1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
増加所得税法案(政府提出)(第五號)
有價証券の処分の調整等に関する法律案(政府提出)(第七號)
戰時補償特別措置法の一部を改正する法律案(左藤義詮君外四名提出)(第一號)
—————————————————————
本委員は昭和二十一年十二月十八日(水曜日)議長の指名で次ぎの通り選定
された。
井田友平君 稻田直道君
今井はつ君 大井直之助君
河原田巖君 川西清君
神田博君 田中重彌君
田中實司君 西村久之君
松浦薫君 森曉君
天野久君 小池新太郎君
白木一平君 圖司安正君
原捨思君 舟崎由之君
細川八十八君 松岡運君
山口光一郎君 井上良次君
加藤鐐造君 佐竹晴記君
澁谷昇次君 島田晋作君
町田三郎君 松永義雄君
松本淳造君 赤澤正道君
駒井藤平君 二階堂進君
的場金右衞門君 井出一太郎君
久芳庄二郎君 疋田敏男君
━━━━━━━━━━━━━
十二月十九日(木曜日)午前十時四十六分委員長理事互選のため次ぎの委員が參集した。
稻田直道君 今井はつ君
河原田巖君 川西清君
神田博君 田中實司君
西村久之君 松浦薫君
天野久君 小池新太郎君
井上良次君 加藤鐐造君
佐竹晴記君 松永義雄君
赤澤正道君 二階堂進君
的場金右衞門君 井出一太郎君
久芳庄二郎君 疋田敏男君
〔年長者西村久之君投票管理者となる〕
━━━━━━━━━━━━━
昭和二十一年十二月十九日(木曜日)午
後一時五十五分開議
出席委員
委員長 稻田直道君
理事 神田博君 理事 西村久之君
理事 小池新太郎君 理事 佐竹晴記君
理事 松永義雄君 理事 赤澤正道君
今井はつ君 河原田巖君
田中實司君 天野久君
山口光一郎君 井上良次君
加藤鐐造君 川島金次君
島田晋作君 駒井藤平君
的場金右衞門君 井出一太郎君
久芳庄二郎君 疋田敏男君
十二月十九日委員松岡運君及び澁谷昇次君辭任につき、その補闕として早稻田柳右ヱ門君及び川島金次君を議長に於て選定した。
十二月十九日有價証券の処分の調整等に関する法律案(政府提出)及び戰時補償特別措置法の一部を改正する法律案(左藤義詮君外四名提出)の審査を本委員に付託された。
出席國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 池田勇人君
━━━━━━━━━━━━━
本日の會議に付した議案
増加所得税法案(政府提出)
有價証券の処分の調整等に関する法律案(政府提出)
戰時補償特別措置法の一部を改正する法律案(左藤義詮君外四名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=0
-
001・西村久之
○西村投票管理者 先例によりまして、私が年長の故をもつて投票管理者となり、これより委員長の互選を行います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=1
-
002・今井はつ
○今井(は)委員 投票を用いず、稻田直道君を委員長に推薦いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=2
-
003・西村久之
○西村投票管理者 今井君の御意見に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=3
-
004・西村久之
○西村投票管理者 御異議ないものと認めます。よつて稻田直道君が委員長に御當選に相なりました。委員長稻田君に本席を讓ります。
〔稻田直道君委員長席に着く〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=4
-
005・稻田直道
○稻田委員長 諸君、本日ここに増加所得税法案の第一囘の委員會が開かるるに當りまして、不肖私は尊敬する各位の御推擧によりまして、本委員會の委員長に當選いたしましたことは、まことに光榮と存じます次第であります。つきましては淺學菲才を省みませずこれをお受けいたしまして、本委員會の審議中、本席を汚させていただくことにいたします。冀くは各位の御指導御協力によりまして、本委員會が圓滿に終了いたしますことを願望してやまない次第であります。簡單でありまするが一言申し述べまして、委員長就任の御挨拶といたします。
それでは引續き理事の互選を行います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=5
-
006・今井はつ
○今井(は)委員 理事はその數を八名とし、委員長において御指名あらんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=6
-
007・稻田直道
○稻田委員長 只今の今井君の御意見に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=7
-
008・稻田直道
○稻田委員長 御異議なしと認めまして理事を指名いたします。
井田友平君 神田博君
西村久之君 小池新太郎君
舟崎由之君 佐竹晴記君
松永義雄君 赤澤正道君
右を理事に指名いたしました。
これより引續き會議に入りたいのでありますが、なおその準備が整いませんので、午前中はこれまでといたしまして、午後は一時より再開いたしたいと思います。それまで暫時休憩いたします。
午前十時五十一分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=8
-
009・稻田直道
○稻田委員長 それではこれより再開いたします。まず政府より提案理由の説明をしていただきます。上塚大藏政務次官。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=9
-
010・上塚司
○上塚政府委員 本委員會に付託となりました増加所得税法案につきまして、提案の理由を説明いたします。
本會議におきましても説明いたしました通り、商工業、農林水産業その他の事業所得者等に對しましては、前年中の所得の實績によつてその年の所得税を課税しているのであります。しかるにこの制度によりましては、國民經濟及び國民所得に著しい膨脹または收縮を生じまして、從つて擔税力ある所得者層に顯著な變化が見受けられる際には、時期的に課税上のずれを生じ、國民負擔の公正を期し難く、またその變化が膨脹的なる場合には、國庫收支の均衡を保し得ない難點があります。よつて政府は、その年の所得税は、その年の所得金額を豫算してその税金を納めるという、いわゆる豫算申告納税制度を實施いたしたく、目下税制の根本的改正について、考究を進めている次第であります。しかして本年度の實況は前年度に比し、まさにこの國民經濟及び國民所得に著しい膨脹的變化を來している次第でありまして、同時に終戰の處理、國民經濟再建等のため、當面必要とする財政需要は巨額に上つているのであります。ここにおきまして、政府は今議會に提案している追加豫算の財源の一部を求めるとともに、明年度から實施する所得税の根本的改正に對應いたしまして、國民負擔の公正と財政收支の均衡とをはかり、併せてこの際いわゆる新圓所得階層等から、できるだけ速やかに購買力を吸收するため、商工業者、農林水産業者、その他の事業所得者及び不動産所得者等で、昭和二十一年中における所得と前年の所得とを比較して、一定金額以上増加した者に對し、その増加所得を對象として、一年限りの増加所得税を課税することといたしたのであります。
ここに本案の内容について申し上げます。増加所得税は課税の便宜上、これを第一種、第二種及び第三種に三分類いたします。第一種所得に對する増加所得税の納税義務者は、昭和二十一年中の所得税法による甲種及び乙種の事業所得竝びに不動産所得の合計金額が、昭和二十一年分のこれらの所得の決定金額の基礎となつた所得金額に比しまして、増加した者であります。もしその決定金額の基礎となつた所得金額が三千圓未滿の者、またはこれらの所得金額の決定を受けなかつた者については、その決定金額の基礎となつた所得金額に相當する金額を三千圓とし、納税義務の有無を定めることといたしました。但し一定金額以下の増加所得につきましては、擔税力及び徴税技術その他諸般の事情を考慮し、課税しないことを適當と認めまして、各納税義務者につき七千圓の控除を行うことといたしました。すなわち増加所得金額から七千圓の控除額を差し引いた課税増加所得金額に對し、二萬圓以下の金額に對する百分の三十から、百萬圓を超える金額に對する百分の九十の超過累進税率により、課税することにいたしたのであります。この税率は現行の分類所得税及び綜合所得税の税率を見合いとし、本税の課税所得の性質、最近の經濟事情及び課税の時期を併せ考慮し、適當と認められる負擔となるようにこれを定めたものであります。
第二種所得に對する増加所得税の納税義務者は、昭和二十一年中に生じた所得税法による山林の所得を有する者であります。また第三種所得に對する増加所得税の納税義務者は、昭和二十一年三月三日以後、同年中に生じた所得税法による讓渡所得を有する者であります。第一種所得の基本である事業所得及び不動産所得が、毎年繼續的に發生する性質の所得であるのに對し、山林の所得及び讓渡所得は、一時の所得として偶發的に發生する性質の所得でありますので、昭和二十一年中の所得の全額に對し課税することにいたしたのであります。但し一定金額以下の所得につきましては、第一種所得におけると同樣の趣旨により、これに課税しないことを適當と認めまして、第二種所得にも第三種所得にも、それぞれ一萬圓の控除を行うことにいたしました。税率につきましても、第一種所得に對する税率を定めたのと同樣の趣旨により、現行の山林の所得、または讓渡所得に對する分類所得税の税率を見合いとし、適當な負擔となるように考慮して定めたものであります。すなわち第二種所得に對しましては、二萬圓以下の金額に對する百分の二十から、五十萬圓を超える金額に對する百分の六十の超過累進税率により、第三種所得に對しましては、二十萬圓以下の金額に對する百分の二十五乃至五十萬圓を超える金額に對する百分の六十五の税率によることといたしたのであります。
本税はこれを急速に徴收して、その大部分を昭和二十一年度の歳入に繰入れることとし、課税標準たる所得金額は、納税義務者の申告を基礎として税務署において調査を進め、今囘新たに税務署毎に設置する増加所得税調査委員會に諮問して、明年三月上旬にその所得金額を決定し、納税者が一時に納付することを困難とする税額を除くのほかは、明年三月中に本税を徴收することとし、所要の規定を設けている次第であります。
本税の收入額は、第一種所得に對する税額四十三億五千九百餘萬圓、第二種所得に對する税額五千五百餘萬圓、第三種所得に對する税額一億二千餘萬圓、合計四十五億三千四百餘萬圓の見込みでありまして、一時納付を困難とする者の延納を認めまするため、昭和二十一年度において、四十億八千餘萬圓、昭和二十二年度において四億五千四百餘萬圓の國庫收入となる見込みであります。
以上増加所得税法案につきまして説明いたした次第であります。期日押し詰まりましてまことに恐縮でありまするが、何とぞ御審議の上、速やかに御賛成あらんことを希望する次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=10
-
011・稻田直道
○稻田委員長 これより質疑に入ります。まず通告順によりまして西村久之君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=11
-
012・西村久之
○西村(久)委員 只今提案中の増加所得税法案につきまして、この法案が提出されました理由は、提案理由に明記してありまする通り、國民負擔の公正をはかり、併せて國庫收入の増加に資せんとするためだと了解するのであります。しかしながら、この各條章を眺めてみまする際に、課税が衡平ならずして不衡平になる恐れがあることを憂慮するのであります。どういう點かと申しますると、だいたいにおいて新圓を退藏しておりまする大部分は闇商人でありまして、この法律を適用しようといたしましても、なかなか適用し得ないような者が、多分にもつているのじやないかという心配をもつものであります。從いましてこの法律案施行後におきましては、正直なる農村漁村の方々がこの税法の適用を受けまして、正直ならざる闇行爲をはかる人々の手許にある新圓の徴收ということは、不可能に陷る恐れが多分にあるかのごとくに思われるのであります。そういう結果になりまする際には、結局生産増強を強調しておりまする現下の世相から見まして、純情なる國民の生産意欲は減退いたしまするし、國を擧げて救國貯蓄運動をやつておりまする所の貯蓄心はますます萎靡沈滯いたしまして、善良なる國民も貯蓄することを見合わせ、表に出ることをいやがる。こういうふうな思想を助長して來ることをまた心配するものであります。この點につきまして政府當局はこの趣意に則りまして、國民に公正なる應分の負擔を課し得られるというお心持をもつておられるものでありまするか。闇商人の退藏しておるものはこれはやむを得ん。こういうふうにお考えになつておりまするものか。まづ第一にその點について政府の御所見を伺つてみたいと存ずるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=12
-
013・池田勇人
○池田(勇)政府委員 お答え申し上げます。今囘の増加所得税法案を制定いたしました狙い所は、商工業者を主題にいたしております。殊に最近の情勢によりまして、非常に多額の利益を擧げたものを主として狙つておるのであります。從いまして四十五億三千四百萬圓のうち、甲種事業所得に對しましての徴收見込みを三十九億六千三百萬圓見込み、乙種事業所得者、すなわち農林、水産業方面からは三億七千萬圓程度の收入しか見込んでいないのであります。從つて善良なる農家が、正常に生産に勵まれまして、米價の昂騰その他によりまして或る程度の増加はございまするが、七千圓の控除を見込みました關係上、普通の農家にかかることは少いのではないか。またたまたま二町三町を自作せられまして、そうして價格の昂騰によりまして相當利益が殖えましても、一萬圓殖えたような方でも、これは控除關係で九百圓の負擔にしかなりませんので、いわゆる農林水産方面の方々の負擔が、非常に増すとも考えていない次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=13
-
014・西村久之
○西村(久)委員 第一條に掲げてありまするこの第一種所得は、本年度中に二十年度の所得を控除した所得超過に對する所得に對して、増加所得をかけるということになつておるようでございますが、この二十年度の所得額を控除される理由はいずれにあるのでありますか。その點をお尋ね申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=14
-
015・池田勇人
○池田(勇)政府委員 昭和二十一年分といたしましては、その課税標準に二十年度の實績所得を使つております關係上、昭和二十一年分につきましては、相當の税を納めておられまするから、その所得を超過する超過分に、今囘一囘限り増加所得税を課税することが、納税上また擔税の上から見ましても適當と考えた次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=15
