1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年十二月二十一日(土曜日)午前十時二十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=0
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001・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) それでは是より開會致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=1
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002・明石元長
○男爵明石元長君 昨日澤田委員が御話になりましたやうに、私も此の法案だけでちよつと見當が付かないやうな氣が致すのでありますが、それはそれとしまして、此の法案と申しまするものを、今後の内閣と云ふものと地方自治體との關係と云ふやうなことに付て伺ひたい、それで私は此の敗戰後の國家の建直しとしましては、地方自治、地方分權と云ふものを強化すべきだと云ふ意見を持つて居るのであります、此の前改正せられました憲法に於きましては、地方自治の問題も採り上げられて居ります、政府に於ても地方自治の強化の施策を執つて居られるのでありますが、今日の此の府縣單位を基礎として地方自治を強化する、分權を強化して行くと云ふことは、餘り根據がないやうに思はれるのであります、詰り政治的、經濟的な考慮が餘り拂はれて居らないやうに思ふ、之を徹底して行つて、さう云ふやうな條件を考慮して、さうして地方分權、地方自治と云ふものを高めて行かなければ、却つて地方割據の弊害に陷るのではないかと思ふのであります、其處で私は大臣に伺ひたいことは、政府は地方分權を強化して居られますけれども、今後斯う云つた點を考へまして、或は道州制と申しますか、さう云ふやうな方面迄更に地方自治を高めて行かれる御考へであるかと云ふことを先づ伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=2
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003・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 地方自治の問題でありますが、ポツダム宣言を受諾した以上は、徹底的に民主政治の行はれるやうにしなければならないと云ふことは、敗戰後の日本の國民に課せられた一つの大きな途だと思ひます、そこで民主政治を實現するには、何と言つても市町村、府縣地方の自治から固めて行かなければならない、御承知の通り、戰爭中極度に中央集權にして、殆ど日本の地方自治制は全面的に其の形態を變へたやうなものになりましたけれども、新憲法の下に於ては出來るだけ地方自治の完成を圖らなければならない、それが爲に御承知の通り府縣知事も民選にする、市町村長は勿論のこと、府縣制に於きましても現在の權限がずつと擴張されて、最近皆樣方から御通過を願つた法案では、知事が民選でありながら官吏のやうな形を備へて居りますけれども、是は極く短かい過渡期のことと御承知を願ひたいと思ひます、只今地方の府縣に於ける官吏と云ふ者も、早晩極く近い期限内に於て公務員、公吏の形に變へてしまはなければならない、さうして民選の知事が公務員として當然それ等の任免黜陟を行ふが、此の場合に、戰爭中殆ど……戰爭中と云ふよりは滿洲事變以來、軍閥官僚が先を見越して極度の中央集權にして、地方の教育費も地方の費用も、殆ど中央政府が支配するやうな分與税で之を維持して居る、斯う云ふ形も出來るだけ改めてしまはなければならぬ、地方自治機關は地方自治の財源を以て之を支辨して行く、府縣知事は公務員とする、其の下の總ての現在の役人も公務員になる、さうして警察權の問題も、心ずや刑事警察、全國に亙る刑事警察は是は別ですけれども、地方自治の警察權は府縣に移す、さうして全國的の通商に關することは別な法規に依つてやる、丁度アメリカに於て、アメリカの各州は殆ど獨立國の體裁をして居りますけれども、其の間に於てインター・ステーツ・コンマース・ローと云ふものがあつて、全國を支配する共通な法律がある、刑事問題に付ては全國的に共通なもの、教育も共通なものだけの指導は文教の府でやりますけれども、國民教育などは努めて地方の自治に任せる、唯程度だけは定める、都會地の小學校の生徒と田舍の山の中の生徒と、同じやうな體操や學課を教へることは間違つて居ると思ふ、農村の兒童は運動をし過ぎて困るのだから、共同生活をする訓練は必要だけれども、劃一的な今迄のやうな教育も皆改めてしまつて、さうして今教員のゼネストや何かあるやうな氣配もありまするけれども、實際は農村に於ける學校の先生と云ふものは、同じ金錢で拂はれる給料を貰つて居れば非常な樂な生活が出來る、何故かならば、先生だと云ふので農村民との關係があつて、さう食物などは不自由しないと云ふ状態になつて居る、下宿してもさうでありますから……總て今迄日本人が全國内を一本のもののやうに考へて來た、是が間違つて居るのぢやありますまいか、民主政治と云ふものは、徹底的に地方の自治と言へば其の地方地方で事を處理する、そこ迄行けるか行けないか知らないけれども、私は今迄の町村などと云ふものは政治と云ふよりは、町村の本當の自治の經濟機關として存在するやうにならなければ、本當の良い町村自治が出來ないと思ふのです、そこ迄行く位の考で、將來を見透して、さうして地方分權を發達せしめて行く、其處に民主主義の基礎を固めて行くと云ふことが將來の平和國家建設をする狙ひぢやなからうかと思ふから、極く全國一般に亙る所の政治上の問題とか、全國一般に亙る所の通商上の問題とか云ふことは中央政府でするけれども、其の他のことは地方に適する状態に於て、其の地方の政治、經濟、社會問題を片付けて行くと云ふことが、本當の民主政治を行つて行く所以なりと考へて居ります、從つて此の内閣法には左樣なことが何處にも法文の上には盛込まれて居りませぬけれども、實際は將來の政治の狙ひは其處を狙つて行くべきだと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=3
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004・明石元長
○男爵明石元長君 只今の御答辯になりましたことは、實は私もさうあるべきだと考へて御同感に思ふのであります、唯私が質問申上げましたのは、其の方針は結構であるけれども、それを具體化する問題としまして、現在の府縣單位を區劃として行つて行くことは、餘り根據が薄弱ぢやないか、さうしてさう云ふ目的を達します爲には、其の區劃が國内の政治條件と申しますか、或は經濟條件と申しますか、さう云ふものが十分に備はつた單位でないと云ふと、却つて國内の割據の風を増すのでありまして、十分さう云ふ條件を受入れた區劃を以て地方分權を發達さして行くべきだ、現在の府縣單位と云ふものはさう云ふ考慮を拂はれたものではないのでありまするから、將來さう云ふ點を考へて道州制と云ふやうな方面迄持つて行かれる御考はないかどうか、と云ふことを伺つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=4
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005・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) まあ國會が中心となり、國會が民意をはつきり反映せしむるものであると云ふ場合から云へば、さう物を窮屈に考へないで、其の時の必要に於て、隨時一般地方自治の爲にも、中央の爲にもやつて行けるやうに變つて行つて宜いぢやありますまいか、だからして其の過渡期でありますからして、兎に角ものを考へるには、現存して居るものをまあ土臺として、さうして何處に移り變つて行くかと云ふことを考へて、其の間に適宜な途を講じて行けば、明石男爵の御心配になるやうな非常に急角度でなくて物が行けやしないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=5
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006・明石元長
○男爵明石元長君 只今御答辯になりましたことを實は伺つて居るのではないのでありまして、詰り現在政府に於きましては、現在の府縣單位を單位として地方分權をやつて行かれる御積りであるか、或は更に其の區劃をも改正を考慮して居られるのであるかと云ふことを伺つて居るのであります、それで若し私の申します後者の場合を今考へて居ないと云ふことであれば、それで宜いのでありまして、私の意見としてはさう云ふ風にあるべきだと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=6
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007・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 只今の御答へしたことは其の意味だと思ひますが、過渡期であります場合に於ては、現存せる所のものを一應考慮の基礎として物を取扱つて行かなければならぬ、唯それを取扱ふ上に於ては將來の見透しをつけて、其處に幾分か手加減をして、成るべく急角度でないやうに、若し必要ならばそれが變化出來るやうにして行くことが、政治の妙用ではなからうか、現在に於ては現存せる事實をもつて先づ一應ものを取決めて行くと云ふより外に方法がないやうに思ふ、やがて其の上で必要に應じて、明石男爵の仰つしやるが如くに先行きの考を以て其處に緩やかに手心を以てやるやうに考へて居る、さう云ふことより致し方がないではありますまいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=7
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008・明石元長
○男爵明石元長君 どうも少し喰ひ違ひがあるやうに思ふのであります、私は現在府縣單位の區劃を以てやつて行かれるのが宜いとか、惡いとか急角度に變へるのが宜いとか、惡いとか云ふのではなくて、詰り政府の考へとしてはさう云ふ道州制と云つたやうな所迄發展させる考を持つて居られるのかどうか、實際の豫定としてさう云ふものを持つて居られるか、どうかと云ふことを伺つて居るのでありまして、それは只今の御答辯に依ると、さう云ふことは考へるかも知れないと云ふやうな御答辯のやうでありますがさう云ふ意味に承知して置いて宜しいのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=8
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009・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 只今此の移り變りの時に於ては、現存の府縣單位なら單位を土臺として一應改正をするよりは外に方法はないのであります、但しそれがいつ迄も固定して居るものと政府に於ても考へて居らぬ、民主主義の政治が行はれる時には、それは一番やつて見て都合の宜いやうに又變形されることも想像の中に入れて居る、斯う御了解を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=9
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010・明石元長
○男爵明石元長君 今の點は大體此の位に致しますが、そこで伺ひたいことは、先日植原國務大臣は本會議に於きまして、あれは參議院法の時でありましたか、政黨は必ず立派な發達をするものであると云ふ御確信と其の前提の下に御考を述べられたのであります、其の點は私もさうあるべきだと思ふのであります、今後改正せられました憲法及び國の行き方全體から考へまして、政黨が如何に發達して行くかと云ふことを前提としなければ悉くやつて行けないのであります、其のことを否定するのではありませぬけれども、私は此の中央政府の權威と云ふやうなものは、現在頗る民心の上に薄弱になつて居ると思ふのであります、是は現實の問題でありまして、政黨政治が發達すべきや否やと云ふ問題ではなくて、現にさうであると思ひます、非常に色色賑かに言はれて居りますけれども民心の機微を察しますると、中央の政治と云ふものに對しては割合に信頼も持つて居らなければ、關心も持つて居らないと云ふのが現状であります、是は、何處から來るかと云ふことになりますと、私は戰爭中の中央集權的な官僚政治と云ふものに對して民心が離反して、戰爭の末期に於きましてはさう云つた政府が既に民意を把握することが出來ずに、官僚自身が實は悲鳴を揚げて居つたやうな現象も多々あるのであります、さう云ふ所からも來て居りますし、加へまして敗戰をしたと云ふやうなことから益益それに輪を掛けまして、殆ど國民は政府の政治と云ふものに信頼を置くよりも、自分自身が自分の生活を護つて行く、自分の力に依つて護つて行かなくちやならぬと云うやうな、もう突詰めた所迄來て居るのであります、茲に道義の頽廢の根本の原因もあると思ひます、殆ど國民は國家機構其のものに對して受想をつかして居ると申しましても過言ではないと思ふのです、殊にまあ特別な此の敗戰後の事情としましては、占領下にあると云ふやうな問題も矢張り政府に對する一つの關心と云ふものに或影響を與へて居ることは否定し得ないと思ひます、兎に角斯くの如く表面政黨政治、或は憲法に於て國權の最高機關として國會と云ふものは最高機關となつた、詰り民意に依る政治が根本になると云ふやうな建前から、或は制度上の建前は極めて確立されて居るのでありますけれども、私はここ當分の間、中央政府の威信と云ふものは案外保てないのぢやないか、現状もさうであり、將來暫くの間はさうではないかと思ふのであります、之を或は現内閣が民意を代表したものでないとか、或は現在政局を擔當して居る政黨が、詰り本當の民意を代表したものでないとか云ふやうな意味から言はれて居りますけれども、さう云ふ一面もありますが、根本的に、實は中央政府の威信と云ふものはなかなか之を囘復するに困難な事態であらうと思ふ、地方分權と云ふことの必要も、亦實にそこに敗戰後の國家の建直しと云ふ面から考へまして、地方分權を強化して行くと云ふことは、國家再興の基礎要件として實は其の點にもあるのであります、詰り地方の再建と云ふことが進められまして、段々と全體の政治が良くなつて行くと云ふやうな、さう云ふ途が採られることが地方分權の重要な點だと思ふのであります、そこで今後の内閣とそれから此の地方自治が強化された、其の團體との關係、其の政策の關係と云ふやうなものに付て、どう云ふ見透しを御持ちになつて居るのであるか、詰り地方分權を阻止する爲に内閣の統制力と云ふものを強化することは出來ない、寧ろ地方分權を高めて行かうと云ふ場合に、其の間の關係をどう云ふ風に調整される積りかと云ふ點の御所見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=10
