1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年十二月二十二日(日曜日)
午前十時十分開議
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議事日程 第九號
昭和二十一年十二月二十二日
午前十時開議
第一 衆議院議員選挙法第十二條の特例等に関する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 開拓者資金融通法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 開拓者資金融通特別会計法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 國会法案(衆議院提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=0
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001・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略致します
〔參照〕
去ル十九日議決ニ係ル桑木嚴翼君ニ對スル弔辭ハ二十一日之ヲ贈レリ
昨二十一日皇室經濟法案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長 伯爵 前田利男君
副委員長 男爵 杉溪由言君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
内閣法案可決報告書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
衆議院議員選挙法第十二條の特例等に関する法律案
開拓者資金融通法案
開拓者資金融通特別会計法案
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
國会法案
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十一囘帝國議會政府委員仰付ラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
大藏省所管事務政府委員
大藏事務官 長沼弘毅君
同 大槻義公君
農林省所管事務政府委員
農林事務官 松野孝一君
農林技官 溝口三郎君
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
議院法の特例に関する法律案
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第一號
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=1
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002・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是より本日の會議を開きます、議事日程の變更に付御諮りを致します、日程第四、國会法案、衆議院提出、第一讀會を、此の際日程の順序を變更して會議を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=2
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003・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=3
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004・会議録情報2
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國会法案
右の本院提出案をここに送付する
昭和二十一年十二月二十一日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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國会法
第一章 國会の召集及び開会式
第一條 國会の召集詔書は、集会の期日を定めて、これを公布する。
常会の召集詔書は、少くとも二十日前にこれを公布しなければならない。
臨時会及び特別会(憲法第五十四條により召集された國会をいう)の召集詔書の公布は、前項によることを要しない。
第二條 常会は、毎年十二月上旬にこれを召集する。但し、その会期中に議員の任期が満限に達しないようにこれを召集しなければならない。
第三條 臨時会の召集の決定を要求するには、いずれかの議院の総議員の四分の一以上の議員が連名で、議長を経由して内閣に要求書を提出しなければならない。
第四條 参議院の緊急集会を求めるには、内閣総理大臣から、集会の期日を定めて、参議院議長にこれを請求しなければならない。
第五條 議員は、召集詔書に指定された期日に、各議院に集会しなければならない。
第六條 各議院において、召集の当日に議長若しくは副議長がないとき、又は議長及び副議長が共にないときは、その選挙を行わなければならない。
第七條 議長及び副議長が選挙されるまでは、事務総長が、議長の職務を行う。
第八條 國会の開会式は、会期の始めにこれを行う。
第九條 開会式においては、衆議院議長が、議長の職務を行う。
衆議院議長に事故があるときは、参議院議長が、議長の職務を行う。
第二章國会の会期及び休会
第十條 常会の会期は、百五十日間とする。
第十一條 臨時会及び特別会の会期は、両議院一致の議決で、これを定める。
第十二條 國会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。
第十三條 前二條の場合において、両議院一致の議決に至らないときは、衆議院の議決したところによる。
第十四條 國会の会期は、召集の当日からこれを起算する。
第十五條 國会の休会は、両議院一致の議決を必要とする。
各議院は、七日以内においてその院の休会を議決することができる。
各議院は、議長において緊急の必要があると認めたとき、又は総議員の四分の一以上の議員から要求があつたときは、國会の休会中又はその院の休会中でも会議を開くことができる。
第三章 役員及び経費
第十六條 各議院の役員は、左の通りとする。
一 議長
二 副議長
三 仮議長
四 常任委員長
五 事務総長
第十七條 各議院の議長及び副議長は、各各一人とする。
第十八條 各議院の議長及び副議長の任期は、各各議員としての任期による。
第十九條 各議院の議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する。
第二十條 議長は、委員会に出席し発言することができる。
第二十一條 各議院において、議長に事故があるとき又は議長が欠けたときは、副議長が、議長の職務を行う。
第二十二條 各議院において、議長及び副議長に共に事故があるときは、仮議長を選挙し議長の職務を行わせる。
議院は、仮議長の選任を議長に委任することができる。
第二十三條 各議院において、議長若しくは副議長が欠けたとき、又は議長及び副議長が共に欠けたときは、直ちにその選挙を行う。
第二十四條 仮議長の選挙の場合及び前條の選挙において議長の職務を行う者がない場合には、事務総長が、議長の職務を行う。
第二十五條 常任委員は、各議院において各各その常任委員の中からこれを選挙する。
第二十六條 各議院に、事務総長一人、参事その他必要な職員を置く。
第二十七條 事務総長は、各議院において國会議員以外の者からこれを選挙する。
参事その他の職員は、事務総長が、議長の同意を得てこれを任免する。
第二十八條 事務総長は、議長の監督の下に、議院の事務を統理し、公文に署名する。
参事は、事務総長の命を受け事務を掌理する。
第二十九條 事務総長に事故があるとき又は事務総長が欠けたときは、その予め指定する参事が、事務総長の職務を行う。
第三十條 役員は、議院の許可を得て辞任することができる。但し、閉会中は、議長において役員の辞任を許可することができる。
第三十一條 役員は、官吏と兼ねることができない。
第三十二條 両議院の経費は、独立して、國の予算にこれを計上しなければならない。
前項の経費中には、予備金を設けることを要する。
第四章 議員
第三十三條 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。
第三十四條 参議院の緊急集会中、参議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、参議院の許諾がなければ逮捕されない。
参議院の緊急集会前に逮捕された参議院の議員は、参議院の要求があれば、緊急集会中これを釈放しなければならない。
第三十五條 議員は、一般官吏の最高の給料額より少くない歳費を受ける。
第三十六條 議員は、別に定めるところにより退職金を受けることができる。
第三十七條 議員は、別に定める規則に從い、会期中及び公務のため自由に國有鉄道に乘車することができる。