-
016・西村久之
○西村(久)委員 私の考えでは本年課してありまする所得税は、二十年度の所得を基準として税をかけてあるのであります。二十一年度の所得は、本年の税には含まれていないのであります。昭和二十二年度からは税の課税方法を豫算申告課税法に改められると言われるのでありますから、二十一年度の課税はかくのごとき控除をなさずに當然全額を標準として税を課税されるのが、本當ではないかというような感じをもつのであります。この點私の考えが違いまするか。控除されますると二十年度標準土臺として課税されました額だけでは、二十一年度の新圓層は免除されるという結果に陷るやうに考えるものでございまするから、お尋ね申し上げるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=16
-
017・池田勇人
○池田(勇)政府委員 或る點まことに御尤もな御質問でございまするが、この所得税を豫算課税にするか、實績課税にするかということは、非常に大きな問題でございます。わが國におきましても大正十五年までは、全然豫算課税にいたしておりました。昭和二年の税制改正から昭和十五年までは豫算と實績と併用いたしておりました。或る所得の種類によりましては、すなはち配當利子所得等につきましては全然實績、不動産の貸付所得或は事業所得につきましては、一應前年の實績によつて課税いたしまするが、その時は翌年の實績によつてこれを更訂する減損更訂制度を認めております。昭和十五年の中央地方を通ずる税制改正の場合には、これを實績主義に改めるという表題でもつて改正したのでありまするが、實際は税法上から申しますると、課税標準を前年にとるというのであつて、あくまでその税は前年の所得ということになつております。これは課税標準を前年の實績でとるというのでありまして、法律的にその年分の所得と規定しておりますので、私は西村委員の仰しやるやうに、それは前年の實績で、たとへば昭和二十年の實績で二十一年を課税している。この二十一年に納めた税金は二十年の税金なりやということは、異論のある所でありますが、法律的に申しますと、二十一年分の所得と規定しておるのであります。從いまして今囘の如くいわゆる新圓層を掴まえ、國庫收入の確保をはかり、そうして來年度の豫算課税をいたす場合においては、やはり今年分においてとりました税金は控除するのが適當ではないか。もし前年においても課税し或は今年の所得にも課税するということになりますと、非常な酷なものに相なりまして、二萬や三萬圓の所得者はそうではありませんが、三十萬、五十萬ということになりますと、たいへんなことに相なると思うのであります。從いまして昭和二十一年分の所得決定の基礎となつた部分を控除し、その超過部分に課税するということが適當ではないか。もう一つ言い換えてみれば、昭和二十二年、來年から豫算課税をするのを、今年から豫算課税をするのだ。こういうふうにお考え下されば御諒承願えるかと考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=17
-
018・西村久之
○西村(久)委員 次にお尋ね申し上げたいのは、この第三種所得の讓渡所得についてでありますが、これは今年の三月三日の財産税査定後の不動産の讓渡に關する讓渡所得を意味しておるものだと思うのであります。はたしてそうだといたしますならば、ここで不動産所得者がありまして三月二日までは自分が所有しておりましたが、その後に至りまして金の所要ができて、自分の家屋、田畑を賣却して新圓を得たというような方がありまする際には、その方々の家屋賣却代金、不動産賣却代金に對しまして、所得額をその人の所得といたしまして、ここでこの増加所得をかけられるお考えであるか。そういう所得はかけない御方針であるか。もしかけるといたします時には、財産税と二重課税になる恐がありますので、一應當局の御方針を伺つてみたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=18
-
019・池田勇人
○池田(勇)政府委員 三月三日以後に不動産、船舶、鑛業權等を賣却なさつた場合につきましては、三月三日の價格を超えた場合につきまして、この第三種の増加所得税を課税することに相成つておるのであります。從つて基本となります價格は三月三日現在の價格でございますから、財産税と二重課税になることはないと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=19
-
020・西村久之
○西村(久)委員 この第三種所得の課税對象に、有價證券を取入れられなかつた理由は、どういう點にあるのでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=20
-
021・池田勇人
○池田(勇)政府委員 有價證券の賣却益に對しまして個入に課税することにつきましては、大藏省としては十數年來これが研究を續けておるのでございます。有價證券の賣却益に對する課税は、實際問題として困難でありますので、只今のごとく讓渡利得或は讓渡所得というものは、不動産、船舶、鑛業權等に限つてをる次第でございます。しかし今後の税制改正の方向といたしましては、私としてはそういうものも課税する方向に向うべきだと考えております。今囘は從來の研究より、どうしても行かなかつたので、讓渡利得はこの程度に止めておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=21
-
022・西村久之
○西村(久)委員 經費の控除に關係する問題でありますが、山林所得者は必要な經費を控除した金額ということになつておりますけれども、この必要な經費というのは、どの程度のものを山林所得者の經費に御豫定になつているか、一定の基準があるわけでございましようが、この點をお尋ね申します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=22
-
023・池田勇人
○池田(勇)政府委員 山林所得の經費は、山林所得を生ずるために直接必要である經費であります。たとえば、立木の苗木代とか、植林費とか、いろんな經費があると思うのでありますが、山林所得を生じますために直接必要な經費は、全部はいることになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=23
-
024・西村久之
○西村(久)委員 本税は申告制による關係がありまするので、納税主義者の異議等の關係は條文に見えないのかは存じませんが、もし増加所得税調査委員會の決定と、納税主義者との間に意見の食い違いを生じました際には、從前通り審査の要求、行政訴訟等の運びができるやうな形に相なるものでありますか。その點をお尋ね申します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=24
-
025・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税務署長納税告知書に對しまして、納税義務者が異議があつた場合には、一般の原則によりまして訴願または行政訴訟ができることになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=25
-
026・西村久之
○西村(久)委員 私の質問はこれで終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=26
-
027・稻田直道
○稻田委員長 次は進歩黨の方に御通告がありませんから、再び自由黨に還りまして、河原田巖君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=27
-
028・河原田巖
○河原田委員 簡單に二、三お伺いいたします。今度のこの増税によりますと、相當高額の増税になるように考えております。かくのごとく増加所得に對して増税を行うことになりますと、今後の増産竝びに國富の増進ということに、國民が熱心にやらなくなるといふ嫌いがあるのではないかと思われます。第一種の方面を見ましても、かりに十萬圓の増加所得のあつた者は百分の六十を納めまして四萬圓殘る。百萬圓を超えるものは百分の九十とられますから十萬圓しか殘らない。その差は六萬圓である。こういうふうになりますと、國民が力の限り、寢る間も寢ずに働いて増産しようといふ考えを起さなくなりはしないか、こう思うのであります。こういう點を考えますると、極端になる所の増税は相當考えなければならないのではないかと思うのでありますが、政府當局はこうした點をどう考えておられるか、儲けたものは全部とつてしまえばよろしいのだということになりますると、どうしても熱心にやらない。なんとかその日その日を働いて暮しさえすればよいのだというような考えに國民がなるならば、國家の將來は非常に心配しなければならないことになるのではないかと思うのでありますが、どういう考えをもつておられますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=28
-
029・池田勇人
○池田(勇)政府委員 第五條に規定いたしておりまする第一種所得の税率は、超過累進税でございますから、只今お話になりましたような、負擔にはなりません。一萬圓増加所得のあつた人は九百圓、十萬圓増加所得のあつた人は三萬九千五百圓の負擔で六萬圓あまり殘ります。百萬圓増加所得のあつた方でも七十萬七千圓の負擔でありまして、三十萬圓程度は殘るのであります。そうしてこの税状はやはり一囘限りの税率でございまして、今の所得税法の税率よりは輕くなつておるのであります。われわれといたしましては、増税によつて産業の復興その他を抑えることがあつたならば、これは角を矯めて牛を殺す謗りを免れません。從いまして財政、需要は非常に膨らんで來ておりますが、やはり負擔能力ということも相當考えまして、税率を盛つた次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=29
-
030・河原田巖
○河原田委員 私の今問いましたのはこれは極端でありましたので、今の累進の關係で行きますと、今の御説明のようなふうになりまするが、あまりにも儲かつたものよりも多くとりすぎると、一口に言えば申し上げるような次第でありまして、こうなりますると、あまり熱心にやらなくなるのじやないか。殊に、税金につきましては、この前の財産税法案の場合におきましても一囘きりだといふことで出された。またこれに關連したようなことが、これもまた一囘きりだということでここに出て來たわけであります。名前は變りましても、またも一囘きりだというので、名前を變えて出るような恐れもなきにしもあらずかと思つておるのであります。國家の經濟が非常に困つているこの時代におきましては、いろいろの方法をとらなければならぬのはやむを得ないとしましても、こうした高率の税金をとることばかりではなく、今度は支出の方もよほど制限しまして、そうしてなるベく高率の税金をとらないようにして、相當殘してやるといふことに考えなければ、産業の發展ということはなくなるのではないかと思うのであります。殊に、こうした所得というものが金になつておつた場合でありましたならば、これは簡單に納めることもできるかも知れませんが、かりに増加しました所の所得が、たとえば工場になつている、或は漁業用の網、船になつている。こうしたような場合におきまして、たとえば本年百萬圓なら百萬圓の工場をようやく作つて動かしておる。或は漁業に百萬圓かけてこれを動かしておる、なんとか次ぎの漁業に出たいというような苦しい仕事をしておるというようなものも、これも所得になつて行くと思うのでありまして、どうかして、それが全部あつても船が出せるか、或は工場が動くかというような所を、今のような税金をかけて行くことになりますると、工場も動かなくなり、船も出られない、魚もとれないといふことになるのじやないかと思うのでありますが、この點はどういうふうなお考えをもつておられまするか工場をやめてしまうか、また漁業もそこで中止をさせられるお考えであるかもし萬一これが納めることのできない場合に、ほかの銀行その他から金融の方法でも考えられましたならば、方法はあるかも知れませんが、そうでなければ、どうにもならぬのじやないかと思いますが、どういうふうなお考えでこれはつくられたのであるか、お伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=30
-
031・池田勇人
○池田(勇)政府委員 新所得に對しまして、この程度の課税ならば、お話のような場合は原則として起らないだらう。ほんとうの利益を全部固定資産として入れておられるという方につきましては、本年中の所得でございますから、いよいよ納税する場合につきましても、或る程度の期間のずれがございます。そういうこともありまするし、また非常に納税が困難であるという場合につきましては、延納の規定も設けております。またその方が、事業をなさつて信用のある方なら、銀行からも貸出しをいたすと考えております。納税にはこの程度の税率ならば、さしたる不都合はないのではないかと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=31
-
032・河原田巖
○河原田委員 只今申し上げましたように、具體的に今申し上げたのでありますが、かりに百萬圓の工場をつくり上げた。或は漁業に對して百萬圓をかけたというものが、今の税率によつてとられる場合に、どうかして工場を動かそう。工場をつくつただけであつて、あとの物資はない。一面に借金もあるというような者が、今の税金を納める場合に、より以上銀行で貸すこともできない、また融資の方法もない。どうしても、國策としてもやらなければならぬ事業をもつているという場合には、どういうふうになりますか。こう具體的にお伺いしたわけであります。そういうことはなかろうというのじやなくして、あとに金のない場合にはどうなりますか。こうお伺いしたわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=32
-
033・池田勇人
○池田(勇)政府委員 個々の場合につきましては、その事業の性質、また運轉資金、或は固定資産の割合等から考へてみなければ、ここでお答え申し上げることは困難と思うのでありますが、だいたいにおきまして、從來ずつと漁業をやり、或は營業をやつておられる方で、非常に儲かつたという場合には、それだけ資産も殖えておるのであります。儲けを全部徴收するというのでもございませんので、だいたい納め得るのではないか。もし萬一納めることが困難であるという場合につきましては、延納の規定もおいておりますので、この程度でよいのではないかと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=33
-
034・河原田巖
○河原田委員 延納はそのもののできるまでお待ちになる考えでありますか。もしくは今評價されたものの物納でも、今度この方も財産税と同じようにおとりになる考えであるか、この點を一つお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=34
-
035・池田勇人
