1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○内閣法案
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委員氏名
委員長 公爵 岩倉具榮君
副委員長 子爵 森俊成君
侯爵 鍋島直泰君
伯爵 柳澤保承君
子爵 岩下家一君
子爵 植村家治君
子爵 大久保教尚君
子爵 稻垣長賢君
林春雄君
牧野英一君
佐々木惣一君
白根竹介君
村上義一君
男爵 伊藤一郎君
男爵 渡邊修二君
男爵 岩村一木君
男爵 山根健男君
男爵 明石元長君
野村嘉六君
澤田牛麿君
田島道治君
鏑木忠正君
原泰一君
小山完吾君
小野耕一君
岩淵辰雄君
淺井清君
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昭和二十一年十二月二十日(金曜日)
午前十時十七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=0
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001・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) それでは是より開會致します、先づ植原國務大臣から御説明を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=1
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002・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 只今委員會に付託されました内閣法案に付きまして御説明致します、先づ第一に内閣の職權、組織、責任、運營に關する基本的な規定を定めて居るのであります、即ち第一條として、内閣は、日本國憲法第七十三條、其の他日本國憲法に定める職權を行ふものであることを規定して、行政權の主體としての職權を明かにし、第三條第一項として、内閣は首長たる内閣總理大臣と國務大臣十六人以内を以て之を組織することを規定して組織の根本を定め、第二條第二項として、内閣は行政權の行使に付て國會に對して連帶責任を負ふものであることを掲げ、行政權行使に付ての國會に對する責任を明かにし、第四條として、内閣が其の職權を行ふのは閣議に依るものであり、閣議は内閣總理大臣が之を主宰すること等、閣議に關する事項を規定して、内閣の機能、運營の根本を定めたのであります、第二に、内閣を組織する各大臣と各省其の他行政各部との關係を明かにする爲め、第三條として、各大臣は憲法上の主任大臣として、出でて各省大臣等となり、行政事務を分擔管理することを規定致して居るのであります、尤も所謂無任所大臣の存することを妨げるものでないことは第三條第二項に明かであります、第三に、首長たる内閣總理大臣の職權に關する規定を設けて居ります、即ち内閣總理大臣の職權として、第五條に於て、内閣を代表して議案を國會に提出し、一般國務及び外交關係に付て國會に報告すること、第六條に於て、閣議に掛けて決定した方針に基いて行政各部を指揮監督すること、第七條に於て、主任の大臣間に於ける權限に付ての疑義は閣議に掛けて之を裁定すること、第八條に於て、行政各部の處分又は命令で適當でないものに付ては、之を中止せしめ、内閣の處置を俟つことが出來ることを定めて居るのであります、第四に、内閣總理大臣及び主任國務大臣に事故ある時竝に是等の大臣が缺けた時、其の職權を臨時に行ふ者を規定する爲第九條及び第十條を設けました、第五に、政令に規定し得る事項の範圍を明かにする爲、第十一條として、政令には法律の委任がなければ義務を課し又は權利を制限する規定を設けることが出來ないことを定めました、本來政令は改正憲法第七十三條の規定に基いて憲法及び法律の規定を實施する爲に内閣に於て制定し得るものでありますが、本條は國民の權利及び義務に關する新憲法第三章等新憲法の原理に即するものであります、最後に内閣の補助部局に關する規定を設けました、即ち第十二條第一項乃至第三項に於て、内閣の補助部局としての内閣官房、法制局に關する事項を規定し、更に同條第四項に於て内閣官房及び法制局以外必要な補助部局を置き得る旨を規定したものであります、以上は概ね臨時法制調査會の答申に則つて立案致して居る次第であります、宜しく御審議の程を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=2
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003・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 初めに全般的の問題に付きまして御質問を御願ひ致したいと思ひます、佐々木委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=3
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004・佐々木惣一
○佐々木惣一君 私は全般的の立場からの質問と、それから各條に付ての質問とありまするが、全般的の質問と云ふ只今委員長の御話でありますから、それに限つて申上げます、但し是は短い時間に皆さんから御質問があるのですからして、委員長に御願ひして置きますが、私の質問が長くなるやうでしたらちよつと御注意願つたら……さう御考になりましたら御注意願ひます、さうしたら私適當に止めるやうにしますから……、それで全般的の質問として、ちよつと簡單なことですけれども御尋ねして見たいと思ひますが、言ふ迄もないことですが、内閣法は私は非常に重大な法律と思ふものですからして、それで之に付きましては矢張りはつきりとして置く必要があると思ふやうなことに著眼して御尋ねして見たいと思ひます、第一には、内閣法と云ふものは、一體内閣に關しましてどう云ふ種類の或は性質の事柄を規定すると云ふ方針を持つて居るのかと云ふことを、ちよつと御尋ねして見たいのです、それは言ふ迄もなく只今御説明がありましたやうに、組織とか或は職權とか云ふやうなものに付きまして規定することは是は言ふ迄もないのですけれども、併しそれは第一に、其の根本は憲法に規定してあるのであります、先刻基本的と仰しやつたですが、それも其の言葉を咎める譯ではありませぬ、但しそれに關する本當の基本的のものは憲法に規定してある、それから其の憲法外のことを此處で規定するんだらうと思ふのでありまするが、併し私の考に依りますと、さう云ふ内閣の組織及び職權に關しまする憲法以外の法で規定すべき事柄は可なり多いと思ふのです、それが總て内閣の組織及び職權に關して此の内閣法で規定し終つたものであらうかどうかと云ふことに付て、私は此の内閣法と云ふものを一つの法典として纒める以上はもつと規定すべき事柄があるのぢやないかと、斯う思ふものですから、其のことを先づ御尋ねして見るのですが、例へばどうせ内閣と云ふものが合議制の一つの機關としての職務とか組織は是で分りますのですが、併し其の内閣を構成して居ります所の國務大臣は、別に此の憲法にも亦此の規定にもありまする通りに、それぞれ一つの事務を分擔すると云ふことにもなつて居るのですね、でありまするから、此の事務の分擔をすると云ふことを法の上で謳ひましたのは、今の現行憲法にはない所でありまして、それで此の事務の分擔と云ふことに付て可なり從來の制度とは違つた一つの規定と云ふものがなければならぬかと思ふのですが、さう云ふ點に付てどう御考になるのでありませうか、もう少し實質的に申しますれば、どうせ此の内閣の、詰り行政權の行使でありますが、詰り行政事務と云ふ文字も使つてあるのでありますが、何れに致しましても立法、司法以外の行政と云ふものを内閣と云ふ一つの合議制の機關だけで決定すると云ふことは出來るものではない、行政事務に付きましては、言ふ迄もないことですけれども、其の事務を決定をすると云ふさう云ふ作用と、それから其の決定したる所に從つて其の事務を實行すると云ふ斯う云ふ作用がある、そこで内閣が一つの合議制機關としても事務の決定及び事務の實行の二つがあるのでありますが、さうでなしに例へば教育なら教育、或は警察なら警察と云ふやうな或特定の種類の事務と云ふものに付きまして、固より内閣は方針を決定するでありませうけれども、決定したる方針に從つて實行すると云ふ機關がなくちやならぬ、其の機關は言ふ迄もなく其の範圍内に於て責任を持たなければならぬと思ひますから、さう云ふ内閣全體の職責及び之に伴ふ所の責任と、それから事務分擔者の職責及び責任と云ふものの關係がどう云ふ風になるものでありますか、現行の内閣官制の範圍であるのですけれども、此の今の内閣法は……どうもそれだけでは是はいかぬので、或は内閣各省官制通則とか、場合に依りましては、各省官制に入つて居ること、其のことでも此の