1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了ノモノヲ除ク)
皇室經濟法案(政府提出)第三號)
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昭和二十一年十二月十七日(火曜日)午前十時三十五分開議
出席委員
委員長 樋貝詮三君
理事 及川規君 理事 井伊誠一君
理事 小島徹三君 理事 吉田安君
理事 酒井俊雄君
井上卓一君 大塚甚之助君
齋藤行藏君 竹内茂代君
殿田孝次君 苫米地英俊君
三ツ木幸三君 藥師神岩太郎君
大島定吉君 馬越晃君
神戸眞君 菅又薫君
津島文治君 長尾達生君
日比野民平君 星一君
堀川恭平君 森山ヨネ君
中原健次君 松木七郎君
武藤運十郎君 森三樹二君
今井耕君 川野芳滿君
越原はる君 井上赳君
久芳庄二郎君 野本品吉君
出席國務大臣
國務大臣 金森徳次郎君
出席政府委員
法政局長官 入江俊郎君
法政局事務官 井手成三君
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本日の會議に付した議案
皇室經濟法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○樋貝委員長 これより會議を開きます、これから質疑にはいります、小島徹三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=1
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002・小島徹三
○小島委員 私は第四條について承わりたいと思います、第四條の第一項には「内廷費は天皇並びに皇后」云々「その他の皇族の日常の費用」と書いてございますが、第五條を見ますと「宮廷費は、内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるものとし、宮内府で、これを經理する、かようになつておりますが、そういたしますと、この内廷費の中には皇室の御個人としての資格でお使いになつておる所の召使の給料というようなものは、第四條の内廷費にはいるわけですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=2
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003・金森徳次郎
○金森國務大臣 内廷費宮廷費の分け方は、非常にはつきりした限界はございません、内廷費と考えまするのは、大體個人的な意味のもの、宮廷費と申しますのは個人と公けとの兩面が合體しておるような意味のもの、かように考えております、そこで宮中の極く内輪の御使用というものの經費は、内廷費から出るものと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=3
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004・小島徹三
○小島委員 そうするとこの内廷費の使用方法の内容というものは、一々報告する必要はないことになるわけですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=4
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005・金森徳次郎
○金森國務大臣 報告すると申しまするか、結局皇室經濟會議が内廷費に關しましても始終氣をつけておるわけでありまするから、内廷費自身も決して祕密の扱いはしないということになりますけれども、しかし宮廷費のように嚴密には扱わない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=5
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006・小島徹三
○小島委員 次ぎにお伺いしたいのは第六條でございまするが、「皇族費は、皇族としての品位保持の資に充てるために、年額により毎年支出するもの」ということになつておりますから、當然これは品位保持の必要のために出すのでありますから一般の收入としては認めないわけでありますか、という意味は、要するに所得税とか、さういう税金の對象にはならないものと思いますが、さようでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=6
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007・金森徳次郎
○金森國務大臣 皇族費は品位維持のためのものでありまして、その考え方から所得税の客體になるかならないかということにつきましては、非常に困難な問題が絡つておりまするために、まだ正確には解決はいたしておりません、恐らく品位保持という御趣旨を主といたしておりまするが故に、所得税の客體にならないのではないかと存じておりますけれども、今申しましたように、いろいろ考慮すべき點がありますので、はつきり解決しておりませんから、今後この税法の上においてそれをはつきり解決して間違いのないよにしたいと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=7
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008・小島徹三
○小島委員 第七條についてお伺いいたしますが、皇室といへども、皇位繼承という問題と家督相續という問題は別個の問題でありますから、皇室においても相續税を拂うという問題が起きて來ると思いますが、さういうことに解してよろしうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=8
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009・金森徳次郎
○金森國務大臣 お説の通りになるかと考えております、ただこの第七條の皇位と結びつけて承繼されるもの、つまり今仰せになりましたように、天皇の御財産は、私有的な、民法的な關係におきますものは、民法によつて相續が解決して行きますし、第七條に書いてあります極く特殊なものだけは、この經濟法によつて解決せられるわけであります、普通の場合の相續は、なんと申しましても一般の相續の原理によつて解決すべきものでありますけれども、第七條の關係において皇嗣が受けられまするものは、これを普通の意味の相續というようには了解し難きものと思つております、だいたい第七條で考えております中におきまして、はつきり念頭に置いておりますのは、三種の神器でありますけれども、三種の神器を物の方面から見た場合でありますけれども、そのほかにもここに入り得る問題があるのではないか、かように考えております、所がその中におきまして、極く日本の古典的な美術の代表的なものというようなものがあります時に、一々それが相續税の客體になりますと、さような財産を保全することもできないというふうな關係になりまして、制度の關係はよほど考えなければなりませんので、これもまことに卑法なようでありますけれども、今後租税制度を考えます時に、はつきりそこをきめたい、かように考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=9
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010・小島徹三
○小島委員 只今の御答辯にもありましたように、由緒ある物というのは、必ずしも三種の神器だけではないのでありまして、いろいろ澤山のものが、ございます、古代美術品、たとえば正倉院の御物というようなものもあると思いますが、そういうものが、相續税の客體になるということでは、とうていこれを永く保存するということもできないことになると思いますから、この點については政府も十分御注意を願いたいと思うのであります、なおこれにつきまして、由緒ある物と認定するのは、誰がするか、お伺いしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=10
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011・金森徳次郎
○金森國務大臣 こういう機微な問題でありますために、結局關係者の間になお密接に相談をしてきめまするので、はつきりどういう方法できめるということは今日考えてはおりません、今後皇室の財産に關します問題について、だんだん具體化されて行きます時に、おのずから適當な方法を案出したい、かように考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=11
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012・小島徹三
○小島委員 それは甚だおかしいのでありまして、こういう非常な機微な問題でありますからして、誰が認定するということもきめておかなければ、後日問題が起きるのではないか、かように考えられるのでありますが、政府の方ではなんとお考えになつておりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=12
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013・金森徳次郎