○池田(勇)政府委員 これは所得に對しまする税でございまするから、物納の制度は認めておりません。延納はだいたい六箇月程度を考えておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=35
-
036・河原田巖
○河原田委員 政府はこうして次ぎから次ぎへと法案をつくり、いろいろしまして増税に増税というように考えております。これは政府は税金をとります時には、どうしても使わなければならない所の豫算を組まなければならぬ。それを補うために税金をとるということに行かなければならぬと思うのであつて、もしこれが不足した場合には、赤字公債も出さなければならぬことになるだらうと思います。しかし今まできめました所の豫算の状態を見ますと、民生安定費等につきましても、三十億圓もとつておつたものが、これが現在十月一日より實施になつても、實際に使われていないではないか。こうした點はどの程度まで使われておるのでありましようか。こうした不用の費用がありといたしましたならば——使わない費用がありましたならば、かくも高率の税金をとらないで間に合わせることがよいではないか。もう一つにおきましては、失業對策の最も重要な事業として、六十億近くの豫算をとりましても、これもまだ失業者救濟の事業として思うように働いていないではないか。こういうふうに考えるのであります。殊にこの民生安定に對する三十億近くの金というものについては、もしこの金が三十億で足りない場合におきましては、たとえ六十億にならうとも、或る一定の民生安定のために使つて行くのだというようなことも、議會では答辯されておるのでありまするが、實際に地方へ出て見ますと、これの實施が思うようでない。こういうふうに考えております。政府は今日までこの點につきまして、どのくらいの程度までやられておるか、どれだけ支出されておるか、これをちよつとお伺いしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=36
-
037・池田勇人
○池田(勇)政府委員 公共事業費等につきましては、所管が違いますので、私からお答え申し上げかねます。次の機會にその方の政府委員からお答えいたすことにいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=37
-
038・河原田巖
○河原田委員 これは豫算委員會ではありません、とる方の増税の法案だけでありますけれども、とる方だけとりましても、これを使う方も政府といたしましては十分考えて使つていただかなければならぬと思います。非常に重要な豫算としてとりましても、それが實施されていない。私はこの機會に一言申し上げたいことは、非常に生活に困るということは聞いております。これらのものを救濟して行くためにも、増税もあるものからやつて參らなければならぬことも考えておりますけれども、豫算をとりましても、實際にそれが實行されていないというのでありましたならば、これは豫算をそれほど多くとらなくてもよいではないか、税金もとらなくてよいではないか、減らしてもよいではないか、こう考えるものであります。十月一日より實施されたものが、地方へ行きましてもまだ出ていない。町を見ましても、各方面にあのデモ行進まで行いまして、民主安定の問題についていろいろの問題が起つておりますけれども、實際に豫算をとつたものを使わないで、他の方面だけ騒いでおられるということは、これは一考を要する問題だと思つておりますが、この問題はこの委員會の問題と違いますので、またの機會にこの點はお伺いたします。
そこでこの所得の増加について、先程西村委員よりも質問があつたのでありますが、闇商人等が金を持つている、増加しているというような場合に、どれをもつて見分けられることになるか。預金の額等を調べて、これによつて税金をかけられるか。申告制にしましても、申告ばかりではいかないので、結局お調べにならなければならぬと思いますが、預金高等もお調べになるお考えがあるかどうか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=38
-
039・池田勇人
○池田(勇)政府委員 新圓の預金の調査は、私は差し控えたいと考えております。できるだけ税務機構を擴充いたしまして、實際の業者について所得を掴まえる。こういう考えでおります。新圓の調査をしないというのは、これは誤解があるから申し上げておきますが、銀行或は郵便局、その他の金融機關に對しまして、全般的の調査はしないという意味でございます。實際個々の業者に當りまして收支を計算する時には、これは預金通帳を見せていただかなければならぬと思ふのでありますが、新圓の調査というのは、全般的の調査をしないという意味でございますから、左樣お考えを願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=39
-
040・河原田巖
○河原田委員 只今の政府の答辯によりますと、ここに問題があるのでありますが、個々の人についてはやる。全般的にはやらない。こういうことになりますと、ややともしますと、いろいろの個人的の感情その他によつて、この者を調べたいと地方の税務官吏等が考えました場合には、その者だけが調べられる。そうしてあすこは非常に儲かつておるようだが、あれをなぜ調べないか、こうしたような問題の場合に、あれは全般的には調べないのであつて、自分の考えでは必要がなかつた。この一言で逃げることができるようになるのではないかと思ひますので、ここに不公平という問題が起るだらうと思うのであります。こうした點はどうして公平を期せられるお考えでありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=40
-
041・池田勇人
○池田(勇)政府委員 民間の全部の人に對して調査することが望ましいのでありますが、期間竝びに人手等の關係から、全部の方を調査するということは、ほとんど不可能と思ひます。從ひまして適當な標準となるべき方について調査することに相なるのであります。各個人の實際の増加所得につきましては、増加所得税調査委員會に諮問いたしまして、各階の代表者、經驗者、或は當業者等の意見を參酌して決めて行きたいと思います。今囘は非常に短期間でございますので、まず税務協會委員、各業種から選びまして、税務に對して御協力される方を任命し、そういう方の御意見をまず十分お聽きして、これから調査いたそう。こう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=41
-
042・河原田巖
○河原田委員 只今調査委員をおつくりになるということでありましたが、その調査委員は結局官選によつておつくりになるのでありましようか、或は選擧その他によつて各階の代表を出されることになるのでありましようか、その點をお伺いいたしたいと思ひます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=42
-
043・池田勇人
○池田(勇)政府委員 從來所得の調査に當りましては、納税者から選出せられた所得調査委員で審議しておつたのでありますが、今囘はその選擧の時日もございませんので、官選によつてやりたいと思ひます。官選によることにしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=43
-
044・河原田巖
○河原田委員 この官選の委員によりまして、こうした一般の所得を調査することになりました場合に、民主的に行かない、場合によりますといろいろの勢力その他によりまして、一方に偏するような恐れがありはしないか。こう心配するものでありますが、こうした心配はないようにお選びになることができるかどうか。この點を重ねてお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=44
-
045・池田勇人
○池田(勇)政府委員 從來の所得調査委員程度の數では、實際の調査が十分に參りませんので、各税務署におきまする増加所得税調査委員會につきましては、相當に數を殖やしまして、そうして各方面の方に出ていただきまして、民主的な答申のできるような組織にいたしたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=45
-
046・河原田巖
○河原田委員 私はこの税金に對しましては、あくまで公平を期さなければならない。こう考えるものでありまして、この場合におきまして、いろいろの都合で今囘は公選とすることができない、官選でやらなければならぬ。これはやむを得ないものと認めます。そうなりましたならば、各界より適當な人物を、あまり人員を制限することなく網羅されまして、そうして決して一方に偏することのないようにやつていただかなければならぬと思うのであります。それからこの調査に當りまして、先ほどの御答辯のごとく現金或は封鎖預金、或は銀行預金というようなものにつきまして、いろいろ調査される場合に、先ほど非常に苦しい御答辯のようでありましたから、強く追究いたしませんが、或る者についてはどこまでもこれを調査して行く、或る者については調査をしない。全般的にやらない關係上、こうしたことになるのでありますが、その場合に、あまり極端なる所の、各人の經濟を干渉してまでやるというようなことがなく、その點はなるべく角を立てないで、效果を大ならしめるようにやつていただかなければならぬのであります。これがためには、地方の税務官吏等も長く同地におりました者は、これは今日までの税の取立てその他につきましても、いろいろな情實がございますので、この際思い切つて税務官吏を相當數地域を變えるなり何なりしまして、新規の方向に向つて公平にやられることが必要ではないか。實際地方を見ますと、實際の個々の問題をここに申し上げますると、個人を攻撃しなければならぬ問題もいろいろ起つたりしますから、それは遠慮いたしまするが、非常に感情その他まで挾みまして税金を取立てておるというようなことがあります。一個人ではなく、部落をここに擧げて所得税の徴收の例を申し上げますと、或る部落におきまして三月三日の時の預金が五百萬圓であつた。普通の部落は二、三百萬圓であつた。一部落だけが約二百萬圓ばかり預金が多かつたということを、ここを口實にしまして、その部落に所得税を二百萬圓近くかけておる。他のこれと同樣の部落が約十萬圓が二十萬圓にしかならない。約百八、九十萬圓というものを、その部落に多く税金をかけておるというような實例もあるのであります。こうした點を考えましても、よほど愼重を期してもらわなければならぬのと、いろいろの情實關係も長くおりますとありますので、非常な重要な地位にあります者は、こうした過渡期におきましては、その地を變えて、新規の面よりまた調査される、研究して調査されるということを考えていただかなければならぬのではないかと思つております。ただ署長だけを迭えましても、實際の業務についておる者が地方に長くおつて情實關係が起りますと、公平を期し得られないという場合が多いのでありまして、この點を十分に考慮願いたいと思つております。なおいろいろ質問したい點があるのでありますが、時間を非常に短縮してやれということでありますし、またほかの法案もこの委員會に付託されるということも聞いておりますので、もし同じ委員にほかの法案が付託されました時には、なお質問さしていただくこととしまして、この法案につきましてはこれをもつて質問を打ち切らしていただきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=46
-
047・稻田直道
○稻田委員長 社會黨の方より大藏大臣の出席を求められておりますが、なおG、H、Qに行つておられまして、歸られぬそうであります。政務次官が來るとかいうことでありますが、御質問はなさいますか、なさいませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=47
-
048・川島金次
○川島委員 やります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=48
-
049・稻田直道
○稻田委員長 川島金次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=49
-
050・川島金次
○川島委員 私は大藏大臣に對する質問を保留いたしまして、主税局長から御意見を一應承つておきたいと思います。まず最初に、今度大藏當局は明年度から豫算課税をやることにだいたい決定した模樣であります。しかるに一方において大藏大臣は、先般の議會から今議會に至るまで、インフレーシヨンに對して、きわめて樂觀的な強硬論を振りかざしている。その口吻から見ますると、明年の諸物價というものは、今でさえも横這いであるのだから、明年あたりの物價というものは、今以上に恐るべき状態になろうとは考えられない、というような意味のことを、繰返し豫算總會等においても述べておられることは、主税局長も御承知の通りであります。しかるに突如といたしまして、大藏當局が豫算課税と睨み合わせました今度の増加所得税というものをでつち上げられたのであります。一體豫算課税をするということは、その年の收入實績を明年度とることは、物價その他の關係で負擔の衡平を期することもできないし、また國庫の收入の上においても種々なる困難があるであろう。こういう意味で豫算課税というものをまず考え出されたのに違いないと私は思うのであります。そうすると、この豫算課税というものを考えたということが、只今申し上げたような理由といたしますれば、大藏大臣は物價は横這いだ、明年も大したことはない。しかるに豫算課税を考え出した大藏當局自身においては、明年度の物價は今年の物價よりも上るであろう。すなわちこれを言い換えれば、紙幣價値が減價するであろうということをあらかじめ含みにおいて、この豫算課税というものを突如としてこの年末に當つて考えられたのではないかという節が私には感じられるのであります。この點につきまして、一體主税局長はそういう觀點に立つての豫算課税と思われているのでありますか。一體どういう考えでこの豫算課税というものを當局が考えられたのであるか、その點をまず一つお伺いしてみたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=50
-
051・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得税は、その年の所得に對する所得税をその年に納めるのが一番いいやり方ではないかと私は考えておるのであります。來年の經濟状況がどうなるかということにつきましては、私は今の程度で行くことを念願いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=51
-
052・川島金次
