1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
増加所得税法案(政府提出)(第五號)
有價證券の處分の調整等に關する法律案(政府提出)(第七號)
戰時補償特別措置法の一部を改正する法律案(左藤義詮君外四名提出)(第一號)
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昭和二十一年十二月二十日(金曜日)午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 稻田直道君
理事 井田友平君 理事 神田博君
理事 西村久之君 理事 小池新太郎君
理事 佐竹晴記君 理事 松永義雄君
理事 赤澤正道君
今井はつ君 河原田巖君
田中實司君 天野久君
白木一平君 圖司安正君
井上良次君 加藤鐐造君
川島金次君 島田晋作君
町田三郎君 松本淳造君
駒井藤平君 二階堂進君
的場金右衞門君 井出一太郎君
久芳庄二郎君 疋田敏男君
出席國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 櫛田光男君
專賣局長官 杉山昌作君
委員長の許可を得て出席した者
議員 左藤義詮君
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本日の會議に付した議案
増加所得税法案(政府提出)
有價證券の處分の調整等に關する法律案(政府提出)
戰時補償特別措置法の一部を改正する法律案(左藤義詮君外四名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=0
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001・稻田直道
○稻田委員長 それでは前會に引續き會議を開きます。まず初めに併託になりました戰時補償特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案者の提案理由の説明を願います。左藤義詮君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=1
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002・左藤義詮
○左藤義詮君 前議會に可決されました戰時補償特別措置法の第十二條に、「民法第三十四條の規定により設立した法人その他の營利を目的としない法人又は團體で命令で定めるものが、この法律施行の際現に別表二第一號に掲げる請求權を有し、又はこの法律施行前に同號に掲げる請求權について決濟を受けた場合においては、政府は、命令の定めるところにより、戰時補償特別税審査委員會の諮問を經て、戰時補償特別税を輕減又は免除することができる。」こういう規定がありますが、この別表第一號と申しますのは、舊戰爭保險臨時措置法、または舊戰時特殊損害保險法に基づく戰爭保險契約による戰爭保險金の請求權であります。わかりやすく申し上げますれば、戰爭保險金、これは戰時補償特別税の減免ということを認めたのでありますが、別表二の第五號を讀んで見ますと、「舊防空法第五條ノ五第二項の規定により指定された地區内に存する建築物を除却する場合における補償金及び當該建築物の賣買代金の請求權」。一口に申しますれば強制疎開のための補償金、これは恩典が認められていない。こういうような片手落ちになつておるのであります。元來舊防空法による疎開が、當時戰局の不利に血迷つた軍閥の專制抑壓により強行されたことは御承知の通りであります。京都府の一例を申しましてもわずかに旬日の期限をもつて、戰局が迫つておりますから無理もありませんが、學校とか、寺院とか、教會とかいうようなものも一律に建物の讓渡命令を發しまして、その建物の移轉や拂下げは絶對にこれは許さない。全部京都府が買上げで二束三文に處分してしまつた。しかもその補償金は當時の貨幣價値をもつてしても非常に安かつたのであります。しかし當時の情勢上涙を呑んでこれに服從したわけでありますが、爆撃にひと思いにやられてしまつたならまだ諦らめがつきやすいのですが、その方の戰爭保險金には法の情けがかけられておりますが、嬲り殺しのような強制疎開の方は何ら考慮が施されていない。これはどうしても不合理、不公平と言わなければならぬと思うのであります。復興するにつきましても、後から燒けてしまつたものよりも、先に疎開せられた方が早く手をつけておる。折角の補償金を頼りにして建築にかかつたものが、今さら課税されたらどうにも動きがつかない。かような状態でありますので、教育團體、慈善團體、醫療團體或は宗教團體、こういうような文化日本の基盤たるべき公益事業を助成するという上から、もう一つには法の公正という上からも、ぜひとも別表二第五號、すなわち強制疎開による補償金につきましても、戰爭保險金と同樣の輕減または免除がなされますよう、各派共同一致してこの法案を提出した次第であります。何とぞ御協賛のほどお願い申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=2
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003・稻田直道
○稻田委員長 これより質疑に移ります。今井はつ君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=3
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004・今井はつ
○今井(は)委員 私のお伺い申し上げたいことは、咋日他の委員によりまして質疑されましたので、なるべく重複を避け、二、三の御質問を申し上げ、御意見をお伺いいたしたいと思います。私は本増加所得税法案は、社會黨の佐竹委員同樣、賛意を表する者でありますが、大藏大臣閣下の御答辯をお聞きいたしますと、あまりにも民情を酌量し過ぎて、今日の再建建直しの大手術のメスの手が鈍つておられるかと思います。社會黨の佐竹委員の御提言の大手術もいかがかと思いますが、道義の廢頽いたした今日、生やさしい手段では、新興資本家の資産調査は困難なことと思います。これはどうしましても、新紙幣の大交換をするのが一番と思いますが、それは大臣閣下の御言葉の通り、幾多の難問題がありますことであります。この難問題の打開策はたとえば期間中に臨時賣買制限を設けて、證明のない物品の賣買持出し禁止令を出すとかなんとかの方法をとりまして、斷行すべきではないかと思います。そうしましてこの増加所得税法案を實施すれば、この國民の税に對します所の不平や非難は緩和されるものと思いますが、それ等の御所見はいかがでございませうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=4
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005・池田勇人
○池田(勇)政府委員 お話のような非常手段をとりますことは、社會經濟によほどの惡影響を及ぼしますので、私はそういう施策をやらなくても、税務官吏がうんと働き、また皆樣方や國民の御支援と御協力を得ますれば、新興所得階層に對しまして、十分の課税ができると信じておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=5
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006・今井はつ
○今井(は)委員 次ぎに私は税務官吏のことについて一言申し上げたいと思いますが、今日税務官吏の不公平な行爲がまことに多々あるので、自分が税を必ず納めたいと思う氣持の者におきましても、この税務官吏のやり方に對して、まことに反感を抱いておるのでございます。その一つといたしまして、税務官吏が納税調査員と申しますか、所得税調査員と申しますか、そういふ人達と結託しまして、饗應を受けまして、その饗應の結果、税の負擔を輕減するとかいうような事件が、地方には澤山あるということでございますが、そういうことをこの際しつかり肅正していただいて、そうしてこの調査員というものを、もう少し眞面目な方面から、單に地方の名望家というものではなくして、ほんとうに公平な、ほんとうにこの人なら間違いがないというような方を選定されまして、それを斷行していただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=6
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007・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税務官吏が至公至平であらねばならぬことは當然であります。ことに今囘のごとく財産税法或は増加所得税法の施行に當りましては、層一層この點につきまして嚴格に取扱わなければならぬと思うのであります。お話のごとく、數多い税務官吏の中には、不心得者が從來もあつたのでありまして、われわれは常にそういう點は是正いたして行きますよう監督いたしておるのでありますが、遺憾ながらその跡を絶ちませんのは、非常に殘念に思つておる所であります。なお從來の所得税調査委員制度につきましては、檢討を要する點が多々ありますので、財産税におきましては、お話のごとく立派な人物を財産税調査委員に政府の方でお願いする。また増加所得税の委員會における委員につきましても、政府の方で立派な人を選んで御協力を願うことにいたしておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=7
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008・今井はつ
○今井(は)委員 今一つ御伺いしたいのでございますが、今囘の増加所得税において、私が次ぎに申し上げるような者はどうしていただけるかということを一つお聽きしたいのです。それはほかでもありませんが、先祖から貰いました所のわずかの山林をもつておりまして、それを出征して負傷しました所の傷痍軍人が歸つて參りまして、働くに途なく、食うことができなくなつて、その山林を今囘賣りましたのでございます。そういう者に對して、やはりこれも増加所得税を課税されるのかどうか、お伺いたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=8
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009・池田勇人
○池田(勇)政府委員 山林をお賣りになつた場合に、そこに所得が生ずれば、本年お賣りになつたものにつきましては、この増加所得税法によつて課税を受けることに相なります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=9
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010・今井はつ
○今井(は)委員 それについてなんとか免税されるやうな特典を與えてもらうことはできないでしようか。傷痍軍人としまして、働くに働くことができなく、やむを得ずそれを賣りましたお金によつて命を支えて行くという、まことに氣の毒なものですが、ほかになんとか許される方法がないでせうか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=10
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011・池田勇人
○池田(勇)政府委員 只今の法制では、そういう方につきましての輕減免除の規定はございません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=11
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012・今井はつ
○今井(は)委員 それについて一つ考慮していただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=12
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013・池田勇人
○池田(勇)政府委員 山林の所得は、他の地上の所得よりも税率が非常に輕くなつておりますので、傷痍軍人の方にはまことにお氣の毒でございますが、この程度の負擔はしていただかなければならぬと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=13
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014・今井はつ
○今井(は)委員 それでは私の質疑はこれで打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=14
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015・池田勇人
○池田委員長 次ぎは井上良次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=15
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016・井上良次
○井上(良)委員 私は二、三點この増加所得税に關連して質問いたしたい。一つは勤勞所得税の問題でありますが、この税金の問題については、衆議院各派の委員から、各委員會を通じまして、これが減免についての非常な要望があるのに拘らず、今日まで、政府の意見を承りますと、全く具體的に何らのこれに對する檢討が加えられていない。この前の第九十議會に、私はこれが撤廢並びに減免に關する建議案を提出いたしまして、政府當局の所見を質しましたる所、政府は、現在の國家財政の現状から、非常に無理であるけれども我慢をしてかけてもらわなければならぬ。こういう聲明をいたし、かつ答辯をされておりました。その後電産爭議を初め各重要産業の勞働爭議の一つの要求項目として、勤勞所得税を即時撤廢せよ、或はこれを減免しろ、或はまた綜合所得税の免税點を引上げろという要求は、どの爭議の要求にも高く掲げられている。特に電産爭議においては、この勤勞所得税と綜合所得税の免税點の引上げ問題に絡んで、政府は相當考慮するということを約束している。しかるに今日に至るまでなおこれが具體的に、どの程度これを減免するのか、また綜合所得税はどの程度に免税點を引上げようというのか、この點がまことに明確でございません。なるほど税制調査會ができまして、國の税制全般にわたつての檢討を加えている面もございますけれども、政府として一應案はどう考えられるか。この點に對してもつと具體的な、なるほどそれなら我慢ができると、勞働階級が期待し得る答辯を、せひこの機會にいただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=16
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017・池田勇人
○池田(勇)政府委員 勤勞所得税の問題につきましては、お話の通り九十議會にも相當論議せられました。われわれも常に研究を續けておるのでございます。この勤勞所得税をどうするか、そうしてまた綜合所得税の免税點をどうするかということは、税制の根本に關係するものでございまして、他の所得の負擔と睨み合わせて考えなければならぬ問題と思うのであります。從いまして、お話のごとく、只今税制調査會にはかりまして、研究をしていただいておるのであります。ただ、問題の綜合所得税が一萬圓超過百分の三十五で課税して行く。こういう問題を、二萬圓にするとか三萬圓にするとかいうことは、所得税の體系をどうするかという所からきまつて來るのでございます。これを昔の第三種所得税のような方法で行きますか、現制度の分類所得税、綜合所得税の制度で行きますか、これはよほど研究を要する問題と思うのであります。從いまして只今綜合所得税の免税點を二萬圓にするとか三萬圓にするということは、現行の所得税體系をそのまま踏襲しての話でございまして、もしこの體系を變えるということになれば、二萬圓とか三萬圓とか言つても詮ないことと思うのであります、できるだけ早い機會に成案を得まして公表したいと努力をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=17
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018・井上良次
○井上(良)委員 できるだけ早い機會に成案を得るというのですが、その見透しは一體いつ頃になるかそれを伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=18
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019・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税制調査會の答申を得まして、政府はきめたいと考えております、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=19
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020・井上良次
○井上(良)委員 そうすると委細は税制調査會の進行の如何によつて決定されるし、また税制調査會が、かりに相當額勤勞所得税の減免についての立案を答申して來た場合は、また綜合所得税の免税點引上げに對する原案をきめました場合は、政府はそれをそのまま呑み込むつもりでありますか。この點を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=20
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021・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税制調査會の原案をそのまま呑み込むとはきまつておりませんが、非常に尊重はいたしまま。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=21
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022・井上良次
○井上(良)委員 そうしますと、この際私はさらに伺つておきたいのは、政府は税制調査會の決定を待つて、その上で政府の全般の財政關係と睨み合わせての問題になると思いますけれども、政府の肚が、だいたいこのくらいまでやるべきである。或はまた今日の勤勞階級の生活から割り出して、他のいろいろな財政の方向さへうまく按配をいたしますならば、四十五、六億の勤勞所得税の見返り財源というものは、いくらでも取り得る見地があり得ると思います。そういう問題を十分考えられて、勤勞所得税を速やかに撤廢し前途に明るい希望を勞働階級に與える責任が政府にあると思う。ストライキをやつて騷いだ時には考慮すると言つておきながら、治まつたら全くのほほんと構えてしまつて、さつぱりいつ具體的に決定するかわからぬという状態では、勞働階級は默つておられません。その點から明確に一つこの際、政府當局としてはどうするのだということを、責任逃れでなしに——税制調査會がきめて來たら、それによつてやるというけれども、それなら税制調査會がきめたことをそのまま呑むかというと呑まぬという。それなら政府は一體どのくらいの見透しをもつておるか、どのくらい下げたらいいと思つておられるか。綜合所得税の免税點引上げもどのくらいの程度が正當と考えておられるか、この點をもう一度はつきりしてもらひたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=22
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023・池田勇人
○池田(勇)政府委員 勤勞所得に對する所得税、これをやめる氣持は全然ございません、昔からこの名前ではございませんが、勤勞所得にはずつと所得税施行以來課税いたしておるのであります。この勤勞所得税を實質的にやめるという考えはもつておりません。ただ分類所得税、綜合所得税というものをどう取扱うかによりまして、名前は變つて來ることがあろうと思いますが、勤勞所得税を撤廢するという氣持は全然ございません。負擔の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、昭和二十二年度の歳出がどうなるか、或は他にどんな財源があるか。こういうことを考慮いたしまして、全般的にきめるべき問題だと思うのでありまして、只今から勤勞所得税をどうするかということは、申し上げかねる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=23
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024・井上良次
○井上(良)委員 だいたい筋道が明らかになつて來ましたが、なるほどわれわれも勤勞所得税の全面的撤廢というものは、いろいろ檢討を加える必要があると思いますけれども、少くとも今日一般勤勞大衆が生活資金として要望しております所のものは、一箇月手取り千二百圓乃至六百圓というような收入がなければ、生活ができないという上に立つての要求なんです、生活ができないからこれだけ生活費をよこして貰いたいという要求をしておるに拘らず、それに税金をかけるというのは、一體これは矛盾する行き方でありまして、政府としましては、現在官公勞その他の團體及び從業員から要求しております所の六百圓乃至千二百圓、この生活資金要求の問題をどうお考えになつておるか。これで十分餘裕があつて税金がかけられると考へておられますか。この點を一應承つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=24
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025・池田勇人
○池田(勇)政府委員 我が國の財政經濟の状況から申しますると、この程度の負擔はしていただきたいというので御協賛を願つてやつておるのであります。ただ今後税制改正をする時には、どういう風な考え方で行くかということになりますと、これは勤勞所得税につきましては、できるだけ負擔を輕減するように努力いたしたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=25
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026・井上良次
○井上(良)委員 私はその點はもう一つわからないのでありますが、つまり六百圓なければ生活ができないというので、政府はそれを認めておるのです。その六百圓を原則的にだいたい認めておるわけです。さうしますと、それに税金をかけるということなら、初めから六百圓を認める必要はないわけです。餘裕があるという上に立つて税金をかけるのですから、勞働者及び一般サラリーマンの俸給というものは、何も贅澤をするために貰つておるのではない。翌日の勞働をさらに一層效率的に發揮するための一つの生活給源なんです。その生活給源に對して税金をとるというのは、事業所得及び動産所得というような面の所得とは全然意味が違うのです。かりに政府は六百圓を正當と認めるといたしますと、六百圓なければ生活ができない。それを豫算の上で認めておる。そうしますと、それに税金をかけるということなら、初めから六百圓を認める必要はないのですこの點どうお考えになるのですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=26
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027・池田勇人
○池田(勇)政府委員 今の税制は先般の議會で協賛を經まして施行いたしておるのであります。その後の情勢によつて六百圓が必要だというので俸給が上りましても、税は直ちにそこまで行かなければならぬことはないのでありまして、そういう状況を見まして、勤勞所得税をどうしようかということを研究いたしておるのでございますから次ぎの通常議會にはぜひともこれに對しまして適當な案を作成して提案する考えであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=27
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028・井上良次