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011・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 只今明石男爵の仰しやつた通り、戰爭中日本の國民は極度の專制政治の爲に殆ど官憲に表面的は唯屈從して行つた、内心では信頼して居らなかつた、其のことが敗戰後ずつと繼續して來て居る今日でも政府に信頼すると云ふ觀念はない、國民はどうかすれば道義も頽廢して居るし虚脱状態で、仰しやることは大體其の通りだと思ひます、戰爭に勝てると思つて、大多數の國民は政府の勝つ勝つと云ふ間違つたことを其の儘信頼して來た、いざ突當つて見たらば、勝つどころでない、原子爆彈と竹槍と戰爭しなければならぬ、飛んでも跳ねても追付かない状態で、騙されて來た、そこで此の未だ經驗しない所の慘めな敗戰になつた、で政府のやることも、政府のやることであるか其の背後に於ける強い力がやることであるか分らぬ、政府と云ふものもさう頼りにならないものだと云ふことと、一つは敗戰の失望と、將來に對する所のはつきりとした見透しと希望も十分に與へられない、政府自體も自體の力で動けない、背後の力に押されて居るやうな状態で、誠に歎かはしい有樣であります、と言つて、そんならば其の政府を除いてどう云ふ政府が出て來ても、其の政府をそんならば國民に信頼出來ると云ふ政府を造り得るかと國民に問うたらば、何等の意見もない、どうかと言へば、唯權力に屈從、隷屬するのみの状態であると云ふやうなことで、誠に歎かはしいことでありまするけれども、如何なるものが日本の今の政局に立ちましても、此の國民の虚脱状態に新しい希望を與へて、政府が總ての中心となつて日本を左右して呉れるのだと云ふやうな感じは、容易に與へられないと思ひます、若し總ての問題が解決されて、講和條約でも出來まして、日本が世界に附合ひをするやうになつて、日本のこと位は總て日本の中央政府が支配出來るやうになつたならば、又國民の見る所も違ふと思ひます、と申しまして、今の政府が地方自治に對してどう云ふ風に考へて居るか、現在の憲法の下に於て、何としても憲法の規定に依つても、地方の自治機關を完成せしめなければなりませぬ、又現在の状態で本當に政黨が威力を出し得るかどうかと云ふことも疑問だが、一日も早くさうなるやうに御同樣に努力して行くよりは致し方がない、其の下に於きまして中央政府と地方自治團體との關係でありますが、出來れば、地方自治團體が本當に自治の下に發達して呉れて、其の上に中央政府の自治機關が乘つかるやうになれば理想だと思ひます、處がなかなかさうもならない、そこで先刻申上げた通り、出來るだけ地方の自治機關を發達せしむるやうに政府は指導する、先般御審議を願つて通過致しましたあれに依つて、府縣知事は勿論のこと、市町村制もなるたけ自治的に行く、知事の官吏と云ふことも出來るだけ早く止めて、公務員たらしめて行くやうにする、さうして全國に亙る安寧秩序とか、交通とか、通信とか、又全國一般でなければならない商業とか、さう云ふやうなものは、中央から統轄するやうになりませうが、出來るだけ地方だけに限つて行はれることは地方だけに限つて、地方の自治を發達せしめて行くと云ふ方針を以て臨んで行くと云ふことよりは、今の場合致し方がないではありますまいか、まあ左樣な考へ方で取扱つて居るものと御承知を願へば宜しいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=11
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012・明石元長
○男爵明石元長君 私の申上げましたことは、地方自治が強化されて、地方が知事も民選になり、色々獨立的な權限が増大して來る、それは私は結構なことだと思ふのであります、又さうなければならぬと思ふのでありますが、それと中央の政府との此の政策的な關聯はどう云ふ風にされるのであるか、地方自治が高まれば高まる程、其の點は困難になるのぢやないか、詰りそれに先程申上げましたやうに、中央政權と云ふものは比較的、此處暫くは民心の上に權威を失墜して來るのではなからうか、さうすれば其の間の調整が非常にむつかしくなるのではないか、それに對してどう云ふ風に御考へになるのであらうかと云ふことを伺つたのでありますが、もう少し之をはつきり申上げてみたいと思ふのであります、此の中央政治と高度化された地方分權と云ふものが相俟つて行く爲には、一つの基盤が必要であると思ふのであります、それは政黨と云ふものが其の兩者を横斷すると申しますか、其の場合は極めて圓滑に行けるのだらうと思ひます、さう云ふ一つの政黨がさう云ふ風になると云ふこと迄行かなくても、其處に一つの基盤があれば、先づ支障なく行はれるのではないか、例へばアメリカの場合はアメリカ的な民主主義と云ふものが一つの基盤を成して居る、或はソ聯に於ける……ソ聯も亦民主主義と言はれますが、果してさうであるかどうか私は存じませぬけれども、其處にはアメリカの聯邦政治と云ふやうなものとは又違つた意味の、一つの別な、民主主義と言はれるかどうか知りませぬけれども、一つの基盤があると思ふのであります、今後の日本に於きましてはさう云ふ點は甚だむつかしいのではないかと思ふのであります、それで是は政黨の發達と云ふものに關聯も致しまするが、其の政黨其のものも私はァメリカに於ける程、又ソ聯に於けるやうな意味で固まるものでなくて、日本としては此の國際環境に支配されて、非常に立場の異なつた政黨が對立するやうな恰好になるのではないかと考へるのであります、例へて申しますると、甲の政黨が中央政府を組織して居るのに、地方の自治では乙の政黨から多數出て居ると云ふやうな場合が起るのであります、中央の政府が自由黨であるのに或る縣の知事は共産黨であると云ふ場合が假りに出るとした場合に、どう云ふ風な政策上の地方と中央との調整を執られるのであるか、さう云ふやうな中央と地方分權の高度化された地方自治團體との關聯を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=12
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013・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 御意見能く分りました、地方の分權が相當に發達した時に於ては、日本の現状に於て各府縣に於て、或縣に於ては中央政府と違つた、それに反對する所の政黨の色彩を持つて居る人が存在することが多々あるだらう、故に中央から之を統治することが困難だらうと云ふ御説のやうでありますが、何れにしても日本のやうな長く中央集權に慣らされた、官僚政治に多年の間服從して來た國民に取つては、地方分權を完成することも、良い政黨の發達することも困難だと思つて居ります、けれども、今御考へになるよりは私は樂でないか、何故かならばもう地方自治、民選の知事の方が出來ます、公吏の方が出來ます、さうして中央で統轄する事、先刻申上げた通り、一般の刑法に關するやうな事、通信の事、交通の事、國内全般の商業に關する事、さう云ふ中央で支配する事は非常に全體に亙ることで、さう地方に衝突するやうなこともなからうと思ひますし、それから假令違つた所の黨派の知事であらうとも、それが永久のものではありませぬ、四年なら四年に任期が盡きるものでありますから、それは結局國民の政治上の知識の問題に俟つより致し方がないのではありますまいか、若し國民が、そこ迄反省したり、自覺することの出來ない國民であるならば、もう地方自治も民主主義の政治も行はれないと、斯う判定してしまふより仕方がない、或縣の知事が政府の存在して居る政黨と違つたと言つたところが、其の爲に中央政府に反對して摩擦を生ずるといふことはないでせう、何故かならば、方地の自治に關することは地方で自由にやられるのです、と云つて中央と摩擦を生ずることはないでせう、丁度スイッツァーランドのカントンは非常に發達した自治をやつて居りますけれども、矢張りスイッツァーランドの一部として、地方は地方、中央の政府は中央の政府で良く調和してやつて行けるのであります、アメリカの或州の知事は共和黨で、中央政府は民主黨であるが、それが爲に其の間に、地方自治と中央の政治と衝突すると云ふやうなことがさうあるやうにも思はれませぬ、で實際内務行政と云ふものが、今迄やつたことと、本當の民主政治が行はれて地方分權が行はれる場合と、非常に違ふのではありますまいか、内務省なんかも殊に依れば要らなくなるのではないかと云ふ位に迄行かなければならないと思うて居ります、さう云ふことを御考になつて根本の問題に御觸れになつたならば、困難はありませう、過渡期に於て相當の困難はありませうけれども、それが爲に地方の分權との結果として、地方の府縣知事と中央政府と衝突すると云ふやうなことはどうも考へられないやうに思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=13
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014・明石元長
○男爵明石元長君 希望としては、又見透しとしては其の通りでありたいと思ふのでありますが、日本の現状から申しますと、餘程困難な事情が起るのではないかと私は考へるのであります、まあさうでないやうな、今の國務大臣の御話のように行けば誠に結構だと思ひます、唯私が心配致しますことは、先程申しましたやうに、日本の政治上の問題に對する見解の相違と云ふやうなものも、實はアメリカに於けるが如く、或はソ聯に於けるが如き一つの方向を示さないで、相當混亂した事態を續けるのではないか、さうすると今のやうな問題が相當起りはしないかと云ふ根本的な、少し大雜把な觀方でありまするけれども、さう云ふ風に考へるのであります、もう一つ御伺ひしたいことは、さうしますと、さう云ふ風に地方分權が強度化されて參りますと、或は又其の他の關係からも、此の内閣法にも國務大臣と云ふものが、行政の長官でもありますが、行政其のものの全貌と云ふことも考へられて來ると思ふ、戰爭中官吏が從來監督行政、或は指導行政と言つた面から、何と申しますか、實施行政の面迄入つて來て、非常に未經驗な官僚行政が行はれて國民が苦しんだと云ふやうなことは戰爭中の政治でありましたが、今後はそれは官廳に依つて色々性質が違ふことでありますけれども、大體中央の内閣、或は中央の官廳に依つて採上られるものは大雜把な監督、或は指導行政に限るべきだ、それが民主政治の一つの在り方だと私は思ふのでありますが、其の點に對する御見解を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=14
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015・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 行政官廳の問題でありますが、今此の移り變りに於ては、丁度府縣の場合に申上げたことと同じことで、現在の官廳の立て方を一應踏襲して行くと云ふ建前を採るより致し方がない、それで只今の文部省、商工省、運輸省、厚生省と云ふやうな形を採らなければならないでせうが、議會が愈愈中心となつて、さうして例へば平和條約でも實施になる場合に於ては、矢張り日本は可成り製造工業や貿易に力を注がなければならないのではございますまいか、さう云ふ場合には貿易廳を作る必要があるとか、貿易廳を立てるのが宜いとか、或は又勞働問題が可なり複雜になつて來れば、厚生省から勞働省を分離さすのが宜いと云ふやうな問題が色々起つて來て、今の行政官廳と可なり違つたものが出て來る、又殊に依れば今の名が違つたものになつてしまふと云ふやうなことも起り得るのではありますまいか、さうして今の日本の國の力と行政事務との上を考へますると、大體十六人以内の國務大臣でやつて行ける何處かに枠を作らなければならない、唯何人でも宜いと云ふことでは紊れ勝ちだから、先づ大體に於て今の國務の分量から言へば、どう云う行政官廳の立て方をしても其の程度でやつて行ける、さうして尚是から色々日本全體の國務は、戰前の状態よりは、國が小さくなつただけ小さくなるかも知れませぬけれども、可なり複雜になることもある、さう云ふ場合には矢張り行政を擔任する國務大臣の外に、尚全般に、例へて言ふならばどのことにも發言を得、どのことにも發言を得、どのことにも大所高所から見て居ることが出來ると云ふやうな、フリーランサーのやうな無任所國務大臣と云ふやうなものもあつた方が宜しいと云ふやうな考へ方で、此の内閣法が出來て居ることを御了承願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=15
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016・明石元長
○男爵明石元長君 私の伺ひましたことは、今の御答辯とはちよつと違つたことを伺つたのでありますが、其の點はまあどうでも宜しいと致しまして、實は此の内閣と云ふ問題は、茲に内閣法と云ふものが出て居りますけれども、或程度は法規で決められるのは結構でありますが、法律と云ふもので決めると云ふ問題よりも、先程から私が例に擧げましたやうに、政治的の面が頗る多い、それを此の内閣法と云ふやうな法規に依つて御定めになつて、何等政治的の面は法案其のものに出て居らないと思ふのでありますが、どうも法律を以て斯う云ふものを御定めになると云ふことの理由が極めて薄弱のやうに私は思ふのでありますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=16
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017・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 御質問の御趣意がはつきり致しませぬが、今迄の内閣官制は勅令で出て居る、是は法律で定める、何故かと申しますれば議會が國權の最高機關である、憲法に於て内閣總理大臣のことも、他の國務大臣のことも規定してありますけれども、是が一つの行政機關として動きますに付ては、憲法だけの規定では十分だとも考へられませぬ、そこで憲法だけに於て國會と云ふものはどう云ふものであるかと云ふことを決めてありまするけれども、それに依つて國會を構成する所の議員の、矢張り選擧方法、構成方法も作らなければならぬ、參議院も、國會に於て國民の代表に依つて之を組織すると決めてありまするけれども、之に對しても參議院の選擧方法と構成方法を作らなければならぬ、最高裁判所があつて、其の裁判所の下級裁判所の運用のことも大體憲法に於て決めてありまするけれども、之に對しても一切の裁判の機構、其の他のことに對しては法律が出なければならない、尤もそれは昨日以來澤田さんの御質問にもあつて、内閣法を作るならば裁判所構成法の色々なことも法律で作つたらどうか、それはまだ準備が出來ないから次の議會に提出すると云ふことを司法大臣が申された通り、内閣に對する大體の規定は憲法の上にありますけれども、是が一つの行政官廳として働く其の骨子を定めるに於ては、此の法に規定して居るだけのことが定められました方が、取扱上其の機關が運用される上に於ても誠に滑らかに行く、是だけの枠がなければ、憲法だけの規定ではどうもうまく最初から出立出來ないぢやないか、斯う考へて居るのであります、若し明石男爵のやうに日本に立派な政黨がある、立派な訓練されたものがありまするならば、英國のやうに、或は斯う云ふ四角四面のものがなくても宜いかも知れませぬ、何故かならば英國のやうに自然に發達した法律がなくて、憲法の成文がなく、内閣法と云ふものがない、唯樞密院で行政事務を扱つた、國政を燮理したと云ふ慣例で、現在に於ても議會を代表し、議會で推薦する樞密顧問官が即ち國務大臣として行政の事務に當つて居る、それにも拘らず、英國には國務大臣と云ふ何も官制も規定もない、それでもうまく行つて居ると云ふことの御趣意から言へばさう云ふ一應理論も立ちます、けれども日本の現状に照らしては、是だけの枠がなければ、新しい憲法が行はれまして直ぐ其の趣意に則つた行政官廳がうまく組織され、其の權限がはつきりし、其の職責が定まつて圓滑に運用されることが、少しむつかしいのぢやなからうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=17