○川島委員 だいぶまことしやかな御答辯でありますが、私は繰返して申し上げますが、明年は物價が高くなる。物價が高くなるから政府は明年、今年の實績によつて税金をとつたのでは、その税額というものはいわゆる紙幣減價になつてしまう。そこでこういう豫算課税というものをにわかに考えたのではないかということを私は繰返して申し上げますが、想像するに難くないのであります。その一面に大藏大臣はしきりと物價は横這いだ、インフレは心配ないのだということを繰返しているという所に、私は大きな矛盾があるのではないかと、そもそもこの法案を見て考えられる。今局長は、そういうことのないような希望だというようなお言葉でありますが、實際の面からいえば、物價は上ります。上つて紙幣價値が減價するのであります。減價したのでは、國庫の收入が今四十億とつたのと、來年四十五億とつたのとでは、インフレーシヨンが惡化すれば、その四十五億圓が實際は國庫收入になつても二十億圓きりの價値がないというようなことを非常に心配をして、泥繩式にこういうことが考えられたのではないかということを、私は確信をもつて言えるのでありますが、もう一遍、さういう簡單な答辯でなく、あなたの良心に愬えた確信ある御答辯を願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=52
-
053・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得税課税につきまして、實績によるか、豫算によるかということは、先ほど申し上げましたように、非常な重要な問題でございます。歴史から申しましても幾多の變遷を經ておるのであります。經濟が膨脹の形をとる時には、私は豫算課税の方が收入の確保ができると、こう考えております。しかし來年は經濟の膨脹がこれ以上になると、こういうお話でございますが、私が豫算課税制度を只今研究いたしておりますのは、これは經濟がうんと膨脹した場合には非常によろしゆうございます。また反對に經濟がうんと收縮したデフレの時にも、これは豫算課税がいいのであつて、來年はインフレーシヨンになるから豫算課税を考えた。こういうのではございません。いかなる事態が發生しようとも、豫算課税が所得税のために一番いいのだ。こういう非常に變動のはげしい時には、豫算課税がいいので、インフレになるから豫算課税をやつたのだ、こういう意味ではございません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=53
-
054・川島金次
○川島委員 その問題は、いずれ大藏大臣が見えましてから問答をいたしたいと思います。
次ぎにお伺いしますが、昨日、私、本會議でちよつとお尋ねいたしたのですが、これに對する答辯が全然なかつたのであります。そこで重ねてお伺いいたすのですが、この増加所得税の實施によりまして、四十五億餘萬圓、人員にいたして百萬、或は百三十萬というお話もありますが、その四十五億圓という、總體の額を豫定されました、すなわち言い換えれば増加所得の總體の額というものは、どのくらいになつておりますか。その見込額をお教え願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=54
-
055・池田勇人
○池田(勇)政府委員 増加所得税の收入見込みは、不動産所得に對しまして二千萬圓、甲種事業所得から三十九億六千二百萬圓、乙種事業所得から三億七千七百萬圓、合計第一種が四十三億五千九百萬圓に相なります。第二種いわゆる山林所得に對するものが五千五百萬圓、第三種の讓渡所得に對するものが一億二千萬圓でございます。これは甲種事業所得が先ほど申し上げましたように最も多いのでございまして、甲種事業所得はだいたい前年の實績に對しまして、昭和二十一年の豫想は八倍程度の増加ではないかと考えております。乙種事業所得につきましては、米價の昂騰その他で二倍餘の増加に相なるのではないかと考えております。かように見積りまして出したのでございます。人員の點につきましても、これは不動産所得と甲種事業を一緒にもつておる者がありますので、正確な數字はなかなか困難でございまするが、だいたい甲種事業につきましては五割程度人員が増加するものと考えております。乙種事業所得につきましても、二、三割程度の人員の増加になると見込んでおる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=55
-
056・川島金次
○川島委員 その今の甲種、乙種の人員見込増が總體にいたしまして百萬になりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=56
-
057・池田勇人
○池田(勇)政府委員 だいたい實際の納税人員が百三十萬人程度になるようでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=57
-
058・川島金次
○川島委員 そうすると、だいぶ細かくなりますが、全國で百三十萬と言いますと、だいたい國内を五十府縣ということで割つてみますると、一府縣で一萬四、五千名程度になる。しかして二府縣が二百四、五十市町村と勘定いたしますと、一市町村當りわずかに五、六十という計算になる。一體この増加所得税に該當する人員が、一市町村あたりわずかに五、六十人ということになりますことは、どうも當局の非常に微温的な計算があるのではないかと私は思うのですが、その點はいかがでございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=58
-
059・池田勇人
○池田(勇)政府委員 われわれの大數觀察と、各財務局の擔當者の意見からかようにいたしたのでございます。この納税は、殊に甲種事業所得を非常に對象といたしております關係上、町村別に見るということはいかがなものかと思います。現在甲種事業所得者は八十數萬人ございます。これは戰災によりまして、餘ほど減つた結果でございまして、從來の甲種事業所得者の半分以下に相なつております。これが相當復活いたしまして、四十數萬人増加する。實際のこの増加所得税を納める人は營業者が非常に多い。こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=59
-
060・川島金次
○川島委員 私のほんとうに知りたいのは、この増加税の標準とした納税義務者というものは、一市町村に割當てて、わずかに六、七十人きりないといふのでありますが、實際はいわゆるこの法案の理由にも書いてありますごとく、現下國民所得の實相という問題です。現下國民所得の實相というこの理由書の冒頭の面から考えてみまして、ここに出ておりまする、いわゆる營業をしておる看板をもつた人、或は山林をもつた人、或は讓渡所得の方面にそういつた財産をもつた人ということに限定すればこそ、そういう少い數になつてくるのではないか。そもそもこの法案の一番狙いとする所は、昨日も私は本會議でちよつと觸れたのでありますが、いわゆる大藏大臣の言う、目に見えない方面、耳には聞えるが、目には見えない方面の闇所得、この方面に對して徹底した對策をもたなければ、國民負擔の公正は思いも及ばないし、併せて國庫收入の増加に資するという目的にも達しないのではないかとこう思うのであります。恐らく私は今日營業的な看板を掲げないで、店舖をもたないで、しかも大口の闇行爲をして莫大な新圓を獲得しておるという階級は、私は當局が眞劍になつて熱意をもつて調査をするならば、莫大な數になるのじやないか。その所得額も非常な巨額に上るのではないかと、私は想像いたすのであります。一例を申し上げまして、まことに恐縮でありますが、これは目に見えない闇でございますからなんでありますが、耳に聞えた所の話によりますと、この間埼玉縣下の或る箇所で競馬がありました。その競馬場で、若い青年で、しかもぶらぶらしておるような立場の者が、スーツケースの中へ百圓札を束にして競馬場へ乘込んで來た。或はまた大藏當局は御存じかも知れませんが、熱海の某温泉旅館、そこへ初めて行つた新圓成金が、ぽんと話のついでに二百萬圓を放り出して、その旅館を買つてしまつた。その旅館の持主は、東京でも財界のきけ者である。そのきけ者ですらも、さすがのきけ者が目を丸くして驚いた。或はまた或る盛り場の地區に行きますと、嘘のような話でありますが、このごろでは大口の取引きに對して、一々百圓札を勘定しておつたのでは面倒だから、秤にかけてそれを計算しておるというようなことが耳にはいつて來る。そうかと思うと、これも主税局長さん御存じかもわかりませんが、この間の新聞に出ておりました。泥坊が林檎屋にはいつた。そうすると戸棚の中に三十何萬圓という現金が唸つておつた。こういうことが頻々に傳えられるということは、私はこの所得税法を實施する階級以外に、大口の闇、新圓所得階級というものが相當な數、しかも總額においては莫大な額をもつておる階級の層がある。この層から本當に根こそぎ増加所得税をとるのでなくては、國民所得のいわゆる負擔の公正というものは期し得られない。そういうことを拔きにして、比較的に眞面目な、正直だとも想像される方面から、蚤とり眼で負擔の過重なものを強いる前に、その方面に對する具體的な、しかも確信のある所の對策をも併せて、こういう所に出して來なければ、われわれはなかなか承服がしかねるということになるのであります。しかもそういう方面に對しては、當局は何ら手を打とうとしておらない。それを見つけるには、一番手取り早いのは再封鎖をやることである。再封鎖ができなければ、ほかの手もあるのでありましよう。あるでありましようが、それをやらないで、この方面にだけいわゆる蚤とり眼で探し當てる。たとえば勤勞所得税においても、勞働者の、このインフレの下において喘ぎ喘ぎ生活しておる勤勞大衆に、百分の十八を一躍百分の二十に率を上げてとろうという、この蚤とり眼式の徴税をやつておる一面において、大きな鼠を逃しておるというこの事實、そういうことであつたのでは、私は日本の今の激化しつつある所のインフレも防げないと思います、同時に昨日私が本會議で申し上げました財政インフレが、刻々としてわれわれの身に迫つておる。このインフレの機危をも乘切ることはできないのじやないか。こういうことを私は痛感するのでありまして、これはひとり私どもだけではありません。國民の心ある全般の人たちの心から憂うる所であると私は確信をいたしておるのでありますが、そういう方面に對する所の眞實な、具體的な、確信のあるいわゆる裏打ちの對策というものを至急に立てて、それを實行するということでなければならないと思います。その點に對しまして、御當局はどのような御考えでありますか。この際改めてお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=60
-
061・池田勇人
○池田(勇)政府委員 新圓階層を把握し、これに適正な課税をすることが、最も必要であることは、お話の通りでございます。この新圓階層を掴まえるのに、どういうふうな成算ありや。こういう御質問でございますが、私としては税務官吏二萬の者が全力を擧げてこれを掴まえるよう努力いたします。やり方にはいろいろなものがあるのでありますが、從來所得税の調査では、單に營業者の所へ行つて、その人の帳面を見る。そうして計算をする。こういうことに止めておりましたが、これだけでは今言う店舖もない、いわゆる闇商人は、なかなかむつかしいと思います。しかし所得發生の事實、いわゆる目に見えるものから闇にはいつて行く。こういう行き方と、また所得消費の状況からその人の所得を見る。いわゆる裏から行くやり方と、いろいろな方法があると思うのであります。今囘増加所得税創設の趣旨に鑑みまして、いろいろな手を使つて捕捉する。また御必配になりましたように、目に見えるものだけを選り食いをする。こういうことは絶對いたしません。だからこれは三月三日までに納税をしていただくことを原則にいたしておりますが、それ以後におきましても把握するように努力をいたします。今の陣容では十分でない點がありますので、新聞に廣告いたしましたように、二級官或は三級官千名程度の増員を計畫し、最近採用する段取りに相なつておるのであります。從來の所得税法や營業税法の調査の不備を是正しまして、各方面から各樣の調査をして、課税漏れのないように努力いたしたいと思うのであります。この點は二萬の税務官吏が全力を擧げても、まだ十分ではございません。私は税務協力員を任命し、そういう方の協力を求めますとともに、國民全體の御協力を願い、この税の適實を期して行きたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=61
-
062・佐竹晴記
○佐竹委員 關連事項で發言を許してもらいたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=62
-
063・稻田直道
○稻田委員長 佐竹君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=63
-
064・佐竹晴記
○佐竹委員 端的に承りたいのですが、新圓の所在を調査いたしますためには、新圓の再調査をするが一番よろしいと思うのです。只今主税局長からお話のような手段では、とうてい闇商人を把握することは困難であると私共は見ておる。從いまして一定の期限を切つて預貯金をしろ、もし預貯金をしなければ、それは無效であるということを宣言すれば、箪笥預金は一遍に出て來る。これをどうして當局はようやらないのですか。これをやることがどうして不可能なんですか。これを私は承つておきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=64
-
065・池田勇人
○池田(勇)政府委員 新圓を封鎖するとか、或は新圓を申告さして、そうして課税の對象にするということは、徴税だけの點から申しますれば、一つの方法かもわかりませんが、そのことが金融經濟界に及ぼす影響、いわゆる通貨の信用に對しまする惡影響等から考えますと、私はとるべき策ではないと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=65
-
066・佐竹晴記
○佐竹委員 私は再封鎖をやれとは申しません。再封鎖をやりました時は、その圓に對する信用と、將來の財界及び産業界に及ぼす影響の重大であることは、勿論聞くまでもないのであります。再調査をしたらどうです。何日までに貯金をしろ、屆け出よということを一般に布告をいたしまして、貯金をせんければ、無效であるということにいたしますならば、必ず一旦貯金するでしよう。そこであの人には平素これだけの收入しかないと税務署が睨んでおつたに拘らず、あれだけの人が十萬圓もつておつた、百萬圓もつておつた。從つてあの人はどれだけの事業をやつていたのだということが明確に掴み得るのであります。しかもそれを把握したからといつて、その貯金を今度再封鎖いたしまして引くことができないようにするということは、私はそこまでは申しません。税をとるための手段方法といたしまして、その新圓の所在を突き止めるためには、これ以上徹底いたしました方法はないと私は信じます。これがなぜいけないのでありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=66
-
067・池田勇人
○池田(勇)政府委員 今の通貨を屆出させまして、そうして一定期間後は無效であるということは、これは三月三日にやつた例で、事實不可能な問題ではありません。しかし無效にする以上は新圓の印刷が要ります。そうしていろんな混み合つた手があります。またそういうことを一應いたすにしても、闇で新圓を儲けた方はいろんな手を打つのでございまして、その手で絶對的に新圓の所在がはつきりわかるとは信じ得られません。それよりも、そういうことをすることが今度は第二の新通貨に對してどういうふうな惡影響があるかということを考えますと、經濟、財政等の面から言つて、第二新圓を出すというようなことは私は考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=67
