1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
内閣法案(政府提出)(第一號)
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昭和二十一年十二月十一日(水曜日)午前十時三十六分開議
出席委員
委員長 高橋泰雄君
理事 安部俊吾君 理事 三浦寅之助君
理事 大久保傳藏君 理事 淺沼稻次郎君
理事 竹山祐太郎君
飯國壯三郎君 花月純誠君
栗原大島太郎君 夏堀源三郎君
綿貫佐民君 五坪茂雄君
苫米地義三君 最上英子君
八木佐太治君 清澤俊英君
古川兼光君 井上徳命君
橋本二郎君 平川篤雄君
疋田敏男君
出席國務大臣
國務大臣 男爵 幣原喜重郎君
國務大臣 植原悦二郎君
出席政府委員
大藏事務官 野田卯一君
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本日の會議に付した議案
内閣法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=0
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001・高橋泰雄
○高橋委員長 これより會議を開きます、前囘に續いて質疑を續行いたします、安倍俊吾君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=1
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002・安部俊吾
○安部委員 私は植原國務大臣にお伺いするのでありまするが、本案の補助的機關のうちに、内閣官房及び法制局を置くといふのでありまして、内閣官房と法制局の二局に止まつておるようでありまするが、私はさらにそれに勞働局或は勞働廳というようなものを設置する必要がないかと考えておるのであります、勞働省の設置は、昨日もどなたかの質問がありましたが、まことに結構でありますが、現在におきまして勞働省という一省を設置することができないならば、せめて勞働廳なり勞働局の設置が必要と思うのであります、それはいかなる國家におきましても、戰後の經濟産業政策は、その組織と秩序の改革を伴わずして成立したことがないのでありまして、そこには必ず勞働運動の重大なる役割が認められるのであります、ましてや敗戰日本の經濟産業の復興再建は、單純に資本制の企業の生産囘復策だけでは、到底達し得られないのであります、またこの勞働運動の指導者たちにいたしましても、無用なゼネストに精力を費して、訓練のない大衆を誤まるようなことをやめて、正々堂々、企業家が利潤追求に餘念がない、或はまた單にサボタージュ的の傾向があるというような、資本家の企業の缺陷をついて、そうしてお互いに腹藏なくその意見を交換する必要があると思うのであります、そこで勞働廳というものは單に勞働者の勞働組合を指導するということに止まらずして、資本家の方の代表者も入れまして、そうしてきわめて忌むべきあの政治的ストライキというようなものに進む前において未然にそういうものを防ぐ方法があると思うのであります、たとえてみまするならば、日本におきまして大都會、大阪なり或は東京なりにおきましては、どうもこのファクトリー、たとえば工場でありまするが、そういう點におきましても、住宅區域においても、或は商店區域においても、何らの區別なくそこに建てられておるのでありますが、これは非常に衞生上忌むべきことであつて、アメリカの如きにおいては、Aクラスは住宅區域、Bクラスは商店區域、Cクラスはファクトリーいわゆる工場區域というように區別されておつて、Aクラスには住宅以外には工場を建てることはできない、Bクラスには商店以外にはファクトリー或は住宅を建てることはできないというように劃然と區別されておる、日本においてはそういう點がない、こういう點にいろいろ考慮を加えなければならぬと思うのであります、また工場にいたしましても、アメリカにおいては、工場法というものがきわめて完備しておりまして、空氣の流通に對しまして非常に注意を拂い、或はまた日光をとることにつきましても、政府の監督が嚴重である、そうして床などは毎日拭き掃除して清潔を保つている、便所にいたしましても男女の區別を明らかにしている、或は寄宿舍も完備している、日本の工場は單に資本家が利益を壟斷する、工場員はどうでもよいということでありまして、たまたま田舍の方から參りまして紡績工場の勞働者となつた者は、必す空氣の流通の惡い、日光の當らない、きわめて不衞生な工場に働く結果、肋膜或は肺病になつて、健康を害して田舍に歸るということを往々にして見受けるのでありますが、そういう點においても、政府で資本家或は企業者を十分監督する必要がないかと思うのであります、また日本においても生活安定の法案とか、いろいろな法案がありますが、しかしそれはアメリカなどに比較するとまだまだ微温的であります、アメリカにおいてはワーキングマン・コンペンセーション・ローというものがありまして、働く間において怪我したとか疾病にかかつたといふ場合には、一生或は治るまで、その保險會社が資本家或は勞働者がその賃金の幾分を割いて掛金した保險によつて保障される、そういうようなことも單に官憲にだけ委ねることをよして、民間の代表者がさらに進んで調査するといふようなことが必要でありますから、勞働廰には單に官僚のみならず、民間の代表者或は代議士を委員に選んで、これを臨時的なものでなく永久に内閣の一補助機關として設ける必要があると思うのであります、またそのほか統計局というものも必要だと思います、どうも日本のあらゆる、企業におきましても、あらゆる政策におきましても、統計を非常に無視する傾向があるんじやないかと思う、アメリカにおいては、統計は必ず的確なものを内閣において、そういうようなことに努力している、そうしてあらゆる政策が統計にその基調を置いて行われるから、的確にやれるというようなことがあるのであります、それからまたもう一つは内閣の中に豫算局というようなものを設置する必要があると私は思うのであります、日本におきまする税金というものはやむを得ないにしても、昔に海軍とか或は陸軍とかの軍備に追われまして、相當の高い税金を賦課せんければならぬような事情もありましたが、現在においては、軍備といふものは撤廢されたのでありますから、文化政策の方に豫算を十分に取つて使うというようなことになれば、道路の建設もできるのであります、今日失業者が氾濫しておる、それを救濟するには道路を建設するという方面、トランスポートというものは、非常に國家の經濟の發展上必要なものである、その道路というものは日本においては非常に貧弱であるから、そういうものを建設する方面において、失業者を救濟する方法もある、それからまた交通難です、たとえば、鐵道においては今非常に慘沮たる、實に世界のいずれかの國においても見ることのできないような、交通地獄の現象を呈しておりますが、しかも非常に交通の運賃が高い、これは交通に對して高い税金を課すると同樣でありまして、これは惡税であります、また日本におきましては、塩とか、或は煙草でも、專賣局があつて專賣をやつておりますが、生活に必要な塩というものが非常に高い、そうしてそれが專賣局の官製でありまするから、現在においては非常に行き渡らぬというようなことがあります、アメリカにおきましても、英國におきましても、鹽なんというものはふんだんに、豐富に配給され、自由販賣で買うことができるのでありますが、日本においては鹽が足りない、お百姓が澤山の野菜があつても、それを漬物にすることができないというような現状にありまして、きわめて政治の貧弱な時においては、そういうような生活に最も必要なものに税金を澤山かけるという傾向があります、煙草のごときもそうだ、煙草のごときも何故に官製にしておかなければならぬのであるかということを、私は了解に苦しむものであります、こういうものも民間の營業にいたしまして、そうしてそれが相當の利益があるならば、所得税でもつて十分に研究して賦課することができるのでありますから、官製をやつたと同樣に、政府で相當國庫の收入があるわけであります、そういうことで豫算局というものを設置いたしまして、十分に民間の經驗知識のある者がその委員となり、また衆議院議員或は參議院議員というようなものをその委員といたしまして、最も公平妥當な税制を確立するというようなことが必要じやないかと思うのであります、この點につきまして政府の御所見を伺いたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=2
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003・植原悦二郎
○植原國務大臣 安部君にお答えいたします、まず第一は、勞働省或は勞働廳というものの設置について、どう考えているかという御意見のようであります、戰爭の後は甚だしく道義が頽廢する、同時に産業組織、社會組織に大變革をもたらす、これは大戰爭のもたらす世界共通の結果であります、そこで産業の復興をはかるには、勞働と資本との協調がなければならない、勞働者を適當に導いて、それらの生活の向上發展をはかるとともに、能率の増進を期するようにする、他面において資本家をも正しく導いてただに私利を貪るのみでなくて、國家公共の福祉ということを考えるようにしなければいけないじやないか、またそういう建前からして都市の計畫についても、ABCというようなことに分つて、Aクラスは住宅、Bクラスは商業地、或はCクラスは工場地帶というように計畫を立てる必要があるのじやないか、この御意見はまことに御尤もだと思います、何れにいたしても、戰後の混亂の後から勞働者をして正しき思慮の下に、その生活の向上發展をはからしむるとともに、自己の立場を十分自覺して、ひとり勞働者のみが生産を増し得るものでない、國家の生産を増強するには、勞資協調いたさなければいけない、同時に資本家の方といたしましても、國家社會の福祉のことを反面に考えて、そうしてただ私利を貪るだけでなく、勞働者と資本家と協調して増産をはかるような組織にいたさなければいけない、また機械工業の發達をするのについては、都會の場合には住宅、商業地、工場地帶等のことを考えなければいけない、また勞働時間についても、勞働保險についても、十分にそういうことを考慮する上には、勞働廳や勞働局が必要ではなかろうか、まことに御趣意は御尤もであります、左樣なふうに考えまして勞働の問題を取扱つて行かなければならないのでありますが、目下の所、勞働廳をつくるか、勞働省をつくるかということは、政府としては研究中であります、また左樣な場合に、これを内閣の直轄下におくかといふことは、さらに考慮すべきものであると思つて、まだその點ははつきりとした意見を申し上げることはできないが、勞働問題、殊に勞資の問題については、相當に考慮する特別な一つの行政官廳、局というか省というか、廳というか、そういうものをつくることを考えなければならないのだということは、御説御尤もでありますが、それを内閣の官房、法制局と竝べてつくるということは、目下の所考えておりません、それから統計局については御説の通りであります、曰本ほど統計の不備な國はありません、なんとしてもこれからすべての問題は、ただに商工業だけの問題にあらず、一切の社會施設をいたすにいたしましても、徹底的な科學的な計畫と基礎によらなければならないのであります、左樣な立場から參りますれば、統計というものに非常な力を入れなければならないが、その統計といふものも、日本の過去のものはまことに不備なものであります、從つて統計の正しいものをつくるということについて、政府は昨今愼重に研究して、ぜひこの統計の立派なものをつくり上げたいという計畫を立てて進んでおります、この局をどうするか、或は内閣に所屬せしむるかということは、未だ決定いたしておりません、豫算の問題でありますが、これに對する御意見も一應御尤もだと思いまするが、この豫算編成の方法も、一體根本から立直しをいたさなければならないのではありますまいか、今までは大藏省という特別の官廳が豫算の編成をいたすことになつておりましたが、安部君御承知の通り、アメリカでは豫算を編成するのは衆議院であります、衆議院のアプロプリエーシヨン・コミティであります、日本も本當に議會中心の政治が行われるようになりましたならば、議會と内閣との間に豫算編成については、相當密接な關係をもつようにいたさなければならないのではありますまいか、只今のやうな全く官僚式の大藏省の一部で豫算を編成するというような建前では、議會中心政治、政黨が中心となつて政治をするのでありますから、政黨の主義政策を國策の上に現わすには、政黨の主義政策に則つた豫算の編成をいたさなければならない、左樣にいたす場合において、大藏省の一角において豫算を編成するというような建前が、はたして實行できるものであるかどうか、政黨と政府と豫算編成についても密接な關係をもたなければならない形になりますから、さういう場合に豫算編成の官廳をどうするかということは、これから議會中心の政治をやる議員方が篤と御研究になることではありますまいか、これを今まだどういうふうに進化するか、發展するかわからない途上において、内閣の官房、法制局と等しく内閣に豫算局を置いたがよろしいかどうかというようなことは、あらかじめ決定しない方がよかろうと思います、自然に議會中心、政黨中心の政治が行われるようになつて、その主義主張を國政の上に現わすにはどうして豫算を編成すればよろしいかという實際の問題に即して、左樣なことを定めるようになる方がほんとうのいい議會政治を實現する方法であろうと考へてをります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=3
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004・安部俊吾
○安部委員 只今の植原國務相の御答辯、まことに御尤もでありますが、この豫算の點に關しましても、それは無論豫算案というものを議會が提出することになりますれば、議會において議員が委員會のようなもので編成するということが合理的でありますけれども現在におきましては日本の豫算というものは、ほとんど大藏省の官吏がそれを檢討して、そうして豫算を編成して議會に提出するというようなわけでありますから、直ちにアメリカの如き最も政治的訓練の行渡つているような國のようにはでき難いと思うのであります、でありますから、その中間の方針といたしまして、たとえば法制局というものが、議會に提案する法制の原案を審議する所であるとするならば、内閣におきましても大藏省の官吏以外に、民間の財政に關して造詣の深い者、或はまた衆議院議員の中の最もそういうような豫算に關する知識の豐富な者を包容いたしまして、あらかじめその原案を練るということが、最も適當な方法ではないかと考えましたので、そういうような政府の所見を伺つたのでありますが、もし幸いにして議會中心の制度が行われることになりまして、そういうような必要がなければ、まことに結構なことと思うのであります
それから昨日三浦君より文官高等試驗と申しますか、判檢事になるにしても、或は高等官吏になるにしても、或は外交官になるにしても、日本には試驗制度というものがありまして、これが明治初年の時におきまして、藩閥政府というものがあつて、獵官運動がはげしく、長州の者であるとか、鹿兒島の人であるとかいう者が、先輩を辿つていろいろな官吏の地位を得たというやうなこともありましたし、また世界の事情に通じない者が官吏になつても、なかなか成績を擧げることができない、少くとも大學において外國の法