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018・明石元長
○男爵明石元長君 私は何等法規が要らないと云ふことを申して居るのぢやございませぬけれども、今朝の新聞に依りますと政黨法と云ふやうなものが出る、どうも色色自然の發達に任せ、又非常な政治的な働きの多いやうな問題を、無理やりに之を法律に依つて規定して行かうと云ふ傾向はどう云ふものであらうか、若しさう云ふ風なことが必要であつたとしても、もう少し全般的に一つに纒つたやうな、簡單な法規を以てそれを實施することは出來ないかどうかと云ふ氣持がするのであります、是は私の氣持でありまして、大臣から御答辯の必要はございませぬ、是で私は打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=18
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019・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 政黨法の問題を御話になりました、政府では目下の所政黨法を作るなどと云ふことは考へて居りませぬ、何か議員の間で左樣なことを考へて居るらしいのですが、之に對しては明石さんと私は全然同感であります、併しどうなるか知れませぬよ、多數の議員が果してさう云ふものを作るか作らないか、私に存じませぬけれども、全然同感であります、政黨自身が法律を以て規定を作らなければならないやうな状態では、是はもう實に立憲政治、民主政治の前途氣遣はれると思ひます、さう云ふことが而も社會黨などに於て唱へられると云ふに至つては、私は何たることかと、實は今朝の新聞を見て驚いたことで、是は全く同感で、日本人が比較的今迄ヨーロッパの大陸式に模倣して、而も其の中のドイツ式に模倣して、惡い習慣で、どんなことでも規則詰めにすると云ふことでは、本當の英米式の民主政治は私は發達しないと思ひます、それは出來るだけ自然の運用で、好い慣例を作つて徐々に締め上げて行くと云ふ、皆自制と反省に依つて共同生活の意義を理解して、左樣にすることが一番宜いことだと思ひますけれども、どうも今迄日本では餘り規則詰めに締められて來た習慣があるのである、一時に之を脱皮することがむつかしいのであるから、色々なことが起ると思ひます、今の政黨法に對する御考へなどは私は全然同感であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=19
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020・澤田牛麿
○澤田牛麿君 私は總體の所で、法律問題でありまするから、主として法制局長官の御答辯を願ひたいのでありますが、私は内閣法と云ふものは單獨に必要としないと云ふやうな氣がするのです、それは官廳法及び官吏法と云ふものが出來れば、其の中に内閣に關することの必要なことは一箇條か二箇條を入れれば、特に内閣法と云ふ特別のものを拵へる必要はないと思ふのです、兎に角法律の數が一つでも減ればそれだけ宜いのだから、此の内閣法は、若し此の規定の中でどうしても外すことが出來ない規定があれば、其の一、二を官廳法に入れることにして、此の内閣法と云ふものは止めたらどうかと云ふ考を持つのですが、それは論旨を進めて行くと各條の批判になりますけれども、ちよつと例を見ますと、第一條で「憲法に定める職權を行う。」憲法に定める職權を行はないならば規定が要るけれども、憲法に定める職權を行ふならば、何も規定は要らない、それから第二條で、「國會に對し連帶して責任を負う。」是も此の書き樣はおかしいのです、立法技術になりますけれども、内閣は連帶責任を負う、内閣と云ふものは合議體の官廳であつて、それが責任を負ふと云ふことは意味を成さない、内閣を組織して居る大臣が責任を負ふことになる、書き樣が間違つて居ると思ひますが、是等も此の間植原大臣からも御話があつた通り憲法で國會に對して連帶責任を負ふと云ふことは政治論で決まつて居る、何も茲に法律として書かないでも當然さうなる筈である、是も要らないと思ひます、それから第三條、各大臣は別に法律の定める所により行政事務を擔當する、是こそ各省官制通則の官廳法に規定すれば宜いのであつて、此處に書く必要はない、それから「閣議による」と云ふことは、内閣と云ふものは合議制である以上は、合議制の閣議によらなければならぬことは當然の話である、殆ど各條を見ると要らないものばかりである、私は此の各條の中でどれが要るかと云ふことがはつきり分らない、法律で斯う云ふことを規定しなければどうしても動かないと云ふ規定がどれとどれであるかと云ふことが分らない、全部要らないのではないかと思ふ、それから尚第十一條の政令のことも大體憲法の解釋からさうなるのである、それから官房法制局を置くと云ふことも、是は行政各部の配置を規定する時に、内務省、外務省を置くと云ふ時に、法制局、官房を置くと言へば宜いのだし、どうも獨立の内閣法と云ふものをどうしても出さなければならぬと云ふ理窟が分らない、それから又是は昨日のことを繰返すことになるから、詳しいことは申しませぬが、内閣法を出すなら各省官廳法と一緒に出して行かなければ、何處にどの規定が重複して居るか、缺けて居るかどつちに入れるか、其の比較は出來ない、植原君は施行細則迄決らなければ審議が出來ないと云ふことはちよつと窮窟過ぎると云ふ御批評でありましたが、施行細則ぢやない、關聯して居る、各省と内閣との關係は、各省が施行細則で、内閣が本則ではない、内閣は、内閣と合議體の所謂各省と言つても宜い位な官廳である、それに總理大臣としての、合議體ではない總理大臣としての單獨の官廳としての庶務もありますけれども、どうも是だけをポツンと出す必要がないし、又是は内閣法がなくても、今度官廳法が出來れば、其の中に一二の規定を入れれば宜いのである、何も是は必要ないと思ひますが、是は一つ純粹の法律論でございますから、法制局長官から詳しく御説明をお願ひしたいのである発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=20
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021・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 御答へ申上げます、今の御意見の内閣法と云ふものを、特に作らずに、内閣に關する法規及行政各部の法規、それを一つに纒めて作つたが宜いぢやないかと云ふ點でございますが、是は法律の形式の問題で、左樣にすることが絶對不可能とは勿論存じませぬ、併しながら私共の考としては、内閣は成る程行政權の中樞でありまして、各省の組織と行政權を分擔すると云ふやうな點からして、行政權に關聯しての或限度に付ては共通點を持つて居りますが、一體憲法の上で、立法、司法、行政と分けまして、行政に付ては内閣が其の最高責任者である、司法に付ては裁判所立法權は國會と云ふ風になつて居る建前から行きまして、行政權を申しましても、内閣の組織と云ふものは憲法的に極めて重要なものであると考へて居ります、各省に於ける行政事務の關係は、寧ろ内閣が持つて居る此の行政權の實行を更に細分すると云ふやうな心持ちでありまして、謂はば憲法六十五條に於て、行政權が内閣に屬して居り、更に憲法七十二條で、總理大臣が内閣を代表して行政各部を指揮監督すると定めて居り、且又憲法に於きまして、國務大臣が一方に於て行政大臣たる方面を持つと云ふ趣旨で規定もあります、そこで各省は寧ろ内閣の下に於きまして色々な行政を分擔すると云ふ形であつて、自ら内閣の地位と各省の地位とは、重要性から申しましても、そこに段階があるやうに考へて居ります、そこで法律の形式であるとしても、内閣法と云ふものは裁判所法若しくは國會法と竝んで特別の法律であることが望ましいと考へます、それからもう一つは、今度の議會に内閣法を出して、行政官廳法が出なかつたと云ふ點は、昨日國務大臣からの御答辯があつたやうに、行政官廳法に於ては未だ十分に整理してないと云ふことから、一緒に出さなかつたのでありますけれども、是は矢張り内閣法が基礎でありまして、内閣法の内容を茲ではつきり決めて戴くと云ふことになりますと、更に之に對應して行政官廳法と云ふものの立案もし易くなると云ふ風にも考へられるのであります、旁旁私共の考としては、憲法の趣旨から言つても、國會法、裁判所法と竝んで内閣法を作るのが適當であるのと、更に内閣法と行政官廳法を併せて一つの法律にすると云ふことは、此の際としては勿論間に合はないと云ふ點がありまして、斯う云ふ形にしたのであります、更に今御話の、内閣法の中の條文に於て、なくても宜いと云ふ話がありましたが、是は法律は分り切つたことは書かないと云ふ原則に立つならば、内閣法の中に書かないでも宜い部分があります、併し私共はそれを見れば分る、大體が分る、總てが分ると云ふやうに持つて行きたいと考へます、内閣法が行政の中樞であると云ふ憲法の趣旨を茲で具體化したのでありますから、憲法に謳つたことであつても、矢張り重要な點はそれを更に細かく分り易くして、内閣法の中で繰返すと云ふことは、將來に於て新しい立法の形式としても望ましいと考へて居ります、どの程度あの中に憲法の規定を繰り返すかと云ふことは程度問題であります、私共の考と致しましては、第一條であるとか、或は又連帶責任であるとか云ふ部分は、是は内閣法に内閣の性格を表はす重要なものであると思ひまして、是はなくても憲法が動くのでありますけれども、内閣法と云ふ一つの法典を作る以上は、繰返しまして分り易くした、斯う云ふ趣旨でございます、大體さう云ふ風な心持ちであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=21
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022・澤田牛麿
○澤田牛麿君 是以上は意見の相違になるかも知れませぬが、どうも是は英米法の寧ろ缺點とでも言ふべきものぢやないかと私も密かに思ふのでありますが、決まり切つて分つて居ることを、上級の法規でちやんと規定して、決り切つて居ることを、又下級の法規でそれを繰返さなければならぬと云ふことは、非常に冗漫な話で、人民は法律の多きに苦しんで居る、成るべく法律は少なくして、分り切つたことは書かない方が宜いと思ひますが、今の法制局長官の御話に依ると、分り切つたことでも成るべく書いた方が宜い、それでは法律か教科書か區別が付かないものになるのではないか、さう云ふ點は、意見になるかも知れませぬが、立法する上に於ては、今迄の我々の考から言へば、どうも大變方針が變つたやうに思ふ、歴代の法制局も私の今言つたやうな方法で來て居つたと思ふのですが、急に何も彼も洗ひ浚ひ出して行く、分り切つたことでも何でも一應書くのだと云ふことは、今後法律が非常に繁雜になるばかりで、ヴォリニームが殖えるばかりで、何等の益がないと思ふのですから、そんな點に付てどう云ふ御考へでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=22
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023・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 其の點は最近になつて急にさう云ふ方針が變つたと云ふよりは、寧ろ戰爭中に於きまして色々な立法がされました時に、一つの法規を見たのでは分らないので、二つも三つも法規を見て始めて分ると云ふことは甚だ不深切であると云ふ聲が非常に強くなりましたが、私共も左樣に考へました、そこで假に、法律があつて、それに基いた勅令若しくは省令が出る時でも、成る程數年前には御話のやうな風に、法律で書くことは、命令でやることは必要最少限度に止めれば宜いのだと云ふ思想もありましたけれども、さうしますと二つも三つも竝べて、初めて全貌が分ると云ふのでは、それでは甚だ不深切であると云ふことから、委任命令の方でも、法律の中に書いたことでも、是は程度問題でありますから一切合切書くのではありませぬが、大體根幹になるものは繰返して書くと云ふやうなことは、戰爭中に於ても相當例があつて書いたのであります、今の内閣法に付ても同じやうな考へ方であり、又將來立法するに付ても、是も程度問題でありますけれども、憲法で書いたことは憲法で分る、法律に書かぬと云ふことになると、一般國民は先づ憲法の其の部分を見て、又法律を見て初めて分ると云ふ風なので、どうも法の統一を圖る上に於て不適當ではないか、從つて諄いやうであるが、重要なことを繰返すと云ふことを強ひて避ける必要はないのぢやないか、大體さう云ふ風に私共は考へて、憲法の附屬法令、其の他の法令に付ては考へたいと思ひます、要するに程度問題ですから、餘り諄くならない程度で、深切にやつて行くと云ふ考であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=23
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024・澤田牛麿
○澤田牛麿君 御趣旨は分りました、さうすると繰返さない條項と云ふのは、此の中に幾つありますか、大抵私は繰返しぢやないかと思ふが、之を一つ、詳しい説明は要りませぬが、どれとどれが繰返さない條項であるか……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=24
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025・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 是は憲法の第五章内閣の條文と、内閣法とを對比する譯でありますが、「行政權は、内閣に屬する。」と云ふ憲法六十五條の規定は、是は茲に特にさう云ふ文字は繰返してありませぬけれども、其の内容を更に具體化して、第一條に於きまして、内閣の職權を内閣法で書いた譯なんです、それから例へば總理大臣の任命であるとか、或は國務大臣の任命であるとか云ふ組織、先づ内閣組織を作る方の部分は内閣法で謳はなかつたのです、即ち憲法で内閣と云ふものが出來た、其の内閣に付ての細かい規定が内閣法でありますから、内閣を作る迄のことは憲法で宜からうと云ふ風に考へて、此處には一應書いてない譯であります、それから内閣が總辭職する場合のことであるとか云ふ風なことも、是は特に内閣法では書いてありませぬ、内閣が出來て辭める迄の間に於ける内閣の活動に付ての基本的な事項を茲に盛り込んであると云ふやうな次第であります、從つて内閣法の條文と憲法の内閣に關する條文とは、びつたり同じものを繰返した譯ではないので、其の中の主要なものを更に分り易く具體化して之に書いた部分が若干あると云ふ譯でありますから、どの條文がなくて、どの條文があると云ふことは、ちよつと餘り明確には言ひにくいのでありますけれども、今言つたやうな趣旨で此の内閣法が出來て居ります、尚内閣法の第五條、是は憲法第七十二條と殆ど同じやうな表現を書いてあります、是は憲法の第七十二條と此の内閣法の五條と云ふものは同じやうなことでありますけれども、是は矢張り内閣が機能を發揮する場合に於きまして、國會との關係が重要な部分でありますから、此の點は殆ど憲法の法文と同じやうな事項を茲に書いてある、更に内閣法第六條は、矢張り憲法第七十二條の後段、即ち行政各部を指揮監督すると云ふ點を茲に現はして居ります、即ち内閣法第五條、六條は、憲法七十二條を二つに分けて書いたのでありますから、此の點は大體憲法の條文を踏襲して居ると云ふやうな風になつて居ります、其の他の細かい規定は、結局憲法で書きました事項を更に分り易く書いてある、即ち内閣が職權を行ふのは閣議に依るのだと云ふやうなことも、是も内閣が合議體であると云ふやうな所から、なくても、分ると仰つしやればさうかも知れませぬけれども、是は矢張り法律家だから分るので、一般の者だとすると矢張りはつきりしないと云ふ點で、それを具體化して六條に規定を置いたと云ふ點でありまして、大體さう云ふ風な考へ方で憲法との釣合ひを取つてあるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=25