○井上(良)委員 大體ポイントが明かになつて來ましたが、ぜひ一つ次ぎの通常議會までには、明確な案を出していただきたいということと、さらに私はこの際これは前の議會でもわれわれは申し上げたのでありますが、この勤勞所得税を撤廢する、或は減免をする、その代り財源として軍需公債の利子の棚上げを要求しているのでありますがこれに對しまして大藏大臣は、この公債の所有者が、郵便貯金或はまた庶民金庫その他の大衆金融機關がこれを大口にもつているから、もしこれを打切るとか、棚上げするとかいうようなことをすれば、金融混亂を來す。これは現在の情勢からそういうことをやるべきではない。こういうお考えをおもちになつて、この國債利子の打切りまたは棚上げに賛成をしない。所が一方政府は軍需補償の打切りをいたし、かつそれに伴う都市の戰爭保險その他についても金融措置令によりまして、ことごとく五萬圓以上は切り捨ててしまつた。何十萬圓、何百萬圓の保險をとろうとも、ことごとく五萬圓に切捨ててしまつて、そうしてそれを封鎖預金で閉じ込めてしまつた。かくのごとき大手術を一方においてはやりながら、何故に軍需公債にそれだけの大手術ができないか。一般勤勞庶民大衆の生活を、脅かすというのならば、今日非常措置としてとりました所の金融措置令により二萬圓、三萬圓という少額の限度をきめまして、それ以上は國家がどうする、少額の生活費の場合に限つては政府が補償する、それ以上は遺憾ながら補償できないというような、ちようど戰爭保險にとりましたような態度を政府がとりましたならば、問題は簡單に片づくとわれわれは考えている。しかるに何故これがやれないか。御承知の通り本年の豫算を見ましても、公債の利子だけが五十億、さらに經常並びに特別會計の公債發行額を加えて行き、さらに來るべき通常議會に提案されようとする赤字公債を加えますと、少くとも本年中にわが國の公債は既に二千億に達するというような状態になつている。二千億の公債を背負つて——これは戰爭の進行と、戰爭による敗戰と、その跡始末と、この三つがおつかぶさつて二千億という借金を背負うことになるのでありますが、その上に例の賠償を日本はやつて行かなければならぬ。そうして國内の再建をしなければならぬ。こういうことを考えた時に、この軍需公債を即時に棚上げするということは絶對に必要である。打切ることができなければ、日本の經濟が再建できるまで、それの支拂いをしばらく待つてもろうといふ非常手段をとつて、何ら差支えないと思う。どういうわけでやれないか、この點を大藏大臣に伺つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=28
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029・石橋湛山
○石橋國務大臣 軍需補償の打切りの場合も、今お話がありましたように、火災保險、戰爭保險は低い方、つまり五萬圓まではこれを認める。それからまた、同じ補償問題に絡んで預金は生命保險等を第一、第二と封鎖を分けました。その場合にやはり小額預金或は小額保險というものは、第一封鎖としてこれを確保するということにして、比較的大口の第二封鎖だけを或る程度打切るという處置をとつたわけであります。そこで今御質問の公債を打切るなり、或はその利子を下げるとか、或は拂わないとかいうことをいたしました場合に、どうなるかと言うと、その軍需補償を打切る問題で助けました戰爭保險金の五萬圓とか、或はまた第一封鎖というものが再び打切られることになる。その全部とは言いませんが、その相當部分が打切られることになる。その處置は、補償打切りほどの大きなことをやつたなら、なぜついでにそれをやらぬかという話にはならぬのでありまして、片方の手だけはやむを得ず切つた、ついでだからもう一つ切つてしまえということになるわけでありましよう。つまり小さな預金者は今でも隨分苦しめられている場合がありましよう。或はこれからも苦しめられるでありましようけれども、その上にさらに重荷を掛けるということであります。これが一つと、そういうふうなことを次ぎ次ぎとして行きますと、いつまで經つても通貨に對する信頼とか、或はその他の經濟的の安定は得られない。ですから、これはこの際できるだけこの間の處置をもつて終りとして、そうして非常處置はやめて、あとは普通の租税その他の方法でもつて處理して行くというのが一番適當と私は考えるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=29
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030・井上良次
○井上(良)委員 大藏大臣の心配されているのは、軍需補償打切りによつて國民に相當大きな犧牲を負わした。さらに軍需公債の利子を打切るということによつて、また國民に大きな犧牲を拂わさなければならぬという點であらうと思います。所が國民たるや、だいたい勤勞所得によつて生活をしている者と、戰爭以來非常に儲けて、その事業なり、金利なり、どつちかの利益によつて生活している者との二通りある。またそれを對象にする銀行にも二通りある。問題はこの少額預金者の取扱いの問題であります。これは政府の方で、たとえば戰爭保險に政府がやりましたような三萬圓なり五萬圓なりの金額は政府でこれを補償するという手さえ打てば、少しも差支えないのではないか。そうすれば一般の預金者は何ら自分の預金に不安を抱くことはありません。そういう手を打てば、十分行けるのではないかという確信をわれわれはもつている。しかしわが國の財政の前途を考えてみると、本年中に既に二千億の公債になろうとしている。三分五厘として少くとも利子だけでも七、八十億というものを拂わなければならぬ。金利に七、八十億も拂わねばならぬというこのことを、一遍眞面目にわれわれは考えなければならぬ。今ここに審議しているような——政府は勿論國民の負擔の均衡の上もありましようけれども、おもなる目的はやはり財政の困難の上に立つて増加所得税をとろうとしている。しかもその金額わずかに四十五億である。そういたしますと、この公債の利子を棚上げするならば、年間に少くとも六十億七十億という金が浮いて來る。このように國が大きな痛手を受けて、これから起ち上らなければならぬという時に一切の借金を整理して、そうして殘つた借金をどうして拂うかということをわれわれが考えた時に、相當大きな犧牲があるということは國民は覺悟しておる。その場合にわれわれは國の前途の財政状態を考え、かつ在現の財政の困難な實情を考えて、これは少くとも思い切つて打切るべきだ。そしてまた日本の財政が立直つた時には拂う。こういうことにすればちつとも差支えないのではないかと思います。小額所得者の問題については、政府が補償すればよい。少くとも貯金を當てにして生活をせなければならぬというような階級に對しては、法律一本でもつてどうでもできる。なぜそれをやらないのであるか伺つておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=30
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031・石橋湛山
○石橋國務大臣 お話の小額貯金者、そういうものをどの程度に見ておるかということで違つて來るでありましようが、現在の日本の預貯金とか、生命保險とかいうものは、決して非常に大きなものではなく、だいたい小額のものが多いのであります。從つて例の第一封鎖、第二封鎖をやつた場合に、第一封鎖の方が割合いに多い。殊に地方の銀行などは第二封鎖が少い。御承知のように市街地信用組合、無盡會社というものが今囘の措置で相當影響を受ける。これをどう處理するかというので今苦心しておる。でありますから、小額預金者を救濟するということになれば相當な金額になる。この間も一口三千圓を助ける。その上に一萬五千圓まで助けるというようなわずかなことで、相當な結果になつております。それをさらに打切る。たとえば郵便貯金は八割打切るということになると、その場合に小額預金者を政府が補償すればまた公債を出す。公債を出さなければ補償ができない。今度の五萬圓の火災保險も、今度の豫算には出ませんが、約二百億圓の公債が出る。公債が殖える、公債が殖えると言いますが、最近の状況は特別會計は赤字でありますが、一般會計は財産税等で埋めて、今までは本當の公債を出しておらない。出しておるのは四十二億圓、これは出資金を復興金融金庫がもつが、これから出ますものは公債のほかに火災保險で二百億圓出るということになりますと、それで公債が殖えるわけになります。火災保險の五萬圓を出せばすぐ二百億圓の公債が出るということになる。それを救わないでよいということなら別ですが、私は救わなければならぬと思います。どうしても救おうとすれば、かりに公債を打切つて、それから小額預金を助けるということになれば、いくらか打切り得るかも知れないが、大部分は同じように公債を出し直さなければならぬ、こういう結果になると思います。これは實際の問題でありますから、幸いに今、財政收支調整委員會もでき、税制調査會もできており、かつまた金融調査會にもこの公債問題は非常に關係あります。三つの調査會にいずれも關係がありますから、これは幸い各黨から皆出て下さつておりますから、そこで實際問題を御檢討願いたい。ここで議論をしてもどうも議論倒れになる懸念がありますから、どうぞお願いします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=31
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032・井上良次
○井上(良)委員 私はただ本年においてさえ二千億圓の公債を政府が背負わなければならぬという見透しに立つておるし、さらに來年の財政計畫を見ました時に、一層赤字公債は殖えて行くといふ見透しをわれわれはもつ。そういう見地において少くとも戰爭中發行した公債というものは、戰爭に敗れた今日、これを棒引きにするというのが建前でありまして、これに何ら未練も何も國民はもつていない。われわれは戰爭中公債を無理押しに買わされたのでありますが、今日公債の利子をどうこう考えておる者はありません。そういう關係で、思い切つてこの際これをやはり整理するような方向を政府はとつてもらいませんと、ほかの借金じやない。内の借金のためにわが國の財政は行詰まる現状に追ひ込まれておると考えますから、特にこの點について政府當局の勇斷を私は要望しておきたいと考えるのであります。
なおこの機會にもう一點承つておきたいのは、この有價證券の調整に關する法律案に關連しての問題ですが、この調整協議會の決定に基ずきまして、できるだけ國民の大多數に有價證券をもたすという方向を政府はとろうといたしておりますが、御存じの通り、だいたい有價證券等の動産をもち得る階級は、どちらかと申しますと、農村、漁村方面に相當これが振向けられるのではないかという見透しであります。そうしますと、ここでちよつと伺つておかなければならないのは、御存じの通り過ぐる特別議會に政府は農地改革法を提出いたしまして、一町歩以上の所有田地は、これを全部土地證券によつて國で買ひ上げるということにいたしました。そうしますと、現在農山漁村にあります所の金は、だいたい耕作地を講入するために使いはせぬかという見透しが一つ立つのです。すなわち政府が買ひ上げてこれを自作農創定のために小作人に賣拂うのでありますから、當然その金は土地代金となつて政府の手許にはいる。農村へ殘りますのは政府が農民、地主に渡します所の土地證券である。そうしますと土地證券とこの有價證券との關係をどう考えられるか。この問題を考へておきませんと、實際は農山漁村の有價證券というものは、うまくもたすことができ得ない經濟的條件が横たわつていて、つまり農地改革法の實施に伴う土地の移動と、これによる金融の動きと、同時に土地證券と有價證券との關係をどう調整しようとするか。この關係について大藏大臣の御説明を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=32
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033・石橋湛山
○石橋國務大臣 御質問は土地證券で地主から土地をとる。しかるに小作人に現金で土地を賣るから、その現金が政府にはいるが、その關係はどうかということのようでありますが、あれはたしか地主にも一部分現金で拂う。それで小作人が、土地を手に入れます場合には、少くとも地主に拂うだけは現金で欲しいという程度であります。そういふ程度で小作人から現金をとる、あとは年賦になるのでありますから、その場合に政府としては、小作人から現金がはいれば、それを右から左に地主に拂わなければならぬという程度で、現金はなんにも政府に殘らないという勘定になります。しかしその場合にさように農家が土地を買うために手にしておる現金を拂うから、農村の現金が涸渇するわけでありますが、しかしその代り今までの地主にその現金が或る程度はいることになりますから、もし農村漁村で今の有價證券投資——これは今まであまりその習慣が多くないのでありますが、これはせいぜい方法を盡くして、一つその方面へこれから賣出そうとする、有價證券を分布するやうに努力しようと、今計畫しております。その點どういうふうに成功するかということは問題でありますが、とにかく現金があるとすればる或程度有望なものは農村漁村へはいるだろうと思つて。折角そのつもりでやつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=33
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034・井上良次
○井上(良)委員 いま一點伺つておきたいのは、前の増加所得税の問題に關連しておるのですが、この税金をとる對象が、新圓階級を狙うという所にあると思うのです。新圓階級の問題については、昨日以來各委員から非常に各方面からの質疑がございましたが、問題は闇商人をどうして押えるか。それで闇所得をどう突くかという問題が論議の中心になつておるのであります。所が政府はこれに對應するために、約二萬人からの税務官吏を動員して、あの手この手で調べる。こういう御答辯のやうに承つておるのであります。所が現在の税務官吏の徴税の調査の現状をわれわれが見ました場合に、はたして政府が期待するがごとき成果を上げることができるかどうかという問題なんです。御承知の通り今日の税務官吏の待遇は、はたして闇商人のべらぼうに儲けておる誘惑に打克つだけの生活が保障されておるかどうかという問題なんです。この問題が解決されませんと、結局は饗應買收の魔の手にかかるのであります。大藏大臣は現在の税務官吏の身分、待遇、地位というものについて、十分にその所期の目的を達することができるとお考えなつておりますか。これを伺いたいと思ます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=34
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035・石橋湛山
○石橋國務大臣 税務官吏の待遇が決して厚くないということは、これはもう以前から言われておることであります。從つて御懸念のようなことが全然ないとは言えませんが、幸に今までの状況では、さような涜職的なことは、そう無茶苦茶にあるものとは私は考えておりません。現在無論待遇の改善その他をはからなければならぬし、それに努力もいたしております。無論やれなかつたら、これはお話にならぬのでありますが、やれるものと信じております。またやらせるつもりで努力いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=35
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036・井上良次
○井上(良)委員 現在の待遇でやれるとお考えになるのは、これは私はあまりにもその場逃れの答辯であろうと思います。現實に税務官吏がその新圓階級及び今日いろいろの名目で取り引きしております所の會社及び商賣人に、どれだけ買收饗應されておるか。しかもその職權を濫用して、甚だしい時には料理飮食店に横柄に乘り込んで來て、そうして酒を飮まさなければ因縁を喰いつけて税金を餘計とるという行き方なんです。飮ましさえすればうまいことやつてくれる。これなんです。これをあなた方はどう考えられるかということなんです。だから、少くとも税務官吏がこれらの誘惑に打克てるだけの待遇なり身分なりを國家的に保障して、いかなる誘惑にも陷らぬというだけの裏づけをしてやらずに、そういう人間だけ殖やして、しかも一箇月に僅かに三百圓や五百圓の給料をこのインフレーシヨンの嵐の中に渡して、それで思ひ切つた仕事をしろと言つたつてできない。だから、少くとも税務官吏の身分待遇というものを相當程度に保障するの手を打たなければいかぬ。これに對して何らの具體策がない限りにおいては、なかなか商賣人はそんなのんきな考え方ではありません。税務官吏さへうまいことごまかしたら、税金の十萬圓や二十萬圓すぐ儲かるのです。だからいかにして税務官吏を買收するかということに、鵜の目鷹の目なんです。しかも會社は御承知の通り計理士をおいて二重帳簿をつくつて、そうして税務官吏に見せるやつと、ほんとのものとは別になつておる。この事實をあなた方は全然見逃してしまつて、それでもつて結局はそういうことのでき得ない、計理士も置けなければ税務官吏の買收もきかないやうな零細な中小商業者及び農民を苛斂誅求することになるのです。結局は掴まなければならぬ大きなやつはみんな逃げてしまう。そうして一番ものもよう言わぬこつこつやつて貯めたやつだけがいかれる。これをあなた方はどう考えられるか。だから、この際われわれが納得し得るような税務官吏の待遇なり、地位なりというものについて、政府は相當誘惑に陷らぬだけの保證ができるかできぬか。この問題についてもう一度伺つておきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=36
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037・石橋湛山
○石橋國務大臣 毎々申し上げる通り待遇決していいと申すのではありません。しかし人はパンのみにて生きるものにあらず、税務官吏には税務官吏の誇りがあります。それはどこの社會にも、またどんな待遇のいいものでも誘惑にかかるということは、これはあり得ることでありますが、私は現在の税務官吏が全體として、中には過ちを犯す者もありましようけれども、しかしながら全體として、私は税務官吏にはやはり長い一つの税務官としての誇りがある。これは私どもが實際に接觸する人達からすぐに感得することでありまして、待遇改善は無論努めますし、そのつもりで今計畫をたてておりますけれども、現状において、お話のような非常弊害が彌漫して、どうにもこうにもならぬということは、絶對にないということを私は申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=37
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038・井上良次
○井上(良)委員 それは事實をもつて來てやらぬと、そういうことは言えませんから、これ以上私はこの問題について大藏大臣に所見を質そうとは考えません。要はこの闇取引による闇利得を、一體どう押えるかということが、一番の中心になりますし、この問題については、後から加藤委員からも詳細に質問することになつておりますので、これ以上私は問題を掘り下げて質問いたしませんが、問題は今日の徴税方法というのが、民主的な國民の組織を少しも活用せずに、單に天降り的に、或はなんと言いますか、權力的に、相手方が十分に準備をしておる中を、いかにして鵜の目鷹の目で逃れておるやつを逃らさぬようにするかという態度だけでやつておるようなやり方では、ほんとうの國民の納税思想による税金の取立つということは、能率的になつて來ないと思います。少くとも政府はこの際もつと國民の民主的ないろいろな組織を動員して、國民が協力でき得る納税の成績を示すような體制をとらなければいけない。たとえて申しますと、工場には勞働組合がある。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=38
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039・稻田直道
○稻田委員長 井上君、簡單に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=39
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040・井上良次
○井上(良)委員 簡單にといつても、人の發言中に簡單も何もありはせぬ。大藏大臣はすぐ行つてもらつても構いません。問題は國民の組織をいかに活用して、そうして誤りのない査定の上に、誤りのない納税を完遂するかということが問題になつて來ると思います。現在までありましたような、所得税調査委員というような組織では、とてもこれは所期の目的を達することはできない。少くとも民主的なあらゆる組織を活用することによつて、初めてこの目的が達成され得ると思うのであります。この點に對する政府の御見解を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=40
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041・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税務官吏の待遇につきましては、大臣から申し上げましたように、われわれとして常にその上昇方について苦心いたしておるのであります。今囘の増加所得税を施行いたすにつきましても、四千五百萬圓の徴税費を要求いたしておるのでございます。しかして職員は今の職員だけで新たに官吏を増員することはいたしません。ただ傭人、雇員の増員はありまするけれども、税務官吏、いわゆる判任官以上のものといたしましては、現在の職員でやつて行きます。從つて四千五百萬圓の使い方につきましては、税務官吏の旅費の引上げにはできるだけの方法を講ずる積りでやつております。私はこの程度ならば税務官吏がお話のごとく非常に惡い途に入るとは考えておりません。また増加所得税のために要求いたしたのではございませんが財産税徴收のために、民間から相當數のいわゆる常識のある、經濟界の實情に通じた人を新規に募集いたしております。かくいたしまして税務機構の強化をはかり、また増加所得税につきましては民間に税務協力員といふものを囑託いたしまして、各業種毎に精通者の意見をまづもつて聽く、こういう建前で行きたいと思います。しかして税務官吏が調査いたしましたものにつきましては、勿論納税者の申告を一應は參考にいたしますが、税務官吏獨自に調査いたしましたものにつきましては、法案にありますように、増加所得税調査委員會に諮問いたしまして決定いたします。この増加所得税調査委員會は、所得税調査委員とは全然構成を變えております。一税務署五、六人或は十人程度の所得税調査委員會制度とは變えまして、各界のいわゆる事情精通者を政府が任命いたしまして、そうして調査していただくことになつておるのでございまして、從來とはよほど民主的に、また機構の點から申しましても、相當綿密にやり得ると確信いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=41
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042・井上良次
○井上(良)委員 簡單にというのですかがまだやつていいですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=42
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043・稻田直道
○稻田委員長 大藏大臣に對する質問は簡單にと願つたのだが、まだ許します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=43
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044・井上良次
○井上(良)委員 どうも大藏省の徴税の考え方というものは、そういうやり方ではだめであります。そういうような民間の有識者を集めて來て、そうして協力を求めるというような行き方ではいかぬのです、やはり横の連絡のある一つの組織を活用する。たとえば農民組合なら農民組合、勞働組合なら勞働組合、從業員組合なら從業員組合、その團體の代表者に對して、或はその團體全體の協力を求めるという行き方をとらなければだめじやないかと私は考える、何ら横の連絡も、その事業の内容に對しても十分の動きを知らない人をぽかんと任命したつてそれはなるほど税の問題については豐富な經驗なり意見をもつておるかもわからぬ、しかし政府のこうしようという一つの目的に對する協力の實際的な效果を擧げることはできないと考える、そういふ民主的な團體を、なんで政府は活用しないかということなんです。たとえば、或る工場が相當生産を上げて相當の利益を上げておるということは、その工場においてすぐわかる。從業員もよく知つておる。それらを、活用すればほんとうのことがわかる。會社が出して來ておる帳簿と、實際の状態が全然違つておることがわかる。そういう方法をなぜとらぬか。この點伺つておきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=44
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045・池田勇人
○池田(勇)政府委員 只今お答えしたのは増加所得税につきまして、それを主題に申し上げたのであります。法人税の調査につきましてはまた別の調査方法もございます。どういうふうなやり方で行くかということを一々ここで申し上げますとこれは煩瑣に堪えませんので、だいたいの考え方だけを申し上げたわけであります。こういう經濟界の變遷いたしております時におきましては、あらゆる手を使わなけれはならぬと思つております。私は適切なる課税につきましては、全力を擧げて努力したいと決心いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=45
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046・井上良次
