1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年十二月十六日(月曜日)午前十時十一分開議
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議事日程 第六號
昭和二十一年十二月十六日
午前十時開議
第一 皇室典範案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 参議院議員選挙法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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001・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 去る十二日坂口康藏君、近藤銕次君、貴族院令第一條第四號に依り貴族院議員に任ぜられました、就きましては、坂口君を第一部に、近藤君を第七部に各各編入致しました
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=1
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002・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 其の他諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=2
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003・会議録情報2
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〔參照〕
去ル四日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ即日裁可ヲ奏請セリ
昭和二十一年勅令第三百五十一号貴族院令第一條第三号、第五号及び第六号の議員の任期延長に関する勅令の一部を改正する勅令案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ即日之ヲ衆議院ニ送付セリ
議院法の特例に関する法律案
同日參議院議員選擧法案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長 伯爵 林博太郎君
副委員長 男爵 高木喜寛君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表(第一囘報告)
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十一囘帝國議會政府委員仰付ラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
商工省所管事務政府委員
商工事務官 細井富太郎君
同 松田太郎君
特許標準局長官 久保敬二郎君
石炭廳長官 菅禮之助君
石炭廳次長 岡松成太郎君
去ル五日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十一囘帝國議會政府委員仰付ラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
内務省所管事務政府委員
内務事務官 鈴木俊一君
外務省所管事務政府委員
外務事務官 與謝野秀君
勳三等 水野甚次郎君
去ル六日願ニ依リ貴族院議員ヲ免セラル
去ル十一日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表(第二囘報告)
去ル十三日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十一囘帝國議會政府委員仰付ラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
厚生省所管事務政府委員
厚生事務官 吉武惠市君
同 小島徳雄君
引揚援護院長官 齋藤惣一君
引揚援護院次長 高辻武邦君
一昨十四日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
參議院議員選挙法案修正報告書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
皇室典範案
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十一囘帝國議會政府委員仰付ラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
農林省所管事務政府委員
食糧管理局長官 片柳眞吉君
本日各部ニ於テ常任委員ノ補闕選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果左ノ如シ
第一部
豫算委員水野甚次郎君ノ補闕トシテ河端作兵衞君當選
第五部
豫算委員吉村友之進君ノ補闕トシテ竹下豐次君當選
請願委員竹下豐次君ノ補闕トシテ丹羽彪吉君當選
第九部
請願委員岩見蘭始君ノ補闕トシテ名古屋三吉君當選
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=3
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004・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 是より本日の會議を開きます、去る一日、從四位勳二等青木周三君卒去せられました、誠に哀悼の至りに堪へませぬ、就きましては、弔辭を贈呈致したいと存じます、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=4
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005・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=5
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006・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 請暇の件に付御諮り致します、坂野鉄次郎君病氣に付會期中請暇の申出がございました、許可を致して御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=6
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007・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=7
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008・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 一昨十四日、豫算委員出淵勝次君、病氣に付委員辭任の申出がございました、許可を致して御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=8
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009・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます、就きましては第一部に於て其の補闕選擧を行はれむことを望みます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=9
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010・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 日程第一皇室典範案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、幣原國務大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=10
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011・会議録情報3
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皇室典範案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十一年十二月十四日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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皇室典範案
皇室典範
第一章 皇位継承
第一條 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第二條 皇位は左の順序により、皇族に、これを傳える。
一 皇長子
二 皇長孫
三 その他の皇長子の子孫
四 皇次子及びその子孫
五 その他の皇子孫
六 皇兄弟及びその子孫
七 皇伯叔父及びその子孫
前項各号の皇族がないときは、皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族にこれを傳える。
前二項の場合においては、長系を先にし、同等内では、長を先にする。
第三條 皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前條に定める順序に從つて、皇位継承の順序を変えることができる。
第四條 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。
第二章 皇族
第五條 皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする。
第六條 嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、男を親王、女を内親王とし、三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王、女を女王とする。
第七條 王が皇位を継承したときは、その兄弟姉妹たる王及び女王は、特にこれを親王及び内親王とする。
第八條 皇嗣たる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という。
第九條 天皇及び皇族は、養子をすることができない。
第十條 立后及び皇族男子の婚姻は、皇室会議の議を経ることを要する。
第十一條 年齡十五年以上の内親王、王及び女王は、その意思に基き、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、内親王、王及び女王は、前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
第十二條 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したきときは、皇族の身分を離れる。
第十三條 皇族の身分を離れる親王又は王の妃並びに直系卑属及びその妃は、他の皇族と婚姻した女子及びその直系卑属を除き、同時に皇族の身分を離れる。但し、直系卑属及びその妃については、皇族会議の議により、皇族の身分を離れないものとすることができる。
第十四條 皇族以外の女子で親王妃又は王妃となつた者が、その夫を失つたときは、その意思により、皇族の身分を離れることができる。
前項の者が、その夫を失つたときは、同項による場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
第一項の者は、離婚したときは、皇族の身分を離れる。
第一項及び前項の規定は、前條の他の皇族と婚姻した女子に、これを準用する。
第十五條 皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。
第三章 攝政
第十六條 天皇が成年に達しないときは、攝政を置く。
天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、國事に関する行爲をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、攝政を置く。
第十七條 攝政は、左の順序により、成年に達した皇族が、これに就任する。
一 皇太子又は皇太孫
二 親王及び王
三 皇后
四 皇太后
五 太皇太后
六 内親王及び女王
前項第二号の場合においては、皇位継承の順序に從い、同項第六号の場合においては、皇位継承の順序に準ずる。
第十八條 攝政又は攝政となる順位にあたる者に、精神若しくは身体の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前條に定める順序に從つて、攝政又は攝政となる順序を変えることができる。
第十九條 攝政となる順位にあたる者が、成年に達しないため、又は前條の故障があるために、他の皇族が、攝政となつたときは、先順位にあたつていた皇族が、成年に達し、又は故障がなくなつたときでも、皇太子又は皇太孫に対する場合を除いては、攝政の任を讓ることがない。
第二十條 第十六條第二項の故障がなくなつたときは、皇室会議の議により、攝政を廃する。
第二十一條 攝政は、その在任中、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。
第四章 成年、敬称、即位の礼、大喪の礼、皇統譜及び陵墓
第二十二條 天皇、皇太子及び皇太孫の成年は、十八年とする。
第二十三條 天皇、皇后、太皇太后及び皇大后の敬称は、陛下とする。
前項の皇族以外の皇族の敬称は、殿下とする。
第二十四條 皇位の継承があつたときは、即位の礼を行う。
第二十五條 天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う。
第二十六條 天皇及び皇族の身分に関する事項は、これを皇統譜に登録する。
第二十七條 天皇、皇后、太皇太后及び皇太后を葬る所を陵、その他の皇族を葬る所を墓とし、陵及び墓に関する事項は、これを陵籍及び墓籍に登録する。
第五章 皇室会議
第二十八條 皇室会議は、議員十人でこれを組織する。
議員は、皇族二人、衆議院及び参議院の議長及び副議長、内閣総理大臣、宮内府の長並びに最高裁判所の長たる裁判官及びその他の裁判官一人を以て、これに充てる。
議員となる皇族及び最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官は、各各成年に達した皇族又は最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官の互選による。
第二十九條 内閣総理大臣たる議員は、皇室会議の議長となる。
第三十條 皇室会議に、予備議員十人を置く。
皇族及び最高裁判所の裁判官たる議員の予備議員については、第二十八條第三項の規定を準用する。
衆議院及び参議院の議長及び副議長たる議員の予備議員は、各各衆議院及び参議院の議員の互選による。
前二項の予備議員の員数は、各各その議員の員数と同数とし、その職務を行う順序は、互選の際、これを定める。
内閣総理大臣たる議員の予備議員は、内閣法の規定により臨時に内閣総理大臣の職務を行う者として指定された國務大臣を以て、これに充てる。
宮内府の長たる議員の予備議員は、内閣総理大臣の指定する宮内府の官吏を以て、これに充てる。
議員に事故のあるとき、又は議員が欠けたときは、その予備議員が、その職務を行う。
第三十一條 第二十八條及び前條において、衆議院の議長、副議長又は議員とあるのは、衆議院が解散されたときは、後任者の定まるまでは、各各解散の際衆議院の議長、副議長又は議員であつた者とする。
第三十二條 皇族及び最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官たる議員及び予備議員の任期は、四年とする。
第三十三條 皇室会議は、議長が、これを招集する。
皇室会議は、第三條、第十六條第二項、第十八條及び第二十條の場合には、四人以上の議員の要求があるときは、これを招集することを要する。
第三十四條 皇室会議は、六人以上の議員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
第三十五條 皇室会議の議事は、第三條、第十六條第二項、第十八條及び第二十條の場合には、出席した議員の三分の二以上の多数でこれを決し、その他の場合には、過半数でこれを決する。
前項後段の場合において、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第三十六條 議員は、自分の利害に特別の関係のある議事には、参與することができない。
第三十七條 皇室会議は、この法律及び他の法律に基く権限のみを行う。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
現在の皇族は、この法律による皇族とし、第六條の規定の適用については、これを嫡男系嫡出の者とする。
現在の陵及び墓は、これを第二十七條の陵及び墓とする。
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〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=11