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026・澤田牛麿
○澤田牛麿君 もう私の質問はやめますが、只今の御説明は私共の考へと喰ひ合はないのですけれども、是以上は幾ら言つても同じですから止めます、總體に對する質問は私は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=26
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027・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 他に全般的の御質問がなければ、逐條審議に入ります、第一條以下を一括して議題に供します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=27
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028・佐々木惣一
○佐々木惣一君 私は此の第一條から出發して、ちよつと伺ひたいと思ひますが、丁度今の澤田委員と法制局長官の御話に關係して居るやうなことですけれども、少し違ふと思ひますが、私は私自身の質問に入る前に、ちよつと意見を申上げます、矢張り同じことが書いてあつても、それは私は差支ないと思ひますが、それは今の法制局長官の仰しやつたやうに、同じことを唯分り易くする爲に書くと云ふだけの意味ではなしに、同じことでも、憲法に於て書いてある意味と、それからして内閣法詰り内閣其のものに關する法に於て書いたものとは、少し意味が違ふと思ふ、内閣に關することでも、憲法に規定する時は、國家組織全般に於ける地位を示す、言ひ換へれば、他の機關との關聯に於て、比較的に、對照的に見たものですが、内閣法は唯其の憲法の下に於て内閣と云ふものだけを引き離して、内閣とはどんなものであるかと云ふことを示す爲でありますから、同じことがあつても、其の取扱ふ法的意味が大分違ふ、斯う云ふ風に豫て考へて居ります、それで私は、第一條に同じやうなことが書いてあつても、此の點は差支ないやうに思ふのです、唯分り易くすると云ふ意味だけではなしに、此處は内閣そのものを引き離して書いてある、憲法に於きましては、他のものとの關聯に於きまして、國家組織全般に於ける其の地位を示すものとして書いてあると云ふ風に考へます、それはそれでいいと思ひますが、此處に「日本國憲法第七十三條その他日本國憲法に定める」と云ふ規定がありますが、是はどうでせうか、大臣なり法制局長官なりに御伺ひするのですが、第七十三條は日本國憲法と云ふものに現に定めてあることである、第七十三條と斯う書いてあるのですが、「日本國憲法に定める」と云ふのは、現に存すると申しても五箇條しかありませぬけれども、日本國憲法と云ふものに現に定まつて居ると云ふことだけを言ふのぢやない、將來内閣の職權と云ふものは、憲法と云ふもので定めたものでなくちやいかぬ、憲法以外の法、例へば政令の如きもので此の職權を定めてはいけないと云ふ意味が之に含まれて居ると解釋は出來ませぬですか、如何なものでせうか、實際さう取れますね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=28
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029・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 第一條は、内閣の職權を此處で具體化した積りであります、從つて憲法の六十五條に「行政權は、内閣に屬する。」とありますから、兎に角行政權を内閣が行ふことは明かですけれども、其の内容はどうかと云ふと、憲法第七十三條で決まつて居ることの外、憲法の中に若干規定がある、さう云ふことを内閣が行ふと云ふことを此處に書いた譯であります、そこで、それ以外のことが一體内閣で出來るかどうかと云ふ點でございますが、全然法律に根據なき政令若しくはそれ以下のもので内閣の職權を加へると云ふことは、恐らく出來ないだらうと思ひます、從つて若し必要が起れば、更に別の法律で内閣の權限を附加する、或は又法律の委任を受けた所の限度に於て、政令で内閣の權限を附加すると云ふことであらうかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=29
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030・佐々木惣一
○佐々木惣一君 法律で定めるのですけれども、法律に定めても、憲法自身が認める範圍に於ける法律でせう、それでないといかぬでせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=30
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031・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 其の通りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=31
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032・佐々木惣一
○佐々木惣一君 尚他の方があつたら、後で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=32
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033・澤田牛麿
○澤田牛麿君 各條毎にやつて行つて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=33
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034・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 澤田委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=34
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035・澤田牛麿
○澤田牛麿君 是はもうほんの文章の問題ですけれども、先程申上げたのは私の趣旨でありますが、憲法に定めない職權を行ふと云ふのなら第一條が必要だけれども、私は此の一條の「憲法に定める職權を行う」と云ふのは必要はないと思ひます、それはそれとして、「憲法に定める」と云ふのは將來のことですか、文章の問題になるけれども、憲法に定めたる職權と云ふならば、憲法で決まつて居るだけのことをやると云ふのだが、さうではなく、第一條は、將來憲法の改正があつて、憲法に新しいことが入つて來ると云ふことを豫想して定めると云ふ、未來の言葉のやうな意味で使つたのですか、どつちの意味ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=35
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036・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 兩方であります、現在憲法の中に定めてあること、及び將來憲法に改正でもあつて附加すれば、矢張り此處に「定める」と云ふ中に入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=36
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037・澤田牛麿
○澤田牛麿君 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=37
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038・佐々木惣一
○佐々木惣一君 今の「定める」と云ふことに關しては、法制局長官と同じですが、此の第一條に關聯致しましてちよつと御尋ね致したいのですが、詰り行政事務の分配に關する根本原理を此の内閣法が何處に置いて居られるかと云ふことを御尋ね申上げたい、と申上げるのは、今度の憲法では内閣が行政權を持つて居るのですから、今申上げたやうな行政に關する方針の決定と云ふものは是は内閣がやるのですね、其處は議會と違ふ、國政の決定は議會ですけれども……、そこで行政に關する方針を決定致しまして、其の方針に從つて具體的に現實に實行致さなければなりませぬね、其の具體的の時に、事務が分配せられるだらうと思ふのですが、其の時に先づ國務大臣にやらせると云ふ趣旨であつて、それだけで、内閣自體は一體さう云ふ意味の行政の實行責任と云ふものは持たぬと云ふことになるのか、と申しまするのは、現行法でも、大臣も御承知と思ひまするが、先づ各省大臣に行政事務は分任せしむると云ふのが根本の建前で、それでも工合の惡いものは總理大臣でやる、それでも工合の惡いものは内閣に持つて行く、斯う云ふやうに主たる責任者は各省大臣で、それで工合の惡いものは總理大臣、掃き溜めみたいなものですけれども、兎に角一人で具合の惡いものは内閣に持つて行く、さう云ふやうになつて居る、それが分任の主たる原理である、さう云ふ原理と云ふものがどう云ふ根據に立つて居るかと云ふことをちよつと明かにして置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=38
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039・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 此の行政權の行使される一番の大本の範圍は何處にあるかと云ふやうな御尋と、其の中にどう云ふ風に分擔されて行くかと云ふ御尋のやうに解釋しまするが、新しい憲法に依りまして、内閣は國會から生れて出て來る、それで大體國會の方針に依つて内閣が動く、其の國會の背後には國會の多數を占むる政黨がある、其の政黨の總裁と云ふものが必ず多數黨であれば内閣總理大臣になる、斯う云ふ順序に行くと思ひます、そこで内閣總理大臣と云ふ建前でどの程度に行政權を行使するかと云ふことは、何時でも國會の多數を制して居る所の政黨に依つて反映して、まあモラリーにと言ひませうか、或は何と言はうか、其處に一種の制肘を受ける、國會の多數で決めたことは是が最後だ、其の範圍の中に行政の最後の枠は限定されると、斯う御考へ下すつて宜からうと思ひます、そこで其の範圍の中で今度は各省の行政事務を擔任する大臣はどうかと言へば、それは内閣で決めた枠の範圍に於て致さなければならない、其の範圍の中で若し逸脱したと思はれる時には、内閣總理大臣が之を注意することも出來る、そこで若し其の場合に於て多少の意見の相違でもあつた時には合議體の閣議に於て決定する、斯う云ふ風な形で行はれるものと御考へ下すつて宜からうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=39
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040・佐々木惣一
○佐々木惣一君 只今大臣の仰しやつたことは能く分りました、それは例の行政事務の縱の見方です、私の申上げたのは横の、事務の種類に依つて主任國務大臣と總理大臣と内閣自體が分れて居て、現行法で申上げますれば、例へば恩給とか、國家試驗と云ふやうな問題になりますると云ふと、内閣總理大臣の所管である、それから例へば都市計畫の決定と云ふやうなことになると今少し違ふかと思ひますが、内閣自體がそれを決定すると云ふやうに、行政事務の種類に依つて各國務大臣と云ふものが主任であると云ふことは、是は疑ないですけれども、唯それで行けぬ時には内閣總理大臣にやらせると云ふ趣旨を採つて居られるのであるか、又内閣總理大臣がやつても工合が惡い時には内閣と云ふものを行政事務の實行官廳にするのであるかと云ふ、唯事務の分配の方法を御尋ねしたのです、是はまあ政治的な意味ではありませぬから、法制局長官に伺つた方が宜いかも知れませぬ、是は可なり行政的には重大な事です、事務分配の方針ですね、内閣と云ふものはもうさう云ふ意味の事務はやらぬものか、内閣で行政權を行使すると云ふのは、行政の方針に付て内閣で決定をすると云ふ意味で行政を掌つて居ると云ふのか、内閣と云ふものが一つの對外的の行政事務を掌るものとして今やつて居りますから、さう云ふことは許されるかどうかと云ふことなんです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=40
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041・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 佐々木博士能く御存じでせうけれども、實際は今の行き方と、本當に國會が中心となつて政黨がなる時と、餘程行き方が違ふと思ます、現在内閣の下に、此の規定にもありますが、内閣に内閣官房と法制局を置くと云ふやうなことで、内閣官房は内閣としてではなくて、實は内閣總理大臣として取扱ふことが多からうと思ひます、此の第十二條には「内閣官房及び法制局を置く。」だけになつて居りまするけれども、私は豫算の編成に付いても從來と違つた方法を採るやうになると思ひます、國會が中心になり、政黨が中心になる場合に於ては、今の大藏省の主計局に於て豫算を作ると云ふやうなことでなくて、政黨の意思がプレドミナントになる、是が最高になりまするから、それと一番連絡の深い内閣總理大臣の下に於て政黨の意思、政策を十分採入れたもので豫算を作らなければならないと云ふ形になると思ひます、さうすると豫算の編成も、豫算を編成する場所も自から違つて來なければならぬと思ひます、だから今佐々木博士の仰しやるが如く、細かしいことは現在の官制を先づ踏襲して、政黨の力と内閣の力とのも合ひで漸次一番良い所へ定まつて行くのではないかと、斯う御解釋下すつて、根本は只今私が申上げたやうなことで、其の他のことは漸次必要に應じて動いて行くものだと、斯う御解釋下さる方が一番素直な解釋ではなからうかと思ひます、議論は拔きに致しまして……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=41
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042・佐々木惣一
○佐々木惣一君 少し私の申上げたいことと喰ひ違つて居る、行政事務分配に付ては、これがどう云ふ趣旨であるかと云ふことを御尋ねした譯ですけれども、私大體大臣の御説明の所は分りましたからもう宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=42
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043・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 第一條に付て外に御質疑がございませぬければ第二條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=43