律であるとか、或は經濟であるとか、或はその他の法制に關する知識を研究して、その知識をもつている者でなければ、官吏としては不適當であるというようなことから、ああいうような制度が設けられたのでありましようが、今日においては、そういうような必要は絶對にないと思うのでありますなぜらば、民間における會社員にしても、或はまた實業家にいたしましても、相當の地位に立つ人は相當の經驗もありまするし、外交官としても相當の適任者があるはずである、また辯護士にしても、辯護士試驗というものはどこにもありますけれども、判檢事試驗というものは必要でないと思うのであります、辯護士の中の最も成績のよい者が、或は選擧の結果判事になる、或は檢事になる、そうしてその檢事がさらに檢事補というようなものを拔擢して、自分の職責を全うする上における補助機關とするということになりますれば、辯護士の優秀な者が判事になり、また檢事になることができるのであります、それからまた行政官にしてもそうであります、無論文官試驗といふものがありまして、非常に勉強はするが、一たびその文官試驗に及第すれば、あまり勉強しないということになれば、わずかに五箇年や四箇年の大學教育によつてその試驗を通過した者よりも、さらに實際においていろいろ經驗を得た者、或はしよつちゆう勉強しておつた者の方が、優秀な官吏になることができると思うのであります、現に縣廳などにおきましてもそうであります、特進級と申しまして、地方事務官になりましても、それはもうどの點まで行くかということがわかつておりまするから、自分が働いても下働きである、文官高等試驗に及第した人は、或は課長になり、或は部長になり、或は知事になり、或は局長になるという榮進の途が開かれているが、われわれは下積みであるというような關係で、あまり熱心にやらぬというような傾向もあるのでありまして、これが非常に弊害があるのであります、今日の統制におきましても、失敗したというのは、實際の經驗のない官吏がおもにそういう衝に當つておつたがために、うまく行かなかつたというようなことも言い得るのでありますから、將來は野に遺賢なしというような建前において、十分に適材を適所に活躍させるというやうなことから、文官高等試驗を撤廢する、そうして辯護士とか醫者ならば或る程度國家試驗が必要でありましようけれども、それ以外のものは、これを大幅に撤廢して、そうして人材をあらゆる方面から拔擢することができるというやうなことにしたならば、日本の行政、或は司法その他にしても、たいへん成績が擧るのじやないかと考えるものでありまするが、いかがなものでありませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=4
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005・植原悦二郎
○植原國務大臣 文官任用試驗制度を改革せよとか、國家試驗の制度を改めようということは、隨分多數の懸案であります、現行憲法の下においてすら、從來の文官任用試驗制度や國家試驗の制度は、非常に欠陷が多いものとして認められております、いわんや新しい憲法によつて國民の基本的權利を認められており、民主主義の撤底した所の制度を行うようになりますれば、從來のごとき文官任用試驗制度や國家試驗を根本的に改正いたさなければならないことは、申すまでもないことであります、それ故に只今行政調査部において官吏や公務員につきましての資格や、それ等の任用の方法を折角研究中であります、やはり官吏に對してはなんらかの試驗をするということは必要でありませうが、あらゆる方面において適所適材に人材を用いて行くということの途が開かれなければならないことは申すまでもなく、またそれは今ここで甚だしく議論をいたさなくても、議員の方々がこれから政治の中心になるのだから、議員の方々が考へて一番いいと思う制度が、結局採用されることではありますまいか、今までの考えと、その點においても皆樣方が根本的に考えを變えて、物の見方をお定めになることの方が、もつと私は必要だと思う、新憲法が實施されるようになりますれば、議員が中心であります、政黨が、官吏を任用するには自由任用が一番いいといふことになれば、そうきまらぬこともないのでありますから、そういうことは、これからは議員中心の議會においてきまる、と申しましても、古い形から新しい形に移り變りまするには何らかのはつきりとした途がなければならないと考えまして、政府では行政調査部をつくりまして、ここにおいて折角研究しております、多分安部君の仰しやるがごとき方向に展開して行くものではなからうかと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=5
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006・安部俊吾
○安部委員 私はほかにいろいろ承りたいことがありましたけれども、昨日同僚からいろいろ御質問がありまして、重複する點もありますから、私の質問はこれで終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=6
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007・高橋泰雄
○高橋委員長 五坪茂雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=7
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008・五坪茂雄
○五坪委員 内閣總理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督するということになつております、勿論そうでありますが、指揮監督ということだけでなしに、たとえば各省に關連するようなことの事務が、急速に處理できるような工合にお考えになつておるかどうかということです、これはいろいろな例がありますが、たとえば今起りつつある問題で申し述べてみますと、教員俸給の七月案であります、それが大藏省の方から豫算をとつてもう既に地方廳に行つておるということでありますが、今日まだ教員の手にその増俸額が渡つていないという縣が多數であるというようなことを聞いておるのであります、文部省の方で伺つてみると、内務省の方へも交渉したり、いろいろな方法をとつて、急速にそれが實施せられるように努力されているようでありますけれども、今申し上げますように、容易にそれが實施に至らない、こういうような點について、もつと急速に連繋をとつて遂行されるような工合にできぬものかどうか、これはまた肥料の増産問題などについてもあるのでありまして、たとへば、先般私ども肥料關係の議員が昭和電工の肥料工場を見に行つたのであります、實は農民が肥料さえ増配してくれるならば、必ず二割や三割の増産をするといつて力んでいる、しかるにその肥料の配給がきわめてわずかである、これはてつきり資本家や勞働者のサボタージュなんだらう、こういうふうに私どもも考えておつたのである、その當時農民もそう考えておつたのである、所が昭和電工の状況を見ますると、終戰後既に八月の十九日ごろからもう社員も勞働者も全員協力して復興に取り掛つておる、涙ぐましいまでの努力を拂つてようやく一部の復興をみて、もう既に十二月二十六日には製品を出しておるというような状態であつて、さらに私どもが見に行つた時には、全く今までわれわれの考えておつた豫想を裏切つて、なかなか眞劍な態度で働いて、肥料の増産に努力いたしておる、それで私はこういふ調子なら、全くこれは私どもの今までの考えが誤まつておつたのだ、誤解であつたのだと確信いたしたのであります、しかしながら、それでいて肥料の増産がはかばかしく行かぬのは、一體どこに原因があるのだと言つて、責任者に聽いてみますると、それは全く資材、資金その他食糧であるとか、いろいろな問題に關連して隘路があるのだ、たとへば、資材の問題について商工省の方へ行くと、これは農林省の協議を經なければならぬ、大藏省の協議を經なければならぬということになつて來るし、また大藏省の方へ行くと、いやそれは商工省だ、農林省だということになつたり、また資金の問題についても、大藏省に行くと商工省と協議をしなければならぬ關係があるとかいろいろ言われるし、また食糧の問題その他農林省にも關係するし、また厚生問題については厚生省に關係もあるといつたような關係で、しかもそれがなかなか敏速に行かぬので、一つのことをやろうとするとどうしても二月三月かかる、これが増産の阻まれる最も有力な原因であるということを私聽きまして、これはいかぬということを痛切に感じた、私は内閣の方でただ單に總理大臣が指揮監督するといつたような、消極的というと變でありますが、そういうことだけでなしに、もつと各省の連繋を敏速にとつて、國務の逐行を急速にやつて行くというようなことにならぬかどうか、たとへば、先に申し上げました例でありますが、今、教員は非常に困つておる、これはよくお聞きでありましようし、また内容も御存じでありましようが、それに對してまだ七月の増俸になつたのが手に渡つていない、實際俸給の低い諸君の身になつてごらんになればおわかりのことと思いますが、そういうようなことから昨日も議會で緊急質問があつたように、先生方の感情も非常に尖鋭化して行き、思想も惡くなつて行く、こういうわけなんですが、結局誰がそんなふうな氣特に先生をさせるのかと言うと、やはりこういう所に大きな原因がありはしませんか、私はそう思う、肥料の増産が阻まれるというのもそうなんですが、私はもつとそういうことを敏速に連繋をとつて急速にやつて行くという工合に行かなければならないと思うのでありますが、そういうような點について政府はお考えになつているかどうか承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=8
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009・植原悦二郎
○植原國務大臣 ここに提案したる内閣法は、申すまでもなく新憲法の下において組立てらるべきように規定いたしておるのであります、新憲法の下におきましては、申すまでもなく議會に多數を有する政黨が入つて内閣を組織することになります、從つて内閣の構成もおのずから違つて來はしないかと思います、そういうような建前で、内閣がほんとうにすべての新政策を一致したものに立てられて、それを内閣總理大臣が主宰する場合には、今御説のようないろいろな問題は大部分解決されると思います、ただ現在の問題に對して御諒解を願つておかなければならないことは、御説のようなこともいろいろな方面において澤山あると思います、それから役人の間にセクシヨナリズムがあつて、それがために事務の敏活を妨げていることもあります、實際今までの官廳の間において役人が勢力爭いをし、その縄張り爭いや勢力爭いなぞのために、事務の運行を妨げておるということも可なりあります、それらはたとえ現行の組織の下においても、できるだけ内閣とし、政府としては、そういうセクシヨナリズムを破つて、敏活にいたすようにしなければならないと思いますが、所によりましては、今述べられたやうにいろいろな方面に隘路があつて、なかなか敏活に行かない、現在の缺陷を御指摘なさることについて、或る點においては至極御尤もな所もあると思いますが、それはこういうことをまた一つ御諒解願つておかなければならぬと思います、戰爭のために日本の經濟組織は根本的に變えられました、ただ戰爭を遂行するというために、軍人と役人とがいろいろな統制をしたり、統制會社をつくつたり、統制の機構をつくりました、統制というものは、一つつくりますと、なかなかそれを解くのに容易でないと思います、或る品物のごときは一日も早く統制を解いた方がいいと思いますけれども、それを解くについては、やはり從來のごときそれを商賣する商賣人ができて來なければ——そういうものを全部戰爭中に潰してしまつたことはあなた方御承知の通りであります、それを潰して統制會社で配給も何もするというような時に、これを一時にぽつと統制をとりましたならば、品物はありましても、それを集荷したり、配給する機關が整つていないから、混亂を來すというようなこともあると思います、戰爭のために、從來可なり圓滑に行つておつた經濟産業の機構を全部改めて、そうして戰爭一本のために立て直されたそのものが、戰爭の濟んだ後に、依然として今日まで存在している、それを早く改めて經濟はできるだけ自由の經濟にする方が、活動が滑らかに行くのですけれども、まだ物資の不足とか、あらゆる方面でそういうことができないでおりますために、お説のごときいろいろな隘路があり、支障を來していることは遺憾千萬と思ひます、また役所の間にセクシヨナリズムがあつて、これが繩張爭いをして事務の運行を遲延せしめているといふ事實も認めます、これも殘念だと思つて、できるだけ政府としても改めたいと思います、また新しい憲法の下において、ほんとうに議會が中心となつてその議會の勢力を基礎として内閣ができまする時には、皆樣多年口にした官僚政治の基礎も、根本的に破られると思います、或る意味から言うと、軍閥はことごとく破れました、しかし多年の間にわたるところの官僚の一部の政治が殘存していることは認めなければなりませぬ、これはほんとうに政黨政治ができました場合には、おのずから影を潛めるようになることと私は考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=9
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010・五坪茂雄
○五坪委員 今後は國會で決めた内閣であるから、その總理大臣及び各省大臣は、從來のようなことはないというふうな意味のお答えであります、それはそうでありましようけれども、現在においても、やはり議會に席を有している大臣もおられるのであるし、政務官などが各政黨から出ております、しかしながらそれでもまだ今申し上げたような状態であります、今後決してないとは言えぬと思うのでありますが、そういう場合に、一體誰がそれを見て調整をとつて行くかと言へば、總理大臣はなかなかそういうことまでやつて行かれない、そうすると自然に今申し上げたようなことがあつても、容易にそれが是正されないことにもなる、一體誰がそういうようなことを推進して行くかということです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=10
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011・植原悦二郎
○植原國務大臣 全部の統一は總理大臣がして行きたいと思います、そうしてほんとうに政黨内閣である時には、やることが、主義主張が常からきまつております、それだから必ず各省の大臣の間も同じ方向に向つて進んで行きますから、そういうセクシヨナリズムというようなものは自然になくなると思います、現在においてもそれをなくさなければならないじやないかという御説も御尤もであります、さよういたしたいと思つておりますけれども、なかなか戰爭中につくりましたあらゆる機構をにわかに改めるわけに行かない事情にあることは、經濟機構についてもよくお分りのことと思います、一時に改めたくもできない、そのためにいろいろの隘路がある、それでも今肥料の點についてお話があつたが、資材やいろいろの點についてできるだけのことはします、内閣とし、政府として統制をとつて、迅速に進行するように進めて行きたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=11
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012・五坪茂雄