○金森國務大臣 この點は實際まだ申しわけない次第でありますが、何を由緒ある物としてはつきりきめますかということは、だいたいにおいてよくわかつておりますけれども、實行の面におきまして、今申しました古典的なものを保全するについての最も完全な道を選ぶというようなことも考慮に入れて、相當考えて行かなければなりませんので、結局皇室と政府との兩面におきまして、よく具體的に話を進めて行くというようなことになつておりまして、今の所はそこまで突き止めては行けませんけれども、場合によりましては政令等をもつてこれを確定するような取扱いになることもあろうと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=13
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014・小島徹三
○小島委員 この點は注意深く取扱つていただきたいのでありまして、憲法におきましても、よほど個人的な皇室の財産でない限りは、全部國有財産になることになつているのでありますから、この點を憲法からいえば、ほとんど全部のものが國有財産になつてしまうのでありますから、將來これを法律か何かできめるならいざ知らず、政令できめるというようなことはできないのではないか、かように思われますし、また由緒ある物というものは、必ずしも現在あるものに限らないのでありまして、後日また非常に由緒ある物が出て來る、また獻上をお受けになるということも出て來るわけでありますから、これをきめるべき機關というものを、はつきりと皇室經濟法か何かにきめておく必要があるのではないか、私はかように考えておりますが、いかがでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=14
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015・金森徳次郎
○金森國務大臣 その點はこういうことになると思います、皇室の御私有の財産と、それから公けの財産で國に移るものというその限界をきめますのは、これは第一義的に非常に重要なことでありますので、この前本會議において御説明申し上げましたように、皇室經濟會議は、この財産がきまつた後で定めて行くものでありますけれども、經過的にどれだけが國の財産として國の方に移つて來るか、どれだけは完全に私有財産として認むべきかということにつきましては、今後法律解釋と實行の面との兩方から考えまして、しかるべき委員會を拵えまして、この經濟法が施行せられますまでにはつきり區分けをすると考えております、殘ります皇室の御私有財産という中におきまして、皇嗣が第七條によつて受けられるものと、しからずして一般の財産として繼がれて行くものと、二つになることと存じております、そういうものは、理窟の上だけで申しますれば、純粹の皇室の私有財産ということになりますので、國の方がこれに對しまして直接に關係する理由はやや乏しくなつて來るのでありまして、皇室の中において本質的にはそれをおきめになることと存じております、しかし、皇室の中でおきめになる本質的なものではありますけれども、第七條という法律の適用がありますし、今後ともこれに關連しまして複雜な問題が起りますので、國家もまたこれと無關係であるわけはございません、そこで結局これは國が相當に關係をしてこの區分を定めなければならぬことになろうと存じております、それらはもとより大事なことではありますけれども、問題はその手續をきめるということが主眼點になりますので、法律をもつてこれをきめなくてもよいのではなかろうかと、只今の所では考えているわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=15
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016・小島徹三
○小島委員 御説明は御説明でございますけれども、少くとも相續税法というものがありまして、家督相續の場合にこれに相續税をかするということになつておるのでありますから、皇室御自身で、自分のこれこれの財産は相續税の對象にならぬということを、勝手におきめになることはできないことになるだろうと私は思いますから、どうしてもこれは法律か何かではつきりとしておかなければならぬので、單なる手續だけの問題でないのではないか、かように考えられますが、いかがでございましようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=16
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017・金森徳次郎
○金森國務大臣 結局さような意味もありますので、第七條の内容を具體化させるために、政令をもつてこれを定めるというふうに今の所では考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=17
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018・小島徹三
○小島委員 私の質問はこれで終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=18
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019・樋貝詮三
○樋貝委員長 森三樹二君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=19
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020・森三樹二
○森(三)委員 私は本會議でも質問をしたのですが、ちようど今小島君が質問した點も、私小島君とだいたい同樣な意見をもつて國務大臣にお尋ねしようと思つておつたのです、やはり私の氣持といたしましても、この第七條の「皇位とともに傳わるべき由緒ある物」これを誰がきめるか、そのきめる決定機關は、やはりできるならばこの皇室經濟法の中に規定することが、將來紛糾を起さないために必要であると私考えているのです、しかし今金森國務大臣の御答辯では、政令をもつてきめようというような意見を抱懷しているという御説明があつたのであります、政令であつても、命令であつても、そうした皇室經濟法の第一條の國有財産法の公用財産、また或は第七條の由緒ある物の決定、これらをきめる機關というものが、先般の本會議でも御質問申し上げたのですが、單に事務的な官僚的宮内官、或は政府の一部の機關できめるということでなく、やはり公の機關、すなわち國の財産と皇室の私有財産と兩方に分かれるのでありますから、國民にその區別をはつきり示すために、現在ならば貴族院がありますが、貴族院、衆議院の議員の人々を、そうした機關の中に入れる御意思があるかどうかということも先般お尋ねしたのでありますが、金森國務大臣の御答辯は、ややそういうようなことを是認せられるようなお言葉もありましたが、改めて私は本委員會において、國務大臣のはつきりした御意思をお聽きしたいと思います、これはやはり重大な問題でありまして、先般も宮城を拜觀いたしましたが、宮城内だけでも、書物であるとか、建物であるとか、その他の動産で相當厖大な品物があるわけであります、だからそれをはつきりさせて國民に納得させなければ、かえつて宮内府とか或は政府の一部の人が勝手にきめたというような感を與えることは、私は非常に將來面白くないのじやないかと考えるのでありますが、その點について國務大臣の詳細なお考えをお聽きかせいただくことが必要であると思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=20
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021・金森徳次郎
○金森國務大臣 お話の通り、少くとも第一歩に皇室に殘るべきものと、國に屬しまするものとの境界線を具體的にきめますることは、必要であると思つております、所が皇室經濟會議は、この經濟法ができました後の、つまり新憲法施行後の會議として備わつておりまして、これが第八條等に法律できまつておるわけでありますが、兩者の關係をはつきり區分いたしまして、これだけは國に來る、これだけは皇室に殘るということをきめまする具體的な働きをいたしまするのは、この經濟法が效力をもつよりも前に起つて來ることであります、そこで法律で經濟會議をつくることは、從來の傳からみますると、少しく釣合が壞れておりまするので、法律以外の方法で經濟會議をつくりたいと思つております、そうしてそういう特殊な經濟會議は、經濟會議とは申しませんが、さような皇室財産の歸屬をきめまするものをつくるつもりであります、そのつくりますものの實質をどんなものにするかということになりますと、今研究中ではありまするけれども、だいたい第八條の經濟會議のつくり方と同じ線に沿わなければならぬと思いまするので、決してそれは役人ばかりでつくるのではなく、貴衆兩院と申しまするか、そういう官吏以外の者が參加することによつて公正なる組立てをしなければならぬということに考えております、問題は今法律の方をおきめ願つておいて、これを五月から實施する、しかし命令でできまするような部門におきましては、まだそこまでの準備を今しなくても、これからやつて行けるわけでありますから、なるべく、その委員會を今月中にでも計畫を立てたいと思つておりまして、今關係しておる部面と協議中でありますけれども、できまするものは、八條の精神にふさわしく、該當するようなものができるものと豫定をいたしております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=21
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022・森三樹二