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044・澤田牛麿
○澤田牛麿君 第二條に付ては、「内閣は、首長たる内閣總理大臣」、此の「首長たる」と云ふことは、此の規定がなければいかぬのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=44
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045・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 是も憲法の意義を茲に移したものだと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=45
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046・澤田牛麿
○澤田牛麿君 心要のない文字のやうに思ひますが……、それから十六人と云ふ定員を此處に書いてある、私共は定員がなくても宜いのではないかと思ひますが、法律で以て定員を規定するのは、外の小さな官廳は別として、國務大臣の數は其の時の便宜で、それこそ國會の意思で以て決ることであるし、大體豫算もそれで決るのだから、法律で何も限定すると云ふ必要はないやうに思ひますが、是も意見になるので是以上御伺ひ致しませぬ、それから「連帶して責任を負う。」内閣は一つの官廳だから、其の官廳が連帶して責任を負ふと云ふことは何を意味することであるか、内閣の各大臣は連帶して責任を負ふと云ふことならば讀めるが、内閣が連帶して責任を負ふと云ふことは私共には讀めないのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=46
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047・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 憲法の六十六條の三項に「内閣は、行政權の行使について、國會に對し連帶して責任を負ふ。」斯う云ふ規定があるので、それを移したのであります、先刻の澤田さんの御議論に依れば、憲法にあることを此處に書く必要はないのではないかと云ふ御議論も立ちますが、今佐々木博士の仰しやるが如き御意見に依つても、相當私は強い理由があると思ふ、憲法に定めてある内閣は、憲法全體との綜合的の意味であり、茲に内閣法の場合には、内閣と云ふ限定したものであると云ふのは、御意見の違ひだけれども、佐々木博士の御意見に私は全然贊成するものであります、是も内閣と云ふものは一つの官廳でありまするけれども、丁度政府と云ふものを廣義に解釋するのと狹義に解釋するのとの違ひで、内容は同じで、内閣と云ふものが連帶して國政を燮理する一つのものであると、斯う解釋する場合に於ては、内閣が國務大臣に依つて編成されて居る、其の國務大臣は皆一つに固まつて、さうして行政の事務を取扱ふ、從つてさう云ふ意味に於て國會に對して連帶して責任を負ふ、さう云ふ風に考へまして、内閣と云ふことを、唯一つの機關である、そこにあるものであると思ふ解釋と、内閣と云ふものが一つの合議體として行政事務を主管する所だと見まする場合に於ては、斯樣な言葉使ひをしても宜しいのではありますまいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=47
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048・澤田牛麿
○澤田牛麿君 憲法では、今仰しやつたやうな意味で私共は實は餘り詳しく穿鑿もしなかつたのでありますが、憲法は極く大體の政治的の考慮も入つて居る文句だと思つて餘り深く考へなかつたのでありますが、法律となつて出て來ると、憲法と同じ文字を使つてあるから惡いことはないと言へばそれ迄でありますが、もう少し精密にしなければいかぬと思ふ、そこも亦意見の相違ですから、私は此の程度で止めて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=48
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049・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 第二條に付て御質疑がなければ第三條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=49
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050・澤田牛麿
○澤田牛麿君 第三條も、本會議で私申しましたが、どうも主務大臣とか、主任大臣とか云ふことは、事柄があつて、例へば警察とか、防疫とか云ふことがあつて、主務大臣とか主任大臣とか云ふことが出て來るので、何ももののないのに主任大臣と云ふと、何處から出て來るのであるか、是は解釋の仕方は「法律の定めるところにより」とあるから、そこで何かものがあるのだと云ふ意味かも知れませぬが、法律としては甚だおかしなものぢやないかと思ひます、法制局長官の御考は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=50
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051・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 其の點は今も御話がありましたやうに、法律の定める所に依りまして、それで具體化すると云ふことを前提として出來て居るのであります、尚内閣が行政權を行ふと云ふことは、第一條で明かなことでありまして、それを實際に行ふ場合には、國務大臣が出でて行政大臣となると云ふ建前を執つて居りますからして、一條と三條とを對比致しましても、矢張りそこに自ら具體的の行政事務と云ふものは限定されて居ると云ふことが分るのぢやなからうかと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=51
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052・澤田牛麿
○澤田牛麿君 是も意見になりますから、餘り突つ込みませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=52
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053・宗武志
○伯爵宗武志君 是は言葉の使ひやうですから、餘計のことのやうですが、初めに各大臣は行政事務を分擔管理すると書いて置いて、次にそれが、「分擔管理しない大臣の有することを妨げるものではない」と書かず、初めから行政事務は主任の大臣を定めて之を行ふと云ふやうに書けないものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=53
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054・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 御答へ致しますが、さう書けないと云ふこともありますまいけれども、從來の法文の體裁とすれば、斯う云ふ書き方でやつて來た、是で今仰しやるが如き意味は御分りだらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=54
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055・宗武志
○伯爵宗武志君 能く分りますが、却つて其の方が非常に面倒な書き方であり、趣旨が却つて徹底しないやうに思ふ、それでちよつと私が申上げて置きたいのは、此の文をどうしろと云ふことではなく、まだまだ新しい法律の書き方と云ふものが、非常にぎごちなくて、從來の文語のものを其の儘少しづついぢつて、口語に直して、新しい法律の書き方にすると云ふ傾向があるやうに思ふのですが、斯う云ふことに付て、それは餘計のやうですが、將來法律の書き方に付て餘程御研究にならないといけないのぢやないかと思ふやうな感じが致しますので、法制局の方でさう云ふことに付て特別に御研究になつて居るやうなことがございませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=55
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056・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 今の御話御尤でありまして、私共も實は出來るだけ努力致して居ります、最近も官廳用語に付ての色々研究を致しまして、是はまあ法令ばかりでありませぬから、文部省が中心になつて官廳用語に付ての簡易化、若しくは平易化に付て色々の研究もして居りまして、法制局は是と一緒になつて、法令を出來るだけ本當の純粹な日本文として、而も分り易くしようと云ふことに目下努力致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=56
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057・宗武志
○伯爵宗武志君 只今の御趣旨は大變滿足でございますが、それには用語の專門家のやうな者を大勢網羅して居るのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=57
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058・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 之に付きましては文部省の國語の方の專門家を現在既に二名程内閣の囑託に致しまして、色々と絶えず相談をしてやつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=58
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059・宗武志
○伯爵宗武志君 了承致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=59
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060・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 外に御質問がなければ第四條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=60
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061・佐々木惣一
○佐々木惣一君 言葉だけのことですが、ちよつと伺ひたいのでありますが、「内閣がその職權を行うのは、閣議によるものとする」とあるのを、「閣議による」としたら如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=61
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062・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 、是も先刻宗伯爵の御質問のありましたやうに、今迄の法文と書違へるやうに、文語體のものが、國語體になり、又本當に法制上の良い言葉も、官廳の良い言葉も出來て居らないから、まあ色々言葉の上から言へば不備があると思ひますが、今さう云ふものを折角何とかして一定の良い日本語に、洗練された日本語で官廳語が出來るやうにしたいと思つて心配致して居る、其の過渡期のものだと一つ御了承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=62
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063・佐々木惣一
○佐々木惣一君 能く分りました、是はさう云ふ文章もありますが、私共の考へが古いのかも知れませんが、兎に角法文と云ふものは總て軌範にならなければならないので、説明的の文句を使ふべきではないと思ひます、是は幾らか説明的の文句に取れるものですから、それで伺つたのです、それから第一條に關聯して、職權と云ふ文字ですが、是は法文よりも、學問的の使ひ方で、私自身も屡屡混亂に陷りますが、職權と言ふと、所謂職權調査するとか云ふ意味に於て、自發的に權能を以てやると云ふやうな職權もありますし、それから例へば命令とか、處分を爲すと云ふ、さう云ふ職權もあります、實質的の行政事務とか、警察の事務とか、さう云ふ事務をやるには、どうも職權と云ふ文字よりも、職務と云ふ方が穩かで宜いと思ふのでありますが、此の職權と云ふのは恐らくさう云ふ意味で御使ひになつたと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=63
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064・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=64
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065・佐々木惣一
○佐々木惣一君 それで結構であります、四條はそれで宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=65
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066・澤田牛麿
○澤田牛麿君 第二項の説明を願ひます、「閣議は、内閣總理大臣がこれを主宰する。」是は矢張り斯う云ふ規定がなければいけないのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=66
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067・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 是がなければ、結局首長たる總理大臣と云ふ風なこともありますから、解釋で出るかも知れませんけれども、併し閣議と云ふものは重要なものでありますし、從つて其の内容を具體化して、此處に書いたのでありまして、閣議を招集したり、議長になつたり、閣議に議案を出したりすると云ふことは總理大臣がやると云ふ趣旨を此處に明かにしたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=67
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068・澤田牛麿
○澤田牛麿君 それは三ッ子でも當然分り切つたことでありますが、是も議論になりますから其の點は止めます、それから第三項の「案件の如何を問わず、内閣總理大臣に提出して、閣議を求めることができる。」と云ふことは、是は言はなくても當然のことであつて、斯う云ふことを書くのは却つて變なものだと思ひますが、どんな意味でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=68
