5
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006・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 それは無理な御尋だと云ふことは存じて居りますが、政府が政界の現状を能く御存じでございませうが、殊に政黨に付ては一身同體の關係にも居られる、それで國務大臣の方から伺ふと云ふと、植原大臣あたりは政黨に依ることを最も必要なものと認めて、さうして之に依つてやつたら相當の效果を得られるだらうと云ふ大分強い御意見も出て居る、さうして委員の中にもさう云ふやうな御考の方も大分おありになる、併し是は政黨の運用一つです、政黨が意氣地がなければ、腰の入れ方が弱ければいけないことであります、強ければ相當に私は行くと思ひます、是は政黨の腰の入れ方が強ければ、選擧法が惡くても實際に相當の效果を擧げることは行くだらうと思ひます、其の邊は私政黨の事情を能く存じませぬ、政府としてはどう云ふ風に御覽になつて居りますか、少し無理な御尋だと云ふことは百も承知致して居りますが、御差支ない限り御答を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=6
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007・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 私も政黨の事情は、自由黨の總裁ではありますけれども、新米でありまして餘り能く承知しないのでありますが、併し今日迄話合つて居りますことは、政黨の今日迄の行き方でなく、違つた行き方で行かなければならぬ、違つた行き方と云へば、結局政黨に新しい人物を歡迎もし、又勸誘もして、さうして政黨の從來の行き方、考へ方を改める迄に政黨自身が考へ直して行かなければいけないと云ふことは話合つて居ります、又進歩黨に於ても同じやうなことであらうと思ひます、何れにしましても參議院或は新しい議院制度を運用して行きます場合には政黨が根本にならなければならぬでありませうし、又さう致しますと、結局は人物と云ふことであつて、政黨が新しい人物の吸收と云ふのもをかしくありますが、歡迎なり、勸誘なり致す考で少くとも自由黨は考へて居ります、一應御答致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=7
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008・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 さう致しますと、是はまあ御尋する迄もないことでございますが、世の中には斯う云ふ風に考へて居る人もあります、參議院なんてどうせ衆議院の附き物なんだからどうでも宜いやと云ふやうに取つて居る人が多いのぢやないか大分居るのです、私は是と違ひまして、衆議院で三分の二の多數を占めるとか、或は憲法改正で參衆兩院同じ權限であると云ふやうなことは、是は可成り重大な問題でありまして、下手をやると云ふととんでもない結果になると私共は考へて居ります、私は人が參議院を言つて居るより重く考へて居る、それで愚念を押すやうでございますが、それでは勿論政黨としても此の選擧法の運用に付きましては公平であるべきことは無論でありますが、唯それと同時に十分に良い人間が出るやうに踏込んでやると云ふだけのことはおやりになるものと斯う承知して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=8
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009・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 御答へ致します、初め憲法草案の研究の時に、一院制度で宜くはないかと云ふ大分議論が強くあつたのです、併し政府と致しましては當初から二院制度で行きたい、即ち參議院なるものの制度を重要致しまして、是非共二院制度で行きたいと云ふ考を以て參議院には牽制と言ひますか、新憲法運用の上から是非共參議院を置かなければいけないと云ふ考へでずつと進んで來て居るのであります、即ち參議院には政府と致しましては相當重要なる注意を拂ひ、又多くの期待を持つて居る譯であります、從つて此の參議院の制度の運用が完全になる爲には有らゆる努力を拂ひたいと考へるのでありまして、政黨が議院政治を中心と致しますれば、政黨に於ても十分な、此の參議院の運用に付て、或は構成に付て、參議院に對して政府が期待する以上の重要なる地位を占むるやうにしたい、又するやうに政黨を指導して行きたい、是が政府と致しましては其の覺悟で居る考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=9
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010・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 色々御答へ下さいまして、御忙しい所有難うございました、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=10
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011・小山完吾