内閣法の中に入れた方が宜いやうに思ふのでありまして、其の分界が頗る明確でないぢやないかと思ふのです、例へば教育部内なら教育部内に付て、或行政上の批評さるべきやうなことが起りまして……内務省なら内務省部内に付て、さう云ふ時には所謂責任と云ふものは一體誰にあるのか、内閣全體がさう云ふことに付ても責任を、所謂内閣全體の責任と云ふことになるのでありますか、さう云ふ程度に至る事項がありまするけれども、併しながら或は其の當該の大臣と云つて宜いか、其の名稱も出て居ないのですから分らないのでありますが、要するに當該の事務を分擔して居る其の人が、其の國務大臣が責任を負うて辭めるにしても、其の國務大臣だけが辭めたら宜いと云ふやうな問題が起るのでありますが、其の場合には、内閣全體の責任となり……例へば文部省なら文部省内部で以て一つのことで一つのしくじりを起す、内務省なら内務省内部で以て一つの問題が起つたと云ふやうな時には國務大臣は、是はどう云ふ責任になるのかと云ふやうなことを一つ御尋ねして見たいと思ふのですが、要するに内閣全體の特定の職責及び茲に規定されてありまする所の、所謂分擔管理者と云ふものの職責及責任との關係ですな、限界、關係と云ふやうなものに付て御尋して見たいと思ふのであります、例へばストライキならストライキと云ふものが非常に問題となつた、さう云ふ時には、今なら其のストライキを所管されて居られる所の、さう云ふ事柄を所管されて居る所の大臣だけの責任となるのであるか、將來はどの大臣が所管になるか知りませぬけれども、内閣全體の責任と云ふものにそれが直ちになるのであるかと云ふやうなことなんですね、そこの所がどうも斯う云ふ此の規定では甚だはつきりとして居ないやうでありますから、規定自身のことはどうでも宜いのですが、さう云ふ時に別々の見地で責任を分つと云ふ建前であるか、或はさう云ふ時でも内閣が全體として連帶責任を負ふと云ふ原則が直ちに當嵌まるかと云ふやうなことをちよつと御尋して見たいのです、全體的のことに於きましては……、それから更に行政の主任大臣と云ふものが居られて、行政の分擔管理と云ふことがありまするが、直ちにさう云ふ分擔管理をせない所の大臣もあり得るのですからして、さう云ふ大臣と、それから分擔管理をする大臣と、それから分擔管理と云ふものをせない所の大臣と云ふものとの、詰り何と申しますかな、是は各條に入るのでありますが、國務大臣の數は十六人以内と云ふことになつて居るが、さう云ふ所に何だか、例へば職務を分擔する人の數の方を多くすると云ふ建前にするとか、或はさうぢやなく、何時かも問題になりました通りに、所謂國務上の内閣と行政上の内閣と實際分つてしまつて、さうして國務上の内閣を主たるものとすると云ふ意味で、成るベく行政事務と云ふものは國務大臣と云ふものに擔當せしめないと云ふ、所謂今の國務大臣を中心とすると云ふやうな概念、是は議論としてあつた譯でありませうが、それはまあ何條かの建前では、是は妨げないとありまするから、寧ろ分擔せしむると云ふ方を主たる建前にすると云ふ風に取れますが、さう云ふ風に解釋して宜いものでありませうか、又第三條の如く、二つあり得ると云ふことを規定したのでありますか、さうでなく、こちらが本來の建前だと云ふやうに考へたものでありませうか、是は可なり事實上の問題でなしに、從來から内閣の制度として國務大臣の數と云ふものを成るべく少くして、さうしてそれらが一つの全體的の立場で國務と云ふものを決定すると云ふ、さう云ふ中心機關だけにした方が宜いと云ふやうな、即ち國務大臣としてと云ふものと各省大臣と云ふものを全然區別した方が宜いと云ふやうなことがありまして、それで以て豫算分取主義と云ふやうなことを制限すると云ふ説があつたのでありまするから、さういふ説に對しましては、此の法律は、それは反對に答へたものと云ふ風に考へられるものであると云ふやうなことを私はちよつと御尋して見たいのであります、一般論として……、それだけのことです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=4
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005・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 佐々木博士に御答へ致します、博士の能く御承知の通り、新らしい憲法に於ては、申す迄もなく國權の中心は國會であります、内閣なるものは現行の内閣の状態とは甚だしく違つたものになると云ふことを豫想して、此の官制を定めて居ることを、先づ第一に御了解を願ひたいのであります、現行憲法に於ては、司法權や立法權のことは、相當よく規定して居りますけれども、行政權のことは唯國務大臣の規定のみを置いて、どう行はれるかといふことを規定して居らない、それが動もすれば軍閥官僚に行政權を以て立法司法迄も支配されるやうな状態になつた原因であると云ふことも、佐々木博士の能く御承知のことであると思ひます、新憲法にありましては、國會が中心となつて政治を行ふ、左樣な形に參るか參らないか分りませぬけれども、英國の行政機關と云ふものは、立法府の出店のやうな、立法府の意思を代表して、立法府で決定した國策を先づ第一に内閣が其の代りになつて行政上之を處理すると云ふ爲に、英國に於ては大臣と云ふものがなくて、樞密顧問に任命されて、それが立法府を代表して行政權を扱つて居ると云ふやうなことは、私の申上げる迄もなく、博士の能く御承知のことと思ひます、日本も左樣になるかならぬかは分りませぬけれども、立法府が中心となつて、さうして其の立法府に於て多數を制する政黨が内閣を作ると云ふことになるのは當然であります、從つて博士の只今御質問になつたやうな、色々の小さな、微妙な細則を作らない方が、實際は憲法の運用上宜いのではありますまいか、どうも日本人は大陸主義――細かしい針のめどを突いたやうな規定や法律を作つて、それに人間を當て箝めて行かうと云ふ所に過去の過ちが多くあつた、國會が中心となり政治を行ふ際には成るべく民主政治をより良く實現せしめる爲に、色々細かしい規定は作らないで、さうして成るべく自然に慣例でうまく展開して行くと云ふことが一番良い事柄のやうに考へて居ります、左樣な考へからして先づ此の内閣法を定めた、從つて色色博士の御氣付のやうな細かしいことが規定内に漏れて居ることもあらうと思ひますが、成るべく新國會が出來て政黨政治が行はれる場合に於ては、さう云ふものは自然の展開に委せて、良い慣例が出來たり、惡いことは惡いなりに是正して行くと云ふことが、本當の立憲政治の滑らかな運用を期し得られる所以ではなからうかと考へて居ります、そこで各大臣の分擔のことでありますが、是は何れ行政事務を規定致しまする別な法律が出來まして、其處で只今の文教に關することは文部省と云ふものがやる、産業に關するものは、まあ只今の商工省や農林省で一緒になつて産業局と云ふやうなものが出來るかも知れませぬが、斯う云ふものでやる、けれども移り變りの時でありますから、何としても現在の事實を一部取り入れて行かなければならない、從つて行政事務は別な法律で作られて、内閣の機構等も變ると思ひます、さうなれば、例へば先刻文教の御話がありましたが國策として文教を掌る、教育の方針を定めると云ふ事は、閣議で決まると思ひます、其處で小さな別別なことは、政令に依つて、或は色々の細則等を設けて、文部大臣なら文部大臣と云ふものが文教の大臣として、新しく定められる法律に依つて内閣の構成が決められる場合にさうなると致しまして、文部大臣なるものがそれを掌る、さうして其の末端の事に至りましては、文部大臣が責任を持つてやる、國策として文教の方針は閣議で決める、其の閣議で決めた事に對しては、當然内閣が連帶責任を負ふ、末端の事に付きましては、文部大臣の權限内でやることは文部大臣が其の責任を取る、さう云ふことに於て行違ひが成るべくないやうに、若し行政各部の處分や命令に於て、内閣の方針と違ふやうなものは之を中止せしめたり、其の間に意見の違ひがあるやうな場合には、之を内閣の閣議にかけて處理すると云ふ爲に、八條の規定が設けてあると御了解を願つて宜しからうと思ひます、さうして此の十六人の大臣の中で行政事務がはつきりと分擔せられるやうに、法律で定められました場合に、此の十六人の中の何名が行政事務を擔任する大臣となり、他の者が無任所大臣として存在する、國政燮理に對する時には、行政の各部を擔任する大臣も無任所大臣も、責任は同一であると思ひます、さうして只今申上げます通り、極く細末の行政事務になりましたならば、之を擔任するところの大臣が其の責任を負ふ、但し其の行政事務を擔任する一區劃の大臣でありましても、其の監督のことに於て萬一非常な過ちでもありました時には、是は政治上の輿論として、國會が出來まして、是が政治上の中心となつて行きます場合には、細かしいことで其の責任は何れにするかと云ふことよりは、寧ろさう云ふ問題は、軈て政治上の解決を俟つやうなやり方が出來て行くことが、立憲政治の運用に非常に宜いことではありますまいか、此の點は佐々木博士も私に御同意下さることと信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=5