-
068・佐竹晴記
○佐竹委員 しからば、結局技術的に不可能である。たとえば新々圓に取替えるためには、日本にはとうていそれだけの印刷能力がない。聞く所によりますと、新々圓を印刷するのには六箇月から一年もかかる、こんなことでは徴税に間に合わない。こういつた技術の點だけからおつしやるのでございましようか。これを一つ確めておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=68
-
069・池田勇人
○池田(勇)政府委員 徴税に間に合うか、合わないかという問題ではございません。財政經濟全體から申しまして、新々圓を出すといふことは考えておりません。不賛成でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=69
-
070・佐竹晴記
○佐竹委員 新圓の所在を突き止めるために、必要があれば適當な方策を講じなければならないことであります。しかして只今申しますような方法が一番徹底した方法でありますことは、申し上げるまでもないと存じます。しからばあなたのおつしやる、財政經濟の上において弊害があるから、そのような徹底したしかも日本の財政を立直し得るかどうかといつたような、重大なる新税をここにかけんとする場合において、財政經濟の上においてとうていとるべきではないとおつしやるならば、その財政經濟の上においていかなる難點があるか。何が故にそうすることができないかという根據を示されぬ限り、それには反對であるという單なる一語によつては、私共は承服することができません。ここで財政經濟上に及ぼします影響、そうして何が故にそういつた再調査をすることが、不可能であるかといふ論據を、今少しく徹底して御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=70
-
071・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは私からお答えいたします。これはもう繰返して申しておることでありますが、現在のいわゆる新圓、日本銀行の紙幣が各所に退藏その他でもつてもたれておる。それを突き止めるには、新々圓の交換をすることが便利だということはおしやる通りでございます。それは突き止め得ると思います。しかし突き止めて、それで一度は何らかの措置を講じて效果があるといたしましても、その後の影響を考えれば、さようなことはなかなか迂濶にできることではありません。といふのは、とにかく今日一番必要なことは、通貨または預金等に對する國民の信頼の念を高めて行く。少くも通貨をもつておれば安全だ、預金をしておけば安全だ。資産の保護の上に、これならばまづ安全だといふ感じを與えることが一番大切なんです。それにはいろいろの所作を必要といたしますが、その一つとして、やはり通貨をもつておつて、そのもつておるものを政府がこの際何らかの措置を講じて、無理に奪いとるようなことをしないということが、一番大切なんであります。もしもここで無理をして、これは通貨をもつておつても危ないということになれば、どうするかと言えば、またその通貨を物に換えるとかなんとかいうことになります。それこそ、いわゆるインフレを促進さすことになるのでありますから、さような措置はこの際はとるべきでない。かような觀點から、いわゆる新々圓の交換なるものは、政府としては絶對に許されない。かように考えておるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=71
-
072・佐竹晴記
○佐竹委員 無理に奪いとるとは、とんでもないことです。あなたは、この税をかけることは、これは無理に奪いとるためなんですか。無理に奪いとるのじやないでしよう。税をとるがためには、正々堂々、適正なる方策をもつて、公正なる徴税をしなければならぬというその觀點に立つて、かくのごとき方法をとることが適正ではないかということを論じておる。しかして、闇商人が政府を信頼せずして、箪笥の中に貯金をする、床の下に、天井の裏にこれを匿まつて置く。また銀行を信用いたしませず、銀行へ預金をしない。かくのごとく、政府乃至金融機關を信頼いたしませずして、天井の裏にあつたり、床の下に匿まわれたりいたしますことが、今日の經濟界の病根をなしておる。これを斷つために、この税を課して、財政上の基礎を固めると同時に、財政經濟一般的に適當な手を打たなければならぬと考えて、ここにこういつた租税の案も出て參りましよう。この意味合いにおいて、増加所得税法案というものは、私どもはきわめて適正なる法案であると存じております。しからば、この適正なる法案を實施いたしまするがためには、いかにしてかくのごとき一般財界、經濟界に害毒を流す所の新圓を發見し、しかして病毒の禍根を斷つための課税をしなければならぬかということに、一生懸命にならなければならぬことは勿論であります。しかるに何ぞや。それを徹底的に調査をし、それを突き止めるのには私の言う通りだ。しかし、それを無理に奪うことはとんでもない結果になるから、などと仰しやることは、これは正しく私どもはとんでもない御答辯だと思う。そういつたことで、財政經濟に惡影響を及ぼすから、それはいけないということになるならば、われわれはこの法案も返上しなければならぬ。私どもはこの法案に滿腔の敬意を捧げ、かつこの實行をいかに效果的ならしめるかということに熱心なればこそ、お尋ねをいたしておる。よつて、これに反對いたしまする理由については、今少しく懇切に、われわれをして納得せしむるに足るものがなければ、私どもは承服ができません。大藏大臣にいま一度徹底的に、私どもが承服のできますように御説明をいただきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=72
-
073・石橋湛山
○石橋國務大臣 奪いとると言つたのは、そういう處置をされる人がさような感じを抱くだらうという意味であります。そうして、それはなるほど、課税をするのには、人の懷ろの中、蟇口までも出さして調べるということをすれば、一番課税に都合のいいことは言うまでもございません。そこで、單に技術上から申せば、徴税の第一線に立つておる税務署などは、そういうことをしたいのは山々だろうと私は想像いたします。そこで、しばしば世間でも問題になるように、どうも税務官吏があまりに爬羅剔抉をするという御非難も、また一面に非常にあるのであります。今度の財産税の問題についても、どうも人の家探しをする、こういうことをしばしば非難されるようであります。これは税をかける方から言えば、家探しが一番簡單でありますから、徹底的にやろうとすればそうなりますが、これは決していい影響を與えない。ですから徴税はどこまでも正しく、またできるだけのことをやらなければなりませぬ。いわゆる爬羅剔抉という感じを與えることは、これは人心に決していい影響を與えぬ。そして後に至つて政府の施策に嫌惡の心を抱かせる、税をますますいやがる。こういう感じを抱かせますから、われわれといたしましてはそういう極端な方法はとりたくない。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=73
-
074・佐竹晴記
○佐竹委員 私は關連質問でございますので、いま一言だけ御質問申し上げます。當初お尋ねをいたしました際に、財政經濟の見地に立つてこういう方策はとれないと仰しやつた。そこで追究いたしますと、今度は税をとる見地に立つて爬羅剔抉することは好まないと言う。大藏大臣はああ言えばこう、こう言へばああ。だから別の委員會でもごろつきの答辯だなどといつたような、失禮な言い分がどこからか出て來る。なんぞと言えば、にやりにやり笑うておる。眞面目に聽くと四の五のと言つて逃げる。國務大臣としてのとるべき態度ではない。われわれは甚だしく不滿に存じておる。私どもの問うておる所は、當初主計局長が財政經濟に及ぼす影響が重大であるからできぬと言つた。その實體を掴まえて質問すると、逃げて、そうして爬羅剔抉云々と、その方法論をもつてこれに答えておる。答辯になつておりません。財政經濟の見地に立つて、われわれを承服するに足るだけのことをお述べいただきたい。しかしまた恐らくこう言つたらああ、四の五のと仰しやるでしようけれども、私は別途質問することにいたしまして、これだけについて、もう一度眞面目なるお答えをいただきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=74
-
075・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今、爬羅剔抉すると人心にいい影響を與えない、そしてその後に財政上等に支障を及ぼす。こう申し上げましたのは、前に申し上げた財政經濟の見地から言うて、これはなすべきことでないと言つたことを、やや具體的に説明をしたのであります。財政經濟の上によくないという、なんと言いますか、理論的、或はやや抽象的に申せば、前にお答え申した通り、これによつて通貨に對して、もつてもいいという信念を失わしめるということが非常に惡影響を及ぼす、こういうことであります。差詰め徴税としての技術的に申せば、後で説明申し上げたような所から、そういう感じを國民に抱かせる、こういうことになるのであります。決して違うことを申し上げて、あれこれ申し上げたのではありませんから、御諒承を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=75
-
076・稻田直道
○稻田委員長 川島君に申し上げますが、大藏大臣は今本會議で何か提案理由の説明をされなければなりませんので、それが濟んだらいらつしやるということですから、しばらく大藏大臣の質問はお待ちを願います。それ以外のことについて川島君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=76
-
077・川島金次
○川島委員 私も大いにその點をお伺いしようと思つたのですが、先輩の佐竹君が十分にやつていただきまして、だいぶ助かりました。そこで重ねてお伺いするのでありますが、先ほどからお話を承つておりますと、くどいようですが、もう一遍聽いてみたいのであります。營業者にあらざる者が物資の流通經濟に携わつておつて、いわゆる大闇をする。その大闇をやつた結果として莫大な新圓をもつておる。こういう方面には、この法案の實施の場合に、該當しないという形になるような恐れがあるのではないか。その點はどういう觀點に立つてその法案を實施しようというのでありましようか。それを一つ伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=77
-
078・池田勇人
○池田(勇)政府委員 お話のような方は、この増加所得税法案の納税義務者になります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=78
-
079・川島金次
○川島委員 私はそういう方面の者までもこの法案の一種の該當者になり得るのだということになれば、この四十五億圓というものは非常に過少である。もつと全國的な御調査を基礎としてやるならば、この程度の税收ではなくして、もつと相當莫大な税收があるのではないかということを、確信をもつのでありますが、當局としてはこの四十五億が、そういう方面にまで擴げても、これが最高だというのでありましようか。それを一つ重ねてお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=79
-
080・池田勇人
○池田(勇)政府委員 お話の方面に手を伸ばすつもりで着々檢討を進めております。また實際の調査にもかかつております。四十五億九千萬圓は最高ではございません。少くともこの程度は確實にとれる、これ以上とれるかもわからぬ、こう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=80
-
081・川島金次
○川島委員 四十五億數千萬圓は最低だ、それ以上も相當期待しているようでありますが、だいたいそれ以上の期待額というものは、どのくらいの見透しでやる熱意でありますか。それを一つ、くどいようですがお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=81
-
082・池田勇人
○池田(勇)政府委員 それはこういう金額の見透しはつきません。多々ますます辨ずると考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=82
-
083・川島金次
○川島委員 その點はその程度にしておきましよう。さらにお伺いいたします。先ほどどなたかがお話された問題でありますが、私はまだ納得ができない。例の前年の實績を基礎として、今年の實績收益からその前年の實績を差引いた分にかける。そういうことになりますと、先ほどのどなたかのお話と同じになるのでありますが、たとえば前年が十、今年が三十の實績になつている。その三十から前年の分の十を引いた二十、引いたそれ自身十という前年の實績だけはいわゆる課税から免れるという具體的な結果になるのではないかと私は思う。局長のお話によりますと、だいたい前年度の實績によつて翌年とつているのだけれども、法律的にはその翌年の税なんだ。法律的にはそういう見解に立つているのでありましようが、實際上の問題としては、その前年の分を差引いただけは課税から免れるということに、これは實際上の問題がなるのじやないか。その上に一種は七千圓、二種、三種は一萬圓の控除、こういう形に實際上なりますと、私は課税の對象に對して公正な方法ではないのではないかと、非常に強く私今でも考えているのでありますが、もう少しそれをわれわれに納得のできるような説明を、もう一遍お願いを申し上げたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=83
-
084・池田勇人
○池田(勇)政府委員 課税標準を前年の實績にとりましたので、お話の十というのは、その年の所得として、その年分をとつているのでございます。從いまして、本年の如く所得の殖えた方につきましては、殖えた部分を徴收することをもつて足れりと考えております。またかりにお話の如く、二十にだけとらずに、なお十にもとるということになりますと、負擔から申しまして、非常な苛酷な場合が起りますので、昭和二十一年から豫算課税に移つたのだ、こういう考えの下に、差額だけをとることにいたしているのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=84
-
085・川島金次
