1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了ノモノヲ除ク)
參議院議員選擧法案(政府提出、貴族院送付)(第四號)
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昭和二十一年十二月二十四日(火曜日)
午前十時三十九分開議
出席委員
委員長 犬養健君
理事 松浦東介君 理事 岩本信行君
理事 廿日出厖君 理事 大島定吉君
理事 青木泰助君 理事 玉井潤次君
理事 大原博夫君
伊藤郷一君 江藤夏雄君
木村公平君 大谷瑩潤君
北浦圭太郎君 北れい吉君
小柳冨太郎君 坂田道太君
小島徹三君 田中實司君
水口周平君 亘四郎君
生方大吉君 白井秀吉君
鈴木周次郎君 佃良一君
坪川信三君 林連君
荒木武行君 八坂善一郎君
石川金次郎君 大澤喜代一君
澁谷昇次君 田原春次君
竹谷源太郎君 松澤兼人君
松澤一君 木下榮君
坪井龜藏君 豊澤豊雄君
野坂參三君
十二月二十四日委員井上知治君辭任につきその補闕として鈴木周次郎君を議長において選定した
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
厚生大臣 河合良成君
出席政府委員
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 鈴木俊一君
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本日の會議に付した議案
參議院議員選擧法案(政府提出、貴族院送付)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=0
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001・松浦東介
○松浦(東)委員長代理 それでは委員長事故のために代つてこの席を汚します、これより會議を開きます、昨日に引き續きまして質疑を續行いたします、この場合おはかりいたしますが、決して言論の自由を束縛するわけではございませんが、御承知のように會期が切迫しております關係上、本委員會で既に論議されました問題については、努めて重複を避けたいと存じますが、いかがでしようか、
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=1
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002・松浦東介
○松浦(東)委員長代理 御異議がないようでございますから、さように決しました、質疑を許します、玉井潤次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=2
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003・玉井潤次
○玉井委員 本議案に對しては、あらゆる觀點から質問をされたのでありまして、また政府の方でも本議案が完全無缺とはお考えなさらんようであります、たとえば一番問題になつております選擧費用の問題、戸別訪問の問題その他に對しても、政府は何らかの考えをもつておられるようであります、なお政府としては新しい法律をつくつてその缺陷を補いたいという御意思のようであります、從つてその新しい法律とはどんなものをおつくりになるのか、まずお聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=3
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004・郡祐一
○郡政府委員 お尋ねの御趣旨が、費用の制限等に關しまして、何らか政府において準備する所があるかという點にあるのでございまするならば、衆議院議員選擧法におきまするような費用の最高制限、これを參議院議員選擧、殊に全國一選擧區のごとき選擧の場合に、あの素朴な形をその儘用いますることは、道義的な拘束の意義すらもきわめて稀薄であるように考えます、從いまして議員候補者の收支につきまして、現在でも支出の面におきまして、買收等に費用を用いますることはもとより禁じてある所でありまするが、それ以外においても、支出の面において相當規制を加える、また收入の面におきましても何らかの方法を講じたいと存ずるのであります、さようにいたしまして、現在ポツダム命令をもつていたしておりまする收支の公開を、さらに合理的な方法によりまして、正確な收支の公開ができまするように、同時に政黨等につきましても、その會計の收支を明瞭にいたし、殊に政黨につきましては、一定の個人または團體から受入れまする寄附金等の最高額は、これを一定の限度に止めることにいたしまして、一個人または一つの團體からきわめて多額な政治資金の供給を受けるというようなことは、好ましくないという思想を表わしたいと存じております、同時にまた寄附金を政黨といたしまして、不適當な面からこれを受入れますることを防止するように、寄附金の受入れ先についての制限等も加える必要があろうと存じます、これをいかなる立法手段でいたしまするかはいまだ決定いたしておりませんが、さような各方面からの規制を加えまして、それと同時に適當な限度が發見できまするならば、最高制限額の限度もまたきめようと存じております、收入支出のあらゆる面をはつきりいたしますると同時に、一定の制限を加え、かつ收支の公開の制度を明瞭にいたし、さようにいたしまして現在よりも合理的な費用制限ということをはかりたいと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=4
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005・玉井潤次
○玉井委員 それではお聽きしますが、今の御趣旨に反對するのではありませんが、その法律は結局は參議院議員の選擧の行われる前にお出しなさる意思であるか、或はまたその後になつてようやく間に合うということになるのでありますか、それをはつきりしていただきたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=5
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006・郡祐一
○郡政府委員 既にさような立法を準備いたすことが必要であるという判斷を下しますならば、新しい國會を構成いたしまする議員の選擧、すなわち參議院議員の總選擧前に、さような立法手段が講ぜられ、從つて參議院議員選擧法の適用を見まする際には、費用制限に關します立法もまた適用を見るということは、もつとも望ましい、かつさような目途で進みたいと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=6
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007・玉井潤次
○玉井委員 それで衆議院議員選擧法と參議院議員選擧法と食い違いの點が相當あるように思われるのでありますが、それは兩方の議員の異質的だということから生ずることは別といたしまして、異質的だということ以外のその他の理由によつて、何か違つておる所があるように思われるのであります、それで衆議院議員選擧法の一部を御改正なさるという意思があるのでありますか、ありませんか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=7
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008・郡祐一
○郡政府委員 衆議院議員選擧法につきましては、先般の衆議院議員總選擧の結果から考えましても、改善を加えるべき點があると存じますが、その後における參議院議員選擧法、地方制度の改正等とも考え合わせまして、當然調和をとらなければならんと考えるのであります、相當大規模な改正案を通常議會に提案いたしたいと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=8
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009・玉井潤次
○玉井委員 今一點お聽きしたいのですが、それは今度の選擧法案の第五條の點なんでありますが、これはどなたか御質問になつたかも知れません、私おりませんからわかりませんが、重複をしたらお許しを願いたいと思ひます、それで選擧權、被選擧權が擴張されたように思われるのでありますが、この趣旨はどこにあるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=9
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010・郡祐一
○郡政府委員 國會議員が全國民の代表でありますし、また自由平等の選擧の基本原則から考えまして、選擧權、被選擧權は可及的に擴充されることが望ましいと存ずるのであります、たとえば御指摘の第五條のごとき缺格條項を、可能な限度において從來よりも著しく缺格條項自體を制限いたしましたのも、破産者、貧困者、一定の住居を有しません者というようなものは、今日政治上の無能力者と考えべきものではなくして、經濟上の各般の、殊に戰爭後におきまする影響によりまする經濟上の無能力者と申しますか、さような者である、從いまして政治上の權利の行使については何ら支障ないと認めて、これらのものに選擧權、被選擧權を附與し、またいわゆる刑餘者につきましても、その反社會性を認める必要のない部分につきましては、これまた公權を附與いたす、かような考えで、申さば新憲法の條章、或は新憲法自身が、選擧について前提としておりまする基本原則に即應いたさせまするがために擴張いたした、かような考えに基ずいておる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=10
