1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
皇室典範案(政府提出)
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昭和二十一年十二月七日(土曜日)午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 樋貝詮三君
理事 北浦圭太郎君 理事 小島徹三君
理事 武藤常介君 理事 吉田安君
理事 菊地養之輔君 理事 黒田壽男君
理事 酒井俊雄君
井上卓一君 稻葉道意君
田中善内君 竹内茂代君
殿田孝次君 三ツ林幸三君
藥師神岩太郎君 池村平太郎君
馬越晃君 菅又薫君
津島文治君 長尾達生君
星一君 井伊誠一君
及川規君 新妻イト君
松本七郎君 森三樹二君
今井耕君 川野芳滿君
越原はる君 井上赳君
久芳庄二郎君 野本品吉君
大石ヨシエ君
同日委員加藤シヅエ君が辭任し、その補闕として新妻イト君を議長において選定した
出席國務大臣
内閣總理大臣兼外務大臣 吉田茂君
司法大臣 木村篤太郎君
國務大臣 金森徳次郎君
出席政府委員
法制局次長 佐藤達夫君
法制局事務官 井手成三君
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本日の會議に付した議案
皇室典範案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00219461207&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○樋貝委員長 それではこれから會議を開きます、この際事務上のことをちよつと申し上げておきますが、この委員會の會議は、本日以後は毎週月水金に、午前十時から會議を開きたいと思います、なお來週の火曜日も午前この會議を開きたいと思つております、そうして最初の日に主として總論をやるといふことにいたしたいといふことを、昨日理事會で打合せをいたしましたような次第であります、それから質疑をなす御希望者は、各理事の方にお申し出を願いたい、なは資料要求をいたすについても、同樣理事の方を通じてお申し出を願いたいと思つております
さて去る十二月五日本委員に付託せられました皇室典範、これを議題に供します、まづ政府の説明を求めます——内閣總理大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00219461207&spkNum=1
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002・吉田茂
○吉田國務大臣 今朝皇室典範その他の問題で、宮内省で打合せをすることが急に起つたものでありますから、遲れましたことを御諒承を願います
本委員會に付託せられました皇室典範案の提案理由は本會議において、一應既に御説明をなして置きましたが、本案は日本國憲法の規定に基づいて、皇位繼承と攝政に關する事項を中心として、これに密接な關係のある事項を規定したものであります、なおこの機會において、やや詳細に金森國務大臣から説明いたすことになつておりますので、どうぞよろしく御審議願います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00219461207&spkNum=2
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003・樋貝詮三
○樋貝委員長 金森國務大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00219461207&spkNum=3
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004・金森徳次郎
○金森國務大臣 只今總理から本質的な點について御説明になりましたが、私より幾分詳細にわたりまして、皇室典範の提案の理由その他につきまして御説明を申し上げたいと存じております
さきに公布せられました憲法によりまして、皇室典範という新たなる規定が法律をもつて定められなければならないといふことが、憲法の第二條と第五條によつて豫想せられておりました、つまり皇位の繼承に關する問題と、攝政を置きますることについての問題、この二つは皇室典範をもつて定められなければならないということになつております、しかし皇室典範はこの二つの點に限られておるという趣旨ではないと存じます、つまり皇位の繼承と攝政ということを中心にいたしまして、皇室に關する必要缺くべからざる規定を編み込みますことが、皇室典範の任務であろうと存じております、その趣旨に基づきまして、今の二點を中心といたしまして、これと密接の關係があります所の事柄、すなはち皇族の範圍でありまするとか、或は皇族の成年、敬稱、即位の禮、大喪の禮、皇統譜、陵墓及び皇室會議といふようなことを規定してあるわけでございます、そこでこの問題を考えまする一番根本に起りまする問題は、現在既に皇室典範があるのでありまして、それと今囘制定せられまする所の皇室典範というものは、どういふ關係があるかといふことでありまするが、憲法の上にほぼ明らかになつておりまするように、現在ありまする皇室典範と、これから法律でお定め願おうと思つております皇室典範とは、法律學的な考えから申しますると非常な別の種類のものになるわけであると存じております、現在の皇室典範はどういふ性質のものであるかといふことにつきましては、學問上多少の議論のある所でございまして、既に明治二十二年に現在の皇室典範が制定せられました當時、憲法のように公布の手續きをとつておられないのでありまして、勿論世の中に見せるようにできておりましたけれども、正式の公布ということは行われていなかつたのであります、その趣旨がどういう精神であるかということは、非常に正確にはつき止めかねますけれども、伊藤公の書かれました憲法義解等の説明を基礎にいたしましたり、その他手續きの道行きを考えますると、どうも一般の法律というような表向きの規則ではない、皇室の内部の規則であるというような前提から、正式に表に發表する必要はないと、こういうふうに考えられておつたと思うわけであります、所が明治四十一年の公式令等によりますと、皇室典範に對する考え方が、かなり變りができておりまして、その後の皇室典範、現在の制度で申しますれば、皇室典範増補といわれております所のものは、初めと違いまして、今度は正式に國務大臣及び宮内大臣等の手續きを經ました後に、官報においてはつきり公布せられることになつておりまして、この道行きから考へますると、これは全く國の公けの掟であるというようなふうに、形の上では扱われていると思うわけであります、でありますから、初めは皇室の家の法というようなふうに考えられましたような取扱いになつておりますし、後に至りましては、明らかに國の掟というようなふうの扱いになつているのであります、その後の方の考えが畢竟正しいとして、さように扱われたものと思つております
所で、さらにもう一つの點は、現在の皇室典範は、憲法といわば竝行しておるような關係になつておりまして、議會等は全然これに、關係することができない、ちようど國の中に二つの掟の系統がありまして一方は皇室典範、一方は憲法というふうに判然としたる境があるようなふうになつておつたのであります、その後を受けまして、今囘の憲法におきましては、法律をもつて皇室典範を定めるというふうになりまするので、そこに考へ方が根本的に非常に違つているわけであります。從來は制度が二つの源をもつておつた、典範と憲法と別になつておつた、今後は憲法という一つの傘の下に、すべての國の掟が皆系列をなし、ちやんと秩序整然たる系統をなして存在をしている、こういうことになる次第であります、從つてこの皇室典範という今囘の法律が、順當に制定せらるることになりまして、來年の五月の三日から效力をもつことになりますると、現在の皇室典範という、憲法と竝立しておりますものは、いかなる立場になるであろうということが第一の問題になつて來まするけれども、これは私どもはかように考えております、つまり憲法が實施せられまする前までは、現在の皇室典範はそのまま毫も變化なく殘つておるということにならうと思います、そうしますると、現在の皇室典範の中に、先ほど申しましたように、國の掟の部分と、それから皇室の御一家の、いわば家範、家の規則、御内部の規則というものと、兩方混つております、そこで現在の皇室典範が、その時になりまして、分解すると申しまするか、國の掟となりまする部分は、今囘の法律たる皇室典範の方に移つて來るものと存じております、それから御一家の法というものは、これは國の制度が直接に關係しないものでありまして、皇室でいかようにそれを御處置になりまするかは、今日はつきりはわかりませんけれども、とにかく國の制度には直接關係のないものとして、皇室で御處理になるであろうと思つておるわけであります、そういうふうに考えて行きますると、現在の皇室典範の中の規定の全部がこの法律に制定せらるる必要はございませんで、その中の家法に屬しまする部分を取り去りまして、國法として殘されなければならない部分だけを今囘の法律のなかに編み込む、こういうことになりまして、しかもその法律として編み込みまするものの中に、時代の變化等によりまして省略すべきものもありまするし、また場合によりましては、少し下の方の規則を上の方に引き上げて來る、現在典範になくて皇室令等にありますようなものでも、重要なものはこれを引き上げて來るというふうに、幾分の變更を加えて、法律の中に編み込んで行くのが正當と思います、その趣旨によつて今囘の法律皇室典範はできておるわけでありまして、實質の大部分は、一昨日總理が述べられましたように、著しい實質上の變化は設けてはおりません、極く缺くべからざる點だけを補正しておりまして、後はだいたい現行の秩序を踏襲しておりまするが、しかし時代の變化によりまして、幾分こまかい所には、この機會に改善をするというような部分も含まれておるわけであります