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012・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 吉田總理は一兩日來少し不快で引籠つて居りますので、只今上程に相成りました皇室典範案に付きまして、私から其の提案の理由を御説明申上げるやうにと云ふことであります、それで大體私から申上げたいと存じて居ります、御承知の通り、政府は夙に臨時法制調査會と云ふものを設置致しまして、其の調査會は憲法改正に伴ふ諸法律の制定、改廢に付きまして調査、審議を重ねまして、重要諸法案の要綱に付きまして答申を得たのであります、此の皇室典範案も此の答申を基礎と致しまして立案致し、成案を得まして、茲に本會議に提出するに至つた次第であります、曩に公布せられました改正憲法の第二條には、「皇位は、世襲のものであつて、國會の議決した皇室典範の定めるところにより、これを繼承する。」とあります、又第五條には、「皇室典範の定めるところにより攝政を置くときは、攝政は、天皇の名でその國事に關する行爲を行ふ。」斯うあるのであります、本案は此の皇位繼承と攝政に關する事項を中心として、之に密接の關係のある事項を規定致して居るのであります、現行の皇室典範に比べますると云ふと、第一に、皇室の御一家に關する事項は之を除外し、第二に、皇室の經濟に關する事項は皇室經濟法案に讓り、第三は、訴訟等に關しましては、之を一般の訴訟法規等に委せることと致した點に顯著なる相違があるのであります、而して是等の事項を除きました爾餘の事項は、概ね現行の皇室典範の規定する所を踏襲して規定することと致して居るのであります、此の規定の中で、現制との間で比較的著しい相違を致して居ります點としては、皇位繼承の資格、從つて皇族の範圍を定めるに當つて嫡男系嫡出に限る、斯う云ふ原則を採用したことと、三世以下を以て王及び女王としたこと、皇族竝に立法、行政及び司法の各分野からの十人の議員で組織する皇室會議と云ふものを設けまして、皇嗣の變更、攝政の設置、其の他皇室に關する重要事項の議に當らしむることと致した等の諸點であります、何卒御審議の上御協贊あらむことを切望致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=12
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013・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 質疑の通告がございます、佐々木惣一君
〔佐々木惣一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=13
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014・佐々木惣一
○佐々木惣一君 只今上程せられましたる皇室典範案に付て、其の制定手續及び規定内容の兩面からして、三四點質疑を試みたいと思ふのであります、第一に、制定手續に關して御尋ね致しますが、其の一つ、此の皇室典範案は皇族會議に諮詢されたものでありますか、御尋ね申すのであります、是は尤も私が新聞で承知致して居りますることが狹きに失して、既に傳つて居るかも知りませぬけれども、此の樞密顧問に諮詢せられたことは知つて居りますけれども、皇族會議に諮詢されたと云ふことは傳つて居りませぬから念の爲に御尋ね致すのであります、此の現行の皇室典範に依りますれば、皇室典範を改正致しまする時には、皇族會議に諮詢せられると云ふことになつて居るのでありますが、それで其の手續がせられて居るかどうかと云ふことを御尋ねするのであります、それから其の二點、皇室典範案が今囘法律の案として、帝國議會の議に付せられたのでありまするが、是は法上如何なる根據に依つて居るものでありませうか、此の點も御尋ね致したいのであります、從つて今日尚行はれて居りまする所の帝國憲法に依りますれば、皇室典範の改正には帝國議會の議を經ないものとなつて居るのであります、從つて帝國議會に於きましては、之を議するの權限を持つて居ないと云ふことになつて居るのでありまするが、是が今囘帝國議會の議に付せられましたのは、法上如何なる根據を持つて居るのでありませうか、固より之に付きましては政府に於て勿論一定の見解を御持ちになつて居ることとは察するのでありまして、それに付て、今私が其の見解を知らざる前に彼此善いの惡いのと申すのではありませぬ、唯其の見解を此處で明らかに知つて置きたいのであります、尚此の點に付て申して置きまするが、皇室典範を改正すると云ふことに付きましても、亦其の皇室典範の改定と帝國議會との關係如何と云ふことに付きましても、今日は尚現行の帝國憲法の條項の適用があると云ふことを前提として御話するのであります、是は特別の説明がない限りは、今日に於きましては、是等の諸國務を審議致しまするのは、言ふ迄もなく今日行はれて居りまする所の帝國憲法の條規に基準して行はなくてはならぬと云ふのでありますからして、それで其の點を前提として御尋ね致して居るのであります、是は御尋ねであります、それから其の三點と致しまして、皇室典範案とありまするが、是はもつと詳しく言へば皇室典範の改正案ではないのでありませうか、此の事をはつきりと御尋ね申上げて置きたいのであります、と申しますのは、曩に帝國憲法の改正に付きましては、明らかに帝國憲法改正案と云ふことを銘打つて提案されたのであります、然るに今囘は皇室典範改正案と云ふのでなしに、皇室典範案と云ふ名で出て居りまするが、是で或は皇室典範の改正でないと云ふやうな御見解があるかとも察せられるのですが、それならばそれで宜いのであるが、皇室典範の改正でないと云ふ、さう云ふ理由に付て、御説明を願ひたい、殊に先刻申しましたやうに、帝國憲法に付きましては、帝國憲法改正案と出て居つた、然るに今囘は皇室典範案と出て居りまして、皇室典範改正案と出て居ないのであるからして、何等か其の兩者の間に差異があると云ふことを特に意識されて、斯う云ふ風になつたのであるかとも察せられますから、此のことをはつきりとして置きたい、斯う云ふ譯であります、是が此の制定の手續に關して御尋ね申上げたい點でありますが、第二に規定内容に付て御尋ね申上げたいのであります、其の第一點と致しまして、今後皇室典範には如何なる種類の事項を規定するものであるかと云ふことを御尋ねする積りでありましたが、之に付きましては、只今總理大臣の代理としての幣原國務大臣の御説明で大體分つた譯でありまするから、それはそれで宜しいのでありますが、唯茲に一つ御尋ね申して置きたいのは、所謂皇室典範の規定する所と、それから皇室に關係しまする所の皇室典範以外の諸法令の規定する所との關係如何と云ふことであります、其の效力の強弱の問題もありまするし、それから又其の規定する事項の種類が、斯う云ふことは皇室典範で規定すべきであるが、斯う云ふことは其の他の普通の法令で規定しても宜しいとか何とか云ふ、さう云ふ何かけじめがあるのであるかと云ふことを御尋ねしたい、と申しまするのは、現行の皇室典範に依りますれば、其の點がはつきりとけじめがあるのでありまするから、現行の皇室典範と何等か異つたことがあるのであるかどうかと云ふことを此處ではつきりして置きたい、斯う云ふ意味であります、それからして、其の内容の第二點と致しましては、女子に皇位繼承の資格を認めないのは如何なる理由に因るのであるか、此の點を御尋ね申したいのであります、是は御存じの通りに現行の皇室典範でも、女子には皇位繼承の資格を認めてありませぬ、從つて其の規定内容其のものから申しますれば、是は從來の皇室典範と何等差異はないのであるが、併しながら皇室典範と云ふものも、固よりそれの前に、基礎として憲法と云ふものを前提として居るのでありまするから、皇室典範が如何なることを規定し得るか否かと云ふやうなことに付きましては、憲法との關聯に於て之を考へなければ正當なる解決を得ないと私は思ふのであります、然るに憲法を見ますると云ふと、此の點に關係ある規定と致しましては、現行の帝國憲法と、それから軈て實施さるべき日本國憲法との間には非常なる差異があるのであります、それは帝國憲法に依りますれば、天皇たる方は、はつきりと男子に限つて居るのであります、「皇男子孫」とありますが、「皇男子孫」と云ふことは、帝國憲法の發表されました當時から今日に至りまする迄、男孫の男子と云ふことに限られて居る、此の解釋は一致して居る、でありまするから、男子でなくてはならぬと云ふのでありまするからして、從つて皇位繼承を爲す所の資格者も固より男子であることは當然のことであります、其のことは帝國憲法其のものが決めて居る原則であります、然るに今囘の、軈て施行されますべき日本國憲法に依りますれば、天皇たる方は男子に限ると云ふ制限はないのであります、固より女子でも宜いとも規定して居ない、男子たるか女子たるかと云ふことは、憲法自身は何等之を規定してないのであります、が併し、斯う云ふことは言へるのである、即ち女子を否定して居るものでないと云ふことは言へるのであります、其の點が從來の帝國憲法と根本的に差異のある點であります、此の從來の帝國憲法と其の點に於きまして根本的の差異を認めて居ります所の此の日本國憲法下に於て、尚從來の憲法と同一に、即ちそれは憲法其のものが女子の帝位に即くと云ふことを認めてないと云ふ、其の從來の憲法と同一の態度で、此の問題を考へると云ふことは、どうも適當であるまいと思ふのであります、併し同一の態度で考へることが適當でないと云ふことは、必ずしも女子に其の資格を認めると云ふ結論に直ちに達するのではありませぬ、兎に角是は從來の即ち憲法下に於ける考へ方とは違つて、別の新たなる觀點で考へなければならぬと云ふことを申上げて居るのであります、先般來新聞紙等で拜見致しまする所に依りますれば、政府と申しますか、或は金森國務大臣と申上げて宜いのでありませうか、此の點に付きましては、我が國の從來の國民感情とか傳統とか云ふものを重んずると云ふやうな趣旨の御言葉があつたかに思ひまするのですが、若しさうでありまするならば、實は日本國憲法に依つて、所謂其の點に付て從來の傳統とか、從來の國民感情と云ふものは、もう此處でそれに囚はれる必要のないと云ふことになつて居るのであります、特に男子に限ると云ふ所の帝國憲法の規定を止めまして、さうして其のことは問題としてないと云ふ風になつて居るのでありまするから、此の日本國憲法下に於きましては、所謂從來の感情とか傳統とか云ふやうなことは兎に角問題にならない、要するにそれは何れにするにしても、即ちさう云ふことに因はれずに其の問題を考へなければならぬであらうかと私は思ふのでありますが、さう云ふ風に相成りますると云ふと、即ち如何なる點で如何なる事柄を標準として、それを考ふべきかと云ふことに問題は進みまするが、私は其の場合には、矢張り今度新たに施行せられまする所の日本國憲法其のものの精神と云ふものに即して此の問題を矢張り考へなければならぬ、斯う云ふ風に思ふのであります、日本國憲法其のものの精神を離れて、從來の傳統とか、感情とか云ふやうなことは、此處では問題にならぬかと私は思ふのであります、然らば此の新たなる日本國憲法其のものの精神と云ふものは、一體どう云ふ風に考へるべきものでありませうか、斯う云ふ問題に進むのであるが、そこで一つ私は一種の自問自答的の言葉を用ひることを許して戴きたいのでありますが、第一に問題となりまするのは、女子は女子であると云ふこと其のことからして即ち皇位に即くと云ふことが否定されると云ふ理由があるかどうか、斯う云ふ問題であります、更に第二には、女子であると云ふこと其のことではなしに、女子であると云ふことに伴ふ所の他の事情、即ち女子であると云ふこと其のこと以外の事情、其の事情に基いて皇位に即くと云ふことを否定されると云ふことがあるかどうか、斯う云ふ二つの點を考へなければならぬかと私は思ふのであります、で第一點たる女子は女子であると云ふこと其のことに基いて、唯女であるからと云ふそれが理由で、皇位に即くと云ふことを否定さるべき理由があるかどうか、と云ふことを考へて見ますると、私は是は獨り日本國憲法下のみでなく、一般に私はさう云ふ理由はないと從來から思つて居つたのであります、唯女であると云ふこと、其の故に皇位に即くと云ふことがいけないと云ふ理由はどうもないやうであります、獨り皇位のみならず一般政治關係に女子であるの故に、女子であると云ふこと其のことから單に政治關係を否定されると云ふやうなことは、例へば選擧權等に於きまして、從來からありましたけれども、さう云ふことはどうも私は從來から贊成して居なかつたのでありまするが、況や今日の如く一般に於きましても、政治關係に付ては別に女子と云ふことを區別せないと云ふことになつて居る、で、それは一般政治關係と云ふものとは別である、皇位と云ふやうな、即ち其の天皇の位に在つて政治に參與せらるると云ふやうな、さう云ふことは普通の政治關係とは別だと云ふやうなことも一應考へられるのでありますけれども
〔副議長退席、議長著席〕
併しそれは、然らば攝政の如きはどうなるのか、一體攝政は天皇ではありませぬけれども、天皇の名に於て、即ち全然天皇に代つて政治上の行爲をなさることでありまするが、其の攝政に於きましては、從來の皇室典範に於きましても、又此の皇室典範案に於きましても、別に女子であるの故に、女子であると云ふこと其のことからして、攝政不適格者と云ふ風には決めて居ないのでありまするが、然らば詰り普通の政治關係とは違つて、天皇に代つて天皇と云ふやうなさう云ふ特別の政治關係に著くと云ふことは適當でないと云ふやうなこともどうも言へないのである、攝政に付て之を認めて居ると云ふことから言へば‥‥更に積極的に申しますると云ふと、今囘の日本國憲法に依りますれば、即ち其の國民の地位、資格として性別、男女の性別に依つて其の政治的關係と云ふものに差異を附けないと云ふことが特に明かになつて居ります、併しまあ之に付きましては、それは皇位と云ふやうな政治關係に付ては、此の規定は適用ないのだと云ふやうな一應の解釋もあり得るのでありまするから、それが必ずしもそれでありまするが故に、其の憲法の規定其のものに牴觸するか否かと云ふことを私は此處では申上げませぬ、實は其の點に付きましては、私は此處ではつきり申上げる程の斷案をまだ持つて居ない、けれども精神的に、日本國憲法の精神的から申しますれば、さう云ふことに付きましても、別に男女の區別を立てないと云ふ、斯う云ふことが精神であらうかと私は思ふのであります、仍て即ち日本國憲法其のものの精神と云ふものに即して考へて見ますると、此の皇位繼承の資格に女子を否定すると云ふことは、どうも理由がないのぢやないか、斯う云ふ風に私は思ふのでありまして、固より私は從つて女子にも皇位繼承の資格を認めた方が、此の日本國憲法下に於ては宜いと云ふ、さう云ふ考を持ちまするが、但しそれは言ふ迄もなく無制限に言ふのではない、今の、女子であると云ふこと其のことに付て言つたのでありますが、女子たることに伴ふ所の他の事情がある、女子たることに伴ふ所の他の事情に鑑みて、さう云ふ事情の伴つて居りまする所の女子は、皇位繼承の資格がないと云ふことは別に考へられる、例へば配偶者があるとか云ふことですね、或は又皇位繼承の資格が認められるに致しましても、女子の皇位繼承の順位と云ふものは即ち後に置く、何となれば是は本來女子と云ふ者は、詰り配偶者を何れかは求めべき立場にある人でありますから、それで成るべくさう云ふ配偶者のあると云ふやうな状況、配偶者が出來るであらうと云ふやうな状況にある人には、先づさう云ふ心配のない人、男子の方を先にして、女子は後に其の順位を附ける、斯う云ふことは考へられまするけれども、併しそれは女子であると云ふこと其のことではないのでありまして、女子であると云ふことに伴ふ所の女子であると云ふこと以外の他の事情と云ふものに顧みて、さう云ふ差異を設くるのでありまするから、他の立論とは別のことであります、此の問題は決して感情的に論じてはいけない、我々男子は事に依ると云ふと、女子と云ふ、さう云ふことを考へたり、さう云ふ地位に著けると云ふことは、どうも何となく好まぬと云ふやうな感情もありまするし、又女子の方から見ますると云ふと、女子だからしてさう云ふ地位に著け得ないのは怪しからぬと云ふ感情もありませう、共にいけない、共に感情論であつて、此處ではさう云ふ個人的の感情論ではないのであつて、兎に角我が國に是から行はむとする所の日本國憲法の下に於ける所の問題としては、國家の爲に何れが宜いか、斯う云ふ點から來べきものであつて、男でも女でも、感情的に斯う云ふ問題を見てはいけないのであります、言ふ迄もなく斯う云ふ點に付きまして、私の斷案を申し上げますれば、先刻も申上げましたやうな、即ち配偶者がないと云ふ、或は又其の順位と云ふものを後に置くと云ふやうな、さう云ふ一つの條件を附けて、さうして私は女子にも皇位繼承の資格を認むべきものであると云ふ意見を持つのでありますが、斯う云ふ點を政府の方では御考になつたでありませかうどうか御尋ねして見たいと思ふのであります、それから其の三と致しましては、攝政のことでありまするが、攝政は天皇が一時的の故障に依つて其の政治上の行爲を親らなさることが出來ないと云ふ場合には置かれるのでありませうかどうか、斯う云ふことであります、攝政のことは言ふ迄もなく、即ち所謂政治上、今迄の攝政では解釋を廣く見ることは出來ないのである、親らすることが出來ない‥‥、今度は憲法上認められて居りまする所の政治上の行爲に限りますが、さう云ふ事柄を何等かの故障に依つて親ら行ふことが出來ないと云ふ場合には攝政を置くことは、是はもう疑ひないのでありまするが、唯今囘の皇室典範に依りますると云ふと、即ち精神若しくは身體の重患又は重大なる事故に依り、國事に關する行爲を親らすることが出來ない時に攝政が置かれることになりまするが、さうしますと云ふと、此の規定を率直に其の儘取りますると云ふと、其の故障が天皇が詰り政治を親ら行はれることの出來ないやうな其の故障は繼續的でなくても、一時的の故