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011・玉井潤次
○玉井委員 それに對して多少意見になるかも知れませんが、私どもの經驗によりますと、犯罪者の大部分は、一時的感情によつて罪を犯す者もありましよう、或は革新的の信念から犯罪を犯す者もありましよう、或は政治犯もありましようが、しがしだいたいにおいては遺傳とか、或はまた生來の精神的の缺陷が因になつて、罪を犯す者が多々あると思うのであります、從つて犯罪においては、犯罪を一度だけ犯したことによつてあと犯罪を犯さぬという例は非常に少いのでありまして、多くは數犯を重ねるというのがたくさんあるのであります、そういうような人は、結局は今局長の御説明のように、政治的の無能力者でないのだということは言えなくて、基本的にむしろ精神的の破綻者であり、それが犯罪を犯す原因になるということを私は痛感しているのであります、そうしますと、結局はいわゆる選擧權を擴張することによつて、そういうような人が當選する可能性ができる、一方にまた今までの自分の經歴にしても、前科があるというような經歴は發表することもできないし、みだりに言うこともできないということになるならば、選擧者が往々に誤まつた方向に進むような恐れがあると思われるのでありますが、それに對して當局の御意見をお聽きしたい、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=11
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012・郡祐一
○郡政府委員 御意見のような犯罪者の性格は十分に考えなければならぬ點だと思います、しかしながらお話のうちにもございましたように犯罪者の犯罪動機或は犯罪者の性格というものは種々雜多でありまして、刑の執行を終りまするならば一應犯罪者の反社會性というものは終結したと見るべきが、一般の考へ方として正しいと存ずるのであります、かりに若干の例外があるといたしましても、その故をもちまして、いわゆる刑餘者として差別的待遇を相當長期間にわたつて加えますることは、國家の刑餘者處遇上にも、必ずしもよい結果をもたらすものとは考えられないのであります、しかして選擧の立場から考えまするならば、意見表示能力がある者に對しては、その自由なる意見を表明させる機會を、若干の危險はありましても可及的多く與えることが、今後の民主主義の發展のために必要である、かように考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=12
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013・玉井潤次
○玉井委員 それにつきましては見解の相違になるわけでありましようが、私どもの見た所によりますと少くとも今局長の言われたように少數の者のみがそうであるかどうかということが疑問になるのでありまして、結局は私が申し上げたように本質的に犯罪を犯すすような人が相當多い、或はまた刑の執行を終るならば反社會性はなくなつたという今のお話でありまするならば、少くとも刑期間だけは、十分に人格の修養のできるような日本の刑務所組織であるならば、そういうことも言い得ると思うのであります、所が實際の面から見ますと、刑務所へ行つて來た人はむしろ犯罪を犯すように仕込まれて來るんだというように、私どもは考えざるを得ない點が多々ある、それはいくらでも例を擧げることができますが、刑務所にいるうちに泥棒する方法を習つて來た、刑務所に行つたら先輩がこういうようなことを教えたというような例がたくさんありますから、要するに今の日本の刑務所組織を根本的に改正するにあらずんば、今局長の御辯解になるようなことは絶對に私はないと思うのであります、その點に對して内務省はどういうお考えを持つているか、その點をお聽きしたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=13
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014・郡祐一
○郡政府委員 刻下の刑事政策については、さらに進歩改善をいたすべき餘地のあることは御指摘のごとくだと存じます、また選擧權の缺格を、外國の立法令にありまするように、具體的にその犯罪人について判斷いたしまして、裁判判決等によつて選擧權の付與或は剥奪を考える、これも一つの方法だと存じます、但し裁判判決の際に、さような缺格人そのものに選擧權を付與すべきか、剥奪すべきかということを判斷いたし得るや否やにつきましては、まだ疑問の點が存するのであります、從いまして仰せのように、一方において改善すべきものは改善をいたすということと竝行して、憲法に申しております基本的人權の享有という點については、最も廣い範圍において、その憲法の趣旨に則つて參るべきものであつてこれと竝行した各般の措置は、國家として十分講じて參ることと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=14
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015・玉井潤次
○玉井委員 さういうことになると、刑事政策上今のいろいろの點が考慮されないうちは、非常な危險であるということを暗にお認めになつていると思うのであります、さうすると、衆議院議員選擧法と參議院議員選擧法との違いが、さういう點において異質性を求めるのだというお考えに、理論上はなつてくるのであります、さうすると、われわれが折角考える參議院というものは、むしろ毒されるという傾向を非常に持つのではないか、こういう心配をもつている、それと同じように、各委員からも御質疑があつたように、選擧費用の無制限、戸別訪問、事前運動とからみ合つて來て、問題が起るのではないかと心配するのでありますが、それに對して政府は、何ら心配はないという御確信があるのでありましようか、一應お聽きしたい、一つ一つとしては或はどうか知りませんが、總括的に見ると、そういう危險性が非常にあるのだというように考えますが、それに對する政府の御確信をお聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=15
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016・郡祐一
○郡政府委員 私はいわゆる刑餘者に對する選擧權の擴張は、現實の選擧權の行使という點において、さように、かくのごとき擴張をしたから危險性があるとは考えていません、ただ何と申しましても選擧權の擴張によつて、恐らく來るべき參議院議員の選擧、或は衆議院議員の選擧においては、三千九百萬という多數の有權者があろうと存じます、これらの有權者は意思表示能力をもつていますが、なおその判斷において適當を缺く者が絶無であるとは言えないのでありますけれども、大量觀察としては、可及的多くの者に選擧權を與えることが、可及的多くの者の基本的人權を尊重いたすことが、選擧の結果を適當ならしめるという工合に考えています、從いまして缺格條項の整備等については、これらのことによりまして、兩院の異質性を出さうとは考へていませんから、衆議院議員選擧法を改正いたし得ます最近の議會において、それらのことは參、衆兩議院とも、全く同樣の形態にいたしたいと考えています、この度費用の制限についての一應の最高制限額を撒廢いたしました所、それらの點については、むしろそれによつて生じて參る危險性はさして考えていません、むしろ先般の衆議院議員總選擧の場合において、これに對する批判としては、取締が緩漫であつたということを指摘されるのでありますが、この總選擧におきましても、惡質の買收犯がきわめて顯著に増加いたしています、これらの傾向は、惡質の買收犯であるとか、選擧妨害であるとか、これらの種類に對しまする國家の取締りの態度等につきまして、十分強力にいたして參る面があるのでありまして、やや手續的な、或はかつて十數年前心配をいたされましたがために設けました規定等につきましては、削除いたして參りましても、選擧の公正な結果というものについては心配をいたす必要がない、むしろ今後心配と申しますか、考えて參らなければなりません所は、費用の合理的な規制でありますとか、惡質犯罪の防止でありますとか、かような點に、十分適當な立法手段を講じて參る必要があると考えておる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=16
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017・玉井潤次
○玉井委員 それではこの點はそれだけにしまして、第四條の年齡の點に對し一つお聽きしたいのであります、年齡を二十五歳から三十歳に上げたということが、一つの特異性を持たせる御主張のようであります、しかしそれは要するに立候補者、いわゆる被選擧人の年齡というものは、私どもの見解によれば何ら影響がないと思うのであります、年齡が多かろうが、少なかろうが、選擧する人の意思によつてそれはきまる問題なのであります、結局は選擧する人が、この人が正しいと思うならばその人は當選する、正しからずと思う人は當選しないという根據から考えて來るならば、年齡の多いとか少いというようなことは、いわゆる議員の特異性に何ら影響する所はないじやないかと私は考えるのであります、もう一つ進んでいうならば、むしろ日本の今の民主主義を徹底的に伸展せしめるには、年の行つた人がはたして適當であるかどうかというようなことは、非常に議論のある所だと思うのであります、なるほど政府は本案によつて、少くとも參議院というものは一つの覆審機關である、したがつて、或る程度の經驗とか知識とか、その他のものを必要とするから、年齡の高い者がいいという御意見のようであります、しかしそういうことは私に言わせるならば、むしろ間違いだということは、今申し上げたことが一つでありますが、もう一つ言うならば、年齡の多いということは、むしろ反動的になるという恐れが澤山あるのであります、なるほど經驗は積んでおりましよう、しかしその年取つた人のもつておる經驗というものは、むしろ今日では捨て去らなければならん所の經驗なのであります、そういう經驗であつた場合には、保守ということが一つの反動になるのであります民主への發展を阻碍する行爲を、私どもは反動というのでありますがそういうふうに考えて來た場合、むしろ政府の考えられておることが、一つの大きな間違いを起して、日本の民主主義というものに大頓挫を來すのではないかというような心配をもつのであります、從つて私は年齡にこだわつた考え方というものは、根本から間違いであろうと思う、かるが故に今申し上げるように、三十歳に上げたということのほんとの根據は、一體どこにあるのであろうか、私は今申し上げたような推理はなさつてごらんになつたのかどうか、それをはつきりお聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=17