○五坪委員 政黨政治であるからそういうことはないと仰しやる、私もそれがないことを信ずるし、またそうでなければならぬと思うけれども、考えようによつては、それだから一層安住というか、そういつたことにならぬとも限らぬ恐れはありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=12
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013・植原悦二郎
○植原國務大臣 そのお答えは議員たる皆樣方御自分でなさるべきだと思います、私はさようなことが、ほんとうに國民を代表する政黨、主義政策を國民に公約して國家の政治を扱う内閣においては——人間のすることでありますから多少の間違いや缺點や、やり損いはありましようが、全體において官僚政治よりはよくなる、こう判斷することの方がよろしからうと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=13
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014・五坪茂雄
○五坪委員 私はこれで濟みました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=14
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015・高橋泰雄
○高橋委員長 竹山祐太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=15
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016・竹山祐太郎
○竹山委員 私は大藏大臣に對しても第二條の行政權行使に關聯をするというか、その元になる官吏制度の根本的改革を必要とするのではないかということを質問したいのであります、これについて政府は行政調査部で研究しておられるということも承知しておりますが、官吏服務紀律を振りかざすことは、今日時代後れであるし、今植原國務大臣が、新しい内閣の下において官吏制度が當然變るのだという御意見をお述べになつておる、私も當然さうだと思います。そこで一體行政調査部が今官吏制度の根本的改革を研究しておられるというけれども、憲法はすぐ施行になる、もしこの憲法の下において改めなければならぬ官吏制度を、何年ものんきに研究しておるということは許されないと思う、從つて現在の内閣が、完全なことは要求できますまいが、考えている官吏制度の改正の輪廓なり重點なり、どこに御考えを持つておられるか、殊にこれらについては、一體行政調査部は誰にやらしておるのか、恐らくこれは官吏であると思う、官吏に官吏制度の根本的改革を研究さしておつても、植原さんの仰しやるようにうまく行くかどうか、それについては少くとも政黨出身の閣僚である植原さんなどの考えておられる、現内閣の主として政黨出身閣僚の考えておられる官吏制度の根本的改革の方向、線はどこにおいておられるか、これを伺いたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=16
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017・植原悦二郎
○植原國務大臣 官吏制度の改革の問題でありますが、大變今の内閣のやつておることに御懸念があつたり、或は迅速にやる必要があるではないかといふような御説でありましたが、憲法は明年の五月三日に効力を發生するようになりますが、それだからといつて、直ちに新憲法の全部のことが行われるようにはなりません、御承知のごとく、まだ新憲法に則り、次ぎの通常議會に大部分出ましようが商法も、刑法も、民法も、根本的に改正しなければならないと思います、さういふことをも皆睨み合わせて、官吏制度の改革もいたさなければならないのではないか、今までの役人がやつたり、今までの人がやつたでは、新憲法に則るような官吏制度はできないではないかという御懸念も無理からぬことでありますけれども、新しい憲法も皆さような人の下にできたことを考へますならば、さう御心配なくも、新しい憲法に則る官吏制度も、今の行政調査部で研究しておることを基礎として、相當なものができるではないか、そればかりではない、行政官廳法も作らなければならぬ、行政組織の根本も、官吏制度ばかりではありません、内閣の全體の組織についても、かように内閣制度をきめて一應出立いたしますけれども、なおさらに民主主義の憲法が實際に即して行われるようになつたらば、それに適應するように順次また改正もされるものだと思わなければならないではありますまいか、そういふ意味から言ひまして、行政調査部で研究していることが、あながち現在の官僚制度の下でできた官吏制度を維持する趣意において研究されているものであると御斷定なさらぬでもよからうではないかと思います、のみならず、只今官吏服務紀律の問題をお話になりましたが、官吏服務紀律というものがあつたがいいか、無いがいいかということは、可なり意見が分れると思います、民主主義に徹底して各人がいつも自分の權利を尊重するがごとく人の權利を尊重し、自己の自由を尊重するがごとく人の自由を尊重するように、十分自制し反省して、もちつもたれつ各人が自己の立場を考えないような時代になりましたならば別として、とにもかくにも法治國で法律が必要であるとするならば、官吏に對して服務紀律と申しますか、官吏として特殊な存在があるならば、また公務を公僕として扱わなければならない人があるならば、それを律する一つの何らかのさようなものの必要があるということを認めてかからなければならないと私は思います、その點はどういう形になりますか、官吏服務紀律はいかぬじやないかというような考え方は、どうも私は贊意を表することはできません発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=17
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018・竹山祐太郎
○竹山委員 私の質問に對する答辯にはなつていないと思うのであります、官吏服務紀律の不必要を申したのではないので、天皇の官吏であつた官吏が、内閣の下で國會に對して責任を負う、根本的な考え方を變えなければならないのでありますから、變るのは當然だと私は思つて、どう變えるのか、またどういうふうに考えておられるのかということを伺つたのでありますが、一向根本の考え方については伺えない、おわかりにならなければやむを得ませんが、一體今後行政官廰法などを考えるについて、戰爭の最中に非常に膨脹をした行政を、小さな日本になつてからも依然として續けて行つておる、むしろますます膨脹をして行くような傾向になつておる、治めなければならぬ國は甚だ小さくなつた、これを最近の傾向から言えば、自由黨は自由主義を唱えておりながら、統制はますます強くなつて行く傾向になつておる、從つて行政機構はますます殖えて行く傾向に、國民の眼から見れば見えるのでありますが、この點についてはむしろ中央集權的になり過ぎたが故に日本がかような間違つた状態になつたのであります、民主政治の上においては、當然もつと地方に徹底的に分權をして、中央の行政機構のごときは、できるだけ簡素化することが必要ではないかと思うのでありますが、この點についてはどうお考えになつておられますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=18
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019・植原悦二郎
○植原國務大臣 お答えいたします、その前にお尋ねになつた質問に對して、的はずれだと仰しやいましたが、竹山さんの御質問は、私が安部君の質問にその問題について答え、五坪さんの御質問に對してお答えしたことにほぼ重複するのであります、あなたは御出席にならなかつたから御存じないでありませうが、あなたの御質問に對して、少しの的はずれもいたしておりません、繰返して申します、安部さんは文官任用令や國家試驗のことについてお尋ねでありました、私は今までは官吏の文官任用試驗も可なり窮屈なものだつたが、そういうものが全部なくなるとは申さないが、國家試驗の範圍においても、文官任用試驗の範圍においても、きわめて幅が小さくなつて、自由の任用の範圍が多くなるだろうとお答えいたしました、それは今までの官僚組織、官吏組織の根本に觸れる問題であります。あなたの第一の御質問に對してそれははつきりしたお答えになることだと思います、また五坪さんの御質問に對しては、私はこれから政黨が中心になつて政治をやるのだ、政黨が中心になつて内閣を作るのだ、それ故に今までの官僚政治の弊害も、必ず政黨をつくる議員の意思によつて根本的に變えられるだらう、さようなことは、政府というよりは、むしろあなた方が御自分で議會を尊重し、その主張を尊んでお變えになるようになればよろしいことではないか、さようにまでお答えしたのであります、その意味において、あなたの第一の御質問に對しては、全部私は透き通る答えをいたしたと思つております
第二のお答えでありますが、なるほど今日戰爭當時よりは統制の状態も行政の組織も、できるだけ簡素化されてそうしてはずれる統制ははずし、役所はなるたけ今までの戰爭中の大きな機構をはずして小さくして行けばよろしいではないか、その説はまことに御尤もだと思いまするけれども、それについて御諒解を願わなければならないことは、日本はまだ獨立國ではありません、戰爭の時には日本が一本で行政事務をすることができましたけれども、今日は日本國内の行政を扱うにいたしても、あらゆる關係方面と折衝いたさなければならないので、戰爭中とは違つた一つの機關も必要になつて、中央から各所に存在しておることも御諒解下さることと思います、また五坪さんの御質問にお答えしたのでありますが、戰爭中につくりました經濟機構、それがためにいろいろの統制の弊害や隘路ができて困りますけれども、それを取りはずすには取りはずすだけの準備がなければ、一途にそれが惡いからといつてそれを取りはずしたならば、さらに混亂を來すのが經濟上、社會上の組織の常態であることを御諒解下さつたならば、現在のやむを得ない實情もおわかりにならうと思います、政府といたしてはお説のごとく統制をできるだけ早くはずしてよろしいものは、はずして行きたいし、さうしてなるたけ行政組織も簡素化して行けるだけのことをしたいと思つて努力しておりますけれども、現在の日本の國情はそう簡單に物の進行ができないことを御諒解下さつたら、今の實情はよくおわかり下さることと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=19
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020・高橋泰雄
○高橋委員長 この際竹山君におはかりいたします、御發言中ですが、只今幣原國務大臣が御出席になつております、ここで吉川君の質疑を許すことにいたしたいと思ひますがいかがですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=20
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021・竹山祐太郎
○竹山委員 よろしゆうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=21
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022・高橋泰雄
○高橋委員長 それでは吉川兼光君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=22
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023・吉川兼光
○吉川委員 それでは幣原國務大臣に對する御質疑を申し上げまして、後ほど時間がありますれば、また植原國務大臣に御質問申し上げたいと思ひます、私が幣原さんに特にお伺ひ申し上げたいことは、内閣法上程の本會議でも、最後にちよつと觸れておいたのでございまするが、終戰連絡中央事務局を、どうして外務省の一局に置いておるかということについてであります、私の見解をもつてしますれば、またたまたま只今植原國務大臣の御答辯を拝聽いたしておりましても、そのお言葉の中に、日本は獨立國でないなどというお言葉がございましたが、その御答辯が示すように、終戰連絡事務局というものの重要性は、或る意味におきましては内閣よりも、もつと重大な、政府以外の政府と言つてもいいくらいな、重要性をもつものではないかと考えるのであります、これを單なる一事務官に任せきつておりまするがために、いわゆる國際關係におきましていろいろ私どもといたしましては、どう言いますか、遺憾に堪えない點があるわけであります、最近の追加豫算等に現われる面を見ましても、その感を同じくしていただくのではないかと思いまするが、ああいうふうな豫算によりまして、終戰連絡中央事務局の關係いたしまする国際關係の仕事をやるということになりますれば、日本の今後の國民經濟の立て方というものは、ほとんど不可能ではないかというくらいに、私どもは心配しておるのでございます、しかるに本會議における幣原國務大臣の御答辯を伺いますると、總裁は外務大臣が兼務しておる方が、便利だから、兼務させておるのだというふうな御答辯であつたように拜承いたしますが、そういうふうに終戰連絡中央事務局を、ただ單に便利の如何によつてお扱いになるようなお考えが、はたして今日の國際情勢に處する政府のお考えとして、妥當なお考えであろうかということを、私どもは疑わざるを得ないわけであります、しかもこの終戰連絡中央事務局は、幣原内閣の時代におつくりになつたのではないかと思いまするが、その時には非常にこれを重要視なさつた跡が歴然と殘つております、その一つは、すなわち中央事務局の總裁を專任として、しかもこれは官僚でなく、民間の中から人材を簡拔して總裁にお用いになつたように、記憶いたしておりまするが、幣原内閣の末期でありましたか、吉田内閣になつてからでありましたか、はつきりわかりませんが、その後急に國會にはかるでもなく、輿論に聽くでもなく、きわめて獨善的な獨斷をもつて、終戰連絡中央事務局總裁を外務大臣が兼務しております、私をもつて言はしむれば、今日の日本には外交というものは存在せず、外務省というものがあることすら、多大の疑惑をわれわれ抱いているのでございますが、その對象のない、ほとんど所管事務のない外務省には大臣を殘し、しかして最も日本の復興の岐路であります所の國際關係を擔う所の終戰連絡中央事務局というものは、そのほとんど仕事のない、いわゆる前の内閣官制の殘滓に過ぎないようにしか思えない所の、空位を擁している外務大臣が必ずこれを兼任するのだというのは、不直面目な間違つたお考であると言わざるを得ないのであります、むしろ私は終戰連絡事務局の總裁が、日本のこの外交杜絶中の外交に關するお仕事を兼ねるというのであれば、これは理窟としてはなり立つ、また實際としても容認することができるように考えられますけれども、この點につきまして私は前議會におきまして、豫算委員會の分科會の席上におきまして、重要な問題として相當突込んだ質問をしたのでありますけれども、たまたま總理大臣も幣原國務大臣もお差支えで御出席がなく、一政府委員が、いずれそれは總理大臣に取り次ぎましてからお答えしますというような、答辯にあらざる答辯をもつて終つているようなわけであります、この機會におきまして私は、幣原國務大臣は終戰連絡中央事務局のもちます所の、今の日本再建に對する重要な事務を、どういうふうにお考えになるかといふことをまづお伺ひ申し上げたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=23