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006・佐々木惣一
○佐々木惣一君 いや、それは大臣の御話能く分りましたがね、私の質問したのは、そんな細かいことを此の規定ですると云ふことでなかつた、私の申上げた積りはですよ、さう云ふ意味でなかつたですが、私は今日所謂各省大臣なるものは何と名稱を御附けになる御積りか、法制局長官が御出でになつて居るから、どう云ふ名稱を付けられるか知らぬが、それの責任の根本的のものは矢張り内閣法で決めた方が宜いではないか、例へば今日ではまあ、各省大臣が其の所管の事務を掌りましてね、其の責に任ずと云ふ規定がありますが、それ位のことですよ、末端的の細かいことをどう斯う言ふのではありませぬが、さう云ふ事でも内閣法に書いて置きませぬと、さう云ふ點で將來或は問題が起りはせぬか、何となれば今度は内閣が連帶責任になることは本來の建前でありまするから、文部行政事務だけの問題が起りました時には、實は文部大臣だけが責任を負うて辭めるだけで宜いことでも内閣が辭めなければならぬと云ふやうなことも起り得ると思ふんですがね、さう云ふことをはつきりとする爲に、今度内閣が連帶して責任を負ふと云ふことになつたら、それは非常に宜いんです、併しそれが惡用されて、何でも彼でも内閣全體が辭めなければならぬと云ふ問題にならぬやうにと云ふ意味です、それ位のことで、私二、三箇條入れたら宜いと思ふんですけれどもね、それは恐らく官廳法に出來るだらうと思ふんです、けれども私は今度は其の點は官廳法ではいけないと思ふ内閣と云ふやうな特殊の問題であるからして、普通の官廳と違ふから……、でありますから、さう云ふ點だけを二、三點此の内閣法に入れたらどうかと思つただけですが、どうせそれは必ず今度出來る官廳で、今後の官制に代るものとして條項があるに違ひないと思ふんですけれどもね、其の條項は内閣法に入れた方が宜いぢやないかと云ふ考ですが、是は別に御答辯は要りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=6
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007・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) いや、大いに參考になることでございます、又それからさう云ふことを考へて、皆責任を感じて反省して民主政治をやつて行かなければならない、なかなか民主政治と云ふものはむづかしいものだから、と云つて細かしいことまでなかなか規定したら、それに引つ掛つてしまふ、成るべく國民の政治的知識と反省とに依つて、餘り細かしく規則を作らぬでやつた方が宜しいのではなからうかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=7
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008・佐々木惣一
○佐々木惣一君 それは細かいことを作らぬのが宜いと云ふのは同意見で、もう一つ申上げたいことは、國務大臣の植原さんの御考はどうでせうか、十六人になる中でですね、先刻ちよつと問うたんですけれども、所謂無任所大臣が多いと云ふことは許されぬ譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=8
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009・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 法律の上から、無任所大臣の數が多いか、或る行政事務を擔當する大臣の方が多いかと云ふことは、決めても居りませぬけれども、事實上今の行政事務の状態を見まして、今行はれて居る所の内閣の官制の元から申しまして、行政事務を擔任する大臣の方が全體に於て數が多くなる、無任所大臣の方が極く少い部分を占めるものと御了解下さつて宜からうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=9
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010・佐々木惣一
○佐々木惣一君 さうですか、能く分りました、私は今度は、内閣が全體で辭めるでせう、大臣も全部御辭めになる場合ですね、責任の問題が起つたら……それで私は今の一般の風潮に從ひましてね、官吏、專門家、行政事務は或意味に於ては專門家でありますから、行政に關することは……、議會は凡そ國政に關する方針を決定致しますけれども、其の國政の中で、行政だけの範圍で又方針と實行とありませう、行政の範圍で方針を決定するのは内閣だ、今度はそれを實行するのも國務大臣でせう、是は別のことになりますから許して戴いて、實は今の官吏を非常に何だか輕く思ふやうな風潮があるのですね、私はあれに反對なのです、矛盾して居るやうですけれどもさうではない、現行の制度のやうに議會と云ふものが非常に強い力があると云ふことはもう大贊成ですが、同時に官吏を輕蔑したり輕く見ると云ふことは、非常に國家の爲に宜くないと豫ねて、思つて居るものですから、私は官吏と云ふものが、文部省なら文部省、内務省なら内務省で練達した人は、官吏として最高の地位である國務大臣と制度上同じく尊敬を受けるやうな所に登せたいさう云ふ制度を考へて居ります、さう云ふ時には私の申しまするやうな行政事務に練達の人と他の國務大臣と對等の地位に……將來親任官と云ふものがあるかどうか知りませぬが、假に現行制度で言へば、ずつと或省で練達した者は矢張り親任官に行けると云ふやうな制度にしたいと云ふのが、現行制度上の建前なのですから、さう云ふ建前から言へば、矢張り各國務大臣が皆行政の責任者になると云ふことは、同時に他の行政の專門家の地位が登つても宜いと云ふことになりますから、さう云ふことでちよつと御尋ねして見たいのですけれども、さう云ふ制度を考へる爲の前提として……唯それだけです、質問より自分の意見を述べたのですが、斯う云ふ意見に付てはどうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=10
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011・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 誠に御尤もな意見だと思つて居ります、此の内閣法が出來ましても、内閣は國會に現はれて居る大多數の意思を體して國政を燮理する、其の間に於て行政上のことは内閣の閣議に於て決定する、其の決定したものを部局に依つて主務大臣が擔任することもありませうが、其の外にですな、官吏が行政事務の遂行に付て重要な任務を執らなければならない、其の官吏に對しては十分社會的に敬意を表される所の途を開いて置かなければ、大切な官吏道がなくなるのぢやないかと云ふ御意見だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=11
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012・佐々木惣一
○佐々木惣一君 全くさうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=12
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013・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 私は其の御意見は誠に至極御尤もだと思ひますが、例へて言ふならば、法制局長官を前に置いて何ですが、斯う云ふ法制局長官のやうな事務を擔任して官吏として行くやうな人は、多年の間に於ては國務大臣と同一の待遇を受けると云ふやうな形を採つて、專門の事務を取扱つて行く官吏に對しては相當な深い考慮を拂はなければならぬのぢやないかと云ふことは、誠に御尤もで、私は本當の民主主義の政治が行はれるやうになれば、さうなるではないか、英國あたりでは商務官として居つた人も非常に功績が良ければ華族にする、多年日本の大使館に居つたジョージ、サンソムは、歸ると直ぐ華族に列せられた、日本の規則では領事をやつた者が親任官の待遇を受けたことがありませんが、領事だけをやつて海外に居つて役人として働いた者が、其の功績に依れば、假令領事であつても、國家の最高の敬意を受ける勳章と云ふものであるか何と云ふものであるか知らないが、さう云ふ待遇をするやうになることは結構だと思ひます、さう云ふことは成るべく官制で定めるよりは、實は慣例で行つた方が本當の民主政治の上では宜くはなからうか、御意見は誠に至極御尤もと思つて、大いに參考となると思つて居ります、有難うございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=13