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018・郡祐一
○郡政府委員 議員候補者の適格性は、有權者それ自身が判斷すべきものであつて、有權者が適當な判斷をするならば、被選擧年齡については制限を加える必要はないという論は、或る程度有力になり立つ議論だと思うのであります、ただしさようなことを極端に申すならば、選擧年齡には制限を置く、しかし被選擧年齡というものの制限を、全く撤廢するという立法がはたして可能なりや否や、この點におきまするならば、やはり大量觀察といたしましては、さようなことは困難であろうと言わざるを得ないと思うのであります、年齡を或程度高めますることは、これは人間の性格なり、能力なりを判斷いたしまする際に、年齡というものが、最も的確にその人間の思慮と分別とを現わすものであるということは言えると思うのであります、從いましてかりにそれじや年齡の高いほど思慮分別が積んでおるかというと、これはそうは申せないと思うのであります、それでは年齡の高いほどよいという考えであるかという反問でありまするならば、それはさように考えません、二十五歳三十歳と區別を設けるなら、もつと二十五歳五十歳という區別を設けたらよいではないか、さような結論にはならぬと思います、しかしながら一般的に考えて、參議院の向上性と安定性をもたせますために、從つてお話の中にもありました、或る程度の保守性を保たすために、一應年齡に差を設けて、その年齡から出て來ます、また社會的經驗から出て來ます思慮と分別を期待するのは當然だと考えるのであります、年齡の高い者が直ちに仰しやるような反動的である、かような工合には私は結論づけられないのではないかと思うのであります、反動的な思想傾向を有しまするものは、可なり年齡の低い所にもあるのであります、そうして惡い意味の保守と言い、或は反動と申しまするものは、これは社會的經驗なり思慮なりを積まない結果起つて來るのだろうと思うのであります、勿論だからと申しまして、決して衆議院議員の被選擧年齡の二十五歳というものが、思慮分別ある年齡であると申すのではありません、いずれも思慮分別が或る程度あることと期待しておるに相違ありませんけれども、それに加うるに參議院に適當した保守性というものは、それのみが全部であるとは申せません、それのみによつて參議院の特色を出せるものでは決してありませんけれども、年齡というものは何と申しましても重要な要素であります、年齡というものに、或る程度の差異を設けるために標準をおくということは、これは最早いかなる國が立法を考える時においても、常に考えるものであります、年齡を無視して國會の構成を考えることができないという方が、私は正しいだろうと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=18
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019・玉井潤次
○玉井委員 私はその點についてはこういうことはどうかと考えておるのであります、結局は參議院のような特殊性のものをつくる、或は參議院は衆議院の一院を制するという考え方から來るならば、少くとも選擧は複選にしたらどうか、參議院議員を選擧する議員を選んで、そうして選擧したら最も眞面目なよいものができるのではないかと考えておるのであります、今政府の言われるごとく、ただ年齡をどうした、地位をどうしたということだけでは、そういうことは考えられないのであります、從つて政府が意圖するように、たとえば選擧を一選擧區とするというものが百人あつたとしても、そのうち當選する人が政府の考えられるような人が當選するかどうかというならば、非常に疑問が起きると思うのであります一方に選擧費用は無制限であります、一方には事前運動が自由であります、一方には戸別訪問が自由だということになつた時に、はたしてわれわれがお願いしたいと思うような、立派な人が、そういうことで得られるかどうかというような、實際問題を考慮する必要があると思うのであります、だから實際問題として現われて來るならば、われわれが豫期しない部類の人が澤山當選して來るだろう、しかして豫期すべき人が落選する憂目に遭うということは考えられると信ずるのであります、勿論それは國民の政治的意識が非常に高まつておるならば、そういう議論は起きないでありましよう、しかし日本の現状を見た場合において、やはり衆議院議員選擧の結果を見た場合においても、私はそういうことを痛感せざるを得ないのであります、從つて政府は本案においては別でありますが、今後私が申し上げたような、複選的な選擧をやる意思があるか否や、それに對しては如何なるお考えをもつておられるのでありますか、御答辯をお伺いしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=19
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020・郡祐一
○郡政府委員 いわゆる間接選擧は、憲法の規定から絶對に否定すべきものではないと存じます、但し間接選擧の方法と申しますものは、その選擧の過程におきまして、選擧人を選びまする第一次の選擧の方がきわめて低調に相なりますか或は逆に第一次の選擧はきわめて白熱的に相成りますが、第二次の選擧はきわめて冷實になつて參りますとか、その間にまたスポイルの行われる場合がありますとか、いろいろな缺陷が生ずるのであります、たとえば自分は某に投票するという名乘りを上げまして、第一次の選擧をいたす、それはアメリカ大統領の選擧のような工合でありますと、第一次の選擧は非常に白熱いたします、逆に選擧人は何人を選擧いたすかということを、全く自由に任されまして選擧をいたす、この場合の選擧というものは、目標のない選擧でありますがために、きわめて低調な選擧に相成つて參ります、この間接選擧にはそのようないろいろな缺陷がありますので、選擧方法といたしましては、全國民を代表する選擧せられた議員という憲法の規定から考えましても、直接選擧が最も直截、簡明に、端的に、民意を表明する方法だと考えております、從いまして間接選擧を採用する考えはもつておりません発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=20
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021・玉井潤次
○玉井委員 政府の御説明によりますと、今の全國選擧と、地方選擧二つに分けた場合のことを言つておられるのでありますが、要するに地方の事情に精通した所の地方議員に配するに、學識經驗ともに秀れた全國的有名有爲の人材を簡拔することにより、參議院は特異的、異質的のものにするというのであります、ただ我々の理想としては、そう言い得るのでありますが、今申し上げるように、本當に全國的に有名有爲の人材というものが、こういう選擧方法によつては當選できるかどうかという點に對して、實際に選擧に經驗のある人から見るならば、非常に危惧の念を懷くのであります、一方において先ほども申しましたことを繰返して言うならば、選擧費用が無制限で、戸別訪問もいい、或は事前運動もしかるべしというような場合に、われわれがいわゆる全國的有名有爲の士は、そういうことを一體やるでありましようか、またやり得るでありましようか、そうするならばこれをやり得る人というものは、多くはわれわれが考える人ではなくして、むしろ出て貰つては困るような人が澤山あるということは、想像にかたくないのであります、有爲の人が出ることを豫想するならば、一方には無爲の人が出ることも考えられることでありますから、そういうことに對する危惧は政府はおもちにならぬのであるか、どうかはたして今申し上げますように、一人の大學の校長があつた、その人が立候補するというような場合に、その人はそういうような選擧費用は勝手次第だ、或は云々といつたようなことをするのでありましようか、私はそういうことをやる人は、むしろ別の人だと思うのであります、かりに私どもが立候補した場合においても、選擧費用を使うことはわれわれ恥辱だ、從つて選擧費用はできるだけ使わぬ、要するに當選するかしないかは、それは選擧民が自分に對する判斷でありますから、その判斷を求めるに必要なだけの、最も少い所の選擧費用で、當選したいのであるというような氣持をもつている人であるならば、恐らくは選擧上においては、甚だみじめな結果になる恐れが澤山あるのであります、今申し上げたように、政府はこの法案に載せられた、いわゆる衆議院議員の選擧よりも緩和されたこの條項のために、本當に逆の效果が現われるということを私は斷言することができるのであります、それに對していかなるお考えをもつておるのでありますか、これは皆樣からお聽きになつたことでありますが、私も一應疑いを述べて御囘答を求めたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=21
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022・郡祐一