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024・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 お答え申し上げます、今のお話のごとく、終戰連絡事務局の事務というものの、きわめて重大であるといふことは、その通りであります、御承知のごとく、また只今のお話にもありましたごとく、日本は今日まだ外國との外交關係は囘復されていないのでありますから、外務省固有の事務よりは、實はこの連絡事務の方がおもなる仕事になつているのであります、さうなりますと、事實外務大臣と連絡事務とを兼ねているというのは、非常に自然の話だと思います、いわんや今日總理大臣が外務大臣を兼ねて、さうして終戰連絡事務局を總裁しておられるのでありますから、大きな問題は必ず閣議で論議せられる、こういうことになりますから、便宜上から言いますと今の方が一番事務が圓滑に行えるだらうと思います、何も事務局の總裁がすべて獨斷でやつているというわけではありません、總理大臣及び外務大臣が内閣に列しておられるのでありますから、この方の途を經て、その何をしておられるかという連絡事務の方の實際のことも、わかつて來るのであります、たとえば、賠償事務などということも、きわめて重大なことであります、これは今日恐らくは日本の外交というか、外國に關係した事務の中の最もおもなる事務だと思いますが、それにはちようど連絡事務局の總裁が外務大臣であり、また總理大臣であるというのは、これが一番適當なことじやないかと思います、これが永久の制度だということを私は申し上げるのではありません、いずれにいたしましても、この連絡事務局などというものは、一時的の制度であります、一時的の制度である以上は、現状が一番都合がいいじやないか、また一番事務が圓滑に行えるじやないかと私は見ております、これは私は實際の事實について申上げたのでありますが、理論としてはいろいろ今お話のようなお考えも浮んで來ると私は思います、決して御無理とは私は申しませんけれども、實際の状況を見ております私らの立場から見れば、今の組織が一番事務を圓滑に處理して行く上において便利ではないかと思つております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=24
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025・吉川兼光
○吉川委員 只今の幣原さんの御答辯は一應御尤もといたしまして了承申上げます、ただそれはあくまで吉田内閣を中心に考えた場合でありまして、吉田内閣の總理大臣がたまたま外務大臣を兼務し、また外務省御出身であらせられますから、御便宜かも知れませんが、本日の論議は、いわゆる新憲法實施後における内閣法を對象といたしましての、この委員會における論議でございます、要するに私の申し上げまするのは、勿論終戰連絡中央事務局はそう長く日本において必要とは考えませんけれども、少くとも新憲法實施後暫くは、やはり終戰連絡中央事務局の御用は、相當重要性をもつのではないかと思うわけであります、ここで私のお尋ね申し上げたいことは、わざわざ官制を變えられたといふことの意味がよくわからない、しかしながら既に終戰連絡中央事務局の官制も近くいわゆる中央行政官廳法をつくることによりまして廢止されまするから、そこで新たに中央行政官廳法の中に、どういふふうに終戰連絡中央事務局を規定しようとするのであるかを伺いたいのでありまするが、それよりももつと根本的には、この内閣法の中に内閣直屬の有力なる機關として明記されたらどうか、内閣官房であるとか、法制局であるとかいうような極く事務的なものも書いてありまするが、それ以上に内閣の行政的なお仕事の最も重要な面を占める所のこの終戰連絡中央事務局を内閣法の制定に當りまして、わざわざつくらないというならば別でありまするが、ここで新たにつくろうとする時に當りまして、どうしてそれを内閣法の中に取り入れられないかということをお尋ね申し上げたいのであります、ちよつとその點を伺います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=25
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026・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 つまり終戰連絡事務局はこれは一時的の事務でありまして、内閣法に書き入れるような永久的の組織ではございません、つまり日本がまだ外國の占領下にあつて、總司令部側と絶えず連絡を取らなければならぬという、今日の特別な必要に基づいてありますので、司令部というものがいつまで存續するか、それはわれわれ今ここで豫見することはできませんけれども、今日におきましては、外務省におきましては外國に關する實況を調査するというのが、おもなる事務になつております、外國と直接に交渉できませんけれども、いろいろな道を經て調査をいたしております、外國の事情を調査して知つているものが、終戰連絡中央事務局と別にまた分れてしまつているといふことになりますと、いろいろな差支えが起つて來るだらうと思います、こういつたような點を考へてみますと、外務大臣が連絡事務の方を兼ねてやるということは、これはきわめて普通のことではないかと私は思つております、いづれにいたしましても、連絡事務の方は永久の制度ではありませんから、内閣法の中には何も書かなかつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=26
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027・吉川兼光
○吉川委員 國務大臣の御答辯は一應御尤もと思いまするが、しからば重ねてこういふふうなことをお尋ね申し上げてみたいと思います、それは今ほとんど外交事務というものがありませんといふことは大臣もお認めの通りであります、ただやがて平和會議も開かれまして、その曉にはまた國交が開かれるわけでありますから、その用意として外交官なり、その他外交に關する御調査のために、今の外務省に殘つておりまするような程度の事務が殘る必要があらうということは、私どもも想像できますが、そうでありまするならば、この内閣法を制定するに當りまして、一應外務省を廢止されて、そうして外務省を内閣の中に入れまして、これを外務局でも外交局でもよろしいのですが、その中に終戰連絡事務も一しよに含んだものを、この際おつくりになつて、實際形のない外務省を置く必要はないように思います、これは或は内閣法の中にはつきり私は規定してもらいたいと思いまするけれども、規定ができないまでも、一つ内閣の考慮の中にそういうものを入れまして、そうして外務省を一省としてその外務大臣が終戰連絡中央事務局總裁を兼ねているというような、さういふ變態な形を改められて、調整される御意思はないかということを、ちよつとお伺いしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=27
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028・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 只今外務省を廢止するといふことになると、どういふことになりましようか、もし講和會議なんというような問題が起りますると、どうしても外務大臣というものがいなくちやならぬ、その時にまた國會にこの問題をもち出して、まず外務大臣を設けるという方から考えてもらはなくちやならぬというようなことでは、間に合わぬと思います、外務大臣が一國に存在しているということは、これは當然のことであります、或る見方からいえば、ちやうど仰しやつたように、獨立國でないという見方もありましようが、また獨立國であるという見方もありましよう、獨立國ということの定義次第でありましようけれども、ともかく一國をなしている以上は、その國に外務大臣があるということは、當然のことだらうと思います、これを廢するということは、これは必ずいろいろな不便が起つて來て間に合わない機宜に適しないというような場合が生じて來るだろうと思いますから、これを今廢止するというような考えは、私は今もつておりません発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=28
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029・吉川兼光
○吉川委員 他の委員の御質問に御迷惑を及ぼしてはいけませんから、これを最後に打切ります、外務大臣がいなければ外交ができないというふうな考え方は私には受け取れないのであります、私は今もそのことを申し上げたつもりでありまするが、今の外務省に存置しておりまする所の事務は、そのまま内閣に移して存置してよくはないか、要するに内閣が次ぎの講和會議に備えるために、外交が開けた場合の準備に萬遺漏なきを期するということは、私どももその必要を痛感しているのでありまするが、實際用事のない所に外務大臣が空位を擁し、しかもそれが空位を擁しているだけならばよろしうございますが、一番大事な終戰連絡中央事務局の總裁を兼ねているということに、私は今日の政治上における物足りなさといいますか、それを感ぜさるを得ないのであります、しかもその對象は最も重要な國際關係の仕事をやる所でありまするが故に、それはなおさらそのやうに考えているのでございます、この點はどこまで議論をいたしましても、少し私の考えと政府の考えが違うようでありまするから、これ以上の追及は避けます、ただこの機會に一つ幣原さんに伺つてみたいと思いますることは、私どもが田舍を廻りますると、よくこういう話を聞くのであります、それは日本はいわゆる「日本」などという言葉を使つて、日出ずる國なんという、まるで聖徳太子時代の名前を依然として稱して、非常に獨善的な考え方が國名から生れて來るということに氣がつかず、ただ民主主義、民主主義といつているが、はたして民主主義が徹底するか、この機會に、むしろ「日本」という言葉の現われる前の、たとえば瑞穗であるとか、或は敷島であるとか、そういうふうに名前を變えることによつて、いわゆる獨善的な日本人の考え方を改めてはどうかというふうな——これは小學校の先生などで、そういうふうなことを言つておる者がありましたから、私はいづれこれは政府に取り次ぐという約束をいたしました關係上、この機會に一つ國名を變えるような御意思はないかということをお伺いいたしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=29
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030・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 私には到底此處で答えられない問題であります、國號を變更するなどということは由々しい問題であります、どうかそういうふうな問題については、私を餘り追及して下さらないようにお願いを申し上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=30
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031・吉川兼光
○吉川委員 それでは幣原さんに對する質問は、先ほど來質問中の竹山君が終りましてから、またお許しを願いたいと思います、幣原さんどうも御苦勞さんでした発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=31
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032・高橋泰雄
○高橋委員長 この際暫時休憩いたします、午後一時三十分會議を開きます
午前十一時五十八分休憩
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午後一時四十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=32
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033・高橋泰雄
○高橋委員長 休憩前に引續き會議を開きます、竹山祐太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=33
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034・竹山祐太郎
○竹山委員 植原國務大臣の御答辯は、よくわかるのでありますが、もう一囘重ねて伺いたいのは、お話の點は了解をいたしますが、今後の官吏制度なり行政機構なりを改めるのは、國會が積極的にやるべきであるというお考え、まことに贊成でありますが、今の所正直に申して、議會がみずからさようなことの準備をいたす機構もまだできておらぬように思う、ただあるものはといえば、内閣の調査部がその問題をやつている、これでもつて十分期待をしたらいいじやないかとおつしやるのでありますが、十分な期待を私としてはもち得ない、大臣はそれで安心しておれとおつしやるが、國會みずからが積極的にやるについては、われわれのような一年生と違つて、大臣は大先輩であります、國會が行政機構、官吏制度全體の制度を根本的に改めて行くということについて、今のような單なる一部局をもつてやつておつて、十分とお考えになるかどうか、議會そのものも、一體どうこれについて積極的にやつて行くべきものであるか、與黨たる大政黨の各位はこれについて、また大臣としても、どういう御用意をお考えになつておられるかということが、私の大臣に對する所見を伺いたい根本であつたわけであります、同時に内容として調査部が今やつております目標は、何と何を一體今やつておられるか、行政機構の問題なり、或は官吏制度の問題なりと抽象的に言いますが、まず差當り何と何を目標に今やつておられるのかということを伺いたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=34
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035・植原悦二郎
○植原國務大臣 内閣が中心となつて主たる行政機構の改革について再檢討を必要とするというので、内閣の下で國務大臣が中心になつて、行政機構の組織のことを調査研究する手配をしております、それから行政調査部の方で下部の組織のことや、その機構運用等のことについて研究いたしておりますが、なおそれに伴うて必ずや文官任用令の現在の問題を改めることも、當然起つて來る問題だと思います、國家試驗の問題も改めなければならないと思いますが、一切の行政機構の大きな改革から、下部組織にいたるまでの、愼重なる調査研究をいたしておるのであります、竹山君の御心配になるような點は、多分除かれると思います、竹山君の根本のお考えは、今までの官僚組織が民主主義の制度に改まるように、官吏制度を根本的に改革しなければならないじやないかと、総括的にそういう御趣意のものと解釋してよかろうと思います、その御意思であるならば、さような方針に向つて今調査研究いたしておるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=35