障でありましても、攝政を置くことが出來ると云ふやうなことに解釋せなければならぬやうに見えますですが、此の點に付きまして政府の方の御解釋は如何なるものでありませうか、それは私は矢張り相當繼續的の、永久とは言はなくても、相當繼續的の故障であつて、從つて相當繼續的に政治を親らせらるることが出來ない場合に限るべきものである、斯う考へて居るのでありまするが、其の故障たる事實其のものは如何に重大でありましても、今非常に重大な事故が起つても‥‥、併しながらそれは明日か明後日は良くなると云ふこともあるのでありまするが、さう云ふのでなく、繼續的に政治を行はせられることが出來ないと云ふ、さう云ふ事情が繼續的にあり得ると、斯う云ふ風に考へる場合に攝政を置くべきものでないかと、斯う云ふ風に私は思ふのでありますが、どう云ふものでありませうか、どうも此の點が、少くとも今度の皇室典範の改正案に依りますれば、はつきりとしてない、若し然らば一時的に重大な故障があつて、政治を行はせられることが出來ないと云ふやうな場合もないとも限らない、さう云ふ場合にどうするかと云ふやうなことになりますと、假に攝政はさう云ふ場合に置くことが出來ないと云ふやうな此の案の解釋、又はさう云ふ制度を設けると致しましても、それには即ち憲法第四條に依りまして、所謂委任、さう云ふ場合には、其の事柄のみに付て天皇が委任を爲され得ると云ふやうな法律規定を設けて置いたら宜いぢやないか、斯う云ふ風に私は思ふのでありますが如何なものでありませうか、此の攝政の問題が多少繼續的の事情を必要とするか、一時的の事情で宜いかと云ふことは可なり重大な問題であらうかと思ふのであります、仍て之を御尋ねする譯であります、それからして此の解釋になりますけれども、今度の皇室典範案の十六條に、「重大な事故」とありまするが、此の「重大な事故」と云ふのは、一體どう云ふことを云ふのでありませうか、假に例へば天皇が御自身で、どうしても是は、即ち自分は政治の衝に當ることは厭だと、どうしてもさう云ふ風に御考になりますと云ふやうなことも入るのでありませうか、或はさうでなく、唯客觀的の、さう云ふ天皇御自身の主觀的の考と云ふことでなく、客觀的の事實と、斯う云ふ風に限るものでありませうか、此の「重大な事故」と云ふのも、甚だぼんやりとしたことでありますから、唯解釋上御尋ねして置くのであります、其の次に進んでは、其の事故が止んだ時に、「攝政を廢する」と云ふ文句があるが、是は私は此の文句に何も非難をするのでも、反對するのでもないが、明かにして置きたいのは、此の廢すると云ふことは、往々にして其の攝政を廢すると云ふ特別の行爲が要るかと云ふやうに取られるが、さうでなく、事故が止んだら、さう云ふ攝政關係は消滅するのであるからして、其の意味であると思ふが、制度上攝政がなくなると云ふ意味であらうと思ひますけれども、置くと云ふ文字は、置くと云ふ行爲をするのであると思ひますけれども、置くと云ふことがありますが、併し從來から攝政を廢すると云ふ文句はない、斯う云ふ規定はないけれども、其の事故が止んだら當然攝政を廢すると云ふことは何等疑ひない、それにも拘らず今度は攝政を廢すると云ふ規定があるから、それでそれを特にどう云ふ意味かと云ふことを御尋ねするのであります、それから進みまして、此の第四點と致しまして、四つの點として、皇室會議と云ふものは、國家組織の上に於て、一體如何なる地位を有するものであるかと云ふことを御尋ねして見たいと思ふのであります、是も詰り皇室會議と云ふものが、如何なる權限を有し、如何なる事柄をするものであるかと云ふことから來ることでありまするが、即ち皇室會議の權限と云ふことに付きましては、先刻幣原國務大臣から御説明戴きましたやうでありますから、大體分りますが、其の時に、皇室に關係する事項とか仰しやつたと思ひますが、それがちよつと實は分りにくいのでありまして、それはどう云ふ意味でありませうか、皇室に關係する事項と云ふことは、皇室或は皇族の方々に關係あると云ふ事項に取れますが、實際はさうでないので、今度の皇室典範改正案に依りますれば、皇室會議と云ふものは詰り國務を行ふものである、國家の仕事を取扱ふものであります、皇室會議と云ふものは決して皇室に關する事項を取扱ふと云ふことではない、無論皇室に關係するのですけれども、此の皇室に關係する事項は、皇室に關係あるからと云ふので、其の故に取扱ふものではありませぬでして、皇室に關係する所の國家事項を取扱ふものでありますから、其の意味に於てこそ、皇室會議と云ふものが從來の皇族會議と云ふものとは其の性質が根本的に違つて居る、斯う云ふことになるだらうと私は思ひますが、從つて其の組織を見ましても、是は幣原國務大臣の御話がありましたやうに、從來の如く皇族本位ではない、從來の皇族會議と云ふものは、皇族を以て之を組織致しまして、さうして即ち其の他の、例へば大審院長でありまするとか云ふやうなさう云ふのが、而もそれを組織するのぢやない、それに參列して居る、皇族會議を組織して居るのではなくて、皇族會議に參列して居りましたのですが、今度はさうぢやない、即ち衆參兩院の議長、副議長と云ふやうなもの、或は又即ち最高裁判所の長官と云ふやうなものが、矢張り組織すると云ふことに相成つて居る、さうして皇族はたつた二人で、總てが十人でありますが、要するに是は皇族會議とか皇室會議とか云ふやうな、さう云ふ文字ではちよつと誤解を生ぜしむるやうな程度にしか皇族は御關係になつてゐないのであります、皇族は二人である、あと八人と云ふものは皆國家機關であります、それはそれで宜い、其のこと自體はそれで宜い、何となれば今度は皇室會議と云ふのは國家の仕事を取扱ふので國家機關として取扱ふのでありますから、それで宜いのでありますが、唯ちよつと少し小さい問題でありますけれども、さう云ふ組織に付きましては、皇族會議と云ふ名稱が相應しくないと思つて皇族會議とせられたのでありませう、政府の名を改めた意思は大體想像出來ますが、更に皇室會議と云ふ名自體も、さう云ふ組織に於きましては適當でない、又權限におきましても適當でない、出來得るならば何とか皇室會議と云ふやうなさう云ふ文字も改めたいと思ふのでありますけれども、併しそれは斯う云ふ風な形に整つて居る時には實行出來ることぢやありませぬけれども、唯それだけの意見だけを申上げて置くのでありますが、偖、さう云ふ風な皇室會議と云ふものは、從來の皇族會議とは違つて、國家事項と云ふものを、唯それが皇室に或關係を持つて居ると云ふやうな意味でもありませうか、兎に角國家事務と云ふものとして之を取扱ふと云ふことに相成つて居りまする以上は、然らば此の皇室會議と云ふさう云ふ機關が一般の國家の制度の上に於て、國家組織に關する制度の上に於て、如何なる地位を有して居るものであるかと云ふことをはつきりとしなくてはならぬと思ふのであります、但し是は軈て御提案になるだらうと思つて居ります所の内閣法上の問題とも關聯致しまして、國家の組織と云ふものが將來どう云ふ風になるか、所謂從來の各省大臣に當るやうなものがどう云ふ風に出來るかと云ふことに關係して居まして、それで、其の皇室會議と云ふものが、何處かの、或は直接に内閣總理大臣か、或はどれかの行政を司ります所の大臣か、どれかの管理に屬すると云ふことにならざるを得ないと思ふ、或は又さうでなしに、將來内閣制度と云ふものが出來ましても、此の皇族會議と云ふものは、何處か別に、其の内閣とは別に、さう云ふ一つの國家の組織であるけれども、さういふ別の組織と云ふものを作ると云ふ趣旨であらうかどうか、此處の所を唯お尋ねしたいのであります、特に今囘の詰り皇室典範に依りますれば、宮内府と云ふ文字が出て居る、宮内の府、宮内府の長官と云ふものが、皇室會議の一員となると云ふことになつて居りまするが、此の宮内府と云ふものは一體どう云ふものであるか、是は矢張り此の點に付て御説明を願つた方が、此の皇室典範案審議の上に於て、非常に役立つかと、斯う云ふ風に思ふのであります、即ち是は皇室會議が如何なる地位を持つて居るものであるかと云ふことを唯お尋ね申上げたのであります、それからして最後に、内容の第五點でありまするが、私は斯う云ふ言葉でお尋ね申上げたいと思ふのであります、天皇の退位の餘地を存するの必要はないのでありませうか、少くとも此の問題を今後の問題として考慮に入れて置くと云ふ必要があるのではありますまいか、斯う云ふ點をお尋ね致したいと思ふのであります、是は非常に重大な問題でありまして、從つて斯う云ふ問題を取扱ふ場合に於ては、云ふ迄もなく眞面目に考へなければならぬと同時に、又それだけ眞面目の問題でありまするが故に、我々が此の問題に付て考へる所を率直に申述ぶると云ふことは要求せられると思ふのであります、其の意味に於てお尋ね申すのであります、それで此の皇室典範案に依りますれば、天皇の退位と云ふやうなことは認められて居りませぬ、此の點は現行の制度と何等異る所はないのであります、そこで此の點に付て暫くお尋を致したいのであつて、又お尋の材料として、私自身の考へて居りまする所を申すことを許して戴きたいのであります、或人が天皇の地位に在られると云ふことは、勿論國家が之を必要として、さう云ふことを要求するのでありまするから、國家的見地から見た國家の要求に依つて、さう云ふ地位に居らるるのであります、天皇が御自分で其の地位に即くと云ふ御意思があるから、其の意思に依つて、其の地位に在られると云ふのではありませぬ、天皇は御自分で欲すると欲せざるとに拘らず、天皇の地位に在られなくてはならないと云ふのであります、即ち國家の爲に其の地位に在られるのであると云ふのでありますが、併しながら天皇が御自身で其の地位に在らるることが、國家の爲にならぬとお考になることは、ないとも限りますまい、即ち國家的見地から、此の個人的の立場からぢやなしに國家的見地から、自分は此の地位を去られることが良いとお考になることもないとは限らぬと思ひます、斯う云ふ場合に、國家は之に付きまして何等か考慮しなくても宜いものでありませうかどうか、此の點をお尋ね致したいと思ふのであります、尤も此のことは、天皇が只今申しました意味に於て、退位の御希望があれば、之に基いて當然に御退位が出來るが宜いと云ふのではないのであります、唯天皇がさう云ふ御希望があるならば、さう云ふ御希望を申出られることが出來るものとして、其の申出がありました時は、天皇だけではなく、天皇以外の或一定の機關も、それが國家の爲になるかどうかと云ふことを判斷し、即ち一方に於きまして天皇の御判斷と、又他の機關の判斷する所とが合致したと云ふやうな場合がありまするならば、即ち天皇は其の御希望に依つて退位せられると云ふやうなことにすることはいけないものであらうか、斯う云ふことを御尋ねするのであります、固より天皇が御自身で御退位が國家の爲になると御考になるのは、如何なる事情が存する場合でありませうかどうか、それは固より一概に定めて申すことは出來ないのでありまして、それ自身固より天皇御自身の御考に依ることであります、唯さう天皇がお考になつた時に、併し、直ちにそれが國家の爲に宜い、斯う云ふ風に國家として決める必要は必ずしもない、そこで同時に天皇以外の何等かの機關もそれを考へまして、さうして天皇の御考になる所と他の一定の機關の考へる所と、それが合致した時には、即ちさう云ふ風にする、さう云ふ風にするのは天皇御自身が御自分でなさつたのではなく、他の機關が機關としてしたのでもない、それは國家がするのである、天皇の御意思と他の機關の意思が同じくなつたならば、さう云ふ風にすると云ふことは、最早天皇の御意思でもなし、機關の意思でもなし、國家自體がさう決めるのであります、斯う云ふ風な構想は、十分私は公正な立場で出來ると思つて居るのでありますが、例へば天皇が何等か御關係になりました事柄に付て、國家的見地から、どうも御自分の御氣持に適はないと云ふやうな御氣持になられることもあるかと思ふのでありまするが、さう云ふ場合に於きましても、天皇以外の者からは何事をも申上ぐべき筈のものではありませぬ、それは出來ませぬ、道義上出來ないし、又法律上出來ない、併しながら天皇御自身に於かせられましては、さう云ふ御氣持があらせらるることもないとも限らない、其の御氣持を非常に強く御抱きになると云ふこともないとも限らないと思ふのでありまするが、さう云ふ何等かの御氣持がある場合に、それが形となつて現れると云ふことが、即ち御退位の場合の一つであるかと思ふのであります、其の場合には實は矢張り天皇は御自身の個人的の御滿足と云ふやうなことではないのでありまして、其のこと自身が國家を治め、國民に教へられると云ふことになるのであります、それに依つて國家の行くべき道、又國民が自己を律すべき道と云ふやうなものが、何等かそこに教へられると云ふことになるのでありまして、斯う云ふ場合の御退位と云ふものは、決して個人が自分の個人的の希望を達すると云ふやうな、其の希望と云ふのは利害と云ふことであります、自分の個人的の道徳觀でも宜しうございます、單に自分の個人的の道徳觀其のものを滿足せしむると云ふのぢやない、是が即ち政治であり、是が又國民を教へる一つの方法でもあると云ふやうに考へられるのでありまするが、斯う云ふ意味に於きまして、即ち國家的見地と云ふことがある、さう云ふ意味に於ての國家的見地と云ふことから御考になりまして、何等か御退位のことを考へさせらるると云ふことがあり、又先刻申しましたやうに、他の機關も成る程さう云ふことであると云ふ風に考へることがありまして、茲に考が合致しますれば、其の時は即ちさう云ふことを國家が、今度は國家であります、國家がさう云ふことを實現せしむることが、國家的意義があるのぢやないかと、斯う云ふ風に思ふのでありますが、さう云ふ場合に一定の機關と云ふ文字を用ひましたのは、言ふ迄もなく國會であります、日本國憲法の下に於ける國會であります、是は言ふ迄もありませぬ、詰り之を引つ括めて申しますれば、天皇が退位することを適當なりとする重大なる理由ありと認められる時は、之を國會に申出られることがある、國會に於きましても、右の理由ありと認められることがあるだらう、さう云ふ時には、天皇の御退位と云ふことが實現せられる、斯う云ふ風な一つの制度を設くることはいけないのでありませうか、固より是は唯根本を言ふのでありまして、之を實現すると致しましても、其の詳細なる所の手續規定などは、言ふ迄もなく別に十分考慮せなくてはならない、殊にさう云ふことが現實に起りましても、それが諸般の内外の事情からして、其の時期と云ふやうなこと、或は又色々な方面との交渉と云ふやうなことがあつて、從つて兩方の意見がさう決定して見ても、直ちにそれを實現すると云ふやうなことは必ずしも適當ではない、それは色々な事情がある、でありまするから、殊に其の時期等は固より重大なる考慮の中に入らなければなりませぬが、何れに致しましても、さう云ふ問題は細かい問題であるから別と致しましても、右のやうな方法に於て、即ち天皇の御退位と云ふことが、可能なる所の餘地と云ふことを定めて置く必要がありはしないか、斯う云ふことであります、其の故に私は天皇御退位の餘地を存する必要がありはしないかと云ふことを御尋ねしたのであります、天皇が自己の御意思で以て御退位が出來る、俺は厭だと云ふので御退位が出來る、或は道徳的にどうしても居れぬから辭める、さう云ふことを言ふのではない、それは總て自分の個人的利害ではなしに、道徳觀に依つてもそれは個人的の問題である、さう云ふことでない、それが國家の爲に宜いと、斯う考へられる時、其の時には即ちさう云ふ餘地があるやうに考へられるではないか、斯う云ふことを御尋ねしたのでありますが、固より重大な問題でありまするから、之に付きまして政府の方々の御即答を御願ひすると云ふやうな氣持はありませぬ、唯御尋ねして見たいのは、今後の問題として、少くとも之を考慮に入れて置くと云ふ、さう云ふ必要はないのであらうか、斯う云ふことに付きましては、其のことの内容でありませぬから、只今御返事を伺つても少しも差支ないかと思ひます、以上申上げましたことの中で、女子に皇位繼承の資格を認むることがどうかと云ふ問題と、天皇の御退位の餘地を存する必要と云ふ、此の二點に付きましては、事柄が單に法理だけの問題でありませぬから、實は總理大臣の御説明を願ひたいと思ふのでありますけれども、今日は御病氣で御缺席でありまするからして、若し出來るならば、幣原國務大臣からでも御説明を戴ければ大變有難いと思ふのであります、以上は私が此處で皇室典範案に付て質問したいと思つた點でありまするが、尚皇室典範案に付きましては、固より幾多の問題がある、併し是は何れ委員會等に於きまして、皆御研究御決定になることを思ひまするが、唯、只今申上げましたやうなことは、單に委員會と云ふやうな限られたる範圍に於て考ふべき問題ではないのでありまして、一般議員、我々が御互に少くとも論點として注意すべきであらうかと思ひまして、そこで此の本會議に於きましても、政府に質問し、併せて又我々同僚議員諸君に此の論點としての御參考にして戴けば、私は誠に幸とする所であります、是で私の質問を終ります
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=14