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014・佐々木惣一
○佐々木惣一君 もう總括質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=14
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015・野村嘉六
○野村嘉六君 今の質問に牽聯して簡單にちよつと……、今佐々木君も御述べになりました「國務大臣十六人以内を以て、これを組織する、」斯う云ふ風になつて居りますが、此の十六人以内と云ふのは、矢張り何か目安があつて十六人以内でそれで差支ない、斯う云ふ考から此の人數に付ての制限をなされたのでありませうか、それから又其の他何か根據があるのでせうか、詰り或は現在の各省の事務長官たる大臣の數を目安にされたのであるか、又所謂無任所國務大臣、斯う云ふ人も見込んで、總體を見込んで、さうして十六人以内となされたのでありませうか、何か是は據る所があつてのことでありますか、其の點を一つ明かにして戴きたい、さうしますると云ふと、一面から云ふと、其の據る所が明かになつた結果、又それに對する考が出て來ると思ひますから、此の點に付て……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=15
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016・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 野村君に御答へ致します、新しい憲法が行はれるやうになりましても、日本の政治、經濟、社會、産業、文教の状態が俄かに激變するものとは考へられません、從つて現在の制度の下に於て行はれて居る所の行政分擔の實情を考慮に入れ、又新事態のことも考へまして、さうして十六人以内と定めたのであります、例へて言ひまするならば、地方分權になりますと云ふと、現在の内務省の機構などにも相當の狂ひの來るものと思ひます、是は新しい憲法が行はれた後でなければ分りませんが、現在の國務の状態が新しい憲法が出來たからと云つて俄かに激變しない、現在行はれて居るものを先づ大體基礎の標準にして宜い、斯う云ふ建前から國務の分量、行政事務の扱ひ方新事態の發生することを考慮致し、更に現在の無任所大臣と云ふが如き國務大臣の存在をも考へまして、十六人以内として先づ宜いものと、さう云ふ標準の下に十六人以内と定めたことを御了承願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=16
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017・野村嘉六
○野村嘉六君 今の御答辯に依れば、詰り現在の大臣の數を大體標準としての御定めと云ふ答辯でありました、兎も角差當り陸軍、海軍と云ふものは將來なくなるのだから、此の二人は詰り將來はもう必要なくなる、それから極く正確なことは分りませぬが、確か此の二人を除いた後は、或は内務、文部其の他を併せて八省かと思つて居るのです、そこは調べれば直ぐ分ります、そこで無任所大臣に付ては是は國政全體に對する關係だからして豫め數を以て決めるものぢやないと思つて居りますが、併し無任所大臣に付ても、豫め是だけの人は日本の今日の國事を擔當しなければならぬ國務大臣として必要のあると云ふ或は標準があるかも知れませぬが、私にはそれは分りませぬが、唯過去の歴史から眺めて見ますると云ふと、無任所大臣が時に二人のことも三人のことも、時には一人も居らぬと云ふことも過去の歴史にはあるやうに思はれます、それですからして、此の點に對しては詰り國事を處理する必要上から十六人以内と云ふ御定めになる考であると、斯うなりますればそれで宜いが、若し何か據り所の標準があつたならば標準だけを御示し願ひたい、私は多數であらうが少數であらうが、其の問題に付ては何も考を持たず、又それに對して意見を持つて居るのでありませぬ、何か標準があつたならば標準を示して戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=17
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018・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 能く御質問の趣意が分りませぬが、先刻私が標準を申上げました國務、國政と云ふものは、假令新憲法が出來ましてもさう激變するものでなからうと思ふ、現在の先づ省が分れて居りますと、さう云ふ省が、同じ省が出來たが宜いか惡いか、新らしい憲法が出來まして決まることでありませうが、大體今御話の通り、現在に於ては内閣官制は兎に角、實際に於て陸軍大臣も海軍大臣もありませぬ、そこで御説の通り十名であります、それに總理大臣を加へて十一名になります、又只今勞働省を作れと云ふやうな意見も相當強くあります、是は省になるか省にならぬか分りませぬけれども、さう云ふことは極く近き將來に於て考へなければなりませぬものとして、先づ立法致しても宜いのではありますまいか、例へば勞働省とか、國土省とか、或は水産省とか云ふやうなものを作れと云ふやうな意見も相當あります、そこに新らしい状態が起つて來て多少の裕りがあつても宜しい、又無任所大臣と云ふものを現在に於て存置する如く、是も誠に行政の運用上便宜な有利な能率的のものだから、斯樣なものを考慮に入れて、さうして大體十六人以内として置きましたならば、是が十二名になりましても十三名になつても宜しいのであります、それならば枠を何故定めるか、何れか枠を定めて置かなければ内閣を組織する上から申しましても不便でありますから、枠を定めて置いた方が宜しい、斯う云ふ考や標準の下に十六人以内と定めたものと御了承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=18
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019・野村嘉六
○野村嘉六君 それで能く分りましたが、結局現在の官制と現在の立場と總てを合せると約十人だ、それで矢張り勞働大臣とか其の他又將來の關係に依つて伸縮も出來るであらうからして、先づ十六名と云ふものを適當と思つて定められた、斯う云ふのですが、さうすれば、私は數が多いとか少いと云ふことを質問する意思がなくして、何か標準があるかと云ふことを伺つたので、それで現在の矢張り官制に基いて大體の標準を定められたと云ふことでありますからそれで宜しうございます、それから總體に關する質問ですが、此の内閣法では、行政權の行使に付ては國會に對して連帶責任を負ふ、斯う云ふのでありまして、是は政治上最も重大問題と看做さるべき連帶責任の問題であります、内閣法殊に行政關係であるからして、勿論行政權の行使に付ての責任は當然であらうと思つて居りますが、さうしますとちよつと感ずるのは、行政權に對する連帶責任は内閣法で十分分るが、さて國民に對する何か責任がないであらうかどうであるか、假にあるとしたならばそれは徳義上の責任であつて、所謂行政權或は權利とか法理とかに基いた此の行使に付ての責任ぢやないので、單純に一般の道徳上に對する責任は國民に對して執らなければならぬであらうと云ふ考も起り、又國民に對して責任を若しも失政がある時には當局大臣が執ると云ふ觀念は、是は普通に誰でもさう信ずると思ひます、そこで國民に對する責任と同時により以上に強く感ずるのは、天皇に對する責任は、植原國務大臣も能く御承知の通りに、以前は先づ責任は天皇に對して執らなければならぬ、斯う云ふ觀念で我々は參つて居つたし、又國民一般も、失敗したならば誰に對して責任を執るのだ、それは天皇に對して責任を執るのである、斯う云ふ觀念で參りました、併しながら此の改正された憲法に於てここに書いてある通りに、行政權に對する所だけは極く明白になりまして、それは結構でありますが、國民に對するとか乃至は天皇に對するのはどう云ふ御考を持つて居られるのであるか、過去のことを申しましたならば、能く初期議會以來問題になるのは、袞龍の袖に隱れると云ふことは、我々は衆議院に居た時分にそれを問題にして、時の政府を攻撃し、又政府は袞龍の袖には隱れて居らない、斯う云ふのが大變論議を戰はしたことがあるのであります、併し今はさう云ふことは改正憲法に於て、袞龍の袖に隱れるとか隱れぬと云ふ問題はなくなつたことと存じます、但し唯私は内閣法は、所謂機關として内閣大臣が政治的の責任を執る根本を定める必要から、此の改正案を提案されたものだらう、斯う存じます、さうなります以上は、私は國民に對する責任はあるとしたならば是は單に道徳上の責任に俟つのであるか、又天皇に對する責任と云ふものはないのであるか、それは此の新憲法の第三條には、詰り天皇陛下の行使さるる此の權限は七つか八つ擧げて書いてあります、從つて所謂政治上の主なる點に對する關係を持つて居るのでありますからして、詰り七條でありました、七條に一から十迄書いてあります、是は天皇の國事に對する行爲に屬することでありますが、さうすれば此の内閣の助言と承認に依つて國事を天皇は行はせられるでありませうけれども、併しながら之に若しも失態のある時には、此の内閣法に於て大臣が責任を執るのではないか、斯う云ふ感じもされますからして、此の點に對して御伺をします、即ち言ひますと云ふと、國民に對する責任と云ふものはあるかないか、それから天皇に對する責任はどうであるか、さうして法律關係を演繹すると云ふと、第七條には天皇の詰り國事に關して行ひなさるる行動を一から十迄記載してある、斯う云ふ譯でありまするからして、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=19