第三十八條 議員は、会期中公の書類を郵送し及び公の性質を有する通信をなすため、別に定めるところにより手当を受ける。
第三十九條 議員はその任期中別に法律で定めた場合を除いては、官吏又は地方公共團體の吏員となることができない。
議員は、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、囑託その他これに準ずる職務に就くことができない。但し、法律で定めた場合又は國会の議決に基く場合は、この限りでない。
第五章 委員及び委員会
第四十條 各議院の委員は、常任委員及び特別委員とする。
第四十一條 常任委員は会期の始めに議院において選任し、議員の任期中その任にあるものとする。
議員は少くとも一箇の常任委員となる。但し、同時に三箇を超える常任委員となることができない。
第四十二條 各議院の常任委員会は、左の通りとし、その部門に属する議案、請願、陳情書その他を審査する。
一 外務委員会
二 治安及び地方制度委員会
三 國土計畫委員会
四 司法委員会
五 文教委員会
六 文化委員会
七 厚生委員会
八 労働委員会
九 農林委員会
十 水産委員会
十一 商業委員会
十二 鉱工業委員会
十三 電氣委員会
十四 運輸及び交通委員会
十五 通信委員会
十六 財政及び金融委員会
十七 予算委員会
十八 決算委員会
十九 議院運営委員会
二十 図書館運営委員会
二十一 懲罰委員会
各議院において必要と認めたときは、前項各号以外の常任委員会を設けることができる。
第四十三條 各常任委員会には、少くとも二人の國会議員でない專門の知識を有する職員(これを專門的職員という)及び書記を常置する。但し議院において不必要と認めたものについては、この限りでない。
專門的職員は、相当額の報酬を受け、他の職務を兼ねることができない。
專門的職員は、その職を辞した後二年間は、内閣行政各部における、いかなる職務にも就くことができない。
第四十四條 各議院の常任委員会は他の議院の常任委員会と協議して合同審査会を開くことができる。
第四十五條 特別委員は、常任委員会の所管に属しない特定の事件を審査するため、議院において選任し、その委員会に付託された事件が、その院で議決されるまでその任にあるものとする。
特別委員長は、その委員がこれを互選する。
第四十六條 常任委員及び特別委員は、各派の所属議員数の比率により、これを各派に割当て選任する。
第四十七條 常任委員会及び特別委員会は会期中に限り付託された事件を審査する。
常任委員会及び特別委員会は、各議院の議決で特に付託された事件については、閉会中もなお、これを審査することができる。
第四十八條 委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持する。
第四十九條 委員会は、その委員の半数以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
第五十條 委員会の議事は、出席委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
第五十一條 委員会は、一般的関心及び目的を有する重要な案件について、公聽会を開き、眞に利害関係を有する者又は学識経驗者等から意見を聽くことができる。
予算及び重要な歳入法案については、前項の公聽会を開かなければならない。
第五十二條 委員会は、議員の外、委員長の許可を得た者が、これを傍聽することができる。但し、その委員会の決議により祕密会とすることができる。
委員長は、秩序保持のため、傍聽人の退場を命ずることができる。
第五十三條 委員長は、委員会の経過及び結果を議院に報告しなければならない。
第五十四條 委員会において廃棄された少数意見は、委員長の報告に次いで少数意見者がこれを議院に報告することができる。
議長は、少数意見の報告につき時間を制限することができる。
少数意見者が簡明な少数意見の報告書を議長に提出したときは、委員会の報告書と共にこれを会議録に掲載する。
第六章 会議
第五十五條 各議院の議長は、議事日程を定め、予めこれを議院に報告する。
第五十六條 すべて議員は、議案を発議することができる。
議案が発議又は提出されたときは、議長は、これを適当の委員会に付託し、その審査を経て会議に付する。但し、特に緊急を要するものは、議院の議決で委員会の審査を省略することができる。
委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した議案は、これを会議に付さない。但し、委員会の決定の日から休会中の期間を除いて七日以内に議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
前項但書の要求がないときは、その議案は廃案となる。
第五十七條 議案に対する修正の動議を議題とするには、二十人以上の賛成を要する。
第五十八條 内閣は、一の議院に議案を提出したときは、予備審査のため、その翌日以後他の議院に同一の案を送付しなければならない。
第五十九條 内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となつた議案を修正し又は撤回するには、その院の承諾を要する。
第六十條 各議院が提出した議案については、その委員長(その代理者を含む)又は発議者は、他の議院において、提案の理由を説明することができる。
第六十一條 各議院の議長は、質疑、討論その他の発言につき、特に議院の議決があつた場合を除いて、時間を制限することができる。
議員が時間制限のため発言を終らなかつた部分につき特に議院の議決があつた場合を除いては、議長の認める範囲内において、これを会議録に掲載する。
第六十二條 各議院の会議は、議長又は議員十人以上の発議により、出席議員の三分の二以上の議決があつたときは、公開を停めることができる。
第六十三條 祕密会議の記録中、特に祕密を要するものとその院において議決した部分は、これを公表しないことができる。
第六十四條 内閣は、内閣総理大臣が欠けたとき、又は辞表を提出したときは、直ちにその旨を両議院に通知しなければならない。
第六十五條 両議院の議決を要する議案について、最後の議決があつた場合、及び衆議院の議決が國会の議決となつた場合には、衆議院議長から、その公布を要するものは、これを内閣を経由して奏上し、その他のものは、これを内閣に送付する。
内閣総理大臣の指名については、衆議院議長から、内閣を経由してこれを奏上する。
第六十六條 法律は、奏上の日から三十日以内にこれを公布しなければならない。
第六十七條 一の地方公共團体のみに適用される特別法については、國会において最後の可決があつた場合は、別に法律で定めるところにより、その地方公共團体の住民の投票に付し、その過半数の同意を得たときに、さきの國会の議決が、確定して法律となる。
第六十八條 会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。
第七章國務大臣及び政府委員
第六十九條 内閣は、國会において國務大臣を補佐するため、両議院の議長の承認を得て政府委員を任命することができる。
第七十條 國務大臣及び政府委員が、議院の会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告しなければならない。
第七十一條 委員会は、議長を経由して國務大臣及び政府委員の出席を求めることができる。
第七十二條 委員会は、議長を経由して会計檢査院の長及び檢査官の出席説明を求めることができる。
第七十三條 議院の会議及び委員会に関する報告は、議員に配付すると同時に、これを國務大臣及び政府委員に送付する。
第八章 質問及び自由討議
第七十四條 各議院の議員が、内閣に質問しようとするときは、議長の承認を要する。
質問は、簡明な主意書を作り、これを議長に提出しなければならない。
議長の承認しなかつた質問について、その議員から異議の申立があつたときは、議長は、これを承認するかどうかを議院に諮らなければならない。
議長又は議院の承認しなかつた質問について、その議員から要求があつたときは、議長は、その主意書を會議録に掲載する。 第七十五條 議長又は議院の承認した質問については、議長がその主意書を内閣に轉送する。
内閣は、質問主意書を受け取つた日から七日以内に答弁をしなければならない。その期間内に答弁をしないときは、理由を明示することを要する。
第七十六條 質問が、緊急を要するときは、議院の議決により口頭で質問することができる。
第七十七條 質問に対する内閣の答弁に関し、議員の動議により、討論又は表決に付することができる。
第七十八條 各議院は、國政に関し議員に自由討議の機会を與えるため、少くとも、二週間に一回その会議を開くことを要する。
自由討議の問題につき、議員の動議により、議院の表決に付することができる。
自由討議における発言の時間は、特に議院の議決があつた場合を除いては、議長がこれを定める。
第九章 請願
第七十九條 各議院に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。
第八十條 請願は、各議院において委員会の審査を経た後これを議決する。