○小山完吾君 只今總理大臣に對して大河内子爵の御質問、之に對する又御應答とに依つて伺つて居つたのですが、私は其の御應答を伺つて、少し私の意見を申述べて置く必要を感ずるのであります、大河内子爵の御質問の中には、何だか政府が選擧に付て力を入れて、さうして良い人間が出るやうにする覺悟があるかと云ふ風に、私の聽き違ひでありますか、さう云ふ風に方向が向いて居つた、又總理の御答辯もそれに應ずるやうな御答辯であつたのでございますが、之に付ては私は根本から考が違つて居ります、政府の爲すことは良い人間の出來るやうな參議院の選擧法と云ふものを定めると云ふことに付てはベストを盡さなくちやならぬですが、是が定つた以上は選擧に對して政府が力を入れるなんて以ての外だ、是はもう自然に國民の主權に現はれたる所の選擇に依つて定まるべきものであつて、我々は參議院の選擧をどうしたら宜いかと云ふ法律を考量するに當つて、政府の其の結果に付ての選擧其のものに力を入れると云ふやうなことを伺ふ必要は毛頭ないと思ひます、そこで私が望む所は全國を一體として參議院を選ぶと云ふことは、果して良い議員を出すと云ふことの目的を達することが出來るか、又それに付て何か弊害が起りはしないか、又其の出さうとするやうな良い人は府縣からも樂に出るぢやないか、是が問題で、それが參議院の選擧法を定める一番の重點であると思ひまして、其の選擧法が出來てしまつた上で、政府が力を入れるとか、何とか云ふことは我々の考量すべき問題でないと私は考へる発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=11
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012・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 大變な誤解があつて誠に遺憾に存じます、政府としては公平にやると云ふことは何でもない、大變な誤解です、それ以上申上げることはない、唯私は是だけのことは言つて宜いと思ふ、政府は公平な態度を以てやるべきものであるが、同時に參議院らしい參議院を作ることに付ては、十分に國民が納得することが出來るやうな方法を取るのは、是は一向差支ないと思ふ、例へばそこ迄具體的に申すのも差控へましたけれども、出來得る限り候補者が政見を發表するに便利なやうに、澤山の紙を寄越す、ラジオも澤山に放送する機會を與へる、又旅行する便利もどんどん與へてやる、あんな所に押込めないで、特別の汽車でも出して全國を旅行させるやうな方法を取る、幾らでもやり方があるのです、それは一向差支ない、さう云ふことを私は申して居る、それから政府はさうだけれども、政黨が中心となる以上、政府の首腦者であり、又政黨の首腦者であられる方は、政府と云ふ地位を離れて、政黨として働かれることが必要なんで、政黨のことを茲で言ふのもをかしいぢやないかと云ふ御話でありますが、兎に角重要な政治の中心機關なんですから、是が如何樣に動くべきものであるか、どれだけ力を入れるか、是だけの大きな力を以て運用して行くと云ふには、私の希望としては、政黨の領袖であり、政黨の幹部であられる方が、全力をそれに注がるべきものである、政黨の方で候補者を決めて、さうして極力之に應援をされることが必要であると思ふ、政府としては兎に角、政黨としては少し位は法には不備のことがあつたつて宜しい、それは引受ける、法律と云ふものはどうせ萬全な法律と云ふものは出來やしない、皆缺點がある、缺點があるが、政府としては最善の努力を盡すが、どうせ百點のものは出來やしない、其の缺點は實際の運用に依つて補ふ、不完全な選擧法を背負つて、さうして立派な議員を出してやる、是が一つ私は言つて戴きたかつた、どんなことでもやる、どんなことでもやつて立派な議員を出す、だからお前達は安心して宜しい、選擧法は拙くても宜しい、お前達は安心して宜しい、自分は政黨の幹部である、此の力を以て行けば、選擧法が惡くても、立派な議員を揃へてやるぞと云ふ御答が欲しかつた、併し今の御答でそれだけの意氣込は相當おありのことであると思ふ、おありのことと思ひますから、私はそれ以上再質問は致しませぬ、何か政府が選擧干渉でもやるやうに私は希望したと云ふことになると、是は大變な誤解になりますから、其のことだけは茲に明かに致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=12
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013・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 只今より懇談會に移ります、速記は止めます
午前十時五十四分懇談會に移る
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午後三時四十一分懇談會を終る発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=13
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014・林博太郎
○委員長(伯爵林博太郎君) 明朝午前十時引續き懇談會を致します、本日は是で散會を致ます
午後三時四十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=14
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015・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 伯爵 林博太郎君
副委員長 男爵 高木喜寛君
委員
公爵 桂廣太郎君
侯爵 細川護立君
侯爵 中山輔親君
伯爵 橋本實斐君
子爵 大河内輝耕君
子爵 秋元春朝君
子爵 織田信恒君
子爵 三島通陽君
子爵 水野勝邦君
子爵 松平親義君
山田三良君
桑木嚴翼君
平塚廣義君
永井松三君
吉田久君
下條康麿君
川村竹治君
男爵 伊江朝助君
男爵 松田正之君
男爵 肝付兼英君
男爵 松平齊光君
男爵 小原謙太郎君
大木操君
田所美治君
松本學君
結城安次君
小山完吾君
山地土佐太郎君
作間耕逸君
淺井清君
國務大臣
内閣總理大臣兼外務大臣 吉田茂君
内務大臣 大村清一君
國務大臣 齋藤隆夫君
政府委員
法制局次長 佐藤達夫君
内務事務官 郡祐一君
同 鈴木俊一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009101169X00619461211&spkNum=15
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