○川島委員 どうも私の頭が惡いせいかわかりませんが、局長のその説明が十分に納得できない。何となれば、今年の實績は、本來ならば明年に行つて、その實績に基づいて從來は課税されていた。ところが今年は前年の實績と比べて、前年の實績を今年の實績より差引いた分におきまして税をかけるということになるですから、どうしてもそこに十という、今の例で言えば、課税から免かれた數字というものが出て來るということになるのじやないかと私は思うのであります。本來ならば今年の三十という實績は、明年に行つて三十全部かかつて納めて來たわけであります。所が明年はこの實績は別になつて、明年から改めて豫算課税になるということになりますと、どうしてもこの差し引かれた十というものは、課税外になるのじやないかと私は思うのですが、どういうことになるのですか。局長の説明はよく分りませんから、もう一遍一つ御説明を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=85
-
086・池田勇人
○池田(勇)政府委員 十というのは、今年分の所得税の基本でございます。しかして實績が三十だということになりますと、その三十は、普通の觀念ならば來年納める、こういうことでございます。それを今年とつて行こうという場合には、今年は既に十納めておることに相なりますから、差額だけでいいのではないか、こういうことでございます。豫算課税は、先ほど申しましたように前年の實績をとつて行くのだということならば、觀念は今の所得税法に貫いておりません。前年の實績を基準にして、今年の所得税をとるということになつておるのであります。それで措置法などにつきまして、或る程度の實績課税を排除いたしておるような状況でございまして、この際といたしましては、お話の通り十は前年分だ。だから十をとり、また今年分の三十もとる。こういうことは不適當だと思います。今年分として既に十はとつておるのだから、實際は差額の二十でいいのだ。こう考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=86
-
087・川島金次
○川島委員 私には納得できんのです。前年の分を差し引いて今年の實績にその差額だけかける。しかも今年とつておるものは前年の實績に徴した税率じやないのですか。今とられたのはそういうことになるのじやないのですか。それが差し引かれた分だけにかけることは、繰返して言いますが、その差し引かれた分だけは税金から除かれる。どうしても實際面においてそうなると思います。主税局長さんの法律論では實際上そういうことになるのじやないかと私は思う。それで私は増加所得税の本當の意味が徹底するかどうかということを考えるのです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=87
-
088・池田勇人
○池田(勇)政府委員 ずつと永い目で見て參りますと、私の言う通りでございます。本年とつておりますのは、前年の實績を標準にして今年のをとる。この十というのは今年の所得税でございます。だから法律にも昭和二十一年分の所得税と、こうなつておるのであります。この際十もとり、また別に三十もとるということは、理論的にも實際的にも合わんと考えまして、差額だけ増加所得税としてとることにいたしておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=88
-
089・川島金次
○川島委員 どうもそれは見解の相違でありますから、この程度で打切ります。
續いて簡單にお尋ねいたしますが、先ほど主税局長は農村の所得者の問題に對して、控除があるから一町歩内外のものは税金がかからぬ。しかしそれ以上のものがあつても僅かだから、その程度のものはというお話がありましたが、だいたい日本の專業農家というものは、しかも中堅農家という階級に屬するものは、一町歩以上二町歩、二町五反というのが だいたい日本の中堅農家に當るのであります。そういう人達には必ずこの増加所得税がかかつておる、以前にも個人的に局長さんと話したのですが、米價を三百五十圓から五百五十圓に上げた。米價を石當り五百五十圓に上げておいて、その年にその中堅農家が米價の値上げによつて増收になつた分が、またここに來て増税の對象になつて來るということは、具體的に申しますれば、農村の中堅農家の供出意欲に心理的な影響を與えると思う。殊に農林大臣も非常に心配し、われわれも心配しておるのですが、今年度の供米成績というものは、まだ三十何パーセントしかない。しかも前途非常に不安がある。鐵道の關係もありますが、到る處に遲配缺配が現われて來た。そういうことを考えて見ました場合に、中堅農家がこの増加所得税に該當して、しかも一面ついこの間五百五十圓に米價を上げてもらつたが、直ぐに増加所得税の對象になつてしまうということは、非常に心理的な影響が多く、それがために延いては供出意欲の上に非常な影響があるのではないかという心配をもつのでありますが、當局はそういう心配をもたずして、大丈夫だという確信があるのでありますか。それを一つお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=89
-
090・池田勇人
○池田(勇)政府委員 控除を七千圓といたしました理由は、或る程度の増加所得は相當數の方にあると思うのであります。これを細大漏らさず徴收するということは技術的にも、また期間的にも困難でありまして、七千圓という控除にいたしたのであります。從いましてこの七千圓の控除を定めますると、だいたい自作の方で、一町一、二反もつておる方につきましては、課税外になると思うのであります。お話のごとく、一般中堅農家は二町も二町五反もつくつておる。こういう方につきましては、相當の擔税力があるのでありますから、納めていただきたい。またそういう場合におきましても、七千圓の控除をいたしておりまするならば、そう供出意欲を減退さすということにもならない。そういう方にはこの際進んで増加所得税を納めていただいて、財政收入の確保に御協力願いたい。こういう考えであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=90
-
091・川島金次
○川島委員 擔税能力があると申されますが、今の政府の決定された米價は、生産價格に追いついておらぬ。辛うじて政府としては財政上いろいろな觀點から、石當り五百五十圓という格上げを今年ようやくした。そうして一應農家に納得してもらつておる。しかもそれは我慢をして納得してもらつておるというのが實情なのであります。そこへもつて來て只今申し上げましたようなことになりますることは、農家の人達の人心に及ぼす影響、いわゆる私の申し上げるのは政治的問題であります。そういうことを心配いたしまして、私はこのお尋ねをいたすのであります。こういう問題については、少くとも私は農林當局などとも一應連絡その他があつて、決定をしたのではないかと想像いたすのでありますが、その方の連絡なども十分におありの上の御決定でありますかどうか。諄いようでありますが、この際お尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=91
-
092・池田勇人
○池田(勇)政府委員 特に私から農林當局に御諒解を求めはいたしませんでした。閣議ではそういう話は勿論あつたと思うのでありますが、私はこの際として七千圓以上の所得の殖えた方に對しましては、二萬圓以下の金額に對して百分の三十程度の負擔をしていただくことは、今の現状では已むを得ないのではないかと考えます。勿論米價が五百五十圓程度であるので、農家に所得がないとすれば問題は起りません。所得がありとすれば増加所得、すなわち七千圓以上の所得があれば、このくらいの負擔をしていただかなければ、財政の確保はおぼつかないと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=92
-
093・川島金次
○川島委員 この問題については、閣議で定めし農林當局とも話合いがあつたことだと承知いたしまして、そのお尋ねは一應打切つておきます。
續いて簡單にお尋ねいたしますが、農村の方面にこのごろ耕作權の取上げ、耕作農地の取上げが、昨年あたりから全國的に蔓延的な症状で現われておる。その耕作農民の零細小作地を取上げてしまつたのを、地主はさらに他に轉賣している。こういう事實も非常に多いのであります。そういつた場合に、この増加税をかける場合に、その耕作地の價格基準というものは、例の自作農創設のあの基準において一轉賣いたしました場合の差額、それにこの増加税をかけるのか。しかもその増加税をかける場合に、一體轉賣した時の登記面を見ての價格で、いわゆる増加というものを考えて行くのか。それともほんとうの轉賣價格を眞に掴んで増加税をかけて行こうという考え方で行くのですか。その點を一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=93
-
094・池田勇人
○池田(勇)政府委員 農地の賣買價格につきましては、法律にありますように三月三日を基準にいたしております。三月三日の價格とは、財産税法で評價いたしますあの價格によつて參るわけでございます。實際賣つた價格か登記面の價格かと申しますと、實際賣つた價格によります。登記面と實際賣つた價格が一しよであれば、いずれか一方ということになります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=94
-
095・川島金次
○川島委員 もう一つお伺いしたいのは、最近日本人以外の料理店が京濱地帶は勿論、全國の重要都市に非常な勢いをもつて開業されております。これらの方面の營業というものは、非常な殷盛を極めておりまして、從つて可なりの利益をとつておるように傳えられておる。この方面のいわゆる第三國人の營業に對して眞の課税をするということは、非常にむずかしいようにも言われている。また實際上の問題としまして、地方の警察などにおきましても、それらの點の取締りさえも、これはほとんどやつておらないと言つてもよいくらいな状態なのであります。そういう状態にある第三國の營業者に對して、大藏當局が勇敢に實體を把握して課税するということは、私は實際問題として非常にむずかしいのではないか、困難が伴うのではないか。しかもそれをやらなければほんとうの新圓の吸收にもならないということになるのでありますが、そういう方面に對するよほどの確信のある、勇氣のある方法對案をもつて行かないと、只今申し上げましたように課税が困難な事情が往住にして伴うのではないか。それに對する何か思い切つた對案というようなものを當局はおもちであるのでありましようか、それをこの際承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=95
-
096・池田勇人
○池田(勇)政府委員 第三國人に對しまする課税につきましては、關係方面と話がつきまして、だいたいきまつて參りました。ただ或る特定の第三國との關係につきましては、只今折衝した案で向うが請訓するようになつております。財産税、戰時補償特別税、こういう劃期的なものは課税しないことになつておりますが、その他の税につきましては、全部課税する方針で行つております。お話のごとく實際問題としてできるか、こういうことでありまするが、これはどうしてもやらなければならぬ。われわれはやる覺悟で今關係方面のみならず、内務省その他と十分對策を練つております。この増加所得につきましても、徹底的にやる。そのために相當われわれの同僚に犧牲者が出ても、あえてやるこういう考えをもつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=96
-
097・川島金次
○川島委員 ついでにお伺いしますが、この税の内容によりますと、讓渡所得の方面につきまして、例の財産税の中に入つておりまする所の貴重なる家具、たとへば家具ではない家庭の用具、寶石類或はピアノというような、ああいう相當價格のもの、そういうものがこの課税の讓渡の對象外になつておる。しかし三月二日以後そういつた寶石だとか或は家具などを相當な價格でよそへ讓つた場合に對する處置というものは、この法案では該當しないことになりますか、どういうことになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=97
-
098・池田勇人
○池田(勇)政府委員 家具、什器等の賣却益につきましては、從來の所得税でも課税いたしておりません。増加所得税におきましては、從來所得税の課税の對象になつたもののみ掲げております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=98
-
099・川島金次
○川島委員 そうすると財産税をとることになつている所在の貴重なる寶石、或はピアノというような相當な價格になつているものが、財産税を納める該當者が三月二日以後に莫大な時價でもつて讓つてしまつたとすると、そこに相當な新圓が流れて入つて來たということになります。私は課税というよりは今の増加税という精神からいつても、そういう方面を掴まえなければ、私はこの増加所得税というものの眞の意味が徹底しないのではないか、こういうふうに考えられるのでありますが、どうしてこういう方面の財産税のあの時の内容になつておる方面をこれに加えなかつたかということを、ちよつと私は疑問に思うのであります。その點を除いたというのはどういう根據でありますか、お尋ねいたしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=99
-
100・池田勇人
○池田(勇)政府委員 從來讓渡所得として課税いたしておりましたのは、不動産、船舶、鑛業權、砂鑛權これに限つておつたのでございます。この際その範圍を非常に擴げることはいかがか、また實際徴税技術上から申しましても、なかなか困難であるというので、今囘は考えておりません。將來の問題といたしまして西村委員からお話になりましたような、有價證券のいわゆる讓渡所得、こういうものは將來は實施すべく考えております。家具、什器等の賣却益を課税するということは、これは將來の問題といたしましても困難ではないかと思います。只今の所ではわれわれは不動産、船舶等を讓渡したものは、これは一時の所得でありましても特に目につくから、課税いたしておるのでありますが、家具、什器を賣つたのは、ちよつと課税の對象とする所までまだ行つていないと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=100
-
101・川島金次
○川島委員 最後にお伺いしますが、これもどなたかからお尋ねがあつたことと思いますが、この委員會の構成内容につきまして、當局はできるだけ民主的な各方面から適當な人をその委員になつていただくのだというお話でありますが、この委員會に對しては、できるだけ民主的な諸團體からも出てもらうのだという御趣旨に副いまして、所在の勞働組合或は農民組合の代表、そういつた、いわゆる民主的な團體の代表というものを、原則として委員に選任をするという考えをもつておられますかどうか、この際お伺いいたしておきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=101
-
102・池田勇人
○池田(勇)政府委員 できるだけお話のような方法で行きたいと考えております。やはりその税務署々々々によりまして、よほど納税者層が變つて來ますので、とにかく利害關係者以外の方で正當な考えをもつ人、こういう人も入れて行きたい。地方であれば農民代表の方もはいられるのでありましよう。また大都市の中心でありますと、そういう方ははいらないという場合もございますし、また勞働者代表が都會であればはいつて來るような場合も想像できると思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=102