委員会において、議員の会議に付するを要しないと決定した請願は、これを会議に付さない。但し、議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
第八十一條 各議院において採択し た請願で、内閣において措置するを適当と認めたものは、これを内閣に送付する。
内閣は、前項の請願の処理の経過を毎年議院に報告しなければならない。
第八十二條 各議院は、各別に請願を受け互に干預しない。
第十章 両議院関係
第八十三條 國会の議決を要する議案を甲議院において可決し、又は修正したときは、これを乙議院に送付し、否決したときは、その旨を乙議院に通知する。
乙議院において甲議院の送付案に同意し、又はこれを否決したときは、その旨を甲議院に通知する。
乙議院において甲議院の送付案を修正したときは、これを甲議院に回付する。
甲議院において乙議院の回付案に同意し、又は同意しなかつたときは、その旨を乙議院に通知する。
第八十四條 法律案について、衆議院において参議院の回付案に同意しなかつたとき、又は参議院において衆議院の送付案を否決し及び衆議院の回付案に同意しなかつたときは、衆議院は、両院協議会を求めることができる。
第八十五條 予算及び衆議院先議の條約について、衆議院において参議院の回付案に同意しなかつたとき、又は参議院において衆議院の送付案を否決したときは、衆議院は、両院協議会を求めなければならない。
参議院先議の條約について、参議院において衆議院の回付案に同意しなかつたとき、又は衆議院において参議院の送付案を否決したときは、参議院は、両院協議会を求めなければならない。
第八十六條 各議院において、内閣総理大臣の指名を議決したときは、これを他の議院に通知する。
内閣総理大臣の指名について、両議院の議決が一致しないときは、参議院は、両院協議会を求めなければならない。
第八十七條 前三條に規定したものを除いて、國会の議決を要する事件について、後議の議院が先議の議院の議決に同意しないときは、先議の議院は、両院協議会を求めることができる。
第八十八條 一の議院から両院協議会を求められたときは、他の議院は、これを拒むことができない。
第八十九條 両院協議会は、各議院において選挙された各各十人の委員でこれを組織する。
第九十條 両院協議会の議長には、各議院の協議委員において夫々互選された議長が、毎会更代してこれに当る。その初会の議長は、くじでこれを定める。
第九十一條 両院協議会は、各議院の協議委員の各各三分の二以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
第九十二條 両院協議会においては、その意見が一致したときに限り成案を議決する。
両院協議会の議事は、前項の場合を除いては、出席協議委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第九十三條 両院協議会の成案は、両院協議会を求めた議院において先ずこれを議し、他の議院にこれを送付する。
成案については、更に修正することができない。
第九十四條 両院協議会において、成案を得なかつたときは、各議院の協議委員議長は、各各その旨を議院に報告しなければならない。
第九十五條 各議院の議長は、両院協議会に出席して意見を述べることができる。
第九十六條 両院協議会は、國務大臣及び政府委員の出席を要求することができる。
第九十七條 両院協議会は、傍聽を許さない。
第九十八條 この法律に定めるものの外、両院協議会に関する規程は、両議院の議決によりこれを定める。
第十一章 両院法規委員会
第九十九條 両院法規委員会は、両議院及び内閣に対し、新立法の提案並びに現行の法律及び政令に関して勧告し、且つ、國会関係法規を調査研究して、両議院に対し、その改正につき勧告する。
第百條 両院法規委員会は、衆議院から選挙された十人の委員及び参議院から選挙された五人の委員でこれを組織し、その委員長は、委員会でこれを互選する。
委員の任期は、議員としての任期による。
第百一條 両院法規委員会は、両議院において特に議決のない限り閉会中は、これを開くことができない。
第百二條 両院法規委員会に関するその他の規定は、両議院の議決によりこれを定める。
第十二章議院と國民及び官廳との関係
第百三條 各議院は、審査又は調査のため、議員を派遣することができる。
第百四條 各議院から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに應じなければならない。
第百五條 内閣及び各省は、その刊行物を國会図書館に送付しなければならない。
図書館運営委員会において必要と認めたものについては、内閣及び各省をしてこれを各議員に配付させることができる。
第百六條 各議院は、議案その他の審査又は國政に関する調査のため、証人の出頭を求めたときは、別に定めるところにより旅費及び日当を支給する。
第十三章辞職、退職、補欠及び資格爭訟
第百七條 各議院は、その議員の辞職を許可することができる。但し、閉会中は、議長においてこれを許可することができる。
第百八條 各議院の議員が、他の議院の議員となり、又は法律により議員たることのできない職務に任ぜられたときは、退職者となる。
第百九條 各議院の議員が、法律に定めた被選の資格を失つたときは、退職者となる。
第百十條 各議院の議員に欠員が生じたときは、その院の議長は、内務大臣に通知しなければならない。
第百十一條 各議院において、その議員の資格につき爭訟があるときは、委員会の審査を経た後これを議決する。
前項の爭訟は、その院の議員から文書でこれを議長に提起しなければならない。
第百十二條 資格爭訟を提起された議員は、二人以内の弁護人を依頼することができる。
前項の弁護人の中一人の費用は、國費でこれを支弁する。
第百十三條 議員は、その資格のないことが証明されるまで、議院において議員としての地位及び權能を失わない。但し、自己の資格爭訟に関する会議において弁明はできるが、その表決に加わることができない。
第十四章 紀律及び警察
第百十四條 國会の会期中各議院の紀律を保持するため、内部警察の權は、この法律及び各議院の定める規則に從い、議長が、これを行う。
参議院の緊急集会中は、前項の規定を準用する。
第百十五條 各議院において、必要とする警察官吏は、議長の要求により内閣がこれを派出し、議長の指揮を受ける。
第百十六條 会議中議員がこの法律又は議事規則に違いその他議場の秩序をみだし又は議院の品位を傷けるときは、議長は、これを警戒し、又は制止し、又は発言を取り消させる。命に從わないときは、議長は、当日の会議を終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。
第百十七條 議長は、議場を整理し難いときは、休憩を宣告し、又は散会することができる。
第百十八條 傍聽人が議場の妨害をするときは、議長は、これを退場させ、必要な場合は、これを警察官廳に引渡すことができる。
傍聽席が騷がしいときは、議長は、すべての傍聽人を退場させることができる。
第百十九條 各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。
第百二十條 議院の会議又は委員会において、侮辱を被つた議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。
第十五章 懲罰
第百二十一條 各議院において懲罰事犯があるときは、議長は、先ずこれを懲罰委員会に付し審査させ、議院の議を経てこれを宣告する。
委員会において懲罰事犯があるときは、委員長は、これを議長に報告し処分を求めなければならない。
議長は、二十人以上の賛成で懲罰の動議を提出することができる。この動議は、事犯があつた日から三日以内にこれを提出しなければならない。
第百二十二條 懲罰は、左の通りとする。
一 公開議場における戒告
二 公開議場における陳謝
三 一定期間の登院停止
四 除名
第百二十三條 両議院は、除名された議員で再び当選した者を拒むことができない。
第百二十四條 議員が正当な理由がなくて召集日から七日以内に召集に應じないため、又は正当な理由がなくて会議又は委員会に欠席したため、若しくは請暇の期限を過ぎたため、議長が、特に招状を発し、その招状を受け取つた日から七日以内に、なお、故なく出席しない者は、議長が、これを懲罰委員会に付する。
第十六章 彈劾裁判所
第百二十五條 裁判官の彈劾は、各議院においてその議員の中から選挙された同数の裁判員で組織する彈劾裁判所がこれを行う。
彈劾裁判所の裁判長は、裁判員がこれを互選する。
第百二十六條 裁判官の罷免の訴追は、衆議院においてその議員の中から選挙された訴追委員で組織する訴追委員会がこれを行う。
訴追委員会の委員長は、その委員がこれを互選する。
第百二十七條 彈劾裁判所の裁判員は、同時に訴追委員となることができない。
第百二十八條 各議院において裁判員を選挙する際及び衆議院において訴追委員を選挙する際、その予備員を選挙する。
第百二十九條 この法律に定めるものの外、彈劾裁判所及び訴追委員会に関する事項は、別に法律でこれを定める。
第十七章國会図書館及び議員会館
第百三十條 議員の調査研究に資するため、國会に國会図書館を置く。
國会図書館は、一般にこれを利用させることができる。