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036・竹山祐太郎
○竹山委員 一應その問題は大臣を信頼して、一つ速かにおやりを願いたい
それから第二の問題として私が本會議の際にも質問をいたした問題で、現在の各省行政各部の運營について、各種の委員會が設けられておる、中には全部衆議院議員をもつて構成をされておるような委員會がこのごろ殖えつつある、これは國會が最高の責任をもつておる以上は、當然考えられる行き方でもあると思うのでありますが、ただこのことは、問題は運用なりの點に幾多の問題が起つて來ようと思う、一體各種の委員會の委員に選ばれた衆議院議員というものは、誰に向つてその責任を負つておられるか、政黨の代表者として出ておるのか、或は衆議院全體を代表して出ておられるのかというようなことについて、議會においては出ていない政黨もあり、また各派交渉會できめて選ばれたとも考えられない、衆議院の事務局は何等これにタッチしていないというようなことでありまして、政府が政務官などを通じて政黨に連絡をとつて選ばれると想像されますが、そういう選び方でもつて、一體どこに對して責任を負つておるか、これは政治的に見れば、國民は衆議院の全體がその責任を受けておるようにもとつておると思うのであります、これは官僚の立場から見れば、まことに都合のいい制度であります、議會の質問もそれで一應封じられますし、國民に對しても衆議院が參加をして決定をしたということであつて、甚だ都合のいい制度でありますが、これがもつと今後擴がつて行くならば根本的に考えなければならぬ。所が私はその質問をいたした時には、國會法にもその問題のことが取り上げられておらない、それならば内閣法で考うべき問題かどうかということの意味で、質問をしたのであります、金森さんの答辯はまことにどつちにも都合のいいような答辯をしておられるが、私はむしろこれは議會としても考えなければならぬ問題だという意味で伺つたのであります所がまだ決定をしたのかどうか存じませんが、図會法の改正の中に、今後政府の委員には衆議院議員を入れないということを入れて行こうというような修正案が出ておるように新聞で拜見をしたのであります、又全く入れないということがそれでいいのかどうか、イギリスとアメリカとはやり方が違うようでありますが、一體日本としては全く入れないのがいいのか、或はさらに入れて行くのもどうかと思うのであります、この點は國會法だけで簡單にきめてしまうだけの問題ではない、行政運營の見地から内閣が國會に對して責任を負うということを、最も能率的に運營をして行くという上においては、限られたる國會で論議をするということだけでは十分でない、從つてその間において責任の所在が明確であるならば、國會と内閣とがよく連繋を取り得る組織をもつて、行政の完全なる運營をして行くということが、當然あつていいと思うのであります、この問題は從つて國會法でも論議されると考えておつた所が、あまりにもはつきりとそういう修正案の發表を見ましたので、はたしてそれで内閣法の運用、今後の行政の運用に當つて萬全を期し得るのか、その點を内閣としての御所見なり、また政黨大臣としての兩方の立場から、最もよく御承知の植原國務大臣の御見解を伺いたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=36
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037・植原悦二郎
○植原國務大臣 竹山君に御答えいたします、現在政府のいろいろな部局において、いろいろの委員があります、その問題を考えるにつきましては、まず第一に、現在の制度は現行憲法において行われている制度である、殊に現在の内閣の立場は、新しい憲法を實施する半面の任務をもつておるとともに、この過渡期を處置して行くという任務もある、いわゆる過渡期のものとも考えられる、從つて現在できております委員は、現行憲法の下で、現在の内閣が運用しておる委員であります、そういふ委員におきまして、御説のごとく或るものには貴衆兩院の議員があり、或るものにはない或るものには貴衆兩院の議員の政黨を代表しておると思われるものがあり、或るものには貴衆兩院を代表しておるものがあるようにも思われるものがある、そうしてその責任の所在も明らかならざるような點もある、こういうような御意向のように承ります、御説の通りでありまして、委員會の職權やその性格や運行において、やはりいろいろあります、從つてその委員の中には、たとえ議員が出ておりましても、議員という立場で出ておらない委員會もあると思います、その特別な審議を求める所の委員のことについて、特別な知識をもつておる、經驗をもつておる、そういう人の知識經驗をその委員會に利用するために、委員になつていただいておる方があると思います、そういう委員は當然貴衆兩院議員のうちでありましても、或る場合においては議員たるがためでなくて、その人の特殊な知識、經驗、或は學識のためであると思われる方もあると思います、そういう方は當然議員に對して責任をもつべきものでもない、また或る委員は、なるべく衆議院なら衆議院の全般の意向を參考として聽取したり、その意見をその委員會の場面に反映せしめたいために或る場合においては各派の數によつて、或は按分的にその數を代表するような組立ての下に出ておる委員もあろうかと思います、實際今後の委員について考えなければわかりませんが、そういう場合において、各黨の黨員の數を代表的に按分して出ていただいておるというような委員會もあろうと思います、そういうのは、その責任はと言えば責任は多く自分が出身しておる所の黨にもつべきものではなかろうかと思います、衆議院全體を代表しておるというような委員もあるかも知れませんし、ないかも知れませんが、その具體的のものでなければわかりませんが、或はその場合には當然貴衆兩院を代表しての責任を有すべきものだと思います、けれども、只今の場合においては、とにかく現行憲法の下で、戰後の非常なる日本を處置しなければならないので、いろいろな種類の委員ができておりまして、今の御説のような、一體この委員はどこに責任をもつのか、どうするのかというような御疑念も起ろうと思いますが、だいたい今申すような或る議員が出ておりますのは衆議院というものを代表するような意味において委員に出ていただくこともありましよう、また或る時には黨派を代表して出ていただいておる時もありましよう、またそうでなくて、その方の特別の知識經驗學識をその委員會に反映せしめ、利用したいためにお願いしておるような場合もあろうと思います、さようなことでありますから、現在の委員の立て方が、新しい憲法によりまして、内閣法の下においてさような形が現われるということは、御想像なさらぬでいいのではないかと思います、全く違つた形になつて、議會の多數の意見、すなはち國民の意思と思うて、それを政治に現わすことが新しい内閣の行き途でありますから、今のように多數のいろいろな委員をつくる必要はなかろう、もしそういう必要があるならば、この内閣とか、その内閣とかいうものでなくて、國家の重要なことを特に調査研究するためにつくられるような委員ができはせぬかと思います、英國でしばしば非常に大きな問題の起りまする時には、ロイヤル・コムミッションというようなものをつくります、そういうものには、その時の政府に關係のある——たとえて言うならば、英國の選擧法は小選擧區で多年やつて來ておるが、そこら中大選擧區比例代表というような意見もあるから、世界中の大選擧區、比例代表の實地調査、學理的の研究をしてみようという時には、そういう道の堪能の人、經驗のある人を選ぶ、また中選擧區はどうだとかいうような場合には、そういう中選擧區の各國の方面に向つて研究調査するような人を選ぶというので、その委員は一内閣に限らず、或は三年五年かかつても、その報告をすればいいというような建前で委員をつくる、民主主義の政治が行われ、政黨の力が議會の中心となる場合においては、そういうような委員もできましようけれども、現在の政府の下に行われておる、この過渡期に行政上の、或は調査上の便宜のために供するというような委員は、どうも必要がなくなりはせぬかというように考えることが、正しい考え方ではありますまいか、また國會の委員のことのお話がありましたけれども、國會の方でやる委員と政府の委員とは、全く關係のないものだと思います、國會も今までは御承知の通り五つか六つの常任委員と、その他議案に應じて特別の委員ができるようでしたが、今度の國會法は議員の提出で、今御檢討中で、やがて提出されると思いますが、その國會法というものには、いろいろの委員を二十四、五もつくるようになつておる、その委員は議會毎に今の委員のように變更することなく、その議員の任期中同じ委員になつておるというような建前をとつております、そうすると結局その委員たることについては、特に研究し、特別の知識を得られ、そうして專門的になるという建前だと思います、今までの衆議院でつくつて參りました所の委員制度と、新しい國會法に豫想されておる委員とは、根本的にその性質と運用の機能の發揮において違うようになる、この内閣法が出來まして、新しい憲法の下に運用される場合には、今のような委員のことを御想定なされないで、新しい建前でお考えになれば、今と違つたようなものができはせぬか、さように考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=37
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038・竹山祐太郎
○竹山委員 たいへん懇切丁寧な御答辯で、よくわかりましたが、私の伺いたい點は、新憲法の下で新しく變るのだからということは、よくわかりますが、吉田首相も言つておらるるように新憲法を施行する以上は、まだ效力は發生しないかも知れんが、新憲法の精神で内閣も運營されておると私は信じて質問をしておるのでありまして、新憲法になつたらすつかり皆變るのだというのならば、これはもう議論拔きです、私の言うのは、先ほどお話しのように、國會法の委員はよくわかる、國會法の方の委員會は、議會が積極的に自分の方で政策の檢討をする委員會でありますから、これはそれをつくつて行くだらうと思いますが、それだけで一體今まで何らかの必要があつて、政府の方にいろいろできて來た委員會というものを全部やめてしまつて、政府の行政の運用は差支えないのか、今度は政府の委員にはなれないことに國會法の方できめられるとすると全くなくなつてしまう、一例を言うならば、前議會において財産税法を審議したけれども、その實體たるべき評價の問題は政府が用意ができないから全く白紙委任のような恰好で法律をきめて、その實體たる評價基準のごときは後で決めるというのでありますから、實質的に見れば議會の延長とも見るべき評價委員會のごとき、これは衆議院議員がはいつてやるのは當然だと思います、そういうものを政府がつくつているのを、われわれは決して間違つていると思つているのではない、だから新憲法の下においても、政府の中にそういう行政運用の際、國會の決議と關連のある行政の運用に對して、衆議院議員が或はお話のように正しく政黨を代表して出るべきであると思いますが、そういう出方をしてやつて行く委員會というものが全く不要なのかどうか、今は舊憲法なのだから、今のことは論議しないと仰しやれば私は論議しませんが、私の伺いたいのは、今の内閣法も新憲法の下においてやつて行こうということで、論議しているのでありますから、私も新憲法の下においてこの内閣法の想定する行政の運用に當つては、そういふ委員會というものをおつくりにならないでいいのかどうかということを、もう一度お伺いいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=38
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039・植原悦二郎
○植原國務大臣 議會を中心とした政治を行う、議會を代表する内閣が行政の事務を擔當する、さような下において議會をよく代表せしめる、議會とよく連絡をとる必要がありますれば、その必要に應じて委員會はつくられると思います、そういう場合において、竹山君の言われるような委員會があつてよろしいという場合には、さようなことになろうと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=39
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040・竹山祐太郎
○竹山委員 そうなりますと、今衆議院で用意をしている所の國會法では、できないことになるのではないかと思う、衆議院議員は政府の委員に一切なつてはいかぬというようなことを想像してきめておりますが、政府はそれでもよろしいのかどうか、もう一度伺います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=40
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041・植原悦二郎
○植原國務大臣 まだ國會法が出て參りませんので、その國會法の規定を見なければ、それに對して私今はつきりとしたお答えをしない方がよかろうと思います、殊に國會法は政府の提案でなく議員の提案と了解しておりますから、その規定に對して私が今意見を述べることは、少しく僭越かと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=41
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042・竹山祐太郎
○竹山委員 たいへん御遠慮でありますが、これは大事な問題でありますから、政府は出てから論議してもいいのでありますが、私はこの内閣法の運營上重大な問題だと思いますから、内閣法の行政の運用上、政府の委員會というものは、もうつくらぬでもいいのかどうか、これは僭越でもなんでもない、やはりお考えはどちらかにきめておいていただかなければならぬと思いますが、それに對する政府としての御意見を伺います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=42
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043・植原悦二郎
○植原國務大臣 竹山君の御質問は先のことを想定してのことのように思います、しかもそれは國會法を想定してのお話だと思いますが、國會法を想定しては申し上げられませんけれども、議會政治をうまく運用して行くという建前で、さようにすることがよろしいと内閣も政黨も考えました時には、さような委員もできようし、さような委員會をつくることも、ちつとも差支えないのではなからうかと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=43
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044・竹山祐太郎