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069・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 是は若し澤田委員のやうに申しましたらば、閣議を求めると云ふことは、一體どう云ふことを求めるかと云ふ其の文章の上からも考へなければならぬ各大臣は其の省の主管であるとないとに拘らず、如何なる案件でも國政の一部である場合に於ては、總理大臣に提出して、閣議の議を經ることが出來ると云ふ方が宜いのぢやありますまいか、どんなことでも國政には、一つの國家である以上は、其の國民の利害休戚に關することが總て其の中に網羅して居るのだ
から、左樣なことを書かなくても宜いぢやないかと云ふことを仰しやれば、それも一つの御意見でありますが、主任大臣が在り、無任所大臣が在る、さう居ふ場合に於て、其の主任大臣の管轄以外のことでありましても、氣付いたこと、或は必要だと考へることを内閣に提出して、其の閣議の了解を求めると云ふ上に於ては、「案件の如何を問わず」と云ふことがあつた方が宜いのぢやありますまいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=69
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070・澤田牛麿
○澤田牛麿君 是も意見の相違でありますから、私は此の程度で止めて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=70
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071・佐々木惣一
○佐々木惣一君 ちよつと第四條で御伺ひ致したい、それは閣議の決定ですが、通常内閣の閣議は全會一致でなければいかぬと云ふやうなことを言ひますけれども、それは必ずしも私は正しい議論とは思ひませぬ、法制局長官の御考は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=71
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072・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 此の點は連帶責任と云ふ規定の趣旨に鑑みまして、全會一致たるべきものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=72
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073・佐々木惣一
○佐々木惣一君 兎も角全會一致と云ふことになつて居るのですね、いやそれならそれで宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=73
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074・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 第四條に御質問がなければ、第五條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=74
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075・澤田牛麿
○澤田牛麿君 五條は全く重複することで、要らないことぢやないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=75
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076・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 先程申しましたやうに、重複と云へば重複でありますが、内閣と國會との關係は矢張り重要な點でありますので、斯う云ふ風に書いた譯であります、且又佐々木博士が仰しやつたやうに、内閣法としての法律上の意味を非常に明かにして來るのぢやないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=76
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077・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 他に御質問がなければ、第六條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=77
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078・澤田牛麿
○澤田牛麿君 第六條も同じやうに考へます、「閣議にかけて決定した方針に基いて」と云ふ此の文句がちよつと …「行政各部を指揮監督する」ではいけないのですか、「閣議にかけて決定した方針に基いて」と、何だか斯う非常に細かい道行きを書いて居るやうですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=78
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079・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 是も矢張り合議制として、皆んな連帶責任と云ふ點から言へば、先づ國家の重要なる事項、行政上の重要な事項は閣議の決定を俟つべきものだ、それだからして「閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」斯う云ふ意味だと御了解下さつて宜からうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=79
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080・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 他に御質問がなければ、第七條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=80
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081・澤田牛麿
○澤田牛麿君 是は權限爭議に付てのことであらうかと思ひますが、現行の規定に於ける權限爭議はどう云ふ風になつて居るか、詳しいことは存じませぬけれども、「權限についての疑義は、内閣總理大臣が、閣議にかけて、これを裁定する」、是は總理大臣が直接裁定してよくないことですかね、「閣議にかけて」と云ふことになると却て混雜を來すものぢやないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=81
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082・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 全體に於て、假に肥料の問題で言ひますと、農林省と商工省とどの範圍迄どうすると云ふやうなことも問題になり易い、さう云ふ問題は總理大臣が決めても宜しいことでありますけれども、成るべく皆の意見の一致を見る爲ならば、閣議にかけてやつて行くと云ふことが宜いのぢやありますまいか、時に依つては總理大臣が裁決してそれで皆事後承諾を受けることもありませう、是は實際連帶責任と云ふ建前で、斯う云ふ規定が出來て居ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=82
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083・澤田牛麿
○澤田牛麿君 私は此の閣議にかけるか、かけぬかは其の時の便宜の問題で、是こそ實行上の問題で、法律で斯う云ふ風に規定して置く必要はちよつともない、えらく窮屈な規定を置いたものだと思ひますが、それも今の御説明で御趣旨だけは分りましたから、それで止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=83
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084・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 外に御質問なければ、第八條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=84
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085・佐々木惣一
○佐々木惣一君 「内閣總理大臣は、行政各部の處分又は命令を中止せしめ、」とありますが、是は從來のものでは、天皇の勅裁を待つ爲に、せしむると云ふことは天皇が監督者ですから宜いのですけれども、今度は内閣總理大臣が殆ど行政各部を監督して居るのだから、中央に於て處分又は命令を中止しとやつてはいかないのですか、どうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=85
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086・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 矢張り中止しと云ふ言葉でも惡いことはないと思ひますけれども、成るべく各主任大臣の地位を尊重し、敬意を表する意味に於て、斯う云ふ言葉が現れて來たと御了解願ひたいと思ひます、意味に於ては左樣なことだと思ひますけれども、事實は成るべく國務大臣の立場を矢張り大切に取扱ふ、斯う云ふ意味であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=86
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087・佐々木惣一
○佐々木惣一君 詰り内閣總理大臣は兎に角各主任國務大臣を監督をすると云ふ地位には影響ないのですね、是で失ふやうなことはありませぬね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=87
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088・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 御説の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=88
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089・澤田牛麿
○澤田牛麿君 此の第八條は、本會議に於ては淺井君も述べられたし、又幾分違つた意味で私も述べて居りますが、是はどうも觀念の混淆ぢやないか、舊制度に於ては、即ち天皇が裁斷をされると云ふことを前堤として、それを基礎として之に似たやうな規定があつたのでありますが、新憲法に於ては天皇が裁斷されるとか命令されるとか云ふことがないのであるから、總理大臣が上級官廳であり、各大臣を監督して居り、各大臣の上に立ち、各大臣を任免するものであるのだから、内閣の處置を待つことが出來ると云ふ何だか他所事のやうなことは、甚だ不當な規定ではないか、此の條は全く要らないのぢやないか、此の條のあるのは舊規定の觀念を去ることが出來ないで、觀念が混淆して居るものぢやないかと私は思ひますが、法制局長官の御考へ如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=89
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090・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 之を作りました心持は、矢張り總理大臣が行政各部を監督する點もありますけれども、併しそれに付きまして、矢張り内閣を代表して其の意味に於て行政各部を監督することになる譯なんで、總理大臣が自分だけの考で、行政各部特に各省大臣のやつた處分命令等をどんどん處理すると云ふことはどうも適當でない、さう云ふ所からして是だけの處置を執りまして、事柄を重要視する態勢を執つた譯であります、併し實際の運用としては、今國務大臣の仰しやいましたやうに、總理大臣の御考に依りまして相當のことは出來るのですけれども、建前としては矢張り斯う云ふ建前で、内閣が全體として責任を負ひながら行政をやつて行かうと云ふことにした方が宜からうかと思つて居るのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=90
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091・淺井清
○淺井清君 只今のことで關聯して御伺ひを致しますが、此の舊内閣官制の第三篠でございますが、之を發動した實例があるかどうか、若しあれば御示しを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=91
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092・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) どうも其の點は餘りはつきり史實を知りませぬけれども、どうもないやうに思はれます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=92
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093・淺井清
○淺井清君 内閣官制は明治十八年に出來たかと思ふのですが、年號は間違つて居るかも知れませぬが、是がそれから今日に至る迄一囘も發動しない規定である、それを受繼いだのが今度の第八條である、既に死文に化したものを又茲に御入れになると云ふ御趣旨が何處にあるか、發動しなくても宜いと云ふ議論があるのか、其の邊ちよつと分らないのですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=93
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094・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 少し第三條と此の第八條の意味が違ふと思ひます、「勅裁ヲ待ツコトヲ得」と云ふことと、「内閣の處置を待つことができる」と云ふこととは……、是も能く議會中心の政治、政黨中心の政治になつたことを御考へ下されば、總理大臣が一番注意しなければならないことは、閣議に於て決定して、さうして其のことを行政各部の主任大臣の間に成るべく摩擦を生じないやうにして行く、それをうまく統轄して行くと云うことが總理大臣の一番の大きな任務ぢやなからうかと思ひます、さうして本當に政黨政治が出來た場合に於ては、各國務大臣は政黨の可なり有力者、而も皆其の領袖株でありますから、それが擔任する所の行政各部の事務を取扱つたり、處分をして行く間に於て、多少の考へ違ひがあつた場合に於ては、總理大臣は、實際其の總理大臣に依つてではありますけれども、命令をして直ぐそれを處理することも出來ませうけれども、穩かな方法は、一應閣議の決定を待つて、其の處理に依つて決定すると云ふことが政黨などの黨議を多く取扱つた上から言へば良い途ぢやありますまいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=94