○森(三)委員 國務大臣はもう今月中にでも、そうした何と申しますか、審議委員會を設置するようにしたいというような御意向でありますが、そうした委員會は、この皇室經濟法竝びに新憲法が效力を發生した後においても私はやはり存續しなければならぬ、それまでに明確に、皇室經濟法が豫定しておる第一條竝びに第七條に規定してある所の財産の區別がはつきりするかどうか、厖大な財産の區分けがそうはつきりするかどうか、これはやはり將來性のある審議委員會というようなものになるのじやなかろうかと思うのです、所で只今金森さんは、その審議委員會、經濟委員會というようなものは、第八條の規定した線に沿つてきめたいと思う、單に政府とか或は宮内府の役人ばかりではないのだ、ここに衆議院及び參議院の議長、副議長というものがはいつておりますが、やはりそうした意味を含んで仰しやつておられると思うのです、これには八人となつておりますが、そうした國有財産と皇室私有財産とがはつきりわかつた後では、皇室經濟會議議員八人でも運用できるかも知れませんけれども、今の過渡的な、厖大な財産を處理するにあたつては私は八人くらいの委員では足りないと思う、やはり相當數——たとえばこの委員會でも三十人も四十人もおるわけでありますが、國民代表の相當數の議員を參與させなければ、非常に官僚的なものになつてしまうと考えるのですが、國務大臣の御意見はいかがでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=22
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023・金森徳次郎
○金森國務大臣 この制度の表を見ますと、そういうような御議論がでて來るのは御尤もと考えておりますが、實際の事情を豫想してみますと、皇室の御財産は財産税等の關係はおきまして、恐らくこの經濟法が效力を生じまする前におきまして、相當なくなつてしまうことになるのではなかろうかと私は想像しております、そこでほんとうの區分けをする部面におきましては、豫想するほどそう大きい事柄は起つて來ないと思つております、それに對しまして極く地道に研究をして行きまする部面におきましてはだいたいこの第八條の線のような行き方でほぼ完全な目的を達するのではないかと、現在の所では考えている次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=23
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024・森三樹二
○森(三)委員 只今御答辯を承りまして、だいたいわかつたのでありますが、いずれにいたしましても、この皇室財産の國有移管について、世間がそれに妙な疑惑を懷くことのないように——只今金森さんは、だいたい財産税でもつてなくなつてしまうと仰しやるのですが、それがどういう結果になるか知りませんが、どちらからいいましても、國民にはつきりした内容を知らせる所の、明るい體制をもつて進んでいただきたいことを希望いたしまして、私はこの問題は打切ります
次ぎにお尋ねいたしたいのは、新憲法の第八條の問題であります、新憲法の第八條は既に憲法審議の時にもう議論が濟んでいるのではないかと言われればそれまででありますが、しかしこの皇室經濟法に關連をもちまして、當時の憲法審議の時と、また具體的に今日この經濟法が提案されて、これを審議する上にあたりまして、われわれの考え方も深みが加わつて、多少違つて參つているのであります、たとえば皇室財産が國有になる、國有になつた後、さらに皇室の公用に供するものは公用財産として區別するというように、皇室經濟法が規定せられまして、非常に内容が深くなつて來たわけであります、それで私は、新憲法の第八條に、「皇室に財産を讓り渡し、又は皇室が、財産を讓り受け、若しくは賜與することは、國會の議決に基かなければならない、」という規定があるのでありますが、これについてお尋ねいたしたいことは、原則として皇室財産は國有に歸屬する、そうするとこの第八條は、皇室に財産を讓り渡すというのは、その讓り渡すものは動産もあり、或は不動産もあるというように考えられるのですが、そうすると、皇室財産というものは一應國有に歸屬するということを前提に皇室經濟法はなつておりますが、この憲法の條文を見ますと、またその財産が國民から、たとえば財産を皇室に讓り渡すということが豫定されておるようでありますが、その點は矛盾がないかどうかということ、それから「若くは賜與すること」云云とありますが、この賜與するというのは、皇室から動産を賜與するというようなことは考えられますが、不動産は國有になつてしまうのですから、賜與するというようなことはあり得ないと考えられますし、またそれをさらに深く考えて見ますと、將來皇室に不動産を讓り渡して、その讓り渡された不動産をまた皇室からさらに讓り渡すというようなことも考えられるのでありますが、その點いかようなものでしようか、その賜與するものは、たとえば皇室から國民に何らかの印しとして花瓶を下賜される或は煙草のケースを下賜されるというようなことも考えられると思いますし、しかしそういうことを一々國會の議決を求めるのではなかろうと思います、もつと大きな財産の變動を豫定したものと私は思うのですが、それらについて金森さんの御意見を伺いたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=24
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025・金森徳次郎
○金森國務大臣 この憲法の第八條と第八十八條との關係は、相當文字がいろいろな關係から節約されておりまするので、ちよつと御覽になりましておわかりになりにくいということは御尤もと考えております、この機會を利用いたしまして、その關係を一つはつきりさせておきたいと存じまするが、だいたいこの憲法の考えは、皇室に關しまして世間の一部にもつておりまする疑惑を完全に取り除くということを財産關係の方ではつきりさせよう、こういう趣旨をもつておりまして、かつまた、今まで皇室が公の面と私の面とが一緒になつてしまつておりまして、内部の取扱いは多少區別はありましようけれども、世間でよく封建の姿とかなんとか申しまするが、天皇は何となさつても、それが公も私もなく、一つの關係において行われておるように見受けられておつたのであります、それをこの憲法ははつきり區別をいたしまして天皇は國民の一人としてのほんとうの私生活をお營みになり、同時に國の象徴として公のことを御擔任になるというふうに、全く天皇のお働きを二つに分けてしまいました、そうして御一人としてのお生活はこれは國民と同じような規律に從うものであります、公の面における働きは、これは全くそれとは違つて、國自身の仕事の一部になるのだ、こういうふうにはつきり分けました、そういたしますると、財産關係におきましても、御一人としてのお仕事は、つまりたとえば學問の御研究を遊ばせられるという面におきましての財産は、これは全くの私有財産である、こうはつきりきめました、しかしながら、政治の面におきまして、外國の使臣を引見されまするようなその設備ということは、これは全く公の方面のものであります、公の關係の財産であります、こういうふうに區別けをしたわけであります、そこで第八條、八十八條におきまして、「すべての皇室財産」この皇室財産と申しまするのは公の財産であります、これは文字から直接には出て來ませんけれども、前後の關係からそういうふうに讀むという考え方によりまして、公の財産は全部國に移してしまう、こういうことになりますると、皇室に殘りますものは全くの私有財産、言い換えますと、お眼鏡は誰の御所有物であるか、御研究に關する書物は國のものか皇室のものかという見分けによつて極く狹い範圍において皇室財産が殘ることになるわけであります、その境界線は、だいたい關係者の間におきましてはおよその諒解をつけてありまするが、とにかくさように狹いものになるわけであります、そこで今度は憲法の第八條に戻つて參りまして、さような狹い範圍になりまする時に、なお皇室の御財産ということについて國民が疑惑をもち、或は國民でなくても世界からもこれに對する非難を向けられることがあるであろうかと申しますと、さようなことのない方がむしろ理論が正しいかと存じております、しかしこの憲法は一切の關係におきまして、そこに一點の疑惑の餘地なからしめる、ほんとうに皇室の御安泰を期するという趣旨から第八條が設けてありますが故に、さような私有財産の關係におきましても、外部から財産が皇室に流れて行く場合、及び皇室から皇室以外に財産が流れて行きまする場合は、國會の議決に基ずかなければならぬというのでありまして、常識からいえば行き過ぎであるということが言えると思いますが、やはりこういう所は念に念を入れて正確を期するというので第八條ができたわけであります、そこで第八條を徹底的に言葉通りに運用いたしますると、今お話になりましたように、五本の煙草をもし皇室から國民に賜與せられますと、やはり第八條によつて國會の議決を經なければならぬということになるわけであります、しかしさようなことは非常識でありますし、また國民の側におきましてよくいたしまするように、非常に立派な農産物ができた、これを一つ皇室に獻納いたしたいという時に、國會にかけるということはまことに手續の上からいつても煩瑣であり、むしろ常識から申しましても甚だ不自然なることと言はなければならぬ、そこで憲法の第八條は特にその點に留意をいたしまして、法律によるとは書きませんで、「國會の議決に基かなければならない、」まあ煎じ詰めれば同じことになるかも知れませんが、いくらか餘裕のある言葉を設けまして、とにかく國會というものの考えを通さなければそういうことはできない、こういうふうになつたわけであります、そこで今日のこの皇室經濟法を設けまして、これが第八條の國會の議決ということの一部分を構成するわけであります、でありますから、憲法の第