次ぎに改正案の中の條文、條章といふものにつきまして、あら方の點を御參考のために申し上げたいと思つておりまするが、だいたい先に申しましたように、皇位の繼承、攝政ということが重點であるわけであります、それに基づきまして、中の章の分け方も、結局この二點に著目をして方針を立てておるわけであります、そこで第一章におきましては、一番根本眼目でありまする所の皇位繼承の規定をおいております、これは御覽になりますとわかりますように、皇位繼承の基本となる規定を一應ここに列擧したわけであります、所がそれを考えて行きますると、皇位繼承を遊ばされ得る資格者ということが當然に考えの中に含まれて參ります、それがつまり皇族ということになりまして、皇族の範圍等を當然に考えなければならないことになるわけであります、次ぎに憲法の豫想しておりまする第二の眼目でありまする所の、攝政ということを根本といたしまして、第三章を設くる必要が起つて來るわけであります、これは今日攝政令等のいろいろの規則もありまするが、そういうものも網羅して、この章に規定をしたわけであります、次ぎに第四章におきまして、今申しました二つの眼目を中心としながら、これと密接の關係のある、いわば家法面の規定、一つの章に集めるのは多少適當でないが、しかしいろいろ重要なる規定を四章に網羅をいたしまして、それが成年とか、敬稱、即位の禮、大喪の禮、それから皇統譜及び陵墓というような規定となつて來るわけであります、次ぎに今度は、いわば手續法とでもいうべきものでありまして、第五章におきまして皇室會議ということを定めまして、典範の運用上の大きな問題につきましての議決機關、或は審議機關としてかような制度を設けたわけであります、次ぎに附則がありますが、これはいかなるものでもあるわけのもので、特に變つたものではございません
そこでまた元へ戻りまして、第一章の皇位繼承という規定の中には、どういう所に著想して規定されたのかと申しますと、だいたいの考え方は現在の制度と同樣であるわけであります、と申しますのは、萬世一系の方が皇位を御繼承になるという基本の原理、恐らく人間が時々の思いつきで定めるというものではなくて、おのずからなる一定の筋道を辿つておるものでありまするが故に、今囘の改正であるからとて、特別に變つた規定が生まれて來る理窟はございません、世の中の進歩に連れまして補正はいたしますけれども、根源の考へ方は踏襲するということは、自然の道行きであらうと存じてをります、がただここに、特に第一章の中に現われて來ます大きな改正の點は、皇位繼承の資格者は今後は嫡男系、嫡出に限定するということになつて來るのであります、と申しますのは、このごろも御議論がありましたが、皇位そのものの永續性ということを念頭に置きますると、つまり重點をそこに置きますると、必ずしも嫡出者、嫡男系ということに限る必要はないのでありまして、むしろ皇位の繼承の範圍が豐かにあり得るというためには、古い傳統に從いまして、嫡出者以外にもその範圍を認めることは、一應の理由はあるわけであります、しかし人間の間におきましても、道徳的判斷というものが漸次變遷して參りました現在の段階におきましては、嫡出者と然らざる者との間に相當大きな變化を加えるということは、これは當然のことでありまして、一方においては皇位の永久性ということを考えつつ、一方においては世の中における道義的な判斷を尊重し、この折衷點からかような制度が今囘取り入れられたわけであります
次ぎに現行の典範におきましては、皇位繼承の順位を變更いたします場合に、どういう制度によるかと申しますると、これはきわめて重大なことでありまするが故に、皇族會議と樞密顧問に諮詢するということになつているのであります、この考え方は、多分現行の制度におきましては、皇位の繼承は皇室みずからの方面において順序等をお考えになるという立場であろうと思います、皇室みずからの定めるという所に重點を置かれました故に、皇族會議の議を經るということになり、かつまた同時に國の方面からも加えて——實はそれを加える分量は少い意味だろうと思いますが、とにかく加えつつ、皇室御自體のことであるということに關係せしめまして、樞密顧問に諮詢する、こういう途が設けられておつたものと思つておりますが、今囘の憲法の建前におきましては、皇室のことというものを、國と切り離しては決して考えません、國民自體がよくその點において參加するという考え方でありまするが故に、從來の制度はやめまして、皇室會議の議によることになつているわけであります、この皇室會議というのは、皇室の方がおつくりになる會議という從前の意味とは全く違いまして、國の各方面の意見をここに反映するところの會議、こういうような趣旨になつているわけであります、これは後に皇室會議の章の所に、この姿がはつきり現われて來るわけであります