-
103・川島金次
○川島委員 今のお話ではそういつた勞働組合と農民組合の代表を選任するということは、できるだけというお話でありますが、私どもから希望を申し上げたいのですが、できるだけという意味合いでなくして、原則としてこの委員會の委員の構成の際には、所在の勞働組合、竝びに農民組合の代表者をもこれに加えて行くことが、私は非常に民主的な形になるのではないかと思います。それを原則としてやるのだというお考えを私は承りたいのでありますが、どんなものでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=103
-
104・池田勇人
○池田(勇)政府委員 できるだけそういうふうに考えるということは、原則として考えるということでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=104
-
105・川島金次
○川島委員 私は大藏大臣に對する質問が保留してありますので大臣が見えたら、また改めてお尋ねを申し上げたいと思います。一般的な質問はこれで打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=105
-
106・稻田直道
○稻田委員長 次は井出一太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=106
-
107・井出一太郎
○井出委員 最初にお尋ねしたいのは、本年度の國民所得を、どのくらいに大藏當局は押えていらつしやるか。それを伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=107
-
108・池田勇人
○池田(勇)政府委員 國民所得につきましては、大藏省として今研究はいたしておりまするが、正確な數字は聞いておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=108
-
109・井出一太郎
○井出委員 それでは只今は別としてこの四月と申しませうか。一般豫算を組立てられた當時における國民所得の推定というものは、數字としておもちになつておられませんでしようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=109
-
110・池田勇人
○池田(勇)政府委員 もつておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=110
-
111・井出一太郎
○井出委員 それではその點についての論議は他の機會に讓りまして、來年度において新しい租税體系を組立てられる、こういう構想をおもちのように伺つておりまするが、これに對してはどのようなプリンシプルをおもちになるかという點を伺いたいと思います。大臣がいらつしやれば非常にいいのでありますが、局長さんからお漏らしをいただきたい。その場合、たとえば直接税と間接税との割合をどんな程度にされるか。從來私どもは所得税を中心といたして、これに收益税等を補完税とした組立ての仕方、特にイギリスなんかにおいては、この方法が原則であつたようでありますが、今の時期において、どうもそういうオーソドツクスな建前だけをとるようなわけにはいかぬと思うのであります。それらに關連した新租税體系の構想を一つお漏らし願いたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=111
-
112・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税制の根本的改正につきましては、さきの臨時議會で大藏大臣がお述べになりましたように、税制調査會を設けまして、しかも税制調査會には舊來のごとき役人は一切關與しない貴衆兩院の方、民間の學識經驗者で、別個に考慮する、研究するというので、先般來税制調査會を設けまして、根本的改正を御研究になつておるようであります。政府といたしましては、その答申によりまして考慮し、議會に提案するのでありまするが、ただ主税局長の私見としてどんな氣持をもつておるかと、こういうお問いでございます。それも直接税中心か間接税中心か、こういう問題でありますが、私はやはり今の經濟状況、いかに負けた、或は混亂しておるとは申しても、やはり直接税がその中心になつて行くと考えるのであります。ただ從來のごとく直接税七十數パーセント、間接税二十數パーセント、こういうことになるかならないかは、これは改正案できまるわけでございますが、やはり直接税中心主義というものは動かないと思うのであります。今いかに間接税を中心にいたそうといたしましても、これは物資が非常に不足なので、十分なる税收入を擧げ得られません。またしからば流通税の賣上税をやつたらどうかという問題もあるのでありますが、やはりこれは物資關係その他取引の状況からいたしまして、賣上税も今そう急には實施できないのではないか、やはり直接税中心で、そして間接税をできるだけ増徴して行くということぐらいを考えておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=112
-
113・井出一太郎
○井出委員 勤勞所得税が去る九十議會あたりでも相當に問題になりまして、かような勤勞者に對して壓迫を加えるような惡税はやめてしまえという意見が、隨分強かつたのであります。しかしながら現在も所得税のうちにおいて勤勞所得税というものが大宗をなしておるという點は、私どももこれを認めなければならぬと思うのであります。來年度あたり豫想される税制改革において、勤勞所得税はこの輿望を容れて、これを引下げられるというようなお氣持をおもちになられるかどうか、伺いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=113
-
114・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得税の體系をどういうふうにしますか。われわれ研究いたしておりますが、今の社會、物價事情から申しまして、勤勞所得税につきましては、よほど愼重に考慮しなければならぬと思うのであります。今、綜合所得税の點、扶養家族の點をどういうふうにするかということは、申し上げるまでに行つておりません。ただ所得税の建前を今の分類所得税、綜合所得税の建前で行くか、或は普通所得税、超過所得税、こういうふうな建前で行きますか。これはよほど檢討しなければならぬ問題が多々あるのでございます。それによりまして免税點、基礎控除、扶養家族の控除もきまつて參りますので、今、私ども内々研究はいたしておりますが、税制調査會の意見を聽きましてから考慮したいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=114
-
115・井出一太郎
○井出委員 私はこの税というものは、いわゆる税的均衡状態と申しませうか、現在の税制體系の下におけるバランスというものがあると思うのであります。それ故に新税を創設いたしまする場合には、そこの所が確かに部分的な凸凹ができて來る。從つて今度のような増加所得税、これは新圓階層を對象にいたしておるわけでありますが、これと同時にその傍にこれで掬えなかつた、漏れる部分というか、或る種の不均衡を生じて來はせぬかというふうな氣がいたすのでありますが、これは局長いかにお考えでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=115
-
116・池田勇人
○池田政府委員 この増加所得税法案が議會を通過し、これを實施いたしました場合に、ほんとうに課税さるべき人が課税漏れになりました場合には、お話の通りに非常な不均衡なことになるのであります。從いまして新圓所得者に對する特別課税をしろという輿論は、ずつと前からあつたのでありますが、私としてなかなか踏み切れなかつたのであります。今の情勢といたしましては、先ほど申しましたように、税務機構を擴充し、晝夜兼行懸命の努力をいたしまして、課税漏れのなきよう努め得る確信ができましたので、本案を提案した次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=116
-
117・井出一太郎
○井出委員 それについて伺いますが、特別消費税とでも申しましようか、或る種の新圓階層は懷ろがあたたかいのに任せて、隨分極端なる濫費をいたしておるようであります。現在都下の料理店において、一夜にして何千金を費すという例などは、まさにそれなのでございますが、こういう者に對する何か特別の消費税というふうなものをお考えになつておられますか、お伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=117
-
118・池田勇人
○池田(勇)政府委員 料理店等における馬鹿げた料理に對しまして、何か税をかけないか。こういうお話であります。只今考慮いたしております遊興飮食税等も、まさしくこういう方面に課税するという趣旨で設けたのでありますが、實際におきましては相當の脱税が豫想されまして、われわれが當初期待しておつたような十分の效果を擧げ得られぬ實情であるのであります。しからばピース、コロナのように、酒について特別の自由販賣をし、それに特別の課税をしてはどうか。こういう御意見が出て來るのでありますが、特別の費途に向ける特別の酒というものが、絶對的に不足でありますので、われわれとして踏み切れんのでございます。ただ將來の問題といたしましては、酒等について御意見のある點を考慮いたしまして、研究してみたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=118
-
119・井出一太郎
○井出委員 先ほど來實績課税と比例課税の點がだいぶ問題になつたのであります。この法案によりますと、課税對象として個人ということに規定してございます。しからば法人は一體どうなるかという問題が起るのでございまして、たとえば、現在インチキな商事會社というふうなものが澤山できております。或はまた軍需會社などが看板を塗り變へて、闇的な商行爲をやつている。こういう現状にあるのであります。この法人の今年度における膨脹した所得税は、なるほど決算報告書によつて、決算が提出されることによつて、その收益は握り得るかと思うのでありますが、そこに既に一年間の時間のずれがあるのでございます。特に現在のようなインフレの時に當りましては、來年の貨幣價値で納めるということになりますると、それだけでも大きな税の逋脱が行われるということになるとも考えられるのであります。法人はそのままに放置をしておかれて、今私が申し上げるような缺陷なきかどうか。この點お伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=119
-
120・池田勇人
○池田(勇)政府委員 實績課税、豫算課税というので議論になりますが、實績、豫算、これは何れにしてもだいたい同じようなことでございます。豫算課税にしたら、いかにして税を納めるかと想像しましても、豫算課税でも實際の實績でございます。一月から三月までの實績によりまして四月に納めるとか、或は最近の實績をとるということでございまして、こういうようにいたしますと、ちよつと先ほど申しましたように今囘増加所得税法案を提案いたしましたのは、昭和二十一年からやることにしたのだ。こういう意味なのでございます。法人につきましては、概ね事業年度が半年でございます。事業年度が濟みますと、二十日以内に申告することになつておる。税務署が直ちに決定してやれば、そう時間的のずれはないと思うのであります。個人の方につきましては、從來のやり方では税務署が前年の實績によつて決定をいたしまして、そうして納税するのは、八月と翌年の一月ということになりますから、非常なずれがあると思いますが、法人につきましては、税務署が手廻しよくやれば、そのずれはないことになつております。從つて只今の制度で賄えるのではないかと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=120
-
121・井出一太郎
○井出委員 税務署の問題が出ましたから、若干申し上げますが、財産税その他による非常に廣汎な税制の改革、或は前議會においての大増税、こういうものが嵩んで參りまして、現在第一線の税務署においては、隨分骨を折つておられるようでありますが、從つて法人の決算なども、今、半年ぐらいであるからよいと仰しやいましたが、事實においては二期も三期も前の決算が、まだ確定をしないというふうな實情に聞いておるのでございます。こういう點などから申しまして、この大増税、これをもつて臨むに、末端の税務署の機構というものは、はたして萬全なりや、御用意は十分であるか。その點を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=121
-
122・池田勇人
○池田(勇)政府委員 今年の増税といい、また財産税或は戰時補償特別措置法の税法の制定等によつて、税務の第一線は相當輻湊いたしております。今囘も増加所得税法案を通過したら、また非常な手數がかかり、背負い切れないのではないか。こういうお話でございますが、先ほど申し上げましたように、新規に二級、三級官千名程度の増員を計畫し、着々採用の準備にかかつております。財産税が非常に手數がかかるのでございますが、これは申告納税制度になりまして、申告があり、納税があつた後に、ゆつくり調査する建前にいたしております。從つてその財産税を調査するまでには、この増加所得税法案を片づけてしまう。こういう時間的の關係になつております。増加所得税法案は、特別の手數を要するのではございません。從來とても十一月或は十月ごろから、二月、三月くらいまでは、營業税の調査にほとんど直税の全員が當つておるような實情でございます。それを入念にやつて行けば、そう特別に非常な人を要するというわけでもないのでございます。只今の所今の税務官吏が全力を擧げて行けば、十分背負い切れる程度になつておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=122
-
123・井出一太郎
○井出委員 局長はだいぶ確信がおありのように仰しやいますが、まあそれを伺つて一應私は了承をいたしますが、なにせこの増加所得税だけで四十五億、本年度の一般豫算における税收入が、だいたい百六十億というふうに承知をしておりましたので、ほとんどその三割に當る厖大な税額をこの新税で取立てることになるのであつて、これは期日も限られておる。そう簡單に考えるべきではないと思います。それに關連いたしまして、これはしばしば達觀的な見透しと言いましようか、政治的な解決と言いましようか、一線の税務署長の頭の働きにまたなければならぬというような點が、多分に出て參ると思うのであります。今年の農家の事業所得税などを査定するに當りまして、各方面に隨分いろいろなトラブルが起つたことを聞いておるのであります。そういう場合に、過つてはすなわち改むるに憚ることなかれというふうな工合に、一線の署長がそういう認識の誤つた査定をいたしたという場合に簡單に更訂し得るかどうか。一々財務局長或は主税局長まで、それをもつて來なければ、はかがいかぬというふうなことでは困るのでありますが、そういう手續き上の問題についてお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=123