第百三十一條 議員の法制に関する立案に資するため、各議院に法制部を置く。
第百三十二條 議員の職務遂行の便に供するため、議員会館を設け事務室を提供し、及び各議員に一人の事務補助員を付する。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
議院法は、これを廃止する。
この法律施行の際現に在職する衆議院の議長及び副議長は、この法律により衆議院の議長及び副議長が選挙されるまで、その地位にあるものとする。
この法律施行の際現に在職する衆議院及び貴族院の書記官長は、この法律により衆議院及び参議院の事務総長が選挙されるまで、夫々事務総長としての地位にあるものとする。
衆議院成立当初における参議院の会議その他の手続及び内部の規律に関しては、参議院において規則を定めるまでは、衆議院規則の例による。
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005・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程變更に付政府の同意を得ました、質疑の通告がございます、佐々木惣一君
〔佐々木惣一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=5
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006・佐々木惣一
○佐々木惣一君 私は只今上程されました國會法案に關し、二點に付政府に質問致したいのであります、簡單でありまするけれども貴族院と致しましては、可なり重大なる考慮を拂はなければならぬ問題と存じまして、從つて是は法理上の説明と云ふ問題ではないのでありまするから、吉田總理大臣又は其の代理の方に御出席を願ひたいと思つたのでありまするけれども御出席がありませぬのでして、丁度植原國務大臣がそれに代ると云ふやうな御話でありますから勿論それでも結構であります、第一に政府は何故に政府自身で國會法を立案し提出することを爲さらないのでありまするか、國會法の制定されると云ふことは、言ふ迄もなく、日本國憲法の立案提出の際に豫想されて居た所であります、政府は右の日本國憲法が適當に實施されるやう努力するの職責を持つて居ることは言ふ迄もありませぬ、從つて日本國憲法の實施する爲に必要であり、且亦日本國憲法の豫想して居りまする所の國會法の成立すると云ふことに付ても努力するべきものであることは當然のことであります、其の努力と致しましては、今日はまだ現行の法でありまする所の帝國憲法に依つて、政府に與へられて居ります所の職權に依りまして、政府自身で立案して提出すると云ふことが最も第一歩であらうと思ふのであります、勿論貴族院又は衆議院の孰れか一院に於きまして、之を立案し提出すると云ふことは差支ありませぬ、差支ないのみならず、議員の職責を盡すに熱心なる態度と致しましては固より適當のことであります、今囘衆議院が之を爲されたことに付きましては、私は敬意を拂ふものであります、でありますから、私の質問は衆議院の態度其のものには少しも關係しないのである、唯政府自身の態度に關係して居ることであります、誤解のないやうに御願ひ致します、政府自身が立案提出しないと云ふ其の理由を政府に御尋ねするのでありまして、衆議院が提出せられたと云ふ理由を茲で御尋ねするのでは固よりありませぬ、私の知つて居ります範圍に於きましては、今囘上程せられましたる國會法の如く、大きな法律を單に其の中の或部分を改正すると云ふやうなことではなく、全部新たに立案して之を提出すると云ふやうなことは、從來に於きましては、政府が自分で之を爲すと云ふことが通例であつたやうに存ずるのであります、今囘は政府が自分で之を爲さないと云ふは、何等か特別な理由がなくてはならないと思ふのでありますから、私は之を御尋ねするのであります、是が質問の第一點であります、第二は國會法を國家的見地から見まして、此の臨時議會の期間内、而も二三日の間に閉會をしなければならぬと云ふやうな、さう云ふ状態に於て成立せしめなくてはならぬと云ふ必要があるのでありますか、此の點は固より政府御自身の提出ではないのでありまするけれども、併しながら此の間に處して政府の職責として努力すべき態度として御尋するのでありまするが、其の點に付きましては政府は如何なる御考を持つて御出でになるのでありまするか、御尋ね致したいと思ふのであります、此の點は我が貴族院の審議の態度、從つて我が貴族院の職責と云ふやうなことに付て、重大なる關係のあることと存ずるのであります、仍て茲に御尋ねするやうな譯であります、で右申しましたやうな意味に於て、特に急ぐと云ふ必要がないのでありまするならば、本案の審議も、他の同樣に重大なる大法律案の審議の場合と同樣の、愼重さを以て貴族院は之に當らなければなりませぬ、是と異り、特に先刻申しましたやうな意味での急ぐ必要がありと云ふ風にあるのでありまするならば、貴族院が此の審議を致しまする場合に採りまする所の愼重さと云ふ點に於きましても、他の大法律案の場合に於けると同樣の程度でなくても已むを得ないと思ふのであります、でありまするから右の必要の有無と云ふことは、今後是から我が貴族院が、此の法案に對して審議を爲す場合の態度如何に餘程の重大なる影響を持つものと存ずるのであります、是が私が特に此の點を御尋ねする次第であります、私の見る所に依りますれば、國會法は今將に會期の終らむとして居りまする此の二三日の臨時議會の期間の中に成立せしめなくてはならぬと云ふ程、急ぐの必要はないと考へるのであります、軈て來るべき通常議會に依つて成立せしめても、差支ないと存ずるのでありまするが、此の點に關して政府の所見は如何でありませうか、且今囘提出せられました國會法案は、形の上では現行の議院法に相當するものでありまするけれども、其の實に於きましては議院法と本質を異にするものであります、それは當然のことであります、帝國憲法の下では議會は其の行動は大體に於て受動的の、受身のものであります、勿論法律案を議會の方から提出することは出來まするけれども、併しながら大體に於きましては、政府の提出するものに對して可否を決すると云ふのは、此の議會の方の、從つて貴族院の態度と考へられて居るのであります、然るに日本國憲法に於きまする所の國會は、それとは全然違つて居りまして、起動的立場にあります、自ら法律を立案提出するのであります、此の憲法上の立場から見ました所の國會との職責の本質上の差異が非常に重大なものでありまするから、從つて此の職責を盡す手續に付きましても、本質的の差異があるのであります、でありまするから、國會法の立案の趣旨と云ふものは、議院法の立案の趣旨とは本質的に異るべきものであります、それ故に從來久しい間議院法を適用して行動し來り、議院法の趣旨を能く明かにして居りまする所の我が貴族院に於きましても、國會法に對しましては、本質的に異る新たなる趣旨のものとして此の案の審議に臨まなくてはならないと思ふのであります、且提出されました國會法案を見ますると云ふと、附則以外には百三十箇の條項を含んで居るのであります、現行議院法の九十九箇條に比して遙かに多いのであります、其の條項の性質を見ましても、兩議院關係の章や、議院と國民及び官廳との關係の章の如きは、現行議院法の中の兩議院關係の章、議院と人民及び官廳等の關係の章と似て居りますけれども、併しながら其の細密の點に至りましては根本的に異つて居ります、彼の兩院法規委員會と云ふやうなことは今囘定つて居りまするが、此の兩院法規委員會の章の如き、又更に彈劾裁判所の如きに至りましては、現行の議院法とは全く連絡のない、眞に新たなものであります、而も此の國會法案の中では頗る重大な地位を占めて居る條規であります、是等のことは愼重に審議すべきものであります、右の如く數量の上から申しましても、亦性質の上から申しましても重大なる國會法を此の兩三日の間に審議し終ると云ふことは、我が貴族院に取りましても非常に困難なことと思ふのであります、で衆議院に於きまして斯かる事情の下に國會法案を立案提出せられ、我が貴族院に送付せられましたことは、惟ふに、出來るならば今審議し終り、議決することを希望せられるの意思であらうとは十分察するのであります、私共は衆議院の意思を尊重すべきものであると云ふことは能く承知致して居るのであります、而も國家が我が貴族院に愼重に審議を求めて居る、殊に重大な法案の如きに付てはさうであると云ふ、さう云ふ國家が我々に職責を課して居ると云ふ、其の國家其のものの意思に至りましては、衆議院の意思に比して一層尊重しなくてはならないと思ふのであります、即ち貴族院は此の衆議院送付の案に對しましても、國家的見地よりして極めて愼重に審議するの職責を捨ててはなりませぬ、今囘是から此の職責を行ふに際しましては、此の二三日の間に審議し終ることが出來なくなるやうなことが萬一生じましても、それは斷じて貴族院の責任ではないと存ずるのであります、それとも此の臨時議會、而も此の二三日間で終らむとする此の期間の間に國會法の成立を見ることが國家的見地よりして、どうしても避くべからざる必要であると云ふならば、それは勿論貴族院は、即ち審議の愼重さに於きまして、從來の如き十分なる程度に至りませぬでも已むを得ないことでありまして、議了し盡さなければならぬのであります、斯う云ふ見地から致しまして、私は即ち此の國會法を、此の二三日に迫れる所の臨時議會の期間の間に成立せしむる必要があるのであるかどうかと云ふことに付て政府の御所見を御尋ねしたいと存ずるのであります(拍手)