○郡政府委員 全國的に有名有爲な人材を選びまするに、そのような廣い選擧區で選擧をいたしまする場合におきましては、選擧運動は必然的に、團體的の運動に相なつて參ると存じます、衆議院議員選擧の場合におきましても、個人的な運動というものは、漸次少くなつて來るものではないかと思うのであります、これは非常に制限されました選擧の場合におきましては、つまり有權者が少い場合においては、選擧の際に名乘りを擧げて、自己の政見を徹底させて、或る個人が當選をするというようなことも考えられましようが、今日の衆議院議員選擧の場合のごときにおいても、非常に多くの有權者をもつている、このような場合におきましては、平素からその人間が有權者に知られておりましても、さらにその人間が強力なる政黨、その他の團體の背景をもつているということが、選擧について絶對に必要になつて參ると思うのであります、さような意味合におきまして、殊に全國選擧區選出議員の選擧運動におきましては、個人的な運動方法から、團體的運動方法へ轉換して參ると存ずるのであります、從いましてなるほどここに立派な人がおりましても、その人が立候補屆出をしただけで當選するということは困難かと思われます、しかしながらその人について、或はお話の中にありましたように、大學の教授がある、立派な人である、それがその人の屬しました學校なり、學派なり、そういうような所から選擧運動を展開いたすということはできるのであります、そういたしまして限られました一地方だけでは、當選に要する十分の得票は得られないけれども、全國にわたりまするがために、その得票を集積いたしまして、當選をするということは可能なのであります、運動方法が團體的に展開いたして參るということ、それからさらに政黨その他の團體というものが、眞に立派な人間を推薦いたすということ、それからこれを支持いたしまするものが一地方だけでは當選することが困難な人でありましても、全國的に呼びかけまするならば、志を同じうする者によつて、出で得る、選擧方法それ自身が、かような種類の人については、必ず出で得るような選擧手續きをきめるというようなことは、不可能なのでありまして、選擧手續きは事柄の半分を規定するだけであつて、殘りの半分は、實際に選擧運動をいたしまするもの、これは多くの場合政黨でありますが、政黨等の活動にまたなければならないのでありますが、さようなものと兩々相まちまするならば、選擧運動費用の制限を撒廢いたしましたのも、金を勝手に使えというのではないのでありまして、選擧運動費用の制限のごとき、さして意味のないものを必要としないというだけであります、しかしこれにつきましては、先ほど繰返して申しましたように、何らか別途の方法は講ぜねばなりませんけれども、決してできるだけ金を使えというのではない、むしろ有名な學者等のごときものにつきましては、ほとんど選擧運動費用を使わぬ、その人の屬する學會なり、學派なりの力によつて出で得るというような途が開けるのではないだろうか、またそれを開きたい、それで全部百名をカバーするものとは考えませんけれども、さようなことが可能な方法というのが、全國選擧區の一つの特徴であると、かように考えておる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=22
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023・玉井潤次
○玉井委員 今のお話はよくわかるのでありますが、結局は團體運動方法が行われるだらう、こう仰しやるならば、その團體というものは、意味のない團體はないのでありますから、たとえば今例にお擧げになつたように、大學の教授であるならば、一つのそこに團體ができるというようなことになれば、職能代表を選ぶということは、當然の歸結になつて來るのであります、從つて大學の教授であるならば、これは學者の系統をもつた一つの團體であり、しかもそれが學者を代表した所の一つの職能代表だというふうに變化して來ると私は思うのであります、そういうようになるならば、恐らく今政府が意圖されるごとく、またわれわれが望むごとくに、ほんとうの優秀な人というものは、おのずから出て來ると思うのであります、所が現在のように自薦もでき、或はまた他人の推薦もできるというような場合においては、直ちにそれが團體運動方法に轉化し得るかというようなことは、ちよつと考えると疑問をもつのであります、しかしてその團體というものは、意味のないような一つの團體である、例を擧げて言うことはちよつと憚りますが、好ましからざる所の團體ができ上つて、それが運動するというようなことは、これは危險があるのであります、むしろ私が申し上げるように、この際參議院においては、少くとも職能代表制をとるというような方針に行くべきであると思うのであります、所がそれに對しては政府は反對の御意見をもつておられるようでありすまが、今政府委員の御説明によると、結局は今私が申し上げるような職能代表制になる一つの過程のごとく私は聞えるのでありますが、それに對する政府の御意見を求めたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=23
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024・郡祐一
○郡政府委員 參議院の構成の上に、選擧の結果が職能代表的な色彩を加味するであらうということは、相當豫測し得ることであります、しかしながらいわゆる職能代表制に直接いたしてしまうかということは、昨日もお話が出ておりましたが、現在國内に職能組織はある、しかしながらその職能組織の發達の状況は、公正に判斷して、なんといつても十分とは申せない、また日本國内の組織を職能國家におきまするような組織にいたすということは、これはとるべきことではないだらう、國民の自由な、平等な發意に期待いたしまする際には、さようなことは不適當だらうと考えるのでありますが、その論は別といたしまして、實際問題として、お話のように適當な團體、なるほど意味のない團體から推されましたものは、それだけ選擧にしましても無力であろうと思います、有力な團體が支持をいたす、しかしながらそれと同時に——職能團體と仰しやいました中に政黨を含んだお考えかどうか、はつきりいたしませんが、いわゆる職能團體で推薦をいたして參りましよう、しかしながら政黨というものが必ず候補者を立てて運動いたしますことも勿論であります、そうしてまた各人の自由平等な選擧を保障いたします際には、獨立候補者というものも當然出て參るわけであります、さようにいたしますならば、これらの團體活動というものは、事實上の問題に委ねまして、法律上これを拘束いたしません方が、自由選擧の趣旨から考えまして、最も適切であろう、かように考えておる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=24
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025・玉井潤次
○玉井委員 それでは私の質問はこれで打ち切つておきます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=25
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026・松浦東介
○松浦委員長代理 田原春次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=26
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027・田原春次
○田原委員 先ほど政府委員の御説明の中に、通常議會に衆議院議員選擧法を出すというお話でありましたが、どういう點の改正を考えて出すのでありますか、それをまず、これに關連がありますので、お聽きいたしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=27
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028・郡祐一
○郡政府委員 まず選擧手續自體の上におきまして、參議院議員選擧法竝びに地方議會の選擧がいずれも選擧管理委員會によりまして選擧手續を行うことにいたしておりますが、さような管理機關を變えることにいたしたいと考えております、それから選擧權、被選擧權につきまして、只今もお話の出ておりました缺格條項の整理等を大幅にいたしたいと考えております、それから未だ結論には達しておりませんけれども、制限連記制につきまして、種々前囘の衆議院議員の總選擧の結果經驗いたしておる點もありますので、これらについて考究いたしたいと考えております、それから選擧人名簿につきまして、現在の選擧人名簿はいわゆる定時名簿でありまして、先般本委員會において御議決を願いました臨時名簿の調整によりまして、今後選擧のあるごとにその時までに選擧權をもつに至りましたもの、また前囘の名簿の脱漏者というものを補正して參りますけれども、かくのごときでは選擧人名簿としては十分でございませんので、選擧人名簿の永久臺帳というようなものを設けまして、絶えず名簿の異動訂正をいたして參り、選擧の際には最近の状態における原簿を本にいたしました抄本によつて選擧を行う、さような名簿の調製方法に改正いたしたいと思つております、又不在者投票事由というものを可及的に擴張いたして、現在より簡易な手續で不在者投票を認めたいと考えております、それから選擧運動、訴訟手續、罰則等につきまして重點的に強化いたします部分と、それから手續的は繁煩な事柄につきましては、むしろ整理をいたすというようなことも必要であろうと考えております、さらに別表の選擧區につきましては、これまた未だ結論を得ておりませんけれども、投票の方法を先ほど申し上げましたように、考え方といたしましては、現行法のような制限連記、或は完全連記、或は單記、これらの方法のいずれかをとる、これに伴いまして投票の方法を自書式にいたすか、記號式にいたすか、さらにこれらと關連いたしまして選擧區をどのようにいたすか、かような諸項目について、現に研究を進めておる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=28