-
124・池田勇人
○池田(勇)政府委員 原則として税務署長限り更訂ができることに相なつております。非常に異例の場合につきましては、財務局長に委任する場合もなきにしもあらずであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=124
-
125・井出一太郎
○井出委員 この第二種所得は山林に對してでありますが、昭和二十一年中に生じた山林の所得ということになつております。この増加所得税法で參りますと、既に現在の所得税法で決定せられた分というものが、一應消滅して、この税法一本建てで行く。こう考えていいでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=125
-
126・池田勇人
○池田(勇)政府委員 山林所得は第一種の所得とは違いまして、一年限りの所得という考え方で、從來課税いたしているわけでございます。その所得の性質上、毎年あるものではございません。從つて今囘こういうふうに課税いたしますと、昭和二十一年度に山林から生じました所得は、從來の考え方から言えば、それは昭和二十一年度一年限りのものでありますから、本年徴税する。そして昭和二十二年から豫算課税ということになりますと、既に本年徴税しましたから、本年の所得に對しては、二十二年は課税にならない。こういうふうになるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=126
-
127・井出一太郎
○井出委員 その點はわかりました。
所で、この山林所得に對する税額であります。先ほど必要經費というふうなものを控除するということを言明せられましたが、山林の場合にはこれを補植しなければならぬ。さもなくても戰時中の濫伐、過伐で、山林は非常に荒廢しておりますから、山持ちは、國土保安の面から見ましても、治山治水の面から見ましても、直ぐに補植して行こうという意欲をもつているはずであります。けれども、現在の植林費というものは非常に餘計かかりまして、さつき仰しやつた必要經費というものが今までに支拂われている經費であるとすれば、それはきわめて安いものであります。なお補植しようと考えるならば、現在のコストで行かなければ、再び山林を育成するわけに行かぬと思うのでありますが、その點現在の植林費というようなものを、必要經費と見るわけには行かぬものでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=127
-
128・池田勇人
○池田(勇)政府委員 山林の所得を得るに必要な經費でありますから、伐採した立木の苗代しか見るわけに行きません。その後に植林いたしまする費用は、その植林に要するものの必要經費で、只今伐つたものの必要經費にはなりません。しかし山林所得は他の所得とは違いますので、他の所得とは全然別箇の課税方法をとつているのも、そういう點を加味している次第であります。從つて普通の所得の税率よりは餘ほど低く相なつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=128
-
129・稻田直道
○稻田委員 なるべく簡單に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=129
-
130・井出一太郎
○井出委員 あとわずかであります。
先ほど豫算課税と實績課税という問題の際に、そこに時間的な開きがあるという問題が出たのでありますが、要するにこの増加所得税法は、明年度は豫算課税になつている。所が現在は實績課税であつて、その間に生ずるギヤツプを埋めるための一年限りの税法である。こういうふうに私は解釋しているのであります。先ほど三十と十というふうな數字のたとえが出たわけでありますが、既に十というものについて本年の決定をしたとするならば、それは十というふうなものについての基礎控除とか、或はその他の特典が加味されている。所が三十から十を差引いた二十というものにこの税法で課税するということになりますと、全體の頭から押えた三十というものとの累進率、その他の不公平ができて來はせぬか。こういう疑問をもつのでありますが、その點いかがでありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=130
-
131・池田勇人
○池田(勇)政府委員 それは増加所得税をどういうふうな計算でとるかという問題でございます。從つて只今お話のように、三十實際あつたのを、十を引いて二十に増加累進税率を適用したならば、三十に増加累進税率を適用したよりも低くなるのではないか。それは不公平だ、こういう御疑問だと思います。從いまして、この案を拵えまする時には、いろいろな方法を考えました。三十に税率を適用いたしまして、そして既に納めた税額を引く。こういうふうなやり方も考えてみたのでありますが、これは必ずしも從來の税率だけで徴收しなければならないこともないので、徴税、計算の便宜上こういうふうな超過部分の所得に對して、分類綜合を一緒にしたような税率で、短期間に早くとりたいといふ所から、この立て方にしたのであります。お話の點は十分研究したのでありますが、ちよつと手數がかかりますので、その方法をとらなかつた次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=131
-
132・井出一太郎
○井出委員 最後に一點お伺いいたしたいのは、この間の大藏大臣の提案説明の中にもありましたし、先ほど上塚政務次官のお述べになつた中にもありましたが、これは現在の經濟状態と申しましようか、貨幣現象とでも申しましようか、この膨脹的變化に鑑み、それ故にかような新税を創設するのだというお話がございました。この膨脹的變化という言葉は、非常に意味深長なものだと思うのであります。これをいわゆるインフレという言葉に當ると解していいかどうか。大藏大臣はしばしば現在の經濟状態はインフレにあらずと仰しやるのでありますが、この膨脹的變化という言葉は、インフレであるということを自白されたに等しいじやないか。こう私は解釋するのでありますが。政務次官の見解を聽きたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=132
-
133・池田勇人
○池田(勇)政府委員 これは先ほど私もちよつと申し上げましたように、どういう言葉を使うかということは、相當考慮しなければならぬと思うのでありますが、膨脹の場合、收縮の場合、これをインフレ、デフレと考えるならば勝手でございますが、政府といたしましては、國民經濟の膨脹、或は國民經濟の收縮、こういうのが、適切だと思いまして、この言葉を使つたのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=133
-
134・井出一太郎
○井出委員 そういつた問題は大臣がお見えになつた上で、さらに聽きたいと思いますので、その際に質問を保留して、この程度で打切りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=134
-
135・稻田直道
○稻田委員長 この際委員各位におはかりいたします。なお通告順の質疑者はありますけれども、各質疑者の御意向もあり、かつ各派の諒解を得ましたので、本日はこれをもつて質疑を打切ることにいたします。
次ぎに只今委員會に有價證券の處分の調整等に關する法律案及び議員提出にかかる戰時補償特別措置法の一部を改正する法律案の二案が併託に相なりました。よりまして政府より有價證券の處分の調整等に關する法律案につきまして、提出の理由の説明を聽くことにいたします。上塚大藏政務次官。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=135
-
136・上塚司
○上塚政府委員 只今議題となりました有價證券の處分の調整等に關する法律案につき、その提案の趣旨を御説明いたします。
今後財産税徴收の結果、國庫に納入いたされました有價證券、所謂持株會社或は閉鎖機關等の所有いたしておりました有價證券、その他きわめて厖大な額に上る有價證券が市場において處分せられることと相なるのでありますが、これら巨額の有價證券を處分するに當りましては、多額の有價證券を處分しようとする各機關が相互に連絡協調して、これらの有價證券の處分の順序、價額等に計畫的調整を加え、有價證券市場の状況に應じて綜合的に、統一的に處理して參りませんと、各機關において處分する有價證券が、時を同じくして市場に競合いたし、證券市場を不測の混亂に陷れ、その結果有價證券の價格も不當に低落を來すということに相なつて、とうてい圓滑にこれが處分を實行することは不可能であらうと思われるのであります。またこれらの有價證券を處分いたしまする場合には特定の者の手に過度に多額の有價證券が集中することを避けて、これを國民の間に廣く分散せしめるよう、きわめて公平に配分することが必要でありますが、このためにはやはり各機關が共同して賣買に關する事務を處理し、各種の機關を動員して、組織的に有價證券を處分して行くような仕組をとるとともに、特定の會社につきましては、中央において常時株主の状況を明らかならしめておくことが適當であると考えられます。以上の理由からいたしまして、政府はここに有價證券の處分の調整等に關する法律案を提案いたした次第であります。
次ぎにこの法律案の内容につきまして、御説明いたします。
第一は、この法律の適用を受ける有價證券の範圍についてであります。この法律の適用を受ける有價證券は、これを指定證券と稱し、その範圍は國の所有する有價證券、持株會社整理委員會の所有する有價證券、閉鎖機關の所有する有價證券、いわゆる制限會社等が先般公布施行せられました會社の株式保有等制限に關する勅令に基づいて處分する株式及び特別經理會社が整備計畫に從つて處分する第二會社の株式、舊勘定所屬の株式等であります。なお將來以上に準ずるものが生じた場合には、命令で規定して指定證券として同樣に扱い得る途が開いてあるのであります。
第二に證券處理調整協議會についてであります。多額の有價證券を處分しなければならない機關、すなわち國、持株會社整理委員會、閉鎖機關保管人委員會及び閉鎖機關の特殊整理人としての日本銀行の代表者、さらに特別經理會社の利益を代表するものは、證券處理調整協議會を組織して、指定證券の處分に關する事項を協議することに要することに相なつております。協議會の決議は、議長の選任及び解任の場合のほかは、協議員全員の意見の一致によることを必要といたしますが、その他協議會の運營に關して必要な事項は、すべて協議會が規約をもつてこれを定めるのであります。
第三に指定證券の讓渡計畫の承認についてであります。國、持株會社整理委員會、閉鎖機關保管人委員會、日本銀行、特別經理會社等が指定證券を處分する場合には、原則として讓渡の時期價額、數量等讓渡の計畫につき、あらかじめ協議會の承認を經なければならないのであります。この計畫書が提出いたされましたならば、協議會は市場の状況を勘案し、指定證券の分散竝びにその處分を圓滑かつ公正ならしめるという見地より、この計畫書を檢討の上適當と認めた場合にはこれを承認するのでありますが、もし計畫が不適當であると認めた場合には不承認とし、或はまた計畫に所要の變更を加えて承認することもできるのであります。但し制限會社等が、株式保有等の制限に關する勅令に基づいて株式を處分する場合には、制限會社等は、右の勅令に基づいて持株會社整理委員會に株式處分計畫書を提出することになつているので、整理委員會においてこれ等の計畫を取りまとめ綜合計畫を作成し、この綜合計畫を協議會に提出して承認を求めることになつております。
第四は指定證券の讓渡についてであります。協議會より指定證券の讓渡に關する計畫について承認を受けた場合には、特別經理會社の場合を除き、その他の各機關は、その計畫に從つて、指定證券の讓渡を協議會に委託しなければならないことに相なつております。ただ特別經理會社の場合には、指定證券を讓渡するには、必ず協議會の承認した計畫に從わなければならないことは勿論でありますが、讓渡自體はみずから行つても、或はまたこれを協議會に委託しても差支えないのであります。なお以上述べました所によつて協議會に對し指定證券の讓渡を委託した各機關は、協議會に對して一定の手數料を支拂うことになつております。
第五は株主等に關する事項の報告についてであります。政府の指定する一定の會社は、政府の指定する日現在の株主名薄に記載されている株主の住所氏名、所有株式の種類及び數を協議會に報告するとともに、その後におきましても、その報告した事項に異動を生じましたたびごとに、その旨を協議會に報告しなければならないのであります。しかしてこれらの會社につきましては、常に株主の状況を明らかならしめておくことを要しまする關係上、商法の規定に拘らず無記名式の株券を發行することができないことといたしました。
第六に協議會がその職務を執行する上に必要と認めた時は、協議會は關係各廳官吏、證券の取引に關し、特別の知識經驗を有する者等に對し協議會の會議に出席することを要求し、またこれらの者から必要な資料、情報、または報告の提出を求めることができるのであります。
第七は協議員その他協議會の職員についてでありますが、これらの者は公務員とみなされ、個人的に有價證券の賣買等に關する行爲は、一切行うことができないとともに、職務上知り得た秘密を他へ漏らすことを禁じられ、これに違反する時は處罰せられることと相なつておるのであります。
第八には協議會の經費でありますが、先ほど申し述べました指定證券の委託手數料を經費に充當するほか、これは國、特株會社整理委員會、閉鎖機關保管人委員會委員長、日本銀行等各機關が分擔するのであります。
最後に特に附言いたしておきたいと存じますが、この證券處理調整協議會は、有價證券の處分に關する調整を行い、またその處分の實行に當つては、共同して處分の斡旋をするための機關でありますから、これによつて持株會社整理委員會や閉鎖機關保管人委員會等の從來の性格には、何ら變更を來すものではなく、また各機關固有の任務については、制限を加えようとするものでないことは勿論であります。
以上がこの法律案のだいたいの内容であります。何とぞ速かに御審議の上御協賛あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=136
-
137・稻田直道
○稻田委員長 本日はこの程度にいたしまして、次囘は明二十日午前十時より開會いたしたいと思います。つきましては明日は午前十時に各位の御來會を得まして御勉強を願い、かつ御協力を願いまして、明日中に原案をだいたい審議し、明後日はなるべくこれを本會議に上程したいと思うております。では本日はこれをもつて散會いたします。
午後四時三十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00119461219&spkNum=137
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。