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020・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 御答へ致します、先づ第一に御了解願ひたいことは、責任と云ふ言葉であります、責任と云ふことは非常などうも曖昧な解釋が出來るのですが、是は元々私は英文の解釋だと思ひます、英語で「レスポンシブル・トゥー・フォア」と云ふとはつきりすると思ひます「レスポンシブル・トゥー」と云ふと、責任を執ると云ふことは政治的の責任を執つて進退すると云ふことと思ひます、普通責任があるかないかと云ふことは道徳上の責任のことで、總て道徳上の責任は誰でも其の任務に當つて居る者は責任を執らなければならないと思ひます、道徳上の責任は持つべきが當然だと思ひますが、政治上の責任と云ふ、進退するかしないか、斯う云ふことでありますが、そこで新しい憲法に依りまして、國政に對して總ての責任を國民に執るものは國會であります、國民が選擧して多數の議員を出す、其の國會に多數を占めるものが國政に對して責任を執るのであります、其の國會の多數を代表して内閣が作られるのであります、其の多數の意見を代表して國政を處理し、行政權を擔任する、其の點に於て、若し内閣に過ちあるとすれば連帶上國會に向つて進退を決する、國會に對して責任を執る、内閣は國會に對して責任を執る意味に於て間接に國民に責任を執ることになりますが、政治上の立憲制の下に於ては、國民との國政上の責任は國會だと思ひます、次に天皇に對することでありますが、天皇は無答責であらせられます、從つて内閣の進退が天皇に影響するが如きことがあつてはならないので、天皇は國政に對しては、總て内閣の助言と承認を得てやると云ふので、天皇陛下は無答責で、神聖侵すべからざるものに事實なるのであります、從つて國務大臣が、内閣が天皇に對して責任を執ると云ふことは政治上ないことと御了解を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=20
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021・野村嘉六
○野村嘉六君 さうすると只今の御答辯では、詰り責任を執る、責任の限界は行政權の行使に付ての責任であつて、國民に對する責任はない、併しながらそれは選擧に依つて選ばれた關係上間接には責任がある、斯う云ふ風な答辯と承りました、併し其の點はそれで宜いとして、國民に對する責任と云ふことは、此の責任と云ふ範圍が甚だ不明確なのであるが、併しながら普通常識に於ては、下手な政治をやると云ふと其の結果が國民全體に利害が及ぶからして、從つて責任を執らなければならぬと云ふことは、普通の常識で論議されつつ今迄あつたのです、將來も同樣であると思ふのです、それであるからして、今の國務大臣の答辯では、國會に對しては責任は當然執るが、それ以外の國民に對して、それから又天皇に對しては責任は執らぬ、斯う云ふ風にも聞えたのであるが、そこはさうでありませうか、殊に天皇に對しては無答責であると、斯う云ふ神聖にして侵すべからずと云ふ立場からも是は明瞭であると云ふやうな御意見でありましたが、併し今の新憲法の第七條には確かに國事に關する天皇の行爲が茲に明確にされて居りますからして、從つて無答責……無責任はそれで宜いのでありませうが、併し國事に關する行動を御執りになる、それに對する所謂責任が當然生じて來るものであらうと、斯う云ふ風に考へるのですが、そこはどうでせうかな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=21
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022・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 御答へ致します尚其の點を一つ明瞭に御了解を願ひたいのであります、道徳上の責任は如何なる人でも其の任務を果す上に於てあるのであります、それだから道徳上の責任は國民に對しても、天皇に對しても是はあると思うて差支ないと思ひます、それだから私は責任と云ふ字は非常に曖昧な字だと思ふ、英語で之を言ふならば、レスポンシブル・フォアと云ふ場合に、其の行爲に對して責任があると云ふことは道徳上の意味で政治上の責任を執るとか執らぬとか言ふことは、責任を帶びて進退すると云ふことであります、國務大臣が若し政治上の過ちがあつた場合には辭職します、此の辭職することが國會から生れ出たものだから國會に對して進退を決すれば宜いので、それを政治上の責任と云ふ譯であります、其の點をはつきり御了解になれば宜い、道徳上の責任はどんな人でも其の爲した行爲に付ては責任を執ることは當然であります、政治上の責任を執る、内閣が進退を決すると云ふことは、内閣は國會から生れ出たものであるから、其の國會に對して進退を決する、天皇に對して進退を決するのではないと、斯う御了解を願へばはつきり致すと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=22
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023・澤田牛麿
○澤田牛麿君 私は議事進行に關する意見と申しますか、さう云ふ考を一つ述べて、委員長外委員各位の御了解を得たいやうに思ふ點があるのであります、それは露骨に言ふと、植原君は豫てから私は御つきあひを願つて居るから露骨に言ひますが、此の法案を握り潰して貰ひたいと思ひます、それは其の握り潰すと云ふことは、政治上の政府不信任とか何とか云ふ意味でなしに、事務上の意味でありますが、昨日政府に伺つた所が、政府は裁判所と行政と立法と、此の三つを此の臨時議會に出すと云ふやうな意味で臨時議會が召集されたのであるけれども、實績から言ふと參議院議員選擧法だけ通つたけれども、あとの國會法は衆議院でさへまだ決つて居らぬやうに私は思ふ、さうすると此方へ廻つて來ても、それを議する時間がありはしない、それから裁判所のことは昨日政府の答辯に依ると、もう出さない、通常議會に出す、斯う云ふのであるからして、さうすれば此の三つの所謂三權に關する法案が此の臨時議會では到底揃はないものであるから、又通常議會でやつて差支ないと云ふものならば、此の内閣法だつて通常議會でやつて差支ないものである、さう云ふ色々の點から見て、之を急いでやる必要はないのである、是はどうも握り潰した方が宜くないか、握り潰すと云ふと語弊があるけれども、通常議會に移して行くべきものではないかと私は思ひます、それは唯三權の權衡論だけでなしに、此の内閣法は極めて簡單な問題のやうにちよつと法案を見ると見えるけれども、非常にむづかしい、私共にはどうもはつきり頭に入らぬ點が多い、それは今迄は行政と云ふことが所謂官制と云ふ建前になつて來て居るから、大體非常に分り易い、役所を拵へるに付ても勅令で行くのである、官吏の任免も天皇の任免權で行くのであるから非常に分り易いことになり、長い間の習慣になつて我々の頭へ入つて居るものが、急に任免權と云ふものも無くなつたやうになつて、總て國會の決議を經る法律的のものになつてしまつたと云ふことになると、非常にむづかしい、それで今迄の各省官制通則とか、内閣官制とか云ふものは、我々も詳しいことは分りませぬけれども、法律專門家でないから分らぬけれども、大體非常に呑込み易いのであるが、今度はどうなるのであるか、「内閣法」と云ふだけで此處へ出しても分らぬのであるが、各省官制通則に當るものは何と云つて出るのであるか、昨日議場で金森君からも何か答辯があるやうに思つたが、どうも頭へ入らなかつた、それから各省官制通則と、それから各省の官制と云ふやうなものはどう云ふ風になるか、それに付ては又官吏に關する法規もあつて、任免なんぞに關することが、矢張り職員の配置充實等の上から、任免に關する規定もはつきりしなければならぬ、さう云ふものが皆くるまつて出ないで、此の内閣法だけ一つ出ると、どうも見當が付かない、それで通常議會に一緒に出して關聯すれば、初めて我々の頭では能く分るのである、能く分つて居る人には分つて居るかも知れぬけれども、私共には官制が突然法律になると云ふことに付ても何か能く分らぬ、從つて政府不信任と云ふ意味でなしに、唯事務的の便宜と云ふ點から見て、次の通常議會に移讓するやうな方針を以て此の議事を整理せられむことを委員長に希望すると共に、委員各位の御意見も伺つて、此の問題に付て議したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=23