八條はきわめて嚴密にできておりますけれども、これの實際の運用の方法として今囘の經濟法ができました、これによりまして、極く輕微なものは一々國會の議にかける必要はない、やや重要なるものは、一面國會の代表というような趣旨を強く含んでおりまする所の皇室經濟會議の議を經るのである、しかしてさらにそれよりも大掛りなものは國會が直接に議決をする、という三段構えにいたしまして、實際の都合のいいようにしたわけであります、こういうふうになつて行きますと、この内容といたしまして、今仰せになりましたような、不動産を獻納するということがあり得るか、或は不動産を賜與せられることがあり得るかというような問題が出て來ますが、理論としてはそれがないとは言えませんが、恐らく現在の行き道ではそういう場面は出て來ない、少くとも現段階におきましてはそういう姿はないかと存じますけれども、理論から申しますと、不動産も動産もともに財産でありますが故に、この中に含まれると考えていいと存じております、そこでなおこの實行方法は、この皇室經濟法がきめておるのでありますが、どういうような程度において、特別な手續と面倒な手續なく、國民から獻納しまた皇室から御賜與になり得るかというような所は、金額の妥當性をはかりまして、常識的に、このくらいの所は自由にできてもよかろう、このくらいの所へ行けば少しく中間の制限すなわち皇室經濟會の制限を加えるがよかろう、それから先は一々國會の議に付せなければならぬという所の見分けをいたしまするのが、この經濟法が豫定いたしておりまする所の別に法律をもつて定める金額といふ所できまると思つております、その時に、別に法律をもつて定める金額はどのくらいにするかという問題が殘つて來まして、私どもの方ではあらかた見當はつけておりますけれども、しかしこれとてもそうまだ簡單にはきめかねまするので、この經濟法が法律として議會の御協贊を經ました後におきまして、正確なるものを生み出したいと考えております、さような次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=25
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026・森三樹二
○森(三)委員 詳細な御説明がありましたが、だいたい金森さんも不動産が讓り渡されることはなかろうという意味で仰しやつている反面、理論的には財産には不動産も動産も加わるというように御説明になつている、所でそうした場合に、皇室財産がすべて國有に歸屬すると言つておきながら、この憲法の第八條では國會の議決に基づかなければならぬとなつておりますが、この皇室經濟法の第二條では、左のものは、一定金額を超えない財産は一々國會の議決を經るということは手數がかかるから、それはしないでもよい、こういうふうになつているわけです、實際において一々皇族が本を三册買われたから、五册買われたからといつて、國會の議決を經ては手數がかかるこの御説明は御尤もであります、しかし、そういうことは考えたくはないですが、一定の價額を超えないということ、その一定の價額は、われわれ聞く所によると五千圓という話もあり、五萬圓という話もありますが、五千圓にしても五萬圓にしても、それをたびたびお買求めになつて行けば厖大なものになつて行く、結局一定の價額というものの制限を置いてありまして、理論的には正しいわけです、しかし、そういうことは想像したくないのですが、皇室經濟法の第二條の規定を利用して——利用といつては語弊がありますが、ここに一つの缺陷が生まれて來るように思うのです、五萬圓以内のものならば國會の議決を經なくてもいい、そうすると五萬十圓、百圓と價額を超えるとたびたび國會の議決を經なければならぬ、そうすると百萬圓のものもそれを二十二囘に買えば一々國會の議決を經なくてもいいようになる、まとめて買えば國會の議決を經なければならぬけれども、それを少數に分割して買えば國會の議決を經なくてもよいというような拔道——言葉に語弊がありましようが、そういうようなこともちよつと考えられないのではないかと思うのですが、如何でしようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=26
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027・金森徳次郎
○金森國務大臣 皇室がものをお買いになりますれば、その代價が皇室外に出て行くわけでありまして、つまり普通の經濟的な取引によつて資産が動きますものは、これは特別に制限を加える必要は事實上ないと思つております、もしそれが不正な方法、つまり賣買等の形をとつて、事實賣買でないような贈與の行爲が行われますと、これはよくないと思いますけれども、普通の場合によつて取引が行われますことは別に考えるだけの重さはないと思つております、經濟法の第二條の中の、相當の對價による賣買等通常の私的經濟行爲に係る場合は國會の議決はいらない、こういうふうにしてあります、この點はお疑いを受ける餘地はなかろうと思つております
第二の點といたしましてたとえば一定の金額以下は自由である、こういたしておきました時にその條項を利用いたしましてたとえば三萬圓のものを毎日一件ずつ獻納するとかいうことになりますと、非常に不自然なことになるかと思います、それから、またそういうふうな方法をとりませんで、たとえば五人の人が組になりまして、甲の人も三萬圓、乙の人も三萬圓、丙の人も三萬圓、こういうふうにいたしますと、そこにまた規定の濫用ということも起り得ると思うわけでありますが、さような點まで心配することがいいかどうか、或はまた世間でよく噂をされておりましたように、日本國民がおのおの一圓ずつ獻納するということになりますと、それが大きな金額になるのであります、そういうことにつきましても、恐らく日本國民がさような非常識なことをするとは思いませんけれども、しかし憲法第八條がそこまで徹底的な態度をとりましたために、それに合わせる方法を考えておくことは必要だらうと思つております、その點を考えて經濟法の第二條第二項以下におきまして、想像し得べき最も包括的な工夫によりまして、全然そういう疑の起る餘地のないようにしてあるわけであります、第二條の第二項を御覽になりますと、たとえば今お話の五萬圓なら五萬圓というような方法を防ぎますために、第二項にそういうものは一年間を通算するということになつておりますから、その途はなくなつております、それから人が顏を違えまして、結果において似たような行動が行われまするような場合は第三項の方に一つの豫想がありまして、一定の金額にそれが合算して達しますれば、その以後はこういう辨法は適用がないというふうにしておりますので、いかなる角度から見ましても、疑惑の餘地は起りませんし、どつちかと申しますと、これはどうもあまりに過ぎたのじやないかとみずからを責める感じもするようなふうに規定してあるわけです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=27
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028・森三樹二
○森(三)委員 法律で定める價額を超えない財産とありますから、これは後にその法律が議會に出るわけでありましようが、今ここで論議をやかましくする必要もないだろうと思いますが、しかしこれはだいたい政府が御意思を決定されているのでしようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=28
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029・金森徳次郎
○金森國務大臣 この金額につきましては、およそ見當をつけているものもありますし、なおきまつていないものもありますが、とにかく今の所はこれに該當する法律案も正式の手續を經ておりませんので、はつきりしたことは申し上げかねますけれども、だいたい私どもの今までの内輪の相談といたしましては、第二條の一項の一號の方は、今仰せになりました五千圓という額が一つの標準になります、しかしこの五千圓と申しますのは、現在の相場の五千圓ということはいかにも非常識でありまして、戰前の五千圓ということであります、今でありましたならば五萬圓という額が然るべきものではなかろうかと考えておりますし、なお皇族と天皇に對しまして額が畫一であるという理窟もおかしいのでありますから、五萬圓くらいの一般の標準によりまして、さらにこれに何か工夫をつけて、合理化するのがいいのぢやないかという氣持で只今研究しているわけであります。同樣に第二號の方にありますのも、もちろん確たることは考えられませんけれども、現在の物價を標準にいたしましたら二三十萬圓くらいの見當をつけて適當な法律案に盛りたい。これは正式にとられると困りますけれども、内部的なそういう氣持で進行しております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=29
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030・森三樹二
○森(三)委員 次ぎに財産の内譯でありますが、先般財産の總額は十五億五千萬圓と仰しやつた、今日參考の御料財産概況を、政府からわれわれに配付されたのでありますが、この中に詳細に規定されてあるこの標準も、御料財産概況の末尾の備考として、昭和二十年九月一日を基準とした概算によるものであると書いてあります、また評價基準としては、終戰直後の經濟状態を基礎にしてあるというようなことも書いてありますから、總額評價價格も變更するものであろうと考えているのでありますが、この點を一つお尋ねいたしたいと思います