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029・田原春次
○田原委員 この法案の二、三の條文にもあるように、たとえば第三十八條後段に「衆議院議員の選擧の開票の例による。」といつたように、衆議院議員選擧法というものが別になつて、そうしてそれよりもやや特色のあるものだけを、參議院議員選擧法として選んだように解釋できるのでありますが、そうしますと、何故に衆議院議員選擧法を同時に出さなかつたか、たとえば國會選擧法とでもいうような名稱で總括的に選擧權、被選擧權、投票方法、管理方法等を總論として書きまして、第二章くらいに衆議院の項、第三章が參議院の項とやるべきではなかつたか、國會法は、現に國會全體の運營のために一本の法律を今議會に出しております、しかるに參議院議員選擧法だけを出して、衆議院議員選擧法を通常議會に讓つた理由が明瞭でない、私は同時に出すか、もしくはそういうのは一本として出すべきものであると思うが、それができなかつたというのはどういうわけであつたか、この點をお尋ねしたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=29
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030・郡祐一
○郡政府委員 今臨時議會は當初からきわめて短期間に限られたることは豫想いたされておりました、從いまして、勢い御審議を願いまする法案も新憲法の實施準備といたしまして、全くその事項が缺けておりまする種類のものについてのみこれを限定いたし、爾餘の部分は通常議會に提案をいたすという當初から方針を立てておつたのであります、從いまして御指摘のように衆議院議員選擧法の改正のできませんこと、これは本法案と對比して考えまして、事柄として御理解を得るのに相當不便であるということは十分考えるのであります、今議會に衆議院議員選擧法の政正案を提出いたしませんでした理由は、專らさように議會が短期の議會であり、そうして全く現行のいずれの法令にも規定いたされておらない部分についてのみ規定をいたすという理由からなのであります、お話の中にございました參議院議員選擧法は、衆議院議員選擧法の例によつております部分がきわめて多いのであります、これらの點につきましても、手續きの點につきましては、どこまでも衆議院議員選擧法が基本的な事項であつて、これを引用いたしますなり、或は準用いたします形式において、參議院議員選擧法は構成されているのであります、一本の國會議員選擧法にしてはというような御意見、これはたとえば地方制度につきまして、一應現行法のままで各地方制度を改正いたしまして、さらに次ぎの通常議會で一本の地方自治法にいたしたいと考えているのであります、さような工合に、手續きとして、まことにものを繰り返えすようなことになるのでありますが、とにかく參議院議員選擧法ができ上らない状態におきまして、事態を遷延しますことは、まことに困ることでありますから、とにかくこれを拵える、そうして早急な機會にだんだん理想的な内容なり形式なりを整えて參りたいと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=30
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031・田原春次
○田原委員 どうもそこの點が私にはわからないのでありますが、國會選擧法というか、またさらに一歩進んで各種選擧法というようなものを立案し、その中に參議院と地方自治體の選擧法、衆議院の選擧法を入れても十分間に合つたと思うし、またこの議會も大體會期は終るのでありますが、この參議院の選擧法も衆議院には隨分遲くなつて廻わつて來たのでありまして、非常に審議の期間が少いのであります、しかるに參議院は大體來年の憲法實施後に成立するのでありまして、來る通常議會に出しても決して遲くないのであります、衆議院の方はもろもろの政治情勢によりまして、臨時議會中といえども解散の可能性もあり、また來る通常議會までかりにの内閣が續くとしても、その會期中にまた解散の可能性もある、衆議院についての選擧法こそ先に修正の方針をきめられ、これを出しておくべきだつたのでありまして、これが遲くなつた以上は、むしろ政府は、この參議院議員選擧法を撤囘して、來るべき通常議會に完全なる選擧法として、總論的には各種の選擧法の基準法、それから各條的に各院の構成をやるべきであると思うが、そういうふうに撤囘されるお考えはないか、審議の期間を通常議會までもたしてはいかがかと思いますが、御意見を伺います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=31
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032・郡祐一
○郡政府委員 すでに新憲法におきまして、國會の構成上參議院というものを置きますことを定められます以上、これの選擧手續きというものは、最も急速に定められておらなければならないのであります、なるほど衆議院には解散ということがあるのでありますが、先ほど申し述べましたように、若干の改正を考慮いたします部分はあるにいたしましても、衆議院議員選擧法は現在存在いたしております、これに對して參議院議員選擧の手續きというものは、全く存在しておらないのであります、この手續きをあらかじめ備えておきますということは、事態の最も急速を要するものなのでございます、かような意味におきまして會期が切迫いたしておりますけれども、なんといたしましても本議會において御協贊を得まして、そうして憲法と相竝びまして、參議院の選擧手續上の準備というもは完成しておくことが必要だと、政府といたしまして考えておる次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=32
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033・田原春次
○田原委員 次ぎは各條項にわたつて二、三御質問申し上げたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=33
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034・松浦東介
○松浦(東)委員長代理 ちよつと田原君におはかりいたしますます、この際厚生大臣が御出席になつておりますので、昨日大澤君から質疑のありました勞働組合と選擧運動の關係について、當局の御答辯をお願いしたいと思いますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=34
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035・田原春次
○田原委員 結構でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=35
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036・松浦東介
○松浦(東)委員長代理 それでは何分厚生大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=36
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037・河合良成
○河合國務大臣 昨日勞働組合が、參議院議員の選擧運動をやつてよいかという御質問があつたそうでありますが、勿論差支えないと思つております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=37
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038・大澤喜代一
○大澤委員 それでは念のためにお伺いしますが、勞働組合が參議院乃至衆議院、これらの選擧に自由に活動できるということは、言葉を換えて申しますと、勞働組合は政治活動が自由なんだ、こういうふうに理解してよろしいかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=38
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039・河合良成
○河合國務大臣 勞働組合は政治的活動をやつてよろしうございます、しかし勞働組合が政黨みたようになりまして、政治が主になるということになりますと、現行の組合法の規定に觸れる所があると考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=39
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040・大澤喜代一
○大澤委員 政治が主になるということは、なるほど現在の勞働組合法の第一條に牴觸すると思いますが、しかし主であるかもしくは主でなく五分と五分であるかということは、相當判斷がむずかしいのじやないかと思います、かりに主でなく、少くとも勞働組合が本來の經濟的な活動をする程度の自由さ、そういつたもので、政治活動でない場合においては、それは現在の勞働組合の第一條に牴觸するかしないか、またそれに對する政府の見解はどうであるか、それから今一つはなぜそういうことを私がお尋ねするかと申しますと、大臣も御承知だと思いますが、極東委員會では勞働組合十六原則というものを決定しまして、マツカーサー司令部を通じて曰本政府の方にもそういう指令が近く來るのじやないかということを新聞に書いております、それによりますと、特に勞働組合が政治活動に參加し、政黨を支持することを認めねばならないということを謳つているように各新聞が書いております、少くとも極東委員會がこれを擧げたということは、私どもの考えによりますと、日本の勞働組合が從來までとつて來た程度の、政治的な活動というものを、單に現在確認したというのではなくて、さらに一歩進めて、現在の日本の情勢に應じて、日本の勞働組合が現在よりもさらに積極的に政治的な活動をしても構わないのだという見解を示したのではないかと自分は考えておるのですが、この極東委員會の勞働組合の政治活動の自由ということに關する政府の見解も、合わせてお聽かせいただきたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=40