それから第二章の皇族という表題をおいて定めておりまする所は、現行制度と幾分の差を生じております、と申しまするのは、先ほども申しましたように、皇族の範圍を嫡男系嫡出、從來の言葉で申します庶出の方をこの中から除くという大きな變化を生じておるのであります、もとよりこれは今後の制度でありまして、今まででき上つておりまする具體的の秩序を變へよう、こういうわけではございません、それが第一點であります、それからこの親王及び内親王の範圍を縮小いたしまして、この規定の文字によりますれば、三世以下は男を王、女を女王ということになつております、この點はいかなる範圍までを親王、内親王とするかいかなる範圍からあとは王、女王とするか、またいかなる範圍からあとは皇族でないようにするか、この三つの點であります、つまり親王、内親王の範圍、王、女王の範圍、それからもう皇族でおなくなりになる範圍、この三つの點をはつきりきめなければ皇族ということの限界ははつきりきめかねるわけであります、この考え方につきましては、日本の歴史におきましていろいろな變遷を遂げているわけであります、御承知のごとく、大寶令はかなりこれを狹く限定しております、親王といえば皇兄弟及び皇子というように限定いたしまして、五世以下は皇族でないというようなふうに限定をしております、しかしそれは非常にまた他面實情に副わない點があつたのでありまして、その後は範圍は擴大せられて來ております、明治の時代の皇室典範、現行皇室典範を定められます時に、幾分過去の經驗を綜合せられたというわけでもありませうが、親王内親王の範圍を昔より廣くして、四世までは親王、内親王でおいでになる、五世以下は王、女王である、それから先は無限に特別なることが起らない限りはどこまで行つても皇族である、こういうような永世皇族制を立てられたわけでありますが、これは非常に考えなけれはならぬ多くの點を含んでおりまするので、今囘の改正におきましてはまず第一に親王、内親主の範圍を大寶令の所よりは廣く、明治の制度よりは狹くしたわけでありまして、つまり二世皇子及び皇孫のその範圍を親王、内親王といたしました、後に宣下親王、内親王とございますけれども、原則としては二世を親王、内親王とする、それから先は王、女王であります、こういうふうに大寶令のほども減縮はいたしませんが、明治の制度を縮小したわけであります、そういたしまするとそれではどこまで行つたら皇族の範圍でなくなるか、皇族と皇族以外との境界線が問題となつて來るのでありまして、これを大寶令に決めましたように五世以下は皇親の限りにあらずというふうに決めるということは、これはまた皇位繼承の完全を期しまする上に相當考慮をしなければなりません、しかしながらどこまで行つたらよいかということになリますると、これは非常に困難な問題でありまして、この典範の改正におきまして、その點は明文の上では解決しておりません、形はいわゆる永世皇族という制度をとりまして、どこまで行つてもこの系統を追うて行く限りは一應は皇族であるというような建前はとります、しかし皇族から皇族以外におなりになる場面の規定が他にありますので、それと見合はせてしかるべき合理的な結果を得るということにされておるのでありまして、その點の精神は現行典範とはあまり違つておりません、ただなんとなくそこが親王の範圍を狹くしたということから來る一つの感じがあるというくらいのことであらうと考えております
第三章に攝政の制度を設けましたが、これは實質におきましては現在の制度と差がないと申し上げてもよいくらいでありますが、きわめて僅かなる例外と申しますか、現行制度に對する一つの修正として考えておりますのは、誰が攝政におなりになることができるかということの範圍は、現在の典範とはあまり違つておりませんけれども、女の方が攝政におなりになる場合におきましては、現在の制度では、配偶者のある皇族女子は攝政におなりになれないといふことになつております、多分その考へ方は攝政といふ公の任務を盡すといふことと、配偶者に對する考へ方といふものは、そこに矛盾を生ずる恐れはなかろうかといふ懸念であつたらうと考えておるのでありますが、時代の趨向を考えますと、かような制限をすることは不合理であるように思われますが故に、配偶者のある皇族女子も攝政におなりになり得るといふように資格を認めます
それから攝政を廢止いたします場合、それから攝政について刑事の訴追をいたしますることができるか否かといふような點につきまして、若干の規定があるわけであります、その中でも攝政訴追のことというのは特にできた規定ではございません、現在の攝政令といふ、皇室典範より一段低い規定であります所の攝政令の中に書いてあります規定を、一段格を上げまして、今囘の法律の中に書き現わしたのであります
第四章は、どこの章に當てはめまするにもちよつと工合が惡い事柄はきわめて重要ではありますけれども、しかし一つにまとめるには、ただ一條だけで一章をつくるというのもいかがかと思ひますために、とにかく一つの章にとりまとめたという規定でございまして、その一番根本は即位の禮などということでありますけれども、そのほかどの規定を特に輕くするか何んとかいうわけにも參りませんので、各種の規定を並らべまして一つの章にいたしましたわけであります、皇室典範の中にどこまで入れてよいかというやうなことをいろいろ考慮した結果、この邊の所がちようどほどよい範圍であらうといふやうに考えたわけであります