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024・小山完吾
○小山完吾君 只今の澤田君の御意見は、一見甚だ突飛で奇なる御意見と思ふのですが、一體我々は本會議に於て委員に任命せられて、此の案を審議すると云ふことに入つた譯であります、此の各條に付て疑問があるなら疑問を質し、さうして其の疑問の終つた上に之を通過すべきものであるか、否決すべきものであるかと云ふ段階に達した時に、澤田君の如く、斯んなどうも分らない案は次に延ばしてしまへと云ふならば、是は反對に御立ちになつたら宜い、今の段階に於ては是は議事進行になりはしないかと私は思ふのでありますが、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=24
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025・澤田牛麿
○澤田牛麿君 今小山委員の言ふ通り、各條に付て質問をして、それから後にすると云ふこともそれは一つの方法である、併し各條に付て質問をするに付て、外の法案の關聯がなければ、なかなかそれはむづかしい、質問をすることに付ても餘程むづかしい、それであるから、私は各條の審議を終つて後に次の會議に移讓するかどうかと云ふ……意見を質すよりは寧ろ初めから各法案の揃ふのを待つてそれを一緒にして議した方が無駄でないと斯う思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=25
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026・小山完吾
○小山完吾君 それは委員長が御決定になつて宜いことだらうと思ひますが、要するに此の案の審議を進めると云ふことに付て我々は任務を持つて居るのですから、今の階段に於て審議出來ぬと云ふのなら、澤田君は質問も何もしないで、愈愈之を一案として總體的に可否を問ふと云ふ討論に入つた時に、あなた御反對になつたら宜いぢやありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=26
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027・澤田牛麿
○澤田牛麿君 私は質問が出來ないと云ふのぢやない、出來る、質問は出來るけれども、それは無駄なことであるし、且不正確なことになるから、寧ろ揃つた時に質問する方が爲になるのぢやないか、斯う思ふのです、小山君の御意見とは後先が違ふのです、不合理ではないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=27
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028・野村嘉六
○野村嘉六君 今の澤田君の前以て是で打切つて、議案の返上と云ふやうな意味合の御言葉がありますけれども、私は矢張り苟くも審議すべきものとして提案され、さうして此の道を通つて居る以上は兎に角審議を進めて、さうして十分に審議を盡した其の上で、それで結論としては可否各各考を決すべきものであらうと思ひます、まだ審議もせない中に、前提的に是はもういかぬから、もう握り潰すのであるとか、止めるのであるとか云ふやうなことは、是は私は甚だ面白くないと思ふのであります、又私は恐らく議會の先例としても、まだ審議もせない中に結論を決めて、さうしてそれで以て解決すると云ふことは今迄もさう云ふ先例は私はないと思ひますからして、審議を進める點は當然進めて、それから自然の結論に達した方が宜いだらうと斯う思ふのですが、何うです澤田さん発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=28
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029・小山完吾
○小山完吾君 是はもう討論を澤田君一人を相手にしても仕樣がないから、委員長が委員長の職權を以て此の議事の進行を進めて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=29
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030・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) それでは質疑を進めることに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=30
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031・澤田牛麿
○澤田牛麿君 此の内閣法だけが出たのでどうも私は見當が付かぬで困つて居りますが、質問するに付ても各省官制通則に代るものは、どう云ふものが出る積りでせうか、其の草案でありませうか、それから又各省官制通則でなしに、各省の官制と云ふものはどう云ふやうになりませうか、或は此の行政事務の分擔を今迄のやうに省と云ふことでやつて行くのでありませうか、或は廳と云ふやうなものになるのか、どう云ふ風なものになるのか、其の邊の所が我々局外者には見當が付かない、さう云ふ點に付て一應御説明を願ひたいと思ひます、金森君がおいでになれば一番結構な方とも思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=31
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032・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 今の澤田君の御質問のことは、行政官廳法を作るので、今折角其の草案の作成の進行中であるさうであります、勿論此の點に於ては、もう澤田君、能く御了解を願ひたいのであります、今迄の行政官廳は、此の新内閣の立場とは全く違ふことを御了承を願つて置かなければならぬと思ひます、今迄の行政の建前は、動もすれば行政官廳から立法部も、司法部も支配する形でありましたが、新憲法の下に於ては、國會が中心である、で國會の多數の意見を國政の上に實現する爲に必要なる所の行政事務を扱ふ其の建前で此の内閣法が作られて居る、現在の省を廳にするかどうか、廳になつても、省になつても、内閣法の審議に於ては私は差支ないことと思ひます、其の各省の分擔される……例へば文部省が文部廳になつても、文部省になつても、此の内閣法の運用に對して、少しも變化を生ずることはないと思ひます、省と省との關係のことは、是は小さな事務取扱の上のことでありまして、今迄は省内のことは勅令で、或は省の規則で定めたやうなことが、内閣法の運用として御考慮下すつたら宜しいことではございますまいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=32
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033・澤田牛麿