○井上(良)委員 この際私はさらにもう一點專賣品の値上げの問題について伺つておきたいのですが、政府は最近煙草の値上げを發表せられまして、特にピース、コロナの値上げをいたしたのですが、このピース、コロナを中心とする煙草の値上げ、更に最近「ひかり」或は「きんし」等の値上げを實行する豫定らしいのでありますが、これが民間のあらゆる物價の引上げに大きな刺戟を與えるということをお考えになりませんか。この點をまず伺つておきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=46
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047・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所管外でありますが、一應私の知つております所をお答えいたします。増加所得税法案を提案いたします場合に、或る程度のいわゆる増税或は專賣品の引上げということも考慮いたしました。しかし今の經濟情勢から申しまして、ピース、コロナ、いわゆる自由販賣のもの以外の配給品について値上げをすることは適當でないと考えて、それはやめておるのでございます。從つて「ひかり」その他の煙草を上げるとか或は酒を増税するとかいうことは、只今の所考えておりません。ただ通常議會の一般の税制改正の時には、これは酒の値上げも考えざるを得ますまい。また情勢によりましては配給品の煙草についても手をつけることなきにしもあらずと考えております。しかしできるだけそういう配給品については、これ以上負擔をかけないといふ方針で只今政府は臨んでおるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=47
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048・井上良次
○井上(良)委員 配給品は手をつけずに、自由販賣のピース、コロナを上げると言われるが、なるほどちよつと考えると當然のやうな考え方でありますけれども、しかしピース、コロナを上げたということによつて、配給品である「ひかり」であるとか「きんし」であるとかいうものが、相當窮屈になつて來ることは事實であります。なお來年の税制改革に伴つて、酒も相當上がることになるかもわからぬという見透しの上に意見を述べられておりますが、われわれは少くとも政府が率先をして政府取扱いの專賣品を値上げをされるということは、結局は民間の取扱つておる所の一切の品物が右へならえということになりますから、少くともこれは最後までがんばつて上げないという方針をとることが、インフレを抑制し、新しい物の増産に役立てる大きな原因になつて行くのでありまするので、この點に對する政府の最大の關心を私は要求しておきたいと思います。いろいろ伺いたい點がありますけれども、時間がありませんから、私の質問はこの程度にしておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=48
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049・稻田直道
○稻田委員長 この際一言委員長から申し上げておきます。まだだいぶん發言通告者もありまするから、なるべく重複しないように御注意を願つておきます。次ぎは的場金右衞門君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=49
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050・的場金右衞門
○的場委員 税務官吏に關することについていろいろ質問がありまして、だいたいは了承いたしたのでありますがもう少しお伺いいたしておきたい。現在の税務官吏の働きぶりを評價すると言いますか、上級官廳から税務官吏を見ます場合に、適正なる課税ができるか、できないかということを、最も重點においてその成績を考えるべきなのに、現在の所では税金を多くとつたか少くとつたかということによつてのみ上級の方ではその是非を判斷するような傾向にありますので、その税金が適正であるかないかということよりも、多くの税金を取立てることにのみ、努力をいたします結果、適正なる査定、適正なる徴税等ができない實情にあるように思いますが、その點はどういうふうに御覽になつておりますか。私ども地方においてふだん接觸いたしまして、税務官吏の苦勞の程度も承知いたしております。最も苦勞いたしますのは、署長以下が、昨年或は前署長の時よりも成績を上げようと努力するのはその時よりも多くの税を取立てようと努力をするのであつて、適正公平な課税をしようということよりも、少々不合理であつても、無理があつても、多く税金をとることによつて、署長以下全員の成績をよくしようと涙ぐましい努力をしておるということを、ふだん見ておるのでありますが、この點を緩和せざれば適正衡平なる課税はできないと考えます。この點をどんなにお考えになつておりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=50
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051・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税務行政の要諦は、課税の適正衡平でございます、決して税收入の多きを望んでおりませんもし誤まつて負擔力以上に税を徴收するようなことがありましたならば、税務行政の最も汚點に相なるのであります。われわれといたしましては適正衡平を望みまして、税收の多きを望んではおりません。もしお話のごとく税務署長が適正衡平をはかつて、租税收入が多くなれば結構でありまするが、租税收入を多くせんがために、努力するということは、意味をなさないことと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=51
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052・的場金右衞門
○的場委員 局長のお考えはさようでありましようし、理論上そうでなければならぬのでありますが、實際問題がさようになつていないということを、もう少し突つ込んで御調査になり、御觀察になる御意思はありませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=52
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053・池田勇人
○池田(勇)政府委員 私も、また主税當局におります同僚も、全部數年或は十數年税務署長をいたしております。實際から申しまして、税務署長の努力は適正衡平を願うための努力でございまして、税收の多きを願うための努力ではございません。私は皆さま方からそういうふうに御覽になつていただきたいと思うのでございます。もし税務署長が税金の多きのみを考えて、課税の衡平適正を期せないことがあるならば、それは税務官吏としての資格なしと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=53
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054・的場金右衞門
○的場委員 先ほど闇の關係の質問がありましたが、別にもう少しお聽きしたいことがありますから、お許しをいただきます。これはすべてに關係をするのでありますが、闇、いわゆる隱れて儲ける面については、課税ができない。これは非常に困難なことではありましようけれども、この闇に動いておる面についてよほど嚴重なる調査をしなければ、現在の課税は、正直な者だけをいじめる結果に相なると思いますこの點について政府にはいかなる御用意があるのであるか、一つお伺いしたいのであります。特に農村の生産物について考えますと、收入の方は闇で高く賣れるものに査定をされて、支出の方は配給の肥料で、配給の價格ですべてのものが査定をされますので、非常に無理な取扱いになつておるように思います。私どもが地方を廻りますと、大藏省の所管になつております煙草作でありますが、煙草作のごときものは大藏省が直接買上げをいたしますので買上げの値段がはつきりとわかつておる。所が支出の方は、表面にわからない相當高價な支出をなさざれば、現在の配給では煙草はできないのでありますが、そういうことは考慮することなしに課税をされますので、少々葉煙草の引上げをされても、煙草耕作人は非常にこれをつくることを嫌つております。嫌つておるけれども、今は惡いけれどもいいこともあるだろうというようなことで、餘儀なく村の耕作組合の關係者などの拜み倒しによつて、反別を保持しておる實情にあります。ああいうふうにはつきりしておるものについては、或る程度課税を考慮されて、また支出の方も或る程度大きく見積つて課税される意思はないのでありますか一部果樹園經營者等は非常な新圓を收得しながら、或る程度税金を免れておる。わずかばかりの收入しかない眞面目なる煙草耕作者等は、重税に苦しんで煙草耕作を嫌う。こういう結果になつておるのであります。米のごときもさような結果になりますので、今は米をつくることほど馬鹿らしいことはないのでありまして、米をつくる代りに野菜物でもつくれば、五倍、十倍の收益がある。けれども、それはたいした課税にはならない。米のごときものは政府が買上げるもので、はつきりその價格がわかつておりますし、そのまま課税をされる。野菜物のごときは、政府が買上げるのではないから、いくらに賣つても買つたかはわからない。わからないものは課税がされない。こういう結果になりまして、正直に眞面目に煙草をつくり、米をつくる百姓は重税に苦しんで、横着で米をつくらずに野菜物をつくるような、そういう國家的觀念のない非國民的な國民は、課税を免れるという結果になつておりますが、この點をどういうふうにお取計らいになるつもりでありますか。この邊の所を詳しく御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=54
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055・池田勇人
○池田(勇)政府委員 農家の所得につきましては、昭和二十一年度分の所得税が相當上りまして、決定通知を出しましたころは、全國そう澤山ではございませんけれども、十數箇所に物議を起したのであります。しかし只今はほとんど全部解決をいたしております。農業所得の計算につきましては、他の所得と同樣、總收入から必要な經費を控除いたして計算しております、闇とか闇でないとかいうことは考えません。實際どれだけの所得があつたかということを掴みます。その實際所得を掴みます場合に、供出割當がこれだけある。それを全部供出したというような場合には、勿論闇があると考えて課税はいたしておりません。ただ非常に供出が少かつた。そうしてどの點から考えても、相當横流しをしておるという地方につきましては、或る程度加算の方法をいたしておると思うのであります。お話の煙草の耕作者が政府へできた煙草を皆賣る。ただ煙草の耕作につきまして割當ての肥料では足らないから、相當高い肥料を買つて來ておるという場合には、勿論必要經費として當然見るべきものと思うのであります、要は實際の所得に對して課税するのでございますから、もし税務官吏の努力、或は知識が足らなくて、不當になつた、或は過少になつたというふうなことがあると困るから、昭和二十二年度分からは、農民組合、或は農事實行組合、部落會、各方面の意見を十分聽き、そうしてまた税務署で考えておる點も申し上げまして、そうして課税のやり方、或は實際の所得をきめて行きたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=55
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056・的場金右衞門
○的場委員 くどいようでありますけれども、今の米とか煙草とかいうようなものについては、事實上それは建前としては局長の仰しやる通りであることは、そうなければならぬのでありますが、實際上は非常にほかのものに比べて重税になつておる。從つてこれらのものを耕作することを、從來は非常に喜んでおつた者が、この頃は非常に嫌う結果になつておるということだけを申し上げまして、更に一つ内容をよく御調査下さるようにお願いいたしておきたいと思います、その次は山林所得の問題でありますが、これも質問がありましたが、私の聽かんとするのは少し違つた點でありますからお伺いをいたします。山林所得については、財産税を課した場合には、この増加所得税は省くというようなお話でありましたが、その取扱いはどういうふうになるのでありますか。山林の所得というものは、一遍所得がありますと、また次ぎの所得までは四、五十年先でなければないのでありまして、今財産税をとられて、今また山を伐つて賣ればお話のようになりましようけれども、五年、十年先に伐つて賣る時にはどういう關係になるのでありますか。山林所得については非常に輕い課税になつておるというお話でありますが、その輕い重いということは、どういう見方によつてそれが輕い重いという見方でありましようか。私達は今の米とか煙草と同じような觀點から山というものを見ますと、非常な苦心と努力を、しかも四、五十年の間繼續いたしまして、しかもその山を育てました勞力については一日の勞銀五十錢にも當らない非常に無理なものであつて、わが國の山をよく育てるためには、現在のような取扱いでは造林熱というものは年々薄らいで行きます。昔は山は寶といつて、山の問題については田舍では熱心にやつたものでありますが、今はもう山を育てることほど馬鹿らしいことはないやうな結果になりましたので、非常に造林熱がなくなり、戰爭以來山は荒れる一方であります。これは國土保全の上に恐るべき結果をもたらしつつありますので、この點については今は輕い課税だというお話でありますけれども、そういう見方から行きますと、山についてはむしろ税金はとらない方がいいのである。日本の山を育てることによつて國土が保全されるのでありますから、傷痍軍人が山を賣つても、生活に困る人間が山を賣つても、それに課税をするというようなお話でありましたが、そういう考え方では私は非常に困る結果が起つて來る、こう考えますので、税金というものによつて、むしろ指導し、奬勵する方法を破壞するような結果になりますから、山に對する課税については、もう少し突つ込んで研究してもらいたいと思いますが、その輕い税であるという考え方は、どういう見方でそれが輕いのであるか、その點をもう少し詳しく御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=56
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057・池田勇人
○池田(勇)政府委員 山林所得は、他の所得のごとく毎年あるものではございません。一時の所得と見るべきものでございますから、從來の所得税におきましては、一般の所得とは變えまして、分類所得税だけを課税いたしておるのであります。他の所得は分類所得税と綜合所得税、こういうふうになつておりまするが、山林所得につきましては分類所得税のみを或る程度の増加累進税率で課税いたしておるのであります。從いまして、もし二萬圓の所得があつたといたしますと、普通の所得ならば八千四百五十圓の負擔でございますが、山林ならば二千八百圓、三分の一弱くらいに相なつておるのであります。かようないわゆる負擔の輕減をはかつておるのであります。で、見方によりましては、非常な山持は、山林所得は一時所得であると申しましても、毎年々々相當の所得のある人もあるのであります。また相當の部分が十年に一遍、五年に一遍というようなものもありましよう。いろいろな見方がありましようが、とにかく山林所得というものは、原則として一年限りの所得であるということから、課税方法を從來から、變えておるのであります。だいたいこの程度の負擔であれば、山林所有者が税がかかるからといつて山を荒らしてしまうというふうなこともないと考えております。なお山林を財産税のいわゆる物納に充てた場合、また財産税を納めるために山林を他に賣却したような場合につきましては、増加所得税を輕減することにいたしておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=57
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058・的場金右衞門
○的場委員 その場合造林費というようなものは計算に入れてお考えになるのでありますか。その點をお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=58
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059・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税の場合につきましては、造林費を入れるというわけに行きません。三月三日現在の立木の價格でございますから、立木の價格に造林費ははいつております。しかし所得を計算いたします時には、賣上げ金額から造林費、その他必要經費は控除することになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=59
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060・的場金右衞門
○的場委員 もう一つお伺いしておきますが、荷馬車營業の收入を見ます場合に、これは今日の飼料、その他馬の飼育費というものは、十分考慮されてあるはずでありますが、これが表面現われない。この飼育費のため、地方農村におきましては荷馬車營業者が非常に苦しい立場にありながら、最も裕福なものと査定されるような傾向にありますので、地方の小運送に非常に惡い影響を及ぼして、折角物がありましても、それが運搬できないという結果になつておる。それは徴税の面において、荷馬車營業者が非常に高價な飼料、しかも人間さえ食うものがないのに、人間の數倍も食う家畜の飼料を非常な困難を忍んで買い求めて馬を育てて地方の小運送をやつておるのに、その點を税務署等で考慮されない結果、荷馬車營業者がだんだん減つて來て小運送に困つておる。私共地方に行つて見ますと、地方の山は、小さな山でも數萬俵という木炭が堆積されておる。そういう所まで行つておる。汽車とか自動車の輸送のできない所は、荷馬車でもつて運搬をしなければならないのでありますが、そういう所へもう少し思いやりのある課税をしていただかなければ、すべての機關に惡い影響を及ぼして行くと考えますので、この點どういうふうに扱つておられるのである、か。これからはどういうふうなお氣持でお取扱いになるのか勿論そういうことについては、十分氣をつけておやりのはずでありましようけれども、結果において非常な無理が行われておるということを御承知願いたいと思いますが、これについてお答え願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=60
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061・池田勇人
○池田(勇)政府委員 小運送業が二、三年前から非常な好況であることは、私も承知いたしております。またそれが好況であるだけ牛馬を非常に使いますので、飼料が非常にかかる、また飼料が非常に高くなつているということも、承知いたしております。田舍の牛馬につきましては、だいたい專業者或は農業者が手間ひまに運送をやる。こういう場合を二通りに分けまして、だいたい一臺いくらいくらというふうな計算で行つていると思つております。その所得を見ます場合には、材料の高くなつたことなどを十分考えて、一臺當りの所得をきめていると私は信じております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=61
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062・的場金右衞門
○的場委員 今局長の仰せの通り、うまく行つておればいいのでありますが、實際はお話のように農家でありながら自分の物も運搬するが、手間ひまには人の物をも運搬するというような荷馬車によつて、山奧の木炭が港へ驛へ出て來るのであります。また農村の芋やその他のものも運ばれているのでありますが、實際は今まで荷馬車をもつて自分の物を運び、手間ひまに人の物を運ぶ。そういう部類のものは非常に重い税金がかけられますので、荷馬車をやめて、小さな車に替えて課税を免れるという傾向にあります。そういうことのために、運んでもらうべき荷物が運ばれずに、木炭等は今山にはいずれの山にも堆積してさらされている實情にあるわけであります。このことはもう少し思いやりのある取扱いをしてもらうように、お願いしたいと思います。私の質問はこの程度で終りますが、なおお許し願つて二階堂君の方から補足してもらいたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=62
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063・稻田直道
○稻田委員長 この際おはかりいたします。午前中はこの程度にして午後一時に再開したいと思いますから、その時の問題にして下さい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=63
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064・的場金右衞門
○的場委員 どうぞそうして下さい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=64
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065・稻田直道
○稻田委員長 これで午前中は打切ります。午後は一時から始めます。
午後零時五分休憩
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午後一時四十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=65
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066・稻田直道
○稻田委員長 これより引續いて會議を始めます。二階堂君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=66
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067・二階堂進
○二階堂委員 さきの的場代議士の質問に關連して質問いたしたいと思いますが、よろしいですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=67
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068・稻田直道
○稻田委員長 これを許します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=68
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069・二階堂進
○二階堂委員 簡單に御質問いたしたいと思います。昨日主税局長のお話の中に、國民の預貯金に對しては全般的にこれを調査しないけれども、個人的には或はやる場合もあるかも知れない。こういうことを申されたように聽いております。これは現在行われております所の國民貯蓄運動の上に、もし、かりにこういうような個人的な調査をやられるということが起りまする時には、可なりの影響があるのではないか。既に國民の方としても、そういうようなことを心配しておる向きもあるのでありまするが、この點に關しましては銀行局といたしましては、そういうことは絶對にやらないということの通知が來ておるのであります。この點主税局の方と銀行局の方との意見の食い違いがあるように考えられまするが、この點について主税局長の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=69
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070・池田勇人
○池田(勇)政府委員 全面的に預金の調査をしない。しかし租税徴收上必要な場合におきましては調査をする。こういうことは銀行局長と私と細目の打合せをいたしまして、全國の銀行並びに税務官廳に通知をいたして、話はすつかりまとまつておるのでございます。で全面的に預金の調査をやると申しましても、税務署から何々銀行の各人毎の預金の調査を出す、こういうようなことはいたさない。しかし租税の賦課徴收につきまして、各業者についていろいろな調査をいたしますような場合には、お宅の預金は何銀行にいくらありますか。こういう質問をするというわけでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=70
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071・二階堂進
○二階堂委員 その點は了承いたしました。
その次ぎにお伺いいたしたい點は、御承知のごとくわが國は文化國家としての建設をやらなければならぬ、最近地方におきましても、いろいろな團體が文化運動を盛んに興しておるのであります。その中で純眞なる青年團とか、處女團體が文化運動の一翼としていろいろ音樂の催しであるとか、或は文化映畫を催してそうして文化向上に資したいというので、きわめて純眞なる氣持をもつて、こういうような催しをやつておる所があるのであります。こういうような純眞な青年の映畫會とか、或は音樂會とかいうようなもの對しまして、切符の前賣りをして聽衆を集めておる。こういうような收入に對しましても、一般の營業を目的とする所の業者に對してと同じような課税をいたしておる所もあるのでありますが、こういうような文化運動に對する所の催しなどに對して、同じように課税して行くということは、文化運動に非常に阻碍になると私は考えるのでありますが、こういうようなものに對して特別なる御考慮をもつて課税の上においてやられる意思があるかどうか。或は特にこういう方面につきましては、私は考慮していただきたい。かように感ずる者でありますが、その點いかがでありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=71
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072・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御質問の點は二樣に考えられると思います。青年團等が映畫或は音樂會をいたします場合には、その青年團等の所得につきましては課税しておりません。業者が興行をやります時には、所得税、營業税を課税しておりまするが、青年團等がやります場合には、所得税は課税しておりません。これが一つの問題、もう一つは、多分そういう場合の入場税の問題だと思います。業者が入場税の上りますことをやりますと、勿論入場税はかかるのでありまするが、お話の青年團或は處女會等が映畫會或は音樂會を催しましても、見る人、聞く人が税を納めるのでございます。これは業者がやるとか或は青年團がやるとかという區別はないと思います。ただ入場税法におきましては、そのことが慈善のためにやる場合におきましては、これは免税いたしておりまするが、その他の場合には免税しないことにしておるのであります。最近におきましては引揚同胞援護會の主催いたしまする映畫會、音樂會につきましては、免税いたしております。その程度の免税に止めたい。それを擴げる考えは只今の所ございません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=72
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073・二階堂進
○二階堂委員 只今の御意見は尤もだと思います。實際におきまして、田舍におきましては税務署が今仰しやつたような意見とは違つた態度に出ておる。從つて非常に迷惑をし、また困つたというような例もあるのでありまして、こういうような場合には、あらかじめ税務署と諒解を得て、そういうような催しをする場合には、特に私は考慮をしていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。その次ぎにもう一言お尋ね申し上げたい點は、從來徴税につきましては、人の收入という觀點のみからして課税をするという方針であつたのでありますが、今後におきましては、私は徴税技術というものをば違つた觀點から考えて行かなければならないのではないか。と申しますのは、收入という觀點からでなくして、人の支出の方面から、その人の收入というものをばかなり徹底的にこれを調査して行くというような方法に變えなければ、目的を達するような、思うような結果をとり得ないということになつて來るのではないかと思います。來年度からは申告制度をおとりになる方針であると思いまするが、この點につきましても、ただ自主的な申告制のみによらずして、民間の強力なる協力がぜひとも必要ではないか。殊にいろいろな民主的な團體の協力は勿論でありまするが、なお密告制度というようなものも、とられる必要があるのではないか。私はかように考えるのであります。殊に闇で儲けた人々に對する課税のごときは、どうしてもやはり正直に申告する者が損をして、闇で儲けた者が得をすることになるのであります。こういうことを考えてみましても、どうしても自主的な申告制度、或は税務官吏或は調査會というようなものを使用するのみならず、民間及び警察あたりの戸口調査というようなものとも密接なる關係をとつて、そうして目的を達するというような方針に變つて行かなければ、とうてい徹底した所の徴收はできないと考えているのでありますが、この點についてどういうお考えをもつておられるか。將來どういうような構想をもつておられるか、お伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=73
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074・池田勇人
○池田(勇)政府委員 二階堂委員の御説、まことに御尤も至極、同感でございます。所得税におきまして收入ばかりでなしに、消費の状況によりまして加算して課税をする制度を採用しておる國もあるのでありますが、ただ問題がそういうように生活状況によりまして、一定の所得以上に加算する制度を只今日本に採用するかどうかということは、餘ほど考究しなければなりますまい。私はそこまでは行きたくない。只今の所、なんと言いましても國民の收入、或は所得を調査する上において、所得の發生する上の方からでなしに、消費生活状況を見て、その人の所得を計算するというやり方は、今囘の増加所得税法を實施いたします上において、非常に必要なことであろうと思うのであります。從つて表面的の資料とかなんとかでなしに、下から、裏面から見まして、たとえば隣組の状況を聽くとか、町會長の意見を聽きますとか、そういう方面から増加所得の調査に進んで行きたいという氣持をもつております。あらゆる方面から、收入ということばかりでなしに、消費の状況からも所得を推察するような方法を講じたい。そうして一般に警察とか、檢察當局につきましては、相當の材料をもつておられるようでありますから、そういう材料を利用することは勿論、各業者の意見等も參酌して行きたいと思います。密告制度、これは從來でも相當税務官廳には、誰々がこういう脱税をしておるというのが參ります。それを調査いたしますと、概ねいわゆる私怨に基づくものが多いようでございます。全部とは申しません。非常に役に立つ資料は半分にも達しないという状況でございますが、今囘のごとく兎に角新圓所得層を把握して、これに特別な課税をすることがいいということになり、この法案が議會を通過いたしましたならば、やはり善良な國民の御協力を願う。その協力の方法として、税務官廳にいろいろな資料を御提供下さることは、われわれは非常に望んでいる所であります。ただ財産税法のごとく、ああいう報奬金を出すかどうかということにつきましては、これは餘ほど考慮しなければならない問題だと思います。すなわち一般の所得税の場合に、アメリカでやつておりますような通報制度を認めるということは、よほど研究の餘地があると考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=74
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075・二階堂進
○二階堂委員 以上で私の質問は終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=75
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076・稻田直道
○稻田委員長 次ぎは天野久君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=76
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077・天野久
○天野委員 私の質問しようとしたことは、だいたい出ておりますが、一、二ちよつとお伺いしておきたいと存じます。戰災のために各地等において、學校その他が非常に燒失しておる。その復興に非常な努力を拂つておりますが、これが復興には相當寄附金を募集いたさねばならぬというようなことになつて參つております。その場合、縣乃至國等に對して寄附金をいたした場合に、財産税から控除する御意圖があるかどうか、承つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=77
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078・池田勇人
○池田(勇)政府委員 三月三日以後の寄附金につきましては、財産税から控除することは考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=78
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079・天野久
○天野委員 今一つ伺いたいのは、第三種所得税における不動産の讓渡でありますが、入手いたしました時がはつきりいたし、そうしてこの限界がきまつているというものはよろしいが、親から讓られた財産その他を讓渡した場合、その時の所得金額がどこを基準として決定いたされるのであるか、その點をお伺いいたしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=79
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080・池田勇人
○池田(勇)政府委員 本年三月三日現在の價格によることにいたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=80
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081・天野久
○天野委員 今一つ申し上げておきたいことは、今囘の増加所得税法は機宜を得たものでありますが、今までも各委員からいろいろ言われていると思いますが、國民は税の衡平な負擔を要望しております。これを見まする時に、ややもすると正直な者が馬鹿を見るような形になりはしないかと考えておりますが、その點につきまして、調査の方法において、今までの所得税の決定方法よりも、何か變つた方法をお考えになつているかどうか。それからなお税法を施行する上において、今の世相を見ますると、非常に勤勞意欲が欠けておりまして、生産は落ちている。そこでこの状態を見まするに、どうしても生産を眞面目にやつて行つた者に對して税が課せられ、闇によつて收入を得た者に對しては、どうしても見逃し勝ちになるようになつておりますが、もしそれが實際において眞面目な生産をいたした者のみが税金を納めるというようなことになつた場合には、生産意欲の上に、また社會の思想の上に及ぼす影響が非常に重大でありますのでその點を特に御考慮していただく必要があるんではないかと考えておりますが、何かその點について今までの所得税の調査方法以外に調査する方法をおやりになつておれば、どんなふうにやつておられるか、承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=81
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082・池田勇人
○池田(勇)政府委員 先ほど二階堂委員にお答えした通りでございますが、とにかく理論的には各個人につきまして調査するのが一番結構でございますしかし人手が足りない、そうして短期間に非常に澤山の納税者を個々に調べるということは困難であります。從いまして組合を組織しております時には組合の方々と相談をし、また他の組合、或はその類似の組合の状況を聽くとか、あらゆる手を盡くしたいと思つております。從來の所得税、營業税調査の機構を擴充強化し、また消費の方面からも見て行くとか、或は國民の公正な批判を求めるとか、いろいろあの手この手を盡くしてやりたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=82
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083・天野久
○天野委員 以上で私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=83
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084・稻田直道
○稻田委員長 次は島田晋作君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=84
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085・島田晋作
○島田委員 私は主として有價證券の方の法案について御質問したいのでありますが、實は昨日の本會議におきまして、質問いたすことになつておりましたが、いろいろ手續き上の手違いがございましたので、その機會を失しました。所が本日は大藏大臣が見えておりませんので、大藏大臣にお伺いしますことは、後ほどに留保しまして政府委員に御質問いたしたいと思います。今囘のこの有價證券の處分の調整等に關する法律案でありまするが、この第一條の目的でありますが、最後に「廣く國民の間に有價證券の分散を圖ることを目的とする。」というのがございます。去る十二月十六日のG・H・Qの渉外局發表によりましても、狙いが株式の大衆化という所に相當強調されておるという點があると思うのであります。ただ單にこの指定證券を處分するのでなく、勿論有價證券市場の状況に應じてこの第一條にありまするように、時期とか價格とか數量等に所要の調整を加えるということも大きな目的でありますが、その結果といたしまして、これがいわゆる經濟の民主化に貢献する、寄與するという所に、大きな狙いがあると解釋するのであります。その場合におきまして私どもの解釋では、有價證券の大衆化ということは、われわれ國民大衆の九割五分、大部分というものを勤勞大衆が占めておる。從つてこの勤勞大衆にこういうような指定證券が分散されなければ、ほんとうの意味の經濟民主化にならぬのじやないか、そういうふうに私どもは考えるのであります。所がこの法案を見ましても、一體どういうふうにこれを分散させるのか、この法案にはほとんどそういうことが載つておりません。またこれは今後できまするいわゆる協議會がやるのでありましようけれども、協議會ができましてもこれは賣渡す方の協議會でありまして、大衆側の分散を受ける方の機關というものが何もこの法案に出ておりません。そういう點につきまして甚だ漠然としておりますが、一應政府當局の御方針を一つ只今伺つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=85
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086・櫛田光男
○櫛田政府委員 只今の有價證券の大衆化の問題につきましては、現在の國民蓄積その他の状況から考えまして、有價證券をできるだけ大衆の間に廣くもつていただくということを勸誘をいたしますことが、絶對に必要なことである。またこれが先ほど御指摘になりましたように、經濟民主化の點におきましても、ぜひそうしなければならぬということで、いろいろ考えておるのでありますが、この法案に關する限りにおきましては、差當り第十四條に書いてありまする通り、この指定會社の株主關係の異動をこの協議會に報告いたさせましてその處分いたしまする主として株式でありまするが、それが特定の者に集中することがないようにという、いわば消極的方面において、この法案の方は配慮いたしてあるわけでございます。また御承知のように先般制限會社等の證券保有制限等に關するポツダム勅令、勅令五百六十七號でございますが、その制限會社等におきまして、特定の會社が特定の制限以上の株をぜひ今囘處分いたさなければならぬのでありますが、その處分の場合におきましては、その會社の從業員並びにその地方における方々が優先的にその株をお買取りができる。こういうふうなことを書いておるのでございます。つまりこれが今後有價證券の處分に當りましての、いわば政府の基本的な方針の一つと御諒承をお願いしてよろしいと存じます。なおそのほかに先ほども申上げましたポツダム勅令の中におきましても、この從業員等に有價證券をおもち願う場合におきまして、その金融等の方法につきましても考慮いたしておる次第でございます。だいたいさような工合に御諒承願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=86
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087・島田晋作
○島田委員 只今の政府委員のお答えを伺いまして、基本的な意味におきまして從業員にもたせるという趣旨は、よくわかつたのでありますが、今日におきまする各事業會社の從業員の現状を見ますと、條件にもよりましようがわれわれの常識から考えるととても從業員が分散されます、處分されます株の讓渡を受ける、買えるという餘裕は、私は、原則としてはないと思います。たとえば大藏省方面の正式の御發表ではありませんが、今年の國民所得が二千五百億と申しましても、これは皆さんもよく御承知の通り、名目だけの國民所得でありまして、實際はわれわれ初め皆筍生活をやつて、餘裕がないのであります。なるほど積極的な面においては、從業員に、或はその他のものに讓るということが、大衆化になりましようけれども、實際問題といたしまして、今日におきましては、從業員はほとんどこれを買取る力がない。また勞働組合自體が、勞働組合として、こういう指定證券の讓渡を受けるということは、法律的にはどうかと思われまするが、これは政府におきまして、もしもその趣旨を徹底されるならば、從業員が買えるような仕組、方法をとらなければ、大衆化はできないと思うのであります。この點につきましては、政府に何か御腹案がございますでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=87
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088・櫛田光男
○櫛田政府委員 先ほども申し上げましたように、會社の證券保有制限等に關するポツダム勅令五百六十七號でございますが、その中に第十條というのがございます。ちよつと御參考までに讀み上げてみます。「持株會社整理委員會が承認した株式處分計畫書の定めるところに從い、第七條第一項第三號に掲げる者が、閣令の定める金融機關に對し當該株式を取得するに必要な資金の借入の申込をなしたときは、當該金融機關は閣令の定めるところにより、その申込に應じなければならない。」というような工合でありまして、つまり特定の場合におきまして、持株整理委員會が制限會社等の株の處分につきまして、その計畫を承認を與えるのであります。その會社が株の處分をいたしまする場合に、從業員にこれだけのものをお分けしたい。從業員の方でも買う。その場合資金が不足するといつた時に、その資金調達に關しては、政府といたしましては特定の機關を——今研究中でありますが、定めまして、滯りなくそれの買取りができるようにという御面倒をみよう。こういう意味で今具體的に研究を進めておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=88
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089・島田晋作
○島田委員 さういう場合におきましては、從業員の場合は、個人としてでなくて、やはり團體のような、或は今の勞働組合、そのまま勞働組合によつてはできるかも知れませんけれども、團體によりまして、團體がそういう特定の金融機關から金融を受ける、株を買うだけの資金を受けるという便法を講ずるのでありますか、或は個人々々というふうになるのでありましようか。その點をちよつとお聽きしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=89
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090・櫛田光男
○櫛田政府委員 只今の問題は今研究中でございますが、たとえば、從業員組合、職員組合というようなものが仲へ立ちまして、その資金の融通ができるようになれば、好都合ではないかと考えております。いろいろ研究いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=90
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091・島田晋作
○島田委員 そううまくできれば結構でありまするが、私の考えでは恐らく今日におきましては、よほど緩和した、ほとんど無償に近いような條件でなければ、個人の勞働者は勿論のこと、從業員組合におきましても、私は買取る力はないと思います。かりに買取りましても、必ずやそれはいつかはやはり金詰まりになりまして、そうしてこれを他の金融機關の擔保にしまして金を借りるとか、或はどつかへ賣るとかいうふうな結果になる可能性が非常に強い。殘念ながらそういう今の經濟情勢或は國民勤勞大衆の生活状態を見ますると、そういふ心配の方が多いのであります。そういう場合におきましてまたそうでない場合におきまして、普通——普通というとおかしいのですが、そういう勞働者でなくして一般大衆が株を買いましても、それが轉々としてまた好ましからざる方面に流れて行く危險性も多分にあるのじやないか。そうなりますると、これは一片の杞憂かも知れませんが、そういう場合には、この法案ができました所の最大の眼目である有價證券の大衆化という精神に悖るのである。これはあらかじめ政府におきましても、そういう好ましからざる所へその株券が流れまして、そうしてまた獨占資本の土臺をつくることのないような手を打つべきだと思いますが、そういう點につきまして、政府におきましては何か具體的な方策を今から考えておられるかどうか、伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=91
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092・櫛田光男
○櫛田政府委員 只今御質問になりました好ましからざる方面、特に資本の獨占ということを防止致しまする爲めには、差當りの所は先ほど申し上げました樣に株式の異動なりを御報告を願うということで、どなたの所にどれだけの株があるかということをはつきりいたさせるという措置を講ずるのであります。これは恐らく今度の通常議會に提案されることと思いますが、つまりアンチ・カルテル法、反トラスト法、その法の構成によりまして資本が一箇所に集中いたしまするようなこと、特定の株主に大口に集中いたしまするようなことを、全面的に防止するという法制的措置が講ぜられることになつております。具體的に今そのやり方等につきまして檢討いたしておるのであります。御諒承願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=92
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093・島田晋作
○島田委員 ちようど大臣が見えましたから簡單にお伺いいたします。今囘の有價證券の處分は、政府當局の御説明によりますと、だいたい二百五十億くらいの額に達するそうでありまするが、勿論これはさう短期にできないと思います。しかし政府の方針はなるべく短期にやるようにも新聞紙上でも拜見いたしますが、經濟界或は金融市場に與える影響は非常に深くかつ大なるものがあることは申すまでもありません。私どもがまづ考えますることは、この證券を、それは勿論有價證券市場或は金融市場等睨み合わせて逐次處分なさるつもりでありましようけれども、これが私ども考えまするに、このインフレーシヨンの問題と關連しまして輕視できない大きな問題だと思うのであります。殊に財産税に基づきまする物納株式の處分につきましては、二重の意味において私はインフレを激化するのではないか。すなはち一面におきまして赤字財政を補填するという意味もありましよう。他面におきましては、これは一般的に有價證券の處分の場合でありまするけれども、一應は資金を吸收することになりましようけれども、また先ほど來申しましたように、株式の大衆化をはかればはかるほどその株式が轉々として、資力のない者は必ずやこれを手離し、或は新しく金を借りる。それで金融機關の追加資本として放出されるということになりますと、私はインフレーシヨンを激化する所の新たなる要因が、これの處分によつて起るのではないかと考えるのでありますが、この點につきまして石橋さんのお考えを一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=93
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094・石橋湛山
○石橋國務大臣 財産税でとりましたものを、一時金繰りのために、國家がそれに對して何等かの見返り證券を出す。それを日本銀行にもたせるという處置を講ずる限りにおいては、お説の通りそれは率直に認めるのであります。通貨膨脹の原因をなす、これはそうであります。しかし他の賣り出す方の者は、實はお話のように、なかなかこれは有價證券が細かく分散して、一應買手がついたとしましても、それがほんとうに安定して行くまでには、相當の年數を要すると思います、中には一度買つたけれども、またそれを賣るという者もありますが、しかしこれは事業界の前途が非常に希望に輝やいておつて、賣り出した株がすぐ賣れるという見込みがなければ、金融機關がそれに對して金融することはありません。その場合には株の下落という現象を呈するでありましううしそのためにインフレーシヨンを起すということは、その方面からは絶對にないと思います。ですから財政の方の處置は別にとるといたしますれば、この有價證券の處分のために、特にインフレーシヨンを促進するという憂いはないと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=94