第五章に皇室會議の規定を設けましたが、これは先ほども申しました通り皇室の一つの大事を議する會議ではございますけれども、會議自體の性質は、國全體としての基礎をもつ會議であるというふうに考えてをりますために、その組立におきましても、現在のように皇族中心の會議といふ建前をやめまして、皇族ももとより皇室に關することについて事情御精通でありまするが故にその代表者をここに入れる、そのほかに國の全般、すなわち立法、行政及び司法の各分野からもその構成員をつくるといふことにいたしまして、人數の點におきましては特に立法の面に重點を置きまして、他の方面の割當よりここを倍にするというふうな構想によりまして、十人の議員でこれを組織するということにいたしました、さうするとその議長は誰がするかということになりますが、現行の皇室典範によりますと、この皇室會議の議長は天皇が御みずからこれにお當りになるといふ建前になつてをります、しかし改正の憲法におきましては、天皇は憲法に明文のある國事にのみ御關與になりますが故に、天皇みずからこの會議を御主催になるということは憲法上適合しないと存じます、しからば誰がこの議長になるがよいかと申しますと、結局これは綜合的な面で取りまとめるのでありますが故に、内閣總理大臣が一番それには適するであらうというようなふうで、これを議長といたしましたほかに、または必要なる豫備議員を置くというような制度を設けたわけであります
なおここに特に申し上げたいのは、皇室會議はこの法律及び他の法律に基づく權限のみを行う旨を規定しているわけであります、つまりこの法律によつた所の皇室會議は、この法律に書いてある權限だけを行えるのであります、またもしも權限を殖やそうとすれば、別の法律をつくらなければならないというふうになつています、この規定による皇室會議というものは非常に重要なるものであります、これがいろいろな意味において注意をしなければならない所のものと思うのであります、でありまするから、これに命令などで權限が殖えますると、自然そこに思わしからざる重點の高まりというふうの感じを起す恐れがありますので、その權限を法律をもつてはつきりさせまして、もしも増加の必要があれば、國會の議を經たる法律をもつてこれを殖やすというふうにしたのであります、一面から見れば審議規定というべきものかも知れませんが、しかし事重大であるが故に、かようにはつきり規定したわけであります
最後に附則の所でありますが、附則の所では特別に面倒な規定もございませんが、ただその第二項におきまして、さきの皇族の範圍を嫡男糸及び嫡出子、こういうふうに限定いたしますと、現在既に皇族でおありになる方の中で、嫡男系、または嫡出子でない方があつたらどうなるかという疑問が起りますので、それは現在までの秩序によつて皇族でおありになる方は、そのまま嫡男系嫡出子の方と同一に規定をおいているわけであります、だいたい、この皇室典範の組み立てはさようになつておりまするが、以上の諸點はこれは政府がみずから内部だけで勝手に決めた、こういうわけではございません、内閣に設置せられました所の臨時法制調査會におきまして、各方面の方のお集まりを願い、その愼重審議の結果、答申せられました要綱を基本にしたわけであります、ただ爾後の研究によりまして、きわめてわずかの相違點はございますけれども、それはむしろ部分的でありまして、本質におきましてはその精神を少しも離れているわけではございません、改正憲法は皇室に關しまして、かなり思い切つた規定を設けているわけでありまして、それについていろいろわれわれは考えさせられているわけでございまするけれども、この皇室典範によりまして、一面におきましては、皇室の尊嚴をはつきり維持することができまするし、また從來の御由緒の深い傳統と、國民感情の線にそつて、寸毫の違背なきように、これを生かして、行くこともこれによつて努めたい、こういうふうに考えている次第でありまして、どうぞ御審議をお願いしたいと思うのであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00219461207&spkNum=4
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005・樋貝詮三
○樋貝委員長 それでは明後九日は午前十時から開會いたすことにいたします、本日はこれにて散會いたします
午前十一時四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00219461207&spkNum=5
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