○澤田牛麿君 そこは意見の相違になりますが、憲法の精神と云ふことは、もう既に憲法が通過して決まつて居るのでありますから、今更問題にはならない、それは植原君の御説明を俟たなくても、さう云ふものは私も大體のことは分つて居ることであります、併しながら内閣と各省との關係、さう云ふ方面に付ては、法規が一應出て見ないと云ふと、見當が付かない所が澤山あると私は思ひます、そこで今のやうな話を持ち出した譯でありますが、各省官制、内閣の官制と云ふのはをかしいけれども、内閣法と云ふものが出て、各省法と云ふか、何法と云ふか、各省法と云ふやうなものがまだ出來ないと云ふ程度であるならば、そこで私が先程申上げたやうな、さう云ふものが色色揃つた上で審議をして見たいと、斯う云ふことが起つて來る、まだ出來ないものに付ては御提出願ふ譯に行かぬし、何とも仕樣がないが、どうも此の内閣法單獨で行くべきものでない、矢張り各省との關係が餘程密なるものである譯でありますが、どうも此の内閣法單獨でははつきりしない所が多いと思ひますが、其の例としては幾らも實例が實際問題として出て來ませうけれども、例へば此の第十一條には、「政令には」といきなりありますが、政令と云ふことは一體何でありませうか、どうも憲法の法文に、政令と云ふ定義もなかつたやうでありますし、誰が出すと云ふことも憲法で規定してなかつたやうであります、それから又此の内閣法にも政令と云ふものを誰が出すと云ふことを規定してないやうでありますが、さう云ふ點もどうも行政機關の組織がはつきり分つて來ないと云ふと、ちよつと掴み所が、見當がつかないやうな氣がするのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=33
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034・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 今政令の御話ですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=34
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035・澤田牛麿
○澤田牛麿君 政令は一つの例ですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=35
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036・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 政令のことは憲法にも其の言葉が使はれて居ります、さうして政令は内閣で出す行政上の一つの法令と御解釋下されば宜しいと思ひます、只今行政官廳法が出ないから關係が分らないと云ふやうな御疑念もあつたやうでありますが、官廳法は此の内閣法の枠の中で定められるもので、枠外には亙らないものであります、それだからして、枠内であるから、それがないからと云つて、審議の出來ないと云ふ譯にはなりますまいではありますまいか、枠外に出たり、是と矛盾したり、衝突したりするものならば、それは兎も角でありますが、行政官廳法と云ふものが出來ますれば、此の内閣法の枠の中で、其の外に一歩も出るものでない、政令と云ふものは法律の外に一歩も出るものでなく、法律の委任がなければ、政令に依つて義務を課したり權利を制限するの規定をすることが出來ないと云ふことにはつきり致して居ります、さうして憲法第七十三條に政令のことは規定されて居ります、其の點を御了解下すつたならば、政令と云ふもののことが分らないから、此の内閣法が審議出來ないと云ふ御議論も、少し行き過ぎではございませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=36
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037・澤田牛麿
○澤田牛麿君 七十三條に、成る程政令を制定すると云ふことがありますが、是は他の省ではどう云ふ風になるのであるか、此の政令と云ふのは今迄の勅令に該當することになるのだらうと思ひますが、さうすると省令に該當するものはどう云ふ風なものになるのでせうか、それから官廳法と云ふものが出來ると云ふ御話でありますが、内閣と云ふものも一つの官廳、新憲法の解釋としては内閣と云ふものも一つの官廳であると思ひますが、さうすると官廳法と云ふものが出來るならば、此の内閣法と云ふものは特に要らないので、官廳法の中の一部に第一章とか、第二章とかと云ふもので規定して差支ないものではないだらうか、私の言ふ他のものとの關聯と云ふのはそこなんです、官廳法と云ふものが出來れば、總ての官廳を含むのであるから、さうすると内閣は官廳であるから、其の中に當然含まれるものである、さうすると官廳法と云ふものが出來れば、内閣法と云ふものは要らないものぢやないか、さう云ふ風な疑問も起る、要らないと斷定出來ないけれども、さう云ふやうな疑問も起る、色々な點で私は呑込めない、實は私は今迄の官制の觀念があるものですから、法律で以てやる場合に非常に解釋がむづかしいのであります、それで官廳のことを伺つたのですが、他の詰り内閣の以外の官廳に付てはどうするかと云ふことを先づ伺つたのですが、是は先づ官廳法と云ふものが兎も角も出來ればそれで決まるのでせうが、さうすると官制通則と云ふやうなものも入るし、それから各省官制も其の中に入るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=37
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038・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 今國務大臣から御話がありましたやうな次第であますが、行政官廳法に付きましては、現在の各省官制通則及び各省毎の官制の中の主要なる部分を吸收致しまして、之を一つの行政官廳法と云ふ法律に致したいと考へて居ります、尚各省官制通則及び各省毎の官制の中の細かい事項に付きましては、行政官廳法で更に之を政令に委任を致しまして、それで細かい各省内部に於ける分課的のことに付ては、政令で之を尚更に細かく規定して行かうと云ふ腹案で今進行中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=38
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039・澤田牛麿
○澤田牛麿君 政令は内閣で定める、あとの各省大臣が定めるものは何になるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=39
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040・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 政令は丁度今の法律の次の程度の法でありますから、現行制度に比較して、其の段階の點で似たものとしては勅令のやうなものでありますが、勿論將來は内閣自身が天皇と直接關係なく決める法が政令であります、處が各省毎の命令に付きましては、是は行政官廳法の中で、各省大臣が省令を發することが出來ると云ふ規定を置く腹案を持つて居ります、尚内閣と申しましても、總理大臣自身が總理大臣として單獨の行政官廳たる面を持つ場合もありますから、それに付きましては、内閣總理大臣が各省大臣並みの立場に於きまして命令を發する權能を、矢張り行政官廳法で決めようと思つて居ります、其の總理大臣の發する命令は政令とは申しませぬので、只今閣令と言つて居りますが、閣令と云ふ名前にするか何にするか、未だ名前は決まりませぬけれども、兎に角各省大臣並みの命令制定權を總理大臣にも行政官廳法で認めようと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=40
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041・澤田牛麿
○澤田牛麿君 さうすると憲法七十三條のやつは、内閣と云ふ官廳が出す命令に限つて居るのですな、さう云ふことになるのでせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=41
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042・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=42
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043・澤田牛麿
○澤田牛麿君 さうすると、他の行政官廳が命令を發し得ることは、憲法には規定がないのでありますが、それで矢張りやり得るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=43
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044・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 憲法の中には、行政官廳が命令を發すると云ふ風な規定、即ち内閣が政令を發すると云ふ風な、さう云ふ風な規定はありませぬけれども、憲法の中には法律、命令と云ふ言葉も使つてありまして、兎に角さう云ふ政令以外の法のあることは前提として居ります、然らばそれがどう云ふやうな内容であるかは、結局行政官廳法と云ふ法律で更に之を具體化して行かうと云ふ風に今日考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=44