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095・淺井清
○淺井清君 私はちよつと國務大臣と意見を異にして居るのでございますが、此の「中止せしめ」と云ふことは、既に穩かな方法でないと思ふ、政黨内閣が若し發達しますれば、此の「中止せしめ」と云ふ職權を發動しない前に、總理大臣の實力なり或は政黨間の問題として、是は解決されて居るので、既に此の職權を發動して中止せしむると云ふことは既に内閣が不統一になつて居る、或はもう内閣は既に崩壞に直面して居るやうな時でなければ、此の職權は發動しないのぢやないか、斯う云ふ風に考へる、さう云ふ譯ですから、是が今日迄遂に死文になつてしまつて居るのぢやないか、斯う云ふ風に考へるのです、ちよつと今の國務大臣の御考と違つて居るのですが、兎に角是は内閣官制制定以來斯う云ふやり方は一遍も發動して居らないのぢやございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=95
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096・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 從來の内閣は左樣なことはありませう、是は主として官僚式でありますから、新しい憲法の下に於て出來まする總理大臣は、出來る限り各省大臣に内閣の決定した事項以外のことは自由の手を揮はせた方が、善い政治が行はれるんぢやありますまいか、左樣な工合に於て幾分其の處分が誤つたと云ふ時に、先づそれを一時止めさせて、さうして閣議の決定を經る、必ずしも左樣なことは内閣の不統一だとは考へませぬ、それを内閣の不統一と御考になると云ふことは、少し政黨の内部なり政黨政治家の本當の心情を御理解にならない結果ではありますまいか、私は斯樣な取扱をすることが、本當に内閣の統一を圖つて行く所以だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=96
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097・淺井清
○淺井清君 私は全然考が違ひます、強力なる政黨内閣に依つては、斯かる現定は絶對發動の餘地はないと思ひます、それは即ち總理大臣の實力なり、閣僚間の融和なりに依つて中止せしめ、斯かる條文の發動は全く意味がないのであつて、過去十數年間のやうな、各方面の勢力を集めた、所謂バランス、オブ・パワーの上に乘かつて居る總理大臣ならば、或は斯う云ふ突つかい棒をしなければならぬことも必要だと思ひますが、政黨内閣が發達致しますれば、是は總理大臣の實力を以て解決することである、中止せしめる以前に總て問題は解決すべきものであつて、總理大臣が斯かる規定を發動するに至ることは、是は總理大臣の貫祿が足らない、苟くも政黨の黨首とあるべき方が、斯かる規定を以て閣僚に臨むに至りましたならば、是は我が國の政黨政治と云ふものは、駄目だと思ふのであります、ちよつと國務大臣と御意見が違ふかも知れませぬが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=97
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098・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) それは意見の違ひで、議論しても致し方ないと云ふことでありますけれども、實際は本當に政黨の各人の意見を尊重して、それを統轄して行くと云ふことが、政黨政治家の一番宜しいことと思ひます、さうして實際に當つて、行政の細部に亙つて、それを一々閣議の決定を俟つて行くことは事實出來ない、可なり大臣にフリー、ハンドを與へると云ふことが宜いことで、萬一の場合にそれを一時中止せしめて、そして、閣議の決定を圖ると云ふことが、本當に圓滑に行く方法であります、實際の問題に付て御考になれば、淺井君と違つた事實が出て來ると思ひます、それは意見の違ひですけれども、本當の行政事務はそんなに簡單に、總てを閣議決定で其の通りやつて行き得るものでなく、其の時に起つた事は其の時に處置して行く、其の處置して行くことが他の省と摩擦を起すやうな場合はそれを中止せしめ、さうして閣議の決定を俟つて行く、斯う云ふことで、行政事務の複雜なことを能く御考になつたならば、能く私の言ふことが御諒解下されると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=98
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099・淺井清
○淺井清君 此の問題は是で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=99
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100・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 他に御質問なければ第九條に移ります……別に御質問もなければ第十條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=100
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101・鏑木忠正
○鏑木忠正君 ほんの是は字句の問題でありますが、第十條を見ると「主任の國務大臣」と書いてありますが、第三條、第七條を見ると「主任の大臣」と書いてあつて、國務大臣とはなつて居らない、此の使ひ分は矢張り第三條、第七條の「主任の大臣」と云ふのは、皆國務大臣を言ふのでせう、第十條の條項は特に重大であるから國務大臣と書いたのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=101
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102・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 第三條に「主任の大臣」としてあるのを、第十條に於て「主任の國務大臣に事故あるとき」と云ふ風に、區別して居るのは、どう云ふことかと云ふことの御質問のやうでありますが、茲に國務大臣と云ふ字を特に用ひた所以は、一つの主管して居る所の國務大臣に事故ある時と云ふ極限した意味、第三條の方はさう云ふ意味でなくて、主任のどの大臣をも指差す意味に於て、斯う云ふことになつたらうと思ひます、片一方の方は主任の或る特定の國務大臣に事故ある時、斯う云ふ意味であるし、片一方の方は主任の全般に亙る大臣、勿論大臣と云ふのは國務大臣の意味ですけれども、總轄的のことで、片一方は特定の具體的のことですから、斯う云ふ差別の使ひ方が出來たと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=102
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103・鏑木忠正
○鏑木忠正君 私の質問は是で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=103
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104・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 外に御質問なければ第十一條発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=104
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105・澤田牛麿
○澤田牛麿君 是は矢張り十一條の斯う云ふ規定がなければいけませぬか、憲法の解釋から當然……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=105
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106・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) どうも同じ根本の觀念としては、いつも同じことのやうでありますが、斯樣にして繰返しであるかも知れないが、明瞭にして置いた方が、他を引出して法律を取扱ふ上に於て便宜ぢやありますまいか、便宜主義だと御了解を下されば宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=106
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107・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 外に御質問なければ十二條発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=107
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108・澤田牛麿
○澤田牛麿君 十二條に「内閣官房及び法制局は、政令の定めるところにより、」とありまして、さうして五項に、其の「組織は、別に法律の定めるところによる。」と、こんなに法律を幾つも出さなければ、法制局が出來ないでせうか、そこで私が豫ね豫ね言つて居る通り、第十二條などなくても、行政官廳に關する一般の法規が出來れば、其の中に、内閣に官房、法制局を置くと云ふ一項があれば、組織が出來ると思ふ、之を此の法律で置くと云ふことを書いて、又其の組織と云ふものは又別の法律で定める、どうも餘り複雜のやうに思ふのですが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=108
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109・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 是は先刻來の御話で、行政官廳法のことを意味するので、其の法に依つて内閣官房や法制局の組織がはつきりすると云ふことと御了解願ひたいのです、別に内閣官房や法制局の爲に、其の組織を規定する爲に法律を設けると云ふことではなくして、行政官廳法を作ると共に、是等の規定も組織も自ら定まる譯です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=109
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110・佐々木惣一
○佐々木惣一君 此の十二條の最後の所ですが、無論此の内閣官房及び法制局以外に、色々な機關が必要であると云ふことは申す迄もない、それをちよつと御尋ねして見ようと思ひます、私は外部に居つた時から感じたのですが、親しく實際機關に接觸して來た感じで、國務大臣と云ふものは……内閣と言つても宜いが餘りに本當の意味の國務を考へると云ふことが出來ない程忙しい、私はもう少し落著いて考へると云ふやうな組織があつたら宜からうと思ふ、具體的の現實の事務を處理すると云ふだけでなしに、落著いて考へるならば、今日どう云ふことが重大な問題であるか、從つて其の解決方法としてどう云ふことに著眼すると云ふことを、落著いて、學者の學理上の問題でなしに、具體的事實に即してであるけれども、事務的に處理するのでなく、落著いて考へると云ふやうな一つのものなり組織を大臣に持つて戴くやうにする爲に、さう云ふことに役立つやうな機關を假に置いて、斯う云ふ問題が今重大だ、大體の方針は斯う云ふ風にやるべきだと云ふことを始終考へて、それを國務大臣に、或は内閣に言ふやうな、さう云ふものが一つあつたらどうかと云ふ感じを痛切に持つのです、名は別ですが、さういふやうなことも此處で考へられて居ないと思ひますが、さう云ふことがあつたら如何かと思ふのですが、如何でせうか、何も責任ある御答辯を望みませんよ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=110
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111・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 佐々木博士の御意見誠に御尤もと思ひます、今日の行政の取扱では、雜務に紛れて、本當の大處高處から國務大臣が國政の方向を考へるやうな時間がない、是では實際良い政治が行はれないと思ひます、さうして今迄は議會の期限も三箇月、會期中は國務大臣も政府の役人も朝から議會に詰切りと云ふことでありましたから、私は新しい國會法が出來る時には、是も徹底的に改めなければならないと思ひます、少くも午前中位は各國務大臣は官廳に居て事務を見る、午後から議會に出て仕事すると云ふことにしなければならぬと思ひます、さう云ふ形を採ります時に、國務大臣なりは可なり落著いて……全く靜かにして國務國政を考へる時間がないやうでは良い政治は行はれないと思ひます、そこでさう云ふ建前から行きますれば、内閣の官制の上になくも、或無任所大臣がそれに當るとか何とか云ふことが出ませうが、一種のブレーン・トラストのやうなものがあつて、別のものを考へて、さうして國内の事情も海外の情勢も、又國家の行くべき道も考へて、そこで相當ものを立案することにならなければ良い政治が行はれないと思ひます、此處にありますことは、今の内閣を引き繼ぐ爲に斯う云ふものが出來て、是等に於ては實際國會が中心になる場合には根本的に改まつた形が出ることと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=111
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112・佐々木惣一
○佐々木惣一君 分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=112
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113・野村嘉六
○野村嘉六君 まだ質問が續くやうですなら、十二時半ですから休憩にしたらどうですか、もう少しならやつても宜いと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=113
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114・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) もう少しのやうでございますけれども……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=114
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115・宗武志