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041・河合良成
○河合國務大臣 第一のお尋ねですが、そのどこまでが政治が主であるかどうかという認定の問題になりますと、これは事實認定の問題であつて、認定すべき權限をもつたものが認定するほかにやりようがないと思いますが、政治活動を主として、政治活動をやるということに對する認定は、或は勞働委員會がまず認定することになつておりますから、勞働委員會の認定によつて決定することになつておるそうであります、それで事實問題として決定して行くと思います
それから第二の點につきましては、まだこまかいことはわかりませんので、どういう趣旨であるかということは明瞭に分りませんが、私どもが只今信じておる所では、今政府の考えておる所と、同じ線のことなりというふうに考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=41
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042・大澤喜代一
○大澤委員 そうすると厚生大臣は、極東委員會の原則指令というものも、だいたい今大臣の考えておるのとほぼ同じだという考へ方におられるのですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=42
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043・河合良成
○河合國務大臣 そうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=43
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044・大澤喜代一
○大澤委員 そうすると別な言葉で申し上げますと、勞働組合がこの十六原則の指令に基づいて、經濟活動同樣、もしくは同樣以上に政治的な活動をした場合においては、政府はこれも勞働組合法の違反と見なされるかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=44
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045・河合良成
○河合國務大臣 同樣、同樣以上というようなことの問題ですが、抽象的と申し上げることは非常に困難ですが、ともかくも勞働組合は政治活動をやつてよろしい、しかしながら組合法第一條によつて、主として政治活動をすることになれば、現行法において、それは解散の理由になつておる、それでその認定を勞働組合がやるのだという建前になつておりまするから、端的に言えば勞働組合が政黨——政治上の政黨みたいになつてしまつては、これはよくないと思つております、そういう法の精神である、それだからその意味において、日本の法律の解釋としては、一つの線がはつきりしておりますので、それで極東委員會の内容はよくわかりません、またまだ司令部から何らの指示もありません、だからここでそれを捉えてどうということはできませんけれども、私らの氣持では、政治運動はやつて差し支えないのだが、勞働組合は政黨化するという所に重點が行くのはよくなかろうという意味において、今の日本の法律と同じ趣旨なりというふうに考えておるということを申し上げておきたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=45
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046・大澤喜代一
○大澤委員 よくわかりました、但し勞働組合というものは、本來經濟活動を主とするものだということの考え方自體が、われわれからみると納得しかねると思うのです、というのは、いうまでもなく、どんな經濟的な問題でも、それをはつきり政治的な問題と區別するということは、むずかしいことじやないかと思うのです、經濟活動、政治活動という分野を、はつきり區別することは、本來原則としてむずかしい、ですからこれが經濟的な活動である、これが政治的な活動である、こちらが主でこちらが從だということ自體の判斷というものは、實際はむずかしいのじやないかと思います、ですから、この際勞働組合はいかなる政治活動をしても、それははつきり自由なんだということを、むしろ明確にしておいた方が正しいのじやないかと思いますが、大臣は經濟活動と政治活動、勞働組合のこの二つの問題に對して、現在とつている、それに對する認識がどうであるか、その點を一つ確かめてみたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=46
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047・河合良成
○河合國務大臣 只今の御質問、ちよつとはつきりしなかつたですが、結局お話しの通り、經濟活動の裏は政治活動と非常な密接な關係を持つておることは私も了承します、それからその問題の區別をどう判斷するかということの困難なことも、お説の通りである、しかしながら困難だというて問題をきめないわけに行かぬので、法律にそうなつておりますれば、それを勞働委員會の權限において、認定においてきめて行くというよりほかは仕方がない、そういう建前になつておる、今の問題は、日本の法律としてはこういう建前になつてこうだということは問題の困難ということは別として、一つの建前としてはつきりしておるということを、そのまま申し上げるのが一つ、それから極東委員會との問題に關することは、まだはつきりしませんから、私の氣持ではこういうことだろうと思うておる、この二つの點をお答えするよりどうもお答えのしようがなかろう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=47
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048・田原春次
○田原委員 續いて御質問いたします、この參議院議員選擧に制限連記制をとらなかつたか、何故第二十條の一人一票にしたのであるか、その理由をお聽かせ願いたい、關連がありますから一つお聽かせ願いたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=48
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049・郡祐一
○郡政府委員 制限連記制は、初めて先般の衆議院議員總選擧にこれを採用いたしました、その理由はこれによりまして比例代表的な投票方法へ、若干近づかせようとする意味と、有權者の撰擇の範圍を廣めようとしたのでありまするが、その結果は必ずしもよい方面のみ現われておりませんで、選擧人の眞の意思がどこにあるか、捕捉しがたいような投票も現われて參つて來ておるのであります、從いましてこれについては、現に制限連記の程度が適當だろうか、或は完全連記に進まなければならないのであろうか、いろいろの點で研究をいたしております、これに比べまして單記主義は、相當の經驗を積んで來ていることであります、現在、衆議院議員の制限連記を、そのまま參議院に取り入れますということにつきましては、衆議院の選擧方法それ自身について、今の政府といたしまして確定的な考え方をもつておりませんために、殊に百名というような、全國議員の選擧の場合を考えまするならば、制限連記の方法をとるといたしまして、何名を適當とするかというようなことは、ほとんど判斷に苦しむ所であります、さような意味合から、殊に全國議員のような有名有爲の人を求めようというような時に、有權者に全國的に判斷をいたさせますためには、ただ一人を選擧させる、これが最も簡明であり、かつ國民の習熟している方法と考えまして、單記制を採用した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=49
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050・田原春次
○田原委員 私の研究によれば、制限連記制もよくないし、無論一人一票の單記制もよくない、これは權利の縮小でありまして、たとえば定員二名の所において、有權者が一人しか選ばれないということは、權利の完全行使とはいえないのであります、二名の議員が出る所に對して、有權者は二名とも選ばなくちやならぬと思うのであります、從つて制限連記を政府は研究しようという、通常議會においてはそれを研究の對象として、衆議院議員選擧法改正を出すというようなことは、これは單記制を出しておいて、これは一人一票でありますが、それにならわして、衆議院の方も單記投票にしようという御意思がないものか、もし來る通常議會におきまして、衆議院議員選擧法が、制限連記制から完全連記制へ移つた場合に、參議院は一人一票であり、衆議院は完全連記制というような、投祭の上においての矛盾が生ずるし、それを今制約するがごとき方法を、參議院で選ぶことは私はいかぬと思う、この意味においてももう少しこれは投票方法を研究する必要はなかつたか、たとえば第三十四條を規定する時に、投票方法は衆議院議員選擧法によるとしておいてよかつたものを、特にここに「成規の用紙を用いないもの云々と入れましたのは、やがて衆議院議員選擧法にも、以前に試みておりました單記投票を適用するという考えがあるのかも知れないと思うのですが、その邊についての御見解はどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=50