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095・島田晋作
○島田委員 それは確かに一面にはそういうことが言えるかも知れませんが、そういたしますと、先ほど申したように、有價證券の大衆化、株式の大衆化というものは、私は進行できないと思う。なるほど今の厖大な株式というものを處分するにつきましても、なかなか政府がお考えになつておるように短日月にはできないと思うのでありますまた單に今までのように資力のある者にもつて行くということなら、簡單にできませうけれども、今申したように大衆化をはかるという見地からするならば、なかなか買えない。また買つてもそれが今大臣が仰しやつたようにすぐ金融機關はそれを恐らく擔保にとるまい。とらないとなればますます私は證券の大衆化はできないと思います。從つて折角處分しようと思いましても豫定通りの處分というものは、私はこのままではインフレーシヨンの危險を冒さなければできないと思う、また危險を冒せばインフレーシヨンになるという一つの大きな矛盾があるのではないかと思うのであります。これは私の意見でありますから餘り長くは申しませんが、このことに關連いたしまして、私個人は、今度の有價證券の處分につきましては、時期尚早と考えておるのでありますが、この意見は差しおきまして、その根據といたしまして特に今申しましたことと、もう一つは財閥解體に關することでありますが、財閥解體ということが御承知の通りマツカサー司令部の指令によつて、經濟民主化の一つの大きなテーマとなつておるのであります。所がこの内閣のみならず、幣原内閣以來、その前の内閣から見ましても、財閥解體の方向というものが曖昧でありまして、財閥のもつておる所の傘下企業の株、財閥持株、これを分散する、これを大衆化するということをもつて財閥解體はなるというようなお考えが、只今の政府の根本的の方針のように私は考えるのであります。私の考え方では、それは單に一應ただ財閥のもつ株券を大衆化す。大衆化すということも、先ほど申したように簡單にできない。今の國民生活の實情、特に勤勞大衆の生活を考えますれば、實際できないのであります。かりにできましても、それだけでは單に株券が分散した、財閥のもつていた株が分散したというに過ぎないのであります。私ども考えますれば、財閥解體という意義は、日本から獨占的資本形態を拂拭して、將來再び軍國主義的の要素を根本から除き去るのが、私は連合國の考え方であると信ずるのであります。またわれわれもそれに賛成する者であります。この場合においては、財閥解體ということは、日本經濟を再建するという基本の線に沿わなければ、ほんとうは意義をなさない。つまり換言すれば、日本經濟の再建をどうするか、その根本的な日本經濟再建計畫というような根本的なものを政府が樹立されまして、その線に沿うて財閥の傘下にあります所の金融機關或は各種の事業、企業、御承知のように財閥の傘下にありました企業というものが戰前或は戰時中におきましても、日本の重要産業の土臺をなしておる。たとえば重工業部門にしろ、化學工業部門にしろ、財閥がもつておりました所の物質的な支配力、それは一々ここで各部門につきまして例證を擧げるまでもなく、平均しまして五割以上も占めておる。ものによつては七、八割も占めておつた。日本の近代的な産業のほとんど半分以上は財閥が占めておる。それが經濟面のみならず政治面にも反映したのが、戰前或は戰時中の日本の政治經濟のあり方である。これは私が今さら申し上げるまでもありません、從つてこれを解體させるということは、今後の日本の經濟を再建する場合、解體によつて再建を進めるという積極的な意味を持たなければならぬ。單になけなしの大衆の當てにならない懷ろを當てにして株券を分散するというような、單なる言葉だけの經濟民主化という美名でなくて、實質的に日本の經濟を再建する意味においては、財閥の解體ということを契機として、新しく建て直すということに向わなければならぬと思うのであります。私ども社會黨といたしましては、立黨以來御承知のように社會主義的な計畫經濟を實行しようと、これを天下に公約しておりますが、この線に沿いまして——これは私どもの黨の主張でありまして、ここでくどくど申しませんが、そういうように一つの目的をもつて日本の經濟を再建する。それには財閥のもつておつた所の各種の重要企業というものを、その方向に沿つて再編成する。根本的、徹底的に再編成する。そこにこそ私は本當の日本の經濟民主化のあり方があると思う。いわゆる持株會社整理委員會、或はまた閉鎖機關のもつておる株とかいうものを、單に大衆の中に廣く分散するというようなことでは、私は經濟の民主化はなり立たないと思うし、またそれが日本經濟再建というわれわれの、或は國民一同の考えております所の目的に副わないと思います。つきまして政府におきましては、前議會の本會議におきまして、私は膳國務大臣に伺つたのでありますが、その時はそういう計畫はまだ安本が設立日なお淺いので、まだというようなお話でありました。今日においても恐らくまだはつきりした日本經濟再建計畫というものがお立ちになつておるかどうか、これは今日膳さん見えておりませんから、ここでお聽きしてもしようがないことでありますが、そういつた確乎たるものを政府がもつておつて、その線に沿つて財閥の解體——今財閥の一族は全部追放されて、財閥の系統の金融機關或は事業會社の幹部連中も、いろいろな意味において追放にひつかかつておる。しかしながら實際を見ますと、その大番頭はなくなつたが、中番頭や小番頭が依然として財閥の勢力を維持しておる。さうして日本の産業における各部門におきまして、私は一一例證を擧げませんけれども、いろいろに名を變え姿を變えて、財閥的勢力というものが陰に陽に依然たる力を占めておる。日本の産業界を全部牛耳つておるとは申しませんけれども、相當な力を中央においても地方においても私どもは實際に見聞しておるのであります。從つて私どもが考えますれば、繰返して申しますが、單に株を分散する、しかもその株は本當の意味の勤勞大衆には分散できない、分散を受けようと思つても——先程政府委員の方から、それにはいろいろ便宜をはかる。便宜をはかる意味において、通常議會にいろいろな施策を發表なさるそうでありますけれども、しかしながらいかに名案がありましても、日本の經濟の現状、國民經濟の現状を見れば、私は起死囘生の名案があるとは信ぜられぬ。從つて政府はここでほんとうに財閥解體をなさる、その一つとしてのこの有價證券の處分でありましようけれども、根本において政府は一體財閥の解體についてどういうお考えを持つているか、この際大藏大臣からこのことをお伺いしたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=95
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096・石橋湛山
○石橋國務大臣 この證券の問題は、言うまでもなく財閥解體、それからいわゆる經濟民主化のただ一つの面でありまして、これが全部でないことは申すまでもありません。それから、しからば財閥解體後の日本の産業をどういうふうにもつて行くかということは、なかなか大きな問題でありまして、今もお話がありましたように、全體としての日本の經濟の計畫、これは今度の賠償設備の撤去とも關連があるわけでありまして、今私からどういう計畫をどういうふうにしておるかということは、申し上げることはできません。經濟安定本部或は商工省その他においてその經濟の今後の規模、それからどういうふうな計畫で行くかということの大體の方針は、既にきまつておるものと承知しております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=96
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097・島田晋作
○島田委員 それから二百五十億という莫大な有價證券を處分するだいたいの時期的な見透しは、何年ぐらい或はもつと早くおやりになるつもりかどうか、お伺いします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=97
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098・石橋湛山
○石橋國務大臣 これは先ほど來お話もありましたやうに、相當容易ならぬ問題であります。ですから何時までにどれだけを處分するという計畫は、今立つておりませんけれども、いづれ協議會ができまして、そうしていろいろな專門家等の意見をまとめて、そうして情勢を見計らいつつ處分して行く、こういうほかにはないと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=98
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099・島田晋作
○島田委員 私どもの考え方では、今どうしても緊急やむを得ざる所の處分すべき株券は、時期を見計らいまして處分なさるということは、これはいたし方がないと思うのでありますけれども原則的に、殊に財産税として取りましたいわゆる物納株式は、これは大藏大臣の言われましたようになるけれども財産税としてとつた以上はいたしかたがないのでありますが、その他のものは、私どもの考えでは、日本經濟再建の根本計畫ができて、そして財閥傘下の諸企業というものを、もつと合理的に再配置、再編成する、そういうような時期が來るまで、この指定證券は國家の手に置いて、國家が保管して、そうして或は委員會なり何かに保管しまして、時期が來るまでこれは出さないということが、私は一番よいことではないか、それが今の日本の經濟の實情に副うことではないか、こう私は考えるのであります。そうしてその上におきまして財閥事業というものを、先ほど申しました日本經濟の再建の方向に副い、かつまた私どもの主張する所の社會化の線に從つて、これを徹底的に民主的な經營をする。そういう所までこの有價證券の處分というものをし緊急やむを得ざるもの以外は大部分は見合わせたらどうか、こう考えるのでありますが、これに對して大藏大臣はどういうお考えを持つておりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=99
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100・石橋湛山
○石橋國務大臣 これは財産税によつて、物納せられるものだけは處分するが、他のものはしばらく待つというわけには行かぬと思います。やはり持株會社整理委員會のものも、或は閉鎖機關のものも、至急に處分のできるものもありますし、またした方がよいものがあると思います。たとえば從業者にその株式が優先的に配分にされるという、それによつて或る會社の株式關係が調整されるというものもあると思いますから、どれこれということは言えませんが、ただ言うまでもなく全體として無理な處分をするということは、これはいたさないつもりでありましてそれが故にまたこういうような協議會をつくつて、各機關が勝手な處分をしては困りますから、そのためにかような法律も必要とするわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=100
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101・島田晋作
○島田委員 只今の大臣の仰しやいました從業員に對しましての分配につきましては、先ほど理財局の政府委員の方もお話しましたように、來年の通常議會に、出されるそうでありますが、これも私申しましたように、どうも棚ぼた式のことになるので、私は實行ができないと思いますが、これは先の見透しの問題でありますから、ただ私どもとしましては、從業員が、たとえば先程もどなたか伺いましたが、日鐵の八幡の制鐵所のごときは、從業員組合でもつて、立派に株を引受け得るというような資力、もあるそうでありますこういう例は若干全國にあると思いますが、そうでない所の事業會社從業員組合の資力をもつてしましては、なるほど特定期間を通じまして、資金その他につきまして御心配下されましても、實際上もしこれを買つても決して從業員が幸福にならぬ。そういうふうに私どもは思つております。これは先のことで水掛論になりますからその程度で打切りますが、これに關連いたしまして農村方面におきまして、農村にはよく新圓がだぶついているのだということを世間の一部では申しておりますがこれは大藏當局の方も既に御承知の通り、世間が思うほど農村には新圓はありません。現に今日におきましては、むしろ現金の取引きが多くなりまして新圓に惱んでおる。ただこれがまた今後農地調整法の實施につれまして考えますると、農地證券はどんどん農村に殖えて參りますけれども、これは政府におきまして農村にもしも今囘處分します所の有償證券を分散する、廣い意味の勤勞大衆といたしまして、農村にこれを分散せしめるという方針でございますならば、既に現金のない所の農村に對して、もしも農地證券をもつてこの處分される有價證券を買いたいという農家の希望が、あつた場合におきましては、全然それは認められませんか。或は何かまた便法を講じて認められることになりますか。その點をちよつとお聽きしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=101
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102・石橋湛山
○石橋國務大臣 その農地證券との交換ということはただその邊だけ考えればできないこともないように見えますが、しかしたとへば財産税のものにつきましては、御承知のように本年度の歳出にこれを充當するということになつておりますから、農地證券をすり換えたのではその役に立ちません。そういうような例はあります。だからこれは公債證券に充て得る部分については農地證券との交換というようなことも考え得るかも知れません。これがどれだけになりますか、その程度であります。それから後の持株會社や證券會社の問題は、無論それはできません。有價證券ですり換えたのでは工合が惡いと思いますから、そういうことはだいたいにおいてできないのではないかと、今考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=102
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103・島田晋作
○島田委員 そうするとなかなか農村の農民を對象としてこの有價證券を分散して、株式の消化をはかるということは農村方面においてもほとんど不可能であり、かつ都會における勤勞大衆の面においても、私はたいした期待はできないとなりますと、この有價證券の處分というものは、なるほど仰しやるように期間がないのだ、ゆつくりやるならば問題は變つて來るでありましようけれども、私は結局におきましてほんとうにマ司令部の狙つた所の株式の大衆化ということは、なかなかできないのではないかという印象を受けるのであります、しかしながら一應は大衆化という方向に進むでありましようが、その場合におきまして、この間の十六日マ司令部の渉外局が發表になりましたように、有價證券に關する大衆教育ということでありまするが、これにつきましては正確な情報というようなものも、これから出さなければならぬと思う。だいたい素人がこの株をいじるということはたいへん危險なことになつております。從來におきましても御承知のように田舍の人、或は都會におきましても、そういう知識のない方が株式をいじつたために或は破産し、或は甚だしきに至つては自殺するというような場面を、私どもはよく見聞しておつたのでありますが、そういうことは結局本人が經濟知識が乏しかつたとともに、要するに證券を取扱つておる所の業者の中に、非常にたちの良くない者、いわゆる不良證券業者というものが非常に澤山あつた。これは隱れもない事實であります。善良な取引員もあつたでしようが、要するに無智な人がひつかかるのは、たいがい不良取引員のためにひつかかつておる。この點につきましては只今いただきました參考資料によりますと、「協議會は有價證券業者其の他を下請機關として活用する」と書いてありますが、これは何か新しい證券業者の協會とか團體を作つて、それに斡旋を依頼するというように取扱つていいでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=103
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104・石橋湛山
○石橋國務大臣 お話はよくわかりました。有價證券の民衆化ということは、そう樂な仕事じやありません。しかし先刻のお話の、何か公債とすり代へることができはしないかということは、今ちよつと氣がつきましたのは、持株會社委員會のやつは、舊財閥に對しては公債で交付するのでありますから、そういうもので株式などを買入れたいという者があれば、國債を持つておれば、その國債との借換えによつてやりますれば、そういうものは或る程度あらうと思います。そういうこともどれほど行われるか知らぬが、考えております。それから今の惡い有價證券の仲介業者があるということはお話の通りでありますが、今度これはこの臨時議會には間に合いませんでしたが、證券法というものを出しまして、取引業その他有價證券に關する法律を統合して行こう、こういう考えで大體法案も草案はできつつあります。それによつて惡徳仲介業者というものは一掃するつもりでおります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=104
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105・稻田直道
○稻田委員長 ちよつと申しますが、大藏大臣はまだ本會議や豫算總會を控えておられまして、此處ばかりにおられないのですが、なるべく島田さんの後の方も簡單に、大臣でなくちやならぬことをお聞き願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=105
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106・島田晋作
○島田委員 私の大藏大臣に對する質問はこれで打切りまして、また後で…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=106
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107・稻田直道
○稻田委員長 それは後でまた許しますから、それでは川島君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=107
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108・川島金次
○川島委員 先般私が本法案に關聯いたしまして、大藏大臣にお尋ねいたした一二の點があるのですが、その際きわめて簡潔過ぎて私に納得のできない點がございましたので、この際お伺いいたす次第であります。大藏大臣は昨日のわが黨の中崎君の豫算總會での質問に對しましても、インフレーシヨンはもう通り越したのだというようなお話をされたのであります。しかし私共から見ますれば、これは見解の相違であるというならば、別なことになるのでありますが、インフレーシヨンはむしろ私はこれからではないか、これからのインフレーシヨンの方が從來のものよりもつと惡性的に、もつと深刻に國民大衆の生活の上にも國の財政の上にも大きくのしかかつて來て、それがやがて經濟の再建の基本計畫にも重大な障碍を及ぼすというような私共は考え方を持ちまして、このインフレの前途に對して衷心から心配をしておる一人であります。もとより私共はこのインフレを如何にして防止するかということにつきましては、日本の内における現状、また日本の國際的なあり方われわれはこういう十分な認識の上に立つて考えておるのであります。殊に大藏大臣は生産の増大だけできれば、このインフレもやむのぢやないか、大臣の一應の御説明の通りではないかと思うのでありますが、その生産の増強という事柄につきましては、賠償物件の撤去の問題等もこれまた未定のような状態で、その具體的内容というものは決定しておりません、そういう事柄と、さらに賃金、物價等の關係からいたしまして、當局の考えておるように生産の増強というものは速やかにはでき得ない現状に、日本は遺憾ながらあるのだと私は心配しておるわけであります、そこで、生産の増大といいましてももとより日本は戰爭中資源を食い潰してしまつた。また資源があつても、その資源を開拓するいろいろの設備が荒廢してしまつた。そういうような惡條件のあることも私どもは承知しております。從つて生産増強ということは、一面においてその窮屈な資材、窮屈な原料というものを外國から輸入を仰がなければならぬということも、われわれは承知しておるのでありますが、いづれにいたしましても、政府の今考えておりまするように、現實の日本の經濟の現状というものは、遺憾ながら急速には生産の増強を期することができないという状態であります。われわれからいたしますれば、むしろいかにして現在の生産を低下せしめないかということの方に、重點がおかれなければならぬというような、遺憾ながら現状にあるのではないか。私どもはさように考えておるのであります、そうすると、日本のインフレというものの防止策といたしましては、生産の増強もとより必要でありますが、生産は今のような状態である。そうすれば私どもの見解からいたしますれば、財政の均衡といふことが重大なかかり合いの問題になつて來るのではないか。こういう點と、もう一つは通貨に對する所の徹底した處理、こういうことを三つ合わせまして、綜合的に考えにおきませんと、このインフレというものの前途はまことに私は文字通り深刻であり、文字通り心配をされなければならないような危險な、状態が來るのではないかと思うのであります。そこで大藏大臣にお伺いをいたしたいことは、一體日本の現在の政府といたしましては、財政の均衡という、いわゆる堅實財政という問題につきまして、大藏大臣はどんな見透しをもつて、この時局を擔當して行こうという御決意であるか。その確信のある所をちよつとお伺いさしていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=108
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109・石橋湛山
○石橋國務大臣 今の御質問で、だいぶ私の考えておる所と近い點に來ておることを考えるのであります。すなわち、第一に今の生産、これが今後非常な悲觀的であるか、それでないかという前途の見透しはとにかくとして、お話でも生産が非常に重要だということはお認めになつておる。それから第二には財政の均衡である。これもお認めになつておる。私はその二つを常に主張しておるのであります。第三に通貨に對する處置というものは、どういうことを御考えになつておるのか存じませんが、つまり通貨の處置というものは、或は社會黨の方で頻りに今もなお言われる公債の打切りとかいうようなことを意味せられるとすれば、なるほどそういうことをして、預金をうんと減らす、郵便貯金も八割方減るということになりますれば、これは確かに通貨收縮でありますから、その限りにおいてデフレになりまして、相當の混亂を來すのでありましようが、物價は下るかも知れぬ。ですからそういうことの必要があれば、それはやつてもよいのですが、私はその必要はないと思う。今そういうドラステイツクなことをやることが、はたしてそれによつて生産が進むかというと、今は普通のインフレとは全く違うということを御承知願いたい。つまり生産ということに非常に力を入れなければならぬというのは、インフレじやない證據である。なぜわれわれがインフレ、デフレということを言うかといえば、インフレというのは、インフレ對策がとれるからインフレと言う。そういう時には生産の面について故障がない。たとえば、この前のドイツの戰後のインフレの場合のように、あの時には生産の面には何らの故障もない。そうしてどんどん通貨が膨脹する。失業者がありません。ですからあの時もし賠償問題がなければ、通貨が收縮したからあのインフレは防げたかも知れぬ。ああいう場合には弊害がない。今日の日本においては、生産を進めなければならぬ。これが第一である。それから財政の均衡ということは言うまでもありませんが、この財政の均衡をほんとうにやるだけでも、私は相當きくと思います。そうすれば、お話のように産業に對しての資金の廻りが惡い惡いと言いますが、それがますます廻りが惡くなる。自然銀行から産業に貸す金も、今でも窮屈だと言いますけれども、もつと窮屈になると思います。それだけでも相當きくと思います。その上に通貨處置をとつて、積極的に預金打切りとか補償打切りとか、またそういうことの必要があるのか。私はないと思います。またそれをしてはかえつていけないと思います。だからあなたの仰しやることは、私の見ておることとちつとも違いはないと思います。つまりあなた方がこれをインフレという言葉で表現するから、從つてインフレ對策をとれという。インフレ對策は何かというとデフレ政策である。今特にデフレ政策をとる必要ありや、こうなるのですが、私は今はほんとうの意味のインフレではない。どうしても生産を進めなければ解決ができないと言う。言葉ですからインフレと言つたつて構いませんが、普通の經濟學上言うインフレじやない。經濟學上においてのインフレは、だいたいにおいて生産には故障がない。ただ通貨が何かの故障で膨脹して物價がどんどん上つて來る。その時にはデフレ政策で引き締めましても、生産はいくらか落ちますけれども、失業者はないのでありますから、デフレ政策でも大した故障がない。違いはこれだけです。多分御諒承願えることと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=109