○伯爵宗武志君 大臣に伺ひます、第十二條でありますが、「内閣に、内閣官房及び法制局を置く。」と云ふことの「内閣に」と云ふ意味はどうですか、内閣と云ふものと官房なり法制局の關係……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=115
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116・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 内閣の組織の中にと云ふことでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=116
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117・宗武志
○伯爵宗武志君 組織の中に入つて居りますか、内閣は總理大臣と國務大臣で以て組織すると云ふことになつて居るのですが、其の内閣と此の場合の内閣は意味が違ひますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=117
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118・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 茲に内閣と云ふ場合には内閣總理大臣の直屬にと云ふ考へ方と思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=118
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119・宗武志
○伯爵宗武志君 矢張り第十二條の中に「庶務を掌る。」其の次に又「法制一般に關することを掌る。」斯う云ふことになつて居りますが、其の後に「内閣の事務を助ける。」と云ふ風に又書いてあります、其の「掌る」と「助ける」の意味の區別が能く分りませんが、御説明願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=119
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120・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 「掌る」と申しました時は、其の部局其のものの權限を書いた譯なのでありますけれども、「助ける」と書きました場合は、結局新しい何か機關を置きまして、其の機關は結局内閣の事務を助ける爲に置くものであると云ふ趣旨を現はしたものであつて、然らば其の機關はどう云ふことを掌るかと云ふことは、それは別に法律で定める所であります、法律で所掌事項は書く積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=120
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121・宗武志
○伯爵宗武志君 新しい機關で以て、「前二項の外、内閣官房及び法制局は」と書いてありますから、矢張りそれも助けるのですか、助けると云ふことは掌ると云ふ意味と同じで、唯やることが決つて居ないけれども、掌るのだと云ふ風に解釋して宜しいのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=121
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122・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) それは掌ると申しますと、具體的に内容は決つて居るだらうと思ふのです、例へば内閣官房は閣議事項の整理其の他の庶務と云ふことが所掌事項の内容であるとして範圍が決つて居ります、それから内閣官房が政令の定める所に依つて内閣の事務を助けると、斯うなりますと、其の場合には内閣官房は内閣の事務を助けるのであつて、而も其の内容の所掌事項は政令に依つて決めると云ふ風になると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=122
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123・宗武志
○伯爵宗武志君 さうしますと、助けると云ふ意味は携はると云ふ意味に解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=123
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124・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) そこは助けると云ふのは、内閣と云ふものの事務を補助すると云ふ意味に於て働くのだと云ふことを言つて居るのであつて、其の補助する場合にどう云う具體的事務を所掌するかと云ふことが、掌ると云ふ觀念なのでありますから、どうも掌ると助けると云ふ間には少し段階の違ひがあるかと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=124
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125・宗武志
○伯爵宗武志君 掌ると云ふことでなく、携はると云ふことに解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=125
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126・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) さう云ふ意味ならそれで結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=126
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127・澤田牛麿
○澤田牛麿君 内閣直屬の恩給局とか、今は印刷局はないと思ひますが、さう云ふやうな部局があります、さう云ふものは此の内閣の事務を助けると云ふ中に入りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=127
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128・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 十二條の中に色々なものがあるやうに考へて居りますが、内閣と申しますのは、先程國務大臣が仰つしやいましたやうに總理大臣と云ふことになりますけれども、其の總理大臣と言ひましても、此の内閣法で言つて居る十二條の規定でありますから、合議體としての内閣と云ふものがあつて、それの代表として總理大臣があると云ふ考へなのであります、處が内閣總理大臣が各省大臣と同じ列に於て行政大臣となる場合もありまして、さう云ふ風な場合に、例へば恩給であるとか統計と云ふことに付て所掌することがあると思ひます、それは實は此處の末項に書いてある事項ではないのであります、矢張り末項に書いてあります必要な機關は、合議體たる内閣竝にそれの代表たる總理大臣、さう云ふものを助けると云ふ意味で書いてありますから、言つて見ますれば、今の制度で言へば、或は今の所之に丁度ぴつたり當るやうなものはないやうにも思ひますけれども、將來或は企畫的な方面の部局とか或は豫算の部局に付て、そんなものが考へられれば、斯う云ふやうな規定からして根據を置いて法律が定つて來るのだらうと考へて居ります、從つて今の恩給局、統計局に付ては十二條から離れて單獨の官廳として置くことがあるかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=128
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129・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 是にて各條の審議を終りました、外に質問がなければ質問を打切りまして、討論に入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=129
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130・野村嘉六
○野村嘉六君 もう十分に質問應答出來ましたからして、是で御採決を願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=130
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131・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) それでは本案の採決を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=131
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132・澤田牛麿
○澤田牛麿君 採決と云ふと何ですか、討論をしないで……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=132
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133・野村嘉六
○野村嘉六君 それは異議がないと思つて居りますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=133
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134・澤田牛麿
○澤田牛麿君 質問は濟んだが、討論と云ふものはないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=134
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135・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 討論に入つて、他に御發言ありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=135
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136・野村嘉六
○野村嘉六君 それでは討論終結の動議を出します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=136
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137・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 澤田委員に御意見があるのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=137
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138・澤田牛麿
○澤田牛麿君 私は此の内閣法は否決すべきものと云ふ意見を出します、それは先程度々述べる通り、官廳法と官吏法があれば、此の内閣法に於て是非共なければならぬと云ふ規定は其の中へ入れれば宜い、大體の規定を觀測すると、多くは憲法との重複になりますから、要らないものを省いて、是非共要するものがあれば、其の一箇條か二箇條は官廳法に入れればそれで濟むのです、獨立の内閣法と云ふものを發布する必要はないと思ひますから、否決の案を主張致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=138
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139・野村嘉六
○野村嘉六君 私は原案の贊成の意見を述べます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=139
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140・淺井清
○淺井清君 澤田さんの御議論も御尤もではございまするが、兎も角敗戰後の今日に於てはバラックしか建たない状態でもございますし、色々法制上移り變りがありますから、色々缺陷もあるとは思ひまするけれども、私は先づ本案は政府に於て其の運用の上に十分注意せられると云ふことを條件として本案に贊成致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=140
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141・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 他に御意見もなければ、本案の採決を致します、本案を可決することに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=141
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142・澤田牛麿
○澤田牛麿君 贊成は全會一致でありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=142
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143・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 本案を可決することに贊成の方の御起立を御願ひ致します
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=143
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144・岩倉具榮
○委員長(公爵岩倉具榮君) 多數と認めます、それでは本案を可決することに決定致しました、是にて本委員會を閉會致します
午後零時四十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=144
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145・会議録情報2
出席者左ノ如シ
委員長 公爵 岩倉具榮君
副委員長 子爵 森俊成君
委員
伯爵 宗武志君
子爵 岩下家一君
子爵 大久保教尚君
子爵 稻垣長賢君
林春雄君
佐々木惣一君
村上義一君
男爵 伊藤一郎君
男爵 渡邊修二君
男爵 岩村一木君
男爵 山根健男君
男爵 明石元長君
野村嘉六君
澤田牛麿君
鏑木忠正君
原泰一君
小山完吾君
小野耕一君
岩淵辰雄君
淺井清君
國務大臣
國務大臣 植原悦二郎君
政府委員
法制局長官 入江俊郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009102807X00219461221&spkNum=145
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