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051・郡祐一
○郡政府委員 御説の中に、完全連記制が理想的な投票の形態であるというようなお話がございましたが、選擧權の行使というものは、有權者各人について平等であればそれでよろしいのでありまして、完全連記制と申しまするものは、これはひとり小選擧區單記と同じ多數代表の方法であります、これがはたして適當な代表方法であるかどうかという點については、十分研究を重ねなければ相ならぬと思うのであります、それで參議院議員の單記主義というものが、これが直ちに衆議院の投票方法を規律してしまつておるものとは考えません、ただお説のように參議院議員の投票方法につきまして、衆議院議員の例によるという形は、どの程度連記してよろしいものか、さような異樣の方法につきましては、運用が不可能であることは十分お察しがいただけることと思うのであります、要點といたしましては、全國選擧區等につきまして、特に考えまして、單記主義をとりました、これをもつて直ちに衆議院議員選擧法の改正の動向を示すものとは、お考えいただかないでよろしいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=51
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052・田原春次
○田原委員 次ぎは六十六條についての見解であります、六十六條はいわゆる泡沫候補者に對して供託金沒收ということがありますが、供託金は五十五條を見ますと五千圓ということであります、今日の五千圓というのは、恐らく立候補する者、いわんや費用の制限のないもの……、(「もう濟んだ」その他發言する者あり)そこでこれに關連して供託金の沒收だけでなく、次ぎの一期間の立候補權の停止というようなことでもつけない限りは、僅かの供託金によつて濫立する恐れがありますが、そういう點についての用意はなかつたかどうか、お尋ねいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=52
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053・郡祐一
○郡政府委員 供託金の沒收は泡沫候補の抑制であることは當然であります、抑制を理由とするのでありますが、得票を得るか得ないかということにつきましては、これはその人の選擧の結果、有權者の判斷でさように相なるのであります、その結果の故をもつて、立候補という重要な基本的權限を制限いたすということは、憲法の趣旨から考えましても到底許せないことだと考えます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=53
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054・田原春次
○田原委員 自書主義をとつて記號主義をとらなかつた理由をお聽きいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=54
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055・郡祐一
○郡政府委員 現在のような立候補者が多數出ます際、政黨によります候補者の選擇が十分でありません現状におきましては、記號主義をとりますことはきはめて不便であります、候補者自身も徒らに數多い人間を竝べまして、その中から選擇されますということは、利不利が著しく起つて參ります、候補者の整理がさらにとられますまでの間は、記號主義は採用できないと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=55
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056・田原春次
○田原委員 衆議院議員選擧法では、或る程度公營が認められております、たとえば選擧公報等——、參議院の方はそういうものをやるのかどうか、もしそれらをやらずに私營ということになりますと、おのずから衆議院議員の選擧法においても、私營自費主義ということになつて來ると思うが、その點をお尋ねしておきたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=56
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057・郡祐一
○郡政府委員 公營方法につきましては、先般も御説明申し上げましたので省略させていただきますが、選擧公報の發行は、事實紙の状況から申しましても、候補者數から考えましても不可能でありますので、經歴のみを簡單に、一人について約二百字を記載いたします經歴方法を採用しております、その他の點については、だいたい衆議院議員の選擧の場合と同樣とお考え下さつてよろしいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=57
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058・青木泰助
○青木(泰)委員 議事進行についての緊急動議を提出します、本法案に對しましては、委員會は連日熱心なる質疑應答を重ねまして、だいたいにおいて了承ができたと思います、なおまた各委員方の質疑をみますと、概ね重複のような形になつておる點もありますから、本法案に對する質疑はここで打切りたいと思います
〔「贊成」「贊成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=58
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059・松浦東介
○松浦(東)委員長代理 お諮りいたします、只今青木君より質疑打切の動議が出ました、御異議ないようでありますから、これをもつて質疑を終了いたしたいと存じます、休憩いたします、午後一時より再開いたします
午前十一時五十七分休憩
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午後三時二十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=59
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060・犬養健
○犬養委員長 會議を開きます、これより參議院議員選擧法案を議題として討論に付します、討論は通告順によりこれを許します、松浦東介君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=60
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061・松浦東介
○松浦(東)委員 私は日本自由黨を代表いたしまして、意見を述べます、本法案は憲法附屬の法典としてきわめて重要であります、しこうしてまた憲法附屬の法典でありまするが故に、今議會において圓滿通過をはかることについて、われわれは責任を痛感する次第であります、しかしながら法案の内容を仔細に檢討いたしまする場合に、理論的には筋も通り、また進歩的な幾多の美點をも含んでおるのでありますが、さて現在の日本の實情に照らしてそのまま實行に移す場合、必ずしも適當にあらざる點が一、二發見されるのであります、しかるに政府はこれらの現實的な弱點につきましては、近く何らかの適當なる法案、またすべての選擧の基本たるべき衆議院議員選擧法改正案の中におきましてこれを補正することを答辯中にしばしば繰返されました、われわれはこの政府の答辯を諒といたしまして、すなわち近く實情に副うように、適宜の處置を講ぜられることを信じまして、次ぎの附帶決議を附して原案に贊成せんとするものであります
附帶決議
選擧運動は原則として國民の自由行動によるべきで、これに諸種の制限を加うることはもとより好む所ではない、しかしわが國過去幾多の選擧實績に鑑みて、選擧事前運動及び戸別訪問、禁止、竝びに費用制限の規定を今にわかに撤廢することは時期いささか尚早と思う、よつて政府は第九十二帝國議會に適當なる法案を提出して善處せられんことを要望する。
以上であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=61
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062・犬養健
○犬養委員長 青木泰助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=62
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063・青木泰助