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015・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今佐々木博士の御質疑に、出來ます限り私から御答を申上げます、多くは法律論であつたやうに存じて居りますから、其の詳細は私の同僚から御説明を申上げることと存じて居ります、御質問になりました點は、今囘の皇室典範は皇族會議に御諮詢があつたかどうかと云ふ點であります、申す迄もなく、只今議題になつて居りまする法案は、日本國憲法に從ふ、それに基く法律でありまして、現行の皇室典範とは全く性質の異つたものであります、從つて皇族會議には御諮詢がなかつたのであります、固より政府は此の法案を拵へまするに付きましては、宮内省の方面とは絶えず密接な連絡を取つて行つたことは申す迄もありませぬ、それから第二點は皇室典範の規定事項の範圍に付ての御尋ねでありましたが、是は大體私が先刻申上げました所で御理解下さつたと云ふやうなことでありましたが、要するに此の今囘の法案は、從來の典範と云ふものとは全く異つたものでありまして、皇室の御一家に關する事項とか、其他他の法律に任しても宜い、其の方が適當であると云ふやうな事項は、之を除外致しまして、國家の見地から見て規定する方が宜しいと云ふ點だけを規定致したのであります、それから第三の點は女子に皇位繼承の御資格を認めない、理由に付ての御尋でありましたが、此の點は極めて重要な問題でありまして、幾多考慮を要する面倒な問題も含んで居ります、頗る愼重なる考慮を要する問題でありまして、事實問題と致しましては、差當り男系の男子たる皇胤が斷絶すると云ふ虞がないのであります、從つて此の際從來の原則を改めて、女子の方に皇位繼承の御資格を認めることを規定することは、尠くとも其の時機ではないと考へたのであります、それから第四點は、天皇御退位の餘地をあらしめるやうな必要はないかと云ふ御尋であります、申す迄もなく天皇の御地位は國民の總意に基くものでありますから、其の御退位の問題も當然國民の總意に基くものであると申さなければなりませぬ、今日國民の總意は斯かる御退位の制度を望んでないものと考へて居ります、是は或は佐々木博士と我々とは意見が違ふかも知れませぬが、私等は左樣に思つて居るのであります、從つて本案には天皇御退位の規定を設けなかつたのであります、それから此の皇室典範の性質に付て、之を此の議會に提出したのはどう云ふ基礎に基くかと云ふ御質問がありましたが、是は申す迄もなく、此の新憲法の第二條に、「皇位は、世襲のものであつて、國會の議決した皇室典範の定めるところにより、これを繼承する。」、皇位は國會の議決した皇室典範の定むる所に依る、國會の議決しなかつた皇室典範には是は關係ないことになつて居ります、どうしても新憲法が施行せられます場合には、其の場合を豫定して、皇室典範案と云ふものは拵へなければならないのであります、第二條の規定に依りまして拵へなければならないものでありますから、今日此の規定に依りまして、國會の議決と云ふ、今日の所に於きましては、帝國議會の議決を求めまして、それに依つて此の議會に付議されると云ふことになつたのであります、それから攝政の置かれる場合に付きまして、御質問がありましたが、是は解釋の問題でありますから、金森國務大臣から御説明申上げることと存じます
〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=15
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016・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 佐々木議員から御質疑の點に付きまして、法律がかつた面の諸問題に付て御答を申上げたいと存じます、第一に制定手續に關して御尋がありました、之に對しましての主なる點は、幣原國務大臣より御答を申上げたのでありまするが、多分佐々木さんの御質疑の御趣旨は、斯樣な質疑を御提供下さつて、今囘此の議會に提出致しました皇室典範案と、現在ありまする所の皇室典範との區別をはつきりさせて惑なきを期せしめようと云ふ御趣旨であらうと拜察致して居ります、若しさうでありますれば、全く御考の通りでありまして、御承知の如く、現在の皇室典範、此の法律に依つて出來まする皇室典範と名は同じでありますけれども、根本的に違つた性質を持ちまするし、效力の點に於きましても、制定手續に付きましても、全く違つた所のものであります、でありますから、若し現在の皇室典範を改正すると云ふ立場でありまするならば、皇族會議に諮詢あらせられなければなりませぬし、又帝國議會の議に付すると云ふことは、あり得ないことになる譯であります、處が、名は同じくして、實の異りまする、此の提案されて居りまする皇室典範は、是は改正憲法の第二條等にありまするやうに、全く憲法に基く國の法律でありまして、從つて此の法律に關しまする手續を取るべきことになるのであります、其の結果と致しまして先に幣原國務大臣から申上げましたやうに、今囘の提案に付きましては、皇族會議に諮詢あらせられることなく、法律案として政府より議會に提出せられたのであります、尚憲法には「國會の議決」と云ふことがありまして、現在の帝國議會は狹い言葉遣を致しますれば、國會ではございませぬけれども、改正憲法の第百條にありまするやうに、此の議會に於きましても憲法實施の準備に必要なる一切の措置を講じ得るのでありまするから、それに依りまして此の議會に提出せられたのでありまするし、尚議會と國會と云ふものが、或限度に於て同一性を持つて居りますることは、既に改正憲法の前文の中にも國會と云ふ文字が用ひられて居りまして、明瞭なる次第と考へて居る譯であります、次に此の内容に關しまする事項に付きましても、あらかた幣原國務大臣より申上げましたが、尚此の法律と云ふ方面からして若干の補充を致しまするならば、今囘の皇室典範は曩にも申しましたやうに、現行の規定を改正すると云ふ實質ではございませぬので、現行の皇室典範は、其の正式なる取扱と致しましては、憲法が實施せられまする前に準備をして、其の瞬間になくなるやうな別の手續きが執られるかと存じて居ります、五月三日以後に於きましては、此の今提案されて居りまする皇室典範と云ふ法律が入れ替る、斯う云ふことなる趣旨でありまして、前に改正としないで唯皇室典範案としたのはどう云ふのかと、斯う云ふ御尋ねがありましたが、此の場合は憲法の場合と違つた考へ方を致して居ります、そこで改正法律たる皇室典範の中味に於きましては、自ら新憲法の規定の内容に即しつつ、必要にして缺くべからざる限度を眼目に置いて規定を致しまするのでありまするから、憲法の豫想して居りますやうに、皇位の繼承と、それから攝政に關することと、此の二つを主眼目に致しまして、是と不可分的にどうしても考へなければならぬ所の公の面に於ける規定、詰り皇族の範圍とか、或は即位の禮とか云ふやうな公の面に於ける規定と、それから幾分私的の面は持つて居りますけれども、公の面と特に組合せて考へなければならないやうな規定、例へば色々の御敬稱とか云ふやうな風のこと、さう云ふやうなことを規定すると云ふ限度に止めまして、從來詰り現行の皇室典範の中にもありました所の多くの規定の中から、此の私法の規律すべき事項、それから皇室御一家の内部の御規定とも考ふべきものに、之を今囘の提出案の範圍外にした譯であります、それ等は、私法に關しまするものは、別の私法的な法律の中に盛り込まれると存じまするし、皇室の御一家の法に屬しまするやうな部分は、今後皇室内部の別の御取扱に依つて定まるものと考へて居ります、それから次に女子に皇位繼承の資格を認めざる理由如何と云ふ點に付きましての本筋は、幣原國務大臣から説明されたる通りであります、佐々木博士が仰せになりましたやうに、女子に皇位繼承を認めないと云ふことは、女子の本質に皇位繼承と結び付けて適當でない理由があるとは、實は今日は考へて居りませぬ、男子たるも、女子たるも、共に皇位繼承の資格を考へます上に於て、其の部分だけに就て見ますれば、恐らくは根本的な差別はないのではないかとも一應は考へて居ります、併し其の外の關係に於きまして、それに伴ふ關係に於きまして、尚資格を認めにくい理由があるかと云ふやうな點に付て、佐々木博士から御示になりましたのでありますが、例へば配偶者があるからと云ふやうなことも主たる點として考へることは不適當ではなからうかと云ふやうな風にも存じて居るのでありますが、一番根本の論點と致しましては、皇位繼承はどう云ふ方がなさるべきであるかと云ふ根本の考へ方の問題でありまして、固より皇位繼承に付きましては、是は法律で定まることではありまするけれども、其の根本の原理は萬世一系の世襲と云ふことに原理があらうと存じます、而も萬世一系の世襲と云ふことはどう云ふことかと言へば、若し是が具體的にがつちり定つて居りまするものならば、今日皇室典範を制定する趣旨も實は沒却されます、併し是が中が非常に重大なるものでありまするならば、萬世一系と云ふ趣旨が沒却せらるるのでありまして、私共は過去の歴史と國民の信念とを綜合致しまして、萬世一系と云ふ根本の原理を確實に把握しつつ、之に對して諸般の面から來る所の角度から適切なる若干の改正は爲し得るものと、斯う云ふ風に考へまして、本格的にはもう容易に動かぬものである、併し派生的なものに付きましては十分研究をして妥當なる結論を導かなければならないのであります、處が、其の見地に立ちまして、女子に皇位繼承の資格を認むるかどうかと云ふことになりますと、實は幾多の疑惑が起つて來るのでありまして、男系でなければならぬと云ふことはもう日本國民の確信とも言ふべきものであらうと存じます、又歴史は一つの例外をも之に設けて居りませぬ、此の點を守ると致しますると、何故に男系を尊重し女系は此の繼承の範圍に置かないかと云ふことの問題が現れて參りまして、此の問題を的確に結論を作つて行きますると、自然現實の女子たる方が皇位繼承を爲さるることが適當かどうかと云ふ論點に多くの研究問題を提供することになる譯でありまして、例へば其の見地から女子の御繼承を認めますると、それから先に男系の皇統が流れ出すべき餘地が止りまするので、其處に一つの論點が考へられます、さう致しますると、御系統の最後の順位を考へたならば宜いではないかと云ふことになりますると、其の順位の問題になりますると、最後の所に持つて行かないで、近親主義の原理を尊重致しますると、もう少し前の方にあつても宜いではなからうか、斯う云ふやうな疑惑が起り、其の繼承の順位を男女平等に置くべきものであるか、それとも或系統の末端に於て之を認むるべきものであるか、或は又全體の皇位繼承者の範圍の最後の所に置くべきものであるかと云ふやうな疑問も起つて來まするし、其の外一々申上げ兼ねまするけれども、可なり多くの問題を提供するものでありまするし、更に此の根本に於きまして、歴史に遡つて女子の皇位繼承がありました事實を精密に調べて見ますると、まあ普通には十代おありになると言はれて居ります、併し特殊なる歴史家は其の外にも二代位はあられるのであると斯う申して居ります、多少の議論が民間にはあるやうに存じます、さうしてそれ等の其の事情を能く究めて見ますると、恐らくは今日迄の歴史に於きまして、はつきりされて居なかつたやうな色々の角度が現れて參りまして、要するに一切の角度から之に誤りなき法規を設ける爲には、尚今後相當の研究を經なければならぬのでありまするし、前に幣原國務大臣から申しましたやうに、今日之を解決すべき現實の必要もないのでありまするから、問題全部を綿密なる今後の研究に殘したい、斯う云ふ趣旨から出て居る譯であります、次に攝政を置く場合に付きまして色々の問題を御示になつたのであります、私偶偶衆議院に用事がありましてそちらへ行つて居りまして、或は傳聞の過ちを生ずるかも知れませぬが、一應申上げますれば、若干の規定が現行の制度と變つて居ることは、御指摘の通りでございます、で、天皇久しきに亙る故障の場合に攝政を置くのが現行の制度でありまするが、今囘の法律案に於きましては、久しきに亙ると云ふ條件がございませぬ、其の點の御指摘がありましたが、固より攝政を置かれまするのは重大なることでありまするから、輕々しき原因に依つて置かるることはないと思ひます、併し重大なる差支と云ふものは、事が久しきに亙ると否とに依つて區別致しますることは、少しく不十分なる點があらうと思ひます、久しきに亙らずと雖ものつぴきならぬ故障も考へらるるのでありまして、そこで文字に多少の變化があつたのでありまするが、精神に於きまして、運用の面に於きまして多くの變化があらうとは實は豫想致して居りませぬ、それから攝政を廢止する場合に付ての特別の規定があるのはどうかと云ふ御質疑でありました、是は事物を精密に考へますると、矢張り斯樣なる規定を設けまして、事に過ち無きを期しますることの外、何等の規定なくして之を學説に委せて置きまするよりも妥當であらうと云ふ見地からして規定を設けた譯であります、次に皇室會議の組織權限、其の性格等に付きまして御尋がありました、是は多分御尋の中に前提として御考になつて居りまするものが、直ちに私の答となつて現れて來ると存じます、詰り皇室會議は現在の皇族會議とは全く趣旨を異に致しまして、國の制度であり、國務運用の爲の一つの組織である譯であります、從つて一般の國家機關と趣きを異にする譯ではございませぬ、從つて其の趣旨に依つて組織を作りまして、又其の系統、詰り行政の上に於ける系統に於きましても、是は政府と別箇のものになる譯ではございませぬ、國の一般行政系統の一部として考へられなければならぬ、内閣總理大臣の責任を以て管理することとならうと存じて居ります、それから之に關聯致しまして、宮内府のことを言つたら能く分るであらうと仰せになりました、宮内府のことは今日正確にまだ組織等に付て御答することは出來ませぬけれども、行政系統に屬しますることは一點の疑ひはありませぬ、從つて内閣の所屬の部局として構想するより外に途はないと存じて居ります、大體法律がかつたことは此の位と存じまして、御答を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=16
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017・佐々木惣一
○佐々木惣一君 簡單でございますがはつきりする爲登壇致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=17
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018・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 宜しうございます
〔佐々木惣一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=18
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019・佐々木惣一
○佐々木惣一君 只今幣原國務大臣、金森國務大臣から詳細に御答辯戴きました、是れ以上彼此言ふのは、是は斯う云ふ大きな席では適當でないと思ひます、それで何れは委員會に於てはつきりとして戴かなければならぬことと思ひますけれども、どうもちよつと私が御質問申上げたことにぴつと來ないことが無論あるのですから、それ等のことは委員會で何する、ちよつと伺つたことでですね、申上げて置きたいと思ふのですが、幣原國務大臣の御話の中に皇族會議ですね、皇族會議に詰り掛けなかつたと云ふことに付て、是は詰り日本國憲法にあるのだから、皇室典範は、それで日本國憲法に依れば皇族會議に掛けると云ふことはないのだからしてと斯う云ふお話でありますのですが、併しそこの所ははつきりと私がお尋して置いた筈でありますが、今斯う云ふことですなあ、斯う云ふ制度を考へて議して居るのは、今日の憲法及び之に基いて居る所の皇室典範と云ふものがあると云ふことを前提として、其の下に於ける權限を行使して居るのであります、決して今我々は此處で、日本國憲法と云ふものに依つて定められたる權限を行使して居るものでも何でもない、憲法に依る權限を行使して居るのである、從つて皇室典範に依りましても、日本國憲法下に於て取扱はれるべきものとして取扱つて居るのでありまして、若しさうでありませぬければ、詰り是は初から此處で論ずべき事柄の範圍に屬せないと云ふことは、初に申上げました通りなのでありますが是は矢張り答を戴いてないことになります、實質的には……併し斯う云ふことは委員會に於てはつきりして戴くべきものであらうと思ひますから申上げませぬ、それから皇室典範の規定事項の範圍、是は、まあ國家的見地からするのであると云ふことを幣原國務大臣から仰せられましたし、それから金森國務大臣はそれに付きましても、大變詳しく御説明がありましたのでありますから、是は申しませぬが、唯此處で一つ申上げたいのでありますが、それは皇室典範と云ふものが、皇族に關係あることを決めると云ふのだが、それは何か法の一つの部門として民法と云ふ法典、商法と云ふ法典、斯う云ふ法の一部分として皇室典範があるので、唯皇室のことを規定すると云ふのでなくて、斯う云ふ皇室典範と云ふ一法典としてあると云ふことに、そこに何等か特別の意味がありはしないかと云ふことを御尋ねしたけれども、其の點もはつきり致しませぬが、最も矢張り恐らく委員會等ではつきりと御判斷御研究があると思ふのであります、それからして女子の皇位繼承のことも是以上申しませぬが、唯此處で金森國務大臣からの御答辯の中に、私と同じ意見がある、女子は女子たるが故に不適當であるとは思はぬと云ふ私自身の詰らぬ私見を、矢張り御同意があつたと解釋して宜いでせう、女子は女子であるが故に不適當であるとは思はぬ、之に伴ふ色々の關係があるからと云ふことを仰しやつたが、其の點は私の申上げたことと全然符節を合するのでありますから、其の點だけを明かにして置きます、唯それにも拘らず、女子に皇位繼承の資格を認めぬと云ふことに付て色々御説明がありましたが、此處で一つ申上げて置きたいことは、萬世一系と云ふことと何かそれは關係がある、又それでなければ女子に皇位繼承を認めると云ふことは男系と云ふことと牴觸すると云ふ御説明がありました、是は全く誤解であらうと思ふ、是は非常に申上ぐべき點でありますが、是も委員會に於ける御研究に委ねて置かうと思ひます、女子に皇位繼承の資格を認めましても、それは萬世一系と云ふことと何等牴觸することがない、又男系と云ふことがそれで止まると云ふことは毛頭ないから、それ以上は議論になりますから、委員會の御研究に御願して置くのであります、それだけのことは、併しはつきりして置かなければならぬ、それからして尚併し金森國務大臣の御言葉で私共に大變寧ろ有難いと思つたのは、是は歴史的のことであつて、從來から女子の皇位繼承を認めたと云ふやうなことは、先づ變態だと思ふ、それは私も本則ではないと思ふ、私は此の日本國憲法と云ふものが行はれる其の後の問題として言うたと云ふことはもう一遍御研究に殘して戴きたい、それでありますから、從來の歴史とか、傳統とか云ふことは、此處では問題にならぬ、日本國憲法として扨どうするかと云ふことでありますから、金森國務大臣は尚研究を要することであると云ふ風に言つて戴いたのは、是は又大變有難いことだと思ひます、唯併し今日之を解決すべき問題でない、研究を要する問題であると云ふ風に仰しやつたことは、私の質問が甲斐があつたものと私は思ふのであります、それから攝政のことでありまするが、攝政の場合に付きましては金森さんの即ち繼續的に親らせらるることが出來ないと云ふ場合に限つた方が宜くはないかと云ふ私の質問に對しまして色々御説明がありましたが、運用上さう云ふ風になる、運用と致しまして、詰りそれが實際に於ては宜いものだと云ふ風な御考かと私は伺つたのですが、然らば私は更にそれを法制上、さう云ふ風にしてしまつた方が宜いだらう、斯う云ふことを言ふのでありますから、是も後での御研究に委ねて置かうかと思ふのであります、それから又金森さんから攝政の場合に付て廢止と云ふことは、學説に委せるよりもはつきりとした方が宜いと云ふ御話がありましたけれども、學説で御異論があつたのでも何でもないのでありますから、攝政は、事故が止んだら攝政の關係は當然なくなると云ふことは、學説上從來も何等疑がないのであります、是は疑を解く爲に特に置くと云ふやうな説明は、此處では當らぬかと思ふのであります、妙に要らぬ問題を起すのです、さう思ひますが、それはそれで宜い、それからして今度は御退位のことに付きましては、是は幣原國務大臣から御答辯を戴いて大變詳細に伺つたのでありますが尚それ以上は今申しましたやうに議論になるので、仕樣がないから止めますが、唯其の御言葉の中に、詰りさう云ふ天皇の御地位と云ふやうなことは國民の總意に基くのだからして、斯う言はれたが、それは宜い、併しさう云ふ制度を置くか置かぬかを問題とすると云ふことは、國民は考へて居ないだらうと云ふ風に仰せられましたのですが、其の退位が宜いか惡いか、退位に付てどう云ふ風に考へて居るかと云ふ問題と、國民が是は退位と云ふことを一つ制度論として考へて見ると、退位は必ず出來る、天皇が退位爲さらうと思へば必ず出來るそれが宜いと云ふ風に國民が考へて居ると云ふことと、さうでなくして、退位と云ふことを問題と爲されることが出來ると云ふことと、其のこととは問題が違ふのでありまして、それははつきりと申して置きます、でありまするから、退位は國民の總意に基きさう云ふ制度を考へると云ふやうなことは、總意でないぢやないかと云ふやうに伺つたのでありますけれども、それはどうも物の觀察の違ひでありまして、是はもう水掛論になつて、或は國民の間に於きましては、それと反對に御退位と云ふやうなことを考へて居る、其の内容の如何に拘らず、さう云ふことを考へて居ると云ふ者がないとも限らない、斯う云ふ風に言つたらそれ迄でありますが、さう云ふことは、私の退位に付て申上げたことに關する所の答辯としてはならないやうな風に私は考へるのであります、それから私は議會に國民が‥‥‥発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=19
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020・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 質問の範圍で、御批判でなく質問の範圍で‥‥‥
〔「簡單、降壇」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=20
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021・佐々木惣一
○佐々木惣一君 それで最後に皇室典範の改正と云ふものでないと云ふことを仰しやつたのですが、それに對しまして、何故それが皇室典範の改正でないと云ふ風に‥‥‥皇室典範を新たにするものであつて、皇室典範の改正でないと云ふ風に言へるかと云ふことに付きましては、更に是はどうもはつきりと分らないのでありますから、此の點に付きまして金森國務大臣の御答辯には、更にそれはどうもさうでないと云ふことを質問致して、是で私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=21
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022・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 南原繁君
〔南原繁君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=22
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023・南原繁
○南原繁君 帝國憲法と共に我が日本の二大法典と考へられて參りました皇室典範が、前議会に於ける新憲法の制定と相俟ちまして今囘其の改正が考へられまして、議會の自由の討議に付せられるに至りましたことは、等しく我が國の歴史的なる事件として長く記憶さるべきことと存ずるのであります、さうして今上程になつて居りまする本皇室典範が、概ね新憲法の理念に即しまして、自由と民主の精神に依つて一新されて居ると云ふことは、是は必然でありまするし、私共の贊同する所でございます、就中、それを先程御説明のありましたやうな皇族、又皇室會議の章に於て私共は認めるのであります、併し外の問題は此處では一切別と致しまして、少くとも極めて重要なる一つの問題が、其處に觸れないで居るのであります、それは皇位繼承に關する章でありまして、其處に天皇の御退位乃至御讓位に關する規定が全然缺けて居ることであります、此のことに付きましては、前質問者が觸れられまして、それに關して政府より若干の簡單な御答辯がありましたけれども、私は實は此のことを以て今囘の皇室典範案に於ける最も重要なる問題と考へる者であります、それ故に、私は特に此の問題に付きまして、率直に私の考へる所を申述べて、政府の意圖を、又、御見解を承りたいのであります、本日は、吉田首相が御出席でありませぬからして、先づ幣原國務大臣に御伺ひ致したいことは、其の根本の問題と致しまして、凡そ如何なる場合にも如何なる事情を想定致しました下に於ても、天皇の御退位乃至御讓位を認めないことは、是は新しく制定されました新憲法に於ける天皇の性格乃至性質と矛盾する所はないかと云ふ點でございます、抑抑先般の憲法改正の中心問題は、實は天皇の性質若しくは性格に付ての變化であつたと考へるのであります、即ち從來のやうに神祕的な非現實的な天皇から、自然的な人間的な天皇への變化であつたと考へるのであります、さうして其のことは又、本年初頭に天皇御親らが國民との結合を、同じく人間としての尊敬と愛親との關係に置き換へられたことの當然の結果でもあります、彼此相俟ちまして、茲に天皇の現人神としての神格を御親ら否定されて、之に依つて天皇の自然性の囘復、天皇の人間性の獨立と解放の宣言であつたと申して宜いと思ふのであります、然るに新皇室典範案に於きまして、皇位が世襲のものであります關係上、一定の順位に當られる皇族が必然に皇位を繼承せられますことは、これは當然と致しまして、一旦皇位に即かれた以上は、如何なる場合、如何なる事由の下に於ても、終生、其の地位に留まらなければならぬと云ふことは、其處に依然として餘りにも不自然的な、又非人間的な考へ方が入つて居るのではないかと云ふことであります、即ち新憲法に於ける天皇の地位と性質の重大なる變化があつたに拘らず、其のことは依然として變更せられずにあることは、憲法の關係に於ては極めて重要な問題と私は考へるのであります、此の點に於きまして、皇位繼承に關する章に於きましては、先程御説明があつたやうに、唯僅かに一箇所、即ち皇嫡子孫に之を限ると云ふことが變更せられた以外、其の外の點に付ては、重要なる問題に付て新憲法の精神が徹底して居ないと私は考へるのであります、私は此のことを三つの具體的な場合に分けて御質問を申したいと思ふのであります、第一の場合と致しまして、萬一、天皇の精神又は身體に不幸にして不治の重患ありと認められた場合に、御退位乃至御皇位の變更を認めないと云ふことは、如何なる事由に依るのであるかと云ふことを金森國務相に御伺ひ致したいのであります、新憲法に於きましては、天皇は從來のやうに祖宗相繼ぎ來つた所謂神的な統治權の總攬者としてではなく、國民の象徴、國民統合の象徴として其の地位に即かれる譯であります、それ故に最早神祕的な超人間的な觀念としてではありませぬで、寧ろ國民の象徴たるに相應しく、何よりも一個の人として精神及び身體の健全性乃至正常性と云ふことがより重要なる意味を持つて參つて居るのであると考へます、現に新たに皇位繼承をせられる場合に於きましては、此の案に於きましても、若し皇嗣たる方が精神又は身體に不治の重患があられる場合には、皇位の變更を規定して居るのであります、然るに若し御在位中に同樣のことが起つた場合に、それを考へまする場合に、此の規定が缺けて居ると云ふことは、彼此相比較して均衡を得ないではなからうかと云ふ點であります、現行典範に於きましては、此の間の區別をしてございます、けれども、正に此の點をこそ今囘は新憲法の精神に關して之を改正すべき時であると私は思ふのであります、即ち天皇の御病體御快復豫想される場合は別であります、併しながら苟も同じく不治の重患と認定せられる場合に於きまして、御在位中の故であるからと言つて、其の御變更を認めずして其の地位終生御留め申すと云ふことは、それは餘りに不自然的、不合理であり、其の御在位の間を攝政に依つて國事を行はせられると云ふことは、餘りにも事實の歪曲、法律の擬制、フイクシヨンに外ならないと私は思ふのであります、第二の場合と致しまして、以上申述べましたやうな生理的な原因からではなくして、一個の自由の人間として、天皇が止み難き要求から、最早天皇としての責任に終生耐へ給はずして、それからの自由を求め給ふ場合に、尚且其の途が全然閉されて居ると云ふことは、是は他方に於て新憲法に依り人間天皇として持たれて居りまする基本的人權の尊重に於て缺くる所はないかと云ふことを金森國務相に御伺ひ致したいのであります、從來の明治憲法に於きましては、天皇は廣汎なる大權を持たれて居つたに拘らず、人間としては極めて不自由なる限界に留つて居られるのであります、此の意味に於きまして、我が國に於て最も中世封建的なる拘束の下に御立ちになつて居つたのは、極めて逆説的な言ひ方でありますけれども、外ならぬ天皇御自身であつたとさへ申上げることが出來ると思ふのであります、嘗て首相伊藤博文が骸骨を乞ひました時に、明治大帝が、卿等には辭職のことがあるけれども、朕には其のことなしと言はれたと云ふことは、我々の廣く記憶して居る所でございます、固より天皇に於きましては、一方に皇位の保持者であると云ふ特殊の地位、身分、それに伴ふ御責務があります、此のことは天皇が今囘憲法の改正に依つて統治權者から象徴たる地位に變はられた場合と雖も變りはございませぬ、併しながら他方に於て天皇が此の新憲法に於ける所謂國民の概念の中に入るかどうかと云ふ其の解釋論は別と致しまして、今や新憲法に依りまして、天皇も等しく人間として國民統合の象徴たる地位に御即きになる以上、凡そ民主主義の大原則として總ての人間は法の前に自由平等であると云ふ此の原理に從つて、人間としての基本的なる人權、完全なる自由をお持ちになると云ふことは、是は當然でございます、是こそは今囘の憲法の一つの大なる眼目であつたと考へるのであります、人或は申すかも知れませぬ、左樣な天皇の自由意思に依つて御讓位を認めると云ふことは、動ともすれば皇位の變更を來し、又それが我が國の歴史に嘗てあつた如き爭ひの原因をなすと云ふかも知れませぬ、併しながら皇位の繼承に付きましては、既に一定の順位が定められてありまするし、又其の上に今囘の改正案に於きましては、新しく民主的に組織せられた皇室會議が出來て居るのであります、之に依つて其の間、客觀的具體的に之を決定することが出來得るのであります、然るに今後止み難き要求から、殊にそれが國家の運命を御一身に負うて、其の御責務を遂げ給うた後に於て、尚其の御讓位の意思があつた場合に於ても、尚且本案の如き法律制度の拘束の下に於きましては、それが實現されないと云ふことは、結局再び人間天皇の再否定となる結果となる、殊に其の御意思がないに拘らず、何時迄も御留め申すと云ふことは、其のことは國家公共の爲にも決して好ましき結果を齎す所以でないと思ふのであります、從つて問題は斯くの如き場合に於きまして、一方に皇位の保持者たる地位から生ずる身分、それと他方に人間としての天皇が享有せられる基本的自由との間の此の調和を如何にするか、其の爲の制度を如何に考へるかと云ふ問題が殘つて居ると思ふのでございます、金森國務相は衆議院に於かれまして、天皇に私無しと云ふ見地から、天皇御自身の意思に依りまして讓位はあると云ふことは國民の感情が、傳統的な信念が之を許さぬと云ふ風に御説明になつて居るやうでありますが、斯くの如き考へ方は、矢張り其處に依然として何か一種の神權的な思想と云ふものが殘つて居り、結局自由の人格としての天皇の人間性の否定となりはしないかと云ふことであります、從つて斯う云ふ考へ方は、所謂傳統的な感情、信念と共に此の際大いに考へ直し、一新する必要があると私は存ずるのであります、然るに同國務相は、更に其の時に國民の間に傳統的に発展して居る思想の流れが此のことを要求して居るのだ、敢て天皇の自由の否認ではないと云ふ風に説明されて居ります、併し若しも是が事實であるとすれば、私に失禮ながら直言するを許されますならば、それは一つの強辯に外ならないと考へるのでありますが、此の點に付て如何樣に國務相は考へられて居りまするか、之を御伺ひしたいのであります、第三の場合と致しまして、御退位又は御讓位の意思が外ならぬ天皇御自身の道徳的意思に基く場合、其の時であります、それが而も固より國家公共の爲に重大な關聯の中にある時に其の途がない、讓位の途が開いて居ないと云ふことは、法律制度を以て國民の象徴としての天皇の徳を覆ひ、延いて國民道徳に重大なる影響を及すものと私は考へるのでございまするけれども、此の點に付て幣原國務相はどう云ふ風に御考になるか、又此の問題に付て田中文相はどう御考になるかと云ふことを伺ひたいのであります、勿論天皇は一切の政治、法律上の責任を御持ちにならぬと云ふことは、是は明治憲法の無答責の規定の存する所であります、又新憲法に於きましては、此の無答責の規定こそなけれ、今囘は國政に關する事項は行ひ給はず、專ら國事に關する事項のみであつて、而もそれに付て内閣が責任を負ふと云ふことになつて居りますからして、愈愈明白になつて居る所でございます、併しながら無答責と云ふことは決して政治、法律上のみならず、更には天皇の道徳的義務と責任、之を排除すると云ふ意味では決してないのであります、此のことは我が國古來の歴史に於きまして、國家に重大なる事變があつた場合、又或時には天災地變があつた時にすらも、天皇は是は朕の不徳であるとして御自身の一身に責任を歸せられて居る所でございます、是等は列聖の御事蹟に於て明かであります、古い昔は問ひませぬでも、近く明治天皇に於かれましては、嘗て公にせられました御宸翰に於て天下億兆一人も其の所を得ざる時には皆朕が罪なれば「罪なれば」と仰せられて居るのであります、是あるが故に、古來皇室は我が民族の結合の中心として、國民の精神的尊崇の的となつて、今日迄持續し來つたものであります、然るに天皇が政治上、法律上のみならず、道徳的評價の外に御立ちになると云ふ考へ方は、實は我が國の歴史に於ける斯かる皇室の美徳を無視するものであると同時に、天皇を以て道徳を超えた、超道徳的な、神的な、絶對的存在と考へると云ふ一つの考へ方と思ふのであります、今囘憲法の改正に依りまして、國民統合の象徴となつた天皇が、政治的に無色透明であると云ふことは、屡屡政府の答辯せられる所であります、けれども其の意味が、道徳的にも無色透明であると云ふ意味では決してございませぬ、所謂政治上の大權は、今囘の憲法に依つて無くなつた代りに、却て象徴として今後は永遠の國家理念、日本國民精神の表現として、天皇のさうした道徳的、精神的御責任感が、益益重大を加へたものと私は考へるのであります、さうした至高の道徳の位置に鑑みられて、或國家重大事變の際に、陛下御自身が衆に先んじて御責任感を深くして、而して其の御地位に賭けても、それを表明されむとする場合があつた時に、其の道が全然閉されて居ることは、斯うした天皇至高の道徳的行爲を、阻止し奉ることになりはしないか、此の點をお伺ひするのであります、私は此のことを今次の大戰に付て想はざるを得ないのであります、陛下が今囘の大戰に對して、政治法律上何の御責任もないことは、現在の憲法に明かな所であります、殊に又誰よりも最も平和に終始せられて、國家の苦惱を御一身に擔ひ來れることに付ては、我等國民一同の存じて居る所でございます、併しそれにも拘らず、實はそれだからこそ陛下の御代に、我が國肇國以來の斯かる大事の起つたことに付きまして、上皇祖に對し、下國民に對して、最も深く責任を御感じになつて居るのは、陛下であると私は拝察するのでございます、それは昨年八月十五日、假令朕が一身は如何にあらうとも、と云ふあの御言葉は、我々の耳朶に尚新たなものがございます、誠に陛下御一生の御念願は、國家の大義と國民の幸福の上に懸けられて居るのでございます、其の爲には御退位はおろか、御一身は何時でも犧牲に爲し給ふと云ふ御決心と、私は拜察するのであります、今、國民を擧げて物質的、精神的な悲惨のどん底に彷徨して居ります、中にも幾百萬の戰死者の遺家族、戰傷軍人竝に數多くの測り知ることの出來ない夥しい戰火の罹災者は、巷に滿ちて居ります、彼等は軍閥や、時の指導者に誤られましたとは言へ、皆何れも陛下の名を呼び、陛下の爲に戰ひ、苦しみ來つて居るのであります、又、側近者、重臣を始め、軍人其の他の指導者達は、中央、地方を通じて御覽の通りに、嚴しき法の裁きの下に處刑若しくは追放されて居るのでございます、さうした中に陛下の御苦惱と御責任感の深きことは、我々の拜察するだに恐懼に堪へない次第でございます、斯樣な情勢下にありまして、尚何事もなかつたかのやうに、國民の傳統的感情が、御退位を許さぬと云ふが如きは、凡そ大義名分の何たると、又國民心理の現實に對して、強ひて眼を蔽ふことはないであらうか、先程幣原國務相の御話は、此のことに牽聯して居るのでありますけれども、國民はそれを考へて居ないと云ふ御話でありまするけれども、斯うした一つの我が社會の國民の現實は、我々が直視する必要があると存ずるのでございます、別けても道徳的義務と責任を旨として居ります教育者、現に私の經驗して居ります所でも國民學校の教師、更に大學の教授に至る迄、此の問題は極めて重要なる問題でございます、戰爭に依りまして義務と責任感が薄らいで、世を擧げて道徳的頽廃の兆のありまする此の祖國の將來の運命は、一に道義的精神の作興如何にありと考へるのでございます、此の意味に於きまして祖國再建の精神的な礎は、國民の象徴たる天皇の御擧措進退の一に懸かつて居ると申しても差支ないのであります、然るに國民の傳統的感情に藉口して、若し國民感情を強制することがあるならば、又萬一にも國民の間に怨嗟の聲を殘すならば、如何にして天皇の大義を發揚し、國民の道義を振興することが出來ませうか、私は此のことを憂ふるのであります、此の點に付て文教の長たる田中文相、又金森國務相は如何樣に考へますか、伺ひたいのであります、最後に幣原國務相竝に金森國務相に御伺ひ致したうございます、政府は以上のやうなことをも考慮して、將來陛下が左樣な御意思を表明せる場合に際し、此のことに關し非常特別の立法措置を講ずる御用意があるかと云ふことであります、それとも外部の情勢はまだ其處迄至つてないからと言つて、御一身の御安泰を冀ひ、或は皇太子未だ御幼少の故を以て、其のことを考慮し、萬一にもさう云ふやうな見地から、天皇の自律的な道徳意思を塞ぎ、陛下の聰明を覆ふと云ふ結果があるならば、是は著しきことであると私は恐れるものであります、其の間の政府の御苦心を御察しすることは十分でありますけれども、それは實は忠なるに似て眞の忠からはまだ遠いと私は考へるのであります、私に直言することを許されるならば、其の間輔弼の責に於て、まだまだ十分御努力を願ふべき點があるのではないかと存ずるのであります、之に反しまして又混亂と變革の只中に、此の新日本の展開の大業を見屆け給ふことに依りまして、何れの日にか日本國民の道義的精神生活の中心として、天皇の大義を明かにし給ふであらうと云ふことは、それを冀ひ、それを期待して居る者は決して國民の中に少くはないのであります、斯くてこそ我が國民道徳の斷ち切られた結合を再び繋ぐことが出來、又一旦敗れた光榮ある歴史の空白を充すことが出來て、後世我が國の歴史に於て昭和天皇の御決斷を明かにし、又外世界に對して日本天皇の道義を顯揚することが出來ると私は思ふのであります、私は内閣諸公を初め、國政の審議に當る人達が此の道理に基いて、此の皇室典範改正の際に、此の重要なる問題を深く考へられることを望んで已まないのであります、外ならぬ當貴族院に於きまして、私が斯かる質疑を敢て致します一片の衷情を御汲取り戴いて、私に非禮の點があつたならば議員各位の御宥忍を願ふと共に、内閣諸公に於かれましては至誠を披瀝して、此の問題に付て御答辯を願ひたいと思ふのであります(拍手起る)
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=23
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024・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今南原さんから極く至誠を籠めての御質疑がありまして、其の點は私も深く感謝するのであります、併しながら御質問の御趣旨は、天皇の御退位と云ふことに付て、何か規定を設けたらどうかと云ふことに歸すると思ひます、法律論としては今姑く措き、實際問題と致しまして、私の考では天皇は斯う云ふ場合に御退位が出來る、斯う云ふ場合に御讓位が出來ると云ふ規定を設けることそれ自身が、實際方面に於きまして甚だ好ましからざる混亂の事態を生じやしないかと思ふのであります、(拍手する者あり)例へばインフレがひどくなつたから平價の切下を行ふべしと云ふ規定を設くべし、斯う云ふ規定を設けられたらどうでありませう、經濟社會には一方ならざる混亂を來すだらうと思ひます、左樣なことは是は規定に掲げない方が宜いのぢやないかと思ひます、例へばイギリスに於きまして、皇帝は退位された、其の實例はあります、併しながら果してイギリスの憲法に於きまして、是は私は何も法律學者でないから知りませぬけれども、イギリスの皇帝は如何なる場合に退位が出來るかと云ふやうな法律上の規定がございませうか、私はさう云ふことを聽いたことはありませぬ、若し間違つて居りますれば、南原さんの御示教を仰ぎたいのであります
〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=24
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025・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 南原君より御退位に關する規定を皇室典範の中に設くると云ふ方向に於きまして、數個の場合を擧げて御質疑になりました、第一には天皇に精神及び身體に不治の重患がある場合に於て、斯樣な場合に御退位の規定を考へ得ることが自然ではないか、それを無理に現在の如き、其の場合に攝政を置くと云ふだけの方法を採ることは物の筋道を歪曲するものではないかと云ふお尋ね、又天皇の個人的なる御自由を尊重するの見地、即ち基本的人權を確保する見地からして、御心に從つて御退位の途が設けられるのが憲法の新しき行き途ではないかと云ふ風の御尋がありました、固より左樣な方向に於きまして考へ得べき幾多の角度はあると存じて居ります、私共も左樣な面から色々の考慮を圍らしたのでありますけれども、要するに最後の結論と致しましては、天皇は國の象徴であり、國民統合の象徴であると云ふ御地位を國民が總意を以て之を維持して居ると云ふ見地より致しまして、細かい理窟を拔きに致しまして、國民は矢張り御退位を豫想するやうな規定を設けないことに贊成をせらるるのではなからうか、斯う云ふ前提の下に皇室典範の起案を致しました、次に天皇御自身の道義的責任感よりして、御退位の場合を豫想するやうな風の規定を考へて居るかどうかと云ふやうなことでありましたが、私共は斯くの如き前提に付きましての信念を現在持つて居りませぬ、新しき憲法に從つて、天皇は國の象徴であると云ふことを國民がはつきり其の總意に依つて維持して居る限り、御退位に關する豫想をしようとは私共の絶對に思はない所のものでございます、次に非常特別の立法の餘地がある、さう云ふことを考へて居るかと申されましたが、私は現在の段階に於て斯くの如きことを考へて居りませぬ
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=25
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026・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 御答へ致します、天皇の御退位なり御讓位の規定が缺けて居ることは、天皇が道義的の御責任感からして、其の御地位に止まることを欲せられないと云ふやうなことがあり得るではないか、さう云ふ場合に御退位を認めないと云ふことは、國家文教の立場から考へても好ましからないことではないかと云ふやうな御趣旨の御質問だと了解致します、是は或意味に於きまして最も深刻なる御質問だと思ひます、私御答辯するのになかなか苦しいのでございます、併しながら私は此の天皇の御地位に關しまする所の制度は、第一我々は外の制度と違つて居ると云ふことを考へなければなりませぬ、皇位が世襲になつて居ると云ふことだけを考へて見ましても、一體封建的要素が拂拭されなければならない今日、世襲と云ふのはどう云ふことであるかと云ふことに付きましても、問題がある譯であります、併しながら何人も此の點に付きまして疑問を抱く者はないだらうと思ひます、さう云ふ點から考へますると、天皇が日本國の象徴として、或は國民統合の象徴としての御地位に在られる間は、我々と同じやうに自由を御持ちになり、又權利を御持ちになつて居られるけれども、併し最高の公共の福祉の要求からして、其の天皇が象徴として非常に日本國の本當の利益の爲に、御自由を制限されておいでになると云ふことを我々は認めなければならぬのぢやないか、從つて陛下が或は御自分の御趣味から、或は又道徳的の生活に於ける御内省の氣持から假令地位に止まることを欲せられないやうな場合に於きましても、矢張り國民統合の要求からして、殘つて戴かなければならないと云ふ風に國民が考へることが、是がナチユラルであり、それが此の草案の精神になつて居ると云ふ風に理解致す次第でございます、要しまするに天皇の御場合に於きましては、私共が例へば或公の地位に於きまして、自己批判で以て、或は自己の趣味に從つて地位を去るとか云ふやうなことを割合に自由に決めますが、さう云ふ場合とは違つた、もつと高い立場に於て其の地位においでになるのでありまして、從つて其の御自由なる天皇の御判斷に對する制約も亦大きいと云ふことを認めなければならないと存ずる次第であります、之を以て御答辯と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=26
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027・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 南原君
〔南原繁君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=27
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028・南原繁
○南原繁君 簡單に一言申すことを御許し願ひたい、先程幣原國務大臣から御答辯がありましたが、私の茲に申上げましたる御退位の問題に關しまして、同國務大臣の御説明に依りますると、其の一々の場合の客觀的な標準を規定することが出來ないのではないか、例へばインフレの場合と云ふ風に‥‥それは必ずしも御本旨ではなかつたと思ひますけれども、極めて不適當なる例を御用ひになつたと私は思ふ、何處に法律で斯く斯くの場合は斯う斯うと云ふインフレの規定をする國がありませうか、又それより以上に、天皇の御心境に關する精神的、道徳的規定に關することを、一々の場合を法律的に規定することの出來る國がありませうか、イギリスにもございませぬ、又法律制度に書くことの出來ないものが、精神的、又道徳的問題の重要なる所以でございます、それ等のことは、併し陛下御自身の單なる御恣意であるかどうかと云ふことは、それを議する爲には、それは今度の案に依りましての皇室會議もございます、又國會と云ふものも最後にございます、豫め法律で規則を具體的に書いて置くものでないと私は考へるのであります、金森國務大臣は、其の地位が國民の象徴として仰がれて居る以上は、永久に其の地位が、其の御個人の天皇に付てもそれは仰いで居るのであると云ふ意味でありましたけれども、此の點に付きましては今囘の憲法に、人間天皇と云ふ一つの此の點は、全く此の皇室典範案に侵透して居ないと私は考へる者であります、田中文相は最後にさすがに此の問題を深刻に、私の問題を考へられて、道徳的問題と關聯しまして、此のことの御答辯があつたことは私は稍稍滿足の至りであります、併しながら皇位の世襲であると云ふことは、是は此の立場からして私共は當然と認めまして、尚且其の上に新憲法に依つて人間天皇との調和の途はないか、此の途は確かにあると私は考へるのであります、又深刻なる天皇御自身の高貴な道徳的責任感に依つて、御退位を決意された場合には、其のことを實現させる途を開いて置くと云ふことが、國家公共の爲に却てなると云ふことは、是は我々は教育道義の立場からはつきり申上げることが出來ると思ふのでございます、さう云ふ次第でありまして、それ以上は意見の相違もございまするし、私は此の本會議の禮儀を重んじて私の質疑は之を以て終りと致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=28
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029・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました皇室典範案は、其の特別委員の數を三十六名とし、其の委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=29
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030・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=30
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031・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=31
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032・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔小野寺書記官朗讀〕
皇室典範案特別委員
侯爵 東郷彪君 侯爵 久我通顯君
侯爵 淺野長武君 侯爵 前田利建君
伯爵 二荒芳徳君 伯爵 大木喜福君
男爵 白根松介君 子爵 黒田長敬君
子爵 北小路三郎君 子爵 梅園篤彦君
子爵 高木正得君 子爵 三島通陽君
子爵 梅渓通虎君 小山松吉君
松村眞一郎君 羽田亨君
男爵 今園國貞君 村上恭一君
渡部信君 男爵 飯田精太郎君
慶松勝左衞門君 副島千八君
男爵 鶴殿家勝君 男爵 岡俊二君
男爵 島津忠彦君 坂田幹太君
宮澤俊義君 松尾國松君
瀧川儀作君 菅澤重雄君
有馬忠三郎君 板倉卓造君
塩田團平君 原田讓二君
小汀利得君 長島銀藏君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=32
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033・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 休憩を致します、午後は一時三十分より開會致します
午後零時二十四分休憩
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午御一時三十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=33
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034・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 休憩前に引續き會議を開きます、日程第二、参議院議員選挙法案、政府提出、第一讀會の續、委員長報告、委員長林伯爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=34
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035・会議録情報4
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参議院議員選挙法案
右別册ノ通修正議決セリ依テ及報告候也
昭和二十一年十二月十四日
委員長 伯爵林 博太郎
貴族院議長公爵徳川家正殿
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第二十二條 市町村会議員選挙管理委員会は、各投票区における選挙人名簿に記載された者の中から、本人の承諾を得て、五人乃至九人の投票立会人を選任しなければならない。
前項の規定による投票立会人が三人に達しなくなつたとき、又は投票立会人で参会する者が投票所を開くべき時刻になつても三人に達しないとき若しくはその後三人に達しなくなつたときは、投票管理者は、その投票区における選挙人名簿に記載された者の中から三人に達するまでの投票立会人を選任し、直ちにこれを本人に通知し、投票に立ち会わしめなければならない。
地方選出議員の選挙と全國選出議員の選挙を同時に行う場合においては、市町村会議員選挙管理委員会又は投票管理者は、地方選出議員の投票立会人を同時に全國選出議員の投票立会人とすることができる。
投票立会人は、正当の理由がなければ、その職を辞することができない。
第二十四條 投票の拒否は、投票立会人がこれを決定する。可否同数のときは、投票管理者がこれを決する。
前項の決定を受けた選挙人において不服があるときは、投票管理者は、仮に投票をさせなければならない。
前項の投票は、選挙人をして、これを封筒に入れて封をし表面に自らその氏名を記載して投票箱に入れさせなければならない。
投票管理者又は投票立会人において異議のある選挙人についてもまた前二項と同樣とする。
第三十二條 開票管理者は、開票立会人立会の上、投票箱を開き、先ず第二十四條第二項及び第四項の規定による投票を調査しなければならない。その投票を受理するかどうかは、開票立会人がこれを決定する。可否同数のときは、開票管理者がこれを決する。