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=6
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007・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 佐々木博士に御答へ致します、御説の如く、只今上程されて居る所の國會法は、衆議院の提出に係るものであります、博士の第一の御質問は、此の法案は憲法附屬の法案とも申すべき極めて重大なる法案であるのに、何故政府自ら之を立案し、提案せずして、衆議院の提案に俟つたのであるかと云ふ御質問でありました、御承知の如く、新憲法に於きましては、國權の最高機關は衆議院でございます、從つて從來の、即ち現行憲法の下に於て、貴衆兩院が、國政を審議するのと根本的に差違のあることを、博士能く御承知のことと私思うて居ります、左樣な立場から致しまして、憲法附屬の重要なる法案であるから、政府が之を提案すべきであると云ふ御議論も亦御尤もであります、政府も其のことを十分承知致しまして、法制調査會の審議を俟ちまして、政府自ら立案して之を提案し、貴衆兩院の御審議を俟たうと計畫を致して居つたのであります、偶偶衆議院の議長から、國會法なるものは何としても將來の衆議院と參議院との運營に拘はることであるのだから、衆議院が自ら之を立案し、提案することが、新憲法の下に於て強い意義のあることではなからうかと云ふ申入れがあつたのであります、是も誠に御尤も千萬のことと思ひまして、然らば國會法として、其の運營は政府自ら之に當ると申すよりは、將來新しい憲法の下に於きましては、衆議院と參議院とが專ら此の運營に當るものでありますが故に、新しい憲法の精神に鑑みまして、政府自ら之を試みるよりは、衆議院の御希望に託した方が、もつとより多く新憲法の精神に副ひ得るものではなからうかと考へまして、十分考慮の末、之を衆議院の提案に御委せすることに致したのであります、其の點を御了承を願ひたいのであります、第二の御質問であります、此の臨時議會は會期も迫つて居るのであるのに、あと數日の期間すらないのに、此の法案を取急いで審議する必要があるかとの御質問のやうに承知致します、御承知の如く、既に皆樣方から御協贊を得ました參議院法は、衆議院の審議に係つて居ります、是も必ずや衆議院に於て議決されることと思ひます、新憲法の效力を發生するのは私が申す迄もなく五月三日であります、出來得ることでありまするならば、其の以前に於て參議院の成立を見ることを政府としては熱望致します、新憲法の下に於きまして、參議院がなくとも、衆議院だけで國政を審議し得る規定もございますが、眞に國會の運用を完からしめようと致しますれば、新憲法の效力を發生致します時に於て、衆議院と參議院の成立を見まして、完全なる國會として、第一歩を踏み出すことを政府は希望致して居るのであります、左樣に致しまして、衆議院と參議院が新憲法の下に、審議を進めるとなりますと云ふと、其の精神に鑑みまして佐々木博士の御指摘になりました如く、現行の議院法に於ては、全きを期することは出來ないのであります、それ故に、其の以前に於て衆議院と參議院とが合體致しまして、國會と云ふ名目の下に國政を審議する場合に、其の國會法が成立致して居ることは、誠に望ましいことであります、左樣な意味に於きまして、衆議院の諸君も此の臨時議會を承知致しながら、非常な御努力になりまして、其の審議を終り、之を貴族院に廻付されたのであります、左樣な意味でありますからして、一日も早く此の國會法が成立して居りますることは、新國會に對して望ましいことであり、左樣に努力致すことは、政府としても致さなければならないことであります、博士の仰せの如く、憲法附屬の法案として、極めて重要な法律ではありまするけれども、議院法に於て議會を如何に運行するかと云ふことは、十分に多年の間御經驗を持ち、御知識を持つて居る貴族院の諸君であります、根本の運用に於ては違ひまするけれども、議事を進めて行く所の運用に付きましては、經驗あるものから致しますれば、百條以上に亙る大きな法典でありまするけれども、問題になる中心點は極めて僅かのものだと思ひます、十分議事の進行等に御經驗のある皆樣方が御覽下さつたらば、法典其のものは非常に大きなものでありまするけれども、既に皆樣方新憲法を愼重審議御研究下さつて、新憲法の精神も十分に御了解であり、議院法のことも十分御辨へであります皆樣方が、有らゆる努力を御拂ひ下さいましたならば、此の案を二日三日で審議すること、敢て難事でないと私は存じて居るのであります、左樣な意味から致して、此の法案を努めて迅速に皆樣方の御精勵に依りまして、愼重審議御決定あらむことを、政府としては皆樣方に御願ひ致したいのであります、尚御質問ではありませぬが、審議を進行せしむる爲に、一言附加へて皆樣方の御了解を得ますることを御許しを願ひたいのであります、此の法案は衆議院の提出の法案であります、多年の間議會に於て一つの院の發案に依つて、其の法案が一つの議院を通過して、他の議院に囘付されました時に、其の他の議院に於ては、發案者の説明を聽くべき機會が、現行法に於てはないのであります、我が國の貴衆兩院の多年の經驗に照しまして、兩院の議事を滑かに運行せしむるのみならず、一院の發案權を尊重して、其の案の成立を見る上に於て、頗る不便不利を感じて居つたのであります、新憲法に於ては、此の點も許されて居りますが、現行憲法に於ては、此の規定を越ゆることが出來ないので、斯樣な大法典の審議に於て、頗る不便を感ずるのでありますけれども、此の不便を補ふ爲に、皆樣方委員會を御開きになる前に、衆議院の發案者、或は議長、書記官長を御呼び下さいまして、委員會を開く前に、委員の方が衆議院の此の法案を立案した精神、各條に亙る所の衆議院の發案者の意向、衆議院全體の意見等を御聽取下さいまして、正式に委員會を御開き下さる所の御手配を得られましたならば、此の審議を進行せしむる上に於ても、頗る便宜だと思ひまして、附加へて御參考迄に此の點を申上げて置きます
〔佐々木惣一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=7
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008・佐々木惣一
○佐々木惣一君 只今植原國務大臣から御答辯を得まして誠に政府の御考は明瞭になりましたが、私が第一點として御尋ね致しました、政府が此の案を立案提出せられないやうになりました事情は、はつきりと致しました、結局政府も本來ならば、自ら立案提出せられることが出來れば宜いと思つて、さう云ふ御準備であつたことは明かになりました、唯衆議院の方の申出で、斯う云ふ風になさつたと云ふことが、はつきり致しましたが、併しながらそれにも拘らず、貴族院の方では獨自に愼重の審議を爲すと云ふことを妨ぐるものであると云ふ結論にはどうもならぬのでありまして、政府は衆議院の方の申出に依つて、本來自ら立案提案されようと思つたことを、止めたと云ふことはそれで宜いと致しましても、併しながらそれは貴族院の審議の態度には何等關係のないことであると云ふことを、御了解願ひたいのであります、それから第二點の國會法が新憲法の施行せられる前に、或は少くともそれと同時に出來ることが宜いと云ふ御意見、是は私共も同感であります、併し私の質問申しましたのは、さう云ふことを言つたのぢやない、次に來るべき通常議會と云ふものを待たずして、此の臨時議會に提案せられ、成立せしむると云ふことの必要が何處にあるか、と云ふことを御尋ねしたのでありますからして、此の新憲法施行前に必要があると思つたと云ふやうなことは、それは私共も全く同じことですけれども、私の質問に對する御答としては、全然喰違つて居ると思つて居るのであります、此の點を明かに申上げて置きます、要するに以上の二點は結局一つのことに繋がるのでありまして、我が貴族院と致しましては、矢張り從來の大法典を審議した時と何等變る所なく、愼重の態度に於て此の案を審議すべきものであると私は思ふのでありまするし、貴族院の多數の諸君もさうであらうと思ひまするが、其の點に付きましては政府も、只今の御答から察しまして別に御異議がない、異議あるべき筈がないと了解して、それで私は此の質問を終ります
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=8
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009・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 佐々木博士に御答へ致しますが、御質問と喰違つて居らぬと思ひます、何故かなければ、參議院法が通過致しますれば、五月三日前に參議院議員の選擧が行はれると思ひます、其の參議院の方は、勿論現在の貴族院の方も多くありませうし、又新しい方もあらうと思ひます、此の國會法は申す迄もなく、憲法が效力を發生した衆議院と參議院との運營に係る重大なる法案であります、參議院の選擧は恐らく次の通常議會が終らない間に行はれるやうなことになりは致しますまいか、左樣な状態でありまするならば、此の法案が一日も早く成立致して居ることが、政治上可なり強い意味を持つことでもあり、又參議院の新たに出る方に對しても非常な意義のあることではありますまいか、左樣な意味に於て非常に取急ぐのでありますけれども、皆樣方の愼重審議は、何と致しましても致して載かなければならないのであります、それには議院法に付ても十分御經驗のある達識堪能の方でありますから、さう長日月を掛けなんでも十分に審議致して載けることと皆樣方を信頼致して、政府は居る譯でありまするから、其の點どうか宜しく御承知を願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=9