○青木(泰)委員 私は日本進歩黨を代表いたしまして、只今議題となつておりまする法案に對しまして、原案贊成の意思を表明いたします、申し上げるまでもなく、參議院の性格は、既に憲法において規定されておりまするから、今さらこれを論議する必要はないと思います、しこうしてその構成を基準する本法案は、通覽いたしますると、今までの選擧法規よりは民主的であり、かつ選擧の自由を認めておりまする點においては、一段の進歩と認めます、たとえば全國選擧區を設け、全國的の優秀な人物を參議院に送ろうというような條文、またこれを地方にも均霑させる、かくして參議院の憲法所定の優秀なる人物を充たさんとするこの法案については、私は贊成であります、只今自由黨代表の方の述べられましたるごとく、立候補前の運動、竝びに選擧費用の制限こういうようなことが條文に現われておりませんが、これは質疑應答の際に、政府當局の説明によりますれば、近き時期において、これらの問題は法律化するということを述べられましたことを私は信じまして、自由黨代表の方の附帶決議に贊意を表するものであります、要するに本案は新憲法附屬の重要法典でありまして、憲法の實施を目前に控えておる今日、可及的急速に、これが公布を見たいものと思つております、しこうしてさきにも申し上げました通り、選擧の自由、公正、手續きの簡素化というような點等、多分に民主主義を織り込んでありまする點から、私は原案に贊成し、自由黨代表の附帶決議に贊意を表するものであります、ただ最後にこの附帶決議に對しましては、政府當局は誠意をもつて速やかに法制化することを最後の希望といたしまして、私の演説を打切ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=63
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064・犬養健
○犬養委員長 竹谷源太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=64
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065・竹谷源太郎
○竹谷委員 私は日本社會黨を代表しまして只今審議中である參議院議員選擧法に關しまして意見を申し述べます
參議院議員選擧法提案の、政府の趣旨にありまする選擧運動に關しまする自由濶達、明朗を期したいという御趣旨につきましては、これを大いに諒とするものでありますけれども、日本の今日における選擧界の現段階におきましては、まだ完全に政治訓練、或は民主主義の徹底ということについては、われわれの所期するがごとき程度にまで至つておらないのでありまして、この際に參議院議員の選擧法案が認めるような、あまりに自由な選擧を一度施行いたしますれば、今後われわれが確立せんとする立派な選擧、民主主義體制の確立上、大なる支障を來す恐れなきを保し難い、かく考えるのであります、水がまだ完全に澄んでおらないのに、鮎を放つては死んでしまうほかない、こうした意味において、最少限度において選擧運動の方法、竝びに費用に關する制限を設けたい、そういう意味から次ぎの三箇條の修正案を提案いたす次第であります
第一は第七十六條の次ぎに、次ぎの一箇條を加えたい、すなわち第七十六條の二といたしまして、「何人も投票を得、もしくは得させ、または得させない目的で戸別訪問をしてはならない」戸別訪問の禁止に關する規定であります、自由に選擧に關する談議をいたしますことは、今後大いに奬勵せられなければならぬことでありますけれども、しかしながら政府當局の説明に聽いてみましても、われわれが子供の時分戸別訪問が許されておつたころには、候補者、その奧さん或はお孃さんなどは、草鞋をはいてあらゆる僻陬の農村にまで戸別訪問をいたした、さようなことを連想されるかも知れませんが、今日行われる戸別訪問は、細胞的に各地に分散された運動員が、軒竝みに情實、因縁その他あらゆる方法を用ひて、投票の勸誘をいたす所の行爲でありまして、かくのごとき行爲は、國民の政治意識の昂揚というようなことからおよそ離れた從來の惡習慣を、そのまま存續させることになりますので、今日の日本の選擧界の情勢においては、戸別訪問はまだ斷じて許してはならない、もう少し國民の政治的教養の向上をまつて、この禁止規定を全廢する方がいい、かく考えるからであります
第二に第七十七條の第一項の次ぎに、次ぎの一項を加えたい、「それは選擧運動の費用については衆議院議員選擧法第百二條の規定を準用する、」この規定を置くことに伴いまして、第八十四條中の第七十六條の次ぎに、「及び第七十六條の二」を加えます、というのは戸別訪問禁止に關する規定でありまして、これは七十六條の二の規定を置いた結果であります、第七十七條の第二項に選擧運動の費用の制限に關する規定を置きました趣旨につきましては、これは本委員會においても、各黨の委員からそれぞれ費用についての制限の規定を置く方がよろしいという議論があつたのでありまして、ここにその趣旨を申し述べるまでもなく、徒らに金權候補等が跳梁跛扈するようなことでは遺憾に堪えない、しかしてこうしたことを嚴正に選擧民が批判の結果、さような金權候補は斷然排撃するような、そういつた態勢にまで、日本の選擧界が進んだ上において、選擧運動費用の制限を撤廃するがよろしい、その過程に至る間においては、費用の制限が妥當である、かく考えまして、この修正條項を加えたい、こういう趣旨であります、以上の修正點を除きまして、原案に贊成するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=65
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066・犬養健
○犬養委員長 大原博夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=66
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067・大原博夫
○大原委員 私は協同民主黨を代表いたしまして申上げます、選擧區は全國一區を排して、縣一區にした方が適當であると思いまして、そう主張し來つたのでありますが、選擧區は全國一區とするも、一縣一區とするも、實際上はほとんど一縣一區と囘樣になると思いますので、この際強いてこれを固執しないことにいたしました、事前運動、戸別訪問の禁止、及び運動費の制限の三點については、現在の日本國民の政治認識の下においては絶對必要であると確信をいたします、これについては各黨同意見ではないかと認められるのであります、ただこの方法において相違し、自進兩黨においては附帶決議として、政黨法において規定せんとせられるのであります、政黨法の可否については別であります、政黨法が必ずできて、これによつて右の禁止事項や、制限ができれば、結果において同樣であると思うのでありますが、しかし第一に參議院議員選擧法を、ここで審議しておるのでありますから、ここで修正をするのが當然であると思うのであります
第二に參議院制度のできた以上、選擧手續きは完備して置くのが正しいとの、地方局長の御意見が本日もあつたのでありますが、これは正しいと考えます
第三に政黨法のできますまでに、議會の解散等が行われることも、絶無とは考えられないから、以上の三點よりして、修正の意見をもつておるのであります、その修正の點につきましては、只今社會黨から述べられたことに同意いたすのであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=67
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068・犬養健
○犬養委員長 豊澤豊雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=68
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069・豊澤豊雄
○豊澤委員 私は國民黨を代表いたしまして、只今社會黨の出された修正案に贊成するものであります、その上になおわが黨としましては希望條件といたしまして、全國一選擧區を廢止する、なお選擧公營を大幅に取り入れていただきたいといふことの希望をもつております、と申しますのは結局有名なる者、或は金をもつている者のみが選ばれるというのでは、名もなき者、或は金もない者の入口というものがあまりに狹いので、その門戸を廣くしてそれを解決するのが、この選擧公營であるというような考えをもつておりますので、その點を希望條件に入れまして、社會黨、協民黨との連合修正案に贊成するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=69
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070・犬養健
○犬養委員長 これにて討論は終局いたしました、よつて只今より採決を行いますが、念のために採決の順序を申し上げます、その順序は、まず社會黨提出の條正案について採決を行い、次ぎに原案について採決を行い、最後に附帶決議を採決いたすことにいたします、では只今より採決をいたします、社會黨提出の修正案に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=70
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071・犬養健
○犬養委員長 起立少數、よつてこの修正案は否決せられました
次ぎに原案に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=71
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072・犬養健
○犬養委員長 起立多數、よつて本案は原案の通り可決いたしました
最後に松浦東介君提出の附帶決議案に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=72
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073・犬養健
○犬養委員長 起立多數、よつてこの附帶決議案は決定いたしました
私は冒頭申し上げましたように、非常に不慣れでございますに拘らず、皆さんの御協力を得ましてこの委員會を終りましたことについて、心から御禮を申し上げます(拍手)
これにて散會いたします
午後三時四十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009111168X00519461224&spkNum=73
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