開票管理者は、開票立会人とともに、市町村その他都議会議員選挙管理委員会又は道府縣会議員選挙管理委員会の定める区域ごとに、投票を点檢しなければならない。
投票の点檢が終つたときは、開票管理者は、直ちにその結果を選挙長(全國選出議員については選挙分会長)に報告しなければならない。
第三十三條 投票の効力は、開票立会人がこれを決定する。可否同数のときは、開票管理者がこれを決する。
第五十八條 第五十四條第一項乃至第三項の規定による届出があつた議員候補者がその選挙における議員の定数を超えないときは、その選挙区においては、投票は、これを行わない。
前項の規定により投票を行わないこととなつたときは、選挙長は直ちにその旨を投票管理者に通知し、併せてこれを告示し、且つ、都議会議員選挙管理委員会又は道府縣会議員選挙管理委員会に報告しなければならない。
投票管理者が前項の通知を受けたときは、直ちにその旨を告示しなければならない。
第一項の場合においては、選挙長は、選挙の期日から五日以内に選挙会を開き、議員候補者を以て当選人と定めなければならない。
在任期間を異にする議員の選挙を合併して行つた場合において、第一項の規定の適用があるときは、くじにより、いずれの議員候補者を以て在任期間の長い議員の選挙の当選人とするかを定めなければならない。
前二項の場合において、議員候補者の被選挙権の有無は、選挙立会人がこれを決定する。可否同数ときは、選挙長がこれを決する。
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〔伯爵林博太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=35
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036・林博太郎
○伯爵林博太郎君 只今議題になりました參議院議員選擧法案特別委員會の經過に付きまして御報告を致します、此の特別委員會は十二月四日より十四日迄愼重に審議致しまして質問討論を經て修正可決に相成りました、此の際政府の説明に付きましてはもう御承知のことでありまするから省略を致します、此の兩院制の採用と云ふことは長短相補はしめると云ふことが目的であつて、國權の最高機關たる、又唯一の立法機關たらしむる爲に參議院と云ふものが必要であると云ふことであります、衆議院が二つ出來ても何にもならない、從つて參議院を作る以上は是はどうしても異質的のもので、衆議院とは全然性格の違つた特徴のあるものにしなければならぬと云ふことが中心のやうであります、それで要するに參議院議員は第一には國民を全面的に代表すると云ふこと、第二には平等の選擧、第三には半數改選、又次には衆議院と違つて六年制であると云ふこと、第五には解散がないと云ふやうな所に特徴がありますが、それ等の點に於て色々の質問應答があつたのであります、茲に其の中で以て主なるものを申上げて見れば、職能代表と云ふものが相當に問題になつたのであります、是は色々の角度から質問應答がありました、職能團體と云ふものは是は自然の發達に俟つて行くべきものであつて、選擧の爲に無理に整理すると云ふことは出來ないのである、然るに今日の現状を見ればはつきりした線を職能の間に引くことが出來ない状態にある、加之極く小さい例を言つて見れば、妻は男女同權の今日夫の職能で以て決められると云ふことも起つて來て、線を引くと云ふことはなかなかむづかしいものである、從つて、是は餘程困難なものではないかと云ふ政府の説明であります、選擧は自由、直接、平等と云ふことでなくてはならない、茲に公選をすると云ふことの意味があるのである、一つの職能團體が其の職能の代表を出すだけのことでは是は自由の代表ではない、其の代議士は本會全國民の代表と云ふことも出來ないのである、色々の方面から見て斯う云ふことはなかなかむづかしい問題であると云ふのであります、それから推薦のことに付きましても、色々の角度から質問應答がありました、推薦と云ふことになりますと云ふと、亦なかなか之にもむづかしい問題が起つて來るのである、職能團體、其の他の團體が茲にプールを作つて、其處で以て色々の方面の者を、エキスパートを推薦致しまして、それを自由の立場で以て國民が選擧すると云ふことであるならば、公のことにならなければ是は差支がないやうに思ふ、不可能ではないやうに思ふ、又參議院が推擧すると云ふことになりますと自己推薦と云ふことになりますし、衆議院が之をやると云ふことになりましても、矢張り合理的には行かないやうである、是等に付て色々の質問があり、職能團體も可能ではないか、堆薦の方式をとつても行けるのではないかと云ふことになると、どうも法文化すると云ふことになりますと、非常に困難であると云ふことであります、新憲法の四十三條に「兩議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。」と斯うなつて居ります、さうして其のやり方は先程の自由、平等、竝に直接にやる、即ち公選でやると云ふことになる譯でありますが、之に觸れると云ふことに付て見ると、推薦にしましても、職能代表にしましても、其の虞は多分にあるのである、法文化が不可能であると云ふ譯ではないのでありますが、どうもまだ今日の職能代表などを見ると、其處迄發達をして居らないのであるし、政府に於きましても法制局などと懇談して、此の法文化と云ふことに付て色々研究をして見たけれども、不可能ではないにしても、實際法文に書くと云ふことになると、色々の方面でむづかしくて、容易に是は出來ない問題であると云ふことであります、次に參議院の問題としては年齡の點でありますが、年齡としては是も亦方々の方面から質問があつたのでありますが、先づ四十歳と云ふ所は分別の盛んな時でありまして、一番良いのではないか、どうも三十歳と云ふことになると、高等教育を經てから四五年經つと直ぐ三十歳になつて、まだ本當の堅固な思想も出來てなければ、分別盛りと云ふ譯にも行かない、さう云ふ時には、まだなるのは早いんぢやないかと云ふのであります、處が、之を外國の例などを考へて見ますと、チエッコは下院が三十歳で以て上院は四十五歳、フランスは下院が二十五歳で上院が四十歳、ベルギーは二十一歳に對して四十歳である、米國は上院が三十歳になつて居ります、日本は衆議院は二十五歳で、貴族院は三十歳、公選知事が三十歳になつて居ると云ふやうな譯で、三十歳と云ふのは新しい方面の傾向でありますけれども、三十歳と云ふと、政府の説明に依りますと云ふと、衆議員よりは五歳を加へて居るのである、處が、其の四十歳と云ふことが惡いとは、政府の方でも言つて居りませぬ、實際に於ては三十歳としてあつても、四十歳に傾くものであるんだ、其の證據には最近の實状でも、衆議院に於きましては、日本で二十九歳以下の人は三人しか居らない、三十歳から三十九歳迄の人は四十七人である、四十歳以上は四百六十人の中で、四百十五人を占めて居るのであるから、現状に於ても四十歳と云ふ所は、自然の成行にすればそこに歸著するのであるから、三十歳として置いても一向に差支はないと思ふと、それから又多額納税議員は三十歳以上で宜いことになつて居るけれども、實際は五十四歳になつて居る、三十歳と云ふことにすれば、例えばイギリスの小ビツト如き人は、若くつて出て居つたのであるが、四十歳だとさう云ふ人は出られなくなつてしまふと云ふやうな點も、考へて行かなければならないと云ふのであります、それから數の問題でありますが、是が亦大變に研究をされた點であります、で質問者の方では多くは、どうも運用上三百人なければ日本の參議院は困る、即ち衆議院の四百六十六人の三分の二と云ふ所が、丁度宜いのではないか、從つて臨時法制調査會では、一應三百人と定めたのであるが、地方議員が百五十人でありまして、全國議員の方が百人とすると云ふと、二百五十人と云ふことになりますが、是では常任委員會とか特別委員會を開いて、而も會期が迫つて居る時になつて、法案が澤山來る、それで以て今でさへ困つて居るのに、其の委員の割當なんぞに付ても、非常に困ることが起るだらう、元來今度は六年であつて、半數交代になるのでありますが、其の半數はどうして定めるかと云ふと、御承知の通り是は得票順でずつと二百五十人竝んで、それが得票數の多い方から半分取つて、後の殘りが三年で改選される方になるのでありますが、其の半數交代の初めての時はどうかと云ふと、今度御承知の通り四月に選擧があるのであります、四月に選擧したのが此の次の三年目に改選される時は、矢張り四月になりますから、參議院の會期が十二月から四月一杯あります、そこで重複して定めてしまふやうになりますから、そこで以て辭める者は辭めなくつてはならなくなつて來る、さうなつて來ると人數が半分になつてしまふのでありますから、そこで先程の常任委員とか、或は特別委員會の委員と云ふやうなものが、三人か四人で以て、忙がしい會期の迫つた時にやらなければならぬと云ふことが起るのだ、尚更以て二百五十人と云ふことは、どうも日本では不都合なことになるのであるから、矢張り三百人はなくつちやならぬと云ふ議論が出たのであります、之に對して政府の答辯としては、それは初の一囘だけはさうなるのだ、其の次は五月から、五月になるのでありますからして、會期には影響がないのだから、まあ第一囘だけのことであるから、其の點は辛抱をして、後は順調に行くと考へるから差支ないと思ふと云ふやうな答辯であつたのであります、それから又百人だと云ふと、七千萬人の中から立派な人間が選ばれるけれども、百五十人でもう五十人殖えると云ふと、必ずしもさうは行かないやうになつて來るから、大人物を揃へるならば百人位が宜いではないかと云ふやうなことであります、そこで外國の例を言つて見れば米國は下院が二百四十五人、上院は所謂元老院は九十六人、英國は逆に六百十五人に對して七百八十五人、イタリー本會は五百三十五人に對して七百人と云ふことになつて居ります、そんな工合でありまして、大體は上院の方は無論少いのでありますが、さう云ふやうな、是は參考でありますが、さう云ふ工合にして兩方で二百五十人と云ふ所が適當であらうと云ふ政府の答でありました、尚加へて置きますが、年齡の所に於きましては議論のあつた中に、強く三十五歳の論もした人があつたのであります、それから質問の途中でありましたが、斯う云ふ主要な重大な問題に付て、一つ練つて見たいと云ふので懇談會があつたのであります、推薦の問題に付きましては法文化がむづかしいことや、又公選と云ふやうなことから論じまして、先づ是は其の儘原案通りに、餘り書かない方が宜からうと云ふことになりました、年齡に付きましても、四十歳論と云ふものが是は非常に多かつたのでありますが、まあ是は一つ大いに考へて見ようと云ふことでありました、それから兩建の問題であります、地方議員と全國議員と兩建にすると云ふことに付ての懇談會も、隨分色々の方面から論じられたのでありますが、一方に於ては、此の全國議員だけが特徴のあるものであつて、世界にない、初めて日本がやると云ふやうなものであるから、全國議員の方を殘して、さうして衆議院のやうな地方議員の方は廢めてしまはうと云ふ議論も出ました、其の反對に地方議員の方を殘して、全國議員と云ふものが何が出るか分らないので、國民もどう云ふ人を選んで宜いか分らないと云ふやうな譯だから、是は餘り面白くないから、此の方を寧ろ廢めようと云ふ議論もありました、併しながら多數の意見としては矢張り兩建にして行くのが宜からうと云ふことであつたのであります、それから數の問題に付きましても、二百五十人竝に三百人と云ふ議論はなかなか盛であつたのでありますが、是は三百人と云ふのが大變多數でありました、先程ちよつと申遲れましたが、年齡のことに付きましては、矢張り此の四十歳論がなかなか多かつたのでありますが、それに付ては先程申しました通り三十五歳と云ふ議論も出たと云ふことを申加へて置きます、それから又質問に移りますが、投票所が餘り多いと云ふことはどうもいけないと思ふが、現状に於て是で政府は宜いと思ふか、ドイツではどうしてヒツトラーがあんな勢力を得たかと云ふと、投票所が餘りに多かつた爲だ、投票所が近くつて、さうして數が多いから之を監視することが出來る、誰が誰を選んだと云ふことが直ぐに分るものだから、國民が怖れをなして、ヒツトラーを選んぢやつたから非常に多い數を以てヒツトラーが當選したことがある、ですから餘り細かく投票所を配分すると云ふことは宜しくないと思ふがどうであるか、政府は之に對しましては數十年來衆議院等に於きまして、投票と云ふことに付ては研究して、今日は最も宜い所に收つて、現状になつて居るのであるから、今日の投票所の數と云ふものが誠に權衡を得たものであると思ふと云ふことであります、それから戸別訪問も勝手にして宜い、選擧費も幾ら使つても無制限で差支ない、とても今度の全國議員の如き者は戸別訪問もし切れるものでなし、金も使ひ切れるものでないから、其の方は自由に其の通り其の儘勝手にやつたら宜からうと云ふ政府の意見がありました、又質問の中に皇族の選擧權被選擧權と云ふものは餘り露骨にしないで、是は御遠慮をなさる方が宜いと思ふがどうであるか、之に對しましては、皇族も今度は明瞭に國民の一員として御生活になるのであるから、國民に選擧權被選擧權が平等にあると云ふことになれば、皇族も矢張り選擧權被選擧權と云ふものを持たれるのが正しい議論である、併し是々のものに付てはどうも宮樣としては困るぢやないかと云ふやうな問題があつた場合には、それは運用で以て然るべくやつたらば宜からうと思ふのだ。どうも原案で行くのが正當であると云ふことであります、それから最後に別表の割當のことを質問された方があります、最後にあります所の、參議院法案の後にあります割當を見ると云ふと、どうも不公平な場所がある、又それが多いのである、元來此の計算は地方選出議員の定數百五十人で人口七千萬人を割つて見ますと、四十五萬人になるのです、其の四十五萬で縣の總人口を割つたもので定數を決めてあるのでありますが、さうすると云ふと、具體的な例で言つて見ると、宮城縣の人口は百四十五萬人でありますから、之を四十五萬人で割ると二・九となるのであります、栃木縣の人口は百五十何萬人でありますが、之を四十五萬で割りますと三・一になるのであります、然るに此の參議院案の原案では定員が二になつて居ります、二・九を二にして居る、栃木縣は三・一を四にして四人にして居るのであります、之を公平に見ると、兩方百五十萬内外でありながら一方は二人であり、他は四人である、倍になつて居る、斯んな不均衡なものはないのであるから、三・一の方は三にして、二・九は四捨五入して三にして、兩方三にすれば宜いぢやないか、斯う云ふ質問であります、之に對しまして、どうも三にすると云ふことは、詰り奇數にすることになるのであります、奇數にする爲に問題が起つたのであつて、奇數になりますと云ふと、例の半數交代の時にちやんぽんにやらなければならないことが起つて來て、日本全國に之をうまくやると云ふことになると、技術的に非常に困難なものになつて來る、第二には此の宮城縣と栃木縣だけでは斯んな風に不均衡に見えるけれども、斯うやると、外の縣の全體を見ると、都合好く割當てられて居るのだから、此の方が寧ろ合理的であると云ふのであります、それから六十六條の沒收點のことでありますが、此の沒收點は有效投票總數を議員定數で割りましたもの、即ち絶對當選確實得票數、例へば十萬投票がありますと、定數が二人であれば、十萬の投票總數を二で割りますと五萬人になる、五萬人取れば確實でありますから、それは絶對確實の得票數と云ふのでありますが、其の絶對確實の得票數の十分の一にならないものは其の供託金を沒收すると云ふのでありますから、十分の一に足りないやうなものはもう泡沫的なものであるから、さう云ふものから沒收すると云ふことは當り前のことであると云ふのであります、併し質問者の方では、十分の一で以てやられては堪まらないから、二十分の一に緩和したらどうかと云ふのであります、まあ十分の一に足りないものは政府の見解としては、それは沒收するだけの値打のあるものであると云ふ答辯であります、其の外數の問題に付き色々の點がありますけれども、是は相當重大な問題ではありますけれども、是は此の際速記録に讓りたいと思ひます、それから一委員から、特に首相に對しまして質問がありました、今日の日本の如き民主的の自覺のない國民に、此の理想的の參議院法案の精神を徹底的に、實際に實現すると云ふことは非常にむづかしいことであるが、之をやるのに對して總理大臣は、踏込んだ、腰を据へた覺悟を有して居られるかどうであるかと云ふ質問であります、總理は之に對しまして次の如く答へられて居ります、民主主義を我が國の津々浦々迄徹底させたいのである、兩院議員、學者其の他を動員して新憲法の普及の方面に付ては色々準備中であり、且訓令を府縣に出して居るのでありまして、此の問題は重大であるだけに極めて愼重に、極めて腰を据へてやつて行きたいと思ふ、決して輕輕には考へて居らないと云ふことであります、又質問は、斯う云ふ風になりまして、總理は政黨の總裁でもあられるのである、此の政黨を如何に改善指導するのであるか、新人物を入黨させるし、今迄の舊體制を改善して行つて、政黨と云ふものを一つ考へ直して行くと云ふことが必要であるから、其の方面に於て十分に考慮すると云ふことであります、斯く致しまして、十二月十三日午後に討論に入りました、一委員から、立會人に關する條項に付きまして修正案が提出をされました、只今其の要旨を申上げますと、立會人は公益代表でなく、利益代表であるべき者である、立會人は候補者の利益を代表し、選擧の公正を期すべき者である、投票管理者は公益代表であつて、選擧事務を管理する者である、此の修正は民主主義的の徹底の上から極めて必要である、即ち立會人に付ては候補者の屆出主義にするのである、地方選出議員の選擧と全國選出議員の選擧を同時に行ふ時に、立會人が之を兼ねると云ふことは不都合であるので、此の項を削つたのである、是は事實上兼ねると云ふことは行はれないのである、地方議員の方は地方議員で以て自ら屆出をしますし、全國議員の方は全國議員の方で自ら違つた屆出をするのであるから、此の兩者が兼ねると云ふことは事實上に於ては容易に起ることではないと云ふのであります、それから投票の拒否の場合には、立會人の意