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010・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました國會法案の特別委員は、其の數を二十七名とし、其の委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=10
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011・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=11
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012・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=12
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013・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔根本書記官朗讀〕
國会法案特別委員
侯爵 廣幡忠隆君 侯爵 池田宣政君
伯爵 黒田清君 子爵 大河内輝耕君
子爵 秋元春朝君 子爵 瀧脇宏光君
子爵 松平銑之助君 子爵 京極高鋭君
吉田久君 長世吉君
男爵 伊藤文吉君 男爵 松平外與麿君
男爵 中御門經民君 男爵 多久龍三郎君
男爵 山名義鶴君 中村藤兵衞君
高木八尺君 大木操君
木下謙次郎君 井川忠雄君
木内四郎君 野田俊作君
山隈康君 河西豊太郎君
馬場恒吾君 片倉兼太郎君
渡邊甚吉君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=13
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014・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第一、衆議院議員選挙法第十二條の特例等に関する法律案、政府提出、衆議院送付、第二讀會、大村内務大臣
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衆議院議員選拳法第十二條の特例等に関する法律案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する。
昭和二十一年十二月二十一日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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衆議院議員選挙法第十二條の特例等に関する法律案
第一條 昭和二十一年法律第三十号(衆議院議員選挙人名簿等の臨時特例に関する件)第一條の規定による衆議院議員選挙人名簿を用いて選挙を行う場合において、衆議院議員選挙人名簿に登録されていない者で衆議院議員の選挙権を有するものがあるときは、市区町村会議員選挙管理委員会その他の名簿調製機関は、本人の申請により、臨時に、これらの者を登録する衆議院議員選挙人名簿を調製しなければならない。
海外引揚者は、市区町村(これに準ずるものを含む。以下これに同じ。)の区域内に住居を有すれば、引き続き六箇月以上その市区町村の区域内に住居を有しなくても、前項の選挙人名簿にこれを登録することができる。
第一項の選挙人名簿は、基本の選挙人名簿が効力を有する間、その効力を有する。
第一項ノ規定は、東京都制第九十三條ノ十三第一項、道府縣制第七十四條ノ十三第一項、市制第七十三條ノ九第一項、町村制第六十一條ノ八第一項及び第百三十六條並びに東京都制施行令第七十八條ノ十第一項の規定による選挙については、これを適用しない。
前三項に定めるものを除く外、第一項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第二條 前條第二項に掲げる者を登録した衆議院議員選挙人名簿を用いて地方公共團体の長又はその議会の議員の選挙を行う場合においては、東京都制第十六條ノ十一第一項、市制第二十條ノ二第一項及び町村制第十七條ノ二第一項の規定の適用については、その選挙人名簿中調製期日において地方公共團体の議会の議員の選挙権を有する者に関する部分(これを衆議院議員選挙人名簿中関係部分という。)は、これを衆議院議員選挙人名簿とみなす。
前項の衆議院議員選挙人名簿中関係部分に関し必要な規定は、命令でこれを定める。
第三條 昭和二十一年法律第三十号第三條の規定による補充選挙人名簿を用いて選挙を行う場合において、衆議院議員選挙人名簿中関係部分又は補充選挙人名簿に登録されていない者で地方公共團体の議会の議員の選挙権を有するものがあるときは、市区町村会議員選挙管理委員会その他の名簿調製機関は、本人の申請により、臨時に、これらの者を登録する補充選挙人名簿を調製しなければならない。
第一條第三項乃至第五項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
昭和十三年法律第八十四号は、これを廢止する。但し、同法の規定による衆議院議員選挙人名簿又は補充選挙人名簿で、この法律施行の際現に効力を有するもの及び調製中のもの並びに地方公共團体の議会の議員で、召集中のためその職を失いその殘任期間中に召集を解除されたものについては、同法は、なお、その効力を有する。
昭和二十年法律第四十二号(衆議院議員選挙法の一部を改正する法律)の一部を次のように改正する。
附則第二項を削る。
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〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=14
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015・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今上程に相成りました衆議院議員選擧法第十二條の特例に關する法律案に付きまして、其の提案の理由竝に法案中主要な事項の概略を御説明申上げたいと存じます、此の法律案の趣旨と致しまする所は、今後凡そ一年の間衆議院議員を初め、地方公共團體の長又は其の議會の議員の選擧を行ふ時は、選擧の都度臨時に選擧人名簿を調製致しまして、其の選擧の直前の一定の線を抑へまして、選擧權を有する者を漏れなく名簿に登録致しまして、國民參政の實を全う致しますると共に、海外引揚者に付きましては、衆議院議員の選擧人名簿に登録せられる爲に必要な所の六箇月の居住の期間を必要としないことと致しまして、特別の救濟的措置を更に繼續して講じて行かうとするものであります、次に此の法律案に於て規定致して居りまする主要な事柄に付きまして説明致します、第一は臨時名簿の調製でございますが、選擧人名簿の調製は、現在所謂定時名簿主義を採用致して居りまして、毎年一囘調製することになつて居るのであります、此の定時名簿主義は名簿の正確を期する上に於きましては、確かに長所を持つて居るのでありまするが、他面其の名簿が一年間据置かれます關係から致しまして、名簿調製後に新に選擧權を行使することが出來るやうになりました者や、又所謂脱漏者は次の年の名簿に登録せられる迄の間は、參政權を行使することが出來ないことに相成るのであります、故に此の定時名簿制度の持つ缺陷を是正しまして、選擧權行使の機會を成るべく廣範圍に與へる爲には、カード式の永久名簿制度を設けてはどうかと云ふ點に付きまして目下考案中でございますが、近く府縣知事、市町村長、其の他公共團體の長竝に府縣會議員、市區町村會議員、其の他の地方公共團體の議會の議員の選擧が行はれることに相成つて居りますので、此の際の暫定措置と致しまして、去る十月十日現在の名簿調製後に新に二十歳に達した者、或は居住期間の要件を充すに至つた者、又は所謂脱漏者等を救濟する爲、本人の申告に依りまして臨時に是等の者を登録する衆議院議員選擧人名簿、又は補充選擧人名簿を調製することと致したのであります、尤も此の措置は、地方公共團體の長の、所謂決選投票の際には、名簿調製の餘裕がございませぬので、之を適用しないことと致して居るのであります、第二に海外引揚者に對する居住期間の要件の撤廢に付てであります、所謂海外引揚者に付きましては、特に其の住居も安定し難い状況にある人が多いのでございまして、昨年の衆議院議員