○竹山委員 非常に手輕にお考えのようでありますが、私はあの國會法の注文がはたして議員だけの積極的な發意で行われたものであるかどうかということに、若干の疑問をもちますが故に申すのであります、決して大臣のお考えが間違つていると申すのではないのでありまして、政府が行政の運營上必要があるというならば、そういうものが必要があるということを明確になさつておく方がよかろう、きまつてしまつてから、それは困つたと言うのではいけないと思うので、たいへん諄いようでありますが、申すのであります、なぜ私がこの問題をさう追究するかと申しますと、私は決してこの制度全體が惡いという意味でばかり言つているのではない、お話のようにこれを最もうまく運營すれば、非常にうまく行くと思います、何かこう他の方面に對して惡いやうにとられて、政府が今後ほんとうに行政の運營をする上にうまく行かぬようなことがあつては、これは國のためにならぬ、これは内閣の行政運營の點から、政府としてははつきりとした今後の考え方をきめておるべき筈だし、また今やつていることは大臣が仰しやるように、まことに過渡的だと仰しやるけれども、これは私にとつてみれば甚だけしからぬ話だと思う、われわれは新憲法をきめて日本の再建にも出發しておる、いつまでが過渡的か知らぬけれども、そんないつまでも過渡的な行政をやつておられたのでは困るので、いいと信ずることは速やかに新憲法の精神に則つてやつて行くべきである、そういう意味において、今の政府がやつていることが惡ければ改めるのは結構でありますけれども、すつかりこれをやめてしまうことを想定しての制度のようなものを、今からの委員會には取り入れておるということは、きわめて矛盾をしているようにも感じますので、重ねて申し上げたのであります、しかし餘りはつきりとおきまりになつていないようなことを重ねて追究するのもどうかと思いますから、私はこの問題についてはこの程度にいたしておきます
なお官吏制度の問題に關連して大藏當局に質問したい問題があるのであります、これは委員長に御相談でありますが、主計局長がどこか廻わつておられるそうですから、私の質問はこの分だけ留保したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=44
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045・高橋泰雄
○高橋委員長 承知いたしました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=45
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046・植原悦二郎
○植原國務大臣 答えは要らないというお話だが、一言申し上げておかなければならぬと思います、この内閣が過渡的であるということで、その日暮しをしているのでは斷じてありません、新憲法は通過いたしました、ただしその效力を發生するのは五月三日後であります、只今御審議を願つている内閣法も、五月三日後でなければ運用のできないものであります、それならば五月三日後に直ちに運用するかと言えば、さようでもないと思います、なぜかならば、新憲法ができたから政府も議會もその時に全く送つてしまうかといえば、さようではありません、一つの國家として繼續性をもつておりますものが根本的に新しい憲法ができたからといつて、そこで中斷してとんぼ返りのように變ることはできないのであります、從つてこの憲法において經過法のできていることも御承知であらうと思ひます、この内閣法は新憲法が行われた後の準備であります、そうして現在しておりますことは、新憲法によつていたすことができないで、現行新憲法によつていたしているのであります、その繼續性をもつ國家に對しては、たとえ新しい憲法が目先にあるにいたしても、その繼續性に鑑みて現行の憲法と新しい憲法との移り變りに多くの支障のないように、圓滑に自然にものが轉囘いたすようにいたさなければならないのであります、なお委員の點についていろいろ御議論がありましたが、これだけのことは根本的に御理解願つておくことが必要であらうと思います、議院は立法の權を行うのであります、議院の權能、立法の權を代表して行政の權を行うのが内閣であります、その立法の權を行うものが、内閣の行政に對して必要があればでありますけれども、内閣という特別な内閣法の下で、また憲法の規定の上で、これが政黨を代表する、議會を代表する所の行政機構なりと定めたものの補助機關に、議員が補助的の行動をすることがいいか惡いかということは可なり大きな問題であると思います、それでも行政上必要があるという場合がありましたならば、特殊な委員もできましよう、けれども、根本において、三權分立の建前から言つて、議員は立法を行う、内閣は行政を行うものという、はつきりとした新憲法の建前の下におきまして、今までのように委員が行政の輔佐的になるということは考えられないのであります、その意味を國會法に取り入れているのではありますまいか、國會法のことは議論いたしませんけれども、そういう意味であると御諒解になるならば、今の竹山君の御質問の大部分は、それで解決できることだと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=46
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047・竹山祐太郎
○竹山委員 實は私はそれを伺いたかつたのであります、私は今の御答辯が現内閣のとつている、新憲法の當然考えている精神だと思う、でありますから本會議においてもそのことを私は伺つたので、大臣のお考えのように私は立法權だけかどうか、今後は内閣が國會に對して全部の行政の責任を負うのでありますから、法律のことだけじやないと思いますけれども、あくまで國會が責任を負う以上は、今の御答辯のように行政にまではいつて行くことは、私は間違つていると思つております、内閣の立場を私は大いに同情をして、現内閣のやつていることを頭から惡いのだと言わぬ程度にさつきから申した、お話のようであれば、新憲法をつくられた現内閣が、もうそろそろそういうような委員會を澤山つくらないで、もつとはつきりした行き方をして行くべきようにも思いますから、私は現内閣の今後の御方針を伺おうと思つて實は伺つたのです、どうか今のお考えのように一つ運營をしていただきたいと思う、ただしかし、實際これをやめてしまつてもいいのかどうかといふ點に、私は多少内閣としても御心配というか、問題があろうと思うので、その點のことを伺つておいたらと思つて伺つたのであります、たいへん明瞭になりましたからその點は了解をいたしました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=47
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048・高橋泰雄
○高橋委員長 疋田敏男君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=48
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049・疋田敏男
○疋田委員 私は第四條につきまして少し疑義がありますから伺いたい、「内閣がその職權を行うのは、閣議による」というようになつておりまして、昨日國務大臣のお話では、閣議は合議性、全會一致、全體責任というお話でございました、しかもそのお話の中に、萬一閣議の場合に一人の反對者があるといふ場合においては、總理大臣に任命權があるといふことで、それで處理されるようなお話に伺つたのですが、遡つて昨年の八月九日の終戰直前における内閣が閣議を開きました時に、ポツダム宣言を無條件で受諾するかどうかという、あの重大な閣議の時に反對と贊成が同數であつて、當時總理大臣はやむなく天皇陛下の御聖斷を仰いでおります、從つてその時には天皇陛下の御聖斷によつて最後の斷が決せられておりますが、新憲法に基ずいてこの内閣法がいよいよ適用されることになつた場合に、萬一重大な問題で閣僚が半々に贊否の數が現われた場合においては、總理大臣は一體どういうような御處置をとられるものであるか、まさか新憲法によつて天皇の御聖斷を仰ぐというわけにも行かなくなるのでありますが、その場合に、政黨内閣であるが故に、總理大臣は政黨で相談をして、仲裁でもしてもらうのか、或はまとまらないから、半々で結論がつかないから、總辭職をするのか、しかし總辭職といつても、議論が半々であるから、半分は、總理大臣が總辭職したいというので贊成しても、半分は總辭職をやらないということになつて、これまたまとまらない、こういうことになつた場合に、落付く先はどういう風になるのか、これは杞憂に過ぎないかも知れませんが、過去においてはそういう實例がありまして、殊に東久邇宮殿下が總理大臣をやめた時に、大臣というものは總理大臣の言うことを聽かないものである、こういうことをはつきり仰しやつておいでになる、そうすると、いかに日本が民主的になつたとはいいながら、まさか今後の大臣をぐんと百八十度角度を轉囘して、若い大臣を御出しになるとは考えられない、やはり相當年輩の方々でありますから、そう急に東久邇宮殿下が言つた時と變つた思想を持つて内閣を組織し、また行政を行われるとも考えませんから、やはりいろいろ各省割據してその意見を述べる、或は總理大臣の意見を聽かないという問題が多々起つて來ようと思います、そういうことが想像されますから、今のような實は杞憂が浮んで參ります、これについて國務大臣に御伺いしておきます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=49
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050・植原悦二郎
○植原國務大臣 疋田さんに御答えいたします、鈴木内閣、東久邇宮内閣のことがどうあろうとも私はここでかれこれ申す次第ではありません、それはお話として伺つておきませうが、只今皆樣方に御審議を願つておる内閣法の建前で參りますれば、内閣といものは一つのものとしてのみそこに現われる、また新憲法の下においては内閣總理大臣は必ずや國會の衆望を擔う人でなければならぬ、それでなければ國會が推薦する氣遣ひはありません、國會が推薦したものに陛下が御任命になる、今までの問題の組織にいたしますれば、内閣總理大臣も陛下の任命、現在の憲法においては各國務大臣も陛下の任命、各國務大臣は個々に陛下に對して責任を有するように憲法に規定されている、新しい憲法においては總理大臣たる者のみが國會の推擧による、そうしてその他の國務大臣も勿論國會の同意を經られないものは——たとい法で規定する如何に拘らず、政黨内閣の議會政治を行う上において、國會が承認しないような者は、國務大臣になり得ないと思います、その國務大臣は内閣總理大臣が任命する形になります、從つて總理大臣は各國務大臣の或る意味から言いますれば、法文に決めてなくも、實質的においては任免黜陟の權までもつようなことになるのでありますから、總理大臣が主宰いたしまして、總理大臣の力によつて内閣を統制する場合に、今の御説のごとき場面は、まず萬々一なかろうと思います、もし、かりに或る一部の人が内閣の不一致を招くような場合においては、總理大臣はその人に對してやめて貰うこともできるし、またほんとうに議會政治が中心となり、政黨が中心になりますならば、さような人が自分の良心と平素聲明している所の主義主張が、内閣と容れない場合には當然その人は辭職すると思います、まさか自分一個のために内閣を瓦解せしむるようなことがあるような措置は、その人の出身政黨やその人の立場が國民の輿論の上にあるという建前から言えば、そういうことは起り得ないと思います、しかしただ想像から言いますならば、人間であることだから、そういうことも絶對にあり得ないことは言われませんが、もし總理大臣の力が、内閣を統一して全會一致の、閣議を經るようなことができない場合、どうしてもそれを抑え切れない場合には、内閣の不統一で辭職するという形になつて解決されるのでなかろうかと思います、さようなことはこれから議會、國民、政黨を代表する國會の信望のある人にして、さような不統制を招くようなことは、まず、あり得ないと考える方が正しくはなからうかと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=50
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051・疋田敏男
○疋田委員 只今の御答えはよくわかりました、それでは次にお尋ねいたしますが、昨日の國務大臣のお話の中に、小黨分立というようなことは將來なくなつて、二大政黨というような、イギリス式な政黨ができて、そうして内閣ができることが、非常にうまく國政の運用が行くのだ、フランスの實例をお話になつて、いろいろ昨日どなたかの御質問に御説明がございましたが、しかしそういう意味がら、中選擧區ができ上るものではございますまいが、小選擧區であれば、或は國務大臣がお話のように自由黨、或は進歩黨の方が、たとえば大勝利を得られてそういうような二大政黨、社會黨と進歩自由兩黨、或は進歩自由兩黨が合同せられて二大政黨の内閣をつくるというようなことが實現するかも知れませんが、少くとも中選擧區をもつとやられるならば、われわれは小黨ですが、決して小黨はなくならないと思います現下の日本の情勢として、さようにならないといたしますならば、これも想定ですけれども、しかしながら、いよいよ新憲法を實施し、内閣法が實施されることになつた場合においては、小黨もあるままの姿において新しい内閣ができなければなりません、そういたします場合において、新しい現在の日本は國内闘爭をやるべき場合ではない、自由黨でも進歩黨でも社會黨でも、その他の小黨でも、今日は敗戰という大きな現實の姿の下において、お互いが手を握つて、そうして國内處理、平和會談の促進というような重大な問題に向つて行かなくてはいけない、これは私の一つの信念であり、常に、最近も各方面にこれを説いておりますが、非常に國民の中に共鳴者が多い、かような考え方をしております時に、現政府と申しますか、或は將來こういうような小黨がある場合に、今の國務大臣のお話では連立内閣はいけないということになると、私の議論と大分違つて參るのであります、現在の姿においても、私は早く吉田内閣も、もう少し大きな觀點から、社會黨にしてもさうですが、連立内閣を——連立ということよりも、吉田内閣を白紙の立場に置いて、もつと刻下の日本ということを考えていただいて、あらゆる政黨を對等の立場で見て、擧國一致内閣を今からつくつて、いろいろの外交問題や或は平和促進問題にぶつかつて行くがいいじやないか、私はこう考える、或はこれはちよつとお尋ねするのが無理かも知れませんが、昨日連立内閣は面白くないというお話があつたので、たいへん質問の要點は内閣法とははずれておるかも知れませんが、國務大臣の御意見を一つ拜聽してみたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=51
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052・植原悦二郎