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110・川島金次
○川島委員 とても了承はできません。今の大臣のお話では生産の増大することが一番大切である、財政の均衡も今の通貨の處理も二の次ぎでいいんだというようなお話。こういうふうな印象を私は受けたのですが、私は、生産の増強というものは、やはり財政の均衡の問題、また通貨の問題とからみ合つていると思う。生産の増強を期そうとするには、そのからみ合つた綜合の對策の上に立たなければ、私は生産の増強はできないと思う。財政が逐次膨脹して、その膨脹のしかも穴埋めというものは公債による、公債もしかも從來のように一般の公募ではない、日銀の引受けだ。日銀の引受けなら引受けで、日銀方面に全國民の預金というものが集結されておればいいけれども、そういかぬから、結局公債に對する所の日銀引受けの通貨というものは、またばら撒かれて來る。それが物價の上に影響し、賃金の上にも影響する。そうなつたら、生産の増強というものは、やはりいかに政府が考えても、この面も考えなければ生産の増強というものはなり立たぬと思う。そこに大藏大臣と私共の考えとの根本において違いがあるように私には受取れる。もう一遍そこをはつきり願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=110
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111・石橋湛山
○石橋國務大臣 いつもあなた方の私に對する見方からいえば、どうも質問者は私の言うたことを無理になんとかしてすり違えようということになりますが、私は財政の均衡ということが非常に必要だということはさつきも言うておいた。また現に追加豫算においても、その觀點からまず均衡を得させる財政を盛つた。こういうことです。來年のことはとやかく數字は言えませんが、やはり同じ方針で參ります。ただこういうことだけは——そう言うとまたそこに議論が起るかも知れませんが、さつきも言つたように、生産を進めなければならぬ。さうして一面において失業者が非常に多くなる。
設備も、跛でうまく動かないものもありましようけれども、遊んでいる設備もある。たとえば炭礦の例をとりましても、今單にインフレ對策ということから言へば、炭礦の補給金などはやめなければいかぬ。また、炭坑の住宅、勞働者の住宅を今度つくりたいというので、また金融的措置をやるのでありますが、そういうこともやめなければいかぬ。ところがそれは今やらなければならぬでしよう。だから生産の増強に寄與するものにおいては、或る程度やはり追加購買力を出す必要がどうしても今日ある。私が先ほども言う通り今日單なるインフレなら、實に簡單である。すべてやめればいい、だから支出はしない。政府の財政も租税でとれる限りにおいて、あとは何も出さぬ。所が教員の待遇は殖やせ、あれの待遇を改善しろというふうに、あなた方の方がインフレ策をどんどんやる、インフレになるような要求をされる。それをどうして賄つて行くかということに、大藏大臣としては苦心があるくらいである。しかしながらそれは責めるわけではない。それが今の日本の現状なんです。なぜかと言うと、單にインフレならば引締めさへすれば、そうして引締めても大した弊害はないからよいのでありますが、今はそうじやない。單に引締めたらたいへんなことになる。こういう事情にあるということだけは考えなければならない。だから單純なインフレでないということを諒承すれば、私はあなたと全然同意見であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=111
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112・川島金次
○川島委員 どうも大藏大臣、穩かでないことを仰つしやる。一體、教職員の待遇改善とか、全官勞の待遇改善の問題は、何もわが黨でやつておるわけではない。大藏大臣の財政政策の結果する所、必然に大衆が窮乏に陷り、その生活苦を愬えて、これが議會に反映しておるのではないですか。それをわが黨の議員が煽動でもして、そういう要求をしておるかのごとき印象を與えるようなことを言うのみならず、その問題がわれわれの責任であるかのごとく、それを轉嫁するということは穩かでないと思う。その點は取消していただきたい。取消さないとすれば、われわれはまた別の觀點に立つて、大藏大臣とやり合わなければならないと思う。どうも責任を轉嫁されては困ります。政府當局自體の責任だと私は思う。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=112
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113・石橋湛山
○石橋國務大臣 いや、責任轉嫁などはしない。今の日本の經濟はそういう現状だ。そういう要求に無理があるとは言わない。しかしながら、これが單なるインフレであるならば、そういう場合には、どつかでサークルを斷ち切らなければならないのです。ほんとうにインフレが心配なら、教員が困つてもそんなものはいかない、給料なんかは殖やさぬ、こういうことでサークルを斷ち切らなければならない。所が今、議會の方で斷ち切れということを主張することもできない。われわれとしてもそれが言えないという所に、今日の經濟の惱みがある。だから仰しやる點は全く同感なんだけれども、單なるインフレ對策ではいけない。こういうことはお互いに事實上單なるインフレ對策をしておらない。決して大藏大臣がインフレを好んでインフレをやつておるわけではない。のみならず、これは實際私はいわゆるほんとうのインフレではないと思う。これは前々から私が申し上げておる通りです。だから財政の均衡はあくまでやります。殊にこういうふうに國民一般が、事實はとにかくとして非常にインフレを懸念する場合においては、この心理作用に對しても、相當強くやらなければならない。だから或る經濟界等には相當惡影響が出ても、一應は一つやらなければならぬと考えてをります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=113
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114・川島金次
○川島委員 この問題で多くやり合うつもりではなかつたのですが、もう一遍お尋ねいたします。私が一番最初に大藏大臣にお伺いしたのは、財政の均衡ということを重點においてお伺いした。その財政の均衡の見透しについてどういう確信をもつて今後この財政の危局というものを乘切つて行くか、こういう所に私のお尋ねの中心があつたのですが、それについて、できれば具體的なお見透し、確信というものを伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=114
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115・石橋湛山
○石橋國務大臣 これはこの間から豫算總會でもしばしば出た問題で、殊に最初の質問者である自由黨の矢野君の質問の最後に、矢野君が申しておつた言葉がありますが、つまり今日の日本の財政の均衡を、もしどうしても保ち得ないとするならば、その原因はどこにあるかと言うと、或る點にあるということは御承知の通りであります。そこでそれについては日本政府としては、非常な決心をもつて解決をしなければならない。これはもう普通の經費なら——先生方の給料を殖やすというようなことなら、これは私はだいたい處理ができると見ております。というのは、物價が高く、賃金が高いというのは、結局一方においては國家の收入は増すということなんでありますから、これはだいたい處理ができると思つておりますが、ただ戰時中の、たとえば臨時軍事費のごとき性質のものがもしもあるとすると、これはなかなか處理がむづかしい。その點については萬全の策を講ずる以外にないのでありますが、これについては私は見込があると考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=115
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116・川島金次
○川島委員 この問題をさらに掘り下げてみたいのでありますが、またいずれの機會があると思いますから、一應これで大藏大臣に對する質問は打切ります、ただ最後に私共が冒頭に申し上げましたように、この財政の膨脹の激化する所は、さらに再び勤勞大衆の生活の脅威、それがやがてぐるぐる廻つて生産の増強の上にも大きな障碍となり、それが惡循環を繰返して行くようであるならば、日本の現状から見て私はまことに前途心配に堪えないというのは、私のみならず、全國の心ある人たちの考え方なんであります。その考え方に基づいて、大藏大臣が今日の日本の財政經濟をほんとうに乘切つて行けるところの確信があるならいざ知らず、われわれが最近まで大藏大臣のいわゆる財政政策を拜見しておりますとまことにその點心許ない、むしろ心配をしている。あなたに乘切りの御自信があるならばいざ知らず、自由黨の矢野氏、進歩黨の北村君においてさえもあなたの財政政策に對して心配している。一體今の内閣はどこに與黨を持つているのかわけがわからぬような議會風景が出るということは、今、國民全般がその心配をあなたに對してもつているということがはつきり言えるのじやないかと思います。これ以上私は申しません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=116
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117・石橋湛山
○石橋國務大臣 御質問じやありませんが、お願いしておきます。御心配下さることは有難い、どうか十分御心配下さい。その代り一つ御協力願います財政の均衡ということは政府だけでやれるものでないということを、議會も一つ銘記してもらいたいということを申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=117
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118・川島金次
○川島委員 その話だつたら、もう一つ伺います。今通貨の増發がえらい勢いで進んでいる。この間大藏大臣は通貨の増發も天井をついたと言われたがまたさらに増加して來た。さらに赤字公債の發行額も、日銀は政府の機關と同じようなものでありますから、大藏大臣が命令すれば公債を引受けるでありましようが、その點或る程度で限度天井というものが來てしまうのではないかと思う。そういう見透しの下にいわゆる健全財政というものを考えて行かないと、大藏大臣の方はインフレは終つたのだから、あなたにはインフレはなくても、われわれの言うインフレは非常に激化する恐れがある。その激化はいつも國民勤勞大衆に犧牲を強うるという形になることを私は恐れる。それがやがて生産の増強に重大な障碍になることを、私どもは常に憂えている者なのであります。日銀が引受ける所の公債は、預貯金が殖えなければその限度、天井というものが來てしまいはしないか。そういう點について政府はどういう處置をとつて行くのかということについて、非常に心配しているのでございます。その點だけで宜しうございますから、一つ大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=118
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119・石橋湛山
○石橋國務大臣 日銀の發行券が最近殖えていることは事實であります。これは私はこういうふうに考えております。これがいくらになるという數字のことは、日銀あたりでいろいろ言うておりますが、結局さつきの問題に戻るのでありまして、つまり明年度の財政がどう處理されるかということであります。今の所では、たとえば今年度の財政の影響が、種々なる建設であるとかなんとかいうものの支拂いのために年末に來て相當昂まつております。そういうものが出て來ますから通貨はちよつと膨れます。しかしこれは或る限度がありまして、明年度の財政がまた同じように膨れて行くということであれば、これは止めなければならぬ。今度の追加豫算は全然通貨の方には影響ありません。ただ九十三億圓の進駐軍費でありますが、これは既に日銀通貨拂いで結局出てしまつたもので、これをただ公債に取替えるだけですから、今度の追加豫算は全部普通財源です。ただ歳入がはいつて來るのにちよつと時間があるから、その間の時間のずれはある。そういうふうに明年度の財政も處理できるとすれば、これは心配ないと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=119
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120・川島金次
○川島委員 それに關連して來るのですが、最近日銀總裁が通貨の發行の限度をきめたいということを言つておる。これは政府の考え方であるか、日銀當局だけの獨自の考え方であるか、それを一つついでに伺わせていただきたいと思う。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=120
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121・石橋湛山
○石橋國務大臣 これはわれわれの方もそう考えておる。今度の金融制度調査會には無論でありますが、根本的に日銀制度および發券制度をどうするかということを調査會で考えてもらおうと思いますが、差詰め發券制度だけについては暫定的の處置を一つ考えてみよう、こういうように政府も考えておりますが、調査會にもその問題を——年末に迫つてお氣の毒でありますが、議會が終つても二、三日委員は東京に留まつてやつてもらいたい、こう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=121
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122・川島金次
○川島委員 その發券制度に關する暫定處置としまして日銀總裁の談話を新聞で見た所によりますと、私の記憶違いであるかも知れませんが、一千億という具體的な線を引こうとしておる。それはやはり政府と話合いの上でああいう線というものが出て來たのですか、それを一つ伺います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=122
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123・石橋湛山
○石橋國務大臣 日銀總裁が何を言いましたか、その後總裁に會つて話を聽いたわけではありませんが、千億とかなんとかいう、そんな數字がきまるわけはありません。何かの話のついでに、或はたとえばと言つたかも知れませんが、政府は別段そんなことは考えておりません。今考えておるラインは、大體今は大藏大臣の一存で發行限度がきまることになつておりますけれども、それを一つ暫定的にわれわれが何らかの形——審議會とか委員會でもつくつて、そうして研究しつつやつて行くようにしよう、こういうくらいの程度であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=123
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124・川島金次
○川島委員 大藏大臣に對する質問は、また他の同僚から私よりもつと深刻な話があるだろうと思いますから、この點で打切りまして、發言のついでに……
稻田委員長 ちよつと、大藏大臣以外なら待つて下さい。大藏大臣はほかに用事がありますから……。加藤鐐造君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=124
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125・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私のお伺いしたいことは、既に川島君竝びに井上君から詳細な御質問がありましたので、私はきわめて簡單に一、二點大藏大臣にお伺いいたしてみたいと存じます。
第一點は、大藏大臣のインフレ昂進に對する見解が、われわれと非常に違うという點につきましては、既に他の諸君からたびたび御質問がありまして、豫算委員會においても相當繰返して質問がありましたので、御答辯に對してわれわれは滿足はできませんけれども、繰返して御質問はしませんが、ただ一點お伺いしたいことは、大藏大臣はたびたび通貨が膨脹してもインフレにはならない。その理由として、通貨の相當の部分が退藏されておるからインフレにならないということを、しばしば仰しやつておるのでありますが、現在もなおそういう見解をもつておられるかどうか。もしそういう見解をもつておられるとすれば、その退藏されておる通貨は、いかなる階層或は職業の人々の間に退藏されておるか。その點を大藏大臣はいかにお考えになるか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=125
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126・石橋湛山
○石橋國務大臣 今でもさように考えております。その理由は繰返しません。どういう者がもつておるかということは、正確な統計は無論あるわけではございませんが、世間のいうように農村、漁村あたりにも相當なものがやはりあると思います。そのほか土建業者でありますとか、いろいろな所に相當分散してある。これはかなりまとまつたものが——ついこの間も或る所で五十萬圓くらいの紙幣を庫に入れておるという、これは多分事實と思いますけれども、新圓を決して封鎖せぬとか、貯蓄運動とかいうことによつて、今まで百萬圓もつておつた者が五十萬圓を銀行に預けて保險的に五十萬圓くらいを庫に入れておるという話を聞きました。そういうように多額にもつておる人もかなりあると思います。これは數でありますから、百萬圓もつておられましてもなかなか大きなものになります。それから各家庭にも退藏というほどではありませんけれども、以前ならば郵便局に預けておいて、必要な時に引出したものを、いろいろな關係で面倒であるとか、そのほかの關係で現金そのものを家に置くという習慣が戰時中からついております。これも莫大なものであると思います。そういうわけで、退藏されておるものがある。あまりはつきり言えないが可なり分散して多くの所にあるものと、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=126
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127・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 勿論この通貨の退藏されておるかどうかという問題につきましては、特に政府がいろいろな機關を調査されても、正確な科學的な調査はできないと思います。しかし大藏大臣がそういうことを堂々と議會において言われる以上、私は相當或る程度の科學的な根據に基づいて仰しやつたことと思いますが、今お伺いしますと、きわめて斷片的な噂話等を根據として、有力な原因と見ておられるということは、大藏大臣として非常に不見識ではないかと私は思うのであります。實は只今大藏大臣は、野黨の社會黨に協力してもらいたいという話でありましたが、私どももできるだけ國家再建の上においては、協力しなければならないという建前において、過日來通貨安定推進委員會において活動しておるのである。私どもこの委員會を通じてこの活動に當りまして、いろいろと只今大藏大臣の仰しやつた農村方面に退藏されておるかどうかという問題について調査して見ましたが、農村方面には何ら退藏されておらない。日銀方面の見解は退藏されておらないという見解をもつておるのである。その他漁村についても或はまた土建業者の方面においても、殊に土建業者の方面においてという話でありましたが、これは事業の性質上、私は通貨を退藏しておるということはほとんどあり得ないと考える。しかるに大藏大臣はそういう方面を特にお擧げになりました。私はこの點大藏大臣の見解は甚だしく事實に齪齬しておると考えるのであります。しかしてその證據には大藏大臣は物價は騰貴しないと仰しやつておりますけれども、殊に日銀の十月までの物價指數を參考としてかくのごとく通貨、物價の膨脹率は鈍化しておるというお話でありましたけれども、私どもが現實の問題として見まする所では、十一月以後物價は非常に騰貴しておる。殊に最近に至りましては非常に騰貴しておるのである。この點につきまして大藏大臣の御見解をお伺いいたしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=127
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128・石橋湛山
○石橋國務大臣 今までしばしば申し上げましたことの繰返しになるかと思いますが、私が通貨の相當部分が退藏されておると見るというのは、今申しました斷片的な噂も、無論一つの材料に違いありませんけれども、そうでなく、通貨の流通速度は減つておる。なぜかと申せば、今もお話になりましたように、もう二月、三月のあの日本銀行券の收縮はそれまでの非常措置によつて人爲的につくつた收縮でありますから特別ではありますが、とにかく百五十億圓臺のものが七、八百億圓に増加した、こういうわけでなかなか増加がひどいのであります。それからその前の六百億圓が今日の八百億圓になつた。こう見ましても相當の膨脹でありますが、それがもし流通速度がそれと同じように増加し、もしくはそれ以上にインフレ——ほんとうのインフレであれば、流通速度はかように通貨が増加する時は、通貨の増加よりももつと殖えるというのが普通の形であります。そうであるなら物價は非常な暴騰をしなければならぬ。この場合にはあらゆるものが上つて來るわけであります。米であらうと、芋であらうと、容赦なく上つて來るわけであります。しかし實際の今度の傾向を見ますると、これはいろいろ議論があるようでありますけれども、とにかく日本銀行の指數を見ましても、物價廳あたりの調べを見ましても、そのほかのものを見ましても、三月以來あの通貨の増加と同じような率で上つているとは、どうも言えない。最近はたしかに十月以來いろいろの事情によりまして、物價が或る程度上りつつあることは事實であります。しかしこれは私は特別の事情によるものと思うのでありまして、特に通貨が殖えたから、通貨の影響によつてこれが騰貴したというふうには、實際冷靜に事實を見ると、そうは考えられない。そういう點から、私は達觀と申しますか、大局を見て言うている次第でありまして、單に斷片的の事實のみによつて推論している次第ではありませぬ。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=128
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129・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 最初にインフレ問答を大藏大臣としないと申しましたが、今の御説を聽いて、もう一度お伺いしなければならない必要があります。大藏大臣は通貨の膨脹と物價騰貴とが比例して進まないから、インフレではない。簡單に言えばそういうようなことをおつしやいましたが、しかし私はそういう見解は間違つていると思う。それは要するに膨脹した通貨が國民の各層に滿遍なく行き渡れば、それはそれでよろしいのでしようけれども、しかし膨脹した通貨が偏在している。しかも通貨の膨脹に從つてだいたい物價は騰貴している。同じ率で上つて行かなくても、それに從つて上つて行くということになりますると、いわゆる新圓を握つている人々はよろしいけれども、國民の大部分、殊に勤勞階級というものは一定の枠の中で生活をしなければならないし、またこの新圓を獲得することも少いのでありますから、結局國民の大部分がこの物價騰貴によつて生活苦に喘がなければならないということになりまするからして、私は大藏大臣がおつしやるように、通貨の膨脹に比例して物價が騰貴しないから構わないという見解は、甚だしく間違いではないかと考えるのであります。大藏大臣は今、物價騰貴が特殊な事情によるとか仰しやいましたが、大藏大臣は一體この國民生活必需品を販賣している闇市—現在では公然と賣つておりますから、闇市とは申さないかも知れませぬけれども、あの群をなしております市場に行つてごらんになつたことがあるかどうか、毎日物價が上つているのであります。生産資材の面においては、或は物價騰貴は甚だしくないかも知れませんが、國民生活の消費財の面においては、毎日物價が上つている事實を、われわれはあの市場において見るのである。私は大藏大臣に、もう少しああいう所をよく調査していただきたいと思う。ただ單に日銀や商工會議所の調査などにのみ頼らないで、眼前國民の前に展開されている事實を、もつと見ていただかなければならないと思う。この問題については、私はただ意見だけを申して、次ぎにもう一點お伺いしておきたい。これは既に井上君からも質問されましたが、今度の増加所得税を設定された目的が、いわゆる負擔の衡平を期することであり、さらに一方においてインフレを防止することが重要な目的となつていると考える。從つて新圓階級がどこにあるかということを正確に掴まなければならないと思う。時間の關係上、私の方から結論を出して申すと、先ほど井上君からも質問があつた通り、まず新圓階級の最たるものは今日の闇商人、殊に大口闇商人であると思う。殊に闇商人の中でも戰時中から隱匿されている物資を今日相當持つている商人があり、纎維製品、鐵材などについても相當持つている商人があり、それを今日大口に賣買している商人があることは、大藏大臣もお聞きになつたであろうと思うこういうものに對してどういう方法をもつて調査されるか。或はそういうものは放つておかれるのか。もしさういうものに對しても課税をするという方針ならば、どういう方法をもつて調査されるか。それをお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=129