の選擧權に付きまして、一般的に六箇月の居住期間を撤廢する爲に、昭和二十年勅令第五百三十七號を制定されたのでありますが、是と同一の特別措置を右の衆議院議員の臨時選擧人名簿を調製する際に、引揚者に限つて更に繼續して之を認めることとしたのであります、尤も此の特例的措置は、衆議院議員の選擧權に限つて之を認めることと致し、地方公共團體の議員の選擧權に付きましては、地方公共團體が地縁團體である特質を持つて居ります點に鑑みまして、之を認めないことと致して居るのであります、第三に、居住期間の六箇月に達しない海外引揚者を登録した衆議院議員選擧人名簿は、其の儘六箇月の居住期間を必要とする所の地方公共團體の長、又は其の議會の議員の選擧には之を用ふることが出來ませぬので、其の名簿の中、地方議會の議員の選擧權を持つて居る者に關する部分のみを、衆議院議員選擧人名簿と看做しまして、それ等の選擧に用ふることと致して居るのであります、第四に、現役又は召集中の者に對する選擧權被選擧權の缺格條項の整理に付てであります、現在尚兵役法上現役又は召集中の取扱を受けて居る者があるのでありますが、軍の解消致しました今日、是等の者に選擧權被選擧權を認めない理由がないばかりでなく、先般の地方制度の改正に依りまして、地方公共團體の議員の選擧權及び被選擧權は、既に認められて居りますので、附則に於きまして特に規定を設け、衆議院議員の選擧權及び被選擧權も此の際之を認めることと致し、臨時名簿調製の際、是等の者を登録することが出來るやうに致したのであります、最後に、昭和十三年法律第八十四號は、現役又は召集中の軍人等が歸還した場合の、臨時名簿の調製及び議員の應召や歸還に伴ふ臨時措置を規定致しました戰時立法でございますが、只今上程になりました法律案の成立するに伴ひまして、此の臨時立法の必要がなくなりますので、之を廢止することと致したのであります、唯同法に從ひまして調製致しました名簿及び地方議會の議員で應召中の者が復歸した場合に於ける特例措置に付てだけ猶其の效力を存續せしめることと致して居るのであります、何卒御審議の上御協贊あらむことを切望致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=15
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016・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程せられました衆議院議員選擧法第十二條の特例等に關する法律案は國會法案の特別委員に併託せられむことの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=16
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017・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=17
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018・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=18
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019・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=19
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020・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第二、開拓者資金融通法案、日程第三、開拓者資金融通特別会計法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、是等の兩案を一括して議題と爲すことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=20
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021・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、和田農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=21
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022・会議録情報3
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開拓者資金融通法案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する。
昭和二十一年十二月二十一日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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開拓者資金融通法案
開拓者資金融通法
第一條 政府は、開拓地において耕作の業務を営む者その他命令で定める耕作の業務を営む者(以下開拓者という。)又はその組織する法人に対し、毎年度予算の範囲内において、左の資金を貸し付けることができる。
一 農具、肥料、家畜その他開拓者の営む耕作の業務に必要な資材又は施設を取得し、又は設置するのに必要な資金
二 開拓者の住宅を取得し、又は建設するのに必要な資金
第二條 前條の規定による貸付金(以下貸付金という。)の償還は、償還期間二十年(据置期間を含む。)以内、年利三分六厘五毛の均等年賦償還の方法によるものとする。但し、左の場合には、政府は、何時でも貸付金の全部又は一部につき一時償還を請求することができる。
一 貸付金の償還をすべき者の申出があつたとき。
二 貸付金の償還をすべき者が年賦金の支拂を怠つたとき。
三 前條の規定による貸付を受けた者(その者が法人であるときは、その法人を組織する者を含む。)が貸付金をその貸付の目的以外の目的に供したとき。
四 前條の規定による貸付を受けた者(その者が法人であるときは、その法人を組織する者)がその営む耕作の業務を怠り、又は廃止したとき。
第三條 前條の規定による年賦金の支拂時期における米穀の價格が第一條の規定による貸付をした時における米穀の價格に比較して下落し、又は高騰した年においては、政府は、命令の定めるところにより、その年に支拂うべき年賦金額のうち元金に相当する部分を米穀の價格の変動に應ずるように減額し、又は増額する。
前項の規定による年賦金の減額又は増額は、貸付金の償還の完了するまでの間におけるその後の年の年賦金の額に変更を及ぼすことはない。但し、年賦金の一部の支拂によつて貸付金の償還の完了する年において、その年の年賦金の額に変更のあることを妨げない。
第一項の規定による年賦金の減額又は減額及び増額があつた場合において、償還期間中の各年の年賦金のうち元金に相当する部分の合計額が貸付金の額に達しなくなつたときは、その不足額に相当する貸付金の償還の義務は、これを免除する。
第一項の規定による年賦金の増額があつたときは、政府は、命令の定めるところにより、その増額分に対する利子に相当する金額を年賦金額から控除しなければならない。
第一項の米穀の價格は、食糧管理法第三條の規定による買入の價格による。
第四條 貸付金の一部につき第二條の規定による一時償還があつた場合には、前條第二項及び第四項の規定を準用する。
第五條 災害その他これに準ずべき事由によつて開拓者の耕作の業務による收益が著しく減少したときは、政府は、年賦金の支拂を猶予することができる。
第六條 政府は、第二條第一項第二号乃至第四号の規定による一時償還の請求、第三條第一項の規定による年賦金の減額若しくは増額又は前條の規定による支拂の猶予をするには開拓委員会の意見を聽かなければならない。
開拓委員会に関する規程は勅令でこれを定める。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
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開拓者資金融通特別会計法案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十一年十二月二十一日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
…………………………………
開拓者資金融通特別会計法案
開拓者資金融通特別会計法
第一條 開拓者資金融通法による貸付に関する歳入歳出は、これを一般会計と区分して特別会計を設置する。
第二條 この会計においては、貸付金の償還金及び利子、一般会計からの繰入金、公債募集金、借入金並びに附属雜收入を以てその歳入とし、貸付金、公債及び借入金の償還金及び利子、一時借入金の利子、公債の発行及び償還に関する諸費並びに附属諸費を以てその歳出とする。
第三條 この会計における貸付金を支弁するため、政府は、必要な額を限度としてこの会計の負担で、公債を發行し、又は借入金をすることができる。