見を聽いて管理者が決定するのであるが、立會人が候補者の方から申込まれて出るのでありますからして、候補者の方の利益のみに傾くと云ふことが起り易いのであるが、それは矢張り管理者が意見を聽いて決めると云ふことの方が正しいのである、さう云ふ大體の意味の御説明がありまして、此の修正動議には贊成者がありましたから、成立を致したのであります、茲で參議院議員選擧法案に付きまして三人の委員から贊成の意見を述べられたのでありますから之を御紹介致します、ちよつと其の前に先程の修正案に付きましての政府の意見を申上げます、政府の意向を尋ねました處、元來衆議院議員選擧法では屆出主義であつた、之を改めて投票管理者の選任としたのであります、此の修正案が成立しますならば、從來の方針のことであるから御同意を致しますと云ふことでありました、で一委員より次の贊成意見が出ました、本法案は申す迄もなく民主化されたものである、新憲法の精神に則つて起草されたものであつて、參議院の構成と云ふものは、全國民を代表する選擧された議員を以て組織すると云ふ原則に基いて居る、又議員の選擧の方法は自由、直接、平等の原則に基いて居る、で參議院を以て、如何にして第二院たるの機能を發揮せしむることを得るやと云ふことが最も重要な問題である、所謂練熟、愼重、耐久の要素が採入れられまして、而も眞に民意を反映するもの、公正なる批判を行ひ得るものでなくてはならない、さう云ふ意味に於きまして、異質的のものたらしめることが必要である、政府は之が爲本案に於ける法的の措置として、衆議院議員より披選擧人の年齡の引上を行つた、又選擧區の構成に付きまして、全國を一選擧區とすると云ふ劃期的の制度を採用せられて居るのである、此の上は進んで參政能力と中正判斷とに信頼して行かなければならない、で此のことに付きましては、選擧民が民主政治の自覺に徹すると共に、第二院の存在理由を篤と認識する點になければならない、而して民主主議的基礎が未だ確立して居ると申し難い我が國の現状に於ては、尚更立派な參議員の成立が望ましいのである、是は其の成否は、實に將來の國民に對しまして殘されたる課題であります、政府は宜しく國民に對して政治思想を啓發し、其の力に依つて二院制に依る所の議会政治を正しい歩みに行くやうに、絶大の努力と一段の工夫を致されむことを切望するのであります、最後に此の選擧權と被選擧權のことでありますが、本案に於きましては、是等の範圍が現行衆議員議員選擧法よりも遙かに擴張されて居つて、寧ろ行過ぎる觀がある、此の點に關しては篤と政府の答辯もありましたが、今後現行衆議院議員選擧法と國籍法と十分なる調整を圖ると云ふことが必要であると思ふ、此の意見を述べて、私は修正案を含めて本案に贊成を致しますと云ふことであります、次に又他の一委員から贊成の意見がありました、參議院の構成は、地方選出議員と全國選出議員とから出來て居る、而して其の半面は衆議院に近付いて居る、地方議員の方は衆議院に近付いて居る、故に其の特色は、どうしても全國選出議員の方面にあると思ふ、自分は齋藤國務大臣の所論とは全く反對である、此の方面を重視するのである、全國一本に如かずと考へるのである、推薦制は法文化することが出來ない、職能代表も具體化されぬ所に不安がある、併しながら之が伴はなくても、實際上は混亂、不安なく能く發展することと思ふので、全國一本で進み得ざりしだけは遺憾である、が併し今日に至つては此の法案は贊成するの外はないのである、又他の一委員からは次の如き贊成意見がありました、此の案には缺點が非常に多い、法文だけでは到底實現が出來ない、大いに運用の方で補はなければならない、其の運用の中でも就中國民の自覺と云ふことに俟たなければならないのである、又此の全國一選擧區と云ふやうなやり方は不安極まるものである、併し之を殘す以上は推薦制が必要であると思ふ、推薦制も研究すれば民主的にやる方法がなきにしもあらずと考へるのである、是も不可能であると云ふやうな空氣であれば已むを得ない、又縁の近い兼職と云ふことは止めなくちやならない、どうも色々の弊害があるからして、議員が兼職すると云ふことは出來るだけ止めなければならない、是は其の趣旨は宜いけれども軈て出る所の國會法に讓つて貰ひたいと云ふ多數の御意見であるならば自分はそれに從ふ、又選擧區に於ける各縣の割當、供託金の沒收點の修正意見は、質問者の言ふことは尤もの點が多いのである、是は將來の研究に俟たうと思ふ、皇族の選擧權、被選擧權の問題も、多數の方が運用に俟つと言はれるならば是は讓るのであるが、此のことには深甚の注意を要する、要するに此の法律が出來たからと云つて直ちに健全な立派な參議院が出來るとは考へない、其の豫想には大いに國民の自覺に俟たなければならない、此の方面を大いに努力しなければならないと思ふ、之を強調して本案に贊成をすると云ふことであります、是より採決に移りました、先程述べました修正案に付きまして採決を致しました處、全會一致を以て可決に相成りました、次に此の修正の箇所を除きまして原案全部に付て採決を致しましたる處、多數を以て原案は可決すべきものなりと決定を致しました、誠に簡單でありましたが、以上を以て報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=36
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037・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 質疑の通告がございます、大河内子爵
〔子爵大河内輝耕君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=37
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038・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 私の質問に付きましては、只今委員長から詳細の御報告もございましたのですが、併し又先輩からの御話で、本會議で一應速記録に留めて置く方が宜いから、一應簡單で宜いからやつたら宜からうと云ふ御話もございましたので、甚だ御迷惑でございますが、皆樣に暫くの時間を拜借致します、又幣原國務大臣御忙しい所を態々御繰合せ下さいまして、又深く此の點を御禮申上げます、私の質問の要點は、此の運用のことでございます、此の法案だけで立派な參議院議員がずつと顏を竝べようとは到底思はれませぬ、是が善く行くか惡く行くかと云ふことは一に運用にある、其の運用で一番大切なものは何かと云ふと、私は是は政黨の覺悟次第だと思ふ、政黨の之に對してする意氣込みと、それからそれに對するどれだけの確信であるかと云ふことで、此の法案の運用はうまく行かうと思ひます、それと何か幣原國務大臣を此處へ置いといて、進歩黨の總裁に質問するやうでございますが、さう云ふ意味ぢやない、政黨と云ふものは重大な政治機關である以上、斯う云ふ重大な法案を出される以上、其の政黨の行動がどうであるかと云ふことは、それは政府として御研究にならなければならぬことである、ならぬことでありますから、國務大臣としてそれを御尋を致すのであります、此の參議院議員選擧法は從來の貴族院の選擧法と違ひまして、大分特色が變つて居る、殊に全國のものなぞと云ふことになりますと、全國に亙つて根を張つて居る團體の力が非常に働くことになります、各府縣に於きましても、是はさう云ふ傾向が強くなりませうが、殊に全國を含んで居ると云ふことになると餘計さう云ふことになる、それでは全國に根を張つた團體と云ふものはどう云ふものかと云ふと、農會もありませうし、或は商工會議所と云ふやうなものもありませうし、或は勞働組合と云ふやうなものもございませうが、斯う云ふ組合、斯う云ふ團體はです、最も重んずベき團體である、經濟團體として最も重んずべき團體でありまするが、經濟團體は何處迄も經濟團體、斯う云ふものを政治上の渦中に投ずると云ふことは、是は避けなければならぬ、先達ても、先程も職能代表で色々御議論もございましたが、どうも斯う云ふ一つの專門で行くべき團體が政治へ飛込んで來ると云ふことは面白くない、是は出來るだけさう云ふことは避けなければならぬ、理論は矯激になりますし、さうして動もすれば政治が偏して來る、軍閥に偏した爲に日本が斯う云ふ風に覆滅されてしまつたことはまざまざと見えて居る、そんなこともありもしますまいが、假に勞農にでも傾いて來ると、又今日の二の舞を踏まないとも限らない、現に民主國に慣れて居ない日本國民は事大主義の強い國民でありますから、勞農戰線に引つ張られ掛けて居るやうな臭いがすることは今でも認められて居る、さう云ふ状態でありまするから、一方に職能團體なり、或は特別の經濟團體なりが政治の渦中に投ずると云ふことは避けなければならぬ、さう云ふ風に避けなければならぬことになるとどう云ふ結果になるかと云ふと、此の選擧を背負つて立つものは、好むと好まざるとに拘らず、政黨の力に依るより外はない、政黨が全體の責任を一人で背負つて迷惑かも知らぬ、自分では迷惑かも知らぬ、自分では迷惑かも知らぬが、迷惑になるとか、さう云ふことには拘らず、自分は全責任を背負ふ、必ず之に對して立派な議員を出してやる十分な意氣込みと、十分な自信とを持つて、必ず立派な參議院議員を組織するのである、是だけの責任は政黨が負ふべきものであらうと思ふ、で私は此の極めて不完全な‥‥又是は決して立法者や委員諸君が惡いと云ふのでありませぬ、是より以上どうも如何に考へてもうまく書けない、法律の技術上から言つて是より一歩も進めないやうな、運用に俟たなければならない、此の重大な案は、政黨は其の缺點を眼の前に置いといて、さうして法律は成る程惡い、法律は惡いが自分の力を以て立派な參議院議員を出すやうにしてやる、是だけの意氣込みがあり、又必ずそれを出して見せるだけの自信があると云ふだけの自信を持つて居らなければならないと存じます、此の點は政黨の總裁に伺ふ譯では無論ありませぬ、ありませぬけれども、政黨と云ふやうな重大な政治機關、此の重大な政治機關に對してどう云ふ風に政府が見て居られるものであらうか、其の責任に對しても、其の將來の行き方に對しても、亦現状に付てもどう云ふ風に見て居られるだらうと云ふことは、是は政府として當然御研究になるべきことだらうと思ひますから、其の意味に於て幣原國務大臣に御尋を致すのであります、どうか御遠慮なく、自分はまだ政黨には入つたばかりで能く分らないと云ふやうに御考になるかも分りませぬが、總裁になつた以上は、それは餘計な御遠慮と云ふもので、爲さるべき御遠慮でない、おなりになつた以上は全體のことは御承知になつて責任を背負つて居られる御方と私は考へる、勿論總裁に對して御質問致すのではないことは呉々も申して居りますが、自分はまだ能く知らないからと云ふやうなことでは、それは餘り御遠慮になり過ぎはしないか、却て爲すべからざる御遠慮ぢやないかと思ふ、どうぞ御腹藏ない所の御意見を承りたい
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=38
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039・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今の大河内子爵の御質疑拜聽致しました、何だか私が斯う答へるであらうと云ふことを御豫想になつて、そんなことでなくて責任を持つて答辯しろと云ふ御話でありましたが、私は左樣なことを答辯する積りでも何でもなかつたのであります、私は眞に此の法律が通過致しまするならば、どうか其の運營の宜しきを期したい、政府と致しましても是は出來るだけの力を盡すべきものであらうと思ふのであります、其の爲には、新憲法竝に斯う云つたやうな新しい憲法に附屬して居る法律、是等の趣旨が能く國民に普及するやうに努めると云ふことは、是は政府の任務であると思ひます、どう云ふ人を選出するかと云ふことは、是は政府は關係すべきことではありませぬ、それは其の政黨であるとか、單に政黨だけぢやありませぬ、總ての國民が此の新しい今日の政治の主張、要求と云ふものを理解して呉れまして、さうして適當な人を選出すると云ふことに努めて呉れなければ、政府が何も候補者を立てる譯でも何でもありませぬから、其の爲に私は總ての人が熱を持つて此の選擧のことに當つて呉れられたい、私はそれを希望致して居るのであります、政黨は固より此の爲に協力する、努力すると云ふことは是は勿論のことであります、併し何とか官民一諸になりまして、總ての人達が、此の法律、此の新憲法の運營宜しきを得るやうに一つやつて貰ひたい、之が私の希望であります、決して答辯を私は囘避した積りぢやありませぬが、私の心持は今申した所にありまするから、其の點は御安心下すつて宜からうと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=39
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040・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 私は是で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=40
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041・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 他に御發言もなければ、本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=41
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042・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=42
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043・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望いたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=43
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044・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=44
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045・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=45
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046・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=46
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047・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ全部を問題に供します、本案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=47
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048・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=48
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049・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=49
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050・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=50
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051・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=51
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052・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます。
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=52
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053・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=53
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054・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます、次會の議事日程は、決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午後二時二十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00619461216&spkNum=54
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