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130・石橋湛山
○石橋國務大臣 これは技術上の問題でありまして、實際にやつている者がかえつてよくわかるのでありますが、結局原則的に申しますと、始終税務署で調査をし、大體お話の點も目星がついていると思いますが、こまかに調査して參るという以外に、實は方法がないのであります。大體調査をこまかにして參れば、そういうものは全部百パーセント捕捉ということは、かりにできないまでも、相當捕捉せられるものと考えている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=130
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131・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 こまかに調査する以外に、方法がないということは事實ですが、先ほど井上君からも指摘されたように、今日薄給の税務官吏が、殊は闇商人にしばしば買收されるという事實は、今日蔽うべからざることである。同時に警察官がこうした闇商人に買收されて、その大口取引きを眼前に見ながら默認している事實もしばしばある。これはわれわれ眼前にしばしば見ている。私はこうした大口商人に課税しなければ、今囘増加所得税を設定した意義はないと思う。いわゆる呑舟の魚を逸して雜魚ばかり漁る結果、國民の不平不滿が政府に集まつて來るのである。そこで私は大口闇商人に對して、徹底的な課税をするためには、ただ單に大藏省が税務官吏を殖やすとか、優遇するとかいうことだけでは、私は足りないと考えるのであります。これはやはり警察官と十分連絡をとつて、或はまた商工省關係とも十分の連絡をとらなければならぬと思います。私はこの問題に限らず、一切の重要な國策を遂行するに當つて一つの省が、その所管の事項だけやつて、他の省がそれに對して應援しない。また應援を求めないという行き方は、今日の時代において、その目的を達する上に非常な支障を來すと考えるのであります。その點について大藏大臣は、この闇商人に徹底的な課税をするために、内務省、或は商工省等の協力を求められる意思があるか、ないか、どうかということをお尋ねいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=131
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132・石橋湛山
○石橋國務大臣 徹底的に調査するという點については、無論商工省あたりには力を借りようと思つております。これも警察官を納税者の所へ派遣して、家宅搜索をすることまでしていいか、どうか、これは昨日も申し上げました。徹底的に調査するということになれば、そういう事になり勝ちであります。そうなつては、またいろいろな弊害があると思いますが、その邊は弊害のない限りにおいて、十分な科學的調査をする。かように考えておるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=132
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133・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私の質問はだいたいこれで終りたいと思いますが、警察官の協力を求めるということは、只今大藏大臣が仰しやつたように、家宅搜索をして、調査するということよりも、現在の警察官が闇商人の取引きを眼前に見ながら、それを見過しておるという事實を、内務省を通じてそういう警察官の涜職行爲を肅正するやうな方法をとらなければ、それと組合わせなければ、その目的を達成することはできないと考えるのであります。それからもう一つ、これも今一寸氣づいたことでありまするから申し上げておきますが、最近或る特殊の人々の高級料理店というものが各地に殖えております。それらの料理店の所得は相當厖大なものであると思いますが、そういう所へ税務官吏が調査に參りまして、その帳簿の檢閲を、強行しようとしました所が、或る種の人々が徒黨を組んでそれを妨害したという事實もたびたびあるということを私は聞き及んでいる。こういう場合には飽くまで警察官の應援を求めて、徹底的な調査をしなければ、先ほど私が申しましたように、結局呑舟の魚を逸して雜魚ばかり漁るというような結果になると思うのであります。そういう點につきましては、私はただ單に今大藏大臣のあげ足をとつて質問するのではなくして、そういうことを大藏大臣が口の先だけで、今私が質問したから、それをできるだけやりますという答辯をせらるるだけでなくして、實際それをおやりにならなければ、この増加所得税徴税の目的を達成することはできないと考えます。その點についてもう一應大藏大臣の信念のある所をお伺いいたします。これで私の質問を打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=133
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134・石橋湛山
○石橋國務大臣 その點は現在も内務省と連絡して、内務省も援助してくれるという諒承を受けているのであります。やることになつております。近頃やれておるでしようが、實際は警察力が一時弱かつたものでありますから、大藏省が希望するように行かなかつたのも事實であります。しかし今局長に聽きますと、だいぶんやり始めているそうでありますから、御諒承願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=134
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135・稻田直道
○稻田委員長 井出君、簡單に一つお願いいたします。井出君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=135
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136・井出一太郎
○井出委員 私は二、三點保留しておいた點について、お伺いいたします。昨日局長にお尋ねいたしまして、明年度あたりに税制の根本的刷新をする意思がおありになるというように伺いましたが、無論恐らく税制審議會その他には、掛けなければならないと存ずるのでありますが、ただここで問題なのは財産税をとり立てる、乃至は補償の打切りをする、それやこれやで經濟的混亂が明年度あたりは相當にあるだらうと思います。そういうやうなデーター自身が動いている時期にはたして根本的な税體系の變革ができるかどうか私は來年度はどうも少し不安ではないかと思うのであります。大藏大臣の御見解は如何でございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=136
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137・石橋湛山
○石橋國務大臣 お話のように相當動くと思いますが、しかし財産税或は補償打切り等のことは、實行はまだ遲れておりますが、それによつて納税者がどんな形になるかということの見透しはついております。ですからそれを基礎にすれば、根本的改正もやれると思います。ただ税制調査會というのは今後一年間というので、まだ續くのでありますから、明年度の税制改革は、主として大藏省で今研究しておりますラインに沿うて、税制調査會にも研究を願つて、明年度から實行するやうに續けて研究をしてもらいたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=137
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138・井出一太郎
○井出委員 最近の國民所得はどのくらいあるかということを、私は昨日伺つたのでありますが、どうもはつきりしたお答えを得なかつたのであります。この内容というものは、たとえば勤勞所得というものよりも、事業所得の方が最近はどんどん殖えている。これは非公式の數字でありますが、本年の前半期の割合というものを大藏省から發表になつたことを、私は新聞紙上で見たのでありますが、こういうことを發表されるとすれば、國民所得に對するしつかりした數字をおもちになつているはずだと思いますが、どのくらいに國民所得を押えておらるるか、その點をお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=138
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139・石橋湛山
○石橋國務大臣 實は國民所得の計算は、以前統計局で或る算式の下にやりました。それから戰時中もいろいろ數字を發表されていると同時に、一面において、專門家を集めて國民所得の計算の方式についての研究を進めておつた。しかし今日まだいろいろの計算をしておりまして、今はたしか三箇月毎に計算をしているのでありますが、どうもまだこれならばという確信のもてる間違いない計算は——どうせああいうものでありますから大雜把なものではありますが、われわれとして安心して、まづこれならばよからうと思うほどの數字の計算は、まだできておりません。それで發表を躊躇しているわけでありますが、今しきりにやつております。それでこれはほんのだいたいの見當でありますが、まず二千五百億圓から三千億圓ぐらいの國民所得に二十二年度はなるだろう。これはいろいろな點から見てそんな見當をつけております。正確なことは今申し上げられないのであります。それから先ほど言われた國民所得は、事業所得が多くて勤勞所得が少いというような數字も、實は出ているわけであります。これらは數字はとにかくとして、常識的に最近の状況を反映しているというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=139
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140・井出一太郎
○井出委員 國民所得の正確なる數字を押えていないということは、言い換えれば非常に經濟變動が激しくなる。もつと言葉を換えれば、インフレが進行しておる、こういうことではないかと思うのであります。この間本税法案の提案の御説明の中に、膨脹的變化という言葉をお使いになつておりますが、インフレ問答は、さつきからもそちらでなさいましたが、大藏大臣相手のインフレ問答は、暖簾に腕押しみたようなもので、どうも效果を擧げ得ないようでありますけれども、こういつた膨脹的變化というふうな言葉を使わないで、もつと率直に、これはインフレなんだ、こう認められて答える方がいいのではないか。なるほど日本の現在の經濟というものは、これは全く衰弱期にある病人でございまして、その一番の主治醫である大藏大臣がこれをみて、もう匙を投げてしまつた。こういうのでは、なるほど國民に與へる影響も大きいのでありまして、大臣はあくまでも心臟強く、これはインフレでないぞというふうにいうていらつしやる方が、或は效果があるかと思いますが、しかしとにもかくにも、インフレであることは私どもは間違いないと思うのであります。大藏大臣がしばしば引用される日銀の物價指數、さつきもお話しに出ましたが、これは十一月のを見れば一九〇になつておりまして、ほとんど本年の三月と大差はない。こういう状況になつておりますし、そのほか大臣がよつてもつて基礎とされるたとえば通貨の關係、或は生産の問題、或は今後の財政の見透し、こういつたものからいうならば、どうもインフレの條件はことごとく出つくしておる。おそらく大臣といえども、夜一人靜かにお考えになると、インフレの波が滔々としてその音が聽えるのじやないか。こういうふうに考えるのでありまして、むしろこの際率直にインフレだと認められて、その上に對策をお立てになるということの方が、かえつて國民に忠實な所以じやないかと思いますが、いかがでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=140
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141・石橋湛山
○石橋國務大臣 膨脹的或は收縮的と言つたのは、インフレとかデフレとかいうよりは、もう少し廣い意味で、その言葉ではありませんが、實は私は考えたのであります。あれをインフレとかデフレとか、簡單なようでありますが、それでは豫算更正の説明をするものとしては足りないので、必らずしもデフレとかインフレでなくても、絶對に生産が進む場合もありますし、減る場合もあります。こういう廣い意味で使つたので、必ずしもインフレ、デフレの言葉を避けたのではありません。
それから今の御質問の御趣意は、私が屡次申すように、終戰後、戰時中の影響も現われて、非常な勢いで物價が騰貴した。インフレの現象が現われたということを、初めから認めておる。ですから現在は今あなたの言葉にインフレが出つくしたと仰しやるが、私はインフレが出つくしたと見ておる。そうして春までに出つくして、後は高いレベルで、いわゆるインフレのレベルの下で、横這いをしておる。でありますからインフレかデフレかということは、レベルが安定すればそれでいいのであります。つまり進行性があるかないかということが、一番の問題なのであります。これからまた一部分で御心配になるように、どんどん物價が騰貴して行く。こういう状況が起るか起らぬかという問題でありますが、今あなたの言うインフレが出つくした。これは私は戰時中から申しておるのでありまして、戰時中でも無理な統制でもつて物價を抑える。これはいけない。現實にインフレは正直にこれを認めて、その上に政策を立てなければならぬということは、戰時中から申しております。現在も同じであります。でありますから既に出ているものはそのまま認めて、これを進行性でなくする。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=141
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142・井出一太郎
○井出委員 その問答はこれで打切ります。私は大臣の自信滿々たるその態度については、さつき申し上げたように、日本の財政の上における主治醫でいらつしやる以上、弱音を吐かれたんじや困るのでありまして、ただその滿々たる自信が、戰時中大東亞の天地を叱咤した東條氏の自信のようなああいつたものであつたのでは困るのであります。その點を御警告申し上げておこうと思うのであります。
それからもう一點だけ、大臣が東洋經濟をおやりになつておつた當時のかねかねの持論であつた納税證券、あれをこの際におやりになるような御考えがあられますかどうか、これを一點最後にお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=142
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143・石橋湛山
○石橋國務大臣 あれはかねがねたいした主張でもありませんでしたが、今の所で別段具體的に考えておりませんが、それらの考案も取入れる部面があれば、取入れて行きたいということは考えておりますが、今は具體的に何もありません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=143
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144・井出一太郎
○井出委員 この程度で打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=144
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145・稻田直道
○稻田委員長 それでは町田君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=145
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146・町田三郎
○町田委員 私の申上げることも、だいぶ諸君の御質問の中に觸れておるようですが、どんなにいい租税でも、問題は適當な徴税ができるかどうかという所に重要なポイントがあるのでありまして、今度の税につきましても、勿論そういうことが言われると思うのです。殊に今度の税はむつかしい點があると思うのです、というのは、この納税者がだいたい二つに分類できると思うのです。非常に所得のはつきりしておる納税者と、所得のはつきりしない納税者と二通りあると思うのですが、今度のこの増加所得税は、その所得のはつきりしない人を、より多く對象としておる租税だと考えるのであります。從つてどういうふうな方法でこれを調査するかということが、先ほど來非常に問題になつておるのでありますけれども、どうもどなたの説にも適切な説はないようですし、當局者の御答辯もただ徹底的に調査するとか、こまかに調査するとかいうようなこと以上に出ておらないようでありますけれども、その調査の方法については、さらにほんとうに徹底的な具體的な方法を考究しなくちやいけないのじやないかというように考えるのです。所で先ほど二階堂さんか誰かもちよつとお話になつておられたようでありますが、このごろこの貯蓄の推進をやりました時に、貯蓄の秘密を保持するということを非常に強く強調したのですが、貯蓄の秘密を保持するということと、所得の内容をはつきりするということとは、矛盾する關係になるように私は考えるのです。貯蓄の秘密を保持するということになれば所得を明瞭にするとことができないし所得を明瞭にするということになれば貯蓄の秘密を保持することができなくなると思うのです。大臣はややその貯蓄の秘密を保持するという方に御意見が傾いておるように思うのでありますけれども、これはまあ從來そういうことが非常に強く主張せられておつて、確かに貯蓄というものは秘密を必要とするので、この秘密を保たんければ、貯蓄はできないと從來考えられておつたのですけれども、しかし今の日本のような、所得が非常に少くて支出が非常に多くなつておる、所得の大部分を租税として徴集しなければならないというような時代におきましては、貯蓄の秘密と所得の秘密を保持するというようなことは、許されないのじやないかというように考えるのです。從來は秘密が保持されなければ、生産が減退するというように考えられたのでありますけれども、しかし今後は秘密が保持されなくても、所得の内容、貯蓄の内容が明かになつても、しかもなお生産に邁進するというような、一つは精神的な訓育もしなくちやならないと思うのです。が、そういう考え方に國民全體が頭を切替えて行かなくちやならぬじやないかというように考えますそこで先般來この新圓の封鎖ということが非常に問題になつておつたのですが、新圓の封鎖に對しては、大藏大臣勿論御賛成になつておられないのですが、私たちも新圓を封鎖するということについては賛成できないけれども、しかしもつておる金を調査するということについては、その必要は大いにあるのじやないかというように考えます大體この租税をとるためには、毎年その人の資産を正確に調査するというような新しい制度を、つくつてもいいくらいのものじやないかというように考えるのですが、大藏省の、殊にこの税を擔當していられる方々は、國民の資産を一手に一囘くらいは正確に調査するという調査法とか、調査令とかいうようなものをお出しになるようなお考えはないかどうか、そういう點を一つお伺いいたしたいと思うのです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=146
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147・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今の所ではさような考えはもつておりません。これはいつも申し上げますように、税をとるということから申せば、皆の蟇口まで開けさせて見るということが一番便利なわけでありますが、それによつて生ずる弊害と利益と、これがどつちがバランスが強いか、こういう問題になる。結局これは所得税のごときは、英國では良心税と稱せられておるそうでありますが、もし日本の國民がほんとうに正直に皆申告してくれるならば、今日よりも遙かに税率が輕くなつて相當の税收入があるべき筈であるが、それが今日のような有樣になつておる。だから結局精神運動といいますか、道徳運動というならば、財産を毎年明るみに出せということも結構でありましようが、それよりもまず納税の申告を良心的にやるといふような運動といいますか、宣傳が非常に必要だと思うのであります。その點が改まらぬで、税務官吏が追つかけて歩いて調べるということは、實は末の末なんです。今度の増加所得税も申告制にしてあるのです。だから申告が相當正確なものなら調査の必要はない、税務署の機構の擴充など必要はないのですが、遺憾ながら正確でないからやりますが、これも町田君の言われるように、またひどくやると、かえつて納税をいやがるといふ氣風をつくつてしまうということを考えますと、やはりほどほどにしておかなければならぬのじやないかと、實際問題として考えるのです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=147
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148・町田三郎
○町田委員 ただその弊害がいかにも多過ぎると思う。眞面目な生業に從事している者は、所得がはつきりしているから十分税金をとられる。隱れてやつている者は、闇商人とかなんとかいうような統制を潜つたり公定價格を破つたりする者が多いので、そういう者は所得が非常に多いのに、そういう者をどうしても掴まえることができないのじやないかというように考えますものですから、それを掴まえるためには、財産調査令のようなものをつくつて調査する必要があるのじやないかというふうに考える。ただ物に換えて物でもつておれば租税がかからないし、金でもつておれば租税がかかるという所に、また非常な困難があると思うのですが、物をもつておるという者に對して、これもまたなんとか調査するというような方法は講ぜられないものかどうか。この前財産税の原案を議會で、多分主税局の方だと思うのですが、御説明なすつた時に、去年の冬から今年の二月、圓の封鎖までの期間に換物運動が非常に活溌に行われておつたので、貯蓄が非常にその方面に逃げておつたのですが、それを掴まえるために大藏省の主税局の方々は相當努力する、銀行の協力を求めて、たとえば當座預金を引出して物を買つたというような者に對しては、相當調査してそれを掴まえようと思うというようなことを仰しやつておられたけれども、そういう努力を現在までに拂つておられたことはないように思うのですが、そういうことをやつていられたかどうか、その點を一つお聽きしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=148
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149・池田勇人
○池田(勇)政府委員 舊圓預金の引出しにつきましては、或る程度の調査をいたしましたし、また今後も調査することにいたしております。これによりまして隱匿物資なども相當出て來ると期待いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=149
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150・町田三郎
○町田委員 財産税の査定によりましては商品をもつていて、その商品が財産から漏れておるという點が非常にあると思うのでありますが、その點は今後でも遲くありませんから、徹底的に調査なさるようにお奬めいたしたいと考えるのであります。
なおもう一つこの機會にお聽きしておきたいことは、今度の増加所得税は、三國人からも徴收することができるかどうかということを確かめておきたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=150
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151・池田勇人
○池田(勇)政府委員 昨日もお答え申し上げましたように、第三國人からも徴收することになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=151
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152・町田三郎