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045・澤田牛麿
○澤田牛麿君 憲法の時の審議に戻るやうで、甚だ恐れ入りますが、命令と云ふものがはつきりしないのです、憲法で認めて居るものは、表面から見ると、内閣の出す政令だけのやうに見えるのですけれども、命令と云ふ文句が何處かにあつたものですから……、それは各行政官廳で發することの出來るものを意味すると云ふことになるのですね、さうすると、各大臣が發するものの外に、今では府縣知事も命令を發することが出來るのですね、さう云ふものはどうなるのですか、府縣知事は今度は自治體で選任された者であるとしても、矢張り國政事務を扱ふ點から言ふと官廳ぢやないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=45
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046・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 公選知事の命令其の他に付てどう取扱ふかと云ふことは、未だ研究中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=46
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047・澤田牛麿
○澤田牛麿君 どうも非常にむつかしいので、總てが未定であるものだから、私は内閣法を審議する上にも非常に困難です、まあ今の點に付ては、其の程度に止めて置きませう、それから更に御伺ひしたいのですが、内閣總理大臣が内閣總理大臣の單獨官廳としての地位と、内閣の議長としての地位と……元の官制で言へば議長としての地位は官廳とは認めて居らぬですね、今度は議長としての地位と云ふか何と云ふか、内閣と云ふ合議體のやうなものが官廳になります譯でありますな、さうすると、例へば憲法の司法官を任命する、それは合議體の内閣と云ふ官廳が任命すると云ふことになるのでありませうし、それから大臣が、各省大臣と云ふか、何と云ふか分らぬが、各部局の大臣が部下の任免をすると云ふ場合には、どうも餘程むつかしいが、大臣個人と云ふのもをかしいけれども、大臣の職に在る人の名で命ずる、それから裁判官は内閣と云ふものが命ずると云ふことになつて、裁判官だけが任命の形が違つて來るのですが各種の方面にどうも疑問があつて分らない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=47
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048・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 裁判官は内閣で任命するやうに憲法第七十九條の規定で定められて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=48
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049・澤田牛麿
○澤田牛麿君 そこで辭令の書きやうですが、内閣と云ふものが命ずるのであつて、内閣總理大臣が命ずるのぢやないのですね、さう云ふ例は外に今迄日本の行政と云ふか、任命や何かの關係で御取扱になつたのでせうか、どうも其處らの點が非常に頭に入り難いのですが、内閣と云ふ機關……例へば農商務省なら農商務省、内務省なら内務省と云ふことで任命すると云ふやうなことは今迄餘りなかつたのであります、今度は裁判官だけは内閣と云ふ非人間的と云ふか、機關が主としてサブジェクトであつて、それが命ずる、それが任命すると云ふことになるのでありませうな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=49
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050・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) さう云ふ事務上の手續は法制局長官から御答を願つた方がはつきり致しませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=50
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051・澤田牛麿
○澤田牛麿君 どうも何か非常にむつかしいのですよ、それで私共分らないのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=51
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052・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 合議體の内閣と云ふものが官吏を任命すると云ふ風な制度は從來なかつたと思ひます、それが憲法に於て新しく任命すると云ふことになつたと思ひます、其の場合に於きまして、合議體の内閣に於きまして裁判官と云ふ官吏を任命致しまして、さうして辭令等の形式は研究中で、どう云ふことになるのでありますか、合議體の内閣が之を任命する、其の外尚官吏法の規定に依りまして、現在の制度では親任級と考へられて居るやうな、さういふ官吏に付きましては、或は内閣と云ふ合議體で之を任命すると云ふやうな規定を、官吏法若しくは行政官廳法等で規定して見たらどうかと云ふことも考へて居りまして、それ等の任免の手續等に付きましては、行政官廳法若しくは官吏法等で之を具體化して行かうと云ふ風に考へて居ります、大體に於きまして謂はばまあ親任級の官吏に付きましては内閣で之を任命し、奏任級と云ひますか今の二級、それから勅任、現在の一級、二級の官吏に付きましては、各省大臣が之を任命する、或は或部分を内閣に持つて來るか、三級官吏に付ては各部局の長に任命をさせると云ふことに、法律で具體化して行かうと思つて考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=52
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053・澤田牛麿
○澤田牛麿君 一應それで終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=53
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054・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) それでは本日は此の程度に致しまして、明日午前十時より再開致したいと思ひますが、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=54
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055・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) それでは明日午前十時より開會致します、本日は是で散會致します
午前十一時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=55
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056・会議録情報2
出席者左ノ如シ
委員長 公爵 岩倉具榮君
副委員長 子爵 森俊成君
委員
子爵 岩下家一君
子爵 大久保教尚君
子爵 稻垣長賢君
林春雄君
佐々木惣一君
白根竹介君
村上義一君
男爵 伊藤一郎君
男爵 渡邊修二君
男爵 岩村一木君
男爵 山根健男君
男爵 明石元長君
野村嘉六君
澤田牛麿君
鏑木忠正君
原泰一君
小山完吾君
小野耕一君
國務大臣
國務大臣 植原悦二郎君
政府委員
法制局長官 入江俊郎君
法制局次長 佐藤達夫君
法制局事務官 井手成三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00119461220&spkNum=56
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