なお御料財産概況のうち現金、有價證券として、有價證券の内容は國債、地方債、社債券を含む、社債券は株式とは違うのですが、お書きになつた方は社債券の中に株式も含んでおるような意味でお書きになつたのでせうか、ここには株式がはいつてないように思いますが、この點もお尋ねいたします
第二の土地につきまして、面積が總體で百三十五萬餘町歩となつておりますが、この中には田畑、山林、原野等もあると思われますが、田畑、山林等の段當の時價の評價はどの位にされてあるのか、それから陵墓地は評價の對象にははいつてないというのですが、これも國有になるのでありますが、陵墓地以外の田畑、山林の内譯の一段歩の原價をいくら位に評價してあるものか、それも聽かしていただきたいと思います
第三の立木の評價も、これは一石當りいくらというような算定をなさつたものと思うのですが、これもお伺いしたいと思います
第四の建物及び工作物、これも今日値段が高いのですが、一坪當りどのような評價がしてあるか、參考までにお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=30
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031・金森徳次郎
○金森國務大臣 御料の財産につきましては、この憲法が施行せられ、經濟法が施行せられました後におきましては、完全に政府の責任となるわけでありまするけれども、現在の所は、そういう財産につきまして政府は直接に責任を負うだけの法律上の立場に置かれておりません、これらの係數等は、實を申しますると、宮内省關係の方の調査せられましたものを受け繼いで、ここに御報告をしておるわけでありまして、その内容につきましてこまかに、實は私は存じません、もしそういう點につきましてのお質しがありまする場合におきましては、もし事情が許され得るならば、何かその方面の現實の事項を擔任しておる人に説明をしていただく方がいいと思つておりますが、いかかでしようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=31
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032・樋貝詮三
○樋貝委員長 ちよつと委員長から申し上げます、只今國務大臣のお話のありましたような事情がありますので、特にそういう方の事情を知つておる方を、明日午後一時からでも來ていただきまして、懇談會にいたしたいと思いますが、委員諸君の御同意を得ますれば、そういうことに取り計らいたいと思います。
〔「必要なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=32
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033・樋貝詮三
○樋貝委員長 多數で必要がなければ……
〔「必要があります」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=33
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034・樋貝詮三
○樋貝委員長 それは今森君の御質問からという意味でなしに、いかがと思つておりますが、實は事前におはかりもいたしたいと思つておりましたが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=34
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035・森三樹二
○森(三)委員 懇談的に聽いておくならばよいでしよう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=35
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036・樋貝詮三
○樋貝委員長 それじや委員長にお任せ願います。
〔「任せます」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=36
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037・森三樹二
○森(三)委員 それは、只今金森さんが仰しやるように、責任のない者にお尋ねしようという考えはないのです、わかる程度にお答え下さればよい、ただ參考に、社債券とありますが、株式は落ちたのでありましようね、おわかりでないでしようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=37
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038・金森徳次郎
○金森國務大臣 どうも、御指摘を受けましたが、その點私どもよくわかりませんから、懇談の方でお聽き取りを願いたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=38
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039・森三樹二
○森(三)委員 おわかりにならぬのに無理にお聽きするつもりはないのです、私は最後に、この皇室經濟法を審議するにつきまして、先般もお話しいたしましたように、われわれは宮城内を拜觀し、陛下のお言葉もいただいておるのでありますから、これに對して愼重なる態度をもつて審議を進めて行きたいと思うのであります、政府におかれましても、できるだけ技術的な機關をお設けになりまして、一日も早く皇室財産の國有に歸屬する立場を明らかにせられんことをお願いいたしまして、私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=39
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040・樋貝詮三
○樋貝委員長 竹内茂代君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=40
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041・竹内茂代
○竹内(茂)委員 私伺いたいことは、第四條の内廷費にございます「日常の費用その他内廷諸費に充てるもの」とありますが、内親王の御婚姻の費用というものがこの中に含まれるのでこざいましようか、別にまたこれだけ特別の支出になるのでございましようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=41
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042・金森徳次郎
○金森國務大臣 第四條にありまする内廷費と申しまするのは、先ほど申しましたように、いわば皇室の私的面の費用でありまするが故に、今仰せになりましたように、御婚姻の費用等はこの中に當然にはいつておるものと存じております、なおもし、そういうやうな場合に非常に特別なる經費を要するというような場面がありますれば、結局そういう時の内廷費を増加して、この豫算に計上しなければならぬということになろうと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=42
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043・竹内茂代
○竹内(茂)委員 前に委員の各位からいろいろの御質問で、私の伺いたいことはだいたい盡きておりますが、皇室の御費用が、今あらかじめ伺いますと、五千圓とか、五萬圓とかいうことでございましたが、今までの内親王樣の——女王樣もそうでありますが、お小遣い等が一般に非常に窮屈でありました、今までは全部が豐かにございましたから、そうでもございませんが、御結婚を遊ばす時に、そのお小遣をもつていらつしやる分があまりなくて、御結婚後にお内輪の、御自分のお小遣というものが非常に少くて、大變御不自由な思いをしていらつしやつたということは、先帝の内親王なんかにそういう例が澤山あつたのであります、これから先の皇室費用というものが非常に限定されるようになつて參りまして、成年者未成年者、お一人お一人に、一定額の二分の一もしくは四分の一というものがきめられておりますから、その定額というものがあまり少いようでございますと、やはりこれから先もお差支えが多いのではないかと思います、それでわれわれ民間の者でごごいますと、子供の時からだんだんと儉約をし、内職をして、嫁入費用をつくるというような生活をするのでございますけれども、宮樣にそういうこともおできにならないと思いますから、根本的になるべくそういうお差支えのないように、御結婚の後にお手許があまり御不自由でないようにという思し召しで、このことをおきめになつていただきたいということを、私の希望として申し上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=43
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044・樋貝詮三
○樋貝委員長 川野芳滿君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=44
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045・川野芳滿
○川野委員 私の質問は、實は今日質問の順番が廻つて來るとは考えておりませんので、政府委員の出席をお願いしておきませんかつたので、實は金森國務相では御無理ではないかとも考えるのでございまするが、しかしお答えのできる範圍において、お尋ね申し上げてみたいと思うのであります