○植原國務大臣 疋田君にお答えいたします、只今お話の日本の現状は、内外にわたつて、きわめて容易ならざる事態である、かような場合においては、國民をすべての方面で代表するような形の内閣をつくつて、今までの通り言葉で申すならば、擧國一致の内閣をつくつた方がいいじやないかという御意見のように承りましたが、さようなことも一つの考え方であると思います、また現在の日本が實に容易ならざる所の國情である、この敗戰日本の國家再建ということは、なまやさしいことではないと思います、今日勞働者の隨分はげしい倒閣運動もありますが、これからしようとする方からいえば相當の理由もありましようが、今日はひとり勞働者のみが生活に困難しているわけではありません、海外から引揚げて來た五百萬の人などは、勞働者以上に困難な状態に陷つております、また今まで相當な恩給をとつた人も恩給をとれないようになり、年とつて働くことができないようになつている人も、また今まで株券をもつておつて、その株の收入によつて生活しておつたというような人も、株券の配當がほとんどなくなつて、食べられないという形の人もあります、それだからそういうことを考えます時に、今日困る者はひとり勞働者のみではない、ほんとうにこの時局を皆認識して起ち上らなければならないと思います先刻實は私日本タイムスを見ておつて非常に感じたことがあります、アメリカの産別系の同盟罷業の指揮をしている所のルイスは、御承知の通り無煙炭の非常に大きい爭議を起しまして、その問題のためにアメリカの大審院の問題までもひき起すというようなことであつたが、アメリカの政府は、今日勞働者の待遇のことも考慮しなければならないが、國家全體の福祉のことを考える場合に、勞働法規如何に拘らず、かような爭議をなすことは、國家福祉増進の上、産業發達のためによろしくないとして、トルーマン大統領は斷乎この爭議に干渉したのであります、こういうことは實に勞働者の運動と、國家の福祉全體を考慮して、實に強い、いい行き方だということを日本タイムスは述べております、もう一つそれと同時にルイスは百八十度の轉換をして、輿論に非なりと見た時は、直ちに罷業をやめてしまつた、この兩者とも、かくあつてこそ國家の隆盛をはかつて、かくあつてこそ勞働者の地位も向上でき、産業の發達もできる、これは日本の今日の國民が、もつて他山の石となすべきことではなかろうか、この心掛けがあつたらば、今日の日本の勞働爭議の問題を解決するなどということは、まことに易易たることであると私は感じました、そういう建前から言いますると、もし疋田さんのようなお考えで、皆んな自分を忘れて國家のために當ろうという者だけでありまして、そういう人が内閣をつくつて今後の難局を切り拔けるというようなことならば、まことに結構だらうと思います、しかし原則といたしましては、國民に向つて違つた所の主張、違つた政策を述べております者が、内閣をつくつた場合に、一時はいいでしようけれども、これがほんとに自己を捨てて國家のために挺身する者が集まつた場合でなければ、不調和を招きます、不調和を招けば内閣の分裂を來します、或は内閣の不統一で瓦解するような恐れがあるのであります、それだから原則としては、やはり同じ黨をもつて内閣をつくるということが一番よろしいのだ、ただしほんとに全部の人が國家を唯一の目的として、私を捨てて非常な難局を救おうとする場合に、皆んなそれに一致するならば、あなたの仰しやることもまことに結構だろうと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=52
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053・高橋泰雄
○高橋委員長 疋田君におはかりいたします、今野田主計局長がみえられまして他の會議のために行かなければならぬそうであります、そこで竹山君に發言を許したいと思います、御諒承を願います竹山祐太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=53
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054・竹山祐太郎
○竹山委員 主計局長に、先ほど官吏制度の問題を質問いたしたことに關連をして、極く簡單に今年の今までの豫算及び今後の追加豫算を含めて、日本の全體の人件費が、大體政府の豫算の中でどのくらいを占めておるか、なお明年度の見當がつけば結構でありますが、これはむずかしければよろしゆうございますが、現在の状態はどのくらいか、なおこれに關連をして食えない官吏の待遇改善の問題が叫ばれておるのでありますが、私は本會議の際も申し述べたように、國家を救う今の行政の中心として、いい官吏に對しては徹底的に待遇の改善をしてやるべきではないかというふうに思いますが、これを政府としてやるとすればどのくらいのものが要るか、また政府で今きまつておる用意は、どの程度にきまつておるのでありましようかということを、極く簡單に伺いたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=54
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055・野田卯一
○野田政府委員 お答え申し上げます、本年度、すなわち昭和二十一年度の豫算におきまする人件費がどのくらいになつているかといふことでございますが、これは本年度の改定豫算の本豫算竝びに追加豫算合計六百五十八億圓になつております、この中で人件費と認められるものは四十八億七千七百萬圓、この人件費の中にはいわゆる行政費でないものを含んでおります、すなわち同胞引揚げ關係の費用でありまして、朝鮮とか臺灣におりました總督府の役人、こういう者に對する給與がはいつております、これは跡始末でありまして、行政費に入れるべきものでない、また海外におります軍人、これに對する留守宅渡しをしております、またそういう軍人が内地に歸つて參ります場合、今まで支拂いの滯つているものを、一時に支拂うというような費用がはいつております、その金が約三十二億五千萬圓くらい含まれておりますから、それを差し引いた殘りがいわば行政費の中に含まれている人件費と見られると思います、それから他の觀點から申し上げますと、この二十一年度の人件費は、途中におきまして幾度も改訂がございました、只今申し上げました數字は實際要る金を申し上げたわけでございます、すなわち初めの四月、五月といふのは惡くて、六月、七月とだんだんよくなつてをりますが、その實際の金額を合わせた數字が只今申し上げた數字でございます、現在の水準におきましてどのくらいの金がかかるかといふことを別な觀點から申し上げますと、これは十月ごろの現在をとつて申し上げるのでありますが、それによりますと、一般會計のいわゆる本給に相當するものは年額にいたしまして十九億六千百萬圓、それから六大都市手當に準ずる勤務地手當が七千四百萬、家族手當が四億三百萬圓、合計いたしまして二十四億三千九百萬圓、これが一般會計の人件費というわけであります、これがほぼ行政費の中の人件費、こう御承知いただいて間違いないと思います、そのほか同じやうな觀點から特別會計を取つてみますと、總額におきまして年間約九十三億三千三百萬圓という額になつております
それから次ぎに待遇改善の問題でありますが、最近政府關係の職員といたしまして、全遞、國鐵、全官公、こういふ方面から待遇改善の叫びが擧つております、給與水準の全般的引上げの問題、或は越年資金の要求というものがあります、私の手許に詳しいものをもつておりませんので、大體のことを申し上げますと、今囘の全遞、國鐵、全官公の要求の内容は、各組合によりまして要求内容が異つておりますので、一律には申し上げられませんが、その中で全遞の要求内容が、算盤を彈いていくらになるかといふことを算出するためには、一番詳しくできておりますので、それを中心にして申し上げてみたいと思います、全遞の要求によりまするいわゆる全般的な水準引上げ、この問題を取り上げて見ますと、これが現在は平均の給與が月五百七十三圓になつておるそれを遞信省側の計算によりますと、千七百五圓に引上げる、こういう要求だと見ております、これに對しまして全遞の方の計算では、いや、これは千七百五圓ではない、千八百二十八圓になるのだということで、ここに多少食い違いがあるのであります、いすれにいたしましても、五百七十三圓のものを千七百五圓、或はまた組合計算によれば千八百二十八圓に引上げるということでありますので、極く大掴みに申し上げますれば三倍以上の引上げになるというわけであります、國鐵、全官公の要求の内容はこれほど明確には出ておりません、この全遞の要求が三倍強になつておりますので、かりに現在の三倍に引上げるのだ、こう要求内容を假定いたしまして、國家の負擔がどういうふうに殖えるかという數字のあらましを申し上げて見たいと思います、先ほどちよつと觸れましたように、現在の水準における給與は本俸、勤務地手當、家族手當等合計いたしまして、一般會計におきましては年間二十四億三千九百萬圓ということになつております、特別會計は九十三億三千三百萬圓、そのほかに政府の一般會計と密接なる關連をもつて參ります地方職員の給與でありますが、これが八十五億一千六百萬圓ということになりまして、その一般會計、特別會計及び地方職員の給與を總計いたしますと、年間二百二億八千八百萬圓といふことになつております、この水準をかりに三倍に引上げるといたしますならば、いくらになるかと申しますと、一般會計では七十三億一千七百萬圓、特別會計では二百七十九億九千九百萬圓地方職員の方におきまして二百五十五億四千八百萬圓、合計いたしますと六百八億六千四百萬圓になります、これを現在の水準と今の上つたあとの水準との差額を求めますと、つまりそれだけ政府負擔が殖える、その數字を申し上げますと、一般會計では四十八億八百萬圓、特別會計におきまして百八十六億六千六百萬圓、地方職員におきまして百七十億三千五百萬圓、合計いたしますと四百五億七千六百萬圓、これが増加をいたすわけであります、一般會計の増加分は、一般會計が負擔するということが考えられるわけでありますが、特別會計の百八十六億六千六百萬圓殖えまするうちには、特別會計自ら負擔するものと、一般會計が賄わなければならぬものと兩樣あるわけであります、それから地方職員の分でありますが、この増加額百七十億のうち、大部分はこれは國庫から出してやらなければ、今日の地方會計では、とてもそれの負擔に堪えられないといふ現状になつております、そういうのをかれこれいたしますと、一般會計の負擔というものは二百億以上に相なるといふ實情でございます、この要求に對して、政府としてどういふ態度をとるかということにつきましては、非常に重大問題でありまして、目下部内において鋭意研究中でございまして、まだ申し上げる段階に至つておらないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=55
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056・高橋泰雄
○高橋委員長 竹山君よろしゆうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=56
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057・竹山祐太郎
○竹山委員 ちよつと——その中には勿論教育も全部含んでおりましようし、現在の政府が全部出している關係人件費を皆んな含んでいると考えてよろしゆうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=57
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058・野田卯一
○野田政府委員 只今申し上げました數字の中には、勿論教育も含んでおりますし、警察官も全部含んでおります、教育とか警察官の分は、この中で地方職員の中に含まれているのであります、政府がどうして出すかという點でありますが、教育の分になりますと、國民學校の分につきましては、義務教育費國庫負擔金で、その半分を當然法律によつて政府が負擔することになつております、あとの半分を地方團體が負擔することになりますが、今日の財政の状況では、とてもそれを地方團體が背負い切れませんので、そのだいたい九割——半分は當然政府が出し、殘つた半分のさらに九割を政府が負擔するということになつております、警察官につきましては、警察費連帶支辨金によりまして、地方警察費の六割というものを當然政府が負擔する、あとの四割を地方が負擔するということになつておるのでありますがそのまた四割の九割を地方財政が困つておるからというので政府が負擔する建前になつております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=58
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059・竹山祐太郎
○竹山委員 從來の慣例はもう役に立ちますまいが、大藏當局の豫算編成の方式からいえば、この人件費は當然經常的な租税收入から上げなければならぬように思うのでありますが、一體從來及び現在のこの財源についてはどういうものを豫想して考えられるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=59
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060・野田卯一
○野田政府委員 お答えいたします、政府といたしましてこの要求をどの程度に認めるかという場合に、一番問題になるのは、御指摘の通り財源問題であります、財源があればこの要求はできるだけ今日の情勢に照らしまして高く認めたいという氣持でございます、財源の點につきましては、最近の情勢から見まして、なかなか困難な點も多いのでありまして、たとえて申しますと、財源を求める大きなものといたしましては、税金、官業收入、國債、大きく分ければこの三つになると思うのであります、官業收入の中では、その大部分は專賣局の益金で、專賣局の益金と申しますのは煙草の賣り上げの利益であります、この煙草の利益をまたうんと殖やすとすれば、どうしてもまた煙草の大幅の値上げをしなければならぬ、こういう問題になります、しかしながらここに官廳職員の窮状を救うために必要とあれば、どうしてもこれも考えなければならぬと思ひます、しかしそんな大きなものは期待できないのではないかという感じがいたすのであります、それで勢い中心的に考えられるのは、やはり租税という問題になると思ふのであります、今日におきましては、租税の體系におきまして、この現在の物價等の上昇、或は所得の漸次増加いたして行きます大勢に十分なと申しますか、その情勢に對應し得られないような弱點があると考えられるのであります、その一つの點を申し上げますれば、實績課税をする、すなわち普通の事業所得につきましては、一年前の實績を基準にして今年の税金を取る、こういうことになりますと、物の値段が上がり或は所得が殖えるような場合におきましては、税金が常に實際の事情より少くなるようなことになります、それに對しまして實績課税をいわゆる豫算課税に改めて、そうして支出と税收というものとを成るべくマツチをさせるようにするというようなことが當然考えられる、それからまた税金の最近の實情を見ておりますと國民所得の關係におきまして、勤勞所得と勤勞所得税、それから事業所得と事業所得税、こういうものの内容を睨み合せて見ますと、勤勞よりも事業の方の負擔が輕いということを痛感するのであります、たとえて申上げますと、私達の方で調べました今年の一月から六月までの間の國民所得の實績、それによりますと、勤勞所得というものが二一・六%といふ割合になつております、それから事業所得というものが七一・九%、あと六・五%は、これは資産所得であります、非常に資産所得というものが少くて、事業所得というものが壓倒的に多いのであります、これに對しまして本年度の豫算において、歳入の方でどういうふうにみておるかと申しますと、勤勞所得についての分類所得税——全部はよくわかりませんが、勤勞所得に對して約四十億位の税收、それから事業所得に對しては二十數億ではなかつたかと私は記憶しておりますが、それが割合に少い、そういうものをみますと、勿論事業所得については實績課税をいたしております、勤勞所得の分類所得税は支拂う時にそれから二割ずつ差引いてとるということになつておりまして、課税の方法が違う、すなはち勤勞所得につきましては、今日でも俸給が上れば直ちにそれから引かれるというわけで、所得の増加に伴つて税收が殖えて來る、事業所得の方は昨年の實績から取りますから、どうしても遲れる、從つて税額が小さく出るという點があるのでありますが、とにかく事業所得が非常に負擔が輕いという點が窺われるのであります、勤勞所得は豫算でありまして實績ではありませんから、それだけでは判斷がつきませんが、要するに事業所得に對する税が非常に輕くなつておる、それで所得の捕捉ができないために税が高くなつておる、こういう問題がございまして、こういう方面に力を注がなければならぬ、すなわちもう一遍繰り返して申しますと、課税の方法を變えるといふ問題、竝びに事業所得を捕捉して、それに對して適切な課税をする、こういう點に重點を注いで税收入をうんと上げなければならぬ、こういうことを考えて行かなければならぬ、國債の點につきましては、國民の貯蓄の状況から見ましても、あまりにこれに多くを期待することは困難であります、勿論全然國債によらないでやつて行くということは、ほとんど不可能な事實だと思いますが、でき得る限り國債による部分は少くして行く、こういうふうに考えておる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=60