第四條 貸付金の償還金は、公債及び借入金の償還金の財源にのみこれを充てるものとする。
第五條 この会計の負担に属する公債及び借入金の償還金及び利子、一時借入金の利子並びに公債の発行及び償還に関する諸費の支出に必要な金額は、これを毎年度國債整理基金特別会計に繰り入れるものとする。
第六條 この会計において支拂上現金に余裕があるときは、これを大藏省預金部に預け入れることができる。
第七條 この会計において支拂上現金に不足があるときは、この会計の負担で、大藏省預金部若しくは日本銀行から一時借入金をし、又は國庫余裕金を繰替使用することができる。
前項の規定による一時借入金又は繰替金は、当該年度の歳入を以てこれを償還しなければならない。
前項の場合において、当該年度の歳入減少のため一時借入金又は繰替金を償還することができないときは、政府は、その償還できない金額を限り、この会計の負担で大藏省預金部又は日本銀行から借入金をすることができる。
前項の規定による借入金は、一年以内にこれを償還しなければならない。
第八條 この会計において決算上剩余を生じたときは、これを翌年度の歳入に繰り入れるものとする。
前項の規定による繰入金は、公債及び借入金の償還金の財源にのみこれを充てるものとする。
この会計において、貸付金の償還金及び第一項の規定による繰入金を以て公債及び借入金の償還金を支弁するのに不足する金額と、貸付金の利子及び附属雜收入を以て公債及び借入金の利子、一時借入金の利子、公債の発行及び償還に関する諸費並びに附属諸費を支弁するのに不足する金額との合計額に相当する金額は、予算の定める所により、一般会計からこの会計にこれを繰り入れるものとする。
第九條 政府は、毎年この会計の歳入歳出予算を調製して、歳入歳出の総予算とともにこれを帝國議会に提出しなければならない。
前項の歳入歳出予算には、当該年度及び前年度における貸付計画表並びに前前年度末現在における第三條の公債又は借入金の発行額又は借入額及び償還額表を添附するものとする。
第十條 この会計の收入支出に関する規程は、勅令でこれを定める。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
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〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=22
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023・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 只今上程されました開拓者資金融通法案に付きまして、其の提案の理由の概要を御説明申上げます、御承知のやうに、政府は曩に緊急開拓計畫を樹立致しまして、それ以來鋭意此の促進に努めて居る次第でありまして、過去一年間に開發されました耕地は田が九千町歩、畑が十五萬町歩に及んで居りまして、又是等の新開拓地に入植しました者は純入植者だけで約八萬三千戸に達して居ります、併し是等の入植者は概して資力に乏しく、殊に最近に於きまする物價暴騰に依り住宅の建設は勿論のこと、其の營農に必要な農具でありますとか、家畜でありますとか、種苗、肥料などの入手にも非常に困難を來して居る實情でございます、勿論入植者の住宅建設とか、營農指導に付きましては、從來とても若干の補助施設を講じて居るのでございまするが、是だけでは到底間に合はないのであります、更に之を金融に依つて補はうと致しましても、只今の處、普通の金融機關を利用することは事實上殆ど出來ない状態にありますので、入植者に對しましてはどうしても特別の金融對策を積極的に講ずる必要がある次第でございます、そこで政府と致しましては、政府の資金を以ちまして自ら開拓者又は其の組織しまする法人に對しまして長期にして低利の金融を行ふ方策を執ることと致しまして、此の法律に依つて資金の貸付及び償還に關する條件其の他の事項を規定致しますると共に、別に新しく特別會計を設けまして運營することに致した次第でございます、此の法案の要點は第一には、政府の貸付けます所の資金の用途は農具でありますとか、或は種苗、肥料、家畜、さう云つたやうなものを購入するのに必要な資金、所謂營農資金でありますとか、それからもう一つには開拓者が住宅を建設したり、取得するのに必要な所謂住宅資金、此の二つを對象に致して居るのでありまして、生活資金は含んで居りませぬ、第二點は、此の貸付の内容でございますが、貸付金は償還期間は二十年と致しまして、内五年は無利子で据置きます、年利は三分六厘五毛の均等年賦償還の方法に依ることに致して居るのであります、第三點は、入植者の營農經濟の状態と償還との調整でありますが、現在の經濟界の状況が將來相當變動のあるべきことは當然豫想せられるのでありまして、本法に依りまする貸付金の償還に當りましては、物價の目安としまして比較的把握し易い米價を基準に致しまして、此の變動に應じ、毎年の年賦金額の中、元金に相當しまする部分の額を變へると云ふ仕組に致しまして、將來物價の下落が續きました時には、年賦金の減額しました部分の償還を免除すると云ふ制度を採つて居るのであります、以上が大體此の法律案の趣旨と内容でございますが、何卒御審議の上御協贊あらむことを切望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=23
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024・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 上塚大藏政務次官
〔政府委員上塚司君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=24
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025・上塚司
○政府委員(上塚司君) 只今議題となりました開拓者資金融通特別會計法案に付きまして提案の理由を御説明申上げます、今囘別途提出致しました開拓者資金融通法案に關する經理上の措置と致しまして、開拓者資金融通の爲の政府歳入歳出は之を一般會計と區分して特別會計を設置致しまして、其の經理を明確に致しますことが適當と存ぜられるのでありますが、之が爲には法律の制定を必要と致します關係上、此の法律案を提出致しました次第であります、何卒御審議の上速かに御協贊を與へられむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=25
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026・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程せられました開拓者資金融通法案外一件の特別委員は其の數を十九名とし、委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=26
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027・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=27
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028・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=28
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029・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔根本書記官朗讀〕
開拓者資金融通法案外一件特別委員
侯爵 小村捷治君 侯爵 四條隆徳君
伯爵 久松定武君 子爵 青木重夫君
子爵 土屋尹直君 子爵 井上勝英君
寺尾博君 男爵 平山洋三郎君
男爵 三須精一君 男爵 岩村一木君
赤木正雄君 我妻榮君
田島正雄君 松尾國松君
合田健吉君 菅澤重雄君
名古屋三吉君 伊藤豐次君
上野喜左衞門君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=29
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030・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 明日は午前十時より開會致します、議事日程は決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午前十一時九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009103242X00919461222&spkNum=30
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