先般宮城内の拜觀を許されまして、拜觀いたしたのでありますが、陛下のおすまいの御上殿が戰災のために燒けましたことは皆樣御承知の通りであります、しかし國民といたしましては、國家の象徴であらせられる陛下の御上殿が一日も早く復舊するということを冀うておる、こういう觀點からいたしまして、政府におきましては、この御上殿の復舊の御計畫があるか否かということをまずお尋ねしてみたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=45
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046・金森徳次郎
○金森國務大臣 この憲法の建前といたしまして、皇室の財産は國へ移る、こういうことになつておりまするが、逆に今度は、今後天皇が國の象徴としてお用いになるものは、國の方からこの設備をしなければならぬということになるのは當然であります、從つて陛下の國務をお執りになる部面、それからまたそれに關連をして、私と公けとの混同しておる部面も實はあるのでありまして、外國の使臣を引見せられるという場合におきましては、結局各方面の絡み合つておる場面もありまして、そういう面につきまして、今仰せになりましたように、御宮殿等がまずないといつていい姿になつておりまして、宮内省の一部分をこれに利用せられておるということは、實を言えば洵に申し譯ないというふうな意味が多分にあると存じております、これに對しましては漸次しかるべき方法を講じなければならぬことはもとよりでございますけれども、しかしいろいろの面を考えまして、まだ政府といたしましてはそれについて確たる方針を立てておりません、これは政府が怠慢をしておる、こういう理由ではなくて、四圍の情勢を綜合的に考えまして、まずいろいろな角度からふさわしき順序をとつて行こう、こういうふうに考えておりますから、仰せになりました點はよく拜承しておきまして、將來の方針を立てる時に用いたいと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=46
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047・川野芳滿
○川野委員 私は九月でございましたか、實は一度拜觀を許されまして、宮城内を拜觀したことがあつたのでありまして、當時御上殿が燒失いたしました所を拜觀いたしました、その後九十議會が濟みましたので、實は歸りまして、そうして、私宮崎縣でありまするか、縣民に宮城内の模樣を報告いたしたのであります、所が縣民の意向といたしまして、陛下の御上殿が燒けておるならば、もしその建築に際しては材木等は獻上する、こういうような輿論が非常に強いのであります、この輿論というものはおそらく宮崎縣だけでない、日本全國におきましてもこういう輿論が私はあるかと考えるのでありまするが故に、少くとも政府におかれては、陛下の御上殿の御造營の御計畫等を立てられ、そうしてその御計畫等を天下に御發表に相なるならば、私は喜んで國民はその御造營にお用いになる所の材木等も獻上するものと考えるのであります、それで一日も早くそういう御計畫を立てられんことを、私はここに希望といたしまして申し上げておきたいのであります
なほ第二條によりまして、一定價格を超えない財産の授受は行われるということが規定にありまするが、これは獻上品等におきましては、この條項によりまして陛下はお受けになる、こういうことになつておるかと考えるのでありますが、しかし先般栃木縣でございましたか、栃木縣の農業會の方々が自分のつくつた米を集めまして、陛下に獻上いたしたのであります、所が陛下におかせられましては、新聞紙の傳うる所によりますると、三合でございましたか、三合だけをお受けになつて、あとはお返しになつたというような記事を私は拜見いたしたのでありまするが、これは授受は今度の經濟法にも載つておりまするが、これはお斷りになることもできるかと私は考えるのでありますが、しかし國民といたしましては、從來もございましたが、自分のつくつたもの等を陛下に獻上するということは無上の先榮である、また篤農家におきましては、陛下に獻上するためにつくつておる、こういうような篤農家も全國にあるのであります、そういうような觀點からいたしまして、折角自分が精神をこめてつくつたお米——その米も政府が要求する所の供出量は全部供出いたしまして、そうして自分に與えられた飯米の範圍内において陛下に獻上したその米を、陛下はお受けにならせずしてお返しになつた、こういうことに相なりますると、折角國民の象徴といたしまして、心の奧より陛下をお慕い申し上げておるその心の繋りに、私は一點のひびが入るかとも考えるのであります、それで、これは内規等によりまして、或る部分の獻上されたものは陛下がお受けになるという規定を一つ政府においては設けてはどうかと私は考えるのでありますが、かかる内規等の規定を設けられる御意思があるかどうか、この點を伺つておきたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=47
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048・金森徳次郎
○金森國務大臣 現在は、宮内省の事務は全く政府と責任を異にしておりまして、政府から全然これに對しまして發言のできない状況になつておりまするために、詳細の事情を存じてはおりません、今後新しき憲法が施行されるやうになりますれば、宮内省の事務はもとより政府の責任になつてくるわけでありまして、從つて政府におきましては諸般の觀點から合理的なものをつくり、合理的な方針によつて行かなければならぬことと考えておるわけであります、今内規の點を仰せになりましたが、いずれかような場合に内規ができることに——これは現在だつて大部分については宮内省側も内規がおありになることと存じております、政府にこれが移りましたる場合にも、實際の運用においては、内規の類いが自然できるものであろうと豫想をいたしておりますが、その時にどういうふうにきめますか、御趣意の通りにできますかどうか、ちよつと今からはつきりきめかねますが、御趣意はよく諒承して實行の方向にそれを用いたいと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=48
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049・川野芳滿
○川野委員 新聞紙上等に現われておりまする輿論の動向と申しますか、さういふ動向から推しますると、いろいろ陛下に對しましても御窮屈なる要望をいたしておる向きもあるのでありますが、しかし私の見た全國民の聲といたしましては、私は獻上品等は遠慮なくとつて貰いたい、また獻上品等を陛下に差し上げて、そうして自分は働きがいがある、こういうことを自覺いたしておる國民の多數あることを私は承知いたしておるのであります、それで政府におきましても、新憲法實施に當りましては、こういう聲のあることもよくお考えをいただき、そうしてこういう規定をおつくり下さらんことを切望いたします、なおこれは金森國務相に對する質問は御無理かと思うのでありますが、實は承りますと、東京都の都市計畫によりまして、宮城内を道路が通るということを、ちよつと實は承つたのでありますが、そういう御計畫がございますかどうかという點をお尋ねいたしたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=49
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050・金森徳次郎
○金森國務大臣 お尋ねの點は私はその方のことに關係がないものでありますからよく存じませんので、いづれとも御答え申し上げかねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=50
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051・川野芳滿
○川野委員 それではこれはまたの機會に質問することにいたします、なお御料財産の問題でございまますが、御料財産のうち、特に御料林について少し申上げたいと思うのであります、先般の御説明によりますと、御料林等も國有林のうちに包含いたしまして、そうして適當な措置を考えるというような御答辯もあつたのでありますが、今日全國の森林を調べてみますと、まことに莫大なる國有林があるのであります、私の國の宮崎縣を調べてみますと、ほとんど森林の九割というものが國有林であるのであります、その國有林の拂下げ等につきましても、いろいろ政府に陳情等もいたしますが、政府におきましては、調査々々で日をお暮しになりまして、なかなか實現がむずかしい、かかる際に、この莫大の御料林を國有林の中に包含されまして、いろいろ適當に御處分されることに相なりましても、實際問題といたしましては、その處分というものは不可能であるかと私は考えるのであります、しかるに現下のわが國の情勢を考えてみますと、戰災復興のためにいろいろと資材が要る、しかるにその資材難のために大多數の國民が困つている、或は戰災のために、或は引揚者が家が無くて、そうして上野の地下道の中でやすんでいるという事情でございます、少くともこういう實情を考えられて、御料林のある部分を、この際一つ國有財産に移讓される機會に、これを國民に拂下げたならば、非常に私は時期に適した處置であり、また國民も喜ぶことと考えるのでありますが、かかる事柄に對して、政府の御所見をお伺いいたしたいと思うのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=51