○町田委員 以上をもつて私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=152
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153・稻田直道
○稻田委員長 この際申し上げまするが、大臣でなくてはならぬという質問はこれで濟みました。あとは島田君と川島君だけ殘つております。それだけして今日は打切りたいと思います。川島君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=153
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154・川島金次
○川島委員 私の最後にお尋ねいたしたいのは、まことに重要であるような、重要でないような問題であるのでありますが、この機會にちよつとお尋ねをしておきたいと思うのであります。それは大分卑俗な話になりますが、いよいよ年末になりまして新年も近づいたのであります。その新年に對して、昨年は實は煙草なども特配をしたように記憶しておるのでありますが、その新年用としての煙草の増配があるかどうか。なおこれも專賣局長さんの管轄だと思うのでありますが、一般國民の家庭に漬物用の鹽というものが非常に逼迫して參つておりまして、野菜物はもつておるが、鹽がなくて漬物をすることができない。その漬物をするために、どこやら流れて來るか分りませんが、非常に高い闇値の鹽ならば各所にある。こういう不思議な現象になつておりまして、高いがなくてならぬというので一般の大衆がその闇鹽を買つておるというような状態であるのでありますが、この漬物用の鹽につきましても、何か需要期に入りまして特別な配給をするというような計畫でもおありでしたら、それを伺いたいということと、いま一つは、ピース、コロナなどの自由販賣の煙草は非常に高いのでありますが、このピース、コロナの製造量と一般に配給いたしておりまする所の煙草の量との比較、こういう問題。それからピース、コロナの自由販賣の問題が、昨今は、——專賣局長は知つておられるか分りませんが、煙草小賣店で、ややもすればそれを一般に公開して自由販賣をしないで、その大部分のものを特別に闇に横流しをしておるという事實も大分見受ける有樣であります。そういうような事柄に對して當局はどのような考え方をもつておるか。それからピース、コロナなどを、ああいう大量に出す能力と原料があるならば、もう少しそういう方面を節約してでも、勞務者の方面に煙草の増配ができないか。そういうことの方が私は生産増強の上に非常に必要なことではないかと思うのでありますが、その點についてまづ羅列的にお尋ねしましたが、お答え願いたいと思うのであります。
〔委員長退席、西村委員長代理着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=154
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155・杉山昌作
○杉山政府委員 第一番目の新年用の煙草の特配をするかどうか。これは一人三十本づついたす見込みで、だいたい今の製造の數量から行くとできるように計算が出ております。それを通達いたしましたが、最近汽車の輸送が非常に惡うございまして、そのために場所によつては年内にできない或は結局お流れになるかも知れぬと思はれる恐れもありますけれども、できるだけやりたいということで、先般その通牒を出しております。ですから交通のよい所、製造工場の近い所は必ず行くと思います。
次ぎに漬物用の鹽の問題でありますが、この第三四半期、すなわち十月より十二月までの鹽の配給につきましては、この期間が一番漬物用に需用の多い時でありますので、それらを見越しまして、生産並びに輸入の方面と照らし合わせまして漬物用の鹽の特配というような數量も相當入れまして、配給計畫をきめました。所が十月末になりまして輸入の方が、私たちが考えていた船が急に來なくなるというようなこともありますし、それから内地の製造におきまして、十一月以降は電氣製鹽は一切電氣をやらない、石炭も汽車さえ止めるような時だから、なかなか鹽の方への石炭も十分には廻せないということで、電氣、石炭を初めに計畫していたよりも相當カツトされるような状態になりました。その關係で輸入、生産ともに減少することになりましたから、初めの計畫を三割方壓縮しなければならないような状況になりましたので、そういうふうに計畫は變えましたけれども、やはり全體として少い中でも、漬物用についてはだいたい從前の比率をもつて特配を計畫して地方でやつております。その政府で賣る鹽のほかに、現在闇の鹽ならいくらでもある。——いくらでもあるということまでには參りませんが、これが若干流れておることは私たちも承知しております。この鹽は例の自給製鹽と申しまして、自分でつくつて自分で食べるのだということで戰爭の末期から始めている、あの自給製鹽の中で、若干でも自分の所で餘つた鹽がある、それを他へ廻すということがあります。それにつきましてはその流し方如何によつては本當の闇であります。その流し方を本當の闇にならないように、價段等につきましても、あのやり方は生産費が非常に高くついております。とても政府で賣つておるような價段ではできませんから、若干生産費が高いのは認めるにしても、いい加減な闇取引でないような方法で、これを必要な方面には一つの流れをつくりたいということで、いろいろ手配をしておりますが、それを拔けまして、本當の闇に流す者があるが、その本當の闇の流れにつきましては、地方で警察等とも連絡をとつて、十分取締りはいたしておりますが、それも幾分出ておると思います。この取締りにつきましては、今後ともなお今まで以上やりたいということで、最近も内務省の警保局といろいろ連絡をとつております。
それから次ぎはピース、コロナの販賣についてですが、ピースがだいたい一年に三十億、コロナが十二億、合計四十二億の豫定をもつて今やつております。本年度の全體の製造數量は四百八十億であります。豫算の時には五百十億ということも考えておりましたが、實行上原料が少いとかその他のことで四百八十億が今實行されております。ですから割合から申しますと一割にも當らない數量であるということであります。所が四十二億つくるなら、今後それを勞務加配に廻したらというようなお話でありましたが、それも確かに勞務加配の方に何本でも廻したらいいということは承知しておりますが、勞務加配或は生産奬勵の加配というものを、實は今のピース、コロナと同程度の數量を豫定してやつております。全部そちらに廻せば、それに越したことはないと思いますが、財政上の必要もありまして、若干高い煙草を發賣いたしまして、收入の増加をはかるということを考えてやつておるのです。
それからピース、コロナが小賣店の店頭で全部が賣られないで、店の裏から出るということも聞きましたのですが、これは初めにはそういうふうなことが恐れられましたので、各店に何個という割當を一定いたしました、そうして店では表へ本日は何個賣るということを貼り出させて、そうして澤山人が集まりますと、その人數でわかるというふうなことをやりました。所が先般このピース、コロナが割合賣れ行きが遠くなつたことがございます、七月の値上げをした後暫くの間非常に遠くなつた。そのためにむしろコロナというようなものは、日曜に賣るものが水曜日、木曜日あたりまで殘つていたという店が多うございました。その關係でいつでも行けば買えるということになつたことから、その初めにやりました習慣がなくなりました。それがごく最近に至りまして、政府は煙草の値上げをするそうだというふうな噂が立つて、それで今度は買う方は買いたいし、賣る方は賣りたくないということで、最近そういうふうなことがあるという事實を聞きまして、これにつきましては、すぐにそれぞれ注意をいたしておりましたが、或は澤山ある小賣店の末端には行屆かない所もあつたかと思いますが、今囘現實に値上げを發表いたしますと同時に、そのことがあつてはならぬと思いまして、發表までは一應賣り止めをする、政府の方からの賣り止めまでしようということでやつております。今後もそういうことのないように、やはり前の何個賣るかということを貼り出させてやることを勵行したいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=155
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156・川島金次
○川島委員 今局長のお話によりますと、特配煙草は一人三十本ということですが、それでは五人家族では百五十本になりますかどうですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=156
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157・杉山昌作
○杉山政府委員 その一人というのは、例の男九割女一割という、あの人數に對して三十本ということであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=157
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158・川島金次
○川島委員 それは世帶の一人々々ではありませんですね。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=158
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159・杉山昌作
○杉山政府委員 そうです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=159
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160・川島金次
○川島委員 續いてお伺ひします。鹽のことも心配しておるというお話でありますが、それはどのくらいの量ですか、具體的にお話ができませんでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=160
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161・杉山昌作
○杉山政府委員 鹽の特配の數量については、今ちよつと資料を持つておりませんが、後ほど資料を……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=161
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162・川島金次
○川島委員 だいたいでよいです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=162
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163・杉山昌作
○杉山政府委員 だいたい三萬トンぐらいかと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=163
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164・川島金次
○川島委員 三萬トンということになりますと、一世帶どのくらいになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=164
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165・杉山昌作
○杉山政府委員 この漬物用の特配は、だいたいにおきまして農村がおもに自家用の漬物をやりますので、主としてそちらへやつております。從つて都會の方へはそれほど廻りませんで、總平均でいくらという數字はちよつと覺へておりまおん。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=165
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166・川島金次
○川島委員 それを一つ詳しく、後ほどでもよいですからお教え願いたいと思います。それから喫ふことと次ぎは飮むことになりますが、飮む方は、正月を控えておりますから、都會地、一般地方、そういう方面の用意がありましたならば、この際聽かせて戴きたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=166
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167・池田勇人
○池田(勇)政府委員 正月用のお酒につきましては、下期に配給計畫をいたしております家庭用酒から出すことにいたしております。だいたい五合乃至一升を成年男子一人につきまして配給いたしたいと思つております。これは輸送その他の關係上、そうしてまた從來毎月配給でなしに隔月になつたり、いろいろな配給方法がありますので、正月用酒としてどの土地はいくらという事は、ここでお話申し上げ兼ねるのでありますが、だいたい五合乃至一升の配給ができると考えております。東京都内におきましては、只今割合集荷が順調に行つておりますので、一升を配給することに決定いたしました。ただそれが年内に全部一升參りますか、或は年の内五合、年が明けまして五合こういうふうに分れる。この點は、はつきりまだきまつておりませんが、とにかく正月を前後にいたしまして一升の特配を計畫いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=167
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168・川島金次
○川島委員 だいぶくどくなりますが、それについてお伺いいたしますが、この前の議會の委員會で清酒、ビール等の増産計畫をおもちのようなお話があつたのですが、明年度といいますか、今度の酒造年度おいて、多少の増石の豫定でもおありでありますか、それをついでにお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=168
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169・池田勇人
○池田(勇)政府委員 只今の所はだいたい前年程度であります。しかし酒が非常に要望されておりますので、われわれといたしましては、できるだけ増産に向つて努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=169
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170・井上良次
○井上(良)委員 ちよつと關連して——今專賣製品並びに酒の特配についていろいろ政府から御説明がありましたが、私はこの際これら政府の專賣及び特配品を特に農村の供米のリンクに大幅にこれを振向けてもらいたいことを要望したいのです。最近今、局長からお話のように、たとえば正月用の酒として、五合か一升がそれぞれ地域的にはもう正月用として配給が始まつております。今頃酒を配給しますと正月には飮んでしまつて正月の酒はなくなります。なお今一つこれが全く各家庭へ、飮む人も飮まぬ人も平等にこれが配給されております關係上、飮まぬ人はこれを全部享樂面の料理屋や飮食店に横流しをしておる事實があります。かくのごときことは全く政府の考えておることは、異なつた面を賑わすことになりますし、現に東京都においては既に三日と何日も平均の遲配を見ておりまして、酒は飮んだが米はないわという正月をせんならぬということでは、これは問題なんです。それだからかりにこれを新潟なり或はまたは秋田なりの農村へ持込みまして、一俵出したら一升やるということになりましたら、農村は喜んで出すのです。これをぜひ一つ供米のリンク物資にして出してもらいたい。少くとも今まで渡したやつはともかく、これから渡そうというものは全部押えてしまつて、これを全部農村へもつて行く。そうして米の方をもつとうまく行くようにしなければ、實際上、生産上、重大な影響を來して參りますから、この點は是非一つそういう方向にできぬものか。それから今一つはえてして配給物資が横流しをするというのは、勿論配給を受けた面からも、それを自家消費せずに横流しをしておるのが煙草、酒等にございますが、業者自身が横流しをしておる部分も相當にある。現に大阪に早期供出のリンク制として、酒一升を一俵に對して渡すということで府がとりましたこの酒を、酒類統制組合の酒類販賣所においては、府が割當てたその清酒に水をぶちあけて、二割、三割の水を入れて、そうして百姓に配給しておる事實があるのです。こんなことをされたら、百姓はもうあとの米は出さぬのです。そういう事實をわれわれが防止する一つの方法としましては、どうしても農民なら農民の代表或はまた實行組合なら實行組合の代表と直結する所の、一つの物資委員會をつくりまして、その委員會にこの郡なら郡には何石の酒を渡す。煙草なら煙草何百本渡す。そうしてこれを公平にその地區に配給するというやり方をいたしますならば、完全に正味正月のものが確配をされるのです。そういう方向に行くように、この點に對する政府の所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=170
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171・池田勇人
○池田(勇)政府委員 正月用の特配に一升を出したと申しましたが、正確に申しますと、正月前後の酒の配給という意味でございます。特に正月として出したのはそんなに多くございません。正月前後に家庭に配給いたします酒が一升、こういうように御承知願いたいと思います。なお農産物の供出につきまして、どういうような酒の割當てをしておるかと申しますと、農山村の供出用といたしまして年間二十二萬石を特配しておるのでございます。最近の供出の状況等から考えまして、なおこの上に二萬數千石を特配して早く供出していただくようにというので、特に二萬四千石を振向けた次第でございます。農産物或は林産物の供出につきましては、できるだけの酒を配給する。こういう方針で行つております。どうぞ御諒承を願います。なお農村特配用酒を、中間の業者が加水いたしまして、その加水に相當する酒を横流しするということは不屆き千萬でございます。もしわかりましたならば、嚴重なる處分をいたしたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=171
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172・井上良次
○井上(良)委員 私は事實を擧げてお話したのですが、現に大阪府の割當てました早期の供出のリンク制に用いた酒は、まず水が二割、三割はいつておるのです。これは大阪府の酒類統制組合についてあなたが直ちに調べればわかる。十一月の供出に使つた酒でありますから直ちにわかる。直ちに大阪府の酒類統制組合は解散を命じて、もつと明確な、公正な取扱いができる方法を一つ考えていただきたい。それから煙草のことも、少くともやはりこれを全般的に配給しておるといふことは、ちよつと見るとまことに公平に見えますけれども、實際あのやり方は、煙草の闇を多くするだけのものであつて、なんにも意義をなさぬ。こういう重要な時期に當面して、しかも政府が仕事をやるという場合には、もつと生産増強の面に大きな手をどんどん打つて行くという行き方を、一つとつてもらいたいと私は特に希望しておきます。なお農村特配物資については、別の機會に特に管理委員會等を要請することになると思いますから、その點どうか一つ政府の方でも特別の配慮をお願いしておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=172
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173・西村久之
○西村委員長代理 島田君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=173
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174・島田晋作
○島田委員 理財局の方に御質問いたしますが、有價證券處理の調整に關します方面におきまして、いろいろ技術的には問題があると思うのであります。たとえば協議會の働き方とか機能、この下にあります事務局の構成とか、先ほどちよつと申しましたが、下請機關としましての證券業者の團體、それを通して大衆の消化をいかにするか、實際問題としまして今までの有價證券事業を見ますと、長い間のあれを見ましても、弊害の方がむしろ大きかつた。良い面もありましたけれども、概して弊害の面が多かつたのではないかと私は考えるのであります。今後におきましては、そういうことのないように、十分に注意していただかなければなりませんが、結局私はなんと申しましても、先ほど大臣も仰せられました新しい取引所のあり方、或は證券市場のあり方と不可分的の問題にあると思うのであります。今日の民報の記事を見ますと、大體大藏省では原案ができた、證券取引法案(假稱)とありますが、一應原案を完成したとありますが、それを見ますと、株式組織を改めて會員組織とする、思惑賣買を極力抑制して、健全な投資取引きを目的とする正常な取引所とする、或は賣買の方法についてもアメリカ的な方法をとる、内閣に證券廳を設置する、というふうな大綱が出ておりますが、既にこれは原案ができたのでございましようか。ちよつとこれを伺いたいと思います。
〔西村委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=174
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175・櫛田光男
○櫛田政府委員 取引所の問題につきましては、がねがね研究中でございまして、だいたいいろいろな腹案がまとまり、現在なお關係方面といろいろ協議中でございますが、恐らく來議會早目に證券取引法の提案をいたしまして、御審議を願う段取りに相なることと存じております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=175
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176・島田晋作
○島田委員 まだ原案を見ませんので、私ども今これからここで批判することは勿論できませんが、これは來年の問題でありますが、今日の株式市場を見ましても、現物取引をやる建前になつておりますが、實際は過去の短期清算取引のような形を實質上とつておる。これは何人といえども、多少とも證券市場のことを知つている者はわかつておるのでありまして、これは私どもは、アメリカ式もよろしうございますけれども、日本における今までの資本主義の制度におきましては、どうしても日本の證券市場というものは、米の方の定期米から歴史的に出ておると思いますので、どうしても、この癖が治らぬのであります。アメリカ式の方法をここではくどくどしく申し上げませんが、これがはたして實際日本に適用されるかどうか。日本はこの證券市場に對する問題が獨特な發展形體を經ておりますので、この點は新しい證券取引所法をつくられる方々が智嚢を傾けられるでありましようが、どうか今までのような弊害をなくして、ただ單に形だけが會員組織だ、形だけがアメリカ式のものだということでなくて、實際にほんとうの意味の投資なら投資にもつて行く、拔け道のないように、また取引所の素質というものも、證券市場を認める限りは、新しい會員なら會員に對する資格も嚴重にする。そうして全員大衆に對して不利益或は損失を與えないような方法を、今度こそは完全にとつてもらいたいと思う。同時に、先ほど來申しましたように、こういう證券市場というものは、資本主義制度のある限りは自然の産物でありますので、われわれの立場から申しまするならば、ほんとうに有價證券の大衆化をはかるならば、今後におきまして從業員組合或はその他に對する、先ほど理財局長からもお話がありましたが、實際實行できる、勞働者が財閥なら財閥の持ち株を讓り受けてもやつて行く、そうして經營に參加できる。決して單なる勞資の協調という美名の下に、むしろ勞働者が株を買つたためにあとでこれを處分しなければならぬというような、ただ單に名目だけのものでなくて、實際やれるような方法でやつてもらいたいのであります。その希望を申し述べまして、私の質問はこれで打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=176
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177・稻田直道
○稻田委員長 これにてだいたい質疑の通告の方々の質問は終りましたが、本日はこの程度で終りたいと思うのでありまするが、本日の本會議におきまして、この委員會に併託されるらしいものが、三つか五つかあるらしいのでありまして、それを明日以後やるということになりますると今日中に上げてしまいたいと思つておりましたものが、とうていその順序に參りませんしいたしまするので、あとで理事諸君にお殘り願いまして、明日以後の審議の方法をきめていただきたいと思います本日はこの程度にいたしまして、次囘は明二十一日午前十時より開會いたしたいと思います。ではこれにて散會いたします。
午後四時十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112115X00219461220&spkNum=177
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