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061・竹山祐太郎
○竹山委員 主計局長にこれ以上のことを御要求することは無理だと思うのでありますが、今の點について私も多少心配の點がありますから伺つておきます、私も税金の問題だと思う、一體税金がどれだけ取れるかということ、一方において勤勞所得税を全廢せよとか、減額をしろという要求、これもお話の通り非常に無理からぬことで、まことに同情しなければならぬ、所が今主計局長のお話のように、事業所得がきわめて少いからということで、狙いは恐らく全部事業所得に向うだらうと思うのであります、その場合に政府は二十年度と二十一年度の所得税の收入から見ましても、全體が約二倍半殖えておる、そのうち農業者の所得が五倍に殖えておる、商工業者は一倍半しか殖えていない、それから勤勞所得は二倍以上に殖えておるという比率であります、このことは農産物價が上つたからということで、簡單にも考えられましようけれども、その主計局長のお考えの線に沿つて事業所得を累増して行くということになりますと、恐らく勤勞所得は減らされなければならぬ、事業所得を殖やすとすれば、どこへ行くかということを想像いたしますと、農業者の所得税に非常なる重課をしなければならぬという結果になると、私は想定をされるのであります、その反面東京のごときは新聞で拜見をしても、ちよつと小屋をつくつて活動寫眞をやれば、半年か一年で元をとつてしまうという、非常なるインフレーシヨンが都會には行われておる、安い米價で我慢をさせられておる農村において本年だけでも五倍に殖やされておる税金を、來年は一體どうなるだらうかということを想像してみますと、まことにこれは政治問題として重大な問題であらうと思うのであります、この點から考えて、恐らく私はこの官公吏の待遇改善の問題と農民の問題とが、政治的に見て非常にむずかしい問題になろうと思うのであります、これに對してお答えを得られるならば、内閣の現在の心境について植原國務大臣の御見解を伺いたいと思うのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=61
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062・植原悦二郎
○植原國務大臣 その問題は主として豫算に關する問題でありますし、追加豫算も明日あたり上程されると思いますから、私がお答えするよりも、大藏大臣のお答えを待つた方が適當だろうと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=62
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063・竹山祐太郎
○竹山委員 それではこれで私は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=63
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064・疋田敏男
○疋田委員 引續いてお尋ねをいたします、只今の私の質問に對する國務大臣の御答辯は、原則論としては御同感であります、しかしながら現下の情勢を御覽になりますならば、既に近く勞働大衆は現内閣不信任の大會を開くというような情勢になつております、これなども根本の原因はどこにあるかと言えば、前議會において勤勞大衆が反對をしておる勞働關係調整法案を、無理押しに議會へお出しになられて、自由、進歩の多數を恃みといたしてこれを通過させられたという所に、根本の原因が生れて參つておるのでありまして、私は各方面を廻わつて見て勤勞者に接してそういうような空氣を切實に感じておるのであります、殊に或る省のごときは全員擧つて、この次ぎの選擧には自由黨と進歩黨は出すなという指令まで出しておる所があるのでありまして、こういうような情勢が高まつておる所に、先般の電産問題が起つて、折角政府がおつくりになられた勞調法によつて勞働委員會で調停をしようという話が出ておるに拘らず、勞調法をお出しになつたこの吉田内閣がこれを拒絶せられた、あの時にもし吉田内閣が、しばらく考慮さしてくれ、こういう言葉によつてその間に勞働委員會で出された案を御研究になつたならば、あれだけ電産問題は惡化しなかつたであらうと私どもは思いますが、これもまた當時の吉田内閣の非常な不手際で、この二つの問題が重なつて、今日のように勤勞大衆が、産業の興隆に一生懸命になるということよりも、現内閣を倒すということの方へ力を入れておりますることは、これは對外的に考えても、或は現下の日本の産業状態から考えても、非常に憂慮に堪えないのであります、從つて私は現在の状態から行くならば、少くとも日本は平和條約を締結して、獨立國としての日本になるまでは、たとえ形はいかに變態であつても、この際擧國一致内閣をつくつて、そうして勤勞大衆にもまた産業の興隆に方向を轉換していただき、吉田内閣も、もし勤勞大衆に對する理解の足らざる所があるならば、理解をもつて各黨に呼びかけ、現吉田内閣を一應御破算にして、新しい出發の、白紙の擧國一致内閣の態勢にみずから襟度を示してなつて行つて、しかして日本を救う、こういうふうに行くことが、最も今急務ではないかと私は思います、從つて新憲法が實施せられても、平和條約が締結されるまでは、やはりこういう態勢が今の日本に必要であるということを私は強く強調いたしたいのでありまして、重ねてこれは國務大臣に私は希望いたします、そうして次ぎの問題に移ります
第五條に「外交關係について國會に報告す」るという文章があります、これと新憲法の第七十三條の第二號には「外交關係を處理すること、」第三號には「條約を締結すること、但し、事前に、時宜によつては事後に國會の承認を經ることを必要とする、」とこうあります、この間に一方は單に「國會に報告する」となつており、一方は「國會の承認を經ることを必要とする」とありますが、この點について多少曖昧な點が内閣法の方にはあるように考えまするが、この點いかがでございましようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=64
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065・植原悦二郎
○植原國務大臣 前段にお述べになつたことは、御意見として承つておけばよろしいようにも思いますけれども、事すこぶる重大でありますから、一應私の意見を申し上げておきます、先刻私の申し上げた通り、日本の現状は容易ならざるものであります、この再建をはかるには、國民全體が協力することが望ましいことであります、今日の勞働階級の人が、その受けます所の給與或は待遇において、御滿足のできないことも了解できますけれども、今日の生活の状態から、苦しんでおりますものは、ひとり勞働者のみではありません、以前は資本家階級といわれた者も、株式によつて生活するような者は、或は勞働者よりももつと少い所得で、その露命を繋いで行く者も相當ありましよう、また恩給で生活しておつた者が、恩給がなくなつて困つているというような人もありましよう、さようなことを考えれば、今日働いておいでになる勞働者ぐらいの苦しみをしている人は、澤山あると思いますけれども、これも皆んな忍んでいる、今勞調法の問題がどうだ、こうだといふことを仰しやつたのでありますが、これは實際は一つの行掛りでありましよう、私は國家を思う者ならば、勞調法の取扱いがよいとか、惡いとか——善惡は別問題でありますが、よいとか惡いとかいふ問題につきましては、それをきつかけにして、なお過大な要求をするなどということは、どうも考えられないことであります、そういうような状態である、また全體の世相から言つても自由主義を利己主義と解釋をし、今まで壓迫されておつたその反動だと言えば、説明はつきますけれども、正しく自由主義を解釋しておらない、自己反省と自制とが伴わない自由主義は、危險千萬であります、大部分の考え方がさような間違つた考えをしておるとは言いませんけれども、ややもすればそういう考え方をしておる者が多い、殊に日本の國民は御承知の通り非常に附和雷同性に富んでおります、勝てない戰爭であるにも拘らす、權力者がそれを引きずればそれに附和雷同して行く、實は戰爭中右と言つて、それが國家のためだといつて活動した人が、現在は左になつて隨分危險な活動をしておることを目撃いたします、そういう状態におきまして、ただ擧國一致がいいからといつて寄せ集めをしたならば、その内閣はきわめて有力なものになるにあらずして、かえつて極度な脆弱性をもつのである、機を見てわずかな言いがかりをつけて内閣の不統一を招いて、破壞しようとすればできるのであります、だから全體、政治をやつている者が、或は勞働を指導している者が、自己を捨ててほんとに國家のために貢獻する考えなら、あなた方のお考えもよからうと思いますが、日本の現實としたならば、連立内閣はすこぶる有力なものにあらずして、脆弱なるもの、今日形式だけは整いましても、翌日どんな波瀾を招かぬとも限らぬ、なるべく政治は主張を一にする者が寄つて政局に當ることが、一番安固なことだと思います、その點においては、簡單に擧國一致内閣、或は連立内閣が有力だなんとお考えになるお考えよりも、私どもは日本の現實をそのまま觀測いたしまして、かえつてさような内閣は脆弱なものだと考えております
次ぎに外交の問題でありますが、外交の問題につきましては、條約を締結しようとするその審議の途中にこれを發表すれば、折角できるものも、できないようなことがあります、まだここに提出されておる所の内閣法でも、また憲法の七十三條でも、その内閣は、國民の多數の意思を代表する議會の人を代表して、國策を遂行するのでありますから、その線に沿うて條約を締結する、その締結された條約は議會の承認を經なければならぬ、そこで條約を締結する、或は外交交渉を進捗せしめておる間でありましても、でき得る限り國民の諒解を得るためにそれを議會に報告する、その規定がここに只今御指摘になつたことで、國務及び外交關係について國會に報告する、こういうことで、でき上つた條約でも或は協定でも、これはでき上つたものとして報告をする、そこまでに至つた經過を報告する、こういうことで、この兩者の間に少しも矛盾の考えも何もないものだと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=65
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066・疋田敏男
○疋田委員 それでは次ぎに移りまして、第二條の國務大臣は十六人以内となつておりまするが、この十六人以内の中に、現在の政府におきまして、今問題になつております國土省、或は水産省というものに對する御構想が今日あるのかないのか、これは非常に國民の中にも要望が強くあるのでありまして、殊に國土省は先般前議會においても本會議に決議案として出そうかといふ問題が起つておつたほどでありまするが、この點についてお尋ねいたしたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=66
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067・植原悦二郎
○植原國務大臣 この二條の十六人の中に、國土省があるかないかということは申し上げ難いのでありますが、現在の内閣組織の下において、現在の國務の擔當の状態を見まして、もし國土省というようなものが議員の方々のお考え、政府の考えでできるとしても、十六人という規定以内でやつて行けると思います、しかしこの十六人の中にそういうことを規定しているとはお答え出來ませんが、十六人という規定の中で、只今お話のような問題が議會において起り、政府においてさようなことを實現しようとしても、特にこの十六人の枠をはずさないでも、できるだろうと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=67
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068・疋田敏男
○疋田委員 今水産省の問題が落ちましたようでありますが、水産省は今の國土省と同じ御意見だろうと思いますから、重ねて伺いません
それでは次ぎに移りまして現在ありまする經濟安定本部につきまして伺いたいのですが、それはいよいよ内閣法が實施された場合におきましては——勿論經濟安定本部は現在の情勢において暫定的につくられたもので、恒久性のものではありませんが、現在の状態から行けば、當分それは繼續されるものと、私どもには考えられるのでありますが、その場合には本法の第十二條の「別に法律の定めるところにより、必要な機關を置き」という、この條項によりまして、これが再度新内閣法の下に繼續されて置かれるものでありまするか、どうでありまするか、この點をお尋ねしたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=68
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069・植原悦二郎
○植原國務大臣 今の經濟安定本部は、内閣總理大臣に直屬する補強機關であります、この機關が必要なる間は、さような形で行けると思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=69
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070・疋田敏男
○疋田委員 私の質問はこれで終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=70
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071・高橋泰雄
○高橋委員長 次會の日程は公報をもつて通知いたします、本日はこれにて散會いたします
午後三時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00319461211&spkNum=71
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