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052・金森徳次郎
○金森國務大臣 事柄が農林省の所管に屬しますために、私からお答えを申し上げますことは、權限を越えるというような意味がありまして困難でありますが、だいたい農林省側の意向を私どもが承知いたしておりまする所では、森林に關しまする行政は、各方面からの研究を要するという立場から、保存を要する部分すなわち要存置林と保存しなくてもいい不要存置林というものを國土保安の見地と、それから國の資源を保全する見地、この兩方面から觀察して研究をしております、そうしてそれによつて漸次實行して行く、こういふ態度になつておると聞き及んでおります、そういふことが原理としては私は正しいと思つております、ただ實行の面におきまして甚だ進行が遲くて、恐らくは御趣旨に合つていないという所からの今の御言葉であろうと思つておりますけれども、その點は國の再建の場合でありますが故に、最大の努力をして、早くすべてのものを運ばして行くことが當然と考えておりまして、實行の面のことは存じませんが、さような考えをもつております、御趣旨のある所は一つ農林大臣によく通じておきたいと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=52
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053・川野芳滿
○川野委員 この問題をこれ以上金森國務大臣に御質問することは、御無理かと考えますので、この程度にしておきますが、最後に、これは先刻森委員からも御質問がございましたが、皇室經濟會議の議長のことでございます、これは國會側から四人、政府側から四人ということになつているようであります、そういたしますと、すべて皇室經濟會議というものは和やかに行われるものと私は信じておりますが、しかし場合によつて政府側と民間側との意見が對立するということもないとはいえないと考えるのであります、その場合、これは議長が決をとるということになつておりますので、總理大臣がその決をとるということになりますると、政府の意見通りに議が決定するということに相なるかと私は考えるのであります、そこで今日民主主義の觀點からいたしますならば、少くともこの議長だけは、民間側に讓るべきであると考えるのであります、少くとも衆議院議長をもつてこの皇室經濟會議の議長にすることが適當であると私は考えるものでありますが、これに對する御意見をお伺いする次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=53
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054・金森徳次郎
○金森國務大臣 お尋ねの點はいろいろの觀點から考えて見なければなりませんが、今までの總理大臣と今後の總理大臣とは全然——實際において全然ともいうべき程度に姿が變つて行くと思つております、今までの總理大臣は、なんといつても官僚的と外から見らるる形でありますけれども、今後は憲法の改正の趣旨によりまして國會においてこれを指名するということになり、國會に對して全責任を負うという立場になつておりますために、總理大臣の行動が國民の意見と反するという疑惑は、不自然であろうと考えております、そこでこの會議を開きまする時には、議長というものは、ほんとうは一面から申しますると、權能が少いものでありまして、兩方を裁くものであつて、自分は積極的に意見を述べられません、まず意見を述べる人は、議長でない、すなわち衆議院、參議院の議長、副議長が意見を述べられて、最後に問題がどつちかにころぶという時に、國民の方面をも強く代表し、しかもそれと少し離れた所にある者がこれを解決するということが、割合い實際的ではないかと私どもは考えております、御意見はあらうと思いますけれども、そういふ趣旨でこの案はできているわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=54
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055・川野芳滿
○川野委員 まだ質問もございますが、金森國務大臣に對する質問はこれで打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=55
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056・樋貝詮三
○樋貝委員長 久芳庄二郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=56
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057・久芳庄二郎
○久芳委員 先般の本會議で金森國務相から、いわゆる委任立法のようなことは、なるべくやめたいという私の質問に對する御答辯がありましたが、まだ納得が參りませんので、まずこれをお伺いしたいと思うのであります、從來は御承知のように法律があり、その施行令があり、またそれに對する施行細則があるというようなふうに、實行の面は他の規則に讓つていることが澤山あるのでありますが、こういうことはなるべく避けて、できれば本の法律一つで臨みたいものと考えるのであります、しかし從來簡便な方法がありまして、勅令というものがあつたものですから、割合簡單にこういう補助立法ができておつたのでありますが、今後はすべて國會でやる、こういうような點もありますので、さらにその必要を感じておるわけであります、本法案を見ますと、先般本會議で指摘いたしましたように、法律で定める一定額というものが二條にも四條にもある、六條には別に法律に定める定額、こんなのがいろいろとありまして、これをむしろこの皇室經濟法で直接にきめてしまつておいた方がいいのじやないか、それならば一本で解決できるじやないか、何故に今これをわざわざ他の法律に讓り、別の法律をつくつてそれに讓ろうとするのであるかという點であります、これについては先ほどからお話しがありましたが、第二條の第一項に別に法律で定めるということの意見については、ほんとうにこれは含みであるというわけでお話しがありましたが、研究がまた中々むずかしいという點もあるだろうと思いますけれども、しかしながらいずれこれは來年の五月三日からは實際に行わなければならぬ、それでなお非常に變更があるという御議論もあるでありましようが、しかし變動があつて變更する場合にも、法律であるからやることはやらなければならぬ、手續の煩瑣ということは同樣のことであります、それでいずれ來議會には今のここに伏せてある所の一定額というものも全身を露呈しなければならぬ、もし今日あまり變動がひどいからということになれば、むしろこの法案全體を來議會に廻しても、この伏せた文字をはつきりしておいて、一本にすべきではないか、これは別の法律できめておいて、また變更する時でも、やはり國會にかけなければならぬ、手續は同樣なのであります、法律であるからやはり國會を通らなければならぬ、かように考えられてならぬのでありますが、それがどうしても他の法律によらなければならぬという、その理由をまずお聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=57
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058・金森徳次郎
○金森國務大臣 純理論といたしましてはお説の通りと考えております、私ども自身の立場から申しましても、一つの固まつた法律事項が、あの法律に載つており、この法律に載つておる、一つのことを知ろうとしても、いくつかのものを對照しなければ分らないということは、これはよろしくないことであつて、できるだけ簡單なものに纏めて、それだけもてばすべてが解決するようにありたいと考えております、で只今の場合、やはりその考えが根本に殘つておることは一點疑いございません、殊に仰せになりましたように、從來は命令に委せるということになりますればそこに簡便法が生れて來ますけれども、國會の議を經ることになりますれば同じことであります、なお今までのありようを申しますと、議會に法律を出しますと、ついその法律全體の他の部分をもいぢられるということもありまして、部分を直すために全部に影響があるというのは面倒だ、これは私の考えではありませんが、試みに一面の官僚思想を代表していえば、さういうことにもなるのであります、それでなるべくばらばらにしておいて、問題の範圍を狹くするというような考え方もあり得たかと存じます、しかし憲法が改正せられて參りますれば、國會の地位というものは非常に高まるのであり、自由自在に國會において發言し、立法せられるわけでありますから、左樣な考えの成立する餘地もありません、今囘現はれておるのは全く純粹の便宜の問題から來ております、その便宜の一つは、今申しましたように、金額は比較的よく變るものでありまして、しかもその金額がここにいくつもある、こう仰せになつておりますけれども、いくつも法律をもつてきめますけれども、さういうことは別々の法律で出るということも豫想しておりません、多分一つの法律でできて來ると思つております、原則法とその中の變更する部分を二つに切離したということでありますから、もし便宜ということが他面において考えられますならば、そのくらいに法律を二つに分けましても十分筋が通り、その方がよいかと思つております、たとえば關税法というものがありながら、税率は別の法律でできておるという考え方でありまして、これも一つの行き途であり、相當殘してもよい行き途ではないかと考えております、ということと、今一つは、現在の場面においては金額を入れますことについては相當考慮しなければならぬ他の部分がありまして、先づ原則をはつきりきめまして、それからそれに基ずいて、第二に金額の面においてあちらこちらに何らの支障の起らないようなきめ方をして行かなければならないと考えております、この見地から二段に分けておく方が都合がよいのであります、また金額を盛込んだものをこの次ぎの通常會に出せばよいというのも一つの意見でありますけれども、何しろこれに應ずるいろいろの他に伴う順序がありまして、なかなかさういうふうにいたしますと、事によると憲法の實施に手をつけなければなりませんし、そこでいろいろのことを考慮した結果、かように二つに分けたわけでありまして、一つお許し願いたいと思つております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=58
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059・久芳庄二郎
○久芳委員 條文のことはそれで諒承いたしました、實際問題として、先ほどのように變動のある時であるし、研究調査も簡潔には行つておらぬ、先ほど第二條第一項のおよその見當、見透しというか、お話もございましたが、第四條の内廷費或は宮廷費、皇族費等の今日の所の研究で、その御額というようなものがお聽きできれば、またそれについて國民としては考えなければならぬと思ひます、御無理ならよろしうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=59
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060・金森徳次郎
○金森國務大臣 第四條の經費につきましては、これもいわば責任をもつてお答えをし得る場面までは到達しておりません、私共はかような金額をでき得る限り御不足のないように計上しなければならぬと思つておりますがしかし他面におきましてそれは國民の負擔にもなることであり、他の均衡等も考えなければなりませんので、答えを正確に出しまするためにはよほど注意をしなければならぬと存じております、ただ宮内省關係者等の意見を綜合して、一體どのくらい計上するのがよいのであろうかという點につきましては、若干の考え方をもつておるのでありますが、それはだいたい現在使用されておりまするような經費を本にいたしまして、その中から省けるものを思い切つて省いて行く、かような建前で進むのでありますが、現在皇室の豫算は相當に大きいのでありまして、私共昭和二十一年度の皇室の會計というものを伺つておりますと、皇室の會計は國の會計と違いまして隨時動いて行く豫算でありますから、國の豫算のように一遍きめたらそれで固定するというのではなくて、一年中ぐるぐる動いておるような豫算でありますが、それが二十一年度の皇室豫算では通常會計の歳出が五千九百萬圓というような數字になつておるのであります、林野局の方の會計、學習院の方の會計、女子學習院の方の會計というようなものは別問題であります、一般の會計は五千九百萬圓ということになつておるのであります、これらはいろいろな方面から縮小し得べきもののようでございまして、これも宮内省側の細かい陳述がないとはつきりした計算も立ちませんけれども、今の所では宮内府の豫算をも含めて二千萬圓くらいというような意見が一つ存在しておるわけであります、そう申しますと、ここにありまする内廷費、宮廷費、皇族費の三つと、そのほかに宮内府、つまりこれは國の官廳の豫算でありますが、それを合わせましてそのくらいというような意見が一つ述べられております、いずれにいたしましても、今後とも深く研究をしなければならぬことと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=60
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061・久芳庄二郎
○久芳委員 第三に伺いたいと思うことは、これは私の研究が足らなかつたと思いますが第四條の三項と四項でありますが、内廷費の定額は法律できめられるのでありますから、その定額の變更は法律の改正によらなければならぬわけであります、そうすると第三項は當然のことであり、第四項は報告だけでは、いけないのではないか、内閣は改正法律案を國會に提出しなければならぬのじやないか、こういうふうに解釋するのであります、第三項は、「皇室經濟會議は、第一項の定額について、變更の必要があると認めるときは、これに關する意見を内閣に提出しなければならない、」とありますが、これは必要ないように感ぜられるのであります、第四項の「前項の意見の提出があつたときは、内閣は、その内容をなるべく速かに國會に報告しなければならない、」とありますが、報告でなく、改正法律案の提出でなければならぬ、こういうふうにちよつと解釋せられますので、申上げたわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=61
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062・金森徳次郎
○金森國務大臣 お説御尤もと考えております、この内廷費は過日も本會議か何かで少し申し上げたかと存じておりますが、皇室の内部の御使用の金でありますから、皇室から金が不足だとか何とかいうことは、容易にお申し出でにならない可能性があると存じております、そういたしますと、皇室では相當に御不自由でありながらも、國の方では知らないでおるというような傾きになりやすいのでありまして、たとえば現在の皇室費が四百五十萬圓にきまつたままで、世の中の經濟は非常に變更しておるに拘らず、そのまま増加していないということはやはりそういうような一つの心理的な事情があると存じております、それはよろしくないというので、この皇室經濟會議が常に注意をしておりまして、その過不足につきましてはちやんと意見を立てて、そうしてしかるべき方面に申し出ずるというのが第四條の第三項の趣旨であります、でありますからその意見を内閣が受取りましたならば、内閣はその意見を本にいたしまして、自分の判斷をきめなければならぬことになろうと思います、でありますから、多くの場合におきましては、經濟會議が變更の必要ありと言い出しましたときには、内閣もまたこれに應じて法律案を出すということは、普通の行き道としてはそうであらうと思うのであります、しかしその場合に内閣が何くわぬ顏をして——まあそういうことは絶對にないと思いますけれども、考え方といたしましては、その變更の必要を耳に入れながら何もせずにおるという恐れも、考えればあるわけであります、そこでそれではいけない、まず國會にこれを報告せよというように二重になつている、だから實際は政府で恐らく法律案を出す、そうしてもう一つ用心のために國會に出して批判の機會を十分そこに與える、こういう考え方であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=62
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063・久芳庄二郎
○久芳委員 よくわかりました、最後に簡單にもう一つ伺います、それは皇太神宮の御遷宮の問題でありますが、これは今度の憲法の改正で皇太神宮に關しては皇室の内廷のお祭りになるのではないかと思います、しかしながら皇室としては、御先祖樣に對し奉り、國としてでなく皇室として、皇太神宮の御遷宮を行わなければならないし、また行うだろうと思いますが、御用材のごときは御料林に關係いたすのであります、木曾の御料林のごときは、明治天皇は特に深い御留意の下に、檜の御用材を育成しておいでになり、二十年毎の御遷宮に備えるべき遠大な計畫を立てておいでになるのでありますが、こういうことがどうなるであろうか、私どもは大變深い關心を持つておりまするので、お伺いしたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=63
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064・金森徳次郎
○金森國務大臣 お説の點は、恐らく從來におきましては、木曾の御料林から來る木材が、皇太神宮の御遷宮の場合に大事な役割を務めたと、こういうふうに考えております、しかし今囘の憲法の改正の結果といたしまして、神社に關しまする問題は全然國の制度と別のことになりますので、そういうような面のことは、表向きの制度としては現わるる餘地はないと考えております、實際どういうような風にして皇太神宮の建設に必要なる材料等が調えられるかということは、實行面において解決せらるる外に途がないというふうに考えておりますので、私として實は御質疑に十分御滿足を與えるような御返事ができない次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=64
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065・久芳庄二郎
○久芳委員 よろしうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=65
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066・樋貝詮三
○樋貝委員長 午後は本會議で決議案が上程せらるるはずでありますから、委員會の審査は休むことといたします、明日は午前十時から開會致しまして、質疑を繼續することにいたします、本日はこれにて散會いたします
午後零時七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00819461217&spkNum=66
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